JP2014524740A - 構成的活性型aba受容体変異体 - Google Patents

構成的活性型aba受容体変異体 Download PDF

Info

Publication number
JP2014524740A
JP2014524740A JP2014518635A JP2014518635A JP2014524740A JP 2014524740 A JP2014524740 A JP 2014524740A JP 2014518635 A JP2014518635 A JP 2014518635A JP 2014518635 A JP2014518635 A JP 2014518635A JP 2014524740 A JP2014524740 A JP 2014524740A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
amino acid
pyr
pp2c
pyl receptor
pyr1
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2014518635A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2014524740A5 (ja
Inventor
ショーン アール. カトラー
アサフ モスクナ
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
University of California
Original Assignee
University of California
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by University of California filed Critical University of California
Publication of JP2014524740A publication Critical patent/JP2014524740A/ja
Publication of JP2014524740A5 publication Critical patent/JP2014524740A5/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N15/00Mutation or genetic engineering; DNA or RNA concerning genetic engineering, vectors, e.g. plasmids, or their isolation, preparation or purification; Use of hosts therefor
    • C12N15/09Recombinant DNA-technology
    • C12N15/63Introduction of foreign genetic material using vectors; Vectors; Use of hosts therefor; Regulation of expression
    • C12N15/79Vectors or expression systems specially adapted for eukaryotic hosts
    • C12N15/82Vectors or expression systems specially adapted for eukaryotic hosts for plant cells, e.g. plant artificial chromosomes (PACs)
    • C12N15/8241Phenotypically and genetically modified plants via recombinant DNA technology
    • C12N15/8261Phenotypically and genetically modified plants via recombinant DNA technology with agronomic (input) traits, e.g. crop yield
    • C12N15/8271Phenotypically and genetically modified plants via recombinant DNA technology with agronomic (input) traits, e.g. crop yield for stress resistance, e.g. heavy metal resistance
    • C12N15/8273Phenotypically and genetically modified plants via recombinant DNA technology with agronomic (input) traits, e.g. crop yield for stress resistance, e.g. heavy metal resistance for drought, cold, salt resistance
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K14/00Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • C07K14/415Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from plants

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Plant Pathology (AREA)
  • Cell Biology (AREA)
  • Botany (AREA)
  • Gastroenterology & Hepatology (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)
  • Breeding Of Plants And Reproduction By Means Of Culturing (AREA)
  • Enzymes And Modification Thereof (AREA)
  • General Preparation And Processing Of Foods (AREA)
  • Medicines Containing Plant Substances (AREA)

Abstract

本発明は、アブシジン酸の非存在下で2型プロテインホスファターゼに結合する変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドを含む組成物を提供する。本発明はさらに、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドの作成方法および使用方法を提供する。

Description

関連出願の相互参照
本特許出願は、2011年7月1日出願の米国仮特許出願第61/503,816号および2011年7月27日出願の米国仮特許出願第61/512,280号に基づく優先権の恩典を主張するものであり、これらの各々の内容は、事実上、参照により本明細書に組み入れられる。
連邦政府によって後援された研究開発の下で作成された発明に対する権利に関する陳述
本発明は、全米科学財団によって授与されたグラント番号IOS0820508の下で政府の支援を受けて作成された。政府は本発明における一定の権利を有する。
発明の背景
アブシジン酸(ABA)は、非生物的ストレス応答に関連したシグナル伝達を制御する植物ホルモンである(Cutler et al.,2010)。ABAシグナリング経路は、多数のアプローチを介して、植物ストレス応答およびそれに関連した収量形質を改善するために活用されている(Yang et al.,2010)。ABAの植物への直接適用は、水使用効率を改善する(Raedmacher et al.,1987);このため、ABAアゴニスト(Park et al.,2009;Melcher et al.,2010)は、作物収量を改善するために有益であり得るため、そのような分子の発見が、ますます注目を集めている(Notman et al.,2009)。ABA経路の活性化のための補足的なアプローチは、遺伝学的方法を介して、植物のABAに対する感受性を増加させることを含む。例えば、植物のABA感受性を増加させるファルネシル転移酵素βサブユニット遺伝子の条件的アンチセンスは、キャノーラおよびアラビドプシス(Arabidopsis)の両方において、中程度の干ばつの下で、収量を改善する(Wang et al.,2005)。従って、収量に寄与する形質を改善するためのABAシグナリングの操作は、現在よく確立されている。
ABAは、PYR/PYLタンパク質と呼ばれる可溶性受容体ファミリーに結合することにより、その細胞応答の多くを誘発することが、最近発見された。PYR/PYLタンパク質は、STARTスーパーファミリー(Iyer et al.,2001;Ponting et al.,1999)と名付けられたリガンド結合タンパク質の大きなファミリーに属している。これらのタンパク質は、「ヘリックス・グリップ」モチーフを形成するため、中心のαヘリックスを包囲する7枚の逆平行βシートからなる保存された三次元構造を含有しており;これらの構造要素は、共同で、ABAまたはその他のアゴニストとの結合のためのリガンド結合ポケットを形成する。
構造研究および機能研究は、ABAによって媒介される受容体によるPP2C阻害のために必要な、一連のコンフォメーション変化およびPYR/PYL受容体とII C型プロテインホスファターゼ(PP2C)との間の重要な接触を明らかにした。例えば、ABAまたはその他のアゴニストは、PYR/PYLタンパク質のリガンド結合ポケット内に結合した時、通常はABAシグナリングを抑制しているPP2Cのファミリーに、受容体が結合し、それらを阻害することを可能にするコンフォメーション変化を安定化する(Weiner et al.,2010)。特に、ABA結合は、リガンド結合ポケットに隣接するフレキシブルな「ゲート」ループにおいて大きな再配置をもたらす。ABAが結合すると、ゲートループは、ループとABAとの間のいくつかの直接接触によって安定化された閉構造をとる。このアゴニストが結合した閉鎖型のゲートは、PYR/PYLタンパク質がPP2Cの活性部位にドッキングし、それを阻害することを可能にする。その結果としての阻害が、次に、ABA応答に関与する転写因子、イオンチャネル、およびその他のタンパク質の活性の制御を担う、SnRK2クラスの下流キナーゼの活性化を可能にする(Weiner et al.,2010)。従って、受容体の閉ゲート構造の安定化が、それらの活性化にとって重要であり、PYR/PYL受容体は、多様なABA応答を制御するシグナリングカスケードの頂点にある分子スイッチである。
ゲート閉鎖が受容体活性化において果たす重要な役割に加えて、その他の構造的再配置も重要である。例えば、PYR1、PYL1、およびPYL2は、溶液中でホモ二量体であるが、PP2Cにはモノマーとして結合する。ホモ二量体界面は、PP2C結合界面とオーバーラップしており、従って、完全な受容体ホモ二量体は、PP2Cに結合しそれを阻害することができない。従って、二量体形成はABAシグナリングに対して拮抗性であり、受容体二量体の破壊が、受容体活性化において必要な工程である。さらに、PP2C上に位置する中央の保存されたトリプトファン「ロック」残基を含有している認識モジュールが、ABA結合型受容体において形成される小孔へ挿入される。トリプトファンロック残基の変異は、受容体によって媒介されるPP2C活性の不活化を消失させる。このことは、受容体の孔へのロック残基の挿入の重要性を証明している。
一つの局面において、本発明は、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、単離された核酸を提供する。いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは、野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドと比較して、リガンド結合ポケットおよび/または2型プロテインホスファターゼ(PP2C)結合界面における1種以上のアミノ酸置換を含み、アブシジン酸の非存在下でPP2Cに結合する、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードする。
いくつかの態様において、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、リガンド結合ポケットにおける1種以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO:1に示されるPYR1におけるアミノ酸置換H60P/G/R/A/W/I/K/V/M、V83F/L/P、L87F、A89W、またはF159V/Aに相当する1種以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO:1に示されるPYR1におけるアミノ酸置換H60P/G、V83F、A89W、またはF159Vに相当する1種以上のアミノ酸置換を含む。
いくつかの態様において、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、PP2C結合界面における1種以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO:1に示されるPYR1におけるアミノ酸置換H60P/G/R/A/W/I/K/V/M、I84Q/E/P/H/K、L87F、A89W、M158T/C/V/I、F159V/A、T162F、L166Y/F、またはK170Wに相当する1種以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO:1に示されるPYR1におけるアミノ酸置換H60P/G、I84Q、A89W、M158T/C、F159V、またはK170Wに相当する1種以上のアミノ酸置換を含む。
いくつかの態様において、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、リガンド結合ポケットにおける1種以上のアミノ酸置換およびPP2C結合界面における1種以上のアミノ酸置換を含む。
いくつかの態様において、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO:1に示されるPYR1におけるアミノ酸置換H60P、V83F、およびF159Vに相当するアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO:1に示されるPYR1におけるアミノ酸置換H60P、V83F、M158I、およびF159Vに相当するアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO:1に示されるPYR1におけるアミノ酸置換H60P、A89W、M158I、およびF159Vに相当するアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO:1に示されるPYR1におけるアミノ酸置換V83F、M158I、F159V、およびK170Wに相当するアミノ酸置換を含む。
いくつかの態様において、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、アブシジン酸の非存在下で、ホスファターゼアッセイにおいて、PP2Cの活性を有意に阻害する。いくつかの態様において、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、アブシジン酸の非存在下で野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドと接触させたPP2CのPP2C活性のレベルと比較して、アブシジン酸の非存在下で、少なくとも50%、PP2Cの活性を阻害する。
いくつかの態様において、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO:1〜155のいずれかと実質的に同一である(即ち、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有する)。いくつかの態様において、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO:120〜155のいずれかである。
いくつかの態様において、PP2Cは、HAB1(Homology to ABI1)、ABI1(Abscisic acid insensitive 1)、またはABI2(Abscisic acid insensitive 2)である。いくつかの態様において、PP2CはHAB1である。
もう一つの局面において、本発明は、植物への発現カセットの導入が、アブシジン酸の非存在下で2型プロテインホスファターゼ(PP2C)に結合するPYR/PYL受容体を有する植物をもたらす、(例えば、本明細書に記載される)本発明の変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたプロモーターを含む発現カセットを提供する。いくつかの態様において、プロモーターはポリヌクレオチドと異種である。いくつかの態様において、プロモーターは誘導性である。いくつかの態様において、プロモーターは、ストレス誘導性プロモーター、例えば、干ばつ誘導性プロモーターおよび/または塩分誘導性プロモーターである。いくつかの態様において、プロモーターは組織特異的である。
いくつかの態様において、植物への発現カセットの導入は、発現カセットを欠く植物と比較して、アブシジン酸の非存在下で有意に阻害されたPP2C活性を有する植物をもたらす。いくつかの態様において、植物への発現カセットの導入は、発現カセットを欠く植物と比較して、ABAの非存在下で、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、またはそれ以上、阻害されたPP2C活性を有する植物をもたらす。
もう一つの局面において、本発明は、(例えば、本明細書に記載される)本発明の発現カセットを含む発現ベクターを提供する。
さらにもう一つの局面において、本発明は、(例えば、本明細書に記載される)本発明の変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたプロモーターを含む発現カセットを含む植物(またはそのような植物に由来する植物細胞、種子、花、葉、果実、もしくはその他の植物部分、またはそのような植物に由来する加工食品もしくは食品成分)を提供する。いくつかの態様において、植物は、アブシジン酸の非存在下で有意に阻害されたPP2C活性を有する。
さらにもう一つの局面において、本発明は、アブシジン酸の非存在下で有意に阻害された2型プロテインホスファターゼ(PP2C)活性を有する植物を作製する方法を提供する。いくつかの態様において、方法は、
(例えば、本明細書に記載される)本発明の変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたプロモーターを含む発現カセットを複数の植物へ導入する工程;および
前記複数の植物から、前記ポリヌクレオチドを発現する植物を選択する工程
を含む。
さらにもう一つの局面において、本発明は、増強されたストレス耐性を有する植物を作製する方法を提供する。いくつかの態様において、方法は、
野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドと比較してリガンド結合ポケットおよび/または2型プロテインホスファターゼ(PP2C)結合界面における1種以上のアミノ酸置換を含み、アブシジン酸の非存在下でPP2Cに結合する本発明の変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたプロモーターを含む発現カセットを複数の植物へ導入する工程;および
前記複数の植物から、前記ポリヌクレオチドを発現する植物を選択する工程
を含む。
複数の植物へ導入される変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、本明細書に記載される任意のPYR/PYLポリペプチドであり得る。いくつかの態様において、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO:1に示されるPYR1におけるアミノ酸置換H60P/G/R/A/W/I/K/V/M、V83F/L/P、I84Q/E/P/H/K、L87F、A89W、M158T/C/V/I、F159V/A、T162F、L166Y/F、またはK170Wに相当する1種以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO:1に示されるPYR1におけるアミノ酸置換H60P、V83F、およびF159Vに相当するアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO:1に示されるPYR1におけるアミノ酸置換H60P、V83F、M158I、およびF159Vに相当するアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO:1に示されるPYR1におけるアミノ酸置換H60P、A89W、M158I、およびF159Vに相当するアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO:1に示されるPYR1におけるアミノ酸置換V83F、M158I、F159V、およびK170Wに相当するアミノ酸置換を含む。
本発明の方法による植物における変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドの発現のため、いくつかの態様において、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、異種プロモーターに機能的に連結される。いくつかの態様において、プロモーターは誘導性プロモーターである。いくつかの態様において、プロモーターは、ストレス誘導性プロモーター、例えば、干ばつ誘導性プロモーターおよび/または塩分誘導性プロモーターである。いくつかの態様において、プロモーターはRD29Aである。いくつかの態様において、プロモーターは組織特異的である。
PYR1のリガンド結合残基およびPP2C相互作用残基はPYR/PYL受容体ファミリー内で高度に保存されている。PYR1における変異誘発のために選択された残基、ならびにアラビドプシスPYR/PYL受容体ファミリーの他のメンバー、ならびに蘚類ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)(GenBankアクセッション番号XP_001778048)および単子葉植物トウモロコシ(Zea mays)(GenBankアクセッション番号ACR34816)に由来する2種のPYR1ホモログにおける選択された各残基に相当するアミノ酸位置および残基が示される。「@」付きのカラムは、飽和変異誘発研究から構成的変異が同定された残基を示す。連続ペプチド=SEQ ID NO:156〜172。 構成的活性型変異体の特徴決定。酵母ツーハイブリッドアッセイにおいて、ABAの非存在下では、PYR1はHAB1に結合しないが、10μM ABAの添加は、それらの間の強力な相互作用を促進する(左上パネルの一番下)。酵母ツーハイブリッドアッセイを使用して測定されるように、10個の異なる残基に位置する、構築されたPYR1変異体741種のうちの29種が、ABAの非存在下で、PYR1とHAB1との間の相互作用を増加させる(左上パネル)。同定された10個の部位のうちの8個(H60P、V83F、I84Q、A89W、M158I、F159V、T162F、およびK170W)における変異体タンパク質のサブセットの発現は、全ての変異体が、ABAの非存在下でHAB1ホスファターゼ活性を阻害する受容体の能力によって測定されるように、受容体の基底活性を増加させることを証明した。各グラフは、10μM ABAの非存在下(菱形)および存在下(四角)で試験された対照野生型PYR1タンパク質を含む。特異的な変異体タンパク質(三角)は、ABAの非存在下で試験された。活性化リガンドの非存在下でのPP2C活性の阻害によって測定されるように、全てが、部分的な構成的受容体活性化を示した。各グラフには、ABAまたは受容体タンパク質の非存在下で測定されたPP2C活性である対照に対する%として表されたPP2C活性が、プロットされている。 部分CA変異を組み合わせることによる強力なPYR1 CA対立遺伝子の工作。飽和変異誘発によって同定された部分構成的活性型(「CA」)対立遺伝子の組み合わせを、本文に記載されたようにして作成し、PP2CであるHAB1(上パネル)、ABI1(中央パネル)、およびABI2(下パネル)を利用して、ABAの非存在下でPP2C活性を阻害する能力について試験した。各グラフは、(左に同定される)特定のPP2Cを用いて、10μM ABAの非存在下(菱形)および存在下(四角)で試験された対照野生型PYR1タンパク質を含む。CA変異体(三角によって表されるPYR1CA3および十字(×)によって表されるPYR1CA4)は、ABAの非存在下で試験された。各グラフには、ABAまたは受容体タンパク質の非存在下で測定されたPP2C活性である対照に対する%として表されるPP2C活性が、プロットされている。 強力なPYL2およびPYL9のCA対立遺伝子の工作。PYR1のCA変異を、PYL2(A)およびPYL9(B)へ導入して、変異体PYL2CA3(H65P、V87F、F169V)、PYL2CA4(H65P、V87F、F169V、M164I)、およびPYL9CA4(V85F、Y160I、F161V)を生成した。HAB1、ABI1、およびABI2(HAB1、上パネル;ABI1、中央パネル;ABI2、下パネル)についての組換えタンパク質を、示された化学量論([PP2C]=600nM)で、インビトロPP2Cアッセイにおいて使用した。PYR1 CA対立遺伝子で観察されたように、PYL2およびPYL9のCA対立遺伝子は、PP2Cの高レベルのリガンド非依存性の阻害を示し、複数のPP2Cに対して活性である。 強力なPYL2およびPYL9のCA対立遺伝子の工作。PYR1のCA変異を、PYL2(A)およびPYL9(B)へ導入して、変異体PYL2CA3(H65P、V87F、F169V)、PYL2CA4(H65P、V87F、F169V、M164I)、およびPYL9CA4(V85F、Y160I、F161V)を生成した。HAB1、ABI1、およびABI2(HAB1、上パネル;ABI1、中央パネル;ABI2、下パネル)についての組換えタンパク質を、示された化学量論([PP2C]=600nM)で、インビトロPP2Cアッセイにおいて使用した。PYR1 CA対立遺伝子で観察されたように、PYL2およびPYL9のCA対立遺伝子は、PP2Cの高レベルのリガンド非依存性の阻害を示し、複数のPP2Cに対して活性である。 PYL2CA3過剰発現は種子における過剰休眠(hyperdormancy)を誘導する。コロンビア(Col)、35S::PYL2、および2種の独立の35S::PYL2CA3の種子試料を、二分割し;一方を4℃で6日間1/3 MSプレートで層積処理し、もう一方を6日後に1/3 MSプレートに播種した。次いで、両方の試料を室温(23℃)に移し、暗所でインキュベートし、次いで、吸水後、24時間間隔で発芽を判定した。上のパネルは、吸水から6日後に得られた写真を示す(35S::PYL2CA3の系統1が示されている)。下のグラフは、10日間にわたる発芽データを示す。 PYL2CA3過剰発現は種子におけるABAによって制御される遺伝子の発現に影響する。Col系統、35S::PYL2トランスジェニック系統、および2種の独立の35S::PYL2CA3トランスジェニック系統の種子を、連続照明下で室温で、水または5μM ABAのいずれかにおいて32時間吸水させ、その後、Em6、LEA、およびRd29bのためのプライマーを使用したqRT-PCR反応において全RNAを使用した。生物学的二重反復および技術的三重反復による測定を実施し、遺伝子発現レベルを決定した。データは、5uM ABAにより処理された野生型種子において観察されたレベルに対して標準化されている。 PYL2CA3過剰発現はaba2表現型を抑制する。PYL2CA3のインビボでABAシグナリングを活性化する能力を試験するため、本発明者らは、この対立遺伝子のaba2表現型を抑制する能力を調査した。野生型Col系統、aba2-1トランスジェニック系統、aba2-1;35S::PYL2トランスジェニック系統、および2種の独立のaba2-1;35S::PYL2CA3トランスジェニック系統を、異なる濃度のパクロブトラゾールで発芽させた。aba2変異体は、ABAによって誘導される種子休眠の欠陥のため、パクロブトラゾールに対して抵抗性である。PYL2CA3過剰発現は、aba2-1変異体種子にパクロブトラゾール感受性を回復させる。 PYR1の部位飽和変異誘発は部分活性化変異体を同定する。(A)飽和変異誘発のために選択された部位。アゴニスト(LIG)またはPP2C(PPI)との接触に関与する39個の残基を、構造座標に基づき選択し、部位飽和変異誘発に供して、741種のPYR1変異体を作出した;アライメントは、全てのアラビドプシスPYL、ならびにトウモロコシおよびヒメツリガネゴケのPYR1オルソログにおける相同残基の同一性およびアミノ酸番号付けを示す。連続ペプチド=SEQ ID NO:156〜172。 PYR1の部位飽和変異誘発は部分活性化変異体を同定する。(B)部位飽和変異誘発によって同定された活性化変異。構築された変異体741種のうちの29種が、確立されている酵母ツーハイブリッドアッセイを使用して測定されたように、ABAの非存在下でHAB1との相互作用を促進した;活性化変異の位置が、PYR1-ABA-HAB1構造上にマッピングされている。上のパネルはゲート残基(赤)を示し、下のパネルはC末端ヘリックス残基(緑)を示し;H60はシアンで示されている。ABAの非存在下でHAB1に結合するPYR1変異体のサブセットについて、X-galにより染色された酵母コロニーの画像が挿入されている。参照のため、酵母ツーハイブリッドにおける、10μM ABAの存在下および非存在下での野生型PYR1-HAB1相互作用が、示されている。 部分活性化変異体の組み合わせは構成的活性型PYR1をもたらす。部分活性化変異体の三重および四重の変異体組み合わせを、本文に記載されるようにして作成した(特徴決定された全ての変異体の完全なリストについては図17を参照のこと)。組換え6×His-PYR1(「wt」)、PYR1CA3(A)、PYR1CA4(B)、およびPYR1CA4B(C)を、大腸菌において発現させ、精製し、GST-HAB1を用いたPP2Cアッセイにおいて利用した。反応物は、600nM GST-HAB1および変動する濃度の受容体(0nM、600nM、1200nM、2400nM、または4800nM受容体)を含有する。PP2C活性は、対照、即ち、受容体およびABAの非存在以外は同一の反応条件でのPP2Cの活性に対する%として表される。野生型受容体に対してABAによって誘発された活性化の程度との比較のため、各グラフは、0μM ABA(菱形)または10μM ABA(四角)により実行された野生型PYR1反応を示す;変異体タンパク質は三角によって表され、ABAの非存在下でアッセイされた。右の画像は、PYR1-ABA-HAB1の結晶構造上にマッピングされた変異の位置を示し;変異させた残基の側鎖が、スティック形式で示されており;赤はゲート変異、緑はC末端ヘリックス変異、シアンはH60変異に相当する。 部分活性化変異体の組み合わせは構成的活性型PYR1をもたらす。部分活性化変異体の三重および四重の変異体組み合わせを、本文に記載されるようにして作成した(特徴決定された全ての変異体の完全なリストについては図17を参照のこと)。組換え6×His-PYR1(「wt」)、PYR1CA3(A)、PYR1CA4(B)、およびPYR1CA4B(C)を、大腸菌において発現させ、精製し、GST-HAB1を用いたPP2Cアッセイにおいて利用した。反応物は、600nM GST-HAB1および変動する濃度の受容体(0nM、600nM、1200nM、2400nM、または4800nM受容体)を含有する。PP2C活性は、対照、即ち、受容体およびABAの非存在以外は同一の反応条件でのPP2Cの活性に対する%として表される。野生型受容体に対してABAによって誘発された活性化の程度との比較のため、各グラフは、0μM ABA(菱形)または10μM ABA(四角)により実行された野生型PYR1反応を示す;変異体タンパク質は三角によって表され、ABAの非存在下でアッセイされた。右の画像は、PYR1-ABA-HAB1の結晶構造上にマッピングされた変異の位置を示し;変異させた残基の側鎖が、スティック形式で示されており;赤はゲート変異、緑はC末端ヘリックス変異、シアンはH60変異に相当する。 部分活性化変異体の組み合わせは構成的活性型PYR1をもたらす。部分活性化変異体の三重および四重の変異体組み合わせを、本文に記載されるようにして作成した(特徴決定された全ての変異体の完全なリストについては図17を参照のこと)。組換え6×His-PYR1(「wt」)、PYR1CA3(A)、PYR1CA4(B)、およびPYR1CA4B(C)を、大腸菌において発現させ、精製し、GST-HAB1を用いたPP2Cアッセイにおいて利用した。反応物は、600nM GST-HAB1および変動する濃度の受容体(0nM、600nM、1200nM、2400nM、または4800nM受容体)を含有する。PP2C活性は、対照、即ち、受容体およびABAの非存在以外は同一の反応条件でのPP2Cの活性に対する%として表される。野生型受容体に対してABAによって誘発された活性化の程度との比較のため、各グラフは、0μM ABA(菱形)または10μM ABA(四角)により実行された野生型PYR1反応を示す;変異体タンパク質は三角によって表され、ABAの非存在下でアッセイされた。右の画像は、PYR1-ABA-HAB1の結晶構造上にマッピングされた変異の位置を示し;変異させた残基の側鎖が、スティック形式で示されており;赤はゲート変異、緑はC末端ヘリックス変異、シアンはH60変異に相当する。 CA3変異およびCA4変異は他の受容体骨格の環境において機能する。PYR1からのCA3変異を、PYL2およびPYL9の相同の位置へ導入し(三角)、PYR1からのCA4変異をPYL2の相同の位置へ導入した(黒丸)。組換え受容体を、GST-HAB1、6×-His-Sumo-ABI1、および6×-His-Sumo-ABI2に対する活性についてアッセイした。反応物は、600nM PP2Cおよび変動する濃度の受容体(0nM、600nM、1200nM、2400nM、または4800nM受容体)を含有する。PP2C活性は、対照、即ち、受容体およびABAの非存在下でのPP2Cの活性に対する%として表される;各グラフは、0μM ABA(菱形)または10μM ABA(四角)のいずれかにより実行された反応における野生型受容体を示す。 PYL2CA3の過剰発現は種子過剰休眠を誘導する。野生型コロンビア(Col)系統、35S::GFP-PYL2系統、または2種の独立の35S::GFP-PYL2CA3系統の種子を、4℃で6日間層積処理するか(四角)または層積処理せず(菱形)、次いで、吸水後、24時間間隔でそれらの発芽をモニタリングした。右の画像は、コロンビア、35S::GFP-PYL2、または2種の独立の35S::GFP-PYL2CA3(系統1)についての吸水後48時間目の代表的な画像を示す。 PYL2CA3の発現はABAによって制御されるmRNAのレベルを上昇させる。方法に記載されるように、野生型コロンビア(Col)、35S::GFP-PYL2、または2種の独立の35S::GFP-PYL2CA3の種子を、室温で32時間吸水させ、RNAを調製し、Em6(左)、LEA(中央)、またはRd29b(右)のためのプライマーを使用したqRT-PCR反応を実施した;野生型コロンビアの種子は、0μM ABAまたは5μM ABAのいずれかにより処理された。(BioRadのCFX Managerソフトウェアを使用して1の値に任意に設定された)野生型発現と比べた誘導倍率が示されている;Y軸が対数スケールで表示されていることに注意すること。 PYL2CA3はABA欠損によって引き起こされる表現型を抑制する。野生型コロンビア(Col)遺伝子型、aba2-1遺伝子型、aba2-1;35S::GFP-PYL2遺伝子型、またはaba2-1;35S::GFP-PYL2CA3遺伝子型の種子を、異なる濃度のパクロブトラゾールまたは塩化ナトリウムを含有している寒天培地で4℃で4日間層積処理し、吸水後72時間目に発芽を判定した。実験はトリプリケートで実施された。標準偏差がグラフ点に示される。左の画像は、対照、50μMパクロブトラゾール、または250mM NaClについての吸水後72時間目の代表的な画像を示す。グラフにプロットされた値は3回の独立の測定の平均値であり、エラーバーは標準偏差を示す。WT(菱形)、aba2-1(三角)、aba2-1;35S::GFP-PYL2(四角)、aba2-1;35S::GFP-PYL2CA3(黒丸)。 PYL6およびPYL10は完全な構成的活性を保有しない。組換え野生型6×-His-PYL6または6×-His-PYL10を、方法に記載されたようにして調製し、600nM GST-HAB1および変動する濃度の受容体(0nM、600nM、1200nM、2400nM、または4800nM受容体)を使用したインビトロPP2Cアッセイにおいて査定した。PP2C活性は、対照、即ち、受容体およびABAの非存在以外は同一の反応条件でのPP2Cの活性に対する%として表される。グラフは、0μM ABA(菱形)または10μM ABA(四角)のいずれかにより実行された反応を示す。 部位飽和変異誘発によって同定された変異はPYR1の基底活性を増加させる。組換え野生型6×-His-PYR1または変異体を、方法に記載されたようにして調製し、600nM GST-HAB1および変動する濃度の受容体(0nM、600nM、1200nM、2400nM、または4800nM受容体)を使用したインビトロPP2Cアッセイにおいて査定した。PP2C活性は、対照、即ち、受容体およびABAの非存在以外は同一の反応条件でのPP2Cの活性に対する%として表される。野生型受容体においてABAによって誘発された活性化の程度との比較のため、各グラフは、0μM ABA(菱形)または10μM ABA(四角)のいずれかにより実行された野生型PYR1反応を示す;変異体タンパク質は三角によって表され、ABAの非存在下でアッセイされた。 CA4C対立遺伝子は複数の受容体を活性化する。組換え野生型または変異体6×-His-受容体を、方法に記載されたようにして調製し、600nM GST-HAB1および変動する濃度の受容体(0nM、600nM、1200nM、2400nM、または4800nM受容体)を使用したインビトロPP2Cアッセイにおいて査定した。PP2C活性は、対照、即ち、受容体およびABAの非存在以外は同一の反応条件でのPP2Cの活性に対する%として表される。野生型受容体においてABAによって誘発された活性化の程度との比較のため、各グラフは、0μM ABA(菱形)または10μM ABA(四角)のいずれかにより実行された野生型PYR1反応を示す;変異体タンパク質は三角によって表され、ABAの非存在下でアッセイされた。グラフにプロットされた値は3回の独立の測定の平均値であり、エラーバーは標準偏差を示す。 単一受容体変異および多重受容体変異についてのPP2C活性の要約。野生型対照PYR/PYLタンパク質(ABAの非存在下または存在下)、ならびに様々なPYR1、PYL2、およびPYL9の単一変異タンパク質または多重変異タンパク質(ABA添加の非存在下)の、HAB1、ABI1、および/またはABI2の活性に対する効果を示す実験データの要約。 Rd29A::GFP-PYL2CA4トランスジーンは中程度の発芽遅延を引き起こす。野生型コロンビア(Col-0)系統、Rd29A::GFP-PYL2系統、または2種の独立のRd29A::GFP-PYL2CA4系統の種子を、4℃で5日間層積処理するか(赤四角)または層積処理せず(青菱形)、次いで、幼根出現によって示されるそれらの発芽を、吸水後24時間間隔でモニタリングした。グラフは、三つの生物学的反復からの値の平均値をプロットしたものであり、エラーバーは1標準偏差を示す。 RD29Aにより駆動されるPYL2CA4トランスジーンを含有している植物は表現型が野生型に類似している。左から右へ、野生型系統、RD29A::GFP-PYL2トランスジェニック系統、および2種の独立のRD29A::GFP-PYL2CA4トランスジェニック系統。示された植物は、長日光条件(16明/8暗)下で、ジフィーポットで生長した4週齢の植物である。 RD29A::GFP-PYL2CA4トランスジーンはアラビドプシスの稔性を実質的に低下させない。野生型コロンビア(Col-0)系統、RD29A::GFP-PYL2トランスジェニック系統、または2種の独立のRD29A::GFP-PYL2CA4トランスジェニック系統の長角果を、2種のパラメータ:長角果の長さ(青菱形)および長角果の数(赤四角)によって特徴決定した。長角果の長さについては、位置を確認した5個の乾燥成熟長角果を測定した。主茎上の長角果の総数を、7個の個々の植物から計数した。グラフは、値の平均値をプロットしたものであり、エラーバーは1標準偏差を示す。 RD29A::GFP-PYL2CA4トランスジーンは干ばつに応答してPYL2発現を駆動する。RD29A::GFP-PYL2トランスジェニック系統および2種の独立のRD29A::GFP-PYL2CA4トランスジェニック系統から、3週齢の植物の葉(-)または切り取って4時間乾燥させた葉(+)から、タンパク質を単離した。ウエスタンブロット分析を、20μg SDS-PAGE上で実施し、分離された全タンパク質を、GFPモノクローナル抗体(Clontech,USA)の1/10,000希釈物またはαチューブリン抗体(Sigma,USA)の1/10,000希釈物のいずれか、続いて、1/10,000二次HRP標識抗マウスIgG抗体(Sigma,USA)によりプロービングし、増強化学発光(GE Healthcare,USA)によって検出した。 RD29A::GFP-PYL2CA4トランスジーンを含有している植物は増加した塩分抵抗性を保有する。野生型コロンビア(Col-0)系統、RD29A::GFP-PYR1トランスジェニック系統、RD29A:GFP-PYL2トランスジェニック系統、2種の独立のRD29A::GFP-PYR1CA4トランスジェニック系統またはRD29A::GFP-PYL2CA4トランスジェニック系統の週齢実生を、16時間100mM NaClに供し、次いで、実生を、さらに2週間、250mM NaClに移し、その後、以下のように生存率を判定した:完全に白い実生を枯死と判定し、色素を保持している実生を生存と判定した。次いで、全実生(N=99)に対する%として生存率を計算した。(A)250mM NaClにおける2週間後の実生の代表的な画像、(B)PYR1トランスジェニック系統の生存率の定量化、(C)PYL2トランスジェニック系統の生存率の定量化。エラーバーは1標準偏差を示す。 RD29A::GFP-PYL2CA4トランスジーンはABAによって制御されるmRNAのレベルを100mM NaClに応答して上昇させる。野生型コロンビア(Col)系統、RD29A::GFP-PYL2系統、または2種の独立のRD29A::GFP-PYL2CA4系統の実生を、0時間、3時間、または6時間、100mM NaClに供した。RNAを調製し、実施例セクションに記載されるように、RD29B遺伝子(上)またはRAB18遺伝子(下)のためのプライマーを使用して、qRT-PCR反応を実施した。プロットされた誘導倍率は、(BioRad CFX Managerソフトウェアを使用して1の値に任意に設定された)野生型発現と比べて計算された。グラフは、三つの技術的反復からの平均値をプロットしたものであり、エラーバーは1SDを示す;遺伝子発現の同一の傾向が、三つの別々の生物学的反復において見られた。 RD29A::GFP-PYL2CA4トランスジーンは水使用効率を改善する。野生型コロンビア(Col)系統、RD29A:GFP-PYL2系統、または2種の独立のRD29A::GFP-PYL2CA4系統からの6週齢の植物を、蒸散に起因しない水損失を防止するためにポットを覆うことにより、干ばつ条件のために準備した。次いで、水を2週間枯渇させ、その間、植物を写真撮影し計量した。水保持を、初期含水量に対するパーセントとして計算した。(A)1週間後または2週間後の水枯渇植物(上パネル)および連続的な水供給を有していた対照の代表的な画像。写真下の数字は、水不足のために少なくとも1枚の葉が崩落した植物の割合を表す。(B)水保持の一元配置の統計Anova検定。プロットは、95%信頼区間と共に平均値を示す。 RD29A::GFP-PYL2CA4トランスジーンはアラビドプシス乾重量蓄積に影響しない。図24に記載された水使用効率実験において使用された植物(n=およそ32)および対照(n=およそ10)を乾燥させ計量した。グラフは、値の平均値をプロットしたものであり、エラーバーは1標準偏差を示す。 RD29A::GFP-PYL2CA4トランスジーンは乾燥からの回復後の気孔開度に影響する。野生型コロンビア(Col-0)系統、RD29A::GFP-PYL2トランスジェニック系統、または2種の独立のRD29A::GFP-PYL2CA4トランスジェニック系統の4週齢の植物からの葉を切断し、1時間明所で乾燥させ、次いで、90分間、植物に再び水分補給した。対照は高湿度下で24時間生長させた。各遺伝子型について4枚の葉の気孔形態学を、実施例に記載されるようなモールディングにより捕えた。各遺伝子型についておよそ100個の気孔の開度を測定し、得られた測定値に対して、一元配置のAnova統計分析を実施した。プロットは、気孔開度平均値(μm)を示し、95%信頼区間がエラーバーにプロットされている。
定義
「PYR/PYL受容体ポリペプチド」という用語は、野生型においては、アブシジン酸(ABA)およびABAアナログのシグナリングを媒介する、ポリケチドシクラーゼドメイン2(PF10604)、ポリケチドシクラーゼドメイン1(PF03364)、およびBetVIドメイン(PF03364)のうちの1種以上または全部の存在を一部分特徴とするタンパク質をさす。多様なPYR/PYL受容体ポリペプチド配列が、当技術分野において公知である。いくつかの態様において、PYR/PYL受容体ポリペプチドは、PYR1(SEQ ID NO:1)、PYL1(SEQ ID NO:2)、PYL2(SEQ ID NO:3)、PYL3(SEQ ID NO:4)、PYL4(SEQ ID NO:5)、PYL5(SEQ ID NO:6)、PYL6(SEQ ID NO:7)、PYL7(SEQ ID NO:8)、PYL8(SEQ ID NO:9)、PYL9(SEQ ID NO:10)、PYL10(SEQ ID NO:11)、PYL11(SEQ ID NO:12)、PYL12(SEQ ID NO:13)、もしくはPYL13(SEQ ID NO:14)、またはSEQ ID NO:15〜155のいずれかと実質的に同一であるポリペプチドを含む。
「リガンド結合ポケット」という用語は、ABAがPYR/PYL受容体ポリペプチドに結合している時、リガンドABAの5Å以内に位置するPYR/PYL受容体ポリペプチドのアミノ酸残基、またはABAと水素結合する水分子をさす。ABAがPYR/PYL受容体に結合している時の、ABAへのアミノ酸残基の近接は、例えば、タンパク質結晶学によって決定され得る。
「2型プロテインホスファターゼ結合界面」または「PP2C結合界面」という用語は、ABAとPYR/PYL受容体ポリペプチドとPP2Cとが、三元複合体として結合している時、PP2Cの5Å以内に位置するPYR/PYL受容体ポリペプチドのアミノ酸残基をさす。PP2CがPYR/PYL受容体に結合している時の、PP2Cへのアミノ酸残基の近接は、例えば、タンパク質結晶学によって決定され得る。
「野生型PYR/PYL受容体ポリペプチド」とは、アブシジン酸(ABA)およびABAアナログのシグナリングを媒介する天然に存在するPYR/PYL受容体ポリペプチドをさす。
「変異型PYR/PYL受容体ポリペプチド」とは、天然に存在する(即ち、野生型)PYR/PYL受容体ポリペプチドからのバリアントであるPYR/PYL受容体ポリペプチドをさす。本明細書において使用されるように、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、対応する野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドと比べて1種、2種、3種、4種、またはそれ以上のアミノ酸置換を含む。これに関して、「変異型」ポリペプチドは、非野生型ヌクレオチド配列を生成する任意の方法によって生成され得る。いくつかの態様において、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは「構成的活性型」である。本明細書において使用されるように、「構成的活性型」とは、ABAの非存在下で2型プロテインホスファターゼ(PP2C)に結合することができ、かつ/またはABAの非存在下でPP2Cの活性を阻害することができるPYR/PYL受容体をさす。
「2型プロテインホスファターゼ(PP2C)の活性を有意に阻害する」という語句は、本明細書において使用されるように、アブシジン酸の非存在下で変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドと接触させたPP2Cの活性レベルが、アブシジン酸の非存在下でのPP2Cの活性レベルと比べて実質的に減少することを意味する。いくつかの態様において、アブシジン酸の非存在下で変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドと接触させたPP2Cの活性レベルは、アブシジン酸の非存在下でのPP2Cの活性レベルと比べて、少なくとも約10%、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上減少する時、実質的に減少する。いくつかの態様において、本発明の構成的活性型PYR/PYL受容体は、約1:1、約1:2、約1:3、または約1:4の受容体/PP2Cモル比で、PP2C活性を有意に阻害する(例えば、PP2C活性の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上を阻害する)。
「アミノ酸置換」とは、所定の位置の天然に存在するアミノ酸残基(例えば、野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドに存在する天然に存在するアミノ酸残基)を、天然に存在する残基以外のアミノ酸残基に交換することをさす。例えば、野生型PYR1受容体ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の60位の天然に存在するアミノ酸残基は、ヒスチジン(H60)であり;従って、H60におけるアミノ酸置換とは、天然に存在するヒスチジンをヒスチジン以外の任意のアミノ酸残基に交換することをさす。
「[指定された配列]におけるアミノ酸残基[X]に相当する」アミノ酸残基、または「[指定された配列]におけるアミノ酸置換[X]に相当する」アミノ酸置換とは、指定された配列の等価なアミノ酸と整列する関心対象のポリペプチドにおけるアミノ酸をさす。一般に、本明細書に記載されるように、指定されたPYR/PYL受容体ポリペプチド配列のある位置に相当するアミノ酸は、BLASTのようなアライメントアルゴリズムを使用して決定され得る。本発明のいくつかの態様において、アミノ酸位置の「相当」は、本明細書にさらに記述されるように、SEQ ID NO:1を含むPYR/PYL受容体ポリペプチドの一領域との整列化によって決定される。PYR/PYL受容体ポリペプチド配列が、(例えば、アミノ酸の変化またはアミノ酸の付加もしくは欠失によって)SEQ ID NO:1と異なる時、PYR/PYL受容体の構成的活性に関連した特定の変異は、SEQ ID NO:1と同一の位置番号にはない可能性がある。例えば、2種の配列のアライメントにおいて容易に例証され得るように、PYL2(SEQ ID NO:3)のアミノ酸位置V87は、PYR1(SEQ ID NO:1)のアミノ酸位置V83と整列する。この例において、SEQ ID NO:3におけるアミノ酸位置87は、SEQ ID NO:1における83位に相当する。相当する位置の例は、図1に示される。
2種の核酸配列またはポリペプチドは、下記のように最大に対応するよう整列化された時、2種の配列におけるヌクレオチドまたはアミノ酸残基の配列が、それぞれ、同一である場合に、「同一」であると言われる。2種以上の核酸またはポリペプチド配列に関して「同一の」または「同一」率という用語は、以下の配列比較アルゴリズムのうちの1種を使用して、または手動アライメントおよび目視検査によって測定されるように、比較ウィンドウにおいて比較され最大に対応するよう整列化された時、同一であるか、または同一であるアミノ酸残基もしくはヌクレオチドを指定された率で有する2種以上の配列または部分配列をさす。配列同一率がタンパク質またはペプチドに関して使用される時、同一でない残基位置は、アミノ酸残基が、類似した化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を有する他のアミノ酸残基に置換され、従って、分子の機能的特性を変化させない、保存的アミノ酸置換によって、しばしば、異なることが認識される。配列が保存的置換において異なる場合には、配列同一率を、置換の保存的な性質について補正するために上方へ調整することができる。この調整を行うための手段は、当業者に周知である。典型的には、これは、保存的置換を、完全ミスマッチではなく部分ミスマッチとして判定し、それにより、配列同一率を増加させることを含む。従って、例えば、同一アミノ酸に1のスコアを与え、非保存的置換に0のスコアを与える場合、保存的置換には0と1との間のスコアを与える。保存的置換の判定は、例えば、プログラムPC/GENE(Intelligenetics,Mountain View,California,USA)において実装されるような、Meyers & Miller,Computer Applic.Biol.Sci.4:11-17(1988)のアルゴリズムに従い、例えば、計算される。
2種の核酸またはポリペプチドに関して使用された「実質的同一性」または「実質的に同一の」という語句は、参照配列との少なくとも70%の配列同一性を有する配列をさす。あるいは、同一率は70%〜100%の任意の整数であり得る。いくつかの態様において、配列が、本明細書に記載された方法;好ましくは、下記のような標準パラメータを使用したBLASTを使用して決定されるように、参照配列との少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する場合、その配列は参照配列と実質的に同一である。本発明の態様は、SEQ ID NO:1〜155のいずれかと実質的に同一であるポリペプチドをコードする核酸を提供する。
配列比較のため、典型的には、1種の配列が、試験配列が比較される参照配列として機能する。配列比較アルゴリズムを使用する時には、試験配列および参照配列をコンピューターに入力し、必要であれば、部分配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。デフォルトプログラムパラメータを使用することもできるし、または代替パラメータを指定することもできる。次いで、配列比較アルゴリズムが、プログラムパラメータに基づき、参照配列と比べた試験配列についての配列同一率を計算する。
「比較ウィンドウ」には、本明細書において使用されるように、2種の配列を最適に整列化した後、配列を同一の連続位置数を有する参照配列と比較することができる、20〜600、一般的には、約50〜約200、より一般的には、約100〜約150からなる群より選択される連続位置数のいずれか一つを有するセグメントへの言及が含まれる。比較のための配列のアライメントの方法は、当技術分野において周知である。比較のための配列の最適アライメントは、例えば、Smith & Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)のローカルホモロジーアルゴリズム(local homology algorithm)、Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)のホモロジーアライメントアルゴリズム(homology alignment algorithm)、Pearson & Lipman,Proc.Nat'l.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似性検索(search for similarity)法、これらのアルゴリズムのコンピューター化された実装(Wisconsin Genetics Software Package(Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WI)内のGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)、または手動アライメントおよび目視検査によって実施され得る。
配列同一率および配列類似率を決定するために適当なアルゴリズムは、それぞれ、Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-410およびAltschul et al.(1977)Nucleic Acids Res.25:3389-3402に記載されているBLASTアルゴリズムおよびBLAST2.0アルゴリズムである。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(NCBI)ウェブサイトを通して公に入手可能である。アルゴリズムは、最初に、データベース配列内の同一の長さのワードと整列化された時、マッチするかまたは何らかの正の値の閾スコアTを満たす、問合せ配列内の長さWの短いワードを同定することにより、高スコア配列対(HSP)を同定することを含む。Tは近隣ワードスコア閾値(neighborhood word score threshold)(Altschul et al、前記)と呼ばれる。これらの初期近隣ワードヒットは、それらを含有しているより長いHSPを見出すための探索を開始するためのシードとして機能する。次いで、ワードヒットは、累積アライメントスコアが増加し得る限り、各配列に沿って両方向に拡張される。累積スコアは、ヌクレオチド配列の場合、パラメータM(マッチ残基対についてのリワードスコア;常に>0)およびN(ミスマッチ残基についてのペナルティスコア;常に<0)を使用して計算される。アミノ酸配列の場合、スコアリングマトリックスが累積スコアを計算するために使用される。各方向へのワードヒットの拡張は、累積アライメントスコアが最高達成値から量Xだけ減少するか;1個以上の負のスコアの残基アライメントの蓄積により累積スコアが0以下になるか;またはいずれかの配列の末端に到達した時、中止される。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、およびXは、アライメントの感度およびスピードを決定する。(ヌクレオチド配列のための)BLASTNプログラムは、デフォルトとして、28のワードサイズ(W)、10の期待値(E)、M=1、N=-2、および両方の鎖の比較を使用する。アミノ酸配列のためのBLASTPプログラムは、デフォルトとして、3のワードサイズ(W)、10の期待値(E)、およびBLOSUM62スコアリングマトリックスを使用する(Henikoff & Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915(1989)を参照のこと)。
BLASTアルゴリズムは、2種の配列の間の類似性の統計分析も実施する(例えば、Karlin & Altschul,Proc.Nat'l.Acad.Sci.USA 90:5873-5787(1993)を参照のこと)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の一つの尺度は、2種のヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の間のマッチが偶然起こる確率の示度を提供する、最小合計確率(P(N))である。例えば、試験核酸の参照核酸との比較において最小合計確率が、約0.01未満、より好ましくは、約10-5未満、最も好ましくは、約10-20未満である場合、その核酸は、参照配列に類似していると見なされる。
「プロモーター」という用語は、本明細書において使用されるように、細胞におけるコード配列の転写を駆動することができるポリヌクレオチド配列をさす。従って、本発明のポリヌクレオチド構築物において使用されるプロモーターには、遺伝子の転写のタイミングおよび/または速度の制御またはモジュレーションに関与する、シス作用性の転写の調節要素および制御配列が含まれる。例えば、プロモーターは、転写制御に関与する、エンハンサー、プロモーター、転写ターミネーター、複製起点、染色体組み込み配列、5'および3'非翻訳領域、またはイントロン配列を含む、シス作用性の転写調節要素であり得る。これらのシス作用性の配列は、遺伝子転写を実行するため(オン/オフにするため、制御するため、モジュレートするため等)、典型的には、タンパク質またはその他の生体分子と相互作用する。「植物プロモーター」は、植物細胞における転写を開始することができるプロモーターである。「構成的プロモーター」とは、ほぼ全ての組織型において転写を開始することができるものであり、「組織特異的プロモーター」は、1種または少数の特定の組織型においてのみ転写を開始する。
ポリヌクレオチド配列は、外来種に起因する場合、または、同一種に起因するが、その最初の型から修飾されている場合、生物または第二のポリヌクレオチド配列と「異種である」。例えば、プロモーターが異種コード配列に機能的に連結されていると言われる時、それは、コード配列とプロモーター配列とが異なる種に由来するか;または、両方が同一種に由来する場合、コード配列がプロモーターと天然には関連していない(例えば、遺伝子的に操作されたコード配列であり、例えば、同一種の異なる遺伝子、または異なる生態型もしくは変種に由来する対立遺伝子に由来する)ことを意味する。
「発現カセット」とは、宿主細胞へ導入された時、それぞれ、RNAまたはポリペプチドの転写および/または翻訳をもたらす核酸構築物をさす。翻訳されないかまたは翻訳され得ないアンチセンス構築物またはセンス構築物が、この定義に明らかに含まれる。トランスジーンの発現および(例えば、アンチセンス、またはセンス抑制による)内在性遺伝子の抑制の両方の場合、当業者は、挿入されるポリヌクレオチド配列が、同一である必要はなく、それが由来した遺伝子の配列と実質的に同一であるに過ぎなくてもよいことを認識するであろう。本明細書において説明されるように、これらの実質的に同一のバリアントは、特定の核酸配列への言及によって具体的にカバーされる。
「植物」という用語には、植物全体、苗条栄養器官および/または構造(例えば、葉、茎、および塊茎)、根、花、および花器官(例えば、包葉、萼片、花弁、雄ずい、心皮、葯)、胚珠(卵細胞および中央細胞を含む)、種子(接合子、胚、胚乳、および種皮を含む)、果実(例えば、成熟子房)、実生、植物組織(例えば、維管束組織、基本組織等)、細胞(例えば、孔辺細胞、卵細胞、毛状突起等)、ならびにそれらの子孫が含まれる。本発明の方法において使用され得る植物の綱は、一般に、被子植物(単子葉植物および双子葉植物)、裸子植物、シダ類、ならびに多細胞藻類を含む、形質転換技術を受け入れる高等植物および下等植物の綱と広い。それには、異数体、倍数体、二倍体、半数体、およびヘミ接合体を含む、多様な倍数性レベルの植物が含まれる。
発明の詳細な説明
I. 序論
本発明は、PYR/PYL受容体ポリペプチドにおける変異の組み合わせが、構成的活性型のPYR/PYL受容体をもたらすという発見に一部分基づく。PYR/PYL受容体は、配列類似性、ABA感受性、オリゴマー状態、および基底活性化のレベルに基づき、三つのクラスに分類され得る。PYR1、PYL1、PYL2、PYL3、およびPYL4は、溶液中で二量体であり、低い基底活性化を示し、他のPYLと比較して、完全なPP2C阻害を誘発するためにより高いレベルのABAを要求する。PYL5、PYL6、PYL7、PYL8、およびPYL9は、溶液中でモノマーであり、PYR1〜PYL4と比較して、PP2C活性を阻害するためにより低いABA濃度を要求し、より高い基底活性を保有する。PYL10、PYL11、PYL12、およびPYL13も、溶液中でモノマーであるが、PYR1〜PYL9よりはるかに高い基底活性化を示す。2型プロテインホスファターゼ(PP2C)との高親和性結合を可能にする型へと受容体を安定化するためには、アブシジン酸(ABA)が必要とされるため、二量体PYR/PYL受容体タンパク質は、ABAの非存在下では、PP2C活性を実質的に阻害しない。
原理的に、アゴニストの非存在下でのPP2Cとの高親和性結合およびPP2Cの阻害を可能にする受容体変異は、ABA非依存性の形式でABAシグナリング経路を活性化するはずである。変異体受容体のこれらの型は、「構成的活性」型と呼ばれる。しかしながら、PYL10のようないくつかのPYLタンパク質は、PYR1と比較してより高い基底活性化を有することが報告されているが、完全な構成的活性型の活性を示す受容体またはバリアントは、以前に報告されていない。本発明は、驚くべきことに、完全な構成的活性特性を保有するPYR/PYL受容体を証明し、トランスジェニック植物においてABAシグナリングおよびストレス耐性を活性化するためのそれらの有用性を証明する。
構成的活性型変異は、単一の受容体が選択的に活性化されることを可能にするため、構成的活性型PYR/PYL受容体変異は、(ABAのような)包括的な化学アゴニストと比較して有益である。PYR/PYL受容体は、比較的大きな遺伝子ファミリー(アラビドプシスにおいては14メンバー)に存在するため、構成的活性型変異による単一の受容体の選択的な活性化は、より広範囲の受容体を活性化するABAまたは全般的アゴニストによるシグナリングの全般的な活性化とは対照的に、別個のファミリーメンバーによって調節される応答を特異的に調節することを可能にし得る。PYR/PYL受容体の選択的な作用は、萎黄病のような全般的活性化の望ましくない副作用を回避することができ、無数の望ましい副作用および望ましくない副作用を区別し、特異的に調節することを可能にする。
II. 構成的活性型PYR/PYL受容体ポリペプチド
一つの局面において、本発明は、リガンド結合ポケットおよび/または2型プロテインホスファターゼ(PP2C)結合界面における1種以上のアミノ酸置換を含み、アブシジン酸の非存在下でPP2Cに結合するPYR/PYL受容体ポリペプチド、ならびに1種以上のアミノ酸置換を含み、アブシジン酸の非存在下でPP2Cに結合するPYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;1種以上のアミノ酸置換を含み、アブシジン酸の非存在下でPP2Cに結合するPYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットおよび発現ベクター;1種以上のアミノ酸置換を含み、アブシジン酸の非存在下でPP2Cに結合するPYR/PYL受容体ポリペプチドを含む植物;1種以上のアミノ酸置換を含み、アブシジン酸の非存在下でPP2Cに結合するPYR/PYL受容体ポリペプチドを含む植物を作成する方法を提供する。
いくつかの態様において、構成的活性型PYR/PYL受容体は、ABAの非存在下でPP2Cに結合する変異型受容体をもたらす変異を含む。本明細書において使用されるように、変異型PYR/PYL受容体(例えば、変異型PYR1受容体)が、ABAの非存在下での対応する野生型PYR/PYL受容体(例えば、SEQ ID NO:1に示される野生型PYR1)のPP2Cに対する基底親和性より高い、PP2Cに対する結合親和性を、ABAの非存在下で有する場合、その変異型PYR/PYL受容体はABAの非存在下でPP2Cと「結合する」。いくつかの態様において、構成的活性型PYR/PYL受容体は、ABAの非存在下でホスファターゼアッセイにおいてPP2Cの活性を有意に阻害する変異型受容体をもたらす変異を含む。いくつかの態様において、変異型受容体は、ABAの非存在下での野生型PYR/PYL受容体と比較して、ABAの非存在下で、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、またはそれ以上、PP2Cの活性レベルを阻害する。
多様な野生型(天然に存在する)PYR/PYLポリペプチド配列が、当技術分野において公知である。PYR1は、最初、アラビドプシスにおけるアブシジン酸(ABA)受容体として同定されたが、実際、PYR1は、同様にABAシグナリングを媒介するアラビドプシスにおける同一タンパク質ファミリーの少なくとも14種のタンパク質(PYR/PYLタンパク質)の群のメンバーである。このタンパク質ファミリーは、他の植物にも存在し(例えば、配列表を参照のこと)、ポリケチドシクラーゼドメイン2(PF10604)、ポリケチドシクラーゼドメイン1(PF03364)、およびBetVIドメイン(PF03364)のうちの1種以上または全部の存在を一部分特徴とする。START/Betv1スーパーファミリードメインは、例えば、Radauer,BMC Evol.Biol.8:286(2008)に記載されている。いくつかの態様において、野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO:1〜119のいずれかを含む。いくつかの態様において、野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO:1〜119のいずれかと実質的に同一である(例えば、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である)。
構成的活性型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、天然に存在する(即ち、野生型)PYR/PYL受容体ポリペプチドからのバリアントであり、バリアントPYR/PYL受容体ポリペプチドは、アブシジン酸の非存在下で、PP2Cに結合することができ、かつ/またはその活性を阻害することができる。本発明の構成的活性型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、PYR/PYL受容体ポリペプチドのリガンド結合ポケットおよび/または2型プロテインホスファターゼ(PP2C)結合界面における1種以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、構成的活性型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、または155のいずれかと実質的に同一であり(例えば、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であり)、リガンド結合ポケットおよび/またはPP2C結合界面における本明細書に記載される1種、2種、3種、4種、またはそれ以上の変異(例えば、アミノ酸置換)を含み、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、アブシジン酸の非存在下で、2型プロテインホスファターゼ(PP2C)に結合し、かつ/またはその活性を阻害する。いくつかの態様において、構成的活性型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、リガンド結合ポケットにおける1種以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、構成的活性型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、PP2C結合界面における1種以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、構成的活性型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、リガンド結合ポケットおよびPP2C結合界面の各々における1種以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、構成的活性型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO:120〜155のいずれか(即ち、SEQ ID NO:120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、または155のいずれか)のアミノ酸配列を有する。
リガンド結合ポケット変異
PYR/PYL受容体タンパク質は、「ゲート」および「ラッチ」と呼ばれる2個のループが隣接する保存されたSTARTドメインリガンド結合ポケットを有する(Melcher,K.et al.,Nature 462(2009))。ABAは、リガンド結合ポケットでPYR/PYL受容体タンパク質に結合し、ABA結合は、リガンド結合ポケット内にABAを封じ込めるため、ループの閉鎖を誘導する。PYR/PYL受容体ポリペプチドのリガンド結合ポケットは、リガンドがPYR/PYL受容体に結合している時、PYR/PYLリガンド(例えば、ABA)の直近(例えば、約5Å以内)にあるアミノ酸残基またはリガンドと接触する水分子を含む。実施例セクションの表1は、PYR1のリガンド結合ポケットを構成する残基をリストしたものであり;PYR1リガンド結合ポケットを構成する残基は全部で25個存在する。リガンド結合ポケットの残基も、他のPYR/PYLファミリーメンバーの間で高度に保存されている。
いくつかの態様において、本発明の変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、リガンド結合ポケットにおける1種以上(例えば、1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、またはそれ以上)のアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、1種以上のアミノ酸置換は、SEQ ID NO:1に示されるPYR1における位置H60、V83、L87、A89、およびF159に相当するアミノ酸置換H60P/G/R/A/W/I/K/V/M、V83F/L/P、L87F、A89W、またはF159V/Aより選択される。いくつかの態様において、1種以上のアミノ酸置換は、SEQ ID NO:1に示されるPYR1における位置H60、V83、L87、A89、およびF159に相当するH60G/R/A/W/I/K/V/M、V83F/P、L87F、A89W、またはF159V/Aより選択される。いくつかの態様において、1種以上のアミノ酸置換は、SEQ ID NO:1に示されるPYR1における位置H60およびV83に相当するH60P/G/R/A/W/I/K/V/MおよびV83F/L/Pより選択される2種のアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、1種以上のアミノ酸置換は、SEQ ID NO:1に示されるPYR1における位置H60およびF159に相当するアミノ酸置換H60P/G/R/A/W/I/K/V/MおよびF159V/Aより選択される2種のアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、1種以上のアミノ酸置換は、SEQ ID NO:1に示されるPYR1における位置H60、V83、およびF159に相当するアミノ酸置換H60P/G/R/A/W/I/K/V/M、V83F/L/P、およびF159V/Aより選択される3種のアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、1種以上のアミノ酸置換は、SEQ ID NO:1に示されるPYR1における位置H60、V83、およびA89に相当するH60P/G/R/A/W/I/K/V/M、V83F/L/P、およびA89Wより選択される3種のアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、1種以上のアミノ酸置換は、SEQ ID NO:1に示されるPYR1における位置H60、A89、およびF159に相当するH60P/G/R/A/W/I/K/V/M、A89W、およびF159V/Aより選択される3種のアミノ酸置換を含む。
本明細書に記載された変異のいずれかを、SEQ ID NO:1〜155のいずれかのポリペプチドまたはSEQ ID NO:1〜155のいずれかと実質的に同一のポリペプチドにおいて作成することができる。当業者は、変異させるPYR/PYL受容体ポリペプチド配列を、SEQ ID NO:1に示されるPYR1受容体ポリペプチド配列と整列化することにより、例えば、PYR1以外のPYR/PYL受容体において、類似のアミノ酸置換を作成し得ることを認識するであろう:非限定的な例として、SEQ ID NO:1に示されるPYR1におけるアミノ酸置換V83Fと類似しているPYL2におけるアミノ酸置換は、PYL2(SEQ ID NO:3)およびPYR1(SEQ ID NO:1)のアミノ酸配列を整列化し、PYR1(SEQ ID NO:1)のアミノ酸位置V83と整列するものとして、PYL2における位置V87を同定することにより、決定され得る。PYR/PYL受容体における類似のアミノ酸位置は、図1および8に示される。
いくつかの態様において、リガンド結合ポケットにおける1種以上のアミノ酸置換は、アブシジン酸の非存在下でPP2Cに結合することができる変異型PYR/PYL受容体をもたらす。いくつかの態様において、リガンド結合ポケットにおけるアミノ酸置換は、アブシジン酸の非存在下でホスファターゼアッセイにおいてPP2Cの活性を有意に阻害することができる変異型PYR/PYL受容体をもたらす。いくつかの態様において、リガンド結合ポケットにおけるアミノ酸置換は、アブシジン酸の非存在下で野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドと接触させたPP2CのPP2C活性のレベルと比較して、アブシジン酸の非存在下で、少なくとも50%、PP2Cの活性を阻害することができる変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドをもたらす。いくつかの態様において、リガンド結合ポケットにおけるアミノ酸置換は、アブシジン酸の非存在下で、約1:1、約1:2、約1:3、または約1:4の受容体:PP2Cモル比で、少なくとも50%、PP2C活性を阻害することができる変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドをもたらす。
リガンド結合ポケットにおける1種以上のアミノ酸置換がABAの非存在下でPYR/PYL受容体活性を活性化する(即ち、PP2C活性を阻害する)程度は、例えば、1種以上のアミノ酸置換を含むPYR/PYL受容体の存在下でホスファターゼ活性をアッセイし、そのホスファターゼ活性を野生型PYR/PYL受容体のそれと比較することにより、定量的に測定され得る。いくつかの態様において、リガンド結合ポケットにおける活性化変異は、PP2C活性の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、もしくは90%、またはそれ以上の阻害をもたらす任意の変異(例えば、アミノ酸置換)である。いくつかの態様において、リガンド結合ポケットにおける活性化変異は、約1:1、約1:2、約1:3、または約1:4の受容体/PP2Cモル比で、PP2C活性の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、もしくは90%、またはそれ以上の阻害をもたらす任意の変異(例えば、アミノ酸置換)である。
いくつかの態様において、本発明の変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO:1に示されるPYR1における位置H60、V83、A89、およびF159に相当するH60P/G、V83F、A89W、またはF159Vからなる群より選択される、リガンド結合ポケットにおける1種以上(例えば、1種、2種、3種、または4種)のアミノ酸置換を含む。下記表1に示されるように、これらの位置におけるアミノ酸置換は、ABAの非存在下で、PYR/PYL受容体を強力に活性化する。いくつかの態様において、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、H60Pにおけるアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、H60Gにおけるアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、V83Fにおけるアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、A89Wにおけるアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、F159Vにおけるアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、上記アミノ酸置換のうちの2種、3種、4種、またはそれ以上を含む。
PP2C結合界面変異
PYR/PYL受容体タンパク質は、2型プロテインホスファターゼ(PP2C)に直接結合し、従って、PP2C結合界面も含有している。PYR/PYL受容体ポリペプチドのPP2C結合界面は、PP2CとPYR/PYL受容体とABAとが三元複合体として全て結合している時、PP2Cの直近(例えば、約5Å以内)にあるアミノ酸残基を含む。実施例セクションの表1は、PYR1のPP2C結合界面を構成する残基をリストしたものであり;PYR1 PP2C結合界面を構成する残基は全部で25個存在する。PP2C結合界面の残基も、他のPYR/PYLファミリーメンバーの間で高度に保存されている。
いくつかの態様において、本発明の変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、PP2C結合界面における1種以上(例えば、1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、またはそれ以上)のアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、1種以上のアミノ酸置換は、SEQ ID NO:1に示されるPYR1における位置H60、I84、L87、A89、M158、F159、T162、L166、およびK170に相当するアミノ酸置換H60P/G/R/A/W/I/K/V/M、I84Q/E/P/H/K、L87F、A89W、M158T/C/V/I、F159V/A、T162F、L166Y/F、またはK170Wより選択される。いくつかの態様において、1種以上(例えば、1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、またはそれ以上)のアミノ酸置換は、SEQ ID NO:1に示されるPYR1における位置H60、I84、L87、A89、M158、F159、T162、L166、およびK170に相当するアミノ酸置換H60/G/R/A/W/I/K/V/M、I84Q/E/P/H、L87F、A89W、M158T/C/V/I、F159V/A、T162F、L166Y/F、またはK170Wより選択される。いくつかの態様において、1種以上のアミノ酸置換は、SEQ ID NO:1に示されるPYR1における位置H60、M158、およびF159に相当するH60P/G/R/A/W/I/K/V/M、M158T/C/V/I、およびF159V/Aより選択される3種のアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、1種以上のアミノ酸置換は、SEQ ID NO:1に示されるPYR1における位置H60、A89、およびF159に相当するアミノ酸置換H60P/G/R/A/W/I/K/V/M、A89W、およびF159V/Aより選択される3種のアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、1種以上のアミノ酸置換は、SEQ ID NO:1に示されるPYR1における位置H60、A89、M158、およびF159に相当するH60P/G/R/A/W/I/K/V/M、A89W、M158T/C/V/I、またはF159V/Aより選択される4種のアミノ酸置換を含む。
本明細書に記載された変異のいずれかを、SEQ ID NO:1〜155のいずれかのポリペプチドまたはSEQ ID NO:1〜155のいずれかと実質的に同一のポリペプチドにおいて作成することができる。PP2C結合界面の残基は、PYR/PYLファミリーメンバーの間で高度に保存されており、従って、当業者は、PYR1について本明細書に記載されたものと類似のアミノ酸置換を、PYR1以外のPYR/PYL受容体において作成し得ることを認識するであろう。
いくつかの態様において、PP2C結合界面における1種以上のアミノ酸置換は、アブシジン酸の非存在下でPP2Cに結合することができる変異型PYR/PYL受容体をもたらす。いくつかの態様において、PP2C結合界面におけるアミノ酸置換は、アブシジン酸の非存在下でホスファターゼアッセイにおいてPP2Cの活性を有意に阻害することができる変異型PYR/PYL受容体をもたらす。いくつかの態様において、PP2C結合界面におけるアミノ酸置換は、アブシジン酸の非存在下で野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドと接触させたPP2CのPP2C活性のレベルと比較して、アブシジン酸の非存在下で、少なくとも50%、PP2Cの活性を阻害することができる変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドをもたらす。いくつかの態様において、PP2C結合界面におけるアミノ酸置換は、アブシジン酸の非存在下で、約1:1、約1:2、約1:3、または約1:4の受容体:PP2Cモル比で、少なくとも50%、PP2Cの活性を阻害することができる変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドをもたらす。
PP2C結合界面における1種以上のアミノ酸置換が、ABAの非存在下でPYR/PYL受容体活性を活性化する(即ち、PP2C活性を阻害する)程度は、例えば、1種以上のアミノ酸置換を含むPYR/PYL受容体の存在下でホスファターゼ活性をアッセイし、そのホスファターゼ活性を野生型PYR/PYL受容体のそれと比較することにより、定量的に測定され得る。いくつかの態様において、PP2C結合界面における活性化変異は、PP2C活性の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、もしくは90%、またはそれ以上の阻害をもたらす任意の変異(例えば、アミノ酸置換)である。いくつかの態様において、PP2C結合界面における活性化変異は、約1:1、約1:2、約1:3、または約1:4の受容体/PP2Cモル比で、PP2C活性の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、もしくは90%、またはそれ以上の阻害をもたらす任意の変異(例えば、アミノ酸置換)である。
いくつかの態様において、本発明の変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO:1に示されるPYR1における位置H60、I84、A89、M158、F159、およびK170に相当するH60P/G、I84Q、A89W、M158T/C、F159V、またはK170Wからなる群より選択されるPP2C結合界面における1種以上(例えば、1種、2種、3種、4種、5種、または6種)のアミノ酸置換を含む。下記表1に示されるように、これらの位置におけるアミノ酸置換は、ABAの非存在下でPYR/PYL受容体を強力に活性化する。いくつかの態様において、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、H60Pにおけるアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、H60Gにおけるアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、I84Qにおけるアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、A89Wにおけるアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、M158Tにおけるアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、M158Cにおけるアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、F159Vにおけるアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、K170Wにおけるアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、上記アミノ酸置換のうちの2種、3種、4種、またはそれ以上を含む。
いくつかの態様において、本発明の変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO:1に示されるPYR1における位置H60、A89、M158、F159、およびK170に相当するH60P、A89W、M158I、F159V、またはK170Wからなる群より選択される、PP2C結合界面における1種以上(例えば、1種、2種、3種、4種、または5種)のアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、上記アミノ酸置換のうちの2種、3種、4種、または5種を含む。例えば、いくつかの態様において、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、H60PおよびF159V、またはH60PおよびA89W、またはA89WおよびF159Vに相当する2種のアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、H60P、A89W、およびF159V、またはH60P、M158I、およびF159Vに相当する3種のアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、H60P、A89W、M158I、およびF159Vに相当する4種のアミノ酸置換を含む。
リガンド結合ポケット変異とPP2C結合界面変異との組み合わせ
いくつかの態様において、本発明の変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、リガンド結合ポケットおよびPP2C結合界面の各々における1種以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、リガンドポケットおよびPP2C結合界面の各々における1種以上のアミノ酸置換は、SEQ ID NO:1に示されるPYR1における位置H60、V83、I84、L87、A89、M158、F159、T162、L166、およびK170に相当するH60P/G/R/A/W/I/K/V/M、V83F/L/P、I84Q/E/P/H/K、L87F、A89W、M158T/C/V/I、F159V/A、T162F、L166Y/F、およびK170Wより選択される。いくつかの態様において、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO:1に示されるPYR1における位置H60、V83、I84、L87、A89、M158、F159、T162、L166、およびK170に相当するH60P/G/R/A/W/I/K/V/M、V83F/L/P、I84Q/E/P/H/K、L87F、A89W、M158T/C/V/I、F159V/A、T162F、L166Y/F、およびK170Wより選択される2種、3種、4種、またはそれ以上のアミノ酸置換を含む。本明細書に記載された変異のいずれかを、SEQ ID NO:1〜155のいずれかのポリペプチドまたはSEQ ID NO:1〜155のいずれかと実質的に同一のポリペプチドにおいて作成することができる。リガンド結合ポケットおよびPP2C結合界面の残基は、PYR/PYLファミリーメンバーの間で高度に保存されており、従って、当業者は、PYR1について本明細書に記載されたものと類似のアミノ酸置換を、PYR1以外のPYR/PYL受容体において作成し得ることを認識するであろう。
いくつかの態様において、ABAとPP2CとPYR/PYL受容体とが共に複合体を形成している時、PYR/PYLのいくつかのアミノ酸残基はABAおよびPP2Cの両方と接触することができるため、リガンド結合ポケットにおいて作成されるアミノ酸置換は、PP2C結合界面において作成されるアミノ酸置換と同一のアミノ酸置換であり得る。下記表1は、リガンド結合ポケットおよびPP2C結合界面の両方と接触する、PYR1に関して番号付けされたPYR/PYLのアミノ酸残基をリストしたものである。従って、いくつかの態様において、本発明の変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO:1に示されるPYR1における位置H60、L87、A89、およびF159に相当するアミノ酸置換H60P/G/R/A/W/I/K/V/M、L87F、A89W、およびF159V/Aより選択されるリガンド結合ポケットおよびPP2C結合界面の各々における1種以上のアミノ酸置換を含む。
いくつかの態様において、本発明の変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO:1に示されるPYR1における位置H60、V83、I84、A89、M158、F159、T162、および/またはK170に相当するH60P、V83F、A89W、M158I、F159V、T162F、および/またはK170Wより選択される3種の変異を含む。いくつかの態様において、3種の変異は、SEQ ID NO:1の位置(i)H60P、V83F、およびA89W;(ii)H60P、V83F、およびF159V;(iii)H60P、A89W、およびF159V;(iv)H60P、V83F、およびM158I;ならびに(v)H60P、M158I、およびF159Vに相当するアミノ酸置換より選択される。
いくつかの態様において、本発明の変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO:1に示されるPYR1における位置H60、V83、I84、A89、M158、F159、T162、および/またはK170に相当するH60P、V83F、A89W、M158I、F159V、T162F、および/またはK170Wより選択される4種の変異を含む。いくつかの態様において、4種の変異は、SEQ ID NO:1の位置(i)H60P、V83F、A89W、およびF159V;(ii)H60P、V83F、M158I、およびF159V;(iii)H60P、A89W、M158I、およびF159V;(iv)H60P、V83F、F159V、およびK170W;(v)H60P、V83F、M158I、およびK170W;ならびに(vi)V83F、M158I、F159V、およびK170Wに相当するアミノ酸置換より選択される。例示的な変異の例は、図17に示される。
本発明の態様は、本発明の方法および組成物(例えば、発現カセット、植物等)における、上記タンパク質および/またはそのようなポリペプチドをコードする核酸配列の使用を提供する。(例えば、PYR/PYL配列が未だ同定されていない植物からの)植物野生型PYR/PYL受容体をコードするポリヌクレオチド配列の単離は、多数の技術によって達成され得る。例えば、本明細書に開示された(例えば、配列表にリストされる)PYR/PYLコード配列に基づくオリゴヌクレオチドプローブを、cDNAライブラリーまたはゲノムDNAライブラリーにおいて所望の野生型PYR/PYL遺伝子を同定するために使用することができる。ゲノムライブラリーを構築するためには、例えば、制限エンドヌクレアーゼを使用して、ランダムな断片化によって、ゲノムDNAの大きなセグメントを生成し、適切なベクターへパッケージングされ得るコンカテマーを形成させるため、ベクターDNAとライゲートすることができる。cDNAライブラリーを調製するためには、特定の植物種に由来する葉のような所望の組織から、mRNAを単離し、関心対象の遺伝子転写物を含有しているcDNAライブラリーを、mRNAから調製する。あるいは、PYR/PYL遺伝子が発現される他の組織から抽出されたmRNAから、cDNAを調製してもよい。
次いで、cDNAライブラリーまたはゲノムライブラリーを、本明細書に開示されたPYR/PYL遺伝子の配列に基づくプローブを使用して、スクリーニングすることができる。同一のまたは異なる植物種における相同遺伝子を単離するため、ゲノムDNA配列またはcDNA配列とハイブリダイズさせるために、プローブを使用することができる。あるいは、ポリペプチドに対する抗体を、mRNA発現ライブラリーをスクリーニングするために使用してもよい。
あるいは、PYR/PYLをコードする核酸を、増幅技術を使用して、核酸試料から増幅することができる。例えば、ゲノムDNA、cDNA、ゲノムライブラリー、またはcDNAライブラリーからPYR/PYLのコード配列を直接増幅するため、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を使用することができる。PCRおよびその他のインビトロ増幅法は、例えば、発現されるPYR/PYLをコードするポリヌクレオチド配列をクローニングするため、試料における所望のmRNAの存在を検出するためのプローブとして使用する核酸を作成するため、核酸配列決定のため、またはその他の目的のためにも、有用であり得る。PCRの一般的な概説については、PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(Innis,M.,Gelfand,D.,Sninsky,J.and White,T.,eds.),Academic Press,San Diego(1990)を参照のこと。植物組織に由来する配列を同定するための適切なプライマーおよびプローブは、本明細書に提供された配列の、他の関連遺伝子との比較から生成される。
いくつかの態様において、多数の植物のゲノムの一部または全部が配列決定され、オープンリーディングフレームが同定されている。BLAST探索によって、様々な植物における野生型PYR/PYLのコード配列を同定することが可能である。
III. 構成的活性型PYR/PYL受容体ポリペプチドを作成する方法
もう一つの局面において、本発明は、リガンド結合ポケットおよび/または2型プロテインホスファターゼ(PP2C)結合界面における1種以上のアミノ酸置換を含み、アブシジン酸の非存在下でPP2Cに結合するPYR/PYL受容体ポリペプチドを作成する方法を提供する。いくつかの態様において、方法は、野生型PYR/PYL受容体を変異誘発する工程、および変異誘発されたPYR/PYL受容体がアブシジン酸の非存在下でホスファターゼアッセイにおいてPP2Cの活性を有意に阻害するか否かを決定する工程を含む。
変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、部位特異的変異誘発と一般的に呼ばれている技術を使用すること等によって、対応する野生型PYR/PYL受容体ポリペプチド(例えば、本発明の変異体PYR/PYL受容体ポリペプチドが由来する、SEQ ID NO:1〜119のいずれかの野生型PYR/PYLポリペプチドまたは対応するバリアント)をコードするDNA配列を変異させることによって構築され得る。当業者に周知の多様なポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術によって、野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードする核酸分子を変異させることができる(例えば、PCR Strategies(M.A.Innis,D.H.Gelfand,and J.J.Sninsky eds.,1995,Academic Press,San Diego,CA)at Chapter 14;PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(M.A.Innis,D.H.Gelfand,J.J.Sninsky,and T.J.White eds.,Academic Press,NY,1990を参照のこと)。
非限定的な例として、点変異、挿入、または欠失がDNA鋳型に作成される部位特異的変異誘発を使用して、変異誘発を達成することができる。QuikChange Site-Directed Mutagenesis Kit(Stratagene)のような部位特異的変異誘発のためのキットが市販されている。簡単に説明すると、変異誘発すべきDNA鋳型を、ハイフィデリティDNAポリメラーゼ(例えば、Pfu Turbo(商標))および所望の変異を含有しているオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、製造業者の説明に従い、PCRによって増幅する。オリゴヌクレオチドの組み入れによって変異型プラスミドが生成され、次いで、それを、DNAの変異誘発を確認するため、その後のスクリーニングのために適当な細胞(例えば、細菌細胞または酵母細胞)へ形質転換することができる。
もう一つの非限定的な例として、DNA複製におけるエラー発生率の増加を促進するため、PCR反応条件を修飾する(例えば、エラープローンポリメラーゼを使用するか、マグネシウムもしくはマンガンの濃度を変動させるか、または不均衡なdNTP比率を提供する)エラープローンPCR増幅(ePCR)によって、変異誘発を達成することができる。GeneMorph(登録商標)PCR Mutagenesisキット(Stratagene)およびDiversify(登録商標)PCR Random Mutagenesis Kit(Clontech)のようなePCR変異誘発のためのキットが市販されている。簡単に説明すると、DNAポリメラーゼ(例えば、Taqポリメラーゼ)、塩(例えば、MgCl2、MgSO4、またはMnSO4)、不均衡な比率のdNTP、反応緩衝液、およびDNA鋳型を組み合わせ、製造業者の説明に従い、標準的なPCR増幅に供する。ePCR増幅の後、変異誘発ライブラリーを構築するため、反応産物を適当なベクターへクローニングし、次いで、下記のような(例えば、ツーハイブリッドスクリーニングを介した)その後のスクリーニングのために適当な細胞(例えば、酵母細胞)へ形質転換することができる。
あるいは、組換え(即ち、DNAシャフリング)によって、変異誘発を達成することができる。簡単に説明すると、ランダムに導入された点変異をもたらす、親DNAのランダムな断片化、それに続く、PCRを使用した再組み立てによるインビトロ相同組換えを使用したDNAシャフリングを通して、シャフリングを受けた変異体ライブラリーが生成される。DNAシャフリングを実施する方法は、当技術分野において公知である(例えば、Stebel,S.C.et al.,Methods Mol Biol 352:167-190(2007)を参照のこと)。
任意で、単離される変異体タンパク質の効率を改善するため、複数回の変異誘発を実施してもよい。従って、いくつかの態様において、ePCRおよびその後のスクリーニングから単離されたPYR/PYL変異体をプールし、後続の変異誘発のための鋳型として使用することができる。
IV. 構成的活性型PYR/PYL受容体ポリペプチドについてのスクリーニング
いくつかの態様において、変異型PYR/PYL受容体がABAの非存在下で活性化されているか否かを決定するため、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドをスクリーニングする。いくつかの態様において、変異型PYR/PYL受容体がABAの非存在下で活性化されているか否かは、変異型受容体がABAの非存在下でホスファターゼアッセイにおいてPP2Cの活性を有意に阻害するか否かを測定することにより決定される。いくつかの態様において、変異型受容体が、ABAの非存在下での野生型PYR/PYL受容体と比較して、ABAの非存在下で、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、またはそれ以上、PP2Cの活性を阻害する場合、その変異型受容体は、ABAの非存在下で活性化されている(即ち、構成的活性型である)と言われる。いくつかの態様において、受容体およびPP2Cが約1:1、約1:2、約1:3、または約1:4の受容体/PP2Cモル比で存在する時、変異型受容体が、ABAの非存在下での野生型PYR/PYL受容体と比較して、ABAの非存在下で、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、またはそれ以上、PP2Cの活性を阻害する場合、その変異型受容体は、ABAの非存在下で活性化されている(即ち、構成的活性型である)。
構成的活性型PYR/PYL受容体についてスクリーニングするため、多数の異なるスクリーニングプロトコルを使用することができる。単離され、精製または部分精製された試薬を使用して、スクリーニングを行うことができる。いくつかの態様において、精製または部分精製されたPYR/PYLポリペプチドを使用することができる。
あるいは、細胞に基づくスクリーニング法または植物に基づくスクリーニング法を使用することができる。例えば、野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドを天然に発現するか、または野生型もしくは変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドを組換えにより発現する細胞を、使用することができる。いくつかの態様において、使用される細胞は、植物細胞、動物細胞、細菌細胞、真菌細胞であり、酵母細胞、昆虫細胞、または哺乳動物細胞を含むが、これらに限定されない。一般に、スクリーニング法は、例えば、野生型PYR/PYL受容体および変異体PYR/PYL受容体を発現する細胞または植物において、ABAによって制御される遺伝子の発現を比較することによって、ABAの非存在下で、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドの活性を、野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドの活性と比較することを含む。いくつかの態様において、ABAシグナリングが欠損している細胞または植物(例えば、ABA生合成に必要な酵素アルデヒドオキシダーゼが欠損しているaba2変異体)において、PYR/PYL受容体ポリペプチドを発現させ、ABA下流遺伝子の発現のレベルを、PYR/PYL受容体ポリペプチドを発現する野生型の細胞または植物における同遺伝子の発現のレベルと比較することができる。いくつかの態様において、ABAシグナリングが欠損している細胞または植物において、PYR/PYL受容体ポリペプチドを発現させ、(立ち枯れ(wiltiness)、複数の非生物的ストレスに対する増加した感受性、および非休眠種子を含むが、これらに限定されない)ABAレベルの低下に起因する任意の表現型について植物を評価し、次いで、その表現型を、PYR/PYL受容体ポリペプチドを発現する野生型の細胞または植物の表現型と比較することができる。
一つの例示的なアッセイは、変異型PYR/PYL受容体が、ABAの非存在下で、2型プロテインホスファターゼ(PP2C)(例えば、Homology to ABI1(HAB1))に結合することができるか否かを試験することを含む。結合アッセイは、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドをPP2Cと接触させ、PYR/PYL受容体とPP2Cとが結合複合体を形成するために十分な時間を経過させることを含み得る。形成された結合複合体を、多数の確立されている分析技術のいずれかを使用して検出することができる。タンパク質結合アッセイには、非変性SDSポリアクリルアミドゲルにおける共沈殿または共移動、およびウエスタンブロットにおける共移動を測定する方法が含まれるが、これらに限定されない(例えば、Bennet,J.P.and Yamamura,H.I.(1985)"Neurotransmitter,Hormone or Drug Receptor Binding Methods,"in Neurotransmitter Receptor Binding(Yamamura,H.I.,et al,eds.),pp.61-89を参照のこと)。その他の結合アッセイは、PYR/PYLポリペプチドに結合した分子を同定するための質量分析またはNMR技術の使用を含む。そのようなアッセイにおいて利用されるPYR/PYLポリペプチドタンパク質は、天然に発現されたものであってもよいし、クローニングされてもよいし、または合成されてもよい。
いくつかの態様において、細胞において共に発現された時に、相互作用するかまたは結合するポリペプチドまたはその他の分子を同定するため、哺乳動物細胞または酵母を用いたツーハイブリッドアプローチ(例えば、Bartel,P.L.et.al.Methods Enzymol,254:241(1995)を参照のこと)を使用することができる。いくつかの態様において、構成的活性型PYR/PYLポリペプチドは、ABAの非存在下でPYR/PYLポリペプチドおよびPP2Cを結合させる、PYR/PYLポリペプチドとPP2Cポリペプチドとの間のツーハイブリッドアッセイにおいて同定される。ABAの非存在下でPP2Cに結合しない野生型PYR/PYLポリペプチドを、対照として使用することができる。
もう一つの例示的なアッセイにおいて、ABAの非存在下でPYR/PYL受容体およびPP2Cをインキュベートする、酵素ホスファターゼアッセイを使用して、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドの基底活性のレベル(即ち、ABAの非存在下での活性のレベル)を決定することができる。この型のアッセイにおいて、ABAの非存在下でのホスファターゼ活性の減少は、活性化された(構成的活性型)PYR/PYL受容体を示す。ホスファターゼ活性の減少は、当技術分野において公知の任意の検出試薬、例えば、パラニトロフェニルリン酸のような比色定量検出試薬を使用して、決定され定量化され得る。
上記スクリーニング法のいずれかによって最初に同定された構成的活性型PYR/PYL受容体ポリペプチドは、見かけの活性をバリデートし、かつ/または構成的活性型PYR/PYL受容体ポリペプチドの他の生物学的効果を決定するため、さらに試験され得る。いくつかの場合、植物ストレス(例えば、干ばつ耐性および/もしくは高耐塩性)、種子発芽、またはABAによって影響されるその他の表現型に影響する能力について、PYR/PYL受容体ポリペプチドを試験する。多数のそのようなアッセイおよび表現型が、当技術分野において公知であり、本発明の方法によって使用され得る。
V. 組換え発現ベクター
変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが入手された後は、異種プロモーターによって指図される、トランスジェニック植物における変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドの発現のための発現カセットを調製するため、それを使用することができる。変異型PYR/PYLポリヌクレオチドの発現の増加は、例えば、PYR/PYL受容体を選択的に活性化し、従って、ストレス耐性を増強する植物を作製するために有用である。
当技術分野において周知の多数の手段のいずれかを、植物における変異型PYR/PYLの活性または発現を駆動するために使用することができる。苗条栄養器官/構造(例えば、葉、茎、および塊茎)、根、花および花器官/構造(例えば、包葉、萼片、花弁、雄ずい、心皮、葯、および胚珠)、種子(胚、胚乳、および種皮を含む)、ならびに果実のような任意の器官を、標的とすることができる。あるいは、1種以上の器官のある種の細胞型および/または組織型において(例えば、孔辺細胞特異的プロモーターを使用して、葉の孔辺細胞において)、変異型PYR/PYLポリヌクレオチドを特異的に発現させることができる。あるいは、(例えば、CaMV 35Sプロモーターを使用して)変異型PYR/PYLポリヌクレオチドを構成的に発現させることができる。
変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドのためのポリヌクレオチド配列を上記技術において使用するため、植物細胞の形質転換のために適当な組換えDNAベクターを調製する。多様な高等植物種を形質転換するための技術が、周知であり、技術文献および科学文献に記載されている。例えば、Weising et al.Ann.Rev.Genet.22:421-477(1988)を参照のこと。変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするDNA配列は、好ましくは、形質転換植物の予定された組織において遺伝子からの配列の転写を指図するであろう転写翻訳開始制御配列と組み合わせられるであろう。
例えば、再生された植物の全ての組織における変異型PYR/PYLポリヌクレオチドの発現を指図するため、植物プロモーター断片を使用することができる。そのようなプロモーターは、本明細書において「構成的」プロモーターと呼ばれ、大部分の環境条件および発達または細胞分化の状態の下で活性である。構成的プロモーターの例には、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35S転写開始領域、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumafaciens)のT-DNAに由来する1'-プロモーターまたは2'-プロモーター、および当業者に公知の様々な植物遺伝子に由来するその他の転写開始領域が含まれる。
あるいは、植物プロモーターは、特定の組織において変異型PYR/PYL受容体タンパク質の発現を指図するものであってもよいし(組織特異的プロモーター)、またはより正確な環境調節下にあってもよい(誘導性プロモーター)。発達調節下にある組織特異的プロモーターの例には、(WO2005/085449;米国特許第6,653,535号;Li et al.,Sci China C Life Sci.2005 Apr;48(2):181-6;Husebye,et al.,Plant Physiol,April 2002,Vol.128,pp.1180-1188;およびPlesch,et al.,Gene,Volume 249,Number 1,16 May 2000,pp.83-89(7)に記載されたものを含むが、これらに限定されない)葉または孔辺細胞のようなある種の組織においてのみ転写を開始するプロモーターが含まれる。誘導性プロモーターによる転写に影響を与えることができる環境条件の例には、嫌気条件、高温、または光の存在が含まれる。
適切なタンパク質発現が望まれる場合には、コード領域の3'末端にポリアデニル化領域が含まれるべきである。ポリアデニル化領域は、天然に存在するPYR/PYL遺伝子、多様な他の植物遺伝子、またはT-DNAに由来し得る。
配列(例えば、プロモーターまたはPYR/PYLコード領域)を含むベクターは、典型的には、選択可能な表現型を植物細胞に付与するマーカー遺伝子を含むであろう。例えば、マーカーは、殺生物剤抵抗性、具体的には、カナマイシン、G418、ブレオマイシン、ハイグロマイシンに対する抵抗性のような抗生物質抵抗性、またはクロルスルフロンもしくはBastaに対する抵抗性のような除草剤抵抗性をコードし得る。
いくつかの態様において、変異型PYR/PYL核酸配列は、植物細胞において組換え発現される。植物細胞の形質転換のために適当な発現カセットおよびベクターのような多様な異なる発現構築物を調製することができる。多様な高等植物種を形質転換するための技術が、周知であり、技術文献および科学文献に記載されている。例えば、Weising et al.Ann.Rev.Genet.22:421-477(1988)を参照のこと。形質転換植物の予定された組織における転写のタイミング、組織型、およびレベルを指図するため、PYR/PYLタンパク質をコードするDNA配列を、シス作用性転写制御配列(プロモーター)およびトランス作用性転写制御配列(エンハンサー)と組み合わせることができる。翻訳調節要素を使用することもできる。
本発明の態様は、いくつかの態様において、植物におけるPYR/PYLコード配列の転写を駆動することができるプロモーターに機能的に連結された変異型PYR/PYL核酸も提供する。プロモーターは、例えば、植物またはウイルスの起源に由来し得る。プロモーターは、例えば、構成的活性型、誘導性、または組織特異的であり得る。本発明の組換え発現カセット、ベクター、トランスジェニックの構築において、例えば、植物または動物のいくつかまたは全ての組織において、遺伝子発現をディファレンシャルに指図するため、異なるプロモーターを選び利用することができる。
構成的プロモーター
全ての形質転換された細胞または組織、例えば、再生された植物のものにおいて変異型PYR/PYL核酸の発現を指図する断片を、使用することができる。「構成的制御要素」という用語は、構成的制御要素が発現される細胞型または組織型とは比較的無関係な発現レベルを、機能的に連結された核酸分子に付与する制御要素を意味する。植物において発現される構成的制御要素は、一般に、極めて多数の細胞型および組織型において広く発現されている。生理学的条件下で発現を連続的に駆動するプロモーターは、「構成的」プロモーターと呼ばれ、大部分の環境条件および発達または細胞分化の状態の下で活性である。
トランスジェニック植物における異所性発現のために有用な多様な構成的制御要素が、当技術分野において周知である。カリフラワーモザイクウイルス35S(CaMV 35S)プロモーターは、例えば、全ての植物組織において高レベルの発現を生ずる、よく特徴決定されている構成的制御要素である(Odell et al.,Nature 313:810-812(1985))。CaMV 35Sプロモーターは、多くの多様な植物種において活性であるため、特に有用であり得る(Benfey and Chua,Science 250:959-966(1990);Futterer et al.,Physiol.Plant 79:154(1990);Odell et al.(前記)1985)。内因性プロモーター要素が重複したタンデム35Sプロモーターは、未修飾の35Sプロモーターと比較して、より高い発現レベルを付与する(Kay et al.,Science 236:1299(1987))。他の有用な構成的制御要素には、例えば、カリフラワーモザイクウイルス19Sプロモーター;ゴマノハグサモザイクウイルスプロモーター;およびノパリンシンターゼ(nos)遺伝子プロモーター(Singer et al.,Plant Mol.Biol.14:433(1990);An,Plant Physiol.81:86(1986))が含まれる。
単子葉植物における効率的な発現のためのものを含む、付加的な構成的制御要素、例えば、pEmuプロモーターおよびイネアクチン1の5'領域に基づくプロモーターが、当技術分野において公知である(Last et al.,Theor.Appl.Genet.81:581(1991);Mcelroy et al.,Mol.Gen.Genet.231:150(1991);Mcelroy et al.,Plant Cell 2:163(1990))。異なる遺伝子に由来する要素を組み合わせたキメラ制御要素も、変異型PYR/PYL受容体タンパク質をコードする核酸分子の異所性発現のために有用であり得る(Comai et al.,Plant Mol.Biol.15:373(1990))。
構成的プロモーターのその他の例には、アグロバクテリウム・ツメファシエンスのT-DNAに由来する1'-プロモーターまたは2'-プロモーター(例えば、Mengiste(1997)(前記);O'Grady(1995)Plant Mol.Biol.29:99-108を参照のこと);アラビドプシスアクチン遺伝子プロモーターのようなアクチンプロモーター(例えば、Huang(1997)Plant Mol.Biol.1997 33:125-139を参照のこと);アルコール脱水素酵素(Adh)遺伝子プロモーター(例えば、Millar(1996)Plant Mol.Biol.31:897-904を参照のこと);アラビドプシス由来のACT11(Huang et al.Plant Mol.Biol.33:125-139(1996))、アラビドプシス由来のCat3(GenBank No.U43147、Zhong et al.,Mol.Gen.Genet.251:196-203(1996))、セイヨウアブラナ(Brassica napus)由来のステアロイルアシル担体タンパク質不飽和化酵素をコードする遺伝子(Genbank No.X74782、Solocombe et al.Plant Physiol.104:1167-1176(1994))、トウモロコシ由来のGPc1(GenBank No.X15596、Martinez et al.J.Mol.Biol 208:551-565(1989))、トウモロコシ由来のGpc2(GenBank No.U45855、Manjunath et al.,Plant Mol.Biol.33:97-112(1997))、当業者に公知の様々な植物遺伝子に由来するその他の転写開始領域が含まれる。Holtorf Plant Mol.Biol.29:637-646(1995)も参照のこと。
誘導性プロモーター
あるいは、植物プロモーターは、変化する環境条件または発達条件の影響下で変異型PYR/PYLポリヌクレオチドの発現を指図するものであってもよい。誘導性プロモーターによる転写に影響する環境条件の例には、嫌気条件、高温、干ばつ、または光の存在が含まれる。そのようなプロモーターは、本明細書において、「誘導性」プロモーターと呼ばれる。いくつかの態様において、誘導性プロモーターは、干ばつ、酷寒、および高塩を含むが、これらに限定されない、1種以上の環境的ストレス要因によって誘導されるものである。例えば、本発明は、トウモロコシの干ばつ誘導性プロモーター(例えば、トウモロコシrab17干ばつ誘導性プロモーター(Vilardell et al.(1991)Plant Mol.Biol.17:985-993;Vilardell et al.(1994)Plant Mol.Biol.24:561-569))のような干ばつ特異的プロモーター;あるいは、ジャガイモ由来(Kirch(1997)Plant Mol.Biol.33:897-909)またはアラビドプシス由来(例えば、rd29Aプロモーター(Kasuga et al.(1999)Nature Biotechnology 17:287-291))の寒冷、干ばつ、高塩誘導性プロモーターを組み入れることができる。その他の環境的ストレス誘導性プロモーターには、以下の遺伝子に由来するプロモーターが含まれる:イネのRab21、Wsi18、Lea3、Uge1、Dip1、およびR1G1B(Yi et al.(2010)Planta 232:743-754)。
いくつかの態様において、植物プロモーターは、rd29Aプロモーターを含むが、これに限定されない、脱水応答要素(DRE)および/またはABA応答要素(ABRE)を含む、ストレス誘導性プロモーター(例えば、干ばつ、寒冷、または塩誘導性プロモーター)である。
あるいは、オーキシンのような植物ホルモンへの曝露によって誘導可能な植物プロモーターが、変異型PYR/PYLポリヌクレオチドを発現させるために使用される。例えば、本発明は、ダイズ(Glycine max L.)のオーキシン応答要素E1プロモーター断片(AuxRE)(Liu(1997)Plant Physiol.115:397-407);(サリチル酸および過酸化水素にも応答性である)オーキシン応答性アラビドプシスGST6プロモーター(Chen(1996)Plant J.10:955-966);タバコ由来のオーキシン誘導性parCプロモーター(Sakai(1996)37:906-913);植物ビオチン応答要素(Streit(1997)Mol.Plant Microbe Interact.10:933-937);およびストレスホルモンアブシジン酸に応答性のプロモーター(Sheen(1996)Science 274:1900-1902)を使用することができる。
除草剤または抗生物質のような、植物に適用され得る化学試薬への曝露によって誘導可能な植物プロモーターも、変異型PYR/PYLポリヌクレオチドを発現させるために有用である。例えば、ベンゼンスルホンアミド除草剤毒性緩和剤によって活性化されるトウモロコシIn2-2プロモーターを使用することができる(De Veylder(1997)Plant Cell Physiol.38:568-577);異なる除草剤毒性緩和剤の適用は、根、排水組織、および苗条頂端分裂組織における発現を含む、別個の遺伝子発現パターンを誘導する。PYR/PYLコード配列は、例えば、オートムギ(Avena sativa L.)アルギニンデカルボキシラーゼ遺伝子を含有しているトランスジェニックタバコ植物について記載されたような(Masgrau(1997)Plant J.11:465-473)、例えば、テトラサイクリン誘導性プロモーター;またはサリチル酸応答要素(Stange(1997)Plant J.11:1315-1324;Uknes et al.,Plant Cell 5:159-169(1993);Bi et al.,Plant J.8:235-245(1995))の調節下にあってもよい。
有用な誘導性制御要素の例には、銅誘導性制御要素(Mett et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:4567-4571(1993);Furst et al.,Cell 55:705-717(1988));テトラサイクリンおよびクロルテトラサイクリンにより誘導性の制御要素(Gatz et al.,Plant J.2:397-404(1992);Roder et al.,Mol.Gen.Genet.243:32-38(1994);Gatz,Meth.Cell Biol.50:411-424(1995));エクジソン誘導性制御要素(Christopherson et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:6314-6318(1992);Kreutzweiser et al.,Ecotoxicol.Environ.Safety 28:14-24(1994));熱ショック誘導性制御要素(Takahashi et al.,Plant Physiol.99:383-390(1992);Yabe et al.,Plant Cell Physiol.35:1207-1219(1994);Ueda et al.,Mol.Gen.Genet.250:533-539(1996));ならびに、例えば、IPTG誘導性発現を付与するため構成的に発現されるlacサプレッサーと組み合わせて使用されるlacオペロン要素(Wilde et al.,EMBO J.11:1251-1259(1992))が含まれる。本発明のトランスジェニック植物において有用な誘導性制御要素は、例えば、ホウレンソウ亜硝酸還元酵素遺伝子に由来する硝酸誘導性プロモーター(Back et al.,Plant Mol.Biol.17:9(1991))、またはRuBPカルボキシラーゼの小サブユニットもしくはLHCP遺伝子ファミリーに関連したもののような光誘導性プロモーター(Feinbaum et al.,Mol.Gen.Genet.226:449(1991);Lam and Chua,Science 248:471(1990))であってもよい。
組織特異的プロモーター
あるいは、植物プロモーターは、特定の組織における変異型PYR/PYLポリヌクレオチドの発現を指図するものであってもよい(組織特異的プロモーター)。組織特異的プロモーターとは、栄養組織または生殖組織のような、植物発達の間の特定の時点における特定の細胞または組織においてのみ活性である転写調節要素である。
発達調節下にある組織特異的プロモーターの例には、栄養組織、例えば、根もしくは葉、または果実、胚珠、種子、花粉、雌ずい、花、もしくは任意の胚組織のような生殖組織、または表皮、または葉肉のような、ある種の組織においてのみ(または、においてのみ主に)転写を開始するプロモーターが含まれる。生殖組織特異的プロモーターは、例えば、胚珠特異的、胚特異的、胚乳特異的、珠皮特異的、種子および種皮に特異的、花粉特異的、花弁特異的、萼片特異的、またはそれらの何らかの組み合わせであり得る。いくつかの態様において、プロモーターは、細胞型特異的、例えば、孔辺細胞特異的である。
表皮特異的プロモーターには、例えば、アラビドプシスLTP1プロモーター(Thoma et al.(1994)Plant Physiol.105(1):35-45)、CER1プロモーター(Aarts et al.(1995)Plant Cell 7:2115-27)、ならびにCER6プロモーター(Hooker et al.(2002)Plant Physiol 129:1568-80)およびオルソロガスなトマトLeCER6(Vogg et al.(2004)J.Exp Bot.55:1401-10)が含まれる。
孔辺細胞特異的プロモーターには、例えば、DGP1プロモーター(Li et al.(2005)Science China C Life Sci.48:181-186)が含まれる。
その他の組織特異的プロモーターには、種子プロモーターが含まれる。適当な種子特異的プロモーターは、以下の遺伝子に由来する:トウモロコシ由来のMAC1(Sheridan(1996)Genetics 142:1009-1020);トウモロコシ由来のCat3(GenBank No.L05934、Abler(1993)Plant Mol.Biol.22:10131-1038);アラビドプシス由来のビブパラス(vivparous)-1(Genbank No.U93215);アラビドプシス由来のatmyc1(Urao(1996)Plant Mol.Biol.32:571-57;Conceicao(1994)Plant 5:493-505);セイヨウアブラナ由来のnapA(GenBank No.J02798、Josefsson(1987)JBL 26:12196-1301);およびセイヨウアブラナ由来のナピン遺伝子ファミリー(Sjodahl(1995)Planta 197:264-271)。
葉、茎、根、および塊茎のような栄養組織において特異的に活性な多様なプロモーターも、変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現させるために使用することができる。例えば、ジャガイモ塊茎の主要な貯蔵タンパク質パタチンを調節するプロモーターを使用することができる(例えば、Kim(1994)Plant Mol.Biol.26:603-615;Martin(1997)Plant J.11:53-62を参照のこと)。根において高い活性を示すアグロバクテリウム・リゾゲネス(rhizogenes)由来のORF13プロモーターも、使用することができる(Hansen(1997)Mol.Gen.Genet.254:337-343)。その他の有用な栄養組織特異的プロモーターには、以下のものが含まれる:サトイモ(Colocasia esculenta L.Schott)球茎タンパク質ファミリー由来のグロブリン、タリン(tarin)をコードする遺伝子のタリンプロモーター(Bezerra(1995)Plant Mol.Biol.28:137-144);タロイモ球茎発達の間に活性なクルクリンプロモーター(de Castro(1992)Plant Cell 4:1549-1559)、ならびに根分裂組織および未熟中心柱領域に発現が局在化されるタバコ根特異的遺伝子TobRB7のためのプロモーター(Yamamoto(1991)Plant Cell 3:371-382)。
リブロース二リン酸脱炭酸酵素(RBCS)プロモーターのような葉特異的プロモーターも、使用することができる。例えば、トマトのRBCS1遺伝子、RBCS2遺伝子、およびRBCS3A遺伝子は、葉および明所で生長した実生において発現され、RBCS1およびRBCS2のみが、発達中のトマト果実において発現される(Meier(1997)FEBS Lett.415:91-95)。Matsuoka(1994)Plant J.6:311-319によって記載された、葉身および葉鞘の葉肉細胞においてほぼ排他的に高レベルに発現されるリブロース二リン酸脱炭酸酵素プロモーターを、使用することができる。もう1種の葉特異的プロモーターは、集光性葉緑素a/b結合タンパク質遺伝子プロモーターである(例えば、Shiina(1997)Plant Physiol.115:477-483;Casal(1998)Plant Physiol.116:1533-1538を参照のこと)。Li(1996)FEBS Lett.379:117-121によって記載された、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)myb関連遺伝子プロモーター(Atmyb5)は、葉特異的である。Atmyb5プロモーターは、若いロゼットおよび茎生葉の端部の発達中の葉毛状突起、托葉、および表皮細胞、ならびに未熟種子において発現される。Atmyb5 mRNAは、胚発生の受精と16細胞期との間に出現し、ハート期を越えて持続する。Busk(1997)Plant J.11:1285-1295によってトウモロコシにおいて同定された葉プロモーターも、使用することができる。
有用な栄養組織特異的プロモーターのもう一つのクラスは、分裂組織(根端および茎頂)プロモーターである。例えば、Di Laurenzio(1996)Cell 86:423-433;およびLong(1996)Nature 379:66-69によって記載された、発達中の苗条または根の頂端分裂組織において活性である「SHOOTMERISTEMLESS」プロモーターおよび「SCARECROW」プロモーターを使用することができる。もう1種の有用なプロモーターは、分裂組織および花組織(柱頭の分泌ゾーン、成熟花粉粒、雌しべ維管束組織、および受精胚珠)にその発現が制限される3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A還元酵素HMG2遺伝子の発現を調節するものである(例えば、Enjuto(1995)Plant Cell.7:517-527を参照のこと)。分裂組織特異的発現を示すトウモロコシおよびその他の種に由来するknl関連遺伝子も有用である(例えば、Granger(1996)Plant Mol.Biol.31:373-378;Kerstetter(1994)Plant Cell 6:1877-1887;Hake(1995)Philos.Trans.R.Soc.Lond.B.Biol.Sci.350:45-51を参照のこと)。例えば、シロイヌナズナKNAT1プロモーター(例えば、Lincoln(1994)Plant Cell 6:1859-1876を参照のこと)。
当業者は、組織特異的プロモーターが、標的組織以外の組織において、機能的に連結された配列の発現を駆動する可能性があることを認識するであろう。従って、本明細書において使用されるように、組織特異的プロモーターとは、標的組織において優先的に発現を駆動するが、他の組織においてもいくらかの発現をもたらす可能性があるものである。
もう一つの態様において、変異型PYR/PYLポリヌクレオチドは、転移要素を通して発現される。これは、構成的活性型ポリペプチドの、構成的ではあるが、周期的な、低頻度の発現を可能にする。本発明は、例えば、トバモウイルスサブゲノムプロモーター(Kumagai(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:1679-1683);強力な篩部特異的レポーター遺伝子発現を駆動するプロモーターを有する、感染イネ植物の篩部細胞においてのみ複製するイネツングロ桿菌状ウイルス(RTBV);維管束要素、葉肉細胞、および根端において最も高い活性を有するキャッサバ葉脈モザイクウイルス(CVMV)プロモーター(Verdaguer(1996)Plant Mol.Biol.31:1129-1139)を含む、ウイルス由来の組織特異的プロモーターの使用も提供する。
VI.トランスジェニック植物の作製
もう一つの局面において、本発明は、植物において本明細書に記載される構成的活性型PYR/PYL受容体タンパク質を発現させるための組換え発現カセットを含むトランスジェニック植物を提供する。いくつかの態様において、そのトランスジェニック植物の種以外の種に由来するポリヌクレオチドの完全配列または部分配列を含有しているトランスジェニック植物が生成される。トランスジェニック植物には、発現カセットが導入されている植物または植物細胞のみならず、発現カセットが染色体に安定的に組み込まれた子孫を含む、発現カセットを含有しているそのような植物または植物細胞の子孫も包含されることが認識されるべきである。
異種プロモーターによって駆動されたPYR/PYLコード配列を含む組換え発現ベクターは、多様な従来の技術によって、所望の植物宿主のゲノムへ導入され得る。例えば、DNA構築物は、植物細胞プロトプラストの電気穿孔および微量注入のような技術を使用して、植物細胞のゲノムDNAへ直接導入されてもよいし、または、DNA構築物は、DNA粒子銃のような衝撃法を使用して、植物組織へ直接導入されてもよい。あるいは、DNA構築物を、適当なT-DNA隣接領域と組み合わせ、従来のアグロバクテリウム・ツメファシエンス宿主ベクターへ導入することもできる。アグロバクテリウム・ツメファシエンス宿主の毒性機能は、細胞が細菌に感染した時、植物細胞DNAへの構築物および隣接マーカーの挿入を指図するであろう。構成的活性型PYR/PYL受容体の一過性発現も、本発明によって包含されるが、一般に、本発明の構築物の発現は、例えば、少なくともいくつかの植物子孫も、組み込まれた発現カセットを含有するような、植物ゲノムへの発現カセットの挿入に由来するであろう。
微量注入技術も、この目的のために有用である。これらの技術は、当技術分野において周知であり、文献中に十分に記載されている。ポリエチレングリコール沈殿を使用したDNA構築物の導入は、Paszkowski et al.EMBO J.3:2717-2722(1984)に記載されている。電気穿孔技術は、Fromm et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:5824(1985)に記載されている。衝撃形質転換技術は、Klein et al.Nature 327:70-73(1987)に記載されている。
バイナリーベクターのディスアーミング(disarming)および使用を含む、アグロバクテリウム・ツメファシエンスによって媒介される形質転換技術は、科学文献によく記載されている。例えば、Horsch et al.Science 233:496-498(1984)およびFraley et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:4803(1983)を参照のこと。
上記形質転換技術のいずれかによって得られた形質転換植物細胞は、形質転換された遺伝子型を保有し、従って、増強された非生物的ストレス抵抗性のような所望の表現型を保有する完全植物を再生させるために培養され得る。そのような再生技術は、組織培養増殖培地中のある種の植物ホルモンの操作に頼り、典型的には、所望のヌクレオチド配列と共に導入された殺生物剤マーカーおよび/または除草剤マーカーに頼る。培養されたプロトプラストからの植物再生は、Evans et al.,Protoplasts Isolation and Culture,Handbook of Plant Cell Culture,pp.124-176,MacMillilan Publishing Company,New York,1983;およびBinding,Regeneration of Plants,Plant Protoplasts,pp.21-73,CRC Press,Boca Raton,1985に記載されている。植物カルス、外植片、器官、またはそれらの一部からも、再生を得ることができる。そのような再生技術は、Klee et al.Ann.Rev.of Plant Phys.38:467-486(1987)に一般に記載されている。
当業者は、発現カセットを、トランスジェニック植物に安定的に組み入れ、機能性であることを確認した後、有性交雑によって他の植物へそれを導入することができることを認識するであろう。交雑すべき種に依って、多数の標準的な育種技術のいずれかを使用することができる。
本発明の発現カセットは、本質的に任意の植物に非生物的ストレス抵抗性を付与するために使用され得る。従って、本発明は、アスパラガス(Asparagus)属、ベラドンナ(Atropa)属、アベナ(Avena)属、アブラナ(Brassica)属、ミカン(Citrus)属、スイカ(Citrullus)属、トウガラシ(Capsicum)属、キュウリ(Cucumis)属、カボチャ(Cucurbita)属、ニンジン(Daucus)属、オランダイチゴ(Fragaria)属、ダイズ(Glycine)属、ワタ(Gossypium)属、ヒマワリ(Helianthus)属、ワスレグサ(Heterocallis)属、オオムギ(Hordeum)属、ヒヨス(Hyoscyamus)属、レタス(Lactuca)属、アマ(Linum)属、ドクムギ(Lolium)属、トマト(Lycopersicon)属、リンゴ(Malus)属、キャッサバ(Manihot)属、ハナハッカ(Majorana)属、ウマゴヤシ(Medicago)属、タバコ(Nicotiana)属、イネ(Oryza)属、キビ(Panieum)属、チカラシバ(Pannesetum)属、ワニナシ(Persea)属、エンドウ(Pisum)属、ナシ(Pyrus)属、サクラ(Prunus)属、ダイコン(Raphanus)属、ライムギ(Secale)属、キオン(Senecio)属、シロガラシ(Sinapis)属、ナス(Solanum)属、モロコシ(Sorghum)属、レイリョウコウ(Trigonella)属、ムギ(Triticum)属、ブドウ(Vitis)属、ササゲ(Vigna)属、およびトウモロコシ(Zea)属からの種を含む、広範囲の植物における使用を有する。いくつかの態様において、植物は、イネ、トウモロコシ、コムギ、ダイズ、ワタ、キャノーラ、芝草、およびアルファルファからなる群より選択される。いくつかの態様において、植物は観賞植物である。いくつかの態様において、植物は野菜または果実を生ずる植物である。
当業者は、他の植物におけるトランスジーン発現の表現型効果を予測するためのモデルとして、多数の植物種を使用することができることを認識するであろう。例えば、タバコ植物およびアラビドプシス植物の両方が、トランスジーン発現、特に、双子葉植物におけるトランスジーン発現の有用なモデルであることは、よく認識されている。
いくつかの態様において、本発明の植物は、構成的活性型PYR/PYL受容体ポリペプチドの発現以外の点では同一である植物と比較して、増強されたABAによって媒介される表現型、例えば、増強された種子休眠を有する。当業者は、ABAがよく研究されている植物ホルモンであり、ABAが多くの特徴の変化を媒介することを認識するであろう。それらのいずれかを、表現型の変化を決定するためにモニタリングすることができる。いくつかの態様において、増強されたABAによって媒介される表現型は、種子発芽のタイミングの改変、またはストレス(例えば、干ばつ、酷寒、および/もしくは塩)耐性の改変によって現れる。
非生物的ストレス抵抗性は、多数の周知の技術のいずれかによってアッセイされ得る。例えば、干ばつ耐性については、最適量より少ない水が植物に供給される条件の下で、植物を生長させることができる。膨圧、生長、収量等を含む、多数の標準的な尺度のいずれかによって、干ばつ抵抗性を決定することができる。いくつかの態様において、本明細書に記載される変異型PYR/PYL受容体を発現しているトランスジェニック植物は、トランスジェニック植物における膨圧の損失が、明確な期間(例えば、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、もしくはそれ以上、例えば、3週、4週、5週、またはそれ以上)にわたり、非トランスジェニック対照植物と比較して、少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上低下する場合、増強された干ばつ耐性を有する。
いくつかの態様において、増強されたABAによって媒介される表現型は、中程度または高度の塩分に対する増強された耐性である。塩分耐性は、発芽、生長、収量、または植物生存、葉の損傷、葉緑素の早期損失等を含む、多数の標準的な尺度のいずれかによって決定され得る。いくつかの態様において、本明細書に記載される変異型PYR/PYL受容体を発現するトランスジェニック植物は、中程度の塩条件または高度の塩条件(例えば、約50mM、100mM、150mM、200mM、250mM、300mM NaCl、またはそれ以上)の下でのトランスジェニック植物の生存が、明確な期間(例えば、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、もしくはそれ以上、例えば、3週、4週、5週、またはそれ以上)にわたり、非トランスジェニック対照植物と比較して、少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上増加する場合、増強された耐塩性を有する。
以下の実施例は、特許請求の範囲に記載された本発明を例示するために提示されるのであって、限定するためではない。
実施例1:PYR1の飽和変異誘発はPYR1-PP2C相互作用を増加させる活性化変異を同定する
PYR/PYL受容体とPP2Cとの間の相互作用を改善するために変異させることができる部位を明らかにするため、本発明者らは、通常、ABAと接触し(即ち、PYR1のリガンド結合ポケット内にあり)かつ/またはPP2Cと接触する(即ち、PP2C結合界面内にある)PYR1の39残基に対して飽和変異誘発を実施した。これらの機能的に重要な位置において可能な741種の単一変異体バリアントを全て構築し、次いで、酵母ツーハイブリッドに基づくアッセイを使用してPP2C相互作用についてアッセイした。飽和変異誘発は、所定の部位における全ての可能なアミノ酸バリアントの構築(即ち、各部位について19種全ての置換変異体の生成)を含む方法である。PYR1は、PYR/PYL受容体ファミリーのよく特徴決定されているメンバーであり、変異誘発研究を案内する広範な構造データを有するため、本発明者らは、PYR1に変異誘発の努力を集中させたが、標的とされた部位は、PYR/PYL受容体の間での高度の配列保存を示すことに注意するべきである(図1)。さらに、低い基底活性のため、野生型PYR1は、適切な酵母細胞をABAの存在下で増殖させた時にのみPP2C HAB1(またはその他のPP2C)に結合するため、PYR1は、酵母に基づくツーハイブリッドアッセイを使用してその活性化状態を研究することが可能であるため、機能研究のために好適である。従って、このアッセイは、ABA添加の非存在下でレポーター遺伝子発現を刺激するものとして、PYR1を活性化する変異を同定することを可能にする。
本発明者らの変異誘発研究のために選択された部位は、ABA結合型PYR1およびABA-PYR-HAB1三元複合体についての結晶学的データによって案内された(Santiago et al.,2009;Nishimura et al.,2009;Dupeux et al.,2011)。ABAまたはPP2Cの5Å以内にある残基を、構造上重要な塩ブリッジを形成するR116を除き、変異誘発のための標的とした(Santiago et al.,2009;Nishimura et al.,2009)。全部で39個の標的部位を変異誘発のために選択し、最終的に、全部で741種のPYR1変異体を部位特異的変異誘発によって生成した。
標的位置にランダムヌクレオチド(即ち、NNN)を含有しているプライマーを使用して、QuikChange(登録商標)site-directed mutagenesisキット(Stratagene)を使用して、変異体を作成した。さらに、各反応物は、稀なコドンの頻度を高めるために少量のMコドンプライマーおよびWコドンプライマーを含有していた。部位特異的変異誘発反応を、pBD GAL4-PYR1鋳型(Park et al.,2009)に対して実施し、DpnIにより消化し、コンピテント大腸菌(Escherichia coli)DH5α細胞へ形質転換した。各部位について96個のコロニーのプラスミドDNAを、Bioneer AccuPrep(登録商標)Plasmid Mini Extraction Kit(Alameda,CA)を使用して単離し、変異体を同定するため配列決定した;これによって、典型的には、各標的部位について19種の所望の変異のうちの約13種が同定された。各部位における残りの変異を、特異的変異誘発プライマーにより構築した。この過程を39個全ての標的部位について実施し、配列がバリデートされた変異体PYR1クローン741種のセットを得た。使用されたベクター鋳型、pBD-GAL4-PYR1は、適当な酵母株へ形質転換された時、GAL4 DNA結合ドメイン(BD)-PYR1融合タンパク質を発現する。実施例5に記載されるように、QuikChange lightning multi-site directed mutagenesisキット(Agilent Technologies,USA)も使用して、変異体を作成した。
PP2C相互作用に対する変異の効果を調査するため、変異体クローンを、GAL4活性化ドメイン-HAB1融合タンパク質を発現するpACT-HAB1(Park et al.,2009)を含有しているS.セレビシエ(cerevisiae)株Y190へ個々に形質転換した。酵母形質転換体を、LeuおよびTrpを欠く選択SD寒天プレート上でプラスミドの存在について選択し、β-galレポーター遺伝子発現レベルをモニタリングするため、X-Gal染色を使用することにより、PP2C相互作用について調査した。10個の異なる残基に位置する変異体741種のうちの29種が、ABA添加の非存在下でPYR1-HAB1相互作用を増加させた(表1および図2)。PYR-PP2C結合の増加によって、同定された変異体は、基底受容体活性を増加させると予想される。この予想のための対照として、そして本発明者らの変異体セットの効力を探求するため、8種のPYR1変異体(H60P、V83F、I84Q、A89W、M158I、F159V、T162F、およびK170W)についてのコード配列を、6×His(SEQ ID NO:173)融合タンパク質として、ベクターpET-28aへクローニングし、大腸菌において発現させ、以前に記載された方法(Park et al.,2009)を使用して精製し、次いで、異なるPYR1:PP2C化学量論においてHAB1ホスファターゼ活性に対する効果について試験した。
組換え受容体タンパク質は以下のように作製された:コード配列を、6×HIS(SEQ ID NO:173)融合タンパク質を与えるpET28へクローニングし、大腸菌発現株BL21へ形質転換した。組換えタンパク質を調製するため、一夜培養物1mlを、50ml TB(1.2%ペプトン、2.4%酵母抽出物、72mM K2HPO4、17mM KH2PO4、および0.4%グリセロール)に接種し、振とうしながら30℃でさらに2時間増殖させた。タンパク質発現を1mMのIPTGの添加によって誘導した。6時間後、5000×gでの15分間の遠心分離によって細胞を採集し、ペレットを、10mMイミダゾール(pH8.0)を含有している5mlの緩衝液A(50mM NaH2PO4、300mM NaCl)に再懸濁させた。精製の前に-80℃で細胞を保管した。解凍後、細胞を、30秒の休止間隔で、5回、30秒間、氷上で超音波処理した。12,000×gにおける10分間の遠心分離の後、清浄化された溶解物を入手し、1mlのNi-NTAカラム(Qiagen)に適用し、30mMイミダゾールを含有している20カラム体積の緩衝液Aにより洗浄した。結合したタンパク質を、250mMイミダゾールを含む10mlの緩衝液Aにより溶出させた。溶出液をTBSに対して透析した。次いで、精製された組換えタンパク質を、受容体アッセイにおいて組換えホスファターゼと共に使用した。これらのアッセイにおいて、受容体活性は、合成ホスファターゼ基質pNPPのGST-HAB1によって媒介される加水分解についての反応初速度から推論される、ホスファターゼ活性の阻害によって示される。反応物は、33mM Tris-OAc(pH7.9)、66mM KOAc、0.1%BSA、25mM Mn(OAc)2、50mM pNPPからなる反応緩衝液の中に、600nM GST-HAB1、および0nM、600nM、1200nM、2400nM、または4800nM 6×His-PYR1またはバリアントを含有していた。完全に活性化された野生型受容体と比べた受容体活性化のレベルを推論するため、飽和レベルの(+)-ABA(10μM)ならびに600nM野生型PYR1およびHAB1を使用した対照反応も実施した。タンパク質と基質とを混合した直後に、Wallacプレートリーダを使用して、20分間にわたり、およそ10秒間隔で、A405で、pNPPの加水分解について反応をモニタリングした。反応進行をプロットし、初速度を計算し、酵素反応測定のために使用されたのと同一の緩衝系体積/プレートリーダで作成された4-ニトロフェノールについての標準曲線を使用して、比活性へ変換した。示された値は、受容体タンパク質の非存在下で測定される対照ホスファターゼ活性レベルに対する%として表されている。本発明者らの実験において利用されたGST-HAB1の平均比活性レベルは、上記方法を使用して記載されたように、PYR1またはその他の受容体の非存在下でホスファターゼ基質pNPPに対してアッセイされた時、およそ4000μmol/分/mgであった。
図2、図15、および図17に示されるように、活性化変異体の各々は、野生型PYR1と比較して基底受容体活性を増加させた。これらの結果は、Y2Hアッセイを使用して報告されたPP2C結合が、基底受容体活性化状態の差を正確に反映することを証明している。従って、本発明者らの変異誘発戦略は、PYR/PYL-PP2C相互作用を改善し、基底受容体活性化レベルを増加させるために使用され得る、変異の包括的なセットを体系的に明らかにした。本発明者らは、現在まで、ABA受容体についての完全CA変異体が記載されていなかったこと、高い基底活性を有するPYL6およびPYL10(Melcher K,et al.(2010);Hao Q,et al.(2011)Mol Cell 42(5):662-672)が完全CA受容体ではないことに注意する(図14および図17を参照のこと)。
(表1)同定された活性化変異の変異部位および強度
Figure 2014524740
LIG=リガンド結合ポケット残基
PPI=PP2C結合界面残基
LIG+PPI=リガンド結合ポケット残基かつPP2C結合界面残基
V83における変異を除き、図2中の試験された活性化変異は、全て、PYR1-PP2C相互作用界面またはPYR1-PYR1相互作用界面にある残基に位置する。残基V83は、「ゲート」ループの端に位置し、その疎水性側鎖がABA結合ポケットへ向いており、ABA結合型受容体構造においてABAとの密接な接触を形成する。本発明者らは、この部位における活性化変異は、リガンド占有を模倣することができ、従って、ゲートの閉鎖型を安定化することができると仮定する。もう1種のゲート残基L87も、受容体活性化をもたらすために変異させることができる。残基M158は、PP2Cトリプトファンロック残基と相互作用する孔に位置し、PYR/PYL-PP2C相互作用を直接安定化するようにも位置付けられている。
実施例2:活性化変異を組み合わせることにより強力な構成的活性型受容体を工作することができる
受容体活性化をさらに増強するために、活性化変異を組み合わせることが可能であることを確立するため、本発明者らは、Quickchange Lightening multi-site directed mutagenesisキット(Agilent;USA)を使用して、PYR1CA3と呼ばれる三重変異体(H60P、V83F、F159V)およびPYR1CA4と呼ばれる四重変異体(H60P、V83F、F159V、M158I)を構築した。変異体クローンの配列をバリデートし、組換えタンパク質を大腸菌において産生させ、上記のようなPP2Cアッセイにおいて利用した。図3に示されるように、三重変異体および四重変異体の両方が、野生型PYR1と比べて基底PYR1活性を劇的に増加させた。重要なことには、構成的活性型(CA)対立遺伝子は、HAB1に加えて、ABI1およびABI2とも相互作用する。このことは、それらの構成的活性が、ABAによって制御されるホスファターゼの群の中の特定のPP2Cに制限されないことを証明している。これは、増強された基底活性化レベルを有する変異体タンパク質を作出するために、単一活性化変異を組み合わせることが可能であることを証明している。
受容体活性化を増強するため、付加的な四重変異体PYR1CA4B(V83F、M158I、F159V、K170W)およびPYR1CA4C(H60P、A89W、M158I、F159V)を構築した。図9、図16、および図17に示されるように、PYR1CA4B変異体およびPYR1CA4C変異体の両方が、野生型PYR1と比べて基底PYR1活性を劇的に増加させた。従って、増強された基底活性化レベルを有する変異体タンパク質を作出するために、4種の単一活性化変異の組み合わせを組み合わせることが可能である。
実施例3:活性化変異は多様なPYR/PYL受容体において機能する
既に記載されたように、PYR1を活性化するために変異させることができる部位は、PYR/PYL受容体ファミリーにおいて高度に保存されており(図1)、従って、PYR1において同定された活性化変異を、他の受容体を活性化するために使用することが可能であると予想される。この仮説を試験するため、実施例2に記載されたPYR1の三重変異体または四重変異体と相同の変異を、PYL2へ導入し、変異体PYL2CA3(H65P、V87F、F165V)およびPYL2CA4(H65P、V87F、M164I、F165V)を生成した。Lightening multi-site directed mutagenesisキットを使用して、PYL9にも変異を導入し、PYL9CA4変異体(V85F、Y160I、F161V)を作出した。上記実施例2に記載されたようにして、組換えタンパク質を作製した。図4に示されるように、変異体タンパク質は、野生型のPYL2またはPYL9と比較して、ABAの非存在下で高度に活性化されており、このことから、活性化変異をABA受容体ファミリーの他の受容体へ移植することが可能であることが証明された。PYR1 CA対立遺伝子により観察されたように、PYL2およびPYL9のCA対立遺伝子は、複数のPP2Cに対して活性である(図4)。
さらに、上記四重変異体CA4Cと相同の変異をPYL2へ導入し、PYL2CA4C変異体(H65P、A93W、M164I、F165V)を作出した。上記のようにして、相同の変異をPYL9へも導入し、PYL9CA4C変異体(A91W、Y160I、F161V)を作出した。図16および図17に示されるように、変異体タンパク質は、野生型のPYL2またはPYL9と比較して、ABAの非存在下で高度に活性化されていた。従って、PYL2-PYR1間およびPYL9-PYR1間のアミノ酸配列同一性は、それぞれ、わずか55%および49%であるにも関わらず、少数の特定の部分活性化変異を組み合わせることにより、多様な受容体の完全な活性化が可能である。
実施例4:植物体における構成的活性型受容体によるABAシグナリングの活性化
本発明者らの研究によって同定された活性化変異は、植物において発現された時、基底レベルより高くABAシグナリングを増加させると予想される。そのような活性化は、構成的活性型または対照野生型の受容体タンパク質を発現するトランスジェニック植物における、ABAによって制御される遺伝子の発現の分析、およびABAによって媒介される生理学的応答の特徴決定を含む、多数の方法によって定量化され得る。従って、本発明者らは、野生型コロンビア背景またはaba2-1変異体背景のいずれかにおいて、野生型PYL2またはPYL2CA3を発現する2セットのトランスジェニック植物を作成した。aba2変異体には、ABA生合成のために必要な酵素ABAアルデヒドオキシダーゼが欠損している。aba2変異体は、立ち枯れ、複数の非生物的ストレスに対する増加した感受性、および非休眠種子を含む、ABAレベルの低下に起因する多数の表現型を保有している。さらに、その種子発芽は、発芽のためにジベレリン(GA)を要求する野生型と異なり、GA生合成を要求しない。その結果として、aba2変異体は、(パクロブトラゾールのような)GA生合成阻害剤の効果に対して抵抗性である。PYL2CA3がABAシグナリングを効率的に活性化するのであれば、それは、aba2変異体におけるABA枯渇の効果を抑制することができ、野生型株およびaba2株の両方において、ABAによって制御される遺伝子の発現に影響することができるはずである。
所望のトランスジェニック植物を作出するため、PYL2およびPYL2CA3のコード配列を、ベクターpEGADの修飾バージョンへクローニングし、35Sにより駆動されるGFP-PYL融合タンパク質を作出した。以前の研究は、N末端GFP融合タグがPYL受容体機能に干渉しないことを証明した(Park et al.,2009);GFPタグを使用することの利点は、トランスジェニック植物においてもトランスジーンサイレンシングを示す系統においても融合タンパク質レベルの迅速なモニタリングが可能になるという点である。作出された構築物の配列をバリデートし、次いで、フローラルディップ法を介して、アグロバクテリウムによって媒介される形質転換を使用して、コロンビアまたはaba2-1変異体へ導入した。構築された各遺伝子型について、およそ40個の初代トランスジェニック植物を、T1実生におけるグルホシネート抵抗性またはGFP発現によって同定し、次いで、10個のT1系統の子孫から単一挿入ホモ接合性系統を単離し;2種の独立のPYL2CA3単一挿入系統を特徴決定した。興味深いことに、本発明者らは、野生型背景およびaba2背景の両方において入手されたPYL2CA3トランスジェニックが、全て、発達中の種子および水浸処理された種子における検出可能なGFP発現を示すが、発芽期の後は発現が検出不可能であることを観察した。分析された全部で80を越える系統から、発芽後発現を有するPYL2CA3トランスジェニックを回収し得なかったことは、発芽後の高レベルトランスジーン発現に対する選択が起こった可能性を示唆する;これは、野生型PYL2過剰発現トランスジェニックについては観察されなかった。そのことは、選択がPYL2CA3対立遺伝子に対して特異的に作用したことを示唆しており、構成的35Sプロモーターの下で発現された時の、成体植物におけるCA3対立遺伝子の毒性を示している可能性がある。
PYL2CA3対立遺伝子の効果を調査するため、本発明者らは、野生型およびaba2-1遺伝子型に対して多数の生理学的アッセイを実施した。コロンビア(Col)、35S::PYL2、および35S::PYL2CA3の種子試料を二分割し;一方を4℃で6日間1/3 MSプレート上で層積処理し、もう一方を6日後に1/3 MSプレートに播種した。両方の試料を室温(23℃)に移し、暗所でインキュベートした。種子の長さの少なくとも1/2の幼根を保有している場合、その種子を発芽陽性と判定した。各実験がトリプリケートで実施され、プロットされた各点は、40〜70粒の種子を使用して実施された試験の平均値を表す。図5および図11に示されるように、野生型コロンビア背景において、PYL2CA3の過剰発現は、PYL2CA3系統の層積処理依存性の発芽によって示されるように、種子における過剰休眠の状態を誘導するが、野生型PYL2はそれを誘導しない。種子休眠はABAによって誘導され、増加したABA感受性を有する変異体が、より高度の種子休眠を有することは、よく確立されている;例えば、era1(enhanced response to aba1)変異は、類似した層積処理要求性を示す(Cutler et al.,1996)。従って、PYL2CA3の過剰発現は、ABAによって制御される種子休眠経路を活性化する。
その他のABA応答がPYL2CA3系統において影響されるか否かを調査するため、本発明者らは、定量的RT-PCR(qRT-PCR)を使用して、数種のABAによって制御される遺伝子の発現レベルのプロファイルを決定した。これらの実験のため、Col系統、35S::PYL2トランスジェニック系統、および2種の独立の35S::PYL2CA3トランスジェニック系統の種子を、連続照明下で室温で、水または5μM ABAのいずれかにおいて32時間水浸処理し、その後、Concert(商標)Plant RNA Reagentを使用してRNAを単離し、ABAによって制御される遺伝子Em6(At2g40170)、LEA(At2g21490)、およびRd29b(At5g52300)のためのプライマーを使用したqRT-PCR反応において利用した。生物学的二重反復および技術的三重反復による測定を実施し、遺伝子発現レベルを決定した。遺伝子発現のqRT-PCR分析のため、オリゴdT20(SEQ ID NO:174)およびリボソームRNAプライマー
Figure 2014524740
を含有している反応混合物において、superscript逆転写酵素II(Invitrogen)を使用して、5μgの全RNAから、cDNAを生成した。リアルタイム定量的PCR分析を、相対的定量化のΔΔCt法によって実施した。PCR混合物は、15μlの最終容量で、2μlのcDNA、7.5μlの2×Maxima(登録商標)SYBR grean/Fluorescein qPCRマスターミックス(2×)(Fermentas)、および330nMの各遺伝子特異的プライマーを含有していた。RT-PCRは、BioRad CFX96 Real-Time SystemおよびBioRad CFX Managerソフトウェア(BioRad)を使用して行われた。PCRは下記条件の下で実施された:96穴光学反応プレート(BioRad)において、95℃3分、ならびに95℃10秒、55℃10秒、および72℃30秒の40サイクル。アンプリコンの特異性は、40サイクルの後に融解曲線(解離)分析(60〜95℃)によって確証された。インプットcDNAはrRNAプライマーを使用して標準化された。以下のプライマーが、特異的な遺伝子発現レベルを検出するために使用された:
Figure 2014524740
図6および図12に示されるように、2種の独立のPYL2CA3トランスジェニック系統が、ABA処理の非存在下で、ABAによって制御される遺伝子のレベルの上昇を示す。これらの遺伝子の発現レベルは、5μM ABAにより処理された野生型種子において観察されたレベルと比べて、比較可能であるか(図6)または上昇している(図12)。従って、PYL2CA3対立遺伝子は、数種のABAによって制御される遺伝子の高レベルの誘導を引き起こす。このことは、PYL2CA3が、ABA処理と比較可能なABAシグナリングをインビボで活性化するという結論と一致している。
インビボでABAシグナリングを活性化するPYL2CA3の能力のさらなる試験として、本発明者らは、ABA経路の効率的な活性化は、aba2変異体において観察される表現型を抑制するはずであると推理し、この対立遺伝子の、ABA欠損によって引き起こされた表現型を復帰させる能力を調査した。aba2変異体は大きく低下したABAレベルを有するため、aba2遺伝的背景は、定義上、ABA非依存性であるはずである、シグナリングの構成的活性化についてのストリンジェントな試験を提供する。これを試験するため、本発明者らは、GA生合成の阻害剤であるパクロブトラゾールで、様々な遺伝子型の発芽を調査した。野生型種子の発芽はパクロブトラゾール処理によって阻止されるが、aba2変異体は、ABAによって誘導される種子休眠の欠陥のために発芽する。本発明者らは、パクロブトラゾールと同様に、ABAおよびaba2に依存して種子発芽を阻害する(Gonzalez-Guzman M.et al.(2002)Plant Cell 14(8):1833-1846;Leon-Kloosterziel KM,et al.(1996)Plant J 10(4):655-661)NaClの存在下でも、様々な遺伝子型の発芽を調査した。PYL2CA3を過剰発現する野生型植物においてなされた本発明者らの観察と一致して、PYL2CA3トランスジーンは、aba2変異体において観察されたパクロブトラゾールおよびNaClに対する抵抗性を抑制したが、野生型PYL2の過剰発現はこのaba2表現型を抑制することができなかった(図7および図13)。従って、発達中の種子におけるPYL2CA3の発現は、aba2背景に存在するABAレベルの枯渇にも関わらず、ABA依存性の生理学的過程を活性化するのに十分である。本発明者らのデータは、総合すると、PYL2CA3がトランスジェニック植物におけるABA応答の強力な活性化剤であること、そして活性化変異がインビボでABAシグナリングをモジュレートするために使用され得ることを証明している。
実施例5:方法
部位飽和変異誘発
2種の方法のうちのいずれかを使用して変異体を作出した。約半分の変異体は、標的位置にランダムヌクレオチド(即ち、NNN)を含有しているプライマーを使用して、QuikChange site-directed mutagenesisキット(Stratagene,USA)を使用して、作成された(使用された全ての変異誘発プライマー配列のリストについては表2を参照のこと)。製造業者の説明に従い、10pmol NNNプライマーならびに稀なコドンの頻度を高めるために添加された各0.5pmolのMコードプライマーおよびWコードプライマーを含有している20μL変異誘発反応を、pBD GAL4-PYR1鋳型(Park et al.(2009)Science 324(5930):1068-1071)を使用して実施した。各部位について96コロニーのプラスミドDNAを、Bioneer AccuPrep(登録商標)Plasmid Mini Extraction Kit(Alameda,CA)を使用して単離し、変異体を同定するために配列決定した。それによって、配列決定された96クローンについて、各標的部位について19種の所望の変異のうち平均12種が同定された。第2の変異誘発法において、本発明者らは、縮重を低下させる、変異誘発標的部位にNNNの代わりに配列NNKを含有しているリン酸化プライマーを使用して、QuikChange lightning multi-site directed mutagenesisキット(Agilent Technologies,USA)を使用して、変異を作成した(Kretz KA,et al.(2004)Methods Enzymol 388:3-11)。各部位について96コロニーのプラスミドDNAを、Beckman Multimek 96ロボットおよびPerfectprep Vacキット(5 Prime Inc.,USA)を使用して単離し、配列決定したところ、配列決定された96クローンについて19種の所望の変異のうちの14種が平均して同定された。ランダムクローンの配列決定によって同定されなかった変異は、QuickChange(登録商標)lightning multi-site directed mutagenesisキット(Agilent Technologies,USA)を使用して、特別に設計された変異誘発プライマーにより構築された。この過程を39個全ての標的部位について実施し、最終的に、741種の配列がバリデートされた変異体PYR1クローンのセットを得た。
(表2)変異誘発プライマー
Figure 2014524740
Figure 2014524740
Figure 2014524740
Figure 2014524740
Figure 2014524740
Figure 2014524740
Figure 2014524740
Figure 2014524740
酵母に基づく受容体活性化アッセイ
変異体pBD GAL-PYR1クローンを、GAL4活性化ドメイン-HAB1融合タンパク質を発現するpACT-HAB1(Park et al.,2009)を含有しているS.セレビシエ株Y190へ個々に形質転換した。酵母形質転換体を、LeuおよびTrpを欠く合成デキストロース(SD)寒天プレート(SD-LT)上でプラスミドの存在について選択し、β-galレポーター遺伝子発現レベルをモニタリングするため、X-gal染色を使用することにより、PP2C相互作用について調査した。個々のクローンを96穴プレートへ配置し、次いで、SD-LT細菌叢(即ち、1穴)プレートにスポットした。各アッセイプレートは、95種の変異体クローンおよび1種の野生型PYR1対照クローンを含有していた。プレートを、30℃における2日間のインキュベーションの後、クロロホルムオーバーレイX-gal法によって染色した。各アッセイプレートを少なくとも3回試験した。図1に示される活性化変異は、3回の別々の実験全てにおいてX-gal+として観察された。
インビトロ受容体活性化アッセイ
全長のABI1およびABI2を、修飾型pSUMOベクター(LifeSensors Inc,USA)へクローニングし、6×His-SUMO融合タンパク質を得た;GST-HAB1を、以前に記載されたようにして(Park et al,2009)発現させ精製した。変異体受容体をpET28へクローニングし、6×His-融合タンパク質を得た。クローンを大腸菌発現株BL21(DE3)pLysSへ形質転換し、以下のように組換えタンパク質を調製した:1mlの一夜培養物を、200ml TB(受容体)または200ml LB(PP2C)に接種した。培養物を、30℃で2時間プレインキュベートし、PP2C発現のため、接種の1時間後に培地に4mM MnCl2を補足した。プレインキュベーションの後、IPTGを添加し(1mM)、細胞を15℃で16時間誘導し、その後、遠心分離によって収集し、5mlの緩衝液A(50mM NaH2PO4、300mM NaCl)+10mMイミダゾール(pH 8.0)に再懸濁させ、-80℃で保管した。精製のため、細胞を解凍し、氷上で超音波処理し(60秒)、次いで、清浄化された溶解物を、1mlベッド容量のNi-NTA(Qiagen,USA)カラムへ適用し、20カラム体積の緩衝液A+30mMイミダゾールにより洗浄し、結合したタンパク質を1mlの緩衝液A+250mMイミダゾールにより溶出させた。受容体については、溶出液をTBSに対して透析し、PP2Cについては、融合タンパク質をSephadex G50カラムに通すことによって脱塩した。
次いで、600nM PP2C、および0nM、600nM、1200nM、2400nM、または4800nM受容体を含有している反応において、合成ホスファターゼ基質pNPPのPP2Cによって媒介される加水分解についての反応初速度から推論されるホスファターゼ活性の阻害によって、受容体活性化が示される、受容体アッセイにおいて、精製された受容体およびホスファターゼを使用した。受容体アッセイ緩衝液は、33mMトリス-OAc(pH7.9)、66mM KOAc、0.1%BSA、25mM Mn(OAc)2、0.1%β-ME、および50mM pNPPからなっていた。タンパク質と基質とを混合した直後に、Wallacプレートリーダを使用して、およそ2分間隔で、A405でpNPPの加水分解について反応をモニタリングした。反応進行をプロットし、初速度を計算し、同一の緩衝液系において作成された4-ニトロフェノールについての標準曲線との比較によって、比活性へ変換した。図に示されたPP2C活性値は、受容体タンパク質の非存在下で同一の反応条件の下で測定された対照ホスファターゼ活性レベルに対する%として表されている。本発明者らの実験において利用されたGST-HAB1、6×His-SUMO-ABI1、および6×His-SUMO-ABI2の平均比活性レベルは、PYR1またはその他の受容体の非存在下でホスファターゼ基質pNPPを使用してアッセイされた時、およそ4500μmol/分/mg(GST-PP2C)またはおよそ2500μmol/分/mg(SUMO-PP2C)であった。
トランスジェニック植物
所望のトランスジェニック植物を作出するため、PYL2、PYL2CA3、およびPYL2CA4のコード配列を、pEGADの修飾バージョン(Cutler SR et al(2000)Proc Natl Acad Sci USA 97(7):3718-3723)へクローニングし、35Sにより駆動されるGFP-受容体融合タンパク質を作出した。以前の研究は、N末端GFP融合タグが、インビボのPYR1機能に干渉しないことを証明した(Park et al.,2009)。構築物の配列をバリデートし、次いで、フローラルディップ法(Clough SJ & Bent AF(1998)Plant J 16(6):735-743)を介して、アグロバクテリウムによって媒介される形質転換を使用して、コロンビアまたはaba2-1変異体へ導入した。構築された各遺伝子型について、およそ40個の初代トランスジェニック植物を、T1実生におけるグルホシネート抵抗性またはGFP発現によって同定し、次いで、単一挿入ホモ接合性系統を、10個のT1系統の子孫から単離した。
種子アッセイ
休眠をアッセイするため、コロンビア、35S::GFP-PYL2、および35S::GFP-PYL2CA3の種子を二分割し、(漂白剤およびHClを使用してインサイチューで調製された)塩素ガスを使用して表面滅菌した。一方を暗所で4℃で6日間1/3 MS寒天プレート上で層積処理し、室温で維持されたもう一方を6日後に1/3 MS寒天プレート上に播種し;両方の試料を、23℃の遮光グロースチャンバーに移し、24時間目に発芽を判定した。これらの実験において使用されたホモ接合性の35S::GFP-PYL2および35S::GFP-PYL2CA3の種子は、図12に示された実験の時点で、それぞれ、収穫後およそ5ヶ月目および6ヶ月目であった。
パクロブトラゾール(Wako Chemicals,Japan)およびNaClにおける発芽試験は、以下のように行われた。コロンビア、aba2-1、aba2-1;35S::GFP-PYL2、およびaba2-1;35S::GFP-PYL2CA3の種子を表面滅菌し、25μM、50μM、もしくは100μMパクロブトラゾール、または0mM、50mM、200mM、250mM NaClを含有している1/3 MS寒天培地に播種した。対照ウェルは、1/3 MS寒天、および0.1%DMSO(パクロブトラゾールのための担体溶媒)を含有していた。種子を暗所で4日間層積処理し、次いで、室温(23℃)の連続照明に移した。発芽を72時間後にアッセイし;種子の長さの少なくとも1/2またはそれ以上の幼根を示す種子を、陽性と判定した。各実験がトリプリケートで実施され;実験は、収穫後およそ6ヶ月目の種子に対して実施された。
定量的RT-PCR
野生型系統またはトランスジェニック系統を、連続照明下で室温で、水または5μM ABAのいずれかにおいて32時間水浸処理し、その後、Concert(商標)Plant RNA Reagentを使用してRNAを単離し、続いて、LiCl2沈降させ、RNase不含DNAse(Ambion)を使用してDNase処理した。精製されたRNAを、ABAによって制御される遺伝子Em6(At2g40170)、LEA(At2g21490)、およびRd29b(At5g52300)のためのプライマーを使用したqRT-PCR反応において利用した。生物学的二重反復および技術的三重反復による測定を実施し、遺伝子発現レベルを決定した。遺伝子発現のqRT-PCR分析のため、オリゴdT20(SEQ ID NO:174)およびリボソームRNAプライマー3404(-)
Figure 2014524740
を含有している反応混合物において、superscript逆転写酵素II(Invitrogen)を使用して、5μgの全RNAからcDNAを生成した。リアルタイム定量的PCR分析を、相対的定量化のΔΔCt法によって実施した。PCR混合物は、15μlの最終容量で、2μlのcDNA、7.5μlの2×Maxima(登録商標)SYBR green/Fluorescein qPCRマスターミックス(2×)(Fermentas)、および330nMの各遺伝子特異的プライマーを含有していた。RT-PCRは、BioRad CFX96 Real-Time SystemおよびBioRad CFX Managerソフトウェア(BioRad)を使用して行われた。PCRは以下の条件の下で実施された:96穴光学反応プレート(BioRad)において、95℃3分、ならびに95℃10秒、55℃10秒、および72℃30秒の40サイクル。アンプリコンの特異性は40サイクルの後に融解曲線(解離)分析(60〜95℃)によって確証された。インプットcDNAはrRNAプライマーを使用して標準化された。以下のプライマーが、特定の遺伝子発現レベルを検出するために使用された:
Figure 2014524740
本発明者らは、その基底活性を増加させるPYR1の一連の変異を同定するため、飽和変異誘発を使用した。これらの変異の組み合わせは、ほぼ完全に活性化されたPYR1バリアントの迅速な構築をもたらした。完全な活性化を誘発するため、活性化組み合わせを、多様なPYL受容体に組み入れることが可能であり、PYL2およびPYL9のCA対立遺伝子は、飽和ABAレベルの下で調査された野生型受容体とほぼ区別不能である。PYL2CA3は、インビボで発現された時、ABAシグナリングを活性化し、aba2-1変異体において欠損している2種の別々のABAによって媒介される種子応答のほぼ完全な抑制を可能にする;このストリンジェントな機能試験は、PYL2の活性化がインビボでABAシグナリングを活性化するのに十分であることを示しており、他の受容体に対するABAの作用を含む、間接的な説明の可能性は低い。
ABAは、通常、野生型環境において多数の受容体を活性化することができ、ABAシグナリングにおいて、異なる受容体が異なる下位機能を有するか否かは、まだ明らかでない。現在のところ、PYR1およびPYL1に対する強力なアゴニスト活性を有し、種子におけるABA応答性遺伝子転写の全部を本質的に活性化するピラバクチン(pyrabactin)を使用してのみ、選択的なABA受容体活性化は、達成されている。しかしながら、ピラバクチンの効果は、PYL2(Peterson FC,et al.(2010)Nature Stuctural and Molecular Biology 17(9):1109-1113;Melcher K,et al.(2010)Nature Stuctural and Molecular Biology 17(9):1102-1108)およびPYL5(Hao Q,et al.(2011)Mol Cell 42(5):662-672)のような他の受容体に対する弱い部分的なアゴニスト/アンタゴニスト活性のため複雑である。CA対立遺伝子は、薬理学的処理の複雑さの回避という利点を有する。CA3変異によるPYL2の活性化は、3種のABAマーカー遺伝子についての転写物レベルにおける種子に対するABA処理の効果を模倣し、aba2-1変異の塩およびパクロブトラゾールに対する感受性を抑制し、過剰休眠を誘導する。ピラバクチンの以前に特徴決定された効果と併せて、本発明者らのデータは、単一の受容体(PYR1またはPYL2)の活性化が種子におけるシグナリングを活性化するのに十分であること、そしてABA応答を誘発するために複数の受容体を活性化する必要はないことを示唆している。
本発明者らの努力は、完全な構成的活性化を誘発するため、多様なPYR/PYL受容体へ活性化変異の組み合わせを組み入れることが可能であることを示した。当業者に公知であるように、構成的活性型受容体変異は、シグナリング経路のリガンド非依存性の活性化を可能にするため、貴重である。PYR/PYL受容体に関しては、水使用、ストレス条件下での収量、およびその他のABAによって調節される形質を改善するため、トランスジェニック植物におけるABAシグナリングおよびその関連下流応答の活性化を使用することができる。さらに、構成的活性型変異体は、単一の受容体が選択的に活性化されることを可能にするため、構成的活性型受容体変異は、(ABAのような)化学アゴニストと比較して有益である。PYL/PYL受容体は比較的大きな遺伝子ファミリーに存在するため、構成的活性型変異による単一の受容体の選択的な活性化は、別個のファミリーメンバーによって調節される応答が特異的に活性化されることを可能にする;これは、ABAによって誘発されるシグナリングの全般的な活性化とは対照的である。このことの価値は多様である。ABAはストレス耐性を誘導するために有益であるが、その適用は、しばしば、萎黄病のような望ましくない副作用を有しており;従って、ABAは、その使用を限定し得る副作用を有している。選択的なアゴニストまたは明確な構成的活性型変異体による明確な受容体の特異的な活性化は、望ましい副作用および望ましくない副作用を区別し、特異的に調節することを可能にし得る。最後に、構成的活性型対立遺伝子の組織特異的なまたは制御された発現は、化学アゴニストによっては得られないレベルの調節を可能にする。
実施例6:RD29Aにより駆動されるPYL2CA4トランスジーンは非ストレス条件下でアラビドプシスの生長および発芽に対する最小の影響を誘導する
上記実施例に示されるように、35SプロモーターからのGFP-PYL2CA4の構成的発現は、増強された種子休眠を含む、多数の望ましくない効果に関連している。一般に、非生物的ストレス応答の構成的な発現は、生長の低下、および収量を低下させるその他の生理学的効果に関連している。これらの負の効果を避けるためには、誘導性の発現を使用することができる。例えば、アブシジン酸経路において正に作用する転写因子DREB1Aの、RD29Aにより駆動される干ばつ誘導性の発現は、干ばつ耐性を改善し、正常な生長条件の下では最小の効果を有するが、構成的な35Sにより駆動されるDREB1Aは、生長を著しく損なう(Kasuga et al.,1999)。ストレス耐性をモジュレートするための干ばつ誘導性の構成的活性型受容体の効率を調査するため、本発明者らは、RD29Aプロモーターの調節下で野生型PYL2受容体またはPYL2CA4受容体のいずれかを発現するトランスジェニックアラビドプシス植物を生成した。対照植物と比べた、これらの植物のストレス耐性を、塩ストレス処理および干ばつストレス処理の両方を使用して調査した。
所望のトランスジェニック植物を作出するため、本発明者らは、pEGAD(Cutler et al.(2000)Proc Natl Acad Sci USA 97:3718-3723)に存在する35SプロモーターをアラビドプシスRD29Aプロモーターに交換し、次いで、修飾されたベクターへ所望のPYL2バリアントをクローニングした。RD29Aプロモーターは、以下のプライマー
Figure 2014524740
および
Figure 2014524740
を用いてシロイヌナズナゲノムDNAから増幅させられ、AgeIおよびSacI制限酵素を使用して、pEGADへクローニングされた。RD29A::GFP-PYL2およびRD29A::GFP-PYL2CA4と以後呼ばれる、RD29Aにより駆動されるGFP-受容体融合タンパク質を作出するため、PYL2およびPYL2CA4のコード配列を上記ベクターへクローニングした。構築物の配列をバリデートし、次いで、フローラルディップ法(Clough et al.1998)を使用して、アグロバクテリウムによって媒介される形質転換によって、コロンビア野生型背景へ導入した。構築された各遺伝子型について、およそ25個の初代トランスジェニック植物を、T1実生におけるグルホシネート抵抗性および/またはGFP発現によって同定し、次いで、単一挿入ホモ接合性系統を、初代T1系統のT2子孫およびT3子孫から同定した。
35S:PYL2CA3系統は野生型植物と比較して劇的に増強された種子休眠を有するため、本発明者らは、最初に、RD29A::GFP-PYL2構築物またはRD29A::GFP-PYL2CA4構築物が種子休眠に影響するか否かを確立しようと努力した。CA4構築物は、CA3構築物より高度の構成的活性のために選ばれ(例えば、図17を参照のこと)、従って、CA3変異より強力にABA応答に影響すると予想される。トランスジェニック植物の選択および分析を容易にするため、GFP融合タンパク質を利用した。本発明者らは、35S::GFP-PYL1構築物がpyr1-1変異体のピラバクチン非感受性を救済するのに十分であることが、以前に示されたことに注意する。そのことは、GFPタグがPYR1タンパク質またはPYL2タンパク質の機能を損なわない可能性が高いことを示す(Park et al.2009)。異なる遺伝子型の休眠をアッセイするため、野生型コロンビア、RD29A::GFP-PYL2トランスジェニック、ならびに2種の独立のRD29A::GFP-PYL2CA4トランスジェニック(系統#1および#2)についての種子を二等分し、(市販の漂白剤および12N HClを混合することによりインサイチューで調製された)塩素ガスを使用して、2時間、乾表面滅菌した。滅菌された種子の一方を、暗所で4℃で5日間、1/3 MS寒天プレート上で層積処理し、室温で乾燥維持されたもう一方を6日後に1/3 MS寒天プレート上に播種した;両方の試料を23℃の遮光グロースチャンバーに移し、24時間間隔で発芽を判定した。図18に示されるように、PYL2CA4トランスジーンのRD29Aにより駆動される発現は、種子休眠の中程度の増強に関連しており、その重度は特徴決定された2種の系統の間で変動していた。この変動は、トランスジェニック系統の適切な選択を、種子効果の重度を緩和するために使用することが可能であることを示唆する。観察された軽度の種子表現型は、公のマイクロアレイデータベース(Schmid et al.,2005)に記述されている種子発達の間のRD29Aプロモーターの発現と一致している。にも関わらず、誘導性プロモーターを使用する時、35Sにより駆動されるPYL2CA3バリアントにより観察されたものと比較して、種子休眠に対するトランスジーンの効果は小さい。
RD29Aにより駆動されるPYL2CA4構築物の効果をさらに調査するため、本発明者らは、開花時の完全植物表現型を特徴決定した。図19に示されるように、完全植物生長に対する最小の影響が観察される。完全植物の稔性に対するトランスジーンの効果も調査した。図20に示されるように、特徴決定されたトランスジェニック植物は、いずれも、種子収量の指標である長角果の長さまたは数の有意差を保有していなかった。従って、PYL2タンパク質またはPYL2CA4タンパク質のRD29Aにより駆動される発現は、非ストレス条件下での植物の収量および生理学に対する最小の効果に関連している。
実施例7:RD29AプロモーターはPYLタンパク質の干ばつ誘導性発現を駆動する
構築されたトランスジェニック植物が、ストレスに応答して適切にPYLタンパク質を発現することを確認するため、RD29A::GFP-PYL2トランスジェニック遺伝子型および2種の独立のRD29A::GFP-PYL2CA4トランスジェニック遺伝子型についての短日下で生長した4週齢の植物の成熟ロゼット葉を切り取り、4時間乾燥させた。その後、1%プロテアーゼ阻害剤混合物(Sigma-Aldrich,USA)が補足されたTBS緩衝液(10mM Tris-Cl(pH7.4)、150mM NaCl)で、タンパク質を抽出した。次いで、20μgの全タンパク質を10%アクリルアミド(wt/vol)SDS/PAGEゲル上で分離し、次いで、ニトロセルロース膜上にブロットし、1:10,000希釈のモノクローナル抗GFP抗体(Clontech,USA)または抗αチューブリン抗体(Sigma-Aldrich,USA)によりプロービングした。抗マウスHRP(1:10,000)コンジュゲートを二次抗体として使用し、次いで、免疫反応性タンパク質を可視化するため、ECL(GE Healthcare,USA)を使用した。図21に示されるように、RD29Aにより駆動されるPYLタンパク質は、脱水に応答して高レベルに発現され、ストレスの非存在下ではより低い基底レベルを有していた。これは、以前に特徴決定された、乾燥後のRD29Aプロモーターの誘導と一致している(Yamaguchi-Shinozaki et al.,1992)。従って、RD29Aにより駆動されるPYL2構築物は、予想通り、成熟アラビドプシス植物においてストレス誘導的にPYL2タンパク質を誘導する。
実施例8:RD29Aにより駆動されるPYR1CA4受容体またはPYL2CA4受容体を発現するアラビドプシス植物は改善された耐塩性を保有する
ABAは、耐塩性の媒介において、よく認識されている役割を果たす(Zhu,2002)。従って、本発明者らは、RD29Aにより駆動されるPYR1、PYL2、PYR1CA4バリアント、またはPYL2CA4バリアントを発現するアラビドプシス植物が、アラビドプシスの耐塩性を増強し得るか否かを調査しようと努力した。類似のPYL2構築物について実施例6に記載された方法を使用して、RD29Aにより駆動されるPYR1トランスジェニック植物およびPYR1CA4トランスジェニック植物を構築した。野生型材料およびトランスジェニック材料の塩分感受性アッセイを、以下のように実施した:野生型コロンビア系統、RD29A::GFP-PYR1系統、2種の独立のRD29A::GFP-PYR1CA4系統、RD29A::GFP-PYL2系統、または2種の独立のRD29A::GFP-PYL2CA4系統の実生を、0.5%ムラシゲ・スクーグ基礎塩混合物(Murashige and Skoog Basal Salt Mixture)(MS)、0.5%ショ糖、および0.5% Gelzan(商標)寒天、および100mg/mlカルボキシリン(carboxyline)抗微生物剤からなる一般的な増殖培地で、BD Falcon 100×15mm使い捨て正方形integridペトリ皿に蒔き、発芽させた。無菌の80×80mmナイロンメッシュを25mlの溶融培地の上に置いた。使用されたナイロンメッシュは、1000ミクロンの正方形開口部、59%開口部面積、および515ミクロンの糸直径を含有している(Small Parts,USAより入手された)。これらのメッシュカバーは、低塩分ペトリ皿から高塩分ペトリ皿への実生の容易な移動を可能にする。滅菌された9粒の種子を、10×10メッシュ正方形ユニット上に均一に蒔き、5日間4℃で暗所で層積処理し、次いで、室温で連続光に曝した。7日後、実生を、RD29Aプロモーターの発現を誘導するため、100mM NaCl+一般的な増殖培地を含有しているプレートに移した。トランスジーン誘導後、実生を250mM NaClプレートに移し、高塩プレートへの移動から14日後に実生生存率を判定した。図22Aに示されるように、RD29A::GFP-PYR1CA4トランスジェニック植物およびRD29A::GFP-PYL2CA4トランスジェニック植物は、野生型植物ならびにRD29A::GFP-PYR1トランスジェニック植物およびRD29A::GFP-PYL2トランスジェニック植物の両方と比較して、高塩分条件下での生存率の有意な改善を示した。PYR1系列(図22B)およびPYL2系列(図22C)のトランスジェニック植物の生存率の定量化は、CA発現トランスジェニック系統の耐塩性の有意な改善を明らかにした。100mM NaCl処理が様々なPYR1タンパク質およびPYL2タンパク質の発現を効率的に誘導することを確認するため、100mM NaClへの移動の後、実生に対してqRT-PCRアッセイを実施した。移動後3時間間隔(移動後0時間目、3時間目、および6時間目)で実生組織を採集し、Concert(商標)Plant RNA Reagentを使用して単離されたRNAを、RNase不含DNase(Ambion,USA)を使用してDNase処理した。次いで、ABAによって制御される遺伝子RAB18(At5g66400)およびRD29B(At5g52300)のためのオリゴヌクレオチドプライマーを使用したqRT-PCR反応において、精製されたRNAを利用した。生物学的トリプリケートおよび技術的三重反復による測定を実施した。遺伝子発現のqRT-PCR分析のため、オリゴdT20(SEQ ID NO:174)プライマーを含有している反応混合物において、Superscript Reverse Transcriptase III(Invitrogen,USA)を使用して、2μgの全RNAからcDNAを生成した。リアルタイム定量的PCR分析を、相対的定量化のΔΔCt法によって実施した。PCR混合物は、15μlの最終反応容量で、2μlのcDNA、7.5μlの2×Maxima(登録商標)SYBR green/Fluorescein qPCRマスターミックス(2×)(Fermentas)、および330nMの各遺伝子特異的プライマーを含有していた。RT-PCRは、BioRad CFX Managerソフトウェア(BioRad,USA)を使用して実施された。PCRは以下の条件の下で実施された:96穴光学反応プレート(BioRad)において、95℃3分、続いて、95℃10秒、55℃10秒、および72℃30秒の40サイクル。アンプリコンの特異性を、40サイクルの後に融解曲線(解離)分析(60〜95℃)によって確証した。インプットcDNAを、rRNAプライマーを使用して標準化した。図23に示されるように、RD29A::GFP-PYL2CA4系統#1において、野生型植物およびRD29A::GFP-PYL2トランスジェニック植物と比較して、ABA応答性遺伝子の発現の増大が観察された。従って、PYR1CA4またはPYL2CA4のRD29Aにより駆動される発現は、アラビドプシス実生におけるABA応答の増大および耐塩性の改善に関連している。
実施例9:RD29Aにより駆動されるPYL2CA4受容体はアラビドプシス干ばつ耐性を改善する
PYL2CA4のRD29Aにより駆動される発現が干ばつ耐性を増強するか否かを調査するため、コロンビア野生型、RD29A::GFP-PYL2トランスジェニック遺伝子型、または2種の独立のRD29A::GFP-PYL2CA4トランスジェニック遺伝子型のいずれかの成熟植物を、水枯渇実験に供し、水枯渇後2週間目に水損失をモニタリングした。実験を以下のように実施した:各遺伝子型の実生を、水分補給されたJiffy-7ピートペレット土壌へ個々に移し、定期的に灌水しながら、短日条件(8/16明暗)で、成熟するまで(およそ6週間)生長させた;各遺伝子型についておよそ40の植物を特徴決定した。成熟後、非蒸散水損失を最小化するため、ポリ塩化ビニルおよびパラフィルムの組み合わせを使用してポットを密閉した。ポットの下半分をポリ塩化ビニルラップにより密封し、上半分をパラフィルムにより密封した。十分に灌水された対照植物(各遺伝子型についておよそ10植物)を、処理された標本と並行して生長させた。実験の間中、毎週、植物を写真撮影し計量した。実験の完了時、(植物バイオマスおよび土壌を含有している)各ポットをオーブンで乾燥させ、各ポットの乾重量を決定するため計量し、次いで、それを、水枯渇実験の間中、測定された含水量を推論するために使用した。さらに、干ばつストレスの示度である葉崩落(即ち、膨圧の損失)についても、視覚的に植物を判定した。さらに、実験中止時に、気生植物乾重量を対照植物および実験植物の両方について測定した。図24Aに示されるように、RD29A::GFP-PYL2CA4トランスジェニック植物は、膨張損失の低下によって証拠付けられるように、コロンビア野生型またはRD29A::GFP-PYL2遺伝子型のいずれよりも良好に、2週間の水枯渇の後に生存していた。さらに、水保持の定量化は、RD29A::GFP-PYL2CA4トランスジェニック植物が、コロンビア野生型またはRD29A::GFP-PYL2遺伝子型のいずれよりも良好に、2週間の水枯渇の間、水を保持していたことを明らかにした。図25に示されるように、対照植物および水ストレス植物の乾重量は有意に異なっていなかったため、このストレス耐性の改善は、植物サイズの差に起因するものではあり得ない。従って、PYL2CA4受容体の干ばつ誘導性の発現は、アラビドプシス干ばつ耐性を増強する。
実施例10:RD29A::GFP-PYL2CA4トランスジーンは乾燥からの回復後の気孔開度に影響する
蒸散および水使用には気孔開度が重要であるため、本発明者らは、RD29Aプロモーターによって駆動されたPYL2CA4の干ばつによって誘導される発現が、気孔開度に影響するか否かを調査しようと努力した。これを調査するため、本発明者らは、乾燥からの回復後の植物の気孔開度を調査した。RD29Aプロモーターの誘導を可能にするため、コロンビア遺伝子型、RD29A::GFP-PYL2トランスジェニック遺伝子型、またはRD29A::GFP-PYL2CA4トランスジェニック遺伝子型からの植物を、切断し、1時間乾燥させた。次いで、90分間、植物に再び水分補給し、その後、Suzuki's Universal Micro-Printing(SUMP)プレート(SUMP Laboratory,Tokyo)でのモールディングにより、各遺伝子型について4枚の葉の気孔形態学を捕えた。1200倍の倍率で、TM1000 Hitachi Tabletop SEMを使用して、気孔所見を画像化した(各遺伝子型についておよそ100個の気孔)。図26に示されるように、RD29A::GFP-PYL2CA4トランスジェニックは、野生型植物およびRD29A::GFP-PYL2植物と比較して低下した気孔開度を有していた。
本明細書に記載された実施例および態様は、例示的な目的のためのものに過ぎず、それらを考慮すれば、様々な修飾または変化が当業者に示唆されるであろうこと、そしてそれらが、本願の本旨および範囲、ならびに添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれるものであることが理解される。本明細書に引用された刊行物、特許、および特許出願は、全て、事実上その全体が参照により本明細書に組み入れられる。

Claims (36)

  1. 野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドと比較して、リガンド結合ポケットおよび/または2型プロテインホスファターゼ(PP2C)結合界面における1種以上のアミノ酸置換を含み、アブシジン酸の非存在下でPP2Cに結合する変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、単離された核酸。
  2. 変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドが、リガンド結合ポケットにおける1種以上のアミノ酸置換を含む、請求項1記載の単離された核酸。
  3. 変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドが、SEQ ID NO:1に示されるPYR1におけるアミノ酸置換H60P/G/R/A/W/I/K/V/M、V83F/L/P、L87F、A89W、またはF159V/Aに相当する1種以上のアミノ酸置換を含む、請求項2記載の単離された核酸。
  4. 変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドが、SEQ ID NO:1に示されるPYR1におけるアミノ酸置換H60P/G、V83F、A89W、またはF159Vに相当する1種以上のアミノ酸置換を含む、請求項3記載の単離された核酸。
  5. 変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドが、PP2C結合界面における1種以上のアミノ酸置換を含む、請求項1記載の単離された核酸。
  6. 変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドが、SEQ ID NO:1に示されるPYR1におけるアミノ酸置換H60P/G/R/A/W/I/K/V/M、I84Q/E/P/H/K、L87F、A89W、M158T/C/V/I、F159V/A、T162F、L166Y/F、またはK170Wに相当する1種以上のアミノ酸置換を含む、請求項5記載の単離された核酸。
  7. 変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドが、SEQ ID NO:1に示されるPYR1におけるアミノ酸置換H60P/G、I84Q、A89W、M158T/C、F159V、またはK170Wに相当する1種以上のアミノ酸置換を含む、請求項6記載の単離された核酸。
  8. 変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドが、リガンド結合ポケットにおける1種以上のアミノ酸置換およびPP2C結合界面における1種以上のアミノ酸置換を含む、請求項1記載の単離された核酸。
  9. 変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドが、SEQ ID NO:1に示されるPYR1におけるアミノ酸置換H60P、V83F、およびF159Vに相当するアミノ酸置換を含む、請求項1記載の単離された核酸。
  10. 変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドが、SEQ ID NO:1に示されるPYR1におけるアミノ酸置換H60P、V83F、M158I、およびF159Vに相当するアミノ酸置換を含む、請求項1記載の単離された核酸。
  11. 変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドが、SEQ ID NO:1に示されるPYR1におけるアミノ酸置換H60P、A89W、M158I、およびF159Vに相当するアミノ酸置換を含む、請求項1記載の単離された核酸。
  12. 変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドが、SEQ ID NO:1に示されるPYR1におけるアミノ酸置換V83F、M158I、F159V、およびK170Wに相当するアミノ酸置換を含む、請求項1記載の単離された核酸。
  13. 変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドが、アブシジン酸の非存在下でホスファターゼアッセイにおいてPP2Cの活性を有意に阻害する、請求項1記載の単離された核酸。
  14. 変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドが、アブシジン酸の非存在下で野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドと接触させたPP2CのPP2C活性のレベルと比較して、アブシジン酸の非存在下でPP2Cの活性を少なくとも50%阻害する、請求項13記載の単離された核酸。
  15. 変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドが、SEQ ID NO:1〜155のいずれかと実質的に同一である、請求項1〜14のいずれか一項記載の単離された核酸。
  16. 変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドが、SEQ ID NO:120〜155のいずれかである、請求項1記載の単離された核酸。
  17. PP2CがHAB1である、請求項1記載の単離された核酸。
  18. 請求項1〜17のいずれか一項記載のポリヌクレオチドに機能的に連結されたプロモーターを含む発現カセットであって、植物への該発現カセットの導入が、アブシジン酸の非存在下で2型プロテインホスファターゼ(PP2C)に結合するPYR/PYL受容体を有する植物をもたらす、発現カセット。
  19. プロモーターが前記ポリヌクレオチドと異種である、請求項18記載の発現カセット。
  20. プロモーターが誘導性である、請求項18記載の発現カセット。
  21. プロモーターがストレス誘導性プロモーターである、請求項20記載の発現カセット。
  22. プロモーターが組織特異的である、請求項18記載の発現カセット。
  23. 植物への発現カセットの導入が、該発現カセットを欠く植物と比較して、アブシジン酸の非存在下で有意に阻害されたPP2C活性を有する植物をもたらす、請求項18記載の発現カセット。
  24. 請求項18〜23のいずれか一項記載の発現カセットを含む発現ベクター。
  25. アブシジン酸の非存在下で有意に阻害されたPP2C活性を有する、請求項18〜23のいずれか一項記載の発現カセットを含む植物。
  26. 請求項25記載の植物に由来する植物細胞。
  27. 請求項25記載の植物に由来する種子、花、葉、果実、加工食品、または食品成分。
  28. アブシジン酸の非存在下で有意に阻害された2型プロテインホスファターゼ(PP2C)活性を有する植物を作製する方法であって、
    請求項18〜23のいずれか一項記載の発現カセットを複数の植物へ導入する工程;および
    前記複数の植物から、前記ポリヌクレオチドを発現する植物を選択する工程
    を含む、方法。
  29. 増強されたストレス耐性を有する植物を作製する方法であって、
    野生型PYR/PYL受容体ポリペプチドと比較して、リガンド結合ポケットおよび/または2型プロテインホスファターゼ(PP2C)結合界面における1種以上のアミノ酸置換を含み、アブシジン酸の非存在下でPP2Cに結合する変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたプロモーターを含む発現カセットを複数の植物へ導入する工程;および
    前記複数の植物から、前記ポリヌクレオチドを発現する植物を選択する工程
    を含む、方法。
  30. 変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドが、SEQ ID NO:1に示されるPYR1におけるアミノ酸置換H60P/G/R/A/W/I/K/V/M、V83F/L/P、I84Q/E/P/H/K、L87F、A89W、M158T/C/V/I、F159V/A、T162F、L166Y/F、またはK170Wに相当する1種以上のアミノ酸置換を含む、請求項29記載の方法。
  31. 変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドが、SEQ ID NO:1に示されるPYR1におけるアミノ酸置換H60P、V83F、およびF159Vに相当するアミノ酸置換を含む、請求項30記載の方法。
  32. 変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドが、SEQ ID NO:1に示されるPYR1におけるアミノ酸置換H60P、V83F、M158I、およびF159Vに相当するアミノ酸置換を含む、請求項30記載の方法。
  33. 変異型PYR/PYL受容体ポリペプチドが、SEQ ID NO:1〜155のいずれかと実質的に同一である、請求項29記載の方法。
  34. プロモーターが誘導性プロモーターである、請求項29記載の方法。
  35. プロモーターがストレス誘導性プロモーターである、請求項34記載の方法。
  36. プロモーターが組織特異的である、請求項29記載の方法。
JP2014518635A 2011-07-01 2012-06-19 構成的活性型aba受容体変異体 Pending JP2014524740A (ja)

Applications Claiming Priority (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US201161503816P 2011-07-01 2011-07-01
US61/503,816 2011-07-01
US201161512280P 2011-07-27 2011-07-27
US61/512,280 2011-07-27
PCT/US2012/043121 WO2013006263A2 (en) 2011-07-01 2012-06-19 Constitutively active aba receptor mutants

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014524740A true JP2014524740A (ja) 2014-09-25
JP2014524740A5 JP2014524740A5 (ja) 2015-07-30

Family

ID=47437614

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014518635A Pending JP2014524740A (ja) 2011-07-01 2012-06-19 構成的活性型aba受容体変異体

Country Status (13)

Country Link
US (1) US10704056B2 (ja)
EP (1) EP2726620B1 (ja)
JP (1) JP2014524740A (ja)
KR (1) KR20140056251A (ja)
AP (1) AP2014007355A0 (ja)
AR (1) AR086996A1 (ja)
AU (1) AU2012279466B2 (ja)
BR (1) BR112013033744A2 (ja)
CA (1) CA2840162A1 (ja)
CL (1) CL2013003821A1 (ja)
EA (1) EA201400089A1 (ja)
HU (1) HUE042487T2 (ja)
WO (1) WO2013006263A2 (ja)

Families Citing this family (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP2997038A2 (en) * 2013-05-13 2016-03-23 Consejo Superior de Investigaciones Científicas (CSIC) Transgenic plants comprising a mutant pyrabactin like (pyl4) regulatory component of an aba receptor
BR112017003528A2 (pt) * 2014-08-26 2018-07-10 Univ California receptores de aba hipersensíveis.
WO2017087633A1 (en) * 2015-11-18 2017-05-26 Purdue Research Foundation Pyl9 and uses thereof
WO2017165855A2 (en) * 2016-03-25 2017-09-28 The Regents Of The University Of California Mutant proteins enabling agrochemical control of plant gene expression
US11414673B2 (en) * 2017-02-10 2022-08-16 The Regents Of The University Of California Hypersensitive ABA receptors having modified PP2C-binding interfaces
CN110872598B (zh) * 2019-12-13 2022-09-13 南京农业大学 一种棉花抗旱相关基因GhDT1及其应用
KR102643810B1 (ko) * 2020-03-20 2024-03-06 포항공과대학교 산학협력단 식물에서 목적 단백질을 대량생산하는 방법
KR102448536B1 (ko) * 2020-06-03 2022-09-29 대한민국 Aba 수용체 돌연변이 및 이의 용도
WO2023141591A2 (en) * 2022-01-20 2023-07-27 The Regents Of The University Of California Reagents and systems for generating biosensors

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20100216643A1 (en) * 2009-02-13 2010-08-26 Regents Of The University Of California Control of plant stress tolerance, water use efficiency and gene expression using novel aba receptor proteins and synthetic agonists
WO2010118338A2 (en) * 2009-04-10 2010-10-14 Dow Agrosciences Llc Plant snf1-related protein kinase gene

Family Cites Families (17)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US5625130A (en) 1995-03-07 1997-04-29 Pioneer Hi-Bred International, Inc. Oilseed Brassica bearing an endogenous oil wherein the levels of oleic, alpha-linolenic, and saturated fatty acids are simultaneously provided in an atypical highly beneficial distribution via genetic control
US20090087878A9 (en) 1999-05-06 2009-04-02 La Rosa Thomas J Nucleic acid molecules associated with plants
US6653535B1 (en) 1999-05-28 2003-11-25 Pioneer Hi-Bred International, Inc. Methods for modulating water-use efficiency or productivity in a plant by transforming with a DNA encoding a NAPD-malic enzyme operably linked to a guard cell or an epidermal cell promoter
PT1230377E (pt) 1999-11-17 2005-05-31 Pioneer Hi Bred Int Modulacao da resposta das plantas ao acido abscisico
US7214786B2 (en) 2000-12-14 2007-05-08 Kovalic David K Nucleic acid molecules and other molecules associated with plants and uses thereof for plant improvement
AU2002341541A1 (en) 2001-06-22 2003-03-03 Syngenta Participations Ag Abiotic stress responsive polynucleotides and polypeptides
US20050244971A1 (en) 2002-04-24 2005-11-03 Korea Kumho Petrochemical Co., Ltd. Transgenic plants with enhanced stress tolerance
EP1551983A2 (en) 2002-10-18 2005-07-13 CropDesign N.V. Identification of e2f target genes and uses thereof
US7569389B2 (en) 2004-09-30 2009-08-04 Ceres, Inc. Nucleotide sequences and polypeptides encoded thereby useful for modifying plant characteristics
US20060150283A1 (en) 2004-02-13 2006-07-06 Nickolai Alexandrov Sequence-determined DNA fragments and corresponding polypeptides encoded thereby
ITMI20040363A1 (it) 2004-02-27 2004-05-27 Univ Degli Studi Milano Cassetta per l'espressione di acidi nucleici negli stomi
CA2597614A1 (en) 2004-12-09 2006-06-15 The University Of Manitoba Plant proteins having an abscisic acid binding site and methods of use
WO2007045386A1 (en) 2005-10-17 2007-04-26 Isagro Ricerca S.R.L. Compounds and relative use for the control of phytopathogens
US9491916B2 (en) 2006-02-07 2016-11-15 Washington State University Mutation breeding for resistance to fungal disease and for drought tolerance
JP2007222129A (ja) 2006-02-27 2007-09-06 Institute Of Physical & Chemical Research 環境ストレス耐性植物の作出方法
CN101173287B (zh) 2007-10-16 2010-08-18 北京未名凯拓农业生物技术有限公司 一组与aba合成相关的提高水稻耐旱性基因的克隆和应用
AR081242A1 (es) 2010-04-28 2012-07-18 Univ California Receptores pyr/pyl modificados activados por ligandos ortogonales

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20100216643A1 (en) * 2009-02-13 2010-08-26 Regents Of The University Of California Control of plant stress tolerance, water use efficiency and gene expression using novel aba receptor proteins and synthetic agonists
WO2010118338A2 (en) * 2009-04-10 2010-10-14 Dow Agrosciences Llc Plant snf1-related protein kinase gene

Also Published As

Publication number Publication date
HUE042487T2 (hu) 2019-06-28
WO2013006263A2 (en) 2013-01-10
US10704056B2 (en) 2020-07-07
AR086996A1 (es) 2014-02-05
US20140259226A1 (en) 2014-09-11
EP2726620B1 (en) 2018-11-28
CA2840162A1 (en) 2013-01-10
EP2726620A2 (en) 2014-05-07
EA201400089A1 (ru) 2014-04-30
CL2013003821A1 (es) 2014-07-25
WO2013006263A3 (en) 2013-04-04
AP2014007355A0 (en) 2014-01-31
AU2012279466B2 (en) 2017-02-16
EP2726620A4 (en) 2014-11-19
NZ618916A (en) 2016-02-26
KR20140056251A (ko) 2014-05-09
AU2012279466A1 (en) 2014-01-16
BR112013033744A2 (pt) 2017-02-07

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US10221426B2 (en) Constitutively active PYR/PYL receptor proteins for improving plant stress tolerance
JP5961607B2 (ja) オルソゴナルリガンドによって活性化される改変pyr/pyl受容体
US10704056B2 (en) Constitutively active ABA receptor mutants
AU2014267394A1 (en) Transgenic plants comprising a mutant pyrabactin like (PYL4) regulatory component of an ABA receptor
EP2970996B1 (en) Modified pyr/pyl receptors activated by orthogonal ligands
WO2008157157A2 (en) Drought-resistant plants and method for producing the plants
WO2013057507A2 (en) Methods for improving abiotic stress response
US10919943B2 (en) Mutant proteins enabling agrochemical control of plant gene expression
US20190359999A1 (en) Hypersensitive aba receptors having modified pp2c-binding interfaces
NZ618916B2 (en) Constitutively active aba receptor mutants
OA16804A (en) Constitutively active ABA receptor mutants.

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20150612

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20150612

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20150618

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160302

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20160527

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20160727

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20160829

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20161205

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20170913