定義:
本明細書で使用するところの用語「活性化」とは、歯と溝との噛み合いによって発生する引っ張り歪みによって、中間のウェブ部分を延伸させる又は延ばす、任意のプロセスを意味する。こうしたプロセスは、通気性フィルム、伸縮性複合材料、孔あき材料及びテクスチャ加工材料などの多くの物品の製造において有用であることが分かっている。不織布では、延伸によって繊維再配向、繊維のデニール及び/又は断面の変化、坪量の減少、及び/又は中間ウェブ部分の制御された繊維破壊をもたらすことができる。一般的な活性化方法としては、例えば、当該技術分野ではリングロール加工として知られるプロセスがある。
本明細書で使用するところの「噛合深さ」とは、対向する活性化部材の噛み合った歯と溝とが互いの中に入り込む程度を意味する。
本明細書で使用するところの用語「不織布ウェブ」とは、個々の繊維又は糸が入り組んではいるものの、ランダムに配向された繊維を典型的には有しない織布又は編布におけるような繰り返しパターンとして入り組んではいない構造を有するウェブのことを指す。不織布ウェブ又は不織布は、例えば、メルトブローイングプロセス、スパンボンディングプロセス、水流交絡、エアレイド、及びカード熱接着を含む接着カードウエブプロセスなどの、多くのプロセスから形成されている。不織布の坪量は、通常は、グラム毎平方メートル(g/m2)で表される。積層ウェブの坪量は、構成要素の層及び任意の他の付加構成要素の総合計坪量である。繊維直径は通常、マイクロメートルで表されるが、繊維径は、繊維の長さ当たりの重量の単位であるデニールで表すこともできる。本発明における使用に適した不織布又は積層ウェブの坪量は、6g/m2〜300g/m2、好ましくは10g/m2〜200g/m2、より好ましくは15g/m2〜120g/m2、及び最も好ましくは20g/m2〜100g/m2の範囲にすることができる。
本明細書で使用するところの「スパンボンド繊維」とは、紡糸口金の微細で通常は円形の複数の毛管から溶融した熱可塑性材料をフィラメントとして押し出した後、押し出されたフィラメントの直径を外部から加えた力によって急速に小径化することによって形成されている比較的小径の繊維を指す。スパンボンド繊維は、捕集面に堆積させる際に概ね粘着性がない。スパンボンド繊維は、概して連続しており、7マイクロメートルを超える平均直径、より具体的には、約10〜40マイクロメートルの平均直径(少なくとも10のサンプルからの)を有する。
本明細書で使用するところの用語「メルトブローイング」は、溶融した熱可塑性材料を、微細で通常は円形の複数の金型毛管を通じて、通常は加熱された高速気体(例えば空気)流中に溶融糸又はフィラメントとして押し出し、この気体流によって溶融熱可塑性材料のフィラメントを場合によりマイクロファイバー径にまで減衰させることによって繊維を形成するプロセスを指す。その後、メルトブローン繊維は、高速の気体流によって運ばれ、多くの場合、依然として粘着性である間に、収集表面上に堆積して、不規則に分散したメルトブローン繊維のウェブを形成する。メルトブローン繊維は、連続的又は不連続的であり得る、平均直径が一般的に10マイクロメートルよりも小さいマイクロファイバーである。
本明細書で使用するところの用語「ポリマー」には、これらに限定されるものではないが、一般的に、ホモポリマー、例えばブロック、グラフト、ランダム及び交互コポリマーなどのコポリマー、ターポリマーなど、並びにこれらのブレンド及び修飾物が挙げられる。更に特に限定しない限り、用語「ポリマー」には、材料のあらゆる可能な幾何学的形態が含まれる。その形態としては、これらに限定されるものではないが、アイソタクチック、アタクチック、シンジオタクチック、及びランダム対称が挙げられる。
本明細書で使用するところの用語「モノコンポーネント」繊維とは、1種類のポリマーのみを使用して1以上の押出成形機によって形成されている繊維のことを指す。これは、1種のポリマーから形成されているが、着色、静電気防止特性、潤滑、親水性などのために、少量の添加物が添加されている繊維を除外することを意味しない。これらの添加物、例えば着色用の二酸化チタンは、一般に、約5重量%未満、より典型的には、約2重量%未満の量で存在する。
本明細書で使用するところの用語「バイコンポーネント繊維」とは、別々の押出成形機から押し出された少なくとも2種類の異なるポリマーを合わせて紡糸し、1本の繊維として形成した繊維を指す。バイコンポーネント繊維は、複合繊維又は多要素繊維と呼ばれることもある。各ポリマーは、バイコンポーネント繊維の断面においてほぼ位置が一定した異なる領域に配され、バイコンポーネント繊維の長さに沿って連続的に延びる。そのようなバイコンポーネント繊維の構成は、例えば、1つのポリマーが別のポリマーにより包囲されたシース/コア配置とするか、又はサイドバイサイド配置、パイ型配置、又は「海島型」配置とすることができる。
本明細書で使用するところの用語「2成分繊維(biconstituent fibers)」とは、同じ押出成形機からブレンドとして押し出される少なくとも2種類のポリマーから形成されている繊維を指す。2成分繊維は、繊維の断面において比較的位置が一定した異なる領域に配された異なるポリマー成分を有しておらず、更に、この異なるポリマーは通常、繊維の全長に沿って連続的ではなく、代わりにランダムに開始及び終了する繊維を通常形成している。2成分繊維は、多成分繊維と呼ばれることもある。
本明細書で使用するとき、用語「非丸形繊維」とは、非丸形の断面を有する繊維を説明し、「成形繊維」及び「毛管チャネル繊維」を包含する。そのような繊維は、中実又は中空であり得、またそれらは、三葉形、デルタ形状であり得、好ましくは、外側表面上に毛管チャネルを有する繊維である。この毛管チャネルは、「U形状」、「H形状」、「C形状」、及び「V形状」などの、様々な断面形状のものとすることができる。1つの好適な毛管チャネル繊維は、Fiber Innovation Technologies(Johnson City,TN)より入手可能な、4DG繊維として指定される、T−401である。T−401繊維は、ポリエチレンテレフタレート(PETポリエステル)である。
「配置された」とは、物品の1つの要素の、物品の別の要素に対する配置のことを指す。例えば、各要素は、おむつの他の要素との一体構造として、あるいはおむつの別の要素と接合された別の要素として特定の場所又は位置に形成されている(接合及び位置決めされる)。
「伸縮性不織布」は、破裂することも、又は破断することもなく、少なくとも50%まで伸長する繊維不織布である。例えば、100mmの初期長を有する伸縮性材料は、23±2℃及び相対湿度50±2%で試験した場合、毎分100%の歪み速度で歪ませると、少なくとも150mmまで伸長し得る。ある材料は、1つの方向(例えばCD)には伸縮性であるが、別の方向(例えばMD)には非伸縮性である場合がある。伸縮性不織布は、一般に、伸縮性繊維から構成される。
「高伸縮性不織布」は、破裂することも、又は破断することもなく、少なくとも100%まで伸長する繊維不織布である。例えば、100mmの初期長を有する高伸縮性材料は、23±2℃、及び相対湿度50±2%で試験した場合、毎分100%の歪み速度で歪ませると、少なくとも200mmまで伸長し得る。ある材料は、1つの方向(例えばCD方向)には伸縮性であるが、別の方向(例えばMD方向)には非伸縮性である場合がある。高伸縮性不織布は、一般に、高伸縮性繊維から構成される。
「非伸縮性不織布」は、50%の伸長に達するまでは、破裂することも、又は破断することもなく伸長する繊維不織布である。例えば、100mmの初期長を有する非伸縮性材料は、23±2℃、及び相対湿度50±2%で試験した場合、毎分100%の歪み速度で歪ませると、50mmを超えて伸長することができない。非伸縮性不織布は、機械方向(MD)及び横断方向(CD)の双方で非伸縮性である。
「伸縮性繊維」は、23±2℃及び相対湿度50±2%で試験した場合、毎分100%の歪み速度で歪ませると、破裂することも、又は破断することもなく、少なくとも400%まで伸長する繊維である。
「高伸縮性繊維」とは、23±2℃及び50±2%の相対湿度で試験を行って毎分100%の歪み速度で引っ張った場合に、断裂又は破断することなく少なくとも500%伸長する繊維のことである。
「非伸縮性繊維」とは、23±2℃及び50±2%の相対湿度で試験を行って毎分100%の歪み速度で引っ張った場合に、断裂又は破断のない伸長率が400%未満である繊維のことである。
「親水性の、又は親水性」とは、水又は生理食塩水が、その繊維若しくは繊維性材料の表面上で浸潤する、繊維あるいは不織布材料を指す。水又は生理食塩水を吸い上げる材料は、親水性として分類することができる。親水性を測定するための方法は、その垂直吸い上げ能力を測定することによるものである。本発明に関しては、不織布材料は、少なくとも5mmの垂直吸い上げ能力を示す場合には、親水性である。
「接合された」とは、要素を直接別の要素に取り付けることにより一方の要素を他方の要素に直接固定する構成、及び要素を中間部材に取り付け、その中間部材を次に別の要素に取り付けることにより、一方の要素を間接的に他方の要素に固定する構成を指す。
「積層」は、例えば、接着剤結合、熱接着、超音波結合などの、当該技術分野で既知の方法によって互いに接着される、2つ以上の材料を意味する。
「機械方向」すなわち「MD」は、製造プロセスにおいてウェブが移動する際のウェブの移動方向と平行な方向である。MD方向の±45度以内の範囲の方向は、機械方向とみなされる。「機械横断方向」又は「CD」は、MD方向に略垂直な、ウェブによって概ね画定される平面内の方向である。横断方向の45度未満の範囲内の方向は、横断方向性であると見なされる。
「外側寄り」及び「内側寄り」とは、それぞれ、要素が、第2要素と比較して、吸収性物品の長手方向中心線から相対的に遠く配置されている位置、又は相対的に近くに配置されている位置を指す。例えば、要素Aが要素Bの外側寄りである場合、要素Aは、要素Bよりも長手方向の中心線から遠くにある。
「吸い上げ」とは、不織布を通る流体の、毛管力を介した能動流体輸送を指す。吸い上げ速度とは、単位時間当たりの流体の移動、すなわち、特定の時間の間に流体がどれくらい遠くに移動するかを指す。
「獲得率」とは、材料が、既定量の流体を取り込む速度、すなわち、その流体が材料を通過するためにかかる時間量を指す。
「浸透性」とは、X−Y平面内で材料を貫流するための、流体の相対能力を指す。高い浸透性を有する材料は、低い浸透性を有する材料よりも高速の流体流速を可能にする。
「ウェブ」とは、ロールに巻くことができる材料のことを意味する。ウェブは、フィルム、不織布、積層体、有孔積層体などとすることができる。ウェブの面とは、ウェブ縁部の対照としての、ウェブの2次元表面の1つを指す。
「X−Y平面」は、移動ウェブのMD及びCDによって、又はその長さによって画定される平面を意味する。
「吸収性物品」とは、身体排出物を吸収して閉じ込める装置のことを指し、より詳細には、着用者の身体に接して又は近接して置かれることによって、身体から排出される様々な排出物を吸収して閉じ込める装置のことを指す。吸収性物品としては、おむつ、パンツ、トレーニングパンツ、成人用失禁下着、女性用衛生用品などが挙げられる。本明細書で使用するところの用語「体液」又は「身体排出物」としては、これらに限定されるものではないが、尿、血液、膣排出物、母乳、汗及び糞便が挙げられる。本発明の好ましい吸収性物品としては、おむつ、パンツ及びトレーニングパンツがある。
「吸収性コア」は、吸収性物品によって受け取られた液体を吸収し封じ込めるために、吸収性物品のトップシートとバックシートとの間に通常配置される構造体を意味し、1つ以上の基材と、1つ以上の基材上に配置された吸収性ポリマー材料と、吸収性粒子状ポリマー材料を1つ以上の基材上に不動化するための、吸収性粒子状ポリマー材料上及び1つ以上の基材の少なくとも一部分上の熱可塑性組成物とを含んでもよい。多層吸収性コアでは、吸収性コアはまたカバー層も含んでもよい。1つ以上の基材及びカバー層は、不織布を備えてもよい。更に、吸収性コアはセルロースを実質的に含まない。吸収性コアには、吸収性物品の獲得システム、トップシート、又はバックシートは含まれない。特定の実施形態では、吸収性コアは、1以上の基材、吸収性ポリマー材料、熱可塑性組成物、及び必要に応じて用いられるカバー層から基本的に構成される。
「吸収性ポリマー材料」、「吸収性ゲル材料」、「AGM」、「超吸収体」、及び「超吸収性材料」は、本明細書において互換可能に使用され、遠心分離保持容量試験(Edana 441.2−01)を使用して測定した場合に、重量の少なくとも5倍の0.9%生理食塩水を吸収することが可能な架橋ポリマー材料のことを指す。
本明細書において「吸収性粒子状ポリマー材料」とは、乾燥状態で流動性を有する粒子状形態である吸収性ポリマー材料のことを指して使用される。
本明細書で使用するところの「吸収性粒子状ポリマー材料領域」とは、第1基材264と第2基材272とが多数の超吸収性粒子によって分離されているコアの領域のことを指す。図30において、吸収性粒子状ポリマー材料領域は、重なり合った円の外周によって画定される。この外周の外側の第1基材264と第2基材272との間には、一定量の外部超吸収性粒子が存在し得る。
本明細書において「エアフェルト」とは、セルロース繊維の一形態である粉砕木材パルプのことを指して使用される。
「バイオベース含有量」は、ASTM D6866−10、方法Bによって決定されるように、材料内の全有機体炭素のパーセンテージとしての材料内の再生可能資源からの炭素量を指す。尚、炭酸カルシウム等の無機資源からの炭素は、材料のバイオベース含有量の決定には含まれていない。
「含む(comprise)」、「含んでいる(comprising)」、及び「備える(comprises)」は非限定的な用語であり、それぞれの語の後に記載されるもの(例えば構成要素)の存在を特定するものであるが、他の特徴(例えば要素、工程、当該技術分野において既知であるか、又は本明細書に開示される構成要素)の存在を除外するものではない。
本明細書において「基本的に〜からなる」とは、例えば特許請求の範囲におけるような発明の主題の範囲を、特定の要素又は工程、及び発明の主題の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないものに限定するために使用される。
「使い捨て式の」とは、その通常の意味において、様々な期間にわたって、限定された使用回数、例えば約20回未満、約10回未満、約5回未満、又は約2回未満の後に処分又は廃棄される物品を意味するものとして使用される。
「おむつ」とは、幼児及び失禁患者によって胴体下部の周囲に一般に着用されることにより着用者の腰部及び脚部を包囲する吸収性物品のことであって、尿及び糞便を受容して閉じ込めるように特に適合されたもののことを指す。本明細書で使用するところの用語「おむつ」には、以下で定義する「パンツ」も含まれる。
本明細書で使用するところの「パンツ」又は「トレーニングパンツ」とは、幼児又は成人の着用者用に設計された、腰部開口部及び脚部開口部を有する使い捨て式衣類のことを指す。パンツは、着用者の脚を脚部開口部に挿入し、パンツを着用者の胴体下部の周囲にまでずらすことによって着用者に対して定位置に置くことができる。パンツは、再締着可能及び/又は再締着不可能な結合を使用して、物品の一部分を一緒に接合するなどの非限定的な任意の好適な技術(例えば、シーム、溶接、接着、凝集結合、留め具など)によって予備形成され得る。パンツは、物品の外周に沿った任意の位置において予備成形することができる(例えば、側面固定、前腰部固定)。用語「パンツ(単数又は複数)」が本明細書では使用されるが、パンツは、一般に「密閉型おむつ」、「事前締着型(prefastened)おむつ」、「プルオン型おむつ」、「トレーニングパンツ」、及び「おむつパンツ」とも呼ばれる。適したパンツは、米国特許第5,246,433号(Hasseら、1993年9月21日発行);同第5,569,234号(Buellら、1996年10月29日発行)、同第6,120,487号(Ashton、2000年9月19日発行);同第6,120,489号(Johnsonら、2000年9月19日発行)、同第4,940,464号(Van Gompelら、1990年7月10日発行)、同第5,092,861号(Nomuraら,1992年3月3日発行)、米国特許出願公開第2003/0233082(A1)号、発明の名称「Highly Flexible And Low Deformation Fastening Device」(2002年6月13日出願)、米国特許第5,897,545号(Klineら、1999年4月27日発行)、同第5,957,908号(Klineら、1999年9月28日発行)に開示されている。
「石油化学製品」は、石油、天然ガス、又は石炭を原料とする有機化合物を指す。
「石油」は、原油、並びにパラフィン系、シクロパラフィン系、及び芳香族炭化水素のその構成物質を指す。原油は、タールサンド、ビチューメンフィールド、及びオイルシェールから得られてもよい。
「再生可能資源」は、100年の時間枠内で補給可能な天然資源を指す。この資源は、自然に、又は農業技術によって補給され得る。再生可能資源は、植物、動物、魚、バクテリア、菌類、及び林産物を含む。これらは、自然発生的な混合物、又は遺伝子操作された有機体である。形成されるのに100年以上かかる原油、石炭、及びピート等の天然資源は、再生可能資源であると考えない。
本明細書で使用するところの「実質的にセルロースを含まない」とは、10重量%未満のセルロース繊維、5重量%未満のセルロース繊維、1重量%未満のセルロース繊維を含むか、まったくセルロース繊維を含まないか、あるいはごく微量のセルロース繊維しか含まない吸収性コアなどの物品のことを述べるのに使用される。ごく微量のセルロース材料は、吸収性コアの薄さ、可撓性、又は吸収性に大きく影響することはない。
本明細書で使用するところの「実質的に連続的に分配された」とは、吸収性粒子状ポリマー材料領域内において、第1基材264と第2基材272とが多数の超吸収性粒子によって分離されていることを示す。吸収性粒子状ポリマー材料領域内において、第1基材264と第2基材272との間にわずかな偶然の接触領域があってもよい点は認識される。第1基材264と第2基材272との間の偶然の接触領域は、意図的である場合も又はそうでない場合(例えば製造加工されたもの)もあるが、枕、ポケット、チューブ、キルト柄などの幾何形状を形成することはない。
「合成ポリマー」は、化学的プロセスによって、少なくとも1つのモノマーから製造されるポリマーを指す。合成ポリマーは、生きている有機体によって直接的には製造されない。
本明細書で使用するところの「熱可塑性接着剤」とは、それから繊維が形成されており、その繊維が乾燥及び湿潤状態の両方において超吸収性材料を固定することを目的として超吸収性材料に適用されるポリマー組成物を含むものとして理解される。本発明の熱可塑性接着剤は、超吸収性材料を覆って繊維質のネットワークを形成する。
本明細書において開示されるすべての数値範囲に関し、本明細書全体を通じて与えられるすべての最大値の限定は、それよりも小さいすべての数値の限定を、そのような、より小さい数値限定が本明細書にあたかも明確に記載されているのと同様に含むものとして理解すべきである。更に、本明細書全体を通じて与えられるすべての最小値の限定は、それよりも大きいすべての数値の限定を、そうしたより大きい数値限定があたかも本明細書に明確に記載されているのと同様に含むものである。更に、本明細書の全体を通じて与えられるすべての数値範囲は、そのような、より広い数値範囲内に含まれるすべてのより狭い数値の範囲、並びにその数値範囲内のそれぞれの個々の数値を、そのような、より狭い数値範囲及び個々の数値のすべてがあたかも本明細書に明確に記載されているのと同様に包含するものである。
本発明は、好適なベース基材の駆動によって形成されている構造化基材を提供する。この駆動は、繊維の変位を含んでおり、ベース基材の流体獲得特性を増大させる3次元の質感を形成する。ベース基材の表面エネルギーを変性させて、その流体吸い上げ特性を増大させることもできる。ベース基材から構造化基材を作製するために使用する、好ましい方法及び装置に関連して、本発明の構造化基材を説明する。図1及び図2に、好ましい装置150を概略的に示し、より詳細に以下で説明する。
ベース基材
本発明によるベース基材20は、熱安定性である繊維の緩い集束から形成された流体浸透性の繊維不織布ウェブである。本発明によるこの繊維は、破裂又は破断することなく300%未満まで伸長するとして上記で定義した、非伸縮性であるが、しかしながら、本発明のベース基材を形成する非伸縮性繊維は、好ましくは、破裂又は破断することなく200%未満まで伸長する。この繊維は、業界標準のカーディング、エアレイド、又はウェットレイド技術を使用してウェブへと形成された短繊維を含み得るが、しかしながら、業界標準のスパンボンド式技術を使用してスパンレイド不織布ウェブを形成する、連続的スパンボンド繊維が好ましい。スパンレイドウェブを作り出すための繊維及びスパンレイドプロセスを、より詳細に以下で説明する。
本発明の繊維は、様々な断面形状を有し得、それらの形状としては、丸形、楕円形、星形、三葉形、3〜8つの葉を備える多葉形、矩形、H形状、C形状、I形状、U形状、及び他の様々な偏心形状が挙げられるが、これらに限定されない。中空繊維もまた、使用することができる。好ましい形状は、丸形、三葉形、及びH形状である。丸形繊維が最も安価であり、したがって経済的観点からは好ましいが、三葉形の成形繊維は、増大した表面積を提供し、それゆえ機能的観点から好ましい。丸形及び三葉形の繊維形状は、中空であってもよいが、しかしながら、中実繊維が好ましい。中空繊維は、同じ形状及び同じデニールの中実繊維よりも、等価のデニールで高い圧縮抵抗を有するため、有用である。
本発明における繊維は、典型的なスパンボンド不織布で見られる繊維よりも、大きくなる傾向がある。成形繊維の直径は、判定し難い場合があるため、その繊維のデニールが参照される場合が多い。デニールは、9000リニアメートルの長さでの、グラム単位の繊維の質量として定義され、dpf(フィラメント当たりのデニール)として表される。本発明に関しては、好ましいデニールの範囲は、1dpfより大きい、100dpf未満である。より好ましいデニールの範囲は、1.5dpf〜50dpf、更により好ましい範囲は、2.0dpf〜20dpf、最も好ましい範囲は、4dpf〜10dpfである。
本発明のベース基材を形成する繊維の緩い集束は、駆動及び対応する繊維変位に先立って接着される。繊維ウェブは、繊維が高いレベルの移動性を有し、張力を受けると接着部位から引き抜かれる傾向にあるように、不完全に接着してもよく、又は繊維が最小限の移動性を呈し、張力を受けると破断する傾向にあるように、より高度な接着部位の一体性を有して完全に接着してもよい。本発明のベース基材を形成する非伸縮性繊維は、好ましくは、完全に接着されて、非伸縮性繊維ウェブ材料を形成する。以下でより詳細に説明するように、繊維変位を介して構造化基材を形成するためには、非伸縮性が好ましい。
ベース基材を完全に接着することは、例えばベース基材を製造する間の、1つの接着工程で行なうことができる。あるいは、1回よりも多い結合工程によって予め結合されたベース基材を製造してもよく、例えば、巻くことができるような充分な一体性をもたらすために製造時にベース基材をごく軽く結合させるか、不完全に結合させてもよい。この後、例えば、ベース基材を本発明の繊維変位処理に供する直前に、ベース基材に更なる結合工程を行って完全に結合したウェブを得ることができる。また、ベース基材の製造と繊維の変位との間の任意の時点で、接着工程が存在してもよい。様々な接着工程はまた、様々な接着パターンを付与することもできる。
繊維を接着するためのプロセスは、Albin Turbakによる「Nonwovens:Theory,Process,Performance and Testing」(Tappi 1997年)で詳細に記載されている。典型的な接着方法としては、機械的交絡、流体力学的交絡、ニードルパンチング、並びに化学的結合及び/又は樹脂結合が挙げられる。しかしながら、熱を利用する通風接着、並びに熱及び圧力を利用する熱ポイント接着などの、熱接着が好ましく、熱ポイント接着が最も好ましい。
通風接着は、繊維の集束に加熱ガスを通過させることによって実行され、固結した不織布ウェブを作り出す。熱ポイント接着には、離散した位置に熱及び圧力を加えて、不織布ウェブ上に接着部位を形成することを伴う。実際の接着部位には、様々な形状及び寸法が含まれ、それらとしては、卵形、円形、及び四辺形の幾何学的形状が挙げられるが、これらに限定されない。熱ポイント接着全体の総合面積は、2%〜60%、好ましくは4%〜35%、より好ましくは5%〜30%、最も好ましくは8%〜20%である。本発明の完全に接着されたベース基材は、8%〜70%、好ましくは12%〜50%、より好ましくは15%〜35%の、接着全体の総合面積を有する。サーマルポイントボンドのピン密度は、5ピン/cm2〜100ピン/cm2、好ましくは10ピン/cm2〜60ピン/cm2、最も好ましくは20ピン/cm2〜40ピン/cm2である。本発明の完全に結合されたベース基材は、10ピン/cm2〜60ピン/cm2、好ましくは20ピン/cm2〜40ピン/cm2の結合ピン密度を有する。
熱接着は、熱可塑性ポリマー及びそれらから作製される繊維などの、熱接着性ポリマーから形成された繊維を必要とする。本発明に関しては、繊維組成物は、熱接着性ポリマーを含む。好ましい熱接着性ポリマーは、ポリエステル樹脂、好ましくはPET樹脂、より好ましくはPET樹脂及びcoPET樹脂を含んでおり、以下でより詳細に説明するような、熱接着性で、熱安定性である繊維を提供する。本発明に関しては、熱可塑性ポリマー含有量は、繊維の約30重量%より大きい濃度で、好ましくは約50重量%より大きい濃度で、より好ましくは約70重量%より大きい濃度で、最も好ましくは約90重量%より大きい濃度で存在する。
接着の結果として、ベース基材は、機械方向(MD)及び機械横断方向(CD)の双方での機械的特性を有する。MD引っ張り強度は、1N/cm〜200N/cm、好ましくは5N/cm〜100N/cm、より好ましくは10N/cm〜50N/cm、最も好ましくは20N/cm〜40N/cmである。CD引っ張り強度は、0.5N/cm〜50N/cm、好ましくは2N/cm〜35N/cm、最も好ましくは5N/cm〜25N/cmである。ベース基材はまた、1.1〜10、好ましくは1.5〜6、最も好ましくは1.8〜5の、MD対CDの引っ張り強度比という特性的比率も有するべきである。
この接着方法はまた、ベース基材の厚さにも影響を及ぼす。ベース基材の厚さ、すなわちキャリパーはまた、所定の測定位置に存在する繊維の数、寸法、及び形状によっても決定される。ベース基材の厚さは、0.10mm〜1.3mm、より好ましくは0.15mm〜1.0mm、最も好ましくは0.20mm〜0.7mmである。
ベース基材はまた、特性的な不透明度も有する。不透明度は、ベース基材を通過する光の相対量の尺度である。理論に束縛されるものではないが、特性的な不透明度は、所定の測定位置に存在する繊維の数、寸法、タイプ、形態学、及び形状に応じて決定されると考えられる。不透明度は、TAPPI試験方法T 425 om−01「Opacity of Paper(15/d geometry,Illuminant A/2 degrees,89% Reflectance Backing and Paper Backing)」を使用して測定することができる。不透明度は百分率として測定される。本発明に関しては、ベース基材の不透明度は、5%より大きい、好ましくは10%より大きい、より好ましくは20%より大きい、更により好ましくは30%より大きい、最も好ましくは40%より大きい。
使い捨て吸収性物品の獲得システムによって構成される構造化繊維ウェブは、下側の吸収性コアの潜在的な汚れを隠す効果があることから比較的高い不透明度が望ましい。吸収性コアの汚れは、尿又は低粘度の便通などの体液の吸収によってもたらされ得る。吸収性物品における最近の傾向は、コスト削減の理由から吸収性物品の異なる要素の坪量を低減させる方向にある。このため、低坪量のトップシートが用いられる場合、こうしたトップシートの不透明度は、高坪量のトップシートと比較して低くなりやすい。また、孔あきトップシートが用いられる場合、こうした孔によっても、獲得システム及び吸収性コアといった吸収性物品の下側の層が見えてしまう。したがって、低坪量のトップシート及び/又は孔あきトップシートが吸収性物品において使用される実施形態では、構造化繊維ウェブの高い不透明度が特に望ましい。本発明の一実施形態では、使い捨て吸収性物品は、坪量が5g/m2〜25g/m2、より好ましくは8g/m2〜16gm2トップシートを含む。
ベース基材は、特性的な坪量、及び特性的な密度を有する。坪量は、単位面積当たりの繊維/不織布の質量として定義される。本発明に関しては、ベース基材の坪量は、10g/m2〜200g/m2である。ベース基材の密度は、ベース基材の坪量を、ベース基材の厚さで除算することによって判定される。本発明に関しては、ベース基材の密度は、14kg/m3〜200kg/m3である。ベース基材はまた、1グラム当たりの立法センチメートルで測定される、ベース基材の密度の逆数であるベース基材の比容積も有する。
ベース基材の修正
本発明では、ベース基材を修正して、流体管理が重要である製品での使用のために、その流体分散特性及び流体獲得特性を最適化することができる。流体分散特性は、ベース基材の表面エネルギーを変化させ、親水性及び対応する吸い上げ特性を増大させることによって、強化することができる。ベース基材の表面エネルギーの修正は、任意選択的であり、典型的には、ベース基材が作製される際に実行される。流体獲得特性は、繊維の変位によってベース基材の構造を修正し、基材の厚さ、すなわちロフト、及び対応する比容積を増大させる3D質感を導入することにより影響され得る。
表面エネルギー
ベース基材の親水性は、表面エネルギーに関連する。ベース基材の表面エネルギーは、局所的表面処理、繊維の表面への化学的グラフト処理によって、又はプラズマ処理若しくはコロナ処理を介した繊維表面の反応性酸化に次ぐガス反応の追加による更なる化学的結合によって、修正することができる。
ベース基材の表面エネルギーはまた、ベース基材の繊維を製造する際に使用する、ポリマー材料によっても影響され得る。ポリマー材料は、固有の親水性を有し得るか、あるいはポリマー、繊維表面、及びベース基材表面の融解添加物による化学修飾によって、又は親水性挙動を誘起する他の材料とのポリマー材料の混合によって、親水性にすることができる。ポリプロピレンに対して使用される材料の例としては、Cibaより販売されるIRGASURF(登録商標)HL560、及びEastman Chemicalより販売されるPETコポリマーであるPET用の重合材料のEASTONE(登録商標)ファミリーがある。
表面エネルギーはまた、繊維の局所的処理によっても影響され得る。繊維表面の局所的処理は、一般に、フォーム、スプレー、キスロール、又は他の好適な技術を介して、乳濁液中に希釈状態で添加され、次いで乾燥される界面活性剤を伴う。局所的処理が必要とされる場合があるポリマーは、ポリプロピレン又はポリエステルテレフタレート系のポリマー系である。他のポリマーとしては、脂肪族ポリエステルアミド;脂肪族ポリエステル;ポリエチレンテレフタレート及びコポリマー、ポリブチレンテレフタレート及びコポリマーを含む芳香族ポリエステル;ポリトリメチレンテレフタレート及びコポリマー;ポリ乳酸及びコポリマーが挙げられる。汚れ放出ポリマー(SRP)と称される材料の範疇もまた、局所的処理に好適である。汚れ放出ポリマーは、低分子量のポリエステルポリエーテル、ポリエステルポリエーテルのブロックコポリマー、並びに非イオン性ポリステル化合物が含まれる、一群の材料である。これらの材料の一部は、融解添加物として添加することができるが、それらの好ましい使用法は、局所的処理剤としてである、この範疇の材料の市販例は、Clariantより、Texcare(商標)の製品群として入手可能である。
構造化基材
ベース基材20に対する第2修正は、ベース基材を機械的処理して構造化繊維ウェブ基材(用語「構造化繊維ウェブ」及び「構造化基材」は、本明細書では互換的に使用される)を作り出すことを伴う。構造化基材は、(1)繊維の再配列、並びに恒久的な繊維の転位(以降では「繊維変位」と称する)を作り出す繊維の分離及び破断によって、構造化基材がベース基材の厚さの値よりも高い厚さの値を有するように、恒久的に変形されたベース基材、及び任意選択的に、(2)ベース基材の厚さよりも低い圧縮領域を形成するように、過剰な接着(以降では「過剰接着」と称する)によって修正されたベース基材として定義される。繊維変位プロセスは、ロッド、ピン、ボタン、構造化されたスクリーン若しくはベルト、又は他の好適な技術を介した、繊維の恒久的な機械的変位を伴う。この恒久的な繊維の転位は、ベース基材と比較して、付加的な厚さ、すなわち付加的キャリパーをもたらす。この付加的な厚さは、基材の比容積を増大させ、また基材の流体浸透性も増大させる。過剰接着は、ベース基材の機械的特性を向上させ、流体管理のための、変位された繊維領域間のチャネルの深さを増進させることができる。
繊維変位
前述のベース基材を、図1に示す装置150を使用して加工処理し、その一部分が図3〜図6に示される構造化基材21を形成することができる。図3に示すように、この構造化基材は、X−Y平面内の第1領域2、及びこの第1領域2全域に配置された複数の第2領域4を有する。第2領域4は、構造化基材21第2表面14上に不連続部16を形成する変位された繊維6、及び第1表面12から延びる遊離端部18を有する変位された繊維6を含む。図4に示すように、変位された繊維6は、第2領域4の第1辺11から延びて、分離して破断し、第1表面12に近位の、第1辺11と対向する第2辺13に沿って、遊離端部18を形成する。本発明では、第1表面12に近接して、とは、繊維の破断が、第1表面12と、変位された繊維の頂点又は末端部3との間、好ましくは変位された繊維6の末端部3よりも第1表面12より近くにおいて生ずることを意味する。
繊維の分離又は破断の位置は、ベース基材を形成する非伸縮性繊維が主要な起因となるが、しかしながら、変位された繊維の形成及び対応する繊維破断はまた、ベース基材の形成に使用された接着の程度にも影響される。完全に接着された非伸縮性繊維を含むベース基材は、図15の顕微鏡写真に示すように、その繊維の強度、繊維の剛性、及び接着の強度のために、軽度の繊維変位の変形で、テント状構造を形成する構造を提供する。繊維変位の変形が拡張すると、図16の顕微鏡写真に示すように、実質的な繊維破断が、典型的には一方の辺上に集中して観察される。
図4の遊離端部18を有する変位された繊維6を作り出す目的は、空隙容積部を生成することによって、ベース基材の比容積を超えて、構造化基材の比容積を増大させることである。本発明では、第2領域において少なくとも50%かつ100%よりも少ない遊離端部を有する変位された繊維を形成することによって、高いキャリパー及び使用に際して持続する付随する比容積を有する構造化基材が製造されることが判明した。(下記に示す表6の実施形態1N5〜1N9を参照)本明細書で更に記載される特定の実施形態では、変位された繊維6の遊離端部18を、圧縮抵抗の上昇及び付随する持続可能性のために熱的に結合できる。熱接着された遊離端部を有する変位された繊維6、及びその同じ変位された繊維を作り出すためのプロセスを、以下で更に詳細に論じる。
図5に示すように、第2領域4内の変位された繊維6は、典型的にはベース基材の厚さと等しい第1領域2厚さ32より大きい厚さ、すなわちキャリパーを呈する。変位された繊維6を有する第2領域4の寸法及び形状は、使用される技術に応じて変化し得る。図5は、第2領域4内の変位された繊維6を示す、構造化基材21断面図を示す。変位された繊維6の厚さ34は、変位された繊維6によって生じる、構造化基材21第2領域4の厚さ、すなわちキャリパーを説明する。図示のように、変位された繊維の厚さ34は、第1領域の厚さ32より大きい。変位された繊維の厚さ34は、第1領域の厚さ32、少なくとも110%より大きいことが好ましく、より好ましくは少なくとも125%より大きく、最も好ましくは第1領域の厚さ32、少なくとも150%より大きい。変位された繊維の厚さ34に関しての、エージングされたキャリパーは、0.1mm〜5mm、好ましくは0.2mm〜2mm、最も好ましくは0.5mm〜1.5mmである。
構造化基材21単位面積当たりの、変位された繊維6を有する第2領域4の数は、図3に示すように様々であり得る。一般に、面密度は、構造化基材21全域にわたって均一である必要はないが、第2領域4は、線、ストリップ、バンド、円などのような既定の形状を有する領域内などの、構造化基材21特定の領域に限定され得る。
図3に示すように、第2領域4が占める面積の合計は、総面積の75%未満、好ましくは50%未満、より好ましくは25%未満であるが、少なくとも10%である。第2領域の寸法、及び第2領域4間の間隔は、様々であり得る。図3及び図4は、長さ36、幅38、並びに第2領域4間の間隔37及び間隔39を示す。図3に示す第2領域4間の機械方向での間隔39は、好ましくは0.1mm〜1000mm、より好ましくは0.5mm〜100mm、最も好ましくは1mm〜10mmである。機械横断方向での第2領域4間の左右の間隔37は、0.2mm〜16mm、好ましくは0.4mm〜10mm、より好ましくは0.8mm〜7mm、最も好ましくは1mm〜5.2mmである。
図1に示すように、構造化基材21は、供給ロール152から供給される、概して平面的な、2次元不織布ベース基材20から形成することができる。ベース基材20は、遊離端部18を有する変位された繊維6を形成する噛み合いローラー104及び102Aによって形成されたニップ116へと、装置150によって機械方向に移動する。変位された繊維6を有する構造化基材21は、任意選択的に、ロール104と、変位された繊維6の遊離端部18を接着する接着ロール156との間に形成されたニップ117へと進行する。この場所から、構造化基材22は、ロール104から構造化基材22を取り出す、任意選択的な噛み合いロール102B及び104へと進行し、ロール102Bと接着ロール158との間に形成されたニップ119へと任意選択的に搬送され、そこで過剰接着領域が構造化基材23内に形成されており、最終的に構造化基材23が供給ロール160上に巻き取られる。図1は、説明したようなプロセス工程の順序を示しているが、未だ完全に接着されていないベース基材に関しては、このプロセスを逆転させて、変位された繊維6を形成する前に、ベース基材内に接着領域を形成することが望ましい。この実施形態の場合、ベース基材20は、図1に示す巻き取り供給ロール160に類似する供給ロールから供給され、ロール102Bと接着ロール158との間に形成されたニップ119へと移動し、そこで基材が接着された後に、噛み合いロール102Bと104との間に形成されたニップ118に入って、そこで遊離端部18を有する変位された繊維6が、第2領域4内に形成される。
図1は、供給ロール152から供給されるベース基材20を示しているが、このベース基材20は、当該技術分野において既知の、ループウェブなどの任意の他の供給手段から供給してもよい。一実施形態では、ベース基材20は、不織布作製用製造ラインなどの、ウェブ作製装置から直接供給することができる。
図1に示すように、第1表面12は、ベース基材20の第1辺、並びに構造化基材21第1辺に相当する。第2表面14は、ベース基材20の第2辺、並びに構造化基材21第2辺に相当する。一般に、用語「面」は、本明細書では、不織布などの概して2次元のウェブの、2つの主表面を説明するための用語の、一般的使用法で使用される。ベース基材20は、実質的に不規則に配向された繊維、すなわち少なくともMD及びCDに対して不規則に配向された繊維を含む、不織布ウェブである。「実質的に不規則に配向された」とは、プロセス条件のために、CDよりもMDに、又はその逆に、より多くの量が配向された繊維を呈し得る、不規則な配向を意味する。例えば、スパンボンディングプロセス及びメルトブローイングプロセスでは、繊維の連続的なストランドが、MDに移動する支持材上に堆積する。スパンボンド不織布ウェブ又はメルトブローン不織布ウェブの繊維の配向を、真に「不規則」にさせるように試みても、通常は、より高い割合の繊維が、CDではなくMDに配向される。
本発明の一部の実施形態では、ウェブ平面内の、MDに対する既定の配向に、著しい割合の繊維を意図的に配向することが望ましい場合がある。例えば、歯の間隔、及びロール104上での配置(以下で説明するような)のために、ウェブの長手方向軸線に対して、例えば平行から60度外れた角度で、主要な繊維配向を有する不織布ウェブを作り出すことが望ましい場合があり得る。そのようなウェブは、所望の角度でウェブをラッピング加工し、所望であれば、そのウェブを、完成ウェブへとカーディングすることを組み合わせたプロセスによって、作り出すことができる。既定の角度を有する繊維を、高い割合で有するウェブは、以下でより詳細に論じるように、より多くの繊維を、統計的に偏倚させ、構造化基材21内の変位された繊維へと形成することができる。
ベース基材20は、ウェブ作製プロセスから直接的に、又は図1に示すように、供給ロール152から間接的に提供することができる。ベース基材20は、当該技術分野において既知の手段によって、例えば、油加熱ローラー又は電気加熱ローラー上で加熱することによって、予備加熱することができる。例えば、ロール154を加熱して、繊維変位プロセスに先立って、ベース基材20を予備加熱することが可能である。
図1に示すように、供給ロール152が、矢印によって示される方向で回転すると、ベース基材20は、機械方向で、ローラー154上を越え、第1逆回転噛み合いロールのセット102A及び104の、ニップ116へと移動する。ロール102A及びロール104は、装置150の、第1噛み合いローラーのセットである。第1噛み合いロールのセット102A及び104は、変位された繊維を形成して、ベース基材20での繊維破断を促進するように動作し、本明細書では以後、構造化基材21と称される、構造化基材を作製する。噛み合いロール102A及び104を、図2で更に明確に示す。
図2を参照すると、本発明の構造化基材21上に変位された繊維を作製するための、装置150の部分が、より詳細に示される。装置150のこの部分は、図2ではニップローラー100として示され、1対の噛み合いロール102及び104(それぞれ、図1ロール102A及びロール104に対応する)を含んでおり、それぞれのロールは軸線Aを中心に回転し、これらの軸線Aは、同一平面内で平行である。装置150は、ベース基材20が、特定の回転角の範囲内でロール104上に留まるように設計されるが、図2は、ベース基材20が装置150上のニップ116を通過して、変位された繊維6の領域を有する構造化基材21として抜け出る際に起こることを、原理的に示す。噛み合いロールは、金属又はプラスチックから作製することができる。金属製ロールの非限定的な例は、アルミニウム又はスチールである。プラスチック製ロールの非限定的な例は、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、及びポリフェニレンオキサイド(PPO)である。プラスチックに、金属又は無機添加物材料を充填してもよい。
図2に示すように、ロール102は、ロール102円周全体の周りに途切れずに延在し得る、複数の隆起部106及び対応する溝108を含む。一部の実施形態では、構造化基材21内で、どの種類のパターンが所望されるかに応じて、ロール102(及び、同様にロール102A)は、一部又はすべての隆起部106が周囲方向に連続ではなく、途切れ又は間隙を有するように、エッチング、ミリング、又はその他の機械加工プロセスなどによって諸部分が除去されている、隆起部106を含み得る。この途切れ又は間隙は、パターンを形成するように配置構成することができ、そのパターンとしては、円又はダイヤモンドなどの単純な幾何学的パターンが挙げられるが、またロゴ及び商標などの複雑なパターンも挙げられる。一実施形態では、ロール102は、以下でより詳細に説明する、ロール104上の歯と同様の歯を有することができる。この方式では、構造化基材21両面12、14上に、変位された繊維6を有することが可能である。
ロール104はロール102と似ているが、ロール104は外周全体に切れ間なく延び得る山部を有する代わりに、ロール104の少なくとも一部に離間して延びる、周方向に間隔を置いて配された歯列110として改変された周方向に延びる複数の山部の列を含む。ロール104の個々の歯列110は、対応する溝112によって分離されている。動作時には、ロール102と104とは、ロール102山部106がロール104の溝112内に延び、ロール104の歯110がロール102溝108内に延びるようにして互いに噛み合う。この噛み合わせは、後述する図7の断面図により詳細に示されている。ロール102及びロール104の双方、又はいずれかは、当該技術分野において既知の手段によって、例えば、熱油を充填したローラー又は電気的に加熱されたローラーを使用することによって、加熱することができる。
図3に示すように、構造化基材21は、概して平面的な構造化基材20の2次元構成によって、構造化基材21両辺上に画定される第1領域2と、ベース基材20の繊維の一体的延伸から生じ得る、離間した変位された繊維6及び不連続部16によって画定される、複数の離散した第2領域4とを有する。第2領域4の構造は、構造化基材21、いずれの辺を考慮するかに応じて、差異化される。図3に示す構造化基材21実施形態に関しては、構造化基材21第1表面12に関連する、構造化基材21辺上に、離散した第2領域4のそれぞれが、第1表面12から外側方向に伸びて遊離端部18を有する、複数の変位された繊維6を含み得る。変位された繊維6は、Z方向での顕著な配向を有する繊維を含んでおり、変位された繊維6のそれぞれは、第2領域4の第1辺11に沿って、第1表面12に近位で配置される基部5と、第1辺11に対向する第2領域4の第2辺13で、第1表面12に接近して分離されるか、又は破断する遊離端部18と、第1表面12からZ方向で最大距離の遠位部分3とを有する。第2表面14に関連する構造化基材21辺上に、第2領域4は、構造化基材21第2表面14上の繊維配向不連続部16によって画定される、不連続部16を含む。この不連続部16は、ロール104の歯110が、ベース基材20を貫通した位置に対応する。
本明細書で使用するとき、第2領域4で使用する場合の「一体的延伸」などでの用語「一体的」とは、第2領域4の繊維がベース基材20の繊維に由来していることを指す。したがって、変位された繊維6の破断繊維8は、例えば、ベース基材20からの、可塑的に変形され、かつ/又は延伸された繊維とすることができ、したがって構造化基材21第1領域2と一体的であり得る。換言すれば、一部ではあるがすべてではない繊維は破断しており、そのような繊維は、当初からベース基材20内に存在していた。本明細書で使用するとき、「一体的」は、変位された繊維を作製する目的のために、別個の前駆体ウェブに導入されるか、又は追加される繊維とは区別されるものである。本発明の構造化基材21、22、及び構造化基材23の一部の実施形態は、そのような追加の繊維を利用することができるが、好ましい実施形態では、変位された繊維6の破断繊維8は、構造化基材21と一体的である。
変位された繊維6内に破断繊維8を有する本発明の構造化基材21ための、好適なベース基材20は、破断して遊離端部18を形成するための、十分な繊維不動性及び/又は可塑的変形を有する繊維を含むべきであることが理解できる。そのような繊維を、図4及び図5で遊離繊維端部18として示す。本発明に関しては、変位された繊維6の遊離繊維端部18は、流体を収集するための空隙、すなわち自由容積を作り出すために望ましい。好ましい実施形態では、Z方向に付勢される繊維の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%かつ100%未満が、遊離端部18を有する破断繊維8である。
第2領域4は、形状、寸法、及び分布が様々であり得る比容積分布を目的とした、X−Y平面及びZ平面(Z-plane)の双方におけるパターンを形成するように、成形することができる。
図2に示す構造化基材21実施形態に関する、変位された繊維6を有する代表的な第2領域を、図3〜図6での更なる拡大図で示す。代表的な変位された繊維6は、変位された繊維6が実質的に位置合わせされる複数の破断した繊維8を含んでおり、かつ、変位された繊維6が異なる長手方向及び長手軸Lを有するように、ロール104上の挺出歯110上に形成された種類のものである。変位された繊維6はまた、MD−CD平面の長手軸Lに対してほぼ直交する横方向軸Tを有する。図2〜図6に示される実施形態において、長手軸Lは、MDに対して平行である。一実施形態では、すべての相隔たる第2領域4は、略平行な長手軸Lを有する。好ましい実施形態において、第2領域4は長手方向を有する、つまり、第2領域は細長い形状となり、円形にはならない。図4に示し、また図5及び図6に更に明確に示すように、細長歯110をロール104上で利用する場合、構造化基材21一実施形態での、変位された繊維6の破断繊維8の1つの特性は、破断繊維8の優勢な方向的整合である。図5及び図6に示すように、破断繊維8の多くは、図6でのように平面図で見た場合、横方向軸線Tに対する実質的に均一な整合を有し得る。「破断」繊維8とは、変位された繊維6が、第2領域4の第1辺11上で開始し、構造化基材21内の、第1辺11に対向する第2領域4の第2辺13に沿って分離されていることを意味する。
したがって、装置150との関連で理解できるように、構造化基材21変位された繊維6は、概して平面的で2次元的として説明することができるベース基材20を、機械的に変形させることによって作製される。「平面状」及び「2次元的」とは、第2領域4が形成されたことによって付与された明瞭な面外のZ方向の3次元性を有する完成した構造化基材1に対してウェブが平坦であることを単純に意味する。「平面状」及び「2次元的」とは、いかなる特定の平坦度、平滑度又は次元性をも示唆するものではない。ベース基材20がニップ116を通過して進むと、ロール104の歯110が、ロール102Aの溝108に入り込み、同時にベース基材20の平面外に繊維を付勢して、変位された繊維6及び不連続部16を含む第2領域4を形成する。要するに、歯110は、ベース基材20を「押し込む」か、又は「突き抜ける」。歯110の先端部がベース基材20を押し込むと、CDに優勢的に配向され、かつ歯110を横断して配向されている繊維の部分が、歯110によってベース基材20の平面外に付勢され、Z方向で伸張され、引っ張られ、かつ/又は可塑的に変形されて、変位された繊維6の破断繊維8を含む第2領域4の形成が、結果として生じる。長手方向軸線Lに略平行に、すなわちベース基材20の機械方向に優勢的に配向されている繊維は、歯110によって、単に離れて広がり、実質的にベース基材20の第1領域2内に留まる。
図2では、装置100は、1つのパターン付きロール、すなわちロール104、及び1つのパターンなし溝付きロール102を有する構成で示される。しかしながら、特定の実施形態では、各ロールの同じ又は異なる対応する領域に同じ又は異なるパターンのいずれかを有する2個のパターン形成ロールを使用することによって、ニップ116を形成することが好ましい場合もある。そのような装置は、構造化ウェブ21両面から突出する変位された繊維6と、ウェブ21内に型押しされたマクロパターンとを有するウェブを作り出すことができる。
変位された繊維6の数、間隔、及び寸法は、歯110の数、間隔、及び寸法を変え、必要に応じてロール104及び/又はロール102に、対応する寸法的変化を加えることによって変更することができる。この変更を、ベース基材20における可能な変更、及びライン速度などの加工処理における変更と併用することによって、多種多様な構造化ウェブ21を、多くの目的のために作製することが可能になる。
構造化ウェブ21の説明から、変位された繊維6の破断繊維8は、構造化ウェブ21第1表面12又は第2表面14のいずれかに由来して延出することが理解できる。当然ながら、変位された繊維6の破断繊維8はまた、構造化ウェブ21内部19から延出する場合もある。図5に示すように、変位された繊維6の破断繊維8は、ベース基材20の概して2次元の平面外に付勢された(すなわち、図3に示すような「Z方向」に付勢された)ことによって延出する。一般に、第2領域4の破断繊維8又は遊離端部18は、繊維ウェブの第1領域2繊維と一体的であり、その繊維から延出する。
破断繊維8の延出には、可塑的変形及びポアソン比効果による、繊維断面寸法(例えば、丸形繊維に関する直径)の全般的な低減が伴い得る。したがって、変位された繊維6の破断繊維8の諸部分は、ベース基材20の繊維並びに第1領域2繊維の平均繊維直径よりも小さい平均直径を有し得る。繊維断面直径の低減は、変位された繊維6の基部5と遊離端部3(遊離端部3)との中間で最大であることが見出されている。これは、変位された繊維6の基部5及び遠位部分3の部分が、以下でより詳細に説明するように、ロール104の歯110の先端部に隣接し、それゆえ加工処理の間、それらの部分が摩擦的に固定されて不動であるためと考えられる。本発明では、繊維断面の低減は、高い繊維強度及び低い繊維伸長性のために、最小限である。
図7は、隆起部106及び歯110を含む、噛み合いロール102(及び、以下で論じる102A及び102B)及び104の一部分を、断面図で示す。示されるように、歯110は歯の高さTHを有し(尚、THはリッジ106の高さにも適用でき、好ましい実施形態では、歯の高さ及びリッジの高さは等しい)、歯と歯の間隔(又はリッジとリッジの間隔)は、ピッチPと称される。示されるように、係合深さ(DOE)Eは、ロール102及び104の相互の噛み合いのレベルの計測値であり、リッジ106の端から歯110の端まで計測される。係合深さE、歯の高さTH、及びピッチPは、所望により、ベース基材20の特性、及び本発明の構造化基材1所望の特性に応じて、変更することができる。例えば、一般に、変位された繊維6内に破断繊維8を得るためには、繊維が破断するポイントまで変位された繊維を伸長させて可塑的に変形させるための、十分なレベルの係合Eが必要とされる。また、所望される第2領域4の密度(構造化基材1単位面積当たりの、第2領域4)が大きくなるにつれて、以下で説明するように、ピッチは小さくするべきであり、歯の長さTL及び歯の距離TDは小さくするべきである。
図8は、スパンボンド不織布ベース基材20から、スパンボンド不織布材料の構造化基材21又は構造化基材1を作製するために有用な、複数の歯110を有するロール104の、一実施形態の一部分を示す。図8に示す歯110の拡大図を、図9に示す。ロール104のこの図では、歯110は、歯の先端部111で、一般に前縁LEから後縁TEまで測定される、約1.25mmの均一な周辺長さ寸法TLを有し、周囲方向で、約1.5mmの距離TDで互いに均等に離間している。ベース基材20から、繊維構造化基材1を作製するために、ロール104の歯110は、約0.5mm〜約3mmの範囲の長さTL、及び約0.5mm〜約3mmの間隔TD、約0.5mm〜約10mmの範囲の歯の高さTH、及び約1mm(0.040インチ)〜2.54mm(0.100インチ)のピッチPを有し得る。噛合深さEは、約0.5mm〜約5mm(最大で歯高THに達する)であり得る。当然ながら、E、P、TH、TD、及びTLは、変位された繊維6の所望の寸法、間隔、及び面密度(構造化基材1単位面積当たりの、変位された繊維6の数)を達成するために、それぞれ互いに独立して変更することができる。
図9に示されるように、各歯110は、先端111、前縁LE及び後縁TEを有する。歯の先端部111は、繊維破断を最小限にするために丸めることができ、好ましくは細長形で、第2領域4の長手方向軸線Lに対応する概して長手方向の配向を有する。構造化基材1変位された繊維6を得るために、LE及びTEは、ロール104の局所的周囲表面120とほぼ直交しているべきである。同様に、先端部111、及びLE若しくはTEからの遷移は、歯110が、使用の際にベース基材20をLE及びTEで押し込むように、十分に小さい曲率半径を有する、直角などの比較的鋭利な角度であるべきである。代替的な歯先端部111は、接着を最適化するために、平坦表面にすることができる。
再び図1を参照すると、変位された繊維6が形成された後、構造化基材21は、回転ロール104上で、ロール104と第1接着ロール156との間のニップ117へと移動することができる。接着ロール156は、数多くの接着技術を容易にすることができる。例えば、接着ロール156は、ニップ117内に熱エネルギーを付与することによって、変位された繊維6の遠位端(先端部)で、構造化ウェブ21近接する繊維を溶融接着するための、加熱スチールローラーとすることができる。
好ましい実施形態では、以下の好ましい構造化基材に関連して論じるように、接着ロール156は、変位された繊維6の遠位端の近接する繊維を熱接着するために、構造化ウェブ21に十分な熱エネルギーを付与するように設計された、加熱ロールである。熱接着は、近接する繊維を直接的に溶融接着することによるものか、又はポリエチレン粉末などの仲介熱可塑性剤を溶融させ、次に近接する繊維に付着させることによるものであってもよい。そのような目的のために、ポリエチレン粉末をベース基材20に添加することができる。
第1接着ロール156を十分に加熱し、変位された繊維6の遠位端3の繊維を溶融させるか、又は部分的に溶融させることができる。第1接着ロール156で必要な熱の量、又は熱容量は、変位された繊維6の繊維の溶融特性、及びロール104の回転速度に応じて決定される。第1接着ロール156で必要な熱の量はまた、第1接着ロール156とロール104上の歯110の先端部との間に誘起される圧力、並びに変位された繊維6の遠位端3で所望される溶融の程度に応じても決定される。
一実施形態では、第1接着ロール156は、加熱スチール円筒形ロールであり、変位された繊維6の近接する繊維を溶融接着するために十分な表面温度を有するように加熱される。第1接着ロール156は、内部電気抵抗加熱器によって、熱油によって、又は加熱ロールを作製するための、当該技術分野において既知の任意の他の手段によって、加熱することができる。第1接着ロール156は、当該技術分野において既知のように、好適なモーター及び連結部によって駆動させることができる。同様に、第1接着ロールは、ニップ117を正確に調節し、設定することができるように、調節可能な支持体上に取り付けることができる。
図10は、ニップ117を通過して構造化基材22に加工処理された後の、構造化基材21一部分を示し、これは、更なる加工処理をせずとも、本発明の構造化基材21とすることができる。構造化基材22は、変位された繊維6の遠位端3が接着され、好ましくは熱溶融接着されることにより、近接する繊維が少なくとも部分的に接着されて、遠位配置溶融接着部分9を形成するという点を除き、前述のような構造化基材21と類似する。上述のプロセスによって変位された繊維6を形成した後、変位された繊維6の遠位部分3を加熱して、近接する繊維の部分が互いに接合されるように、繊維の部分を熱的に接合させ、「先端部接着」とも称される、溶融接着部分9を有する変位された繊維6を形成する。
この遠位配置溶融接着部分9は、変位された繊維6の遠位部分への、熱エネルギー及び圧力の適用によって作製することができる。遠位配置溶融接着部分9の寸法及び質量は、変位された繊維6の遠位部分に付与される熱エネルギーの量、装置150のライン速度、及び熱の適用方法を修正することによって、修正することができる。
他の実施形態では、遠位配置溶融接着部分9は、放射熱の適用によって作製することができる。つまり、一実施形態では、変位された繊維6の遠位配置部分内の繊維部分を軟化させるか若しくは溶融させるために十分な距離、及び対応する十分な時間で、構造化基材21に向けて放射熱を方向付けることができるように、放射熱源によって接着ロール156を置き換えるか、又は補助することができる。放射熱は、任意の既知の放射加熱器によって適用することができる。一実施形態では、放射熱は、抵抗加熱ワイヤーによって提供することができ、このワイヤーは、CD方向で、十分に近接した、均等な間隔距離で延在し、このワイヤーに対してウェブが移動する際に、放射熱エネルギーが、変位された繊維6の遠位配置部分を少なくとも部分的に溶融させるように、構造化基材21と関連させて配置される。他の実施形態では、衣服のアイロン掛け用の手持ち式アイロンなどの、加熱平坦アイロンを、溶融がそのアイロンによって実行されるように、変位された繊維6の遠位端3に近接させて保持することができる。
上述のように構造化基材22を加工処理することの効果は、変位された繊維6を圧縮することも平坦化することもなく、ニップ117内の特定量の圧力の下で、変位された繊維6の遠位端3を溶融させることができる点である。したがって、3次元ウェブは、言わば形成後に熱接着を提供することによって、作り出して整えることができる、すなわち、その形状に「固定する」ことができる。更には、遠位配置接着部分又は遠位配置溶融接着部分9は、構造化基材22が、圧縮力又は剪断力を受けた場合に、変位された繊維6の嵩高の構造、及び構造化基材のエージングされたキャリパーを維持することに役立ち得る。例えば、上記で開示したように加工処理されて、第1領域2と一体的ではあるが第1領域2から延出している繊維を含んでおり、かつ遠位配置溶融接着部分9を有する変位された繊維6を有する、構造化基材22は、供給ロール上に巻かれること及びその後に巻き出されることによる圧縮の後の、改善された形状保持を有し得る。変位された繊維6の遠位部分で近接する繊維を、一体に接着することによって、繊維は、圧縮後に不規則な圧潰を起こすことが少なく、すなわち、変位された繊維6の全構造が一体となって移動する傾向があることにより、ウェブ表面の研磨に伴う、圧縮力及び/又は剪断力などの障害事象の後の、より良好な形状保持が可能になる。
図1を参照して述べる代替的な一実施形態では、基材20は、ローラー154上を、噛合深さが0.25mm〜3.81mm(0.01インチ〜0.15インチ)である、逆回転する互いに噛み合ったロール102Aと104の第1組のニップ116へと機械方向に移送されることにより、部分的な繊維の変位が生じるが、繊維の破断は生じたとしてもごくわずかである。次に、このウェブは、ロール104と接着ロール156との間に形成されたニップ117へと進行し、そこで部分的に変位された繊維の先端部が接着される。ニップ117を通過した後、構造化基材22は、ロール104とロール102Bとの間に形成されたニップ118へと進行するが、このニップ118での係合深さは、ニップ116での係合深さよりも大きいことにより、変位された繊維を更に変位させ、破断繊維を形成する。このプロセスは、溶融接着部分9によって接合されている、より多くの変位された繊維6を生じさせることができる。
過剰接着
過剰接着とは、事前に繊維変位が施されている基材上に実行される、溶融接着を指す。過剰接着は、任意選択的なプロセス工程である。この過剰接着は、インラインで行なってもよく、あるいは、別個の変換プロセス上で行なってもよい。
過剰接着は、一貫性のあるパターンでフィラメントを一体に融着させる、熱及び圧力に依存する。一貫性のあるパターンは、構造化基材の長さに沿って、反復パターンが認められるように再現可能なパターンとして定義される。過剰接着は、少なくとも一方のロールが加熱され、好ましくは双方のロールが加熱される、加圧ローラーのニップに通過させて行なわれる。ベース基材が既に加熱されている場合に、過剰接着を行なうのであれば、加圧ローラーのニップを加熱する必要はない。過剰結合領域11パターンの例が図12A〜12Fに示されているが、他の過剰結合のパターンも可能である。図12Aは、機械方向に連続パターンを形成する、過剰接着領域11を示す。図12Bは、過剰接着11連続的な網目が形成されるように、機械方向及び横断方向の双方に連続する過剰接着領域11を示す。このタイプのシステムは、単一工程の過剰接着ロール、又は複数のロール接着システムで、作り出すことができる。図12Cは、機械方向に不連続である過剰接着領域11を示す。図12Cに示すMD過剰接着パターンはまた、連続的又は不連続的なデザインでMD過剰接着線に接続する、CDでの過剰接着領域11も含み得る。図12Dは、MDで波のパターンを形成する過剰接着領域11を示す。図12Eは、ヘリンボーンパターンを形成する過剰接着領域11を示し、図12Fは、波状ヘリンボーンパターンを示す。
過剰接着のパターンは、均一に分布している必要はなく、特定の用途に適合するように起伏を付けてもよい。過剰接着が実行される総面積は、繊維ウェブの総面積の75%未満、好ましくは50%未満、より好ましくは30%未満、最も好ましくは25%未満であるが、少なくとも3%であるべきである。
図13は、過剰接着の特性を示す。過剰接着領域11は、過剰接着領域の中間で測定される、ベース基材20の第1領域の厚さ32に対する厚さ特性を有する。過剰接着領域11は、圧縮された厚さ42を有する。過剰接着領域は、構造化基材21上の特性的な幅44、及び過剰接着領域間の間隔46を有する。
第1領域の厚さ32は、好ましくは0.1mm〜1.5mm、より好ましくは0.15mm〜1.3mm、更により好ましくは0.2mm〜1.0mm、最も好ましくは0.25mm〜0.7mmである。過剰接着領域の厚さ42は、好ましくは0.01mm〜0.5mm、より好ましくは0.02mm〜0.25mm、更により好ましくは0.03mm〜0.1mm、最も好ましくは0.05mm〜0.08mmである。過剰接着領域11幅44は、好ましくは0.05mm〜15mm、より好ましくは0.075mm〜10mm、更により好ましくは0.1mm〜7.5mm、最も好ましくは0.2mm〜5mmである。過剰接着領域11間の間隔46は、構造化基材21内で均一である必要はないが、極限値は、0.2mm〜16mm、好ましくは0.4mm〜10mm、より好ましくは0.8mm〜7mm、最も好ましくは1mm〜5.2mmの範囲内に収まる。過剰接着領域11間隔46、幅44、及び厚さ42は、引っ張り強度特性及び流体処理特性などの、構造化基材21に所望される特性に基づく。
図13は、過剰接着厚さ42を有する過剰接着11を、構造化基材21一方の面上に作り出し得ることを示す。図14は、構造化基材21を作製するために使用する方法に応じて、過剰接着11を、構造化基材21いずれの面上にも作り出し得ることを示す。構造化基材を他の不織布と組み合わせて、流体の管理を更に補助する場合、トンネルを作り出すために、構造化基材21両面12、14上に過剰接着11が所望される場合がある。例えば、両面構造化基材は、多層式の高容量流体獲得システム内で使用することができる。
過剰接着プロセス
図1装置を参照すると、構造化基材23は、変位された繊維6の遠位配置部分ではない接着部分、すなわち変位された繊維6の遠位配置部分のみではない接着部分を有し得る。例えば、接着ロール156用に、平坦で円筒形のロールではなく、噛み合う隆起付きのローラーを使用することによって、第2領域4間の第1領域2内の、第1表面12上の位置などの、構造化基材23の他の部分を接着することができる。例えば、溶融接着された材料の連続的な線を、変位された繊維6の列の間の、第1表面12上に作製することができる。この溶融接着された材料の連続的な線が、前述の過剰接着領域11を形成する。
一般に、1つの第1接着ロール156が示されているが、一連のニップ117及び/又は関与する様々なタイプの接着ロール156で接着が行なわれるように、プロセスのこの段階で、2つ以上の接着ロールが存在してもよい。更には、接着ロールのみが存在するのではなく、類似のロールを提供して、機能的効果を付与するための、様々な表面処理剤のような、様々な物質を、ベース基材20又は構造化ウェブ21に転写することができる。そのような処理剤を塗布するための当該技術分野では既知の任意のプロセスを用いることができる。
ニップ117を通過した後、構造化基材22は、ロール104とロール102Bとの間に形成されたニップ118へと進行するが、ロール102Bは、好ましくはロール102Aと同一のものである。ロール102Bの周りを進む目的は、構造化基材22をロール104から、それらの間に形成された変位された繊維6を乱すことなく取り出すことである。ロール102Bは、ロール102Aと全く同じように、ロール104と噛み合うため、変位された繊維6が、ロール102Bの溝108内に適合し、同時に構造化基材22が、ロール102Bの周りに巻かれる。ニップ118を通過した後、構造化基材22は、本発明の構造化基材23として、更に加工処理されるために供給ロール上に巻き取られる。しかしながら、図1に示す実施形態では、構造化基材22は、ロール102Bと第2接着ロール158との間のニップ119を通過して加工処理される。第2接着ロール158は、第1接着ロール156と、設計が同じものとすることができる。第2接着ロール158は、構造化基材22第2表面14の一部分を少なくとも部分的に溶融させ、ロール102Bの隆起部106の先端部とロール158の概ね平坦で滑らかな表面との間のニップの圧力に対応する、複数の、非交差で、実質的に連続的な過剰接着領域11を形成するために十分な熱を提供することができる。
第2接着ロール158は、プロセスにおける唯一の接着工程として(すなわち、最初に変位された繊維6の遠位端を接着することによって構造化基材22を形成させることなく)使用することができる。そのような場合では、構造化ウェブ22は、その第2辺14上に接着部分を有する、構造化ウェブ23となる。しかしながら、一般に、構造化ウェブ23は、好ましくは、変位された繊維6の接着遠位端(先端部接着)と、その第1辺12上若しくは第2辺14上の、複数の、非交差で、実質的に連続的な溶融接着領域とを有する、二重過剰接着構造化ウェブ22である。
最終的に、構造化基材23は、形成された後で、保管のため、及び他の製品内の構成要素として更に加工処理するために、供給ロール160上に巻き取ることができる。
代替的な実施形態では、図1Aに示すプロセスを使用して、構造化基材21に、第2基材21Aを追加することができる。この第2基材21Aは、フィルム、不織布、又は前述のような第2ベース基材とすることができる。この実施形態に関しては、ベース基材20は、機械方向で、ローラー154上を越え、第1逆回転噛み合いロールのセット102A及び104の、ニップ116へと移動し、そこで繊維は十分に変位され、破断繊維を形成する。次に、このウェブは、ロール104と接着ロール156との間に形成されたニップ117へと進行し、そこで第2基材21Aが導入されて、変位された繊維6の遠位部分3に接着される。ニップ117を通過した後、構造化基材22は、ロール104とロール102Bとの間に形成されたニップ118へと進行するが、このニップ118での係合深さは、ロール104及びロール102Bが係合しないようにゼロであるか、又はその係合深さは、更なる繊維変位が構造化基材で生じないように、ロール102Aとロール104との間のニップ116で形成される係合深さより小さい。あるいは、この実施形態に関しては、第2基材21Aでは変形が生じるが、構造化基材22では更なる繊維変位が生じないように、ニップ118での係合深さを設定することができる。換言すれば、ニップ118での係合深さは、ニップ116での係合深さより更に小さい。
材料
本発明のベース基材のための繊維を形成するために使用される組成物は、熱可塑性ポリマー材料、及び非熱可塑性ポリマー材料を含み得る。熱可塑性ポリマー材料は、溶融紡糸に適したレオロジー特徴を有する必要がある。ポリマーの分子量は、ポリマー分子間の絡み合いを可能にするうえで充分でなければならず、なおかつ溶融紡糸を可能とするだけ充分に低くなければならない。溶融紡糸に関しては、熱可塑性ポリマーは、約1,000,000g/mol未満、好ましくは約5,000g/mol〜約750,000g/mol、より好ましくは約10,000g/mol〜約500,000g/mol、更により好ましくは約50,000g/mol〜約400,000g/molの分子量を有する。特に指定のない限り、示される分子量は、数平均分子量である。
熱可塑性ポリマー材料は、短繊維用の紡糸延伸プロセス又はスパンボンド連続繊維プロセスなどの、既知のプロセスで典型的に見られるように、比較的急速に、好ましくは延伸流動の下で固化して、熱安定性である繊維構造を形成することが可能である。好ましいポリマー材料としては、ポリプロピレン及びポリプロピレンコポリマー、ポリエチレン及びポリエチレンコポリマー、ポリエステル及びポリエステルコポリマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、ポリアクリレート、及びこれらのコポリマー、並びにこれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。他の好適なポリマー材料としては、米国特許出願公開第2003/0109605(A1)号及び同第2003/0091803号に詳細に述べられるような熱可塑性デンプン組成物がある。その他の好適なポリマー材料としては、エチレンアクリル酸、ポリオレフィンカルボン酸のコポリマー、及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらのポリマーは、米国特許公開第6746766号、米国特許第6818295号、同第6946506号、及び米国特許出願第03/0092343号に記載されている。通常の熱可塑性ポリマー繊維等級の材料が好ましく、特に、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリヒドロキシアルカノエート系樹脂、及びポリエチレン系樹脂、並びにこれらの組み合わせが好ましい。ポリエステル系樹脂及びポリプロピレン系樹脂が、最も好ましい。
本発明での使用に好適な熱可塑性ポリマーの非限定的な例としては、脂肪族ポリエステルアミド;脂肪族ポリエステル;ポリエチレンテレフタレート(PET)及びコポリマー(coPET)、ポリブチレンテレフタレート及びコポリマーを含めた、芳香族ポリエステル;ポリトリメチレンテレフタレート及びコポリマー;ポリプロピレンテレフタレート及びコポリマー;ポリプロピレン及びプロピレンコポリマー;ポリエチレン及びポリエチレンコポリマー;脂肪族/芳香族コポリエステル;ポリカプロラクトン;ポリ(ヒドロキシブチラート−コ−ヒドロキシバレラ−ト)、ポリ(ヒドロキシブチラート−コ−ヘキサノエート)、又は参照として本明細書に組み込まれる米国特許第5,498,692号(Noda)に参照されるような、他のより高分子のポリ(ヒドロキシブチラート−コ−アルカノエート)を含めた、ポリ(ヒドロキシアルカノエート);脂肪族ポリオール(すなわち、ジアルカノイルポリマー)から誘導される、ポリエステル及びポリウレタン;ポリアミド;ポリエチレン/ビニルアルコールコポリマー;乳酸ホモポリマー及び乳酸コポリマーを含めた、乳酸ポリマー;ラクチドホモポリマー及びラクチドコポリマーを含めた、ラクチドポリマー;グリコリドホモポリマー及びグリコリドコポリマーを含めた、グリコリドポリマー;及びこれらの混合物が挙げられる。脂肪族ポリエステルアミド、脂肪族ポリエステル、脂肪族/芳香族コポリエステル、乳酸ポリマー、及びラクチドポリマーが好ましい。
本明細書に記載される構造化繊維ウェブの形成について使用するために適した特定のポリエステルは、一部、再生可能資源を原料とすることができる。かかるポリエステルは、アルキレンテレフタレートを含むことができる。少なくとも一部、再生可能資源を原料とする、かかる適したアルキレンテレフタレートは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキシレンジメチルテレフタレート(PCT)、及びその組み合わせを含むことができる。例えば、かかるバイオ原料のアルキレンテレフタレートは、米国特許第7,666,501号;米国特許出願公開第2009/0171037号、同第2009/0246430号、同第2010/0028512号、同第2010/0151165号、同第2010/0168371号、同第2010/0168372号、同第2010/0168373号、及び同第2010/0168461号;及びPCT出願番号WO 2010/078328号に記載されており、それらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
バイオ原料PETの代替物は、再生可能材料から製造できる、ポリ(エチレン2,5−フランカルボン酸)(PEF)を含むことができる。PEFは、PETに対して同様の熱的及び結晶化性質を有している、再生可能又は一部再生可能なポリマーにすることができる。PEFは、スパンボンド繊維内の石油ベースのPET(又は別の適したポリマー)の唯一の代用品又はかかるPETとの混合物、及び再生可能材料によるこれらの不織布繊維の以降の製造の役割を果たす。これらのPEFの例は、PCT出願番号WO 2009/076627号及びWO 2010/077133号に記載されており、その開示は、参照によって本明細書に組み込まれる。
好適な乳酸ポリマー及びラクチドポリマーとしては、一般に約10,000g/mol〜約600,000g/mol、好ましくは約30,000g/mol〜約400,000g/mol、より好ましくは約50,000g/mol〜約200,000g/molの範囲の重量平均分子量を有している、それらのホモポリマー、及び乳酸及び/又はラクチドのコポリマーが挙げられる。市販のポリ乳酸ポリマーの例としては、Golden,ColoradoにあるChronopol Incorporationより入手可能な様々なポリ乳酸及び商標名EcoPLA(登録商標)で販売のポリラクチドが挙げられる。好適な市販のポリ乳酸の例は、Cargill Dow製のNATUREWORKS及びMitsui Chemical製のLACEAである。約160°〜約175℃の融点を有するポリ乳酸のホモポリマー又はコポリマーが好ましい。ポリL−乳酸、及び最大75%のD−異性体濃度を有するポリD、L−乳酸などの、変性ポリ乳酸並びに種々の立体配置もまた、使用することができる。高融点のPLAポリマーを作り出すための、D−異性体及びL−異性体の任意選択的なラセミ混合物もまた好ましい。これらの高い溶融温度PLポリマーは、溶融温度が180℃を超える特別なPLAコポリマーである(但しD−異性体及びL−異性体はステレオモノマーとして取り扱われる)。これらの高い溶融温度は、平均溶融温度を上げるために、晶子径を特別に制御することによって実現される。PET等の、他のポリエステルの代わりに使用可能な特定のポリ乳酸繊維は、米国特許第5,010,175号に記載されており、その開示は、参照することにより本明細書に記載される。
使用される特定のポリマー、プロセス、及び繊維の最終用途に応じて1種類よりも多いポリマーが望ましい場合もある。本発明のポリマーは、繊維の機械的特性、繊維の不透明度を向上させ、繊維との流体相互作用を最適化し、溶融加工性を向上させ、繊維の細繊化を向上させる量で存在する。ポリマーの選択及び量は、繊維が熱的に結合可能であるか否かを更に決定し、最終製品の柔軟性及びテクスチャに影響する。本発明の繊維は、単一のポリマー、ポリマーのブレンドを含むことができ、又は2種以上のポリマーを含むマルチコンポーネント繊維であってもよい。本発明における繊維は、熱接着性である。
多成分のブレンドが望ましい場合もある。例えば、この方法を用いてポリエチレンとポリプロピレンのブレンド(以後、ポリマーアロイと呼ぶ)を混合及び紡糸することができる。別の実施例は、異なる粘度又は異なるモノマー含有量を有している、ポリエステルのブレンドである。区別可能な化学種を各要素に含有する多要素繊維を製造することもできる。その非限定的な例としては、25メルトフローレート(MFR)のポリプロピレンと50MFRのポリプロピレンとの混合物、及び25MFRのホモポリマーポリプロピレンと、コモノマーとしてのエチレンとポリプロピレンとの25MFRのコポリマーとの混合物が挙げられる。
より好ましいポリマー材料は、110℃を超える溶融温度を有し、より好ましくは130℃を超え、更により好ましくは145℃を超え、また更により好ましくは160℃を超え、最も好ましくは200℃を超える。本発明では、高いガラス相転移温度を有するポリマーが更に好ましい。最終用途繊維の形態において−10℃を超えるガラス相転移温度が好ましく、より好ましくは0℃を超え、更により好ましくは20℃を超え、最も好ましくは50℃を超える。この特性の組み合わせにより、高温に適した繊維が生じる。このタイプの材料の例示的な例は、ポリプロピレン、ポリ乳酸系ポリマー、及びポリエステルテレフタレート(PET)系のポリマー系である。
再生可能資源を原料とするポリマーの検証
適した検証技術は、14Cの分析によるものである。大気中における少量の二酸化炭素は、放射性である。14Cの二酸化炭素は、紫外線が窒素に当たり、窒素が中性子を生じ、窒素がプロトンを失って、分子量14の炭素を形成し、これが直ちに二酸化炭素に酸化されるときに生成される。。この放射性アイソトープは、大気中の炭素の少量であるが測定可能な部分である。大気中の二酸化炭素は、緑色植物によって循環され、光合成中に有機分子を製造する。循環は、緑色植物又は生命体の他の形態が、有機分子を代謝して二酸化炭素を生成すると完了し、それは再び大気への二酸化炭素の放出を引き起こす。地球上の実質的にすべての形態の生物の、成長及び繁殖は、有機分子のこの緑色生物の生産に依存している。したがって、大気中に存在する14Cは、すべての生命形態及びそれらの生物学的生成物の一部となる。対照的に、化石燃料系炭素は、大気の二酸化炭素のシグネチャー放射性炭素比率を有さない。
標準的なテスト方法によって材料内の再生可能エネルギーに基づく炭素の査定を実施できる。放射性炭素及びアイソトープ比率質量分析を用いて、材料のバイオベース含有量を決定できる。米国材料試験協会として以前は知られていたASTM Internationalは、材料のバイオベース含有量を査定するための標準的な方法を確立した。ASTMの方法は、ASTM D6866−10と称される。
「バイオベースの含有量」を導き出すためのASTM D6866−10の適用は、放射性炭素年代測定法と同じ概念上に構築されるが、年齢方程式の使用を伴わない。分析は、未知の試料中の有機放射性炭素(14C)の量の、現代参照基準の量に対する比率を導き出すことによって行われる。比率は、単位「pMC」(現代炭素パーセント)による百分率として報告される。
放射性炭素年代測定法において使用される現代参照基準は、およそAD 1950年と同等の既知の放射性炭素含有量によるNIST(米国標準技術局)基準である。AD 1950年は、各爆発と共に大量の過剰の放射性炭素(「爆発炭素」と称される)を大気中に導入した、熱核兵器実験前の時を代表するため、それが選択された。AD 1950参照は、100pMCを代表する。
実験のピークであり、かつ実験を停止させる条約の前の1963年に、大気中の「爆発炭素」は、正常濃度のほぼ2倍に到達した。大気内のその分布は、その出現以来近似されており、AD 1950年以来生存している植物及び動物について100pMCを超える値を示す。これは、時間と共に徐々に減少し、今日の値は107.5pMCに近くなっている。これはすなわち、トウモロコシなどの新しいバイオマス材料によって、放射性炭素値特性がおよそ107.5pMC付近になることを意味する。
化石炭素を現代の炭素と物質中に組み合わせることは、現代のpMC含有量の希釈をもたらすであろう。107.5pMCが現代のバイオマス物質を代表し、0pMCが石油誘導体を代表すると推定することによって、その物質について測定されるpMC値は、2つの構成成分タイプの割合を反映するであろう。現代のダイズに100%由来する物質は、107.5pMCに近い放射性炭素シグネチャーをもたらすであろう。例えば、その材料が50%石油誘導体で希釈される場合、54pMCに近い放射性炭素シグネチャーが生じる(石油誘導体がダイズと同じ炭素パーセンテージを有すると仮定)。
バイオマス含有量結果は、100%が107.5pMCに等しく、0%が0pMCに等しいように割り当てることによって導き出される。この点で、99pMCと測定される試料は、92%の同等のバイオベース含有量結果をもたらすであろう。
本明細書に記載される材料の査定は、ASTM D6866に従って行われた。この報告で引用される中央値は、最終構成成分放射性炭素シグネチャーにおける変動を計上するために、6%の絶対範囲(バイオベース含有量値のいずれかの側からプラスマイナス3%)を包含する。すべての物質が、現代の又は化石の起源であり、所望の結果は、製造プロセスにおいて「使用される」バイオ物質の量ではなく、物質中に「存在する」バイオ構成成分の量であることが推定される。
一実施形態では、構造化繊維ウェブは、ASTM D6866−10、方法Bを用い、約10%〜約100%のバイオベース含有量の値を含む。他の実施形態では、構造化繊維ウェブは、ASTM D6866−10、方法Bを用い、約25%〜約75%のバイオベース含有量の値を含む。更に他の実施形態では、構造化繊維ウェブは、ASTM D6866−10、方法Bを用い、約50%〜約60%のバイオベース含有量の値を含む。
いずれかの構造の繊維ウェブのバイオベース含有量を決定するためにASTM D6866−10の方法を適用するには、テストのために構造繊維ウェブの代表的なサンプルを入手する必要がある。一実施形態において、構造繊維ウェブを、公知の破砕方法(例えばWiley(登録商標)ミル)を使用して約20メッシュ未満の粒子に破砕することができ、適した質量の代表的なサンプルを、ランダムに混合した粒子から取ることができる。
任意材料
所望により、ベース基材のための繊維を形成するために使用される、紡糸可能な組成物中に、他の成分を混和することができる。必要に応じて用いられる材料を使用することによって加工性を改変し、及び/又は最終製品の不透明度、弾性、引っ張り強度、湿潤強度、及び弾性率などの物理特性を改変することができる。他の効果としては、これらに限定されるものではないが、酸化安定性などの安定性、白色度、色、可撓性、弾力性、加工性、加工助剤、粘度改変剤、及び悪臭防止効果が挙げられる。必要に応じて用いられる材料の例としては、これらに限定されるものではないが、二酸化チタン、炭酸カルシウム、着色顔料、及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらに限定されるものではないが、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、及びチタンの酸化物などの無機充填剤を含む更なる添加物を安価な充填剤又は加工助剤として添加してもよい。他の好適な無機材料としては、これらに限定されるものではないが、ケイ酸マグネシウム水和物、二酸化チタン、炭酸カルシウム、粘土、チョーク、窒化ホウ素、石灰岩、珪藻土、雲母、ガラス、石英、及びセラミックスが挙げられる。更に、これらに限定されるものではないが、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、及びリン酸塩などの無機塩類を使用することもできる。
所望により、他の成分を、組成物中に混和することができる。必要に応じて用いられるこれらの成分は、組成物の重量に対して約50重量%未満、好ましくは約0.1重量%〜約20重量%、更に好ましくは約0.1重量%〜約12重量%の量で存在してよい。必要に応じて用いられるこれらの成分を使用することによって、加工性を改変し、及び/又は最終製品の弾性、引っ張り強度及び弾性率といった物理的特性を改変することができる。他の効果としては、酸化安定性を含めた安定性、白色度、可撓性、色、弾力性、加工性、加工助剤、粘度修正剤、生分解性、及び臭気制御が挙げられるが、これらに限定されない。非限定的な例としては、塩、スリップ剤、結晶化促進剤又は抑制剤、臭気マスキング剤、架橋剤、乳化剤、界面活性剤、シクロデキストリン、潤滑剤、他の加工助剤、光学的光沢剤、酸化防止剤、難燃剤、染料、顔料、充填剤、タンパク質及びそのアルカリ塩、ワックス、粘着付与樹脂、増量剤、並びにこれらの混合物が挙げられる。スリップ剤を使用して、繊維の粘着度又は摩擦係数の低減に役立てることができる。また、スリップ剤を使用して、特に高い湿度又は温度での、繊維の安定性を向上させることができる。好適なスリップ剤は、ポリエチレンである。熱可塑性のデンプン(TPS)もまた、ポリマー組成物に添加することができる。ポリエステル熱可塑性材料、具体的にはPETの、製造及び使用の際の静電気の蓄積を低減するために使用されるポリマー添加物が、特に重要である。そのような好ましい材料は、アセトアルデヒドスカベンジャー、エトキシル化ソルビトールエステル、グリセロールエステル、スルホン酸アルキル、これらの組み合わせ及び混合物、並びに配合誘導体である。
マグネシウム、アルミニウム、シリコン、及びチタンの酸化物などの無機充填剤を含む更なる添加剤を安価な充填剤又は加工助剤として添加してもよい。その他の無機材料としては、水和ケイ酸マグネシウム、二酸化チタン、炭酸カルシウム、粘土、チョーク、窒化ホウ素、石灰石、珪藻土、雲母、ガラス、石英、及びセラミックスが挙げられる。更に、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、リン酸塩などの無機塩類を加工助剤として使用してもよい。熱可塑性デンプンブレンド繊維の水反応性を修正する他の任意材料は、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、及び他のステアレートなどの、ステアレート系塩、並びにガムロジンなどの、ロジン構成成分である。
親水性剤を、ポリマー組成物に添加してもよい。親水性剤は、当該技術分野において既知の標準的方法で添加することができる。親水性剤は、低分子量のポリマー材料又はポリマー化合物とすることができる。親水性剤はまた、高分子量を有するポリマー材料であってもよい親水性剤は、0.01重量%〜90重量%の量で存在し、0.1重量%〜50重量%の好ましい範囲、及び0.5重量%〜10重量%の更により好ましい範囲を有し得る。親水性剤は、樹脂の製造元で、最初の樹脂を製造する際に添加するか、又は繊維を作製する際に、押出成形機内のマスターバッチとして添加することができる。好ましい作用剤は、ポリエステル系ポリマーのための、ポリエステルポリエーテル、ポリエステルポリエーテルコポリマー、及び非イオン性ポリエステル化合物である。エトキシル化低分子量及び高分子量の、ポリオレフィン化合物もまた、添加することができる。これらの材料に相溶化剤を添加して、これらの材料に関するより良好な加工処理を補助し、より均一で均質なポリマー化合物を生み出すことができる。当業者は、相溶化剤の使用は、本質的にはベースポリマーでは効果的でない融解添加物を使用してポリマーアロイを製造するための配合工程で、追加し得ることを理解されよう。例えば、ベースのポリプロピレン樹脂は、相溶化剤としての変性ポリプロピレンの使用によって、親水性のポリエステルポリエーテルコポリマーと結合させることができる。
繊維
本発明におけるベース基材を形成する繊維は、モノコンポーネント又はマルチコンポーネントとすることができる。用語「繊維」は、1,000より大きい長さ対厚さの比を有している、固化ポリマー形状として定義される。本発明のモノコンポーネント繊維はまた、多成分であってもよい。本明細書で使用するところの成分とは、物質又は材料の化学種を意味するものとして定義される。多成分繊維は、本明細書で使用するとき、2種以上の化学種又は材料を含有する繊維を意味するように定義される。多成分ポリマー及びアロイポリマーは、本発明では同じ意味を有し、互換的に使用することができる。一般的には、繊維は、モノコンポーネントのタイプのものか、又はマルチコンポーネントのタイプのものとすることができる。コンポーネントとは、本明細書で使用するとき、繊維の別の部分に対して空間的関係を有する、繊維の別個の部分として定義される。マルチコンポーネントという用語は、本明細書で使用するとき、繊維が、互いに対する空間的関係において2つ以上の別個の部分を有することとして定義される。マルチコンポーネントという用語は、繊維が、互いに対する空間的関係において2つの別個の部分を有することとして定義される、バイコンポーネントを包含する。マルチコンポーネント繊維の異なるコンポーネントは、繊維の横断面にわたって実質的に個別の区域内に配置構成され、繊維の長さに沿って連続して延びる。マルチコンポーネント繊維を作製するための方法は、当該技術分野において周知である。マルチコンポーネント繊維の押出成形は、1960年代には周知であった。Dupontは、マルチコンポーネント機能の主要な技術開発企業であり、米国特許第3,244,785号及び同第3,704,971号は、これらの繊維を作製するために使用される技術の技術的な説明を記載している。1971年のMerrow Publishing、R.Jeffriesによる「Biocomponent Fibers」は、バイオコンポーネント技術の強固な基礎を形作った。より最近の刊行物としては、「Taylor−Made Polypropylene and Bicomponent Fibers for the Nonwoven Industry」(Tappi Journal 1991年12月(103ページ))、及び「Advanced Fiber Spinning Technology」(Nakajima編、Woodhead Publishingより)が挙げられる。
本発明で形成される不織布は、種々の押出成形システムから、同じ紡糸口金を通じて供給される、複数のタイプのモノコンポーネント繊維を含み得る。この実施例では、押出成形システムは、種々のポリマーを別個の毛管に供給するマルチコンポーネント押出成形システムである。例えば、一方の押出成形システムが、ポリエステルテレフタレートを供給し、他方が、ポリエステルテレフタレートコポリマーを供給するが、このコポリマー組成物は、異なる温度で融解する。第2実施例では、一方の押出成形システムが、ポリエステルテレフタレート樹脂を供給し、他方が、ポリプロピレンを供給することができる。第3の実施例では、一方の押出成形システムが、ポリエステルテレフタレート樹脂を供給し、他方が、この第1ポリエステルテレフタレート樹脂とは異なる分子量を有する追加的なポリエステルテレフタレート樹脂を供給することができる。このシステムでのポリマーの比率は、95:5〜5:95、好ましくは90:10〜10:90及び80:20〜20:80の範囲とすることができる。
バイコンポーネント繊維及びマルチコンポーネント繊維は、並列、シース−コア、分割パイ、リボン、海島型の構成、又はこれらの任意の組み合わせの形とすることができる。シースはコアの周囲において連続的又は非連続的であってよい。代表的なマルチコンポーネント繊維の非限定的な実施例は、米国特許第6,746,766号に開示されている。コアに対するシースの重量比は、約5:95〜約95:5である。本発明の繊維は、種々の幾何学的形状を有し得、それらの形状としては、丸形、楕円形、星形、三葉形、3〜8つの葉を備える多葉形、矩形、H形状、C形状、I形状、U形状、及び他の様々な偏心形状が挙げられるが、これらに限定されない。中空繊維もまた、使用することができる。好ましい形状は、丸形、三葉形、及びH形状である。丸形及び三葉形の繊維形状はまた、中空であってもよい。
「高度細繊化繊維」とは、高い引き下げ(draw down)比を有する繊維として定義される。繊維全体の引き下げ比は、最大直径での繊維(典型的には、毛管から抜け出た直後に生じる)と、最終用途での最終的な繊維直径との比率として定義される。繊維全体の引き下げ比は、1.5より大きい、好ましくは5より大きい、より好ましくは10より大きい、最も好ましくは12より大きい。これは、触覚性、及び有用な機械的特性を達成するために必要である。
本発明の成形繊維の繊維「直径」は、繊維の外周に外接する円の直径として定義される。中空繊維の場合では、直径は中空領域の直径ではなく、中実領域の外縁部の直径である。非円形の繊維の場合では、繊維直径は、非円形繊維の葉部又は縁部の最も外側の点に外接する円を用いて測定される。この外接円の直径は、その繊維の有効直径と呼ばれる場合もある。好ましくは、高度細繊化マルチコンポーネント繊維は、500マイクロメートル未満の有効繊維直径を有する。より好ましくは、この有効繊維直径は、250マイクロメートル以下、更により好ましくは100マイクロメートル以下、最も好ましくは50マイクロメートル以下である。不織布を作製するために通常使用される繊維は、約5マイクロメートル〜約30マイクロメートルの有効繊維直径を有する。本発明における繊維は、典型的なスパンボンド不織布で見られる繊維よりも、大きくなる傾向がある。したがって、10マイクロメートル未満の有効直径を有する繊維は有用ではない。本発明で有用な繊維は、約10マイクロメートルより大きい有効直径、より好ましく15マイクロメートルより大きい有効直径、最も好ましくは20マイクロメートルより大きい有効直径を有する。繊維直径は、紡糸速度、質量スループット、及びブレンド組成によって制御される。本発明における繊維が積層構造体へと作製される場合、その層は、小径繊維を含み得る追加層、更にはナノ寸法の繊維さえも含み得る追加層と、組み合わせることができる。
スパンレイド直径という用語は、繊維が、約12.5マイクロメートルより大きい、最大50マイクロメートルまでの有効直径を有することを指す。この直径範囲は、最も標準的なスパンレイド装置によって作り出される。マイクロメートル及びミクロン(μm)は、同じことを意味し、互換的に使用することができる。メルトブローン直径は、スパンレイド直径よりも小さい。メルトブローン直径は、典型的には、約0.5〜約12.5マイクロメートルである。好ましいメルトブローン直径は、約1〜約10マイクロメートルの範囲である。
成形繊維の直径は、判定し難い場合があるため、その繊維のデニールが参照される場合が多い。デニールは、9000リニアメートルの長さでの、グラム単位の繊維の質量として定義され、dpf(フィラメント当たりのデニール)として表される。したがって、直径からデニールへ変換する場合、及びその逆の場合には、繊維の固有密度も要因に含まれる。本発明に関しては、好ましいデニールの範囲は、1dpfより大きい、100dpf未満である。より好ましいデニールの範囲は、1.5dpf〜50dpf、更により好ましい範囲は、2.0dpf〜20dpf、最も好ましい範囲は、4dpf〜10dpfである。ポリプロピレンに関するデニールと直径との関係の例は、約0.900g/cm3の密度を有する中実丸形のポリプロピレンの1dpfの繊維は、約12.55マイクロメートルの直径を有する。
本発明に関しては、繊維は、制限された伸縮性を有し、圧縮力に耐えるための剛性を呈することが望ましい。本発明の繊維は、フィラメント当たり5gより大きい、個々の繊維破断荷重を有する。繊維の引っ張り特性は、ASTM標準規格D 3822−91によって一般に説明される手順、又は等価試験に従って測定されるが、使用した実際の試験は、以下で詳細に説明される。引っ張り係数(特に指定のない限り、ASTM標準規格D 3822−91で指定される初期係数)は、0.5GPa(ギガパスカル)より大きい、より好ましくは1.5GPaより大きい、更により好ましくは2.0GPaより大きい、最も好ましくは3.0GPaより大きくあるべきである。より高い引っ張り係数は、持続可能な比容積を提供する、より剛性の繊維を作り出す。実施例は、以下に記載される。
本発明では、繊維の親水性及び疎水性を調節することができる。ベース樹脂の特性は、共重合を介した親水性の特性を有し得る(特定のポリエステル(一般にスルホポリエステル群のポリマーである、Eastman Chemical製のEASTONE)又はポリプロピレン若しくはポリエチレンなどのポリオレフィンに関する場合など)か、又はベース樹脂に添加され、そのベース樹脂を親水性にさせる材料を有し得る。添加物の代表的な例には、CIBA Irgasurf(登録商標)の群の添加物が含まれる。本発明における繊維はまた、作製された後に、処理又はコーティングして、親水性にさせることもできる。本発明では、耐久性のある親水性が好ましい。耐久性のある親水性とは、2回以上の流体相互作用の後に、親水性の特性を維持していることとして、定義される。例えば、評価中のサンプルが、耐久性のある親水性に関して試験される場合には、サンプル上に水を注ぎ、湿潤を観察することができる。サンプルが浸潤しているならば、そのサンプルは、初期には親水性である。次に、サンプルを水で完全にすすぎ、乾燥させる。このすすぎは、サンプルを大きな容器内に入れて10秒間攪拌し、次いで乾燥させることによって、最良に行なわれる。乾燥後のサンプルはまた、再び水と接触させた場合にも、浸潤するべきである。
本発明の繊維は、熱安定性である。繊維の熱安定性は、熱湯中で30%未満の収縮、より好ましくは20%未満の収縮、最も好ましくは10%未満の収縮を有することとして、定義される。本発明における一部の繊維は、5%未満の収縮を有する。収縮は、熱湯中に1分間定置される前後の、繊維の長さを測定することによって判定される。高度細繊化繊維は、熱安定性である繊維の製造を可能にする。
本発明におけるベース基材で使用される繊維形状は、いくつかある形状の中でも特に、中実丸形、中空丸形、及び様々な多葉形の成形繊維からなることができる。互いに異なる断面形状を有する成形繊維の混合物とは、走査型電子顕微鏡によって断面を調べた場合に、区別可能に充分に異なる断面形状を有する少なくとも2種類の繊維として定義される。例えば、2種類の繊維は三葉形であるが、一方の三葉形は長い脚を有し、他方の三葉形は短い脚を有してもよい。好ましくはないが、成形繊維は、全体的な断面形状が同じであっても1つの繊維が中空であって別の繊維が中実である場合には、異なっているとされる場合もある。
多葉(multi-lobal)形状の繊維は、中実であっても、中空であってもよい。多葉形繊維は、繊維の外側表面に沿って、2つ以上の変曲点を有するとして定義される。変曲点とは、繊維の軸に垂直に繊維を切断した場合の、繊維表面に対して垂直に引いた線の傾斜の絶対値における変化であるとして、定義される。成形繊維には、三日月形、楕円形、方形、菱形、又は他の好適な形状も含まれる。
中実円形の繊維は、合成繊維の業界では長年にわたって既知である。これらの繊維は、繊維断面の幅にわたって光学的に実質的に連続した物質の分布を有する。これらの繊維は、微小空隙、又は内部フィブリル化を含み得るが、実質的に連続であると見なされる。中実丸形繊維の外側表面に関しては、変曲点は存在しない。
本発明の中空繊維は、円形形状又は多葉形状のいずれかによらず中空領域を有する。中空繊維の中実の領域が中空の領域を包囲する。中空領域の外周は、中実領域の内周でもある。中空領域は、中空繊維と同じ形状であってもよく、又は中空領域の形状は、非円形又は非同心状とすることができる。複数の中空領域が繊維内に存在してもよい。
中空領域は、いかなる材料も含まない繊維の部分として定義される。また、空隙領域又はから空間として述べることもできる。中空領域は、繊維の約2%〜約60%を構成する。中空領域は、好ましくは繊維の約5%〜約40%を構成する。中空領域は、より好ましくは繊維の約5%〜約30%を構成し、最も好ましくは繊維の約10%〜約30%を構成する。これらの割合は、中空繊維の断面領域(すなわち2次元)に対して与えられたものである。
本発明においては中空領域の割合を制御する必要がある。中空領域の百分率は、好ましくは2%より大きいが、さもなければ、中空領域の効果は、意味を持たない。しかしながら、中空領域は、好ましくは60%未満であり、さもなければ、繊維が圧潰する恐れがある。所望の中空率(%)は、使用される材料、繊維の最終用途、並びに他の繊維特徴及び用途によって決まる。
互いに区別される断面形状を有する、2種以上の成形繊維の平均繊維直径は、各繊維のタイプの平均デニールを測定し、各成形繊維のデニールを、等価の中実丸形繊維の直径に変換し、各成形繊維の、総繊維含有量の百分率によって重み付けした平均直径を合わせて加え、繊維のタイプ(異なる成形繊維)の総数で除算することによって算出される。平均繊維デニールもまた、平均繊維直径(又は等価の中実丸形繊維の直径)を、繊維の密度の関係によって変換することによって算出される。平均直径が、少なくとも約10%高いか又は低い場合には、繊維は、異なる直径を有すると見なされる。互いに異なる断面形状を有する2種類以上の成形繊維は、同じ直径を有しても、又は異なる直径を有してもよい。更にこれらの成形繊維は、同じデニールを有しても、又は異なるデニールを有してもよい。特定の実施形態では、これらの成形繊維は、直径は異なるが同じデニールを有する。
多葉形繊維には、これらに限定されるものではないが、三葉形及びデルタ形などの最も一般的に見られる形態が含まれる。多葉形繊維の他の好適な形状としては、三角形、方形、星形、又は楕円形が挙げられる。これらの繊維は、少なくとも1つの傾斜変曲点を有するとして、最も正確に説明される。傾斜変曲点とは、繊維の傾斜が変化する、繊維の表面の外周に沿った点として、定義される。例えば、デルタ形状の三葉形繊維は、3つの傾斜変曲点を有し、顕著な三葉形繊維は、6つの傾斜変曲点を有する。本発明における多葉形繊維は、一般に、約50未満の傾斜変曲点、最も好ましくは約20未満の傾斜変曲点を有する。多葉形繊維は非円形として一般的に述べることができ、中実又は中空のいずれであってもよい。
本発明の1成分及び多成分繊維(multiconstituent)は、多くの異なる形態を有し得る。本明細書で使用するところの成分とは、物質又は材料の化学種を意味するものとして定義される。繊維はモノコンポーネントの形態であってもよい。コンポーネントとは、本明細書で使用するとき、繊維の別の部分に対して空間的関係を有する、繊維の別個の部分として定義される。
繊維を形成した後に、その繊維を更に処理してもよく、又はその接着布を処理することもできる。親水性仕上げ又は疎水性仕上げを追加して、布地の表面エネルギー及び化学的性質を調節することができる。例えば、親水性である繊維を湿潤剤で処理し、水性液体の吸収を促進させることができる。接着布もまた、界面活性剤、顔料、スリップ剤、塩、又は他の材料を含有する局所溶液で処理し、繊維の表面特性を更に調節することができる。
本発明における繊維は、捲縮させることが可能であるが、この繊維は捲縮させないことが好ましい。捲縮繊維は、一般に、2つの方法で作り出される。第1方法は、既に紡糸された後の、繊維の機械的な変形である。繊維を溶融紡糸して、最終フィラメント直径まで引き下げ、一般的には、2次元的捲縮若しくは3次元的捲縮のいずれかを付与する歯車又はスタッファーボックスに通して、機械的に処理する。この方法は、殆どのカーディングされた短繊維を作り出す際に使用されるが、しかしながら、カーディングされた短繊維の布地は、繊維が連続的ではなく、また捲縮繊維から製造される布地は、繊維変形技術を使用する前に、概して非常に嵩高であるため、好ましくない。繊維を捲縮させるための第2方法は、スパンレイドプロセスにおいて捲縮することが可能な、マルチコンポーネント繊維を押し出すことである。当業者は、バイコンポーネント捲縮スパンボンド繊維を作製する数多くの方法が存在することを認識するであろうが、しかしながら、本発明に関しては、捲縮スパンレイド不織布を作製するために、3つの主要な技術を考察する。第1方法は、ポリマーの種類、ポリマーの分子量特徴(例えば分子量の分布)、又は添加剤の含量の差異に基づく紡糸線におけるポリマーの結晶化の差のために紡糸線において生じる捲縮である。第2方法は、スパンレイド基材へと紡糸された後の、繊維の収縮差である。例えば熱接着プロセスの間などに、スパンレイドウェブを加熱することによって、紡糸されたままの繊維内での結晶化度の差異のために、繊維の捲縮を引き起こすことができる。捲縮を引き起こす第3の方法は、繊維又はスパンレイドウェブを、機械的に伸張させることである(一般に、機械的な伸張に関しては、ウェブは一体となって接着されている)。この機械的な伸張は、2種のポリマーコンポーネント間の、応力−歪み曲線における差異を顕在化させることができ、この差異によって捲縮を引き起こすことができる。
後の2つの方法は、繊維が紡糸された後で実行しなければならないために、通常は、潜在的捲縮プロセスと呼ばれる。本発明では、捲縮繊維の使用に関しては、優先順位が存在する。カーディングされた短繊維の布地は、それらが1.3mm未満のベース基材の厚さを有するのであれば、使用することができる。スパンレイド布地又はスパンボンド布地は、連続フィラメントを含むために好ましく、ベース基材の厚さ、すなわちキャリパーが1.3mm未満であれば、捲縮させることができる。本発明に関しては、ベース基材は、100重量%未満の捲縮繊維、好ましくは50重量%未満の捲縮繊維、より好ましくは20重量%未満の捲縮繊維、より好ましくは10重量%未満の捲縮繊維、最も好ましくは0重量%の捲縮繊維を含む。捲縮プロセスは、繊維の表面上で移送される流体の量を低減する可能性があり、また捲縮は、ベース基材の特定の密度を低減することによって、ベース基材の固有の毛管現象を低減する可能性があることから、捲縮していない繊維が好ましい。
短い長さの繊維とは、50mm未満の長さを有する繊維として、定義される。本発明では、連続繊維は、2つの付加的効果をもたらすため、短く切断された繊維よりも好ましい。第1効果は、流体が、繊維端部を経ずに、より長距離を移送され、それゆえ毛細現象の増強がもたらされ得ることである。第2効果は、連続繊維は、接着された網目が、短い長さの繊維から構成されるマトリックスよりも、より全体として相互接続している繊維の連続的なマトリックスを有するために、より高い引っ張り強度及び剛性を有するベース基材を作り出すことである。本発明のベース基材は、非常に少量の短い長さの繊維、好ましくは50重量%未満の短い長さの繊維、より好ましくは20重量%未満の短い長さの繊維、より好ましくは10重量%未満の短い長さの繊維、最も好ましくは0重量%の短い長さの繊維を含むことが好ましい。
本発明におけるベース基材のために製造される繊維は、好ましくは熱接着性である。本発明における熱接着性とは、ピーク融点近く又はピーク融点を超えて上昇すると軟化し、少なくとも低い圧力の適用の影響下で、一体となって固着又は融着する繊維として定義される。熱接着に関しては、熱可塑性繊維の総含有量は、30重量%を超え、好ましくは50重量%を超え、更により好ましくは70重量%を超え、最も好ましくは90重量%を超えるべきである。
スパンレイドプロセス
本発明におけるベース基材を形成する繊維は、好ましくは、スパンレイド布地を形成する連続フィラメントである。スパンレイド布地とは、本質的に連続的なフィラメントから形成される、基本的に凝集性の引っ張り特性を有さない、非接着布地として定義される。連続フィラメントとは、10,000:1を超える比率の、長さ対直径の高い比率を有する繊維として定義される。スパンレイド布地を構成する、本発明における連続フィラメントは、短繊維、短く切断された繊維、又は他の意図的に作製された短い長さの繊維ではない。本発明における連続フィラメントは、平均して、長さ100mmを超え、好ましくは長さ200mmを超える。本発明における連続フィラメントはまた、意図的に又は非意図的に、捲縮されていない。
本発明におけるスパンレイドプロセスは、米国特許第3,802,817号、同第5,545,371号、同第6,548,431号、及び同第5,885,909号に開示されるような高速紡糸プロセスを用いて作られる。これらの溶融紡糸プロセスでは、押出成形機が、溶融ポリマーを溶融ポンプに供給し、この溶融ポンプが、特定の体積の溶融ポリマーを送り出すと、この溶融ポリマーは、複数の毛管から構成される紡糸パックを通過して移動し、繊維へと形成され、ここでその繊維は、空気焼入れ区域を通過して冷却され、空気圧的に引き下げられて、その寸法を高度細繊化繊維へと低減し、分子レベルの繊維配向によって繊維強度を増大させる。次に、この引き出された繊維は、形成ベルト又は形成テーブルと称される場合が多い、多孔性のベルト上に堆積する。
連続フィラメントを作製するために使用される、本発明におけるスパンレイドプロセスは、1メートル当たり100〜10,000の毛管、好ましくは1メートル当たり200〜7,000の毛管、より好ましくは1メートル当たり500〜5,000の毛管、更により好ましくは1メートル当たり1,000〜3,000の毛管を含む。本発明における、1つの毛管当たりのポリマーの質量流量は、0.3GHM(毎分の1つの穴当たりのグラム)より大きい。好ましい範囲は、0.4GHM〜15GHM、好ましくは0.6GHM〜10GHM、更により好ましくは0.8GHM〜5GHM、最も好ましい範囲は1GHM〜4GHMである。
本発明におけるスパンレイドプロセスは、高度に細繊化された、捲縮していない連続フィラメントを作製するための、単一のプロセス工程を含む。押し出されたフィラメントは、急冷用空気の区域を通過して引き出され、この区域でフィラメントは、細繊化しつつ、冷却されて硬化する。そのようなスパンレイドプロセスは、米国特許第3338992号、同第3802817号、同第4233014号、同第5688468号、同第6548431(B1)号、同第6908292(B2)号、及び米国特許出願第2007/0057414(A1)号に開示されている。欧州特許第1340843(B1)号、及び同第1323852(B1)号に記載される技術もまた、スパンレイド不織布を製造するために使用することができる。高度細繊化連続フィラメントは、紡糸口金からのポリマー出口から、細繊化デバイスへと直接引き下げられるが、スパンレイド布地は形成テーブル上で形成されるため、ここでは連続フィラメントの直径又はデニールは、実質的に変化しない。本発明において好ましいスパンレイドプロセスは、引き出しデバイスを含んでおり、このデバイスは、紡糸口金出口と、この空気圧式引き出しデバイスとの間に、繊維を空気圧的に引き出し、形成ベルト上に繊維を横たえることができる。このプロセスは、紡糸口金から繊維を機械的に引き出す、他のスパンレイドプロセスとは異なる。
本発明に関するスパンレイドプロセスは、単一の工程で、前述のような、既定の固有引っ張り強度、繊維直径、又はデニールを有する、熱安定性であり、連続及び非捲縮繊維を製造する。好ましいポリマー材料としては、ポリプロピレン及びポリプロピレンコポリマー、ポリエチレン及びポリエチレンコポリマー、ポリエステル及びポリエステルコポリマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、ポリアクリレート、及びこれらのコポリマー、並びにこれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。他の好適なポリマー材料としては、米国特許出願公開第2003/0109605(A1)号及び同第2003/0091803号に詳細に述べられるような熱可塑性デンプン組成物がある。更に他の好適なポリマー材料としては、エチレンアクリル酸、ポリオレフィンカルボン酸コポリマー、及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらのポリマーは、米国特許第6746766号、同第6818295号、同第6946506号、及び米国特許出願第03/0092343号に記載されている。通常の熱可塑性ポリマー繊維等級の材料が好ましく、特に、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリヒドロキシアルカノエート系樹脂、及びポリエチレン系樹脂、並びにこれらの組み合わせが好ましい。ポリエステル系樹脂及びポリプロピレン系樹脂が、最も好ましい。代表的なポリエステルテレフタレート(特に指定のない限り、以降ではポリエステルと称する)樹脂は、Eastman F61HC(IV=0.61dL/g)、Eastman 9663(IV=0.80dL/g)、DuPont Crystar 4415(IV=0.61gl/g)である。好適なコポリエステルは、Eastman 9921(IV−0.81)である。本発明に関して好適な、ポリエステル固有粘度(IV)の範囲は、約0.3dL/g〜0.9dL/g、好ましくは0.45dL/g〜0.85dL/g、より好ましくは0.55dL/g〜0.82dL/gの範囲である。固有粘度は、ポリマー分子量の尺度であり、ポリマー技術の当業者には周知である。本発明におけるポリエステル繊維は、アロイ、モノコンポーネント、及び成形されたものとすることができる。好ましい実施形態は、3dpf〜8dpfのデニールを有する、0.61dL/gの樹脂から製造される、多葉形の、好ましくは三葉形のポリエステル繊維である。本発明では、PETが最も一般的に参照されるが、PBT、PTT、PCTなどの、他のポリエステルテレフタレートポリマーを使用してもよい。
予期せぬことに、樹脂特性の特定の組み合わせをスパンボンドプロセスで使用して、高デニールの熱接着PET不織布を製造し得ることが見出された。Eastman F61HC PETポリマー及びEastman 9921 coPETは、熱接着されていても熱安定性である繊維を製造するための、理想的な組み合わせを提供することが見出されている。この予期せぬ発見は、F61HC及び9921が、別個の毛管を通じて、70:30〜90:10の範囲の比率(F61HC:9921比率)で押し出すことができ、結果として得られるウェブが、一体となって熱接着され、熱安定性である不織布を作り出し得ることである。この実施例における熱安定性であるとは、熱湯中で5分後に、MDで10%未満の収縮を有することとして、定義される。この熱的安定性は、4000メートル/分より大きい紡糸速度によって達成され、丸形繊維及び成形繊維の双方において、1dpf〜10dpfの範囲のフィラメントのデニールを作り出す。5g/m2〜100g/m2の範囲の坪量が作り出されている。これらの布地は、熱ポイント接着で作り出されている。これらのタイプの布地は、使い捨て吸収性物品、乾燥機用シート、及び屋根用フェルトなどの、広範囲の用途で使用することができる。所望の場合、マルチビームシステムを単独で使用してもよく、又は微細繊維直径の層を、2つのスパンレイド層の間に定置させてから、一体に接着してもよい。
更なる好ましい実施形態は、ポリプロピレン繊維及びスパンレイド不織布の使用である。ポリプロピレンに関する好ましい樹脂特性は、5MFR(10分当たりの、グラム単位のメルトフローレート)〜400MFRのメルトフローレートであり、10MFR〜100MFRの好ましい範囲、15MFR〜65MFRの更により好ましい範囲、及び23MFR〜40MFRの最も好ましい範囲を有する。MFRの測定に使用される方法については、230℃で2.16kgの質量を用いて測定したものがASTM D1238に概略的に述べられている。
モノコンポーネント繊維及びマルチコンポーネント繊維から作り出される不織布製品はまた、特定の特性、具体的には、強度、可撓性、柔軟性、及び吸収性も呈する。強度の目安としては、乾燥及び/又は湿潤引っ張り強度が挙げられる。可撓性は剛性と関連しており、柔軟性に起因するものであると考えられる。一般的に柔軟性は、可撓性及びテクスチャの両方と関連する生理学的に知覚される属性として述べられる。吸収性は、製品が流体を取り込む能力、並びにその流体を保持する容量と関連している。本発明における吸収性には、パルプ繊維、再生セルロース繊維(例えばレーヨン)に見られるような水を取り込む繊維自体の内部領域は関与しない。一部の熱可塑性ポリマーは、本来的に小量の水を取り込むことから(例えばポリアミド)、水の取り込み率は10重量%未満、好ましくは5重量%未満、最も好ましくは1重量%未満に制限される。本発明における吸収性は、繊維及び不織布構造の親水性から生じ、主として、繊維の表面積、孔径、及び接着交差部分に応じて決定される。毛管現象は、流体と繊維性基材との相互作用を説明するために使用される、一般的な現象である。毛管現象の性質は、当業者には十分に理解され、Albin Turbakによる「Nonwovens:Theory,Process,Performance and Testing」のChapter 4で詳細に提示されている。
本発明においてベース基材を形成するスパンレイドウェブは、1g/g(グラム/グラム)〜10g/g、より好ましくは2g/g〜8g/g、最も好ましくは3g/g〜7g/gの吸収取り込み率すなわち保持容量(C
保持)を有する。この取り込み率の測定は、MD方向の長さが15cm、CD方向の幅が5cmである乾燥試料を秤量し(グラムで)、乾燥重量をm
乾燥とし、試料を蒸留水に30秒間浸漬した後、水から試料を取り出し、これを10秒間垂直に(MD方向に)吊してから、試料を再び秤量し、湿潤重量をm
湿潤とすることによって行われる。最終的な湿潤試料の重量(m
湿潤)から乾燥試料の重量(m
乾燥)を差し引いて、乾燥試料の重量(m
乾燥)で割ることによって、試料の吸収性すなわち保持容量(C
保持)が得られる。すなわち、
構造化基材は、同様の保持能力を有する。
本発明におけるスパンレイドプロセスは、所望の坪量を有するスパンレイド不織布を製造する。坪量は、単位面積当たりの繊維/不織布の質量として定義される。本発明に関しては、ベース基材の坪量は、10g/m2〜200g/m2であり、15g/m2〜100g/m2の好ましい範囲、18g/m2〜80g/m2のより好ましい範囲、及び25g/m2〜72g/m2の更により好ましい範囲を有する。最も好ましい範囲は、30g/m2〜62g/m2である。
多成分繊維を製造する際の第1工程は、配合又は混合の工程である。配合工程では、典型的には、剪断力の作用下で原材料を加熱する。組成が適切に選択されていれば、熱の存在下での剪断によって均質な溶融物が得られる。次に、溶融物を、繊維が形成される押出成形機内に定置する。繊維の集束を、熱、圧力、化学的バインダー、機械的交絡、及びこれらの組み合わせを使用して、一体に結合し、不織布ウェブの形成を生じさせる。次に、この不織布を修正し、ベース基材へと組み上げる。
配合工程の目的は、均質な溶融組成物を作り出すことである。多成分ブレンドに関しては,この工程の目的は、熱可塑性ポリマー材料を、共に溶融ブレンドすることであり、この場合の混合温度は、最も高い融点の熱可塑性構成成分を上回る。任意成分もまた、添加して、共に混合することができる。好ましくは、この溶融組成物は均質であり、これは一様分布が広範囲にわたって見出され、特異な領域が認められないことを意味する。ポリプロピレンにポリ乳酸を添加する場合、又はポリプロピレンに熱可塑性デンプンを添加する場合などのように、弱い混和性を有する材料を結合させるために、相溶化剤を添加してもよい。
二軸配合は、当該技術分野において周知であり、ポリマーアロイを調製するため、又はポリマーを任意材料と共に適切に混合するために使用される。二軸押出成形機は、一般的には、ポリマー製造と繊維紡糸工程との間に使用される単独プロセスである。コストを低減するために、繊維の押し出しを、二軸押出成形機で開始して、配合と繊維の作製とを、直接結合させることができる。特定のタイプの一軸押出成形機では、良好な混合及び相溶化を、インラインで実施することができる。
最も好ましい混合デバイスは、複数の注入ポイントを備える複数混合区域二軸押出成形機である。二軸バッチ混合機又は一軸押出成形システムもまた、使用することができる。十分な混合及び加熱が実施される限り、特定の使用機器は、必要不可欠ではない。
本発明は、溶融紡糸のプロセスを利用する。溶融紡糸においては、押出品での質量損失は存在しない。溶融紡糸は、溶液からの湿式紡糸又は乾式紡糸などの、他の紡糸とは区別されるが、それらの紡糸では、揮発又は拡散によって、溶媒が押出品から除去されていることにより、質量損失がもたらされる。
紡糸は、120℃〜約350℃で、好ましくは160℃〜約320℃で、最も好ましくは190℃〜約300℃で実施される。100メートル/分を超える繊維紡糸速度が必要とされる。好ましくは、繊維紡糸速度は、約1,000〜約10,000メートル/分、より好ましくは約2,000〜約7,000メートル/分、最も好ましくは約2,500〜約5,000メートル/分である。単一繊維の試験、並びにベース基材又は構造化基材の熱安定性によって判定されるような、強固で熱安定性である繊維を作製するために、ポリマー組成物は、高速で紡糸されなければならない。
均質な溶融組成物を、市販の溶融紡糸装置上で、モノコンポーネント繊維又はマルチコンポーネント繊維へと溶融紡糸することができる。この装置は、マルチコンポーネント繊維の所望の構成に基づいて選択される。市販の溶融紡糸装置は、Melbourne,Floridaにある、Hills,Inc.より入手可能である。繊維の紡糸(モノコンポーネント及びマルチコンポーネント)に関する優れた資料は、Woodhead Publishingからの、Nakajimaによる「Advanced Fiber Spinning Technology」である。紡糸のための温度は、約120℃〜約350℃の範囲である。プロセス温度は、各コンポーネントの化学的性質、分子量、及び濃度によって決定される。空気細繊化技術の例は、Hill’s Inc、Neumag、及びREICOFILにより市販されている。本発明のために好適な技術の例は、Reifenhauser REICOFIL 4スパンレイドプロセスである。これらの技術は、不織布産業界において周知である。
流体処理
本発明の構造化基材を使用して、流体を管理することができる。流体管理とは、構造化基材の特性の制御による、流体の意図的な移動として定義される。本発明では、流体管理は、2つの工程によって達成される。第1工程は、繊維の形状、繊維のデニール、坪量、接着方法、及び表面エネルギーによって、ベース基材の特性を設計操作することである。第2工程は、繊維変位によって発生する空隙容積部を設計操作することを伴う。
吸収性物品
図23は、本発明の特定の実施形態に基づいたおむつ210の平面図である。おむつ210は、その広げられた非収縮(弾性による収縮がない)状態で示され、おむつ210の一部は、おむつ210の下層構造をより明瞭に示すために切り取られている。着用者と接触するおむつ210の部分は、図23において観察者の方を向いている。おむつ210は、一般的に、シャーシ212及びシャーシ内に配置された吸収性コア214とを含み得る。
図23におけるおむつ210のシャーシ212は、おむつ210の本体を構成してもよい。シャーシ212は、液体透過性であってよいトップシート218、及び/又は液体不透過性であってよいバックシート220を含む外側カバー216を有し得る。吸収性コア214は、トップシート218とバックシート220との間に収容されてもよい。シャーシ212はまた、サイドパネル222、弾性レッグカフ224、及び弾性ウェスト機構226も有し得る。
レッグカフ224及び弾性ウェスト機構226は、典型的には、それぞれ弾性部材228を有し得る。おむつ210の一方の端部は、おむつ210の第1ウェスト領域230として構成することができる。おむつ210の反対側の端部は、おむつ210の第2ウェスト領域232として構成することができる。おむつ210の中間部分は、第1ウェスト領域230と第2ウェスト領域232との間に長手方向に延びる股領域234として構成することができる。ウェスト領域230及び232は弾性要素を有することにより、着用者の腰部の周囲に寄り集まって高いフィット感及び密閉性をもたらすことができる(弾性ウェスト機構226)。股部34は、おむつ210が着用される際に着用者の脚の間に概ね位置するおむつ210の部分である。
おむつ210は、図23にその長手方向軸236及び横方向軸238とともに示されている。おむつ210の外周240はおむつ210の外縁部によって画定され、長手方向の縁部242がおむつ210の長手方向軸236に略平行に延び、端縁部244がおむつ210の横方向軸238に略平行に長手方向の縁部242間に延びている。シャーシ212は、少なくとも1つの締結部材246及び少なくとも1つの保存ランディング領域248を含み得る締結システムを備えてもよい。
おむつ220はまた、フィット感、密閉性、美的特徴を向上させるための前方及び後方イヤーパネル、ウェストキャップ機構、伸縮材などの当技術分野では既知の他の機構を含んでもよい。このような更なる機構は当該技術分野では周知のものであり、例えば米国特許第3,860,003号及び同第5,151,092号に述べられている。
おむつ210を着用者の周囲の定位置に保持するため、第1ウェスト領域230の少なくとも一部を締結部材246により第2ウェスト領域232少なくとも一部に取り付けることによって、脚部開口部及び物品の腰部を形成することができる。締結する時、締結システムが物品の腰部周辺の引張荷重を支える。締結システムにより、物品の使用者は締結部材246のような締結システムの1つの要素を掴んで、第1ウェスト領域230を第2ウェスト領域232と少なくとも2箇所において連結することができる。これは、締結装置の要素間の結合強度を操作することによって実現することができる。
特定の実施形態によれば、おむつ210は再閉鎖可能な締結システムを備えてもよく、あるいはパンツ型のおむつの形態で提供されてもよい。吸収性物品がおむつである場合、吸収性物品は、おむつを着用者に固定するためにシャーシに接合された再閉鎖可能な締結システムを含んでもよい。吸収性物品がパンツ型のおむつである場合、物品は、シャーシ及び互いに接合されてパンツを形成する少なくとも2つのサイドパネルを有してもよい。締結システム及びその任意の要素は、これらに限定されるものではないが、プラスチック、フィルム、発泡体、不織布、織布、紙、積層体、繊維強化プラスチックなど、又はこれらの組み合わせを含んでいる、こうした用途に適した任意の材料を含み得る。特定の実施形態では、締結システムを構成する材料は可撓性のものであってよい。こうした可撓性により、締結システムを身体の形状に適合させることができるため、締結システムが着用者の皮膚を刺激したり傷つけたりする可能性を低減させることができる。
一体型の吸収性物品の場合では、シャーシ212及び吸収性コア214がおむつ210の主構造を形成し、他の機構を加えることで複合おむつ構造を形成することができる。トップシート218、バックシート220、及び吸収性コア214は周知の様々な形態に組み立てることができるが、好ましいおむつの形態が、Roeらに付与された1996年9月10日発行の発明の名称が、「Absorbent Article With Multiple Zone Structural Elastic−Like Film Web Extensible Waist Feature」である米国特許第5,554,145号、Buellらに付与された1996年10月29日発行の発明の名称が、「Disposable Pull−On Pant」である米国特許第5,569,234号、並びにRoblesらに付与された1999年12月21日発行の発明の名称が、「Absorbent Article With Multi−Directional Extensible Side Panels」である米国特許第6,004,306号に一般的に述べられている。
図23のトップシート218は全体的又は部分的に伸縮性を持たせてもよく、又はトップシート218と吸収性コア214との間に隙間が形成されるように短縮させてもよい。伸縮性を有するか又は短縮させたトップシートを有する代表的な構造については、Allenらに付与された1991年8月6日発行の発明の名称が、「Disposable Absorbent Article Having Elastically Extensible Topsheet」である米国特許第5,037,416号、及びFreelandらに付与された1993年12月14日発行の発明の名称が、「Trisection Topsheets for Disposable Absorbent Articles and Disposable Absorbent Articles Having Such Trisection Topsheets」である同第5,269,775号に更に詳細に述べられている。
バックシート226は、トップシート218に接合されてもよい。バックシート220は、吸収性コア214により吸収されておむつ210内に封じ込められた排出物が、例えばベッドシーツ及び下着などのおむつ210と接触し得る他の外部の物品を汚すことを防止することができる。特定の実施形態では、バックシート226は、液体(例えば、尿)に対して実質的に不透過性であってもよく、不織布と約0.012mm(0.5ミル)〜約0.051mm(2.0ミル)の厚さを有する熱可塑性フィルムのような薄いプラスチックフィルムとの積層体で構成することができる。好適なバックシートフィルムとしては、Tredegar Industries Inc.(Terre Haute,Indiana)によって製造され、商標名X15306、X10962、及びX10964で販売されるものが挙げられる。他の好適なバックシート材料としては、蒸気をおむつ210から逃がす一方で、液体排出物がバックシート210を通過することは防止する通気性材料を挙げることができる。代表的な通気性材料としては、織布ウェブ、不織布ウェブなどの材料、フィルムコートされた不織布ウェブなどの複合材料、並びに日本国の三井石油化学工業株式会社によりESPOIR NOの表記で、及びEXXON Chemical Co.(Bay City,Texas)によりEXXAIREの表記で、製造されるものなどの微多孔質フィルムを挙げることができる。ポリマーブレンドを含んでいる、適した通気性複合材料は、名称HYTRELブレンドP18−3097として、Clopay Corporation(Cincinnati,Ohio)から入手可能である。こうした通気性複合材料については、E.I.DuPontの名義で1995年6月22日に公開された国際特許出願公開第WO 95/16746号により詳細に述べられている。不織布ウェブ及び孔あき成形フィルムなどの他の通気性バックシートについては、Dobrinらに付与された1996年11月5日発行の米国特許第5,571,096号に述べられている。
図24は、図23の切断線2−2に沿って取った図23の断面を示す。おむつ210は、着用者に面した面から順に、トップシート218、吸収性コア214の各要素、及びバックシート220を含み得る。おむつ210は更に、液体透過性のトップシート218と、吸収性コア214の着用者に面した面との間に配される獲得システム250を有し得る。獲得システム250は、吸収性コアと直接接触し得る。
獲得システム250は本発明の繊維ウェブを含んでいる。本発明においては、吸収性物品は全体として比較的薄いものであることが望ましい。これにより、必要とされる貯蔵容量が小さくなり、陳列用のスペースが小さくて済む。更に、より薄い吸収性物品は、多くの消費者により魅力的であることが分かっている。薄い吸収性物品を助長するには、獲得システムもできるだけ薄くする必要がある。しかしながら、薄い材料ほど一時的な液体保持容量がしばしば小さくなる。薄いことに加えて、獲得システムは、トップシート上の自由流体による吸収性物品の漏れを防ぐために流体を速やかに獲得できるものである必要がある。本発明の獲得システムは更に、物品の前方及び後方ウェスト領域に向かう液体の輸送を可能とするために高い吸い上げ性能を有する必要がある。これにより、吸収性コアによって構成された吸収性物品のより効率的な使用が可能である。更に、前方及び後方ウェスト領域に向かった液体の貯蔵性が高いことにより、濡れた場合においても股部における嵩が小さい吸収性物品が実現される。
本発明の繊維ウェブは、第2表面がトップシートに面した状態で獲得システムにおいて使用することができる。これらの実施形態では、第1領域のトップシートに面した表面は、吸収性物品内に排出された液体を一時的に保持する機能を有する間隙容積を形成する。すなわち、繊維ウェブ自体のみではなく、繊維ウェブの不連続部の間の表面の直ぐ上の領域も流体を保持するように機能する。第2領域によって形成されたトップシートに面した不連続部は、トップシートと繊維ウェブの第1領域との間の間隔を維持するための隆起部として機能する。第2領域によって形成された不連続部の遊離端部は、繊維ウェブ内に比較的開放的な構造を形成し、液体が繊維ウェブ内、更には繊維ウェブの下の吸収性コア内へと、あるいは獲得システムの更なる下層内へと(更なる獲得システムの層を有する実施形態の場合)、容易かつ速やかに流入することが可能である。
また、本発明の繊維ウェブは、第1表面がトップシートに面した状態で獲得システムにおいて使用することもできる。これらの実施形態では、不連続部の内部の間隙容積は、流体を速やかに獲得して一時的に保持する機能を有する。液体は、繊維ウェブの他の領域へ、更に繊維ウェブの下の吸収性コアへと、特に変位された繊維によって形成された遊離端部を通って広がってゆくことができる。
大量の吸収性ポリマー材料を有している、吸収性コアを備えた吸収性物品では、所定量のエアフェルトを有する吸収性コアと比較して初期の流体吸収は遅いことが多い。これらの吸収性物品では、獲得システムが流体を獲得して一時的に保持できることが特に重要である。更に、大量の吸収性ポリマー材料を有している、吸収性コアは、典型的には、薄い吸収性物品の製造を可能とするものであり、こうした薄い吸収性物品は、本発明の薄い構造化繊維ウェブを使用して獲得システムによって更に支持される。
また、大量の吸収性ポリマー材料を有している、吸収性コア内部における垂直吸い上げよりも速い液体の垂直吸い上げを可能とする獲得システムが提供されることが望ましい。
獲得システム250は、本発明の繊維ウェブのみから構成されてもよい。しかしながら、繊維ウェブは、繊維ウェブが本明細書で述べる繊維の変位に供されるよりも前に積層体の異なる層が互いに積層された積層体であってもよい。
また、獲得システムは、着用者の皮膚に面する上側獲得層252、及び着用者の下着に面する異なる下側獲得層254として、本発明の繊維ウェブを含んでもよい。特定の実施形態によれば、獲得システム250は尿の放出などの大量の液体を受容する機能を有してもよい。別の言い方をすれば、獲得システム250は、吸収性コア214が液体を吸収できるようになるまでの間、液体の一時的な貯留部として機能し得る。
特定の実施形態では、獲得システム250は、化学的に架橋されたセルロース繊維を含んでもよい。このような架橋されたセルロース繊維は、所望の吸収特性を有し得る。代表的な化学的に架橋されたセルロース繊維については、米国特許第5,137,537号に開示されている。特定の実施形態では、化学的に架橋されたセルロース繊維は、グルコース単位に基づいて約0.5mol%〜約10.0mol%のC2〜C9ポリカルボン酸架橋剤、又は約1.5mol%〜約6.0mol%のC2〜C9ポリカルボン酸架橋剤により架橋される。クエン酸は代表的な架橋剤の1つである。他の実施形態では、ポリアクリル酸を使用することもできる。更に、特定の実施形態によれば、架橋されたセルロース繊維は約25〜約60、又は約28〜約50、又は約30〜約45の保水値を有する。保水値を求めるための方法については、米国特許第5,137,537号に開示されている。特定の実施形態によれば、架橋されたセルロース繊維は、捲縮、撚糸、若しくはカールさせるか、又は捲縮、撚糸、及びカールさせることを含むこれらの組み合わせを行うことができる。
特定の実施形態では、下側獲得層254は、親水性を有し得る不織布で構成するか、又はこれを含むことができる。更に、特定の実施形態によれば、下側獲得システム254は化学的に架橋されたセルロース繊維を含んでもよく、こうしたセルロース繊維は不織布材料の一部を形成してもしなくともよい。更に、一実施形態によれば、下部獲得層254は、天然又は合成ポリマー繊維などの他の繊維と混合された化学的に架橋されたセルロース繊維を含んでもよい。代表的な実施形態によれば、このような他の天然又は合成ポリマー繊維としては、表面積の大きな繊維、熱可塑性結合繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、PET繊維、レーヨン繊維、リオセル繊維、及びこれらの混合物を挙げることができる。特定の実施形態によれば、下側獲得層254は一定の総乾燥重量を有し、架橋されたセルロース繊維は、乾燥重量基準で下側獲得層254の約30重量%〜約95重量%の量で上側獲得層中に存在し、他の天然又は合成ポリマー繊維は、乾燥重量基準で下側獲得層254の約70重量%〜約5重量%の量で下側獲得層254中に存在する。他の実施形態によれば、架橋されたセルロース繊維は、乾燥重量基準で下側獲得層254の約80重量%〜約90重量%の量で第1獲得層中に存在し、他の天然又は合成ポリマー繊維は、乾燥重量基準で下側獲得層254の約20重量%〜約10重量%の量で下側獲得層254中に存在する。
特定の実施形態によれば、下側獲得層254は高い流体取り込み性能を有することが望ましい。流体取り込み率は、吸収性材料の1グラム当たりの吸収された流体のグラム数として測定され、「最大取り込み率」の値によって表される。したがって流体取り込み率が高いほど材料容量は高くなり、これにより獲得材料によって吸収されるべき流体が完全に獲得されることから有益である。代表的な実施形態によれば、下側獲得層254は、約10g/gの最大取り込み率を有する。
注目すべき点として、本発明の繊維ウェブは、吸収性物品の他の部分においても有用であり得る。例えば、上記に述べたような永久的な親水性を有する不織布を含んだトップシート及び吸収性コア層は、効果的に機能することが判明した。
図23〜30の吸収性コア214は、トップシート218とバックシート220との間に概ね配置され、第1吸収層260及び第2吸収層262層を含む。図25に最も分かりやすく示されるように、吸収性コア214の第1吸収層260は、基材264、基材264上の吸収性粒子状ポリマー材料266、及び吸収性粒子状ポリマー材料266上の熱可塑性組成物268からなり、第1基材264の少なくとも部分が接着剤として、第1基材264上の吸収性粒子状ポリマー材料266を覆って固定している。図26に示される他の実施形態によれば、吸収性コア214の第1吸収層260はまた、熱可塑性組成物268上にカバー層270も含み得る。
同様に図24に最も分かりやすく示されるように、吸収性コア214の第2吸収層262はまた、基材272、第2基材272上の吸収性粒子状ポリマー材料274、及び吸収性粒子状ポリマー材料274上の熱可塑性組成物266も含んでよく、第2基材272少なくとも部分が第2基材272上に吸収性粒子状ポリマー材料274を固定している。図には示されていないが、第2吸収層262もまた、図26に示されるカバー層270のようなカバー層を含み得る。
第1吸収層260の基材264はダスティング層と呼ぶことができるもので、おむつ210のバックシート220に面する第1表面278と、吸収性粒子状ポリマー材料266に面する第2表面280とを有している。同様に、第2吸収層262基材272はコアカバーと呼ぶことができるもので、おむつ210のトップシート218に面する第1表面282と、吸収性粒子状ポリマー材料274に面する第2表面284とを有している。第1基材264及び第2基材272は、外周に沿って接着剤で互いに接着されることによって、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274を吸収性コア214内に保持するための封入要素を吸収性粒子状ポリマー材料266及び274の周囲に形成することができる。
特定の一実施形態によれば、第1吸収層260及び第2吸収層262基材264及び272は、上記に述べた不織布材料のような不織布材料とすることができる。特定の実施形態では、不織布は多孔質であり、一実施形態では約32マイクロメートルの孔径を有する。
図24〜30に示されるように、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274は、第1吸収層260及び第2吸収層262それぞれの基材264及び272上に粒子のクラスター290として置かれることによって、ランド領域294とランド領域294の間の接合領域296とからなる格子パターン292を形成する。本明細書において定義するように、ランド領域294は、熱可塑性接着剤が不織布基材又は補助接着剤と直接接触していない領域であり、接合領域296は、熱可塑性接着剤が不織布基材又は補助接着剤と直接接触している領域である。格子パターン292接合領域296は、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274をほとんど又はまったく含んでいない。ランド領域94及び接合領域296は、これらに限定されるものではないが、円形、楕円形、正方形、長方形、三角形などの様々な形状を有し得る。
図30に示される格子パターンは、ランド領域が規則的な間隔及びサイズを備えた正方形の格子である。六角形、菱形、斜方晶状、平行四辺形、三角形、長方形、及びこれらの組み合わせなどの他の格子パターンを使用することもできる。格子線間の間隔は、規則的であっても不規則的であってもよい。
格子パターン292内のランド領域294のサイズは、異なり得る。特定の実施形態によれば、格子パターン292内のランド領域294の幅319は、約8mm〜約12mmの範囲である。特定の一実施形態では、ランド領域294の幅は約10mmである。これに対して接合領域296は、特定の実施形態において、約5mm未満、約3mm未満、約2mm未満、約1.5mm未満、約1mm未満、若しくは約0.5mm未満の幅又はこれよりも大きなスパンを有する。
図30に示されるように、吸収性コア214は、後端部302から前端部304に延びる長手方向軸300と、長手方向軸300と直交する、第1縁部308から第2縁部310に延びる横方向軸306と、を有している。吸収性粒子状ポリマー材料のクラスター290の格子パターン292は、ランド領域294及び接合領域296の配列によって形成された格子パターン292がパターン角312をなすように、それぞれの吸収層260及び262基材264及び272上に配列されている。パターン角312は、0.5°よりも大きいか、又は15〜30°、又は約5〜約85°、又は約10〜約60°、又は約15〜約30°であり得る。
図29A、29B、及び30に最も分かりやすいように、第1層260と第2層262とを合わせることによって吸収性コア214を形成することができる。吸収性コア214は、パターン長さ116とパターン幅318とによって区切られた吸収性粒子状ポリマー材料領域314を有する。吸収性粒子状ポリマー材料領域314の大きさ及び形状は、吸収性コア214及び吸収性コア214を組み込むことができる特定の吸収性物品の所望の用途に応じて異なり得る。しかしながら、特定の一実施形態においては、吸収性粒子状ポリマー材料領域314は、図30に示されるように、吸収性コア214のほぼ全体にわたって延びる。
第1吸収層262及び第2吸収層264のそれぞれの格子パターン292が、吸収性コア214の長さ及び/又は幅に沿って互いからずれるように、第1吸収層260と第2吸収層262とを合わせることによって、吸収性コア214を形成することができる。それぞれの格子パターン292は、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274が、吸収性粒子状ポリマー領域314にわたって実質的に連続的に分配されるようにずらすことができる。特定の一実施形態では、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274は、個々の格子パターン292が、第1基材264及び第2基材272にわたってクラスター290に不連続的に分配された吸収性粒子状ポリマー材料266及び274からなる場合であっても、吸収性粒子状ポリマー材料領域314にわたって実質的に連続的に分配される。特定の一実施形態では、格子パターンは、第1吸収層260のランド領域294が第2吸収層262接合領域296と対向し、第2吸収層262ランド領域が第1吸収層260の接合領域296と対向するようにずらすことができる。ランド領域294及び接合領域296が適切なサイズ及び配列である場合、得られる吸収性粒子状ポリマー材料266と274との組み合わせは、吸収性コア214の吸収性粒子状ポリマー材料領域314にわたった吸収性粒子状ポリマー材料のほぼ連続的な層となる(すなわち、第1基材264及び第2基材272が、それらの間に吸収性粒子状ポリマー材料266のクラスター290がそれぞれ含まれる複数のポケットを形成しない)。特定の一実施形態では、第1吸収層260及び第2吸収層262それぞれの格子パターン292は、ほぼ同じである。
図30に示されるような特定の一実施形態においては、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274の量は、格子パターン292長さ316に沿って変化し得る。特定の一実施形態では、格子パターンを吸収材領域320、322、324、及び326に分割し、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274の量が各領域毎に異なるようにしてもよい。本明細書で使用するところの「吸収材領域」とは、図30に示される長手方向軸と直交する境界線を有する吸収性粒子状ポリマー材料領域の領域のことを指す。特定の一実施形態では、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274の量は、複数の吸収材領域320、322、324、及び326の1つから別の吸収材領域へと徐々に変化する。吸収性粒子状ポリマー材料266及び274の量がこのように徐々に変化することにより、吸収性コア214にひび割れが生じる可能性が低減され得る。
吸収性コア214内に存在する吸収性粒子状ポリマー材料266及び274の量は異なり得るが、特定の実施形態においては、吸収性コアの約80重量%よりも多い、又は吸収性コアの約85重量%よりも多い、又は吸収性コアの約90重量%よりも多い、又はコアの約95重量%よりも多い量で吸収性コア内に存在する。特定の一実施形態では、吸収性コア214は、第1基材264及び第2基材272、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274、並びに熱可塑性接着剤組成物268及び276によって基本的に構成される。一実施形態では、吸収性コア214は、実質的にセルロースを含まなくてもよい。
特定の実施形態に従い、少なくとも1つの自由に選択された1cm×1cmで計測された第1正方形内の吸収性粒子状ポリマー材料266及び274の重量は、1cm×1cmで計測された少なくとも1つの自由に選択された第2正方形内の吸収性粒子状ポリマー材料266及び274の重量よりも、少なくとも約10%、又は20%、又は30%、40%又は50%大きくてもよい。特定の実施形態では、第1正方形及び第2正方形は、長手軸を中心としてセンタリングされる。
代表的な一実施形態によれば、吸収性粒子状ポリマー材料領域は、着心地を高めるために吸収性物品の股部において比較的狭い幅を有してもよい。すなわち、一実施形態によれば、吸収性粒子状ポリマー材料領域は、吸収性物品の前縁部及び後縁部に対して等距離に位置する横線に沿って測定した幅が、約100mm、90mm、80mm、70mm、60mm未満又は更には約50mm未満でよい。
おむつなどの多くの吸収性物品において、主としておむつの前半分において液体の排出が生じることが分かっている。したがって、吸収性コア214の前半分が、コアの吸収容量の大部分を含む必要がある。このため、特定の実施形態よれば、吸収性コア214の前半分が、超吸収性材料の約60%よりも多く、又は超吸収性材料の約65%、70%、75%、80%、85%、又は90%よりも多くを含むことができる。
特定の実施形態では、吸収性コア214は、一般的に圧縮可能で、柔軟性があり、着用者の皮膚に対して刺激を与えない、尿及び他の特定の身体排出物などの液体を吸収及び保持することが可能な任意の吸収性材料を更に含み得る。こうした実施形態では、吸収性コア214は、エアフェルトと一般に呼ばれる粉砕木材パルプ、縮みセルロース詰め物、コフォームを含むメルトブローンポリマー、化学的に剛化、改質若しくは架橋されたセルロース繊維、ティッシュラップ及びティッシュラミネートを含むティッシュ、吸収性発泡体、吸収性スポンジ、又は他の任意の既知の吸収性材料若しくは材料の組み合わせなど、使い捨ておむつ及び他の吸収性物品に一般的に使用される広範な液体吸収性材料を含み得る。吸収性コア214は、接着剤、ワックス、オイルなどの小量(典型的には約10%未満)の物質を更に含んでもよい。
吸収性アセンブリとして使用するための代表的な吸収性構造体については、米国特許第4,610,678号(Weismanら)、同第4,834,735号(Alemanyら)、同第4,888,231号(Angstadt)、同第5,260,345号(DesMaraisら)、同第5,387,207号(Dyerら)、同第5,397,316号(LaVonら)、及び同第5,625,222号(DesMaraisら)に述べられている。
熱可塑性接着剤268及び276は、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274を覆って少なくとも部分的に固定するのに役立つことができる。本発明の一実施形態では、熱可塑性接着剤268及び276は、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274内においてポリマー間に基本的に均一に配置することができる。しかしながら、特定の一実施形態では、熱可塑性接着剤268及び276は、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274と少なくとも部分的に接触し、更に第1吸収層260及び第2吸収層262基材層264及び272と部分的に接触する繊維層として準備され得る。図25、26、及び29はこうした構造を示しており、この構造では、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274は不連続層として準備され、繊維質の熱可塑性接着剤268及び276の層が吸収性粒子状ポリマー材料266及び274の層上に置かれていることによって、熱可塑性接着剤268及び276は吸収性粒子状ポリマー材料266及び274と直接接触し、更に、基材264及び272第2表面280及び284の、基材が吸収性粒子状ポリマー材料266及び274によって覆われていない部分とも直接接触している。これにより、熱可塑性接着剤268及び276の繊維層に基本的な3次元構造が与えられるが、この構造自体は、長さ及び幅方向の寸法と比較すれば基本的に比較的厚みの小さい2次元的構造である。別の言い方をすれば、熱可塑性接着剤268及び276は、吸収性粒子状ポリマー材料268及び276と、基材264及び272第2表面との間で波形の構造となっている。
これにより、熱可塑性接着剤268及び276は、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274を覆う空洞を与えることによって、この材料を固定することができる。更なる一態様では、熱可塑性接着剤268及び276は基材264及び272と結合することによって、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274を基材264及び272に対して付着させる。したがって特定の実施形態によれば、熱可塑性接着剤268及び276が湿潤状態にある場合に吸収性粒子状ポリマー材料266及び274を固定することによって、吸収性コア214は、2008年6月13日に出願された国際特許出願公開第WO 2008/155699(A1)号に述べられる湿潤固定化試験に従って、約70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%以下の吸収性粒子状ポリマー材料の損失率を実現する。特定の熱可塑性接着剤はまた、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274並びに基材264及び272両方に浸透することによって、更なる固定及び付着効果をもたらす。無論、本明細書において開示する熱可塑性接着剤は大幅に向上した湿潤固定性(すなわち、物品が濡れているか少なくとも部分的に充填されている場合の吸収性材料の固定性)を与えるものであるが、これら熱可塑性接着剤は吸収性コア214が乾燥している場合にもまた吸収性材料の極めて優れた固定性を与え得るものである。熱可塑性接着剤268及び276はまた、ホットメルト接着剤と呼ばれる場合もある。
理論によって束縛されるものではないが、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274を固定するうえで最も有用なこれらの熱可塑性接着剤は、優れた凝集挙動及び優れた粘着挙動を兼ね備えたものであることが判明している。優れた粘着性は、熱可塑性接着剤268及び276と、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274と、基材264及び272との間の良好な接触を促し得るものである。優れた凝集性は、特に外力、すなわち歪みに応じて接着剤が破断する可能性を低減するものである。吸収性コア214が液体を吸収すると、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274が膨潤して、熱可塑性接着剤268及び276に外力が作用する。特定の実施形態では、熱可塑性接着剤268及び276は、破断することなく、また吸収性粒子状ポリマー材料266及び274の膨潤を制限する過剰な圧縮力を付与することなく、このような膨潤を許容し得るものである。
特定の実施形態によると、熱可塑性接着剤268及び熱可塑性接着剤276は、ASTM法D−36−95「環球法(Ring and Ball)」によって決定されるように、50℃〜300℃の範囲の軟化点を有する単一熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマーのブレンドをそっくりそのまま含んでもよく、または別の方法としては、熱可塑性接着剤は、粘着付与樹脂、可塑剤、及び酸化防止剤などの添加剤などの他の熱可塑性希釈剤と組み合わせた少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを含んでいる、ホットメルト接着剤であってもよい。特定の実施形態では、熱可塑性ポリマーは、典型的には、10,000よりも大きい分子量(Mw)、及び通常室温よりも低いか又は−6℃>Tg<16℃であるガラス転移温度(Tg)を有する。特定の実施形態では、ホットメルト中のポリマーの一般的な濃度は、約20〜約40重量%の範囲である。特定の実施形態では、熱可塑性ポリマーは水の影響を受けないものでよい。代表的なポリマーは、Aブロックが典型的にはポリスチレンを含む非弾性ポリマーブロックであり、Bブロックが不飽和共役ジエン又はその(部分)水素添加物であるものとして、A−B−Aトリブロック構造、A−Bジブロック構造及び(A−B)nラジアルブロックコポリマー構造を含む(スチレン性)ブロックコポリマーである。Bブロックは典型的には、イソプレン、ブタジエン、エチレン/ブチレン(水素添加ブタジエン)、エチレン/プロピレン(水素添加イソプレン)、及びこれらの混合物である。
使用することが可能な他の好適な熱可塑性ポリマーとして、シングルサイト触媒又はメタロセン触媒を使用して調製されるエチレンポリマーであるメタロセンポリオレフィンがある。その場合、少なくとも1種類のコモノマーをエチレンと重合して、コポリマー、ターポリマー、又はより高次のポリマーを調製することができる。C2〜C8のαオレフィンのホモポリマー、コポリマー、又はターポリマーである、非晶質ポリオレフィン又は非晶質ポリαオレフィン(APAO)も同様に適用可能である。
例示的な実施形態では、粘着付与樹脂は一般的に5,000未満の分子量(Mw)、及び通常、室温よりも高いTgを有し、ホットメルト中の樹脂の一般的な濃度は約30〜約60%の範囲であり、可塑剤は一般的には1,000未満の低い分子量(Mw)及び室温よりも低いTgを有し、一般的な濃度は約0〜約15%である。
特定の実施形態では、熱可塑性接着剤268及び276は繊維の形態で存在する。特定の実施形態では、この繊維は約1〜約50マイクロメートル又は約1〜約35マイクロメートルの平均厚さ、及び約約5mm〜約50mm又は約5mm〜約30mmの平均長さを有する。基材264及び272又は他の任意の層、特に他の任意の不織布層に対する熱可塑性接着剤268及び276の接着性を高めるには、こうした層を補助的接着剤で前処理することができる。
特定の実施形態では、熱可塑性接着剤268及び276は以下のパラメータの少なくとも1つ、又は幾つか、又はすべてを満たすものである。
代表的な熱可塑性接着剤268及び276は、20℃で測定した貯蔵弾性率G’が少なくとも30,000Paかつ300,000Pa未満、又は200,000Pa未満、又は140,000Pa〜200,000Pa、又は100,000Pa未満であってよい。更なる一態様では、35℃で測定した貯蔵弾性率G’が、80,000Paよりも大きくてもよい。更なる一態様では、60℃で測定した貯蔵弾性率G’が、300,000Pa未満でかつ18,000Paよりも大きいか、又は24,000Paより大きいか、又は30,000Paよりも大きいか、又は90,000Paよりも大きくてもよい。更なる一態様では、90℃で測定した貯蔵弾性率G’が、200,000Pa未満でかつ10,000Paよりも大きいか、又は20,000Paよりも大きいか、又は30,000Paよりも大きくてもよい。60℃及び90℃で測定した貯蔵弾性率は、高い周囲温度における熱可塑性接着剤の形状安定性の目安となり得る。この値は、60℃及び90℃における貯蔵弾性率G’が充分に高くなければ、熱可塑性接着剤がその一体性を失ってしまうような高温の気候において吸収性製品が使用される場合に特に重要である。
G’は、米国特許出願公開第2008/0312617(A1)号に述べられるレオメーターyを使用して測定される。このレオメーターは、接着剤に剪断応力を加え、生ずる歪み(剪断変形)応答を一定温度において測定することが可能である。接着剤は、下側の固定プレートとして機能するペルチエ素子と、剪断応力を発生させるようにモータの駆動軸に連結された、例えば10mmの半径Rを有する上側プレートとの間に置かれる。両プレート間の間隙は、例えば高さ1500マイクロメートルである。ペルチエ素子によって材料の温度制御が可能である(+0.5℃)。歪み速度及び周波数は、すべての測定が直線的な粘弾性領域において行われるように選択する必要がある。
吸収性コア214は、図に示されていない補助的な接着剤を更に含んでもよい。補助的な接着剤は、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274並びに熱可塑性接着剤268及び276のそれぞれの基材264及び272に対する接着性を高めるために、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274を塗布するのに先立って、第1吸収層260及び第2吸収層262それぞれの第1基材264及び第2基材272上に置くことができる。補助接着剤は、吸収性微粒子ポリマー材料266及び274を不動化するのを助けることもでき、上述したのと同じ熱可塑性接着剤を含んでもよく、または更に、H.B.Fuller Co.(St.Paul,MN)の製品番号HL−1620−Bなどの噴霧可能なホットメルト接着剤が挙げられるがこれに限定されない他の接着剤を含んでもよい。補助の糊は、あらゆる適した手段によって基材264及び基材272に塗布されてもよいが、特定の実施形態によると、約0.5〜約2mm離隔した幅約0.5〜約1mmのスロットで塗布されてもよい。
図26に示されるカバー層270は、基材264及び272と同じ材料からなるものでも、異なる材料からなるものでもよい。特定の実施形態では、カバー層270に適した材料は不織布であり、典型的には基材264及び272において有用であるものとして上記に述べたような材料である。
以下のベース基材は、Hills Incにて、0.5m幅スパンボンドライン上で製造した。詳細を、各実施例において記載する。実施例1、2、4、及び実施例7で製造した材料の測定特性を、以下に示す表に作成する。
実施例1:90重量%のEastman F61HC PET樹脂、及び10重量%のEastman 9921 coPETから構成されるスパンボンド布地を製造した。このスパンボンド布地は、丸い終端ポイントを備えた、長さ1.125mm及び幅0.15mmを有する顕著な三葉形の紡糸口金を使用して製造した。水圧の長さと直径との比は、2.2:1とした。紡糸パックは、250の毛管を有し、それらの毛管のうちの25がcoPET樹脂を押し出し、225がPET樹脂を押し出した。使用ビーム温度は285℃であった。紡糸距離は83.8cm(33インチ)であり、形成距離は86.4cm(34インチ)であった。この実施例及び後続の実施例で、異なる距離を使用することは可能であるが、示した距離が最良の結果をもたらした。残りの関連プロセスデータは、表1〜3に含まれる。
比較実施例1:90重量%のEastman F61HC PET樹脂、及び10重量%のEastman 20110から構成されるスパンボンド布地を製造した。このスパンボンド布地は、丸い終端ポイントを備えた、長さ1.125mm及び幅0.15mmを有する顕著な三葉形の紡糸口金を使用して製造した。水圧の長さと直径との比は、2.2:1とした。紡糸パックは、250の毛管を有し、それらの毛管のうちの25がcoPET樹脂を押し出し、225がPET樹脂を押し出した。使用ビーム温度は285℃であった。紡糸距離は83.8cm(33インチ)であり、形成距離は86.4cm(34インチ)であった。このポリマーの組み合わせで、熱安定性であるスパンボンド不織布を製造することは困難であった。coPET繊維は、熱安定性ではなく、100℃を超えて加熱される場合に、繊維構造全体が収縮した。MD布地の収縮率は20%であった。
実施例2:100重量%のEastman F61HC PETから構成されるスパンボンド布地を製造した。このスパンボンド布地は、丸い終端ポイントを備えた、長さ1.125mm及び幅0.15mmを有する顕著な三葉形の紡糸口金を使用して製造した。水圧の長さと直径との比は、2.2:1とした。紡糸パックは、250の毛管を有するものとした。使用ビーム温度は285℃であった。スピニング距離は83.8cm(33インチ)であり、形成距離は83.8cm(34インチ)であった。残りの関連プロセスデータは、表1〜3に含まれる。
実施例3:90重量%のEastman F61HC PET樹脂、及び10重量%のEastman 9921 coPETから構成されるスパンボンド布地を製造した。このスパンボンド布地は、半径0.18mmの丸い終端ポイントを備えた、長さ0.55mm及び幅0.127mmを有する標準的な三葉形の紡糸口金を使用して製造した。水圧の長さと直径との比は、2.2:1とした。紡糸パックは、250の毛管を有し、それらの毛管のうちの25がcoPET樹脂を押し出し、225がPET樹脂を押し出した。使用ビーム温度は285℃であった。スピニング距離は83.8cm(33インチ)であり、形成距離は86.4cm(34インチ)であった。残りの関連プロセスデータは、表4〜6に含まれる。
比較実施例2:90重量%のEastman F61HC PET樹脂、及び10重量%のEastman 20110から構成されるスパンボンド布地を製造した。このスパンボンド布地は、半径0.18mmの丸い終端ポイントを備えた、長さ0.55mm及び幅0.127mmを有する標準的な三葉形の紡糸口金を使用して製造した。水圧の長さと直径との比は、2.2:1とした。紡糸パックは、250の毛管を有し、それらの毛管のうちの25がcoPET樹脂を押し出し、225がPET樹脂を押し出した。使用ビーム温度は285℃であった。スピニング距離は83.8cm(33インチ)であり、形成距離は86.4cm(34インチ)であった。このポリマーの組み合わせで、熱安定性であるスパンボンド不織布を製造することは困難であった。繊維は、熱安定性ではなく、100℃を超えて加熱される場合に、繊維構造全体が収縮した。MD布地収縮率は20%であった。
実施例4:90重量%のEastman F61HC PET樹脂、及び10重量%のEastman 9921 coPETから構成されるスパンボンド布地を製造した。このスパンボンド布地は、0.35mmの毛管出口直径、及び長さと直径との比4:1を有する、中実丸形紡糸口金を使用して製造した。紡糸パックは、250の毛管を有し、それらの毛管のうちの25がcoPET樹脂を押し出し、225がPET樹脂を押し出した。使用ビーム温度は285℃であった。スピニング距離は83.8cm(33インチ)であり、形成距離は86.4cm(34インチ)であった。残りの関連プロセスデータは、表7〜9に含まれる。
比較実施例3:90重量%のEastman F61HC PET樹脂、及び10重量%のEastman 20110から構成されるスパンボンド布地を製造した。このスパンボンド布地は、0.35mmの毛管出口直径、及び長さと直径との比4:1を有する、中実丸形紡糸口金を使用して製造した。紡糸パックは、250の毛管を有し、それらの毛管のうちの25がcoPET樹脂を押し出し、225がPET樹脂を押し出した。使用ビーム温度は285℃であった。スピニング距離は83.8cm(33インチ)であり、形成距離は86.4cm(34インチ)であった。このポリマーの組み合わせで、熱安定性であるスパンボンド不織布を製造することは困難であった。coPET繊維は熱安定性ではなく、100℃を超えて加熱される場合に、繊維構造全体が収縮した。MD布地の収縮率は20%であった。
サンプルの説明:以下の情報は、下記のデータの表における実施例を識別するために使用される、サンプル説明の命名法を提供する。
●最初の数字は、試料が製造された実施例の番号を示す。
●数字の後に続く文字は、大まかに述べた実施例の説明において、異なる条件下で製造された試料を指定するためのものである。この文字及び番号の組み合わせによって、ベース基材の製造が特定される。
●文字の後に続く数字は、本特許において述べる構造化基材の製造を指定する。異なる番号は、構造化基材を製造するために使用される、異なる条件を示す。
本発明には、ベース基材及び構造化基材の試料を、カーディングした樹脂結合試料に対して比較するための2種類の参照資料が含まれる。
●43g/m2−30%のスチレンブタジエンラテックス結合剤と70%の繊維混合物とからなるもの。この繊維混合物は、6デニール中実丸形PET繊維、及び9デニール中実丸形PET繊維の、それぞれ40:60の混合物を含む。
●60g/m2−30%の(カルボキシル化)スチレンブタジエンラテックス結合剤と70%の繊維混合物とからなるもの。この繊維混合物は、6デニール中実丸形PET繊維、及び9デニール中空螺旋状PET繊維(25〜40%が中空)の、それぞれ50:50の混合物を含む。
開示されている方法のいずれかにおけるサンプルが、事前にエージングされているか、又は製品から取り出されているという場合には、いずれの試験プロトコルに先立っても、そのサンプルは、23±2℃、及び相対湿度50±2%で24時間、圧縮されずに保管されるべきである。このエージング後のサンプルは、「製造されたまま」と称される。
発明における特性に関しての定義及び試験方法:特性表における特性に関しての試験方法を、以下に記載する。特に指定のない限り、すべての試験は、約23±2℃、及び相対湿度50±2%で実施される。明示的な指定のない限り、使用される特定の合成尿は、脱イオン水で作製された0.9(重量)%生理食塩水(NaCL)溶液で、作製される。
●質量スループット:穴1個当たりの毎分のグラム数(GHM)として測定される、毛管1本当たりのポリマー流速を測定するものであり、ポリマー溶融物の密度、1回転当たりのポリマー溶融物のポンプ吐き出し量、及び溶融物ポンプによって供給される毛管の数に基づいて計算される。
●形状:実施例の表記名において記載する毛管の幾何形状に基づいて繊維の形状を指定する。
●坪量の実測値:好ましい坪量は、少なくとも10個の7500mm2(幅50mm×長さ150mmの試料サイズ)の試料部分をランダムに試料から切り出して、各試料部分を±1mgの範囲内で秤量した後、秤量した試料の合計数により質量の平均を求めることによって測定される。坪量の単位は、グラム毎平方メートル(g/m2)である。坪量の測定のために7500mm2の方形区域が使用できない場合には、サンプル寸法を2000mm2まで減少させてもよいが、(例えば、100mm×20mmのサンプル寸法、又は50mm×40mmのサンプル寸法)、サンプルの数は、少なくとも20の測定まで増加させるべきである実際の坪量は、平均質量をサンプルの面積で除算し、単位を確実にグラム毎平方メートルにすることによって判定される。
●布地の厚さ:厚さはキャリパーとも呼ばれ、これら2つの語は互換可能に使用される。布地厚さ、及び新品のキャリパーとは、いずれのエージング条件も伴わないキャリパーを指す。製造されたままのキャリパーに関する試験条件は、0.5kPaで測定され、少なくとも5回の測定値が平均化される。典型的な試験デバイスは、Thwing Albert ProGageシステムである。脚部の直径は50mm〜60mmである。保持時間は、各測定に対して2秒である。サンプルは、23±2℃、及び相対湿度50±2%で24時間、圧縮されずに保管されて、次いで布地厚さ測定を受けなければならない。修正前のベース基材に対して測定を行なうことが好ましいが、しかしながら、この材料が入手不可能な場合には、代替的な方法を使用することができる。構造化基材に関しては、第2領域(変位された繊維領域)間の第1領域の厚さは、電気式厚さ計(例えば、McMaster−CarrカタログよりMitutoyo No 547〜500として入手可能)を使用することによって判定することができる。これらの電気式厚さ計は、非常に小さい区域を測定するために変更される先端部を有し得る。これらのデバイスは、測定を行なうために、予め荷重がかけられたバネを有し、品種によって異なっている。例えば、長さ6.6mm及び幅1mmであるブレード形状の先端部を使用することができる。直径が1.5mmよりも小さい区域を測定する平坦丸形先端部も、挿入することができる。構造化基材に対する測定に関しては、製造されたままの布地厚さを測定するために、これらの先端部を構造化領域間に挿入する必要がある。この測定技術で使用される圧力は、この技術を使用して慎重に制御することはできず、加えられる圧力は、一般に0.5kPaよりも高い。
●エイジング処理キャリパー:これは、40℃かつ35kPaの圧力下で15時間エイジングした後、圧縮せずに23±2℃及び相対湿度50±2%で24時間弛緩させた後の試料のキャリパーのことを指す。これはまた、キャリパー回復と呼ぶこともできる。エージングされたキャリパーは、2.1kPaの圧力下で測定される。典型的な試験デバイスは、Thwing Albert ProGageシステムである。脚部の直径は50mm〜60mmである。保持時間は、各測定に対して2秒である。すべてのサンプルは、23±2℃、及び相対湿度50±2%で24時間、圧縮されずに保管され、次いでエージングされたキャリパーの試験を受ける。
●Mod比:「Mod比」すなわち改変比は、非円形繊維の更なる表面積形状を補償するために使用される。修正比率は、繊維の最長軸線に垂直な、繊維の断面における、最長の連続直線距離を測定し、その距離の50%での、繊維の幅で除算することによって判定される。一部の複雑な繊維形状に関しては、修正比率を容易に判定し難い場合がある。図19A〜19Cは、成形繊維の構成の例を提供する。「A」の表記は、長軸線の寸法であり、「B」の表記は、幅の寸法である。比率は、短い寸法で長い寸法を除算することによって判定される。これらの単位は、顕微鏡の使用を介して直接測定される。
●デニールの実測値:デニールの実測値は、特定の実施例の繊維の測定されたデニールである。デニールは、9000リニアメートルの長さでの、グラム単位の繊維の質量として定義される。それゆえ、異なるポリマーからの繊維を比較する場合、デニールの算出に関しては、繊維の固有密度もまた要因に含まれ、dpf(フィラメント当りのデニール)として表されるが、そのため2dpfのPP繊維と2dpfのPET繊維とでは、異なる繊維直径を有する。ポリプロピレンに関するデニールと直径との関係の例は、約0.900g/cm3の密度を有する中実丸形のポリプロピレンの1dpfの繊維は、約12.55マイクロメートルの直径を有する。本発明におけるPET繊維の密度は、デニールの算出に関して、1.4g/cm3(グラム毎立方センチメートル)となる。当業者であれば、PP繊維及びPET繊維に関して、中実丸形繊維の直径からデニールへ変換することは、通常の操作である。
●等価な中実円形繊維の直径:等価な中実円形繊維の直径は、非円形又は中空成形繊維の繊維特性の測定値として繊維の弾性率を計算するために用いられる。等価の中実丸形繊維直径は、繊維の実際のデニールから決定される。非丸形繊維の実際のデニールは、実際の繊維デニールを得て、そのフィラメントが中実丸形であると想定してフィラメントの直径を算出することによって、等価の中実丸形繊維直径へと変換される。この変換は、非丸形繊維断面に関する、単一繊維の弾性率を判定するために重要である。
●不織布の引っ張り特性:ベース基材及び構造化基材の引っ張り特性は、すべて同様にして測定した。ゲージ幅は50mm、ゲージ長は100mm、延伸速度は100mm/分である。報告される値は、特に指定のない限り、ピークでの強度及び伸長に関する。MD及びCDでの特性に関して、別個の測定が行なわれる。典型的な単位は、ニュートン(N)毎センチメートル(N/cm)である。提示される値は、少なくとも5回の測定値の平均である。強制負荷(perforce load)は0.2Nである。試料は、圧縮せずに23±2℃及び相対湿度50±2%で24時間保管し、その後、23±2℃及び50±2%で試験しなければならない。ここで報告される引っ張り強度は、応力−歪み曲線におけるピーク引っ張り強度である。引っ張りピークでの伸長は、引っ張りピークが記録される際の、百分率伸長である。
●MD/CD比:これはMD方向の引っ張り強度をCD方向の引っ張り強度で割ったものとして定義される。MD/CD比は、不織布繊維基材における相対的な繊維配向を比較するために使用される方法である。
●繊維周長:これは顕微鏡により直接測定したものであり、μmで表した不織布中の典型的な繊維の周長である。提示される値は、少なくとも5回の測定値の平均である。
●不透明度:不透明度はベース基材を通過する光の相対量の尺度である。特性的な不透明度は、特に、測定される所定の位置に存在する繊維の数、寸法、タイプ、及び形状に応じて決定される。本発明に関しては、ベース基材の不透明度は、好ましくは5%より大きい、より好ましくは10%より大きい、より好ましくは20%より大きい、更により好ましくは30%より大きい、最も好ましくは40%より大きい。不透明度は、TAPPI試験方法T 425 om−01「Opacity of Paper(15/d geometry,Illuminant A/2 degrees,89% Reflectance Backing and Paper Backing)」を使用して測定される。不透明度は百分率として測定される。
●ベース基材の密度:ベース基材密度は、試料の坪量の実測値を試料のエイジング処理キャリパーで割り、同じ単位に変換し、g/立方メートルとして報告することによって求められる。
●ベース基材の比容積:ベース基材の比容積は、立方cm/gの単位で表される、ベース基材密度の逆数である。
●ライン速度:ライン速度は試料が製造される直線的な機械方向の速度である。
●結合温度:結合温度は、スパンボンド試料が一体に結合される温度である。接着温度は、2種の温度を含む。第1温度は、刻印ロール又はパターン付きロールの温度であり、第2は、滑面ロールの温度である。特に指定のない限り、結合領域は18%であり、カレンダー線圧は700.5N/cm(直線インチ当たり400ポンド)であった。
●本発明の試料への界面活性剤の添加:これは、ベース基材及び構造化基材に親水性を付与する目的でこれらを処理するために使用される物質のことを指す。本発明では、すべてのサンプルに対して、同じ界面活性剤を使用した。界面活性剤は、Procter & Gambleの、コードDP−988Aを有する開発等級の材料とした。この材料は、ポリエステルポリエーテルコポリマーである。Clariant製の、商業的等級の汚れ放出ポリマー(SRP)(TexCare SRN−240及びTexCare SRN−170)もまた使用し、良好に作用することを見出した。基本的な手順は、以下の通りとした。
○200mLの界面活性剤を、5ガロンのバケツに入れた80℃の15Lの水道水と混合する。
○コーティングしようとする試料を、希釈した界面活性剤のバケツに5分間入れる。各サンプルは、公称100mmの幅及び300mmの長さとする。1回につき最大9個のサンプルをバケット内に置き、最初の10秒間サンプルを攪拌する。同じバケットを、最大50のサンプルに対して使用することができる。
○次に、各サンプルをバケットの一角上で垂直に保持し、5〜10秒間、バケツ内に残留水を流し入れる。
○試料をすすぎ、水道水の入ったきれいなバケツに少なくとも2分間浸漬する。1回につき最大9個のサンプルをバケット内に置き、最初の10秒間サンプルを攪拌する。すすぎ用バケットは、1セットの9個のサンプルの後で、交換する。
○サンプルは、乾燥状態となるまで80℃の強制空気オーブン中で乾燥させる。典型的な時間は、2〜3分である。
●保持容量:保持容量の測定には、界面活性剤でコーティングした試料を用い、材料の流体取り込み率を測定する。200mm×100mmのサンプルを1分間20℃の水道水に漬けた後、取り出す。取り出した後、サンプルを一角で10秒間保持し、次いで計量する。この最終重量を初期重量で除算し、保持能力を算出する。保持能力は、特に指定のない限り、製造されたままの布地厚さ試験で測定される条件に一致する、製造されたままの布地サンプルに対して測定される。これらのサンプルは、試験の前に、圧縮エージングされていない。この試験では、異なるサンプル寸法を使用することができる。使用することができる代替的サンプル寸法は、100mm×50mm又は150mm×75mmである。算出方法は、選択したサンプル寸法とは関わりなく、同一である。
●吸い上げ拡散面積:吸い上げ拡散は、MD方向とCD方向の拡散に分けられる。界面活性剤で処理されたサンプルを、少なくとも長さ30cm及び幅20cmに切り出す。未処理のサンプルは、流体を吸い上げることはない。サンプルを、一連のペトリ皿(直径10cm及び深さ1cm)の上に、1つのペトリ皿がサンプルの中央に置かれており、2つが両側に対して置かれるように載せる。次に、蒸留水20mLを、毎秒5mLの速度でサンプル上に注ぐ。不織布の刻印ロールの面が上向きに、流体の注入方向に面している。流体が吸い上げられる距離を、1分後に、MD及びCDで測定する。必要に応じて蒸留水に着色することができる(Merck、インジゴカルミン、c.i.73015)。この顔料は、蒸留水の表面張力を変化させるべきではない。材料毎に、少なくとも3回の測定を行なうべきである。吸い上げ拡散は、特に指定のない限り、製造されたままの布地厚さ試験で測定される条件に一致する、製造されたままの布地サンプルに対して測定される。これらのサンプルは、試験の前に、圧縮エージングされていない。長さ30cm及び幅20cmよりも小さいサンプル寸法を使用する場合には、吸い上げが、1分よりも前に材料の端部まで拡散するか否かを判定するために、サンプルを最初に試験しなければならない。MD又はCDでの吸い上げの拡散が、1分よりも前にサンプルの幅より大きい場合には、MD水平吸い上げ試験、高さ方法を使用するべきである。ペトリ皿は、毎回の測定に関し、空にして洗浄する。
試薬
●人工尿:0.9%生理食塩水(9.0g/lの分析グレードの塩化ナトリウムを脱イオン水に加え、青色色素(例えばMerck、インジゴカルミン、c.i.73015)で着色した、23±2℃の表面張力が70±2N/mのもの)を調製する
手順
1.)機械方向で幅(70±1)mm
*長さ(300±1)mmのサンプルを切り出す。
2.)サンプルの重量(w1)を、0.01gの単位までの概数で測定し報告する。
3.)サンプルを、トレイの上側端部上で、その幅にわたって、ベビー面を上に向けて(構造化基材の測定の場合には非平坦面、又はベース基材の測定の場合には刻印ロールの面)、クランプ固定する。このとき、材料は、トレイの底よりも上で、自由に張られている。
4.)弁付き250mLガラス漏斗の出口を、サンプルの上方25.4±3mmで、サンプルにわたる機械方向及び横断方向の中心に位置するように調節する。
5.)人工尿を調製する。
6.)漏斗の便を閉鎖したままで、ピペット又はビュレットで、人工尿5.0mL(4.)を漏斗内に分与する。
7.)漏斗の弁を開放して、人工尿5.0mLを排出する。
8.)30秒の期間、待機する(ストップウォッチを使用する)。
9.)最大のMD分配を測定する。センチメートルの単位の概数で報告する。
●垂直吸い上げ高さ:少なくとも長さ20cm及び幅5cmの好ましいサイズの試料を大量の蒸留水の上に垂直に保持することによって垂直吸い上げ試験を行う。サンプルの下端部は、水中に、少なくとも流体表面の1cm下まで浸される。流体が5分で上昇する、最も高い点を記録する垂直吸い上げは、特に指定のない限り、製造されたままの布地厚さ試験で測定される条件に一致する、製造されたままの布地サンプルに対して測定される。他のサンプル寸法を使用することができるが、しかしながら、構造化基材について実施する場合、サンプル幅が測定値に影響を及ぼす可能性がある。最も小さいサンプル幅は、幅2cmであり、最小の長さ10cmを有するべきである。
●熱安定性:ベース基材又は構造化基材不織布の熱安定性は、MD方向に10cm×CD方向に少なくとも2cmの試料が沸騰水中で5分間にどれくらい収縮するかに基づいて評価を行う。ベース基材は、10%未満で収縮するべきであり、すなわち、熱安定性と見なされる、9cmを超えるMDでの最終寸法を有するべきである。サンプルが10%を超えて収縮する場合には、そのサンプルは熱安定性ではない。この測定は、10cm×2cmのサンプル寸法を切り出して、MDでの正確な長さを測定し、熱湯中に5分間サンプルを定置することによって行なった。サンプルを取り出して、サンプルの長さを再びMDで測定する。本発明で試験するすべてのサンプルに関しては、比較実施例での高度に収縮するサンプルであっても、熱湯中での時間の後、サンプルは依然として平坦なままであった。理論に束縛されるものではないが、不織布の熱安定性は、構成成分の繊維の熱安定性に依存する。不織布を構成する繊維が収縮する場合には、その不織布は収縮する。したがって、本明細書での熱安定性の測定はまた、繊維の熱安定性も把握する。不織布の熱安定性は、本発明に関して重要である。本発明で好ましい10%を優に超える、顕著な収縮を示すサンプルに関しては、熱湯中で縮こまるか、又は丸まる場合がある。これらのサンプルに関しては、20gの重りをサンプルの底部に取り付けて、垂直方向で長さを測定することができる。この20gの重りは、金属製のバインダークリップ、又は底部に取り付けたままで長さを測定することが可能な任意の他の好適な重りとすることができる。
●FDT:FDTは繊維変位技術(Fiber Displacement Technology)の略であり、変位された繊維を有する構造化基材を形成するためのベース基材の機械的処理のことを指す。ベース基材が、いずれかのタイプの繊維の変形又は位置変更によって修正されている場合には、そのベース基材はFDTを施されている。フラットローラーを横切る不織布の単純な処理、又は曲げは、FDTではない。FDTは、z方向平面内での繊維の意図的な移動のための、集中的な、機械的又は流体力学的な力による、計画的な繊維の移動を意味する。
●歪み深さ:FDTプロセスにおいて使用される機械的歪み距離。
●過剰熱結合:熱及び/又は圧力を使用した第2別個の結合工程によって試料が過剰結合されているか否かを示す。
●FS先端:変位された繊維の先端又は上部が結合されているか否かを示す。
●構造化基材の密度:構造化基材の密度は、坪量の実測値を構造化基材のエイジング処理キャリパーで割り、同じ単位に変換し、g/立方メートルとして報告することによって求められる。
●構造化基材の比容積:構造化基材の比容積は、立方cm/gの単位で表される、構造化基材密度の逆数である。
●間隙容積の形成:間隙容積の形成とは、繊維の変位工程において形成される間隙容積のことを指す。空隙容積部の生成は、構造化基材の比容積とベース基材の比容積との差である。
エージングされた裏抜け及び再湿潤の試験:裏抜け試験に関しては、Edanaの方法150.3〜96が、以下の修正と共に使用されている。
B.試験条件
●試料の調整及び測定は、23℃±2℃及び相対湿度50%±5%で行う。
E:機器
●基準としてオルストームグレード989又は同等の基準吸収パッド10層(av.ストライクスルー時間:1.7秒±0.3秒、寸法:10×10cm)
F:手順
2.Eに記載されるような吸収パッドを基準とする。
3.試験片を、70×125mmの矩形に切り出す。
4.Bに記載されるように状態調節する。
5.試験片を、10プライの濾紙のセット上に定置する。構造化基材に関しては、構造化面を上方に向ける。
10.この手順を、第1噴出及び第2噴出のそれぞれの吸収の60秒後に繰り返し、第2及び第3の裏抜けの時間を記録する。
11.各試料からの試験片に対する3回の試験のうちの、最小値が推奨される。
再湿潤の測定に関しては、Edanaの方法151.1〜96が、以下の修正と共に使用されている。
B.試験条件
●試料の調整及び測定は、23℃±2℃及び相対湿度50%±5%で行う。
D.原理
●裏抜け測定からの試験片を上に乗せた濾紙の組を使用して再湿潤性を測定した。
E.装置
●ピックアップ紙:Ahlstromグレード632又はこれに相当するものを62mm×125mmに切断し、参照吸収パッドと接触しないように試験片の上に中心を合わせて置く。
●赤ちゃんの模擬体重:総重量3629g±20g
F.手順
12.裏抜けの方法の第3の噴出の終了直後に、工程12から手順を開始する。追加量(L)は、裏抜け試験の3回の噴出の15mLを、この湿潤戻り試験に必要とされる液体の総量(Q)から差し引くことによって決定される。
21.この湿潤戻りの値は、本発明での再湿潤と等しい。
●繊維の特性:本発明における繊維の特性は、MTS Synergie 400シリーズの試験システムを使用して測定された。単一の繊維を、正確に長さ25mm及び幅1cmである穴を作り出すように予め切り取られている、テンプレート紙の上に取り付けた。この繊維を、弛みなく、紙の穴を横切って長さ方向に直線状となるように取り付けた。中実丸形に関する平均繊維直径、又は非丸形に関する等価の中実丸形繊維直径を、少なくとも10回の測定を行なうことによって判定する。これらの10回の測定値の平均を、ソフトウェア入力によって繊維の弾性率を判定する際の、繊維直径として使用する。MTSシステム内に、繊維を装填し、テンプレート紙の端部を、試験の前に切り取った。繊維試料を0.1gの力よりも大きな負荷力で始まる強度プロファイルに従って50mm/分の速度で引っ張る。ピークの繊維荷重及び破断時の歪みを、MTSソフトウェアを使用して測定する。繊維の弾性率もまた、MTSにより、1%の歪みで測定する。表10に提示されるような繊維の弾性率を、この方法で報告した。繊維破断での伸長及びピーク繊維荷重もまた、表10で報告される。結果は、10回の測定の平均である。繊維の弾性率の算出では、中実丸形繊維に関しては、繊維直径を使用し、又は非丸形若しくは中空の繊維に関しては、等価の中実丸形繊維直径を使用する。
●破断したフィラメントの割合:繊維の変位された位置における破断したフィラメントの割合を測定することができる。破断フィラメントの数を判定するための方法は、計数によるものである。変位された繊維を有して製造されたサンプルは、先端部接着を有している場合もあれば、又は有さない場合もある。実際の繊維計数測定を行なうためには、精密なピンセット及びハサミが必要とされる。Tweezermanブランドは、これらの測定のためのそのような器具を作製しており、品目コード1240Tを有するピンセット、及び品目コード3042−Rを有するハサミなどが、使用可能である。品目コードMDS0859411 Medical Supplier Expertもまた、ハサミに使用可能である。他の供給元もまた、使用可能な器具を作製している。
○先端の結合が行われない試料の場合:一般的に、図16に示されるように、変位された繊維の位置の一方の側において破断したフィラメントがより多くなる。構造化繊維ウェブは、第1表面上の、より少ない破断フィラメントを有する、第2領域内の変位された繊維の辺で、切断されるべきである。図16に示すように、この部分は、第1切断部82として特定される左側である。この部分は、第1表面に沿って、変位された繊維の基部で切断されるべきである。この切断を、図17A及び図17Bに示す。図17Bに示す側面図は、図示のようにMDに配向されている。この切断を行なった後で、いずれの遊離繊維も、繊維がそれ以上抜け落ちなくなるまで、振り払うか、又は払い落とすべきである。その繊維を収集して、計数するべきである。次に、第2領域の他方の辺を切断し(図16に、第2切断部84として特定される)、その繊維の数を計数するべきである。第1切断部は、破断繊維の数を詳細に説明する。第1切断部及び第2切断部で計数し、組み合わせた数は、繊維の総数に等しい。第1切断部での繊維の数を、繊維の総数で除算して100を乗じると、破断繊維の百分率が得られる。殆どの場合では、目視検査によって、繊維の大多数が破断しているか否かを明らかにすることができる。定量的な数が必要とされる場合、上記の手順を使用するべきである。この手順は、少なくとも10のサンプルについて行い、その全体を総合して平均化するべきである。ある程度の期間、サンプルが圧縮されていたならば、この試験のために、切断する前に軽くブラシを掛けて、転位区域を露呈させることが必要な場合がある。百分率が接近し、統計的に有意なサンプルサイズが生成されていない場合には、サンプルの数を10単位で増大させ、95%の信頼区間の範囲内の、十分な統計的確実性を与えるべきである。
○先端の結合が行われた試料の場合:図18に示されるように、一般に変位された繊維の位置の一方の側において破断したフィラメントがより多くなる。より少ない破断繊維を有する辺を、最初に切断するべきである。図18に示すように、この部分は、第1切断部として標識される左側上部領域であり、先端部接着が位置する場所の頂部であるが、先端部接着材量は全く含んでいない(すなわち、この部分は、破断繊維の辺に向かう先端部接着の辺上で切断するべきである)。この切断を行なって、遊離繊維を振り払って計数し、繊維計数1として指定するべきである。第2切断部は、変位された繊維の基部とするべきであり、図18の第2切断部として標識される。繊維を振り払って計数し、この計数を、繊維計数2として指定するべきである。第3切断部は、先端部接着領域の反対側で行い、振り落として計数し、繊維計数3として指定する。第4切断部は、変位された繊維の基部で行い、振り払って計数し、繊維計数4として指定する。この切断を、図17A及び図17Bに示す。繊維計数1及び繊維計数2で計数された繊維の数は、その辺1〜2上の繊維の総数に等しい。繊維計数3及び繊維計数4で計数された繊維の数は、その辺3〜4上の繊維の総数に等しい。繊維計数1と繊維計数2との差を判定し、次に繊維計数1及び繊維計数2合計で除算してから100を乗じたものが、破断フィラメント百分率1〜2と呼ばれる。繊維計数3と繊維計数4との差を判定し、次に繊維計数3及び繊維計数4の合計で除算してから100を乗じたものが、破断フィラメント百分率3〜4と呼ばれる。本発明に関しては、破断フィラメント百分率1〜2又は破断フィラメント百分率3〜4は、50%より大きくあるべきである。殆どの場合では、目視検査によって、繊維の大多数が破断しているか否かを明らかにすることができる。定量的な数が必要とされる場合、上記の手順を使用するべきである。この手順は、少なくとも10のサンプルについて行い、その全体を総合して平均化するべきである。ある程度の期間、サンプルが圧縮されていたならば、この試験のために、切断する前に軽くブラシを掛けて、転位区域を露呈させることが必要な場合がある。百分率が接近し、統計的に有意なサンプルサイズが生成されていない場合には、サンプルの数を10単位で増大させ、95%の信頼区間の範囲内の、十分な統計的確実性を与えるべきである。
●平面内径方向の透過性(IPRP):平面内径方向の透過性すなわちIPRP、又は本発明で単に透過性とは、不織布の透過性の目安であり、材料を通じて液体を輸送するために必要とされる圧力に関係している。以下の試験は、多孔質材料の面内放射状浸透性(IPRP)の測定に好適である。一定の圧力下で、材料の環状サンプルを放射状に貫流する、食塩水(0.9% NaCl)の量を、時間の関数として測定する。(参照:J.D.Lindsay、「The anisotropic Permeability of Paper」TAPPI Journal,(1990年5月、pp223)面内生理食塩水の流れ伝導の決定にダーシーの法則及び定常流れ方法が使用される)。
IPRP試料格納装置400が図20に示されており、円筒状の下側プレート405、上側プレート420、及び図21A〜Cに詳細に示される円筒状のステンレス鋼ウェイト415を含んでいる。
上部プレート420は、厚さ10mmで、70.0mmの外径を有し、その中心に固定される長さ190mmの管425に連結される。管425は、15.8mmの外径及び12.0mmの内径を有する。この管は、図21Aに示すように、管の下端が、上部プレートの下面に面一となるように、上部プレート420の中心の、円形12mmの穴内に接着固定される。底部プレート405及び上部プレート420は、Lexan(登録商標)又は等価物から製作される。図21Bに示すステンレス鋼の重り415は、70mmの外径、及び15.9mmの内径を有することにより、この重りは、管425に対して静止滑合となる。ステンレス鋼の重り415の厚さは、約25mmであり、上部プレート420、管425、及びステンレス鋼の重り415の総重量が788gとなり、測定の間、2.1kPaの拘束圧を提供するように、調節される。
図21Cに示すように、底部プレート405は、厚さ約50mmであり、プレートの下面内へ彫られた2つの位置合わせ溝430を有し、各溝は、底部プレートの直径の全長に及び、互いに垂直である。各溝は、幅1.5mm及び深さ2mmである。底部プレート405は、プレートの直径の全長に及ぶ水平の穴435を有する。この水平の穴435は、11mmの直径を有し、その中心軸線は、底部プレート405の上面よりも12mm下方にある。底部プレート405はまた、10mmの直径を有し、深さ8mmである、中央の垂直穴440も有する。この中央の穴440は、水平の穴435と接続し、底部プレート405内にT形状の空洞を形成する。図21Bに示すように、水平の穴435の外側部分は、底部プレート405に水密方式で取り付けられる配管エルボ445に適合するように、ネジ付となっている。一方のエルボは、190mmの高さ及び10mmの内径を有する垂直透明管460に連結される。管460は、底部プレート420の上面よりも50mm上方の高さに、好適なマーク470で刻線される。これは、測定中に維持されるべき流体レベルに関しての参照である。他方のエルボ445は、可撓性の管を介して、流体送達リザーバ700(以下で説明)に連結される。
好適な流体送達リザーバ700を図22に示す。リザーバ700は、好適な実験用ジャッキ705上に置かれており、流体によるリザーバの充填を促進するための、気密ストッパー付き開口部710を有する。10mmの内径を有する開口ガラス管715が、この管の外側とリザーバとの間が気密封止されるように、リザーバの最上部のポート720を通って延びる。リザーバ700には、リザーバ内の流体の表面よりも下方の入口730、ストップコック735、及び出口740を有する、L形状の送出管725が備わっている。出口740は、可撓性のプラスチック管450(例えば、Tygon(登録商標))を介して、エルボ445に連結される。送出管725の内径、ストップコック735及び可撓性のプラスチック管450は、測定中の常時、管460内の流体レベルを刻線マーク470で維持するために十分な高い流量での、IPRPサンプルホルダー400への流体の送達を可能にする。リザーバ700の容量は約6リットルであるが、試料の厚さ及び透過性によってはこれよりも大きなリザーバが必要とされる場合もある。測定の持続時間の間、サンプルホルダー400に流体を供給し、管460内の流体レベルを、刻線マーク470で維持することが可能であれば、他の流体送達システムを採用してもよい。
IPRP集水漏斗500を図20に示し、この漏斗500は、漏斗の上端部で約125mmの内径を有する、外側ハウジング505を含む。漏斗500は、漏斗内に落下する液体が、吐水口515から、迅速かつ自由に排水されるように構成される。漏斗500の周囲の水平フランジ520は、漏斗を水平位置に取り付けることを容易にする。2つの一体型垂直内部リブ510は、漏斗の内径の全長に及び、互いに垂直である。各リブ510は、幅1.5mmであり、リブの上面は、水平面内に位置する。漏斗のハウジング500及びリブ510は、サンプルホルダー400を支持するために、Lexan(登録商標)又は等価物などの、好適な硬質材料から製作される。サンプルの装填を容易にするためには、底部プレート405をリブ510上に配置する際に、底部プレート405の上面が、漏斗のフランジ520よりも上に位置し得るように、リブの高さが十分であることが有利である。ステンレス鋼の重り415の相対的高さを測定するダイヤルゲージ535を備え付けるために、ブリッジ530が、フランジ520に取り付けられる。このダイヤルゲージ535は、25mmの範囲にわたって±0.01mmの解像度を有する。好適なデジタルダイヤルゲージは、Mitutoyoの型番575−123(McMaster Carr Co.より入手可能、カタログ番号19975−A73)、又は等価物である。ブリッジ530は、管425及び管460に適合し、管がブリッジに接触しないための、直径17mmの2つの円形の穴を有する。
図20に示すように、漏斗500は、電子計量器600の上方に取り付けられる。この計量器は、±0.01gの解像度及び少なくとも2000gの秤量を有する。計量器600はまた、コンピュータとインターフェースさせて、計量器の読み取りを定期的に記録し、コンピュータ上に電子的に記憶させることもできる。好適な計測器は、Mettler−Toledoの型番PG5002−S、又は等価物である。収集容器610は、漏斗の吐水口515から排水される液体が、容器610内に直接落下するように、計量パン上に置かれる。
漏斗500は、リブ510の上面が水平面内に位置するように取り付けられる。計量器600及び容器610は、漏斗の吐水口515から排水される液体が、容器610内に直接落下するように、漏斗500の真下に配置される。IPRPサンプルホルダー400は、リブ510が溝430内に配置された状態で、漏斗700内の中央に置かれる。底部プレート405の上面は、完全に平坦かつ水平でなければならない。上部プレート420は、底部プレート405と位置合わせされ、底部プレート405上に安置される。ステンレス鋼の重り415は、管425を取り囲んで、上部プレート420上に安置される。管425は、ブリッジ530内の中央の穴を通って垂直に延びる。ダイヤルゲージ535は、プローブがステンレス鋼の重り415の上面上のポイント上に安置された状態でブリッジ530に堅個に備え付けられる。この状態で、ダイヤルゲージをゼロに設定する。リザーバ700に0.9%食塩水溶液を充填し、再封止する。出口740は、可撓性のプラスチック管450を介して、エルボ445に連結される。
試験される材料の環状サンプル475を、好適な手段によって切り出す。このサンプルは、70mmの外径及び12mmの内側穴の直径を有する。サンプルを切り出す1つの好適な手段は、鋭利な同心状の刃を有する打ち抜きカッターを使用することである。
上部プレート420を、サンプル475が上部プレートと底部プレート405との間に挿入されるように十分持ち上げ、サンプルを底部プレート上の中心に置き、プレートの位置を揃える。ストップコック735を開放し、ジャッキ705を使用してリザーバ700の高さを調節することによって、及びリザーバ内の管715の位置を調節することによって、管460内の流体レベルを刻線マーク470に設定する。管460内の流体レベルが刻線マーク470で安定しており、ダイヤルゲージ535上の読み取りが一定である場合に、ダイヤルゲージ上の読み取りに注目し(最初のサンプル厚さ)、コンピュータによる、計量器からのデータの記録を開始する。計量器の読み取り及び経過時間を、5分の間、10秒毎に記録する。3分後、ダイヤルゲージ上の読み取りに注目し(最終のサンプル厚さ)、ストップコックを閉鎖する。平均のサンプル厚さLpは、最初のサンプル厚さと最終のサンプル厚さとの平均値であり、cm単位で表される。
グラム毎秒の単位での流量は、30秒〜300秒のデータに適合させた線形最小2乗回帰法によって算出する。以下の等式を使用して、材料の浸透性を算出する。
式中、
kは、材料の浸透性(cm
2)である
Qは、流量(g/s)である
ρは、22℃での液体の密度(g/cm
3)である
μは、22℃での液体の粘度(Pa・s)である
R
oは、サンプルの外側半径(mm)である
R
iは、サンプルの内側半径(mm)である
L
pは、平均のサンプル厚さ(cm)である
ΔPは、静水圧(Pa)である
式中、
Δhは、底部プレートの上面よりも上の、管460内の液体の高さ(cm)である
Gは、重力加速度定数(m/s
2)である
式中、
K
rは、cm
2/(Pa・s)の単位で表される、IPRPの値である
表内のデータの摘要:以下の情報は、表に見出される情報を本発明に含めるための根拠を提供する。
●表1及び表2:明確な三葉形の繊維のベース基材の材料特性、中実円形及び標準的な三葉形ベース基材の製造時特性。表1は、ベース基材の製造されたままの特性を説明する。この表は、各サンプルに関する詳細を記載する。表1において指摘するべき重要な特性は、顕著な三葉形のフィラメントに関する修正比率、及びこれらのポイント接着PET基材に関する比較的低いMDの伸長である。
●表3:ベース基材の流体処理特性を示す。これらのベース基材の保持能力は、グラム毎グラムの保持能力が10を下回り、これらのベース基材が吸収性材料ではないことを示した。
●表4:プロセスの設定及びベース基材の特性に対する構造化基材の特性変化を示す。サンプルの1Dの集合に関する実施例は、本発明における主要目的を強調する。1Dは、ベース基材(60g/m2、6.9dpfのPET)であり、一方1D1〜1D6は、歪み深さによって示される、繊維変位の増大を伴うキャリパーの変化を示している。歪みの増大は、キャリパーを増大させる。過剰接着は、過剰熱接着によって示される。先端部接着は、FS−先端によって示され、また、示されるように、エージングされたキャリパー、及び生成される空隙容積部の量にも影響を及ぼし得る。本発明の目的は、液体獲得のための空隙容積部を生成することである。過剰熱接着もまた、ベース基材と比較したMD引っ張り強度の増大で示されるように、機械的特性を増大させるために使用することができる。実施例1Nのデータセットは、ベース基材と、種々の歪み深さプロセスが施されている1N1〜1N9とを比較する。このデータセットは、いずれかの過剰熱接着、FS−先端、及び歪み全般によって決定される、キャリパー生成の最適化が存在することを示す。このデータは、過大な歪みは、エージングされたキャリパーの悪化を伴うサンプルを作り出す恐れがあることを示す。本発明の1つの実行では、このことは、駆動領域内の完全に破断されたフィラメントに相当するが、一方で、最高の空隙容積部の生成を有する領域は、好ましい破断フィラメントの範囲を有する。これらの結果はまた、本発明に関しては、典型的な樹脂結合構造と同様ではあるが、その一方で流体移送特性も有する、構造化基材の容積を生成し得ることも示す。
●表5:データ及び実施例は、本発明におけるキャリパーの増大及び間隙容積の形成を標準的な三葉形及び中実円形の繊維形状に対して使用することが可能であることを示している。本発明の効果は、顕著な三葉形の繊維に制限されるものではない。
●表6は、ベース基材の特性に対する構造化基材の流体処理特性を示す。表6での実施例は、表4と同じである。表6でのデータは、FDTの使用が、ベース基材と比較した、構造化基材のMD水平移送特性を実際に増大させることを示す。過剰接着は、MDでの流体移送を増大させることが見出されている。垂直吸い上げ高さ成分は、中程度FDT歪みでは、構造化基材とベース基材との類似した特性を示すが、より高度の歪みでは、垂直吸い上げ高さ成分は実際に若干減少する。カーディングされた樹脂結合不織布と比較すると、この垂直移送成分は、依然として非常に良好である。エイジングを行った裏抜き試験のデータは、ベース基材に対して構造化基材の液体獲得速度が劇的に向上していることを示している。ベース基材に対してFDTでは、裏抜き時間が劇的に減少している。再湿潤特性は、FDTではベース基材に対して概ね低下している。この表6でのデータは、構造化基材の、流体獲得率を制御する能力と共に、流体移送を提供する能力を立証する。この表はまた、サンプルについての、IPRPを介した材料の流体浸透性を含んでおり、この浸透性は、FDT後の劇的な向上を示し、また、構造化基材が、カーディングされた樹脂結合構造と同様のキャリパーで、より高い浸透性をどの程度有するかということも示す。
●表7は、ベース基材に対する、特定の明確な繊維形状の構造化基材の更なる流体処理特性を示す。このサンプルで使用される駆動条件は、表5に記載される。表5は、FDTにおける変化が、流体獲得率を向上させ得ることを示す。
●表8は、ベース基材試料に対して更なる構造化基材を示しており、中実円形(SR)及び標準的三葉形繊維(TRI)において流体獲得速度が向上していることを示している。構造化基材サンプルに関して使用される駆動条件は、表9に記載される。
●表9は、表8で作った試料のプロセス条件を示す。
●表10は、本発明において使用する基材の単一繊維特性の値を示す。本発明は、高速の繊維紡糸を使用して、熱安定性PETを製造することから、弾性率の値は、フィラメント当たりの強度>10gを有する繊維に関して、非常に高い。
本明細書に開示した寸法及び値は、記載された正確な数値に厳密に限定されるものと理解されるべきではない。むしろ、特に指定のない限り、そのような寸法のそれぞれは、記載された値及びその値の周辺の機能的に同等の範囲の両方を意味するものとする。例えば、「40mm」として開示された寸法は、「約40mm」を意味することを意図する。
相互参照されるか又は関連するすべての特許又は特許出願を含む、本願に引用されるすべての文書を、特に除外又は限定することを明言しない限りにおいて、その全容にわたって本願に援用するものである。いずれの文献の引用も、こうした文献が本願で開示又は特許請求されるすべての発明に対する先行技術であることを容認するものではなく、また、こうした文献が、単独で、あるいは他のすべての参照文献とのあらゆる組み合わせにおいて、こうした発明のいずれかを参照、教示、示唆又は開示していることを容認するものでもない。更に、本文書において、ある用語の任意の意味又は定義の範囲が、援用文献中の同じ用語の任意の意味又は定義と矛盾する場合には、本文書中で用語に与えられる意味又は定義が優先するものとする。
本発明の特定の諸実施形態を図示し、記載したが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を実施できることが当業者には自明である。したがって、本発明の範囲に含まれるそのような変更及び改変はすべて、添付の「特許請求の範囲」において網羅されるものとする。