JP2014234503A - 熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法 Download PDF

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重哉 中村
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Abstract

【課題】ポリプロピレン及びポリアミドを含み、熱的特性及び機械的特性に優れる熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリプロピレン及びポリアミドを含む樹脂成分と、架橋剤とを含む混合物の電離性放射線架橋物を熱可塑性樹脂組成物とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法に関する。
ポリプロピレン(以下、PPと略記することがある)はその高いコストパフォーマンス、高い成形性、優れた耐水性及び耐薬品性等を有していることから自動車部品、一般消費材等として幅広く利用されている。しかしながら、用途の多様化及び複雑化に伴い、PP単一成分ではその要求特性を満たすことが難しくなってきている。
PPの物理的、機械的特性を向上するための手段として、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、珪石等の無機充填剤(フィラー)を混練する方法が効果的とされている。無機フィラーがPP複合材料に与える効果はフィラーの形状、大きさ、アスペクト比の他に界面接着力及び分散度合に強く依存するとされている。
また、ポリマーブレンド又はアロイによるPPの物性向上という観点では、PPにポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、エチレン−プロピレンラバー、ポリアミド(以下、PAと略記することがある)等の高分子材料を添加することで、引張特性及び衝撃特性が向上するとされている(例えば、特許文献1及び非特許文献1参照)。
ところで、ガンマ線、電子線等の電離性放射線の照射による高分子架橋は、高分子材料の硬さ、ヤング率、耐熱性、溶解特性等の物理化学的特性を改善することを可能にする。特に電子線照射による高分子架橋はケーブルの絶縁、ラジアルタイヤ、熱収縮チューブ、熱収縮シート等の発泡製品などの工業分野において幅広く活用されている。
一般的に、PPに対する電子線照射は、架橋構造の形成よりも分子鎖切断が支配的であるとされている。そのため、PPの架橋形成には架橋剤、エラストマー等の添加が行われている。架橋PPは、高温時高弾性率と高衝撃特性を示し、また溶融時での弾性率においては、ゴム状領域が発現するとされている。また、PPの電子線照射による架橋形成には3つ以上のアクリロイルオキシ基を有する多官能モノマーが有効であり、PPの劣化反応を抑制する適量な酸化防止剤の添加と可能な限り低い電子線照射量が重要であるとされている(例えば、非特許文献2参照)。
一方、PAに対する電子線照射に関しては、ポリアミド66(PA66)の電子線照射品が未照射品に比べて弾性率が向上し、熱分解速度が減少するとされている(例えば、非特許文献3参照)。
特開2010−111841号公報
Duvall, J.; Sellitti, C.; Myers, C.; Hiltner, A.; Baer, E. J. Appl. Polym. Sci., 1994, 52, 195-206. Sawasaki, T.; Nojiri, A. Rad. Phys. Chem., 1988, 31, 877-886. Pramanik, N. K.; Haldar, R.S.; Bhardwaj, Y. K.; Sabharwal, S.; Niyogi, U. K. Khandal, R. K.; J. Appl. Polym. Sci., 2011. 122, 193-202.
従来のポリプロピレン及びポリアミドを含む樹脂組成物では、充分な熱的特性及び機械的特性を達成することが困難な場合があった。
本発明は、ポリプロピレン及びポリアミドを含み、熱的特性及び機械的特性に優れる熱可塑性樹脂組成物を提供することを課題とする。
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> ポリプロピレン及びポリアミドを含む樹脂成分と、架橋剤とを含む混合物の電離性放射線架橋物である熱可塑性樹脂組成物である。
<2> 架橋剤の含有量が、樹脂成分100質量部に対して0.01質量部以上20質量部以下である<1>に記載の熱可塑性樹脂組成物である。
<3> ポリプロピレンに対して親和性を有する部分構造と、ポリアミドに対して反応性を有する官能基とを有する相溶化剤を、更に含む<1>又は<2>に記載の熱可塑性樹脂組成物である。
<4> 電離性放射線架橋物は、照射線量が1kGy以上300kGy以下の電子線の照射物である<1>〜<3>のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂組成物である。
<5> ポリプロピレン及びポリアミドを含む樹脂成分と、架橋剤とを含む混合物を準備することと、前記混合物に電離性放射線を照射することと、を含む熱可塑性樹脂組成物の製造方法である。
<6> 電離性放射線が電子線であり、照射線量が1kGy以上300kGy以下である<5>に記載の製造方法である。
本発明によれば、ポリプロピレン及びポリアミドを含み、熱的特性及び機械的特性に優れる熱可塑性樹脂組成物を提供することができる。
実施例1−2、1−3及び比較例1−0の動的粘弾性解析の結果を示すチャートである。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。さらに組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
[熱可塑性樹脂組成物]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ポリプロピレン及びポリアミドを含む樹脂成分と、架橋剤とを含む混合物の電離性放射線架橋物である。ポリプロピレン及びポリアミドを含む樹脂成分と、架橋剤とを含む混合物に電離性放射線を用いて架橋して熱可塑性樹脂組成物とすることにより、高荷重の熱変形温度等の熱的特性、並びに引張弾性率、曲げ弾性率等の機械的特性に優れる。
これは例えば、電子線照射によってポリアミド等の樹脂成分に架橋構造が形成されて、3次元的な網目構造が発達したためと考えることができる。
(樹脂成分)
熱可塑性樹脂組成物は、樹脂成分としてポリプロピレンの少なくとも1種を含む。ポリプロピレンはプロピレンの単独重合体(ホモポリマー)であっても、プロピレンに由来する構成単位を主成分として含み、プロピレン以外の他のオレフィン及びエチレン性ビニル単量体からなる群より選択される少なくとも1種のモノマーに由来する構成単位を更に含むポリプロピレン共重合体(コポリマー)であってもよい。
ポリプロピレンは、1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリプロピレン共重合体を構成するプロピレン以外の他のオレフィンは、プロピレンと共重合可能であれば特に制限されない。他のオレフィンは、プロピレン以外のα−オレフィンであることが好ましく、炭素数2〜20のプロピレン以外のα−オレフィンであることがより好ましい。他のオレフィンとして具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチルペンタ−1−エン、1−オクテン、1−デセン等挙げることができる。他のオレフィンは1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
エチレン性ビニル単量体は、プロピレンと共重合可能であれば特に制限されない。エチレン性ビニル単量体としては例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、メタリルグリシジルエーテル、2―ビニル―4―メチル―2―オキサゾリン、2―ビニル―4―メチル―4―メチル―2―オキサゾリン、2―イソプロペニル―2―オキサゾリン、2―イソプロペニル―4―オキサゾリン、2―ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2―ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2―ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。ここで(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルの少なくとも一方を意味する。
ポリプロピレン共重合体は、ランダムコポリマーであっても、ブロックコポリマーであってもよい。
ポリプロピレン共重合体におけるプロピレンに由来する構成単位の含有率は、目的等に応じて適宜選択することができる。中でも、熱可塑性樹脂組成物としての熱的特性及び機械的特性の観点から、プロピレンに由来する構成単位の含有率が50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましい。
樹脂成分としてのポリプロピレンは、熱可塑性樹脂組成物としての熱的特性及び機械的特性の観点から、ホモポリマー及びコポリマーからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、ホモポリマー及びプロピレンに由来する構成単位が80質量%以上であるコポリマーからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、実質的にホモポリマーであることが更に好ましい。ここで実質的とは、プロピレンに由来する構成単位が95質量%以上であることを意味する。
ポリプロピレンの立体規則性(タクティシティー)は特に制限されず、アイソタクチック、シンジオクタクチック及びアタクチックのいずれであってもよい。中でも、熱可塑性樹脂組成物としての熱的特性及び機械的特性の観点から、アイソタクチックポリマーの含有率が95%以上であることが好ましく、97%以上であることがより好ましい。なお、タクティシティーは、13C−NMRを用いる常法により求めることができる。
ポリプロピレンの比重は、0.9g/cm〜1.2g/cmであることが好ましく、0.9g/cm〜1.1g/cmであることがより好ましい。ポリプロピレンの比重はアルキメデス法によって測定される。また、ポリプロピレンのMFRは、2g/10min〜200g/10minであることが好ましく、2g/10min〜50g/10minであることがより好ましい。ポリプロピレンのMFRは、ISO1133(温度230℃、2.16kgf(21.18N))に準拠して測定される。
ポリプロピレンのヤング率は、1200MPa〜2500MPaであることが好ましく、1500MPa〜2200MPaであることがより好ましい。また、ポリプロピレンの降伏応力は、20MPa〜45MPaであることが好ましく、30MPa〜40MPaであることがより好ましい。
ポリプロピレンのヤング率及び降伏応力は、ISO527に準拠して測定される。
熱可塑性樹脂組成物は、樹脂成分としてポリアミドの少なくとも1種を含む。ポリアミドは、酸アミド基(−CONR−;Rは水素原子、アルキル基等)を構成単位として含む高分子化合物であれば特に制限されない。ポリアミドとしては、ラクタム化合物の開環重合物、アミノカルボン酸化合物の重縮合物、ジアミン化合物とジカルボン酸化合物の重縮合物等を挙げることができる。
ポリアミドは、1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい
ラクタム化合物としては、ε−カプロラクタム、ω−エナントラクタム、ω−ラウロラクタム等の炭素数5〜12のメチレン鎖を含む環状アミド化合物を挙げることができる。
アミノカルボン酸化合物としては、ε−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等の炭素数5〜12のメチレン鎖を含む鎖状化合物を挙げることができる。
ジアミン化合物としては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、イソホロンジアミン、m−キシリレンジアミン等の炭素数4〜14の脂肪族ジアミン化合物を挙げることができる。
ジカルボン酸化合物としては、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン二酸、ダイマー酸等の炭素数6〜12のジカルボン酸化合物を挙げることができる。
ポリアミドを構成するこれらの化合物は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。すなわちポリアミドは、ホモポリマーであっても、コポリマーであってもよい。
ポリアミドとしては、ポリカプロアミド(ポリアミド6、ナイロン6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46、ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66、ナイロン66)、ポリへキサメチレンセバカミド(ポリアミド610、ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612、ナイロン612)、ポリへキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T、ナイロン6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I、ナイロン6I)、ポリウンデカンアミド(ポリアミド11、ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ポリアミド12、ナイロン12)及びこれらのポリアミドを構成するモノマーの共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、熱可塑性樹脂組成物としての熱的特性及び機械的特性の観点から、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11及びポリアミド12からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、ポリアミド6及びポリアミド66からなる群より選択される少なくとも1種であることが更に好ましい。
ポリアミドの比重は、1.02g/cm〜1.62g/cmであることが好ましく、1.12g/cm〜1.14g/cmであることがより好ましい。ポリアミドの比重はアルキメデス法によって測定される。また、ポリアミドのMFRは、10g/10min〜150g/10minであることが好ましく、30g/10min〜100g/10minであることがより好ましい。ポリアミドのMFRは、JIS K7210(220℃、2.16kgf(21.18N))に準拠して測定される。
ポリアミドの引張強さは、48MPa〜190MPaであることが好ましく、70MPa〜100MPaであることがより好ましい。
ポリアミドの引張強さは、ISO527に準拠して測定される。
樹脂成分におけるポリプロピレンとポリアミドの含有比率は特に制限されず、目的等に応じて適宜選択することができる。熱可塑性樹脂組成物としての熱的特性及び機械的特性の観点から、ポリプロピレン(PP)のポリアミド(PA)に対する含有比率(PP/PA)は、質量基準で、60/40〜10/90であることが好ましく、50/50〜20/80であることがより好ましく、40/60〜30/70であることが更に好ましい。
樹脂成分は、ポリプロピレン及びポリアミド以外のその他の樹脂を更に含んでいてもよい。その他の樹脂としては特に制限されず、目的等に応じて通常用いられる樹脂から適宜することができる。
その他の樹脂としては、ポリエチレン、エチレン−プロピレンラバー、エチレン−プロピレン−ジエンゴム等を挙げることができる。
樹脂成分がその他の樹脂を含む場合、その含有量は、ポリプロピレン及びポリアミドの総含有量に対して、40質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。その他の樹脂の含有量の下限値は特に制限されず、ポリプロピレン及びポリアミドの総含有量に対して、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。
熱可塑性樹脂組成物における樹脂成分の含有量は特に制限されない。例えば、熱可塑性樹脂組成物の総質量中に50質量%以上95質量%以下であることが好ましく、70質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。
(架橋剤)
熱可塑性樹脂組成物は、少なくとも1種の架橋剤を含有する。架橋剤は、ポリプロピレン及びポリアミドの少なくとも一方と共有結合を形成可能な反応性官能基を2以上有する化合物であれば特に制限されない。
反応性官能基としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、メタリル基、2−ヒドロキシ−3−(アリルオキシ)プロピル基、2−アリルフェニル基、3−アリルフェニル基、4−アリルフェニル基、2−(アリルオキシ)フェニル基、3−(アリルオキシ)フェニル基、4−(アリルオキシ)フェニル基、2−(アリルオキシ)エチル基、2,2−ビス(アリルオキシメチル)ブチル基、3−アリルオキシ−2,2−ビス(アリルオキシメチル)プロピル基等を挙げることができる。中でも、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、及びメタリル基からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、アリル基、ビニル基及び(メタ)アクリロイル基からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
架橋剤における反応性官能基の数は、1分子中に2以上であれば特に制限されない。反応性官能基の数は、1分子中に2〜4であることが好ましい。
架橋剤は、反応性官能基に加えて、2以上の反応性官能基を互いに連結する連結基を有することが好ましい。連結基は2以上の反応性官能基と共有結合を形成可能な基であれば特に制限されない。連結基として具体的には、炭素数2〜15の脂肪族炭化水素に由来する基、炭素数6〜14の芳香族炭化水素に由来する基、トリアジンに由来する基、シアヌル酸に由来する基、イソシアヌル酸に由来する基等を挙げることができる。中でも熱可塑性樹脂組成物としての熱的特性及び機械的特性の観点から、トリアジンに由来する基、シアヌル酸に由来する基及びイソシアヌル酸に由来する基からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、トリアジンに由来する基及びシアヌル酸に由来する基からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
なお、「由来する基」とは、母体となる化合物から、反応性官能基の数に応じた数の水素原子を取り除いて形成される基を意味し、水素原子が取り除かれる位置は特に制限されない。
架橋剤として、具体的には、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアリルシアヌレート、トリメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、メトキシカルボニルメチルジアリルイソシアヌレート、エトキシカルボニルメチルジアリルイソシアヌレート、イソプロポキシカルボニルメチルジアリルイソシアヌレート、エトキシカルボニルメチルジメタリルイソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等を挙げることができる。中でも熱可塑性樹脂組成物としての熱的特性及び機械的特性の観点から、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリメチルプロパントリ(メタ)アクリレート及びトリアリルシアヌレートからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
架橋剤は、1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
熱可塑性樹脂組成物における架橋剤の含有量は特に制限されず、目的等に応じて適宜選択することができる。架橋剤の含有量は、熱可塑性樹脂組成物としての熱的特性及び機械的特性の観点から、樹脂成分100質量部に対して0.01質量部〜20質量部であることが好ましく、1質量部〜20質量部であることがより好ましく、5質量部〜15質量部であることが更に好ましい。
更に架橋剤の含有量は、熱可塑性樹脂組成物としての熱的特性及び機械的特性の観点から、樹脂成分中のポリアミド100質量部に対して1.5質量部〜35質量部であることが好ましく、9質量部〜27質量部であることがより好ましい。
(相溶化剤)
熱可塑性樹脂組成物は、少なくとも1種の相溶化剤を更に含んでいてもよい。相溶化剤は、ポリプロピレンとポリアミドの混合物の相分離を抑制可能な化合物であれば特に制限されず、通常用いられる化合物から適宜選択することができる。中でも、ポリプロピレンに対して親和性を有する部分構造と、ポリアミドに対して親和性を有する部分構造又は反応性を有する官能基とを有する化合物であることが好ましく、ポリプロピレンに対して親和性を有する部分構造と、ポリアミドに対して反応性を有する官能基とを有する化合物であることがより好ましい。
ポリプロピレンに対して親和性を有する部分構造としては、ポリオレフィン、ポリオレフィン誘導体、ポリスチレン、ポリスチレン誘導体、オレフィンとスチレンの共重合体等のポリプロピレンに対して親和性を有するポリマーに由来する部分構造を挙げることができる。ここでポリマーに由来する部分構造とは、ポリマーから少なくとも1つの水素原子を取り除いて形成される基であり、水素原子が取り除かれる位置は特に制限されない。
ポリオレフィンとしては、オレフィンの単独重合体であっても、2種以上のオレフィンから形成される共重合体であってもよい。オレフィンの共重合体はランダムコポリマー及びブロックコポリマーのいずれであってもよい。オレフィンの炭素数は特に制限されず、炭素数2〜10であることが好ましく、炭素数2〜8であることがより好ましい。またオレフィンは、α−オレフィンであることが好ましい。
ポリオレフィン及びポリオレフィン誘導体としては、ポリオレフィン系樹脂、例えばポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体等のエチレン又は/及びプロピレンと他のモノマー(例えば、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン等)とのブロックコポリマー及び/又はランダムコポリマー、又はこれらのコポリマーとエチレン及びプロピレン以外の他のモノマーからなる2成分以上のコポリマーを単独又は2種以上混合したもの、共役ジエンの共重合体を混合したもの、それらを塩素化したもの、水添したもの、水酸基を導入したもの、マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸を共重合させたもの等を挙げることができる。
オレフィンとスチレンの共重合体は、ランダムコポリマー及びブロックコポリマーのいずれであってもよく、ブロックコポリマーであることが好ましい。またオレフィンとスチレンの共重合体に用いられるオレフィンは1種単独であっても、2種以上であってもよく、2種以上であることが好ましい。オレフィンとスチレンの共重合体におけるオレフィンは炭素数2〜5であることが好ましく、炭素数2〜4であることがより好ましい。2種以上のオレフィンを用いる場合、少なくとも炭素数2〜3のオレフィンと炭素数4〜5のオレフィンとを用いることが好ましい。オレフィンとスチレンの共重合体におけるスチレンの含有量は特に制限されないが、オレフィンとスチレンの総質量中に13質量%〜67質量%であることが好ましく、20質量%〜40質量%であることがより好ましい。
ポリプロピレンに対して親和性を有する部分構造として具体的には、ポリプロピレンに由来する部分構造、スチレン−エチレン共重合体に由来する部分構造、スチレン−ブテン共重合体に由来する部分構造、スチレン−エチレン/ブテン共重合体に由来する部分構造、スチレン−イソブテン共重合体に由来する部分構造等を挙げることができる。これらの中でも、ポリプロピレンに対して親和性を有する部分構造は、ポリプロピレンに由来する部分構造、スチレン−イソブテン共重合体に由来する部分構造及びスチレン−エチレン/ブテン共重合体に由来する部分構造からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
相溶化剤は、ポリプロピレンに対して親和性を有する部分構造を、1種単独でも、2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
ポリアミドに対して親和性を有する部分構造又は反応性を有する官能基としては、カルボキシ基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、オキサゾリル基、グリシジル基等を挙げることができる。これらの中でも、カルボキシ基、酸無水物基、オキサゾリル基及びグリシジル基からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
相溶化剤は、例えば、ポリプロピレンに対して親和性を有するポリマーを、ポリアミドに対して親和性を有する部分構造又は反応性を有する官能基を含む化合物で変性することで得ることができる。
相溶化剤は、具体的には例えば、ポリプロピレン、スチレン−エチレン/ブテン共重合体等のポリプロピレンに対して親和性を有するポリマーを、無水マレイン酸で変性することで得ることができる。
変性方法は通常用いられる変性方法から適宜選択することができる。変性方法として具体的には、ポリプロピレンに対して親和性を有するポリマーに、無水マレイン酸等のポリアミドに対して反応性を有する官能基を有するモノマーをグラフト重合する方法、ラジカル重合する方法等を挙げることができる。
相溶化剤がポリプロピレンに対して親和性を有するポリマーの無水マレイン酸変性物である場合、相溶化剤における無水マレイン酸に由来する部分構造の含有量は、相溶化剤の総質量中に0.1質量%〜10質量%であることが好ましく、1質量%〜5質量%であることがより好ましい。
熱可塑性樹脂組成物が相溶化剤を含む場合、相溶化剤は1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、相溶化剤の含有量は特に制限されず、目的等に応じて適宜選択することができる。相溶化剤の含有量は、熱可塑性樹脂組成物としての熱的特性及び機械的特性の観点から、樹脂成分100質量部に対して0.1質量部〜20質量部であることが好ましく、1質量部〜10質量部であることがより好ましく、3質量部〜8質量部であることが更に好ましい。
(無機フィラー)
熱可塑性樹脂組成物は、少なくとも1種の無機フィラーを更に含んでいてもよい。無機フィラーとしては、一般に樹脂組成物に用いられるものであれば特に制限なく使用することができる。
無機フィラーとしては、ガラス繊維、炭素繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク、タルク、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレイ、パイロフィライト、モンモリトナイト、アスベスト、アルミノシリケート、珪酸カルシウム、アルミナ、シリカ、珪藻土、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、セラミックビーズ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化珪素等が挙げられる。これらの中でも、熱的特性及び機械的特性の観点から、ガラス繊維、ガラスビーズ、タルク、マイカ、ワラステナイト、カオリン、炭酸カルシウム及びシリカからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、タルク、マイカ及び炭酸カルシウムからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
無機フィラーの形状は特に制限されず、板状、棒状、球状、繊維状等のいずれであってもよく、中空であってもよい。無機フィラーの形状が繊維状である場合、数平均繊維長は、強度及び剛性の観点から、200μm以上であることが好ましく、200μm〜2000μmであることがより好ましい。また無機フィラーが板状、棒状、球状等の場合、体積平均粒子径は、強度及び剛性の観点から、0.5μm〜10μmであることが好ましく、1μm〜5μmであることがより好ましい。無機フィラーの数平均繊維長は、電子顕微鏡観察により測定することができ、体積平均粒子径は、レーザー回折法により測定した粒度分布において、小径側からの50%体積積算値として求めることができる。
また無機フィラーの含有量は、樹脂成分と無機フィラーの総質量中に5質量%〜50質量%であることが好ましく、10質量%〜30質量%であることがより好ましい。
無機フィラーは、1種単独でも、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、無機フィラーは、イソシアネート化合物、有機シラン化合物、有機チタネート化合物、有機ボラン化合物、エポキシ化合物等のカップリング剤で処理したものであってもよい。
熱可塑性樹脂組成物は、目的等に応じて、上記以外の各種添加剤を更に含んでいてもよい。添加剤としては、ヒンダードフェノール、ヒドロキノン、ホスファイト、ホスホナイト、チオエーテル、これらの誘導体等の酸化防止剤及び耐熱安定剤;レゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、トリアジン、ヒンダードアミン、これらの誘導体等の耐候剤;酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム等の紫外線遮蔽剤;モンタン酸、モンタン酸金属塩、モンタン酸エステル、ステアリン酸、ステアリン酸金属塩、ステアリルアルコール、ステアラミド、各種ビスアミド、ビス尿素、ポリエチレンワックス等の離型剤及び滑剤;p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等の可塑剤;アルキルサルフェート型アニオン、ベタイン、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等の帯電防止剤;赤燐、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂、三酸化アンチモン等の難燃剤などを挙げることができる。
(製造方法)
熱可塑性樹脂組成物は、ポリプロピレン及びポリアミドを含む樹脂成分と架橋剤とを含む混合物の電離性放射線架橋物である。すなわち、熱可塑性樹脂組成物は、樹脂成分と架橋剤とを含む混合物を準備する工程と、前記混合物に電離性放射線を照射する工程を含む熱可塑性樹脂組成物の製造方法で製造することができる。熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、必要に応じて、その他の工程を更に含んでいてもよい。
樹脂成分と架橋剤とを含む混合物を準備する工程は、樹脂成分と架橋剤とを混合することを含んでいれば特に制限されない。混合方法は特に制限されず、通常用いられる混合方法から適宜選択することができる。例えば、2軸押出機を用いてポリプロピレンとポリアミドとを含む樹脂混合物と架橋剤とを混合することができる。混合温度は樹脂成分、架橋剤等に応じて適宜選択することができる。混合温度は、例えば、160〜280℃とすることができ、160〜250℃であることが好ましい。また2軸押出機のスクリュー回転数は、例えば、30〜700rpm(min.−1)とすることができ、100〜500rpm(min.−1)であることが好ましい。
なお、ポリプロピレンとポリアミドとを含む樹脂混合物は、市販の樹脂混合物から選択されたものでもよいし、所望の構成を有する樹脂混合物として、例えば、2軸押出機を用いて調製されたものであってもよい。
準備した混合物には電離性放射線が照射されて、架橋剤によって樹脂成分に架橋構造が形成された熱可塑性樹脂組成物が得られる。樹脂成分中に架橋構造が形成されていることは、示差走査熱量測定、動的粘弾性解析等により確認することができる。
例えば、示差走査熱量測定を用いて樹脂成分の結晶化度の変化を測定することで架橋構造の形成を確認することができる。具体的には、電離性放射線の照射後に樹脂成分の結晶化度を前後することで架橋構造が形成されたことを確認することができる。電離性放射線を照射する前後における結晶化度の減少度は、5%以上であることが好ましく、10〜30%であることがより好ましい。なお、結晶化度の減少率は、電離性放射線照射前の結晶化度から電離性放射線照射後の結晶化度を差し引いた値を電離性放射線照射前の結晶化度で除することで算出される。
また例えば、動的粘弾性解析を用いて温度に対する貯蔵弾性率の変化を測定することで架橋構造の形成を確認することができる。一般には温度上昇に伴って貯蔵弾性率が低下していくが、架橋構造が形成されていると、樹脂成分(好ましくはPA)の融点付近で温度上昇に伴う貯蔵弾性率の低下が抑制され、一定値をとるようになる。
電離性放射線の種類は、その照射により架橋剤による架橋構造を形成可能であれば特に制限されない。電離性放射線としては、電子線、ガンマ線、アルファ線、可視光線、赤外線、紫外線、エックス線等を挙げることができる。電離性放射線は、熱可塑性樹脂組成物としての熱的特性及び機械的特性の観点から、電子線、ガンマ線及び紫外線からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、電子線であることがより好ましい。
電離性放射線の照射線量は、架橋構造が形成される限り特に制限されない。電離性放射線の照射線量は、熱可塑性樹脂組成物としての熱的特性及び機械的特性の観点から、1kGy以上300kGy以下であることが好ましく、50kGy以上250kGy以下であることがより好ましく、100kGy以上200kGy以下であることが更に好ましい。
電離性放射線を照射する際の温度条件は特に制限されない。温度条件は例えば、5〜80℃とすることができ、常温(5〜35℃)であることが好ましい。
電離性放射線を照射する雰囲気は特に制限されない。電離性放射線は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で照射してもよいし、大気下で照射してもよい。
電離性放射線の照射は、例えば、電子線加速器等を用いて行うことができる。
ポリプロピレン及びポリアミドを含む樹脂成分と架橋剤とを含む混合物に電離性放射線を照射する工程は、熱可塑性樹脂組成物としての熱的特性及び機械的特性の観点から、電子線を照射線量が1kGy以上300kGy以下となるように、常温で照射する工程であることが好ましく、電子線を照射線量が50kGy以上250kGy以下となるように、常温で照射する工程であることがより好ましい。
熱可塑性樹脂組成物は、目的等に応じて成形されることができる。熱可塑性樹脂組成物を成形する方法は特に制限されず、通常用いられる成形方法から適宜選択することができる。成形方法としては、射出成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形等を挙げることができる。
熱可塑性樹脂組成物の用途は特に制限されない。熱可塑性樹脂組成物は、熱的特性及び機械的特性に優れることから、自動車部品、電気部品、一般機械品等の用途に好適に適用することができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
(材料)
以下に示す材料を用いて熱可塑性樹脂組成物を調製した。
ポリプロピレン(PP):住友化学(株)製、W101(比重:0.9g/cm、MFR:3g/10min(230°C、2.16kgf(21.18N))、ヤング率:1585MPa、降伏応力:33MPa)。
ポリアミド(PA):東洋紡(株)製、T803(比重:1.14g/cm、MFR:55g/10min(220°C、2.16kgf(21.18N))、ヤング率:1729MPa、降伏応力:51.3MPa)、ポリカプロアミド(PA6)。
架橋剤:日本化成(株)製、TAIC、トリアリルイソシアヌレート。
相溶化剤:クレイトンポリマ社製、FG1901、無水マレイン酸変性SEBS(SEBS−g−MAH)(比重:0.91g/cm、MFR:22g/10min(230°C、5kgf(49N)、無水マレイン酸変性量:2%(スチレン/(エチレン−ブテン)配合質量比:30/70)。
無機フィラー:日本タルク(株)製、MS−P(粒子径:12.4μm)、タルク。
(実施例1−1)
材料混練は2段階に分けて実施した。まず初めに、PP及びPA6(質量比PP/PA6=45/55)の樹脂成分と、樹脂成分100部に対して5部の相溶化剤(SEBS−g−MAH)をドライブレンドし、同軸方向回転2軸押出機(KTW−15TW−45HG−NH−700−SG、L/D=45、Φ=25、テクノベル(株))を用いて、ドライブレンドした材料をメインフィーダから供給しながら混練を行ってPP/PA6ブレンド材料を得た。
なお、同軸方向回転2軸押出機は、6つのシリンダブロック(C1〜C6)とダイスとから構成されており、その温度設定は、C1部を60°C、C2部からC6部及びダイス部を240℃として制御した。スクリュー回転数は250rpm(min−1)とした。
得られたPP/PA6ブレンド材料を、80℃雰囲気下で5時間以上真空乾燥して、水分を十分に除去した。
次いで、同軸方向回転2軸押出機(HK25D、L/D=40、Φ=25、(株)Parker社製)を用いて、PP/PA6ブレンド材料、無機フィラー、架橋剤の溶融混練を行って樹脂混合物として、ブレンド試料を得た。同軸方向回転2軸押出機の温度は、上記と同様条件に設定した。
なお、該同軸方向回転2軸押出機は、6つのシリンダブロックC1〜C6)とダイスとから構成されており、材料の供給方法は、PP/PA6ブレンド材料をメインフィーダより供給し、架橋剤はC1より、また無機フィラー(タルク)はC4よりそれぞれサイドフィーダを用いて供給した。スクリュー回転数は250rpm(min−1)とした。
なお、PP/PA6ブレンド材料とタルクの配合質量比は80/20とし、架橋剤(TAIC)の添加量は、PP/PA6ブレンド材料100部に対して10部とした。
試験片調製
上記で得られたブレンド試料を、80℃で3時間以上乾燥した後、シリンダ温度を240℃に設定した射出成形機を用いてダンベル試験片と短冊試験片に成形した。引張り試験用ダンベル試験片はJIS K7113に準拠するダンベル試験片の形状とし、厚みは4mmであった。曲げ試験、衝撃試験、荷重たわみ温度試験用の短冊試験片はJIS K7171に準拠する短冊状の形状とし、厚みは4mmであった。
また、温度240℃に設定したホットプレス機を用いてブレンド試料を10MPaで3min溶融加熱し、フィルム状の試験片に成形した。フィルム状の試験片の大きさは厚み1mm、幅3mm、長さ30mmであった。
電子線照射
上記で得られた各種サイズの試験片に対して、2MeVの電子線加速器(RDI社製、ダイナミトロン型電子加速器)を備える電子線照射装置(日本電子線照射サービス社製)を用いて、照射量が50kGyとなるように電子線を照射して、熱可塑性樹脂組成物として各種サイズの評価用試料(E1−1)を得た。なお、加速電圧は4.8MV、ビーム電流は20mAとした。
(実施例1−2、1−3)
電子線の照射量を、100kGy及び200kGyにそれぞれ変更したこと以外は、実施例1−1と同様にして、評価用試料(電子線照射量に応じて順に、E1−2及びE1−2)を得た。
(比較例1)
実施例1における電子線照射前の試験片を、評価用試料(C1−0)とした。
(比較例2−0〜2−3)
ブレンド試料の調製において、相溶化剤と架橋剤を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にしてブレンド試料を調製し、各種サイズの試験片を作製した。得られた試験片に電子線を照射しなかった評価用試料(C2−0)、並びに試験片に照射量が50kGy、100kGy及び200kGyとなるように電子線をそれぞれ照射した評価用試料(電子線照射量に応じて順に、C2−1、C2−2及びC2−3)をそれぞれ作製した。
(比較例3−0〜3−3)
ブレンド試料の調製において、架橋剤を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にしてブレンド試料を調製し、各種サイズの試験片を作製した。得られた試験片に電子線を照射しなかった評価用試料(C3−0)、並びに試験片に照射量が50kGy、100kGy及び200kGyとなるように電子線をそれぞれ照射した評価用試料(電子線照射量に応じて順に、C3−1、C3−2及びC3−3)をそれぞれ作製した。
<評価>
(引張試験)
引張試験は、ISO527に準拠し、引張試験機((株)島津製作所製、AG−1)を用いてダンベル試験片から得た評価用試料について23℃にて実施して、引張弾性率と引張強度を測定した。引張速度は50mm/min、評価用試料の寸法は初期チャック間距離115mm、幅10mm、厚み4mmであった。
結果を表1に示した。表1には、実施例1−1〜1−3における測定値の比較例1−0の測定値に対する比を相対値として併せて示した。また比較例2−1〜2−3については比較例2−0の測定値に対する比としての相対値と、比較例3−1〜3−3については比較例3−0の測定値に対する比としての相対値とを併せて示した。
(曲げ試験)
曲げ試験はISO718に準拠し、曲げ試験機((株)島津製作所製、EZ−1)を用いて23℃にて実施した。評価用試料としては短冊試験片から得たものを用いた。クロスヘッドスピードは2mm/minとした。
曲げ強度は、最大荷重より下記(1)式を用いて算出した。
σ=3FL/(2BH) ・・・(1)
ここで、Fは最大荷重、Lは支持点間距離(64mm)、Bは試料の幅(10mm)であり、Hは試料高さである。
曲げ弾性率は下記(2)式を用いて決定した。
E=FL/4BHd ・・・(2)
ここでdは荷重を付加させたときの変形量である。
結果を表1に示した。表1には、実施例1−1〜1−3における測定値の比較例1−0の測定値に対する比を相対値として併せて示した。また比較例2−1〜2−3については比較例2−0の測定値に対する比としての相対値と、比較例3−1〜3−3については比較例3−0の測定値に対する比としての相対値とを併せて示した。
(シャルピー衝撃試験)
シャルピー衝撃試験はISO179に準拠し、シャルピー衝撃試験機((株)安田精機製作所製、No.141−IS)を用いて23℃にて実施し、短冊試験片から得た各評価用試料の衝撃強度を測定した。打撃アームには秤量2J(WR=N・m)のハンマーを用いた。評価用試料には予め、ノッチ加工機((株)東洋精機製、A−4E)を用いて幅方向に2mmのノッチ(タイプA:ノッチ半径0.25mm)を形成した。
結果を表1に示した。表1には、実施例1−1〜1−3における測定値の比較例1−0の測定値に対する比を相対値として併せて示した。また比較例2−1〜2−3については比較例2−0の測定値に対する比としての相対値と、比較例3−1〜3−3については比較例3−0の測定値に対する比としての相対値とを併せて示した。
(荷重たわみ温度測定)
荷重たわみ温度測定はISO75に準拠し、荷重たわみ温度試験機(東洋精機S3−MH)を用いて実施した。評価用試料としては短冊試験片から得たものを用いた。測定はフラットワイズで行い、初期温度30℃、昇温速度120℃/minとした。支点間距離は64mmとし、荷重は0.45MPa及び1.8MPaとした。変位量0.34mmまでたわんだ時の温度をそれぞれ計測して、荷重たわみ温度とした。
結果を表1に示した。表1には、実施例1−1〜1−3における測定値の比較例1−0の測定値に対する比を相対値として併せて示した。また比較例2−1〜2−3については比較例2−0の測定値に対する比としての相対値と、比較例3−1〜3−3については比較例3−0の測定値に対する比としての相対値とを併せて示した。
(DSC)
示差走査熱量解析(DSC)は示差走査熱量計((株)島津製作所、DSC−60−A)を用いて実施した。評価用試料としては短冊試験片から得たものを用いた。測定温度範囲は40〜250℃、昇温速度は10℃/minとした。また評価用試料の酸化劣化を防ぐために窒素雰囲気下で測定を行った。評価用試料中のPP相の結晶化度(X PP)とPA6相の結晶化度(X PA6)は、各相の重量分率を考慮して下記(3)式及び(4)式により算出した。
PP(%)={ΔHPP Sample/(ΔHPP Cry×MPP)}×100 (3)
PA6(%)={ΔHPA6 Sample/(ΔHPA6 Cry×MPA6)}×100 (4)
なお、式中、MPPはPP相の重量分率、MPA6はPA6相の重量分率であり、PPの完全結晶の融解エンタルピー(ΔHPP Cry)として209.1J/g、PA6の完全結晶の融解エンタルピー(ΔHPA6 Cry)として184.1J/gを用いた。
結果を表2に示した。
(DMA)
動的粘弾性解析(DMA)は動的粘弾性測定装置((株)UBM製、Rheogel−E4000)を用いて引張モードで実施し、貯蔵弾性率(E’)とtanδの温度依存性を測定した。初期チャック間距離は20mm、周波数は8Hz、昇温速度は3℃/min、測定温度範囲は−150℃から250℃に設定した。評価用試料には厚み1mm、幅3mm、長さ30mmのフィルム状の試験片から得たものを用いた。
結果の一例を図1に示す。図1実施例1−2、1−3及び比較例1−0の結果を示す。
Figure 2014234503
Figure 2014234503
表1から、樹脂成分と架橋剤とを含む試料に電子線を照射することで、引張弾性率、引張強度、曲げ弾性率及び曲げ強度のいずれもが向上することが分かる。すなわち、電子線照射により機械的特性に優れる熱可塑性樹脂組成物が得られることが分かる。
また表1から、樹脂成分と架橋剤とを含む試料に電子線を照射することで、荷重たわみ温度が上昇することが分かる。すなわち、電子線照射により熱的特性に優れる熱可塑性樹脂組成物が得られることが分かる。
以上の結果は例えば、PA6分子鎖内又は分子鎖間で、架橋構造が形成され、3次元的な網目構造が発達したためと考えられる。また電子線照射によって結晶ドメインサイズが増大したためか、結晶ドメインが応力集中として寄与したのではないかとも考えられる。
表2から、電子線照射によって、PP相とPA6相の融点が低下したことが分かる。またPP相の結晶化度は、わずかに減少し、PA6相の結晶化度は、大きく減少したことが分かる。これは電子線照射による分子鎖切断の劣化より架橋が支配的であり、特に架橋はPA6分子鎖内又は分子鎖間で、架橋構造が形成され、3次元的な網目構造が発達したためと考えられる。
図1のDMAの結果は、電子線照射によりPA6の架橋構造が形成されたことを示していると考えられる。アモルファス領域の局所的な主鎖緩和であるβ分散ピーク温度は高温側にシフトし、その強度は電子線照射量の増加に伴い減少したことが分かる。すなわち、PA6のβ緩和強度は電子線照射量と何らかの関係があり、PA6のβ緩和強度の減少が示されている。
更に、貯蔵弾性率において、PA6の融点である200℃付近から平坦領域が発現し、またその弾性率は電子線照射量の増加に伴い向上することが分かる。これは3次元網目構造がPA6の多くのアモルファス領域で次第に形成されたことを示していると考えられる。
以上の結果として、高荷重(1.8MPa)における荷重たわみ温度が顕著に向上したと考えることができる。

Claims (6)

  1. ポリプロピレン及びポリアミドを含む樹脂成分と、架橋剤とを含む混合物の電離性放射線架橋物である熱可塑性樹脂組成物。
  2. 架橋剤の含有量が、樹脂成分100質量部に対して0.01質量部以上20質量部以下である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. ポリプロピレンに対して親和性を有する部分構造と、ポリアミドに対して反応性を有する官能基とを有する相溶化剤を、更に含む請求項1又は請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 電離性放射線架橋物は、照射線量が1kGy以上300kGy以下の電子線の照射物である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. ポリプロピレン及びポリアミドを含む樹脂成分と、架橋剤とを含む混合物を準備することと、
    前記混合物に電離性放射線を照射することと、を含む熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  6. 電離性放射線が電子線であり、照射線量が1kGy以上300kGy以下である請求項5に記載の製造方法。
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