JP2014234416A - 架橋環状オレフィン樹脂組成物、架橋環状オレフィン樹脂フィルム及びそれらの製造方法 - Google Patents

架橋環状オレフィン樹脂組成物、架橋環状オレフィン樹脂フィルム及びそれらの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】封止材、プリプレグ及び接着剤等に使用される樹脂との十分な離型性を有するフィルムを与える架橋環状オレフィン樹脂組成物を提供する。
【解決手段】架橋環状オレフィン樹脂組成物を、(a)環状オレフィンモノマー100質量部、(b)非極性ゴム0.3〜15質量部及び(c)メタセシス重合触媒を含有する重合性組成物をメタセシス重合して得る。
【選択図】なし

Description

本発明は、ICチップ、LED等の半導体封止工程、多層プリント配線板製造時の積層熱プレス工程、フレキシブルプリント配線板製造時のカバーレイ貼付工程等の実装工程の歩留まり向上に寄与する架橋環状オレフィン樹脂フィルムを与える架橋環状オレフィン樹脂組成物、当該フィルム及びそれらの製造方法に関する。
ICチップ、LED等の半導体素子の小型化及び薄型化が、携帯電話等のモバイル機器の小型化及び薄型化に伴い、進んでいる。これらの素子を封止している封止チップ形状も変化している。最近では、従来の表面実装用素子に見られる、リードフレームが封止チップから伸びるように配置された形状のチップは主流ではなくなり、端子が素子上に直接配置される形状であるチップ・サイズ・パッケージ(CSP)、ボール・グリッド・アレイ(BGA)、クアッド・フラット・ノウリード・パッケージ(QFN)等の形状の実装用封止チップが主流になりつつある。これらの形状は、実装面積が小さいという利点を有し、機器の小型化に貢献している。更に、これらの形状の実装用封止チップは薄く、封止膜の薄膜化に貢献している。
しかし、製品の割れ、封止材の端子部からのはみ出しが、これらの形状の実装用封止チップの製造工程で発生しやすく、製造歩留まりが低下する。離型フィルムによるアシスト成形を用いる封止方法が、歩留まり向上のため検討された(例えば、特許文献1及び2参照)。当該封止方法で使用される離型フィルムの材料であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)及びポリイミドは高価であり、当該離型フィルムは廃棄時に焼却処理できない。
一方、メタセシス重合触媒とメタセシス重合可能なシクロオレフィン類を含む液状物をキャリアー上で重合させて得られる架橋樹脂フィルムが離型フィルムとして検討された(例えば、特許文献3参照)。しかし、当該フィルムは、封止材、プリプレグ及び接着剤等に使用される樹脂との十分な離型性を有していない。
特開2000−167841号公報 特開2001−250838号公報 特開2001−253934号公報
最近、環状オレフィンモノマーをメタセシス重合して得られる架橋環状オレフィン樹脂を含み、封止材、プリプレグ及び接着剤等に使用される樹脂との十分な離型性を有するフィルムが希求されていたが、このようなフィルムは見出されていない。
本発明が解決しようとする課題は、環状オレフィンモノマーをメタセシス重合して得られる架橋環状オレフィン樹脂を含み、封止材、プリプレグ及び接着剤等に使用される樹脂との十分な離型性を有するフィルムを与える架橋環状オレフィン樹脂組成物、当該フィルム及びそれらの製造方法の提供である。
本発明の発明者は、鋭意検討の結果、(a)環状オレフィンモノマー、特定範囲量の(b)非極性ゴム及び(c)メタセシス重合触媒を含有する重合性組成物をメタセシス重合してなる架橋環状オレフィン樹脂組成物が、封止材、プリプレグ及び接着剤等に使用される樹脂との十分な離型性を有するフィルムを与えることを見出し、本発明の架橋環状オレフィン樹脂組成物、当該樹脂組成物からなる架橋環状オレフィン樹脂フィルム、及びそれらの製造方法を完成させるに至った。
本発明の架橋環状オレフィン樹脂組成物は、(a)環状オレフィンモノマー100質量部、(b)非極性ゴム0.3〜15質量部及び(c)メタセシス重合触媒を含有する重合性組成物をメタセシス重合してなる。上記重合性組成物は、好ましくは、更に、(d)1分間半減温度が160〜200℃の有機過酸化物を含む。上記(b)非極性ゴムは、好ましくは、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴムからなる群から選択される1種以上である。好ましい(a)環状オレフィンモノマーはノルボルネン系モノマーである。好ましい(c)メタセシス重合触媒はルテニウムカルベン錯体である。
本発明の架橋環状オレフィン樹脂フィルムは、上記架橋環状オレフィン樹脂組成物からなる。上記架橋環状オレフィン樹脂フィルムの好ましい用途は、半導体封止工程に用いられる離型フィルム又はプリント基板製造用の離型フィルムである。
本発明の架橋環状オレフィン樹脂組成物の製造方法は、(a)環状オレフィンモノマー100質量部、(b)非極性ゴム0.3〜15質量部及び(c)メタセシス重合触媒を含有する重合性組成物をメタセシス重合する工程を含む。上記重合性組成物は、好ましくは、更に、(d)1分間半減温度が160〜200℃の有機過酸化物を含む。上記(b)非極性ゴムは、好ましくは、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴムからなる群から選択される1種以上である。上記重合性組成物に含有される、好ましい(a)環状オレフィンモノマーはノルボルネン系モノマーである。上記重合性組成物に含有される、好ましい(c)メタセシス重合触媒はルテニウムカルベン錯体である。
本発明の架橋環状オレフィン樹脂フィルムの製造方法は、(a)環状オレフィンモノマー100質量部、(b)非極性ゴム0.3〜15質量部及び(c)メタセシス重合触媒を含有する重合性組成物を基材上に塗布し、メタセシス重合を上記基材上で行う工程を含む。上記重合性組成物は、好ましくは、更に、(d)1分間半減温度が160〜200℃の有機過酸化物を含む。上記(b)非極性ゴムは、好ましくは、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴムからなる群から選択される1種以上である。上記重合性組成物に含有される、好ましい(a)環状オレフィンモノマーはノルボルネン系モノマーである。上記重合性組成物に含有される、好ましい(c)メタセシス重合触媒はルテニウムカルベン錯体である。
本発明の架橋環状オレフィン樹脂組成物は、封止材、プリプレグ及び接着剤等に使用される樹脂との十分な離型性を有するフィルムを与える。
本発明の架橋環状オレフィン樹脂組成物は、(a)環状オレフィンモノマー100質量部、(b)非極性ゴム0.3〜15質量部及び(c)メタセシス重合触媒を含有する重合性組成物をメタセシス重合してなる。
本発明の架橋環状オレフィン樹脂フィルムは、上記架橋環状オレフィン樹脂組成物を含有してなる。
本発明の架橋環状オレフィン樹脂フィルムは、上記架橋環状オレフィン樹脂組成物以外のものを含有していてもよいが、好ましくは、上記架橋環状オレフィン樹脂組成物のみからなる。
本発明の架橋環状オレフィン樹脂組成物の原料の1つである(a)環状オレフィンモノマーは、炭素原子で形成される環構造を有し、該環中に炭素−炭素二重結合を有する化合物である。その具体例は、ノルボルネン系モノマー及び単環環状オレフィン等である。好ましい(a)環状オレフィンモノマーはノルボルネン系モノマーである。ノルボルネン系モノマーは、ノルボルネン環を含むモノマーである。ノルボルネン系モノマーの具体例は、ノルボルネン類、ジシクロペンタジエン類及びテトラシクロドデセン類などである。これらは、アルキル基、アルケニル基、アルキリデン基及びアリール基などの炭化水素基;カルボキシル基及び酸無水物基などの極性基;を置換基として含有し得る。
ノルボルネン系モノマーは、ノルボルネン環の二重結合以外に、さらに二重結合を有していてもよい。離型フィルムの離型性の向上の観点から、ノルボルネン系モノマーは、非極性の、すなわち炭素原子と水素原子のみで構成されるノルボルネン系モノマーが好ましい。
非極性のノルボルネン系モノマーの具体例は、ジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン及びジヒドロジシクロペンタジエン(トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エンとも言う。)などの非極性のジシクロペンタジエン類;
テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−エチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−シクロヘキシルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−シクロペンチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メチレンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−エチリデンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−ビニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−プロペニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−シクロヘキセニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−シクロペンテニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン及び9−フェニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エンなどの非極性のテトラシクロドデセン類;
2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−ヘキシル−2−ノルボルネン、5−デシル−2−ノルボルネン、5−シクロヘキシル−2−ノルボルネン、5−シクロペンチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−プロペニル−2−ノルボルネン、5−シクロヘキセニル−2−ノルボルネン、5−シクロペンテニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロ−9H−フルオレンとも言う。)及びテトラシクロ[10.2.1.02,11.04,9]ペンタデカ−4,6,8,13−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9,9a,10−ヘキサヒドロアントラセンとも言う。)などの非極性のノルボルネン類;
トリシクロペンタジエン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカ−4,10−ジエン、ペンタシクロ[9.2.1.14,7.02,10.03,8]ペンタデカ−5,12−ジエン及びヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]ヘプタデカ−4−エンなどの五環体以上の非極性の環状オレフィン類;などである。
入手容易性とフィルムの耐熱性向上の観点から、好ましい非極性のノルボルネン系モノマーは、非極性ジシクロペンタジエン類及び非極性テトラシクロドデセン類であり、より好ましい非極性ノルボルネン系モノマーは、非極性ジシクロペンタジエン類である。
極性基を含むノルボルネン系モノマーの具体例は、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−カルボン酸メチル、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−メタノール、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−カルボン酸、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4,5−ジカルボン酸、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4,5−ジカルボン酸無水物、5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチル、2−メチル−5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチル、酢酸5−ノルボルネン−2−イル、5−ノルボルネン−2−メタノール、5−ノルボルネン−2−オール、5−ノルボルネン−2−カルボニトリル、2−アセチル−5−ノルボルネン及び7−オキサ−2−ノルボルネンなどである。
単環環状オレフィンの具体例は、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、シクロドデセン、1,5−シクロオクタジエン、及び、置換基を有するこれらの誘導体などである。
これらの(a)環状オレフィンモノマーは1種単独で若しくは2種以上を組み合わせて用いられる。単環環状オレフィンの添加量は、(a)環状オレフィンモノマーの全量に対して、好ましくは40質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。単環環状オレフィンの添加量が上記上限以下であることにより、架橋環状オレフィン樹脂組成物の耐熱性が十分に得られる。
本発明の架橋環状オレフィン樹脂組成物を得る際には、少なくとも、(a)環状オレフィンモノマー、(b)非極性ゴム及び(c)メタセシス重合触媒を含有する重合性組成物をメタセシス重合する。(c)メタセシス重合触媒は、(a)環状オレフィンモノマーをメタセシス重合させる。当該(c)メタセシス重合触媒は特定の触媒に限定されない。
遷移金属原子を中心にして、イオン、原子、多原子イオン及び/又は化合物が複数結合してなる錯体が、(c)メタセシス重合触媒として用いられる。5族、6族及び8族(長周期型周期表、以下同じ)の原子が、遷移金属原子として使用される。それぞれの族の原子は特に限定されないが、好ましい5族の原子はタンタルであり、好ましい6族の原子はモリブデン及びタングステンであり、好ましい8族の原子はルテニウム及びオスミウムである。
より好ましい(c)メタセシス重合触媒は、8族のルテニウム及びオスミウムの錯体であり、特に好ましい(c)メタセシス重合触媒は、ルテニウムカルベン錯体である。ルテニウムカルベン錯体は、重合時の触媒活性に優れるため、残留未反応モノマーが少ない架橋環状オレフィン重合体が生産性よく得られる。
ルテニウムカルベン錯体の具体例は、触媒活性の観点から、以下の式(1)又は式(2)で表される錯体である。
Figure 2014234416
式(1)及び(2)において、R1及びR2はそれぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含んでいてもよい、環状又は鎖状の、炭素数1〜20の炭化水素基;を表す。X1及びX2はそれぞれ独立して、任意のアニオン性配位子を示す。L1及びL2はそれぞれ独立して、中性電子供与性化合物を表す。また、R1とR2は互いに結合して、ヘテロ原子を含んでいてもよい、脂肪族環又は芳香族環を形成していてもよい。さらに、R1、R2、X1、X2、L1及びL2は、任意の組合せで互いに結合して多座キレート化配位子を形成していてもよい。
本発明におけるヘテロ原子は、周期表15族及び16族の原子である。ヘテロ原子の具体例は、窒素原子(N)、酸素原子(O)、リン原子(P)、硫黄原子(S)、砒素原子(As)及びセレン原子(Se)などである。カルベン化合物の安定性の観点から、好ましいヘテロ原子はN、O、P、及びSであり、特に好ましいヘテロ原子はNである。
中性電子供与性化合物は、ヘテロ原子含有カルベン化合物とその他の中性電子供与性化合物に大別される。(c)メタセシス重合触媒の活性の観点から、好ましい中性電子供与性化合物は、ヘテロ原子含有カルベン化合物である。カルベン炭素の両側にヘテロ原子が隣接して結合しているヘテロ原子含有カルベン化合物が好ましく、カルベン炭素原子とその両側のヘテロ原子とを含んでヘテロ環が形成されているヘテロ原子含有カルベン化合物がより好ましい。カルベン炭素に隣接するヘテロ原子は、好ましくは嵩高い置換基を有している。
好ましいヘテロ原子含有カルベン化合物の具体例は、以下の式(3)又は式(4)で示される化合物である。
Figure 2014234416
式(3)及び式(4)において、R3〜R6はそれぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含んでいてもよい、環状又は鎖状の、炭素数1〜20の炭化水素基;を表す。R3〜R6は任意の組合せで互いに結合して環を形成していてもよい。
前記式(3)又は式(4)で表される化合物の具体例は、1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジ(1−アダマンチル)イミダゾリジン−2−イリデン、1−シクロヘキシル−3−メシチルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジメシチルオクタヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン、1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジ(1−フェニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン及び1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデンなどである。
前記式(3)又は式(4)で示される化合物のほかに、1,3,4−トリフェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン、1,3−ジシクロヘキシルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン、N,N,N',N'−テトライソプロピルホルムアミジニリデン、1,3,4−トリフェニル−4,5−ジヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン及び3−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2,3−ジヒドロチアゾール−2−イリデンなどのヘテロ原子含有カルベン化合物を用い得る。
ヘテロ原子含有カルベン化合物以外の中性電子供与性化合物は、中心金属から引き離されたときに中性の電荷を持つ配位子である。当該中性電子供与性化合物の具体例は、カルボニル類、アミン類、ピリジン類、エーテル類、ニトリル類、エステル類、ホスフィン類、チオエーテル類、芳香族化合物、オレフィン類、イソシアニド類及びチオシアネート類などである。好ましい中性電子供与性化合物は、ホスフィン類、エーテル類及びピリジン類であり、より好ましい中性電子供与性化合物はトリアルキルホスフィンである。
前記式(1)及び式(2)において、アニオン(陰イオン)性配位子X1とX2は、中心金属原子から引き離されたときに負の電荷を持つ配位子であり、その具体例は、弗素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)及び沃素原子(I)などのハロゲン原子;ジケトネート基;置換シクロペンタジエニル基;アルコキシ基;アリールオキシ基;カルボキシル基;などである。好ましいアニオン性配位子はハロゲン原子であり、より好ましい配位子は塩素原子である。
前記式(1)において、X2とL2が互いに結合して多座キレート化配位子を形成しているルテニウムカルベン錯体の例は、下式(5)で表されるシフ塩基配位錯体である。
Figure 2014234416
式(5)において、Zは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、NR12、PR12又はAsR12を表し、R12は、R1およびR2で例示したものと同様である。
式(5)中、R7〜R9は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を含んでいてもよい1価の有機基を表す。ヘテロ原子を含んでいてもよい1価の有機基の具体例は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、アリール基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数2〜20のアルケニルオキシ基、炭素数2〜20のアルキニルオキシ基、アリールオキシ基、炭素数1〜8のアルキルチオ基、炭素数1〜20のカルボニルオキシ基、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素数1〜20のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜20のアルキルスルホン酸基、アリールスルホン酸基、炭素数1〜20のホスホン酸基、アリールホスホン酸基、炭素数1〜20のアルキルアンモニウム基及びアリールアンモニウム基等である。
これらのヘテロ原子を含んでいてもよい1価の有機基は、置換基を有していてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。置換基の例は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシル基及びアリール基である。1価の有機基が環を形成する場合、環は、芳香環、脂環及びヘテロ環のいずれであってもよい。
式(5)中、R10及びR11は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、又はヘテロアリール基を表し、これらの基は、置換基を有していてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。当該置換基の例は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシル基及びアリール基である。R10及びR11が環を形成する場合、環は、芳香環、脂環及びヘテロ環のいずれであってもよい。
前記式(1)で表される錯体化合物の具体例は、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−4,5−ジブロモ−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(3−フェニル−1H−インデン−1−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリジン−2−イリデン)(3−メチル−2−ブテン−1−イリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−オクタヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン[1,3−ジ(1−フェニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(トリシクロヘキシルホスフィン)(1,3,4−トリフェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジイソプロピルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン)(エトキシメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリジン−2−イリデン)ピリジンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリジン−2−イリデン)(2−フェニルエチリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(2−フェニルエチリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4,5−ジブロモ−4−イミダゾリン−2−イリデン)[(フェニルチオ)メチレン](トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド及び(1,3−ジメシチル−4,5−ジブロモ−4−イミダゾリン−2−イリデン)(2−ピロリドン−1−イルメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリドなどの、ヘテロ原子含有カルベン化合物及び中性電子供与性化合物が各々1つ結合したルテニウム錯体化合物;
ベンジリデンビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド及び(3−メチル−2−ブテン−1−イリデン)ビス(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリドなどの、2つの中性電子供与性化合物が結合したルテニウム錯体化合物;
ベンジリデンビス(1,3−ジシクロヘキシル−4−イミダゾリジン−2−イリデン)ルテニウムジクロリド及びベンジリデンビス(1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン)ルテニウムジクロリドなどの、2つのヘテロ原子含有カルベン化合物が結合したルテニウム錯体化合物;
式(6)で表される、X2とL2が互いに結合して多座キレート化配位子を形成しているルテニウムカルベン錯体;などである。
Figure 2014234416
式(6)において、Mesはメシチル基を表す。R7及びR8は、それぞれ、水素原子又はメチル基であって、少なくとも一方はメチル基である。R13及びR14は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を含んでいてもよい1価の有機基を表す。なお、「1価の有機基」は、式(5)の説明において上述したR7〜R9と同様のものである。
前記式(2)で表される錯体化合物の具体例は、(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリジン−2−イリデン)(フェニルビニリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(t−ブチルビニリデン)(1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリド及びビス(1,3−ジシクロヘキシル−4−イミダゾリン−2−イリデン)フェニルビニリデンルテニウムジクロリドなどである。
特に好ましい錯体化合物は、前記式(1)で表され、かつ配位子として前記式(3)または(4)で表される化合物を1つ有するものである。
これらのルテニウムカルベン錯体は、(I)Org. Lett.,1999年、第1巻、953頁、(II)Tetrahedron. Lett.,1999年、 第40巻、2247頁、(III)国際公開第2003/062253号パンフレットなどに記載された方法によって製造される。
(c)メタセシス重合触媒の使用量は、((c)メタセシス重合触媒中の金属原子:(a)環状オレフィンモノマー)のモル比で、(1:2,000)〜(1:2,000,000)、好ましくは(1:5,000)〜(1:1,000,000)、より好ましくは(1:10,000)〜(1:500,000)の範囲である。(c)メタセシス重合触媒の量が上記下限以上であることにより、重合反応率の低下による重合体中のモノマーの残留、及び、架橋重合体の架橋度の低下を抑制することができ、得られる架橋環状オレフィン樹脂組成物の耐熱性を向上させることができる。また、重合触媒の量が上記上限以下であることにより、製造コストを抑えることができ、また反応速度が速くなりすぎることを抑えて、後述する重合時のフィルム成形を容易に行うことができる。
(c)メタセシス重合触媒は、重合活性を制御し、重合反応率を向上させる目的で活性剤(共触媒)と併用され得る。活性剤の具体例は、アルミニウム、スカンジウム、スズ並びに珪素の、アルキル化物、ハロゲン化物、アルコキシ化物及びアリールオキシ化物などである。活性剤の更なる具体例は、トリアルコキシアルミニウム、トリフェノキシアルミニウム、ジアルコキシアルキルアルミニウム、アルコキシジアルキルアルミニウム、トリアルキルアルミニウム、ジアルコキシアルミニウムクロリド、アルコキシアルキルアルミニウムクロリド及びジアルキルアルミニウムクロリド等のアルミニウム化合物;トリアルコキシスカンジウム等のスカンジウム化合物;テトラアルコキシチタン等のチタン化合物;テトラアルキルズズ及びテトラアルコキシスズ等のスズ化合物;テトラアルコキシジルコニウム等のジルコニウム化合物;ジメチルモノクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、テトラクロロシラン、ビシクロヘプテニルメチルジクロロシラン、フェニルメチルジクロロシラン、ジヘキシルジクロロシラン、フェニルトリクロロシラン及びメチルトリクロロシラン等のシラン化合物;などである。
活性剤の使用量は、((c)メタセシス重合触媒中の金属原子:活性剤)のモル比で、例えば、(1:0.05)〜(1:100)、好ましくは(1:0.2)〜(1:20)、より好ましくは(1:0.5)〜(1:10)の範囲である。
(c)メタセシス重合触媒は、重合活性を制御し、重合反応速度を調節する目的で重合調節剤と併用され得る。重合調節剤の具体例は、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリブチルホスフィン、1,1−ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン及び1,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタンなどのリン化合物;エーテル、エステル及びニトリルなどのルイス塩基;等である。これらの使用量は、(c)メタセシス重合触媒1モルに対して、例えば0.01〜50モル、好ましくは0.05〜10モルである。
本発明の架橋環状オレフィン樹脂組成物の製造にあたり、重合法は、溶液重合法、塊状重合法のいずれでもよいが、溶媒除去の工程が不要であるとの観点から、塊状重合法が好ましい。また、本発明の架橋環状オレフィン樹脂フィルムの製造にあたっては、重合と同時にフィルム形状に成形され得るとの観点からも、塊状重合法が好ましい。
塊状重合法は、(a)環状オレフィンモノマー、(b)非極性ゴム及び(c)メタセシス重合触媒を含有する重合性組成物を、必要に応じ用いられる添加剤の存在下にメタセシス重合する工程において好適に用いられる。
(a)環状オレフィンモノマーはメタセシス重合されて、環状オレフィン重合体が得られ、更に、当該環状オレフィン重合体は、メタセシス重合後またはメタセシス重合と同時に、架橋されて架橋環状オレフィン重合体が得られると考えられる。
本発明の架橋環状オレフィン樹脂組成物の前駆体である重合性組成物は、(a)環状オレフィンモノマー100質量部に対して、(b)非極性ゴム0.3〜15質量部を含有する。(b)非極性ゴムは、それを構成する各単量体単位が、実質的に、炭素(C)と水素(H)のみを含有するゴムである。(b)非極性ゴムは、特定のゴムに限定されない。
(b)非極性ゴムの好ましいsp値は8.6(cal/cm31/2以下であり、より好ましいsp値は6.0(cal/cm31/2〜8.6(cal/cm31/2であり、更に好ましいsp値は7.5(cal/cm31/2〜8.6(cal/cm31/2である。
(b)非極性ゴムの好ましいムーニー粘度(ML1+4,100℃)範囲は40〜90である。
(b)非極性ゴムは、好ましくは、共役ジエン単量体単位を含有する。共役ジエン単量体の具体例は、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン及び1,3−シクロペンタジエン等である。好ましい共役ジエン単量体は、1,3-ブタジエン及びイソプレンである。これらの共役ジエン単量体は、1種単独で、あるいは2種以上を併用して用いられる。
(b)非極性ゴムは、上記共役ジエン単量体以外の、他の単量体に由来する単量体単位を含有していてもよい。上記他の単量体の具体例は、エチレン;プロピレン、1−ブテン、イソブチレン等の鎖状α−オレフィン;シクロペンテン、シクロヘキセン、ビシクロノルボルネン等の脂環式オレフィン;
スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルスチレン、1,1−ジフェニルスチレン等のビニル芳香族化合物;等である。好ましい他の単量体は、ビニル芳香族化合物及び鎖状α−オレフィンであり、より好ましい他の単量体は、スチレン及びイソブチレンである。これらの他の単量体は、1種単独で、あるいは2種以上を併用して用いられる。
好ましい(b)非極性ゴムは、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム(イソブチレン−イソプレンゴム)である。スチレン−ブタジエンゴムは、スチレン単位を10〜50質量%含有するものが好ましく、スチレン単位を15〜40質量%含有するものがより好ましい。より好ましい(b)非極性ゴムは、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴムである。更に好ましい(b)非極性ゴムはイソプレンゴムである。(b)非極性ゴムは、1種単独で、あるいは2種以上を併用して用いられる。
本発明の架橋環状オレフィン樹脂組成物の前駆体である重合性組成物中の(b)非極性ゴムの含有量は、(a)環状オレフィンモノマー100質量部に対し、0.3〜15質量部であり、好ましくは0.5〜10質量部であり、より好ましくは1〜10質量部であり、更に好ましくは1〜5質量部である。(b)非極性ゴムの含有量を上記範囲とすることにより、本発明の架橋環状オレフィン樹脂フィルムの離型性が良好となる。また、上記上限以下とすることにより、重合性組成物がメタセシス重合を行う前に固化することを防止し、本発明の架橋環状オレフィン樹脂組成物を好適に得ることができる。
本発明の架橋環状オレフィン樹脂組成物の前駆体である重合性組成物は、好ましくは、(d)1分間半減温度が160〜200℃の有機過酸化物(以下、「(d)有機過酸化物」と称することがある。)を含有する。当該(d)有機過酸化物は、本発明において、架橋剤として作用する。当該(d)有機過酸化物の好ましい具体例は、ビス(t−ブチルジオキシイソプロピル)ベンゼン及びジ−t−ブチルパーオキサイドなどである。これらの(d)1分間半減温度が160〜200℃の有機過酸化物は、1種単独で若しくは2種以上を組み合わせて用いられる。
(d)1分間半減温度が160〜200℃の有機過酸化物における、好ましい1分間半減温度は170〜195℃であり、より好ましい1分間半減温度は180〜195℃であり、さらに好ましい1分間半減温度は185〜195℃であり、特に好ましい1分間半減温度は185〜192℃である。1分間半減温度が上記下限以上にあることにより、本発明の架橋環状オレフィン樹脂組成物のガラス転移温度が低下せず、また本発明の架橋環状オレフィン樹脂フィルムの離型性が良好となる。
本発明の架橋環状オレフィン樹脂組成物の前駆体である重合性組成物中の、(d)1分間半減温度が160〜200℃の有機過酸化物の含有量は、(a)環状オレフィンモノマー100質量部に対して、好ましくは0.5〜10質量部であり、より好ましくは1〜5質量部である。(d)1分間半減温度が160〜200℃の有機過酸化物の含有量が上記下限以上にあることにより、本発明の架橋環状オレフィン樹脂組成物のガラス転移温度が低下せず、また本発明の架橋環状オレフィン樹脂フィルムの離型性が良好となる。(d)1分間半減温度が160〜200℃の有機過酸化物の含有量が上記上限以下にあることにより、本発明の架橋環状オレフィン樹脂組成物が脆くなることを防止できる。
各種の添加剤を、各種の用途、目的に応じた、本発明の架橋環状オレフィン樹脂組成物及び架橋環状オレフィン樹脂フィルムの特性改質、機能付与及び成形作業性の改善などを目的として、本発明の架橋環状オレフィン樹脂組成物の前駆体である重合性組成物中に含有し得る。そのような添加剤の具体例は、重合禁止剤、消泡剤、発泡剤、着色剤、紫外線吸収剤、安定剤、難燃剤、湿潤剤、分散剤、離型滑剤、可塑剤及び充填材などである。架橋環状オレフィン樹脂組成物の耐久性および保存安定性を向上するため、安定剤を含有させることが好ましい。
本発明の架橋環状オレフィン樹脂組成物の前駆体である重合性組成物中に含有し得る安定剤としては、フェノール系安定剤、リン系安定剤及びヒンダードアミン系光安定剤が好ましい。
フェノール系安定剤の具体例は、N,N'−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)アセチル]ヒドラジン、N,N'−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、N,N'−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブチロニル]ヒドラジン、N,N'−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)オクチロニル]ヒドラジン、N,N'−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ステアロイル]ヒドラジン及びN,N'−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ベンゾイル]ヒドラジン等の、ヒドラジン構造を有するフェノール系安定剤;N,N'−ビス[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)アセチルオキシ〕エチル]オキサミド、N,N'−ビス[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]オキサミド、N,N'−ビス[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブチロニルオキシ〕エチル]オキサミド、N,N'−ビス[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)オクチロニルオキシ〕エチル]オキサミド、N,N'−ビス[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ステアロイルオキシ〕エチル]オキサミド及びN,N'−ビス[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ベンゾイルオキシ〕エチル]オキサミド等の、オキサミド構造を有するフェノール系安定剤;ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート] 、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス{ 2−〔3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニロキシ〕−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,1 0−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン及び2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等の、ヒドラジン構造又はオキサミド構造を有するフェノール系安定剤以外のフェノール系安定剤;等である。
上記フェノール系安定剤は、1種類又は複数種が併用されて使用される。これらのうち、高温耐変色性の観点から、ヒドラジン構造又はオキサミド構造を有するフェノール系安定剤以外のフェノール系安定剤が好ましく、オクタデシル−3−(3,5−ジ―tert−ブチル―4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが特に好ましい。
リン系安定剤の具体例は、2,2'−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸塩、ビス−(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリル[(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]ホスフォネート、ジエチル{[(3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル)メチル]ホスフォネート}及び6−〔3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチル)プロポキシ〕−2,4,8,10−テトラ−tert−ブチルジベンズ〔d,f〕〔1,3,2〕−ジオキサホスフェピン等である。これらの1種類又は複数種が併用されて使用される。
ヒンダードアミン系光安定剤の具体例は、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−アリル−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−ベンジル−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(4−t−ブチル−2−ブテニル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−エチル−4−サリチロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン−4−イル−β(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1−ベンジル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニルマレイネート(maleinate)、(ジ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−アジペート、(ジ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−セバケート、(ジ−1,2,3,6−テトラメチル−2,6−ジエチル−ピペリジン−4−イル)−セバケート、(ジ−1−アリル−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−4−イル)−フタレート、1−アセチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−アセテート、トリメリット酸−トリ−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)エステル、1−アクリロイル−4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ジブチル−マロン酸−ジ−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−ピペリジン−4−イル)−エステル、ジベンジル−マロン酸−ジ−(1,2,3,6−テトラメチル−2,6−ジエチル−ピペリジン−4−イル)−エステル、ジメチル−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オキシ)−シラン,トリス−(1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−ホスフィット、トリス−(1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−ホスフェート,N,N'−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−ヘキサメチレン−1,6−ジアミン、N,N'−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−ヘキサメチレン−1,6−ジアセトアミド、1−アセチル−4−(N−シクロヘキシルアセトアミド)−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン、4−ベンジルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、N,N'−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−N,N'−ジブチル−アジパミド、N,N'−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−N,N'−ジシクロヘキシル−(2−ヒドロキシプロピレン)、N,N'−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−p−キシリレン−ジアミン、4−(ビス−2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−メタクリルアミド−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン及びα−シアノ−β−メチル−β−[N−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)]−アミノ−アクリル酸メチルエステル等である。これらの1種類又は複数種が併用されて使用される。
本発明の架橋環状オレフィン樹脂組成物の前駆体である重合性組成物中に含有し得る安定剤の種類及び含有量は、架橋環状オレフィン樹脂組成物の高温時の機械的特性、フィルム成形作業性、保存安定性等の条件により適宜選択される。これらの安定剤の合計含有量は、(a)環状オレフィンモノマー100質量部に対して、好ましくは20質量部以下であり、より好ましくは1〜15質量部であり、更に好ましくは1〜10質量部である。上記下限以上であることにより、架橋環状オレフィン樹脂組成物の高温耐変色性が優れる。上記上限以下であることにより、(a)環状オレフィンモノマーに不溶の部分が生じることがなく、架橋環状オレフィン樹脂フィルムを良好に得ることができる。
重合禁止剤の具体例は、パラベンゾキノン、トルキノン及びナフトキノン等のキノン類;ハイドロキノン、パラ−t−ブチルカテコール及び2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン等のハイドロキノン類;ナフテン酸銅やオクテン酸銅等の銅塩;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、トリメチルベンジルアンモニウムマレエート及びフェニルトリメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩類;キノンジオキシムやメチルエチルケトオキシム等のオキシム類;トリエチルアミン塩酸塩やジブチルアミン塩酸塩等のアミン塩酸塩類;等である。これらの1種類又は複数種が併用されて使用される。
離型滑剤の具体例は、シリコーンオイル及びステアリン酸亜鉛等である。これらの1種類又は複数種が併用されて使用される。これらの離型滑剤の含有量は、(a)環状オレフィンモノマー100質量部に対して、好ましくは200質量部以下である。
充填材の具体例は、カーボンブラック、天然黒鉛、シリカ、珪砂、ガラス粉、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム及びクレーなどの無機充填材;木粉、ポリエステルビーズ及びポリスチレンビーズなどの有機充填材;等である。これらの1種類又は複数種が併用されて使用される。充填材は、架橋環状オレフィン樹脂組成物の収縮率、弾性率、熱伝導率、導電性などの物性を向上させる。
充填材の粒径、形状、アスペクト比、品位などのグレードは、架橋環状オレフィン樹脂組成物の物性により、適宜決定される。これらの充填材の含有量は、(a)環状オレフィンモノマー100質量部に対して、好ましくは400質量部以下、より好ましくは300質量部以下である。
本発明の架橋環状オレフィン樹脂組成物を得る際には、少なくとも、(a)環状オレフィンモノマー、(b)非極性ゴム、(c)メタセシス重合触媒及び必要に応じて用いられる添加剤を含有する重合性組成物をメタセシス重合する。(c)メタセシス重合触媒は、必要に応じて、少量の不活性溶剤に溶解又は懸濁して使用される。当該溶剤の具体例は、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、流動パラフィン及びミネラルスピリットなどの鎖状脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ジシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデン及びシクロオクタンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン及びキシレンなどの芳香族炭化水素;インデン及びテトラヒドロナフタレンなどの、脂環と芳香環とを有する炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン及びアセトニトリルなどの含窒素炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、シクロペンタノン及びシクロヘキサノンなどの含酸素炭化水素;などである。好ましい溶剤は、含酸素炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、および脂環と芳香環とを有する炭化水素である。重合触媒としての活性を低下させない液状の老化防止剤又は可塑剤を溶剤として用いてもよい。
(a)環状オレフィンモノマー、(b)非極性ゴム、(c)メタセシス重合触媒及び必要に応じて用いられる添加剤を含む重合性組成物の室温(20℃)における粘度は、所望のフィルムの厚みにもよるが、0.4〜500mPa・sが好ましい。粘度が上記範囲内にあることにより、フィルム形状に成形することが容易となる。上記重合性組成物の粘度は、(a)環状オレフィンモノマー、(b)非極性ゴム、(c)メタセシス重合触媒及び必要に応じて用いられる添加剤の種類および使用量により調整される。
上記重合性組成物をメタセシス重合してフィルム形状に成形して本発明の架橋環状オレフィン樹脂フィルムを得る方法の好適な具体例は、上記重合性組成物を基材上に塗布し、メタセシス重合を上記基材上で、塊状重合により行う方法である。
樹脂、ガラス、金属など一般公知の素材が、上記基材として選択される。樹脂の具体例は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート及びポリアリレートなどのポリエステル;ポリカーボネート;ポリプロピレン及びポリエチレンなどのポリオレフィン;ナイロンなどのポリアミド;ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂;等であり、入手が容易なポリエステルが好ましい。上記基材の好ましい形状は、材料が金属又は樹脂であればドラム状又はベルト状である。好ましい基材は、入手が容易で安価な樹脂フィルムである。
上記重合性組成物を、必要に応じ、(c)メタセシス重合触媒が活性を発現する温度まで加熱してメタセシス重合する。重合温度は、好ましくは0〜250℃、より好ましくは20〜200℃である。上記重合性組成物の加熱方法は特に制約されない。当該加熱方法の具体例は、加熱プレート上で加熱する方法、プレス機を用いて加圧しながら加熱(熱プレス)する方法、加熱したローラーで押圧する方法、加熱炉を用いる方法などである。重合反応時間は、(c)メタセシス重合触媒の量および加熱温度により適宜決定されるが、好ましくは1分間〜24時間である。
(a)環状オレフィンモノマーはメタセシス重合されて、環状オレフィン重合体が得られ、更に、当該環状オレフィン重合体は、メタセシス重合後またはメタセシス重合と同時に、架橋されて架橋環状オレフィン重合体が得られると考えられる。メタセシス重合と同時に行う架橋は、より少ない工程で工業的に有利に本発明の架橋環状オレフィン樹脂組成物を得られるので好ましい。
架橋方法の具体例は、(A)(a)環状オレフィンモノマーの少なくとも一部として架橋性モノマーを用いて、これを重合させ三次元架橋構造を有する重合体を得る方法;(B)上記重合性組成物に架橋剤を添加して重合を行い、さらに重合と同時または重合後に架橋反応を行って架橋する方法;(C)環状オレフィン重合体に光または電子線を照射し、重合後に架橋反応を行って架橋する方法;などである。これらの方法は、そのうちの1法を用いてもよく、2法以上を併用してもよい。経済性の点から、(A)及び/又は(B)の方法が好ましい。
炭素−炭素二重結合を2以上有する(a)環状オレフィンモノマーが、(A)の方法に用いられる架橋性モノマーとして用いられる。当該架橋性モノマーの具体例は、ジシクロペンタジエン及びトリシクロペンタジエン等である。これらの1種類又は複数種が併用されて使用される。当該架橋性モノマーの使用量及び重合時の加熱温度により架橋密度を制御できる。当該架橋性モノマーの使用量は、本発明の架橋環状オレフィン樹脂組成物の用途に応じて適正な架橋密度が様々であるため特に限定されない。当該架橋性モノマーの好ましい使用量は、(a)環状オレフィンモノマー全量中の架橋性モノマーの割合で0.1〜100モル%である。
公知の熱架橋剤及び光架橋剤が、(B)の方法に用いられる架橋剤として挙げられる。架橋剤としては熱架橋剤が好ましい。熱架橋剤の中でも、有機過酸化物、ジアゾ化合物、非極性ラジカル発生剤などのラジカル発生剤が好ましく、その中でも、前述した(d)有機過酸化物が特に好ましい。架橋剤の使用量は、(a)環状オレフィンモノマー100質量部に対して、好ましくは0.5〜10質量部、より好ましくは1〜5質量部である。熱架橋剤を用いる場合の架橋を行う温度は、好ましくは100〜250℃、より好ましくは150〜200℃である。架橋する時間は特に制約されないが、好ましくは数分間から数時間である。
本発明におけるメタセシス重合及び架橋は、好ましくは酸素分子及び水の不存在下で行われる。当該メタセシス重合及び架橋方法の具体例は、(1)窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下でメタセシス重合及び架橋を行う方法(2)真空下でメタセシス重合及び架橋を行う方法、(3)基材上に塗布した上記重合性組成物を樹脂フィルムなどで覆って密閉した状態でメタセシス重合及び架橋を行う方法、などである。当該樹脂フィルムの具体例は、前記基材として例示したものと同じである。本発明におけるメタセシス重合及び架橋を、酸素分子及び水の不存在下で行うことにより、得られる本発明の架橋環状オレフィン樹脂組成物及び架橋環状オレフィン樹脂フィルムの表面の酸化を防止し、所望の屈曲性を発揮することが可能となる。
本発明の架橋環状オレフィン樹脂フィルムの厚さは、用途に応じて適正値が様々であり、特に限定されないが、好ましくは0.5〜5,000μmであり、ハンドリング性の観点から、より好ましい当該厚さは5〜500μmである。本発明の架橋環状オレフィン樹脂フィルムの表面は、平滑であってもよく、エンボス加工や、凹凸を有するポリエチレンテレフタレートなどの基材で挟んで重合し表面に凹凸形状を付与する加工等により、凹凸形状を形成されていてもよい。
有機物、無機物、金属などの異種素材よりなる層を、気相反応、コーティング、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング、CVD及び無電解メッキなど公知の表面処理技術を用いて、本発明の架橋環状オレフィン樹脂フィルムの表面に形成することもできる。例えば、シリカ(SiO2)、フッ化マグネシウム(MgF2)及びフッ素樹脂などの離型性を向上させる素材よりなる薄膜を架橋環状オレフィン樹脂フィルムの表面層に設けたり、フッ素ガス、炭素繊維系プリカーサで表面処理を行い、架橋環状オレフィン樹脂フィルムの表面をフッ素化することもできる。
本発明の架橋環状オレフィン樹脂組成物の好ましいガラス転移温度は、耐熱性、封止性および形状追従性の観点より、135℃以上である。
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。実施例および比較例等における部および%は、特に断りのない限り質量基準である。
(1)非極性ゴムのムーニー粘度
非極性ゴムのムーニー粘度は、JIS K6300−1に準拠して、100℃にて測定した。
(2)スチレン−ブタジエンゴムのスチレン単位含有量
スチレン−ブタジエンゴムのスチレン単位含有量は、JIS K6239に準拠して、1H−NMR測定により求めた。
(3)架橋環状オレフィン樹脂フィルムの対プリプレグ剥離力
架橋環状オレフィン樹脂フィルムの対プリプレグ剥離力は下記のとおりに測定された。
300mm×300mmに打ち抜かれたプリント基板積層用プリプレグ(パナソニック電工(株)製FR−4 R−1661(G)GBタイプ)の両面を、各実施例又は比較例の架橋環状オレフィン樹脂フィルムではさんで真空プレス中に挿入し、2.0MPa、180℃で70分間加熱硬化した後、40℃まで冷却して、得られた試料を真空プレスから取り出した。25mm×150mmの試験片を当該試料から切り出し、180度剥離力をJIS K 6854−2に従って測定した。当該剥離力を初期対プリプレグ剥離力(N/25mm)とした。
(実施例1〜19及び比較例1〜3)
フェノール系老化防止剤(BASFジャパン(株)製 IRGANOX1076)1部、リン系老化防止剤((株)ADEKA製 アデカスタブHP−10)1部、ヒンダードアミン系光安定剤(BASFジャパン(株)製 TINUVIN770)1部、表1及び2に示される量の非極性ゴム、表1及び2に示される量の1分間半減温度が192℃の有機過酸化物(化薬アクゾ(株)製 カヤブチルD)、トリフェニルホスフィン1部を、ジシクロペンタジエン90質量%及びトリシクロペンタジエン10質量%からなるノルボルネン系モノマー混合液100部に溶解して反応原液を得た。次に、式(7)の構造を有するルテニウム触媒の1.8%シクロペンタノン溶液(RIMTEC(株)製 VC843)1.7部を反応原液に添加し、ラインミキサーで混合して重合性組成物を得た。該重合性組成物を、25℃で、厚さ0.075mm、表面をシリコーン離型処理したポリエチレンテレフタレート製キャリアフィルムの離型処理面に塗布しキャスト製膜を行い、次いで直ぐに、塗布層の上を別に用意した上記同様のキャリアフィルムで覆った。その後、200℃で3分間加熱を行い、架橋環状オレフィン樹脂フィルムを得た。得られた架橋環状オレフィン樹脂フィルムの厚さは50μmであった。結果を表1及び2に示す。
Figure 2014234416
Figure 2014234416
Figure 2014234416
1)BASFジャパン(株)製IRGANOX1076
2)(株)ADEKA製アデカスタブHP−10
3)BASFジャパン(株)製TINUVIN770
4)日本ゼオン(株)製Nipol BR1220
5)日本ゼオン(株)製Nipol NS210
6)日本ゼオン(株)製Nipol IR2200
7)JSR(株)製JSR BUTYL268
8)化薬アクゾ(株)製カヤブチルD
9)RIMTEC(株)製VC843(ルテニウム触媒1.8%含有のシクロペンタノン溶液)
上記非極性ゴムのムーニー粘度(ML1+4,100℃)、sp値及びスチレン単位含有量が表3に示される。
Figure 2014234416
実施例1〜19の重合性組成物から得られた架橋環状オレフィン樹脂フィルムは、初期対プリプレグ剥離力が小さく、離型性に優れるものであった。
比較例1の非極性ゴムを含有しない重合性組成物から得られた架橋環状オレフィン樹脂フィルムは、実施例1〜19と比較すると、初期対プリプレグ剥離力が大きく、離型性に劣るものであった。比較例2及び3の非極性ゴムの含有量が多すぎる重合性組成物は固化してしまい、これらの重合性組成物からフィルムを成形できなかった。
本発明の架橋環状オレフィン樹脂組成物は、半導体装置の製造における半導体封止工程に用いられる離型フィルムとして好適な架橋環状オレフィン樹脂フィルムを与える。本発明の架橋環状オレフィン樹脂フィルムを用いて半導体封止を行う方法は特に限定されない。当該半導体封止方法の具体例は、(I)半導体チップを搭載したリードフレームと片側の金型内面との間に、リードフレーム基板と接触するように架橋環状オレフィン樹脂フィルムを介在させて樹脂封止する方法及び(II)半導体チップを搭載したリードフレーム基板の、半導体チップ面と少なくとも片側の金型内面の間に、封止時にチップと金型の間に封止材料が充填されるように、架橋環状オレフィン樹脂フィルムを介在させて樹脂封止する方法、すなわち、架橋環状オレフィン樹脂フィルムを上金型、下金型内面の少なくとも一方の側に介在させる方法である。
本発明の架橋環状オレフィン樹脂フィルムは、プリント基板製造時及びフレキシブルプリント基板のカバーレイ貼付工程時の離型フィルムとして好適に使用される。

Claims (18)

  1. (a)環状オレフィンモノマー100質量部、(b)非極性ゴム0.3〜15質量部及び(c)メタセシス重合触媒を含有する重合性組成物をメタセシス重合して得られる架橋環状オレフィン樹脂組成物。
  2. 上記重合性組成物が、更に、(d)1分間半減温度が160〜200℃の有機過酸化物を含む、請求項1に記載の架橋環状オレフィン樹脂組成物。
  3. 上記(b)非極性ゴムが、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴムからなる群から選択される1種以上である、請求項1又は2に記載の架橋環状オレフィン樹脂組成物。
  4. 上記(a)環状オレフィンモノマーがノルボルネン系モノマーである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の架橋環状オレフィン樹脂組成物。
  5. 上記(c)メタセシス重合触媒がルテニウムカルベン錯体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の架橋環状オレフィン樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の架橋環状オレフィン樹脂組成物を含有してなる架橋環状オレフィン樹脂フィルム。
  7. 半導体封止工程に用いられる離型フィルムである、請求項6に記載の架橋環状オレフィン樹脂フィルム。
  8. プリント基板製造用の離型フィルムである、請求項6に記載の架橋環状オレフィン樹脂フィルム。
  9. (a)環状オレフィンモノマー100質量部、(b)非極性ゴム0.3〜15質量部及び(c)メタセシス重合触媒を含有する重合性組成物をメタセシス重合する工程を含む、架橋環状オレフィン樹脂組成物の製造方法。
  10. 上記重合性組成物が、更に、(d)1分間半減温度が160〜200℃の有機過酸化物を含む、請求項9に記載の架橋環状オレフィン樹脂組成物の製造方法。
  11. 上記(b)非極性ゴムが、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴムからなる群から選択される1種以上である、請求項9又は10に記載の架橋環状オレフィン樹脂組成物の製造方法。
  12. 上記(a)環状オレフィンモノマーがノルボルネン系モノマーである、請求項9〜11のいずれか1項に記載の架橋環状オレフィン樹脂組成物の製造方法。
  13. 上記(c)メタセシス重合触媒がルテニウムカルベン錯体である、請求項9〜12のいずれか1項に記載の架橋環状オレフィン樹脂組成物の製造方法。
  14. (a)環状オレフィンモノマー100質量部、(b)非極性ゴム0.3〜15質量部及び(c)メタセシス重合触媒を含有する重合性組成物を基材上に塗布し、メタセシス重合を上記基材上で行う工程を含む、架橋環状オレフィン樹脂フィルムの製造方法。
  15. 上記重合性組成物が、更に、(d)1分間半減温度が160〜200℃の有機過酸化物を含む、請求項14に記載の架橋環状オレフィン樹脂フィルムの製造方法。
  16. 上記(b)非極性ゴムが、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴムからなる群から選択される1種以上である、請求項14又は15に記載の架橋環状オレフィン樹脂フィルムの製造方法。
  17. 上記(a)環状オレフィンモノマーがノルボルネン系モノマーである、請求項14〜16のいずれか1項に記載の架橋環状オレフィン樹脂フィルムの製造方法。
  18. 上記(c)メタセシス重合触媒がルテニウムカルベン錯体である、請求項14〜17のいずれか1項に記載の架橋環状オレフィン樹脂フィルムの製造方法。
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