JP2014222651A - 絶縁構造体及び絶縁構造の製造方法 - Google Patents

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幸三 平野
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幸三 平野
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Abstract

【課題】窒化ホウ素を使用することにより、アルミナや酸化マグネシウムを充填したような従来の金属シース又は金属スリーブ内の絶縁構造よりも優れた絶縁性を有しつつも、現実的なコストで窒化ホウ素の高絶縁性能を引き出し、且つ加工性にも優れた金属シース及び金属スリーブ内の絶縁構造を提供すること。
【解決手段】金属シースケーブル内部、又は金属シースケーブル同士若しくは金属シースケーブルと他のケーブルとを連結する連結部の金属スリーブ内部において、金属線と金属シース又は金属スリーブとの間に絶縁材を充填してなる絶縁構造体であって、前記絶縁材として絶縁性金属酸化物及び窒化ホウ素を充填してなることを特徴とする、絶縁構造体。
【選択図】図1

Description

本発明は、金属シースケーブル内部、又は金属シースケーブル同士若しくは金属シースケーブルと他のケーブルとを連結する連結部の金属スリーブ内部において、金属線と金属シース又は金属スリーブとの間に絶縁材を充填してなる絶縁構造体及びこのような絶縁構造の製造方法に関する。
高温下での高い電気絶縁性能が求められるシースヒータやシース熱電対の金属シース内に充填する絶縁充填材として、これまで化学的に安定で且つ絶縁抵抗や絶縁耐力の高い絶縁材、具体的には酸化マグネシウムやアルミナ等の金属酸化物が使用されてきた。
また、これらシースヒータやシース熱電対に延長ケーブルを接続する方法として、シースケーブルの端部外周側から対面する延長ケーブルの端部外周側まで、前記接続部を覆うように軸方向に延びる連結用の金属スリーブを設ける方法が頻繁に利用されている。この金属スリーブの中にも、酸化マグネシウムやアルミナ等の絶縁性を有する金属酸化物が絶縁材として充填され、前記接続部における防湿性や防塵性を確保している。
このような絶縁材により構成される絶縁構造においては、絶縁破壊を避けるため、前記絶縁構造の絶縁性は、高い方がよいのは言うまでもない。そして、このような絶縁構造の絶縁性を高めるための方法として、絶縁抵抗の高い金属酸化物を利用した方法が多く提案されてきた。
例えば、無機絶縁粉末粒子を金属シースや金属スリーブ内に充填することにより、絶縁性を向上させる方法が提案されている(特許文献1参照。)。アルミナ粉末粒子又はマグネシア粉末粒子よりなる絶縁材を金属スリーブ内に充填することにより、粒子と粒子が充填時に互いに固着することなく流動性を維持し、隙間なく密に充填することができるとされている。とはいえ、ここで使用されるアルミナや酸化マグネシウムの粒子は数十μmと比較的大きなものである。これら粒子を金属シースや金属スリーブ内に充填する際には、充填率を上げるためにバイブレーションをかけるが、この際に大きな粒子は上側に、小さな粒子は下側に集まる傾向となる。この場合、大きな粒子が偏った部分には粒子間の隙間が多くなり、過大な電圧が印加されるとこの部分が絶縁破壊することとなる。このように、絶縁材の充填方法を試行錯誤することにより、絶縁性の向上に対してある一定の効果は得られてはいるが、依然改善の余地は残されており、より一層の高い絶縁性を有する絶縁構造体及びそのような絶縁構造の製造方法が求められていた。
そこで、こうした絶縁材の充填方法に着目するのではなく、充填材の素材自体に着目した方法も考えられており、特許文献2では窒化ホウ素を絶縁材として使用することが提案されている。窒化ホウ素はこれまで使用されてきた、アルミナや酸化マグネシウムに比べ、はるかに絶縁性に優れており、少なくとも絶縁性という面では、金属シース又は金属スリーブ内の絶縁構造体に使用するのに適している。しかし、窒化ホウ素それ自体が、アルミナや酸化マグネシウムに比べて非常に高額であるだけでなく、物性面でも微細な粉末状であるため、これを金属シースや金属スリーブ内に隙間なく充填するのは、加工性の面から非常に難しかった。このように、窒化ホウ素を金属シースや金属スリーブ内の絶縁構造に使用することで絶縁性向上が望める反面、コスト面及び加工性における課題が大きな障壁となっていた。
特開2011−115001号公報 特許5095349号公報
上記のような事情に鑑み、本発明の目的とするところは、窒化ホウ素を使用することにより、アルミナや酸化マグネシウムを充填したような従来の金属シース又は金属スリーブ内の絶縁構造よりも優れた絶縁性を有しつつも、現実的なコストで窒化ホウ素の高絶縁性能を引き出し、且つ加工性にも優れた金属シース及び金属スリーブ内の絶縁構造を提供することにある。
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、絶縁性金属酸化物と窒化ホウ素とを併せて金属シース又は金属スリーブ内に充填することで、絶縁構造体中にできる空洞を極力少なくすることができ、これが絶縁性の向上に寄与することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の要旨は以下の通りである。
〔1〕金属シースケーブル内部、又は金属シースケーブル同士若しくは金属シースケーブルと他のケーブルとを連結する連結部の金属スリーブ内部において、金属線と金属シース又は金属スリーブとの間に絶縁材を充填してなる絶縁構造体であって、
前記絶縁材として絶縁性金属酸化物及び窒化ホウ素を充填してなることを特徴とする、
絶縁構造体、
〔2〕前記絶縁構造体中の一部または全体に、前記絶縁性金属酸化物と前記窒化ホウ素との混合物より成る層が存在する、前記〔1〕に記載の絶縁構造体、
〔3〕前記金属線と金属シース又は金属スリーブとの間に、前記絶縁材として前記金属線が通る貫通孔を有する、前記絶縁性金属酸化物又は該絶縁性金属酸化物及び前記窒化ホウ素より成る成形体を配設するとともに、該成形体と金属シース若しくは金属スリーブの隙間、又は前記成形体の貫通孔と前記金属線との隙間に、前記絶縁材として窒化ホウ素又は窒化ホウ素と絶縁性金属酸化物との混合物を充填してなる、
前記〔1〕に記載の絶縁構造体、
〔4〕前記成形体を配設して前記隙間に絶縁材を充填した金属シース又は金属スリーブをスウェージング又はドローイングにより縮径圧縮して前記成形体を粒子状に砕くとともに絶縁材の充填率を高めてなる、前記〔3〕に記載の絶縁構造体、
〔5〕前記絶縁性金属酸化物が酸化マグネシウムであり、且つ前記混合物中における前記絶縁性金属酸化物と前記窒化ホウ素との重量比は2:1〜15:1である、前記〔2〕〜〔4〕の何れかに記載の絶縁構造体、
〔6〕前記金属シースケーブルが、前記金属シースの内部に前記金属線として発熱線を収納してなる金属シースヒータ、又は前記金属シースの内部に前記金属線として熱電対素線を収納してなるシース熱電対である、前記〔1〕〜〔5〕の何れかに記載の絶縁構造体、
〔7〕金属シースケーブル内部、又は金属シースケーブル同士若しくは金属シースケーブルと他のケーブルとを連結する連結部の金属スリーブ内部において、金属線と金属シース又は金属スリーブとの間に絶縁材を充填してなる絶縁構造の製造方法であって、
前記絶縁材として絶縁性金属酸化物及び窒化ホウ素を充填することを特徴とする、
絶縁構造の製造方法、
〔8〕前記絶縁構造体中の一部または全体に、前記絶縁性金属酸化物と前記窒化ホウ素との混合物より成る層を形成させる、前記〔7〕に記載の絶縁構造の製造方法、
〔9〕前記金属線と金属シース又は金属スリーブとの間に、前記絶縁材として前記金属線が通る貫通孔を有する、前記絶縁性金属酸化物又は該絶縁性金属酸化物及び前記窒化ホウ素より成る成形体を配設するとともに、該成形体と金属シース若しくは金属スリーブとの隙間、又は前記成形体の貫通孔と前記金属線との隙間に、前記絶縁材として窒化ホウ素又は窒化ホウ素と絶縁性金属酸化物の混合物を充填する、
前記〔7〕に記載の絶縁構造の製造方法、
〔10〕前記成形体を配設して前記隙間に絶縁材を充填した金属シース又は金属スリーブをスウェージング又はドローイングにより縮径圧縮して前記成形体を粒子状に砕くとともに絶縁材の充填率を高める、前記〔9〕に記載の絶縁構造の製造方法、
〔11〕前記絶縁性金属酸化物が酸化マグネシウムであり、且つ前記混合物中における前記絶縁性金属酸化物と前記窒化ホウ素との重量比は2:1〜15:1である、前記〔7〕〜〔10〕の何れかに記載の絶縁構造の製造方法、
〔12〕前記金属シースケーブルが、前記金属シースの内部に前記金属線として発熱線を収納してなる金属シースヒータ、又は前記金属シースの内部に前記金属線として熱電対素線を収納してなるシース熱電対である、前記〔7〕〜〔11〕の何れかに記載の絶縁構造の製造方法、
である。
以上にしてなる本願発明に係る金属シースケーブル内部、又は金属シースケーブル同士若しくは金属シースケーブルと他のケーブルとを連結する連結部の金属スリーブ内部において、金属線と金属シース又は金属スリーブとの間に絶縁材を充填してなる絶縁構造体は、前記絶縁材として絶縁性金属酸化物及び窒化ホウ素を充填している。このような構成をとることにより、前記絶縁構造体内に形成される空洞の容積を顕著に少なくすることが可能である。そしてこの空洞体積を小さくしたことが、前記絶縁構造体における絶縁破壊発生のリスクを低減させる。また、窒化ホウ素は粒径2μm前後と非常に小さい上に丸みを帯びた形状をしているので、絶縁材を充填して前記絶縁構造体を形成する際に窒化ホウ素が潤滑材様の働きをして、絶縁材による金属線へのダメージが軽減される。
ここで、前記絶縁性金属酸化物と窒化ホウ素とを混合させた層は、より効果的に絶縁構造体中の空洞体積を減少させる。従ってこのような絶縁性金属酸化物と窒化ホウ素との混合物より成る層を、絶縁構造体の一部または全体に設けると、より効果的に絶縁破壊が発生するリスクを回避することができる。
また、金属線と金属シース又は金属スリーブとの間に、絶縁材として金属線が通る貫通孔を有する、絶縁性金属酸化物又は絶縁性金属酸化物及び窒化ホウ素より成る成形体を配設するとともに、該成形体と金属シース若しくは金属スリーブの隙間、又は前記成形体の貫通孔と金属線との隙間に、絶縁材として窒化ホウ素又は窒化ホウ素と絶縁性金属酸化物との混合物を充填することにより、金属線の周辺や、成形体と金属シース又は金属スリーブとの隙間などの、狙った部分を均質化することが可能である。特に金属線の周辺に、絶縁性金属化合物と窒化ホウ素の混合物を充填させることにより、連結部周辺の空洞体積を確実に減らすことができるので、絶縁破壊が生じにくい。
ここで、前記成形体を配設して成形した金属シース又は金属スリーブをドローイングやスウェージングにより縮径圧縮して絶縁構造体を成形することにより絶縁材の充填率を高めることができる。これにより絶縁構造体内の空洞体積を少なくすることができ、絶縁破壊発生のリスクを低減させることができる。特にこの縮径圧縮する際には、窒化ホウ素が潤滑材の役割を果たすことにより、金属線へのダメージを軽減させる。
上記の絶縁構造体は、特にシースヒータやシース熱電対に使用すれば、絶縁破壊のリスクが軽減された、品質の高いシースヒータ又はシース熱電対を作製することができる。
(a)本発明に係る二芯型金属シースヒータ端末の金属スリーブの実施例の 軸方向断面図。 (b)二芯型金属シースヒータにおける発熱体シース部分の周方向断面図。 (a)本発明に係る一芯型金属シースヒータ端末の金属スリーブの実施例の 軸方向断面図。 (b)本発明に係る二芯型金属シースヒータ端末の金属スリーブの実施例の軸 方向断面図。 (c)本発明に係る金属シースケーブル接続部分実施例の軸方向断面図。 (d)本発明に係る金属シース熱電対と補償導線との接続部分実施例の軸方向 断面図。 (a)酸化マグネシウムのみを充填した絶縁構造の拡大イメージ図。 (b)酸化マグネシウムと窒化ホウ素との混合物を充填した絶縁構造の拡大イメ ージ図。 (a)金属シースケーブル接続部分変形例の軸方向断面図。 (b)金属シースケーブルと補償導線との接続部分変形例の軸方向断面図。 (a)耐電圧評価試験に使用した一芯型シースヒータ端末の金属スリーブの軸 方向断面の説明図。 (b)耐電圧評価試験に使用した一芯型シースヒータ端末の金属スリーブの軸 方向断面の説明図。
本発明に係る絶縁構造体及び該絶縁構造の製造方法は、金属シースケーブル内部、又は金属シースケーブル同士若しくは金属シースケーブルと他のケーブルとを連結する連結部の金属スリーブ内部において、金属線と金属シース又は金属スリーブとの間に絶縁材を充填する絶縁構造体であって、前記絶縁材として絶縁性金属酸化物及び窒化ホウ素を充填することを特徴とするものである。
以下に、本発明の実施形態を、添付図面を基に説明する。
図1は、本発明に係る絶縁構造体の代表的実施形態を示す概略図である。尚、図1では、本発明に係る絶縁構造体を二芯型金属シースヒータ端末の金属スリーブに適用した例を説明するが、後述するように本発明はこれのみならず、一芯型金属シースヒータ端末の金属スリーブや金属シース熱電対と金属シースケーブルとの接続部分の金属スリーブに使用される絶縁構造体に適用することも可能であり、またこれらに限定されるわけでもない。
図1(a)に示すように、本発明に係る絶縁構造体13は、例えば金属シースヒータ10のヒータ部分を構成する金属シース12から延びる発熱線16と、絶縁被覆14端部から延びる導電線17とを連結部15において連結する部分を被覆する金属スリーブ11の内腔に配される。そして、絶縁構造体13は、封止材18でシールされる。
図1(b)は、図1(a)のI―I断面図である。金属シース12の中には2本の発熱
線16が挿通されており、金属シース12と発熱線16との隙間に絶縁構造体13が配される。そして該絶縁構造体にも、本発明に係る絶縁構造体を使用することができる。
そして、このような本発明に係る絶縁構造体は、図2(a)〜(d)に示すような、それぞれ一芯型金属シースヒータ端末の金属スリーブ、二芯型金属シースヒータ端末の金属スリーブ、金属シースケーブル同士の接続部分の金属スリーブ、及び金属シースケーブルと絶縁樹脂シースケーブルとの接続部分における金属スリーブ等に使用することができる。図2(a)、(b)に示した金属シースヒータ端末の金属スリーブ11部分において、金属シース12と接続される導電線17は、導線が絶縁性樹脂で被覆された、所謂絶縁樹脂シースケーブルであってもよいし、金属シースケーブルであってもよい。その他にも、本発明に係る絶縁構造体は、図2(c)に示したように、熱電対素線16´同士、言い替えれば金属シースケーブル21同士の接続部分における金属スリーブ11に使用してもよいし、図2(d)に示したように、シースケーブルの熱電対素線16´と補償導線19、言い替えれば金属シースケーブル21と絶縁樹脂シースケーブル22との接続部分における金属スリーブ11に使用してもよい。図2(c)、(d)での金属シースケーブル21としては、ここでは熱電対シースについて図示しているが、発熱体シースあってもよい。勿論これら以外の組み合わせに使用される金属スリーブや金属シースに対しても、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々なる形態で実施することが可能である。
金属スリーブ11や金属シース12を構成するスリーブ管やシース管の素材としては、公知のものを広く使用することができ、例えばステンレス鋼等が挙げられるが、これに限定されない。
金属シースヒータとしては、図2(a)、(b)に示したように、一芯型金属シースヒータであってもよいし、二芯型金属シースヒータであってもよい。
図2(a)〜(d)に示すように、金属スリーブ11内には発熱線16や熱電対素線16´、導電線17といった金属線が挿通しており、連結部15を介して連結されている。これらの金属線に関しても、公知のものを広く使用することができ、特に限定はない。
発熱線16と導電線17、或いは熱電対素線16´と補償導線19は前述の通り連結部15を介して連結される。当該連結させる方法としても、公知の方法を広く使用することができ、例えばカシメや溶接が挙げられるが、これらに限定されない。
封止材18は、金属シースヒータ10に絶縁材を充填した後、これをシールするための部材であり、これに関しても公知のものを広く使用することができ、特に限定はないが、熱可塑性樹脂により製造するのが好ましく、中でも特に耐熱性や接着性に優れたエポキシ樹脂が好適である。
そして本発明に係る絶縁構造体13は、絶縁材として絶縁性金属酸化物及び窒化ホウ素を使用することを特徴としている。
絶縁性金属酸化物としては、金属シースや金属スリーブの絶縁材として使用される公知の絶縁性金属酸化物を広く使用することができ、特に限定はないが、例えば酸化マグネシウム(MgO)や酸化アルミニウム(Al23)が挙げられる。窒化ホウ素としては、特に六方晶系窒化ホウ素が高熱伝導率で低膨熱張率であるという優れた絶縁性能を有しており、好ましい。
金属シースや金属スリーブに充填する絶縁材としては、従来より絶縁性金属酸化物である、酸化マグネシウムが汎用されてきた。しかし図3(a)に示したように、一般的に流通している酸化マグネシウム31は粒径の大きなものが多く、大抵は平均粒径100μm以上であるだけでなく、角ばったいびつな形状をしている。従って、酸化マグネシウム31を金属シースや金属スリーブに充填した際に、酸化マグネシウム31間の隙間が多くなってしまう。そして使用時に過大な電圧が印加された場合、まずこの隙間が絶縁破壊を起こし、製品品質に致命的な支障をきたすこととなる。酸化マグネシウムの前記粒径に関しては粉砕することにより小さくすることができるが、たとえ粉砕しても、酸化マグネシウムの角ばったいびつな形状に関しては、かわるものではない。酸化マグネシウムのみを金属シース又は金属スリーブに充填する際に発生する隙間を小さくするのには限界があるのである。
窒化ホウ素は絶縁性の充填材として公知のものであるが、このような充填材として市場に出回っている窒化ホウ素は、平均粒径約2μmという微細な略球形の粉体状を成している。従って、図3(b)に示したように、金属シースや金属スリーブに充填する絶縁材として酸化マグネシウム31と窒化ホウ素32との混合物を使用した場合、酸化マグネシウムの粒子間の隙間に窒化ホウ素が入り込んで隙間の形成が顕著に抑制される。このような事情は、絶縁性金属酸化物として酸化アルミニウムを使用した際にも同様のことが言える。また、ここで使用する絶縁性金属酸化物と窒化ホウ素との混合物の配合比は、重量比にして2:1〜15:1が好ましく、3:1〜10:1がより好ましく、4:1〜8:1が更に好ましい。
窒化ホウ素は優れた絶縁性能を有している反面、微細な粉体状を成し、窒化ホウ素のみを金属スリーブや金属シースに隙間なく充填するのは取り扱いが困難である。加えて、酸化マグネシウムや酸化アルミニウム等の絶縁性金属酸化物と比べて非常に高額である。従って、金属スリーブや金属シースに窒化ホウ素のみを充填するのは、実際上、非現実的である。そこで、金属シースや金属スリーブにおいて絶縁破壊を起こしにくい部位には絶縁性金属酸化物を充填し、前記絶縁破壊を起こしやすい部位には窒化ホウ素を充填するのも好ましい。
図2(a)、(b)に示したような金属シースヒータの金属スリーブ11部分に絶縁材を充填する際には、金属スリーブ11は金属シース12側を下方に、導電線17側を上方に向けた状態で絶縁材を入れ、振動させることにより充填した後に封止材18でシールする。そして振動させた際には粒径の小さな絶縁材が下方、つまり金属シース12側に移動し、粒径の大きな絶縁材が上方、つまり導電線17や封止材18側に残ることになる。このように、金属スリーブ内における封止材18近傍は隙間が比較的多く存在しており、絶縁破壊を起こしやすい。その他、連結部15付近においても経験上、絶縁破壊を起こしやすい。以上のように、金属シースヒータの金属スリーブ内では、封止材18近傍や連結部付近が絶縁破壊を起こしやすく、これらの部位に窒化ホウ素又は絶縁性金属酸化物と窒化ホウ素との混合物を充填すると、使用時に絶縁破壊を起こしにくくなり、好適である。
図2(c)、(d)に示したような金属シース12に絶縁材を充填する方法としては、公知の方法を広く採用することができる。例えば、充填口23を設けた金属スリーブ11を接続部分にかぶせた上で、前記充填口23より絶縁材を充填した後に、熱可塑性樹脂製の封止材18´でシールするという方法が挙げられるが、これに限定されるものではない。
このように、上記の絶縁破壊を起こしやすい部位を始め、絶縁構造体の一部には、絶縁材として、絶縁性金属酸化物と窒化ホウ素との混合物を使用するのも好ましい。勿論、金属スリーブ内全体に窒化ホウ素又は絶縁性金属酸化物と窒化ホウ素との混合物を充填してもよい。
その他の実施形態としては、図4(a)に示したように、絶縁材を充填する前に、予め金属スリーブ11又は金属シース12内にある金属線を通す貫通孔を有した上で、前記金属スリーブ11又は金属シース12内に収まる大きさの筒状の成形体41を利用するのも好ましい。尚、図4(a)について下記に記載する以外の部分に関しては、図2について記載した事項と構成を共通にするので、記載を割愛する。
このような筒状の成形体を作製する方法としては、例えば、絶縁性金属酸化物や、絶縁性金属酸化物と窒化ホウ素との混合物などの絶縁材を焼き固めて筒状に成形する方法や、粒状ではなく塊状として存在する前記絶縁材を切削加工して作製する方法が挙げられるが、この方法以外であっても、これらの絶縁材が筒状に固まった構造を作製できるような方法であればよく、特に限定はない。
筒状の成形体41を使用して金属スリーブ11又は金属シース12に絶縁材を充填する際には、例えば、まず前記筒状の成形体41を金属スリーブ11又は金属シース12に、金属線が成形体の内側の周方向略中心に位置するような態様で配置する。その後、前記筒状の成形体41の内側の金属線との隙間、及び前記筒状の成形体の外側の金属スリーブ11又は金属シース12との隙間に、窒化ホウ素又は窒化ホウ素と絶縁性金属酸化物の混合物を入れるとよい。このような構成をとることにより、金属線の周辺や、成形体と金属シース12又は金属スリーブ11との隙間などの、狙った部分を均質化することが可能である。特に金属線の周辺に、絶縁性金属化合物と窒化ホウ素の混合物を充填させることにより、連結部周辺の空洞体積を確実に減らすことができるので、絶縁破壊が生じにくい。
以上のように構成した金属シース12又は金属スリーブ11を、更にスウェージング又はドローイングすることにより、絶縁材の充填率を高めることができる。これにより絶縁構造体内の空洞体積が少なくなり、絶縁破壊発生のリスクが低減する。この際には、窒化ホウ素は潤滑材の役割も果たすので、絶縁性金属酸化物のみを充填した場合に比べて、金属線へのダメージを軽減させるという利点もある。
ここで、スウェージングとは、金属シースや金属スリーブを回転させながらたたくなどの外的な力を加えながら縮径していく方法をいう。ドローイングとは、所謂線引き加工により、外径を小さく絞っていく方法をいう。
また、図4(b)に示したように、連結部15を適宜カシメや玉溶接等の方法により金属シース12と略同径に作製した後に、絶縁材を充填するための充填口43を設け内腔径を連結部15及び金属シース12の外径と略同径に作製した絶縁性構造体42で連結部15及び金属シース12を被覆して充填口43より絶縁材を充填した後、更に絶縁性構造体42を金属カバー44で被覆するような実施形態も好適である。このような構成をとることにより、導電線17から金属シース12の金属までの沿面距離を稼ぐことができ、これにより電気のリークを低減させることが可能であり、高耐電圧の性質を付与することができる。
ここで、図4(b)のような実施形態において、充填口43より封入する絶縁材は、絶縁性金属酸化物でもよいが、絶縁性金属酸化物と窒化ホウ素との混合物が好ましい。そして絶縁性金属酸化物と窒化ホウ素との混合物の配合比は、重量比にして2:1〜15:1が好ましく、3:1〜10:1がより好ましく、4:1〜8:1が更に好ましい。
絶縁性構造体42を金属カバー44で被覆した後、金属カバー44をカシメると更に好ましい。これにより、絶縁材の充填率を高まり、更に電気のリークを低減させ、高耐電圧能が高まる。また、金属スリーブ11内の部品の安定性を向上させるために、適宜絶縁スペーサ45を設けてもよいが、設けなくともよく、特に限定はない。尚、この絶縁スペーサ45は絶縁性を有するものである必要があり、例えばエポキシ樹脂などの熱可塑性樹脂が好ましい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
以下、実施例に基づき、本発明の実施形態をより具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない
(実施例1)
図5(a)に示したように、一芯型金属シースヒータを、発熱体シースは径3.2mm、金属スリーブは径8mmで作製した。発熱体シース内の絶縁材としては酸化マグネシウムを使用した。そして金属スリーブ内の絶縁材としては、図5(a)に示したように、エポキシ樹脂よりなる封止材側5mmについては窒化ホウ素の粉末を2g充填し、それ以外の部分については酸化マグネシウムを充填し、金属スリーブ部分をスウェージングにより縮径した。以上の構成を有する一芯型金属シースヒータを2本用意した。
(実施例2)
金属スリーブ内に窒化ホウ素の粉末を充填する替わりに酸化マグネシウムと窒化ホウ素との混合物を重量比1:1で総量2g充填した以外は実施例1と同一の構成を有する一芯型シースヒータを4本用意した。
(実施例3)
金属スリーブ内に窒化ホウ素の粉末を充填する替わりに酸化マグネシウムと窒化ホウ素との混合物を重量比2:1で総量2g充填した以外は実施例1と同一の構成を有する一芯型シースヒータを2本用意した。
(実施例4)
金属スリーブ内に窒化ホウ素の粉末を充填する替わりに酸化マグネシウムと窒化ホウ素との混合物を重量比3:1で総量2g充填した以外は実施例1と同一の構成を有する一芯型シースヒータを2本用意した。
(実施例5)
図5(b)に示したように、一芯型金属シースヒータを、発熱体シースは径3.2mm、金属スリーブは径8mmで作製した。金属スリーブの絶縁材としては、図5(b)に示したように、酸化マグネシウムと窒化ホウ素とを2:1で混合したもののみを充填し、金属スリーブ部分をスウェージングにより縮径した。封止材としてはエポキシ樹脂を使用した。以上の構成を有する一芯型金属シースヒータを2本用意した。
(実施例6)
金属スリーブ内の酸化マグネシウムと窒化ホウ素が重量比3:1で混合されている以外は実施例5と同一の構成を有する一芯型金属シースヒータを2本用意した。
(実施例7)
金属スリーブ内の酸化マグネシウムと窒化ホウ素が重量比4:1で混合されている以外は実施例5と同一の構成を有する一芯型金属シースヒータを7本用意した。
(実施例8)
金属スリーブ内の酸化マグネシウムと窒化ホウ素が重量比6:1で混合されている以外は実施例5と同一の構成を有する一芯型金属シースヒータを7本用意した。
(実施例9)
金属スリーブ内の酸化マグネシウムと窒化ホウ素が重量比8:1で混合されている以外は実施例5と同一の構成を有する一芯型金属シースヒータを9本用意した。
(実施例10)
金属スリーブ内の酸化マグネシウムと窒化ホウ素が重量比15:1で混合されている以外は実施例5と同一の構成を有する一芯型金属シースヒータを2本用意した。
(実施例11)
二芯型金属シースヒータを、発熱体シースは径4.8mm、金属スリーブは径10mmで作製した。発熱体シース内の絶縁材としては酸化マグネシウムを使用した。封止材としては、エポキシ樹脂を使用した。金属スリーブ内に充填する絶縁材としては、酸化マグネシウムと窒化ホウ素とを重量比8:1で混合したものを、総量4.2g充填した。以上の構成を有する二芯型金属シースヒータを5本用意した。
(比較例1)
金属スリーブ内に酸化マグネシウムを総量2g充填した以外は実施例1と同一の構成を有する一芯型金属シースヒータを2本用意した。
(比較例2)
金属スリーブ内に酸化マグネシウムを総量4.2g充填した以外は実施例11と同一の構成を有する二芯型金属シースヒータを2本用意した。
(耐電圧試験)
耐電圧試験機(菊水電子工業株式会社製、品番TOS5051A)を使用し、実施例1〜11、及び比較例1〜2の金属シースヒータに電圧を印加した。そして絶縁破壊を起こすまで100Vずつ印加電圧を高めた。絶縁破壊を起こす前の電圧を各金属シースヒータの最大耐電圧とした。データ集計に際しては、各実施例及び比較例においてそれぞれ複数本使用した金属シースヒータの耐電圧の平均値を算出した。
(一芯型金属シースヒータ耐電圧試験結果:単位はV)
Figure 2014222651
表1に示したように、金属スリーブ内の封止材側5mmのみに酸化マグネシウムと窒化ホウ素を重量比3:1で混合した絶縁材を充填し、他の部位には酸化マグネシウムを充填した実施例4の一芯型シースヒータは、絶縁材として酸化マグネシウムのみを充填した比較例1の一芯型シースヒータに比べて高耐電圧であることが確認された。また、金属スリーブ内に充填する絶縁材として、酸化マグネシウムと窒化ホウ素の混合物のみを使用した実施例5〜10については、全例が比較例1の一芯型シースヒータよりも高耐電圧であり、中でも酸化マグネシウムと窒化ホウ素を3:1〜8:1で混合して構成した絶縁材を金属スリーブ内に充填した実施例6〜9の一芯型シースヒータは顕著に高耐電圧であった。また、実施例1においては金属スリーブの封止材側5mmには窒化ホウ素のみを充填したが、同じ部位に酸化マグネシウムと窒化ホウ素の混合物を充填した実施例2〜4とは、バラツキの範囲内で同等であるという結果が得られた。この結果は窒化ホウ素の充填部位と混合比による効果の違いは見られるものの窒化ホウ素のみを充填するよりも酸化マグネシウムと窒化ホウ素の混合物を所定の比率で混合して充填した方が安定して良好な絶縁性能を示すことを示唆するものであった。
(二芯型金属シースヒータ耐電圧試験結果:単位はV)
Figure 2014222651
表2に示したように、金属スリーブ内に酸化マグネシウムと窒化ホウ素との混合物を充填した実施例11の二芯型金属シースヒータは、金属スリーブ内に酸化マグネシウムのみを充填した二芯型金属シースヒータに比べて高耐電圧であることが確認された。
10 金属シースヒータ
11 金属スリーブ
12 金属シース
13 絶縁構造体
14 絶縁被覆
15 連結部
16 発熱線
16´ 熱電対素線
17 導電線
18 封止材
18´ 封止材
19 補償導線
21 金属シースケーブル
22 絶縁樹脂シースケーブル
23 充填口
31 酸化マグネシウム
32 窒化ホウ素
41 成形体
42 絶縁性構造体
43 充填口
44 金属カバー
45 絶縁スペーサ

Claims (12)

  1. 金属シースケーブル内部、又は金属シースケーブル同士若しくは金属シースケーブルと他のケーブルとを連結する連結部の金属スリーブ内部において、金属線と金属シース又は金属スリーブとの間に絶縁材を充填してなる絶縁構造体であって、
    前記絶縁材として絶縁性金属酸化物及び窒化ホウ素を充填してなることを特徴とする、
    絶縁構造体。
  2. 前記絶縁構造体中の一部または全体に、前記絶縁性金属酸化物と前記窒化ホウ素との混合物より成る層が存在する、請求項1に記載の絶縁構造体。
  3. 前記金属線と金属シース又は金属スリーブとの間に、前記絶縁材として前記金属線が通る貫通孔を有する、前記絶縁性金属酸化物又は該絶縁性金属酸化物及び前記窒化ホウ素より成る成形体を配設するとともに、該成形体と金属シース若しくは金属スリーブの隙間、又は前記成形体の貫通孔と前記金属線との隙間に、前記絶縁材として窒化ホウ素又は窒化ホウ素と絶縁性金属酸化物との混合物を充填してなる、
    請求項1に記載の絶縁構造体。
  4. 前記成形体を配設して前記隙間に絶縁材を充填した金属シース又は金属スリーブをスウェージング又はドローイングにより縮径圧縮して前記成形体を粒子状に砕くとともに絶縁材の充填率を高めてなる、請求項3に記載の絶縁構造体。
  5. 前記絶縁性金属酸化物が酸化マグネシウムであり、且つ前記混合物中における前記絶縁性金属酸化物と前記窒化ホウ素との重量比は2:1〜15:1である、請求項2から4の何れか1項に記載の絶縁構造体。
  6. 前記金属シースケーブルが、前記金属シースの内部に前記金属線として発熱線を収納してなる金属シースヒータ、又は前記金属シースの内部に前記金属線として熱電対素線を収納してなるシース熱電対である、請求項1〜5の何れか1項に記載の絶縁構造体。
  7. 金属シースケーブル内部、又は金属シースケーブル同士若しくは金属シースケーブルと他のケーブルとを連結する連結部の金属スリーブ内部において、金属線と金属シース又は金属スリーブとの間に絶縁材を充填してなる絶縁構造の製造方法であって、
    前記絶縁材として絶縁性金属酸化物及び窒化ホウ素を充填することを特徴とする、
    絶縁構造の製造方法。
  8. 前記絶縁構造体中の一部または全体に、前記絶縁性金属酸化物と前記窒化ホウ素との混合物より成る層を形成させる、請求項7に記載の絶縁構造の製造方法。
  9. 前記金属線と金属シース又は金属スリーブとの間に、前記絶縁材として前記金属線が通る貫通孔を有する、前記絶縁性金属酸化物又は該絶縁性金属酸化物及び前記窒化ホウ素より成る成形体を配設するとともに、該成形体と金属シース若しくは金属スリーブとの隙間、又は前記成形体の貫通孔と前記金属線との隙間に、前記絶縁材として窒化ホウ素又は窒化ホウ素と絶縁性金属酸化物の混合物を充填する、
    請求項7に記載の絶縁構造の製造方法。
  10. 前記成形体を配設して前記隙間に絶縁材を充填した金属シース又は金属スリーブをスウェージング又はドローイングにより縮径圧縮して前記成形体を粒子状に砕くとともに絶縁材の充填率を高める、請求項9に記載の絶縁構造の製造方法。
  11. 前記絶縁性金属酸化物が酸化マグネシウムであり、且つ前記混合物中における前記絶縁性金属酸化物と前記窒化ホウ素との重量比は2:1〜15:1である、請求項7〜10の何れか1項に記載の絶縁構造の製造方法。
  12. 前記金属シースケーブルが、前記金属シースの内部に前記金属線として発熱線を収納してなる金属シースヒータ、又は前記金属シースの内部に前記金属線として熱電対素線を収納してなるシース熱電対である、請求項7〜11の何れか1項に記載の絶縁構造の製造方法。

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