JP4258662B2 - O−フコース結合型タンパク質合成系遺伝子が導入された酵母形質転換体 - Google Patents
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Description
(1) O−フコース結合型タンパク質合成系遺伝子が導入された、酵母形質転換体。
(2) O−フコース結合型タンパク質合成系遺伝子が、GDP−フコース合成酵素遺伝子、GDP−フコース輸送体遺伝子、フコース転移酵素遺伝子、及びフコース受容体遺伝子であることを特徴とする、(1)に記載の酵母形質転換体。
(3) フコース受容体遺伝子が、分泌シグナル配列を付加したものであることを特徴とする、(2)に記載の酵母形質転換体。
(4) フコース受容体遺伝子が、少なくともEGFドメインをコードする塩基配列を含むDNAであることを特徴とする、(3)に記載の酵母形質転換体。
(5) 酵母用プロモーターの制御下にGDP−フコース輸送体遺伝子が挿入されていることを特徴とする、組換えベクター。
(6) 酵母用プロモーターの制御下にフコース転移酵素遺伝子が挿入されていることを特徴とする、組換えベクター。
(7) 酵母用プロモーターの制御下にフコース受容体遺伝子が挿入されていることを特徴とする、組換えベクター。
(8) フコース受容体遺伝子が、分泌シグナル配列を付加したものである、(7)に記載の組換えベクター。
(9) フコース受容体遺伝子が、少なくともEGFドメインをコードする塩基配列を含むDNAであることを特徴とする、(8)に記載の組換えベクター。
(10) 酵母用プロモーターの制御下に、GDP−フコース合成酵素遺伝子、GDP−フコース輸送体遺伝子及び/又はフコース転移酵素遺伝子が挿入されていることを特徴とする、組換えベクター。
(11) (1)〜(4)のいずれかに記載の酵母形質転換体を作製するための、(5)〜(10)のいずれかに記載の組換えベクターの使用。
(12) (1)〜(4)のいずれかに記載の酵母形質転換体を培養し、培養物からO−フコース結合型タンパク質を採取することを特徴とする、O−フコース結合型タンパク質の製造方法。
(13) GDP−フコース合成酵素遺伝子、GDP−フコース輸送体遺伝子、フコース転移酵素遺伝子、及びフコース受容体をコードする遺伝子を含む、(1)〜(4)のいずれかに記載の酵母形質転換体を作製するための遺伝子キット。
(14) 以下の(a)又は(b)の遺伝子を導入したことを特徴とする酵母形質転換体。
(a) GDP−フコース合成酵素遺伝子及びGDP−フコース輸送体遺伝子
(b) GDP−フコース合成酵素遺伝子、フコース転移酵素遺伝子及び/又はフコース受容体遺伝子
(15) (14)に記載の酵母形質転換体を培養し、発現タンパク質を採取し、該発現タンパク質における糖分子の存在を指標として、O−フコース結合型タンパク質合成系遺伝子及び/又は該遺伝子の発現タンパク質をスクリーニングする方法。
(16) (14)に記載の酵母形質転換体を培養し、発現タンパク質を採取し、該発現タンパク質における糖分子の存在を指標として、O−フコース結合型タンパク質合成系遺伝子の発現タンパク質の活性を確認又は測定する方法。
(17) 以下の(a)又は(b)の遺伝子を含む、(14)に記載の酵母形質転換体を作製するための遺伝子キット。
(a) GDP−フコース合成酵素遺伝子及びGDP−フコース輸送体遺伝子
(b) GDP−フコース合成酵素遺伝子、フコース転移酵素遺伝子及び/又はフコース受容体遺伝子
(18) (1)〜(4)のいずれかに記載の酵母形質転換体を培養し、培養物からO−フコース結合型タンパク質を採取し、得られたO−フコース結合型タンパク質と非フコース結合型タンパク質の分子量を測定することにより、フコースのタンパク質に対する結合による分子量増加を求めることを特徴とする、タンパク質におけるジスルフィド結合の数を測定する方法。
(19) 配列表の配列番号8に示されるアミノ酸配列を有するか、あるいは該アミノ酸配列の1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を有し、かつGDP−フコース輸送体活性を有するタンパク質。
(20) (19)に記載のタンパク質をコードする遺伝子。
本発明によれば、O−フコース結合型タンパク質を生産することのできる酵母形質転換体が提供される。本酵母形質転換体は、酵母にO−フコース結合型タンパク質合成系遺伝子を導入することにより作製できるが、O−フコース結合型タンパク質合成系遺伝子としては、GDP−フコース合成酵素遺伝子、GDP−フコース輸送体遺伝子、フコース転移酵素遺伝子、及びフコース受容体遺伝子が含まれる。
O−フコース結合型タンパク質を酵母で生産させるために、本発明においては、まず、上記本発明者らが開発した手段により酵母の細胞質内に基質となるGDP-フコースを蓄積させる。これには、GDP−フコース合成酵素遺伝子を酵母に導入するが、このGDP-フコース合成酵素遺伝子として、例えば、シロイヌナズナMUR1遺伝子及びAtFX遺伝子の2種の酵素遺伝子を用いることができる。これら遺伝子より発現される2種の酵素の強度により、酵母細胞内において生成しているGDP結合型マンノース(GDP-マンノース)からGDP-フコース への変換能を酵母に付与することが可能になる。MUR1及びAtFX遺伝子の塩基配列及び対応するアミノ酸配列を配列表の配列番号1、2及び3、4にそれぞれ示す。
本発明は、上記したO−フコース結合型タンパク質合成系に関与する各遺伝子を組み合わせて酵母に導入し、酵母形質転換体を得、酵母において、O−フコース結合型タンパク質合成系を形成するものである。これらの遺伝子導入においては、例えば、PCR法等により調製した遺伝子ORFを酵母で発現可能なプロモーター(以下、酵母プロモーターという)の下流に接続した遺伝子カセットを作製し、酵母発現用の組換えベクターとする。
本発明の酵母形質転換体は、上記の組換えベクターを酵母に導入することにより得ることができる。ここで、酵母としては、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピヒア・パストリス(Pichia pastoris)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等が挙げられる。
本発明の目的とするO−フコース結合型タンパク質は、上記遺伝子の全部が導入された酵母形質転換体を培養し、その培養物から採取することにより得ることができる。「培養物」とは、培養上清のほか、培養細胞若しくは培養菌体又は細胞若しくは菌体の破砕物のいずれをも意味するものである。
上記のO−フコース結合型タンパク質合成系遺伝子の全部又は一部が導入された酵母形質転換体は、新規なO−フコース結合型タンパク質合成系遺伝子のスクリーニング、ジスルフィド結合の数の測定、インビトロで合成困難な蛋白質基質を糖受容体とする糖転移酵素のスクリーニング、輸送基質の特定が困難な糖ヌクレオチド輸送体の活性確認等に利用できる。
(1) YCH01株の作製
hGFT遺伝子は、ヒト第20番染色体に位置し、hGFT遺伝子のcDNA塩基配列は、データベースにAF326199で登録されている。hGFT遺伝子のcDNA全長をプライマーA(AATGAGCTCATGAATAGGGCCCCTCTGAAG:配列番号13)とプライマーB(ACTCTAGATCATTTACCCAATCTATTCATTTCAATATCAGTGTACACCCCCATGGCGCTCTTC:配列番号14)を用いてPCRで増幅した。鋳型にはヒトbrain由来cDNAライブラリー(クロンテック社)を用いた。プライマーBには発現の確認に用いるVSVG抗原がコードされ、増幅したDNA断片は3’側にタグの融合したタンパク質として発現するように設計されている。このPCR産物をSac I部位とXba I部位にて切断し、すでに報告のあるプラスミドYep352GAPIIのSac I/Xba I部位に組み込み、酵母においてhGFT遺伝子が発現するプラスミドYEp352GAP-hGFT/VSVGを構築した。次にこのプラスミドからBamH Iで酵母GAPDHプロモーター、ターミネーターを含む領域を切り出し、両端の平滑化を行った後インテグレーションベクターであるpRS306のPvu II部位に挿入した。このプラスミドpRS-hGFT/VSVGをEcoR Vにて切断後、S. cerevisiae W303-1A株を形質転換した。形質転換は酢酸リチウム法を用いて行った。形質転換後、SD-Ura(2%グルコース、0.67% Yeast Nitrogen Base w/o amino acids(Difco社製)、ウラシルを除く核酸塩基及びアミノ酸混合物(20-400 mg/L))培地のプレートにまいて、30℃にて2日間培養し、形質転換体を得た。形質転換体をプレートから掻き取りPCR反応液に懸濁する簡易法PCRにて染色体上への組み込みを確認し、YCH01株とした。
AtGFT1遺伝子は、シロイヌナズナ第5番染色体に位置し、AtGFT1遺伝子のcDNA塩基配列は、データベースにAt5g19980で登録されている。AtGFT1遺伝子のcDNA全長をプライマーC(AGAGCTCATGTCGTCCTCTCGATTCGAT:配列番号15)とプライマーD(CCTCTAGATCATTTACCCAATCTATTCATTTCAATATCAGTGTATACAACAGAAGCTAGTTTC:配列番号16)を用いてPCRで増幅した。鋳型にはシロイヌナズナ由来cDNAライブラリー(クロンテック社)を用いた。プライマーDには発現の確認に用いるためのVSVG抗原がコードされており、増幅したDNA断片の3’側に融合タンパク質として発現するように設計されている。このPCR産物をSac I部位とXba I部位にて切断し、すでに報告のあるプラスミドYep352GAPIIのSac I/Xba I部位に組み込み、酵母においてAtGFT1遺伝子が発現するプラスミドYEp352GAP-AtGFT1/VSVGを構築した。次にこのプラスミドからBamH Iで酵母GAPDHプロモーター、ターミネーターを含む領域を切り出し、両端の平滑化を行った後インテグレーションベクターであるpRS306のPvu II部位に挿入した。このプラスミドpRS- AtGFT1/VSVGをEcoR Vにて切断後、S. cerevisiae W303-1A株を形質転換した。形質転換は酢酸リチウム法を用いて行った。形質転換後、SD-Ura(2%グルコース、0.67% Yeast Nitrogen Base w/o amino acids(Difco社製)、ウラシルを除く核酸塩基及びアミノ酸混合物(20-400 mg/L))培地のプレートにまいて、30℃にて2日間培養し、形質転換体を得た。形質転換体をプレートから掻き取りPCR反応液に懸濁する簡易法PCRにて染色体上への組み込みを確認し、YCH02株とした。
POFUT1遺伝子は、ヒト第20番染色体に位置し、POFUT1遺伝子のcDNA塩基配列は、データベースにAF375884で登録されている。POFUT1遺伝子のcDNA全長をプライマーE(AGAATTCATGGGCGCCGCCG:配列番号17)とプライマーF(GCTCCGGCTCGAGTCAGAACTCGTCCCGCA:配列番号18)を用いてPCRで増幅した。鋳型にはヒトbrain由来cDNAライブラリー(クロンテック社)を用いた。このPCR産物をEcoR I部位とXho I部位にて切断し、酵母の発現プラスミドYep352GAPのEcoR I/Xho I部位に組み込み、プラスミドYEp352GAP-POFUT1を構築した。次にPOFUT1の5'領域をプライマーEとプライマーG(AGCCCGCGGGCATTGAGATCTGTACTAGTCCCGGGAGCGGCAGAAGCAGC:配列番号19)により増幅し、このDNA断片をEcoR I部位とSac II部位にて切断した後、YEp352GAP-POFUT1の同部位と入れ替えた。さらにこの行程により新たに付加されたSpe I部位とBgl II部位に、ベクターpESC-trpからSpe I/Bgl II部位にて切り出したFLAG抗原発現のためのDNA塩基配列を挿入し、YEp352GAP-FLAG/POFUT1プラスミドを構築した。このプラスミドからBamH Iで酵母GAPDHプロモーター、ターミネーターを含む領域を切り出し、両端の平滑化を行った後インテグレーションベクターであるpRS305のPvu II部位に挿入した。このプラスミドpRS-FLAG/POFUT1をEcoR Vにて切断後、S. cerevisiae W303-1B株を形質転換した。形質転換は酢酸リチウム法を用いて行った。形質転換後、SD-Leu(2%グルコース、0.67% Yeast Nitrogen Base w/o amino acids(Difco社製)、ロイシンを除く核酸塩基及びアミノ酸混合物(20-400 mg/L))培地のプレートにまいて、30℃にて2日間培養し、形質転換体を得た。形質転換体をプレートから掻き取りPCR反応液に懸濁する簡易法PCRにて染色体上への組み込みを確認し、YCH03株とした。
F7遺伝子は、ヒト第13番染色体に位置し、F7遺伝子のcDNA塩基配列は、データベースにNM000131で登録されている。F7遺伝子の発現産物はヒトの凝結因子human Factor VIIであり、このタンパク質中に内在するEGF ドメイン(f7egf-1〜4、f7egf-a〜f)を酵母において発現・分泌させるため、このアミノ酸をコードするDNA塩基配列を図3に示す通りに合成した(f7egf-1:配列番号25、f7egf-a:配列番号26、f7egf-2:配列番号27、f7egf-b:配列番号28、f7egf-3:配列番号29、f7egf-c:配列番号30、f7egf-4:配列番号31、f7egf-d:配列番号32)。またこれらの配列は精製用に5’側にHis6タグが融合するように設計した。全ての一本鎖DNAの5’側をリン酸化した後、アニール反応により4組の二本鎖DNAとし、これをそれぞれ結合して、5’側にApa I部位、3’側にKpn I部位を有するDNA断片とした。pCR2.1プラスミドのApa I/Kpn I部位に挿入し塩基配列の確認を行った後、Nae I部位とKpn I部位にて切断し、すでに報告のあるプラスミドpAFF2のNae I/Kpn I部位に組み込み、酵母分泌プラスミドYEp352GAP-alpha/HisEGFを構築した。このプラスミドからBamH Iで酵母GAPDHプロモーター、ターミネーターを含む領域を切り出し、インテグレーションベクターであるpJJ246のBamH I部位に挿入した。このプラスミドpJJ-alpha/HisEGFをEcoR Vにて切断後、S. cerevisiae W303-1B株を形質転換した。形質転換は酢酸リチウム法を用いて行った。形質転換後、SD-Trp(2%グルコース、0.67% Yeast Nitrogen Base w/o amino acids(Difco社製)、トリプトファンを除く核酸塩基及びアミノ酸混合物(20-400 mg/L))培地のプレートにまいて、30℃にて2日間培養し、形質転換体を得た。形質転換体をプレートから掻き取りPCR反応液に懸濁する簡易法PCRにて染色体上への組み込みを確認し、YCH04株とした。
MUR1遺伝子はシロイヌナズナ第3番染色体上に位置し、MUR1遺伝子のcDNA塩基配列はAY084574でデータベースに登録されている。この遺伝子の酵母における発現プラスミドとしてすでに報告のあるYEp352GAPII-MUR1-HAをPvu I部位にて切断し、MUR1のcDNAを含む領域をPvu I部位にて切断したpRS303の選択マーカーを含む領域とつなぎインテグレーション用のプラスミドpRS303-MUR1/HAを構築した。
上記(2)で構築したプラスミドpRS-AtGFT1/VSVGを鋳型に、プライマーM (ACCTTCGAAACGATGTCGTCCTCTCGATTC:配列番号33) とプライマーN (ACCTCTAGATCATTTACCCAATCTATTC:配列番号34)を用いてPCRでVSVG部分を含むAtGFT1遺伝子を増幅した。このPCR産物をNsp V 部位とXba I部位にて切断し、 プラスミドpPICZ( A のNsp V /Xba I部位に挿入し、プラスミドpPICZ-AtGFT1/VSVGを構築した。プラスミドYEp352GAPII-MUR1-HAを鋳型に、プライマーO(TATGGTACCATGGCGTCAGAGAACAAC:配列番号35) とプライマーP (CTTGGGCCCTTAAGCCTTGGCAACGTG:配列番号36)を用いてPCRでHA部分を含むMUR1遺伝子を増幅した。このPCR産物をKpn I 部位とApa I部位にて切断し、 プラスミドpGAPZαA のKpn I /Apa I部位に挿入し、プラスミドpGAPZ-MUR1/HAを構築した。pGAPZ-MUR1/HAからBgl II/Bam HI部位でGAPプロモーター、MUR1/HA及びターミネーター領域を含むDNA断片を切り出し、プラスミドpPICZ-AtGFT1/VSVGのBam HI部位に挿入し、インテグレーション用プラスミドpPICZ-AtAtGFT1/VSVG-MUR1/HAを構築した。このプラスミドをAvr II部位にて切り開いた後、P. pastoris SM 1168株に形質転換した。形質転換体をZeocin (100 (g/ml)を含むYPADのプレートに播き、30(Cにて5日培養し、形質転換体のZeocin耐性株を得た。形質転換体をプレートから掻き取りPCR反応液に懸濁する簡易法PCRにて染色体上への組み込みを確認し、SDP01株とした。
上記(3)で構築したプラスミドYep352GAP-FLAG/POFUT1を鋳型に、プライマーQ (TAAGAATTCATGGGCGCCGCCG:配列番号37) とプライマーR (TAAGAATTCTCAGAACTCGTCCCGCA:配列番号38)を用いてPCRでFLAG部分を含むPOFUT1を増幅した。このPCR産物をEco RIにて切断し、 プラスミドpAO815 のEco RI部位に挿入し、プラスミドpAO815-FLAG/POFUT1を構築した。プラスミドYEp352GAPII-AtFX-mycを鋳型に、プライマーS (CAACTCGAGATGTCTGACAAATCTGCC:配列番号39) とプライマーT (CTTGGGCCCTTAAGCCTTGGCAACGTG:配列番号40)を用いてPCRでmyc部分を含むAtFX遺伝子を増幅した。このPCR産物をXho I /Apa I部位にて切断し、 プラスミドpGAPZαのXhoI /Apa I部位に挿入し、プラスミドpGAPZ-AtFX/mycを構築した。このプラスミドからBgl II/Bam HI部位でGAPプロモーター、AtFX/mycとターミネーター領域を含むDNA断片を切り出し、プラスミドPAO815-FLAG/POFUT1のBam HI部位に挿入し、インテグレーション用プラスミドPAO815-FLAG/POFUT1-AtFX/mycを構築した。このプラスミドをStu I部位にて切断した後、P. pastoris SM 1168株に形質転換した。形質転換体をヒスチジン欠損培地のプレートに播き、30(Cにて2日培養し、形質転換体のヒスチジン非要求性株を得た。形質転換体をプレートから掻き取りPCR反応液に懸濁する簡易法PCRにて染色体上への組み込みを確認し、SDP02株とした。
上記(4)で構築したプラスミドYEp352GAP-alpha His/EGFを鋳型に、プライマーU (TAATACGTACATCACCATCACCATCAC:配列番号41) とプライマーV (TAAGAATTCTTAGTCATCCTTATGAGTTTC:配列番号42)を用いてPCRでHis-tag部分を含むF7遺伝子を増幅した。このPCR産物をSna BI/Eco RIにて切断し、 プラスミドpPIC9k のSna BI/Eco RI部位に挿入し、プラスミドpPIC9k-alpha His/EGFを構築した。このプラスミドをStu I部位にて切断した後、P. pastoris SM 1168株に形質転換した。形質転換体をヒスチジン欠損培地のプレートに播き、30(Cにて2日培養し、形質転換体のヒスチジン非要求性株を得た。形質転換体をプレートから掻き取りPCR反応液に懸濁する簡易法PCRにて染色体上への組み込みを確認し、SDP03株とした。
(1) S. cerevisiae YCH09株, YCH10株の作製
形質転換株であるS. cerevisiae YCH01株とYCH03株、またS. cerevisiae YCH02株とYCH03株をYPAD培地のプレート上にて掛け合わせた後、それぞれSD-Ura, Leu(2%グルコース、0.67% Yeast Nitrogen Base w/o amino acids(Difco社製)、ウラシルとロイシンを除く核酸塩基及びアミノ酸混合物(20-400 mg/L))培地のプレートにまいて30℃にて2日間培養し、二倍体の選択を行った。得られた二倍体を四分子解析にて分離し、SD-Ura, Leu培地のプレートにレプリカすることで目的の形質転換体S. cerevisiae YCH06株とS. cerevisiae YCH07株を得た。
形質転換株であるSDP01株に、Stu I部位にて切り開いたプラスミドPAO815-FLAG/POFUT1-AtFX/mycを形質転換した。形質転換体をヒスチジン欠損培地のプレートに播き、30(Cにて2日培養し、形質転換体のヒスチジン非要求性株を得た。形質転換体をプレートから掻き取りPCR反応液に懸濁する簡易法PCRにて染色体上への組み込みを確認し、SDP04株とした。更に、SDP04株にStu I部位にて切断したプラスミドpPIC9k-alpha His/EGFを形質転換した。形質転換体をGeneticin (200μg/ml)を含むYPDAのプレートに播き、30(Cにて5日培養し、形質転換体のカナマイシン耐性株を得た。形質転換体をプレートから掻き取りPCR反応液に懸濁する簡易法PCRにて染色体上への組み込みを確認し、SDP05株とした。
(1) S. cerevisiae YCH09株, YCH10株における遺伝子発現の確認
実施例2にて作製したS. cerevisiae YCH09株とS. cerevisiae YCH10株を3 mlのYPAD培地(2%ポリペプトン、1%酵母抽出液、2%グルコース、アデニン(40 mg/L))にて30℃で12時間培養後、遠心分離により菌体を回収した。この菌体をグラスビーズにて破砕し、破砕液に界面活性剤を加え不溶性タンパク質を可溶化した後、遠心分離によって上清を得た。得られた上清を粗酵素液としSDSサンプルバッファーにて変性後、常法にてウェスタンブロット解析を行った。ウェスタンブロット解析は一次抗体にヤギ抗VSVG抗体、マウス抗HA抗体、マウス抗myc抗体、マウス抗FLAG抗体を用い、一次抗体としてヤギ抗VSVG抗体を使用した際には二次抗体には抗ヤギIg抗体ホースラディッシュペルオキシダーゼ複合体を、一次抗体にマウス抗HA抗体、マウス抗myc抗体、マウス抗FLAG抗体を使用した場合には、それぞれに対し二次抗体として抗マウスIg抗体ホースラディッシュペルオキシダーゼ複合体を用い、検出はECL plusシステム(アマシャム社)を用いて、化学発光検出器(富士フイルム社)にて行った。結果を、図4に示す。
同様に、実施例2にて作製したP. pastoris SDP05株を50mlのBMMY(2%ポリペプトン、1%酵母抽出液、1.34%酵母ナイトロゲンベース、0.3M塩化カリウム、0.1Mリン酸緩衝液pH6.0)にて30℃で24時間培養後、1%のメタノールを24時間ごと添加して蛋白の発現誘導を行なった。72時間後に培養をやめ遠心分離により菌体を回収した。集めた菌体をワイパー酵母蛋白質抽出試薬(ピアス社)で蛋白を抽出し、サンプルをSDSサンプルバッファーにて変性後、常法にてウェスタンブロット解析を行った。ウェスタンブロット解析は一次抗体にヤギ抗VSVG抗体、マウス抗HA抗体、マウス抗myc抗体とマウス抗FLAG抗体を用い、一次抗体としてヤギ抗VSVG抗体を使用した際には二次抗体には抗ヤギIg抗体ホースラディッシュペルオキシダーゼ複合体を、一次抗体にマウス抗HA抗体、マウス抗myc抗体、マウス抗FLAG抗体を使用した場合には、それぞれに対し二次抗体として抗マウスIg抗体ホースラディッシュペルオキシダーゼ複合体を用い、検出はECL plusシステム(アマシャム社)を用いて、化学発光検出器(富士フイルム社)にて行った。結果を、図5に示す。
(1) S. cerevisiae YCH09株, YCH10株の培養物由来のEGFドメイン
S. cerevisiae YCH09株とS. cerevisiae YCH10株を30 mlのYPAD培地(2%ポリペプトン、1%酵母抽出液、2%グルコース、アデニン(40 mg/L))にて30℃で60時間培養後、遠心分離により培養上清を得た。コントロール株としてS. cerevisiae YCH04株を同様に培養し、培養上清を得た。培養上清のpHを8.0に調整した後、Ni-NTA Agarose(キアゲン社)を添加し、0.3 M NaClと20 mMのイミダゾールを含むリン酸緩衝液(pH 8.0)にて洗浄した後、溶出は0.3 M NaClと250 mMのイミダゾールを含むリン酸緩衝液(pH 8.0)にて行った。得られた溶出液を精製EGFドメイン標品とした。
P. pastoris SDP05株を100mlのBMGY(2%ポリペプトン、1%酵母抽出液、1.34%酵母ナイトロゲンベース、1%グリセロール、0.3M塩化カリウム、0.1Mリン酸緩衝液pH6.0)にて30℃で24時間培養後、1%のメタノールを24時間ごと添加して蛋白の発現誘導を行なった。72時間後に培養をやめ遠心分離により培養上清を得た。また、コントロール株としてP. pastoris SM 1168株を同様に培養し、培養上清を得た。集めた培養上清をHis Trap Chelating カラム(ファルマシア)にかけ、0.3 M NaClと20 mMのイミダゾールを含むリン酸緩衝液(pH 7.0)にて洗浄した後、溶出は0.3 M NaClと300 mMのイミダゾールを含むリン酸緩衝液(pH 7.0)にて行った。溶出された蛋白ピークを回収し精製EGFドメイン標品とした。なお、精製はファルマシア社製のAKTA 100-Sにて行なった。
Claims (9)
- GDP−フコース合成酵素遺伝子、O−フコース転移酵素遺伝子、及びフコース受容体遺伝子が導入された酵母形質転換体。
- 前記フコース受容体遺伝子が、分泌シグナル配列を付加したものであることを特徴とする、請求項1に記載の酵母形質転換体。
- 前記フコース受容体遺伝子が、少なくともEGFドメインをコードする塩基配列を含むDNAであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の酵母形質転換体。
- さらに、GDP−フコース輸送体遺伝子が導入された、請求項1〜3のいずれかに記載の酵母形質転換体。
- 前記GDP−フコース輸送体遺伝子が、配列表の配列番号8に示されるアミノ酸配列、あるいは該アミノ酸配列の1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を含み、かつGDP−フコース輸送体活性を有するタンパク質をコードするDNAである、請求項4に記載の酵母形質転換体。
- 請求項4又は5に記載の酵母形質転換体を培養し、培養物からO−フコース結合型タンパク質を採取することを特徴とする、O−フコース結合型タンパク質の製造方法。
- それぞれが酵母用プロモーターの制御下にある組換えベクター内に挿入されている遺伝子キットであり、GDP−フコース合成酵素遺伝子、O−フコース転移酵素遺伝子、及びフコース受容体遺伝子を含む酵母形質転換体作製用遺伝子キット。
- さらに、GDP−フコース輸送体遺伝子を含むことを特徴とする、請求項7に記載の遺伝子キット。
- 配列表の配列番号8に示されるアミノ酸配列、あるいは該アミノ酸配列の1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を含み、かつGDP−フコース輸送体活性を有するタンパク質を有効成分とする、GDP−フコース輸送体酵素試薬。
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