JP2014509864A - Gdp−フコースを産生可能な酵母組換え細胞 - Google Patents
Gdp−フコースを産生可能な酵母組換え細胞 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2014509864A JP2014509864A JP2014500415A JP2014500415A JP2014509864A JP 2014509864 A JP2014509864 A JP 2014509864A JP 2014500415 A JP2014500415 A JP 2014500415A JP 2014500415 A JP2014500415 A JP 2014500415A JP 2014509864 A JP2014509864 A JP 2014509864A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- yeast
- cassette
- yeast cell
- expression
- fucose
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Classifications
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12N—MICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
- C12N9/00—Enzymes; Proenzymes; Compositions thereof; Processes for preparing, activating, inhibiting, separating or purifying enzymes
- C12N9/10—Transferases (2.)
- C12N9/12—Transferases (2.) transferring phosphorus containing groups, e.g. kinases (2.7)
- C12N9/1241—Nucleotidyltransferases (2.7.7)
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12N—MICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
- C12N9/00—Enzymes; Proenzymes; Compositions thereof; Processes for preparing, activating, inhibiting, separating or purifying enzymes
- C12N9/10—Transferases (2.)
- C12N9/1048—Glycosyltransferases (2.4)
- C12N9/1051—Hexosyltransferases (2.4.1)
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12P—FERMENTATION OR ENZYME-USING PROCESSES TO SYNTHESISE A DESIRED CHEMICAL COMPOUND OR COMPOSITION OR TO SEPARATE OPTICAL ISOMERS FROM A RACEMIC MIXTURE
- C12P21/00—Preparation of peptides or proteins
- C12P21/005—Glycopeptides, glycoproteins
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12Y—ENZYMES
- C12Y207/00—Transferases transferring phosphorus-containing groups (2.7)
- C12Y207/07—Nucleotidyltransferases (2.7.7)
- C12Y207/0703—Fucose-1-phosphate guanylyltransferase (2.7.7.30)
Abstract
二機能性フコキナーゼ/GDP−L−フコースピロホスホリラーゼ酵素を発現しかつGDP−L−フコースをイン・ビボで産生することができる酵母株を提供する。GDP−L−フコーストランスポーターおよび/またはフコシルトランスフェラーゼを二機能性酵素で発現する酵母細胞も提供する。更に、前記の酵母は、異種グリコシル化経路とER/ゴルジ体保持配列との融合タンパク質のための1以上の発現カセットを含む。最後に、本発明は、目的とする組換え糖タンパク質を産生する方法も提供する。
Description
グリコシル化は、真核生物のタンパク質の機能およびそれらの薬理特性の両方にとって本質的なものである。最適なN−またはO−グリコシル化を有する糖タンパク質を生産する目的で、多くの技術的解決法が提案されてきた。例えば、様々なグリコシルトランスフェラーゼによりガラクトース、グルコース、フコースまたはシアル酸のような糖残基の付加によって、または特定の糖残基の抑制、例えば、マンノシダーゼによるマンノース残基の除去によってイン・ビトロでグリカン構造を付加することが提案されてきた(WO03/031464号)。しかしながら、この方法は、同一糖タンパク質上に存在する数個のオリゴ糖の逐次修飾に幾つかの連続段階をともなうので、工業的規模で用いることは困難である。それぞれの段階において、レシピエントタンパク質上で同種のグリカン構造を得るには、反応をしっかりと制御しなければならない。更に、精製酵素の使用は、現実的な経済的解決法であるとは思われない。同様の問題は、WO2006/106348号およびWO2005/000862号に記載されているような化学的カップリング技術でも起きる。それらは、保護/脱保護および多数の制御を有する多数の長たらしい反応を伴う。同一糖タンパク質が幾つかのオリゴ糖鎖を有するときには、逐次反応によって望ましくない異質の修飾物が生じる危険性が高い。
最近、マンノシダーゼおよび幾つかのグリコシルトランスフェラーゼを発現するプラスミドで酵母または単細胞糸状菌を形質転換することによってこれらの微生物で糖タンパク質を産生することが提案されてきている(例えば、WO01/4522号、WO02/00879号、WO02/00856号を参照されたい)。しかしながら、これらの微生物が高容量発酵装置で時間を通して安定であることは今日まで明らかにされていない。従って、このような細胞系が臨床ロットの生産に確実に用いることができるかどうかは、知られていない。
最適のイン・ビボ活性が得られるようにデザインされたグリカン構造を有するタンパク質を得るために、本発明者らは、以前に、ゲノムの様々な部位にターゲッティング配列を有する哺乳類のグリコシル化酵素の様々な融合体を含む発現カセットを挿入することによって遺伝子組換え酵母を構築した(WO2008/095797号)。更に、これらの株を、高マンノースN−グリカンの産生に関与している選択された内在性のグリコシル化酵素を除去することによって修飾した。これらの生成株により、同種で特徴がはっきりしたN−グリコシル化パターンを有するタンパク質が強力に発現された。
動物の糖タンパク質のN−グリカンは、典型的にはガラクトース、フコースおよび末端シアル酸を含む。これらの糖は、大部分の酵母や糸状菌で産生される糖タンパク質では見られない。ヒトでは、総ての範囲のヌクレオチド糖前駆体(例えば、UDP−N−アセチルグルコサミン、UDP−N−アセチルガラクトサミン、CMP−N−アセチルノイラミン酸、UDP−ガラクトース、GDP−フコースなど)はサイトゾルで合成され、ゴルジ体に運ばれ、そこでそれらはグリコシルトランスフェラーゼによってコアオリゴ糖に付着する。
動物およびヒト細胞は、あるタンパク質上のN−グリカンの還元末端におけるGlcNAc残基にフコース残基を付加するフコシルトランスフェラーゼ経路を有する。この経路は、GDP−D−マンノースから始まり、第一の段階は特異的ヌクレオチド−糖デヒドラターゼであるGDP−マンノース−4,6−デヒドラターゼ(GMD)によって触媒される脱水反応である。これは、不安定なGDP−4−ケト−6−デオキシ−D−マンノースを形成し、これが次の3,5−エピマー化に続いてNADPH依存性還元を受けることによって、GDP−L−フコースを形成する。これらの後の二段階は、単一の二機能性酵素GDP−4−ケト−6−デオキシ−D−マンノース−3,5−エピメラーゼ/4−レダクターゼ(ヒトでは、FXとして知られる)によって触媒される。GDP−L−フコースは次に、ゴルジ体膜に位置したGDP−L−フコーストランスポーターによってゴルジ装置に運ばれた後、α1,6−フコシルトランスフェラーゼ(ヒトでは、FUT8によってコードされる)によってN−グリカンの還元末端のGlcNAc残基の6位に移される。
再利用経路と呼ばれるGDP−L−フコースを生産する第二の経路は、報告されている(Reiter and Vanzin,Plant Mol Biol, 47(1-2): 95-113, 2001; Coyne et al., Science, 307: 1778-1781, 2005)。この再利用経路では、遊離のサイトゾルフコースはL−フコキナーゼによってリン酸化されてL−フコース−L−ホスフェートを形成し、これは次にGDP−L−フコースピロホスホリラーゼによって触媒される反応で更にGDP−L−フコースに転換される。細菌および植物では、フコキナーゼおよびGDP−L−フコースピロホスホリラーゼ活性を両方とも有する単一の二機能性酵素が、L−フコースからGDP−L−フコースの合成を触媒することが示されている。この酵素は、それぞれ、バクテロイデス(Bacteroides)(Coyne et al., Science, 307: 1778-1781, 2005; Fletcher et al., Proc Natl Acad Sci U.S.A., 104(7): 2413-2418, 2007; Xu et al., PloS Biol, 5(7): e156, 2007)およびシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)(Kotake et al., J Biol Chem, 283(13): 8125-8135, 2008)におけるFkpおよびFKGp遺伝子によってコードされる。これらの酵素を発現する遺伝子組換え大腸菌(Escherichia coli)株は、フコシル化乳化合物を産生することができる(WO2010/070104号明細書)。精製されたバクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)酵素は、フコシル化化合物 (Wang et al., Proc Natl Acad Sci U.S.A., 106(38): 16096-16101, 2009)またはGDP−L−フコース(Zhao et al., Nat Protoc, 5(4): 636-46, 2010)をイン・ビトロで合成するのに使用されてきた。
IgG1抗体のN−グリカンからフコースを除去するとそれらの抗体依存性細胞傷害性(ADCC)が増すが(例えば、WO00/61739号、Shields et al., J Biol Chem., 277(30): 26733-26740, 2002, Mori et al., Cytotechnology, 55(2−3): 109-114, 2007, Shinkawa et al., J Biol Chem., 278(5): 3466-73, 2003, WO03/035835号、Chowdury and Wu, Methods, 36(1): 11−24, 2005; Teillaud, Expert Opin Biol Ther., 5(Suppl 1): S15-27, 2005; Presta, Adv Drug Deliv Rev., 58(5-6): 640-656, 2006)、フコシル化N−グリカンは他の糖タンパク質にとって重要であると思われる。例えば、白血球増加症の顕著な特徴を有する極めて稀なヒト疾患は、感染症の発生を増加させ、精神遅滞LAD IIは白血球上の選択リガンドの欠如へと導くGDP−L−フコーストランスポーター活性における欠損と関連づけられている(Luhn et al., 2001; Etzioni, 2005)。α1,6−フコシルトランスフェラーゼを欠いているマウスはα4β1インテグリン/VCAM−1相互作用が低下し、プレB細胞再増殖が損なわれ、免疫グロブリンの産生が減少することも示されている (Li et al., Glycobiology, 18(1): 114-124, 2008)。更に一般的には、マウスにおけるFUT8の崩壊は、成長の著しい阻害、生後発育中の早期の死、および肺における肺気腫様変化を引き起こす。これらの表現型は、少なくとも部分的にはTGF−β1およびEGFレセプターのフコシル化の減少による可能性がある(Wang et al., Meth Enzymol, 417: 11-22, 2006)。更に、抗体の少なくとも一部がフコシル化されてADCC活性を減少させない抗体組成物を産生することが望ましい場合がある。
GDP−L−フコースを化学的に合成する方法は、記載されている(欧州特許第502298号明細書、米国特許第5,371,203号明細書)。その特異的糖ヌクレオチドの産生は原核生物で行った後、それを培養培地に分泌することもできる(米国特許第6,875,591号明細書)。しかしながら、これらの合成法の価格は、工業的過程でのそれらの使用に負の影響を与える。
もう一つの方法は、酵母細胞におけるGDP−L−フコース合成経路の組込みからなっている。酵母細胞では、グリコシル化は主としてマンノシル化に制限されている。これらの細胞は、それら自身のフコース代謝を有することは知られていない。特に、酵母はGDP−L−フコースを合成せず、これは何か他の手段によって提供しなければならない。例えば、欧州特許第1199364号明細書およびWO2008/112092号には、ヒトGDP−マンノース−4,6−デヒドラターゼおよびGDP−4−ケト−6−デオキシ−D−マンノース−3,5−エピメラーゼ/4−レダクターゼ酵素を発現する酵母細胞の構築が記載されている。この方法では、GDP−L−フコースを産生することができる酵母細胞を得ることができるが、酵母に2種類の外来タンパク質を類似の量で同時に発現させる必要があり、これは工業的に達成が困難なことがある。
フコシル化糖タンパク質の組換え生成のための遺伝学的に増強された酵母細胞が、未だに求められている。
説明
本発明は、フコシル化N−グリカンを有する糖タンパク質を産生することができる遺伝子組換え酵母細胞を提供する。また、遺伝子組換え酵母細胞を得る方法並びにフコシル化糖タンパク質を産生する方法も提供される。
本発明は、フコシル化N−グリカンを有する糖タンパク質を産生することができる遺伝子組換え酵母細胞を提供する。また、遺伝子組換え酵母細胞を得る方法並びにフコシル化糖タンパク質を産生する方法も提供される。
本発明による酵母は、異種タンパク質の大規模生産に用いることができる任意の種類の酵母である。従って、本発明の酵母は、サッカロマイセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス種(Saccharomyces sp.)、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizzosaccharomyces pombe)、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ピキア・フィンランディカ(Pichia finlandica)、ピキア・トレハロフィラ(Pichia trehalophila)、ピキア・コクラマエ(Pichia koclamae)、ピキア・メンブラナエファシエンス(Pichia membranaefaciens)、ピキア・ミヌタ(Pichia minuta)(オガタエア・ミヌタ(Ogataea minuta)、ピキア・リンドネリ(Pichia lindneri))、ピキア・オプンティアエ(Pichia opuntiae)、ピキア・サーモトレランス(Pichia thermotolerans)、ピキア・サリクタリア(Pichia salictaria)、ピキア・グエルクウム(Pichia guercuum)、ピキア・ピジペリ(Pichia pijperi)、ピキア・スティプティス(Pichia stiptis)、ピキア・メタノリカ(Pichia methanolica)、ピキア種(Pichia sp.)、クルイベロミセス種(Kluyveromyces sp.)、クルイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)のような種を含んでなる。好ましくは、本発明の酵母は、サッカロマイセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)である。「酵母細胞」、「酵母株」、「酵母培養物」という表現は互換的に用いられ、このような名称は総て後代(progeny)を包含する。例えば、「形質転換体」および「形質転換細胞」という用語は、初代被験体細胞、およびトランスファーの数には関係なくそれに由来する培養物を含む。意図的なまたは偶然の突然変異により、総ての子孫はDNAの内容が精確に同一ではないことがあることも理解されている。最初に形質転換した細胞でスクリーニングしたのと同じ機能または生物活性を有する突然変異体子孫が含まれる。別個の名称を付けようとする場合には、前後関係から明らかになる。
「グリコシル化」という用語は、糖タンパク質へのオリゴ糖(互いに連結した2つ以上の単糖、例えば、互いに連結した2〜約12個の単糖を含む炭水化物)の付着を意味する。オリゴ糖側鎖は、典型的にはN−またはO−結合を介して糖タンパク質の主鎖に連結している。生じる本発明のオリゴ糖は、通常はN−結合したオリゴ糖としてのFc領域のCH2ドメインに結合している。「N−結合したグリコシル化」は、従って、糖タンパク質鎖におけるアスパラギン残基への炭水化物部分の結合を表す。
本明細書で用いられる「N−グリカン」という用語は、N−結合したオリゴ糖、例えば、アスパラギン−N−アセチルグルコサミン結合によってポリペプチドのアスパラギン残基に結合しているものを表す。N−グリカンは、Man3GlcNAc2(「Man」はマンノースを表し、「Glc」はグルコースを表し、「NAc」はN−アセチルを表し、GlcNAcはN−アセチルグルコサミンを表す)の共通の五糖コアを有する。N−グリカンに関して用いられる「トリマンノースコア」という用語も、構造Man3GlcNAc2(「Man3」)を表す。N−グリカンに関して用いられる「ペンタマンノースコア」または「マンノース−5コア」または「Man5」は、構造Man5GlcNAc2を表す。
N−グリカンは、Man3コア構造に結合している周辺糖(peripheral sugars)(例えば、GlcNAc、ガラクトース、フコースおよびシアル酸)を含んでなる分枝(触角)の数および性質に関して異なる。N−グリカンは、それらの分枝した成分(例えば、高マンノース、複合またはハイブリッド)に従って分類される。「高マンノース」型N−グリカンは、少なくとも5つのマンノース残基を含んでなる。「複合」型N−グリカンは、典型的にはトリマンノースコアの1,3マンノースアームに結合した少なくとも1つのGlcNAcと1,6マンノースアームに結合した少なくとも1つのGlcNAcを有する。複合N−グリカンは、場合によってはシアル酸または誘導体(「NeuAc」(式中、「Neu」はノイラミン酸を表し、「Ac」はアセチルを表す)で修正されているガラクトース(「Gal」)残基を有することもある。複合N−グリカンは、典型的には、例えばNeuNAc−、NeuAcα2−6GalNAcα1−、NeuAcα2−3Galβ1−3GalNAcα1−、NeuAcα2−3/6Galβ1−4GlcNAcβ1−、GlcNAcα1−4Galβ1−(ムチンのみ)、Fucα1−2Galβ1−(血液グループH)のようなオリゴ糖で終わる少なくとも1つの分枝を有する。硫酸エステルはガラクトース、GalNAcおよびGlcNAc残基上に存在することができ、リン酸エステルはマンノース残基上に存在することができる。NeuAc(Neu:ノイラミン酸;Ac:アセチル)は、O−アセチル化し、あるいはNeuGl(N−グリコリルノイラミン酸)によって置換することができる。複合N−グリカンは、「二分割」GlcNAcおよびコアフコース(「Fuc」)を含んでなる鎖内置換を有することもある。「ハイブリッド」N−グリカンは、トリマンノースコアの1,3マンノースアームの末端に少なくとも1つのGlcNAcと、トリマンノースコアの1,6マンノースアーム上に0個以上のマンノースを有する。
真核生物のタンパク質のN−グリコシル化は、小胞体(ER)内腔およびゴルジ装置で起こる。この過程は、細胞質で合成した分枝したドリコール結合オリゴ糖Man5GlcNAc2をER内腔にフリップしてコアオリゴ糖Glc3Man9GlcNAc2を形成することで始まる。オリゴ糖を、次に初期ポリペプチド鎖のN−グリコシル化コンセンサス配列のアスパラギン残基に移し、末端グルコース残基を除去するα−グルコシダーゼIおよびII、および末端マンノース残基を開裂させるα−マンノシダーゼによって順次にトリムする。生成するオリゴ糖Man8GlcNAc2は、接合中間体であり、これは更にトリムして、哺乳類細胞などの高等真核細胞では複合型構造をもたらす最初の基質であるMan5GlcNAc2を生じ、またはマンノース残基の付加によって伸長して、下等真核細胞ではMan9GlcNAc2をゴルジ装置に生じることがある。
ヒトグリコシル化反応のレパートリーの中心部分は、2種類の別個なマンノシダーゼ(すなわち、α−1,2−マンノシダーゼおよびマンノシダーゼII)によるマンノースの連続除去、N−アセチルグルコサミンの付加(N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIおよびIIによる)、ガラクトースによる(β−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ)、および最後にシアリルトランスフェラーゼによるシアル酸の付加を必要とする。他の反応は、追加の酵素、例えば、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII、IVおよびVまたはフコシルトランスフェラーゼによって制御して、複合N−グリカン型の様々な組合せを生成することができる。
第一の態様では、本発明は、GDP−L−フコースをイン・ビボで合成することができる酵母細胞に関する。従って、本発明は、フコキナーゼおよびGDP−L−フコースピロホスホリラーゼ酵素活性を両方とも発現する遺伝子組換え酵母細胞を提供する。
「フコキナーゼ」とは、本明細書では、ホスフェートをL−フコースに付加する酵素活性を表す。従って、本発明のフコキナーゼ活性は、具体的にはホスフェートドナーとしてATPを用いてL−フコースをL−フコース−1−Pに転換する(例えば、Ishihara et al., J. Biol. Chem., 243: 1103-1109, 1968を参照されたい)。この酵素は、当該技術分野では、「フコキナーゼ(リン酸化)」、「フコースキナーゼ」、「L−フコースキナーゼ」、「ATP:6−デオキシ−L−ガラクトース1−ホスホトランスフェラーゼ」、「L−フコキナーゼ」、「ATP:L−フコース1−ホスホトランスフェラーゼ」または「ATP:β−L−フコース1−ホスホトランスフェラーゼ」としても知られている。好ましくは、本発明のフコキナーゼ活性は、EC2.7.1.52と呼ばれる酵素活性に相当する。
「GDP−L−フコースピロホスホリラーゼ」とは、本明細書では、GDPの存在下にてL−フコース−1−PをGDP−L−フコースに転換する酵素活性を表す(例えば、Ishihara et al., J. Biol. Chem., 243: 1110-1115, 1968を参照されたい)。この酵素は、文献では「フコース−1−ホスフェートグアニリルトランスフェラーゼ」、「GDPフコースピロホスホリラーゼ」、「グアノシンジホスフェートL−フコースピロホスホリラーゼ」、「GDP−フコースピロホスホリラーゼ」、「GTP:L−フコース−1−ホスフェートグアニリルトランスフェラーゼ」または「GTP:β−L−フコース−1−ホスフェートグアニリルトランスフェラーゼ」としても知られている。好ましくは、本発明のGDP−L−フコースピロホスホリラーゼは、EC2.7.7.30と呼ばれる酵素活性に相当する。
本発明の一実施態様では、フコキナーゼおよびGDP−L−フコースピロホスホリラーゼ活性のそれぞれは、別のポリペプチドによって運ばれる。このようなタンパク質は当該技術分野で知られており、それ自体当業者にとって利用可能である。例えば、豚フコキナーゼはPark et al.(J Biol Chem, 273(10): 5685-5691, 1998)において、および豚GDP−L−フコースピロホスホリラーゼはPastuszak et al.(J Biol Chem, 273(46): 30165-3074, 1998)において特性決定されている。この実施態様によれば、本発明は、2種類のポリペプチドであって、一方はフコキナーゼ活性を有し、他方はGDP−L−フコースピロホスホリラーゼ活性を有するものを発現する酵母細胞に関する。
本発明は、前記の、すなわち2種類の酵素活性のそれぞれは別個のポリペプチドと関連している状況を包含するが、本発明の目的には、両方の酵素活性が同一ポリペプチドによって運ばれるのが有利である。これによって、1種類のみのタンパク質を発現させることによってL−フコースからGDP−L−フコースのイン・ビボ産生が可能になる。
この実施態様によれば、フコキナーゼおよびGDP−L−フコースピロホスホリラーゼ活性は、単一の二機能性タンパク質によって運ばれる。既知の二機能性タンパク質は、バクテロイデス(Bacteroides)のFkpタンパク質(Coyne et al., Science, 307: 1778-1781, 2005; Fletcher et al., Proc Natl Acad Sci U.S.A., 104(7): 2413-2418, 2007; Xu et al., PloS Biol, 5(7): e156, 2007)およびシロイヌナズナ(A. thaliana)のFKGpタンパク質(Kotake et al., J Biol Chem, 283(13): 8125-8135, 2008)である。本発明による他の二機能性酵素は、すなわち、Fkpおよび/またはFKGpタンパク質との配列同一性に基づいて、配列比較によって当業者が同定することができる。Fkpタンパク質とは、本明細書では、バクテロイデス(Bacteroides)属に含まれておりかつフコキナーゼおよびGDP−L−フコースピロホスホリラーゼ活性を両方とも有する細菌タンパク質を表す。Fkpタンパク質の一例は、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)Fkpタンパク質であり、これはGenbank ID番号AAX45030.1.を有する。好ましくは、本発明のFkpタンパク質は、配列番号2と同一の配列を有する。FKGpとは、本明細書では、フコキナーゼおよびGDP−L−フコースピロホスホリラーゼ活性を両方とも有し、Genbank ID番号NP_563620.1.を有するシロイヌナズナ(A. thaliana)のタンパク質を意味する。本発明のFKGpタンパク質は、好ましくは配列番号4と同一のポリペプチド配列を有する。好ましい実施態様では、フコキナーゼおよびGDP−L−フコースピロホスホリラーゼ活性を両方とも有する二機能性タンパク質は、FkpおよびFKGpからなる群から選択される。更に好ましい実施態様では、前記の二機能性タンパク質は、配列番号2および配列番号4からなる群から選択される配列を有するタンパク質である。
本発明のもう一つの態様では、前記の遺伝子組換え酵母細胞は、上記のように二機能性タンパク質をコードする遺伝子を含んでなる発現カセットを含んでなる。好ましい実施態様では、本発明の遺伝子は、FkpおよびFKGpからなる群から選択されるタンパク質をコードする。更に好ましい実施態様では、本発明の遺伝子は、配列番号2および配列番号4からなる群から選択される配列を有するタンパク質をコードする。好ましくは、本発明の遺伝子は、配列番号1および配列番号3の群から選択される配列と少なくとも80%の同一性を有する配列を有する。最も好ましい実施態様では、本発明の遺伝子は、配列番号5および配列番号6からなる群から選択される配列を有する。
本発明による発現カセットは、目的のタンパク質をコードする遺伝子の他に、前記タンパク質の発現を指示するのに必要な総ての配列を含む。これらの調節要素は、プロモーター、リボソーム開始部位、開始コドン、停止コドン、ポリアデニル化シグナルおよびターミネーターを含んでなることがある。更に、エンハンサーが遺伝子発現に必要なことが多い。これらの要素は、所望なタンパク質をコードする配列に操作可能に連結していることが必要である。「操作可能に連結している」発現制御配列は、発現制御配列が目的の遺伝子と隣接して目的の遺伝子を制御する結合、並びにイン・トランス(in trans)または離れて作用して目的の遺伝子を制御する発現制御配列を表す。
開始および停止コドンは、一般的には所望なタンパク質をコードするヌクレオチド配列の一部と考えられている。しかしながら、これらの要素は、遺伝子構築物が導入される細胞で機能性であることが必要である。開始および終止コドンは、コード配列とイン・フレーム(in frame)でなければならない。
遺伝子の発現に必要なプロモーターとしては、GAPDH、PGKなどの構成的発現プロモーターおよびGAL1、CUP1などの誘導的発現プロモーターが何ら特別な制限なしに挙げられる。前記プロモーターは、内在性プロモーター、すなわち異種N−グリコシル化酵素を発現する同一酵母種由来のプロモーターであることができる。あるいは、それらは別の種由来であることができ、唯一の要件は、前記プロモーターが酵母で機能性であることである。一例として、遺伝子の一つの発現に必要なプロモーターは、pGAPDH、pGAL1、pGAL10、pPGK、pTEF、pMET25、pADH1、pPMA1、pADH2、pPYK1、pPGK、pENO、pPHO5、pCUP1、pPET56を含んでなる群から選択することができ、前記群は、異種プロモーターpnmt1、padh2(いずれも、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizzosaccharomyces pombe)由来)、pSV40、pCaMV、pGRE、pARE、pICL(カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis))をも含んでなる。ターミネーターは、CYC1、TEF、PGK、PHO5、URA3、ADH1、PDI1、KAR2、TPI1、TRP1、Bip、CaMV35S、およびICLを含んでなる群において選択される。
これらの調節配列は、当該技術分野で広く用いられている。当業者であれば、何ら困難なしにデーターベースでそれらを同定するであろう。例えば、当業者であれば、発芽期の酵母プロモーターおよび/またはターミネーター配列を検索する目的でサッカロマイセス(Saccharomyces)ゲノムデーターベースウェブサイト(http://www.yeastgenome.org/)を調べるであろう。
本発明において酵母にN−グリコシル化タンパク質を産生させるには、GDP−L−フコースを、本発明の二機能性フコキナーゼ/GDP−L−フコースピロホスホリラーゼ酵素によるその産生の結果として最初に細胞質内に蓄積させる。次いで、酵母細胞質内に蓄積したGDP−L−フコースをゴルジ装置に輸送しなければならず、そこでグリコシルトランスファー反応および糖タンパク質の合成が起こる。この反応は、真核生物細胞ではGDP−フコーストランスポーターによって行われる。GDP−フコーストランスポーターは、幾つかの種で同定されている。例えば、ヒトGDP−フコーストランスポーター(Fuct1)は、グリコシル化−IIの先天性疾患に関連したものとして同定されている(Lubke et al, Nat. Genet., 28: 73-76, 2001)。それは、SLC35C1遺伝子によってコードされる。GDP−フコーストランスポーター活性を有する相同遺伝子は、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)(Ishikawa et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U S A., 102:18532-18537, 2005)、ラット肝(Puglielli and Hirschberg; J. Biol. Chem., 274: 35596-35600, 1999)、推定的CHO(Chen et al., Glycobiology; 15: 259-269, 2005)およびシロイヌナズナ(A. thaliana)ホモログ(米国特許出願公告第2006/0099680号明細書)のような他の種で同定されている。好ましくは、GDP−L−フコーストランスポーターは、ヒトGDP−L−フコーストランスポーターであり、これはSLC35C1遺伝子(受入番号:NM_018389)によってコードされる。
更に、本発明においてGDP−L−フコースを糖ドナーとして利用するには、フコシルトランスフェラーゼは本発明の酵母細胞で発現しなければならない。現在のところ、8種類のフコシルトランスフェラーゼが哺乳類におけるAsnに結合したムチン型の糖鎖のシンターゼとして知られている。「フコシルトランスフェラーゼ」は、1種類以上のフコースを糖タンパク質に付加する酵素である。例としては、α1,2−フコシルトランスフェラーゼ(EC2.4.1.69;FUT1およびFUT2によってコードされる)、α1,3−フコシルトランスフェラーゼ(糖タンパク質3−α−L−フコシルトランスフェラーゼ、EC2.4.1.214;FUT3−FUT7およびFUT9によってコードされる)、α1,4−フコシルトランスフェラーゼ(EC2.4.1.65;FUT3によってコードされる)、およびα1,6−フコシルトランスフェラーゼ(糖タンパク質 6−α−L−フコシルトランスフェラーゼ、EC2.4.1.68;FUT8によってコードされる)が挙げられる。一般に、α1,2−フコシルトランスフェラーゼは、フコースをα1,2結合によってN−グリカンの末端ガラクトース残基に移動させ、一般に、α1,3−フコシルトランスフェラーゼおよびα1,4−フコシルトランスフェラーゼは、フコースをN−グリカンの非還元末端におけるGlcNAc残基に移動させる。一般に、α1,6−フコシルトランスフェラーゼは、フコシル残基をGDP−L−フコースからアスパラギンに結合したオリゴ糖の最内側のGlcNAc(N−グリカン)への移動を触媒する。典型的には、フコースを還元末端のGlcNAcに付加させることができるようにするためには、α1,6−フコシルトランスフェラーゼは、トリマンノースコアの少なくとも1本の分枝の非還元末端に末端GlcNAc残基を必要とする。しかしながら、α1,6−フコシルトランスフェラーゼは、フコースを還元末端のGlcNAcに付加させることができるようにするためには、非還元末端に末端ガラクトシド残基を必要とすることが確認されている(Wilson et al, Biochem. Biophys. Res. Comm., 72: 909-916, 1976))。GlcNAcトランスフェラーゼIを欠いているCHO細胞では、α1,6−フコシルトランスフェラーゼは、フコシレートMan4GlcNAc2およびMan5GlcNAc2N−グリカンをフコシル化することも報告されている(Lin et al., Glycobiol., 4: 895-901, 1994)。ブタおよびヒトα1,6−フコシルトランスフェラーゼは、Uozumi et al.(J. Biol. Chem., 271: 27810-27817, 1996)およびYanagidani et al.(J. Biochem., 121: 626-632, 1997)にそれぞれ記載されている。好ましくは、α−1,6−フコシルトランスフェラーゼは、ヒトタンパク質であり、これはFUT8(受入番号:NM_178156)によってコードされる。
本発明は、二機能性フコキナーゼ/GDP−L−フコースピロホスホリラーゼ酵素をコードする遺伝子を含む発現カセットの他に、GDP−L−フコーストランスポーターをコードする遺伝子および/またはフコシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子を有する少なくとも1つの発現カセットを含む遺伝子組換え酵母細胞にも関する。換言すれば、本発明は、二機能性フコキナーゼ/GDP−L−フコースピロホスホリラーゼ酵素をコードする遺伝子を含み、かつ少なくとも1つの追加カセットであって、GDP−L−フコーストランスポーターおよび/またはフコシルトランスフェラーゼの発現のための前記カセットを含んでなる遺伝子組換え酵母株に関する。GDP−L−フコーストランスポーターおよびフコシルトランスフェラーゼの発現のためのこれらのカセットは、WO2008/095797号に記載されている。好ましくは、本発明の酵母細胞は、二機能性フコキナーゼ/GDP−L−フコースピロホスホリラーゼ酵素をコードする遺伝子を含む発現カセットの他に、2つの発現カセットであって、GDP−L−フコーストランスポーターをコードする遺伝子を含む第一のカセットとフコシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子を含むもう一方のカセットを含んでなる。更に好ましくは、本発明のフコシルトランスフェラーゼは、α1,6−フコシルトランスフェラーゼである。この最後の実施態様では、本発明は、酵母細胞において完全フコシル化経路の発現を可能にする発現カセットであって、
第一の発現カセットが二機能性フコキナーゼ/GDP−L−フコースピロホスホリラーゼ酵素をコードし、
第二の発現カセットがGDP−L−フコーストランスポーターコードし、かつ
第三の発現カセットがα1,6−フコシルトランスフェラーゼをコードする
ものを含んでなる前記酵母細胞に関する。
第一の発現カセットが二機能性フコキナーゼ/GDP−L−フコースピロホスホリラーゼ酵素をコードし、
第二の発現カセットがGDP−L−フコーストランスポーターコードし、かつ
第三の発現カセットがα1,6−フコシルトランスフェラーゼをコードする
ものを含んでなる前記酵母細胞に関する。
ヒトN−グリコシル化は、GlcNAc、ガラクトースおよびシアル酸で伸長されたトリマンノースコア上に構築された複合型のものであるが、酵母N−グリコシル化は、100までまたはそれ以上のマンノース残基を含む高マンノース型である(超マンノシル化(hypermannosylation))。小胞体(ER)におけるMan8中間体の形成までは、両経路は同一である。これらの経路は、この中間体の形成後に別れ、酵母酵素では更なるマンノース残基を付加するが、哺乳類経路はα−1,2−マンノシダーゼに依存してマンノース残基を更にトリムする。従って、酵母で複合グリコシル化を獲得するには、最初に内在性のマンノシルトランスフェラーゼ活性を不活性化する必要がある。1種類以上のマンノシルトランスフェラーゼを不活性化する突然変異を含む酵母は、マンノース残基をAsn結合した内部オリゴ糖Man8GlcNAc2に付加することができない。
第一の実施態様では、本発明は、少なくとも1種類のマンノシルトランスフェラーゼ活性が欠けておりかつ上記のような二機能性フコキナーゼ/GDP−L−フコースピロホスホリラーゼ酵素に対して少なくとも1種類の発現カセットを含む酵母細胞に関する。更に好ましい実施態様では、少なくとも1種類のマンノシルトランスフェラーゼ活性を欠いている酵母細胞は、二機能性フコキナーゼ/GDP−L−フコースピロホスホリラーゼ酵素に対する発現カセットと少なくとも1種類の発現カセットであって、GDP−L−フコーストランスポーターまたはフコシルトランスフェラーゼをコードする前記他の発現カセットを含む。好ましくは、少なくとも1種類のマンノシルトランスフェラーゼ活性を欠いている酵母細胞は、フコシル化経路に対する発現カセットを含む。
「マンノシルトランスフェラーゼ」とは、本明細書では、マンノース残基を糖タンパク質に付加する酵素活性を表す。これらの活性は当業者に周知であり、サッカロマイセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)のような酵母におけるグリコシル化経路は広範囲に検討されてきた(Herscovics and Orlean, FASEB J., 7(6): 540-550, 1993; Munro, FEBS Lett., 498(2-3): 223-227, 2001. Karhinen and Makarow, J. Cell Sci., 117(2): 351-358, 2004))。好ましい実施態様では、マンノシルトランスフェラーゼは、サッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)遺伝子OCH1、MNN1、MNN4、MNN6、MNN9、TTP1、YGL257c、YNR059w、YIL014w、YJL86w、KRE2、YUR1、KTR1、KTR2、KTR3、KTR4、KTR5、KTR6およびKTR7の産物、またはそれらのホモログからなる群から選択される。更に好ましい実施態様では、マンノシルトランスフェラーゼは、サッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)遺伝子OCH1、MNN1およびMNN9の産物、またはそれらのホモログからなる群から選択される。更に一層好ましい実施態様では、マンノシルトランスフェラーゼは、サッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)OCH1の産物またはそのホモログである。もう一つの更に好ましい実施態様では、マンノシルトランスフェラーゼは、サッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)MNN1の産物、またはそのホモログである。更にもう一つの更に好ましい実施態様では、マンノシルトランスフェラーゼは、サッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)MNN9の産物、またはそのホモログである。更に一層好ましい実施態様では、本発明の酵母は、OCH1遺伝子によってコードされるマンノシルトランスフェラーゼおよび/またはMNN1遺伝子によってコードされるマンノシルトランスフェラーゼおよび/またはMNN9遺伝子によってコードされるマンノシルトランスフェラーゼを欠いている。
本発明によれば、マンノシルトランスフェラーゼ活性が酵母細胞に実質的に存在しないときには、マンノシルトランスフェラーゼ活性は、この細胞には欠けている。これは、前記マンノシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子の転写または翻訳の妨害によって起こる可能性がある。更に好ましくは、マンノシルトランスフェラーゼは、前記酵素をコードする遺伝子における突然変異により、欠けている。更に一層好ましくは、マンノシルトランスフェラーゼ遺伝子は、部分的または全体的にマーカー遺伝子によって置換されている。遺伝子ノックアウトの創成は、酵母および真菌の分子生物学界で定着した手法であり、当該技術分野で通常の技術を有する何人によっても生じさせることができる(R Rothstein, Methods in Enzymology, 194: 281-301, 1991)。本発明の更に好ましい実施態様によれば、マーカー遺伝子は、抗生物質に対する耐性を付与するタンパク質をコードする。更に一層好ましくは、OCH1遺伝子は、カナマイシン耐性カセットによって分断され、および/またはMNN1遺伝子は、ハイグロマイシン耐性カセットによって分断され、および/またはMNN9は、フェロマイシンまたはブラストサイジンまたはヌールセオスリシン(nourseothricin)耐性カセットによって分断される。本明細書で用いられる「抗生物質耐性カセット」は、タンパク質をコードする遺伝子を含んでなるポリヌクレオチドであって、前記タンパク質が前記抗生物質に対する耐性を付与することができ、すなわち、宿主酵母細胞を抗生物質の存在下にて増殖させることができるものを指す。前記ポリヌクレオチドは、前記タンパク質をコードするオープンリーディングフレームだけでなく、プロモーター、リボソーム開始部位、開始コドン、終止コドン、ポリアデニル化シグナルおよびターミネーター等その発現に必要な総ての調節シグナルも含んでなる。
更に、本発明の酵母細胞は、1種類以上の追加の発現カセットであって、前記酵母細胞において異種グリコシル化酵素を発現させる前記の追加カセットを含んでなる。例えば、前記酵素は、α−マンノシダーゼ(α−マンノシダーゼIまたはα−1,2−マンノシダーゼ、α−マンノシダーゼII)、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnT−I、GnT−II、GnT−III、GnT−IV、GnT−V)I、ガラクトシルトランスフェラーゼI(GalT)、シアリルトランスフェラーゼ(SiaT)、UDP−N−アセチルグルコサミン−2−エピメラーゼ/N−アセチルマンノサミンキナーゼ(GNE)、N−アセチルノイラミネート−9−ホスフェートシンターゼ(SPS)、シチジンモノホスフェートN−アセチルノイラミン酸シンターゼ(CSS)、シアル酸シンターゼ、CMP−シアル酸シンターゼなどの1以上の活性を含む。このような酵素は、多年にわたって広範囲に特性決定されてきた。
前記酵素をコードする遺伝子も、クローニングされて、研究されてきた。例えば、カエノルハブジチス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)α−1,2−マンノシダーゼ(ZC410.3、Man(9)−α−マンノシダーゼ、受入番号:NM_069176)をコードする遺伝子、ネズミマンノシダーゼII(Man2a1、受入番号:NM_008549.1)をコードする遺伝子、ヒトN−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼI(MGAT1、受入番号:NM_001114620.1)をコードする遺伝子、ヒトN−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼII(MGAT2、受入番号:NM_002408.3)をコードする遺伝子、ネズミN−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(MGAT3、受入番号:NM_010795.3)をコードする遺伝子、ヒトガラクトシルトランスフェラーゼI(B4GALT1、受入番号:NM_001497.3)をコードする遺伝子、ヒトシアリルトランスフェラーゼ(ST3GAL4、受入番号:NM_006278)をコードする遺伝子、ヒトUDP−N−アセチルグルコサミン−2−エピメラーゼ/N−アセチルマンノサミンキナーゼ(GNE、受入番号:NM_001128227)をコードする遺伝子、ヒトN−アセチルノイラミネート−9−ホスフェートシンターゼ(NANS、受入番号:NM_018946.3)をコードする遺伝子、ヒトシチジンモノホスフェートN−アセチルノイラミン酸シンターゼ(CMAS、受入番号:NM_018686)をコードする遺伝子、細菌性(ナイセリア・メニンギティジス(N. meningitidis))のシアル酸シンターゼ(SiaA、受入番号:M95053.1)をコードする遺伝子、細菌性(ナイセリア・メニンギティジス(N. meningitidis))のCMP−シアル酸シンターゼ(SiaB、受入番号:M95053.1)をコードする遺伝子が挙げられる。
他の種由来の関連遺伝子は、当業者に知られている方法のいずれかによって、例えば、配列の比較を行うことによって容易に同定することができる。
2つのアミノ酸配列における配列比較は、通常は最良のアライメントに従って以前に整列されているこれらの配列を比較することによって行われ、この比較は、比較のセグメントについて、類似性の局所領域を同定および比較する目的で行われる。比較を行うための最良の配列アライメントは、手動による他、Smith and Watermanによって開発されたグローバル・ホモロジー・アルゴリズムの使用(Ad. App. Math., 2: 482-489, 1981)、Neddleman and Wunschによって開発されたローカル・ホモロジー・アルゴリズムの使用(J. Mol. Biol., 48: 443-453, 1970)、Pearson and Lipmanによって開発された類似度法の使用(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85: 2444-2448, 1988)、これらのアルゴリズムを用いるコンピューターソフトウェアの使用(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, Wl USAにおけるGAP、BESTFIT、BLASTP、BLASTN、FASTA、TFASTA)、MUSCLEマルチプルアライメントアルゴリズムの使用(Edgar, Nucl. Acids Res., 32: 1792-1797, 2004)によって行うことができる。最良のローカルアライメントを得るために、好ましくは、BLOSUM62マトリックスまたはPAM30マトリックスを用いるBLASTソフトウェアを用いることができる。2つのアミノ酸配列の同一性率は、最適に整列されたこれら2つの配列を比較することによって決定され、アミノ酸配列は、これら2つの配列の間に最適アライメントを得るためのリファレンス配列に関して付加または欠失を含んでなることができる。同一性率は、これら2つの配列の間の同一位置の数を決定し、この数を比較した位置の総数で割り、得られた結果に100を掛けて計算し、これら2つの配列間の同一性率を得る。
更に、多数の公表文献には、他の種の関連酵素も記載されており、当業者であれば、目的の遺伝子の配列を誘導することができる(例えば、WO01/25406号、Kumar et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 87: 9948-9952, 1990、Sarkar et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A, 88: 234-238, 1991、D'Agostero et al., Eur. J. Biochem., 183: 211-217, 1989、Mash et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 157: 657, 1988、Wang et al. Glycobiology, 1: 25-31, 1990、Lai et al., J Biol Chem., 269: 9872-9881, 1984、Herscovics et al., J Biol Chem., 269: 9864-9871, 1984、Kumar et al., Glycobiology 2: 383-393, 1992、Nishikawa et al., J Biol Chem., 263: 8270-8281, 1988、Barker et al., J Biol Chem., 247: 7135, 1972、Yoon et al., Glycobiology, 2: 161-168, 1992、Masibay et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 86: 5733-5737, 1989、Aoki et al., EMBO J., 9: 3171, 1990、Krezdom et al., Eur. J. Biochem., 212: 113-120, 1993を参照されたい)。
従って、当業者であれば、哺乳類のグリコシル化に関与する活性のそれぞれをコードする遺伝子を容易に同定することができるであろう。
当業者であれば、発現に用いられる遺伝子および細胞の起源によっては、コドン最適化はコードされた二機能性タンパク質の発現増加を促進することがあることも分かるであろう。「コドン最適化」とは、酵母宿主細胞におけるコドン使用頻度について配列を改良する細菌酵素についてのコード配列の変更を表す。多くの細菌または植物は、酵母ではさほど頻繁に用いられない多数のコドンを用いている。一般に用いられる酵母コドンに相当するようにこれらを変化させることによって、本発明の酵母細胞における二機能性酵素の発現を増加させることができる。コドン使用表は、酵母細胞並びに様々な他の生物についての技術分野で知られている。
糖タンパク質は、ERでの合成から後期ゴルジ体での完全な成熟まで進行するので、哺乳類のN−グリコシル化酵素は連続的に作用する。酵母で哺乳類発現系を再構成するには、哺乳類のN−グリコシル化活性を適宜ゴルジ体またはERに標的化する必要がある。これは、これらのタンパク質のそれぞれのターゲッティング配列を所望な酵素を正確な細胞コンパートメントにターゲッティングすることができる配列に置換することによって行うことができる。もちろん、特定の酵素のターゲッティング酵素が酵母で機能を有しかつ前記酵素をゴルジ体および/またはERに向けることができるときには、この配列を置換する必要がないことは容易に理解されるであろう。ターゲッティング配列は公知であり、科学文献および公表データーベースに記載されている。本発明によるターゲッティング配列(または保持配列;本明細書で用いられるこれら2つの用語は同じ意味を有し、同じものと解釈すべきである)は、このような配列を有するタンパク質を特定の細胞コンパートメントに輸送し、保持するように指示するペプチド配列である。好ましくは、前記細胞コンパートメントはゴルジ体またはERである。当業者であれば、多数のERまたはゴルジ体ターゲッティングシグナル、例えば、サッカロマイセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)のHDEL小胞体残留/回収配列、またはOch1、Mns1、Mnn1、Ktr1、Kre2、Mnn9またはMnn2タンパク質のターゲッティングシグナルを選択することができる。これらの遺伝子の配列並びに任意の酵母遺伝子の配列は、サッカロマイセスゲノムデーターベースウェブサイトに見出すことができる(http://www.veastqenome.org/)。
従って、本発明の目的は、更に1種類以上の発現カセットであって、異種グリコシル化酵素とER/ゴルジ体保持配列の融合体をコードする前記の追加発現カセットを含んでなる、上記で定義した本発明の酵母細胞を提供することである。
本発明によれば、前記融合体は、慎重に設計した後に構築される。従って、本発明の融合体は、グリコシル化活性を正確な細胞コンパートメントに正確に局在化させる融合体を見出すためにランダムな融合体のライブラリーのスクリーニングを教示している従来技術とは対照的である。
「融合タンパク質」という用語は、異種アミノ酸配列にカップリングしたポリペプチドまたは断片を含んでなるポリペプチドを指す。融合タンパク質は、2種類以上の異なるタンパク質から2種類以上の所望な機能要素を含むように構築することができるので、有用である。融合タンパク質は、目的のポリペプチド由来の少なくとも10の連続するアミノ酸、更に好ましくは少なくとも20または30のアミノ酸、更に一層好ましくは少なくとも40、50または60のアミノ酸、更にもっと好ましくは少なくとも75、100または125のアミノ酸を含んでなる。融合タンパク質は、ポリペプチドまたはインフレームのその断片をコードする核酸配列を異なるタンパク質またはペプチドをコードする核酸配列で構築した後、融合タンパク質を発現させることによって組換えによって産生することができる。あるいは、融合タンパク質は、ポリペプチドまたはその断片を別のタンパク質に架橋させることによって化学的に産生させることができる。
更に、本発明の前記酵母細胞は、好都合にはUDP−ガラクトース、CMP−N−アセチルノイラミン酸、またはUDP−GlcNAcのような様々な活性化したオリゴ糖前駆体の輸送体を含むことがある。前記輸送体は、CMP−シアル酸輸送体(CST)など、およびUDP−GlcNAc輸送体、UDPGAL輸送体、およびCMP−シアル酸輸送体のような糖ヌクレオチド輸送体の群を含んでいる。これらの輸送体をコードする遺伝子は、多数の種においてクローニングされ、配列決定されている。例えば、ヒトUDP−GlcNAc輸送体をコードする遺伝子(SLC35A3、受入番号:NM_012243)、分裂酵母のUDP−ガラクトース輸送体をコードする遺伝子(Gms1、受入番号:NM_001023033.1)、ネズミのCMP−シアル酸輸送体をコードする遺伝子(Slc35A1、受入番号:NM_011895.3)を挙げることができる。従って、好ましい実施態様では、本発明の前記YACは、輸送体に対して1種類以上の発現カセットを含んでなることがあり、前記輸送体は、CMP−シアル酸輸送体、UDP−GlcNAc輸送体、およびUDPGAL輸送体からなる群から選択される。
更に、本発明の酵母株は、酵母シャペロンタンパク質の1種類以上の発現カセットを含んでなることがある。好ましくは、これらのタンパク質は、酵母細胞で産生される組換え異種タンパク質と同じ調節配列によって支配されている。これらのシャペロンタンパク質の発現によって、発現した異種タンパク質を正確にフォールディングすることができる。
好ましい実施態様では、本発明の発現カセットは、下記のものを含んでいる。
・カセット1は、適当なプロモーターと適当なターミネーターの制御下にあるFkp遺伝子を含むか、またはカセット1は、前記プロモーターと前記ターミネーターの制御下にあるFKGp遺伝子を含む。
・カセット2は、SV40プロモーターとCYC1ターミネーターの制御下にあるヒトSLC35C1遺伝子を含む。
・カセット3は、nmt1プロモーターとCYC1ターミネーターの制御下にあるヒトFUT8遺伝子を含む。
・カセット4は、TDH3プロモーターおよびCYC1ターミネーターの制御下にあるα−マンノシダーゼIとHDEL小胞体残留/回収配列の融合体をコードする遺伝子を含む。
・カセット5/6は、ADH1プロモーターとTEFターミネーターの制御下にあるN−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIとサッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)Mnn9保持配列の融合体をコードする遺伝子、およびPGKプロモーターとPGKターミネーターの制御下にあるDP−GlcNAcトランスポーター遺伝子を含む。
・カセット7は、TEFプロモーターとURAターミネーターの制御下にあるα−マンノシダーゼII遺伝子を含む。
・カセット8は、PMA1プロモーターとADH1ターミネーターの制御下にあるN−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIIとサッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)Mnn9保持配列の融合体をコードする遺伝子を含む。
・カセット9は、CaMVプロモーターとPHO5ターミネーターの制御下にあるβ−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼとサッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)Mnt1保持配列の融合体をコードする遺伝子を含む。
・カセット10は、内在性ターミネーターと共にダイバージェント配向で、両方ともpGAL1−10プロモーターの制御下にあるサッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)PDI1およびKAR2遺伝子を含む。
・カセット1は、適当なプロモーターと適当なターミネーターの制御下にあるFkp遺伝子を含むか、またはカセット1は、前記プロモーターと前記ターミネーターの制御下にあるFKGp遺伝子を含む。
・カセット2は、SV40プロモーターとCYC1ターミネーターの制御下にあるヒトSLC35C1遺伝子を含む。
・カセット3は、nmt1プロモーターとCYC1ターミネーターの制御下にあるヒトFUT8遺伝子を含む。
・カセット4は、TDH3プロモーターおよびCYC1ターミネーターの制御下にあるα−マンノシダーゼIとHDEL小胞体残留/回収配列の融合体をコードする遺伝子を含む。
・カセット5/6は、ADH1プロモーターとTEFターミネーターの制御下にあるN−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIとサッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)Mnn9保持配列の融合体をコードする遺伝子、およびPGKプロモーターとPGKターミネーターの制御下にあるDP−GlcNAcトランスポーター遺伝子を含む。
・カセット7は、TEFプロモーターとURAターミネーターの制御下にあるα−マンノシダーゼII遺伝子を含む。
・カセット8は、PMA1プロモーターとADH1ターミネーターの制御下にあるN−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIIとサッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)Mnn9保持配列の融合体をコードする遺伝子を含む。
・カセット9は、CaMVプロモーターとPHO5ターミネーターの制御下にあるβ−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼとサッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)Mnt1保持配列の融合体をコードする遺伝子を含む。
・カセット10は、内在性ターミネーターと共にダイバージェント配向で、両方ともpGAL1−10プロモーターの制御下にあるサッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)PDI1およびKAR2遺伝子を含む。
更に好ましい実施態様によれば、本発明の発現カセットは、配列番号7〜12から選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
本発明の酵素は安定的に発現しかつ詳細には発現カセットが世代間にわたって喪失しないことが望ましい。従って、本発明の発現カセットを酵母の染色体DNAに組込むのが好都合である。一つの実施態様では、染色体DNAは前記酵母のゲノムDNAであり、一方、もう一つの実施態様では、それは人工染色体、すなわち酵母人工染色体(YAC)のDNAである。
第一の態様では、本発明は、1種類以上の発現カセットが前記酵母のゲノムDNAに組込まれている酵母細胞を提供する。この酵母細胞は、従って、詳細には前記酵母のゲノムDNA中に組込まれた本発明の二機能性酵素についての発現カセットを含む。
従って、本発明は、フコシル化N−グリカンを有する糖タンパク質を産生することができる遺伝子組換え酵母細胞を得る方法であって、
・二機能性フコキナーゼ/GDP−L−フコースピロホスホリラーゼ酵素の発現のためのカセットを酵母細胞に導入し、
・ゲノムに挿入される前記カセットを含む形質転換体を選択する
段階を含んでなる前記方法にも関する。
・二機能性フコキナーゼ/GDP−L−フコースピロホスホリラーゼ酵素の発現のためのカセットを酵母細胞に導入し、
・ゲノムに挿入される前記カセットを含む形質転換体を選択する
段階を含んでなる前記方法にも関する。
前記酵母細胞のゲノムDNAに組込まれる上記した1種類以上の追加の発現カセットを含む本発明の酵母細胞も、本発明の方法によって得ることができる。この実施態様によれば、本発明の二機能性酵素の発現のためのカセットの他に1種類以上の哺乳類グリコシル化酵素の発現のための発現カセットが酵母細胞に導入され、次いで前記カセットの総てが前記酵母のゲノムDNAに組込まれる。特定の実施態様では、哺乳類グリコシル化経路に必要な総ての発現カセット、すなわちフコシル化経路の酵素(二機能性フコキナーゼ/GDP−L−フコースピロホスホリラーゼ酵素、GDP−L−フコーストランスポーターおよびフコシルトランスフェラーゼ)のカセットなどがこのようにして本発明の酵母に導入され、この導入によりそれらが前記酵母細胞のゲノムに組込まれる。
本発明のカセットを染色体に挿入する方法は、特に限定されていないが、前記カセットは下記の方法によって前記カセットを含むDNAで酵母を形質転換し、このカセットを異種組換えによって染色体のランダムな位置に挿入する方法によって、または前記カセットを含むDNAを所望の位置に相同組換えによって挿入する方法によって挿入することができる。この方法は、好ましくは相同組換えによる方法である。
前記カセットを含むDNAを相同組換えによって染色体の所望の位置に挿入する方法は、例えば、前記カセットを含むDNAの上流または下流の所望の位置に相同領域を付加するようにデザインされたプライマーを用いることによってPCRを行い、下記の方法によって得られるPCR断片により酵母を形質転換する方法であるが、それらに限定されない。更に、PCR断片は、好ましくは形質転換体を容易に選択するための酵母選択可能マーカーを含む。このようなPCR断片を得る方法は、例えば、WO2008/095797号に記載されている。
例えば、形質転換、形質導入、トランスフェクション、コトランスフェクションまたはエレクトロポレーションの方法を用いて、このようにして得られた本発明の増幅カセットを含んでなるPCR断片を酵母に導入することができる。当業者は、本発明の前記発現カセットをレシピエント酵母に導入するのに、酵母形質転換の通常の手法(例えば、酢酸リチウム法、エレクトロポレーションなど、例えば、Johnston, J. R.(監修):Molecular Genetics of Yeast, a Practical Approach. IRL Press, Oxford, 1994;Guthrie, C. and Fink, G. R.(監修): Meth Enzymol, Vol. 194, Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology. Acad. Press, NY, 1991;Broach, J. R., Jones, E. W. and Pringle, J. R.(監修):The Molecular and Cellular Biology of the Yeast Saccharomyces, Vol. 1, Genome Dynamics, Protein Synthesis, and Energetics)」Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1991;Jones, E. W., Pringle, J. R. and Broach, J. R.(監修): The Molecular and Cellular Biology of the Yeast Saccharomyces, Vol. 2. Gene Expression. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1992;Pringle, J. R., Broach, J. R. and Jones, E. W.(監修); The Molecular and Cellular Biology of the Yeast Saccharomyces, Vol. 3. Cell cycle and Cell .Biology. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1997) を用いるであろう。
本発明のもう一つの態様では、本発明の酵母細胞は、YAC(酵母人工染色体)を含み、前記YACは、本発明の発現カセットを有している。従って、このYACは、詳細には本発明の二機能性酵素の発現カセットを含む。本発明のYACは、更に1種類以上の上記発現カセットを含むことがある。この実施態様によれば、本発明のYACは、本発明の二機能性酵素の発現のためのカセットの他に、1種類以上の哺乳類グリコシル化酵素の発現のための発現カセットを有する。特定の実施態様では、本発明のYACを用いて、哺乳類グリコシル化経路を酵母に再構築することができる。
本明細書で用いられる「YAC」または「酵母人工染色体」(2つの用語は同義であり、本発明の目的には同様であると解釈すべきである)は、酵母染色体の総ての構成要素を含むベクターを指す。本明細書で用いられる「ベクター」という用語は、核酸分子が結合していた別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。
従って、本明細書で用いられるYACは、好ましくは線状で、1つの酵母複製起点、セントロメアおよび2つのテロメア配列を含むベクターを指す。また、薬物耐性を与えまたは宿主の代謝障害を補完する遺伝子のような少なくとも1つの選択マーカーを有するそれぞれの構造物を提供することも好ましい。このマーカーの存在は、その後の形質転換体の選択において有用であり、例えば、酵母では、URA3、HIS3、LYS2、TRP1、SUC2、G418、BLA、HPH、NATまたはSH BLE遺伝子を用いることができる。多数の選択マーカーが知られており、酵母、真菌、植物、昆虫、哺乳類および他の真核生物宿主細胞での使用に利用可能である。
本発明のYACは、上記の発現カセットを1つ以上含むことがある。以下に詳記するように、異なる発現カセット、例えば、異なるグリコシル化酵素を組み合わせて、特異的なグリコシル化パターンを有する糖タンパク質を産生することは極めて容易である。従って、本発明のYACの使用は、発現カセットを細胞のゲノムに直接挿入することによる新たな宿主細胞の構築より遙かに容易でかつ遙かに速やかである。
本発明のYACは、空のYACベクターに1つ以上の発現カセットを挿入することによって構築することができる。好ましい実施態様では、前記の空のYACベクターは、環状のDNA分子である。更に好ましい実施態様では、本発明の空のYACベクターは、下記の要素を含んでなる。
・1つの酵母複製起点と1つのセントロメアORI ARS1/CEN4、
・2つのテロメア配列TEL、
・それぞれのアームに2つの選択マーカー:HIS3、TRP1、LYS2、BLA、
・組換体の負の選択のための1つの選択マーカー:URA3、
・1つの多重クローニング部位(LYS2の上流)、
・1つの大腸菌複製起点と1つのアンピシリン耐性遺伝子、
・4つの線状化部位:2つのSacI部位と2つのSfiI部位。
・1つの酵母複製起点と1つのセントロメアORI ARS1/CEN4、
・2つのテロメア配列TEL、
・それぞれのアームに2つの選択マーカー:HIS3、TRP1、LYS2、BLA、
・組換体の負の選択のための1つの選択マーカー:URA3、
・1つの多重クローニング部位(LYS2の上流)、
・1つの大腸菌複製起点と1つのアンピシリン耐性遺伝子、
・4つの線状化部位:2つのSacI部位と2つのSfiI部位。
更に好ましい実施態様では、空のYACベクターはpGLY−yac_MCSと呼ばれ、配列番号13を有する。空のYACベクターを、図1に示す。
本発明のYACは、空のYACベクターを消化して、1種類以上の発現カセットを当業者に知られている任意の方法によって前記YACに挿入することによって構築される。例えば、一つの実施態様によれば、空のYACベクターを、ユニークな制限酵素で消化する。あるいは、前記の空のYACベクターを、少なくとも2種類の制限酵素で消化する。YACに挿入される発現カセットは、前記酵素の少なくとも1つについてそれぞれの末端に制限部位を有しており、消化される。このカセットを(複数の)前記の同じまたは適合酵素で消化した後、カセットをYACに連結し、次いで大腸菌に形質転換する。カセットを受け取ったYACベクターを、制限消化または任意の他の適当な方法(例えば、PCR)によって同定する。関連する実施態様では、連結混合物を酵母に直接形質転換する。もう一つの実施態様では、YACベクターと消化されたカセットを、(何ら先行する連結段階なしに)酵母に形質転換する。この実施態様によれば、カセットは、酵母細胞内での組換えによって消化されたYACベクターに挿入される。酵母組換え経路を用いる他の手法は、当業者に利用可能である(例えば、Larionov et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 93: 491-496、WO 95/03400号、WO 96/14436号)。
YACは、好ましくは線状分子である。好ましい実施態様では、選択マーカーは、空のYACベクターの消化によって切出され、環状のYACベクターを対向選択(counter-selection)することができる。
次いで、本発明のYACを、酵母細胞に適宜導入することができる。当業者であれば、前記YACをレシピエント酵母に導入するのに、酵母形質転換の通常の手法(例えば、酢酸リチウム法、エレクトロポレーションなど、例えば、Johnston, J. R.(監修):Molecular Genetics of Yeast, a Practical Approach. IRL Press, Oxford, 1994;Guthrie, C. and Fink, G. R.(監修): Meth Enzymol, Vol. 194, Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology. Acad. Press, NY, 1991;Broach, J. R., Jones, E. W. and Pringle, J. R.(監修):The Molecular and Cellular Biology of the Yeast Saccharomyces, Vol. 1, Genome Dynamics, Protein Synthesis, and Energetics. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1991;Jones, E. W., Pringle, J. R. and Broach, J. R.(監修): The Molecular and Cellular Biology of the Yeast Saccharomyces, Vol. 2. Gene Expression. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1992;Pringle, J. R., Broach, J. R. and Jones, E. W.(監修); The Molecular and Cellular Biology of the Yeast Saccharomyces, Vol. 3. Cell cycle and Cell Biology. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1997)を用いるであろう。
詳細には、本発明のYACは、工業的規模で糖タンパク質発現に適する酵母細胞に導入することができる。
従って、本発明のもう一つの目的は、発酵装置でしっかり増殖することができる適当な複合グリコフォーム(complex glycoform)を有する標的タンパク質を製造するための酵母細胞を提供することである。本発明の酵母細胞は、ヒト様グリカン構造を有する標的糖タンパク質を多量に産生することができる。特に、本発明の酵母細胞で産生されるオリゴ糖はフコース残基を含み、すなわち、糖タンパク質はフコシル化されている。その上、更なる変異が生じれば、本発明の酵母細胞は、臨床形態の生産に必要とされるように元の形態に容易に修復することができる。本発明は、最適化した均一なヒト化オリゴ糖構造を有する糖タンパク質を製造するための遺伝子修飾した酵母に関する。
本発明の酵母細胞は、フコース残基を含む複合N−グリカン構造を前記酵母で発現した異種タンパク質に付加する目的で用いることができる。
従って、本発明のもう一つの態様は、目的とする組換え糖タンパク質を製造する方法を提供することである。特定の実施態様によれば、本発明の方法は、
(a)組換え糖タンパク質をコードする核酸を上記した宿主細胞の1つに導入する工程、
(b)宿主細胞中で核酸を発現させて、糖タンパク質を産生させる工程、および
(c)組換え糖タンパク質を宿主細胞から単離する工程
を含んでなる。
(a)組換え糖タンパク質をコードする核酸を上記した宿主細胞の1つに導入する工程、
(b)宿主細胞中で核酸を発現させて、糖タンパク質を産生させる工程、および
(c)組換え糖タンパク質を宿主細胞から単離する工程
を含んでなる。
前記の糖タンパク質は、目的とする任意のタンパク質であり、詳細には治療目的のタンパク質であることができる。このような治療タンパク質としては、制限なしに、サイトカイン、インターロイキン、成長ホルモン、酵素、モノクローナル抗体、ワクチンタンパク質、可溶性レセプター、およびあらゆる種類の他の組換えタンパク質のようなタンパク質が挙げられる。
前記のタンパク質をコードする遺伝子は、上記したように発現カセットの一部として本発明の酵母に導入することができる。前記のタンパク質を発現するのに適当なプロモーターは、当業者に知られており、上記されている。pGAL1−10プロモーターのような高レベルの誘導プロモーターを用いるのが好都合である。それらは、前記の糖タンパク質の発現を一層良好に制御することができる。更に、それらにより、糖タンパク質が一層良好な収率で得られる。前記のカセットは、上記したように相同組換えによってゲノムに挿入して、前記のタンパク質の安定な発現を確実にすることができる。あるいは、この発現カセットをベクターにクローニングすることができ、これは次いで酵母中に形質転換される。
本明細書で用いられる「ベクター」という用語は、結合している別の核酸を輸送することができる核酸分子を指すものと解釈される。ベクターの1つの型は「プラスミド」であり、これは追加のDNAセグメントを連結することができる環状の二本鎖DNAループを指す。あるベクターは、それらが導入される宿主細胞で自律複製が可能である(例えば、pRS314およびpRS324および関連ベクターのような細菌複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム酵母ベクター;Sikorski and Hieter, Genetics, 122: 19-27, 1989を参照されたい)。他のベクター(例えば、pRS304および関連ベクターのような非エピソーム酵母ベクター;Sikorski and Hieter, Genetics, 122: 19-27, 1989を参照されたい)は、宿主細胞へ導入する際に宿主細胞のゲノムに組込むことができ、これにより宿主ゲノムと共に複製される。あるベクターは、それらが作動可能に連結している遺伝子の発現を指示することができる。このようなベクターは、本明細書では「組換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」)と呼ばれる。一般に、組換えDNA手法で用いられる発現ベクターは、プラスミドの形態である。本明細書では、「プラスミド」と「ベクター」は、プラスミドがベクターの最も普通に用いられる形態であるので、互換的に用いられる。
本発明のポリヌクレオチドおよびこれらの分子を含んでなるベクターは、本発明の酵母細胞の形質転換に用いることができる。酵母細胞の形質転換は、上記した方法のいずれか、すなわちリチウム形質転換、エレクトロポレーションなどを用いて行うことができる。本発明の糖タンパク質は、形質転換した宿主細胞の培養物を所望の糖タンパク質を発現させるのに必要な培養条件下で増殖させることによって調製することができる。生成する発現した糖タンパク質は、次いで培養培地または細胞抽出物から精製することができる。本発明の糖タンパク質の可溶性形態は、培養液上清から回収することができる。次いで、それを、タンパク質精製の当業者に知られている任意の方法によって、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティー、特にIgG抗体についてのプロテインAアフィニティーによるなど)によって、遠心分離、示差溶解度(differential solubility)、またはタンパク質の精製ための任意の他の標準的手法によって精製することができる。適当な精製方法は、当業者には明らかになるであろう。
本発明の糖タンパク質は、未修飾および/または未精製タンパク質と比較してそのグリコシル化の増加に基づいて更に精製することができる。多数の方法が、この目的を達成するのに存在する。1つの方法では、未精製ポリペプチドの供給源、例えば、本発明の宿主細胞の培養培地を所望なオリゴ糖を結合することが知られているレクチンを有するカラムを通過させる。特定のレクチンを選択することによって、所望な型のN−グリカンを有する糖タンパク質を濃縮することができる。
本発明の酵母細胞で発現したポリペプチドについてグリコシル化の範囲を調べるため、これらのポリペプチドを還元条件下でのSDS−PAGEで精製し、分析することができる。グリコシル化は、単離したポリペプチドを特定のレクチンと反応させることによって決定することができ、あるいは当業者によって理解されるように、HPLCに続いて質量分析法を用いて糖型を確認することができる(Wormald et al., Biochem, 36(6): 1370-1380, 1997)。IgG抗体におけるN−グリカンの定量的シアル酸確認(N−アセチルノイラミン酸残基)、炭水化物組成分析および定量的オリゴ糖マッピングは、本質的に以前に報告された方法で行うことができる(Saddic et al., Methods Mol. Biol., 194: 23-36, 2002; Anumula et al., Glycobiology, 8:685-694, 1998)。
本発明の実施では、特に断らない限り通常の手法またはタンパク質化学、分子ウイルス学、微生物学、組換えDNA技術、および薬理学を用い、これらは当該技術分野の技術範囲内にある。このような手法は、文献に詳細に説明されている(Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, 監修, John Wiley & Sons, Inc. New York, 1995、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1985、およびSambrook et al., Molecular cloning: A laboratory manual 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press - Cold Spring Harbor, NY, USA, 1989、Introduction to Glycobiology, Maureen E. Taylor, Kurt Drickamer, Oxford Univ. Press (2003)、Worthington Enzyme Manual, Worthington Biochemical Corp. Freehold, NJ、Handbook of Biochemistry: Section A Proteins,Vol I 1976 CRC Press、Handbook of Biochemistry: Section A Proteins, Vol II 1976 CRC Press、Essentials of Glycobiology, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1999)を参照されたい)。本明細書に記載の分子および細胞生物学、タンパク質生化学、酵素学および医化学および薬化学に関して用いた命名法および実験室での手順および手法は、公知でありかつ当該技術分野で普通に用いられているものである。
特に断らない限り、本明細書で用いられる総ての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって普通に理解されているものと同じ意味を有する。
本発明を総括的に記載してきたが、本発明の特徴や利点は、例示のためにのみ本明細書に提供され特に断らない限り制限的なものと解釈されない特定の実施例および図を参照することによって、更に理解することができる。
二機能性フコキナーゼ/GDP−L−フコースピロホスホリラーゼ酵素FkpおよびFKGpの配列は、位置指定突然変異誘発によってサッカロマイセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)で発現のために最適化されたコドンである。制限部位を配列のそれぞれの5‘および3’部位に付加し、酵母発現ベクターにおけるそれらのクローニングを容易にし、すなわち、ApaIおよびSalI部位をそれぞれのオープンリーディングフレームに付加した。
次いで、コドン最適化配列を、pGAL誘導プロモーターの制御下にてpESC−LEU酵母発現ベクター(Agilent Technologies)にクローニングする。次に、組換えベクターを酢酸リチウム法によって酵母細胞に形質転換する。形質転換体を、PCRによってチェックする。
インサートの転写の確認
pESC−LEU−FkpまたはpESC−LEU-FKGpによって形質転換した野生型酵母の培養物を、YNB−CSMからLEUを除きグルコース2%を加えたもので30℃にて24時間増殖させた。クローニングした遺伝子の転写は、培養培地を洗浄し、それをYNB−CSMからLEUを除きグルコース2%を加えたものに置き換えることによって誘発され、その中で次に細胞を30℃で更に16時間増殖させた。
pESC−LEU−FkpまたはpESC−LEU-FKGpによって形質転換した野生型酵母の培養物を、YNB−CSMからLEUを除きグルコース2%を加えたもので30℃にて24時間増殖させた。クローニングした遺伝子の転写は、培養培地を洗浄し、それをYNB−CSMからLEUを除きグルコース2%を加えたものに置き換えることによって誘発され、その中で次に細胞を30℃で更に16時間増殖させた。
酵母細胞を回収し、RNAを抽出して精製した(RNeasy mini kit Qiagen)。それぞれのRNA試料を2つに分け、半分をRNアーゼ(Sigma-Aldrich)で室温にて30分間処理し、他のものは未処理のままにした。逆転写を、RNアーゼで処理したネガティブコントロールを包含する総てのRNA試料について行った。水からなるPCRのネガティブコントロールを、反応に含めた。
下記のプライマーを、逆転写反応に用いた。
cDNAに対するPCRは、ミックスダイナザイム(mix Dynazyme)12.5μl、それぞれのプライマー(10pmol/μl)1.25μl、H2O 9.5μlおよびcDNA 0.5μlを含む25μl中で行った。cDNAを最初に95℃で5分間変性させた後、95℃で30秒間の30サイクルの変性、53℃で30秒間のハイブリダイゼーションおよび72℃で1分30秒間の伸長を行った後、伸長を72℃で5分間行った。
PCR産物をアガロースゲル上に流し、シロイヌナズナ(A. thaliana)の1153bpのバンド(レーン1)またはバクテロイデス・フラジリス(B. fragilis)の1425bpのバンド(レーン6)の存在を確かめた。図3に示されている結果は、ガラクトース誘発酵母培養物における予想サイズのバンドの特異的増幅を示している。
従って、FkpおよびFKGp遺伝子はいずれも、対応する形質転換体がガラクトースで増殖するときに発現する。
異種酵素活性の確認
pESC−LEU−FkpまたはpESC−LEU−FKGpによって形質転換した野生型酵母の発芽期の酵母培養物を、YNB−CSMからLEUを除きグルコース2%を加えたもので30℃にて24時間増殖させた。クローニングした遺伝子の転写は、培養培地を洗浄し、それをYNB−CSMからLEUを除きグルコース2%を加えたものに置き換えることによって誘発され、その中で次に細胞を30℃で更に16時間増殖させた。
pESC−LEU−FkpまたはpESC−LEU−FKGpによって形質転換した野生型酵母の発芽期の酵母培養物を、YNB−CSMからLEUを除きグルコース2%を加えたもので30℃にて24時間増殖させた。クローニングした遺伝子の転写は、培養培地を洗浄し、それをYNB−CSMからLEUを除きグルコース2%を加えたものに置き換えることによって誘発され、その中で次に細胞を30℃で更に16時間増殖させた。
FkpおよびFKGpのそれぞれの酵素活性を、最初にスフェロブラスト製剤についてイン・ビトロで評価した。
簡単に説明すれば、細胞のペレットをH2Oで洗浄し、3000gで5分間遠心分離した。細胞を100mMのTris HCl、pH9.4、1mMのDTTを含む緩衝液に再懸濁し、30℃にて10分間インキュベーションした。上清を、遠心分離段階(1000g、5分間)の後に除去した。ペレットをスフェロブラスト緩衝液(0.6mMソルビトール、50mMのTris、pH7.4、1mMのDTT)に懸濁し、リチカーゼ400Uを加えた。OD800nmを測定した(試料は1/100emeに希釈)。懸濁液は、吸光度が80%だけ減少するまで30℃でインキュベーションした。スフェロブラストペレットは、遠心分離(1000g、5分間)によって回収した。
スフェロブラストペレットをリライシス緩衝液(0.4Mソルビトール、20mM HEPES、pH6.8、0.15M酢酸カリウムおよび2mM酢酸マグネシウム)に再懸濁し、室温にて10分間インキュベーションした。1Mソルビトール2容を加え、懸濁液を4℃、6500gで5分間遠心分離した。サイトゾルを含む上清を、新しい1.5ml試験管に移し、タンパク質定量をブラッドフォード試験によって行った。
最初に、酵素のフコースキナーゼ活性を測定した。用いた評価法(図4に記載)では、フコキナーゼ活性により、ATPの分子はADPに変換する。ピルベートキナーゼ(PK)活性は、次に、ホスホエノールピルベート(PEP)をピルベートに変換するときにATPの前記分子を再生する。生成するピルベートは、次いでNADH消費下にてL−ラクテートデヒドロゲナーゼ(LDH)によりL−ラクテートに転換される。NADHのNADへの酸化は、340nmにおける吸収の減少によって監視する。
次に、この酵素のピロホスホリラーゼ活性は、市販のキットを用いるGTP加水分解から得られるPPiの量を測定することによって評価した(Notice EnzChek(商標) Pyrophosphate Assay Kit)。この試験では、無機リン酸塩(Pi)は、2−アミノ−6−メルカプト−7−メチルプリンリボヌクレオシド(MESG)の存在下でホスファターゼによって消費される。MESGの酵素転換は、360nmでの吸光度の増加によって測定される。
図5は、サッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)で発現した二機能性酵素(バクテロイデス・フラジリス(B. fragilis)およびシロイヌナズナ(A. thaliana)由来)の双方のイン・ビトロ活性を示す。これらの結果は、フコキナーゼおよびピロホスホリラーゼ活性(FK活性およびピロホスホリラーゼ活性 左パネル)の両方について、植物性酵素より細菌性酵素の方が、応答が大きいことを示している。次に、FKp酵素をより広い時間範囲で試験した。これらの結果は、安定な活性を示しており、20分でプラトーに達した。このように、細菌性FKp酵素は、サッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)で発現するときには、機能的かつ活性である。
フコシル化EPOの産生
N−グリコシル化についてヒト化酵母で用いられるようにするには、Fkp遺伝子(またはFKGp遺伝子)の配列を酵母ゲノムに挿入しなければならない。従って、酵母プロモーター、Fkp遺伝子および酵母ターミネーターを含んでなる発現カセットを構築する。FKGpについての対応する発現カセットも、構築される。次に、これらのカセットを、WO2008/095797号に記載の酵母株のゲノムに挿入する。
N−グリコシル化についてヒト化酵母で用いられるようにするには、Fkp遺伝子(またはFKGp遺伝子)の配列を酵母ゲノムに挿入しなければならない。従って、酵母プロモーター、Fkp遺伝子および酵母ターミネーターを含んでなる発現カセットを構築する。FKGpについての対応する発現カセットも、構築される。次に、これらのカセットを、WO2008/095797号に記載の酵母株のゲノムに挿入する。
次に、酵母株を、3N−グリコシル化部位を有するエリトロポエチン(EPO)の前記の株における発現によってフコースを糖タンパク質のN−グリカンへ付加する能力について試験する。
組換え酵母におけるEPOの発現に用いられるプラスミドは、プロモーター Gal1を含む。このプロモーターは、サッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)で知られている最強のプロモーターであり、現在は組換えタンパク質の産生に用いられている。このプロモーターは、ガラクトースによって誘導され、グルコースによって抑制される。実際に、グリセロール中でのサッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)の培養物では、ガラクトースの添加によりGAL遺伝子を約1,000倍誘導することができる。一方、培地にグルコースを添加すると、GAL1プロモーターの活性が抑制される。本発明者らのプラスミドにおけるヒトEPOの組込み配列は、ポリヒスチジンタグを付加することによって5’において修飾され、産生されたタンパク質の検出および精製が促進された。
ヒトEPOの産生に用いる酵母は、最初に選択ドロップアウトYNB培地、2%グルコース中で、OD600>12となるまで培養する。24〜48時間培養した後、2%ガラクトースを培養物に加え、目的とする本発明者らのタンパク質を誘導する。0、6、24および48時間の誘導後に、試料を採取する。
酵母細胞を、遠心分離によって除去する。上清を、最初にイミダゾール5mM、Tris HCl 1M、pH=9を所望なpHになるまで加え、pH7.4で緩衝する。次いで、上清を0.8μmおよび0.45μmで濾過した後、HisTrap HP 1mlカラム(GE Healthcare)に入れる。EPOを、製造業者の指示に従って精製する(平衡緩衝液:Tris HCl 20mM、NaCl 0.5M、イミダゾール5mM、pH=7.4;溶出緩衝液:Tris HCl 20mM、NaCl 0.5M、イミダゾール5mM、pH=7.4)。
産生されたEPOは、溶離液中に回収される。カラムから溶出したタンパク質を、12%アクリルアミドゲル上でSDS−PAGE電気泳動によって分析する。
SDS−PAGEゲルの移動後、タンパク質をクーマシーブルーによる染色またはウェスタンブロット法によって分析する。ウェスタンブロット法については、全タンパク質をニトロセルロース膜に転写し、抗EPO抗体(R&D Systems)による検出を続行する。転写後、膜をブロッキング溶液(PBS、5%脂肪乳)で1時間飽和させる。次いで、膜を抗EPO抗体溶液(希釈度1:1000)と1時間接触させる。0.05%Tween20−PBSで3回すすいだ後、膜を二次抗マウス−HRP抗体と接触させ、比色検出を続行する。
このようにして、約35kDaにおけるタンパク質を検出することができる。このタンパク質は、クーマシーブルー染色によって検出される主要タンパク質であり、ウェスタンブロット分析における抗EPO抗体によって明らかにされている。α1,6結合を介して初期GlcNAcに連結したフコース残基の存在は、アレウリア・アウランティア(Aleuria aurantia)AALまたはレンズ・クリナリス(Lens culinaris)LcHのレクチンとの相互作用によって検証されている。
精製タンパク質のN−グリコシル化を、次に、質量分析法によって分析する。EPOを含む溶出画分を、Amicon Ultra-15(Millipore)上で、10kDaのカットオフで、4℃での遠心分離により濃縮する。約500μlの容積が得られたときに、精製タンパク質の量を分析する。PNGアーゼ処理後のN−グリカン分析は、酵母株で産生したrHuEPOは、GlcNAc2Man3(Fuc)GlcNAc2またはGal2GlcNAc2Man3(Fuc)GlcNAc2の型の複合グリカン構造を有することを示している。
Claims (25)
- 二機能性フコキナーゼ/GDP−L−フコースピロホスホリラーゼ酵素の発現のためのカセットを含んでなる、遺伝子組換え酵母。
- 二機能性フコキナーゼ/GDP−L−フコースピロホスホリラーゼ酵素がバチルス・フラジリス(Bacillus fragilis)のFkpまたはシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のFKGpである、請求項1に記載の酵母。
- 二機能性フコキナーゼ/GDP−L−フコースピロホスホリラーゼ酵素が、配列番号2および配列番号4からなる群から選択されるポリペプチド配列を有する、請求項1または2に記載の酵母株。
- 少なくとも1つの追加カセットを含んでなり、前記のカセットがGDP−L−フコーストランスポーターおよび/またはフコシルトランスフェラーゼの発現のためのものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の酵母株。
- GDP−L−フコーストランスポーターの発現のための追加カセットとフコシルトランスフェラーゼの発現のための追加カセットとを含んでなる、請求項4に記載の酵母株。
- 酵母細胞がマンノシルトランスフェラーゼ活性を欠いている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の酵母細胞。
- 酵母細胞が、OCH1遺伝子および/またはMNN1遺伝子および/またはMNN9遺伝子の欠失を含んでなる、請求項6に記載の酵母細胞。
- 酵母において異種グリコシル化酵素を発現するための少なくとも1つの追加カセットを含んでなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の酵母細胞。
- 前記の異種グリコシル化酵素が、α−マンノシダーゼI(α−1,2−マンノシダーゼ)、α−マンノシダーゼII、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼI、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼII、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIV、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV、ガラクトシルトランスフェラーゼI、シアリルトランスフェラーゼ、UDP−N−アセチルグルコサミン−2−エピメラーゼ/N−アセチルマンノースアミンキナーゼ、N−アセチルノイラミネート−9−ホスフェートシンターゼ、シチジンモノホスフェートN−アセチルノイラミン酸シンターゼ、シアル酸シンターゼ、CMP−シアル酸シンターゼからなる群から選択される、請求項8に記載の酵母細胞。
- 前記の追加発現カセットが、異種グリコシル化酵素の接触ドメインとER/ゴルジ体残留シグナルの融合タンパク質をコードする、請求項8または9に記載の酵母細胞。
- 残留シグナルが、サッカロマイセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)のHDEL小胞体残留/回収配列およびOch1、Msn1、Mnn1、Ktr1、Kre2、Mnt1およびMnn9タンパク質のターゲッティングシグナルからなる群から選択される、請求項8〜10のいずれか一項に記載の酵母細胞。
- 前記の酵母細胞が、更にトランスポーターのための1以上の発現カセットを含み、前記のトランスポーターがCMP−シアル酸トランスポーター、UDP−GlcNAcトランスポーターおよびUDPGALトランスポーターからなる群から選択される、請求項8〜11のいずれか一項に記載の酵母細胞。
- 前記のYACが、更に酵母タンパク質シャペロンのため発現カセットを含む、請求項8〜12のいずれか一項に記載の酵母細胞。
- 前記の発現カセットが、pGAPDH、pGAL1、pGAL10、pPGK、pTEF、pMET25、pADH1、pPMA1、pADH2、pPYK1、pPGK、pENO、pPHO5、pCUP1、pPET56、pnmt1、padh2、pSV40、pCaMV、pGRE、pAREおよびpICLからなる群から選択されるプロモーターを含んでなる、請求項1〜13のいずれか一項に記載の酵母細胞。
- 前記の発現カセットが、CYC1、TEF、PGK、PHO5、URA3、ADH1、PDI1、KAR2、TPI1、TRP1、Bip、CaMV35S、およびICLからなる群から選択されるターミネーターを含んでなる、請求項1〜14のいずれか一項に記載の酵母細胞。
- 前記の酵母細胞が、発現カセット1を含み、前記のカセット1がプロモーターおよびターミネーターの制御下にあるFkp遺伝子またはFKGpを含み、前記の酵母細胞が、下記の発現カセット:
カセット2であって、SV40プロモーターとCYC1ターミネーターの制御下にあるヒトSLC35C1遺伝子を含む前記のカセット2、
カセット3であって、nmt1プロモーターとCYC1ターミネーターの制御下にあるヒトFUT8遺伝子を含む前記のカセット3、
カセット4であって、TDH3プロモーターおよびCYC1ターミネーターの制御下にあるα−マンノシダーゼIとHDEL小胞体残留/回収配列の融合体をコードする遺伝子を含む前記のカセット4、
カセット5/6であって、ADH1プロモーターとTEFターミネーターの制御下にあるN−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIとサッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)Mnn9保持配列との融合体をコードする遺伝子、およびPGKプロモーターとPGKターミネーターの制御下にあるDP−GlcNAcトランスポーター遺伝子を含む前記カセット5/6、
カセット7であって、TEFプロモーターとURAターミネーターの制御下にあるα−マンノシダーゼII遺伝子を含む前記のカセット7、
カセット8であって、PMA1プロモーターとADH1ターミネーターの制御下にあるN−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIIとサッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)Mnn9保持配列との融合体をコードする遺伝子を含む前記のカセット8、
カセット9であって、CaMVプロモーターとPHO5ターミネーターの制御下にあるヒトβ−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼとサッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)Mnt1保持配列との融合体をコードする遺伝子を含む前記のカセット9、
カセット10であって、内在性ターミネーターと共にダイバージェント配る向で、両方ともpGAL1/10プロモーターの制御下にあるサッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)PDI1およびKAR2遺伝子を含む前記のカセット10
の1以上を含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の酵母細胞。 - 前記の酵母細胞が、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11および配列番号12から選択される配列を有する1以上のカセットを含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載の酵母細胞。
- 前記の発現カセットが、前記の酵母細胞のゲノムDNAに組込まれている、請求項1〜17のいずれか一項に記載の酵母細胞。
- 前記の酵母細胞が酵母人工染色体(YAC)を含み、前記のYACが前記の発現カセットを有する、請求項1〜18のいずれか一項に記載の酵母細胞。
- 前記の酵母細胞がサッカロマイセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)である、請求項1〜19のいずれか一項に記載の酵母細胞。
- 二機能性フコキナーゼ/GDP−L−フコースピロホスホリラーゼ酵素の発現のためのカセットを酵母細胞に導入し、
形質転換のゲノムに挿入される前記カセットを含む前記の形質転換体を選択する
段階を含んでなる、請求項18に記載の酵母を得る方法。 - 1以上の発現カセットを空のYACベクターに挿入することを含んでなる、請求項18に記載のYACを構築する方法。
- 前記の空のYACベクターが、下記の要素:
1つの酵母複製起点と1つのセントロメアORI ARS1/CEN4、
2つのテロメア配列TEL、
それぞれのアームに2つの選択マーカー:HIS3、TRP1、LYS2、BLA、
組換体の負の選択のための1つの選択マーカー:URA3、
1つの多重クローニング部位(LYS2の上流)、
1つの大腸菌複製起点と1つのアンピシリン耐性遺伝子、
4つの線状化部位:2つのSacI部位と2つのSfiI部位
を含んでなる、請求項22に記載の方法。 - 前記の空のYACベクターが、配列番号13のDNA配列を含んでなる、請求項22または23に記載の方法。
- 目的とする組換え糖タンパク質を産生する方法であって、
(a)組換え糖タンパク質をコードする核酸を請求項1〜20のいずれか一項に記載の酵母細胞に導入する工程、
(b)宿主細胞中で核酸を発現させて、糖タンパク質を産生させる工程、および
(c)組換え糖タンパク質を宿主細胞から単離する工程
を含んでなる、方法。
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
US201161466639P | 2011-03-23 | 2011-03-23 | |
US61/466,639 | 2011-03-23 | ||
PCT/EP2012/055245 WO2012127045A1 (en) | 2011-03-23 | 2012-03-23 | A yeast recombinant cell capable of producing gdp-fucose |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2014509864A true JP2014509864A (ja) | 2014-04-24 |
Family
ID=45894470
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2014500415A Pending JP2014509864A (ja) | 2011-03-23 | 2012-03-23 | Gdp−フコースを産生可能な酵母組換え細胞 |
Country Status (3)
Country | Link |
---|---|
EP (1) | EP2895592A1 (ja) |
JP (1) | JP2014509864A (ja) |
WO (1) | WO2012127045A1 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2021019104A2 (en) * | 2019-09-18 | 2021-02-04 | Basf Se | A production host for producing human milk oligosaccharides |
Family Cites Families (18)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
DE4102817A1 (de) | 1991-01-31 | 1992-08-06 | Merck Patent Gmbh | Verfahren zur stereoselektiven herstellung von (beta)-fucopyranosyl-phosphaten und sehr reiner gdp-fucose |
WO1995003400A1 (en) | 1993-07-23 | 1995-02-02 | Johns Hopkins University School Of Medicine | Recombinationally targeted cloning in yeast artificial chromosomes |
US5643763A (en) | 1994-11-04 | 1997-07-01 | Genpharm International, Inc. | Method for making recombinant yeast artificial chromosomes by minimizing diploid doubling during mating |
EP2275540B1 (en) | 1999-04-09 | 2016-03-23 | Kyowa Hakko Kirin Co., Ltd. | Method for controlling the activity of immunologically functional molecule |
WO2001004522A1 (en) | 1999-07-09 | 2001-01-18 | Arthur Brenes | Throttle gate valve |
US6875591B1 (en) | 1999-08-10 | 2005-04-05 | Kyowa, Hakko Kogyo Co., Ltd. | Process for producing GDP-fucose |
WO2001025406A1 (en) | 1999-10-01 | 2001-04-12 | University Of Victoria Innovation & Development Corporation | Mannosidases and methods for using same |
KR100787073B1 (ko) | 2000-06-28 | 2007-12-21 | 글리코파이, 인크. | 변형된 당단백질의 제조방법 |
US6803225B2 (en) | 2000-06-30 | 2004-10-12 | Flanders Interuniversity Institute For Biotechnology | Protein glycosylation modification in Pichia pastoris |
FI109811B (fi) | 2000-09-26 | 2002-10-15 | Medicel Oy | Menetelmä GDP-L-fukoosin valmistamiseksi ja menetelmässä käytettäviä välineitä |
NZ532027A (en) | 2001-10-10 | 2008-09-26 | Neose Technologies Inc | Remodeling and glycoconjugation of peptides |
ES2326964T3 (es) | 2001-10-25 | 2009-10-22 | Genentech, Inc. | Composiciones de glicoproteina. |
AU2004251105B2 (en) | 2003-06-24 | 2010-04-01 | Isis Innovation Limited | Reagents and methods for the formation of disulfide bonds and the glycosylation of proteins |
JP4258662B2 (ja) | 2004-04-23 | 2009-04-30 | 独立行政法人産業技術総合研究所 | O−フコース結合型タンパク質合成系遺伝子が導入された酵母形質転換体 |
GB0507123D0 (en) | 2005-04-08 | 2005-05-11 | Isis Innovation | Method |
FR2912154B1 (fr) | 2007-02-02 | 2012-11-02 | Glycode | Levures genetiquement modifiees pour la production de glycoproteines homogenes |
RU2479629C2 (ru) | 2007-03-07 | 2013-04-20 | Гликофи, Инк. | Продукция гликопротеинов с модифицированным фукозилированием |
SG171814A1 (en) | 2008-12-19 | 2011-07-28 | Jennewein Biotechnologie Gmbh | Synthesis of fucosylated compounds |
-
2012
- 2012-03-23 JP JP2014500415A patent/JP2014509864A/ja active Pending
- 2012-03-23 WO PCT/EP2012/055245 patent/WO2012127045A1/en active Application Filing
- 2012-03-23 EP EP12710943.7A patent/EP2895592A1/en not_active Withdrawn
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
WO2012127045A1 (en) | 2012-09-27 |
EP2895592A1 (en) | 2015-07-22 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
EP2401378B1 (en) | Metabolic engineering of a galactose assimilation pathway in the glycoengineered yeast pichia pastoris | |
AU2007248485B2 (en) | Production of sialylated N-glycans in lower eukaryotes | |
JP5562647B2 (ja) | 均質な糖タンパク質の生産のための遺伝的に修飾された酵母 | |
EP1505149B1 (en) | Methylotroph yeast producing mammalian type sugar chain | |
US20110207214A1 (en) | Novel tools for the production of glycosylated proteins in host cells | |
RU2479629C2 (ru) | Продукция гликопротеинов с модифицированным фукозилированием | |
JP2011019521A (ja) | 下等真核生物におけるn−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼiii発現 | |
US8936918B2 (en) | Yeast strain for the production of proteins with modified O-glycosylation | |
KR102134936B1 (ko) | Crz1 돌연변이체 진균 세포 | |
US20140308702A1 (en) | Yeast recombinant cell capable of producing gdp-fucose | |
JP2014509864A (ja) | Gdp−フコースを産生可能な酵母組換え細胞 | |
JP2013535198A (ja) | 哺乳類のグリコシル化経路を有する酵母人工染色体 |