JP2013535198A - 哺乳類のグリコシル化経路を有する酵母人工染色体 - Google Patents

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Abstract

ヒト化グリコシル化経路の1種類以上の活性の発現を指示する酵母人工染色体 (YAC)を提供する。前記YACは、異種グリコシル化経路とER/ゴルジ体保持配列の融合タンパク質のための1種類以上の発現カセットを含んでなる。本発明は、前記YACを含む新規な酵母細胞にも関する。最後に、本発明は、目的とする組換え糖タンパク質の産生方法も提供する。

Description

発明の背景
酵母は、確立された発現系のために生物学的に重要な組換えタンパク質の生産に広く用いられており、これは多量に生育させることが容易にできる。例えば、サッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)は、いずれも増殖因子、サイトカインなどのような高分子量治療薬の生産に用いられてきている。これらの分泌タンパク質は、限定的タンパク質加水分解、フォールディング、ジスルフィド結合形成、リン酸化およびグリコシル化などの翻訳後修飾を受ける。従って、酵母は、ヒトエリトロポエチンおよびα-1-アンチトリプシンのような糖タンパク質の産生に好ましい宿主である。
最初の酵母人工染色体(YAC)は、1980年代の初めに報告された(Murray and Szostak, Nature, 305(5931): 189-93, 1983)。それらは、初めはクロマチン組織および染色体安定性(セントロメア機能、有糸分裂中の隔離など)の研究に用いられた。それらは極めて長いDNA断片を受け取ることができるので、DNAライブラリーの作製に用いられ(Riethman et al, Proc Natl Acad Sci U S A, 86(16): 6240-6244, 1989; Chartier et al., Nat Genet, 1(2): 132-136, 1992; Palmieri et al, Gene, 188(2): 169-74, 1997)、それらは次に機能研究に用いられた。例えば、YACは、酵母における機能的相補性によるヒトテロメアのクローニング(Cross et al., Nature, 338(6218): 771-774, 1989; Cheng and Smith, Genet Anal Tech Appl., 7(5): 119-25, 1990)、または動原体の機能の決定に用いられた。これらの構造は、複雑なゲノムの展開および組織のタッギング、分析(Schlessinger, Trends Genet., 6(8):248: 255-258, 1990)並びに研究(Kouprina and Larionov, FEMS Microbiol Rev, 27(5): 629-649, 2003)に極めて有用な手段であることも明らかになっている。
ネオマイシンのような抗生物質に対する耐性を付与するカセットを導入することによって、哺乳類細胞でYACを用いることができるようになり、これによって前記の相補性の結果が確かめられた(Cross et al., Nucl. Acids Res., 18(22): 6649-57, 1990; Srivastava and Schlessinger, Gene, 103(1): 53-59, 1991)。YACは、このようにしてES細胞のような哺乳類細胞において目的タンパク質の発現に用いられてきた(WO 93/05165号)。このようなYACは、酵母内因性組換えおよび/または修復経路を用いることによって構築することができる(WO 95/03400号; WO 96/14436号)。
これらの用途に加えて、YACは、新規代謝物および種々の天然生成物を得る目的で無作為に混合した異種遺伝子配列を含む幾つかの発現カセットのレシピエント(recipient)として用いられてきた(WO 2004/016791号)。例えば、この方法は、フラボノイド生合成の新たな経路をもたらし、これにより酵母代謝物であるフェニルアラニンおよび/またはチロシンは、通常は植物によってのみ産生されるフラボノイドに転換される(Naesby et al., Microb. Cell Fact., 8: 45-56, 2009)。
他方、YACは、多数のおよび/または長いDNA断片を受け取ることができるので、全代謝経路を導入するのに用いて、これにより新たな機能特性を有する宿主細胞を得ることができる。
エリトロポエチンまたは抗体のような治療タンパク質は、グリコシル化されている。グリコシル化は、タンパク質の機能およびそれらの薬理特性のいずれにとっても本質的なものである。例えば、治療用抗体の抗体依存性細胞傷害性(ADCC)は、前記抗体のフコシル化がないことと相関しており(例えば、WO 00/61739号、Shields et al., J Biol Chem., 277(30): 26733-26740, 2002、Mori et al., Cytotechnology, 55(2-3): 109-114, 2007、Shinkawa et al., J Biol Chem., 278(5): 3466-73, 2003、WO 03/035835号, Chowdury and Wu, Methods, 36(1): 11-24, 2005、Teillaud, Expert Opin Biol Ther., 5(Suppl 1): S15-27, 2005、Presta, Adv Drug Deliv Rev., 58(5-6): 640-656, 2006を参照されたい)、一方、シアリル化は吸収、血清半減期および血清からのクリアランス、並びにそれぞれの糖タンパク質の物理的、化学的および免疫原特性に影響を及ぼす(Byrne et .al., Drug Discov Today), 12(7-8): 319-326、Staldmann et al., J Clin Immunol, 30 (Suppl 1): S15-S19, 2010)。更に、タンパク質のグリコシル化は、その免疫原性に影響を与え、患者に問題を生じて、タンパク質の治療効力を減ずる可能性がある(J Immunotoxicol., 3(3): 1 1 -113, 2006)。
最適N-またはO-グリコシル化により糖タンパク質を産生するため、多数の技術的方法が提案されてきた。例えば、様々なグリコシルトランスフェラーゼによるガラクトース、グルコース、フコースまたはシアル酸のような糖残基の添加によって、または特異的糖残基の抑制、例えばマンノシダーゼによるマンノース残基の除去によって、糖鎖構造をイン・ビトロで付加することが提案されている(WO 03/031464号)。しかしながら、この方法は、同一糖タンパク質上に存在する幾つかのオリゴ糖を連続修飾するための数個の連続的段階を含んでいるので、工業的規模で用いることは困難である。それぞれの段階において、レシピエントタンパク質上に相同糖鎖構造を得るには、反応をしっかりと制御しなければならない。更に、精製した酵素の使用は、現実的な経済的方法であるとは思われない。同じ問題は、WO 2006/106348号およびWO 2005/000862号に記載されているような化学カップリング法で生じる。それらは、保護/脱保護段階や多数の制御を有する多数の長たらしい反応を含んでいる。同じ糖タンパク質が幾つかのオリゴ糖鎖を有するときには、逐次反応が望ましくない不均質修飾(heterogeneous modifications)を生じる危険性が高い。
もう一つの方法は、フコース残基を抗体のFcドメインに付加せず、従って、ADCC活性が100倍に増加するYB2/0 (WO 01/77181号)または遺伝子修飾したCHO (WO 03/055993号)のような哺乳類細胞系を使用することである。しかしながら、これらの手法は、抗体の産生に有用なだけである。
最近、酵母または単細胞性の糸状菌において、これらの微生物を、マンノシダーゼおよび幾つかのグリコシルトランスフェラーゼを発現するプラスミドで形質転換することによって産生することが提案されている(例えば、WO 01/4522号、WO 02/00879号、WO 02/00856号を参照されたい)。しかしながら、今日までのところ、これらの微生物が大容量発酵装置中での時間を通して安定であることは明らかにされていない。それ故、このような細胞系が臨床ロットの生産に確実に用いることができるかどうかは、不明である。
ヒトエリトロポエチン(HuEPO)は、残基Asn-24、Asn-38およびAsn-83に3個のN-グリコシル化部位と、位置Ser-126に1個のムチンO-グリコシル化部位を含む166アミノ酸からなる糖タンパク質である。オリゴ糖鎖はその分子量の40%までを構成しているので、EPOはN-グリコシル化の研究に特に関連性のあるモデルである。EPOの尿中形態 (uHuEPO)と比較すると、CHO細胞またはBHK細胞で発現した組換えEPO (rHuEPO)は、異なるN-糖鎖構造を示した(Takeuchi et al, J Biol Chem., 263(8): 3657-63, 1988、Sasaki et al., Biochemistry, 27(23): 8618-8626, 1988、Tsuda et al., Biochemistry, 27(15): 5646-5654, 1988、Nimtz et al., Eur J Biochem., 213(1): 39-56, 1993、Rahbek-Nielsen et al., J Mass Spectrom., 32(9): 948-958, 1997)。これらの差は、イン・ビトロではタンパク質に大きな影響を与えないかもしれないが、それらはイン・ビボでは活性に劇的な差を生じる(Higuchi et al, J Biol Chem., 267(11): 7703-7709, 1992)。
イン・ビボでの活性が最適となるようにデザインした糖鎖構造を有するタンパク質を得るために、本発明者らは、以前に遺伝子修飾した酵母でrHuEPOを発現させた (WO 2008/095797号)。このような菌株は、均質で特徴のはっきりしたグリコシル化パターンを有するタンパク質を強く発現した。これらの酵母は、ゲノムの様々な位置にターゲッティング配列を有する哺乳類のグリコシル化酵素の様々な融合体を含む発現カセットの挿入によって構築された。しかしながら、新たな菌株の構築は、長くて退屈である可能性がある。更に、このような構築では、多数の栄養要求性マーカーを不活性化する必要があるので、生成する菌株を余り健康なものではなくし、かつ工業用菌株として十分な強さを持たなくする可能性がある。
従って、複雑なN-糖鎖構造を目的とするタンパク質に付加することができ、かつ、発酵装置で丈夫に増殖することができる酵母細胞が必要である。
本発明者らは、1種類以上の哺乳類のN-グリコシル化酵素を発現させる目的で酵母人工染色体(YAC)を構築することが可能であることを見いだした。前記YACの構築は、通常のクローニング手法によって手早くかつ容易に行うことができ、従って、当業者であれば任意の所望な酵素の組合せを得ることができる。本発明のYACは、次に任意の宿主細胞に導入して、ヒト様N-糖鎖構造を付加することができる細胞を得ることができる。更に、本発明のYACは、発酵装置でしっかりした増殖に必要な安定性を示す。
本発明による酵母は、異種タンパク質の大規模生産に用いることができる任意の種類の酵母である。本発明の酵母は、例えば、サッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス種(Saccharomyces sp.)、ハンセヌラ・ポリモルファ (Hansenula polymorpha)、スキゾサッカロミセス・ポンベ(Schizzosaccharomyces pombe)、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ピキア・フィンランデカ(Pichia finlandica)、ピキア・トリハロフィア(Pichia trehalophila)、ピキア・コクラマエ(Pichia koclamae)、ピキア・メンブラナエファシエンス(Pichia membranaefaciens)、ピキア・ミヌタ(Pichia minuta)(オガタエア・ミヌタ(Ogataea minuta)、 ピキア・リンドネリ(Pichia lindneri)、ピキア・オプンチアエ(Pichia opuntiae)、ピキア・サーモトレランス(Pichia thermotolerans)、ピキア・サリクタリア(Pichia salictaria)、ピキア・グエルクウム(Pichia guercuum)、ピキア・ピペリ(Pichia pijperi)、ピキア・スティプティス(Pichia stiptis)、ピキア・メタノリカ(Pichia methanolica)、ピキア種(Pichia sp.)、クルイベロミセス種(Kluyveromyces sp.)、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)のような種を含んでなる。好ましくは、本発明の酵母は、サッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)である。「酵母細胞」、「酵母菌株」、「酵母培養物」という表現は、互換的に用いられ、総てのこのような名称は子孫を包含する。例えば、「形質転換体」および「形質転換細胞」という用語は、トランスファーの数に関係なく一次被験細胞(primary subject cells)およびそれから誘導された培養物を包含する。また、意図的または偶然による変異により、総ての子孫がDNA内容物について正確には同一とならない可能性があることも理解される。元の形質転換細胞においてスクリーニングされたのと同じ機能または生物活性を有する変異子孫が包含される。明確な名称が指定されている場合には、このことはその状況から明らかとなる。
本明細書で用いられているように、「N-グリカン」という用語は、Nに結合したオリゴ糖、例えば、アスパラギン-N-アセチルグルコサミン結合によってポリペプチドのアスパラギン残基に結合しているものを指す。N-グリカンは、Man3GlcNAc2 (「Man」はマンノースを指し、「Glc」はグルコースを指し、「NAc」はN-アセチルを指し、GlcNAcはN-アセチルグルコサミンを指す)という通常の五糖類コアを有する。N-グリカンに関して用いられる「トリマンノースコア」という用語も、構造Man3GlcNAc2を指す(「Man3」)。N-グリカンに関して用いられる「ペンタマンノースコア」または「マンノース-5コア」または「Man5」という用語は、構造Man5GlcNAc2を指す。
N-グリカンは、Man3コア構造に結合している抹消糖(peripheral sugars)(例えば、GlcNAc、ガラクトース、フコースおよびシアル酸)を含んでなる分枝(アンテナ)の数および性質に関して異なっている。N-グリカンは、それらの分枝成分(例えば、高マンノース、複合体またはハイブリッド)に従って分類される。「高マンノース」型N-グリカンは、少なくとも5個のマンノース残基を含んでなる。「複合」型N-グリカンは、典型的にはトリマンノースコアの1,3マンノースアームに結合した少なくとも1個のGlcNAcと1,6マンノースアームに結合した少なくとも1個のGlcNAcを有する。複合N-グリカンは、場合によってはシアル酸または誘導体(「NeuAc」であって、「Neu」はノイラミン酸を指し、「Ac」はアセチルを指す)で修飾されているガラクトース(「Gal」)残基を有することもある。複合N-グリカンは、典型的にはオリゴ糖において終わる少なくとも1個の分枝、例えば、NeuNAc-、NeuAcα2-6GalNAcα1-、NeuAcα2-3Galβ1-3GalNAcα1-、NeuAcα2-3/6Galβ1-4GlcNAcβ1-、GlcNAcα1-4Galβ1-(ムチンのみ)、Fucα1-2Galβ1-(血液型H)を有する。硫酸エステルは、ガラクトース、GalNAcおよびGlcNAc残基で生じる可能性があり、リン酸エステルはマンノース残基で生じる可能性がある。NeuAc (Neu:ノイラミン酸、Ac:アセチル)は、O-アセチル化またはNeuGl (N-グリコリルノイラミン酸)によって置換することができる。複合N-グリカンは、GlcNAcとコアフコース(「Fuc」)を「バイセクティング(bisecting)」することを含んでなる鎖内置換を有することもある。「ハイブリッド」N-グリカンは、トリマンノースコアの1,3マンノースアームの末端に少なくとも1個のGlcNAcとトリマンノースコアの1,6マンノースアームに0個以上のマンノースを有する。
ヒトグリコシル化反応のレパートリーの中心部は、2種類の性質の異なるマンノシダーゼ(すなわち、α-1,2-マンノシダーゼおよびマンノシダーゼII)によるマンノースの逐次除去、(N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIおよびIIによる)N-アセチルグルコサミンの付加、(β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼによる)ガラクトースの付加、および最後にシアリルトランスフェラーゼによるシアル酸の付加を必要とする。他の反応は、例えば、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII、IVおよびVまたはフコシルトランスフェラーゼのような追加的酵素で制御して、複合N-グリカン型の様々な組合せを産生することができる。酵母で哺乳類グリコシル化経路を再構成するには、これら総ての酵素を発現させてERおよび/またはゴルジ体に局在化させ、それらが逐次的に作用して、完全にグリコシル化した糖タンパク質を産生することができるようにする必要がある。
真核細胞タンパク質のN-グリコシル化は、小胞体(ER)内腔およびゴルジ装置で起こる。この過程は、細胞質で合成された分枝したドリコール結合オリゴ糖Man5GlcNAc2をER内腔にフリップさせてコアオリゴ糖Glc3Man9GlcNAc2を形成することから始まる。次いで、オリゴ糖を、初期のポリペプチド鎖上のN-グリコシル化コンセンサス配列のアスパラギン残基に転移させ、末端グルコース残基を除去するα-グルコシダーゼIおよびII、および末端マンノース残基を開裂するα-マンノシダーゼによって連続的にトリミングする。生成するオリゴ糖Man8GlcNAc2は、接合中間体であって、これは更にトリミングして哺乳類の細胞などの高等真核生物で複合型構造を生じる最初の基質であるMan5GlcNAc2を生じ、またはマンノース残基の付加によって伸長し、下等真核生物では、ゴルジ装置でMan9GlcNAc2を生成することがある。
本発明の第一の態様では、全代謝経路の酵素をコードする総ての遺伝子を有するYAC (酵母人工染色体)が提供される。このYACは、酵母の前記代謝経路の再構築に用いることができる。
好ましい実施態様では、前記代謝経路は、哺乳類グリコシル化経路である。
この実施態様によれば、本発明のYACは、1種類以上の哺乳類のグリコシル化酵素を発現させるための発現カセットを有する。本明細書で用いられる「YAC」または「酵母人工染色体」(これら2個の用語は同義であり、本発明の目的にとって同様に解釈すべきである)は、酵母染色体の総ての構造要素を含むベクターを指す。本明細書で用いられる「ベクター」という用語は、結合している別の核酸を輸送することができる核酸分子を指すものと解釈される。
従って、本明細書で用いられるYACは、好ましくは線状で、1個の酵母複製起点、セントロメアおよび2個のテロメア配列を含むベクターを指す。また、薬物耐性を与えまたは宿主の代謝障害を補完する遺伝子のような少なくとも1個の選択マーカーを有するそれぞれの構造物を提供することも好ましい。マーカーの存在は、その後の形質転換体の選択において有用であり、例えば、酵母では、URA3、HIS3、LYS2、TRP1、SUC2、G418、SLA、HPHまたはSH BLE遺伝子を用いることができる。多数の選択マーカーが知られており、酵母、真菌、植物、昆虫、哺乳類および他の真核生物宿主細胞での使用に利用可能である。
本発明のYACは、酵母における異種グリコシル化酵素を発現するための1種類以上のカセットをも含んでなる。例えば、前記酵素は、α-マンノシダーゼ (α-マンノシダーゼ Iまたはα-1,2-マンノシダーゼ、α-マンノシダーゼ II)、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnT-l、GnT-ll、GnT-lll、GnT-IV、GnT-V) I、ガラクトシルトランスフェラーゼ I (GalT)、フコシルトランスフェラーゼ (FucT)、シアリルトランスフェラーゼ (SiaT)、UDP-N-アセチルグルコサミン-2-エピメラーゼ/N-アセチルマンノサミンキナーゼ (GNE)、N-アセチルノイラミネート-9-ホスフェートシンターゼ (SPS)、シチジンモノホスフェートN-アセチルノイラミン酸シンターゼ (CSS)、シアル酸シンターゼ、CMP-シアル酸シンターゼなどの1以上の活性を含む。このような酵素は、多年にわたって特性決定されてきた。前記酵素をコードする遺伝子も、クローニングされて、研究されてきた。例えば、カエノルハブジチス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)α-1,2-マンノシダーゼ (ZC410.3, Man(9)-α-マンノシダーゼ、受入番号: NM_069176)をコードする遺伝子、ネズミマンノシダーゼ II (Man2a1、受入番号: NM_008549.1)をコードする遺伝子、ヒトN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼI (MGAT1、受入番号: NM_001114620.1)をコードする遺伝子、ヒトN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼII (MGAT2、受入番号: NM_002408.3)をコードする遺伝子、ネズミN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII (MGAT3、受入番号: NM_010795.3)をコードする遺伝子、ヒトガラクトシルトランスフェラーゼI (B4GALT1、受入番号: NM_001497.3)をコードする遺伝子、ヒトシアリルトランスフェラーゼ(ST3GAL4、受入番号: NM_006278)をコードする遺伝子、ヒトUDP-N-アセチルグルコサミン-2-エピメラーゼ/N-アセチルマンノサミンキナーゼ (GNE、受入番号: NM_001128227)をコードする遺伝子、ヒトN-アセチルノ
イラミネート-9-ホスフェートシンターゼ (NANS、受入番号: NM_018946.3)をコードする遺伝子、ヒトシチジンモノホスフェートN-アセチルノイラミン酸シンターゼ (CMAS、受入番号: NM_018686)をコードする遺伝子、ヒトα-1,6フコシルトランスフェラーゼ (FUT8、受入番号: NM_178156)をコードする遺伝子、細菌性(ナイセリア・メニンギティジス(N. meningitidis))のシアル酸シンターゼ (SiaC、受入番号: M95053.1)をコードする遺伝子、細菌性(ナイセリア・メニンギティジス(N. meningitidis))のCMP-シアル酸シンターゼ (SiaB、受入番号: M95053.1)をコードする遺伝子が挙げられる。
他の種由来の関連遺伝子は、当業者に知られている方法のいずれかによって、例えば、配列の比較を行うことによって容易に同定することができる。
2つのアミノ酸配列における配列比較は、通常は最良のアライメントに従って以前に整列されているこれらの配列を比較することによって行われ、この比較は、比較のセグメントについて、類似性の局所領域を同定および比較する目的で行われる。比較を行うための最良の配列アライメントは、手動による他、Smith and Watermanによって開発されたグローバル・ホモロジー・アルゴリズムの使用(Ad. App. Math., 2: 482-489, 1981)、Neddleman and Wunschによって開発されたローカル・ホモロジー・アルゴリズムの使用(J. Mol. Biol., 48: 443-453, 1970)、Pearson and Lipmanによって開発された類似度法の使用 (Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85: 2444-2448, 1988)、これらのアルゴリズムを用いるコンピューターソフトウェアの使用(GAP, BESTFIT, BLASTP, BLASTN, FASTA, TFASTA、 Wisconsin Geneticsソフトウェア Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, Wl USA)、MUSCLEマルチプルアライメントアルゴリズムの使用 (Edgar, Nucl. Acids Res., 32: 1792-1797, 2004)によって行うことができる。最良のローカルアライメントを得るために、好ましくは、BLOSUM 62マトリックスまたはPAM 30マトリックスを用いるBLASTソフトウェアを用いることができる。2個のアミノ酸配列の同一性率は、最適に整列されたこれら2個の配列を比較することによって決定され、アミノ酸配列は、これら2個の配列の間に最適アライメントを得るためのリファレンス配列に関して付加または欠失を含んでなることができる。同一性率は、これら2個の配列の間の同一位置の数を決定し、個の数を比較した位置の総数で割り、得られた結果に100を掛けて計算し、これら2個の配列間の同一性率を得る。
更に、多数の公表文献には、他の種の関連酵素も記載されており、当業者であれば、目的の遺伝子の配列を誘導することができる(例えば、WO 01/25406号、Kumar et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 87: 9948-9952, 1990、Sarkar et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A, 88: 234-238, 1991、D'Agostero et al., Eur. J. Biochem., 183: 211-217, 1989、Mash et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 157: 657, 1988、Wang et al. Glycobiology, 1: 25-31, 1990、Lai et al., J Biol Chem., 269: 9872-9881, 1984、Herscovics et al., J Biol Chem., 269: 9864-9871, 1984、Kumar et al., Glycobiology, 2: 383-393, 1992、Nishikawa et al., J Biol Chem., 263: 8270-8281, 1988、Barker et al., J Biol Chem., 247: 7135, 1972、Yoon et al., Glycobiology, 2: 161-168, 1992、Masibay et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 86: 5733-5737, 1989、Aoki et al., EMBO J., 9: 3171, 1990、Krezdom et al., Eur. J. Biochem., 212: 113-120, 1993を参照されたい)。
従って、当業者であれば、哺乳類のグリコシル化に関与する活性のそれぞれをコードする遺伝子を容易に同定することができるであろう。
当業者であれば、発現に用いられる遺伝子および細胞の起源によっては、コドン最適化は二官能価タンパク質の発現増加を促進することがあることも分かるであろう。「コドン最適化」とは、酵母宿主細胞におけるコドン出現頻度について配列を改良する細菌酵素についてのコード配列の変更を表す。多くの細菌、植物または哺乳類は、酵母ではさほど頻繁に用いられない多数のコドンを用いている。一般に用いられる酵母コドンに相当するようにこれらを変化させることによって、本発明の酵母細胞における二官能価酵素の発現を増加させることができる。コドン出現頻度表は、酵母細胞並びに様々な他の生物についての技術分野で知られている。
糖タンパク質は、ERでの合成から後期ゴルジ体での完全な成熟まで進行するので、哺乳類のN-グリコシル化酵素は連続的に作用する。酵母で哺乳類発現系を再構成するには、哺乳類のN-グリコシル化活性を適宜ゴルジ体またはERに標的化する必要がある。これは、これらのタンパク質のそれぞれのターゲッティング配列を所望な酵素を正確な細胞コンパートメントにターゲッティングすることができる配列に置換することによって行うことができる。もちろん、特定の酵素のターゲッティング酵素が酵母で機能を有しかつ前記酵素をゴルジ体および/またはERに向けることができるときには、この配列を置換する必要がないことは容易に理解されるであろう。ターゲッティング配列は公知であり、科学文献および公表データーベースに記載されている。本発明によるターゲッティング配列(または保持配列; 本明細書で用いられるこれら2つの用語は同じ意味を有し、同じものと解釈すべきである)は、このような配列を有するタンパク質を特定の細胞コンパートメントに輸送し、保持するように指示するペプチド配列である。好ましくは、前記細胞コンパートメントはゴルジ体またはERである。当業者であれば、多数のERまたはゴルジ体ターゲッティングシグナル、例えば、HDEL小胞体残留/回収配列、またはサッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)のOch1、Mns1、Mnn1、Ktr1、Kre2、Mnn9またはMnn2タンパク質のターゲッティングシグナルを選択することができる。これらの遺伝子の配列並びに任意の酵母遺伝子の配列は、サッカロミセスゲノムデーターベースウェブサイトに見出すことができる (http://www.veastqenome.org/)。
従って、本発明の目的は、1種類以上の発現カセットであって、異種グリコシル化酵素とER/ゴルジ体保持配列の融合体をコードする前記発現カセットを含んでなるYACを提供することである。
本発明によれば、前記融合体は、慎重に設計した後に構築される。従って、本発明の融合体は、グリコシル化活性を正確な細胞コンパートメントに正確に局在化させる融合体を見出すためにランダムな融合体のライブラリーのスクリーニングを教示している従来技術とは対照的である。
「融合タンパク質」という用語は、異種アミノ酸配列にカップリングしたポリペプチドまたは断片を含んでなるポリペプチドを指す。融合タンパク質は、2種類以上の異なるタンパク質から2種類以上の所望な機能要素を含むように構築することができるので、有用である。融合タンパク質は、目的のポリペプチド由来の少なくとも10個の連続するアミノ酸、更に好ましくは少なくとも20または30個のアミノ酸、更に一層好ましくは少なくとも40、50または60個のアミノ酸、更にもっと好ましくは少なくとも75、100または125個のアミノ酸を含んでなる。融合タンパク質は、ポリペプチドまたはインフレームのその断片をコードする核酸配列を異なるタンパク質またはペプチドをコードする核酸配列で構築した後、融合タンパク質を発現させることによって組換えによって産生することができる。あるいは、融合タンパク質は、ポリペプチドまたはその断片を別のタンパク質に架橋させることによって化学的に産生させることができる。
更に、本発明の前記YACは、好都合にはUDP-ガラクトース、CMP-N-アセチルノイラミン酸、UDP-GlcNAcまたはGDP-フコースのような様々な活性化したオリゴ糖前駆体の輸送体を含むことがある。前記輸送体は、CMP-シアル酸輸送体 (CST)など、およびUDP-GlcNAc輸送体、UDP-Gal輸送体、GDP-フコース輸送体およびCMP-シアル酸輸送体のような糖ヌクレオチド輸送体の群を含んでいる。これらの輸送体をコードする遺伝子は、多数の種においてクローニングされ、配列決定されている。例えば、ヒトUDP-GlcNAc輸送体をコードする遺伝子 (SLC35A3,受入番号: NM_012243)、分裂酵母のUDP-ガラクトース輸送体をコードする遺伝子 (Gms1,受入番号: NM_001023033.1)、ネズミのCMP-シアル酸輸送体をコードする遺伝子 (Slc35A1,受入番号: NM_011895.3)、ヒトCMP-シアル酸輸送体をコードする遺伝子 (SLC35A1;受入番号: NM_006416)、およびヒト GDP-フコース輸送体をコードする遺伝子 (SLC35C1 ;受入番号: NM_018389)を挙げることができる。従って、好ましい実施態様では、本発明の前記YACは、輸送体に対して1種類以上の発現カセットを含んでなることがあり、前記輸送体は、CMP-シアル酸輸送体、UDP-GlcNAc輸送体、UDP-Gal輸送体およびGDP-フコース輸送体からなる群から選択される。
本発明による発現カセットは、前記融合タンパク質の発現の指示に必要な総ての配列を含んでいる。これらの調節要素は、プロモーター、リボソーム開始部位、開始コドン、終結コドン、ポリアデニル化シグナルおよびターミネーターを含んでなることがある。更に、エンハンサーが、遺伝子発現に必要となることがよくある。これらの要素は、所望なタンパク質をコードする配列に操作可能連結していることが必要である。「作動可能な形で連結」した発現調節配列は、この発現調節配列が目的の遺伝子と連続して、目的の遺伝子を調節する結合、並びにイン・トランスまたは遠隔で作用して目的の遺伝子を調節する発現調節配列を指す。
開始および終結コドンは、遺伝学的には所望のタンパク質をコードするヌクレオチド配列の部分であると考えられる。しかしながら、これらの要素は、遺伝子構築物が導入される細胞で機能し得ることが必要である。開始および終結コドンは、コード配列とインフレームでなければならない。
遺伝子発現に必要なプロモーターとしては、GAPDH、PGKなどの構成的発現プロモーター、およびGAL1、CUP1などの誘導的発現プロモーターが何らの特別な制限なしに挙げられる。前記プロモーターは、内因性プロモーター、すなわち、異種N-グリコシル化酵素が発現される同一酵母種由来のプロモーターであることができる。あるいは、それらは別の種に由来することができ、唯一の要件は、前記プロモーターが酵母で機能を有することである。一例として、遺伝子の1つを発現させるのに必要なプロモーターは、pGAPDH、pGAL1、pGAL10、pPGK、pMET25、pADH1、pPMA1、pADH2、pPYK1、pPGK、pENO、pPHO5、pCUP1、pPET56、pTEF2、pTCM1からなる群から選択することができ、前記群は、異種プロモーター pTEF pnmtl、padh2 (いずれもスキゾサッカロミセス・ポンベ (Schizzosaccharomyces pombe)由来)、pSV40、pCaMV、pGRE、pARE、pICL (カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis))も含んでなる。ターミネーターは、CYC1、TEF、PGK、PHO5、URA3、ADH1、PDI1、KAR2、TPI1、TRP1、Bip、CaMV35S、ICLおよびADH2を含んでなる群から選択される。
これらの調節配列は、当該技術分野で広く用いられている。当業者であれば、データーベースでそれらを同定することは困難ではないであろう。例えば、当業者は、発芽酵母プロモーターおよび/またはターミネーター配列を検索する目的でサッカロミセスゲノムデーターベースウェブサイトを調べる (http://www.yeastgenome.org/)であろう。
更に、本発明のYACは、酵母シャペロンタンパク質の1種類以上の発現カセットを含んでなることがある。好ましくは、これらのタンパク質は、酵母細胞で産生される組換え異種タンパク質と同じ調節配列によって支配されている。これらのシャペロンタンパク質の発現によって、発現した異種タンパク質を正確にフォールディングすることができる。
好ましい実施態様では、本発明の発現カセットは、下記のものを含んでいる。
・カセット1は、TDH3プロモーターとCYC1ターミネーターの調節下にある、α-マンノシダーゼ IとHDEL小胞体残留/回収配列の融合体をコードする遺伝子を含む。
・カセット2/3は、ADH1プロモーターとTEFターミネーターの調節下にある、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ Iとサッカロミセス・セレビシアエ(S. cerevisiae) Mnn9保持配列の融合体をコードする遺伝子、ならびに、PGKプロモーターとPGKターミネーターの調節下にあるUDP-GlcNAc輸送体遺伝子を含む。
・カセット4は、TEFプロモーターとURAターミネーターの調節下にあるα-マンノシダーゼ II遺伝子を含む。
・カセット5は、PMA1プロモーターとADH1ターミネーターの調節下にある、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIIとサッカロミセス・セレビシアエ(S. cerevisiae) Mnn9保持配列の融合体をコードする遺伝子を含む。
・カセット6は、CaMVプロモーターとPHO5ターミネーターの調節下にある、β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼとサッカロミセス・セレビシアエ(S. cerevisiae) Mnt1保持配列の融合体をコードする遺伝子を含む。
・カセット7は、pGAL1/10プロモーターの調節下にあり、それぞれの内因性ターミネーターを有する、サッカロミセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)のPDI1遺伝子とKAR2遺伝子を異なる方向で含む。
・カセット8は、シアリル化に必要な総てのORFである、PET56プロモーターとTPI1ターミネーターの調節下にあるSiaC(NeuB)、SV40プロモーターとURA3ターミネーターの調節下にあるSiaB(NeuC)、TEF2プロモーターとCaMVターミネーターの調節下にあるSLC35A1、および最後に、TCM1プロモーターとADH2ターミネーターの調節下にあるST3GAL4を含む。
更に好ましい実施態様によれば、本発明の発現カセットは、配列番号1、2、3、4、5、6および21から選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
本発明のYACは、上記の発現カセットの1個以上を含むことがある。以下に詳記するように、異なる発現カセット、例えば、異なるグリコシル化酵素を組み合わせて、特異的なグリコシル化パターンを有する糖タンパク質を産生することは極めて容易である。従って、本発明のYACの使用は、発現カセットを細胞のゲノムに直接挿入することによる新たな宿主細胞の構築より遙かに容易でかつ遙かに速やかである。
本発明のYACは、空のYACベクターに1個以上の発現カセットを挿入することによって構築することができる。好ましい実施態様では、前記の空のYACベクターは、環状のDNA分子である。更に好ましい実施態様では、本発明の空のYACベクターは、下記の要素を含んでなる。
・1個の酵母複製起点と1個のセントロメア ORI ARS1/CEN4、
・2個のテロメア配列 TEL、
・それぞれのアームに2個の選択マーカー: HIS3、TRP1、LYS2、BLAまたはHPH、
・組換体の負の選択のための1個の選択マーカー: URA3、
・1個の多重クローニング部位 (LYS2の上流)、
・1個の大腸菌複製起点と1個のアンピシリン耐性遺伝子、
・4個の線状化部位: 2個のSacl部位と2個のSfil部位。
更に好ましい実施態様では、空のYACベクターはpGLY-yac_MCSおよびpGLY-yac-hph_MCSと呼ばれ、それぞれ配列番号7および20の配列を有する。空のYACベクターを、図1および2に示す。
本発明のYACは、空のYACベクターを消化して、1種類以上の発現カセットを当業者に知られている任意の方法によって前記YACに挿入することによって構築される。例えば、一つの実施態様によれば、空のYACベクターを、ユニーク制限酵素で消化する。あるいは、前記の空のYACベクターを、少なくとも2種類の制限酵素で消化する。YACに挿入される発現カセットは、前記酵素の少なくとも1個についてそれぞれの末端に制限部位を有しており、消化される。このカセットを(複数の)前記の同じまたは適合酵素で消化した後、カセットをYACに連結し、次いで大腸菌に形質転換する。カセットを受け取ったYACベクターを、制限消化または任意の他の適当な方法(例えば、PCR)によって同定する。関連する実施態様では、連結混合物を酵母に直接形質転換する。もう一つの実施態様では、YACベクターと消化されたカセットを、(何ら先行する連結段階なしに)酵母に形質転換する。この実施態様によれば、カセットは、酵母細胞内での組換えによって消化されたYACベクターに挿入される。酵母組換え経路を用いる他の手法は、当業者に知られている (例えば、Larionov et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93: 491-496、WO 95/03400号、WO 96/14436号)。
YACは、好ましくは線状分子である。好ましい実施態様では、選択マーカーは、空のYACベクターの消化によって切出され、環状のYACベクターを対向選択(counter-selection)することができる。
次いで、本発明のYACを、酵母細胞に適宜導入することができる。当業者であれば、レシピエント酵母への前記YACの導入には、酵母形質転換の通常の手法 (例えば、Johnston, J. R. (監修): 「酵母の分子遺伝学、実際的方法(Molecular Genetics of Yeast, a Practical Approach)」. IRL Press, Oxford, 1994、Guthrie, C. and Fink, G. R. (監修). 「酵素学の方法、第194巻、酵母遺伝学および分子生物学入門(Methods in Enzymology, Vol. 194, Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology)」. Acad. Press, NY, 1991、Broach, J. R., Jones, E. W. and Pringle, J. R. (監修): 「酵母サッカロミセスの分子および細胞生物学、第1巻、ゲノム動力学、タンパク質合成およびエネルギー論(The Molecular and Cellular Biology of the Yeast Saccharomyces, Vol. 1. Genome Dynamics, Protein Synthesis, and Energetics)」. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1991、Jones, E. W., Pringle, J. R. and Broach, J. R. (監修): 「酵母サッカロミセスの分子および細胞生物学、第2巻、遺伝学発現(The Molecular and Cellular Biology of the Yeast Saccharomyces, Vol. 2. Gene Expression)」. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1992、Pringle, J. R., Broach, J. R. and Jones, E. W. (監修): 「酵母サッカロミセスの分子および細胞生物学、第3巻、細胞サイクルおよび細胞生物学(The Molecular and Cellular Biology of the Yeast Saccharomyces, Vol. 3. Cell cycle and Cell Biology)」. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1997) に記載されている酢酸リチウム法、電気穿孔などを用いるであろう。
詳細には、本発明のYACは、工業的規模で糖タンパク質発現に適する酵母細胞に導入することができる。
従って、本発明のもう一つの目的は、発酵装置でしっかり増殖することができる適当な複合グリコフォーム(complex glycoform)を有する目的とするタンパク質を製造するための酵母細胞を提供することである。本発明の酵母細胞は、ヒト様糖鎖構造を有する目的とする糖タンパク質を多量に産生することができる。更に、本発明の酵母細胞は、大規模条件で増殖させるときに安定である。その上、更なる変異が生じれば、本発明の酵母細胞は、臨床形態に必要とされるように元の形態に容易に修復することができる。本発明は、最適化した均一なヒト化オリゴ糖構造を有する糖タンパク質を製造するための遺伝子修飾した酵母に関する。
本発明による酵母は、異種タンパク質の大規模生産に用いることができる任意の種類の酵母である。従って、本発明の酵母は、サッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス種(Saccharomyces sp.)、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、スキゾサッカロミセス・ポンベ(Schizzosaccharomyces pombe)、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ピキア・フィンランデカ(Pichia finlandica)、ピキア・トリハロフィア(Pichia trehalophila)、ピキア・コクラマエ(Pichia koclamae)、ピキア・メンブラナエファシエンス(Pichia membranaefaciens)、ピキア・ミヌタ(Pichia minuta) (オガタエア・ミヌタ(Ogataea minuta)、ピキア・リンドネリ(Pichia lindneri))、ピキア・オプンチアエ(Pichia opuntiae)、ピキア・サーモトレランス(Pichia thermotolerans)、ピキア・サリクタリア(Pichia salictaria)、ピキア・グエルクウム(Pichia guercuum)、ピキア・ピペリ(Pichia pijperi)、ピキア・スティプティス(Pichia stiptis)、ピキア・メタノリカ(Pichia methanolica)、ピキア種(Pichia sp.)、クルイベロミセス種(Kluyveromyces sp.)、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)のような種を含んでなる。好ましくは、本発明の酵母は、サッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)である。
ヒトN-グリコシル化は、GlcNAc、ガラクトースおよびシアル酸で伸長したトリマンノースコアに基づく複合型のものであるが、酵母N-グリコシル化は、100以下またはそれ以上のマンノース残基を含む高マンノース型のものである(ハイパーマンノシル化)。小胞体(ER)でのMan8中間体の形成までは、いずれの経路も同一である。しかしながら、この中間体を形成した後に経路は別れ、酵母酵素は更にマンノース残基を付加するが、哺乳類経路はα-1,2-マンノシダーゼに依存し、マンノース残基を更に削減(trim)する。従って、酵母で複合グリコシル化を行うには、最初に内因性マンノシルトランスフェラーゼ活性を不活性化する必要がある。1種類以上のマンノシルトランスフェラーゼを不活性化する変異を含む酵母は、マンノース残基をAsnに連結した内部オリゴ糖 Man8GlcNAc2に付加することができない。
第一の実施態様では、本発明は、少なくとも1個のマンノシルトランスフェラーゼ活性を欠いておりかつ上記のようなYACを有する酵母細胞に関する。「マンノシルトランスフェラーゼ」とは、本明細書では、マンノース残基を糖タンパク質に付加する酵素活性を指す。これらの活性は当業者には公知であり、サッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)のような酵母のグリコシル化経路は詳細に検討されている (Herscovics and Orlean, FASEB J., 7(6): 540-550, 1993、Munro, FEBS Lett., 498(2-3): 223-227, 2001、Karhinen and Makarow, J. Cell Sci., 117(2): 351-358, 2004)。好ましい実施態様では、マンノシルトランスフェラーゼは、サッカロミセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)遺伝子OCH1、MNN1、MNN4、MNN6、MNN9、TTP1、YGL257c、YNR059w、YIL014w、YJL86w、KRE2、YUR1、KTR1、KTR2、KTR3、KTR4、KTR5、KTR6およびKTR7の産物、またはそれらの同族体からなる群から選択される。更に好ましい実施態様では、マンノシルトランスフェラーゼは、サッカロミセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)遺伝子、OCH1、MNN1およびMNN9の産物他はそれらの同族体からなる群から選択される。更に一層好ましい実施態様では、マンノシルトランスフェラーゼは、サッカロミセス・セレビシアエ(S. cerevisiae) OCH1の産物またはその同族体である。もう一つの更に好ましい実施態様では、マンノシルトランスフェラーゼは、サッカロミセス・セレビシアエ(S. cerevisiae) MNN1の産物またはその同族体である。更にもう一つの更に好ましい実施態様では、マンノシルトランスフェラーゼは、サッカロミセス・セレビシアエ(S. cerevisiae) MNN9の産物またはその同族体である。更に一層好ましい実施態様では、本発明の酵母は、OCH1遺伝子によってコードされるマンノシルトランスフェラーゼおよび/またはMNN1遺伝子によってコードされるマンノシルトランスフェラーゼおよび/またはMNN9遺伝子によってコードされるマンノシルトランスフェラーゼを欠いている。
本発明によれば、マンノシルトランスフェラーゼ活性が酵母細胞に実質的に存在しないときには、マンノシルトランスフェラーゼ活性は、この細胞には欠けている。これは、前記マンノシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子の転写または翻訳の妨害によって起こる可能性がある。更に好ましくは、マンノシルトランスフェラーゼは、前記酵素をコードする遺伝子における突然変異により、欠けている。更に一層好ましくは、マンノシルトランスフェラーゼ遺伝子は、部分的または全体的にマーカー遺伝子によって置換されている。遺伝子ノックアウトの創成は、酵母および真菌の分子生物学界で定着した手法であり、当該技術分野で通常の技術を有する何人によっても生じさせることができる(R Rothstein, Methods in Enzymology, 194: 281-301, 1991)。本発明の更に好ましい実施態様によれば、マーカー遺伝子は、抗生物質に対する耐性を付与するタンパク質をコードする。更に一層好ましくは、OCH1遺伝子は、カナマイシン耐性カセットによって分断され、および/またはMNN1遺伝子は、ハイグロマイシン耐性カセットによって分断され、および/またはMNN9は、フェロマイシンまたはブラストサイジンまたはナールセオトリシン(nourseothricin)耐性カセットによって分断される。本明細書で用いられる「抗生物質耐性カセット」は、タンパク質をコードする遺伝子を含んでなるポリヌクレオチドであって、前記タンパク質が前記抗生物質に対する耐性を付与することができ、すなわち、宿主酵母細胞を抗生物質の存在下にて増殖させることができるものを指す。前記ポリヌクレオチドは、前記タンパク質をコードするオープンリーディングフレームだけでなく、プロモーター、リボソーム開始部位、開始コドン、終結コドン、ポリアデニル化シグナルおよびターミネーター等その発現に必要な総ての調節シグナルも含んでなる。
本発明の酵母細胞は、前記酵母で発現した異種タンパク質への複合N-糖鎖構造の付加に用いることができる。
従って、本発明のもう一つの態様は、目的とする組換え糖タンパク質を製造する方法を提供することである。特定の実施態様によれば、本発明の方法は、
(a)組換え糖タンパク質をコードする核酸を上記した宿主細胞に導入する工程、
(b)宿主細胞中で核酸を発現させて、糖タンパク質を産生させる工程、および
(c)組換え糖タンパク質を宿主細胞から単離する工程
を含んでなる。
前記の糖タンパク質は、目的とする任意のタンパク質であり、詳細には治療目的のタンパク質であることができる。このような治療タンパク質としては、制限なしに、サイトカイン、インターロイキン、成長ホルモン、酵素、モノクローナル抗体、ワクチンタンパク質、可溶性レセプター、およびあらゆる種類の他の組換えタンパク質のようなタンパク質が挙げられる。
本発明の実施では、特に断らない限り通常の手法またはタンパク質化学、分子ウイルス学、微生物学、組換えDNA技術、および薬理学を用い、これらは当該技術分野の技術範囲内にある。このような手法は、文献に詳細に説明されている (Ausubel et al., 「分子生物学の最新のプロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」, 監修, John Wiley & Sons, Inc. New York, 1995、「レミントンの薬科学、第17版(Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed.)」, Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1985、およびSambrook et al., 「分子クローニング: 実験室便覧、第2版(Molecular cloning: A laboratory manual 2nd edition)」, Cold Spring Harbor Laboratory Press - Cold Spring Harbor, NY, USA, 1989、「グリコバイオロジー入門(Introduction to Glycobiology)」, Maureen E. Taylor, Kurt Drickamer, Oxford Univ. Press (2003)、「ワージングトンの酵素便覧(Worthington Enzyme Manual)」, Worthington Biochemical Corp. Freehold, NJ、「バイオケミストリーのハンドブック: 第A部タンパク質、第I巻(Handbook of Biochemistry: Section A Proteins, Vol I)」 1976 CRC Press、「バイオケミストリーのハンドブック: 第A部タンパク質、第II巻(Handbook of Biochemistry: Section A Proteins, Vol II)」 1976 CRC Press、「グリコバイオロジーの要点(Essentials of Glycobiology)」, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1999)を参照されたい)。本明細書に記載の分子および細胞生物学、タンパク質生化学、酵素学および医および薬化学に関して用いた命名法および実験室での手順および手法は、公知でありかつ当該技術分野で普通に用いられているものである。
特に断らない限り、本明細書で用いられる総ての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって普通に理解されているものと同じ意味を有する。
本発明を総括的に記載してきたが、本発明の特徴や利点は、例示のためにのみ本明細書に提供され特に断らない限り制限的なものと解釈されない特定の実施例および図を参照することによって、更に理解することができる。
pGLY-yac_MCSのマップ。 pGLY-yac-hph_MCSのマップ。 本発明のYACの構築。 Δoch1株の検証: A: Δoh1 形質転換体の温度感受性の分析、 B: Δoh1 形質転換体のPCR分析、 C: Δoh1 形質転換体におけるrHuEPOの発現、 D: Δoh1 形質転換体で産生したrHuEPOのN-グリカン分析。 Gontrandでの組込みORFの発現のRT PCR分析。 YAC 安定性の分析。 Seraphinでのシアリル化経路の発現のRT PCR分析。
6種類の酵母細胞を構築し、異種タンパク質上に下記の糖鎖構造を得る。
・ GlcNAc2Man3GlcNAc2 (Gontrand株およびDYGorD株)、
・ Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2 (George株およびDyoGGene株)、
・ NeuAc2Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2 (Seraphin株およびDrYSSia株)。
下記の実施例では、酵母細胞は、それらが含むYAC構造の名前によって呼ばれ、例えば、Seraphin細胞はSeraphin YACを含む。
実施例1:och1Δおよび/またはmnn1Δおよび/またはmnn9Δ宿主細胞の作製
カナマイシン耐性カセット (KanMX4カセットを含み、前記抗生物質に耐性を付与する酵素をコードする)をPCRによって増幅し、これらの両末端に、サッカロミセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)酵母のそれぞれの株の特異領域であるOCH1遺伝子に対する相同フランキング領域を付加した (WO 2008/095797号を参照されたい)。遺伝子OCH1は、抗生物質カナマイシン耐性のこのカセットの挿入によって不活性化される。この遺伝子の酵母ゲノムへの組込みを電気穿孔によって行った後、目的のカセットを相同組換えによって組込む。
フランキング領域は、約40-100個の塩基を有し、カナマイシン耐性カセットを酵母ゲノムのOCH1遺伝子に組込むことができる。
カナマイシン耐性遺伝子が組込まれた株を、200 pg/mlのカナマイシンを含む培地で選択する。第二の選択段階は、37℃におけるΔoh1株の増殖欠損の適否を用いて行った(図4A)。
次に、カナマイシン耐性遺伝子のOCH1遺伝子への組込みをPCRによってチェックした。カナマイシン耐性を示すクローニングのゲノムDNAを抽出した。オリゴヌクレオチドは、カナマイシン耐性遺伝子の存在並びにこの遺伝子がOCH1遺伝子に正確に組込まれたことをチェックできるように選択した。従って、プライマーCR025/BS15カナマイシンカセットをOCH1遺伝子に組込んだクローンに、期待したサイズ (1237 bp)のバンドの増幅を生じた(図4 Bc)。対照的に、野生型株のゲノムDNAを用いたときには、増幅は見られなかった。他方、両者をOCH1遺伝子内でハイブリダイズするプライマーを用いるPCR反応では、野生型のDNA断片を増幅したが、カナマイシン耐性クローンでは増幅しなかった (図4 Ba BS40/CR004およびBb CR003/CR004)。カナマイシン耐性を示す株は、欠失カセットを正確な部位に組込んだものと結論する。
MNN1遺伝子を、同じ方法によってハイグロマイシン耐性欠失カセット (前記カセットはhph遺伝子を含んでなり、この産物は宿主細胞に耐性を付与する働きをする) に置換する。同様に、MNN9遺伝子は、ブラストサイジン耐性カセットまたはフレオマイシン耐性カセットまたはナールセオトリシン(nourseothricin)耐性カセット (nat1遺伝子を含み、この産物はナールセオトリシンアセチルトランスフェラーゼ酵素である)によって欠失を生じる。
Och1酵素の活性は、イン・ビトロでのアッセイによって検出することができる。従来の研究は、Och1酵素によるマンノースの転移に最良のアクセプターはMan8GlcNAc2であることを示している。酵母のミクロソーム画分 (100 pgのタンパク質)または全タンパク質の溶解物 (200 pg)から、Man8GlcNAc2構造上のα-1,6位におけるマンノースの転移活性を測定する。このため、アミノ-ピリジン基に結合したMan8GlcNAc2 (M8GN2-AP)をアクセプターとして用い、[14C]-マンノースで標識したGDP-マンノースを放射性マンノースのドナー分子として用いる。ミクロソームまたはタンパク質を、ドナー(放射性GDP-マンノース)、アクセプター (Man8GlcN2-AP)およびデオキシマンノジリマイシン (マンノシダーゼIの阻害剤)と共にpHが調節された緩衝培地でインキュベーションする。30℃で30分間インキュベーションした後、クロロホルムとメタノールを反応培地に加え、CHCl3/MeOH/H2Oの比を3:2:1 (v/v/v)とする。水相に相当する上相は、Man8GlcNAc2-AP、放射性Man9GlcNAc2-APおよびGDP-[14C]-マンノースを含む。乾燥後、試料を100 plのH2O/1%酢酸に取り、生じた放射性Man9GlcNAc2-APからGDP-マンノースを分離する目的で予めコンディショニングしたSep-Pak C18 (Waters)カラムを通過させる(AP基により、この化合物はC18カラムに保持される)。H2O /1%酢酸 (20 ml)、次いで20%メタノール/1%酢酸 (4 ml)で溶出することによって、様々な画分を回収して、シンチレーションカウンターで計数することができる。
非相同タンパク質生産および糖鎖分析
修飾酵母株を、ガラクトース誘導プロモーター下でEPO配列を含む発現ベクターによって形質転換する。ヒトEPOの産生に用いる酵母は、最初にウラシルドロップアウトYNB培地、2%グルコース中で、OD600 > 12となるまで培養する。24 - 48時間培養した後、2%ガラクトースを培養物に加え、目的とする本発明者らのタンパク質を誘導する。0、24時間の誘導後に、試料を採取する。
酵母細胞を、遠心分離によって除去する。上清を、最初にイミダゾール 5 mM、Tris HCl 1 M pH = 9を所望なpHになるまで加え、pH 7.4で緩衝する。次いで、上清を0.8 μmおよび0.45 μmで濾過した後、HisTrap HP 1mlカラム(GE Healthcare)に入れる。EPOを、製造業者の指示に従って精製する(平衡緩衝液: Tris HCl 20 mM、NaCl 0.5 M、イミダゾール 5 mM、pH = 7.4;溶出緩衝液: Tris HCl 20 mM、NaCl 0.5 M、イミダゾール 0.5 M、pH = 7.4)。
産生されたEPOは、溶離液中に回収される。カラムから溶出したタンパク質を、12%アクリルアミドゲル上でSDS-PAGE電気泳動によって分析する。
SDS-PAGEゲルの移動後、タンパク質をクーマシーブルーによる染色またはウェスタンブロット法によって分析する。ウェスタンブロット法については、全タンパク質をニトロセルロース膜に転写し、抗EPO抗体(R&D Systems)による検出を続行する。転写後、膜をブロッキング溶液(PBS, 5%脂肪乳)で1時間飽和させる。次いで、膜を抗EPO抗体溶液(希釈度1:1000)と1時間接触させる。0.05% Tween 20-PBSで3回すすいだ後、膜を二次抗マウス-HRP抗体と接触させ、比色検出を続行する(図4 C)。
このようにして、約35 kDaにおけるタンパク質を、脱グリコシル化の後に検出することができる。このタンパク質は、クーマシーブルー染色によって検出される主要タンパク質であり、ウェスタンブロット分析における抗EPO抗体によって明らかにされている。
PNGアーゼ処理後のN-グリカン分析は、Δoh1株で産生したrHuEPOは、Man8/9GlcNAc2型のオリゴマンノシル糖鎖構造を有することを示していた(図4 D)。
実施例2:GonTRanD/DYGorD George/DYoGGeneおよびSeraphin/DrYSSia株の構築
様々なマンノシダーゼおよびグリコシルトランスフェラーゼの遺伝子であって、それぞれの遺伝子が異なる構成的プロモーターおよびターミネーターによって制御されているものを含む配列を、発現カセットとしてのYACに導入する。様々な調節要素の使用によって、組換えYACの良好な安定性が得られる。YACは、2種類の酵母タンパク質シャペロン (Pdi1およびKar2)をコードする遺伝子を含むこともある。これらの遺伝子はpGAL1/10プロモーターによって制御され、それらの発現を、発現される異種タンパク質の発現と調和させる。
GeorgeおよびDYoGGeneのYACは、カセット1-7を含んでいる。
前記YACは、それぞれSfilおよびSacl pGLY-yac_MCSまたはpGLY-yac-hph_MCS (図1および2参照)によって消化することによって構築される。この消化は、3個の線状断片、すなわち2本のアームとURA3マーカーを生じる。
7カセットのそれぞれは、Sfil部位によって境界を定められている。Sfil制限部位: GGCCNNNN↓NG GCCの使用により、異なるカセット間に適合、ユニーク、付着末端が生じ、7個の発現カセット間のアセンブリングの1つの型を準備するだけである。
カセット1 : GGCC ATGC↓A GGCC________GGCC CGTA↓C GGCC
カセット2/3 : GGCC CGTA↓C GGCC________GGCC TGAC↓G GGCC
カセット4 : GGCC TGAC↓G GGCC________GGCC GCTA↓T GGCC
カセット5 : GGCC GCTA↓T GGCC________GGCC ACGC↓T GGCC
カセット6 : GGCC ACGC↓T GGCC________GGCC CCTG↓A GGCC
カセット7 : GGCC CCTG↓A GGCC________GGCC GACT↓C GGCC
カセット8 : GGCC CCTG↓A GGCC________GGCC GACT↓C GGCC
カセットを中間ベクターへのクローニングによってアセンブリングした後、「ポリカセット」を新たなSfil消化によって削除する。
相当するバンドを精製した後、線状化ポリカセットを線状化pGLY-yac_MCSで酵母に形質転換する。
レシピエント酵母株は、och1::KanMX4および/またはmnn1::hphおよび/またはmnn9::nat1対立遺伝子を含む(上記参照)。あるいは、MNN9遺伝子は、ナールセオトリシン耐性カセットの代わりにブラストサイジンまたはフレオマイシン耐性カセットで分断されることがある。
前記酵母株を500 mlのYPD (1% 酵母エキス、2%ペプトン、2% D-グルコース) OD600 = 0.1に接種し、OD600が5.5 - 6.5に達するまで増殖させる。
細胞を、4℃で1500 gにて遠心分離する。細胞ペレットを低温滅菌水で2回(最初は500 ml、次に250 ml)洗浄した後、1M滅菌ソルビトール20 mlに再懸濁する。細胞を再度遠心分離した後、1M滅菌ソルビトール mlに再懸濁する。この段階で、細胞を80 μlずつ小分けし、必要な場合には、-80℃で冷凍することができる。
形質転換を電気穿孔によって行う。簡単に説明すれば、細胞を、DNA (Sfil-Saclで消化したpGLY-yac_CSおよびSfilで消化したポリカセット)を用いて氷上で5分間インキュベーションする。V = 1500 Vのパルスを加える。細胞を直ちに1M低温滅菌ソルビトール1 mlに徐々に再懸濁し、回収のため30℃で1時間インキュベーションする。次いで、細胞を選択培地で培養する。本発明の場合には、選択培地は、選択用の形質転換体 +/- ブラスチシジンの正の選択に用いられるヒスチジン、トリプトファン、リジンを除く形質転換体の増殖に必要な総ての補足物を含むYNB (0.17% (wt/vol) 酵母窒素ベース(アミノ酸および硫酸アンモニウムなし、YNBww; Difco, パリ, フランス)、0.5% (wt/vol) NH4Cl、ウラシル (0.1 g/l)、0.1% (wt/vol) 酵母エキス (Bacto-DB)、50 mM リン酸緩衝液, pH 6.8、および固形培地だけに、2%寒天)である。一方、YNBプレートは、環状pGLY-yac_MCS 形質転換体を対向選択するための5-フルオロオロト酸(5-fluorootic acid) (5-FOA)を含む。
従って、これらの選択プレートで増殖する形質転換体は、総てポリカセットが挿入されているpGLY-yac_MCS YACを含んでいる。YACにポリカセットが含まれていることは、それぞれの形質転換についてPCRによって確認される。
GoNTRanDおよびDYGoRD YACは、それらだけがカセット1-5を含む点においてGeorgeおよびDYoGGene YACと異なっている。
GoNTRanD細胞を回収し、RNAを抽出して、精製する(RNeasy mini kit Qiagen)。それぞれのRNA試料を2つに分け、一方の半分をRNアーゼ(Sigma-Aldrich)で室温にて30分間処理し(抽出の際にDNA混入のないコントロール)、他のものは未処理のままにした。逆転写を、RNアーゼで処理したネガティブコントロールを包含する総てのRNA試料について行った。水からなるPCRのネガティブコントロールを、反応に含めた。
Figure 2013535198
60 nmol MgCl2
10 nmol dNTP
20 U RNアーゼ阻害剤
+バッファーRT + 逆転写酵素
下記のプライマーを、逆転写反応に用いた。
CA027: GGAAAGACGGGTGCAAC (配列番号 22)
CA028: CCCAACGTCATATAATGATCTGA (配列番号 23)
CA017: ATGTTCGCCAACCTAAAATACG (配列番号 24)
CA018: TTACAAGGATGGCTCCAAGG (配列番号 25)
CA046: TCCAGGGCTACTACAAGA (配列番号 26)
CR008: CCAGCTCCTTCCGGTCA (配列番号 27)
CA040: TGGAGAAGATAATTGGAGAT (配列番号 28)
CA041 : GCGGTCTTAGGGAAACATA (配列番号 29)
CD030: CCCGAATACCTCAGACTG (配列番号 30)
CD031 : ACTCGATCAGCTTCTGATAG (配列番号 31)
Figure 2013535198
cDNAに対するPCRは、ミックスダイナザイム12,5 μl、それぞれのプライマー (10 pmol/pl)1.25 μl、H2O 8 μlおよびcDNA 2 μlを含む25 μl中で行った。cDNAを最初に95℃で5分間変性させた後、95℃で40秒間の変性を30サイクル、53℃で40秒間のハイブリダイゼーションおよび72℃で1分間の伸長を行った後、伸長を72℃で5分間行った。
PCR産物をアガロースゲル上に流し、増幅バンドの存在を確かめた。図5に示されている結果は、酵母培養物における予想サイズのバンドの特異的増幅を示している。
SeraphinおよびDrYSSia YACは、それらが、ヒトシアリルトランスフェラーゼST3GAL4 (NM_006278)、ネズミCMP-シアル酸輸送体 (NM__011895.3)、ナイセリア・メニンギティジス(Neisseria meningitidis) CMP-シアル酸シンターゼ (U60146 M95053.1)およびナイセリア・メニンギティジス(N. meningitidis)シアル酸シンターゼ (M95053.1)についてオープンリーディングフレームをも有している点でGeorgeおよびDYoGGene YACと異なっている。これらのオープンリーディングフレームは、カセット 8内に含まれている。更に、これらのYACは、カセット 7 (PDI-BIP)を含まない。この第二のシリーズのYACは、第一のシリーズと同様にして構築される。
Seraphin細胞を回収し、RNAを抽出して精製した (RNeasy mini kit Qiagen)。それぞれのRNA試料を2つに分け、一方の半分をRNアーゼ(Sigma-Aldrich)で室温にて30分間処理し(抽出の際にDNA混入のないコントロール)、他のものは未処理のままにした。逆転写を、RNアーゼで処理したネガティブコントロールを包含する総てのRNA試料について行った。水からなるPCRのネガティブコントロールを、反応に含めた。
Figure 2013535198
Figure 2013535198
60 nmol MgCl2
10 nmol dNTP
20 U RNアーゼ阻害剤
+ バッファーRT + 逆転写酵素
下記のプライマーを、逆転写反応に用いた。
CA095: cagtagctttaggcggttc (配列番号 32)
CA096: gctacgacagatgcaaagg (配列番号 33)
CB125: tggcgggttaattgcagaag (配列番号 34)
CB126: agtggatgatgctccattgg (配列番号 35)
CB144: aggaactggcgaagttgagt (配列番号 36)
CB145: actcctgcaaatccagagca (配列番号 37)
CB127: gcttgaggattatttctggg (配列番号 38)
CB104: tcagaaggacgtgaggttc (配列番号 39)
cDNAに対するPCRは、ミックスダイナザイム12,5 μl、それぞれのプライマー (10 pmol/pl)1.25 μl、H2O 8 μlおよびcDNA 2 μlを含む25 μl中で行った。cDNAを最初に95℃で5分間変性させた後、95℃で30秒間の変性を30サイクル、56℃で30秒間のハイブリダイゼーションおよび72℃で40秒間の伸長を行った後、伸長を72℃で5分間行った。
PCR産物をアガロースゲル上に流し、増幅バンドの存在を確かめた。図7に示されている結果は、酵母培養物における予想サイズのバンドの特異的増幅を示している。
実施例3:George株でのEPO発現
George株は、哺乳類に見られ、複合型のグリカンとして記載されている構造であるN-グリカンGal2GlcNAc2Man3GlcNAc2を独占的に産生することができる。関連YACの構築の存在および宿主細胞へのその導入は、上記されている。これらの段階のそれぞれは、最良の生産クローンを選択して利用可能なクローンを得るための可能性の割合を最大にすることからなる「一括の」確認作業に入る。
修飾酵母でEPOの発現に用いられるプラスミドは、プロモーターGal1を含んでいる。このプロモーターは、サッカロミセス・セレビシアエ(S.cerevisiae)で知られている最強のプロモーターの1つであり、現在、組換えタンパク質の産生に用いられている。このプロモーターは、ガラクトースによって誘導され、グルコースによって抑制される。実際に、グリセロール中でのサッカロミセス・セレビシアエ(S.cerevisiae)酵母の培養では、ガラクトースの添加によってGAL遺伝子が約1,000倍まで誘導される。一方、グルコースを培地に添加すると、GAL1プロモーターの活性が抑制される。本発明者らのプラスミドにおけるヒトEPOの組込み配列は、ポリヒスチジンタグを付加することによって5'において修飾され、産生されたタンパク質の検出および精製が促進された。
ヒトEPOの産生に用いる酵母は、最初にウラシルドロップアウトYNB培地、2%グルコース中で、OD600 > 12となるまで培養する。24 - 48時間培養した後、2%ガラクトースを培養物に加え、目的とする本発明者らのタンパク質を誘導する。0、6、24および48時間の誘導後に、試料を採取する。
酵母細胞を、遠心分離によって除去する。上清を、最初にイミダゾール 5 mM、Tris HCl 1 M pH = 9を所望なpHになるまで加え、pH 7.4で緩衝する。次いで、上清を0.8 μmおよび0.45 μmで濾過した後、HisTrap HP 1mlカラム(GE Healthcare)に入れる。EPOを、製造業者の指示に従って精製する(平衡緩衝液: Tris HCl 20 mM、NaCl 0.5 M、イミダゾール 5 mM、pH = 7.4;溶出緩衝液: Tris HCl 20 mM、NaCl 0.5 M、イミダゾール 0.5 M、pH = 7.4)。
産生されたEPOは、溶離液中に回収される。カラムから溶出したタンパク質を、12%アクリルアミドゲル上でSDS-PAGE電気泳動によって分析する。
SDS-PAGEゲルの移動後、タンパク質をクーマシーブルーによる染色またはウェスタンブロット法によって分析する。ウェスタンブロット法については、全タンパク質をニトロセルロース膜に転写し、抗EPO抗体(R&D Systems)による検出を続行する。転写後、膜をブロッキング溶液(PBS, 5%脂肪乳)で1時間飽和させる。次いで、膜を抗EPO抗体溶液(希釈度1:1000)と1時間接触させる。0.05% Tween 20-PBSで3回すすいだ後、膜を二次抗マウス-HRP抗体と接触させ、比色検出を続行する。
このようにして、約35 kDaにおけるタンパク質を検出することができる。このタンパク質は、クーマシーブルー染色によって検出される主要タンパク質であり、ウェスタンブロット分析における抗EPO抗体によって明らかにされている。
EPOを含む溶出画分を、Amicon Ultra-15 (Millipore)上で、10 kDAのカットオフで、4℃での遠心分離により濃縮する。約500 μlの容積が得られたときに、精製タンパク質の量を分析する。
PNGアーゼ処理後のN-グリカン分析は、George株で産生したrHuEPOは、Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2型の複合糖鎖構造を有することを示していた。
実施例4:YACの安定性
YACの安定性を評価するために、GoNTRanD YACを有する酵母細胞を微量発酵装置中にて選択培地でまたは他の培地で増殖させ(BioPod -図6 A)、次いで幾つかの選択寒天培地(CSM、CSM LYS DO、DO LEU MSC、MSC DO HIS、URA DO CSM、CSM +ブラストサイジン)で培養し、40 - 400のコロニーを得た。次いで、プレートを30℃で4日間インキュベーションし、コロニーを計数した。安定性試験は、微量発酵装置中での増殖の0、24および48時間目に行う。
図6 Bは、GoNTRanD株における幾つかの培地(選択または他の培地)中のYACの安定性の割合を示している。安定性の割合は、式: 安定性% = ((選択培地上のコロニー数)/(非選択培地上のコロニー数))/100によって計算される。ネガティブコントロールは、GoNTRanDの親株(同じ遺伝学的バックグラウンドであるが、YACを持たない)であり、増殖のコントロールは原栄養株である。
培地1: インハウスで生産される選択培地
培地2: インハウスで生産される非選択培地
培地3: インハウスで生産される非選択培地
YNB CSM: 非選択合成培地
YNB S-CSM: 非選択合成培地
YPD: 非選択完全培地
この人工染色体は、非選択培地での産生時間中は安定であり(図6 B)、エピソームベクターに比較された(データーは示さず)。この安定性は、微量発酵装置から5L-バイオリアクターへの培養のスケールアップの際に保存された。総ての様々な試験において、安定性は「インハウス」増殖培地を用いると常に若干増加した。
次いで、YACの完全性を、ゲノムDNA上での5個のORFの存在をPCRで検証することによって確認した。人工染色体上にある総てのORFは、非選択増殖条件での70時間に続いて5L-バイオリアクターでの生産条件での培養48時間増殖した酵母細胞から増幅することができた(データーは示さず)。

Claims (19)

  1. 酵母において異種グリコシル化酵素を発現するための1個以上のカセットを含有する、酵母人工染色体(YAC)。
  2. 前記異種グリコシル化酵素が、α-マンノシダーゼI (α-1,2-マンノシダーゼ)、α-マンノシダーゼII、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼI、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼII、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIV、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV、ガラクトシルトランスフェラーゼI、フコシルトランスフェラーゼ、シアリルトランスフェラーゼ、UDP-N-アセチルグルコサミン-2-エピメラーゼ/N-アセチルマンノサミンキナーゼ、N-アセチルノイラミネート-9-ホスフェートシンターゼ、シチジンモノホスフェートN-アセチルノイラミン酸シンターゼ、シアル酸シンターゼ、CMP-シアル酸シンターゼからなる群から選択される、請求項1に記載のYAC。
  3. 1個以上の前記発現カセットが、異種グリコシル化酵素の触媒ドメインおよびER/ゴルジ体保持シグナルの融合タンパク質をコードする、請求項1または2に記載のYAC。
  4. 保持シグナルが、HDEL小胞体残留/回収配列、およびサッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)のOch1、Msn1、Mnn1、Ktr1、Kre2、Mnt1、Mnn2およびMnn9タンパク質のターゲッティングシグナルからなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載のYAC。
  5. CMP-シアル酸輸送体、UDP-GlcNAc輸送体, UDP-Gal輸送体およびGDP-フコース輸送体からなる群から選択される輸送体の1個以上の発現カセットをさらに含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のYAC。
  6. 酵母タンパク質シャペロンの発現カセットをさらに含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のYAC。
  7. pGAPDH、pGAL1、pGAL10、pPGK、pTEF、pMET25、pADH1、pPMA1、pADH2、pPYK1、pPGK、pENO、pPHO5、pCUP1、pPET56、pnmt1、padh2、pSV40、pCaMV、pGRE、pARE pICL、pTEF2およびpTCM1からなる群から選択されるプロモーターを含んでなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載のYAC。
  8. CYC1、TEF、PGK、PHO5、URA3、ADH1、PDI1、KAR2、TPI1、TRP1、CaMV35S、ADH2およびICLからなる群から選択されるターミネーターを含んでなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載のYAC。
  9. 下記の発現カセット:
    ・TDH3プロモーターとCYC1ターミネーターの調節下にある、α-マンノシダーゼ IとHDEL残留配列の融合体をコードする遺伝子を含む、カセット1、
    ・ADH1プロモーターとTEFターミネーターの調節下にある、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ Iとサッカロミセス・セレビシアエ(S. cerevisiae) Mnn9保持配列の融合体をコードする遺伝子、ならびに、PGKプロモーターとPGKターミネーターの調節下にあるUDP-GlcNAc輸送体遺伝子を含む、カセット2/3、
    ・TEFプロモーターとURAターミネーターの調節下にあるα-マンノシダーゼ II遺伝子を含む、カセット4、
    ・PMA1プロモーターとADH1ターミネーターの調節下にある、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIIとサッカロミセス・セレビシアエ(S. cerevisiae) Mnn9保持配列の融合体をコードする遺伝子を含む、カセット5、
    ・CaMVプロモーターとPHO5ターミネーターの調節下にある、ヒトβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼとサッカロミセス・セレビシアエ(S. cerevisiae) Mnt1保持配列の融合体をコードする遺伝子を含む、カセット6、
    ・pGAL1/10プロモーターの調節下にあり、それぞれの内因性ターミネーターを有する、サッカロミセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)のPDI1遺伝子とKAR2遺伝子を異なる方向で含む、カセット7、
    ・PET56プロモーターとTPI1ターミネーターの調節下にあるSiaC(NeuB)遺伝子、SV40プロモーターとURA3ターミネーターの調節下にあるSiaB(NeuC)遺伝子、TEF2プロモーターとCaMVターミネーターの調節下にあるSLC35A1遺伝子、およびTCM1プロモーターとADH2ターミネーターの調節下にあるST3GAL4遺伝子を含む、カセット8、
    の1個以上を含有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載のYAC。
  10. 配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6および配列番号21から選択される配列を有する1個以上のカセットを含有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載のYAC。
  11. 1個以上の発現カセットを空のYACベクターに挿入することを含んでなる、請求項1〜10のいずれか一項に記載のYACを構築する方法。
  12. 前記空のYACベクターが、下記の要素:
    ・1個の酵母複製起点と1個のセントロメア ORI ARS1/CEN4、
    ・2個のテロメア配列 TEL、
    ・それぞれのアームに2個の選択マーカー:HIS3、TRP1、LYS2、BLAまたはHPH、
    ・組換体の負の選択のための1個の選択マーカー:URA3、
    ・1個の多重クローニング部位(LYS2の上流)、
    ・1個の大腸菌複製起点と1個のアンピシリン耐性遺伝子、
    ・4個の線状化部位:2個のSacl部位と2個のSfil部位
    を含んでなる、請求項11に記載の方法。
  13. 前記空のYACベクターが、配列番号7のDNA配列を含んでなる、請求項11または12に記載の方法。
  14. 目的とする糖タンパク質を製造するための酵母細胞であって、請求項1〜10のいずれか一項に記載のYACを含んでなる、酵母細胞。
  15. マンノシルトランスフェラーゼ活性を欠いている、請求項14に記載の酵母細胞。
  16. OCH1遺伝子および/またはMNN1遺伝子および/またはMNN9遺伝子および/またはMNN2遺伝子の欠失を含んでなる、請求項14または15に記載の酵母細胞。
  17. ・GlcNAc2Man3GlcNAc2
    ・Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2および
    ・NeuAc2Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2
    から選択される糖鎖構造を有する糖タンパク質を産生することができる、請求項14〜16のいずれか一項に記載の酵母細胞。
  18. 酵母がサッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)である、請求項14〜17のいずれか一項に記載の酵母細胞。
  19. 目的とする組換え糖タンパク質を製造する方法であって、
    (a)組換え糖タンパク質をコードする核酸を請求項14〜18のいずれか一項に記載の酵母細胞に導入する工程、
    (b)宿主細胞中で核酸を発現させて、糖タンパク質を産生させる工程、および
    (c)組換え糖タンパク質を宿主細胞から単離する工程
    を含んでなる、方法。
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