JP2014225339A - 飛行時間型質量分析装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡単な構造及び制御により、不要イオンを飛行途中で排除する。
【解決手段】試料2にレーザ光を照射してイオンを発生させる時点で、試料プレート1から引出し電極3に向かって緩やかに下傾する電位勾配をもつ引出し電場を形成しておく。この電場の作用により、イオンはm/zに応じて大まかに分離され、m/zが小さいイオンが先行する。所定の遅延時間経過後に電位勾配を急にし各イオンに加速エネルギを与える。このとき、減速電極8の電位V3よりも低い電圧で加速されたm/zが小さな不要イオンは、減速電極8によるエネルギ障壁を越えられず排除され、大きな電圧で加速されたm/zが大きな目的化合物由来イオンはエネルギ障壁を越えて再加速され、飛行空間10へと送り込まれる。これにより、m/zが小さな不要イオンを的確に排除できる。
【選択図】図2

Description

本発明は飛行時間型質量分析装置(Time-of-Flight Mass Spectrometer、以下「TOFMS」と略す)に関する。
TOFMSは一般に、電場により加速したイオンを電場及び磁場を有さない飛行空間に導入して自由飛行させ、検出器に到達するまでの飛行時間に応じて各種イオンを質量電荷比m/z毎に分離して検出するものである。TOFMSのイオン源としては、マトリクス支援レーザ脱離イオン化(MALDI=Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization)法によるMALDIイオン源が最も広く利用されているが、それ以外にも、高速原子衝突(FAB=Fast Atom Bombardment)法、レーザ脱離イオン化(LDI=Laser Desorption/Ionization)法、二次イオン質量分析(SIMS=Secondary Ion Mass Spectrometry)法、脱離エレクトロスプレイイオン化(DESI=Desorption Electrospray Ionization)法、プラズマ脱離イオン化法(PDI=Plasma Desorption Ionization)法などが利用されている。
MALDIイオン源を用いたTOFMSでは、短時間のレーザ光照射によってサンプルから発生した各種イオンが電場の作用によりサンプル近傍から引き出され、加速されて飛行空間に送り込まれる。高い質量分解能を得るためには、イオンが飛行空間に導入される際に同一種の、つまり同一の質量電荷比を有するイオンの、初期速度ができるだけ揃っている必要がある。しかしながら、MALDIイオン源では一般に、イオン発生時点でイオンが持つ初期エネルギのばらつきが大きく、そのために初期速度のばらつきが大きくなって時間収束性が悪化する。そこで、この問題を回避するために、遅延引出し法と呼ばれる手法が一般に利用されている。
一般的な遅延引出し法では、サンプルにレーザ光を照射する際にはサンプルを載せたサンプルプレートと該プレートに対向して配置された引出し電極とを同電位としておく。これにより、サンプルプレートと引出し電極との間には電位勾配がないため、サンプルから発生したイオンはそれぞれが持つ初期速度に応じて拡散する。そして、レーザ光照射から一定時間(数十nsec程度)が経過した後にサンプルプレートから引出し電極に向かって大きな下向き傾斜の電位勾配を有する加速電場を形成し、これによってサンプルプレートと引出し電極との間の空間にある各種イオンを略同時に加速する。このとき、初期速度の小さなイオンほどサンプルプレートに近い位置に存在するから、上記加速電場により大きな運動エネルギを付与される。その結果、同種のイオンの中でも初期速度が小さなイオンほど大きな速度で以て飛行空間に送り込まれることになり、最終的に同種のイオンはほぼ同時に検出器に到達する。このようにして、各イオンが持つ初期エネルギのばらつきの影響が軽減され、高い時間収束性を達成することができる。
しかしながら、特許文献1で指摘されているように、上述した一般的な遅延引出し法では、高い時間収束性を確保できる質量電荷比範囲が狭いため、広い質量電荷比範囲に亘って質量分解能を改善するのが難しいという問題点がある。これは、TOFMSにおいてイオンの初期エネルギのばらつきを適切に補正するには質量電荷比に応じたエネルギを与える必要があるにも拘わらず、上記遅延引出し法において加速電場が形成されるときのイオンの空間分布は質量電荷比とは無関係であるためである。
こうした問題を解決するために、特許文献1には、二つの新たな遅延引出し法が提案されている。それら提案法についてはあとで詳しく述べるが、重要な点は、各種イオンをほぼ同時に加速して飛行空間へと送り込む前に、サンプルプレートと引出し電極との間に、サンプルプレートから引出し電極に向かって緩やかに下がる電位勾配を持つ電場を形成することで、動きにくい質量電荷比が大きなイオンほどサンプルプレートの近くに位置するようにイオンを質量電荷比の大きさに応じて大まかに分布させることである。そのあとに、サンプルプレートから引出し電極に向かう下傾斜の電位勾配を急にするように加速電場を形成することで、イオンを略同時に加速すると、質量電荷比が大きなイオンは質量電荷比が小さなイオンに比べて大きな加速エネルギを付与される。これにより、質量電荷比に応じて適切なエネルギ変化をイオンに与え、幅広い質量電荷比に亘るエネルギ収束を実現して質量分解能を改善することができる。
ところで、TOFMSでは基本的に、上記のような加速電場により加速された全てのイオンが最終的に検出器に到達する。そのため、目的化合物由来のイオンだけでなく、様々な不所望のバックグラウンドイオン、例えばMALDIイオン源やFABイオン源では各種マトリクス由来のイオンや夾雑物由来のイオンなどが、検出器に直接入射する。これら不所望のイオンは目的化合物由来イオンに比べてイオン強度が著しく大きい場合が多く、こうしたイオンがマイクロチャンネルプレート(MCP)や高速応答形の小型2次電子増倍管(SEM)を用いた検出器に入射すると検出器が飽和する。その結果、検出器にはμ秒オーダーのデッドタイム(不感時間)が生じ、その時間中に入射したイオンを検出できずに測定精度や感度の低下をもたらすという問題がある。また、過剰量のイオンの入射は検出器の劣化の大きな原因となり、短寿命化を招くという問題もある。
こうした問題を解決するために、従来、飛行経路の途中に静電偏向方式又はブラッドベリ-ニールセン(Bradbury-Nielsen)ゲートによるイオンゲートを配置し、目的化合物由来イオン以外の不要イオンを排除するという方法が採られている。こうした手法による機能はイオンビームブランキング機能と呼ばれ、またそれに用いられるイオンゲートはイオンビームブランカ又は単にブランカと呼ばれている(特許文献2など参照)。
イオンビームブランカには不要イオンを十分に排除する性能、つまり排除能と、排除すべきイオンとそうでないイオンとを適切に選択する性能、つまり選択能、とが求められる。
静電偏向式ブランカによるイオンビームブランキングでは、イオンが飛行する方向に沿って延在するように配置されたブランキング電極に所定の電圧を印加することで、イオン光軸に対し直交する方向に力が作用する偏向電場が形成される。この偏向電場によりイオンの進行方向を偏向させることで不要イオンを排除する。通常、上述したような不要イオンは目的化合物由来イオンに比べて質量電荷比が小さく、該目的化合物由来イオンよりも先にブランキング電極に到達する。そこで、不要イオンが全てブランキング電極を通過した瞬間に該電極への電圧印加を停止すれば、イオンに対する静電偏向電場は無くなるので、必要なイオンは排除されることなく該電極を通過して検出器に到達する。この場合、通過するイオンはブランキング電極近傍を通過する間だけ静電偏向電場による作用を受けるため、排除能及び選択能はブランキング電極に印加される電圧の大きさと該電極のイオン光軸方向の長さに依存する。
ブランキング電極がイオン光軸方向に長いほど、イオンの通過時間つまり偏向電場による力を受ける時間が長くなるため、排除能は高くなる。その反面、印加電圧を停止する瞬間にブランキング電極を通過しようとしているイオンの質量電荷比範囲が広くなり、これらイオンは検出器に到達し得ない可能性が高いから、選択能は低くなる。また、ブランキング電極に印加する電圧が大きいほど不要イオンが受ける力も大きくなるため、排除能は高くなるが、電圧の切替えに伴って発生するスイッチングノイズも大きくなり、それが測定に悪影響を及ぼすおそれがある。
一方、ブラッドベリ-ニールセンゲートによるイオンビームブランキングでは、複数本のワイヤを例えば1[mm] 程度の間隔で平行に張設し、隣接するワイヤに互いに極性の異なる電圧を印加することで不要イオンビームを偏向させる。この方法は上述した静電偏向方式に比べると低電圧で不要イオンを排除することが可能であり、また選択能も高いという利点がある。しかしながら、飛行するイオンを遮るようにワイヤが設置されるため、イオンの透過効率が下がり、検出感度の低下に繋がる。また、複雑で且つ繊細な構造であるため、高度な製造技術を要するとともにコストも高くなる傾向にある。
特開2011−175898号公報 特開2007−335368号公報
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、特にイオンを加速するために上述したような遅延引出し法を用いたTOFMSにおいて、ノイズなどの発生を抑え、且つイオン通過効率を犠牲にすることなく、高い排除能及び選択能を以て不要イオンを排除することができるイオンビームブランキング機能を搭載したTOFMSを提供することである。
上記課題を解決するためになされた本発明は、試料から発生したイオンを加速して飛行空間に導入し、該飛行空間内で質量電荷比に応じてイオンを分離して検出する飛行時間型質量分析装置において、
a)試料を保持する試料保持部から所定距離離間して配設され、該試料保持部との間の空間にイオンを試料表面から引き出して加速する電場を形成するための引出し電極と、
b)イオン発生開始時点から所定の遅延時間が経過するまでの期間中の少なくとも一部期間に、試料表面から前記引出し電極に向けてイオンが質量電荷比に応じて移動するような電位勾配を持つ引出し電場が形成され、前記遅延時間が経過した時点以降には、前記試料保持部と前記引出し電極との間の空間にあるイオンを一斉に加速する加速電場が形成されるように、前記試料保持部及び前記引出し電極に電圧を印加する射出用電圧印加部と、
c)前記加速電場により加速されたイオンが飛行する飛行経路中に設けられ、該加速電場が形成されるときに該電場により受けるエネルギが所定以上であるイオンのみが乗り越え可能であり、そうでないイオンが跳ね返されるようなエネルギ障壁となる障壁電場を形成する不要イオン排除部と、
を備えることを特徴としている。
ここで、試料からイオンを発生させるためのイオン化法は、試料からイオンを短時間の間にパルス状(又はパケット状)に発生させるものであれば特に限定されないが、例えば、MALDI、LDIなどのレーザ光を利用したイオン化法、FAB、SIMSなどの高速粒子流を利用したイオン化法、DESIなどの帯電噴霧流を利用したイオン化法、PDIなどのプラズマを利用したイオン化法、などが考えられる。
本発明に係る飛行時間型質量分析装置の第1の態様において、上記射出用電圧印加部は、イオン発生開始時点から所定の遅延時間が経過するまでの期間中、試料表面から引出し電極に向けてイオンが質量電荷比に応じて移動するような緩やかに下傾する電位勾配を持つ引出し電場を形成するように試料保持部及び引出し電極に電圧を印加する構成とすることができる。
また本発明に係る飛行時間型質量分析装置の第2の態様において、上記射出用電圧印加部は、イオン発生開始時点以降に、試料保持部と引出し電極との間の空間においてイオンを該試料保持部から該引出し電極に向かう方向に引き出す電位勾配の傾斜が段階的に大きくなる引出し電場が形成されるように、引出し電極の電位に対して試料保持部の相対的な電位を段階的に増加させる電圧を印加する構成としてもよい。
上記第1の態様による飛行時間型質量分析装置では、イオン発生開始時点において、試料保持部と引出し電極との間の空間に、試料保持部から引出し電極に向かって緩やかに下傾する電位勾配を持つ引出し電場が形成されている。この引出し電場により、試料から発生した各種イオンは試料表面から引出し電極に向かってゆっくりと移動する。こうした一定の電場の下でイオンの速度はそのサイズに逆比例するから、質量電荷比が小さな軽いイオンほど引出し電極に近づき、逆に質量電荷比が相対的に大きなイオンは試料に近い位置に残ることになる。もちろん、イオン発生時に各イオンが持つ初期エネルギは質量電荷比とは無関係にばらついており、移動速度はこの初期エネルギの影響も受ける。そのため、所定の遅延時間が経過したときに、各イオンが質量電荷比に応じて整然と分布するわけではないものの、全体としては質量電荷比を反映した空間分布となる。
なお、所定の遅延時間が経過した時点において、試料から発生した各種イオンが混じった状態ではなく、全体としては質量電荷比を反映した空間分布となることは上記第2の態様でも同様である。
所定の遅延時間が経過した時点でイオンを一斉に加速させるべく急勾配の加速電場が形成されると、各イオンには一斉に加速電圧(加速エネルギ)が与えられるが、各イオンには上述したように質量電荷比に応じて分布した位置毎に異なる加速電圧が付与される。具体的には、試料に近い位置にある質量電荷比が大きなイオンほど大きな加速エネルギを受ける。こうして加速エネルギを付与されたイオンはいずれも飛行して不要イオン排除部に達する。不要イオン排除部にはエネルギ障壁となる障壁電場が形成されており、所定以上のエネルギを持って到達するイオンのみが該障壁を乗り越え、そうでないイオンは障壁で反射される。上述したように、このときにイオンが持つエネルギの大きさは質量電荷比に依存するので、質量電荷比が或る程度以上のイオンはエネルギ障壁を乗り越えて飛行を続けるのに対し、該障壁を乗り越えられないような低いエネルギしか持たない小さな質量電荷比のイオンは飛行を続行できずに排除される。
このようにして本発明に係る飛行時間型質量分析装置では、質量電荷比が相対的に小さなイオンを飛行途中で排除し検出器に到達し得ないようにすることができる。一方、質量電荷比が相対的に大きなイオンはエネルギ障壁によるエネルギ減衰は受けるものの、そのまま飛行を続け、その飛行の過程で質量電荷比に応じて時間的に分離されて検出器に到達する。前述したように、例えばMALDIなどのイオン源において多く発生する不要イオンの質量電荷比は測定対象である目的化合物由来のイオンに比べて質量電荷比がかなり小さい。したがって、エネルギ障壁の高さや加速電場により各イオンに付与される加速エネルギの大きさ、つまりは試料保持部及び引出し電極に印加される電圧の値などを適切に定めておくことで、目的化合物由来のイオンについては不要イオン排除部を通過させ、該イオンよりも質量電荷比が十分に小さな不要イオンのみを排除することができる。
排除されるイオンの質量電荷比の上限値とエネルギ障壁の高さや加速エネルギの大きさとの大まかな関係は、シミュレーション計算や予備実験などにより予め求めておくことができる。したがって、本発明に係る飛行時間型質量分析装置では例えば、排除したいイオンの質量電荷比上限値など、排除対象のイオンの質量電荷比に関連する情報(例えばMALDIで使用されるマトリクスの種類など)をユーザが入力すると、これに応じてエネルギ障壁の高さや加速エネルギの大きさが自動的に適切に設定されるような構成とすることができる。
なお、本発明に係る飛行時間型質量分析装置では、イオンを一斉に加速させるべく加速電場を形成する際に、同一質量電荷比を持つ同一種のイオンは空間的に比較的近い位置に存在するため、ほぼ同程度の加速電圧が与えられる。したがって、各種イオンに対し質量電荷比に応じたより適切な加速電圧を与えることが可能となり、広い質量電荷比範囲に亘って質量分解能を改善することができる。また、同一質量電荷比を持つイオンの中では、初期エネルギが小さなものほど試料保持部に近い位置にあるため、相対的に大きな加速電圧が加えられることになる。したがって、遅延引出し法による初期エネルギのばらつきの補正効果も十分に得ることができる。
本発明に係る飛行時間型質量分析装置によれば、従来用いられている静電偏向式ブランカやブラッドベリ-ニールセンゲートによるイオンビームブランキングとは全く異なる原理で以て、測定の障害となり且つ検出器を損傷するおそれのある不要イオンを飛行途中で的確に排除することができる。これにより、検出器のデッドタイムに起因する測定精度の低下を防止できるとともに、検出器の長寿命化を図ることができる。また、本発明で用いられるイオンビームブランキングでは、不要イオン排除のために高電圧の切替えは不要であるので、そうした切替えに伴うノイズ発生はない。また、測定対象化合物由来のイオンは飛行途中で何ら遮られることがないので、そうしたイオンの通過効率を落とすこともない。こうしたことから、従来のイオンビームブランキング機能を搭載した装置に比べても、高い測定精度、測定感度を達成することができる。また、イオンビームブランキングのための構造や制御も簡単であり、コスト的にも有利である。
本発明の第1実施例であるMALDI−TOFMSの概略構成図。 第1実施例のMALDI−TOFMSにおける不要イオン排除動作を説明するためのイオン光軸Cに沿った電位勾配の変化を示す図。 第2実施例のMALDI−TOFMSにおける不要イオン排除動作を説明するためのイオン光軸Cに沿った電位勾配の変化を示す図。 図2(a)に示す状態でVS=8[kV]、VE=7.2[kV]、V1=V2=−5[kV]、V4=−10[kV]とし、レーザ光照射時点から440[nsec]後に試料プレートへの印加電圧を720[V]増加させたときの、質量電荷比と加速電圧との関係をシミュレーション計算により求めた結果。
本発明に係るTOFMSの第1実施例であるMALDI−TOFMSについて、図面を参照して説明する。図1は第1実施例のMALDI−TOFMSの概略構成図である。
第1実施例のMALDI−TOFMSでは、試料2を保持する試料プレート1に略直交するイオン光軸Cに沿って、引出し電極3、第1ベース電極4、第2ベース電極7、減速電極8、第3ベース電極9、飛行空間10、及び検出器11が配置されている。制御部13の制御の下に、レーザ照射部5から出射したレーザ光はミラー6で反射され、試料2表面の微小領域に照射される。試料プレート1は金属製又は導電ガラス製であり、図示しないステージにより保持され、該ステージを介して電圧が印加されるようになっているが、図1では便宜上、試料プレート1に直接、電圧が印加されるように記載してある。
引出し電圧発生部14は制御部13の制御に従って、試料プレート1及び引出し電極3にそれぞれ所定の直流電圧Vs、Veを印加する。引出し電極3と飛行空間10との間に配置された第1ベース電極4、第2ベース電極7、減速電極8、及び第3ベース電極9には、それぞれ所定の直流電圧V1、V2、V3、V4が印加される。なお、説明の便宜上、ここでは、各電極に印加される電圧、及びそれによって各電極が持つ電位をともに、V1〜V4、Vs、Ve等の符号で示す。検出器11は例えば光電子増倍管であり、飛行空間10を通過する過程で質量電荷比に応じて時間的に分離されて順次到達するイオンを検出し、イオン量に応じた検出信号を信号処理部12に送る。信号処理部12は検出信号に基づいて飛行時間とイオン強度との関係を示す飛行時間スペクトルを作成し、予め求めた情報に基づいて飛行時間を質量電荷比に換算することによりマススペクトルを作成する。
図1中に示すように、便宜的に、試料プレート1と引出し電極3との間の空間は引出し領域、引出し電極3と第1ベース電極4との間の空間は第1加速領域、第1ベース電極4と第2ベース電極7との間の空間は第1自由飛行加速領域、第2ベース電極7と減速電極8との間の空間は減速領域、減速電極8と第3ベース電極9との間の空間は第2加速領域、第3ベース電極9と検出器11との間の飛行空間10は第2自由飛行領域と呼ぶこととする。
第1実施例のMALDI−TOFMSにおける特徴的な不要イオン排除動作について、図2を参照して説明する。図2はイオン引出し時及び射出時におけるイオン光軸Cに沿った電位勾配の変化を示す図である。なお、この図2における遅延引出し法は特許文献1における第1の提案法(以下「傾斜場引出し法」と呼ぶ)に相当するものである。
制御部13からレーザ照射部5に開始信号が送られると、それに対応してレーザ照射部5は所定パルス幅のレーザ光を出射する。このレーザ光はミラー6で反射されて試料プレート1上の試料2に照射される。一方、レーザ光が出射されるとそのごく一部のレーザ光をモニタして得られた信号がレーザ照射部5から制御部13にフィードバックされ、それによって制御部13はレーザ出射を認識する。そして、制御部13はその時点がイオン発生開始時点であるとみなして内部タイマの計時を開始する。
また制御部13は、レーザ光が照射される以前の適宜な時点で、引出し電極3への印加電圧VeをVE、試料プレート1への印加電圧VsをVEよりも高いVSとするように引出し電圧発生部14を制御する。このときVS>VEであるが、その電位差VS−VEは後述するイオン加速時の電位差V0−VEに比べると遙かに小さい。また、第1ベース電極4、第2ベース電極7、減速電極8、第3ベース電極9の電位はV1=V2<V3、V1、V2、V3>V4の関係にあり、イオン光軸C上の電位分布は図2(a)に示す状態である。即ち、引出し領域には、試料プレート1から引出し電極3に向かって緩やかに下傾する電位勾配を有する引出し電場が形成され、第1加速領域には引出し電極3から第1ベース電極4に向かって急な下傾斜の電位勾配を有する加速電場が形成されている。なお、引出し領域に形成される引出し電場、第1加速領域に形成される加速電場ともにイオンを加速する作用を有することから、以下の説明では、引出し領域及び第1加速領域に形成される電場を併せて第1加速電場ということとする。
試料2にレーザ光が照射されると、試料2中のマトリクスと目的化合物とが共に気化し、それらがイオン化される。試料2表面近傍で発生した各種イオンには上述した引出し電場が作用するから、図2(b)に示すように、イオンは引出し電極3に向かう方向に誘引される。このとき、引出し電場により各イオンに与えられるポテンシャルエネルギに由来するイオンの速度は質量電荷比が小さいほど大きい。そのため、質量電荷比の小さなイオン(つまりは軽いイオン)ほど引出し電極3に近付くことになる。
図2(a)及び(b)の状態では、試料2表面付近から引き出された各種イオンが所定の遅延時間内に引出し電極3を通りすぎてしまわない程度の運動エネルギを各イオンに付与するように、引出し領域における電位勾配の傾斜を緩くしておく。ただし、電位勾配の傾斜が緩すぎると、その電場によりイオンが受ける運動エネルギよりもイオンが持つ初期エネルギの影響のほうが大きいために、イオンは質量電荷比に応じて分離されない。こうしたことから、試料プレート1と引出し電極3との間の距離、遅延時間などの条件に基づいて、引出し領域中で遅延時間内に各種イオンが質量電荷比に応じて適度に分離されるように、電位差VS−VEを適切に定めておくとよい。こうした適切な電位差は例えばシミュレーション計算や予備実験により決めておくことができる。
各イオンは発生時点で質量電荷比に依存しない初期エネルギを有しており、それによる速度成分もあるため、上記のような引出し電場が作用してもイオンは単純に質量電荷比の順に並ぶわけではない。しかしながら、例えばイオン発生時に同一の初期エネルギが付与された異なる質量電荷比を有するイオンをみると、質量電荷比が小さいイオンがより早く引出し電極3に近づくため、全体的には図2(b)に示すように、質量電荷比の小さなイオンが先行し、質量電荷比の大きなイオンは試料2表面近くに位置することになる。そして、ほぼ同一の質量電荷比を有する同種のイオンの集まりを子細にみると、大きな初期エネルギを持つイオンほど引出し電極3に近い位置に存在することになる。
制御部13は内部タイマの計時開始から所定の遅延時間が経過した時点で、引出し電圧発生部14により、試料プレート1への印加電圧VsをそれまでのVSからV0(>VS)に上昇させる。これにより、イオン光軸C上の電位分布は図2(c)に示す状態に変化し、引出し領域及び第1加速領域には、試料プレート1から引出し電極3に向かって大きく下傾する電位勾配を有する加速電場、即ち第1加速電場が形成される。その結果、その直前に引出し領域中に存在している全てのイオンに対し最大V0なる加速電圧が一斉に与えられ、イオンは引出し電極3に向かって移動する。このとき、引出し領域において試料プレート1に近い位置に存在するイオン、つまりは質量電荷比が大きなイオンほど大きな加速エネルギが与えられる。
図2(d)に示すように、第1加速電場において加速されたイオンは第1ベース電極4、第2ベース電極7を順に通過するが、その前方の減速電極8の電位V3は第2ベース電極7の電位V2よりも高い。つまり、減速領域には第2ベース電極7から減速電極8に向かって上り傾斜の電位勾配を有する減速電場が形成され、これがイオンにとってはエネルギ障壁となる。この減速電場において各イオンは運動エネルギを奪われる。図2(c)に示すように各イオンが略一斉に加速される際に電位V3よりも高い電圧で加速された、つまりはエネルギ障壁の頂部よりも高いエネルギを付与された質量電荷比が相対的に大きなイオンは、減速電場によって奪われるエネルギよりも大きなエネルギを以て減速電場に突入する。このため、図2(e)に示すように、こうしたイオンはエネルギが減衰してもエネルギ障壁を乗り越え得る。これに対し、質量電荷比が相対的に小さなイオンは加速時にエネルギ障壁の頂部よりも低いエネルギしか与えられないため、エネルギ障壁を乗り越えることができず跳ね返されることになる。
このように減速電極8によるエネルギ障壁の頂部を越えて第2加速領域に進んだ相対的に質量電荷比が大きなイオンは、第2加速領域に形成されている加速電場(以下の説明では上記第1加速電場と区別するために第2加速電場という)により再び加速され、第3ベース電極9を通過して飛行空間10に導入される。減速電場を通過する際に各イオンは一定のエネルギを奪われ、そのあとに第2加速電場において各イオンは一定のエネルギを付与される。したがって、飛行空間10に導入される各イオンは、図2(c)に示すように第1加速電場において加速されたときの、それぞれの位置に応じた運動エネルギの差異に対応した速度差を持つ。即ち、質量電荷比が大きなイオンほど大きな速度を有し、同じ質量電荷比であれば初期エネルギが小さなイオンほど大きな速度を有する。
引出し領域において試料プレート1に近い位置に存在した或る質量電荷比のイオンは、同じ質量電荷比であって引出し電極3により近い位置に存在したイオンよりも時間的に後から飛行空間10に導入される。しかしながら、上述したように、遅れて導入されるイオンの飛行速度はより大きいので、飛行中に、先行している同質量電荷比のイオンに徐々に追いつき、ほぼ同一時刻に検出器11に到達する。これにより、同一質量電荷比であるイオンのエネルギ収束が達成される。また、質量電荷比が大きなイオンには質量電荷比が小さなイオンに比べて相対的に高い加速エネルギが与えられる。したがって、それぞれの質量電荷比のイオンに対して適切なポテンシャルエネルギの変化が与えられるため、質量電荷比による初速のばらつきの補正効果の差異が軽減できる。これにより、特定の質量電荷比に片寄らず、幅広い質量電荷比範囲に亘って初速のばらつきを軽減し、高い質量分解能を達成することができる。
また上述したように質量電荷比が或る程度以下である軽いイオンは、減速領域で跳ね返され飛行空間10には導入されない。MALDI−TOFMSでは、殆どの場合、測定対象の目的化合物はタンパク質やペプチドなど分子量が大きな化合物である。一方、イオン発生時には目的化合物由来イオンのほかに、試料2中に多量に含まれるマトリクス由来のイオンが多く発生するが、こうした測定に不要で且つ測定の障害ともなるイオンは通常、目的化合物由来のイオンに比べると質量電荷比が十分に小さい。そのため、減速電極8に印加する電圧の値(電位V3)と、試料プレート1及び引出し電極3にそれぞれ印加する電圧Vs、Veを適切に決めておくことにより、不要イオンを排除しつつ、目的化合物由来のイオンを質量分析することが可能である。
図4は上述の傾斜場引出し法において、図2(a)、(b)に示す状態で、VS=8[kV]、VE=7.2[kV]、V1=V2=−5[kV]、V4=−10[kV]とし、レーザ光照射時点から440[nsec]後に試料プレート1への印加電圧を720[V]増加させたときの、質量電荷比と加速電圧との関係をシミュレーション計算により求めた結果である。ここで、図4の縦軸の加速電圧の値は接地を0[V]とした値である。
図4から明らかなように、質量電荷比が大きな重いイオンほど高い電圧で加速されている。これは上述したようなイオン引き出し動作によって、各イオンが質量電荷比に応じた分布を示すことを意味している。図4における加速電圧値が減速電極8に印加する電圧値(即ち、減速電圧)よりも低いような質量電荷比範囲のイオンは、減速電場によって排除される。したがって、例えば500[Da]以下のイオンを排除したければ、減速電極8に印加する電圧V3を接地に対して8.023[kV]に設定すればよい。上述したように目的化合物がタンパク質やペプチドなどの生体試料由来の化合物である場合には、こうした条件設定で不要イオンを十分に排除することができる。
減速電場で排除されたイオンは検出器11に達しないので、検出器11が過剰な量の不要イオンの入射によって飽和する事態を回避できる。また、過剰な量のイオン入射によって、マイクロチャンネルプレートなどが損傷を受けたり汚れたりすることも防止でき、結果的に、検出器11の長寿命化に寄与する。
次に、本発明の第2実施例によるMALDI−TOFMSについて説明する。この第2実施例のMALDI−TOFMSの構成は上記第1実施例と同じであり、制御部13による制御の下で行われる不要イオン排除動作が異なるだけである。そこで、この不要イオン排除動作について、図2と同様の図3を参照して説明する。なお、この図3における遅延引出し法は特許文献1における第2の提案法(以下「二段階引出し法」と呼ぶ)に相当するものである。
制御部13は、レーザ光が照射される以前の適宜に時点で、引出し電極3への印加電圧Ve及び試料プレート1への印加電圧Vsを共にVEとするように引出し電圧発生部14を制御する。したがって、この第2実施例では図3(a)に示すように、イオン発生時にはイオンを誘引するような実質的な電場は引出し領域に存在しない。こうした状況で試料2にレーザ光が照射され、試料2表面近傍で発生した各種イオンはそれぞれの初期エネルギに基づく初速で拡散する。
制御部13はレーザ光照射時点から所定の遅延時間t1が経過したときに、引出し電圧発生部14により、試料プレート1への印加電圧VsをそれまでのVEからVSに上昇させる。これにより、図3(b)に示すように、引出し領域には、試料プレート1から引出し電極3に向かって緩やかに下傾する電位勾配を有する引出し電場が形成される。なお、試料プレート1の電位を固定し引出し電極3の電位を下げることで、同様の引出し電場を形成してもよい。これにより、図2(b)と同様に、引出し領域において質量電荷比の小さなイオンほど引出し電極3に近い位置になるように各イオンは質量電荷比に応じて大まかに分離される。
制御部13は、図3(c)に示すように、先行する質量電荷比の小さなイオンが引出し電極3を通過したあとの所定のタイミングで、試料プレート1への印加電圧VsをVSからさらにV0に上昇させる。これにより、イオン光軸C上の電位分布は図3(d)に示す状態に変化する。即ち、試料プレート1から引出し電極3に向かう電位勾配の傾斜が大きくなり、その時点で引出し領域中に残っていた主として質量電荷比の大きなイオンに対し最大V0なる加速電圧が一斉に与えられる。これによって、これらイオンも引出し電極3に向かって加速される。このとき既に引出し電極3を通過していた質量電荷比が小さなイオンは上記のような傾斜が急になった引出し領域中の加速電場の影響を受けず、もともと第1加速領域に形成されている加速電場によって加速される。
図2に示した例と同様に、第2ベース電極7の電位V2と減速電極8の電位V3との差によって減速領域にはエネルギ障壁が形成されている。このため、このエネルギ障壁の頂部の電位V3よりも高い加速電圧を与えられた質量電荷比が大きなイオンは、該障壁を乗り越えて第2加速領域中の第2加速電場により再加速されたあとに飛行空間10へ導入される(図3(e)、(f))。一方、減速領域におけるエネルギ障壁の頂部の電位よりも低い加速電圧しか与えられなかった質量電荷比が小さなイオンは、該障壁で跳ね返されて実質的に排除される。これにより、第1実施例と同様に、目的化合物由来イオンに比べて質量電荷比が小さい不要イオンが検出器11に到達することを防止することができ、検出器11の飽和回避など、同様の効果を達成できる。
上述したように、この第2実施例のMALDI−TOFMSでは、イオン発生開始時点から遅延時間t1が経過するまでの期間中には、試料2の表面付近で発生したイオンが初期速度で自由に拡がり、質量電荷比に依らず主として初期速度(初期エネルギ)の大きなイオンほど引出し電極3に近づくように分散する。遅延時間t1の経過時点から遅延時間t2が経過するまでの期間中には、引出し領域中に存在している主として質量電荷比の小さなイオンが比較的小さな加速エネルギで以て引出し電極3の方向に引き出され第1加速領域に導入される。このとき同じ質量電荷比を持つイオンの中でも試料2の近くに存在するイオンほど大きな加速エネルギが与えられる。続いて遅延時間t2が経過すると、引出し領域中に存在している主として質量電荷比の大きなイオンが大きな加速エネルギで以て引出し電極3の方向に引き出され第1加速領域に導入される。このときにも、同じ質量電荷比を持つイオンの中で試料2の近くに存在するイオンほど大きな加速エネルギが与えられる。このように質量電荷比に拘わらず同一質量電荷比を持つイオンの中で試料2の近くに存在するほど大きな加速エネルギが与えられることで、同一質量電荷比のイオンに対するエネルギ収束が達成され、ひいては時間収束が達成される。
また、試料2から発生した各種イオンは質量電荷比に応じておおまかに分離され、質量電荷比の大きなイオンには質量電荷比の小さなイオンよりも大きな加速エネルギが与えられる。したがって、第1実施例と同様に、質量電荷比に応じた適切なポテンシャルエネルギの変化をイオンに与えることができるので、質量電荷比による初速のばらつきの補正効果の差異が軽減できる。これにより、特定の質量電荷比に片寄らず、幅広い質量電荷比範囲に亘って初速のばらつきを軽減し、高い質量分解能を達成することができる。
なお、上記第2実施例の説明では、イオン発生時点では引出し領域中に実質的な電場を形成せず、その後、試料プレート1への印加電圧Vsを2段階に分けて増加させるようにしていたが、さらに3段階以上に細かく分けて加速電圧を増加させるようにしてもよい。
また、上記実施例はいずれも本発明の一例であり、本発明の趣旨の範囲で適宜変形、修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは当然である。
1…試料プレート
2…試料
3…引出し電極
4…第1ベース電極
5…レーザ照射部
6…ミラー
7…第2ベース電極
8…減速電極
9…第3ベース電極
10…飛行空間
11…検出器
12…信号処理部
13…制御部
14…電圧発生部
C…イオン光軸

Claims (4)

  1. 試料から発生したイオンを加速して飛行空間に導入し、該飛行空間内で質量電荷比に応じてイオンを分離して検出する飛行時間型質量分析装置において、
    a)試料を保持する試料保持部から所定距離離間して配設され、該試料保持部との間の空間にイオンを試料表面から引き出して加速する電場を形成するための引出し電極と、
    b)イオン発生開始時点から所定の遅延時間が経過するまでの期間中の少なくとも一部期間に、試料表面から前記引出し電極に向けてイオンが質量電荷比に応じて移動するような電位勾配を持つ引出し電場が形成され、前記遅延時間が経過した時点以降には、前記試料保持部と前記引出し電極との間の空間にあるイオンを一斉に加速する加速電場が形成されるように、前記試料保持部及び前記引出し電極に電圧を印加する射出用電圧印加部と、
    c)前記加速電場により加速されたイオンが飛行する飛行経路中に設けられ、該加速電場が形成されるときに該電場により受けるエネルギが所定以上であるイオンのみが乗り越え可能であり、そうでないイオンが跳ね返されるようなエネルギ障壁となる障壁電場を形成する不要イオン排除部と、
    を備えることを特徴とする飛行時間型質量分析装置。
  2. 請求項1に記載の飛行時間型質量分析装置であって、
    前記射出用電圧印加部は、イオン発生開始時点から所定の遅延時間が経過するまでの期間中、前記試料表面から前記引出し電極に向けてイオンが質量電荷比に応じて移動するような緩やかに下傾する電位勾配を持つ引出し電場を形成するように前記試料保持部及び前記引出し電極に電圧を印加することを特徴とする飛行時間型質量分析装置。
  3. 請求項1に記載の飛行時間型質量分析装置であって、
    前記射出用電圧印加部は、イオン発生開始時点以降に、前記試料保持部と前記引出し電極との間の空間においてイオンを該試料保持部から該引出し電極に向かう方向に引き出す電位勾配の傾斜が段階的に大きくなる引出し電場が形成されるように、前記引出し電極の電位に対して前記試料保持部の相対的な電位を段階的に増加させる電圧を印加することを特徴とする飛行時間型質量分析装置。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の飛行時間型質量分析装置であって、
    試料をイオン化するイオン化法は、MALDI、LDI、FAB、SIMS、DESI、PDI法のいずれかであることを特徴とする飛行時間型質量分析装置。
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