JP2014218596A - 架橋環状オレフィン樹脂フィルム、積層体及びそれらの製造方法 - Google Patents

架橋環状オレフィン樹脂フィルム、積層体及びそれらの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】架橋環状オレフィン樹脂を含み、金属材料との接着性に優れ、金属箔との積層体においてエッチング処理後のそり量が小さい架橋環状オレフィン樹脂フィルムを与える架橋環状オレフィン樹脂組成物を提供する。
【解決手段】架橋環状オレフィン樹脂フィルムを、(a)環状オレフィンモノマー100質量部、(b)炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも1つ有する炭素数8〜20の脂肪族カルボン酸0.01〜2質量部、(c)共役ジエン重合体環化物3〜40質量部、及び(d)メタセシス重合触媒を含有する重合性組成物を基材上に塗布した後、メタセシス重合し、その後、得られたフィルム状重合体の表面をコロナ処理して得る。
【選択図】なし

Description

本発明は、金属材料との接着性が優れる架橋環状オレフィン樹脂フィルム、当該架橋環状オレフィン樹脂フィルムと金属箔が接着されている積層体、及び当該積層体の製造方法に関する。
ノルボルネン系モノマー等の環状オレフィンモノマーを含む重合性単量体を、メタセシス重合触媒の存在下で重合させて得られる環状オレフィン樹脂の吸水率は低く、その電気特性、機械特性、耐衝撃性、耐熱性、耐光性等は優れており、当該環状オレフィン樹脂は幅広い分野の成形体の原料として使用されている。
はんだ等の利用により形成されるプリント配線基板の配線層を絶縁する電気絶縁材料、プリント配線基板に実装される電子部品の端子電極を封止する電気絶縁材料は、電気特性に加え、はんだ耐熱性を必要とする。そこで、優れた電気特性及び耐熱性を有する環状オレフィン樹脂は、プリント配線基板、電子部品の端子電極等の電気絶縁材料として使用されている。
しかし、環状オレフィン樹脂がプリント配線基板等の絶縁材料として使用されると、プリント配線基板、電子部品の端子電極等を構成する金属材料と環状オレフィン樹脂の接着性が低く、信頼性が不十分になっている。
そこで、環状オレフィン樹脂と接着させる金属材料の表面を予め所定のカップリング剤で処理し、環状オレフィン樹脂と金属材料の接着性を向上させることが検討されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、カップリング剤による金属材料の前処理は、製造工程を煩雑にする。
特開2009−255380号公報
環状オレフィン樹脂からなるフィルムと金属箔とを接着して得られる積層体をプリント基板用に用いる場合などに、金属部分を複雑な形状にするために、積層体の表面の金属箔をエッチング液でエッチング処理することが通常行われるが、エッチング処理後の積層体において、そり量が大きくなってしまう場合がある。
最近、環状オレフィンモノマーをメタセシス重合して得られる架橋環状オレフィン樹脂を含み、金属材料との接着性が優れ、金属箔との積層体においてエッチング処理後のそり量が小さい架橋環状オレフィン樹脂フィルムが希求されているが、このようなフィルムは見出されていない。
本発明が解決しようとする課題は、架橋環状オレフィン樹脂を含み、金属材料との接着性に優れ、金属箔との積層体においてエッチング処理後のそり量が小さい架橋環状オレフィン樹脂フィルム、当該架橋環状オレフィン樹脂フィルムと金属箔が接着されている積層体、及び当該積層体の製造方法の提供である。
本発明の発明者らは、鋭意検討の結果、(a)環状オレフィンモノマー、特定範囲量の(b)炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも1つ有する炭素数8〜20の脂肪族カルボン酸、特定範囲量の(c)共役ジエン重合体環化物、及び(d)メタセシス重合触媒を含有する重合性組成物を基材上に塗布した後、メタセシス重合し、その後、得られたフィルム状重合体の表面をコロナ処理して得られる架橋環状オレフィン樹脂フィルムが、金属材料との接着性に優れ、金属箔との積層体においてエッチング処理後のそり量が小さくなることを見出し、本発明の架橋環状オレフィン樹脂フィルム、当該架橋環状オレフィン樹脂フィルムと金属箔が接着されている積層体、及び当該積層体の製造方法を完成させるに至った。
本発明の架橋環状オレフィン樹脂フィルムは、(a)環状オレフィンモノマー100質量部、(b)炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも1つ有する炭素数8〜20の脂肪族カルボン酸0.01〜2質量部、(c)共役ジエン重合体環化物3〜40質量部、及び(d)メタセシス重合触媒を含有する重合性組成物をメタセシス重合し、その後、得られたフィルム状重合体の表面をコロナ処理して得られる。
上記重合性組成物は、好ましくは、更に、(e)1分間半減温度が160〜200℃の有機過酸化物を含む。好ましい上記(b)炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも1つ有する炭素数8〜20の脂肪族カルボン酸は、分子末端に炭素−炭素二重結合を有する炭素数8〜20の脂肪族カルボン酸である。好ましい上記(a)環状オレフィンモノマーはノルボルネン系モノマーである。好ましい上記(d)メタセシス重合触媒はルテニウムカルベン錯体である。
本発明の積層体は、上記架橋環状オレフィン樹脂フィルムと(f)金属箔が、該架橋環状オレフィン樹脂フィルムのコロナ処理された面にて接着されている。好ましい上記(f)金属箔は銅箔である。本発明の積層体は、好ましくは、フレキシブルプリント基板に使用される。
本発明の架橋環状オレフィン樹脂フィルムの製造方法は、(a)環状オレフィンモノマー100質量部、(b)炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも1つ有する炭素数8〜20の脂肪族カルボン酸0.01〜2質量部、(c)共役ジエン重合体環化物3〜40質量部、及び(d)メタセシス重合触媒を含有する重合性組成物を基材上に塗布した後、メタセシス重合し、その後、得られたフィルム状重合体の表面をコロナ処理する工程を含む。
上記重合性組成物は、好ましくは、更に、(e)1分間半減温度が160〜200℃の有機過酸化物を含む。好ましい上記(b)炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも1つ有する炭素数8〜20の脂肪族カルボン酸は、分子末端に炭素−炭素二重結合を有する炭素数8〜20の脂肪族カルボン酸である。好ましい上記(a)環状オレフィンモノマーはノルボルネン系モノマーである。好ましい上記(d)メタセシス重合触媒はルテニウムカルベン錯体である。
本発明の積層体の製造方法は、(a)環状オレフィンモノマー100質量部、(b)炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも1つ有する炭素数8〜20の脂肪族カルボン酸0.01〜2質量部、(c)共役ジエン重合体環化物3〜40質量部、及び(d)メタセシス重合触媒を含有する重合性組成物を基材上に塗布した後、メタセシス重合し、その後、得られたフィルム状重合体の表面をコロナ処理して架橋環状オレフィン樹脂フィルムを得る工程、及び、上記架橋環状オレフィン樹脂フィルムと(f)金属箔を、上記架橋環状オレフィン樹脂フィルムのコロナ処理された面にて接触させ、その後、加圧しながら加熱して両者を接着させる工程を含む。
上記重合性組成物は、好ましくは、更に、(e)1分間半減温度が160〜200℃の有機過酸化物を含む。好ましい上記(b)炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも1つ有する炭素数8〜20の脂肪族カルボン酸は、分子末端に炭素−炭素二重結合を有する炭素数8〜20の脂肪族カルボン酸である。好ましい上記(a)環状オレフィンモノマーはノルボルネン系モノマーである。好ましい上記(d)メタセシス重合触媒はルテニウムカルベン錯体である。
本発明の架橋環状オレフィン樹脂フィルムは、金属材料との優れた接着性を有する。本発明の積層体は、エッチング液によるエッチング処理後のそり量が小さい。
本発明の架橋環状オレフィン樹脂フィルムは、(a)環状オレフィンモノマー100質量部、(b)炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも1つ有する炭素数8〜20の脂肪族カルボン酸0.01〜2質量部、(c)共役ジエン重合体環化物3〜40質量部、及び(d)メタセシス重合触媒を含有する重合性組成物を基材上に塗布した後、メタセシス重合し、その後、得られたフィルム状重合体の表面をコロナ処理して得られる。
本発明の架橋環状オレフィン樹脂フィルムの原料の1つである(a)環状オレフィンモノマーは、炭素原子で形成される環構造を有し、該環中に炭素−炭素二重結合を有する化合物である。その具体例は、ノルボルネン系モノマー及び単環環状オレフィン等である。好ましい(a)環状オレフィンモノマーはノルボルネン系モノマーである。ノルボルネン系モノマーは、ノルボルネン環を含むモノマーである。ノルボルネン系モノマーの具体例は、ノルボルネン類、ジシクロペンタジエン類及びテトラシクロドデセン類などである。これらは、アルキル基、アルケニル基、アルキリデン基及びアリール基などの炭化水素基;カルボキシル基及び酸無水物基などの極性基;を置換基として含有し得る。
ノルボルネン系モノマーは、ノルボルネン環の二重結合以外に、さらに二重結合を有していてもよい。好ましいノルボルネン系モノマーは、非極性の、すなわち炭素原子と水素原子のみで構成されるノルボルネン系モノマーである。
非極性のノルボルネン系モノマーの具体例は、ジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン及びジヒドロジシクロペンタジエン(トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エンとも言う。)などの非極性のジシクロペンタジエン類;
テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−エチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−シクロヘキシルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−シクロペンチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メチレンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−エチリデンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−ビニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−プロペニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−シクロヘキセニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−シクロペンテニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン及び9−フェニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エンなどの非極性のテトラシクロドデセン類;
2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−ヘキシル−2−ノルボルネン、5−デシル−2−ノルボルネン、5−シクロヘキシル−2−ノルボルネン、5−シクロペンチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−プロペニル−2−ノルボルネン、5−シクロヘキセニル−2−ノルボルネン、5−シクロペンテニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロ−9H−フルオレンとも言う。)及びテトラシクロ[10.2.1.02,11.04,9]ペンタデカ−4,6,8,13−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9,9a,10−ヘキサヒドロアントラセンとも言う。)などの非極性のノルボルネン類;
トリシクロペンタジエン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカ−4,10−ジエン、ペンタシクロ[9.2.1.14,7.02,10.03,8]ペンタデカ−5,12−ジエン及びヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]ヘプタデカ−4−エンなどの五環体以上の非極性の環状オレフィン類;などである。
入手容易性とフィルムの耐熱性向上の観点から、好ましい非極性のノルボルネン系モノマーは、非極性ジシクロペンタジエン類及び非極性テトラシクロドデセン類であり、より好ましい非極性ノルボルネン系モノマーは、非極性ジシクロペンタジエン類である。
極性基を含むノルボルネン系モノマーの具体例は、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−カルボン酸メチル、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−メタノール、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−カルボン酸、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4,5−ジカルボン酸、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4,5−ジカルボン酸無水物、5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチル、2−メチル−5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチル、酢酸5−ノルボルネン−2−イル、5−ノルボルネン−2−メタノール、5−ノルボルネン−2−オール、5−ノルボルネン−2−カルボニトリル、2−アセチル−5−ノルボルネン及び7−オキサ−2−ノルボルネンなどである。
単環環状オレフィンの具体例は、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、シクロドデセン、1,5−シクロオクタジエン、及び、置換基を有するこれらの誘導体などである。
これらの(a)環状オレフィンモノマーは1種単独で若しくは2種以上を組み合わせて用いられる。単環環状オレフィンの添加量は、(a)環状オレフィンモノマーの全量に対して、好ましくは40質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。単環環状オレフィンの添加量が上記上限以下であることにより、フィルムの耐熱性が十分に得られる。
本発明の架橋環状オレフィン樹脂フィルムを得る際には、少なくとも、(a)環状オレフィンモノマー、(b)炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも1つ有する炭素数8〜20の脂肪族カルボン酸、(c)共役ジエン重合体環化物、及び(d)メタセシス重合触媒を含有する重合性組成物をメタセシス重合する。(d)メタセシス重合触媒は、(a)環状オレフィンモノマーをメタセシス重合させる。当該(d)メタセシス重合触媒は特定の触媒に限定されない。
遷移金属原子を中心にして、イオン、原子、多原子イオン及び/又は化合物が複数結合してなる錯体が、(d)メタセシス重合触媒として用いられる。5族、6族及び8族(長周期型周期表、以下同じ)の原子が、遷移金属原子として使用される。それぞれの族の原子は特に限定されないが、好ましい5族の原子はタンタルであり、好ましい6族の原子はモリブデン及びタングステンであり、好ましい8族の原子はルテニウム及びオスミウムである。
より好ましい(d)メタセシス重合触媒は、8族のルテニウム及びオスミウムの錯体であり、特に好ましい(d)メタセシス重合触媒は、ルテニウムカルベン錯体である。ルテニウムカルベン錯体は、塊状重合時の触媒活性に優れるため、残留未反応モノマーが少ない架橋環状オレフィン重合体が生産性よく得られる。
ルテニウムカルベン錯体の具体例は、触媒活性の観点から、以下の式(1)又は式(2)で表される錯体である。
Figure 2014218596
式(1)及び(2)において、R1及びR2はそれぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含んでいてもよい、環状又は鎖状の、炭素数1〜20の炭化水素基;を表す。X1及びX2はそれぞれ独立して、任意のアニオン性配位子を示す。L1及びL2はそれぞれ独立して、中性電子供与性化合物を表す。また、R1とR2は互いに結合して、ヘテロ原子を含んでいてもよい、脂肪族環又は芳香族環を形成していてもよい。さらに、R1、R2、X1、X2、L1及びL2は、任意の組合せで互いに結合して多座キレート化配位子を形成していてもよい。
本発明におけるヘテロ原子は、周期表15族及び16族の原子である。ヘテロ原子の具体例は、窒素原子(N)、酸素原子(O)、リン原子(P)、硫黄原子(S)、砒素原子(As)及びセレン原子(Se)などである。カルベン化合物の安定性の観点から、好ましいヘテロ原子はN、O、P、及びSであり、特に好ましいヘテロ原子はNである。
中性電子供与性化合物は、ヘテロ原子含有カルベン化合物とその他の中性電子供与性化合物に大別される。(d)メタセシス重合触媒の活性の観点から、好ましい中性電子供与性化合物は、ヘテロ原子含有カルベン化合物である。カルベン炭素の両側にヘテロ原子が隣接して結合しているヘテロ原子含有カルベン化合物が好ましく、カルベン炭素原子とその両側のヘテロ原子とを含んでヘテロ環が形成されているヘテロ原子含有カルベン化合物がより好ましい。カルベン炭素に隣接するヘテロ原子は、好ましくは嵩高い置換基を有している。
好ましいヘテロ原子含有カルベン化合物の具体例は、以下の式(3)又は式(4)で示される化合物である。
Figure 2014218596
式(3)及び式(4)において、R3〜R6はそれぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含んでいてもよい、環状又は鎖状の、炭素数1〜20の炭化水素基;を表す。R3〜R6は任意の組合せで互いに結合して環を形成していてもよい。
前記式(3)又は式(4)で表される化合物の具体例は、1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジ(1−アダマンチル)イミダゾリジン−2−イリデン、1−シクロヘキシル−3−メシチルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジメシチルオクタヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン、1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジ(1−フェニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン及び1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデンなどである。
前記式(3)又は式(4)で示される化合物のほかに、1,3,4−トリフェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン、1,3−ジシクロヘキシルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン、N,N,N',N'−テトライソプロピルホルムアミジニリデン、1,3,4−トリフェニル−4,5−ジヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン及び3−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2,3−ジヒドロチアゾール−2−イリデンなどのヘテロ原子含有カルベン化合物を用い得る。
ヘテロ原子含有カルベン化合物以外の中性電子供与性化合物は、中心金属から引き離されたときに中性の電荷を持つ配位子である。当該中性電子供与性化合物の具体例は、カルボニル類、アミン類、ピリジン類、エーテル類、ニトリル類、エステル類、ホスフィン類、チオエーテル類、芳香族化合物、オレフィン類、イソシアニド類及びチオシアネート類などである。好ましい中性電子供与性化合物は、ホスフィン類、エーテル類及びピリジン類であり、より好ましい中性電子供与性化合物はトリアルキルホスフィンである。
前記式(1)及び式(2)において、アニオン(陰イオン)性配位子X1とX2は、中心金属原子から引き離されたときに負の電荷を持つ配位子であり、その具体例は、弗素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)及び沃素原子(I)などのハロゲン原子;ジケトネート基;置換シクロペンタジエニル基;アルコキシ基;アリールオキシ基;カルボキシル基;などである。好ましいアニオン性配位子はハロゲン原子であり、より好ましい配位子は塩素原子である。
前記式(1)において、X2とL2が互いに結合して多座キレート化配位子を形成しているルテニウムカルベン錯体の例は、下式(5)で表されるシフ塩基配位錯体である。
Figure 2014218596
式(5)において、Zは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、NR12、PR12又はAsR12を表し、R12は、R1およびR2で例示したものと同様である。
式(5)中、R7〜R9は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を含んでいてもよい1価の有機基を表す。ヘテロ原子を含んでいてもよい1価の有機基の具体例は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、アリール基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数2〜20のアルケニルオキシ基、炭素数2〜20のアルキニルオキシ基、アリールオキシ基、炭素数1〜8のアルキルチオ基、炭素数1〜20のカルボニルオキシ基、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素数1〜20のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜20のアルキルスルホン酸基、アリールスルホン酸基、炭素数1〜20のホスホン酸基、アリールホスホン酸基、炭素数1〜20のアルキルアンモニウム基及びアリールアンモニウム基等である。
これらのヘテロ原子を含んでいてもよい1価の有機基は、置換基を有していてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。置換基の例は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシル基及びアリール基である。1価の有機基が環を形成する場合、環は、芳香環、脂環及びヘテロ環のいずれであってもよい。
式(5)中、R10及びR11は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、又はヘテロアリール基を表し、これらの基は、置換基を有していてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。当該置換基の例は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシル基及びアリール基である。R10及びR11が環を形成する場合、環は、芳香環、脂環及びヘテロ環のいずれであってもよい。
前記式(1)で表される錯体化合物の具体例は、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−4,5−ジブロモ−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(3−フェニル−1H−インデン−1−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリジン−2−イリデン)(3−メチル−2−ブテン−1−イリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−オクタヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン[1,3−ジ(1−フェニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(トリシクロヘキシルホスフィン)(1,3,4−トリフェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジイソプロピルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン)(エトキシメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリジン−2−イリデン)ピリジンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリジン−2−イリデン)(2−フェニルエチリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(2−フェニルエチリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4,5−ジブロモ−4−イミダゾリン−2−イリデン)[(フェニルチオ)メチレン](トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド及び(1,3−ジメシチル−4,5−ジブロモ−4−イミダゾリン−2−イリデン)(2−ピロリドン−1−イルメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリドなどの、ヘテロ原子含有カルベン化合物及び中性電子供与性化合物が各々1つ結合したルテニウム錯体化合物;
ベンジリデンビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド及び(3−メチル−2−ブテン−1−イリデン)ビス(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリドなどの、2つの中性電子供与性化合物が結合したルテニウム錯体化合物;
ベンジリデンビス(1,3−ジシクロヘキシル−4−イミダゾリジン−2−イリデン)ルテニウムジクロリド及びベンジリデンビス(1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン)ルテニウムジクロリドなどの、2つのヘテロ原子含有カルベン化合物が結合したルテニウム錯体化合物;
式(6)で表される、X2とL2が互いに結合して多座キレート化配位子を形成しているルテニウムカルベン錯体;などである。
Figure 2014218596
式(6)において、Mesはメシチル基を表す。R7及びR8は、それぞれ、水素原子又はメチル基であって、少なくとも一方はメチル基である。R13及びR14は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を含んでいてもよい1価の有機基を表す。なお、「1価の有機基」は、式(5)の説明において上述したR7〜R9と同様のものである。
前記式(2)で表される錯体化合物の具体例は、(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリジン−2−イリデン)(フェニルビニリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(t−ブチルビニリデン)(1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリド及びビス(1,3−ジシクロヘキシル−4−イミダゾリン−2−イリデン)フェニルビニリデンルテニウムジクロリドなどである。
特に好ましい錯体化合物は、前記式(1)で表され、かつ配位子として前記式(3)または(4)で表される化合物を1つ有するものである。
これらのルテニウムカルベン錯体は、(I)Org. Lett.,1999年、第1巻、953頁、(II)Tetrahedron. Lett.,1999年、 第40巻、2247頁、(III)国際公開第2003/062253号パンフレットなどに記載された方法によって製造される。
(d)メタセシス重合触媒の使用量は、((d)メタセシス重合触媒中の金属原子:(a)環状オレフィンモノマー)のモル比で、(1:2,000)〜(1:2,000,000)、好ましくは(1:5,000)〜(1:1,000,000)、より好ましくは(1:10,000)〜(1:500,000)の範囲である。(d)メタセシス重合触媒の量が上記下限以上であることにより、重合反応率の低下による重合体中のモノマーの残留、及び、架橋重合体の架橋度の低下を抑制することができ、得られるフィルムの耐熱性を向上させることができる。また、重合触媒の量が上記上限以下であることにより、製造コストを抑えることができ、また反応速度が速くなりすぎることを抑えて、後述する塊状重合時のフィルム成形を容易に行うことができる。
(d)メタセシス重合触媒は、重合活性を制御し、重合反応率を向上させる目的で活性剤(共触媒)と併用され得る。活性剤の具体例は、アルミニウム、スカンジウム、スズ並びに珪素の、アルキル化物、ハロゲン化物、アルコキシ化物及びアリールオキシ化物などである。活性剤の更なる具体例は、トリアルコキシアルミニウム、トリフェノキシアルミニウム、ジアルコキシアルキルアルミニウム、アルコキシジアルキルアルミニウム、トリアルキルアルミニウム、ジアルコキシアルミニウムクロリド、アルコキシアルキルアルミニウムクロリド及びジアルキルアルミニウムクロリド等のアルミニウム化合物;トリアルコキシスカンジウム等のスカンジウム化合物;テトラアルコキシチタン等のチタン化合物;テトラアルキルズズ及びテトラアルコキシスズ等のスズ化合物;テトラアルコキシジルコニウム等のジルコニウム化合物;ジメチルモノクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、テトラクロロシラン、ビシクロヘプテニルメチルジクロロシラン、フェニルメチルジクロロシラン、ジヘキシルジクロロシラン、フェニルトリクロロシラン及びメチルトリクロロシラン等のシラン化合物;などである。
活性剤の使用量は、((d)メタセシス重合触媒中の金属原子:活性剤)のモル比で、好ましくは(1:0.05)〜(1:100)、より好ましくは(1:0.2)〜(1:20)、更に好ましくは(1:0.5)〜(1:10)の範囲である。
(d)メタセシス重合触媒は、重合活性を制御し、重合反応速度を調節する目的で重合調節剤と併用され得る。重合調節剤の具体例は、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリブチルホスフィン、1,1−ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン及び1,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタンなどのリン化合物;エーテル、エステル及びニトリルなどのルイス塩基;等である。これらの使用量は、(d)メタセシス重合触媒1モルに対して、好ましくは0.01〜50モル、より好ましくは0.05〜10モルである。
本発明の架橋環状オレフィン樹脂フィルムの製造にあたり、重合法は、溶液重合法、塊状重合法のいずれでもよいが、溶媒除去の工程が不要であるとの観点から、塊状重合法が好ましい。また、本発明の架橋環状オレフィン樹脂フィルムの製造にあたっては、重合と同時にフィルム形状に成形され得るとの観点からも、塊状重合法が好ましい。
塊状重合法は、(a)環状オレフィンモノマー、(b)炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも1つ有する炭素数8〜20の脂肪族カルボン酸、(c)共役ジエン重合体環化物、及び(d)メタセシス重合触媒を含有する重合性組成物を、必要に応じ用いられる添加剤の存在下にメタセシス重合する工程において好適に用いられる。
(a)環状オレフィンモノマーはメタセシス重合されて、環状オレフィン重合体が得られ、更に、当該環状オレフィン重合体は、メタセシス重合後またはメタセシス重合と同時に、架橋されて架橋環状オレフィン重合体が得られると考えられる。
本発明の架橋環状オレフィン樹脂フィルムは、原料の1つとして、(a)環状オレフィンモノマー100質量部に対して、(b)炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも1つ有する炭素数8〜20の脂肪族カルボン酸0.01〜2質量部を含有する。
(b)炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも1つ有する炭素数8〜20の脂肪族カルボン酸(以下、「(b)脂肪族カルボン酸」と称することがある。)の具体例は、7−オクテン酸、8−ノネン酸、9−デセン酸、10−ウンデセン酸、11−ドデセン酸、12−トリデセン酸、13−テトラデセン酸、14−ペンタデセン酸、15−ヘキサデセン酸、16−ヘプタデセン酸、17−オクタデセン酸及び18−ノナデセン酸等の、分子末端に炭素−炭素二重結合を有する炭素数8〜20の脂肪族カルボン酸;ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、リノール酸、エイコサジエン酸、リノレン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、ミード酸及びエイコサトリエン酸等の分子末端以外に炭素−炭素二重結合を有する炭素数8〜20の脂肪族カルボン酸;1,3−ジアリルモノカルボキシルイソシアヌル酸及び1,3−カルボキシルモノアリルイソシアヌル酸などのイソシアヌル酸類;等である。
(b)脂肪族カルボン酸の1種又は2種以上を用いることができる。好ましい(b)脂肪族カルボン酸は、分子末端に炭素−炭素二重結合を有する炭素数8〜20の脂肪族カルボン酸であり、より好ましい(b)脂肪族カルボン酸は、分子末端に炭素−炭素二重結合を有する炭素数8〜16の脂肪族カルボン酸であり、更に好ましい(b)脂肪族カルボン酸は、分子末端に炭素−炭素二重結合を有する炭素数8〜12の脂肪族カルボン酸であり、特に好ましい(b)脂肪族カルボン酸は、分子末端のみに炭素−炭素二重結合を有する炭素数8〜12の脂肪族カルボン酸であり、最も好ましい(b)脂肪族カルボン酸は、10−ウンデセン酸である。
本発明の架橋環状オレフィン樹脂フィルムの原料となる架橋環状オレフィン樹脂組成物の前駆体である重合性組成物中の(b)脂肪族カルボン酸の含有量は、(a)環状オレフィンモノマー100質量部に対し、0.01〜2質量部であり、好ましくは0.1〜1質量部、更に好ましくは0.1〜0.5質量部である。(b)脂肪族カルボン酸の含有量を上記範囲とすることにより、本発明の架橋環状オレフィン樹脂フィルムの金属材料との接着性が良好となり、本発明の積層体のエッチング液によるエッチング処理後のそり量が小さくなる。また、上記上限以下とすることにより、重合性組成物のメタセシス重合の阻害が防止され、本発明の架橋環状オレフィン樹脂フィルムを好適に得られる。
本発明の架橋環状オレフィン樹脂フィルムは、原料の1つとして、(a)環状オレフィンモノマー100質量部に対して、(c)共役ジエン重合体環化物3〜40質量部を含有する。(c)共役ジエン重合体環化物は、共役ジエン重合体を、酸触媒等の存在下に環化反応させて得られる。
共役ジエン重合体として、共役ジエン単量体の単独重合体、並びに、共役ジエン単量体及びこれと共重合可能な他の単量体の共重合体を使用できる。
共役ジエン単量体は、特に限定されず、その具体例として、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン及び3−ブチル−1,3−オクタジエン等が挙げられる。中でも、1,3−ブタジエン及びイソプレンが好ましく、イソプレンがより好ましい。
これらの単量体は、単独で使用しても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
共役ジエン単量体と共重合可能な他の単量体として、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、o−クロルスチレン、m−クロルスチレン、p−クロルスチレン、p−ブロモスチレン、2,4−ジブロモスチレン及びビニルナフタレン等の芳香族ビニル単量体;エチレン、プロピレン及び1−ブテン等の鎖状オレフィン単量体;シクロペンテン及び2−ノルボルネン等の環状オレフィン単量体;1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、ジシクロペンタジエン及び5−エチリデン−2−ノルボルネン等の非共役ジエン単量体;(メタ)アクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリロニトリル及び(メタ)アクリルアミド等のその他の(メタ)アクリル酸誘導体;等が挙げられる。中でも芳香族ビニル単量体が好ましく、スチレンがより好ましい。
これらの単量体は、単独で使用しても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
共役ジエン重合体における共役ジエン単量体単位の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択されるが、好ましくは40モル%以上、より好ましくは60モル%以上、更に好ましくは80モル%以上である。中でも、実質的に共役ジエン単量体単位のみからなる共役ジエン重合体が特に好ましい。共役ジエン単量体単位の含有量が上記下限以上であることにより、適切な範囲の不飽和結合減少率を得ることが可能になる。
共役ジエン重合体の重合方法は常法に従えばよく、例えば、チタン等を触媒成分として含むチーグラー系重合触媒、アルキルリチウム重合触媒又はラジカル重合触媒等の適切な触媒を用いて、溶液重合又は乳化重合により行われる。
共役ジエン重合体の具体例として、天然ゴム(NR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、イソプレン−イソブチレン共重合体ゴム(IIR)、エチレン−プロピレン−ジエン系共重合体ゴム(EPDM)、ブタジエン−イソプレン共重合体ゴム(BIR)及び芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体等を挙げることができる。中でも、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム及びスチレン−イソプレンブロック共重合体が好ましく、ポリイソプレンゴムがより好ましい。
本発明で用いる(c)共役ジエン重合体環化物は、前記共役ジエン重合体を、酸触媒等の存在下に環化反応させて得ることができる。
環化反応に好適に用いられる酸触媒として、公知の酸触媒を使用できる。その具体例として、硫酸;フルオロメタンスルホン酸、ジフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、炭素数2〜18のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸、並びに、これらの無水物及びアルキルエステル等の有機スルホン酸化合物;三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、塩化アルミニウム、ジエチルアルミニウムモノクロリド、エチルアンモニウムクロリド、臭化アルミニウム、五塩化アンチモン、六塩化タングステン及び塩化鉄等のルイス酸;等が挙げられる。これらの酸触媒は、単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。中でも、有機スルホン酸化合物が好ましく、p−トルエンスルホン酸及びキシレンスルホン酸がより好ましく、p−トルエンスルホン酸がさらに好ましい。
酸触媒の使用量は、共役ジエン重合体100質量部に対して、好ましくは0.05〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部、更に好ましくは0.3〜2質量部である。
環化反応は、例えば、共役ジエン重合体を炭化水素溶媒中に溶解して行うことができる。
炭化水素溶媒は、環化反応を阻害しないものであれば特定の化合物に限定されないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン及びエチルベンゼン等の芳香族炭化水素;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン及びn−オクタン等の鎖状脂肪族炭化水素;シクロペンタン及びシクロヘキサン等の脂環族炭化水素;等が挙げられる。これらの炭化水素溶媒の沸点は、70℃以上であることが好ましい。
共役ジエン重合体の重合反応に用いる溶媒と環化反応に用いる溶媒は、同一種であってもよい。この場合は、重合反応が終了した重合反応液に環化反応用の酸触媒を添加して、重合反応に引き続いて環化反応を行うことができる。
炭化水素溶媒の使用量は、共役ジエン重合体の固形分濃度が、例えば、5〜60質量%、好ましくは20〜40質量%となる範囲である。
環化反応は、加圧、減圧及び大気圧のいずれの圧力下でも行われ得るが、操作の簡便性の点から、好ましくは大気圧下で行われる。また、環化反応を、乾燥気流下、特に乾燥窒素や乾燥アルゴンの雰囲気下で行うと、水分によって引き起こされる副反応を抑えることができる。
環化反応における、反応温度や反応時間は、特に限定されない。反応温度は、好ましくは50〜150℃、より好ましくは70〜110℃であり、反応時間は、好ましくは0.5〜10時間、より好ましくは2〜5時間である。
環化反応を行った後、常法により、酸触媒を不活性化し、酸触媒残渣を除去し、次いで炭化水素溶媒を除去して、固形状の(c)共役ジエン重合体環化物を得ることができる。
(c)共役ジエン重合体環化物の不飽和結合減少率は、好ましくは10%以上、より好ましくは25〜75%、更に好ましくは45〜70%である。不飽和結合減少率が上記下限以上であることにより、得られる本発明の架橋環状オレフィン樹脂組成物の機械的強度を高くすることができる。不飽和結合減少率が上記上限以下であることにより、その製造が容易になる。
ここで、不飽和結合減少率とは、共役ジエン重合体中の共役ジエン単量体単位部分において、不飽和結合が環化反応によって減少した程度を表す指標であり、以下のようにして求められる数値である。即ち、プロトンNMR分析により、共役ジエン重合体中の共役ジエン単量体単位部分において、全プロトンのピーク面積に対する二重結合に直接結合したプロトンのピーク面積の比率を、環化反応前後について、それぞれ求め、その減少率を計算する。
共役ジエン重合体中の共役ジエン単量体単位部分において、環化反応前の全プロトンピーク面積をSBT、二重結合に直接結合したプロトンのピーク面積をSBUとし、環化反応後の全プロトンピーク面積をSAT、二重結合に直接結合したプロトンのピーク面積をSAUとすると、
環化反応前の二重結合に直接結合したプロトンのピーク面積比率(SB)は、
SB=SBU/SBT
環化反応後の二重結合に直接結合したプロトンのピーク面積比率(SA)は、
SA=SAU/SAT
従って、不飽和結合減少率は、下記式により求められる。
不飽和結合減少率(%)=100×(SB−SA)/SB
(c)共役ジエン重合体環化物の不飽和結合減少率は、環化反応の際の酸触媒等の量、反応温度及び反応時間等を適宜選択して調節できる。
(c)共役ジエン重合体環化物の重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィで測定される標準ポリスチレン換算値で、好ましくは1,000〜1,000,000、より好ましくは10,000〜700,000、更に好ましくは30,000〜500,000である。
(c)共役ジエン重合体環化物の重量平均分子量が上記下限以上であることにより、得られる本発明の架橋環状オレフィン樹脂組成物の機械的強度を高くすることができる。(c)共役ジエン重合体環化物の重量平均分子量が上記上限以下にあることにより、環化反応する際の反応溶液の粘度が高くならず、取り扱い易くなる。
(c)共役ジエン重合体環化物の重量平均分子量は、原料として用いる共役ジエン重合体の重量平均分子量を適宜選択して調節できる。
(c)共役ジエン重合体環化物のガラス転移温度(Tg)は、特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜選択できるが、好ましくは−50〜200℃、より好ましくは0〜100℃、更に好ましくは20〜90℃、特に好ましくは30〜70℃の範囲である。(c)共役ジエン重合体環化物のTgが、上記範囲内にあることにより、取り扱い性が良好となる。
(c)共役ジエン重合体環化物のTgは、原料として用いる共役ジエン重合体の組成や不飽和結合減少率を適宜選択して調節できる。
(c)共役ジエン重合体環化物のゲル量(トルエン不溶解分の割合)は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であるが、特に好ましい(c)共役ジエン重合体環化物は、実質的にゲルを有しない。ゲル量が上記上限以下にあることにより、本発明の架橋環状オレフィン樹脂組成物の前駆体である重合性組成物を略均一な溶液として調製することが可能になる。
本発明の架橋環状オレフィン樹脂組成物の前駆体である重合性組成物中の(c)共役ジエン重合体環化物の含有量は、(a)環状オレフィンモノマー100質量部に対し、3〜40質量部であり、好ましくは5〜30質量部であり、より好ましくは5〜20質量部であり、更に好ましくは5〜15質量部である。(c)共役ジエン重合体環化物の含有量を上記範囲とすることにより、本発明の架橋環状オレフィン樹脂フィルムの金属材料との接着性が良好となり、本発明の積層体のエッチング液によるエッチング処理後のそり量が小さくなる。また、上記上限以下とすることにより、重合性組成物のメタセシス重合を行う前の固化が防止され、本発明の架橋環状オレフィン樹脂組成物は好適に得られる。
本発明で用いる(c)共役ジエン重合体環化物は、安定剤を含有し得る。
(c)共役ジエン重合体環化物中の安定剤の含有量は、好ましくは500ppm以下、より好ましくは400ppm以下、さらに好ましくは300ppm以下である。安定剤の含有量の下限は、好ましくは10ppm以上、より好ましくは20ppm以上である。安定剤の種類については、後述する、重合性組成物中に含有し得る安定剤と同じである。
本発明の架橋環状オレフィン樹脂フィルムの原料となる架橋環状オレフィン樹脂組成物の前駆体である重合性組成物は、(e)1分間半減温度が160〜200℃の有機過酸化物(以下、「(e)有機過酸化物」と称することがある。)を含有することが好ましい。当該(e)有機過酸化物は、本発明において、後述する架橋剤として作用する。当該(e)有機過酸化物の具体例は、ビス(t−ブチルジオキシイソプロピル)ベンゼン及びジ−t−ブチルパ-オキサイドなどである。これらの(e)1分間半減温度が160〜200℃の有機過酸化物は、1種単独で若しくは2種以上を組み合わせて用いられる。
(e)1分間半減温度が160〜200℃の有機過酸化物の、好ましい1分間半減温度は170〜195℃であり、より好ましい1分間半減温度は180〜195℃であり、さらに好ましい1分間半減温度は185〜195℃であり、特に好ましい1分間半減温度は185〜192℃である。1分間半減温度が上記下限以上にあることにより、本発明の架橋環状オレフィン樹脂フィルムのガラス転移温度が低下せず、その耐熱性が良好となる。
本発明の架橋環状オレフィン樹脂フィルムの原料となる架橋環状オレフィン樹脂組成物の前駆体である重合性組成物中の、(e)1分間半減温度が160〜200℃の有機過酸化物の含有量は、(a)環状オレフィンモノマー100質量部に対して、好ましくは0.3〜8質量部であり、より好ましくは0.5〜6質量部であり、さらに好ましくは0.5〜4質量部である。(e)1分間半減温度が160〜200℃の有機過酸化物の含有量が上記下限以上にあることにより、本発明の架橋環状オレフィン樹脂フィルムのガラス転移温度が低下せず、その耐熱性が良好となる。(e)1分間半減温度が160〜200℃の有機過酸化物の含有量が上記上限以下にあることにより、本発明の架橋環状オレフィン樹脂フィルムが脆くなることが防止される。
各種の添加剤を、各種の用途、目的に応じた、本発明の架橋環状オレフィン樹脂フィルムの特性改質、機能付与及び成形作業性の改善などを目的として、本発明の架橋環状オレフィン樹脂フィルムの原料となる架橋環状オレフィン樹脂組成物の前駆体である重合性組成物中に含有し得る。そのような添加剤の具体例は、重合禁止剤、消泡剤、発泡剤、着色剤、紫外線吸収剤、安定剤、難燃剤、湿潤剤、分散剤、離型滑剤、可塑剤及び充填材などである。架橋環状オレフィン樹脂組成物の耐久性および保存安定性を向上するため、安定剤を含有させることが好ましい。
本発明の架橋環状オレフィン樹脂フィルムの原料となる架橋環状オレフィン樹脂組成物の前駆体である重合性組成物中に含有し得る安定剤としては、フェノール系安定剤、リン系安定剤及びヒンダードアミン系光安定剤が好ましい。
フェノール系安定剤の具体例は、N,N'−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)アセチル]ヒドラジン、N,N'−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、N,N'−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブチロニル]ヒドラジン、N,N'−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)オクチロニル]ヒドラジン、N,N'−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ステアロイル]ヒドラジン及びN,N'−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ベンゾイル]ヒドラジン等の、ヒドラジン構造を有するフェノール系安定剤;N,N'−ビス[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)アセチルオキシ〕エチル]オキサミド、N,N'−ビス[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]オキサミド、N,N'−ビス[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブチロニルオキシ〕エチル]オキサミド、N,N'−ビス[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)オクチロニルオキシ〕エチル]オキサミド、N,N'−ビス[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ステアロイルオキシ〕エチル]オキサミド及びN,N'−ビス[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ベンゾイルオキシ〕エチル]オキサミド等の、オキサミド構造を有するフェノール系安定剤;ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート] 、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス{ 2−〔3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニロキシ〕−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,1 0−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン及び2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等の、ヒドラジン構造又はオキサミド構造を有するフェノール系安定剤以外のフェノール系安定剤;等である。
上記フェノール系安定剤は、1種類又は複数種が併用されて使用される。これらのうち、高温耐変色性の観点から、ヒドラジン構造又はオキサミド構造を有するフェノール系安定剤以外のフェノール系安定剤が好ましく、オクタデシル−3−(3,5−ジ―tert−ブチル―4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが特に好ましい。
リン系安定剤の具体例は、2,2'−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸塩、ビス−(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリル[(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]ホスフォネート、ジエチル{[(3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル)メチル]ホスフォネート}及び6−〔3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチル)プロポキシ〕−2,4,8,10−テトラ−tert−ブチルジベンズ〔d,f〕〔1,3,2〕−ジオキサホスフェピン等である。これらの1種類又は複数種が併用されて使用される。
ヒンダードアミン系光安定剤の具体例は、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−アリル−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−ベンジル−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(4−t−ブチル−2−ブテニル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−エチル−4−サリチロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン−4−イル−β(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1−ベンジル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニルマレイネート(maleinate)、(ジ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−アジペート、(ジ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−セバケート、(ジ−1,2,3,6−テトラメチル−2,6−ジエチル−ピペリジン−4−イル)−セバケート、(ジ−1−アリル−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−4−イル)−フタレート、1−アセチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−アセテート、トリメリット酸−トリ−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)エステル、1−アクリロイル−4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ジブチル−マロン酸−ジ−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−ピペリジン−4−イル)−エステル、ジベンジル−マロン酸−ジ−(1,2,3,6−テトラメチル−2,6−ジエチル−ピペリジン−4−イル)−エステル、ジメチル−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オキシ)−シラン,トリス−(1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−ホスフィット、トリス−(1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−ホスフェート,N,N'−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−ヘキサメチレン−1,6−ジアミン、N,N'−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−ヘキサメチレン−1,6−ジアセトアミド、1−アセチル−4−(N−シクロヘキシルアセトアミド)−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン、4−ベンジルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、N,N'−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−N,N'−ジブチル−アジパミド、N,N'−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−N,N'−ジシクロヘキシル−(2−ヒドロキシプロピレン)、N,N'−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−p−キシリレン−ジアミン、4−(ビス−2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−メタクリルアミド−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン及びα−シアノ−β−メチル−β−[N−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)]−アミノ−アクリル酸メチルエステル等である。これらの1種類又は複数種が併用されて使用される。
本発明の架橋環状オレフィン樹脂フィルムの原料となる架橋環状オレフィン樹脂組成物の前駆体である重合性組成物中に含有し得る安定剤の種類及び含有量は、架橋環状オレフィン樹脂組成物の高温時の機械的特性、フィルム成形作業性、保存安定性等の条件により適宜選択される。これらの安定剤の合計含有量は、(a)環状オレフィンモノマー100質量部に対して、好ましくは20質量部以下であり、より好ましくは1〜15質量部であり、さらに好ましくは1〜10質量部である。上記下限以上であることにより、架橋環状オレフィン樹脂フィルムの高温耐変色性が優れる。上記上限以下であることにより、(a)環状オレフィンモノマーに不溶の部分が生じることがなく、架橋環状オレフィン樹脂フィルムを良好に得ることができる。
重合禁止剤の具体例は、パラベンゾキノン、トルキノン及びナフトキノン等のキノン類;ハイドロキノン、パラ−t−ブチルカテコール及び2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン等のハイドロキノン類;ナフテン酸銅やオクテン酸銅等の銅塩;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、トリメチルベンジルアンモニウムマレエート及びフェニルトリメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩類;キノンジオキシムやメチルエチルケトオキシム等のオキシム類;トリエチルアミン塩酸塩やジブチルアミン塩酸塩等のアミン塩酸塩類;等である。これらの1種類又は複数種が併用されて使用される。
離型滑剤の具体例は、シリコーンオイル及びステアリン酸亜鉛等である。これらの1種類又は複数種が併用されて使用される。これらの離型滑剤の含有量は、(a)環状オレフィンモノマー100質量部に対して、好ましくは200質量部以下である。
充填材の具体例は、カーボンブラック、天然黒鉛、シリカ、珪砂、ガラス粉、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム及びクレーなどの無機充填材;木粉、ポリエステルビーズ及びポリスチレンビーズなどの有機充填材;等である。これらの1種類又は複数種が併用されて使用される。充填材は、架橋環状オレフィン樹脂組成物の収縮率、弾性率、熱伝導率、導電性などの物性を向上させる。
充填材の粒径、形状、アスペクト比、品位などのグレードは、架橋環状オレフィン樹脂組成物の物性により、適宜決定される。これらの充填材の含有量は、(a)環状オレフィンモノマー100質量部に対して、好ましくは400質量部以下、より好ましくは300質量部以下である。
本発明の架橋環状オレフィン樹脂フィルムを得る際には、少なくとも、(a)環状オレフィンモノマー、(b)炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも1つ有する炭素数8〜20の脂肪族カルボン酸、(c)共役ジエン重合体環化物、及び(d)メタセシス重合触媒を含有する重合性組成物を開環メタセシス重合する。(d)メタセシス重合触媒は、必要に応じて、少量の不活性溶剤に溶解又は懸濁して使用される。当該溶剤の具体例は、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、流動パラフィン及びミネラルスピリットなどの鎖状脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ジシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデン及びシクロオクタンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン及びキシレンなどの芳香族炭化水素;インデン及びテトラヒドロナフタレンなどの、脂環と芳香環とを有する炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン及びアセトニトリルなどの含窒素炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、シクロペンタノン及びシクロヘキサノンなどの含酸素炭化水素;などである。好ましい溶剤は、含酸素炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、および脂環と芳香環とを有する炭化水素である。重合触媒としての活性を低下させない液状の老化防止剤又は可塑剤を溶剤として用いてもよい。
(a)環状オレフィンモノマー、(b)炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも1つ有する炭素数8〜20の脂肪族カルボン酸、(c)共役ジエン重合体環化物、(d)メタセシス重合触媒及び必要に応じて用いられる添加剤を含む重合性組成物の室温(20℃)における粘度は、所望のフィルムの厚みにもよるが、0.4〜500mPa・sが好ましい。粘度が上記範囲内にあることにより、フィルム形状に成形することが容易となる。上記重合性組成物の粘度は、(a)環状オレフィンモノマー、(b)炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも1つ有する炭素数8〜20の脂肪族カルボン酸、(c)共役ジエン重合体環化物、(d)メタセシス重合触媒及び必要に応じて用いられる添加剤の種類および使用量により調整される。
上記重合性組成物をメタセシス重合してフィルム形状に成形してフィルム状重合体を得る方法の好適な具体例は、上記重合性組成物を基材上に塗布し、メタセシス重合を上記基材上で、塊状重合により行う方法である。
樹脂、ガラス、金属など一般公知の素材が、上記基材として選択される。樹脂の具体例は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート及びポリアリレートなどのポリエステル;ポリカーボネート;ポリプロピレン及びポリエチレンなどのポリオレフィン;ナイロンなどのポリアミド;ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂;等であり、入手が容易なポリエステルが好ましい。上記基材の好ましい形状は、材料が金属又は樹脂であればドラム状又はベルト状である。好ましい基材は、入手が容易で安価な樹脂フィルムである。
上記重合性組成物を、必要に応じ、(d)メタセシス重合触媒が活性を発現する温度まで加熱して塊状重合することが好ましい。重合温度は、好ましくは0〜250℃、より好ましくは20〜200℃である。上記重合性組成物の加熱方法は特に制約されない。当該加熱方法の具体例は、加熱プレート上で加熱する方法、プレス機を用いて加圧しながら加熱(熱プレス)する方法、加熱したローラーで押圧する方法、加熱炉を用いる方法などである。重合反応時間は、(d)メタセシス重合触媒の量および加熱温度により適宜決定されるが、好ましくは1分間〜24時間である。
(a)環状オレフィンモノマーはメタセシス重合されて、環状オレフィン重合体が得られ、更に、当該環状オレフィン重合体は、メタセシス重合後またはメタセシス重合と同時に、架橋されて架橋環状オレフィン重合体が得られると考えられる。メタセシス重合と同時に行う架橋は、より少ない工程で工業的に有利に本発明の架橋環状オレフィン樹脂フィルムを得られるので好ましい。
架橋方法の具体例は、(A)(a)環状オレフィンモノマーの少なくとも一部として架橋性モノマーを用いて、これを重合させ三次元架橋構造を有する重合体を得る方法;(B)上記重合性組成物に架橋剤を添加して重合を行い、さらに重合と同時または重合後に架橋反応を行って架橋する方法;(C)環状オレフィン重合体に光または電子線を照射し、重合後に架橋反応を行って架橋する方法;などである。これらの方法は、そのうちの1法を用いてもよく、2法以上を併用してもよい。経済性の点から、(A)及び/又は(B)の方法が好ましい。
炭素−炭素二重結合を2以上有する(a)環状オレフィンモノマーが、(A)の方法に用いられる架橋性モノマーとして用いられる。当該架橋性モノマーの具体例は、ジシクロペンタジエン及びトリシクロペンタジエン等である。これらの1種類又は複数種が併用されて使用される。当該架橋性モノマーの使用量及び重合時の加熱温度により架橋密度を制御できる。当該架橋性モノマーの使用量は、本発明の架橋環状オレフィン樹脂組成物の用途に応じて適正な架橋密度が様々であるため特に限定されない。当該架橋性モノマーの好ましい使用量は、(a)環状オレフィンモノマー全量中の架橋性モノマーの割合で0.1〜100モル%である。
公知の熱架橋剤及び光架橋剤が、(B)の方法に用いられる架橋剤として挙げられる。架橋剤としては熱架橋剤が好ましい。熱架橋剤の中でも、有機過酸化物、ジアゾ化合物、非極性ラジカル発生剤などのラジカル発生剤が好ましく、その中でも、有機過酸化物が特に好ましい。架橋剤の使用量は、(a)環状オレフィンモノマー100質量部に対して、好ましくは0.3〜8質量部、より好ましくは0.5〜6質量部である。熱架橋剤を用いる場合の架橋を行う温度は、好ましくは100〜250℃、より好ましくは150〜200℃である。架橋する時間は特に制約されないが、好ましくは数分間から数時間である。
本発明におけるメタセシス重合および架橋は、好ましくは酸素分子および水の不存在下で行われる。当該メタセシス重合及び架橋方法の具体例は、(1)窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下でメタセシス重合および架橋を行う方法(2)真空下でメタセシス重合および架橋を行う方法、(3)基材上に塗布した上記重合性組成物を樹脂フィルムなどで覆って密閉した状態でメタセシス重合および架橋を行う方法、などである。当該樹脂フィルムの具体例は、前記基材として例示したものと同じである。本発明におけるメタセシス重合および架橋を、酸素分子および水の不存在下で行うことにより、得られる本発明の架橋環状オレフィン樹脂フィルムの表面の酸化を防止し、所望の屈曲性を発揮することが可能となる。
上記重合性組成物を基材上に塗布しメタセシス重合して得られたフィルム状重合体は、その一方の面又は両面がコロナ処理される。なお、本発明の積層体を製造するにあたっては、(f)金属箔と接着させるフィルム状重合体の面には、コロナ処理がなされていることが必要である。
また、コロナ処理を行うにあたっては、コロナ処理される面に基材が接触している場合には、上記基材から上記フィルム状重合体を剥離することが好ましいが、基材が透明な樹脂フィルムである場合などは、上記基材から上記フィルム状重合体を剥離することなしにコロナ処理を行ってもよい。
また、コロナ処理の条件は特定の範囲に限定されない。コロナ処理は、バッチコロナ処理機(例えば、春日電機(株)製CORONA GENERATOR CT-0212)などを用いて、出力0.05〜2.0kW、搬送速度0.1〜6.0m/分、放電隙間0.5〜20mmの条件で行うことが好ましい。
本発明の架橋環状オレフィン樹脂フィルムの厚さは、用途に応じて適正値が様々であり、特に限定されないが、好ましくは0.5〜5,000μmであり、ハンドリング性の観点から、より好ましい当該厚さは5〜500μmである。本発明の架橋環状オレフィン樹脂フィルムの表面は、平滑であってもよく、エンボス加工や、凹凸を有するポリエチレンテレフタレートなどの基材で挟んで重合し表面に凹凸形状を付与する加工等により、凹凸形状を形成されていてもよい。
有機物、無機物、金属などの異種素材よりなる層を、気相反応、コーティング、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング、CVD及び無電解メッキなど公知の表面処理技術を用いて、本発明の架橋環状オレフィン樹脂フィルムの表面に形成することもできる。例えば、シリカ(SiO2)、フッ化マグネシウム(MgF2)及びフッ素樹脂などの離型性を向上させる素材よりなる薄膜を架橋環状オレフィン樹脂フィルムの表面層に設けたり、フッ素ガス、炭素繊維系プリカーサで表面処理を行い、架橋環状オレフィン樹脂フィルムの表面をフッ素化することもできる。
本発明の架橋環状オレフィン樹脂フィルムの好ましいガラス転移温度は、耐熱性の観点より、135℃以上である。
上記架橋環状オレフィン樹脂フィルムと(f)金属箔を、当該架橋環状オレフィン樹脂フィルムのコロナ処理された面にて接触させ、その後、加圧しながら加熱して両者を接着させ、本発明の積層体が製造される。上記架橋環状オレフィン樹脂フィルムと(f)金属箔は、金属板、金属部品等の他の材料と共に熱プレスされてもよい。熱プレス圧力は、好ましくは0.5〜20MPa、より好ましくは1〜10MPaである。熱プレスは真空又は減圧下で行われてもよい。熱プレスは、平板成形用のプレス枠型を有する公知のプレス機、シートモールディングコンパウンド(SMC)、バルクモールドコンパウンド(BMC)等のプレス機により行われ得る。
上記(f)金属箔の具体例は、銅箔、金箔、銀箔、ステンレス箔、アルミニウム箔、ニッケル箔、クロム箔等である。中でも、銅箔が好ましい。
上記他の材料は特定のものに限定されない。上記他の材料の具体例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ナイロン等の樹脂;鉄、ステンレス、銅、アルミニウム、ニッケル、42アロイ、クロム、金、銀等の金属;等からなるものである。好ましい他の材料は、金属からなるものである。他の材料の形状は限定されない。他の材料の好ましい形状は金属板、金属部品、金属フレーム等である。なお、(f)金属箔が銅箔である場合、樹脂付き銅箔(Resin Coated Copper(RCC))が得られる。(f)金属箔の好ましい厚さは、作業性等の観点から、好ましくは1〜150μm、より好ましくは2〜100μm、更に好ましくは3〜75μmである。他の材料として好ましいものである金属板及び金属フレームは、ニッケル−パラジウム−金メッキ処理等が施された銅(最外層からニッケル、パラジウム、金の順にメッキ処理された銅)からなるものである。当該銅板及び銅フレームの耐熱性及び耐食性は優れている。金属板及び金属フレームの厚みは適宜設定される。
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。実施例及び比較例における部及び%は、特に断りのない限り質量基準である。
(1)共役ジエン重合体環化物の重量平均分子量
上記重量平均分子量は、下記条件によりGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ)法の標準ポリスチレン換算で求めた。
溶媒:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
流速:0.3ml/min
ガードカラム:Plgel MiniMix−A GUARD 20μm、4.6mmI.D.×5cm(ポリマーラボラトリーズ(株)製)
分析カラム:Plgel MiniMix−A 20μm、4.6mmI.D.×25cm×3本(ポリマーラボラトリーズ(株)製)
検出器:RI検出器/Waters2414(ウォーターズ(株)製)
(2)対銅箔接着力
架橋環状オレフィン樹脂フィルムの対銅箔接着力を下記のとおりに測定した。銅箔と架橋環状オレフィン樹脂フィルムと銅箔との積層体を、10mm×150mmの大きさに切り出して試験片とし、当該試験片における、架橋環状オレフィン樹脂フィルムの銅箔に対する180度接着力をJIS K 6854-2に従って測定した。測定で得られた最大接着力を対銅箔接着力(N/cm)とした。
(3)エッチング後のそり量
銅箔と架橋環状オレフィン樹脂フィルムと銅箔との積層体を、60mm×60mmの大きさに切り出して試験片とし、当該試験片の片面に端部から10mmおきに格子状に油性マジックペンで線を引いた。更に、他面に端部から5mmおきに格子状に油性マジックペンで線を引いた。その後、当該試験片を55℃に加熱されたエッチング液(塩化第二鉄の35%水溶液)に15分間浸漬し、油性マジックペンで線を引いた部分以外の銅を溶解した。エッチング処理された試験片を取り出して、10mmおきに格子状に油性マジックペンで線を引いた面を上にして水平な面に置き、試験片の中心に直径10mm、高さ10mm、重さ10gのおもりを置き、試験片の4隅が水平面から浮いた高さを定規で測定し、それらの平均値をエッチング後のそり量(mm)とした。
(製造例1:共役ジエン重合体環化物Aの製造)
Nipol IR−2200(日本ゼオン(株)製、シス−1,4−結合単位含有量99%以上)をロールで素練りしてハイシスポリイソプレン(重量平均分子量が302,000)を得た。攪拌機、温度計、還流冷却管及び窒素ガス導入管を備えた耐圧反応器に、10mm角に裁断したハイシスポリイソプレン300部を、トルエン700部とともに仕込んだ。反応器内を窒素置換した後、85℃に加温して攪拌下でハイシスポリイソプレンをトルエンに完全に溶解した。その後、p−トルエンスルホン酸(トルエン中で、水分量が150ppm以下になるように、還流脱水したもの。以下、「無水パラトルエンスルホン酸」という。)2.16部を投入し、85℃で環化反応を行った。4時間反応させた後、炭酸ナトリウム0.75部を含む25%炭酸ナトリウム水溶液を投入して反応を停止した。85℃で、イオン交換水300部を用いた洗浄を3回繰り返して、系中の触媒残渣を除去した。得られた共役ジエン重合体環化物Aは、不飽和結合減少率61%、重量平均分子量20万だった。
(製造例2:共役ジエン重合体環化物Bの製造)
反応時間を3時間に変更した以外は、製造例1と同様にして共役ジエン重合体環化物Bを得た。得られた共役ジエン重合体環化物Bは、不飽和結合減少率49%、重量平均分子量20万だった。
(実施例1)
フェノール系安定剤(BASFジャパン(株)製 IRGANOX1076)1部、リン系安定剤((株)ADEKA製 アデカスタブHP−10)1部、ヒンダードアミン系光安定剤(BASFジャパン(株)製 TINUVIN770)1部、10−ウンデセン酸0.3部、共役ジエン重合体環化物A 5部及びトリフェニルホスフィン1部を、ジシクロペンタジエン90部及びトリシクロペンタジエン10部からなるノルボルネン系モノマー混合液に溶解又は分散して反応原液を得た。次に、式(7)の構造を有するルテニウム触媒の1.8%シクロペンタノン溶液(RIMTEC(株)製 VC843)1.7部を前記反応原液に添加し、ラインミキサーで混合して得た重合性組成物を、25℃で、厚さ0.075mmのポリエチレンテレフタレート製キャリアフィルム上に塗工しキャスト製膜を行い、次いで直ぐに、塗布層の上から別に用意した前記同様のキャリアフィルムをラミネートした。その後、200℃で3分間加熱を行い、その後、20℃まで冷却した後、上下のキャリアフィルムをそれぞれ剥離し、フィルム状重合体(コロナ処理前の架橋環状オレフィン樹脂フィルム)を得た。
次に、コロナ処理装置(高周波電源;春日電機(株)製 CT−0212、発信機本体;春日電機(株)製 CT−0212、高圧トランス;春日電機(株)製 CT−T022)を用い、コロナ処理前の架橋環状オレフィン樹脂フィルム(フィルム状重合体)表面とコロナ処理装置の電極との距離が2mmとなるように調整し、出力0.15kW、ラインスピード0.5m/min、周囲温度23℃、周囲相対湿度55%RHの条件で、コロナ処理前の架橋環状オレフィン樹脂フィルム(フィルム状重合体)表裏面をそれぞれ1回ずつコロナ処理し、コロナ処理された架橋環状オレフィン樹脂フィルムを得た。
続いて、300mm×300mmのコロナ処理された架橋環状オレフィン樹脂フィルムを、同サイズの電解銅箔(古河電工(株)製、表面GTS処理、十点平均粗さRz=8、厚さ0.018mm)2枚を用いて、それぞれ粗化処理面が当該フィルムに接するようにして上下から挟んだ。得られた銅箔/樹脂フィルム/銅箔積層体を真空プレスに挿入し、面圧9.0MPa、180℃で60分間加圧しながら加熱し、その後、20℃まで冷却して得られた試料を真空プレスから取り出し、銅箔とコロナ処理された架橋環状オレフィン樹脂フィルムと銅箔とがこの順序でそれぞれ接着され積層されている積層体を得た。結果を表1に示す。
(実施例2及び実施例3)
共役ジエン重合体環化物Aの量を表1に示すように変更した他は、実施例1と同様にして、架橋環状オレフィン樹脂フィルム、及び、銅箔とコロナ処理された架橋環状オレフィン樹脂フィルムと銅箔とがこの順序でそれぞれ接着され積層されている積層体を、それぞれ得た。結果を表1に示す。
(実施例4及び実施例5)
共役ジエン重合体環化物Aを共役ジエン重合体環化物Bに変更し、さらにその量を表1に示すように変更した他は、実施例1と同様にして、架橋環状オレフィン樹脂フィルム、及び、銅箔とコロナ処理された架橋環状オレフィン樹脂フィルムと銅箔とがこの順序でそれぞれ接着され積層されている積層体を、それぞれ得た。結果を表1に示す。
(実施例6)
フェノール系安定剤(BASFジャパン(株)製 IRGANOX1076)1部、リン系安定剤((株)ADEKA製 アデカスタブHP−10)1部、ヒンダードアミン系光安定剤(BASFジャパン(株)製 TINUVIN770)1部、10−ウンデセン酸0.3部、共役ジエン重合体環化物A 30部、有機過酸化物(化薬アクゾ(株)製 カヤブチルD)1部及びトリフェニルホスフィン1部を、ジシクロペンタジエン90部及びトリシクロペンタジエン10部からなるノルボルネン系モノマー混合液に溶解又は分散して反応原液を得た他は、実施例1と同様にして、架橋環状オレフィン樹脂フィルム、及び、銅箔とコロナ処理された架橋環状オレフィン樹脂フィルムと銅箔とがこの順序でそれぞれ接着され積層されている積層体を、それぞれ得た。結果を表1に示す。
(実施例7)
有機過酸化物(化薬アクゾ(株)製 カヤブチルD)の量を3部に変更した他は、実施例6と同様にして、架橋環状オレフィン樹脂フィルム、及び、銅箔とコロナ処理された架橋環状オレフィン樹脂フィルムと銅箔とがこの順序でそれぞれ接着され積層されている積層体を、それぞれ得た。結果を表1に示す。
(実施例8及び実施例9)
共役ジエン重合体環化物A 30部を共役ジエン重合体環化物B 30部に変更し、さらに、有機過酸化物(化薬アクゾ(株)製 カヤブチルD)の量を表1に示すように変更した他は、実施例6と同様にして、架橋環状オレフィン樹脂フィルム、及び、銅箔とコロナ処理された架橋環状オレフィン樹脂フィルムと銅箔とがこの順序でそれぞれ接着され積層されている積層体を、それぞれ得た。結果を表1に示す。
(比較例1)
共役ジエン重合体環化物Aを用いず、10−ウンデセン酸を用いず、さらにコロナ処理を行わなかった他は、実施例1と同様にして、架橋環状オレフィン樹脂フィルム、及び、銅箔とコロナ処理されていない架橋環状オレフィン樹脂フィルムと銅箔とがこの順序でそれぞれ接着され積層されている積層体を、それぞれ得た。結果を表1に示す。
(比較例2)
共役ジエン重合体環化物Aの量を50部に変更した他は、実施例1と同様にして、架橋環状オレフィン樹脂フィルムを得ようとしたが、重合性組成物が固化し、架橋環状オレフィン樹脂フィルムが得られなかった。
Figure 2014218596
Figure 2014218596
1)BASFジャパン(株)製IRGANOX1076
2)(株)ADEKA製アデカスタブHP−10
3)BASFジャパン(株)製TINUVIN770
4)化薬アクゾ(株)製 カヤブチルD
5)RIMTEC(株)製VC843(ルテニウム触媒1.8%含有のシクロペンタノン溶液)
実施例1〜9の架橋環状オレフィン樹脂フィルムの対銅箔接着力は高かった。これらの架橋環状オレフィン樹脂フィルムから得られた積層体のエッチング液によるエッチング処理後のそり量は小さかった。
炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも1つ有する炭素数8〜20の脂肪族カルボン酸及び共役ジエン重合体環化物を含有せず、コロナ処理されない比較例1の架橋環状オレフィン樹脂フィルムの対銅箔接着力は低かった。当該架橋環状オレフィン樹脂フィルムから得られた積層体のエッチング液によるエッチング処理後のそり量は大きかった。共役ジエン重合体環化物の添加量が多すぎる比較例2の重合性組成物は固化し、フィルムが得られなかった。
本発明の積層体は、各種電子材料として好適に使用され、特に、フレキシブルプリント基板、多層回路基板、LED用基板等に好適に用いられる。

Claims (18)

  1. (a)環状オレフィンモノマー100質量部、(b)炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも1つ有する炭素数8〜20の脂肪族カルボン酸0.01〜2質量部、(c)共役ジエン重合体環化物3〜40質量部、及び(d)メタセシス重合触媒を含有する重合性組成物を基材上に塗布した後、メタセシス重合し、その後、得られたフィルム状重合体の表面をコロナ処理して得られる架橋環状オレフィン樹脂フィルム。
  2. 上記重合性組成物が、更に、(e)1分間半減温度が160〜200℃の有機過酸化物を含む、請求項1に記載された架橋環状オレフィン樹脂フィルム。
  3. 上記(b)炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも1つ有する炭素数8〜20の脂肪族カルボン酸が、分子末端に炭素−炭素二重結合を有する炭素数8〜20の脂肪族カルボン酸である、請求項1又は2に記載されている架橋環状オレフィン樹脂フィルム。
  4. 上記(a)環状オレフィンモノマーがノルボルネン系モノマーである、請求項1〜3のいずれか1項に記載されている架橋環状オレフィン樹脂フィルム。
  5. 上記(d)メタセシス重合触媒がルテニウムカルベン錯体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載されている架橋環状オレフィン樹脂フィルム。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載されている架橋環状オレフィン樹脂フィルムと(f)金属箔が、該架橋環状オレフィン樹脂フィルムのコロナ処理された面にて接着されている積層体。
  7. 上記(f)金属箔が銅箔である、請求項6に記載されている積層体。
  8. フレキシブルプリント基板用である、請求項7に記載されている積層体。
  9. (a)環状オレフィンモノマー100質量部、(b)炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも1つ有する炭素数8〜20の脂肪族カルボン酸0.01〜2質量部、(c)共役ジエン重合体環化物3〜40質量部、及び(d)メタセシス重合触媒を含有する重合性組成物を基材上に塗布した後、メタセシス重合し、その後、得られたフィルム状重合体の表面をコロナ処理する工程を含む、架橋環状オレフィン樹脂フィルムの製造方法。
  10. 上記重合性組成物が、更に、(e)1分間半減温度が160〜200℃の有機過酸化物を含む、請求項9に記載された架橋環状オレフィン樹脂フィルムの製造方法。
  11. 上記(b)炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも1つ有する炭素数8〜20の脂肪族カルボン酸が、分子末端に炭素−炭素二重結合を有する炭素数8〜20の脂肪族カルボン酸である、請求項9又は10に記載されている架橋環状オレフィン樹脂フィルムの製造方法。
  12. 上記(a)環状オレフィンモノマーがノルボルネン系モノマーである、請求項9〜11のいずれか1項に記載されている架橋環状オレフィン樹脂フィルムの製造方法。
  13. 上記(d)メタセシス重合触媒がルテニウムカルベン錯体である、請求項9〜12のいずれか1項に記載されている架橋環状オレフィン樹脂フィルムの製造方法。
  14. (a)環状オレフィンモノマー100質量部、(b)炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも1つ有する炭素数8〜20の脂肪族カルボン酸0.01〜2質量部、(c)共役ジエン重合体環化物3〜40質量部、及び(d)メタセシス重合触媒を含有する重合性組成物を基材上に塗布した後、メタセシス重合し、その後、得られたフィルム状重合体の表面をコロナ処理して架橋環状オレフィン樹脂フィルムを得る工程、及び、
    上記架橋環状オレフィン樹脂フィルムと(f)金属箔を、上記架橋環状オレフィン樹脂フィルムのコロナ処理された面にて接触させ、その後、加圧しながら加熱して両者を接着させる工程を含む、積層体の製造方法。
  15. 上記重合性組成物が、更に、(e)1分間半減温度が160〜200℃の有機過酸化物を含む、請求項14に記載された積層体の製造方法。
  16. 上記(b)炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも1つ有する炭素数8〜20の脂肪族カルボン酸が、分子末端に炭素−炭素二重結合を有する炭素数8〜20の脂肪族カルボン酸である、請求項14又は15に記載されている積層体の製造方法。
  17. 上記(a)環状オレフィンモノマーがノルボルネン系モノマーである、請求項14〜16のいずれか1項に記載されている積層体の製造方法。
  18. 上記(d)メタセシス重合触媒がルテニウムカルベン錯体である、請求項14〜17のいずれか1項に記載されている積層体の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN107250202A (zh) * 2015-02-14 2017-10-13 马特里亚公司 对烃类流体的抵抗性提高的romp聚合物

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