JP2014507664A - ヒト胚における異数性の検出方法 - Google Patents

ヒト胚における異数性の検出方法 Download PDF

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Abstract

【課題】1つもしくは複数の胚もしくは多能性細胞の発生能、ならびに/または1つもしくは複数の胚もしくは多能性細胞における染色体異常の存在を判定するための、方法、組成物およびキットを提供する。
【解決手段】これらの方法、組成物およびキットは、ヒトにおける不妊症の治療に最も有用な、in vitroでの胚および卵母細胞の識別において、用途が見出される。
【選択図】なし

Description

関連出願への相互参照
本出願は、2011年、2月23日に出願された米国特許仮出願第61/445,863号、および2011年、9月21日に出願された同61/537,336号に基づく優先権を主張し、これらの出願はともに、参照によりその全体がすべての目的のために本明細書に組み込まれる。
本発明は、生物学的試験および臨床試験の分野に関し、詳細には、生存能の予測および異数性の検出の目的のための、ヒト胚の撮像および評価に関する。2010年、12月30日に出願された米国特許出願第12/982,341号;2010年、8月23日に出願された同12/861,571号;2010年、5月7日に出願された同61/332,651号、2009年、8月22日に出願された同61/236,085号、2011年、2月23日に出願された同61/445,863号、および2011年、9月21日に出願された同61/537,336号は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
生殖可能年齢にある、我々の人口の10〜15%近くの夫婦が不妊である。その結果、多くの不妊の夫婦が、1980年代初期に米国に導入された、体外受精(IVF)を選択している。疾病対策予防センターによれば、2006年には米国だけで、140,000回を超えるIVFが実施され、2008年には、ほぼ150,000回にまで増加した(cdc.gov/art)。これは、IVFを求める夫婦の数が増加傾向にあり、一般市民が子供を持つことを先延ばしし続けるとすれば、その傾向が持続し得ることを示唆している。これらのIVFの実施回数から、首尾よく着床しかつ出産まで発達する可能性が変わりやすくかつ明確に定義されていないことが多い、年間百万を超える胚が、生産されていることが推定される。さらに、IVF後の、実施あたりの平均生児出生率は、わずか30%であると報告されており、この割合(%)は、30年よりも前にヒトIVFが導入されて以来、有意に変化していない(cdc.gov/art)。IVF失敗の潜在的原因は多様である可能性があるが、染色体異常または異数性が、名ばかりのIVFの成功および生児出生率の一因となっていると考えられる(Munne et al., (2003) Reprod Biomed Online, 7:91-97; Olgilvie (2008) Obstetrician & Gynaecol 10:88-92)。
先の研究は、卵割期のヒト胚のうちの50〜70%に、異数性が存在していることを示している(Vanneste et al. (2009) Nat Med, 15:577-583; Johnson et al. (2010) Hum Reprod 25:1066-1075)。形態と異数性を関連付ける試みがなされている一方、従来のIVF評価技術において、異数性胚がしばしば、正常かつ移植に好適であるように見えるということは周知である(Baltaci et al. (2006) Reprod Biomed Online 12: 77-82)。現在、最も頻繁に使用される異数性の診断方法は、3日目の生検割球の着床前遺伝子スクリーニング(PGS)であるが、該方法は、胚に対して侵襲的であり、モザイク現象を起こし、かつ生殖補助医療の患者のうちのごく一部にしか利用されていない(Kuo et al., (1998) J. Assist Reprod Genet, 15:276-280; Baart et al., (2006) Hum Repro 21:223-233)。代替の手法、例えば胚盤胞期までの胚の長期培養、および栄養外胚葉生検による染色体状態の解析も、異数性を評価するために使用されている。しかしながら、後成的変化の導入、胚停止、および胚の整合性を乱す他の要因を含む、さらなる潜在的リスクが、長期の胚の培養に伴うと考えられている(Khosla et al., (2001) Hum Reprod Update, 7: 419-427; Katari, et al. (2009) Hum Mol Genet, 18:3769-3778; Lim et al., (2009) Hum Reprod 24:741-747; Fernandez-Gonzalez et al., (2009) Reproduction 137:271-283.)。
ヒト胚の生態の研究は困難なままであり、研究費の対象外であることが多いため、基本的な胚の発達の分野における理解は限られている。結果として、胚の発達に関する現在の知識の多くは、モデル生物の研究に由来する。しかしながら、異なる種由来の胚は、類似する発達段階を経るが、タイミングは種により異なる。これらの、および多くの他の差異により、1つの種から別の種へと直接推定することは、不適切となる(Taft, R.E. (2008) Theriogenology 69(1):10-16)。ヒトの発達の一般的経路、および基本的な根底にある分子決定要因は、ヒト胚の発達に固有である。例えば、マウスにおいて、胚の転写は、受精の約12時間後に、第1卵割と同時に活性化されるが、ヒトにおける胚性遺伝子の活性化(EGA)の主要な高まりは、およそ8細胞期である3日目に生じる(Bell, C. E., et al. (2008) Mol. Hum. Reprod. 14:691-701; Braude, P., et al. (1988) Nature 332:459-461; Hamatani, T. et al. (2004) Proc. Natl. Acad. Sci. 101:10326-10331; Dobson, T. et al. (2004) Human Molecular Genetics 13(14):1461-1470)。加えて、初期のヒトの発達において調節される遺伝子の多くが固有である(Dobson, T. et al. (2004) Human Molecular Genetics 13(14):1461-1470)。さらに、マウスなどの他の種において、in vitroで培養される胚のうち85%超が、哺乳類の発達における最初の主要な目印の1つである胚盤胞期に達するが、一方培養されたヒト胚は、約30〜50%の平均胚盤胞形成率を有し、モザイク現象および異常表現型、たとえば断片化および発達停止の発生率が高い(Rienzi, L. et al. (2005) Reprod. Biomed. Online 10:669-681; Alikani, M., et al. (2005) Mol. Hum. Reprod. 11:335-344; Keltz, M. D., et al. (2006) Fertil. Steril. 86:321-324; French, D. B., et al. (2009) Fertil. Steril.)。このような差異にもかかわらず、着床前の胚の発達の研究の多くが、モデル生物に由来し、ヒト胚の発達に関連付けることが困難である(Zernicka-Goetz, M. (2002) Development 129:815-829; Wang, Q., et al. (2004) Dev Cell. 6:133-144; Bell, C. E., et al. (2008) Mol. Hum. Reprod. 14:691-701; Zernicka-Goetz, M. (2006) Curr. Opin. Genet. Dev. 16:406-412; Mtango, N. R., et al. (2008) Int. Rev. Cell. Mol. Biol. 268:223-290)。
最近では、発達中のヒト胚をモニタし、および可能性として生存能を評価するために、微速度撮像解析が実施されている(Mio and Maeda (2008) Am J. Obstet Gynecol 199:660-665; Nakahara et al.、(2010) J Assist Reprod Genet、27:93-96)。初期の胚の発達を評価するための非侵襲的な手法を提供し、モザイク現象などの他の欠点を回避することに加え、ヒト胚における動的な撮像パラメータの検出および測定が、すべてのIVF患者に利用可能となり得る。これらの研究において、受精、卵割、胚盤胞形成、および胚孵化を含む発達事象を解析し、従来の3日目のIVFの形態基準と関連付けた。しかしながら、胚盤胞形成または妊娠成績と相関する撮像パラメータは無かった。他の方法は、ヒト胚の生存能を予測するための指標として、第1卵割の開始に目を向けている(Fenwick、et al. (2002) Human Reproduction、17:407-412; Lundin、et al. (2001) Human Reproduction 16:2652-2657)。しかしながら、これらの方法は、細胞質分裂の持続時間または初期の分裂間の時間間隔の重要性を認識しない。
他の方法もまた、初期の胚の発達の間の、細胞分裂のタイミングおよび程度を測定するために、微速度撮像を使用している(WO/2007/144001)。しかしながら、これらの方法は、発生能、形態学的挙動、分子および後成的プログラム、ならびに移植を取り巻くタイミングパラメータの観点からヒト胚と実質的に異なる、ウシ胚の微速度撮像のための基本的かつ一般的な方法のみを開示している。例えば、ウシ胚は、ヒト胚と比較して、着床するのに大幅により長くかかる(それぞれ30日および9日)。(Taft, (2008) Theriogenology 69(1):10-16.)さらに、ヒト胚の生存能を予測し得る、具体的な撮像パラメータまたは時間間隔が開示されていない。
最近では、微速度撮像を使用して、受精後の最初の24時間の間のヒト胚の発達が観察されている(Lemmen et al. (2008) Reproductive BioMedicine Online 17(3):385-391)。最初の分裂後の核の同調性は、妊娠成績と相関することが判明した。しかしながら、この研究は、第1卵割は重要な予測パラメータではないと結論付け、これは先の研究と矛盾する(Fenwick, et al. (2002) Human Reproduction 17:407-412; Lundin, et al. (2001) Human Reproduction 16:2652-2657)。
最後に、撮像パラメータを、胚の分子プログラムまたは染色体構成との相関によって検証した研究は無い。従って、ヒト胚の評価方法はいくつかの観点を欠いており、微速度顕微鏡検査、画像解析、ならびに撮像パラメータの分子プロファイルおよび染色体構成との相関の新規用途を含む本発明の方法によって改善することができる。本発明者らは、驚くべきことに、ある特定の細胞周期の撮像パラメータが、撮像挙動(imaging behavior)と撮像された胚の染色体構成との相関を介して、ヒト胚において、胚の生存能を予測するだけでなく、単純および複雑なモザイク現象であるモノソミーおよびトリソミーを含む、異数性をも予測することを発見した。
1つまたは複数の胚の発生能および/または染色体構成を判定するための方法、組成物およびキットを提供する。これらの方法は、正常な染色体構成および/または良好な発生能、すなわち胚盤胞へと発達する能力または可能性を有する胚を、in vitroで識別するために有用であり、従ってこれらは、ヒトにおける不妊症の治療方法において有用である。
本発明のいくつかの態様において、胚または多能性細胞の発生能を判定するための方法を提供する。そのような態様においては、胚または多能性細胞の1つまたは複数の細胞パラメータを測定して、細胞パラメータ測定値を得る。次いで、細胞パラメータを使用して、胚または多能性細胞の発生能の判定を提供し、その判定を臨床的行動方針の指針として使用することができる。いくつかの実施形態において、細胞パラメータは、微速度顕微鏡検査により測定可能な、形態学的事象である。いくつかの実施形態において、例えば胚をアッセイする際、1つまたは複数の細胞パラメータは:例えば細胞質分裂1などの細胞質分裂事象の持続時間;細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔である。ある実施形態においては、細胞周期1の持続時間もまた、細胞パラメータとして使用される。いくつかの実施形態においては、細胞パラメータ測定値は、それを基準の胚からの比較可能な細胞パラメータ測定値と比較し、この比較の結果を使用して、胚の発生能の判定を提供することにより、使用される。いくつかの実施形態において、胚はヒト胚である。いくつかの実施形態において、細胞パラメータは、遺伝子発現測定値を得るために測定される、遺伝子発現レベルである。いくつかの実施形態において、遺伝子発現測定値は、それを基準の多能性細胞もしくは胚またはそれら由来の1つもしくは複数の細胞からの遺伝子発現測定値と比較することにより使用され、ここで、この比較の結果は、多能性細胞または胚の発生能の判定を提供するために使用される。いくつかの実施形態において、胚は、in vitroでの卵母細胞の体外受精により産生される。他の実施形態において、胚は、in vitroでの卵細胞質内精子注入法により産生される。いくつかの実施形態においては、卵母細胞をin vitroで成熟させる。他の実施形態においては、卵母細胞をin vivoで成熟させる。いくつかの実施形態において、胚は異数体である。
本発明のいくつかの態様においては、良好な発生能を有することが判明した胚を、女性に移植するための方法を提供する。いくつかの態様においては、発達を促進するために良好な条件下で胚を培養し、および1つまたは複数の細胞パラメータを測定して、細胞パラメータ測定値を得る。次いで、細胞パラメータを使用して、胚の発生能の判定を提供する。いくつかの実施形態において、細胞パラメータは、微速度顕微鏡検査により測定可能な、形態学的事象である。いくつかの実施形態において、例えば胚をアッセイする際、1つまたは複数の細胞パラメータは:例えば細胞質分裂1などの細胞質分裂事象の持続時間;細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔である。ある実施形態においては、細胞周期1の持続時間もまた、細胞パラメータとして使用される。いくつかの実施形態においては、良好な発生能を示す1つまたは複数の胚を女性に移植するための方法を提供する。いくつかの実施形態において、胚はヒト胚である。いくつかの実施形態において、胚は、in vitroでの卵母細胞の体外受精により産生される。他の実施形態において、胚は、in vitroでの卵細胞質内精子注入法により産生される。いくつかの実施形態においては、卵母細胞をin vitroで成熟させる。他の実施形態においては、卵母細胞をin vivoで成熟させる。いくつかの実施形態においては、培養皿において発達を促進するために良好な条件下で、胚を培養する。いくつかの実施形態において、培養皿は1つまたは複数のマイクロウェルを含む。さらなる実施形態においては、良好な発生能を有すると判定された胚を、それを必要とする女性受容者に移植する前に、まず培養皿から取り出す。
本発明のいくつかの態様においては、胚における異数性を検出するための方法を提供する。本発明のそのような態様においては、まず、胚が胚盤胞に達する可能性を判定し、その後、胚における断片化の存在もしくは不存在および/または断片化のレベルを判定する方法を提供し、ここで、断片化の存在、とくに高レベルの断片化は、異数性胚を示す。いくつかの実施形態においては、1つまたは複数の細胞パラメータを測定することにより、胚盤胞に達する可能性を判定する。ある態様において、細胞パラメータは、第1細胞質分裂の持続時間、細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔、細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔、第1細胞分裂までの時間、胚の形態、遺伝子発現パターン、または胚が胚盤胞に達する可能性を判定するための当技術分野で公知のいずれかの他の方法およびそれらの組み合わせを含む。
本発明のいくつかの態様においては、胚における異数性を検出するための方法を提供する。そのような態様においては、胚または多能性細胞の1つまたは複数の細胞パラメータを測定して、細胞パラメータ測定値を得る。細胞パラメータ測定値を使用して、胚が異数体かどうかの判定を提供し、その判定を、臨床的行動方針の指針として使用することができる。いくつかの実施形態において、細胞パラメータは、微速度顕微鏡検査により測定可能な、形態学的事象である。いくつかの実施形態において、例えば胚をアッセイする際、1つまたは複数の細胞パラメータは:例えば細胞質分裂1などの細胞質分裂事象の持続時間;細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔である。ある実施形態においては、細胞周期1の持続時間もまた、細胞パラメータとして使用される。いくつかの実施形態においては、異数体であると判定された胚が、有糸分裂または減数分裂のエラーに起因する異数体であるかどうかを判定するための方法を提供する。いくつかの実施形態において、胚はヒト胚である。いくつかの実施形態において、胚は異数体である。いくつかの実施形態において、異数性はトリソミーである。いくつかの実施形態において、トリソミーはトリソミー21である。他の実施形態において、異数性はモノソミーである。いくつかの実施形態において、モノソミーはモノソミー22である。いくつかの実施形態において、胚はヒト胚である。いくつかの実施形態において、胚は、in vitroでの卵母細胞の体外受精により産生される。他の実施形態において、胚は、in vitroでの卵細胞質内精子注入法により産生される。いくつかの実施形態においては、卵母細胞をin vitroで成熟させる。他の実施形態においては、卵母細胞をin vivoで成熟させる。いくつかの実施形態においては、細胞パラメータを測定する前に、胚を冷凍する。他の実施形態においては、細胞パラメータを測定する前に、胚を冷凍しない。
本発明のいくつかの態様においては、正常染色体数を有する胚を選択するための方法を提供する。そのような態様においては、胚または多能性細胞の1つまたは複数の細胞パラメータを測定して、細胞パラメータ測定値を得る。次いで、細胞パラメータを使用して、胚が正常染色体数を有するかどうかの判定を提供し、その判定を臨床的行動方針の指針として使用することができる。いくつかの実施形態において、細胞パラメータは、微速度顕微鏡検査により測定可能な、形態学的事象である。いくつかの実施形態において、例えば胚をアッセイする際、1つまたは複数の細胞パラメータは:例えば細胞質分裂1などの細胞質分裂事象の持続時間;細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔である。ある実施形態においては、細胞周期1の持続時間もまた、細胞パラメータとして使用される。いくつかの実施形態において、胚はヒト胚である。いくつかの実施形態において、胚は、in vitroでの卵母細胞の体外受精により産生される。他の実施形態において、胚は、in vitroでの卵細胞質内精子注入法により産生される。いくつかの実施形態においては、卵母細胞をin vitroで成熟させる。他の実施形態においては、卵母細胞をin vivoで成熟させる。いくつかの実施形態においては、細胞パラメータを測定する前に、培養皿において発達を促進するために良好な条件下で、胚を培養する。いくつかの実施形態において、培養皿は1つまたは複数のマイクロウェルを含む。さらなる実施形態においては、正常染色体数を有すると判定された胚を、培養皿から取り出す。さらなる実施形態においては、正常染色体数を有すると判定された胚を、培養皿から取り出した後に、さらに女性受容者に移植する。
本発明のいくつかの態様においては、正常染色体数を有する胚を選択する方法を提供する。本発明のそのような態様においては、まず、胚が胚盤胞に達する可能性を判定し、その後、胚における断片化の存在もしくは不存在および/または断片化のレベルを判定する方法を提供し、ここで、断片化の存在、とくに高レベルの断片化の存在は、異数性胚を示し、断片化の不存在は、正常染色体数を有する胚を示す。低レベルの断片化は、高レベルの断片化を有する胚よりも、異数性のリスクがより低く、全く断片化を有さない胚よりも異数性のリスクがより高いことを示す。言い換えれば、断片化のレベルが低いほど、胚が異数体になる可能性は低くなり、断片化のレベルがより高いほど、胚が異数体になる可能性は高くなる。いくつかの実施形態においては、1つまたは複数の細胞パラメータを測定することにより、胚盤胞に達する可能性を判定する。ある態様においては、細胞パラメータは、第1細胞質分裂の持続時間、細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔、細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔、第1細胞分裂までの時間、胚の形態、遺伝子発現パターン、または胚が胚盤胞に達する可能性を判定するための当技術分野で公知のいずれかの他の方法およびそれらの組み合わせを含む。
本発明のいくつかの態様においては、正常染色体数を有することが判明した胚を、女性に移植するための方法を提供する。いくつかの態様においては、発達を促進するために良好な条件下で胚を培養し、および1つまたは複数の細胞パラメータを測定して、細胞パラメータ測定値を得る。その後、細胞パラメータを使用して、胚が正常染色体数を有するかどうかの判定を提供する。いくつかの実施形態において、細胞パラメータは、微速度顕微鏡検査により測定可能な、形態学的事象である。いくつかの実施形態において、例えば胚をアッセイする際、1つまたは複数の細胞パラメータは:例えば細胞質分裂1などの細胞質分裂事象の持続時間;細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔である。ある実施形態においては、細胞周期1の持続時間もまた、細胞パラメータとして使用される。いくつかの実施形態においては、正常染色体数を有する1つまたは複数の胚を、女性に移植するための方法を提供する。いくつかの実施形態において、胚はヒト胚である。いくつかの実施形態において、胚は、in vitroでの卵母細胞の体外受精により産生される。他の実施形態において、胚は、in vitroでの卵細胞質内精子注入法により産生される。いくつかの実施形態においては、卵母細胞をin vitroで成熟させる。他の実施形態においては、卵母細胞をin vivoで成熟させる。いくつかの実施形態においては、細胞パラメータを測定する前に、胚を冷凍する。他の実施形態においては、細胞パラメータを測定する前に、胚を冷凍しない。
本発明のいくつかの態様においては、群中の他の胚または多能性細胞と比較して、胚または多能性細胞をそれらの染色体内容についてランク付けするための方法を提供する。そのような実施形態においては、群中の胚または多能性細胞の1つまたは複数の細胞パラメータを測定して、各胚または多能性細胞の細胞パラメータ測定値を得る。次いで、細胞パラメータ測定値を使用して、群中の各胚または多能性細胞の、互いに相対的な染色体内容を判定し、その判定を、臨床的行動方針の指針として使用することができる。いくつかの実施形態において、細胞パラメータは、微速度顕微鏡検査により測定可能な、形態学的事象である。いくつかの実施形態において、例えば胚をランク付けする際、1つまたは複数の細胞パラメータは、例えば細胞質分裂1などの細胞質分裂事象の持続時間、;細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔である。ある実施形態においては、細胞周期1の持続時間もまた、測定される。いくつかの実施形態においては、正常染色体数、有糸分裂のエラーに起因する異数体、または減数分裂のエラーに起因する異数体を有するとして、胚をランク付けする。いくつかの実施形態においては、群中の各胚または多能性細胞からの細胞パラメータ測定値を互いに比較して、互いと相対的な胚または多能性細胞の染色体内容を判定することにより、1つまたは複数の細胞パラメータ測定値を使用する。いくつかの実施形態においては、各細胞パラメータ測定値を基準の胚または多能性細胞からの細胞パラメータ測定値と比較して、各胚または多能性細胞の染色体数を判定し、およびこれらの染色体数を比較して、互いに相対的な胚または多能性細胞の染色体数を判定することにより、1つまたは複数の細胞パラメータ測定値を使用する。
以下の詳述を添付の図面と併せて読む場合に、本発明は最もよく理解される。一般的な慣行に従って、図面の様々な特徴は原寸に比例しないことが強調される。むしろ、様々な特徴の寸法が、明確にするために、任意に拡大または縮小される。図面には以下の図が含まれる。
胚の評価に使用されるプロセスを示すフローチャートである。 6日間にわたる細胞分裂および卵割を示す一連の写真である。画像は、1日目から6日目までの表示が付けられている。スケールバーは50μmを表す。 1細胞胚(接合体)から胚盤胞にうまく発生した割合(%)を示す棒グラフである。4回の独立した実験全体で、合計100個の胚を、5〜6日目まで、微速度顕微鏡で観測した。各示された時期(胚盤胞、8細胞、4〜7細胞、2〜3細胞、および1細胞)に達した細胞の割合(%)を示す。 示した期間追跡した、異なる4つの胚の一連の写真である。 本評価に使用される期間の間の時間経過を示す図である。第1細胞質分裂の長さ、第1分裂と第2分裂の間の時間(細胞質分裂の第1分裂が収束してから、第2分裂が始まるまでの時間として測定される)、および有糸分裂の第2分裂と第3分裂の間の時間(細胞質分裂の第2分裂の開始と第3分裂の開始との間の時間として測定される)を含む。 3つの事象の測定値を示す3次元点グラフ。多くの胚の集団について、第1細胞質分裂の長さ、細胞の第1分裂と第2分裂の間の時間(細胞質分裂の第1分裂が収束してから、第2分裂が始まるまでの時間として測定される)、および細胞の第2分裂と第3分裂の間の時間(細胞質分裂の第2分裂の開始と第3分裂の開始との間の時間として測定される)を測定した。胚盤胞期に達する胚(丸で示す)は、3次元グラフ上で集合しているが、胚盤胞に達する前に停止する胚(×で示す)は、全体に散らばっている。 3つの動的形態パラメータを使用して胚盤胞形成を予測するための受信者動作特性(ROC)曲線を示すグラフである。 停止した6個の1〜2細胞胚および正常な5個の1〜2細胞胚からの52種類の遺伝子の発現レベルを示すレーダーグラフである。黄色で強調され、星印で示されるこれらの遺伝子の正常胚と異常胚との間の発現レベルの差は、マン・ホイットニー検定により、統計的に有意であると判定された。 停止した2細胞胚および正常な2細胞胚における、異なる遺伝子の発現レベルを示す棒グラフである。選択されたいくつかの停止した2細胞胚の微速度画像を上部に示す。 図9に示した同じ遺伝子の、停止した4細胞胚と正常な4細胞胚での比較を示す棒グラフである。選択されたいくつかの停止した4細胞胚の微速度画像を上部に示す。 4つの異なる遺伝子の発現パターン(ESSP)を示す一連の棒グラフである。胚性遺伝子が活性化する前(2日目)の早期移植の時間と、3日目の典型的な発現の時間を示す。 異なる期の単一割球からの遺伝子の遺伝子発現を示す。(A)単一割球に由来する2つの遺伝子、CTNNB1およびCDX2の遺伝子発現を細胞期別にプロットしたものであり、例えば、2細胞期、3細胞期、桑実胚期、および胚盤胞期毎のこれら遺伝子の発現レベルの変化を示す。(B)接合体プログラムから発現した遺伝子と比較した、母性プログラムで発現した遺伝子を表す棒グラフで表された遺伝子発現の特性。 胚の生存能を評価するための微速度画像分析および相関分子分析を使用するためのモデルの図である。 in vitroで成熟している卵母細胞の3つの発生期を示す一連の写真である。 in vitroで成熟した後の卵母細胞の胚発生プロセスを示す一連の写真である。 卵母細胞の評価に使用されるプロセスを示すフローチャートである。 幹細胞および多能性幹細胞の評価に使用されるプロセスを示すフローチャートである。 人工多能性幹細胞の、ニューロンロゼットへの分化過程を示す一連の写真である。 発現レベルを試験した遺伝子が分類され得る分類表であり、分類毎の遺伝子数を含む。 141の正常に発生した単一胚および単一割球の遺伝子発現分析中に識別された、4つの胚期特異的パターン(ESSP)、および遺伝子をそれらの分類のうちのそれぞれ1つに分類した表である。 撮像パラメータの胚盤胞形成を予測する能力を示す自動画像分析を示す。(A)単一胚についての追跡アルゴリズムの結果を示す。(B)分析された14個一組の胚を示す。(C)細胞質分裂の持続時間に関する、手動画像解析と自動画像解析との比較を示す。(D)有糸分裂の第1分裂と第2分裂の間の時間に関する、手動画像分析と自動分析との比較を示す。(E)良好な形態の胚盤胞と不良な形態の胚盤胞との比較を示す。 本発明による暗視野顕微鏡の概略図であり、左側の差し込み図は、レーザー加工した暗視野パッチの構成を示す。 インキュベーター内に設置し、かつ、コンピュータに接続するために支持台上に載置された、図22に図示される3つの並んだ顕微鏡の模式図である。図23Aは顕微鏡を示し、図23Bはインキュベーター内に入っている顕微鏡を示す。 本研究で使用した画像捕捉ソフトウェアのスクリーンショットであり、3つのチャネルで撮像した胚を示している。 A〜Dは、実験2のステーション2から選択した微速度画像を示す4枚の一連の写真である。図25Aおよび25Bは、培地を交換する前に捉えた画像であり、図25Cおよび25Dは、培地を交換した後に捉えた画像である。 A〜Dは、実験1のステーション2から選択した微速度画像を示す4枚の一連の写真である。図26Aおよび26Bは、培地を交換する前に捉えた画像であり、図26Cおよび26Dは、培地を交換した後に捉えた画像である。 AおよびBは、マイクロウェルを備えた、特別仕様の培養皿の図である。図27Aは、寸法の入った培養皿の図を示しており、図27Bは、マイクロウェルの3次元表示を示す。 AおよびBは、事前画像登録をした場合、および事前画像登録をしなかった場合の細胞活性を示すグラフである。図28Aおよび28Bは、併せて、登録することで結果が整理され、胚の移動および回転によるスパイクが除去されることを示す。 AおよびBは、正常胚および異常胚の細胞活性を示すグラフ(左)、並びに細胞の写真(右)である。図29Aおよび図29Bは、併せて、3日目で、胚の形態は似ているが、それらの細胞活性のプロットは大きく異なり、それらのうちの1つのみが胚盤胞に発生することを示している。 胚発生中の連続する組の画像間における画素強度の差を示すグラフである。これは、胚の生存能を評価するために単独で使用されるか、またはどのくらいの粒子(予測された胚モデル)が使用されるべきかを判定することにより、粒子フィルタ等の他のアルゴリズムを改善するための方式として使用され得る。 A〜Gは、様々な細胞期での2次元追跡の結果を示す7枚の一連の写真である。各画像組に付随するフレーム番号で示されるように細胞は進行する:フレーム15(図31A)、45(B)、48(C)、189(D)、190(E)、196(F)および234(G)。下段は、重ね合わせたシミュレーション画像を示す。輪郭線は、可視の細胞膜であり、白い点線は下になっていた膜である。画像フレームは5分毎に捉えたが、数画像のみを示す。 AおよびBは、3D細胞追跡の2つの成功例を示す一連の写真および図である。胚の各写真の下に示した図は、フレーム314およびフレーム228を除き、3次元モデルを上から見下ろした図である。フレーム314およびフレーム228では、それぞれのフレームのモデルを側面から見た図である。画像フレームは、5分毎に捉えた。 1細胞〜2細胞分割についての粒子フィルタ結果の図表示である。データ点は、細胞中心の3次元位置である。1細胞モデル、2細胞モデル、3細胞モデル、および4細胞モデルについての点を示す。上段は、予測後の粒子、そして下段は、再サンプリング後の粒子を示す。 AおよびBは、14個一組の胚における自動対手動の画像分析の比較を示すグラフである。図34Aは、第1細胞質分裂の長さについての比較を示し、図34Bは、有糸分裂の第1分裂と第2分裂の間の時間についての比較を示す。 胚をモデル化し、ある形態パラメータを測定するために画像分析がどのように使用されるかを示すフローチャートである。 A、BおよびCは、独立した各時間パラメータと、それぞれの時間パラメータに基づいた、正常胚、有糸分裂異数性の胚、および減数分裂異性数の胚のクラスターを示す3次元プロットである。 Aは、独立した各時間パラメータと、それぞれの時間パラメータに基づいた、正常胚、三倍性正常胚、22モノソミー、その他のモノソミー、21トリソミー、およびその他のトリソミーの胚のクラスターを示す3次元プロットである。Bは、正常胚、三倍性の胚、一倍性の胚における、各染色体のコピー数を示している。コピー数は、1番染色体から2番染色体にかけての平均シグナルの較正CGH値のlog2比に基づくものである。 Aは、低モザイク胚および高モザイク胚における、各染色体のコピー数を示している。コピー数は、1番染色体から2番染色体にかけての平均シグナルの較正CGH値のlog2比に基づくものである。Bは、独立した各時間パラメータと、それぞれの時間パラメータに基づいた、低モザイク胚および高モザイク胚のクラスターを示す3次元プロットである。 独立した各時間パラメータと、それぞれの時間パラメータに基づいた、正常胚、低モザイク胚、高モザイク胚、22モノソミー、その他のモノソミー、21トリソミー、およびその他のトリソミーの胚のクラスターを示す3次元プロットである。 正常胚と、有糸分裂の異常がある胚、および減数分裂の異常がある胚に関する、独立した時間パラメータ解析を示す表である。 Aは、独立した各時間パラメータと、それぞれの時間パラメータに基づいた、断片化を示さなかった正倍数性の胚、断片化を示さなかった異数性の胚、断片化を起こした正倍数性の胚、断片化を起こした異数性の胚、断片化を示さなかった正常な三倍数性の胚および断片化を起こした正常な三倍数性の胚のクラスターを示す3次元プロットである。Bは、独立した各時間パラメータと、それぞれの時間パラメータに基づいた、断片化を起こした正常な胚、断片化を起こした正常な三倍数性の胚、有糸分裂の異常により断片化を起こした異数性の胚、および有糸分裂の異常により断片化を起こした異数性の胚のクラスターを示す3次元プロットである。Cは、独立した各時間パラメータと、それぞれの時間パラメータに基づいた、断片化を起こした正常な胚、断片化を起こした正常な三倍数性の胚、断片化を起こした低モザイク胚および断片化を起こした高モザイク胚のクラスターを示す3次元プロットである。Dは、独立した各時間パラメータと、それぞれの時間パラメータに基づいた、高レベルの断片化を起こした胚および低レベルの断片化を起こした胚のクラスターを示す3次元プロットである。Eは、独立した各時間パラメータと、それぞれの時間パラメータに基づいた、1細胞期に断片化が始まった胚、2細胞期に断片化が始まった胚、および3細胞期以降に断片化が始まった胚のクラスターを示す3次元プロットである。 胚の染色体異常の評価に使用されるプロセスを示すフローチャートである。 着床前の発生の間の、後成的な抹消とトランスポゾンの活性化との相関を示す。 断片化のタイミングが、胚の染色体異常の指標となることを示す。Aは、微速度の結果から得たそれぞれのフレームを示す。Bは、断片化のタイミングと細胞周期の撮像パラメータとの関係を示す3次元プロットを示す。Cは、断片化のタイミング、再吸収および根底にある染色体異常に基づいた、ヒト胚の異数性の起源に関する提唱モデルを示す。 細胞断片中に染色体がかくまわれていることの証拠を示す。Aは、断片化が起きた場合と起きなかった場合の、染色体のコピー数の修正と染色体のコピー数の不適当との関係を示す3次元プロットを示す。Bは、細胞が断片化を起こしている透明帯のない卵割期の胚の共焦点画像である。Cは、断片化を起こした、別の胚の差分画像コントラストにより画像化した3次元モデルを示す。Dは、微速度撮像の最終フレームを示す。このフレームは、4細胞期に断片化を起こした胚を示す。
本発明の方法および組成物を説明する前に、本発明は、当然、それが変化し得るので、記載される特定の方法または組成物に限定されないということが理解される。本発明の範囲は、添付される特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のためのみのものであり、限定を意図するものではないということもまた、理解される。
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限の間の各介在値も、文脈により明確に指示されない限り、下限の単位の10分の1まで、具体的に開示されることが理解される。規定範囲内の、いずれの規定値または介在値間、およびその規定範囲内のいずれの他の規定値または介在値間のそれぞれのより小さい範囲も、本発明の範囲に包含される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、独立して範囲に含まれるか、または除外されてもよく、ならびにより小さい範囲に上限および下限のどちらかが含まれる、どちらも含まれない、または両方が含まれる各範囲もまた、規定範囲内のいずれかの具体的に除外される限界に従って、本発明の範囲に包含される。規定範囲が限度の1つまたは双方を含む場合、これらの含まれた限度のどちらかまたは双方を除外する範囲もまた、本発明に含まれる。
別様に定義されない限り、本明細書に使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者に、一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似するかまたは同等であるいずれの方法および材料をも、本発明の実践または試験において使用することができるが、いくつかの可能性のある、および好ましい方法および材料をここで説明する。本明細書において言及される全ての刊行物は、それに関して刊行物が引用される方法および/または材料を開示および説明するために、参照により本明細書に組み込まれる。矛盾がある点では、組み込まれた刊行物のいずれかの開示にも、本開示が優先することが理解される。
本明細書および添付される請求の範囲で使用される、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈により明確にそうでないと示されない限り、複数形の指示物を含むことに留意しなければならない。従って、例えば、「細胞(a cell)」との言及には、複数のそのような細胞が含まれ、「ペプチド(the peptide)」との言及には、1つまたは複数のペプチドおよびその等価物、例えば、当業者に公知のポリペプチドへの言及が含まれ、他も同様である。
本明細書において論じられる刊行物は、本出願の出願日前の、それらの開示としてのみ提供される。本明細書におけるいかなる記載も、本発明が先の発明を根拠として、そのような刊行物に先行する資格が無いと認めるものと解釈されるべきではない。さらに、提供される刊行物の日付は、独立して確認される必要があり得る実際の公表日とは異なっている場合がある。
定義
1つもしくは複数の胚もしくは多能性細胞の発生能、および/または1つもしくは複数の胚もしくは多能性細胞における染色体異常の存在を判定するための、方法、組成物およびキットを提供する。これらの方法、組成物およびキットは、ヒトにおける不妊症の治療において最も有用である、in vitroでの胚および卵母細胞の識別において用途を見出す。本発明のこれらおよび他の目的、利点、および特徴は、以下に詳細に記載される、本発明の方法および組成物の詳細を読むことにより、当業者には明らかになるであろう。
「発生能(developmental potential)」および「発達能力(developmental competence)」という用語は、本明細書において、健康な胚または多能性細胞が、成長または発達する能力または可能性を指すために使用される。
「胚」という用語は、本明細書において、2つの半数体配偶子細胞、例えば未授精の二次卵母細胞および精子細胞が結合して、二倍体全能性細胞、例えば受精卵を形成するときに形成される接合体、ならびにその直後の細胞分裂、すなわち胚分割から、桑実胚、すなわち16細胞期および胚盤胞期(分化した栄養外胚葉および内部細胞塊を有する)までから生じる胚、の両方を指すために使用される。
「多能性細胞」という用語は、本明細書において、生物において、複数の細胞型に分化する能力を有するあらゆる細胞を意味するために使用される。多能性細胞の例としては、幹細胞、卵母細胞、および1細胞胚(すなわち接合体)が挙げられる。
「幹細胞」という用語は、本明細書において、(a)自己再生する能力を有する、および(b)多様な分化細胞型を生じる可能性を有する、細胞または細胞の集団を指すために使用される。しばしば、幹細胞は、複数の細胞の系列を生じる可能性を有する。本明細書において使用される場合、幹細胞は、全能性幹細胞、例えば、生物の胚および胚外組織のすべてを生じる、受精卵母細胞;多能性幹細胞(pluripotent stem cell)、例えば、生物の胚組織のすべて、すなわち内胚葉、中胚葉、および外胚葉系を生じる、胚性幹(ES)細胞、胚性生殖(EG)細胞、または人工多能性幹(iPS)細胞;多能性幹細胞(multipotent stem cell)、例えば、生物の胚組織のうちの少なくとも2つ、すなわち内胚葉、中胚葉および外胚葉系列のうちの少なくとも2つを生じる間葉系幹細胞であるか、または特定の組織の複数の分化細胞型を生じる、組織特異的幹細胞であってもよい。組織特異的幹細胞としては、特定の組織の細胞を生じる組織特異的胚細胞、ならびに、成人の組織に存在し、その組織の細胞を生じる体性幹細胞、例えば中枢神経系の細胞を生じる神経幹細胞、骨格筋を生じる衛星細胞、および造血系の細胞のすべてを生じる造血幹細胞が挙げられる。
「卵母細胞」という用語は、本明細書において、未授精の女性生殖細胞、または配偶子を指すために使用される。本出願の卵母細胞は、一次卵母細胞または二次卵母細胞であってもよく、一次卵母細胞である場合、それらは減数分裂Iを経るように位置付けられるかまたは減数分裂Iを経て、二次卵母細胞である場合、それらは減数分裂IIを経るように位置付けられるかまたは減数分裂IIを経る。
「減数分裂」とは、配偶子の産生をもたらす細胞周期事象を意味する。第1減数分裂細胞周期、すなわち減数分裂Iにおいて、細胞の染色体は複製され、2つの娘細胞に分配される。次いで、これらの娘細胞が、第2減数分裂細胞周期、すなわち減数分裂IIにおいて分裂し、これはDNA合成を伴わず、染色体の半数を有する配偶子をもたらす。
「胚胞」期とは、減数分裂I細胞周期の前期I、すなわち核材料の第1分裂前と相関する、一次卵母細胞の成熟期を意味する。この期の卵母細胞は、胚胞と呼ばれる、特徴的に大きな核のために、「胚胞卵母細胞」とも呼ばれる。in vitroで培養された正常なヒト卵母細胞において、胚胞は成熟開始約6〜24時間後に生じる。
「中期I」期とは、減数分裂I細胞周期の中期Iと相関する、一次卵母細胞の成熟期を意味する。胚胞卵母細胞と比較して、中期I卵母細胞は、大きく、明確な核をもたない。in vitroで培養された正常なヒト卵母細胞において、中期Iは、成熟開始約12〜36時間後に生じる。
「中期II」期とは、減数分裂II細胞周期の中期IIと相関する、二次卵母細胞の成熟期を意味する。中期IIは、第1極体の突出により区別される。in vitroで培養された正常なヒト卵母細胞において、中期IIは、成熟開始約24〜48時間後に生じる。
「有糸分裂細胞周期」とは、細胞の染色体の複製、ならびにこれらの染色体および細胞の細胞質物質の2つの娘細胞への分裂をもたらす、細胞における事象を意味する。有糸分裂細胞周期は、間期および有糸分裂の2つの期に分けられる。間期において、細胞は成長し、そのDNAを複製する。有糸分裂において、細胞は、細胞分裂を開始し完了するが、最初にその核材料を分配し、次いで、その細胞質材料およびその分配された核材料を2つの個別の細胞に分割(細胞質分裂)する。
「第1有糸分裂細胞周期」または「細胞周期1」とは、受精から第1細胞質分裂、すなわち受精卵母細胞の2つの娘細胞への分裂の完了までの時間間隔を意味する。卵母細胞をin vitroで受精させる場合は、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)の注入(一般に卵母細胞の回収前に投与される)と、第1細胞質分裂事象の完了との間の時間間隔を、代理の時間間隔として使用することもできる。
「第2有糸分裂細胞周期」または「細胞周期2」とは、有糸分裂による受精卵母細胞からの娘細胞の産生と、有糸分裂によるこれらの娘細胞(「先行娘細胞(leading daughter cell)」、または娘細胞A)のうちの1つからの孫娘細胞の最初の一組の産生との間の時間間隔である、胚において観察される第2の細胞周期事象を意味する。細胞周期2の完了時、胚は3つの細胞から成る。言い換えれば、細胞周期2は、2細胞を含む胚と3細胞を含む胚との間の時間として、視覚的に識別することができる。
「第3の有糸分裂細胞周期」または「細胞周期3」とは、一般に、有糸分裂による受精卵母細胞からの娘細胞の産生と、有糸分裂による第2の娘細胞(「遅れ娘細胞(lagging daughter cell)」または娘細胞B)からの孫娘細胞の第2の一組の産生との間の時間間隔である、胚において観察される第3の細胞周期事象を意味する。細胞周期3の完了時、胚は4つの細胞から成る。言い換えれば、細胞周期3は、3細胞を有する胚と4細胞を有する胚との間の時間として、視覚的に識別することができる。
「第1卵割事象」とは、第1分裂、すなわち卵母細胞の2つの娘細胞への分裂、すなわち細胞周期1を意味する。第1卵割事象の完了時、胚は2細胞から成る。
「第2卵割事象」とは、第2の一組の分裂、すなわち、先行娘細胞の2つの孫娘細胞への分裂および遅れ娘細胞の2つの孫娘細胞への分裂を意味する。言い換えれば、第2卵割事象は、細胞周期2および細胞周期3の双方から成る。第2卵割の完了時、胚は4細胞から成る。
「第3卵割事象」とは、第3の一組の分裂、すなわち、すべての孫娘細胞の分裂を意味する。第3卵割事象の完了時、胚は一般に8細胞から成る。
「細胞質分裂」または「細胞分裂」とは、細胞が細胞分裂を経る、有糸分裂の時期を意味する。言い換えれば、これは、細胞の分配された核材料およびその細胞質材料が分割されて、2つの娘細胞を産生する、有糸分裂期である。細胞質分裂の期間は、細胞膜の圧縮(「分裂溝」)が最初に観察された時と、その圧縮事象の収束、すなわち2つの娘細胞の生成との間の期間、または時間枠として、識別可能である。分裂溝の開始は、細胞膜の湾曲が凸面(外側に向かって丸くなった)から凹面(くぼみまたはへこみを伴って内側へ屈曲した)に変化する点として、視覚的に識別することができる。これは、図4の上部パネルに、2つの分裂溝を示す白色の矢印により図示される。細胞伸長の開始は、細胞質分裂の開始を示すためにも使用することが出来、その場合、細胞質分裂の期間は、細胞伸長の開始と、細胞分裂の収束との間の期間として定義される。
「第1細胞質分裂」または「細胞質分裂1」とは、受精後の最初の細胞分裂事象、すなわち、受精卵母細胞が分裂して、2つの娘細胞を産生することを意味する。第1細胞質分裂は、一般に受精約1日後に生じる。
「第2細胞質分裂」または「細胞質分裂2」とは、胚において観察される第2の細胞分裂、すなわち、受精卵母細胞の娘細胞(「先行娘細胞」、または娘A)が、2つの孫娘細胞の第1の一組に分裂することを意味する。
「第3細胞質分裂」または「細胞質分裂3」とは、胚において観察される第3の細胞分裂、すなわち、受精卵母細胞の他の娘細胞(「遅れ娘細胞」、または娘B)が、2つの孫娘細胞の第2の一組に分裂することを意味する。
「基準マーカー(fiduciary marker)」または「基準マーカー(fiducial marker)」という用語は、参照点または測定点として使用するための、生成された画像に現れる、撮像システムの視野において使用される目的物である。それは、撮像対象の中または上に設置される何か、または、光学機器のレチクルの印または一組の印のいずれかであり得る。
「マイクロウェル」という用語は、細胞規模で寸法決定された、好ましくは単一真核細胞を収容するために提供される、容器を指す。
「異数性」とは、染色体の異常な数を特徴とする、染色体異常の型を意味する。異数性胚は、1つもしくは複数の欠失染色体、および/または1つもしくは複数の過剰染色体を有し得る。異数性は、「有糸分裂のエラー」または「減数分裂のエラー」の結果であり得る。「異数性胚」とは、異数性を含む胚である。「異数体」および「異常」または「異常染色体数」という用語は、本明細書において、互換可能に使用される。
「正倍数体」とは、染色体的に正常であると特徴づけられた胚を意味する。正倍数体、または正常な胚は、適切な数の染色体対を有する。正倍数体のヒト胚は、例えば、合計46染色体のための、23対の染色体を有する。「正倍数体」および「正常」または「正常染色体数」という用語は、本明細書において、互換可能に使用される。
「有糸分裂のエラー」とは、有糸分裂の間の染色体分離のエラーにより生じる異数性型を意味する。
「減数分裂のエラー」とは、減数分裂の間の染色体分離のエラーにより生じる異数性型を意味する。
「トリソミー」とは、特定の染色体のコピーが、2つの代りに3つある、異数性型を意味する。「トリソミー胚」は、染色体数が異常であり、1つまたは複数の染色体のコピーを、2つのコピーの代わりに3コピー含む胚である。
「モノソミー」とは、特定の染色体のコピーが、2つの代りに1つある、異数性型を意味する。「モノソミー胚」は、染色体数が異常であり、1つまたは複数の染色体のコピーを、2つのコピーの代わりに1コピー含む胚である。
「正常染色体数」とは、ヒトの23染色体それぞれの2つのコピーを意味する。
「モザイク」または「モザイク現象」とは、異なる染色体内容を有する、細胞集団を意味する。「モザイク胚」とは、異なる染色体内容を有する細胞集団を含む胚である。
「低モザイク」とは、有糸分裂のエラーから生じる、4つ以下の染色体が影響を受けている、異なる染色体内容を有する細胞集団を意味する。
「高モザイク」とは、有糸分裂のエラーから生じる、4つを超える染色体が影響を受けている、異なる染色体内容を有する細胞集団を意味する。
「高レベルの断片化」とは、細胞質の約25体積%超の断片化を意味する。
「低レベルの断片化」とは、細胞質の約25体積%以下の断片化を意味する。
「断片化」とは、核DNAを含んでもいてもいなくてもよい、膜結合性細胞質の一部を意味する。
目的の多能性細胞および胚
本発明の方法において、胚または多能性細胞の1つまたは複数の細胞パラメータを測定することにより、ならびにこれらの測定値を使用して、胚または多能性細胞の発生能、異数性、および/または染色体内容を判定することにより、1つまたは複数の胚または多能性細胞の発生能、異数性、および/または染色体内容を評価する。このようにして得た情報を、臨床判断、例えばin vitroで受精させた胚を移植するかどうか、培養した細胞または複数の細胞を移植するかどうかの指針として、使用することもできる。
本発明の方法により評価することができる胚の例としては、1細胞胚(接合体とも呼ばれる)、2細胞胚、3細胞胚、4細胞胚、5細胞胚、6細胞胚、8細胞胚など、一般に、16細胞胚までが挙げられ、それらのうちのいずれも、いずれかの都合のよい様式、例えばin vivoで成熟させた卵母細胞またはin vitroで成熟させた卵母細胞に由来し得る。
本発明の方法により評価することができる多能性細胞の例としては、全能性幹細胞、例えば、一次卵母細胞および二次卵母細胞などの卵母細胞;多能性幹細胞(totipotent stem cells)、例えばES細胞、EG細胞、iPS細胞等;多能性細胞(multipotent cells)、例えば間葉系幹細胞;ならびに組織特異的幹細胞が挙げられる。それらは、生命のあらゆる段階、例えば胚、新生児、若年または成人、ならびにいずれかの性別、すなわちXXまたはXYに由来し得る。
胚および多能性細胞は、あらゆる生物、例えばあらゆる哺乳類の種、例えばヒト、霊長類、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ等に由来し得るが、ヒト由来であることが好ましい。それらは予備冷凍されてもよく、例えば、1細胞期で低温保存されその後解凍された胚、または凍結および解凍された卵母細胞および幹細胞であってもよい。あるいは、それらは新たに作製されてもよく、例えば、体外受精または卵細胞質内精子注入技術により卵母細胞から新たに作製された胚;新たに採取された、および/もしくはin vitro成熟技術により新たに成熟させた卵母細胞、またはin vitroで生殖細胞に分化させ、卵母細胞に成熟させた多能性幹細胞に由来する卵母細胞;当技術分野で公知の方法により、組織の解離および培養により新たに作製された幹細胞等であってもよい。それらを、評価される試料の生存、成長、および/または発達を促進するための、当技術分野で公知のいずれかの都合の良い条件下、例えば、胚については、体外受精または卵細胞質内精子注入の技術分野で使用されるものなどの条件下(例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,610,543号、同第6,130,086号、同第5,837,543号を参照のこと);卵母細胞については、卵母細胞の成熟を促進するために当技術分野で使用されるものなどの条件下(例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,882,928号および同第6,281,013号を参照のこと);幹細胞については、増殖を促進させるために当技術分野で使用されるものなどの条件下(例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,777,233号、同第7037892号、同第7,029,913号、同第5,843,780号、および同第6,200,806号、米国特許出願第2009/0047263号、同第2009/0068742号を参照のこと)で培養してもよい。胚/多能性細胞はしばしば、評価される特定の胚/多能性細胞の必要性に合わせた、血清または血清代替物、アミノ酸、および成長因子が添加された、ノックアウトDMEM、DMEM−F12、またはイスコフ改変ダルベッコ培地等の、市販の培地中で培養される。
微速度撮像解析
いくつかの実施形態においては、微速度撮像により細胞パラメータを測定することにより、胚/多能性細胞を評価する。胚/多能性細胞を、標準の培養皿において培養することもできる。あるいは、胚/多能性細胞を、特別仕様の培養皿、例えば、本明細書に記載される、光学品質のマイクロウェルを備えた特別仕様の培養皿において、培養することもできる。そのような特別仕様の培養皿において、各マイクロウェルは単一の胚/多能性細胞を保持し、単一の皿内の胚の群全体を、細胞有糸分裂プロセスを追跡するために十分な解像度を備えた単一の小型顕微鏡により、同時に撮像することができるように、各マイクロウェルの底面は、光学品質仕上げになっている。マイクロウェルの群全体は、培養皿中で同一の培地ドロップ(media drop)を共有し、および、培地ドロップを安定させるためにマイクロウェル周囲に配置された外壁、およびマイクロウェルの近くに配置された基準マーカー(fiducial marker)をも含み得る。表面の疎水性を、プラズマエッチングまたは別の処理により調節して、マイクロウェルを培地で満たした際に、泡の形成を予防することもできる。標準の培養皿または特別仕様の培養皿のどちらを使用するかどうかに関わらず、培養の間、1つまたは複数の発達中の胚を、同一の培地で培養してもよく、例えば培養皿あたり、1〜25個の胚を培養してもよい。
画像を継時的に獲得し、その後解析して、1つまたは複数の細胞パラメータの測定値を得る。微速度撮像は、デジタル画像の保存および解析用装備を備えたいかなるコンピュータ制御顕微鏡、例えば、加熱ステージおよびインキュベーションチャンバーを備えた倒立顕微鏡、または従来のインキュベーター内に丁度おさまる特別仕様の小型顕微鏡アレイによっても、実施し得る。小型顕微鏡のアレイは、同一のインキュベーターにおける、複数の試料皿の同時培養を可能にし、および連続撮像間の最小時間間隔に制限のない複数のチャネルを収容するために、拡張可能である。複数の顕微鏡を使用することにより、試料を移動する必要がなくなり、それにより、システムの正確性および全体的なシステムの信頼性が改善される。インキュベーター中の個々の顕微鏡は、部分的または全体的に隔離することができ、各培養皿に独自の制御された環境を提供する。これにより、他の試料の環境を乱すことなく、撮像ステーションへの、およびそこからの、皿の移動が可能になる。
微速度撮像のための撮像システムは、明視野照明、暗視野照明、位相差、ホフマン変調コントラスト、微分干渉コントラスト、または蛍光を使用することができる。いくつかの実施形態において、暗視野照明を使用して、その後の特徴抽出および画像解析のための、強調された画像コントラストを提供することもできる。さらに、赤色光または近赤外光源を使用して、光毒性を減少させ、細胞膜と細胞の内部部分との間のコントラスト比を改善することができる。
取得した画像を、ライブビデオのような継続方式、または対象が静止画で繰り返し撮像される微速度写真撮影のような断続的方式のどちらかで保存し得る。以下に記載する有意な形態学的事象を捕捉するために、画像間の時間間隔は、好ましくは1〜30分間の間であるべきである。代替の実施形態において、画像間の時間間隔は、細胞活性量に応じて変化し得る。例えば、活性期間の間は、2〜3秒毎または毎分の頻度で画像を撮像し得るが、不活性期間の間は、10分または15分以上毎に、画像を撮像し得る。撮像された画像のリアルタイム画像解析を使用して、時間間隔が、いつ、どのように変化するかを検出することもでき得る。本発明の方法において、試料が受け取る総光量は、5日間の撮像において、約24分間の連続的な低レベルの露光に相当すると推定される。微速度撮像システムのための光強度は、LEDの低出力(例えば、一般の100Wハロゲン電球と比較して、1WのLEDを使用)および高感度のカメラセンサに因り、一般に生殖補助医療顕微鏡で使用される光強度よりも、著しくより低い。このように、微速度撮像システムを使用することにより胚が受ける総光エネルギー量は、IVFクリニックでの日常の処理の間に受けるエネルギー量と同程度であるか、それ未満である。さらに、露光時間を著しく短縮して、胚/多能性細胞に対する総露光量を減少させることもできる。画像あたり0.5秒の露光で、5分毎に撮像する、2日間の撮像において、低レベルの総露光量は5分未満である。
画像取得後、画像を抽出し、異なる細胞パラメータ、例えば、細胞サイズ、透明帯の厚さ、断片化の程度、細胞分裂から生じた娘細胞の対称性、最初のいくつかの有糸分裂間の時間間隔、および細胞質分裂の持続時間について解析する。
微速度撮像により測定され得る細胞パラメータは、一般に、形態学的事象である。例えば、胚の評価において、微速度撮像を使用して、細胞質分裂事象の持続時間、例えば細胞質分裂1、細胞質分裂2、細胞質分裂3、または細胞質分裂4を測定することができ、ここで細胞質分裂事象の持続時間は、分裂溝(細胞質分裂の開始)の最初の観察と分裂溝の2つの娘細胞への分離(すなわち、2つの娘細胞の産生)との間の時間間隔と定義される。別の目的のパラメータは、細胞周期事象、例えば細胞周期1、細胞周期2、細胞周期3、または細胞周期4の持続時間であり、ここで細胞周期事象の持続時間は、細胞の産生(細胞周期1においては、卵子の受精;後の細胞周期においては、細胞質分裂の収束時)と、その細胞からの2つの娘細胞の産生との間の時間間隔と定義される。微速度撮像により測定することができる、他の目的の細胞パラメータには、これらの細胞事象により定義される時間間隔、例えば、(a)細胞質分裂1の開始と細胞質分裂2の開始との間の時間間隔、細胞質分裂1の収束と細胞質分裂2の収束との間の時間間隔、細胞質分裂1の開始と細胞質分裂2の収束との間の時間間隔、もしくは細胞質分裂1の収束と細胞質分裂2の開始との間の時間間隔、のうちのいずれか1つとして定義可能である、細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;または(b)細胞質分裂2の開始と細胞質分裂3の開始との間の時間間隔、もしくは、細胞質分裂2の収束と細胞質分裂3の収束との間の時間間隔、もしくは、細胞質分裂2の開始と細胞質分裂3の収束との間の時間間隔、もしくは、細胞質分裂2の収束と細胞質分裂3の開始との間の時間間隔、のうちのいずれか1つとして定義可能である、細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔、が含まれる。
体外受精および卵細胞質内精子注入の目的においては、in vitro環境に関する培養条件の欠点に因る胚の損失を低減するため、および培養の間に発生し得る後成的なエラーに関連する有害事象の可能性を低減するため、胚を、発達の初期、例えば2日目または3日目まで、すなわち8細胞期に至るまでに子宮に移植することが有利であると考えられる(Katari et al. (2009) Hum Mol Genet. 18(20):3769-78; Sepulveda et al. (2009) Fertil Steril. 91(5):1765-70)。従って、細胞パラメータの測定は、受精から2日以内に行われることが好ましいが、より長期の解析、例えば約36時間、約54時間、約60時間、約72時間、約84時間、約96時間、またはそれ以上もまた、本発明の方法により意図される。
微速度撮像により評価し得る、成熟中の卵母細胞における細胞パラメータの例としては、限定されないが、卵母細胞膜の形態における変化、例えば透明体からの分離の速度および程度;卵母細胞核の形態の変化、例えば胚胞崩壊(GVBD)の開始、完了および速度;細胞質および核における顆粒移動の速度および方向;卵母細胞および第1極体の細胞質分裂ならびに第1極体の突出の移動および/または持続時間が挙げられる。他のパラメータには、成熟二次卵母細胞および第2極体の細胞質分裂の持続時間が含まれる。
微速度撮像により評価し得る、幹細胞または幹細胞集団における細胞パラメータの例としては、限定されないが、細胞質分裂事象の持続時間、細胞質分裂事象間の時間、細胞質分裂事象前および事象の間の幹細胞のサイズおよび形状、細胞質分裂事象により産生される娘細胞の数、分裂溝の空間的定位、観察される非対称分裂(すなわち、1つの娘細胞は幹細胞を維持するが、もう一つは分化する)の速度および/または数、観察される対称分裂(すなわち、両方の娘細胞が幹細胞のままであるか、または両方が分化する)の速度および/または数、および細胞質分裂事象の収束と幹細胞が分化を始める時との間の時間間隔が挙げられる。
パラメータは、手動で測定することもでき、または例えば、画像解析解析ソフトウェアにより、自動で測定することもできる。画像解析ソフトウェアを使用する場合、逐次モンテカルロ法に基づいた確率的モデル推定技術を利用する画像解析アルゴリズムを使用することもでき、逐次モンテカルロ法は、例えば、仮定された胚/多能性細胞モデルの分布を生成し、単純な光学モデルに基づいて画像をシミュレーションし、およびこれらのシミュレーションを観察された画像データと比較する。このような確率的モデル推定法を使用する場合、細胞を、いずれかの適切な形状、例えば、2D空間における楕円の集まり、3D空間における楕円体の集まり等として、モデル化してもよい。遮蔽および深度の不明確さに対処するため、方法は、予測される物理的挙動に対応する幾何学的制約を実施することができる。頑健性を改善するために、1つまたは複数の焦点面で画像を撮像することもできる。
遺伝子発現解析
いくつかの実施形態においては、遺伝子発現を測定することにより、胚または多能性細胞を評価する。そのような実施形態において、細胞パラメータは、遺伝子発現レベルまたは遺伝子発現プロファイルである。1つまたは複数の遺伝子の発現の判定、すなわち、発現プロファイルまたは発現評価の取得は、例えばmRNAなどの、1つもしくは複数の目的の遺伝子の核酸転写産物、例えば核酸の発現プロファイルを測定することにより;または1つもしくは複数の目的の遺伝子の発現産物である1つもしくは複数の異なるタンパク質/ポリペプチドのレベル、例えばプロテオーム発現プロファイルを測定することにより、行ってもよい。言い換えれば、「発現プロファイル」および「発現評価」という用語は、広い意味で使用され、RNAレベルまたはタンパク質レベルでの遺伝子発現プロファイルを含む。
いくつかの実施形態においては、核酸発現プロファイルを得ることにより、遺伝子の発現を評価することができ、ここで試料中の1つまたは複数の核酸、例えば、1つまたは複数の目的の遺伝子の核酸転写産物の量またはレベルが判定される。これらの実施形態において、発現プロファイルを生成するためにアッセイされる試料は、核酸試料である。核酸試料には、評価される胚または細胞の目的の遺伝子の発現情報を含む、複数の別個の核酸または別個の核酸の集団が含まれる。試料が、由来する宿主細胞または組織の発現情報を保持する限り、核酸はRNAまたはDNA核酸、例えば、mRNA、cRNA、cDNA等を含んでいてもよい。試料は、当技術分野で公知のいくつかの異なる方法、例えば、細胞からのmRNAの単離により調製することもでき、ここで、差次的発現技術の分野で公知のとおり、単離されたmRNAを、そのまま、または増幅して使用して、cDNA、cRNAなどを調製することもできる。試料は、標準的プロトコルを使用して、単一の細胞、例えば、目的の多能性細胞の培養物の多能性細胞、もしくは目的の胚からの単一の細胞(割球)から;または数個の細胞、例えば多能性細胞の培養物の一部、もしくは目的の胚の2、3、もしくは4個以上の割球から、調製してもよい。
発現プロファイルは、最初の核酸試料から、あらゆる都合の良いプロトコルを使用して、生成することができる。差次的遺伝子発現解析の分野で使用されるものなどの、発現プロファイルを生成する種々の異なる手段が知られているが、発現プロファイル生成のための、1つの代表的かつ便利なプロトコルの種類は、アレイベースの遺伝子発現プロファイル生成プロトコルである。このような用途は、ハイブリダイゼーションアッセイであり、該アッセイでは、生成されるプロファイルにおいてアッセイされる/プロファイルされる遺伝子それぞれに対する「プローブ」核酸を示す核酸が使用される。これらのアッセイにおいて、標的核酸の試料は、まず、アッセイされる最初の核酸試料から調製され、ここで調製には、例えば、シグナル生成システムのメンバーなどの標識による、標的核酸の標識化が含まれ得る。標的核酸試料の調製後、ハイブリダイゼーション条件下で、試料をアレイと接触させ、それによりアレイ表面に結合したプローブ配列と相補的である標的核酸間で、複合体が形成される。次いで、定性的または定量的のいずれかで、ハイブリダイズした複合体の存在を検出する。
本発明の方法で使用される、発現プロファイルを生成するために実施され得る、特定のハイブリダイゼーション技術としては:米国特許第5,143,854号;同5,288,644号;同5,324,633号;同5,432,049号;同5,470,710号;同5,492,806号;同5,503,980号;同5,510,270号;同5,525,464号;同5,547,839号;同5,580,732号;同5,661,028号;同5,800,992号(これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる);ならびに国際公開第95/21265号;同第96/31622号;同第97/10365号;同第97/27317号;欧州特許第373203号;および同第785280号に記載される技術が挙げられる。これらの方法において、その発現がアッセイされる表現型決定遺伝子それぞれに対するプローブを含む、「プローブ」核酸のアレイを、上述の標的核酸と接触させる。ハイブリダイゼーション条件、例えば、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、接触を実施し、次いで未結合の核酸を除去する。本明細書で使用される「ストリンジェントなアッセイ条件」という用語は、例えば、表面結合および溶液相核酸などの、アッセイにおいて所望のレベルの特異性を提供するのに十分相補的である核酸の結合対を産生するのには適しているが、所望の特異性を提供するために十分相補的ではない結合メンバー間の結合対の形成にはあまり適していない条件を指す。ストリンジェントなアッセイ条件は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件両方の総和または組み合わせ(全体性)である。
得られたハイブリダイズした核酸のパターンは、プローブされた遺伝子のそれぞれの発現に関する情報を提供し、ここで発現情報は、遺伝子が発現するかどうか、および通常どのレベルで発現するかに関するものであり、ここで発現データ、すなわち発現プロファイル(例えば、トランスクリプトソームの形態における)は、定性的および定量的の両方であり得る。
あるいは、試料中の1つまたは複数の核酸のレベルを定量化するための非アレイベースの方法を使用することもでき、該方法には増幅プロトコルに基づくもの、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)ベースのアッセイが含まれ、これには定量的PCR、逆転写PCR(RT−PCR)、リアルタイムPCR等が含まれる。
いくつかの実施形態において、遺伝子の発現は、プロテオミクスの発現プロファイルを得ることにより評価することができ、ここで試料中の1つまたは複数のタンパク質/ポリペプチド、例えば、目的の遺伝子によりコードされたタンパク質/ポリペプチドの量またはレベルが判定される。これらの実施形態において、方法において使用される発現プロファイルを生成するためにアッセイされる試料は、タンパク質試料である。発現プロファイルがプロテオミクスの発現プロファイル、すなわち試料中の1つまたは複数のタンパク質レベルのプロファイルである場合、アッセイされる試料中の1つまたは複数のタンパク質のレベルを判定する、タンパク質レベルを評価するためのあらゆる都合の良いプロトコルを使用することができる。
タンパク質レベルをアッセイする種々の異なる手法が当技術分野において公知であるが、タンパク質レベルをアッセイするための、1つの代表的かつ便利なプロトコルの種類は、ELISAである。ELISAおよびELISAベースのアッセイにおいては、目的のタンパク質に対して特異的な1つまたは複数の抗体を、選択された固体表面上、好ましくはポリスチレンマイクロタイタープレートのウェルなどの、タンパク質親和性を示す表面上に固定してもよい。完全に吸着されていない材料を除去するために洗浄した後、アッセイプレートウェルを、被験試料に対して抗原的に中性であることが知られている非特異的「ブロッキング」タンパク質、例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼインまたは粉乳の溶液等でコーティングする。これは、固定化表面上の非特異的吸着部位のブロッキングを可能にし、それにより、表面への抗原の非特異的結合により生じるバックグラウンドを低減する。未結合のブロッキングタンパク質を除去するための洗浄後、免疫複合体(抗原/抗体)形成を誘導する条件下で、固定化表面を、試験される試料と接触させる。そのような条件は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)/TweenまたはPBS/Triton−X100中にBSAまたはウシガンマグロブリン(BGG)を希釈する等、希釈液で試料を希釈すること(これは非特異的バックグラウンドの低減も補助する傾向にある)、および約25〜27℃の温度(他の温度も使用され得るが)で約2〜4時間、試料をインキュベートすることを含む。インキュベーション後、非免疫複合材料を除去するために、抗血清接触表面を洗浄する。例示的な洗浄手順には、PBS/Tween、PBS/トリトン−X100、またはホウ酸塩緩衝剤などの溶液で洗浄することが含まれる。次いで、結合した免疫複合体を、一次抗体とは異なる標的に対する特異性を有する二次抗体にさらし、二次抗体の結合を検出することにより、免疫複合体形成の発生および量を判定する。ある実施形態において、二次抗体は、適切な発色基質とインキュベートすると有色の沈殿物を生成する関連酵素、例えばウレアーゼ、ペルオキシダーゼ、またはアルカリホスファターゼを有する。例えば、ウレアーゼまたはペルオキシダーゼ結合抗ヒトIgGを、免疫複合体形成の発達に好ましい時間および条件下で(例えば、PBS含有溶液、例えばPBS/Tween中、室温で2時間のインキュベーション)使用してもよい。二次抗体とのそのようなインキュベーションおよび未結合材料を除去するための洗浄後、例えば、ウレアーゼ標識の場合は尿素およびブロモクレゾールパープル、またはペルオキシダーゼ標識の場合は、2,2’−アジノ−ジ−(3−エチル−ベンズチアゾリン)−6−スルホン酸(ABTS)およびHなどの、発色基質とともにインキュベーションすることにより、標識の量を定量化する。その後、例えば、可視スペクトル分光光度計を使用して、色の生成の程度を測定することにより、定量化を達成する。
前述の方式を、最初に試料をアッセイプレートに結合させることにより、変更することもできる。次いで、アッセイプレートとともに一次抗体をインキュベートした後、一次抗体に対する特異性を有する標識された二次抗体を使用して、結合した一次抗体を検出する。
抗体または複数の抗体を固定する固体基質は、広範な材料から、広範な形状、例えば、マイクロタイタープレート、マイクロビーズ、計深棒、樹脂粒子等に、作成することができる。シグナルのノイズに対する比率を最大化し、バックグラウンド結合を最小化し、ならびに分離を容易にしおよび費用を低減するように、基質を選択してもよい。使用される基質に最適な手法、例えば、ビーズもしくは計深棒をリザーバから除去すること、マイクロタイタープレートウェルなどのリザーバを空にするかもしくは希釈すること、または洗浄溶液もしくは溶媒でビーズ、粒子、クロマトグラフィー用カラム、もしくはフィルタを漱ぐことにより、洗浄を達成してもよい。
あるいは、試料中の1つまたは複数のタンパク質のレベルを測定するための非ELISAベースの方法を使用してもよい。代表的な例としては、限定されないが、質量分析、プロテオームアレイ、xMAP(商標)ミクロスフェア技術、フローサイトメトリー、ウェスタンブロット、および免疫組織化学が挙げられる。
得られたデータは、プローブされた遺伝子のそれぞれの発現に関する情報を提供し、ここで発現情報は、遺伝子が発現するかどうか、および通常どのレベルで発現するかに関するものであり、およびここで発現データは、定性的および定量的の両方であり得る。
発現プロファイルの生成において、いくつかの実施形態において、試料をアッセイして、少なくとも1つの遺伝子/タンパク質、時には複数の遺伝子/タンパク質の発現データを含む発現プロファイルを生成し、ここで複数とは、少なくとも2つの異なる遺伝子/タンパク質を意味し、多くの場合、少なくとも約3つ、一般には少なくとも約10以上、およびより一般には少なくとも約15以上、例えば、50以上、もしくは100以上等の、異なる遺伝子/タンパク質を意味する。
最も広い意味において、発現の評価は、定性的であっても、定量的であってもよい。従って、検出が定性的である場合、方法は、標的検体、例えば、核酸または発現産物が、アッセイされる試料中に存在するかどうかの測定または評価、例えば鑑定を提供する。さらなる他の実施形態において、方法は、標的検体がアッセイされる試料中に存在するかどうかの定量的検出、すなわち標的検体、例えばアッセイされる試料中の核酸またはタンパク質の、実際の量または相対存在量の評価または鑑定を提供する。そのような実施形態において、定量的検出は、絶対的であってもよく、その方法が2つ以上の異なる検体、例えば、試料中の標的核酸またはタンパク質を検出する方法である場合は、相対的であってもよい。従って、「定量化する」という用語は、標的検体、例えば、試料中の核酸またはタンパク質を定量化する状況において使用される場合、絶対的または相対的定量化を指すことができる。絶対的定量化は、1つまたは複数の対照検体の既知の濃度を含むことにより、および既知の対照検体を用いて、標的検体の検出レベルを参照すること、すなわち正規化することにより(例えば、標準曲線の生成を介して)、達成することができる。あるいは、2つ以上の異なる標的検体間の検出レベルまたは検出量を比較して、例えば互いに相対的な、2つ以上の異なる検体のそれぞれの相対的定量化を提供することにより、相対的定量化を達成することができる。
その発現レベルが接合体の発生能を示す遺伝子の例としては、コフィリン(NM_005507)、DIAPH1(NM_001079812、NM_005219)、ECT2(NM_018098)、MYLC2/MYL5(NM_002477)、DGCR8(NM_022720)、ダイサー/DICER1(NM_030621、NM_177438)、TARBP2(NM_004178、NM_134323、NM_134324)、CPEB1(NM_001079533、NM_001079534、NM_001079535、NM_030594)、シンプレキン(Symplekin)/SYMPK(NM_004819)、YBX2(NM_015982)、ZAR1(NM_175619)、CTNNB1(NM_001098209、NM_001098210、NM_001098210、NM_001904)、DNMT3B(NM_006892、NM_175848、NM_175849、NM_175850)、TERT(NM_198253、NM_198255)、YY1(NM_003403)、IFGR2/IFNGR2(NM_005534)、BTF3(NM_001037637、NM_001207)、およびNELF(NM_001130969、NM_001130970、NM_001130971、NM_015537)が挙げられる。その発現レベルが、胚の発生能を示す細胞パラメータとして機能し得る他の遺伝子を図8に示す。遺伝子発現レベル測定値を得るうえで、発現レベルは、評価された後、標準対照に対して正規化されることが多く、標準対照とは例えば、発達を通して一定であることが知られている遺伝子、例えばGAPDHもしくはRPLPO、またはその時間点での発現が知られている遺伝子の、試料中の発現レベルである。
遺伝子発現レベルは、単一の細胞、例えば目的の胚からの割球、もしくは単離した卵母細胞、もしくは幹細胞の培養物から単離した細胞等から判定してもよく、または胚、例えば、目的の胚全体までを含む2、3、または4個以上の目的の胚の割球、もしくは幹細胞の培養物の全体までを含む、幹細胞の培養物からの複数の細胞等から、判定してもよい。
他の態様において、本発明は、単一細胞において、遺伝子型決定および遺伝子発現解析を同時に実施するためのプロトコルを含む。胚において、これを使用することにより、単一細胞を胚から取り出しそのDNAを核型異常または特定の疾患遺伝子の存在について試験する手順である、着床前遺伝子診断(PGD)を、改善することができる。本発明の方法は、遺伝子解析および遺伝子発現解析を同時に行うことを可能にする。方法には以下のステップが含まれる:(1)単一細胞を少量の培地または緩衝剤中に収集する、(2)遺伝子型決定および遺伝子発現解析用プライマーの混合物を使用して、1工程の、逆転写およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅を実施する、(3)18サイクル未満のPCR後、増幅されたcDNAのアリコートを収集して、増幅の直線性を維持する、(4)cDNAのアリコートを使用して、定量的リアルタイムPCR等の標準技術を用いて、遺伝子発現解析を実施する、(5)残りの試料を使用して、2回目のPCRを実施し、遺伝子型決定の目的のために遺伝情報をさらに増幅する、ならびに(6)ゲル電気泳動等の標準技術を使用して、遺伝子型を決定する。
異数性の検出方法
いくつかの実施形態において、胚または多能性細胞の染色体内容について評価する。一実施形態においては、胚において、異数性を検出するための方法を提供する。いくつかの実施形態において、胚はヒト胚である。いくつかの実施形態においては、1つまたは複数の細胞パラメータを測定して細胞測定値を得ることにより、およびその測定値を使用して、胚が異数体かどうかを判定することにより、胚の異数性を評価する。本発明のある特定の実施形態において、異数体であることが判明した胚は、有糸分裂のエラーに起因する異数体であり、および他の実施形態においては、異数体であることが判明した胚は、減数分裂のエラーに起因する異数体である。従って、本明細書において、正常から、最も重症の異数性型までに、胚をランク付けする方法を提供する。より詳細には、細胞パラメータ測定値に基づいて、正常な染色体内容、有糸分裂のエラーに起因する異数体、または減数分裂のエラーに起因する異数体を含む胚として、胚をランク付けする方法を提供する。
いくつかの実施形態においては、最初に、胚が胚盤胞に達する可能性を判定し、その後、胚盤胞に達する可能性を有すると判定された胚において、断片化の存在もしくは不存在および/または断片化のレベルを判定するための方法を提供し、ここで、断片化の存在、特に高レベルの断片化の存在は異数性胚を示し、断片化の不存在は正常染色体数を示す。低レベルの断片化は、高レベルの断片化を有する胚よりも、異数性のリスクがより低く、全く断片化を有さない胚よりも異数性のリスクがより高いことを示す。言い換えれば、断片化のレベルが低いほど、胚が異数体である可能性は低くなり、断片化のレベルが高いほど、胚が異数体である可能性は高くなる。一実施形態において、高断片化は、細胞質の約15体積%超の断片化を特徴とする。さらなる別の実施形態において、高断片化は、細胞質の約20体積%超の断片化を特徴とする。さらなる別の実施形態において、高断片化は、細胞質の約25体積%超の断片化を特徴とする。さらなる別の実施形態において、高断片化は、細胞質の約30体積%超の断片化を特徴とする。別の実施形態において、低断片化は、細胞質の約30体積%未満の断片化を特徴とする。別の実施形態において、低断片化は、細胞質の約25体積%未満の断片化を特徴とする。さらなる別の実施形態において、低断片化は、細胞質の約20体積%未満の断片化を特徴とする。さらなる別の実施形態において、低断片化は、細胞質の約15体積%未満の断片化を特徴とする。
方法は、まず、胚が胚盤胞に達する可能性を判定し、その後、胚盤胞に達する可能性を有する胚において、断片化の存在もしくは不存在および/または断片化のレベルを測定し、ならびに断片化の不存在もしくは低レベルの断片化を示している胚を選択することにより、正常染色体数を有する胚を選択することを、さらに含む。断片化のレベルに加えて、胚の断片化の動態をも評価することにより、正常染色体数を有する胚を選択する可能性を判定することができる。例えば、微速度顕微鏡検査により測定される、細胞断片化の程度および進展のタイミング、または割球の非対称性を包含すること等の、断片化の追加の判定基準が、胚の評価を補助する。1つまたは複数の細胞パラメータを測定することにより、または胚盤胞形成を予測する、当技術分野で公知のいずれかの他の方法により、胚盤胞に達する可能性を判定することができる。ある態様においては、細胞パラメータは、第1細胞質分裂の持続時間、細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔、細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔、第1細胞分裂までの時間、胚の形態、遺伝子発現パターン、または胚が胚盤胞に達する可能性を判定するための当技術分野で公知のいずれかの他の方法およびそれらの組み合わせを含む。
いくつかの実施形態において、異数体であると判定された胚は、トリソミー胚である。本発明の方法により検出可能な、例示的なトリソミーの非限定的な例としては、トリソミー21(ダウン症候群)、トリソミー18(エドワーズ症候群)、トリソミー13(パトー症候群);トリソミー8(ワーカニー症候群2(Warkany syndrome 2))、トリソミー9、トリソミー16、およびトリソミー22(ネコ眼症候群)が挙げられる。
いくつかの実施形態において、異数体であると判定された胚は、モノソミー胚である。本発明の方法により検出可能な、例示的なモノソミーの非限定的なリストとしては、モノソミー22、モノソミー4、モノソミー5、モノソミー7、モノソミー11、モノソミー17またはモノソミーX(ターナー症候群)が挙げられる。
画像および/または遺伝子発現解析からの発生能の判定
ひとたび細胞パラメータ測定値が得られたら、その測定値を使用して、胚/多能性細胞の発生能を判定する。上述の通り、「発生能」および「発達能力」という用語は、多能性細胞または組織が、成長または発達する能力または可能性を指す。例えば、卵母細胞または胚の場合、発生能は、その卵母細胞または胚が、健康な胚盤胞に成長または発達する能力または可能性であり得る。別の例として、幹細胞の場合、発生能は、1つまたは複数の目的の細胞、例えばニューロン、筋肉、B細胞またはT細胞等に成長または発達する能力または可能性である。いくつかの実施形態において、卵母細胞または胚の発生能は、その卵母細胞または胚が健康な胚盤胞へ発達して;子宮に首尾よく着床し;妊娠期間を経て;および/または生存して誕生する、能力または可能性である。いくつかの実施形態において、多能性細胞の発生能は、その多能性細胞が、1つまたは複数の目的の細胞、例えばニューロン、筋肉、B細胞もしくはT細胞等に発達する;および/またはin vivoで目的の組織に寄与する、能力または可能性である。
「良好な発生能」とは、胚/多能性細胞が、所望の通り発達する可能性が統計的に高いこと、すなわちそれが、所望の通り発達する、55%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上の確率、例えば、100%の確率を有することを意味する。言い換えれば、良好な発生能の判定を得るために使用された細胞パラメータ測定値を示している、100のうちの55、100のうちの60、100のうちの70、100のうちの80、100のうちの90、100のうちの95、または100のうちの100の胚または多能性細胞が、実際に所望の通り発達を続ける。逆に、「不良な発生能」とは、胚/多能性細胞が、所望の通り発達する可能性が統計的に高くないこと、すなわちそれが、所望の通り発達する、50%、40%、30%、20%、10%、5%またはそれ以下の確率、例えば0%の確率を有することを意味する。言い換えれば、不良な発生能の判定を得るために使用された細胞パラメータ測定値を示している、100のうちの50、100のうちの40、100のうちの30、100のうちの20、100のうちの10、または100のうちの5以下の胚または多能性細胞のみが、実際に所望の通り発達を続ける。本明細書において使用される場合、「正常な」または「健康な」胚および多能性細胞は、良好な発生能を示し、一方「異常な」胚および多能性細胞は、不良な発生能を示す。
いくつかの実施形態においては、細胞パラメータ測定値を直接使用して、胚/多能性細胞の発生能を判定する。言い換えれば、測定値の絶対値自体が、発生能を判定するために十分である。微速度撮像を使用して細胞パラメータを測定する実施形態におけるこの例としては、限定されないが、以下が挙げられ、これらのうちのいずれかが単独または組み合わせで、ヒト胚における良好な発生能を示す:(a)約0〜30分間、例えば、約6〜20分間、平均で約14.3±6.0分間持続する細胞質分裂1;(b)約20〜27時間、例えば約25〜27時間持続する、細胞周期1;(c)約8〜15時間、例えば約9〜13時間、平均値は約11.1+/−2.1時間である、細胞質分裂1の収束と細胞質分裂2の開始との間の時間間隔;(d)約0〜5時間、例えば約0〜3時間、平均時間は約1.0+/−1.6時間である、細胞質分裂2の開始と細胞質分裂3の開始との間の時間間隔、すなわち同調性。いずれかが単独または組み合わせで、ヒト胚における不良な発生能を示す直接測定値の例としては、限定されないが、以下が挙げられる:(a)約30分間より長い、例えば、約32、35、40、45、50、55、または60分間以上持続する、細胞質分裂1;(b)約27時間より長い、例えば28、29、または30時間以上持続する、細胞周期1;(c)15時間超、例えば約16、17、18、19、もしくは20時間以上、または8時間未満、例えば約7、5、4、もしくは3時間以下持続する、細胞質分裂1の収束と細胞質分裂2の開始との間の時間間隔;(d)6、7、8、9、または10時間以上である、細胞質分裂2の開始と細胞質分裂3の開始との間の時間間隔。いくつかの実施形態において、胚が良好な発生能を有すると判定されたら、胚を、それが培養されている培養皿から取り出す。いくつかの実施形態においては、それが培養されている培養皿から取り出された、良好な発生能を有すると判定された胚を、女性受容者に移植する。
いくつかの実施形態においては、細胞パラメータ測定値を、基準もしくは対照の胚/多能性細胞からの細胞パラメータ測定値と比較することにより、およびこの比較の結果を使用して、胚/多能性細胞の発生能の判定を提供することにより、使用する。本明細書で使用される「基準」および「対照」という用語は、所与の胚/多能性細胞の細胞パラメータ測定値を解釈し、およびそれに対して発生能の判定を割り当てるために使用される、標準化された胚または細胞を意味する。基準または対照は、所望の表現型、例えば、良好な発生能を有することが知られる胚/多能性細胞であってもよく、従って、陽性基準または陽性対照の胚/多能性細胞であってもよい。あるいは、基準/対照の胚/多能性細胞は、所望の表現型を有さないことが知られる胚/多能性細胞であってもよく、従って、陰性基準または陰性対照の胚/多能性細胞であってもよい。
ある実施形態においては、得られた細胞パラメータ測定値を、単一の基準/対照の胚/多能性細胞からの比較可能な細胞パラメータ測定値と比較して、アッセイされる胚/細胞の表現型に関する情報を得る。さらなる他の実施形態においては、得られた細胞パラメータ測定値を、2つ以上の異なる基準/対照の胚または多能性細胞からの比較可能な細胞パラメータ測定値と比較して、アッセイされる胚/細胞の表現型に関する、より詳細な情報を得る。例えば、評価される胚または多能性細胞から得られた細胞パラメータ測定値を、陽性および陰性両方の胚または多能性細胞と比較して、胚/細胞が目的の表現型を有するかどうかに関する、確実な情報を得ることができる。
例として、正常なヒト胚、すなわち良好な発生能を有する胚における細胞質分裂1は、約0〜30分間、より一般には約6〜20分間、平均して約14.3±6.0分間、すなわち約1、2、3、4、または5分間であり、より一般には約6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20分間、いくつかの場合においては21、22、23、24、25、26、27、28、29、または最大約30分間である。正常な基準の胚で観察されるものと比較して、評価される胚における細胞質分裂1が完了するまでのより長い時間は、不良な発生能を示す。第2の例として、正常な胚における細胞周期1、すなわち受精から細胞質分裂1の完了までの時間は、一般に約20〜27時間、より一般には約25〜27時間、すなわち約15、16、17、18、または19時間、より一般には約20、21、22、23、または24時間、およびより一般には約25、26または27時間で完了する。正常な基準の胚で観察されるものと比較して、評価される胚におけるより長い細胞周期1は、不良な発生能を示す。第3の例として、正常なヒト胚における細胞質分裂1の収束と細胞質分裂2の開始は、約8〜15時間、より頻繁には、約9〜13時間、平均値は約11.1+/−2.1時間;すなわち6、7、または8時間、より一般には約9、10、11、12、13、14、または最大約15時間である。正常な基準の胚で観察されるものと比較して、評価される胚におけるより長いかまたはより短い細胞周期2は、不良な発生能を示す。第4の例として、ヒト胚における、細胞質分裂2の開始と細胞質分裂3の開始との間の時間間隔、すなわち第2および第3有糸分裂の同調性は、一般に約0〜5時間、より一般には約0、1、2または3時間、平均時間は約1.0+/−1.6時間であり;正常な基準の胚で観察されるものと比較して、評価される胚における細胞質分裂2の完了と細胞質分裂3との間のより長い間隔は、不良な発生能を示す。最後に、遺伝子発現レベルを、発生能を評価するためのパラメータとして使用する際、どのようにこの実施形態を適用するかの例として、コフィリン、DIAPH1、ECT2、MYLC2、DGCR8、ダイサー、TARBP2、CPEB1、シンプレキン(Symplekin)、YBX2、ZAR1、CTNNB1、DNMT3B、TERT、YY1、IFGR2、BTF3および/またはNELFのより低い発現レベル、すなわち、正常な基準の2細胞胚で観察されるものと比較して、評価される2細胞胚において1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、50倍、または100倍、より低い発現は、不良な発生能を示し、一方、正常な基準の2細胞胚で観察されるもの以上である発現は、良好な発生能を示す。他の例は、例えば評価される胚/多能性細胞とともに、1つまたは複数の基準の胚または多能性細胞を観察することによる、経験的データに由来し得る。いかなる基準の胚/多能性細胞、例えば、良好な発生能を有する正常な基準試料、または不良な発生能を有する異常な基準試料を使用してもよい。いくつかの場合においては、2つ以上の基準試料を使用してもよく、例えば正常な基準試料および異常な基準試料の両方を使用してもよい。
いくつかの実施形態においては、微速度顕微鏡検査および発現プロファイリング両方ではなく、微速度顕微鏡検査または発現プロファイリングにより得た細胞パラメータ測定値を使用することが望ましい場合がある。他の実施形態においては、微速度顕微鏡検査により得た細胞パラメータ測定値および発現プロファイリングにより得た細胞パラメータ測定値を使用することが、望ましい場合がある。
上述の通り、1つまたは複数のパラメータを測定し、使用して、胚または多能性細胞の発生能を判定することができる。いくつかの実施形態において、単一のパラメータの測定値が、発生能の判定を得るために十分である場合もある。いくつかの実施形態においては、2つ以上のパラメータ、例えば、2細胞パラメータ、3細胞パラメータ、または4つ以上の細胞パラメータの測定値を使用することが望ましい場合もある。
ある実施形態において、複数のパラメータをアッセイすることが、より高い感度および特異度を提供し得るため、複数のパラメータをアッセイすることが望ましい場合もある。感度とは、そうであると正確に識別された、実際の陽性の比率を意味する。これは、数学的に:
(真陽性の数)
感度= --------------------------
(真陽性の数+偽陰性の数)
として表すことができる。
従って、「陽性」が、良好な発生能を有する、すなわち胚盤胞に発達する胚であり、「陰性」が、不良な発生能を有する、すなわち胚盤胞に発達しない胚である方法において、100%の感度とは、試験が、胚盤胞に発達するすべての胚をそのように認識することを意味する。いくつかの実施形態において、アッセイの感度は、約70%、80%、90%、95%、98%またはそれ以上、例えば100%であり得る。特異度とは、そうであると正確に識別された、実際の陰性の比率を意味する。これは、数学的に:
(真陽性の数)
特異度= --------------------------
(真陰性の数+偽陽性の数)
として表すことができる。
従って、「陽性」が、良好な発生能を有する、すなわち胚盤胞に発達する胚であり、「陰性」が、不良な発生能を有する、すなわち胚盤胞に発達しない胚である方法において、100%の特異度とは、試験が、胚盤胞に発達しない、すなわち胚盤胞期前に停止する、すべての胚を、そのように認識することを意味する。いくつかの実施形態において、アッセイの特異度は、約70%、80%、90%、95%、98%またはそれ以上、例えば100%であり得る。
以下の実施例のセクションおよび図7に示す通り、3つのパラメータの使用は、94%の感度および93%の特異度を提供し、カットオフポイントは、胚盤胞分布の標準偏差の3倍である。言い換えれば、本発明の方法は、胚盤胞に発達するであろう胚の数を94%の確率(感度)で、および胚盤胞期の前に停止するであろう胚の数を、93%の確率(特異度)で、正確に識別することができる。加えて、指定の平均値および/またはカットオフポイントを、これらの値を算出するために使用したデータセットおよび具体的な用途に応じて、修正してもよい。
画像解析からの異数性または染色体内容の判定
ひとたび細胞パラメータ測定値が得られたら、その測定値を使用して、胚の異数性の状況および/または染色体内容を判定する。上述の通り、「異数性」とは、限定されないが、例えばトリソミー、モノソミーおよびモザイク現象を含む、有糸分裂のエラーまたは減数分裂のエラーに起因するものを含む、異常な染色体内容を有する胚を指す。
「正常」または「正常染色体数」とは、その種の適切な数の対の染色体を含む胚を意味する。例えば、「正常」なヒト胚は、23の染色体の対、合計46の染色体を含む。
いくつかの実施形態においては、細胞パラメータ測定値を使用して、胚/多能性細胞の異数性の状況および/または染色体数を直接判定する。言い換えれば、測定値の絶対値自体が、胚/多能性細胞の異数性の状況および/または染色体数を判定するために十分である。微速度撮像を使用して細胞パラメータを測定する実施形態におけるこの例としては、以下が挙げられ、これらのうちのいずれかが単独または組み合わせで、ヒト胚における異数性を示す:(a)約0〜約30分間の正常範囲外である、細胞質分裂1;(b)約8〜約15時間の正常範囲外である、細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;(c)約0〜約5時間の正常範囲外である、細胞質分裂2と細胞質分裂3との間との間の時間間隔。具体的には、以下のうちのいずれか1つが単独または組み合わせで、異数性を示す:(a)約30分超である、細胞質分裂1;(b)約8時間未満である、細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および/または(c)約90分超である、細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔。
いくつかの実施形態においては、細胞パラメータ測定値を使用して、検出された異数性が、有糸分裂または減数分裂のエラーの結果であるかどうかを判定することができる。例えば、以下の細胞測定値のうちの1つまたは複数が、単独または組み合わせで、検出された異数性が有糸分裂のエラーに起因して生じることを示す:(a)約35分間より長い、例えば約35.5、36、38、40、42、44、46、48、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100分間以上である、細胞質分裂の持続時間;(b)約7時間より短い、例えば約6.5、6、5、4、3、2、または1時間以下である、細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および/または(c)約2時間より長い、例えば約2.5、3、4、5、6、7、8、または9時間以上である、細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔。具体的には、以下の測定値が、単独または組み合わせのどちらかで、特に、有糸分裂のエラーに起因する異数性を示す:(a)約36.0±66.9分間である、第1細胞質分裂の持続時間;(b)約6.4±6.6時間である、細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および/または(c)約2.0±3.9時間である、細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔。別の例においては、以下の細胞測定値のうちの1つまたは複数が、単独または組み合わせで、検出された異数性が減数分裂のエラーに起因して生じることを示す:(a)約100分間より長い、例えば約105、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、または400分間以上である、細胞質分裂の持続時間;(b)約4時間より短い、例えば約3.5、3、2、または1時間以下である、細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および/または(c)約2時間より長い、例えば約2.5、3、4、5、6、7、8、または9時間以上である、細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔。具体的には、以下の測定値が、単独または組み合わせのどちらかで、特に、有糸分裂のエラーに起因する異数性を示す:(a)約117.2±166.5分間である、第1細胞質分裂の持続時間;(b)約4.0±5.2時間である、細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および/または(c)約2.0±4.3時間である、細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔。別の例においては、細胞パラメータ測定値を使用して、正常な胚から、異数性が1つまたは複数の有糸分裂のエラーに起因する異数性胚、異数性が1つまたは複数の減数分裂のエラーに起因する異数性胚まで、重症度のレベルの増加に応じて、胚をランク付けする。
いくつかの実施形態においては、細胞パラメータ測定値を使用して、正常染色体数を有する1つまたは複数の胚を選択する。言い換えれば、測定値の絶対値自体が、胚が正常染色体数を有するかどうかを判定するのに十分である。微速度撮像を使用して細胞パラメータを測定する実施形態におけるこの例としては、以下が挙げられ、これらのうちのいずれかが、単独または組み合わせで、ヒト胚における正常染色体数を示す:(a)約0〜30分間、例えば、約6〜20分間、平均で約14.4±4.2分間持続する、細胞質分裂1;(b)約20〜27時間、例えば約25〜27時間持続する、細胞周期1;(c)約8〜15時間、例えば約9〜13時間、平均値は約11.8+/−0.71時間である、細胞質分裂1の収束と細胞質分裂2の開始との間の時間間隔;(d)約0〜5時間、例えば約0〜3時間、平均時間は約0.96+/−0.84時間である、細胞質分裂2の開始と細胞質分裂3の開始との間の時間間隔、すなわち同調性。別の実施形態においては、正常染色体数を根拠として、細胞パラメータ測定値により選択された1つまたは複数の胚を、それを必要とする女性に提供する。
発生能および/または染色体異常の報告
いくつかの実施形態において、胚または多能性細胞の評価には、本発明の胚/多能性細胞の当業者の評価、例えば「発生能の評価」、「染色体異常の評価」等を含む、書面の報告書を作成することが含まれる。従って、本発明の方法は、そのような評価の結果を提供する報告書を作成または出力するステップをさらに含んでもよく、その報告書は、電子媒体(例えば、コンピュータモニタ上の電子表示)の形態、または有形媒体(例えば、紙に印刷された報告書または他の有形媒体)の形態で提供することができる。
本明細書に記載される「報告書」とは、本発明の方法により得られた評価に関する目的の情報を提供する報告要素を含む、電子または有形の文書である。本発明の報告書は、完全にまたは部分的に、電子的に作成することができる。本発明の報告書は、少なくとも、本発明の胚または多能性細胞の発生能の評価、染色体異常の存在の確率の評価等を含む。本発明の報告書は、以下のうちの1つまたは複数をさらに含むことができる:1)試験施設に関する情報;2)業務提供者の情報;3)対象データ;4)試料データ;5)評価がどのようにして得られたかに関する情報、例えば、a)測定した細胞パラメータ測定値、b)有る場合は、使用された基準値、を提供する詳細な評価報告セクション;および6)他の特色。
報告書は、試料収集および/またはデータ生成が行われた病院、クリニック、または研究所に関係する、試験施設に関する情報を含んでもよい。試料収集は、どのように試料を作製したか、例えば、それを対象からどのように採取したか、および/またはそれをどのように培養したかなどを含むことができる。データ生成は、どのように画像を獲得したか、またはどのように遺伝子発現プロファイルを解析したかを含むことができる。この情報は、例えば、試験施設の名称および所在地、アッセイを実施したおよび/または入力データを入力した研究所技術者の身元、アッセイを実施および/または解析した日付および時間、試料および/または結果データが保管される場所、アッセイで使用した試薬(例えば、キット等)のロット番号等に関する、1つまたは複数の詳細を含むことができる。この情報の報告欄は、一般的に、ユーザーにより提供される情報を使用して作成することができる。
報告書は、ユーザーが所在する医療機関の外部、または医療機関の内部に所在し得る、業務提供者に関する情報を含んでもよい。そのような情報の例としては、業務提供者の名称および所在地、審査者の氏名、および必要な場合または所望の場合、試料調製および/またはデータ生成を行った個人の氏名を挙げることができる。この情報を有する報告欄は、一般的に、予め書かれた選択項目の中から(例えば、ドロップダウンメニューを使用して)選択可能な、ユーザーにより入力されたデータを使用して作成することができる。報告書における、業務提供者の他の情報には、結果および/または解釈的報告に関する技術情報についての連絡先が含まれ得る。
報告書は、卵母細胞または多能性細胞を採取した対象の病歴、患者の年齢、体外受精または卵細胞質内精子注入サイクルの特徴(例えば受精率、3日目の卵胞刺激ホルモン(FSH)レベル)、および、いつ卵母細胞が採取されたか、接合体/胚コホートパラメータ(例えば、胚の総数)を含む、対象データセクションを含んでいてもよい。この対象データを統合して、胚の評価を改善し、および/または移植する胚の最適数の判定を補助することもできる。報告書はまた、管理上の対象データ(すなわち、発生能の評価に必須ではないデータ)、例えば対象を識別するための情報(例えば、氏名、対象の生年月日(DOB)、性別、郵送先住所および/または居住先住所、医療記録番号(MRN)、医療機関の部屋番号および/またはベッド番号)、保険情報等)、発生能の評価を指示した対象の医師または他の医療専門家、ならびに、指示した医師と異なる場合は、対象のケアに関して責任のある職員医師(例えば、家庭医)の氏名を含んでいてもよい。
報告書は、評価において解析された生物試料に関する情報、例えば試料の種類(胚または多能性細胞、および多能性細胞の種類)、どのように試料が取り扱われたか(例えば、保管温度、調製プロトコル)、ならびに収集された日付および時間等を提供し得る、試料データセクションを含んでいてもよい。この情報を有する報告欄は、一般的に、ユーザーにより入力されたデータを使用して作成することができ、そのデータのいくつかは、予め書かれた選択項目(例えば、ドロップダウンメニューを使用した)として提供されてもよい。
報告書は、本明細書に記載される評価/判定がどのように得られたかに関する情報を含み得る、評価報告セクションを含んでもよい。解釈的報告は、例えば、評価される胚または多能性細胞の微速度画像、および/または遺伝子発現結果を含むことができる。報告書の評価部分は、所望により、推奨セクションを含むこともできる。例えば、結果が胚の良好な発生能を示す場合、推奨には、当技術分野において推奨される通り、不妊治療の間、限られた数の胚を子宮に移植するという推奨が含まれ得る。
報告書が、付加的要素または修正された要素を含み得るということが、容易に理解されるであろう。例えば、電子報告書の場合、報告書は、報告書の選択された要素に関するより詳細な情報を提供する内部または外部データベースを提示する、ハイパーリンクを含むことができる。例えば、報告書の患者のデータ要素は、機密データベースに保管されている、電子的な患者の記録、またはそのような患者の記録にアクセスするためのサイトへのハイパーリンクを含むことができる。この後者の実施形態は、病院内システムまたはクリニック内環境において、興味深いものであり得る。電子形式である場合、報告書は、好適な物理的媒体、例えば、コンピュータメモリ、zipドライブ、CD、DVD等の、コンピュータに読み込み可能な媒体上に記録される。
報告書が一般的に、少なくともユーザーにより要求される解析(例えば、発生能の評価)を提供するために十分な要素を含む場合に限り、報告書が上述のすべてまたはいくつかの要素を含むことができる、ということが容易に理解されるであろう。
実用性
上述の通り、本発明の方法を使用することにより、胚または多能性細胞を評価してそれらの発生能を判定し、異数性を検出し、正常染色体数を有する胚を選択し、および/または異数性型に基づいて胚をランク付けすることができる。これらの判定を、臨床判断および/または行動の指針として、使用することができる。例えば、妊娠率を増加させるために、医師はしばしば複数の胚を患者に移植するが、これは母体および胎児両方に健康上のリスクを呈する多胎妊娠をもたらす可能性がある。本発明の方法から得られた結果を使用することにより、移植される胚が胎児に発達する発生能を移植前に判定し、リスクを最小化しつつ満期妊娠の成功の確率を最大化するために、いくつの胚を移植するかを、実施者が判断することができる。さらに、例えば、トリソミー16などの致死性の染色体異常またはトリソミー21などの非致死性の異常を有し得る胚を選択しないことが可能なことにより、妊娠率を増加させるだけでなく、流産率を減少させ、かつ非致死性の異数性の出生率を減少させるために、本発明の方法を使用して、異数体ではない、正常染色体数を有する胚を、移植のために選択することができる。
以下の本発明の方法により得られた評価は、胚または多能性細胞の群中の胚または多能性細胞を、その発生能に関してランク付けすることにおいても、用途を見出し得る。例えば、いくつかの例においては、複数の胚が胚盤胞に発達する可能性がある、すなわち良好な発生能を有する。しかしながら、いくつかの胚は、他よりも、胚盤胞期またはより高品質の胚盤胞に達する可能性が高い、すなわち他の胚よりも、より良い発生能を有する。そのような場合において、本発明の方法を使用して、群中の胚をランク付けすることができる。そのような方法においては、各胚/多能性細胞の1つまたは複数の細胞パラメータを測定して、各胚/多能性細胞の細胞パラメータ測定値を得る。次いで、各胚または多能性細胞からの1つまたは複数の細胞パラメータ測定値を使用して、互いに対する、胚または多能性細胞の発生能を判定する。いくつかの実施形態においては、各胚または多能性細胞からの細胞パラメータ測定値を、それらを直接互いに比較して、胚または多能性細胞の発生能を判定することにより、使用する。いくつかの実施形態においては、細胞パラメータ測定値を基準の胚/多能性細胞からの細胞パラメータ測定値と比較して、各胚/多能性細胞の発生能を判定し、その後、各胚/多能性細胞の判定された発生能を比較して、互いに対する胚または多能性細胞の発生能を判定することにより、各胚または多能性細胞からの細胞パラメータ測定値を使用する。このようにして、例えば、複数の接合体/胚を評価する実施者は、リスクを最小化しつつ、満期妊娠の成功の確率を最大化するために、最高の品質の胚、すなわち最高の発生能を有するもののみを選択し、移植することができる。
同様に、本発明の方法は、胚を、それらの染色体内容に基づいてランク付けすることにおいても用途を見出すことができる。例えば、いくつかの例において、複数の胚が異数体であることが判明する。しかしながら、異数性のうちのいくつかは、他よりもより軽度である。例えば、有糸分裂の細胞分裂におけるエラーに起因する異数性は、減数分裂の細胞分裂におけるエラーに起因する異数性よりも、一般的により軽度である。このような場合、本発明の方法を使用して、群中の胚をランク付けすることができる。このような方法においては、各胚の1つまたは複数の細胞パラメータを測定して、各胚の細胞パラメータ測定値を得る。その後、各胚からの1つまたは複数の細胞測定値を使用して、胚が異数体であるかどうか、およびそれが異数体である場合、その異数体が1つまたは複数の有糸分裂のエラーに起因するより軽度の異数性であるか、または1つまたは複数の減数分裂のエラーに起因するより重度の異数性であるかを判定する。いくつかの実施形態においては、各胚または多能性細胞からの細胞パラメータ測定値を、それらを互いに直接比較して、胚の異数性の型/重症度を判定することにより、使用する。いくつかの実施形態においては、細胞パラメータ測定値を基準の胚からの細胞パラメータ測定値と比較して、各胚/多能性細胞の異数性の型/重症度を判定し、その後、判定された各胚の異数性を比較して、互いに相対的な胚の異数性の型/重症度を判定することにより、各胚または多能性細胞からの細胞パラメータ測定値を使用する。このようにして、例えば、複数の接合体/胚を評価する実施者は、リスクを最小化しつつ、満期妊娠の成功の可能性を最大化するために、最高の品質の胚、すなわち、正常であるかまたはより軽度の異数性型を有するもののみを選択し、移植することができる。
本発明の方法に従って得られた評価は、in vitroで成熟させた卵母細胞およびin vitroで培養した幹細胞の発生能を判定することにおいても、用途を見出すことができる。本発明の方法により得られた卵母細胞の発生能に関する情報は、実践者が受精させるための卵母細胞を選択するための指針となり得、これらの卵母細胞から胚盤胞を誘導する上で、より高い成功率をもたらす。同様に、幹細胞の発生能に関する情報は、例えば、それを必要とする対象において、in vivoで組織を再構成または置き換える処置において使用するための、実施者の幹細胞の選択において、知識を提供することができる。
試薬、デバイスおよびキット
上述の方法のうちの1つまたは複数を実施するための、試薬、デバイス、およびそのキットもまた提供する。本発明の試薬、デバイス、およびそのキットは、非常に多様であり得る。目的の試薬およびデバイスは、前述の細胞パラメータのうちのいずれかを測定する方法に関して上で述べられたものを含み、ここで、そのような試薬は、実施される特定の測定プロトコルに応じて、培養皿、培地、顕微鏡、撮像ソフトウェア、撮像解析ソフトウェア、核酸プライマー、核酸プローブのアレイ、抗体、シグナル生成システム試薬等を含み得る。例えば、試薬は、上述の通り、コフィリン、DIAPH1、ECT2、MYLC2/MYL5、DGCR8、ダイサー/DICER1、TARBP2、CPEB1、シンプレキン(Symplekin)/SYMPK、YBX2、ZAR1、CTNNB1、DNMT3B、TERT、YY1、IFGR2/IFNGR2、BTF3、およびNELF遺伝子のうちの1つまたは複数に対して特異的なPCRプライマーを含んでもよい。試薬の他の例としては、1つまたは複数の目的の遺伝子に対して特異的なプローブを含むアレイ、または、これらの目的の遺伝子によってコードされるタンパク質に対する抗体が挙げられる。
上述の構成要素に加え、本発明のキットは、本発明の方法を実施するための指示を、さらに含む。これらの指示は、本発明のキットに、種々の形態で含まれ得、それらのうちの1つまたは複数が、キットに含まれ得る。これらの指示が含まれ得る1つの形態は、好適な媒体または基質上に印刷された情報、例えば、情報が印刷された1枚または複数の紙として、キットのパッケージ中、添付文書中等に提示され得る。さらに別の手段は、情報が記録された、コンピュータに読み込み可能な媒体、例えば、ディスケット、CD等であろう。提示され得るさらに別の手段は、インターネット経由で使用して、移動サイトの情報にアクセスすることができる、ウェブサイトのアドレスである。あらゆる都合の良い手段が、キット中に提示され得る。
顕微鏡アレイによる自動細胞撮像
上述の方法のうちのいくつかは、微速度撮像を介して、胚および幹細胞の発達を観察する機能を必要とする。これは、標準のインキュベーター内に収まり得る、小型のマルチチャネル顕微鏡アレイから成るシステムを使用して、達成することができる。これは、皿を物理的に移動する必要なく、複数の試料を迅速かつ同時に撮像することを可能にする。図22に示す、1つの実例となるプロトタイプは、暗視野照明を備える3チャネル顕微鏡アレイから成るが、他の型の照明を使用することもできる。「3チャネル」とは、3つの別個の培養皿を同時に撮像する、3つの独立した顕微鏡を有することを意味する。ステッパーモーターを、焦点合わせのための焦点位置の調節または3D画像スタックを取得するために使用する。照明には白色光LEDを使用するが、ヒト胚において、赤色または近赤外(IR)LEDを使用することにより、細胞膜と細胞の内部部分とのコントラスト比を改善し得ることが観察されている。この改善されたコントラスト比は、手動および自動両方の画像解析を補助することができる。さらに、赤外領域へ移動することにより、試料に対する光毒性を低減することができる。画像は、低コスト、高解像度ウェブカメラにより撮像されるが、他の型のカメラを使用することもできる。
図22に示す通り、上述のプロトタイプシステムの各顕微鏡を使用して、1〜25個までの胚を含み得る培養皿を撮像する。顕微鏡は、LEDにより生成されるあらゆる熱(短い露光時間においては非常に小さい)の消散を補助するためのヒートシンクに連結された、白色光LEDからの光を収集する。光は、直接光を遮るための従来の暗視野パッチを通過し、集光レンズを通って、培養され研究されている胚を保持する培養皿である、「ペトリ皿」と標識された検体上に達する。培養皿は、皿がインキュベーターへ、およびインキュベーターから運ばれる間、胚の順序を維持し、それらが移動するのを防ぐ補助をする、ウェルを有してもよい。ウェルは、胚が同一の培地ドロップを共有できるように、十分緊密に配置され得る。分散した光は、その後、顕微鏡の対物レンズを通過し、次いで色消しダブレットを通り、CMOSセンサ上に達する。CMOSセンサはデジタルカメラとして機能し、上述の画像解析および追跡のためのコンピュータに接続されている。
この設計は、非常により多くのチャンネルおよび異なる照明技術を提供するように、容易に拡張可能であり、試料を供給するための流体デバイスを収容するように変更することができる。さらに、温度、CO(pHの制御のため)、および培地等の培養条件を、フィードバックおよび撮像データに基づいてリアルタイムで最適化するフィードバック制御システムと、本設計を統合することができる。このシステムを使用して、体外受精(IVF)または卵細胞質内精子注入(ICSI)処置のための胚の生存能を判定する上で実用性を有する、ヒト胚の発達の微速度ビデオを取得した。他の用途には、幹細胞療法、薬剤スクリーニング、および組織工学が含まれる。
デバイスの一実施形態において、照明は、アルミニウムヒートシンク上に取り付けられ、BuckPuck電流制御ドライバーにより電力供給されたLuxeon白色発光ダイオード(LED)により提供される。LEDからの光は、コリメーティングレンズを通過する。その後、コリメートされた光は、図22に示されるレーザー加工された特別仕様のパッチストップを通過し、非球面の集光レンズを使用して、中空の光錐に焦点が合わせられる。試料を直接通過する光は対物レンズによって排除され、一方、試料により分散される光が、収集される。一実施形態においては、20X倍率のOlympus対物レンズを使用するが、視野を増大させるためにより小さい倍率を使用することもでき、または解像度を増加させるためにより大きな倍率を使用することもできる。次いで収集された光は、色収差および球面収差の作用を低減するために、色消しダブレットレンズ(すなわち、鏡筒)を通過する。あるいは、撮像対物レンズから収集された光は、鏡筒の代替として機能する、反対の方向を向いた別の対物レンズを通過することもできる。一構成において、撮像対物レンズは、10X対物レンズであってもよく、一方鏡筒対物レンズは4X対物レンズであってもよい。得られた画像は、2メガピクセルの解像度(1600x1200ピクセル)を有するCMOSセンサにより撮像される。異なる種類のセンサおよび解像度を使用することもできる。
図23Aは、3つの同一の顕微鏡を有するマルチチャネル顕微鏡アレイの概略図である。すべての光学構成要素は、鏡筒に取り付けられる。アレイシステムの操作において、ペトリ皿は、手動の2軸傾斜ステージ上に取り付けられたアクリルプラットフォーム上に配置され、これにより光学軸と相対的な結像面の調節が可能になる。これらのステージは顕微鏡の底部に固定され、最初の位置合わせ後は動かない。LED、コリメータレンズ、パッチストップ、および集光レンズからなる照明モジュールは、位置決めおよび照明光の焦点合わせのために、手動のxyzステージ上に取り付けられる。対物レンズ、色消しレンズ、およびCMOSセンサからなる撮像モジュールもまた、視野の位置決めおよび対物レンズの焦点合わせのために、手動のxyzステージに取り付けられる。撮像モジュールのうちの2つ全ては、リニアスライドに取り付けられ、ステッパーモーターを使用して作動するシングルレバーアームにより支持される。これは、コンピュータ制御の焦点合わせおよび画像スタックの自動撮像を可能にする。自動の焦点合わせおよび作動の他の方法を使用することもできる。
顕微鏡アレイは、図23Bに示す標準のインキュベーター内に配置した。CMOSイメージセンサは、USB接続を介して、インキュベーター内部に位置する単一のハブに接続され、それは他の通信および電力線とともに、外部PCへと接続される。全ての電気ケーブルは、シリコーン接着剤で密封されたゴム製ストッパーの中心を通って、インキュベーターから出ていく。
上述の顕微鏡アレイを使用して、初期のヒト胚の発達および接合体から胚盤胞期までの確認された成長の微速度画像を記録した。4つの異なる実験により、合計242個の胚をモニタした。この群のうち、100個を最大5日目または6日目まで撮像した;他は、遺伝子発現解析のために、様々な時点で撮像ステーションから取り除いた。撮像ソフトウェアおよび撮像された胚のスクリーンショットを、図24に示す。画像あたり約1秒の低露光で、5分毎に画像を撮像した。試料が受けた総光量は、24分間の連続露光に相当し、これはIVF診療所における取扱いの間に受ける総レベルと類似する。画像あたり1秒の持続時間の露光は、低減することができる。ヒト胚で作業する前に、胚盤胞形成率および遺伝子発現パターンの両方が撮像プロセスによって影響を受けないことを確実にするために、マウスの着床前の胚で、広範な対照実験を実施した。
図25および26は、微速度の連続画像(time-lapse sequence)から選択された画像を示す。1日目、2.5日目、4日目、および5.5日目の画像を示す。図25に示す連続画像(sequence)については、9個の胚のうちの3個が胚盤胞に発達し、図26に示す連続画像(sequence)については、12個の胚のうち5個が、胚盤胞に発達した。胚は3日目に培地交換を受けたたため、写真の視野におけるそれらの位置は移動しているが、個々の胚を継時的に追跡した。発達中の胚の時期特異的な必要条件を満たすために、逐次培地の使用が必要である。培地交換の間、胚を、数分間撮像ステーションから取り出し、新たなペトリ皿へ移動した。培地交換の間、各胚の同一性の追跡を維持するために、一つの皿から他への試料の移動をビデオテープで録画して、胚が混同されなかったことを確認した。このプロセスを、遺伝子発現解析のための試料収集の間にも使用した。胚の同一性の追跡の問題は、胚を特定の順序で配置するのを補助するためのウェルを使用することにより、軽減することができる。
マイクロウェルを備えたペトリ皿
ペトリ皿を異なるステーション間で移動する際、時には胚が移動され、胚の同一性の追跡を維持することが困難になり得る。これは、微速度撮像が1つのステーションで実施され、胚がその後、胚の選択と移植のために第2のステーションに移動される場合、問題となる。1つの方法は、胚を個々のペトリ皿で培養することである。しかしながら、これは、各胚がそれぞれの培地ドロップを有することを必要とする。通常のIVFまたはICSI処置において、患者の胚のすべてを同一のペトリ皿および同一の培地ドロップ中で培養することが一般に望ましい。この問題に対処するために、マイクロウェルを備えた特別仕様のペトリ皿を設計した。これは、インキュベーターまたは撮像ステーションへ、またはそれらからの移動の際に、胚が移動することを防ぎ、ペトリ皿上のそれらの配置を維持する。さらに、胚が同一の培地ドロップを共有でき、および同一の顕微鏡によりすべてを同時に見ることができるように、ウェルは十分小さく、緊密に配置される。各マイクロウェルの底面は、光学品質仕上げになっている。図27Aは、一実施形態の寸法を伴う図を示す。この型においては、1.7x1.7mmの視野内に、25のマイクロウェルが緊密に配置される。図27Bは、皿表面から約100ミクロンくぼんだ、マイクロウェルの3D図を示す。識別を補助するために、文字、数字、および他の印を含む基準マーカー(fiducial marker)が、皿の上に含まれている。
限定されないが、それぞれ2011年、2月23日および2011年、9月21日に出願された、米国特許第61/445,863号および同第61/537,336号各々の全内容および数字を含む、本明細書に引用されるすべての参考文献は、参照によりその全体がすべての目的のために組み込まれる。
以下の実施例は、開示と本発明をどのように作成・使用するかを当業者に示すためのものであり、かつ、発明者らが発明だと見なしている範囲を限定する目的のものでも、以下に示す実験が、行った実験の全てまたは行った実験のみだということを示す目的のものでもない。使用した数(例えば量、温度など)に関しては、正確さを確保するように努めたが、多少の実験誤差および偏差も含まれる。特段の記載のない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧か或いは大気圧に近い。
試料の供給源
本試験で使用した胚は全て、複数の胎生学者が数年間かけて回収し、受精させて凍結保存したものであった。患者一人当たりの胚の平均数は、我々の試験においては3個であり、IVF施設の通常業務で対応した全ての年齢群を含めた。標準的なロング・ルプロン法(cdc.gov/art)によって刺激した。凍結保存は、余剰なヒト胚を凍結保存液(1.5Mの1,2プロパンジオール+0.2Mのショ糖)中に入れて、25分間、室温(22+2℃)に置き、次いで胚を緩慢凍結法(1分当たり−1℃で−6.5℃まで;5分間保持;蒔種;5分間保持;−0.5℃/分で−80Cまで;液体窒素に沈める)で凍結することによって行った。委員会。保護されている医療情報で、これらの胚に関連づけられるものはなかった。
多数の凍結保存胚を確認し、以下のような観察を行った。1)胚は、以下を含む特徴をに関して、正常な胚発生を示すタイミングを示した:2細胞への卵割(2日目の早いうちに起こる)、RNA分解の開始(1〜3日目に起こる)、4細胞および8細胞への卵割(それぞれ2日目と3日目に起こる)、胚性ゲノムの活性化(8細胞期の3日目に起こる)、および桑実胚と胚盤胞の形成(それぞれ4日目と5日目に生じる)。2)胚は、臨床現場で得られる胚で典型的である胚盤胞期への到達おいて、有効性を示した。これは、1細胞期で凍結保存する前に胚を発生するかしないかで「選別(トリアージ)」せず、胚を2PN期で凍結保存したこと、およびIVFクリニックで遭遇した胚(すなわち、通常、胚は発生3日目または胚盤胞期で凍結保存される)の全体から構成されているという事実によるものと考えられる。従って、我々のデータから、これらの胚が通常IVFクリニックで見られるのと同様の胚盤胞形成率を示すことが確認された。3)これまでの研究から、2PN期で凍結した胚が、発生、着床、臨床上の妊娠、および出産に関して、新鮮胚と同等の能力を示すことが分かっている。凍結卵母細胞に関する他の研究からも同様の結果が得られていることから、ヒトの胚発生の最も初期の事象は、凍結保存した後でも適切な時系列を維持していることが示唆されている。4)我々は、受精時期または融解時間に依存しないパラメータに焦点を当てた。測定した第1のパラメータ(最初の細胞質分裂に要する時間)は短い時間(およそ10〜15分)であり、かつ、本試験の受精時期には依存していない(最終的な結果にかかわらず、全ての胚について独立して測定することができる)。さらに、続くパラメータは全て、この最初の測定点との関連で測定し、胚盤胞まで発生することができた胚と胚盤胞にならなかった胚との間で比較を行った。5)最後に、正常で新鮮な胚と同じ時間枠で発生することが知られている、3PNの新鮮な(凍結していない)胚についても記載する。我々は、スタンフォードのIVFクリニックで得られた新鮮な3PN胚のパラメータについても比較を行い、それらと凍結保存胚または既に出版されている報告との間に違いが認められないことを確認した。
実験計画
4回の実験で、242個の前核期胚(それぞれ、61個、80個、64個および37個)を追跡した。実験では毎回、1日目にヒトの接合体を融解し、小集団で、複数のプレートで培養した。各プレートをそれぞれ独立して、それぞれ別の撮像ステーションを使用して、微速度顕微鏡により、暗視野照明下で観察した。およそ24時間ごとに、胚の入ったプレートを1つ撮像システムから取り、高処理のリアルタイム定量的PCRによる遺伝子発現の解析用に、単一の胚か或いは単一の細胞(割球)のいずれかを回収した。通常、それぞれのプレートには、回収時点で予想された発生段階に達していた胚の混合物(「正常」と呼ぶ)、およびより前段階で発生が停まったか若しくは発生が遅れた胚の混合物、または多くが断片化を起こした胚の混合物(「異常」と呼ぶ)が入っていた。胚は、単一のインタクトな胚として、または単一の割球に分離して、そのいずれかを解析し、その後、遺伝子特異的にRNAを増幅した。胚のうちのいくつか(242個中の100個)については、5日目または6日目まで撮像し、胚盤胞の形成を観察した。
ヒト胚の培養および顕微鏡観察
貯蔵タンクの液体窒素から凍結保存バイアルを取り出し、室温に置くことでヒト胚を融解した。融解したらバイアルを開け、胚を手術用顕微鏡で目視観察した。その後、バイアルの内容物を3003培養皿の底部に注いだ。胚が液滴の中に入るようにして、各胚の生存状態を評価・記録した。室温で、1.0Mの1,2プロパンジオール+0.2Mのショ糖の入った3037培養皿に胚を移して5分おき、その後0.5Mの1,2プロパンジオール+0.2Mのショ糖で5分、さらに、0.0Mの1,2プロパンジオール+0.2Mのショ糖に5分おいた。次いで胚を、10%のQuinn’s Advantage血清タンパク質代用物(SPS;CooperSurgical)を添加したQuinn’s Advantage卵割培地(CooperSurgical)で1〜3日目まで培養し、3日目以降は、10%のSPSを添加したQuinn’s Advantage胚盤胞培地(CooperSurgical)を使用し、油を使った微小滴中で培養した。全実験で、同型の卵割期培地を使ったが、最初の実験の間、2つのステーションでは、Global培地(Life Global、ギルフォード、コネチカット)を使用した。この少さな亜集団(12個)では、胚は胚盤胞形成率はやや低かった(12個中3個、25%)が、この群に対する我々の予測パラメータの感受性と特異性は両方とも100%であった。
微速度撮像を、複数の試料について同時に解析を行い、また、異なる装置を使った場合のデータの一貫性を確認するために、複数のシステムを使って行った。このシステムは、以下の個別の顕微鏡を7台含むものであった。(1)東海ヒットの加熱ステージ、白色のLuxeon LED、および暗視野照明用開口部を備えたオリンパスのIX−70/71型顕微鏡2台;(2)加熱ステージ、白色のLuxeon LED、およびホフマン変調コントラスト照明を備えたオリンパスのCKX−40/41型顕微鏡2台(注:暗視野照明の方がパラメータの測定に好ましいと決定した後は、これらのシステムは、4回の実験のうちの初回にのみ使用した。);並びに(3)標準的なインキュベーターの中に収まる、白色のLuxeon LEDと暗視野照明用開口部を備えた、特別仕様の3チャンネル小型顕微鏡装置一式。これら、異なるシステム上で培養した胚の発生様式、胚盤胞形成率、または遺伝子発現プロファイルに有意な差がないことを認めた。実際のところ、複数のシステムおよび実験にわたって、胚盤胞予測に関する我々のパラメータは一貫していた。
全システムの光の強度は、LEDの低電力と(一般的な100Wのハロゲン球と比較して)、およびカメラセンサーの感度が高かったために、医療用顕微鏡(assisted reproduction microscope)で一般的に使用されているものよりも有意に低かった。473nmの波長での、医療用顕微鏡(オリンパスIX−71、ホフマン型モジュレーションコントラスト)の一般的な光量を光量計を使用して測定するとおよそ7〜10mWの範囲(倍率による)であったが、我々の撮像システムの同じ波長での光量は0.2〜0.3mWの範囲であった。5または6日目まで5分毎に、露光時間を1秒として画像を捕捉した。これは、連続しておよそ24分間露光した結果となった。これは0.3mWの出力では、一般的な医療用顕微鏡下でおよそ1分間露光したのと同程度である。
関連する撮像および遺伝子発現実験の間、それぞれの胚を個別に追跡するために実体顕微鏡にビデオカメラを設置して、培地を交換する間と試料を回収する間の試料の移動過程を記録した。マウスの着床前の胚(n=56)と、より小さい亜集団のヒト胚(n=22)を使って対照実験も実施した。撮像した胚と対照の胚の胚盤胞形成率に有意な差は認められなかった(p=0.96)。
高処理qRT−PCR解析
単一胚または単一割球についてのqRT−PCR解析を行うために、胚をまず酸性タイロード液で処理して透明帯を除去した。単一割球を回収するため、Ca2+とMg2+を含まず、HEPESの入ったQuinn’s Advantage培地(CooperSurgical)を使用して、胚を5〜20分間、37℃で、注意深くピペット操作しながらインキュベートした。試料を回収して、そのまま10μlの反応緩衝液に加えた。その後、既に記載のあるように、1ステップで逆転写/プレ増幅反応を行った。逆転写およびプレ増幅反応には、プールしておいたABIのassay−on−demandq RT−PCRのプライマーとプローブの混合液(20×、アプライドバイオシステムズ)を遺伝子特異的なプライマーとして使用した。高処理のqRT−PCR反応を、フリューダイム社のBiomark96.96Dynamic Arraysを使用し、ABIのassay−on−demand qRT−PCRプローブを使って既に記載したように行った。全試料について同じものを3つか4つ準備して試験した。qRT−PCRのデータ解析は、qBasePlus(Biogazelle)、マイクロソフト社のExcel、および特別仕様のソフトウェア使って行った。データの質が悪かったこと(例えばPCR増幅曲線の不良)または、評価した胚での発現が低かったか或いは発現していなかったことから、特定の遺伝子はデータ解析から除外した。割球齢の分析のために、用いた母系の転写産物パネルは、DAZL、GDF3、IFITM1、STELLAR、SYCP3、VASA、GDF9、PDCD5、ZAR1およびZP1を含み、胚性遺伝子パネルは、ATF7IP、CCNA1、EIF1AX、EIF4A3、H2AFZ、HSP70.1、JARID1B、LSM3、PABPC1、およびSERTAD1を含むものであった。基準となる遺伝子であるGAPDHおよびRPLPOと比較した場合、並びに遺伝子平均と比較した場合の各遺伝子の発現値をgeNormおよびΔΔCt法を用いて算出した。この試験の基準遺伝子として、遺伝子安定性と変動係数(GAPDHは1.18および46%、RPLPOは1.18および34%)に基づいて、経験的に、GAPDHおよびRPLPOを選択した。この2つの遺伝子は、試験した10種類のハウスキーピング遺伝子の中で最も安定であり、かつ、典型的な不均一の試料セットの範囲に収まった。第二に、単一割球内では、予想通り、RPLPOとGAPDHの転写産物の量は、1細胞期から8細胞期にかけて、分裂1回当たりおよそ1Ct値低下した。このことは、ヒトの発生の最初の3日間、EGAの前にはそれぞれの細胞は、新しい転写産物の蓄積なしに、1回卵割分裂するごとに、蓄えられていたmRNAのおよそ半分を受け継ぐという予測と一致する。第三に、EGAが開始した後、8細胞期から桑実期の間、単一割球内でのこれら基準遺伝子の発現レベルが、安定に維持されたことを認めた。インタクトな胚のレベルでは、RPLPOおよびGAPDH両方のCt値は、発生の間、桑実胚期までほぼ一定に維持された。その後の胚盤胞期では、発現量はやや上昇するが、これはおそらく、割球数が非常に多くなり、転写産物のレベルが増加するからであろう。しかしながら本研究で行った遺伝子発現解析の大部分は、桑実胚期よりも前の発生段階に焦点を当てたが、その間基準遺伝子の発現レベルは非常に安定していた。
自動細胞追跡
細胞追跡アルゴリズムには、コンピュータービジョンの分野では粒子フィルタと呼ばれることが多い、逐次モンテカルロ法に基づく確率論的な枠組みを使用した。この粒子フィルタは、主な3つの変数、すなわち、状態、制御、および測定変数の伝搬を経時的に追跡する。状態変数は胚のモデルであり、かつ、楕円の集積として表される。制御変数は状態変数を変換する入力であり、かつ、我々の細胞の増殖・分化モデルから構成される。測定変数は状態の観察結果であり、微速度顕微鏡で取得した画像からなる。各時点における、現在どの状態にあるかという予測は、事後確率分布によって表される。事後確率分布は、粒子と呼ばれる、重み付けした一組の試料によって近似される。用語「粒子」と「胚モデル」は同じ意味で用いられ、この場合粒子とは、所定の時間における、胚モデルに対する1つの仮説である。粒子フィルタは、初期化した後、3つのステップ、すなわち予測、測定、および更新を繰り返し適用する。
予測:細胞は二次元空間では楕円として表され、それぞれの細胞が、向きと重なり指数を有する。この重なり指数は細胞の相対的な高さを表す。我々が予測したいのは、一般に、細胞運動と細胞分裂という、2種類の挙動である。細胞運動を予測するには、制御入力で粒子を得て、各細胞についてのそれぞれのパラメータ(位置、向き、長軸・短軸の長さなど)を無作為に攪乱する。この攪乱によって、分散が比較的小さい(初期値の5%)正規分布から試料が無作為にサンプリングされる。細胞分裂の予測には以下の方法を用いた。所与の時点で各粒子に対して、細胞のうちのいずれか1つが分裂するであろう確率の50%を割り当てる。この値は経験的に選択され、現在の構成をうまく網羅しながら、生じる可能性のある多くの細胞分裂まで及ぶ。分裂が予測される場合、次いで、分裂している細胞が無作為に選択される。分裂する細胞を選択したら、楕円の長軸に沿って、同じ大きさと形の2つの娘細胞が生じる、対称な分裂を適用する。その後、それぞれの娘細胞の各値を無作為に攪乱する。最後に、2つの娘細胞の残りの細胞に対する重なりの集合を維持しながら、それらの重なり指数を無作為に選択する。
制御入力を適用した後、それぞれの粒子をシミュレート画像に変換する。この変換は、重なり指数を用いて、各細胞の楕円形をシミュレート画像上に投影することによって行う。対応する画素値を二進数の1に設定し、膜の厚さが観察した画像データと同等になるまで拡大する。胚は部分的に透明で焦点外の光が収集されるため、胚底部の膜は、時折のみ可視である。そのため、見えなかった細胞膜が10%の確率で加えられる。実際にやってみると、これらの見えなかった膜点が正確な形状モデリングに非常に重要であり、それらが可視縁部に類似しないようにそれらを十分に散在させることが大切であることを発見した。
測定:仮説モデルの分布を一旦生成したら、対応するシミュレート画像と実際の顕微鏡像を比較する。顕微鏡画像は、主曲率に基づく方法と、次いで閾値化を行うことで前処理して、細胞膜の二値画像を作成する。比較の正確性は、対称な切断面距離−距離法によって評価し、それを次に各粒子の重み付けまたは尤度付けに用いる。
更新:重み付けを行った後、これら重みの割合に応じて粒子を選択し、次の反復用に新しい粒子セットを作る。これにより、粒子の分布を、最も高い確率の領域に収束させる。低い確率の粒子は破棄され、高い確率の粒子が増加される。分散の小さい方法を使用して、粒子を再サンプリングする。
一旦、胚のモデルを作製すれば、本文で論じたような、細胞質分裂の持続時間や有糸分裂間の時間などの動的撮像パラメータを抽出することができる。我々の細胞追跡用ソフトウェアは既にMatlabに実装されており、算定時間は、粒子の数にもよるが、各画像あたり数秒から30秒ほどである。ソフトウェアの現行のバージョンはCで実行され、算定時間は粒子の数に応じて、1〜5秒である。
胚の発生能を決定するための画像解析
方法
凍結しておいた1細胞のヒト胚(接合体とも呼ばれる)を融解し、培養液に入れて、IVFまたはICSIの手順で用いられる条件下で培養した。上でより詳細に記載したように、これらの胚は2PN期で、選別せずに凍結保存したことから、典型的な体外受精(IVF)集団を代表するものであると考えられる。このことは、新しい周期にある最も質の高い胚だと認知されている、移植後、一般的に発生のより遅い段階で凍結保存される胚とは大きく異なる。いくつかの実験用には、胚を標準的な培養皿に入れた。他の実験では、光学用の品質のマイクロウェルを備えた、特別仕様の培養皿で胚を培養した。
通常、培養皿一枚あたり1〜25個で成長している胚を、デジタル画像の保存・解析装置を備えたコンピューター制御の顕微鏡を使い、微速度撮像で個別に追跡した。いくつかの例では、加熱ステージと培養チャンバーを備えた倒立顕微鏡を使用して、微速度撮像を行った。他の例では、標準的なインキュベーターに入る大きさの、特別仕様の顕微鏡装置一式を使って微速度撮像を行った。これにより、試料の入った複数の培養皿を、同じインキュベーターの中で同時に培養することができ、また、画像を捕捉する間の時間差を最小限に抑えながら、制限無しに複数のチャネルを適用するために拡張することができた。複数の顕微鏡を使うことで、試料を移動させる必要もなくなり、システムの正確性およびシステムの信頼性が全体的に改善された。暗視野照明を備えた撮像システムを使うことで、その後の特徴抽出および画像解析用にコントラストの高い画像が得られたが、他の照明でも十分だったかも知れない。インキュベーターに入れた個々の顕微鏡はそれぞれ独立しており、培養皿はそれぞれ、独自の制御環境に置かれた。このことにより、他の試料の環境を乱すことなく、培養皿を撮像ステーションに、また、撮像ステーションから移動させることができた。
続く細胞形態の解析のために、微速度画像を取得した。細胞形態の解析には、細胞質分裂の第1分裂の長さ、細胞質分裂の第1分裂と第2分裂の間の時間、および細胞質分裂の第2分裂と第3分裂の間の時間の細胞パラメータのうち、少なくとも1つの測定が含まれた。図に示した画像は、5または6日目まで、5分おきに、1秒間露光して取得したものである。以下に詳細に示すように、第1細胞質分裂は通常、受精の翌日に起こり、約14分かかる。通常、細胞質分裂の第1分裂と第2分裂の間の時間は平均して約11時間である。細胞質分裂の第2分裂と第3分裂の間の時間は、概して、平均約1時間である。従って、撮像は受精後およそ36時間(プラスマイナス数時間)にわたって続けられた。
結果
着床前の健康なヒト胚の培養液中での発生の時系列を、微速度撮像で6日間にわたって記録した(図2)。正常なヒトの接合体では、2日目の早い内に第1卵割が起こることが観察された。次いで胚は、2日目の遅くと3日目にそれぞれ、4細胞および8細胞胚に卵割し、その後、コンパクションを起こし、4日目には桑実胚になる。細胞分化の最初の形態学的な証拠は5日目と6日目、胚盤胞が形成されている間に見られ、この時、全能性をもつ割球は、胎盤のような胚体外構造になる栄養外胚葉細胞か、或いはin vivoでは胎児に、in vitroでは多能性胚性幹細胞に発生する内部細胞塊のいずれかに分化する。
次に、4回の独立した実験の組において、242個の正常に受精した胚の発生を追跡し、5日目または6日目まで培養した試料のうち、正常な胚と停止した胚の分布を記録した。242個の胚のうち、100個を5日目または6日目まで培養し、その胚盤胞形成率は33%〜53%の間であった。これは通常のIVFクリニックで見られる胚盤胞形成率と同程度である(図3)。残りの胚は、発生の異なる段階で、多くは2細胞期および8細胞期で停止したため、異常な胚と定義した(図3)。胚盤胞期まで発生がうまく進む胚を予測する定量的な撮像パラメータを確立するために、割球の大きさ、透明帯の厚さ、断片化の程度、1回目の細胞周期の長さ、最初数回の有糸分裂の間の時間、および細胞質分裂の第1分裂の長さなどのいくつかのパラメータを微速度ビデオから抽出し、解析した。発生学的に正常な胚と異常な胚両方のビデオ画像解析を行っている間に、我々は、多くの停止した胚では、最初の細胞分裂の時に、異常な細胞質分裂が起こったことを認めた。娘細胞への分離が進む分裂溝の様子から、正常な胚の細胞質分裂は、14.3+/−6.0分という短い時間帯で、円滑で制御された方法のうちに完了した。図4の上段に示す。一方、異常な胚は基本的に、二つのうちいずれかの異常な細胞質分裂の表現型を示した。軽度の表現型では、細胞質分裂の形態と機序は正常に見えたが、過程が完了するまでにかかった時間が、正常な胚と比較して、数分から1時間長かった(図4)。場合により、細胞質分裂にかかる時間が僅かに長かった胚は、それでも胚盤胞まで発生した。より重度の表現型では、細胞質分裂の形態と機序に異常が見られた。例えば、図4下段のパネルに示した例のように、胚は片側にのみ分裂溝を生じ、通常とは異なる膜ラフリング事象が数時間続き、最終的に、より小さい構成要素に断片化する。このような挙動の他の変異も見られた。加えて、このようなより重度の表現型を示している異常な胚は断片化を起こすことが多く、このことは、胚の断片化は、異常な胚発生をもたらす、異常な細胞質分裂の副産物のようであるという直接的な証拠を示している。
撮像結果の詳細解析から、初期の分裂の間、正常な胚は細胞質分裂と有糸分裂のタイミングに厳密に従い、その後、胚性遺伝子の活性化(EGA)が始まることが示された。このことは、胚の発生能が遺伝性の母性プログラムによって予め決定されていることを示唆している。具体的には、初期胚の細胞周期で厳密に制御されていた3つの時間間隔、すなわちパラメータを認めた。そのパラメータは、(1)細胞質分裂の第1分裂の長さ、(2)有糸分裂の第1分裂と第2分裂の間の時間、および(3)有糸分裂の第2分裂と第3分裂の同調性、である。これら3つの時間間隔の関係と形態変化を図5に示す。正常な胚で測定したこれらのパラメータはそれぞれ、およそ、14.3+/−6.0分、11.1+/−2.1時間、および1.0+/−1.6時間であった(平均+/−標準偏差を示す)。
我々は、1細胞期から開始する、少数(n=10)の新鮮な(凍結保存していない)3PN(三倍体)胚についても撮像を行った。3PN胚が、少なくとも最初3回の細胞周期では、正常な新鮮胚と同様に時系列の目標となる事象を追うことが分かっている。撮像システムを確認するために、主要な実験の前にこれらの胚を撮像した(技術的な問題から、胚盤胞までは追跡できなかった)。この新鮮胚のセットのうち3個の胚は、我々の凍結保存した2PN胚と同様に時系列の事象を追い、細胞質分裂の持続時間は15〜30分、有糸分裂の第1分裂と第2分裂の間の時間は9.6〜13.8時間、有糸分裂の第2分裂と第3分裂の間は0.3〜1.0時間であった。しかしながら、7個の胚では、細胞質分裂に関する特異な表現型が見られ、その特徴は、同時に3つの分裂溝が出現する、細胞質分裂の持続時間がやや長い、および最終的に3つの娘細胞を生じるというものであった(図4)。これらの胚の細胞質分裂の持続時間は15〜70分(分裂溝の開始から、3つの娘細胞への分離が完了するまでの間の時間とした)、有糸分裂の第1分裂と第2分裂の(3細胞から4細胞)の間は8.7〜12.7時間、そして有糸分裂の第2分裂と第3分裂の(4細胞から5細胞)の間は0.3〜2.6時間であった。この観察と異常な胚が示した細胞質分裂に関する様々な表現型から、我々の凍結保存胚は、凍結保存の過程によって発生の遅れがみられないこと、および、我々の凍結保存胚は2つの割球に卵割する新鮮な接合体と同様の挙動を示すことが示唆される。
最初の細胞質分裂の持続時間が0〜33分、有糸分裂の第1分裂と第2分裂の間の時間が7.8〜14.3時間、および有糸分裂の第2分裂と第3分裂の間の時間が0〜5.8時間であることにより、胚盤胞期に達した胚を、それぞれ94%と93%の感受性および特異性で予測することができた(図6)。逆に、これらの幅から外れた値を1つでも示した胚は、停止する胚と予測された。胚盤胞までうまく発生した正常胚は全て、全3パラメータにおいて同様の値を示した。一方、異常な胚では、それぞれの期間が終了するまでにかかった時間のばらつきが非常に大きかった(図6)。我々は以下のことを観察した:(1)第1細胞質分裂が完了するまでの時間が正常なものよりも長いことは、発生能の不良を示す;(2)細胞分裂の第1分裂と第2分裂の間隔が正常なものよりも長い或いは短いことは、発生能の不良を示す;および(3)細胞質分裂の第2分裂と第3分裂の間隔が正常なものよりも長いことは、発生能の不良を示す。従ってこれらのパラメータは、胚が胚盤胞を形成することができる能力と胚盤胞の質の予測値であった。
最後に、それぞれのパラメータは自律的に胚の発生能を予測するものであるが、3つのパラメータ全てを使うと90%を越える感受性と特異性の両方を提供することができ、この時のカットオフ値が標準偏差の3倍であったことを認めた。これらのパラメータの受信者動作特性(ROC)曲線を図7に示す。この図に示す曲線は、種々の標準偏差カットオフについての、真に陽性の割合(感受性)に対する偽陽性の割合(1−特異性)を表している。このROCの作成には、以下の数値を使用した:真の陽性の数=34(胚盤胞への到達を正しく予測した);真の陰性の数=54(停止を正しく予測した);偽陽性の数=4(胚盤胞への到達を正しく予測できなかった);偽陰性の数=2(停止を正しく予測できなかった)。
考察
我々の解析は、最初の3回の卵割における有糸分裂と細胞質分裂の間、時系列に厳密に従う胚は、胚盤胞期まで発達し、かつ、増殖した内部細胞塊(ICM)を伴った良質な胚盤胞を形成する傾向が強いことを示している。この動的形態パラメータを使用して、移植または凍結保存に最適な胚を選択することができる。これらのパラメータはまた、質の異なる胚盤胞を区別するために使用することができ、このことによって、ある群の中に含まれている胚を相対的な発生能に基づいて順位付けすることができる。IVFクリニックでの標準的な慣行では8細胞期(3日目)で移植する。胚盤胞移植の着床率が3日目での移植の2倍に達することから、いくつかの病院は、胚盤胞期(5日目)まで胚を培養することを選択している。しかしながら、後成的な障害の危険性が高いことから、多くの病院ではより長い培養は避けられている。予測的な撮像パラメータを使用して、4細胞期(2日目)まで、かつ、胚性遺伝子が活性化される前に、胚の生存能を予測することができる。このことによって、通常行われているよりも丸一日早く、かつ、胚が分子プログラムに有意な変化を受ける前に、胚を移植または凍結保存することができる。これにより、PGDまたは他の種類の解析に最適な胚を選択することも可能である。
遺伝子発現解析を通じた撮像パラメータの検証、および発生能を決定するための遺伝子発現解析の使用
方法
凍結しておいた、接合体とも呼ばれる1細胞のヒト胚を融解し、培養液に入れて、IVFの手順で用いられる条件下で培養した。いくつかの実験用には、胚を標準的な培養皿に入れた。他の実験では、光学品質のマイクロウェルを備えた、特別仕様の培養皿で胚を培養した。
胚を培養液および撮像システムから取り除き、遺伝子発現の解析用に、単一胚または単一細胞(割球)のいずれかとして回収した。各プレートには通常、胚の混合物が入っており、回収の時点で、いくつかの胚は期待された発生段階に達しており、その他の胚は発生のより初期の段階で停止しているか、細かく断片化していた。回収時に期待されていた発生段階に達していた胚を「正常」と分類し、停止していた胚を「異常」と見なした。例えば、試料を回収するために、2日目に胚の入ったプレートを撮像システムから回収した場合、4細胞期とそれ以降に達していた胚をいずれも正常と判定し、4細胞期に達することができなかった胚を停止したものと決めた。これらの停止していた胚をそれらが停止した期に応じて分類し、2日目の遅くに割球が2つだけだった胚を停止2細胞胚として解析することにした。死んでいるおよび多孔質の形態を見せた胚(例えば変質した割球)を、試料の回収時に注意深く除去した。生きているように見えた胚だけを(正常および停止の両方で)遺伝子発現の解析に用いた。しかしながら、回収時点では正常に見えた胚も、最終的には、より後期に成長することができたとしても、停止する可能性もある。これらの各分類を代表する、胚の遺伝子発現解析を、定量的RT−PCR(qRT−PCR)で実施した。およそ24時間毎に、胚をそれぞれの撮像システムから回収し、96種類の試料に対して96の遺伝子まで、多数の反応を行う、高処理のqRT−PCR遺伝子発現解析に使用した。遺伝子発現解析の実施にはフリューダイムのBiomarkシステムを使用した。このシステムでは、TaqManアッセイを利用したqRT−PCR反応を、9216つまで、ナノリットル単位で行うことができる。
結果
形態学的な事象の根底をなしていると考えられる分子機序を明かにするために、相関遺伝子発現プロファイリングを行った。1試料あたり、異なるカテゴリーに属す96種類の遺伝子の発現レベルについて試験した。これらの遺伝子には、ハウスキーピング遺伝子、生殖細胞マーカー、母性因子、EGAマーカー、栄養芽細胞マーカー、内部細胞塊マーカー、多能性マーカー、エピジェティック制御因子、転写因子、ホルモン受容体その他が含まれた(図19表1)。2回の別々の実験組において、重複しているが僅かに異なる2種類の遺伝子セットについて試験した。これにより、ヒト胚の運命を診断する固有の遺伝子セットが得られる。モデル生物由来の胚またはヒト胚性幹細胞の遺伝子発現に関するデータ、および我々自身の未発表のマイクロアレイデータから、この独自の遺伝子セットを集めた。本試験において、これら遺伝子セットのヒトの着床前の胚における発現状態が、初めて明らかにされる。
各遺伝子の、基準遺伝子であるGAPDHおよびRPLPO、並びに遺伝子平均に対する発現値を、geNorm(El−Toukhy T,et al.(2009)Hum Reprod)およびAACt(Vanneste E,et al.(2009)Nat Med 15:577−83)法で算出した。遺伝子の安定性に関する値および変動係数は、GAPDHが1.18および46%、RPLPOが1.18および34%で、試験した10種類のハウスキーピング遺伝子の中で最も安定であり、かつ、典型的な不均質試料のセットの範囲にあった。RPLPOとGAPDHの転写産物の量は、単一割球では期待した通り、1細胞期から8細胞期にかけて、1回の分裂につきおよそ1Ct値低下した。これは、卵割による半減効果、並びにヒトの発生の最初の3日間にはEGAが起こらないことによるものである。単一割球におけるこれら基準遺伝子の発現レベルは、8細胞期から桑実胚期にかけて安定に維持された。胚全体のレベルでは、RPLPOとGAPDH両方のCt値は、桑実胚期まで発達する間、ほぼ一定に維持された。RPLPOおよびGAPDHの発現レベルは胚盤胞で有意に上昇し、これは存在する割球の数が増えたことによることの可能性が最も高い。これらの変化は、基準遺伝子としてのRPLPOおよびGAPDHの信頼性に影響を与えなかった。この試験で実施した遺伝子発現解析の大半は、桑実胚期よりも前の発生段階に焦点を当てた。この段階では、基準遺伝子の発現レベルは非常に安定していた。
正常な胚と異常な胚での遺伝子発現の差。図8に、52種類の遺伝子の、1〜2細胞の6個の異常な胚と1〜2細胞の5個の正常な胚での発現レベルの平均を示す。発現レベルは、対数尺度のレーダーグラフに表した。停止した胚におけるmRNA量は概して、正常な胚と比べると低下しており、特に、細胞質分裂、RNAプロセシング、およびmiRNAの生合成を促進した遺伝子が最も大きく影響を受けた。アスタリスクで強調した遺伝子は、マン・ホイットニー検定で、正常な胚と異常な胚で、統計的に有意差(p<0.05)のあったものを示す。これら18の遺伝子は、コフィリン、DIAPH1、ECT2、MYLC2、DGCR8、ダイサー、TARBP2、CPEB1、シンプレキン(Symplekin)、YBX2、ZAR1、CTNNB1、DNMT3B、TERT、YY1、IFGR2、BTF3およびNELFであった。それぞれの遺伝子は図に示したグループに属している。すなわち、細胞質分裂:コフィリン、DIAPH1、ECT2およびMYCL2;miRNA生合成:DGCR8、ダイサーおよびTARBP2;RNAプロセシング:YBX2;母性因子:ZAR1;ハウスキーピング:CTNNB1;多能性:DNMT3B、TERTおよびYY1;受容体:IGFR2;および転写因子:BTF3およびNELFである。多くの例で、これら遺伝子の発現は、正常な1および2細胞胚では停止した1および2細胞胚よりも高かった。
興味深いことに、異常胚では、特定の遺伝子カテゴリーが他のものよりもより影響を受けた。例えば異常胚では、大部分のハウスキーピング遺伝子、ホルモン受容体および母性因子の遺伝子発現は大きく変化しなかったが、細胞質分裂およびmiRNA生合成に含まれる多くの遺伝子の発現は有意に低下した。さらに、影響を受けた遺伝子のうちのいうつかの遺伝子は、正常胚と異常胚の間の差が、他のものよりもはるかにより大きかった。例えば、DGCR8、ダイサーおよびTARBP2などのmiRNA生合成経路に関わる遺伝子の発現レベルは異常胚では大きく低下した。とりわけ、影響の度合が最も大きかった遺伝子のうちの2つであるCPEB1とシンプレキンは同じ分子機構、すなわち、母性mRNAの保存と転写産物のポリ(A)テールの長さを操作することによる再活性化に属すものであった(Bettegowda,A. et al.(2007)Front. Biosci. 12:3713−3726)。これらのデータは、胚の異常は、胚でのmRNA制御プログラムの欠損と関係していることを示唆している。
細胞質分裂と遺伝子発現プロファイルの対応付け。鍵となる細胞質分裂の構成要素の遺伝子をコードしている遺伝子について、遺伝子発現解析を行った。実体顕微鏡にカメラを取り付け、培地を交換している間と試料を回収している間の試料の移動過程をビデオに録画することにより、各胚の同一性を追跡した。異常胚の遺伝子発現プロファイルを試験した時には、異常な細胞質分裂と細胞質分裂に重要な構成要素での遺伝子の発現レベルの低下に強い相関があることを認めた。興味深いことに、異常胚の遺伝子発現プロファイルは、それらの異常な形態学的な表現型と同様に多様であり、一定しなかった。
正常な2細胞胚と異常な2細胞胚との間(図9)、および正常な4細胞胚と異常な4細胞胚との間(図10)で、細胞質分裂に関わる遺伝子の発現が変化したことを見出した。図9および10は、正常な2細胞胚(図9)および正常な4細胞胚(図10)での発現量がより高く、異なる細胞質分裂の表現型と関連のある遺伝子の相対的異な発現を示している。図9に示すように、最初の細胞質分裂の間に異常な膜ラフリングを示した停止した2細胞胚では、試験した細胞質分裂制御遺伝子全ての発現レベルが有意に低下した。図9で差を示している遺伝子は、アニリン、コフィリン、DIAPH1、DIAPH2、DNM2、ECT2、MKLP2、MYCL2およびRhoAである。正常な発現レベルを右側のバーで示した。それぞれの遺伝子の発現量が正常胚で高いことが分かる。図9上段の写真は異常な2細胞胚を示しており、スケールバーは50μmである。図10は、片側での細胞質のくびれを伴う異常な細胞質分裂をし、最初の分裂の持続時間が非常に長かった、停止した4細胞胚の結果を示しており、この場合、細胞質分裂の制御因子であるアニリンとECT2の発現が低下した。図10のスケールバーも50μmである。
胎生期特異的遺伝子の発現パターン。図11に、正常に発生した141個の単一胚と単一割球の遺伝子発現解析から特定した、4つの胎生期特異的パターン(ESSP)を示す。4つのESSPのそれぞれに分類された遺伝子を表2に挙げる(図20)。図11のプロットは、発現パターンの類似性に基づく遺伝子の分類と、その発現値を平均化すること(基準遺伝子に対して)によって作成した。ESSPの相対的な発現レベルは、発現パターンが似ている遺伝子の発現レベルを平均化することによって算出した。遺伝子の発現レベルをそれぞれの細胞期、すなわち1c=1細胞;M=桑実胚、B=胚盤胞、に対してプロットした。図11では、1細胞期から桑実胚、および胚盤胞にかけての、4つのESSPそれぞれに含まれる遺伝子の相対的な発現を発達の関数として示している。ESSP1は母性遺伝を、ESSP2は遺伝子の転写活性化を、ESSP3は後期活性化を、およびESSP4は持続的な転写産物を示している。ESSP2に示すように、IVFクリニックで通常行われている移植は、3日目、胚性遺伝子の活性化により、胚が発生学的に大きく変化している時点で行われている。微速度画像のデータは、胚の発生能を4細胞期までに特定できること、その結果、2日目のこの遺伝子活性化の前に胚を移植できることを示している。この早期での移植は、IVF法の成功率の向上に有効である。
表2(図20)では、同定した4つのESPPのそれぞれに属す遺伝子を挙げている。各遺伝子の相対的な遺伝子発現レベルは、基準遺伝子(GAPDHとRPLPO)に対して、および遺伝子平均との関連で算出した。胚の発生時系列に対する各遺伝子の発現パターンは、以下4つのESSPのうちのいずれかに準じた。ESSPパターン(1)初期:初期の発現量が高く、徐々に減滅し、胚盤胞の前に消失する遺伝子;ESSPパターン(2)中期:4細胞期以降に発現し始める遺伝子;ESSPパターン(3)後期:桑実胚期または胚盤胞期で発現し始める遺伝子;およびESSPパターン(4)一定:相対的に一定した発現値を有する遺伝子。
ESSP1は、母性遺伝の遺伝子のパターンを示した。これらの転写産物の発現レベルは、接合期で最初高く、その後、胚が胚盤胞へと発生していくに連れて減少した。これら転写産物の半減期はおよそ21時間であった。他のモデル生物由来の典型的な母性因子、例えばGDF9やZAR1、並びに生殖細胞(卵母細胞)特異的遺伝子であるVASAやDAZLはこのカテゴリーに入った。ESSP2には、4細胞期の後、最初に転写された胚性活性化遺伝子を含めた。このカテゴリーに入ったいくつかの遺伝子では、活性化の高まりが2回見られた。1回目の、小さい方の高まりは5〜6細胞期に見られ、2回目のより大きい高まりは8細胞期に見られた。他のモデル生物から分かっているEGA遺伝子、例えばEIF1AX31やJARID1B32がこのカテゴリーに入った。ESSP3には、栄養芽細胞のマーカーであるGCM1などの、胚盤胞期まで発現しなかった後期活性化遺伝子を含めた。ESSP4には、基準遺伝子と比較した場合に、発生の間中安定な発現を維持した、持続的な転写産物が含まれた。これら遺伝子の半減期は193時間であり、ESSP1に含まれる遺伝子より約9倍長かった。このカテゴリーには、ハウスキーピング遺伝子、転写因子、エピジェネティック制御因子、ホルモン受容体およびその他の混合物が入ったこれらの4パターンの遺伝子発現を、正常な単一胚と割球の61の試料を使用して、別の実験組で確認した。
第1分裂の間に異常な細胞分裂や有糸分裂の挙動を示す異常胚は、異常な遺伝子発現プロファイルと、特に胚性RNAの制御に関わる遺伝子のプロファイルの異常と関連があった。従って、これらの方法を組み合わせて、着床前の胚の生存能を予測するために使用することができる方法を提供することができる。結果は、異常胚はRNAプロセシングとmiRNA生合成のプログラムに欠陥をもって発生を始めるため、母性mRNAが過剰に減滅することを示唆している。このような制御されていないRNA減滅の確率論的な性質によって転写産物の無作為な破壊が誘導され、その結果、異常胚で見られたような、様々な異常な表現型が生じる。miRNAレベルの低下は、母性RNA減滅の制御に問題を生じ、その結果、様々な段階で発生が停止する。
個々の割球の解析。ヒトの着床前胚において、分子的な分化がいつ始まるのかを評価するために、様々な発生段階で回収した17個の胚由来の単一割球におけるCDX2の発現レベルを解析した。図12Aは、2細胞期から胚盤胞までのCTBBN1(濃い線)およびCDX2(薄い線)の2遺伝子の相対的な発現レベルを、発現段階の関数として表したものである。ここから分かるように、4細胞期以前の胚由来の単一割球のいくつかでは、CDX2の発現レベルはところどころ低かった(図12A)。しかしながら、6細胞期以降は、全ての胚は、CDX2を有意なレベルで発現する割球を少なくとも1つの有していた。ハウスキーピング遺伝子であるCTNNB1の発現レベルも図12Aに示す。CTNNB1の発現レベルは、同じ胚由来の割球では一定に維持され、このことから、CDX2の不均一な発現パターンがqPCRの人為的な結果ではないことが示された。独立した実験のデータから同様の結果が認められた。これらの結果は、着床前のヒトの胚における分子的な分化は、4細胞期の直後に起こるのだろうということを示している。
興味深いことに、単一割球における遺伝子発現プロファイルの精査から、様々な発育齢に対応している遺伝子発現の徴候を示す割球を含む胚が明らかになった。所与の任意の胚の所与の任意の時点での遺伝子発現プロファイルは、母性mRNAの減滅とEGAの総和に等しい。発生の初期段階にある、より若い割球は通常、大量の母性転写産物と少量の接合体遺伝子を含み、発育齢のより進んだ、時間の経った割球ではこの逆となる。この実験では、母性プログラムを、10種類のESSP1マーカー(母性転写産物)の発現値の平均として定義し、胚性プログラムを10種類のESSP2マーカー(胚性転写産物)の発現値の平均として定義した。使用した母性転写産物パネルには、DAZL、GDF3、IFITM1、STELLAR、SYCP3、VASA、GDF9、PDCD5、ZAR1およびZP1が含まれ、胚性遺伝子パネルには、ATF7IP、CCNA1、EIF1AX、EIF4A3、H2AFZ、HSP70.1、JARID1B、LSM3、PABPC1、およびSERTAD1が含まれる。この特定の8細胞胚でうまく回収できた6個の割球のうち、3個の割球は正常な3細胞胚試料由来の割球と同様な遺伝子発現の徴候を示し、残りの3個の割球は、正常な8細胞胚由来の割球と同様の徴候を示した(図12B)。この観察結果に最も妥当な説明は、胚に含まれる細胞のいくつかが停止したというものである。この部分的に停止した表現型は、試験に用いた試料の内の別の9細胞胚および2個の桑実胚でも認められた。停止した割球においても母性転写産物のレベルは高く維持され、この割球が正常な姉妹細胞と同じ長さの期間、培養液中で過ごしたという事実は、母性RNAの減滅は、単に時間と共に生じる自発的な過程ではなく、マイクロRNA(miRNA)のような特定のRNA減滅機構を必要する可能性が高いことを示している。これらのデータはまた、母性mRNAの減滅が、哺乳類の胚形成に保存された発生事象であること、および正常な胚発生に必要であるということ(Bettegowda,A.,et al.(2008)Reprod.Fertil.Dev.20:45−53)の、さらなる証拠を提供するものである。加えてこれらのデータは、胚に含まれている個々の割球は自律性で、かつ、互いに独立して発生することができることを示唆している。さらにこれらの結果は、被検細胞におけるmRNAレベル(これは遺伝子発現レベルのパラメータとなる)を試験するために、本明細書に記載の遺伝子発現レベル試験を使用してもよく、そのRNAが母性プログラムの一端をなすことが分かっている遺伝子のものである場合、その発現レベルが胚発生の後期で持続していることは異常な結果が生じる可能性と関連があり、またはそのRNAが胚性プログラムの一部である場合、時間が経過しても発現しないことが異常な結果が起こる可能性と関連することを示している。本明細書では、ZAR1、PDCD5、NLRP5、H5F1、GDF9およびBNC2の母性プログラム遺伝子について解析した。他の母性効果遺伝子も知られており、これらを使用してもよい。
胚性遺伝子の活性化。本発明の方法は、発生が停止した異常な胚では、EGA(胚性遺伝子の活性化)が起きる前の最初3回の分裂の間に、異常な細胞質分裂と有糸分裂タイミングの異常が頻繁に見られるという発見に、少なくとも部分的に基づいている。このことは、胚発生の運命は主に、母性遺伝(Hardyらによって200134で行われた、ヒトの着床前発生の数学的モデルに大きく従う知見)によって決定されているということを示唆している。さらに、細胞質分裂と有糸分裂の異変は、miRNAの生合成、並びに母性mRNAの遮蔽、保存および再活性化を制御する遺伝子の母性転写産物のレベルの低下と強く相関している。miRNAは、器官の発達や分化を含む様々な生物学的過程においてmRNAの減滅を促進することで、翻訳を制御している(Blakaj,A.&Lin,H.(2008)J.Biol.Chem.283:9505−9508;Stefani,G.&Slack,F.J.(2008)Nat.Rev.Mol.Cell Biol.9:219−230)。モデル生物を使った多くの証拠から、初期胚の母性転写産物の減滅では、miRNAが重要な制御因子である可能性が示されている(Bettegowda,A.,et al.(2008)Reprod.Fertil.Dev.20:45−53)。従って、miRNAの生合成の欠損は、異常な胚発生を引き起こす可能性がある。一方、母性mRNAの制御が正確に行わないことによっても、胚形成の不良が引き起こされる可能性がある。哺乳類の卵母細胞は母親が産まれる以前に、初期胚の成長を支持するために必要とされる母性RNAの転写産物を大量に合成する。これらの転写産物は抑制され、受精後に再び活性化されるまで、長い間保存される。この母性RNAの管理プログラムに関する欠陥はおそらく、母性転写産物の量と質に影響を及ぼし、その結果、発生が上手くいく機会を危うくするだろう。
胚の生存能を試験するためのモデル。図13に、相関された撮像と分子解析に基づく、ヒトの胚発生のモデルを示す。接合体から胚盤胞までの発生を時系列で示し、胚盤胞まで発生が上手くいくかを予測するのに重要な短い時間と、胚発生の図を含んでいる。重要な分子データは、図に示したように、ヒト胚は、母親から遺伝する卵母細胞RNAの固有なセットを伴って一生を開始することを示している。このRNAのセットは、卵子中では、特定のRNA管理プログラムによって、維持・パッケージングされる。受精すると、卵子に特異的な母性RNAの一部(ESSP1;胎生期特異的パターン1)は必ず減滅され、同時に、卵母細胞から胚への移行が始まる。並行して、発生の継続に伴い、他のRNA(ESSP4)は理想的には、それぞれの割球へ等しく分配される。分解とRNAの分配が成功すると、最終的に、胚性ゲノムが活性化(EGA)され、ESSP2の遺伝子が細胞内で自律的に転写される。特に、胚の割球は卵割の間、独立して停止または進行する場合がある。胚における細胞の自律的な発生の結果は、個々の割球が停止または進行するということであり、8細胞胚が桑実胚やそれ以降の期まで進行することから、胚盤胞の質は、停止した細胞の数または8細胞期を越えて進行した細胞の数に影響を受けるようである。撮像データは、成功または失敗を予測する重要な発生期間があることを示しており、それらは、最初の細胞質分裂、第2卵割、および第2卵割と第3卵割の同調性である。これらのパラメータは、既に記載のある細胞追跡用アルゴリズムやソフトウェアを使用して自動で測定することができる。記載したシステムと方法を使用し、鍵となる画像予測装置を使って、胚の転帰を予測することができ、このことによって、発生のより初期段階にある(EGAより前の)、より少ない数の胚を移植することができる。
卵母細胞の成熟とそれに続く胚発生の撮像
結果
現行のIVF法を制限している主な問題の1つに、卵母細胞の質と利用可能度がある。例えば、現在のIVFの手順では、小さい周期プールから卵母細胞を採取するため、少ない数の卵母細胞しか受精用に得られない(例えば1〜20個)。さらに、IVF法の過程でホルモン刺激を与えた後に採卵した卵母細胞のうち、およそ20%が未成熟と分類され、これらは通常、現在の培養条件下では胚の発生能が低いため、破棄される。
卵母細胞のプールを大きくする方法の1つに、in vitroで成熟させる方法がある。図14に、成熟に伴う3つの発生段階を示す。これには、胚胞、中期I、および中期IIが含まれる。胚胞期と中期Iにある卵母細胞は未成熟と分類されるが、中期IIにある卵母細胞は、第1極体があるため、成熟していると分類される。成熟極体は、in vitroでは開始して24〜48後に時間に生じる。
卵母細胞のプールを拡大するための別の方法には、卵母細胞を第1プールと第2プールから採取する方法があり、この場合、最大数千個の卵母細胞が得られる。この方法では、休眠状態にある原始卵胞を卵巣から採取し、正常な染色体組成、エピジェネティック状態、RNA発現、および形態をもつ卵母細胞が生じるようにin vitroでプログラムする。他の態様では、in vitroで生殖細胞に分化させた多能性幹細胞から卵母細胞を誘導し、ヒト卵母細胞へと成熟させてもよい。
図14に図示するように、in vitroでの卵母細胞の成熟過程は、複数の細胞の変化を目印とすることができ、このような目印は、本発明の方法における測定および解析用の細胞パラメータを定義するために使用してもよい。これらには例えば、卵母細胞膜の形態変化、例えば透明帯から分離している割合や程度;卵母細胞の核の形態変化、例えば胚胞崩壊(GVBD)の開始、完了、および速度;細胞質および核に含まれる顆粒の移動速度および移動方向;および第1極体の移動および突出が含まれる。
幹細胞分化の撮像
結果
微速度画像解析は、他の細胞型、例えば幹細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、およびヒト胚性幹細胞(hESC)の生存能、発生能および転帰を評価するのにも使用することができる。幹細胞の発生能は、微速度画像解析を使用して、細胞の発生および分化中の形態変化を測定することで評価することができる(図17)。その後、分化した細胞を解析し、in vivo移植または他の用途に選択することができる。幹細胞の複数のパラメータ、例えば、細胞質分裂の持続時間、有糸分裂の間の時間、細胞の大きさと形、細胞数、細胞運動、分裂パターン、分化、非対照分裂(この場合、1つの娘細胞が幹細胞を維持し、その他の細胞は分化する)、対称分裂(この場合、娘細胞は両方とも、幹細胞を保持するか、或いは両方とも分化する)、および運命特定(幹細胞がいつ分化するかを正確に決定すること)を微速度画像から抽出し、分析してもよい。
幹細胞治療の定式は、未分化の幹細胞をin vitroで培養し、特定の細胞型に分化させ、その後、受容者に移植して損傷を受けた組織および/または器官を再生させることができる、というものである。微速度画像解析は、成熟組織に組み込むことが可能な、非腫瘍原性の分化した後代を形成する幹細胞を特定するための、高処理で非侵襲性の装置として使用することができる。利用可能な用途としては、神経障害(アルツハイマー病やパーキンソン病など)、血管系障害や心臓疾患、筋障害や骨障害(関節炎など)、自己免疫疾患および癌の治療、並びに標的や新規治療を評価することによる創薬が挙げられる。
ヒトでは、損傷を受けた組織は通常、体内にある幹細胞からの継続した補充および分化によって置き換わる。しかしながら、この体の再生能は、加齢とともに低下する。この一例が、括約筋の不十分による尿失禁である。括約筋の不足の主な原因の1つが加齢であると考えられている。なぜならば、筋繊維の数と神経密度が加齢にともなって減少するからである。尿失禁の患者を治療するには、分化した平滑筋細胞を作成するために、膣壁組織から培養した線維芽細胞からiPSCを誘導することができる。これらの分化した細胞をその後、in vivoに移植することができる。移植の前に、微速度画像解析を使用して、iPSCの多能性、分化、メチル化、および腫瘍原性に関して、特徴付けを行うことができる。他の利用用途には、パーキンソン病患者の皮膚細胞由来で、かつ、移植のためにニューロンへ分化させたiPSCの微速度撮像が挙げられる(図18)。
自動解析を介した撮像パラメータの検証
我々の微速度画像データから明らかなように、ヒトの胚の発生過程は、あるコホートに含まれる胚同士でも非常に多様であり、かつ、胚は細胞分裂の間、様々な挙動を示す場合がある。従って、特定の発生事象、例えば非常に異常な細胞質分裂(図4)の手動での特徴付けは、解釈のに左右され得る。我々の撮像パラメータと胚盤胞形成を系統的に予測する能力を検証するために、4細胞期までの細胞分裂を自動で追跡するためのアルゴリズムを開発した。この追跡アルゴリズムでは、逐次モンテカルロ法に基づく確率モデル予測技術を使用している。この技術は、仮説胚モデルの分布を生成し、単純な光学モデルに基づいて画像をシミュレートし、そしてこれらのシミュレーションと観察した画像データを比較することで機能する(図21a)。
胚を、位置、向きおよび重なり指数(細胞の相対的な高さを表すための)を伴う楕円の集積としてモデル化した。これらのモデルを使用して、細胞質分裂の持続時間、および有糸分裂の間の時間を抽出することができる。細胞質分裂は通常、細胞質のくびれ(分裂軸に沿って、双極性の弯入が形成される部分)が最初の出現から、娘細胞の分離が完了するまでとして定義される。我々は、細胞質分裂を、1細胞から2細胞に分裂する前の細胞伸長の期間として近似させることで、問題を単純化した。細胞の軸の長さに15%を上回る差がある場合に、細胞が伸長したと見なした(経験的に選択した)。有糸分裂の間の時間は単純に、各モデルに含まれている細胞数を計測することで抽出するものとする。
1組14個のヒト胚を使ってこのアルゴリズムを試験し(図21b)、自動測定と手動での画像解析を比較した(図21c、図21d)。このデータセットでは、14個の胚のうち、8個が正常な形態を保ったまま胚盤胞期に到達した(図21e上段)。自動測定と手動測定は良く一致し、8個の胚全てが胚盤胞に到達することを正確に予測した。14個の胚のうち2個は、形態が悪かったが、胚盤胞まで到達した(内部細胞塊の質の不良;図21e下段)。これらの胚については、手動評価は、1つは胚盤胞に達し、1つは停止すると示したが、自動評価は2つとも停止すると予測した。最終的に、14個の胚のうちの4個が胚盤胞期より前に停止し、これらは全て、双方の手段によって停止することが正確に予測された。
粒子フィルタの枠組み
粒子フィルタは、モンテカルロシミュレーションに基づく、モデル予測技術である。この方法は、仮説モデルの分布を生成し、これらのモデルを観察データと比較することで、未知のまたは「隠れた」モデルを予測するために使用されている。任意の運動(動力学、位置移動描画)と測定の不確定性を適用させるその能力によって、粒子フィルタは、細胞分裂を追跡するための理想的な候補である。
粒子フィルタは、主要な3つの変数の伝搬を経時的に追跡する。その変数とは、状態変数であるx、制御変数であるu、および測定変数のzである。状態変数のxは、我々が予測したいと考えている胚のモデルであり、楕円(2次元)または楕円体(3次元)の集積として表される。制御変数のuは、状態変数を変換する入力であり、我々の細胞増殖および分裂モデルからなる。測定変数のzは、状態の観察結果であり、微速度顕微鏡を使って取得した画像からなる。これらのパラメータについては、以下のセクションでより詳細に記述する。
各時間ステップtでの現在の状態xの予測は、事後確率分布によって表される。この事後は、信念と呼ばれることも多く、所与の過去の画像測定z1:tと過去の制御u1:tの全てから求められる、現在の状態xの条件付きの確率として定義される。
粒子フィルタは、以下の式で表されるように、重み付けした試料のセット、すなわち粒子のセットで事後を、近似する。
式中、Mは粒子の数である。本明細書では、用語「粒子」および「胚モデル」は同じ意味で使用する。従って、単一の粒子xt[m](この場合、1<=m<=M)は、時間tでの、胚モデルの1つの仮説である。
初期化した後、粒子フィルタに繰り返し、3つのステップを適用する。最初のステップは、制御入力を使用して各粒子を伝搬させる予測である。
得られた粒子セットは、前の確率の近似値である。第2ステップは測定の更新であり、このステップでは、現在の測定値の確率に対応する重みを各粒子に割り当てる。
重み付けした粒子セットは、事後のbel(xt)の近似値である。
粒子フィルタの鍵となる構成要素は、第3ステップにある。ここでは、粒子セットをそれらの重みによって、再サンプリングする。この再サンプリングステップにより、粒子の分布を、最も確率の高い領域に収束させる。
細胞の表示
二次元空間では、細胞は楕円として表される。細胞はそれぞれ、長軸、短軸、および、以下の式によって求められる、デカルト座標上の2次元座標をもつ。
各楕円はさらに進行方向θ(yaw)をもち、このことにより、x−y平面で回転させることができる。ほとんどの場合、楕円が互いに重なり合うので、我々は、重なりの順序(または細胞の相対的な高さ)を特定する重なりパラメータを記録する。そのため、各胚モデルに関する、時間tでのパラメータは以下の通りになる。
式中、Nはそのモデルに含まれている細胞の数である。
細胞の攪乱と分裂
粒子フィルタの第一ステップは予測であり、このステップでは、制御入力を用いて、各粒子を伝搬する。ここでのの用途では、2種類の挙動についてモデル化したいと考えられる。第1の挙動は細胞運動を含み、細胞運動としては、並進、ヨー角を軸とした回転、および長軸および短軸の長さの変化が挙げられる。第2の挙動は細胞分裂で、ここで細胞は2つの新しい細胞に別れる。
細胞運動をモデル化するために、制御入力で粒子を得て、各細胞の値、x0i、y0i、a、b、θ、を無作為に攪乱する。この攪乱は、分散が相対的に小さい(通常、初期値の5%に設定される)正規分布から、無作為にサンプリングされる。
細胞分裂をモデル化するために、以下の方法を用いる。所与の時点で、各粒子に、細胞のうちの1つが分裂するであろう50%の確率を割り当てる。この値は経験的に選択され、現在の構成をうまく網羅しながら、生じる可能性のある多くの細胞分裂にまで広く及ぶ。分裂が予測される場合、次いで分裂している細胞を無作為に選択する。より複雑なモデルでは、より多くの因子、例えば粒子に含まれる細胞の数やそれらの細胞分裂パターンの過去の記録を考慮に入れることができ、かつ、実際のデータに由来する観察された挙動に基づいてモデルを作成することができ得る。
細胞を分裂するように選択したら、楕円の長軸に沿って、同じ大きさと形の2つの娘細胞が生じる、対称な分裂を適用する。その後、娘細胞の各値を無作為に攪乱する。攪乱は、再度、正規分布からサンプリングされるが、ここでは、新しい細胞形状の大きな変動に適用させるために、分散がより大きい(初期値の10%)正規分布からサンプリングする。最後に、2つの娘細胞の残りの細胞に対する重なりの集合を維持しながら、それらの重なり指数を無作為に選択する。
画像のシミュレーション
制御入力を各粒子に適用した後、粒子表示を、実際の画像と比較することが可能なシミュレート画像へと変換しなければならない。画像を正確にシミュレートする処理は難しいものになり得、かつ、光線追跡や光学モデルが必要になる場合が多い。そこで本発明の方法では、写実的にシミュレートするよりも、画像において容易に識別できる特徴をシミュレートすることを目的とした。具体的には、細胞膜の画像をシミュレートする。
考慮に入れなくてはならない物理的観察事項が2つある。第1に、顕微鏡は胚を横断する1平面に焦点を当てるが、視野深度はかなり大きく、焦点から外れた光が、ほぼ胚の全体から収集される。そして第2に、胚は部分的に透明なため、時に(いつもというわけではないが)、胚底部にある細胞膜が、胚上部の細胞膜を通して見える可能性がある。
これらの物理的観察事項を念頭に置きつつ、ここで、画像シミュレーションモデルについて説明する。各細胞の、それぞれに対応する楕円形を、重なり指数hを使ってシミュレート画像上に投影する。対応する画素値を二進数の1に設定し、膜の厚さが観察した画像データと同等になるまで拡大する。重なり指数hは、どの細胞がどの細胞の上にあるかの順番を特定するものである。下になる細胞膜は時折見えるのみなので、下になっていて見えない点が検出された場合には、それらは低い確率(通常およそ10%)でシミュレート画像に置かれた。実際には、これらの見えなかった膜点は正確な形状モデリングに必要であり、見えている輪郭に似ないように、見えなかった膜を十分に離すことが大切である。
画像の前処理
測定変数zについて説明する。本発明の方法の目的は、シミュレート画像と比較するために、顕微鏡像から細胞膜の二値画像を抽出することである。これらの膜は、曲がっていて、コントラストの強い像を示すが、強度または色に基づく閾値化法による抽出は容易ではない。そのため、主曲率に基づく検出装置を使用する。この方法では、ヘッセ演算子を使用する。
式中、Ixx、Ixy、およびIyyは、画素位置およびガウス測度σで評価される二階偏導関数である。2×2のヘッセ行列の固有値は主曲率に関する情報を提供し、固有値の信号は、「谷」と「山」43を区別する。明るいふくらみ、すなわち山を検出するためには、各画素での主となる角度を以下のように求める。
式中、λ2は最小の固有値である。厚さが多岐にわたる膜を検出するために、尺度全体に及ぶヘッセ演算子(すなわちσ最小<=σ<=σ最大)を適用し、この範囲に対する最大角度を抽出する。最後に、ヘッシアン画像を閾値化して、抽出した細胞膜の二値画像を作成する。閾値のレベルは通常、ヘッシアン中の画素値の標準偏差の2倍に設定する。
粒子の重み
「粒子フィルタの枠組み」という標題の節で説明したように、粒子フィルタの第2の主要なステップは測定の更新であり、このステップでは、特定のモデルに付与された現在の測定の確率に相当する重みを割り当てる。我々の例では、上で論じた前処理した顕微鏡像と、これも上で論じたシミュレート画像を比較することで重要性の重みを決定する。
正規化した相互情報を利用して、シミュレート画像と実際の画像を比較することで粒子フィルタの重みを算出するこの問題については、既に研究が行われている。この方法は、占有格子マッピングの考え方と同じようなものであり、両方が占有されている(値1)または両方が占有されていない(値0)、いずれかの画素位置を検索する。これらの方法は、シミュレート画像と実際の画像の形が似ているが、僅かに位置合わせが正しく行われていない場合に問題を生じる可能性がある。その代わり、記載される方法は、ある点集合と別の点集合までの最も近い距離の平均値を測定する面取り距離に基づく尤度関数を使用する。それぞれがシミュレート画像および実際の画像中のゼロでない画素に対応する、2組の点A(大きさmの実数の組)と点B(大きさがnの実数の組)を定義する。点Aから点Bへの前向きの面取り距離は以下のように求められる。
後ろ向きの面取り距離も同様に定義する。本方法では、シミュレート画像と実際の画像がどの程度上手く一致しているかと、実際の画像がシミュレート画像とどの程度うまく一致しているかの基準を提供する、対称の面取り距離を使用する。
実際には、個々の距離の測定値は、ノイズの影響を減少させるために切り捨てる。コンピューターによる算定時間を短縮するために、画像の距離変換の画素位置を照合することによって距離を判定する。
面取り距離は、推定モデルを考慮した、我々のデータ測定値の尤度基準として使用される。つまり、時間tにおける、所与の画像測定値zおよび粒子モデルxt[m]において、粒子の重みは、以下の式で求められる。
定数λは、通常1に設定され、尤度分布の「平面度」を制御するように変えてもよい。
粒子の再サンプリングおよび動的割り当て
粒子フィルタの第3の主要なステップは再サンプリングであり、このステップで、粒子がそれらの重みに比例して選択され、新しい粒子セットが作成される。低確率の粒子は破棄され、一方、高確率の粒子は増加される。これまで、再サンプリングの効率的なアルゴリズムの開発に関する多くの研究があった。本方法では、分散の少ないアプローチを使用する。
粒子フィルタにおける重要な問題は、選択する粒子の数である。最も簡単な選択法は、固定値、例えば、M=1000を使用することである。その後、各時間ステップにおいて、M個一組の粒子を同じ大きさの別の組に変換する。場合により、比較的長い時間があく場合があり、この間、細胞は不活性であるか、或いは大きさや位置が単純に少し変化する。粒子数を細胞活性の量に従って動的に割り当てることによって処理負荷を低減するために、この観察の利点が利用される。つまり、細胞が活性で分割している時には粒子の数を増加し、細胞が不活性である場合には粒子の数を削減する。
細胞活性の程度を測定するために、新しい画像(顕微鏡によって取得)と前の画像との間の画素強度の2乗和の差(SSD)を計算する。ノイズを削減するために、最初に画像をガウスフィルタで平滑化し、SSD値を因果的移動平均で経時的に平滑化する。次いで、この値に比例して粒子の数を動的に調節し、100<M<1000の範囲内に収まるように切り捨てる。図30は、粒子の数がどのように1細胞期から4細胞期に分割する胚に割り当てられ得るかを示すグラフである。事前画像登録は実施されなかったため、この方法は、単に画像における「活性」量の尺度を提供するだけであり、細胞分割と胚運動(並進および/または回転)を区別しないことに留意されたい。粒子の数はいずれかの事象においても増加するはずであるため、このことは、この状況では(粒子の数を判定する)許容される。実際には、我々は、最も可能性のある胚モデルの細胞数に基づき、粒子の数も調節する。つまり、より多くの細胞が画像に存在すると考えられる時に、より多くの粒子が生成される。
2次元追跡の限界
上述の2次元細胞追跡アルゴリズムは、胚の細胞の数、ならびにそれらの2次元形状を判定するのに有用である。しかしながら、根底にある物理的表示がないという事実により制限される。これは、胚の生存能を評価するための、自動的な細胞分割の追跡に重要である場合も、重要でない場合もある。例えば、細胞質分裂の持続時間、および細胞分割間の時間等の特定のパラメータは、2次元細胞追跡アルゴリズムを使用して測定され得る。次の節で我々は、2次元モデルを3次元に拡張する。2次元画像から3次元形状を推定することにより生じる遮蔽および深度の曖昧さに対処するために、幾何制約および細胞容量の保存に対する制約を適用する。
細胞の表示および3次元追跡
この節では、細胞分割の3次元追跡用のアルゴリズムを説明する。2次元アルゴリズムからのステップの多くがこのアルゴリズムに引き継がれるが、重要な例外がいくつかある。3次元で使用するために、細胞は新しい方法で表示される。細胞は3次元空間では、以下の式によって求められる楕円体として表される。
いずれの楕円体も、進行方向θ、ピッチψ、および回転αを有する。よって、時間tにおける胚モデルの表示は、以下のように求められる。
この改訂されたモデルの大きな効果の1つは、2次元画像から3次元形状を推測することに関連する曖昧さが存在し得るということである。例えば、形態が球状である細胞は、より長い主軸およびより大きいピッチ回転を有する細胞と、外観が類似する可能性がある。後に示すが、区別するために十分な情報が利用可能になるまで(例えば、細胞分割等の事象から)、粒子分布は、これら複数の仮定を維持するため、これは大きな問題ではない。
楕円体は、堅いものと考えられる。つまり、変形は、明示的にモデル化されない。しかしながら、我々は、隣接する楕円体同士がわずか重複することを許容し、これらの重複している領域では、細胞が互いに平らにしあっていると想定する。このようなことは胚では一般的に観察されるため、これは重要な問題であり、以下の節でそれを説明する。
細胞の撹乱および分割
我々の3次元細胞分割および撹乱モデルは、4節「細胞の撹乱および分割」のモデルと類似しているが、重要な例外がいくつかある。3次元形状の推定を使用して、強制的に体積を保存することができる。これは、細胞が任意に、特にz方向に大きく成長することを防止する。体積の保存は、2つの状況において適用される。第1に、細胞撹乱では、軸aおよびbは変動し、cは、その個々の細胞の体積が保存されるように計算される。第2に、細胞分割では、以下の制約が適用される。
式中、下付き文字pは親細胞を示し、下付き文字d1およびd2は2つの娘細胞を示す。実際には、我々は、胚の総体積を元の体積のプラス/マイナス5%の間で変動させることにより、これらの制約からのわずかな違反を可能にする。これを利用して、初期の体積推定における潜在的な不確実性を相殺する。
3次元で細胞が分割すると選択される場合、その分割は、以下の方式でモデル化される。第1に、選択した単一細胞に、楕円の長軸に沿った分割が適用される。楕円の長軸は構成によって、a、b、またはcのいずれかであり得る。娘細胞は、親細胞の回転を考慮に入れつつ、大きさが等しく、間隔が均一に空くように初期化される。次いでこれらのパラメータを攪乱して、取り得る構成を広くカバーする。ここでも分散が初期値の10%に設定された正規分布を使用する。
幾何制約
重なっていて見えないこと、および深度の曖昧さの問題は、体積の保存を通して部分的に軽減される。しかしながら、隣接する楕円体の空間関係に関する制約も必要とされる。第1の制約は、細胞は、半径の20%を超える重複が禁止されることである。許容量の範囲内で重複する細胞は、それらが互いに平らにしあっていると想定する。この現象は、説明している粒子モデルでは、画像のシミュレーションを行っている間、楕円体を交差する内側点を無視することによって表される。これは、経験的に動機づけされ、物理的に観察された挙動とよく相関する。
第2の制約は、細胞を近接に保つことが課されるということである。この制約は、ヒトの胚の物理的挙動に直接関係し、ここで細胞は、透明帯と呼ばれる膜による制約を受ける。透明帯は球状の殻としてモデル化され、これを使用して境界条件を付与する。透明帯の半径は、1細胞胚の半径より30%大きく設定する。
これらの制約は以下のように実施される。上述のように、所与の時間の各粒子に制御入力を無作為に適用し、新しい粒子を生成する。いずれかの物理的制約が違反された場合、新しい粒子は廃棄され、新しい無作為な制御が適用される。一定数の試みの後、満足する新しい粒子が生成されない場合、その粒子は廃棄される。
画像シミュレーション
実施例で使用した暗視野照明の利点は、細胞膜が細胞内部より多く光を分散することである。この作用は、細胞膜が光軸(z軸)に平行である位置で最も顕著である。従って、我々の3次元モデルでは、画像をシミュレートするために、これらの位置を検索する。これらの位置は、回転のため、楕円体の赤道に位置するとは限らない。見えた輪郭および見えなかった輪郭に関しても、上述のように、同じ規則に従う。
次元での細胞追跡例
この実施例は、自動化した細胞顕微鏡に関し、細胞分割を2次元で追跡するために上述のアルゴリズムを使用する。このモデルは、画像中の細胞の数、ならびに細胞膜の2次元輪郭を追跡するために設計されている。第1のステップは画像の取得であり、このステップによって、画像シミュレーションおよび画像前処理等の以下の節が誘導される。この実施例の一連の微速度画像は、10×対物レンズを備えた特別仕様のオリンパスIX−50倒立顕微鏡を用いて取得された。顕微鏡は、暗視野照明に改変され、ここで、中空の光錐は、光源と集光レンズとの間に円形の開口部を設置することにより、試料に焦点を合わせる。対物レンズは、試料によって分散された光を収集し、直接透過した光を排除し、暗い背景上に明るい画像を産生する。暗視野照明の利点は、細胞膜が細胞内部より多く光を分散する傾向にあり、それによって、それらのコントラストが強まることである。顕微鏡には、加熱ステージおよび特別仕様のインキュベーションチャンバーが装備されており、最大5日または6日間にわたる胚の培養を可能にする。画像は、IX−50のサイドポート上に載置されたオリンパスSLRデジタルカメラにより、5分間隔で捕捉された。
胚の撮像は、それらが接合体、またはほぼ球形の受精卵である時点で開始した。粒子セットを初期化するために、6節「画像の前処理」に記載するように、閾値化したヘッシアンを計算し、最小2乗を使用してそれに円を適合させる。次いで、等分布からサンプリングした、無作為配向の円として全ての粒子を初期化する。
図31は、1細胞期から4細胞期までの細胞分割を追跡するための2次元アルゴリズムの結果を示す。結果は、部分的に見えなかった底に面していた細胞においてさえ、細胞膜がアルゴリズムによりうまく抽出されることを示す。大半の粒子フィルタ用途において、「単一」の最適モデルは、粒子分布からの重み付き状態パラメータの和として表される場合が多いことに留意するべきである。しかしながら、本明細書に示した結果については、最も確率の高い粒子を提示する。
3次元での細胞追跡例
図32に、上述の3次元アルゴリズムを使用して、1細胞期から4細胞期までの追跡に成功した2つの例を示す。図33は、粒子が1細胞から2細胞への分割中にどのように分布するかの例を示す図である(図32に示される最初の実施例と対応する)。このプロットは、各細胞の中心の3次元での位置を示す。細胞が分割し始めると、予測は、どの娘細胞が他の上に重なり合うかに関しては曖昧さを示すが、これは数フレーム内に解決される。
予測パラメータの抽出
前述の方法を使用して胚をモデル化したら、特定のパラメータをモデルから抽出することができる。通常、最適なモデルまたは最も高確率のモデルが使用される。これらのパラメータは、例えば、第1細胞質分裂の持続時間、第1と第2の細胞分割との間の時間、および第2と第3の細胞分割との間の時間を含む。細胞質分裂の持続時間は、細胞のモデルが2つの細胞に分裂する前にどのくらい長く伸長したかを測定することにより近似され得る。伸長は、楕円の長軸対短軸の比率を調べることにより測定してもよい。モデルから抽出することができる他のパラメータは、受精と第1細胞分割との間の時間、細胞および分割プロセスの形状および対称性、分割の角度、断片化等を含む。パラメータは、2次元細胞追跡アルゴリズムまたは3次元細胞追跡アルゴリズムのいずれかを使用して抽出することができる。
細胞質分裂は、細胞質のくびれの最初の出現から娘細胞の完全な分離までとして定義される。我々の胚モデルは、変形不可能な楕円から成るため、細胞質のくびれの出現を識別するのは困難な課題である。一つの方法では、楕円の変形が可能になるが、これは追跡に関して、より複雑な問題をもたらす。別の方法は、前処理した顕微鏡画像から曲率の変化を探すことであるが、これは、胚のモデルから直接予測パラメータを測定しようとする我々の目的を無にする。よって我々は、細胞質分裂の第1分裂の持続時間を、1細胞から2細胞に分裂する前までの細胞伸長の持続時間として近似することにより問題を単純化する。伸長は、楕円の短軸bに対する長軸aの比率を計算することにより定量化される。細胞は、
である場合、伸長したと判断される。
この15%という値は経験的に選択されており、この特定のデータセットにおいて良く機能するが、他の値を使用することもできる。胚モデルが2細胞に分裂したら、我々は、1細胞モデルの伸長の持続時間を計算することにより、第1細胞質分裂の近似持続時間を抽出することができる。
原理上、有糸分裂事象間の時間を測定することは容易である。例えば、有糸分裂の第1分裂と第2分裂の間の時間は、2細胞モデルと3細胞モデルとの間の時間として測定され得る。しかしながら、一部の例において胚は、異常な、無作為な挙動を示す場合がある。これは、例えば、1細胞から2細胞、2細胞から外見上3もしくは4細胞に進み、そして2細胞に戻ることを含む。記載のアルゴリズムは、この種の挙動を追跡することができるが、有糸分裂事象間の時間間隔の判定に対する課題が提起される。
この挙動に対処するための方法の1つは、以下の通りである。2細胞と3細胞のモデルとの間の時間を測定する(有糸分裂の第1分裂と第2分裂の間の時間を見出すため)代わりに、これは、2細胞モデルが最も高確率で入っている画像フレームの数を単純に数えることにより近似することができる。これは、一部の例ではよく機能するが、有糸分裂事象間の真の時間を表すとは必ずしも限らない。細胞の数に基づいてモデルに対して制約を設けるにより、これらの事象に対処することができる。つまり、各反復で分布から最適なモデル、または最も高確率のモデルを選択する場合、モデルに含まれる細胞の数は、常に同じままであるか、或いは増加するが、決して減少しないことを義務づけることができる。この制約を設けた後に有糸分裂事象間の時間を計算することは容易である。この制約は、ごく僅かな変動を示し得る追跡結果をフィルタにかけるのにも有用である。このような僅かな変動は、モデルが、例えば1細胞と2細胞のモデルの間を前後に切り替わる時に時折生じる。
予測パラメータの抽出方法
図35に上述の方法を要約したフローチャートを示す。フローチャート(これは複数の胚または他の種類の細胞および幹細胞にも適用され得るが)は、単一胚をどのように分析され得るかを示す。第1ステップでは、胚の画像が微速度顕微鏡を用いて取得する(「測定」)。この画像はファイルに保存され、後の時点で再度開くことができる。画像は、一般に、必須ではないが、ある特色を強調するために前処理される。取り得る胚構成のモデルが予測され、これらのモデルから画像はシミュレートされる(「予測」)。シミュレーション画像は、前述の細胞膜の画像、または前処理前の顕微鏡画像をより正確に表す画像を含み得る。次いで、モデルは、前処理された顕微鏡画像と比較される(「比較」)。この比較を使用して最良の予測が保持される一方、不良な予測は廃棄される。次いで、得られた予測の組は、次の画像の予測を改善するために使用される。複数の連続した画像にこのプロセスを実施した後、例えば、細胞質分裂の持続時間、および有糸分裂事象間の時間等の、形態パラメータを最良のモデルから直接測定することが可能である。これらのパラメータは、既に説明したように、胚の生存能を評価するために使用することができる。
細胞活性の自動分析
上述の方法は、顕微鏡を介して細胞の発生を追跡する機能を必要とする。胚に関しては、複数の胚を追跡することが望ましく、これは同一の培養皿で一緒に培養される。本明細書で使用される分析方法には、画像が定期的に撮像されることも必要である(例えば、胚に対しては、1〜5日間にわたり1〜30分毎、幹細胞などの他の細胞型については異なる時間間隔が使用され得る)。そのため、自動的に胚の発生を追跡する撮像方法を考案した。
微速度顕微鏡検査において、制御された条件下で細胞を成長させ、運動性(環境内での運動)、増殖(成長および分裂)、および形態変化(大きさおよび形状)等のプロセスを監視するために、長時間にわたり撮像した。実験期間が長く、また、膨大な画像データが生成されるため、細胞分裂の持続時間および細胞分裂間の時間等のパラメータの抽出には、時間がかかる場合がある。複数の試料を同時に撮像する高処理法で、特にそういう傾向がある。よって、所望の情報を自動的に抽出することができる画像分析ソフトウェアが必要である。
胚の生存能を評価する方法の1つは、画像中の「細胞活性」の量を測定することである。これは、単純に、遂次画像の組を選び、それらの画素値を比較することにより達成され得る。より具体的には、新しい画像それぞれにおける細胞活性量を測定するために、全ての重複する画素iに関して、I’と示される新しい画像とI’と示される前の画像との間の画素強度の2乗和の差(SSD)を計算する。
ノイズを低減するために、最初に画像をガウスフィルタで平滑化する。図28は、単一胚の1日目〜3日目までの細胞活性のプロットを示す。示すように、ヒトの胚の1細胞から2細胞への分割、2細胞から4細胞への分割、4細胞から8細胞への分裂に対応する鋭いピークが存在する。ピークの幅は、細胞分割の持続時間を表す。
このアプローチの限界の1つは、SSD計量が画像中の活性量のみを測定し、胚の運動(移動または回転)等の事象が細胞分裂と同じように見えることである。この問題に対する解決策の1つは、SSDを計算する前に画像登録を実施することである。画像登録は、それらを同じ座標系に整列させるために、2つの画像間の幾何学的関係を見出すプロセスであり、種々の異なる技法を利用することができる。例えば、重複する画素強度のSSDを最小にすることによって画像を表示する、レーベンバーグマルカート反復非線形ルーチンの変形を使用することができる。LMアルゴリズムは、以下に示す3×3のホモグラフィ行列を使用して画素位置を変換する。
式中、目的画素位置x’およびy’は、
として正規化されるため、
である。
ホモグラフィ行列は、種々の画像変換に適用することができ、本用途での妥当な選択は、剛性体(ユークリッド)変換であろう。これは、並進している胚と面内回転(カメラ軸に沿って)している胚の画像を整列させ得る。しかしながら、わずかに一般化し、アフィン変換を使用する可能性があるため、画像を歪める場合がある。この一般化は、測定しようとするシグナルによって望ましい場合も、望ましくない場合もある。従って運動等式は、以下のようになる。
LMアルゴリズムは、最初に、連鎖法則、
を使用して、未知の運動パラメータhに関するeの偏導関数を計算する。
アフィン運動パラメータにおいて、これらの偏導関数は以下の通りになる。
次に、これらの偏導関数を使用して、LMアルゴリズムは、各画素からの寄与を加えることにより、近似ヘッセ行列A(大きさ6×6の実数の組において)および重み付き勾配ベクトル(大きさ6×1の実数の組において)を計算する。
最後に、運動パラメータは、増分運動を加えることにより更新され得る。
式中、定数λは運動更新の刻み幅を調節し、Iは単位行列である。
アルゴリズムの各反復で、最初の画像は更新された運動推定値によって歪められ、重複する領域の画素強度のSSDを計算することにより第2の画像と比較される。本適用は、連続している画像間の胚の運動は非常に小さいと想定し、したがって、少数で一定した回数の反復のみが行われる。図28Bは、各画像の組において行われた画像登録なし(28A)および画像登録あり(28B)の細胞活性のプロットを示す。レーベンバーグマルカートルーチンの誤差関数はSSDであるため、単に各表示の残余誤差をプロットする。図29は、正常胚と異常胚の発生についての細胞活性のプロットを比較する。胚生学者が通常形態を評価するであろう3日目には、胚は同じように見え、双方とも潜在的に生存可能であると考えられる。しかしながら、胚のうちの1つは、通常通りの一連の細胞分裂を起こすが、もう一方は、1細胞胚から複数の細胞および断片に分裂するため、それらの細胞活性プロットは、大幅に異なる。予想通り、正常な活性プロットを有する胚は、最終的に、5.5日目までに胚盤胞に達する。
画素強度のSSDを計算する前に、別の種類の画像登録を使用してもよい。これには、例えば、相互相関、標準化した相互相関、相互位相相関、相互情報、特徴検出および追跡、スケール不変特徴変換(SIFT)、オプティカルフロー、および勾配降下が含まれる。特徴およびコントラストの強調など、表示前の画像の前処理は、望ましい場合も、望ましくない場合もある。
胚の生存能を評価するためのモデル
図13は、関連する撮像および分子解析に基づくヒトの胚の発生のモデルを示す。胚盤胞まで発生が上手くいくかを予測するのに重要な短い時間と、胚発生の図を含む、接合体から胚盤胞までの発生を時系列で示す。主要な分子データは、図に示したように、ヒトの胚は、母親から受け継がれた卵母細胞に固有なRNAのセットを伴って一生を開始することを示している。このRNAのセットは、卵子中では、特定のRNA管理プログラムによって、維持・パッケージングされる。受精の後、卵子に特異的な母性RNAの一部(ESSP1;胎生期特異的パターン1)は必ず減滅され、同時に、卵母細胞から胚への移行が始まる。並行して、発生の継続に伴い、他のRNA(ESSP4)は理想的には、それぞれの割球へ等しく分配される。RNAの減滅と分配が成功すると、最終的に、胚性ゲノムが活性化(EGA)され、ESSP2の遺伝子が細胞内で自律的に転写される。特に、胚の割球は卵割の間、独立して停止または進行する場合がある。胚における細胞の自律的な発生の結果は、個々の割球が停止または進行するということであり、8細胞胚が桑実胚やそれ以降の期まで進行することから、胚盤胞の質は、停止した細胞の数か、或いは8細胞期を越えて進行した細胞の数に影響を受けるようである。撮像データは、成功または失敗を予測する重要な発生期間があることを示しており、これらは、最初の細胞質分裂、第2卵割、および第2卵割と第3卵割の同調性である。これらのパラメータは、前述の細胞追跡アルゴリズムおよびソフトウェアを使用して、自動的に測定することができる。記載のシステムおよび方法を使用し、鍵となる画像予測装置を使って、胚の転帰を予測することができ、このことによって、発生のより初期段階にある(EGAより前の)、より少ない数の胚を移植することができる。
自動対手動画像分析の比較
図34は、一組14個の胚についての手動画像分析と自動画像分析の比較を示す。胚1から10(プロットに標識される)は、様々な形態を有して、胚盤胞期に達した。胚11から14は停止し、胚盤胞に達しなかった。図34Aは、第1細胞質分裂の持続時間の測定の比較を示し、図34Bは、有糸分裂の第1分裂と第2分裂の間の時間の測定値の比較を示す。示したように、2つの方法は基本的に、良く一致している。第1細胞質分裂の持続時間におけるわずかな矛盾が予想されるが、それらは、我々の自動分析が、前述の通り、伸長を測定することにより近似を行うという事実に起因し得るためである。いくつかの例では、細胞質分裂の持続時間、および有糸分裂の第1分裂と第2分裂の間の時間の双方において、自動分析と手動分析との間により大きな不一致がある。このような不一致はいくつかの異常胚において生じ、手動で特徴付けることも自動的に追跡することもどちらも困難な、異常な挙動に起因する。この群の胚に、最初の2つの基準(第1細胞質分裂の持続時間、および有糸分裂の第1分裂と第2分裂の間の時間)のみを使用することにより、自動アルゴリズムの偽陽性はゼロになる。これは、偽陽性が回避されなければならないIVFの手順において、非常に重要であろう。手動画像分析は、偽陰性(胚9)が1個で、一方、自動アルゴリズムは、偽陰性(胚9および10)が2個であった。しかしながら、胚9および10の双方は基準から言えば胚盤胞期に達したが、これらは他の胚盤胞と比較して不良な形態を示し、移植の候補にはあまり最適ではないだろう。手動画像分析では、胚14は、これらの2つの基準に基づきおそらく偽陽性であり、真の陰性を与えるには、第3のパラメータである第2と第3の有糸分裂との間の持続時間が必要である。しかしながら、自動アルゴリズムは、最初の2つの基準だけで正しい予測を行う。これらの結果は、我々の自動アルゴリズムが胚盤胞対非胚盤胞を適切に予測し、ならびに質の異なる胚盤胞を区別できることを示す。よって、IVFの手順の間に、複数の胚が好ましい発生能を有すると判断される場合に、それらの相対的な質の等級を計算し、上位1つまたは2つの胚を選択して、移植することが可能である。
前述したものは、単に本発明の原理を解説するにすぎない。本明細書に明白に説明もしくは表されてはいないが、当業者は、本発明の原則を具体化し、その精神と範囲内に含まれるものである様々な構造を考案し得ることが理解されるであろう。さらに、本明細書に記載される全ての実施例および条件言語は、主に、読者が、本発明の原則、ならびに本発明者らによって貢献された当技術分野を推進するための概念を理解することを補助することを意図しており、かかる具体的に記載される実施例および条件に限定されることはない解釈されたい。さらに、原則、態様、および本発明の実施形態、ならびにその特異的実施例を記載する本明細書の全ての陳述は、その構造的および機能的同等物の双方を包含することを意図している。加えて、かかる同等物が、現在既知の同等物および将来的に開発される同等物の双方を含むことを意図している、すなわち、構造にかかわらず、同一機能を実施する開発されるいずれの要素をもである。したがって、本発明の範囲は、本明細書で表され、説明される例示的実施形態に限定されることを意図していない。正確には、本発明の範囲および精神は、添付の特許請求の範囲によって具体化される。
胚の発生能を決定するための画像解析
方法
接合体期または2前核期(2PN)で凍結したヒト胚をQuinn’s Advantage融解キット(CooperSurgical、トランブル、コネチカット)を使用し、2段階の迅速融解プロトコールで融解した。簡単に説明すると、凍結毛細管または凍結バイアルのいずれかを液体窒素から取り出し、大気中にさらし、その後37℃の水浴中でインキュベートした。融解したら、胚を0.5mol/Lのショ糖溶液に10分間移し、その後、0.2mol/Lのショ糖溶液にさらに10分間移した。次いで胚を、Hepes(CooperSurgical)と5%の血清タンパク質代用物(SPS;CooperSurgical)を加えたQuinn’s Advantage培地で洗浄し、それぞれを、ミネラル油(シグマ、セントルイス、ミズーリ)を使った微小滴(60μl)中の、10%のSPSを添加したQuinn’s Advantage卵割培地(CooperSurgical)に移し、37℃、6%のCO2、5%のO2および89%のN2で培養した。撮像とそれ以降の操作中、個々の胚をそれぞれ追跡するのを補助するために専用に作成したポリスチレン製の培養皿中で培養した。培養皿の設計はIVFに使用されている市販の培養皿と同様であるが、25個の個別のマイクロウェルのアレイを中心部に置いた。各マイクロウェルは、幅250ミクロン、深さ100ミクロンであり、発生中の1個の胚に合わせたものである。ウェルの底部は平らで、光学的な品質で仕上げられており、これにより、胚をはっきりと撮像することができる。群毎の培養を維持するために、マイクロウェルは全て、押し出しリングで安定化された、共通の培地滴を共有する。識別のために、小さい基準となるマーカー(文字と数字)をマイクロウェルの近くに置く。ヒト胚に使用するために、標準的なマウス胚アッセイ(MEA)手順により、培養皿の毒性について試験した。
続く細胞形態の解析用に、微速度画像を収集した。形態解析には、細胞質分裂の第1分裂の長さ、細胞質分裂の第1分裂と第2分裂の間の時間、および細胞質分裂の第2分裂と第3分裂の間の時間、のうちの少なくとも1つの細胞パラメータの測定が含まれる。図に示した画像は、胚の多くが4細胞期に達する2日目まで(およそ30時間)、5分毎に、露光を0.6秒として取得した。以下に詳細に示すように、第1細胞質分裂は通常、受精後1日目に起こり、約14分間持続する。細胞質分裂の第1分裂と第2分裂の間は通常、約11時間である。細胞質分裂の第2分裂と第3分裂の間隔は、平均して約1時間である。従って、撮像は、受精後およそ30時間(プラスマイナス数時間)継続した。
撮像の後、胚を酸性タイロード液(ミリポア)に移し、透明帯(ZP)を除去し、ZPを除去した胚を、Hepes(CooperSurgical)と10%のヒトアルブミン(CooperSurgical)を添加した、Quinn’s Advantageのカルシウムとマグネシウムを含まない培地中で再分離させた。分離したら、胚の各割球を非粘着性の洗浄緩衝液の液滴(10μl)で3回洗浄し、無菌のPCRチューブに移した。各チューブに割球が1個入っていることを顕微鏡下で確認した。DNA抽出およびプレ増幅は、SurePlexキットを使用し、業者(BlueGnome)の説明に従って行った。簡単に説明すると、Cell Extraction Enzymeを使い、75℃で10分間かけて各試料からDNAを抽出し、これを95℃で4分処理することで不活性化させた。PicoPlex Pre−Amp Enzymeを使用し、95℃で2分間かけてホットスタートさせることでDNAを変性させ、その後、勾配PCR(95℃で15秒、15℃で50秒、25℃で40秒、35℃で30秒、65℃で40秒および75℃で40秒)を12サイクル行ってプレ増幅させた。次いでPicoPlex Amplification Enzymeを使用して、95℃、2分で再変性し、14サイクルのPCR(95℃で15秒、65℃で1分、および75℃で1分)で増幅させた。全ゲノムを増幅した後、試料をそれぞれ、Cy3またはCy5のいずれかで蛍光標識し、次いでBlueGnomeのCytoChipにハイブリダイズさせた。BlueGnome CytoChipは、超顕微鏡的なコピー数多型を検出するために設計された、5000を大きく上回る複製クローンを搭載したBACアレイであり、ヒトゲノムのおよそ30%をカバーするものである(www.cytochip.com)。スキャンした画像を解析し、染色体コピー数の比を定量し、そして既に記載のあるように(Gutierrez−Mateo et al.,(2011)Fertil Steril 95:953−958)、CytoChipアルゴリズムおよびBlueFuseソフトウェア(BlueGnome)を使用して報告した。
結果
培養した、着床前のヒトの健康な胚の発生の時系列を、2日間にわたって微速度撮像で記録した。正常なヒトの接合体では、最初の卵割が2日目の早くに起こることが観察された。続いて、胚は2日目の遅くと3日目に、4細胞および8細胞にそれぞれ卵割し、その後、コンパクションを起こして4日目には桑実胚となった。
本発明の細胞周期パラメータと異数性との関係を調べるために、接合体の時点で融解した胚を、胚の多くが4細胞期に達するまでの2日間培養し、胚発生を微速度撮像で監視した。撮像の後、それぞれの胚を分離し、個々の割球の染色体組成をアレイ比較ゲノムハイブリダイゼーション(A−CHG)で解析した。A−CHGは、ゲノムの再構成、例えば、欠損、重複、逆位および転座によって生じるコピー数多型(CNV)を、24本全ての染色体について高解像度で検出する、マイクロアレイを基にした技術である。
我々は、75個の正常な受精胚の発生を追跡し、2日目まで培養した試料中の、正常な胚と停止した胚の分布を記録した。胚盤胞期までの胚発生の成功を予測する定量的撮像パラメータを特定するために、微速度撮像したビデオから、第1細胞周期の長さ、最初数回の有糸分裂間の間隔、および細胞質分裂の第1分裂の持続時間などの複数のパラメータを抽出・解析した。発生学的に正常な胚と異常な胚の両方に関する画像解析を行っている間に、我々は、停止した胚の多くが、第1細胞分裂の間に異常な細胞質分裂を生じたことを認めた。正常な胚では、分裂溝の出現から娘細胞の分離が完了するまでの細胞質分裂は、狭い時間帯(14.4+/−4.2分)の間に、円滑で制御された方法で完了した。
我々の撮像結果の詳細な解析から、正常な胚は、胚性遺伝子の活性化(EGA)が始まる前の初期分裂の間の細胞質分裂と有糸分裂では、厳密なタイミングに従うことが示された。このことは、胚の発生能は、遺伝性の母性プログラムによって予め決定されていることを示唆している。具体的には、我々は、初期胚の細胞周期中の、厳密に制御されている3つの時間間隔、すなわちパラメータ、を記録した。その3つのパラメータは、(1)細胞質分裂の第1分裂の長さ、(2)有糸分裂の第1分裂と第2分裂の間の時間、および(3)有糸分裂の第2分裂と第3分裂の同調性である。正常な胚ではこれらのパラメータがそれぞれ、およそ、14.4+/−4.2分、11.8+/−0.71時間、および0.96+/−0.84時間(平均プラス/マイナス標準偏差として示す)であることを測定した。
3つの撮像パラメータを一緒にプロットすると、正常な核型の大部分の胚は、Wong/Loewke et al.(Wong/Loewke et al.,(2010)Nat.Biotechnol 25:1115−1121);図36A、B、C)で見られた、停止していない胚または遅れていない胚と類似した領域にまとめてクラスターを形成した。一方、CGHによって異数体であることが分かった胚のパラメータ値は、正常な胚のタイミングの時間帯の外側で見られ、その結果、グラフにした場合には、正倍数性の胚のクラスターとは離れた別の部分に集中した。さらに、CGH解析の結果に基づいて、影響を受けたそれぞれの胚の異数型を区別することができた。染色体組成の異なる倍数性の胚は、有糸分裂の異常であったと考えられ、一方、等しい割球を有する倍数性の胚は、最初の細胞分裂で同様の染色体組成をもつ割球が生じたと仮定すると、減数分裂の異常であることが明示された。このことは、有糸分裂に異常のあった胚では、2つ目および3つ目のパラメータが正常な胚からより逸脱し、減数分裂に異常のあった胚では、3つ全てのパラメータに影響が生じたことが、個々のパラメータの解析によって確認された(表3、図40)。有糸分裂に異常のあった25個の胚のうち、11個の胚が、正常なCGHプロファイルの胚と同様の部分に集中し、減数分裂に異常のあった胚が示したパラメータのクラスターは、より散在していた(図36A、BおよびC)。
興味深いことに、3PN胚は、1回の有糸分裂事象で1つの細胞から3つの娘細胞へと分裂するという、はっきりとした形態的特徴を示すというこれまでの観察(Wong/Loewke et al.,(2010)Nat.Biotechnol 25:1115−1121)に基づいて、我々は、三倍体のように見えるいくつかの胚を特定することができた。1細胞から2細胞への分裂の前に2つの分裂溝を示した、正常に細胞質分裂した胚とは異なり、三倍体の胚は、1細胞から3細胞への移行に先んじて、3つの分裂溝を示す。CGHが特定の種類の倍数性、例えば69XXY(Gutierrez−Mateo et al.,(2011)Fertil Steri l95:953−958)だけを検出できること、および我々が三倍体であると特徴付けた胚はメスまたはXYYのいずれかであったことから、これらの胚の三倍性を確認することはできなかった。既に記載のあるように、蛍光in Situハイブリダイゼーション(FISH)または定量的PCR(Q−PCR)などの別の方法を代わりに使用して、倍数性を検出し得る(Gutierrez−Mateo et al.,(2011)Fertil Steri l95:953−958)。それにもかかわらず、CGHでは、胚のこのコホートは三倍体であると認識されなかったが、これらの胚の一部は異数性であると同定され、我々の撮像パラメータの解析に基づき、これらの胚は移植のための生育可能な候補にはならなかっただろう(図36A、BおよびC)。
撮像解析による、一染色体性および三染色体性の胚の検出
減数分裂と有糸分裂の異常を区別できたことに加えて、我々は、より重大な染色体の欠損を、これらの多くは減数分裂の異常に由来する、初期の細胞周期パラメータにおける僅かな挙動の変化として検出できることも決定した。我々の撮像パラメータと動的パラメータの解析により、我々は、胚の各割球にそれぞれ1コピーまたは3コピーの染色体が含まれる一染色体性と三染色体性を、発生中に正常な胚から区別できることを決定した。図37Aに示すように、正常な核型の胚のパラメータ値からはかなり外れたパラメータを有する、複数の三倍性の胚を特定した。より具体的には、我々は、21トリソミーである少なくとも2つの胚を検出し(出産まで生存してダウン症を生じる、最も一般的な常染色体の三倍性の内の1種;図37B)、かつ、これらの胚が、異型の細胞周期特徴を、特に2つ目のパラメータ、すなわち、有糸分裂の第1分裂と第2分裂の間の時間で示したことを決定した。同様に、我々は、一染色性の胚を複数特定することができ、これらには、ごく僅かだが、22モノソミーが含まれていた(図37B)。22モノソミーの胚は、21トリソミーの胚と同様に、正常な胚のクラスターとははなれた領域に集合する傾向にあり、かつ、示した2つ目のパラメータ値が低かった(図37A)。染色体の一染色性のほとんどは胚性致死なため(X染色体のみが例外である)、一染色性の胚と、正常な影響を受けていない胚の細胞周期パラメータの違いは、各胚の根底にある染色体組成によって説明できる。そのため、我々の微速度撮像解析は、ヒト胚における染色体の重複(三染色性)と欠損(一染色性)を正確に検出することができ、いずれの種類の胚を移植することも回避することができるだろう。
低モザイク型および高モザイク型の有糸分裂異常を示した胚と正常な胚のクラスタリング
染色体異常に関するこのような極端な例に加えて、我々は、有糸分裂の異常から生じた、モザイク現象の程度に関する変異を識別することができた。モザイク現象の程度は、異なる撮像プロファイルをもつ胚同士の間の、影響を受けた染色体の数として測定した。我々の細胞周期パラメータと染色体組成の包括的な解析に基づいて、我々は、4本以下の染色体に欠損がある胚は低モザイク型と見なすことができ、4本を上回る染色体が影響を受けている胚を高モザイク型と表すことができるだろうと判定した(図38A)。図38Bに示すように、12個のうちの9個が、正常な胚の近くにクラスタリングされる有糸分裂の低モザイク胚であったが、有糸分裂の異常から生じた高モザイク胚が示すパラメータのクラスターは、より散在していた。染色体組成のより詳細な解析から、高モザイク胚はより分裂しない傾向にあり、それによって、染色体対は分裂中に、それぞれの娘細胞に正確に分離せず、このことが、微速度撮像で研究津可能な細胞周期の挙動に影響を及ぼし得ることも明らかになった。この発見は、低度のモザイク現象を示す胚は、正常により近く、かつ、胚盤胞期までに自己修正する傾向にあるが、高度のモザイク現象は異常であると予測され、かつ、生存しそうにないということを示している、これまでの研究からも支持される(Baart et al.(2004)HumReprod.19:685−693;Munneetal.(2005)Fertil Steril 84:1328−1334;Barbash−Hazan et al.(2008)Fertil Steril 92:890−896;Johnson et al.(2010)Hum Reprod 25:1066−1075)。従って、我々の撮像技術は、胚を倍数性のモザイク現象によって等級付けることができる情報を提供し、どの胚を移植するかの決定を補助することができる。
細胞の断片化と異数性との相関
ヒト胚の発生能を評価するのに、現在、最も一般的に使用されている形態的な特徴は、典型的には、ヒト胚の発生にのみ見られる現象である、細胞の断片化の度合である(Antczak and VanBlerkom,1999 Human Reprod.14,429−447;Alikani et al.,1999 Fertil.Steril.71,836−842;Ebner et al.,2001 Fertil.Steril.76,281−285)。異数性の胚の個々の割球が、染色体の欠損または重複のいずれかを示したことを考慮すれば、その合計は、必ずしも、割球1個当たり各染色体2コピーになっておらず(例えば、割球が4個であれば、合計、8コピーの各染色体を有するはずである)、我々は、断片が形成される中で、失われた染色体が発生中の胚からつまみ取られた可能性があると推理した。発生が進むにつれ、これらの断片はDNAと細胞質の別個の単位として維持されたか、或いは、同じ若しくは近隣の割球に再吸収された。断片化は、8個の正倍数性の胚のうちの1個でのみ観察されたが、34個の異数性の胚のうち、27個が断片化を示した(図40A)。断片化を起こさなかった7個の異数性の胚のうち、少なくとも5個の胚の時間パラメータは、正常な時間パラメータをもつ胚のクラスターの外側にプロットされ、移植の候補にはならないようであった。興味深いことに、第1細胞質分裂の異常に基づいて三倍性であると認識した3個の胚のうちの2個でも、断片化が検出された。このことは、三倍性の胚の同定を補助するために、1細胞から3割球への表現型または他のパラメータと合わせて、断片化も使用することができることを示唆している(図40A)。
断片化が見られた30個の胚についてさらに解析を行い、我々は、減数分裂の異常があった8個の胚のうちの7個も断片化を示したと判断した(図36Bと図40Bを比較のこと)。一方、有糸分裂の異常があった20個の胚のうちの14個においても断片化が検出された(図36Cと40Bを比較のこと)。減数分裂の異常があった胚の1個と有糸分裂の異常があった胚の6個だけが正常な胚と同様の領域にクラスターを形成したことを踏まえると、断片化の解析は、我々の細胞周期パラメータの測定と共に、このような異数性の胚の選抜と移植を回避するために使用することができる(図40B)。加えて、有糸分裂の異常があり、かつ、断片化を示した胚の中でも、正倍数性の胚の近くに集合した9個の胚のうちの5個と11個の胚のうちの1個はそれぞれ、低度および高度のモザイク有糸分裂異常を根底にもっていた(図40C)。このことは、我々のパラメータ解析に断片化を含めることで、正常な時間パラメータの近傍に集合した胚の順位付けを補助することができることを示唆している。
最後に、さらに別の断片化基準、例えば細胞の断片化の度合や発生のタイミングもまた、胚の等級付けを補助する可能性がある。図40Dに示すように、断片化の度合が高かった胚の全て(細胞質の体積当たり、断片化を起こした部分が25%を上回るとして測定した)と、度合の低い断片化を示した胚のおよそ半分(細胞質の体積で、25%未満の断片化として測定した)が正常な胚と同様の領域には蓄積されなかった。さらに、正常な時間パラメータが観察された領域にクラスタリングされた胚の全てで、断片化は2細胞期の開始期のみで検出された(図40E)。対照的に、1細胞期または3個以上の細胞への分裂以降に断片化の開始を示した胚は、グラフにした時に、正倍数性の胚のクラスターの外側に集中した。このことは、受精後の発生の最も初期の段階(1細胞)で生じた断片化、または2細胞期の後、続く有糸分裂によって増幅される断片化は、正常なパラメータのタイミングおよび胚の生存能に重篤な影響を及ぼし得ることを示唆している。
考察
我々の解析は、最初3回の卵割の間に有糸分裂と細胞質分裂の厳密なタイミングに従う胚は、胚盤胞期まで発生し、かつ、拡張した内部細胞塊(ICM)を有する高品質な胚盤胞を形成する、両方の可能性が高いという観察をさらに確認し、精密にするものである。これらの結果は、IVFまたはICSIの手順中の移植または凍結保存に最適な胚の選抜に、動的形態パラメータを使用することができることを、さらに確認するものである。
我々の解析は、加えて、我々の微速度撮像解析を使用して、異常の種類の区別(減数分裂対有糸分裂)、染色体の重複(三倍性)および欠損(一倍性)の検出、並びにヒトの胚における有糸分裂のモザイク現象の度合の確認を行うことができることを確立するものである(図39)。染色体異常の大部分が、減数分裂の間に母性的に生じるものであることを踏まえると(Fragouli et al.,(2006)Cytogenet Genome Res 114:30−38;Fragouli et al.,(2006)Hum Reprod 21:2319−2328;Frumkin et al.,(2008)Mol Cell Endocrinol 282:112−119;Johnson et al.(2010)Hum Reprod 25:1066−1075)、成熟とそれに続く受精および胚発生双方での、in vitroで成熟した卵母細胞の発生能も、このシステムで評価し得る。この目的のため、我々の撮像技術は、他の型の幹細胞、例えば、相当数が完全なおよび/または部分的な染色体異常をもつことが報告されている人工多能性幹細胞(iPSC)やヒト胚性幹細胞(hESC)(Mayshar et al.,(2010)Cell Stem Cell 7:521−531)の生存能、発生能および染色体の状態を評価するのにも使用することができる。まとめると、我々の細胞周期パラメータが、異数性の評価および包括的な断片化の解析(断片化の有無、度合およびタイミング)と合わせて、移植用に、どの胚が発生への応答能を有するかの決定を補助する可能性があることも示している。
細胞の断片化の動態と異数性との相関
方法
上に記載したように、酸性タイロード液(ミリポア)で透明帯(ZP)を除去し、このZPを除去した胚を、0.1%ウシ胎仔血清(BSA;シグマ−アルドリッチ)を添加したリン酸緩衝液(PBS;インビトロジェン、カールスバッド)で3回洗浄し、その後、PBSに溶解した4%パラホルムアルデヒド(USB Corp.、クリーブランド、オハイオ)で、室温(RT)で20分間かけて固定した。固定した後、胚をPBS−0.1%BSAで3回洗浄して固定液が残存しないように除去し、1μg/mlのDAPIと0.5μg/mlのMitoTracker Red CMXRos(インビトロジェン)で、室温で15分間かけて免疫染色した。続く撮像により免疫蛍光を可視化し、これによって、チャネルトラックを、ツァイスのLSM510 Meta倒立レーザー走査型共焦点顕微鏡(http://nism.stanford.edu/Equipment/LSM510Meta01v01.htmlに記載されている)を使用し、チャネル間の相互汚染を回避するために各フレームに切り替えた。胚全体の共焦点面の画像を1μm毎に捕捉し、Z−スタック画像解析用にImageJ(NIH)で処理した。IMARIS(Bitplane)を使用して、胚を3次元に再構築した。
FISH解析は以下のように行った。まず、1%のクエン酸三ナトリウム塩低張緩衝液中でインキュベートし、次いで、カルノア液(メタノール:氷酢酸が3:1の割合)で固定した。その後、ポリ−L−リシンを処理したスライドグラス(フィッシャーサイエンティフィック、ピッツバーグ、ペンシルヴァニア)上にマウントし、一晩、60℃で成熟させた。蛍光標識したDNAプローブ(アボットモレキュラー、デスプレーンズ、イリノイ)を使用して、18番染色体およびY染色体へのハイブリダイゼーションを2日間、37℃の加湿チャンバー内で行い、陽性のシグナルを蛍光顕微鏡で可視化した。
結果
現在、最も一般的には、ヒト胚の発生能は、3日目または5日目のいずれかで、割球数や対称性および/または細胞の断片化の度合を含み得る、形態学的な特徴に基づいて評価される。興味深いことに、断片化は通常、ヒトの胚のみで見られる。ヒト胚の細胞の断片化がin vivoで生じることを示唆する証拠もあり、このことは、断片化はin vivo培養の結果ではないことを示している。断片化を示した胚と示さなかった胚の細胞周期撮像パラメータを解析した時、我々は、断片化の動的評価を行うことで、正倍数性、すなわち正常な胚と、正常な時間パラメータの領域にクラスターを形成する異数性の胚を区別できるだろうと判断した(図41A)。断片化が認められた胚をさらに解析した後、我々は、減数分裂の異常および有糸分裂の異常が根底にあった、低度および高度のモザイク現象が見られた、並びに三倍性に見えた胚の数を決定した(図41B)。加えて、我々のパラメータ解析と合わせてさらに別の断片化基準、例えば細胞断片化の度合や発生のタイミング、または割球の非対称性を含めることで、胚の評価を補助することもできることを示した(図44B)。
断片に含まれている染色体が複雑な異数性に寄与する
各胚の染色体組成を評価しているうちに、異数性の胚の個々の割球が染色体の欠損または追加のいずれかを示すことが多く、染色体の合計が、常に割球1個当たり各染色体2コピーになっているわけではなかったことを認めた。従って、異数性の胚が断片化と関連があるようであるということを前提として(図41)、我々は、失われた染色体が、発生の間、断片中にかくまわれ得るか否かを調べた。実際には、指定した染色体について、正しい総コピー数を有していなかった胚の多くで断片化が観察されたと判断した(11/14個)。断片化を起こさなかった3個の異数性の胚のうちの1個だけが、正倍数性、すなわち正常なパラメータの時間帯に入った(図45A)。不適当な染色体のコピー数を示した3個の胚で断片化が見られなかったことは、いくつかの断片は、微速度顕微鏡を含む光学顕微鏡で検出するのが容易ではない可能性があるが、別の光学系を利用したより高倍率では認識できるというこれまでの知見によって説明できるだろうと推測した。
断片が、失われた染色体を含むか否かをさらに試験するために、核酸用の色素である4’6−ジアミノジノ−2−フェニルインドール(DAPI)とミトコンドリアDNA用の色素であるMitotracker Redを核とミトコンドリアのDNAを区別するために使用し、共焦点顕微鏡で、透明帯を除去した卵割期のヒト胚を免疫蛍光法によって解析した。図45Bに、共焦点画像の1コマとして示すように、断片中にDNAが局在していることを観察した。これはミトコンドリアDNAには共存していなかった。興味深いことに、我々は、DAPI陽性の断片のすぐ近くに、DAPI染色陰性の断片を認めた。このことは、全ての断片が核DNAを含んでいるのではないことを示唆している(図45B)。Zスタック共焦点撮像およびDAPIシグナル陽性を示した胚全体の3次元モデリングによって、DIC光学系によっても検出可能な複数の断片(図45C)で、同様の結果が得られた(図45C)。これらの発見は、図45Dに示す実施例で示すように、ヒトの胚発生において最も共通して影響を受けたいくつかの染色体についてのFISHによって、さらに支持された。この例では、4コピーのY染色体をもつ胚の微速度撮像によって可視化された断片中に、2コピーの18番染色体が観察された。従って、細胞分裂の間に染色体が集まり、その後それぞれに分離するのに連れて、染色体異常が紡錘体に現れるという一般的な概念とは対照的に、我々の解析は、染色体異常は、ヒトの染色体を有する割球の断片化を介して生じる可能性があることを示唆している。
ヒトの初期胚における異数性発生のモデル
ヒトの胚では断片化が頻繁に生じ得るが、我々の微速度画像解析は、発生が進行するにつれて断片は、我々が微小核と命名した染色体DNAと細胞質の個別の単位として維持され得ることを示唆している。あるいは、これらの微小核はまた、これら小核が生じたのと同じ割球に再吸収される、または近くの割球に融合される場合もある(図44A)。染色体を含有している微小核が、それらの元となった割球に融合する場合、その割球は、核膜崩壊以降は胚の正倍数性を回復できる可能性があり(図44C)、かつ、胚発生の間に染色体修正が起こる場合があるというこれまでの発見を説明することができる。しかしながら、同等、或いはそれ以上に、染色体をかくまっている微小核が近くの割球に融合し(図44C)、本研究および他の研究において複雑な遺伝子型を生じる可能性がある。
断片化のタイミングと細胞周期の撮像パラメータとの相関をさらに評価した後、我々は、1細胞期、または発生のより後期である3〜4細胞期に断片化が生じた胚に、パラメータ帯に対する最も有意な影響が出たことを認めた(図44B)。胚の染色体組成の解析に続き、我々は、減数分裂の異常があった胚、または撮像から三倍性であると見受けられた胚は、通常、1細胞期で断片化を示したと決定した。対照的に、有糸分裂の異常があった胚では、断片化は主に、1細胞から2細胞への分裂後に観察された。このことは、ヒトの胚には、根底にある染色体異常を感知する能力があり、胚の異数性を修正する手段(図44C)、または、おそらくは最終的な崩壊過程を開始するための手段のいずれかとして、断片化を起こすということを示唆している。有糸分裂に異常のあるこれらの胚について、ヒトの初期胚発生の我々のモデルでは、これらの胚は、全ての染色体が、有糸分裂紡錘体上に正確に整列する機会をもつ前に、分裂する傾向にあったということも提唱している(図44C)。
考察
我々は、ヒトに特有の高頻度に発症する胚の異数性は主に、減数分裂および有糸分裂紡錘体とは別のヒトに特異的な現象によって、自動追跡によって検出可能な細胞の断片化を介して生じ得ることを示した。微小核と命名した、染色体を含む細胞断片がその後、胚の割球に再吸収される場合もされない場合もあることの証拠を示しただけでなく、断片化のタイミングや画像解析に基づいて、我々は、ヒトの胚は、染色体組成を認識し、生存するために断片化を起こする可能性があることも示唆している。
これらの結果により、我々は、胚の基本的な細胞特性に基づいてヒト胚や個々の割球の発生を評価することにより、移植の前に、正倍数性の胚と異数性の胚を区別することができるだろうと期待している。このことは、ほとんどの場合、胚性致死や自然流産を起こすことになる不注意による移植を回避することで、IVFの結果を改善するはずである。
着床前の発生段階での、後成的な抹消とトランスポゾン活性化との相関
方法
BioMarkDynamicArrayマイクロ流体システム(フリューダイム、サンフランシスコ、カリフォルニア)を使用して、ヒト胚での遺伝子発現を解析した。ZPを除去した胚を、Hepesと5%のSPSを添加したQuinn’s Advantage培地で3回洗浄し、その後、0.1%のウシ胎仔血清(BSA;シグマ−アルドリッチ)を添加したリン酸緩衝液(PBS;インビトロジェン、カールスバッド)に入れ、ドライアイス上で素早く凍結させ、使用するまで−80℃で保存した。CellsDirectOne−Step qRT−PCRキット(インビトロジェン)と20×TaqMan遺伝子発現アッセイ(アプライドバイオシステムズ、フォスターシティ、カリフォルニア)を使用し、製造業者によるプロトコール(フリューダイム)に従って、個々の胚をプレ増幅した。2×のUniversalMasterMix(アプライドバイオシステムズ)と試料添加緩衝液(フリューダイム)と合わせて2.25μlのプレ増幅したcDNAを、48.48または96.96いずれかのDynamicArray(DA;フリューダイム)の試料用インレットに負荷した。各プローブにつき、20×のTaqMan遺伝子発現アッセイおよびアッセイ添加緩衝液(フリューダイム)をDAのアッセイ用インレットに負荷した。各試料を3重で試験し、6〜10種類のハウスキーピング遺伝子の発現を対照として解析した。較正正規化相対量(Calculated normalized relative quantity、CNRQ)の値を、qBasePlus 1.3解析ソフトウェア(http://www.biogazelle.com)を使って算出し、CTNNB1およびGAPDGHに対して正規化した。
結果
DNAトランスポゾンと呼ばれており、DNAを直接「カット−アンド−ペースト」する機構によって移動する要素が、ヒトゲノムの最大45%に含まれていると考えられている。トランスポゾンは通常、後成的な機構を介したプロモーターCpGのメチル化によって抑制されているが、包括的に脱メチル化されている短い期間は例外であり、この脱メチル化は、哺乳類の発生の桑実胚期までに完了する。トランスポゾンは、着床前の発生段階では後成的なサイレンシングから逃れ、一旦活性化すると、減数分裂と有糸分裂の間の染色体対合を阻害し得るゲノムの再構成(おそらくは不等交差や非分離が生じる)を引き起こす可能性を踏まえて、我々は、卵割期のヒト胚で高頻度に見られる染色体の不安定性は、トランスポゾン活性の上昇によるものであろうと推理した。DNAのメチル化、ヒストンの修飾、H3リシン4およびリシン9のメチル化、並びにRNA緩衝(RNAi)がトランスポゾンのサイレンシングまたは活性化と関連があるという最近の知見に基づいて、我々は、新規のDNAメチルトランスフェラーゼであるDNMT3AとDNMT3B、ヒストン修飾酵素のSETD7とSETDB1(これらはそれぞれ、ヒストンH3のリシン4とリシン9の修飾を仲介する)、およびRNAi関連酵素であるダイサーの発現を、ヒトの着床前の発生全体にわたって評価した。ヒストン修飾がトランスポゾン活性の上昇と関連することが示されているSETD7を除き、DNMT3A、DNMT3B、SETDB1およびダイサー全ての発現が、後成的な抹消が完了し、高レベルのモザイク現象が観察される桑実胚までに有意に減少した。このことは、着床前の胚が発生している間の後成的およびRNAiによる制御の欠如が、染色体のコピー数の差として検出される、トランスポゾンによって引き起こされるゲノムの再構成に寄与する可能性があることを示唆している(図43)。

Claims (102)

  1. ヒト胚の発生能を測定する方法であって、前記方法が:
    (a)第1細胞質分裂の持続時間;
    (b)細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および/または
    (c)細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔;
    のうちの少なくとも1つを測定すること;ならびに
    前記測定値を使用して、前記胚の発生能を判定すること;
    を含み、ここで、前記胚の良好な発生能が:
    (i)約14.3±6.0分間である、第1細胞質分裂の持続時間;
    (ii)約11.1±2.1時間である、細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および/または
    (iii)約1.0±1.6時間である、細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔;
    により示される、方法。
  2. (a)前記第1細胞質分裂の持続時間;
    (b)前記細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および/または
    (c)前記細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔;
    のうちの少なくとも2つを測定することを含む、請求項1に記載の方法。
  3. (a)前記第1細胞質分裂の持続時間;
    (b)前記細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および
    (c)前記細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔;
    の3つすべてを測定することを含む、請求項1に記載の方法。
  4. 前記測定値を、微速度顕微鏡検査により測定する、請求項1に記載の方法。
  5. 細胞周期1の持続時間を測定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  6. 前記ヒト胚の良好な発生能が、約20〜27時間である細胞周期1の持続時間により示される、請求項5に記載の方法。
  7. 前記ヒト胚における1つまたは複数の遺伝子の遺伝子発現レベルを測定して、遺伝子発現測定値を得ることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  8. 前記1つまたは複数の遺伝子が、コフィリン、DIAPH1、ECT2、MYLC2/MYL5、DGCR8、ダイサー/DICER1、TARBP2、CPEB1、シンプレキン(Symplekin)/SYMPK、YBX2、ZAR1、CTNNB1、DNMT3B、TERT、YY1、IFGR2/IFNGR2、BTF3、およびNELFから成る群から選択される、請求項7に記載の方法。
  9. 前記ヒト胚の発生能の判定を提供するために、前記ヒト胚の1つまたは複数の遺伝子の遺伝子発現レベルを、基準の胚の1つまたは複数の遺伝子の遺伝子発現レベルと比較することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
  10. 前記胚における、コフィリン、DIAPH1、ECT2、MYLC2/MYL5、DGCR8、ダイサー/DICER1、TARBP2、CPEB1、シンプレキン(Symplekin)/SYMPK、YBX2、ZAR1、CTNNB1、DNMT3B、TERT、YY1、IFGR2/IFNGR2、BTF3、およびNELFから成る群から選択される1つまたは複数の遺伝子の、前記基準の胚と比較してより低いレベルの発現が、不良な発生能を示す、請求項9に記載の方法。
  11. 前記第1細胞質分裂の持続時間が約30分超であり、かつ前記胚が異数体である、請求項1に記載の方法。
  12. 前記細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔が約8時間未満であり、かつ前記胚が異数体である、請求項1に記載の方法。
  13. 前記細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔が約90分超であり、かつ前記胚が異数体である、請求項1に記載の方法。
  14. 良好な発生能を有するヒト胚を女性に提供する方法であって、前記方法が:
    (a)胚の発達に十分な条件下で、1つまたは複数の胚を培養すること;
    (b)前記1つまたは複数の胚における1つまたは複数の細胞パラメータを測定して、細胞パラメータ測定値を得ること;
    (c)前記細胞パラメータ測定値を使用して、前記1つまたは複数の胚の発生能の判定を提供することであって;ここで、ヒト胚の良好な発生能は:
    (i)約14.3±6.0分間である、第1細胞質分裂の持続時間;
    (ii)約11.1±2.1時間である、細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;または
    (iii)約1.0±1.6時間である、細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔;
    によって示されることと、および
    (d)良好な発生能を示す、前記1つまたは複数の胚を、それを必要とする女性に移植すること;
    を含む、方法。
  15. (a)前記第1細胞質分裂の持続時間;
    (b)前記細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および/または
    (c)前記細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔;
    のうちの少なくとも1つを測定することを含む、請求項14に記載の方法。
  16. (a)前記第1細胞質分裂の持続時間;
    (b)前記細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および/または
    (c)前記細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔;
    のうちの少なくとも2つを測定することを含む、請求項14に記載の方法。
  17. (a)前記第1細胞質分裂の持続時間;
    (b)前記細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および
    (c)前記細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔;
    の3つすべてを測定することを含む、請求項14に記載の方法。
  18. 前記胚が、in vitroでの卵母細胞の受精により産生される、請求項14に記載の方法。
  19. 前記卵母細胞を、in vitroで成熟させる、請求項18に記載の方法。
  20. 前記卵母細胞を、in vivoで成熟させる、請求項18に記載の方法。
  21. 前記ヒト胚を、測定前に凍結する、請求項1に記載の方法。
  22. 前記ヒト胚を、測定前に凍結しない、請求項1に記載の方法。
  23. 前記ヒト胚が、卵細胞質内精子注入法により産生される、請求項1に記載の方法。
  24. ヒト胚において異数性を検出する方法であって、前記方法が:
    (a)前記ヒト胚の1つまたは複数の細胞パラメータを測定して、細胞パラメータ測定値を得ること;
    (b)前記細胞パラメータ測定値を使用して、前記ヒト胚が異数体かどうかを判定すること;
    を含む、方法。
  25. 前記細胞パラメータを、微速度顕微鏡検査により測定する、請求項24に記載の方法。
  26. 前記1つまたは複数の細胞パラメータが:
    (a)前記第1細胞質分裂の持続時間;
    (b)前記細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および
    (c)前記細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔;
    から成る群から選択される、請求項24に記載の方法。
  27. 前記測定される細胞パラメータのうちの1つまたは複数において正常範囲外である細胞測定値により、異数性が検出され、ここで、前記測定される細胞パラメータの正常範囲が:
    (a)約0〜約30分間である、第1細胞質分裂の持続時間;
    (b)約8〜15時間である、細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および/または
    (c)約0〜5時間である、細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔;
    である、請求項26に記載の方法。
  28. 異数性が検出され、かつ1つまたは複数の細胞パラメータが:
    (a)約30分超である、第1細胞質分裂の持続時間;
    (b)約8時間未満である、細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および/または
    (c)約90分超である、細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔;
    を含む、請求項26に記載の方法。
  29. 前記測定される細胞パラメータの正常範囲が:
    (a)14.4±4.2分間である、第1細胞質分裂の持続時間;
    (b)11.8±0.71時間である、細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および
    (c)約0.96±0.84時間である、細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔;
    である、請求項27に記載の方法。
  30. 前記異数性が、有糸分裂または減数分裂のエラーに起因するかどうかを判定することをさらに含む、請求項24に記載の方法。
  31. 有糸分裂のエラーが:
    (a)約35分間より長い、第1細胞質分裂の持続時間;
    (b)約7時間よりも短い、細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および/または
    (c)約2時間よりも長い、細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔;
    により判定される、請求項30に記載の方法。
  32. 有糸分裂のエラーが:
    (a)約36.0±66.9分間である、第1細胞質分裂の持続時間;
    (b)約6.4±6.6時間である、細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および/または
    (c)約2.0±3.9時間である、細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔;
    により判定される、請求項31に記載の方法。
  33. 減数分裂のエラーが:
    (a)約100分間よりも長い、第1細胞質分裂の持続時間;
    (b)約4時間よりも短い、細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および/または
    (c)約2時間よりも長い、細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔;
    により判定される、請求項30に記載の方法。
  34. 減数分裂のエラーが:
    (a)約117.2±166.5分間である、第1細胞質分裂の持続時間;
    (b)約4.0±5.2時間である、細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および/または
    (c)約2.0±4.3時間である、細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔;
    により判定される、請求項31に記載の方法。
  35. 検出される前記異数性がモノソミーである、請求項24に記載の方法。
  36. 前記モノソミーがモノソミー22である、請求項35に記載の方法。
  37. 検出される前記異数性がトリソミーである、請求項24に記載の方法。
  38. 前記トリソミーがトリソミー21である、請求項35に記載の方法。
  39. 前記ヒト胚が、in vitroでの卵母細胞の受精により産生される、請求項24に記載の方法。
  40. 前記卵母細胞を、in vitroで成熟させる、請求項39に記載の方法。
  41. 前記卵母細胞を、in vivoで成熟させる、請求項39に記載の方法。
  42. 前記ヒト胚を、測定前に凍結する、請求項24に記載の方法。
  43. 前記ヒト胚を、測定前に凍結しない、請求項24に記載の方法。
  44. 前記ヒト胚が、卵細胞質内精子注入法により産生される、請求項24に記載の方法。
  45. 正常染色体数を有する胚を選択する方法であって、前記方法が:
    (a)前記ヒト胚の1つまたは複数の細胞パラメータを測定して、細胞パラメータ測定値を得ること;
    (b)前記細胞パラメータ測定値を使用して、前記ヒト胚が正常染色体数を有するかどうかを判定すること;
    を含む、方法。
  46. 前記細胞パラメータを、微速度顕微鏡検査により測定する、請求項45に記載の方法。
  47. 前記1つまたは複数の細胞パラメータが:
    (a)前記第1細胞質分裂の持続時間;
    (b)前記細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および
    (c)前記細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔;
    から成る群から選択される、請求項45に記載の方法。
  48. (a)前記第1細胞質分裂の持続時間;
    (b)前記細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および/または
    (c)前記細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔
    のうちの少なくとも2つを測定することを含む、請求項47に記載の方法。
  49. (a)前記第1細胞質分裂の持続時間;
    (b)前記細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および
    (c)前記細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔;
    の3つすべてを測定することを含む、請求項47に記載の方法。
  50. 正常染色体数が:
    (a)約0〜約30分間である、第1細胞質分裂の持続時間;
    (b)約8〜15時間である、細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および/または
    (c)約0〜5時間である、細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔;
    のうちの1つまたは複数により示される、請求項47に記載の方法。
  51. 正常染色体数が:
    (a)14.4±4.2分間である、第1細胞質分裂の持続時間;
    (b)11.8±0.71時間である、細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および/または
    (c)約0.96±0.84時間である、細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔;
    のうちの1つまたは複数により示される、請求項50に記載の方法。
  52. 前記細胞周期1の持続時間を測定することをさらに含む、請求項45に記載の方法。
  53. 正常染色体数が、約20〜27時間である細胞周期1の持続時間により示される、請求項52に記載の方法。
  54. 正常染色体数を有するヒト胚を女性に提供する方法であって、前記方法が:
    (a)胚の発達に十分な条件下で、1つまたは複数の胚を培養すること;
    (b)前記1つまたは複数の胚において、1つまたは複数の細胞パラメータを測定して、細胞パラメータ測定値を得ること;
    (c)前記細胞パラメータ測定値を使用して、前記胚が正常染色体数を有するかどうかを判定することであって;ここで、ヒト胚の正常染色体数は:
    (i)約14.4±4.2分間である、第1細胞質分裂の持続時間;
    (ii)約11.8±0.71時間である、細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および/または
    (iii)約0.96±0.84時間である、細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔;
    により示されることと、ならびに
    (d)正常染色体数を有する前記1つまたは複数の胚を、それを必要とする女性に移植すること;
    を含む、方法。
  55. 前記胚が、in vitroでの卵母細胞の受精により産生される、請求項45に記載の方法。
  56. 前記卵母細胞を、in vitroで成熟させる、請求項55に記載の方法。
  57. 前記卵母細胞を、in vivoで成熟させる、請求項55に記載の方法。
  58. 前記ヒト胚を、測定前に凍結する、請求項45に記載の方法。
  59. 前記ヒト胚を、測定前に凍結しない、請求項45に記載の方法。
  60. 前記ヒト胚が、卵細胞質内精子注入法により産生される、請求項45に記載の方法。
  61. (a)正常染色体数を有する;
    (b)有糸分裂のエラーに起因する異数体である;または
    (c)減数分裂のエラーに起因する異数体である;
    として、ヒト胚をランク付けする方法であって、前記方法が、
    前記ヒト胚の1つまたは複数の細胞パラメータを測定して、細胞パラメータ測定値を得ること;および前記細胞測定値を使用して、前記ヒト胚が、正常染色体数を有するかどうか、有糸分裂のエラーを原因とする異数体または減数分裂のエラーを原因とする異数体であるかどうかを判定すること;を含む、方法。
  62. 前記細胞パラメータを、微速度顕微鏡検査により測定する、請求項61に記載の方法。
  63. 前記1つまたは複数の細胞パラメータが:
    (a)前記第1細胞質分裂の持続時間;
    (b)前記細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および
    (c)前記細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔;
    から成る群から選択される、請求項61に記載の方法。
  64. (a)前記第1細胞質分裂の持続時間;
    (b)前記細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および/または
    (c)前記細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔;
    のうちの少なくとも2つを測定することを含む、請求項63に記載の方法。
  65. (a)前記第1細胞質分裂の持続時間;
    (b)前記細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔:および
    (c)前記細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔;
    の3つすべてを測定することを含む、請求項63に記載の方法。
  66. 前記第1細胞周期の持続時間を測定することをさらに含む、請求項61に記載の方法。
  67. 正常染色体数が:
    (a)約0〜約30分間である、第1細胞質分裂の持続時間;
    (b)約8〜15時間である、細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および/または
    (c)約0〜5時間である、細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔;
    のうちの1つまたは複数により示される、請求項61に記載の方法。
  68. 正常染色体数が:
    (a)約14.4±4.2分間である、第1細胞質分裂の持続時間;
    (b)約11.8±0.71時間である、細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および/または
    (c)約0.96±0.84時間である、細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔;
    のうちの1つまたは複数により示される、請求項67に記載の方法。
  69. 正常染色体数が:
    (a)約14.4±4.2分間である、第1細胞質分裂の持続時間;
    (b)約11.8±0.71時間である、細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および/または
    (c)約0.96±0.84時間である、細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔;
    のうちの2つ以上により示される、請求項67に記載の方法。
  70. 正常染色体数が:
    (a)約14.4±4.2分間である、第1細胞質分裂の持続時間;
    (b)約11.8±0.71時間である、細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および
    (c)約0.96±0.84時間である、細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔;
    により示される、請求項67に記載の方法。
  71. 有糸分裂のエラーに起因するヒト異数性胚が:
    (a)約35分間よりも長い、第1細胞質分裂の持続時間;
    (b)約7時間よりも短い、細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および/または
    (c)約2時間よりも長い、細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔;
    のうちの1つまたは複数により示される、請求項61に記載の方法。
  72. 有糸分裂のエラーに起因するヒト異数性胚が:
    (a)約36.0±66.9分間である、第1細胞質分裂の持続時間;
    (b)約6.4±6.6時間である、細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および/または
    (c)約2.0±3.9時間である、細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔;
    のうちの1つまたは複数により示される、請求項71に記載の方法。
  73. 有糸分裂のエラーに起因するヒト異数性胚が:
    (a)約36.0±66.9分間である、第1細胞質分裂の持続時間;
    (b)約6.4±6.6時間である、細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および/または
    (c)約2.0±3.9時間である、細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔;
    のうちの2つ以上により示される、請求項71に記載の方法。
  74. 有糸分裂のエラーに起因するヒト異数性胚が:
    (a)約36.0±66.9分間である、第1細胞質分裂の持続時間;
    (b)約6.4±6.6時間である、細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および
    (c)約2.0±3.9時間である、細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔;
    により示される、請求項71に記載の方法。
  75. 減数分裂のエラーに起因するヒト異数性胚が:
    (a)約100分間よりも長い、第1細胞質分裂の持続時間;
    (b)約4時間よりも短い、細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および/または
    (c)約2時間よりも長い、細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔;
    のうちの1つまたは複数により示される、請求項61に記載の方法。
  76. 減数分裂のエラーに起因するヒト異数性胚が:
    (a)約117.2±166.5分間である、第1細胞質分裂の持続時間;
    (b)約4.0±5.2時間である、細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および/または
    (c)約2時間よりも長い、細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔;
    のうちの1つまたは複数により示される、請求項75に記載の方法。
  77. 減数分裂のエラーに起因するヒト異数性胚が:
    (a)約117.2±166.5分間である、第1細胞質分裂の持続時間;
    (b)約4.0±5.2時間である細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および/または
    (c)約2時間よりも長い細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔;
    のうちの2つ以上により示される、請求項75に記載の方法。
  78. 減数分裂のエラーに起因するヒト異数性胚が:
    (a)約117.2±166.5分間である、第1細胞質分裂の持続時間;
    (b)約4.0±5.2時間である、細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および
    (c)約2時間よりも長い、細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔;
    により示される、請求項75に記載の方法。
  79. 前記胚の断片化の存在もしくは不存在および/または断片化のレベルを検出することをさらに含む、請求項24に記載の方法。
  80. ヒト胚において異数性を検出する方法であって、前記方法が:
    (a)前記ヒト胚の1つまたは複数の細胞パラメータを測定して、細胞パラメータ測定値を得ること;
    (b)前記胚の断片化の存在もしくは不存在および/または断片化のレベルを検出すること;ならびに
    (c)前記細胞パラメータを使用して、前記ヒト胚が異数体であるかどうかを判定すること;
    を含む、方法。
  81. 前記細胞パラメータ測定値および断片化を、微速度顕微鏡検査により測定する、請求項80に記載の方法。
  82. 前記1つまたは複数の細胞パラメータが:
    (a)前記第1細胞質分裂の持続時間;
    (b)前記細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および
    (c)前記細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔;
    から成る群から選択される、請求項80に記載の方法。
  83. 前記測定される細胞パラメータのうちの1つまたは複数において正常範囲外である細胞測定値により、異数性が検出され、ここで、前記測定される細胞パラメータの正常範囲が:
    (a)約0〜約30分間である、第1細胞質分裂の持続時間;
    (b)約8〜15時間である、細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および
    (c)約0〜5時間である、細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔;
    である、請求項82に記載の方法。
  84. 異数性が検出され、かつ1つまたは複数の細胞パラメータが:
    (a)約30分超である、第1細胞質分裂の持続時間;
    (b)約8時間未満である、細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および/または
    (c)約90分超である、細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔;
    を含む、請求項82に記載の方法。
  85. 前記測定される細胞パラメータの正常範囲が:
    (a)14.4±4.2分間である、第1細胞質分裂の持続時間;
    (b)11.8±0.71時間である、細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔;および
    (c)約0.96±0.84時間である、細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔;
    である、請求項83に記載の方法。
  86. 前記異数性が、増加したトランスポゾン活性に起因する、請求項24に記載の方法。
  87. ヒト胚において異数性を検出する方法であって、前記方法が:
    (a)ヒト胚においてトランスポゾン活性を測定すること;
    (b)前記トランスポゾン活性測定値を使用して、前記ヒト胚が異数体かどうかを判定すること;
    を含む、方法。
  88. ヒト胚において異数性を検出する方法であって、前記方法が:
    (a)胚が胚盤胞に達する可能性を判定すること、および胚盤胞に達する可能性を有する胚を選択すること;
    (b)前記胚盤胞に達する可能性を有する胚における断片化のレベルを測定すること;
    を含み、ここで高レベルの断片化が異数性を示す、方法。
  89. 高レベルの断片化が、細胞質の約25体積%超の断片化である、請求項88に記載の方法。
  90. 前記断片化のレベルを、微速度顕微鏡検査により測定する、請求項88に記載の方法。
  91. 前記胚が胚盤胞に達する可能性を判定することが、1つまたは複数の細胞パラメータを測定すること、遺伝子発現レベルおよび/またはパターンを測定すること、または胚の形態を解析することにより達成される、請求項88に記載の方法。
  92. 正常染色体数を有する胚を選択する方法であって、前記方法が:
    (a)胚が胚盤胞に達する可能性を判定すること、および胚盤胞に達する可能性を有する胚を選択すること;
    (b)前記胚盤胞に達する可能性を有する胚における断片化のレベルを測定すること;
    を含み、ここで低レベルの断片化が、正常染色体数を有する胚を示す、方法。
  93. 低レベルの断片化が、細胞質の約25体積%未満の断片化である、請求項92に記載の方法。
  94. 前記断片化のレベルを、微速度顕微鏡検査により測定する、請求項92に記載の方法。
  95. 前記胚が胚盤胞に達する可能性を判定することが、1つまたは複数の細胞パラメータを測定すること、遺伝子発現レベルおよび/またはパターンを測定すること、または胚の形態を解析することにより達成される、請求項92に記載の方法。
  96. 前記胚が:
    (a)前記第1細胞質分裂の持続時間;
    (b)前記細胞質分裂1と細胞質分裂2との間の時間間隔:および/または
    (c)前記細胞質分裂2と細胞質分裂3との間の時間間隔;
    のうちの少なくとも1つを測定する前に、培養皿において培養される、請求項1に記載の方法。
  97. 前記胚が良好な発生能を有すると判定された際、前記培養皿から前記胚を取り出すことをさらに含む、請求項96に記載の方法。
  98. 前記胚が良好な発生能を有すると判定された後に、前記培養皿から取り出した前記胚を、さらに女性受容者に移植する、請求項97に記載の方法。
  99. 前記胚の発達に十分な条件下で1つまたは複数の胚を培養することが、培養皿において実施される、請求項14に記載の方法。
  100. ステップ(c)において良好な発生能を有すると判定された胚を、ステップ(d)における前記胚の移植前に、前記培養皿から取り出す、請求項99に記載の方法。
  101. 前記胚の発達に十分な条件下で1つまたは複数の胚を培養することが、培養皿において実施される、請求項54に記載の方法。
  102. ステップ(c)において良好な発生能を有すると判定された胚を、ステップ(d)における前記胚の移植前に、前記培養皿から取り出す、請求項101に記載の方法。
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