JP2014516537A - 組換え油性微生物における、その中のオイル含量を増加させるためのカレオシンの発現 - Google Patents

組換え油性微生物における、その中のオイル含量を増加させるためのカレオシンの発現 Download PDF

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Abstract

カレオシンポリペプチドの発現によりオイル含量が増加した組換え油糧微生物について記載される。本開示発明の組換え油糧微生物は、オイルとしてその乾燥細胞重量の少なくとも25%を産生し、かつ機能的な多価不飽和脂肪酸(PUFA)生合成経路とカレオシンポリペプチドをコードする少なくとも1つの遺伝子コンストラクトとを含む。組換え油糧微生物中のオイル量を増加させる方法についても記載される。

Description

本出願は2011年5月26日に出願された米国仮特許出願第61/490,337号明細書の利益を主張するものであり、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれるものとする。
本発明はバイオテクノロジーの分野に入る。より具体的には、本発明は、カレオシンポリペプチドの発現により、より多くのオイルを産生することができる組換え油性微生物に関する。
糸状菌、酵母、および藻類などの微生物は、脂肪酸アシル、グリセロ脂質、リン脂質、スフィンゴ脂質、サッカロ脂質、ポリケチド、ステロール脂質、およびプレノール(prenol)脂質を含む、種々の脂質を産生する。微生物から一般に抽出される脂質の1種として、グリセロールの脂肪酸エステル(「トリアシルグリセロール」または「TAG」)を含むグリセロ脂質がある。TAGは脂肪酸の主要な貯蔵単位であり、したがって、長鎖多価不飽和脂肪酸(PUFA)ならびに短鎖飽和および不飽和脂肪酸と長鎖飽和脂肪酸を含有することができる。医薬品およびダイエット食品の中に、エイコサペンタエン酸[「EPA」;オメガ−3]およびドコサヘキサエン酸[「DHA」;オメガ−3]などのPUFAを含有させることに関心が高まっている。したがって、PUFAを含む脂質組成物を効率的かつ費用対効果高く製造するための手段が具体的に望まれている。
PUFAの種々の商業的供給源がある。しかしながら、天然供給源を使用するこれらの製造方法にはいくつかの欠点が付随する。第1に、魚類および植物などの天然供給源は、高度に不均一なオイル組成物を有する傾向がある。そのため、これらの供給源から得られるオイルは、1つまたは複数の所望のPUFAを分離または濃縮するために、広範囲の精製が必要となることがある。魚油には一般に不快な味および臭いがあり、それらを、所望の生成物から経済的に分離することが不可能な場合があり、そのような生成物を食品サプリメントとして受け入れることを困難にさせることがある。不快な味および臭いにより、高用量の摂取に基づく医療レジメンが望ましくないものになる場合があり、患者によるコンプライアンスが阻害されることがある。
魚類は環境汚染物質を蓄積することがあり、栄養補助食品として魚油カプセルを摂取することは、望ましくない汚染物質の摂取をもたらす可能性がある。PUFAの天然供給源はまた、入手可能性が制御しがたい変動を受ける(例えば、魚類資源の場合には、天候、病気、または過剰漁獲により)。さらに、PUFAを産生する作物は、食糧生産用に開発されたハイブリッド作物と経済的に競合しないことが多い。また、PUFAを天然に産生する一部の生物(例えば、ポルフィリディウム属(Porphyridium)、モルティエラ属(Mortierella))の大規模発酵も、工業規模で培養するには高価かつ/または困難になり得る。これらの制限の結果として、工業規模でPUFAを効率的かつ経済的に産生することができる組換え油性微生物の開発に向けて広範囲の研究がなされてきた(例えば、特許文献1)。さらに、所望のPUFA産生を可能にする、組換え油性微生物中の脂肪酸生合成経路の改変も報告されている(例えば、特許文献2、3、4、および5)。しかしながら、現在公知の株のオイルに対して、オイル含量が増加した組換え油性微生物の必要性が依然として存在する。
特許文献6では、カロテノイドなどの疎水性/親油性化合物を産生するように操作された微生物細胞中の少なくとも1つの植物オレオシン遺伝子の発現が、化合物の全体的な力価を顕著に増加させることを開示している。
Froissardら(FEMS Yeast Res.9:428−438,2009)は、カレオシンポリペプチド(シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のカレオシン1、AtClo1)をコードする異種遺伝子で形質転換された非油性酵母(サッカロミセス・セレビシア(Saccharomyces cerevisiae))が、脂肪体の数およびサイズの増加を示し、親株よりも多くの脂肪酸を蓄積したことを開示している。
米国特許出願公開第2005−0136519−A1号明細書 米国特許出願公開第2006−0110806−A1号明細書 米国特許出願公開第2006−0115881−A1号明細書 米国特許出願公開第2009−0093543−A1号明細書 米国特許出願公開第2010−0317072−A1号明細書 米国特許第7,256,014号明細書
しかしながら、そのような組換え微生物細胞のオイル含量を増加させるために、カレオシンポリペプチドをコードする遺伝子で形質転換された組換え油性微生物の報告はない。
第1の実施形態では、本発明は、その乾燥細胞重量の少なくとも25%をオイルとして産生し、かつ機能的な多価不飽和脂肪酸生合成経路とカレオシンポリペプチドをコードする少なくとも1つの遺伝子コンストラクトとを含む組換え油性微生物を提供する。この実施形態の組換え油性微生物は、対応する対照により産生されるオイル量と比較すると、少なくとも1つの多価不飽和脂肪酸を含む、より大量のオイルを産生する。
第2の実施形態では、組換え油性微生物は、酵母、菌類、または藻類であってもよい。第3の実施形態では、組換え油性微生物は、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)であってもよい。
第4の実施形態では、組換え油性微生物により産生されるオイル内に含まれる多価不飽和脂肪酸は、オメガ−3多価不飽和脂肪酸であってもオメガ−6多価不飽和脂肪酸であってもよい。第5の実施形態では、オメガ−3多価不飽和脂肪酸はエイコサペンタエン酸(EPA)である。
第6の実施形態では、遺伝子コンストラクトによりコードされたカレオシンポリペプチドは、Clustal Wアライメント法に基づくと、配列番号2、4、6、8、10、12、14、38、40、42、または51に対して少なくとも90%の同一性があるアミノ酸配列を有する。この実施形態のカレオシンポリペプチドにはカレオシン機能がある。
第7の実施形態では、遺伝子コンストラクトによりコードされたカレオシンポリペプチドは、ジアシルグリセロールのアシル化を触媒する酵素に連結している。第8の実施形態では、ジアシルグリセロールのアシル化を触媒する酵素はリン脂質:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(PDAT)である。
第9の実施形態では、カレオシンポリペプチドは、カレオシンポリペプチドの野生型アミノ酸配列に対して付加されたシステイン残基を含有する。付加されたシステイン残基は、カレオシンポリペプチドのN末端およびC末端の領域内に点在することができる。
第10の実施形態では、本発明は、組換え油性微生物に含有されるオイル量を増加させる方法であって、
a)本発明の組換え油性微生物を準備するステップと、
b)少なくとも1つの多価不飽和脂肪酸を含むオイルが産生する条件下でステップ(a)の組換え油性微生物を増殖させるステップと、
c)場合によっては、ステップ(b)のオイルを回収するステップと
を含む方法を提供する。
この方法の一態様では、組換え油性微生物は、酵母、菌類、または藻類であってもよい。別の態様では、組換え油性微生物はヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)であってもよい。
この方法の別の態様では、組換え油性微生物により産生されるオイル内に含まれる多価不飽和脂肪酸は、オメガ−3多価不飽和脂肪酸であってもオメガ−6多価不飽和脂肪酸であってもよい。別の態様では、オメガ−3多価不飽和脂肪酸はエイコサペンタエン酸(EPA)である。
この方法のさらに別の態様では、遺伝子コンストラクトによりコードされたカレオシンポリペプチドは、Clustal Wアライメント法に基づくと、配列番号2、4、6、8、10、12、14、38、40、42、または51に対して少なくとも90%の同一性があるアミノ酸配列を有する。この態様のカレオシンポリペプチドにはカレオシン機能がある。
本明細書の実施例1に記載される、pYRH55のプラスミドマップを示す図である。 AtClo1sとcys−AtClo1sとの間のアミノ酸配列アライメントを示す図である。cys−AtClo1sを得るためにAtClo1sに付加されたシステイン残基には下線を付す。
Figure 2014516537
Figure 2014516537
本明細書で引用されたすべての特許文献および非特許文献の開示は、それらの内容全体を参照によって本明細書に組み込むものとする。
本開示では、以下の用語および略語を使用する。
「翻訳領域」は「ORF」と略す。
「ポリメラーゼ連鎖反応」は「PCR」と略す。
「米国培養細胞系統保存機関」は「ATCC」と略す。
「多価不飽和脂肪酸」は「PUFA(s)」または「PUFAs」と略す。
「トリアシルグリセロール」は「TAG」と略す。
「総脂肪酸」は「TFA」と略す。
「脂肪酸メチルエステル」は「FAME」と略す。
「乾燥細胞重量」は「DCW」と略す。
本明細書で使用する用語「発明」または「本発明」は、限定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に定義されたかまたは本明細書に記載された任意の発明に一般に適用するものである。
本明細書で使用する用語「カレオシン機能」は、脂肪体および/または小胞体(ER)へのカレオシンの細胞内局在を指す。好ましくは、カレオシンポリペプチドは脂肪体に局在する。免疫蛍光顕微鏡法、電子顕微鏡法、および細胞成分分画(例えば、密度勾配遠心分離)は、カレオシン局在を決定するために使用することができる周知の分析法の例である。カレオシンポリペプチド機能にはまた、その過程が脂肪体融合にある役割を果たすと考えられている、カルシウム陽イオン(Ca2+)に結合するカレオシンの能力を含めることができる(Murphy et al.,2000,Biochem.Soc.Trans.28:710−711)。カレオシンポリペプチドによるカルシウム結合は、例えば、EGTAなどのカルシウムキレーターがカレオシンの電気泳動度を変化させ得るか否かを決定することを含む、Chenら(1999,Plant Cell Physiol.,40:1079−1086)により記載された方法を使用して決定することができる。あるいは、カレオシン機能には、カレオシンの過剰発現時における、油性の細胞または微生物の総脂質レベルの増加に寄与するカレオシンの能力が含まれる;そのような分析の例が本明細書に提供される。
用語「融合タンパク質」は、少なくとも2つの独立しかつ分離可能な酵素活性、機能性、および/または結合活性を有する単一ポリペプチドを指す。用語「マルチザイム」および「融合タンパク質」は、本明細書において互換的に使用される。好ましくは、マルチザイムは、第2の酵素活性、機能性、または結合活性に連結された第1の酵素活性を含む。
用語「連結(link)」は、独立しかつ分離可能な酵素、機能性、および/または結合活性を有する少なくとも2つのポリペプチドの連結(joining)または結合(bonding)を指す。用語「連結」および「に連結した」は、本明細書において互換的に使用される。
用語「リンカー」は、マルチザイムまたは融合タンパク質における、2つ以上のポリペプチド間の結合または連結を指す。マルチザイムの形成に使用される連結は、単一ポリペプチド結合で最小限構成される。別の態様では、連結は、プロリンなどの1つのアミノ酸残基またはポリペプチドで構成することができる。連結がポリペプチドである場合、連結が少なくとも1つのプロリンアミノ酸残基を有することが望ましいことがある。
用語「油性」は、エネルギー源をオイルの形態で貯蔵する傾向がある生物を指す(Weete,In:Fungal Lipid Biochemistry,2nd Ed.,Plenum,1980)。一般に、油性微生物の細胞オイル含量はシグモイド曲線に従い、脂質濃度は、後期対数増殖期または初期定常増殖期に最大に達するまで増加し、次いで、後期定常期および死滅期の間に徐々に減少する(Yongmanitchai and Ward,Appl.Environ.Microbiol.,57:419−25(1991))。油性微生物が乾燥細胞重量の約25%を超えてオイルを蓄積することはまれではない。用語「油性酵母」は、オイルを生成することができる酵母と分類される微生物を指す。油性酵母の例としては、決してこれらに限定されるものではないが、次の属、すなわちヤロウィア(Yarrowia)、カンジダ(Candida)、ロドトルラ(Rhodotorula)、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)、クリプトコックス(Cryptococcus)、トリコスポロン(Trichosporon)およびリポマイセス(Lipomyces)が挙げられる。
用語「ω−3脂肪酸」、「n−3脂肪酸」、および「オメガ−3脂肪酸」は、本明細書で互換的に使用される。
用語「ω−6脂肪酸」、「n−6脂肪酸」、および「オメガ−6脂肪酸」は、本明細書で互換的に使用される。
デサチュラーゼを指す場合、用語「Δ」および「デルタ」は、本明細書で互換的に使用される。
用語「脂質」は、任意の脂溶性(すなわち、親油性)天然分子を指す。脂質の一般的概要は、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2009−0093543−A1号明細書(その中の表2を参照のこと)に提供されている。
用語「オイル」は、25℃で液体であり、通常多価不飽和である脂質物質を指す。油性生物では、オイルは、総脂質の大部分を構成する。「オイル」は主としてトリアシルグリセロールから構成されるが、他の中性脂質、リン脂質、および遊離脂肪酸を含有することもある。オイル中の脂肪酸組成および総脂質の脂肪酸組成は、一般に類似している;したがって、総脂質中のPUFA濃度の増加または減少は、オイル中のPUFA濃度の増加または減少と対応することになり、その逆も同様である。
本明細書で使用する用語「より大量のオイルを産生する」は、本明細書で開示される組換え油性微生物から回収されたオイルまたは総脂質の量が、対応する野生型微生物またはカレオシンポリペプチドをコードする遺伝子コンストラクトを含まないかもしくはカレオシンポリペプチドをコードする遺伝子コンストラクトを含むが発現しない組換え油性微生物であり得る対応する対照から回収されたオイルまたは総脂質の量よりも大きいことを意味する。例えば、対応する対照は、カレオシンをコードする遺伝子コンストラクトを含有するように改変される前の組換え油性微生物(すなわち、親株)であってもよく、カレオシンをコードする遺伝子コンストラクトを含有するように改変されたが、カレオシンを発現しない組換え油性微生物であってもよい。本明細書に記載の組換え油性微生物により産生されるオイルまたは総脂質の量は、対応する対照組換え油性微生物の総脂質/オイル含量に対して、少なくとも約3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、または25%増加し得る。
用語「脂肪酸」は、より長い鎖長の酸およびより短い鎖長の酸の両方が知られているが、約C12〜C22の種々の鎖長の長鎖脂肪酸(アルカン酸)を指す。主な鎖長はC16〜C22の間である。脂肪酸の構造は「X:Y」の単純な表記法で表し、ここで、Xは、特定の脂肪酸における炭素原子の総数であり、Yは二重結合の数である。「飽和脂肪酸」対「不飽和脂肪酸」、「一価不飽和脂肪酸」対PUFA、および「オメガ−6脂肪酸」対「オメガ−3脂肪酸」の間の差異に関するさらに詳細な説明が、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第7,238,482号明細書に提供されている。
本明細書中の用語「総脂肪酸」[「TFA」]は、例えばバイオマスまたはオイルのこともある所与の試料において、塩基エステル転移反応法(当技術分野で公知)により脂肪酸メチルエステル[「FAME」]に誘導することができる、すべての細胞脂肪酸の合計を指す。したがって、総脂肪酸は、中性脂質分画(ジアシルグリセロール、モノアシルグリセロール、およびTAGを含む)由来、および遊離脂肪酸以外の極性脂質分画(例えば、PCおよびPEの分画を含む)由来の脂肪酸を含む。
細胞の「総脂質含量」という用語は、乾燥細胞重量(DCW)のパーセントとしてのTFAの尺度である。ただし、DCWのパーセントとしてのFAMEの尺度[「FAME%DCW」]で総脂質含量を近似することができる。したがって、総脂質含量[「TFA%DCW」]は、例えばDCW100ミリグラム当たりの総脂肪酸のミリグラムに等しい。
総脂質中の脂肪酸濃度は、TFAの重量パーセント[「%TFA」]、例えばTFA100ミリグラム当たりの所与の脂肪酸のミリグラムとして本明細書では表現する。本明細書の開示に特に記載がない限り、総脂質に対する所与の脂肪酸のパーセントに言及する場合、%TFAとしての脂肪酸濃度に等しい(例えば、総脂質の%EPAは、EPA%TFAに等しい)。
一部の場合には、細胞の所与の脂肪酸含量を、乾燥細胞重量[「%DCW」]の重量パーセントとして表現することが有用である。したがって、例えば、EPA%DCWは、次式:(EPA%TFA)(TFA%DCW)]/100によって決定されよう。しかしながら、乾燥細胞重量[「%DCW」]の重量パーセントとしての細胞の所与の脂肪酸含量は、次式:(EPA%TFA)(FAME%DCW)]/100で近似することができる。
本明細書で使用する用語「多価不飽和脂肪酸」および「PUFA」は、少なくとも18個の炭素原子および2つ以上の二重結合を有する脂肪酸を指す。
本明細書中でPUFAを記載するために使用する名称を、表2に示す。「簡便表記」と題された欄には、オメガ参照系を使用して、炭素数、二重結合数、およびオメガ炭素(この目的のために1と番号付けされた)から数えてオメガ炭素に最も近い二重結合の位置を示す。表2の残りの欄には、オメガ−3およびオメガ−6脂肪酸とそれらの前駆体の一般名、本明細書を通して使用される略称、ならびに各化合物の化学名を要約する。
Figure 2014516537
用語「PUFA生合成経路」および「オメガ−3/オメガ−6脂肪酸生合成経路」は、本明細書で互換的に使用され、オレイン酸を、LA、EDA、GLA、DGLA、ARA、DTA、およびDPAn−6などのオメガ−6脂肪酸に、そしてALA、STA、ETrA、ETA、EPA、DPA、およびDHAなどのオメガ−3脂肪酸に変換する代謝過程を指す。この過程は、文献に十分に記載されている(例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2006−0115881−A1号明細書を参照のこと)。手短に言えば、この過程には、小胞体膜中に存在する「PUFA生合成経路酵素」と称される一連の特定の伸長および不飽和化の酵素を介する、炭素原子の付加による炭素鎖の伸長および二重結合の付加による分子の不飽和化が含まれる。より具体的には、「PUFA生合成経路酵素」は、デルタ−4デサチュラーゼ、デルタ−5デサチュラーゼ、デルタ−6デサチュラーゼ、デルタ−12デサチュラーゼ、デルタ−15デサチュラーゼ、デルタ−17デサチュラーゼ、デルタ−9デサチュラーゼ、デルタ−8デサチュラーゼ、デルタ−9エロンガーゼ、C14/16エロンガーゼ、C16/18エロンガーゼ、C18/20エロンガーゼ(デルタ−6エロンガーゼまたはデルタ−9エロンガーゼ)、および/またはC20/22エロンガーゼを含む、PUFAの生合成に関連した任意の酵素(および前記酵素をコードする遺伝子)を指す。オメガ−3/オメガ−6脂肪酸生合成経路と関連して本明細書で使用する用語「機能的」は、この経路中の遺伝子の一部または全部が活
性酵素を発現することを意味する。「オメガ−3/オメガ−6脂肪酸生合成経路」または「機能的なオメガ−3/オメガ−6脂肪酸生合成経路」は、多くの脂肪酸生成物がこの経路の遺伝子のサブセットの発現を必要とするだけであるので、この段落に記載された遺伝子がすべて必要であることを意味するものではないことを理解されたい。
用語「ポリヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド配列」、「核酸配列」、「核酸断片」および「単離核酸断片」は、本明細書において互換的に使用する。これらの用語はヌクレオチド配列等を包含する。ポリヌクレオチドは、合成、非天然または改変のヌクレオチド塩基を場合によっては含有する、一本鎖または二本鎖のRNAまたはDNAのポリマーとすることができる。DNAポリマーの形態にあるポリヌクレオチドは、cDNA、ゲノムDNA、合成DNAまたはそれらの混合物の1つまたは複数のセグメントから構成することができる。ヌクレオチド(通常、5’−一リン酸形態で見出される)は、次の一文字名により表す。アデニル酸またはデオキシアデニル酸(それぞれRNAまたはDNAに対応)に対しては「A」、シチジル酸またはデオキシシチジル酸に対しては「C」、グアニル酸またはデオキシグアニル酸に対しては「G」、ウリジル酸に対して「U」、デオキシチミジル酸に対しては「T」、プリン(AまたはG)に対しては「R」、ピリミジン(CまたはT)に対しては「Y」、GまたはTに対しては「K」、AまたはCまたはTに対しては「H」、イノシンに対しては「I」、任意のヌクレオチドに対しては「N」である。
一本鎖形態の核酸断片が、温度および溶液イオン強度の適切な条件下で別の核酸断片にアニールすることができる場合、核酸断片は、cDNA、ゲノムDNAまたはRNA分子などの別の核酸断片に「ハイブリダイズ可能」である。ハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件は周知であり、参照によって本明細書に組み込むSambrook,J.,Fritsch,E.F.and Maniatis,T.Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor,NY(1989)の特に第11章および表11.1に例示されている。温度およびイオン強度の条件は、ハイブリダイゼーションの「ストリンジェンシー」を決定する。ストリンジェンシー条件は、中程度に類似した断片(遠縁の生物からの相同配列など)から高度に類似した断片(機能性酵素を再現する、近縁の生物からの遺伝子など)までスクリーニングするように調整することができる。ハイブリダイゼーション後の洗浄は、ストリンジェンシー条件を決定する。好ましい条件の1セットは、6×SSC、0.5%SDS、室温で15分間に始まり、次いで2×SSC、0.5%SDS、45℃で30分間を反復し、さらに0.2×SSC、0.5%SDS、50℃で30分間を2回反復する一連の洗浄を使用する。ストリンジェントな条件のより好ましいセットは、より高温を使用するが、その洗浄は、最後の2回の0.2×SSC、0.5%SDS、30分間洗浄の温度を60℃に上昇させることを除いて上記のものと同じである。高度にストリンジェントな条件の別の好ましいセットは、最後の2回に0.1×SSC、0.1%SDS、65℃の洗浄を使用する。ストリンジェントな条件のさらなるセットとして、例えば、0.1×SSC、0.1%SDS、65℃でのハイブリダイゼーションおよび2×SSC、0.1%SDS、次いで0.1×SSC、0.1%SDSでの洗浄が挙げられる。
ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに応じて、塩基間のミスマッチが可能となるけれども、ハイブリダイゼーションには、2つの核酸が相補的配列を含有することが必要となる。核酸をハイブリダイズさせるための適切なストリンジェンシーは、当技術分野で周知の変数である核酸の長さおよび相補性の程度に依存する。2つのヌクレオチド配列間の類似性または相同性の程度が高い程、それらの配列を有する核酸ハイブリッドの熱融解点[「T」または「Tm」]の値は高くなる。Tmの高さに対応する、核酸ハイブリダイゼーションの相対的安定性は、RNA:RNA、DNA:RNA、DNA:DNAの順序で低下する。長さが100超のヌクレオチドのハイブリッドについては、Tmの計算式が誘導されている(Sambrookら、前出、9.50−9.51を参照のこと)。より短い核酸、すなわちオリゴヌクレオチドによるハイブリダイゼーションについては、ミスマッチの位置がより重要になり、オリゴヌクレオチドの長さがその特異性を決定する(Sambrookら、前出、11.7−11.8を参照のこと)。一実施形態では、ハイブリダイズ可能な核酸の長さは少なくとも約10ヌクレオチドである。ハイブリダイズ可能な核酸の最小の長さは、好ましくは少なくとも約15ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも約20ヌクレオチドであり、最も好ましくは、その長さは少なくとも約30ヌクレオチドである。さらに、当業者ならば、温度および洗浄液塩濃度は、プローブの長さなどの要因に応じて必要なときに調整することができることを認識されよう。
アミノ酸またはヌクレオチド配列の「実質的な部分」とは、当業者による配列のマニュアル評価またはBasic Local Alignment Search Tool[「BLAST」](Altschul,S.F.,et al.,J.Mol.Biol.,215:403−410(1993))などのアルゴリズムを使用する、コンピュータによる自動配列比較および同定のいずれかによって、そのポリペプチドまたは遺伝子を推定的に同定するのに十分なポリペプチドのアミノ酸配列または遺伝子のヌクレオチド配列を含む部分である。一般に、10以上の連続したアミノ酸配列または30以上のヌクレオチド配列が、既知のタンパク質または遺伝子に相同なものとしてポリペプチド配列または核酸配列を推定的に同定するために必要である。さらに、ヌクレオチド配列に関しては、20〜30の連続したヌクレオチドを含む、遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブを、微生物コロニーまたはバクテリオファージプラークのin situハイブリダイゼーションなど、遺伝子同定(例えばサザンハイブリダイゼーション)および単離の配列依存的方法に使用することができる。加えて、プライマーを含む特定の核酸断片を得るために、12〜15塩基の短いオリゴヌクレオチドを、PCRの増幅プライマーとして使用することができる。したがって、ヌクレオチド配列の「実質的な部分」は、その配列を含む核酸断片を特異的に同定および/または単離するのに十分な配列を含む。本明細書に報告された配列の利益を受ける当業者は、本明細書に記載の方法論に基づいて、当業者に周知の目的のために本開示の配列の全部または実質的な部分を今や使用することができる。
用語「相補的」は、互いにハイブリダイズすることができるヌクレオチド塩基間の関係を記載するために使用する。例えば、DNAに関しては、アデノシンはチミンに相補的であり、シトシンはグアニンに相補的である。
用語「相同性」および「相同」は互換的に使用する。これらは、1つまたは複数のヌクレオチド塩基の変化が、遺伝子発現の媒介または特定の表現型の生成に対する遺伝子断片の能力に影響を及ぼさない核酸断片を指す。これらの用語はまた、最初の未改変断片に比較して、得られる核酸断片の機能特性が実質的に変化しない、1つまたは複数のヌクレオチドの欠失または挿入などの核酸断片の改変を指す。
さらに、当業者は、相同な核酸配列はまた、0.5×SSC、0.1%SDS、60℃などの中程度にストリンジェントな条件下で、本明細書に例示した配列またはその配列と機能的に同等である、本明細書に開示のヌクレオチド配列の任意の部分とハイブリダイズする能力によっても定義されることを認識する。ストリンジェンシー条件は、中程度に類似した断片をスクリーニングするように調整することができる。
用語「パーセント同一性」は、配列の比較により決定される、2つ以上のポリペプチド配列間または2つ以上のポリヌクレオチド配列間の関係を指す。「パーセント同一性」は、場合によっては、比較配列間のマッチのパーセントにより決定されるポリペプチド配列間またはポリヌクレオチド配列間の配列関連度も意味する。「パーセント同一性」および「パーセント類似性」は、これらに限定されないが、1)Computational Molecular Biology(Lesk,A.M.,Ed.)Oxford University:NY(1988);2)Biocomputing:Informatics and Genome Projects(Smith,D.W.,Ed.)Academic:NY(1993);3)Computer Analysis of Sequence Data,Part I(Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,Eds.)Humana:NJ(1994);4)Sequence Analysis in Molecular Biology(von Heinje,G.,Ed.)Academic(1987);および5)Sequence Analysis Primer(Gribskov,M.and Devereux,J.,Eds.)Stockton:NY(1991)に記載のものを含む、公知の方法によって容易に計算することができる。
パーセント同一性を決定する好ましい方法は、試験配列間に最良のマッチを与えるように設計されている。パーセント同一性およびパーセント類似性を決定する方法は、一般に入手できるコンピュータプログラムの中に成文化されている。配列アラインメントおよびパーセント同一性の計算は、LASERGENEバイオインフォマティクス計算スイート(DNASTAR Inc.,Madison,WI)のMegAlign(商標)プログラムを使用して実施することができる。配列の多重アライメントは、「アライメントのClustal V法」および「アライメントのClustal W法」(Higgins and Sharp,CABIOS,5:151−153(1989);Higgins,D.G.et al.,Comput.Appl.Biosci.,8:189−191(1992)に記載)を含む数種類のアルゴリズムを包含し、LASERGENEバイオインフォマティクス計算スイート(DNASTAR Inc.)のMegAlign(商標)(バージョン8.0.2)プログラムの中にある「アライメントのClustal法」を使用して実施する。いずれかのClustalプログラムを使用して配列アライメントをした後、プログラム中の「配列距離」表を見ることにより、「パーセント同一性」を得ることができる。
「アライメントのBLASTN法」は、デフォルトパラメーターを使用してヌクレオチド配列を比較するための国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)[「NCBI」]により提供されるアルゴリズムであり、一方、「アライメントのBLASTP法」は、デフォルトパラメーターを使用して、タンパク質配列を比較するためのNCBIにより提供されるアルゴリズムである。
同一または類似の機能または活性を有する他種由来のポリペプチドを同定する際に、多くのレベルの配列同一性が有用であることは、当業者は十分理解している。適切な核酸断片、すなわち本明細書に記載の方法および宿主細胞において単離した、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、本明細書に報告したアミノ酸配列に対して少なくとも約70〜85%同一のポリペプチドをコードし、一方、より好ましい核酸断片は、少なくとも約85〜95%同一のアミノ酸配列をコードする。好ましい範囲は上記のとおりであるが、パーセント同一性の有用な例としては、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%などの50%〜100%間の任意の整数パーセントが挙げられる。さらに、この単離したヌクレオチド断片のいずれの全長相補物もまたは部分的相補物も目的のものである。
適切な核酸断片は、上記の相同性を有するだけでなく、典型的には少なくとも50アミノ酸、好ましくは少なくとも100アミノ酸、より好ましくは少なくとも150アミノ酸、さらにより好ましくは少なくとも200アミノ酸、最も好ましくは少なくとも250アミノ酸を有するポリペプチドをコードする。
用語「コドン縮重」は、コードされたポリペプチドのアミノ酸配列に影響を及ぼすことなく、ヌクレオチド配列の変異を許容する遺伝暗号における性質を指す。当業者は、所与のアミノ酸を指定するヌクレオチドコドンの使用において特定の宿主細胞が示す「コドンバイアス」について十分承知している。したがって、宿主細胞における発現の改善を目的として遺伝子を合成する場合、そのコドン使用頻度が、宿主細胞の好ましいコドン使用頻度に近づくように遺伝子を設計することが好ましい。
「合成遺伝子」は、当業者に公知の手順を使用して、化学的に合成されるオリゴヌクレオチドビルディングブロックから組み立てることができる。これらのオリゴヌクレオチドビルディングブロックをアニールし、次いで連結して遺伝子セグメントを形成した後、酵素的に組み立てて全遺伝子を構築する。したがって、宿主細胞のコドンバイアスを反映するヌクレオチド配列の最適化に基づいて、最適な遺伝子発現のための遺伝子を構築することができる。当業者は、宿主が好むコドンの方向へコドン使用をバイアスすると、遺伝子発現が成功する可能性が高まることを認識している。好ましいコドンは、配列情報が利用可能である、宿主細胞に由来する遺伝子の調査に基づいて決定することができる。例えば、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)のコドン使用プロフィールは参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,125,672号明細書に提供されている。
「遺伝子」は、特定のタンパク質を発現する核酸断片を指し、コード領域のみを指すことも、またはコード配列の前(5’非コード配列)およびコード配列の後(3’非コード配列)に調節配列を含むこともある。「天然遺伝子」は、それ自体の調節配列を有する、天然に見出される遺伝子を指す。「キメラ遺伝子」は、天然では一緒に見出されることがない制御配列およびコード配列を含む、天然遺伝子ではない任意の遺伝子を指す。したがって、キメラ遺伝子は、異なる供給源に由来する調節配列およびコード配列を含むことも、または同じ供給源に由来するが、天然に見出される様式とは異なる様式で配置された調節配列およびコード配列を含むこともある。「内在性遺伝子」は、生物ゲノム内のその天然位置にある天然遺伝子を指す。「外来」または「異種」遺伝子は、遺伝子移入により宿主生物に導入される遺伝子を指す。外来遺伝子は、非天然生物に挿入された天然遺伝子、天然宿主内の新たな位置に導入された天然遺伝子またはキメラ遺伝子を含むことができる。「導入遺伝子」は、形質転換手順によりゲノムに導入された遺伝子である。「コドン最適化遺伝子」は、宿主細胞の好ましいコドン使用頻度を模倣するように設計された、そのコドン使用頻度を有する遺伝子である。
「コード配列」は、特定のアミノ酸配列をコードするDNA配列を指す。「適切な調節配列」は、コード配列の上流(5’非コード配列)、内部または下流(3’非コード配列)に位置し、転写、RNAのプロセシングもしくは安定性、または関連コード配列の翻訳に影響を及ぼすヌクレオチド配列を指す。調節配列としては、プロモーター、エンハンサー、サイレンサー、5’非翻訳リーダー配列(例えば、転写開始部位と翻訳開始コドンの間)、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位およびステムループ構造を挙げることができる。
「プロモーター」は、コード配列または機能RNAの発現を制御することができるDNA配列を指す。一般に、コード配列はプロモーター配列に対して3’に位置する。プロモーターは、その全体が天然遺伝子に由来することも、または天然に見出される様々なプロモーターに由来した様々なエレメントから構成されていることも、または合成DNAセグメントまで含むこともある。異なる組織もしくは細胞型において、または異なる発生段階で、または異なる環境もしくは生理学的条件に応答して、異なるプロモーターが遺伝子の発現を指示し得ることを当業者は理解している。ほぼ常に大部分の細胞型で遺伝子の発現を誘導するプロモーターは、一般に、「構成的プロモーター」と呼ばれる。ほとんどの場合、調節配列の正確な境界が完全には画定されていないので、様々な長さのDNA断片が同一のプロモーター作用を示す可能性があることもまた認識されている。
用語「3’非コード配列」および「転写ターミネーター」は、コード配列の下流に位置するDNA配列を指す。これには、mRNAプロセシングまたは遺伝子発現に影響を及ぼすことができるポリアデニル化認識配列およびその他の調節配列をコードする配列が含まれる。ポリアデニル化シグナルは、通常、mRNA前駆体の3’末端へのポリアデニル酸トラクトの付加に影響を及ぼすことにより特徴づけられる。3’領域は、転写、RNAのプロセシングもしくは安定性、または関連コード配列の翻訳に影響を及ぼすことができる。
「RNA転写物」は、RNAポリメラーゼが触媒するDNA配列の転写により生じる生成物を指す。RNA転写物がDNA配列の完全な相補的コピーである場合、その転写物は転写一次産物と呼ばれ、または転写一次産物の転写後プロセシングから生じたRNA配列である場合は、成熟RNAと呼ばれる。「メッセンジャーRNA」または「mRNA」は、イントロンがなく、かつ細胞がタンパク質に翻訳することができるRNAを指す。「cDNA」は、mRNAに相補的で、それに由来する二本鎖DNAを指す。「センス」RNAは、mRNAを含み、その故細胞がタンパク質に翻訳することができるRNA転写物を指す。「アンチセンスRNA」は、標的転写一次産物またはmRNAの全部または一部に相補的で、標的遺伝子の発現を阻止するRNA転写物を指す(米国特許第5,107,065号明細書;国際公開第99/28508号パンフレット)。
用語「作動可能に連結される」は、一方の機能が他方の機能に影響を及ぼすように、単一核酸断片上で核酸配列が結合していることを指す。例えば、プロモーターがそのコード配列の発現に影響を及ぶすことができる場合、そのプロモーターはコード配列に作動可能に連結されている。すなわち、そのコード配列はプロモーターの転写制御下にある。コード配列は、センスまたはアンチセンスの方向で調節配列に作動可能に連結することができる。さらに、例えば、コード配列は、3’転写終結配列に作動可能に連結することができる。
用語「組換え体」は、例えば化学合成により、または遺伝子工学技術を用いる核酸の単離セグメントの操作により、さもなければ別々の2つの配列を人為的に組合せたものを指す。
本明細書で使用する用語「発現」は、核酸断片に由来したセンス(mRNA)またはアンチセンスRNAの転写および安定な蓄積を指す。発現はまた、mRNAのポリペプチドへの翻訳を指すこともある。したがって、本明細書で使用する用語「発現」は、機能性最終生成物(例えばmRNAまたはタンパク質[前駆体または成熟のいずれか])の生成を指す。
用語「導入」は、核酸(例えば、発現コンストラクト)またはタンパク質を細胞の中に供給することを意味する。導入には、核酸が細胞ゲノム中に組み込まれ得る真核生物または原核細胞の中への核酸の組み込みに関するものが含まれ、さらに核酸またはタンパク質の細胞への一過性の供給に関するものが含まれる。導入には、安定なまたは一過性の形質転換法および性的交雑法に関するものが含まれる。したがって、核酸断片(例えば、組換えコンストラクト/発現コンストラクト)の細胞内への挿入に関連した「導入」には、「トランスフェクション」または「形質転換」または「形質導入」の意味があり、核酸断片が細胞ゲノム(例えば、染色体、プラスミド、色素体、またはミトコンドリアDNA)中に組み込まれるか、自律レプリコンに変換されるか、または一過性に発現され得る(例えば、トランスフェクトされたmRNA)真核生物または原核細胞の中への核酸断片の組み込みに関するものが含まれる。
「形質転換」は、遺伝学的に安定な遺伝をもたらす、宿主生物への核酸分子の移入を指す。核酸分子は、例えば自律的に複製するプラスミドである場合も、または宿主生物のゲノムへ組み込まれる場合もある。形質転換された核酸断片を含有する宿主生物は、「トランスジェニック」、「組換え」、「形質転換」、または「形質転換体」生物と呼ばれる。
用語「プラスミド」および「ベクター」は、細胞の中心的代謝の一部ではない遺伝子を運ぶことが多く、通常は環状二本鎖DNA断片の形態をとる染色体外エレメントを指す。このようなエレメントは、自己複製配列、ゲノム組み込み配列、ファージまたは任意の供給源に由来する一本鎖もしくは二本鎖のDNAもしくはRNAの線状もしくは環状のヌクレオチド配列とすることができ、そこでは、いくつかのヌクレオチド配列が連結または組換えされて、細胞に発現カセットを導入することができるユニークな構築物になっている。
用語「発現カセット」は、外来遺伝子を含有し、かつ外来宿主においてその遺伝子の発現を増強させることができるエレメントを、外来遺伝子に加えて有するDNAの断片を指す。一般に、発現カセットは、選択された遺伝子のコード配列ならびに選択された遺伝子生成物の発現に必要とされる、コード配列の前(5’非コード配列)および後(3’非コード配列)の調節配列を含むことになる。したがって、発現カセットは、典型的には、1)プロモーター配列、2)コード配列、すなわち翻訳領域[「ORF」]、および3)3’非翻訳領域、例えば真核生物では通常ポリアデニル化部位を含有するターミネーターから構成される。発現カセットは、通常、クローニングおよび形質転換を容易にするためにベクター内に含まれる。それぞれの宿主に対して適正な(適切な)調節配列を使用する限り、様々な発現カセットを、細菌、酵母、植物および哺乳類の細胞を含む様々な生物に形質転換することができる。
用語「組換えコンストラクト」、「発現コンストラクト」および「コンストラクト」は、本明細書において互換的に使用する。組換えコンストラクトは、例えば天然に一緒に見出すことはない調節配列およびコード配列などの核酸断片の人為的な組合せを含む。例えば、組換えコンストラクトは、異なる供給源に由来する調節配列およびコード配列を含むことも、または同じ供給源に由来するが、天然に見出される様式とは異なる様式で配置された調節配列およびコード配列を含むこともある。このようなコンストラクトは、それ自体で使用することも、またはベクターと共に使用することもできる。ベクターを使用する場合、ベクターの選択は、当業者には周知のように、宿主細胞を形質転換するために使用する方法に依存する。例えば、プラスミドベクターを使用することができる。当業者は、本明細書に記載の任意の単離核酸断片を含む宿主細胞の形質転換、選択および増殖を成功裡に行うためにベクター上に存在しなければならない遺伝エレメントを十分承知している。当業者はまた、独立した異なる形質転換事象は、異なるレベルおよびパターンの発現をもたらし(Jones et al.,EMBO J.,4:2411−2418(1985);De Almeida et al.,Mol.Gen.Genetics,218:78−86(1989))、したがって、所望の発現レベルおよびパターンを示す系統を得るためには多数の事象をスクリーニングしなければならないことも認識している。
用語「配列分析ソフトウェア」は、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列の解析に有用な任意のコンピュータアルゴリズムまたはソフトウェアプログラムを指す。「配列分析ソフトウェア」は市販のものでも、または独立に開発されたものでもよい。典型的な配列分析ソフトウェアとしては、これらに限定されないが、1)GCGプログラムスイート(Wisconsin Package Version 9.0,Genetics Computer Group(GCG),Madison,WI)、2)BLASTP、BLASTN、BLASTX(Altschul et al.,J.Mol.Biol.,215:403−410(1990))、3)DNASTAR(DNASTAR,Inc.Madison,WI)、4)Sequencher(Gene Codes Corporation,Ann Arbor,MI)、および5)Smith−Watermanアルゴリズムを組み込んだFASTAプログラム(W.R.Pearson,Comput.Methods Genome Res.,[Proc.Int.Symp.](1994),Meeting Date 1992,111−20.Editor(s):Suhai,Sandor.Plenum:New York,NY)が挙げられる。本記載内では、配列分析ソフトウェアを解析に使用する場合は常に、特に指示がない限り、分析結果は、参照プログラムの「デフォルト値」に基づくものである。本明細書で使用する「デフォルト値」は、ソフトウェアを最初に初期化したときに、初めにロードされる値またはパラメーターの任意のセットを意味する。
オイルとして乾燥細胞重量の少なくとも25%を産生し、かつ機能的な多価不飽和脂肪酸生合成経路とカレオシンポリペプチドをコードする少なくとも1つの遺伝子コンストラクトとを含む組換え油性微生物が本明細書で開示される。本発明の組換え油性微生物は、対応する対照により産生されるオイル量と比較して、少なくとも1つの多価不飽和脂肪酸を含む、より大量のオイルを産生する。
本明細書に開示された組換え油性微生物の構築に使用される適切な宿主微生物は、オイルの合成および蓄積ができる油性微生物であり、オイルとして乾燥細胞重量の約25%を超える量が一般に蓄積される。種々の酵母、真菌類、および藻類が油性として分類される。油性酵母がより好ましく、油性酵母として典型的に同定される属としては、これらに限定されないが、ヤロウィア属(Yarrowia)、カンジダ属(Candida)、ロドトルラ属(Rhodotorula)、ロドスポリジウム属(Rhodosporidium)、クリプトコックス属(Cryptococcus)、トリコスポロン属(Trichosporon)およびリポマイセス属(Lipomyces)が挙げられる。より具体的には、例示のオイル合成酵母として、ロドスポリジウム・トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)、リポマイセス・スターケイ(Lipomyces starkeyii)、L.リポフェラス(L.lipoferus)、カンジダ・レブカウフィ(Candina revkaufi)、C.プルケリマ(C.pulcherrima)、C.トロピカリス(C.tropicalis)、C.ユチリス(C.utilis)、トリコスポロン・プランス(Trochosporon pullans)、T.クタネウム(T.cutaneum)、ロドトルラ・グルチヌス(Rhodotorula glutinus)、R.グラミニス(R. graminis)およびヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)(以前はカンジダ・リポリティカとして分類された)が挙げられる。最も好ましい油性酵母はヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)であり、ATCC#76982、ATCC#20362、ATCC#8862、ATCC#18944および/またはLGAM S(7)1(Papanikolaou S.,and Aggelis G.,Bioresour.Technol.,82(1):43−9(2002))として指定されるY.リポリティカ(Y.lipolytica)株が最も好ましい。代替的実施形態では、非油性微生物、例えばサッカロミセス・セレビシア(Saccharomyces cerevisiae)などの酵母は、油性になるように遺伝子改変することができる。
例として、いくつかの酵母生物が少なくとも1つのPUFAを産生するように組換え操作されている。例えば、サッカロミセス・セレビシア(Saccharomyces cerevisiae)(Dyer,J.M.et al.,Appl.Env.Microbiol.,59:224−230(2002);Domergue,F.et al.,Eur.J.Biochem.,269:4105−4113(2002);米国特許第6,136,574号明細書;米国特許出願公開第2006−0051847−A1号明細書)および油性酵母のヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)(米国特許第7,238,482号明細書;米国特許第7,465,564号明細書;米国特許第7,588,931号明細書;米国特許出願公開第2006−0115881−A1号明細書;米国特許7,550,286号明細書;米国特許出願公開第2009−0093543−A1号明細書;米国特許出願公開第2010−0317072−A1号明細書)の研究を参照されたい。
したがって、本明細書に記載されたPUFA生合成経路遺伝子および遺伝子産物は、異種微生物の宿主細胞、特に油性酵母(例えば、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica))の細胞で産生することができる。組換え微生物宿主における発現は、種々のPUFA経路中間体を産生するために、またはその宿主を使用して可能でなかった新しい生成物の合成のためにすでに宿主に存在するPUFA経路を調節するために有用となり得る。
上記に引用された教示に基づいて、好ましいオメガ−3/オメガ−6 PUFAを産生するために、数多くの油性酵母を操作することが可能であるが、油性酵母ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)の代表的なPUFA産生株を、下記の表3に記載する。これらの株は、以下のPUFA生合成経路遺伝子の種々の組合せを有する:デルタ−4デサチュラーゼ、デルタ−5デサチュラーゼ、デルタ−6デサチュラーゼ、デルタ−12デサチュラーゼ、デルタ−15デサチュラーゼ、デルタ−17デサチュラーゼ、デルタ−9デサチュラーゼ、デルタ−8デサチュラーゼ、デルタ−9エロンガーゼ、C14/16エロンガーゼ、C16/18エロンガーゼ、C18/20エロンガーゼ、およびC20/22エロンガーゼ。ただし、導入される特定の酵素(およびこれらの酵素をコードする遺伝子)および産生される特定のPUFAは、本明細書中の本発明を限定するものでは決してないことを認識されたい。
カレオシンは、植物種子中の細胞がその中にトリアシルグリセリドを貯蔵する種子脂肪体に関連したマイナーなタンパク質の1つである。カレオシンは、脂質または油体に関連して最も豊富なタンパク質であるオレオシンに類似の3ドメイン構造、具体的には、両親媒性のN末端およびC末端領域に挟まれた中央の70〜80の非極性残基からなる高度に保存されたドメインを有する。中央疎水性領域の真中には、脂肪体に正確にターゲティングするために必要な、いわゆる「プロリンノット」モチーフが位置する。N末端およびC末端ドメインは、脂肪体の表面にあるリン脂質頭部と相互作用する。カレオシンはまた、カルシウム結合部位に相当するN末端領域に位置した、高度に保存されたEFハンドループモチーフ(Naested et al.2000,Plant Mol.Biol.44,463−476,およびHanano et al.2006,J.Biol.Chem.,44,33140−33151)およびC末端領域の推定上のリン酸化部位を有する。この単一カルシウム結合EFハンドモチーフは、数百のEFハンドタンパク質の中でまれな新規の特徴である。ほとんどの場合、高親和性に2つのカルシウムイオンを協調的に結合するために、EFハンドは対で見出される。Naestedら(上記)は、カレオシンの単一EFハンドドメインが、EFハンド対を形成するために脂肪体または細胞小器官の間の膜融合に関与することを提案した。したがって、カレオシンは、ER(小胞体)と脂肪体の間の脂質輸送過程に関与する可能性がある。この考えを支持して、局在化研究から、脂肪体にまさに関連しているオレオシンと異なり、カレオシンがER、液胞、および脂肪体に関連していることがわかった(Frandsen et al.,1996,J.Biol.Chem.271,343−348,Naested et al.,上記,およびLiu et al.,2005,Planta,221,513−522)。
本発明では使用することができるカレオシンポリペプチドは、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、菜種、ゴマ、ヒマワリ、大豆、テーダマツ、米、トマト、トウモロコシ、大麦、およびピーナッツなどの植物の種子、ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)およびアスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)などの真菌類、ならびにクロレラ・プロトテコイデス(Chlorella protothecoides)などの藻類に見出される。したがって、植物カレオシン、真菌カレオシン、および/または藻類カレオシンを本発明で使用することができる。植物カレオシンポリペプチドの他の例としては、GenBank受託番号NP_001151906.1、AAF13743.1、ACJ70083.1、XP_003626887.1、ACP27620.1、ABV72237.1、ABY56103.1、ABB05052.1、AAY40837.1、AEE85247.1、NP_194404.1、ABK40508.1、AAY87906.1、ABF94710.1、AAQ74240.1、AAQ74239.1、AAQ74238.1、BAD16161.1、NP_173738.2、NP_173739.4、およびAEC08825.1が挙げられる。真菌カレオシンポリペプチドの他の例としては、GenBank受託番号EAL91241.1、XP_753279.1、EHA56268.1、EHA51085.1、EGX88252.1、XP_001822392.2、XP_001397384.1、GAA84711.1、EGY20893.1、EED23685.1、EFY86741.1、CBF78379.1、EED47644.1、EDP52113.1、EAW17406.1、EDU41523.1、XP_001828377.2、EAU93369.2、XP_002382486.1、およびXP_002341072.1が挙げられる。藻類カレオシンポリペプチドの他の例としては、GenBank受託番号AEB77763.1、EIE19762.1、EIE19761.1、EDP09778.1、EFN52997.1、XP_002958325.1、XP_002945870.1、EFJ52865.1、EFJ40618.1、XP_001696463.1、XP_001695367.1、CAB42585.1、およびEDP01625.1が挙げられる。
さらに、本発明で使用するのに適したカレオシンポリペプチドとして、これらに限定されないが、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、38、40、42、および51に示されたアミノ酸配列を含むポリペプチドが挙げられる。
カレオシンポリペプチドには上記に定義されたカレオシン機能がある。
一実施形態では、カレオシンポリペプチドは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、38、40、42,および51からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、カレオシンポリペプチドは、配列番号2に示されたアミノ酸配列を含む。
当技術分野で周知のように、これらのカレオシンポリペプチド配列は、配列分析ソフトウェアを使用して、同種または他種のカレオシンホモログを簡便に探索するために使用することができる。一般に、このようなコンピュータソフトウェアは、種々の置換、欠失、およびその他の改変に対して相同性の程度を割り当てることにより、類似配列をマッチさせる。タンパク質配列データベースに対してタンパク質配列を比較し、それによって好ましい生物内の類似の公知配列を同定するために、低複雑性フィルター(low complexity filter)および以下のパラメーター:期待値(Expect value)=10、マトリックス=Blosum62を用いるBLATPアライメント法(Altschul,et al.,Nucleic Acids Res.,25:3389−3402(1997))などのソフトウェアアルゴリズムを使用することはよく理解されている。
公知配列のデータベースの中を検索するためのソフトウェアアルゴリズムの使用は、上記に記載されている配列など、公的に利用可能なカレオシンポリペプチド配列に対して比較的低いパーセント同一性を有するホモログの単離に特に適している。公的に利用可能なカレオシン配列に対して少なくとも約70%〜85%同一であるカレオシンホモログの単離は比較的容易であると予測できる。さらに、少なくとも約85%〜90%同一であるそれらの配列は、単離に特に適しており、少なくとも約90%〜95%同一である配列は、最も容易に単離されるであろう。
一実施形態では、カレオシンポリペプチドは、Clustal Wアライメント法に基づくと、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、38、40、42、および51に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%または95%の配列同一性があり、これらのカレオシンポリペプチドにはカレオシン機能(上記)がある。
他の実施形態では、カレオシンポリペプチドは、Clustal Wアライメント法に基づくと、配列番号2、4、6、8、10、12、14、38、40、42、および51に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%または95%の配列同一性があり、これらのカレオシンポリペプチドにはカレオシン機能(上記)がある。
他の実施形態では、カレオシンポリペプチドは、Clustal Wアライメント法に基づくと、配列番号2に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%または95%の配列同一性があり、これらのカレオシンポリペプチドにはカレオシン機能(上記)がある。
加えて、本明細書または公開文献に記載されているカレオシンをコードする任意の核酸断片または同定された任意のホモログを使用して、同種または他種由来のホモログタンパク質をコードする遺伝子を単離することができる。配列依存プロトコールを用いるホモログ遺伝子の単離は当技術分野で周知である。配列依存プロトコールの例としては、これらに限定されないが、1)核酸ハイブリダイゼーション法、2)PCR(米国特許第4,683,202号明細書)、リガーゼ連鎖反応(Tabor,S.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,82:1074(1985))、または鎖置換増幅(Walker,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,89:392(1992))などの核酸増幅技術の種々の使用により例示されるDNAおよびRNA増幅法、ならびに3)相補性によるライブラリー構築およびスクリーニングの方法が挙げられる。
例えば、公的に利用可能なカレオシン遺伝子またはそれらのモチーフに類似したタンパク質またはポリペプチドをコードする遺伝子は、それらの公的に利用可能な核酸断片の全部または一部をDNAハイブリダイゼーションプローブとして用い、周知の方法によって所望の任意の生物からのライブラリーをスクリーニングすることにより直接単離することができよう。公的に利用可能な核酸配列に基づいた特定のオリゴヌクレオチドプローブは、当技術分野で公知の方法により設計および合成することができる(Maniatis)。さらに、配列全体を直接使用して、ランダムプライマーDNA標識化、ニックトランスレーション法、もしくは末端標識化手法などの当業者に公知の方法によるDNAプローブ合成、または利用可能なin vitro転写システムを用いるRNAプローブ合成を行うことができる。さらに、特定のプライマーを設計および使用して、公的に利用可能な配列またはそれらのモチーフの一部または全長を増幅することができる。得られた増幅産物は、増幅反応の間に直接標識するか、または増幅反応の後に標識して、適切なストリンジェンシー条件下で全長DNA断片を単離するためのプローブとして使用することができる。
まさに議論した周知の方法のいずれかに基づいて、選択した好ましい任意の生物において、カレオシン遺伝子ホモログを同定および/または単離することが可能であろう。
カレオシンポリペプチドをコードする異種遺伝子が、宿主微生物において同じコドン選択性を共有する可能性は低い。したがって、所望の宿主微生物のためにコドン使用頻度を最適化することが望ましいことがある。当技術分野で公知のように、コドン使用頻度は、宿主微生物のコドン使用頻度パターン、「ATG」翻訳開始コドン周辺のコンセンサス配列、およびRNA安定性の一般側(Guhaniyogi,G.and J.Brewer,Gene,265(1−2):11−23(2001))に従って最適化することができる。例えば、カレオシン遺伝子のコード配列は、ヤロウィア(Yarrowia)のコドン使用頻度パターン(国際公開第2004/101753号パンフレット)に従って、国際公開第2004/101753号パンフレットおよび米国特許第7,125,672号明細書に記載の方法でヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)での発現のために最適化することができる。ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)での発現のためにコドン最適化されたAtClo1コード配列(「AtClo1s」と命名)を、配列番号33に示す。
本発明の特定の実施形態は、オイルとしてその乾燥細胞重量の少なくとも25%を産生し、かつ機能的な多価不飽和脂肪酸生合成経路とジアシルグリセロールのアシル化を触媒する酵素などの別のタンパク質に連結されているカレオシンポリペプチドをコードする少なくとも1つの遺伝子コンストラクトとを含む組換え油性微生物に注目する。
ジアシルグリセロールのアシル化を触媒する酵素の例としては、アシルCoA:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT、EC 2.3.1.20;例えば、アイソフォームDGAT−1およびDGAT−2)ならびにリン脂質:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(PDAT、E.C.2.3.1.158)がある。好ましい実施形態では、ジアシルグリセロールのアシル化を触媒する酵素は、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)のDGATまたはPDATである。本発明で有用なDGATおよびPDAT酵素の例が、米国特許第7,901,928号明細書、米国特許第7,273,746号明細書、および米国特許第7,267,976号明細書に開示されており、これらはすべて、参照により本明細書に組み込まれる。ジアシルグリセロールのアシル化を触媒する酵素は、本発明の組換え油性微生物にとって異種または天然の供給源に由来することができる。
本発明の特定の実施形態では、リンカーペプチドは、カレオシンポリペプチドとジアシルグリセロールのアシル化を触媒する酵素との間の融合を媒介する。リンカーペプチドは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25以上のアミノ酸残基を含有することができる。本発明では使用することができるリンカーの一例は、24アミノ酸の配列番号60である。本明細書で有用なリンカーの他の例が、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2008−0254191−A1号明細書に開示されている。あるいは、ペプチド結合を使用して、ジアシルグリセロールのアシル化を触媒する酵素とカレオシンポリペプチドを連結することができる。
カレオシンポリペプチドは、ジアシルグリセロールのアシル化を触媒する酵素に連結される場合、融合タンパク質のN末端終端(すなわち、アミノ末端)またはC末端終端(すなわち、カルボキシ末端)に位置させることができる。換言すれば、連結の順序は重要ではない。C末端タンパク質の最初の1、2、3、4、5、または6アミノ酸残基は、融合の形成に適合するように、それに応じて改変されてもよい。カレオシンポリペプチドには、融合タンパク質として本発明で使用される場合、カレオシン機能(上記)がある。
カレオシンポリペプチドとジアシルグリセロールのアシル化を触媒する酵素とを含有する融合タンパク質の例は、配列番号53および55であり、そこでは、特定のシロイヌナズナ(A.thaliana)由来カレオシンが、ヤロウィア(Yarrowia)由来PDATに連結されている。カレオシンは、配列番号53ではPDATに対してN末端に位置し、配列番号55ではPDATに対してC末端に位置する。特定の実施形態では、融合タンパク質は、Clustal Wアライメント法に基づくと、配列番号53または55に対して少なくとも90%または95%の配列同一性があり、融合タンパク質のカレオシン部分にはカレオシン機能(上記)がある。
本発明の特定の実施形態では、遺伝子コンストラクトによりコードされたカレオシンポリペプチドは、付加されたシステイン残基を含有する。システイン残基は、カレオシンポリペプチドの野生型アミノ酸配列に対して「付加」される。カレオシンが脂肪体に局在する場合、カレオシンの概して親水性のN末端およびC末端領域は、脂肪体表面上に局在するが、より疎水性の中間領域は、脂肪体内部に留まる。したがって、付加されたシステイン残基が、カレオシンポリペプチドのN末端および/またはC末端領域の内部に点在すると、脂肪体表面における、隣接カレオシンポリペプチド間でのジスルフィド結合形成のための部位が形成されると考えられる。カレオシン間のそのようなジスルフィド結合形成により、二量化または重合したカレオシンが生じ得る。
少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10のシステイン残基をカレオシンポリペプチドに付加することができる。そのような改変カレオシンまたは「cys−カレオシン」は、天然および付加のシステインの両方をカウントすると、合計3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12のシステインを有することができる。システイン残基は、カレオシンのN末端終端およびC末端終端の両方に付加することができるが、ここで、N末端領域はカレオシンの最初の約90〜100アミノ酸残基を包含し、C末端領域は、カレオシンの最後の約100〜110アミノ酸を包含する。一例として、3、4、または5システイン残基を、カレオシンポリペプチドのN末端およびC末端領域の両方に付加することができる。好ましくは、cys−カレオシンのシステインは、N末端およびC末端領域の内部で、平均間隔が10アミノ酸になるように、互いに7、8、9、10、11、12、13、14、または15アミノ酸の間隔で配置される。システインは、アミノ酸の変異によって、かつ/または例えばカレオシンをコードするヌクレオチド配列の部位特異的突然変異を使用する挿入によって、本発明のカレオシンに付加することができる。
本発明に有用なcys−カレオシンポリペプチドの一例は、配列番号51である。このポリペプチドは、そのN末端およびC末端領域にそれぞれ5および3の付加されたシステイン残基を有するように改変された、特定のシロイヌナズナ(A.thaliana)由来カレオシンである。特定の実施形態では、本発明のcys−カレオシンは、Clustal Wアライメント法に基づくと、配列番号51に対して少なくとも90%または95%の配列同一性があり、cys−カレオシンにはカレオシン機能(上記)がある。
カレオシンポリペプチドをコードする遺伝子は、当技術分野で公知の方法を使用して、遺伝子コンストラクトの一部として宿主微生物に導入することができる。例えば、この遺伝子をプラスミド上で宿主細胞に導入することができる。加えて、遺伝子を適切な調節配列と共に染色体に組み込むこともできる。遺伝子を、非天然プロモーターまたは改変天然プロモーターの制御下になるように改変することができる。内因性プロモーターは、変異、欠失、および/または置換により、in vivoで改変することができる。カレオシンポリペプチドをコードする遺伝子は、以下に記載の方法を使用して、個別の遺伝子コンストラクト上で、または機能的な多価不飽和脂肪酸生合成経路遺伝子をコードする遺伝子コンストラクトの一部として宿主微生物に導入することができる。
本発明の組換え油性微生物は、機能的な多価不飽和脂肪酸生合成経路をコードする少なくとも1つの遺伝子コンストラクトを含む。数多くの微生物が、デサチュラーゼ(すなわち、デルタ−12デサチュラーゼ、デルタ−6デサチュラーゼ、デルタ−8デサチュラーゼ、デルタ−5デサチュラーゼ、デルタ−17デサチュラーゼ、デルタ−15デサチュラーゼ、デルタ−9デサチュラーゼ、デルタ−4デサチュラーゼ)遺伝子とエロンガーゼ(すなわち、C14/16エロンガーゼ、C16/18エロンガーゼ、C18/20エロンガーゼ、C20/22エロンガーゼ、およびデルタ−9エロンガーゼ)遺伝子との適切な組合せの導入により長鎖多価不飽和脂肪酸を産生するように遺伝子操作されてきた。例えば、サッカロミセス・セレビシア(Saccharomyces cerevisiae)(Dyer,J.M.et al.,Appl.Env.Microbiol.,59:224−230(2002);Domergue,F.et al.,Eur.J.Biochem.,269:4105−4113(2002);米国特許第6,136,574号明細書;米国特許出願公開第2006−0051847−A1号明細書)、海洋性のシアノバクテリウム・シネココッカス(cyanobacterium Synechococcus)種(Yu et al.,Lipids,35(10):1061−1064(2006))、メチロトローフの酵母ピチア・パストリス(Pichia pastoris)(Kajikawa et al.,Plant Mol Biol.,54(3):335−52(2004))、およびコケのニセツリガネゴケ(Physcomitrella patens)(Kaewsuwan et al.,Bioresource Technol.,101(11):4081−4088(2010))の研究を参照されたい。
一部の実施形態では、天然のデサチュラーゼ酵素の発現が、以下の理由で異種の(または「外来の」)酵素よりも好まれる:1)天然の酵素は、細胞内の他の酵素およびタンパク質との相互作用について最適化されている;および2)異種遺伝子は、宿主生物において同じコドン選択性を共有している可能性が低い。加えて、天然遺伝子の配列が知られている場合、内因性遺伝子のダウンレギュレーションが所望により可能になるので、有利性がある。
しかしながら、多くの実例では、適切なデサチュラーゼおよびエロンガーゼは、所望のPUFA生成物の産生を可能にするために選択した宿主微生物の中に存在しない。油性微生物は、デルタ−6デサチュラーゼ/デルタ−6エロンガーゼ経路またはデルタ−9エロンガーゼ/デルタ−8デサチュラーゼ経路のデサチュラーゼおよびエロンガーゼをコードする適切な異種遺伝子を、目的の任意特定のPUFA産生用の宿主微生物に組み込むことによりオメガ−3/オメガ−6 PUFAを産生するように操作することができる。好ましい遺伝子、デサチュラーゼまたはエロンガーゼ活性を有する特定のポリペプチドを選ぶための検討事項、および油性微生物の中にPUFA生合成経路を組み込む手段が、米国特許第7,238,482号明細書、同第7,465,564号明細書、同第7,588,931号明細書、および同第7,550,286号明細書、ならびに米国特許出願公開第2006−0115881−A1号明細書および米国特許出願公開第2009−0093543−A1号明細書に詳述されている。これらの参考文献はまた、以下のことを含む、特定のPUFAの高レベル産生を可能にするために必要とされ得るさらなる改変に関する詳細についても記載している:1)効率的な生合成および貯蔵脂質プール(すなわち、TAG分画)へのオメガ脂肪酸の移行を可能にするアシルトランスフェラーゼ活性の操作;2)強力なプロモーターの使用、多コピーでの発現、および/またはコドン最適化による、デサチュラーゼ、エロンガーゼ、およびジアシルグリセロールコリンホスホトランスフェラーゼの過剰発現;3)所望のPUFAの全体的な蓄積を増加させる、β酸化に関与するものなど特定遺伝子の発現のダウンレギュレーション;4)所望のPUFAの産生に影響を及ぼす経路および全体的な調節因子の操作;および5)PUFA生合成経路内の「推進/抑制」。さらに、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2008−0254191−A1号明細書、具体的にはその中の実施例55および56は、油性酵母において異種的に発現された場合、個々のデルタ−9エロンガーゼおよび/またはデルタ−8デサチュラーゼに比べて改善された酵素活性を有するDGLAシンターゼ(マルチザイム)について記載している。驚くべきことに、リンカー領域により分離して、1つの融合タンパク質として2つの独立した酵素を一緒に融合させると、LAからDGLAへの流れが増加し、デルタ−9エロンガーゼの生成物が融合タンパク質中のデルタ−8デサチュラーゼの基質として直接投入され得ることが示唆された。
表3に、以下のPUFA生合成経路遺伝子の種々の組合せを有するY.リポリティカ(Y.lipolytica)株について記載する:デルタ−4デサチュラーゼ、デルタ−5デサチュラーゼ、デルタ−6デサチュラーゼ、デルタ−12デサチュラーゼ、デルタ−15デサチュラーゼ、デルタ−17デサチュラーゼ、デルタ−9デサチュラーゼ、デルタ−8デサチュラーゼ、デルタ−9エロンガーゼ、C14/16エロンガーゼ、C16/18エロンガーゼ、C18/20エロンガーゼ、およびC20/22エロンガーゼ。ただし、導入される特定の酵素(およびこれらの酵素をコードする遺伝子)および産生される特定のPUFAは、本明細書中の本発明を限定するものでは決してない。
Figure 2014516537
Figure 2014516537
Figure 2014516537
Figure 2014516537
当業者は、本発明の方法論が上記のY.リポリティカ(Y.lipolytica)株に限定されるものではないことを認識するであろう。むしろ、PUFAを産生することができるいずれの組換え油性微生物も、本明細書で開示のような使用に等しく適するであろう。
一部の実施形態では、組換え油性微生物株が「高レベル産生」できることが望ましいことがあり、そこでは、微生物が、所望のPUFA(すなわち、LA、ALA、EDA、GLA、STA、ETrA、DGLA、ETA、ARA、DPA n−6、EPA、DPA n−3、および/またはDHA)を総脂質の少なくとも約5〜10%産生することができる。より好ましくは、Y.リポリティカ(Y.lipolytica)は、所望のPUFAを総脂質の少なくとも約10〜25%、より好ましくは所望のPUFAを総脂質の少なくとも約25〜35%、より好ましくは所望のPUFAを総脂質の少なくとも約35〜45%、より好ましくは所望のPUFAを総脂質の少なくとも約45〜55%、最も好ましくは所望のPUFAを総脂質の少なくとも約55〜65%産生する。PUFAの構造形態は限定されない;したがって、例えば、EPAは、遊離脂肪酸として、またはアシルグリセロール、リン脂質、スルホリピド、もしくは糖脂質などのエステル形態で総脂質中に存在してもよい。
したがって、適切なプロモーターの制御下にある、PUFA生合成経路、すなわち、本明細書に記載のデルタ−9エロンガーゼ/デルタ−8デサチュラーゼ経路もしくはデルタ−6デサチュラーゼ/デルタ−6エロンガーゼ経路、またはその一部をコードするキメラ遺伝子の導入により、オメガ−3および/またはオメガ−6脂肪酸の産生の増加が予測される。宿主微生物の中で、PUFAデサチュラーゼおよびエロンガーゼ遺伝子の種々の組合せが一緒に発現することが有用になると考えられる。特定の発現カセット内に含まれる特定の遺伝子は、宿主細胞、天然のデサチュラーゼおよびエロンガーゼを使用してPUFAを合成するその能力、基質の利用可能性、および所望の最終生成物に依存することは、当業者には明らかであろう。例えば、以下の酵素活性の1つまたは複数をコードする遺伝子を含む発現カセットが構築されることが望ましくなり得る:デルタ−4デサチュラーゼ、デルタ−5デサチュラーゼ、デルタ−6デサチュラーゼ、デルタ−12デサチュラーゼ、デルタ−15デサチュラーゼ、デルタ−17デサチュラーゼ、デルタ−9デサチュラーゼ、デルタ−8デサチュラーゼ、デルタ−9エロンガーゼ、C14/16エロンガーゼ、C16/18エロンガーゼ、C18/20エロンガーゼ、およびC20/22エロンガーゼ。そのため、本発明は、本明細書に記載のPUFA酵素に脂肪酸基質を曝露して基質を所望の脂肪酸生成物に変換することを含む、PUFAの産生方法を包含する。したがって、本明細書に記載の各PUFA遺伝子および対応する酵素生成物(例えば、適切なデサチュラーゼまたはエロンガーゼ活性を有する、野生型、コドン最適化、合成、および/または変異の酵素)は、PUFA産生のために直接的または間接的に使用することができる。脂肪酸基質が、中間ステップまたは経路中間体を何ら介さずに、所望の脂肪酸生成物に直接変換される場合に、PUFAの直接産生が生じる。例えば、DGLAを産生するかまたは供給される宿主細胞において、デルタ−5デサチュラーゼ活性を提供する発現カセットを前記細胞に付加または導入することにより、ARA産生が生じるであろう。
さらに、PUFA生合成経路をコードする複数の遺伝子を組み合わせて使用して、所望のPUFAを産生する一連の反応を生じさせることができる。例えば、C18/20エロンガーゼ、デルタ−5デサチュラーゼ、およびデルタ−17デサチュラーゼ活性をコードする発現カセットにより、天然ではGLAを産生する宿主細胞が、その代りにEPAを産生できるようになるであろう(結果として、デルタ−6エロンガーゼなどのC18/20エロンガーゼによりGLAがDGLAに変換され;次いで、デルタ−5デサチュラーゼによりDGLAがARAに変換可能であり;次いで、デルタ−17デサチュラーゼによりARAがEPAに変換される)。C20/22エロンガーゼを加えると、EPAがDPAに変換され、さらにデルタ−4デサチュラーゼを加えると、DPAがDHAに変換されるであろう。
一実施形態では、本明細書に開示の組換え油性微生物により産生される多価不飽和脂肪酸は、EPA、DPA、およびDHAからなる群から選択されるオメガ−3多価不飽和脂肪酸を含む。好ましい実施形態では、産生されるオメガ−3多価不飽和脂肪酸はEPAである。
本発明の組換え油性微生物を構築するために、PUFA生合成経路およびカレオシンポリペプチドをコードする少なくとも1つの遺伝子コンストラクトを作製し、適切な宿主細胞に導入することが必要である。1つまたは複数のPUFA生合成経路酵素およびカレオシンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、複数の別々のコンストラクトに配置してもよい。当業者は、1)DNA分子、プラスミド等の高分子の構築、操作、および単離のための特定の条件および手順、2)組換えDNA断片および組換え発現コンストラクトの生成、および3)クローンのスクリーニングおよび単離を記載する標準資料教材について承知している。上記のManiatis、Silhavyら、およびAusubelらを参照されたい。
一般に、コンストラクトに含まれる配列の選択は、所望の発現生成物、宿主細胞の性質および非形質転換細胞に対して形質転換細胞を分離する提案手段に依存する。当業者は、キメラ遺伝子を含有する宿主細胞の形質転換、選択および増殖を成功裡に行うためにプラスミドベクター上に存在しなければならない遺伝エレメントについて承知している。しかしながら、典型的には、ベクター、プラスミドまたはカセットは、関連遺伝子、選択可能マーカー、および自律複製または染色体組込みを可能にする配列の転写および翻訳を指示する配列を含有する。適切なベクターは、転写開始を制御する遺伝子の領域5’(すなわちプロモーター)、遺伝子コード配列および転写終結を制御するDNA断片の領域3’(すなわちターミネーター)を含む。両方の制御領域が、形質転換された宿主細胞の遺伝子に由来する場合が最も好ましい。両方の制御領域は、産生宿主にとって天然の遺伝子に由来する必要はないが、形質転換された宿主細胞の遺伝子に由来する場合が最も好ましい。
所望の微生物宿主細胞において、デサチュラーゼおよび/またはエロンガーゼならびにカレオシンポリペプチドコード配列の発現を促進するのに有用な転写開始制御領域(開始制御領域またはプロモーターもまた)は周知である。これらの制御領域は、プロモーター、エンハンサー、サイレンサー、イントロン配列、3’UTRおよび/または5’UTR領域、ならびにタンパク質および/またはRNA安定化エレメントを含むことができる。このようなエレメントはそれらの強度および特異性において異なっていてもよい。実際、選択された宿主細胞において、これらのコード配列の発現を指示できる任意のプロモーター、すなわち天然、合成、またはキメラのいずれのプロモーターも適している。ただし、宿主種由来の転写および翻訳領域は特に有用である。宿主細胞における発現は、誘導様式または構成的様式で達成することができる。誘導発現は、目的の遺伝子に作動可能に連結された調節可能プロモーターの活性を誘導することにより起こるが、一方構成的発現は、構成的プロモーターの使用により起こる。例えば、Y.リポリティカ(Y.lipolytica)で使用される好ましい転写開始調節領域については、国際公開第2006/052870号パンフレットに対応する米国特許出願公開第2006−0115881−A1号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。構成的転写または誘導転写のいずれが望ましいか、目的のコード配列を発現する際のプロモーターの効率、構築の容易さ等に応じて、いくつかの調節配列のいずれか1つを使用することができる。翻訳開始コドン「ATG」周辺のヌクレオチド配列が、酵母細胞における発現に影響を及ぼすことがわかっている。所望のポリペプチドの発現が酵母では不十分な場合、外来性遺伝子のヌクレオチド配列を効率的な酵母翻訳開始配列を含めるように改変して、最適な遺伝子発現を得ることができる。酵母における発現の場合、非効率的に発現する遺伝子を、内因性酵母遺伝子、好ましくは高度発現する遺伝子にインフレームで融合することによる、この遺伝子の部位特異的突然変異誘発によりこれを行うことができる。あるいは、宿主におけるコンセンサス翻訳開始配列を決定し、目的の宿主における異種遺伝子の最適な発現のために、この配列を異種遺伝子の中に組み込むことができる。
転写終結領域を含有する3’非コード配列は、組換え体コンストラクト中に備えることができ、開始領域が得られた遺伝子の3’領域に由来してもまたは異なる遺伝子に由来してもよい。多数の終結領域が公知であり、(それらが由来した属および種と同じでも異なっていても使用されると)種々の宿主において満足に機能する。終結領域はまた、好ましい宿主にとって天然の種々の遺伝子に由来してもよい。終結領域は、通常、何らかの特定の性質のためではなく便宜上で選択されることが多い。当業者は、入手可能な情報を利用して、転写ターミネーターとして機能する3’−領域配列を設計し合成することができるので、3’−領域は合成することもできる。終結部位は不必要な場合もあるが、極めて好ましいものである。
クローニングベクターに遺伝子を挿入するのみでは、所望の率、濃度、量等でのその発現は保証されない。高い発現率の必要性に応じて、多くの特殊化した発現ベクターが、転写、RNA安定性、翻訳、タンパク質の安定性および局在、ならびに宿主細胞からの分泌を支配する特定の性質を調整することにより作製されている。これらの性質としては、関連転写プロモーター配列およびターミネーター配列の性質;クローン化遺伝子のコピー数(そこでは、追加のコピーは単一発現コンストラクト内にクローニングされてもよく、かつ/または追加のコピーは、プラスミドコピー数の増加により、もしくはゲノムへのクローン化遺伝子の多重組込みにより宿主細胞に導入されてもよい);遺伝子がプラスミドに保持されるか宿主細胞ゲノムに組み込まれるか;合成される外来タンパク質の最終的な細胞局在、宿主生物におけるタンパク質の翻訳および正確なフォールディングの効率;宿主細胞内でのクローン化遺伝子のmRNAおよびタンパク質の固有の安定性;ならびに宿主細胞の好ましいコドン使用頻度に近い頻度でのクローン化された遺伝子内のコドン使用が挙げられる。これらの種類の改変それぞれが、PUFA生合成経路酵素およびカレオシンポリペプチドの発現をさらに最適化する手段として本発明に包含される。
少なくとも1つのプロモーター、機能的なPUFA生合成経路およびカレオシンポリペプチドをコードする核酸配列、ならびに少なくとも1つのターミネーターを含む、少なくとも1つの遺伝子コンストラクトを作製した後、そのコンストラクトを宿主細胞において自律複製可能なプラスミドベクターに配置するか、またはキメラ遺伝子を含有するDNA断片を宿主細胞ゲノムに直接組み込む。発現カセットの組込みは、宿主ゲノム内でランダムに起こすことができるか、または宿主遺伝子座内での組換えを目的とするのに十分な宿主ゲノムとの相同領域を含有するコンストラクトを使用することにより標的を設定することができる。コンストラクトの標的を内因性遺伝子座にする場合、転写および翻訳の制御領域の全部または一部を内因性遺伝子座から得ることができる。
2つ以上の遺伝子が別々の複製ベクターから発現する場合、各ベクターには異なる選択手段があることが望ましく、各ベクターは、安定な発現を維持しかつコンストラクト間のエレメントの再集合を防止するために他のコンストラクトとの相同性を有するべきではない。すべての導入遺伝子が、所望の生成物の合成を実現するのに必要なレベルで発現するように、導入コンストラクトの制御領域、選択手段、および増殖方法の賢明な選択を実験的に決定することができる。
目的遺伝子を含むコンストラクトは、任意の標準手法により宿主細胞に導入することができる。これらの手法としては、形質転換(例えば、酢酸リチウム形質転換[Methods in Enzymology,194:186−187(1991)])、遺伝子銃衝撃(bolistic impact)、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、または目的遺伝子を宿主細胞に導入する他の任意の方法が挙げられる。油性酵母(例えば、Y.リポリティカ(Y.lipolytica))に適用可能なより具体的な教示としては、米国特許第4,880,741号明細書および米国特許第5,071,764号明細書、ならびにChen,D.C.ら(Appl.Microbiol Biotechnol.,48(2):232−235(1997))が挙げられ、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
便宜上、例えば発現カセット中のDNA配列を取り込む任意の方法により操作された宿主細胞を、本明細書では、「形質転換された」、「形質転換体」、または「組換え体」と呼ぶことにする。形質転換された宿主は、発現コンストラクトの少なくとも1つのコピーを有し、発現カセットがゲノムに組み込まれ、増幅されるか否か、または複数のコピー数を有する染色体外エレメント上に存在するか否かに応じて、2つ以上有することがある。形質転換宿主細胞は、導入コンストラクト上に含有されるマーカーに対する選択により同定することができる。あるいは、多くの形質転換手法が多くのDNA分子を宿主細胞に導入するので、別個のマーカーコンストラクトを所望のコンストラクトと同時形質転換することができる。
典型的には、形質転換宿主は、選択培地上で増殖する能力に対して選択され、選択培地は、抗生物質が組み込まれている場合も、または栄養素もしくは増殖因子など非形質転換宿主の増殖に必要な要素が欠損している場合もある。導入マーカー遺伝子は、抗生物質抵抗性を与える場合も、または必須な増殖因子または酵素をコードしている場合もあり、そのため、形質転換宿主で発現すると、選択培地上での増殖が可能になる。発現したマーカータンパク質を直接的または間接的に検出することができると、形質転換宿主の選択も可能になる。さらなる選択手法については、米国特許第7,238,482号明細書、米国特許第7,259,255号明細書、および国際公開第2006/052870号パンフレットに記載されている。
形質転換後、組換え型で発現されるデサチュラーゼおよび/またはエロンガーゼ(ならびに場合によっては、宿主細胞内に発現される他のPUFA酵素)に適した基質は、宿主により天然にまたは遺伝子導入的に産生されてもよく(すなわち、基質は内因性である)、外因的に提供されてもよい。
形質転換された宿主細胞は、キメラ遺伝子(例えば、デサチュラーゼ、エロンガーゼ等をコードする)の発現を最適化する条件下で増殖し、好ましいPUFAを最大かつ最高経済収率で産生する。一般に、最適化することができる培地条件としては、炭素源のタイプおよび量、窒素源のタイプおよび量、炭素対窒素比、種々のミネラルイオンの量、酸素レベル、増殖温度、pH、バイオマス生産段階の期間、オイル蓄積段階の期間、ならびに細胞収集の時期および方法が挙げられる。油性酵母は、複合培地(例えば、酵母抽出物−ペプトン−デキストロースブロス(YPD))、または増殖に必要な成分が欠損し、それによって所望の発現カセットの選択を引き出す合成(defined)最少培地(例えば、Yeast Nitrogen Base(DIFCO Laboratories,Detroit,MI))の中で増殖させることができる。
本明細書に記載の方法および宿主細胞のための発酵培地は、米国特許第7,238,482号明細書および米国特許出願公開第2011−0059204A1号明細書に教示されるものなど、適切な炭素源を含有する。本発明で利用される炭素源には、多種多様な炭素含有源が包含され得ると考えられるが、好ましい炭素源は、糖、グリセロール、および/または脂肪酸である。グルコース、スクロース、転化スクロース、フルクトース、および/または10〜22の間の炭素を含有する脂肪酸が最も好ましい。
窒素は、無機(例えば、(NHSO)または有機(例えば、尿素、グルタミン酸、または酵母抽出物)の供給源から補充することができる。スクロースおよび窒素源に加えて、発酵培地はまた、微生物の増殖およびPUFA産生に必要な酵素経路の促進に適した、当業者に公知の適切なミネラル、塩、補因子、緩衝液、ビタミン、および他の成分を含有する。脂質およびPUFAの合成を促進するいくつかの金属イオン(例えば、Fe+2、Cu+2、Mn+2、Co+2、Zn+2、Mg+2)に対しては、特別の考慮が払われる(Nakahara et al.,Ind.Appl.Single Cell Oils,Kyle and Colin,eds.pp.61−97(1992))。
本発明における好ましい増殖培地は、Yeast Nitrogen Base(DIFCO Laboratories,Detroit,MI)などの一般の商業的調製培地である。他の合成(defined)増殖培地または合成(synthetic)増殖培地も使用することができ、特定の微生物の増殖に適した培地は、微生物学または発酵科学の当業者には公知である。発酵に適したpH範囲は、典型的には、約pH4.0〜pH8.0の間であり、その中では初期増殖条件の範囲としてpH5.5〜pH7.5が好ましい。発酵は好気性または嫌気性条件下で行うことができ、その中では微好気条件が好ましい。
典型的には、増殖と脂肪の合成/貯蔵との間で代謝状態の「バランス」を取らなければならないため、油性酵母細胞における高レベルのPUFAの蓄積には、二段階発酵工程が必要である。したがって、二段階発酵工程を油性酵母におけるPUFAの産生に使用することが最も好ましい。この方法は、米国特許第7,238,482号明細書に、種々の適切な発酵工程設計(すなわち、バッチ、フェドバッチ、および連続)ならびに増殖期間中の検討事項として記載されている。
本明細書の一部の態様では、一次生成物は油性酵母バイオマスである。そのため、バイオマスからのPUFA含有オイルの単離および精製が必要でないこともある(すなわち、そこでは全細胞バイオマスが生成物である)。
しかしながら、特定の末端使用および/または生成物形態によっては、部分精製バイオマス、精製オイル、および/または精製PUFAを得るために、バイオマスからのPUFA含有オイルの部分的および/または完全な単離/精製が必要となることがある。PUFAは、遊離脂肪酸として、またはアシルグリセロール、リン脂質、スルホリピド、もしくは糖脂質などのエステル形態で宿主微生物中に見出され得るものであり、当技術分野で周知の種々の手段により宿主細胞から抽出することができる。酵母脂質の抽出手法、品質分析、および許容基準についての総説の1つは、Jacobs(Critical Reviews in Biotechnology 12(5/6):463−491(1992))のものである。下流工程の簡単な総説も、SinghおよびWard(Adv.Appl.Microbiol.,45:271 312(1997))により提供されている。
一般に、微生物バイオマスからPUFAを回収および精製するための方法としては、有機溶媒による抽出(例えば、米国特許第6,797,303号明細書および同第5,648,564号明細書)、超音波処理、超臨界流体抽出(例えば、二酸化炭素を使用する)、けん化、および圧搾、ビーズビータなどの物理的手段、またはそれらの組合せを挙げることができる。さらなる詳細については、米国特許第7,238,482号明細書の教示を参照されたい。
カレオシンポリペプチドおよび機能的なPUFA生合成経路の1つまたは複数の酵素をコードする1つまたは複数の遺伝子コンストラクトを含む組換え油性微生物は、カレオシンポリペプチドをコードする少なくとも1つの遺伝子コンストラクトを含まないか、またはカレオシンポリペプチドをコードする少なくとも1つの遺伝子コンストラクトを含むが発現しない、対応する対照組換え油性微生物に含有されるオイル量と比較すると、より大量のオイルを含有する。組換え油性微生物に含有されるオイル量は、総脂肪酸として測定される、乾燥細胞重量のパーセントとしての総脂質含量であってもよい。
オメガ−3および/またはオメガ−6脂肪酸、具体的には、例えばALA、GLA、ARA、EPA、DPA、およびDHAを組み込んだ、おびただしい数の食品および飼料製品がある。長鎖PUFAを含む微生物バイオマス、PUFAを含む部分精製微生物バイオマス、PUFAを含む精製微生物オイル、および/または精製PUFAは、食品および飼料製品の中で、現行調製物に健康有益性を付与するように機能すると考えられている。より具体的には、オメガ−3および/またはオメガ−6脂肪酸を含有するオイルは、これらに限定されないが、食品類似品、食肉加工品、穀物製品、ベークト食品、スナック食品、および乳製品を含む種々の食品で使用するのに適する(詳細に関しては、米国特許出願公開第2006−0094092号明細書を参照されたい)。飼料製品はまた、動物使用に対するものを含む。
医療栄養物、栄養補助食品、乳児用調製粉乳、および医薬品を含む医療用食品に健康有益性を付与するために、これらの組成物を調製物に使用することができる。食品加工および食品調製の当業者は、本オイルの量および組成を食品または飼料製品にどのように添加できるかを理解していよう。そのような量は、本明細書では「有効」量と称し、食品および飼料製品、その製品を補給する意図がある食餌、または医療用食品または医療栄養物により矯正または治療する意図がある病状に依存することになる。
別の実施形態では、組換え油性微生物に含有される少なくとも1つの多価不飽和脂肪酸を含むオイル量を増加させるための方法が提供される。この方法は、(a)本明細書に開示の組換え油性微生物を準備するステップと、(b)少なくとも1つの多価不飽和脂肪酸を含むオイルが産生される条件下で組換え油性微生物を増殖させるステップとを含む。本発明の組換え油性微生物は、前記カレオシンポリペプチドをコードする少なくとも1つの遺伝子コンストラクトを含まない組換え油性微生物に含有されるオイル量と比較して、より大量のオイルを含有する。
本発明を以下の実施例の中でさらに詳細に説明する。これらの実施例は、本発明の好ましい態様を示す一方、例示としてのみ示されることを理解されたい。上記の考察およびこれらの実施例から、当業者は、本発明の本質的特性を確認することができ、その精神および範囲から逸脱することなく、本発明の様々な変更および修正をなして、様々な使用および条件にそれを適合させることができる。
一般的方法
本明細書で使用する標準の組換えDNAおよび分子クローニングの手法は、当技術分野で周知であり、Sambrook,J.and Russell,D.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Third Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY(2001)により;およびSilhavy,T.J.,Bennan,M.L.and Enquist,L.W.,Experiments with Gene Fusions,Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor,NY(1984)により;およびAusubel,F.M.et.al.,Short Protocols in Molecular Biology,5th Ed.Current Protocols,John Wiley and Sons,Inc.,N.Y.,2002により記載されている。
微生物培養の維持および増殖に適した材料および方法は、当技術分野で周知である。以下の実施例における使用に適した手法は、Manual of Methods for General Bacteriology(Phillipp Gerhardt,R.G.E.Murray,Ralph N.Costilow,Eugene W.Nester,Willis A.Wood,Noel R.Krieg and G.Briggs Phillips,Eds),American Society for Microbiology:Washington,D.C.(1994));またはManual of Industrial Microbiology and Biotechnology,3rd Edition(Richard H.Baltz,Julian E.Davies,and Arnold L.Demain Eds.),ASM Press,Washington,DC,2010の記載に見出すことができる。
微生物細胞の増殖および維持に使用されるすべての試薬、制限酵素および材料は、特に指示がない限り、Aldrich Chemicals(Milwaukee,WI),DIFCO Laboratories(Detroit,MI),New England Biolabs,Inc.(Beverly,MA),GIBCO/BRL(Gaithersburg,MD),またはSigma Chemical Company(St.Louis,MO)から入手した。
一般的な分子クローニングは標準的方法(Sambrook etal.、上記)に従って実施した。本明細書において特に指示がない限り、遺伝子配列の比較はDNASTARソフトウェア(DNASTAR Inc.,Madison,WI)を使用して行った。
発現カセットの構造は「X::Y::Z」の単純な表記法により表され、ここでXはプロモーター断片を記述し、Yは遺伝子断片を記述し、Zはターミネーター断片を記述し、これらはすべて互いに作動可能に連結されることとする。
機能的な多価不飽和脂肪酸生合成経路を含有するヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)株−Y4184株、Y4184U株、Y9502株、Y9502U株、Z1978株、Z1978U株、Z5567株、およびZ5567U株
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y4184は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2008/073367号パンフレットの実施例7に記載されるヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC#20362に由来する。Y4184株は、デルタ−9エロンガーゼ/デルタ−8デサチュラーゼ経路の発現を介して総脂質に対して約31%のEPAを産生することができた。
Y4184株と対照的にUra3表現型を有するヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y4184Uも、国際公開第2008/073367号パンフレットの実施例7に記載された。
Y9502株の生成が、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2010−0317072−A1号明細書に記載されている。Y9502株は、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC#20362に由来し、デルタ−9エロンゲース/デルタ−8デサチュラーゼ経路の発現を介して、総脂質に対して約57.0%のEPAを産生することができた。
Y9502株と対照的にUra3表現型を有するY9502U株の生成は、米国特許出願公開第2012−0052537A1号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)に記載された。
Y9502株からのZ1978株の開発は、米国特許出願公開第2012−0052537A1号明細書(上記)に記載されている。Z1978株と対照的にUra3表現型を有するZ1978U株の開発も、米国特許出願公開第2012−0052537A1号明細書に記載された。
Z1978株からのZ5567株の開発は、米国特許出願公開第2012−0052537A1号明細書(上記)に記載されている。Z5567株と対照的にUra3表現型を有するZ5567U株の開発も、米国特許出願公開第2012−0052537A1号明細書に記載された。
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)の形質転換および培養
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)株は、下記の処方に従った数種の培地中で30℃にてルーチン的に増殖させた。
高グルコース培地[「HGM」](1リットル当たり):80gのグルコース、2.58gのKHPO、および5.36gのKHPO、pH7.5(調整の必要なし)。
合成デキストロース培地[「SD」](1リットル当たり):硫酸アンモニウム含有、アミノ酸非含有の6.7gのYeast Nitrogen baseおよび20gのグルコース。
発酵培地[「FM」](1リットル当たり):硫酸アンモニウム含有かつアミノ酸非含有の6.7gのYeast Nitrogen base、6.0gのKHPO、2.0gのKHPO、1.5gのMgSO・7HO、20gのグルコース、および5.0gの酵母抽出物(BBL,BD Diagnostic Systems,Sparks,MD)。
Y4184株は、SD培地中で2日間増殖させた後、HGM中で5日間増殖させた。Y9502株およびZ1978株は、FM中で2日間増殖させた後、HGM中で5日間増殖させた。
Y.リポリティカ(Y.lipolytica)の形質転換は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2009−0093543−A1号明細書に記載のように実施した。一般に、Ura3細胞の形質転換の場合は、URA3遺伝子を保持するプラスミドまたはその断片を用いて細胞を形質転換し、次いで、ウラシルを欠くプレート上で形質転換に対して選択した。
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)の脂肪酸分析
脂肪酸分析のために、細胞を遠心分離により集め、Bligh,E.G.& Dyer,W.J.(Can.J.Biochem.Physiol.,37:911−917(1959))に記載のように脂質を抽出した。ナトリウムメトキシドによる脂質抽出物のエステル転移反応により脂肪酸メチルエステル[「FAME」]を調製し(Roughan,G.,and Nishida I.,Arch Biochem Biophys.,276(1):38−46(1990))、次いで、30m×0.25mm(内径)のSUPELCO Omegawax320(Agilent Technologies)カラムを装着したAgilent Technologies 6890Nガスクロマトグラフで分析した。オーブン温度は、30℃/分で160℃から240℃に上昇させ、次いで240℃に3.8分間保持した。
直接の塩基エステル転移反応のために、ヤロウィア(Yarrowia)培養物(1mL)を1分間の遠心分離(13,000×g)により回収した。ナトリウムメトキシド(500μLの1%溶液)を試料に添加し、次いで試料を45分間攪拌振盪した。次いで、100μLの1.0M NaClおよび500μLのヘキサンを添加し、試料を攪拌回転した。上層を取り出し、上記のようにガスクロマトグラフィーにより分析した。
同等油性条件下における、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)の総脂質含量および組成の分析
特定のヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)株の総脂質含量および組成を詳細に分析するために、以下のようにフラスコアッセイを実施した。具体的には、125mLフラスコに入れたSD培地25mL中で、約0.3のOD600から出発して48時間、培養物を増殖させた。50mL円錐管において、4300rpmで5分間遠心分離して細胞を回収した。上清を廃棄して、別の125mLフラスコに入れたHGM25mL中に細胞を再懸濁した。250rpmで30℃の振盪インキュベーター中で5日後、13,000rpmで1分間の遠心分離に続いて、1mLのアリコートを使用して脂肪酸分析(上記)を行い、5mLのアリコートを乾燥させて乾燥細胞重量(DCW)を測定した。
DCW測定のために、5mLの培養物を4300rpmで5分間遠心分離して回収した。ペレットを10mLの滅菌水に再懸濁し、上記のように再度回収した。洗浄したペレットを1mLの水に再懸濁し(3回)、予め秤量したアルミニウム皿に移した。細胞懸濁液を真空オーブン中、80℃で一晩乾燥させた。細胞の重量を測定した(g/L)。
細胞の総脂質含量[「TFA%DCW」]を計算し、TFAの重量パーセントとしての各脂肪酸の濃度[「%TFA」]、およびEPAが産生された場合、乾燥細胞重量のパーセントとしてのEPA含量[「EPA%DCW」]を表にしたデータと併せて検討した。フラスコアッセイからのデータを、細胞の総DCW、細胞の総脂質含量[「TFA%DCW]」、TFAの重量パーセントとしての各脂肪酸濃度「[%TFA]」、および乾燥細胞重量のパーセントとしてのEPA含量「[EPA%DCW]」を要約する表形式で提示する。より具体的には、脂肪酸は、18:0(ステアリン酸)、18:1(オレイン酸)、18:2(LA)、および20:5(EPA)として同定される。
実施例1
機能的な多価不飽和脂肪酸生合成経路およびコドン最適化シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)カレオシンAtClo1sコード配列を含有する組換えヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)−Y4184U+AtClo1s株
本実施例は、過剰発現コンストラクトpYRH55(図1;配列番号43)の構築およびY.リポリティカ(Y.lipolytica)−Y4184U+AtClo1s株について記載する。
AtClo1遺伝子(ATS1またはAt4g26740とも称される)は、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)種子脂肪体で見出され、多重遺伝子族に属する(Naested et al.(2000),Plant Mol.Biol.44:463−476)。シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のAtClo1遺伝子(配列番号1で示すコード配列)のコドン使用頻度を、国際公開第2004/101753号パンフレットおよび米国特許第7,125,672号明細書に記載のものと同様の方法で、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)における発現用に最適化した。具体的には、コドン最適化AtClo1コード配列(「AtClo1s」と命名、配列番号33)を、ヤロウィア(Yarrowia)コドン使用頻度パターン(国際公開第2004/101753号パンフレット)、「ATG」翻訳開始コドン周辺のコンセンサス配列、およびRNA安定性の一般則(Guhaniyogi and Brewer,Gene 265(1−2):11−23(2001))に従い、AtClo1遺伝子(配列番号1)のコード配列に基づいて設計した。翻訳開始部位の改変に加えて、738bpのコード領域のうちの173bpを改変して(23.4%)、153コドンを最適化した(62%)。GC含量は、野生型遺伝子(すなわち、AtClo1)内の45.4%から合成遺伝子(すなわち、AtClo1s)内の54.4%に増加した。NcoIおよびNotI部位をそれぞれ、AtClo1sの翻訳開始コドンの周辺および停止コドンの後に組み込んだ。コドン最適化配列における改変はいずれも、コード化タンパク質(配列番号2)のアミノ酸配列を変化させなかった;すなわち、AtClo1コード配列(配列番号1)およびAtClo1sコード配列(配列番号33)は両方とも、配列番号2をコードする。設計したAtClo1sコード配列(配列番号33)は、GenScript Corporation(Piscataway,NJ)により合成され、pUC57−AtClo1sとして提供された。
pYRH55の構築:プラスミドpYRH55(図1、配列番号43)は、Y.リポリティカ(Y.lipolytica)コドン最適化AtClo1sコード配列(配列番号33)を過剰発現するように構築した。プラスミドpYRH55は、プラスミドpZuFmEaD5s(参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2008−0274521−A1号明細書の実施例6に記載される)に由来した。プラスミドpZuFmEaD5sは、キメラFBAINm::EaD5S::PEX20遺伝子を含有し、ここで、FBAINmはY.リポリティカ(Y.lipolytica)プロモーター(米国特許第7,202,356号明細書)であり、EaD5Sは、ユーグレナ・アナバエナ(Euglena anabaena)に由来する、Y.リポリティカ(Y.lipolytica)における発現用にコドン最適化された、NcoI/NotI制限酵素部位に挟まれた合成デルタ−5デサチュラーゼであり、PEX20はヤロウィア(Yarrowia)PEX20遺伝子(GenBank受託番号AF054613)由来のターミネーター配列である。
pUC57−AtClo1sのコドン最適化AtClo1sコード配列を、NcoI/NotIで消化し、得られた断片を使用してpZuFmEaD5sのNcoI/NotI断片と置換して、キメラFBAINm::AtClo1s::PEX20遺伝子を含有するpYRH55(図1)を作製した。
Y.リポリティカ(Y.lipolytica)Y4184U+AtClo1s株の生成:Y.リポリティカ(Y.lipolytica)Y4184U株においてAtClo1sを過剰発現させるために、pYRH55をBsiWI/PacIで切断し、3.5kB断片を単離し、それを使用して形質転換し(一般的方法に記載のように)、それによりY4184U+AtClo1s株を生成した。
実施例2
機能的な多価不飽和脂肪酸生合成経路およびコドン最適化シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)カレオシンAtClo1sコード配列を含有する組換えY.リポリティカ(Y.lipolytica)−Y9502U+AtClo1s株
本実施例は、過剰発現プラスミドpYRH55を含有するY.リポリティカ(Y.lipolytica)Y9502U+AtClo1s株の構築について記載する。
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y9502U株においてAtClo1sを過剰発現させるために、実施例1に記載のプラスミドpYRH55をBsiWI/PacIで消化し、3.5kB断片を単離し、それを使用してY9502Uを形質転換し(一般的方法に記載のように)、それによりY9502U+AtClo1s株を生成した。
実施例3
機能的な多価不飽和脂肪酸生合成経路およびコドン最適化シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)カレオシンAtClo1sコード配列を含有する組換えヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)−Z1978U+AtClo1s株
本実施例は、過剰発現プラスミドpYRH55を含有するY.リポリティカ(Y.lipolytica)Z1978U+AtClo1s株の構築について記載する。
Y.リポリティカ(Y.lipolytica)Z1978U株においてAtClo1sを過剰発現させるために、実施例1に記載のプラスミドpYRH55をBsiWI/PacIで消化し、3.5kB断片を単離し、それを使用して形質転換し(一般的方法に記載のように)、それによりZ1978U+AtClo1s株を生成した。
実施例4
Y4184U+AtClo1s株によるオイル産生
本実施例では、オイル蓄積レベルに対する、Y4184U+AtClo1s株におけるAtClo1s過剰発現の効果を決定し、AtClo1s発現を欠く親株で得られたオイルレベルと比較した。AtClo1s過剰発現は、AtClo1s発現を欠く細胞と比較して、オイル/総脂質含量(総乾燥細胞重量のパーセントとして測定された、[TFA%DCW])の増加をもたらした。
オイル量および脂肪酸(FA)組成に対する、Y.リポリティカ(Y.lipolytica)におけるAtClo1s過剰発現の効果を評価および比較するために、Y4184株(対照)およびY4184U+AtClo1s株を、一般的方法に記載のように、同等油性条件下で増殖させた。
Y.リポリティカ(Y.lipolytica)Y4184対照株およびY4184U+AtClo1s株に対する、DCW、細胞の総脂質含量[TFA%DCW]、およびTFAの重量パーセントとしての各脂肪酸の濃度[%TFA]を、一般的方法に記載のように決定した。結果を表4に示す。
Figure 2014516537
表4の結果は、Y4184UにおけるAtClo1sの過剰発現により、総脂質含量として測定されたオイル量[TFA%DCW]が、対照Y4184株の総脂質含量よりも約24%増加したことを示す。さらに、Y4184UにおけるAtClo1s過剰発現により、平均EPA力価[EPA%DCW]が、Y4184のEPA力価と比較して、約27%増加した。
したがって、カレオシンポリペプチドの過剰発現により、多価不飽和脂肪酸生合成経路を含む組換え微生物のオイル含量を増加させることができる。この特定の実施例では、カレオシン過剰発現がない場合には、乾燥細胞重量を基準にして約17%までオイルを蓄積する組換えヤロウィア(Yarrowia)株(Y4184)におけるオイル含量が、カレオシン過剰発現により増加した(TFA%DCW、表4)。この状況でオイル含量を上昇させるカレオシン過剰発現の能力によれば、より高いオイル含量(例えば、少なくとも25TFA%DCW)を有する組換えヤロウィア(Yarrowia)でも過剰発現によりオイル含量が上昇することが示唆される。
実施例5
Y9502+AtClo1s株によるオイル産生
オイル蓄積レベルに対する、Y9502U+AtClo1s株におけるAtClo1s過剰発現の効果を決定し、AtClo1s発現を欠く親株で得られたオイルレベルと比較した。AtClo1s過剰発現は、AtClo1s発現を欠く細胞と比較して、オイル/総脂質含量(総乾燥細胞重量のパーセントとして測定された、[TFA%DCW])の増加をもたらした。
オイル量およびFA組成に対する、Y.リポリティカ(Y.lipolytica)におけるAtClo1s過剰発現の効果を評価および比較するために、Y9502株(対照)およびY9502U+AtClo1s株を、一般的方法に記載のように、同等油性条件下で増殖させた。
Y.リポリティカ(Y.lipolytica)Y9502対照株およびY9502U
+AtClo1s株に対する、DCW、細胞の総脂質含量[TFA%DCW]、およびTFAの重量パーセントとしての各脂肪酸の濃度[%TFA]を、一般的方法に記載のように決定した。結果を表5に示す。
Figure 2014516537
表5の結果は、Y9502UにおけるAtClo1sの過剰発現により、総脂質含量として測定されたオイル量[TFA%DCW]が、対照Y9502株の総脂質含量よりも約16%増加したことを示す。さらに、Y9502UにおけるAtClo1s過剰発現により、平均EPA力価[EPA%DCW]が、Y9502のEPA力価と比較して、約7%増加した。
こうして、カレオシン過剰発現がない場合には、乾燥細胞重量を基準にして約34.5%までオイルを蓄積する組換え油性ヤロウィア(Yarrowia)株(Y9502U)におけるオイル含量が、カレオシン過剰発現により増加した(TFA%DCW、表5)。したがって、カレオシンポリペプチドの過剰発現により、多価不飽和脂肪酸生合成経路を含み、かつオイルとしてその乾燥細胞重量の少なくとも25%を産生する組換え油性微生物のオイル含量を増加させることができる。
実施例6
Z1978U+AtClo1s株によるオイル産生
オイル蓄積レベルに対する、Z1978U+AtClo1s株におけるAtClo1s過剰発現の効果を決定し、AtClo1s発現を欠く親株で得られたオイルレベルと比較した。AtClo1s過剰発現は、AtClo1s発現を欠く細胞と比較して、オイル/総脂質含量(総乾燥細胞重量のパーセントとして測定された、[TFA%DCW])の増加をもたらした。
オイル量およびFA組成に対する、Y.リポリティカ(Y.lipolytica)におけるAtClo1s過剰発現の効果を評価および比較するために、Z1978株(対照)およびZ1978U+AtClo1s株を、一般的方法に記載のように、同等油性条件下で増殖させた。
Y.リポリティカ(Y.lipolytica)Z1978対照株およびZ1978U+AtClo1s株に対する、DCW、細胞の総脂質含量[TFA%DCW]、およびTFAの重量パーセントとしての各脂肪酸の濃度[%TFA]を、一般的方法に記載のように決定した。対照Z1978株は二つ組でアッセイし、Z1978U+AtClo1s株については、2つの分離株を三つ組で試験し、三つ組測定の平均を表6に示す。
Figure 2014516537
表6の結果は、Z1978UにおけるAtClo1sの過剰発現により、総脂質含量として測定されたオイル量[TFA%DCW]が約5%増加したことを示す。したがって、これは、カレオシン過剰発現により、多価不飽和脂肪酸生合成経路を含み、かつオイルとしてその乾燥細胞重量の少なくとも25%を産生する組換え油性微生物のオイル含量を増加させることができることを示す。
実施例7
機能的な多価不飽和脂肪酸生合成経路およびコドン最適化カレオシンコード配列を含有する組換えヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)−Y9502U+Cal01s株、Y9502U+Cal02s株、Y9502U+Cal03s株、Y9502U+Cal04s株、Y9502U+Cal05s株、およびY9502U+Cal06s株
本実施例は、過剰発現コンストラクトpYRH84(配列番号44)、pYRH85(配列番号45)、pYRH86(配列番号46)、pYRH88(配列番号47)、pYRH89(配列番号48)、およびpYRH90(配列番号49)、ならびにY.リポリティカ(Y.lipolytica)Y9502U+Cal01s株、Y9502U+Cal02s株、Y9502U+Cal03s株、Y9502U+Cal04s株、Y9502U+Cal05s株、およびY9502U+Cal06s株の構築について記載する。
トウゴマ(Ricinus communis)(GenBank受託番号XP_002528367)、ダイズ(Glycine max)(GenBank受託番号AAB71227)、ゴマ(Sesamum indicum)(GenBank受託番号AAF13743)、コイクス・ラクリマ(Coix lacryma)(GenBank受託番号ACP27620)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)(GenBank受託番号XP_001397384)、およびニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)(GenBank受託番号XP_958990)に由来する6種の異なるカレオシンタンパク質の配列(それぞれ「Cal01s」[配列番号4]、「Cal02s」[配列番号6]、「Cal03s」[配列番号8]、「Cal04s」[配列番号38]、「Cal05s」[配列番号40]、および「Cal06s」[配列番号42]と命名)を、実施例1ならびに国際公開第2004/101753号パンフレット(上記)および米国特許第7,125,672号明細書(上記)に記載のものと同様な方法で、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)における発現用にコドン最適化した。具体的には、各コドン最適化カレオシンコード配列を、ヤロウィア(Yarrowia)コドン使用頻度パターン(国際公開第2004/101753号パンフレット)、「ATG」翻訳開始コドン周辺のコンセンサス配列、およびRNA安定性の一般則(Guhaniyogi and Brewer,2001,Gene 265(1−2):11−23))に従い、対応する野生型カレオシンコード化遺伝子(配列番号3、5、7、9、11、または13)のコード配列に基づいて設計した。
翻訳開始部位の改変に加えて、Cal01sについては、702bpのコード領域のうちの167bp(23.8%)を改変して、150コドン(64%)をヤロウィア(Yarrowia)発現用に最適化した。GC含量は、野生型遺伝子内の44.6%から合成遺伝子内の54.8%に増加した。Cal02sについては、720bpのコード領域のうちの182bp(25.3%)を改変して、160コドン(64%)を最適化した。GC含量は、野生型遺伝子内の42.5%から合成遺伝子内の54.2%に増加した。Cal03sについては、738bpのコード領域のうちの175bp(23.7%)を改変して、157コドン(67%)を最適化した。GC含量は、野生型遺伝子内の49.2%から合成遺伝子内の54.9%に増加した。Cal04sについては、954bpのコード領域のうちの187bp(19.6%)を改変して、165コドン(52%)を最適化した。GC含量は、野生型遺伝子内の66.5%から合成遺伝子内の57.3%に減少した。Cal05sについては、849bpのコード領域のうちの190bp(22.4%)を改変して、174コドン(61%)を最適化した。GC含量は、野生型遺伝子内の54.0%から合成遺伝子内の55.2%に若干変化した。Cal06sについては、900bpのコード領域のうちの182bp(20.2%)を改変して、157コドン(52%)を最適化した。GC含量は、野生型遺伝子内の57.8%から合成遺伝子内の54.3%に減少した。
NcoIおよびNotI部位をそれぞれ、各合成遺伝子の翻訳開始コドンの周辺および停止コドンの後に組み込んだ。酵素部位の導入により、それぞれの野生型タンパク質アミノ酸配列に対して、Cal04sポリペプチド(配列番号38)はQ2E(アミノ酸位置2でのグルタミンからグルタメートへの変化)を有し、Cal05sポリペプチド(配列番号40)はP2A(アミノ酸位置2でのプロリンからアラニンへの変化)を有し、Cal06sポリペプチド(配列番号42)はP2A(アミノ酸位置2でのプロリンからアラニンへの変化)を有する。これらの変化を除いて、コドン最適化配列の他の改変は、コード化タンパク質のアミノ酸配列を変化させなかった。Cal01コード配列(配列番号3)およびCal01sコード配列(配列番号34)は両方とも、配列番号4をコードし、Cal02コード配列(配列番号5)およびCal02sコード配列(配列番号35)は両方とも、配列番号6をコードし、Cal03コード配列(配列番号7)およびCal03sコード配列(配列番号36)は両方とも、配列番号8をコードする。
NcoIおよびNotI部位を加えた、設計のCal01s、Cal02s、Cal03s、Cal04s、Cal05s、およびCal06sコード配列(それぞれ配列番号34、35、36、37、39、および41)は、GenScript Corporation(Piscataway,NJ)により合成された。NcoIおよびNotI部位は、配列番号34、35、36、37、39、および41には示されていないことに留意されたい。
カレオシン過剰発現プラスミドの構築:コドン最適化カレオシン過剰発現用プラスミドは、pYRH55(図1、配列番号43)に由来した。上記で調製された、トウゴマ(Ricinus communis)、ダイズ(Glycine max)、ゴマ(Sesamum indicum)、コイクス・ラクリマ(Coix lacryma)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、およびニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)のコドン最適化カレオシンコード配列を、NcoI/NotIで消化した。得られた断片を使用してpYRH55から放出されたNcoI/NotI断片を置換した(すなわち、AtClo1s挿入断片)。得られたコンストラクトのpYRH84(配列番号44)、pYRH85(配列番号45)、pYRH86(配列番号46)、pYRH88(配列番号47)、pYRH89(配列番号48)、およびpYRH90(配列番号49)はそれぞれ、FBAINmプロモーター(上記)およびPEX20ターミネーター(上記)と共に、Cal01s、Cal02s、Cal03s、Cal04s、Cal05s、またはCal06sコード配列を有するキメラ遺伝子を含有した。したがって、pYRH55、pYRH84、pYRH85、pYRH86、pYRH88、pYRH89、およびpYRH90は、各コンストラクトに含有された特定のコドン最適化カレオシンコード配列に関して互いに異なるだけである。
Y.リポリティカ(Y.lipolytica)Y9502U+Cal01s株、Y9502U+Cal02s株、Y9502U+Cal03s株、Y9502U+Cal04s株、Y9502U+Cal05s株、およびY9502U+Cal06s株の生成:Y.リポリティカ(Y.lipolytica)Y9502U株において特定のカレオシンを過剰発現させるために、プラスミドコンストラクトpYRH84、pYRH85、pYRH86、pYRH88、pYRH89、およびpYRH90を、それぞれ個々にAscI/SphIで消化し、より大きな断片(それぞれの消化から得られた2つの断片のうち)を使用して形質転換し(一般的方法に記載のように)、それにより、それぞれY9502U+Cal01s株、Y9502U+Cal02s株、Y9502U+Cal03s株、Y9502U+Cal04s株、Y9502U+Cal05s株、およびY9502U+Cal06s株を生成した。
実施例8
Y9502U+Cal01s株、Y9502U+Cal02s株、Y9502U+Cal03s株、Y9502U+Cal04s株、Y9502U+Cal05s株、およびY9502U+Cal06s株によるオイル産生
Y9502U+Cal01s株、Y9502U+Cal02s株、Y9502U+Cal03s株、Y9502U+Cal04s株、Y9502U+Cal05s株、およびY9502U+Cal06s株における、オイル蓄積に対するカレオシン過剰発現の効果を、本明細書で以下に記載のように決定した。種々の供給源に由来するカレオシンの過剰発現は、カレオシン発現を欠く細胞と比較して、オイル/総脂質含量(総乾燥細胞重量のパーセントとして測定された、[TFA%DCW])の増加をもたらした。
オイル量およびFA組成に対する、Y.リポリティカ(Y.lipolytica)におけるカレオシン過剰発現の効果を評価および比較するために、Y9502株(対照)、ならびにY9502U+Cal01s株、Y9502U+Cal02s株、Y9502U+Cal03s株、Y9502U+Cal04s株、Y9502U+Cal05s株、およびY9502U+Cal06s株を、一般的方法に記載のように同等油性条件下で増殖させた。
Y.リポリティカ(Y.lipolytica)Y9502対照、ならびにY9502U+Cal01s株、Y9502U+Cal02s株、Y9502U+Cal03s株、Y9502U+Cal04s株、Y9502U+Cal05s株、およびY9502U+Cal06s株に対する、DCW、細胞の総脂質含量[TFA%DCW]、およびTFAの重量パーセントとしての各脂肪酸の濃度[%TFA]を、一般的方法に記載のように決定した。結果を表7に示す。各カレオシン過剰発現株に対して3つの形質転換体を脂質測定のために選んだ;表7の値は、各株について、3つの形質転換体の独立した2実験の平均である。対照Y9502株については、その値は、それぞれ二つ組で分析された、独立した4実験の平均を表す。
Figure 2014516537
表7の結果は、Y9502Uにおけるカレオシンの過剰発現により、総脂質含量[TFA%DCW]として測定されたオイル量が、脂肪酸中のEPAレベル[EPA%TFA]の顕著な減少を伴わずに、最大16%増加したことを示す。こうして、平均EPA力価[EPA%DCW]は、対照Y9502株と比較して、最大13%増加した。
したがって、カレオシン過剰発現がない場合には、乾燥細胞重量を基準にして約31%までオイルを蓄積する組換え油性ヤロウィア(Yarrowia)株(Y9502)におけるオイル含量が、AtClo1s以外の他の種々のカレオシンの過剰発現により増加した(TFA%DCW、表7)。これらの結果は、カレオシンポリペプチドの過剰発現により、多価不飽和脂肪酸生合成経路を含み、かつオイルとしてその乾燥細胞重量の少なくとも25%を産生する組換え油性微生物のオイル含量を増加させることができることをさらに示す。さらに、これらの結果は、カレオシンタンパク質を使用して、一般に(特定の供給源に由来する1つのカレオシンだけでなく)、組換え油性微生物中のオイル含量を増加させることができることを示す。
実施例9
複数のシステイン残基を有するコドン最適化AtClo1配列(cys−AtClo1s)およびPDATまたはLPCATへの連結
過剰発現コンストラクトpYRH95(配列番号61)、pYRH96(配列番号62)、pYRH97(配列番号63)、pYRH98(配列番号64)、およびpYRH99(配列番号65)の構築について記載する。さらに、Y.リポリティカ(Y.lipolytica)Y9502U+cys−AtClo1s株、Z5567U+cys−AtClo1s株、Z5567U+cys−AtClo1s::PDAT株、Z5567U+PDAT::cys−AtClo1s株、Z5567U+cys−AtClo1s::LPCAT株、およびZ5567U+LPCAT::cys−AtClo1s株の調製について記載する。
AtClo1sコード配列(配列番号33)を、AtClo1sポリペプチドのN末端およびC末端領域に付加されたシステインコドンをコードするように改変した。複数のシステインを含有する、この変異ポリペプチド(配列番号51)は、「cys−AtClo1s」と命名され、配列番号50によりコード化される。図2は、AtClo1s(配列番号2)とcys−AtClo1s(配列番号51)とのアミノ酸配列のアライメントを示す。AtClo1sのN末端およびC末端領域にある、それぞれ4つおよび3つの残基をシステイン残基に変異させた。得られたアミノ酸配列(配列番号51)は、N末端領域にD11C、H25C、R35C、およびQ46Cの変異を、C末端領域にG200C、R207C、およびD240Cの変異を含有する。さらに、1つのシステイン残基をGly2とSer3との間に挿入した。付加されたシステイン残基には、図2に示すcys−AtClo1s配列で下線を付した。AtClo1sポリペプチドは、アミノ酸位置221および230に天然のシステイン残基を含有する。したがって、cys−AtClo1sは、そのN末端およびC末端領域のそれぞれに5つのシステイン残基を含有する;これらのシステインは、ほぼ10アミノ酸(7〜15のアミノ酸)の間隔で互いに配置される。
次に、4つのヌクレオチド配列を、Y.リポリティカ(Y.lipolytica)リン脂質:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(PDAT、E.C.2.3.1.158;参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,901,928号明細書)またはY.リポリティカ(Y.lipolytica)リゾホスファチジルコリンアシルトランスフェラーゼ(LPCAT、E.C.2.3.1.23;参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2010−0317882号明細書)に融合したcys−AtClo1sを発現させるために調製した。コード化融合タンパク質は、(i)cys−AtClo1sがN末端にあるPDAT(「cys−AtClo1s::PDAT」と命名)(配列番号53)、(ii)cys−AtClo1sがC末端にあるPDAT(「PDAT::cys−AtClo1s」と命名)(配列番号55)、(iii)cys−AtClo1sがN末端にあるLPCAT(「cys−AtClo1s::LPCAT」と命名)(配列番号57)、および(iv)cys−AtClo1sがC末端にあるLPCAT(「LPCAT::cys−AtClo1s」と命名)(配列番号59)の融合タンパク質であった。各融合配列中には、パートナー間に24アミノ酸のリンカー配列(GAGPARPAGLPPATYYDSLAVMGS、配列番号60)が存在した。各融合物において第1タンパク質の停止コドンは除去した。融合タンパク質PDAT::cys−AtClo1s(配列番号55)およびLPCAT::cys−AtClo1s(配列番号59)のそれぞれにおいて、cys−AtClo1sの位置2のグリシン残基は存在しない。さらに、4つの融合配列のそれぞれについて、NcoIおよびNotI部位がそれぞれ、第1遺伝子の翻訳開始コドンの周辺および第2遺伝子の停止コドンの後に組み込まれた。各配列はGenScript Corporation(Piscataway,NJ)により合成された。NcoIおよびNotI部位が、上記の融合タンパク質をコードする配列番号52、54、56、および58に示されていないことに留意されたい。
cys−AtClo1sの過剰発現用プラスミドの構築およびPDATまたはLPCATへの連結:cys−AtClo1s、cys−AtClo1s::PDAT、PDAT::cys−AtClo1s、cys−AtClo1s::LPCAT、およびLPCAT::cys−AtClo1sの過剰発現用プラスミドを、pYRH55(図1、配列番号43)を使用して調製した。これらのタンパク質に対する各コード配列をNcoI/NotIで消化し、得られた断片を使用してpYRH55のNcoI/NotI断片(すなわち、AtClo1s挿入断片)を置換した。得られたコンストラクトのpYRH95(配列番号61)、pYRH96(配列番号62)、pYRH97(配列番号63)、pYRH98(配列番号64)、およびpYRH99(配列番号65)はそれぞれ、FBAINmプロモーター(上記)およびPEX20ターミネーター(上記)と共に、cys−AtClo1s、cys−AtClo1s::PDAT、PDAT::cys−AtClo1s、cys−AtClo1s::LPCAT、またはLPCAT::cys−AtClo1sに対するコード配列を有するキメラ遺伝子を含有した。したがって、pYRH95、pYRH96、pYRH97、pYRH98、およびpYRH99は、各コンストラクトに含有された特定のシステイン改変カレオシン/融合コード配列に関して互いに異なるだけである。
Y.リポリティカ(Y.lipolytica)Y9502U+cys−AtClo1s株、Z5567U+cys−AtClo1s株、Z5567U+cys−AtClo1s::PDAT株、Z5567U+PDAT::cys−AtClo1s株、Z5567U+cys−AtClo1s::LPCAT株、およびZ5567U+LPCAT::cys−AtClo1s株の生成:Y.リポリティカ(Y.lipolytica)Z9502U株またはZ5567U株において、cys−AtClo1s、cys−AtClo1s::PDAT、PDAT::cys−AtClo1s、cys−AtClo1s::LPCAT、またはLPCAT::cys−AtClo1sを過剰発現させるために、pYRH95、pYRH96、pYRH97、pYRH98、およびpYRH99をそれぞれ個々に、AscI/SphIで消化し、より大きな断片(各消化から得られる2つの断片のうち)を使用して形質転換した(一般的方法に記載のように)。それぞれの形質転換から、Y9502U+cys−AtClo1s株、Z5567U+cys−AtClo1s株、Z5567U+cys−AtClo1s::PDAT株、Z5567U+PDAT::cys−AtClo1s株、Z5567U+cys−AtClo1s::LPCAT株、およびZ5567U+LPCAT::cys−AtClo1s株を得た。
実施例10
Y9502U+AtClo1s株およびY9502U+cys−AtClo1s株によるオイル産生の比較
Y9502株におけるオイル蓄積に対する、そのN末端およびC末端領域(cys−AtClo1s)に複数のシステイン残基を有するカレオシンの過剰発現の効果を決定した。この分析は、Y9502U+AtClo1s株とカレオシン発現を欠く親株とで測定されたオイル蓄積の比較でなされた。
Y.リポリティカ(Y.lipolytica)におけるオイル含量および脂肪酸(FA)組成に対するAtClo1sおよびcys−AtClo1s過剰発現の効果を評価および比較するために、Y9502株(対照)、Y9502U+AtClo1s株、およびY9502U+cys−AtClo1s株を、同等油性条件下で増殖させた。これらの株それぞれに対する、DCW、細胞の総脂質含量[TFA%DCW]、およびTFAの重量パーセントとしての各脂肪酸の濃度[%TFA]を、一般的方法に記載のように決定した。結果を表8に示す。
Y.リポリティカ(Y.lipolytica)ゲノムへの過剰発現コンストラクトのランダムな組み込みの位置効果があるため、形質転換株のそれぞれの8つのうちの4つに対するオイル蓄積結果を、分析のために選んだ;形質転換体の各セットの選択は、他の4つの形質転換体と比較して、EPA力価[EPA%DCW]がより高いことに基づいた。
Figure 2014516537
表8の結果は、Y9502UにおけるAtClo1sの過剰発現により、Y9502で測定されたそれぞれの値に比べて、総脂質含量として測定されたオイル量[TFA%DCW]が約8%増加し、EPA力価[EPA%DCW]が約9%増加したことを示す。これらの結果により、実施例5(表5)において観察されたこと、すなわち、Y9502と比較すると、オイル含量およびEPA力価がY9502U+AtClo1sにおいてより高いことが確認された。
しかしながら、Y9502U+AtClo1sと比較すると、cys−AtClo1sを過剰発現するY9502Uは、Y9502において測定されたそれぞれの値に対するオイル量(約2.6%)およびEPA力価(約3.8%)の増加量が少ないことが示された。cys−AtClo1sの過剰発現では、システイン改変のない対応するカレオシンがY9502Uにおいて過剰発現された場合と比較して、オイル量に対する効果が軽度であったが、異なる株(Z5567U)においてまたはPDATとの融合タンパク質(下記)として発現された場合には、cys−AtClo1sは、オイル量のより顕著な増加を伴った。
実施例11
Z5567U+cys−AtClo1s株、Z5567U+cys−AtClo1s::PDAT株、Z5567U+PDAT::cys−AtClo1s株、Z5567U+cys−AtClo1s::LPCAT株、およびZ5567U+LPCAT::cys−AtClo1s株によるオイル産生
Z5567株におけるオイル蓄積に対する、複数の付加されたシステイン残基(cys−AtClo1s)を有するカレオシンの過剰発現の効果を試験した。具体的には、Z5567U+cys−AtClo1s、Z5567U+cys−AtClo1s::PDAT、Z5567U+PDAT::cys−AtClo1s、Z5567U+cys−AtClo1s::LPCAT、およびZ5567U+LPCAT::cys−AtClo1sにおける蓄積オイルレベルを測定し、カレオシン発現を欠く親株(Z5567)のオイルレベルと比較した。cys−AtClo1s::PDATおよびPDAT::cys−AtClo1s融合タンパク質の過剰発現は両方とも、カレオシン発現を欠く細胞と比較すると、総乾燥細胞重量のパーセントとして測定されるオイル[TFA%DCW]の顕著な増加をもたらした。
Y.リポリティカ(Y.lipolytica)におけるオイル含量および脂肪酸(FA)組成に対するカレオシン過剰発現の効果を評価および比較するために、Z5567株(対照)、Z5567U+cys−AtClo1s株、Z5567U+cys−AtClo1s::PDAT株、Z5567U+PDAT::cys−AtClo1s株、Z5567U+cys−AtClo1s::LPCAT株、およびZ5567U+LPCAT::cys−AtClo1s株を同等油性条件下で増殖させた。これらの株それぞれに対する、DCW、細胞の総脂質含量[TFA%DCW]、およびTFAの重量パーセントとしての各脂肪酸の濃度[%TFA]を、一般的方法に記載のように決定した。結果を表9および10に示す。
各カレオシン過剰発現株について、ウラシルを欠く対照プレート上でのZ5567Uのバックグラウンドレベルの増殖に応じて、8つまたは16の形質転換体を分析した。形質転換株のそれぞれについて、8つのうちの4つまたは16のうちの5つに関する結果を分析のために選んだ;各セットの形質転換体の選択は、各株について他の形質転換体と比較して総脂質含量またはEPA力価がより高いことに基づいた。
Figure 2014516537
表9の結果は、Z5567Uにおけるcys−AtClo1sの過剰発現により、脂質含量として測定されたオイル量[TFA%DCW]が、対照Z5567株の総脂質含量よりも約5%増加したことを示す。さらに、Z5567Uにおけるcys−AtClo1s過剰発現により、平均EPA力価[EPA%DCW]が、Z5567のEPA力価と比較して、約10%増加した。
こうして、カレオシン過剰発現がない場合には、乾燥細胞重量を基準にして約47.5%までオイルを蓄積する組換え油性ヤロウィア(Yarrowia)株(Z5567)におけるオイル含量が、付加されたシステインを含有するように改変されたカレオシン(cys−AtClo1s)の過剰発現により増加した(TFA%DCW、表9)。したがって、これは、カレオシンポリペプチドの過剰発現が、多価不飽和脂肪酸生合成経路を含み、かつオイルとしてその乾燥細胞重量の少なくとも25%を産生する組換え油性微生物のオイル含量を増加させ得る方法の別の例を表す。
cys−AtClo1s発現の効果がZ5567U株とY9502U株との間でかなり類似しているのであれば、付加されたシステインを含有するように改変されていない対応するカレオシン(すなわち、AtClo1s)の発現は、cys−AtClo1sによる誘導と比較して、Z5567Uにおいて同等またはより高レベルのオイル蓄積を誘導するであろうと予測することは妥当である。これは、cys−AtClo1s過剰発現により、Y9502に比べてY9502Uにおけるオイル含量が約2.6%増加したが、AtClo1sが過剰発現されたときには、Y9502Uにおけるオイル含量はそれより高かったからである(約8%、表8)。
Z5567Uにおけるcys−AtClo1s::PDATまたはPDAT::cys−AtClo1sの過剰発現により、対照Z5567株に対して測定されたそれぞれの値と比較して、オイル量が約14〜15%、EPA力価が約5〜8%増加した。これは、カレオシンをそのN末端またはC末端で特定の他のタンパク質に融合しても、オイル含量の増加を誘導するその能力を保持することができることを示す例を表す。この例におけるカレオシンはシステイン改変がなされているが、PDATと融合した、システイン改変されていないカレオシンの過剰発現により、オイルおよびEPA含量を増加させ得ると予測される。これらの結果をまとめると、PDATなど、ジアシルグリセロールのアシル化を触媒する酵素と融合したカレオシンタンパク質を過剰発現させると、多価不飽和脂肪酸生合成経路を含み、かつオイルとしてその乾燥細胞重量の少なくとも25%を産生する組換え油性微生物中のオイル含量を増加させ得ることが実証される。
Figure 2014516537
表10の結果は、Z5567Uにおけるcys−AtClo1s::LPCATまたはLPCAT::cys−AtClo1sの過剰発現により、対照Z5567株のそれぞれの値と比較して、総脂質含量として測定されたオイル量[TFA%DCW]またはEPA力価[EPA%DCW]が増加しないことを示す。
この結果は、本明細書で試験された特定のcys−カレオシン/LPCAT融合タンパク質(cys−AtClo1s::LPCAT、配列番号64;LPCAT::cys−AtClo1s、配列番号65)が、Y.リポリティカ(Y.lipolytica)Z5567株など、多価不飽和脂肪酸生合成経路を含み、かつオイルとしてその乾燥細胞重量の少なくとも25%を産生する油性微生物中のオイル含量を増加させるために有用ではない可能性があることを示す。この結果は、Y.リポリティカ(Y.lipolytica)Z5567U株においてオイル含量を最大15%と顕著に増加させることができた、cys−AtClo1s::PDATおよびPDAT::cys−AtClo1s融合タンパク質を使用して得られた結果(表9)とまったく対照的である。

Claims (15)

  1. 乾燥細胞質量の少なくとも25%をオイルとして産生する組換え油糧微生物であって、
    該組換え油糧微生物が、機能的な多価不飽和脂肪酸生合成経路とカレオシンポリペプチドをコードする少なくとも1つの遺伝子コンストラクトとを含み;
    さらに該組換え油糧微生物が、対応する対照により産生されるオイル量と比較すると、少なくとも1つの多価不飽和脂肪酸を含むオイルをより多量に産生する、
    組換え油糧微生物。
  2. 前記微生物が、酵母、真菌、および藻類からなる群から選択される、請求項1に記載の組換え油糧微生物。
  3. 微生物が、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)である、請求項1に記載の組換え油糧微生物。
  4. 多価不飽和脂肪酸が、オメガ−3多価不飽和脂肪酸およびオメガ−6多価不飽和脂肪酸からなる群から選択される、請求項1に記載の組換え油糧微生物。
  5. オメガ−3多価不飽和脂肪酸が、エイコサペンタエン酸(EPA)である、請求項4に記載の組換え油糧微生物。
  6. カレオシンポリペプチドが、Clustal Wアライメント法に基づくと、配列番号2、4、6、8、10、12、14、38、40、42、および51からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性があるアミノ酸配列を有し、該カレオシンポリペプチドがカレオシン機能を有する、請求項1に記載の組換え油糧微生物。
  7. カレオシンポリペプチドが、ジアシルグリセロールのアシル化を触媒する酵素に結合している、請求項1に記載の組換え油糧微生物。
  8. 前記酵素が、リン脂質:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(PDAT)である、請求項7に記載の組換え油糧微生物。
  9. カレオシンポリペプチドが、カレオシンポリペプチドの野生型アミノ酸配列に対して付加されたシステイン残基を含有し、該付加されたシステイン残基が、上記カレオシンポリペプチドのN末端およびC末端領域内に散在する、請求項1に記載の組換え油糧微生物。
  10. 組換え油糧微生物に含有されるオイル量を増加させる方法であって、該方法が、
    a)請求項1に記載の組換え油糧微生物を準備するステップと、
    b)少なくとも1つの多価不飽和脂肪酸を含むオイルが産生される条件下でステップ(a)の組換え油糧微生物を増殖させるステップと、
    c)場合によっては、ステップ(b)のオイルを回収するステップと
    を含む、上記方法。
  11. 組換え油糧微生物が、酵母、真菌、および藻類からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
  12. 微生物が、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)である、請求項10に記載の方法。
  13. 多価不飽和脂肪酸が、オメガ−3多価不飽和脂肪酸およびオメガ−6多価不飽和脂肪酸からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
  14. オメガ−3多価不飽和脂肪酸が、エイコサペンタエン酸(EPA)である、請求項13に記載の方法。
  15. カレオシンポリペプチドが、Clustal Wアライメント法に基づくと、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、および32からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性があるアミノ酸配列を有し、該カレオシンポリペプチドがカレオシン機能を有する、請求項10に記載の方法。
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