周知のように、食品工業においては、飲料などの食品を充填する前に容器を内部、外部共に殺菌する必要がある。
一般に、殺菌には、紙、段ボール、金属およびプラスチックを含む実質的にあらゆるタイプの材料に適用可能な過酸化水素、ペルオキシ酢酸のような化学薬品が使用される。
充填作業を確実に無菌状態で実行するためには、容器の殺菌が必要であるばかりでなく、充填後に容器を密閉するために使用するキャップや栓などの蓋もまた同様の処理を受ける必要がある。
典型的には蓋の殺菌は、キャップの場合においても栓の場合においてもイオン化放射又は化学薬品によって行われる。
イオン化放射は、原子又は分子から電子を分離させるのに十分なエネルギーを有する粒子又は電磁波を含み、それによって原子又は分子のイオン化を行う。単一粒子又は単一光子による直接のイオン化は、遊離基すなわち不対電子を含む原子や分子を生成し、その電子構造のためにこれらは特に化学的な反応性が高くなる傾向がある。その一方で、粒子や光子と原子や分子との間の相互作用はまた、一つ又は複数の電子を遊離させ、次にこれが更なるイオン生成を可能にする。
具体的には当分野においては、殺菌目的として電子ビームエミッタが一般的に利用されている。実際には、電子ビームを殺菌対象の物体に照射し、ウィルスや菌類やバクテリアなどの病原体に電子を直接作用させてそれらのDNAに損傷を与え、生存に必要な蛋白質及び酵素を不活性化する。
イオン化源を用いる殺菌は、化学薬品や水や殺菌物質の消費量が、皆無とは言わなくても大幅に低減されるために、充填/瓶詰工場の運転コストの低減にとって重要な利点となる。
更にイオン化放射源を殺菌剤として利用することは、化学残留物の廃棄などの環境問題に対してプラスに作用する。
キャップや栓の殺菌に特に関連して、キャップや栓のためのマガジンを装備し、それを上記の種類のイオン化放射を受ける殺菌ゾーンに供給するためのシュートに接続した装置が、瓶詰工業においてはよく知られている。
この種の装置は、完全な信頼性のおける殺菌を保証できないという大きな欠点を持っている。事実、供給シュート上に一列に並んで配置された隣接する2つの蓋の面が互いに接触する部分には、一般的に陰のゾーンが形成されやすい。このような陰のゾーンにおいては、イオン化放射は十分にその機能を達成できない。その結果、このような陰のゾーンにある病原体は除去されない可能性が非常に高く、キャップであっても栓であっても、蓋の全体としての殺菌性は大いに損なわれてしまう。
国際公開第2009/139013号パンフレットには、容器蓋の供給装置に関連した殺菌ユニットが開示されている。この装置は、処理ステーションに蓋を搬送するガイドと、蓋を収納するのに好適な複数の突起と窪みを有し、ガイドと動作的に結合する星形車とを備えていて、一定の時間間隔で蓋を処理ステーションに投入するようになっている。
星形車は、殺菌ステーションへ近づこうとする蓋の列を阻止する位置と、蓋の列が殺菌ステーションに向かって前進可能とする位置との間を交互に動くことができる。
ただしこの構成が正しく動作するためには、星形車が回転してそれぞれの蓋に初速を与え、次いで重力とガイドの傾斜の組み合わせ効果によって蓋が加速されることが必要である。
従って、ガイドの傾斜は少なくとも摩擦を相殺できるだけの大きさである必要がある。その一方で、傾斜を大きくし過ぎて、蓋が殺菌手段にさらされる時間が短くなり過ぎるような速度になってはならない。従ってこれらの設計上の限界は常に考慮に入れられなければならない。
更に、星形車は、個々の蓋に十分な初速を与えられるように動作させる必要がある。その上、隣り合う蓋同士が適切な距離を確保するために、星形車の動作タイミングを慎重に制御する必要がある。従って、国際公開第2009/139013号パンフレットに示されるような方法には、設計上の特定の本質的な制約による欠点があり、回転と停止を交互に行う周波数と星形車から1つ1つの蓋に与える速度の両方に対して星形車の動作を正確に制御することによってはじめてうまく機能させることができる。
このような設計上の制約の結果として、寸法の異なる蓋、又は異なる特性(例えば、材質及びその結果としてガイド面に対する摩擦係数とか、殺菌剤への最小露出時間の違い、など)の蓋に対して、このタイプの殺菌ユニットを適合させることは困難になる場合がある。更に、設備の生産性を上げなければならない場合にも、星形車の動作を規定する設定を注意深く変更することが必要になって、困難となる可能性がある。つまり、このタイプの殺菌ユニットは調節機能と適応性において十分に満足のいくものではあり得ない。
図1の符号1は、特にビンなどの関連する容器に用いられるキャップ及び栓のための容器蓋殺菌ユニットの全体を表す。
殺菌ユニット1は、少なくとも1つの蓋処理ステーション2と、複数の容器蓋100(図2及び3参照)を蓋処理ステーション2へ供給するための装置3とから成っている。
図2に詳細を示すように供給装置3はガイド手段4を備え、このガイド手段4は、殺菌に供する蓋100を供給する装填手段又は蓋格納ユニット(図示せず)に連通する蓋100用の入り口5と、少なくとも1つの直線管P1(すなわち、垂直方向に対して一定傾斜となっている1つの管)を備え、それに沿って少なくとも1つの処理ステーション2が配置されている搬送路Pと、殺菌ユニット1の下流に配置された更なるユニット(図示せず)に連通する蓋用の出口6と、を画定する。
有利には供給装置3は、一列に並んだ蓋100に動作的に作用して、処理ステーション2に向かって搬送路P沿いに互いに等間隔に前進させる搬送手段7を備えている(図2参照)。具体的には、搬送手段7はガイド手段4と動作的に結合している。
好ましくは、搬送手段7は螺旋コイル8(図3参照)を備える。これは、蓋100の列に動作的に作用してこれらの蓋を搬送路P沿いに前進させ、少なくとも1つの処理ステーション2へ搬送路P沿いに相互に等間隔に離間した状態で供給されるようにする。
具体的には、螺旋コイル8の長手軸が搬送路Pの管P1と平行になっている。
図3の実施形態において、螺旋コイル8は、実質的にコイル8と共軸であり、モータ手段10によって駆動されるシャフト9に支えられている。より具体的には、螺旋コイル8は好ましくは、シャフト9から半径方向に延びかつシャフト上に等間隔に配置された複数の支持要素11によってシャフト9に固定されている。そして、シャフト9はシャフト端部の取り付け部で、回転可能に取り付けられている。
搬送手段7とガイド手段4が動作的に結合していることにより、螺旋コイル8の軸を中心とする回転によって、螺旋コイル8が動作的に作用するすべての蓋に前進運動を与える。
特に、螺旋コイル8が一定速度で回転すると、螺旋コイル8が動作的に作用する蓋100は、搬送路Pの管P1に沿って一定の直線速度で均一な前進運動をするように見える。すなわち、螺旋コイル8と協働することにより、蓋100はすべてが同一速度で管P1沿いに前進する。
搬送手段7は好ましくはブラシレス電気モータによって駆動されるが、例えば歯車などの機械的な駆動手段を利用することも実行可能な代替手段となる。
図2を特に参照すると、ガイド手段4が好ましくは複数のガイド12から成っている。ガイド12は、少なくともその一部は、水平方向に対して傾斜しており、蓋100が重力によって滑るようになっている。
図2に示す実施形態のように好ましくは、ガイド12は、経路Pに沿う蓋100の進行方向に関して連続的に入口部分13と本体部分14と出口部分15とから成り、各部分は、(蓋の進行方向に関して)以前のものよりも水平方向に対してより大きく傾斜している。ただしこの後明らかとなるように、代替的な配置及び傾斜もまた、本発明においては可能である。
キャップや栓などの容器の蓋100は通常、それぞれの軸Bに沿って延びる実質的な円筒形を有している。従って、容器蓋のそれぞれは、軸Bに対して実質的に直交する頂部面101と、軸Bに対して実質的に平行な側部(円筒)端面102とを持っている。
ガイド12は具体的には、少なくとも搬送路Pの管P1に沿って、シャフト9に平行に延伸し、かつ蓋100の側端部表面102に動作的に作用する一つ又は複数の第1のガイド12’と、蓋100の頂部表面101と協働する一つ又は複数の第2のガイド12’’とを備える(図2参照)。
実際に蓋100の側部端面101は、蓋100を前進させるレールをシャフト9と共に実質的に画定する一つ又は複数の第1のガイド12’上に載っている。
その一方でこの後明らかとなるように、蓋100は蓋100の両側に(すなわち、蓋100の頂部と底部にそれぞれが面して)配置された複数の対の第2のガイド12’’の間、又は片側の一つ又は複数の第2のガイド12’’と反対側の支持壁との間、で実質的にガイドされる。
ガイド12’が垂直方向に対して傾斜しているところで、螺旋コイル8が蓋100に作用しないガイド12’部分は、蓋100は重力によって回転する。
殺菌ユニット1は更に、ガイド手段4と搬送手段7とを覆うようになっている外部ケース16を備えている。図に示した実施例では、ケース16はシェル部分17とカバー部分18とから成り、シェル部分は、ガイド12、螺旋コイル8、シャフト9及びモータ手段10とを実質的に覆うようになっている。
図1を特に参照すると、外側ケース16は入口通路19、中央本体20及び出口通路21から成り、搬送手段7とガイド手段4の一部は中央本体20に覆われている。
中央本体20は、蓋処理(すなわち殺菌)ステーション2の位置に少なくとも第1のサービス窓を有し、中央本体20の内部にあるガイド手段4の部分によって画定される経路Pを移動する蓋100の処理を可能とする。
好ましくは中央本体20が更に、第1のサービス窓22の反対に第2のサービス窓23を備え、螺旋コイル8によって経路Pを搬送される蓋100が両側から都合よく殺菌されるようにする。
入口通路19は一般に、処理される蓋を格納及び供給するための装填手段又は蓋格納ユニット(図示せず)に連通している。
図1に示す実施形態において、殺菌ユニット1は、例えば電子ビーム、ガンマ線又はベータ線のエミッタである、イオン化放射源24、24’を一つ又は複数備えており、それぞれは関連するサービス窓22、23に相互に対向して配置されて、その間に蓋が通る搬送路Pがある。図1に示すような場合、一対のエミッタ24、24’の間にガイド手段と搬送手段が配置され、外側ケース16の中央本体20にあるそれぞれの窓22、23(図ではその1つだけが示されている)を通して蓋100が照射される。従って、有利なことに蓋100は頂部側と底部側の両側を処理することができる。
好適な実施形態において、螺旋コイル8は中空であり(図3の細部を参照)、有利なことにその内部を水などの熱伝導(例えば冷却)流体を流すことができる。この目的のために、有利には冷却流体用の入口と出口を螺旋コイル8の両端、例えばシャフト端部の両取り付け部に設けてもよい。
使用時には、電子ビームエミッタは、殺菌目的で一般に使用される他のイオン化放射源と同様に熱を放出する(例えば、当分野では約500Wの熱出力が一般的である)。従って、殺菌ユニット1全体としての過熱防止のため、及びより重要なことには、螺旋コイル8の温度を所定範囲内に維持して熱膨張による形状変化をさせないための両方の観点から、少なくとも1つの処理ステーション2において放出された熱を除去することが望ましい。実際問題として、螺旋コイル8の熱変形は動作異常をもたらし、隣接するコイルの旋回部間のピッチが変化して、蓋100との協働が不正確となって適切に機能しなくなったり、全く機能不能となったりすることがある。
図4の符号1.1は、本発明による殺菌ユニットの代替実施形態を全体として表している。
殺菌ユニット1.1は、殺菌ユニット1と類似であり、以下にはその違いの部分だけに関して説明し、殺菌ユニット1と1.1との同一または対応する部品に対しては可能な範囲で同一の符号を用いた。
より具体的には、殺菌ユニット1.1は、軸Hに平行で螺旋コイル8の旋回部に実質的に接している複数の強化ガイド要素31.1を備えている点(図5の詳細も参照)が、殺菌ユニット1とは異なっている。好ましくは、強化ガイド要素31.1は軸Hの周りに等間隔となっている。例えば、図4の実施形態においては、3つの強化ガイド要素31.1が互いに120度ずれて備えられている。
図示した実施形態において、強化ガイド要素31.1は螺旋コイル8の一部分に沿ってしか延伸していないが、螺旋コイル8の全長に亘って平行に延びていてもよい。
好ましくは殺菌ユニット1.1が更に、螺旋コイル8と動的に連結され、螺旋コイル8の一端において同軸的に延伸した回転遮蔽部32.1を備えている。
螺旋コイル8とその旋回部分は、強化ガイド要素31.1が螺旋コイル8の旋回部と蓋100との適切な相互作用を妨げないように、設計されて配置される。
強化ガイド要素31.1は螺旋コイル8が熱膨張によって偏向したり、変形を受けたりすることを防止する助けとなっており、それによって螺旋コイル8そのものの最適な機能性を保持するようになっている。
強化ガイド要素31.1を備えることによるこのプラスの効果は、前述したような中空螺旋コイル8の中に冷却流体を流すことにより得られる効果に重畳することができることは明らかであろう。
殺菌ユニット1(1.1)の動作を次に簡単に説明する。
装填手段又は蓋格納ユニットから取り込まれた蓋100は、入口通路19内に配置されたガイド12の部分に沿って滑って、経路P(具体的には図1参照)に沿って列を形成する。
螺旋コイル8はモータ手段10によって軸9の周りを回転させられ、螺旋コイル8の旋回部とガイド12は蓋100と協働して搬送路Pの管P1に沿う蓋100の前進運動を生成する。
これにより螺旋コイル8は、管P1に到達したすべての蓋100に管P1に沿う均一な速度を付与し、少なくとも1つのサービス窓22を横断して搬送する。そこで、蓋100は都合よく、殺菌手段(電子ビームエミッタなど)の放射源24の作用に曝される。螺旋コイル8の形状のおかげで、蓋100は搬送路Pの管P1に沿って進行する際に、相互に均等な間隔を維持する。実際には、螺旋コイル8の旋回部は蓋100とは実質的に外縁の一点で接する。従って、摩擦や、結果としてあり得る局所的な摩耗粉や塵埃の形成は有利なことに大幅に低減される。更に、蓋100は螺旋コイル8のそれぞれの旋回部で相互に分離され、螺旋コイル8の隣接する旋回部及びガイド12と緩い協働をしているので、出口通路21に向かって前進するときに、蓋100の回転運動(すなわち軸Bの周りの回転)が誘導される。この回転運動の結果、非常に有利なことに陰ゾーンの形成が防止される。
蓋100が搬送路Pの管P1に沿って進む速度は、ガイド12の傾斜及び蓋の材料特性(例えば摩擦係数、密度など)とは無関係に、シャフト9の回転速度を制御するだけで好都合かつ均一に制御される。
イオン化手段の放射源24による余分の熱の発生を除去するために、水などの冷却流体が螺旋コイル8内部を流れるようにしてもよい。
本発明による殺菌ユニット1の利点は、上記の説明で明らかであろう。
特に、本発明による殺菌ユニット1は蓋100同士の間の陰のゾーンの形成を防止し、蓋の完全かつ安全な殺菌処理を可能とする。更に、搬送手段7(螺旋コイル8)の回転速度のみの制御で、蓋を所定の間隔及び均一な所与の速度で均一な間隔を置いて経路Pに沿って前進させることが可能である。従って、すべての蓋が殺菌手段の放射源24に、同一の処理時間でかつ実質的に等価な処理条件下で均一に曝され得る。特に、処理継続時間は使用時に好都合に調整可能である。更に、蓋100が搬送路Pの管P1に沿って、すなわち実際に経路Pの殺菌プロセスに関係する部分に沿って前進する速度は、ガイド12の垂直方向への傾斜に関係なく、搬送手段7によって一義的に制御されるので、非常に多くの設計の選択肢が可能となり、設計者が異なる形状及び間隔の制約に対しても殺菌ユニットを適合させることが可能となる。実際問題として、管P1は水平にでも又は垂直にでも配置可能である。
有利なことには、本発明による殺菌ユニットは、工場の生産性の要求に基づいて、例えば1時間当たりに栓をするビンの数の関数として、経路P上を前進する蓋の速度を調節することが可能である。
更に、本発明の殺菌ユニットは、螺旋コイル8の回転速度などのパラメータを時折調節したりする必要なしに、異なる材料の蓋を操作することが可能である。それは蓋100とガイド12との間の摩擦係数などの性質が殺菌手段の放射源24への露出時間に関係しないからである。その上、螺旋コイル8をより小さな、又はより大きな蓋と協働するように適合された修正コイルに交換することで、異なる寸法の蓋100に対して殺菌ユニット1を十分に機能的に操作可能であるようにできる。
本明細書で記述し説明した殺菌ユニット1に対して、添付の特許請求の範囲に規定される保護範囲から逸脱しなければ、変更を加えることが可能であることは明らかである。