JP2014526890A - トランスフェリン−タムスタチン融合タンパク質並びにそれを作製する方法及びそれを使用する方法 - Google Patents

トランスフェリン−タムスタチン融合タンパク質並びにそれを作製する方法及びそれを使用する方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、タムスタチン又は他の抗血管形成タンパク質と結び付いているトランスフェリンを含む組換えタンパク質と、それらを作製する方法と、それらを使用する方法とを提供する。さらに本発明は、かかる組換えタンパク質を発現することが可能な発現系、プラスミド及び細胞と、それらを作製する方法と、それらを使用する方法とを提供する。
【選択図】図1

Description

本発明は、本発明は、タムスタチン又は他の抗血管形成タンパク質と結び付いているトランスフェリンを含む組換えタンパク質と、それらを作製する方法と、それらを使用する方法とに関する。さらに本発明は、かかる組換えタンパク質を発現することが可能な発現系と、それを作製する方法と、それを使用する方法とに関する。
[関連出願の相互参照]
本願は2011年8月17日に出願された米国仮出願第61/524,508号(その全体が引用することにより本明細書の一部をなすものとする)の優先権の利益を主張する。
脈絡膜血管新生(Choroidal NeoVascularization:CNV)は、弾性線維性仮性黄色腫、網膜色素線条症、ヒストプラスマ症、点状脈絡膜内層症及び滲出型の加齢黄斑変性症(Age related Macular Degeneration:AMD)等の疾患において重度の失明を引き起こし得る、脈絡膜血管系の無制御成長を指す。滲出型AMDは、結晶腔(drusen:ドルーゼン)(補体成分、脂質及びアポリポタンパク質)の沈着によって限局性の虚血領域が生じ、低酸素状態に陥ることで発症する。低酸素状態が血管内皮成長因子(Vascular Endothelial Growth Factor:VEGF)の分泌の増大を引き起こし、脈絡膜内皮細胞を活性化させて、マトリックスメタロプロテイナーゼ(Matrix MetalloProteinases:MMP)を分泌すると考えられる。メタロプロテイナーゼが細胞外基質を分解することによって、内皮細胞の増殖及び該内皮細胞の網膜への移動が可能となる。最終的にMMPの効果によって、新生血管の発生又はCNVが起こり、それにより血液及び脂質の漏出に起因して網膜剥離及び網膜出血及び網膜下病変の形成が引き起こされ得る。発症した場合、CNVは先進国の高齢者集団における失明の主な原因である。
CNVの治療は現在、一部の患者集団に限定されており、血管透過性亢進(vascular hyperpermeability)及び新生血管形成におけるVEGFの有害な作用(role)を抑えることに傾注している。しかしながら、VEGFは創傷治癒、光受容器の生存及び脈絡膜毛細血管床の維持等の生理的活性において建設的で重要な役割も果たす。現在のところ、CNVを治療するのにこれまでに認可されている治療剤は、ラニビズマブ(Lucentis(商標))、アフリベルセプト(Eylea(商標))及びペガプタニブ(Macugen(商標))の2つだけである。これらの治療剤はVEGFを阻害するものである。ラニビズマブは一般的にCNVを治療するのにペガプタニブよりも有効であることが分かっている。ラニビズマブはVEGF−Aの全てのアイソフォームと結合し、血管透過性及び血管成長を含むVEGF活性を阻害する。2つの言及された治療剤以外にも、ラニビズマブの元となった(parent)完全長抗体であるベバシズマブ(Avastin(商標))が、CNVの適応外治療として研究されている。
CNVの治療にこれらの治療法が成功しているが、これらの治療法には、活性化内皮細胞におけるアポトーシスの欠如及び創傷治癒等のVEGF関連の生理活性の潜在的機能障害を含む特有の欠点が存在する。加えて、ラニビズマブの使用は、ヒトの硝子体内への投与後の血栓塞栓事象の速度の増大を含む全身リスクに繋がる。さらに硝子体内のベバシズマブは虚血性発作、血圧上昇、脳血管発作及び致死を伴う。さらにCNVを患う患者の臨床研究において、ラニビズマブに対する奏効率はCNVの患者で僅か約40%であり、文字数の増加は僅か7.2であった。
そのため、副作用の少ない及び/又は治療効果がより良好である、CNVを治療する新規の及び/又はより有効な治療アプローチが必要とされている。
本発明の幾つかの態様は、タムスタチン又は他の類似の抗血管形成タンパク質と結び付いているトランスフェリンを含む組換えタンパク質を提供する。幾つかの実施の形態では、トランスフェリンとタムスタチンとが互いに直接結び付いている。更に他の実施の形態では、トランスフェリンとタムスタチンとがリンカーを介して互いに共有結合で結び付いている。好適なリンカーは当業者にとって既知である。
本発明の他の態様は、タムスタチンと結び付いているトランスフェリンを含む組換えタンパク質をコードする核酸配列を含むプラスミドを提供する。典型的には、組換えタンパク質をコードする核酸配列が発現制御配列と操作可能に結び付いている。
本発明の更に他の態様は、タムスタチンと結び付いているトランスフェリンを含む組換えタンパク質をコードする核酸配列を含む組換え核酸分子を提供する。幾つかの実施の形態では、核酸配列が発現制御配列と操作可能に結び付いている。
本発明の更に他の態様は、タムスタチンと結び付いているトランスフェリンを含む組換えタンパク質をコードする核酸配列を含む組換え核酸分子がトランスフェクトされており、該組換え核酸分子を発現する、組換え宿主細胞を提供する。
本発明の他の態様は、タムスタチンと結び付いているトランスフェリンを含む組換えタンパク質を作製する方法であって、
組換え宿主細胞に、タムスタチンと結び付いているトランスフェリンを含む組換えタンパク質をコードする核酸配列を含む組換え核酸分子をトランスフェクトすることと、
トランスフェクトされた宿主細胞を、タムスタチンと結び付いているトランスフェリンを含む組換えタンパク質を作製するのに十分な条件下で培養することと、
組換えタンパク質を実質的に精製された組換えタンパク質として回収することと、を含む、方法を提供する。
幾つかの実施の形態では、組換えタンパク質が、タムスタチンと直接結び付いているトランスフェリンを含む。
本発明の更に他の態様は、被験体において脈絡膜血管新生(CNV)に関連する臨床病態を治療する方法であって、かかる治療を必要とする該被験体に、タムスタチンと結び付いているトランスフェリン(transferrin)を含む組換えタンパク質を治療的に有効な量投与することを含む、方法を提供する。
幾つかの実施の形態では、CNVに関連する臨床病態が、弾性線維性仮性黄色腫、網膜色素線条症、ヒストプラスマ症、点状脈絡膜内層症又は滲出型の加齢黄斑変性症(AMD)を含む。
本発明の組成物を使用して、限定するものではないが、がん;がん関連血管新生;角膜血管形成;増殖性糖尿病網膜症;新生血管緑内障;眼の他の新生血管障害及び血管増殖性障害;並びに身体の別の部位における他の新生血管障害及び血管増殖性障害等といった他の疾患を治療することもできる。
本発明の組成物を、硝子体内投与、静脈内投与、脈絡膜上投与、局所投与、眼周囲投与、皮下投与、筋肉内投与、網膜下投与、眼後投与、強膜内投与等を含むが、これらに限定されない当業者に既知の方法のいずれかを使用して投与することができる。
トランスフェリン−タムスタチン、ベバシズマブ及びタムスタチンの抗増殖活性を示すグラフである。 様々な濃度のタムスタチン、トランスフェリン−タムスタチン及びベバシズマブタンパク質による、脈絡膜内皮細胞で観察された内皮血管形成の阻害を示すグラフである。 ブラウン−ノルウェー(Brown Norway:BN)ラットにおけるCNV病変サイズのin vivo評価を示す棒グラフである。 トランスフェリン−タムスタチンを保持する遺伝子発現構築物の概略図である。
本発明の幾つかの態様は、タムスタチンと結び付いている(すなわち付着している)トランスフェリンを含む組換えタンパク質を提供する。トランスフェリンはタムスタチンと直接的に又は間接的に(例えばリンカーを介して)結び付くことができる。本発明の他の態様は、タムスタチンと結び付いているトランスフェリンを含む組換えタンパク質をコードする核酸配列を含む組換え核酸分子を提供する。本発明の更なる他の態様は、タムスタチンと結び付いているトランスフェリンを含む組換えタンパク質をコードする核酸配列を含む組換え核酸分子がトランスフェクトされており、該組換え核酸分子を発現する組換え宿主細胞を提供する。本発明の更なる他の態様は、タムスタチンと結び付いているトランスフェリンを含む組換えタンパク質を作製する方法及びそれを使用する方法を提供する。
タムスタチンは、CNVを治療するのに治療的に有効であることが分かっている。何ら理論に束縛されるものではないが、タムスタチンには、現在のCNV療法にはない性質であるアポトーシスを引き起こすことによって血管形成を抑える能力があると考えられている。
タムスタチンは、基底膜に存在するコラーゲンIVのC末端非コラーゲンドメイン(NC1)から最初に得られた内因性血管形成阻害剤である。タムスタチンは、αVβ3インテグリンと結合し、内皮細胞の増殖を妨げることによって、更には内皮細胞アポトーシスを誘導することによって、血管形成を阻害する役割を果たすと考えられている。病態の非存在下では、血管形成分子(例えばVEGF)と抗血管形成分子(例えばタムスタチン)とのバランスが保たれている。低酸素状態及び虚血状態では、血管形成分子と抗血管形成分子とのバランスが乱れると考えられており、それにより血管新生が引き起こされる。タムスタチンのような血管形成阻害剤は血管新生に対抗する身体の固有機構の一部である。
タムスタチンは、ラニビズマブ及びベバシズマブを超える多くの利点があり、これらの抗体よりも治療的に良好であると考えられる。今日までタムスタチン受容体であるαVβ3インテグリンは活性化内皮細胞でのみ見出され、正常な血管では見出されていない。したがって、タムスタチンは、創傷治癒等の生理的プロセスに影響を与えることなく標的となる活性化内皮細胞への道筋を与えると考えられる。タムスタチンは内皮細胞でのアポトーシスを促し、タムスタチンによって引き起こされるアポトーシスが血管の増殖の抑制をもたらすことができ、そのため正常な視力の回復に有利に働くと考えられる。したがって、タムスタチンは、重大な抗VEGF療法関連の副作用を何ら伴うことなく血管新生を有効に治療し、失明を防ぐことができる。
予想外に驚くべきことに、本発明者らによって、CNVでのタムスタチンの治療有効性は、タムスタチンが別のタンパク質と結び付くことで大幅に増大し得ることが発見された。特定の一実施形態では、網膜色素上皮細胞(RPE細胞)からの融合タンパク質の極性分泌を達成するために、タムスタチンをトランスフェリンと結び付けた。RPE単層に曝露されると、好ましいことに融合タンパク質はタムスタチンと比較して側底側に向かって分泌された。トランスフェリン−タムスタチン遺伝子をトランスフェクトした後、形成されたトランスフェリン−タムスタチンタンパク質は、タムスタチン遺伝子産物と比較して極性上皮細胞単層の側底方向に向かってより多く分泌された。組換えトランスフェリン−タムスタチンタンパク質の側底側への分泌によって、活性化内皮細胞及び血管新生脈絡膜内皮細胞の極めて近くにタムスタチンが送達され、それによりタムスタチンの治療活性が亢進した。理論に何ら束縛されるものではないが、AMDを患う患者の眼において鉄含量及びトランスフェリン受容体活性が上昇すると推定されることから、これらの患者の眼では、トランスフェリン−タムスタチンの側底側への分泌の亢進が重要であると考えられる。最も利用可能な鉄排除経路は脈絡膜脈管構造を介したものであると考えられる。さらにこの経路では、トランスフェリン(及びひいては組換えトランスフェリン−タムスタチンタンパク質)の脈絡膜への分泌の増大がもたされる。
上述に基づき、本発明者らは、脈絡膜内皮細胞の移動、増殖及び管形成の阻害における有効性に関して新規のトランスフェリン−タムスタチン融合タンパク質(すなわち組換えトランスフェリン−タムスタチンタンパク質)及びタムスタチンを調べた。これらの活性をベバシズマブと比較した。さらに本発明者らは、十分に確立された極性細胞モデル(例えばメイディン−ダービーイヌ腎臓(Madin-Darby Canine Kidney)細胞、すなわちMDCK細胞)において本発明の組換えタンパク質を極性分泌する能力があるかどうかを判断している。
本明細書で使用される場合、「トランスフェリン」という用語は治療的に有効なトランスフェリン断片を含む。幾つかの実施形態では、「トランスフェリン」という用語は、インテグリンと結合することができるトランスフェリンのペプチド断片を少なくとも有するペプチドを指す。代替的には、「トランスフェリン」という用語は典型的に、トランスフェリンの全ペプチド配列の少なくとも5アミノ酸を有するペプチドを指す。さらに代替的には、「トランスフェリン」という用語は、断片がインテグリンと選択的に結合することが可能である限りにおいて、トランスフェリンの全ペプチド配列の少なくとも25%、典型的には少なくとも50%、多くの場合で少なくとも75%、更により多くの場合で少なくとも90%を有するペプチドを指す。したがって、任意の治療的に有効なトランスフェリン断片を組換えタンパク質の標的取込み及び組換えタンパク質の新生血管領域への分泌(例えば脈絡膜への分泌)に使用することができる。幾つかの実施形態では、治療的に有効なトランスフェリン断片は、典型的にインテグリンと選択的に結合することができるトランスフェリンのペプチド断片を含む。
生物活性を有するトランスフェリン断片の幾つかは当業者に知られている。本発明の範囲には、完全長のトランスフェリンタンパク質及びタムスタチンタンパク質だけでなく、かかる組換えタンパク質が所望の生物活性を有している限りにおいて、これらのタンパク質の一方又は両方の断片も含まれることが理解される。トランスフェリン及び/又はタムスタチンの特定の断片が所望の生物活性を有するか否かについては、本明細書に開示されるようなin vitro実験及びin vivo実験を用いて当業者が容易に判断することができる。したがって、本発明の範囲には、新生血管障害を治療する任意の治療用の融合タンパク質(すなわち組換えタムスタチン−トランスフェリンタンパク質)が含まれ、ここではそれとは関係なくタムスタチン及び/又はトランスフェリンは総タンパク質又はその断片とすることができる。組換えタンパク質は典型的に親タンパク質よりも治療的効果があると考えられる。本発明の組成物は、関連細胞において組換えタンパク質を発現することが可能な組換えタンパク質又は核酸構築物を含む。
系列Iペプチド トランスフェリン断片
側底側への分泌を与えることが可能な代表的なトランスフェリン断片の一部と、これを特定する方法と、これを作製する方法とが本明細書で論考される。
トランスフェリンタンパク質の配列及び様々な分泌タンパク質の配列を分析して、側底側への分泌/輸送が可能な新規の融合タンパク質の生成に適したトランスフェリン断片を特定した。インターロイキン6(Holtkamp et al., Clin Exp Immunol., 1998, 112(1), 34-43)、インターロイキン8(同上)及び血管内皮成長因子A(VEGF−A)(Sonoda et al., AGING, 2010, 2(1), 28-42)等の様々な側底側へと分泌されるタンパク質のペプチド配列の分析によって、かかるタンパク質のN末端アミノ酸において驚くべき類似性が特定された。インターロイキン6、インターロイキン8及び血管内皮成長因子A(VEGF−A)を含むタンパク質は、側底側へと分泌され、ロイシンアミノ酸を豊富に含むと考えられる。さらに、ジロイシン(すなわち「LL」)もこれらのタンパク質のN末端付近に存在する。これらの見解に基づき、本発明者らは、トランスフェリン−タムスタチンの側底側への分泌に関与し得る下記の代表的なペプチドをトランスフェリンにおいて特定した:MRLAVGALL(配列番号1)、MRLAVGALLVC(配列番号2)、LLVCAVLGLCL(配列番号3)、GALLVCAVLGLCL(配列番号4)、LLVCAVLGLCLAV(配列番号5)、GALLVCAVLGLCLAV(配列番号6)及びMRLAVGALLVCLLVCAVLGLCLAV(配列番号7)。したがって幾つかの実施形態では、これらのペプチドを含む任意のペプチド又は組換えペプチドが、トランスフェリン−タムスタチンの側底側への分泌をもたらすのに適している。これらのペプチド(すなわち本明細書で開示されるトランスフェリン断片)は、タムスタチン又は任意の他の好適な治療用タンパク質と融合することで、治療用タンパク質の側底側への(例えば網膜色素上皮細胞を通る脈絡膜への)分泌をもたらす。
系列IIペプチド インテグリンと結合することが可能なトランスフェリンのペプチド:
予想外に驚くべきことに、本発明者らは、トランスフェリンタンパク質が、予想されるトランスフェリン受容体との相互作用に加えて、αVβ3インテグリン受容体とも相互作用することができることを発見した。本発明の組換えトランスフェリン−タムスタチンタンパク質は、タムスタチンの受容体であるαVβ3インテグリン受容体と相互作用するだけでなく、トランスフェリンが存在することからトランスフェリン受容体とも相互作用すると考えられる。コンピュータ上でのトランスフェリン−タムスタチンとαVβ3インテグリン受容体とのドッキングを用いて、本発明者らは、トランスフェリンタンパク質内においてインテグリン受容体と相互作用するアミノ酸を同定した。下記のアミノ酸は、コンピュータ上でのドッキングに基づきインテグリン受容体と相互作用すると考えられる代表的なペプチドの一部である:
Q(127)、N(129)、L(131)、N(148)、I(151)、G(152)、C(156)、L(158)、K(163)、E(166)、K(167)、A(168);及び、
C(246)、T(250)、R(251)、D(259)、E(337)、I(342)、L(345)、T(349)、E(357)、K(359)、L(366)、E(370)、W(377)、C(396)、I(400)、N(402)、E(404)、A(405)、D(406)、L(423)、V(424)、P(425)、E(429)。
これらの相互作用アミノ酸に基づき、トランスフェリンの下記のペプチドをインテグリン受容体と相互作用することが可能なものとして設計した:GFQNLNIGCLKEKAVA(配列番号8)、LLCTRDEILTEKLEWCINEADLVPENY(配列番号9)、トランスフェリン127〜168、トランスフェリン125〜170、トランスフェリン246〜259、トランスフェリン244〜261、トランスフェリン337〜429及びトランスフェリン335〜431。本明細書で使用される場合、「トランスフェリンx〜y」という用語は、アミノ酸「x」からアミノ酸「y」までのトランスフェリンのアミノ酸配列を表す。
系列IIIペプチド トランスフェリン受容体と結合することが可能なトランスフェリン断片:
トランスフェリン受容体と結合することが可能であることが見出されている代表的なトランスフェリン断片の一部が下記に開示される。
トランスフェリン中の下記のアミノ酸がトランスフェリン受容体と相互作用すると考えられている:トランスフェリン161〜169;H(368)、R(371)、L(372)、D(375)、E(376)、S(378)、V(379);PRKPLEKAV(配列番号10);トランスフェリン159〜171;トランスフェリン368〜379;及びトランスフェリン366〜381。したがってこれらのトランスフェリン断片も本発明の方法に使用することができる。
系列IVペプチド 抗血管形成活性及び/又は抗腫瘍活性を有するタムスタチン断片
「タムスタチン」という用語はタムスタチンの治療的に有効な断片を含む。特に「タムスタチン」という用語は、付加的なタムスタチンペプチドを全く含まないトランスフェリンを用いるのと比べてトランスフェリンの送達を増大することができるタムスタチンペプチドの一部又は断片を含む。したがって幾つかの実施形態では、「タムスタチン」という用語は、かかるペプチドを含まないトランスフェリンと比べてトランスフェリンの治療有効性を増大することができるタムスタチンのペプチド断片を少なくとも有するペプチドを表す。代替的には、「タムスタチン」という用語は、全タムスタチンペプチド配列の少なくとも25%、典型的には少なくとも50%、多くの場合で少なくとも75%、更により多くの場合で少なくとも90%を有するペプチドを表す。生物活性(例えば抗血管形成活性)を有するタムスタチン断片の幾つかが当業者にとって既知である。本発明の範囲(及び「タムスタチン」という用語)には、完全長タムスタチンタンパク質及びその断片が含まれることが理解される。
タムスタチンは、αVβ3インテグリン受容体と結合して腫瘍成長を抑制する血管形成阻害剤である。これまでの欠失突然変異誘発試験(例えば、Eikesdal et al., PNAS, 2008, 105(39), 15040-15045及びThevenard et al., Int. J. Cancer, 2010, 126, 1055-1066を参照されたい)により、抗血管形成活性を有するタムスタチンの下記のアミノ酸断片が同定された:タムスタチン74〜98、タムスタチン185〜203及びYSNSG(配列番号11)。
さらに本発明者らは、コンピュータ上でのタンパク質モデリングにより上記のペプチド配列に基づき新規のペプチドを設計した。特定の一実施形態では、下記のように、2つの位置でD(アスパラギン酸)をH(ヒスチジン)に置き換えた:
TMPFLFCNVNHVCNFASRNHYSYWL(配列番号12)
HをDに置き換えることによって、Hの正電荷と他のタンパク質電荷との間に有益な正味の静電相互作用が生じると考えられる。幾つかの他の実施形態では、疎水性残基アラニン(A)及びロイシン(L)を親水性アミノ酸であるアルギニン(R)に置き換えた。これらの修飾ペプチドの一部には、TMPFLFCNVNDVCNFRSRNDYSYWL(配列番号13)、TMPFLFCNVNDVCNFASRNDYSYWR(配列番号14)、CNYYSNSYSFWLRSLNPER(配列番号15)及びCNYYSNSYSFWLASRNPER(配列番号16)が含まれる。
アルギニンは極性に関与するグアニジン基を含有する。疎水性残基を親水性のアルギニンに置き換えることが、溶媒との付加的な水素結合が形成されることでタンパク質の安定性の改善を助けると考えられる。さらに、グアニジン基がpH7.4で正に帯電しているアルギニンは、表面上に電荷を導入し、タンパク質表面での更なる相互作用手段をもたらすと考えられる。上記の天然配列又は修飾断片のいずれかを、本発明の融合タンパク質又は組換えタンパク質を作製するのに使用することができる。したがって、「トランスフェリン」及び「タムスタチン」という用語には、アミノ酸残基の1つ又は複数が、同族アミノ酸を含む非野生型アミノ酸に置き換わっている修飾体(modifications)が含まれることが理解される。当業者であれば、本開示を読むことで好適なアミノ酸置換を容易に判断することができる。
上述のように、トランスフェリン及びタムスタチンの完全長組換えタンパク質に加えて、本発明の範囲には、トランスフェリン及び/又はタムスタチンの完全長タンパク質の一方又は両方が上で開示された対応する部分ペプチドのいずれかに置き換わっている組換えタンパク質が含まれる。
したがって本発明の範囲には、上記の系列Iペプチド若しくは系列IIIペプチドに開示されたペプチド由来のペプチド/タンパク質又はトランスフェリン自体と、上記の系列IIペプチド若しくは系列IVペプチドにおけるペプチド又はタムスタチン自体とが任意に組み合わされた(例えばタムスタチン又は系列IIペプチド若しくは系列IVペプチドのペプチド等の任意の治療用タンパク質又は治療用ペプチドと融合した系列Iペプチド、及び系列Iペプチドと融合した系列IIペプチド等の)組換えタンパク質が含まれる。さらに、系列Iペプチドを標的取込み/輸送/分泌用の任意の新たな治療用高分子と組み合わせることができる。
本発明の更なる目的、利点及び新規の特徴は、限定の意図を有しない以下の実施例を検討すれば当業者にとって明らかになる。実施例では、積極的に実行に移される手法は現在時制で記載されており、研究所で行った手法は過去時制で記載されている。
材料及び方法
実施例1
材料:
Transwell(商標)フィルター(孔径0.4μm)はCorning Inc.(ニューヨーク州)から購入した。ウシ血清アルブミンはSigma Aldrich(ミズーリ州)から購入した。BD Matrigel Matrix Growth Factor ReducedはBD Biosciences(カリフォルニア州)から購入した。DNAラダー、リポフェクタミン(商標)2000試薬及びDAPI染色剤はInvitrogen Corporation(カリフォルニア州)から購入した。使用する制限酵素はNew England Biolabs(マサチューセッツ州)から購入した。QuikChange(商標)部位特異的突然変異誘発キットはAgilent Technologies(カリフォルニア州)から購入した。トランスフェリン遺伝子、脈絡膜内皮細胞(RF/6A)及びRF/6A細胞培地はAmerican Type Culture Collection(バージニア州)から購入した。QIAGEN(商標)プラスミドGigaキットはQIAGEN Inc.(カリフォルニア州)から購入した。TALON(商標)金属親和性樹脂(カタログ番号635502)はClonetech Laboratories, Inc.(カリフォルニア州)から購入した。Pierce Biotechnology, Inc.(イリノイ州)から購入したBCA(商標)タンパク質アッセイキット(カタログ番号23225)を使用してタンパク質含量を推定した。既製ゲルとしてBio-Rad laboratories, Inc.(カリフォルニア州)の10% Ready Gel Tris−HCl(商標)及びFisher Scientific(ペンシルバニア州)のEZ Run(商標)前染色タンパク質ラダーをSDS PAGEゲル電気泳動に使用した。BCA(商標)タンパク質アッセイキットはThermo Fisher Scientific(イリノイ州)から購入した。
プラスミドの構成:
下記のcDNAを含む4つの異なる構築物、すなわち(a)タムスタチン、(b)タムスタチン−EGFP、(c)トランスフェリン−タムスタチン(トランスフェリン−タムスタチンを保持する遺伝子発現構築物を示す概略図である図4を参照されたい。トランスフェリンを有する類似の構築物がタムスタチンの長期発現に有用である)及び(d)トランスフェリン−タムスタチン−EGFPを試験用に調製した。本実験で使用するプライマーは全て、Integrated DNA Technologies Inc.(カリフォルニア州)から購入した。タムスタチンcDNAを、フォワードプライマー(5'-CGATGGATCCGCAACCTGGACAACGAGAGGCTT-3')(配列番号17)とリバースプライマー(5'-CGATCTCGAGAGTGTCTTTTCTTCATGCACACC-3')(配列番号18)とを用いてPCRによって増幅して、BamH1/Xho1断片としてベクターPSecTag2Bにライゲートした。EGFPを、鋳型としてpEGFPベクター(Clonetech Laboratories、カリフォルニア州)を使用して、フォワードプライマー(5'-ATCGATAAGCTTTGTGAGCAAGGGCGAGGAGC-3')(配列番号19)と、リバースプライマー(5'-ATCGATGGATCCCTTGTACAGCTCGTCCATGC-3')(配列番号20)とを用いてHind III/BamH1断片としてPSecTag2Bベクターにクローニングした。
初めに本発明者らの構築物をNhe1及びSfi1で消化することにより、IgK分泌配列をトランスフェリンと交換して、IgK配列を除去した。トランスフェリンは、制限部位であるNhe1部位及びSfi1部位をそれぞれ含有する、フォワードプライマー(5'-AGTCGCTAGCATGAGGCTCGCCGTGGGAGCCC-3')(配列番号21)とリバースプライマー(5'-AGTCGCGGCCGGCTGGGCCAGGTCTACGGAAAGTGCAGGCT-3')(配列番号22)とを用いて増幅し、線形ベクターにクローニングした。トランスフェリンをタムスタチンとpEGFPとを含有するPsecTag2Bに組み込んだ。PSecTag2BのIgk遺伝子部分をこのプロセスの際に除去した。同じフォワードプライマー及びリバースプライマーを用いて、トランスフェリンをタムスタチンのみを含有するPsecTag2Bベクターに組み込み、トランスフェリン−タムスタチンプラスミドを作製した。
全てのプラスミドを、大腸菌のdH5α株を用いて成長させ、QIAGEN(商標)プラスミドGigaキットを用いて増幅した。1%アガロースゲルをTAEバッファー中で調製し、それを用いて、cDNA構築物を研究した。写真はGelDoc XR(商標)撮像システム(Bio-Rad laboratories, Inc.、カリフォルニア州)を用いて撮影した。
タンパク質の作製及び精製:
上述のようにプラスミドを構築するのに使用するPSecTag2Bベクターは、培地中に分泌されるタンパク質の精製を助けることができる6つのヒスチジン標識を有する。プラスミドをARPE(ヒト網膜色素上皮)細胞にトランスフェクトして、生成される融合タンパク質を発現させた。ARPE細胞を集密度が80%に達するまで成長させた。ARPE細胞の一過性トランスフェクションを、リポフェクタミン(商標)2000試薬を用いて行った。TALON(商標)金属親和性樹脂を用いてヒスチジン標識タンパク質を精製した。BCA(商標)タンパク質アッセイキットを用いて、溶出液のタンパク質含量を推定した。タンパク質推定用の検量線を、ウシ血清アルブミン(Sigma Aldrich、ミズーリ州)を用いて作成した。
ARPE細胞の共焦点顕微鏡検査:
APRE細胞におけるEGFP遺伝子の機能化を確認するために、タムスタチン−EGFPプラスミドをAPRE細胞において研究した。ARPE細胞を集密度が80%に達するまで成長させた。ARPE細胞の一過性トランスフェクションを、リポフェクタミン(商標)2000試薬を用いて行った。DAPI(4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(二塩酸塩))による染色を細胞核に対して行った。タムスタチン−EGFPプラスミドをトランスフェクトせずに、DAPIによる染色のみを行ったARPE細胞を対照として使用した。
トランスフェリン−タムスタチン−EGFPタンパク質及びタムスタチン−EGFPタンパク質の内部移行を研究するために、脈絡膜内皮細胞をトランスフェリン−タムスタチン−EGFPタンパク質及びタムスタチン−EGFPタンパク質に24時間曝露した。24時間後、細胞を低温のPBS(pH7.4)で洗浄した後、低温の酸性バッファー(pH5.0)で洗浄して、4%パラホルムアルデヒドを用いて固定して、DAPIで染色した。細胞を株式会社ニコンのC1si(商標)共焦点顕微鏡下で観察した。
トランスフェリン−タムスタチン−EGFP融合タンパク質の極性分泌:
MDCK細胞株を、該細胞株が十分に解明されている極性系であることから、融合タンパク質極性分泌研究に選んだ。MDCK細胞は膜タンパク質を頂端面又は側底面に送達する経路を有する。
MDCK細胞をTranswellフィルター上にプレーティングして、経上皮電気抵抗(Trans Epithelial Electrical Resistance:TEER)を、EVOM(商標)抵抗計(World Precision Instruments、CA)を用いて測定した。TEERが300Ωを超える場合、細胞に上記のタムスタチン−EGFPプラスミド又はトランスフェリン−タムスタチン−EGFPプラスミドをトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、MDCK細胞を固定して、DAPI核染色剤を用いて染色した。培地を側底側及び頂端側の両方から別々に回収して、融合タンパク質を、BCA(商標)タンパク質アッセイキットを用いて定量化した。
細胞増殖アッセイ:
脈絡膜内皮細胞(RF/6A)を用いて、VEGF 165の影響下での細胞の増殖に対するタムスタチンタンパク質及びトランスフェリン−タムスタチンタンパク質の効果を研究した。MTTアッセイを用いて、細胞増殖を評価した。
脈絡膜内皮細胞(RF/6A、継代数9)を、1ウェル当たり約20000個の細胞という播種密度で96ウェルプレートにプレーティングして、24時間、ウェルに付着させた。24時間後、細胞を50ng/mlの濃度のVEGF165(R&D systems、ミネソタ州)の溶液とともにインキュベートした。RF/6A細胞の増殖は、50ng/mLのVEGF 165を用いることで誘導された。96ウェルの中で3つのウェルをRF/6A及び50ng/mLのVEGF 165のみを含む対照とした。残りのウェルには、可変濃度のベバシズマブ、タムスタチン又はトランスフェリン−タムスタチンが含まれていた。
ベバシズマブに関して1.5nM〜500nMという濃度を用いた。24時間経過後に、培地を吸い出し、新たな血清無含有培地200μlを各ウェルに添加した。MTT試薬(Sigma Aldrich、ミズーリ州)、すなわち3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニル四ナトリウムブロミド(PBS(pH 7.4)に溶解した5mg/mlのMTT 20μl)を各ウェルに添加して、37℃で3時間インキュベートした。培地を吸い出し、形成されるホルマザン結晶をDMSO 200μlに溶解した。DMSOを添加した後、溶解した結晶及び比色吸光度(color absorbance)を、マイクロプレートリーダーを用いて570nmで測定した。次の実験では、ベバシズマブの代わりに7.8nM〜1000nMの濃度のタムスタチン又はトランスフェリン−タムスタチンを使用した。上記と同じ方法に従った。トランスフェリン−タムスタチンタンパク質は1.5nM〜500nMの濃度で使用した(各濃度に対してn=3)。
管形成アッセイ:
マトリゲル(商標)を4℃で一晩解凍した。48ウェルプレートを、各ウェルの底部に解凍したマトリゲル75μlを展開することにより管形成アッセイ用に調製した。プレートを37℃で30分間維持して、マトリゲルを重合させた。脈絡膜内皮細胞をマトリゲルの入った48ウェルプレートに移した。各ウェルに6×10個の細胞を含ませた。3つのウェルを、タムスタチンを組み込まない対照とした。更に45個のウェルには、増殖アッセイに関して上記された濃度でタムスタチンタンパク質を含ませた。プレートは37℃で18時間維持した。管形成を、光学顕微鏡を用いて分析した。同じ方法を用いて、トランスフェリン−タムスタチンタンパク質実験及びベバシズマブタンパク質実験を行った。0.15nM〜500nMの範囲の濃度(各濃度に対してn=3)を用いた。
細胞移動アッセイ:
in vitro細胞移動アッセイを、マトリゲル浸潤チャンバ(孔径8μm、Becton Dickinson、マサチューセッツ州)を用いて行った。血清無含有培地0.5ml中の5×10個の細胞の懸濁液をマトリゲルチャンバに添加した。ウェルに10ng/mlのVEGF溶液1mlを注いだ。チャンバを37℃で24時間、95%空気/5%COインキュベータ内でインキュベートした。膜の下面の細胞をヘマトキシリン−エオジン染色によって染色した。浸潤細胞を株式会社ニコンの顕微鏡下において倍率40倍で撮影し、各濃度に対して3つの膜の5つの視野でカウントした。同じ方法を用いて、トランスフェリン−タムスタチンタンパク質実験及びベバシズマブタンパク質実験を行った。0.15nM〜500nMの範囲の濃度(各濃度に対してn=3)を用いた。
分子ドッキング:
Accelerys discovery visualizer v2.5.1.9167(Accelrys, Inc.、カリフォルニア州)を用いて、タムスタチン及びトランスフェリン−タムスタチンと、αVβ3インテグリン受容体とのコンピュータ上でのドッキングを研究した。コラーゲンIVの非コラーゲンドメインの結晶構造(PDB # 1LI1)を、タムスタチンの同種モデルを開発する参照として使用した。鉄無含有ヒト血清トランスフェリンの結晶構造(PDB # 2HAV)を、トランスフェリンの同種モデルを開発する参照として使用した。これらのタンパク質を調製して、エネルギーの最小化を行った。トランスフェリン−タムスタチン融合タンパク質は、タムスタチンをペプチド結合によってトランスフェリンのC末端に融合させることにより作製した。αVβ3インテグリンドッキング研究でのタムスタチンに関しては、タムスタチンの同種モデルをリガンドとして使用して、αVβ3インテグリンの細胞外ドメインの結晶構造(PDB # 1JV2)にドッキングさせた。αVβ3インテグリンドッキング研究でのトランスフェリン−タムスタチンに関しては、融合タンパク質をαVβ3インテグリン受容体(PDB # 1JV2)にドッキングさせた。
アポトーシスアッセイ:
アポトーシスを、DeadEnd比色TUNEL(TdT媒介性dUTP切断末端標識)システム(Promega Corporation、ウィスコンシン州)を用いて研究した。脈絡膜内皮細胞(1ウェル当たり1×10個の細胞)を12ウェルプレート内のカバーガラス上にプレーティングして、24時間付着させた。24時間後、細胞を様々な濃度のベバシズマブ(1nM、10nM及び100nM)、タムスタチン(100nM、250nM及び500nM)、及びトランスフェリン−タムスタチン(1nM、10nM及び100nM)タンパク質に曝露した。24時間のタンパク質曝露後、細胞を洗浄して、4%パラホルムアルデヒドで固定して、リン酸バッファー(pH7.4)中の0.2% Triton(商標)X−100溶液を用いて透過処理した。細胞をDeadEnd(商標)比色TUNELアッセイシステムとともに与えられる標準プロトコルに従って更に染色した。細胞を光学顕微鏡下において倍率40倍で研究した。
ブラウン−ノルウェーラット及び脈絡膜フラットマウントにおけるCNVの誘導:
成体の雄ブラウン−ノルウェーラット(150g〜180g)をHarlan Sprague Dawley Inc.(米国インディアナ州インディアナポリス)から購入した。ラットを40mg/ml〜80mg/mlのケタミンと10mg/kg〜12mg/kgのキシラジンとの混合物の腹腔内注射を用いて麻酔した。レーザーによる熱傷の誘導を以下のように行った。1%トロピカミド溶液の局所投与により瞳孔を拡張させた。眼球の上にカバーガラスを載せて、2.5%ヒプロメロース溶液を滴下した(instillation)後に眼底を可視化した。視神経に対して同心円状に8つのレーザースポット(100mm、150mW、100ms)を、532nmダイオードレーザー(Oculight Glx;Iridex Inc.、米国カリフォルニア州マウンテンビュー)及び細隙灯(Zeiss細隙灯30SL;Carl Zeiss Meditec Inc.、米国カリフォルニア州ダブリン)を用いて各ラットの右眼に当てた。左眼は各動物の対照として使用した。ブルッフ膜の破壊がエンドポイント「気泡形成」により確認された。レーザー適用に対して眼内出血を示すラットは本研究から除外した。CNV病変をレーザーによる熱傷の導入後14日間発生させた。14日経過後に、ラットに下記の処理物:(a)PBS(pH7.4)、(b)ベバシズマブ、(c)タムスタチンタンパク質及び(d)トランスフェリン−タムスタチンタンパク質の1つを硝子体内投与した。処理から14日経過後にラットを安楽死させ、眼を摘出した。
脈絡膜フラットマウントに関しては、ラットを80mg/kgのケタミンと10mg/kgのキシラジンとの混合物の腹腔内注射を用いて麻酔した。ラットにPBS(pH7.4)10mlを注入した後、4%パラホルムアルデヒド10mlを注入した。最後に、50mg/mlのフルオレセインイソチオシアネート(FITC)−デキストラン溶液(2×10Da)4mlを注入した。次いで眼を摘出して、フラットマウントを調製した。フラットマウントを株式会社ニコンのEZ−C1共焦点顕微鏡によって488nm及び568nmの励起波長を用いて撮像した。CNV面積を、ImageJソフトウェアを用いて取得した。
結果
プラスミドの構築:
それぞれ5813塩基対、6521塩基対、8550塩基対及び7842塩基対であるタムスタチン、タムスタチン−EGFP、トランスフェリン−タムスタチン−EGFP及びトランスフェリン−タムスタチンのプラスミドの1%アガロースゲルの写真を撮影した(図示せず)。1Kb DNAラダーをサイズマーカーとして泳動した。タムスタチン(28kDa)及びトランスフェリン−タムスタチン−EGFP(135kDa)タンパク質のSDSゲル電気泳動画像も撮影した(図示せず)。タムスタチンの塩基対シークエンシング結果のためにタムスタチンをPSecTag2Bに挿入した後の電気泳動図も撮影した。シークエンシングはキャピラリー電気泳動(Applied Biosystems、カリフォルニア州)を用いて行った。タムスタチン−EGFP遺伝子の発現をARPE細胞において研究して、画像を撮影した(図示せず)。タムスタチン−EGFPタンパク質を発現するARPE細胞の共焦点顕微鏡写真(100倍)も撮影した(図示せず)。DAPIによる染色を行い、細胞核を染色した。タムスタチン−EGFPをトランスフェクトしていないARPE細胞を対照として用いて、任意のバックグラウンド蛍光を取り除いた。
トランスフェリン−タムスタチン−EGFPタンパク質の内部移行を求めた。トランスフェリン−タムスタチン−EGFPタンパク質に曝露した際、RF/6A細胞において強いEGFPシグナルが観察された。細胞表面上の全てのタンパク質が酸性バッファー洗浄液により除去されることが期待された。これは細胞膜を構成するリン脂質のpKaによるものであった。リン酸基の最小pKaは約2であり、これはリン酸基がpH2で非荷電状態のHPOであるか又は単一負電荷(HPO )を有することを示唆している。約2を超えるpHでは、2つの負電荷(HPO −2)を有する可能性が増大する。このことから、EGFPシグナルは内部移行タンパク質のみによるものであることが裏付けられた。RF/6A細胞のタムスタチン−EGFPタンパク質への曝露では、観察可能な内部移行は起こらなかった。
トランスフェリン−タムスタチン−EGFP融合タンパク質の極性分泌:
MDCK細胞を用いて、トランスフェリン−タムスタチン−EGFPタンパク質の側底側への分泌を研究した。この実験で撮影された画像から、トランスフェリン−タムスタチン−EGFPタンパク質が細胞の側底側で分泌されたことが示された。側底側を共焦点顕微鏡下で調べたところ、細胞境界を視認することができなかった。これは、光を顕微鏡へと反射させることなく、また細胞への光路を妨げ得るtranswellフィルターの多孔性の結果であり得る。このことが、フィルターの側底側からの細胞の視認性の欠如の考えられる理由であり得る。細胞は側底側からは視認することはできなかったが、DAPI染色及び分泌タンパク質からのEGFPシグナルは、側底側ではっきりと観察することができた。フィルターの頂端側を共焦点顕微鏡下で研究したところ、細胞をはっきりと観察することができた。タンパク質の分泌が細胞の側底面で観察された。このような事象は少なくとも2つの方法で説明することができる。タンパク質が細胞表面上の受容体に結合すると考えらえるか、又は(側底側に分泌されたタンパク質では)タンパク質がフィルター内に埋包されると考えらえる。さらに、側底培地及び頂端培地で分泌されたタンパク質の量から、トランスフェリン−タムスタチン−EGFPタンパク質の分泌経路が確認された。
頂端培地及び側底培地から回収されたトランスフェリン−タムスタチン−EGFPタンパク質を精製した。頂端培地及び側底培地中のタンパク質含量を決定した。頂端培地には23.17%のトランスフェリン−タムスタチン−EGFPタンパク質が含まれており、側底側には76.83%のトランスフェリン−タムスタチン−EGFPタンパク質が含まれていた。両培地で分泌された総タンパク質を100%とした。極性MDCK細胞研究が完了した後、タムスタチン−EGFPタンパク質(対照)を頂端培地及び側底培地から精製した。頂端培地には68.84%のタムスタチン−EGFPタンパク質が含まれており、側底側には31.16%のタムスタチン−EGFPタンパク質が含まれていた。これらのデータから、トランスフェリン−タムスタチン融合タンパク質を含むことが融合タンパク質の側底側への分泌を大幅に増大させることができることが示される。融合タンパク質においてトランスフェリンの存在下で頂端側に分泌されたタムスタチンが僅か23.17%であったのに対して、トランスフェリン非存在下ではタムスタチンは頂端側により多く分泌された(68.84%)。
細胞増殖アッセイ:
VEGF 165により誘導される細胞増殖を、タムスタチン及びトランスフェリン−タムスタチンタンパク質の存在により阻害した。図1に、タムスタチン、トランスフェリン−タムスタチンタンパク質及びベバシズマブタンパク質の影響下での細胞増殖を示している。MTTアッセイを用いて、VEGF(50ng/ml)により刺激された脈絡膜内皮細胞の増殖に対するタムスタチン(●)、トランスフェリン−タムスタチン(△)及びベバシズマブ(■)の抗増殖活性を評価した。MTT試薬による処理後の吸光度を、UV−Vis分光光度計を用いて測定した。データはn=3で平均±S.D.として表す。グラフから分かるように、トランスフェリン−タムスタチンタンパク質はタムスタチン単独と比較して細胞増殖を低減するのに非常に効果的であった。トランスフェリン−タムスタチンタンパク質のIC50は5.97nMであることが見出された。タムスタチンタンパク質単独でのIC50は185.7nMであることが見出された。ベバシズマブも細胞増殖の阻害に関して試験し、その有効性は7.78nMのIC50であることが見出された。
トランスフェリン−タムスタチンタンパク質はベバシズマブよりも細胞増殖を阻害するのに有効であった。トランスフェリン−タムスタチンはベバシズマブと比較してタンパク質のIC50を超えてより多くの数の細胞を阻害することもできた。15.6nMの濃度では、トランスフェリン−タムスタチンの阻害率が84%近くであったのに対し、ベバシズマブの阻害率は約63%であった。
管形成アッセイ:
管形成の代表的な画像(図示せず)を様々な濃度のタムスタチン、トランスフェリン−タムスタチン及びベバシズマブ下で撮影した。タムスタチンタンパク質及びトランスフェリン−タムスタチンタンパク質の濃度が増大するにつれて、管形成は低減することが分かっていた。タムスタチンタンパク質及びトランスフェリン−タムスタチンタンパク質の両方が管形成を阻害することができたが、ベバシズマブの影響下では管形成の顕著な阻害は観察されなかった。トランスフェリン−タムスタチン融合タンパク質を用いて行った管形成アッセイでは、125nMの濃度で管形成の実質的に完全な抑制が観察された。図2に、試験した3つ全てのタンパク質のS字適合グラフを示している。管形成を18時間後に評価した。データはn=3で平均±S.D.として表す。
浸潤アッセイ:
浸潤アッセイはin vivoにおいて基底膜を再現するものであり、細胞はVEGF等の化学誘引物質に向かって移動する傾向がある。画像から、タムスタチンタンパク質及びトランスフェリン−タムスタチンタンパク質の影響下での浸潤細胞の数の低減が示された。培地中のタムスタチンタンパク質の濃度が増大するにつれて、マトリゲル浸潤チャンバ膜に浸潤する細胞の数の大幅な低減が観察された。タムスタチン及びトランスフェリン−タムスタチンの影響下での膜に浸潤する細胞の画像も撮影した(図示せず)。VEGF(10ng/ml)を化学誘引物質として使用して、タムスタチンタンパク質又はトランスフェリン−タムスタチンタンパク質のいずれかの非存在下では膜のかなりの浸潤が示された。しかしながら、たとえVEGFが存在していたとしても2つのタンパク質のいずれかの存在下では、膜浸潤を誘導するVEGFの効果は低減した。このことから、たとえVEGF等の刺激物質の存在下でもタムスタチンタンパク質及びトランスフェリン−タムスタチンタンパク質には細胞の移動及び浸潤を低減する効果があることが示唆される。
浸潤はタムスタチンタンパク質単独と比較した場合にトランスフェリン−タムスタチンタンパク質により大幅に低減した。トランスフェリン−タムスタチンタンパク質の効果は、15nM及び125nMの濃度でタムスタチンとは有意に異なるものであった(P<0.05)。しかしながら、250nM及び500nMというより高い濃度では実質的に有意な差はなかった。このことから、浸潤傾向は飽和状態にあり(細胞はこれ以上浸潤せず、VEGFによって誘引されることなく)、より高い濃度では浸潤に影響を及ぼさなかったことが示唆される。この効果は2つのタンパク質を用いて研究した細胞増殖及び管形成で観察されるものとは異なるものである。ベバシズマブは、トランスフェリン−タムスタチンでの12.14nMと比較して8.0nMというより低いIC50値を呈し、細胞浸潤におけるVEGFの重要な役割を示唆している。
分子ドッキング:
分子モデルを、αVβ3インテグリン受容体にドッキングされたタムスタチン及びトランスフェリン−タムスタチンに関してコンピュータ上で作製した。2つの異なるドッキングタンパク質のエネルギー値から、トランスフェリン−タムスタチンのドッキング(−130.43kcal/molの相互作用エネルギー)がタムスタチン単独のドッキング(−113.28kcal/molの相互作用エネルギー)よりもエネルギー的に有利であることが示唆された。
アポトーシスアッセイ:
タムスタチン、トランスフェリン−タムスタチン及びベバシズマブの影響下でアポトーシスを呈する細胞の代表的な画像を撮影した(図示せず)。脈絡膜内皮細胞においてタムスタチンタンパク質及びトランスフェリン−タムスタチンタンパク質は3つ全ての試験濃度(それぞれ100nM、250nM及び500nM、並びに1nM、10nM及び100nM)でアポトーシスを誘導した。ベバシズマブ(1nM、10nM及び100nM濃度)によっては顕著なアポトーシスは誘導されず、対照PBSで観察されるものと同程度であった。
ブラウン−ノルウェーラット及び脈絡膜フラットマウントにおけるCNVの誘導:
トランスフェリン−タムスタチンは、ベバシズマブ及びタムスタチンと比較してレーザーによって誘導されるCNV病変面積の低減においてより効果があることが見出された(図3)。CNV病変サイズを脈絡膜フラットマウントでの処理から14日経過後に定量した。CNV病変サイズの定量的比較を図3に示す(はタムスタチン処理と比較した場合のp<0.05を示す。†はベバシズマブと比較した場合のp<0.05を示す。データは各群当たりn=42〜48の病変で平均±S.D.として表される)。トランスフェリン−タムスタチンで処理したラットは、ベバシズマブで処理したラット及びタムスタチンで処理したラットと比較して病変サイズが有意に低かった。
考察
本発明の幾つかの態様は、タムスタチンと結び付いているトランスフェリンを含む組換えタンパク質を提供する。本発明の組換えタンパク質(特にトランスフェリン−タムスタチン組換え(例えば融合)タンパク質)はαVβ3インテグリンとの結合を亢進させ、タムスタチン単独と比べてそれぞれ21倍、25倍及び31倍高い活性で内皮細胞の増殖、移動及び管形成を阻害している。さらに、トランスフェリン−タムスタチンはベバシズマブと比較して脈絡膜内皮細胞の増殖及び管形成を阻害するのにより効果的であることが示された。その上、トランスフェリン−タムスタチン組換えタンパク質はトランスフェリン単独と比較してin vivoでCNVを阻害するというより優れた効果を示した。本発明の他の態様は、タムスタチンと結び付いているトランスフェリンを含む組換えタンパク質(すなわちトランスフェリン−タムスタチン融合タンパク質)を産生することが可能なプラスミド発現系を提供する。幾つかの実施形態では、本発明のプラスミド発現系によって、コンフルエントな細胞単層の側底側へのタンパク質の選択的な分泌が可能になる。
実験から、トランスフェリン−タムスタチンの組換えタンパク質(5.97nMのIC50)がタムスタチン(185.7nMのIC50)及びベバシズマブ(7.78nMのIC50)よりもそれぞれ31倍及び1.3倍強い効力で内皮細胞増殖を阻害したことが示された。理論に何ら束縛されるものではないが、トランスフェリン−タムスタチンの有効性がタムスタチンより31倍強く、活性がベバシズマブよりも1.3倍良好であるのは、2つの考えられる機構の結果であると考えられる。第1には、トランスフェリンがタムスタチンとαVβ3インテグリン受容体との結合効率を改善したと考えられる。コンピュータ上でのモデリングを用いて、本発明者らは、トランスフェリンがαVβ3インテグリンとの結合相互作用を有することを見つけ出した。コンピュータ上でのモデリングによって、融合タンパク質がタムスタチン単独よりも良好な相互作用エネルギーを呈することも示された(−113.28kcal/molに対する−130.43kcal/mol)。組換えタンパク質トランスフェリン−タムスタチンの活性の改善の第2の考えられる機構は融合タンパク質の内部移行であると考えられる。トランスフェリン−タムスタチンが脈絡膜内皮細胞により内部移行されることが観察された。この内部移行はタムスタチンでは明らかではなかった。
さらにトランスフェリン−タムスタチンが内部移行後でのみ活性化される経路を介して作用し得る可能性がある。エンドスタチン及びアンギオスタチン等の他の内因性の抗血管形成タンパク質は、フィブロネクチン及びビトロネクチン等のRGD含有タンパク質との複合体を形成することが分かっている。複合体形成はこれらの抗血管形成タンパク質の活性に必須であり、これらのタンパク質はフィブロネクチン又はビトロネクチンのいずれかを欠いたマウスでは不活性状態であることが見出された。フィブロネクチンは内皮細胞により相当量分泌され(約3.0μg/10細胞/日)、内部移行すると細胞の細胞質内にフィブロネクチン等のRGD含有タンパク質の集積によりアポトーシスが誘導される。このようにして、トランスフェリンのタムスタチンへの融合がフィブロネクチン等のRGD含有タンパク質の細胞質含量を増大させ、それにより細胞のアポトーシスが引き起こされる可能性がある。この可能性は、タムスタチンが実験において内部移行の兆候を全く示さなかったことからタムスタチンにとっては重要ではない。タムスタチンに関しては、αVβ3インテグリンとの結合が主な作用機構であると考えられる。
これも理論に何ら束縛されるものではないが、トランスフェリン−タムスタチンの組換えタンパク質は、タムスタチン単独の場合と同様に、タンパク質合成を阻害し、アポトーシスを誘導することにより細胞増殖を阻害すると考えられる。本発明者らは、タムスタチン単独よりも組換えトランスフェリン−タムスタチンタンパク質でより大きな抗アポトーシス活性を観察している。ベバシズマブは脈絡膜内皮細胞では観察可能なアポトーシス活性を全く呈さなかった。これまでアポトーシス活性の喪失は、角膜内皮細胞、網膜視神経細胞及び網膜−RPE−脈絡膜培養物におけるベバシズマブで報告されている。
実験から、トランスフェリン−タムスタチンの組換えタンパク質が脈絡膜内皮細胞においてタムスタチン単独よりも25倍有効に管形成を阻害することが示された。トランスフェリン−タムスタチンの組換えタンパク質の内部移行により、トランスフェリン−タムスタチンと、他の活性化内皮細胞とより強く結合し得るフィブロネクチンとの複合体がもたらされ、管形成が抑制されると考えられる。ベバシズマブは脈絡膜内皮細胞では顕著な管形成の阻害を示さなかった。管形成は、基底膜に存在する、コラーゲンIV、コラーゲンVIII、コラーゲンXV、コラーゲンXVIII、並びにラミニン8及びラミニン10の影響下で起こると一般的に考えられている。これらの構成要素は内皮細胞の安定性、付着及び移動を促進する傾向がある。VEGF等の成長因子も基底膜マトリックスに存在する。しかしながら、たとえ細胞外マトリックスにおいてVEGFを中和することにより作用することが知られているベバシズマブの存在下であっても高い効率で管形成が起こることから、VEGFが管形成において重要な役割を果たすとは思われない。
血管形成中、基底膜の分解後に、内皮細胞が仮の基底膜様マトリックス上に移動すると考えられる。VEGFは内皮細胞の移動において重要な役割を果たすことが知られており、本発明者らは、ボイデンチャンバ細胞移動アッセイを用いてこのプロセスを研究している。このアッセイの目的の一つは、更に血管を形成することになる内皮細胞による基底膜の浸潤に対するVEGFの影響を評価することであった。組換えタンパク質トランスフェリン−タムスタチンを使用した場合の10ng/mlのVEGFの影響下での細胞移動は、タムスタチンを単独で使用した場合よりも大幅に低かった。タムスタチンが焦点接着キナーゼ(Focal Adhesion Kinase:FAK)のリン酸化を阻害することが分かっている。最終的にFAK活性化の喪失により細胞移動の阻害がもたらされる。組換えタンパク質トランスフェリン−タムスタチンは同様の効果を呈するが、その程度はより大きなものであると考えられる。
トランスフェリンをタムスタチンと融合することの別の主な利点は、融合タンパク質の側底側への選択的な分泌である。タムスタチンタンパク質単独の僅か約35%と比較して組換えタンパク質トランスフェリン−タムスタチンの75%近くが細胞の側底側に向かって分泌された。これにより、硝子体内への薬物送達後に、増殖する脈絡膜内皮細胞を標的とする能力がある組換えタンパク質トランスフェリン−タムスタチンが与えられる。治療剤の硝子体内への送達後、RPE細胞は、これらの細胞の密着接合性に起因して治療剤の更なる移動を抑えるものとして働く。トランスフェリン−タムスタチンは、その側底側への分泌性のためにタムスタチン又はベバシズマブよりも有益である。硝子体内に投与されたトランスフェリン−タムスタチンは、タムスタチンを脈絡膜内皮細胞に向かって疾患部位のすぐ近くへと配置させる。
in vivo研究によって、脈絡膜血管新生の阻害におけるトランスフェリン−タムスタチンの優れた効果が示唆された。トランスフェリン−タムスタチンで処理したBNラットの眼の病変サイズはベバシズマブ又はタムスタチンで処理したラットと比較して大幅に低下した。
これらの結果から、とりわけ(a)トランスフェリン−タムスタチンがベバシズマブよりも良好な細胞増殖の阻害剤であることと、(b)トランスフェリン−タムスタチンが、脈絡膜内皮細胞においてベバシズマブでは起こらない細胞アポトーシスを誘導することと、(c)トランスフェリン−タムスタチンが管形成を阻害するが、ベバシズマブは管形成の阻害には効果がないこととから、トランスフェリン−タムスタチンはベバシズマブよりも良好な治療剤であることが示唆される。タムスタチン単独と比較して、トランスフェリン−タムスタチンは血管新生を評価するのに用いられる全てのin vitroアッセイにおいて20倍以上の効力を呈する。より重要なことには、トランスフェリン−タムスタチンは、ベバシズマブ及びタムスタチンと比較してin vivoにおいてレーザーによって誘導されるCNVを低減するのにより有効であった。
実施例2
Tf−Tタンパク質の産生及び精製:
PSecTag2Bベクターを用いて、培地中に分泌されるタンパク質の精製を助ける6つのヒスチジン標識を有するプラスミドを構築した。ARPE細胞(継代数24)を集密度が80%に達するまで12ウェルプレートで成長させた。精製したTf−T(トランスフェリン−タムスタチン)プラスミド(PSecTag2Bベクターにクローニングした)をDMEM/F12培地で希釈して、リポフェクタミン試薬と混合した。プラスミドとリポフェクタミンとの複合物を細胞及び培地の入ったウェルに添加した。複合物を、ウェルを前後に揺らすことによりゆっくりと混合させた。細胞を37℃で5%COインキュベータ内において24時間インキュベートした。24時間経過後に、培地を回収して精製した。TALON(商標)金属親和性樹脂を用いて、融合タンパク質を精製した。細胞から回収された培地を樹脂と混合して、ゆっくりかき混ぜながら室温で20分間インキュベートした。樹脂に結合したタンパク質を、pH7.0の50mMのリン酸ナトリウム、300mMの塩化ナトリウム及び150mMのイミダゾールの水溶液を用いて溶出した。後に、イミダゾールを含まない類似のバッファーに対して(2000 MWCO透析バッグを用いて)透析することにより、イミダゾールをタンパク質溶液から除去した。BCA(商標)タンパク質アッセイキットを用いて、タンパク質含量を推定した。3つの別個のバッチを記載のように精製して、SDSゲル電気泳動(PAGE)、蛍光分光法及び円偏光二色性を用いて再現性に関して評価した。
ゲル電気泳動に関しては、5μgのタンパク質を4×ローディングダイと混合して、5分間煮沸した。サンプルを4%から20%の勾配のSDS−PAGEゲル(Bio-Rad、カリフォルニア州ハーキュリーズ)上に泳動した。遠紫外線スペクトル領域(190nm〜250nm)での円偏光二色性(CD)を用いて、Tf−T及びタムスタチンの二次構造を研究した。CDスペクトルをAVIVモデル62 DS分光偏光計(AVIV Biomedical, Inc.、ニュージャージー州)で取得した。タンパク質溶液を1mm路長の石英セルに移し、恒温セルホルダーに入れた。データを、2nmバンド幅を用いて0.25nm間隔で回収した。100nMのタムスタチン及びTf−Tの溶液を5mMのリン酸バッファー(pH7.4)中で調製した。蛍光分光分析を280nmでタンパク質を励起させることにより行った。発光スペクトルは300nm〜400nmの波長で回収した。実験はSpectramax M5マイクロプレートリーダー(Molecular Devices, LLC)で行った。
タムスタチンタンパク質及びTf−Tタンパク質の特性決定:
Tf−Tの特性決定を、SDSゲル電気泳動(PAGE)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、円偏光二色性及び動的光散乱を用いて行った。ゲル電気泳動に関しては、5μgのタンパク質を4×ローディングダイと混合して、5分間煮沸した。サンプルを4%から20%の勾配のSDS−PAGEゲル(Bio-Rad、カリフォルニア州ハーキュリーズ)上に泳動した。SECをAgilentのSEC−3カラム(内径7.8mm及び長さ300mm)を用いて行った。注入サンプルの流速は1ml/分であった。サンプル注入量は25μlであった。SECに使用される移動相はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(pH7.4)であった。
遠紫外線スペクトル領域でのCDを用いて、Tf−T及びタムスタチンの二次構造を研究した。CDスペクトルをAVIVモデル62 DS分光偏光計(AVIV Biomedical, Inc.、ニュージャージー州)で取得した。タンパク質溶液を1mm路長の石英セルに移し、恒温セルホルダーに入れた。データを、2nmバンド幅を用いて0.25nm間隔で回収した。MalvernのNanosizerを用いて、1mg/mlのタムスタチン及びTf−Tの溶液の粒度を評価した。
タムスタチン及びTf−T融合タンパク質の分泌:
タンパク質分泌研究に関しては、Tf−Tの分泌パターンを評価するためにRPE細胞単層を選んだ。初めに細胞の電気抵抗、密着接合形成及び核染色パターンに関して特性決定を行った。RPE細胞をTranswellフィルター上にプレーティングして、経上皮電気抵抗(TEER)を、EVOM(商標)抵抗計(World Precision Instruments、CA)を用いて測定した。TEERが200Ω/cmを超えた場合、密着接合形成はZO−1による染色によっても確認された。TEERが200Ω/cmを超える細胞を含むフィルターを、10%ホルマリンを添加することにより(頂端側0.5ml及び側底側1.5ml)、室温で30分間固定した。細胞を、5%ヤギ血清を含む0.1%トリトンX100(頂端側0.5ml)を添加することにより室温で1時間更に透過処理した。100倍希釈したZO1一次抗体(頂端側0.5ml)を細胞に添加して、室温で1時間インキュベートした。100倍希釈したFITC標識二次抗体(頂端側0.5ml)を細胞に添加して、室温で1時間インキュベートした。細胞を3μg/mlのDAPI(4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール)とともに5分間インキュベートして、核を染色した。フィルターを利刃で切り出して、スライドガラスに移し、SuperMount封入剤(BioGenex、カリフォルニア州)を添加することにより固定して、共焦点顕微鏡下で可視化した。
分泌パターンを評価するために、細胞を頂端側で200μgのタムスタチンタンパク質又はTf−Tタンパク質とともにインキュベートした。24時間のトランスフェクション後、培地を側底側及び頂端側の両方から別々に回収して、TALON金属親和性樹脂を用いて精製した。タムスタチンタンパク質とTf−Tタンパク質とを、BCA(商標)タンパク質アッセイキットを用いて定量化した。
Tf−Tタンパク質の安定性:
Tf−Tタンパク質の安定性を、(a)pH4.0及びpH8.0のバッファー、(b)トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)及びリン酸クエン酸バッファー(pH7.0)、並びに(c)イオン強度が10mM〜250mMの範囲の塩化ナトリウム(pH7.0)で評価した。タンパク質溶液を48時間言及された条件に曝露して、安定性を円偏光二色性及び蛍光分光法を用いて評価した。円偏光二色性及び蛍光分光法に加えて、SDS PAGEを用いて、pH安定性を評価した。
CNVを誘導したブラウン−ノルウェーラットにおける早期の有効性研究:
成体の雄ブラウン−ノルウェー(BN)ラット(150g〜180g)をHarlan Sprague Dawley Inc.(米国インディアナ州インディアナポリス)から購入した。ラットを40mg/ml〜80mg/mlのケタミンと10mg/kg〜12mg/kgのキシラジンとの混合物の腹腔内注射を用いて麻酔した。レーザーによる熱傷の誘導は実施例1に記載のように行った。CNV病変をレーザーによる熱傷の導入後7日間発生させた。7日経過後に、ラットに下記の処理物:(a)PBS(pH7.4)、(b)ベバシズマブ又は(c)Tf−Tタンパク質の1つを硝子体内投与した。処理前後のCNV病変の発生を、フルオレセイン血管造影法を用いてモニタリングした。フルオレセイン血管造影法に関しては、ラットを麻酔して、1%トロピカミド溶液の局所投与により瞳孔を拡張させ、1%フルオレセインナトリウム200μlをラットの尾静脈に投与した。病変からの漏出を、Genesis Df眼底カメラ(Kowa Optimed Inc、カリフォルニア州)を用いて即時的にモニタリングした。CNV面積を、ImageJソフトウェアを用いて取得した。
結果
Tf−Tタンパク質の作製及び精製:
100KdaのTf−Tタンパク質の単一バンドを、調製して試験したTf−Tの3バッチにおいて得た。上記の方法により作製されたTf−Tは類似の蛍光スペクトル及び円偏光二色性スペクトルを有していた。
タムスタチン及びTf−Tタンパク質の特性決定:
SDS PAGEにおける100kDa及び28kDaの単一バンド、並びにSECにおける単一ピークからTf−T及びタムスタチンの純度が示された。Tf−Tの粒度は0.414の多分散度(PolyDispersity Index:PDI)で8.0nmであった。タムスタチンの粒度は0.359のPDIで3.9nmであった。Tf−T円偏光二色性スペクトルのCDスキャンから、Tf−Tは大部分(約60%)がβシート及びβターンであるが、α−ヘリックスも存在する(約32%)ことが示唆された。タムスタチンの構造もβシート及びβターンを豊富に含む(約50%)。しかしながら、タムスタチンはα−ヘリックスが少なく(約16%)、より多くのランダムコイル構造を含む(約40%)。そのため、円偏光二色性スペクトルは両タンパク質で異なる。
Tf−T融合タンパク質の分泌:
Transwellフィルター上で4週間成長させた場合に、RPE細胞は密着接合を形成した。密着接合の形成はZO−1タンパク質の染色によっても確認された。RPE細胞はZO−1に対して明らかな染色パターンを示し、単層内においてRPE細胞の均一な多角形の輪郭を示した。タンパク質の頂端曝露後、RPE細胞は126.8μg/mlのTf−Tタンパク質を側底側へと分泌した。これに対して、僅か12.3μg/mlのタムスタチンが側底側へと分泌された。
Tf−Tタンパク質の安定性:
Tf−TはpH7.0で最も安定であることが見出された。SDS PAGEでは、対照Tf−Tと比較してバンド強度はpH4〜6で低減することが示され、このことはタンパク質の分解を示唆していた。さらに蛍光及び円偏光二色性では、pH7.0以外の全てのpH値でシグナルの低減が示された。タンパク質がpH7.0で最も安定であることが見出されたことから、更なる安定性研究(イオン強度及びバッファー)はpH7.0で行った。
リン酸クエン酸バッファー及びTRISバッファー中で10mM〜250mMのNaClに曝露したTf−Tの蛍光スペクトル及び円偏光二色性スペクトルを入手した。Tf−Tでは、リン酸クエン酸バッファーの存在下ではイオン強度変化の効果は示されなかった。しかしながら、Tf−Tシグナルは250mMのNaCl及びTRISバッファーの存在下で低減した。このため、リン酸クエン酸バッファーがこのタンパク質により適している。
CNVを誘導したブラウン−ノルウェーラットにおける早期の有効性研究:
処理をより早期に(CNV誘導の7日後に)開始した場合、Tf−Tで処理したラットはベバシズマブで処理したラットと比較して病変サイズがより小さかった。このことはTf−Tが脈絡膜血管新生の予防処理に有効であることを示唆している。
本発明の上記の記述は例示及び説明のために提示されている。上記の記載は本明細書において開示されている形態(単数又は複数)に本発明を限定する意図はない。本発明の記載には1つ又は複数の実施形態並びに或る特定の変形形態及び変更形態の記載が含まれているが、例えば本開示を理解した後に当業者の技術及び知識内にあり得るような他の変形形態及び変更形態も本発明の範囲内である。許容される程度まで代替的な実施形態(特許請求されるものに対して代替的な、交換可能な及び/又は均等な構造、機能、範囲又は工程が含まれる)を含む権利を、かかる代替的な、交換可能な及び/又は均等な構造、機能、範囲又は工程が本明細書に開示されているか否かにかかわらず、また任意の特許可能な主題を公衆に捧げる意図なく取得することが意図される。

Claims (12)

  1. タムスタチンと結び付いているトランスフェリンを含む組換えタンパク質。
  2. トランスフェリンとタムスタチンとが互いに直接結び付いている、請求項1に記載の組換えタンパク質。
  3. トランスフェリンとタムスタチンとがリンカーを介して互いに共有結合で結び付いている、請求項1に記載の組換えタンパク質。
  4. タムスタチンと結び付いているトランスフェリンを含む組換えタンパク質をコードする核酸配列を含むプラスミド。
  5. 前記組換えタンパク質をコードする前記核酸配列が発現制御配列と操作可能に結び付いている、請求項4に記載のプラスミド。
  6. タムスタチンと結び付いているトランスフェリンを含む組換えタンパク質をコードする核酸配列を含む組換え核酸分子。
  7. 前記核酸配列が発現制御配列と操作可能に結び付いている、請求項6に記載の組換え核酸分子。
  8. タムスタチンと結び付いているトランスフェリンを含む組換えタンパク質をコードする核酸配列を含む組換え核酸分子がトランスフェクトされており、該組換え核酸分子を発現する、組換え宿主細胞。
  9. タムスタチンと結び付いているトランスフェリンを含む組換えタンパク質を作製する方法であって、
    組換え宿主細胞に、タムスタチンと結び付いているトランスフェリンを含む組換えタンパク質をコードする核酸配列を含む組換え核酸分子をトランスフェクトすることと、
    トランスフェクトされた宿主細胞を、タムスタチンと結び付いているトランスフェリンを含む組換えタンパク質を作製するのに十分な条件下で培養することと、
    前記組換えタンパク質を実質的に精製された組換えタンパク質として回収することと、を含む、方法。
  10. 前記組換えタンパク質が、タムスタチンと直接結び付いているトランスフェリンを含む、請求項9に記載の方法。
  11. 被験体において脈絡膜血管新生(CNV)に関連する臨床病態を治療する方法であって、かかる治療を必要とする該被験体に、タムスタチンと結び付いているトランスフェリンを含む組換えタンパク質を治療的に有効な量投与することを含む、方法。
  12. CNVに関連する前記臨床病態が、弾性線維性仮性黄色腫、網膜色素線条症、ヒストプラスマ症、点状脈絡膜内層症又は滲出型の加齢黄斑変性症(AMD)を含む、請求項11に記載の方法。
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