腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーに属する様々なリガンド及びレセプターが当該技術分野で同定されている。このようなリガンドに含まれるものは、腫瘍壊死因子−アルファ(「TNF−アルファ」)、腫瘍壊死因子−ベータ(「TNF−ベータ」又は「リンホトキシン−アルファ」)、リンホトキシン−ベータ(「LT−ベータ」)、CD30リガンド、CD27リガンド、CD40リガンド、OX−40リガンド、4−1BBリガンド、ライト、Apo−1リガンド(Fasリガンド又はCD95リガンドとも称される)、Apo−2リガンド(Apo2L又はTRAILとも称される)、Apo−3リガンド(TWEAKとも称される)、APRIL、OPGリガンド(RANKリガンド、ODF又はTRANCEとも称される)、及びTALL−1(BlyS、BAFF又はTHANKとも称される)である(例えばAshkenazi, Nature Review, 2:420-430 (2002);Ashkenazi及びDixit, Science, 281:1305-1308 (1998);Ashkenazi及びDixit, Curr. Opin. Cell Biol., 11:255-260 (2000);Golstein, Curr. Biol., 7:750-753 (1997) Wallach, Cytokine Reference, Academic Press, 2000,377-411頁;Locksleyら, Cell, 104:487-501 (2001)を参照。
このようなTNFファミリーリガンドにより媒介される様々な細胞応答の誘導は典型的には特定の細胞レセプターに結合することにより開始される。全てではないがいくつかのTNFファミリーリガンドは、細胞表面「デスレセプター」に結合し、様々な生物活性を誘導し、カスパーゼ、つまり細胞死又はアポトーシス経路を実施する酵素を活性化させる(Salvesenら, Cell, 91:443-446 (1997)。今日までに同定されているTNFレセプタースーパーファミリーのメンバーに含まれるものは、TNFR1、TNFR2、TACI、GITR、CD27、OX−40、CD30、CD40、HVEM、Fas(Apo−1又はCD95とも称される)、DR4(TRAIL−R1とも称される)、DR5(Apo−2又はTRAIL−R2)、DcR1、DcR2、オステオプロテゲリン(OPG)、RANK及びApo−3(DR3又はTRAMPとも称される)である(例えば、Ashkenazi, Nature Reviews, 2:420-430 (2002); Ashkenazi and Dixit, Science, 281:1305-1308 (1998); Ashkenazi and Dixit, Curr. Opin. Cell Biol., 11:255-260 (2000); Golstein, Curr. Biol., 7:750-753 (1997); Wallach, Cytokine Reference, Academic Press, 2000, 377-411頁; Locksleyら, Cell, 104:487-501 (2001)を参照)。
これらのTNFレセプターファミリーメンバーのほとんどは、細胞外、膜貫通及び細胞内領域を含む細胞表面レセプターに典型的な構造を共有しており、その他のものは、膜貫通及び細胞内ドメインを欠く可溶性タンパク質として天然に見いだされる。典型的なTNFRの細胞外部分は、NH2−末端から始まる複数のシステインリッチドメイン(CRD)の反復アミノ酸配列パターンを含んでいる。
Apo−2L又はTRAILと称されるリガンドは、サイトカインのTNFファミリーのメンバーとして過去に同定された(例えば、Wileyら, Immunity, 3:673-682 (1995); Pittiら, J. Biol. Chem., 271:12697-12690 (1996);国際公開第97/01633号;国際公開第97/25428号;1998年6月9日に発行された米国特許第5763223号;2001年9月4日に発行された米国特許第6284236号)。全長天然配列ヒトApo2L/TRAILポリペプチドは、281アミノ酸長のII型膜貫通タンパク質である。いくつかの細胞は、ポリペプチドの細胞外領域の酵素切断により、ポリペプチドの天然の可溶型を産生しうる(Marianiら, J. Cell. Biol., 137:221-229 (1997))。Apo2L/TRAILの可溶型の結晶学的研究により、TNFと他の関連したタンパク質の構造に類似のホモ三量体構造があることが明らかになった(Hymowitzら, Molec. Cell, 4:563-571 (1999);Chaら, Immunity, 11:253-261 (1999);Mongkolsapayaら, Nature Structural Biology, 6:1048 (1999);Hymowitzら, Biochemistry, 39:633-644 (2000))。しかしながら、他のTNFファミリーメンバーとは異なり、Apo2L/TRAILは、3つのシステイン残基(ホモ三量体の各サブユニットの230位)が亜鉛原子と配位結合し、亜鉛結合が三量体の安定性及び生物活性にとって重要である、独特の構造的特徴を有していることが見いだされた(上掲のHymowitz ら;Bodmerら, J. Biol. Chem., 275:20632-20637 (2000))。
Apo2L/TRAILの可溶型は、結腸、肺、乳房、前立腺、膀胱、腎臓、卵巣及び脳の腫瘍、並びにメラノーマ、白血病、多発性骨髄腫を含む様々な癌細胞においてアポトーシスを誘導することもまた報告されている(例えば、上掲のWileyら;上掲のPittiら;2000年2月29日に発行された米国特許第6030945号;2004年6月8日に発行された米国特許第6746668号;Riegerら, FEBS Letters, 427:124-128 (1998);Ashkenaziら, J. Clin. Invest., 104:155-162 (1999);Walczakら, Nature Med., 5:157-163 (1999);Keane ら, Cancer Research, 59:734-741 (1999);Mizutaniら, Clin. Cancer Res., 5:2605-2612 (1999);Gazitt, Leukemia, 13:1817-1824 (1999);Yuら, Cancer Res., 60:2384-2389 (2000);Chinnaiyanら, Proc. Natl. Acad. Sci., 97:1754-1759 (2000))。マウス腫瘍モデルにおけるインビボ研究は、Apo2L/TRAILが、単独で又は化学療法もしくは放射線療法と組合せて、実質的な抗腫瘍効果を奏しうることをさらに示唆している(例えば、上掲のAshkenaziら;上掲のWalzcakら;Gliniakら, Cancer Res., 59:6153-6158 (1999);上掲のChinnaiyanら;Rothら, Biochem. Biophys. Res. Comm., 265:1999 (1999);PCT出願US/00/15512;PCT出願US/01/23691を参照)。多くの種類の癌細胞と対照的に、ほとんどの正常なヒト細胞型は、Apo2L/TRAILのある組換え型によりアポトーシス誘導に対する耐性があると思われる(Ashkenaziら, 上掲;Walzcakら, 上掲)。Joらは、Apo2L/TRAILのポリヒスチジンタグ可溶型が、非ヒトではなく正常な単離ヒト肝細胞においてインビトロでアポトーシスを誘導したことを報告している(Joら, Nature Med., 6:564-567 (2000);また、Nagata, Nature Med., 6:502-503 (2000)を参照)。Liらは、ヒトTRAILの組換え調製物が、培養されたヒト内皮細胞においてアポトーシスを惹起させたことを報告している(Li ら, J. Immunol., 171:1526-1533 (2003))。ある種の組換えApo2L/TRAIL調製物は、例えばタグ分子の有無、亜鉛含有量、及び%三量体含有量に応じ、罹患対正常細胞において、生化学的特性及び生物活性に関して変動しうると考えられる(Lawrenceら, Nature Med., Letter to the Editor, 7:383-385 (2001);Qinら, Nature Med., Letter to the Editor, 7:385-386 (2001)を参照)。
Apo2L/TRAILは、少なくとも5つの異なるレセプターと結合することが見いだされている。Apo2L/TRAILに結合するレセプターの少なくとも2つは、機能的な細胞質デスドメインを含む。このようなレセプターの一つは「DR4」(又は、TR4もしくはTRAIL−R1と称される(Panら, Science, 276:111-113 (1997);また1998年7月30日に公開された国際公開第98/32856号;1999年7月29日に公開された国際公開第99/37684号;2000年12月7日に公開された国際公開第00/73349号;2002年8月13日に発行された米国特許第6433147号;2002年10月8日に発行された米国特許第6461823号、及び2002年1月29日に発行された米国特許第6342383号を参照)。
Apo2L/TRAILに対する他のこのようなレセプターは、DR5とも称される(また、別に、Apo-2;TRAIL-R又はTRAIL-R2、TR6、Tango-63、hAPO8、TRICK2又はKILLERとも称される)(例えば、Sheridanら, Science, 277:818-821 (1997); Panら, Science, 277:815-818 (1997); 1998年11月19日に公開された国際公開第98/51793号;1998年9月24日に公開された国際公開第98/41629号;Screatonら, Curr. Biol., 7:693-696 (1997); Walczakら, EMBO J., 16:5386-5387 (1997);Wuら, Nature Genetics, 17:141-143 (1997);1998年8月20日に公開された国際公開第98/35986号;1998年10月14日に公開された欧州特許出願公開第870827号;1998年10月22日に公開された国際公開第98/46643号;1999年1月21日に公開された国際公開第99/02653号;1999年2月25日に公開された国際公開第99/09165号;1999年3月11日に公開された国際公開第99/11791号;2002年8月13日に発行された米国特許第2002/0072091号;2001年12月7日に発行された米国特許第2002/0098550号;2001年12月6日に発行された米国特許第6313269号;2001年8月2日に発行された米国特許第2001/0010924号;2003年7月3日に発行された米国特許第2003/01255540号;2002年10月31日に発行された米国特許第2002/0160446号;2002年4月25日に発行された米国特許第2002/0048785号;2002年2月に発行された米国特許第6342369号;2003年3月27日に発行された米国特許第6569642号;2000年6月6日に発行された米国特許第6072047号;2003年11月4日に発行された米国特許第6642358号;2004年6月1日に発行された米国特許第6743625号を参照)。DR4と同様、DR5は細胞質デスドメインを含み、リガンド結合時(又はリガンドの活性を模倣するアゴニスト抗体等の分子への結合時)にアポトーシスをシグナル伝達することができると報告されている。Apo−2L/TRAILとDR5との間に形成された複合体の結晶構造は、Hymowitzら, Molecular Cell, 4:563-571 (1999)に記載されている。
リガンド結合時に、DR4とDR5は双方共、FADD/Mort1と称されるデスドメイン含有アダプター分子を通してアポトーシスイニシエーターであるカスパーゼ−8を独立して補充し活性化することによってアポトーシスを惹起しうる[Kischkelら, Immunity, 12:611-620(2000);Sprickら, Immunity, 12:599-609(2000);Bodmerら, Nature Cell Biol., 2:241-243 (2000)]。
Apo2L/TRAILは、シグナル伝達のトランスデューサーというよりはむしろ、インヒビターとして機能すると考えられている、DcR1、DcR2及びOPGと称されるレセプターに結合することが報告されている(例えば、DCR1(TRID、LIT又はTRAIL−Rとも称される)[Panら, Science, 276:111-113 (1997);Sheridanら, Science, 277:818-821 (1997);McFarlaneら, J. Biol. Chem., 272:25417-25420 (1997);Schneiderら, FEBS Letters, 416:329-334 (1997);Degli-Espostiら, J. Exp. Med., 186:1165-1170 (1997);及び Mongkolsapayaら, J. Immunol., 160:3-6 (1998);DCR2(TRUNDD又はTRAIL-R4とも称される)[Marstersら, Curr. Biol., 7:1003-1006 (1997);Panら, FEBS Letters, 424:41-45 (1998);Degli-Espostiら, Immunity, 7:813-820 (1997)]、及びOPG[上掲のSimonetら]。DR4及びDR5とは対照的に、DcR1及びDcR2レセプターはアポトーシスをシグナル伝達しない。
ある種の癌細胞は、デスレセプター活性化に応答してアポトーシスを受けるが、多くは部分的又は全体的耐性を示す。Yangら, Curr. Opin. Cell Biol., (2010)。アポトーシス促進性レセプターアゴニスト(「PARA」)を用いた多くの前臨床研究は、培養されたヒト癌細胞又はマウスで増殖した異種移植ヒト腫瘍に依存している。しかしながら、自発的又は同系腫瘍におけるアポトーシス促進性レセプター経路の活性化効果については、あまり知られていない。特に、動物モデルにおける腫瘍微小環境に対する効果は、ほとんどのPARAがヒトデスレセプターを標的とするが、マウスカウンターパートを標的としないため、十分には理解されていない(Ashkenaziら, Nat. Rev. Drug Disc., 7:1001-1012 (2008))。以前の研究では、マウスに存在する唯一のApo2L/TRAILデスレセプター、マウスDR5に対して産生された抗体(又はTRAIL−R)のMD5.1を使用している。MD5.1はインビトロで癌細胞のアポトーシスを誘導することが報告されているが、インビボにおけるその殺腫瘍効果は、自然及び適応免疫の観点で偶発性でありうる(Takedaら, J. Exp. Med., 199:437-448 (2004);Unoら, Nat. Med., 12:693-698 (2006);Frewら, Proc. Natl. Acad. Sci., 105:11317-11322 (2008);Haynesら, J. Immunol., 185:532-541 (2010))。
特に別の定義をしない限り、ここで使用される専門用語、表記及び他の科学的な用語のすべては、この発明に関連する当業者に一般的に理解される意味を持つことが意図される。ある場合には、一般的に理解される意味を持つ用語を明確化及び/又は参照を容易にするためにここで定義するが、ここで定義を含めることが、当該技術分野で一般的に理解されていることと実質的に異なることを表すためであると必ずしも解釈されるべきではない。ここに記載され又は参照される技術及び手順は当業者により一般的に十分に理解され、例えばSambrook 等, Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2版(1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.に記載された広く利用される分子クローニング方法論などの、一般的な方法論を使用して通常利用されるものである。必要に応じて、市販のキットや試薬の使用を伴う手順は、特に明記しない限り、製造者が定めたプロトコール及び/又はパラメータに従って一般的に実施される。
明細書及び添付の特許請求の範囲に使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかにそうでない限り、複数形を含むことに留意されなければならない。
ここに述べられるすべての出版物は出典明示によりここに援用され、該出版物の引用に関連して方法及び/又は材料を開示し記載する。ここで引用される出版物は、本出願の出願日前の開示について引用するものである。発明者が優先日より早い又は発明日より早い出版物によって権利が与えられないことを認めていると決して解釈されてはならない。さらに、実際の出版日は示されているものと異なり、個々に検証を必要とする場合がある。
(定義)
「Apo−2リガンド」、「Apo−2L」、「Apo2L」、「Apo2L/TRAIL」、「Apo−2リガンド/TRAIL」及び「TRAIL」なる用語は、補足図11に示されたアミノ酸配列のアミノ酸残基114−281、95−281、残基92−281、残基91−281、残基41−281、残基39−281、残基15−281、又は残基1−281、並びに上記配列の生物学的に活性な断片、欠損、挿入、又は置換変異体を含むポリペプチド配列を意味するものとして互換可能に使用される。一実施態様では、ポリペプチド配列は補足図11の残基114−281を含む。場合によっては、ポリペプチド配列は補足図11の残基92−281又は残基91−281を含む。Apo−2Lポリペプチドは補足図11に示された天然ヌクレオチド配列によってコードされうる。場合によっては、残基Pro119(補足図11)をコードするコドンは「CCT」又は「CCG」でありうる。場合によっては、断片又は変異体は生物学的に活性であり、上記の配列の何れか一と少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約90%の配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する。この定義には、その天然のアミノ酸の少なくとも一がアラニン残基などの他のアミノ酸によって置換されているApo−2リガンドの置換変異体が包含される。任意の置換変異体は一又は複数の残基置換を包含する。任意の変異体は、補足図11の天然配列のApo−2リガンドポリペプチド配列と異なるアミノ酸配列を含んでもよく、補足図11の残基位置での一又は複数の次のアミノ酸置換:S96C;S101C;S111C;R170C;K179Cを有する。また、定義には、組換え又は合成法によって調製され、又はApo−2リガンド源から単離された天然配列Apo−2リガンドもまた包含される。本発明のApo−2リガンドは1997年1月16日公開の国際公開第97/01633号、1997年7月17日公開の国際公開第97/25428号、1999年7月22日公開の国際公開第99/36535号、2001年1月4日公開の国際公開第01/00832号、2002年2月7日公開の国際公開第02/09755号、及び2000年12月14日公開の国際公開第00/75191号に開示されたApo−2リガンド又はTRAILと称されるポリペプチドを含む。本用語は、一般に、ポリペプチドの単量体、二量体、三量体、六量体又はより高度のオリゴマー形態を含むApo−2リガンドの形態を意味するために使用される。Apo−2L配列において言及されているアミノ酸残基の全ての番号付けは、特に他の定義を行わない限り、補足図11に従った番号付けを使用している。例えば、「D203」又は「Asp203」は、補足図11に与えられた配列における位置203のアスパラギン酸残基を意味している。
補足図11のアミノ酸114−281からなり、大腸菌で産生される組換えヒトApo2L/TRAILポリペプチドの可溶型は、USAN名「デュラネルミン」が割り当てられており、「デュラネルミン」との記載はApo2L/TRAILポリペプチドのこの形態を意味する。デュラネルミンは、2001年1月4日に公開の国際公開第01/00832号と2003年5月22日に公開の国際公開第03/042344号に記載されているように、ジェネンテック社(South San Francisco, CA)により製造され、製剤化されている。
ここで使用される「Apo−2リガンド選択的変異体」という用語は、天然Apo−2リガンド配列において一又は複数のアミノ酸変異を含み、DR4レセプター又はDR5レセプターに対して選択的な結合親和性を有するApo−2リガンドポリペプチドを意味する。一実施形態では、Apo−2リガンド変異体はDR4レセプターに対して選択的結合親和性を有し、天然Apo−2リガンド配列の位置189、191、193、199、201又は209のいずれか一に一又は複数のアミノ酸置換を含む。別の実施形態では、Apo−2リガンド変異体はDR5レセプターに対して選択的結合親和性を有し、天然Apo−2リガンド配列の位置189、191、193、264、266、267又は269のいずれか一に一又は複数のアミノ酸置換を含む。好ましいApo−2リガンド選択的変異体は、一又は複数のアミノ酸変異を含み、DR4レセプターに対し、天然配列Apo−2リガンド結合親和性以上(≧)のDR4レセプターに対する結合親和性を示し、さらに好ましくは、Apo−2リガンド変異体は、DR5レセプターに対し、天然配列Apo−2リガンドがDR5に対して示す結合親和性より小さい(<)結合親和性を示す。このようなApo−2リガンド変異体のDR4レセプターに対する結合親和性が、天然配列Apo−2リガンドと比較した場合、ほぼ等しい(不変である)か、それよりも大きく(増大している)、Apo−2リガンド変異体のDR5レセプターに対する結合親和性が、天然配列Apo−2リガンドと比較した場合、小さいか、殆ど消滅している場合、ここでの目的に対して、Apo−2リガンド変異体の結合親和性はDR4レセプターに対して「選択性」であると考えられる。本発明の好ましいDR4選択性Apo−2リガンド変異体は、DR5レセプターに対して(天然配列Apo−2リガンドと比較した場合)少なくとも10倍少ない結合親和性を有し、さらに好ましくは、DR5レセプターに対して(天然配列Apo−2リガンドと比較した場合)少なくとも100倍少ない結合親和性を有する。Apo−2リガンド変異体それぞれの結合親和性を測定し、当該技術分野で知られているELISA、RIA、及び/又はBIAcoreアッセイにより(114−281形態等の)天然Apo−2Lの結合特性と比較されうる。本発明の好ましいDR4選択性Apo−2リガンド変異体は、少なくとも1種類の哺乳動物細胞(好ましくは癌細胞)にアポトーシスを誘導し、そのようなアポトーシス活性をアラマーブルー又はクリスタルバイオレットアッセイ等の既知の方法により測定することができる。DR4選択性Apo−2リガンド変異体は、Apo−2Lのデコイレセプターのいずれかに対して変化した結合親和性を有していても有していなくともよく、それらデコイレセプターは当技術分野でDcR1、DcR2及びOPGと称される。
さらなる好ましいApo−2リガンド選択的変異体は、一又は複数のアミノ酸変異を含み、DR5レセプターに対し、天然配列Apo−2リガンドの結合親和性に等しいかそれより多い(≧)DR5レセプターに対する結合親和性を示し、さらに好ましくは、そのようなApo−2リガンド変異体は、DR4レセプターに対し、天然配列Apo−2リガンドにより示される結合親和性よりも小さい(<)結合親和性をDR4に対して示す。このようなApo−2リガンド変異体のDR5レセプターに対する結合親和性が、天然配列Apo−2リガンドと比較して、ほぼ等しい(不変である)か、それよりも大きく(増大している)、Apo−2リガンド変異体のDR4レセプターに対する結合親和性が、天然配列Apo−2リガンドと比較して、それより小さいか、殆ど消滅している場合、ここでの目的に対して、Apo−2リガンド変異体の結合親和性はDR5レセプターについて「選択性」であると考えられる。本発明の好ましいDR5選択性Apo−2リガンド変異体は、DR4レセプターに対して(天然配列Apo−2リガンドと比較した場合)少なくとも10倍少ない結合親和性を有し、さらに好ましくは、DR4レセプターに対して(天然配列Apo−2リガンドと比較した場合)少なくとも100倍少ない結合親和性を有する。Apo−2リガンド変異体のそれぞれの結合親和性を測定し、当該技術分野で知られているELISA、RIA、及び/又はBIAcoreアッセイにより(114−281型等の)天然Apo2Lの結合特性と比較されうる。本発明の好ましいDR5選択性Apo−2リガンド変異体は、少なくとも1種類の哺乳動物細胞(好ましくは癌細胞)にアポトーシスを誘導し、そのようなアポトーシス活性をアラマーブルー又はクリスタルバイオレットアッセイ等の既知の方法により測定することができる。DR5選択性Apo−2リガンド変異体は、Apo−2Lのデコイレセプターのいずれかに対して変化した結合親和性を有していても有していなくともよく、それらデコイレセプターを当技術分野でDcR1、DcR2及びOPGと称される。
アミノ酸の識別にはアミノ酸の1文字アルファベット又は3文字アルファベットが使用される、すなわち、
Asp D アスパラギン酸 Ile I イソロイシン
Thr T スレオニン Leu L ロイシン
Ser S セリン Tyr Y チロシン
Glu E グルタミン酸 Phe F フェニルアラニン
Pro P プロリン His H ヒスチジン
Gly G グリシン Lys K リジン
Ala A アラニン Arg R アルギニン
Cys C システイン Trp W トリプトファン
Val V バリン Gln Q グルタミン
Met M メチオニン Asn N アスパラギン
「Apo2L/TRAIL細胞外ドメイン」又は「Apo2L/TRAIL ECD」なる用語は、膜貫通又は細胞質ドメインを本質的に含まない形態のApo2L/TRAILを意味する。通常、ECDはこのような膜貫通及び細胞質ドメインを1%未満しか有しておらず、好ましくはこのようなドメインを0.5%未満しか有していない。本発明のポリペプチドに対して同定される任意の膜貫通ドメインは、疎水性ドメインのタイプを同定するために当該技術分野で常套的に使用される基準に従い同定される。膜貫通ドメインの厳密な境界は変わり得るが、最初に同定されたドメインのいずれかの末端から約5アミノ酸を越えないと思われる。好ましい実施態様では、ECDは、膜貫通で細胞質又は細胞内ドメインを有さない(及び膜結合していない)ポリペプチドの、可溶性の細胞外ドメイン配列からなる。Apo2L/TRAILの特定の細胞外ドメイン配列は、PCT公報WO97/01633及びWO97/25428に開示されている。
ここで使用される「エピトープタグ」なる用語は、「タグポリペプチド」に融合したApo−2リガンド又はその一部を含んでなるキメラポリペプチドを意味する。タグポリペプチドは、その抗体が産生され得るエピトープを提供するのに十分な数の残基を有しているが、その長さは、Apo−2リガンドの活性を妨害しないよう充分に短い。また、タグポリペプチドは、好ましくは、抗体が他のエピトープと実質的に交差反応をしないようにかなり独特である。適切なタグポリペプチドは、一般に、少なくとも6のアミノ酸残基、通常は約8から約50のアミノ酸残基(好ましくは約10〜約20のアミノ酸残基)を有する。
「Apo2L/TRAIL単量体」又は「Apo2L単量体」なる用語は、Apo2Lの細胞外ドメイン配列の共有結合鎖を意味する。
「Apo2L/TRAIL二量体」又は「Apo2L二量体」なる用語は、ジスルフィド結合を介した共有結合で結合した2つのApo2L単量体を意味する。ここで使用される該用語は、独立のApo2L二量体とApo2Lの三量体形態内にある(すなわち、他の第3のApo2L単量体と結合している)Apo2L二量体を含む。
「Apo2L/TRAIL三量体」又は「Apo2L三量体」なる用語は、非共有結合的に結合した3つのApo2L単量体を意味する。
Apo2L/TRAILの高度なオリゴマー型、例えばApo2L/TRAILの六量体型、ナノマー型、及び架橋型も、本発明における使用のために含まれる。Apo2L/TRAIL単量体、二量体、又は三量体(又は、他の高度なオリゴマー型)の存在の決定及び定量は、当該技術分野で知られている方法及びアッセイ、例えば、未変性サイズ排除HPLC(「SEC」)、硫酸ドデシルナトリウムを使用する変性サイズ排除クロマトグラフィー(「SDS−SCE」)、逆相HPLC、及びキャピラリー電気泳動を使用(及び商業的に入手可能な材料を使用)して実施される。Apo2L/TRAILの高度なオリゴマー型は、当該技術分野で知られている方法及び材料、例えば、リンカー又はロイシンジッパー分子を使用することにより実施されうる。
「Apo−2リガンドレセプター」には、「DR4」及び「DR5」等と当該技術分野で称されるレセプターが含まれる。Panらは、「DR4」と称されるTNFレセプターファミリーメンバーについて記載している(Panら, Science, 276:111-113 (1997); また、1998年7月30日に公開された国際公開第98/32856号;1999年7月29日に公開された国際公開第99/37684号;2000年12月7日に公開された国際公開第00/73349号;2002年8月13日に発行された米国特許第6433147号;2002年10月8日に発行された米国特許第6461823号;及び2002年1月29日に発行された米国特許第6342383号を参照)。Sheridanら( Science, 277:818-821 (1997))及びPanら(Science, 277:815-818 (1997))には、Apo2L/TRAILの他のレセプターが記載されている(また1998年11月19日に公開された国際公開第98/51793号;1998年9月24日に公開された国際公開第98/41629号を参照)。このレセプターはDR5とも称される(該レセプターは、Apo−2;TRAIL−R、TR6、Tango−63、hAPO8、TRICK2又はKILLERとも呼ばれている;Screatonら, Curr. Biol., 7:693-696(1997);Walczakら, EMBO J., 16:5386-5387(1997);Wuら, Nature Genetics, 17:141-143 (1997);1998年8月20日公開の国際公開第98/35986号;1998年10月14日公開の欧州特許第870,827号;1998年10月22日公開の国際公開第98/46643号;1999年1月21日公開の国際公開第99/02653号;1999年2月25日公開の国際公開第99/09165号;1999年3月11日公開の国際公開第99/11791号;2002年8月13日公開の米国特許出願公開第2002/0072091号;2001年12月7日公開の米国特許出願公開第2002/0098550号;2001年12月6日発行の米国特許第6313269号;2001年8月2日公開の米国特許出願公開第2001/0010924号;2003年7月3日公開の米国特許出願公開第2003/01255540号;2002年10月31日公開の米国特許出願公開第2002/0160446号;2002年4月25日公開の米国特許出願公開第2002/0048785号;2003年5月27日発行の米国特許第6569642号;2000年6月6日発行の米国特許第6072047号;2003年11月4日発行の米国特許第6642358号)。上述したように、Apo−2Lに対する他のレセプターには、DcR1、DcR2、及びOPGが含まれる(Sheridanら, 上掲;Marstersら, 上掲;及びSimonetら, 上掲を参照)。ここで使用される場合、「Apo−2Lレセプター」なる用語は、天然配列レセプター及びレセプター変異体を含む。これらの用語は、ヒトを含む多様な哺乳動物において発現されるApo−2Lレセプターを含む。Apo−2Lレセプターは多様なヒト組織系統において自然に生じる場合、内因的に発現されてもよいし、又は組換えもしくは合成法により発現されてもよい。「天然配列Apo−2Lレセプター」は、天然から誘導されるApo−2Lレセプターと同じアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。よって、天然配列Apo−2Lレセプターは、任意の哺乳動物からの天然に生じるApo−2Lレセプターのアミノ酸配列を有することができる。このような天然配列Apo−2Lレセプターは、自然から単離することもできるし、又は組換えもしくは合成手段により生じさせることもできる。「天然配列Apo−2Lレセプター」なる用語は、特に、該レセプターの天然に生じた切断又は分泌型(例えば、細胞外ドメイン配列を含む可溶型)、天然に生じた変異形態(例えば、選択的にスプライシングされた形態)及び天然に生じた対立遺伝子変異体が含まれる。レセプター変異体は、天然配列Apo−2Lレセプターの断片又は欠失変異体を含む。ヒトDR5の転写スプライシングバリアントは当該技術分野で知られている。このDR5スプライシングバリアントは、ヒトDR5の440のアミノ酸配列をコードする。
「デスレセプター抗体」は、アポトーシスをシグナル伝達することができるデスドメインを含み、腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリーにおけるレセプターに対して産生される抗体又は抗体群を一般的に意味するためにここで使用され、このような抗体にはDR5抗体及びDR4抗体が含まれる。
「DR5レセプター抗体」、「DR5抗体」又は「抗DR5抗体」は、広義には、DR5レセプター、例えば1−411配列又は1−440配列、又はその細胞外ドメインの少なくとも一形態に結合する抗体を指すために使用される。場合によっては、DR5抗体は異種性配列又は分子に融合又は結合する。好ましくは、異種性配列は抗体がより高次の又はオリゴマー複合体を形成させるか又は形成を補助する。場合によっては、DR5抗体はDR5レセプターに結合するが、任意の付加的なApo−2Lレセプター(例えばDR4、DcR1又はDcR2)と結合又は交差反応をしない。場合によっては、抗体はDR5シグナル伝達活性のアゴニストである。
場合によっては、本発明のDR5抗体は、BIAcore結合アッセイで測定して約0.1nMから約20mMの範囲の濃度でDR5レセプターに結合する。場合によっては、本発明のDR5抗体は、BIAcore結合アッセイで測定して約0.6nMから約18mMのIC50値を示す。
「DR4レセプター抗体」、「DR4抗体」又は「抗DR4抗体」は、広義には、DR4レセプター又はその細胞外ドメインの少なくとも一形態に結合する抗体を指すために使用される。場合によっては、DR4抗体は異種性配列又は分子に融合又は結合する。好ましくは、異種性配列は抗体がより高次の又はオリゴマー複合体を形成させるか又は形成を補助する。場合によっては、DR4抗体はDR4レセプターに結合するが、任意の付加的なApo−2Lレセプター(例えばDR5、DcR1又はDcR2)と結合又は交差反応をしない。場合によっては、抗体はDR4シグナル伝達活性のアゴニストである。
場合によっては、本発明のDR4抗体は、BIAcore結合アッセイで測定して約0.1nMから約20mMの範囲の濃度でDR4レセプターに結合する。場合によっては、本発明のDR4抗体は、BIAcore結合アッセイで測定して約0.6nMから約18mMのIC50値を示す。
「アゴニスト」なる用語は広義に用いられ、Apo2L/TRAIL、DR4又はDR5のインビトロ、インサイツないしインビボでの一又は複数の生物学的活性を部分的又は完全に亢進、刺激又は活性化する任意の分子を含む。このような生物学的活性の例は、アポトーシス並びにさらに文献に報告されているものを含む、DR4又はDR5へのApo2L/TRAILの結合である。アゴニストは直接的ないし間接的形式で機能しうる。例えば、アゴニストは、レセプター活性化又はシグナル伝達を起こすDR4又はDR5への直接的結合の結果としてのインビトロ、インサイツないしインビボでのDR4又はDR5の一又は複数の生物学的活性を部分的又は完全に亢進、刺激又は活性化するように機能しうる。また、アゴニストは、例えば、DR4又はDR5の活性化ないしシグナル伝達を引き起こす他のエフェクター分子を刺激する結果としてのDR4又はDR5のインビトロ、インサイツないしインビボでの一又は複数の生物学的活性を部分的又は完全に亢進、刺激又は活性化するように間接的に機能しうる。アゴニストは、DR4又はDR5の活性化又は活性を亢進又は増強するように間接的に機能するエンハンサー分子として働きうることが考えられる。例えば、アゴニストは哺乳動物の内因性のApo−2Lの活性を亢進しうる。例えば、これはDR4ないしDR5をプレ複合体化することによって、又は、DR4又はDR5レセプターとのそれぞれのリガンドの複合体を安定化することによって達成することができる(Apo−2LとDR4又はDR5との間に形成された天然複合体型を安定化するなど)。
ここで使用される「ポリオール」という用語は広く多価アルコール化合物を意味する。ポリオールは例えば任意の水可溶型ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーであり得、直鎖又は分枝鎖を有しうる。好適なポリオールには、一又は複数のヒドロキシル位置に化学基、例えば1から4の炭素を有するアルキル基で置換されているものが含まれる。典型的には、ポリオールはポリ(アルキレングリコール)、好ましくはポリ(エチレングリコール)(PEG)である。しかし、当業者であれば、他のポリオール、例えばポリ(プロピレングリコール)及びポリエチレン−ポリプロピレングリコールコポリマーを、ここでPEGについて記載したコンジュゲート技術を使用して用いることができることが分かるであろう。本発明のポリオールには当該技術分野でよく知られたもの及び公的に入手可能なもの、例えば商業的に利用可能な供給源からのものが含まれる。
「コンジュゲート」という用語は、ここではその最も広い定義で使用され、互いに接合(joined)又は結合(linked)されていることを意味する。分子は、それらが接合されているように作用又は機能する場合、「コンジュゲート」されている。
「細胞外ドメイン」又は「ECD」という用語は、膜貫通及び細胞質ドメインを本質的に持たないリガンド又はレセプターの形態を意味する。通常、可溶性ECDは、そのような膜貫通及び細胞質ドメインを1%未満、好ましくはそのようなドメインを0.5%未満だけ有する。
「二価の金属イオン」という用語は、二つの正電荷を有する金属イオンを意味する。本発明において使用される二価金属イオンの例には、限定されるものではないが、亜鉛、コバルト、ニッケル、カドミウム、マグネシウム、及びマンガンが含まれる。かかる金属の特定の形態は塩形態(例えば、製薬剤的に許容可能な塩形態)、例えば、上述の二価の金属イオンの塩化物、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩及び硫酸塩形態を含むものが用いられうる。ここに記載の二価金属イオンは、好ましくは、例えば、(1)所望する期間にわたってApo−2L三量体の貯蔵安定性を高め、(2)組換え細胞培養又は精製法においてApo−2L三量体の生産又は収量を高め、(3)Apo−2L三量体の溶解性を高め(又は凝集性を低下させ)、又は(4)Apo−2L三量体の形成を高めるのに十分な濃度又は量(例えば有効量)で用いられる。
「単離された」とは、ここで開示された様々なタンパク質を記述するために使用するときは、その自然環境の成分から同定され分離され及び/又は回収されたタンパク質を意味する。その自然環境の汚染成分とは、タンパク質の診断又は治療的な使用を典型的には妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様では、タンパク質は、(1)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15のN末端あるいは内部アミノ酸配列の残基を得るのに充分なほど、あるいは、(2)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた非還元あるいは還元条件下でのSDS−PAGEにより均一になるまで充分なほど精製される。タンパク質の自然環境の少なくとも一の成分が存在しないため、単離されたタンパク質には、組換え細胞内のインサイツでのタンパク質が含まれる。しかしながら、通常は、単離されたタンパク質は少なくとも一の精製工程により調製される。
「単離された」核酸分子は、同定され、核酸の天然源に通常付随している少なくとも一の汚染核酸分子から分離された核酸分子である。単離されたApo−2リガンド核酸分子は、天然に見出される形態あるいは設定以外のものである。よって、単離されたApo−2リガンド核酸分子は、天然の細胞中に存在するApo−2リガンド核酸分子とは区別される。しかし、単離されたApo−2リガンド核酸分子は、例えば、核酸分子が天然の細胞のものとは異なった染色体位置にあるApo−2リガンドを通常発現する細胞に含まれるApo−2リガンド核酸分子を含む。
ここで同定されている配列に対する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列を整列させ、必要ならば最大のパーセント配列同一性を得るために間隙を導入し、如何なる同類置換も配列同一性の一部と考えないとした後の、Apo−2リガンド配列のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の技量の範囲にある様々な方法で達成可能であり、比較される配列の完全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要なアルゴリズムを割り当てることを含み、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。ここでの目的のために、パーセントアミノ酸同一性値は、ジェネンテック社によって作成され、ソースコードが米国著作権庁(Washington D.C., 20559)に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087の下で登録されている配列比較コンピュータプログラムALIGN−2を用いて得られる。ALIGN−2プログラムはジェネンテック社(South San Francisco, CA)を通して公に入手可能である。全ての配列比較パラメーターはALIGN−2プログラムにより設定され、変化しない。
「コントロール配列」という用語は、特定の宿主生物において作用可能に結合したコード配列を発現するために必要なDNA配列を意味する。原核生物に好適なコントロール配列は、例えばプロモーター、場合によってはオペレータ配列、及びリボソーム結合部位を含む。真核生物の細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーを利用することが知られている。
核酸は、他の核酸配列と機能的な関係にあるときに「作用可能に結合し」ている。例えば、プレ配列あるいは分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に寄与するプレタンパク質として発現されているならそのポリペプチドのDNAに作用可能に結合している;プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼすならばコード配列に作用可能に結合している;又はリボソーム結合部位は、もしそれが翻訳を容易にするような位置にあるならコード配列と作用可能に結合している。一般的に、「作用可能に結合する」とは、結合されたDNA配列が近接しており、分泌リーダーの場合には近接していて読みフェーズにある。しかし、エンハンサーは必ずしも近接しているわけではない。結合は簡便な制限部位でのライゲーションにより達成される。そのような部位が存在しない場合は、通常の手法にしたがって、合成されたオリゴヌクレオチドアダプターあるいはリンカーが使用される。
「VEGF」又は「VEGF-A」なる用語は、Leungら(Science, 246:1306 (1989))、及びHouckら(Mol. Endocrin., 5:1806 (1991))により記載されているように、天然に生じたアレル及びそのプロセシング形態と共に、165−アミノ酸ヒト血管内皮細胞増殖因子、及び関連する121−、189−、及び206−アミノ酸ヒト血管内皮細胞増殖因子を指すために使用される。VEGF−Aは、VEGF−B、VEGF−C、VEGF−D、VEGF−E、VEGF−F、及びPlGFを含む遺伝子ファミリーの一部である。VEGF−Aは、主として、2つの高親和性レセプターチロシンキナーゼ、VEGFR−1(Flt−1)及びVEGFR−2(Flk−1/KDR)に結合し、後者は、VEGF−Aの血管内皮細胞分裂促進シグナルの主要伝達物質である。さらに、ニューロピリン−1は、ヘパリン−結合VEGF−Aアイソタイプに対するレセプターとして同定されており、血管発生における役割を担っている。また、「VEGF」又は「VEGF−A」なる用語は、非ヒト種、例えばマウス、ラット又は霊長類からのVEGFも称する。時折、特定の種からのVEGFは、例えばヒトVEGFに対してhVEGF、又はマウスVEGFに対してmVEGF等の用語で示される。また、「VEGF」なる用語は、165−アミノ酸ヒト血管内皮細胞増殖因子のアミノ酸8〜109又は1〜109を含有するポリペプチドの切断形態又はフラグメントを指すために使用される。任意のこのような形態のVEGFに対する参照は、本出願において、例えば「VEGF(8−109)」、「VEGF(1−109)」又は「VEGF165」により同定することができる。「切断された」天然VEGFについてのアミノ酸位置は、天然VEGF配列に示されたように番号付けされる。例えば、切断された天然VEGFにおけるアミノ酸位置17(メチオニン)は、天然VEGFにおいても17位(メチオニン)である。切断された天然VEGFは、天然VEGFに匹敵する、KDR及びFlt−1レセプターに対する結合親和性を有する。
ここで使用される場合、「VEGF変異体」なる用語は、天然VEGF配列において一又は複数のアミノ酸変異を含むVEGFポリペプチドを意味する。場合によっては、一又は複数のアミノ酸変異は、アミノ酸置換を含む。ここに記載のVEGF変異体の省略命名法の目的では、数は、推定天然VEGFのアミノ酸配列に沿ったアミノ酸残基の位置を指すことに留意のこと(Leungら, 上掲、及びHouckら, 上掲にて提供)。
ここで「抗体」なる用語は、広い意味で用いられ、特に無傷のモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの無傷の抗体から形成した多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び所望の生物学的活性を有する限りにおける抗体断片をカバーする。
「抗体断片」は、無傷の抗体の一部、好ましくはその抗原結合又は可変領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2及びFv断片;ダイアボディ;線形抗体;一本鎖抗体分子;及び抗体断片から形成された多重特異性抗体が含まれる。
「天然抗体」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖からなる、約150000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は一つの共有ジスルフィド結合により重鎖に結合しており、ジスルフィド結合の数は、異なった免疫グロブリンアイソタイプの重鎖の中で変化する。また各重鎖と軽鎖は、規則的に離間した鎖間ジスルフィド結合を有している。各重鎖は、多くの定常ドメインが続く可変ドメイン(VH)を一端に有する。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(VL)を、他端に定常ドメインを有する;軽鎖の定常ドメインは重鎖の第一定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列している。特定のアミノ酸残基が、軽鎖及び重鎖可変ドメイン間の界面を形成すると考えられている。
「可変」なる用語は、可変ドメインのある部位が、抗体の中で配列が広範囲に異なっており、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合性及び特異性に使用されているという事実を意味する。しかしながら、可変性は抗体の可変ドメインにわたって一様には分布していない。軽鎖及び重鎖の可変ドメインの両方の高頻度可変領域と呼ばれる3つのセグメントに濃縮される。可変ドメインのより高度に保持された部分はフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、βシート構造を結合し、ある場合にはその一部を形成するループ結合を形成する、3つの高頻度可変領域により連結されたβシート配置を主にとる4つのFRをそれぞれ含んでいる。各鎖の高頻度可変領域は、FRによって近接して結合され、他の鎖の高頻度可変領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabatら, Sequence of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関連しているものではないが、様々なエフェクター機能、例えば抗体依存性細胞媒介性障害活性(ADCC)への抗体の関与を示す。
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗体結合断片を生成し、その各々は単一の抗原結合部位を持ち、残りは容易に結晶化する能力を反映して「Fc」断片と命名される。ペプシン処理はF(ab’)2断片を生じ、それは2つの抗原結合部位を持ち、抗原を交差結合することができる。
「Fv」は、完全な抗原認識及び抗原結合部位を含む最小抗体断片である。この領域は、堅固な非共有結合をなした一つの重鎖及び一つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。この配置において、各可変ドメインの3つの高頻度可変領域は相互に作用してVH−VL二量体表面に抗原結合部位を形成する。集合的に、6つの高頻度可変領域が抗体に抗原結合特異性を付与する。しかし、単一の可変ドメイン(又は抗原に対して特異的な3つの高頻度可変領域のみを含むFvの半分)でさえ、全結合部位よりも親和性が低くなるが、抗原を認識して結合する能力を有している。
またFab断片は、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第一定常領域(CH1)を含む。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの一又は複数のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に数個の残基が付加している点でFab断片とは異なる。Fab’−SHは、定常ドメインのシステイン残基が少なくとも一つの遊離チオール基を担持しているFab’に対するここでの命名である。F(ab’)2抗体断片は、間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として生産された。また、抗体断片の他の化学結合も知られている。
任意の脊椎動物種からの抗体(イムノグロブリン)の「軽鎖」には、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの明確に区別される型の一つが割り当てられる。
重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、抗体は異なるクラスが割り当てられる。無傷の抗体には5つの主なクラスがある:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgM、更にそれらは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、及びIgA2等のサブクラス(アイソタイプ)に分かれる。抗体の異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。イムノグロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元立体配位はよく知られている。
「一本鎖Fv」又は「scFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含み、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。好ましくは、FvポリペプチドはVH及びVLドメイン間にポリペプチドリンカーを更に含み、それはscFvが抗原結合に望まれる構造を形成するのを可能にする。scFvの概説についてはPluckthun(The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg及びMoore編, Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994))を参照のこと。
「ダイアボディ」なる用語は、二つの抗原結合部位を持つ小さい抗体断片を称し、その断片は同一のポリペプチド鎖(VH−VL)内で軽鎖可変ドメイン(VL)に重鎖可変ドメイン(VH)が結合してなる。非常に短いために同一鎖上で二つのドメインの対形成ができないリンカーを使用して、ドメインを他の鎖の相補ドメインと強制的に対形成させ、二つの抗原結合部位を創製する。ダイアボディーは、例えば、欧州特許出願公開第404097号;国際公開第93/11161号;及びHollingerら, Proc.Natl.Acad.Sci. USA 90:6444-6448(1993)に更に詳細に記載されている。
ここで使用される「モノクローナル抗体」なる用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味する。すなわち、集団に含まれる個々の抗体は、少量で存在しうる自然に生じる可能性がある突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位に対するものである。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的には含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物に対し、各モノクローナル抗体は抗原の単一の決定基に対するものである。その特異性に加えて、モノクローナル抗体はハイブリドーマ培養により合成され、他のイムノグロブリンの混入がないという利点がある。「モノクローナル」との修飾語句は、実質的に均一な抗体の集団から得たものとしての抗体の性質を表すものであり、抗体が何か特定の方法による生成を必要として構築したものであることを指すものではない。例えば、本発明において使用されるモノクローナル抗体は、最初にKohlerら(Nature, 256:495(1975))に記載されたハイブリドーマ法によって作ることができ、あるいは組換えDNA法によって作ることができる(例えば米国特許第4816567号を参照のこと)。また「モノクローナル抗体」は、例えば、Clacksonら(Nature, 352:624-628(1991))及びMarksら(J. Mol. biol. 222: 581-597(1991))に記載された技術を用いてファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。
ここでモノクローナル抗体は、特に、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の種由来又は特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列に一致するか又は類似する一方、鎖の残りが、他の種由来又は他の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列に一致する又は類似する「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、並びに所望の生物学的活性を示す限り、そのような抗体の断片を含む(米国特許第4816567号;及びMorrisonら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855(1984))。ここで対象とするキメラ抗体には、非ヒト霊長類(例えば、ヒヒ、アカゲザル又はカニクイザルなどの旧世界サル)由来の可変ドメイン抗原結合配列とヒト定常領域配列を含む「霊長類化」抗体を含む(米国特許第5693780号)。
非ヒト(例えばマウス)の抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体である。大部分において、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域の残基が、マウス、ラット、ウサギ又は所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト霊長類のような非ヒト種(ドナー抗体)からの高頻度可変領域の残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。例として、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、もしくはドナー抗体にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は抗体の特性をさらに洗練するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいは実質的に全ての高頻度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいは実質的に全てのFRが、ヒト免疫グロブリン配列のものである少なくとも一又は典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むであろう。また、ヒト化抗体は、場合によっては免疫グロブリン定常領域(Fc)の一部、典型的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部も含む。さらなる詳細については、Jonesら, Nature 321:522-525(1986);Riechmannら, Nature 332:323-329(1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596(1992)を参照のこと。
ここで使用される「高頻度可変領域」なる用語は、抗原結合の原因である抗体のアミノ酸残基を意味する。高頻度可変領域は「相補性決定領域」又は「CDR」からのアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変ドメインの残基24−34(L1)、50−56(L2)及び89−97(L3)、及び重鎖可変ドメインの31−35(H1)、50−65(H2)及び95−102(H3);Kabatら, Sequences of Proteins of Immunological Interest,5版, Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD.(1991))及び/又は「高頻度可変ループ」からの残基(例えば、軽鎖可変ドメインの残基26−32(L1)、50−52(L2)及び91−96(L3)及び重鎖可変ドメインの残基26−32(H1)、53−55(H2)及び96−101(H3);Chothia及びLesk J.Mol.Biol. 196:901-917(1987))を含む。「フレームワーク」又は「FR」残基はここで定義するように高頻度可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
関心ある抗原、例えばVEGFに「結合する」抗体とは、抗体が抗原発現細胞を標的とした治療薬として有用となるように十分な親和性及び/又は結合活性を有して抗原に結合することができるものである。
「抗VEGF抗体」は、十分な親和性と特異性で、VEGFに結合する抗体である。選択された抗体は、VEGFに対して、通常、かなり強い結合親和性を有しており、例えば抗体は、100nM−1pMのKd 値でhVEGFと結合可能である。抗体親和性は、表面プラズモン共鳴法をベースにしたアッセイ(例えば、PCT出願WO2005/012359に記載されたようなBIAcoreアッセイ);酵素結合免疫吸着測定法(ELISA);及び競合アッセイ(例えば、RIA)等により測定することができる。好ましくは、本発明の抗VEGF抗体は、VEGF活性が関与する疾患又は病状を標的とする又は干渉する治療剤として使用することができる。また、抗体は、例えば治療法としての効果を評価するために、他の生物活性アッセイにかけることもできる。このようなアッセイは当該技術分野で公知であり、標的抗原及び抗体の意図する使用に依存する。具体例には、HUVEC阻害アッセイ;腫瘍細胞増殖阻害アッセイ(例えば、国際公開第89/06692号に記載);抗体−依存性細胞傷害(ADCC)及び補体−媒介性細胞傷害(CDC)アッセイ(米国特許第5500362号);及びアゴニスト活性又は造血アッセイ(国際公開第95/27062号を参照)が含まれる。抗VEGF抗体は、通常、他のVEGFホモログ、例えばVEGF−B又はVEGF−Cにも、又は他の増殖因子、例えばPlGF、PDGF又はbFGFにも結合しない。好ましくは、抗VEGF抗体には、ハイブリドーマATCC HB 10709により生成されるモノクローナル抗VEGF抗体 A4.6.1と同様のエピトープに結合するモノクローナル抗体;Prestaら((1997) Cancer Res. 57:4593-4599)に従い産生された組換えヒト化抗VEGFモノクローナル抗体が含まれ、限定されるものではないが、ベバシズマブ(BV:アバスチン(登録商標))として知られている抗体も含む。ベバシズマブは、そのレセプターへのヒトVEGFの結合をブロックするマウス抗hVEGFモノクローナル抗体A.4.6.1からの、抗原-結合相補性-決定領域及び変異したヒトIgG1フレームワーク領域を含む。ほとんどのフレームワーク領域を含む、ベバシズマブのアミノ酸配列の約93%が、ヒトIgG1から誘導され、配列の約7%がマウス抗体A4.6.1から誘導され.ベバシズマブは、約149000ダルトンの分子量を有し、グリコシル化されている。ベバシズマブ及び他のヒト化抗VEGF抗体は、2005年2月26日に発行された米国特許第6884879号にさらに記載されている。付加的な好ましい抗体には、PCT出願200WO5/012359号に記載されるような、G6又はB20シリーズ抗体(例えば、G6−31、B20−4.1)が含まれる。付加的な好ましい抗体について、米国特許第7,060,269号、同6,582,959号、同6,703,020号; 同6,054,297号; 国際公開第98/45332号; 国際公開第96/30046号; 国際公開第94/10202号; 欧州特許第0666868B1号; 米国特許出願第2006009360号、同20050186208号、同20030206899号、同20030190317号、同20030203409号、及び同20050112126号;及びPopkovら, Journal of Immunological Methods 288:149-164 (2004)を参照。他の好ましい抗体には、残基F17、M18、D19、Y21、Y25、Q89、I91、K101、E103、及びC104を含有する、又は残基F17、Y21、Q22、Y25、D63、I83及びQ89を含有する、ヒトVEGFにおける機能的エピトープに結合するものが含まれる。
この開示の「G6シリーズ抗体」は、PCT出願WO2005/012359の、図7、24−26、及び34−35の任意の一つのG6抗体又はG6−誘導抗体の配列から誘導された抗VEGF抗体である。好ましい一実施態様において、G6シリーズ抗体は、残基F17、Y21、Q22、Y25、D63、I83及びQ89を含むヒトVEGFの機能的エピトープに結合する。
この開示の「B20シリーズ抗体」は、PCT出願WO2005/012359の、図27−29の任意の一つのB20抗体又はB20−誘導抗体の配列から誘導された抗VEGF抗体である。一実施態様において、B20シリーズ抗体は、残基F17、M18、D19、Y21、Y25、Q89、I91、K101、E103、及びC104を含むヒトVEGFの機能的エピトープに結合する。
ここでの目的のための「免疫療法」とは、抗体を用いた哺乳動物(好ましくはヒト患者)の治療方法を称し、この抗体はコンジュゲートされないもの又は「ネイキッド」抗体でもよいし、又は一又は複数の細胞傷害性剤などの薬剤やヘテロ分子とコンジュゲート又は融合して、それによって「免疫コンジュゲート」を生成してもよい。
「単離された」抗体は、その自然環境の成分から同定され分離され及び/又は回収されたものである。その自然環境の汚染成分は、抗体の診断又は治療への使用を妨害しうる物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様においては、抗体は、(1)ローリー(Lowry)法により定量して、抗体が95重量%より多くなるほど、最も好ましくは99重量%より多くなるまで、(2)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、N末端あるいは内部アミノ酸配列の少なくとも15の残基を得るのに充分な程度まで、あるいは、(3)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた非還元あるいは還元条件下でのSDS−PAGEによる均一性が得られるようになるまで精製される。抗体の自然環境の少なくとも一つの成分が存在しないため、単離された抗体には、組換え細胞内のインサイツの抗体が含まれる。しかしながら、通常は、単離された抗体は少なくとも一の精製工程により調製される。
「抗体依存性細胞媒介性障害活性」及び「ADCC」は、Fcレセプター(FcR)を発現する非特異的細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)が標的細胞上の結合した抗体を認識し、続いて標的細胞を溶解する細胞媒介性反応を意味する。ADCCを媒介する一次細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現する一方、単球はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血性細胞でのFcRの発現は、Ravetch及びKinet(Annu.Rev.Immunol., 9:457-92(1991))の464頁の表3に要約されている。対象分子のADCC活性を評価するためには、米国特許第5500362号又は5821337号に記載されているようなインビトロADCCアッセイが実施されうる。そのようなアッセイのための有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー細胞(NK)細胞を含む。あるいは、又は付加的に、対象分子のADCC活性は、例えばClynesら(PNAS(USA), 95:652-656(1998))に開示されたような動物モデルにおいて、インビボで評価されうる。
「ヒトエフェクター細胞」とは、一又は複数のFcRを発現し、エフェクター機能を実行する白血球のことである。好ましくは、その細胞が少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を実行する。ADCCを媒介するヒト白血球の例として、末梢血液単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞傷害性T細胞及び好中球が含まれるが、PBMCとNK細胞が好適である。
「Fcレセプター」又は「FcR」は、抗体のFc領域に結合するレセプターを記載するために使用される。好適なFcRは、天然配列ヒトFcRである。さらに好適なFcRは、IgG抗体(γレセプター)に結合し、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIサブクラスのレセプターを含むものであり、これらのレセプターの対立遺伝子変異体及び選択的スプライシング型を含む。FcγRIIレセプターは、FcγRIIA(「活性化レセプター」)及びFcγRIIB(「阻害レセプター」)を含み、それらは、主としてその細胞質ドメインにおいて異なる類似のアミノ酸配列を有する。活性化レセプターFcγRIIAは、その細胞質ドメインに、免疫レセプターチロシン−ベース活性化モチーフ(ITAM)を有する。阻害レセプターFcγRIIBは、その細胞質ドメインに、免疫レセプターチロシン−ベース阻害モチーフ(ITIM)を有する(Daeron, Annu. Rev. Immunol., 15:203-234(1997)参照)。FcRはRavetch及びKinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991);Capelら, Immunomethods 4:25-34 (1994);及びde Haasら, J. Lab. Clin. Med. 126:330-41(1995)において概説されている。将来同定されるものも含む他のFcRが、ここにおける「FcR」なる用語によって包含される。この用語は胎児への母性IgGの移動の原因である新生児レセプター、FcRnもまた含む(Guyerら, J. Immumol. 117:587(1976)及びKimら, J. Immunol. 24:249 (1994))。ここでのFcRはFcγRIIIaをコードする遺伝子内に遺伝的二形性などの多型を含有し、それによってIgG1に結合するレセプターの領域内に位置するアミノ酸位置158がフェニルアラニン(F)又はバリン(V)となる。ホモ接合体バリンFcγRIIIa(FcγRIIIa−158V)は、ホモ接合体フェニルアラニンFcγRIIIa(FcγRIIIa−158F)又はヘテロ(FcγRIIIa−158F/V)レセプターと比較してインビトロでのADCC媒介を増加し、ヒトIgG1に対する親和性も高いことが示された。
「補体依存性細胞傷害」もしくは「CDC」は、補体の存在下で標的を溶解する分子の能力を意味する。補体活性化経路は補体系(Clq)の第1成分が、同族抗原と結合した分子(例えば、抗体)に結合することにより開始される。補体の活性化を評価するために、CDCアッセイを、例えばGazzano−Santoroら(J. Immunol. Methods 202:163(1996))に記載されているように実施することができる。
「治療的有効量」なる用語は、哺乳動物における疾患又は疾病を処置又は予防するための治療剤の量を意味する。癌の場合、治療剤の治療的有効量は、腫瘍関連内皮細胞又は組織の量又は程度を減少させ;癌細胞の数を減少させ;原発性腫瘍サイズを減少させ;周辺器官への癌細胞の浸潤を阻害し(つまり、ある程度まで遅くさせ、好ましくは停止させ);腫瘍転移を阻害し(つまり、ある程度まで遅くさせ、好ましくは停止させ);腫瘍増殖をある程度まで阻害し;及び/又は疾患に伴う徴候の一又は複数をある程度軽減しうる。薬剤が増殖を防止し、及び/又は存在する癌細胞を死滅させうる程度まで、それは細胞分裂阻害性及び/又は細胞毒性でありうる。癌治療では、インビボでの効能は、例えば生存期間、無増悪期間(TTP)、奏功率(RR)、反応時間、及び/又は生活の質を評価することにより測定することができる。
ここで使用される場合、「細胞傷害性剤」なる用語は、細胞の機能を阻害又は阻止する、及び/又は細胞破壊をもたらす物質を意味する。この用語は、放射性同位体(例として、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32及びLuの放射性同位体)、化学療法剤、及び細菌、真菌、植物、又は動物起源の酵素活性毒素又は小分子毒素などの毒素、又はそれらの断片を含むことを意図する。
「血管破壊剤」又は「VDA」なる用語は、広義の意味において、腫瘍又は癌組織に関連した、確立した脈管構造又は血管を破壊することにより、抗血管活性を示す薬剤を意味する。確立した脈管構造におけるこのような破壊は、例えば、腫瘍血流の阻害、及び/又は腫瘍又は癌の細胞又は組織の壊死又は死に影響を与えることができる。
「アポトーシス」及び「アポトーシス活性」なる用語は広義に使用され、典型的には、細胞質の凝集、原形質膜の微絨毛の喪失、核の分節化、染色体DNAの分解又はミトコンドリア機能の喪失を含む一又は複数の特徴的な細胞変化を伴う、哺乳動物における細胞死の規則的又は制御された形態を意味する。この活性は、当該技術分野で公知の、例えば細胞生死判別アッセイ、FACS分析又はDNA電気泳動法を用いて、アネキシンVの結合、DNAの断片化、細胞収縮、小胞体の拡張、細胞断片化、及び/又は膜小胞(アポトーシス体と呼ばれる)の形成を決定して測定することができる。抗体(例えば、リツキシマブ)のアポトーシスを誘導する能力を測定するためのアッセイは、Shanら. Cancer Immunol Immunther 48:673-83 (2000); Pedersenら. Blood 99:1314-9 (2002); Demidemら. Cancer Chemotherapy & Radiopharmaceuticals 12(3):177-186 (1997)に記載されている。
「癌」、「癌性」、「腫瘍」及び「悪性」という用語は、典型的には調節されない細胞増殖を特徴とする、哺乳動物の生理学的状態を指すか記載する。癌の例には、これらに限定されるものではないが、腺癌、リンパ腫、芽細胞腫、メラノーマ、肉腫及び白血病などの癌が含まれる。このような癌の特定の例には、扁平上皮細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、胃腸癌、ホジキン及び非ホジキンリンパ腫、膵癌、神経膠芽腫、膠腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、例えば肝腫瘍及び肝細胞癌(hepatoma)、膀胱癌、乳癌、大腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜上皮癌、骨髄腫(例えば多発性骨髄腫)、唾液腺上皮癌、腎臓癌、例えば腎臓細胞癌及びウィルムス腫瘍、基底細胞癌、メラノーマ、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、精巣癌、食道癌、及び様々な種類の頭頸部の癌が含まれる。
「前癌」とは、典型的には、癌に先行する又は発育する病状又は成長を意味する。「前癌性」成長は、異常な細胞サイクルの調節、増殖、又は分化により特徴付けられる細胞であり、細胞サイクルの調節、細胞増殖、又は分化のマーカーにより測定可能である。
「異形成」とは、組織、器官、又は細胞の任意の異常な成長又は発育を意味する。好ましくは、異形成は高悪性度又は前癌性である。
「転移」とは、原発部位から、体内の他の場所に癌が広がることを意味する。癌細胞は原発腫瘍から離れ、リンパ管又は血管に浸透し、血流を介して循環し、体内のどこかの正常な組織において遠位病巣で増殖(転移)するおそれがある。転移は局所的又は遠位的である。転移は、原発腫瘍から離れ、血流を通って移動し、遠位位置で停止する、腫瘍細胞に付随する逐次プロセスである。新たな部位で、細胞は血液供給を樹立し、増殖し、生命を危うくする腫瘤を形成する。
腫瘍細胞内における促進及び阻害分子経路の双方が、この行動を調節し、遠位位置にある腫瘍細胞と宿主細胞との間の相互作用もまた著しい。
「非転移」とは、癌が良性であるか、又は原発部位に留まっており、原発部位以外の組織、又はリンパ管又は血管系に浸透しないことを意味する。一般的に、非転移性癌は、0、I、又はII段階の癌、時折III段階の癌である任意の癌である。
「原発腫瘍」又は「原発癌」とは、元の癌を意味し、被験者の体内の他の組織、器官、又は位置に位置する転移性病変ではない。
「良性腫瘍」又は「良性癌」とは、最初の位置に局在化して留まっており、遠位位置に浸潤、侵入、又は転移する能力を有さない腫瘍を意味する。
「腫瘍量」とは、癌細胞の数、腫瘍の大きさ、又は体内の癌の量を意味する。腫瘍量は腫瘍負荷(tumor load)とも称される。
「腫瘍数」とは、腫瘍の数を意味する。
ここで使用する「細胞傷害性剤」なる用語は、細胞の機能を阻害又は阻止する、及び/又は細胞破壊をもたらす物質を意味する。この用語は、放射性同位体(例として、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32及びLuの放射性同位体)化学療法剤、及び細菌、真菌、植物、又は動物起源の酵素活性毒素又は小分子毒素などの毒素、それらの断片及び/又は変異体を含むことを意図する。
「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化学的化合物である。化学療法剤の例には、チオテパ及びCYTOXAN(登録商標)シクロスホスファミドのようなアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンのようなスルホン酸アルキル類;ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、及びウレドーパのようなアジリジン類;アルトレートアミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類及びメチラメラミン類;アセトゲニン(acetogenins)(特にブラタシン(bullatacin)及びブラタシノン(bullatacinone));カンプトセシン(合成類似体トポテカン(topotecan)を含む);ブリオスタチン;カリスタチン(callystatin);CC-1065(そのアドゼレシン(adozelesin)、カルゼレシン(carzelesin)及びバイゼレシン(bizelesin)合成類似体を含む);クリプトフィシン類(cryptophycins)(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン(dolastatin);デュオカルマイシン(duocarmycin)(合成類似体、KW-2189及びCBI-TM1を含む);エレトロビン(eleutherobin);パンクラチスタチン(pancratistatin);サルコディクチン(sarcodictyin);スポンジスタチン(spongistatin);クロランブシル、クロルナファジン(chlornaphazine)、チョロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタード等のナイトロジェンマスタード;ニトロスレアス(nitrosureas)、例えばカルムスチン(carmustine)、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン(lomustine)、ニムスチン、及びラニムスチン;エネジイン(enediyne) 抗生物質等の抗生物質(例えば、カリケアマイシン(calicheamicin)、特にカリケアマイシンガンマ1I及びカリケアマイシンオメガI1、例えば、Agnew Chem Intl. Ed. Engl., 33:183-186(1994)を参照のこと);ダイネミシンA(dynemicinA)を含むダイネミシン(dynemicin);クロドロネート(clodronate)などのビスホスホネート(bisphosphonates);エスペラマイシン(esperamicin);同様にネオカルチノスタチン発光団及び関連色素蛋白エネジイン抗生物質発光団)、アクラシノマイシン(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン類(bleomycins)、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン(carminomycin)、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)ドキソルビシン (モルフォリノ-ドキソルビシン、シアノモルフォリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マルセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシンCなどのマイトマイシン類(mitomycins)、マイコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン類(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin);メトトレキセート及び5-フルオロウラシル(5-FU)のような抗-代謝産物;デノプテリン(denopterin)、メトトレキセート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate)のような葉酸類似体;フルダラビン(fludarabine)、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンのようなプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6-アザウリジン(azauridine)、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、フロキシウリジン(floxuridine)のようなピリミジン類似体;カルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン(testolactone)のようなアンドロゲン類;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンのような抗副腎剤;フロリン酸(frolinic acid)のような葉酸リプレニッシャー(replenisher);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル(eniluracil);アムサクリン(amsacrine);ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium acetate);エポチロン(epothilone);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン(lonidainine);メイタンシン(maytansine)及びアンサマイトシン(ansamitocin)のようなメイタンシノイド(maytansinoid);ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン;モピダモール(mopidamol);ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖類複合体(JHS Natural Products, Eugene, OR);ラゾキサン(razoxane);リゾキシン(rhizoxin);シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テニュアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジコン(triaziquone);2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(trichothecenes)(特に、T-2トキシン、ベラキュリンA(verracurin A)、ロリジンA(roridin A)及びアングイジン(anguidine));ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール;ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えばタキソール(登録商標)パクリタキセル、(Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, NJ)、ABRAXANETM クレモフォール(Cremophor)を含まない、アルブミン設計のナノ粒子形状のパクリタキセル(American Pharmaceutical Partners, Schaumberg, Illinois)及びタキソテア(登録商標)ドキセタキセル、(Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France);クロランブシル;GEMZAR(登録商標)ゲンシタビン(gemcitabine);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;シスプラチン及びカルボプラチンのようなプラチナ類似体;ビンブラスチン;プラチナ;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントン;ビンクリスチン;NAVELBINE(登録商標)ビノレルビン;ノバントロン(novantrone);テニポシド;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;キセローダ(xeloda);イバンドロナート(ibandronate);CPT-11;トポイソメラーゼインヒビターRFS2000;ジフルオロメチロールニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド類;カペシタビン;並びに上述したものの薬学的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体が含まれる。
また、この定義には、腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように働く抗ホルモン剤、抗エストロゲン及び選択的エストロゲンレセプターモジュレーター(SERM)など、例えばタモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェンを含む)、ラロキシフェン(raloxifene)、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストーン(onapristone)、及びFARESTONトレミフェン;アロマターゼ酵素を阻害するアロマターゼ阻害物質、副腎でのエストロゲン産生を調節するもの、例えば4(5)-イミダゾール類、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)メゲストロールアセテート、AROMASIN(登録商標)エキセメスタン、ホルメスタイン(formestanie)、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)ゾロゾール(vorozole)、FEMARA(登録商標)レトロゾール及びARIMIDEX(登録商標)アナストロゾール;及び抗アンドロゲン、例えばフルタミド(flutamide)、ニルタミド(nilutamide)、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリン;並びにトロキサシタビン(troxacitabine)(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に不粘着性細胞増殖に関係するシグナル伝達経路の遺伝子の発現を抑制するもの、例えばPKC-アルファ、ラルフ及びH-Ras;VEGF発現インヒビター(例えばANGIOZYME(登録商標)リボザイム)及びHER2発現インヒビターなどのリボザイム;遺伝子治療ワクチンなどのワクチン、例えばALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン及びVAXID(登録商標)ワクチン;PROLEUKIN(登録商標)rIL-2;LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ1インヒビター;ABARELIX(登録商標)rmRH並びに上記のものの薬学的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体が含まれる。
ここで用いられる際の「増殖阻害剤」は、増殖の増殖をインビトロ又はインビボで阻害する化合物又は組成物を意味する。即ち、増殖阻害剤は、S期でそのような遺伝子を過剰発現する細胞の割合を有意に減少させるものである。増殖阻害剤の例は、細胞周期の進行を(S期以外の位置で)阻害する薬剤、例えばG1停止又はM期停止を誘導する薬剤を含む。古典的なM期ブロッカーは、ビンカス(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキソール、及びトポII阻害剤、例えばドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド及びブレオマイシンを含む。G1を停止するこれらの薬剤は、S期停止にも溢流し、例えば、DNAアルキル化剤、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5−フルオロウラシル、及びara−Cである。さらなる情報は、The Molecular Basis of Cancer, Mendelsohn and Israel編, Chapter 1, 表題「Cell cycle reguration, oncogene, and antineoplastic drugs」, Murakamiら, (WB Saunders: Philadelphia, 1995)、特に13頁に見出すことができる。
「サイトカイン」なる用語は、一つの細胞集団から放出されるタンパク質であって、他の細胞に対して細胞間メディエータとして作用するものの包括的な用語である。このようなサイトカインの例としては、リンフォカイン、モノカイン、及び伝統的なポリペプチドホルモンである。サイトカインには、成長ホルモン、例えばヒト成長ホルモン、N−メチオニルヒト成長ホルモン、及びウシ成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラクシン;プロリラクシン;卵胞刺激ホルモン(FSH)のような糖タンパク質ホルモン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、及び黄体形成ホルモン(LH);肝臓増殖因子;線維芽細胞増殖因子;プロラクチン;胎盤ラクトゲン;腫瘍壊死因子−α及び−β;ミュラー阻害物質;マウス性腺刺激ホルモン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮増殖因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);神経増殖因子;血小板増殖因子;TGF−αあるいはTGF−βのような形質転換増殖因子(TGF);インスリン様増殖因子−I及び−II;エリスロポイエチン(EPO);オステオインダクティブ因子;インターフェロン−α、−β、及び−γのようなインターフェロン;マクロファージ−CSF(M−CSF)のようなコロニー刺激因子(CSF);顆粒球−マクロファージ−CSF(GM−CSF)及び顆粒球−CSF(G−CSF);IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−11、IL−12等のインターロイキン(IL);LIF及びキットリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子が含まれる。ここで使用される場合、サイトカインなる用語は天然源由来あるいは組換え細胞培養由来のタンパク質及び天然配列サイトカインの生物的に活性な等価物を含む。
「パッケージ挿入物」は、指示、使用法、用量、投与、禁忌、包装された製品と組合せられる他の治療用製品、及び/又はこのような治療用製品の使用に関する注意についての情報を含む、治療用製品の市販パッケージに常套的に含まれる指示を指すために使用される。
ここで使用される「治療する」、「治療」、及び「療法」とは、治癒的療法、予防的療法及び防護的療法を意味する。
ここで使用される「哺乳動物」なる用語は、ヒト、ウシ、ウマ、イヌ及びネコを含む哺乳動物に分類されるあらゆる動物に称する。本発明の好ましい実施態様では、哺乳動物はヒトである。
II.本発明の組成物及び方法
TNFリガンドファミリーに関連したサイトカインであって、ここにおいて「Apo−2リガンド」又は「TRAIL」と同定されたサイトカインが記載されている。ヒト天然Apo−2リガンドの予測成熟アミノ酸配列は、281のアミノ酸を含み、約32.5kDaの計算上の分子量を有する。シグナル配列が存在せず内在性疎水性領域が存在することは、Apo−2リガンドがII型膜貫通タンパク質であることを示唆する。また、可溶性細胞外ドメインApo−2リガンドポリペプチドが記載されている。例えば1997年7月17日公開の国際公開第号97/25428を参照のこと。Apo−2L置換変異体がさらに記載されている。アラニンスキャンニング技術が、生物学的活性を有する様々な置換変異体分子を同定するために利用されてきた。Apo−2リガンドの特定の置換変異体は、少なくとも一つのアミノ酸がアラニン残基等の別のアミノ酸残基によって置換されているものを含む。これら置換変異体は、例えば「D203A」、「D218A」及び「D269A」として同定されている。この命名法は、位置203、218、及び/又は269(補足図11に示した番号を使用)のアスパラギン酸残基がアラニン残基によって置換されているApo−2リガンド変異体を同定するために使用されている。場合によっては、本発明のApo−2L変異体は一又は複数のアミノ酸置換を含んでもよい。場合によっては、このようなApo−2L変異体はDR4又はDR5レセプター選択的変異体である。
下記の説明は、核酸をコードするApo−2リガンドを含むベクターで形質転換又は形質移入された宿主細胞を培養し、細胞培養物からポリペプチドを回収することによる、Apo−2リガンド変異体を含むApo−2リガンドを生産する方法に関する。
Apo−2リガンドをコードするDNAは、Apo−2リガンドmRNAを有し、これを検出可能なレベルで発現すると考えられる組織から調製された任意のcDNAライブラリーから得ることできる。従って、ヒトApo−2リガンドDNAは、国際公開第97/25428号に記載されているヒト胎盤cDNAのバクテリオファージライブラリーのような、ヒト組織から調製されたcDNAライブラリーから簡便に得ることが可能である。また、Apo−2リガンドコード化遺伝子は、ゲノムライブラリーから又はオリゴヌクレオチド合成によって得ることもできる。
ライブラリーは、対象となる遺伝子あるいはその遺伝子によりコードされるタンパク質を同定するために設計された(Apo−2リガンドに対する抗体又は少なくとも約20−80塩基のオリゴヌクレオチド等の)プローブによってスクリーニングすることができる。選択されたプローブによるcDNA又はゲノムライブラリーのスクリーニングは、例えばSambrookら, Molecular Cloning:A Laboratory Manual(New York:Cold Spring HarborLaboratory Press, 1989)に記載されている標準的な手順を使用して実施することができる。Apo−2リガンドをコードする遺伝子を単離する他の方法はPCR法を使用するものである[Sambrookら,上掲;Dieffenbachら, PCR Primer:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1995)]。
Apo−2リガンドのアミノ酸配列断片又は変異体は、Apo−2リガンドDNAに適切なヌクレオチド変化を導入するか、所望のApo−2リガンドポリペプチドを合成することにより調製することができる。このような断片又は変異体は、完全長Apo−2リガンドについて補足図11に示したアミノ酸配列の、又は細胞内領域、膜貫通領域、又は細胞外領域の内部あるいは一方又は両方の末端に残基の挿入、置換及び/又は欠損を示す。挿入、置換及び/又は欠損の何れかを組み合わせて、ここに定義するような所望の生物活性、例えばアポトーシス活性を有する最終のコンストラクトに到達するように作製することができる。好ましい実施態様では、断片又は変異体は、Apo−2リガンドの細胞内、膜貫通、又は細胞外領域についてここで同定した配列、あるいはApo−2リガンドの完全長配列に対して、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約90%の配列同一性、さらに好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する。また、アミノ酸の変化により、グリコシル化部位の数と位置の変化、又は膜係留特性の改変のように、Apo−2リガンドの翻訳後プロセスを改変し得る。
上述したApo−2リガンド配列における変異は、米国特許第5,364,934号に記載された保存的及び非保存的突然変異に関する技術とガイドラインの任意のものを使用して生じさせることができる。これらは、オリゴヌクレオチド媒介(部位特異的)突然変異誘発、アラニンスキャニング、及びPCR突然変異誘発を含む。
近接配列に沿った一又は複数のアミノ酸を同定するために、スキャニングアミノ酸分析法を使用することができる。好ましいスキャニングアミノ酸は、比較的小さい中性アミノ酸である。このようなアミノ酸には、アラニン、グリシン、セリン及びシステインが含まれる。変異体の主鎖構造をあまり改変することなく、ベータ炭素を越えた側鎖が除去されるため、典型的にはアラニンがこの群のなかで好ましいスキャニングアミノ酸である[Cunninghamら, Science, 244:1081(1989)]。またアラニンは最も一般的なアミノ酸であることによっても好ましい。さらに、アラニンは埋設及び露出位置の双方に頻繁に見出される[Creighton, The Proteins,(W.H. Freeman & Co., NY);Chothia, J. Mol. Biol., 150:1(1976)]。
アミノ酸はその側鎖の性質の類似性に応じて分類される(Biochemistry, 第2版., pp.73-75, Worth Publishers, New York(1975)中のA. L. Lehninger):
(1)非極性:Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Pro(P)、Phe(F)、Trp(W)、Met(M)
(2)荷電のない極性:Gly(G)、Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、Tyr(Y)、Asn(N)、Gln(Q)
(3)酸性:Asp(D)、Glu(E)
(4)塩基性:Lys(K)、Arg(R)、His(H)
あるいは、天然に生じる残基は共通の側鎖の性質に基づいてグループに分けることができる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響する残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
また、本発明の範囲に含まれるApo−2リガンド配列の変異は、アミノ末端誘導体又は修飾形にも関連する。このようなApo−2リガンド配列は、ポリペプチド配列のN末端にメチオニン又は修飾メチオニン(例えばホルミルメチオニル又は他のブロックされたメチオニル種など)を有するここに記載した任意のApo−2リガンドポリペプチドを含む。
天然又は変異体Apo−2リガンドをコードする核酸(例えば、cDNA又はゲノムDNA)は、さらなるクローニング(DNAの増幅)又は発現のために、複製可能なベクター内に挿入されてよい。様々なベクターが公的に入手可能である。ベクター成分としては、一般に制限されるものではないが、次のものの一又は複数が含まれる:シグナル配列、複製開始点、一又は複数のマーカー遺伝子、エンハンサー成分、プロモーター、及び転写終結配列であり、それぞれを以下に説明する。用いられるであろう任意のシグナル配列、複製開始点、マーカー遺伝子、エンハンサーエレメント及び転写終結配列は当該技術分野で知られており、国際公開第97/25428号にさらに詳しく記載されている。
発現及びクローニングベクターは、通常、宿主生物によって認識され、Apo−2リガンド核酸配列に作用可能に結合したプロモーターを含む。プロモーターは、作用可能に結合したApo−2リガンド核酸配列のような特定の核酸配列の転写及び翻訳を制御する構造遺伝子(一般的に約100ないし1000塩基対)の開始コドンの上流側(5’)に位置する未翻訳配列である。このようなプロモーターは典型的には、誘導的及び構成的なクラスの2つのクラスに属する。誘導的なプロモーターは、例えば、栄養分の存在あるいは不存在、温度変化などの培養条件のある変化に対応してその制御の下でDNAからの転写レベルを上昇させるプロモーターである。現時点において多種の可能な宿主細胞により認識される非常に多くのプロモーターがよく知られている。これらのプロモーターは、制限酵素の消化によって供給源DNAからプロモーターを除去し、ベクターに単離したプロモーター配列を挿入することで、Apo−2リガンドをコードするDNAに作用的に結合している。天然のApo−2リガンドプロモーター配列及び多くの異種性プロモーターはいずれもApo−2リガンドDNAの直接増幅及び/又は発現に用いることができる。
原核生物及び真核生物宿主を用いての使用に適したプロモーターは当該技術分野で知られており、国際公開第97/25428号にさらに詳しく記載されている。
大腸菌における可溶性Apo−2Lの生産の好ましい方法には、生産物発現の制御のための誘導的プロモーターが用いられる。制御可能な誘導的なプロモーターの利用は、生産物発現の誘導、及び宿主によってよく耐えることのできないかなりの量の生産物の蓄積の前に、所望する細胞密度への培養成長を可能にする。
Apo−2L(114−281形態)の発現のために、いくつかの誘導的なプロモーター系(T7ポリメラーゼ、trp及びアルカリホスファターゼ(AP))が出願人によって評価されている。これら3つのプロモーターのそれぞれの利用は、収集細胞ペーストから回収されたかなりの量の可溶性で生物学的に活性なApo−2L三量体を結果として生じた。しっかりとしたプロモーターコントロール、及び収集細胞ペーストにおいて到達したより高い細胞密度及び力価のために、試験されたこれら3つの誘導的なプロモーター系の中でAPプロモーターが好まれている。
一又は複数の上に列挙した成分を含む適切なベクターの構築には、標準的なライゲーション技術を用いる。単離されたプラスミド又はDNA断片を開裂させ、整え、そして必要とされるプラスミドの生成のために望ましい形態に再びライゲーションする。
作成されたプラスミドが正しい配列であることを確認する分析のために、ライゲーション混合物を用いて、大腸菌K12菌株294(ATCC31446)を形質転換し、適当な場合にはアンピシリン又はテトラサイクリン耐性によって、形質転換細胞を好適に選択する。形質転換細胞からプラスミドを調製し、制限エンドヌクレアーゼ消化により分析し、及び/又は当該技術分野で知られている標準的技術を利用して配列を決定する[例えば、Messingら,Nucleic Acids Res., 9:309(1981);Maxamら, Methods in Enzymology, 65:499(1980)を参照のこと]。
Apo−2リガンドをコードしているDNAの哺乳動物細胞における一過性発現をもたらす発現ベクターを使用することができる。一般に、一過性発現は、宿主細胞が発現ベクターの多くのコピーを蓄積し、次にその発現ベクターによってコードされている所望のポリペプチドを高レベルで合成するように、宿主細胞中で効果的に複製できる発現ベクターを使用することを含む[Sambrookら, 上掲]。一過性発現系は、適切な発現ベクターと宿主細胞を含むが、クローニングされたDNAによりコードされているポリペプチドの簡便で確実な同定並びに所望の生物学的又は生理学的性質についてのこのようなポリペプチドの迅速なスクリーニングを可能にする。したがって、一過性発現系は、本発明において、生物学的に活性なApo−2リガンドであるApo−2リガンドの類似物及び変異体を同定する目的に特に有用である。
組換え脊椎動物細胞培養でのApo−2リガンドの合成に適応化させるのに適切な他の方法、ベクター及び宿主細胞は、Gethingら, Nature, 293:620-625(1981);Manteiら, Nature, 281:40-46(1979);欧州特許出願公開第117060号;及び欧州特許出願公開第117058号に記載されている。
ここのベクターにDNAをクローニングあるいは発現するために適切な宿主細胞は、原核生物、酵母、又は高等真核生物細胞である。この目的にとって適切な原核生物は、限定するものではないが、真正細菌、例えばグラム陰性又はグラム陽性生物体、例えばエシェリチアのような腸内菌科、例えば大腸菌、エンテロバクター、エルウィニア(Erwinia)、クレブシエラ、プロテウス、サルモネラ、例えばネズミチフス菌、セラチア属、例えばセラチア・マルセスキャンス及び赤痢菌属、並びにバシラス、例えば枯草菌及びバシラス・リチェフォルミス(licheniformis)(例えば、1989年4月12日に公開されたDD266710に開示されたバシラス・リチェニフォルミス41P)、シュードモナス属、例えば緑膿菌及びストレプトマイセス属を含む。好ましくは、宿主細胞は最小量のタンパク質分解酵素を分泌すべきである。
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母菌のような真核微生物は、Apo−2リガンドをコードするベクターのための適切なクローニング又は発現宿主である。グリコシル化Apo−2リガンドの発現に適切な宿主細胞は、多細胞生物から誘導される。CHO細胞を含むすべてのこのような宿主細胞の例は、さらに国際公開第97/25428号に記載されている。
宿主細胞を形質移入し、好ましくはApo−2リガンド産生のための上述した発現又はクローニングベクターで形質転換し、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために適切ならば修飾された栄養培地で培養する。
形質移入は、如何なるコード配列が実際に発現されるか否かにかかわらず、宿主細胞による発現ベクターの取り込みを意味する。多数の形質移入の方法が当業者に知られており、例えば、CaPO4及びエレクトロポレーションである。このベクターの操作のあらゆる徴候が宿主細胞内で生じたときに成功した形質移入が一般に認められる。
形質転換は、染色体外の成分としてであろうと染色体成分によってであろうと、DNAが複製可能であるように生物体中にDNAを導入することを意味する。用いられる宿主細胞に応じて、そのような細胞に対して適した標準的な方法を用いて形質転換はなされる。前掲のSambrookらにより記載された塩化カルシウムを用いるカルシウム処理又はエレクトロポレーションが、原核生物又は実質的な細胞壁障壁を含む他の細胞に対して一般的に用いられる。アグロバクテリウム・トゥメファシエンスによる感染が、Shawら, Gene, 23:315(1983)及び1989年6月29日公開の国際公開第89/05859号に記載されたように、ある種の植物細胞の形質転換に用いられる。加えて、1991年1月10日に公開された国際公開第91/00358号に記載されているように、超音波処理を用いて植物を形質移入することもできる。
このような細胞壁のない哺乳動物細胞に対しては、Graham及びvan der Eb, Virology, 52:456-457(1978)のリン酸カルシウム沈殿法を使用してもよい。哺乳動物細胞の宿主系形質転換の一般的な側面は米国特許第4399216号に記載されている。酵母中の形質転換は、典型的には、Van Solingenら, J. Bact., 130:946(1977)及びHsiaoら, Proc.Natl. Acad. Sci. USA, 76:3829(1979)の方法によって実施する。しかしながら、DNAを細胞中に導入する他の方法、例えば、核マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、無傷の細胞、又はポリカチオン、例えばポリブレン、ポリオルニチン等を用いる細菌プロトプラスト融合もまた用いることもできる。哺乳動物細胞を形質転換するための様々な技術については、Keownら, Methods in Enzymology, 185:527-537(1990)及び Mansourら, Nature, 336:348-352(1988)を参照のこと。
Apo-2リガンドを生産するために用いられる原核細胞は、前掲のSambrookらにより一般的に記載されているような適切な培地で培養される。大腸菌の培養に用いることができる培養培地の特定の形態は、文献に記載されている。Apo−2リガンドを生産するために使用される哺乳動物宿主細胞は、様々な培養培地において培養することができる。
市販培地の例としては、ハム(Ham)のF10(Sigma)、最小必須培地(「MEM」、Sigma)、RPMI−1640(Sigma)及びダルベッコの改良イーグル培地(「DMEM」、Sigma)が含まれる。これらの培地はいずれも、ホルモン及び/又は他の増殖因子(例えばインスリン、トランスフェリン、又は表皮増殖因子)、塩類(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びリン酸塩)、バッファー(例えばHEPES)、ヌクレオシド(例えばアデノシン及びチミジン)、抗生物質(例えば、ゲンタマイシンTM薬)、微量元素(最終濃度がマイクロモル範囲で通常存在する無機化合物として定義される)及びグルコース又は同等のエネルギー源を必要に応じて補充することができる。任意の他の必要な補充物質もまた当業者に知られている適当な濃度で含むことができる。培養条件、例えば温度、pH等々は、発現のために選ばれた宿主細胞について以前から用いられているものであり、当業者には明らかであろう。
一般に、哺乳動物の細胞培養の生産性を最大にするための原理、プロトコル、及び実用技術は、Mammalian Cell Biotechnology: A Practical Approach, M. Butler編(IRL Press, 1991)に見出すことができる。
本発明の一側面では、宿主細胞の培養又は発酵のために、典型的には一又は複数の二価金属イオンが培養培地へ添加されるかあるいは含まれる。二価金属イオンは、好ましくは、貯蔵安定性を増すため、溶解性を増すため、又は一又は複数の亜鉛イオンによって調整される安定なApo−2L三量体の形成を補助するために十分な濃度レベルで培養培地に存在するかあるいは添加される。添加されうる二価金属イオンの量は、一部は培養中の宿主細胞密度又はこのような二価金属イオンへの潜在的な宿主細胞感受性に依存する。培養におけるより高い細胞密度では、二価金属イオンの濃度を増すことは有益である。宿主細胞による生産物の発現中又は発現後に二価金属イオンが添加される場合は、宿主細胞による産物の発現が増加するのに応じて二価金属イオン濃度を調節又は増加させることが望ましい。典型的な普通に入手可能な細胞培養培地に存在しうる微量レベルの二価金属イオンは、安定な三量体形成には十分ではないと一般的に考えられている。従って、ここに開示するように、さらなる量の二価金属イオンの添加が好ましい。
培養中の宿主増殖の増殖期の間に二価金属イオンが添加される場合は、二価金属イオンは、逆に又は負の方向に宿主細胞成長へ影響しない濃度で培養培地へ添加されるのが好ましい。振盪フラスコ培養では、1mMより高い濃度でのZnSO4の添加は、結果として低い宿主細胞密度を生じる可能性があることが観察されている。当業者であれば、細菌細胞は、細胞マトリックスと金属イオン複合体を形成することで、効果的に金属イオンを隔離することが可能であることが分かる。従って、細胞培養では、成長期の後(所望する宿主細胞密度に達した後)又は宿主細胞による生産物発現の直前に、選択された二価金属イオンを培地に添加することが好ましい。十分な量の二価金属イオンが存在していることを確かめるために、さらなる二価金属イオンを、生産物発現期の間に細胞培養培地へ添加又は供給してもよい。
培養培地の二価金属イオン濃度は、宿主細胞に対して有害又は毒性でありうる濃度を越えてはならない。宿主細胞として大腸菌を用いる方法では、培養培地の二価金属イオンの濃度が約1mM(好ましくは≦1mM)を越えないことが好ましい。さらにより好ましくは、培養培地の二価金属イオン濃度は、約50マイクロモルから約250マイクロモルである。最も好ましくは、このような方法で使用される二価金属イオンは硫酸亜鉛である。金属イオン及びApo−2リガンド三量体が1対1モル比で存在することが可能である量の二価金属イオンを細胞培養へ添加することが望ましい。
二価金属イオンは、細胞培養へ如何なる許容可能な形態でも添加が可能である。例えば、金属イオンの溶液は水を使って調製することが可能であり、次に、二価金属イオン溶液は培養培地へ添加又は供給することが可能である。
Apo−2Lの発現は、例えば、ここに記載された配列に基づき、適切に標識されたプローブを用い、従来からのサザンブロット法、mRNAの転写を定量化するノーザンブロット法[Thomas, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:5201-5205(1980)]、ドットブロット法(DNA分析)、又はインサイツハイブリダイゼーション法によって、直接的に試料中で測定することができる。様々な標識を用いることができ、最も一般的なものは放射性同位元素、特に32Pである。しかしながら、他の方法、例えばポリヌクレオチド中への導入のためのビオチン修飾ヌクレオチドを用いる方法もまた使用することができる。ついで、このビオチンは、例えば放射性核種、蛍光剤又は酵素等のような広範囲の標識で標識することができるアビジン又は抗体への結合部位となる。あるいは、DNA二本鎖、RNA二本鎖及びDNA−RNAハイブリッド二本鎖又はDNA−タンパク二本鎖を含む、特異的二本鎖を認識することができる抗体を用いることもできる。ついで、抗体を標識し、アッセイを実施することができ、ここで二本鎖は表面に結合しており、その結果二本鎖の表面での形成の時点でその二本鎖に結合した抗体の存在を検出することができる。あるいは、遺伝子の発現は、遺伝子産物の発現を直接的に定量する免疫学的な方法、例えば組織切片の免疫組織化学的染色及び細胞培養又は体液の検定によって測定することもできる。免疫組織化学的染色技術では、細胞試料を、典型的には脱水と固定によって調製し、結合した遺伝子産物に対し特異的な標識化抗体と反応させるが、この標識は通常は視覚的に検出可能であり、例えば酵素的標識、蛍光標識、ルミネセンス標識等である。
試料液の免疫組織化学的染色及び/又はアッセイに有用な抗体は、モノクローナルでもポリクローナルでもよく、任意の哺乳類において調製することができる。簡便には、抗体は、天然Apo−2リガンドポリペプチドに対して、又はここで提供されるDNA配列をベースとした合成ペプチドに対して、又はApo−2リガンドDNAに融合し特異的抗体エピトープをコードする外因性配列に対して調製され得る。
Apo-2リガンドは、好ましくは培養培地から分泌されたポリペプチドとして回収されるが、分泌シグナル無しで直接産生される場合は宿主細胞溶菌液から回収してもよい。Apo−2リガンドが膜結合性である場合は、適切な洗浄液(例えばトリトン−X100)を用いて膜から放出させるか、又は酵素的切断によりその細胞外領域を放出させてもよい。
Apo−2リガンドがヒト起源のもの以外の組換え細胞でつくられる場合は、Apo−2リガンドはヒト起源のタンパク質又はポリペプチドを含まない。しかしながら、Apo−2リガンドに関して実質的に相同である調製物を得るには、組換え細胞タンパク又はポリペプチドからApo−2リガンドを回収又は精製することが通常必要である。第一段階として、培地又は溶菌液を遠心分離して粒状の細胞屑を除去することができる。ついで、Apo−2リガンドを、汚染した可溶性タンパク質及びポリペプチドから、適切な精製手順の例である次の手順により精製される:イオン交換カラムでの分画;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカ又はカチオン交換樹脂、例えばDEAE又はCMにおけるクロマトグラフィー;クロマトフォーカシング;SDS−PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;例えばセファデックスG−75を用いるゲル濾過;及びIgGのような汚染物を除くプロテインAセファロースカラムである。
好ましい実施態様では、Apo−2リガンドはアフィニティークロマトグラフィーによって単離することができる。残基が欠損され、挿入され、又は置換されたApo−2リガンド断片又は変異体は、その変異によってしばしば惹起される実質的な性質変化を考慮に入れて、天然Apo−2リガンドと同じようにして回収される。例えば、他のタンパク質又はポリペプチド、例えば細菌性もしくはウイルス性抗原とのApo−2リガンド融合体の調製は精製を容易にする;抗原に対する抗体を含む免疫アフィニティーカラムを、融合ポリペプチドを吸着させるために使用することができる。
例えばフェニルメチルスルホニルフルオライド(PMSF)のようなプロテアーゼインヒビターもまた精製の間のタンパク分解を阻害するのに有用であり、偶発的な汚染物質の成長を防止するために抗生物質を含めることができる。天然Apo−2リガンドに適切な精製方法は、組換え細胞培養の発現の際におけるApo−2リガンド又はその変異体の特性の変化の起因となる改変が必要となることは、当業者であれば分かるであろう。
このような任意の精製工程では、回収されたApo−2Lを二価金属イオン含有溶液又は一又は複数の二価金属イオンを含有する精製物質(例えばクロマトグラフィー媒体又は支持体)へ曝露することが望ましいであろう。好ましい実施態様では、二価金属イオン及び/又は還元剤は、Apo−2Lの精製又は回収の間に使用される。場合によっては、DTT又はBMEのような二価金属イオン及び還元剤の両方を、Apo−2Lの精製又は回収の間に使用してもよい。精製又は回収の間に二価金属イオンを使用することは、Apo−2L三量体の安定性を提供するか、あるいは細胞培養段階の間に形成されるApo−2L三量体を保存すると考えられる。
また、以下の記載は一又は複数の化学基に共有的に結合した(以下「コンジュゲートされた」)Apo−2リガンドを製造する方法に関する。本発明のApo−2Lコンジュゲートに使用するのに適した化学基は好ましくは有意に毒性又は免疫原性ではない。化学基は場合によっては保存することができ保存に適した条件下で使用できるApo−2Lコンジュゲートを製造するために選択される。ポリペプチドにコンジュゲートされうる様々な例示的化学基が当該技術分野で知られており、例えば糖タンパク質に天然に生じる炭水化物のような炭水化物、ポリグルタミン、及び非タンパク様ポリマー、例えばポリオールが含まれる(米国特許第6245901号を参照)。
例えばポリオールは、上掲の国際公開第93/00109号に開示されているように、リジン残基を含む一又は複数のアミノ酸残基においてApo−2Lなどのポリペプチドにコンジュゲートされうる。用いられるポリオールは任意の水溶性ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーとでき、直鎖又は分枝鎖を有しうる。好適なポリオールには一又は複数のヒドロキシル位置で1から4の炭素を有するアルキル基のような化学基が置換されているものが含まれる。典型的には、ポリオールはポリ(アルキレングリコール)、例えばポリ(エチレングリコール)(PEG)であり、よって記載を簡単にするために、以下の議論においては、用いるポリオールがPEGである例示的な実施態様に関するものとし、ポリペプチドにポリオールをコンジュゲートさせる方法を「ペグ化(pegylation)」と称する。しかし、当業者であれば、他のポリオール、例えばポリ(プロピレングリコール)及びポリエチレン−ポリプロピレングリコールコポリマーを、PEGに対してここに記載したコンジュゲート法を使用して用いることができると認識しているであろう。
Apo−2Lのペグ化に用いられるPEGの平均分子量は変動し得、典型的には約500から約30000ダルトン(D)の範囲でありうる。好ましくは、PEGの平均分子量は約1000から約25000Dであり、より好ましくは約1000から約5000Dである。一実施態様では、ペグ化は約1000Dの平均分子量を持つPEGを用いて実施される。場合によっては、PEGホモポリマーは未置換であるが、アルキル基で一端が置換されていてもよい。好ましくは、アルキル基はC1−C4アルキル基、最も好ましくはメチル基である。PEG調製物は商業的に入手可能であり、典型的には本発明において使用するのに適したPEG調製物は平均分子量に応じて販売されている非均一調製物である。例えば、市販のPEG(5000)調製物は典型的には分子量が僅かに変動し、通常は±500Dの分子を含む。
本発明のApo−2リガンドは単量体形態又は三量体形態(3つの単量体を含む)等、様々な形態でありうる。場合によっては、Apo−2L三量体は、PEG分子が三量体Apo−2Lを構成する三の単量体の一、二、又はそれぞれに結合又はコンジュゲートされるようにペグ化される。そのような実施態様では、用いられるPEGは約1000から約5000Dの平均分子量を有するのが好ましい。また、Apo−2L三量体は「部分的に」ペグ化され得、つまり、三量体を構成する三の単量体の一又は二だけがPEGに結合又はコンジュゲートされる。
タンパク質をペグ化するための様々な方法が当該技術分野で知られている。PEGにコンジュゲートしたタンパク質を製造するための特定の方法には、米国特許第4179337号、米国特許第4935465号及び米国特許第5849535号に記載された方法が含まれる。典型的には、タンパク質は、主に反応条件、ポリマーの分子量等々に応じて、ポリマーの末端反応性基にタンパク質のアミノ酸残基の一又は複数を介して共有的に結合される。反応性基を有するポリマーはここでは活性化ポリマーと命名する。反応性基はタンパク質の遊離のアミノ又は他の反応性基と選択的に反応する。PEGポリマーは無作為又は部位特異的方式の何れかでタンパク質上のアミノ又は他の反応性基に結合しうる。しかし、最適な結果を得るために、選択される反応性基のタイプと量、並びに用いられるポリマーのタイプは、反応性基がタンパク質上の余りに多くの特に活性な基と反応することを避けるために用いられる特定のタンパク質又はタンパク質変異体に依存するものと理解されるであろう。これは完全に避けることができないであろうため、タンパク質1モル当たり一般に約0.1から1000モル、好ましくは2から200モルの活性化ポリマーを、タンパク質濃度に応じて用いることが推奨される。タンパク質1モル当たりの活性化ポリマーの最終量は、最適な活性を維持し、同時に可能ならばタンパク質の循環半減期を最適化するためのバランス量である。
さらに、ここにに記載のApo2Lは、当分野に公知の技術を用いてロイシンジッパー配列又はタグ分子とに結合又は融合させてもよいと考えられる。よって、Apo−2リガンドは、他の異種ポリペプチドと融合してもよい。一実施態様において、キメラポリペプチドは、抗タグ抗体が選択的に結合できるエピトープを提供するタグポリペプチドとApo−2リガンドとの融合を含む。エピトープタグは、一般的にはApo−2リガンドのアミノ又はカルボキシル末端に位置する。このようなApo−2リガンドのエピトープタグ形態の存在は、タグポリペプチドに対する抗体を用いて検出することができる。また、エピトープタグの提供は、抗タグ抗体又はエピトープタグに結合する他の型の親和性マトリクスを用いたアフィニティ精製によってApo−2リガンドを容易に精製できるようにする。
様々なタグポリペプチド及びそれら各々の抗体はこの分野で良く知られている。例としては、フルHAタグポリペプチド及びその抗体12CA5[Field等, Mol. Cell. Biol., 8:2159-2165 (1988)];c−mycタグ及びそれに対する8F9、3C7、6E10、G4、B7及び9E10抗体[Evan等, Molecular and Cellular Biology, 5:3610-3616 (1985)];及び単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(gD)タグ及びその抗体[Paborsky等, Protein Engineering, 3(6):547-553 (1990)]を含む。他のタグポリペプチドは、フラッグペプチド[Hopp等, BioTechnology, 6:1204-1210 (1988)];KT3エピトープペプチド[Martin等, Science, 255:192-194 (1992)];α−チューブリンエピトープペプチド[Skinner等, J. Biol. Chem., 266:15163-15166 (1991)];及びT7遺伝子10タンパク質ペプチドタグ[Lutz-Freyermuth等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:6393-6397 (1990)]を含む。タグポリペプチドが選択されると、そこで抗体を、ここで開示の技術を使用して生じさせることができる。
一般的に、エピトープタグApo−2リガンドは、天然及び変異Apo−2リガンドについて上記された方法に従い、構築及び生成されうる。Apo−2リガンドタグポリペプチド融合体は、好ましくはApo−2リガンド部分をコードするcDNA配列をタグポリペプチドDNA配列にインフレームで融合させ、得られたDNA融合コンストラクトを適切な宿主細胞において発現させることで構築される。通常、本発明のApo−2リガンドタグポリペプチドキメラを調製する場合、Apo−2リガンドをコードする核酸は、タグポリペプチドのN末端をコードする核酸に、その3’末端で融合するが、5’融合体も可能である。エピトープタグApo−2リガンドの例は、以下の実施例にさらに詳細に記載する。
エピトープタグApo−2リガンドは、抗−タグ抗体を使用するアフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる。アフィニティー抗体が結合するマトリックスには、例えばアガロース、調整多孔質ガラス、又はポリ(スチレンジビニル)ベンゼンが含まれる。エピトープタグApo−2リガンドは、ついで、当該技術分野で公知の技術を使用し、アフィニティーカラムから溶出させることができる。
また、Apo2L/TRAILを含有する製剤が、本発明により提供される。このような製剤は、治療的投与のみならず、特に貯蔵に適していると考えられる。製剤は、既知の技術で調製することが可能である。例えば、製剤はゲル濾過カラムでのバッファー交換によって調製することが可能である。
また、Apo2L/TRAILを含有する製剤が、本発明により提供される。このような製剤は、治療的投与のみならず、特に貯蔵に適していると考えられる。製剤は、既知の技術で調製することが可能である。
典型的には、適量の許容可能な塩又は担体が、製剤を等浸透圧にするために製剤に使用される。薬学的に許容可能な担体の例は、生理食塩水、リンガー液及びデキストロース液を含む。製剤のpHは、好ましくは約6〜約9、さらに好ましくは約7〜約7.5である。例えば薬剤の濃度及び投与経路よっては、ある種の担体がより好ましい場合があることは、当業者には明らかであろう。
治療用組成物は、凍結乾燥製剤、水溶液又は水性懸濁液の形態で、場合によっては任意成分の担体、賦形剤又は安定剤と、適切な純度を有する所望の分子を混合することにより(Remington's Pharmaceutical Sciences, 16版, A. Osol, A.編(1980))調製することができる。許容される担体、賦形剤、又は安定剤は、好ましくは用いられる投与量及び濃度で受容者に非毒性であり、トリス(Tris)、HEPES、PIPES、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸などの緩衝剤、アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;保存料(例えば、オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベンのようなアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;及びm−クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;及び/又はTWEENTM、PLURONICSTM、又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。
そのような担体の更なる例は、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えばグリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、塩、又は電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、及びセルロースベースの物質を含む。局所又はゲルベースの形態用の担体は、多糖類、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース又はメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコール、及びモクロウアルコールを含む。あらゆる投与に対して、一般的なデポー形態が好適に用いられる。このような形態は、例えば、マイクロカプセル、ナノカプセル、リポソーム、硬膏剤、吸入形態、鼻スプレー、舌下錠、及び徐放性製剤を含む。
インビボ投与に使用される製剤は滅菌されていなくてはならない。これは、凍結乾燥及び再構成の前又は後に、滅菌フィルター膜を通す濾過により容易に達成される。製剤は凍結乾燥形態又は全身投与される場合には溶液で貯蔵される。凍結乾燥形態にある場合、典型的には使用時に適当な希釈剤と再構成するために他の成分と組み合わせて製剤化される。液体製剤の例は、皮下注射用の単回投与バイアルに充填された無菌の透明な無色の保存料未添加(unpreserved)溶液である。
治療用製剤は、一般的に無菌のアクセスポート、例えば、静脈内溶液バッグ又は皮下注射針で貫通可能なストッパーを備えたバイアルに入れられる。製剤は、好ましくは静脈内(i.v.)、皮下(s.c.)、筋肉内(i.m.)の繰り返し注射又は注入として、あるいは鼻内又は肺内送達に適したエアロゾル製剤として投与される(肺内送達については、例えば欧州特許出願公開第257956号参照)。
徐放性調製物の適切な例は、タンパク質を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスを含み、このマトリクスは、例えばフィルム又はマイクロカプセル等の成形品の形態である。徐放性マトリクスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、Langerら, J. Biomed. Mater. Res. 15:167-277(1981)及びLanger, Chem. Tech. 12:98-105(1982)に記載されたポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3773919号、欧州特許出願公開第58481号)、L−グルタミン酸とガンマ−エチル−L−グルタメートのコポリマー(Sidmanら, Biopolymers 22:547-556(1983))、非分解性エチレン-酢酸ビニル(Langerら, 上掲)、分解性の乳酸−グリコール酸コポリマー、例えばLupron Depot(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドからなる注入可能なミクロスフィア)、及びポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸(欧州特許出願公開第133988号)を含む。
ここに記載した様々な病理状態の哺乳動物における診断は、熟練した実務者によって行うことが可能である。例えば、哺乳動物の癌の診断又は検出を可能にする診断技術は、当該技術分野で利用可能である。例えば、癌は、限定されるものではないが、触診(法)、血液分析、X線、NMR等々を含む技術を通して同定され得る。癌ステージ分類システムは、解剖学的に癌が如何に遠くまで広がっているかを記述し、同じステージ群において患者に類似の予後及び治療を付与しようとするものである。幾つかの試験を実施することにより、胸部x線、マンモグラフィー、骨スキャン、CTスキャン、及びMRIスキャンのような所定の画像処理試験及び組織診を含む癌のステージ分類を補助することができる。患者の全体的な健康状態を評価し、癌が特定の器官に広がっているかどうかを検出するために、血液検査及び臨床評価もまた使用される。
腫瘍は固形腫瘍である場合がある。固形腫瘍は血液、骨髄、又はリンパ系以外の体組織の任意の癌を含む。固形腫瘍は上皮細胞由来のものと非上皮細胞由来のものに更に分類できる。上皮細胞固形腫瘍の例は、消化管、結腸、乳房、前立腺、腎臓、肝臓、膵臓、卵巣、頭頸部、口腔、胃、十二指腸、小腸、大腸、肛門、胆嚢、口唇、上咽頭、皮膚、子宮、男性生殖器、泌尿器、膀胱、及び皮膚の腫瘍を含む。非上皮細胞由来の固形腫瘍は肉腫、脳腫瘍、及び骨腫瘍を含む。
Apo2L/TRAILは、既知の方法に従い、ボーラスとしての静脈内投与、又は一定期間にわたる連続的な注入、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、骨液内、くも膜腔内、経口、局所的、又は吸入の経路により投与できる。場合によっては、投与は、様々な市販の装置を使用するミニポンプでの注入によって実施することもできる。
更なる治療法を本方法において使用することも考えられる。一又は複数の他の治療法は、これらに限定されるものではないが、当該技術分野において既知であり、特に前述のセクションIにおいてさらに詳細に定義された、放射線療法、サイトカイン、増殖阻害剤、化学療法剤、細胞傷害剤、チロシンキナーゼ阻害因子、ラスファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、血管形成阻害剤、及びサイクリン依存性キナーゼ阻害剤の投与を含む。
化学療法剤の調製物は、製造者の指示に従って使用されるか、熟練した実務家により経験的に決定される通りに使用されうる。また、そのような化学療法のための調製物はChemotherapy Service Ed., M.C. Perry編, Williams & Wilkins, Baltimore, MD(1992)にも記載されている。
本発明の他の実施態様では、癌の治療に有用な材料を含む製造品が提供される。一態様では、製造品は、(a)Apo2L/TRAILを含む容器(好ましくは容器はApo2L/TRAILと薬学的に許容可能な担体又は賦形剤を容器内に含む)と(b)癌を治療するための指示書(説明書)を伴うパッケージ挿入物を含み、ここで、指示書は添付の図面に記載したもののような情報を提供する。場合によっては、パッケージ挿入物は、投与、副作用、及び/又はFDAのような適用可能な規制庁によって記載される注意的警告等々に関する情報を含む。
これらの態様の全てにおいて、パッケージ挿入物は容器上にあるか又は容器に付随している。適切な容器は、例えばビン、バイアル、シリンジ等を含む。容器は、ガラス又はプラスチックのような様々な材料から形成されうる。容器は、癌の治療に効果的な組成物を収容し又は含み、滅菌のアクセスポートを有しうる(例えば容器は皮下注射針が突き通すことが可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアルでありうる)。製造品は、薬学的に許容される希釈剤バッファー、例えば注射用の静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー液及び/又はデキストロース溶液を含む更なる容器を更に具備していてもよい。製造品は、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む、商業上及び使用者の見地から望ましい他の材料を更に含みうる。
実施例において言及される市販試薬は、特段の記載がない場合は、製造者の説明書に従って使用した。
方法と材料
Apo2L/TRAIL: 追加の図11のアミノ酸114−281(配列番号1)からなる組換えヒトApo2L/TRAIL(「rhApo2L/TRAIL」又はデュラネルミン)は2001年1月4日公開の国際公開第01/00832号及び2003年5月22日公開の国際公開第03/042344号に記載された通りにジェネンテック社(South San Francisco, CA)によって製造され製剤化された。組換え可溶型FlagタグヒトApo2L/TRAILは公開された方法(Ashkenaziら, J. Clin. Invest., 104:155-162 (1999);Kischkelら, Immunity, 12:611-620 (2000))に従って調製した(以下の実施例及び図面においては「Apo2L.M2」と称する)。
マウスモデル:C57BL/6(野生型)マウスはJackson Laboratoryから取得し、C57BL/6.Rag2−/−マウスはTaconic社から取得した。C57BL/6.DR5−/−(Diehlら, Immunity, 21:877-889 (2004))及びC57BL/6.TNFR1−/−TNFR2−/−マウスは、特定病原体を含まない条件下でジェネンテック社で飼育され維持された。全ての動物実験はジェネンテック社の研究機関の動物管理使用委員会によってレビューされ承認された。
線維肉腫腫瘍イニシエーション:C57BL/6(野生型)又はC57BL/6.DR5−/−マウスの後側腹部に(過去に記載されたように(Koebelら, Nature, 450:903-907 (2007))0.1mLのトウモロコシ油中200mgのメチルコラントレン(MCA)(Sigma-Aldrich)を皮下的に接種した。MCA処置90日後から腫瘍発生について毎週評価した。
細胞株及び腫瘍移植モデル:線維肉腫細胞株を、Liberase Blendzyme2(Roche Applied Biosystems)を含む2.5%の熱失活FBS(ウシ胎仔血清)を含む培地中において原発性腫瘍組織を機械的に分離させることによってつくり出した。過去に記載されたようにして(上掲のKoebelら;Wilsonら, Blood, 102:2187-2194 (2003))室温で20分組織片をピペッティングすることによってシングル細胞懸濁液を得た。EDTA(pH7.2)を5分間加えて細胞クラスターを破壊し、酵素活性を阻害した。未消化断片を濾過によって除去した。細胞ペレットを、37℃、5%CO2の条件下でL−グルタミン及び10%ウシ胎仔血清(FBS)を補填したRPMI培地に再懸濁させた。同一の培養条件を使用してルイス肺腫瘍細胞(ATCC)を維持した。マウスに5×106の癌細胞を皮下的に注射した。ノギスを使用して2次元で腫瘍を測定した。腫瘍体積は式V=0.5a×b2(ここで、aとbはそれぞれ腫瘍の長径及び短径である)を使用して計算した。抗腫瘍効果の実験では、〜200mm3の腫瘍を有するマウスを無作為にグループ分けし、記載された投薬レジメンに従ってApo2L及びM2を腹腔内に注射した。腫瘍を有するマウスに10mg/kgのApo2Lと続いて10mg/kgの抗Flag抗体(M2)(Sigma)を逐次的に投与した。Apo2L又はM2単独は抗腫瘍効果を示さなかった(データは示さず)。
細胞生存率及びカスパーゼ−3アッセイ:Apo2L/TRAIL処置後の細胞生存率を、Cell−titer Glo細胞生存率アッセイ(Promega)を使用してインビトロで決定した。カスパーゼ−3/7又は8の活性を、製造者の説明書に従って、カスパーゼ−Glo3/7又はカスパーゼ−Glo8アッセイ(Promega)を使用してインビトロで測定した。カスパーゼアッセイのインビトロ生存率については、Apo2L及びM2を1:1のモル比で逐次的に組み合わせた。腫瘍細胞におけるエクスビボカスパーゼ−3プロセシングを、切断型カスパーゼ−3特異的抗体(クローンC92−605, BD Pharmingen)を使用するフローサイトメトリーによってモニターした。カスパーゼ−3活性化はコントロール処置マウスに対する増加倍数として表される。
内皮細胞 DR5発現解析: シングル細胞懸濁液をつくるために、野生型又はDR5欠損マウスからルイス肺腫瘍(<500mm3)又は腎臓を解体し、小断片に機械的に分離した。分離した組織を、腫瘍細胞株をつくりだすのに記載したものと同じプロトコルに従って、Liberase Blendzyme2(Roche Applied Biosystems)を含む2.5%の熱失活FBSを含む培地に再懸濁させた。細胞ペレットを、抗Fcγレセプター(Fcγ RIIB/III(クローン2.4G2, BD Pharmingen)、抗FcγRIV(クローン39A.1,ジェネンテック社)を含む2.5%のウシ血清アルブミンを含むPBS中に再懸濁させ、内皮細胞を特徴づけるために使用される抗体:抗CD45(クローン104, BDPharmingen)、抗DR5(クローンMD5.1, eBiosciences)及び抗CD31 (クローン390, BD Pharmingen)に非特異的に結合するFcγRをブロックした。ついで、細胞集団を、死滅細胞を排除するために7AAD(BD Pharmingen)を使用するFACScan(Becton Dickinson)を使用して分析した。
免疫組織化学的検査: 免疫組織化学的検査(IHC)をガラススライドに取り付けた5ミクロン厚のホルマリン固定パラフィン包埋組織片で実施した。DR5及び汎内皮細胞(panendothelial cell)マーカーのスライドをキシレンで脱パラフィンし、等級化アルコールで蒸留水に再水和させた。スライドを99℃で20分間、標的賦活液(Dako; Carpinteria, CA)で前処理した。スライドをKPL遮断液(Kierkegaard and Perry Laboratories; Gaithersburg, MD)及びアビジン/ビオチンブロック(Vector; Burlingame, CA)で処理した。非特異的IgG結合を、DR5 IHCに対しては、1%のウシ血清アルブミン(Roche; Basel, Switzerland) 及び10%の正常なヤギ血清を含むTBSTで、又は汎内皮細胞マーカーIHCに対しては10%の正常なウサギ血清(Life Technologies; Carlsbad, CA)でブロックした。一次抗体はDR5では10mg/mlで(クローンMD5−1, BD Biosciences; Franklin Lakes, NJ)、汎内皮細胞マーカーに対しては2mg/mlで(クローンMECA-32, BD Biosciences, NJ)使用した。スライドを室温で60分、一次抗体でインキュベートした。スライドをすすぎ、7.5mg/mlに希釈したビオチン化ヤギ抗ハムスター又はビオチン化ウサギ抗ラット二次抗体の何れか(Vector, CA)と共に30分インキュベートした。ついで、スライドをベクタステインABCエリート試薬(Vector, CA)及びPierce金属増感型DAB(Thermo Scientific; Worcester, MA)で引き続きインキュベートし、対比染色し、脱水し、カバーガラスをつけた。切断型カスパーゼ3IHC (Asp175)を、細胞コンディショナー1、標準処理を利用するVentana Discovery XT(Ventana Medical Systems; Tucson, AZ)自動染色装置で実施した。一次抗体、切断型カスパーゼ3(Asp175)(Cell Signaling Technologies; Danvers, MA)を0.06mg/mlの濃度で使用し、37℃で3時間インキュベートした。Ventana DABMap(Ventana Medical Systems; AZ)を検出システムとして使用した。
切断型カスパーゼ−3免疫組織化学的検査の定量: 画像を200×の最終倍率でオリンパスNanozoomer自動スライドスキャンプラットフォーム(Olympus America, Center Valley, PA)によって獲得した。腫瘍特異的領域を個々の24ビットRGB画像としてMatlabソフトウェアパッケージ(Mathworks, Natick, MA)で解析した。褐色のDAB特異的染色を、Breyら, J. Histochem. Cytochem., 51:575-584 (2003)によって記載されているように、ブルー規準化アルゴリズムを使用してヘマトキシリン対比染色から分離した。DABとヘマトキシリン双方の陽性領域に対する面積測定値を報告した。
インビボ近赤外線蛍光イメージング: Apo2L/TRAIL又はPBSでの処置の2時間後にマウス(n=3から5/処置群)に蛍光血液プールマーカーAngioSense680IVM(PerkinElmer)を静脈注射した。腫瘍及び近傍の組織内における経時的分布を、Kodak4000FX Proイメージングシステム(CareStream Health)で蛍光(650nm励起/700nm発光)を可視化し、時間=0に対して規準化した腫瘍又は隣接組織にわたって位置する興味ある領域内の蛍光強度を定量化することによって測定した,(IROIt=x−IBG)/(IROIt=0−IBG)。それぞれの示された時点において、体温を37℃に維持してイソフランで動物に痲酔をかけ、画像化した。
実験結果及びデータ
マウス癌細胞はDR5を発現するが、デュラネルミン、つまりある種の臨床試験において評価されているヒトApo2L/TRAILの三量体組換え可溶型(Ashkenaziら, J. Clin. Invest., 104:155-162 (1999);Herbstら, J. Clin. Oncol., 2010))に応答しない(追加の図1a、1b、1c)。ここで実施した実験では、Apo2L/TRAILのFlag エピトープタグ型の抗Flag抗体を伴うオリゴマーへの架橋がある範囲のマウス癌細胞株においてアポトーシス促進性シグナル伝達を可能にしたことが観察された。これらは、膜結合Apo2L/TRAILに特に感受性である(Sekiら, Cancer Res., 63:207-213 (2003))Renca331細胞(追加の図1b)、並びにルイス肺癌(LLC)細胞(追加の図1c)を含んでいた。
インビボでのApo−2リガンドのこの架橋型の効能を決定するために、マウスLLC細胞をC57BL/6野生型レシピエントマウスに移植し、動物を架橋Apo2L/TRAILの単回用量で処置した。驚いたことに、処置後24時間以内に腫瘍に著しい出血の出現が観察された(図1a)。LLC腫瘍が抗血管新生療法に比較的耐性がある(Shojaeiら, Nat. Biotechnol., 25:911-920 (2007))ことを考えると、Apo2L/TRAILの効果は腫瘍脈管構造に対するより急性的影響を示唆している。組織学的検査により、腫瘍にわたる広範な出血、並びに広範な腫瘍細胞死を確認した(図1b)。
マウス内皮細胞マーカーMeca−32(Hallmannら, Dev. Dyn., 202:325-332 (1995))での免疫組織化学的染色は、Apo2L/TRAILによる腫瘍脈管構造 の深刻な破壊を明らかにした(図1c)。これらの組織学的観察を確認するために、血管完全性を長軸方向にモニターする非侵襲的近赤外線蛍光イメージング法を利用した。腫瘍を持つ野生型及びDR5欠損マウスをApo2L/TRAILで処置し、血液プールプローブAngioSense680IVMを静脈内注射し、ついで経時的に画像化した。DR5欠損ではなく野生型レシピエントマウスにおいて、Apo2L/TRAILはLLC腫瘍中へのプローブの迅速な蓄積(3−6時間以内)を誘導したが、これは血管破壊を示している(図1d及び追加の図2)。
著しいことに、腫瘍脈管構造に対するApo2L/TRAILの効果はDR5欠損マウスにおけるLLC腫瘍細胞の移植時に完全に抑制された(図1a-d)。この結果が与えられたので、腫瘍関連ストローマ区画に対するApo2L /TRAILの生物学的効果は直接的でありうると思われる。過去の報告は、Apo2L/TRAILが内皮細胞においてアポトーシスを誘導しうることを示唆している。しかしながら、これらの研究の大部分は、培養された内皮細胞を使用して実施され、インビトロでの Apo2L/TRAILの効果に対して矛盾する結論に到達している(Liら, J. Immunol., 171:1526-1533 (2003);Mariniら, BMC Cancer, 5:5 (2005);Chanら, Circ. Res., 106:1061-1071 (2010);Chenら, Biochem. Biophys. Res. Commun., 391:936-941 (2009))。ある研究は、Apo2L/TRAILの膜結合型を発現するように操作されたアデノウイルス形質導入ヒトCD34+細胞を注射されたマウスにおける腫瘍脈管構造の破壊を報告している(Lavazzaら, Blood, 115:2231-2240 (2010))。しかしながら、この効果が内皮細胞におけるアポトーシス促進性DR5活性化の直接的結果であったのか、あるいは悪性腫瘍細胞区画におけるDR5のターゲティングの間接的な結果であったのか分からないままである。確かに、マウスへのこれらの改変ヒト細胞の導入は、アポトーシス促進性DR5シグナル伝達に厳密には起因しない応答を腫瘍微小環境においてまた誘導しうる。
腫瘍脈管構造に対する観察された効果と腫瘍関連内皮細胞(TEC)におけるDR5活性化の間の関係を更に評価するために、野生型又はDR5欠損レシピエントにおいて増殖させたLLC腫瘍を分離し、単離細胞を3種のマーカーDR5;白血球共通抗原CD45;及び内皮細胞関連抗原CD31に対する抗体でのフローサイトメトリー分析のために染色した(Tangら, J. Biol. Chem., 268:22883-22894 (1993))。CD45及びCD31の発現差異を用いて腫瘍関連白血球(CD45high)、濃縮腫瘍上皮細胞画分(CD45lowCD31low)、及びTECs (CD45lowCD31high)を広く明確化した。DR5タンパク質発現は野生型又はDR5欠損マウスにおいて増殖させた腫瘍由来のCD45neg上皮細胞で検出されたが、何れの株において増殖された腫瘍由来のCD45high白血球では検出されなかった(追加の図3)(上掲のTangら)。重要なことは、DR5発現が、DR5欠損マウスではなく野生型で増殖された腫瘍由来のCD45lowCD31high TECでもまた観察されたことである(図2a)。これに対して、正常なマウス腎臓から単離されたCD45lowCD31high内皮細胞には有意なDR5発現は検出されなかった(図2b)。免疫組織化学的検査は、DR5欠損ではなく野生型マウスの腫瘍ストローマ内の内皮細胞上にDR5発現を確認した(図2c)。注目すべきは、悪性上皮細胞はストローマ区画におけるDR5の状態にかかわらず、DR5を発現したことである。
内皮細胞は表現型的にも機能的にも多様であり、組織特異的表面マーカーの差次的発現変動及びギャップ結合を伴う(Dejanaら, Nat. Rev. Mol. Cell Biol., 5:261-270 (2004);Poberら, Nat. Rev. Immunol., 7:803-815 (2007))。正常組織中の内皮細胞によるDR5発現の欠如と一致して、Apo2L/TRAIL処置マウスにおける腫瘍微小環境の外側の血管破壊又は出血の証拠は何らなかった。正常内皮細胞と比較したTECによるDR5発現の明らかな特異性は、例えば低炭素−癌細胞においてDR5発現を調節することが示されている症状(Mahajanら, Carcinogenesis, 29:1734-1741 (2008))のような腫瘍内の環境条件を反映している場合がある。
TECにおけるアポトーシス促進性シグナル伝達を評価するために、LLC腫瘍を持つマウスをApo2L/TRAILで処置し、腫瘍内皮におけるアポトーシスマーカーの出現をモニターした。腫瘍組織の一連の切片を、TECを局在化させるためにMeca−32 で、又はアポトーシス促進性シグナル伝達のマーカーとして活性型(切断)カスパーゼ−3に特異的な抗体で染色した。Apo2L/TRAIL処置後2時間以内に活性型カスパーゼ−3の速やかな生成がTECにおいて検出された(図2d)。活性型カスパーゼ−3染色の幾らかの領域が処置にかかわらず腫瘍上皮細胞に出現したが、これは、マウス腫瘍において一般的に発生する自然の限局的アポトーシスを示唆している。Apo2L/TRAIL処置後24時間までに、広範な活性型カスパーゼ−3染色が腫瘍全体にわたって見ることができた(図2e;追加の図4)。早期の時点では、腫瘍上皮細胞内全体にわたって殆どカスパーゼ−3活性は存在せず(図2d及びe)、これは、TECにおいてApo2L/TRAIL誘導性アポトーシスが進行し、悪性細胞区画におけるアポトーシスとは独立していたことを示唆している。Apo2L/TRAILはDR5欠損マウスにおいて増殖されたLLC腫瘍においてはTECアポトーシスを誘導しなかったが(追加の図4)、これはTECにおけるDR5依存性シグナル伝達を確認するものである。
アポトーシス促進性シグナル伝達に加えて、ある環境下でのデスレセプターの関与は、核内因子kB(NF−kB)カスケードのような非アポトーシス経路を活性化し得、これが、細胞性効果のなかでもサイトカイン及びケモカイン生産を促進しうる(Wilsonら, Nat. Immunol., 10:348-355 (2009))。腫瘍壊死因子アルファ(TNFアルファ)は、しばしばNF−kB活性化に応答して生産されるが、劇的な腫瘍血管効果を惹起させることが報告されている(Cortiら, Ann. NY Acad. Sci., 1028:104-112 (2004);ten Hagenら, Immunol. Rev. 222:299-315 (2008))。腫瘍脈管構造に対するDR5活性化の影響が例えばTNFαを介して間接的に作用させられるかどうかを調べるために、TNFレセプター(TNFR)1及び2二重欠損マウスにLLC腫瘍を移植し、Apo2L/TRAILで処置した。TNFR1/2欠損マウスにおいてApo2L/TRAILによって誘導された腫瘍脈管構造の破壊の出現及び発生は野生型マウスのものと区別することができず、DR5欠損レシピエントにはなかった(図2f及びg)。従って、ストローマ区画におけるTNFR1/2欠乏は、腫瘍上皮細胞内でのApo2L/TRAIL誘導性カスパーゼ−3活性化に効果はなかった(追加の図5)。
メチルコラントレン(MCA)誘導線維肉腫を野生型及びDR5欠損マウスで発生させ、腫瘍由来の細胞株を樹立した。これらの腫瘍細胞株のDR5発現状態をフローサイトメトリーによって確認下(図3a)。ついで、野生型又はDR5欠損MCAMCA腫瘍を、DR5陽性又はDR5陰性レシピエントマウスにこれらの腫瘍細胞株を移植することによって増殖させた。Apo2L/TRAILでの処置は、悪性細胞におけるDR5発現とは無関係に24時間までに有意な腫瘍出血を誘導した(図3b);これに対して、この表現型はDR5欠損ストローマを持つ腫瘍では完全に存在していなかった。Meca−32及び活性型カスパーゼ−3染色は、悪性細胞区画にDR5を発現するか又はDR5を欠く腫瘍内のTECにおけるアポトーシス促進性シグナル伝達を確認下(図 3c及び3d)。これらのデータは、Apo2L/TRAILによる腫瘍脈管構造の破壊が悪性細胞中におけるDR5活性化とは独立して生じることを証明している。更に、Apo2L/TRAIL処置は野生型及びDR5欠損腫瘍細胞の双方におけるカスパーゼ−3活性を増加させたが、これは、腫瘍脈管構造の実質的な破壊によって引き起こされる二次的なDR5非依存性アポトーシスをおそらくは反映している。
野生型又はDR5欠損腫瘍を持つマウスにおけるApo2L/TRAILの抗癌効果を更に評価した。カスパーゼ−8、カスパーゼ−3/7の活性化、又は細胞生存率の喪失についてのインビトロアッセイは、Apo2L/TRAILで処置されたDR5欠損MCA腫瘍細胞におけるアポトーシス促進性シグナル伝達の欠如を確認した(図4a)。しかしながら、DR5陽性マウスに移植された場合、DR5欠損線維肉腫は、Apo2L/TRAILに応答して有意なカスパーゼ−3活性化を示した(図4b)。更に、Apo2L/TRAIL処置は、野生型又はDR5欠損何れの線維肉腫を移植したマウスにおいても腫瘍増殖を有意に遅延させた(図4c及びd)。何れにおいても、Apo2L/TRAIL処置後の広範な出血性腫瘍壊死が注目されるが(追加の図6)、これは、悪性細胞の死が腫瘍血管破壊の間接的な結果として起こったことを示唆している。これらのデータは、TECにおけるDR5活性化が、DR5依存性腫瘍細胞アポトーシスとは区別され分離可能な形で抗腫瘍効果に寄与することを裏付けている。注目すべきは、Apo2L/TRAILがDR5欠損マウスにおける野生型線維肉腫の移植時に癌細胞において有意なアポトーシス促進性シグナル伝達を誘導しなかったことである(追加の図7)。同様の結果がルイス肺癌モデルにおいて見られた。処置がなされない場合における腫瘍イニシエーション及び増殖はレシピエントマウスのDR5状態によって影響を受けなかった(追加の図8);しかし、線維肉腫モデルにおいて観察されるように、Apo2L/TRAILの抗腫瘍効果は、ストローマTECにおけるDR5発現に随伴性であった。従って、この研究に使用された線維肉腫及び肺癌モデルにおいては、TECでのDR5活性化が Apo2L/TRAILによる腫瘍阻害の主要な機序であるようである。ヒト肺癌移植モデル、並びにヒト膵臓癌のジェネティックマウスモデルにおけるApo2L/TRAILによる同様の腫瘍脈管構造破壊がまた観察された(追加の図9及び10)。