図 1 は膀胱拡大足場の例を示す。
図 2 は膀胱交換足場の例を示す。
図 3 は尿路変更手段または導管足場の例を示す。
図 3A はさまざまなタイプの断面がある尿路変更構造体と、尿管に接続するように構成される可能性がある開口部の位置の例を示す。
図 3B は尿路変更構造体の変形を示す (A- 開いたクレーム卵型、B- 開いたクレーム卵型レセプタクル、C- 閉じた卵型レセプタクルおよびチューブ3つ)
図 4 は尿路変更または導管構造体の異なる用途を示す。
図 5A-B は筋肉等価足場の例を示す。
図 6 はパッチやストリップの形態のさまざまな筋肉等価足場の画像を示す。
図 7 はさまざまな筋肉等価足場と代表的な移植方法を示す。図 7a は足場の平面シートの形成を示す。図 7b は移植時に丸めて腹腔鏡チューブから通し、腹腔内で広げることができる腹腔鏡手術に適した足場を示す。図 7c は腹腔鏡チューブに通しやすいように丸められ、その後腹腔内で広げられる、腹腔鏡手術に適した足場シートの形成を示す。図 7d はチューブに通しやすいように折りたたまれるか、アコーディオン型となり、その後腹腔内で広げられる、腹腔鏡手術に適した足場シートの形成を示す。図 7e は筋肉等価足場を移植できる外科手技を示す。図 7f は空または充満した膀胱における移植サイトを示す。図 7g は表面の切開の際に形成された楕円形の外科的切り口のある膀胱モデルを示す。
図 8 は腹腔鏡ポートを通じて挿入しやすいようにアコーディオン型に前もって折り畳まれた足場シートを示す。
図 9A は事前に細片にカットされ、一緒に縫合することで、腹腔鏡端子に重ねて挿入して、腹腔内にしっかりと固定できるようにした足場を示す。
図 9B は長さ 18.7cm、幅 2.0cm で2つ折りの足場1つを示す。
図 9C は長さ 13.3 cm、幅 2.8 cm で3つ折りの足場1つを示す。
図 9D は長さ 9.7 cm、幅 4.0 cm で4つ折りの足場1つを示す。
図 9E はそれぞれ長さ 9.7cm、幅 2.0cm で2つ折りにした2つの足場から成る1つの足場を示す。
図 10 は移植された導管構造体の構成例を示す。
図 11 は臨時の尿路変更構造体の移植済みコンポーネントの例を示す。
図 12 は永続的尿路変更構造体の移植済みコンポーネントの例を示す。
図 13 はその他の尿路変更構造体の適用法を示す。
図 14 は犬の末梢血単核細胞画分 (軟膜) の培養を示す。
図 15 は犬の末梢血の増殖細胞を示す。
図 16 はさまざまな継代後の犬の平滑筋細胞の形態を示す。
図 17 は豚およびヒトの脂肪から単離した平滑筋細胞を示す。
図 18 は平滑筋細胞マーカーの遺伝子発現についての RT-PCR 分析を示す。
図 19 は平滑筋細胞マーカーの免疫蛍光タンパク発現を示す。
図 20 はヒトの脂肪血液から単離された平滑筋細胞の免疫染色を示す。
図 21 は血液 (A) 脂肪組織 (B) および膀胱組織 (C) から単離された豚の平滑筋細胞に対する収縮性の分析結果を示す。
図 22 はヒトの脂肪組織から単離された平滑筋細胞の成長を単位面積ごとの回収された細胞の数の関数として示す。
図 23 は豚の脂肪 (A)、末梢血 (B) および膀胱の平滑筋 (C) から単離された平滑筋細胞の成長を継代ごとの回収された細胞の数の関数として示す。
図 24 はヒトの膀胱の平滑筋、脂肪、末梢血、および膀胱尿路上皮から単離された細胞のサイトカイン MCP-1 の発現を示す。
図 25 はMCP-1 産生と播種した細胞密度の間の相関を示す。
図 26 は尿管ステントを示す。
図 27 は新しい導管構造体を示す。
図 28 は尿管 (実線矢印) に取り付けられた新しい導管構造体 (破線矢印) を示す。
図 29 は尿管に取り付けられた構造体の流入口端 (実線矢印) および外科的に作られたストーマに直接向けられた流出口 端(破線矢印) を示す。
図 30 は尿排出のためのストーマとカテーテルを示す。
図 31-32 は細胞のない足場を移植された動物の膀胱鏡検査画像を示す。
図 33 は血液由来の SMC で播種した足場を移植した動物の膀胱鏡検査画像を示す。
図 34-36 は血液由来の SMC で播種した足場を移植した動物の膀胱鏡検査画像を示す。
図 37 は血液由来の SMC で播種した足場を移植した動物の膀胱鏡検査画像を示す。
図 38-39 は脂肪由来の SMC で播種した足場を移植した動物の膀胱鏡検査画像を示す。
図 40-42 は脂肪由来の SMC で播種した足場を移植した動物の膀胱鏡検査画像を示す。
図 43 は脂肪由来の SMC で播種した足場を移植した動物の膀胱鏡検査画像を示す。
図 44 は尿路の導管に対するトリミングの略図を示す。
図 45 は新しい尿路導管の構造体を移植した動物の Subgross 写真を示す。
図 46 は新しい尿路導管の構造体を移植された動物における尿路と導管の接点付近の新しい尿路導管の顕微鏡写真を示す。
図 47 は新しい尿路導管の構造体を移植された動物における尿路と導管の接点付近の新しい尿路導管の顕微鏡写真を示す。
図 48 は新しい尿路導管の構造体を移植した動物の導管壁中部の顕微鏡写真を示す。
図 49 は新しい尿路導管 (膀胱 SMC 足場) を移植した動物の腎孟像を示す。
図 50 は新しい尿路導管 (脂肪 SMC 足場) を移植した動物の腎孟像を示す。
図 51 は新しい尿路導管 (脂肪 SMC 足場) を移植した動物の腎孟像を示す。
図 52 は新しい尿路導管 (血液 SMC 足場) を移植した動物の腎孟像を示す。
図 53 は新しい尿路導管 (血液 SMC 足場) を移植した動物の腎孟像を示す。
図 54 は新しい尿路導管 (血液 SMC 足場) を移植した動物の腎孟像を示す。
図 55 は新しい尿路導管 (血液 SMC 足場) を移植した動物の腎孟像を示す。
図 56 は新しい尿路導管 (足場のみ) を移植した動物の腎孟像を示す。
図 57 は新しい尿路導管 (足場のみ) を移植した動物の腎孟像を示す。
図 58 は新しい尿路導管 (足場のみ) を移植した動物の腎孟像を示す。
図 59 は固定後の導管 (A) とトリミングの略図 (B) を示す。図 59C は導管部分を特定する。
図 60 は新しい尿路導管 (脂肪 SMC 足場) を移植した動物の顕微鏡写真を示す。
図 61 は新しい尿路導管 (膀胱 SMC 足場) を移植した動物の顕微鏡写真を示す。
図 62 は新しい尿路導管 (脂肪 SMC 足場) を移植した動物の顕微鏡写真を示す。
図 63 は新しい尿路導管 (膀胱 SMC 足場) を移植した動物の顕微鏡写真を示す。
図 64 は新しい膀胱導管を形成する再生泌尿器組織の組織学的特徴を示す。
図 65 は生来の尿管膀胱移行部の3つの筋肉成分を示す。
図 66 は導管構造体移植者の子宮導管移行部を示す。
図 67 は移植した導管構造体の組織構造を示す。
図 68 は豚の (A) 膀胱由来、(B) 脂肪由来、(C) 末梢血由来の平滑筋細胞の形態学的特徴を示す。
図 69 は豚の膀胱由来、脂肪由来および末梢血由来の平滑筋細胞からの平滑筋細胞関連マーカーの RT-PCR 分析を示す。
図 70 は豚の膀胱由来、脂肪由来および末梢血由来の平滑筋細胞からの平滑筋細胞関連マーカーの免疫蛍光分析を示す。
図 71 は豚の (A) 膀胱由来、(B) 脂肪由来、(C) 末梢血由来の平滑筋細胞の収縮性を示す。
図 72 は豚の (A) 膀胱由来、(B) 脂肪由来、(C) 末梢血由来の平滑筋細胞の成長速度を示す。
図 73 は移植した新しい尿路導管構造体から形成した再生泌尿器組織の組織学的特徴を示す。
図 74 は尿路変更構造体を移植した動物における上皮化した粘膜の存在を示す。
図 75 は移植した新しい膀胱の構造体の4 ヶ月目の膀胱鏡検査画像を示す。A- 膀胱由来SMC、B- 血液由来 SMC、C- 脂肪組織由来 SMC、D- 生来の膀胱のベースライン
図 76 は移植した新しい膀胱構造体の時間経過に伴う (A) 容積および (B) コンプライアンスを示す。
図 77 は4ヶ月間超における動物の平均体重を示す。
図 78 は4ヶ月間超における動物の血清中クレアチニンの平均を示す。
図 79 は4ヶ月間超における動物の平均 BUN を示す。
図 80 は4ヶ月間超における動物の平均アルカリ性ホスファターゼ (ALP) を示す。
図 81 は4ヶ月間超における動物の総タンパク量の平均を示す。
図 82 は4ヶ月間超における動物の白血球細胞 (WBC) の平均を示す。
図 83 は4ヶ月間超における移植した構造体における膀胱鏡検査画像を示す (血液由来 SMC)。
図 84 は4ヶ月間超における移植した構造体における膀胱鏡検査画像を示す (脂肪由来 SMC)。
図 85 はヒトの膀胱成長における、膨張と収縮を繰り返すこと(cycling)の役割を示す。
図 86 は年齢および尿排出量にともなう膀胱容積の増加を示す。
図 87A-C は膨張と収縮を繰り返すこと(cycling)が再生転帰に影響することを示す。
図 88 は膨張と収縮を繰り返すこと(cycling)の再生を増強する効果の臨床転帰への現れを示す。
図 89 は筋肉等価足場の移植を示す。
図 90 は筋肉等価足場移植後4週間目の動物の膀胱鏡検査画像を示す。
図 91 は脂肪由来の細胞集団におけるマーカー (A) アディポネクチンおよび FABP-4、(B) SMαA、SM22、ミオカルディン、SMMHC、(C) カルポニン、(D) VECAD、vWF、PECAM、FLT1、(E) FLK および TEK の発現レベルを示す。
図 92 は媒体タイプ (A) SMαA、SM22、ミオカルディン、SMMHCおよび (B) カルポニンに対する平滑筋マーカーの依存性を示す。
図 93 は脂肪由来細胞および間葉幹細胞における平滑筋マーカーであるカルポニン、ミオカルディンおよび SMMHC の発現比較を示す。
図 94 は脂肪由来細胞におけるSMαA、SM22、ミオカルディン、カルポニンの時間経過に伴う発現を示す。
図 95 は脂肪由来細胞および間葉幹細胞における内皮マーカーの発現を示す。
図 96 は脂肪由来細胞における細胞表面マーカーの発現レベルを示す。
図 97 は間葉幹細胞における細胞表面マーカーの発現レベルを示す。
図 98 は MSC、膀胱由来 SMC、Ad-SMC、およびヒトの大動脈平滑筋細胞のプロテオームサインの比較分析を示す。
図 99 は脂肪由来細胞の培養液中における時間経過に伴う繁殖能を示す。
図 100 は脂肪由来細胞および間葉幹細胞の U46619 に対する応答を示す。
図 101 は中胚葉性分化マーカーの RT-PCR 分析結果を示す。
図 102 は MSC/AdSMC における Oct4A/Oct4B 発現の RT-PCR 分析結果を示す。
発明の詳細な説明
本発明は、本明細書でで説明される再構築、修復、拡大または置換の対象となる臓器や組織構造とは別の源から得られた細胞集団、そうした細胞単離させる方法、その細胞で播種された新しい臓器/組織構造足場またはマトリクス(構造体)、そしてそれを作製する方法とそのような新しい臓器/組織構造構造体を使用して、必要としている患者を治療する方法に関連する。
1. 定義
別に定義されない限り、本明細書で使用される技術的および科学的用語は本発明の属する業界の当業者によって一般的に解釈されるものと同じの意味を有する。Principles of Tissue Engineering、第三版 (R Lanza、R Langer、& J Vacanti編)、2007 では、本願において使用される多くの用語に対する一般的な指針を当業者に提供する。
当業者は、本明細書に説明されるものに相似の、または同等の多くの方法や材料が、本発明の実践において使用され得ることを認識するであろう。実際、本発明は説明される方法や材料に限定されるものではない。本発明の目的では、次の用語は以下のように定義される。
本明細書で使用される「平滑筋細胞」または「SMC」という用語は、本明細書でで説明される再構築、修復、拡大または置換の構造体および方法の対象となる生来の臓器や組織とは異なる源から得られた収縮性細胞を指す。SMC は末梢血または脂肪組織に由来し得る。脂肪組織の場合、SMC はSVFを含む 血管組織から得ることができる。よって SMC は毛細血管や細動脈、脂肪由来血管床の小静脈、または周皮細胞を含む血管周辺の割れ目から得ることができる。本発明で提供される平滑筋細胞は、本明細書でで説明される足場やマトリクスで播種および培養されると、空洞臓器 (膀胱、腹腔、胃腸管など) の壁で見られる無紋筋を形成できるようになり、収縮や弛緩できるという特性を持つ。当業者は平滑筋細胞のその他の特性を正しく理解するであろう。
本明細書で使用される「細胞集団」は、適切な哺乳類の組織源から直接単離し、インビトロで培養することによって得られる多くの細胞を指す。当業者は本発明で使用する細胞集団の単離と培養のさまざまな方法や本発明における使用に適した細胞集団内のさまざまな細胞数を正しく理解するであろう。細胞集団は含脂肪細胞や非接着性脂肪細胞が実質上ない、脂肪由来の平滑筋細胞集団 (SMC) であり得る。SMC 集団は平滑筋細胞に関連するマーカー発現によって特徴付けられ得る。また、SMC 集団は精製された細胞集団であり得る。SMC 集団は自己源から由来し得る。
用語「自己」は本人の身体から得た、または移されたことを指す。自己の平滑筋細胞集団は本明細書でで説明される移植可能な構造体の移植者である対象から得られる。
用語「マーカー」や「バイオマーカー」は一般的に DNA、RNA、タンパク質、炭水化物、または糖脂質ベースの分子マーカーを指し、培養細胞集団におけるその発現、または存在は、標準方法 (またはここに記載される方法) によって検出することができ、細胞の培養細胞集団における1つ以上の細胞が特定のタイプであることと一致する。一般的に細胞「マーカー」や「バイオマーカー」という用語は、本明細書でで説明される細胞集団で発現した分子を指し、それは通常生来の細胞によって発現する。マーカーは細胞よって発現するポリペプチド、または遺伝子等の染色体における識別可能な物理的位置、制限エンドヌクレアーゼ認識部位、または生来細胞によって発現したポリペプチド (mRNA など) をコード化する核酸であり得る。マーカーは「遺伝子発現マーカー」と呼ばれる遺伝子の発現部位、または既知のコード化機能を持たない DNA のセグメントであり得る。
「平滑筋細胞マーカー」という用語は一般的に DNA、RNA、タンパク質、炭水化物、または糖脂質ベースの分子マーカーを指し、培養細胞集団におけるその発現、または存在は、標準方法 (またはここに記載される方法) によって検出することができ、培養細胞集団における1つ以上の細胞が平滑筋細胞であることと一致する。一般的に平滑筋細胞 (SMC) 「マーカー」または「バイオマーカー」は通常生来の平滑筋細胞によって発現した分子を指す。マーカーは細胞によって発現するポリペプチド、または遺伝子等の染色体における識別可能な物理的位置、制限エンドヌクレアーゼ認識部位、またはSMC によって発現したポリペプチドをコード化する核酸であり得る。マーカーは「遺伝子発現マーカー」といわれる遺伝子の発現部位または既知のコード化機能を持たない DNA のセグメントであり得る。本発明で意図されるそのようなマーカーにはミオカルディン、アルファ平滑筋作用、カルポニン、ミオシン重鎖、BAALC、デスミン、筋線維芽細胞抗原、SM22の1つ以上、およびそれらの任意の組み合わせが含まれるが、限定されない。
「異なって発現された遺伝子」、「識別的遺伝子発現」という用語、およびその同義語は、互換可能に使用されるが、第二の細胞や細胞集団における発現に比較して第一の細胞や細胞集団において高レベルまたは低レベルで発現が活性化する遺伝子を指す。またこれらの用語は、培養中の第一または第二細胞の継代中において時間経過と共に別の段階で高レベルまたは低レベルで発現が活性化する遺伝子も含む。さらに、異なって発現された遺伝子は核酸レベルまたはタンパク質レベルで活性されるか、抑制され得、代替スプライシングの対象となり、別のポリペプチド産物となり得る。こうした違いは mRNA レベル、表面発現、分泌、もしくはその他のポリペプチドなどの分割における変更によって明らかとなり得る。識別的遺伝子発現は2つ以上の遺伝子や遺伝子産物間の発現の比較や、2つ以上の遺伝子や遺伝子産物間の発現率の比較、さらには第一細胞および第二細胞間で異なる、同一遺伝子の別様に処理された産物2つの比較を含み得る。識別的発現は、例えば第一細胞や第二細胞間における、遺伝子や発現産物の一時的もしくは細胞的発現パターンにおける定性的および定量的な違いの両方を含む。本発明の目的では、第一細胞および第二細胞の所与の遺伝子の発現や、培養中の細胞の継代中における時間経過に伴うさまざまな段階で少なくとも約 1 倍、約 1.5 倍、約 2 倍、約 2.5 倍、約 3 倍、約 3.5 倍、約 4 倍、約 4.5 倍、約 5 倍、約 5.5 倍、約 6 倍、約 6.5 倍、約 7 倍、約 7.5 倍、約 8 倍、約 8.5 倍、約 9 倍、約 9.5 倍、約 10 倍、約 10.5 倍、約 11 倍、約 11.5 倍、約 12 倍、約 12.5 倍、約 13 倍、約 13.5 倍、約 14 倍、約 14.5 倍、または約 15 倍の違いが見られる場合に「識別的遺伝子発現」が存在するとみなされる。マーカーの異なった発現は間葉幹細胞または MSC (第二細胞) における発現と比べ、脂肪由来の細胞 (第一細胞) において見られる場合がある。
「抑制」、「下方制御」、「下方発現」、および「減少」という用語は互換可能に使用され、遺伝子の発現または 1つ以上のタンパク質やサブユニットタンパク質をコード化する RNA 分子やRNA 分子に相当するもの、もしくは1つ以上のタンパク質やサブユニットタンパク質の活性が1つ以上の陽性対照および/または陰性対照などの1つ以上の対照と比較して低減するという意味である。下方発現は MSC における発現と比較して脂肪由来の細胞で見られ得る。
「上方制御」または「上方発現」という用語は、遺伝子の発現または 1つ以上のタンパク質やサブユニットタンパク質をコード化するRNA 分子や RNA 分子に相当するもの、もしくは1つ以上のタンパク質やサブユニットタンパク質の活性が1つ以上の陽性対照および/または陰性対照などの1つ以上の対照と比較して上昇するという意味である。上方発現は MSC における発現と比較して脂肪由来の細胞で見られ得る。
「収縮機能」という用語は滑動するアクチンおよびミオシンのフィラメントの相互作用が関与する平滑筋収縮機能を指し、ミオシンのカルシウム依存性リン酸化反応によって開始し、それによって細胞内のカルシウムレベルに依存して収縮を起こす。
用語「接触依存性増殖抑制」は2つ以上の細胞が互いに接触する場合に細胞増殖を停止することを指す。この特性の欠如は、それは変形細胞培養の病巣形成に類似する、接触によって成長が抑制されない細胞が互いの上に重なり合うことが観察できる細胞培養物において観察することができる。間葉幹細胞はこの特性を示さない。対照的に、接触依存性増殖抑制作用を有する細胞は培養物内でお互いの上に重なり合うことが観察されることはない。
「末梢血」という用語は通常身体中を循環する血液を指す。
「脂肪組織」または「脂肪」という用語は通常、主に含脂肪細胞から成る疎性結合組織を指す。脂肪組織は皮膚の下 (皮下脂肪) および内臓の周り (内臓脂肪) を含むがそれに限定されない身体のさまざまな部位から得られる。
用語「構造体」は1つ以上の合成または天然の生体適合性材料で作られた足場やマトリクスの表面内外に堆積した1つ以上の細胞集団を指す。細胞集団は生体外もしくは生体内で足場やマトリクスと組み合わせることができる。
用語「サンプル」、「患者サンプル」または「生体サンプル」は通常、個人や体液、体内組織、細胞系、組織培養またはその他の源から得られる生体サンプルを指す。この用語は末梢血や静脈血などの血液、尿および吸引脂肪などの生体起源のその他の液体サンプルなどの体液、および生検標本などの固形組織内バイオプシー (脂肪組織生検など)、もしくは組織培養やそこから由来する細胞、およびその子孫細胞を含む。またこの定義には、試薬による処理や可溶化、タンパク質やポリヌクレオチドなどの特定成分で濃縮など供給源から取得後に何らかの形で処理されているサンプルも含まれる。さらにこの定義には臨床サンプル、培養中細胞、細胞上清、細胞溶解物、血清、血漿、生体液および組織サンプルが含まれる。サンプルの供給源は、新鮮臓器や冷凍/保存臓器または組織サンプルやバイオプシー、吸引物などからの固形組織、血液または血液成分、脳脊髄液や羊水、腹水、間質液などの体液、対象の成長におけるいずれかの時期からの細胞であり得る。生体サンプルには防腐剤や抗凝血剤、バッファ、固定剤、栄養素、抗生物質など、本来は組織に存在しない成分が含まれる場合がある。サンプルは診断分析や監視分析に使用することができる。哺乳類からサンプルを取得する方法は当業者に周知である。用語「サンプル」が単独で使用される場合、「サンプル」は「生体サンプル」または「患者サンプル」などの意味で使用されるものとし、すなわち、これらの用語は互換可能に使用される。またサンプルとは試験サンプルであり得る。
「試験サンプル」という用語は本明細書でで説明される構造体移植後の対象からのサンプルを指す。試験サンプルは哺乳類対象における血液や血清、尿、精液、骨髄、粘膜、組織などを含むがそれに限定されないさまざまな供給源に由来し得る。
用語「対照」または「対照サンプル」は陰性の結果が予測される陰性対照を指し、試験サンプルにおいて陽性の結果を相互に関連付けるのに役立つ。また、対照は陽性の結果が予想される陽性対照となる場合があり、試験サンプルにおける陰性結果を相互に関連付けるのに役立つ。本発明に適した対照には、通常レベルのサイトカインを持つことが知られているサンプル、本明細書でで説明される構造体を移植されていない哺乳類の対象から得たサンプル、および異常のない哺乳類対象から得たサンプルを含むがそれに限定されない。また対照は本明細書でで説明される構造体を移植する前に対象から得たサンプルであり得る。さらに、対照は試験サンプルで得られた細胞と同じ起源を持つ正常細胞を含むサンプルの場合がある。当業者は本発明における使用に適切なその他の対照を正しく理解するであろう。
用語「患者」は治療が望まれる単一の動物、好ましくは哺乳類 (犬や猫、馬、ウサギ、動物園の動物、牛、豚、羊およびヒト以外の霊長類などのヒト以外の動物を含む) を指す。最も好ましくは、本明細書における患者はヒトである。
「対象」という用語は1つ以上の兆候や症状、または不良な、損傷した、または機能しない泌尿系を含む不全の臓器機能または障害のその他の兆候を経験している、または経験したことのある、治療対象となりえる患者を含む単一のヒトを指す。そのような対象には、新たに診断された対象や、以前に診断された対象、現在再発している対象、または原因に関係なく、不全の臓器機能欠損や障害の疑いがある対象を含むがそれに限定されない。対象は不全の内蔵機能または障害に関連した症状の治療を以前に受けたことがある場合や、そのように治療されていない場合がある。嚢胞切除が必要な膀胱がんの対象、腎臓機能に影響を及ぼす過敏膀胱を持つ対象、膀胱に放射線傷害を受けた対象および難治性失禁を患う対象を含むがそれに限定されない対象が尿路変更術対象候補となり得る。対象は尿路変更術が必要であると新たにまたは過去に診断され、現在合併症を患っている場合、または原因に関係なく、泌尿系の欠損、損傷または非機能の恐れがある場合がある。対象は不全の、損傷したまたは機能しない泌尿系に関連した症状の治療を以前に受けたことがある場合や、そのように治療されていない場合がある。
用語「尿路変更手段」または「導管」は、対象と移植した尿路変更構造体や吻合尿管、隣接アトリウムの時間経過に伴う相互作用によってもたらされた臓器や組織構造を指す。アトリウムは尿が腹壁を通して排出できるようにする、前房で接続する室であり、構造体の尾方端を皮膚に接続する腹膜 (腹内腔にある) の最前にあるチューブ状部位によって成る場合がある。
「尾部」および「頭部」という用語は尿産生およびその流れに関連する説明用語である。用語「尾部」は移植後にストーマに一番近い尿路変更構造体の端を指し、「頭部」は移植後に腎臓や尿管に一番近い尿路変更構造体の端を指す。
用語「有機堆積物」は尿路変更構造体の移植後に発生する、治癒プロセスおよび再生プロセスにおいて形成される破片を指す。破片は剥脱した組織細胞や、炎症性滲出液、足場の生分解で構成され得る。導管がそうした破片で遮断される (不適切な流出となる) 場合、沈滞する破片が導管の内腔内に有機堆積物や半固体の塊を形成する。
「創傷清拭」という用語は、感染や閉塞を防止して、治癒プロセスを促進するために異物や破裂組織、失活組織または死細胞を手術または手術以外の方法で導管から除去することを指す。創傷清拭には有機堆積物の除去も含まれる場合がある。
「ストーマ」という用語は尿路変更構造体の排出端から身体の外に尿を排出させるために使用する、外科的に形成された開口部を指す。尿は通常身体外の容器に収集される。
用語「ストーマポート」または「ストーマボタン」は、ストーマのオープニングの一貫性を維持するために使用する器具などの手段を指す。
本明細書で使用される用語「拡大」または「拡張」は既存の薄層状構造の管腔臓器や組織構造の大きさを増大することを指す。たとえば、本発明の一態様では、既存の薄層状構造の管腔臓器や組織構造が10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28% または 29% に拡大され得る。本発明における他の態様では、既存の薄層状構造の管腔臓器や組織構造は既存の薄層状構造の管腔臓器や組織構造の容量を増加するなどのために拡大することができる。
本明細書で使用される用語「容積」は画定された場所に入れることができる液体の容量を指す。
「再生予後診断」は一般に、本明細書で説明される構造体の移植の予測できる経過や結果の予想や予測を指す。本明細書で使用される再生予後診断は、膀胱交換または拡大後の機能する膀胱の進展や改善、導管移植後の機能する尿路変更手段の進展、改善した膀胱容量の進展、および改善した膀胱コンプライアンスの進展のうちの1つ以上の予想または予測を含む。本明細書で使用される「再生予後診断」は、新しい臓器や組織構造の経過や結果の予想または予測を提供することを指す。いくつかの実施形態では、「再生予後診断」は、膀胱交換または拡大後の機能する膀胱の進展や改善、導管移植後の機能する尿路変更手段の進展、改善した膀胱容量の進展、および膀胱コンプライアンスまたは改善した膀胱コンプライアンスの進展のうちの1つ以上の予想または予測 (予後診断) を提供することを含む。
「再生組織」は本明細書で説明される構造体を移植した後に作られた新しい臓器や組織構造の組織を指す。臓器や組織構造は膀胱または膀胱の一部であり得る。再生組織は平滑筋が下にある途切れのない尿路上皮を含み得る。
2. 細胞集団
本発明は薄層状構造の管腔臓器や組織構造の再構築、修復、拡大または置換において使用する平滑筋細胞集団を提供し、細胞集団は少なくとも1つの収縮機能有する細胞含み、1つ以上の平滑筋細胞マーカーについて陽性を示す。
本明細書でで説明されるように、再生医療の原則が、通常尿路上皮や平滑筋層で作られる膀胱や膀胱の構成要素などの薄層状構造の管腔臓器および組織構造の再構築、修復、拡大または置換において使用するのための移植可能な細胞マトリクスを提供することにうまく適用されている(Becker 他 Eur. Urol. 51, 1217-1228 (2007);Frimberger 他 Regen. Med. 1, 425-435 (2006);Roth 他 Curr. Urol. Rep. 10, 119-125 (2009);Wood 他 Curr. Opin. Urol. 18, 564-569)。平滑筋細胞は膀胱や尿道、尿管、およびその他の泌尿生殖器組織を含む患者自身の組織から得ることができる。ただし、がん性の膀胱組織の治療時など、新しく健康な培養組織を作るための基本単位としての、一次臓器サイト由来の細胞培養系の作成および管理への依存に関連する課題がある。そのようながん性細胞は明らかに移植可能な新しい膀胱足場やマトリクスを培養するのに最適な選択ではない。
本発明は再構築、修復、拡大または置換の対象となる臓器や組織構造とは異なる供給源から得られる細胞集団を提供する。一実施形態では、供給源は自己の供給源である。
他の態様では、細胞集団は平滑筋細胞集団と合致する、もしくは平滑筋細胞集団に典型的なマーカーを発現する。
また他の態様では、本発明は再構築、修復、拡大または置換の対象となる管腔臓器や組織構造とは異なる供給源から単離された細胞集団を提供する。また好適な実施形態では、当該管腔臓器/組織構造は膀胱または膀胱の一部である。
一態様では、供給源は末梢血である。一実施形態では、末梢血由来の平滑筋細胞集団は患者サンプルから得られる。患者サンプルは静脈血である場合がある。
一態様では、供給源は脂肪組織である。一実施形態では、脂肪組織由来の平滑筋細胞集団は患者サンプルから得られる。患者サンプルは腹腔形成術や脂肪吸引中に切除された脂肪組織である場合がある。好適な実施形態では患者サンプル
さらに他の実施形態では、本発明における単離された細胞集団は、培養されると、山と谷の形態、1つ以上の平滑筋細胞マーカー、収縮機能、フィラメント形成およびサイトカイン合成を含むがそれに限定されないさまざまな平滑筋細胞の特徴を発現させることができる。
一態様では、培養した細胞集団はで山と谷形態の特徴を持つ。山と谷の形態をした細胞は、細長形、扁平で線維芽細胞状の継代、長く平行に整列、らせん状成長、およびそのあらゆる組み合わせを含むがそれに限定されない、さまざまな特徴を有し得る。一実施形態では、適切な培地で培養した細胞集団は培養平滑筋細胞特有の「山と谷形態」を発現する。
他の態様では、培養した細胞集団には1つ以上の平滑筋細胞マーカーが見られる特徴がある。一実施形態では、細胞集団は、適切な培地で培養すると、ミオカルディン、アルファ平滑筋作用、カルポニン、ミオシン重鎖、BAALC、デスミン、筋線維芽細胞抗原、SM22のうちの 1つ以上、およびそのあらゆる組み合わせを含むがそれに限定されない検出可能な平滑筋細胞マーカーを発現する。
他の態様では、培養した細胞集団には1つ以上の細胞表面マーカーを発現する1つ以上の細胞が見られる特徴がある。一実施形態では、細胞集団は適切な培地で培養されると、CD73、CD90、CD105、CD166、CD31、CD54、CD56、CD117のうちの1つ以上、 およびそのあらゆる組み合わせを含むがそれに限定されない細胞表面マーカーで陽性を示す1つ以上の細胞が含まれる。他の実施形態では、細胞集団は適切な培地で培養されると、1つ以上のCD45+、CD31+、CD54+、CD56+、CD90+ および CD105+ である細胞を含む。
また他の態様では、培養した細胞集団には1つ以上の収縮機能を有する細胞が見られる特徴がある。一実施形態では、細胞集団は適切な培地で培養されると、収縮機能を発現する。また他の実施形態では、収縮機能はカルシウム依存性である。さらに他の実施形態では、カルシウム依存性収縮機能はカルシウムキレート剤による収縮阻止で証明される。他の実施形態では、カルシウムキレート剤は EDTA である。当業者は、当業者間で知られるほかのキレート剤が適している場合があることを正しく理解するであろう。
また他の態様では培養した細胞集団はフィラメント形成によって特徴付けられる。一実施形態では、細胞集団は適切な培地で培養されると、フィラメント形成する。
一態様では、細胞集団には1つ以上のサイトカインを発現する少なくとも1つの細胞が含まれる。一実施形態では、サイトカインは MCP-1、オンコスタチン M、IL-8 および GRO で構成されるグループから選択される。
一態様では、本発明の細胞集団は単離後後培養液中において有限的な増殖寿命を持つ。他の実施形態では、細胞集団は約 1 継代、約 2 継代、約 3 継代、約 4 継代、約 5 継代、約 6 継代、約 7 継代、約 8 継代、約 9 継代、約 10 継代、約 11 継代、約 12 継代、約 13 継代、約 14 継代、約 15 継代、約 16 継代、約 17 継代または約 18 継代の寿命を持つ。好適な実施形態では、細胞集団は5 継代を越えることのない培養液中の寿命を有する。脂肪由来の SMC は通常、継代の間 3〜5 日で培養され、血液由来の SMC は通常最初の継代前 14 日、そして次の継代で 3〜5 日培養される (詳細は例 1 を参照)。
一態様では、本発明は少なくとも1つ以上の新生細胞を含む新生細胞集団を提供し、本明細書でで説明される足場やマトリクスに堆積され、移植が必要な対象に移植される場合、ここで考えられる再構築や修復、拡大、または置換の対象となる臓器や組織構造に再生効果を提供する。新生細胞集団は移植が必要な患者へ移植されると薄層状構造の管腔臓器または組織構造の再生を促進したり、開始する能力がある。一般的に臓器や組織構造の再生は、細胞成分、組織構成および構造、機能、調節的発生によって特徴付けられる。また、新生細胞集団は播種細胞の管腔臓器または組織構造構造体の移植サイトに発生する傾向がある不全や疾患を最小限に抑える。移植サイトにおける無秩序さは、コラーゲン堆積の増加や瘢痕組織の形成として現れるが、それぞれは新生細胞集団を使用することで最小限に抑えることができる。また、特定の細胞的事象は再生プロセスを示している。本明細書で説明される細胞集団や足場を使って再生された膀胱や膀胱の一部の場合、再生臓器や組織構造は、管腔表面に向かって拡張する多数の微細血管の周りに放射状に広がる線維性血管性組織をともなう平滑筋柔組織と、粘膜面に整列する非常に発達した血管を有する基質成分で構成される (Jayo II supra を参照)。また再生される膀胱や膀胱の一部は Spindloid/間葉細胞および αSMA 陽性の筋前駆体細胞の存在によって特徴付けられる。一実施形態では、αSMA 陽性 Spindloid 細胞は新しい間質組織および複数の新しい血管 (細動脈) で確認される。
一実施形態では、本発明は細胞集団を提供し、本明細書でで説明される足場やマトリクスに堆積され、移植が必要な対象に移植される場合、ここで企図される再構築や修復、拡大、または置換の対象となる臓器や組織構造に修復効果を提供する。他の実施形態では、修復効果は瘢痕組織の形成やコラーゲンの堆積によって特徴付けられる。当業者は、当業者の間で知られている修復におけるその他の特性を正しく理解するであろう。
他の態様では、新生細胞集団は修復した薄層状構造の管腔臓器や組織構造のサイズにおける適応的調節によって特徴付けられる再生効果を提供する。一実施形態では、新生細胞集団の再生効果は新生細胞集団で播種した足場やマトリクスを移植する対象に特定した適応的調節を施すことである。一実施形態では、適応的調節は本明細書でで説明される構造体を使った対象における膀胱の置換や拡大であり、新しい膀胱は成長し、対象の身体サイズに釣り合うサイズになる。
一実施形態では、再生を促進できる細胞集団は MCP-1 を産生する細胞集団であり、ケモカイン生成 MCP-1 を発現する少なくとも1つの細胞が含まれる。MCP-1 の再生促進は移植サイトに特定の細胞タイプを動員することで特徴付けられる。一実施形態では、MCP-1 は筋肉前駆細胞を移植サイトに動員し、新しい膀胱内で増殖する。他の実施形態では、MCP-1 は移植サイトに単核白血球を動員し、単核白血球は、次いで、さまざまなサイトカインやケモカインを産生して再生プロセスを促進させる。他の実施形態では、MCP-1 は筋肉細胞に成長する大網細胞を誘導する。
一態様では、本発明は MCP-1 などの特定サイトカインを、組織再生の代理マーカーとして使用する方法を提供する。そうしたマーカーは機能が再構成されたかどうかを基にした再生の評価とともに使用される。再生の時間的経過にわたり代理マーカーをモニタリングすることは、再生の予後指標としての役に立つ場合もある。
他の実施形態では、細胞集団は精製された細胞集団である。本明細書でで説明される精製された細胞集団は1つ以上の形態、マーカーの発現および機能を基にした表現型によって特徴付けられる。表現型には、1つ以上の山と谷形態、1つ以上の平滑筋細胞マーカーの発現、サイトカインの発現、培養液中の有限的な増殖寿命、収縮機能およびフィラメント形成を誘発する能力を含まれるがそれに限定されない。表現型には本明細書でで説明されるその他の特徴や当業者の間において既知の特徴が含まれ得る。他の実施形態では、精製された細胞集団は本明細書で説明される平滑筋細胞集団に対して実質は均質である。実質上均質である精製集団は通常、1つ以上の形態、マーカーの発現および機能によって判断して、少なくとも 90% 均質である。他の実施形態では精製集団は少なくとも約 95% 均質であり、少なくとも約 98% 均質であり、または少なくとも約 99.5% 均質である。
他の実施形態では、平滑筋細胞集団はヒトの脂肪組織から直接得られ、ヒトの骨髄由来間充織幹細胞 (MSC) における発現レベルと比較して、オステオポンチン、Oct4B、成長分化因子 5 (GDF5)、肝細胞成長因子 (HGF)、白血病抑制因子 (LIF)、黒色腫細胞接着分子 (MCAM)、血管細胞接着分子 1 (VCAM1)、PECAM、vWF、Flk-1、ラント関連転写因子 2 (RUNX2)、骨形成タンパク質 6 (BMP6)、CD44、および IL-1B のうちの1つ以上の差次的発現によって特徴付けられる。また更に他の実施形態では、SMC 集団はヒトの骨髄由来の MSC における発現レベルと比較して、(a) GDF5、HGF、LIF、MCAM、RUNX2、VCAM1、PECAM、vWF、および Flk-1 のうちの1 つ以上の発現が不十分であり、(b) Oct4B、オステオポンチン、BMP6、CD44、および IL-1B のうちの1つ以上の発現が過剰である。また更に他の実施形態では、SMC 集団はヒトの骨髄由来の MSC における発現レベルと比較して、 (a) GDF5、HGF、LIF、MCAM、RUNX2、VCAM1、PECAM、vWF、および Flk-1 のすべての発現が不十分であり、(b) Oct4B、オステオポンチン、BMP6、CD44、および IL-1B のすべての発現が過剰である。
他の実施形態では、平滑筋細胞集団は CD45+ である細胞1つ以上および/または CD45+ である細胞1つ以上で構成される脂肪組織から直接抽出される。
他の実施形態では、本発明はヒトの骨髄由来の MSC よりも増殖寿命の短いヒトの脂肪組織から直接得られた平滑筋細胞集団を提供する。他の実施形態では、SMC 集団は培養物において接触依存性の増殖抑制を示す。また更に他の実施形態では、SMC 集団はトロンボキサン A2 模倣剤に対して少なくとも1つの平滑筋細胞 (SMC) マーカーの抑制が見られる脂肪組織から直接得られる。他の実施形態では、SMC マーカーはミオカルディン、ミオシン重鎖 − 平滑筋アイソフォーム (SMMHC) で構成される群から選択される。他の実施形態では、ミオカルディンおよび SMMHC はトロンボキサン A2 模倣剤に応答して抑制される。
すべての実施形態において、SMC 集団は自己供給源から得られる。
一態様では、本発明は本明細書で説明される平滑筋細胞集団を呼吸器疾患に適用することを意図する。気道平滑筋はほとんどの脊椎動物の気管支樹に存在する。呼吸器疾患は肺の筋肉機能不全のために不全の呼吸器系を持つ対象に見られる。特定の細胞集団は肺に施されると有益な効果を提供する場合があることが報告されている (例 Ohnishi 他 Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2008 December;3(4): 509−514)。喘息や肺気腫、慢性閉塞性肺疾患 (COPD) などの呼吸器疾患を患う患者は SMC 集団から恩恵を受けることができる。また肺がんを患う患者にも役立つ。一実施形態では、自己 SMC 細胞集団は移植が必要な対象の脂肪組織または末梢血から単離することができる。細胞集団は対象の肺内のサイトで移植に適した足場に播種される。本発明における細胞集団の利点は、対象が肺がんなど呼吸器系に欠損がある場合に対象の肺から適切な SMC が利用できない場合にある。細胞集団は対象の肺の一部またはすべてが肺がんなどのために切除される場合に使用できる場合がある。対象の肺または肺の一部を切除した後、自己 SMC 集団はバイオプシーから単離して培養し、適切な足場に播種し、対象に移植して新しい肺や新しい肺組織構造を提供する。
他の態様では、本発明は本明細書で説明される SMC 集団を眼疾患に適用することを意図する。眼疾患は目の筋肉機能不全のために欠損した目を持つ対象に見られる。平滑筋は毛様筋として眼に存在し、さまざまな距離から物体を見るために眼を調節し、シュレム管を通じた房水の流量を調節する。平滑筋は眼球の虹彩にも存在する。老眼や遠視などの眼疾患を患う患者はこうした SMC 集団から恩恵を受けることができる。また目のがんを患う患者にも役立つ。一実施形態では、自己 SMC 細胞集団は移植が必要な対象の脂肪組織または末梢血から単離することができる。細胞集団は対象の眼球内のサイトで移植に適した足場に播種される。本発明における細胞集団の利点は、対象の眼に欠損がある場合や眼組織の利用に制限がある場合に対象の眼から適切な SMC が利用できない場合にある。自己 SMC 集団はバイオプシーから単離され、培養して適切な足場に播種し、対象に移植して新しい眼組織を提供する。
他の実施形態では、本発明の平滑筋細胞集団は呼吸器疾患や眼疾患を患う対象に、足場を使わずに生着などによって施すことができる。当業者は生着の適切な方法を正しく理解するであろう。
一実施形態では、自己 SMC 細胞集団は移植が必要な対象の脂肪組織または末梢血から単離することができる。細胞集団は対象の肺内のサイトで播種に適した足場に播種され得る。本発明における細胞集団の利点は、対象が肺がんなど呼吸器系に欠損がある場合に対象の肺から適切な SMC が利用できない場合にある。細胞集団は対象の肺の一部またはすべてが肺がんなどのために切除される場合に使用できる場合がある。対象の肺または肺の一部を切除した際に、自己 SMC 集団はバイオプシーから単離して培養し、適切な足場に播種し、対象に移植して新しい肺や肺組織構造を提供する。他の実施形態では、本発明の平滑筋細胞集団は呼吸器疾患を患う対象に、足場を使わずにエンフラグメントなどによって施す場合がある。当業者はエンフラグメントの適切な方法を正しく理解するであろう。
3. 細胞集団の単離方法
自己細胞集団は、治療を必要とする対象から得られる。対象の由来組織は、一般に治療を必要とする患者の臓器/組織構造と同じではない。自己細胞集団は、脂肪組織や末梢血といった患者自身の組織から生成され得る。自己細胞は、生検で単離することが可能である。また、当該細胞は使用前に凍結または拡張することが可能である。
細胞を播種する足場の構造体準備のため、対象から得られた平滑筋細胞を含む検体を適切な細胞懸濁液をへと分離する。細胞を単離および培養する方法については、明確に参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許No. 5,567,612で考察されている。細胞を単一細胞期へと分離することは、一次培養の初期には必ずしも必要ではない。なぜなら、単一の細胞 懸濁液は1週間といった一定期間のin vitro培養の後に得られるからである。組織分離は、細胞外マトリックスと細胞同士を接着させる細胞間結合の機械的および酵素酵素的分断によって行われる。自己細胞は、足場に播種する細胞の数を増やすため、必要に応じてin vitro培養することが可能である。
細胞は播種前に、遺伝物質でトランスフェクトすることが可能である。平滑筋細胞はポリマー播種前に、特定の遺伝子でトランスフェクトすることが可能である。細胞ポリマー構造体には、ホストまたは再構築された新臓器の長期生存に必要な遺伝情報が含まれている場合がある。
細胞培養は、細胞分画法を用いてまたは用いないで準備することができる。細胞分画法は、当業者に知られている技術を用いて行われる。細胞分画法は、細胞の大きさ、DNA含量、細胞表面抗原、および生存能力に基づき行われ得る。例えば、平滑筋細胞は脂肪組織から濃縮され、内皮細胞や含脂肪細胞は平滑筋細胞の採取により減らすことが可能である。本発明の実施に際して、細胞分画法の利用は可能ではあるが、必須ではない。
本方法のもう1つのオプション手順として、低温保存が挙げられる。例えば、複数の侵襲的外科手順の必要性を低減できるといったように、低温保存は有用であるといえる。生検で得た細胞または対象から採取した検体は増幅され得、その増幅細胞の部分を使用して、その他の部分を低温保存することが可能である。細胞を増幅/保存する能力により、必要とされる外科手順の数を最低限に抑えることができる。低温保存の有用性のもう1つの例として、組織バンクが挙げられる。自己細胞は、例えばドナーの組織バンクに、保存可能である。新臓器または組織構造に細胞が必要となる際に、低温保存された細胞を必要に応じて利用することができる。疾患を持つまたは治療を行っている患者で既存の臓器/組織構造が危機に瀕している場合、1つ以上の生検を低温保存することが可能である。その後、患者自身の臓器/組織構造が機能不全となった場合、低温保存しておいた自己細胞を解凍して治療に用いることができる。例えば、治療後に新臓器/組織構造にガンが再発した場合、低温保存しておいた細胞を利用して追加の生検をすることなく臓器/組織構造を再構築することができる。
平滑筋細胞は、以下の一般的プロトコルに基づいて、脂肪または末梢血から単離させることができる。適切な重量(例、単位はg)および/または面積(例、cm2)の脂肪生検試料を採取可能である。新臓器/組織構造の構造体を計画移植する前に、適切な量(例、ml)の末梢血を採取可能である。
以下は、平滑筋細胞を脂肪間質血管細胞群(SVF)から単離するのに適切なプロトコルの代表的な例である。SVFは、内皮/平滑筋細胞および国際細胞治療学会(ISCT)の基準(Domini 他 2006 Cytotherapy 8: 4, 315-317)により定義されるMSC様細胞を含む複数の細胞タイプからなる異種細胞集団である。生検により脂肪組織の適切なグラム重量(例、7〜25g)を採取し、PBSで洗浄し(例、3回)、メスおよびハサミで細分化し、50mLの円錐管に移し、コラゲナーゼ(例、0.1〜0.3%)(Worthington)と1% BSAを含むDMEM-HGの溶液内で37℃で60分間培養する。円錐管は消化を促進させるため、継続的に揺動させるか、一定期間ごとに振り動かす。SVFは、600gで10分遠心分離してペレット成形し、10% FBSを含むDMEM-HG内で再懸濁する。間質血管細胞群は、移植継代0まで利用可能である。
以下は、末梢血からの平滑筋細胞の単離に適切なプロトコルの代表例である。適量の末梢血(例、25ml)をPBS内で1:1に希釈し、50mLの円錐管内で25mlのヒストパック1077(Sigma)を使って積層化され得る。遠心分離(例、800gで30 分)した後に、単核細胞群を採取し、PBSで1回洗浄し、α-MEM/10% FBS(Invitrogen)内で移植継代0まで再懸濁する。
当業者は、追加の平滑筋細胞単離方法を理解するであろう。
一態様において本発明は、平滑筋細胞の分化を誘導する条件を必要とせずに、単離平滑筋細胞集団をSVFから単離する方法を提供する。一実施形態において当該方法は、a)脂肪組織の採取、b)脂肪組織の消化、c)間質血管細胞群(SVF)を得るための消化脂肪組織の遠心分離、d)平滑筋細胞の分化誘導条件を必要としないSVFの培養、e)平滑筋細胞集団の脂肪組織由来SVFからの単離、を含む。一実施形態において当該培養工程は、SVFの洗浄、細胞培地でのSVFの再懸濁、再懸濁SVFの培養基による培養を含む。他の実施形態において当該培養工程は、プレート/容器といった細胞培養支持体に付着している細胞集団の形成を含む。他の実施形態において当該方法は、さらに、培養された細胞集団の拡張を含む。また他の実施形態において当該方法は、さらに、平滑筋細胞の特徴に関する平滑筋細胞集団の分析を含む。一実施形態では、当該脂肪組織は自己起源から得られる。
一実施形態では、脂肪組織SVF由来の細胞集団の平滑筋細胞への分化を誘導する細胞培養成分の使用を、当該培養条件は必要としない。Jack 他、J Biomaterials 30(2009)3529-3270は、幹細胞を平滑筋細胞へと分化させるため、SVF由来の未分化脂肪幹細胞をヘパリン含有誘導培地で6週間培養したと報告している(Rodriguez米国特許No. 7,531,355も参照)。Jack 他が報告した幹細胞は、本培養期間中の分割を必要としなかった。他の実施形態では、当該培養条件はヘパリン含有誘導培地を含む誘導培地の使用を必要としない。また他の実施形態において本発明の当該方法は、細胞集団を平滑筋細胞へと分化する/細胞集団を培養・拡張する外因性成長因子の使用を必要としない培養条件の使用を含む。
本発明の当該方法がその他の報告されている方法より優れている点には、脂肪由来幹細胞を平滑筋細胞へと分化させる工程を省くことができ、それにより脂肪生検の採取とそこから平滑筋細胞集団を単離するまでの時間を短縮できることが含まれる。さらには、外因性成長因子といった分化を誘導するためのその他の細胞培地成分の必要がなくなり、コストの面からみても優れている。
また一態様において本発明は、収縮機能があり1つ以上の平滑筋細胞マーカーに陽性を示す細胞を1つ以上含む平滑筋細胞集団の単離および培養の方法を提供する。一実施形態において当該方法には、薄層状構造の管腔臓器/組織構造の再構築、修復、拡大、置換を必要としており当該の再構築、修復、拡大、置換を必要とする管腔臓器/組織構造から検体を採取できない患者から検体を採取する工程が含まれる。他の実施形態では、平滑筋細胞は患者検体から生成される。また他の実施形態では、当該管腔臓器/組織構造は膀胱または膀胱の一部である。一実施形態では、当該検体は自己検体である。他の実施形態では、当該検体は末梢血検体である。また他の実施形態では、当該検体は脂肪組織検体である。当該脂肪組織は、腹腔形成術手順の結果として対象から摘出された組織である場合がある。
他の実施形態では、採取工程の後に分離工程を行う。
末梢血検体については、検体の密度勾配物質への接触、単核細胞群を持つ密度勾配を画定するための検体の遠心分離、密度勾配からの単核細胞群の抽出が、当該分離工程に含まれる。当該分離工程の後に、抽出された細胞群からの細胞を培養する培養工程を行う場合がある。
脂肪組織検体については、検体のコラゲナーゼによる消化、消化済み検体の遠心分離、間質細胞を一次含脂肪細胞から分離するための遠心分離済み検体の攪拌、後の培養のために再懸濁可能な間質血管細胞群を得るための攪拌済み検体の遠心分離が、当該精製工程に含まれる。
一態様において本発明は、分化を誘導する細胞培地の利用なしで単離平滑筋細胞(SMC)集団 を形成する方法を提供する。一実施形態において当該方法には、a)脂肪組織生検の採取、b)脂肪組織の酵素消化、c)異種細胞集団を含む間質血管細胞群(SVF)を得るための消化脂肪組織の遠心分離、d)異種細胞集団の洗浄および培養基による培養、e)平滑筋細胞の分化誘導培地を利用しない細胞集団の培養、f)完全に分化したSMC集団の培養細胞からの単離、が含まれる。また他の実施形態では当該培養工程e)は、細胞培養支持体に付着した細胞の選択を含む。他の実施形態では当該培養工程e)は、外因性成長因子を含む細胞培地の使用を含まない。一実施形態では当該培養工程は、当業者に知られている標準条件による、最小必須培地(例、DMEMまたはα-MEM)およびウシ胎仔血清(例、10% FBS)を含む細胞培地の使用を含む。別の実施形態では、平滑筋細胞集団は脂肪由来の幹細胞集団ではない。また他の実施形態では、当該平滑筋細胞集団は間葉幹細胞集団ではない。
4. 足場
Atala U.S. 6576019(参照することにより全体が本明細書に組み込まれる)で説明されている通り、足場またはポリマーマトリックスはさまざまな材料から構成することが可能である。一般に、生体適合性材料や特に生分解可能な物質が、本明細書で説明する足場を構成する材料として好ましい。当該足場は、少なくとも2つ以上の別個の面を有する、移植可能な生体適合性がある合成または天然のポリマーマトリックスである。当該足場は、治療を要する管腔臓器/組織構造の少なくとも一部と適合するよう形成されている。生体適合性材料は生分解可能である。生体適合性とは、生物学的機能に有害作用または損傷作用を及ぼさない材料を指す。生分解可能な物質とは、患者の体内で吸収されるまたは分解される材料を指す。生分解可能な材料の例として、吸収性縫合糸などが挙げられる。足場形成用の代表的な材料として、加水分解により制御された速度で分解され再吸収される、コラーゲン、ポリ(アルファエステル)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリオルトエステル、ポリ無水物とその共重合体といった、天然または合成ポリマーが挙げられる。これらの材料は、分解性、管理容易性、大きさ、構成を最大限に制御することができる。推奨される生分解可能ポリマー材料には、吸収性の合成縫合糸の材料として開発されたポリグリコール酸やポリグラクチンが挙げられる。ポリグリコール酸やポリグラクチン縫合糸は、製造業者から購入して利用することができる。その他の足場材料には、セルロースエーテル、セルロース、セルロシックエステル、フッ化ポリエチレン、ポリ4メチルペンテン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリル酸塩、ポリベンゾオキサゾール、ポリカーボネート、ポリシアノアリールエーテル、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレン、ポリフルオロオレフィン、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリオキサジアゾール、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリスルファイド、ポリサルフォン、ポリテトラフルオルエチレン、ポリチオエーテル、ポリトリアゾール、ポリウレタン、ポリビニル、フッ化ポリビニリデン、再構築セルロース、シリコン、ユリアホルムアルデヒド、またはこれらの材料の共重合体/物理的融合物が挙げられる。当該材料には適切な抗菌剤を含ませ、外科手順の際に見やすくするよう着色料で色を付けされ得る。
その他の生分解可能な足場材料には、MONOCRYL(TM)(グリコリドおよびイプシロンカプロラクトンの共重合体)、VICRYL(TM)またはポリグラクチン910(ポリグラクチン370およびステアリン酸カルシウムでコーティングされたラクチドおよびポリグラクチンの共重合体)、PANACRYL(TM)(カプロラクトンおよびグリコリドのポリマーでコーティングされたラクチドおよびグリコリドの共重合体)といったEthicon Co製の合成縫合糸材料(Ethicon Co、Somerville、N.J.)が挙げられる。(Craig P. H、Williams J. A、Davis K. W、他: A Biological Comparison of Polyglactin 910 and Polyglycolic Acid Synthetic Absorbable Sutures. Surg. 141;1010、(1975)) およびポリグリコール酸が含まれる。これらの材料は製造業者から供給されたままで使用することができる。
また他の実施形態では、細胞を非集団化した天然の臓器の一部を利用して、マトリックスまたは足場を生成することが可能である。生物学的構造または臓器の一部は、細胞質および組織全体を臓器から取り除くことにより、細胞を非集団化することができる。細胞非集団化のプロセスは、一連の順次抽出を含む。この抽出プロセスの特徴は、生物学的構造の複雑なインフラストラクチャを妨害し破壊する可能性のある行き過ぎた抽出を避けることである。最初の工程には、細胞質細片の除去と細胞膜の可溶化が含まれる。その後、核原形質成分および核成分の可溶化を行う。
好適には、生物学的構造(例、臓器の一部)は、軽度の機械的破砕方法を用いて当該臓器の一部の周辺の細胞膜や細胞質細片を除去して細胞の非集団化を行う。軽度の機械的破砕方法は、細胞膜を壊すのに十分な程度でなければならない。しかし細胞の非集団化のプロセスでは、生物学的構造の複雑なインフラストラクチャの損傷または妨害を避けることが必要である。軽度の機械的破砕法には、臓器一部表面をかき取ること、臓器一部の揺動、適量の液体(例、蒸留水)内での臓器の攪拌などが挙げられる。好ましい一実施形態では、細胞膜が破壊され臓器から細胞質破片が除去されるまで適量蒸留水内で臓器一部を攪拌することが、軽度の機械的破砕方法に含まれる。
細胞膜が除去された後、生物学的構造の核成分および原形質成分を除去する。これは、インフラストラクチャを妨害せずに、細胞質と核成分を溶解して行うことができる。核成分を溶解するため、非イオン洗剤または界面活性剤を使用する。非イオン洗剤または界面活性剤の例として、フィラデルフィアのRohm and Haasが販売するTritonシリーズ(Triton X-100、Triton N-101、Triton X-114、Triton X-405、Triton X-705、Triton DF-16など)(多くのベンダーから入手可能)、モノラウレート(Tween 20)、モノパルミテート(Tween 40)、モノオレエート(Tween 80)、ポリオキシエチレン23ラウリルエーテル(Brij.35)を含むTweenシリーズ、ポリオキシエチレンエーテルW-1(Polyox)、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸塩、CHAPS、サポニン、nデシルD- グルコピラノシド、nヘプチルDグルコピラノシド、nオクチルDグルコピラノシド、ノニデットP-40などが挙げられるが、これらに限定されない。
当業者は、前述の分類および業者に属する化合物の説明を理解し、また市販されるものを入手可能であり、「Chemical Classification、Emulsifiers and Detergents」、McCutcheonの「Emulsifiers and Detergents、1986、North American and International Editions」(McCutcheon Division、MC Publishing Co、Glen Rock、N.J、U.S.A.)、Judith Neugebauerの「A Guide to the Properties and Uses of Detergents in Biology and Biochemistry」(Calbiochem、R、Hoechst Celanese Corp、1987)で探すことが可能である。推奨される一実施形態では、非イオン界面活性剤はTritonシリーズ、できればTriton X-100と指定されている。
当該非イオン洗剤の濃度は、細胞の非集団化を行う生物学的構造の種類により変更され得る。例えば、血管のような繊細な組織については、洗剤の濃度は低くするべきである。推奨される非イオン洗剤の濃度範囲は、約0.001〜2.0%(w/v)である。できれば、約0.05〜1.0%(w/v)が望ましい。約0.1%(w/v)〜0.8%(w/v)であればなお良い。推奨されるこれらの濃度範囲は約0.001〜0.2%(w/v)で、特に約0.05〜0.1%(w/v)が推奨される
細胞骨格成分には細胞質性の密な繊維状ネットワーク、細胞間複合体、頂端微小細胞構造が含まれており、水酸化アンモニウムといったアルカリ溶液を用いて溶解することができる。その他のアルカリ溶液にはアンモニウム塩があり、それらの誘導体も細胞骨格成分の可溶化に利用できる。その他の適したアンモニウム溶液として、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、水酸化アンモニウムが挙げられる。好ましい実施形態では、水酸化アンモニウムが使用されている。
当該アルカリ溶液(例、水酸化アンモニウム)の濃度は細胞の非集団化を行う生物学的構造の種類により変更され得る。例えば、血管のような繊細な組織については、洗剤の濃度は低くするべきである。推奨される濃度範囲は、約0.001〜2.0%(w/v)である。できれば、約0.005〜0.1%(w/v)が望ましい。約0.01%(w/v)〜0.08%(w/v)であればなお良い。
細胞が非集団化され凍結乾燥された構造は、使用が求められるまで適温で保管する。当該の細胞が非集団化された構造は使用前に、適切な等張緩衝液または細胞培地で平衡化する。適切な緩衝液には、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、生理食塩水、MOPS、HEPES、ハンクス液などがあるが、それらに限定されない。適切な細胞培地には、RPMI 1640、フィッシャー培地、イスコブ培地、マッコイ培地、ダルベッコ培地などがあるが、それらに限定されない。
さらに、使用可能なその他の生体適合性材料としてステンレス鋼、チタン、シリコン、金、シラスチックが挙げられる。
ポリマーマトリックス/足場は強化可能である。例えば、合成マトリックス/足場の形成中に強化材料を追加する、または移植前に天然または合成マトリックスを接着することが可能である。強化形成用の代表的な材料として、加水分解により制御された速度で分解され再吸収される、コラーゲン、ポリ(アルファエステル)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリオルトエステル、ポリ無水物とその共重合体といった、天然または合成ポリマーが挙げられる。これらの材料は、分解性、管理容易性、大きさ、構成を最大限に制御することができる。
生分解可能なポリマーは、機械的性質に関して特徴付けることができる。それらの性質には、インストロン試験機を使用しての伸張強度、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるポリマー分子量ついて、示差走査熱量測定法(DSC)によるガラス/遷移温度、赤外線(IR)分光学法による結合構造がある。また毒物学の点については、Ames 試験とin vitro奇形発生試験を伴う初期スクリーニング検査および免疫原性についての動物の移植検査よる炎症、開放、分解検査がある。in vitro細胞の接着および生存能力は、走査電子顕微鏡法、組織学、放射性同位体による定量的評価を利用して評価することができる。また生分解可能な材料は、患者に移植した際に材料が分解されるのにかかる期間に関して特徴付けることもできる。例えば厚みや網目サイズといった構造を変えることにより、生分解可能な材料は約2年〜2カ月の期間に実質的に生分解可能とでき、できれば約18カ月〜約4カ月の期間にし、さらには15カ月〜8カ月の期間にできればなお良い。最も好ましいのは約12カ月〜10カ月の期間である。必要であれば、生分解可能な材料は約3年、約4年、約5年の間、実質的に分解されないように構造体可能である。
ポリマーマトリックス/足場は、前述の通り、制御された細孔構造で組立てることが可能である。細孔サイズを使用して、細胞の分布を決めることができる。例えば、ポリマーマトリックス/足場上の細孔を大きくすると、細胞がある面から反対側の面へと移動できるようになる。あるいは細孔を小さくすると、ポリマーマトリックス/足場の両面の間で流体連結はあるが、細胞は通り抜けることができない。本目的を達成するために適切な細孔サイズは、直径約0.04ミクロン〜10ミクロンで、できれば直径約0.4ミクロン〜4ミクロンが望ましい。一部の実施形態では、ポリマーマトリックス/足場の面は、細胞集団が細胞集団を通り抜けて接着および移動するのに十分な大きさの細孔で構造体される。ポリマーマトリックス/足場の内部では細孔サイズを小さくして、ポリマーマトリックス/足場のある面から反対側の面に細胞が移動することを防ぐことができる。細孔サイズを小さくしたポリマーマトリックス/足場の一実施形態では、小さい細孔材料が2つの大きい細孔材料に挟まれた積層構造となっている。特にポリカーボネート膜が適している。なぜなら、約0.01ミクロン、約0.05ミクロン、約0.1ミクロン、約0.2ミクロン、約0.45ミクロン約0.6ミクロン、約1.0ミクロン、約2.0ミクロン、約4.0ミクロンといった非常に制御された細孔サイズで製造されているからである。1ミクロン未満のレベルでは、ポリマーマトリックス/足場は細菌、ウイルス、その他の微生物に対して不浸透性となり得る。
各々別個のマトリックスまたはその一部の設計において、以下の特徴または基準を特に考慮に入れる:(i)形状、(ii)強度、(iii)剛性および固定度、(iv)縫合性(マトリックスまたはその一部を容易に縫合できる、または隣接組織に接着できる度合)。本明細書では、所与のマトリックス/足場の剛性は、足場を変形させようとする単位面積あたりの圧力とその結果としての歪み量の比率を表す係数である、弾性係数により定義される。(Andreas F. von Recum編「Handbook of Biomaterials evaluation、Scientific、Technical、and Clinical Testing of Implant Materials、2nd edition」(1999)、Ratner、他「Biomaterials Science: An Introduction to Materials in Medicine、Academic Press」(1996)などを参照)。足場の固定度とは、任意の足場が示す柔軟性(またはその欠如)の度合いを指す。
これらの基準はそれぞれ(特に材料や製造プロセスの選択を通して)変更可能な変数であり、それによりマトリックスまたはその一部の最良な配置とそれが意図する医学的適応や生理学的機能に対処するための修正が可能となる。例えば、膀胱の置換、再構築、および/または拡大のためのマトリックス/足場を構成する材料は、断裂することなく縫合糸を支持するのに十分な強度がなければならず、また変動する尿の量に対応するのに十分な柔軟性がなければならない。
好ましくは、マトリックス/足場は、その生分解の後、その結果として再構築された膀胱は天然の膀胱と同様に空の時は折り畳まれるようになり、尿管は閉塞されることはなく、それと同時に新臓器/組織構造から、漏出点を残さずに導尿カテーテルが除去されるように、形成されるべきである。生物工学によって作られた膀胱構造体は、一体として生成されるか、または各部分を個々に生成可能であり、あるいは複数セクションの組合せを特定部分として生成可能である。特定のマトリックス/足場部分はそれぞれ、特定の機能を持つように生成され得る。または、特定部分は製造簡易化のために生成される。特定部分は特定の材料で構築され、特定の性質を提供するために設計され得る。特定部分の性質には、元の組織(例、尿管)と同様の0.5〜1.5 MPa.sup.2の伸張強度、および30〜100%の極限伸びが含まれる。または、伸張強度は0.5〜28 MPa.sup.2の範囲、極限伸びは10〜200%の範囲、圧縮強度は<12であり得る。
網目状構造は繊維質で形成され、円形、扇形、平板形、星形、孤立形、その他の繊維質との絡み合わせが好ましい。枝分かれする繊維質の利用は、容積増大に比例して表面積が増えるという問題を解決するため、自然界で行われているのと同じ原理に基づいている。多細胞性微生物はすべて、この反復型枝分かれ構造を利用している。枝分かれ体系は、臓器間の通信ネットワークおよび個々の臓器の機能ユニットを表している。細胞とともに本設定を播種・移植することにより、大量の細胞の移植が可能となる。各細胞はホストの環境へとさらされ、栄養素と老廃物の自由な交換が行なわれ新血管形成が達成される。ポリマーマトリックス/足場は、所望の最終形態、構造、機能次第で、柔軟にするまたは固定化することが可能である。
好ましい一実施形態では、ポリマーマトリックス/足場は繊維質平均直径15 .mu.mのポリグリコール酸で形成され、4-0ポリグラクチン910縫合糸を利用して膀胱型のモールドへと構成される。結果としてできる構造は、適正な機械的特性を得るためおよびその形状を設定するため、pol-DL-ラクチド-コ-グリコリド50: 50(80mg/ml塩化メチレン)などの液化共重合体でコーティングされる。
他の実施形態では、本発明の足場は、生体適合性があり生分解可能な形状設定材料でコーティングされている。一実施形態では、形状設定材料にポリ-ラクチド-コ-グリコリド共重合体が含まれている。他の実施形態では、形状設定材料は液化されている。
他の一態様において、本発明の足場は、例えば、移植後に新組織の再構築を促進するため、移植前に添加物または薬剤で処理される場合がある(ポリマーマトリックス/足場が細胞で播種される前または後)。したがって、増殖因子、サイトカイン、細胞外マトリックス/足場要素、その他の生体活性材料などをポリマーマトリックス/足場に添加して、移植の治癒および新組織の再構築を促進することができる。そのような添加物は一般的に、播種された臓器/組織内に適切な新組織が形成されるのを確実にするため、再構築・置換・拡大される組織/臓器に従って選択される(例えば骨折治癒に利用されるそのような添加物の例については、Kirker-Head、C. A. Vet. Surg. 24(5): 408-19(1995)を参照)。408-19 (1995)). 例えば、ポリマーマトリックス(随意に内皮細胞とともに播種)が血管組織を拡大するために使用される場合、血管内皮増殖因子(VEGF)(例として米国特許No. 5,654,273を参照)は新血管組織の再構築を促進するために利用可能である。増殖因子やその他の添加物(例、上皮増殖因子(EGF)、ヘパリン結合性上皮様増殖因子(HBGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、サイトカイン、遺伝子、蛋白質、など)は、ポリマーマトリックスに播種された細胞により生成されたそのような増殖因子(もしあれば)の量を上回って添加することが可能である(添加細胞が利用されている場合)。好ましくはそのような添加物は、好ましくは、適切な種類の新組織の再構築を促進(例、ホスト細胞の移植片への浸潤を誘発/促進)するのに十分な量で、修復、置換、拡大が行われる組織/臓器に供給される。その他の有用な添加物として、抗生物質といった抗菌剤が挙げられる。
1つの好ましい支持体マトリックス/足場は交差する繊維質から成り、細胞支持体が移植されると短距離間で栄養素を伝播して細胞生存を可能にする。当該細胞支持体マトリックス/足場は、移植後の細胞集団の拡張に呼応して血管新生される。
移植前に生体内で3D構造の構造体を作ることで、移植後の生体内細胞最終分化を促進し、マトリックスに対する炎症反応のリスクを最低限に抑えることができ、したがって移植片の拘縮や収縮を回避することができる。
ポリマーマトリックス/足場は、使用前に既知の方法を利用して滅菌できる場合がある。当該方法が利用できるかどうかは、ポリマーマトリックスで使用されている材料によって決まる。滅菌方法の例として、蒸気、乾熱、放射線、ガス(エチレンオキシドガスなど)、煮沸が挙げられる。
足場を構成する合成材料は、溶剤キャスティング、圧縮成形、フィラメント延伸、メッシング、浸出、ウィービング、コーティングなどの方法を利用して形成可能である。溶剤キャスティングでは、1種類以上のポリマーを適切な溶剤(塩化メチレンなど)に溶かした溶液を、枝分かれパターンのレリーフ構造となるようキャスティングする。溶剤が蒸発した後に薄いフィルムができる。圧縮成形では、ポリマーを最大30,000ポンド/平方インチの圧力で適切なパターンへと圧縮する。フィラメント延伸では溶融ポリマーから延伸を行い、メッシングでは繊維質を圧縮してフェルト様材料を作ることで網目形成を行う。浸出では、2種類の材料を含む溶液を構造体の最終型に近い形に展開する。次に、溶剤を使用して1つの成分を溶かし、細孔を形成する。(参照することにより本明細書に組み込まれるMikos、米国特許No. 5,514,378を参照。)核生成では、足場の形をした薄いフィルムを放射性核分裂生成物にさらして、材料に放射線損傷の跡をつける。次に、酸または基剤でポリカーボネートシートにエッチングを施すと、放射線損傷を受けた材料の跡が細孔となる。最後に、レーザーを使用してさまざまな材料で個々の孔を形成し均一な細孔サイズを構成する。コーティングとは、ポリマー構造に液化共重合体(ポリ-DL-ラクチドコ-グリコリド 50: 50 80mg/ml 塩化メチレン)などの材料をコーティング/浸透させて機械的特性を変えることを指す。コーティングは一層を施す、または所望の機械的性質が得られるまで多層とすることが可能である。これらの形成技術は、組合わせて利用可能である。例えば、ポリマーマトリックス/足場をウィービング、圧縮成形して接着するといった具合である。また、異なるプロセスで形成された異なるポリマー材料を組合わせて複合形状を作ることもできる。複合形状は層構造である場合がある。例えば、ポリマーマトリックス/足場は1つ以上のポリマーマトリックスに接着して、複数層のポリマーマトリックス/足場構造を形づくる場合がある。当該接着は、液体ポリマーを用いた接着または縫合により行われる。またポリマーマトリックス/足場は堅いブロックとして形成し、レーザーまたはその他の標準的機械加工技術で所望の最終型へと形づくることも可能である。レーザー形成術とは、レーザーを用いて材料を除去するプロセスを指す。
好ましい実施形態において、当該足場は、不織のポリグリコール酸(PGA)フェルトおよびポリ(lactic-コ-グリコール酸)ポリマー(PLGA)から形成される。他の好ましい実施形態において、当該足場は尿路変更術足場である。
Bertram 他米国公開出願20070276507(参照することにより全体が本明細書に組み込まれる)で説明されている通り、本発明のポリマーマトリックス/足場は、包括的体系、幾何配置、空間上の制約を満たすために必要な形態へといくつでも形成することが可能である。当該マトリックスは、薄層状構造の管腔臓器/組織構造の寸法および形に適合するよう形成された3Dマトリックスである。例えば、膀胱再構築のためにポリマーマトリックスを使用する場合、膀胱全部/一部の寸法および形に適合するよう形成された3Dマトリックスを使用することができる。必然的に、ポリマーマトリックスはサイズの異なる患者の膀胱に適合するよう、別のサイズおよび形に形成され得る。任意で、ポリマーマトリックスは、その生分解の後、再構築された膀胱が、天然の膀胱と同様に空の時は折り畳まれ得るように、成形されるべきである。ポリマーマトリックスは、患者の特殊なニーズに合わせて別の方法で成形され得る。例えば、負傷/身体不全を負った患者は腹腔の状態が異なり、膀胱置換足場、膀胱拡大足場、膀胱導管足場、排尿筋等価足場を調整して適合させなければならない場合がある。
一態様において本発明は、本明細書で述べる平滑筋細胞集団とともに利用するのに適した、追加の足場を企図する。例えば、肺への移植に適した足場が提供され得る。
A. 拡大/置換足場
他の一態様において、ポリマーマトリックス/足場は膀胱の一部と適合するよう形成される。一実施形態では、形成されたマトリックスは、臓器被提供者の既存膀胱の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%を置換する。他の一態様において、ポリマーマトリックス/足場は膀胱の100%または全部と適合するよう成形される。
一実施形態では、当該ポリマーマトリックスは、別個の面を2つ以上持ち移植可能な生体適合性のある第一の合成/天然ポリマーマトリックス/足場と、別個の面を2つ以上持ち移植可能な生体適合性のある第二の合成/天然ポリマーマトリックス/足場からなり、互いに結合するよう適応されており、結合した場合、治療を要する管腔臓器/組織構造の少なくとも一部と適合するよう成形されている。第一および第二のポリマーマトリックスは、2つ以上の別の部分に分割される1つの統合ユニットから形成する、または2つ以上の別の部分から形成して結合するよう適応させることが可能である。一部の実施形態では、ひとたび結合した第一および第二ポリマーマトリックスは、管腔臓器/組織構造の再構築、修復、拡大、置換に使用可能である。
一部の実施形態では、第一および第二ポリマーマトリックスは対称形であり、また他の実施形態では、第一および第二ポリマーマトリックスは非対称形である。一実施形態では、第一ポリマーマトリックス/足場は球形または準半球形で閉じたドーム型端部と開いたエカトリアル境界があり、第二ポリマーマトリックス/足場は第一ポリマーマトリックスのエカトリアル境界と結合するよう適応された環である。他の実施形態では、第一および第二ポリマーマトリックスは各々半球形または準半球形で、閉じたドーム型端部と開いたエカトリアル境界がある。また他の実施形態では、第一および第二ポリマーマトリックスは各々円形または準円形基部で構造体され、各基部から2つ以上の弁が放射状に延びている。本実施形態では、第一および第二ポリマーマトリックスの基部と弁が形成された部分が結合して、空洞の球形または準球形マトリックス/足場が形成され、結合したポリマーマトリックスの1面に突縁の付いた縦方向の楕円形開口部が形成され、縦方向開口部の反対側に円形の開口部が形成される。他の実施形態では、第一および第二ポリマーマトリックスは上部、前部、側面部からなる3部構造体であり、結合するよう適応されている。本実施形態では、3つ以上(好ましくは4つ)の垂直方向のシームで3つの他の部分を結合させる。それにより、王冠型の新膀胱構造体が形成される。当該王冠型構造体は、好ましくは、管腔臓器の再構築、修復、拡大、置換のための手段として単独で使用される。一実施形態では、当該構造体は膀胱拡大足場である。膀胱拡大足場の一例を図1に示す。他の実施形態では、当該構造体は膀胱置換足場である。膀胱置換足場の一例を図2に示す。
また、第一ポリマーマトリックス、第二ポリマーマトリックス、またはその両方には、当該構造体を元の血管/導管へ繋ぐ必要がある部分で、管状容器または挿入を受けるよう適応させた1つ以上の容器またはポートがある。容器/挿入は、それら自体が円筒状や管状などに形成されたポリマーマトリックスであり、各々が円筒状ポリマーの第一端部に1つ以上の突縁を持つ。容器/挿入は、前述の第一または第二ポリマーマトリックスのものと同じ生体適合性材料で構成されるのが好ましい。一部の実施形態では、円筒状または管状の容器/挿入ポリマーマトリックスの周辺に嵌めるよう適応されたウォッシャーも、当該容器/挿入に含まれる。例えば、当該ウォッシャーはヒドロゲルである。円筒状または管状の容器/挿入は、随意にウォッシャーを含む場合がある。当該ウォッシャーはヒドロゲルであり得る。また、当該円筒状または管状の挿入は自己安定式であり得る。
他の実施形態では、当該足場/マトリックスを(細胞とともに播種した後に)元の血管/導管へ繋ぐ必要がある部分で、管状容器または挿入を受けるよう適応させた容器/ポートは、以下で考察するその他のマトリックスにも適用する。
B. 尿路変更手段
本発明は、細胞を播種でき、対象の尿路変更手段の構築においての胃腸組織を置換するものとして使用できる、新尿路変更手段または導管足場を提供する。例えば本明細書で説明する新尿路変更手段は、その他の方法としては回腸ループ造設術しかない患者の治療のために、根治的膀胱切除術の後に適用することが可能である。
一態様において本発明は、対象において尿路変更手段として利用するのに適しており、本明細書で述べる方法から形成される導管足場/マトリックスを検討する。当該導管足場の一方の端部は1つ以上の尿管に接続され、もう片方の端部は対象の体外にある尿貯留容器に接続される。一実施形態では、当該導管はストーマを経由して対象の体外に出される。他の実施形態では、当該ポリマーマトリックスは移植可能な生体適合性のある管状の第一合成ポリマーマトリックス/足場から成る。一部の実施形態では、当該管状の足場は対象の尿管に繋がるよう設定された第一端部を含む。他の実施形態では、当該第一足場はさらに、ストーマまたは対象の括約筋を形成するよう構成された第二端部を有する。他の実施形態では、当該第一足場はさらに、少なくとも1つの尿管に繋がるよ構成された少なくとも 1つの側方開口部を持つ。一部の実施形態では、当該第一足場は、第一尿管に繋がるよう構成された第一側方開口部と第二尿管に繋がるよう構成された第二側方開口部を有する。
他の実施形態では、当該管状構造は、縁が均一に揃えられている第一端部と縁が均一でなく不揃いである第二端部からなる。不揃いの縁は、複数の弁が放射状に延びている円形基部を有し得る。弁の数は1、2、3、4、5、または6であり得る。不揃いの縁は、図3に示されているもののような一連の弁を有し得る。一実施形態では、当該管状構造は、尿路変更系または患者の導管として使用するのに適した形状を有する。他の実施形態において当該系は、例えば尿管瘻術については、尿を1つ以上の尿管から腹壁部分へと方向転換させる。他の実施形態において当該系は、例えば膀胱瘻造設術については、尿を膀胱から腹壁部分へと方向転換させる。また他の実施形態では、当該系は膀胱を尿道へ接続する。さらに他の実施形態では、第一系は尿を1つ以上の尿管から腹壁部分へと方向転換し、第二系は尿を膀胱から腹壁部分へと方向転換する。すべての実施形態において、当該系は、例えばストーマ造設では、尿を1つ以上の尿管から腹壁部分へと方向転換する。
他の実施形態では、管状マトリックス/足場は尿路変更手段または導管足場である。
一実施形態では、尿路変更系の管状構造は、長方形、円形、三角形の断面積である。図3Aでは、本明細書で企図するいくつかの異なる断面形態のを図説している。
別の実施形態では、管状構造が十分な剛性を維持して移植後の開存性を保持する。別の実施形態では、当該管状構造の内腔でカテーテルを使用してまたは使用せずにその剛性を保持している。カテーテルを使用する場合、当該管状構造の内腔空間に位置付けて追加の開存性を提供できる。
別の一実施形態では当該導管足場は、さらに、第一足場の第一端部を尿管へと繋げるよう構成された円形または卵形のコネクタの形態の第二足場を含む。また別の実施形態では当該導管足場に、さらに、対象にストーマを造設するための第一管状の足場の第二端部を伴うストーマまたは括約筋を形成するよう構成された、ウォッシャー/リングの形態の第三足場が含まれる。図3Bは、さまざまな尿路変更手段の構造体を図説している(A − オープンクレーム卵形、B − オープンクレーム卵形容器、C − クローズド卵形容器および3つの導管)。
一部の実施形態では、自制型ストーマまたは括約筋を形成するため吻合術を達成するため、組織、臓器、身体部位接続用のウォッシャー構造が、当該管状構造に含まれる場合がある。別の実施形態では、当該ウォッシャーは約1mm未満、約1.5mm未満 、約2mm未満 、約2.5mm未満、約3mm未満、約3.5mm未満、約4mm未満、約4.5mm未満、約5mm未満の厚さで提供される。
一実施形態では、当該尿路変更手段または導管足場は図3で示す構成に成形される。
別の実施形態では、当該管状構造は、縁が均一に揃えられている第一端部と縁が均一でなく不揃いである第二端部からなる。不揃いの縁には、対象への外部ストーマの造設など、対象の外部領域に接続するために設定されている1つ以上の締め具が含まれる場合がある。一実施形態では、当該管状構造の第一および第二端部は図3に図説されている形態であり得る。当該締め具の数は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つであり得る。
別の実施形態では、当該管状の足場は図27で示す形態である。
図4Aは、ヒト泌尿器系の通常の解剖学的構造の一部を示したものである。
一実施形態では、当該管状構造は治療を要する患者の尿路変更手段または導管として使用するのに適した形態を有する。別の実施形態において当該導管は、例えば尿管瘻術については、1つ以上の尿管から腹壁部分へと尿路変更する(図4D)。別の実施形態において当該導管は、例えば膀胱瘻造設術については、膀胱から腹壁部分へと尿路変更する(図4B)。また別の実施形態では、当該導管は膀胱を尿道へ接続する(図4D)。さらに別の実施形態では、第一導管は1つ以上の尿管から腹壁部分へと尿路変更し、第二導管は膀胱から腹壁部分へと尿路変更する。すべての実施形態において、当該導管は1つ以上の尿管から腹壁部分へと尿路変更する(図4B)。すべての実施形態において、当該導管はストーマを造設するよう構成され得る。
一実施形態では、尿路変更手段または導管足場の管状構造は、長方形、円形、三角形の横断面積である。別の実施形態では、当該管状構造が十分な剛性を維持して移植後の開存性を保持する。別の実施形態では、当該管状構造の内腔でカテーテルを使用してまたは使用せずにその剛性を保持している。一部の実施形態では尿路変更足場には、さらに、移植上の管状構造の内腔空間に位置付けるよう設定されたカテーテルが含まれる。一実施形態では、当該カテーテルはフォーリー様バルーンカテーテルである。カテーテルを使用する場合、当該管状構造の内腔空間に位置付けて追加の開存性を提供できる。当技術分野で既知のその他のカテーテルが本発明での利用に適しているという事実を、当業者は理解するであろう。
別の実施形態では、当該足場の管状壁の厚さは約2mm未満、約2.5mm未満、約3.5未満、約4mm未満、約4.5mm未満、約5mm未満、約5.5mm未満、約6mmである。
一部の実施形態では、当該足場は可変外径/内径を持つ。一実施形態では、当該足場の端部は張り出し、非張り出し、密閉、曲線処理されている。
別の実施形態では、当該足場は尿に対して浸透性である。一実施形態では、当該足場の細孔サイズは0ミクロンを超える値〜約500ミクロンである。別の実施形態では、当該細孔サイズは約100ミクロン〜約200ミクロンである。別の実施形態では、当該細孔サイズは約150ミクロン〜約200ミクロンである。別の実施形態では、当該細孔サイズは約100ミクロン、約110ミクロン、約120ミクロン、約130ミクロン、約140ミクロン、約150ミクロン、約160ミクロン、約170ミクロン、約180ミクロン、約190ミクロン、約200ミクロンである。一部の実施形態では、当該細孔サイズは約100ミクロン、約200ミクロン、約300ミクロン、約400ミクロン、約500ミクロン、約600ミクロンである。別の実施形態において当該足場には、単一の細孔サイズ分布、複数の細孔サイズ分布、または細孔勾配分布である細孔構造が含まれる。
別の実施形態では、当該足場材料は縫合可能であり、漏出耐性のある組織との結合を構成し得る。
別の実施形態では、移植の利用期間中の開存性の保持、支持体細胞の接着とホスト組織の内方成長の支持、柔軟性を維持を行うべく、当該管状の足場材料を選択する。別の実施形態では、当該材料は生体内流体サイクルの間に受ける圧力を超える破裂強度を持つ。別の実施形態では、当該材料はホスト組織の内方成長に比例する分解時間を持つ。
C. 筋肉等価物
一態様において、本発明のポリマーマトリックス/足場は筋肉等価足場である。一実施形態では、当該筋肉等価足場は排尿筋等価足場である。別の実施形態では、当該足場は腹腔鏡下移植に適している。
一態様において当該ポリマーマトリックスは、治療を必要とする臓器/組織構造の少なくとも一部と適合するよう形成され、かつ腹腔鏡下で移植を行うのに十分な大きさであるポリマーマトリックス/足場から構成される。特定の実施形態では、本発明のポリマーマトリックス/足場の長さは約3〜20cmである。一実施形態では、当該ポリマーマトリックス/足場は最長約20cmである。別の実施形態では、当該ポリマーマトリックス/足場は最長約15cmである。別の実施形態では、当該ポリマーマトリックス/足場は最長約10cmである。別の実施形態では、当該ポリマーマトリックス/足場は最長約8cmである。別の実施形態では、当該ポリマーマトリックス/足場は最長約4cmである。また別の実施形態では、当該ポリマーマトリックス/足場は最長約3cmである。特定の実施形態では、本発明のポリマーマトリックス/足場の幅は約1〜8cmである。一部の実施形態では、当該ポリマーマトリックス/足場は最大幅約4cmである。別の実施形態では、当該ポリマーマトリックス/足場は最大幅約3 cmである。また別の実施形態では、当該ポリマーマトリックス/足場は最大幅約5 cmである。
一実施形態では、当該ポリマーマトリックス/足場は三次元(3-D)形状である。別の実施形態では、当該ポリマーマトリックス/足場は平板形状である。一実施形態では、当該平板形状ポリマーマトリックス/足場は柔軟性を高めるための事前処理が施された面で構成される。特定の実施形態では、当該事前処理済み面はしわの寄りやすい箇所がコーティングされている。一実施形態において当該ポリマーマトリックス/足場は、腹腔鏡導管および/またはポートを通して巻き上げ、折り畳み、その他移植向けの形状を作るための十分な適応性がある。かかる実施形態において当該ポリマーマトリックス/足場は、腹腔鏡導管および/またはポートを通して展開し、折り開き、または挿入後に元の形状に戻すための十分な適応性がある。一実施形態において当該ポリマーマトリックス/足場は、腹腔鏡導管および/またはポートを通しての移植前に、2本、3本、4本、5本、6本、7本、8本、9本、10本の細長片に切り分ける。特定の実施形態では、2本、3本、4本、5本、6本、7本、8本、9本、10本の当該細長片を、腹腔鏡導管および/またはポートを通しての移植前に結合する。2本、3本、4本、5本、6本、7本、8本、9本、10本の当該細長片は、縫合糸または同業者に知られているその他の技術で結合可能である。かかる実施形態では、2本、3本、4本、5本、6本、7本、8本、9本、10本の結合済み細長片を、腹腔鏡導管および/またはポートを通るように折り畳む、および/または積み重ねる。かかる実施形態では、2本、3本、4本、5本、6本、7本、8本、9本、10本の結合済み細長片を、腹腔鏡導管および/またはポートを通した挿入後に折り開くおよび/または平積みする。一部の実施形態では、先に置かれた結合手段を、腹腔鏡導管および/またはポートを通した挿入後に必要に応じて締める。
一実施形態では、当該ポリマーマトリックスは、パッチの形状または細長片の形状で提供される移植可能で生体適合性のある第一の合成/天然ポリマーマトリックス/足場で構成される。一実施形態では、当該パッチは治療を必要とする患者の膀胱の排尿筋等価物として利用するのに適した形状である。別の実施形態では、当該パッチは治療を必要とする患者の既存の膀胱容積を増やすのに適した形状である。特定の実施形態では、当該パッチにより増やせる膀胱容積は約50mL〜500mLである。一部の実施形態では、当該パッチにより膀胱容積は50mLづつ増やせる。一部の実施形態では、当該パッチにより増やせる膀胱容積は約450mLである。一実施形態では、表面積を30cm2増大させると、200 mLの膀胱容積が250mLに増える。別の実施形態では、25cm2増大させると、350mLの膀胱容積が400mLに増える。一実施形態では、当該足場に約30cm2の二次元平面がある。別の実施形態では、当該足場に約25cm2の二次元平面がある。一実施形態では、当該パッチは細長片、円板、正方形、楕円形またはその他の適した形態の形状である。別の実施形態では、当該パッチはあらかじめ折り畳まれた形状で提供される(例、アコーディオン式)。
図5A-Bは、筋肉等価足場またはポリマーマトリックスの例を示したものである。一実施形態では、ポリマーマトリックス/足場は二重ウェッジの形状である(例、図5Aに示されている形状)。別の実施形態では、当該ポリマーマトリックスは図6〜9に示されている形状のうちの1つに形成されている。
すべての実施形態において当該ポリマーマトリックス/足場は、膀胱とマトリックス/足場の両方にかかる負荷を最低限に抑えるよう成形されている。
別の実施形態では、当該ポリマーマトリックスは、パッチの形状または細長片の形状で提供される移植可能で生体適合性のある第一の合成/天然ポリマーマトリックス/足場で構成される。一実施形態では、当該パッチは治療を要する患者の膀胱の排尿筋等価物として利用するのに適した形状である。別の実施形態では、当該パッチは治療を要する患者の既存の膀胱容積を増やすのに適した形状である。一部の実施形態では、当該パッチにより膀胱容積は50mLづつ増やせる。一実施形態では、当該パッチは細長片、円板、正方形、楕円形またはその他の適した形態の形状である。別の実施形態では、当該パッチはあらかじめ折り畳まれた形状で提供される(例、アコーディオン式)。
一実施形態では、当該ポリマーマトリックスは図1〜9または27に示されている形状のうちの1つに成形されている。
すべての実施形態において、これらのマトリックス/足場に使用される生体適合性材料は、例えば、生分解可能である。すべての実施形態において、当該生体適合性材料はポリグリコール酸であり得る。
すべての実施形態において、当該ポリマーマトリックス/足場は生体適合性のある生分解可能な形成設定材料でコーティングされている。一実施形態では、当該形成設定材料は液体共重合体を包含し得る。別の実施形態では、当該液体共重合体は液化ラクチド/グリコリド共重合体を包含する場合がある。一実施形態では、当該液体共重合体はポリ-DL-ラクチド-コ-グリコリドを包含し得る。
5. 構造体
一態様において、本発明は1つ以上の細胞集団で播種される1つ以上のポリマー足場またはマトリックスを提供する。細胞集団で播種されるかかる足場は、本明細書内では「構造体」と称する。一実施形態では、当該細胞播種済みポリマーマトリックス/マトリックスは、膀胱置換構造体、膀胱拡大構造体、膀胱導管構造体、排尿筋等価構造体からなる群から選択される新膀胱構造体を形成する。
本明細書で説明する細胞集団1つ以上の播種または堆積は当分野の既知の方法で達成可能であるという事実は、当業者により正当に理解されるであろう。例えば、バイオリアクター孵化および培養(Bertram 他 米国公開出願20070276507;McAllister 他 米国特許. No. 7,112,218;Auger 他 米国特許. No. 5,618,718;Niklason 他 米国特許. No. 6,537,567);圧力誘起移植(Torigoe 他(2007)Cell Transplant、16(7): 729-39;Wang 他(2006)Biomaterials. May;27(13): 2738-46);および静電移植(Bowlin 他 米国特許. No. 5,723,324)を使用可能である。また、エレクトロスピン法で得られる繊維質を細胞のエアロゾルで同時にコーティングする新技術が、移植または堆積に適し得る(Stankus 他(2007)Biomaterials、28: 2738-2746)。
一実施形態における当該細胞堆積には、足場を細胞接着強化蛋白質と接触させる工程が含まれる。別の実施形態では、当該強化蛋白質は以下のうちの一つ以上である:フィブロネクチン、コラーゲン、MATRIGEL(TM)。別の実施形態では、当該足場は細胞接着強化蛋白質を含んでいない。別の実施形態における当該細胞堆積には、足場の細胞集団との接触後の培養工程が含まれる。また別の実施形態において当該培養には、パルスおよび/またはバイオリアクターの定常流による調整工程が含まれる。
本明細書で述べる脂肪または末梢血から単離した平滑筋細胞集団は、その後、本明細書で述べる足場へ播種可能である。
以下は、細胞を足場へと播種するプロトコルの代表例である。脂肪由来または末梢血由来の平滑筋細胞を最長7週間拡張して、足場の播種に必要な細胞量を生成する。足場の播種に適した細胞密度を、以下に示す。足場播種のための細胞の採集前に、脂肪由来の平滑筋細胞を継代を2回行って拡張する。末梢血由来の平滑筋細胞の培養は、足場播種のための採集の前にP3-4まで拡張することができる。細胞播種のための足場を準備するため、適した材料(例、PGAフェルト)を適切な大きさに切り、適切な形状に縫合し、材料(例、PLGA)でコーティングする。その後、当該足場を適切な方法(例、エチレンオキシド)を用いて滅菌する。細胞移植の前日に、滅菌済み足場を逐次60% エタノール/40% D-PBS、100% D-PBS、D-MEM/10% FBSまたはα-MEM/10% FBSの飽和液であらかじめ湿潤させ、その後、D-MEM/10% FBSまたはα-MEM/10% FBS内で室温で一晩培養する。そして、当該足場を脂肪由来または末梢血由来の平滑筋細胞で播種し、移植された構造体を加湿インキュベーター(37oC、5% CO2)で対象に移植する日まで(例、7日目まで)成長させる。当業者は、細胞播種のための足場準備、および細胞の足場への播種のためのさらなる方法を理解するであろう。
一態様において、本発明は短縮された時間枠内で構造体を準備する方法を提供し、それにより構造体の移植を待っている対象に恩恵がもたらされる。これまで、SVFから生成された未分化脂肪幹細胞は、血管平滑筋細胞への分化の前に、誘導培地で6週間培養しなければならないと報告されている(上記Jack 他 2009). 一実施形態において当該方法は、a)ヒト脂肪組織検体の採取、b)完全に分化した平滑筋細胞集団の検体からの単離、c)細胞集団の培養、d)細胞集団の形成ポリマーマトリックス細胞構造体との接触の工程が含まれ、工程a)、b)、c)、d)は約45日以内で行われる。別の実施形態では、単離工程は細胞選択なしで行われる。別の実施形態では、当該単離工程b)は工程a)の採取後約72時間以内に行う。また別の実施形態では、当該培養工程c)は約4週間以内で行う。別の実施形態では、当該接触工程d)は約10日以内で行う。別の実施形態では、工程a)、b)、c)、d)は約28日以内で行う。また別の実施形態では、当該単離工程b)は工程a)の採取後約48時間以内に行う。一実施形態では、当該培養工程c)は約2週間以内で行う。別の実施形態では、当該接触工程d)は約5日以内で行う。すべての実施形態において、当該ヒト脂肪組織検体は自己起源から採取される。別の実施形態において当該方法には、さらに、平滑筋細胞マーカーの発現を検出する工程が含まれる。別の実施形態では、発現はmRNA発現である。さらに別の実施形態では、当該発現はポリペプチド発現である。一実施形態では、当該ポリペプチド発現は細胞内免疫蛍光測定法で検出される。
一実施形態では、当該足場は本明細書で述べる細胞集団で構成される。別の実施形態では、当該足場は本質的に本明細書で述べる細胞集団からなる。また別の実施形態では、当該足場は本明細書で述べる細胞集団からなる。
第一ポリマーマトリックス、第二ポリマーマトリックス(ある場合)、または両方は、1つ以上の細胞集団が第一ポリマーマトリックスの第一表面、第二ポリマーマトリックスの第一表面、または両方に堆積され、マトリックス/足場の構造体および細胞を形成し、そこで1つ以上の細胞集団が実質的に筋肉細胞集団から成る。当該筋肉細胞集団は、例えば、平滑筋細胞集団である。好ましい実施形態では、当該第一表面および第二表面はそれぞれ、第一および第二ポリマーマトリックスの外部表面である。
別の実施形態では、マトリックスおよび細胞を含む当該構造体は他のいかなる細胞集団も含まない。好ましい実施形態では、当該構造体は尿路上皮細胞を含まない。
これらの構造体は、膀胱、尿管、尿道などの泌尿生殖器といった内腔臓器/組織構造を、治療を必要とする対象に提供するために使用される。対象はかかる臓器/組織の再生、修復、拡大、置換が必要である場合がある。一実施形態では、当該内腔臓器/組織構造は膀胱またはその一部であり、当該ポリマーマトリックス/足場はマトリックス表面に堆積する平滑筋細胞を有する。当該構造体はまた、尿路変更手段/導管または排尿筋等価を提供するために使用される。
一態様において、本発明は本明細書で述べる細胞集団で播種される尿路変更手段または導管の足場/マトリックスを提供する。細胞集団で播種されたかかる足場は、本明細書内では「構造体」と称する。一実施形態において当該尿路変更手段/膀胱導管構造体は、1つ以上の本明細書で述べる足場および1つ以上の本明細書で述べる足場の1つ以上の表面に堆積する細胞集団から成る。
一態様において本発明は、膀胱などの泌尿生殖器といった既存の内腔臓器/組織構造を強化するために利用可能な筋肉等価構造体を、治療を必要とする対象に提供する。当該対象は、かかる臓器/組織の拡張または治療が必要である場合がある。一実施形態では、当該内腔臓器/組織構造は膀胱またはその一部であり、当該ポリマーマトリックス/足場はマトリックス表面に堆積する平滑筋細胞を有する。一実施形態では、当該構造体を使用して排尿筋等価物を提供する。
当業者は、マトリックス/足場に細胞集団を堆積するいくつかの適切な方法があると事を理解するであろう。
一態様において当該構造体は、新臓器/組織構造を必要とする対象への移植に適している。一実施形態において当該構造体は、サイトカインMCP-1を生成する細胞集団を包含する。別の実施形態において当該MCP-1は、対象/受容者の体内間葉幹細胞の、移植を行う部位への移動を引き起こす。一実施形態では、受容者の体内間葉幹細胞の移動により、新臓器/組織構造の再生が支援される。
別の一態様において本発明は、特定の細胞濃度で、細胞で播種された足場を提供する。一実施形態では、足場は平滑筋細胞集団で、約20x10 6 〜約30x10 6 の細胞濃度で移植される。別の実施形態では、当該細胞濃度は約1x10 6 〜約40x10 6 、約1x10 6 〜30x約10 6 、約1x10 6 〜約20x10 6 、約1x10 6 〜約10x10 6 、約1x10 6 〜約5x10 6 である。
さらなる実施形態では、当該濃度は約20x10 6 〜約98x10 6 細胞である。またさらなる実施形態では、当該濃度は約21x約10 6 〜97x約10 6 、約22x10 6 〜約95x10 6 、約23x10 6 〜約93x10 6 、約24x10 6 〜約91x10 6 、約25x10 6 〜約89x10 6 、約26x10 6 〜約87x10 6 、約28x10 6 〜約85x10 6 、約29x10 6 〜約83x10 6 、約30x10 6 〜約80x10 6 、約35x10 6 〜約75x10 6 、約40x10 6 〜約70x10 6 、約45x10 6 〜約65x10 6 、約50x10 6 〜約60x10 6 である。好ましい実施形態では、当該濃度は約24x10 6 〜約91x10 6 細胞である。
別の実施形態では、当該濃度は約2.5x10 6 〜約40x10 6 、約5x10 6 〜約40x10 6 、約7.5x10 6 〜約35x10 6 、約10x10 6 〜約30x10 6 、約15x10 6 〜約25x10 6 、約17.5x10 6 〜約22.5x10 6 である。別の実施形態では、当該細胞濃度は約1x10 6 、約2x10 6 、約3x10 6 、約4x10 6 、約5x10 6 、約6x10 6 、約7x10 6 、約8x10 6 、約9x10 6 、約10x10 6 、約11x10 6 、約12x10 6 、約13x10 6 、約14x10 6 、約15x10 6 、約16x10 6 、約17x10 6 、約18x10 6 、約19x10 6 、約20x10 6 、約21x10 6 、約22x10 6 、約23x10 6 、約24x10 6 、約25x10 6 、約26x10 6 、約27x10 6 、約28x10 6 、約29x10 6 、約30x10 6 、約31x10 6 、約32x10 6 、約33x10 6 、約34x10 6 、約35x10 6 、約36x10 6 、約37x10 6 、約38x10 6 、約39x10 6 、約40x10 6 、約41x10 6 、約42x10 6 、約43x10 6 、約44x10 6 、約45x10 6 、約46x10 6 、約47x10 6 、約48x10 6 、約49x10 6 、約50x10 6 、約51x10 6 、約52x106、約53x106、約54x10 6 、約55x10 6 、約56x10 6 、約57x10 6 、約58x10 6 、約59x10 6 、約60x10 6 、約61x10 6 、約62x10 6 、約63x10 6 、約64x10 6 、約65x10 6 、約66x10 6 、約67x10 6 、約68x10 6 、約69x10 6 、約70x10 6 、約71x10 6 、約72x10 6 、約73x10 6 、約74x10 6 、約75x10 6 、約76x10 6 、約77x10 6 、約78x10 6 、約79x10 6 、約80x10 6 、約81x10 6 、約82x10 6 、約83x10 6 、約84x10 6 、約85x10 6 、約86x10 6 、約87x10 6 、約88x10 6 、約89x10 6 、約90x10 6 、約91x10 6 、約92x10 6 、約93x10 6 、約94x10 6 、約95x10 6 、約96x10 6 、約97x10 6 、約98x10 6 、約99x10 6 である。
さらなる形態において本発明は、足場容積あたりの特定の細胞濃度で、細胞で播種された足場を提供する。一実施形態では、当該濃度は約3,000細胞/cm 2 〜15,000 細胞/cm 2 、約3,500細胞/cm 2 〜14,500細胞/cm 2 、約4,000細胞/cm 2 〜14,000細胞/cm 2 、約4,500細胞/cm 2 〜13,500細胞/cm 2 、約5,00細胞/cm 2 〜13,000細胞/cm 2 、約4,500細胞/cm 2 〜13,500細胞/cm 2 、約5,000細胞/cm 2 〜13,000細胞/cm 2 、約5,500細胞/cm 2 〜12,500細胞/cm 2 、約6,000細胞/cm 2 〜12,000細胞/cm 2 、約6,500細胞/cm 2 〜11,500細胞/cm 2 、約7,000細胞/cm 2 〜11,000細胞/cm 2 、約7,500細胞/cm 2 〜10,500細胞/cm 2 、約8,000細胞/cm 2 〜10,000細胞/cm 2 、約7,500細胞/cm 2 〜9,500細胞/cm 2 、約8,000細胞/cm2〜9,000細胞/cm 2 である。好ましい実施形態では、当該濃度は約3,000細胞/cm 2 〜7,000細胞/cm 2 、または約9,000細胞/cm 2 〜15,000細胞/cm 2 である。
一態様において本発明の構造体は、移植後に特定の特徴を対象に提供するよう適合される。一実施形態では、当該構造体は移植後に対象体内での再生を提供するよう適合される。別の実施形態では、当該構造体は移植部位において対象体内での再生を促進するよう適合される。例えば、移植後に、移植の部位において構造体自体から再生組織が形成され得る。別の実施形態では、当該構造体は移植後に機能的特性を対象に与え得る。例えば、尿路変更構造体は、対象の尿を第一尿管(例、第一側方開口部)から管状の足場内部へと通過させる事を可能にするように適合される。および/または対象の尿の一時的留置または排出(例、管状の足場)を提供するよう適合される。一実施形態において尿路変更構造体は、移植上で上皮化された粘膜を提供するよう適合される。別の実施形態において構造体は、対象の新臓器/組織構造の恒常性調節的発生を提供するよう適合される。
6. 使用方法
一態様において本発明は、薄層状内腔臓器/組織構造を、かかる治療を必要とする対象に提供するための方法を企図する。一実施形態では、当該対象は臓器/組織の再生、修復、拡大、置換を必要とし得る。一実施形態において当該方法は、臓器/組織構造を、必要とする臓器/組織構造の少なくとも一部と適合するよう成形された、生体適合性のある合成または天然のポリマーマトリックスを提供する工程を含む。当該提供工程の後に、再生、修復、拡大、置換を受ける対象の臓器/組織構造から得られたのではない1つ以上の細胞集団の堆積が行われ得る。当該堆積工程は、ポリマーマトリックス上での細胞集団の培養を含み得る。当該マトリックス上で細胞集団を堆積し構造体を形成した後に、内腔臓器/組織構造の形成のために患者の治療部位に移植することができる。一実施形態では、薄層構造である当該内腔臓器/組織構造は膀胱または膀胱の一部である。
別の一態様において本発明は、薄層状内腔臓器/組織構造を、治療を必要とする対象に提供するための方法を提供する。一実施形態において当該方法には、a)前述治療を必要とする臓器/組織構造の少なくとも一部と適合するよう成形された、生体適合性のある合成または天然のポリマーマトリックスの提供、b)新臓器/ 組織構造に対応する体内臓器/組織から得られたのではない自己細胞集団の、ポリマーマトリックス第一面の上または内部への堆積、c)薄層状内腔臓器/組織構造の形成を目的とした、成形されたポリマーマトリックス細胞構造体の前述対象への移植、の工程を含む。別の一態様において本発明は、新膀胱またはその一部を、治療を必要とする対象に提供するための方法を提供する。一実施形態において当該方法は、a)膀胱またはその一部と適合するよう成形された、生体適合性のある合成または天然のポリマーマトリックスの提供、b)対象の膀胱から得られたのではない自己細胞集団の、ポリマーマトリックスの第一面の上または内部への堆積、c)新膀胱またはその一部の形成を目的とした、成形されたポリマーマトリックス細胞構造体の対象への移植、の工程が含まれる。別の実施形態では、本明細書で述べる工程b)の当該細胞集団は、収縮機能があり平滑筋細胞マーカーに陽性を示す1つ以上の末梢血由来の平滑筋細胞を含む。または工程b)の細胞集団は、収縮機能があり平滑筋細胞マーカーに陽性を示す1つ以上の脂肪組織由来の平滑筋細胞を含む。別の一実施形態では、当該細胞集団の収縮機能はカルシウム依存性である。
一実施形態において本発明の方法には、さらに、移植された導管構造体を対象の大小網、腸間膜、筋膜および/または腹膜で覆い、血管新生を可能とする工程が含まれる。
別の一態様において本発明は、欠陥のある膀胱のための尿路変更手段または導管を、治療を必要とする対象に提供するための方法を提供する。一実施形態では、尿路変更手段を治療を必要とする対象に提供するための方法は、(a)生体適合性のある導管足場の提供、(b)第一細胞集団の前述足場の第一面の上または内部への堆積(前述第一細胞集団は実質的に筋肉細胞集団である)、(c)対象からの尿の排出を可能とする導管の形成を目的とした、工程(b)の足場の前述対象への移植、の工程を含む。別の実施形態では、当該生体適合性材料は生分解可能である。別の実施形態では、当該生体適合性材料はポリグリコール酸である。また別の実施形態では、当該第一細胞集団は実質的に平滑筋細胞集団である。
一実施形態における当該方法には、本明細書で述べる尿路変更手段/導管足場を提供する工程を含む。別の追加実施形態では、当該尿路変更手段/導管足場は、本明細書で述べるように、第一、第二、第三足場といったように、複数部分で提供される。別の実施形態において当該方法は、さらに、欠陥のある膀胱から得られたのではない細胞集団を堆積して、尿路変更手段/導管構造体を形成する工程を含む。別の一実施形態では、当該堆積工程が細胞集団を足場上で培養することを含み得る。一部の実施形態において当該方法は、さらに、治療を必要とする患者に尿路変更構造体を移植する工程を含む。別の実施形態では、当該移植は欠陥のある膀胱部位で行われる。
一実施形態では、当該構造体の開口端部(例、腹壁に繋がるよう構成された第一端部)を腹壁または恥骨上壁を通して皮膚に吻合して(造孔術)、ストーマ/括約筋を形成する。別の実施形態では、カテーテルをストーマ開口部を通して、構造体内腔へと挿入して、尿の排出を提供する。
図10は、移植された導管構造体の構成を示す。
別の実施形態において本発明の方法は、さらに、尿路変更構造体の移植後に、閉塞が発生していないか導管をモニタリングする工程を含む。当該閉塞は、デトリタスの堆積に起因し得る。さらに当該方法は、閉塞が検出された場合に導管内腔からデトリタスを除去する工程を含み得る。
一態様において本発明は、治療を必要とする対象に尿路変更手段を一時的に提供する。一実施形態では、一時的尿路変更手段/導管構造体を対象へと移植してストーマ開口部を形成し、カテーテルまたは他の器具をストーマを通して導管構造体内腔へと一時的に挿入する。一時的導管は、尿を対象から排出でき、その一方で欠陥のある膀胱の恒久的な解決法を試行できるという利点がある。例えば、導管構造体の移植は、細胞集団が播種される新膀胱構造体の移植の前、後、または同時に行うことができる(例として上記Bertram 他 を参照)。図11に、移植された一時的尿路変更構造体の構成の例を示す。
一実施形態において本発明の方法は、さらに、移植された尿路変更手段/導管構造体を対象の大小網、腸間膜、筋膜および/または腹膜で覆い、血管新生を可能とさせる工程が含まれる。
一態様において本発明は、治療を必要とする対象に尿路変更手段を恒久的に提供する。図12に、移植された恒久的尿路変更構造体の構成の例を示す。
一実施形態では、本明細書で述べる構造体は前立腺尿道置換および尿路変更術のために使用可能である。かかる手順は、前立腺尿道を除去する根治的前立腺切除術を必要とする対象にとって必須である。別の実施形態では、当該構造体を経皮的迂回導管のために使用して、弁膜様のねじれを持つ自制型導管を形成することが可能である。さらなる実施形態において当該構造体は、膀胱頚部手術および自制型導管やカテーテル用開口部のある尿排泄口で使用される、膀胱頚部スリングまたは被覆材料として使用可能である。かかる実施形態の例を、図13に示す。
一態様において、本発明の尿路変更術構造体は上皮化粘膜を提供する。一実施形態では、当該構造体は移植の際に上皮化粘膜を形成するよう適合される。一実施形態では、当該上皮化粘膜は前庭領域および皮膚粘膜領域を成す。別の実施形態では、当該前庭領域は当該皮膚粘膜領域に隣接している。別の実施形態において当該皮膚粘膜領域は、対象の腹壁および皮膚に接着している構造体の間質端部に位置している。一般に、天然に存在する皮膚粘膜領域は粘膜および皮膚の存在により特徴付けられ、典型的には外表皮膚が終わり体内を覆う粘膜が始まる部位である体の開口部付近に存在している。本発明の構造体および方法により提供される上皮化粘膜は、対象への移植後に、尿路変更構造体の第一端部で発達する。さらなる実施形態において当該上皮化粘膜は、まず前庭領域に現れ徐々に皮膚粘膜領域を通って構造体のストーマ端部に向けて拡張/増大する上皮組織の存在により特徴付けられる。別の実施形態では、当該上皮組織は上皮細胞マーカーの発現により特徴付けられる。さらなる実施形態では、当該上皮細胞マーカーはサイトケラチンである。当該サイトケラチンは、サイトケラチン1〜19を含むがこれらに限定されない、当技術分野で知られている1つ以上のサイトケラチンであり得る。別の一実施形態では、当該サイトケラチンはAE-1/AE3抗体で検出可能である。
拡大される臓器/組織への足場の移植は、当該例で説明されている方法に従って、または当該技術分野において認められている方法に従って行うことが可能である。当該マトリックス/足場は、移植材料の標的器官への縫合により、対象の臓器/組織へと移植可能である。
前述の技術は、かかる治療を必要とする患者の既存の薄層状内腔臓器/組織構造を拡張するために使用可能である。例えば、既存の薄層状内腔臓器/組織構造は、治療を要する臓器/組織構造の少なくとも一部と適合するよう成形されかつ腹腔鏡下で移植を行うのに十分な大きさであるポリマーマトリックス/足場の提供、当該臓器/組織構造から得られたのではない自己細胞集団の前述ポリマーマトリックスの第一面の上または内部への堆積、および前述患者の既存の薄層状内腔臓器/組織構造を拡張する前述治療部位への成形済みポリマーマトリックス構造体の腹腔鏡下での移植、により拡大可能である。
図7eは、本明細書で述べる筋肉等価足場の移植のための外科的方法を示したものである。図7fは、空のおよび満たされた膀胱上の移植部位を示したものである。図7gは、表面切開時に形成された楕円形状の外科的開口部を有する膀胱モデルを示したものである。制限された空間のモデルとして、折り畳まれた/巻き上げられた本発明のポリマーマトリックス/足場を通すための、プラスチックの導管を使用することができる。
前述の技術はまた、かかる治療を必要とする患者の膀胱の容積を増大させるために使用することができる。例えば、膀胱の容積は、前述治療を必要とする臓器/組織構造の少なくとも一部と適合するよう成形されかつ腹腔鏡下で移植を行うのに十分な大きさである生体適合性のある合成/天然のポリマーマトリックスの提供、当該臓器/組織構造から得られたのではない自己細胞集団の前述ポリマーマトリックスの第一面の上または内部への堆積、前述患者の膀胱容積を増大させる前述治療部位への成形されたポリマーマトリックス構造体の腹腔鏡下での移植、により増大可能である。一実施形態では、本発明のマトリックス/足場は膀胱容積を約50mL増大させるのに適している。別の実施形態では、本発明のマトリックス/足場は膀胱容積を約100mL増大させるのに適している。別の実施形態では、本発明のマトリックス/足場は膀胱容積を約60mL、約70mL、約80mL、約90mL増大させるのに適している。
前述の技術はさらに、膀胱の切開部位の拡張を、かかる治療を必要とする患者において行うために使用することができる。例えば、膀胱の切開部位は、前述治療を必要とする臓器/組織構造の少なくとも一部と適合するように成形されかつ腹腔鏡下で移植を行うのに十分な大きさである生体適合性のある合成/天然のポリマーマトリックスの提供、b)当該臓器/組織構造から得られたのではない自己細胞集団の前述ポリマーマトリックスの第一面の上または内部への堆積、c)前述患者の膀胱切開部位を拡張させる前述治療部位への成形されたポリマーマトリックス構造体の腹腔鏡下での移植、により拡張可能である。
本発明の限定されない別の使用方法には、尿失禁治療を、かかる治療を必要とする患者において行うための方法が含まれる。例えば、尿失禁は、前述治療を必要とする臓器/組織構造の少なくとも一部と適合するように成形されかつ腹腔鏡下で移植を行うのに十分な大きさである生体適合性のある合成/天然のポリマーマトリックスの提供、当該臓器/組織構造から得られたのではない自己細胞集団の前述ポリマーマトリックスの第一面の上または内部への堆積、前述患者の膀胱容積を増大させる前述治療部位への成形されたポリマーマトリックス構造体の腹腔鏡下での移植、により治療可能である。
一実施形態では、本明細書で述べる足場、細胞集団、方法はさらに、本明細書で述べる障害の治療に役立つ薬剤の調製のために使用し得る。当該障害には、薄層状構造の管腔臓器/組織構造の再生、再構築、修復、拡大、置換を必要とする対象における、あらゆる症状が含まれる。別の実施形態では、当該臓器/組織構造は膀胱または膀胱の一部である。
別の実施形態では、移植された構造体上に堆積される細胞によりMCP-1が生成され、移植部位で放出される。それにより、体内間葉幹細胞(MSC)が刺激され移植部位へと移動する。別の一実施形態では当該体内MSCにより、移植部位の移植された構造体の再生が促進および/または強化される。
一実施形態では、当該堆積細胞集団は、本明細書で述べる末梢血または脂肪組織から生成される平滑筋細胞(SMC)集団である。別の実施形態において当該SMC集団は、収縮機能があり平滑筋細胞マーカーに陽性を示す1つ以上の細胞を含む(例、ミオカルディン、アルファ平滑筋アクチン、カルポニン、ミオシン重鎖、BAALC、デスミン、筋線維芽細胞抗原、SM22、その組み合わせ)。別の実施形態において当該SMC集団は、ミオカルディン(MYOCD)発現を示す少なくとも1つの細胞 が含まれる。当該MYOCD発現は、MYCODポリペプチドをコード化する核酸またはMYOCDポリペプチドの発現である場合がある。別の実施形態では、当該SMCの収縮機能はカルシウム依存性である。一実施形態では、再構築、修復、拡大、置換の対象である薄層状構造の管腔臓器/組織構造は膀胱または膀胱の一部である。別の実施形態では、当該ポリマーマトリックスは尿路上皮細胞を含んでいない。
すべての実施形態において、本発明の当該方法は、本明細書で述べる細胞集団とともに播種される膀胱置換足場、膀胱拡大足場、膀胱導管足場、または排尿筋等価足場に基づく移植用の構造体を利用する。
別の実施形態おいて、本明細書で述べる薄層状構造の管腔臓器/組織構造の再生、再構築、修復、拡大、置換の方法は、a)前述治療を必要とする管腔臓器/組織構造の少なくとも一部と適合するように成形された、生体適合性のある合成または天然のポリマーマトリックスの提供、b)前述ポリマーマトリックスの第一面の上または内部への第一細胞集団の本明細書で述べる細胞濃度での堆積(前述第一細胞集団は実質的に筋肉細胞集団)、c)薄層状構造の管腔臓器/組織構造の形成を目的とした、成形されたポリマーマトリックス細胞構造体の前述患者の前述治療の部位への移植、の工程を含む。別の一実施形態では、生体内で形成される当該薄層状構造の管腔臓器/組織構造は、天然の膀胱組織のコンプライアンスを示す。
別の一態様において本発明は、生体力学的刺激または膨張および収縮の繰り返し(cycling)に基づく新膀胱の再生のための方法を、患者への移植後に提供する。一態様において当該方法は、膀胱または膀胱の一部の拡大/置換のために移植された、新膀胱構造体の再生促進に利用するのに適している。一実施形態では当該膀胱構造体は、新膀胱マトリックス/足場上の細胞の播種から形成される。別の実施形態では新膀胱足場は、膀胱置換足場、膀胱拡大足場、膀胱導管足場、または排尿筋肉等価足場である。
一態様において本発明の当該方法は、新膀胱足場を1つ以上の細胞集団で播種することから形成された、移植された膀胱構造体に適用される。一実施形態では当該の細胞播種されたポリマーマトリックスは、膀胱置換足場、膀胱拡大足場、膀胱導管足場、または排尿筋等価足場である。一実施形態では当該の1つ以上の細胞集団は、実質的に筋肉細胞集団からなる。別の実施形態では、当該筋肉細胞集団は平滑筋細胞集団であり得る。本明細書で述べるように、播種には異なる細胞濃度が適切である場合がある。
一態様において本発明の当該方法は、異なる時間および異なる期間で新膀胱の移植後に行われる。一実施形態では、当該膨張と収縮は一定期間にわたって毎日、一定期間にわたって毎週、または隔週に行われる。別の実施形態では、当該の毎日の膨張と収縮レジメンの期間は約2週間、約3週間、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、約8週間、約9週間、約10週間、約11週間、約12週間、約13週間、約14週間、または14週間以上である。
一実施形態では、対象の毎日の膨張と収縮プロトコルには、約1時間の新膀胱の充填、約1時間の新膀胱からの排出、自由な(典型的には一晩の)新膀胱からの排出、の工程が含まれる。本プロトコルは、対象の膨張と収縮レジメンの1日目に行うことが可能である。この毎日のシーケンスは、1日目の後に数日連続して行うことができる。一実施形態において当該膨張と収縮プロトコルは、1日目の後に、充填工程が約2時間、約3時間、約4時間、4時間以上の期間に増やされた日に行われ得る。別の実施形態では当該の充填工程および排出工程は、新膀胱を自由に排出させる前に、1日1回以上繰り返され得る。
別の実施形態では、移植後に当該対象にカテーテルを装着し、カテーテルのクランプを締めたり緩めたりして膨張と収縮時間をコントロールする。
当業者によれば、本細書にて追加の膨張と収縮レジメンが企図されていることが理解されるであろう。
膨張と収縮プロトコルの例は以下の通りである。本明細書で述べる通り、細胞で新膀胱マトリックス/足場を播種することにより形成される新膀胱構造体の移植後に、膨張と収縮を行う。当該膨張と収縮は、移植の約1ヵ月後に開始され 2週間ごと(14 ± 2日の間隔)で行い、およそ90日目まで続ける。膨張と収縮は、移植済み新膀胱のコンプライアンス測定といった特定の種類のアセスメントの後に、ただし、蛍光透視像法といったその他の種類のアセスメントの前に完了となる。膨張と収縮は、コンプライアンス測定を完了した後に(インキュベーターで温めた)無菌生理食塩水で膀胱を10〜25mL/分の率で再膨張させて行う。当該サイクルは少なくとも、5〜10回繰り返される。開始圧力として0〜10mmHgが得られ、開始時刻とともに記録される。カテーテル周辺での漏れが観察されたとき(漏出点としても知られている)、または供給した容積がコンプライアンス測定直後の値と同じになったときの、どちらかが先に起こったときに各サイクルについて時間、供給した等張液の容積、得られた圧力が記録される。
一実施形態において本発明は、対象に移植された新膀胱の再生を促進する方法を提供し、それには(a)移植された新膀胱の流体による充填、(b)工程(a)の充填された新膀胱からの排出、の工程が含まれる。別の実施形態では、当該方法には工程(a)と(b)を繰り返す工程(c)が含まれる。別の一実施形態では、当該方法を移植後の最初の2週間以内に始める。一実施形態では、工程(a)および(b)を1日に1回、1週間に1回、2週間に1回行う。一部の実施形態では、当該充填工程(a)を約1時間行い、当該排出工程(b)を約1時間行う。また別の実施形態では、工程a)およびb)を移植後少なくとも約6週間まで行う。別の一実施形態では、工程a)およびb)を移植後約10週間を超えては行わない。別の実施形態では、工程a)およびb)を移植後約10週間より長く行う。別の実施形態では、当該充填には新膀胱の拡張が包含される。別の実施形態において当該再生には、膨張と収縮を行っていない対象の新膀胱と比較しての当該新膀胱の容積増大包含される。別の一実施形態において当該再生には、膨張と収縮を行っていない対象の新膀胱と比較しての当該新膀胱のコンプライアンス増大が包含される。別の実施形態において当該再生には、膨張と収縮を行っていない対象の新膀胱と比較しての当該新膀胱の細胞外マトリックス発生の増大が包含される。一実施形態では、当該の細胞外マトリックス発生の増大にはエラスチン繊維の発生が包含される。
別の一態様において本発明は、哺乳類における新膀胱の恒常性調節的発生を提供する方法に関係し、かかる移植済み膀胱は受容者のニーズに対応する。一実施形態では、当該移植された新膀胱は臓器被提供者に見合った大きさへと成長する。別の実施形態では、新膀胱の恒常性調節的発生を対象に提供するための方法は、(a)生体適合性のあるポリマー足場の提供、(b)第一細胞集団の前述足場の第一面の上または内部への堆積(前述第一細胞集団は実質的に筋肉細胞集団である)、(c)恒常性調節的発生を達成するための、工程(b)の足場の前述対象への移植、の工程が含まれる。別の一実施形態における当該恒常性調節的発生は、臓器の大きさおよび構造の復元w包含する。別の実施形態において恒常性調節的発生は、体重に比例した新膀胱容積を包含する。一実施形態では、当該の比例した新膀胱容積は移植後約4ヶ月で得られる。別の実施形態において新膀胱の恒常性調節的発生を対象に提供する方法は、恒常性調節的発生または移植済み新膀胱の状態をモニタリングする工程を含む。当該モニタリングは、移植された新膀胱の位置や形状を示すための膀胱X線造影手順、および/または尿流動態のコンプライアンスと容積の測定を含む。
別の態様において本発明は、新臓器/組織構造の移植後の、患者の予後を評価するための方法を提供する。一実施形態において当該方法は、前述対象から得られた試験検体におけるMCP-1発現量の検出、(b)対照検体に関連するMCP-1発現量(または対照参照値)に対しての当該試験検体における発現量の判定、(c)MCP-1発現量の測定に基づく、患者の再生予後の予測、の工程が含まれ、当該試験検体のMCP-1発現量が対照検体(または対照参照値)より高くなることは、対象の再生の予後予測である。
別の態様において本発明は、患者への新臓器/組織構造の移植後の、患者の予後を評価するのための方法を提供し、当該方法は(a)患者の生物検体の採取、および(b)生物検体内のMCP-1発現の検出からなり、MCP-1発現は患者の再生に関する予後予測である。一部の実施形態では、対照検体(対照参照値)と比較しての患者の生物検体におけるMCP-1発現の増加は、対象における再生の予後予測である。一部の実施形態では、対照検体(対照参照値)と比較しての患者の生物検体におけるMCP-1発現の減少は、対象における再生の予後予測とならない。当該患者検体は、血液や尿といった体液からなる試験検体である。
一部の実施形態における当該判定工程は、(i)試験検体および対照における差次的MCP-1発現量の測定、および/または(ii)試験検体および対照における差次的MCP-1発現量の測定により取得されたデータの分析の目的で、適切なプロセッサにより実行されるソフトウェアプログラムの使用を包含する。適切なソフトウェアおよびプロセッサは当技術分野で周知であり、市販されている。当該プログラムは、CD-ROM、フロッピーディスク、ハードドライブ、DVD、プロセッサ関連メモリといった有形的媒体に保存されているソフトウェア内で具現化可能であるが、当業者は、代わりになる方法として、当該プログラムの全体またはその一部をプロセッサ以外のデバイスにより実行可能である、および/または周知のやり方でファームウェアおよび/または専用ハードウェアで具現化可能であることを容易に理解するであろう。
当該判定工程の後に、当該測定結果、所見、診断、予測および/または治療についての提案が記録されることが通常であり、例えば、技師、医師および/または患者に伝達される。特定の実施形態では、コンピュータを利用してかかる情報を患者および/または担当医といった利害関係者に伝達する。一部の実施形態では、当該検査/当該検査結果の分析は、当該結果または診断が伝達された国/管轄とは異なる国/管轄で行われる場合がある。
好ましい実施形態において、差次的MCP-1発現量を持つ対象において測定されたMCP-1発現量に基づく予後診断、予測および/または治療についての提案は、検査完了後直ちに対象へと伝達され、予後診断および/または予測が作成される。当該結果および/または関連情報は、対象の担当医により対象に伝達され得る。あるいは当該結果は、電子メールや電話といった電子形態通信を含む任意の伝達手段により、対象に直接伝達され得る。伝達は、電子メール通信の場合のように、コンピュータにより支援される場合がある。特定の実施形態にでは、予後試験の結果および/または引き出された結論および/または当該試験に基づく治療についての提案を含む当該伝達は、テレコミュニケーション分野の技術者にとって周知のコンピュータハードウェアとソフトウェアの組合わせを利用して生成し、自動的に患者に送達することが可能である。保健医療向けの通信システムの例が、米国特許No. 6,283,761で説明されている。ただし本発明は、この特定の通信システムを利用する方法のみに限定されない。本発明の当該方法の特定の実施形態において、検体の検査、再生の予後診断および/または予測、検査結果または予後診断の伝達を含む当該方法工程のすべてまたは一部は、さまざまな管轄(例、外国)において行われる場合がある。
別の態様において本明細書で述べる当該予後診断方法は、移植の成功および再生のリハビリ/治療プロトコルに関する情報を利害関係者に提供する。一実施形態において当該方法は、前述対象から得られた試験検体におけるMCP-1発現量の検出、(b)対照検体に関連するMCP-1発現量(または対照参照値)に対しての当該試験検体における発現量の判定、(c)MCP-1発現量の測定に基づく患者の再生予後の予測、の工程を含み、対照検体(または対照参照値)と比較したより高いMCP-1発現量は、新臓器/組織構造の再生の状態を示唆するものである。
一般的に、本明細書で用いる、再生予後診断には以下の1つ以上の見通しまたは予測が含まれる: 本明細書で述べる構造体の移植を通しての膀胱置換/拡大後の膀胱機能の進展または改善、本明細書で述べる構造体移植後の機能する尿路変更手段の進展、本明細書で述べる構造体移植後の膀胱容積/改善された膀胱容積の進展、または本明細書で述べる構造体移植後の膀胱コンプライアンス/改善された膀胱コンプライアンスの進展。
すべての実施形態おいて、本明細書で述べる、薄層状構造の管腔臓器/組織構造をかかる治療を必要とする対象に提供する当該方法には、前述のように再生の予後評価の移植後工程が含まれる場合がある。
すべての実施形態において本発明は、ある種の移植後モニタリング工程を含む、新臓器/組織構造を治療を必要とする対象に提供する方法に関する。一実施形態では、超音波画像や腎盂像、または移植後の異なる時点での尿および血液解析などを通して、移植された構造体の効果および性能をモニタリングする。当該モニタリング工程の詳細は、実施例3〜6で説明する。
7. キット
さらに本発明は、本発明のポリマーマトリックス/足場と関連材料、および/または細胞培地と使用説明書を包含するキットを含む。当該使用説明書には、細胞の培養または細胞および/または細胞産物の管理についての指示が記載され得る。当該使用説明書にはまた、腹腔鏡下移植用の本発明のポリマーマトリックス/足場の事前処理、折り畳み、またはその他の準備についての指示が記載されて得る。
一実施形態において本発明は、本明細書で述べる足場および使用説明書を包含するキットを提供する。別の実施形態では、当該キットの足場は以下のうちの1つ以上である: 膀胱拡大足場、膀胱置換足場、尿路導管足場、筋肉等価足場。
8. 報告
本発明の当該方法では、商業目的で実施される場合には通常、再生予後報告または要旨が作成される。本発明の当該方法では、本明細書で述べる構造体を提供するための外科的処置の前および後に、考えられる再生の経過または転帰の予測を含む報告が作成される。当該報告は、予後に関する指標についての情報を含み得る。本発明の当該方法および報告は、さらに、データベースへの報告の保存を含み得る。あるいは当該方法は、さらに、データベース内に対象に関するレコードを作成して、データを当該レコードに投入する場合がある。一実施形態では当該報告は紙の報告であり、別の実施形態では当該報告は音声による報告であり、別の実施形態では当該報告は電子記録である。当該報告を医師および/または患者に提供することが企図される。当該報告の受領は、さらに、データと報告を包含するサーバーコンピュータへのネットワーク接続の確立、およびサーバーコンピュータからのデータと報告の要求を含む。また、本発明により提供される当該方法は、すべてまたは一部を自動化することが可能である。
以下の実施例は例証のみを目的として提供されており、本発明の範囲を何ら制限する事を意図するものではない。
本明細書内で引用されるすべての特許、特許出願、参照文献は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
実施例1 − SMCの供給源としての末梢血および脂肪組織
血液由来細胞
平滑筋細胞は、イヌ、ブタ、ヒトの末梢血からの単離に成功した。簡潔に言えば、末梢血50mlをリン酸緩衝生理食塩水(PBS、最終容積100mL)と1:1で希釈調整し、密度勾配材料であるヒストパック(Histopaque)の上に重ね、1,354xgで20分間室温で遠心分離した。遠心分離後、当該密度勾配に4つの層が明確に画定される(上から順に、血清、軟膜、ヒストパック、赤血球)。当該軟膜に、乳白色/グレーの帯に見える単核細胞が認められる。当該軟膜を採取し、別の50mlの円錐管へ移す。PBSで50mLに希釈する。当該検体を711xgで10分間室温で遠心分離して、細胞をペレット成形する。再懸濁してペレット成形し、当該細胞を培養する。その後の細胞継代で適切な細胞数が得られたら、発現平滑筋細胞蛋白質の免疫検出、平滑筋細胞mRNA転写産物の核酸検出、細胞収縮、サイトカインおよび酵素の合成を含む終点分析のため、アリコートを準備・処理する。
結果
培地の選択。単一のイヌ末梢血検体40〜50mLの単核細胞群を、6つの異なる培地処方で再懸濁し、6ウェルプライマリア(Primaria)またはコラーゲン被覆プレートに播種した。
図14A-Eで示す通り、すべての条件において培養の1週間後に小規模な付着性コロニーおよび小規模な細胞集合体が観察された(DMEM培地分離は見られなかった)が、細胞の種類が何であるかは識別できなかった。すべての補足材料を加えたアルファ-MEM + 10% FBS、EGM-2の培地で培養した場合、選択された補足材料(マイナスVEGFおよびFGF2)(A、C、E)と組織培養プラスチックプレートを覆うコラーゲンタイプIを加えたEGM-2を同様の培地(B、D、F)で培養した場合、小規模なクラスターおよび細胞集合体がプライマリア培養皿上で観察された。DMEM処方で培養された末梢血培養でも、同様の結果が得られた(データ非表示)。
図15に示すように、培養の2週間後に増殖コロニーと小規模な単分子層が、プライマリア上のアルファMEM(左パネル)とコラーゲン被覆プレート(中パネル)で観察された。形態学的に、これらのコロニーは平滑筋(図15、上パネル)または内皮(図15、中パネル)のようであった。また、平滑筋(図15、上パネル)または内皮(図 15、中パネル)の増殖コロニーの形態は、その他の培地/基質条件(右パネル)でも形成された。一部のマクロファージは当初はアルファMEM内で維持された(図15、左下および中パネル)が、その後の継代へは引き継がれなかった。プライマリア プレート上の10% FBSでαMEMへと単離された細胞は、平滑筋(左上パネル)またはマクロファージ(左下パネル)の形態であった。内皮細胞はこれらの条件下では分離されなかった(左中パネル)。コラーゲンIプレート上の10% FBSでαMEMへと単離された細胞は、平滑筋(中上パネル)、内皮(中中パネル)、マクロファージ(中下パネル)の形態であった。EGM-2(右上パネル)および20% FBSで補足されたDMEM(右中パネル)といったその他の培地/基質処方も、間葉性および内皮様の細胞の増殖が見られた。
12の培地/基質条件のうち、アルファ-MEM/10% FBSのプライマリアプレートでは、内皮細胞の増殖コロニーを伴わない、最も均質な平滑筋細胞の分離(図15、左上パネル)が得られた。プライマリアプレート上で単離しNunclon表面で拡張した(アルファMEM/10% FBS内)細胞は、平滑筋細胞(SMC)に典型的な標準的「山と谷」形態を提示した。そしてそれは、他の研究での記述と一致している(Kassis他(2006)、Koerner他(2006)、Simper他 (2002)、supra)。
図16に示すように、これらの細胞はまた、複数継代に関するこの形態を維持した(図 16A-G)。ブタ頸動脈SMC(図 16H)およびイヌ膀胱SMC(図16I)の画像を、対照用に示す。後の継代で当該平滑筋細胞(図16F、G)は、より大きくなりより散開した。初期継代(A-E)は、ブタ頸動脈(H)およびイヌ膀胱(I)から単離された平滑筋細胞(SMC)に似ている。平滑筋細胞(F、G)の後の継代は、より大きくなりより散開したことから、平滑筋表現型が示唆される。
脂肪由来細胞
平滑筋細胞は、以下の手順によりブタ脂肪組織から分離されている。すべての手順は、バイオセーフティー施設内で行われる。
脂肪検体の採取。室温または4℃でバイオセーフティー容器に最長24時間、使用前に保管する。
PBS 100mlにつきBSA 1gmおよびコラゲナーゼ 0.1〜0.3gmを加えて、コラゲナーゼ溶液を調製する。当該溶液を0.2μmのフィルターユニットを通してろ過する。37o Cに温める。
コラゲナーゼ溶液の脂肪容積あたりの等価容積を、各遠心分離器に加える。1組織容積のコラゲナーゼ溶液が必要である(すなわち脂肪組織10mlあたりコラゲナーゼ溶液10ml)。
当該導管を消毒剤で拭き、パラフィルムで被覆し、揺動装置上の37℃のインキュベーター内に60分間留置する。あるいは、導管を37℃の水浴内に留置し、20分ごとに強く振り動かす。
300xgで5分間室温で遠心分離する。
遠心分離器から当該導管を取り出し、10秒間強く振り動かして、細胞を十分に攪拌する。これで、間質細胞の含脂肪細胞からの分離が完了する。
もう一度、300xgで5分間遠心分離する。表面の脂質、一次含脂肪細胞(浮遊細胞の黄色層)、コラゲナーゼ溶液を、注意深く吸引する。間質血管細胞群(底部の赤黒い細胞)がかき乱されないよう、ペレット上方に茶色のコラゲナーゼ溶液約10mlを残す。
当該細胞ペレットをPBS+1%BSA内で再懸濁し、ステリフリップ(Steri-Flip)を利用してろ過する。
当該細胞を300xgで5分間遠心分離し、残留コラゲナーゼ溶液を吸引する。吸引の際は、脂質ができるだけ入念に除去されるよう、ピペット端部を上から吸引するべきである。当該細胞ペレットは、底部に密集しているべきである。
組織培地10mlを各遠心分離導管に加え、当該細胞を再懸濁する。当該細胞を1つの導管に集め、もう一度遠心分離する。
上清を吸引する。10 mlの培地内の細胞を懸濁する。
当該細胞を、フラスコの数に合わせて等分に分割する。24〜72時間のプレーティング後に、培地をフラスコから吸引する。PBSで洗浄し、吸引する。
フラスコあたりの当初容積の新鮮培地を加える。
細胞が合流点の80〜90%まで成長したら、継代または低温保存のいずれかを行う。
その後の細胞継代で適切な細胞数が得られたら、発現平滑筋細胞蛋白質の免疫検出のため、アリコートを準備・処理する。
図17は、培養の形態学的評価に関連する。当該形態は、培養の3〜5日後に評価された。脂肪組織から生成されたヒト細胞およびブタ細胞は、平滑筋細胞の形態学的特徴を示す(図17)。当該細胞は「山と谷」形態を実証し、継代上での細長い、平板状、線維芽細胞様の形状、長い平行に並べられた列、培養の「渦巻状」の概観といった追加特徴を提示する。それらはすべて、培養された平滑筋細胞に典型的なものである。
平滑筋マーカー。収縮性遺伝子の発現(およびそれらがコード化する蛋白質)の増加は、SMCの成熟に関連がある(Jeon他 J Cell Sci 119、4994-5005 (2006);Ross他 J Clin Inves. 116、3139-3149 (2006);Sinha他 Am J Physiol Cell Physiol 287、1560-1568 (2004))。ミオカルディンは、平滑筋収縮性蛋白質をコード化する遺伝子の転写制御因子であり、その中にはSM22、アルファ平滑筋アクチン、平滑筋 ミオシン重鎖、カルポニンなどが挙げられる(Qiu他 (2005) Circ Res 983-991;Wang他 (2003) Proc Natl Acad Sci 100: 7129-7134;Yoshida他 (2003) Circ Res 92: 856-864)。ミオカルディンは平滑筋の分化に必須であり、一部の細胞型における平滑筋遺伝子の発現を十分に促進する(Milyavsky他 (2007) Cancer Cell 11:133-146;van Tuyn他 (2005) supra;Wang他 (2003)、supra;Yoshida他 (2003)、supra)。我々は、血液組織または脂肪組織から単離された平滑筋細胞が、トータルRNAの分離および準定量的RT-PCRの実行により、平滑筋細胞マーカーミオカルディン、平滑筋アルファアクチン、SM22、ミオシン重鎖、カルポニンを発現したかどうかを判定した。
図18に示すように、これらの細胞は遺伝子レベルでこれらすべての平滑筋細胞マーカーを発現し、膀胱平滑筋細胞で見られる平滑筋細胞マーカーと一致していることが、当該結果により示される。これらのデータは、これらの末梢血組織または脂肪組織から単離された平滑筋細胞は平滑筋細胞の性質を有するという意見を支持する。
表現型の特徴。末梢血から単離された平滑筋細胞が、平滑筋遺伝子発現の転写制御因子に加え、特定の平滑筋収縮性蛋白質を発現するということは、既に述べた(図18)。図18は、SMCマーカーミオカルディン、平滑筋アルファアクチン、SM22、平滑筋ミオシン重鎖、カルポニンの遺伝子発現に関するRT-PCR分析を示したものである。検体は、ブタ脂肪、末梢血、膀胱(継代4)から単離された平滑筋細胞である。脂肪組織から単離されたSMCは各継代間で3〜5日間培養することが可能であり、血液から単離されたSMCは最初の継代の前に14日間、その後追加継代のために3〜5日間培養することが可能である。ベータアクチンの遺伝子発現は、当該ゲルの内部負荷を制御するために使用される。脂肪細胞および末梢血細胞の分離の発現プロフィールは、膀胱SMCの発現プロフィールと比較可能である。
図19は、平滑筋細胞を発現した蛋白質マーカーに向けられたさまざまな抗体を利用して行われた、免疫蛍光検染色検査を示したものである。当該マーカーアルファ-アクチン、SM22、カルポニン、平滑筋ミオシン重鎖が、ブタ脂肪、末梢血、膀胱から単離された平滑筋細胞において検査された。これらの蛋白質はすべて、平滑筋細胞の収縮機能に関係する。複数継代での平滑筋細胞は、平滑筋アルファアクチン、SM22、カルポニン、平滑筋ミオシン重鎖について陽性染色された。これらの蛋白質の細胞内局在性は、平滑筋細胞において膀胱SMCと比較して実質的に同一であった。細胞の圧力繊維質におけるこれらの蛋白質の詳細にわたる染色を書きとめた。この染色パターンは典型的であり、平滑筋細胞についての予想されるものである。
図20は、ヒト末梢血から単離された平滑筋細胞の免疫染色法を示したものである(継代5)。平滑筋アルファアクチン、SM22、カルポニン用のプローブを使用した。平滑筋アルファアクチンおよびカルポニンの二重染色により(右上パネル)、これらの2つの蛋白質の同一細胞内での共発現が明らかとなった。この1つ以上の平滑筋細胞マーカーの単一細胞内同時発現により、これらの平滑筋細胞についての考えがさらに支持される。
収縮性。末梢血由来の平滑筋細胞が平滑筋収縮性蛋白質を発現させるため、我々は三次元ゲル収縮検査法を行って、それらの収縮機能を評価した。SMCは三次元ゲルに組み込まれる場合、コラーゲンマトリックスの収縮を自然に誘導することが証明されている(Travis他 (2001) Circ Res 88: 77-83)。脂肪組織由来の平滑筋細胞についてもまた、収縮性の試験を行った。
図21は、ブタ血液由来の細胞(A)およびブタ脂肪組織由来の細胞(B)が膀胱平滑筋細胞(C)の収縮と匹敵する程度まで収縮することを示したものである。EDTAの混合体への添加により収縮が抑制され、したがって、当該収縮は平滑筋細胞のもう1つの特徴であるカルシウム依存性であるという考えが支持される。これらのデータにより、直径が収縮性細胞に依存して減少すること、および細胞がこの容量で機能することが示される。当該細胞は500,000細胞/mlで播種され、2日後にコラーゲンゲルの直径減少が実証されたため、収縮可能であることが確認された。ブタ膀胱平滑筋細胞は、陽性対照として使用された。本収縮のカルシウム依存性を実証するため、当該カルシウムキレート剤EDTAを添加して収縮を抑制しようとする検体を単離された。これらの結果、膀胱由来の平滑筋細胞と同様のカルシウム依存性の方法で、収縮を行う細胞の能力が確認された。
成長速度。細胞療法で平滑筋細胞を利用するには、必要とされる細胞数を容認可能な時間枠内に得ることができるかどうかを判定することが重要である。イヌおよびブタの検査の結果により、平滑筋コロニー(末梢血検体40mlから)は早ければ播種後7日目に観察できること、および14日以内に容易に合格となることが、示される(図14および15)。一検査において、培養18日目(継代2終了時)後に120万細胞が採取され、その時点で当該細胞は低温保存された。これらの特定細胞は、約50日後に解凍され、一般的に約80%融合性となるときに合格とし成長速度を判定した。解凍の6日後に、当該細胞集団は1670万細胞へと拡張した(継代3終了時)。培養のさらに7日後には、当該細胞集団は3170万細胞に達した(継代4終了時)。この初期検査により、約30日間の培養で3000万細胞が得られることが示される。
図22は、当該細胞の限定的増殖力に関連する。図22により、単位面積あたりの回収細胞数に応じて、ヒト脂肪組織から単離された平滑筋細胞が成長することが示される。これらのデータにより、継代4と5の間で回収される細胞数が減少し始めることが示され、これらの細胞が限定的かつ有限な増殖能を持つという主張が支持される。これは前駆細胞の特徴であるが、真性幹細胞には当てはまらない。
図23により、継代あたりの回収細胞数に応じて、ブタ脂肪、末梢血、膀胱平滑筋から単離された平滑筋細胞が成長することが示される。図説の通り、継代2と3の間(2〜4週間の時間枠)に細胞数の劇的な拡張が得られ、数千万もの細胞を回収することができる。これにより、脂肪由来細胞の限定的/有限の増殖力が実証される。
増殖の接触阻止。末梢血および脂肪組織から単離された平滑筋細胞には、増殖の接触阻止が見られる。例えば、図14〜17で提供されるこれらの細胞の形態学的評価により、複数継代にわたり増殖の接触阻止が起こっていることが実証される。当該細胞は、互いに接触すると増殖し続けることがない。対照的にMSCには増殖の接触阻止は見られず、形質転換細胞培養における増殖巣形成と同様に、互いに重なり合っているのが観察される。例えば、Zhou他が、マウス骨髄の単核細胞群からのMSCの分離および培養についての報告し、3継代後に当該培養MSCで接触阻止が見られなくなることを観察した(10850ページおよび図1Aを参照)(Cancer Res. 2006;66(22): 10849-10854).
サイトカインMCP-1産生。MCP-1は膀胱排尿細胞の正常産物である。大動脈平滑筋細胞で、MCP-1は再生における役割を果たす。MCP-1は、その単核細胞を補充する能力で最もよく知られている。ケモカイン以上である一方で、MCP-1は血管平滑筋細胞増殖の強力な分裂促進因子でもある。また、循環血液中の単球を血管損傷部位へと補充する。単球は典型的に、サイトカインと増殖因子の貯留層として機能するマクロファージへと変換される。マクロファージおよび筋前駆体細胞はともに MCP-1 のシグナル伝達の標的である。本サイトカインは体内の幹細胞および前駆細胞に関与しており、当該再生プロセスに貢献する可能性がある。
ヒト末梢血平滑筋細胞により産生されたMCP-1を定量化するため、R&DシステムからELISAベースの検査法システムを使用した。培地検体を二重検査し、標準曲線と比較して推定MCP-1量を出し、ug/24時間/100万細胞として報告した。ヒト膀胱平滑筋、脂肪、末梢血、膀胱尿路上皮(陰性対照)から単離された細胞の、サイトカインMCP-1の発現が判定された。
図24は本分析からの結果を示したもので、ヒト末梢血由来およびヒト脂肪組織由来の平滑筋細胞は、ヒト膀胱平滑筋細胞のものと比較可能な量でMCP-1を産生することが示唆される。これらのデータにより、SMCと同様にMCP-1は脂肪および末梢血から単離された平滑筋細胞により発現される、という結果が支持される。さらに、筋肉前駆細胞の構造体内での動員/移動または増殖を直接的または間接的に引き起こすことにより、MCP-1産生は、再生における重大な役割を果たす可能性がある、という仮説をこれらのデータに基づき立てることができる。
考察。脂肪から単離された平滑筋細胞は、いくつかの平滑筋細胞の特徴を示す。我々の研究により当該細胞は、標準的な酵素消化法および低速遠心分離プロトコルを利用して脂肪から容易に分離できることが示された。細胞は非常に速く拡張され、おそらく1カ月以内に約3000万細胞に達すると推測される。我々の研究により、さらに、早くは継代3で平滑筋マーカーが現れることから、これらの細胞は真性幹細胞集団というよりはむしろ平滑筋細胞集団に相当する場合があると実証された。SMCマーカーmRNAの発現はRTPCRにより実証される通り、早ければP0に観察できる。さらには単離された平滑筋細胞は、標準コラーゲンゲル収縮検査法で実証される通り、収縮機能がある。
平滑筋細胞の特徴付け。その後の継代で当該平滑筋細胞の細胞形態が維持されることは、既に本明細書で示した。また平滑筋マーカーの遺伝子と蛋白質量において、良い相関関係が見られる。
サイトカインの誘導。体内間葉幹細胞の構造体内での動員/移動または増殖を直接的または間接的に引き起こすことにより、MCP-1産生は、新臓器/組織構造再生における重大な役割を果たす可能性がある、という仮説を脂肪平滑筋細胞によるMCP-1の発現に基づき立てることができる。
実施例2MCP-1産生および細胞濃度
膀胱平滑筋細胞の培養からの調整培地を、市販のキットを利用してMCP-1を検出・定量化するために分析した。9つの構造体(3つの播種レベルから3つづつ)からの調整培地検体、および当該構造体の播種に利用された対のSMC細胞を検査してMCP-1量を調べた。当該結果を表2.1に示す。
構造体培地内のMCP-1を定量化するため、R&DシステムからイヌMCP-1用の特殊なELISAベース検査法システムを利用した。検体を二重検査し、標準曲線と比較して構造体培地内の推定MCP-1量を出した。図25に示すとおり、MCP-1産生と播種された細胞濃度との間に正の相関関係があることが、本分析の結果により示される。表2.2は、R&DシステムELISAにより判定された構造体培地のMCP-1定量化を示したものである。
表2.3は、各郡の平均MCP-1量の比較を示したものであり、当該結果の比率が播種濃度差異に平行していることが見られる。
結果により、細胞数と培地から検出されたMCP-1量との間に、正の相関関係があったことが示された。SMC外移植のために処理されたより多くの脂肪を含む再生イヌ膀胱(約900万細胞を播種)からの一部組織が、元のおよび再生イヌ組織において典型的に観察される、ということは既に述べた。外移植時の当該組織は非常に柔軟で、観察時の外移植は元の組織で観察されるものより多量の脂肪組織を包含していた。また、これらの外移植プレート上の培地表面に、脂肪組織が存在するときに典型的に観察される「光沢」が見られた。これらの観察所見により、脂肪堆積/再生膀胱組織の脂質生成におけるMCP-1/CCR-2相互作用の役割が示唆される。
実施例3 −新尿路導管構造体のブタへの移植
本研究は、新尿路導管の外科的移植および術後ケアの評価を調査することに加えて、新尿路導管導管(NUC)被験物移植後の尿路様組織の再生および血管供給と水密性を移植に供給するブタ腹膜の能力を評価することを目的とした。
新尿路導管(NUC)構造体被験物は、不織のポリグリコール酸(PGA)フェルトおよび自己平滑筋細胞(SMC)を伴うまたは伴わないポリ(乳-コ-グリコール酸)ポリマー(PLGA)からなる足場で構成される。事前に被験動物から除去された細胞を使用して、同一のブタに移植する構造体を生成した。構造体とは、不織のポリグリコール酸(PGA)フェルトおよび自己SMCを伴うポリ(乳-コ-グリコール酸)ポリマー(PLGA)からなる足場で構成される、無菌の導管状生体材料を指す。用語「足場のみ」とは、不織のポリグリコール酸(PGA)フェルトおよび細胞を伴なわないポリ(乳-コ-グリコール酸)ポリマー(PLGA)からなる足場で構成される、無菌の導管状生体材料を指す。
本研究で使用した構造体は足場とSMCからなる被験物に対応しており、足場のみとはSMCを伴わない足場からなる被験物を指す。雌ゲッティンゲンミニブタ7頭を3つの群に分けた。1群(足場のみ)のN=1、2群(血液由来SMCを播種した足場)のN=3、3群(脂肪由来SMCを播種した足場)のN=3として、被験物を移植した。
ブタとヒトでは腹部と上部尿路の解剖学的構造、外科的操作の方法、ストーマの造設と治癒、手術後のケア、腹膜の解剖学的構造に類似点があることを前提として、ブタを新尿路導管の評価に適した動物モデルであると見なした。ブタはまた、皮膚の創傷治癒の動物モデルとして良好に確立されており、ヒトにおける正常の治癒プロセスに限りなく近づけることができ、ストーマ治癒の評価を可能とする。ゲッティンゲンミニブタは、3ヵ月の研究期間の平均成長率が遅いことに基づき選択された。自己SMCは脂肪組織生検から採取し、静脈血検体は被験物移植の約10〜11週間前にすべての被験動物から採取した。特定の被験物は、0日目に各群に外科的に移植した。膀胱の外科的切除(膀胱全摘出術)後に、尿管にステントを配置し、吻合術のために被験物の流入方向(上方)端部へと結集した。壁側腹膜の腹壁からの分離を、正中線の白線から開始して左右両側の腹壁に向かって行った。当該腹膜の左側を横に切断し、血管供給源および水密性尿路を供給する正中線部分の右に向かって移植を被覆するのに使用し、(腹腔内窩にある)移植の尾方端と皮膚との間に管状接合(アトリウム)を形成した。当該移植の尾方端は、腹膜アトリウム内で皮膚ストーマから約5〜7cm離して終端とした。腹壁を横断し(正中線右側の)剣状突起付近の皮膚から抜け出る、上方腹膜の被覆を利用して当該アトリウムを拡張した。外部腹膜を皮膚に縫合して、腹膜と皮膚の接合部および腹膜で覆われたストーマ内腔を生成した。
尿管ステントへと繋げられた当該縫合糸は、後に除去できるようストーマを通して体外に露出させた。腹部切開を、非吸収性プロリン(Prolene)縫合糸で閉合した。当該皮膚は定常方法で閉合した。フォーリーカテーテルを当該ストーマへと挿入して、ストーマが治癒する間の尿の通過を可能にした。すべての被験動物に対して、同一の外科的処置を使用した。フォーリーカテーテルを除去した後、すべてのブタに尿排出を促進するTRACOE(TM)ストーマポートを装着した。被験動物によりストーマポートが外される場合があったので、8Frフォーリーカテーテルを使用して尿排出を補助した。アトリウムおよびストーマにデトリタスが堆積したため、より大きな直径に変更された拡張セット(研究特異的)を利用してストーマを管理した。
ストーマの管理および置換を毎週予定に入れ、必要に応じて行った。ベースライン、移植後1週〜4週の毎週、8週、剖検時に、血液学的検査および血液生化学検査用の血液検体を採取・分析し当該結果を記録した。ベースラインおよび剖検時に、尿検査用の尿検体を採取・分析し当該結果を記録した。構造体、尿管、腎臓の画像化(蛍光透視法、超音波検査および/または内視鏡検査)を、研究中の2週、4週、8週、および剖検時に行った。また、有害な臨床徴候(例、尿流欠如が観察されるまたは瘻孔形成が疑われる場合)に対応するためにも、画像化を必要に応じて行った。瘻孔とは、膿瘍、窩洞、または空洞臓器と体表または別の空洞臓器(例えば、腸間、または腸と導管との間)とを接続する異常性導管または経路を指す。
剖検時に腹腔を開き、導管をストーマ、腎臓、尿管とともに除去する前に、導管が見えるようにして写真撮影した。腎臓から皮膚ストーマ、局所リンパ節、その他肉眼的に明らかな病巣まで、全尿路の代表的な組織検体を採取した。すべての組織検体を、組織学的処理および評価のため、10%の中性緩衝ホルマリン(NBF)内に留置した。固定後に、組織を定常的にマイクロスライドへと加工し、ヘマトキシリンとエオシン(H&E)およびマッソンの三重染色法で染色した。スライドを顕微鏡下で評価した。
結果、移植(外科的手法)、すべての被験動物は問題なく移植手術から回復し、当該ストーマは尿排出のため可視化された。当該動物モデルは、NUC(新尿路導管)を移植する外科的処置の評価に適切であると見なした。
疾病率と死亡率 : 被験動物は28〜83日生存した。7頭中1頭は、予定のと殺日まで生存した(群2の動物4,83日間)。7頭中6頭は、予定日より前にと殺した、群3の被験動物5は、組織病理学的分析のため移植後38日目〜63日目に選択的に安楽死させた。また5頭は、臨床条件不良のため移植後28日目に安楽死させた。(群1の被験動物1、群2の被験動物2および3、群3の被験動物6および7)。これらの予定前の死はすべての治療群において起こり、原因はウイルス性感染および/または上部尿路への損傷を伴う閉塞関連病変であった。
術後ケア、移植後1〜30日目、すべての被験動物は処置とは無関係に、術後のストーマ管理(例、毎週および必要に応じての流水洗浄と細片除去、および外された場合のカテーテル/ストーマポート置換)を必要とした。細片は、治癒および再生プロセス中に形成される。細片の原因として、剥離組織細胞、炎症性滲出液、足場の生分解が挙げられる。適切な流出がない場合(例、閉塞のため)、停滞した細片がデトリタスを形成する、導管内腔内の半固体塊。
移植後31日目の剖検、すべての被験動物に、尿流出の一部/完全閉塞が見られた。細片堆積を伴うまたは伴わない、尿流閉塞が観察された。外科移植済み被験物の前腹部への位置付けが、四肢動物モデルにおける尿流の物理的閉塞の原因となった。つまり、のしかかる腹部臓器の重みが、導管の閉塞、癒着や瘻孔の形成、二次的上部尿路腎臓合併症(例、膨張、炎症、および/または尿管や腎臓の感染)を引き起こした。癒着とは、2つの組織表面が結合することを指す。腹腔内癒着および/または骨盤癒着が、術後合併症としてよく見られる。剖検で、導管または尿管の癒着が肉眼的かつX線写真上で観察され、顕微鏡的相関性を得るための試みを行った。
さらに、尿流閉塞は腹膜を使用してアトリウムを生成したことにより悪化し、一部/完全尿路閉塞および後のデトリタス堆積と細菌感染が引き起こされた。アトリウムとは、腹壁を通しての尿の通過を可能とした前部接続房を指す。本セグメントは、被験物の尾方端(皮膚から約5〜7cm離れた腹腔内窩にある)と皮膚を接続する、腹膜被覆のほとんどの前部導管様部分から作られた。
被験物の外科的配置は、すべての被験動物において同様であった。したがって閉塞関連合併症は、すべての群において同様の病理学的メカニズムを有した(すなわち腹腔内容物圧力およびデトリタス堆積の原因となった腹膜アトリウム)。
再生、尿路様組織の再生は早くは28日目から観察され、群3(脂肪由来SMC)の選択的に安楽死させた5匹の被験動物において、尿路上皮、固有層、尿管導管接合部(UCJ)の平滑筋束の存在が確認された。移植の尿管端部の再生プロセスは、構造体移植を受けた被験動物(群2および3)の間で比較可能な尿路様組織形成をもたらした。構造体群(群2および3)における尿路様組織再生は、被験動物の移植後の生存期間により影響を受けた。予定のと殺まで生存した1頭の被験動物(83日目の群2の被験動物4)には、ウイルス性感染が検出されたに関わらず、当該導管のUCJ、上方および中部に尿路上皮および平滑筋が見られた。しかしながら、腹膜のみのアトリウムは尿路様組織再生を支持するのに十分ではなかった。またアトリウム内で形成された組織は、尿路上皮粘膜を伴わない線維性結合組織で構成される壁を有していた。移植の尾方端が腹膜被覆内を自由に浮遊して、導管からアトリウムへの移行を剖検で定義することを困難にしたため、導管からアトリウムへの移行ポイントは被験動物間で異なる。尾方導管の典型的な組成(推定)は、有機コラーゲンと関連線維芽細胞および/または筋線維芽細胞であった。腹膜アトリウムは尿路様組織再生には不十分であることが明らかとなったが、当該腹膜はNUC移植への血管新生の供給源として機能する。
結論、当該ブタ動物モデルは、新尿路導管の外科的応用の評価に適していることが、本パイロット研究において証明された。なぜなら、すべての被験動物が手術から回復し尿路変更が達成されたからである。さらにブタモデルは、尿流閉塞およびその上部尿路への影響についての術後ケアの評価に適していた。最後にブタモデルは、デトリタス堆積および細菌コロニー形成、ウイルス性 感染、腸の癒着および瘻孔を合併する環境においての被験物の尿路様組織再生能力を評価するのに適していた。尿路変更術の解剖学的配置部位が四足歩行動物の前腹底部であったことが尿流出の一部閉塞を引き起こしたが、当該外科的手法は成功であったと判定された。当該動物モデルを、新尿路導管の外科的応用、術後ケア、機能性の評価に適切であると見なした。
移植術後の最初の30日間の術後所見により、ブタにおける尿路変更手術後では珍しくない所見が明らかとなった。
研究中に複数の交絡因子が起こったにもかかわらず(すなわち、前腹部底部への外科的配置、腹膜アトリウム、ウイルス性感染)、尿路様組織の再生は早くは28日目から観察され、選択的に安楽死させた被験動物(群3(脂肪由来SMC)の被験動物5)において、尿路上皮、固有層、尿管導管接合部の平滑筋束の存在が確認された。
構造体群(群2および3)における尿路様組織再生の程度は、被験動物の移植後の生存期間により影響を受けた。予定のと殺まで生存した1頭の被験動物(83日目の群2の被験動物4)は、ウイルス性感染が検出されたにも関わらず、当該導管のUCJ、上方および中部に尿路上皮および平滑筋が見られた。
足場が血液由来または脂肪由来のSMCとともに播種された場合(順に群2および3)、再生プロセスにおける明白な差異は観察されなかった。これにより、再生促進におけるSMCの由来間の等価性が示唆される。
当該導管のアトリウムセグメント内の腹膜から形成された組織は、尿路上皮膜を伴わない線維性結合組織で構成される壁を有していた。
実験デザイン
概要、雌ゲッティンゲンミニブタ7頭を3つの群に分けた。1群(足場のみ)のN=1、2群(血液由来SMC)のN=3、3群(脂肪由来SMC)のN=3として、被験物を移植した。自己SMCは脂肪組織生検から採取し、静脈血検体は被験物の移植の約10〜11週間前にすべての被験動物から採取した。特定の被験物は、0日目に各群に外科的に移植した。膀胱の外科的切除(膀胱全摘出術)後に、尿管にステントを配置し、吻合術のために被験物の流入方向(上方)端部へと結集した。壁側腹膜の腹壁からの分離を、正中線の白線から開始して左右両側の腹壁に向かって行った。当該腹膜の左側を横に切断し、血管供給源および水密性尿路を供給する正中線の右に向かって移植を被覆するのに使用し、(腹腔内窩にある)移植の尾方端と皮膚との間に管状接合(アトリウム)を形成した。当該移植の尾方端は、腹膜アトリウム内で皮膚ストーマから約5〜7cm離して終端とした。腹壁を横断し(正中線右側の)剣状突起付近の皮膚から抜け出る、上方腹膜の被覆を利用して当該アトリウムを拡張した。外部腹膜を皮膚に縫合して、腹膜と皮膚の接合部および腹膜で覆われたストーマ内腔を生成した。尿管ステントへと繋げられた当該縫合糸は、後に除去できるようストーマを通して体外に露出させた。腹部切開を、非吸収性プロリン(Prolene)縫合糸で閉合した。当該皮膚は定常方法で閉合した。フォーリーカテーテルを当該ストーマへと挿入して、ストーマが治癒する間の尿の通過を可能にした。すべての被験動物に対して、同一の外科的処置を使用した。
フォーリーカテーテルを除去した後、すべての被験動物に尿排出を促進するTRACOE(TM)ストーマポートを装着した。被験動物によりストーマポートが外される場合があったので、8Frフォーリーカテーテルを使用して尿排出を補助した。アトリウムおよびストーマにデトリタスが堆積したため、より大きな直径に変更された拡張セット(研究特異的)を利用してストーマを管理した。ストーマの管理およびポート/カテーテルの置換を毎週予定に入れ、必要に応じて行った。
ベースライン、移植後1週〜4週の毎週、8週、剖検時に、血液学的検査および血液生化学検査用の血液検体を採取・分析し当該結果を記録した。ベースラインおよび剖検時に、尿検査用の尿検体を採取・分析し当該結果を記録した。構造体、尿管、腎臓の画像化(蛍光透視法、超音波検査および/または内視鏡検査)を、研究中の2週、4週、8週、および剖検時に行った。また、有害な臨床徴候(例、尿流欠如が観察されるまたは瘻孔形成が疑われる場合)に対応するためにも、画像化を必要に応じて行った。剖検時に腹腔を開き、導管をストーマ、腎臓、尿管とともに除去する前に、導管が見えるようにして写真撮影した。腎臓から皮膚ストーマ、局所リンパ節、その他肉眼的に明らかな病巣まで、全尿路の代表的な組織検体を採取した。すべての組織検体を、組織学的処理および評価のためにVet Path Services、Inc.宛に発送する前の24〜48時間、10%の中性緩衝ホルマリン(NBF)内に留置した。固定後に、組織を定常的にマイクロスライドへと加工し、ヘマトキシリンとエオシン(H&E)およびマッソンの三重染色法で染色した。スライドを顕微鏡下で評価した。当該病変報告は以下の実施例において示す。
以下の表 3.1は、研究デザインの概要を提供したものである。
ブタとヒトでは腹部と上部尿路の解剖学的構造、外科的操作の方法、ストーマの造設と治癒、手術後のケアに類似点があることを前提として、ブタを新尿路導管の評価に最適な動物モデルであると見なした。ブタは、皮膚の創傷治癒の動物モデルとして定評があり、ヒトにおける正常の治癒プロセスに限りなく近づけることができ、ストーマ治癒の評価を可能とする。当該大小網は、イヌにおける尿路組織再生のための血液供給および水密性表面を提供することが、前もって認められていた。現在の研究では、血管供給と水密性をNUCに供給するブタ腹膜の能力を評価した。またブタは、ヒトの壁側腹膜に似た当該臓器を有する唯一の大型被験動物である。ゲッティンゲンミニブタは、3ヵ月の研究期間の平均成長率が遅いことに基づき選択された。
材料および方法
試験デバイス - 当該被験物は、i)自己脂肪由来のブタ平滑筋細胞を播種した合成ラクチド/グリコリドポリマーからなる導管状の足場(2.5 x 107細胞または2.5 x 107 細胞、ii)自己血液由来のブタ平滑筋細胞を播種した合成ラクチド/グリコリドポリマーからなる導管状の足場(2.5 x 107細胞または2.5 x 107細胞)、およびiii)いかなる細胞も播種していない合成ラクチド/グリコリドポリマーからなる導管状の足場、であった。
被験動物。合計7頭の被験動物に、当該被験物の移植を行った。被験物を移植した7頭の被験動物のうちの1頭(群 3)を、組織病理学的評価のため1カ月の時点(28日目)で、選択的に安楽死させた。その他のすべての被験動物を、研究過程で安楽死させた。
外科的処置。
生検/組織の採取。すべての被験動物について(群1〜 3)、肪組織生検および静脈血を0日目(移植手順)の10-11週間前に採取した。組織生検手順として、臍孔のすぐ尾方から始まる腹部を正中線切開した。柔軟皮下脂肪組織(結合組織なし)21〜34gの脂肪生検を、本正中線アクセス点から無菌採取した。採取した組織検体を、個別かつ無菌で組織培地とともに容器へと移した。当該腹部切開は、適切な大きさの吸収性縫合糸材料で層状に閉合した。当該皮膚は、適切サイズの吸収性縫合糸材料で表皮下の方法で閉合した。10-mlのアリコート約6つの静脈血を、ヘパリン化バキュテナー(vacutainer)で採取した。
カニューレ挿入手順。被験物移植の12〜18日前に、血液採取を促進するため、留置カテーテルを各被験動物の頸静脈内に留置した。右頸静脈周辺部を剃髪し、上述の通りに準備した。すべての被験動物に無菌5.5-mm IDシリコンカテーテルをカニューレ挿入した。右外頸静脈に挿入し、ずれないよう縫合糸で固定した。特大のDaVINCIポートを、皮下ポケット内に取り付け・移植した。
試験デバイスの移植。正中線腹部切開を臍孔の上方5cmで行い、約15cm尾方に拡張した。腹膜を特定し、その後、正中線の白線から開始して左右両側の腹壁に向かって分離した。当該組織を傷つけず血管新生が確保されるよう、注意を払った。その後、膀胱を露出させ慎重に尿を排出させて、腹腔内に尿が侵入しないよう確保した。膀胱へと供給を行う動脈および静脈を特定し、結紮した。尿管を特定し、ステント(14-cmの7Fr DaVINCI非吸収性尿管ステント2つ、上行法で挿入)を配置し、慎重に膀胱を横に切断した。切断された尿道を縫合した。その後、膀胱を切除した。左尿管を、周辺の後腹膜筋膜から慎重に分離させ、被験物の右側に達するのに十分な可動性が得られるまで頭側に伸張した。右尿管は、被験物の反対側に自由に到達できるよう分離した。尿管は、3-0 Vicrylを用いてシンプルな連続的パターンで、被験物上に縫合した。当該腹膜の左側を横に切断し、血管供給源および水密性尿路を供給する正中線部分の右に向かって移植を被覆するのに使用し、(腹腔窩にある)移植の尾方端と皮膚との間に管状接合(アトリウム)を形成した。当該移植の尾方端は、腹膜アトリウム内で皮膚ストーマから約5〜7cm離して終端とした。当該腹膜は、3-0 Vicrylで縫合した。腹壁を横断しかつ(正中線右側の)剣状突起付近の皮膚から抜け出る上方腹膜の被覆を利用して、当該アトリウムを拡張した。外部腹膜を皮膚に縫合して、腹膜と皮膚の接合部および腹膜で覆われたストーマ内腔を形成した。その後外科用接着剤を、腹膜が体壁から抜け出る縫合線に沿って留置した。尿管ステントへと繋げられた当該縫合糸は、後に除去できるようストーマを通して体外に露出させた。腹部切開を、非吸収性プロリン(Prolene)縫合糸で閉合した。当該皮膚は定常方法で閉合した。フォーリーカテーテルを当該ストーマへと挿入して、ストーマが治癒する間の尿の通過を可能にした。すべての被験動物に対して、同一の外科的処置を使用した。
ストーマの管理。移植後2週間または切開部位が治癒するまで、当該手術部位について、離開、異常分泌物、異臭、炎症、その他の異変徴候がないか評価した。ストーマ部位および周辺組織を毎日2回洗浄し、尿排出のためストーマカテーテルを利用した。滴下がない場合、カテーテルを無菌生理食塩水で流水洗浄し、開存性を確認した。ストーマが閉塞した場合、生理食塩水で流水洗浄した後に、鉗子で綿状沈殿および詰まっている材料を除去した。これらの作業を行っても自由な尿流が回復されない場合、新しいカテーテルを設置して動かないようプロリン縫合糸で固定した。また、ストーマポートを設置して2-0プロリン縫合糸で固定した。
ステントの除去。移植術後2〜4週のさまざまな時点において、前述の通り被験動物に麻酔を実施して尿管ステントを除去した。
頸静脈ポート。頸静脈ポートカテーテルを注入可能な生理食塩水で流水洗浄し、4週まで毎週およびその後は使用ごとにヘパリンロック(100 U/mL、〜2-3mL)し、開存性を確保した。
画像化。
超音波検査。当該導管および腎臓の超音波画像化を2週、4週、8週、および剖検前に実施した。
膀胱鏡検査。4週に、膀胱スコープ(望遠鏡または顕微鏡のようなレンズ付き伸縮性光ファイバー)を挿入して膀胱鏡検査を実施し、導管内面を観察し、上記説明通り尿管ステントを除去した。本処置では被験動物に麻酔を投薬した。
体重。体重はベースライン、毎週、および剖検前に記録した。
臨床病理学的検査。
血液採取。血液学的分析(CBC)、凝析、血液生化学検査パラメータのための血液検体を、予定された時点(ベースライン、1週、2週、3週、4週、8週、および、剖検前)に、頸静脈の留置ポート経由で採取した。
血液学的検査。血液学的検体を2.0mlのEDTA導管内に採取し、Idexxへの(ウェットアイス)配送の前に冷蔵保管またはウェットアイス(2〜8°C)保管した。配送は、プロトコルで規定されている通り、分析促進のため採取から24時間以内に行った。以下の血液学パラメータについて検体を評価した、合計白血球数(WBC)、赤血球数(RBC)、ヘモグロビン濃度(HGB)、ヘマトクリット値(HCT)1、平均赤血球容積(MCV)、平均赤血球ヘモグロビン(MCH)1、平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)1、血小板数(PLT)、相対網状赤血球数(RTC)(1=計算値)。
凝析。凝析検体を1.8mlのクエン酸ナトリウム導管(0.2mL of 3.8%のクエン酸ナトリウム0.2mL)内へと採取し、8,000 RPMで10〜15分間遠心分離されるまでウェットアイス保管した。血漿を除去し、2つのラベリングされたバイアルへと分割し、その後-70℃で凍結した。1つのバイアルをドライアイス梱包し、分析のためIdexx宛に配送した。残りのバイアルは、研究結果が出るまで予備として保管した。以下のパラメータについて検体を評価した : プロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、フィブリノゲン(FIB)。
血液生化学検査。血液生化学検査のための血液検体を、約4.0-mlの血清分離チューブ内に採取した。血液検体を10,000 RPMで10〜15分間遠心分離し、無菌技術を利用して血清を抽出した。血清を2つのラベリングされたバイアルへと分割し、-70°Cで凍結した。1つのバイアルをドライアイス梱包し、分析のためIdexx宛に配送した。残りのバイアルは、研究結果が出るまで予備として保管した。以下の血液生化学的パラメータについて検体を評価した、グルコース(GLU)、尿素窒素(BUN)、クレアチニン(CRE)、総蛋白質(TPR)、アルブミン(ALB)、グロブリン(GLOB)1、アルブミン/グロブリン比率(A/G)1、カルシウム(CAL)、リン(PHOS)、ナトリウム(NA)、カリウム(K)、塩化物(CL)、総コレステロール(CHOL)、総ビリルビン(TBIL)、トリグリセリド(TRG)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アルカリホスファターゼ(ALK)、ガンマグルタミルトランスフェラーゼ(GGT)(1=計算値)。
血液ガス。動脈内血液ガス検体をシリンジ(約1.0 mL)内に採取し、自家分析のためCG8+ i-STATカートリッジ内に血液を留置した。以下の血液ガスパラメータについて検体を評価した、ナトリウム(Na)(mmol/L)PCO2(mm Hg)、カリウム(K)(mmol/L)PO2(mm Hg)、イオン化カルシウム(iCa)(mmol/L)TCO2(mmol/L)、グルコース(Glu)(mg/dL)HCO3(mmol/L)、ヘマトクリット(Hct)(%)BEecf(mmol/L)、pH、SO2(%)。
尿の採取。尿検体は、ベースラインおよび剖検前に採取した。約1.0mLおよび3.0mLの検体を、順に定性的分析および定量的分析のために、無菌容器に採取した。当該定性的分析は採取時に、MultistixR 10 SG試験紙を利用して実施した。定量的包括的尿検査用の検体は冷蔵し、採取から24時間以内にIDEXX Laboratories (マサチューセッツ州ノースグラフトン) 宛てに配送した。以下の定性的尿検査パラメータについて検体を評価した : グルコース、ビリルビン、血液、pH、蛋白質、ケトン、ウロビリノーゲン、比重、亜硝酸塩、白血球。また以下の定量的尿検査パラメータについて評価した、細菌培養、総細菌、グルコース、総蛋白質。
剖検。予定通りに(84±5日)安楽死させた被験動物は、特に腎臓、導管、尿管、尿管膀胱接合部、中導管、導管皮膚接合部、リンパ節(腰部および腸間膜)に重点を置いて剖検した。
組織の採取。安楽死および剖検において、新導管移植周辺のすべての組織を肉眼で観察し、自然位で写真撮影した。腎臓新、取り付けた尿管を伴う導管、リンパ節を採集した。腎臓を離体し写真撮影した。付属尿管を伴う新導管を評価し、10%の通常緩衝食塩水(NBF)で圧力かん流した。すべての採取された組織を、組織学的処理のため、10%の通常緩衝食塩水(NBF)内に保存した。
組織学的検査と組織病理学的検査。泌尿器のトリミング、観察、パラフィン包埋、切開を実施した。検体の切開スキームに関する特定の詳細については、病変報告(後述)に示す。スライドは、ヘマトキシリンとエオシン(H & E)およびマッソンの三重染色法で染色した。
結果
生検。脂肪組織生検(21-34g)および静脈血(ヘパリンチューブ内の6 x 10 mLアリコート)を、プロトコルに規定されている通りに採取した。脂肪生検検体の個々の重量を、別表 1(EE = 選択的安楽死、PCV-2=ブタサーコウイルス-2、SMC = 平滑筋細胞、S = 生存個体、UD = 臨床条件不良による予定外の死、X = 確認)に示す。
移植(外科的手法)。すべての被験動物は問題なく移植手術から回復し、当該ストーマは尿排出のため可視化された。当該動物モデルを、新尿路導管の外科的応用、術後ケア、機能性の評価に適切であると見なした。
図26は、本研究で利用した尿管ステントを示したものである。図27は当該新導管構造体を示したものである。図 28は、尿管に取り付けられた当該新導管構造体を示したものである。図29は、尿管に取り付けられた当該構造体の流入端部、および手術で造設されたストーマに向けられた流出端部を示したものである。図 30は、尿排出のための当該ストーマおよびカテーテルを示したものである。
死亡率。被験動物7頭中1頭は、予定のと殺日まで生存した(群2の動物4、83日間)。7頭中6頭は、予定日より前にと殺した、群3の動物5は、組織病理学的分析のため移植後28日目に選択的に安楽死させた。また5頭は、臨床条件不良のため移植後38日目〜63日目に安楽死させた。(群1の動物1、群2の動物2および3、群3の動物6および7)。これらの予定前の死はすべての治療群において起こり、原因はウイルス性感染および/または上部尿路への損傷を伴う 閉塞関連病変であった。
被験動物7頭各々の最終的処遇および死亡所見を以下の表3.2に示す(EE = 選択的安楽死、PCV-2=ブタサーコウイルス-2、SMC = 平滑筋細胞、S = 生存個体、UD = 臨床条件不良による予定外の死、X = 確認)。
閉塞。導管およびストーマを通る尿流の閉塞が原因で、予定外のと殺を行った被験動物の疾病率は4/6に達した。これらには、47日目に安楽死させた群1の被験動物1、38日目と40日目に安楽死させた群2の被験動物2と3、39日目に安楽死させた群3の被験動物6が含まれる。閉塞は、被験物が四肢動物の腹腔前部に配置されていることにより促進されたと思われる。つまり、のしかかる腹部臓器の重みで、導管の閉塞、癒着や瘻孔の形成、腎臓合併症(例、膨張、炎症、および/または尿管や腎臓の感染)が引き起こされたと見なされる。閉塞は腹膜を使用してアトリウムを生成したことにより悪化し、一部/完全尿路閉塞および後のデトリタス堆積と細菌感染が引き起こされた。被験物の外科的配置は、すべての被験動物において同様であった。したがって閉塞関連合併症は、すべての群において同様の病理学的メカニズムを有した(すなわち四肢動物解剖学的構造が原因の腹部内臓の導管上への圧迫)
30日超後の臨床健康観察および術後ケア。30日超で、試験されていた被験動物は6頭であった(群3の被験動物5は28日目に安楽死させることを決定した)。重要な臨床観察の1つとして、尿流出の間欠的閉塞が挙げられる。移植後の最初の30日間に足場の生分解が起こるため、閉塞は、被験物が四肢動物の腹腔前部に配置されていることにより促進されたと思われる。つまり、のしかかる腹部臓器の重みで、導管の閉塞、癒着や瘻孔の形成、腎臓合併症(例、膨張、炎症、および/または尿管や腎臓の感染)が引き起こされたと見なされる。閉塞は腹膜を使用してアトリウムを生成したことにより悪化し、一部/完全尿路閉塞および後のデトリタス堆積と細菌感染が引き起こされた。したがって、生存していた6頭の被験動物について、31日目から剖検までストーマの管理を続けた。これは、31日目から剖検までで最低4回、最高13回行われた。被験動物6頭のうち2頭は、30日後に摂食障害を起こした(群1の被験動物1、群3の被験動物7)。被験動物6頭のうち3頭は、30日後に嗜眠が見られた。被験動物2頭は最初の30日に不活発状態を呈し、30日後も不活発状態が継続した(群1の被験動物1、群2の被験動物4)。被験動物1頭は最初の30日に不活発状態を示さなかったが、30日後に不活発状態を呈した(群3の被験動物6)。以下の表3.4は、臨床健康観察および術後ケアを群別で(移植後30日未満)示したものである。
ステントの除去。移植後2週〜4週の間に、ステントテザーまたは超音波による視覚化や膀胱鏡による修正を利用して、麻酔をした被験動物からステントを除去した。被験動物1頭に設置したステント(群2の被験動3)は視覚化および除去ができなかったため、剖検までそのまま留置した。個々の尿管ステント除去データを収集した(データ未表示)。
ストーマポート/カテーテル。個々のデータを収集した(データ未表示)。研究過程で変化を進展させ、ストーマの管理を最適化した。当初はフォーリーカテーテル を利用した。これはTRACOE(登録商標)8) ストーマポートに置換された。このデバイスは被験動物により外されることが相次ぎ実用的でないことが明らかとなったので、8Frフォーリー カテーテルを利用して尿排出を補助した。これは後に、閉塞を低減させるためのより大きな直径に変更された拡張セットチューブに置き換えられた。管理または置換を、毎週および必要に応じて行った。
体重。すべての被験動物は、移植後に体重が減少した。研究過程で、すべての被験動物の体重が変動した。被験動物1頭(群2の被験動物4)は予定のと殺まで生存し、2週〜剖検まで定常状態を維持した、または体重が増加した。個々の体重データは以下の表3.5に記載する。
臨床病理学的検査。個々の被験動物の臨床病理学的データを収集した。
血液学的検査。血液学的データを収集した(データ未表示)。血液学的検査のための術後血液採取により、すべての群における白血球増加症の発生が明らかになった。すべての群の白血球数が変動したが、足場のみの被験動物(群1)の白血球数が剖検で最高値を示した。赤血球数(RBC)はすべての群で変動したが、研究過程で参照値域(8〜10MILL/uL)内に留まった。ヘマトクリット(%)は、研究過程ですべての群において変動した。
血液生化学検査。血液生化学検査データを収集した(データ未表示)。全体として、BUN、クレアチニン、総蛋白質、およびカリウムが、すべての被験動物の剖検で上昇した。アルブミンは剖検により一般に減少し、カリウムおよびナトリウムは変動した。すべての群において変動は明白であったが、剖検により足場のみの被験動物(群1)について最も有意な変動が明らかになった。
凝析。凝析データを収集した(データ未表示)。活性化部分トロンボプラスチン時間が増加したが、増加を示し続けた被験動物5、7を除くすべての被験動物については、剖検によりベースライン付近に戻った。剖検時にフィブリノゲンがすべての群で増加し、足場のみの被験動物で最も値が高かった。
尿検査。尿検査データを収集した(データ未表示)。尿検査データでは、ベースラインと剖検の間、すべての群で蛋白質、潜血、白血球数、細菌数の増加が見られた。
画像化。超音波データを以下の表3.6に記載する
図31〜43は、代表的な膀胱鏡検査画像を示したものである。図31は、4週の群1の被験動物1(細胞分離足場を移植)の膀胱鏡検査画像を示したものである。図32は、6週検査時、剖検2日前の同一被験動物を示したものである。
図 33は、剖検前の群2の被験動物2(血液由来SMCを播種した足場)の膀胱鏡検査画像を示したものである。
図34〜36は、4週、5週、および剖検前の群2の被験動物3(血液由来SMCを播種した足場)の膀胱鏡検査画像を示したものである。
図 37は、剖検前の群2の被験動物4(血液由来SMCを播種した足場)の膀胱鏡検査画像を示したものである。
図38は、3週の群3の被験動物5(脂肪由来SMCを播種した足場)の膀胱鏡検査画像を示したものである。当該画像は、白-黄褐色の不定形粒状概観の足場細片に覆われた粘膜を示したものである。図39は、3週の同一被験動物の画像を示したものである。尿管吻合付近または当該部位のピンク色のフォーカスは、ステント除去に伴い剥がされた上皮組織の場所を示しており、ピンク色の血管新生された果粒層となっている。
図40〜42は、3週、4週、および剖検前の群3の被験動物6(脂肪由来SMCを播種した足場)の膀胱鏡検査画像を示したものである。
図43は、4週の群3の被験動物7(脂肪由来SMCを播種した足場)の膀胱鏡検査画像を示したものである。当初は2つのステント(青の材料)が超音波画像で見られたが、後に細胞検査ガイダンスにより除去された。
超音波。個々および群の超音波検査データを上記の表に記載する。研究過程で行なった腎臓の超音波検査により、表面積の増大(長さx幅)が示され、すべての治療群における腎臓の変化(水腎)が示唆された。
移植壁厚の超音波検査により、すべての群における厚さ変動が認められた。以下の表3.8でこれを示す。
当該病変報告は以下の実施例4において示す。
ブタサーコウイルス-2型(PCV-2)感染の徴候が、被験動物の3/7で観察された。これらには、38日目に安楽死させた群2の被験動物2、および63日目に安楽死させた群3の被験動物7が含まれる。PCV-2感染が認められた3番目の被験動物は群2の被験動物4で、予定のと殺まで生存した(83日間)。導管およびストーマを通る尿流の閉塞が原因で、予定外のと殺を行った被験動物の疾病率は4/6に達した。これらには、47日目に安楽死させた群1の被験動物1、38日目と40日目に安楽死させた群2の被験動物2と3、39日目に安楽死させた群3の被験動物6が含まれる。外科移植済み被験物の前腹部への位置付けが、四肢動物モデルにおける尿流の物理的閉塞の原因となった。つまり、のしかかる腹部臓器の重みが、導管の閉塞、癒着や瘻孔の形成、二次的上部尿路腎臓合併症(例、膨張、炎症、および/または尿管や腎臓の感染)の原因となった。さらに、尿流閉塞は腹膜を使用してアトリウムを生成したことにより悪化し、一部/完全尿路閉塞および後のデトリタス堆積と細菌感染が引き起こされた。被験物の外科的配置は、すべての被験動物において同様であった。したがって閉塞関連合併症は、すべての群において同様の病理学的メカニズムを有した。尿路様組織の再生は早くは28日目から観察され、選択的に安楽死させた被験動物(群3(脂肪由来SMC)の被験動物5)において、尿路上皮、固有層、尿管導管接合部(UCJ)の平滑筋束の存在が確認された。移植の尿管端部の再生プロセスは、構造体移植を受けた被験動物(群2および3)の間で比較可能な尿路様組織形成をもたらした。構造体群(群2および3)における尿路様組織再生は、被験動物の移植後の生存期間により影響を受けた。予定のと殺まで生存した1頭の被験動物(83日目の群2の被験動物4)には、ウイルス性感染が検出されたに関わらず、当該導管のUCJ、上方および中部に尿路上皮および平滑筋が見られた。しかしながら、腹膜のみのアトリウムは尿路様組織再生を支持するのに十分ではなかった。またアトリウム内で形成された組織は、尿路上皮粘膜を伴わない線維性結合組織で構成される壁を有していた。移植の尾方端が腹膜被覆内を自由に浮遊して、導管からアトリウムへの移行を剖検で定義することを困難にしたため、導管からアトリウムへの移行ポイントは被験動物間で異なる。尾方導管の典型的な組成(推定)は、線維芽細胞および/または筋線維芽細胞に関連する有機コラーゲンであった。腹膜アトリウムは尿路様組織再生には不十分であることが明らかとなったが、当該腹膜はNUC移植への血管新生の供給源として機能する。
結論。当該ブタ動物モデルは、新尿路導管の外科的応用の評価に適していることが、本研究において証明された。なぜなら、すべての被験動物が手術から回復し尿路変更術が達成されたからである。さらにブタモデルは、尿流閉塞およびその上部尿路への影響についての術後ケアの評価に適していた。最後にブタモデルは、デトリタス堆積および細菌コロニー形成、ウイルス性 感染、腸の癒着および瘻孔を合併する環境においての被験物の尿路様組織再生能力を評価するのに適していた。
尿路変更術の解剖学的配置部位が四足歩行動物の前腹底部であったことが尿流出の一部閉塞を引き起こしたが、当該外科的手法は成功であったと判定された。当該動物モデルを、新尿路導管の外科的応用、術後ケア、機能性の評価に適切であると見なした。
移植術後の最初の30日間の術後所見により、ブタにおける尿路変更術後では珍しくない所見が明らかとなった。
実施例4 − 新導管構造体移植後の被験動物の病理学的検査
実施例3で述べた研究結論の時点で、被験動物の解剖病理学的検査を評価した。
組織の採取。当該腹腔を開き、当該導管(すなわち、構造体または足場のみの被験物の移植の所産)を可視化して、被験動物施設で自然位でデジタル写真撮影した。当該導管を、腎臓、尿管とともに除去した。当該尿管を吻合から3〜4cm離して横断切開して、当該導管から単離された。腎臓、尿管、リンパ節、その他の病巣の代表的な部分を肉眼観察し、収集した。すべての組織検体を、組織学的処理および評価のためにVet Path Services、Inc.宛に発送する前の24〜48時間、10%の中性緩衝ホルマリン(NBF)内に留置した。
組織学的処理。固定後に当該導管を縦方向に切開し(流出に対して平行)、図44で図説する通り背側半分と腹側半分に分割した。
背・腹側半分両方から、3つの横断切片をトリミングした(背側半分と腹側半分について上方、中部、尾方切片を取得)。背・腹側半分ともに1切片づつを、導管アトリウム接合部から採取した。2つの尿管導管接合部からそれぞれ、追加の切片を取得した。もう1つのスライドを利用して、皮膚表面のストーマおよび腹壁を通る隣接管を取得した。導管サイズが許容範囲内である場合、本スキームにより11のスライドが得られた。切片は各被験動物から採取された。さらに、以下の組織/臓器切片を採取して組織学的検査のために提出した : 左腎臓、右腎臓、左尿管、右尿管、腰リンパ節、腸間膜リンパ節、鼠径部リンパ節、あらゆる肉眼的病変。
VPSでの組織トリミングの間、図示目的のためデジタル写真撮影を行った。固定後に、組織を定常的にマイクロスライドへと加工し、ヘマトキシリンとエオシン(H&E)およびマッソンの三重染色法で染色した。また、腎臓用のスライドと5つの導管部位をブラウン‐ホップス法(グラム)で染色した。スライドを顕微鏡下で評価した。必要に応じて、個々の被験動物 データについての顕微鏡観察所見を取得し記録した。
結果
死亡率。被験動物は28〜83日生存した。7頭中1頭は、予定のと殺日まで生存した(群2の被験動物1頭、83日間)。7頭中6頭は、予定日より前にと殺した、群3の被験動物1頭は、組織病理学的分析のため移植後28日目に選択的に安楽死させた。また5頭は、臨床条件不良のため移植後38日目〜63日目に安楽死させた(群1の被験動物1頭、群2の被験動物2頭、群3被験動物2頭)。これらの予定外の死はすべての治療群において起こり、原因はウイルス性感染および/または上部尿路への損傷を伴う閉塞関連病変であった。被験動物7頭各々の最終的処遇および死亡知見を、別表1「被験動物情報」に示した。処遇(死亡分類)については治療群ごとに、以下の表4.2に要約した(群1 = 足場のみ、群2 = 血液由来SMC構造体、群3 = 脂肪由来SMC構造体)。
閉塞。導管およびストーマを通る尿流の閉塞が原因で、予定外のと殺を行った被験動物の疾病率は4/6に達した。これらには、47日目に安楽死させた群1の被験動物1、38日目と40日目に安楽死させた群2の被験動物2と3、39日目に安楽死させた群3の被験動物6が含まれる。外科移植済み被験物の前腹部への位置付けが、四肢動物モデルにおける尿流の物理的閉塞の原因となった。つまり、のしかかる腹部臓器の重みが、導管の閉塞、癒着や瘻孔の形成、二次的上部尿路腎臓合併症(例、膨張、炎症、および/または尿管や腎臓の感染)の原因となった。さらに、尿流閉塞は腹膜を使用してアトリウムを生成したことにより悪化し、一部/完全尿路閉塞および後のデトリタス堆積と細菌感染が引き起こされた。被験物の外科的配置は、すべての被験動物において同様であった。したがって閉塞関連合併症は、すべての群において同様の病理学的メカニズムを有した。
被験物の移植から形成された導管は、前腹部の後腹膜腔に位置するさまざまなサイズと形状の導管あった。当該尿管が、当該導管の上方端部(尿管導管接合部、UCJ、図44)で加わった。尿流を腹膜被覆移植およびアトリウムを通して誘導し、ストーマ部分で噴出させた。当該導管上方端部(尿管連結部)には頻繁に球状の両側性膨張が見られた。当該膨張は憩室と呼ばれ、再生プロセスの一部と考えられており、またストーマの間欠的閉塞や背圧を反映して、再生導管内の発生に対して膨張を引き起こしていると見なされた。
癒着および瘻孔。当該導管の腹側は筋膜および腹壁の骨格筋へと癒着しており、背側は腹膜で被覆されていた。剖検では、導管/尿管とその他の腹部臓器(例、胃腸管、大小網、その他の腹部臓器)との癒着が観察された。当該導管の内腔はデトリタスで満たされていた。さまざまな腹部臓器間の癒着を含む腹部癒着および導管と腹部臓器の癒着が、被験動物の7/7に認められた。
7頭中6頭には導管と腸との間の癒着が見られた(肉眼的および顕微鏡下で群1の被験動物1、群2の被験動物3および4、群3の被験動物6および7、顕微鏡下で群2の 被験動物2)。また7頭中1頭には、導管・子宮・尿管の子宮または卵巣への肉眼で見える癒着が認められた(群2の被験動物4)。被験動物1頭(群3の被験動物5)には、尿管と子宮/卵巣との癒着が見られた(肉眼的)。7頭中1頭には、尿管の子宮/卵巣への、および尿管の腸への肉眼で見える癒着が認められた(群3の被験動物6)。被験動物の2/7の導管と腸管との間に、肉眼的に瘻孔が観察され、顕微鏡下で瘻孔/好中球経路が認められた(群2の被験動物2および3)。被験動物2/7の導管と腸管との間に 、肉眼的に瘻孔が観察され、顕微鏡下で瘻孔/好中球経路が認められた(群2の被験動物2および3)。
尿管および腎臓。顕微鏡的評価での根本的な生物学的プロセスにおいて、肥厚性尿管が肉眼的に観察された。尿管膨張(または水尿管症)は、正常な尿管壁構造を伴う拡張された内腔を特徴とした。尿管周辺の腸間膜がコラーゲンや線維芽細胞により(偶発的リンパ球およびマクロファージを伴う)拡張する場合に起こる、尿管周囲腸間膜の亜急性/慢性炎症により、尿管が肥厚性となることが時折見られた。移行細胞空胞化は、上皮組織内の円形透明な空胞を特徴とした。この炎症は通常、筋肉被膜または尿管の尿路上皮に影響を与えなかった。尿管周囲炎症は、尿管と腸管/生殖器の癒着に関連していた可能性があるが、癒着がなくとも発症していた可能性がある。血管壊死を伴う/伴わない血管炎が、尿管周囲炎症の部位内に観察された。これは、群2の被験動物2におけるPCV-2ウイルス性感染と関連がある可能性がある。顕微鏡下で水腎は、薄層化を伴う腎盂の膨張および腎臓皮質の慢性炎症(線維症、リンパ球、血漿細胞、偶発的マクロファージ)を特徴とした。水腎は、下部泌尿器系(尿管、導管、アトリウム/ストーマ)の全/一部閉塞の結果であると見なされた。水腎と時折関連が認められる慢性-活性腎盂腎炎は、好中球と細胞質細片の腎盂への浸潤(しばしば遠位髄質まで拡散)を特徴とした。腎盂腎炎は、腎盂へと上行する下部尿路の細菌感染の結果であった。慢性腎炎(水腎を伴わない)は、腎臓皮質または髄質における炎症細胞(リンパ球、マクロファージ、血漿細胞、偶発的好中球)の浸潤を伴う線維症を特徴とした。慢性腎炎を伴う腎臓皮質は、水腎/慢性腎炎を患う被験動物のものと同様の外観を持つが、慢性腎炎については腎盂拡張は見られなかった。慢性-活性腎炎は慢性腎炎と同様の外観を持つが、好中球の有意な浸潤が見られた。尿細管壊死/流体/キャスティング/糸球体腎炎は、好中球、糸球体内のリンパ球およびマクロファージ、個々の尿細管上皮細胞の壊死、蛋白性管状キャスティングおよび/または管状内腔内の出血を特徴とする一連の病変であった。尿細管壊死/流体/キャスティング/糸球体腎炎は、群2の被験動物2および4、群3の被験動物7で観察された。尿細管壊死/流体/キャスティング/糸球体腎炎を患う被験動物の腎臓において、血管炎/血管周囲炎もよく見られた。被膜/腹膜の慢性-活性炎症は、線維芽細胞、コラーゲン繊維質および/またはフィブリン、好中球、リンパ球、マクロファージによる腎臓被膜の肥厚化を特徴とし、腹膜炎を示唆した。
片側性水尿管症(被験動物の2/7)、群1の被験動物1頭(被験動物1)および群3の被験動物1頭(被験動物6)。両側性水尿管症(被験動物の2/7)、群2の被験動物1頭(被験動物2)および群3の被験動物1頭(被験動物5)。片側性水腎(被験動物の2/7)、群3の被験動物2頭(被験動物5および6)。両側性水腎(被験動物の2/7)、群1の被験動物1頭(被験動物1)および群2の被験動物1頭(被験動物2)。腎盂腎炎(両側性)は、7頭中1頭で観察された(群2、被験動物2)。予定のと殺まで生存した被験動物1頭(群2、被験動物4、83日)には、水尿管症、水腎、腎盂腎炎のいずれも見られなかった。
尿路導管再生に関する所見。収穫された切片で観察された組織構成要素の詳細な所見を収集した(データ未表示)。
導管再生の所見の群間発生率を以下の表に示す。以下の表4.17に、群別所見のNUC概要を示す。
以下の表4.18に、群別所見のNUC概要を示す(非PCV-2被験動物)。
被験物の外科的移植後に発生した導管は、尿管(上方端部)から移植およびアトリウムを通って前腹部皮膚のストーマ開口部へと走行する中央内腔で構成された。構造体群(群2および3)における尿路様組織再生は、被験動物の移植後の生存期間により影響を受けた。移植後の様々な時点で被験動物のと殺を行ったため、観察された再生プロセスは異なるステージにあり、各群の尿路様組織の有無は移植後の時点およびSMCの有無に基づき群ごとに異なった。
尿管-導管接合部、導管上方部および中間部。尿管導管接合部(UCJ、図44のセクション14および16)を含む導管上方端部付近の組織の典型的な組成は、様々なサイズの粘膜下層に重なる尿路上皮、および分散型結合組織を伴う平滑筋繊維質の層(図27〜28)であった。
図45は、上部パネルの群3の被験動物6(脂肪由来SMC)および下部パネルの群1の被験動物1の準肉眼的写真を示したものである。
図46は、群2の被験動物4(血液由来SMC)からの尿管-導管接合部付近の新尿路導管の顕微鏡写真(マッソンの三重染色法)を示したものである。当該尿路上皮は、薄い粘膜下層および平滑筋層上で確認された。
図47は、群3の被験動物6(脂肪由来SMC)からの尿管-導管接合部付近の新尿路導管の顕微鏡写真(マッソンの三重染色法)を示したものである。当該尿路上皮は、薄い粘膜下層および平滑筋層上で確認された。
図48は、被験動物1(群1)(左パネル)および被験動物3(群2)(右パネル)の中部導管壁の顕微鏡写真(マッソンの三重染色法)を示したものである。内腔に近い中部導管壁は多くの場合、慢性-活性炎症で覆われていた。足場のみ(群1)被験動物の壁は、主に青染色のコラーゲン(修復)からできており、右側の構造体の壁は、主に(再生)赤染色の紡錘細胞(おそらくミオサイト、線維芽細胞、筋線維芽細胞)でできていた。
予定のと殺まで生存した被験動物の上方部位および中間導管は、同様の外観であった。尿路上皮および平滑筋層が導管内に存在する場合、典型的には導管壁は尿管より厚い(特に憩室内)にも関わらず、それらは尿管と形態学的に同様であった。導管の2層コンパートメント部が左および右尿管-導管接合部から尾方に突出するに従い、憩室が出現した。尿路上皮は典型的に、軽度に空胞化され変動する厚さを持つ外観であった。尿路上皮の厚さは(特に大型の憩室内で)最小限から中度漸先形とさまざまであり、また軽度の過形成が見られた。
尿路上皮は、被験動物の5/7の尿管-導管接合部(UCJ、図44のセクション14および/または16)に見られた(表4.19)、群1の被験動物1頭(被験動物 1)、群2の被験動物1頭(被験動物 4)、群3の被験動物3頭(被験動物5、6、および7)。尿路上皮は被験動物の1/7において、上方部および中部に見られた(図44のセクション6および/または10、図44のセクション7および/または11)、群2の被験動物1頭(被験動物4)。平滑筋は、被験動物の4/7の尿管-導管接合部(UCJ、図44のセクション14および/または16)に見られた、群1の被験動物1頭(被験動物1)、群2の被験動物1頭(被験動物4)、群3の被験動物2頭(被験動物5、および6)。平滑筋は被験動物の1/7において、上方部および中部に見られた(図44のセクション6および/または10、図44のセクション7および/または11)、群2の被験動物1頭(被験動物4)。
尿路様組織再生は、移植後の時間に依存していた。予定のと殺まで生存した被験動物1頭(群2、被験動物4、83日)については、尿路上皮および平滑筋がUCJ、導管の上方部および中部に見られた。
以下の表4.19に、UCJ、上方部導管、中部導管における尿路上皮および平滑筋の発生率を示した(群1 = 足場のみ、群2 = 血液由来SMC構造体、群3 = 脂肪由来SMC構造体)。
導管尾方部。移植の尾方端が腹膜被覆内を自由に浮遊して、導管からアトリウムへの移行を剖検で定義することを困難にしたため、導管からアトリウムへの移行ポイントは被験動物間で異なる。セクション8および12(尾方導管と推定、図44)の典型的な組成は、有機コラーゲンと関連線維芽細胞および/または筋線維芽細胞であった。コラーゲン様壁に対して内側でかつ内腔に最も近い層には 組成密度の低いコラーゲン、毛細血管、少数のリンパ球とマクロファージを伴う豊富な好中球からなる、慢性活性炎症が見られた。炎症に対して内側の内腔は多くの場合、退化または壊死した炎症細胞(主に好中球)および混合細菌コロニーを伴う細胞質細片からなるデトリタスで満たされていた。ブラウン‐ホップス・グラム染色により、細菌コロニーはグラム陽性およびグラム陰性の両方を示した。グラム陽性菌のほとんどは球菌であったが、球状および棒状両方のグラム陰性菌およびグラム陽性菌が観察された。足場のみの被験動物(群1)では、片側尿管付近での最小限の再生のみが見られた。残りの導管体については、ほとんどがコラーゲン繊維質と最小限の線維芽細胞でのみ構成されていた。構造体を受けた被験動物(群2および3)において、再生はより広域である傾向があった。また導管のその他の部分において、当該壁はコラーゲン、線維芽細胞、その他の紡錘細胞(筋線維芽細胞とミオサイトと推定)の混合から構成されていた。
導管のアトリウムおよびストーマ部分。導管のアトリウム-ストーマ端部(図44のセクション9、13、18)の領域において、当該ストーマ-アトリウム接合部は有機コラーゲンとストーマの真皮の付属器がアトリウム壁を並置する箇所で見ることができた。これらのセクションは、主に扁平上皮と慢性-活性炎症/デトリタスからなっていた。被験動物の3/7において(群2の被験動物3および4、群3の被験動物7)、皮膚の扁平上皮(表皮)がアトリウムを超える近距離の頭側に拡張していた。アトリウムの外部表面は、腹膜由来の密度の低い結合組織で構成されていた。この外部被覆は漿膜層と同等であり、神経、血管、脂肪組織、線維性結合組織の領域(コラーゲン繊維質および線維芽細胞)が含まれていた。導管のアトリウム-ストーマ端部での尿路様組織の再生は、いずれの被験動物においても確認されなかった(図44のセクション9、13、18)。
その他の所見。被験動物の2/7において、当該導管壁内に足場材料が観察された。これは、群3の被験動物5(28日)の導管体のすべてのレベルにおいて観察され、群3の被験動物6(39日)のアトリウム導管接合部のみにおいて観察された。
考察。被験動物は28〜83日生存した。被験動物7頭中1頭は、予定のと殺日まで生存した(群2の動物4、83日間)。7頭中6頭は、予定日より前にと殺した、被験動物5(群3)は、組織病理学的分析のため移植後28日目に選択的に安楽死させた。また5頭は、臨床条件不良のため移植後38日目〜63日目に安楽死させた(群1の被験動物1、群2の被験動物2および3、群3の被験動物6および7)。
導管およびストーマを通る尿流の閉塞が原因で、予定外のと殺を行った被験動物の疾病率は4/6に達した。これらには、47日目に安楽死させた群1の被験動物1、38日目と40日目に安楽死させた群2の被験動物2と3、39日目に安楽死させた群3の被験動物6が含まれる。腹部内蔵が移植を圧迫するブタの腹部底部への被験物の外科的配置、および外部環境および尿内粘液(ブタにおいて正常)によるデトリタスの堆積を生じた腹膜を使用しての導管-皮膚へと繋がるアトリウムセグメントの生成という複合的原因により、閉塞が引き起こされた。本四肢動物モデルに特有の関連術後合併症として以下が挙げられる:(i)潜在的瘻孔形成につながる腹部癒着、および(ii)腹部臓器との関連で配置する被験物の位置。癒着臓器が腸である場合、癒着の発生点はアトリウム壁であるため、そこで腸の癒着部分の筋層が縮小する、また侵食されることが多く見られた。被験物は腹膜に被覆された前腹部に留置され、尿管から皮膚表面への尿路導管を形成した。当該被験物は尿管に向けて上方端部を固定したが、尾方端部(腹膜が腹壁を通って皮膚表面に出る管を形成する場所)を被覆している腹膜内を自由に浮遊した。平滑筋および/または尿路上皮の形成は、被験動物の5/7の導管-尿管接合部付近、および予定のと殺まで生存した被験動物1頭(群2、被験動物4、83日)の導管の上方端部(移植済み被験物が腹膜被覆内にある場所)で起こった。導管の中部および尾方部は、尿路上皮被覆を伴わない線維性結合組織壁で構成されていた(群2の被験動物 4を除く。当該被験動物では導管中部において尿路上皮および平滑筋が観察された)。尿路様組織の再生は早くは28日目から観察され、選択的に安楽死させた被験動物5(群3、脂肪由来SMC)において、尿路上皮、固有層、尿管導管接合部(UCJ)の平滑筋束の存在が確認された。移植の尿管端部の再生プロセスは、構造体移植を受けた被験動物(群2および3)の間で比較可能な尿路様組織形成をもたらした。構造体群(群2および3)における尿路様組織再生は、被験動物の移植後の生存期間により影響を受けた。予定のと殺まで生存した1頭の被験動物(群2の被験動物4、83日)には、ウイルス性感染が検出されたにの関わらず、当該導管のUCJ、上方および中部に尿路上皮および平滑筋が見られた。しかしながら、腹膜のみのアトリウムは尿路様組織再生を支持するのに十分ではなかった。またアトリウム内で形成された組織は、尿路上皮粘膜を伴わない線維性結合組織で構成される壁を有していた。移植の尾方端が腹膜被覆内を自由に浮遊して、導管からアトリウムへの移行を剖検で定義することを困難にしたため、導管からアトリウムへの移行ポイントは被験動物間で異なる。セクション8および12(尾方導管と推定、図44)の典型的な組成は、有機コラーゲンと関連線維芽細胞および/または筋線維芽細胞であった。細胞質構造体を伴わない腹膜導管は尿路様組織再生には不十分であることが明らかとなったが、当該腹膜はNUC移植への血管新生の供給源として機能する。
結論。
尿路様組織の再生は早くは28日目から観察され、尿路上皮、固有層、尿管導管接合部の平滑筋束の存在が確認された(被験動物5、脂肪由来SMC)。
ウイルス性感染および動物モデルによる合併症にも関わらず、構造体(血液または脂肪から生成されたSMCを播種した足場)の移植(順に群2および3)により、粘膜および平滑筋層からなる尿路様組織壁を持つ導管の形成が得られた。
構造体群(群2および3)における尿路様組織再生の程度は、被験動物の移植後の生存期間により影響を受けた。予定のと殺まで生存しかつPCV-2に感染していた被験動物1頭(群2、被験動物4、83日)については、尿路上皮および平滑筋がUCJ、導管の上方部および中部に見られた。
足場が血液由来または脂肪由来のSMCとともに播種された場合(順に群2および3)、再生プロセスにおける明白な差異は観察されなかった。これにより、再生促進におけるSMCの由来間の等価性が示唆される。
動物モデルの解剖学的構造が原因で、合併症が認められる事態となった(すなわち、腹部における被験物の位置、腹膜を利用したアトリウム形成、癒着や瘻孔形成を伴う腹部内臓による被験物の圧迫、後の閉塞につながるデトリタス堆積)。
PCV-2感染は被験動物の3/7で確認された。PCV-2に感染した被験動物のうち2頭に対して、予定外の剖検を行った。外科的移植の部位および内腔を圧迫する腹部内臓が原因であった尿流の閉塞により、4/6の予定外のと殺が実施された。被験動物1頭(群3の被験動物5)は28日目に、組織病理学的評価のため選択的に安楽死させた。
実施例5 − ブタモデルにおける移植された新尿路導管構造体の評価
本研究は、膀胱、脂肪、血液から生成された自己平滑筋細胞(SMC)で播種した新尿路導管の安全性と機能性の評価を目的とした。また、(SMCとともに播種しない)足場のみの治療についても評価した。
方法、新尿路導管(NUC)被験物は、不織のポリグリコール酸(PGA)フェルトおよび自己平滑筋細胞(SMC)を伴うまたは伴わないポリ(乳-コ-グリコール酸)ポリマー(PLGA)からなる足場で構成された。他に指定がない限り、本実施例で従うプロトコルは原則的に、実施例3で従ったプロトコルと同一である。
本研究はゲッティンゲンミニブタ32頭(雌16頭、雄16頭)からなり、8頭づつの4 群へと分け(1群につき雄4頭と雌4頭)、4種類の被験物のうちの1つを播種するよう割当てた。膀胱、脂肪組織、静脈血検体の生検を、被験物移植の6〜10週間前に群1、2、3(構造体)の被験動物から採取した。膀胱、脂肪、血液から生成されたSMCを播種した被験物を、順に群1、2、3の被験動物に移植した。群4の被験動物には生検を実施せず、足場のみの被験物を移植した。群1〜3の被験動物は2つの外科的処置(生検と被験物移植)を受け、群 4の被験動物は1つの外科的処置(被験物移植)を受けた。被験物は0日目にすべての被験動物(群1〜4)に対して、膀胱の切除(根治的膀胱切除術)および被験物流入端部への尿管の転換により、外科的に移植した。被験物は、皮膚ストーマからの外気に直接暴露することのない腹内である腹腔の前底部に留置した。当該皮膚ストーマについては、正中線から剣状突起付近の右上腹部に向けて中を空にした。脈管元を提供し、液体が漏れないようにし、また流出皮膚ストーマに尿を導くよう、腹膜で被験物の周りを覆った。当該腹膜被覆を、被験物(腹腔内窩にある)の尾方端部を超えるよう約5〜7cm拡張して、腹壁を通って皮膚表面へと、尿流出のための管路であり本明細書内で「アトリウム」と呼ばれる構造を形成した。指定された時点で血液および尿検体を採取・分析し結果を記録した。移植、尿管、腎臓の画像化(蛍光透視法、超音波検査および/または内視鏡検査)を、研究過程の指定された時点で行った。また画像化は、観察される臨床的症候を受けて必要に応じて行った。
当該腹腔を開き、当該導管(構造体または足場のみの被験物の移植の所産)を可視化して、被験動物施設で自然位でデジタル写真撮影した。当該導管を、皮膚ストーマ、腎臓、尿管とともに切除した。当該尿管を測定し、その後吻合から3〜4cm離して横断切開して、当該導管から分離した。腎臓から皮膚ストーマ、局所リンパ節、その他肉眼的に明らかな病変まで、全尿路の代表的な組織検体を採取した。すべての組織検体を24〜48時間、組織学的処理および評価のため、10%の中性緩衝ホルマリン(NBF)内に留置した。固定後に、組織を定常的にマイクロスライドへと加工し、ヘマトキシリンとエオシン(H&E)およびマッソンの三重染色法で染色した。スライドを顕微鏡下で評価した。
結果
死亡率、根治手術中に、被験動物30(群4)の尿管に穿孔をきたした。したがって、被験物の移植を回避した。当該被験動物を0日目に安楽死させ補充を行わなかったため、被験物を移植した被験動物合計数N(構造体または足場のみ)は31に減少し、群4のNは7頭となった。その他のすべての被験動物への被験物の移植およびは術後の回復は順調であった。被験動物は移植後、6〜84日生存した。被験動物24頭に対して予定外のと殺を行い、被験動物7頭が予定のと殺まで生存した。
構造体および足場のみの治療群の安全性に関連する所見、術後の臨床観察所見は、群を問わず同様であった。最もよく見られたものとして、ストーマ流出障害(31/31頭)、食欲不振(30/31頭)、軟便(23/31頭)、体重減少(21/31頭)が挙げられる。生存中の臨床観察中に、PCV 2感染と一致する皮膚病変が観察された。予定外にと殺された被験動物24頭中12頭に、1つ以上の病変が生じ、PCV-2感染と関連があるブタ皮膚炎ネフロパシー症候群(PDNS)に帰属する病理学的特徴と一致していた。PCV-2の症状は被験物とは無関係な疾病率の顕著な原因であると考えられるため、PCV-2に感染した被験動物については結果の節で議論しない。すべての被験動物の入手可能なデータを取得した(データ未表示)。以下のいずれかが認められた被験動物は「PCV-2感染」として分類した:1)臨床的に観察された紫色の皮膚変色、2)微視的な血管炎または腎臓、皮膚、または肺に影響を与える血管炎/血管周囲炎、3)尿細管壊死/流体/キャスティング/糸球体腎炎の腎臓所見、または尿細管上皮細胞のウイルス性封入体、4)1、2、または3が見られる場合の腰静脈リンパ節におけるリンパ球枯渇。
これらの基準により、予定外の剖検を行った被験動物24頭中12頭のブタPCV-2感染を確認した、群1の5/8頭、群2の4/8頭、群3の2/8頭、群4の1/7頭。すべての被験動物における重要な臨床的観察として、アトリウムの、ストーマの、又はステント細片堆積を伴う/伴わない尿流出の間欠的閉塞が挙げられる。閉塞は、被験物が四肢動物の腹腔前部に配置されていること、および解剖学的関連により促進されたと思われる。つまり、のしかかる腹部臓器の重みで、導管の閉塞、癒着や瘻孔の形成、腎臓合併症(例、膨張、炎症、および/または尿管や腎臓の感染)が引き起こされたと見なされる。
被験物の外科的配置は、すべての被験動物において同様であった。したがって閉塞関連合併症は、すべての群において同様の病理学的メカニズムを有した(すなわち、四肢動物解剖学的構造が原因の腹部内臓の導管上への圧迫、またはストーマ内のデトリタス堆積)。閉塞により、水尿管症、水腎、腎盂腎炎、癒着、瘻孔形成からなる重要な安全性についての所見が得られた。水尿管症および水腎は、尿流出の間欠的完全閉塞に関連していた。腎盂腎炎は、細片やデトリタスの堆積および便や皮膚によるストーマの細菌汚染の二次性病変であると見なされ、足場のみの群(群4)で最もよく見られた。被験物の外科的位置および群1〜3の被験動物への複数の手術(生検および被験物移植)により、腹部および骨盤内の癒着の形成が促進された。デブリードマンプロトコル(鎮静させた被験動物における鉗子の使用)、尿流閉塞、ウイルス性感染、腸管の導管への癒着が、腸-導管瘻孔の形成の原因となった。
再生に関する所見、被験物の外科的移植後に発生した導管は、尿管(上方端部)から移植およびアトリウムを通って前腹部皮膚のストーマ開口部へと走行する中央内腔で構成される。当該導管壁の組織学的外観は、導管内の検体の位置および被験動物の生存期間により異なる。尿路様組織再生は、SMCの由来(すなわち膀胱、脂肪、血液)に関わらず、構造体(群1〜3)被験物の移植後に、線維血管間質を伴う粘膜、粘膜下層、平滑筋が観察されることを特徴とする。下層の平滑筋を伴う連続的尿路上皮からなる尿路組織部位が、構造体被験物を移植した被験動物のほとんどにおいて観察された。それとは対照的に、修復プロセスは、足場のみの被験物の移植後に観察され、わずかの平滑筋を伴う線維血管間質により支持される異常性粘膜を特徴とした。構造体群における尿路様組織再生は、被験動物の移植後の生存期間により影響を受けた。
結論、被験動物31頭中7頭(23%)が本研究を完了した。PCV-2 ウイルス感染、および外科的移植の部位および内腔を圧迫する腹部内臓が原因であった尿流の一部〜完全な閉塞により、23/24の予定外のと殺が実施された。生存中外科的処置関連の合併症により、1/24の予定外のと殺が実施された。当該導管の間欠的閉塞と関連がある安全性についての所見は、水腎、水尿管症、腎盂腎炎、癒着、瘻孔であった。
あらゆる構造体被験物から生成された導管の複数部位において、治癒および再生が観察された。その一方で、足場のみの被験物から生成された導管において、治癒および修復が観察され、構造体移植により、粘膜および平滑筋層からなる尿路様組織壁を持つ導管の形成が得られることが実証された。
構造体被験物(再生)と足場のみの被験物(修復)との間の治癒の差異が、足場のみの被験物とともに観察された重要な腎臓所見の高い発生率の原因となり、足場のみの被験物はさらなる発生に不適当であったという判定につながった。
再生プロセスおよび構造体被験物間の転帰における差異は、観察されなかった。これにより、再生促進におけるSMCの由来間の等価性が示唆される。
本研究は、膀胱、脂肪、血液から生成された自己平滑筋細胞(SMC)とともに播種した新尿路導管の安全性と機能性の判定を目的とした。また、(SMCとともに播種しない)足場のみの治療についても評価した。膀胱の外科的切除(膀胱全摘出術)および尿管の被験物流入端部への再移植の後に、尿路様組織粘膜および壁からなる導管様構造を再生することを目標とした。本研究の生存フェーズは約5ヶ月持続した。
実験デザイン。
概要。ゲティンゲンミニブタ32頭を4群(4/性別/群)に分けた。群1〜3については被験物(構造体)の移植の6〜10週間前に外科的生検処置を行って隔離し、構造体構築の必要に応じてSMC の特徴付けおよび拡張を行った。構造体または足場のみの被験物(群1〜4)を0日目に外科的に移植した。膀胱切除(根治的切除)の外科的手術後に尿管は被験物の流入端部へと転換された。被験物は、皮膚ストーマからの外気に直接暴露することのない腹内である腹腔の前底部に留置した。当該皮膚ストーマについては、正中線から剣状突起付近の右上腹部に向けて中を空にした。脈管元を提供し、液体が漏れないようにし、また流出皮膚ストーマに尿を導くよう、腹膜で被験物の周りを覆った。当該腹膜被覆を、被験物(腹腔内窩にある)の尾方端部を超えるよう腹壁を通って皮膚表面へと拡張して、本明細書内で「アトリウム」と呼ばれる構造を形成した。この被験物は細長い筒状で、不織のポリグリコール酸(PGA)フェルトおよびポリ(乳-コ-グリコール酸)ポリマー(PLGA)で構成され、自己SMCを伴う(構造体)または伴わない(足場のみ)。群1には膀胱由来の自己組織SMCを播種した構造体を移植し、群2には脂肪由来の自己組織SMCを播種した構造体を移植し、群3には、血液由来の自己組織SMCを播種した構造体を移植し、群4には足場のみを移植した。表5.1は研究計画の概要である。
表5.2 は研究概要を表す(TA = 被験物、NA = 該当なし、M = 雄F = 雌 N = いいえ、Y = はい、a − 死体動物、b − 麻酔により死亡の動物、c − 手術後通るようになった尿管、動物の代替は不可、d- 研究における予備動物の利用不可)。
血液と尿の検体を指定された日時に採取、分析、記録した。
移植物、尿管、腎臓の画像化(蛍光透視法、超音波検査および/または内視鏡検査)を、研究過程の指定された時点で行った。また画像化は、観察される臨床的症候を受けて必要に応じて行った。被験動物は、移植後6〜84日間生存した。剖検時に腹腔を開き、導管を腎臓および尿管とともに除去する前に、導管が見えるようにして写真を撮影した。当該尿管の長さと幅を測定し、その後吻合から3〜4cm離して横断切開して、当該導管から単離された。{腎臓、尿管、リンパ節、その他の病変の代表的な部分を肉眼観察し、収集した。すべての組織検体を、組織学的処理および評価のため、10%の中性緩衝ホルマリン(NBF)内に留置した。固定後に、組織を定常的にマイクロスライドへと加工し、ヘマトキシリンとエオシン(H&E)およびマッソンの三重染色法で染色した。当該スライドは、委員会認定の病理学者によって評価された。
病理学報告例を下記に表示する。
材料および方法。
被験物
当該被験物は、i)自己膀胱由来のブタ平滑筋細胞を播種した合成ラクチド/グリコリドポリマーからなる導管状の足場(24.9 x 106細胞、40.7 x 106細胞、29 x 106細胞、24.25 x 106細胞、または35.7 x 106細胞)、ii)自己血液由来のブタ平滑筋細胞を播種した合成ラクチド/グリコリドポリマーからなる導管状の足場 (40.7 x 106細胞または29 x 106細胞)、iii)自己脂肪由来のブタ平滑筋細胞を播種した合成ラクチド/グリコリドポリマーからなる導管状の足場(24 x 106細胞、40 x 106細胞、33.1 x 106細胞、または29 x 106細胞)、およびiii)いかなる細胞も播種していない合成ラクチド/グリコリドポリマーからなる導管状の足場であった。
2008年5月13日にゲティンゲンミニブタ32頭(雌16頭、雄16頭)をマーシャルファーム(ニューヨーク州ノースローズ)から提供を受けた。これらの対象動物は生後7ヶ月であった。追加として3頭のミニブタ(雌2頭と雄1頭)を同ファームから提供を受けた。追加のブタは生後6ヶ月で、予備として取得した。受領に際して、傷病についての検査完了の承諾を得た。最初の検査後、最初の積荷で受領した動物は最初の受取り日から数え6日の検疫期間を置き、身体検査の後に研究用として解放された。予備の動物については、4日の検疫期間を置いたが、本研究のために使用しなかった。
最初の群割当ては、平均群重量に基づいて行った。群1〜3については割当を変更して、収集された組織と末梢血からの体外細胞拡大に基づいて行った。
外科的処置。
生検/組織収集、被験動物群1〜3(構造体被験物)については、膀胱、脂肪組織、および静脈血の生検を、0日目(移植手順)の6〜10週前に取得した。被験動物群4動物(足場のみの被験物)は、これらの処置を受けなかった。 組織生検手順として、臍孔のすぐ尾方から始まる腹部を正中線切開した。可能である場合、柔軟皮下脂肪組織(結合組織なし)20〜50gの脂肪生検を、本正中線アクセス点から採取した。膀胱生検(およそ2.5cmx 2.5cm)は、膀胱の先端ドームから収集した。採取した組織検体を、個別かつ無菌で組織培地とともに容器へと移した。膀胱の欠陥は、吸収性の縫合材料を使用して最低2層として閉合した。当該腹部切開は、適切なサイズの吸収性縫合糸材料で層状に閉合した。
静脈血の10mlのアリコートを各動物につき、およそ6つづつ、ヘパリン化ヴァキュテナーに収集した。次に、血液のバイアルを、氷嚢で冷した容器(〜8°C)に梱包した。
被験物の移植。正中線腹部切開を臍孔の上方5cmで行い、約15cm尾方に拡張した。腹膜を特定し、その後腹部スペースから慎重に分割した。組織が無傷であること、および血管新生を確実にするため、注意を払った。
その後膀胱を露出し、尿を慎重に排出させ、腹腔に尿が入ってないことを確認した。膀胱に分布する動脈および静脈を特定し結紮した。尿管を特定し、ステントを留置し、膀胱から慎重に横に切開した。切断された尿道を縫合した。その後、膀胱を切除した。左尿管を、周辺後腹膜筋膜から慎重に分離させ、被験物の右側に達するのに十分な可動性が得られるまで頭側に伸張した。右尿管を、被験物の流入(上方)端部に届くように切開して自由にした。尿管は、3-0 Vicrylを用いてシンプルな連続的パターンで、被験物上に縫合した。脈管元を提供し、液体が漏れないようにし、また流出皮膚ストーマに尿を導くよう、腹膜で被験物の周りを覆った。腹壁を通って皮膚表面へ達する尿の流出のための経路を形成するため、被験物の尾方端部(腹腔内窩にある)まで約5〜7cm拡張した。腹膜を3-0 Vicryl で縫合した。
ストーマおよびストーマポートの処置。乳腺の横にある前腹側壁に、ストーマを形成した。構造体なしあるいは足場のみの腹部アトリウム部を体外に露出し、皮膚へと縫合した。外科用接着剤を縫合線に沿った腹膜が体壁から抜け出る部位に塗布した。ステントに接合した当該縫合糸は、後に除去できるようストーマを通して体外に露出させた。ストーマポート(TRACOER(登録商標))を設置した。移植後の約1〜3カ月後に、研究特有のストーマポートを残りの被験動物で使用した。両方の種類について、ストーマポートを固定した後、腹部切開を非吸収性Prolene縫合糸で閉じた。皮膚を通常通りの方法で縫合した。
ステントの除去。移植後5〜14日からのさまざまな時点で、前述通りに被験動物に麻酔を実施し、尿管ステントを除去した。
術後管理。
ストーマポート。移植後の2週間、ストーマポートの開存性(尿ドレナージ)を毎日評価した。尿が検査により尿滴下が見られない場合、ストーマポートを生理食塩水で流水洗浄し開存性を評価した。
切開部位。切開部位もまた、離開、異常分泌物、異臭、炎症、その他の異変について移植後2週間(または治癒するまで)毎日検査を行った。
デブリードマン、デトリタス/乾酪性物質が導管に堆積しており、尿の自由な放出が妨げられる可能性があったため、デブリードマン術を開始した。被験動物の検査期間は移植後35〜52日に達した。デブリードマンについては記述通りに、被験動物に鎮痛剤を投与した。デトリタスがストーマ開口部より大きかった場合、ストーマ上で小規模の切開を行いデブリードマンを促進した。デトリタスを視覚的に特定し、鉗子でつかみ緩やかに曳引した。目に見えるデトリタスをすべて除去してから、ストーマを生理食塩水で流水洗浄した。ストーマ切開を縫合して閉じ、新しい研究特有のストーマポートを被験動物に挿入し、固定した。被験動物は、プロトコルに従った回復が可能であった。
頚静脈ポート。頚静脈ポートカテーテルを注入用食塩水で流水洗浄し、開存性を確認するため4週まで毎週、へパリンロック(100のU/mL、〜2-3mL)した。
画像化
静脈性腎盂撮影法。8週および剖検前に、蛍光透視法のガイダンスに従い下腎動脈に直接X線造影剤を噴射し、腎盂像を撮像した。処置のため被験動物に鎮静剤を投与し、大腿動脈あるいは末梢静脈から注入した。
Loopography(逆行性腎盂撮影法)。被験動物5頭 [群2の被験動物9 (33日)および被験動物10(30日)、群3の被験動物17 (48日)、群4の被験動物27 (20日)および被験動物29 (41日)] において、瘻孔の有無を確認するため逆行性腎盂撮影を行った。これらの被験動物のストーマの腹部部分を洗浄、すすぎ、乾燥させ、透視画像の準備を行った。A 3:1 生理食塩水の混合物:造影剤をストーマを介して導管に注入した。その後、蛍光透視像を撮像した。
超音波検査。導管および腎臓の超音波診断を、2週、6週、10週、および剖検前に基線(腎臓のみ)で行なった。本手術のために被験動物に麻酔を施した。
観察。
体重。生検前(群1〜3)、移植手術前(群1〜4)、剖検前に(群1〜4)に体重を量り、記録した。
臨床病理学的検査。
血液。血液学分析(CBC)凝析、血液生化学検査パラメーターの分析用血液検体を生検前(群1〜3)、移植手術前(群4)、頚静脈内の内在のポートを介した剖検前(群1〜4)に1週、2週、3週、4週および8週にそれぞれ収集した。血液ガス分析用血液検体は、生検(群1〜3)および移植前手術(群4)で頚静脈または大腿静脈から収集した。
実施例3での説明の通り、血液分析、凝析、血液生化学検査および血液ガス分析を実施した。
追加分析。安楽死の直前に、ヘパリン添加血液および血清試料を、被験動物23、18、12、6、1、15から収集した。10-mLの全血試料をヘパリン・チューブに収集した。追加の血液を2本の4.0-mL血清分離チューブに収集した。また、上述通りに、血清を分離した。
尿。予定された時点(生検前 [群1〜3]、移植前手術 [群4]、および剖検前)において、尿検体収集のために2つの方法を使用した:カテーテル挿入または試験管キャッチ法。使用した方法を記録した。所望の検体サイズは少なくとも3mlとし、5mlの無菌チューブ内の3つのアリコートへと分割した。検体収集が困難であった場合、定量検体は前例を取った。実施例3での説明の通り、検体を定性および定量パラメータで検査した。
結果。
生検。膀胱組織および血液検体を、群1、2、3および予備の全被験動物からプロトコルに従って採取した。すべての雄被験動物から採取した脂肪組織生検は、20グラムというプロトコルで定義する最小量未満であった。しかしながら、収集した組織から十分なSMCが拡張し、群2に割り当てた雄用構造体を産生した。3頭の被験動物3頭(被験動物22および23、ならびに予備の被験動物34)からは、脂肪組織を得ることができなかった。被験動物22および23を群3に割り当てた。脂肪の生検標本のそれぞれの重量を表5.2に示す。
移植。2頭を除くすべての被験動物に移植を行った。被験動物30(雄、群4)は解剖学的に尿管が小規模で、被験物移植の際にステント設置を試みたところ穿孔をきたした。当該動物を安楽死させ、交換はしなかった。また被験動物29(雄、群4)についても、被験物移植において尿管に穿孔をきたした。当該被験動物の移植は成功し、外科的処置から生存した。
ステントの除去。各ステント除去データは表5.2に示されている。尿管ステントを移植後5〜14日目に除去した。
死亡率。被験物を移植した被験動物31頭のそれぞれの移植後からの生存日および最終的処理日は、表5.2 (上方) および表5.5 (下方) に表示されている。尿管穿孔のため、被験動物30(群4)には被験物を移植しなかった。当該被験動物を安楽死させ交換はしなかったため、被験動物の合計Nが31頭に減少し、群4のNは7頭となった。被験動物24頭に対して予定外のと殺を行い、被験動物7頭が予定のと殺まで生存した。24の予定外の死亡の素因 (死亡率分類) については、表5.3の治療群に要約される。
PCV-2関連の死亡率生存中の臨床観察中に、PCV 2感染と一致する皮膚病変が観察された。CV-2の症状は被験物とは無関係な疾病率の顕著な原因であると考えられるため、PCV-2に感染した被験動物については結果の節で議論しない。
非PCV-2関連死亡率。予定外にと殺した合計12頭は、PCV-2ウイルス感染に関係はなかった(生存中手術の関係での死亡1頭も含む)。PCV-2感染に起因しない12の予定外の死亡は群1に1頭(被験動物8)、群2に3頭 (被験動物11、9および12)、群3に4頭 (被験動物24、21、22および17)、群4に4頭 (動物32、31、29および27) 含まれていた。被験動物の臨床的衰退における重要な事象は、ストーマによる、尿および細胞破片の流出が上手く行かなかったことにある。過度の腹部器官の重みが、導管閉鎖、付着および瘻孔形成、および腎の合併症(例、膨張、炎症、および/または尿管や腎臓の感染)を引き起こした前腹腔部への被験物の配置により、尿流出の異常が促進されたと見なされた。被験物の外科的配置は、すべての被験動物において同様であった。したがって閉塞関連合併症は、すべての群において同様の病理学的メカニズムを有した(すなわち四肢動物解剖学的構造が原因の腹部内臓の導管上への圧迫)。
研究結果に基づいた予定外の死亡の分布。24の予定外の死亡の根本的な研究結果の要約は、表5.4に示される。
被験物を移植した各被験動物の死亡カテゴリーを、表5.5に表示した(S = 予定のと殺、FD = 発見時死亡、E = 臨床症状不良による安楽死、A = 術後の処置関連合併症によるの研究過程での死、SMC = 平滑筋細胞、NA = 該当なし、F = 雌、M = 雄、P=PCV-2関連の死亡、Non-P = PCV-2非関連の死亡、SURV = 予定のと殺まで生存)。
安全性関係の所見。被験物を移植した被験動物31頭のすべての個体および群のデータを取得した(データ未表示)。予定された剖検まで生存した被験動物7頭および12頭のPCV-2非関連の予定外の死に焦点を当てて、考察を行う。データは以下のようにまとめられる、
生存被験動物7頭の臨床健康観察および術後ケア。移植後最初の30日間は、デブリードマンはどの被験動物にも実施しなかった。食欲不振(拒食)が認められ、ストーマポート管理を7頭の被験動物すべて対して行った。軟便(下痢))は7頭の動物のうちの3頭に認められた:群1の2/2(被験動物1)および群3の1/2(被験動物23)。侵襲性外科的処置後において、これらの観察結果は珍しくない(表5.6 - 7頭の生存被験動物の群別の適切な臨床健康観察および術後ケア(移植後30日未満))。
30日目以降(つまり31-84日±5/剖検)に、7頭の動物のうちの4頭の排出物/残骸を除去するためにデブリードマンを行った:群1の1/2(被験動物1)、群2の1/1(動物15)、および群3の2/2(被験動物23)。*足場が挿入された被験動物に(群4)デブリードマン術を行わなかった。*食欲不振(拒食)は7頭の被験動物のうちの4頭に認められた:群1の1/2(被験動物1)、群2の1/1(被験動物15)、群3の1/2(被験動物18)および、群4の1/2(被験動物26)。ストーマポート管理は7頭の被験動物すべてに行った。軟便(下痢)は7頭の被験動物のうちの5頭で観察された:群1の2/2(被験動物1および6)、群2の1/1(被験動物15)、群3の2/2(被験動物23および18)(表5.7 - 7頭の生存被験動物の群別の適切な臨床健康観察および術後ケア、(移植後30日超))を参照)。
PCV-2非関連の予定外の死12件の臨床健康観察および術後ケア。移植後最初の30日間は、デブリードマンはどの被験動物にも実施しなかった。食欲不振(拒食)は12頭の被験動物のうちの11頭に認められた:群1の1/1(被験動物番号8)、群2の3/3(被験動物番号9、11、12)、群3の4/4(被験動物番号17、21、24および22)、および群4の3/4(動物番号27、32および29)。ストーマポート管理は12頭の被験動物すべてに対して行った。軟便(下痢)は12頭の被験動物のうちの5頭で観察された:群1の1/1(動物番号8))、群2の1/3(動物番号11)、および群3の3/4(動物番号21、22、24)。侵襲性外科的処置後において、これらの観察結果は珍しくない(表5.8を参照)。
2 匹の被験動物 (グループ 1 の被験動物番号 8 (9日目)および グループ 4 の被験動物番号 27番 (20 日目))を、30 日間の前に安楽死させた。2 匹の被験動物、グループ4 の被験動物番号 32およびグループ2の被験動物番号9を、それぞれ31日目、33日目に安楽死させた。ここには30日以上実験を実施した被験動物が含まれる。30日後 (例、日 31-84±5/生検)、細片や排出物を除去するために、12匹中5匹の被験動物にデブリードマンが実施された。グループ 2 に属する3匹中2匹(被験動物番号12および11)、さらにグループ3の4匹中3匹 (被験動物番号21、22、24)が含まれていた。足場のみを移植した被験動物 (グループ 4)は安楽死させたか、デブリードマン処置の実施前に死亡が確認された。食欲不振(餌を食べない)の動物が、12匹中7匹観察された。そのなかでグループ2の動物は3匹中1匹 (被験動物番号11)、さらに 4 匹中4匹はグループ 3(被験動物番号17、21、22、24) さらにグループ4は4匹中2匹(被験動物番号29および31)であった。ストーマ ポートの維持が12匹中10匹に対して行われた。グループ 2 のうち 3匹中 3匹 (被験動物番号9、11、12)、グループ 3 のうち 4匹中 4 匹 (被験動物番号21、22、17、24)、グループ 4 のうち 4匹中 3 匹 (被験動物番号29、31、32)。12匹中8匹から軟便 (下痢)が確認された。グループ 2 のうち 3匹中 3匹 (被験動物番号9、11、12)、グループ 3 の 4匹中 4 匹 (被験動物番号17、21、22、24)、およびグループ 4 のうち 4匹中 1 匹 (被験動物番号:29)。健康有害に関する所見では、これは閉塞により引き起こされたと考えられた(表 5.9-非 PCV-2で12匹の被験動物グループに関連する臨床健康所見および術後処置「予定外の死亡 (移植後30日超)」)。
生存した 7 匹の被験動物の体重。実験中、7匹すべての被験動物の体重は変動した。これは術後の合併症 (例、閉塞、腹部癒着、瘻孔および腎臓の合併症を導く動物型合併症) が原因である (表 5.12)。各グループにおける被験動物の数は少ないものの、構造体を得たすべての被験動物 (グループ 1-3) が生検前から術前にかけて体重が増大した。グループ 3 を除くすべてのグループは、移植時から解剖を行うまでに体重が減少した。
非PCV-2 で予定外に死亡した12匹の被験動物の体重。実験中、12匹すべての被験動物の体重は変動した。これは術後の合併症 (例、閉塞、腹部癒着、瘻孔および腎臓の合併症を導く動物型合併症) が原因である (表 5.13)。構造体を受けたすべての被験動物 (グループ 1-3) が、生検前から術前にかけて体重が増大した。すべてのグループは、移植時から解剖を行うまでに体重が減少した。グループ 1 は体重の減少が最も大きく (1匹)、グループ 2 は体重の減少が最も少なかった。(表 5.13 − 非PCV-2 で予定外に死亡した 12 匹の被験動物の平均体重。NA=該当なし)。
臨床病理学。各動物の臨床病理学データ(血液学的検査 (CBC)、凝固検査、血清生化学検査、血液ガス検査、尿検査)が取得された。
すべてのグループのデータにおいて増減が確認された。一般的に、構造体移植を行った動物 (グループ 1-3) のプロファイルは、大きさは類似していた。しかし足場のみのグループ (グループ 4) は、より深刻な腎臓変質を引き起こすほどの血清の変化が見られた。
生存した 7 匹の被験動物および非 PCV-2 で予定外に「死亡」した 12 匹の被験動物の血液ガス データ19匹すべての被験動物の血液ガス データは、すべて正常の範囲値だった。
「生存した 7 匹の被験動物および非 PCV-2 の予定外に死亡した 12 匹の被験動物の尿検査」。剖検予定のある7匹の生存した被験動物は、尿中タンパク質の平均値はすべてのグループで0-100mg/dLと通常値を超えなかった。しかし、足場のみのグループ (グループ 4)は剖検で最大数値を示した (表 5.87)。非 PCV-2 の予定外に死亡した12匹の被験動物に対するデータが不十分であったことから、比較を実施することはできなかった。表 5.87 では「生存した7匹の被験動物グループの尿中タンパク質の平均値」が示されている。
画像化。静脈性腎盂撮影 (IVP) およびloopograms(逆行性腎盂撮影法)が各被験動物に実施された。尿管および腎臓の一方または両方の静脈性腎盂撮影に不一致があった。いくつかのケースでは、腎臓、尿管、導管は目に見える状態であった (X線不透過性)。一方、別のケースではほとんど、あるいは全く見えない場合もあった。実験の性質上、希薄溶液を用いなければならず、そのため各部位の視覚化が制限された。
7匹の生存した被験動物のIVP。7匹中6匹 (被験動物番号1、6、15、23、25、26)において、8週目での腎盂X線像が可能であった。8週目では、番号 18 の被験動物(グループ3)の腎盂X線像は (過失により) 得ることができなかった。しかしこのことにより番号18の被験動物(グループ3)の腎盂X線像が一枚失われることの影響は、それほど大きくはない。安楽死前の腎盂X線像が、7匹中7匹すべてで実施された。
代表的な腎盂X線像イメージが提供される。図 49 は、8週目 (A) および生検前 (B) のグループ 1 に属する 6 匹の被験動物に対する腎盂X線像を示している。図 50 は、8週目 (A) および生検前 (B) のグループ 2 に属する 15 匹の被験動物に対する腎盂X線像を示している。図 51 は5週目のグループ 2 に属する9匹の被験動物に対する腎盂X線像を示している(loopogram: 腸の図は瘻孔を示している)。図 52 は7週目のグループ 3 に属する17匹の被験動物に対する腎盂X線像を示している(loopogram: 腸の図は瘻孔を示している)。図 53 は8週目のグループ 3 に属する21匹の被験動物に対する腎盂X線像 (両腎臓、各尿管、導管を図示)を示している。図 54 は8週目のグループ 2 に属する24匹の被験動物に対する腎盂X線像 (一つの腎臓、尿管が確認可能) を示している図 55 は、グループ 2 に属する 23 匹の被験動物に対する8 週目(A)での腎盂X線像および解剖前のストーマ ポートの導管 (B) を示している。図 56 は、グループ 4 に属する 25 匹の被験動物に対する8 週目(A)および解剖前(B)の腎盂X線像を示している。図 57 は、グループ 4 に属する 26 匹の被験動物に対する8 週目(A)および解剖前(B)の腎盂X線像を示している。図 58 では4 週目のグループ 4 に属する 29 匹の被験動物に対する、目に見える尿管(A)と、同じく4週目のloopogramの腎盂X線像を示している。
非PCV-2 で予定外に死亡した12匹の被験動物のIVP。これらの被験動物は死亡したため腎盂X線像を取得できなかった。いくつかの生検前の腎盂X線像は、健康障害、導管/腸の瘻孔や早期の安楽死により実行されなかった。
生存した7匹の被験動物の代表的なLoopograms(逆行性腎盂像)は、上記に記されている。7匹の生存した被験動物のうち、1匹から腸導管の瘻孔形成が確認された。3週目に、被験動物番号25に対してLoopogramが実施された。導管に瘻孔がないことが確認された。被験動物はケージに戻され、実験終了まで引き続き利用された。
非 PCV-2 の予定外に死亡した12匹の被験動物に対して実施されたLoopograms (逆行性腎盂像)。非 PCV-2 の予定外に死亡した12匹の被験動物のうち4匹から、腸導管の瘻孔が確認された。Loopograms (逆行性腎盂像)が異なった時点で実施され、グループ 2 の被験動物番号9 (33日目)、グループ 3 の被験動物番号17(48日目)、さらにグループ4の被験動物番号27 (20日目) および 29 (41日目) に対して瘻孔の有無が確認された。これらの動物に対しては、移植処置後 20 日から48日目のあいだに、安楽死または部検が実施された。
「7匹の生存した被験動物に対する超音波検査」各被験動物およびグループ毎の超音波検査のデータが示された。実験期間中に行われた腎臓の超音波検査では、すべての処置グループに対して、表面積(長さ x 幅)が増大している、つまり腎臓の変化(水腎症)があることを知らせる結果が示された。グループの平均値は、右、左の腎臓共に各グループで類似していた。
移植への超音波検査は、すべての構造体 グループ(グループ 1-3)で導管壁の厚さが薄くなっていることを示した。足場のみを移植した被験動物 (グループ 4) は、導管壁の厚さがわずかに増加していることを示した (表 5.89 - 「生存した7匹の被験動物グループ (cm) の導管壁の厚さの平均値」)
実験期間中に行われた腎臓の超音波検査では、すべての処置グループにおいて、腎臓の変化(水腎症)を意味する表面積(長さX幅)の増大が示された。グループ平均値は、右左の腎臓で全グループで時間を通じて類似していた。
移植への超音波検査は、すべての構造体 グループ(グループ 1-3)で導管壁の厚さが薄くなっていることを示した。足場のみを移植した被験動物 (グループ 4) では、厚さがわずかに増加していることを示した。しかし分析を実施するために使用できるデータには限りがあった (表 5.93 - 「生存した7匹の被験動物グループ (cm) の導管壁の厚さの平均値」)。
病理学。病理学報告は、下記の実施例で確認できる。
ウイルス感染および閉塞を原因とする予定外の死亡により、実験中に生存した被験動物の数は、32匹から7匹に減少した。検死を行う対象となる被験動物 (7匹)すべてから癒着が確認され、さらに腸導管の瘻孔が7匹中4匹の被験動物から確認された(実例は以下)。水尿管症および水腎症(一方または両方)がすべての動物から確認され、また7匹中1匹からは腎盂腎炎が見られた。腎盂腎炎を持つ被験動物は、足場のみの処置グループ (グループ 4)であった。非 PCV-2 の予定外に死亡した被験動物 (12匹)のうち、すべての動物から癒着が確認された。また12匹中7匹から(腸導管の)瘻孔が12匹中1匹から (尿管から腸にかけて)瘻孔が確認された。水尿管症および水腎症(一方または両方)が被験動物12匹中8匹から確認され、また12匹中4匹からは腎盂腎炎が見られた。腎盂腎炎を持つ3匹の被験動物は、足場のみの処置グループ (グループ 4)であり、1匹の被験動物は自己血液由来の SMC 処置グループ (グループ 3)であった。予定外の死亡を引き起こした合併症にも関わらず、構造体の移植は、尿路上皮と平滑筋層で構成される組織の再生過程のためのテンプレートとして機能を果たした。再生は尿管端部の移植で最も顕著であった。尾部の移植および導管のアトリウムにある組織には、尿路上皮の内膜のない線維性結合組織で構成された壁があった。尿管端部の移植における再生過程により尿路組織が形成された。これは、構造体 グループ間で比較され、足場のみのグループで顕著にみられる組織回復治療とは異なるものであった。
足場のみの被験物は、結果が通常の尿路組織と一致せず、さらに被験動物に高い割合で両側性の腎臓合併症が見られたことから、今後の開発には適していないことが確認された。構造体 グループで観察された結果は、細胞源を問わず、等しいものであった。
考察。手術後に回復した31匹の被験動物のうち、7匹 (23%、グループ 1、3、4 から各2匹およびグループ 2 から 1 匹) が実験完了まで生存することができた。すべてのグループで肉眼的病変が見られ、そのなかにはウイルス感染の兆候、尿流の間欠的閉塞、導管の破損、排出物の堆積、腹部および骨盤の癒着、瘻孔、水腎症、水尿管症、腎盂腎炎が含まれる。各供給源(グループ1-3、膀胱、脂肪、血液由来の SMC)からのSMCが播種されて行われた構造体移植から、尿路組織再生の証拠が異なる程度で確認された。一方で不完全な尿路組織の回復と、尿路上部の病理が、足場のみ移植されたグループ (グループ 4)で観察された。31 匹の被験動物のうち 12 匹 (39%)が、PCV-2ウイルスに感染した。ウイルス感染は生存した被験動物の数を減らしたが、しかし尿路組織の再生も構造体 グループ (グループ 1-3) で観察された。被験物の外科的処置による置換は、四肢動物が刺激性接触皮膚炎を避けるために最適な排尿を行い、各動物が保護されることを目的として設計された。しかし、この外科的処理により、被験物が腹部臓器を直接覆ってしまい、各臓器の重量と腹部臓器の圧力が導管の間欠的な閉塞を引き起こしてしまった。この四肢動物にのみ実施される外科的処置の置換により、観察された癒着、瘻孔、尿路上部の合併症(尿管または腎臓の膨張、炎症および/または感染症)が引き起こされた可能性がある。しかし、腸閉塞はこの実験では観察されなかった。一般には豚が、開発と術後の癒着防止に関する研究を行うための動物モデルとして使用される。そのため、構造体被験動物 (グループ 1-3) の生検を行う際に腹部を開腹することで、いくつかの癒着が発生することが予期されていた。グループ 1-3 の被験動物はまた、被験物の移植を行うために 2 度目の外科的処置を受けた。そのことで、実質的に癒着の発生リスクが、外科的処置を 1 度だけ受けた (被験物移植のみ)、足場のみの移植を行った被験動物に比較すると上がった。本実験で観察された癒着は、これらの外科的処置により引き起こされたものであると考えられた。
すべての有害所見が、尿路上部の問題 (水尿管症、水腎症、腎盂腎炎) は導管を経由した尿流が間欠的に閉塞されたことが原因であることを示した。本実験で使用した四肢動物の豚から観察された腎盂腎炎は、細胞質細片や排出物の堆積、および糞便や皮膚からのストーマに含まれるバクテリアにより続発すると考えられた。腎盂腎炎は、足場のみの動物 (グループ 4) から最も頻繁に観察された。すべての被験動物に対して外科的処置で実施された被験物の移植と、グループ 1-3 の動物に対して実施された複数の外科的処置 (生検および被験物移植) が、腹部および骨盤の癒着の形成を促進した。さらに、間欠的閉塞、ストーマの保持に使用されたデブリードマン処置 (平静にされた動物から堆積した排出物を取り除くために鉗子を使用)、ウイルス感染、さらに導管への腸管の癒着が、腸の導管における瘻孔形成と、腎臓上部の疾患を引き起こした。予定外の死亡を引き起こした合併症にも関わらず、構造体の移植 (グループ 1-3) は、尿路上皮と平滑筋層で構成される組織の再生過程のためのテンプレートとして機能を果たした。再生は尿管端部の移植で最も顕著であった。導管のアトリウムの組織 (構造体または足場のない腹膜組織のみ) には尿路上皮の内膜のない線維性結合組織で構成された壁があった。つまり腹膜単体では尿路組織の再生の支援は行われなかったことを示している。尿管端部の移植における再生過程により、尿路組織が形成された。これは、構造体 グループ間で比較され、足場のみのグループで顕著にみられる組織回復治療とは異なるものであった。足場のみの被験物は、結果が通常の尿路組織および、瘢痕および/または内腔狭窄に対して感染が起こりやすい線維性結合組織で構成された壁とは一致しなかった。足場のみを移植した動物に対する尿路組織の不完全な形成により、上記で議論された間欠的閉塞が発生し、尿路上部の所見に悪影響を与えた。グループ 4 の動物には、高い割合で両側性の腎臓合併症が見られた。構造体 グループで観察された結果は、細胞源を問わず、等しいものであった。
結論。本研究の目的は、自己血液由来、脂肪から抽出したあるいは血液由来の平滑筋細胞 (SMC) または足場だけ (SMCなしの足場) を播種することにより、新生尿管(NUC)の安全性と機能性を評価することにあった。機能評価の対象は、尿流および尿路組織の再生であった。31 匹中 7 匹 (23%) の動物が本研究で比較された。主要な安全性に関する評価において、31匹中24匹の予定外の死亡は、PCV-2ウイルス感染または導管の間欠的閉塞により、上部尿路に損傷 (水腎症、水尿管症、腎盂腎炎) が起こったことが原因であった。閉塞には、デブリードマンおよびストーマを生理食塩水で洗い流すことで対応した。粘膜、粘膜下層、および線維血管間質がみられる平滑筋によって特徴付けられる再生された尿路組織が、被験物移植の構造体後に SMC 源 (膀胱、脂肪、血液) に関わらず観察された。その一方で、限られた平滑筋の線維血管間質に由来する粘膜異常で特徴づけられる足場のみの被験物の修復過程が、移植後に確認された。癒着形成が発生しやすい豚の性質と、すべての構造体 グループに対して実施された組織生検および被験物の移植に関連した2度の外科的処置は、再生組織と腸の間に癒着を引き起こした。瘻孔形成は、頻繁なストーマの洗浄と、豚の四肢での立ち姿勢によりさらに悪化した。足場のみの被験物における SMC の欠如は、尿路組織の発達の不完全性および動物の死亡率や閉塞の増加を引き起こしたように見られた。またこれにより、足場のみの被験物は今後の開発には適さないという結論が導かれた。
実例 6 − 新生尿管構造体移植後の被験動物の病理
実例 5 に記述されている本研究の結論部分では、被験動物に対する解剖病理検査が評価された。
組織採取プロトコル毎に骨盤腔が開かれ、導管 (構造体または足場のみの被験物の移植の結果) が視覚化され、生体内原位置で撮影された。導管は腎臓及び尿管と共にまとめて除去された。尿管は測定が行われ、その後、横断切片により吻合から 3、4 センチほど放すことで、導管から単離された。腎臓、尿管、リンパ節、およびその他に観察された肉眼的病変を採取した。すべての組織サンプルは、組織学的過程および評価のために 10 %の中性緩衝ホルマリンと交換された。
組織学的過程。トリミングされた下記の図に示されている通り、導管は固定後に縦方向に開かれ (流出方向と平行)、その後背面と腹部に分けられた。
図 59A-B は、DB-252 被験動物番号 18 の固定後の導管組織と、トリミングされた図を示している。図 59C は尿管、ストーマ、導管中部および憩室の位置を示している。
3 つの横断面が各動物の半身図からトリミングされた (それぞれ背面部のスライド 5、6、7でキャプチャされた頭蓋、腹部、尾、および腹部のスライド 9、10、11)。各動物の半身図からの横断面の一つは、アトリウムから取得された (背面部のスライド 8および腹部のスライド 12)。その他の断面は 2 つの尿管導管接合部で撮影された (スライド 13 の左側、スライド 15 の右側)。一方の断面 (スライド 17) は皮膚表面と腹壁に隣接した管にあるストーマを記録するために撮影された。導管のサイズが認められた際、本スキームでは 11 のスライドを作成した。いくつかの導管は長さが足りず、スキームのトリミングを行えなかった。そのため、利用可能な導管は小さい断面に分けられた。各被験動物から採取された断面には、導管背面頭部、導管背面中部、導管背面尾部、背面ストーマ側導管結合部、導管腹側頭部、導管腹側中部、腹側導管ストーマ側結合部、左側尿管導管ストーマ側結合部、右側尿管導管結合部、および導管ストーマ−皮膚結合部が含まれる。さらに、以下の組織/臓器の断面が組織採取のために取得、提出された。左腎臓 (スライド 1)、右腎臓 (スライド 2)、左尿管 (スライド 14)、右尿管 (スライド 16)、腰リンパ節 (スライド 3)、腸間膜リンパ節 (スライド 4)、その他の肉眼的病変 (スライド 18、19など)。組織のトリミング中、図示を行うためにデジタル写真が撮影された。固定後、組織は定期的にマイクロスライドへ処理され、ヘマトキシリンとエオシンとマッソン・トリクローム(エラスチン)に染み付けられた。スライドは顕微鏡を使用して評価された。必要に応じて、各被験動物データの顕微鏡観察が行われ、採点が実施された。
結果
死亡率。根治手術中、被験物の移植を防ぐために動物番号 30 (グループ 4) の尿管に穴が開けられた。被験動物は安楽死され、代用は実施されなかった。そのため被験物(構造体または足場のみ)を移植された動物の全体数は31匹に減少し、またグループ4の動物数は7匹になった。24 匹の動物は予定外に死亡し、7 匹が予定された検死まで生存した。
以下のセクションでは、予定外の死亡に対して観察された発見について議論していく。
ウイルスによる死亡率。存命中臨床観察中に、PCV 2感染と一致する皮膚病変が観察された。予定外の死亡した 12 匹からは一つまたは複数の病変が見られ、それらは豚の皮膚炎の原因となる病理学的特徴や、PCV-2感染に関連する腎症症候群(PDNS)と一致した。
予定外に剖検が実施された24匹中12匹の動物から、豚のPCV-2 感染が特定された。そのうちの 5 匹はグループ 1 であった (被験動物番号5113342、7、2、4、3)。また 4 匹はグループ 2 であった (被験動物番号13、16、14、10)。さらに 2 匹はグループ 3 であった (動物番号20、19)。さらに 1 匹はグループ 4 であった (被験動物番号 28)。PCV-2条件が装置と無関係な罹患率の見逃すことのできない原因と考えられたとともに、PCV-2動物は結果の節では議論されない。
非PCV-2関連死亡率。予定外に死んだ合計12匹は、PCV-2ウイルス感染に関係はなかった(一匹の生存中手術の関係での死亡も含む)PCV-2感染に起因しない12の予定外の死亡はグループ1に1匹(被験動物番号8); グループ2に3匹(被験動物番号11、9および12)グループ3に4匹(被験動物番号24、21、22および17)グループ4に4匹(被験動物番号(32、31、29および27)含まれていた。被験動物の臨床的減少に関わる重要な点は、尿流の閉塞およびストーマから発生する排出物であった。閉塞は、腹部器官の重量が導管の閉合、癒着、瘻孔形成、および腎臓の合併症 (尿管または腎臓の膨張、炎症および/または感染症)を引き起こす可能性のある、腹部・骨盤腔に対する被験物の置換により促進されたと考えられた。外科的処置による被験物の置換は、すべての実験動物で同様に実施された。つまり、閉塞に関連する合併症は、すべてのグループで類似した病理学的メカニズムを有していたということになる(四肢動物生体構造が原因で腹部内臓が導管に負担をかけている等)。
安全性に関連する研究結果。すべての動物に対する肉眼的所見および顕微鏡による所見の総合リストが準備された (数値を示さない)。それぞれの微視的動物データが得られた (数値を示さない)。予定されていた検死まで生存していた7匹の動物と非PCV-2の予定外に死亡した12匹の動物(合計19匹)に対する被験物の解剖学的置換により促進された尿流の閉塞に関して、肉眼的所見および顕微鏡所見では焦点があてられている。被験物の移植により形成された導管のサイズは一定ではなく、成形管は腹部の腹膜腔に位置された。尿管は、導管の頭部末端に挿入される(尿管導管接合部 (UCJ)、図 59c)。尿流は、腹膜に包まれた移植物とアトリウムを通るように方向付けられ、ストーマに現れた。導管の頭部末端では、両側が球根状に頻繁に膨張した。これは憩室と呼ばれ、間欠的閉塞により発生すると考えられた。
癒着および瘻孔。導管の腹部は筋膜および腹壁の骨格筋に癒着し、背面部は腹膜で覆われた。部検の際、著しい癒着(消化管への導管、網、尿管、精嚢、膵臓、脾臓、または生殖器)が原因となり、導管の視覚化が困難であることが時折あった。導管の内腔に排出物が堆積することがあった。導管と隣接する空洞器官(腸など)の間に瘻孔が観察された。特に、観察された19匹の被験動物の腸導管または尿管の導管で瘻孔が確認された。
7匹の生存した動物の癒着および瘻孔。予定された検死まで生存した7 匹すべての動物から癒着が確認された(表 6.4)。7匹の被験動物のうち4匹の導管または腸管のあいだで、瘻孔が観察された。2匹中2 匹はグループ 1 であった (被験動物番号1、6)。さらに 1 匹はグループ 2 であった (被験動物番号 15)。また2匹中1匹はグループ3であった(被験動物番号23)。
予定外に死亡した12匹の被験動物の癒着および瘻孔。早期に死亡した非PCV-2の12 匹すべての被験動物から癒着が確認された(表 6.5)。12匹の被験動物のうち7匹の導管または腸管のあいだで、瘻孔が観察された。そのうちの3匹中3匹がグループ 2 であった (被験動物番号11、12および9)。またグループ3からは4匹中3匹(被験動物番号21、22および17)グループ4からは4匹中1匹(被験動物番号29)から観察された。グループ 4 の動物から、腸および尿管の間から一つの瘻孔が観察された(被験動物番号27)。
尿管および腎臓。顕微鏡で観察された肥厚した尿管は、微視的評価されたいくつかの現象が原因となった。尿管の膨張 (または水尿管症)は、正常な尿管壁構造の内腔の肥大に特徴づけられた。移行細胞過形成は、移行上皮の細胞の増加により特徴づけられた。また空胞形成は上皮の円形かつ傷の無い空砲に特徴づけられた。尿管を覆っている腸間隔はコラーゲン、線維芽細胞、時折リンパ球とマクロファージにより膨張した際、尿管-腸間隔に亜急性/慢性的炎症が発生した。通常、この炎症は尿管の尿路上皮へ影響しなかった。尿管炎症は、尿管、腸または生殖器間の癒着に関係があると考えられたが、一方で同炎症は癒着なしでも発生した。
微視的に、水腎症は腎盂の膨張、細線化、および腎皮質の慢性的炎症 (線維症、リンパ球、形質細胞、またマクロファージ)で特徴づけられる。水腎症は、下部泌尿器系(尿管)の全てまたは一部が閉塞されたことで引き起こされたと考えられた。水腎症に関連していた慢性活動性腎盂腎炎は、好中球および細胞質細が腎盂へ侵入し、時折、抹消髄質にまで拡がっていくという特徴があった。
水腎症は、腎盂へ上行する下部尿路のバクテリア感染で引き起こされたと考えられた。慢性腎炎(水腎症なし)は、腎皮質または髄質の炎症細胞(リンパ球、マクロファージ、形質細胞、時々好中球も)の線維症により特徴付けられた。
慢性腎炎のある腎皮質は、水腎症/慢性腎炎のある動物の腎皮質と類似していた。しかし慢性腎炎の場合、骨盤は膨張しなかった。慢性活動性腎炎は、慢性腎炎と外見が類似していたが、好中球の浸潤が深刻であった。腎尿細管壊死/円柱/糸球体腎炎は、好中球、リンパ球、そして糸球体のマクロファージ、各尿細管上皮細胞の壊死、タンパク性の管状円柱および/または尿細管内腔の出血といった一連の変化により引き起こされた。
生存した7匹の被験動物にみられる水尿管症と水腎症および/または腎盂腎炎生存した7匹の被験動物から、水尿管症と水腎症が顕微鏡で観察された(表 6.6)。片側性水尿管症 (7匹中2匹)。グループ3の被験動物2匹 (被験動物番号23および18)。両側性水尿管症 (7匹中5匹)。グループ1の被験動物2匹 (被験動物番号1および6)、グループ2の被験動物1匹 (被験動物番号 15)、グループ 4 の被験動物 2 匹(被験動物番号25および26)。片側性水腎症 (7匹中6匹)。グループ1の被験動物2匹 (被験動物番号1および6)、グループ2の被験動物1匹 (被験動物番号 15)、グループ 3 の被験動物 2 匹(被験動物番号18および23)、グループ4の被験動物1匹 (被験動物番号 26)。両側性水腎症(7匹中1匹)、グループ4 (被験動物番号 25)。腎盂腎炎(片側性)が、グループ4 の7匹中1匹の被験動物から確認された(被験動物番号 26)。
予定外に死亡した12匹の被験動物にみられる水尿管症と水腎症および/または腎盂腎炎。非PCV-2に関連し、早期に死亡した12匹中8匹の被験動物から、水尿管症と水腎症が顕微鏡で観察された(表 6.7)。片側の水尿管症 (12匹中3匹)。グループ2の被験動物1匹 (被験動物番号12)、グループ3の被験動物1匹(被験動物番号 21)およびグループ4の被験動物1匹 (被験動物番号27)。両側の水尿管症 (12匹中5匹)。グループ3の被験動物2匹 (被験動物番号22および24)、グループ4の被験動物3匹 (被験動物番号32、31、および29)。片側性水腎症 (12匹中5匹)。グループ2の被験動物2匹 (被験動物番号9および12)、グループ3の被験動物1匹 (被験動物番号 21)、グループ 4 の被験動物 2 匹(被験動物番号32および27)。両側性水腎症 (12匹中3匹)。グループ3の被験動物1匹 (被験動物番号 24)、グループ 4 の被験動物 2 匹(被験動物番号31および29)。
片側性腎盂腎炎が、12匹中2匹の被験動物から確認された。グループ3の被験動物1匹 (被験動物番号 24)、グループ 4 の被験動物 1 匹(被験動物番号32)。両側性腎盂腎炎が、12匹中2匹の被験動物から確認された。グループ4の被験動物2匹 (被験動物番号31および29)。
尿路導管の再生に関連する所見。各セクションの組織成分が観察された(数値を示さない)。下記の再生に関わる所見についての議論は、組織学的評価(図 59)のために予定されていた検死まで生存した7匹の動物、および予定外に死亡した12匹の動物から得たセクションに焦点があてられている。被験物の外科的移植後に発達した導管は、尿管(頭部末端)から、移植物とアトリウムを通じて、腹部前面の皮膚上にあるストーマに向かって辿る中央内腔で構成されていた。導管壁の組織学的外見は、導管内のサンプルの場所や動物の生存期間により異なった。
尿管導管接合部および導管の頭部。尿管導管接合部(UCJ、図59の節13および15)と頭部(図59の節5と9)を含む導管頭部の組織の通常の構成は、散在している結合組織を有する平滑筋繊維の層を覆っている尿路上皮であった。UCJおよび導管頭部は、尿管と形態的に類似していた。しかし導管壁の厚さは一般的に尿管の壁よりも厚くなっていた(特に憩室内)。憩室は、左右の尿管導管接合部から尾方に向かって突き出ている両コンパートメント部として考えられた。尿路上皮の通常の外見は、僅かまたは中程度に空砲化していて、また厚さに関しては各自異なっていた。尿路上皮の厚さは僅かまたは中程度に細くなり(特に大腸憩室内)、さらに僅かまたは少しだけ肥厚があった。予定されていた検死まで生存した7匹の動物において、節5、9、13、15で観察された尿路上皮と平滑筋層の発現率は、すべての被験動物のなかで類似していた。表6.8:生存した7匹の被験動物における尿路上皮と導管頭部の平滑筋層の発現率
非PCV-2で予定外に死亡した12匹の動物に対して、節5、9、13、15で観察された尿路上皮と平滑筋層の発現率は、構造体移植を行ったグループ(グループ1-3)のすべての被験動物のなかで類似していた。足場のみ移植された動物(グループ4)に対する節 5、9、13、15の尿路上皮と、導管頭部の平滑筋層の発現率は、構造体移植された動物よりも低かった。表6.9:「予定外に死亡した12匹の被験動物」に対する尿路上皮と導管頭部の平滑筋層の発現率。
導管中部および導管尾部。19匹すべての動物に対して、導管中部の典型的な外見(図59の節6と10)と導管尾部(図59の節7および11)は、UCJおよび導管頭部と比較して異なっていた。導管からアトリウムへの遷移は、被験動物により異なった。原因は移植の尾方端が腹膜内で自由に浮き上がり、導管からアトリウムへの遷移を解剖時に定義することが困難であったためである。節 6、7、10、11の典型的な構成は、線維芽細胞のコラーゲンで組織されていた。コラーゲン壁内側および内腔に最も近いのは、大まかに配置されたコラーゲン、毛細血管、十分な好中球、リンパ球、そしてマクロファージで構成された慢性活動性炎症の層であった。炎症および内腔の内側は、変質組織または壊死した炎症細胞(好中球)および混合細菌集落の細胞破片で時折覆われた。
導管のアトリウム及びストーマ部。導管のアトリウム-ストーマ端部(図59の節 8、12、17)で、組織されたコラーゲンとストーマの真皮の付属器がコラーゲン壁(付属器なし)に並列されたストーマ-アトリウム結合部は、肉眼で見えた。19匹すべての動物において、それらの節は主に扁平上皮と慢性活動性炎症/排出物で構成されていた。通常、皮膚の扁平上皮(上皮)は、アトリウムに向かって頭側から短い範囲を膨張していった。アトリウムの外部表面は、腹膜起始の緩い結合組織で構成されていた。この外部被膜は、漿膜層、血管、脂肪組織、線維性結合組織のいくつかの部位(コラーゲン繊維と線維芽細胞)と同等であった。瘻孔のうち一つの場所で、導管の小さいセグメントが隣接する瘻孔を覆うための異所性腸粘膜が観察された。これは、グループ2に属する7匹の生存した被験動物のうち一匹から確認された(被験動物番号 15)。
構造体または足場のみを移植された動物の回復の結果。粘膜、粘膜下層、および線維血管間質がみられる平滑筋によって特徴付けられる再生された尿路組織が、被験物移植の構造体後に SMC 源 (膀胱、脂肪、血液) に関わらず観察された。構造体被験物を移植した予定外に死亡した8匹の動物のうちの4匹と、生存した5匹の動物のうち4匹に対して、平滑筋が下にある途切れのない尿路上皮で構成された膀胱組織の部位が観察された。足場のみの被験動物の大部分は、導管組織の形態が、平滑筋が下にある尿管導管接合部から短い範囲(約1mm)膨張する尿路上皮に特徴づけられる再生過程と適合した。
考察。31匹中7匹の被験動物が予定されていた検死まで生存し、31匹中24匹が予定外に安楽死されたか、死亡が確認された。ウイルス感染により24匹中12匹が予定外に死亡した。本実験中、PCV-2感染の臨床および病理学的サインがあった。肉眼で見える所見としては、皮膚の斑状出血(紫に変色)があり、また(予定外に死亡した24匹のうち11匹から)鼠径リンパ節の拡大が確認された。顕微鏡的所見には、腎尿細管壊死、円柱、糸球体腎炎、腎臓内の尿細管上皮細胞にある好酸性細胞内の含有物、腎臓および尿管の血管炎または血管周囲炎等による腎の変化、および肺の炎症(顕微鏡的所見では解剖時にPCV-2感染の動物にみられた。この感染は予定外に死亡した24匹の動物中12匹に影響を与えた)が含まれていた。予定外に死亡した24匹の動物のうち12匹が、非PCV-2関連であった。予定外に死亡した24匹のうち1匹の動物は手技上の合併症により、また予定外に死亡した24匹中11匹は、閉塞の影響が原因であった。閉塞の原因として、被験物の外科的処置による置換および、腹部内臓の重量が移植を圧迫した豚の腹部、また導管を皮膚に接続することで外部環境および尿(豚に正常)の粘液からの排出物の堆積を引き起こす、アトリウム・セグメントを形成する腹膜の使用があった。
この四肢動物の動物モデルに関連する術後合併症には以下が含まれる。(i) 瘻孔形成の可能性を導く腹部癒着および (ii) 腹部器官に関連する被験物の置換場所。
腸で癒着が起こった場合、腸内の癒着部位の筋層とアトリウム内壁が減少および腐食することがあった。被験物は腹部の腹腔内に、被験物の尾方端から腹壁を介して皮膚へ向かって拡張していく腹膜から抽出されたチューブと共に置かれた。被験物は尿管の頭部末端で固定されていたが、腹膜の最尾側が自由に浮いてしまった。尿管(頭部末端)から腹部前面の皮膚上にあるストーマ開口部に向かって辿る、中央内腔で構成されていた尿導管が治癒された。尿路上皮と積層化された平滑筋の形成は、移植された被験物が腹膜内に見られた導管の頭部末端で最も多く観察された。腹膜のみで形成されるアトリウムは、尿路上皮が覆われていない線維性結合組織壁で構成されていた。
頭側導管(尿管付近)中における尿路上皮及び/又は平滑筋層の発生頻度は、足場だけのグループ(グループ4)よりも構造体グループ(グループ1、2、3)の方が高かった。移植の尾側端付近から取った断片に観察される再生の程度は変化しうるが、その理由は、解剖時に移植の尾側端とアトリウム頭側の境界を識別することが困難だからである。移植中央部にあると推定されるほとんどの断片(断片6及び10、図 59)に、尿路上皮は存在しなかった。表6.10は、新生導管に関するグループ別所見概要を示す。
表6.10
表6.11は、腎臓、尿管、その他の組織のグループ別所見概要を示す。
尿路上皮再生は被験物中の細胞の有無に依存せず、導管管腔に面したアトリウムの表面に発生することは予想しなかった;そのため、泌尿器組織再生の評価は導管の頭側端に限定して行った (断片5、9、13及び15)。
被験物の配置と覆い被さる腹腔内器官の重みが、全てのグループの管腔において排水不良とデトリタスの蓄積を引き起こした原因となった可能性がある。足場のみの移植を移植した動物の解剖では、顕著な所見があった。頭側導管中の憩室形成、尿管と腎臓障害の頻度によって証明されるように、尿路上部の病変は尿の背圧に起因する断続的又は完全な閉塞を伴なった。尿管又は導管の狭窄の形跡はどのグループにおいても観察されなかった。しかしグループ4では、グループ1、2及び3の動物と比べて水尿管症と水腎症の頻度が上昇した(各々合計100%及び69%)。足場だけの被験物中にSMCが存在しないことが、閉塞及び泌尿器組織の不完全な発達に起因する死亡率を増加させたように思われ、これによって足場のみの被験物が更なる発達に適さないと判断された。
粘膜、粘膜下層及び線維血管間質を持つ平滑筋によって特徴付けられる泌尿器組織様再生が、SMC供給源の種類(即ち、膀胱、脂肪又は血液)に拘わらず、構造体被験物の移植後に観察された。対照的に、限られた平滑筋を持つ繊維血管間質で支持された異常粘膜によって特徴付けられる足場のみの被験物の移植後には、修復過程が観察された。構造体グループでの泌尿器様組織再生の程度は、移植後の動物生存期間によって影響を受けた。
図60〜63は、新生尿管の顕微鏡写真を提示している。図60は、グループ2の雌の動物11に由来するNUC頭側部分の顕微鏡写真(マッソントリクローム染色)を示す。
図61は、グループ1の雌の動物1に由来するNUC頭側部分の顕微鏡写真(マッソントリクローム染色)を示す。尿路上皮が平滑筋層上に存在する。
図62は、グループ2の雄の動物15に由来する左尿管に近いNUCの顕微鏡写真(マッソントリクローム染色)を示す。尿路上皮が平滑筋層上に存在する。
図63は、グループ1の雄の動物5に由来するNUC壁の顕微鏡写真(マッソントリクローム染色)を示す。このレベルで、導管の壁は繊維性結合組織から構成されている。管腔側はデトリタスで覆われている。この外観は、NUCの尾側部分で最も頻繁に観察された。
結論
23/24の予定外の死亡は、PCV-2のウイルス感染や、外科移植と管腔を圧迫する腹部内容物に起因する部分的又は全体的な尿管閉塞が原因であった。管腔圧迫と尿管閉塞に関する所見は、癒着、瘻、水尿管症、水腎症、腎盂腎炎であった。1/24の予定外の死亡は、生存中の外科手術に起因する合併症が原因であった。
足場だけの被験物に由来する導管で治癒と修復が観察された一方、全ての構造体被験物に由来する導管の各部位で治癒と再生が観察された。これは構造体の移植が、粘膜と平滑筋層から成る泌尿器様組織壁を持つ導管を形成したことを示している。
構造体被験物(再生)と足場だけの被験物の治癒における差が、足場だけの被験物で観察された高頻度の腎臓所見の原因であり、これが足場だけの被験物が更なる発達に不適であると判定した理由である。
各構造体被験物の間で再生過程の差は観察されず、これは再生促進において各SMC供給源が同価値であることを示唆している。
実施例7 − SMCを播種した新生尿管足場のインビボ移植
人工足場(PGA)と細胞構造体の、尿路上部への損傷や代謝異常を起こさず尿を尿管経由で体外へ流せる新生尿管(NUC)の生成能力を評価するために、3ヶ月の前臨床研究を(実施例3の手順に従い)ブタモデルを使用して実施した。
SMCを播種したPLGA生分解性足場又は新生尿管(NUC)を使った失禁型尿路迂回路確立の実施可能性を評価した。足場のみのコントロール及び、血液、脂肪又は膀胱に由来する自己SMCを播種したNUCを、経皮迂回路ブタモデルを使って3ヶ月間評価した。導管管腔とストーマの術後管理を通じて尿排出を維持した。
血液、脂肪又は膀胱に由来する平滑筋細胞(SMC)から成る構造体が、尿路上皮細胞ライニングと平滑筋層から成り、上部尿路に変質を起こさない開存性導管を再生した。クレアチニンの上昇、代謝異常又は血液学的パラメーター変化の形跡は認められなかった。
NUC迂回路は、細胞供給源に拘わらず再生泌尿器組織(上皮細胞ライニング及び血管平滑筋壁)から成る導管に発達した。上部尿路での顕著な変質、クレアチニン上昇、出血、血液学的異常、代謝異常は観察されなかった。対照的に、足場のみが移植された動物は、尿路上皮でライニングされ主として繊維性結合組織から成る開存性導管と、限られた平滑筋を発達させた。このグループはまた、高頻度の水尿管症と水腎症を示した。両方のグループにおいて、研究期間中の開存性を維持するために、導管管腔とストーマの早期術後管理が必要とされた。
図64は、新生膀胱導管を形成する再生泌尿器組織の組織学的特徴が、SMC供給源に拘わらず類似していたことを示している。48日目に仮分析、そして研究終了時に分析(3ヶ月後の最終屠殺)を実施した。
これらの研究結果は、様々な供給源(血液、脂肪又は膀胱)に由来する自己SMCを播種した人工新生尿管(NUC)が、膀胱切除後の尿排泄管理のための開存性失禁型尿路迂回路を確立できることを示している。NBCを移植した動物は、GI由来の尿路迂回路又は足場のみの移植に通常伴う後遺症を示さなかった。新生膀胱導管は、失禁型尿路迂回路を使った膀胱切除術後管理用GI組織の代替物となり得る。
Pirker他. (2007) J Urol. 4月;177(4):1546-51によると、尿管膀胱移行部(UVJ)の3個の筋肉構成物が、妊娠60日目のブタ胎児において容易に識別することができる。これには、1) 尿管 (U) 平滑筋、 2) 排尿 (D) 平滑筋、及び 3) 尿管周囲鞘平滑筋を含む。尿管平滑筋が多くの小さな筋束(長い矢印)によって特徴付けられる一方、排尿筋は多方向へ走る大きな筋束から構成され、尿管周囲鞘の筋繊維は全ての年齢グループにおいて、中間部の繊維サイズ、部位、壁内尿管に沿った方向によって識別可能である(短い矢印)。U = 尿管管腔、B = 膀胱管腔、α-SMA 染色、x40から縮小。これは、図65で示されている。
図66に示すように脂肪グループの動物では、82日後に、新しく形成された尿管-導管移行部(UCJ)とPirkerのUVJに関する記述の類似性が示された。UCJの断片は60〜90日目のブタ胎児の胚発生に対して基本的に組織学的な類似性を示した。マッソントリクローム染色を行った UCJの組織断片。オリジナル拡大率10x。U= 尿管管腔;C=導管管腔、矢印は、尿管及び尿管周囲との類似性を持つ筋繊維の混合物を示している。
図67は、移植した導管の組織像を示し、また、平滑筋細胞壁、腹壁、尿路上皮細胞蓋及び導管管腔の位置を示している。
実施例8−非膀胱細胞の供給源に由来する新規機能性新生尿管
我々はここで、表現型、機能性に関して膀胱由来の平滑筋細胞と識別できない、ブタ末梢血及び脂肪由来の平滑筋細胞の分離と特性評価について述べる。我々は、末梢血及び脂肪に由来する平滑筋細胞が、合成生分解性管状の足場構造に使用し得ること、そしてこれらの播種足場をブタ膀胱切除モデルにおいて移植すると、膀胱由来の平滑筋細胞を播種したものと機能的に識別できない新生尿管が順調に再生されることを示す。末梢血又は脂肪に由来する平滑筋細胞を播種した足場から泌尿器構造を新規に生成する能力は、泌尿器組織工学技術の臨床診療への転換を大幅に促進するだろう。
平滑筋細胞は、骨格筋や綱などその他の組織供給源からも単離されているが(Wilschut 他. J Cell Biochem 105、1228-1239 (2008)、Hernando 他. Eur J Vasc Surg 8、531-536 (1994))、我々は末梢血と脂肪に由来する平滑筋細胞の回収に着目することを選択した。その理由は、これらの平滑筋細胞が、試料回収が容易だという良好な潜在力を持つ臨床的有用性の典型だからである。ブタ膀胱切除モデルを選択し、細胞/足場複合体に応用した場合における末梢血又は脂肪に由来する平滑筋細胞の性能を、膀胱由来の平滑筋細胞と比較して評価した(Baldwin 他. J. Endourol. 17、307-312 (2003)、Akbal 他. J Urol. 176、1706-1711 (2006))。
図68は、ブタ(A) 膀胱、(B) 脂肪、及び(C) 末梢血由来の平滑筋細胞を示している。これら3種類の組織に由来する平滑筋細胞は、完全に分化した平滑筋細胞の形態学的特徴を共有しており、これには扁平で紡錘状の繊維芽細胞の外観と、渦巻き状の「山と谷」構造を含む。
図69は、ブタ膀胱、脂肪及び末梢血に由来する平滑筋細胞マーカーのRT-PCR分析を示している。平滑筋細胞マーカーSmαA、SM22、ミオカルジン、SMMHC及びカルポニンの発現は、組織供給源に拘わらず、全ての平滑筋細胞型において類似している。試料は、RNA量とβ-アクチンに基づいて正規化されている。数字は、一次細胞培養物が由来するブタ個体を指している。
図70は、ブタ膀胱、脂肪及び末梢血に由来する平滑筋細胞の免疫蛍光分析を示している。平滑筋細胞マーカーであるSmαA、SM22、SMMHC及びカルポニンの発現は、組織供給源に拘わらず、全ての平滑筋細胞型において類似しているが、例外として、脂肪由来SMC陰性コントロール(IgG アイソタイプ)におけるSM22が、検出可能な着色を示さなかった(データは表示されていない)。
ブタ末梢血由来の単核分画を直接プレーティングすると、典型的な平滑筋細胞の形態を持つコロニーが増殖した(図68)。スクリーニング(n=24)された全ての動物(100%)が平滑筋細胞コロニーを生成し、末梢血50mlの継代0において2.44 x 103から2.37 x 106個の平滑筋細胞を回収した。平滑筋細胞の回収は、培地組成、細胞密度又は表面コーティングを変更しても影響を受けなかった(データは示されていない)。同様の手法を用いて、皮下から又は脂肪吸引で得た脂肪の平滑筋細胞供給源としての潜在的有用性を調べた。脂肪の間質血管分画(SVF)は、限定された間葉潜在能力22を持ち、内皮細胞、平滑筋細胞及び前駆細胞を含んでいる異種細胞集団の典型である。我々は、ブタ脂肪由来の平滑筋細胞コロニー(単層へ増殖可能)を、効率100%(n=24)、1.37 x 105〜4.36 x 105 細胞数/ 脂肪組織(g)の回収率(図68)で生成することができた。それに対し膀胱組織からは、1.29 x 106〜9.3 x 106 細胞数/膀胱組織(g)の回収率で平滑筋細胞を分離することができた。末梢血又は脂肪由来の平滑筋細胞コロニーの増殖は、膀胱由来の培養平滑筋細胞の典型的な渦巻状「山と谷」構造の特徴を持つ細胞単層を形成した(図68)。
平滑筋細胞の濃縮は、高い細胞密度と高グルコース培地の使用によって促進されたが、この条件は特に間葉系幹細胞の増殖に不利であることが示されている(Lund 他. 2009 上記参照)。このため系統的な比較分析が実施され、脂肪由来平滑筋細胞と間葉系幹細胞の表現型と機能特性に関する重要な差が示されている(以下の実施例を参照)。
末梢血又は脂肪に由来する平滑筋細胞の機能特性のインビトロ分析は、これらが膀胱由来の平滑筋細胞と識別できないことを示している。平滑筋の収縮能と関連するタンパク質の発現増加は、平滑筋細胞の分化及び成熟の特徴的な性質の1つである(Jeon 他、2006 上記参照、Ross 他、2006 上記参照、Sinha 他、2004 上記参照)。ミオカルジンは平滑筋細胞の分化にとって重要な転写因子の1つであり、収縮能にとって不可欠な平滑筋マーカーの発現を仲介する。これらのマーカーには、SM22、 α-平滑筋アクチン(SMαA)、平滑筋ミオシン重鎖 (SMMHC) 及びカルポニン (CNN)を含む。平滑筋マーカーであるSMMHC及びCNNの発現は、通常、成熟した平滑筋細胞の徴候と見なされる。(Qiu 他、2005 上記参照、Wang 他、2003 上記参照、Yoshida 他、2003 上記参照) 図69で示されるように、これらの重要な平滑筋細胞マーカー発現の半定量RT-PCR分析は、血液及び脂肪に由来する平滑筋細胞が、膀胱由来の平滑筋細胞に直接的に匹敵することを示している。
これらの結果は、平滑筋細胞特異タンパク質発現の免疫蛍光分析によって裏付けられた。末梢血と脂肪に由来し、膀胱由来の平滑筋細胞で観察される同じ局在パターンを持つ平滑筋細胞において、αSMA、SM22、CNN及びSMMHCが発現した(図70)。ストレスファイーバーへの局在化が観察されたが、これは膀胱由来の平滑筋細胞において典型的である。脂肪由来の平滑筋細胞では、SM22の弱い着色が観察された。
図71は、ブタ(A)膀胱、(B)脂肪、及び(C)末梢血に由来する平滑筋細胞の収縮能を示している。3種類全ての組織供給源に由来する平滑筋細胞が、コラーゲンゲル基質においてCa2+ 依存性収縮能を示す。数字は、動物個体に由来する細胞株を指している。
末梢血と脂肪に由来する平滑筋細胞の機能性を、三次元Ca2+依存性収縮能アッセイを用いて更に評価した。平滑筋細胞は3次元ゲルに埋め込まれると、コラーゲン基質の収縮をCa2+依存的かつ自発的に誘発する (Travis 他. 2001 上記参照)。図71に示すように、試料毎に変動が観察されるものの、末梢血と脂肪に由来する細胞は、膀胱由来の平滑筋細胞と同程度に収縮し、この収縮能はCa2+ キレート剤として知られるEDTAによって阻害される。
図72A-Cは、ブタの (A) 膀胱、(B) 脂肪、及び(C) 末梢血に由来する平滑筋細胞の成長機構を示している。番号は、動物個体由来の細胞株を示している。
脂肪及び末梢血に由来する平滑筋細胞の泌尿器再生医学への応用は、充分な細胞数を許容時間枠内に確保できるか否かに左右される。この目的のため、平滑筋細胞コロニー(ブタ末梢血試料50ml又はブタ脂肪7〜25gに由来)が、播種後7日以内に識別可能となり、14日以内に継代しうることを観察した。図72A-Cで示されるように、一個の膀胱平滑筋試料が原因不明により増殖に失敗した例を除き、2〜3週間(n=24)以内に百万から数千万個の平滑筋細胞が、膀胱、末梢血又は脂肪から回収された。膀胱及び脂肪に由来する平滑筋細胞が、人工新生尿管足場へ播種するための細胞を採取する前に、2回継代された。末梢血由来の平滑筋細胞は3〜4回継代され、同数の細胞が生成された。平均すると30〜40 x 106個の平滑筋細胞が、新生尿管足場へ播種するために使用された。
膀胱由来の平滑筋細胞が人工生体高分子足場への播種に使用することができ、この足場が膀胱切除のインビボ臨床モデルへ移植されると完全に機能する新規膀胱増大の再生をもたらすことは既に示した (Jayo I 上記)。しかし、膀胱由来の平滑筋細胞は臨床的に望ましくないため、尿失禁の三ヶ月ブタ臨床モデルにおいて、末梢血及び脂肪に由来する平滑筋細胞のインビボ臨床効果の評価が進められた(Baldwin 他. 2003 上記;Akbal 他 2006 supra)膀胱、脂肪及び末梢血に由来する平滑筋細胞をPGA/PLGA足場へ播種して再生新規尿管を生成し、尿が尿管から体の外部表面へ直接流出させることが可能になった。血液又は膀胱を供給源として得られた平滑筋細胞から成る構造体が、尿路上皮細胞内膜と平滑筋層から成る開存性導管を再生し、上部尿路に変更が生じないことが認められた。クレアチニンの上昇、代謝異常、又は血液学的パラメーター変化の形跡は見られなかった。
図73は、脂肪、末梢血及び膀胱に由来する平滑筋細胞を播種した人工足場を使ったブタ膀胱切除モデルにおける、新生尿管の再生を示している。脂肪、末梢血又は膀胱に由来する平滑筋細胞を播種した新生尿管合成物が、尿路上皮と平滑筋層を持つ泌尿器様組織の再生をもたらした。平滑筋細胞束が、尿管/足場接合部に隣接する、新生尿管の頭側、背側、腹側面で認められた。全てのグループで、繊維芽細胞と平滑筋細胞が、導管中間部から得られた代表的な節において認められた。足場だけのグループは、主として繊維性結合組織から成る新生尿管を発達させ、修復と関連する平滑筋束を抑制した。マッソン・トリクローム染色を使い、再生された平滑筋束と(赤)、コラーゲンが豊富な基質内における、繊維芽細胞と平滑筋細胞から成る初期細胞組織の存在を確認した(青)。核は暗褐色に染まった。全てのグループで、繊維芽細胞と平滑筋細胞が、導管中間部から得られた代表的な節において認められた。より高い濃度のコラーゲンが、膀胱と足場グループの各々で認められ、これはマッソン・トリクローム染色の青染色によって特徴付けられた。足場のみのグループは、主として繊維性結合組織から成る新生尿管を発達させ、平滑筋束を抑制した。
図73に示されるように、新生尿管を形成する再生泌尿器組織の組織学的特徴は、平滑筋細胞集団の出所にかかわらず、全般的に類似していた。対照的に、足場のみが移植された動物は、主として繊維性結合組織から成る、尿路上皮で裏打ちされた開存性導管を発達させ、平滑筋の発達は抑制した。両方のグループにおいて、研究期間中の開存性を維持するために、導管ルーメン及びストーマの初期術後管理が必要とされた。
本研究は、複数の有望な細胞供給源(血、脂肪又は膀胱)に由来する自己平滑筋細胞で播種された人工生分解性足場合成物が、前臨床ブタモデルにおける開存性新生尿管の再形成に使用しうることを実証している。末梢血又は脂肪に由来する平滑筋細胞を播種した人工足場から新規に泌尿器構造物を生成するこの技能が、泌尿器組織技術工学の臨床診療への移行を大幅に促進するだろう。
材料及び方法
ブタの膀胱、脂肪及び末梢血からの平滑筋細胞の生成。自己新生尿管構造体生成のために、膀胱と脂肪の生体組織並びに採血した末梢血から、平滑筋細胞が単離された。膀胱の生検標本1cm2 、脂肪の生検標本2cm2、及び末梢血50mLが、計画されている最終的な新生尿管の移植の約8週間前に、24匹のゲッチンゲンブタの各々から得られた。
膀胱由来の平滑筋細胞を単離するために、尿路上皮細胞層が膀胱生検組織から切り離され、残りの平滑筋層は1mm2 の小片に切断されてから組織培養プレート表面に配置された。生検用の小片は、生物学的安全キャビネットの中で10〜30分間乾燥された。DMEM-HG (Gibco) + 10% FBSが生検試料に加えられた後、培養プレートは、加湿状態で37℃、CO2濃度5%に保持されたインキュベーターの中でインキュベートされた。
脂肪組織(7〜25g)がPBSで3回洗浄された後、メスとハサミで切り刻まれてから50mLの円錐管に移され、0.3%のコラゲナーゼ(Worthington)及びDMEM-HG中の1% BSAから成る溶解液の中で、37℃で60分間インキュベートされた。消化を促進するため、これらの円錐管を連続的に揺するか、又は周期的に振とうさせた。600Gで10分間、遠心分離機にかけて間質血管細胞分画をペレット化した後、DMEM-HG + 10% FBS中で再懸濁させた。次に、間質血管細胞分画を継代0への播種に使った。
25mlのブタ末梢血がPBS中で1:1に希釈された後、50mL 円錐管の中で25ml のヒストパック-1077 (Sigma)を使って積層化された。遠心分離(800G、30分間)の後、単核分画が採取され、PBSで一度洗浄された後、α-MEM/10% FBS (Invitrogen)中で再懸濁され、継代0に播種された
新生尿管細胞/足場合成物の集合体。膀胱、脂肪及び末梢血に由来する平滑筋細胞が、個別に7週間まで増殖され、NUC足場への播種に必要な107 個の細胞が生成された。足場へ播種して最終構造体を生成するための細胞を採取する前に、膀胱及び脂肪に由来する平滑筋細胞が2回継代された。末梢血に由来する平滑筋細胞の培養物が、足場への播種のための採取前に3〜4回継代された。NUC足場を作製するため、PGAフェルトがNUCの形に切断、縫合された後、PLGAでコーティングされた。次にこの構造体が、エチレンオキサイドを使って殺菌された。細胞播種の前日、NUC足場が、60% エタノール/40% D-PBS、100% D-PBS、D-MEM/10% FBS又はα-MEM/10% FBSで飽和させることで事前に加湿され、続いてD-MEM/10% FBS又はα-MEM/10% FBSの中で、一晩、室温でインキュベートされた。次に、NUC足場に膀胱、脂肪又は末梢血に由来する平滑筋細胞が播種され、播種された構造体を、加湿されて37℃、CO2濃度5%に保持されたインキュベーターの中で、自己宿主ブタへ移植する7日目まで成熟させた。
RNAの単離及び半定量RT-PCR分析ブタの膀胱、脂肪及び末梢血に由来する平滑筋細胞から、RNAがRNeasy Plus RNA Mini 単離キット(Qiagen)を使って単離された。Quantitect cDNA 合成キット (Invitrogen)を使い、各試料から1 μgのRNAが逆転写された。以下の平滑筋細胞特異プライマーが、RT-PCR反応(5’-3’)を引き起こすために使われた:β-actin (F:TTC TAC AAT GAG CTG CGT GTG、R:CGT TCA CAC TTC ATG ATG GAG T)、SM22 (transgelin) (F:GAT CCA ACT GGT TTA TGA AGA AAG C、R:TCT AAC TGA TGA TCT GCC GAG GTC)、SMαA (F:CCA GCA GAT GTG GAT CAG CA、R:AAG CAT TTG CGG TGG ACA AT)、SMMHC°(F:GCT CAG AAA GTT TGC CAC CTC、R:TCC TGC TCC AGG ATG AAC AT)、CNN (calponin) (F:CAT GTC CTC TGC TCA CTT CAA C、R:CCC CTC GAT CCA CTC TCT CA)、MYOCD°。(F:AAG AGC ACA GGG TCT CCT CA、R:ACT CCG AGT CAT TTG CTG CT)。サイクル条件:熱変性 95° (2分)、熱変性 95° (45秒)、アニーリング (45秒)、伸長反応72° (45秒)、最終伸長反応72° (5 分)。35 サイクル(ミオカルディン40 サイクル).アニーリング温度:β-actin=58°、SM22=56°、SMαA=55°、SMMHC=60°、CNN=51°、MYOCD=52°。PCR反応は GoTaq Green PCR ミックス (Promega) を使って行われ、iQcycler (Bio-Rad)上で繰り返された。
免疫蛍光分析:以下の抗体が免疫蛍光分析のために使われた:SMαA (Dako #M0851)、CNN (Dako #M3556)、SM-MHC (Sigma #M7786)、ミオカルディン (Santa Cruz #SC3428)、SM22 (Abcam #ab28811-100)、抗msIgG1/Alexafluor 488 (Invitrogen #A21121)、抗msIgG2a/Alexafluor 488 (Invitrogen #A21131)、抗gtIgG/Alexafuor 488 (Invitrogen #A11055)。SMMHCが濃度10 μg/mlで使われたことを除き、全ての一次抗体が最終濃度5 μg /mlにおいて使われた。
収縮アッセイ。収縮アッセイが、先に述べたように実施された(Travis 他、2001 supra)。
成長機構。平滑筋細胞を、コンフルエンス≧70%の連続継代によって、組織単離から新生尿管足場への播種まで増殖する。
ブタ膀胱切除モデルにおける新規新生尿管形成のGLP前臨床分析。GLP前臨床分析において、膀胱を完全に切除した32匹のゲッチンゲンブタ(データ点毎に雄4匹、雌4匹、合計8匹)と失禁型尿管造瘻術を使い、膀胱、血又は脂肪組織に由来する自己平滑筋細胞を播種し、生体組織工学を用いて作製したNUC構造体の安全性と機能性を判定する。32匹のブタの内、最初のグループ(雄4匹、雌4匹)には、膀胱由来の平滑筋細胞を播種したNUCを移植する。2番目のグループには、脂肪由来のSMCを播種したNUC足場を移植し、3番目のグループには、血由来のSMCを播種したNUC足場を移植し、4番目のグループには播種されていないNUC足場のみを移植した。デバイスの効果と性能は、研究中の異なった時点において、超音波画像診断、腎盂造影並びに尿、血液の分析をすることでモニターした。回復期の完了(84日目±5日)に伴い全ての動物を安楽死させ、組織プレパラートと病理学検査用の解剖を実施し、腎臓、導管、随伴器官及び組織を採取した。
実施例9−ブタにおける新生尿管の評価
本研究の目的は、膀胱、血液又は脂肪に由来する自己平滑筋細胞を播種したTengion 新生尿管 (NUC) 構造体の使用における安全性と機能性を判定することにあり、この構造体は、膀胱の外科的切除(根治的膀胱切除術)及び尿管のNUC構造体移植システム流入端部への迂回後の、導管移植と組織再生のために使われる構造体全体を覆うために腹膜を使用する。構造体の排出流出端部を、尿を通すために外科的に作られたストーマへ向けて取り付ける。本研究では、新生尿管構造体の性能、及び随伴器官と組織に対する効果を評価する。終点測定には、腎盂造影、超音波検査、血液分析及び病理組織診断を含む。
本研究では20匹の動物(雌10匹、雄10匹)を使用する。一つのグループ(I)は、自己膀胱SMCを持つ4匹の動物(雌2匹、雄2匹)から構成される。二つのグループは、各々8匹(雌4匹、雄4匹)から構成される:自己脂肪SMC及び自己血液SMC。一番目のグループには、膀胱由来のSMCを播種したNUC足場を移植し、2番目のグループには、脂肪由来のSMCを播種したNUC足場を移植し、三番目のグループには血液由来のSMCを播種した新生尿管足場を移植する。デバイスの効果と性能は、研究中の異なった時点において、超音波画像診断、腎盂造影並びに尿、血液の分析をすることによってモニターする。回復期の完了(84日目±4〜5日)に伴い、動物を安楽死させ、組織プレパラートと病理学検査用の解剖を実施し、腎臓、導管、随伴器官及び組織を採取するものとする。20匹の動物の内、4匹が二つの主要な処置に付される。最初の処置は、膀胱の生検である。後日、2番目の外科的処置を実施し、自己膀胱SMCを播種した新生尿管構造体を移植する。残りの16匹を、一つの非主要な外科的処置に付し、腹部及び採血した静脈血から脂肪組織を採取する。この組織は、細胞を播種した新生尿管構造体の生成に使われる自己細胞を採取するために用いる。この処置は、構造体に必要な充分な数の自己組織試料を確保するために必要である。集団選択の最適な進行を実現するために、これら二種類の組織を16匹の動物から採取する。これらの同じ動物に、血液又は脂肪組織に由来する、自己SMCを播種した足場を移植する。導管移植のために腹膜を血管供給源として利用することも、評価の対象とされる。
試験動物:俗名:ヨークシャー豚;種:Sus Scrofa;動物の数(性別)雌10匹と雄10匹;体重範囲:25±5Kg
処置グループ:本研究の目的は、雌と雄のヨークシャー豚に移植したTengion新生尿管構造体を、12週間に渡り評価することである。表9.1は、研究の五つの段階を示す。
表9.2は、研究デザインの概要を示している。生検前、術前、解剖前に体重を測定する。切開部の評価を、14日間にわたり毎日、又は治癒するまで実施する。ストーマボタンの維持管理を、14日間にわたり毎日、又は必要に応じて実施する。デブリードマンを、動物毎に必要に応じて実施する。
試験デバイス
被験物グループ1:自己膀胱由来のSMCを持つPGA/PLGA新生尿管構造体。説明合成ラクチド−コ−グリコリド酸ポリマーと自己膀胱由来のSMCから構成される足場。
被験物グループ2:自己脂肪由来のSMCを持つPGA/PLGA新生尿管構造体。説明合成ラクチド−コ−グリコリド酸ポリマーと自己脂肪由来のSMCから構成される足場。
被験物グループ3:自己血液由来のSMCを持つPGA/PLGA新生尿管構造体。説明合成ラクチド−コ−グリコリド酸ポリマーと自己血液由来のSMCから構成される足場。
体重
手続きの説明:動物の体重を、調整済みの天秤ばかりで測定する。
手続きの回数/持続期:生検前、術前、解剖前。獣医の裁量によって体重を追加的に測定する。
処置の実施:体重は、訓練された技術者が測定する。
鎮静及び麻酔:
手続きの説明:生検及び試験デバイスの移植処置:各動物に鎮静剤が投与され、手術準備前に麻酔が施される。
手術の準備
手続きの説明:全ての動物に対して(生検と移植の当日に)、剣状突起の3インチ上部から恥骨結合部までの毛を剃る。次にこの動物を背臥位で横たえる。その後、手術部位をポビドンヨードとアルコール70%の溶液を用いて3回の交互スクラブにより洗浄し、交互スクラブが完了次第、最後のポビドンヨード溶液を加えてから乾燥する。無菌手術を行うために手術部位をドレーピングする。
手続きの回数/持続期:生検前及び手術前。各イベント毎に約30分の手術準備が必要となる。
尿試料の採取と分析:
処置の説明:カテーテル又は試験管で受ける方法を用いて、二つの尿試料を生検前と解剖前に採取する。
約3.0mLの尿試料(-1mLは定量試験、2mLは定性試験用)を滅菌した容器に採取し、定性分析に使用する。
採取した尿の上澄みを5mLの滅菌チューブに移す。
定性尿検査:0.5 mLの尿を採取当日に分析する。Multistixe 10 SG試験紙を用いて採取時に定性的測定を行う。
定量尿検査:1 mL以上の尿の上澄みを5 mLの滅菌チューブに移す。定性及び定量測定において着目するパラメーターは以下を含む:定性尿検査:以下の各種試験紙 − グルコース、ビリルビン、ケトン、比重、血液、pH、タンパク質、ウロビリノーゲン、亜硝酸塩、及び白血球。
定量尿検査:定性的な量のバクテリア、グルコース及び総タンパク質。
処置の期間と頻度:処置の所用時間は、動物毎に約15分間である。生検前と解剖前に採取を行う。
採血
血液学的検査、凝固検査、血清生化学検査、血液ガス検査
血液学的検査:血液学的試料を2.0mLのEDTAチューブに採取し、湿氷の上に保管するか、又は2〜8 °Cで冷蔵する。試料を標識し、採取から24時間以内に分析を行う。血液試料の以下のパラメーターを測定する:白血球数 (WBC);赤血球数(RBC);ヘモグロビン濃度(HGB);ヘマトクリット値(HCT) 1;平均赤血球容積(MCV);平均赤血球ヘモグロビン(MCH) 1;平均赤血球ヘモグロビン濃度 (MCHC) 1;血小板数(PLT)、ここで1=計算値。
凝固検査:合計1.8mLの血液を、1.8mLクエン酸ナトリウムチューブ(3.8%クエン酸ナトリウム0.2mL)で採取する。クエン酸血試料を氷上で保管し、準備ができ次第、1000〜1300Gで10〜15分間、遠心分離する。冷凍前に血漿を2分割してから、マイナス70°Cで冷凍する。クエン酸血漿試料は、マイナス70°Cで保管する必要がある。試料の以下のパラメーターを測定する:プロトロンビン時間 (PT);活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT);及びフィブリノゲン(FIB)。
血清生化学検査:血清生化学検査の試料を、約4.0mLの血清分離用チューブに採取する。血液試料を遠心分離して(1300-1600Gで10〜15分間)、無菌操作によって血漿を抽出する。次に血漿はマイナス70°Cで冷凍される。血漿の以下の血清生化学パラメーターを測定する:グルコース (GLU);尿素窒素(BUN);クレアチニン(CRE);総タンパク質量 (TPR);アルブミン (ALB);グロブリン(GLOB) 1;アルブミン/グロブリン比 (A/G) 1;カルシウム (CAL);リン酸 (PHOS);ナトリウム(NA);カリウム (K);塩化物(CL);総コレステロール(CHOL);総ビリルビン(TBIL);トリグリセリド(TRG);アラニン・アミノトランスフェラーゼ(ALT);アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST);アルカリ性ホスファターゼ(ALK);γ-グルタミン酸転移酵素(GGT);ここで 1=計算値。
血液ガス検査:血液ガス/スパンヘマトクリット/総タンパク質量モニタリング:動脈血試料(-1.0 mL)を採取し、調整済みの血液分析器i-STAT と適切なカートリッジを使って分析する。試料の以下の血液ガスパラメーターを測定する:ナトリウム (Na) (mmol/L) PCO2 (mm Hg);カリウム (K) (mmol/L) PO2 (mm Hg);イオン化カルシウム(iCa) (mmol/L) TCO2 (mmol/L);グルコース (Glu) (mg/dL) HCO3 (mmol/L);ヘマトクリット (Hct) (%) BEecf (mmol/L);pH;及び SO2 (%)。処置の期間/頻度。CBC、臨床化学及び凝固検査用の血液試料採取を、生検前、4、8週間後、解剖前に行う。血液ガスを生検前に採取する。各採血処置の所要時間は、動物毎に約15分間である。
細胞培養のための採血、脂肪組織採取、及び膀胱組織採取
処置の説明:採血(グループ2及び3):6匹の動物(雄8匹、雌8匹)から約8 x 10mLアリコートの静脈血を、ヘパリン入り真空採血管を使って採取する。脂肪組織採取(グループ2及び3):脂肪組織と膀胱を得るために、尾側から臍へかけて正中切開を行う。採血をした同じ16匹の動物の腹部から、約25〜50グラムの皮下脂肪組織を無菌状態で採取する。生検組織は、直ちに組織培地が入ったジャーに保存する。
膀胱組織の採取(グループ1):残った4匹の動物の膀胱を露出させ、尿を抜いて空にする。膀胱組織の先端ドーム片(〜2.5 X 2.5 cm)1個を、膀胱から摘出する。膀胱組織は、直ちに組織培地に無菌状態で保存する。膀胱の欠損は、吸収性縫合材と適切な技術を用いて閉じられる。
腹部の切開部を、適切な寸法の吸収性縫合材を用いて層状に閉じる。皮膚は、又に適当な寸法の吸収性の縫合材料を用いて、下位クチクラ・ファッションで合わせられる。
膀胱切除に伴う、導管を経由した尿管移動:
処置の説明概要:尿管の移動処置を、開腹術によって行う。腹部の正中切開を行い、頭側5cmから始まり臍まで、更に尾側へ約15cm伸展させて切開する。腹膜を確認し、その組織が新生尿管構造体を被覆し、腹壁を通じて抜け出ることが可能な導管を形成するに足る長さになるまで、注意深く腹部から分離する。構造体を覆い、腹壁から外へ伸びる導管を形成するために、腹膜を測定して切除する。腹膜を、3-0 Vicrylを用いて構造体周囲に縫合する。組織が損傷を受けず、血管が通じる状態が維持されるよう注意が払われる。次に膀胱を露出し、尿が腹腔に入らないよう注意しながら、尿を排出して空にする。膀胱へ血液を供給する動脈と静脈を確認して結紮する。尿管を確認し、2個の7Fr 14cm非吸収性尿管ステント(DaVinci 製)を上行挿入する。尿管を注意深く膀胱から切除する。切除の際に、尿管をかがり縫いする。次に膀胱を取り外す。左の尿管を、右側に充分に届くまで、頭側方向に伸びる周辺後腹膜筋膜から注意深く取り外す。右の尿管を、構造体端部に届くよう切除して取り外す。これらの尿管を、3-0 Vicrylを使い単純連続パターンで構造体に縫合する。乳腺の外側にある腹壁にストーマを設置する。腹膜導管を露出させ、皮膚に縫合する。外科用接着剤を、縫合線に沿った部分と腹膜が体壁から外へ出る部分に塗布する。ステントに結ばれた縫合糸ストランドを、将来の取り外しのために、ストーマを通じて体外に出す。適当な長さの、DaVINCI製のストーマボタン/カテーテルをストーマに挿入し、生存期間中の適切な排出を可能にする。これらが処置が完了次第、腹部切開部を非吸収性プロリン縫合糸で閉じる。皮膚は通常の方法で縫合する。次に動物をケージに戻す。注記:腹膜は、血管系内の血流を阻止しないよう、細心の注意を払って取り扱わねばならない。非分解性の尿管ステントは、診断的評価が時期を早めて取り除く必要性(例えば、腎臓閉塞)を示さない限り、約7日間その場所に残される。
処置の期間/頻度:Day0において、動物毎に一回、約2〜4時間。
ストーマボタンの手入れと維持管理及び切開部の評価。
処置の説明:
ストーマボタン/カテーテル(フォーリー又は同等物):根治手術の後、ストーマカテーテル(DaVINCIで作製したストーマボタン又は同等物:各時点で必要に応じて3〜10cm )を再挿入し、縫合糸で動物に固定する。研究期間中、ストーマボタンは所定の位置に保持する。滴が漏れていないカテーテルを滅菌した生理食塩水で洗い流し、開存性を確保する。注記:7日目から21日目の間、足場材料が分解作用を受け、(タンパク質付随の)細片が尿の中へ流れ出し始める。これがストーマボタンの閉塞と、構造体容量を超過する尿の滞留を引き起こす可能性がある。そのため、必要に応じてストーマと新生導管のデブリードマンを実施する。
切開部の評価:最初の14日間又は治癒するまでの毎日、切開部の評価を行う。ストーマ部位と周辺組織を、1日に2回清掃する。ストーマの尿排出を観察し、切開部位の離開、異常排出、臭い、炎症、その他の異常を評価する。
滞留したストーマの組織デブリードマン処置:ストーマ/導管に組織が滞留した動物を、デブリードマン処置に付す。所定の手順に従って動物に鎮静剤を投与する。デブリードマン用の鉗子を挿入できるよう、ストーマ表面を小さく切開する。滞留した組織を視覚的に確認して鉗子でつかみ、ていねいに引っ張る。滞留した組織が除去されてから、ストーマ/導管を生理食塩水で洗い流す。切開部を縫合糸で閉じ、ストーマボタンを再挿入し、縫合糸で動物に固定する。動物を各自のケージに戻す。
処置の期間/頻度:以下の外科的処置に従う:ストーマボタン:毎日観察を行い、カテーテルから滴が漏れていない時、必要に応じて維持管理を行う。所要時間は約15分である。切開部の評価:最初の14日間又は治癒するまで毎日行う。
臨床観察
処置の説明:回復:各手術の完了に続き、すぐに動物を麻酔から覚醒させ、各自のケージへ戻す。移植後4週間の臨床観察:移植後、4週間にわたり毎週5日(月曜〜金曜)、動物個体の食物摂取と糞尿排泄の観察を行う。実験施設の獣医及び/又は研究責任者の裁量によって観察期間を延長してもよい。生存:移植/再移植手術から回復した動物は、84±5日間生存する。
処置の回数/頻度:回復:あらゆる外科処置の最後に、約一時間実施される。移植後或いは再移植外科手術後5日間の臨床観察:臨床観察は週に5日間、毎週行う。
毎日の動物健康評価:隔離から剖検までの研究期間に、日に二回、約8時間隔で、約10分間で行われる。
腎盂X線像と超音波:
処置の説明:
腎盂X線像は、蛍光X線透視検査造影剤の腎動脈への直接注射により、末梢静脈を通して或いは大腿動脈のカテーテル法によって行われる。超音波は、一般的麻酔下で、腎臓及び新尿路導管に対し行われる。
処置の回数/頻度:
腎盂X線像:プレ剖検。処置は、動物につき約30分間続く。超音波:プレ生検(腎臓) 第4週、第8週とプレ剖検(腎臓と新尿路導管)。追加の超音波イメージは、研究ディレクターと主治の獣医の裁量で、動物の臨床健康を評価するために必要な他の時点で得られてもよい。
動物の犠牲と剖検。
処置の説明:
臨時の剖検 ― 死亡、ひん死の状態、或は臨時の安楽死を受けることが分かった任意の動物は、限られた剖検に供される。診査の剖検は、死亡の潜在的な任意の原因又は安楽死につながった問題の決定を試みる。組織収集は、泌尿生殖器の組織に限られる。臨時と定期の安楽死―安楽死を引き起こすために、認可されたAVMA(American Veterinary Medical Association)ガイドラインに沿って、すべての動物にナトリウム・ペントバルビタールを注射する(150mg/IV)。定期の安楽死は、12週の移植後(84日目±5)に行われる。
身体検査―すべての動物は、安楽死の前に施設獣医に査定される。検査は動物の全身状態の記録を含む。直腸の体温、呼吸速度、心拍数、毛細血管再充満時間。剖検―すべての動物は剖検に当てる。腎臓、導管、尿管、尿管膀胱結合部、導管中間部、導管ー皮膚交差点、リンパ節(腰部と腸間膜)に特に注目する。腎臓、尿管、尿道(有れば)、導管、ストーマ、胸部、腹腔と骨盤腔、その臓器と組織について大まかな評価を行う。どれでも肉眼的病変、癒着と/或は臓器変化(生殖器を含み)は観察されば、組織病理学的な評価のために、査定、写真、収集にする。骨盤腔の主要の臓器は採取され、将来の顕微鏡の可能な分析のために保存される。主要の臓器は、肝臓、膵臓、脾臓、大腸(盲腸、結腸、直腸)、小腸(十二指腸、空腸、回腸)、胃(噴門、胃底、幽門)である。完全な新尿路導管は、視覚化され、生体内原位置で撮影される。付加的な写真と/或は肉眼的病変は、プロセクターの裁量で取られてもよい。導管の固定はフォナリンにより行われ、ストーマにフォナリンを注入し、導管及び尿管をふくらませることによる。これは、ストーマが圧力を保っておくために縛られている間に、フォーリーカテーテル(或は同等の)により行われる。一回の時間は、動物ごとに約1/2時間であり、84日目(±5日)に実施される。
組織学/病理学研究
処置の説明。固定した泌尿器官(移植された新尿路導管、腎臓、付属組織)は採取され、切られ、観察され、パラフィンの中に埋め込まれ、切片にする。切片は、ヘマトキシリンとエオシン(H&E)とマッソン・トリクローム(エラスチン)により染色される。
実施例10―上皮化された粘膜を含んでいる導管の形成
上記実施例9の実施計画に従って、脂肪組織―、末梢血―或は膀胱―由来の平滑筋細胞を蒔かれたNUC足場を動物に移植した。
術後の臨床観察は、全ての三治療群にわたって類似した。全群の全動物は、術後処置に続いてすぐにストーマから流れる尿があった。全群の全動物は、一ヶ月まで臨床的に正常だった。全群の全動物は、尿がストーマから流れるのを維持するために、ストーマボタンメンテナンスと壊死組織除去術を必要とした。腎機能の血清マーカー(血中尿素窒素[BUN]と血清クレアチニン)は、全ての治療群にわたって基線で類似した。第4週に、全群について数値が増えた(データを示さない)。炎症及び/又は安全性に関する血液学的指標(全白血球とフィブリノゲン)は、全治療群にわたって基線で類似した。第4週に、全群について数値が増えた(データを示さない)。
剖検についで、固定した泌尿器官(移植された新尿路導管、腎臓、付属組織)は採取され、切られ、観察され、パラフィン中に埋め込まれ、切片にされた。切片は、ヘマトキシリンとエオシンとマッソン・トリクローム(エラスチン)により染色された。動物の中に形成された導管は調べられ、ストーマ端部で上皮化された粘膜により特徴付けられることが見つけ出された。上皮化された粘膜は、Fig.74に示されたように、ストーマ端部にある。(脂肪組織由来の平滑筋細胞がまかれた新尿路導管)AE-1/AE-3は、上皮の指標として、サイトケラチンマーカーの検出が用いられた。
実施例11―三角部温存の膀胱摘除後での新膀胱拡大構造体
その研究中の新膀胱構造体は、対象自身の器官に特有の細胞がその上に増殖した生物分解可能な足場より形成される。目的は、病的な膀胱に代わりに移植される可能性がある対象のために、新しい膀胱を構築し、「排せつ腔」の創設性の必要を緩和することである。この研究の目的は、膀胱拡大のために新膀胱構造体の同等物を決定することである。
試験設計。イヌ科動物の6組は、各々、3雌と3雄を含み、それらにおいて、異なる密度の尿路上皮細胞(UC)と平滑筋細胞(SMC)が試験される。膀胱拡大足場は、下記のように細胞播種される。
組織生検の処置。第1−4組には、膀胱生検から得れたSMCとUCが採用される。動物が膀胱生検処置のために麻酔をかけられる間に又はその日の前には、動物は、末梢血管から無菌血収集の準備をされ、約60ミリリットルの静脈血を無菌的に集められる(ナトリウムヘパリンと6本の10ml血液チューブ)。膀胱生検のための正中切開が腹部に用いられると、脂肪組織は露出され切除される。腹部から無菌的に集められた脂肪組織量は、約20-50グラムの組織に相当する。集められた組織量が足りないと決めたならば、切開は脂肪組織を得るために解剖された皮下組織と鼠径部脂肪パッドの上へ用いられる。膀胱には露出され、尿や存在しうるあらゆるものが出される。次いで、約2cm×1cmの膀胱の一片が膀胱の頂点から切除される。
外科処置(第1日)−三角部を温存する膀胱摘除は、新膀胱構成の移植につづいて行われる。術後処置―サイクリング、コンプライアンス測定、蛍光透視検査、全身健康評価、臨床治療は、必要ならば行われる。剖検時点―移植の後で約6ヶ月(移植から182±2日)。
動物。Canis familiaris種(血統―雑種犬)が採用される。12頭の雄(代わりの1頭を加える)は採用される。未経産と非妊娠の12頭の雌(代わりの1頭を加える)は採用される。動物は、生検段階に若いおとなであり、体重は15−25kgである。
動物の準備。膀胱は、生検外科手術の時に、基線のコンプライアンス測定を得るために、二重ルーメン・カテーテルを用いてカテーテル処置される。カテーテルは、測定のあとで、動物から取り除かれる。膀胱は、決定的な手術のときに、フォーリーカテーテルを用いてカテーテル処置される。手術部位は、ポビドンヨード洗浄液を用いて重ねて徹底的に洗われ、70%イソプロピルアルコールに浸されたスポンジを用いて拭われ、次に乾かす。DuraPrep(TM)(或は同類の)液はこの部位に塗布され、また乾かす。次に、この部位は厳格な無菌手術のために適切に覆われる。
外科処置
膀胱の生検。正中切開は、尾の近くから開始され臍までの腹部に行われる。膀胱は露出され、尿や存在しうるあらゆるものが出される。次いで、約2cm×1cmの膀胱の一片は、膀胱の頂点から切除される。膀胱組織は、組織培養メディア(DMEM或は同類)に保たれる。膀胱の欠陥は、吸収性の縫合材料(PDS或は同類)を用いて少なくとも2層で閉じられる。膀胱は、代わりに外科用ステープルを用いて閉じられ、縫合糸で更に縫われる。腹部切開部は、適当な寸法の吸収性の縫合材料で層を重ねて合わせられる。皮膚は、再度、適当な寸法の吸収性の縫合材料を用いて、表皮下筋膜で閉じられる。皮膚は、代わりにステープルを用いて閉じられてもよい。
新膀胱拡大構造体の移植。新膀胱拡大足場は、移植のための新膀胱拡大構造体を形成するために、上記のとおりUC及び/或はSMCをまかれる。正中切開は、尾の近くから開始され臍までの腹部に行われる。腹部の収縮調整装置は、切り口を開くために置かれる。膀胱は露出され、尿や存在しうるあらゆるものが出される。膀胱三角の部位が見分けられて、尿管弁と膀胱三角を完全に残して、膀胱は全部が切り除かれる。カテーテルは、三角部位の粘膜下管或は漿膜下管を通して、構造体の管腔になるものの中に進める。次いで、このカテーテルは、適当な縫合材料で膀胱漿膜にしっかり留められて、腹筋、皮下組織、皮膚にトンネルを掘ることで動物の外部に至り、臍の近くで外にでる。
構造体は、ポリグラクチン910縫合材料を用いて外科手術の実時間に決められた縫合パターンで正常膀胱組織と吻合される。吻合部の外側の縁(右側と左側の両方)は、剖検の時に吻合線の同定を手伝うために非吸収性縫合糸で印を付ける。網は、膀胱構造体の上をおおって引っ張られ、外科用接着剤でしっかり留められる。
腹部切開部、適当な寸法の吸収性の縫合材料で層を重ねて閉じられる。皮膚は、再度、適当な寸法の吸収性の縫合材料を用いて、表皮下筋膜で閉じられる。皮膚は、代わりにステープルを用いて閉じられてもよい。フォーリーカテーテルは、試験装置を用いた膀胱拡大処置後に術後採尿を容易にするために残される。
切開部位の観察。外科的切開は、外科手術後の感染と炎症と全般的な保全の標示のために少なくとも14日で(治癒するまで)少なくとも日に1回に観察されて、査定される。皮膚ステープル(使用したならば)は、外科手術後7−21日の間に取り去れそうだ。適当な治療は、必要により開始される。
術後の採尿。根治手術後に、カテーテルが取り去られるまで、尿はカテーテルから集められる。
留置尿道カテーテル(例えば、フォーリー)は、置換の約7日以内に取り去られてもよい。恥骨上/漿膜/経皮カテーテルは、外科手術後の約14-21日で取り去られる。尿はフォーリーと恥骨上カテーテルが取り去れてしまったら、カテーテル法で或は「pan caught」法で集められてもよい。
コンプライアンス測定。生検処置前に、移植後約30±3日に開始され、月一回、剖検の日に、コンプライアンス測定が得られる。膀胱は、二重ルーメン・カテーテルでカテーテル処置される。全ての残尿が取り除かれて、カテーテル寸法と配置の長さがフォローアップ処置の一貫性を確保するために書き留められる。一つの管腔が直接的な圧力ケーブルと結びつけられて、他の管腔が10−25mL/分の速度で無菌生理食塩水(定温器で温められた)を注ぐために用いられる。0−10mmHgの始動圧は成し遂げられて開始時刻に沿って書き留められる。時間、供給された量、得られた圧力は、漏出物がカテーテルの周り(a.k.a.漏出圧)に観察されるときに書き留められる。ついでに、注入された生理食塩水の総量が膀胱(完全にか又は部分的か、後に続くのがサイクリングか又は透視画像かによる)を空にするために吸い上げられて、回収された量が書き留められる。動物は、13.7項に概説したように鎮静化される。測定は、ゼロの漏出圧が得られれば、少なくとも1回、3回以下で繰り返される。
サイクリング。サイクリングは、移植後の約1ヶ月で開始され、2週間ごと(14±2日の間隔)に行われ、約第90日目まで続く。サイクリングは、コンプライアンス測定の後、透視画像の前に終了する。サイクリングは、0−25mL/分の速度でコンプライアンス測定の終了後、無菌生理食塩水(定温器で温められた)を用いて膀胱を再度ふくらませることで行われる。サイクリングは、少なくとも5−10回繰り返される。0−10mmHgの始動圧は成し遂げられて、開始時刻に沿って書き留められる。時間、供給された等張液の量、得られた圧力は、漏出物がカテーテルの周り(a.k.a.漏出ポイント)に観察されるときに、或は供給された量が今しがた行われたコンプライアンス測定の量と相等しくする時に、どちらが先に起こっても、サイクリング毎に書き留められる。
透視画像透視画像は、移植後約30±3日に開始され、月一回、剖検の日に行われる。透視画像は、膀胱に造影剤を注ぐこと及びこれを記録することで行われる。透視画像は、コンプライアンス測定又はサイクリングの終了後に(必要な時点で)行われる。注がれた全生理食塩水の約半分は吸い上げられ、膀胱の直近の漏出量まで膨らませるために、無菌生理食塩水と造影剤の50/50混合物に置き換えられる。透視画像は、50/50混合物の注入で行われる。膀胱造影図のために使用された量は、漏出時圧を得られた時の量である。
存命中の観察と測定
瀕死/死亡率の検査。瀕死/死亡率の検査は、毎日に2回(AMとPM)で行われる。全ての動物は、一般的な健康、瀕死、死亡のために検査される。
臨床観察。臨床観察は生検方法を実行した後に、少なくとも週1回実行する。移植の後に、臨床観察は、最初の2週間は毎日少なくとも2回(少なくとも6時間間隔)、30日目まで、毎日実行する。その後、臨床観察は少なくとも毎週1回(7±1日)継続するすべての動物が観察され;観察は記録される。
体重。体重は動物割当の前、生検方法前の5日以内、移植前の5日以内に記録され、その後、最初の3カ月(すなわち90日まで)は毎週(7±1日)記録され、次に、検死まで毎月ごとに(30±2日間の間隔) 記録される。
身体検査。全身状態、直腸体温、呼吸数、心拍数、および毛細血管再充満時の記録を含む身体検査は、研究と剖検の前に、各動物に実行される。
併用療法。受け入れられた獣医学診療に従って、動物の一般的な健康を維持するために、動物は併用療法(抗生物質や輸液療法など)を投与される可能性がある。併用療法は、必要に応じて投与される。
標本採集
血液。血液は末梢血管から採取される。全血を表している血液量はおよその量である。血液標本採集は次の計画に従う。
尿。フォーリーカテーテルが取り除れた後、尿標本はカーテル法によるフォーリーカテーテル(それが留置されている間)、或いは「パンコート」法を通して採取する。収集後、処理と分析のために標本は適切な試験室に転送される。尿標本採取は次の計画に従う。
臨床病理学
血液学y 血液試料の以下のパラメーターを測定する:赤血球数;ヘモグロビン濃度;ヘマトクリット;平均赤血球容積;平均赤血球ヘモグロビン濃度;平均赤血球ヘモグロビン;網状赤血球数;赤血球細胞形態;血小板数;血小板形態;白血球数;好中球数;リンパ球数;単球数;好酸球数;好塩基球数;他の細胞(必要に応じて)
凝固血液標本は、遠心分離され、血漿を抽出し、そして血漿標本は以下のパラメータに従って評価される:凝固パラメータ;活性化部分トロンボプラスチン時間;プロトロンビン時間;フィブリノゲン。
血清生化学検査.血液標本は、遠心分離され、血漿を抽出し、そして血漿標本は以下のパラメータに従って評価される:血清化学パラメータ;アラニンアミノトランスフェラーゼ;アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ;アルカリホスファターゼ;γ-グルタミルトランスフェラーゼ;総ビリルビン;血中尿素窒素(BUN );クレアチニン;カルシウム;リン;総蛋白;アルブミン;グロブリン;アルブミン/グロブリン比;ブドウ糖;コレステロール;トリグリセリド;ナトリウム;カリウム;塩化。
尿検査。尿標本は以下のパラメータに従って評価される:量;色;クラリティ;比重;尿沈渣顕微鏡評価;pH、蛋白質、ブドウ糖、ビリルビン、ケトン、血液、ウロビリノーゲン、亜硝酸塩、白血球を含む尿試験片分析。
安楽死。安楽死の日には、動物が最初に安定され、そしてコンプライアンス測定及びX線透視撮影が実行される。安楽死は、実行される(ペントバルビタールナトリウムの麻酔、35〜60 mg / kg、静脈内投与、効果的に、放血の後に)。
総剖検。完全な総剖検は、全ての動物に実施される。剖検では死骸と筋骨格系の検査、すべての外部表面と穴、頭蓋腔、脳の外表面、およびそれに関連する臓器や組織がある全ての腹部、胸部、骨盤腔が含まれる。膀胱上に特定の巣があるであろう。
組織の収集と保存。腹腔が開かされ、拡張膀胱は可視化され、その位置で撮影される。そして完全な膀胱(三角、吻合部位、および新膀胱)を取り除く、尿道が定着され、そして尿道は圧力下で固定できるために適切なカテーテルされ、それはコンプライアンス測定中に生成されたものと同様に、(病理組織学的)法に従う適切な色留め剤(すなわち10%中性緩衝ホルマリン[NBF])を使う。21から48時間の10%NBFで21―48時間固定した後、組織は70%エタノールに移しされる。さらに、臓器(または臓器の標本)と下記の組織は、その場で検査され、検討され、解剖無しに、そして10%NBFまたは他の適切な色留め剤で固定される。
以下の組織が収集される:副腎(両方);動物識別(IDを保持するために剖検で収集する);大動脈;骨髄;胸骨;脳(大脳、小脳、脳幹);頚;精巣上体(両方);食道;目(両方)(ディヴィッドソン氏の解決法で修正された);胆嚢;心臓;小腸;盲腸;小腸;大腸;小腸;十二指腸;小腸;回腸(パイアー斑がある);大腸;空腸;大腸;直腸;腎臓(両方);涙腺(両方);肝;肺;リンパ節;下顎;リンパ節;腸間膜;リンパ節;腸骨;乳腺;光ファイバ(両方)(ディヴィッドソン氏の解決法で修正された);神経;坐骨;卵巣(両方);すい臓;副甲状腺腺;脳下垂体腺;前立腺;唾液腺;顎(両方);骨格筋;皮膚;脊髄(頸部、胸部、腰椎);脾臓;胃(心臓、胃、幽門);精巣(両方(ディヴィッドソン氏の解決法で修正された);胸腺;甲状腺(両方);舌;気管;子宮;膣;総病変/質量(ディヴィッドソン氏の解決法で修正された)。
組織学。固定尿新膀胱は背側半分と腹半分二つ半分に切られる(尿管は背面に膀胱を入れる)。膀胱は再び、膀胱組織の4象限を作成する頭蓋/尾線に沿って半分に切られる。組織の各象限から、最大0.5-cmワイドの3つの標本が収集される(完全な厚さ)。識別の補助として、標本は標本1(最も長い)から標本3(最も短い)の長さに縮小される。更に、組織の方向を支援するために、それぞれの標本の尾方端の漿膜/外膜の部分で刻み目の切込みをする。
手術のインターフェイスが明らかにされている場合、各象限から、本来の膀胱と新膀胱の手術のインターフェイスにまたがる領域から2つの標本(すなわち、標本1および2)が収集される。これらの標本は、膀胱に尿管が挿入するすぐ上の領域から采集される。各象限から3番目の標本(すなわち、標本3)は尿の新膀胱の標本を表す手術インターフェイスへの頭蓋領域から収集され、そして手術のインターフェイスにかかわらない可能性がある。
手術インターフェイスが明らかにされていない場合、3つの標本は尾部(すなわち、三角)から頭蓋(すなわち、頂点)まで直線的に収集される。
合計12個の標本が各拡張膀胱から収集される。組織の標本は、パラフィン包埋され、組織学的評価のために薄片にされる。薄片方法に関係なく、各象限から3つの標本が、1膀胱あたりに4ブロックがあるはずであるように、1ブロックに埋め込まれる。組織標本は、組織標本が薄片にされてる時に薄片は組織の表面(皮膜だけなどの)ではなく、すべての層を通過するように埋め込まれる。
組織病理学のためのスライドをヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)とマッソンの三重(エラスチン)で染色される。
また、尿管は、尿道、腎臓は、代表的な三角の標本、および局所リンパ節は整えられて、パラフィンに包埋され、そして区分されるで。スライドはH&Eで染色される。
膀胱壁の厚さ。各節の肉厚量の定量的測定はグループ内および間の比較評価で実行される。膀胱壁の主な構成部、結合された尿路上皮/粘膜固有層(尿/ LP)と筋層(TM)の盲検は接眼マイクロメータを4×倍率にし、手動で実行され、網線として指示される。次に網線はミリメートルに変換され、そして尿/ LPは、TM、および総壁の平均厚さが計算される。組織学的グレーディング段階で近似解剖学的に常態(つまり、「解剖」)として解釈されたの節は、比較分析のために評価される。そして、これらの測定は、上記3つの部分、膀胱(すなわち、三角、中間、および頂部膀胱領域)の相対的な厚さの比較、そして総肉厚の総合的な一貫性、その構成部品の比率、および割合の算定に使用される。すべての値が平均値の式で表示される。
統計分析。データは動物による個々の値と計算及び標準偏差による概要値として表示される。体重、血液学、凝固、および血液生化学検査の統計分析は実施される。適切な統計テストを判別するには、各データセットはSAS(登録商標)システムを使用して統計的決定ツリーを受けるべき。統計分析のために、間隔ごと、グループごと、性別ごとに少なくとも3匹の動物が必要となる。データは最初に、差異の均一性を測るためのレヴィンのテストを受け、そして常態を測るためにシャピロ-ウィルクテストを受ける。前提条件を拒否するいずれかのテストに有意水準A p ≦ 0.05は必要となる。両方の前提条件が満たされている場合は、単一の因子ANOVAは適用され、動物のグループを要素として、有意水準AP≦0.05を利用する。パラメトリックANOVAが、有意p≦0.05である場合は、ダネット検定が対照群と各テストの記事投与群間の有意差を識別するために使用される。パラメトリック前提条件のいずれも満たされてない場合は、クラスカル- ワリスのノンパラメトリックANOVA手順は、集団間の有意差(p≦0.05)を評価するために使用される。このANOVA差が大きい場合、ダンの多重比較試験が適用され、再びの有意水準p≦0.05利用する。
例12- 三角温存摘出後の新膀胱拡張構築の生体内移植
上記の例で説明されたイヌ科の対象に新膀胱拡張構造物の移植に続き、移植された構造物は蛍光透視像及び容量とコンプライアンスで検査される。図75は4カ月の移植された構造物の膀胱X線造影を示している。Aは膀胱由来のSMCsのある移植された構造物に対応する。Bは血液由来のSMCsのある移植された構造物に対応する;Cは脂肪組織由来のSMCsのある移植された構造物に対応するDは天然膀胱の基線に対応する。図76は移植された新膀胱構造物の(A)容量と(B)コンプライアンスを示している。すべての血液学と血液生化学検査は、すべての膀胱グループにおいて正常範囲内であることが分かった。
5ヶ月では、動物は、予想通りに体重が増え、また臨床的に順調に見え、そしてすべての血液学と血液生化学検査は、すべての膀胱グループにおいて正常範囲内であることが分かった。さらに、水尿管症/水腎症は全く観測されなかった。5か月に、脂肪由来平滑筋細胞のグループが、血液由来平滑筋細胞のグループに対して高い平均膀胱容量を持つことが見られ(i)、膀胱由来平滑筋細胞のグループ(10/10,0.01/20及び0/20 )の容量と近似(ii)していた。コンプライアンスは5ヶ月ですべてのグループの間に類似していた。図77は、動物の平均体重を示している。図78は、動物の平均血清クレアチニン値を示している。図79は、動物の平均BUNを示している。図80は、動物の平均アルカリホスファターゼ(ALP)を示している。図81は、動物の平均総タンパク質を示している。図82は、動物の平均白血球数(WBC)を示している。図83は、(血液)及び図84(脂肪)は移植された構造物の膀胱のX線造影を示している。表12.3は、天然膀胱対新膀胱足場構造の容量を示している。
例13-完全再生膀胱の特性
序論と目的:新膀胱の耐久性、機能性、および総数平滑筋細胞(SMC)を多形性低悪性腺癌ベースの生分解性高分子足場に移植する効果は、イヌ科の動物で根治的膀胱切除術および自己新膀胱置換(NBR)構造物の注入により評価された。
方法:NBRは3つの密度でSMCに移植された:25、12と4 x 106個の細胞/構造物(n= 8/grp)。全く膀胱切除術された膀胱がすぐに再移植された(R)グループ(n= 8)は、グループは抑制として機能した。寿命診断(X線、尿検査、尿力学)は9カ月の研究期間で行われた。体外薬理学的および組織学的研究は、研究終了時に新膀胱組織で実施された。
結果:動物は、臨床的に健康、自制であり、移植3週間後に排尿することができた。移植9カ月後では、すべての尿流動態コンプライアンス値と新膀胱組織(粘膜と漿膜内膜、排尿筋、血管系、神経構造を含む)のある機能的な膀胱グループ(NBRとR)が天然膀胱と一致することが示した。様々な濃度のカルバコール(Car)とフェニレフリン(PE)に対しての収縮応答は、すべてのグループにおいて類似していた。しかし、α-β- メチレン-ATP(AA)に対しての収縮応答は、RとNBRが25 x 106 SMCに移植するだけで明らかになる。電気刺激(EFS)を受けた膀胱組織片のロジスティック解析は、すべてのグループに同様のEC50と傾斜因子値を示した。
結論:自己新生膀胱置換構造体は、生来の膀胱と類似して、組織のと尿動態のと薬理的な特徴である完全な器官として膀胱を再生させることができ、外科的な移植の後で9 moに至るまで恒久性である。病的な組織発生、免疫の反応、或は新生膀胱再生への全身的な反応は、形跡があらなかった。尿動態のと薬理的な反応は、自己新生膀胱置換構造体につき播種された自己のSMCsと、組織再生を達成している12 x106 SMCsと最終的な再生の結果、Rと類似して組織再生、尿動態のと薬理的な結果を成し遂げている25 x106 SMCsと尿動態の結果の間で、正相関を示唆する。
例14-再生膀胱サイズの適応制御
器官サイズと構造を維持する恒常性制御は、特定の臓器、組織、体重やサイズとの複雑な関係です。組織再生または器官復元の間、調節的発生か器官サイズの回復と細胞や組織の損失の後の構造か実質欠損を観測できる。再生式療法の目標は構造と機能の回復と受取人の適応的調節の両方が含まれている。細胞移植されたPLGAベースの足場注入された、膀胱切除術を受けた動物の適応的調節は二分脊椎神経因性膀胱を伴う子供の自己テンジョン新膀胱拡張(TM)(NBA)の第II相臨床試験の初期結果に基づく適応的調節と比べられる。
新膀胱容量と体重は、細胞移植されたPLGAベースの足場注入された、膀胱切除術を受けた動物の移植6ヶ月後で測定した(p.i.)。膀胱圧容量と排尿間隔(VI)は測定され、そして公式予測膀胱容量(FPBC)は基線で計算され、2つの年齢と体重にマッチした第II相NBA臨床試験の対象(PT1 と PT2)のNBA移植の1 2ヵ月後に行われる
注入された動物は研究期間に健康と自制的のままにいて、そして新膀胱容量は、6ヶ月に早く体重との一貫性を実現した。新膀胱組織の組織学と免疫組織学は天然膀胱に似た構造と機能、膀胱の再生を示した。PT1の基線容量は33%のFPBCでした。p.i. の12カ月では、PT1容量は、基線から84%増加し、60%のFPBCを達成した。PT2のは、ベースラインでFPBCの100%の容量と12ヶ月のパイを持っていたVIは、両方のPT1、PT2の増加となった。
これらの結果は、動物と人間の受取人の体の大きさに自己新膀胱の再生成は適切に成長しているを示した。これらのデータは、テンジョン自己新膀胱拡張(TM)注入によって誘発された新膀胱は、受信者のニーズに生体反応しているという結論を支持する。
実施例15新生膀胱再生における生体力学刺激法(膨張と収縮の繰り返し)の役割
生体力学刺激は、組織再生と最適治療を促進する方法として知られている。膀胱の再生を、膨張と収縮(充填、貯蔵、排尿)により生体力学的に刺激する。このサイクリングは子宮内の胎児期に始まり、幼児期早期の人体における機能的な膀胱の発達に貢献する。先天性(即ち、二分脊椎)又は後天性(即ち、脊髄損傷)の機能障害に起因する神経因性膀胱を持つ患者においてこのサイクリングが阻害されると、重大な機能的、構造的な変化が引き起こされる。
膀胱を切除し、細胞を播種したPLGA足場を移植した動物での膀胱組織再生に対する膨張と収縮の効果を評価し、そこで得た知見を、二分脊椎に起因する神経因性膀胱を持つ患者におけるTengion 自己 NEO-BLADDER AUGMENT(TM) (NBA)の臨床試験(第2段階)結果に応用した。
移植後の新生膀胱の膨張と収縮を、移植後2週間の動物において、1週当たり3日の頻度で開始した。3個の膨張と収縮パラメーターを収集した:総週数、時間/日、総時間数。平均パラメーターに基づいた尿流動態測定を三つの膨張と収縮群に対して実施した:高 (10 週、>3.75 時間/日、<60 時間)、低 (10 週、<2.25 時間/日、<25 時間)、及び 膨張と収縮なし。高群は、改善されたコンプライアンスと低群 (p < 0.0001)よりも平均して3倍高い容量を持つ新生膀胱を発達させた。HIGH群は、移植後6ヶ月までに自然ベースライン容量の90%を達成し、その一方、低群では40%を達成しただけだった。膨張と収縮させない動物(尿失禁)は、管状の尿路組織迂回路を発達させた。新生膀胱壁の組織学的検査により、膨張と収縮させた膀胱中には、より自然な組織構造と細胞外基質組成物(例えば、エラスチン)が確認された。NBAを研究した第2段階早期のデータによると、術後の膨張と収縮で問題(例えば、開いた膀胱頸部、低圧の重症逆流)がある患者の予後は、これらの問題のない患者と比較し、臨床、尿流動態的に劣っていた。
動物とヒトにおいて、自己細胞を播種したPLGA足場の移植後の再生治療を促進するためには、初期の移植後膨張と収縮が不可欠である。前臨床研究から得た知見は、NBA試験の第2段階から得た初期知見に一致しており、膀胱再生における膨張と収縮の重要性が確認される。
図85は、ヒト膀胱の発達における膨張と収縮の役割を示している。コラーゲンの減少に伴い筋肉と弾性繊維の増加が認められた。出産が近づくと括約筋の緊張が高まり、膨張と収縮グ動態を促進する(Wahl 他.BJU Int、2003. 91:255)。図86は、加齢と尿排出量増加に伴う膀胱容量の増大を示している。尿産生の増加が膀胱容量の増大を促進する(Kim 他. J. Urol、1991;146:524)。
図87A-Cは、膨張と収縮が再生結果に影響を与えることを示している。同じような大きさの新生膀胱足場を持つイヌの二つのグループを検査し、膨張と収縮数を増やすと膀胱容量が増大することが確認された。図87Aは、膨張と収縮させた移植新生膀胱と膨張と収縮させない移植新生膀胱の間の組織学的な比較を示している。膨張と収縮させた膀胱中にエラスチン繊維が観察された。図87Bは、2個の異なった膀胱間の、膨張と収縮時間に基づく容量の差を示している図87Cは、膨張と収縮させた膀胱と膨張と収縮させない膀胱の容量の対比を示している。
図88は、膨張と収縮による再生増強効果の臨床成果への移転を示している。新生膀胱が移植されて膨張と収縮が可能なヒト患者の膀胱容量が、膨張と収縮が不可能な患者に比べて改善されていることが観察された。このことは、膨張と収縮又は生体力学刺激が再生を促進し、臨床成果の改善にとって重要であることを示唆している。
実施例16 − 筋肉と同等な構造体
3次元(3-D)構造体をPGA/PLGAフェルト材から作製した。具体的には、PLGAで被覆したPGAフェルトで作られた多孔質の分解性足場を3次元の膀胱形に形成し、細胞を播種した。図9A-Eで、追加された構造体を示す。
最適な足場構造を決定するため、7個の異なった足場構造体を事前に形成し、外科的に適合性試験を行った。各構造体に、10段階(1=適合性最低、10=適合性最高)の品質等級を付けた。7種類の足場構造体の概要を、以下の表16.1で示す。
外科的適合性試験の結果を、以下の表16.2で示す。
*他の足場よりも高い温度で滅菌された。
実施例17 − インビボ
研究スケジュール − インビボ:研究開始前の処置(生検):Day (-20) - (-30);研究開始 (Day 0):研究開始前の生検後、約 20 − 30 Days ;解剖開始:Day 30 ± 3d 及び Day 84 ± 3d;予備報告:病理報告の受領後2〜3週間後;最終報告提出:予備報告承認の2週間後;インビボ研究の完了: 84 日± 3日
研究用動物:俗名:ヨークシャー豚;種:Sus Scrofa;動物の数(性別)雌12匹min、雄2匹min.;年齢範囲:記録済;体重範囲:>45 kg
研究デザイン:研究デザインを以下の表17.1で示す1 ((a): 組織ドナー及び研究用動物 (b):ポリ(ラクチド- co -グリコール酸)の足場メッシュ + 自己平滑筋細胞 (c) 尿のみ (d) 動物30匹の解剖前試料 (e) 平滑筋細胞 = SMC)。
試験デバイス:新生膀胱拡大構造体w/膀胱平滑筋細胞(SMC);説明:上記の実施例に記載されている足場No.1 (楕円形 長さ10cm×幅3.7cm (図5A最上部の構造を参照) ;2次元表面積29.1 cm2)は、合成ラクチド−コ−グリコリド酸ポリマーと自己膀胱平滑筋細胞から構成される。標識細胞数:構造体に播種されたSMCの数を分析証明書に表示する。保管温度:22°C ± 5.
技術的及び分析的処置
体重
手順の説明:動物の体重を、調整済みの天秤ばかりで測定した。
手続きの回数/持続期:ベースラインとして、移植手術前、一ヶ月目は毎週、その後は毎月一回(±2 日間)、及び解剖前。
外科手術の準備
手順の説明:動物を仰向けに横たえた。処置前に、滅菌尿カテーテルを注意深く膀胱へ挿入し、尿を抜いて膀胱を空にした。
手続きの回数/持続期:外科手術前における単独処置
生検(供給源は雄ブタのみ):処置の説明:腹部に正中切開を行い、膀胱へ接近した。膀胱組織を採取する前に尿を抜いて膀胱を空にし、約2 cm x 2 cmの大きさの膀胱組織片を摘出した。
生検用の組織を、すぐに組織培地を入れたジャーに無菌状態で保存し、パッケージした。更に、35mL以上の静脈血又は動脈血を採取し、血液の採取量と同量の0.05%ヘパリンを加えた滅菌EtOプラスチックジャーに無菌状態で保存した。
手続きの回数/持続期:供給源の動物当り1回、所要時間は1時間。
カテーテルの移植(雌ブタのみ):
手順の説明:留置カテーテルを頸静脈及び膀胱内部に挿入し、各動物の採血と尿採取を容易にした。
膀胱へのカテーテル挿入:腹部に正中切開を行い、膀胱へ接近した。尿を抜いて膀胱を空にしてから、8-9.5Frオープンルーメンカテーテル1個を挿入し、移動を防ぐため膀胱の中へ縫合した。挿入地点は、腹側の拡大予定部位から離れた、膀胱の腹側とする。膀胱に固定された後、カテーテルを動物の脇腹に設置したポートから挿入し、皮下ポケットに移植した。
頸静脈へのカテーテル挿入:右又は左の頸静脈周辺部を剃毛し、無菌処理を行った。9.5Frシリコンカテーテルを静脈へ挿入し、移動を防ぐために縫合糸で固定した。固定された後、追加の大型DaVINCIポートを取り付け、皮下ポケットへ移植した。
手続きの回数/持続期:拡大手術の前に最低10日間実施する。動物当り1回実施し、所要時間は約1時間。
尿試料の採取と分析(雌ブタのみ):
手順の説明:2個の尿試料をカテーテル又は皿受けによって採取した。約1.0 mL と 3.0 mLの試料を滅菌容器に採取し、それぞれを定性分析と定量分析で使用した。採取後24時間以内に、定量分析用の尿の上澄みを5 mL滅菌チューブに移して冷蔵した。採取時に、Multistix(登録商標) 10 SG 試験紙を使って定性的測定を行った。定性及び定量測定において着目するパラメーターは以下を含む:グルコース、ビリルビン、pH、タンパク質、ケトン、ウロビリノーゲン、比重、亜硝酸塩、バクテリア1(定量的測定のみ)、白血球。
手続きの回数/持続期:ベースラインとして、最初の48時間は定期的に、移植後から1、2、3、42週と8週、及び解剖前に行う。処置の所用時間は、動物毎に約15分間である。
膀胱透視造影
手順の説明:各動物の膀胱に対して、透視造影用の下処理を以下のように実施した:滅菌したオープンルーメンFoleyカテーテルを膀胱の挿入部位に挿入する; 注射器を装着し、尿を抜いて膀胱を空にする;3:1に希釈した生理食塩水を注入する:オープンルーメンカテーテル経由で造影剤を注入し、膀胱を満たす;透視造影を実施する。
持続期/手順の回数:基線、術後、42、8週、プレ生検。手順は、毎頭の動物に約10-30分間を持続する。
採血(雌豚だけ):
血液学、凝固、血清生化学、血中ガス血液学:血液学の標本は、2.0ml EDTA管で集められ、湿った氷の中に蓄えられた、或いは(2-8 °C)冷蔵された。標本は、氷中で分類され、包装された。分析が収集の24時間で行われた。血標本は、下記の具体的な限定要素のために評価された:白血球数(WBC);赤血球数(RBC);ヘモグロビン濃度(HGB);ヘマトクリット値(HCT)a;平均赤血球容積(MCV);平均赤血球ヘモグロビン量(MCH)a;平均赤血球ヘモグロビン 濃度(MCHC)a;血小板数(PLT);網状赤血球数(RTC);白血球百分率;a =計算された数値。
凝固1.8 mL血の全部は、1.8 mLのクエン酸ナトリウムチューブ(0.2 mLの 3.8%クエン酸ナトリウム)へ集まられた。クエン酸血標本は、15分間1、700 x gで遠心分離のために備えられるまで氷中で持たれた。凍っている前に、血漿は、半分に離れ、-70℃で凍結された。一つのバイアル瓶が選定された実験室へ送られた。外のバイアルが研究末のまで代替物として持たれた。クエン酸血漿標本は、-70℃で蓄えられた。
測られた凝固限定要素は、プロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン 時間(APTT)、繊維素原(FIB)を含んだ。
血清生化学:血清生化学の標本は、約4.0ml血清分離チューブに集められた。血標本は、(10 分間に10,000 RPM)遠心単離された。血清が無菌操作で析出された。血清は、平らに二つの別々のラベル瓶の間で単離された。血清が-70℃で凍結された。血清標本は、下記の限定要素のために評価された:グルコース(GLU)、血中尿素窒素(BUN)、クレアチニン(CRE)、総蛋白・血清蛋白(TPR)、アルブミン(ALB)、グロブリン(GLOB) 1、アルブミン/グロブリン割合(A/G) 1、カルシウム(CAL)、リン(PHOS)、電解質:ナトリウム(NA)、カリウム(K)、塩化物(CL);総コレステロール(CHOL);総ビリルビン(TBIL);トリグリセリド(TRG);アラニンアミノ基転移酵素(ALT);アスパラギン酸アミノ基転移酵素(AST);アルカリフォスファターゼ(ALK);ガンマグルタミルトランスフェラーゼ(GGT);1 =計算された数値。
血中ガス:血中ガス/スパンヘマトクリット/タンパク質監視:動脈血標本(〜1.0 mL)は、目盛りをつけたi-STAT分析器と適当なカートリッジを用いて集められた。標本は、下記の血中ガスの限定要素のために評価された:ナトリウム(NA) (mmol/L);カリウム(K) (mmol/L);イオン化カルシウム(iCa) (mmol/L);ブドウ糖(Glu) (mg/dL);ヘマトクリット値(Hct) (%) ;pH、PCO2 (mm Hg);PO2 (mm Hg);TCO2 (mmol/L);HCO3 (mmol/L);BEecf (mmol/L);pH;and SO2 (%).
血標本の収集手順の持続期/回数は、下記のように行われた:移植の後でと部検の前に基線、1、2、3、4、8週(プレ生検の動物標本は、30日を持続)、手順は、毎頭の動物に約15分間を持続する。
腹腔鏡検査の膀胱の増大:
処置の説明:
ポート配置と定位:4ポートの経腹膜技術は、腹腔内空間と膀胱へ腹腔鏡の通路を得るために採用された。四つの穴が作られた:一つの12-mmの原始的なポートが臍の上に〜1 cmで挿入された;二つの12-mmの派生的なポートが〜7−10cm側面まで臍の下に〜3 − 4 cmで挿入された;一つの5-mmの恥骨上のポートは、網、腹膜と新生膀胱の矯正の腹腔鏡検査の操作を容易にすると/或いはCO2を用いて気腹術を創立するために挿入された。臍の下の第5の腹部穴は、約15 mm Hgの圧力までにCO2を用いて気腹術を創立するためにベレシュ針で行われた。
膀胱増大:3種の膀胱増大方法は、利用されている脈管源に基づいて行われた。(例、大綱或は腹膜.)
腹膜を使用した膀胱拡大:張力をかけない状態で 1次12-mmポートまでの距離を越える長さの腹膜断片を、体内操作により腹壁から注意深く剥離した。構造体よりも大きな腹膜断片を12-mmポートの1個を通じて体外へ取り出し、注意深く広げて構造体に供した。播種した構造体を培地から取り出し、構造体番号を動物の記録と照合して検証した。次に構造体を外科用接着剤又は縫合糸を使って腹膜へ固定し、腹膜を構造体全体に重ね合わせた。滅菌した注射器を使って滅菌pH生理食塩水を徐々に注入し、構造体の湿りを保持した。構造体が固定され次第、腹膜/構造体から成るユニットを、12-mmポートを経由して注意深く腹腔内スペースへ挿入し、膀胱の腹側(尿管口の反対側)にある尿道のすぐ上に位置する膀胱円蓋上に縦方向で置いた。構造体の片側を、適切な寸法(例えば横寸法0.45cm、縦寸法0.47cm)のステープルを使って膀胱に固定した.膀胱へ確実に固定され次第、構造体の位置に沿って膀胱を縦切開し、切除した膀胱組織を構造体の固定されていない側へステープルを使って固定した。切開した膀胱内に残留している尿の腹腔内への漏出量を抑えるため、予防措置を講じた。構造体に重ね合わせた腹膜を全て、外科用接着剤を使って膀胱へ固定した。
綱を使用した膀胱拡大:張力をかけない状態で膀胱全長に足る長さの末端大綱断片を内視鏡と鉗子を使って丁寧につかみ、体内操作によって注意深く腹腔から剥離した。綱断片を、膀胱の腹側(尿管口の反対側)にある尿道のすぐ上に位置する膀胱円蓋上に縦方向で据えた。綱血管の片側を、外科用接着剤を使って膀胱表面へ固定した。大綱断片が膀胱へ確実に固定され次第、播種した構造体を培地から取り出し、構造体番号を動物の記録と照合して検証した。構造体を12-mmポートを経由して注意深く腹腔内スペースへ挿入し、固定した大綱の形に沿って膀胱表面へ縦方向に据えた。構造体の、固定された大綱に近い側を、適切な寸法のステープルを使って膀胱表面へ縦方向に固定した。固定した構造体と同じ形に沿って、膀胱を縦切開した。摘出した膀胱組織を、構造体の固定されていない側へステープルを使って固定した。切開した膀胱内に残留している尿の腹腔内への漏出量を抑えるため、予防措置を講じた。構造体に重ね合わせた大綱を全て、外科用接着剤を使って膀胱へ固定した。ルーメンカテーテルを使い、拡大した膀胱の漏れをチェックし、適切な閉合と水密性を確保した。4個の腹腔鏡用ポートを取り外し、適切な寸法の吸収性縫合糸を使って腹腔穿刺を縫合した。適切な寸法の吸収性縫合材を使い、皮膚を皮下縫合で閉合じた。
手続きの回数/持続期:Day0において動物当り1回、所要時間は約5時間。
大綱を使用した、開腹術による膀胱拡大:上述した大綱を使った膀胱拡大処置を、腹腔鏡方式から開腹方式へと変更した。比較のため、以下の表17.2に示すように、腹膜を使った膀胱拡大処置を開腹方式で2回行った。
表 17.2開腹術による研究デザイン
*前述のとおり
簡潔には、尾側から臍へかけて正中切開を行った。綱と腹膜を確認し、組織が膀胱の拡大部分を覆うに足りる長さになるまで、注意深く腹腔内スペースから剥離した。組織内の血管が維持されるよう注意を払った。次に膀胱を露出させ、尿が腹腔内へ浸入しないよう注意しながら、慎重に尿を抜いて膀胱を空にした。構造体の膀胱への増大は、前述した同じ処置に従った。確認され次第、適切な寸法の吸収性縫合材を使い、腹部の切開部を重ね合わせて閉合した。皮膚は、適切な寸法の吸収性縫合材を使い、皮下縫合で閉合した。
手続きの回数/持続期:動物当りの所用時間はDay0において最大5時間。
動物の犠牲と剖検。
手続きの説明:
予定外及び予定された安楽死 − 全ての動物にペントバルビタールナトリウムを投与(150 mg/kg、IV)し、安楽死させた。予定された安楽死は、生検当日(雄ブタのみ)、拡張処置後30日目(Day30)及び84日目(Day84)に実施した。
解剖 − 全ての雌ブタを解剖し、特に膀胱に着目する。完全な膀胱(膀胱三角、吻合部位及び新生膀胱)を可視化し、原位置で撮影してからひとまとめに摘出し、10% NBFで固定した。
手続きの回数/持続期:Day 30 及び 84 (±3 日)において、1つの処置の動物当り所用時間は約1/2時間。
組織学/病理学研究
手続きの説明:固定された膀胱(即ち、拡大された新生膀胱)を、正常な膀胱と構造体の間の境界面にまたがった独立部分を含むようにトリミングした。組織試料をトリミングしてパラフィン包埋してから、薄片にした。スライドをヘマトキシリン、エオシン(H & E)及びマッソントリクローム(エラスチン)で染色した。
手続きの回数/持続期:組織学的検査と病理学的検査を、試料の受領から3ヶ月以内に実施した。
結果:以下の表17.3と17.4に示すように、移植は、体重で計測される動物の成長能力とそれに伴う膀胱容量の増加に対して影響を与えなかった。図8fは、本発明の移植パッチの4週間目における透視画像を示す。
図89は、足場の移植を示す。
図90は、移植したパッチ足場の4週間目の透視画像を示す。
実施例 18脂肪由来の平滑筋細胞と間葉系幹細胞(MSCs)の比較
脂肪組織は、限定的な間葉系分化能を有する内皮細胞、脂肪細胞、平滑筋細胞、前駆細胞から成る異種起源細胞集団の典型である。我々は、定量RT-PCR、抗原発現、タンパク質フィンガープリンティング法、成長機構分析、機能分析を用いて、ヒト脂肪由来の付着間質血管分画(SVF)の細胞構成を評価した。我々は、平滑筋細胞コンパートメント用に脂肪SVFを濃縮する工程が培地組成に直接左右されることを明らかにしている。これらヒト脂肪由来の平滑筋細胞(Ad-SMC)は、ヒト膀胱由来の平滑筋細胞と機能的に区別がつかず、間葉系幹細胞(MSC)又は他の脂肪由来の前駆細胞集団とは表現型と機能面で異なっている。
我々は、定量リアルタイムPCR法 (TaqMan)を使い、初期「継代0」付着ヒトSVF由来細胞集団の細胞構成を研究した。付着SVFに由来するこの開始細胞集団が、内皮、平滑筋及び脂肪と関連したマーカーを発現する細胞から構成されているにもかかわらず、我々は、MSCの増殖に不利に選択された特定の培地条件下においてSVF由来の細胞を増幅することにより、著しい特性を持つ細胞集団を特定し、培養することができたMSC (Gong 他. Tissue Eng Part A 2008;15:319-330;Lund 他. Cytotherapy 2009;11:189-197)。Cytotherapy 2009;11:189-197)。主要な核及び細胞表面マーカーの 発現をFACS並びにRT-PCR (逆転写PCR) で分析した結果、分化能における部分的な重複及びMSCと組織学的に関連するマーカーの発現にもかかわらず、この細胞集団はMSCと比べて、より顕著な平滑筋細胞表現型を明らかに有している。また、この細胞集団はMSCと比べて顕著に少ない内皮特異的遺伝子を発現する。平滑筋細胞表現型の発現は、継代数、脂肪供給源、又は遺伝子組換えサイトカインと増殖因子を伴う分化の必要条件とは無関係である。さらに、平滑筋細胞で濃縮したこの集団は顕著なプロテオミクシグネチャを持ち、このことがこの集団とMSCを明確に区別している。最後に我々は、この平滑筋細胞様集団及びMSCの、トロンボキサンA2類似体U46619に対する正反対の反応を活用し、これら2つの細胞型の間にある顕著な機能的差異を実証した。総合するとこれらのデータは、この細胞集団が、脂肪細胞、内皮細胞及びMSCを含む他の種類の脂肪由来細胞と比べ、脂肪由来の平滑筋細胞(Ad-SMC)としてより正確に特定されており、独特な特徴を持つ細胞種の典型の1つであるという結論を支持している。
方法及び材料
脂肪組織の調製:ヒト脂肪の試料を皮下から又は脂肪吸引 (Zen-Bio、Research Triangle Park、NC)によって得た後、同量のPBS/ゲンタマイシン(Gibco) (5μg/ml)で3〜5回洗浄した。脂肪をフィルター滅菌したコラーゲナーゼ I (Worthington)(0.1%、DMEM-HG(Gibco)中の1% BSA)を使い37℃で1時間消化してから、50ml円錐チューブに入れ、300Gで5分間遠心単離された。間質血管分画をPBS/1% BSA中で再懸濁させてから、100 μmのSteriflip真空フィルターで濾過した。この細胞集団を再び300Gで5分間遠心分離してペレット化し、DMEM-HG + 10% FBS +ゲンタマイシン(5 μg/ml)の中で再懸濁させた。継代2最終段階の骨髄由来MSCをサプライヤー(Lonza)から入手した。平滑筋細胞マーカーの発現に対する培地タイプの影響を研究するため、SVF由来の細胞を α-MEM (Gibco) + 10% FBS、SMCM (ScienCell) 又は L15 (Sigma)の中で交互に懸濁させた。
Taq-Man qRT-PCR。RNAは、メーカーの指図によりRNeasy Plus Mini Kit (Qiagen)を用いてMSC とAd-SMCから精製された。cDNAは、メーカーの指図により2 SuperScript VILO cDNA Synthesis Kit (Invitrogen)を用いて2 μg of RNAから抽出された。cDNA合成に従って、各試料が1:10で希釈された。qRT-PCRは、ついで以下のように記録されたTaqManプライマーと探り針を用いて構成された。10μマスターミックス(2X)、1 μlプライマー/探り針、9 μl cDNA (1:10で希釈された)。
以下のTaqManプライマーは、平滑筋、内皮と脂質生成の遺伝子発現の評価のために使用された。SmαA(平滑筋αアクチン): Hs00909449_m1、SM22: Hs00162558_m1、ミオカルディン: Hs00538076_m1、SMMHC (平滑筋ミオシンサブユニット): Hs00224610_m1、カルポニン: Hs00154543_m1、アディポネクチン: Hs00605917_m1、FABP-4 (脂肪酸結合蛋白質#4): Hs1086177_m1、CDH5/VECAD (血管内皮カドヘリン): Hs00174344_m1、vWF (フォンヴィレブランド因子): Hs00169795_m1、PECAM1 (血小板内皮細胞接着分子#1): Hs00169777_m1、FLT1/VEGFR (VEGF受容体): Hs01052936_m1、KDR/FLK1 (胎児肝臓キナーゼ#1): Hs00176676_m1、TEK (チロシンキナーゼ、内皮): Hs00945155_m1. 18s rRNAが、内在性コントロールとして使われた。試料が膀胱平滑筋細胞cDNAと対照して調整済まれた。全てのプライマー/探り針をアプライドバイオシステムより手に入れる。全ての反応は、初期設定のサイクリングパラメーターで即時のサーマルサイクラーに行われた。PCRデータの分析は、比較のCtによって相対定量の方法で行われた。
配列-RT-PCR。qRT-PCR分析に基づいての即時の配列は、メーカーの指図により細胞表面マーカーPCR配列プラットフォームとSABiosciences MSC(PAHS-082A)を用いて、35回りで行われた。
FACs分析。データ点での0.5 x 106- 1 x 106細胞は、非特異的結合を防止するために塞がれたFc受容体と2%パラホルムアルデヒドに固定された。細胞は、それから、メーカーの推薦として細胞表面マーカーCD31、CD45、CD54、CD56、CD73、CD90、CD105、CD117 or CD133 (BD Biosciences)のために直接的な標識抗体と培養された。洗濯(PBS、0.1% Triton X-100)、の終わる後で、抗原検出がBD FACS AriaとGuava EasyCyte Mini発現アッセイ系を役立たせて適当な蛍光チャネルで行われた。最少量の5000-10,000催し物は、各試料から捕らえられた。
2Dプロテオミクスの分析。パッセージ制御骨髄由来( P2の端)のMSC とAd-SMCは、50mM Tris pH 8; 150mM NaCl; 0.5% NP40 とプロテアーゼ阻害剤の副作用、ロシュ溶菌緩衝液に溶解された。各細胞種類からの40μgタンパク質溶解液は、メーカーの指図によりpH 4.0-7.0 Zoom IEFストリップ(Invitrogen)の上で流れ出た。各ストリップは、4-12% Bis/Trisアクリルアミドゲルへ積まれ、2目の寸法の上で流れ出た ゲル剤は、メーカーの指図によりSYPROルビー染色(Invitrogen)としみをつけられた
パッセージ制御骨髄由来( P2の端)のMSC とAd-SMCは、50mM Tris pH 8; 150mM NaCl; 0.5% NP40 とプロテアーゼ阻害剤の副作用、ロシュ溶菌緩衝液に溶解された。各細胞種類からの40μgタンパク質溶解液は、メーカーの指図によりpH 4.0-7.0 Zoom IEFストリップ(Invitrogen)の流れ出た。各ストリップは、4-12% Bis/Trisアクリルアミドゲルへ積まれ、2目の寸法の上で流れ出た。ゲル剤は、メーカーの指図によりSYPROルビー染色(Invitrogen)としみをつけられた
結果
Ad-SVF中の発現マーカー。定義済みの内皮と脂肪細胞と平滑筋細胞の特異的なTaqManプライマーのパネルを用いて、平板培養の後で最初の24-48以内で組織培養フラスコの上に粘着された脂肪組織の間質血管断片から得られた細胞集団の量的なTaqMan RT-PCR分析は、行われた。これは、平滑筋細胞特異的な遺伝子の表現の上に時間と継代と保存液製剤へ影響の分析のために基線を確立すると同じように、最初の粘着された細胞集団に表現目印を分析するのに役に立った。図表91Aのように、アディポネクチンとFABP-4のレベルは、低いけれども探知できるし、残留脂肪の現存と調和して24-48以内で粘着された細胞集団に観察された。同様に、VECAD、vWF、PECAM、FLT1、FLK と TEKの表現に限定された内皮細胞集団は、この時点に示された(図表91D-E)。SMαA、SM22、ミオカルディン 、SMMHC とカルポニンの表現に限定された平滑筋細胞集団は、最も早く粘着された細胞集団以内で観察された(図表91B-C)。三つの細胞集団は、平板養の24-48時間以内に類似のレベルで検出されてできられた。以下に検討されたように、平滑筋細胞は、細胞集団の混合物より取り分けられた。
平滑筋細胞マーカーの発現は、保存液の類型に依存する。脂肪が多様な細胞類型から構成された異種性の組織であるゆえに、内皮細胞の上を覆う平滑筋細胞の豊富が保存液製剤の影響を受けるとの予期は合理である。非識別されたMSCsが骨髄と脂肪から分離されることは、厳密に保存液製剤に基づく(Gong 他 2009 supra) 保存液での上昇されたぶどう糖レベル或いは高い密度に成長の存在は、MSC拡張に対する選択ために現われる(Lund 他 2009 supra ; Stolzing 他) Rejuv Res 2006;9:31-35)。保存液製剤の調整が他の細胞集団とMSCの拡張に平滑筋細胞のための豊富に対して有用だと推論された。図表92A-Bに示されたように(保存液類型によりSMC目印の表現のTaqman 分析)、脂肪-SVFから平滑筋細胞の富ませられた集団の拡張は、厳密にDMEM-HG保存液に成長に基づく。α-MEM、SMCM 或いは L15の成長は、SMαA、SM22、ミオカルディン、SMMHC とカルポニンの減少された表現により示されたように、著しく減らされた平滑筋細胞表現型と関連する。
Ad-SMCは、MSCより接近して平滑筋細胞に似ている。Ad-SMC と MSCの遺伝子の表現のシグナチュアと関連する平滑筋細胞を査定するためには、半定量的なRT-PCRを採用された。図表93に示されたように、重要な平滑筋目印のカルポニン、ミオカルディンとSMMHCの表現は、MSCより平滑筋細胞ともっと類似しているという仮定を裏付けて、MSCと比べてもっと目立ってAd-SMCに断言された。次いで、SMC特異的な目印の表現の安定性は、5個以上の培養中の継代と多様な頼らない脂肪組織標本(n=4)に渡して査定された。図表94に示されたように、(継代に渡してRT-PCR of Ads)、SMαA、SM22、SMMHC、ミオカルディンとカルポニンの表現は、平滑筋細胞表現型の表現が期間にわたって安定であることを証明しながら、著しく一定であり、提供者に頼らないである。これらの観察は、もっと完全に区別されて表現型的に安定な細胞集団となるAd-SMCと一致する。
配列根拠のRT-PCR分析は、Ad-SMC とMSCの間で主要な目印の遺伝子表現に重要な差異を示す。SABiosciences MSC目印配列パネルは、(P2) Ad-SMC と MSC制御継代の間で遺伝子表現に差異を系統的に見分けるために使われてしまった。このパネルは、MSC多分化能と自己再生に関係された84個の遺伝子の表現状態の輪郭を描く。Ad-SMC とMSCの間で明確なほど見分けられた主要な目印の梗概は、表18.1に示される。
表18.1
著しい下向き調節(少なくとも十重)は、MSCと関係であるAd-SMCにGDF5、HGF、LIF、MCAM、RUNX2 と VCAM1のために観察された。著しい上向き調節(少なくとも十重)は、MSCと比べるAd-SMCにBMP6、CD44、と IL1βのために観察された。これらの主要な差別は、細胞集団或いは、遺伝子表現の中に、継代に依存しない一貫性を存続して観察された。(n=6、データが示されない)。
遺伝子表現分析は、SABiosciences表面印目配列を用いて続いた。主要な結果の概要は、表18.2に示された。この表には、Ad-SMCがP0 とP4に検査された。
表18.2
線維芽細胞の/間質印目ALCAM、COL1A1 と COL1A2の表現は、平滑筋細胞特異的な印目MYH10、MYH9 と MYOCDのように継代に渡して維持される。集団は、付着脂肪細胞での最小限の汚染であるということを示し、脂肪細胞印目RETNに対して役に立たない。重要的に、Ad-SMCが四つの継代以内でHLA MHC II負のステータスを捕らえるが、これらは、MHC II負であるMSCで主要な区別として、正のHLA MHC IIである。他の興味を起こさせる観察は、内皮印目下ENG、ICAM2、NOS3、PECAM1、SELP、TEK、VECAM とVWFの向き調節に一般的傾向により判断されたように、Ad-SMCが次第に継代でより少ない内皮となるということである。このデータは、図表95にRT-PCR分析に独立して確証される
脂肪由来の平滑筋細胞(Ad-SMC)と間葉系幹細胞(MSC)の遺伝子発現プロフィールを更に比較するため、ヒト間葉系幹細胞マーカー(SABiosciences; PCR アレイカタログ # PAHS-082A)のPCR遺伝子アレイ分析を実施した(データは示されていない)。その結果は、Ad-SMC、MSC、良く特徴づけられた非MSC細胞型、及びヒト大動脈皮内細胞(HuAEC)における、相同遺伝子の発現の程度を示している。分析した84個のヒトMSC遺伝子の内、初回分離においてヒトAd-SMCは、ヒトMSCと27%だけの相同性(遺伝子84個中、23個)を持っている(データは示されていない)。対照的に、良く特徴づけられた非MSC、HuAECは、MSCと49%の相同性(遺伝子84個中、41個)を持っている(データは示されていない)。これは、良く知られている非MSC細胞型であるHuAECに比べ、Ad-SMCのMSCに対する相同性が際だって低いという結論を支持している。このように、Ad-SMCはHuAECよりも更に非MSCs的であり、脂肪組織から単離されたAd-SMC細胞はAd-SMCであってMSCではないという結論を更に支持している。
Ad-SMCの細胞表面プロフィールは、MSCのそれとは著しく異なっている。我々は、通常MSCに関連する表面マーカーCD73、CD90、CD105 及び CD166の発現を、MSCとAd-SMCが共有していることを観察した(表18.1)。しかしながら以下で論じるように、これらのマーカーはMSCとの組織学的関連性以上の固有の生物学的意義を持っていない。細胞表面マーカーのRT-PCR分析による遺伝子発現は、図 96A-C (Ad-SMCs) 及び図 97A-B (MSCs)で示された比較FACs分析において全般的に反映されており、Ad-SMCがCD31+、CD45+、CD54+、CD56+、CD90+、CD105+であることを示している。重要なことには、Ad-SMCがCD45+ 及び CD117+であり、CD45- CD117-であるMSCとは明らかに異なった。CD73の発現は、既報の脂肪間質血管分画での発現と一致したが(da Silva Meirelles 他. J Cell Sci、119:2204 (2006))、既報の骨髄由来MSCでの発現とは異なる。我々は、小さな多機能細胞下部集団の存在を反映している可能性がある、小さいが特異的なCD133+ 細胞集団も観察できた。
継代管理されたMSCとAd-SMCは、特有のプロテオームシグネチャを持つ。図98は、MSC、膀胱由来の SMC、Ad-SMC、及びヒト大動脈平滑筋細胞の全プロテオームシグネチャの比較分析を示している。最上部の2つの枠では、Ad-SMCsがMSCと異なり、脂肪細胞や他の種類の幹細胞、前駆細胞から単離されたMSCとも明らかに異なることを示している(Roche 他; Proteomics 2009;9:223-232; Noel 他. Exp Cell Res 2008;314:1575-1584)。両方のゲル上の矢印は、MSCとAdSMC間の1つの違いを強調しており、それはpH勾配と分子量範囲における異なった位置でのタンパク質濃度である。MSCではこのタンパク質濃度が、pH7.0に近く、分子量60,000に等しいかそれ以上に位置している。対照的に、AdSMCではこのタンパク質濃度がpH 4.0に近く、分子量が60,000以下に位置している。またAdSMCは、pH 7.0におけるゲルの右外縁に沿ったシミで示されるように、pH7以上のタンパク質をMSCより多く持っていた。膀胱平滑筋細胞をコントロールとして分析した。囲みは、全ての試料における類似領域を示している。AdSMCのタンパク質プロフィールが膀胱由来SMC(左下の枠)のプロフィールに最も類似し、MSCで観察されるパターンと異なっている。大動脈平滑筋細胞を追加の平滑筋細胞コントロールとして分析した(右下の枠)。大動脈平滑筋細胞と膀胱平滑筋細胞のプロテオームシグネチャは、ほぼ同一である。総合すると、AdSMC、膀胱及び大動脈平滑筋細胞のプロフィール(これらはMSCのプロフィールと著しく異なる)における高度の類似性が、SMC(MSCではない)が脂肪組織から分離されているという結論を支持している。全てのゲルをSYPRO Rubyで染色し、タンパク質パターンを可視化した。
Ad-SMCの成長機構はMSCと著しく異なる。Ad-SMCの増殖能は、継代40まで順調に増殖させたMSCと著しく異なっている(Bruder 他、J Cell Biochem、64:278-294 (1997))。図99に示したように、Ad-SMCは培養の4〜5日後に増殖能の顕著な低下を示している。我々は、MSCとは異なり、Ad-SMCが接触依存性増殖阻害を示すことも観察した。これらの観察結果は、Ad-SMCが自己再生能力を持たず、そのため当然ながら幹細胞でも前駆細胞でもないことを示している。MSCは接触依存性増殖阻害を示さず、互いに重なり合い、形質転換細胞培養物中の病巣形成に似ていることが観察された。これは、既報の観察結果と一致している(Zhou 他. 2006 supra)
Ad-SMC と MSCは、U46619を使った処理に対して顕著な拮抗反応を示す。平滑筋細胞に係る分化経路の活性化に関与するシグナル伝達カスケードを対象とする小分子の効果を評価する取組みの一環として、我々はトロンボキサンA2類似体であるU46619に着目した。この類似体には、細胞内Ca2+レベルを増大させ、RhoA、CaM 及び MLC キナーゼシグナル伝達カスケードを活性化する効果がある。既報されているように (Kim 他. 2009、Stem Cells. 27(1):191 -199)、我々は、U46619 (1μM)を使った処理が、主要な平滑筋細胞マーカーミオカルディンとMSC中の SMMHC をアップレギュレートすることを確認した。しかしながら、図100で示されるように、Ad-SMCはこの同じ処理に対して、ミオカルディンとSMMHC発現の顕著なダウンレギュレーションを伴う反応を示した。これらの結果は、Ad-SMCと MSCの機能的差異を明白に証明している。
機能性マーカーの発現。図101は、中胚葉分化マーカーのRT-PCR分析結果を提示している。レーン内容、1:1: MSC コントロール、2:MSC 実験用、3: AdSMC コントロール、4: AdMSC 実験用、5: 末梢血コントロール、6: 末梢血実験用、及び 7: H2O. MSCとAdSMC中の中胚葉分化マーカーの発現が、脂肪生成分化をする。標準条件下(n=1)での増殖において、AdSMCはMSCと比べて著しく強いオステオポンチンを発現する。Oct4B(Oct4Aのスプライスバリアント)の発現(確立されている多能性マーカー(Kotoula 他、2008、Stem Cells 26(1): 290-1))は、MSCと比べ、脂肪由来細胞中で著しくアップレギュレートされている。MSCと脂肪由来細胞は、共に Oct4A.を発現しない。
図102は、MSC/AdSMC中のOct4A/Oct4B発現のRT-PCR分析結果を示している。レーン内容: 1:1: 膀胱 SMC、2: HFF-1 (ヒト繊維芽細胞)、3: MSC、4: AdSMC、5: 末梢血、6: H2O. 緊密に関連した転写アイソフォームであるOct4AとOct4Bの発現を、MSC、AdSMC、繊維芽細胞及びSMC レーンで評価した。全ての細胞株がOct4B (n=1)を発現したが、多能性マーカーOct4A(Gong 他. 2009 上記)の発現は観察できなかった。
検討。本報において、我々は脂肪由来細胞集団のマーカー発現を評価した。脂肪細胞は異種細胞型混合物の典型であり、内皮細胞、周皮細胞、平滑筋細胞、脂肪細胞及びMSC (Lin 他、Stem Cells Dev 2008;17:1053-1063)を含んでいる。異なった条件下で単離され、異なった密度と培地組成で増殖された脂肪の間質血管分画から成る付着細胞はしばしばMSCとしてグループ化されるが、異なる条件下で細胞組成物を確立する系統的な手法はない(Rebelatto 他、2008 上記、Liu 他. 2007 上記、Jack 他. Biomaterials 2009;30:3259-3270)。同様に、骨髄の単核分画に由来する付着細胞は、通常まとめてMSCと称される。しかしながら複数の研究施設が、異なってはいるが部分的に重複する表現型と機能特性を持つ、骨髄由来の別な幹細胞又は前駆細胞集団を単離したと主張している。ただし、これらがインビボでユニークな細胞型を代表している否かはまだ明らかになっていない(Ulloa-Montoya 他、J Biosci Bioeng 2005;100:12-27; Ratajczak 他. Folia Histochem et Cyto 2004;42:139-146; Lodie 他. Tissue Eng 2002;8:739-751) 。同様に多くの研究において、脂肪とMSC由来の骨髄間の機能と表現型の相似性の程度に関し、相反する結論が報告されている(Roche 他. Proteomics 2009;9:223-232; Noel 他. Exp Cell Res 2008;314:1575-1584)。全ての非骨髄由来間質細胞のMSCとしての 同定に対し、インビボの異所性小骨形成アッセイの結果に基づいた疑義が提起されており、これによると骨髄由来の間質細胞だけがMSCとして分類され得る (Kalz 他. Stem Cells 2008;26:2419-24)。これらのデータにもかかわらず既刊文献の評価から判断すると、定量PCR系譜解析で評価されるように、脂肪由来MSCと骨髄由来MSCが、部分的に重複するが別個の分化能を共有していると合理的に結論してもよい(Roche 他. 2009 上記.、Noel 他. 2008 上記.、Rebelatto 他. 2008 上記、Liu 他. 2007上記)。
我々はTaqMan Q-RTPCRを使って、初期の付着脂肪間質血管分画由来細胞の分析に着手した。図91と92で示すように、我々はSmαA、SM22、SMMHC、カルポニン及びミオカルディンの発現によって示される平滑筋細胞表現型を常に示す細胞集団を分離することができた。内皮細胞と脂肪細胞マーカーもプレーティング後最初の24〜48時間内に検出可能だが、この集団は継代と共に他の細胞特性の出現頻度を低下させながら平滑筋の特性は保持する(図 91、92、表 7)。脂肪生成マーカーの発現は急速に弱まることが観察された(表7)。脂肪由来MSCの分離とそれに続く組織工学的応用について述べている他の報告書とは異なり、平滑筋遺伝子発現シグネチャの分化を引き起こすために誘導サイトカイン及び追加の外因性増殖因子は必要なかった(Jack 他. 2009 上記)
International Society for Stem Cell Research、7th Annual Meeting 、7月 8〜11日、2009)。Ad-SMCの分離は、図91Bに示すように、特定の培地組成中の分離に直接依存し、平滑筋細胞マーカーの発現はDMEM-HG培地における増殖を条件とする。他の培地タイプでの増殖は平滑筋細胞特性を弱化させ、また間葉系前駆細胞集団を更に濃縮する可能性がある(Gong 他. 2009 supra) この結果までに、培地中の高グルコースの存在と高密度に拡張は、旺盛なMSC 分化能の表現に有害で示された。(Lund 他. 2009 supra) 追加研究によれば、高グルコース培地と比べ、低グルコース培地におけるMSCの骨形成分化能が増大することが示されている(Jager 他. Biomed Tech (Berl) 2003;48:241-244). グルコースや他の糖類と関連する糖化最終産物の存在が、MSCの分化能を低下させる可能性があることが示唆されている(Kume 他 J Bone Miner Res 2005;20:1647-1658). 総合するとこれらの観察結果は、高濃度、高グルコース条件下における脂肪SVF由来細胞の増殖が、平滑筋細胞表現型にとって有利な選択となり、MSC特性の獲得に不利になることを示している。
遺伝子発現の手法を継続し、我々は表18.1と18.2でアレイPCRデータパネルを使って、Ad-SMCとMSCを一貫して明確に識別するマーカーのコア集団を同定した。BMP6、CD44 及びIL-1βは、Ad-SMCにおいてMSCと比べ少なくとも30倍強い発現を示し、その一方、GDF5、HGF、LIF、MCAM、RUNX2 及びVCAM1は、MSCにおいてAd-SMCと比べ少なくとも30倍強い発現を示している。これらの結果は複数のドナー試料(n=3)において相互に一貫しており、我々の観察結果がドナーのばらつきや遺伝子発現レベルでの不規則変動の結果でないことを示唆している。BMP6は、MSC分化中の軟骨形成と骨形成の制御に関わるTGF-βスーパーファミリーの一員である。(Henning 他. J Cell Physiol 2007;211:682-291; Friedman 他. J Cell Biochem 2006;98:538-554)。我々のデータは、アップレギュレートされたBMP6発現がAd-SMCと脂肪由来MSCを明確に識別することを示しており、骨髄由来MSC に比べ、BMP6発現が下方調整されていることが観察された(Henning 他. 2007 上記) 興味深いことには、外因性BMP6を持つ脂肪由来MSCの誘発が、TGF-β1受容体の発現におけるアップレギュレーションを引き起こす(Henning 他. 2007 上記) TGF-βシグナル伝達経路は良く確立されており、平滑筋特異的発達経路の活性化において重要な役割を持っている(Owens 他. Acta Physiol Scand 1998;164:623-635)。CD44は良く知られたMSC様細胞マーカーであり、細胞増殖、マイグレーション及びホーミングと強く関連している(Khaldoyanidi S. Cell Stem Cell 2008;2:198-200)。脂肪由来及び骨髄由来MSCのCD44発現は、全体的な発現、スプライスバリアント及び遺伝子発現の全体的な安定性に関して類似していることが示されている(Peroni 他. Exp Cell Res 2008;314:603-615)。
Ad-SMCではなくMSCで交流安定化されていた遺伝子は、MSCの軟骨と骨形成分化の制御に重要であることが示されているGDF5を含くむ。HGFおよびその同族体の受容体は骨髄由来MSCの運動と増殖の制御とで明らかにされていた。(ノイス他。幹細胞2004;22:405-414)。以前の報告と一致し、私たちは親炎症性サイトカインLIFの表現がMSCsとAd-SMCsを区別する主な特徴であることを観測した。(Majumdar 他. J Hematother Stem Cell Res 2000;9:841-8) MSCの前駆状態の主要なマーカーとしてのLIFの行為は、最大の分化能のプロキシとして提供している。(Whitney 他. Tissue Eng Part A 2009;15:1)。CD146の表現が密接にこの観測は、AD - SMCが平滑筋細胞集団を表していることを我々の解釈と一致している。MCAMは(CD146)脂肪(Zannettino 他 J Cell Physiol 2008;214:413-421)及び骨髄(Baksh 他 Stem Cells 2007;25:1384-92)の血管周囲のニッチから誘導したMSCと密接に関連している細胞表面マーカーである。(Zannettino 他 2008 supra; Baksh 他 2007 supra; Gronthos 他 J Cell Physiol 2001;189:54-63) CD146の表現は、脂肪や骨髄からMSCのような細胞集団の幹細胞の可能性と相関性があると表示する。(Zannettino 他 2008 supra; Baksh 他 2007 supra; Gronthos 他 J Cell Physiol 2001;189:54-63) RUNX2は、MSCの分化骨形成の調節に関与する転写因子である。(Isenmann 他、Stem Cells 2009) 細胞接着マーカーVCAM1(CD106)の表現も脂肪(Zannettino 他 2008 supra)や骨髄(Brooke 他 Stem Cells Dev 2008;17:929-40)から単離されたMSCの特徴である。最終的に、Ad-SMCは脂肪質または骨髄から分離されてるMSCと違って、MHCのII組の強発現を示す。(Niemeyer 他 Tissue Eng 2007;13:111-121)。
つまり、遺伝子発現データは、Ad-SMCがMSCのような細胞集団ではなく、完全に差別化されたSMC集団を表していることを示す。この解釈は、図39における、MSCとAd-SMCの2D全体のプロテオーム比較で確証されます。(図39はAd-SMCとMSCには特有の、そして、ユニークなプロテオミクス署名があるのを示します。) それと脂肪由来MSCおよび他のクラスの幹細胞や前駆細胞のプロファイルとAd-MSCのプロテオミクスプロファイルの追加比較の重要なオーバラップは見られなかった。(Noel 他. 2008 上記; Rebelatto 他. 2008 上記). 複数の成熟した平滑筋細胞マーカーと内皮細胞マーカーの損失、および機能収縮の関連表現が膀胱由来の平滑筋細胞(Basu 他、2009; 準備中; Basu 他. 幹細胞研究国際学会、第7回会議、7月8-11、2009)に匹敵するから見ると、これらのデータは、実際にMSCs ではなく、Ad-SMCが平滑筋細胞であると強く示唆した。
私たちは骨髄由来のMSCとFACSからのAd-SMC両方の主要なMSC関連細胞表面マーカーの発現を検討してきた。両方の細胞種類は、CD90+とCD105+に一貫して陽性であったが、CD73には陰性であった、MSCの確立したマーカーが標準のMSCマーカーの表現におけるかなりの不均一性の可能性を示した。(Chamberlain 他 幹細胞2007;25:2739-49). また、Ad-SMCはCD45+CD117+であることが観測され、脂肪質か骨髄由来のMSCとそれらを明白に区別している。(Lee 他 細胞生理生化2004;14:311-324) CD45+コンパートメントの識別は、MSCとは異なり、造血起源の亜母集団の存在を示唆している。これらの観測にもかかわらず、我々はMSCとCD73、CD90およびCD105の細胞表面マーカーとの識別はどの本質的な生物学的意義も持たず、その分野の歴史的の進行中に作成された成果物と見なすことができると信じている。(Dominici 他 2006 supra). AD-SMCはMSCS(例えば、CD90およびCD105)と典型的な細胞表面マーカーの一部を共有することがあるが、それらは明らかにMSCから他の確立したマーカー(CD34、CD45とCD117)の表現において明確に区別されている。私たちと他の研究者が、複数の完全に微分された細胞種類がMSCと一般的に関連している同じマーカーの多くを確実に表現していることを観察したとき、これらのマーカーには差別している値があると信じるのはさらに難しいものである。(Jones 他 リウマチ学2008;47:126-131) 現在の報告に、MSCとAd-SMCの転写学、プロテオーム及び機能分析の結合はMSCとAd-SMCが生物学的に異なる細胞集団を表すかどうかを評価する上で有用されていることを示した。(Lodie 他 2002 上記; Gong 他 2009 上記).
我々のAd-SMCとMSCの機能的な比較は、平滑筋細胞の特定の信号伝達経路を標的とする低分子医薬品の成長速度、平滑筋表現と応答の分析に焦点を当てた。幹細胞の重要な特徴は、自己複製能力である。MSCは、多系統分化の可能性を維持しながら、少なくとも25から40までの通路に広がる能力によって示したように、自己複製能力を持っていることを証明した。(Tintut 他 Circulation 2003;108:2505-2510; Reyes 他 Blood 2001;98:2615-2625; Bruder 他 J Cell Biochem 1997;64:278-294). 対照的に、図99に示したように、4-5日間以内の初期めっきに、末端分化平滑筋細胞の種類の識別と一致している、潜在成長力への急激な低下を示した。自己更新のための任意の能力の兆候は全くない。
幹細胞や前駆細胞集団のもう一つの特徴は、外因性成長因子、ECMと細胞外環境の他の制御コンポーネントの組み合わせを使用する明確な発生系譜に沿って指示された分化のための要件である。多くの報告が組織工学と再生医療における脂肪や骨髄からのMSCの調節分化に焦点を当てている。例えば、脂肪由来のMSCは、ネズミ膀胱切除モデルで機能性に関する証拠を示したポリマー膀胱ドーム状足場構造を移植するまでの6週間前に100U/mlヘパリンを含む誘導メディアを使用して平滑筋のような細胞に分化した。(Jack 他 2009 上記) また、スフィンゴシルホスホリルコリン、ブラジキニンとアンジオテンシンIIを含むTGF-βの信号伝達経路を標的するTGF-β及び小分子アゴニストは、脂肪や骨髄由来のMSCから平滑筋のような表現型への誘導に使用されている。(Gong 他 2009 supra; Kim他. Cell Signal 2008;20:1882-1889; Jeon 他 2006 supra; Kim 他 Int J Biochem Cell Biol 40;2482-2491). それほど標的ではないアプローチとしては、DNA脱メチル化剤5-azaCを利用するエピジェネティクス再プログラミング法は、心筋細胞のような表現型を直接骨髄由来のMSCに向けるのに使用された。(Xu 他 Exp Biol Med 2004;229:623-631). 脱分化脂肪細胞はまた、TGF-βを使用して平滑筋系統によって動かされ、そしてマウス膀胱損傷モデルにおける膀胱組織の再生に貢献することが報告された。(Sakuma 他 J Urol 2009 Jul;182(1):355-65. Epub 2009 May 20). 最後に、骨髄由来の細胞からの平滑筋細胞のTGF -β誘導分化するための方法が記載されている。(Kanematsu 他 Am J Pathol 2005;166:565-573; Becker 他 Int J Artif Organs 2008;31:951-9). 総合すれば、これらの報告は、通常、誘導性サイトカインまたは小分子アゴニストによる治療前にマーカー関連するどんな平滑筋細胞の表現もないMSCのような集団を提示していた。
明白な対比には、平滑筋細胞集団を直接的に分離して、完全に発達した平滑筋細胞と典型的に関連されたそれらを含んでいる全ての主要的な平滑筋関連の目印を表現している脂肪から拡張することができた。(Owens 他.Physiol Rev 2004;84:767-801). これの観察は、Ad-SMCがすでに最初の分離ともっと完全的に区別された細胞集団を示すと、根本的にMSCと異なるということを強く暗示する。外因性増殖因子の付加なしに高密度に複数継代のあとでブタ骨髄由来MSCにより特徴のような平滑筋の獲得は、近ごろ現れた。(Shukla 他 World J Urol 2008;26:341-349)。しかしながら、この報告と対比して、我々は、複数の、依存しない組織標本に渡して最も初期の継代から明確的な平滑筋細胞表現型をつれて、Ad-SMCを分離できる。(図表94に論証されたとおりのn=174). 合流に長期増殖を通る「分化」のための必要条件があらない。
異種独立キナーゼに渡してシグナル伝達収縮調節とともに複数の平滑筋細胞特異的な遺伝子経路の協調的調節、いわゆる励起転写カプリング (Wamhoff 他 Circ Res 2006;98:868-878)は、U46619、トロンボキサンの安定性のアナログA2 (TxA2)に調節される。U46619での治療は、脂肪由来MSCと平滑筋細胞特異的な印目SMαA、カルポニン、smoothelin と SMMHCの関連向き調節に増えられたSRFの表現とミオカルディンとなることを示された。(Kim 他 2009 supra) 励起転写カプリングにTxA2の効果は、源細胞にかかわらず、MSCのために機能指紋として仕える見える。我々は、骨髄由来MSCが脂肪由来MSCのために観察されたようにU46619とともに治療時で平滑筋印目の向き調節を再現することに気がついた。2009 上記) しかしながら、図100に示されたように、Ad-SMCは、主要的な機能的な平滑筋印目ミオカルディンとSMMHCの明瞭な向き調節を示して、まったく反対のふうにU46619に反応する。疑いもなく、励起転写カプリングに必要であるシグナル伝達の組織と規制は、MSCに観察されたように、Ad-SMCにまった異なる。この観察は、Ad-SMCが機能上脂肪或は骨髄由来MSCと性質が異なって、実に生物学上の独特な細胞集団を表現するという決定的な証拠を与える。
Ad-SMCsは、何処から源を発されるか、MSCとのかれらの関係が何であるか?脂肪が高密度の脈管Z組織であり、多数の研究は、平滑筋と同じようなMSCのと内皮細胞の潜在的な源として、血管周囲ニッチを関係させてしまった。(Caplan J Pathol 2009;217:318-324) MSC分化能でのペリ細胞は、多臓器システムからと同じようにうまく、血管から直接的に分離されてしまった。(da Silva Meirelles 他 2006 supra; da Silva Meirelles 他 Tissue Eng Part A 2009Feb;15(2):221-9; Tintut 他 2003 supra) しかしながら、SMαA+細胞を、全ての毛細血管、細動脈と脂肪由来血管床の細静脈に制限するが、STRO-1、主要なMSC-特異的な印目の表現は、しっかりと内皮に関連され、その上に血管のサブセット以内だけで見つけ出された。(Lin 他 Stem Cells Dev 2008;17:1053-1063). さらに、幹細胞-特異的な印目Oct4のとテロメラーゼの表現は、多能性前駆細胞が脂肪以内で珍しいことがわかって、めったに観察されなかった。(Lin 他 2008 supra) これらの観察は、そっくりそのままMSC、内皮と広い血管周囲ニッチ以内で明確な区域を占めている平滑筋を指す。それでも、可能性が開発の系譜に渡して相当な差し引きのために残る。たとえば、内皮細胞は、TGF-β或は血管新生因子の枯渇と内皮細胞間接触の損害に応じて、表現型のような平滑筋細胞へ切り替わる系譜の可能となる。Trends Cardiovasc Med 2008;18:312-323; Krenning 他 Biomaterials 2008;11:189-3711)。
最後に、内皮のと平滑筋の表現型での粘着細胞類型は、限られた間葉系分化能と同じようにうまく、おとなの末梢血を循環するために見かけられた(He 他 Stem Cells 2007;25:69-77)。こんな循環している平滑筋細胞は、有意義な数量でおとなの末梢血から精製されて不能であるが、脂肪由来平滑筋細胞の集団の役に立ちそうだ(我々の公にされない観察)。長い期間のMSCが分化経路のように平滑筋細胞に従うと仮定する(Dennis 他 Stem Cells 2002;20:205-214)と、我々の観察のように合わせて取られたの、公にされた資料は、増殖性のと分化能の可変程度につれて平滑筋、内皮とMSC細胞類型の広い連続体のための源として血管周囲ニッチと調和してあることが信じられる。直接的なMSCの分化によって、生じられたの或いは脂肪から単離された平滑筋細胞が間葉系分化柔軟性の証左を示して続くが(Kim 他 2009 supra; 我々の公にされない観察)、それにもかかわらず、明確的な区別は、骨髄或は脂肪SVF供給源のMSC と関連して明瞭な機能のと表現型の区別をもっている脂肪由来平滑筋細胞につれて、連続体の対立的な端の間で引かれそうだ。
終わりで、我々は、PO脂肪の付着間質血管分画からのAd-SMCsの分離がしっかりと保存液製剤に左右されてあるということを証明してしまった。平滑筋細胞印目の表現は、がっしりして、一致であり、脂肪供給源と無関係であり、継代に渡してある。我々は、Ad-SMCsが遺伝子の表現、表現型的にプロテオミクと表面印目分析により論証されたようにMSCと異なり、機能的にシグナリング、経路と関係づけされた平滑筋細胞に向けている薬理的な医薬品に対して彼らの反応により評価されたようにMSCと異なるを明らかにした。他の発表された報告に対比して、これらの平滑筋細胞の分離は、TGF-β或いは関係のある分子と直接的な区分を必要としない。Ad-SMCは、4-5継代以内で107 細胞に至るまで拡大され、印目と関係のある平滑筋の完全的な範囲を表現しそうで、vitro (Ca2+-依存性収縮) の中にも、vivo (豚の膀胱切除に新生尿管の再生)の中にも膀胱由来SMCに匹敵している。(Basu 他2009準備中; Basu 他 International Society for Stem Cell Research、7th 年会、July 8-11、2009). これらの資料は、これの集団が脂肪由来平滑筋細胞のようにもっと正確に述べられ、内皮細胞とMSCを含んでいる脂肪由来平細胞の他の種類に対比して異なると明瞭な集団を著わすという結論を支持する。