JP2014518613A - メタクリル酸およびメタクリレートエステルの産生のための微生物ならびにそれに関連する方法 - Google Patents

メタクリル酸およびメタクリレートエステルの産生のための微生物ならびにそれに関連する方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、メタクリル酸経路、メタクリレートエステル経路、3−ヒドロキシイソブチレート経路および/または2−ヒドロキシイソブチレート経路を有する、天然に存在しない微生物体を提供する。上記微生物体は、メタクリル酸経路における酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含有する。本発明は、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートを生成するための方法をさらに提供する。

Description

発明の背景
本願は、2011年4月1日に出願された米国仮特許出願第61/471,078号、2011年6月22日に出願された米国仮特許出願第61/571,232号、2011年7月19日に出願された米国仮特許出願第61/509,560号、2011年7月20日に出願された米国仮特許出願第61/510,054号、および2011年7月27日に出願された米国仮特許出願第61/512,348号の優先権の利益を主張し、これらの米国仮特許出願の各々の全体の内容は、本明細書中に参考として援用される。
本発明は、一般に生合成プロセスに、より具体的にはメタクリル酸の生合成能力を有する生物体に関する。
メチルメタクリレート(MMA)は、式CH=C(CH)COCHを有する有機化合物である。この無色の液体は、メタクリル酸(MMA)のメチルエステルであり、透明なプラスチックであるポリメチルメタクリレート(PMMA)を生成するためのモノマーである。
メチルメタクリレートの主な適用例は、ポリメチルメタクリレートアクリルプラスチックの生産である。また、メチルメタクリレートは、PVCの改質剤として使用されるコポリマーのメチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン(MBS)の生産にも使用される。メチルメタクリレートポリマーおよびコポリマーは、ラテックス塗料などの水性コーティングに使用される。接着剤においても使用が見出される。現代の適用例には、液晶ディスプレイ(LCD)コンピュータおよびTVスクリーンにわたって光の広がりを均一に維持するプレートにおける使用がある。メチルメタクリレートは、心臓の冠状動脈などの解剖学的臓器の腐食成型品(corrosion cast)にも使用される。
メタクリル酸、または2−メチル−2−プロペン酸は、ローマカミツレの油中に少量で天然に存在する低分子量のカルボン酸である。それは、刺激性の不快なにおいを有する腐食性の液体である。それは、温水に溶解性であり、ほとんどの有機溶媒と混和性がある。メタクリル酸は、加熱、または触媒量のHClなどの強酸での処理後に容易に重合する。得られたポリマーは、セラミックに見えるプラスチックである。メタクリル酸は、メチルメタクリレートなど、まとめてメタクリレートとして公知であるそのエステルの調製において産業上使用される。メタクリレートは、最も顕著にはポリマーの製造において多数の用途を有する。
ほとんどの商業的生産体は、アセトンシアノヒドリン(ACH)経路を適用してメタクリル酸(MAA)を生成し、アセトンおよびシアン化水素を原料とする。この中間体シアノヒドリンは、硫酸を用いてメタクリルアミドの硫酸エステルに転換され、その加水分解により重硫酸アンモニウムおよびMAAが得られる。一部の生産体は、イソブチレン、または同等のtert−ブタノールから開始し、それは酸化されてメタクロレインになり、さらに酸化されてメタクリル酸になる。次いでMAAはメタノールでエステル化されてMMAになる。
アセトンシアノヒドリン経路を使用する従来の生成プロセスでは、シアン化水素(HCN)およびアセトンがアセトンシアノヒドリンに転換され、次いで酸の補助による加水分解を受け、メタノールでのエステル化によりMMAが得られる。潜在的に致死性のあるHCNの取り扱いが難点であるとともに、副産物の廃棄のコストが高い(MMA1トン当たり1.2トンの重硫酸アンモニウムが形成される)ことが、よりクリーンで経済的なプロセスを目的とする非常に多くの研究の契機となった。いくつかの新たなプロセスが過去20年間に商業化されており、さらに多くのプロセスが商業化に近づいている。イソブチレンを酸化してメタクロレインにし、次いでそれをメタノールと混合し、空気で酸化し、エステル化してMMAにする、Asahiの「Direct Metha」経路が、経済的なプロセスとして記載されている。
MMAポリマー以外で、この産業の他の主要な製品は、粗製メタクリル酸であり、MMAの総生産の約20パーセントを占める。粗製MAAは処理されてブチルメタクリレートおよび/または高度に精製された粗製MAAである「氷状」MAAとなる。氷状MAAは、様々なポリマーにおけるコモノマーとして直接使用することができ、種々の少量のメタクリレートの作製にも使用される。その一方で、MAAは、メタノールでのエステル化を介してMMAに転換することもできる。
したがって、メタクリル酸などの化合物を有効に生成する代替方法の必要性が存在する。本発明はこの必要性を満たし、関連する利点も提供する。
本発明は、メタクリル酸経路、メタクリレートエステル経路、例として、メチルメタクリレート経路、3−ヒドロキシイソブチレート経路および/または2−ヒドロキシイソブチレート経路を有する、天然に存在しない微生物体(microbial organism)を提供する。この微生物体は、メタクリル酸経路中の酵素をコードする少なくとも1つの外因性の核酸を含有する。本発明は、メタクリル酸、メタクリレートエステル、例として、メチルメタクリレート、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートを生成するための方法をさらに提供する。この方法は、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートを生成する微生物体を培養する工程を含むことができ、この微生物体は、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートを生成する条件下およびそれを生成するのに十分な期間、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートを生成するのに十分な量で、メタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を発現する。
本発明はまた、天然に存在しない微生物体であって、メタクリレートエステルまたはメチルメタクリレートを生成するのに十分な量で発現されるメタクリレートエステルの酵素またはメチルメタクリレートの酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメタクリレートエステル経路またはメチルメタクリレート経路を含有する微生物体も提供する。該微生物体は、メタクリレートエステル経路またはメチルメタクリレート経路中の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸、および、酵素であって、(i)還元的TCA回路を介して炭素固定を増強し、かつ/あるいは(ii)気体の炭素供給源、ならびに/またはシンガス構成成分、例として、CO、COおよび/もしくはHからの追加の還元当量を利用可能にすることによってメタクリレートエステルまたはメチルメタクリレートの収率を増加させる酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含有する。いくつかの態様では、天然に存在しない微生物体は、(i)還元的TCA経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む還元的TCA経路であって、前記少なくとも1つの外因性核酸が、ATPクエン酸リアーゼ、クエン酸リアーゼ、フマル酸レダクターゼ、およびアルファ−ケトグルタル酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼから選択される還元的TCA経路;(ii)還元的TCA経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む還元的TCA経路であって、前記少なくとも1つの外因性核酸が、ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、COデヒドロゲナーゼ、およびHヒドロゲナーゼから選択される還元的TCA経路;あるいは(iii)少なくとも1つの外因性核酸が、COデヒドロゲナーゼ、Hヒドロゲナーゼ、およびそれらの組合せから選択される酵素をコードすることを含む。本発明は、そのような微生物体を使用して、メタクリレートエステルまたはメチルメタクリレートを生成する条件下およびそれを生成するのに十分な期間、メタクリレートエステル経路またはメチルメタクリレート経路を含有する、天然に存在しない微生物体を培養することによって、メタクリレートエステルまたはメチルメタクリレートを生成する方法をさらに提供する。
図1は、ピルベートおよびアセチルCoAならびにアコニテートからメタクリル酸への例示的な経路を示す。酵素は以下である:A.シトラマル酸シンターゼ、B.シトラマル酸デヒドラターゼ(シトラコネート形成)、C.シトラコン酸デカルボキシラーゼ、D.シトラマリルCoAリアーゼ、E.シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、F.シトラマル酸デヒドラターゼ(メサコネート形成)、G.シトラコン酸イソメラーゼ、H.メサコン酸デカルボキシラーゼ、I.アコニット酸デカルボキシラーゼ、J.イタコン酸イソメラーゼ、K.シトラマリルCoAデヒドラターゼおよびL.イタコニルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ。
図2は、メタクリレートからメタクリレートエステルへの例示的な経路を示す。メタクリレートは、図1に図示される経路または他のメタクリレート経路(WO2009/135074および米国公開2009/0275096に記載されるものなど)から形成され得る。メタクリリルCoAは、メタクリリルCoAトランスフェラーゼまたはメタクリリルCoAシンテターゼを介して、メタクリレートから形成され得る。メタクリレートエステルは、アルコールトランスフェラーゼ酵素の存在下で、メタクリリルCoAおよびアルコールから形成され得る。メタクリレートエステルはまた、メタクリレートエステル形成酵素によって、または化学的転換(例えば、酸などの脱水剤の存在下での加熱)によって、メタクリレートおよびアルコールから直接形成され得る。Rは、以下が挙げられるが、これらに限定されない任意の有機官能基を示す:メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、i−プロピル、sec−ブチル、およびtert−ブチル、ペンチル、またはヘキシル官能基。例えば、Rがメチル基を示す場合、R−OHはメタノールを示し、この経路の産物は、メチルメタクリレートである。
図3は、3−ヒドロキシイソブチレートを介した、スクシニルCoAからMMAへの例示的な代謝経路を示す。
図4は、3−アミノ−2−メチルプロピオネートを介するスクシニルCoAからMAAへの例示的な経路を示す図である。「ひとまとめにした反応」(段階2〜3)は、1)メチルマロニルCoAエピメラーゼおよび2)メチルマロニルCoAレダクターゼによって触媒される。
図5は、3−ヒドロキシイソブチレートまたはメタクリリルCoAを介して進行する4−ヒドロキシブチリルCoAからMAAへの例示的な経路を示す図である。段階2は、3つの代替酵素:3−ヒドロキシイソブチリルCoAシンテターゼ、3−ヒドロキシイソブチリルCoAヒドロラーゼまたは3−ヒドロキシイソブチリルCoAトランスフェラーゼによって触媒され得る。同様に、段階5は、3つの代替酵素:メタクリリルCoAシンテターゼ、メタクリリルCoAヒドロラーゼまたはメタクリリルCoAトランスフェラーゼによって触媒され得る。
図6は、トレオ−3−メチルアスパルテートを介した、例示的なアルファ−ケトグルタレートからMAAへの経路を示す。
図7は、2−ヒドロキシグルタレートを介した、例示的なアルファ−ケトグルタレートからMAAへの経路を示す。
図8は、アセチルCoAまたは4−ヒドロキシブチリルCoAからMAAまたは2−ヒドロキシイソブチレートへの転換の例示的な代謝経路を示す図である。
図9は、アセチルCoAからMAAへの例示的な経路を示す図である。
図10は、ピルベートからアクリリルCoA、そしてMAAへの例示的な経路を示す図である。
図11は、2−ケトバレレートからMAAへの例示的な経路を示す図である。2−ケトイソバレレートは、バリンまたはピルベートから生成することができる。ピルベートから2−ケトイソバレレートに転換する酵素の例示的なセットは、アセト乳酸シンターゼ、アセトヒドロキシ酸イソメロレダクターゼ、およびジヒドロキシ酸デヒドラターゼからなる。
図12は、基質としての炭水化物におけるCOの固定のための逆行的TCA回路を示す。酵素的変換は、示される酵素によって行われる。
図13は、シンガスのアセチルCoAへの転換のための、一酸化炭素デヒドロゲナーゼおよびヒドロゲナーゼとカップリングされた逆行的TCA回路についての経路を示す。
図14は、10マイクログラムのACS90細胞抽出物(レーン1)、ACS91細胞抽出物(レーン2)、Mta98/99細胞抽出物(レーン3および4)およびサイズ標準(レーン5)ならびにM.thermoacetica CODH(Moth_1202/1203)タンパク質またはMtr(Moth_1197)タンパク質(50、150、250、350、450、500、750、900、および1000ng)である対照の、ウエスタンブロットを示す。
図15は、CO酸化アッセイ結果を示す。細胞(CODH/ACSオペロン;ACS90もしくはACS91または空のベクター:pZA33Sを有する M.thermoaceticaまたはE.coli)を、増殖させ、そして抽出物を調製した。アッセイを、55℃にて、抽出物を調製したその日における種々の時点で、行った。メチルビオローゲンの還元を、578nmにて、120秒の時間経過にわたって、追跡した。
図16Aは、メタクリル酸および3−ヒドロキシイソ酪酸の生合成のための経路を示す。示される酵素的変換は、以下の酵素によって実施される:(1)ヒドロゲナーゼ、(2)一酸化炭素デヒドロゲナーゼ、(3)スクシニルCoAトランスフェラーゼ、スクシニルCoAシンテターゼ、(4)メチルマロニルCoAムターゼ、(5)メチルマロニルCoAエピメラーゼ、(6)メチルマロニルCoAレダクターゼ、(7)メチルマロン酸セミアルデヒドレダクターゼおよび(8)3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ。
図16Bは、4−ヒドロキシブチリルCoA中間体を介した、グルコースからのメタクリル酸の生合成のための経路を示す。酵素的変換は、以下の酵素によって実施される:(1)ヒドロゲナーゼ、(2)一酸化炭素デヒドロゲナーゼ、(3)スクシニルCoAトランスフェラーゼ、スクシニルCoAシンテターゼ、(4)スクシニルCoAレダクターゼ(アルデヒド形成)、(5)4−ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ、(6)4−ヒドロキシ酪酸キナーゼ、(7)ホスホトランス−4−ヒドロキシブチリラーゼ、(8)コハク酸レダクターゼ、(9)スクシニルCoAレダクターゼ(アルコール形成)、(10)4−ヒドロキシブチリルCoAシンテターゼ、4−ヒドロキシブチリルCoAトランスフェラーゼ、(11)4−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、(12)3−ヒドロキシイソブチリルCoAシンテターゼ、トランスフェラーゼまたはヒドロラーゼ、(13)3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ、(14)3−ヒドロキシイソブチリルCoAデヒドラターゼ、(15)メタクリリルCoAシンテターゼ、トランスフェラーゼまたはヒドロラーゼ。
図16Cは、炭素が還元的TCA回路を介した経路を辿る場合の、グルコースに対するメタクリル酸の最大理論収率の増大を示すフラックス分布を示す。酵素的変換は、以下によって実施される:(1)ATP−クエン酸リアーゼ;クエン酸リアーゼ、アセチルCoAシンテターゼ;またはクエン酸リアーゼ、酢酸キナーゼ(kinse)、ホスホトランスアセチラーゼ、(2)リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、(3)フマラーゼ、(4)フマル酸レダクターゼ、(5)スクシニルCoAシンテターゼまたはトランスフェラーゼ、(6)アルファ−ケトグルタル酸:フェレドキシン(ferridoxin)オキシドレダクターゼ、(7)イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、(8)アコニターゼ、(9)ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ;ピルビン酸オキシダーゼ、アセチルCoAシンテターゼ;またはピルビン酸オキシダーゼ、酢酸キナーゼ、ホスホトランスアセチラーゼ、(10)アセトアセチルCoAチオラーゼ、(11)アセトアセチルCoAレダクターゼ、(12)3−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、(13)2−ヒドロキシブチリルCoAデヒドラターゼ、(14)メタクリリルCoAシンテターゼ、トランスフェラーゼまたはヒドロラーゼ、(15)2−ヒドロキシイソブチリルCoAシンテターゼ、トランスフェラーゼまたはヒドロラーゼ。
図16Dは、炭素が還元的TCA回路を介した経路を辿る場合の、シトラマレートを介したグルコースに対するメタクリル酸の最大理論収率の増大を示すフラックス分布を示す。酵素的変換は、以下によって実施される:(1)ATP−クエン酸リアーゼ;クエン酸リアーゼ、アセチルCoAシンテターゼ;またはクエン酸リアーゼ、酢酸キナーゼ、ホスホトランスアセチラーゼ、(2)リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、(3)フマラーゼ、(4)フマル酸レダクターゼ、(5)スクシニルCoAシンテターゼまたはトランスフェラーゼ、(6)アルファ−ケトグルタル酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、(7)イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、(8)アコニターゼ、(9)ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ;ピルビン酸オキシダーゼ、酢酸キナーゼ、ホスホトランスアセチラーゼ、(10)シトラマル酸シンターゼ、(11)シトラマル酸デヒドラターゼおよび(12)シトラコン酸デカルボキシラーゼ。
図16Eは、アセチルCoAおよびピルベートからのメタクリル酸の生合成のための経路を示す。酵素的変換は、示されるように、酵素によって実施される。酵素は、以下である:(1)シトラマル酸シンターゼ、(2)シトラマル酸デヒドラターゼ(シトラコネート形成)、(3)シトラコン酸デカルボキシラーゼ、(4)シトラマリルCoAリアーゼ、(5)シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ(hyrolase)、(6)シトラマル酸デヒドラターゼ(メサコネート形成)、(7)シトラコン酸イソメラーゼ、(8)メサコン酸デカルボキシラーゼ、(9)アコニット酸デカルボキシラーゼ、(10)イタコン酸イソメラーゼ、(11)イタコニルCoAトランスフェラーゼまたはシンテターゼおよび(12)イタコニルCoAヒドラターゼ。
図17Aおよび17Bは、例示的な経路を示す。酵素的変換は、示されるように、酵素によって実施される。図17Aは、還元的TCA回路を用いたスクシニルCoAへのCOの固定のための経路を示す。図17Bは、スクシニルCoAからの3−ヒドロキシイソ酪酸(3−hydroxyisobutric acid)およびメタクリル酸の生合成のための例示的な経路を示す;示される酵素的変換は、以下の酵素によって実施される:A.メチルマロニルCoAムターゼ、B.メチルマロニルCoAエピメラーゼ、C.メチルマロニルCoAレダクターゼ、D.メチルマロン酸セミアルデヒドレダクターゼ、E.3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ。
図18Aおよび18Bは、例示的な経路を示す。酵素的変換は、示されるように、酵素によって実施される。図18Aは、還元的TCA回路を用いたスクシネートへのCOの固定のための経路を示す。図18Bは、スクシネートからの3−ヒドロキシイソ酪酸およびメタクリル酸の生合成のための例示的な経路を示す;示される酵素的変換は、以下の酵素によって実施される:A.3−ヒドロキシイソブチリルCoAデヒドラターゼ、B.メタクリリルCoAシンテターゼ、トランスフェラーゼまたはヒドロラーゼ、C.スクシニルCoAトランスフェラーゼまたはシンテターゼ、D.スクシニルCoAレダクターゼ(アルデヒド形成)、E.4−ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ、F.4−ヒドロキシ酪酸キナーゼ、G.ホスホトランス−4−ヒドロキシブチリラーゼ、H.コハク酸レダクターゼ、I.スクシニルCoAレダクターゼ(アルコール形成)、J.4−ヒドロキシブチリルCoAシンテターゼまたはトランスフェラーゼ、K.4−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、L.3−ヒドロキシイソブチリルCoAシンテターゼ、トランスフェラーゼまたはヒドロラーゼ、M.3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ。
図19Aおよび19Bは、例示的な経路を示す。図19Aは、還元的TCA回路を用いたアセチルCoAおよびピルベートへのCOの固定のための経路を示す。図19Bは、アセチルCoAおよびピルベートからのメタクリレートの生合成のための例示的な経路を示す;示される酵素的変換は、以下の酵素によって実施される:1.シトラマル酸シンターゼ、2.シトラマル酸デヒドラターゼ(シトラコネート形成)、3.シトラコン酸デカルボキシラーゼ、4.シトラマリルCoAリアーゼ、5.シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、6.シトラマル酸デヒドラターゼ(メサコネート形成)、7.シトラコン酸イソメラーゼ、8.メサコン酸デカルボキシラーゼ、9.アコニット酸デカルボキシラーゼ、10.イタコン酸イソメラーゼ、11.イタコニルCoAトランスフェラーゼまたはシンテターゼ、12.イタコニルCoAヒドラターゼ。
図20Aおよび20Bは、例示的な経路を示す。図20Aは、還元的TCA回路を用いたアセチルCoAへのCOの固定のための経路を示す。図20Bは、アセチルCoAからのメタクリル酸および2−ヒドロキシイソ酪酸の生合成のための例示的な経路を示す。
図21Aおよび21Bは、例示的な経路を示す。図21Aは、還元的TCA回路を用いたアセチルCoAへのCO2の固定のための経路を示す。図21Bは、アセチルCoAからのメタクリル酸および3−ヒドロキシイソ酪酸の生合成のための例示的な経路を示す;示される酵素的変換は、以下の酵素によって実施される:1)アセトアセチルCoAチオラーゼ(AからB)、2)3−ヒドロキシブチリルCoAデヒドロゲナーゼ(Hbd)、3)クロトナーゼ(Crt)、4)クロトニルCoAヒドラターゼ(4−Budh)、5)4−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、6)3−ヒドロキシイソブチリルCoAヒドロラーゼ、シンテターゼ、またはトランスフェラーゼ、7)3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ、8)3−ヒドロキシイソブチリルCoAデヒドラターゼ、9)メタクリリルCoAヒドロラーゼ、シンテターゼ、またはトランスフェラーゼ。
図22Aは、Nocardia iowensis(GNM_720)由来のカルボン酸レダクターゼのヌクレオチド配列(配列番号1)を示し、そして図22Bは、コードされたアミノ酸配列(配列番号2)を示す。
図23Aは、コドン最適化されたホスフパンテテイン(phosphpantetheine)トランスフェラーゼのヌクレオチド配列(配列番号3)を示し、そして図23Bは、コードされたアミノ酸配列(配列番号4)を示す。
図24Aは、Mycobacterium smegmatis mc(2)155由来のカルボン酸レダクターゼ(890と名付けられる)のヌクレオチド配列(配列番号5)を示し、そして図24Bは、コードされたアミノ酸配列(配列番号6)を示す。
図25Aは、Mycobacterium avium亜種paratuberculosis K−10由来のカルボン酸レダクターゼ(891と名付けられる)のヌクレオチド配列(配列番号7)を示し、そして図25Bは、コードされたアミノ酸配列(配列番号8)を示す。
図26Aは、Mycobacterium marinum M由来のカルボン酸レダクターゼ(892と名付けられる)のヌクレオチド配列(配列番号9)を示し、そして図26Bは、コードされたアミノ酸配列(配列番号10)を示す。
図27Aは、891GAと名付けられるカルボン酸レダクターゼのヌクレオチド配列(配列番号11)を示し、そして図27Bは、コードされたアミノ酸配列(配列番号12)を示す。
図28は、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または3−ヒドロキシイソブチリルCoAを介したメタクリレートエステルへの例示的な経路を示す。R−OHは、任意の有機アルコールを指す。
図29は、2−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチリルCoAを介したメタクリレートエステルへの例示的な経路を示す。R−OHは、任意の有機アルコールを指す。
図30は、例示的なメタクリレートエステル、メチルメタクリレートへの例示的な経路を示す。
本発明は、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートのための生合成的生成能力を有する細胞および生物体の設計および生成を対象とする。本明細書に開示するように、代謝経路を設計し、組換えにより工学的に操作して、Escherichia coliなどの微生物体、および他の細胞または生物体で、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートの生合成を行うことができる。メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートの生合成的生成は、設計された代謝遺伝子型を有する株の構築によって確認される。理論的な最大増殖に近づく条件下を含めて、代謝について工学的に操作されたこれらの細胞または生物体につき適応進化を受けさせてメタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートの生合成をさらに増強することもできる。
メタクリル酸(MAA)を生成するための微生物(microorganism)が、先に記載されている(例えば、参照により本明細書に組み込まれている、WO2009/135074および米国公開第2009/0275096号を参照)。本発明は、微生物体を工学的に操作して、メタクリル酸(MAA)を生成するための追加の経路を提供する。図1は、アセチルCoAおよびピルベートから中間体シトラマレートを経てMAAに至る例示的な経路を示す。また、アコニテートからMAAに至る経路も示す。一方の経路では、最初に、アセチルCoAおよびピルベートが、シトラマル酸シンターゼによりシトラマレートに変換される。シトラマレートの脱水により、シトラコネート(ステップB)またはメサコネート(ステップC)のいずれかを得ることができる。ステップGにおいて、メサコネートとシトラコネートとが、シス/トランスイソメラーゼにより相互転換される。メサコネートの脱カルボキシル化(ステップH)またはシトラコネートの脱カルボキシル化(ステップC)により、MAAが得られる。代替の経路では、シトラマリルCoAリアーゼ、およびシトラマリルCoAヒドロラーゼ、トランスフェラーゼまたはシンテターゼにより触媒されるステップDおよびEにおいて、アセチルCoAおよびピルベートから、シトラマリルCoA中間体を経てシトラマレートが形成される。
本発明はまた、アコニテートからMAAに至る経路も網羅する。一方の経路では、最初に、アコニテートが、アコニット酸デカルボキシラーゼによりイタコネートに脱カルボキシル化される(ステップI)。次いで、イタコネートが、イタコネートデルタ−イソメラーゼによりシトラコネートに異性化される(ステップJ)。シトラコネートのMAAへの転換は、脱カルボキシル化により直接進行するか、またはメサコネートを経て間接的に進行する。代替の経路では、最初に、イタコネート中間体が、CoAトランスフェラーゼまたはシンテターゼによりイタコニルCoAに転換される(ステップL)。イタコニルCoAの水和により、シトラマリルCoAが得られ、次いで、シトラマリルCoAは、既に記載したように、MAAに転換することができる。さらに、例示的なMAA経路の詳細および実施形態を、本明細書下記に記載する。
本明細書で用いるように、本発明の微生物体または微生物に関して用いられる場合、用語「天然に存在しない」は、その微生物体が、その参照種の野生型株を含むその参照種の天然株で通常見られない、少なくとも1つの遺伝的変化を有することを意味するものとする。遺伝的変化には、例えば、代謝ポリペプチドをコードする発現可能な核酸を導入する改変、他の核酸の付加、核酸欠失および/または微生物体遺伝物質の他の機能的破壊が含まれる。そのような改変には、例えば、参照種の異種の、同種の、または異種および同種のポリペプチドのコード領域およびその機能的断片が含まれる。追加の改変には、例えば、その改変が遺伝子またはオペロンの発現を変化させる非コード調節領域が含まれる。例示的な代謝ポリペプチドには、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレート生合成経路内の酵素またはタンパク質が含まれる。
代謝改変は、その天然の状態から変更された生化学反応を指す。したがって、天然に存在しない微生物は、代謝ポリペプチドまたはその機能的断片をコードする核酸に対する遺伝子改変を有することができる。例示的な代謝改変が、本明細書で開示される。
本明細書で用いるように、微生物体に関して用いられる場合、用語「単離された」は、参照の微生物体が天然で見られるような少なくとも1つの成分を実質的に含まない生物体を意味するものとする。本用語は、その天然環境で見られるような一部または全ての成分が除去されている微生物体を含む。本用語は、その微生物体が天然に存在しない環境で見られるような一部または全ての成分が除去されている微生物体も含む。したがって、単離された微生物体は、それが天然で見られるか、またはそれが天然に存在しない環境で増殖され、保存されるか生存するような他の物質から一部または完全に分離される。単離された微生物体の具体例には、部分的に純粋な微生物、実質的に純粋な微生物、および天然に存在しない培地で培養された微生物が含まれる。
本明細書で用いるように、用語「微生物の」、「微生物体」または「微生物」は、古細菌、細菌または真核生物のドメインに含まれる、微視的細胞として存在する任意の生物体を意味するものとする。したがって、本用語は、顕微鏡的大きさを有する原核生物または真核生物の細胞または生物体を包含するものとし、全ての種の細菌、古細菌および真正細菌、ならびに酵母および真菌類などの真核生物の微生物を含む。本用語は、生化学物質の生成のために培養することができる、任意の種の細胞培養物も含む。
本明細書で用いるように、化学式CH=C(CH)CO(図1を参照)を有する「メタクリル酸」(IUPAC名2−メチル−2−プロペン酸)は、メタクリレートの酸の形態であり、メタクリル酸およびメタクリレートは、その任意の塩の形態を含めて、その中性またはイオン化形態のいずれかの化合物を指すのに全体にわたって交換可能な形で使用できることが理解される。特定の形態がpHに依存することが当業者により理解される。
本明細書で用いるように、「メタクリレートエステル」は、化学式CH=C(CH)COORを有する化合物を指し(図28および29を参照)、式中、Rは、分枝鎖または直鎖のC1〜C6である低級アルキルであり、これには、非限定的に、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、i−プロピル、sec−ブチルおよびtert−ブチル、ペンチルまたはヘキシルが含まれ、それらのいずれもが不飽和であってもよく、それにより、それらは、例えば、プロペニル、ブテニル、ペンチルおよびヘキセニルであり得る。例示的なメタクリレートエステルには、非限定的に、メチルメタクリレート、エチルメタクリレートおよびn−プロピルメタクリレートが含まれる。本明細書で用いるメタクリレートエステルはまた、中鎖〜長鎖の基、すなわちC7〜C22である他のR基も含み、該メタクリレートエステルは、脂肪アルコール、例として、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、パルミトリルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、ノナデシルアルコール、アラキジルアルコール、ヘンイコシルアルコールおよびベヘニルアルコールから誘導され、それらのいずれもが必要に応じて、分枝していてもよく、かつ/または不飽和を含有してもよい。
本明細書で用いるように、用語「CoA」または「補酵素A」は、活性酵素系を形成するためにその存在が多くの酵素(アポ酵素)の活性のために必要とされる、有機コファクターまたは補欠分子族(酵素の非タンパク部分)を意味するものとする。補酵素Aは、特定の縮合酵素で機能し、アセチルまたは他のアシル基転移、ならびに脂肪酸合成および酸化、ピルベート酸化ならびに他のアセチル化で作用する。
本明細書で用いるように、培養または増殖条件に関して用いられる場合、用語「実質的に嫌気性」は、酸素の量が、液体培地中の溶存酸素の飽和量の約10%未満であることを意味するものとする。本用語は、約1%未満の酸素の雰囲気で維持される、液体または固体培地の密封チャンバー、も含むものとする。
本明細書で用いる「外因性」は、参照分子または参照活性が宿主の微生物体に導入されることを意味するものとする。分子は、例えば、宿主染色体への組込みなどによる宿主遺伝物質へのコード核酸の導入によって、またはプラスミドなどの非染色体遺伝物質として導入することができる。したがって、コード核酸の発現に関して用いられる本用語は、微生物体への発現可能な形でのコード核酸の導入を指す。生合成活性に関して用いられる場合、本用語は、宿主参照生物体に導入される活性を指す。供給源は、例えば、宿主の微生物体への導入の後に参照活性を発現する、同種または異種のコード核酸であってよい。したがって、用語「内因性」は、宿主に存在する参照分子または活性を指す。同様に、コード核酸の発現に関して用いられる場合、本用語は、微生物体に含まれるコード核酸の発現を指す。用語「異種の」は、参照種以外の供給源に由来する分子または活性を指し、「同種の」は、宿主の微生物体に由来する分子または活性を指す。したがって、本発明のコード核酸の外因性の発現は、異種または同種のコード核酸のいずれかまたは両方を利用することができる。
2つ以上の外因性核酸が微生物体に含まれる場合、こうした2つ以上の外因性核酸は、上記で論じた参照のコード核酸または生合成活性を指すことが理解される。本明細書で開示されるように、そのような2つ以上の外因性核酸は、宿主の微生物体の別個の核酸分子上に、ポリシストロニック核酸分子上に、またはそれらを組み合わせて宿主の微生物体に導入することができ、そしてそれは依然として、2つ以上の外因性核酸とみなすことができることがさらに理解される。例えば、本明細書で開示されるように、微生物体を工学的に操作して、所望の経路の酵素またはタンパク質をコードする2つ以上の外因性核酸を発現させることができる。所望の活性をコードする2つの外因性核酸が宿主の微生物体に導入される場合、こうした2つの外因性核酸は、単一の核酸として、例えば、単一のプラスミド上にもしくは別個のプラスミド上に導入することができ、宿主染色体の単一の部位もしくは複数の部位へと組み込むこともでき、そしてそれは依然として、2つの外因性核酸とみなすことができることが理解される。同様に、3つ以上の外因性核酸は、任意の所望の組合せで、宿主の生物体へと、例えば、単一のプラスミド上にもしくは別個のプラスミド上に導入することができ、宿主染色体の単一の部位もしくは複数の部位へと組み込むことができ、そしてそれは依然として、2つ以上の外因性核酸、例えば、3つの外因性核酸とみなすことができることが理解される。したがって、参照される外因性の核酸または生合成活性の数は、宿主生物体へと導入された別々の核酸の数ではなく、コード核酸の数または生合成活性の数を指す。
本発明の天然に存在しない微生物体は安定した遺伝的変化を含むことができ、それは変化を失わずに5世代を超えて培養することができる微生物を指す。一般に、安定した遺伝的変化には、10世代を超えて存続する改変が含まれ、特に安定した改変は約25世代を超えて存続し、より詳しくは、安定した遺伝子改変は無期限を含めて50世代を超える。
当業者は、本明細書で例示される代謝改変を含む遺伝的変化が、E.coliなどの適切な宿主生物体およびそれらの対応する代謝反応、または所望の遺伝物質、例えば所望の代謝経路の遺伝子に適する供給源生物体に関して記載されることを理解するであろう。しかし、多種多様な生物体の完全なゲノム配列決定およびゲノミクスの領域における高レベルの技術を考慮して、当業者は、本明細書で提供される教示および指針を事実上他の全ての生物体に適用することが容易にできる。例えば、本明細書で例示したE.coliの代謝改変は、参照種以外の種からの同じであるか類似したコード核酸を組み込むことによって、他の種に容易に適用することができる。そのような遺伝的変化には、例えば、一般には種のホモログの遺伝的変化、より詳細には、オルソログ、パラログまたは非オルソロガスな遺伝子置換が含まれる。
オルソログは、垂直伝達(vertical descent)が関係し、異なる生物体での実質的に同じか同一の機能の役割を担う1つまたは複数の遺伝子である。例えば、マウスエポキシドヒドロラーゼおよびヒトエポキシドヒドロラーゼは、エポキシドの加水分解の生物学的機能のためのオルソログと考えることができる。遺伝子は、例えば、それらが同種であるか共通祖先からの進化によって関係していることを示すのに十分な量の配列類似性をそれらが共有する場合、垂直伝達が関係している。それらが、一次配列類似性が識別可能でない程度までそれらが共通祖先から進化したことを示すのに十分な量の三次元構造を共有するが必ずしも配列類似性を共有しない場合にも、遺伝子はオルソログと考えることができる。オルソロガスである遺伝子は、約25%〜100%アミノ酸配列同一性の配列類似性を有するタンパク質をコードすることができる。それらの三次元構造も類似性を示す場合、25%未満のアミノ酸類似性を共有するタンパク質をコードする遺伝子も、垂直伝達によって生じたと考えることができる。組織プラスミノーゲン活性化因子およびエラスターゼを含む、酵素のセリンプロテアーゼファミリーのメンバーは、共通祖先から垂直伝達によって生じたと考えられる。
オルソログには、例えば進化を通して構造または全体的活性が異なった、遺伝子またはそれらのコードされた遺伝子生成物が含まれる。例えば、1つの種が2つの機能を示す遺伝子生成物をコードし、そのような機能が第2の種の異なる遺伝子に分離されている場合、3つの遺伝子およびそれらの対応する生成物はオルソログであるとみなされる。生化学生成物の生成については、当業者は、天然に存在しない微生物の構築のために、導入または破壊される代謝活性を抱えているオルソロガス遺伝子が選択されるべきであることを理解するであろう。分離できる活性を示すオルソログの例は、異なる活性が2つ以上の種の間で、または単一の種の中で異なる遺伝子生成物に分離されている場合である。具体例は、セリンプロテアーゼ活性の2つの型であるエラスターゼタンパク質分解およびプラスミノーゲンタンパク質分解の、プラスミノーゲン活性化因子およびエラスターゼのような異なる分子への分離である。第2の例は、マイコプラズマ5’−3’エキソヌクレアーゼおよびDrosophilaDNAポリメラーゼIII活性の分離である。第1の種からのDNAポリメラーゼは、第2の種からのエキソヌクレアーゼまたはポリメラーゼの一方または両方にオルソログであると、またはその逆とみなすことができる。
対照的に、パラログは、例えば複製とそれに続く進化的分岐によって関係があるホモログであり、類似または共通しているが、同一でない機能を有する。パラログは、例えば、同じ種または異なる種を起源とするかそれに由来することができる。例えば、ミクロソームのエポキシドヒドロラーゼ(エポキシドヒドロラーゼI)および可溶性のエポキシドヒドロラーゼ(エポキシドヒドロラーゼII)は、同じ種で異なる反応を触媒し、異なる機能を有する、共通祖先から共進化した2つの異なる酵素を表すので、パラログと考えることができる。パラログは、かなりの相互に配列類似性を有する同じ種からのタンパク質であり、共通祖先からの共進化を通してそれらが相同であるか関係することを示唆している。パラロガスのタンパク質ファミリー群には、HipAホモログ、ルシフェラーゼ遺伝子、ペプチダーゼなどが含まれる。
非オルソロガス遺伝子置換は、異なる種の参照遺伝子機能の代わりになることができる、1つの種からの非オルソロガス遺伝子である。置換には、例えば、異なる種での参照機能と比較して、起源種で実質的に同じかまたは類似した機能を発揮することができるものが含まれる。一般に、非オルソロガス遺伝子置換は、参照機能をコードする公知の遺伝子に構造的に関係することを確認することが可能であるが、より構造的に関係しないが機能的に類似した遺伝子およびそれらの対応する遺伝子生成物も、本明細書で用いられるような用語の意味の範囲内である。例えば、機能的類似性は、置換しようとする機能をコードする遺伝子と比較して、非オルソロガス遺伝子生成物の活性部位または結合性領域において少なくとも多少の構造類似性を要求する。したがって、非オルソロガス遺伝子には、例えばパラログまたは無関係な遺伝子が含まれる。
したがって、メタクリル酸生合成能力を有する本発明の天然に存在しない微生物体を特定し、構築することにおいて、特定の種に本明細書で提供される教示および指針を適用することで、当業者は、代謝改変の特定にはオルソログの特定および組入れまたは不活化を含めることができることを理解する。パラログおよび/または非オルソロガスな遺伝子置換が、類似したか実質的に類似した代謝反応を触媒する酵素をコードする参照微生物に存在する範囲内において、当業者はこれらの進化関係の遺伝子を利用することもできる。
オルソログ、パラログおよび非オルソロガスな遺伝子置換は、当業者に周知である方法によって決定することができる。例えば、2つのポリペプチドのための核酸またはアミノ酸配列の検査は、比較される配列間の配列の同一性および類似性を明らかにする。そのような類似性に基づいて、タンパク質が共通祖先からの進化を通して関係していることを示すのにその類似性が十分に高いかどうか、当業者は決定することができる。当業者に周知であるアルゴリズム、例えばAlign、BLAST、Clustal Wなどは、生の配列の類似性または同一性を比較、決定し、さらに、重みまたはスコアを割り当てることができる配列中のギャップの存在または重要性を決定する。そのようなアルゴリズムは当技術分野でも公知であり、ヌクレオチド配列の類似性または同一性を決定することに同様に適用できる。関連性を決定するのに十分な類似性のパラメータは、統計的類似性、またはランダムなポリペプチド中で類似したマッチを見出す可能性、および決定されるマッチの有意性を計算するための周知の方法に基づいて計算される。所望により、2つ以上の配列のコンピュータによる比較を、当業者が視覚的に最適化することもできる。関係する遺伝子生成物またはタンパク質は、高い類似性、例えば25%〜100%の配列同一性を有すると予想することができる。無関係であるタンパク質は、十分なサイズのデータベースをスキャンする場合に偶然に起こることが予想されるのと事実上同じである同一性を有することができる(約5%)。5%から24%の間の配列は、比較する配列が関係していると結論するのに十分な相同性を表すことができるか、表すことができない。これらの配列の関連性を決定するために、データセットのサイズを前提とするそのようなマッチの有意性を決定する追加の統計分析を実施することができる。
例えば、BLASTアルゴリズムを用いて2つ以上の配列の関連性を決定するための例示的なパラメータは、下に示すようなものでよい。簡単に述べると、アミノ酸配列アラインメントは、BLASTPバージョン2.0.8(1999年1月5日)および以下のパラメータを用いて実施することができる:マトリックス:0 BLOSUM62;ギャップオープン:11;ギャップ伸長:1;x_dropoff:50;予想:10.0;ワードサイズ:3;フィルター:オン。核酸配列アラインメントは、BLASTNバージョン2.0.6(1998年9月16日)および以下のパラメータを用いて実施することができる:マッチ:1;ミスマッチ:−2;ギャップオープン:5;ギャップ伸長:2;x_dropoff:50;予想:10.0;ワードサイズ:11;フィルター:オフ。当業者は、例えば、比較のストリンジェンシーを増加または低減させ、2つ以上の配列の関連性を決定するために、どのような改変を上記のパラメータに加えることができるかを知るであろう。
一実施形態では、本発明は、メタクリレートエステル経路を有する、天然に存在しない微生物体であって、メタクリレートエステルを生成するのに十分な量で発現されるメタクリレートエステル経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含み、前記メタクリレートエステル経路が、アルコールトランスフェラーゼまたはエステルを形成する酵素、およびデヒドラターゼを含む微生物体を提供する。特定の実施形態では、微生物体は、それぞれメタクリレートエステル経路の酵素をコードする2つの外因性核酸を含む。例えば、2つの外因性核酸は、アルコールトランスフェラーゼおよびデヒドラターゼ、またはそれに代わって、エステルを形成する酵素およびデヒドラターゼをコードすることができる。特定の実施形態では、少なくとも1つの外因性核酸は、異種の核酸であってよい。別の実施形態では、天然に存在しない微生物体は、実質的に嫌気性の培地中にあってよい。本発明は、メタクリレートエステルを生成するための方法であって、メタクリレートエステルを生成する条件下およびそれを生成するのに十分な期間、本明細書で開示される、メタクリレートエステル経路を有する天然に存在しない微生物体を培養する工程を含む方法をさらに提供する。
本発明は、メチルメタクリレート経路を有する、天然に存在しない微生物体であって、メチルメタクリレートを生成するのに十分な量で発現されるメチルメタクリレート経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含み、メチルメタクリレート経路が、アルコールトランスフェラーゼまたはエステルを形成する酵素、およびデヒドラターゼを含む微生物体をさらに提供する。さらなる実施形態では、微生物体は、それぞれメチルメタクリレート経路の酵素をコードする2つの外因性核酸を含むことができる。特定の実施形態では、2つの外因性核酸は、アルコールトランスフェラーゼおよびデヒドラターゼ、またはそれに代わって、エステルを形成する酵素およびデヒドラターゼをコードすることができる。別の実施形態では、少なくとも1つの外因性核酸は、異種の核酸であってよい。別の実施形態では、天然に存在しない微生物体は、実質的に嫌気性の培地中にあってよい。本発明はまた、メチルメタクリレートを生成する条件下およびそれを生成するのに十分な期間、メチルメタクリレート経路を有する、天然に存在しない微生物体を培養することによって、メチルメタクリレートを生成するための方法も提供する。
一実施形態では、本発明は、天然に存在しない微生物体であって、メタクリレートエステルを生成するのに十分な量で発現されるメタクリレートエステル経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメタクリレートエステル経路を有する微生物体を含み、前記メタクリレートエステル経路が、アルコールトランスフェラーゼまたはエステルを形成する酵素、およびデヒドラターゼを含む微生物体を提供する。一態様では、天然に存在しない微生物体は、それぞれメタクリレートエステル経路の酵素をコードする2つの外因性核酸を含む。一態様では、2つの外因性核酸は、アルコールトランスフェラーゼおよびデヒドラターゼ、またはそれに代わって、エステルを形成する酵素およびデヒドラターゼをコードする。別の態様では、少なくとも1つの外因性核酸は、異種の核酸である。別の態様では、天然に存在しない微生物体は、実質的に嫌気性の培地中にある。
一実施形態では、本発明は、天然に存在しない微生物体であって、前記デヒドラターゼが、3−ヒドロキシイソブチレートエステルまたは2−ヒドロキシイソブチレートエステルを前記メタクリレートエステルに転換する微生物体を提供する。一実施形態では、本発明は、天然に存在しない微生物体であって、前記アルコールトランスフェラーゼが、3−ヒドロキシイソブチリルCoAを3−ヒドロキシイソブチレートエステルに転換するか、または2−ヒドロキシイソブチリルCoAを2−ヒドロキシイソブチレートエステルに転換する微生物体を提供する。
一実施形態では、本発明は、天然に存在しない微生物体であって、メタクリレートエステルを生成するのに十分な量で発現されるメタクリレートエステル経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメタクリレート(methacyrlate)エステル経路をさらに含み、前記メタクリレートエステル経路が、(a)3−ヒドロキシイソ酪酸CoAトランスフェラーゼもしくは3−ヒドロキシイソ酪酸CoAシンテターゼ;アルコールトランスフェラーゼ;およびデヒドラターゼ;(b)3−ヒドロキシイソブチレートエステルを形成する酵素およびデヒドラターゼデヒドラターゼ(dehydratasedehydratase);(c)2−ヒドロキシイソ酪酸CoAトランスフェラーゼもしくは2−ヒドロキシイソ酪酸CoAシンテターゼ;アルコールトランスフェラーゼ;およびデヒドラターゼ;または(d)2−ヒドロキシイソブチレートエステルを形成する酵素およびデヒドラターゼから選択される経路を含む微生物体を提供する。一態様では、本発明は、メタクリレートエステルを生成する条件下およびそれを生成するのに十分な期間、本明細書で開示される天然に存在しない微生物体を培養することによって、メタクリレートエステルを生成するための方法を提供する。
一実施形態では、本発明は、天然に存在しない微生物体であって、メチルメタクリレートを生成するのに十分な量で発現されるメチルメタクリレート経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメチルメタクリレート経路を有する微生物体を含み、前記メチルメタクリレート経路が、アルコールトランスフェラーゼまたはエステルを形成する酵素、およびデヒドラターゼを含む微生物体を提供する。一態様では、この微生物体は、それぞれメチルメタクリレート経路の酵素をコードする2つの外因性核酸を含む。別の態様では、2つの外因性核酸は、アルコールトランスフェラーゼおよびデヒドラターゼ、またはそれに代わって、エステルを形成する酵素およびデヒドラターゼをコードする。別の態様では、少なくとも1つの外因性核酸は、異種の核酸である。別の態様では、天然に存在しない微生物体は、実質的に嫌気性の培地中にある。
一実施形態では、本発明は、メチルメタクリレートを生成するための方法であって、メチルメタクリレートを生成する条件下およびそれを生成するのに十分な期間、本明細書に記載する天然に存在しない微生物体を培養する工程を含む方法を提供する。
一実施形態では、本発明は、メタクリレートエステルを生成するための方法であって、3−ヒドロキシイソブチレートエステルを生成する条件下およびそれを生成するのに十分な期間、天然に存在しない微生物体を培養する工程(前記天然に存在しない微生物体は、3−ヒドロキシイソブチレートエステルを生成するのに十分な量で発現されるアルコールトランスフェラーゼまたは3−ヒドロキシイソブチレートエステルを形成する酵素をコードする外因性核酸を含む)と、前記3−ヒドロキシイソブチレートエステルを化学的に脱水して、メタクリレートエステルを生成する工程とを含む方法を提供する。
一実施形態では、本発明は、メタクリレートエステルを生成するための方法であって、2−ヒドロキシイソブチレートエステルを生成する条件下およびそれを生成するのに十分な期間、天然に存在しない微生物体を培養する工程(前記天然に存在しない微生物体は、2−ヒドロキシイソブチレートエステルを生成するのに十分な量で発現されるアルコールトランスフェラーゼまたは2−ヒドロキシイソブチレートエステルを形成する酵素をコードする外因性核酸を含む)と、前記2−ヒドロキシイソブチレートエステルを化学的に脱水して、メタクリレートエステルを生成する工程とを含む方法を提供する。
一実施形態では、本発明は、メチルメタクリレートを生成するための方法であって、メチル−3−ヒドロキシイソブチレートを生成する条件下およびそれを生成するのに十分な期間、天然に存在しない微生物体を培養する工程(前記天然に存在しない微生物体は、メチル−3−ヒドロキシイソブチレートを生成するのに十分な量で発現されるアルコールトランスフェラーゼまたはエステルを形成する酵素をコードする外因性核酸を含む)と、前記メチル−3−ヒドロキシイソブチレートを化学的に脱水して、メチルメタクリレートを生成する工程とを含む方法を提供する。
上記の方法の一態様では、外因性核酸は、異種の核酸である。上記の方法の別の態様では、天然に存在しない微生物体は、実質的に嫌気性の培地中にある。
一実施形態では、本発明は、前記微生物体が、3−ヒドロキシイソブチレートエステルを生成するのに十分な量で発現される3−ヒドロキシイソブチレートエステル経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む3−ヒドロキシイソブチレートエステル経路をさらに含み、前記3−ヒドロキシイソブチレートエステル経路が、(a)3−ヒドロキシイソ酪酸CoAトランスフェラーゼもしくは3−ヒドロキシイソ酪酸CoAシンテターゼ;およびアルコールトランスフェラーゼ;または(b)3−ヒドロキシイソブチレートエステルを形成する酵素から選択される経路を含む方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、前記微生物体が、2−ヒドロキシイソブチレートエステルを生成するのに十分な量で発現される2−ヒドロキシイソブチレートエステル経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む2−ヒドロキシイソブチレートエステル経路をさらに含み、前記2−ヒドロキシイソブチレートエステル経路が、(a)2−ヒドロキシイソ酪酸CoAトランスフェラーゼもしくは2−ヒドロキシイソ酪酸CoAシンテターゼ;およびアルコールトランスフェラーゼ;または(b)2−ヒドロキシイソブチレートエステルを形成する酵素から選択される経路を含む方法を提供する。
本明細書で開示されるように、本発明は、メタクリル酸経路を有する、天然に存在しない微生物体であって、メタクリル酸を生成するのに十分な量で発現されるメタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む微生物体を提供する。例示的な経路には、これらに限定されないが、図1に開示される経路が含まれる。例示的なメタクリル酸経路には、例えば、以下に示す、図1に示される酵素に対応する経路、すなわち、経路(1)A/B/C;経路(2)A/B/G/H;経路(3)A/F/G/C;経路(4)A/F/H;経路(5)D/E/B/C;経路(6)D/E/B/G/H;経路(7)D/E/F/H;経路(8)D/E/F/G/C;経路(9)I/J/C;経路(10)I/J/G/H;経路(11)I/L/K/E/B/C;経路(12)I/L/K/E/B/G/H;経路(13)I/L/K/E/F/H;および経路(14)I/L/K/E/F/G/Cが含まれ、これらは、下記に、より詳細に論じる。
特定の実施形態では、本発明は、天然に存在しない微生物体であって、メタクリル酸を生成するのに十分な量で発現されるメタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメタクリル酸経路を有する微生物体を含み、メタクリル酸経路が、シトラマル酸シンターゼ(A)、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ(B)、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ(C)を含む微生物体を提供する(図1、経路(1)A/B/C)。本明細書で開示されるように、微生物体は、メタクリル酸経路の酵素(経路中の酵素を最大で全て含む)をコードする、2つ以上の外因性核酸を含むことができ、例えば、3つの外因性核酸が、シトラマル酸シンターゼ、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼをコードする。
特定の実施形態では、MAAを生成する、本発明の天然に存在しない微生物体は、異種の核酸である少なくとも1つの外因性核酸を有することができる。別の実施形態では、MAAを生成する、天然に存在しない微生物体は、実質的に嫌気性の培地中にあってよい。
別の実施形態では、本発明は、天然に存在しない微生物体であって、メタクリル酸を生成するのに十分な量で発現されるメタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメタクリル酸経路を含み、メタクリル酸経路が、シトラマル酸シンターゼ(A)、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ(B)、シトラコン酸イソメラーゼ(G)、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ(H)を含む微生物体を提供する(図1、経路(2)A/B/G/H)。その上別の実施形態では、本発明は、天然に存在しない微生物体であって、メタクリル酸を生成するのに十分な量で発現されるメタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメタクリル酸経路を含み、メタクリル酸経路が、シトラマル酸シンターゼ(A)、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ(F)、シトラコン酸イソメラーゼ(G)、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ(C)を含む微生物体を提供する(図1、経路(3)A/F/G/C)。
さらなる実施形態では、本発明は、天然に存在しない微生物体であって、メタクリル酸を生成するのに十分な量で発現されるメタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメタクリル酸経路を含み、メタクリル酸経路が、シトラマル酸シンターゼ(A)、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ(F)、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ(H)を含む微生物体を提供する(図1、経路(4)A/F/H)。さらにさらなる実施形態では、本発明は、天然に存在しない微生物体であって、メタクリル酸を生成するのに十分な量で発現されるメタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメタクリル酸経路を含み、メタクリル酸経路が、シトラマリルCoAリアーゼ(D)、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ(E)、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ(B)、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ(C)を含む微生物体を提供する(図1、経路(5)D/E/B/C)。
さらなる実施形態では、本発明は、天然に存在しない微生物体であって、メタクリル酸を生成するのに十分な量で発現されるメタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメタクリル酸経路を含み、メタクリル酸経路が、シトラマリルCoAリアーゼ(D)、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ(E)、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ(B)、シトラコン酸イソメラーゼ(G)、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ(H)を含む微生物体を提供する(図1、経路(6)D/E/B/G/H)。その上さらなる実施形態では、本発明は、天然に存在しない微生物体であって、メタクリル酸を生成するのに十分な量で発現されるメタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメタクリル酸経路を含み、メタクリル酸経路が、シトラマリルCoAリアーゼ(D)、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ(E)、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ(F)、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ(H)を含む微生物体を提供する(図1、経路(7)D/E/F/H)。
別の実施形態では、本発明は、天然に存在しない微生物体であって、メタクリル酸を生成するのに十分な量で発現されるメタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメタクリル酸経路を含み、メタクリル酸経路が、シトラマリルCoAリアーゼ(D)、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ(E)、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ(F)、シトラコン酸イソメラーゼ(G)、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ(C)を含む微生物体を提供する(図1、経路(8)D/E/F/G/C)。さらに、本発明は、天然に存在しない微生物体であって、メタクリル酸を生成するのに十分な量で発現されるメタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメタクリル酸経路を含み、メタクリル酸経路が、アコニット酸デカルボキシラーゼ(I)、イタコン酸イソメラーゼ(J)、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ(C)を含む微生物体を提供する(図1、経路(9)I/J/C)。
さらにさらなる実施形態では、本発明は、天然に存在しない微生物体であって、メタクリル酸を生成するのに十分な量で発現されるメタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメタクリル酸経路を含み、メタクリル酸経路が、アコニット酸デカルボキシラーゼ(I)、イタコン酸イソメラーゼ(J)、シトラコン酸イソメラーゼ(G)、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ(H)を含む微生物体を提供する(図1、経路(10)I/J/G/H)。さらなる実施形態では、本発明は、天然に存在しない微生物体であって、メタクリル酸を生成するのに十分な量で発現されるメタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメタクリル酸経路を含み、メタクリル酸経路が、アコニット酸デカルボキシラーゼ(I)、イタコニルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ(L)、シトラマリルCoAデヒドラターゼ(K)、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ(E)、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ(B)、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ(C)を含む微生物体を提供する(図1、経路(11)I/L/K/E/B/C)。
本発明は、天然に存在しない微生物体であって、メタクリル酸を生成するのに十分な量で発現されるメタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメタクリル酸経路を含み、メタクリル酸経路が、アコニット酸デカルボキシラーゼ(I)、イタコニルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ(L)、シトラマリルCoAデヒドラターゼ(K)、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ(E)、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ(B)、シトラコン酸イソメラーゼ(G)、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ(H)を含む微生物体も提供する(図1、経路(12)I/L/K/E/B/G/H)。その上さらなる実施形態では、本発明は、天然に存在しない微生物体であって、メタクリル酸を生成するのに十分な量で発現されるメタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメタクリル酸経路を有する微生物体を含み、メタクリル酸経路が、アコニット酸デカルボキシラーゼ(I)、イタコニルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ(L)、シトラマリルCoAデヒドラターゼ(K)、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ(E)、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ(F)、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ(H)を含む微生物体を提供する(図1、経路(13)I/L/K/E/F/H)。さらなる実施形態では、本発明は、天然に存在しない微生物体であって、メタクリル酸を生成するのに十分な量で発現されるメタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメタクリル酸経路を含み、メタクリル酸経路が、アコニット酸デカルボキシラーゼ(I)、イタコニルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ(L)、シトラマリルCoAデヒドラターゼ(K)、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ(E)、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ(F)、シトラコン酸イソメラーゼ(G)、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ(C)を含む微生物体を提供する(図1、経路(14)I/L/K/E/F/G/C)。
さらなる実施形態では、本発明は、メタクリル酸経路を有する、天然に存在しない微生物体であって、本明細書に記載する反応ならびに図1に示される例示的なメタクリル酸経路中に示す基質および生成物などの、アセチルCoAおよびピルベートをシトラマレートに、シトラマレートをシトラコネートに、ならびにシトラコネートをメタクリレートに;アセチルCoAおよびピルベートをシトラマリルCoAに、シトラマリルCoAをシトラマレートに、シトラマレートをシトラコネートに、ならびにシトラコネートをメタクリレート(methyacrylate)に;アコニテートをイタコネートに、イタコネートをイタコニルCoAに、イタコニルCoAをシトラマリルCoAに、シトラマリルCoAをシトラマレートに、シトラマレートをメサコネートに、メサコネートをメタクリレートになどからなる群から選択される、基質を生成物に転換する酵素またはタンパク質をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む、天然に存在しない微生物体を提供する。当業者は、これらは単なる例示に過ぎず、本明細書に開示される基質−生成物の対のいずれもが、所望の生成物を生成するのに適していることを理解し、当業者は、本明細書の教示に基づいて、基質を生成物に変換するためには、どの適切な活性が利用可能であるかについて容易に決定することができる。したがって、本発明は、天然に存在しない微生物体であって、酵素またはタンパク質をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含有し、酵素またはタンパク質が、図1に示される経路などのメタクリル酸経路の基質および生成物を転換する微生物体を提供する。さらに、アセトアセチルCoAチオラーゼ、アセトアセチルCoAレダクターゼ、クロトナーゼ、4−ヒドロキシブチリルCoAデヒドラターゼ(またはクロトニルCoAヒドラターゼ、4−ヒドロキシ)、4−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、3−ヒドロキシイソブチリルCoAシンテターゼまたは3−ヒドロキシイソブチリルCoAヒドロラーゼまたは3−ヒドロキシイソブチリルCoAトランスフェラーゼ、および3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼを含むメタクリル酸経路も提供される(実施例XXIIおよび図21を参照)。また、アセトアセチルCoAチオラーゼ、アセトアセチルCoAレダクターゼ、クロトナーゼ、4−ヒドロキシブチリルCoAデヒドラターゼ、4−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、3−ヒドロキシイソブチリルCoAデヒドラターゼ、およびメタクリリルCoAシンテターゼまたはメタクリリルCoAヒドロラーゼまたはメタクリリルCoAトランスフェラーゼを含むメタクリル酸経路も提供される(実施例XXIIおよび図21を参照)。
本明細書では一般に、メタクリル酸経路を含有する微生物体について記載しているが、本発明はさらに、天然に存在しない微生物体であって、メタクリル酸経路の中間体を生成するのに十分な量で発現されるメタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む微生物体も提供することを理解されたい。例えば、本明細書に開示されるとおり、メタクリル酸経路を、図1に例示する。したがって、メタクリル酸を生成するメタクリル酸経路を含有する微生物体に加えて、本発明はさらに、メタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む、天然に存在しない微生物体であって、メタクリル酸経路の中間体、例えば、シトラマリルCoA、イタコニルCoA、イタコネート、シトラコネート、シトラマレートおよびメサコネートを生成する微生物体も提供する。
実施例に記載され、図1〜30の経路に例示されるように、いずれかの所望の経路の中間体または生成物を生成する、天然に存在しない微生物体を生成するために、本明細書に開示される経路はいずれも利用され得ることが理解される。本明細書で開示されるように、中間体を生成するそのような微生物体を、下流の経路の酵素を発現する別の微生物体と組み合わせて使用して、所望の生成物を生成することができる。しかし、所望の生成物として、中間体を生成するために、メタクリル酸経路の中間体を生成する、天然に存在しない微生物体を利用することができることを理解されたい。
また、本発明は一部には、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートに至る途上の中心的な代謝中間体を通る炭素フラックスを改善するために工学的に操作された生合成経路も対象とする。本発明は、天然に存在しない微生物体であって、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートに至る途上の種々の酵素的変換を触媒することができる酵素をコードする1つまたは複数の外因性遺伝子を有する微生物体を提供する。いくつかの実施形態では、これらの酵素的変換は、還元的トリカルボン酸(RTCA)回路の一部であり、これに限定されないが、炭水化物に基づく炭素フィードストックからの生成物の収率を含めた、生成物の収率を改善するために使用される。
工学的に操作される多数の経路において、炭水化物フィードストックに基づく生成物の最大収率の実現が、還元当量が不十分であること、または還元当量が喪失することおよび/もしくは炭素が喪失して副産物が生じることによって妨げられる。いくつかの実施形態によれば、本発明は、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートの収率を、(i)炭素固定を、還元的TCA回路を介して増強し、かつ/あるいは(ii)気体の炭素供給源、ならびに/またはシンガス構成成分、例として、CO、COおよび/もしくはHからの追加の還元当量を利用可能にすることによって増加させる。シンガスに加えて、そのような気体の他の供給源には、これらに限定されないが、大気も含まれ、そうした供給源は、自然界に見出されるか、または生成される。
CO固定還元的トリカルボン酸(RTCA)回路は、CO同化作用のエネルギー吸収性のアナボリックな経路であり、この経路は、還元当量およびATPを使用する(図12)。RTCA回路が1回転すると、2モルのCOが同化されて、1モルのアセチルCoAが生じるか、または4モルのCOが同化されて、1モルのオキサロアセテートが生じる。こうした、アセチルCoAがさらに利用できることによって、炭水化物に基づく炭素フィードストックから誘導される生成物分子の最大理論収率が改善される。例示的な炭水化物には、これらに限定されないが、グルコース、スクロース、キシロース、アラビノースおよびグリセロールが含まれる。
いくつかの実施形態では、一酸化炭素デヒドロゲナーゼ酵素および/またはヒドロゲナーゼ酵素とカップリングさせた還元的TCA回路を利用して、微生物が、シンガス、CO、CO、Hおよび/または他の気体の炭素供給源を利用するのを可能にすることができる。特に、合成ガス(シンガス)は、主としてHおよびCOの、時にはいくらかの量のCOを含む混合物であり、石炭、コールオイル、天然ガス、バイオマスまたは有機廃棄物などの任意の有機フィードストックのガス化を経て得ることができる。多数のガス化プロセスが開発されており、ほとんどの設計が、部分的酸化に基づき、この場合、酸素を制限することによって、高温(500〜1500℃)での有機物質の全面燃焼を回避して、シンガスを、0.5:1〜3:1のH/CO混合物としてもたらす。石炭に加えて、多くのタイプのバイオマスも、シンガス生成のために使用されており、再生可能な化学物質および燃料の生物学的生成のための安価なかつ多目的のフィードストックを代表する。二酸化炭素は、大気から、もしくは、例えば、タンクボンベから圧縮された形態(from)で、または固体のCOの昇華を経て提供され得る。同様に、COおよび水素ガスも、試薬の形態で提供してもよく、および/または任意の所望の比で混合してもよい。気体炭素の他の形態には、例えば、メタノールまたは類似の揮発性有機溶媒が含まれ得る。
合成ガスおよび/または他の炭素供給源の構成成分は、還元的TCA回路が作動するのに十分なCO、還元当量およびATPをもたらすことができる。RTCA回路が1回転すると、2モルのCOが同化されて、1モルのアセチルCoAが生じ、これには、2ATPおよび4還元当量が必要である。COおよび/またはHはそれぞれ、一酸化炭素デヒドロゲナーゼ酵素およびヒドロゲナーゼ酵素により、還元当量をもたらすことができる。還元当量は、NADH、NADPH、FADH、還元型キノン、還元型フェレドキシン、還元型フラボドキシンおよびチオレドキシンの形態をとって生じ得る。還元当量、特に、NADH、NADPHおよび還元型フェレドキシンは、RTCA回路の酵素、例えば、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、フマル酸レダクターゼ、アルファ−ケトグルタル酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ(あるいは、2−オキソグルタル酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、アルファ−ケトグルタル酸シンターゼまたは2−オキソグルタル酸シンターゼとしても公知である)、ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、およびイソクエン酸デヒドロゲナーゼのための補因子として働くことができる。それに代わって、これらの還元当量からの電子が、イオン勾配が生成する電子伝達鎖を通過する場合もあり、この場合、電子は、酸素、ニトレート、酸化型金属イオン、プロトンなどのアクセプター、または電極に渡される。次いで、イオン勾配は、ATPシンターゼまたは類似の酵素を介するATPの生成のために使用され得る。
還元的TCA回路は、最初に、緑色硫黄光合成細菌Chlorobium limicolaにおいて報告された(Evansら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、55巻:928〜934頁(1966年))。類似の経路が、いくつかの原核生物(プロテオバクテリア、緑色硫黄細菌および好熱性水素酸化細菌(thermophillic Knallgas bacteria))、ならびに硫黄依存性古細菌(Huglerら、J. Bacteriol.、187巻:3020〜3027頁(2005年);Huglerら、Environ. Microbiol.、9巻:81〜92頁(2007年))においても特徴付けられている。場合によっては、還元的および酸化的(クレブス)TCA回路が、同じ生物体中に存在する(Huglerら、上記(2007年);Siebersら、J. Bacteriol.、186巻:2179〜2194頁(2004年))。いくつかのメタン産生菌および偏性嫌気性菌が、不完全な酸化的または還元的なTCA回路を保有し、これらの回路が機能して、生合成中間体を合成することができる(Ekielら、J. Bacteriol.、162巻:905〜908頁(1985年);Woodら、FEMS Microbiol. Rev.、28巻:335〜352頁(2004年))。
還元的TCA回路の炭素を固定する主要な酵素は、アルファ−ケトグルタル酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、およびイソクエン酸デヒドロゲナーゼである。ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼもしくはホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼによるホスホエノールピルベートからオキサロアセテートへの転換の間に、またはリンゴ酸酵素によるピルベートからマレートへの転換によって、追加の炭素を固定することもできる。
TCA回路中の酵素の多くが、可逆性であり、反応を還元的な方向にも酸化的な方向にも触媒することができる。しかし、TCA回路の反応の中には、in vivoにおいて不可逆的な反応があり、したがって、異なる酵素を使用して、これらの反応を逆行的TCA回路に必要な方向に触媒する。これらの反応は、(1)シトレートからオキサロアセテートおよびアセチルCoAへの転換、(2)フマレートからスクシネートへの転換、および(3)スクシニルCoAからアルファ−ケトグルタレートへの転換である。TCA回路では、シトレートが、オキサロアセテートとアセチルCoAとの縮合から形成される。逆行的反応、すなわち、シトレートのオキサロアセテートおよびアセチルCoAへの切断は、ATP依存性であり、ATPクエン酸リアーゼ、またはシトリルCoAシンテターゼおよびシトリルCoAリアーゼにより触媒される。あるいは、クエン酸リアーゼをアセチルCoAシンテターゼ、アセチルCoAトランスフェラーゼまたはホスホトランスアセチラーゼ、および酢酸キナーゼにカップリングさせて、シトレートからアセチルCoAおよびオキサロアセテートを形成することもできる。スクシネートからフマレートへの転換は、コハク酸デヒドロゲナーゼにより触媒され、一方、逆行的反応は、フマル酸レダクターゼにより触媒される。TCA回路では、スクシニルCoAが、アルファ−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ複合体によるアルファ−ケトグルタレートのNAD(P)依存性の脱カルボキシル化から形成される。逆行的反応は、アルファ−ケトグルタル酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼにより触媒される。
逆行的トリカルボン酸回路を利用して、1)CO、2)COおよびH、3)COおよびCO、4)COおよびHを含む合成ガス、ならびに5)CO、COおよびHを含む合成ガスまたは他の気体の炭素供給源上でのアセチルCoAにより誘導される生成物の生成を可能にし得る生物体は、以下の酵素活性、すなわち、ATPクエン酸リアーゼ、クエン酸リアーゼ、アコニターゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、アルファ−ケトグルタル酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、スクシニルCoAシンテターゼ、スクシニルCoAトランスフェラーゼ、フマル酸レダクターゼ、フマラーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、酢酸キナーゼ、ホスホトランスアセチラーゼ、アセチルCoAシンテターゼ、アセチルCoAトランスフェラーゼ、ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、NAD(P)H:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、一酸化炭素デヒドロゲナーゼ、ヒドロゲナーゼ、およびフェレドキシンのいずれかを含むことができる(図13を参照)。これらの活性に必要な酵素(enzyme enzymes)および対応する遺伝子を、本明細書に記載する。
シンガスまたは他の気体の炭素供給源からの炭素を、逆行的TCA回路およびその構成成分を介して固定することができる。具体的には、炭素ガスを利用する経路の特定の構成成分を、アセチルCoAからメタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートを形成するための経路と組み合わせると、外因性に供給されるかまたはCOから内因性に生成される二酸化炭素中に存在する炭素を、アセチルCoA中に固定するための効率的な機構をもたらすことによって、これらの生成物の高い収率が得られる。
いくつかの実施形態では、本発明の天然に存在しない微生物体におけるメタクリル酸経路、メタクリレートエステル経路、3−ヒドロキシイソブチレート経路および/または2−ヒドロキシイソブチレート経路は、(1)CO、(2)CO、(3)Hの任意の組合せまたはそれらの混合物を利用して、還元的TCA回路の推進に加わることを含めて、還元が関与する生合成ステップの収率を増強することができる。
いくつかの実施形態では、メタクリル酸経路、メタクリレートエステル経路、3−ヒドロキシイソブチレート経路および/または2−ヒドロキシイソブチレート経路を有する、天然に存在しない微生物体は、還元的TCA経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む。少なくとも1つの外因性核酸は、ATPクエン酸リアーゼ、クエン酸リアーゼ、フマル酸レダクターゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、アコニターゼ、およびアルファ−ケトグルタル酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼから選択され;少なくとも1つの外因性酵素は、(1)CO、(2)CO、(3)H、(4)COおよびH、(5)COおよびCO、(6)COおよびH、または(7)CO、COおよびHの利用を可能にするのに十分な量で発現される一酸化炭素デヒドロゲナーゼ、ヒドロゲナーゼ、NAD(P)H:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、およびフェレドキシンから選択される。
いくつかの実施形態では、ある方法は、メタクリル酸経路、メタクリレートエステル経路、3−ヒドロキシイソブチレート経路および/または2−ヒドロキシイソブチレート経路を有し、また、還元的TCA経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸も含む、天然に存在しない微生物体を培養する工程を含む。少なくとも1つの外因性核酸は、ATPクエン酸リアーゼ、クエン酸リアーゼ、フマル酸レダクターゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、アコニターゼ、およびアルファ−ケトグルタル酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼから選択される。さらに、そのような生物体はまた、(1)CO、(2)CO、(3)H、(4)COおよびH、(5)COおよびCO、(6)COおよびH、または(7)CO、COおよびHの利用を可能にするのに十分な量で発現される一酸化炭素デヒドロゲナーゼ、ヒドロゲナーゼ、NAD(P)H:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、およびフェレドキシンから選択される少なくとも1つの外因性酵素も含んで、生成物を生成することができる。
いくつかの実施形態では、メタクリル酸経路、メタクリレートエステル経路、3−ヒドロキシイソブチレート経路および/または2−ヒドロキシイソブチレート経路を有する、天然に存在しない微生物体は、アセチルCoAを通る炭素フラックスを増強するのに十分な量で発現される還元的TCA経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸をさらに含む。少なくとも1つの外因性核酸は、ATPクエン酸リアーゼ、クエン酸リアーゼ、フマル酸レダクターゼ、ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、アコニターゼ、およびアルファ−ケトグルタル酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼから選択される。
いくつかの実施形態では、メタクリル酸経路、メタクリレートエステル経路、3−ヒドロキシイソブチレート経路および/または2−ヒドロキシイソブチレート経路を有する、天然に存在しない微生物体は、一酸化炭素および/または水素の存在下で還元当量の利用可能性を増強するのに十分な量で発現される酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含み、それにより、炭水化物に基づく炭素フィードストックを介して、酸化還元により制限される生成物の収率を増加させる。少なくとも1つの外因性核酸は、一酸化炭素デヒドロゲナーゼ、ヒドロゲナーゼ、NAD(P)H:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、およびフェレドキシンから選択される。いくつかの実施形態では、本発明は、一酸化炭素または水素の存在下で還元当量の利用可能性を増強し、それにより、炭水化物に基づく炭素フィードストック、例として、糖、または気体の炭素供給源を介して、酸化還元により制限される生成物の収率を増加させる方法であって、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートを生成する条件下およびそれを生成するのに十分な期間、この天然に存在しない微生物体を培養する工程を含む方法を提供する。
いくつかの実施形態では、メタクリル酸経路、メタクリレートエステル経路、3−ヒドロキシイソブチレート経路および/または2−ヒドロキシイソブチレート経路を有する、天然に存在しない微生物体は、それぞれ還元的TCA経路の酵素をコードする2つの外因性核酸を含む。いくつかの実施形態では、メタクリル酸経路、メタクリレートエステル経路、3−ヒドロキシイソブチレート経路および/または2−ヒドロキシイソブチレート経路を有する、天然に存在しない微生物体は、それぞれ還元的TCA経路の酵素をコードする3つの外因性核酸を含む。いくつかの実施形態では、天然に存在しない微生物体は、ATPクエン酸リアーゼ、フマル酸レダクターゼ、およびアルファ−ケトグルタル酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼをコードする3つの外因性核酸を含む。いくつかの実施形態では、天然に存在しない微生物体は、クエン酸リアーゼ、フマル酸レダクターゼ、およびアルファ−ケトグルタル酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼをコードする3つの外因性核酸を含む。いくつかの実施形態では、天然に存在しない微生物体は、ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ;ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼまたはホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、COデヒドロゲナーゼ;およびHヒドロゲナーゼをコードする4つの外因性核酸を含む。いくつかの実施形態では、天然に存在しない微生物体は、COデヒドロゲナーゼおよびHヒドロゲナーゼをコードする2つの外因性核酸を含む。
いくつかの実施形態では、メタクリル酸経路、メタクリレートエステル経路、3−ヒドロキシイソブチレート経路および/または2−ヒドロキシイソブチレート経路を有する、天然に存在しない微生物体は、ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、アコニターゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、スクシニルCoAシンテターゼ、スクシニルCoAトランスフェラーゼ、フマラーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、酢酸キナーゼ、ホスホトランスアセチラーゼ、アセチルCoAシンテターゼ、NAD(P)H:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、およびそれらの組合せから選択される酵素をコードする外因性核酸をさらに含む。
いくつかの実施形態では、メタクリル酸経路、メタクリレートエステル経路、3−ヒドロキシイソブチレート経路および/または2−ヒドロキシイソブチレート経路を有する、天然に存在しない微生物体は、一酸化炭素デヒドロゲナーゼ、アセチルCoAシンターゼ、フェレドキシン、NAD(P)H:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、およびそれらの組合せから選択される酵素をコードする外因性核酸をさらに含む。
いくつかの実施形態では、メタクリル酸経路、メタクリレートエステル経路、3−ヒドロキシイソブチレート経路および/または2−ヒドロキシイソブチレート経路を有する、天然に存在しない微生物体は、(1)CO、(2)CO、(3)COおよびH、(4)COおよびH、または(5)CO、COおよびHから選択される炭素フィードストックを利用する。いくつかの実施形態では、メタクリル酸経路、メタクリレートエステル経路、3−ヒドロキシイソブチレート経路および/または2−ヒドロキシイソブチレート経路を有する、天然に存在しない微生物体は、還元当量のために水素を利用する。いくつかの実施形態では、メタクリル酸経路、メタクリレートエステル経路、3−ヒドロキシイソブチレート経路および/または2−ヒドロキシイソブチレート経路を有する、天然に存在しない微生物体は、還元当量のためにCOを利用する。いくつかの実施形態では、メタクリル酸経路、メタクリレートエステル経路、3−ヒドロキシイソブチレート経路および/または2−ヒドロキシイソブチレート経路を有する、天然に存在しない微生物体は、還元当量のためにCOと水素との組合せを利用する。
いくつかの実施形態では、メタクリル酸経路、メタクリレートエステル経路、3−ヒドロキシイソブチレート経路および/または2−ヒドロキシイソブチレート経路を有する、天然に存在しない微生物体は、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、およびリンゴ酸酵素から選択される酵素をコードする1つまたは複数の核酸をさらに含む。
いくつかの実施形態では、メタクリル酸経路、メタクリレートエステル経路、3−ヒドロキシイソブチレート経路および/または2−ヒドロキシイソブチレート経路を有する、天然に存在しない微生物体は、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、フマラーゼ、フマル酸レダクターゼ、スクシニルCoAシンテターゼ、およびスクシニルCoAトランスフェラーゼから選択される酵素をコードする1つまたは複数の核酸をさらに含む。
いくつかの実施形態では、メタクリル酸経路、メタクリレートエステル経路、3−ヒドロキシイソブチレート経路および/または2−ヒドロキシイソブチレート経路を有する、天然に存在しない微生物体は、クエン酸リアーゼ、ATPクエン酸リアーゼ、シトリルCoAシンテターゼ、シトリルCoAリアーゼ、アコニターゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、スクシニルCoAシンテターゼ、スクシニルCoAトランスフェラーゼ、フマラーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、酢酸キナーゼ、ホスホトランスアセチラーゼ、アセチルCoAシンテターゼ、およびフェレドキシンをコードする少なくとも1つの外因性核酸を有し得るか、または必要に応じて、それらをさらに含む。
本明細書に記載する、生成物の収率を増加させるための経路を、図に示される経路を含めた、本明細書に開示される経路のいずれかと組み合わせることができることは当業者に理解される。当業者は、所望の生成物に至る経路ならびにその経路の前駆体および中間体に応じて、本明細書および実施例で論じられる生成物の収率を改善するための特定の経路またはそのような経路の組合せを所望の生成物に至る経路と組み合わせて使用して、その生成物または経路の中間体の収率を増加させることができることを理解する。
本発明はまた、天然に存在しない微生物体であって、メタクリル酸を生成するのに十分な量で発現されるメタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメタクリル酸経路を有する微生物体を含み;(i)還元的TCA経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む還元的TCA経路であって、前記少なくとも1つの外因性核酸が、ATPクエン酸リアーゼ、クエン酸リアーゼ、フマル酸レダクターゼ、およびアルファ−ケトグルタル酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、または必要に応じて、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、アコニターゼ、シトリルCoAシンテターゼもしくはシトリルCoAリアーゼから選択される還元的TCA経路;(ii)還元的TCA経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む還元的TCA経路であって、前記少なくとも1つの外因性核酸が、ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、COデヒドロゲナーゼ、およびHヒドロゲナーゼから選択される還元的TCA経路;あるいは(iii)少なくとも1つの外因性核酸が、COデヒドロゲナーゼ、Hヒドロゲナーゼ、およびそれらの組合せから選択される酵素をコードすることをさらに含み;前記メタクリル酸経路が、(a)シトラマル酸シンターゼ、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ;(b)シトラマル酸シンターゼ、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、シトラコン酸イソメラーゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ;(c)シトラマル酸シンターゼ、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、シトラコン酸イソメラーゼ、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ;(d)シトラマル酸シンターゼ、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ;(e)シトラマリルCoAリアーゼ、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ;(f)シトラマリルCoAリアーゼ、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、シトラコン酸イソメラーゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ;(g)シトラマリルCoAリアーゼ、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ;(h)シトラマリルCoAリアーゼ、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、シトラコン酸イソメラーゼ、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ;(i)アコニット酸デカルボキシラーゼ、イタコン酸イソメラーゼ、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ;(j)アコニット酸デカルボキシラーゼ、イタコン酸イソメラーゼ、シトラコン酸イソメラーゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ;(k)アコニット酸デカルボキシラーゼ、イタコニルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、シトラマリルCoAデヒドラターゼ、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ;(l)アコニット酸デカルボキシラーゼ、イタコニルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、シトラマリルCoAデヒドラターゼ、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、シトラコン酸イソメラーゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ;(m)アコニット酸デカルボキシラーゼ、イタコニルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、シトラマリルCoAデヒドラターゼ、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ;(n)アコニット酸デカルボキシラーゼ、イタコニルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、シトラマリルCoAデヒドラターゼ、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、シトラコン酸イソメラーゼ、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ;(o)3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ;(p)メチルマロニルCoAムターゼ、メチルマロニルCoAレダクターゼ、3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドロゲナーゼ、および3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ;(q)メチルマロニルCoAムターゼ、メチルマロニルCoAエピメラーゼ、メチルマロニルCoAレダクターゼ、3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドロゲナーゼ、および3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ;(r)メチルマロニルCoAムターゼ、アルコール/アルデヒドデヒドロゲナーゼ、および3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ;(s)メチルマロニルCoAムターゼ、メチルマロニルCoAエピメラーゼ、アルコール/アルデヒドデヒドロゲナーゼ、および3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ;(t)メチルマロニルCoAムターゼ、メチルマロニルCoAレダクターゼ、3−アミノ−2−メチルプロピオン酸トランスアミナーゼ、および3−アミノ−2−メチルプロピオン酸アンモニアリアーゼ;(u)メチルマロニルCoAムターゼ、メチルマロニルCoAエピメラーゼ、メチルマロニルCoAレダクターゼ、3−アミノ−2−メチルプロピオン酸トランスアミナーゼ、および3−アミノ−2−メチルプロピオン酸アンモニアリアーゼ;(v)4−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、3−ヒドロキシイソブチリルCoAシンテターゼまたは3−ヒドロキシイソブチリルCoAヒドロラーゼまたは3−ヒドロキシイソブチリルCoAトランスフェラーゼ、および3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ;(w)アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、グルタミン酸ムターゼ、3−メチルアスパルターゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ;(x)アルファ−ケトグルタル酸レダクターゼ、2−ヒドロキシグルタミン酸ムターゼ、3−メチルリンゴ酸デヒドラターゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ;(y)アセトアセチルCoAチオラーゼ、アセトアセチルCoAレダクターゼ、3−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、2−ヒドロキシイソブチリルCoAデヒドラターゼ、およびメタクリリルCoAトランスフェラーゼまたはメタクリリルCoAヒドロラーゼまたはメタクリリルCoAシンテターゼ;(z)アセトアセチルCoAチオラーゼ、アセトアセチルCoAレダクターゼ、3−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、2−ヒドロキシイソブチリルCoAデヒドラターゼ、エノイルCoAヒドラターゼ、および3−ヒドロキシイソブチリルCoAヒドロラーゼまたは3−ヒドロキシイソブチリルCoAシンテターゼまたは3−ヒドロキシイソブチリルCoAトランスフェラーゼ、および3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ;(aa)4−ヒドロキシブチリルCoAデヒドラターゼ、ビニルアセチルCoA Δ−イソメラーゼ、クロトナーゼ、3−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、2−ヒドロキシイソブチリルCoAデヒドラターゼ、およびメタクリリルCoAヒドロラーゼまたはメタクリリルCoAシンテターゼまたはメタクリリルCoAトランスフェラーゼのいずれか;(bb)4−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、3−ヒドロキシイソブチリルCoAデヒドラターゼ、およびメタクリリルCoAシンテターゼまたはメタクリリルCoAヒドロラーゼまたはメタクリリルCoAトランスフェラーゼ;(cc)アセトアセチルCoAチオラーゼ、アセトアセチルCoAレダクターゼ、クロトナーゼ、ブチリルCoAデヒドロゲナーゼ、イソブチリルCoAムターゼ、イソブチリルCoAデヒドロゲナーゼ、およびメタクリリルCoAシンテターゼまたはメタクリリルCoAヒドロラーゼまたはメタクリリルCoAトランスフェラーゼ;(dd)乳酸デヒドロゲナーゼ、乳酸CoAトランスフェラーゼ、ラクトイルCoAデヒドラターゼ、アシルCoAデヒドロゲナーゼ、プロピオニルCoAカルボキシラーゼ、メチルマロニルCoAレダクターゼ、3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドロゲナーゼ、および3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ;(ee)バリンアミノトランスフェラーゼ、2−ケトイソ吉草酸デヒドロゲナーゼ、イソブチリルCoAデヒドロゲナーゼ、およびメタクリリルCoAシンテターゼまたはメタクリリルCoAヒドロラーゼまたはメタクリリルCoAトランスフェラーゼ;(ff)バリンアミノトランスフェラーゼ、2−ケトイソ吉草酸デヒドロゲナーゼ、イソブチリルCoAデヒドロゲナーゼ、メタクリリルCoAシンテターゼまたはメタクリリルCoAヒドロラーゼまたはメタクリリルCoAトランスフェラーゼ、アセト乳酸シンターゼ、アセトヒドロキシ酸イソメロレダクターゼ、およびジヒドロキシ酸デヒドラターゼ;(gg)アセトアセチルCoAチオラーゼ、アセトアセチルCoAレダクターゼ、クロトナーゼ、4−ヒドロキシブチリルCoAデヒドラターゼ、4−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、3−ヒドロキシイソブチリルCoAシンテターゼまたは3−ヒドロキシイソブチリルCoAヒドロラーゼまたは3−ヒドロキシイソブチリルCoAトランスフェラーゼ、および3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ;ならびに(hh)アセトアセチルCoAチオラーゼ、アセトアセチルCoAレダクターゼ、クロトナーゼ、4−ヒドロキシブチリルCoAデヒドラターゼ、4−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、3−ヒドロキシイソブチリルCoAデヒドラターゼ、およびメタクリリルCoAシンテターゼまたはメタクリリルCoAヒドロラーゼまたはメタクリリルCoAトランスフェラーゼ
から選択される経路を含む微生物体も提供する。
本発明は、2−ヒドロキシイソ酪酸経路を有する、天然に存在しない微生物体であって、2−ヒドロキシイソ酪酸を生成するのに十分な量で発現される2−ヒドロキシイソ酪酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む微生物体をさらに提供する。そのような天然に存在しない微生物体は、(i)還元的TCA経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む還元的TCA経路であって、前記少なくとも1つの外因性核酸が、ATPクエン酸リアーゼ、クエン酸リアーゼ、フマル酸レダクターゼ、およびアルファ−ケトグルタル酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、または必要に応じて、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、アコニターゼ、シトリルCoAシンテターゼもしくはシトリルCoAリアーゼから選択される還元的TCA経路;(ii)還元的TCA経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む還元的TCA経路であって、前記少なくとも1つの外因性核酸が、ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、COデヒドロゲナーゼ、およびHヒドロゲナーゼから選択される還元的TCA経路;あるいは(iii)少なくとも1つの外因性核酸は、COデヒドロゲナーゼ、Hヒドロゲナーゼ、およびそれらの組合せから選択される酵素をコードすることをさらに含み得;ここで、前記2−ヒドロキシイソ酪酸経路は、(a)アセトアセチルCoAチオラーゼ、アセトアセチルCoAレダクターゼ、3−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、および2−ヒドロキシイソブチリルCoAトランスフェラーゼまたは2−ヒドロキシイソブチリルCoAヒドロラーゼまたは2−ヒドロキシイソブチリルCoAシンテターゼ;ならびに(b)4−ヒドロキシブチリルCoAデヒドラターゼ、ビニルアセチルCoA Δ−イソメラーゼ、クロトナーゼ、3−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、および2−ヒドロキシイソブチリルCoAヒドロラーゼまたは2−ヒドロキシイソブチリルCoAシンテターゼまたは2−ヒドロキシイソブチリルCoAトランスフェラーゼのいずれか、から選択される経路を含む(図16Cを参照)。前記天然に存在しない微生物体は、それぞれメタクリル酸経路の酵素をコードし、この経路の酵素を最大で全てコードする2、3、4または5つの外因性核酸を含むことができる。
本発明は、天然に存在しない微生物体であって、3−ヒドロキシイソ酪酸を生成するのに十分な量で発現される3−ヒドロキシイソ酪酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む3−ヒドロキシイソ酪酸経路を有する微生物体を含む、微生物体をさらに提供する。前記天然に存在しない微生物体は、(i)還元的TCA経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む還元的TCA経路であって、前記少なくとも1つの外因性核酸が、ATPクエン酸リアーゼ、クエン酸リアーゼ、フマル酸レダクターゼ、およびアルファ−ケトグルタル酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、または必要に応じて、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、アコニターゼ、シトリルCoAシンテターゼもしくはシトリルCoAリアーゼから選択される還元的TCA経路;(ii)還元的TCA経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む還元的TCA経路であって、前記少なくとも1つの外因性核酸が、ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、COデヒドロゲナーゼ、およびHヒドロゲナーゼから選択される還元的TCA経路;あるいは(iii)少なくとも1つの外因性核酸が、COデヒドロゲナーゼ、Hヒドロゲナーゼ、およびそれらの組合せから選択される酵素をコードすることをさらに含み得;ここで、前記3−ヒドロキシイソ酪酸経路が、(a)4−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ;ならびに(b)4−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、および3−ヒドロキシイソブチリルCoAシンテターゼまたは3−ヒドロキシイソブチリルCoAヒドロラーゼまたは3−ヒドロキシイソブチリルCoAトランスフェラーゼから選択される経路を含む(図16Bを参照)。前記天然に存在しない微生物体は、それぞれメタクリル酸経路の酵素をコードする2つの外因性核酸を含むことができる。
本発明は、天然に存在しない微生物体であって、3−ヒドロキシイソ酪酸を生成するのに十分な量で発現される3−ヒドロキシイソ酪酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む3−ヒドロキシイソブチリルCoA経路を有する微生物体を含む微生物体も提供する。前記天然に存在しない微生物体は、(i)還元的TCA経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む還元的TCA経路であって、前記少なくとも1つの外因性核酸が、ATPクエン酸リアーゼ、クエン酸リアーゼ、フマル酸レダクターゼ、およびアルファ−ケトグルタル酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、または必要に応じて、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、アコニターゼ、シトリルCoAシンテターゼもしくはシトリルCoAリアーゼから選択される還元的TCA経路;(ii)還元的TCA経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む還元的TCA経路であって、前記少なくとも1つの外因性核酸が、ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、COデヒドロゲナーゼ、およびHヒドロゲナーゼから選択される還元的TCA経路;あるいは(iii)少なくとも1つの外因性核酸が、COデヒドロゲナーゼ、Hヒドロゲナーゼ、およびそれらの組合せから選択される酵素をコードすることをさらに含み得;ここで、前記3−ヒドロキシイソブチリルCoA経路が、4−ヒドロキシブチリルCoAムターゼを含む(図16Bを参照)。
さらなる実施形態では、(i)を含む微生物体は、ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、アコニターゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、スクシニルCoAシンテターゼ、スクシニルCoAトランスフェラーゼ、フマラーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、酢酸キナーゼ、ホスホトランスアセチラーゼ、アセチルCoAシンテターゼ、NAD(P)H:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、フェレドキシン、およびそれらの組合せから選択される酵素をコードする外因性核酸をさらに含み;(ii)を含む微生物体は、アコニターゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、スクシニルCoAシンテターゼ、スクシニルCoAトランスフェラーゼ、フマラーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、およびそれらの組合せから選択される酵素をコードする外因性核酸をさらに含む。
そのような微生物体は、それぞれメタクリル酸経路の酵素をコードし、経路の酵素を最大で全てコードする2、3、4、5、6または7つの外因性核酸を含むことができる。例えば、この微生物体は、(a)シトラマル酸シンターゼ、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼをコードする3つの外因性核酸;(b)シトラマル酸シンターゼ、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、シトラコン酸イソメラーゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼをコードする4つの外因性核酸;(c)シトラマル酸シンターゼ、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、シトラコン酸イソメラーゼ、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼをコードする4つの外因性核酸;(d)シトラマル酸シンターゼ、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼをコードする3つの外因性核酸;(e)シトラマリルCoAリアーゼ、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼをコードする4つの外因性核酸;(f)シトラマリルCoAリアーゼ、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、シトラコン酸イソメラーゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼをコードする5つの外因性核酸;(g)シトラマリルCoAリアーゼ、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼをコードする4つの外因性核酸;(h)シトラマリルCoAリアーゼ、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、シトラコン酸イソメラーゼ、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼをコードする5つの外因性核酸;(i)アコニット酸デカルボキシラーゼ、イタコン酸イソメラーゼ、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼをコードする3つの外因性核酸;(j)アコニット酸デカルボキシラーゼ、イタコン酸イソメラーゼ、シトラコン酸イソメラーゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼをコードする4つの外因性核酸;(k)アコニット酸デカルボキシラーゼ、イタコニルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、シトラマリルCoAデヒドラターゼ、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼをコードする6つの外因性核酸;(l)アコニット酸デカルボキシラーゼ、イタコニルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、シトラマリルCoAデヒドラターゼ、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、シトラコン酸イソメラーゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼをコードする7つの外因性核酸;(m)アコニット酸デカルボキシラーゼ、イタコニルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、シトラマリルCoAデヒドラターゼ、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼをコードする6つの外因性核酸;あるいは(n)アコニット酸デカルボキシラーゼ、イタコニルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、シトラマリルCoAデヒドラターゼ、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、シトラコン酸イソメラーゼ、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼをコードする7つの外因性核酸;(o)3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼをコードする1つの外因性核酸;(p)メチルマロニルCoAムターゼ、メチルマロニルCoAレダクターゼ、3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドロゲナーゼ、および3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼをコードする4つの外因性核酸;(q)メチルマロニルCoAムターゼ、メチルマロニルCoAエピメラーゼ、メチルマロニルCoAレダクターゼ、3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドロゲナーゼ、および3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼをコードする5つの外因性核酸;(r)メチルマロニルCoAムターゼ、アルコール/アルデヒドデヒドロゲナーゼ、および3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼをコードする3つの外因性核酸;(s)メチルマロニルCoAムターゼ、メチルマロニルCoAエピメラーゼ、アルコール/アルデヒドデヒドロゲナーゼ、および3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼをコードする4つの外因性核酸;(t)メチルマロニルCoAムターゼ、メチルマロニルCoAレダクターゼ、3−アミノ−2−メチルプロピオン酸トランスアミナーゼ、および3−アミノ−2−メチルプロピオン酸アンモニアリアーゼをコードする4つの外因性核酸;(u)メチルマロニルCoAムターゼ、メチルマロニルCoAエピメラーゼ、メチルマロニルCoAレダクターゼ、3−アミノ−2−メチルプロピオン酸トランスアミナーゼ、および3−アミノ−2−メチルプロピオン酸アンモニアリアーゼをコードする5つの外因性核酸;(v)4−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、3−ヒドロキシイソブチリルCoAシンテターゼまたは3−ヒドロキシイソブチリルCoAヒドロラーゼまたは3−ヒドロキシイソブチリルCoAトランスフェラーゼ、および3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼをコードする3つの外因性核酸;(w)アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、グルタミン酸ムターゼ、3−メチルアスパルターゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼをコードする4つの外因性核酸;(x)アルファ−ケトグルタル酸レダクターゼ、2−ヒドロキシグルタミン酸ムターゼ、3−メチルリンゴ酸デヒドラターゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼをコードする4つの外因性核酸;(y)アセトアセチルCoAチオラーゼ、アセトアセチルCoAレダクターゼ、3−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、2−ヒドロキシイソブチリルCoAデヒドラターゼ、およびメタクリリルCoAトランスフェラーゼまたはメタクリリルCoAヒドロラーゼまたはメタクリリルCoAシンテターゼをコードする5つの外因性核酸;(z)アセトアセチルCoAチオラーゼ、アセトアセチルCoAレダクターゼ、3−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、2−ヒドロキシイソブチリルCoAデヒドラターゼ、エノイルCoAヒドラターゼ、および3−ヒドロキシイソブチリルCoAヒドロラーゼまたは3−ヒドロキシイソブチリルCoAシンテターゼまたは3−ヒドロキシイソブチリルCoAトランスフェラーゼ、および3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼをコードする7つの外因性核酸;(aa)4−ヒドロキシブチリルCoAデヒドラターゼ、ビニルアセチルCoA Δ−イソメラーゼ、クロトナーゼ、3−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、2−ヒドロキシイソブチリルCoAデヒドラターゼ、およびメタクリリルCoAヒドロラーゼまたはメタクリリルCoAシンテターゼまたはメタクリリルCoAトランスフェラーゼのいずれかをコードする6つの外因性核酸;(bb)4−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、3−ヒドロキシイソブチリルCoAデヒドラターゼ、およびメタクリリルCoAシンテターゼまたはメタクリリルCoAヒドロラーゼまたはメタクリリルCoAトランスフェラーゼをコードする3つの外因性核酸;(cc)アセトアセチルCoAチオラーゼ、アセトアセチルCoAレダクターゼ、クロトナーゼ、ブチリルCoAデヒドロゲナーゼ、イソブチリルCoAムターゼ、イソブチリルCoAデヒドロゲナーゼ、およびメタクリリルCoAシンテターゼまたはメタクリリルCoAヒドロラーゼまたはメタクリリルCoAトランスフェラーゼ;(dd)乳酸デヒドロゲナーゼ、乳酸CoAトランスフェラーゼ、ラクトイルCoAデヒドラターゼ、アシルCoAデヒドロゲナーゼ、プロピオニルCoAカルボキシラーゼ、メチルマロニルCoAレダクターゼ、3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドロゲナーゼ、および3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ;(ee)バリンアミノトランスフェラーゼ、2−ケトイソ吉草酸デヒドロゲナーゼ、イソブチリルCoAデヒドロゲナーゼ、およびメタクリリルCoAシンテターゼまたはメタクリリルCoAヒドロラーゼまたはメタクリリルCoAトランスフェラーゼ;(ff)バリンアミノトランスフェラーゼ、2−ケトイソ吉草酸デヒドロゲナーゼ、イソブチリルCoAデヒドロゲナーゼ、メタクリリルCoAシンテターゼまたはメタクリリルCoAヒドロラーゼまたはメタクリリルCoAトランスフェラーゼ、アセト乳酸シンターゼ、アセトヒドロキシ酸イソメロレダクターゼ、およびジヒドロキシ酸デヒドラターゼ;(gg)アセトアセチルCoAチオラーゼ、アセトアセチルCoAレダクターゼ、クロトナーゼ、4−ヒドロキシブチリルCoAデヒドラターゼ、4−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、3−ヒドロキシイソブチリルCoAシンテターゼまたは3−ヒドロキシイソブチリルCoAヒドロラーゼまたは3−ヒドロキシイソブチリルCoAトランスフェラーゼ、および3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ;ならびに(hh)アセトアセチルCoAチオラーゼ、アセトアセチルCoAレダクターゼ、クロトナーゼ、4−ヒドロキシブチリルCoAデヒドラターゼ、4−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、3−ヒドロキシイソブチリルCoAデヒドラターゼ、およびメタクリリルCoAシンテターゼまたはメタクリリルCoAヒドロラーゼまたはメタクリリルCoAトランスフェラーゼを含むことができる。
別の実施形態では、微生物体は、それぞれ(i)、(ii)または(iii)の酵素をコードする2、3、4または5つの外因性核酸を含むことができる。例えば、(i)を含む微生物体(amicrobial organism)は、ATPクエン酸リアーゼ、クエン酸リアーゼ、フマル酸レダクターゼ、およびアルファ−ケトグルタル酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼをコードする4つの外因性核酸を含むことができ;(ii)を含む微生物体は、ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、COデヒドロゲナーゼ、およびHヒドロゲナーゼをコードする5つの外因性核酸を含むことができ;または(iii)を含む微生物体は、COデヒドロゲナーゼおよびHヒドロゲナーゼをコードする2つの外因性核酸を含むことができる。
本発明は、天然に存在しない微生物体をさらに提供し、この微生物体は、2−ヒドロキシイソ酪酸を生成するのに十分な量で発現される2−ヒドロキシイソ酪酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む2−ヒドロキシイソ酪酸経路を有する微生物体を含み、前記2−ヒドロキシイソ酪酸経路の酵素は、図16Cに示される酵素から選択され;前記天然に存在しない微生物体は、(i)還元的TCA経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む還元的TCA経路であって、前記少なくとも1つの外因性核酸が、ATPクエン酸リアーゼ、クエン酸リアーゼ、フマル酸レダクターゼ、およびアルファ−ケトグルタル酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、または必要に応じて、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、アコニターゼ、シトリルCoAシンテターゼもしくはシトリルCoAリアーゼから選択される還元的TCA経路;(ii)還元的TCA経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む還元的TCA経路であって、前記少なくとも1つの外因性核酸が、ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、COデヒドロゲナーゼ、およびHヒドロゲナーゼから選択される還元的TCA経路;あるいは(iii)少なくとも1つの外因性核酸が、COデヒドロゲナーゼ、Hヒドロゲナーゼ、およびそれらの組合せから選択される酵素をコードすることをさらに含む。
さらなる実施形態では、本発明は、天然に存在しない微生物体を提供し、この微生物体は、3−ヒドロキシイソ酪酸を生成するのに十分な量で発現される3−ヒドロキシイソ酪酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む3−ヒドロキシイソ酪酸経路を有する微生物体を含み;ここで、前記2−ヒドロキシイソ酪酸経路の酵素は、図16Bに示される酵素から選択され;前記天然に存在しない微生物体は、(i)還元的TCA経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む還元的TCA経路であって、ここで、前記少なくとも1つの外因性核酸が、ATPクエン酸リアーゼ、クエン酸リアーゼ、フマル酸レダクターゼ、およびアルファ−ケトグルタル酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、または必要に応じて、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、アコニターゼ、シトリルCoAシンテターゼもしくはシトリルCoAリアーゼから選択される還元的TCA経路;(ii)還元的TCA経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む還元的TCA経路であって、ここで、前記少なくとも1つの外因性核酸が、ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、COデヒドロゲナーゼ、およびHヒドロゲナーゼから選択される還元的TCA経路;あるいは(iii)少なくとも1つの外因性核酸が、COデヒドロゲナーゼ、Hヒドロゲナーゼ、およびそれらの組合せから選択される酵素をコードすることをさらに含む。
本発明は、一部は、シンガスまたはその構成成分である水素、二酸化炭素および一酸化炭素を還元当量の供給源として使用して、生成物の理論収率を改善することを対象とする。工学的に操作される多数の経路において、炭水化物フィードストックに基づく生成物の最大収率の実現が、還元当量が不十分であること、または還元当量が喪失することおよび/もしくは炭素が喪失して副産物が生じることによって妨げられる。水素および/または一酸化炭素から、十分な還元当量を供給することができる場合、炭水化物フィードストック上のいくつかの生成物の理論収率が実質的に増加する。例えば、MAA、2−ヒドロキシイソブチレートおよび3−ヒドロキシイソブチレートの理論収率は、Hの存在下において、2モル/グルコース1モルまで増加する。
還元当量または電子を、合成ガスの構成成分、例として、COおよびHから、それぞれ一酸化炭素デヒドロゲナーゼ(CODH)酵素およびヒドロゲナーゼ酵素を使用して抽出することができる。次いで、還元当量は、アクセプター、例として、酸化型フェレドキシン、酸化型キノン、酸化型チトクローム、NADP+、水または過酸化水素に渡されて、それぞれ還元型フェレドキシン、還元型キノン、還元型チトクローム、NAD(P)H、Hまたは水を形成する。還元型フェレドキシンおよびNAD(P)Hは、Wood−Ljungdahl経路および還元的TCA回路の種々の酵素のための酸化還元伝達体として働くことができるので、特に有用である。
ここで、本発明者らは、COおよび/またはHからの追加の酸化還元が利用可能なことにより、どのように還元生成物、例として、メタクリル酸、2−ヒドロキシイソブチレートおよび3−ヒドロキシイソブチレートの収率が改善され得るかの具体例を示す。
メタクリル酸(MAA)、3−ヒドロキシ酪酸および2−ヒドロキシイソ酪酸は、例示的な還元生成物である。発酵を通してのMAAの生成は、グルコース1モル当たり1.33モルのMAAの理論収率を有する。MAAは最も一般に、原材料のアセトンおよびシアン化水素を原材料として使用して、アセトンシアノヒドリン(ACH)ルートから生成される。中間体のシアノヒドリンを、硫酸を用いて、メタクリルアミドの硫酸エステルに転換し、これを加水分解して、硫酸水素アンモニウムおよびMAAを得る。他の生産体は、イソブチレンから開始するか、または同等に、tert−ブタノールから開始し、これを酸化して、メタクロレインを得、再び酸化を行って、メタクリル酸を得る。次いで、MAAを、メタノールを用いてエステル化して、MMAを得る。メタクリル酸は産業上、そのエステルの調製において使用され、これらは、まとめてメタクリレートとして公知であり、例として、メチルメタクリレートがある。メタクリレートは、多数の用途、最も顕著には、ポリマーの製造における用途を有する。
12→1.33C+0.67CO+2H
フィードストックを組み合わせる戦略を、MAAの生成に適用する場合、シンガスから生成される還元当量(equivlent)により、グルコースからのMAAの理論収率を、グルコース1モル当たり2モルのMAAまで増加させることができ、この経路を、図16Aおよび16Bに詳述する。
1C12+2CO+6H→2C+6H
または
1C12+2CO+4H→2C+4H
同様に、3−ヒドロキシイソ酪酸の、発酵を通しての生成も、フィードストックを組み合わせる戦略により改善することができる。3−ヒドロキシイソ酪酸の、発酵を通しての生成により、グルコース1モル当たり1.33モルの3−ヒドロキシイソ酪酸の理論収率が得られる。
3C12→4C+2CO+2H
フィードストックを組み合わせる戦略を、3−ヒドロキシイソ酪酸の生成に適用する場合、シンガスから生成される還元当量により、グルコースからの3−ヒドロキシイソ酪酸の理論収率を、グルコース1モル当たり2モルの3−ヒドロキシイソ酪酸まで増加させることができ、この経路を、図16Aおよび16Bに詳述する。
1C12+2CO+6H→2C+4H
同様に、2−ヒドロキシイソ酪酸の、発酵を通しての生成も、フィードストックを組み合わせる戦略により改善することができる。2−ヒドロキシイソ酪酸の、発酵を通しての生成により、グルコース1モル当たり1.33モルの2−ヒドロキシイソ酪酸の理論収率が得られる。
3C12→4C+2CO+2H
フィードストックを組み合わせる戦略を、3−ヒドロキシイソ酪酸の生成に適用する場合、シンガスから生成される還元当量により、グルコースからの3−ヒドロキシイソ酪酸の理論収率を、グルコース1モル当たり2モルの2−ヒドロキシイソ酪酸まで増加させることができ、この経路を、図16Bに詳述する。
1C12+2CO+6H→2C+4H
また、本発明は、一部は、炭素固定を還元的TCA回路を介して増強することによって、生成物分子に至る途上の中心的な代謝中間体であるアセチルCoAを通る炭素フラックスを増大させることも対象とする。例示的な生成物分子には、メタクリル酸および2−ヒドロキシイソブチレートが含まれるが、本明細書において提供される教示および手引きを考慮すると、アセチルCoAを基本要素として有する任意の生成物分子が、アセチルCoAを通る炭素フラックスの増加を通して、生成の増強を示すことができることが、当業者により認識される。本発明は、天然に存在しない微生物体であって、アセチルCoAに至る途上の種々の酵素的変換を触媒することができる酵素をコードする1つまたは複数の外因性遺伝子を有する微生物体を提供する。いくつかの実施形態では、これらの酵素的変換は、還元的トリカルボン酸(RTCA)回路の一部であり、炭水化物に基づく炭素フィードストックからの生成物の収率を改善するために使用される。他の実施形態では、これらの酵素的変換は、Wood−Ljungdahl経路の一部である。
CO固定還元的トリカルボン酸(RTCA)回路は、CO同化作用のエネルギー吸収性のアナボリックな経路であり、この経路は、NAD(P)HおよびATPを使用する。RTCA回路が1回転すると、2モルのCOが同化されて、1モルのアセチルCoAが生じるか、または4モルのCOが同化されて、1モルのオキサロアセテートが生じる。こうした、アセチルCoAのさらなる利用可能性によって、炭水化物に基づく炭素フィードストックから誘導される生成物分子の最大理論収率が改善される。例示的な炭水化物には、これらに限定されないが、グルコース、スクロース、キシロース、アラビノースおよびグリセロールが含まれる。本明細書に記載する例示的な生成物分子のための経路は全て、アセチルCoAを通って進行することに留意されたい。
糖から図16C、16Dおよび16Eに示される経路を経るMAAの生成は、還元的TCA回路活性の非存在下において、消費されるグルコース1モル当たり1モルのMAAの最大収率を有する。還元的TCA回路により炭素を固定することによって、これらの経路の収率は、糖からのMAAの最大理論収率まで増加する。図16Cおよび16Dは、還元的TCA回路により生成される追加の炭素が、どのようにこれらの経路により生成されるメタクリル酸の収率を、1モル/グルコース1モルから1.33モル/グルコース1モルに増加させるかを示す、例示的なフラックス分布である。
12→1.33C+0.67CO+2H
一実施形態では、本発明は、天然に存在しない微生物体であって、メタクリレートエステルを生成するのに十分な量で発現されるメタクリレートエステル経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメタクリレートエステル経路を有する微生物体を含み;(i)還元的TCA経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む還元的TCA経路であって、ここで、前記少なくとも1つの外因性核酸が、ATPクエン酸リアーゼ、クエン酸リアーゼ、フマル酸レダクターゼ、およびアルファ−ケトグルタル酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、または必要に応じて、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、アコニターゼ、シトリルCoAシンテターゼもしくはシトリルCoAリアーゼから選択される還元的TCA経路;(ii)還元的TCA経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む還元的TCA経路であって、ここで、前記少なくとも1つの外因性核酸が、ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、COデヒドロゲナーゼ、およびH2ヒドロゲナーゼから選択される還元的TCA経路;あるいは(iii)少なくとも1つの外因性核酸が、COデヒドロゲナーゼ、H2ヒドロゲナーゼ、およびそれらの組合せから選択される酵素をコードすることをさらに含み;ここで、前記メタクリレートエステル経路は、アルコールトランスフェラーゼまたはエステルを形成する酵素、およびデヒドラターゼを含む、微生物体を提供する。一態様では、デヒドラターゼは、3−ヒドロキシイソブチレートエステルまたは2−ヒドロキシイソブチレートエステルを前記メタクリレートエステルに転換する。一態様では、アルコールトランスフェラーゼは、3−ヒドロキシイソブチリルCoAを3−ヒドロキシイソブチレートエステルに転換するか、または2−ヒドロキシイソブチリルCoAを2−ヒドロキシイソブチレートエステルに転換する。
一実施形態では、本発明は、メタクリレートエステルを生成するのに十分な量で発現されるメタクリレートエステル経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメタクリレート(methacyrlate)エステル経路をさらに含む微生物体であって、前記メタクリレートエステル経路が、(a)3−ヒドロキシイソ酪酸CoAトランスフェラーゼもしくは3−ヒドロキシイソ酪酸CoAシンテターゼ;アルコールトランスフェラーゼ;およびデヒドラターゼ;(b)3−ヒドロキシイソブチレートエステルを形成する酵素およびデヒドラターゼ;(c)2−ヒドロキシイソ酪酸CoAトランスフェラーゼもしくは2−ヒドロキシイソ酪酸CoAシンテターゼ;アルコールトランスフェラーゼ;およびデヒドラターゼ;または(d)2−ヒドロキシイソブチレートエステルを形成する酵素およびデヒドラターゼから選択される経路を含む、微生物体を提供する。別の態様では、(i)を含む微生物体は、ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、アコニターゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、スクシニルCoAシンテターゼ、スクシニルCoAトランスフェラーゼ、フマラーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、酢酸キナーゼ、ホスホトランスアセチラーゼ、アセチルCoAシンテターゼ、NAD(P)H:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、フェレドキシン、およびそれらの組合せから選択される酵素をコードする外因性核酸をさらに含む。別の態様では、(ii)を含む微生物体は、アコニターゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、スクシニルCoAシンテターゼ、スクシニルCoAトランスフェラーゼ、フマラーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、およびそれらの組合せから選択される酵素をコードする外因性核酸をさらに含む。
一態様では、この微生物体は、それぞれメタクリル酸経路の酵素をコードする2つの外因性核酸を含む。別の態様では、前記2つの外因性核酸は、アルコールトランスフェラーゼおよびデヒドラターゼ、またはそれに代わって、エステルを形成する酵素およびデヒドラターゼをコードする。
一実施形態では、本発明は、天然に存在しない微生物体(microbial)を提供し、ここで、(i)を含む前記微生物体が、ATPクエン酸リアーゼ、クエン酸リアーゼ、フマル酸レダクターゼ、およびアルファ−ケトグルタル酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼをコードする4つの外因性核酸を含むか;(ii)を含む前記微生物体が、ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、COデヒドロゲナーゼ、およびH2ヒドロゲナーゼをコードする5つの外因性核酸を含むか;または(iii)を含む前記微生物体が、COデヒドロゲナーゼおよびH2ヒドロゲナーゼをコードする2つの外因性核酸を含む。
一実施形態では、本発明は、メタクリレートエステルを生成するための方法であって、メタクリレートエステルを生成する条件下およびそれを生成するのに十分な期間、本明細書に記載する天然に存在しない微生物体を培養する工程を含む方法を提供する。
一般に、代謝反応、その反応体または生成物について言及しつつ、あるいは特に、言及する代謝反応、反応体もしくは生成物と関連があるかもしくはそれを触媒する酵素、または言及する代謝反応、反応体もしくは生成物と関連があるタンパク質をコードする1つまたは複数の核酸または遺伝子に言及しつつ、本明細書において本発明を記載する。本明細書で別段明示的に述べられていない限り、反応への言及はまた、反応の反応体および生成物への言及にもなることを当業者は理解する。同様に、本明細書で別段明示的に述べられていない限り、反応体または生成物への言及はまた、反応にも言及しており、これらの代謝構成要素のいずれかへの言及は、言及する反応、反応体もしくは生成物を触媒する酵素または言及する反応、反応体もしくは生成物に関与するタンパク質をコードする1つまたは複数の遺伝子にも言及している。同様にして、代謝生化学、酵素学およびゲノミクスの周知の分野を考慮すると、本明細書における遺伝子またはコード核酸への言及はまた、対応するコードされる酵素およびそれが触媒する反応または反応と関連があるタンパク質、ならびにその反応の反応体および生成物への言及にもなる。
本明細書で開示されるように、生成物であるメタクリル酸、および他の中間体は、カルボン酸であり、これらは、完全プロトン化形態、部分的プロトン化形態および完全脱プロトン化形態を含めた、種々のイオン化の形態をとって存在し得る。したがって、接尾語の「〜エート(−ate)」または酸の形を互換的に使用して、遊離酸の形態および任意の脱プロトン化形態の両方を記載することができ、これは、特に、イオン化形態は、その中で、化合物が見出されるpHに依存することが公知であるからである。カルボン酸生成物または中間体には、カルボン酸生成物または経路の中間体のエステル形態、例として、O−カルボキシレートエステルおよびS−カルボキシレートエステルが含まれることを理解されたい。O−およびS−カルボキシレートは、C1〜C6である低級アルキルの、分枝鎖または直鎖のカルボキシレートを含むことができる。いくつかのそのようなO−またはS−カルボキシレートとして、非限定的に、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、i−プロピル、sec−ブチルおよびtert−ブチル、ペンチル、ヘキシルのO−またはS−カルボキシレートが挙げられ、これらはいずれも、不飽和をさらに保有することができ、それらには、例えば、プロペニル、ブテニル、ペンチルおよびヘキセニルのO−またはS−カルボキシレートがある。O−カルボキシレートは、生合成経路の生成物である場合がある。生合成経路を介して入手される例示的なO−カルボキシレートとして、非限定的に、メチルメタクリレート、エチルメタクリレートおよびn−プロピルメタクリレートを挙げることができる。生合成により入手し得る他のO−カルボキシレートとして、脂肪アルコール、例として、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、パルミトリルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、ノナデシルアルコール、アラキジルアルコール、ヘンイコシルアルコールおよびベヘニルアルコールから誘導される、中鎖〜長鎖の基、すなわちC7〜C22のO−カルボキシレートエステルを挙げることができ、それらのいずれも必要に応じて、分枝していてもよく、かつ/または不飽和を含有してもよい。O−カルボキシレートエステルはまた、化学的プロセス、例として、遊離カルボン酸の生成物のエステル化、またはO−もしくはS−カルボキシレートのエステル交換反応を介して入手することもできる。S−カルボキシレートは、例えば、CoA S−エステル、システイニルS−エステル、アルキルチオエステル、ならびに種々のアリールチオエステルおよびヘテロアリールチオエステルである。さらに、メタクリルCoA中間体を介するメタクリル酸エステルの形成も提案されている(WO/2007/039415および米国特許第7,901,915号)。メタクリレートから、メタクリルCoAシンテターゼをWO/2007/039415および米国特許第7,901,915号の記載のとおり使用してか、またはメタクリルCoAトランスフェラーゼを適用することによって、メタクリルCoAを形成することができる(図2および実施例IIIを参照)。メタクリリルCoAトランスフェラーゼは、これらに限定されないが、アセチルCoA、スクシニルCoA、ブチリルCoAおよびプロピオニルCoAを含めた、いくつかのCoA供与体から、CoA部分をメタクリレートに移すことができる。図1に示される経路、またはWO/2009/135074もしくは米国公開第2009/0275096号に記載されている経路から、メタクリレートを形成することができる。それに代わって、WO/2009/135074の記載のとおり、2−ヒドロキシイソブチリルCoA、3−ヒドロキシイソブチリルCoA、3−ヒドロキシイソブチレートまたはイソブチリルCoAから、2−ヒドロキシイソブチリルCoAデヒドラターゼ、3−ヒドロキシイソブチリルCoAデヒドラターゼ、3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼまたはイソブチリルCoAデヒドロゲナーゼを介して、メタクリリルCoAを生成することもできる。
したがって、本発明は、メタクリレートエステルを生成するための微生物体をさらに提供する。そのような生物体は、メタクリリルCoAトランスフェラーゼを含むメタクリレートエステル経路を含むことができる。そのような微生物体は、メタクリリルCoAシンテターゼおよび/またはアルコールトランスフェラーゼを含むメタクリレートエステル経路をさらに含むことができる(図2および実施例IIIを参照)。これらに限定されないが、本明細書に開示される(実施例IおよびV〜XIV、ならびに図1〜11を参照)か、またはWO2009/135074もしくは米国公開第2009/0275096号に記載されているメタクリル酸経路を含めた、メタクリル酸経路またはメタクリリルCoA経路を含有する微生物体を含有するように、メタクリレートエステルを生成する、そのような生物体を工学的に作製することができることが理解される。したがって、開示される、メタクリル酸を生成する微生物体はいずれも、メタクリレートエステルを生成するのに十分な量で発現されるメタクリレートエステル経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸をさらに含むことができ、前記メタクリレートエステル経路は、メタクリリルCoAシンテターゼ、メタクリリルCoAトランスフェラーゼ、およびアルコールトランスフェラーゼを含む。メタクリル酸からメタクリレートエステルへの例示的な酵素的および化学的な転換が、実施例IVに記載される。
したがって、本発明は、メタクリレートエステル経路を含み、図1および3〜11、ならびに実施例IおよびV〜XIVに記載されるメタクリル酸経路を含めた、本明細書に開示されるメタクリル酸経路をさらに含む微生物体をさらに提供する。特定の実施形態では、メタクリレートエステル経路を含む微生物体は、3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ;メチルマロニルCoAムターゼ、メチルマロニルCoAレダクターゼ、3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドロゲナーゼ、および3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ;メチルマロニルCoAムターゼ、メチルマロニルCoAエピメラーゼ、メチルマロニルCoAレダクターゼ、3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドロゲナーゼ、および3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ;メチルマロニルCoAムターゼ、アルコール/アルデヒドデヒドロゲナーゼ、および3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ;メチルマロニルCoAムターゼ、メチルマロニルCoAエピメラーゼ、アルコール/アルデヒドデヒドロゲナーゼ、および3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ;メチルマロニルCoAムターゼ、メチルマロニルCoAレダクターゼ、3−アミノ−2−メチルプロピオン酸トランスアミナーゼ、および3−アミノ−2−メチルプロピオン酸アンモニアリアーゼ;メチルマロニルCoAムターゼ、メチルマロニルCoAエピメラーゼ、メチルマロニルCoAレダクターゼ、3−アミノ−2−メチルプロピオン酸トランスアミナーゼ、および3−アミノ−2−メチルプロピオン酸アンモニアリアーゼ;4−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、3−ヒドロキシイソブチリルCoAシンテターゼまたは3−ヒドロキシイソブチリルCoAヒドロラーゼまたは3−ヒドロキシイソブチリルCoAトランスフェラーゼ、および3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ;アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、グルタミン酸ムターゼ、3−メチルアスパルターゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ;アルファ−ケトグルタル酸レダクターゼ、2−ヒドロキシグルタミン酸ムターゼ、3−メチルリンゴ酸デヒドラターゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ;アセトアセチルCoAチオラーゼ、アセトアセチルCoAレダクターゼ、3−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、2−ヒドロキシイソブチリルCoAデヒドラターゼ、およびメタクリリルCoAトランスフェラーゼまたはメタクリリルCoAヒドロラーゼまたはメタクリリルCoAシンテターゼ;アセトアセチルCoAチオラーゼ、アセトアセチルCoAレダクターゼ、3−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、2−ヒドロキシイソブチリルCoAデヒドラターゼ、エノイルCoAヒドラターゼ、および3−ヒドロキシイソブチリルCoAヒドロラーゼまたは3−ヒドロキシイソブチリルCoAシンテターゼまたは3−ヒドロキシイソブチリルCoAトランスフェラーゼ、および3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ;4−ヒドロキシブチリルCoAデヒドラターゼ、ビニルアセチルCoA Δ−イソメラーゼ、クロトナーゼ、3−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、2−ヒドロキシイソブチリルCoAデヒドラターゼ、およびメタクリリルCoAヒドロラーゼまたはメタクリリルCoAシンテターゼまたはメタクリリルCoAトランスフェラーゼのいずれか;ならびに4−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、3−ヒドロキシイソブチリルCoAデヒドラターゼ、およびメタクリリルCoAシンテターゼまたはメタクリリルCoAヒドロラーゼまたはメタクリリルCoAトランスフェラーゼから選択されるメタクリル酸経路をさらに含む(commprise)(実施例V〜XIVを参照)。
例示的な、メタクリル酸を生成することが可能である天然に存在しない微生物体を、本明細書に開示する。例えば、スクシニルCoAが前駆体であるメタクリル酸経路が提供される(実施例V〜VI、図3および4を参照)。一実施形態では、天然に存在しない微生物体は、メタクリル酸を生成するのに十分な量で発現されるメタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメタクリル酸経路を有し、メタクリル酸経路が、メチルマロニルCoAムターゼ、メチルマロニルCoAエピメラーゼ、メチルマロニルCoAレダクターゼ、3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドロゲナーゼおよび3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼを含む(実施例VおよびVIならびに図3を参照)。別の実施形態では、天然に存在しない微生物体は、メタクリル酸を生成するのに十分な量で発現されるメタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメタクリル酸経路を有し、メタクリル酸経路が、メチルマロニルCoAムターゼ、メチルマロニルCoAエピメラーゼ、アルコール/アルデヒドデヒドロゲナーゼ、および3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼを含む(実施例Vを参照)。さらに、天然に存在しない微生物体は、メタクリル酸を生成するのに十分な量で発現されるメタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメタクリル酸経路を有し得、メタクリル酸経路が、メチルマロニルCoAムターゼ、メチルマロニルCoAエピメラーゼ、メチルマロニルCoAレダクターゼ、3−アミノ−2−メチルプロピオン酸トランスアミナーゼ、および3−アミノ−2−メチルプロピオン酸アンモニアリアーゼを含む(実施例VIおよび図4を参照)。
前駆体として4−ヒドロキシブチリルCoAを有するメタクリル酸経路を含有する天然に存在しない微生物体がさらに提供される。1つのそのような実施形態は、メタクリル酸経路を有する天然に存在しない微生物体であって、メタクリル酸を生成するのに十分な量で発現されるメタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含み、メタクリル酸経路が、4−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、3−ヒドロキシイソブチリルCoAシンテターゼまたは3−ヒドロキシイソブチリルCoAヒドロラーゼまたは3−ヒドロキシイソブチリルCoAトランスフェラーゼ、および3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼを含む微生物体である(実施例VIIおよび図5を参照)。あるいは、この経路は、4−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、3−ヒドロキシイソブチリルCoAデヒドラターゼ;およびメタクリリルCoAシンテターゼまたはメタクリリルCoAヒドロラーゼまたはメタクリリルCoAトランスフェラーゼを含み得る。
さらに、天然に存在しない微生物体であって、アルファ−ケトグルタル酸を前駆体として有するメタクリル酸経路を含有する微生物体も提供される。1つのそのような実施形態は、メタクリル酸経路を有する天然に存在しない微生物体であって、メタクリル酸を生成するのに十分な量で発現されるメタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含み、メタクリル酸経路が、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、グルタミン酸ムターゼ、3−メチルアスパルターゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼを含む微生物体である(実施例VIIIおよび図6を参照)。さらに別の実施形態では、天然に存在しない微生物体は、メタクリル酸を生成するのに十分な量で発現されるメタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメタクリル酸経路を有し、メタクリル酸経路が、アルファ−ケトグルタル酸レダクターゼ、2−ヒドロキシグルタミン酸ムターゼ、3−メチルリンゴ酸デヒドラターゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼを含む(実施例IXおよび図7を参照)。
さらに別の実施形態では、メタクリル酸経路を含有する天然に存在しない微生物体は、前駆体としてアセチルCoAを有する。例えば、天然に存在しない微生物体は、メタクリル酸を生成するのに十分な量で発現されるメタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメタクリル酸経路を有し得、メタクリル酸経路が、アセトアセチルCoAチオラーゼ、アセトアセチルCoAレダクターゼ、3−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、2−ヒドロキシイソブチリルCoAデヒドラターゼ、およびメタクリリルCoAトランスフェラーゼまたはメタクリリルCoAヒドロラーゼまたはメタクリリルCoAシンテターゼを含む(実施例Xおよび図8を参照)。別の実施形態では、天然に存在しない微生物体は、メタクリル酸を生成するのに十分な量で発現されるメタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメタクリル酸経路を有し、メタクリル酸経路が、アセトアセチルCoAチオラーゼ、アセトアセチルCoAレダクターゼ、3−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、2−ヒドロキシイソブチリルCoAデヒドラターゼ、エノイルCoAヒドラターゼ、および3−ヒドロキシイソブチリルCoAヒドロラーゼまたは3−ヒドロキシイソブチリルCoAシンテターゼまたは3−ヒドロキシイソブチリルCoAトランスフェラーゼ、および3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼを含む(実施例Xを参照)。
さらなる実施形態では、天然に存在しない微生物体は、4−ヒドロキシブチリルCoAを前駆体として有するメタクリル酸を含有することができる。例えば、天然に存在しない微生物体は、メタクリル酸を生成するのに十分な量で発現されるメタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメタクリル酸経路(pathay)を有し、前記メタクリル酸経路は、4−ヒドロキシブチリルCoAデヒドラターゼ;ビニルアセチルCoA Δ−イソメラーゼ;クロトナーゼ;3−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ;2−ヒドロキシイソブチリルCoAデヒドラターゼ;およびメタクリリルCoAヒドロラーゼまたはメタクリリルCoAシンテターゼまたはメタクリリルCoAトランスフェラーゼを含む(実施例XIVおよび図8を参照)。
さらに別の実施形態では、天然に存在しない微生物体は、メタクリル酸を生成するのに十分な量で発現されるメタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメタクリル酸経路を有し、メタクリル酸経路が、アセトアセチルCoAチオラーゼ、アセトアセチルCoAレダクターゼ、クロトナーゼ、ブチリルCoAデヒドロゲナーゼ、イソブチリルCoAムターゼ、イソブチリルCoAデヒドロゲナーゼ、およびメタクリリルCoAシンテターゼまたはメタクリリルCoAヒドロラーゼまたはメタクリリルCoAトランスフェラーゼを含む(実施例XIおよび図9を参照)。
前駆体としてピルベートを有するメタクリル酸経路を含有する天然に存在しない微生物体がさらに提供される。例えば、天然に存在しない微生物体は、メタクリル酸を生成するのに十分な量で発現されるメタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメタクリル酸経路を有し、メタクリル酸経路が、乳酸デヒドロゲナーゼ、ラクテートCoAトランスフェラーゼ、ラクトイルCoAデヒドラターゼ、アシルCoAデヒドロゲナーゼ、プロピオニルCoAカルボキシラーゼ、メチルマロニルCoAレダクターゼ、3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドロゲナーゼ、および3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼを含む微生物体を提供する(実施例XIIおよび図10を参照)。
前駆体として2−ケトイソバレレートを有するメタクリル酸経路を含有する天然に存在しない微生物体も提供される。例えば、本発明は、天然に存在しない微生物体は、メタクリル酸を生成するのに十分な量で発現されるメタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメタクリル酸経路を有し得、メタクリル酸経路が、バリンアミノトランスフェラーゼ、2−ケトイソ吉草酸デヒドロゲナーゼ、イソブチリルCoAデヒドロゲナーゼ、およびメタクリリルCoAシンテターゼまたはメタクリリルCoAヒドロラーゼまたはメタクリリルCoAトランスフェラーゼを含む(実施例XIIIおよび図11を参照)。そのようなメタクリル酸経路は、バリンを2−ケトイソバレレートに転換(図11)するバリンアミノトランスフェラーゼをさらに含有し得る。さらに、そのようなメタクリル酸経路は、アセト乳酸シンターゼ、アセトヒドロキシ酸イソメロレダクターゼおよびジヒドロキシ酸デヒドラターゼなど、ピルベートを2−ケトイソバレレートに転換(図11)する酵素をさらに含有し得る(実施例XIIIを参照)。
本発明はまた、天然に存在しない微生物体であって、メタクリレートエステルを生成するのに十分な量で発現されるメタクリレートエステル経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメタクリレートエステル経路を有し、前記メタクリレートエステル経路が、メタクリリルCoAトランスフェラーゼおよびアルコールトランスフェラーゼを含む微生物体も提供する。さらなる実施形態では、そのようなメタクリレートエステル経路は、メタクリリルCoAシンテターゼをさらに含むことができる。特定の実施形態では、メタクリレートエステル経路を有する微生物体は、メタクリリルCoAおよびアルコールトランスフェラーゼをコードする2つの外因性核酸を含むことができる。その上さらなる実施形態では、本発明は、メタクリレートエステル経路を有する微生物体であって、メタクリリルCoAシンテターゼ、メタクリリルCoAトランスフェラーゼ、およびアルコールトランスフェラーゼをコードする3つの外因性核酸を含むことができる微生物体を提供する。
本発明の天然に存在しない微生物体を、1つまたは複数のメタクリル酸生合成経路に関与する酵素またはタンパク質の1つまたは複数をコードする発現可能な核酸を導入することによって生成することができる。生合成のために選ばれる宿主の微生物体に応じて、特定のメタクリル酸生合成経路の一部または全部についての核酸を発現させることができる。例えば、所望の生合成経路についての1つまたは複数の酵素またはタンパク質が、選ばれた宿主に欠損している場合、欠損している酵素(複数可)またはタンパク質(複数可)のための発現可能な核酸を宿主に導入し、続いて、外因性の発現を行う。あるいは、選ばれた宿主がいくつかの経路の遺伝子の内因性の発現を示すが、他の遺伝子は欠損している場合には、メタクリル酸の生合成を達成するには、欠損している酵素(複数可)またはタンパク質(複数可)についてのコード核酸が必要である。したがって、本発明の天然に存在しない微生物体を、外因性の酵素もしくはタンパク質の活性を導入して、所望の生合成経路を得ることによって生成することができ、または1つもしくは複数の内因性の酵素もしくはタンパク質と一緒になって、所望の生成物、例として、メタクリル酸を生成する、1つもしくは複数の外因性の酵素もしくはタンパク質の活性を導入することによって、所望の生合成経路を得ることができる。
宿主の微生物体を、例えば、細菌、酵母、真菌、または発酵プロセスに適用できる多様な他の微生物のいずれかから選択することができ、天然に存在しない微生物体を、例えば、細菌、酵母、真菌、または発酵プロセスに適用できる多様な他の微生物で生成することができる。例示的な細菌には、Escherichia coli、Klebsiella oxytoca、Anaerobiospirillum succiniciproducens、Actinobacillus succinogenes、Mannheimia succiniciproducens、Rhizobium etli、Bacillus subtilis、Corynebacterium glutamicum、Gluconobacter oxydans、Zymomonas mobilis、Lactococcus lactis、Lactobacillus plantarum、Streptomyces coelicolor、Clostridium acetobutylicum、Pseudomonas fluorescens、およびPseudomonas putidaから選択される種が含まれる。例示的な酵母または真菌には、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe、Kluyveromyces lactis、Kluyveromyces marxianus、Aspergillus terreus、Aspergillus niger、Pichia pastoris、Rhizopus arrhizus、Rhizobus oryzae、Yarrowia lipolyticaなどから選択される種が含まれる。E.coliが、特に有用な宿主の生物体である。これは、E.coliが、遺伝子工学に適している、十分に特徴付けられた微生物体であるからである。他の特に有用な宿主の生物体には、酵母、例として、Saccharomyces cerevisiaeが含まれる。任意の適切な宿主の微生物体を使用して、代謝および/または遺伝子の改変を導入して、所望の生成物を生成することができることが理解される。
選択される宿主の微生物体の、メタクリル酸の生合成経路、メタクリレートエステルの生合成経路、3−ヒドロキシイソブチレートの生合成経路および/または2−ヒドロキシイソブチレートの生合成経路の構成要素に応じて、本発明の天然に存在しない微生物体は、少なくとも1つの、外因性に発現されるメタクリル酸経路、メタクリレートエステル経路、3−ヒドロキシイソブチレート経路および/または2−ヒドロキシイソブチレート経路のコード核酸、そして最大では、1つまたは複数のメタクリル酸の生合成経路、メタクリレートエステルの生合成経路、3−ヒドロキシイソブチレートの生合成経路および/または2−ヒドロキシイソブチレートの生合成経路のためのコード核酸を全て含む。例えば、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートの生合成を、経路の酵素またはタンパク質が欠損している宿主において、対応するコード核酸の外因性の発現を通して確立することができる。メタクリル酸経路、メタクリレートエステル経路、3−ヒドロキシイソブチレート経路および/または2−ヒドロキシイソブチレート経路の全ての酵素またはタンパク質が欠損している宿主では、前記経路中の全ての酵素またはタンパク質の外因性の発現を含めることができるが、宿主が経路の酵素またはタンパク質の少なくとも1つを含有する場合でも、該経路の全ての酵素またはタンパク質を発現させることができることが理解される。例えば、メタクリル酸を生成するための、経路中の全ての酵素またはタンパク質の外因性の発現、例として、シトラマル酸シンターゼ(A)、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ(B)、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ(C)(図1、経路(1)A/B/C);シトラマル酸シンターゼ(A)、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ(B)、シトラコン酸イソメラーゼ(G)、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ(H)(図1、経路(2)A/B/G/H);シトラマル酸シンターゼ(A)、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ(F)、シトラコン酸イソメラーゼ(G)、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ(C)(図1、経路(3)A/F/G/C);シトラマル酸シンターゼ(A)、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ(F)、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ(H)(図1、経路(4)A/F/H);シトラマリルCoAリアーゼ(D)、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ(E)、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ(B)、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ(C)(図1、経路(5)D/E/B/C);シトラマリルCoAリアーゼ(D)、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ(E)、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ(B)、シトラコン酸イソメラーゼ(G)、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ(H)(図1、経路(6)D/E/B/G/H);シトラマリルCoAリアーゼ(D)、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ(E)、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ(F)、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ(H)(図1、経路(7)D/E/F/H);シトラマリルCoAリアーゼ(D)、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ(E)、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ(F)、シトラコン酸イソメラーゼ(G)、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ(C)(図1、経路(8)D/E/F/G/C);アコニット酸デカルボキシラーゼ(I)、イタコン酸イソメラーゼ(J)、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ(C)(図1、経路(9)I/J/C);アコニット酸デカルボキシラーゼ(I)、イタコン酸イソメラーゼ(J)、シトラコン酸イソメラーゼ(G)、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ(H)(図1、経路(10)I/J/G/H);アコニット酸デカルボキシラーゼ(I)、イタコニルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ(L)、シトラマリルCoAデヒドラターゼ(K)、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ(E)、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ(B)、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ(C)(図1、経路(11)I/L/K/E/B/C);アコニット酸デカルボキシラーゼ(I)、イタコニルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ(L)、シトラマリルCoAデヒドラターゼ(K)、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ(E)、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ(B)、シトラコン酸イソメラーゼ(G)、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ(H)(図1、経路(12)I/L/K/E/B/G/H);アコニット酸デカルボキシラーゼ(I)、イタコニルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ(L)、シトラマリルCoAデヒドラターゼ(K)、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ(E)、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ(F)、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ(H)(図1、経路(13)I/L/K/E/F/H);ならびにアコニット酸デカルボキシラーゼ(I)、イタコニルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ(L)、シトラマリルCoAデヒドラターゼ(K)、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ(E)、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ(F)、シトラコン酸イソメラーゼ(G)、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ(C)(図1、経路(14)I/L/K/E/F/G/C)を含めることができる。
本明細書において提供される教示および手引きを考慮すると、発現可能な形態で導入するコード核酸の数は少なくとも、選択される宿主の微生物体の、メタクリル酸経路、メタクリレートエステル経路、3−ヒドロキシイソブチレート経路および/または2−ヒドロキシイソブチレート経路の欠損と平行することが当業者により理解される。したがって、本発明の天然に存在しない微生物体は、本明細書に開示されるメタクリル酸の生合成経路、メタクリレートエステルの生合成経路、3−ヒドロキシイソブチレートの生合成経路および/または2−ヒドロキシイソブチレートの生合成経路を構成する酵素またはタンパク質をコードする核酸を、経路に応じて、最大で全てを含めて、1、2、3、4、5、6または7つ有し得る。いくつかの実施形態では、前記天然に存在しない微生物体また、メタクリル酸の生合成、メタクリレートエステルの生合成、3−ヒドロキシイソブチレートの生合成および/もしくは2−ヒドロキシイソブチレートの生合成を促進もしくは最適化するまたは他の有用な機能を宿主の微生物体に付与する他の遺伝子改変を含んでもよい。1つのそのような他の機能性として、例えば、メタクリル酸経路、メタクリレートエステル経路、3−ヒドロキシイソブチレート経路および/または2−ヒドロキシイソブチレート経路の前駆体、例として、アセチルCoA、ピルベートまたはアコニテートの1つまたは複数の合成の増大を挙げることができる。
一般に、宿主の微生物体が、メタクリル酸経路、メタクリレートエステル経路、3−ヒドロキシイソブチレート経路および/または2−ヒドロキシイソブチレート経路の前駆体を、自然に生成した分子または工学的に操作された(engineered)生成物のいずれかとして生成し、所望の前駆体の新規の生成または宿主の微生物体により自然に生成される前駆体の生成の増加のいずれかをもたらすように、宿主の微生物体は選択される。例えば、アコニテート、アセチルCoAおよびピルベートは、宿主の生物体、例として、E.coliで自然に生成する。本明細書で開示されるように、宿主の生物体を、前駆体の生成を増大させるように工学的に操作することができる。さらに、所望の前駆体を生成するように工学的に操作されている微生物体を、宿主の生物体として使用し、さらに工学的に操作して、メタクリル酸経路、メタクリレートエステル経路、3−ヒドロキシイソブチレート経路および/または2−ヒドロキシイソブチレート経路の酵素またはタンパク質を発現させることもできる。
いくつかの実施形態では、本発明の天然に存在しない微生物体は、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートを合成する酵素能力を含有する宿主から生成される。この特定の実施形態では、例えば、メタクリル酸経路、メタクリレートエステル経路、3−ヒドロキシイソブチレート経路および/または2−ヒドロキシイソブチレート経路の反応を、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートの生成に向けて推進するために、メタクリル酸経路、メタクリレートエステル経路、3−ヒドロキシイソブチレート経路および/または2−ヒドロキシイソブチレート経路の生成物の合成または蓄積を増大させることが有用となる場合がある。合成または蓄積の増大は、例えば、本明細書に記載するメタクリル酸経路、メタクリレートエステル経路、3−ヒドロキシイソブチレート経路および/または2−ヒドロキシイソブチレート経路の酵素またはタンパク質の1つまたは複数をコードする核酸の過剰発現によって達成することができる。メタクリル酸経路、メタクリレートエステル経路、3−ヒドロキシイソブチレート経路および/または2−ヒドロキシイソブチレート経路の1つもしくは複数の酵素および/または1つもしくは複数のタンパク質の過剰発現を、例えば、内因性の1つもしくは複数の遺伝子の外因性の発現を通して、または異種の1つもしくは複数の遺伝子の外因性の発現を通して起こすことができる。したがって、例えば、経路中の酵素の数に応じて、1、2、3、4、5、6または7つ、すなわち、最大で全ての、メタクリル酸の生合成経路、メタクリレートエステルの生合成経路、3−ヒドロキシイソブチレートの生合成経路および/または2−ヒドロキシイソブチレートの生合成経路の酵素またはタンパク質をコードする核酸の過剰発現を通して、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートを生成する本発明の天然に存在しない微生物体に、天然に存在する生物体を容易になすことができる。さらに、天然に存在しない生物体は、メタクリル酸の生合成経路、メタクリレートエステルの生合成経路、3−ヒドロキシイソブチレートの生合成経路および/または2−ヒドロキシイソブチレートの生合成経路の酵素の活性の増大をもたらす内因性の遺伝子の変異誘発により生成することもできる。
特に有用な実施形態では、コード核酸の外因性発現が使用される。外因性発現は、発現および/または調節エレメントを宿主および用途向けに調整する能力を付与し、使用者によって制御される所望の発現レベルを達成する。しかし、誘導可能なプロモーターまたは他の調節エレメントに連結する場合、負の調節エフェクターの除去または遺伝子のプロモーターの誘導などによって、内因性発現を他の実施形態で利用することもできる。したがって、天然に存在する誘導可能なプロモーターを有する内因性遺伝子は、適当な誘導剤を提供することによって上方制御することができるか、または、内因性遺伝子の調節領域を誘導可能な調節エレメントを組み込むように工学的に処理し、それによって所望の時間における内因性遺伝子の発現の増加の調節を可能にすることができる。同様に、天然に存在しない微生物体に導入される外因性遺伝子のための調節エレメントとして、誘導可能なプロモーターを含めることができる。
本発明の方法では、1つまたは複数の外因性核酸のいずれかを微生物体に導入して、本発明の天然に存在しない微生物体を生成することができることが理解される。核酸を導入し、その結果、例えば、メタクリル酸の生合成経路、メタクリレートエステルの生合成経路、3−ヒドロキシイソブチレートの生合成経路および/または2−ヒドロキシイソブチレートの生合成経路を微生物体に付与することができる。あるいは、コード核酸を導入して、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートの生合成能力を得るのに必要な反応のいくつかを触媒する生合成能力を有する中間体の微生物体を生成することもできる。例えば、メタクリル酸の生合成経路、メタクリレートエステルの生合成経路、3−ヒドロキシイソブチレートの生合成経路および/または2−ヒドロキシイソブチレートの生合成経路を有する天然に存在しない微生物体は、所望の酵素またはタンパク質、例として、シトラマル酸シンターゼおよびシトラコン酸デカルボキシラーゼ;シトラコン酸イソメラーゼおよびメサコン酸デカルボキシラーゼ;またはイタコニルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼもしくはヒドロラーゼ、およびイタコン酸イソメラーゼなどの組合せをコードする少なくとも2つの外因性核酸を含むことができる。したがって、生合成経路の2つ以上の酵素の任意の組合せを、本発明の天然に存在しない微生物体に含めることができることが理解される。同様に、所望の生合成経路の酵素および/またはタンパク質の組合せにより、対応する所望の生成物の生成が生じる限り、所望により、生合成経路の3つ以上の酵素の任意の組合せ、例えば、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、シトラコン酸イソメラーゼおよびメサコン酸デカルボキシラーゼ;シトラマリルCoAリアーゼ、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼもしくはヒドロラーゼ、およびシトラマル酸デヒドラターゼ;またはアコニット酸デカルボキシラーゼ、イタコン酸イソメラーゼおよびメサコン酸デカルボキシラーゼなどを、本発明の天然に存在しない微生物体に含めることができることも理解される。同様に、所望の生合成経路の酵素の組合せにより、対応する所望の生成物の生成が生じる限り、4つの任意の組合せ、例えば、シトラマリルCoAリアーゼ、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼもしくはヒドロラーゼ、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ;アコニット酸デカルボキシラーゼ、イタコン酸イソメラーゼ、シトラコン酸イソメラーゼ(citraconate isomerasae)、およびメサコン酸デカルボキシラーゼなど、または本明細書で開示される生合成経路のより多くの酵素を、所望により、経路中の酵素を最大で全て含めて、本発明の天然に存在しない微生物体に含めることもできる。
本明細書に記載するメタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートの生合成に加えて、本発明の天然に存在しない微生物体および方法はまた、種々の組合せ、すなわち、お互いに組合せて、ならびに当技術分野で周知の他の微生物体および方法と組合せて利用して、他のルートによる生成物の生合成を達成することもできる。例えば、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートの生産体の使用に代わる、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートを生成するための1つの代替が、メタクリル酸経路、メタクリレートエステル経路、3−ヒドロキシイソブチレート経路および/または2−ヒドロキシイソブチレート経路の中間体を、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートに転換することが可能な別の微生物体の添加によるものである。1つのそのような手順は、例えば、メタクリル酸経路、メタクリレートエステル経路、3−ヒドロキシイソブチレート経路および/または2−ヒドロキシイソブチレート経路の中間体を生成する微生物体の発酵を含む。次いで、メタクリル酸経路、メタクリレートエステル経路、3−ヒドロキシイソブチレート経路および/または2−ヒドロキシイソブチレート経路の中間体を、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートに転換する第2の微生物体のための基質として、メタクリル酸経路、メタクリレートエステル経路、3−ヒドロキシイソブチレート経路および/または2−ヒドロキシイソブチレート経路の中間体を使用することができる。メタクリル酸経路、メタクリレートエステル経路、3−ヒドロキシイソブチレート経路および/もしくは2−ヒドロキシイソブチレート経路の中間体を、第2の生物体の別の培養物に直接添加して、またはメタクリル酸経路、メタクリレートエステル経路、3−ヒドロキシイソブチレート経路および/もしくは2−ヒドロキシイソブチレート経路の中間体の生産体の元々の培養物から、これらの微生物体を、例えば、細胞分離により枯渇させることができ、次いで、その後に、第2の生物体を発酵ブロスに添加し、これを利用して、中間体の精製ステップなしで最終生成物を生成することができる。
他の実施形態では、本発明の天然に存在しない微生物体および方法を、多種多様なサブ経路として組み立てて、例えば、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートの生合成を達成することができる。これらの実施形態では、所望の本発明の生成物の生合成経路を、異なる微生物体へと分離することができ、これらの異なる微生物体を共培養して、最終生成物を生成することができる。そのような生合成スキームでは、最終生成物が合成されるまで、1つの微生物体の生成物が、第2の微生物体のための基質となる。例えば、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートの生合成を、1つの経路の中間体を、別の経路の中間体、または生成物に転換するための生合成経路を含有する微生物体を構築することによって達成することができる。それに代わって、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートはまた、同じ槽中で2つの生物体を使用する共培養または共発酵を通して、微生物体から生合成的に生成することもでき、この場合、第1の微生物体が、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートの中間体を生成し、第2の微生物体が、その中間体を、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートに転換する。
本明細書において提供される教示および手引きを考慮すると、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートを生成するために、他の微生物体、サブ経路を有する他の天然に存在しない微生物体の共培養、ならびに当技術分野で周知の他の化学的および/または生化学的な手順の組合せを併用する、本発明の天然に存在しない微生物体および方法について、多種多様な組合せおよび置換形態が存在することが当業者により理解される。
メタクリル酸経路、メタクリレートエステル経路、3−ヒドロキシイソブチレート経路および/または2−ヒドロキシイソブチレート経路の酵素またはタンパク質のためのコード核酸の供給源は、例えば、コードされる遺伝子産物が参照反応を触媒することが可能である任意の種を含み得る。そのような種は、原核生物および真核生物の両方を含み、それらとして、これらに限定されないが、古細菌および真正細菌を含めた、細菌、ならびに酵母、植物、昆虫、動物、およびヒトを含む哺乳動物を含めた、真核生物が挙げられる。そのような供給源の例示的な種には、例えば、Escherichia種(Escherichia coli、Escherichia fergusoniiを含む)、Methanocaldococcus jannaschii、Leptospira interrrogans、Geobacter sulfurreducens、Chloroflexus aurantiacus、Roseiflexus種RS−1、Chloroflexus aggregans、Achromobacter xylosoxydans、Clostrdia種(Clostridium kluyveri、Clostridium symbiosum、Clostridium acetobutylicum、Clostridium saccharoperbutylacetonicum、Clostridium ljungdahliiを含む)、Trichomonas vaginalis G3、Trypanosoma brucei、Acidaminococcus fermentans、Fusobacterium種(Fusobacterium nucleatum、Fusobacterium mortiferumを含む)、Corynebacterium glutamicum、Rattus norvegicus、Homo sapiens、Saccharomyces種(Saccharomyces cerevisiaeを含む)、Apsergillus種(Aspergillus terreus、Aspergillus oryzae、Aspergillus nigerを含む)、Gibberella zeae、Pichia stipitis、Mycobacterium種(Mycobacterium smegmatis、亜種paratuberculosis(pratuberculosis)を含めたMycobacterium aviumを含む)、Salinispora arenicola、 Pseudomonas種(Pseudomonas種CF600、Pseudomonas putida、Pseudomonas fluorescens、Pseudomonas aeruginosaを含む)、Ralstonia種(Ralstonia eutropha、Ralstonia eutropha JMP134、Ralstonia eutropha H16、Ralstonia pickettiiを含む)、Lactobacillus plantarum、Klebsiella oxytoca、Bacillus種(Bacillus subtilis、Bacillus pumilus、Bacillus megateriumを含む)、Pedicoccus pentosaceus、Chlorofexus種(Chloroflexus aurantiacus、Chloroflexus aggregansを含む)、Rhodobacter sphaeroides、Methanocaldococcus jannaschii、Leptospira interrrogans、Candida maltosa、Salmonella種(Salmonella enterica serovar Typhimuriumを含む)、Shewanella種(Shewanella oneidensis、Shewanella種MR−4を含む)、Alcaligenes faecalis、Geobacillus stearothermophilus、Serratia marcescens、Vibrio cholerae、Eubacterium barkeri、Bacteroides capillosus、Archaeoglobus fulgidus、Archaeoglobus fulgidus、Haloarcula marismortui、Pyrobaculum aerophilum株IM2、Rhizobium種(Rhizobium leguminosarumを含む)、および本明細書に開示されるかまたは対応する遺伝子のための供給源生物体として利用可能である他の例示的な種が含まれる。しかし、完全ゲノム配列が現在、395種の微生物のゲノム、ならびに多様な酵母、真菌、植物および哺乳動物のゲノムを含めて、550超の種について利用可能である(これらの半分超が公共のデータベース、例として、NCBI上で利用可能である)ので、例えば、公知の遺伝子のホモログ、オルソログ、パラログおよび非オルソロガス遺伝子の置換物を含めた、関係のあるまたは離れた種における1つまたは複数の遺伝子について、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートの必要な生合成活性をコードする遺伝子を同定すること、ならびに生物体間で遺伝子変化物(genetic alteration)を交換することは、当技術分野で日常的であり、周知である。したがって、特定の生物体、例として、E.coliに言及して本明細書に記載する、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートの生合成を可能にする代謝変化は、原核生物および真核生物を一様に含めた、他の微生物に容易に適用することができる。本明細書において提供される教示および手引きを考慮すると、1つの生物体において例示される代謝変化を、他の生物体に等しく適用することができることを当業者は知る。
代替のメタクリル酸の生合成経路、メタクリレートエステルの生合成経路、3−ヒドロキシイソブチレートの生合成経路および/または2−ヒドロキシイソブチレートの生合成経路が無関係な種に存在する場合などの一部の例では、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートの生合成を、例えば、参照反応に代わる類似するが同一ではない代謝反応を触媒する、無関係な種からの1つまたは複数のパラログの外因性の発現により、宿主種に付与することができる。異なる生物体間には、代謝のネットワークの間に特定の差が存在することから、異なる生物体間においては、実際の遺伝子の使用が異なる場合があることが当業者により理解される。しかし、本明細書において提供される教示および手引きを考慮すると、本発明の教示および方法を、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートを合成する微生物体を対象種において構築するために本明細書に例示される代謝変化とコグネイトな代謝変化を使用すれば、全ての微生物体に適用することができることもまた当業者は理解する。
天然に存在しない、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートを生成する宿主を構築し、それらの発現レベルを試験するための方法を、例えば、当技術分野で周知の組換えおよび検出の方法により実施することができる。そのような方法は、例えば、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual,第3版、Cold Spring Harbor Laboratory、New York(2001年);およびAusubelら、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley and Sons、Baltimore, MD(1999年)に記載されているのを見出すことができる。
メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートを生成する経路に関与する外因性核酸配列は、それらに限定されないが、コンジュゲーション、エレクトロポレーション、化学的変換、形質導入、トランスフェクションおよび超音波形質転換を含む当技術分野で周知の技術を用いて、宿主細胞に安定してまたは一時的に導入することができる。E.coliまたは他の原核細胞での外因性発現では、遺伝子のいくつかの核酸配列または真核生物の核酸のcDNAは、N末端ミトコンドリアなどのターゲティングシグナルまたは他のターゲティングシグナルをコードすることができ、それは、所望により、原核生物の宿主細胞への形質転換の前に除去することができる。例えば、ミトコンドリアのリーダー配列を除去すると、E.coliでの発現が増加した(Hoffmeisterら、J. Biol. Chem. 280巻、4329〜4338頁(2005年))。酵母または他の真核細胞での外因性発現では、宿主細胞に適したミトコンドリアのターゲティングまたは分泌シグナルなどの適切なターゲティング配列を加えることによって、遺伝子は、リーダー配列を加えることなしにサイトゾルで発現させることができるか、またはミトコンドリアもしくは他のオルガネラを標的にすることができるか、または分泌を標的にすることができる。したがって、核酸配列にターゲティング配列を除去するか含めるための適当な改変を外因性核酸配列に組み込んで、望ましい特性を付与できることが理解される。さらに、当技術分野で周知の技術を用いて遺伝子にコドン最適化を行って、タンパク質の最適化された発現を達成することができる。
宿主生物体で機能的である発現調節配列に作動可能に連結されている、本明細書で例示される1つまたは複数のメタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレート生合成経路をコードする核酸を含むように、1つまたは複数の発現ベクターを構築することができる。本発明の微生物宿主生物体での使用に適用可能な発現ベクターには、例えば、宿主染色体への安定した組込みで作動可能なベクターおよび選択配列またはマーカーを含めて、プラスミド、ファージベクター、ウイルスベクター、エピソームおよび人工染色体が含まれる。さらに、発現ベクターは、1つまたは複数の選択可能なマーカー遺伝子および適当な発現調節配列を含むことができる。例えば、抗生物質もしくは毒素に対する耐性を提供するか、栄養要求性の欠乏を補充するか、または培地中にない重大な栄養素を供給する、選択可能なマーカー遺伝子を含めることもできる。発現調節配列は、当技術分野で周知である、構成的および誘導可能なプロモーター、転写エンハンサー、転写ターミネーターなどを含めることができる。2つ以上の外因性コード核酸を共発現させる場合、両方の核酸を、例えば、単一の発現ベクターまたは別々の発現ベクターに挿入することができる。単一ベクターの発現では、コード核酸を作動的に1つの共通の発現調節配列に連結することもでき、または異なる発現調節配列に、例えば1つの誘導可能なプロモーターおよび1つの構成的プロモーターに連結することもできる。代謝もしくは合成経路に関与する外因性核酸配列の形質転換は、当技術分野で周知である方法を用いて確認することができる。そのような方法には、例えば、mRNAのノーザンブロットもしくはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅などの核酸分析、または遺伝子産物の発現についてのイムノブロッティング、または導入された核酸配列もしくはその対応する遺伝子産物の発現を試験する他の適切な分析法が含まれる。外因性核酸は所望の産物の産生に十分な量で発現されることが当業者によって理解され、また、当技術分野で周知であり本明細書で開示される方法を用いて発現レベルを最適化して十分な発現を得ることができることがさらに理解される。
本発明は、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートを生成する方法であって、メタクリル酸経路を含む本発明の微生物体を使用する方法をさらに提供する。特定の実施形態では、本発明は、天然に存在しない微生物体であって、メタクリル酸を生成するのに十分な量で発現されるメタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメタクリル酸経路を有する微生物体を含む微生物体を、メタクリル酸を生成する条件下およびそれを生成するのに十分な期間培養することによって、メタクリル酸を生成するための方法であって、前記メタクリル酸経路は、シトラマル酸シンターゼ(A)、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ(B)、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ(C)を含む(図1、経路(1)A/B/C)、方法を提供する。本明細書で開示されるように、この微生物体は、メタクリル酸経路の酵素(経路中の酵素を最大で全て含む)をコードする、2つ以上の外因性核酸を含むことができ、例えば、3つの外因性核酸が、シトラマル酸シンターゼ、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼをコードする。
特定の実施形態では、MAAを生成する、本発明の天然に存在しない微生物体は、異種の核酸である少なくとも1つの外因性核酸を有することができる。別の実施形態では、MAAを生成する、天然に存在しない微生物体は、実質的に嫌気性の培地中にあってよい。
別の実施形態では、本発明は、天然に存在しない微生物体であって、メタクリル酸を生成するのに十分な量で発現されるメタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメタクリル酸経路を含む微生物体を、メタクリル酸を生成する条件下およびそれを生成するのに十分な期間培養することによって、メタクリル酸を生成するための方法であって、前記メタクリル酸経路は、シトラマル酸シンターゼ(A)、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ(B)、シトラコン酸イソメラーゼ(G)、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ(H)を含む(図1、経路(2)A/B/G/H)、方法を提供する。さらに別の実施形態では、本発明は、天然に存在しない微生物体であって、メタクリル酸を生成するのに十分な量で発現されるメタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメタクリル酸経路を含む微生物体を、メタクリル酸を生成する条件下およびそれを生成するのに十分な期間培養することによって、メタクリル酸を生成するための方法であって、前記メタクリル酸経路は、シトラマル酸シンターゼ(A)、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ(F)、シトラコン酸イソメラーゼ(G)、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ(C)を含む(図1、経路(3)A/F/G/C)、方法を提供する。
さらなる実施形態では、本発明は、天然に存在しない微生物体であって、メタクリル酸を生成するのに十分な量で発現されるメタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメタクリル酸経路を含む微生物体を、メタクリル酸を生成する条件下およびそれを生成するのに十分な期間培養することによって、メタクリル酸を生成する方法であって、前記メタクリル酸経路は、シトラマル酸シンターゼ(A)、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ(F)、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ(H)を含む(図1、経路(4)A/F/H)、方法を提供する。さらにさらなる実施形態では、本発明は、天然に存在しない微生物体であって、メタクリル酸を生成するのに十分な量で発現されるメタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメタクリル酸経路を含む微生物体を、メタクリル酸を生成する条件下およびそれを生成するのに十分な期間培養することによって、メタクリル酸(methacylic acid)を生成するための方法であって、前記メタクリル酸経路は、シトラマリルCoAリアーゼ(D)、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ(E)、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ(B)、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ(C)を含む(図1、経路(5)D/E/B/C)、方法を提供する。
さらなる実施形態では、本発明は、天然に存在しない微生物体であって、メタクリル酸を生成するのに十分な量で発現されるメタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメタクリル酸経路を含む微生物体を、メタクリル酸を生成する条件下およびそれを生成するのに十分な期間培養することによって、メタクリル酸を生成するための方法であって、前記メタクリル酸経路は、シトラマリルCoAリアーゼ(D)、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ(E)、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ(B)、シトラコン酸イソメラーゼ(G)、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ(H)を含む(図1、経路(6)D/E/B/G/H)、方法を提供する。さらに別の実施形態では、本発明は、天然に存在しない微生物体であって、メタクリル酸を生成するのに十分な量で発現されるメタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメタクリル酸経路を含む微生物体を、メタクリル酸を生成する条件下およびそれを生成するのに十分な期間培養することによって、メタクリル酸を生成するための方法であって、前記メタクリル酸経路は、シトラマリルCoAリアーゼ(D)、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ(E)、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ(F)、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ(H)を含む(図1、経路(7)D/E/F/H)、方法を提供する。
別の実施形態では、本発明は、天然に存在しない微生物体であって、メタクリル酸を生成するのに十分な量で発現されるメタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメタクリル酸経路を含む微生物体を、メタクリル酸を生成する条件下およびそれを生成するのに十分な期間培養することによって、メタクリル酸を生成するための方法であって、前記メタクリル酸経路は、シトラマリルCoAリアーゼ(D)、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ(E)、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ(F)、シトラコン酸イソメラーゼ(G)、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ(C)を含む(図1、経路(8)D/E/F/G/C)、方法を提供する。さらに、本発明は、天然に存在しない微生物体であって、メタクリル酸を生成するのに十分な量で発現されるメタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメタクリル酸経路を含む微生物体を、メタクリル酸を生成する条件下およびそれを生成するのに十分な期間培養することによって、メタクリル酸を生成するための方法であって、前記メタクリル酸経路は、アコニット酸デカルボキシラーゼ(I)、イタコン酸イソメラーゼ(J)、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ(C)を含む(図1、経路(9)I/J/C)、方法を提供する。
さらにさらなる実施形態では、本発明は、天然に存在しない微生物体であって、メタクリル酸を生成するのに十分な量で発現されるメタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメタクリル酸経路を含む微生物体を、メタクリル酸を生成する条件下およびそれを生成するのに十分な期間培養することによって、メタクリル酸を生成するための方法であって、前記メタクリル酸経路は、アコニット酸デカルボキシラーゼ(I)、イタコン酸イソメラーゼ(J)、シトラコン酸イソメラーゼ(G)、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ(H)を含む(図1、経路(10)I/J/G/H)、方法を提供する。さらなる実施形態では、本発明は、天然に存在しない微生物体であって、メタクリル酸を生成するのに十分な量で発現されるメタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメタクリル酸経路を含む微生物体を、メタクリル酸を生成する条件下およびそれを生成するのに十分な期間培養することによって、メタクリル酸を生成するための方法であって、前記メタクリル酸経路は、アコニット酸デカルボキシラーゼ(I)、イタコニルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ(L)、シトラマリルCoAデヒドラターゼ(K)、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ(E)、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ(B)、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ(C)を含む(図1、経路(11)I/L/K/E/B/C)、方法を提供する。
本発明は、天然に存在しない微生物体であって、メタクリル酸を生成するのに十分な量で発現されるメタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメタクリル酸経路を含む微生物体を、メタクリル酸を生成する条件下およびそれを生成するのに十分な期間培養することによって、メタクリル酸を生成するための方法であって、前記メタクリル酸経路は、アコニット酸デカルボキシラーゼ(I)、イタコニルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ(L)、シトラマリルCoAデヒドラターゼ(K)、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ(E)、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ(B)、シトラコン酸イソメラーゼ(G)、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ(H)を含む(図1、経路(12)I/L/K/E/B/G/H)、方法を提供する。その上さらなる実施形態では、本発明は、天然に存在しない微生物体であって、メタクリル酸を生成するのに十分な量で発現されるメタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメタクリル酸経路を有する微生物体を含む微生物体を、メタクリル酸を生成する条件下およびそれを生成するのに十分な期間培養することによって、メタクリル酸を生成するための方法であって、前記メタクリル酸経路は、アコニット酸デカルボキシラーゼ(I)、イタコニルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ(L)、シトラマリルCoAデヒドラターゼ(K)、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ(E)、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ(F)、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ(H)を含む(図1、経路(13)I/L/K/E/F/H)、方法を提供する。さらなる実施形態では、本発明は、天然に存在しない微生物体であって、メタクリル酸を生成するのに十分な量で発現されるメタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメタクリル酸経路を含む微生物体を、メタクリル酸を生成する条件下およびそれを生成するのに十分な期間培養することによって、メタクリル酸を生成するための方法であって、前記メタクリル酸経路は、アコニット酸デカルボキシラーゼ(I)、イタコニルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ(L)、シトラマリルCoAデヒドラターゼ(K)、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ(E)、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ(F)、シトラコン酸イソメラーゼ(G)、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ(C)を含む(図1、経路(14)I/L/K/E/F/G/C)、方法を提供する。
本発明はまた、3−ヒドロキシイソブチレートエステルを生成する条件下およびそれを生成するのに十分な期間、天然に存在しない微生物体を培養すること(この天然に存在しない微生物体は、3−ヒドロキシイソブチレートエステルを生成するのに十分な量で発現されるアルコールトランスフェラーゼまたは3−ヒドロキシイソブチレートエステルを形成する酵素をコードする外因性核酸を含む)と、3−ヒドロキシイソブチレートエステルを化学的に脱水して、メタクリレートエステルを生成することとによって、メタクリレートエステルを生成するための方法も提供し、これを、図28、ならびに図30のステップ6および7に例示する。別の実施形態では、本発明は、メチル−3−ヒドロキシイソブチレートを生成する条件下およびそれを生成するのに十分な期間、天然に存在しない微生物体を培養する工程(この天然に存在しない微生物体は、メチル−3−ヒドロキシイソブチレートを生成するのに十分な量で発現されるアルコールトランスフェラーゼまたはエステルを形成する酵素をコードする外因性核酸を含む)と、前記メチル−3−ヒドロキシイソブチレートを化学的に脱水して、メチルメタクリレートを生成する工程とによって、メチルメタクリレートを生成するための方法を提供し、これを、図30のステップ6および7に例示する。本発明のいくつかの態様では、本明細書で開示されるメタクリレートエステルまたはメチルメタクリレートを生成するための方法は、天然に存在しない微生物体が、図1〜11および28〜30に記載されるかまたはそれらの任意の組み合わせのとおりの、3−ヒドロキシイソブチリルCoA経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むことをさらに含む。いくつかの態様では、本発明は、外因性核酸が、異種の核酸であることを条件とする。いくつかの態様では、本発明は、天然に存在しない微生物体が、実質的に嫌気性の培地中にあることを条件とする。
一実施形態では、本発明は、天然に存在しない微生物体であって、メチルメタクリレートを生成するのに十分な量で発現されるメチルメタクリレート経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメチルメタクリレート経路を有する微生物体を含み、(i)還元的TCA経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む還元的TCA経路であって、前記少なくとも1つの外因性核酸が、ATPクエン酸リアーゼ、クエン酸リアーゼ、フマル酸レダクターゼ、およびアルファ−ケトグルタル酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、または必要に応じて、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、アコニターゼ、シトリルCoAシンテターゼもしくはシトリルCoAリアーゼから選択される還元的TCA経路;(ii)還元的TCA経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む還元的TCA経路であって、前記少なくとも1つの外因性核酸が、ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、COデヒドロゲナーゼ、およびHヒドロゲナーゼから選択される還元的TCA経路;あるいは(iii)少なくとも1つの外因性核酸が、COデヒドロゲナーゼ、Hヒドロゲナーゼ、およびそれらの組合せから選択される酵素をコードすることをさらに含み;ここで、前記メチルメタクリレート経路が、アルコールトランスフェラーゼまたはエステルを形成する酵素、およびデヒドラターゼを含む微生物体を提供する。別の態様では、本発明は、方法であって、(i)を含む微生物体が、ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、アコニターゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、スクシニルCoAシンテターゼ、スクシニルCoAトランスフェラーゼ、フマラーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、酢酸キナーゼ、ホスホトランスアセチラーゼ、アセチルCoAシンテターゼ、NAD(P)H:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、フェレドキシン、およびそれらの組合せから選択される酵素をコードする外因性核酸をさらに含む方法を提供する。別の態様では、本発明は、(ii)を含む微生物体が、アコニターゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、スクシニルCoAシンテターゼ、スクシニルCoAトランスフェラーゼ、フマラーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、およびそれらの組合せから選択される酵素をコードする外因性核酸をさらに含む方法を提供する。一態様では、この微生物体は、それぞれメチルメタクリレート酵素をコードする2つの外因性核酸を含む。さらなる態様では、2つの外因性核酸が、アルコールトランスフェラーゼおよびデヒドラターゼ、またはそれに代わって、エステルを形成する酵素およびデヒドラターゼをコードする。
一実施形態では、本発明は、方法であって、(i)を含む微生物体が、ATPクエン酸リアーゼ、クエン酸リアーゼ、フマル酸レダクターゼ、およびアルファ−ケトグルタル酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼをコードする4つの外因性核酸を含むか;(ii)を含む前記微生物体が、ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、COデヒドロゲナーゼ、およびHヒドロゲナーゼをコードする5つの外因性核酸を含むか;(iii)を含む前記微生物体が、COデヒドロゲナーゼおよびHヒドロゲナーゼをコードする2つの外因性核酸を含む方法を提供する。
一実施形態では、本発明は、メチルメタクリレートを生成するための方法であって、メチルメタクリレートを生成する条件下およびそれを生成するのに十分な期間、本明細書で開示される天然に存在しない微生物体を培養する工程を含む方法を提供する。
別の実施形態では、本発明は、メタクリレートエステルを生成するための方法であって、3−ヒドロキシイソブチレートエステルを生成する条件下およびそれを生成するのに十分な期間、天然に存在しない微生物体を培養すること(前記天然に存在しない微生物体は、3−ヒドロキシイソブチレートエステルを生成するのに十分な量で発現されるアルコールトランスフェラーゼまたは3−ヒドロキシイソブチレートエステルを形成する酵素をコードする外因性核酸を含み、(i)還元的TCA経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む還元的TCA経路であって、前記少なくとも1つの外因性核酸が、ATPクエン酸リアーゼ、クエン酸リアーゼ、フマル酸レダクターゼ、およびアルファ−ケトグルタル酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、または必要に応じて、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、アコニターゼ、シトリルCoAシンテターゼもしくはシトリルCoAリアーゼから選択される還元的TCA経路;(ii)還元的TCA経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む還元的TCA経路であって、前記少なくとも1つの外因性核酸が、ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、COデヒドロゲナーゼ、およびHヒドロゲナーゼから選択される還元的TCA経路;または(iii)COデヒドロゲナーゼ、Hヒドロゲナーゼ、およびそれらの組合せから選択される酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸をさらに含む)と、前記3−ヒドロキシイソブチレートエステルを化学的に脱水して、メタクリレートエステルを生成することとを含む方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、メタクリレートエステルを生成するための方法であって、2−ヒドロキシイソブチレートエステルを生成する条件下およびそれを生成するのに十分な期間、天然に存在しない微生物体を培養すること(前記天然に存在しない微生物体は、2−ヒドロキシイソブチレートエステルを生成するのに十分な量で発現されるアルコールトランスフェラーゼまたは2−ヒドロキシイソブチレートエステルを形成する酵素をコードする外因性核酸を含み、(i)還元的TCA経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む還元的TCA経路であって、前記少なくとも1つの外因性核酸が、ATPクエン酸リアーゼ、クエン酸リアーゼ、フマル酸レダクターゼ、およびアルファ−ケトグルタル酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、または必要に応じて、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、アコニターゼ、シトリルCoAシンテターゼもしくはシトリルCoAリアーゼから選択される還元的TCA経路;(ii)還元的TCA経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む還元的TCA経路であって、前記少なくとも1つの外因性核酸が、ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、COデヒドロゲナーゼ、およびHヒドロゲナーゼから選択される還元的TCA経路;または(iii)COデヒドロゲナーゼ、Hヒドロゲナーゼ、およびそれらの組合せから選択される酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸をさらに含む)と、前記2−ヒドロキシイソブチレートエステルを化学的に脱水して、メタクリレートエステルを生成することとを含む方法を提供する。さらに別の実施形態では、本発明は、メチルメタクリレートを生成するための方法であって、メチル−3−ヒドロキシイソブチレートを生成する条件下およびそれを生成するのに十分な期間、天然に存在しない微生物体を培養すること(前記天然に存在しない微生物体は、メチル−3−ヒドロキシイソブチレートを生成するのに十分な量で発現されるアルコールトランスフェラーゼまたはエステルを形成する酵素をコードする外因性核酸を含み、(i)還元的TCA経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む還元的TCA経路であって、前記少なくとも1つの外因性核酸が、ATPクエン酸リアーゼ、クエン酸リアーゼ、フマル酸レダクターゼ、およびアルファ−ケトグルタル酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、または必要に応じて、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、アコニターゼ、シトリルCoAシンテターゼもしくはシトリルCoAリアーゼから選択される還元的TCA経路;(ii)還元的TCA経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む還元的TCA経路であって、前記少なくとも1つの外因性核酸が、ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、COデヒドロゲナーゼ、およびHヒドロゲナーゼから選択される還元的TCA経路;または(iii)COデヒドロゲナーゼ、Hヒドロゲナーゼ、およびそれらの組合せから選択される酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸をさらに含む)と、前記メチル−3−ヒドロキシイソブチレートを化学的に脱水して、メチルメタクリレートを生成することとを含む方法を提供する。上記の方法の一態様では、前記外因性核酸の少なくとも1つは、異種の核酸である。上記の方法の別の態様では、天然に存在しない微生物体は、実質的に嫌気性の培地中にある。
一実施形態では、本発明は、上記および本明細書に開示される方法であって、(i)を含む前記微生物体が、ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、アコニターゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、スクシニルCoAシンテターゼ、スクシニルCoAトランスフェラーゼ、フマラーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、酢酸キナーゼ、ホスホトランスアセチラーゼ、アセチルCoAシンテターゼ、NAD(P)H:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、フェレドキシン、およびそれらの組合せから選択される酵素をコードする外因性核酸をさらに含む方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、上記および本明細書に開示される方法であって、(ii)を含む前記微生物体が、アコニターゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、スクシニルCoAシンテターゼ、スクシニルCoAトランスフェラーゼ、フマラーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、およびそれらの組合せから選択される酵素をコードする外因性核酸をさらに含む方法を提供する。さらに別の実施形態では、本発明は、上記および本明細書に開示される方法であって、(i)を含む前記微生物体が、ATPクエン酸リアーゼ、クエン酸リアーゼ、フマル酸レダクターゼ、およびアルファ−ケトグルタル酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼをコードする4つの外因性核酸を含むか;(ii)を含む前記微生物体が、ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、COデヒドロゲナーゼ、およびHヒドロゲナーゼをコードする5つの外因性核酸を含むか;(iii)を含む前記微生物体が、COデヒドロゲナーゼおよびHヒドロゲナーゼをコードする2つの外因性核酸を含む方法を提供する。
一態様では、本明細書で開示される方法は、3−ヒドロキシイソブチレートエステルを生成するのに十分な量で発現される3−ヒドロキシイソブチレートエステル経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む3−ヒドロキシイソブチレートエステル経路を含む微生物体を増進することができ、前記3−ヒドロキシイソブチレートエステル経路は、(a)3−ヒドロキシイソ酪酸CoAトランスフェラーゼもしくは3−ヒドロキシイソ酪酸CoAシンテターゼ;およびアルコールトランスフェラーゼ;または(b)3−ヒドロキシイソブチレートエステルを形成する酵素から選択される経路を含む。一態様では、本明細書で開示される方法は、2−ヒドロキシイソブチレートエステルを生成するのに十分な量で発現される2−ヒドロキシイソブチレートエステル経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む2−ヒドロキシイソブチレートエステル経路を含む微生物体を増進することができ、前記2−ヒドロキシイソブチレートエステル経路は、(a)2−ヒドロキシイソ酪酸CoAトランスフェラーゼもしくは2−ヒドロキシイソ酪酸CoAシンテターゼ;およびアルコールトランスフェラーゼ;または(b)2−ヒドロキシイソブチレートエステルを形成する酵素から選択される経路を含む。
メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートの生成について試験するのに適した精製および/またはアッセイを、周知の方法を使用して実施することができる。試験する各工学的に操作された株について、3連の培養物などの適切な複製物を増殖させることができる。例えば、工学的に操作された産生宿主における生成物および副産物の形成をモニタリングすることができる。最終生成物および中間体、ならびに他の有機化合物を、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)、GC−MS(ガスクロマトグラフィー−質量分析)およびLC−MS(液体クロマトグラフィー−質量分析)などの方法、または当技術分野で周知である日常的な手順を用いる他の適切な分析法によって分析することができる。発酵ブロス中の生成物の放出を、培養上清で試験することもできる。副産物および残留グルコースは、例えば、グルコースおよびアルコールには屈折率検出器を、有機酸には紫外線検出器を用いるHPLCによって(Linら、Biotechnol. Bioeng. 90巻、775〜779頁(2005年))、または当技術分野で周知である他の適切なアッセイおよび検出方法によって定量化することができる。また、外因性DNA配列から得られた個々の酵素またはタンパク質の活性も、当技術分野で周知の方法を使用してアッセイすることができる。例えば、シトラマル酸シンターゼの活性を、精製タンパク質、アセチルCoA、ピルベートおよび緩衝液の溶液中でCoAの生成を経時的にモニタリングすることによってアッセイすることができる(Atsumiら、AEM、74巻:7802〜7808頁(2008年))。
メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートは、当技術分野で周知である様々な方法を用いて培養物中の他の成分から分離することができる。そのような分離法には、例えば、抽出法、ならびに連続液液抽出、浸透気化法、膜濾過、膜分離、逆浸透、電気透析、蒸留、結晶化、遠心分離、抽出濾過、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィーおよび限外濾過を含む方法が含まれる。上記の方法は全て、当技術分野において周知である。
本明細書で記載される天然に存在しない微生物体のいずれかを培養して、本発明の生合成生成物を生成および/または分泌することができる。例えば、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートの生合成的生成のために、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレート生産体を培養することができる。
メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートを生成するために、組換え体の株を、炭素供給源および他の必須栄養素を有する培地で培養する。全体的なプロセスのコストを低減するために、発酵槽中の嫌気的条件を維持することが、時には望ましく、そうすることが、極めて望ましい場合がある。そのような条件は、例えば、最初に、窒素で培地をスパージし、次いで、フラスコを、セプタムおよびクリンプキャップを用いて密封することによって得ることができる。嫌気的条件で増殖が観察されない株については、微好気的または実質的に嫌気的な条件を、限定的通気のための小さな穴をセプタムに開けることによって適用することができる。例示的な嫌気的条件は、先に記載されており、当技術分野で周知である。例示的な好気的条件および嫌気的条件が、例えば、2007年8月10日出願の米国公開第2009/0047719号に記載されている。本明細書で開示されるように、発酵は、回分、流加または連続的な様式で実施することができる。
培地を望ましいpHに維持することが必要なとき、所望により、塩基、例えばNaOHもしくは他の塩基、または酸の添加によって培地のpHを所望のpH、特に中性pH、例えば約7のpHに維持することができる。増殖速度は、分光光度計(600nm)を用いて光学密度を測定することによって決定することができ、グルコース取り込み速度は、炭素源枯渇を経時的にモニターすることによって決定できる。
増殖培地は、例えば、天然に存在しない微生物に炭素源を供給することができる任意の炭水化物源を含み得る。例えば、そのような供給源には、糖類、例えばグルコース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、スクロースおよびデンプンが含まれる。炭水化物の他の供給源には、例えば再生可能なフィードストックおよびバイオマスが含まれる。本発明の方法でフィードストックとして用いることができる例示的なバイオマスの型には、セルロースのバイオマス、ヘミセルロースのバイオマスおよびリグニンフィードストックまたはフィードストックの部分が含まれる。そのようなバイオマスフィードストックは、例えば炭素源として有用な炭水化物基質、例えばグルコース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、マンノース、フルクトースおよびデンプンを含有する。本明細書で提供される教示および指針を考慮すると、当業者は、上記に例示されるもの以外の再生可能なフィードストックおよびバイオマスを、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートの生成のための本発明の微生物体を培養するのに用いることもできることを理解するであろう。
いくつかの実施形態では、本発明は、大気中の炭素取り込みの供給源を反映する炭素−12、炭素−13および炭素−14の比を有する、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/もしくは2−ヒドロキシイソブチレート、またはメタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/もしくは2−ヒドロキシイソブチレートの中間体を提供する。いくつかのそのような実施形態では、取り込みの供給源はCOである。いくつかの実施形態では、いくつかの実施形態では、本発明は、石油に基づく炭素取り込みの供給源を反映する炭素−12、炭素−13および炭素−14の比を有する、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/もしくは2−ヒドロキシイソブチレート、またはメタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/もしくは2−ヒドロキシイソブチレートの中間体を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、大気中の炭素取り込みの供給源と石油に基づく取り込みの供給源との組合せにより得られる炭素−12、炭素−13および炭素−14の比を有する、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/もしくは2−ヒドロキシイソブチレート、またはメタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/もしくは2−ヒドロキシイソブチレートの中間体を提供する。取り込みの供給源のそのような組合せは、炭素−12、炭素−13および炭素−14の比を変化させることができる1つの手段となる。
再生可能なフィードストック、例として、上記および本明細書に例示されるものに加えてまた、炭素の供給源としてのシンガスで増殖するために、本発明のメタクリル酸(methacrylic acid methacrylic acid)、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートの微生物体を改変することもできる。この特定の実施形態では、シンガスまたは他の気体の炭素供給源を利用するための代謝経路をもたらすために、1つまたは複数のタンパク質または酵素を、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートを生成する生物体で発現させる。
合成ガス(syngas)またはプロデューサーガスとしても公知の合成ガス(synthesis gas)は、石炭、ならびに炭素材、例えば農作物および残渣を含むバイオマス材のガス化の主要な生成物である。合成ガスは主としてHおよびCOの混合物であり、それらに限定されないが、石炭、石油、天然ガス、バイオマスおよび廃棄有機物を含む任意の有機フィードストックのガス化から得ることができる。ガス化は、高い燃料対酸素比の下で一般に実施される。ほとんどHおよびCOであるが、合成ガスはより少ない量のCOおよび他のガスをも含み得る。したがって、合成ガスはCO、さらにCOなどのガス状炭素の費用効果の高い供給源を提供する。
Wood−Ljungdahl経路は、COおよびHからアセチルCoAおよびアセテートなどの他の生成物への転換を触媒する。COおよび合成ガスを利用することができる生物体は一般に、Wood−Ljungdahl経路に包含される酵素および変換の同じ基本セットを通して、COおよびCO/H混合物を利用する能力も有する。同じ生物体がCOを用いることもでき、同じ経路が含まれることが明らかにされるずっと前に、微生物によるCOからアセテートへのH依存性転換が認識された。必要な還元当量を供給する水素が存在する限り、多くの酢酸生成菌がCOの存在下で増殖し、アセテートなどの化合物を生成することが示された(例えば、Drake、Acetogenesis、3〜60頁、Chapman and Hall、New York、(1994年)参照)。これは、以下の式に要約することができる:
2CO+4H+nADP+nPi→CHCOOH+2HO+nATP
したがって、Wood−Ljungdahl経路を有する天然に存在しない微生物は、アセチルCoAおよび他の所望の生成物の生成にCOおよびH混合物も利用することができる。
Wood−Ljungdahl経路は当技術分野で周知であり、12個の反応からなり、それらは2つの分岐:(1)メチル分岐および(2)カルボニル分岐に分けることができる。メチル分岐はシンガスをメチルテトラヒドロ葉酸(メチルTHF)に転換し、カルボニル分岐はメチルTHFをアセチルCoAに転換する。メチル分岐における反応は、以下の酵素またはタンパク質によって順番に触媒される:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、ギ酸デヒドロゲナーゼ、ホルミルテトラヒドロ葉酸シンテターゼ、メテニルテトラヒドロ葉酸シクロデヒドラターゼ、メチレンテトラヒドロ葉酸デヒドロゲナーゼおよびメチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ。カルボニル分岐における反応は、以下の酵素またはタンパク質によって順番に触媒される:メチルテトラヒドロ葉酸:コリノイドタンパク質メチルトランスフェラーゼ(例えば、AcsE)、コリノイド鉄−硫黄タンパク質、ニッケル−タンパク質集合タンパク質(例えば、AcsF)、フェレドキシン、アセチルCoAシンターゼ、一酸化炭素デヒドロゲナーゼ、およびニッケル−タンパク質集合タンパク質(例えば、CooC)。十分な数のコード核酸を導入してメタクリル酸経路、メタクリレートエステル経路、3−ヒドロキシイソブチレート経路および/または2−ヒドロキシイソブチレート経路を生成するための本明細書で提供される教示および手引きに従って、当業者は、宿主生物体に存在しないWood−Ljungdahl酵素またはタンパク質をコードする核酸を少なくとも導入することに関して、同じ工学的設計を実施することもできることを理解する。したがって、改変された生物体が完全なWood−Ljungdahl経路を含むように、本発明の微生物体へ1つまたは複数のコード核酸を導入すると、シンガス利用能が付与される。
さらに、還元的(逆行性)トリカルボン酸回路が、CO、COおよび/またはHを、アセチルCoA、および他の生成物、例として、アセテートに転換するために使用され、かつ/またはヒドロゲナーゼ活性もまた、そのために使用することができる。炭素を、還元的TCA経路を介して固定することが可能な生物体は、以下の酵素の1つまたは複数を利用することができる:ATPクエン酸リアーゼ、クエン酸リアーゼ、アコニターゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、アルファ−ケトグルタル酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、スクシニルCoAシンテターゼ、スクシニルCoAトランスフェラーゼ、フマル酸レダクターゼ、フマラーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、NAD(P)H:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、一酸化炭素デヒドロゲナーゼ、およびヒドロゲナーゼ。具体的には、COを、還元的TCA回路を介してアセチルCoAまたはアセテートに固定するために、COおよび/またはHから一酸化炭素デヒドロゲナーゼおよびヒドロゲナーゼにより抽出された還元当量が利用される。アセテートを、酵素、例として、アセチルCoAトランスフェラーゼ、酢酸キナーゼ/ホスホトランスアセチラーゼ、およびアセチルCoAシンテターゼによりアセチルCoAに転換することができる。アセチルCoAを、メタクリル酸前駆体、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートに転換することができる。例えば、ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、および糖新生の酵素により、グリセルアルデヒド−3−リン酸、ホスホエノールピルベート、およびピルベート。メタクリル酸経路、メタクリレートエステル経路、3−ヒドロキシイソブチレート経路および/または2−ヒドロキシイソブチレート経路を生成するのに十分な数のコード核酸を導入するための、本明細書において提供される教示および手引きに従って、同じ工学的設計をまた、少なくとも、宿主の生物体中に存在しない還元的TCA経路の酵素またはタンパク質をコードする核酸を導入することに関しても実施することができることが当業者により理解される。したがって、改変された生物体が完全な還元的TCA経路を含有するように、1つまたは複数のコード核酸を本発明の微生物体に導入すると、シンガス利用能が付与される。
したがって、本明細書において提供される教示および手引きを考慮すると、天然に存在しない微生物体であって、炭素供給源、例として、炭水化物で増殖する場合、生合成された本発明の化合物を分泌する微生物体を生成することができることが当業者により理解される。そのような化合物には、例えば、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレート、ならびにメタクリル酸経路、メタクリレートエステル経路、3−ヒドロキシイソブチレート経路および/または2−ヒドロキシイソブチレート経路における中間体の代謝産物のいずれかが含まれる。必要とされることは、例えば、メタクリル酸の生合成経路、メタクリレートエステルの生合成経路、3−ヒドロキシイソブチレートの生合成経路および/または2−ヒドロキシイソブチレートの生合成経路の一部または全部を含める操作を含めて、所望の化合物または中間体の生合成を達成するため、必要とされる酵素またはタンパク質の活性の1つまたは複数に関して工学的な操作を行うだけである。したがって、本発明は、天然に存在しない微生物体であって、炭水化物または他の炭素供給源で増殖する場合、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートを生成および/または分泌する微生物体、ならびに炭水化物または他の炭素供給源で増殖する場合、メタクリル酸経路、メタクリレートエステル経路、3−ヒドロキシイソブチレート経路および/または2−ヒドロキシイソブチレート経路において示される中間体の代謝産物のいずれかを生成および/または分泌する微生物体を提供する。本発明のメタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートを生成する微生物体は、中間体、例えば、シトラマリルCoA、イタコニルCoA、イタコネート、シトラマレート、メサコネートまたはシトラコネートから合成を開始することができる。
本明細書に例示されるように、当技術分野で周知の方法を使用して、本発明の天然に存在しない微生物体は、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートを生成するのに十分な量のメタクリル酸経路、メタクリレートエステル経路、3−ヒドロキシイソブチレート経路および/または2−ヒドロキシイソブチレート経路の酵素またはタンパク質をコードする少なくとも1つの核酸を外因性に発現するように構築される。本発明の微生物体は、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートを生成するのに十分な条件下で培養されることが理解される。本明細書において提供される教示および手引きに従って、本発明の天然に存在しない微生物体は、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートの生合成を達成し、結果として、約0.1〜200mM以上の間の細胞内濃度をもたらすことができる。一般に、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートの細胞内濃度は、約3〜150mMの間、特に、約5〜125mMの間、より詳細には、約10mM、20mM、50mM、80mM以上を含めた、約8〜100mMの間である。これらの例示的な範囲のそれぞれの間のおよびそれらを上回る細胞内濃度もまた、本発明の天然に存在しない微生物体から達成することができる。
いくつかの実施形態では、培養条件は、嫌気的または実質的に嫌気的な増殖または維持の条件を含む。例示的な嫌気的条件が、先に記載されており、当技術分野で周知である。発酵プロセスのための例示的な嫌気的条件は、本明細書、および例えば、2007年8月10日出願の米国公開第2009/0047719号に記載されている。これらの条件のいずれかおよび当技術分野で周知の他の嫌気的条件を、天然に存在しない微生物体に関して用いることができる。そのような嫌気的または実質的に嫌気的な条件下で、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートの生産体は、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートを、5〜10mM以上の細胞内濃度および本明細書に例示される全ての他の濃度で合成することができる。上記の記載は、細胞内濃度を指すにもかかわらず、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートを生成する微生物体は、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートを、細胞内で生成し、かつ/または生成物を培地中に分泌することができることが理解される。
本明細書に開示される培養および発酵の条件に加えて、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートの生合成を達成するための増殖条件に、浸透圧保護剤を培養条件に添加することを含めることもできる。特定の実施形態では、本発明の天然に存在しない微生物体を、浸透圧保護剤の存在下において、本明細書に記載されるように維持し、培養し、または発酵させることができる。手短に述べると、浸透圧保護剤は、オスモライトとして作用し、本明細書に記載する微生物体が浸透圧のストレスを生き延びるのを支援する化合物を指す。浸透圧保護剤には、これらに限定されないが、ベタイン、アミノ酸、および糖のトレハロースが含まれる。そのような浸透圧保護剤の非限定的な例が、グリシンベタイン、プロリン(praline)ベタイン、ジメチルテチン、ジメチルスルホニオプロプリオネート(dimethylslfonioproprionate)、3−ジメチルスルホニオ−2−メチルプロプリオネート、ピペコリン酸、ジメチルスルホニオアセテート、コリン、L−カルニチンおよびエクトインである。一態様では、浸透圧保護剤は、グリシンベタインである。本明細書に記載する微生物体を浸透圧のストレスから保護するのに適している浸透圧保護剤の量およびタイプは、使用される微生物体に依存することは当業者に理解される。培養条件における浸透圧保護剤の量は、例えば、約0.1mM以下、約0.5mM以下、約1.0mM以下、約1.5mM以下、約2.0mM以下、約2.5mM以下、約3.0mM以下、約5.0mM以下、約7.0mM以下、約10mM以下、約50mM以下、約100mM以下、または約500mM以下であり得る。
いくつかの実施形態では、炭素フィードストック、ならびにホスフェート、アンモニア、サルフェート、クロリドおよび他のハロゲンなどの細胞による他の取り込み供給源を選んで、メタクリル酸、メタクリレートエステル(este)、メチルメタクリレート、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/もしくは2−ヒドロキシイソブチレート、またはメタクリル酸経路、メタクリレートエステル経路、メチルメタクリレート経路、3−ヒドロキシイソブチレート経路および/または2−ヒドロキシイソブチレート経路の任意の中間体に存在する原子の同位体の分布を変化させることができる。上記に列挙した種々の炭素フィードストックおよび他の取り込み供給源は、本明細書ではまとめて「取り込み供給源」を指す。取り込み供給源は、生成物としてのメタクリル酸経路、メタクリレートエステル経路、メチルメタクリレート経路、3−ヒドロキシイソブチレート経路および/もしくは2−ヒドロキシイソブチレート経路の中間体に存在する任意の原子について、またはメタクリル酸経路、メタクリレートエステル経路、メチルメタクリレート経路、3−ヒドロキシイソブチレート経路および/または2−ヒドロキシイソブチレート経路から逸脱した反応において生成される副産物について、同位体の富化をもたらし得る。同位体の富化は、例えば、炭素、水素、酸素、窒素、硫黄、リン、クロリドまたは他のハロゲンを含めた、任意の標的原子について達成することができる。
いくつかの実施形態では、取り込み供給源を選択して、炭素−12、炭素−13および炭素−14の比を変化させることができる。いくつかの実施形態では、取り込み供給源を選択して、酸素−16、酸素−17および酸素−18の比を変化させることができる。いくつかの実施形態では、取り込み供給源を選択して、水素、重水素および三重水素の比を変化させることができる。いくつかの実施形態では、取り込み供給源を選択して、窒素−14および窒素−15の比を変化させることができる。いくつかの実施形態では、取り込み供給源を選択して、硫黄−32、硫黄−33、硫黄−34および硫黄−35の比を変化させることができる。いくつかの実施形態では、取り込み供給源を選択して、リン−31、リン−32およびリン−33の比を変化させることができる。いくつかの実施形態では、取り込み供給源を選択して、塩素−35、塩素−36および塩素−37の比を変化させることができる。
いくつかの実施形態では、標的原子の同位体の比を、1つまたは複数の取り込み供給源を選択することによって、所望の比に変化させることができる。取り込み供給源は、自然界に見出されるような天然の供給源、または人造の供給源から得ることができ、当業者は、天然の供給源、人造の供給源、またはそれらの組合せを選択して、標的原子の同位体の所望の比を達成することができる。人造の取り込み供給源の例には、例えば、少なくとも部分的に化学的合成反応から得られる取り込み供給源が含まれる。そのような同位体が富化された取り込み供給源を、商業的に購入することもしくは実験室で調製することができ、かつ/または必要に応じて、取り込み供給源の天然の供給源と混合して、同位体の所望の比を達成することもできる。いくつかの実施形態では、所望の起源の、自然界に見出されるような取り込み供給源を選択することによって、取り込み供給源の標的原子の同位体比を達成することができる。例えば、本明細書で論じるように、天然の供給源は、バイオベースであり、生物学的有機体(biological organism)に由来してもよくもしくは生物学的有機体により合成されてもよく、または石油に基づく生成物もしくは大気などの供給源であってもよい。いくつかのそのような実施形態では、炭素の供給源を、例えば、炭素−14が枯渇している場合がある、化石燃料に由来する炭素供給源、または石油に由来する対応物よりも多くの量の炭素−14を保有する場合がある、環境もしくは大気中の炭素供給源、例として、COから選択することができる。
不安定な炭素の同位体である炭素−14または放射性炭素は、地球の大気中の1012個の炭素原子うちのおおよそ1個を構成し、約5700年の半減期を有する。炭素のストックは、上層大気中で、宇宙線および通常の窒素(14N)が関与する核反応により補充される。炭素−14が、遠い昔に崩壊したので、化石燃料は、炭素−14を含有しない。化石燃料の燃焼により、大気中の炭素−14の割合が下がり、これは、いわゆる「スース効果」である。
化合物中の原子の同位体の比を決定する方法は、当業者に周知である。同位体の富化は、質量分析により、当技術分野で公知の技法、例として、加速器質量分析(AMS)、安定同位体比質量分析(SIRMS)、および核磁気共鳴による部位特異的天然同位体分配(SNIF−NMR)を使用して容易に評価される。そのような質量分析の技法を、分離の技法、例として、液体クロマトグラフィー(LC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および/またはガスクロマトグラフィーなどと一体化することができる。
炭素の場合、ASTM D6866が、固体、液体および気体の試料のバイオベースの含有量を、放射性炭素年代測定を使用して決定するための標準化された分析方法として、米国材料試験協会(ASTM)インターナショナルにより米国で開発された。この標準法は、放射性炭素年代測定の使用に基づいて、生成物のバイオベースの含有量の決定を行う。ASTM D6866は、最初に2004年に公開され、この標準法の現在有効なバージョンは、ASTM D6866−11である(2011年4月1日以来有効)。本明細書に記載する技法を含めて、放射性炭素年代測定の技法は、当業者に周知である。
化合物のバイオベースの含有量は、炭素−14(14C)対炭素−12(12C)の比により推定される。具体的には、現在の割合(fraction modern)(Fm)は、式:Fm=(S−B)/(M−B)から算出され、式中、B、SおよびMはそれぞれ、ブランク、試料および現在の参照の14C/12C比を示す。現在の割合は、「現在」からの、試料の14C/12C比の偏差の測定値である。現在は、δ13VPDB=−19/milに対して正規化された、国家標準局(NBS)シュウ酸I(すなわち、標準参照(resference)物質(SRM)4990b)の(AD1950年の)放射性炭素濃度の95%と定義される(Olsson、The use of Oxalic acid as a Standard、Radiocarbon Variations and Absolute Chronology、Nobel Symposium, 12th Proc.、John Wiley & Sons、New York(1970年))。例えば、ASMにより測定された質量分析の結果は、国際的に同意されている定義、すなわち、δ13VPDB=−19/milに対して正規化された、NBSシュウ酸I(SRM 4990b)の比活性の0.95倍を使用して計算される。これは、1.176±0.010×10−12の、(AD1950年の)14C/12Cの絶対比と同等である(Karlenら、Arkiv Geofysik、4巻:465〜471頁(1968年))。標準法の計算には、1つの同位体の、別の同位体に関する識別的な取り込み、例えば、C12>C13>C14の生物学的な系における優先的な取り込みが考慮に入れられており、これらの補正は、δ13について補正されたFmとして反映されている。
シュウ酸標準物質(SRM 4990bまたはHOx1)は、1955年のサトウダイコンの作物から作製された。1000ポンドが作製されたが、このシュウ酸標準物質は最早、商業的に入手可能でない。シュウ酸II標準物質(HOx2;N.I.S.T 表記 SRM 4990C)が、1977年のFrench beetの作物の糖蜜から作製された。1980年代初期に、12の研究室からなるグループが、2つの標準物質の比を測定した。シュウ酸II対1の活性の比は、1.2933±0.001(加重平均)である。HOxIIの同位体の比は、−17.8/ミル(mille)である。ASTM D6866−11は、現在の標準物質のために、入手可能なシュウ酸II標準物質SRM 4990C(Hox2)の使用を提案している(Mann、Radiocarbon、25巻(2号):519〜527頁(1983年)における元々のシュウ酸標準物質対現時点で入手可能なシュウ酸標準物質についての考察を参照)。Fm=0%は、材料中に炭素−14原子を完全に欠くことを示し、したがって、化石(例えば、石油に基づく)炭素供給源を示す。核爆弾の試験からの大気中への炭素−14の1950年以降の射出について補正した後のFm=100%は、完全に現在の炭素供給源を示す。本明細書に記載する場合、そのような「現在の」供給源には、バイオベースの供給源が含まれる。
ASTM D6866に記載されているように、現在の炭素のパーセント(percent modern carbon)(pMC)が、100%よりも大きくなる場合がある。これは、減少しつつあるが継続的している1950年代の核試験プログラムの作用により、ASTM D6866−11に記載されているように、大気中の炭素−14の相当な富化が生じたことによる。全ての試料の炭素−14活性が、「爆弾前(pre−bomb)」の標準物質へ参照されること、およびほとんど全ての新しいバイオベースの生成物が、爆弾後の環境において生成されることから、試料の本当のバイオベースの含有量をより良好に反映するために、(同位体の割合についての補正の後の)全てのpMC値に、(2010年の時点では)0.95を乗じなければならない。103%よりも大きいバイオベースの含有量は、分析の誤りが生じてしまった、またはバイオベースの炭素の供給源が、数年超古いものであるかのいずれかであることを示唆している。
ASTM D6866により、材料の総有機含有量と比べたバイオベースの含有量が定量化され、存在する無機炭素および炭素を含有しない他の物質は考慮されない。例えば、ASTM D6866に基づくと、50%がデンプンに基づく材料であり、50%が水である生成物は、バイオベースの含有量=100%を有するとみなされる(100%バイオベースである、50%の有機含有量)。別の例では、50%がデンプンに基づく材料であり、25%が石油に基づき、25%が水である生成物は、バイオベースの含有量=66.7%を有する(有機含有量は75%であるが、生成物の50%のみがバイオベースである)。別の例では、50%が有機炭素であり、石油に基づく生成物である生成物は、バイオベースの含有量=0%を有するとみなされる(有機炭素は50%であるが、化石供給源に由来する)。したがって、化合物または材料のバイオベースの含有量を決定するための周知の方法および公知の標準物質に基づいて、当業者は、バイオベースの含有量を容易に決定すること、および/またはバイオベースの所望の含有量を有する本発明の生成物を利用する(utilize of the invention)下流の生成物を調製することができる。
材料のバイオベースの含有量を定量化するための、炭素−14年代測定の技法の適用は、当技術分野で公知である(Currieら、Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B、172巻:281〜287頁(2000年))。例えば、炭素−14年代測定を使用して、テレフタレート含有材料中のバイオベースの含有量が定量化されている(Colonnaら、Green Chemistry、13巻:2543〜2548頁(2011年))。とりわけ、再生可能な1,3−プロパンジオールおよび石油に由来するテレフタル酸から得られたポリプロピレンテレフタレート(PPT)ポリマーでは、、ほぼ30%のFm値が得られた(すなわち、ポリマー炭素の3/11が、再生可能な1,3−プロパンジオールに由来し、8/11が、化石の終点メンバーのテレフタル酸に由来するからである)(Currieら、上記、2000年)。対照的に、再生可能な1,4−ブタンジオールおよび再生可能なテレフタル酸の両方から得られたポリブチレンテレフタレートポリマーからは、90%を上回るバイオベースの含有量が得られた(Colonnaら、上記、2011年)。
したがって、いくつかの実施形態では、本発明は、環境の炭素ともまた呼ばれる、大気中の炭素の取り込み供給源を反映する炭素−12、炭素−13および炭素−14の比を有する、メタクリル酸、メタクリレートエステル、メチルメタクリレート、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/もしくは2−ヒドロキシイソブチレート、またはメタクリル酸経路の中間体、メタクリレートエステル経路の中間体、メチルメタクリレート経路の中間体、3−ヒドロキシイソブチレート経路の中間体および/もしくは2−ヒドロキシイソブチレート経路の中間体を提供する。例えば、いくつかの態様では、メタクリル酸、メタクリレートエステル、メチルメタクリレート、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/もしくは2−ヒドロキシイソブチレート、またはメタクリル酸の中間体、メタクリレートエステルの中間体、メチルメタクリレートの中間体、3−ヒドロキシイソブチレートの中間体および/もしくは2−ヒドロキシイソブチレートの中間体は、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または100%程度のFm値を有し得る。いくつかのそのような実施形態では、取り込み供給源はCOである。いくつかの実施形態では、本発明は、石油に基づく炭素の取り込み供給源を反映する炭素−12、炭素−13および炭素−14の比を有する、メタクリル酸、メタクリレートエステル、メチルメタクリレート、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/もしくは2−ヒドロキシイソブチレート、またはメタクリル酸の中間体、メタクリレートエステルの中間体、メチルメタクリレートの中間体、3−ヒドロキシイソブチレートの中間体および/もしくは2−ヒドロキシイソブチレートの中間体を提供する。この態様では、メタクリル酸、メタクリレートエステル、メチルメタクリレート、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/もしくは2−ヒドロキシイソブチレート、またはメタクリル酸の中間体、メタクリレートエステルの中間体、メチルメタクリレートの中間体、3−ヒドロキシイソブチレートの中間体および/もしくは2−ヒドロキシイソブチレートの中間体は、95%未満、90%未満、85%未満、80%未満、75%未満、70%未満、65%未満、60%未満、55%未満、50%未満、45%未満、40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、2%未満、または1%未満のFm値を有し得る。いくつかの実施形態では、本発明は、大気の炭素の取り込み供給源と石油に基づく取り込み供給源との組合せにより得られる炭素−12、炭素−13および炭素−14の比を有する、メタクリル酸、メタクリレートエステル、メチルメタクリレート、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/もしくは2−ヒドロキシイソブチレート、またはメタクリル酸の中間体、メタクリレートエステルの中間体、メチルメタクリレートの中間体、3−ヒドロキシイソブチレートの中間体および/もしくは2−ヒドロキシイソブチレートの中間体を提供する。取り込み供給源のそのような組合せの使用は、炭素−12、炭素−13および炭素−14の比を変化させることができる1つの方法となり、それぞれの比が、取り込み供給源の比率を反映する(refelect)。
さらに、本発明は、本明細書に開示されるように、生物学的に生成された、メタクリル酸、メタクリレートエステル、メチルメタクリレート、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/もしくは2−ヒドロキシイソブチレート、またはメタクリル酸の中間体、メタクリレートエステルの中間体、メチルメタクリレートの中間体、3−ヒドロキシイソブチレートの中間体および/もしくは2−ヒドロキシイソブチレートの中間体ならびに、それらから得られる生成物にも関し、ここで、前記メタクリル酸、メタクリレートエステル、メチルメタクリレート、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/もしくは2−ヒドロキシイソブチレート、またはメタクリル酸の中間体、メタクリレートエステルの中間体、メチルメタクリレートの中間体、3−ヒドロキシイソブチレートの中間体および/もしくは2−ヒドロキシイソブチレートの中間体は、環境中に存在するCOとおよそ同じ値の炭素−12、炭素−13および炭素−14の同位体比を有する。例えば、いくつかの態様では、本発明は、環境中に存在するCOとおよそ同じ値の炭素−12対炭素−13対炭素−14の同位体比、または本明細書に開示される任意の他の比を有する、バイオに由来する(bioderived)メタクリル酸、メタクリレートエステル、メチルメタクリレート、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/もしくは2−ヒドロキシイソブチレート、またはバイオに由来するメタクリル酸の中間体、メタクリレートエステルの中間体、メチルメタクリレートの中間体、3−ヒドロキシイソブチレートの中間体および/もしくは2−ヒドロキシイソブチレートの中間体を提供する。本明細書で開示されるように、生成物が、環境中に存在するCOとおよそ同じ値の炭素−12対炭素−13対炭素−14の同位体比、または本明細書に開示されるいずれかの比を有し得、生成物は、本明細書に開示されるように、バイオに由来するメタクリル酸、メタクリレートエステル、メチルメタクリレート、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/もしくは2−ヒドロキシイソブチレート、またはバイオに由来するメタクリル酸の中間体、メタクリレートエステルの中間体、メチルメタクリレートの中間体、3−ヒドロキシイソブチレートの中間体および/もしくは2−ヒドロキシイソブチレートの中間体から生成され、そのバイオに由来する生成物は化学的に改変されて、最終生成物を生成することが理解される。メタクリル酸、メタクリレートエステル、メチルメタクリレート、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/もしくは2−ヒドロキシイソブチレートのバイオに由来する生成物、またはそれらの中間体を化学的に改変して、所望の生成物を生成する方法は、本明細書に記載するように、当業者に周知である。本発明は、環境中に存在するCOとおよそ同じ値の炭素−12対炭素−13対炭素−14の同位体比を有する、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリルプラスチック、およびコ−ポリマー、例として、コ−ポリマーのメチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン(MBS)などを含む、ポリマーをさらに提供し、ポリメチルメタクリレート、アクリルプラスチック、およびコ−ポリマーのメチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン(MBS)を含む、前記ポリマーは、本明細書に開示されるように、バイオに由来するメタクリル酸、メタクリレートエステル、メチルメタクリレート、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/もしくは2−ヒドロキシイソブチレート、またはバイオに由来するメタクリル酸の中間体、メタクリレートエステルの中間体、メチルメタクリレートの中間体、3−ヒドロキシイソブチレートの中間体および/もしくは2−ヒドロキシイソブチレートの中間体からまたはそれらと組み合わせて直接生成される。
メタクリル酸、メタクリレートエステル、メチルメタクリレート、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートは、商業的および工業的な適用において使用される化学物質である。そのような適用の非限定的な例には、アクリルガラス、Lucite(商標)またはPlexiglas(商標)ともまた呼ばれるポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリルプラスチック、およびコ−ポリマー、例として、コ−ポリマーのメチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン(MBS)を含めた、ポリマーの生成が含まれる。さらに、メタクリル酸、メタクリレートエステル、メチルメタクリレート、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートはまた、ポリメチルメタクリレートアクリルプラスチックおよびコ−ポリマーのメチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン(MBS)を含めた、ポリマーを含む広い範囲の生成物の生成における原材料としても使用される。したがって、いくつかの実施形態では、本発明は、ポリメチルメタクリレート、アクリルプラスチック、およびメチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン(MBS)を含めた、コ−ポリマーを含む、バイオベースのポリマーを提供し、これらは、本発明の天然に存在しない微生物により生成されるかまたは本明細書に開示される方法を使用して生成される、1つまたは複数の、バイオに由来するメタクリル酸、メタクリレートエステル、メチルメタクリレート、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/もしくは2−ヒドロキシイソブチレート、またはバイオに由来するメタクリル酸の中間体、メタクリレートエステルの中間体、メチルメタクリレートの中間体、3−ヒドロキシイソブチレートの中間体および/もしくは2−ヒドロキシイソブチレートの中間体を含む。ポリメチルメタクリレート、アクリルプラスチック、およびメチルメタクリレート−ブタジエン−スチレンを含めた、コ−ポリマーを含む、そのようなポリマーは、上記した所望の比の、バイオに由来する前駆体と石油に基づく前駆体との混合物を有し得る。
本明細書で用いるように、用語「バイオに由来する」は、生物学的有機体から得られるまたは生物学的有機体により合成されることを意味し、生物学的有機体により生成され得ることから、再生可能な資源とみなすことができる。そのような生物学的有機体、特に、本明細書に開示される本発明の微生物体は、農業、植物、細菌または動物からの供給源から得られるフィードストックまたはバイオマス、例として、糖または炭水化物を利用することができる。あるいは、生物学的有機体は、大気中の炭素を利用することもできる。本明細書で用いるように、用語「バイオベース(biobased)」は、本発明のバイオに由来する化合物の全体または部分で構成される、上記した生成物を意味する。バイオベースの生成物またはバイオに由来する生成物は、石油に由来する生成物とは対照的であり、そのような生成物は、石油もしくは石油化学フィードストックから得られるかまたは石油もしくは石油化学フィードストックから合成される。
いくつかの実施形態では、本発明は、バイオに由来するメタクリル酸、メタクリレートエステル、メチルメタクリレート、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/もしくは2−ヒドロキシイソブチレート、またはバイオに由来するメタクリル酸の中間体、メタクリレートエステルの中間体、メチルメタクリレートの中間体、3−ヒドロキシイソブチレートの中間体および/もしくは2−ヒドロキシイソブチレートの中間体を含む、ポリメチルメタクリレートアクリルプラスチックおよびコ−ポリマーのメチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン(MBS)を含めた、ポリマーを提供し、前記バイオに由来するメタクリル酸、メタクリレートエステル、メチルメタクリレート、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/もしくは2−ヒドロキシイソブチレート、またはバイオに由来するメタクリル酸の中間体、メタクリレートエステルの中間体、メチルメタクリレートの中間体、3−ヒドロキシイソブチレートの中間体および/もしくは2−ヒドロキシイソブチレートの中間体は、ポリメチルメタクリレートアクリルプラスチックおよびコ−ポリマーのメチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン(MBS)を含めた、ポリマーの生成において使用されるメタクリル酸、メタクリレートエステル、メチルメタクリレート、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/もしくは2−ヒドロキシイソブチレート、またはメタクリル酸の中間体、メタクリレートエステルの中間体、メチルメタクリレートの中間体、3−ヒドロキシイソブチレートの中間体および/もしくは2−ヒドロキシイソブチレートの中間体の全部または一部を含む。したがって、いくつかの態様では、本発明は、ポリメチルメタクリレートアクリルプラスチックおよびコ−ポリマーのメチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン(MBS)を含めた、バイオベースのポリマーであって、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または100%の、本明細書で開示されるようなバイオに由来するメタクリル酸、メタクリレートエステル、メチルメタクリレート、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/もしくは2−ヒドロキシイソブチレート、またはバイオに由来するメタクリル酸の中間体、メタクリレートエステルの中間体、メチルメタクリレートの中間体、3−ヒドロキシイソブチレートの中間体および/もしくは2−ヒドロキシイソブチレートの中間体を含むバイオベースのポリマーを提供する。さらに、いくつかの態様では、本発明は、ポリメチルメタクリレートアクリルプラスチックおよびコ−ポリマーのメチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン(MBS)を含めた、バイオベースのポリマーであって、その生成に使用される前記メタクリル酸、メタクリレートエステル、メチルメタクリレート、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/もしくは2−ヒドロキシイソブチレート、またはメタクリル酸の中間体、メタクリレートエステルの中間体、メチルメタクリレートの中間体、3−ヒドロキシイソブチレートの中間体および/もしくは2−ヒドロキシイソブチレートの中間体が、バイオに由来する、メタクリル酸、メタクリレートエステル、メチルメタクリレート、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/もしくは2−ヒドロキシイソブチレート、またはメタクリル酸の中間体、メタクリレートエステルの中間体、メチルメタクリレートの中間体、3−ヒドロキシイソブチレートの中間体および/もしくは2−ヒドロキシイソブチレートの中間体と、石油に由来する、メタクリル酸、メタクリレートエステル、メチルメタクリレート、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/もしくは2−ヒドロキシイソブチレート、またはメタクリル酸の中間体、メタクリレートエステルの中間体、メチルメタクリレートの中間体、3−ヒドロキシイソブチレートの中間体および/もしくは2−ヒドロキシイソブチレートの中間体との組合せであるバイオベースのポリマーも提供する。例えば、50%のバイオに由来するメタクリル酸、メタクリレートエステル、メチルメタクリレート、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/もしくは2−ヒドロキシイソブチレートと、50%の石油に由来するメタクリル酸、メタクリレートエステル、例として、メチルメタクリレート、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/もしくは2−ヒドロキシイソブチレートとを使用するか、または生成物の少なくとも一部が、本明細書に開示される微生物体により生成された、バイオに由来する生成物を含む限り、他の所望の比、例として、60%/40%、70%/30%、80%/20%、90%/10%、95%/5%、100%/0%、40%/60%、30%/70%、20%/80%、10%/90%の、バイオに由来する(deried)前駆体/石油に由来する前駆体を使用して、ポリメチルメタクリレートアクリルプラスチックおよびコ−ポリマーのメチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン(MBS)を含めた、バイオベースのポリマーを生成することができる。本発明のバイオに由来するメタクリル酸、メタクリレートエステル、メチルメタクリレート、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/もしくは2−ヒドロキシイソブチレート、またはバイオに由来するメタクリル酸の中間体、メタクリレートエステルの中間体、メチルメタクリレートの中間体、3−ヒドロキシイソブチレートの中間体および/もしくは2−ヒドロキシイソブチレートの中間体を使用して、ポリメチルメタクリレートアクリルプラスチックおよびコ−ポリマーのメチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン(MBS)を含めた、ポリマーを生成するための方法は、当技術分野で周知であることが理解される。
培養条件には、例えば、液体培養法だけでなく発酵および他の大規模培養法を含めることができる。本明細書で記載されるように、本発明の生合成生成物の特に有用な収率は、嫌気的または実質的に嫌気的な培養条件下で得ることができる。
本明細書に記載するように、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートの生合成を達成するための1つの例示的な増殖条件として、嫌気的な培養または発酵の条件が挙げられる。特定の実施形態では、本発明の天然に存在しない微生物体は、嫌気的または実質的に嫌気的な条件の下で保持し、培養し、または発酵させることができる。簡単に述べると、嫌気的条件とは酸素不足の環境を指す。実質的に嫌気的な条件には、例えば、培地中の溶存酸素濃度が飽和の0〜10%の間にとどまるような、培養、回分発酵または連続発酵が含まれる。実質的に嫌気的な条件には、1%未満の酸素の雰囲気で維持される密封チャンバー内の液体培地または固体寒天で細胞を増殖または休止させることも含まれる。酸素の割合は、例えば、培養物をN/CO混合物または他の適切な1つまたは複数の非酸素ガスでスパージすることによって維持することができる。
本明細書で記載される培養条件の規模を拡大し、連続的に増殖させてメタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートを製造することができる。例示的な増殖法には、例えば、流加回分発酵および回分分離;流加回分発酵および連続分離、または連続発酵および連続分離が含まれる。これらのプロセスは全て、当技術分野において周知である。発酵法は、商業的な量のメタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートの生合成による生成に特に有用である。一般に、また非連続的な培養法と同様に、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートの連続的および/またはほとんど連続的な生成には、指数増殖期の増殖を維持および/またはほとんど維持するのに十分な栄養素および培地で、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートを生成する本発明の天然に存在しない生物体を培養することが含まれる。そのような条件下における連続培養は、例えば、1、2、3、4、5、6または7日間以上の増殖を含むことができる。さらに、連続培養は、1、2、3、4または5週間以上、および最長数ヵ月間のより長い期間を含むこともできる。あるいは、本発明の生物体は、特定の用途に適する場合は数時間培養することができる。連続的および/またはほとんど連続的な培養条件は、これらの例示的な期間の間の全ての期間を含むこともできることを理解すべきである。本発明の微生物体を培養する時間は、所望の目的に十分な量の生成物を生成するのに十分な期間であることがさらに理解される。
発酵法は、当技術分野において周知である。簡単に述べると、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートを生合成により生成するための発酵は、例えば、流加回分発酵および回分分離;流加回分発酵および連続分離、または連続発酵および連続分離で利用することができる。回分および連続発酵法の例は、当技術分野で周知である。
本発明のメタクリル酸、メタクリレートエステル、メチルメタクリレート、3−ヒドロキシイソブチレート、3−ヒドロキシイソブチレートエステル、2−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートエステルの生産体を使用する上記の発酵法に加えて、多くの量のメタクリル酸、メタクリレートエステル、メチルメタクリレート、3−ヒドロキシイソブチレート、3−ヒドロキシイソブチレートエステル、2−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートエステルを連続的に生成するためにまた、所望により、生産体を、例えば、化学的合成手順に同時にかけて、生成物を他の化合物に転換することもでき、または前記生成物を、発酵培養物から分離し、順次、化学的もしくは酵素的な転換にかけて、生成物を他の化合物に転換することもできる。例えば、いくつかの実施形態では、本発明は、3−ヒドロキシイソブチレートエステル、例として、メチル−3−ヒドロキシイソブチレート、または2−ヒドロキシイソブチレートエステル、例として、メチル−2−ヒドロキシイソブチレートを化学的に脱水して、メタクリレートエステル、例として、メチルメタクリレートを得ることを提供する。そのような化合物の脱水を触媒する(catylyzing)ための方法および化合物は当技術分野で周知であることが理解される。
発酵溶液から単離された純粋な3−ヒドロキシイソブチレートまたは2−ヒドロキシイソブチレートから開始するか、または発酵溶液の運転中に単離された3−ヒドロキシイソブチレートエステルまたは2−ヒドロキシイソブチレートエステルの水溶液もしくは有機溶液から開始して、3−ヒドロキシイソブチレートエステルおよび2−ヒドロキシイソブチレートエステルを化学的に脱水して、メタクリレートエステルを形成することができる。3−ヒドロキシイソブチレートエステルまたは2−ヒドロキシイソブチレートエステルのそのような溶液はまた、脱水ステップの前に、例えば、蒸留により、必要に応じて、適切な添加溶剤の存在下において濃縮してもよい。
脱水反応は、液相または気相中で実施することができる。脱水反応は、触媒の存在下において実施することができ、用いる触媒の性質は、実施する反応が、気相または液相のいずれであるかに依存する。
適切な脱水触媒は、酸性触媒およびアルカリ性触媒の両方を含む。特に、酸性触媒は、オリゴマーを形成する傾向の減少を示し得る。脱水触媒は、均一触媒、不均一触媒、またはそれらの組合せとして用いることができる。不均一触媒は、適切な支持材料と併せて使用することができる。そのような支持体自体が、酸性であってもアルカリ性であってもよく、酸性またはアルカリ性の脱水触媒を提供することができ、または触媒を、不活性な支持体に適用することができる。
脱水触媒として働く、適切な支持体には、天然または合成のシリケート、例として、モルデナイト、モンモリロナイト、酸性ゼオライト;一塩基性、二塩基性もしくは多塩基性の無機酸、例として、リン酸でコーティングされている、または無機酸の酸性塩、例として、酸化物もしくはケイ酸塩、例えば、Al2O3、TiO2でコーティングされている支持体;酸化物、および混合酸化物、例として、γ−Al2O3、およびZnO−Al2O3のヘテロポリ酸の混合酸化物が含まれる。脱水触媒および支持材料(a support a support material)の両方として作用するアルカリ性物質には、アルカリ、アルカリ土類、ランタン、ランタノイド(lanthoid)、またはそれらの酸化物としてのそれらの組合せが含まれる。脱水をもたらすことができる材料のさらなるクラスが、アルカリ性または酸性のいずれかの形態で使用することができるイオン交換体である。
適切な均一脱水触媒には、無機酸、例として、リン酸などのリンを含有する酸が含まれる。無機酸を、支持材料上に浸漬または含浸により固定化することができる。
いくつかの実施形態では、脱水反応は、当技術分野で公知の従来の装置、例えば、管型反応器、サーモプレートを熱交換器として含むシェルアンドチューブ式の熱交換器および反応器を使用して、気相中で実施される。いくつかの実施形態では、気相における脱水は、単離された3−ヒドロキシイソブチレートエステル、または該エステルの溶液を利用することができ、該エステルは、固定床触媒を有する反応器へと導入される。液相中の熱による脱水を、200℃〜350℃の間の温度範囲で、いくつかの実施形態では、250〜300℃の間の温度範囲で実施することができる。
より良好な生産体を得るために、代謝モデリングを利用して、増殖条件を最適化することができる。モデリングを用いて、経路の利用をさらに最適化する遺伝子ノックアウトを設計することができる(例えば、米国特許公開US2002/0012939、US2003/0224363、US2004/0029149、US2004/0072723、US2003/0059792、US2002/0168654およびUS2004/0009466、ならびに米国特許第7,127,379号を参照)。モデリング解析は、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートのより効率の高い生成の方向に代謝を移動させる細胞増殖に対する影響の信頼性のある予測を可能にする。
所望の生成物の生合成を有利にする代謝改変を特定し、設計するための1つのコンピュータ方法は、OptKnockコンピュータフレームワークである(Burgardら、Biotechnol. Bioeng. 84巻、647〜657頁(2003年))。OptKnockは、標的生成物を過剰に生産する遺伝的に安定した微生物をもたらす遺伝子欠失または破壊戦略を示唆する、代謝モデリングおよびシミュレーションプログラムである。具体的には、フレームワークは、所望の生化学物質を細胞増殖の必須の副産物になるように強制する遺伝子操作を示唆するために、微生物の完全な代謝ネットワークおよび/または生化学ネットワークを調べる。戦略的に置かれた遺伝子欠失または他の機能的遺伝子破壊を通して生化学的生成を細胞増殖と連結することによって、バイオリアクター内での長期間の後に設計製作された株に加えられる増殖淘汰圧は、強制的な増殖連結型の生化学的生成の結果として、性能の改善をもたらす。最後に、遺伝子欠失が構築されると、OptKnockによって選択された遺伝子はゲノムから完全に除去されるので、設計された株がそれらの野生型状態に戻る可能性はごくわずかである。したがって、このコンピュータ方法は、所望の生成物の生合成をもたらす代替経路を特定するために用いること、または所望の生成物の生合成のさらなる最適化のために、天然に存在しない微生物体と共に用いることができる。
簡単に述べると、OptKnockは細胞代謝のモデリングのためのコンピュータによる方法およびシステムを指すために本明細書で用いられる用語である。OptKnockプログラムは、特定の制約をフラックスバランス分析(FBA)モデルに組み込む、モデルおよび方法のフレームワークに関する。これらの制約には、例えば、定性的動態学情報、定性的調節情報および/またはDNAマイクロアレイ実験データが含まれる。OptKnockは、例えばフラックスバランスモデルを通して誘導されるフラックス境界を締め、その後、遺伝子付加または欠失の存在下で代謝ネットワークの性能限界を調査することによって、様々な代謝問題の解法も計算する。OptKnockコンピュータフレームワークは、代謝ネットワークの性能限界の効果的なクエリーを可能にするモデル式の構築を可能にし、生じる混合整数線形計画法の問題を解決する方法を提供する。OptKnockとして本明細書で言及される代謝モデリングおよびシミュレーション法は、例えば、2002年1月10日に出願の米国特許公開第2002/0168654号、2002年1月10日に出願の国際特許PCT/US02/00660、および2007年8月10日に出願の米国公開第2009/0047719号に記載されている。
生成物の生合成による生成を有利にする代謝変化を特定および設計するための別のコンピュータ方法は、SimPheny(登録商標)と呼ばれる代謝モデリングおよびシミュレーションシステムである。このコンピュータ方法およびシステムは、例えば、2002年6月14日に出願の米国特許公開2003/0233218および2003年6月13日に出願の国際特許出願PCT/US03/18838に記載されている。SimPheny(登録商標)は、コンピュータでネットワークモデルを生成し、生物系の化学反応を通して質量、エネルギーまたは電荷のフラックスをシミュレートして、その系の化学反応のありとあらゆる可能な機能を含む解空間を定義し、それによってその生物系に許容される一連の活性を判定するのに用いることができるコンピュータシステムである。この手法は、含まれる反応の公知の化学量などの制約、ならびに反応を通して最大フラックスに関連する反応の熱力学のおよび容量制約によって解空間が定義されるので、制約に基づくモデリングと称される。これらの制約によって定義される空間を調べて、生物系またはその生化学成分の表現型能力および挙動を判定することができる。
生物系は柔軟であり、多くの異なる方法で同じ結果に到達することができるので、これらのコンピュータ手法は生物的な現実と一貫している。生物系は、全ての生物系が直面しなければならない基本的な制約によって制限されている進化機構を通して設計される。したがって、制約に基づくモデリング戦略は、これらの一般的な現実を包含する。さらに、制約の締め付けを通してさらなる制限をネットワークモデルに連続的に加える能力は、解空間のサイズの縮小をもたらし、それによって、生理的性能または表現型を予測できる精度を高める。
本明細書で提供される教示および指針を考慮すると、当業者は、代謝モデリングおよびシミュレーションのための様々なコンピュータフレームワークを適用して、宿主微生物体における所望の化合物の生合成を設計および実施することができる。そのような代謝モデリングおよびシミュレーション方法には、例えば、SimPheny(登録商標)およびOptKnockのような上で例示したコンピュータシステムが含まれる。本発明の説明のために、モデリングおよびシミュレーションのためのOptKnock計算フレームワークに関して、いくつかの方法を本明細書に記載する。当業者は、OptKnockを用いる代謝変化の特定、設計および実行を、当技術分野で周知であるそのような他の代謝モデリングおよびシミュレーションコンピュータフレームワークおよび方法のいずれかに適用する方法を知るであろう。
上記の方法は、破壊する1セットの代謝反応を提供する。セット内の各反応の除去または代謝改変は、生物体の増殖期の間の必須の生成物として、所望の生成物をもたらすことができる。反応が知られているので、2層の(bilevel)OptKnock問題の解決は、反応セット内の各反応を触媒する1つまたは複数の酵素をコードする1つまたは複数の関連遺伝子も提供する。反応セットおよび各反応に関与する酵素をコードするそれらの対応遺伝子の同定は、一般に自動化されたプロセスであり、その反応と、酵素およびコード遺伝子の間の関係を有する反応データベースとの相関関係を通して達成される。
同定されると、標的細胞または生物体において、所望の生成物の生成を達成するために破壊される反応セットが、セット内の各代謝反応をコードする少なくとも1つの遺伝子の機能的破壊によって実施される。反応セットの機能的破壊を達成する1つの特に有用な手段は、各コード遺伝子の欠失によるものである。しかし、一部の例では、例えば、変異、プロモーターもしくは調節因子のためのシス結合部位などの調節領域の欠失を含む他の遺伝子異常、またはいくつかの場所のいずれかにおけるコード配列の切断によって反応を破壊することが有益となることがある。例えば、生成物の連結の速やかな評価が所望され、または遺伝子復帰変異が起こる可能性がより低い場合、遺伝子セットの全体未満の欠失をもたらすこれらの後者の異常が有用なことがある。
所望の生成物の増殖連結型の生合成を含む生合成をもたらすことができる破壊すべきさらなる反応セットまたは代謝改変をもたらす上記の2層のOptKnock問題のさらなる生産的解法を特定するために、整数カットと呼ばれる最適化法を実施することができる。この方法は、各反復での整数カットと呼ばれる追加の制約の組込みで、上に例示されるOptKnock問題を反復して解決することによって進行する。整数カット制約は、解決手法が、生成物生合成を増殖に不可避的に連結する任意の前の反復で特定されるものと正確に同じ反応セットを選択することを、効果的に防止する。例えば、前に特定された増殖連結型の代謝改変が破壊のための反応1、2および3を特定する場合、以下の制約は、その後の解法で同じ反応が同時に考慮されることを防止する。整数カット法は当技術分野で周知であり、例えば、Burgardら、Biotechnol. Prog. 17巻、791〜797頁(2001年)に記載されているのを見ることができる。代謝モデリングおよびシミュレーションのためのOptKnockコンピュータフレームワークと組み合わせたそれらの使用に関して本明細書で記載される全ての方法と同様に、反復性コンピュータ分析でのリダンダンシーを減らす整数カット法は、例えばSimPheny(登録商標)を含む当技術分野で周知である他のコンピュータフレームワークとともに適用することもできる。
本明細書で例示される方法は、所望の生成物を生合成的に生成する細胞および生物体の構築を可能にし、それには、特定された遺伝子改変を抱えるように設計製作された細胞または生物体の増殖への、標的生化学生成物の生成の必須の連結が含まれる。したがって、本明細書で記載されるコンピュータ方法は、OptKnockまたはSimPheny(登録商標)から選択されるコンピュータ方法によって特定される代謝改変の同定および実行を可能にする。代謝改変のセットには、例えば、1つまたは複数の生合成経路の酵素の付加および/または、例えば遺伝子欠失による破壊を含む1つまたは複数の代謝反応の機能的破壊を含めることができる。
上記のように、OptKnock方法は、長期の増殖選択に曝した場合、変異体微生物ネットワークをコンピュータによって予測されるそれらの最大増殖表現型の方へ進化させることができるという前提で開発された。言い換えると、本手法は、選択圧の下で自己最適化する生物体の能力を導入する。OptKnockフレームワークは、ネットワーク化学量論に基づいて生化学的生成と細胞増殖との間の連結を強制する遺伝子欠失組合せの網羅的な列挙を可能にする。最適遺伝子/反応ノックアウトの同定は、生じたネットワークについての最適増殖の解法が対象とする生化学物質を過剰に生産するように活性反応セットを選択する、2層の最適化問題の解決を必要とする(Burgardら、Biotechnol. Bioeng. 84巻、647〜657頁(2003年))。
前に例示され、例えば米国特許公開US2002/0012939、US2003/0224363、US2004/0029149、US2004/0072723、US2003/0059792、US2002/0168654およびUS2004/0009466、ならびに米国特許第7,127,379号に記載されるように、代謝経路に必要不可欠な遺伝子を同定するために、E.coli代謝のコンピュータ化学量論モデルを使用することができる。本明細書で開示されるように、OptKnock数学フレームワークを、所望の生成物の増殖連結型生成をもたらす正確な遺伝子欠失に適用することができる。さらに、2層のOptKnock問題の解決は、1セットの欠失だけを提供する。全ての意味がある解決、すなわち増殖連結型生成の形成をもたらすノックアウトの全セットを列挙するために、整数カットと呼ばれる最適化技術を実施することができる。これは、上記のように、各反復での整数カットと呼ばれる追加の制約の組込みでOptKnock問題を反復して解決することを必要とする。
本明細書で開示されるように、メタクリル酸経路、メタクリレートエステル経路、3−ヒドロキシイソブチレート経路および/または2−ヒドロキシイソブチレート経路の所望の活性をコードする核酸を、宿主の生物体に導入することができる。場合によっては、メタクリル酸経路、メタクリレートエステル経路、3−ヒドロキシイソブチレート経路および/または2−ヒドロキシイソブチレート経路の酵素またはタンパク質の活性を改変して、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートの生成を増大させるのが望ましいことがある。例えば、タンパク質または酵素の活性を増大させる公知の変異を、コード核酸分子に導入することができる。さらに、最適化の方法を適用して、酵素もしくはタンパク質の活性を増大させること、および/または阻害活性を低下させる、例えば、負のレギュレーターの活性を低下させることもできる。
1つのそのような最適化の方法が、定向進化である。定向進化は、酵素の特性を改善するためおよび/または変化させるための特定の遺伝子を標的とする変異の導入が関与する、強力なアプローチである。多く(例えば、>10個)の酵素バリアントの自動化スクリーニングを可能にする、感度の高い高スループットスクリーニングアッセイの開発および実行を通して、改善されたおよび/または変化した酵素を同定することができる。典型的には、変異誘発およびスクリーニングを反復して実施して、最適化された特性を有する酵素を得る。また、変異誘発のための遺伝子の領域を同定するのを支援することができる計算アルゴリズムも開発されており、これにより、生成し、スクリーニングする必要がある酵素バリアントの数を顕著に低下させることができる。多種多様なバリアントライブラリーを有効に生み出すために、多数の定向進化の技術が開発されており(総説については、Hibbertら、Biomol.Eng、22巻:11〜19頁(2005年);HuismanおよびLalonde、Biocatalysis in the pharmaceutical and biotechnology industries、717〜742頁(2007年)、Patel(編)、CRC Press;OttenおよびQuax、Biomol.Eng、22巻:1〜9頁(2005年).;ならびにSenら、Appl Biochem.Biotechnol、143巻:212〜223頁(2007年)を参照)、これらの方法は、多くの酵素のクラスにわたる広い範囲の特性の改善に首尾よく適用されている。定向進化の技術により改善および/または変化が生じている酵素の特徴として、例えば、非天然の基質の転換についての選択性/特異性;ロバストな高温処理のための温度安定性;より低いまたはより高いpH条件下におけるバイオ処理のためのpH安定性;高い生成物タイターを達成することができるような、基質または生成物の耐性;非天然の基質を含めるための、基質結合性を広げることを含んだ、結合性(K);生成物、基質または主要な中間体による阻害を除去するための阻害(K);酵素反応速度を増加させて、所望のフラックスを達成するための活性(kcat);タンパク質収率および全体的な経路のフラックスを増大させるための発現レベル;好気的条件において、空気に感受性の酵素を操作するための酸素安定性;ならびに酸素の非存在下において、好気的酵素を操作するための嫌気性下での活性が挙げられる。
下記に、特定の酵素の所望の特性を標的にする、遺伝子の変異誘発および多様化のために開発されている、例示的な方法をより詳細に記載する。そのような方法は、当業者に周知である。これらのいずれかを使用して、メタクリル酸経路、メタクリレートエステル経路、3−ヒドロキシイソブチレート経路および/または2−ヒドロキシイソブチレート経路の酵素またはタンパク質の活性を変化させることおよび/または最適化することができる。
EpPCR(Pritchardら、J Theor.Biol.、234巻:497〜509頁(2005年))は、PCR反応におけるDNAポリメラーゼの忠実度を、Mn2+イオンの添加により、dNTP濃度の偏りにより、または他の条件の変更により低下させることによって、ランダム点変異を導入する。変異誘発を対象の標的遺伝子に限定するための、5つのステップのクローニングプロセスは、1)対象の遺伝子の誤りがちのPCR増幅;2)制限酵素消化;3)所望のDNA断片のゲル精製;4)ベクターへのライゲーション;5)遺伝子バリアントの適切な宿主への形質転換、および改善された性能についてのライブラリーのスクリーニングを含む。この方法は、単一の遺伝子中に複数の変異を同時に生成することができ、所望の活性を有する、より多数の潜在的なバリアントをスクリーニングするのに有用であり得る。多数の変異体を、EpPCRにより生成することができ、したがって、高スループットスクリーニングアッセイ、または例えば、ロボット工学を使用する選択方法が、望ましい特徴を有する変異体を同定するのに有用である。
誤りがちのローリングサークル増幅(Error−prone Rolling Circle Amplification)(epRCA)(Fujiiら、Nucleic Acids Res、32巻:e145頁(2004年);およびFujiiら、Nat. Protoc.、1巻:2493〜2497頁(2006年))は、epPCRと同じエレメントの多くを有し、ただし、環状プラスミド全体が、鋳型として使用され、最後の2つのヌクレオチド上にエキソヌクレアーゼ抵抗性のチオホスフェート連結を有する、ランダムな6塩基長を使用して、プラスミドを増幅し、続いて、細胞への形質転換を行い、細胞中で、該プラスミドは、タンデムリピートにおいて再環状化する。Mn2+濃度を調節することによって、変異速度を若干変化させることができる。この技法は、3〜4つの変異/kbpを有するプラスミドの完全なコピーを生み出すために、単純な、誤りがちの、単一ステップの方法を使用する。制限酵素消化も特定のプライマーも必要としない。さらに、この方法は典型的には、商業的に入手可能なキットとして入手可能でもある。
DNAシャフリング(DNA Shuffling)またはファミリーシャフリング(Family Shuffling)(Stemmer、Proc Natl Acad Sci USA、91巻:10747〜10751頁(1994年));およびStemmer、Nature、370巻:389〜391頁(1994年))は、典型的には、2つ以上のバリアント遺伝子を、ヌクレアーゼ、例として、Dnase IまたはEndoVを用いて消化して、ランダムな断片のプールを生成し、これらの断片を、DNAポリメラーゼの存在下でのアニーリングおよび伸長のサイクルにより再度組み立てて、キメラ遺伝子のライブラリーを生み出すことに関与する。断片が、相互にプライムし、1つのコピーが、別のコピーとプライムする場合に、組換えが生じる(鋳型スイッチ)。この方法は、>1kbpのDNA配列に関して使用することができる。断片の再組立てにより生み出される変異による組換え体に加えて、この方法は、伸長ステップにおいて、点変異を、誤りがちのPCRに類似する率で導入する。この方法を使用して、有害変異、ランダム変異および中立変異を除去することができる。
互い違いの伸長(Staggered Extension)(StEP)(Zhaoら、Nat. Biotechnol.、16巻:258〜261頁(1998年))は、鋳型のプライミングを引き起こし、続いて、変性および非常に短い期間(5秒程度の短さ)のアニーリング/伸長が伴う2段階PCRのサイクルが繰り返される。成長しつつある断片が、異なる鋳型にアニールし、さらに伸長し、これを、完全長配列が作られるまで繰り返す。鋳型スイッチは、結果として生じたほとんどの断片が複数の親を有することを意味する。低い忠実度のポリメラーゼの組合せ(TaqとMutazyme)は、反対の変異スペクトルにより、誤りがちの偏りを低下させる。
ランダムプライミング組換え(Random Priming Recombination)(RPR)では、ランダムな配列のプライマーを使用して、鋳型の異なるセグメントに相補的な、多くの短いDNA断片を生成する(Shaoら、Nucleic Acids Res、26巻:681〜683頁(1998年))。epPCRを介する塩基の誤った組込みおよび誤ったプライミングが、点変異をもたらす。短いDNA断片が、相同性に基づいて相互にプライムし、熱サイクリングを繰り返すことによって、組み換えられ、完全長に再度組み立てられる。このステップの前に鋳型を除去することによって、確実に、親の組換え体を減らす。この方法も、ほとんどの他の方法と同様、複数回にわたり反復して実施して、明確に異なる特性を進化させることができる。この技術は、配列の偏りを回避し、遺伝子の長さに依存せず、適用に非常に少ない親DNAしか必要としない。
ヘテロ二重鎖組換え(Heteroduplex Recombination)では、線形化プラスミドDNAを使用して、ミスマッチ修復により修復されるヘテロ二重鎖を形成する(Volkovら、Nucleic Acids Res.、27巻:e18頁(1999年);およびVolkovら、Methods Enzymol.、328巻:456〜463頁(2000年))。ミスマッチ修復ステップは、少なくとも若干変異原性である。ヘテロ二重鎖は、直鎖のホモ二重鎖よりも効率的に形質転換する。この方法は、大きな遺伝子およびオペロン全体に適している。
一過性鋳型上におけるランダムキメラ形成(Random Chimeragenesis on Transient Templates)(RACHITT)(Cocoら、Nat. Biotechnol.、19巻:354〜359頁(2001年))は、Dnase Iによる断片化および一本鎖DNA(ssDNA)のサイズ分画を用いる。相同な断片を、ポリメラーゼの非存在下において、相補的なssDNA骨格にハイブリダイズさせる。オーバーラップする、ハイブリダイズしていない断片の任意の末端が、エキソヌクレアーゼにより刈り込まれる。断片間のギャップが埋められ、次いで、ライゲーションされて、増幅を妨害するUを含有する骨格にハイブリダイズした完全長の多様な鎖のプールが生じる。次いで、骨格は破壊され、PCR増幅により、前記多様な鎖に相補的な新しい鎖で置き換えられる。この方法は、一方の親のみに由来する1つの鎖(骨格)を必要とし、一方、プライミング断片は、他の遺伝子から得られ、親の骨格が、それに対して選択される。したがって、親の断片との再アニーリングは生じない。オーバーラップする断片を、エキソヌクレアーゼを用いて刈り込む。この点以外は、この方法は、DNAシャフリングおよびStEPに概念的に類似する。したがって、同胞はおらず、不活性体はほとんどなく、未シャフルの親(parental)はないはずである。この技法には、親遺伝子が、ほとんどまたは全く生み出されず、標準的なDNAシャフリングと比べて、さらに多くのクロスオーバーが生じ得るという点で利点がある。
切断型鋳型上における組換え伸長(Recombined Extension on Truncated templates)(RETT)は、鋳型のプールとして使用される一方向性のssDNA断片の存在下において、プライマーから一方向性に成長しつつある鎖の鋳型スイッチを引き起こす(Leeら、J. Molec. Catalysis、26巻:119〜129頁(2003年))。DNAエンドヌクレアーゼは使用されない。一方向性のssDNAは、ランダムプライマーを用いてDNAポリメラーゼによってか、またはエキソヌクレアーゼを用いる段階的な欠失によって作製される。一方向性のssDNAは、鋳型に過ぎず、プライマーではない。ランダムプライミングおよびエキソヌクレアーゼによって、DNAシャフリング/RACHITTの酵素による切断の場合のような配列の偏りは導入されない。RETTは、非常に短い伸長に代わって、通常のPCR条件を使用するので、最適化するのが、StEPよりも容易であり得る。PCRステップの構成成分として組換えが生じ、すなわち、これは、直接的なシャフリングではない。この方法はまた、停止が存在しないことに起因して、StEPよりもランダムな場合もある。
縮重オリゴヌクレオチド遺伝子シャフリング(Degenerate Oligonucleotide Gene Shuffling)(DOGS)では、縮重プライマーを使用して、分子間の組換えを制御する;(BergquistおよびGibbs、Methods Mol.Biol、352巻:191〜204頁(2007年);Bergquistら、Biomol.Eng、22巻:63〜72頁(2005年);Gibbsら、Gene、271巻:13〜20頁(2001年))。これを使用して、他の方法、例として、DNAシャフリングの、親遺伝子を再生する傾向を制御することができる。この方法を、選択された遺伝子セグメントのランダム変異誘発(epPCR)と組み合わせることができる。これは、親配列の再形成をブロックするには良い方法となり得る。エンドヌクレアーゼは必要でない。作製されたセグメントのインプット濃度を調節することによって、所望の骨格に向けて偏らせることができる。この方法により、無関係の親からのDNAシャフリングが制限酵素消化なしで可能になり、ランダム変異誘発の方法の選択が可能になる。
ハイブリッド酵素の創出のための漸進的切断(Incremental Truncation for the Creation of Hybrid Enzymes)(ITCHY)は、対象の遺伝子または遺伝子断片の1塩基対の欠失を有するコンビナトリアルライブラリーを生み出す(Ostermeierら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、96巻:3562〜3567頁(1999年);およびOstermeierら、Nat. Biotechnol.、17巻:1205〜1209頁(1999年))。切断は、2つの異なる遺伝子の一部(piece)で、反対の方向に導入される。これらが、一緒にライゲーションされ、融合体が、クローニングされる。この技法は、2つの親遺伝子間の相同性を必要としない。ITCHYを、DNAシャフリングと組み合わせる場合、この系は、SCRATCHYと呼ばれる(下記を参照)。両方の主要な利点は、親遺伝子間の相同性の必要性がないことである。例えば、E.coliとヒトの遺伝子との間の機能性融合体が、ITCHYを介して生み出された。ITCHYライブラリーを作製すると、全ての可能なクロスオーバーが獲得される。
ハイブリッド酵素の創出のためのチオ−漸進的切断(Thio−Incremental Truncation for the Creation of Hybrid Enzymes)(THIO−ITCHY)は、ホスホチオエートdNTPを使用して切断部を生成することを除いては、ITCHYに類似する(Lutzら、Nucleic Acids Res、29巻:E16頁(2001年))。ITCHYと比べて、THIO−ITCHYは、最適化するのがより容易であり得、より高い再現性、および調節性をもたらすことができる。
SCRATCHYは、遺伝子を組み換えるための2つの方法、ITCHYとDNAシャフリングとを組み合わせる(Lutzら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、98巻:11248〜11253頁(2001年))。SCRATCHYにより、ITCHYおよびDNAシャフリングの最良の特徴が組み合わさる。最初に、ITCHYを使用して、遺伝子の断片間の融合体の包括的なセットを、DNA相同性に依存しない様式で生み出す。次いで、この人工的なファミリーをDNAシャフリングのステップにかけて、クロスオーバーの数を増強する。最適化において、コンピュータによる予測を使用することができる。配列同一性が80%を下回る場合に、SCRATCHYは、DNAシャフリングよりも有効である。
ランダムドリフト変異誘発(Random Drift Mutagenesis)(RNDM)では、変異を、epPCRを介して作り、続いて、使用可能な活性を維持する変異についてスクリーニング/選択を行う(Bergquistら、Biomol. Eng.、22巻:63〜72頁(2005年))。次いで、これらをDOGSにおいて使用して、複数の活性な変異体間の融合、または活性な変異体と何らかの、他の望ましい親との間の融合を有する組換え体を生成する。中立の変異の単離を促すために設計され、その目的は、触媒活性の維持についてのスクリーニングであり、この活性は、元々の遺伝子における活性よりも高くてもまたは低くても構わない。RNDMは、高スループットアッセイにおいて使用可能であり、この場合、スクリーニングにより、バックグラウンドを上回る活性を検出することが可能になる。RNDMは、多様性を生成するに際して、DOGSに至る初期段階(front end)として使用されている。この技法には、シャフリングまたは他の続くステップの前に活性についての要件が課せられる。中立のドリフトのライブラリーは、より小さなライブラリーから、活性のより高い/より速い改善が得られることを示す。公開は、epPCRを使用してなされているが、これは、他の大規模な変異誘発の方法に適用することができる。
配列飽和変異誘発(Sequence Saturation Mutagenesis)(SeSaM)は、ランダム変異誘発の方法であり、この方法は、1)ランダムな長さの断片のプールを、ホスホチオエートヌクレオチドのランダムな組込みおよび切断を使用して生成し;このプールを鋳型として使用して、2)「ユニバーサル」塩基、例として、イノシンの存在下において伸長し、;3)イノシンを含有する相補体の複製により、ランダムな塩基の組込みをもたらし、その結果、変異誘発をもたらす(Wongら、Biotechnol. J.、3巻:74〜82頁(2008年);Wongら、Nucleic Acids Res.、32巻:e26頁(2004年);およびWongら、Anal. Biochem.、341巻:187〜189頁(2005年))。この技法を使用すれば、単純な方法を使用して、変異体の大きなライブラリーを2〜3日以内に生成することが可能になり得る。この技法は、DNAポリメラーゼの変異の偏りと比較すれば、無方向性である。このアプローチの差により、この技法は、epPCRを補完する(またはepPCRの代替になる)。
合成シャフリング(Synthetic Shuffling)では、オーバーラップするオリゴヌクレオチドが、「標的における全ての遺伝子多様性」をコードし、シャフルされた子孫について非常に高い多様性を可能にするように設計される(Nessら、Nat. Biotechnol.、20巻:1251〜1255頁(2002年))。この技法では、断片を、シャフルされるように設計することができる。これにより、結果として生じる子孫の多様性の増大が促進される。配列/コドンの偏りを設計して、関係がより薄い配列を、より密接に関係のある配列に関して観察される率に近い率で組み換えることができる。さらに、この技法では、鋳型の遺伝子を物理的に保有する必要もない。
ヌクレオチド交換および切除技術(Nucleotide Exchange and Excision Technology)NexTは、dUTPの組込みの組合せを利用し、続いて、ウラシルDNAグリコシラーゼ、次いで、ピペリジンを用いて処理して、エンドポイントDNA断片化を実施する(Mullerら、Nucleic Acids Res.、33巻:e117頁(2005年))。プルーフリーディングポリメラーゼによる内部PCRプライマー伸長を使用して、遺伝子を再度組み立てる。様々なdUPT::dTTPの比を使用すれば、シャフリングのためのサイズは、直接制御可能である。これは、ウラシルの組込みおよび切断ための単純な方法を使用するエンドポイント反応である。この方法と共に、他のヌクレオチド類似体、例として、8−オキソ−グアニンを使用することができる。さらに、この技法は、非常に短い断片(86bp)を用いても良好に働き、誤り率も低い。この技法において使用するDNAの化学的切断の結果、未シャフルのクローンは非常に少数しか生じない。
配列相同性に依存しないタンパク質の組換え(Sequence Homology−Independent Protein Recombination)(SHIPREC)では、リンカーを使用して、関係の薄いまたは無関係の2つの遺伝子間の融合を促進する。ヌクレアーゼ処理を使用して、2つの遺伝子間の様々なキメラを生成する。これらの融合体から、単一クロスオーバーハイブリッドのライブラリーが得られる(Sieberら、Nat. Biotechnol.、19巻:456〜460頁(2001年))。これにより、限定されたタイプのシャフリングが生じ、変異誘発には、別個のプロセスが必要である。さらに、相同性が必要でないことから、この技法により、2つの無関係の親遺伝子のそれぞれの各種の画分を有するキメラのライブラリーを生み出すことができる。SHIPRECが、哺乳動物のCP450のN−末端領域に融合させた、細菌のCP450のヘム結合ドメインに関して試験された。これから、より溶解性の酵素において哺乳動物の活性が得られた。
Gene Site Saturation Mutagenesis(商標)(GSSM(商標))では、開始材料が、挿入部を含有するスーパーコイルdsDNAプラスミド、および変異の所望の部位において縮重している2つのプライマーである(Kretzら、Methods Enzymol.、388巻:3〜11頁(2004年))。対象の変異を担持するプライマーが、DNAの反対の鎖上の同じ配列にアニールする。典型的には、変異は、プライマーの中央にあり、変異の両側には、正しい配列のおよそ20個のヌクレオチドが隣接する。プライマー中の配列は、NNNまたはNNK(コード)、およびMNN(非コード)である(N=4つ全て、K=G、T、M=A、C)。伸長の後に、DpnIを使用して、dam−メチル化DNAを消化し、野生型の鋳型を排除する。この技法は、所与の遺伝子座(すなわち、1つのコドン)における全ての可能なアミノ酸置換を調査する。この技法は、ナンセンスコドンを有さない単一部位における全ての可能な置換えの生成を促進し、その結果、ほとんどの可能な対立遺伝子を、等しい形からほぼ等しい形で提示する。この技法では、標的酵素の構造、機構またはドメインについての事前の知識は必要でない。この技術は、続いて、シャフリングまたは遺伝子の再組立てが行われる場合、単一部位の変異上昇(up−mutation)の全ての可能な組合せを含有する組換え体の多様なライブラリーを生み出す。50個を上回る異なる酵素の進化を成功させる場合に、また、所与の酵素に2つ以上の特性をもたらす場合にも、この技術による組合せの有用性が示されている。
コンビナトリアルカセット変異誘発(Combinatorial Cassette Mutagenesis)(CCM)では、短いオリゴヌクレオチドカセットを使用して、限定的な領域を、多数の可能なアミノ酸配列の変化で置き換える(Reidhaar−Olsonら、Methods Enzymol.、208巻:564〜586頁(1991年);およびReidhaar−Olsonら、Science、241巻:53〜57頁(1988年))。この技法を使用すれば、2または3つの部位において同時に置換することが可能になる。さらに、この方法は、限定的な範囲の部位における、非常に多数の可能な配列変化も試験する。この技法は、ラムダリプレッサーのDNA結合ドメインの情報量を調査するために使用されている。
コンビナトリアル複数カセット変異誘発(Combinatorial Multiple Cassette Mutagenesis)(CMCM)は本質的には、CCMに類似し、ただし、これは、より大きなプログラムの一部として用いられる。すなわち、1)epPCRを、高い変異率で使用して、2)ホットスポットおよびホット領域を同定し、次いで、3)CMCMにより伸長して、タンパク質配列空間の定義された領域を網羅する(Reetzら、Angew. Chem. Int. Ed Engl.、40巻:3589〜3591頁(2001年))。CCMと同様、この方法により事実上、標的領域上の全ての可能な変化を試験することができる。この方法は、ランダム変異およびシャフルされた遺伝子を生み出すための方法と併せて使用すると、多様なシャフルされたタンパク質を生成する優れた手段になる。このアプローチにより、酵素のエナンチオ選択性を51倍増大させることに成功した。
ミューテーター株技法(Mutator Strains technique)では、条件付tsミューテータープラスミドにより、選択の間に、ランダムなおよび天然の変異の頻度を20〜4000倍増大させることが可能になり、選択が必要でない場合、有害な変異が蓄積するのがブロックされる(Selifonovaら、Appl. Environ. Microbiol.、67巻:3645〜3649頁(2001年))。この技術は、プラスミド由来のmutD5遺伝子に基づき、この遺伝子は、DNAポリメラーゼIIIの変異体サブユニットをコードする。このサブユニットは、内因性DNAポリメラーゼIIIに結合し、プラスミドを有する任意の株において、ポリメラーゼIIIのプルーフリーディング能力を損なう。広い範囲の塩基置換およびフレームシフト変異が起こる。有効に使用するために、所望の表現型が達成されたら、前記ミューテータープラスミドは除去すべきである。これは、41℃においてプラスミドの除去(plasmid curing)を可能にする温度感受性の(ts)複製開始点を通して達成される。ミューテーター株はかなり長い間調査されていることに留意すべきである(Lowら、J. Mol. Biol.、260巻:359〜3680頁(1996年)を参照)。この技法では、非常に高い自然発生の変異率が観察される。条件付特性により、望まれないバックグラウンドの変異が最小限に留められる。この技術を、適応進化と組み合わせて、変異誘発率を増強し、所望の表現型をより迅速に達成することができる。
ルックスルー変異誘発(Look−Through Mutagenesis)(LTM)は、選択されたアミノ酸のコンビナトリアル変異を評価し、最適化する、多次元の変異誘発の方法である(Rajpalら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、102巻:8466〜8471頁(2005年))。全ての可能なアミノ酸変化で各部位を飽和させるのではなく、9つからなるセットを選んで、アミノ酸のR基の化学的性質の範囲を網羅する。1つの部位当たりの変化がより少ないことにより、複数の部位をこのタイプの変異誘発に付すことが可能になる。低ナノモル濃度〜ピコモル濃度の抗体についての結合親和性の>800倍の増加が、この方法を通して達成されている。これは、ランダムな組合せの数を最小限に留めるための合理的なアプローチであり、改善された形質を見出す能力を、スクリーニングしようとするクローンの数を大幅に減少させることによって増やすことができる。これは、抗体の工学的操作、具体的には、結合親和性を増大させること、および/または解離を低下させることとに適用されている。この技法は、スクリーニングまたは選択のいずれかと組み合わせることができる。
遺伝子の再組立て(Gene Reassembly)は、複数の遺伝子に一度に適用すること、または単一の遺伝子のキメラの大きなライブラリー(複数の変異)を生み出すために適用することができる、DNAシャフリング方法である(Verenium Corporationにより供給されるTunable GeneReassembly(商標)(TGR(商標))技術)。典型的には、この技術は、超高スループットスクリーニングと組み合わせて使用して、所望の改善について、提示された配列空間のクエリーを行う。この技法により、相同性に依存しない複数の遺伝子組換えが可能になる。クロスオーバー事象の正確な数および位置を、バイオインフォマティクス解析を介して設計された断片を使用してあらかじめ決定することができる。この技術により、親遺伝子を事実上再形成することなく、非常に高いレベルの多様性、および低いレベルの不活性な遺伝子がもたらされる。GSSM(商標)と組み合わせると、大きな範囲の変異を、改善された活性について試験することができる。この方法により、DNAシャフリングの「ブレンディング」および「微調整」が可能になり、例えば、コドンの使用を最適化することができる。
インシリコのタンパク質設計の自動化(Protein Design Automation)(PDA)は、特定の折畳みを有する、構造的に定義されたタンパク質骨格をアンカーし、折畳みおよび全体的なタンパク質のエネルギー特性を安定化させることができるアミノ酸置換について、配列空間を検索する最適化アルゴリズムである(Hayesら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、99巻:15926〜15931頁(2002年))。この技術は、タンパク質のアミノ酸変異に対する構造的な許容度について検索するために、インシリコの構造に基づく、エントロピーの予測を使用する。統計力学を適用して、各位置におけるカップリング相互作用を計算する。アミノ酸置換に対する構造的な許容度が、カップリングの尺度である。最終的に、この技術は、構造的な特徴の完全性を維持しながら、タンパク質の特性の所望の改変を得るように設計される。この方法は、コンピュータによる評価を行い、非常に多数の可能な配列バリアント(1050個)をフィルターにかけることを可能にする。試験すべき配列バリアントの選択は、最も好ましい熱力学に基づく予測に関連する。明らかに、安定性または安定性に関連する特性のみが、この技術を用いて有効に処理され得る。この方法は、いくつかの治療用タンパク質、とりわけ、工学的に操作された免疫グロブリンにおいて首尾よく使用されている。インシリコの予測により、並外れて多数の潜在的なバリアントを試験することが回避される。現存する三次元構造に基づく予測は、仮定上の構造に基づく予測よりも成功する可能性が高い。この技術により、複数の同時変異を容易に予測することができ、複数の同時変異の、標的を定めたスクリーニングが可能になり、こうしたスクリーニングは、純粋に実験による技術では、数の指数関数的な増加に起因して幾分不可能である。
反復飽和変異誘発(Iterative Saturation Mutagenesis)(ISM)は、1)構造/機能の知識を使用して、酵素の改善に有望な部位を選ぶこと;2)飽和変異誘発を、選ばれた部位において、変異誘発の方法、例として、Stratagene QuikChange(Stratagene;San Diego CA)を使用して実施すること;3)所望の特性についてスクリーニング/選択すること;および4)改善されたクローン(複数可)を使用して、別の部位において再度始め、所望の活性が達成されるまで繰り返し続けることを含む(Reetzら、Nat. Protoc.、2巻:891〜903頁(2007年);およびReetzら、Angew. Chem. Int. Ed Engl.、45巻:7745〜7751頁(2006年))。これは、実績のある方法論であり、これにより確実に、所与の位置における全ての可能な置換えが、スクリーニング/選択のためになされる。
変異誘発のための上記の方法はいずれも、単独で、または任意に組み合わせて使用することができる。さらに、本明細書に記載するように、定向進化の方法は、いずれか1つを、またはそれらを組み合わせて、適応進化の技法と併せて使用してもよい。
(実施例I)
例示的なメタクリル酸経路の酵素
この実施例は、メタクリル酸の生成のための例示的な経路を記載する。
図1は、アセチルCoAおよびピルベートからMAAへの、中間体シトラマレートを介した例示的な経路を図示する。また、アコニテートからMAAへの経路も、示される。1つの経路において、アセチルCoAおよびピルベートは、まず、シトラマル酸シンターゼによって、シトラマレートに転換される。シトラマレートの脱水は、シトラコネート(ステップB)またはメサコネート(ステップC)のいずれかを生じ得る。メサコネートおよびシトラコネートは、シス/トランスイソメラーゼによって、ステップGにおいて相互転換される。メサコネート(ステップH)またはシトラコネート(ステップC)の脱カルボキシル化は、MAAを生じる。代替の経路において、シトラマレートは、アセチルCoAおよびピルベートから、シトラマリルCoA中間体を介して、ステップDおよびEにおいて形成され、シトラマリルCoAリアーゼおよびシトラマリル−coAヒドロラーゼ、トランスフェラーゼまたはシンテターゼによって触媒される。
また、アコニテートからMAAへの経路も、例示される。1つの経路において、アコニテートは、まず、アコニット酸デカルボキシラーゼによって、イタコネートへと脱カルボキシル化される(ステップI)。イタコネートは、次いで、イタコン酸デルタ−イソメラーゼによって、シトラコネートへと異性体化される(ステップJ)。シトラコネートのMAAへの転換は、脱カルボキシル化によって直接進むか、またはメサコネートを介して間接的に進むかのいずれかである。代替の経路において、イタコネート中間体は、まず、CoAトランスフェラーゼまたはシンテターゼによって、イタコニルCoAへと転換される(ステップL)。イタコニルCoAの水和は、シトラマリルCoAを生じ、これは、上で記載されそして図1において示されるように、次いで、MAAへと転換される。
表1は、図1において示されるステップを実施可能である酵素クラスを示す。例示的な酵素は、下でさらに詳細に記載される。
EC2.3.1.a シンターゼ(ステップA)。シトラマル酸シンターゼ(EC2.3.1.182)は、アセチルCoAおよびピルベートのシトラマレートおよび補酵素Aへの転換を触媒する。この酵素は、Methanocaldococcus jannaschii(Howellら、J Bacteriol.181巻、331〜333頁(1999年))、Leptospira interrrogans(Xuら、J Bacteriol.186巻、5400〜5409頁(2004年))およびGeobacter sulfurreducens(Rissoら、J Bacteriol、190巻、2266〜2274頁(2008年))などの古細菌に見出される、イソロイシン生合成のトレオニン非依存型経路に関わる。この酵素は、in vivoで合成方向に作用するが、基質としてピルベートに対して非常に特異的であり、典型的には、イソロイシンによって阻害される。定向進化によって開発されたM.jannaschii由来の組換えシトラマル酸シンターゼは、非常に活性であり、イソロイシンによる阻害を欠く(Atsumiら、Appl Environ Microbiol 74巻、7802〜7808頁(2008年))。シトラマル酸シンターゼ活性もまた、Rhodospirillum rubrumのシトラマル酸回路の酢酸同化経路において実証されたが、この活性に関連する遺伝子は、同定されなかった(Bergら、Mikrobiologiia 78巻、22〜31頁(2009年))。
EC2.8.3.a CoAトランスフェラーゼ(ステップE)。CoAトランスフェラーゼは、1つの分子から別の分子へのCoA部分の可逆的転移を、触媒する。図1における2つの変換は、CoAトランスフェラーゼを利用する:シトラマリルCoAのシトラマレートへの転換(ステップE)およびイタコネートのイタコニルCoAへの活性化(ステップL)。図1のステップEにおけるシトラマリルCoAトランスフェラーゼ(EC2.8.3.7および2.8.3.11)は、シトラマリルCoA由来のCoA部分を、供与体へと転移させる。シトラマル酸:スクシニルCoAトランスフェラーゼ酵素は、グリオキシル酸同化の3−ヒドロキシプロピオン酸回路において活性である。この酵素は、Chloroflexus aurantiacusにおけるsstによってコードされ、これは、シトラマリルCoAリアーゼをコードする遺伝子の上流に位置する(Friedmannら、J Bacteriol.188巻、6460〜6468頁(2006年))。この酵素は、E.coliにおいてクローニングされ、異種性に発現させられ、特徴付けされた。この酵素はまた、イタコン酸:スクシニルCoAトランスフェラーゼとしても活性である。類似の酵素は、Roseiflexus種RS−1およびChloroflexus aggregansにおいて、配列同一性およびシトラマリルCoAリアーゼ遺伝子に対する近接性によって、見出される。Pseudomonas種B2abaにおいて特徴付けされたCoAトランスフェラーゼは、シトラマリル(citramlayl)CoAトランスフェラーゼ活性およびイタコニルCoAトランスフェラーゼ活性の両方を示し、生物体が、イタコネートおよびシトラマレートの両方において成長することを可能にする(Cooperら、Biochem.J 91巻、82〜91頁(1964年))。この酵素に関連する遺伝子は、同定されていない。シトラマリルCoAトランスフェラーゼ活性もまた、Achromobacter xylosoxydansの細胞抽出物において検出され、これは、効率的にイタコネートをシトラマレートへ転換する(Heら、J Biosci Bioeng.89巻、388〜391頁(2000年))。関連の遺伝子は不明であるが、この遺伝子は、最も高いタンパク質配列類似性Sstを有する。
これらの変換を触媒するためのさらなる候補酵素としては、Clostridium kluyveriのcat1、cat2およびcat3の遺伝子産物が挙げられ、これは、それぞれ、スクシニルCoA活性、4−ヒドロキシブチリルCoA活性およびブチリルCoAトランスフェラーゼ活性を示すことが示されている(Seedorfら、Proc.Natl.Acad.Sci USA 105巻、2128〜2133頁(2008年);Sohlingら、J Bacteriol.178巻、871〜880頁(1996年))。類似のCoAトランスフェラーゼ活性はまた、Trichomonas vaginalis(van Grinsvenら、J.Biol. Chem.283巻、1411〜1418頁(2008年))およびTrypanosoma brucei(Riviereら、J.Biol.Chem.279巻、45337〜45346頁(2004年))においても示される。
嫌気性細菌Acidaminococcus fermentans由来のグルタコニルCoA−トランスフェラーゼ(EC2.8.3.12)酵素は、2,3−デヒドロアジピルCoAと構造が似ている基質である、グルタコニルCoAおよび3−ブテノイルCoAと反応する(Mackら、Eur.J.Biochem.226巻、41〜51頁(1994年))。この酵素をコードする遺伝子は、gctAおよびgctBである。この酵素は、他のCoA誘導体(グルタリルCoA、2−ヒドロキシグルタリルCoA、アジピルCoA、クロトニルCoAおよびアクリリルCoAが挙げられる)に対して、低減しているが検出可能な活性を有する(Buckelら、Eur.J Biochem.118巻、315〜321頁(1981年))。この酵素は、E.coliにおいてクローニングされ、発現されている(Mackら、Eur.J.Biochem.226巻、41〜51頁(1994年))。グルタコン酸CoA−トランスフェラーゼ活性もまた、Clostridium sporosphaeroidesおよびClostridium symbiosumにおいて検出されている。さらなるグルタコン酸CoA−トランスフェラーゼ酵素は、Acidaminococcus fermentansタンパク質配列に対する相同性によって推測され得る。
アセチルCoAをCoA供与体として利用可能であるCoAトランスフェラーゼは、アセトアセチルCoAトランスフェラーゼであり、E.coli atoA(アルファサブユニット)およびatoD(ベータサブユニット)遺伝子によってコードされている(Korolevら、Acta Crystallogr.D.Biol.Crystallogr.58巻、2116〜2121頁(2002年);Vanderwinkelら、Biochem.Biophys.Res.Commun.33巻、902〜908頁(1968年))。この酵素は、広い基質範囲を有し(Sramekら、Arch.Biochem.Biophys.171巻、14〜26頁(1975年))、そして、種々の分枝鎖状および直鎖状のアシルCoA基質(イソブチレート(Matthiesら、Appl Environ.Microbiol 58巻、1435〜1439頁(1992年))、バレレート(Vanderwinkelら、Biochem.Biophys.Res.Commun.33巻、902〜908頁(1968年))およびブタノエート(Vanderwinkelら、Biochem.Biophys.Res.Commun.33巻、902〜908頁(1968年))が挙げられる)からCoA部分をアセテートへ転移させることが示されている。この酵素は、アセトアセテートによって転写レベルで誘導される。したがって、調節制御の改変は、この酵素を経路へと工学的に操作するために有用であり得る(Pauliら、Eur.J Biochem.29巻、553〜562頁(1972年))。類似の酵素は、Corynebacterium glutamicum ATCC 13032(Duncanら、Appl.Environ.Microbiol 68巻、5186〜5190頁(2002年))、Clostridium acetobutylicum(Caryら、Appl.Environ.Microbiol 56巻、1576〜1583頁(1990年);Wiesenbornら、Appl.Environ.Microbiol 55巻、323〜329頁(1989年))、およびClostridium saccharoperbutylacetonicum(Kosakaら、Biosci.Biotechnol Biochem.71巻、58〜68頁(2007年))に存在する。
EC3.2.1.a CoAヒドロラーゼ(ステップE)。3.1.2 ファミリーにおける酵素は、アシルCoA分子をその対応する酸へと加水分解する。広い基質範囲を有するいくつかのCoAヒドロラーゼは、シトラマリルCoAヒドロラーゼ活性を示す好適な候補である。例えば、Rattus norvegicus脳由来のacot12によってコードされる酵素(Robinsonら、Biochem.Biophys.Res.Commun.71巻、959〜965頁(1976年))は、ブチリルCoA、ヘキサノイルCoAおよびマロニルCoAと反応し得る。acot8によってコードされるヒトジカルボン酸チオエステラーゼは、グルタリルCoA、アジピルCoA、スベリルCoA、セバシルCoAおよびドデカンジオイルCoAに対する活性を示す(Westinら、J.Biol.Chem.280巻、38125〜38132頁(2005年))。この酵素に最も近いE.coliホモログであるtesBもまた、ある範囲のCoAチオールエステルを加水分解することができる(Naggertら、J Biol Chem 266巻、11044〜11050頁(1991年))。また、類似の酵素が、ラット肝臓において特徴付けされている(Deana R.、Biochem Int 26巻、767〜773頁(1992年))。E.coliにおいてヒドロラーゼ活性を有するさらなる酵素としては、ybgC、paaIおよびybdBが挙げられる(Kuznetsovaら、FEMS Microbiol Rev、2005年、29巻(2号)、263〜279頁;Songら、J Biol Chem、2006年、281巻(16号)、11028〜38頁)。その配列は報告されていないが、エンドウの葉のミトコンドリア由来の酵素は、広い基質特異性を有し、アセチルCoA、プロピオニルCoA、ブチリルCoA、パルミトイルCoA、オレオイルCoA、スクシニルCoAおよびクロトニルCoAにおいて活性が実証されている(Zeiherら、Plant.Physiol.94巻、20〜27頁(1990年))。S.cerevisiae由来のアセチルCoAヒドロラーゼ、ACH1は、別の候補ヒドロラーゼを代表する(Buuら、J.Biol.Chem.278巻、17203〜17209頁(2003年))。
なお別の候補ヒドロラーゼは、Acidaminococcus fermentans由来のグルタコン酸CoAトランスフェラーゼである。この酵素は、部位特異的変異誘発によって、グルタリルCoA、アセチルCoAおよび3−ブテノイルCoAに対して活性を有するアシルCoAヒドロラーゼへと変換される(Mackら、FEBS.Lett.405巻、209〜212頁(1997年))。これは、スクシニルCoA:3−ケト酸CoAトランスフェラーゼおよびアセトアセチルCoA:アセチルCoAトランスフェラーゼをコードする酵素はまた、適切な変異を導入してその機能を上記のように変化させることで、この反応ステップについての候補としても働き得ることを示す。
EC4.1.1.a デカルボキシラーゼ(ステップC、H、J)。図1におけるMAAの最終ステップは、メサコネートまたはシトラコネートのいずれかの脱カルボキシル化である。シトラコネートデカルボキシラーゼ活性またはメサコネートデカルボキシラーゼ活性を有する酵素は、現在までに同定されていないが、好適な酵素候補としては、アコニテートのイタコネートへの転換を触媒するアコニット酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.6)、4−オキサロクロトネートの2−オキソペンテノエート(oxopentenoate)への転換を触媒する4−オキサロクロトン酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.77)、ならびにケイ皮酸デカルボキシラーゼファミリー(EC4.1.1.−)における酵素が、挙げられる。アコニット酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.6)は、Candidaの株において、およびまた、糸状菌Aspergillus terreusにおいても、イタコネート生合成における最終ステップを触媒する(Bonnarmeら、J Bacteriol.177巻、3573〜3578頁(1995年);WillkeおよびVorlop、Appl Microbiol. Biotechnol 56巻、289〜295頁(2001年))。シス−アコニット酸デカルボキシラーゼ(CAD)(EC4.1.16)は、Aspergillus terreusから精製されて、そして特徴付けされている(Dwiartiら、J. Biosci. Bioeng. 94巻(1号)、29〜33頁(2002年))。近年、この遺伝子は、クローニングされ、そして機能的に特徴付けされている(Kanamasaら、Appl.Microbiol Biotechnol 80巻、223〜229頁(2008年))および(WO/2009/014437)。CADのいくつかの近いホモログが、以下に列挙される(EP2017344A1;WO2009/014437A1)。CADの遺伝子配列およびタンパク質配列は、以下に列挙されるいくつかの近いホモログと共に、以前に報告された(EP2017344A1;WO2009/014437A1)。
4−オキサロクロトン酸(Oxalocronate)デカルボキシラーゼは、4−オキサロクロトネートの2−オキソペンタノエートへの脱カルボキシル化を触媒する。この酵素は、多くの生物体から単離され、そして特徴付けされている。この酵素をコードする遺伝子としては、Pseudomonas種(株600)におけるdmpHおよびdmpE(Shinglerら、174巻、711〜724頁(1992年))、Pseudomonas putida由来のxylIIおよびxylIII(Katoら、Arch.Microbiol 168巻、457〜463頁(1997年);Stanleyら、Biochemistry 39巻、3514頁(2000年);Lianら、J.Am.Chem.Soc.116巻、10403〜10411頁(1994年))ならびにRalstonia eutropha JMP134由来のReut_B5691およびReut_B5692(Hughesら、158巻、79〜83頁(1984年))が挙げられる。Pseudomonas種(株600)由来の酵素をコードする遺伝子は、E.coliにおいてクローニングされ、そして発現されている(Shinglerら、J. Bacteriol.174巻、711〜724頁(1992年))。Pseudomonas putidaにおけるxylIによってコードされる4−オキサロクロトネートデカルボキシラーゼは、ビニルピルビン酸ヒドラターゼと複合体を形成して機能する。ヒドラターゼ活性を欠き、野生型デカルボキシラーゼ活性を維持するこの酵素の組換え形態が、特徴付けされている(Stanleyら、Biochem.39巻、718〜26頁(2000年))。類似の酵素は、Ralstonia pickettii(正式にはPseudomonas pickettii)に見出される(Kukorら、J Bacteriol.173巻、4587〜94頁(1991年))。
最後に、デカルボキシラーゼのクラスは、シンナメート(フェニルアクリレート)および置換シンナメート誘導体の、その対応するスチレン誘導体への転換を触媒することが、特徴付けされている。これらの酵素は、種々の生物に共通しており、E.coliにおいてクローニングされ、発現されているこれらの酵素をコードする特定の遺伝子としては、以下が挙げられる:Saccharomyces cerevisae由来のpad 1(Clausenら、Gene 142巻、107〜112頁(1994年))、Lactobacillus plantarum由来のpdc(Barthelmebsら、67巻、1063〜1069頁(2001年);Qiら、Metab Eng 9巻、268〜276頁(2007年);Rodriguezら、J.Agric.Food Chem.56巻、3068〜3072頁(2008年))、Klebsiella oxytoca(Uchiyamaら、Biosci.Biotechnol.Biochem.72巻、116〜123頁(2008年);Hashidokoら、Biosci.Biotech.Biochem.58巻、217〜218頁(1994年))、Pedicoccus pentosaceus(Barthelmebsら、67巻、1063〜1069頁(2001年))由来のpofK(pad)、ならびにBacillus subtilisおよびBacillus pumilus由来のpadC(Shinglerら、174巻、711〜724頁(1992年))。Pseudomonas fluorescens由来のフェルラ酸デカルボキシラーゼもまた、精製され、特徴付けされている(Huangら、J.Bacteriol.176巻、5912〜5918頁(1994年))。このクラスの酵素は、安定であり、外因性のまたは内部的に結合する補因子を必要としない。このことは、これらの酵素を、生体内変化のために理想的に好適にする(Sariaslani、Annu.Rev.Microbiol.61巻、51〜69頁(2007年))。
別の好適な酵素は、ソルビン酸を1,3−ペンタジエンに転換するソルビン酸デカルボキシラーゼである。Aspergillus nigerによるソルビン酸脱カルボキシル化は、3つの遺伝子:padA1、ohbA1およびsdrAを必要とする(Plumridgeら、Fung. Genet. Bio、47巻、683〜692頁(2010年)。PadA1は、フェニルアクリル酸デカルボキシラーゼとして注解されており、ohbA1は、推定4−ヒドロキシ安息香酸デカルボキシラーゼであり、そしてsdrAは、ソルビン酸デカルボキシラーゼ調節因子である。いくつかの真菌種および酵母種を含むさらなる種が、ソルビン酸を脱カルボキシル化することが示されている(KinderlerlerおよびHatton、Food Addit Contam.、7巻(5号)、657〜69頁(1990年);Casasら、Int J Food Micro.、94巻(1号)、93〜96頁(2004年);PinchesおよびApps、Int. J. Food Microbiol.116巻、182〜185頁(2007年))。例えば、Aspergillus oryzaeおよびNeosartorya fischeriは、ソルビン酸を脱カルボキシル化すること、およびpadA1、ohbA1およびsdrAに近いホモログを有することが、示されている。
上で挙げられたデカルボキシラーゼのそれぞれは、メサコネートまたはシトラコネートを脱カルボキシル化するための可能性のある好適な酵素を代表する。前記酵素の所望の活性または産生性が所望の転換において観察されない場合、このデカルボキシラーゼ酵素は、公知のタンパク質の工学的操作方法を用いて、必要な性能を達成するように進化させられ得る。重要なことには、このことは、デカルボキシラーゼのC末端領域が基質特異性を担うとみられるキメラ酵素の使用を通して、示された(Barthelmebsら、AEM 67巻、1063〜1069頁(2001年))。したがって、メサコネートまたはシトラコネートに対する活性を取得するためにデカルボキシラーゼの特異性を拡大する定向進化実験は、これらの酵素のC末端領域に、焦点をあわせ得る。
EC4.1.3.a リアーゼ(ステップD)。シトラマリルCoAリアーゼ(EC4.1.3.25)は、アセチルCoAおよびピルベートを、シトラマリルCoAへと転換する(図1のステップDにおいて示される)。この酵素は、グリオキシル酸同化の3−ヒドロキシプロピオン酸(3−HP)回路に関わり、ここで、シトラマリルCoA分解方向において作用する。この酵素は、緑色非硫黄光栄養細菌Chloroflexus aurantiacusにおけるccl遺伝子によってコードされ(Friedmannら、J Bacteriol.189巻、2906〜2914頁(2007年))、シトラマリルCoAトランスフェラーゼをコードする遺伝子の下流に位置する。ccl遺伝子は、E.coliにおいて、クローニングされ、異種性に発現された。類似の遺伝子クラスターは、Roseiflexus種RS−1およびChloroflexus aggregansに見出されるが、この酵素は、現在までに特徴付けされていない。3−HP回路はまた、Rhodobacter sphaeroides(そのゲノムは、ccl遺伝子産物に対して高い配列類似性を有するタンパク質をコードする)において活性である(Filatovaら、Mikrobiologiia 74巻、319〜328頁(2005年))。Bacillus種由来のシトラマリルCoAリアーゼは、可逆的であることが示されたが、関連の遺伝子は、現在までに同定されていない(Sasakiら、J Biochem.73巻、599〜608頁(1973年))。
EC4.2.1.a デヒドラターゼ(ステップB、F)。図1のステップBにおけるシトラマレートのシトラコネートへの脱水は、シトラマル酸デヒドラターゼ(シトラコネート形成)活性を有する酵素(EC4.2.1.35)によって触媒される。この酵素は、シトラマル酸シンターゼと共に、トレオニン非依存型イソロイシン生合成経路(Methanocaldococcus jannaschiiおよびLeptospira interrrogansにおいて特徴付けされた)に関わる。これらの生物体におけるシトラマレートの脱水は、イソプロピルリンゴ酸イソメラーゼ(IPMI)によって触媒され、この酵素は、シトラマレートのシトラコネートへの脱水とその後の水のシトラコネートへのトランス付加によるメチルマレートの形成との両方を触媒する(Xuら、J Bacteriol.186巻、5400〜5409頁(2004年);Drevlandら、J Bacteriol.189巻、4391〜4400頁(2007年))。hacABによってコードされるM.jannaschiiホモアコニターゼ(EC4.2.1.114)もまた、好適な候補であり、改変された基質特異性およびイソプロピルリンゴ酸イソメラーゼ活性を有するこの酵素の変異体は、特徴付けされている(Jeyakanthanら、Biochemistry 49巻、2687〜2696頁(2010年))。L.interrogans IPMI遺伝子は、E.coli内にクローニングされ、ここで、この遺伝子は、共に発現された場合、ネイティブのアコニターゼ活性を欠損する株を補うことができる(Xuら、J Bacteriol. 186巻、5400〜5409頁(2004年))。シトラマル酸デヒドラターゼもまた、Pseudomonas putidaにおいて特徴付けされており、ここで、この酵素は、3,5−キシレノール分解に関わる。この経路の酵素(シトラマル酸デヒドラターゼを含む)をコードする遺伝子は、伝達性プラスミドpRA500に位置し、E.coli内にクローニングされている(Jain、Appl. Microbiol. Biotechnol.、45巻、502〜508頁(1996年))。シトラコネートはまた、LEU1によってコードされるSaccharomyces cerevisiae 3−イソプロピルリンゴ酸デヒドラターゼ(EC4.2.1.33)酵素の基質でもある(Kohlhaw、Methods Enzymol. 166巻、423〜429頁(1988年))。Candida maltosaの3−イソプロピルリンゴ酸デヒドラターゼLEU1は、ネイティブの基質よりも、シトラコネートに対してより高い活性を示す(Bode, R.およびBirnbaum, D.、J. Basic Microbiol.31巻、21〜26頁(1991年))。シトラコネートのメチルマレートへの水和活性の減弱化または選択的阻害は、シトラコネート中間体の蓄積の増大に必要とされ得る。
別の好適なシトラマル酸デヒドラターゼ候補は、シス−2−メチルアコニテート(EC4.2.1.79)およびトランス−2−メチルアコニテート(EC4.2.1.117)を形成する2−メチルクエン酸デヒドラターゼ酵素である。prpDによってコードされるE.coliの2−メチルクエン酸シス−デヒドラターゼは、基質としてのシトラマレートにおいて活性である(Blankら、Microbiology 148巻、133〜146頁(2002年))。シトラコネートも、メサコネートもまた、基質として活性ではなく、このことは、PrpDが、厳密に、イソメラーゼよりもむしろデヒドラターゼ酵素であることを示す。Salmonella enterica serovar TyphimuriumのPrpD酵素もまた、特徴付けされているが、シトラマレートにおける活性は、実証されていない(Horswillら、Biochemistry 40巻、4703〜4713頁(2001年))。acnBおよびacnDによってコードされる、Shewanella oneidensisの2−メチルクエン酸デヒドラターゼ酵素もまた、候補である(Grimekら、J Bacteriol. 186巻、454〜462頁(2004年))。AcnD酵素は、in vivoで機能するために、prpFによってコードされる補因子を必要とする。アコニテートとの複合体におけるPrpFの結晶構造研究は、この酵素が、アコニテートおよび2−メチルアコニテートのシス/トランス異性体を相互転換する、シス/トランスイソメラーゼとして機能することを示す(Garveyら、Protein Sci 16巻、1274〜1284頁(2007年))。S.oneidensis由来のさらなる候補は、leuCDによってコードされた、予測されたイソプロピルリンゴ酸イソメラーゼである。
ステップFにおいて、シトラマレートのメサコネートへの脱水は、2−メチルリンゴ酸デヒドラターゼまたはメサコナーゼとも呼ばれる、シトラマル酸デヒドラターゼによって触媒される(メサコネート形成、EC4.2.1.34)。この酵素は、Clostridium tetanomorphumにおいて部分的にのみ特徴付けされていて、現在、遺伝子候補は利用可能ではない。活性は、Rhodospirillum rubrumの細胞抽出物において実証されている(ここでは、アセテート利用のシトラマル酸回路において関わっている)(BergおよびIvanovskii、Mikrobiologiia 78巻、22〜31頁(2009年))が、関連の遺伝子は、同定されていない。
イタコニルCoAは、イタコニルCoAヒドラターゼ(EC4.2.1.56)によってシトラマリルCoAに転換される(図1のステップK)。イタコニルCoAヒドラターゼは、Pseudomonas種B2aba(CooperおよびKornberg、Biochem.J 91巻、82〜91頁(1964年))、Achromobacter xylosoxydans(Heら、J Biosci Bioeng.89巻、388〜391頁(2000年))およびPseudomonas fluorescens(Nagai, J.、J. Biochem、53巻、181〜7頁(1963年))などの生物体におけるイタコン酸同化経路に関わる酵素である。この酵素活性は、現在まで、遺伝子に関連づけられていない。
EC5.2.1.a シス/トランスイソメラーゼ(ステップG)。メサコネートおよびシトラコネートのシス/トランス異性体化は、シトラコン酸イソメラーゼ活性を有する酵素によって触媒される。好適な候補としては、アコニット酸イソメラーゼ(EC5.3.3.7)、マレイン酸シス,トランス−イソメラーゼ(EC5.2.1.1)、マレイルアセトンシス,トランス−イソメラーゼおよび不飽和脂肪酸のシス,トランス−イソメラーゼ(Cti)が挙げられる。
アコニット酸イソメラーゼは、シス−およびトランス−アコニテートを相互転換する。prpFによってコードされるShewanella oneidensisのアコニット酸イソメラーゼは、アコニテートおよび2−メチルアコニテートのシス/トランス異性体を相互転換する(Garveyら、Protein Sci 16巻、1274〜1284頁(2007年))。この酵素は、メチルクエン酸デヒドラターゼ、AcnDとの複合体で作用する。アコニット酸イソメラーゼ活性は、Pseudomonas fluorescensおよびPseudomonas putidaを含む多くのグラム陰性細菌において検出されたが、グラム陽性細菌においては検出されていない(Watanabeら、Curr Microbiol 35巻、97〜102頁(1997年))。Pseudomonas putidaから精製された酵素は、特徴付けされている(Klinmanら、Biochemistry 10巻、2253〜2259頁(1971年))。アコニット酸イソメラーゼ酵素もまた、植物において研究されているが、現在までに、遺伝子は同定されていない(Thompsonら、Anal.Biochem.184巻、39〜47頁(1990年))。prpFタンパク質に対して高い配列相同性を有する、いくつかの予測されるタンパク質は、以下に列挙される。
したがって、シス,トランスイソメラーゼの添加は、テレフタル酸(terepthalic acid)の収率を改善することを助け得る。類似の異性体転換のための酵素としては、マレイン酸シス,トランス−イソメラーゼ(EC5.2.1.1)、マレイルアセトンシス−トランス−イソメラーゼ(EC5.2.1.2)および不飽和脂肪酸のシス,トランス−イソメラーゼ(Cti)が挙げられる。
マレイン酸シス,トランス−イソメラーゼ(EC5.2.1.1)は、シス型のマレイン酸のトランス型のフマレートへの転換を触媒する(Scherら、J Biol.Chem. 244巻、1878〜1882頁(1969年))。Alcalidgenes faecalis maiA遺伝子産物が、クローニングされ、そして特徴付けされている(Hatakeyamaら、Biochem.Biophys.Res.Commun.239巻、74〜79頁(1997年))。他のマレイン酸シス,トランス−イソメラーゼは、Serratia marcescens(Hatakeyamaら、Biosci.Biotechnol Biochem.64巻、1477〜1485頁(2000年))、Ralstonia eutrophaおよびGeobacillus stearothermophilusにおいて利用可能である。
マレイルアセトン シス,トランス−イソメラーゼ(EC5.2.1.2)は、4−マレイル−アセトアセテートの4−フマリル−アセチアセテート(4−fumaryl−acetyacetate)への転換、シスからトランスへの転換を触媒する。この酵素は、Pseudomonas aeruginosa(Fernandez−Canonら、J Biol.Chem.273巻、329〜337頁(1998年))およびVibrio cholera(Seltzer、J Biol.Chem.248巻、215〜222頁(1973年))において、maiAによってコードされる。類似の酵素は、E.coli O157において、配列相同性によって同定された。
cti遺伝子産物は、シス−不飽和脂肪酸(UFA)のトランス−UFAへの転換を触媒する。酵素は、P.putidaにおいて特徴付けされている(Junkerら、J Bacteriol.181巻、5693〜5700頁(1999年))。類似の酵素は、Shewanella種MR−4およびVibrio choleraeに見出される。
EC5.3.3.a デルタ−イソメラーゼ(ステップI)。イタコネートのシトラコネートへの転換は、イタコン酸デルタ−イソメラーゼによって触媒される。この活性を有する酵素は、Eubacterium barkeriのメチルイタコン酸デルタ−イソメラーゼ(EC5.3.3.6)(Velardeら、J Mol Biol 391巻、609〜620頁(2009年))である。この酵素は、E.coliにおいて異種性に発現され、そして特徴付けされた。高いタンパク質配列類似性を有するホモログは、以下に列挙される。
EC6.2.1 CoAシンテターゼ(ステップE)。シトラマリルCoAのシトラマレートへの転換(図1、ステップE)およびイタコネートのイタコニルCoAへの転換(図1、ステップL)は、酵素の6.2.1ファミリーにおけるCoA酸−チオールリガーゼまたはCoAシンテターゼによって触媒され得る。イタコニルCoAシンテターゼ(EC6.2.1.4)活性を有するスクシニルCoAシンテターゼ酵素は、Pseudomonas種B2abaにおいて特徴付けされたが、遺伝子は、同定されていない(CooperおよびKornberg、Biochem.J 91巻、82〜91頁(1964年))。さらなるCoAリガーゼ酵素候補としては、スクシニルCoAシンテターゼ(EC6.3.1.4)、アセチルCoAシンテターゼ(EC6.2.1.13)、アシルCoAリガーゼおよびマロニルCoAシンテターゼ(EC6.3.4.9)が挙げられる。広い基質範囲を有するいくつかの酵素が、文献において記載されている。ADP−形成アセチルCoAシンテターゼ(ACD、EC6.2.1.13)は、アシルCoAエステルのその対応する酸への転換を、相伴うATPの合成とカップリングする酵素である。Archaeoglobus fulgidus由来のACD I(AF1211によってコードされる)は、イソブチレート、イソペンタノエートおよびフマレートを含む、種々の直鎖状および分枝鎖状の基質に作用することが示された(Musfeldtら、J Bacteriol.184巻、636〜644頁(2002年))。Archaeoglobus fulgidusにおける第2の可逆的ACD(AF1983によってコードされる)もまた、環状化合物であるフェニルアセテートおよびインドールアセテートに対し高い活性を有する、広い基質範囲を有することが示されている(MusfeldtおよびSchonheit、J Bacteriol.184巻、636〜644頁(2002年))。Haloarcula marismortui由来の酵素(スクシニルCoAシンテターゼとして注解される)は、プロピオネート、ブチレートおよび分枝鎖状の酸(イソバレレートおよびイソブチレート)を基質として受け入れ、そして順方向および逆方向に作用することが示された(Brasenら、Arch.Microbiol 182巻、277〜287頁(2004年))。超好熱性のクレン古細菌Pyrobaculum aerophilum由来のPAE3250によってコードされたACDは、アセチルCoA、イソブチリルCoA(好ましい基質)およびフェニルアセチルCoAと反応する全ての特徴付けされたACDの中で最も広い基質範囲を示した(BrasenおよびSchonheit、Arch.Microbiol 182巻、277〜287頁(2004年))。定向進化または工学的操作は、宿主生物体の生理学的温度で作用するようにこの酵素を改変するために使用され得る。A.fulgidus、H.marismortuiおよびP.aerophilum由来の酵素が、E.coliにおいてクローニングされ、機能的に発現され、そして特徴付けされている(BrasenおよびSchonheit、Arch.Microbiol 182巻、277〜287頁(2004年);MusfeldtおよびSchonheit、J Bacteriol.184巻、636〜644頁(2002年))。Pseudomonas putida由来のアシルCoAリガーゼ(paaFによってコードされる)は、いくつかの脂肪族基質(酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸およびオクタン酸を含む)および芳香族化合物(フェニル酢酸およびフェノキシ酢酸など)に対して働くことが実証されている(Fernandez−Valverdeら、Appl.Environ.Microbiol.59巻、1149〜1154頁(1993年))。関連の酵素、Rhizobium leguminosarum由来のマロニルCoAシンテターゼ(6.3.4.9)は、いくつかの二酸、すなわち、エチル−、プロピル−、アリル−、イソプロピル−、ジメチル−、シクロプロピル−、シクロプロピルメチレン−、シクロブチル−、およびベンジル−マロネートを、その対応するモノチオエステルに転換し得る(Pohlら、J.Am.Chem.Soc.123巻、5822〜5823頁(2001年))。さらなる候補は、E.coliにおけるsucCDおよびS.cerevisiaeにおけるLSC12によってコードされるスクシニルCoAシンテターゼ酵素であり、これは、1つのATP(one ATP)の相伴う消費とともに、スクシネートからのスクシニルCoAの形成を天然に触媒し、この反応は、in vivoで可逆的である(Buckら、Biochemistry 24巻、6245〜6252頁(1985年))。
(実施例II)
アセチル(Actyl)CoAからMAAへの経路を有するMAA産生微生物体の調製
この実施例は、アセチルCoAおよびピルベートからMAAを産生可能な微生物体の生成を記載する。この例示的な経路は、図1のステップA/B/Cにおいて示される。
Escherichia coliは、図1におけるステップA、BおよびCにおいて示されるアセチルCoAおよびピルベートからのMAA産生経路を工学的に操作するための、標的生物体として使用される。E.coliは、MAAを産生可能な、天然的に存在しない微生物を生成するための良い宿主を提供する。E.coliは、遺伝子操作を受け入れ可能であり、エタノール、酢酸、ギ酸、乳酸、コハク酸および1,4−ブタンジオールなどの種々の産物を、嫌気性または微好気性条件下で効率的に産生することが可能であることが、公知である。
アセチルCoAからMAAを産生するように工学的に操作されたE.coli株を生成するために、図1の経路において使用される酵素をコードする核酸(既に記載されている)は、周知の分子生物学技術を用いて、E.coliにおいて発現される(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版(2001年);Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology(1999年)参照)。詳細には、E.coli株は、工学的に操作されて、図1に概説されたルート(ステップA/B/C)を介してアセチルCoAからMAAを産生する。アセチルCoAをMAAへと変換させる酵素をコードする遺伝子を、ベクター上に構築する。詳細には、遺伝子cimA(Q58787.1)、leuCD(P81291.1およびQ58673.1)ならびにcad(XP_001209273)(それぞれ、シトラマル酸シンターゼ、シトラマル酸デヒドラターゼおよびシトラコン酸デカルボキシラーゼをコードする)を、pZE13ベクター(Expressys、Ruelzheim、Germany)に、PA1/lacOプロモーターの制御下にクローニングする。次いで、このプラスミドを、lacI(イソプロピル−ベータ−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)の添加による誘導性の発現を可能にする)を含む宿主株E.coli MG1655内に形質転換させる。得られた株は、アセチルCoAからのMAAの合成に必要なタンパク質および酵素を発現する。
得られた遺伝子操作された生物体を、グルコース含有培地で、当該分野で周知の手順にしたがって培養する(例えば、Sambrookら、前出、2001年参照)。MAA経路遺伝子の発現を、ポリペプチド発現または酵素活性を決定するための当該分野で周知の方法(例えば、ノーザンブロット、mRNAのPCR増幅およびイムノブロッティングが挙げられる)を用いて裏付ける。発現された酵素の酵素活性を、個々の活性について特異的なアッセイを用いて確認する。MAAを産生するよう工学的に操作されたE.coli株の能力を、HPLC、ガスクロマトグラフィー−質量分析(GCMS)または液体クロマトグラフィー−質量分析(LCMS)を用いて確認する。
機能的MAA合成経路を有するように工学的に操作された微生物株を、この経路の効率的利用のために最適化することによって、さらに増大させる。簡潔には、前記工学的に操作された株を、評価し、任意の外因性遺伝子が、律速レベルで発現されるかどうかを決定する。この経路を通るフラックスを制限し得る、低レベルで発現される任意の酵素について、例えば、さらなる遺伝子コピー数の導入またはコドン最適化の導入により、発現が増大される。MAA経路酵素の活性、調節および/または発現を変えるために、変異誘発および/または定向進化などの戦略も適用され得る。
より良い生産体を生成するために、代謝モデリングを使用し、増殖条件を最適化する。モデリングはまた、経路の利用をさらに最適化する任意選択の遺伝子ノックアウトを設計するためにも使用される(例えば、米国特許公開US2002/0012939、US2003/0224363、US2004/0029149、US2004/0072723、US2003/0059792、US2002/0168654およびUS2004/0009466、ならびに米国特許第7,127,379号参照)。モデリング分析は、MAAのより効率的な産生に向けて代謝を変化させる細胞増殖に対する効果の、信頼性のある予測を可能にする。1つのモデリング方法は、2層の最適化アプローチである、OptKnock(Burgardら、Biotechnol. Bioengineer.84巻、647〜657頁(2003年))であり、これは、MAAのより良い産生を集団的に生じる遺伝子ノックアウトを選択するように適用される。適応進化もまた、例えば、シトラコネート中間体またはMAA産物のより良い生産体を生成するために使用され得る。適応進化は、耐性、増殖および産生の特性を改善するために実施される(FongおよびPalsson、Nat. Genet.36巻、1056〜1058頁(2004年);Alperら、Science 314巻、1565〜1568頁(2006年))。結果に基づき、さらに産生を増大させるために、モデリングのその後のラウンドである遺伝子操作および適応進化が、MAA生産体に適用され得る。
MAAの大規模産生のために、上記のMAA経路を含む生物体を、嫌気性条件下でこの生物体の増殖を支持する当該分野で公知の培地を用い、発酵槽内で培養する。発酵は、回分様式、流加−回分様式または連続様式のいずれかで実施される。嫌気性条件を、最初に培地に窒素をスパージし、次いで、培養容器を密封する(例えば、フラスコは、セプタムおよびクリンプキャップで密封され得る)ことによって維持する。微好気性条件もまた、限定的通気のための小さな穴を提供することによって使用され得る。培地のpHを、酸、例えばHSOの添加によって、pH7に維持する。増殖速度を、分光光度計(600nm)を使用して光学濃度を測定すること、およびグルコース取り込み速度を、炭素供給源の枯渇を経時的にモニタリングすることによって測定することによって、決定する。望まないアルコール、有機酸などの副産物および残留グルコースを、HPX−087カラム(BioRad)を用い、グルコースおよびアルコールに屈折率検出器および有機酸にUV検出器を使用して、HPLC(Shimadzu)によって定量化し得る(Linら、Biotechnol. Bioeng.、775〜779頁(2005年))。
(実施例III)
メタクリレートおよびアルコールからのメタクリレートエステルの形成のための例示的な酵素
この実施例は、メタクリレートエステルの産生のための例示的な経路のための酵素を記載する。
図2は、MAAおよびアルコールからメタクリレートエステルへの例示的な経路を示す。メタクリリルCoAシンテターゼまたはメタクリリルCoAトランスフェラーゼは、メタクリレートからメタクリリルCoAを形成するために適用され得る。アルコールトランスフェラーゼ活性を有する酵素は、メタクリリルCoAおよびアルコールからメタクリレートエステルを形成するために適用され得る。
メタクリレートのメタクリリルCoAへの転換は、酵素の6.2.1ファミリーにおけるCoA酸−チオールリガーゼまたはCoAシンテターゼによって触媒され得る。この活性を有する例示的な酵素は、実施例Iにおいて提供される。あるいは、メタクリレートのメタクリリルCoAへの転換は、酵素の2.8.3ファミリーにおけるトランスフェラーゼ酵素によって触媒され得る。CoAトランスフェラーゼは、1つの分子から別の分子へのCoA部分の転移を触媒する。この活性を有する例示的な酵素は、実施例Iに提供される。
メタクリリルCoAおよびアルコールからのメタクリレートエステルの形成は、アルコールトランスフェラーゼ活性を有する酵素によって触媒される。アルコールトランスフェラーゼ活性を有するいくつかの酵素は、米国特許第7,901,915号の実施例1〜10において実証されている。これらとしては、Novozyme 435(Sigma製のCandida antarctica由来の固定化リパーゼB)、Candida cylindracea由来のリパーゼC2(Alphamerix Ltd)、Pseudomonas fluorescens由来のリパーゼ(Alphamerix Ltd)、Aspergillus spp.由来のL−アミノアシラーゼおよびAspergillus oryzae由来のプロテアーゼが挙げられる。このような酵素は、アクリリルCoAおよびメタノールまたはエタノールから、それぞれメチルアクリレートおよびエチルアクリレートを形成することが示された。したがって、このようなトランスフェラーゼ酵素が、メタクリレートエステルを形成するために使用され得る。
他の好適な酵素としては、Candida antarctica由来のcalBによってコードされるリパーゼ(Efeら、Biotechnol.Bioeng.99巻、1392〜1406頁(2008年))およびPseudomonas fluorescens由来のEstF1エステラーゼ(Khalameyzerら、Appl.Environ.Microbiol.65巻、477〜482頁(1999年))が挙げられる。Pseudomonas fluorescens由来のlipBおよびBacillus subtilis由来のestAによってコードされるリパーゼ酵素もまた、この変換を触媒し得る。B.subtilisおよびP.fluorescens遺伝子は、トリアシルグリセロールリパーゼ酵素をコードし、これは、E.coliにおいてクローニングされ、そして特徴付けされている(Dartoisら、Biochim.Biophys.Acta 1131巻、253〜260頁(1992年);Tanら、Appl.Environ.Microbiol.58巻、1402〜1407頁(1992年))。
メタクリリルCoAおよびアルコールからメタクリレートエステルを形成するための酵素をコードするさらなる候補遺伝子としては、ワックスエステルシンターゼ(WS)活性およびアシルCoA:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)活性の両方を有する二機能性酵素をコードするAcinetobacter種ADPl atfA (Kalscheuerら、AJ Biol Chem 2003年、278巻、8075〜8082頁);ホホバ種子においてワックスを蓄積するために必要な酵素をコードするSimmondsia chinensis遺伝子AAD38041(Lardizabalら、Plant Physiology 2000年、122巻、645〜655頁);二機能性WS/DGAT酵素をコードするAlcanivorax borkumensis atfAlおよびatfA2(Kalscheuerら、J Bacteriol 2007年、189巻、918〜928頁);アルコールアセチルトランスフェラーゼをコードするFragaria x ananassa AAT(Noichindaら、FoodSci Technol Res 1999年、5巻、239〜242頁);アルコールアセチルトランスフェラーゼをコードするRosaハイブリッド培養変種AATl(Gutermanら、Plant MoI Biol 2006年、60巻、555〜563頁);アルコールアセチルトランスフェラーゼをコードするSaccharomyces cerevisiae ATFlおよびATF2(Masonら、Yeast 2000年、16巻、1287〜1298頁);ならびにMarinobacter hydrocarbonoclasticus由来のWs1およびWs2(Holtzapple,E.およびSchmidt−Dannert,C.、J. Bacteriol.189巻(10号)、3804〜3812頁、2007年)が挙げられる。Lactococcus lactis由来のカルボキシルエステラーゼ(estAによってコードされる)は、アセチルCoAおよびアルコール(エタノールおよびメタンチオールなど)からのエステルの形成を触媒する(Nardiら、J. Appl. Microbiol.93巻、994〜1002頁(2002年))。Saccharomyces uvarum由来のアルコールO−アセチルトランスフェラーゼは、分枝鎖状アルコールを含む広い範囲のアルコール基質を、その対応する酢酸エステルに転換する(YoshiokaおよびHashimoto、Agricul and Biol Chem、45巻、2183〜2191頁(1981年)。これらの遺伝子によってコードされる酵素のタンパク質配列は、以下に提示される。
(実施例IV)
メタクリレートおよびアルコールからのメタクリレートエステルの形成のための例示的な酵素
この実施例は、メタクリレートエステルの産生のための例示的な経路のための酵素を記載する。
図2は、MAAおよびアルコールからメタクリレートエステルへの例示的な経路を図示する。メタクリレートエステルは、例えば、アルコールまたは多価アルコールの存在下で酸触媒のような脱水剤の存在下で、メタクリレートを加熱することによって、化学的に生成され得る。メタクリレートエステル−形成活性を有する酵素もまた、メタクリレートおよびアルコールから直接メタクリレートエステルを形成するために適用され得る。このような酵素をコードする遺伝子は、メタクリレート合成経路を含む生物体において発現され得る。メタクリレート合成経路を含むいくつかのこのような生物体が、本明細書中およびWO/2009/135074において開示されている。メタクリレートエステル−形成酵素は、サイトゾルを標的として、アルコールおよびメタクリレートのメタクリレートエステルへの細胞内転換を可能にする。あるいは、メタクリレートエステル−形成酵素は、発酵培地中に分泌されてもよく、アルコールおよびメタクリレートからメタクリレートエステルへの細胞外転換を可能にする。別の選択肢は、メタクリレートエステル−形成酵素を、メタクリレートおよびアルコールを含む混合物(発酵ブロスなど)に添加することである。メタクリレート−エステル形成活性を有するいくつかの酵素が、以下に記載される。
Brevibacterium種R312(EC3.5.1.4)由来のアミダーゼは、メタクリレートエステル−形成活性を有する有望な酵素である。この酵素は、エチルアクリレートを加水分解することが示された(Thieryら、J. Gen. Microbiol.、132巻、2205〜8頁、1986年;Soubrierら、Gene、116巻、99〜104頁、1992年)。Rattus norvegicus(EC3.3.2.9)由来のミクロソームのエポキシドヒドロラーゼは、グリシジルメタクリレートを加水分解する活性を有し、そして別の好適な酵素である(Guengerichら、Rev. Biochem. Toxicol.4巻、5〜30頁、1982年)。これらの遺伝子のタンパク質配列は、以下に提示される。
潜在的メタクリレートエステル−形成酵素をコードするさらなる遺伝子としては、ワックスエステルシンターゼ(WS)活性およびアシルCoA:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)活性の両方を有する二機能性酵素をコードするAcinetobacter種ADPl atfA(Kalscheuerら、AJ Biol Chem 2003年、278巻、8075〜8082頁);ホホバ種子においてワックスを蓄積するために必要な酵素をコードするSimmondsia chinensis遺伝子AAD38041(Lardizabalら、Plant Physiology 2000年、122巻、645〜655頁);二機能性WS/DGAT酵素をコードするAlcanivorax borkumensis atfAlおよびatfA2(Kalscheuerら、J Bacteriol 2007年、189巻、918〜928頁);アルコールアセチルトランスフェラーゼをコードするFragaria x ananassa AAT(Noichindaら、FoodSci Technol Res 1999年、5巻、239〜242頁);アルコールアセチルトランスフェラーゼをコードするRosaハイブリッド培養変種AATl(Gutermanら、Plant MoI Biol 2006年、60巻、555〜563頁);およびアルコールアセチルトランスフェラーゼをコードするSaccharomyces cerevisiae ATFlおよびATF2(Masonら、Yeast 2000年、16巻、1287〜1298頁);ならびにMarinobacter hydrocarbonoclasticus由来のWs1およびWs2(Holtzapple,E.およびSchmidt−Dannert,C.、J. Bacteriol.189巻(10号)、3804〜3812頁、2007年)が挙げられる。Lactococcus lactis由来のカルボキシルエステラーゼ(estAによってコードされる)は、アセチルCoAおよびアルコール(エタノールおよびメタンチオールなど)からのエステルの形成を触媒する(Nardiら、J. Appl. Microbiol.93巻、994〜1002頁(2002年))。Saccharomyces uvarum由来のアルコールO−アセチルトランスフェラーゼは、分枝鎖状アルコールを含む広い範囲のアルコール基質を、その対応する酢酸エステルに転換する(YoshiokaおよびHashimoto、Agricul and Biol Chem、45巻、2183〜2191頁(1981年)。この活性に関連する遺伝子は、現在までに同定されていない。これらの遺伝子によってコードされる酵素のタンパク質配列は、以下に提示される。
Homo sapiensパラオキソナーゼ酵素PON1、PON1(G3C9)およびPON3(EC3.1.8.1)は、アリールエステラーゼ活性およびオルガノホスファターゼ活性の両方を有し、また、メタクリレートエステル−形成活性をも有し得る。PON1は、残基192において、グルタミン(R)またはアルギニン(Q)の共通多型部位を有し、これにより、質的相違がもたらされる。例えば、R異性体は、S異性体よりもGBLに対する高いエステラーゼ活性を有する(Billeckeら、Drug Metab Dispos.28巻、1335〜1342頁(2000年))。H.sapiens細胞において、PON1は、高密度リポタンパク質(HDL)粒子に存在し、その活性および安定性は、この環境を必要とする。野生型および組換えのPON1酵素は、他の生物体において、機能的に発現されている(Rochuら、Biochem.Soc.Trans.35巻、1616〜1620頁(2007年);Martinら、Appl.Environ.Microbiol.(2009年))。PON1の定向進化研究は、E.coliにおいて改善された溶解性および触媒性質を有するいくつかの変異体酵素を生じた(ヌクレオチド受託番号AY499188〜AY499199)(Aharoniら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A 101巻、482〜487頁(2004年))。本研究の1つの組換えバリアントG3C9(Aharoniら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A 101巻、482〜487頁(2004年))は、近年、レブリネートからの4−バレロラクトンのpH依存的産生のための統合されたバイオプロセスにおいて使用された(Martinら、Appl.Environ.Microbiol.(2009年))。ヒトPON3は、メタクリレートエステル−形成活性を有し得る、なお別な好適な酵素である(Draganovら、J.Lipid Res.46巻、1239〜1247頁(2005年))。
さらに、Candida antarcticaリパーゼBは、メタクリレートエステル−形成活性を有する別の好適な候補酵素である(Efeら、Biotechnol.Bioeng.99巻、1392〜1406頁(2008年))。Pseudomonas fluorescens由来のエステラーゼ(EstF1によってコードされる)は、なお別の好適な酵素である(Khalameyzerら、Appl.Environ.Microbiol.65巻、477〜482頁(1999年))。生物体、例えばPseudomonas fluorescensおよびBacillus subtilisに由来する他のリパーゼ酵素もまた、この変換を触媒する。B.subtilisおよびP.fluorescens遺伝子は、E.coliにおいてクローニングされ、そして特徴付けされているトリアシルグリセロールリパーゼ酵素をコードする(Dartoisら、Biochim.Biophys.Acta 1131巻、253〜260頁(1992年);Tanら、Appl.Environ.Microbiol.58巻、1402〜1407頁(1992年))。
メタクリレートエステルの形成もまた、環状ラクトンと非環式ヒドロキシカルボン酸との間の相互転換のために、カルボキシルエステル結合分子に作用する、3.1.1ファミリーの酵素によって触媒され得る。Fusarium proliferatum ECU2002由来のL−ラクトナーゼは、種々のラクトン基質に対する、ラクトナーゼ活性およびエステラーゼ活性を示す(Zhangら、Appl.Microbiol.Biotechnol.75巻、1087〜1094頁(2007年))。1,4−ラクトンヒドロキシアシルヒドロラーゼ(EC3.1.1.25)(1,4−ラクトナーゼまたはガンマ−ラクトナーゼとしても公知である)は、4〜8個の炭素原子を有する1,4−ラクトンに特異的である。ヒト血液およびラット肝臓のミクロソームにおけるガンマラクトナーゼは、精製され(Fishbeinら、J Biol Chem 241巻、4835〜4841頁(1966年))、そしてそのラクトナーゼ活性は、カルシウムイオンによって活性化され、そして安定化された(Fishbeinら、J Biol Chem 241巻、4842〜4847頁(1966年))。最適なラクトナーゼ活性は、pH6.0において観察され、高いpHは、加水分解活性をもたらした(FishbeinおよびBessman、J Biol Chem 241巻、4842〜4847頁(1966年))。Xanthomonas campestris、Aspergillus nigerおよびFusarium oxysporumに由来する遺伝子は、1,4−ラクトナーゼとして注解され、4−ヒドロキシブチレートのGBLへの変換を触媒するために使用され得る(Zhangら、Appl Microbiol Biotechnol 75巻、1087〜1094頁(2007年))。
(実施例V)
3−ヒドロキシイソブチレートを介したスクシニルCoAのMAAへの転換のための経路
この実施例は、3−ヒドロキシイソブチレートを介した、スクシニルCoAからメタクリル酸への例示的なMAA合成経路を記載する。
MAA合成のための1つの例示的な経路は、スクシニルCoAから進行する(図3参照)。この経路は、スクシニルCoAからMAAを形成するために、少なくとも3つの、多くとも5つの、酵素的ステップを使用する。この経路中(図3参照)、スクシニルCoAは最初に(R)−メチルマロニルCoAに転換され、これはエピメラーゼによって(S)−メチルマロニルCoAに転換される可能性がある。メチルマロニルCoAの(R)−または(S)−のいずれかの立体異性体は、(図3中に示すような)一対の酵素、またはアシルCoAレダクターゼおよびアルコールデヒドロゲナーゼ活性を示す一種の酵素のいずれかによって、次いでそれぞれ(R)−または(S)−3−ヒドロキシイソブチレートに還元される。スクシニルCoAから3−ヒドロキシイソブチレートへの経路はWO2007/141208中にも記載されている。最終ステップ中、3−ヒドロキシイソブチレートが脱水してMAAが形成される。
この経路の首尾良い工学的操作は、十分な活性および特異性を有する適切な酵素のセットの同定を含む。これは、適切な酵素のセットの同定、生成宿主へのそれらの対応する遺伝子のクローニング、発酵条件の最適化、および発酵後の生成物形成に関するアッセイを伴う。メタクリル酸の生成用の生成宿主を工学的に操作するために、1つまたは複数の外因性DNA配列を微生物中で発現させる。さらに、微生物は機能的に欠失した(1つまたは複数の)内因性遺伝子を有することができる。これらの改変は、再生可能なフィードストックを使用したメタクリル酸の生成を可能にする。
所望経路のそれぞれのステップを触媒する酵素をコードすることができる、いくつかの生化学的に特徴付けた候補遺伝子を以下および本明細書中に記載する。経路を工学的に操作するための宿主生物体としてのE.coliの使用を記載するが、本質的に任意の適切な宿主生物体を使用することができる。具体的に挙げるのは、E.coliに固有である遺伝子、および適切にクローニングおよび発現したときに適切な変換を触媒するために適用することができる他の生物体中の遺伝子である。
図3を参照すると、ステップ1はメチルマロニルCoAムターゼ(EC5.4.99.2)が関与する。最初のステップでは、メチルマロニルCoAムターゼ(MCM)によってスクシニルCoAがメチルマロニルCoAに転換される。メチルマロニルCoAムターゼは、スクシニルCoAをメチルマロニルCoAへと転換する、コバラミン依存型酵素である。E.coliでは、可逆性アデノシルコバラミン依存性ムターゼが3ステップ経路に関与し、プロピオネートへのスクシネートの転換をもたらす(Hallerら、Biochemistry 39巻、4622〜4629頁(2000年))。YgfGの欠失と共にMCM遺伝子候補の過剰発現を使用して、プロピオニルCoAへのメチルマロニルCoAの脱カルボキシル化を妨げること、およびMAA合成に利用可能なメチルマロニルCoAを最大にすることができる。MCMはEscherichia coliでは遺伝子scpAによってコードされており(BobikおよびRasche、Anal.Bioanal.Chem.、375巻、344〜349頁(2003年);Hallerら、Biochemistry 39巻、4622〜4629頁(2000年))、およびHomo sapiensではmutAによってコードされている(PadovaniおよびBanerjee、Biochemistry、45巻、9300〜9306頁(2006年))。いくつかの他の生物体において、MCMは、アルファサブユニットおよびベータサブユニットを含み、2つの遺伝子によってコードされている。2−サブユニットタンパク質をコードする例示的な遺伝子候補は、Propionibacterium fredenreichii種shermani mutAおよびmutB(KorotkovaおよびLidstrom、J. Biol. Chem.279巻、13652〜13658頁(2004年))、Methylobacterium extorquens mcmAおよびmcmB(Korotkovaおよび Lidstrom、前出、2004年)ならびにRalstonia eutropha sbm1およびsbm2(Peplinskiら、Appl. Microbiol. Biotech.88巻、1145〜59頁(2010年))である。E.coli spcA遺伝子産物に対する高い相同性に基づいて同定されるさらなる酵素候補もまた、以下に列挙される。
これらの配列を使用して、配列類似性検索(例えば、BLASTp)によりGenBankまたは他のデータベース中のホモログタンパク質を同定することができる。得られたホモログタンパク質およびそれらの対応する遺伝子配列は、生成宿主を作製するためのE.coliまたは他の適切な宿主微生物への形質転換用の追加的な外因性DNA配列をもたらす。追加的な遺伝子候補には、E.coliのspcA遺伝子産物との高い相同性に基づいて同定した以下のものがある。
メチルマロニルCoAムターゼ触媒遺伝子と隣接する遺伝子は、最大活性に寄与するという証拠がさらに存在する。例えば、M.extorquens由来のmeaB遺伝子はメチルマロニルCoAムターゼと複合体を形成し、in vitroでムターゼ活性を刺激し、かつ不可逆的失活からおそらくそれを保護することが実証されている(KorotkovaおよびLidstrom、J.Biol.Chem.279巻、13652〜13658頁(2004年))。M.extorquensのmeaB遺伝子産物は、染色体上でscpAと隣接するE.coliのargK遺伝子(BLASTp:45%同一、e値:4e−67)の生成物と非常に類似している。P.freudenreichii中のmeaBホモログに関する配列はGenBankに載っていない。しかしながら、Propionibacterium acnesのKPA171202遺伝子産物、YP_055310.1はM.extorquensのmeaBタンパク質と51%同一であり、かつその遺伝子も染色体上でメチルマロニルCoAムターゼ遺伝子と隣接する。類似の遺伝子は、Ralstonia eutropha H16のH16_B1839によってコードされる。
E.coliはアデノシルコバラミン、中間体コビナミドまたはコバラミンと供給される時だけこの反応に必要な補因子を合成することができる(LawrenceおよびRoth.J.Bacteriol.177巻、6371〜6380頁(1995年);LawrenceおよびRoth、Genetics142巻、11〜24頁(1996年))。あるいは、de novoでコバラミンを合成する能力が、異種遺伝子の発現後にE.coliにおいて付与されている(Rauxら、J.Bacteriol.、178巻、753〜767頁(1996年))。
図3を参照すると、ステップ2は、メチルマロニルCoAエピメラーゼ(EC5.1.99.1)が関与する。この経路における第2の酵素、メチルマロニルCoAエピメラーゼ(MMCE)は、(R)−メチルマロニルCoAと(S)−メチルマロニルCoAとを相互転換する。MMCEは、奇数鎖(odd numbered)脂肪酸、およびアミノ酸バリン、イソロイシン、およびメチオニンの分解において必要な酵素である。メチルマロニルCoAエピメラーゼ活性はE.coliのゲノム中にコードされるとは考えられないが(Boyntonら、J.Bacteriol.、178巻、3015〜3024頁(1996年))、Homo sapiens(YqjC)(FullerおよびLeadlay、Biochem.J.、213巻、643〜650頁(1983年))、Rattus norvegicus(Mcee)(BobikおよびRasche、J.Biol.Chem.、276巻、37194〜37198頁(2001年))、Propionibacterium shermanii(AF454511)(Fuller.およびLeadlay、Biochem.J.、213巻、643〜650頁(1983年);Hallerら、Biochemistry、39巻、4622〜4629頁(2000年);McCarthyら、Structure、9巻、637〜646頁、2001年))およびCaenorhabditis elegans(mmce)(Kuhnlら、FEBS J.、272巻、1465〜1477頁(2005年))などの他の生物体中には存在する。さらなる遺伝子候補、Bacillus cereusにおけるAE016877は、他の特徴付けされた酵素に対して高い配列相同性を有する。この酵素的ステップは、メチルマロニルCoAの3−ヒドロキシイソブチレートへの転換のために使用される単数または複数の酵素の立体特異性に依存してもよく、必ずしも依存しなくてもよい(図3におけるステップ3〜4)。これらの遺伝子/タンパク質は、以下に記載される。
図3を参照すると、ステップ3はメチルマロニルCoAレダクターゼ(EC1.2.1.−)が関与する。図3中に示すように、その対応するアルコール、3−ヒドロキシイソブチレートへのメチルマロニルCoAの還元は、2つの酵素ステップによって進行し得る。最初のステップ、メチルマロン酸セミアルデヒドへのメチルマロニルCoAの転換は、CoA依存性アルデヒドデヒドロゲナーゼによって実施される。Sulfolobus tokodaii由来のマロニルCoAレダクターゼ遺伝子によってコードされる酵素(Alberら、J.Bacteriol.、188巻、24号、8551〜8559頁(2006年))は、その対応するアルデヒドへのメチルマロニルCoAの転換を触媒することが示されている(WO2007141208)。同様の酵素がMetallosphaera sedula中に存在する(Alberら、J.Bacteriol.、188巻、24号、8551〜8559頁(2006年))。いくつかの追加的なCoAデヒドロゲナーゼは、その対応するアルデヒドにアシルCoAを還元することもできる。メチルマロニルCoAのその対応するアルデヒドであるメチルマロン酸セミアルデヒドへの還元は、CoA−依存型アルデヒドデヒドロゲナーゼによって触媒される。例示的な酵素としては、脂肪酸アシルCoAレダクターゼ(fatty acyl CoA reductase)、スクシニルCoAレダクターゼ(EC1.2.1.76)、アセチルCoAレダクターゼおよびブチリルCoAレダクターゼが挙げられる。例示的な脂肪酸アシルCoAレダクターゼ酵素は、Acinetobacter calcoaceticusのacr1(ReiserおよびSomerville.、J. Bacteriol.179巻、2969〜2975頁(1997年))、およびAcinetobacter種M−1脂肪酸アシルCoAレダクターゼ(Ishigeら、Appl. Environ. Microbiol.68巻、1192〜1195頁(2002年))によってコードされる。CoA−依存型およびNADP−依存型のコハク酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(スクシニルCoAレダクターゼとも呼ばれる)もまた、公知であり、Clostridium kluyveriにおけるsucD遺伝子(SohlingおよびGottschalk、J. Bacteriol.178巻、871〜880頁(1996年);SohlingおよびGottschalk、J. Bacteriol. 178巻、871〜880頁(1996年))ならびにP.gingivalisのsucD(Takahashi、J. Bacteriol 182巻、4704〜4710頁(2000年))によってコードされる。さらなるスクシニルCoAレダクターゼ酵素は、Metallosphaera sedula(Bergら、Science 318巻、1782〜1786頁(2007年))およびThermoproteus neutrophilus(Ramos−Veraら、J Bacteriol、191巻、4286〜4297頁(2009年))を含む好熱性古細菌の3−ヒドロキシプロピオン酸/4−ヒドロキシ酪酸回路に関わる。M.sedula酵素(Msed_0709によってコードされる)は、厳密にNADPH−依存型であり、また、マロニルCoAレダクターゼ活性をも有する。T.neutrophilus酵素は、NADPHおよびNADHの両方に対して活性である。Pseudomonas種における酵素アシル化アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(bphGによってコードされる)もまた、良い候補であり、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ホルムアルデヒドおよび分枝鎖状化合物イソブチルアルデヒドを酸化およびアシル化することが実証されている(Powlowskiら、J. Bacteriol.175巻、377〜385頁(1993年))。アセチルCoAをエタノールへと還元することに加えて、Leuconostoc mesenteroidesにおいてこの酵素(adhEによってコードされる)は、分枝鎖状化合物イソブチルアルデヒドをイソブチリルCoAへと酸化することが示されている(Kazahaya、J. Gen. Appl. Microbiol.18巻、43〜55頁(1972年);およびKooら、Biotechnol Lett.27巻、505〜510頁(2005年))。ブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼは、ソルベント産生(solventogenic)生物体(Clostridium saccharoperbutylacetonicumなど)において、類似の反応であるブチリルCoAからブチルアルデヒドへの転換を触媒する(Kosakaら、Biosci Biotechnol Biochem.、71巻、58〜68頁(2007年))。
アシルCoAをその対応するアルデヒドへと転換するさらなる酵素型は、マロニルCoAをマロン酸セミアルデヒドへと変換させるマロニルCoAレダクターゼである。マロニルCoAレダクターゼは、好熱好酸性古細菌における3−ヒドロキシプロピオン酸回路を介した独立栄養性炭素固定において、重要な酵素である(Berg、Science 318巻、1782〜1786頁(2007年);およびThauer、Science 318巻、1732〜1733頁(2007年))。この酵素は、NADPHを補因子として用い、MetallosphaeraおよびSulfolobus種において特徴付けされている(Alberら、J. Bacteriol.188巻、8551〜8559頁(2006年);およびHugler、J. Bacteriol.184巻、2404〜2410頁(2002年))。この酵素は、Metallosphaera sedulaにおいて、Msed_0709によってコードされる(Alberら、J. Bacteriol.188巻、8551〜8559頁(2006年);およびBerg、Science 318巻、1782〜1786頁(2007年))。Sulfolobus tokodaii由来のマロニルCoAレダクターゼをコードする遺伝子は、E.coliにおいてクローニングされ、異種性に発現された(Alberら、J. Bacteriol 188巻、8551〜8559頁(2006年)。この酵素はまた、メチルマロニルCoAのその対応するアルデヒドへの転換を触媒することが示されている(WO2007141208(2007年))。これらの酵素のアルデヒドデヒドロゲナーゼ機能性は、Chloroflexus aurantiacus由来の二機能性デヒドロゲナーゼと類似しているが、僅かな配列類似性しか存在しない。両マロニルCoAレダクターゼ酵素候補は、アスパルチル−4−ホスフェートのアスパラギン酸セミアルデヒドへの還元および同時の脱リン酸化を触媒する酵素である、アスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼに対して高い配列類似性を有する。さらなる遺伝子候補は、他の生物体(Sulfolobus solfataricusおよびSulfolobus acidocaldariusならびに以下に列挙されている生物体)において、タンパク質に対する配列相同性によって見出され得る。CoA−アシル化アルデヒドデヒドロゲナーゼについてのなお別の候補は、Clostridium beijerinckii由来のald遺伝子である(Toth、Appl. Environ. Microbiol.65巻、4973〜4980頁(1999年)。この酵素は、アセチルCoAおよびブチリルCoAをその対応するアルデヒドに還元することが報告されている。この遺伝子は、Salmonella typhimuriumおよび E.coliのアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードするeutEに対して非常に類似している(Toth、Appl. Environ. Microbiol.65巻、4973〜4980頁(1999年)。
アシルCoAレダクターゼ活性およびアルコールデヒドロゲナーゼ活性を有する二機能性酵素は、メチルマロニルCoAを3−ヒドロキシイソブチレートへと直接転換し得る。アシルCoAをアルコールへ転換する例示的な二機能性オキシドレダクターゼとしては、アセチルCoAなどの基質をエタノールへ変換するもの(例えば、E.coli由来のadhE(Kesslerら、FEBS.Lett.281巻、59〜63頁(1991年)))およびブチリルCoAをブタノールへ変換するもの(例えば、C.acetobutylicum由来のadhE2(Fontaineら、J.Bacteriol.184巻、821〜830頁(2002年))が挙げられる。bdh Iおよびbdh IIによってコードされるC.acetobutylicum酵素(Walter,ら、J. Bacteriol.174巻、7149〜7158頁(1992年))は、アセチルCoAおよびブチリルCoAを、エタノールおよびブタノールへそれぞれ還元する。アセチルCoAのエタノールへの還元に加えて、Leuconostoc mesenteroidesにおけるadhEによってコードされる酵素は、分枝鎖状化合物イソブチルアルデヒドをイソブチリルCoAへ酸化することが示されている(Kazahayaら、J.Gen.Appl.Microbiol.18巻、43〜55頁(1972年);Kooら、Biotechnol Lett、27巻、505〜510頁(2005年))。別の例示的な酵素は、マロニルCoAを3−HPへ転換し得る。この活性を有するNADPH−依存型酵素は、Chloroflexus aurantiacusにおいて特徴付けされており、ここでは、この酵素は、3−ヒドロキシプロピオン酸回路に関わる(Huglerら、J Bacteriol、184巻、2404〜2410頁(2002年);Straussら、Eur J Biochem、215巻、633〜643頁(1993年))。300kDaの質量を有するこの酵素は、非常に基質特異的であり、他の公知のオキシドレダクターゼに対して僅かな配列類似性しか示さない(Huglerら、前出)。他の生物体におけるどの酵素も、この特異的反応を触媒することが示されていない;しかし、他の生物体が類似の経路を有し得るという生物情報学的証拠が存在する(Klattら、Env Microbiol、9巻、2067〜2078頁(2007年))。Roseiflexus castenholzii、Erythrobacter種NAP1および海洋性のガンマプロテオバクテリアHTCC2080を含む他の生物体における酵素候補は、配列類似性によって推測され得る。
図3を参照すると、ステップ4は、3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.31)が関与する。3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドロゲナーゼは、3−ヒドロキシイソブチレートのメチルマロン酸セミアルデヒドへの可逆的酸化を触媒する。メチルマロン酸セミアルデヒドの3−ヒドロキシイソブチレートへの還元は、メチルマロン酸セミアルデヒドレダクターゼまたは3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドロゲナーゼによって触媒される。この酵素はバリン、ロイシンおよびイソロイシンの分解と関係があり、細菌、真核生物、および哺乳動物中で同定されている。Thermus thermophilus HB8由来のP84067によってコードされる酵素は、構造的に特徴付けられている(Lokanathら、J.Mol.Biol.、352巻、905〜917頁(2005年))。ヒト3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドロゲナーゼの可逆性は、同位体標識した基質を使用して実証された(ManningおよびPollitt、Biochem.J.、231巻、481〜484頁(1985年))。この酵素をコードする追加的な遺伝子には、Homo sapiens(Hawesら、Methods Enzymol.、324巻、218〜228頁(2000年))およびOryctolagus cuniculus(Chowdhuryら、Biosci.Biotechnol.Biochem.、60巻、2043〜2047頁(1996年);Hawesら、Methods Enzymol.、324巻、218〜228頁(2000年))における3hidh、Pseudomonas aeruginosaにおけるmmsb、およびPseudomonas putidaにおけるdhat(AberhartおよびHsu..J Chem.Soc.[Perkin1]6巻、1404〜1406頁(1979年);Chowdhuryら、Biosci. Biotechnol.Biochem.、67巻、438〜441頁(2003年);Chowdhuryら、Biosci.Biotechnol.Biochem.、60巻、2043〜2047頁(1996年))がある。Pseudomonas aeruginosa由来のmmsB(Gokarnら、米国特許第7,393,676号(2008年))およびPseudomonas putida由来のmmsBを含むいくつかの3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドロゲナーゼ酵素は、還元の方向において特徴付けされている。
図3を参照すると、代替として、ステップ3および4は、組合せアルコール/アルデヒドデヒドロゲナーゼ(EC1.2.1.−)を含むことができる。デュアルアシルCoAレダクターゼおよびアルコールデヒドロゲナーゼ活性を有する多機能酵素による1ステップ中で、メチルマロニルCoAを3−ヒドロキシイソブチレートに還元することができる。3−ヒドロキシイソブチレートへのメチルマロニルCoAの直接転換に関する証拠は報告されていないが、この反応は、アルコールデヒドロゲナーゼ活性とアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性の両方を有するCoA依存性酵素によって触媒される、アセチルCoAからエタノールおよびブチリルCoAからブタノールなどの一般的な転換と類似する。遺伝子候補には、E.coliのadhE(Kesslerら、FEBS Lett.、281巻、59〜63頁(1991年))、およびそれぞれアセチルCoAおよびブチリルCoAをエタノールおよびブタノールに還元することができる、C.acetobutylicumのbdhIおよびbdhII(Walterら、J.Bacteriol.、174巻、7149〜7158頁(1992年))がある。アセチルCoAをエタノールに還元する以外に、Leuconostoc mesenteroides中でadhEによってコードされる酵素は、分岐鎖状化合物イソブチルアルデヒドをイソブチリルCoAに酸化することが示されている(Kazahayaら、J.Gen.Appl.Microbiol.、18巻、43〜55頁(1972年);Kooら、Biotechnol.Lett.、27巻、505〜510頁(2005年))。メチルマロニルCoAを直接3−ヒドロキシイソブチレートに転換するための追加的候補酵素は、Chloroflexus aurantiacus由来のマロニルCoAレダクターゼによってコードされる(Hueglerら、J.Bacteriol.184巻、9号、2404〜2410頁(2002年)。
図3を参照すると、ステップ5は、3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ(EC4.2.1.−)が関与する。最終ステップは、3−ヒドロキシイソブチレートのメタクリル酸への脱水に関わる。3−ヒドロキシイソブチレートのメチルアクリル酸への脱水は、3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ活性を有する酵素によって触媒される。この特異的酵素的変換についての直接的な証拠は同定されていないが、ほとんどのデヒドラターゼは、水のα,β−脱離を触媒し、これは、電子吸引性のカルボニル、カルボキシレートまたはCoA−チオールエステル基によるα−水素の活性化およびβ−位からのヒドロキシル基の除去に関わる(BuckelおよびBarker、J Bacteriol.117巻、1248〜1260頁(1974年);Martinsら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101巻、15645〜15649頁(2004年))。これは、まさに、メタクリレート経路における最終ステップに提案される変換の型である。加えて、提案される変換は、2−ヒドロキシメチルグルタレートの2−メチレングルタレートへの転換を触媒し得るEubacterium barkeriの2−(ヒドロキシメチル)グルタル酸デヒドラターゼに非常に類似している。この酵素は、ニコチネート異化に関して研究されており、hmdによってコードされる(Alhapelら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103巻、12341〜12346頁(2006年))。高い配列相同性を有する類似の酵素は、Bacteroides capillosus、Anaerotruncus colihominisおよびNatranaerobius thermophiliusに見出される。いくつかの酵素は、ヒドロキシル基のアルファ、ベータ脱離を触媒することが公知である。例示的な酵素としては、2−(ヒドロキシメチル)グルタル酸デヒドラターゼ(EC4.2.1.−)、フマラーゼ(EC4.2.1.2)、2−ケト−4−ペンテン酸デヒドラターゼ(EC4.2.1.80)、シトラマル酸ヒドロリアーゼおよびジメチルマレイン酸ヒドラターゼが挙げられる。
2−(ヒドロキシメチル)グルタル酸デヒドラターゼは、2−(ヒドロキシメチル)グルタレートを2−メチレン−グルタレートに脱水する[4Fe−4S]含有酵素であり、Eubacterium barkeri(正式には、Clostridium barkeri)におけるニコチネート異化におけるその役割について研究されている(Alhapelら、Proc Natl Acad Sci USA 103巻、12341〜12346頁(2006年))。高い配列相同性を有する類似の酵素が、Bacteroides capillosus、Anaerotruncus colihominisおよびNatranaerobius thermophiliusに見出される。これらの酵素もまた、[4Fe−4S]含有細菌性セリンデヒドラターゼのα−サブユニットおよびβ−サブユニットに対して相同である(例えば、tdcG、sdhBおよびsdaAによってコードされるE.coli酵素)。E.barkeriにおいて類似の機能性を有する酵素は、アコニターゼファミリーにおける可逆的Fe2+依存型および酸素感受性酵素であるジメチルマレイン酸ヒドラターゼであり、これは、ジメチルマレート(dimethylmaeate)を水和して、(2R,3S)−2,3−ジメチルマレートを形成する。この酵素は、dmdABによってコードされる(Alhapelら、Proc Natl Acad Sci USA 103巻、12341〜6頁(2006年);Kollmann−Kochら、Hoppe Seylers.Z.Physiol Chem.365巻、847〜857頁(1984年))。
フマル酸ヒドラターゼ酵素は、フマレートのマレートへの可逆的水和を天然に触媒する。フマル酸ヒドラターゼの、3−オキソブタノールを基質として用いる分枝鎖状基質に対して反応する能力は記載されていないが、豊富な構造情報が、この酵素について利用可能であり、他の研究者らは、成功裏にこの酵素を工学的に操作し、活性、阻害および局在を改変させてきた(Weaver、Acta Crystallogr. D Biol. Crystallogr.61巻、1395〜1401頁(2005年))。E.coliは、3つのフマラーゼを有する:FumA、FumBおよびFumCであり、これらは、増殖条件によって調節される。FumBは、酸素感受性であり、嫌気性条件下でのみ活性である。FumAは、微嫌気性条件下で活性であり、そしてFumCは、好気性増殖においてのみ活性な酵素である(Tsengら、J. Bacteriol.183巻、461〜467頁(2001年);Woodsら、Biochm. Biophys. Acta 954巻、14〜26頁(1988年);Guestら、J Gen Microbiol 131巻、2971〜2984頁(1985年))。例示的な酵素候補としては、Escherichia coli由来のfumCによってコードされるもの(Estevezら、Protein Sci.11巻、1552〜1557頁(2002年);HongおよびLee、Biotechnol. Bioprocess Eng.9巻、252〜255頁(2004年);RoseおよびWeaver、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101巻、3393〜3397頁(2004年))、ならびにCampylobacter jejuni(Smithら、Int. J. Biochem.Cell Biol.31巻、961〜975頁(1999年))、Thermus thermophilus(Mizobataら、Arch. Biochem. Biophys.355巻、49〜55頁(1998年))およびRattus norvegicus(Kobayashiら、J. Biochem.89巻、1923〜1931頁(1981年))に見出される酵素が挙げられる。高い配列相同性を有する類似の酵素としては、Arabidopsis thaliana由来のfum1、およびCorynebacterium glutamicum由来のfumCが挙げられる。Pelotomaculum thermopropionicum由来のMmcBCフマラーゼは、2つのサブユニットを有する別のクラスのフマラーゼである(Shimoyamaら、FEMS Microbiol Lett.270巻、207〜213頁(2007年))。
4−ヒドロキシ−2−オキソバレレートの2−オキソペンテノエートへの脱水は、4−ヒドロキシ−2−オキソ吉草酸ヒドラターゼ(EC4.2.1.80)によって触媒される。この酵素は、芳香族分解経路に関わり、典型的には、4−ヒドロキシ−2−オキソ吉草酸アルドラーゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子と共転写される。例示的な遺伝子産物は、E.coliのmhpD(Ferrandezら、J Bacteriol.179巻、2573〜2581頁(1997年);Pollardら、Eur J Biochem.251巻、98〜106頁(1998年))、Pseudomonas putidaのtodGおよびcmtF(Lauら、Gene 146巻、7〜13頁(1994年);Eaton、J Bacteriol.178巻、1351〜1362頁(1996年))、Comamonas種CNB−1のcnbE(Maら、Appl Environ Microbiol 73巻、4477〜4483頁(2007年))ならびにBurkholderia xenovoransのmhpD(Wangら、FEBS J 272巻、966〜974頁(2005年))によってコードされる。密接に関連する酵素である2−オキソヘプタ−4−エン−1,7−二酸ヒドラターゼは、4−ヒドロキシフェニル酢酸分解に関わり、ここで、マグネシウムを補因子に用いて、2−オキソ−ヘプタ−4−エン−1,7−ジオエート(OHED)を2−オキソ−4−ヒドロキシ−ヘプタ−1,7−ジオエートへと転換する(Burksら、J.Am.Chem.Soc.120巻、(1998年))。OHEDヒドラターゼ酵素候補は、E.coli C(Roperら、Gene 156巻、47〜51頁(1995年);Izumiら、J Mol.Biol.370巻、899〜911頁(2007年))およびE.coli W(Prietoら、J Bacteriol.178巻、111〜120頁(1996年))において同定され、そして特徴付けされている。配列比較は、広い範囲の細菌、植物および動物におけるホモログを明らかにする。非常に類似の配列を有する酵素は、とりわけ、Klebsiella pneumonia(91%同一、e値(eval)=2e−138)およびSalmonella enterica(91%同一、e値=4e−138)に含まれる。
別の酵素候補は、天然に2−メチルマレートをメサコネートに脱水する酵素である、シトラマル酸ヒドロリアーゼ(EC4.2.1.34)である。この酵素は、2−オキソブタノエートへのピルベート経路に関してMethanocaldococcus jannaschiiにおいて研究されており、ここで、広い基質特異性を有することが示されている(Drevlandら、J Bacteriol. 189巻、4391〜4400頁(2007年))。この酵素活性もまた、Clostridium tetanomorphum、Morganella morganii、Citrobacter amalonaticusにおいて検出されたが、ここでは、グルタメート分解に関わると考えられる(Katoら、Arch.Microbiol 168巻、457〜463頁(1997年))。M.jannaschiiタンパク質配列は、これらの生物体における遺伝子に対して有意な相同性を有さない。
ジメチルマレイン酸ヒドラターゼ(EC4.2.1.85)は、アコニターゼファミリーにおける、可逆的Fe2+依存型かつ酸素感受性の酵素であり、ジメチルマレートを水和して(2R,3S)−2,3−ジメチルマレートを形成する。この酵素は、Eubacterium barkeriにおけるdmdABによってコードされる(Alhapelら、前出;Kollmann−Kochら、Hoppe Seylers.Z.Physiol Chem.365巻、847〜857頁(1984年))。
この実施例は、スクシニルCoAからのMAA産生のための生合成経路を記載する。
(実施例VI)
3−アミノ−2−メチルプロパノエートを介した、スクシニルCoAのMAAへの転換のための経路
この実施例は、3−アミノ−メチルプロパノエートを介した、スクシニルCoAからMAAへの例示的なMAA合成経路を記載する。
MAA生合成のための別の例示的な経路は、スクシニルCoAから3−アミノ−2−メチルプロパノエートを介して進行する(図4参照)。メチルマロン酸セミアルデヒドへのスクシニルCoAの転換を含む、この経路の最初の3ステップは、実施例IV中に記載したスクシニルCoAからMAAへの経路と同一である(図3参照)。この経路はステップ4で分岐し、そこでメチルマロン酸セミアルデヒドはトランスアミナーゼによって3−アミノ−2−メチルプロピオネートに転換される。最終経路のステップは、メタクリル酸への3−アミノ−2−メチルプロピオネートの脱アミノ化を伴う。
最初の3経路ステップを触媒するための酵素および遺伝子候補は、実施例IV中に記載する。ステップ4および5の遺伝子候補は以下で論じる。
図4を参照すると、ステップ4は3−アミノ−2−メチルプロピオン酸トランスアミナーゼ(EC2.6.1.22)に関与する。3−アミノ−2−メチルプロピオン酸トランスアミナーゼは、メチルマロン酸セミアルデヒドから3−アミノ−2−メチルプロピオネートへの変換を触媒する。Rattus norvegicusおよびSus scrofaにおいて特徴付けられAbatによってコードされる酵素は、経路中の対象とする方向にこの変換を触媒することが示されている(Kakimotoら、Biochim.Biophys.Acta、156巻、374〜380頁(1968年);Tamakiら、Methods Enzymol.、324巻、376〜389頁(2000年))。3−アミノ−2−メチルプロピオン酸トランスアミナーゼと高い配列相同性を有する、他の生物における酵素候補には、C.elegans中のGta−1およびBacillus subtilus中のgabTがある。さらに、遺伝子gabTによってコードされるE.coli中の天然GABAアミノトランスフェラーゼの1つは、広範囲の基質特異性を有することが示されており、基質として3−アミノ−2−メチルプロピオネートを利用することができる(Liuら、Biochemistry、43巻、10896〜10905頁(2004年);Schulzら、Appl.Environ.Microbiol.、56巻、1〜6頁(1990年))。
図4を参照すると、ステップ5は3−アミノ−2−メチルプロピオン酸アンモニアリアーゼ(EC4.3.1.−)が関与する。この経路の最終ステップ中、3−アミノ−2−メチルプロピオネートはメタクリル酸に脱アミノ化される。この正確な変換を触媒する酵素は実験によって実証されていないが、しかしながら、天然E.coli酵素、アスパラギン酸アンモニアリアーゼ(EC4.3.1.1)は、この反応を触媒することができる可能性がある。E.coli中でaspAによってコードされるアスパラギン酸アンモニアリアーゼは、アスパルテートを脱アミノ化してフマレートを形成するが、別の基質アスパラギン酸フェニルメチルエステル、アスパラギン、ベンジル−アスパルテートおよびマレートと反応することもできる(Maら、Ann.N.Y.Acad.Sci.672巻、60〜65頁(1992年))。別の研究では、定方向進化をこの酵素に利用して基質特異性を変えていた(Asanoら、Biomol.Eng.22巻、95〜101頁(2005年))。他の生物体中のアスパルターゼをコードする遺伝子には、Bacillus subtilus中のansB(Sjostromら、Biochim.Biophys.Acta、1324巻、182〜190頁(1997年))、ならびにPseudomonas fluorescens(Takagiら、J.Biochem.、96巻、545〜552頁(1984年);Takagiら、J.Biochem.、100巻、697〜705頁(1986年))およびSerratia marcescens(Takagiら、J.Bacteriol.、161巻、1〜6頁(1985年))中のaspAがある。
この実施例は、スクシニルCoAからのMAA生合成経路を記載する。
(実施例VII)
4−ヒドロキシブチリルCoAの3−ヒドロキシイソ酪酸またはMAAへの転換のための経路
この実施例は、4−ヒドロキシブチリルCoAからの例示的な3−ヒドロキシイソ酪酸またはMAA合成経路を記載する。
別の例示的な経路はMAAへの4HB−CoAの転換を伴う(図5参照)。最初のステップ中、4HB−CoAはメチルムターゼによって3−ヒドロキシイソブチリルCoA(3−Hib−CoA)に転換される。次いで3−Hib−CoAは、CoAヒドロラーゼ、シンターゼまたはトランスフェラーゼによって3−ヒドロキシイソブチレートに転換され得る。3−ヒドロキシイソブチレートが分泌され、生成物として、またはメタクリル酸の生成における最終ステップとして回収される可能性がある。3−ヒドロキシブチレートを脱水させてメタクリル酸を形成することが可能である。あるいは、3−Hib−CoAをメタクリリルCoAに脱水させて、次いでヒドロラーゼ、シンターゼ、またはトランスフェラーゼによってMAAに転換することが可能である。トリカルボン酸回路中間体、アルファ−ケトグルタレート、スクシネート、またはスクシニルCoAを4HB−CoAに転換するのに必要な酵素は十分文書化されている(2008年3月14日出願のBurkら、米国出願第12/049,256号;Lutke−EverslohおよびSteinbuchel.FEMS Microbiol.Lett.、181巻、63〜71頁(1999年);SohlingおよびGottschalk、Eur.J.Biochem.、212巻、121〜127頁(1993年);SohlingおよびGottschalk、J.Bacteriol.、178巻、871〜880頁(1996年);Valentinら、Eur.J.Biochem.、227巻、43〜60頁(1995年);WolffおよびKenealy、Protein Expr.Purif.、6巻、206〜212頁(1995年))。
図5を参照すると、ステップ1は4−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ(EC5.4.99.−)が関与する。3−ヒドロキシイソブチリルCoAへの4HB−CoAの転換は未だ実験によって実証されていない。しかしながら、2つのメチルムターゼ、すなわち類似の反応を触媒するイソブチリルCoAムターゼ(ICM)およびメチルマロニルCoAムターゼ(MCM)は、それらの対応する基質の構造類似性を考慮すると優れた候補である。メチルマロニルCoAムターゼは、スクシニルCoAをメチルマロニルCoAに転換するコバラミン依存性酵素である。この酵素および適切な遺伝子候補はスクシニルCoAからMAAの経路中で論じた(実施例V参照)。
あるいは、イソブチリルCoA(ICM,EC5.4.99.13)は、提案される変換を触媒し得る。ICMは、ブチリルCoAの炭素骨格をイソブチリルCoAに可逆的に転位する、MCMファミリーにおけるコバラミン依存性メチルムターゼである(Ratnatillekeら、J.Biol.Chem.、274巻、31679〜31685頁(1999年))。Methylibium petroleiphilumにおける新規なICMの近年の研究は、以前の仕事と共に、活性部位近辺の1つのアミノ酸の変化はその酵素の基質特異性を変えるという証拠を与える(Ratnatillekeら、J.Biol.Chem.、274巻、31679〜31685頁(1999年);Rohwerderら、Appl.Environ.Microbiol.、72巻、4128〜4135頁(2006年))。このことは、ネイティブの酵素は、4HB−CoAの3HIB−CoAへの転換を触媒できないか、またはこれについて低い活性を示すならば、この酵素は、この活性を増大するために合理的に工学的に操作され得ることを示している。ホモ二量体酵素をコードする例示的なICM遺伝子には、Streptomyces coelicolor A3におけるicmA(Alhapelら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、103巻、12341〜12346頁(2006年))およびMethylibium petroleiphilum PM1におけるMpe_B0541(Ratnatillekeら、J.Biol.Chem.、274巻、31679〜31685頁(1999年);Rohwerderら、Appl.Environ.Microbiol.、72巻、4128〜4135頁(2006年))が挙げられる。ヘテロ二量体酵素をコードする遺伝子には、Streptomyces cinnamonensisにおけるicmおよびicmB(Ratnatillekeら、J.Biol.Chem.、274巻、31679〜31685頁(1999年);Vrijbloedら、J.Bacteriol.、181巻、5600〜5605頁(1999年);Zerbe−Burkhardtら、J.Biol.Chem.、273巻、6508〜6517頁(1998年))が挙げられる。Streptomyces avermitilis MA−4680におけるicmAおよびicmB遺伝子によってコードされる酵素は、公知のICMに対し、高い配列類似性を示す。これらの遺伝子/タンパク質は、以下で同定される。
図5を参照すると、ステップ2は3−ヒドロキシイソブチリルCoAヒドロラーゼ(EC3.1.2.4)、シンテターゼ(EC6.2.1.−)または3−ヒドロキシイソブチリルCoAトランスフェラーゼ(EC2.8.3.−)が関与する。ステップ5は、メタクリリルCoAヒドロラーゼ、シンテターゼ、またはトランスフェラーゼが関与する。これらの変換は、CoAヒドロラーゼ(EC3.1.2.−)、CoAトランスフェラーゼ(EC2.8.3.−)、およびCoAシンテターゼ(EC6.1.2.−)を含めた異なるクラスの酵素によって実施することができる。初期に論じたように、CoAトランスフェラーゼまたはCoAシンテターゼを利用してこの変換を実施する場合(表1)、経路のエネルギー特性は最も好ましい。
CoA−トランスフェラーゼファミリー中、アセテート−CoAトランスフェラーゼ(EC2.8.3.8)としても公知である、E.coliの酵素アシルCoA:アセテート−CoAトランスフェラーゼは、イソブチレート(MatthiesおよびSchink、Appl.Environ.Microbiol.58巻、1435〜1439頁(1992年))、バレレート(Vanderwinkelら、Biochem.Biophys.Res.Commun.33巻、902〜908頁(1968年))およびブタノエート(Vanderwinkelら、上記、1968年)を含めた、様々な分岐状および直鎖状アシルCoA基質由来のアセテートにCoA成分を移動させることが示されている。この酵素は、E.coli種K12中のatoA(αサブユニット)およびatoD(βサブユニット)(Korolevら、Acta Crystallogr.D Biol.Crystallogr.58巻、2116〜2121頁(2002年);Vanderwinkelら、上記、1968年)、ならびにCorynebacterium glutamicum ATCC 13032中のactAおよびcg0592(Duncanら、Appl.Environ.Microbiol.68巻、5186〜5190頁(2002年))によってコードされ、図5、ステップ2および5中に示す、望ましい3−ヒドロキシイソブチリルCoAトランスフェラーゼまたはメタクリリルCoAトランスフェラーゼ生体内変化を触媒するための理想的な候補となる。配列相同性による候補遺伝子にはEscherichia coli UT189中のatoDおよびatoAがある。類似した酵素はClostridium acetobutylicumおよびClostridium saccharoperbutylacetonicum中にも存在する。
さらなる例示的なトランスフェラーゼの変換は、スクシニルCoA、4−ヒドロキシブチリルCoA、およびブチリルCoAアセチルトランスフェラーゼ活性をそれぞれ示すことが示されているClostridium kluyveriのcat1、cat2、およびcat3の遺伝子産物によって触媒される(SohlingおよびGottschalk、J.Bacteriol.、178巻、3号、871〜880頁(1996年);Seedorfら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、105巻、6号、2128〜2133頁(2008年))。
嫌気性細菌Acidaminococcus fermentans由来のグルタコネートCoA−トランスフェラーゼ(EC2.8.3.12)酵素は、二酸グルタコニルCoAおよび3−ブテノイルCoAと反応する(MackおよびBuckel、FEBS Lett.405巻、209〜212頁(1997年))。この酵素をコードする遺伝子はgctAおよびgctBである。この酵素は、グルタリルCoA、2−ヒドロキシグルタリルCoA、アジピルCoAおよびアクリリルCoAを含めた他のCoA誘導体と共に、低減しているが検出可能な活性を有する(Buckelら、Eur.J.Biochem.、118巻、315〜321頁(1981年))。この酵素はクローニングされE.coliにおいて発現された(Mackら、Eur.J.Biochem.、226巻、41〜51頁(1994年))。
さらなる酵素候補は、CoAアクセプターとしてスクネシートを利用するスクシニルCoA:3−ケト酸CoAトランスフェラーゼを含む。例示的なスクシニルCoA:3−ケト酸CoAトランスフェラーゼは、Helicobacter pylori(Corthesy−Theulazら、J.Biol.Chem.、272巻、25659〜25667頁(1997年))およびBacillus subtilis(Stolsら、Protein Expr.Purif.、53巻、396〜403頁(2007年))に存在する。
候補ATPシンテターゼは、ADP形成アセチルCoAシンテターゼ(ACD、EC6.2.1.13)、それらの対応する酸へのアシルCoAエステルの転換とATPの同時合成を連結する酵素である。この酵素が基質としての3−ヒドロキシイソブチリルCoAまたはメタクリリルCoAと反応することは示されていないが、広範囲の基質特異性を有するいくつかの酵素は文献中に記載されている。AF1211によってコードされるArchaeoglobus fulgidus由来のACDIは、イソブチレート、イソペンタノエート、およびフマレートを含めた、様々な直鎖状および分岐鎖状基質に作用することが示された(MusfeldtおよびSchonheit、J.Bacteriol.184巻、636〜644頁(2002年))。Haloarcula marismortui由来の酵素(スクシニルCoAシンテターゼとして注釈をつける)は基質としてのプリオピオネート、ブチレート、分岐鎖状の酸(イソバレレートおよびイソブチレート)を受け入れ、正方向および逆方向に作用することが示された(BrasenおよびSchonheit、Arch.Microbiol.182巻、277〜287頁(2004年))。超好熱性クレン古細菌Pyrobaculum aerophilum由来のPAE3250によってコードされるACDは全ての特徴付けられたACDの最も広い基質範囲を示し、アセチルCoA、イソブチリルCoA(好ましい基質)およびフェニルアセチルCoAと反応した(BrasenおよびSchonheit、上記、2004年)。しかしながら、定方向進化または工学的操作を使用してこの酵素を改変し、宿主生物体の生理的温度において働かせることができる。A.fulgidus、H.marismortuiおよびP.aerophilum由来の酵素はいずれもクローニングされ、機能的に発現され、E.coliにおいて特徴付けされた(BrasenおよびSchonheit、上記、2004年;MusfeldtおよびSchonheit、J.Bacteriol.184巻、636〜644頁(2002年))。
CoAヒドロラーゼファミリー中、酵素3−ヒドロキシイソブチリルCoAヒドロラーゼは3−HIBCoAに特異的であり、バリン分解中の所望の変換を効率よく触媒することが記載されている(Shimomuraら、J.Biol.Chem.、269巻、14248〜14253頁(1994年))。この酵素をコードする遺伝子には、Rattus norvegicus(Shimomuraら、J.Biol.Chem.、269巻、14248〜14253頁(1994年);Shimomuraら、Methods Enzymol.、324巻、229〜240頁(2000年))およびHomo sapiens(Shimomuraら、上記、2000年)のhibchがある。配列相同性による候補遺伝子にはSaccharomyces cerevisiaeのhibchおよびBacillus cereusのBC_2292がある。
図5を参照すると、ステップ3は3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ(EC4.2.1.−)が関与する。これは、3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼによるMAAへの3−ヒドロキシイソブチレートの脱水を伴う。この酵素の遺伝子候補はスクシニルCoAからMAAの経路中に記載する(実施例V参照)。さらに図6を参照すると、ステップ4は3−ヒドロキシイソブチリルCoAデヒドラターゼ(EC4.2.1.−)が関与する。メタクリリルCoAへの3−ヒドロキシイソブチリルCoAの脱水は、クロトナーゼなどの可逆的3−ヒドロキシアシルCoAデヒドラターゼ(3−ヒドロキシブチリルCoAデヒドラターゼ、EC4.2.1.55とも呼ばれる)またはエノイルCoAヒドラターゼ(3−ヒドロキシアシルCoAデヒドラターゼ、EC4.2.1.17とも呼ばれる)によって実施することができる。これらの酵素は一般に可逆的である(MoskowitzおよびMerrick、Biochemistry、8巻、2748〜2755頁(1969年);Durreら、FEMS Microbiol.Rev.、17巻、251〜262頁(1995年))。クロトナーゼ酵素をコードする例示的な遺伝子は、C.acetobutylicum(Boyntonら、J.Bacteriol.178巻、11号、3015〜3024頁(1996年))、C.kluyveri(HillmerおよびGottschalk、FEBS Lett.、21巻、3号、351〜354頁(1972年))、およびMetallosphaera sedula(Bergら、Science、318巻、5857号、1782〜1786頁(2007年))中で見ることはできるが、後者の遺伝子の配列は公知ではない。脂肪酸β酸化および/または様々なアミノ酸の代謝と関係があるエノイルCoAヒドラターゼも、3−ヒドロキシブチリルCoAを形成するためのクロトニルCoAの水和を触媒することができる(AgnihotriおよびLiu、Bioorg.Med.Chem.、11巻、1号、9〜20頁(2003年);Robertsら、Arch.Microbiol.、117巻、1号、99〜108頁(1978年);Conradら、J.Bacteriol.、118巻、1号、103〜111頁(1974年))。P.putidaのエノイルCoAヒドラターゼ、phaAおよびphaBは、フェニル酢酸の異化中に二重結合のヒドロキシル化を実施すると考えられる(Oliveraら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、95巻、6419〜6424頁(1998年))。P.fluorescens由来のpaaAおよびpaaBは類似した変換を触媒する(Oliveraら、上記、1998年)。最後に、maoC(ParkおよびLee、J.Bacteriol.、185巻、5391〜5397頁(2003年))、paaF(Ismailら、Eur.J.Biochem.、270巻、3047〜3054頁(2003年);ParkおよびLee、Appl.Biochem.Biotechnol.、113〜116頁:335〜346頁(2004年);ParkおよびYup、Biotechnol.Bioeng.、86巻、681〜686頁(2004年))、およびpaaG(Ismailら、Eur.J.Biochem.、270巻、3047〜3054頁(2003年);ParkおよびLee、Appl.Biochem.Biotechnol.、113〜116頁:335〜346頁(2004年);ParkおよびYup、Biotechnol.Bioeng.、86巻、681〜686頁(2004年))を含めた、いくつかのEscherichia coliの遺伝子は、エノイルCoAヒドラターゼの機能性を示すことが示されている。
この実施例は、4−ヒドロキシブチリルCoAから3−ヒドロキシイソ酪酸またはメタクリル酸を生成するための生合成経路を記載する。
(実施例VIII)
トレオ−3−メチルアスパルテートを介したMAAへのアルファ−ケトグルタレートの転換のための経路
この実施例は、アルファ−ケトグルタレートからトレオ−3−メチルアスパルテートへの例示的なMAAの合成経路を記載する。
MAAの生合成に関する別の例示的な経路は、TCA回路で生成されるE.coliにおける代謝産物であるアルファ−ケトグルタレートを介して進行する(図6参照)。
酵素アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼによって触媒されるこの経路の最初のステップは、アミノ基をアスパラギン酸からアルファ−ケトグルタレートに移動させ、グルタミン酸およびオキサロ酢酸を形成する。その後の2ステップは、炭素骨格の転位およびメサコン酸形成のためのその後の脱アミノ化を含む。これらの転換を触媒する酵素は、アミノ酸の発酵が可能である土壌中のClostridiaおよび他の生物体中でのグルタミン酸のエネルギー生成発酵において見られる(BuckelおよびBarker、J.Bacteriol.、117巻、1248〜1260頁(1974年))。これらの生物体中の経路の方向性は、生合成経路中のMAA合成に必要な方向と一致する。最終経路のステップは、メタクリル酸を生成するためのメサコン酸の脱カルボキシル化を伴う。
図6を参照すると、ステップ1はアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(EC2.6.1.1)が関与する。経路の最初のステップは、アミノ基をアスパラギン酸からアルファ−ケトグルタレートに移動させ、グルタミン酸およびオキサロ酢酸を形成する。Escherichia coli由来の遺伝子aspC(Yagiら、FEBS Lett.、100巻、81〜84頁(1979年);Yagiら、Methods Enzymol.、113巻、83〜89頁(1985年))、Saccharomyces cerevisiae由来のAAT2(Yagiら、J.Biochem.、92巻、35〜43頁(1982年))、およびArabidopsis thaliana由来のASP5(de la Torreら、Plant J.、46巻、414〜425頁(2006年);KwokおよびHanson、J.Exp.Bot.、55巻、595〜604頁(2004年);WilkieおよびWarren、Protein Expr.Purif.、12巻、381〜389巻(1998年))は、この転換を触媒する酵素、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼをコードする。
図6を参照すると、ステップ2はグルタミン酸ムターゼ(EC5.4.99.1)が関与する。ステップ2中、グルタミン酸の炭素直鎖をトレオ−3−メチルアスパルテートの分岐状構造に転位する。この変換は、グルタミン酸ムターゼ、2つのサブユニットで構成されるコバラミン依存性酵素によって触媒される。Clostridium cochleariumおよびClostridium tetanomorphum由来の2つのグルタミン酸ムターゼは、E.coliにおいてクローニングされ機能的に発現されている(HollowayおよびMarsh、J.Biol.Chem.、269巻、20425〜20430頁(1994年);Reitzerら、Acta Crystallogr.D Biol.Crystallogr.、54巻、1039〜1042頁(1998年))。この2つのサブユニットタンパク質をコードする遺伝子は、Clostridium cochlearium由来のglmEおよびglmS、Clostridium tetanomorphum由来のmamAおよびglmE、ならびにClostridium tetani由来のmutEおよびmutSである(Switzer、Glutamate mutase、289〜305頁、Wiley、New York(1982年))。
図6を参照すると、ステップ3は3−メチルアスパルターゼ(EC4.3.1.2)が関与する。β−メチルアスパルターゼまたは3−メチルアスパラギン酸アンモニアリアーゼとも呼ばれる3−メチルアスパルターゼは、メサコン酸へのトレオ−3−メチルアスパルテートの脱アミノ化を触媒する。Clostridium tetanomorphum由来の3−メチルアスパルターゼが、E.coliにおいてクローニングされ機能的に発現され、結晶化されている(Asuncionら、Acta Crystallogr.D Biol.Crystallogr.、57巻、731〜733頁(2001年);Asuncionら、J.Biol.Chem.、277巻、8306〜8311頁(2002年);Bottingら、Biochemistry、27巻、2953〜2955頁(1988年);Godaら、Biochemistry、31巻、10747〜10756頁(1992年))。Citrobacter amalonaticusでは、この酵素はBAA28709によってコードされる(KatoおよびAsano、Arch.Microbiol.、168巻、457〜463頁(1997年))。E.coliYG1002由来の3−メチルアスパルターゼも結晶化されているが(AsanoおよびKato、FEMS Microbiol.Lett.、118巻、255〜258頁(1994年))、そのタンパク質配列はGenBankなどの公のデータベース中には挙げられていない。配列相同性を使用して、C.tetani中のCTC_02563およびEscherichia coli O157:H7中のECs0761を含めた追加的候補遺伝子を同定することができる。
図6を参照すると、ステップ4はメサコン酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.−)が関与する。経路の最終ステップはメタクリル酸へのメサコネートの脱カルボキシル化を伴う。この正確な反応を触媒する酵素は実験によって実証されていない。しかしながら、非常に類似した反応を触媒するいくつかの酵素が存在する。密接に関連した機能を有する1つの酵素はアコニット酸デカルボキシラーゼである。この酵素は、Candidaのある株および糸状真菌Aspergillus terreusにおける、イタコネートの生合成中の最終ステップを触媒する(Bonnarmeら、J.Bacteriol.、177巻、3573〜3578頁(1995年);WillkeおよびVorlop、Appl.Microbiol.Biotechnol.、56巻、289〜295頁(2001年))。イタコネートはバイオテクノロジーの対象とする化合物であるが、アコニット酸デカルボキシラーゼ遺伝子を同定またはクローニングするための努力はこれまでなされていない。
類似した機能を有する第2の酵素は4−オキサロクロトン酸(oxalocronate)デカルボキシラーゼである。この酵素は様々な生物体において一般的であり、Pseudomonas種(株600)由来の酵素をコードする遺伝子はE.coliにおいてクローニングされ発現されている(Shinglerら、J.Bacteriol.、174巻、711〜724頁(1992年))。メサコネート中のメチル基は立体障害を引き起こす可能性があるが、この問題は定方向進化またはタンパク質工学によって克服される可能性がある。4−オキサロクロトン酸デカルボキシラーゼは2つのサブユニットから構成される。この酵素をコードする遺伝子には、Pseudomonas種(株600)中のdmpHおよびdmpE(Shinglerら、J.Bacteriol.、174巻、711〜724頁(1992年))、Pseudomonas putida由来のxylIIおよびxylIII(KatoおよびAsano、Arch.Microbiol.、168巻、457〜463頁(1997年);Stanleyら、Biochemistry、39巻、718〜726頁(2000年))、ならびにRalstonia eutropha JMP134由来のReut_B5691およびReut_B5692(Hughesら、J.Bacteriol.、158巻、79〜83頁(1984年))がある。
この実施例は、アルファ−ケトグルタレートからMMAを生成するための生合成経路を記載する。
(実施例IX)
2−ヒドロキシグルタレートを介したMAAへのアルファ−ケトグルタレートの転換のための経路
この実施例は、2−ヒドロキシグルタレートを介したMAAへのアルファ−ケトグルタレートからの例示的なMAAの合成経路を記載する。
MAAの生合成に関する別の例示的な経路は実施例VIIIに記載した経路と類似したスキームを有するが、それは、アミン置換中間体(図6参照)ではなく、ヒドロキシル化中間体である2−ヒドロキシグルタレートおよび3−メチルマレート(図7参照)を通過する。
図7を参照すると、ステップ1はα−ケトグルタル酸レダクターゼ(EC1.1.99.2)が関与する。この経路の最初のステップは、天然酵素α−ケトグルタル酸レダクターゼによる、2−ヒドロキシグルタレートへのアルファ−ケトグルタレートの還元を伴う。この酵素は、serA、中心代謝中の3−ホスホグリセリン酸の還元も触媒する多機能酵素によってコードされる(ZhaoおよびWinkler、J.Bacteriol.、178巻、232〜239頁(1996年))。Homo sapiens中の遺伝子L2HGDH(JansenおよびWanders、Biochim.Biophys.Acta、1225巻、53〜56頁(1993年))、Fusobacterium nucleatum中のFN0487におけるL2hgdh(Hayashiら、J.Nihon Univ.Sch.Dent.、28巻、12〜21頁(1986年))、Rattus norvegicus中の予想L2hgdh(JansenおよびWanders、Biochim.Biophys.Acta、1225巻、53〜56頁(1993年))はこの酵素をコードする。高い配列相同性を有する遺伝子候補には、Mus musculus中のL2hgdhおよびBos taurus中のL2HGDHがある。高濃度で、2−ヒドロキシグルタレートは、競合阻害によりα−ケトグルタル酸レダクターゼ活性をフィードバックすることが示されている(ZhaoおよびWinkler、J.Bacteriol.、178巻、232〜239頁(1996))。
図7を参照すると、ステップ2は2−ヒドロキシグルタミン酸ムターゼ(EC5.4.99.−)が関与する。経路の第2ステップ中、炭素骨格はグルタミン酸ムターゼ酵素による転位を経る。このような酵素により触媒される最も一般的な反応は、図6のステップ2中に示す、トレオ−3−メチルアスパルテートへのグルタミン酸の転換である。Clostridium cochlearium由来のアデノシルコバラミン依存性グルタミン酸ムターゼも、別の基質として2−ヒドロキシグルタレートと反応することが示されているが(Roymoulikら、Biochemistry、39巻、10340〜10346頁(2000年))、天然基質グルタミン酸を用いた速度と比較して、この反応の速度は2−ヒドロキシグルタレートを用いると2桁低い。酵素の定方向進化を使用して、2−ヒドロキシグルタレートに対するグルタミン酸ムターゼの親和性を増大することができる。グルタミン酸ムターゼをコードするタンパク質配列のGenBankアクセッション番号は、実施例VIII、経路のステップ2中で見られる。
図7を参照すると、ステップ3は3−メチルリンゴ酸デヒドラターゼ(EC4.2.1.−)が関与する。第3ステップ中、3−メチルマレートを脱水してメサコネートを形成する。この正確な変換を触媒する酵素は文献中に記載されていないが、いくつかの酵素は類似の反応を触媒することができる。1つのこのような酵素は、2−メチルマレートをメサコネートに転換する、シトラリンゴ酸ヒドロリアーゼとも呼ばれる2−メチルリンゴ酸デヒドラターゼである。2−メチルマレートと3−メチルマレートは密接に関連があり、構造の唯一の違いはヒドロキシル基の位置である。2−メチルリンゴ酸デヒドラターゼの活性は、グルタミン酸分解VI経路の状況でClostridium tetanomorphum、Morganella morganii、Citrobacter amalonaticusにおいて検出されたが(KatoおよびAsano、Arch.Microbiol.168巻、457〜463頁(1997年))、しかしながら、この酵素をコードする遺伝子は今日まで配列決定されていない。
第2の候補酵素は、フマレートへのマレートの脱水を触媒するフマル酸ヒドラターゼである。実施例V(ステップ5)中に記載したように、この酵素に関する大量の構造情報が入手可能であり、他の研究ではこの酵素を首尾良く工学的に操作して、活性、阻害および局在を変えている(Weaver、Acta Crystallogr.D Biol.Crystallogr.、61巻、1395〜1401頁(2005年))。遺伝子候補は実施例V、経路のステップ5中に論じる。
図7を参照すると、ステップ4はメサコン酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.−)が関与する。最終経路のステップは、メタクリル酸へのメサコネートの脱カルボキシル化が関与する。この反応は、実施例VIII中に記載した経路の最終ステップと同一である。
この実施例は、アルファ−ケトグルタレートからMMAを生成する生合成経路を記載する。
(実施例X)
アセチルCoAの2−ヒドロキシイソ酪酸またはMAAへの転換のための経路
この実施例は、アセチルCoAからの例示的な2−ヒドロキシイソ酪酸またはMAAの合成経路を記載する。
MAAの生合成は、少なくとも5つの酵素ステップでアセチルCoAから進行し得る(図8参照)。この経路では、2分子のアセチルCoAが組み合わさってアセトアセチル−coAを形成し、次いでこれが3−ヒドロキシブチリルCoAに還元される。あるいは、4−ヒドロキシブチリルCoAデヒドラターゼおよびクロトナーゼによって、4−ヒドロキシブチリルCoAを3−ヒドロキシブチリルCoAに転換することができる(Martinsら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA、101巻、44号、15645〜15649頁(2004年);JonesおよびWoods、Microbiol.Rev.、50巻、484〜524頁(1986年);Bergら、Science、318巻、5857号、1782〜1786頁(2007年))。次いでメチルムターゼが3−ヒドロキシブチリルCoAの炭素骨格を2−ヒドロキシイソブチリルCoAに転位して、次いでそれを脱水してメタクリリルCoAを形成する。あるいは、2−ヒドロキシイソブチリルCoAを2−ヒドロキシイソブチレートに転換し、分泌させ、生成物として回収することが可能である。メタクリリルCoAをMAAに転換する最終ステップは、1つの酵素(図8中に示す)または一連の酵素によって実施することができる。
図8を参照すると、ステップ1はアセトアセチルCoAチオラーゼ(EC2.3.1.9)が関与する。2つのアセチルCoA単位からのアセトアセチルCoAの形成は、アセチルCoAチオラーゼによって触媒される。この酵素はE.coliに本来備わっており、遺伝子atoBによってコードされ、典型的には脂肪酸酸化の間にアセトアセテート分解方向に作用する(DuncombeおよびFrerman、Arch.Biochem.Biophys.176巻、159〜170頁(1976年);FrermanおよびDuncombe、Biochim.Biophys.Acta 580巻、289〜297(1979年))。Clostridium acetobutylicum由来の遺伝子thlAをE.coliのイソプロパノール生成株へと工学的に操作した(Hanaiら、Appl.Environ.Microbiol.、73巻、7814〜7818頁(2007年);Stim−Herndonら、Gene、154巻、81〜85頁(1995年))。さらなる遺伝子候補としては、Clostridium pasteurianum由来のthl(MengおよびLi、Cloning, Biotechnol. Lett.28巻、1227〜1232頁(2006年))およびS.cerevisiae 由来のERG10(Hiserら、J Biol Chem 269巻、31383〜89頁(1994年))が挙げられる。
図8を参照すると、ステップ2はアセトアセチルCoAレダクターゼ(EC#:1.1.1.35)が関与する。第2ステップは、アセトアセチルCoAレダクターゼによる3−ヒドロキシブチリルCoAへのアセトアセチルCoAの還元を伴う。この酵素は数種のClostridiaにおいてブチレートへのアセチルCoAの発酵経路に関与し、詳細に研究されている(JonesおよびWoods、Microbiol.Rev.、50巻、484〜524頁(1986年))。hbdによってコードされるClostridium acetobutylicum由来の酵素が、E.coliにおいてクローニングされ機能的に発現されている(Younglesonら、J.Bacteriol.、171巻、6800〜6807頁(1989年))。さらに、fadBおよびfadJによってコードされる、E.coliにおける2つの脂肪酸酸化複合体のサブユニットは、3−ヒドロキシアシルCoAデヒドロゲナーゼとして機能する(BinstockおよびSchulz、Methods Enzymol.、71巻PtC、403〜411頁(1981年))。アセトアセチルCoAを3−ヒドロキシブチリルCoAに還元することが証明されているなお他の遺伝子は、Zoogloea ramigera由来のphbB(Plouxら、Eur.J Biochem.174巻、177〜182頁(1988年))およびRhodobacter sphaeroides由来のphaB(Alberら、Mol.Microbiol 61巻、297〜309頁(2006年))である。前者の遺伝子は、NADPH−依存型であり、そのヌクレオチド配列は、決定されていて(Peoplesら、Mol.Microbiol 3巻、349〜357頁(1989年))、この遺伝子は、E.coliにおいて発現されている。この遺伝子における基質特異性研究は、アセトアセチルCoAのほかに3−オキソプロピオニルCoAを基質として受け入れ得るという結論に導いた(Plouxら、Eur.J Biochem.174巻、177〜182頁(1988年))。さらなる遺伝子候補としては、Clostridium kluyveriにおけるHbd1(C末端ドメイン)およびHbd2(N末端ドメイン)(HillmerおよびGottschalk、Biochim. Biophys. Acta 3334巻、12〜23頁(1974年))ならびにBos taurusにおけるHSD17B10(Wakilら、J. Biol. Chem.207巻、631〜638頁(1954年))が挙げられる。Paracoccus denitrificans由来の酵素は、E.coliにおいて、機能的に発現され、特徴付けされている(Yabutaniら、FEMS Microbiol Lett.133巻、85〜90頁(1995年))。一群の類似の酵素が、Clostridiaの他の種およびMetallosphaera sedulaに見出されている(Bergら、Science.318巻、1782〜1786頁(2007年))。Candida tropicalis由来の酵素は、ペルオキシソームの脂肪酸ベータ−酸化多機能性酵素2型(MFE−2)の構成要素である。このタンパク質のデヒドロゲナーゼBドメインは、アセトアセチルCoAに対して触媒的に活性である。このドメインは、E.coliにおいて機能的に発現されていて、結晶構造は利用可能であり、触媒メカニズムは十分に理解されている(Ylianttilaら、Biochem Biophys Res Commun 324巻、25〜30頁(2004年);Ylianttilaら、J Mol Biol 358巻、1286〜1295頁(2006年))。
図8を参照すると、ステップ3は3−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ(EC5.4.99.−)が関与する。次のステップでは、3−ヒドロキシブチリルCoAムターゼにより、3−ヒドロキシブチリルCoAを転位して2−ヒドロキシイソブチリルCoA(2−HIBCoA)を形成する。この酵素は近年発見された新規のICM様メチルムターゼであり、Methylibium petroleiphilumにおいて特徴付けられている(Ratnatillekeら、J.Biol.Chem.274巻、31679〜31685頁(1999年);Rohwerderら、Appl.Environ.Microbiol.72巻、4128〜4135頁(2006年))。Methylibium petroleiphilum PM1におけるMpe_B0541によってコードされるこの酵素は、Rhodobacter sphaeroidesにおけるRsph17029_3657およびXanthobacter autotrophicusにおけるXaut_5021を含めた他の生物体におけるメチルマロニルCoAムターゼの大サブユニットと高い配列相同性を有する。実施例VII(ステップ1)において議論されるように、活性部位の近くの1つのアミノ酸に対する変化は、その酵素の基質特異性を変える(Ratnatillekeら、前出、1999年;Rohwerderら、前出、2006年)ので、この部位において類似の酵素(先に記載されたメチルマロニルCoAムターゼまたはイソブトリリル(isobutryryl)CoAムターゼなど)の工学的操作を指向することが、所望の反応性を達成するために使用され得る。
図8を参照すると、ステップ4は、2−ヒドロキシイソブチリルCoAデヒドラターゼが関与する。2−ヒドロキシアシルCoA(例えば、2−ヒドロキシイソブチリルCoA)の脱水は、2−ヒドロキシアシルCoA誘導体をラジカル機構を介して脱水する特別なクラスの酸素感受性酵素によって触媒され得る(BuckelおよびGolding、Annu. Rev. Microbiol.60巻、27〜49頁(2006年);Buckelら、Curr. Opin. Chem. Biol.8巻、462〜467頁(2004年);Buckelら、Biol. Chem.386巻、951〜959頁(2005年);Kimら、FEBS J.272巻、550〜561頁(2005年);Kimら、FEMS Microbiol. Rev.28巻、455〜468頁(2004年);Zhangら、Microbiology 145巻(Pt9)、2323〜2334頁(1999年))。このような酵素の一例は、ラクトイルCoAの脱水を触媒してアクリルCoAを形成する、Clostridium propionicum由来のラクチルCoAデヒドラターゼである(KuchtaおよびAbeles、J.Biol.Chem.、260巻、13181〜13189頁(1985年);HofmeisterおよびBuckel、Eur.J.Biochem.206巻、547〜552頁(1992年))。さらなる例は、Acidaminococcus fermentans由来のhgdABCによってコードされる2−ヒドロキシグルタリルCoAデヒドラターゼである(MuellerおよびBuckel、Eur.J.Biochem.、230巻、698〜704頁(1995年);Schweigerら、Eur.J.Biochem.、169巻、441〜448頁(1987年))。さらに別の例は、hadBCによって触媒されhadIによって活性化されるClostridium difficile由来の2−ヒドロキシイソカプロイルCoAデヒドラターゼである(Darleyら、FEBS J.、272巻、550〜61頁(2005年))。A.fermentansおよびC.difficileについての対応する配列は、以下に列挙されるとおり見出され得る。完全なC.propioniciumラクトイルCoAデヒドラターゼの配列は、公に利用可能なデータベースにおいて未だ列挙されていない。しかし、ベータ−サブユニットの配列は、GenBank受託番号AJ276553(Selmer ら、Eur J Biochem、269巻、382〜80頁(2002年))に対応する。
図8を参照すると、ステップ5または6は、それぞれメタクリル酸または2−ヒドロキシイソ酪酸に対する活性を有する、トランスフェラーゼ(EC2.8.3.−)、ヒドロラーゼ(EC3.1.2.−)、またはシンテターゼ(EC6.2.1.−)が関与する。メタクリリルCoAからMAAへの直接転換、または2−ヒドロキシイソブチリルCoAから2−ヒドロキシイソブチレートへの直接転換は、CoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼによって実施することができる。実施例VII中で論じたように、CoAトランスフェラーゼまたはCoAシンテターゼを利用してこの変換を実施する場合、経路のエネルギー特性は最も好ましい。トランスフェラーゼファミリー中、アセテート−CoAトランスフェラーゼとしても公知である酵素アシルCoA:アセテート−CoAトランスフェラーゼは、分岐状アシルCoA基質を含めたその広範囲の基質特異性のため、望ましい2−ヒドロキシイソブチリルCoAまたはメタクリルCoAトランスフェラーゼ活性を触媒するのに適した候補である(MatthiesおよびSchink、Appl.Environ.Microbiol.、58巻、1435〜1439頁(1992年);Vanderwinkelら、Biochem.Biophys.Res.Commun.、33巻、902〜908頁(1968年))。ADP形成アセチルCoAシンテターゼ(ACD)は、構造上類似した分岐鎖状化合物に作用するCoAシンテターゼファミリー中の有望な酵素である(BrasenおよびSchonheit、Arch..Microbiol.、182巻、277〜287頁(2004年);MusfeldtおよびSchonheit、J.Bacteriol.、184巻、636〜644頁(2002年))。CoA−ヒドロラーゼファミリー中、酵素3−ヒドロキシイソブチリルCoAヒドロラーゼは、3−ヒドロキシイソブチリルCoA、メチルマロニルCoA、および3−ヒドロキシ−2−メチルブタノイルCoAを含めた、様々な分岐鎖状アシルCoA基質に作用することが示されている(Hawesら、Methods Enzymol.、324巻、218〜228頁(2000年);Hawesら、J.Biol.Chem.、271巻、26430〜26434頁(1996年);Shimomuraら、J.Biol.Chem.、269巻、14248〜14253頁(1994年))。CoAトランスフェラーゼ、シンテターゼおよびヒドロラーゼのための他の例示的な遺伝子候補は、実施例VII(ステップ2および5)中に論じる。
図8を参照すると、別のステップ5はMAAへの間接的転換が関与する。MAAへのMAA−CoAの直接転換の代替として、メタクリリルCoAをMAAに転換するための別の戦略は、3−ヒドロキシイソブチレートを介してMAA−CoAをMAAに転換する多段階プロセスを伴う。このプロセスによって、MAA−CoAは最初に3−ヒドロキシイソブチリルCoAに転換され、それは後に実施例VII中に記載したようにMAAに転換され得る。
この間接的経路の最初のステップは、エノイルCoAヒドラターゼ(EC4.2.1.17および4.2.1.74)による、3−ヒドロキシイソブチリルCoA(3HIB−CoA)へのMAA−CoAの転換を伴う。E.coliでは、fadAおよびfadBの遺伝子産物は、エノイルCoAヒドラターゼ活性を示す脂肪酸酸化に関与する多酵素複合体をコードする(NakahigashiおよびInokuchi、Nucleic Acids Research、18巻、4937頁(1990年);Yang、J.Bacteriol.、173巻、7405〜7406頁(1991年);Yangら、J.Biol.Chem.、265巻、10424〜10429頁(1990年);Yangら、Biochemistry、30巻、6788〜6795頁(1991年))。fadRによってコードされる負のレギュレーターのノックアウトを利用して、fadB遺伝子産物を活性化することができる(Satoら、J.Biosci.Bioengineer.、103巻、38〜44頁(2007年))。fadI遺伝子とfadJ遺伝子は類似した機能をコードし、嫌気的条件下で天然に発現される(Campbellら、Mol.Microbiol.、47巻、793〜805頁(2003年))。
エノイルCoAヒドラターゼをコードする追加的な天然遺伝子候補には、maoC(ParkおよびLee、J.Bacteriol.、185巻、5391〜5397頁(2003年))、paaF(Ismailら、Eur.J.Biochem.、270巻、3047〜3054頁(2003年);ParkおよびLee、Appl.Biochem.Biotechnol.、113〜116巻、335〜346頁(2004年);ParkおよびYup、Biotechnol.Bioeng.、86巻、681〜686頁(2004年))、およびpaaG(Ismailら、Eur.J.Biochem.、270巻、3047〜3054頁(2003年);ParkおよびLee、Appl.Biochem.Biotechnol.、113〜116巻:335〜346頁(2004年);ParkおよびYup、Biotechnol.Bioeng.、86巻、681〜686頁(2004年))がある。他の候補には、P.putida(Oliveraら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、95巻、6419〜6424頁(1998年))およびP.fluorescens(Di Gennaroら、Arch.Microbiol.、188巻、117〜125頁(2007年))由来のpaaA、paaB、およびpaaNがある。C.acetobutylicum由来のcrtの遺伝子産物は別の候補である(Atsumiら、Metab.Eng.、2007年9月14日電子出版;Boyntonら、J.Bacteriol.、178巻、3015〜3024頁(1996年))。Pseudomonas putidaのエノイルCoAヒドラターゼ(echによってコードされる)は、3−ヒドロキシブチリルCoAのクロトニルCoAへの転換を触媒する(Robertsら、Arch.Microbiol 117巻、99〜108頁(1978年))。この変換はまた、Clostridium acetobutylicumのcrt遺伝子産物、C.kluyveriおよび他のクロストリジウム生物体のcrt1遺伝子産物によっても、触媒される(Atsumiら、Metab Eng 10巻、305〜311頁(2008年);Boyntonら、J Bacteriol.178巻、3015〜3024頁(1996年);Hillmerら、FEBS Lett.21巻、351〜354頁(1972年))。さらなるエノイルCoAヒドラターゼ候補は、P.putidaの phaAおよびphaB、ならびにP.fluorescens由来のpaaAおよびpaaBである(Oliveraら、Proc.Natl.Acad.Sci U.S.A 95巻、6419〜6424頁(1998年))。
この実施例は、アセチルCoAからの2−ヒドロキシイソブチレートまたはMAAの産生のための生合成経路を記載する。
(実施例XI)
この実施例は、クロトノイルCoAを介したアセチルCoAからの例示的なMAAの合成経路を記載する。
少なくとも7つの酵素ステップでMAAにアセチルCoAを転換するための別の経路を記載する(図9参照)。好気的および嫌気的条件下でのこの経路の収率は、実施例XI中に記載した経路と類似している。
経路の最初の2ステップは、実施例X中に記載した経路中のステップ1および2と同一である。第3ステップでは、クロトナーゼ(EC#:4.2.1.55)によって3−HBCoAを脱水してクロトニルCoAを形成する。クロトニルCoA中の二重結合はブチリルCoAデヒドロゲナーゼ(EC#:1.3.99.2)によって還元される。これらの酵素の両方が、アセトアセチルCoAレダクターゼと全く同様に、Clostridia種における酪酸へのアセチルCoAの発酵経路の一部である(JonesおよびWoods、Microbiol.Rev.、50巻、484〜524頁(1986年))。後のステップ中、イソブチリルCoAムターゼ(5.4.99.12)、イソブチリルCoAにブチリルCoAを可逆的に転換することができる酵素によって、ブチリルCoAをイソブチリルCoAに転換する。この酵素はStreptomyces cinnamonensisからクローニングおよび配列決定されており、組換え酵素がE.coliにおいて特徴付けられている(Ratnatillekeら、J.Biol.Chem.、274巻、31679〜31685頁(1999年))。経路中の次のステップは、2−メチル−アシルCoAデヒドロゲナーゼ(EC#:1.3.99.12)によるメタクリリルCoAへのイソブチリルCoAの転換を伴う。メタクリリルCoAへのこの変換はStreptomyces種において観察されており、関連酵素はE.coliにおいて単離および発現されている(Younglesonら、J.Bacteriol.、171巻、6800〜6807頁(1989年))。最終ステップでは、実施例X(ステップ5)中に記載したように、1つの酵素または一連の酵素のいずれかによって、メタクリリルCoAをMAAに転換する。
この実施例は、アセチルCoAからMAAを生成する生合成経路を記載する。
(実施例XII)
MAAへのアクリリルCoAの転換のための経路
この実施例は、アクリリルCoAからの例示的なMAAの合成経路を記載する。
高収率のMAAはアクリリルCoA経路によって得ることができる(図10参照)。この経路は、ラクトイルCoAへのラクテートの活性化、次にこの活性化CoA分子をMAAに転換するための5、または場合によっては6、それより多くのステップを必要とする。この経路を使用したグルコースからのMAA収率はグルコース1mol当たり1.28molであり、酸素の取り込みがこれらの収率を得るのに必要とされる。酸素の不在下では、予想収率は消費するグルコース1mol当たり1.28molから1.09molに低下する。好気的経路と嫌気的経路は両方共に最大MAA収率でエネルギーが制限され、いかなるATPも生成しない。
アクリリルCoA経路を介したMAAの生合成は、乳酸デヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.28)、E.coliおよび多くの他の生物体に固有の酵素によるラクテートへのピルベートの転換を最初に必要とする。ラクテートをプロピオニルCoAに転換する3つの後のステップは、Clostridium propionicumおよびMegasphaera elsdeniiなどのいくつかの無関係な細菌中のピルビン酸発酵経路における酵素によって触媒される(MetaCyc)。プロピネートCoAトランスフェラーゼとしても公知されているラクテートCoAトランスフェラーゼ(EC2.8.3.1)はラクテートをラクトイルCoAに転換し、基質としてプロピオネートとラクテートの両方を使用することができる。この酵素は精製および特徴付けられている(Schweigerら、Eur.J.Biochem.、169巻、441〜448頁(1987年))。ラクトイルCoAデヒドラターゼ(EC4.2.1.54)、多数の研究の対象となっている酵素を使用して、ラクトイルCoAをアクリリルCoAに脱水する(HofmeisterおよびBuckel、Eur.J.Biochem.、206巻、547〜552頁(1992年);KuchtaおよびAbeles、J.Biol.Chem.、260巻、13181〜13189頁(1985年))。その後アクリリルCoAは、アクリロイルCoAレダクターゼ(EC1.3.2.2、以前は1.3.99.3)を使用してプロピオニルCoAに還元する(Hetzelら、Eur.J Biochem.、270巻、902〜910頁(2003年);KuchtaおよびAbeles、上記、1985年)。
図10を参照すると、ステップ5中、プロピオニルCoAカルボキシラーゼ(6.4.1.3)によってプロピオニルCoAがS−メチルマロニルCoAに転換される。プロピオニルCoAカルボキシラーゼはラット肝臓から精製されており(Brownerら、J. Biol.Chem.、264巻、12680〜12685頁(1989年);Krausら、J.Biol.Chem.、258巻、7245〜7248頁(1983年))、ヒト肝臓からも単離され特徴付けられている(Kalousekら、J.Biol.Chem.、255巻、60〜65頁(1980年))。この酵素によるスクシニルCoAへのプロピオニルCoAのカルボキシル化は、E.coliにおけるプロピネート代謝の機構の1つとして確認されているが(Evansら、Biochem.J.、291巻、Pt3号、927〜932頁(1993年))、この経路の遺伝的性質に関してはほとんど公知でない。
この経路の最終ステップは、MAAへのメチルマロニルCoAの転換を伴う(図10中のひとまとめにした反応)。これらの反応を触媒する酵素は実施例V中に記載する。
この実施例は、ピルベートからMAAを生成する生合成経路を記載する。
(実施例XIII)
2−ケトイソバレレートのMAAへの転換のための経路
この実施例は、2−ケトイソバレレートからの例示的なMAA合成経路を記載する。
上記経路(図11参照)は、Bacillus subtilis、Arabidopsis thaliana、および数種のPseuodomonasを含めたいくつかの生物体において記載されるが、E.coli中またはS.cerevisiae中に存在することは公知でない、バリン分解経路の多数のステップを利用する。バリン分解経路の最初のステップ中、分岐鎖状アミノ酸アミノトランスフェラーゼ(EC2.6.1.24)、E.coliにも固有である酵素によって、バリンは2−ケトイソバレレートに転換される(MatthiesおよびSchink、Appl.Environ.Microbiol.、58巻、1435〜1439頁(1992年);RudmanおよびMeister、J.Biol.Chem.、200巻、591〜604頁(1953年))。分岐鎖状ケト酸デヒドロゲナーゼ複合体(EC1.2.1.25)によって触媒される、イソブチリルCoAへの2−ケトイソバレレートのその後の転換は、この経路によるMAA生合成の実行ステップである。次に、イソブチリルCoAデヒドロゲナーゼ(EC1.3.99.12)によって、イソブチリルCoAをメタクリリルCoAに転換する。このステップに関する詳細は実施例XI中に記載する。最終ステップ、MAAへのMAA−CoAの転換は実施例V中に記載する。
この実施例は、2−ケトイソバレレートからMMAを生成する生合成経路を記載する。
(実施例XIV)
2−ヒドロキシイソブチリルCoAを介した、4−ヒドロキシブチリルCoAの2−ヒドロキシイソブチレートまたはMAAへの転換のための経路
この実施例は、4−ヒドロキシブチリルCoAから進行し、2−ヒドロキシイソブチリルCoAを通る例示的な2−ヒドロキシイソブチレートまたはMAA合成経路を記載する。
この経路は最初にビニルアセチルCoAへの4−ヒドロキシブチリルCoAの脱水を伴い、それは後にクロトノイルCoAに異性体化される。クロトニルCoAを水和して3−ヒドロキシブチリルCoAを形成し、それは2−ヒドロキシイソブチリルCoAに転位される。2−ヒドロキシイソブチレート経路の最終ステップは、2−ヒドロキシイソブチリルCoAからのCoA官能基の除去が関与する。MAA合成中の最終ステップは、2−ヒドロキシイソブチリルCoAの脱水、次にメタクリリルCoAからのCoA官能基の除去が関与する。図8の最初の3経路のステップ、ステップ7、8、および9の遺伝子候補は以下に記載する。図8のステップ3、4、5、および6の遺伝子候補は実施例X中に論じる。
図8を参照すると、ステップ7および8は4−ヒドロキシブチリルCoAデヒドラターゼ酵素によって実施する。Clostridium aminobutyriumとC.kluyveriの両方由来の酵素は、クロトニルCoAへの4−ヒドロキシブチリルCoAの可逆的転換を触媒し、さらに固有のビニルアセチルCoAΔ−イソメラーゼ活性を有する(ScherfおよびBuckel、Eur.J.Biochem.、215巻、421〜429頁(1993年);Scherfら、Arch.Microbiol.、161巻、239〜245頁(1994年))。N末端アミノ酸配列を含めて両方の天然酵素が精製および特徴付けられている(ScherfおよびBuckel、上記、1993年;Scherfら、上記、1994年)。C.aminobutyriumおよびC.kluyveri由来のabfD遺伝子はこれらのN末端アミノ酸配列が正確に一致し、したがって4−ヒドロキシブチリルCoAデヒドラターゼ/ビニルアセチルCoAΔ−イソメラーゼをコードする。さらに、Porphyromonas gingivalis由来のabfD ATCC33277は、相同性によって同定することができる別の例示的な4−ヒドロキシブチリルCoAデヒドラターゼである。Porphyromonas gingivalis由来のabfD遺伝子産物およびMetallosphaera sedula由来のMsed_1220遺伝子産物は、クロストリジウムの遺伝子産物に対して、配列相同性によって、密接に関連している。
図8のステップ9はクロトナーゼ酵素によって実施する。このような酵素はいくつかの生物体、特にClostridial種中のn−ブタノール形成に必要とされ、Sulfolobus、Acidianus、およびMetallosphaera属の好熱好酸性古細菌中の3−ヒドロキシプロピオン酸/4−ヒドロキシ酪酸回路の1ステップをさらに含む。クロトナーゼ酵素をコードする例示的な遺伝子は、C.acetobutylicum(Boyntonら、J.Bacteriol.、178巻、11号、3015〜3024頁(1996年))、C.kluyveri(HillmerおよびGottschalk、FEBS Lett.、21巻、3号、351〜354頁(1972年))、およびMetallosphaera sedula(Bergら、Science、318巻、5857号、1782〜1786頁(2007年))中で見ることができるが、後者の遺伝子の配列は公知ではない。脂肪酸β酸化および/または様々なアミノ酸の代謝に関与するエノイルCoAヒドラターゼは、3−ヒドロキシブチリルCoAを形成するためのクロトニルCoAの水和も触媒することができる(AgnihotriおよびLiu、Bioorg.Med. Chem.11巻、1号、9〜20頁(2003年);Robertsら、Arch. Microbiol.、117巻、1号、99〜108頁(1978年);Conradら、J.Bacteriol.、118巻、1号、103〜11頁(1974年))。P.putidaのエノイルCoAヒドラターゼ、phaAおよびphaBは、フェニル酢酸異化中に二重結合のヒドロキシル化を実施すると考えられる(Oliveraら、Proc Natl Acad Sci USA、95巻、11号、6419〜6424頁(1998年))。P.fluorescens由来のpaaAおよびpaaBは同様の変換を触媒する(Oliveraら、上記、1998年)。最後に、maoC(ParkおよびLee、J.Bacteriol.、185巻、18号、5391〜5397頁(2003年))、paaF(ParkおよびLee、Biotechnol.Bioeng.、86巻、6号、681〜686頁(2004年a));ParkおよびLee、Appl.Biochem.Biotechnol.、113〜116頁:335〜346頁(2004年b));Ismailら、Eur.J.Biochem.、270巻、14号、3047〜3054頁(2003年)、およびpaaG(ParkおよびLee、上記、2004年;ParkおよびLee、上記、2004年b;Ismailら、上記、2003年)を含めた、いくつかのEscherichia coliの遺伝子はエノイルCoAヒドラターゼの機能性を示すことが示されている。
この実施例は、4−ヒドロキシブチリルCoAからの2−ヒドロキシイソブチレートまたはメタクリル酸のための生合成経路を記載する。
(実施例XV)
シンガスから還元当量を抽出するための例示的なヒドロゲナーゼおよびCOデヒドロゲナーゼ酵素ならびに例示的な還元的TCA回路の酵素
本発明の天然に存在しない微生物体において有用である還元的TCA回路の酵素としては、1つ以上のATPクエン酸リアーゼならびに3つのCO固定酵素:イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、アルファ−ケトグルタル酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼが挙げられる。ATPクエン酸リアーゼまたはクエン酸リアーゼおよびアルファ−ケトグルタル酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼの存在は、ある生物体における活性な還元的TCA回路の存在を示す。還元的TCA回路の各ステップについての酵素は、以下に示され、本明細書中で記載される。
ATPクエン酸リアーゼ(ACL、EC2.3.3.8)はまた、ATPクエン酸シンターゼとも呼ばれ、シトレートからオキサロアセテートおよびアセチルCoAへのATP依存型切断を触媒する。ACLは、緑色硫黄細菌Chlorobium limicolaおよびChlorobium tepidumにおいて研究されているRTCA回路の酵素である。Chlorobium limicola由来のアルファ(4)ベータ(4)ヘテロマー酵素は、E.coliにおいてクローニングされ、そして特徴付けされた(Kanaoら、Eur. J. Biochem.269巻、3409〜3416頁(2002年)。aclABによってコードされるC.limicola酵素は、不可逆的であり、その酵素の活性は、ADP/ATPの比によって調節される。Chlorobium tepidum由来の組換えACLはまた、E.coliにおいて発現され、触媒メカニズムにおけるアルファサブユニットおよびベータサブユニットの役割を明らかにする研究において、ホロ酵素は、in vitroで再構成された(KimおよびTabita、J. Bacteriol.188巻、6544〜6552頁(2006年)。ACL酵素はまた、Balnearium lithotrophicum、Sulfurihydrogenibium subterraneumおよびAquificae門の細菌の他のメンバーにおいても同定されている(Huglerら、Environ. Microbiol.9巻、81〜92頁(2007年))。この活性は、幾種類かの真菌においても報告されている。例示的な生物体としては、Sordaria macrospora(Nowrousianら、Curr. Genet.37巻、189〜93頁(2000年))、Aspergillus nidulans、Yarrowia lipolytica(HynesおよびMurray、Eukaryotic Cell, 7月号、1039〜1048頁、(2010年)およびAspergillus niger(Meijerら、J. Ind. Microbiol. Biotechnol.36巻、1275〜1280頁(2009年))が挙げられる。他の候補は、配列相同性に基づいて見出され得る。これらの酵素に関連する情報は、以下に表にまとめられる:
いくつかの生物体において、シトレートのオキサロアセテートおよびアセチルCoAへの転換は、シトリルCoA中間体を通して進行し、2つの別個の酵素、シトリルCoAシンテターゼ(EC6.2.1.18)およびシトリルCoAリアーゼ(EC4.1.3.34)によって触媒される(Aoshima, M.、Appl. Microbiol. Biotechnol.75巻、249〜255頁(2007年)。シトリルCoAシンテターゼは、シトレートのシトリルCoAへの活性化を触媒する。Hydrogenobacter thermophilusの酵素は、それぞれccsAおよびccsBによってコードされる大サブユニットおよび小サブユニットからなる(Aoshimaら、Mol. Micrbiol.52巻、751〜761頁(2004年))。Aquifex aeolicusのシトリルCoAシンテターゼは、sucC1およびsucD1によってコードされるアルファサブユニットおよびベータサブユニットからなる(Huglerら、Environ. Microbiol.9巻、81〜92頁(2007年))。シトリルCoAリアーゼは、シトリルCoAを、オキサロアセテートとアセチルCoAとに分ける。この酵素は、Hydrogenobacter thermophilusにおけるccl(Aoshimaら、Mol. Microbiol.52巻、763〜770頁(2004年))およびAquifex aeolicusにおけるaq_150(Huglerら、前出(2007))によってコードされるホモトリマーである。シトレートをオキサロアセテートとシトリルCoAとに転換するメカニズムについての遺伝子はまた、近年、Chlorobium tepidumにおいて報告されている(Eisenら、PNAS 99巻(14号)、9509〜14頁(2002年)。
オキサロアセテートは、順方向および逆方向の両方において機能する酵素であるリンゴ酸デヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.37)によって、マレートに変換される。S.cerevisiaeは、リンゴ酸デヒドロゲナーゼの3つのコピー、MDH1(McAlister−HennおよびThompson、J. Bacteriol.169巻、5157〜5166頁(1987年)、MDH2(MinardおよびMcAlister−Henn、Mol. Cell. Biol.11巻、370〜380頁(1991年);GibsonおよびMcAlister−Henn、J. Biol. Chem.278巻、25628〜25636頁(2003年))、ならびにMDH3(SteffanおよびMcAlister−Henn、J. Biol. Chem.267巻、24708〜24715頁(1992年))を有し、これらは、それぞれ、ミトコンドリア、サイトゾルおよびペルオキシソームに局在する。E.coliは、mdhによってコードされる活性型リンゴ酸デヒドロゲナーゼを有することが公知である。
フマル酸ヒドラターゼ(EC4.2.1.2)は、フマレートのマレートへの可逆的水和を触媒する。E.coliの3つのフマラーゼ(fumA、fumBおよびfumCによってコードされる)は、酸素利用性の異なる条件下で調節される。FumBは、酸素感受性であり、嫌気性条件下で活性である。FumAは、微嫌気性条件下で活性であり、FumCは、好気性増殖条件下で活性である(Tsengら、J. Bacteriol.183巻、461〜467頁(2001年);Woodsら、Biochim. Biophys. Acta 954巻、14〜26頁(1988年);Guestら、J. Gen. Microbiol.131巻、2971〜2984頁(1985年))。S.cerevisiaeは、フマラーゼ−コード遺伝子であるFUM1の1つのコピーを含み、この産物は、サイトゾルおよびミトコンドリアの両方に局在する(Sassら、J. Biol. Chem.278巻、45109〜45116頁(2003年))。さらなるフマラーゼ酵素は、Campylobacter jejuni(Smithら、Int. J. Biochem. Cell. Biol.31巻、961〜975頁(1999年))、Thermus thermophilus(Mizobataら、Arch. Biochem. Biophys.355巻、49〜55頁(1998年))およびRattus norvegicus(Kobayashiら、J. Biochem.89巻、1923〜1931頁(1981年))に見出される。高い配列相同性を有する類似の酵素としては、Arabidopsis thaliana由来のfum1およびCorynebacterium glutamicum由来のfumCが挙げられる。Pelotomaculum thermopropionicum由来のMmcBCフマラーゼは、2つのサブユニットを有する別のクラスのフマラーゼである(Shimoyamaら、FEMS Microbiol. Lett. 270巻、207〜213頁(2007年))。
フマル酸レダクターゼは、フマレートのスクシネートへの還元を触媒する。E.coliのフマル酸レダクターゼは、frdABCDによってコードされる4つのサブユニットからなり、膜結合型であり、嫌気性条件下で活性である。この反応のための電子供与体は、メナキノンであり、この反応において生成する2つのプロトンは、プロトン勾配に寄与しない(Iversonら、Science 284巻、1961〜1966頁(1999年))。酵母ゲノムは、2つの可溶性フマル酸レダクターゼアイソザイムをコードし、このアイソザイムは、FRDS1(Enomotoら、DNA Res.3巻、263〜267頁(1996年))およびFRDS2(Muratsubakiら、Arch. Biochem. Biophys.352巻、175〜181頁(1998年))によってコードされ、それぞれサイトゾルおよびプロミトコンドリアに局在し、グルコースでの嫌気性増殖の間に使用される(Arikawaら、FEMS Microbiol. Lett.165巻、111〜116頁(1998年))。
スクシネートのスクシニルCoAへのATP依存型アシル化は、スクシニルCoAシンテターゼ(EC6.2.1.5)によって触媒される。S.cerevisiaeのLSC1およびLSC2遺伝子の産物ならびにE.coliのsucCおよびsucD遺伝子の産物は、天然に、スクシニルCoAシンテターゼ複合体を形成し、これは、1つのATPの相伴う消費と共に、スクシネートからのスクシニルCoAの形成を触媒し、この反応は、in vivoで可逆的である(Buckら、Biochemistry 24巻、6245〜6252頁(1985年))。これらのタンパク質は、以下に同定される:
アルファ−ケトグルタル酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ(EC1.2.7.3)は、2−オキソグルタル酸シンターゼもしくは2−オキソグルタル酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ(OFOR)としても公知であり、2当量の還元型フェレドキシンの消費を伴って、CO2およびスクシニルCoAから、アルファ−ケトグルタレートを形成する。OFORおよびピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ(PFOR)は、チアミンピロホスフェート、CoAおよび鉄−硫黄クラスターを補因子として、ならびにフェレドキシン、フラボドキシンおよびFADを電子伝達体として利用する、2−オキソ酸:フェレドキシン(フラボドキシン)オキシドレダクターゼの多様なファミリーのメンバーである(Adamsら、Archaea. Adv. Protein Chem.48巻、101〜180頁(1996年))。このクラスの酵素は、可逆的であり、RTCA回路によって炭素を固定する生物体(例えば、Hydrogenobacter thermophilus、Desulfobacter hydrogenophilusおよびChlorobium種)におけるカルボキシル化方向において機能する(Shibaら、1985年;Evansら、Proc. Natl. Acad. ScI. U.S.A. 55巻、92934頁(1966年);Buchanan、1971年)。H.thermophilus由来の2サブユニットの酵素(two−subunit enzyme)(korABによってコードされる)は、E.coliにおいてクローニングされ、そして発現されている(Yunら、Biochem. Biophys. Res. Commun.282巻、589〜594頁(2001年))。スクシニルCoAについての厳密な基質特異性を有する同じ生物体由来の5サブユニットのOFOR(forDABGEによってコードされる)は、近年、E.coliにおいて同定され、そして発現された(Yunら、2002年)。H.thermophilusの両OFOR酵素のCO2固定の動態は、特徴付けされている(Yamamotoら、Extremophiles 14巻、79〜85頁(2010年))。Chlorobium thiosulfatophilum由来のCO2固定OFORは、精製され、そして特徴付けされているが、この酵素をコードする遺伝子は、現在までに同定されていない。Chlorobium種における酵素候補は、H.thermophilus遺伝子に対する配列類似性によって推測され得る。例えば、Chlorobium limicolaゲノムは、2つの類似のタンパク質をコードする。Moorella thermoaceticaのような酢酸産生性細菌は、2つのOFOR酵素をコードすることが予測される。Moth_0034によってコードされる酵素は、CO2同化方向で機能することが予測される。この酵素に関連する遺伝子、Moth_0034は、現在までに実験的に検証されていないが、公知のOFOR酵素に対する配列類似性によって推測され得る。
生理学的条件下で脱カルボキシル化方向で機能するOFOR酵素はまた、逆反応を触媒する。好熱好酸性古細菌Sulfolobus種の株7由来のOFOR(ST2300によってコードされる)は、広範囲にわたって研究されている(Zhangら、1996年)。プラスミドベースの発現系は、このタンパク質をE.coliにおいて効率的に発現するために開発されており(Fukudaら、Eur. J. Biochem.268巻、5639〜5646頁(2001年))、基質特異性に関与する残基は、決定された(FukudaおよびWakagi、Biochim. Biophys. Acta 1597巻、74〜80頁(2002年))。Aeropyrum pernix K1株(str.)由来のApe1472/Ape1473によってコードされるOFORは、近年、E.coli内にクローニングされ、特徴付けされ、そして2−オキソグルタレートおよび広い範囲の2−オキソ酸と反応することが見出された(Nishizawaら、FEBS Lett.579巻、2319〜2322頁(2005年))。別の例示的なOFORは、Helicobacter pyloriにおいてoorDABCによってコードされる(Hughesら、1998年)。アルファ−ケトグルタレートに対して特異的な酵素は、Thauera aromaticaにおいて報告されている(DornerおよびBoll、J, Bacteriol.184巻(14号)、3975〜83頁(2002年)。類似の酵素は、配列相同性によって、Rhodospirillum rubrumに見出され得る。2サブユニットの酵素はまた、Chlorobium tepidumにおいても同定されている(Eisenら、PNAS 99巻(14号)、9509〜14頁(2002年))。
イソクエン酸デヒドロゲナーゼは、NAD(P)の還元とカップリングしたイソシトレートの2−オキソグルタレートへの可逆的脱カルボキシル化を触媒する。Saccharomyces cerevisiaeおよびEscherichia coliにおけるIDH酵素は、IDP1およびicdによってそれぞれコードされる(HaselbeckおよびMcAlister−Henn、J. Biol. Chem.266巻、2339〜2345頁(1991年);Nimmo, H.G., Biochem. J.234巻、317〜2332頁(1986年))。還元的TCA回路における逆反応である、2−オキソグルタレートのイソシトレートへの還元的カルボキシル化は、Chlorobium limicola由来のNADPH依存型CO固定IDHによって有利に働き、E.coliにおいて機能的に発現された(Kanaoら、Eur. J. Biochem.269巻、1926〜1931頁(2002年))。95%配列同一性を有する類似の酵素は、以下に列挙されるいくつかの他の候補に加えて、C.tepidumゲノムに見出される。
H.thermophilusにおいて、2−オキソグルタレートのイソシトレートへの還元的カルボキシル化は、2つの酵素:2−オキソグルタル酸カルボキシラーゼおよびオキサロコハク酸レダクターゼによって触媒される。2−オキソグルタル酸カルボキシラーゼ(EC6.4.1.7)は、アルファ−ケトグルタレートのオキサロスクシネートへのATP依存型カルボキシル化を触媒する(AoshimaおよびIgarashi, Mol. Microbiol. 62巻、748〜759頁(2006年))。この酵素は、2つのサブユニットからなる大型の複合体である。大(A)サブユニットのビオチン化が、酵素機能に必要である(Aoshimaら、Mol. Microbiol.51巻、791〜798頁(2004年))。オキサロコハク酸レダクターゼ(EC1.1.1.−)は、オキサロスクシネートのD−トレオ−イソシトレートへのNAD依存型転換を触媒する。この酵素は、H.thermophilusにおけるicdによってコードされるホモダイマーである。この酵素の動態学パラメータは、この酵素が、他の生物体におけるイソクエン酸デヒドロゲナーゼ酵素とは対照的に、in vivoで、還元的カルボキシル化方向でのみ作用することを示す(AoshimaおよびIgarashi, J. Bacteriol.190巻、2050〜2055頁(2008年))。配列相同性に基づき、遺伝子候補は、Thiobacillus denitrificansおよびThermocrinis albusにおいても見出されている。
アコニターゼ(EC4.2.1.3)は、中間体シス−アコニテートを介したシトレートおよびイソシトレートの可逆的異性体化を触媒する、鉄−硫黄含有タンパク質である。2つのアコニターゼ酵素が、E.coliゲノムのacnAおよびacnBによりコードされている。AcnBは、主な異化酵素であり、一方、AcnAは、より安定的であり、酸化ストレスまたは酸ストレスの条件下で活性であると見られる(Cunninghamら、Microbiology 143巻(Pt12)、3795〜3805頁(1997年))。Salmonella typhimuriumにおけるアコニターゼの2つのアイソザイムは、acnAおよびacnBによってコードされる(HorswillおよびEscalante−Semerena、Biochemistry 40巻、4703〜4713頁(2001年))。S.cerevisiaeのアコニターゼ(ACO1によってコードされる)は、ミトコンドリア(ここで、それはTCA回路に関わる)(Gangloffら、Mol. Cell. Biol.10巻、3551〜3561頁(1990年))およびサイトゾル(ここで、それはグリオキシレートシャントに関わる)(Regev−Rudzkiら、Mol. Biol. Cell.16巻、4163〜4171頁(2005年))に局在する。
ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ(PFOR)はピルベートの可逆的酸化を触媒して、アセチルCoAを形成する。Desulfovibrio africanus由来のPFORは、E.coliにおいてクローニングされ、発現されて、酸素の存在下で数日間安定的である活性型組換え酵素を生じている(Pieulleら、J. Bacteriol.179巻、5684〜5692頁(1997年))。酸素安定性は、PFORにおいて比較的まれであり、D.africanus酵素のポリペプチド鎖における60残基の延長によって付与されると考えられる。この酵素の2つのシステイン残基はジスルフィド結合を形成し、このジスルフィド結合が酸素の形態の不活性化に対してこの酵素を保護する(prtotect)。このジスルフィド結合および酸素の存在下での安定性は、他のDesulfovibrio種においても見出されている(Vitaら、Biochemistry、47巻、957〜64頁(2008年))。M.thermoaceticaのPFORもまた、十分に特徴付けされていて(MenonおよびRagsdale、Biochemistry 36巻、8484〜8494頁(1997年))、独立栄養性増殖の間のピルベート合成の方向において高い活性を有することが示された(FurduiおよびRagsdale、J. Biol. Chem.275巻、28494〜28499頁(2000年))。さらに、E.coliは、M.thermoaceticaのPFORに対して51%同一であるタンパク質をコードする、特徴付けされていないオープンリーディングフレームydbKを有する。E.coliにおけるピルビン酸オキシドレダクターゼ活性についての証拠は、記載されている(Blaschkowskiら、Eur. J. Biochem.123巻、563〜569頁(1982年))。PFORは、Rhodobacter capsulatas(YakuninおよびHallenbeck、Biochimica et Biophysica Acta 1409巻(1998年)39〜49頁(1998年))およびCholoboum tepidum(Eisenら、PNAS 99巻(14号)、9509〜14頁(2002年))を含む他の生物体においても記載されている。H.thermophilus由来の5サブユニットのPFOR(porEDABGによってコードされている)は、E.coli内にクローニングされ、脱カルボキシル化方向およびCO同化方向の両方において機能することが示された(Ikedaら、2006;Yamamotoら、Extremophiles 14巻、79〜85頁(2010年))。ホモログもまた、C.carboxidivorans P7に存在する。いくつかのさらなるPFOR酵素が、以下の総説に記載される(Ragsdale, S.W.、Chem. Rev.103巻、2333〜2346頁(2003年))。最終的に、フラボドキシンレダクターゼ(例えば、Helicobacter pyloriまたはCampylobacter jejuni由来のfqrB)(St Mauriceら、J. Bacteriol.189巻、4764〜4773頁(2007年))またはRnf型タンパク質(Seedorfら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.105巻、2128〜2133頁(2008年);およびHerrmann、J. Bacteriol 190巻、784〜791頁(2008年))は、PFORによって生成された還元型フェレドキシンからNADHまたはNADPHを生成する手段を提供する。これらのタンパク質は、以下に同定される。
ピルベートのアセチルCoAへの転換は、いくつかの他の酵素またはそれらの組合せによって触媒され得る。例えば、ピルビン酸デヒドロゲナーゼは、NADの1分子のNADHへの同時の還元を伴って、ピルベートをアセチルCoAに変換し得る。これは、ピルベートのアシル化酸化的脱カルボキシル化(acylating oxidative decarboxylation)をもたらす一連の部分的反応を触媒する、多酵素複合体である。この酵素は、3つのサブユニット:ピルビン酸デカルボキシラーゼ(E1)、ジヒドロリポアミドアシルトランスフェラーゼ(E2)およびジヒドロリポアミドデヒドロゲナーゼ(E3)からなる。この酵素は、E.coliおよびS.cerevisiaeを含むいくつかの生物体において天然に存在する。E.coli酵素において、E1構成要素における特定の残基が、基質特異性を担う(Bisswanger, H.、J. Biol. Chem.256巻、815〜82頁(1981年);Bremer, J.、Eur. J. Biochem.8巻、535〜540頁(1969年);Gongら、J. Biol. Chem.275巻、13645〜13653頁(2000年))。酵素工学的操作の試みは、嫌気性条件下でのE.coliのPDH酵素活性を改善させてきた(Kimら、J. Bacteriol.190巻、3851〜3858頁(2008年);Kimら、Appl. Environ. Microbiol.73巻、1766〜1771頁(2007年);Zhouら、Biotechnol. Lett.30巻、335〜342頁(2008年))。E.coliのPDHとは対照的に、B.subtilis複合体は、嫌気性条件下で活性であり、増殖のために必要とされる(Nakanoら、J. Bacteriol.179巻、6749〜6755頁(1997年))。Klebsiella pneumoniaeのPDH(グリセロールでの増殖の過程で特徴付けされる)もまた、嫌気性条件下で活性である(5)。ウシ腎臓由来の酵素複合体の結晶構造(18)およびAzotobacter vinelandii由来のE2触媒ドメインの結晶構造が、利用可能である(4)。この転換を触媒し得るなお別の酵素は、ピルビン酸ギ酸リアーゼである。この酵素は、ピルベートおよびCoAのアセチルCoAおよびホルメートへの転換を触媒する。ピルビン酸ギ酸リアーゼは、嫌気性酸化還元バランスをモジュレートすることを助けるために使用される、原核生物において共通の酵素である。例示的な酵素は、Escherichia coli(pflBによってコードされる)(KnappeおよびSawers、FEMS.Microbiol Rev.6巻、383〜398頁(1990年))、Lactococcus lactis(Melchiorsenら、Appl Microbiol Biotechnol 58巻、338〜344頁(2002年))、およびStreptococcus mutans(Takahashi−Abbeら、Oral.Microbiol Immunol.18巻、293〜297頁(2003年))において見出すことができる。E.coliは、tdcEによってコードされるさらなるピルビン酸ギ酸リアーゼを有し、これは、ピルベートまたは2−オキソブタノエートの、アセチルCoAまたはプロピオニルCoAへの転換をそれぞれ触媒する(Hesslingerら、Mol. Microbiol 27巻、477〜492頁(1998年))。E.coli由来のpflBおよびtdcEの両方は、ピルビン酸ギ酸リアーゼ活性化酵素(pflAによってコードされる)の存在を必要とする。さらに、E.coliにおいてyfiDによってコードされる短タンパク質は、酸素で切断したピルビン酸ギ酸リアーゼに会合し、そしてこれに対する活性を回復し得る(Veyら、Proc.Natl. Acad. Sci. U.S.A.105巻、16137〜16141頁(2008年))。E.coli由来のpflAおよびpflBは、WO/2008/080124]において記載されるように、ブタノール産生のためにサイトゾルのアセチルCoAを増大するための手段として、S.cerevisiaeにおいて発現されたことに留意されたい。さらなるピルビン酸ギ酸リアーゼおよび活性化酵素候補(それぞれpflおよびactによってコードされる)は、Clostridium pasteurianumに見出される(Weidnerら、 J Bacteriol.178巻、2440〜2444頁(1996年))。
さらに、ピルベートをアセチルCoAへ転換するために、異なる酵素が組み合わされて使用され得る。例えば、S.cerevisiaeでは、まず、ピルベートを脱カルボキシル化してアセトアルデヒドを形成し;後者をアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼによってアセテートに酸化し、その後、アセチルCoAシンテターゼによって活性化して、アセチルCoAを形成することにより、サイトゾルにおいてアセチルCoAが得られる。アセチルCoAシンテターゼは、E.coli(Kumariら、J. Bacteriol.177巻、2878〜2886頁(1995年))、Salmonella enterica(Staraiら、Microbiology 151巻、3793〜3801頁(2005年);Staraiら、J. Biol. Chem.280巻、26200〜26205頁(2005年))およびMoorella thermoacetica(既に記載される)を含むいくつかの他の生物体において天然の酵素である。あるいは、酢酸キナーゼおよびホスホトランスアセチラーゼによってアセテートが活性化され、アセチルCoAを形成することができる。酢酸キナーゼは、まず、ATP分子の使用を伴って、アセテートをアセチルホスフェートに転換する。次いで、アセチルホスフェートおよびCoAは、ホスホトランスアセチラーゼによって1つのホスフェート(one phosphate)を放出して、アセチルCoAに転換される。酢酸キナーゼおよびホスホトランスアセチラーゼ(phosphotransacetlyase)の両方は、いくつかのClostridiaおよびMethanosarcina thermophilaにおいて、十分に研究された酵素である。
ピルベートをアセチルCoAに転換するなお別の方法は、ピルビン酸オキシダーゼを介する。ピルビン酸オキシダーゼは、電子受容体としてユビキノンを用いて、ピルベートをアセテートに転換する。E.coliにおいて、この活性は、poxBによってコードされる。PoxBは、S.cerevisiaeおよびZymomonas mobilisのピルビン酸デカルボキシラーゼに対して類似性を有する。この酵素は、チアミンピロホスフェート補因子(KolandおよびGennis、Biochemistry 21巻、4438〜4442頁(1982年));O’Brienら、Biochemistry 16巻、3105〜3109頁(1977年);O’BrienおよびGennis, J. Biol. Chem.255巻、3302〜3307頁(1980年))ならびにフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)補因子を有する。次いで、アセテートは、上記したように、アセチルCoAシンテターゼまたは酢酸キナーゼおよびホスホトランスアセチラーゼのいずれかによってアセチルCoAへと転換され得る。これらの酵素のいくつかは、アセチルCoAからピルベートへの逆反応もまた触媒し得る。
NADHまたはNADPHの形態の還元当量を使用する酵素について、これらの還元型伝達体は、還元型フェレドキシンから電子を転移することによって、生成され得る。2つの酵素は、還元型フェレドキシンからNAD(P)への電子の可逆的転移を触媒する、フェレドキシン:NADオキシドレダクターゼ(EC1.18.1.3)およびフェレドキシン:NADPオキシドレダクターゼ(FNR、EC1.18.1.2)である。フェレドキシン:NADPオキシドレダクターゼ(FNR、EC1.18.1.2)は、NADPHからフェレドキシンまたはフラボドキシンなどの低電位受容体への電子の可逆的転移を容易にする、非共有結合FAD補因子を有する(Blaschkowskiら、Eur. J. Biochem.123巻、563〜569頁(1982年);Fujiiら、1977年)。Helicobacter pylori FNR(HP1164(fqrB)によってコードされる)は、ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ(PFOR)の活性とカップリングされて、NADPHのピルベート依存型生成をもたらす(Stら、2007年)。類似の酵素は、Campylobacter jejuniに見出される(Stら、2007年)。フェレドキシン:NADPオキシドレダクターゼ酵素は、E.coliゲノムにおいて、fprによってコードされる(Bianchiら、1993年)。フェレドキシン:NADオキシドレダクターゼは、NADからNADHを生成するために、還元型フェレドキシンを利用する。E.coliを含むいくつかの生物体において、この酵素は、多機能性ジオキシゲナーゼ酵素複合体の構成要素である。E.coliのフェレドキシン:NADオキシドレダクターゼ(hcaDによってコードされる)は、3−フェニルプロピオネート(3−phenylproppionate)ジオキシゲナーゼ系の構成要素であり、芳香族酸利用に関与する(Diazら、1998年)。NADH:フェレドキシンレダクターゼ活性は、Hydrogenobacter thermophilus株TK−6の細胞抽出物において検出されたが、この活性を有する遺伝子は、未だ示されていない(Yoonら、2006年)。最終的に、エネルギー保存膜結合Rnf型タンパク質(Seedorfら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.105巻、2128〜2133頁(2008年);Herrmannら、J. Bacteriol.190巻、784〜791頁(2008年))は、還元型フェレドキシンからNADHまたはNADPHを生成する手段を提供する。さらなるフェレドキシン:NAD(P)オキシドレダクターゼは、Clostridium carboxydivorans P7において注解される。
フェレドキシンは、低い還元電位を有する細胞内電子伝達体として機能する1つ以上の鉄−硫黄クラスターを含む小さい酸性タンパク質である。還元型フェレドキシンは、Fe依存型酵素(例えば、フェレドキシンNADPオキシドレダクターゼ、ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ(PFOR)および2−オキソグルタル酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ(OFOR))に対して電子を供与する。H.thermophilus遺伝子fdx1は、OFORおよびPFORによる2−オキソグルタレートおよびピルベートの可逆的カルボキシル化にそれぞれ必要である[4Fe−4S]型フェレドキシンをコードする(Yamamotoら、Extremophiles 14巻、79〜85頁(2010年))。Sulfolobus solfataricus 2−オキソ酸:フェレドキシンレダクターゼに関連するフェレドキシンは、モノマージクラスター[3Fe−4S][4Fe−4S]型フェレドキシンである(Parkら、2006年)。このタンパク質に関連する遺伝子は、完全に配列決定されていないが、N末端ドメインは、S.acidocaldarius由来のzfxフェレドキシンに対し93%の相同性を有する。E.coliゲノムは、生理的機能が不明である可溶性フェレドキシン、fdxをコードする。いくつかの証拠は、このタンパク質が、鉄−硫黄クラスター集合において機能し得ることを示す(TakahashiおよびNakamura、1999年)。さらなるフェレドキシンタンパク質は、Helicobacter pylori(Mukhopadhyayら、2003年)およびCampylobacter jejuni(van Vlietら、2001年)において特徴付けされている。Clostridium pasteurianum由来の2Fe−2Sフェレドキシンは、E.coliにおいてクローニングされ、そして発現されている(FujinagaおよびMeyer、Biochemical and Biophysical Research Communications、192巻(3号)、(1993年))。Moorella thermoacetica、Clostridium carboxidivorans P7およびRhodospirillum rubrumなどの酢酸産生性細菌は、以下の列挙されるいくつかのフェレドキシンをコードすることが予測される。
スクシニルCoAトランスフェラーゼは、スクシニルCoAのスクシネートへの転換を触媒し、その一方で、CoA部分をCoA受容体分子に転移する。多くのトランスフェラーゼは、広い特異性を有し、以下のように多様なCoA受容体を利用し得る:とりわけ、アセテート、スクシネート、プロピオネート、ブチレート、2−メチルアセトアセテート、3−ケトヘキサノエート、3−ケトペンタノエート、バレレート、クロトネート、3−メルカプトプロピオネート、プロピオネート、ビニルアセテート、およびブチレート。
スクシネートのスクシニルCoAへの転換は、ATPまたはGTPの直接消費を必要としないトランスフェラーゼによって行われ得る。この型の反応は、多くの生物体に共通である。スクシネートのスクシニルCoAへの転換はまた、スクシニルCoA:アセチルCoAトランスフェラーゼによっても触媒され得る。Clostridium kluyveriのcat1の遺伝子産物は、スクシニルCoA:アセチルCoAトランスフェラーゼ活性を示すことが示されている(SohlingおよびGottschalk、J. Bacteriol. 178巻、871〜880頁(1996年))。加えて、この活性は、Trichomonas vaginalis(van Grinsvenら、2008年)およびTrypanosoma brucei(Riviereら、2004年)に存在する。Acetobacter aceti由来のスクシニルCoA:酢酸CoAトランスフェラーゼ(aarCによってコードされる)は、バリアントTCA回路におけるスクシニルCoAシンテターゼを置き換える(Mullinsら、2008年)。類似のスクシニルCoAトランスフェラーゼ活性はまた、Trichomonas vaginalis(van Grinsvenら、2008年)、Trypanosoma brucei(Riviereら、2004年)およびClostridium kluyveri(SohlingおよびGottschalk、1996年c)に存在する。Pseudomonas putidaにおけるpcaIおよびpcaJによってコードされるベータ−ケトアジピン酸:スクシニルCoAトランスフェラーゼもまた、なお別の候補である(Kaschabekら、2002年)。上記のタンパク質は、以下に同定される。
スクシネートをスクシニルCoAに転換し、その一方で3−ケトアシルCoAを3−ケト酸に転換するさらなる例示的なトランスフェラーゼは、スクシニルCoA:3:ケト酸CoAトランスフェラーゼ(EC2.8.3.5)である。例示的なスクシニルCoA:3:ケト酸CoAトランスフェラーゼは、Helicobacter pylori(Corthesy−Theulazら、1997年)、Bacillus subtilisおよびHomo sapiens(Fukaoら、2000年;Tanakaら、2002年)に存在する。上記のタンパク質は、以下に同定される。
スクシニルCoA:3:ケト酸CoAトランスフェラーゼによってスクシネートをスクシニルCoAに転換することは、3−ケトアシルCoA(アセトアセチルCoAなど)の3−ケト酸(アセトアセテートなど)への同時の転換を必要とする。3−ケト酸の3−ケトアシルCoAへの戻し転換は、アセトアセチルCoA:酢酸:CoAトランスフェラーゼによって触媒され得る。アセトアセチルCoA:酢酸:CoAトランスフェラーゼは、アセトアセチルCoAおよびアセテートをアセトアセテートおよびアセチルCoAへ転換し、またはその逆の転換を行う。例示的な酵素としては、E.coli由来のatoAD(Hanaiら、Appl Environ Microbiol 73巻、7814〜7818頁(2007年)、C.acetobutylicum由来のctfAB(Jojimaら、Appl Microbiol Biotechnol 77巻、1219〜1224頁(2008年)およびClostridium saccharoperbutylacetonicum由来のctfAB(Kosakaら、Biosci.Biotechnol Biochem.71巻、58〜68頁(2007年))の遺伝子産物が挙げられ、以下に示される。
なお別の可能性のあるCoA受容体は、ベンジルスクシネートである。スクシニルCoA:(R)−ベンジルコハク酸CoAトランスフェラーゼは、Thauera aromaticaなどの生物におけるトルエンについての嫌気性分解経路の一部分として機能する(Leutweinおよび Heider、J. Bact.183巻(14号)4288〜4295頁(2001年))。ホモログは、Azoarcus種T、Aromatoleum aromaticum EbN1、およびGeobacter metallireducens GS−15に見出され得る。上記のタンパク質は、以下に同定される。
さらに、ygfHは、E.coliにおいてプロピオニルCoA:コハク酸CoAトランスフェラーゼをコードする(Hallerら、Biochemistry、39巻(16号)4622〜4629頁)。密接なホモログは、例えば、Citrobacter youngae ATCC 29220、Salmonella enterica亜種arizonae serovarおよびYersinia intermedia ATCC 29909に見出され得る。上記のタンパク質は、以下に同定される。
クエン酸リアーゼ(EC4.1.3.6)は、シトレートのアセテートおよびオキサロアセテートへの切断をもたらす一連の反応を触媒する。この酵素は、嫌気性条件下で活性であり、3つのサブユニット:アシルキャリアタンパク質(ACP、ガンマ)、ACPトランスフェラーゼ(アルファ)およびアシルリアーゼ(ベータ)からなる。酵素活性化は、稀な補欠分子族2’−(5”−ホスホリボシル)−3−‘−デホスホCoA(アセチルCoAと構造が類似している)の共有結合およびアセチル化を使用する。アシル化は、CitC、クエン酸リアーゼシンテターゼによって触媒される。2つのさらなるタンパク質、CitGおよびCitXは、アポ酵素を活性型ホロ酵素に転換するために使用される(Schneiderら、Biochemistry 39巻、9438〜9450頁(2000年))。野生型E.coliは、クエン酸リアーゼ活性を有さない;しかし、モリブデン補因子合成を欠損する変異体は、活性型クエン酸リアーゼを有する(Clark, FEMS Microbiol. Lett.55巻、245〜249頁(1990年))。E.coliの酵素は、citEFDによってコードされ、クエン酸リアーゼシンテターゼは、citCによってコードされる(NilekaniおよびSivaRaman、Biochemistry 22巻、4657〜4663頁(1983年))。Leuconostoc mesenteroidesクエン酸リアーゼは、E.coliにおいてクローニングされ、特徴付けされ、かつ発現されている(Bekalら、J. Bacteriol.180巻、647〜654頁(1998年))。クエン酸リアーゼ酵素はまた、シトレートを炭素およびエネルギーの供給源として利用する腸内細菌(Salmonella typhimuriumおよびKlebsiella pneumoniaeを含む)において同定されている(Bott, Arch. Microbiol.167巻、78〜88頁(1997年);BottおよびDimroth, Mol. Microbiol.14巻、347〜356頁(1994年))。上記のタンパク質は、以下に表にまとめられる。
酢酸キナーゼ(EC2.7.2.1)は、アセテートのアセチルホスフェートへの可逆的ATP依存型リン酸化を触媒する。例示的な酢酸キナーゼ酵素は、E.coli、Clostridium acetobutylicumおよびMethanosarcina thermophilaを含む多くの生物において特徴付けされている(Ingram−Smithら、J. Bacteriol.187巻、2386〜2394頁(2005年);FoxおよびRoseman、J. Biol. Chem.261巻、13487〜13497頁(1986年);Winzerら、Microbioloy 143巻(Pt10)、3279〜3286頁(1997年))。酢酸キナーゼ活性はまた、E.coli purTの遺伝子産物において実証されている(Marolewskiら、Biochemistry 33巻、2531〜2537頁(1994年)。いくつかの酪酸キナーゼ酵素(EC2.7.2.7)、例えばClostridium acetobutylicum由来のbuk1およびbuk2もまた、アセテートを基質として受容する(Hartmanis, M.G.、J. Biol. Chem.262巻、617〜621頁(1987年))。
アセチルホスフェートからのアセチルCoAの形成は、ホスホトランスアセチラーゼ(EC2.3.1.8)によって触媒される。E.coli由来のpta遺伝子は、アセチルCoAをアセチルホスフェートへ可逆的に転換する酵素をコードする(Suzuki, T.、Biochim. Biophys. Acta 191巻、559〜569頁(969))。さらなるアセチルトランスフェラーゼ酵素は、Bacillus subtilis(RadoおよびHoch、Biochim. Biophys. Acta 321巻、114〜125頁(1973年))、Clostridium kluyveri(Stadtman, E.、Methods Enzymol. 1巻、5896〜599頁(1955年))およびThermotoga maritima(Bockら、J. Bacteriol. 181巻、1861〜1867頁(1999年))において特徴付けされている。この反応はまた、Clostridium acetobutylicum由来のptb遺伝子産物を含むいくつかのホスホトランスブチリラーゼ(phosphotranbutyrylase)酵素(EC2.3.1.19)によって触媒される(Wiesenbornら、App. Environ. Microbiol.55巻、317〜322頁(1989年);Walterら、Gene 134巻、107〜111頁(1993年))。さらなるptb遺伝子は、ブチレート産生細菌L2−50(Louisら、J. Bacteriol.186巻、2099〜2106頁(2004年))およびBacillus megaterium(Vazquezら、Curr. Microbiol.42巻、345〜349頁(2001年))に見出される。
アセテートのアセチルCoAへのアシル化は、アセチルCoAシンテターゼ活性を有する酵素によって触媒される。この反応を触媒する2つの酵素は、AMP形成アセチルCoAシンテターゼ(EC6.2.1.1)およびADP形成アセチルCoAシンテターゼ(EC6.2.1.13)である。AMP形成アセチルCoAシンテターゼ(ACS)は、アセテートのアセチルCoAへの活性化のための、主要な酵素である。例示的なACS酵素は、E.coli(Brownら、J. Gen. Microbiol. 102巻、327〜336頁(1977年))、Ralstonia eutropha(PriefertおよびSteinbuchel、J. Bacteriol.174巻、6590〜6599頁(1992年))、Methanothermobacter thermautotrophicus(Ingram−SmithおよびSmith、Archaea 2巻、95〜107頁(2007年))、Salmonella enterica(Gulickら、Biochemistry 42巻、2866〜2873頁(2003年))およびSaccharomyces cerevisiae(JoglおよびTong、Biochemistry 43巻、1425〜1431頁(2004年))に見出される。ADP形成アセチルCoAシンテターゼは、一般に広い基質範囲を有する可逆的酵素である(MusfeldtおよびSchonheit、J. Bacteriol. 184巻、636〜644頁(2002年))。ADP形成アセチルCoAシンテターゼの2つのアイソザイムは、Archaeoglobus fulgidusゲノムにおいて、AF1211およびAF1983によってコードされる(MusfeldtおよびSchonheit, 前出(2002年))。Haloarcula marismortui由来の酵素(スクシニルCoAシンテターゼとして注解される)もまた、アセテートを基質として受け入れ、この酵素の可逆性は、実証された(BrasenおよびSchonheit、Arch. Microbiol. 182巻、277〜287頁(2004年))。超好熱性クレン古細菌Pyrobaculum aerophilum由来のPAE3250によってコードされるACDは、全ての特徴付けされたACDの最も広い基質範囲を示し、アセテート、イソブチリルCoA(好ましい基質)およびフェニルアセチルCoAと反応した(BrasenおよびSchonheit、前出(2004年))。定向進化または工学的操作は、この酵素が宿主生物体の生理学的温度において作用するように、この酵素を改変するために使用され得る。A.fulgidus、H.marismortuiおよびP.aerophilum由来の酵素は、全て、E.coliにおいてクローニングされ、機能的に発現され、そして特徴付けされている(BrasenおよびSchonheit、前出(2004年);MusfeldtおよびSchonheit、前出(2002年))。さらなる候補としては、E.coliにおけるsucCDによってコードされるスクシニルCoAシンテターゼ(Buckら、Biochemistry 24巻、6245〜6252頁(1985年))およびPseudomonas putida由来のアシルCoAリガーゼ(Fernandez−Valverdeら、Appl. Environ. Microbiol. 59巻、1149〜1154頁(1993年))が挙げられる。上記のタンパク質は、以下に表にまとめられる。
還元型発酵産物(例えば、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレート)を合成する微生物細胞の基質のC−mol当たりの産物の収率は、炭水化物フィードストックにおける不十分な還元当量によって限定される。還元当量、または電子は、一酸化炭素デヒドロゲナーゼ(CODH)およびヒドロゲナーゼ酵素を用いて合成ガス構成要素(COおよびHなど)から、それぞれ抽出され得る。次いで、還元当量は、酸化型フェレドキシン、酸化型キノン、酸化型シトクロム、NAD(P)+、水または過酸化水素などの受容体に渡され、それぞれ、還元型フェレドキシン、還元型キノン、還元型シトクロム、NAD(P)H、Hまたは水を形成する。還元型フェレドキシンおよびNAD(P)Hは、種々のWood−Ljungdahl経路および還元的TCA回路の酵素のための酸化還元伝達体として寄与し得るので、特に有用である。
COおよび/またはH由来のさらなる酸化還元の利用可能性により、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートなどの還元産物の収率が改善される。グルコースからメタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートを産生する最大理論収率は、好気性条件下で本明細書中で開示される経路を介して、グルコース1モル当たり1.33モルのMAAである:
12→1.33C+0.67CO+2H
糖およびシンガスのフィードストックの両方が使用可能である場合、シンガスの構成要素COおよびHは、ヒドロゲナーゼおよびCOデヒドロゲナーゼを使用することによって、還元当量を生成するために使用され得る。シンガス構成要素から生成される還元当量は、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートの産生経路へグルコースを向けるために利用される。理論的には、グルコース中の全ての炭素は、転換され、それにより、本明細書中で記載されたとおりの好気性条件下または嫌気性条件下で、グルコース1モル当たりの2molのメタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートでの、グルコースからメタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートを産生する最大の理論的収率をもたらす。
1C12+2CO+6H→2C+6H
または
1C12+2CO+4H→2C+4HO。
上の例において示された通り、シンガスが糖ベースのフィードストックまたは他の炭素基質と組み合わせられる組合せフィードストック戦略は、理論的収率を多いに改善し得る。この共栄養補給(co−feeding)アプローチにおいて、シンガスの構成要素であるHおよびCOは、ヒドロゲナーゼおよびCOデヒドロゲナーゼによって利用されて、還元当量を生成することができ、これは、糖または他の炭素基質由来の炭素が最大に保存され、理論的収率が改善される、化学的産生経路に力を与えるために使用され得る。グルコースまたは糖からのメタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートの産生の場合、理論的収率は、グルコース1mol当たり1.33molのメタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートから、グルコース1mol当たり2molのメタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートにまで改善する。このような改善は、環境的および経済的な利益、ならびに持続可能な化学的産生の大幅な増大をもたらす。
本明細書中で、シンガス(synags)構成要素から酸化還元を引き出すことのために使用される酵素および対応する遺伝子が、記載される。CODHは、COとCOとを電子の消費または獲得によって相互転換する可逆的酵素である。ACS/CODH複合体におけるCODHの天然の生理学的役割は、アセチルCoAシンターゼによるアセチルCoAへの組込みのためにCOをCOへ転換することである。それでも、このようなCODH酵素は、このような酵素の可逆的性質ゆえに、COから還元当量を引き出すために好適である。ACSの非存在下でこのようなCODH酵素を発現することは、これらが、その天然の生理学的な役割(すなわち、CO酸化)と反対の方向に作用することを可能にする。
M.thermoacetica、C.hydrogenoformans、C.carboxidivorans P7およびいくつかの他の生物体において、さらなるCODHコード遺伝子が、ACS/CODHオペロンの外に位置する。これらの酵素は、一酸化炭素の二酸化炭素への転換から、電子(または還元当量)を引き出すための手段を提供する。M.thermoacetica遺伝子(Genbank受託番号:YP_430813)は、オペロンにおいてそれ自体で発現され、「ピンポン」反応でフェレドキシンなどの外部媒介因子へ、COから電子を転移すると考えられている。次いで、この還元型媒介因子は、他の還元型ニコチンアミド(nicolinamide)アデニンジヌクレオチドホスフェート(NAD(P)H)伝達体もしくはフェレドキシン依存型細胞性プロセスにカップリングする(Ragsdale、Annals of the New York Academy of Sciences 1125巻、129〜136頁(2008年))。C. hydrogenoformans CODH−IIおよび隣接するタンパク質CooFをコードする遺伝子は、クローニングされ、配列決定された(GonzalezおよびRobb、FEMS Microbiol Lett.191巻、243〜247頁(2000年))。得られた複合体は、膜結合型であったが、CODH−IIの細胞質画分は、NADPHの形成を触媒することが示され、これにより同化の役割が示唆された(Svetlitchnyiら、J Bacteriol.183巻、5134〜5144頁(2001年))。CODH−IIの結晶構造もまた、利用可能である(Dobbekら、Science 293巻、1281〜1285頁(2001年))。類似のACS非含有CODH酵素は、Geobacter metallireducens GS−15、Chlorobium phaeobacteroides DSM 266、Clostridium cellulolyticum H10、Desulfovibrio desulfuricans亜種desulfuricans株 ATCC 27774、Pelobacter carbinolicus DSM 2380およびCampylobacter curvus 525.92を含む一群の生物体に見出され得る。
いくつかの場合、ヒドロゲナーゼコード遺伝子は、CODHの隣に位置する。Rhodospirillum rubrumにおいて、コードされたCODH/ヒドロゲナーゼタンパク質は、プロトン勾配の形態のエネルギーがCOおよびHOからCOおよびHへの転換から生成される部位であることが示されている、膜結合型酵素複合体を形成する(Foxら、J Bacteriol.178巻、6200〜6208頁(1996年))。C.hydrogenoformansのCODH−Iおよびその隣接遺伝子は、R.rubrum CODH/ヒドロゲナーゼ遺伝子クラスターに対するその類似性に基づく類似の機能的役割を触媒すると提唱されている(Wuら、PLoS Genet.1巻、e65(2005年))。C.hydrogenoformans CODH−Iはまた、電極に連結した場合、激しいCO酸化活性およびCO還元活性を示すことが示された(Parkinら、J Am.Chem.Soc. 129巻、10328〜10329頁(2007年))。例示的なCODH遺伝子およびヒドロゲナーゼ遺伝子のタンパク質配列は、以下のGenBank受託番号によって同定され得る。
4つまでのヒドロゲナーゼをコードする複数の遺伝子が、E.coliおよび他の腸内細菌に本来備わっている(Sawers, G.、Antonie Van Leeuwenhoek 66巻、57〜88頁(1994年);Sawersら、J Bacteriol.164巻、1324〜1331頁(1985年);SawersおよびBoxer、Eur.J Biochem.156巻、265〜275頁(1986年);Sawersら、J Bacteriol.168巻、398〜404頁(1986年))。酵素活性の多様性を考慮すると、E.coliまたは他の宿主生物体は、入ってくる分子状水素を分け、対応する受容体を還元する十分なヒドロゲナーゼ活性を提供し得る。E.coliは、2種の取り込みヒドロゲナーゼであるHyd−1およびHyd−2を有し、これらはそれぞれ、hyaABCDEFおよびhybOABCDEFGの遺伝子クラスターにコードされる(Lukeyら、How E. coli is equipped to oxidize hydrogen under different redox conditions、J Biol Chem、2009年11月16日オンライン公開)。Hyd−1は、酸素耐性であり、不可逆的であり、そしてhyaCシトクロムを介したキノン還元とカップリングしている。Hyd−2は、Oに感受性であり、可逆的であり、ペリプラズムのフェレドキシンhybAに電子を転移し、次に、hybB内在性膜タンパク質を介してキノンを還元する。還元型キノンは、TCA回路の還元分枝においてフマル酸レダクターゼのための電子の供給源として寄与する。還元型フェレドキシンは、NAD(P)H:フェレドキシンオキシドレダクターゼなどの酵素によって使用され、NADPHまたはNADHを生成し得る。これらは、あるいは、ピルビン酸フェレドキシンオキシドレダクターゼ、AKGフェレドキシンオキシドレダクターゼおよび5,10−メチレン−H4葉酸レダクターゼなどの反応のための電子供与体として使用され得る。
E.coliの水素−リアーゼ系は、フェレドキシンを受容体として用いる膜結合型酵素複合体であるヒドロゲナーゼ3、ならびにやはりフェレドキシン受容体を用いるヒドロゲナーゼ4を含む。ヒドロゲナーゼ3および4は、それぞれ、hycおよびhyfの遺伝子クラスターによってコードされる。ヒドロゲナーゼ3は、可逆的酵素であることが示されている(Maedaら、Appl Microbiol Biotechnol 76巻(5号)、1035〜42頁(2007年))。E.coliにおけるヒドロゲナーゼ活性はまた、hyp遺伝子(その対応するタンパク質がヒドロゲナーゼ複合体の集合に関与する)の発現にも依存する(Jacobiら、Arch.Microbiol 158巻、444〜451頁(1992年);Rangarajanら、J. Bacteriol.190巻、1447〜1458頁(2008年))。
M.thermoaceticaヒドロゲナーゼは、充分な内因性ヒドロゲナーゼ活性を有さない宿主にとって、好適である。M.thermoaceticaは、排他的炭素供給源としてのCOによって増殖し得、このことは、還元当量は、Hから引き出されて、Wood−Ljungdahl経路を介したアセチルCoA合成を可能にすることを示している(Drake, H. L.、J. Bacteriol.150巻、702〜709頁(1982年);DrakeおよびDaniel、Res. Microbiol.155巻、869〜883頁(2004年);KellumおよびDrake、J. Bacteriol.160巻、466〜469頁(1984年))(図12および13を参照)。M.thermoaceticaは、E.coli由来のいくつかのhyp遺伝子、hyc遺伝子およびhyf遺伝子に対するホモログを有する。これらの遺伝子によってコードされるタンパク質配列は、以下のGenBank受託番号によって同定されている。
遺伝子がE.coli hyp遺伝子に対し相同である、M.thermoaceticaにおけるタンパク質は、以下に示される。
E.coliヒドロゲナーゼ3および/または4タンパク質に対し相同である、M.thermoaceticaにおけるタンパク質が、以下に列挙される。
さらに、ヒドロゲナーゼ機能性をコードするいくつかの遺伝子クラスターが、M.thermoaceticaに存在し、その対応するタンパク質配列は、以下に提示される。
Ralstonia eutropha H16は、エネルギー供給源として水素を、末端電子受容体としての酸素と共に使用する。その膜結合型取り込み[NiFe]ヒドロゲナーゼは、「O2耐性」ヒドロゲナーゼ(Cracknellら、Proc Nat Acad Sci、106巻(49号)20681〜20686頁(2009年))であり、ペリプラズムの方向に向いており、b型シトクロムを介して呼吸鎖に接続される(SchinkおよびSchlegel、Biochim. Biophys. Acta、567巻、315〜324頁(1979年);Bernhardら、Eur. J. Biochem.248巻、179〜186頁(1997年))。R.eutrophaもまた、HoxオペロンによってコードされるO耐性可溶性ヒドロゲナーゼを含み、これは、細胞質性であり、水素を消費してNAD+を直接還元する(SchneiderおよびSchlegel、Biochim. Biophys. Acta 452巻、66〜80頁(1976年);Burgdorf、J. Bact.187巻(9号)3122〜3132頁(2005年))。可溶性ヒドロゲナーゼ酵素は、さらに、以下を含むいくつかの他の生物体に存在する:Geobacter sulfurreducens(Coppi、Microbiology 151巻、1239〜1254頁(2005年))、Synechocystis株PCC6803(Germer、J. Biol. Chem.、284巻(52号)、36462〜36472頁(2009年))、およびThiocapsa roseopersicina(Rakhely、Appl. Environ. Microbiol.70巻(2号)722〜728頁(2004年))。Synechocystis酵素は、水素からNADPHを生成することが可能である。Synechocystis株PCC6803由来のHoxオペロンおよびNostoc種PCC7120由来のHypオペロンによってコードされるアクセサリー遺伝子の両方の過剰発現は、Hox遺伝子単独の発現と比較して、増大したヒドロゲナーゼ活性に導いた(Germer、J. Biol. Chem. 284巻(52号)、36462〜36472頁(2009年))。
ピルベートまたはホスホエノールピルベートのいずれかへと二酸化炭素を固定してTCA回路中間体であるオキサロアセテートまたはマレートを形成するために使用されるいくつかの酵素および対応する遺伝子は、以下に記載される。
ホスホエノールピルベートのオキサロアセテートへのカルボキシル化は、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼによって触媒される。例示的なPEPカルボキシラーゼ酵素は、E.coliにおけるppc(Kaiら、Arch. Biochem. Biophys.414巻、170〜179頁(2003年)、Methylobacterium extorquens AM1におけるppcA(Arpsら、J. Bacteriol.175巻、3776〜3783頁(1993年)、およびCorynebacterium glutamicumにおけるppc(Eikmannsら、Mol. Gen. Genet.218巻、330〜339頁(1989年)によってコードされる。
ホスホエノールピルベートをオキサロアセテートへ転換するための代替の酵素は、PEPカルボキシキナーゼであり、これは、PEPのカルボキシキル化と同時に、ATPを形成する。ほとんどの生物体において、PEPカルボキシキナーゼは、糖新生機能の役割を担い、そして1つのATPを消費してオキサロアセテートをPEPに転換する。S.cerevisiaeは、天然のPEPカルボキシキナーゼであるPCK1が糖新生の役割を果たす生物体の1つである(Valdes−Heviaら、FEBS Lett.258巻、313〜316頁(1989年)。E.coliは、別のこのような生物体であり、オキサロアセテートの産生におけるPEPカルボキシキナーゼの役割はPEPカルボキシキナーゼのバイカーボネートについてのより高いKゆえに、、ATPを形成しないPEPカルボキシラーゼと比較した場合に主要ではないと考えられる(Kimら、Appl. Environ. Microbiol.70巻、1238〜1241頁(2004年))。それでも、天然のE.coli PEPカルボキシキナーゼのPEPからオキサロアセテートへの活性は、近年、E.coli K−12のppc変異体において実証されている(Kwonら、J. Microbiol. Biotechnol.16巻、1448〜1452頁(2006年))。これらの株は、増殖欠損がないことを示し、高いNaHCO濃度において増大したスクシネート産生を有した。E.coliの変異株は、Pckを、適応進化後に、主要なCO2固定酵素として取り入れ得る(Zhangら、2009年)。いくつかの生物体(特にルーメン細菌)において、PEPカルボキシキナーゼは、PEPからオキサロアセテートを産生すること、およびATPを生成することにおいて、非常に効率的である。E.coli内にクローニングされているPEPカルボキシキナーゼ遺伝子の例としては、Mannheimia succiniciproducens(Leeら、Biotechnol. Bioprocess Eng.7巻、95〜99頁(2002年))、Anaerobiospirillum succiniciproducens(Laivenieksら、Appl. Environ. Microbiol.63巻、2273〜2280頁(1997年)、およびActinobacillus succinogenes(Kimら、前出)におけるものが挙げられる。Haemophilus influenzaによってコードされるPEPカルボキシキナーゼ酵素は、PEPからのオキサロアセテートの形成において有効である。
ピルビン酸カルボキシラーゼ(EC6.4.1.1)は、1つのATPを消費して、ピルベートをオキサロアセテートへ直接転換する。ピルビン酸カルボキシラーゼ酵素は、Saccharomyces cerevisiaeにおけるPYC1(Walkerら、Biochem. Biophys. Res. Commun.176巻、1210〜1217頁(1991年)およびPYC2(Walkerら、前出)、ならびにMycobacterium smegmatisにおけるpyc(MukhopadhyayおよびPurwantini、Biochim. Biophys. Acta 1475巻、191〜206頁(2000年))によってコードされる。
リンゴ酸酵素は、1還元当量の消費によりCOおよびピルベートをマレートに転換するために適用され得る。この目的のためのリンゴ酸酵素としては、限定されないが、リンゴ酸酵素(NAD依存型)およびリンゴ酸酵素(NADP依存型)が挙げられる。例えば、E.coliリンゴ酸酵素のうちの1つ(Takeo、J. Biochem.66巻、379〜387頁(1969年))またはより高い活性を有する類似の酵素は、ピルベートおよびCOのマレートへの転換を可能にするために発現され得る。PEPとは対照的に、炭素をピルベートへ固定することにより、リンゴ酸酵素は、PEPからの高エネルギーリン酸結合をピルビン酸キナーゼによって保存する(それにより、ピルベートの形成においてATPが生成する)か、または、グルコース輸送のためのホスホトランスフェラーゼ系によって保存することを可能にする。リンゴ酸酵素は、典型的には、マレートからのピルベートの形成の方向で作用すると考えられるが、maeAによってコードされるNAD依存型酵素の過剰発現は、E.coliにおいてスクシネート産生を増大する一方で、炭素固定方向で作用することにより、嫌気性条件下で致死性のΔpfl−ΔldhA表現型を回復することが実証されている(StolsおよびDonnelly、Appl. Environ. Microbiol.63巻(7号)2695〜2701頁(1997年))。類似の観察は、Ascaris suum由来のリンゴ酸酵素のE.coliにおける過剰発現によってなされた(Stolsら、Appl. Biochem. Biotechnol.63〜65巻(1号)、153〜158頁(1997年))。maeBによってコードされる第2のE.coliリンゴ酸酵素は、NADP依存型であり、オキサロアセテートおよび他のアルファ−ケト酸を脱カルボキシル化する(Iwakuraら、J. Biochem.85巻(5号)、1355〜65頁(1979年))。
TCA回路の還元分枝を介してオキサロアセテート(例えば、PEPカルボキシラーゼ、PEPカルボキシキナーゼまたはピルビン酸カルボキシラーゼから形成される)またはマレート(例えば、リンゴ酸酵素またはリンゴ酸デヒドロゲナーゼから形成される)をスクシニルCoAに転換するために使用される酵素は、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、フマル酸デヒドラターゼ(フマラーゼ)、フマル酸レダクターゼおよびスクシニルCoAトランスフェラーゼである。この酵素それぞれについての遺伝子は、本明細書中上で記載される。
スクシニルCoAから種々の産物への経路を微生物内で工学的に操作するための酵素、遺伝子および方法は、今や当該分野で公知である。本明細書中で開示されるようにCOおよび/またはHから得られるさらなる還元当量は、炭水化物ベースのフィードストックを利用する場合、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートの収率を改善する。例えば、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートは、スクシニルCoAから産生され得る(図を参照)。スクシニルCoAのメタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートへの転換のための例示的な酵素としては、本明細書中に開示される酵素が挙げられる。
解糖中間体から種々の産物への経路を微生物内で工学的に操作するための酵素、遺伝子および方法は、当該分野で公知である。本明細書中で記載されるようにCOおよびHから得られるさらなる還元当量は、炭水化物におけるこれらの全ての産物の収率を改善する。例えば、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートは、解糖中間体であるスクシネートから産生され得る。スクシネートのMAAへの転換のための例示的な酵素としては、スクシニルCoAトランスフェラーゼ、スクシニルCoAシンテターゼ、スクシニルCoAレダクターゼ(アルデヒド形成)、4−ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ、4−ヒドロキシ酪酸キナーゼ、ホスホトランス−4−ヒドロキシブチリラーゼ、コハク酸レダクターゼ、スクシニルCoAレダクターゼ(アルコール形成)、4−ヒドロキシブチリルCoAシンテターゼ、4−ヒドロキシブチリルCoAトランスフェラーゼ、4−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、3−ヒドロキシイソブチリルCoAシンテターゼ、3−ヒドロキシイソブチリルCoAトランスフェラーゼ、3−ヒドロキシイソブチリルCoAヒドロラーゼ、3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ、3−ヒドロキシイソブチリルCoAデヒドラターゼ、メタクリリルCoAシンテターゼ、メタクリリルCoAトランスフェラーゼおよびメタクリリルCoAヒドロラーゼが挙げられる。
(実施例XVI)
COおよび嫌気性培養を操作するための方法
この実施例は、COおよび嫌気性培養の操作に使用される方法を記載する。
A.アッセイおよび少量培養のための少量でのCOの操作。COは、有毒である無臭無色無味のガスである。したがって、COを利用する培養およびアッセイは、特別な操作を必要とした。小回分培養におけるCO酸化、アセチルCoA合成、ミオグロビンを用いるCO濃度、およびCO耐性/利用を含むいくつかのアッセイ(少量のCOガスを必要とする)を、換気フード内で施行し、操作した。生化学アッセイは、非常に少量(2mL未満)の生化学アッセイ培地または緩衝液をCOで飽和させることを必要とし、その後、アッセイを実施した。CO操作ステップの全てを、適切な高さに設定されたサッシを有する換気フード内で、ブロワを作動させて行った;COを、圧縮ガス筒およびシュレンクラインに接続したレギュレーターから分配した。後者は、等濃度のCOを、いくつかの予定のキュベットまたはバイアルのそれぞれに分配することを確実にする。シュレンクラインを、酸素スクラバーをインプット側に、油圧解放バブラー(oil pressure release bubbler)およびベントを他の側に含むように設定した。アッセイキュベットは、いずれも嫌気性かつCO含有であった。したがって、アッセイキュベットを、ゴム栓によって固く密閉し、試薬を、気密針およびシリンジを用いて添加し、または除去した。次に、少量(約50mL)培養物を、固く密閉した血清ボトル内で飽和COによって増殖させた。生化学アッセイのように、このCO飽和微生物培養物を、シュレンクライン装備を用いて換気フード内で平衡化させた。生化学分析物(assays)および微生物培養物の両方とも、持ち運び可能な、密閉容器内に存在し、少体積であることは、換気フードの外での安全な操作に寄与した。圧縮COタンクを、換気フードに隣接させた。
典型的には、シュレンクラインを使用して、COをキュベットに分配し、それぞれベントした。キュベット上のゴム栓を、19または20ゲージの使い捨てシリンジ針で突き通し、同様にベントした。油バブラーをCOタンクおよび酸素スクラバーと共に使用した。ガラスまたは水晶の分光光度計キュベットは、頂部に円形の穴を有し、この中に、Kontes栓スリーブSz7 774250−0007をはめた。CO検出ユニットを、換気フードに近接して配置した。
B.大規模培養物へのより大量の流加(fed)におけるCOの操作。発酵培養物に、発酵産生におけるフィードストックとして、COまたはシンガスを模倣するCOとHとの混合物のいずれかを供給する。したがって、1リットルから数リットルまでの範囲の細胞の量は、培地中のCOの溶存濃度を増大させるためのCOガスの添加を含み得る。これらの環境において、非常に大きなかつ継続的に適用される量のCOガスを、培養物に添加する。異なる点において、培養物を収穫し、サンプルを取り出す。あるいは、細胞を、発酵槽の一部である組み込まれた連続フロー遠心分離機によって収穫する。
発酵プロセスを、嫌気性条件下で実施する。いくつかの場合、酸素または空気を発酵槽に送り込んで、適切な酸素飽和を確実にし、呼吸環境を提供することは、非経済的である。加えて、嫌気性発酵の間に生み出される還元力は、呼吸よりもむしろ産物形成に必要とされ得る。さらに、種々の経路についての多くの酵素が、種々の程度で酸素感受性である。古典的アセトゲン、例えばM.thermoaceticaは、偏性嫌気性菌であり、Wood−Ljungdahl経路における酵素は、分子状酸素による不可逆的不活性化に対し非常に感受性である。酸素耐性アセトゲンが存在する一方で、Wood−Ljungdahl経路における酵素のレパートリーは、ほとんどが金属酵素であり、不可欠の構成要素がフェレドキシンであるため、酸素の存在と不適合であり得、調節は、Wood−Ljungdahl経路からエネルギー獲得の最大化へと代謝を転じ得る。同時に、培養中の細胞は、大量細胞増殖の存在下で、過度の手段(extreme measure)の必要性を加減する、酸素スカベンジャーとして作用する。
C.嫌気性チャンバーおよび条件。例示的な嫌気性チャンバーは、市販されている(例えば、Vacuum Atmospheres Company、Hawthorne CA;MBraun、Newburyport MAを参照)。条件は、1ppm以下のO濃度、1atmの純粋Nを含んだ。1つの例において、3酸素スクラバー/触媒リジェネレーターを使用し、チャンバーは、O電極(例えば、Teledyne;City of Industry CA)を備えた。ほぼ全ての項目(item)および試薬を、内部チャンバー扉を開ける前に、チャンバーのエアロック内で、4回反復した。5mLを超える試薬に、チャンバーへの導入前に、純粋Nをスパージした。グローブを年2回交換し、酸素レベルの変化に対しチャンバーが鈍い応答を示すことが多くなると、触媒コンテナを定期的に再生した。チャンバーの圧力を、ソレノイドによって活性化した1方向バルブを通して制御した。この特徴により、チャンバー圧を周囲よりも高く設定することが可能になり、パージバルブを通って非常に小さな管の移動が可能になる。
嫌気性チャンバーは、継続的に非常に低く、高度に酸素感受性な嫌気性条件が必要とされるOレベルを達成した。しかし、細胞の増殖および操作は、通常、このような用心を必要としない。代替の嫌気性チャンバー構成において、白金またはパラジウムが、混合物中にいくらかの水素ガスを必要とする触媒として使用され得る。電磁弁を使用する代わりに、圧力放出を、バブラーによって制御し得る。装置ベースのOモニタリングを用いる代わりに、試験片を使用し得る。
D.嫌気性微生物学。少量培養物を、CO操作について上記したように操作した。詳細には、血清ボトルまたは培地ボトルに、厚いゴム栓をはめ、ボトルを密閉するために、アルミニウムクリンプを使用する。培地(例えばTerrific Broth)を、従来様式で作り、適切な大きさの血清ボトルに分配する。ボトルは、約30分間にわたって、適度にバブリングしながら、窒素をスパージする。これにより、酸素のほとんどを培地から除去し、このステップの後に、各ボトルに、ゴム栓で蓋をし(例えば、Bellco 20mmセプタム栓;Bellco、Vineland、NJ)、およびクリンプ密閉する(Bellco 20mm)。次いで、培地のボトルを、低速(液体)排出サイクルを用いてオートクレーブした。少なくとも時折、オートクレーブの間、針は、栓を貫いて排出をもたらす;針は、オートクレーブから取り出す際に直ちに取り除かれる必要がある。滅菌培地は、シリンジおよび針によって添加された残りの培地構成要素(例えば、緩衝液または抗生物質)を有する。還元剤を添加する前に、ボトルを、30〜60分間にわたって、窒素(または使用に依存してCO)で平衡化する。還元剤(例えば、100×150mMの硫化ナトリウム、200mMのシステイン−HCl)を添加する。これは、乾燥したビーカー内の硫化ナトリウムおよび血清ボトル内のシステインを秤量し、両方を嫌気性チャンバーに入れ、硫化ナトリウムを嫌気性水中に溶解し、次いで、これを血清ボトル中のシステインに添加することによって行われる。硫化ナトリウム溶液はシステインとの接触の際に硫化水素を生成するので、このボトルに、直ちに栓をする。培養物に注入する際、溶液を滅菌するために、シリンジフィルターを使用する。他の構成要素、例えば、B12(10μMシアノコバラミン)、塩化ニッケル(NiCl、40mMストックからの終濃度20μM、嫌気性水においてチャンバー内にて作製し、オートクレーブによってまたは培養物への注入の際にシリンジフィルターを使用することによって滅菌する)および硫酸鉄(II)アンモニウム(必要とされる終濃度は100μMであり、100〜1000×のストック溶液によって嫌気性水においてチャンバー内で作製し、オートクレーブによってまたは培養物への注入の際にシリンジフィルターを使用することによって滅菌する)を、シリンジ針を通して添加する。嫌気性条件下でのより早い増殖を容易にするために、1リットルのボトルに、50mLの嫌気性増殖させた事前培養物を接種した。ベクターへのpA1−lacO1プロモーターの導入を、終濃度0.2mMのイソプロピルβ−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)の添加によって実施し、約3時間にわたって行った。
大量培養物を、連続的なガス添加をバブリングしながら用いて、より大きなボトル内で増殖させ得る。培地添加および30分間以上の窒素スパージの後に、金属バブラーを備えたゴム栓をボトルに配置し、その後に残りのボトルで始める。滅菌フィルターがバブリングするガスを滅菌し、ボトル上のホースが小Cクランプによって圧縮可能なように、各ボトルをまとめる。培地および細胞を、磁気撹拌棒によって撹拌する。一旦全ての培地構成要素および細胞が添加されたら、ボトルを、室内空気中のインキュベーター内であるが、ボトル内に連続的に窒素をスパージしながら、インキュベートする。
(実施例XVIII)
CO酸化(CODH)アッセイ
この実施例は、CO酸化(COデヒドロゲナーゼ;CODH)を測定するためのアッセイ方法を記載する。
Moorella thermoaceticaの7遺伝子CODH/ACSオペロンを、E.coli発現ベクター内にクローニングした。完全な約10kbpのDNA断片をクローニングしたが、この領域における遺伝子のいくつかは、それ自身の内因性プロモーターから発現され、かつ全ては、内因性リボソーム結合部位を含むという可能性がある。これらのクローンを、CODH活性を定量的に測定するアッセイを用いて、CO酸化についてアッセイした。M.thermoacetica遺伝子産物に対する抗血清を、比活性を推定するためのウエスタンブロットのために使用した。M.thermoaceticaは、グラム陽性であり、リボソーム結合部位エレメントは、E.coliにおいて十分に働くことが予測される。以下でより詳細に記載されるこの活性を、M.thermoaceticaの比活性の約1/50であると推定した。組換えE.coli細胞のCODH活性は、M.thermoacetica酵素が、約55℃の最適温度を有するという事実によって制限される可能性がある。したがって、中温性のCODH/ACS経路は、中温性であり、明らかに完全なCODH/ACSオペロンおよびWood−Ljungdahl経路を有する、Moorellaの近縁であるDesulfitobacterium hafnienseのように、有利であり得る。潜在的な宿主生物体であるアセトゲンとしては、Rhodospirillum rubrum、Moorella thermoaceticaおよびDesulfitobacterium hafnienseが挙げられるが、これらに限定されない。
CO酸化は、CODH/ACSアッセイで最も感度が高く、そして最も堅固である。E.coliベースのシンガスを使用する系は最終的にクロストリジウムの(すなわち、Moorellaの)系と、特に最大活性についてほぼ同程度に嫌気性である必要があるという可能性がある。CODHにおける改善は、可能であるはずであるが、最終的には、水中でのCOガスの溶解度によって制限される。
最初に、遺伝子のそれぞれを、発現ベクター内に個々にクローニングした。複数のサブユニット/1複合体についての組合せ発現ユニットを、生成した。E.coliにおけるタンパク質レベルでの発現を、決定した。組合せM.thermoacetica CODH/ACSオペロンと、個々の発現クローンとの両方を、作製した。
CO酸化アッセイ。このアッセイは、より単純で、信頼性があり、より多目的な、Wood−Ljungdahl経路内の酵素活性のアッセイであり、CODHを試験する(Seravalliら、Biochemistry 43巻、3944〜3955頁(2004年))。M.thermoacetica CODH比活性の典型的な活性は、55℃で500U、または25℃で約60Uである。このアッセイは、COの存在下で、メチルビオロゲンの還元を使用する。これは、578nmにおいて、密閉された、嫌気性のガラスキュベットにおいて測定される。
より詳細には、ゴム栓されたガラスキュベットを、まずキュベットを4回脱イオン水で、1回アセトンで洗浄した後に調製した。少量の真空グリースをゴムガスケットの頂部に塗った。22Ga.の針および排気針によってキュベットにCOを通気し、10分間乾燥させた。0.98 mlLの反応緩衝液(50mM Hepes、pH8.5、2mMジチオトレイトール(DTT)を、22Ga.針および排気針、ならびに100%COを用いて添加した。メチルビオロゲン(CHビオロゲン)ストックは、水中1Mであった。各アッセイは、20マイクロリットルを、20mMの最終濃度で使用した。メチルビオロゲンが添加された際、18Ga針(部分的)を、CHビオロゲンを回収するためのHamiltonシリンジの使用を容易にするためのジャケットとして、使用した。4〜5のアリコートを、引き出し、廃棄して、洗浄し、シリンジをガス平衡化した。少量の亜ジチオン酸ナトリウム(0.1Mストック)を、CHビオロゲンストックを作製する際に、CHビオロゲンを僅かに還元させるために、加えた。温度を、加熱したOlis分光光度計(Bogart GA)において、55℃で平衡化した。まず、ブランク反応(CHビオロゲン+緩衝液)を行って、CHビオロゲン還元の基本速度を測定した。ACS90およびACS91(それぞれ、第1のcooCを有するか有さない、M.thermoaceticaのCODH−ACSオペロン)の粗E.coli細胞抽出物。10マイクロリットルの抽出物を、一度に加え、混合し、アッセイした。還元されたCHビオロゲンは、紫色になる。アッセイの結果を、表2に示す。
Mta98/Mta99は、M.thermoacetia由来のメタノールメチルトランスフェラーゼ遺伝子を発現する E.coli MG1655株であり、したがって、M.thermoacetica CODHオペロンを含むACS90 ACS91 E.coli株についての陰性対照である。
約1%の細胞タンパク質がCODHである場合、これらの図は、純粋なM.thermoacetica CODHの500U/mg活性より約100倍少ない。ウエスタンブロットに基づく実際の推定は、細胞タンパク質の0.5%であり、したがって、活性は、M.thermoacetica CODHに対して約50倍少ない。それでも、この実験は、陰性対照におけるよりもずっと少量で組換えE.coliにおけるCO酸化活性を実証する。陰性対象において認められる少量のCO酸化(CHビオロゲン還元)は、E.coliがCHビオロゲンを還元する限定的な能力を有し得ることを示す。
CODHおよびMtrタンパク質の終濃度を推定するために、SDS−PAGEおよびその後のウエスタンブロット分析を、CO酸化アッセイ、ACSアッセイ、メチルトランスフェラーゼアッセイおよびコリノイドFe−Sアッセイにおいて使用された物と同じ細胞抽出物において行った。使用した抗血清は、精製M.thermoacetica CODH−ACSおよびMtrタンパク質に対するポリクローナルであり、アルカリホスファターゼ結合したヤギ抗ウサギ二次抗体を用いて可視化した。ウエスタンを実施した、そして結果を図14に示す。ACS90およびACS91におけるCODHの量を対照レーンと比較して、50ngと推定した。2CODHサブユニットおよびメチルトランスフェラーゼを含むCODH−ACSオペロン遺伝子の発現を、ウエスタンブロット分析を介して確認した。したがって、組換えE.coli細胞は、7遺伝子オペロンの複数の構成要素を発現する。加えて、メチルトランスフェラーゼとコリノイド鉄硫黄タンパク質との両方は、同じ組換えE.coli細胞において活性であった。これらのタンパク質は、同じ細胞内にクローニングされた同じオペロンの部分である。
Moorella thermoacetica細胞の抽出物を陽性対照として用いて、CO酸化アッセイを繰り返した。E.coli ACS90およびACS91におけるCODH活性は測定可能であったが、これは、M.thermoacetica対照より約130〜150倍の低さであった。アッセイの結果を、図15に示す。簡潔には、細胞(CODH/ACSオペロン;ACS90もしくはACS91または空のベクター:pZA33Sを有するM.thermoaceticaまたはE.coli)を増殖させ、そして上記のように抽出物を調製した。上記のように、アッセイを、抽出物を調製した日の種々の時点で、55℃で実施した。メチルビオロゲンの還元を、578nmにて、120秒間の時間経過にわたって追跡した。
これらの結果は、CO酸化(CODH)アッセイおよび結果を記載する。組換えE.coli細胞は、メチルビオロゲン還元アッセイによって測定されたように、CO酸化活性を発現した。
(実施例XVIII)
E.coli CO耐性実験およびCO濃度アッセイ(ミオグロビンアッセイ)
この実施例は、高濃度のCOに対するE.coliの耐性を記載する。
飽和量のCOの存在下でE.coliが嫌気的に増殖し得るか否かを試験するために、培養物を、小容量での嫌気的微生物学において上記したように、50mlのTerrific Broth培地(還元溶液、NiCl、Fe(II)NHSO、シアノコバラミン、IPTGおよびクロラムフェニコールを加えた)を含む120mlの血清ボトル中に提供した。これらのボトルのうちの半分を、窒素ガスによって30分間平衡化させ、もう半分を、COガスによって30分間平衡化させた。空のベクター(pZA33)を、対照として使用し、pZA33空ベクターおよびACS90とACS91との両方を含む培養物を、NおよびCOの両方で試験した。全てに接種し、振とうしながら(250rpm)37℃にて、36時間にわたって増殖させた。36時間の期間の最後における、フラスコの試験は、全てにおいて、多量の増殖を示した。観察した増殖の大部分(bulk)は、長いラグ(lag)をもって一晩で起こった。
全ての培養物はCOの存在下で十分に増殖したようであることを考慮して、CO終濃度を確認した。これは、COへの曝露の際のミオグロビンのスペクトルシフトのアッセイを用いて行った。亜ジチオン酸ナトリウムによって還元されたミオグロビンは、435nmにおいて吸光度のピークを有する;このピークは、COによって423nmにシフトする。低波長および300nmより上の全スペクトルを記録する必要性ゆえに、水晶のキュベットが使用されなければならない。CO濃度は、標準曲線に対して測定され、20℃および1気圧において、COの最大水溶性についてのヘンリーの法則の定数=970マイクロモル濃度に依存する。
CO濃度についてのミオグロビン試験のために、キュベットを、水で10回、アセトンで1回洗浄し、次いでCODHアッセイにおけるように栓をした。Nを、キュベット内に約10分間にわたって吹き込んだ。1mlの容量の嫌気性緩衝液(HEPES、pH8.0、2mM DTT)を、Hamiltonシリンジによってブランクに添加した(COによって平衡化しない)。10マイクロリットルの容量のミオグロビン(約1mM、変動し得るが、非常に大量に必要)および1マイクロリットルのジチオナイト(20mMストック)を、添加した。CO標準曲線を、1マイクロリットルの増加量で加えたCO飽和緩衝液を用いて作製した。ピークの高さおよびシフトを、各増加量について記録した。試験した培養物は、pZA33/CO、ACS90/COおよびACS91/COであった。これらのそれぞれに、同じキュベットに対し、1マイクロリットルの増加量を加えた。実験の半ばで、第2のキュベットを用意し、使用した。結果を、表3に示す。
表3に示される結果は、株がCOの存在下または非存在下で培養されたか否かに関わらず、培養物が増殖したことを示す。これらの結果は、E.coliが、嫌気性条件下でのCOに対する曝露に耐性であり、CODH−ACSオペロンを発現するE.coli細胞は、COのいくらかを代謝し得ることを示す。
これらの結果は、E.coli細胞が、CODH/ACSを発現していようといまいと、飽和量のCOの存在下で増殖可能であったことを実証する。さらに、これらは、COの代わりの窒素中での対照と等しく良好に増殖した。この実験は、E.coliの研究室株が、通常の大気圧において実施されるシンガスプロジェクトにおいて達成可能なレベルでCOに対して非感受性であることを実証した。加えて、予備的実験は、CODH/ACSを発現する組換えE.coli細胞が、実際にいくらかCOを消費した(おそらくは酸化によって二酸化炭素になった)ことを示した。
(実施例XVIX)
メチルマロニルCoAを介したスクシネートからのMAAおよび3−ヒドロキシイソ酪酸の産生のための経路
還元的TCA回路は、炭水化物ベースのフィードストックを用いた場合、メタクリル酸(MAA)の収率を改善する。MAA産生は、図16Aに示される経路によって、組換え生物体によって達成され得る。
例えば、MAAおよび/または3−ヒドロキシイソ酪酸は、図16Aにおいて示されるように、スクシネートからメチルマロニルCoA中間体を介して産生され得る。この経路によるスクシネートのMAAまたは3−ヒドロキシイソ酪酸への転換のための例示的な酵素としては、スクシニルCoAトランスフェラーゼ、スクシニルCoAシンテターゼ、メチルマロニルCoAムターゼ、メチルマロニルCoAエピメラーゼ、メチルマロニルCoAレダクターゼ、メチルマロン酸セミアルデヒドレダクターゼおよび3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼが挙げられる。
この経路において、主な代謝中間体は、まず、スクシネートに向けられる。スクシネートの形成のために、ホスホエノールピルベート(PEP)は、PEPカルボキシキナーゼまたはPEPカルボキシラーゼのいずれかを介してオキサロアセテートに転換される。あるいは、PEPは、まずピルビン酸キナーゼによってピルベートに転換され、次いで、メチルマロニルCoAカルボキシトランスフェラーゼまたはピルビン酸カルボキシラーゼによってオキサロアセテートに転換される。次いで、オキサロアセテートは、還元的TCA回路によってスクシネートに転換される。
次いで、スクシネートは、スクシニルCoAトランスフェラーゼまたはシンテターゼによってスクシニルCoAに活性化される。次いで、メチルマロニルCoAムターゼは、スクシニルCoAからメチルマロニルCoAを形成する。次いで、メチルマロニルCoAは、メチルマロン酸セミアルデヒドに還元される。メチルマロン酸セミアルデヒドのさらなる還元は、3−ヒドロキシイソ酪酸を生じ、これは、産物として分泌されるか、または脱水を介してMAAにさらに変換され得る。
図16Aに示される変換のための例示的な酵素候補は、以下に記載される。スクシニルCoAトランスフェラーゼおよびシンテターゼ酵素は、先に実施例XV(RTCA回路)において記載された。
メチルマロニルCoAムターゼ。メチルマロニルCoAムターゼは、スクシニルCoAをメチルマロニルCoAへ転換するコバラミン依存型酵素である。E.coliにおいて、可逆的アデノシルコバラミン依存型ムターゼは、スクシネートのプロピオネートへの転換に導く3ステップ経路に関わる。例示的なMCM酵素は、実施例Vにおいて記載される。
あるいは、イソブチリルCoAムターゼ(ICM)は、提案される変換を触媒し得る。ICMは、ブチリルCoAの炭素骨格をイソブチリルCoAへ可逆的に転位するMCMファミリーにおける、コバラミン依存型メチルムターゼである(Ratnatilleke、J Biol Chem.274巻、31679〜31685頁(1999年))。例示的なICM酵素は、実施例VIIにおいて記載される。
メチルマロニルCoAエピメラーゼ。メチルマロニルCoAエピメラーゼ(MMCE)は、(R)−メチルマロニルCoAと(S)−メチルマロニルCoAとを相互転換する酵素である。MMCEは、奇数鎖脂肪酸およびバリン、イソロイシンおよびメチオニンのアミノ酸の分解において必須の酵素である。例示的なMMCE酵素は、実施例Vにおいて記載される。
メチルマロニルCoAレダクターゼ。メチルマロニルCoAの対応するアルデヒドであるメチルマロン酸セミアルデヒドへの還元は、CoA依存型アルデヒドデヒドロゲナーゼによって触媒される。例示的な酵素は、実施例Vにおいて記載される。
メチルマロン酸セミアルデヒドレダクターゼ。メチルマロン酸セミアルデヒドの3−ヒドロキシイソブチレートへの還元は、メチルマロン酸セミアルデヒドレダクターゼまたは3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドロゲナーゼによって触媒される。この酵素は、バリン、ロイシンおよびイソロイシンの分解に関わり、細菌、真核生物および哺乳動物において同定されている。例示的なメチルマロン酸セミアルデヒドレダクターゼ酵素は、実施例Vにおいて記載される。
3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ。3−ヒドロキシイソブチレートのメチルアクリル酸への脱水は、3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ活性を有する酵素によって触媒される。例示的な3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ酵素は、実施例Vにおいて記載される。
活性な還元的TCA回路は、図17の例示的な経路において示されるように、アセチルCoA誘導産物であるメタクリル酸(MAA)の収率を改善する。還元的TCA回路の経路およびスクシニルCoAのメタクリル酸への転換は、本明細書中で記載されている(また、図3および16Aならびに実施例Vを参照)。図17Aおよび17Bは、例示的な経路を示す。酵素的変換は、示される酵素によって実施される。図17Aは、還元的TCA回路を用いたCOのスクシニルCoAへの固定のための経路を示す。図17Bは、スクシニルCoAからの3−ヒドロキシイソ酪酸およびメタクリル酸の生合成のための例示的な経路を示す;示される酵素的変換は、以下の酵素によって実施される:A.メチルマロニルCoAムターゼ、B.メチルマロニルCoAエピメラーゼ、C.メチルマロニルCoAレダクターゼ、D.メチルマロン酸セミアルデヒドレダクターゼ、E.3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ。
(実施例XX)
スクシネートからの4−ヒドロキシブチリルCoAを介したMAAおよび3−ヒドロキシイソ酪酸の産生のための経路
還元的TCA回路は、炭水化物ベースのフィードストックを用いる場合、メタクリル酸(MAA)の収率を改善する。MAA産生は、図16Bにおいて示される組換え生物体において達成され得る。
例えば、MAAおよび/または3−ヒドロキシイソ酪酸は、図16Bに図示される多くの代替の経路によって、スクシネートから、4−ヒドロキシブチリルCoA中間体を介して産生され得る。これらの経路のための例示的な酵素としては、以下が挙げられる:スクシニルCoAトランスフェラーゼ、スクシニルCoAシンテターゼ、スクシニルCoAレダクターゼ(アルデヒド形成)、4−ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ、4−ヒドロキシ酪酸キナーゼ、ホスホトランス−4−ヒドロキシブチリラーゼ、コハク酸レダクターゼ、スクシニルCoAレダクターゼ(アルコール形成)、4−ヒドロキシブチリルCoAシンテターゼ、4−ヒドロキシブチリルCoAトランスフェラーゼ、4−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、3−ヒドロキシイソブチリルCoAシンテターゼ、3−ヒドロキシイソブチリルCoAトランスフェラーゼ、3−ヒドロキシイソブチリルCoAヒドロラーゼ、3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ、3−ヒドロキシイソブチリルCoAデヒドラターゼ、メタクリリルCoAシンテターゼ、メタクリリルCoAトランスフェラーゼおよびメタクリリルCoAヒドロラーゼ。
スクシネートからの4−ヒドロキシブチリルCoA中間体の形成は、図16Bに図示されるいくつかの経路を介して進行する。スクシネートは、まずCoAトランスフェラーゼまたはシンテターゼによって、スクシニルCoAに転換される。次いで、スクシニルCoAは、CoA依存型アルデヒドデヒドロゲナーゼによってコハク酸セミアルデヒドに転換される。あるいは、スクシネートは、酸レダクターゼによってコハク酸セミアルデヒドに直接転換される。コハク酸セミアルデヒド中間体は、4−ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼによって、4−ヒドロキシブチレート(4−HB)に還元される。二機能性アルデヒドデヒドロゲナーゼ/アルコールデヒドロゲナーゼは、スクシニルCoAを4−HBに直接転換する。4−HBのそのアシルCoAへの活性化は、CoAトランスフェラーゼまたはシンテターゼによって触媒される。あるいは、4−HBは、4−ヒドロキシブチリル−ホスフェート中間体に転換され得、その後、ホスホトランス−4−ヒドロキシブチリラーゼによって4−HBCoAに変換され得る。
4−ヒドロキシブチリルCoAの3−ヒドロキシイソブチリルCoAへの異性体化は、4−HBCoAメチルムターゼによって触媒される。3−ヒドロキシイソブチリルCoAのCoA部分の除去は、3−ヒドロキシイソブチレートを生じ、これは、産物として分泌されるか、または脱水によりMAAへさらに変換され得る。3−ヒドロキシイソブチリルCoAのメタクリリルCoAへの脱水、その後のCoAヒドロラーゼ、トランスフェラーゼまたはシンテターゼによるCoA部分の除去は、MAA形成のための別の経路である。
図16Aおよび16Bにおいて示される変換のための例示的な酵素候補は、下に記載される。スクシニルCoAトランスフェラーゼおよびシンテターゼ酵素は、実施例I(RTCA回路)において先に記載された。メチルマロニルCoAムターゼおよびメチルマロニルCoAエピメラーゼは、実施例IIIにおいて記載された。3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ酵素候補は、実施例IIIに記載された。
表4は、図16Bにおいて図示されるステップを実施し得る酵素クラスを示す。例示的な酵素は、以下にさらに詳細に記載される。
1.1.1.a. 4−ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ活性を示す酵素(EC1.1.1.61)は、コハク酸セミアルデヒドを4−ヒドロキシブチレートに還元する(図16Bのステップ5)。このような酵素は、Ralstonia eutropha(Bravoら、J Forens Sci、49巻、379〜387頁(2004年))、Clostridium kluyveri(Wolffら、Protein Expr.Purif.6巻、206〜212頁(1995年))およびArabidopsis thaliana(Breitkreuzら、J Biol Chem、278巻、41552〜41556頁(2003年))において特徴付けされている。A.thaliana 酵素は、酵母においてクローニングし、そして特徴付けされた(Breitkreuzら、J.Biol.Chem. 278巻、41552〜41556頁(2003年))。なお別の遺伝子は、Geobacillus thermoglucosidasius由来のアルコールデヒドロゲナーゼadhIである(Jeonら、J Biotechnol 135巻、127〜133頁(2008年))。
1.1.1.c. アシルCoAレダクターゼ活性とアルコールデヒドロゲナーゼ活性とを有する二機能性酵素は、スクシニルCoAを4−ヒドロキシブチレートに直接転換することができる。アシルCoAをアルコールに転換する例示的な二機能性オキシドレダクターゼとしては、基質、例えば、アセチルCoAをエタノールに変換する酵素(例えば、E.coli由来のadhE(Kesslerら、FEBS.Lett.281巻、59〜63頁(1991年)))およびブチリルCoAをブタノールに変換する酵素(例えば、C.acetobutylicum由来のadhE2(Fontaineら、J.Bacteriol.184巻、821〜830頁(2002年)))が挙げられる。bdhIおよびbdhIIによってコードされるC.acetobutylicum酵素(Walter,ら、J. Bacteriol.174巻、7149〜7158頁(1992年))は、アセチルCoAおよびブチリルCoAをそれぞれエタノールおよびブタノールに還元する。アセチルCoAをエタノールに還元することに加え、Leuconostoc mesenteroidesにおけるadhEによってコードされる酵素は、分枝鎖状化合物イソブチルアルデヒドをイソブチリルCoAに酸化することが示されている(Kazahayaら、J.Gen.Appl.Microbiol.18巻、43〜55頁(1972年);Kooら、Biotechnol Lett、27巻、505〜510頁(2005年))。別の例示的な酵素は、マロニルCoAを3−HPに転換し得る。この活性を有するNADPH依存型酵素は、Chloroflexus aurantiacusにおいて特徴付けされていて、ここでは、それは、3−ヒドロキシプロピオン酸回路に関わる(Huglerら、J Bacteriol、184巻、2404〜2410頁(2002年);Straussら、Eur J Biochem、215巻、633〜643頁(1993年))。300kDaの質量を有するこの酵素は、高度に基質特異的であり、他の公知のオキシドレダクターゼに対し、僅かな配列類似性しか示さない(Huglerら、前出)。他の生物体において、この特異的反応を触媒することが示されている酵素はない;しかし、他の生物体が類似の経路を有し得ることの生物情報学的証拠が存在する(Klattら、Env Microbiol、9巻、2067〜2078頁(2007年))。Roseiflexus castenholzii、Erythrobacter種NAP1および海洋性のガンマプロテオバクテリアHTCC2080を含む他の生物体における酵素候補が、配列類似性によって推定され得る。
長鎖アシルCoA分子は、アルコール形成脂肪族アシルCoAレダクターゼをコードするホホバ(Simmondsia chinensis)FARなどの酵素によって、その対応するアルコールに還元され得る。E.coliにおけるその過剰発現は、FAR活性および脂肪族アルコールの蓄積を生じた(Metzら、Plant Physiol、122巻、635〜644頁(2000年))。
1.2.1.b. スクシニルCoAの、対応するアルデヒドであるコハク酸セミアルデヒドへの還元は、スクシニルCoAレダクターゼ(アルデヒド形成)によって触媒される。例示的な酵素としては、スクシニルCoAレダクターゼ(EC1.2.1.76)、アセチルCoAレダクターゼ、ブチリルCoAレダクターゼおよび脂肪族アシルCoAレダクターゼが挙げられる。スクシニルCoAレダクターゼ活性を有する酵素は、Clostridium kluyveriのsucD(Sohling、J. Bacteriol.178巻、871〜880頁(1996年))およびP.gingivalisのsucD(Takahashi、J. Bacteriol 182巻、4704〜4710頁(2000年))によってコードされる。さらなるスクシニルCoAレダクターゼ酵素は、Metallosphaera sedula(Bergら、Science 318巻、1782〜1786頁(2007年))およびThermoproteus neutrophilus(Ramos−Veraら、J Bacteriol、191巻、4286〜4297頁(2009年))を含む好熱性古細菌の3−ヒドロキシプロピオン酸/4−ヒドロキシ酪酸回路に関わる。Msed_0709によってコードされるM.sedula酵素は、厳密にNADPH依存型であり、マロニルCoAレダクターゼ活性をも有する。T.neutrophilus酵素は、NADPHおよびNADHの両方に対して活性である。Pseudomonas種においてアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼをアシル化する酵素(bphGによってコードされる)は、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒドおよびホルムアルデヒドを酸化しそしてアシル化することが実証されているので、それはなお別である(Powlowski、J. Bacteriol.175巻、377〜385頁(1993年))。アセチルCoAのエタノールへの還元に加え、Leuconostoc mesenteroidesにおいてadhEによってコードされる酵素は、分枝鎖状化合物イソブチルアルデヒドをイソブチリルCoAに酸化することが示されている(Kazahaya、J. Gen. Appl. Microbiol.18巻、43〜55頁(1972年);およびKooら、Biotechnol Lett.27巻、505〜510頁(2005年))。ブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼは、Clostridium saccharoperbutylacetonicum(Kosakaら、Biosci Biotechnol Biochem.、71巻、58〜68頁(2007年))のようなソルベント産生生物体において、類似の反応である、ブチリルCoAのブチルアルデヒドへの転換を触媒する。例示的な脂肪族アシルCoAレダクターゼ酵素は、Acinetobacter calcoaceticus(Reiser、Journal of Bacteriology 179巻、2969〜2975頁(1997年))およびAcinetobacter種M−1(Ishigeら、Appl. Environ. Microbiol.68巻、1192〜1195頁(2002年))のacr1によってコードされる。
1.2.1.e. スクシネートのコハク酸セミアルデヒドへの直接転換は、カルボン酸レダクターゼによって触媒される。例示的な酵素としては、カルボン酸レダクターゼ、アルファ−アミノアジピン酸レダクターゼおよびレチノイン酸レダクターゼが挙げられる。Nocardia iowensisに見出されたカルボン酸レダクターゼ(CAR)は、カルボン酸のその対応するアルデヒドへの、マグネシウム、ATPおよびNADPH依存型の還元を触媒する(Venkitasubramanianら、J Biol.Chem.282巻、478〜485頁(2007年))。この酵素の天然の基質は、ベンゾエートであり、この酵素は、p−トルエンを含む芳香族基質の広い受容能を示す(Venkitasubramanianら、「Biocatalysis in Pharmaceutical and Biotechnology Industries」、CRC press(2006年))。Nocardia iowensis由来のこの酵素(carによってコードされる)は、E.coliにおいてクローニングされ、機能的に発現されている(Venkitasubramanianら、J Biol.Chem.282巻、478〜485頁(2007年))。CARは、ホスホパンテテイントランスフェラーゼ(PPTアーゼ)による翻訳後活性化(不活性型アポ酵素を活性型ホロ酵素に転換する)を必要とする(Hansenら、Appl.Environ.Microbiol 75巻、2765〜2774頁(2009年))。npt遺伝子(特定のPPTアーゼをコードする)の発現は、産物が酵素の活性を改善した。Streptomyces griseusに見出されるさらなる酵素候補は、griCおよびgriD遺伝子によってコードされる。この酵素は、3−アミノ−4−ヒドロキシ安息香酸を3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドに転換し、griCまたはgriDのどちらかの欠失が、3−アミノ−4−ヒドロキシ安息香酸代謝のシャント産物である3−アセチルアミノ−4−ヒドロキシ安息香酸の細胞外蓄積をもたらすと考えられている(Suzukiら、J. Antibiot.60巻(6号)、380〜387頁(2007年))。griCおよびgriDのSGR_665(Nocardia iowensis nptに対し配列において類似している酵素である)との共発現は、有益であり得る。
さらなるcar遺伝子およびnpt遺伝子は、配列相同性に基づいて同定され得る。
類似の特性を有する酵素、アルファ−アミノアジピン酸レダクターゼ(AAR、EC1.2.1.31)は、いくつかの真菌種において、リシン生合成経路に関わる。この酵素は、アルファ−アミノアジペートを、アルファ−アミノアジピン酸セミアルデヒドに、天然で還元する。カルボキシル基は、まず、アデニレートのATP依存型の形成を通して活性化され、次いで、NAD(P)Hによって還元されて、前記アルデヒドおよびAMPを生じる。CARのように、この酵素は、マグネシウムを利用し、PPTアーゼによる活性化を必要とする。AARおよびその対応するPPTアーゼについての酵素候補は、Saccharomyces cerevisiae(Morrisら、Gene 98巻、141〜145頁(1991年))、Candida albicans(Guoら、Mol.Genet.Genomics 269巻、271〜279頁(2003年))およびSchizosaccharomyces pombe(Fordら、Curr.Genet.28巻、131〜137頁(1995年))に見出される。S.pombe由来のAARは、E.coliにおいて発現された際に有意な活性を示した(Guoら、Yeast 21巻、1279〜1288頁(2004年))。Penicillium chrysogenum由来のAARは、S−カルボキシメチル−L−システインを代替の基質として受け入れるが、アジペート、L−グルタメートまたはジアミノピメレートと反応しなかった(Hijarrubiaら、J Biol.Chem.278巻、8250〜8256頁(2003年))。P.chrysogenum PPTアーゼをコードする遺伝子は、現在までに同定されておらず、配列比較相同性調査によって、高い信頼性のヒットは同定されなかった。
2.3.1.a. ホスホトランス−4−ヒドロキシブチリラーゼ活性を有する酵素は、4−ヒドロキシブチリル−ホスフェートを4−ヒドロキシブチリルCoAに転換することが必要とされる。例示的なリン酸転移アシルトランスフェラーゼとしては、ホスホトランスアセチラーゼ(EC2.3.1.8)およびホスホトランスブチリラーゼ(EC2.3.1.19)が挙げられる。E.coli由来のpta遺伝子は、ホスホトランスアセチラーゼをコードし、ホスホトランスアセチラーゼは、アセチルCoAをアセチルホスフェートに可逆的に転換する(Suzuki、Biochim.Biophys.Acta 191巻、559〜569頁(1969年))。この酵素はまた、プロピオニルCoAを基質として利用し得、プロセスにおいてプロピオネートを形成する(Hesslingerら、Mol.Microbiol 27巻、477〜492頁(1998年))。プロピオニルCoAに対する活性を示す他のリン酸アセチルトランスフェラーゼは、Bacillus subtilis(Radoら、Biochim.Biophys.Acta 321巻、114〜125頁(1973年))、Clostridium kluyveri(Stadtman、Methods Enzymol 1巻、596〜599頁(1955年))およびThermotoga maritima(Bockら、J Bacteriol.181巻、1861〜1867頁(1999年))に見出される。同様に、C.acetobutylicum由来のptb遺伝子は、ブチリルCoAをブチリルホスフェートに可逆的に転換する酵素であるホスホトランスブチリラーゼをコードする(Wiesenbornら、Appl Environ.Microbiol 55巻、317〜322頁(1989年);Walterら、Gene 134巻、107〜111頁(1993年))。さらなるptb遺伝子は、ブチレート産生細菌L2−50(Louisら、J.Bacteriol.186巻、2099〜2106頁(2004年))およびBacillus megaterium(Vazquezら、Curr.Microbiol 42巻、345〜349頁(2001年))に見出される。
2.7.2.a. ECクラス2.7.2におけるキナーゼまたはホスホトランスフェラーゼ酵素は、1つのATPの同時の加水分解と共にカルボン酸をホスホン酸に変換する。例示的な4−ヒドロキシ酪酸キナーゼ酵素候補としては、酪酸キナーゼ(EC2.7.2.7)、イソ酪酸キナーゼ(EC2.7.2.14)、アスパルトキナーゼ(EC2.7.2.4)、酢酸キナーゼ(EC2.7.2.1)およびガンマ−グルタミルキナーゼ(EC2.7.2.11)が挙げられる。酪酸キナーゼは、クロストリジウム種における酸産生の間に、ブチリルホスフェートのブチレートへの可逆的転換を触媒する(Caryら、Appl Environ Microbiol 56巻、1576〜1583頁(1990年))。Clostridium acetobutylicum酵素は、2つのbuk遺伝子産物のいずれかによってコードされる(Huangら、J Mol.Microbiol Biotechnol 2巻、33〜38頁(2000年))。他の酪酸キナーゼ酵素は、C.butyricumおよびC.tetanomorphumに見出される(Twarogら、J Bacteriol. 86巻、112〜117頁(1963年))。関連の酵素、Thermotoga maritima由来のイソ酪酸キナーゼは、E.coliにおいて発現され、結晶化された(Diaoら、J Bacteriol.191巻、2521〜2529頁(2009年);Diaoら、Acta Crystallogr.D.Biol.Crystallogr.59巻、1100〜1102頁(2003年))。アスパルトキナーゼは、アスパルテートのATP依存型リン酸化を触媒し、いくつかのアミノ酸の合成に関与する。E.coliにおけるアスパルトキナーゼIII酵素(lysCによってコードされる)は、広い基質範囲を有し、基質特異性に関与する触媒残基は、明らかにされている(Kengら、Arch Biochem Biophys 335巻、73〜81頁(1996年))。E.coliにおける2つのさらなるキナーゼはまた、酢酸キナーゼおよびガンマ−グルタミルキナーゼである。E.coli酢酸キナーゼ(ackAによってコードされる)(Skarstedtら、J.Biol.Chem.251巻、6775〜6783頁(1976年))は、プロピオネートを、アセテートに加えてリン酸化する(Hesslingerら、Mol.Microbiol 27巻、477〜492頁(1998年))。E.coliガンマ−グルタミルキナーゼ(proBによってコードされる)(Smithら、J.Bacteriol.157巻、545〜551頁(1984年))は、グルタメートのガンマカルボン酸基をリン酸化する。
2.8.3.a. CoAトランスフェラーゼは、1つの分子から別の分子へのCoA部分の可逆的転移を触媒する。図16Bにおけるいくつかの変換は、CoAトランスフェラーゼ活性:スクシニルCoAトランスフェラーゼ、4−ヒドロキシブチリルCoAトランスフェラーゼ、3−ヒドロキシイソブチリルCoAトランスフェラーゼおよびメタクリリルCoAトランスフェラーゼを必要とする。スクシニルCoAトランスフェラーゼについての酵素候補は、本明細書中で先に記載されており、この経路にも適用可能である。さらなる例示的なCoAトランスフェラーゼ酵素としては、Clostridium kluyveriのcat1、cat2およびcat3の遺伝子産物(それぞれスクシニルCoA活性、4−ヒドロキシブチリルCoA活性、およびブチリルCoAトランスフェラーゼ活性を示すことが示されている)が挙げられる(Seedorfら、Proc.Natl.Acad.Sci U.S.A 105巻、2128〜2133頁(2008年);Sohlingら、J Bacteriol.178巻、871〜880頁(1996年))。類似のCoAトランスフェラーゼ活性はまた、Trichomonas vaginalis(van Grinsvenら、J.Biol.Chem.283巻、1411〜1418頁(2008年))およびTrypanosoma brucei(Riviereら、J.Biol.Chem.279巻、45337〜45346頁(2004年))に存在している。
嫌気性細菌Acidaminococcus fermentans由来のグルタコニルCoAトランスフェラーゼ(EC2.8.3.12)酵素は、2,3−デヒドロアジピルCoAと類似の構造の基質であるグルタコニルCoAおよび3−ブテノイルCoA(Mackら、226巻、41〜51頁(1994年))と反応する。この酵素をコードする遺伝子は、gctAおよびgctBである。この酵素は、グルタリルCoA、2−ヒドロキシグルタリルCoA、アジピルCoA、クロトニルCoAおよびアクリリルCoAを含む他のCoA誘導体に対して、減少しているが検出可能な活性を有する(Buckelら、Eur.J Biochem. 118巻、315〜321頁(1981年))。この酵素は、E.coliにおいてクローニングされ、発現されている(Mackら、Eur.J.Biochem. 226巻、41〜51頁(1994年))。グルタコン酸CoA−トランスフェラーゼ活性はまた、Clostridium sporosphaeroidesおよびClostridium symbiosumにおいて検出されている。さらなるグルタコン酸CoA−トランスフェラーゼ酵素は、Acidaminococcus fermentansタンパク質配列と相同性であることによって推定され得る。
アセチルCoAをCoA供与体として利用し得るCoAトランスフェラーゼは、E.coli atoA遺伝子(アルファサブユニット)およびatoD遺伝子(ベータサブユニット)によってコードされる、アセトアセチルCoAトランスフェラーゼである(Korolevら、Acta Crystallogr.D.Biol.Crystallogr.58巻、2116〜2121頁(2002年);Vanderwinkelら、33巻、902〜908頁(1968年))。この酵素は、広い基質範囲を有し(Sramekら、Arch Biochem Biophys 171巻、14〜26頁(1975年))、イソブチレート(Matthiesら、Appl Environ.Microbiol 58巻、1435〜1439頁(1992年)), バレレート(Vanderwinkelら、Biochem.Biophys.Res.Commun.33巻、902〜908頁(1968年))およびブタノエート(Vanderwinkelら、Biochem.Biophys.Res.Commun.33巻、902〜908頁(1968年))を含む種々の分枝鎖状および直鎖状のアシルCoA基質からアセテートへCoA部分を転移させることが示されている。この酵素は、アセトアセテートによって転写レベルで誘導され、調節制御の改変は、この酵素を経路へと工学的に操作するために必要であり得る(Pauliら、Eur.J Biochem.29巻、553〜562頁(1972年))。類似の酵素は、Corynebacterium glutamicum ATCC13032(Duncanら、68巻、5186〜5190頁(2002年))、Clostridium acetobutylicum(Caryら、Appl Environ Microbiol 56巻、1576〜1583頁(1990年);Wiesenbornら、Appl Environ Microbiol 55巻、323〜329頁(1989年))およびClostridium saccharoperbutylacetonicum(Kosakaら、Biosci.Biotechnol Biochem.71巻、58〜68頁(2007年))に存在している。
3.1.2.a. 3−ヒドロキシイソブチリルCoAヒドロラーゼは、3−ヒドロキシイソブチリルCoAの3−ヒドロキシイソブチレートへの転換を触媒する。この酵素は、バリン分解経路に関わる(Shimomuraら、J Biol Chem.269巻、14248〜14253頁(1994年))。この酵素をコードする遺伝子としては、Rattus norvegicus(Shimomuraら、Methods Enzymol.324巻、229〜240頁(2000年))およびHomo sapiens(Shimomuraら、前出)のhibchが挙げられる。類似の遺伝子候補もまた、配列相同性によって同定され得、Saccharomyces cerevisiaeのhibchおよびBacillus cereusのBC_2292が挙げられる。
メチルマロニルCoAは、メチルマロニルCoAヒドロラーゼ(EC3.1.2.7)によって、メチルマロネートへ転換される。Rattus norvegicus肝臓から単離されるこの酵素はまた、代替の基質として、マロニルCoAおよびプロピオニルCoAにおいても活性である(Kovachyら、J. Biol. Chem.、258巻、11415〜11421頁(1983年))。この酵素に関連する遺伝子は、現在までに同定されていない。広い基質範囲を有する例示的なCoAヒドロラーゼは、好適な候補であり、3−HIBCoAヒドロラーゼ酵素が上で記載されている。Rattus norvegicus脳由来のacot12によってコードされる酵素(Robinsonら、Biochem.Biophys.Res.Commun.71巻、959〜965頁(1976年))は、ブチリルCoA、ヘキサノイルCoAおよびマロニルCoAと反応し得る。ヒトジカルボン酸チオエステラーゼ(acot8によってコードされる)は、グルタリルCoA、アジピルCoA、スベリルCoA、セバシルCoAおよびドデカンジオイルCoAに対して活性を示す(Westinら、J.Biol.Chem. 280巻、38125〜38132頁(2005年))。この酵素に対して最も近いE.coliホモログであるtesBもまた、一連のCoAチオールエステルを加水分解し得る(Naggertら、J Biol Chem 266巻、11044〜11050頁(1991年))。類似の酵素はまた、ラット肝臓においても特徴付けされている(Deana R.、Biochem Int 26巻、767〜773頁(1992年))。E.coliにおいてヒドロラーゼ活性を有するさらなる酵素としては、ybgC、paaIおよびybdBが挙げられる(Kuznetsovaら、FEMS Microbiol Rev、2005年、29巻(2号)、263〜279頁;Songら、J Biol Chem、2006年、281巻(16号)、11028〜38頁)。その配列は報告されていないが、エンドウの葉のミトコンドリア由来の酵素は、広い基質範囲を有し、アセチルCoA、プロピオニルCoA、ブチリルCoA、パルミトイルCoA、オレオイルCoA、スクシニルCoAおよびクロトニルCoAにおいて活性を実証されている(Zeiherら、Plant.Physiol.94巻、20〜27頁(1990年))。S.cerevisiae由来のアセチルCoAヒドロラーゼ、ACH1は、別の候補ヒドロラーゼを代表する(Buuら、J.Biol.Chem.278巻、17203〜17209頁(2003年))。
なお別の候補ヒドロラーゼは、Acidaminococcus fermentans由来のグルタコン酸CoA−トランスフェラーゼである、この酵素は、部位特異的変異誘発により、グルタリルCoA、アセチルCoAおよび3−ブテノイルCoAに対して活性を有するアシルCoAヒドロラーゼに変換された(Mackら、FEBS.Lett.405巻、209〜212頁(1997年))。このことは、スクシニルCoA:3−ケト酸CoAトランスフェラーゼおよびアセトアセチルCoA:アセチルCoAトランスフェラーゼをコードする酵素はまた、この反応ステップについての候補としても働き得るが、その機能を変えるために、ある特定の変異を必要とする。
4.2.1.a. 図16Bにおける2つの変換は、デヒドラターゼ酵素を必要とする。3−ヒドロキシイソブチレートのMAAへの脱水は、3−ヒドロキシイソブチレートによって触媒される。この変換のための酵素候補は、実施例VIIにおいて記載される。3−ヒドロキシイソブチリルCoAのメタクリリルCoAへの脱水は、3−ヒドロキシイソブチリルCoAデヒドラターゼ活性を有する酵素によって触媒される。例示的な酵素としては、エノイルCoAヒドラターゼおよびクロトナーゼが挙げられる。
エノイルCoAヒドラターゼ(EC4.2.1.17)は、一連の3−ヒドロキシアシルCoA基質の脱水を触媒する(Robertsら、Arch.Microbiol 117巻、99〜108頁(1978年);Agnihotriら、Bioorg.Med.Chem. 11巻、9〜20頁(2003年);Conradら、J Bacteriol.118巻、103〜111頁(1974年))。Pseudomonas putidaのエノイルCoAヒドラターゼ(echによってコードされる)は、3−ヒドロキシブチリルCoAのクロトニルCoAへの転換を触媒する(Robertsら、Arch.Microbiol 117巻、99〜108頁(1978年))。この変換はまた、Clostridium acetobutylicumのcrt遺伝子産物、C.kluyveriおよび他のクロストリジウム生物体のcrt1遺伝子産物によっても触媒される(Atsumiら、Metab Eng 10巻、305〜311頁(2008年);Boyntonら、J Bacteriol.178巻、3015〜3024頁(1996年);Hillmerら、FEBS Lett.21巻、351〜354頁(1972年))。さらなるエノイルCoAヒドラターゼ候補は、P.putidaのphaAおよびphaB、ならびにP.fluorescens由来のpaaAおよびpaaBである(Oliveraら、Proc.Natl.Acad.Sci U.S.A 95巻、6419〜6424頁(1998年))。Rhodopseudomonas palustrisにおけるpimFの遺伝子産物は、ピメロイルCoA分解に関わるエノイルCoAヒドラターゼをコードすることが予測される(Harrisonら、Microbiology 151巻、727〜736頁(2005年))。最後に、多くのEscherichia coli遺伝子は、以下を含むエノイルCoAヒドラターゼ機能性を実証することが示されている:maoC(Parkら、J Bacteriol.185巻、5391〜5397頁(2003年))、paaF(Ismailら、Eur.J Biochem.270巻、3047〜3054頁(2003年);Parkら、Appl.Biochem.Biotechnol 113〜116巻、335〜346頁(2004年);Parkら、Biotechnol Bioeng 86巻、681〜686頁(2004年))およびpaaG(Ismailら、Eur.J Biochem.270巻、3047〜3054頁(2003年);ParkおよびLee、Appl.Biochem.Biotechnol 113〜116巻、335〜346頁(2004年);Park およびYup、Biotechnol Bioeng 86巻、681〜686頁(2004年))。
あるいは、fadAおよびfadBのE.coli遺伝子産物は、エノイルCoAヒドラターゼ活性を示す脂肪酸酸化に関与する多酵素複合体をコードする(Yangら、Biochemistry 30巻、6788〜6795頁(1991年);Yang、J Bacteriol.173巻、7405〜7406頁(1991年);Nakahigashiら、Nucleic Acids Res.18巻、4937頁(1990年))。fadRによってコードされる負の調節因子をノックアウトすることは、fadB遺伝子産物を活性化するために利用され得る(Satoら、J Biosci.Bioeng 103巻、38〜44頁(2007年))。fadIおよびfadJ遺伝子は、類似の機能をコードし、嫌気性条件下で天然に発現される(Campbellら、Mol.Microbiol 47巻、793〜805頁(2003年))。
5.4.99.a. 4−ヒドロキシブチリルCoAは、4−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ活性を有する酵素によって、転位されて3−ヒドロキシイソブチリルCoAを形成する。この活性は、現在まで実証されていない。メチルマロニルCoAムターゼおよびイソブチリルCoAムターゼは、類似の変換を触媒する。例示的なメチルマロニルCoAムターゼおよびイソブチリルCoAムターゼ酵素候補は、実施例VおよびVIIにおいて記載される。
6.2.1.a. アシルCoA基質のその酸産物への転換は、6.2.1ファミリーの酵素におけるCoA酸−チオールリガーゼまたはCoAシンテターゼによって触媒され得る。このクラスにおける図16Bの酵素としては、スクシニルCoAシンテターゼ、4−ヒドロキシブチリルCoAシンテターゼ、3−ヒドロキシイソブチリルCoAシンテターゼおよびメタクリリルCoAシンテターゼが挙げられる。スクシニルCoAシンテターゼ酵素候補は、先に記載されている。4−ヒドロキシブチリルCoAシンテターゼ活性、3−ヒドロキシイソブチリルCoAシンテターゼ活性およびメタクリリルCoAシンテターゼ活性を触媒するための例示的な酵素は、本明細書中および以下で記載される。ADP形成アセチルCoAシンテターゼ(ACD、EC6.2.1.13)は、アシルCoAエステルのその対応する酸への転換を、相伴うATPの合成とカップリングする酵素である。Archaeoglobus fulgidus由来のACD I(AF1211によってコードされる)は、イソブチレート、イソペンタノエートおよびフマレートを含む種々の直鎖状および分枝鎖状の基質に作用することが示された(Musfeldtら、J Bacteriol.184巻、636〜644頁(2002年))。Archaeoglobus fulgidusにおける第2の可逆的ACD(AF1983によってコードされる)もまた、環状化合物であるフェニルアセテートおよびインドールアセテートに高い活性を有し、広い基質範囲を有することが示された(MusfeldtおよびSchonheit、J Bacteriol.184巻、636〜644頁(2002年))。Haloarcula marismortui由来の酵素(スクシニルCoAシンテターゼと注解される)は、プロピオネート、ブチレートおよび分枝鎖状の酸(イソバレレートおよびイソブチレート)を基質として受容し、順方向および逆方向に作用することが示された(Brasenら、Arch Microbiol 182巻、277〜287頁(2004年))。超好熱性クレン古細菌Pyrobaculum aerophilum由来のPAE3250によってコードされるACDは、全ての特徴付けされたACDのうちで最も広い基質範囲を示し、アセチルCoA、イソブチリルCoA(好ましい基質)およびフェニルアセチルCoAと反応した(Brasenら、前出)。定向進化または工学的操作は、この酵素を宿主生物体の生理学的温度において作用するように改変するために使用され得る。A.fulgidus、H.marismortuiおよびP.aerophilum由来の酵素は、E.coliにおいて、全てクローニングされ、機能的に発現され、そして特徴付けされている(BrasenおよびSchonheit、前出;MusfeldtおよびSchonheit、J Bacteriol.184巻、636〜644頁(2002年))。さらなる候補は、スクシニルCoAシンテターゼであり、E.coliのsucCDならびにSaccharomyces cerevisiaeのLSC1およびLSC2遺伝子によってコードされる。これらの酵素は、in vivoで可逆的である反応において1つのATPの消費を伴う、スクシネートからのスクシニルCoAの形成を触媒する(Buckら、Biochemistry 24巻、6245〜6252頁(1985年))。Pseudomonas putida由来のアシルCoAリガーゼは、いくつかの脂肪族基質(酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸およびオクタン酸を含む)および芳香族化合物(例えば、フェニル酢酸およびフェノキシ酢酸)に対して働くことが実証されている(Fernandez−Valverdeら、Appl.Environ.Microbiol.59巻、1149〜1154頁(1993年))。Rhizobium leguminosarum由来の関連の酵素であるマロニルCoAシンテターゼ(6.3.4.9)は、いくつかの二酸、すなわち、エチル−、プロピル−、アリル−、イソプロピル−、ジメチル−、シクロプロピル−、シクロプロピルメチレン−、シクロブチル−、およびベンジル−マロネートを、その対応するモノチオエステルに転換することができる(Pohlら、J.Am.Chem.Soc.123巻、5822〜5823頁(2001年))。
活性な還元的TCA回路は、図18の例示的な経路で示されたように、アセチルCoA誘導産物であるメタクリル酸(MAA)の収率を改善する。還元的TCA回路の経路およびスクシネートの4−ヒドロキシブチリルCoAおよびメタクリル酸への転換は、本明細書中で記載される(また、図5および16Bならびに実施例VIIを参照)。図18Aおよび18Bは、例示的な経路を示す。酵素的変換は、示されるような酵素によって実施される。図18Aは、還元的TCA回路を用いたCOのスクシネートへの固定のための経路を示す。図18Bは、スクシネートからの3−ヒドロキシイソ酪酸およびメタクリル酸の生合成のための例示的な経路を示す;示される酵素的変換は、以下の酵素によって実施される:A.3−ヒドロキシイソブチリルCoAデヒドラターゼ、B.メタクリリルCoAシンテターゼ、トランスフェラーゼまたはヒドロラーゼ、C.スクシニルCoAトランスフェラーゼまたはシンテターゼ、D.スクシニルCoAレダクターゼ(アルデヒド形成)、E.4−ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ、F.4−ヒドロキシ酪酸キナーゼ、G.ホスホトランス−4−ヒドロキシブチリラーゼ、H.コハク酸レダクターゼ、I.スクシニルCoAレダクターゼ(アルコール形成)、J.4−ヒドロキシブチリルCoAシンテターゼまたはトランスフェラーゼ、K.4−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、L.3−ヒドロキシイソブチリルCoAシンテターゼ、トランスフェラーゼまたはヒドロラーゼ、M.3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ。
(実施例XXI)
アセチルCoAからのMAAおよび2−ヒドロキシイソ酪酸の産生のための経路
活性な還元的TCA回路は、図16Cのフラックス分布で示されるように、アセチルCoA誘導産物であるメタクリル酸(MAA)の収率を改善する。この経路において、MAAは、5つの酵素的ステップにおいてアセチルCoAから産生される。第1のステップにおいて、アセチルCoAの2つの分子は、組み合わされて、アセトアセチルCoAを形成する。アセトアセチルCoAは、その後、3−ヒドロキシブチリルCoAに還元される。次いで、メチルムターゼは、3−ヒドロキシブチリルCoAの炭素骨格を、2−ヒドロキシイソブチリルCoAに転位し、これは、次いで、脱水されて、メタクリリルCoAを形成する。あるいは、2−ヒドロキシイソブチリルCoAは、2−ヒドロキシイソブチレートに転換され、分泌されて、産物として回収され得る。メタクリリルCoAをMAAに転換する最終ステップは、1つの酵素または一連の酵素によって行われ得る。メタクリリルCoAをMAAに転換するための代替の戦略は、MAA−CoAが3−ヒドロキシイソブチレートを介してMAAに転換される多ステッププロセスを必要とする。このプロセスによって、MAA−CoAは、まず、3−ヒドロキシイソブチリルCoAに転換され、これは、その後、3−ヒドロキシイソブチリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼによって、3−ヒドロキシイソブチレートに転換され得る。3−ヒドロキシイソブチレートは、次いで、3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼを介してMAAに生物触媒的に転換されるか、または分泌され、化学的脱水によってMAAに転換され得る。
各経路ステップについての酵素候補は、本明細書中で記載される。メタクリリルCoAのMAAへの転換を触媒するCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼおよびヒドロラーゼ酵素は、上の実施例VIIにおいて記載された。メタクリリルCoAの3−ヒドロキシイソブチレートおよびメタクリル酸への間接的転換を説明する酵素もまた、上で記載される。
アセトアセチルCoAチオラーゼ。2つのアセチルCoA単位からのアセトアセチルCoAの形成はアセチルCoAチオラーゼによって触媒される。例示的な酵素は、実施例Xにおいて記載される。
(実施例XXII)
ピルベートおよびアセチルCoAからのMAAの産生のための経路
活性な還元的TCA回路は、アセチルCoA誘導産物であるメタクリル酸(MAA)の収率を改善する。この改善された収率を示すフラックス分布は図16Dにおいて示される。
図16E(図1および実施例Iも参照)は、アセチルCoAおよびピルベートから中間体であるシトラマレートを介したMAAへの例示的な経路を図示する。また、アコニテートからMAAへの経路も、示される。1つの経路において、アセチルCoAおよびピルベートは、シトラマル酸シンターゼによってシトラマレートに転換される。シトラマレートの脱水は、シトラコネートまたはメサコネートのどちらかを生じ得る。メサコネートおよびシトラコネートは、シス/トランスイソメラーゼによって相互転換される。メサコネートまたはシトラコネートの脱カルボキシル化は、MAAをもたらす。代替の経路において、シトラマレートは、シトラマリルCoAリアーゼおよびシトラマリルCoAヒドロラーゼ、トランスフェラーゼまたはシンテターゼにより触媒されて、アセチルCoAおよびピルベートから、シトラマリルCoA中間体を介して、形成される。また、アコニテートからMAAへの経路も、示される。1つの経路において、アコニテートは、まず、アコニット酸デカルボキシラーゼによって、イタコネートに脱カルボキシル化される。次いで、イタコネートは、イタコン酸デルタ−イソメラーゼによってシトラコネートに異性体化される。シトラコネートのMAAへの転換は、直接脱カルボキシル化によって、または間接的にメサコネートを介して進行する。代替の経路において、イタコネート中間体は、まず、CoAトランスフェラーゼまたはシンテターゼによってイタコニルCoAに転換される。イタコニルCoAの水和は、シトラマリルCoAを生じ、これは、次いで、上記のようにMAAに転換され得る。
実施例Iにおいて提供される表1は、図16Eにおいて図示されるステップを行い得る酵素クラスを示す。例示的な酵素は、以下に記載され、より詳細には、実施例Iに記載される。
EC2.3.1.a シンターゼ。シトラマル酸シンターゼ(EC2.3.1.182)は、アセチルCoAおよびピルベートのシトラマレートおよび補酵素Aへの転換を触媒する。例示的な酵素は、実施例Iに記載される。
EC2.8.3.a CoAトランスフェラーゼ(ステップE)。CoAトランスフェラーゼは、1つの分子から別の分子へのCoA部分の可逆的転移を触媒する。図16Eにおける2つの変換が、CoAトランスフェラーゼを利用する:シトラマリルCoAのシトラマレートへの転換およびイタコネートのイタコニルCoAへの活性化。シトラマリルCoAトランスフェラーゼ(EC2.8.3.7および2.8.3.11)は、シトラマリルCoAから供与体へとCoA部分を転移する。シトラマル酸:スクシニルCoAトランスフェラーゼ酵素は、グリオキシル酸同化の3−ヒドロキシプロピオン酸回路において活性である。例示的な酵素は、実施例Iにおいて記載される。
EC3.2.1.a CoAヒドロラーゼ。3.1.2ファミリーにおける酵素は、アシルCoA分子をその対応する酸に加水分解する。広い基質範囲を有するいくつかのCoAヒドロラーゼは、シトラマリルCoAヒドロラーゼ活性を示すための好適な候補である。例示的な酵素は、実施例Iにおいて記載される。
EC4.1.1.a デカルボキシラーゼ。図16EにおけるMAA合成の最終ステップは、メサコネートまたはシトラコネートのいずれかの脱カルボキシル化である。例示的な酵素は、実施例Iに記載される。
EC4.1.3.a リアーゼ。シトラマリルCoAリアーゼ(EC4.1.3.25)は、アセチルCoAおよびピルベートを、シトラマリルCoAに転換する。この酵素は、グリオキシル酸同化の3−ヒドロキシプロピオン酸(3−HP)回路に関わり、ここで、それは、シトラマリルCoA分解方向に作用する。例示的な酵素は、実施例Iに記載される。
EC4.2.1.a デヒドラターゼ。シトラマレートのシトラコネートへの脱水は、シトラマル酸デヒドラターゼ(シトラコネート形成)活性(EC4.2.1.35)を有する酵素によって触媒される。この酵素は、Methanocaldococcus jannaschiiおよびLeptospira interrrogansにおいて特徴付けされているトレオニン非依存型イソロイシン生合成経路に、シトラマル酸シンターゼと共に関わる。これらの生物におけるシトラマレートの脱水は、シトラマレートのシトラコネートへの脱水と、その後の水のシトラコネートへのトランス付加によるメチルマレートの形成との両方を触媒する、イソプロピルリンゴ酸イソメラーゼ(IPMI)によって触媒される(Xuら、J Bacteriol.186巻、5400〜5409頁(2004年);Drevlandら、J Bacteriol.189巻、4391〜4400頁(2007年))。例示的な酵素は、実施例Iに記載される。
EC5.2.1.a シス/トランスイソメラーゼ。メサコネートおよびシトラコネートのシス/トランス異性体化は、シトラコン酸イソメラーゼ活性を有する酵素によって触媒される。好適な候補としては、アコニット酸イソメラーゼ(EC5.3.3.7)、マレイン酸シス,トランス−イソメラーゼ(EC5.2.1.1)、マレイルアセトンシス,トランス−イソメラーゼおよび不飽和脂肪酸のシス,トランス−イソメラーゼ(Cti)が挙げられる。アコニット酸イソメラーゼは、シス−およびトランス−アコニテートを、相互転換する。例示的な酵素は、実施例Iに記載される。
EC5.3.3.a デルタ−イソメラーゼ。イタコネートのシトラコネートへの転換は、イタコン酸デルタ−イソメラーゼによって触媒される。例示的な酵素は、実施例Iに記載される。
EC6.2.1 CoAシンテターゼ。シトラマリルCoAのシトラマレートへの転換およびイタコネートのイタコニルCoAへの転換は、酵素の6.2.1ファミリーにおけるCoA酸−チオールリガーゼまたはCoAシンテターゼによって触媒され得る。例示的な酵素は、実施例Iに記載される。
図19の例示的な経路で示されるように、活性な還元的TCA回路は、アセチルCoA誘導産物であるメタクリル酸(MAA)の収率を改善する。還元的TCA回路の経路およびアセチルCoAおよび/またはピルベートの中間体シトラマレートを介したメタクリル酸への転換は、本明細書中で記載される(図1および16Eならびに実施例Iも参照)。図19Aおよび19Bは、例示的な経路を示す。図19Aは、還元的TCA回路を用いるCOのアセチルCoAおよびピルベートへの固定のための経路を示す。図19Bは、アセチルCoAおよびピルベートからのメタクリレートの生合成のための例示的な経路を示す;示される酵素的変換は、以下の酵素によって実施される:1.シトラマル酸シンターゼ、2.シトラマル酸デヒドラターゼ(シトラコネート形成)、3.シトラコン酸デカルボキシラーゼ、4.シトラマリルCoAリアーゼ、5.シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、6.シトラマル酸デヒドラターゼ(メサコネート形成)、7.シトラコン酸イソメラーゼ、8.メサコン酸デカルボキシラーゼ、9.アコニット酸デカルボキシラーゼ、10.イタコン酸イソメラーゼ、11.イタコニルCoAトランスフェラーゼまたはシンテターゼ、12.イタコニルCoAヒドラターゼ。
図20の例示的な経路において示されるように、活性な還元的TCA回路は、アセチルCoA誘導産物であるメタクリル酸(MAA)の収率を改善する。還元的TCA回路の経路およびアセチルCoAのメタクリル酸または2−ヒドロキシイソ酪酸への転換は、本明細書中で記載される(図8および実施例Xも参照)。図20Aおよび20Bは、例示的な経路を示す。図20Aは、還元的TCA回路を用いる、COのアセチルCoAへの固定のための経路を示す。図20Bは、アセチルCoAからのメタクリル酸および2−ヒドロキシイソ酪酸の生合成のための例示的な経路を示す。
図21の例示的な経路において示されるように、活性な還元的TCA回路は、アセチルCoA誘導産物であるメタクリル酸(MAA)の収率を改善する。還元的TCA回路の経路およびアセチルCoAの中間体3−ヒドロキシイソブチリルCoAを介したメタクリル酸への転換は、本明細書中で記載される(また、図5、8および9ならびに実施例VII、X、XIおよびXIVも参照)。図21Aおよび21Bは、例示的な経路を示す。図21Aは、還元的TCA回路を用いるCOのアセチルCoAへの固定のための経路を示す。図21Bは、アセチルCoAからのメタクリル酸および3−ヒドロキシイソ酪酸の生合成のための例示的な経路を示す;示される酵素的変換は、以下の酵素によって実施される:1)アセトアセチルCoAチオラーゼ(AからBへ)、2)3−ヒドロキシブチリルCoAデヒドロゲナーゼ(Hbd)、3)クロトナーゼ(Crt)、4)クロトニルCoAヒドラターゼ(4−Budh)、5)4−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、6)3−ヒドロキシイソブチリルCoAヒドロラーゼ、シンテターゼ、またはトランスフェラーゼ、7)3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ、8)3−ヒドロキシイソブチリルCoAデヒドラターゼ、9)メタクリリルCoAヒドロラーゼ、シンテターゼ、またはトランスフェラーゼ。クロトニルCoAヒドラターゼ(4−ヒドロキシブチリルCoAを形成する)は、4−ヒドロキシブチリルCoAのクロトニルCoAへの可逆的転換を触媒する4−ヒドロキシブチリルCoAデヒドラターゼの、逆反応である(実施例XIVを参照されたい)。したがって、本発明の実施形態において、メタクリル酸経路は、アセトアセチルCoAチオラーゼ、アセトアセチルCoAレダクターゼ(本明細書中で3−ヒドロキシブチリルCoAデヒドロゲナーゼとも呼ばれる)(図9および21を参照されたい)、クロトナーゼ、4−ヒドロキシブチリルCoAデヒドラターゼ(本明細書中でクロトニルCoAヒドラターゼとも呼ばれる)、4−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、3−ヒドロキシイソブチリルCoAシンテターゼまたは3−ヒドロキシイソブチリルCoAヒドロラーゼまたは3−ヒドロキシイソブチリルCoAトランスフェラーゼ、および3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼを含む。あるいは、メタクリル酸経路は、アセトアセチルCoAチオラーゼ、アセトアセチルCoAレダクターゼ、クロトナーゼ、4−ヒドロキシブチリルCoAデヒドラターゼ、4−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、3−ヒドロキシイソブチリルCoAデヒドラターゼ、およびメタクリリルCoAシンテターゼまたはメタクリリルCoAヒドロラーゼまたはメタクリリルCoAトランスフェラーゼを含む(図21を参照)。
(実施例XXIII)
例示的なカルボン酸レダクターゼ
この実施例は、カルボン酸のアルデヒドへの転換を実施するための、カルボン酸レダクターゼの使用を記載する。
1.2.1.e 酸レダクターゼ。不活性型の酸のアルデヒドへの転換は、酸レダクターゼによって実施される。このような転換の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:4−ヒドロキシブチレート、スクシネート、アルファ−ケトグルタレート、および4−アミノブチレートの、それぞれ4−ヒドロキシブタナール、コハク酸セミアルデヒド、2、5−ジオキソペンタノエート、および4−アミノブタナールへの転換。1つの顕著なカルボン酸レダクターゼが、Nocardia iowensisに見出され得、これは、カルボン酸のその対応するアルデヒドへの、マグネシウム、ATPおよびNADPH依存型還元を触媒する(Venkitasubramanianら、J. Biol. Chem.282巻、478〜485頁(2007年))。この酵素は、car遺伝子によってコードされ、E.coliにおいてクローニングされ、機能的に発現された(Venkitasubramanianら、J. Biol. Chem.282巻、478〜485頁(2007年))。npt遺伝子産物の発現は、転写後修飾を介して酵素の活性を改善した。npt遺伝子は、不活性型アポ酵素を活性型ホロ酵素に転換する特異的なホスホパンテテイントランスフェラーゼ(PPTアーゼ)をコードする。この酵素の天然の基質は、バニリン酸であり、この酵素は、芳香族および脂肪族の基質の広い受容能を示す(Venkitasubramanianら、「Biocatalysis in the Pharmaceutical and Biotechnology Industires」、R.N. Patel編、第15章、425〜440頁、CRC Press LLC, Boca Raton, FL.(2006年))。
さらなるcar遺伝子およびnpt遺伝子が、配列相同性に基づいて同定され得る。
Streptomyces griseusに見出されるさらなる酵素候補は、griCおよびgriD遺伝子によってコードされる。griCまたはgriDのいずれかの欠失が、3−アミノ−4−ヒドロキシ安息香酸代謝のシャント産物である3−アセチルアミノ−4−ヒドロキシ安息香酸の細胞外蓄積をもたらすので、この酵素は、3−アミノ−4−ヒドロキシ安息香酸を3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドに転換すると考えられている(Suzukiら、J. Antibiot.60巻(6号)、380〜387頁(2007年))。griCおよびgriDとSGR_665(Nocardia iowensis nptに対し配列が類似している酵素)との共発現は、有益であり得る。
類似の特性を有する酵素、アルファ−アミノアジピン酸レダクターゼ(AAR、EC1.2.1.31)は、いくつかの真菌種において、リシン生合成経路に関わる。この酵素は、アルファ−アミノアジペートを、アルファ−アミノアジピン酸セミアルデヒドに、天然で還元する。カルボキシル基は、まず、アデニレートのATP依存型の形成を通して活性化され、次いで、NAD(P)Hによって還元されて、アルデヒドおよびAMPを生じる。CARのように、この酵素は、マグネシウムを利用し、PPTアーゼによる活性化を必要とする。AARおよびその対応するPPTアーゼについての酵素候補は、Saccharomyces cerevisiae(Morrisら、Gene 98巻、141〜145頁(1991年))、Candida albicans(Guoら、Mol. Genet. Genomics 269巻、271〜279頁(2003年))、およびSchizosaccharomyces pombe(Fordら、Curr. Genet.28巻、131〜137頁(1995年))に見出される。S.pombe由来のAARは、E.coliにおいて発現された際に有意な活性を示した(Guoら、Yeast 21巻、1279〜1288頁(2004年))。Penicillium chrysogenum由来のAARは、S−カルボキシメチル−L−システインを代替の基質として受け入れるが、アジペート、L−グルタメートまたはジアミノピメレートとは反応しなかった(Hijarrubiaら、J. Biol. Chem.278巻、8250〜8256頁(2003年))。P.chrysogenum PPTアーゼをコードする遺伝子は、現在までに同定されていない。
カルボン酸レダクターゼのクローニングおよび発現。Escherichia coliを、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートのためての経路を工学的に操作するための標的生物体として使用する。E.coliは、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートの産生が可能な天然に存在しない微生物を生成するための、良い宿主を提供する。E.coliは、遺伝子操作を受容可能であり、種々の酸素化条件下で、種々の中間体および産物を効率的に産生可能であることが公知である。
メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレート]を産生するために工学的に操作された、E.coli株などの微生物体株を生成するために、カルボン酸レダクターゼおよびホスホパンテテイントランスフェラーゼをコードする核酸を、周知の分子生物学技術を用いて、E.coliにおいて発現させる(例えば、Sambrook、前出、2001年;Ausubel前出、1999年を参照)。詳細には、Nocardia iowensisに由来するcar遺伝子(720と名付けられる)、Mycobacterium smegmatis mc(2)155(890と名付けられる)、Mycobacterium avium 亜種 paratuberculosis K−10(891と名付けられる)およびMycobacterium marinum M(892と名付けられる)を、pZS13ベクター(Expressys、Ruelzheim、Germany)にPA1/lacOプロモーターの制御下ででクローニングした。npt(ABI83656.1)遺伝子(すなわち、721)を、pKJL33Sベクター(元のmini−FプラスミドベクターPML31の誘導体)に、pZS13において使用されるものと類似のプロモーターおよびリボソーム結合部位の制御下にてクローニングした。
car遺伝子(GNM_720)を、NocardiaゲノムDNAからのPCRによってクローニングした。その核酸およびタンパク質配列は、それぞれ図22Aおよび図22Bにおいて示される。npt遺伝子(GNM_721)のコドン最適化バージョンは、GeneArt(Regensburg、Germany)によって合成された。その核酸配列およびタンパク質配列を、それぞれ図23Aおよび23B示す。Mycobacterium smegmatis mc(2)155(890と名付けられる),Mycobacterium avium亜種paratuberculosis K−10(891と名付けられる)およびMycobacterium marinum M(892と名付けられる)の遺伝子および酵素についての核酸配列およびタンパク質配列は、図24、25および26においてそれぞれ見出される。プラスミドは、メタクリル酸、メタクリレートエステル、3−ヒドロキシイソブチレートおよび/または2−ヒドロキシイソブチレートの産生のために必要とされるタンパク質および酵素を発現するように、宿主細胞に形質転換させる。
さらなるCARバリアントを、作製した。CAR891のコドン最適化バージョンを作製し、891GAと名付けた。CAR891GAの核酸配列およびアミノ酸配列は、それぞれ図27Aおよび27Bにおいて示される。2000を超えるCARバリアントを、作製した。詳細には、全ての20アミノ酸の組み合わせを、V295、M296、G297、G391、G421、D413、G414、Y415、G416、およびS417の位置において作製し、さらなるバリアントを、同様に試験した。例示的なCARバリアントとしては以下が挙げられる:E16K;Q95L;L100M;A1011T;K823E;T941S;H15Q;D198E;G446C;S392N;F699L;V883I;F467S;T987S;R12H;V295G;V295A;V295S;V295T;V295C;V295V;V295L;V295I;V295M;V295P;V295F;V295Y;V295W;V295D;V295E;V295N;V295Q;V295H;V295K;V295R;M296G;M296A;M296S;M296T;M296C;M296V;M296L;M296I;M296M;M296P;M296F;M296Y;M296W;M296D;M296E;M296N;M296Q;M296H;M296K;M296R;G297G;G297A;G297S;G297T;G297C;G297V;G297L;G297I;G297M;G297P;G297F;G297Y;G297W;G297D;G297E;G297N;G297Q;G297H;G297K;G297R;G391G;G391A;G391S;G391T;G391C;G391V;G391L;G391I;G391M;G391P;G391F;G391Y;G391W;G391D;G391E;G391N;G391Q;G391H;G391K;G391R;G421G;G421A;G421S;G421T;G421C;G421V;G421L;G421IG421M;G421P;G421F;G421Y;G421W;G421D;G421E;G421N;G421Q;G421H;G421K;G421R;D413G;D413A;D413S;D413T;D413C;D413V;D413L;D413I;D413M;D413P;D413F;D413Y;D413W;D413D;D413E;D413N;D413Q;D413H;D413K;D413R;G414G;G414A;G414S;G414T;G414C;G414V;G414L;G414I;G414M;G414P;G414F;G414Y;G414W;G414D;G414E;G414N;G414Q;G414H;G414K;G414R;Y415G;Y415A;Y415S;Y415T;Y415C;Y415V;Y415L;Y415I;Y415M;Y415P;Y415F;Y415Y;Y415W;Y415D;Y415E;Y415N;Y415Q;Y415H;Y415K;Y415R;G416G;G416A;G416S;G416T;G416C;G416V;G416L;G416I;G416M;G416P;G416F;G416Y;G416W;G416D;G416E;G416N;G416Q;G416H;G416K;G416R;S417G;S417A;S417S;S417T;S417C;S417VS417L;S417I;S417M;S417P;S417F;S417Y;S417W;S417D;S417E;S417N;S417Q;S417H;S417K;andS417R。
CARバリアントを、活性についてスクリーニングし、多くのCARバリアントが、CAR活性を示すことを見出した。
この実施例は、カルボン酸をアルデヒドに転換するためのCARの使用を記載する。
(実施例XXIV)
4−ヒドロキシブチリルCoAのメチルメタクリレートへの転換のための経路
この実施例は、4−ヒドロキシブチリルCoAを例示的なメタクリレートエステルとしてのメチルメタクリレートへ転換するための経路を記載する。
メチルメタクリレートへの例示的な経路は、図30に示される。簡潔には、4−ヒドロキシブチリルCoAは、上記のように、3−ヒドロキシブチリルCoAに転換され得る。3−ヒドロキシイソブチリルCoAは、図30に示されるように、上記のようにアルコールトランスフェラーゼを、詳細にはメチルトランスフェラーゼを用いて、3−ヒドロキシイソブチレートメチルエステルに転換され得る(実施例IIIを参照;また、WO/2007/039415および米国特許第7,901,915号も参照)。3−ヒドロキシイソブチレートメチルエステルは、デヒドラターゼによって、または化学的転換によって、例えば、メタクリレートのメタクリレートエステルへの転換について上記されるように(図2を参照)、メチルメタクリレートに転換され得る。例示的なデヒドラターゼとしては、上記のもの、例えば実施例V、VI、XおよびXIIに記載されるものが挙げられる。
CoA部分の除去の下で、本明細書中で規定されるようなアルコール開始材料からのアルコール部分の(メタ)アクリリルCoAへの転移をもたらすことが可能な酵素、例えば、トランスフェラーゼ(EC2)またはヒドロラーゼ(EC3)クラスの酵素、例えば、リパーゼ、エステラーゼ(例えば、アセチルコリンエステラーゼ)、トランスフェラーゼ(例えば、コリンアセチルトランスフェラーゼ)、プロテアーゼまたはアシラーゼ(例えば、アミノアシラーゼ)をコードする核酸(特に、DNA)(1つ以上のこのような酵素のコーディングを含む)。
ECグループ2の酵素(すなわち、トランスフェラーゼ)としては、例えば、トランスアミナーゼ、トランスアミダーゼ、トランスケトラーゼ、トランスホスホリラーゼ、またはコリンアセチルトランスフェラーゼが挙げられ、これらは、1つの化合物から他の化合物への化学基の移動を触媒することが公知である。ECクラス3;トランスエステル化反応を触媒し得るヒドロラーゼであって、例えば、Candida antarticaに由来するリパーゼ(CAL B)、ブタ膵臓リパーゼ(PPL)、Candid rugosa(CRL)Pseudomonas cepacia(PCL)など;エステラーゼ、例えばブタ肝臓エステラーゼ(PLE)アセチルコリンエステラーゼ;また、スブチリシンなどのプロテアーゼ、例えば、Aspergillus種、Bacillus種.、Rhizopus種由来のプロテアーゼが挙げられ、他のヒドロラーゼ、例えばペニリシンアミダーゼまたは、例えば、L−アミノアシラーゼが、転移を触媒するための好適な酵素であり得る。
これらの酵素は、細菌などの原核生物、真核生物またはより高等な生物体に由来し得、例えば、Candida種由来のリパーゼ、哺乳動物細胞由来のエステラーゼまたはコリンアセチルトランスフェラーゼであり得、これらは、このような反応のために供給され得る。あるいは、これは、バイオマスに由来する適切な開始材料から生合成的に産生され得る。
この実施例はメチルメタクリレートへの転換を記載するが、当業者は、他のメタクリレートエステルが、類似の経路を用い、所望のエステルのために適切なトランスフェラーゼを選択して、作製され得ることを、理解する。
(実施例XXV)
3−ヒドロキシイソブチレート、2−ヒドロキシイソブチレート、3−ヒドロキシイソブチリルCoAまたは2−ヒドロキシイソブチリルCoAの、メタクリレートエステルへの転換
この実施例は、3−ヒドロキシイソブチレート、2−ヒドロキシイソブチレート、3−ヒドロキシイソブチリルCoAまたは2−ヒドロキシイソブチリルCoAの、メタクリレートエステルへの転換を記載する。
本明細書中に含まれる代替のシナリオは、以下である:
(1)A.糖から3−ヒドロキシイソブチリルCoAへ(酵素的、上記の経路)、B.アルコールトランスフェラーゼによる3−ヒドロキシイソブチリルCoAから3−ヒドロキシイソブチレートエステルへ、C.デヒドラターゼ酵素または化学的転換による、3−ヒドロキシイソブチレートエステルからメタクリレートエステルへ
(2)A.糖から2−ヒドロキシイソブチリルCoAへ(酵素的、上記の経路)、B.アルコールトランスフェラーゼによる2−ヒドロキシイソブチリルCoAから2−ヒドロキシイソブチレートエステルへ、C.デヒドラターゼ酵素または化学的転換による、2−ヒドロキシイソブチレートエステルからメタクリレートエステルへ
(3)A.糖から3−ヒドロキシイソブチレートへ(酵素的、上記の経路)、B.3−ヒドロキシイソブチレートエステル形成酵素による、3−ヒドロキシイソブチレートから3−ヒドロキシイソブチレートエステルへ、C.デヒドラターゼ酵素または化学的転換による、3−ヒドロキシイソブチレートエステルからメタクリレートエステルへ
(4)A.糖から2−ヒドロキシイソブチレートへ(酵素的、上記の経路)、B.2−ヒドロキシイソブチレートエステル形成酵素による、2−ヒドロキシイソブチレートから2−ヒドロキシイソブチレートエステルへ、C.デヒドラターゼ酵素または化学的転換による、2−ヒドロキシイソブチレートエステルからメタクリレートエステルへ
(5)A.生物体に供給された外因性3−ヒドロキシイソブチレート(別の生物体の産物(すなわち、共培養または分離発酵(separate fermentation))であってもよく、または、他の供給源由来でもよい)、B.3−ヒドロキシイソブチレートエステル形成酵素による、3−ヒドロキシイソブチレートから2−ヒドロキシイソブチレートエステルへ、C.デヒドラターゼ酵素または化学的転換による、3−ヒドロキシイソブチレートエステルからメタクリレートエステルへ
(6)A.生物体に供給された外因性3−ヒドロキシイソブチレート(別の生物体の産物(すなわち、共培養または分離発酵)であってもよく、または、他の供給源由来でもよい)、B.CoAトランスフェラーゼまたはシンテターゼによる、3−ヒドロキシイソブチレートから3−ヒドロキシイソブチリルCoAへ、C.アルコールトランスフェラーゼ酵素による3−ヒドロキシイソブチレートエステルの形成、C.デヒドラターゼ酵素または化学的転換による、3−ヒドロキシイソブチレートエステルからメタクリレートエステルへ
(7)A.生物体に供給された外因性2−ヒドロキシイソブチレート(別の生物体の産物(すなわち、共培養または分離発酵)であってもよく、または、他の供給源由来でもよい)、B.2−ヒドロキシイソブチレートエステル形成酵素による2−ヒドロキシイソブチレートから2−ヒドロキシイソブチレートエステルへ、C.デヒドラターゼ酵素または化学的転換による、2−ヒドロキシイソブチレートエステルからメタクリレートエステルへ
(8)A.生物体に供給された外因性2−ヒドロキシイソブチレート(別の生物体の産物(すなわち、共培養または分離発酵)であってもよく、または、他の供給源由来でもよい)、B.CoAトランスフェラーゼまたはシンテターゼによる、2−ヒドロキシイソブチレートから2−ヒドロキシイソブチリルCoAへ、C.アルコールトランスフェラーゼ酵素による、2−ヒドロキシイソブチレートエステルの形成、C.デヒドラターゼ酵素または化学的転換による2−ヒドロキシイソブチレートエステルからメタクリレートエステルへ
3−ヒドロキシブチレート、2−ヒドロキシブチレート、3−ヒドロキシイソブチリルCoAおよび2−ヒドロキシイソブチリルCoAからメタクリレートエステルへの経路は、図28および29において示されている。これらのメタクリレートエステル前駆体への例示的な経路は、本出願において先に記載されており、図3、5および8において示されている。3−ヒドロキシブチレートは、図3において示される経路によってスクシニルCoAから形成され得るか、図5に示されるように4−ヒドロキシブチリルCoAから形成され得る。3−ヒドロキシブチリルCoAは、図5において示される経路によって4−ヒドロキシブチリルCoAから形成され得る。2−ヒドロキシイソブチレートおよび2−ヒドロキシブチリルCoAは、図8に記載される経路によって形成され得る。
2−ヒドロキシイソブチレートおよびそのCoAエステルである、2−ヒドロキシイソブチリルCoAは、2−ヒドロキシイソブチリルCoAトランスフェラーゼまたは2−ヒドロキシイソブチリルCoAシンテターゼによって相互転換され得る。同様に、3−ヒドロキシイソブチレートおよびそのCoAエステルである、3−ヒドロキシイソブチリルCoAは、3−ヒドロキシイソブチリルCoAトランスフェラーゼまたは3−ヒドロキシイソブチリルCoAシンテターゼによって相互転換され得る。例示的なCoAトランスフェラーゼおよびシンテターゼ酵素は、実施例IおよびVIIにおいて記載される。
3−ヒドロキシイソ酪酸エステルのメタクリル酸エステルへの脱水は、3−ヒドロキシイソ酪酸のメタクリル酸への脱水と類似の条件下で行い得る。これらの反応条件は、温和である(参照:米国特許出願第20100068773号)。
2−ヒドロキシイソブチレートエステルのメタクリレートエステルへの化学的脱水は、2−ヒドロキシイソ酪酸のメタクリル酸への脱水と類似であり、これは、例えば米国特許第3,666,805号および同第5,225,594号において開示される。これらの参照文献において、2−ヒドロキシイソ酪酸は、金属酸化物および水酸化物、イオン交換樹脂、アルミナ、シリカ、アミン、ホスフィン、アルカリ金属アルコキシドまたはカルボキシレートを反応温度(典型的には、160〜250℃の間)で用いて、脱水する。1つの方法において(米国特許第5,225,594号)、2−ヒドロキシイソ酪酸および水酸化ナトリウムを、185〜195℃にて真空下(300torr)で撹拌しながら反応させ、2−ヒドロキシイソ酪酸の97.1%の転換およびメタクリル酸の96%の収率を得た。類似のアプローチは、2−ヒドロキシイソ酪酸エステルをメタクリル酸エステルに脱水するために適用され得る。
本出願を通して、種々の刊行物が、参照されている。これらの刊行物の開示は、GenBankおよびGI番号公開を含めて、その全体が、本発明が属する分野の技術水準をより完全に記載するために、本出願において本明細書中で参考として組み込まれる。本発明は、上で提供された実施例を参照して記載されているが、種々の変更は、本発明の趣旨から逸脱することなくなされ得ることが理解されるべきである。

Claims (46)

  1. メタクリル酸経路を有する、天然に存在しない微生物体であって、該微生物体は、メタクリル酸を生成するのに十分な量で発現されるメタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含み、該メタクリル酸経路が、
    (a)シトラマル酸シンターゼ、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ;
    (b)シトラマル酸シンターゼ、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、シトラコン酸イソメラーゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ;
    (c)シトラマル酸シンターゼ、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、シトラコン酸イソメラーゼ、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ;
    (d)シトラマル酸シンターゼ、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ;
    (e)シトラマリルCoAリアーゼ、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ;
    (f)シトラマリルCoAリアーゼ、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、シトラコン酸イソメラーゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ;
    (g)シトラマリルCoAリアーゼ、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ;
    (h)シトラマリルCoAリアーゼ、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、シトラコン酸イソメラーゼ、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ;
    (i)アコニット酸デカルボキシラーゼ、イタコン酸イソメラーゼ、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ;
    (j)アコニット酸デカルボキシラーゼ、イタコン酸イソメラーゼ、シトラコン酸イソメラーゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ;
    (k)アコニット酸デカルボキシラーゼ、イタコニルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、シトラマリルCoAデヒドラターゼ、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ;
    (l)アコニット酸デカルボキシラーゼ、イタコニルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、シトラマリルCoAデヒドラターゼ、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、シトラコン酸イソメラーゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ;
    (m)アコニット酸デカルボキシラーゼ、イタコニルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、シトラマリルCoAデヒドラターゼ、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ;
    (n)アコニット酸デカルボキシラーゼ、イタコニルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、シトラマリルCoAデヒドラターゼ、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、シトラコン酸イソメラーゼ、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ;
    (o)アセトアセチルCoAチオラーゼ、アセトアセチルCoAレダクターゼ、クロトナーゼ、4−ヒドロキシブチリルCoAデヒドラターゼ、4−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、3−ヒドロキシイソブチリルCoAシンテターゼまたは3−ヒドロキシイソブチリルCoAヒドロラーゼまたは3−ヒドロキシイソブチリルCoAトランスフェラーゼ、および3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ;ならびに
    (p)アセトアセチルCoAチオラーゼ、アセトアセチルCoAレダクターゼ、クロトナーゼ、4−ヒドロキシブチリルCoAデヒドラターゼ、4−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、3−ヒドロキシイソブチリルCoAデヒドラターゼ、およびメタクリリルCoAシンテターゼまたはメタクリリルCoAヒドロラーゼまたはメタクリリルCoAトランスフェラーゼ
    から選択される経路を含む、微生物体。
  2. それぞれメタクリル酸経路の酵素をコードする、2、3、4、5、6または7つの外因性核酸を含む、請求項1に記載の天然に存在しない微生物体。
  3. (a)〜(p)から選択される前記経路のうちの少なくとも1つの前記酵素のそれぞれをコードする外因性核酸を含む、請求項2に記載の天然に存在しない微生物体。
  4. 請求項1に記載の天然に存在しない微生物体であって、メタクリレートエステルを生成するのに十分な量で発現されるメタクリレートエステル経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含むメタクリレートエステル経路をさらに含み、該メタクリレートエステル経路が、メタクリリルCoAシンテターゼ、メタクリリルCoAトランスフェラーゼ、およびアルコールトランスフェラーゼを含む、微生物体。
  5. それぞれメタクリレートエステル経路の酵素をコードする2または3つの外因性核酸を含む、請求項4に記載の天然に存在しない微生物体。
  6. 前記3つの外因性核酸が、メタクリリルCoAシンテターゼ、メタクリリルCoAトランスフェラーゼ、およびアルコールトランスフェラーゼをコードする、請求項4に記載の天然に存在しない微生物体。
  7. メタクリレートエステル経路を有する、天然に存在しない微生物体であって、メタクリレートエステルを生成するのに十分な量で発現されるメタクリレートエステル経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含み、該メタクリレートエステル経路がメタクリリルCoAトランスフェラーゼを含む、微生物体。
  8. 前記メタクリレートエステル経路が、メタクリリルCoAシンテターゼおよびアルコールトランスフェラーゼをさらに含む、請求項7に記載の天然に存在しない微生物体。
  9. それぞれメタクリレートエステル経路の酵素をコードする2または3つの外因性核酸を含む、請求項7に記載の天然に存在しない微生物体。
  10. 前記3つの外因性核酸が、メタクリリルCoAシンテターゼ、メタクリリルCoAトランスフェラーゼ、およびアルコールトランスフェラーゼをコードする、請求項7に記載の天然に存在しない微生物体。
  11. 請求項7に記載の天然に存在しない微生物体であって、
    (a)シトラマル酸シンターゼ、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ;
    (b)シトラマル酸シンターゼ、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、シトラコン酸イソメラーゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ;
    (c)シトラマル酸シンターゼ、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、シトラコン酸イソメラーゼ、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ;
    (d)シトラマル酸シンターゼ、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ;
    (e)シトラマリルCoAリアーゼ、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ;
    (f)シトラマリルCoAリアーゼ、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、シトラコン酸イソメラーゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ;
    (g)シトラマリルCoAリアーゼ、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ;
    (h)シトラマリルCoAリアーゼ、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、シトラコン酸イソメラーゼ、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ;
    (i)アコニット酸デカルボキシラーゼ、イタコン酸イソメラーゼ、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ;
    (j)アコニット酸デカルボキシラーゼ、イタコン酸イソメラーゼ、シトラコン酸イソメラーゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ;
    (k)アコニット酸デカルボキシラーゼ、イタコニルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、シトラマリルCoAデヒドラターゼ、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ;
    (l)アコニット酸デカルボキシラーゼ、イタコニルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、シトラマリルCoAデヒドラターゼ、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、シトラコン酸イソメラーゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ;
    (m)アコニット酸デカルボキシラーゼ、イタコニルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、シトラマリルCoAデヒドラターゼ、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ;
    (n)アコニット酸デカルボキシラーゼ、イタコニルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、シトラマリルCoAデヒドラターゼ、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、シトラコン酸イソメラーゼ、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ;
    (o)3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ;
    (p)メチルマロニルCoAムターゼ、メチルマロニルCoAレダクターゼ、3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドロゲナーゼ、および3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ;
    (q)メチルマロニルCoAムターゼ、メチルマロニルCoAエピメラーゼ、メチルマロニルCoAレダクターゼ、3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドロゲナーゼ、および3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ;
    (r)メチルマロニルCoAムターゼ、アルコール/アルデヒドデヒドロゲナーゼ、および3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ;
    (s)メチルマロニルCoAムターゼ、メチルマロニルCoAエピメラーゼ、アルコール/アルデヒドデヒドロゲナーゼ、および3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ;
    (t)メチルマロニルCoAムターゼ、メチルマロニルCoAレダクターゼ、3−アミノ−2−メチルプロピオン酸トランスアミナーゼ、および3−アミノ−2−メチルプロピオン酸アンモニアリアーゼ;
    (u)メチルマロニルCoAムターゼ、メチルマロニルCoAエピメラーゼ、メチルマロニルCoAレダクターゼ、3−アミノ−2−メチルプロピオン酸トランスアミナーゼ、および3−アミノ−2−メチルプロピオン酸アンモニアリアーゼ;
    (v)4−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、3−ヒドロキシイソブチリルCoAシンテターゼまたは3−ヒドロキシイソブチリルCoAヒドロラーゼまたは3−ヒドロキシイソブチリルCoAトランスフェラーゼ、および3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ;
    (w)アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、グルタミン酸ムターゼ、3−メチルアスパルターゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ;
    (x)アルファ−ケトグルタル酸レダクターゼ、2−ヒドロキシグルタミン酸ムターゼ、3−メチルリンゴ酸デヒドラターゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ;
    (y)アセトアセチルCoAチオラーゼ、アセトアセチルCoAレダクターゼ、3−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、2−ヒドロキシイソブチリルCoAデヒドラターゼ、およびメタクリリルCoAトランスフェラーゼまたはメタクリリルCoAヒドロラーゼまたはメタクリリルCoAシンテターゼ;
    (z)アセトアセチルCoAチオラーゼ、アセトアセチルCoAレダクターゼ、3−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、2−ヒドロキシイソブチリルCoAデヒドラターゼ、エノイルCoAヒドラターゼ、および3−ヒドロキシイソブチリルCoAヒドロラーゼまたは3−ヒドロキシイソブチリルCoAシンテターゼまたは3−ヒドロキシイソブチリルCoAトランスフェラーゼ、および3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ;
    (aa)4−ヒドロキシブチリルCoAデヒドラターゼ、ビニルアセチルCoA Δ−イソメラーゼ、クロトナーゼ、3−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、2−ヒドロキシイソブチリルCoAデヒドラターゼ、およびメタクリリルCoAヒドロラーゼまたはメタクリリルCoAシンテターゼまたはメタクリリルCoAトランスフェラーゼのいずれか;
    (bb)4−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、3−ヒドロキシイソブチリルCoAデヒドラターゼ、およびメタクリリルCoAシンテターゼまたはメタクリリルCoAヒドロラーゼまたはメタクリリルCoAトランスフェラーゼ;
    (cc)アセトアセチルCoAチオラーゼ、アセトアセチルCoAレダクターゼ、クロトナーゼ、ブチリルCoAデヒドロゲナーゼ、イソブチリルCoAムターゼ、イソブチリルCoAデヒドロゲナーゼ、およびメタクリリルCoAシンテターゼまたはメタクリリルCoAヒドロラーゼまたはメタクリリルCoAトランスフェラーゼ;
    (dd)乳酸デヒドロゲナーゼ、乳酸CoAトランスフェラーゼ、ラクトイルCoAデヒドラターゼ、アシルCoAデヒドロゲナーゼ、プロピオニルCoAカルボキシラーゼ、メチルマロニルCoAレダクターゼ、3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドロゲナーゼ、および3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ;
    (ee)バリンアミノトランスフェラーゼ、2−ケトイソ吉草酸デヒドロゲナーゼ、イソブチリルCoAデヒドロゲナーゼ、およびメタクリリルCoAシンテターゼまたはメタクリリルCoAヒドロラーゼまたはメタクリリルCoAトランスフェラーゼ;
    (ff)アセトアセチルCoAチオラーゼ、アセトアセチルCoAレダクターゼ、クロトナーゼ、4−ヒドロキシブチリルCoAデヒドラターゼ、4−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、3−ヒドロキシイソブチリルCoAシンテターゼまたは3−ヒドロキシイソブチリルCoAヒドロラーゼまたは3−ヒドロキシイソブチリルCoAトランスフェラーゼ、および3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ;ならびに
    (gg)アセトアセチルCoAチオラーゼ、アセトアセチルCoAレダクターゼ、クロトナーゼ、4−ヒドロキシブチリルCoAデヒドラターゼ、4−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、3−ヒドロキシイソブチリルCoAデヒドラターゼ、およびメタクリリルCoAシンテターゼまたはメタクリリルCoAヒドロラーゼまたはメタクリリルCoAトランスフェラーゼ
    から選択されるメタクリル酸経路をさらに含む、微生物体。
  12. メタクリル酸経路を有する、天然に存在しない微生物体であって、メタクリル酸を生成するのに十分な量で発現されるメタクリル酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含み;
    (i)還元的TCA経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む還元的TCA経路であって、該少なくとも1つの外因性核酸が、ATPクエン酸リアーゼ、クエン酸リアーゼ、フマル酸レダクターゼ、およびアルファ−ケトグルタル酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、または必要に応じて、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、アコニターゼ、シトリルCoAシンテターゼもしくはシトリルCoAリアーゼから選択される、還元的TCA経路;
    (ii)還元的TCA経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む還元的TCA経路であって、該少なくとも1つの外因性核酸が、ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、COデヒドロゲナーゼ、およびHヒドロゲナーゼから選択される、還元的TCA経路;あるいは
    (iii)少なくとも1つの外因性核酸が、COデヒドロゲナーゼ、Hヒドロゲナーゼ、およびそれらの組合せから選択される酵素をコードすること
    をさらに含み;
    該メタクリル酸経路が、
    (a)シトラマル酸シンターゼ、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ;
    (b)シトラマル酸シンターゼ、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、シトラコン酸イソメラーゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ;
    (c)シトラマル酸シンターゼ、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、シトラコン酸イソメラーゼ、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ;
    (d)シトラマル酸シンターゼ、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ;
    (e)シトラマリルCoAリアーゼ、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ;
    (f)シトラマリルCoAリアーゼ、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、シトラコン酸イソメラーゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ;
    (g)シトラマリルCoAリアーゼ、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ;
    (h)シトラマリルCoAリアーゼ、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、シトラコン酸イソメラーゼ、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ;
    (i)アコニット酸デカルボキシラーゼ、イタコン酸イソメラーゼ、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ;
    (j)アコニット酸デカルボキシラーゼ、イタコン酸イソメラーゼ、シトラコン酸イソメラーゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ;
    (k)アコニット酸デカルボキシラーゼ、イタコニルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、シトラマリルCoAデヒドラターゼ、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ;
    (l)アコニット酸デカルボキシラーゼ、イタコニルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、シトラマリルCoAデヒドラターゼ、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、(シトラコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、シトラコン酸イソメラーゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ;
    (m)アコニット酸デカルボキシラーゼ、イタコニルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、シトラマリルCoAデヒドラターゼ、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ;
    (n)アコニット酸デカルボキシラーゼ、イタコニルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、シトラマリルCoAデヒドラターゼ、シトラマリルCoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、(メサコネートを形成する)シトラマル酸デヒドラターゼ、シトラコン酸イソメラーゼ、およびシトラコン酸デカルボキシラーゼ;
    (o)3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ;
    (p)メチルマロニルCoAムターゼ、メチルマロニルCoAレダクターゼ、3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドロゲナーゼ、および3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ;
    (q)メチルマロニルCoAムターゼ、メチルマロニルCoAエピメラーゼ、メチルマロニルCoAレダクターゼ、3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドロゲナーゼ、および3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ;
    (r)メチルマロニルCoAムターゼ、アルコール/アルデヒドデヒドロゲナーゼ、および3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ;
    (s)メチルマロニルCoAムターゼ、メチルマロニルCoAエピメラーゼ、アルコール/アルデヒドデヒドロゲナーゼ、および3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ;
    (t)メチルマロニルCoAムターゼ、メチルマロニルCoAレダクターゼ、3−アミノ−2−メチルプロピオン酸トランスアミナーゼ、および3−アミノ−2−メチルプロピオン酸アンモニアリアーゼ;
    (u)メチルマロニルCoAムターゼ、メチルマロニルCoAエピメラーゼ、メチルマロニルCoAレダクターゼ、3−アミノ−2−メチルプロピオン酸トランスアミナーゼ、および3−アミノ−2−メチルプロピオン酸アンモニアリアーゼ;
    (v)4−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、3−ヒドロキシイソブチリルCoAシンテターゼまたは3−ヒドロキシイソブチリルCoAヒドロラーゼまたは3−ヒドロキシイソブチリルCoAトランスフェラーゼ、および3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ;
    (w)アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、グルタミン酸ムターゼ、3−メチルアスパルターゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ;
    (x)アルファ−ケトグルタル酸レダクターゼ、2−ヒドロキシグルタミン酸ムターゼ、3−メチルリンゴ酸デヒドラターゼ、およびメサコン酸デカルボキシラーゼ;
    (y)アセトアセチルCoAチオラーゼ、アセトアセチルCoAレダクターゼ、3−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、2−ヒドロキシイソブチリルCoAデヒドラターゼ、およびメタクリリルCoAトランスフェラーゼまたはメタクリリルCoAヒドロラーゼまたはメタクリリルCoAシンテターゼ;
    (z)アセトアセチルCoAチオラーゼ、アセトアセチルCoAレダクターゼ、3−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、2−ヒドロキシイソブチリルCoAデヒドラターゼ、エノイルCoAヒドラターゼ、および3−ヒドロキシイソブチリルCoAヒドロラーゼまたは3−ヒドロキシイソブチリルCoAシンテターゼまたは3−ヒドロキシイソブチリルCoAトランスフェラーゼ、および3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ;
    (aa)4−ヒドロキシブチリルCoAデヒドラターゼ、ビニルアセチルCoA Δ−イソメラーゼ、クロトナーゼ、3−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、2−ヒドロキシイソブチリルCoAデヒドラターゼ、およびメタクリリルCoAヒドロラーゼまたはメタクリリルCoAシンテターゼまたはメタクリリルCoAトランスフェラーゼのいずれか;
    (bb)4−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、3−ヒドロキシイソブチリルCoAデヒドラターゼ、およびメタクリリルCoAシンテターゼまたはメタクリリルCoAヒドロラーゼまたはメタクリリルCoAトランスフェラーゼ;
    (cc)アセトアセチルCoAチオラーゼ、アセトアセチルCoAレダクターゼ、クロトナーゼ、ブチリルCoAデヒドロゲナーゼ、イソブチリルCoAムターゼ、イソブチリルCoAデヒドロゲナーゼ、およびメタクリリルCoAシンテターゼまたはメタクリリルCoAヒドロラーゼまたはメタクリリルCoAトランスフェラーゼ;
    (dd)乳酸デヒドロゲナーゼ、乳酸CoAトランスフェラーゼ、ラクトイルCoAデヒドラターゼ、アシルCoAデヒドロゲナーゼ、プロピオニルCoAカルボキシラーゼ、メチルマロニルCoAレダクターゼ、3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドロゲナーゼ、および3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ;
    (ee)バリンアミノトランスフェラーゼ、2−ケトイソ吉草酸デヒドロゲナーゼ、イソブチリルCoAデヒドロゲナーゼ、およびメタクリリルCoAシンテターゼまたはメタクリリルCoAヒドロラーゼまたはメタクリリルCoAトランスフェラーゼ;
    (ff)アセトアセチルCoAチオラーゼ、アセトアセチルCoAレダクターゼ、クロトナーゼ、4−ヒドロキシブチリルCoAデヒドラターゼ、4−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、3−ヒドロキシイソブチリルCoAシンテターゼまたは3−ヒドロキシイソブチリルCoAヒドロラーゼまたは3−ヒドロキシイソブチリルCoAトランスフェラーゼ、および3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドラターゼ;ならびに
    (gg)アセトアセチルCoAチオラーゼ、アセトアセチルCoAレダクターゼ、クロトナーゼ、4−ヒドロキシブチリルCoAデヒドラターゼ、4−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、3−ヒドロキシイソブチリルCoAデヒドラターゼ、およびメタクリリルCoAシンテターゼまたはメタクリリルCoAヒドロラーゼまたはメタクリリルCoAトランスフェラーゼ
    から選択される経路を含む、
    微生物体。
  13. それぞれメタクリル酸経路の酵素をコードする2、3、4、5、6または7つの外因性核酸を含む、請求項12に記載の天然に存在しない微生物体。
  14. (a)〜(gg)から選択される前記経路のうちの少なくとも1つの前記酵素のそれぞれをコードする外因性核酸を含む、請求項13に記載の天然に存在しない微生物体。
  15. 2−ヒドロキシイソ酪酸経路を有する、天然に存在しない微生物体であって、2−ヒドロキシイソ酪酸を生成するのに十分な量で発現される2−ヒドロキシイソ酪酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含み;
    (i)還元的TCA経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む還元的TCA経路であって、該少なくとも1つの外因性核酸が、ATPクエン酸リアーゼ、クエン酸リアーゼ、フマル酸レダクターゼ、およびアルファ−ケトグルタル酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、または必要に応じて、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、アコニターゼ、シトリルCoAシンテターゼもしくはシトリルCoAリアーゼから選択される、還元的TCA経路;
    (ii)還元的TCA経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む還元的TCA経路であって、該少なくとも1つの外因性核酸が、ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、COデヒドロゲナーゼ、およびHヒドロゲナーゼから選択される、還元的TCA経路;あるいは
    (iii)少なくとも1つの外因性核酸が、COデヒドロゲナーゼ、Hヒドロゲナーゼ、およびそれらの組合せから選択される酵素をコードすること
    をさらに含み;
    該2−ヒドロキシイソ酪酸経路が、
    (a)アセトアセチルCoAチオラーゼ、アセトアセチルCoAレダクターゼ、3−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、および2−ヒドロキシイソブチリルCoAトランスフェラーゼまたは2−ヒドロキシイソブチリルCoAヒドロラーゼ、または2−ヒドロキシイソブチリルCoAシンテターゼ;ならびに
    (b)4−ヒドロキシブチリルCoAデヒドラターゼ、ビニルアセチルCoA Δ−イソメラーゼ、クロトナーゼ、3−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ、および2−ヒドロキシイソブチリルCoAヒドロラーゼまたは2−ヒドロキシイソブチリルCoAシンテターゼまたは2−ヒドロキシイソブチリルCoAトランスフェラーゼのいずれか
    から選択される経路を含む、
    微生物体。
  16. それぞれメタクリル酸経路の酵素をコードする2、3、4または5つの外因性核酸を含む、請求項15に記載の天然に存在しない微生物体。
  17. (a)〜(b)から選択される前記経路のうちの少なくとも1つの前記酵素のそれぞれをコードする外因性核酸を含む、請求項15に記載の天然に存在しない微生物体。
  18. 3−ヒドロキシイソ酪酸経路を有する、天然に存在しない微生物体であって、3−ヒドロキシイソ酪酸を生成するのに十分な量で発現される3−ヒドロキシイソ酪酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含み;
    (i)還元的TCA経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む還元的TCA経路であって、該少なくとも1つの外因性核酸が、ATPクエン酸リアーゼ、クエン酸リアーゼ、フマル酸レダクターゼ、およびアルファ−ケトグルタル酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、または必要に応じて、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、アコニターゼ、シトリルCoAシンテターゼもしくはシトリルCoAリアーゼから選択される、還元的TCA経路;
    (ii)還元的TCA経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む還元的TCA経路であって、該少なくとも1つの外因性核酸が、ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、COデヒドロゲナーゼ、およびHヒドロゲナーゼから選択される、還元的TCA経路;あるいは
    (iii)少なくとも1つの外因性核酸が、COデヒドロゲナーゼ、Hヒドロゲナーゼ、およびそれらの組合せから選択される酵素をコードすること
    をさらに含み;
    該3−ヒドロキシイソ酪酸経路が、
    (a)4−ヒドロキシブチリルCoAムターゼ;ならびに
    (b)4−ヒドロキシブチリルCoAムターゼおよび3−ヒドロキシイソブチリルCoAシンテターゼまたは3−ヒドロキシイソブチリルCoAヒドロラーゼまたは3−ヒドロキシイソブチリルCoAトランスフェラーゼ;
    から選択される経路を含む、
    微生物体。
  19. それぞれメタクリル酸経路の酵素をコードする2つの外因性核酸を含む、請求項18に記載の天然に存在しない微生物体。
  20. (a)〜(b)から選択される前記経路のうちの少なくとも1つの前記酵素のそれぞれをコードする外因性核酸を含む、請求項18に記載の天然に存在しない微生物体。
  21. 3−ヒドロキシイソブチリルCoA経路を有する、天然に存在しない微生物体であって、3−ヒドロキシイソ酪酸を生成するのに十分な量で発現される3−ヒドロキシイソ酪酸経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含み;
    (i)還元的TCA経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む還元的TCA経路であって、該少なくとも1つの外因性核酸が、ATPクエン酸リアーゼ、クエン酸リアーゼ、フマル酸レダクターゼ、およびアルファ−ケトグルタル酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、または必要に応じて、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、アコニターゼ、シトリルCoAシンテターゼもしくはシトリルCoAリアーゼから選択される、還元的TCA経路;
    (ii)還元的TCA経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む還元的TCA経路であって、前記少なくとも1つの外因性核酸が、ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、COデヒドロゲナーゼ、およびHヒドロゲナーゼから選択される、還元的TCA経路;あるいは
    (iii)少なくとも1つの外因性核酸が、COデヒドロゲナーゼ、Hヒドロゲナーゼ、およびそれらの組合せから選択される酵素をコードすること
    をさらに含み;
    該3−ヒドロキシイソブチリルCoA経路が4−ヒドロキシブチリルCoAムターゼを含む、
    微生物体。
  22. メタクリレートエステル経路を有する、天然に存在しない微生物体であって、メタクリレートエステルを生成するのに十分な量で発現されるメタクリレートエステル経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含み、該メタクリレートエステル経路が、アルコールトランスフェラーゼまたはエステルを形成する酵素、およびデヒドラターゼを含む、微生物体。
  23. それぞれメタクリレートエステル経路の酵素をコードする2つの外因性核酸を含む、請求項22に記載の天然に存在しない微生物体。
  24. 前記2つの外因性核酸が、アルコールトランスフェラーゼおよびデヒドラターゼ、またはエステルを形成する酵素およびデヒドラターゼをコードする、請求項22に記載の天然に存在しない微生物体。
  25. 前記デヒドラターゼが、3−ヒドロキシイソブチレートエステルもしくは2−ヒドロキシイソブチレートエステルを前記メタクリレートエステルに転換する;または前記アルコールトランスフェラーゼが、3−ヒドロキシイソブチリルCoAを3−ヒドロキシイソブチレートエステルに転換するか、もしくは2−ヒドロキシイソブチリルCoAを2−ヒドロキシイソブチレートエステルに転換する、請求項22に記載の天然に存在しない微生物体。
  26. 請求項22に記載の天然に存在しない微生物体であって、
    (a)3−ヒドロキシイソ酪酸CoAトランスフェラーゼもしくは3−ヒドロキシイソ酪酸CoAシンテターゼ;アルコールトランスフェラーゼ;およびデヒドラターゼ;
    (b)3−ヒドロキシイソブチレートエステルを形成する酵素およびデヒドラターゼ;
    (c)2−ヒドロキシイソ酪酸CoAトランスフェラーゼもしくは2−ヒドロキシイソ酪酸CoAシンテターゼ;アルコールトランスフェラーゼ;およびデヒドラターゼ;または
    (d)2−ヒドロキシイソブチレートエステルを形成する酵素およびデヒドラターゼ
    を含むメタクリレートエステル経路を含む、
    微生物体。
  27. メチルメタクリレート経路を有する、天然に存在しない微生物体であって、メチルメタクリレートを生成するのに十分な量で発現されるメチルメタクリレート経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含み、該メチルメタクリレート経路が、アルコールトランスフェラーゼまたはエステルを形成する酵素、およびデヒドラターゼを含む、微生物体。
  28. それぞれメチルメタクリレート経路の酵素をコードする2つの外因性核酸を含む、請求項27に記載の天然に存在しない微生物体。
  29. 前記2つの外因性核酸が、アルコールトランスフェラーゼおよびデヒドラターゼ、またはエステルを形成する酵素およびデヒドラターゼをコードする、請求項27に記載の天然に存在しない微生物体。
  30. 請求項7から11および請求項21から29のいずれかに記載の天然に存在しない微生物体であって、
    (i)還元的TCA経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む還元的TCA経路であって、該少なくとも1つの外因性核酸が、ATPクエン酸リアーゼ、クエン酸リアーゼ、フマル酸レダクターゼ、およびアルファ−ケトグルタル酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、または必要に応じて、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、アコニターゼ、シトリルCoAシンテターゼもしくはシトリルCoAリアーゼから選択される、還元的TCA経路;
    (ii)還元的TCA経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む還元的TCA経路であって、該少なくとも1つの外因性核酸が、ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、COデヒドロゲナーゼ、およびHヒドロゲナーゼから選択される、還元的TCA経路;あるいは
    (iii)少なくとも1つの外因性核酸が、COデヒドロゲナーゼ、Hヒドロゲナーゼ、およびそれらの組合せから選択される酵素をコードすること
    をさらに含む、微生物体。
  31. 請求項12、15、18、21または30のいずれかに記載の天然に存在しない微生物体であって、
    (i)を含む該微生物体が、ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、アコニターゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、スクシニルCoAシンテターゼ、スクシニルCoAトランスフェラーゼ、フマラーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、酢酸キナーゼ、ホスホトランスアセチラーゼ、アセチルCoAシンテターゼ、NAD(P)H:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、フェレドキシン、およびそれらの組合せから選択される酵素をコードする外因性核酸をさらに含む、微生物体。
  32. 請求項12、15、18、21または30のいずれかに記載の天然に存在しない微生物体であって、
    (ii)を含む該微生物体が、アコニターゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、スクシニルCoAシンテターゼ、スクシニルCoAトランスフェラーゼ、フマラーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、およびそれらの組合せから選択される酵素をコードする外因性核酸をさらに含む、微生物体。
  33. それぞれ(i)、(ii)または(iii)の酵素をコードする2、3、4または5つの外因性核酸を含む、請求項12、15、18、21または30のいずれかに記載の天然に存在しない微生物体。
  34. 請求項12、15、18、21または30のいずれかに記載の天然に存在しない微生物体(orgnaism)であって、
    (i)を含む該微生物体が、ATPクエン酸リアーゼもしくはクエン酸リアーゼ、フマル酸レダクターゼ、およびアルファ−ケトグルタル酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼをコードする3つの外因性核酸を含むか;
    (ii)を含む該微生物体が、ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼもしくはホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、COデヒドロゲナーゼ、およびHヒドロゲナーゼをコードする4つの外因性核酸を含むか;または
    (iii)を含む該微生物体が、COデヒドロゲナーゼおよびHヒドロゲナーゼをコードする2つの外因性核酸を含む、
    微生物体。
  35. 請求項1から34のいずれかに記載の天然に存在しない微生物体であって、
    前記少なくとも1つの外因性核酸が、異種の核酸であるか、または該天然に存在しない微生物体が、実質的に嫌気性の培地中にある、微生物体。
  36. メタクリレートエステルを生成するための方法であって、3−ヒドロキシイソブチレートエステル、2−ヒドロキシイソブチレートエステルまたはメチル−3−ヒドロキシイソブチレートを生成する条件下および3−ヒドロキシイソブチレートエステル、2−ヒドロキシイソブチレートエステルまたはメチル−3−ヒドロキシイソブチレートを生成するのに十分な期間、天然に存在しない微生物体を培養する工程であって、該天然に存在しない微生物体が、3−ヒドロキシイソブチレートエステル、2−ヒドロキシイソブチレートエステルまたはメチル−3−ヒドロキシイソブチレートを生成するのに十分な量で発現される外因性核酸であって、アルコールトランスフェラーゼ;または3−ヒドロキシイソブチレートエステルを形成する酵素、2−ヒドロキシイソブチレートエステルを形成する酵素もしくはメチル−3−ヒドロキシイソブチレートエステルを形成する酵素をコードする外因性核酸を含む、工程と、該3−ヒドロキシイソブチレートエステルもしくは2−ヒドロキシイソブチレートエステルを化学的に脱水してメタクリレートエステルを生成する工程または該メチル−3−ヒドロキシイソブチレートを化学的に脱水してメチルメタクリレートを生成する工程、とを含む方法。
  37. 前記微生物体が、
    (a)3−ヒドロキシイソ酪酸CoAトランスフェラーゼもしくは3−ヒドロキシイソ酪酸CoAシンテターゼ;およびアルコールトランスフェラーゼ;または
    (b)3−ヒドロキシイソブチレートエステルを形成する酵素
    を含む3−ヒドロキシイソブチレートエステル経路;あるいは
    (a)2−ヒドロキシイソ酪酸CoAトランスフェラーゼもしくは2−ヒドロキシイソ酪酸CoAシンテターゼ;およびアルコールトランスフェラーゼ;または
    (b)2−ヒドロキシイソブチレートエステルを形成する酵素
    を含む2−ヒドロキシイソブチレートエステル経路
    を含む、請求項36に記載の方法。
  38. メタクリレートエステルを生成するための方法であって、3−ヒドロキシイソブチレートエステル、2−ヒドロキシイソブチレートエステルまたはメチル−3−ヒドロキシイソブチレートを生成する条件下および3−ヒドロキシイソブチレートエステル、2−ヒドロキシイソブチレートエステルまたはメチル−3−ヒドロキシイソブチレートを生成するのに十分な期間、天然に存在しない微生物体を培養する工程であって、該天然に存在しない微生物体が、3−ヒドロキシイソブチレートエステル、2−ヒドロキシイソブチレートエステルまたはメチル−3−ヒドロキシイソブチレートを生成するのに十分な量で発現される外因性核酸であって、アルコールトランスフェラーゼ;または3−ヒドロキシイソブチレートエステルを形成する酵素、2−ヒドロキシイソブチレートエステルを形成する酵素もしくはメチル−3−ヒドロキシイソブチレートエステルを形成する酵素をコードする外因性核酸を含み、該天然に存在しない微生物体が、
    (i)還元的TCA経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む還元的TCA経路であって、該少なくとも1つの外因性核酸が、ATPクエン酸リアーゼ、クエン酸リアーゼ、フマル酸レダクターゼ、およびアルファ−ケトグルタル酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、または必要に応じて、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、アコニターゼ、シトリルCoAシンテターゼもしくはシトリルCoAリアーゼから選択される、還元的TCA経路;
    (ii)還元的TCA経路の酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む還元的TCA経路であって、該少なくとも1つの外因性核酸が、ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、COデヒドロゲナーゼ、およびHヒドロゲナーゼから選択される、還元的TCA経路;あるいは
    (iii)COデヒドロゲナーゼ、Hヒドロゲナーゼ、およびそれらの組合せから選択される酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸
    をさらに含む、工程と、
    該3−ヒドロキシイソブチレートエステルまたは2−ヒドロキシイソブチレートエステルを化学的に脱水してメタクリレートエステルを生成する工程;または該メチル−3−ヒドロキシイソブチレートを化学的に脱水してメチルメタクリレートを生成する工程、
    とを含む方法。
  39. 前記微生物体が、
    (a)3−ヒドロキシイソ酪酸CoAトランスフェラーゼもしくは3−ヒドロキシイソ酪酸CoAシンテターゼ;およびアルコールトランスフェラーゼ;または
    (b)3−ヒドロキシイソブチレートエステルを形成する酵素
    を含む3−ヒドロキシイソブチレートエステル経路;あるいは
    (a)2−ヒドロキシイソ酪酸CoAトランスフェラーゼもしくは2−ヒドロキシイソ酪酸CoAシンテターゼ;およびアルコールトランスフェラーゼ;または
    (b)2−ヒドロキシイソブチレートエステルを形成する酵素
    を含む2−ヒドロキシイソブチレートエステル経路
    を含む、請求項38に記載の方法。
  40. 請求項38または39のいずれかに記載の方法であって、
    (i)を含む前記微生物体が、ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、アコニターゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、スクシニルCoAシンテターゼ、スクシニルCoAトランスフェラーゼ、フマラーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、酢酸キナーゼ、ホスホトランスアセチラーゼ、アセチルCoAシンテターゼ、NAD(P)H:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、フェレドキシン、およびそれらの組合せから選択される酵素をコードする外因性核酸をさらに含む、方法。
  41. 請求項38または39のいずれかに記載の方法であって、
    (ii)を含む前記微生物体が、アコニターゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、スクシニルCoAシンテターゼ、スクシニルCoAトランスフェラーゼ、フマラーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、およびそれらの組合せから選択される酵素をコードする外因性核酸をさらに含む、方法。
  42. 請求項38または39のいずれかに記載の方法であって、
    (i)を含む前記微生物体が、ATPクエン酸リアーゼもしくはクエン酸リアーゼ、フマル酸レダクターゼ、およびアルファ−ケトグルタル酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼをコードする3つの外因性核酸を含むか;
    (ii)を含む前記微生物体が、ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼもしくはホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、COデヒドロゲナーゼ、およびHヒドロゲナーゼをコードする4つの外因性核酸を含むか;または
    (iii)を含む前記微生物体が、COデヒドロゲナーゼおよびHヒドロゲナーゼをコードする2つの外因性核酸を含む、
    方法。
  43. メタクリル酸を生成するための方法であって、メタクリル酸を生成する条件下およびメタクリル酸を生成するのに十分な期間、請求項1から6、請求項12から14または請求項30から35のいずれかに記載の天然に存在しない微生物体を培養する工程を含む方法。
  44. メタクリレートエステルを生成するための方法であって、メタクリレートエステルを生成する条件下およびメタクリレートエステルを生成するのに十分な期間、請求項7から11、請求項22から29または請求項30から35のいずれかに記載の天然に存在しない微生物体を培養する工程を含む方法。
  45. 2−ヒドロキシイソ酪酸、3−ヒドロキシイソ酪酸または3−ヒドロキシイソブチリルCoAを生成するための方法であって、2−ヒドロキシイソ酪酸、3−ヒドロキシイソ酪酸または3−ヒドロキシイソブチリルCoAを生成する条件下および2−ヒドロキシイソ酪酸、3−ヒドロキシイソ酪酸または3−ヒドロキシイソブチリルCoAを生成するのに十分な期間、請求項15から21または請求項30から35のいずれかに記載の天然に存在しない微生物体を培養する工程を含む方法。
  46. 前記外因性核酸の少なくとも1つが、異種の核酸であるか;または前記天然に存在しない微生物体が、実質的に嫌気性の培地中にある、請求項36から45のいずれか一項に記載の方法。
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