JP2014222085A - 転がり部材及びその製造方法並びに転がり軸受 - Google Patents

転がり部材及びその製造方法並びに転がり軸受 Download PDF

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Abstract

【課題】より低コストで、転がり疲労に対して長寿命を確保することができる転がり部材を提供する。
【解決手段】外輪3は、軸受鋼からなる素材により形成されている。外輪3の表面には、浸炭窒化処理による処理層Lが形成されており、処理層Lは、外輪軌道面3aの表面Sから、当該表面Sからの深さが0.05mmである位置までの範囲に亘って形成されている、残留オーステナイト量が15体積%未満である表面層L1と、表面層L1よりも芯部側に位置している残留オーステナイト量が15体積%未満である母材層L3と、表面層L1と母材層L3との間に介在しているとともに、少なくとも、表面Sからの深さが0.1mmである位置から、0.3mmである位置までの範囲に亘って形成されている、残留オーステナイト量が25体積%以上である中間層L2とを有している。
【選択図】 図2

Description

本発明は、転がり部材及びその製造方法並びに転がり軸受に関する。
転がり軸受における転がり疲労破壊の主な原因として、内部起点型の表面はく離が挙げられる。この内部起点型の表面はく離は、材料中に含まれる非金属介在物等の不純物質の部分に転がり接触により作用する応力が集中し、これが起点となってき裂が発生、進展し発生する表面損傷である。
内部起点型の表面はく離を抑制し、転がり疲労寿命を向上させる方策として、高清浄度鋼を素材として用いることがある(例えば、特許文献1参照)。
高清浄度鋼は、鋼中酸素量を減少させることで、酸化物系非金属介在物の含有量が抑制された鋼材であり、この高清浄度鋼を用いることで、き裂の起点となる非金属介在物を減少させることができ、表面はく離の発生が抑制されることで疲労寿命を向上させることができる。
また、材料自身を強化して非金属介在物が存在していたとしてもき裂の発生やその進展を抑制しうる程度に高強度化された合金鋼を用いることもある。
特開2005−8987号公報
上記高清浄度鋼は、一般的な鋼材と製造方法が異なるため、材料としてのコストが高く、さらに、品質管理のためのコストも必要となり、製品の製造コストを増大化させてしまうという問題を有していた。また、高強度化された合金鋼においても、高価な希少金属を合金元素として添加するため、材料としてのコストが高く、高清浄度鋼と同様、製品の製造コストを増大化させてしまうという問題を有していた。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、より低コストで、転がり疲労に対して長寿命を確保することができる転がり部材及びその製造方法並びに転がり軸受を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための本発明は、軸受鋼からなる素材により形成され、相手部材との間で転がり接触する転がり接触面を有する転がり部材であって、前記転がり接触面には、浸炭窒化処理による処理層が形成されており、前記処理層は、前記転がり接触面の表面に形成されている、残留オーステナイト量が15体積%未満である表面層と、前記表面層よりも芯部側に位置している残留オーステナイト量が15体積%未満である母材層と、前記表面層と前記母材層との間に介在している残留オーステナイト量が25体積%以上である中間層と、を有していることを特徴としている。
上記構成の転がり部材によれば、表面層及び母材層と比較して残留オーステナイト量が多い中間層を、転がり接触面の表面から表面層の深さだけ深さ方向に位置する範囲に形成したので、中間層に相手部材との間で転がり接触したときに生じるせん断応力を作用させることができる。これにより、当該中間層に含まれる残留オーステナイトを、転がり接触によるせん断応力によって積極的に応力誘起マルテンサイトに変態させることができる。
さらに、オーステナイトがマルテンサイトに変態するときには、硬さが向上するとともに体積膨張が生じる。このため、残留オーステナイトを表面層及び母材層よりも多く含む中間層は、より多くの応力誘起マルテンサイトが生じ、体積膨張が顕著に表れる。
一方、中間層を介して設けられている表面層及び母材層は、中間層よりも残留オーステナイト量が少なくかつ転がり接触によるせん断応力も小さいことから、中間層ほど応力誘起マルテンサイトが生成せず体積膨張も顕著に表れない。中間層は、体積膨張しようとしているにも関わらず、体積膨張が顕著に生じない表面層と母材層との間に介在しているので、その体積膨張が制限される。このため、中間層には圧縮応力が生じる。
この結果、素材中に非金属介在物等の不純物が存在していたとしても、中間層における硬さの向上及び圧縮応力によって、不純物を起点としたき裂の発生又はその伸展が抑制され、当該中間層に転がり接触による最大せん断応力が継続的に作用したとしても、転がり疲労に対して長寿命を確保することができる。
さらに、本発明によれば、非金属介在物等の不純物が素材中に存在していたとしても、転がり疲労に対して長寿命を確保することができるため、上記従来例のように、高清浄度鋼等の特殊な鋼材を用いる必要がない。このため、上記従来例よりも、低コストで、転がり疲労に対して長寿命を確保することができる。
上記転がり部材において、前記中間層は、前記相手部材との間で転がり接触したときに生じる最大せん断応力が作用する深さ領域に形成されていることが好ましい。
この場合、中間層は、相手部材との間で転がり接触したときに生じる最大せん断応力が作用する深さ領域に存在することになる。これにより、当該中間層に含まれる残留オーステナイトを、転がり接触によるせん断応力によってより積極的に応力誘起マルテンサイトに変態させることができる。
上記転がり部材において、前記表面層は、前記転がり接触面の表面から、当該表面からの深さが0.05mmである位置までの範囲に亘って形成されており、前記中間層は、少なくとも、前記転がり接触面の表面からの深さが0.1mmである位置から、0.3mmである位置までの範囲に亘って形成されていることが好ましい。
この場合、中間層を、相手部材との間で転がり接触したときに生じる最大せん断応力が作用する深さ領域に形成することができる。
上記転がり部材において、前記表面層及び前記母材層の窒素濃度が0.1重量%未満であり、前記中間層の窒素濃度が0.15〜0.6重量%であり、前記表面層及び前記母材層のマイクロビッカース硬さが700Hv以上であり、前記中間層のマイクロビッカース硬さが600Hv以上であることが好ましい。
この場合、各層の残留オーステナイト量を適切とすることができるとともに、転がり疲労に対する長寿命化を確実とするために必要な断面硬さを確保することができる。
また、本発明は、内輪軌道面を有する内輪と、前記内輪の外周側に同心に配置され前記内輪軌道面に対向している外輪軌道面を有する外輪と、前記内輪軌道面及び前記外輪軌道面との間に転動自在に介在している複数の転動体と、を備えた転がり軸受であって、前記外輪、前記内輪、及び転動体の少なくとも一つが上述の転がり部材であることを特徴としている。
上記構成の転がり軸受によれば、上述のように、低コストで、転がり疲労に対して長寿命を確保することができる。
また、本発明は、相手部材との間で転がり接触する転がり接触面を有する転がり部材の製造方法であって、軸受鋼からなる素材に対して、浸炭窒化雰囲気中で加熱保持することで、窒素拡散によって得られる高窒素濃度層を素材表面側に設ける第1工程と、前記第1工程における浸炭窒化雰囲気を水素雰囲気に変更し、前記素材を水素雰囲気中で保持することで、前記高窒素濃度層の芯部側の一部を残しつつ前記高窒素濃度層の表面側の一部の窒素濃度を低下させる第2工程と、前記第2工程を経た前記素材に焼入れ処理を行う第3工程と、を含むことを特徴としている。
上記構成の転がり部材の製造方法によれば、第2工程によって、第1工程で得られる高窒素濃度層の芯部側の一部を残しつつ表面側の一部の窒素濃度を低下させるので、最表面に、窒素濃度が低い脱窒層を設けることができる。また、脱窒層の下層においては、高窒素濃度層の一部が残り、さらにこの高窒素濃度層の下層においては、第1工程による窒素拡散が及んでいないことから窒素濃度が低くなっている部分が、窒素濃度の低い母材層とされる。
鋼中に拡散した窒素濃度が高ければ、焼入れ時の残留オーステナイト量を増加させる。よって第3工程によって焼入れが行われると、高窒素濃度層は、脱窒層及び母材層よりも窒素濃度が高いため、残留オーステナイト量が脱窒層及び母材層よりも多くなる。
よって、脱窒層及び母材層は、焼入れによって、残留オーステナイト量が比較的少ない表面層及び母材層となり、高窒素濃度層は、焼入れによって、表面層及び母材層に比べて残留オーステナイトを多く含んだ中間層となる。
この結果、表面層と、表面層よりも芯部側に位置している母材層と、表面層及び母材層の間に介在しているとともに、表面層及び母材層に比べて残留オーステナイトを多く含んだ中間層を有する処理層を素材に形成することができ、転がり疲労に対して長寿命を確保することができる転がり部材を得ることができる。
本発明の転がり部材及び転がり軸受によれば、より低コストで、転がり疲労に対して長寿命を確保することができる。また、本発明の転がり部材の製造方法によれば、より低コストで、転がり疲労に対して長寿命を確保することができる転がり部材を得ることができる。
本発明の一実施形態に係る玉軸受の断面図である。 (a)は、未使用の玉軸受の外輪に形成された処理層を模式的に示す、外輪軌道面の部分断面図であり、(b)は、所定時間使用した後の玉軸受の外輪に形成された処理層を模式的に示す、外輪軌道面の部分断面図である。 (a)は、外輪の製造方法の一例を示す工程図であり、(b)は、浸炭窒化処理に含まれる工程を示す図である。 浸炭窒化処理の熱処理条件を示す図である。 (a)は、浸炭窒化工程後の中間素材の表面近傍の状態を模式的に示した部分断面図であり、(b)は、脱窒工程後の中間素材の表面近傍の状態を模式的に示した部分断面図である。 試験片の断面硬さ、及び残留オーステナイト量を測定した結果を示すグラフであり、(a)は、未使用の試験片の測定結果、(b)は、所定時間使用した後の試験片の測定結果を示している。 EPMAによる窒素濃度の線分析の結果を示すグラフである。 転動疲労寿命試験に用いた試験機を示す断面図である。
次に、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る玉軸受の断面図である。
玉軸受1は、内輪2と、内輪2の外周側に同心に配置された外輪3と、内外輪2,3の間に配列された複数の転動体としての複数の玉4とを備えている。
内輪2は、SUJ2(JIS G4805)等の高炭素クロム軸受鋼を用いて形成された環状の部材であり、その外周には、複数の玉4が転動する内輪軌道面2aが形成されている。
外輪3も、内輪2同様、SUJ2等の高炭素クロム軸受鋼を用いて形成された環状の部材であり、その内周には、内輪軌道面2aに対向しているとともに、複数の玉4が転動する外輪軌道面3aが形成されている。
玉4は、その表面である転動面4aが内輪軌道面2aと外輪軌道面3aとに接触しており、両軌道面2a,3aの間に転動自在に介在している。玉4も、内外輪2,3と同様、SUJ2等の高炭素クロム軸受鋼を用いて形成されている。
上記内輪2、及び外輪3は、相手部材である玉4との間で転がり接触する転がり接触面としての内輪軌道面2a、及び外輪軌道面3aを有しており、転がり部材を構成している。また、玉4も、相手部材である内外輪2,3との間で転がり接触する転がり接触面としての転動面4aを有しており、転がり部材を構成している。
これら転がり部材を構成する内外輪2,3、及び玉4の少なくとも一つの部材には、以下において説明する本実施形態による浸炭窒化処理によって表面に複数層が形成されている。
なお、以下の説明では、外輪3に前記浸炭窒化処理が施された場合について説明する。
図2(a)は、未使用の玉軸受1の外輪3に形成された処理層を模式的に示す、外輪軌道面3aの部分断面図である。
図2に示すように、外輪軌道面3aには、本実施形態による浸炭窒化処理によって複数の処理層が形成されている。
処理層Lは、外輪軌道面3aの最表面側に位置する表面層L1と、表面層L1よりも芯部側に位置している母材層L3と、表面層L1と母材層L3との間に介在している中間層L2とを有している。
表面層L1は、少なくとも、外輪軌道面3aの表面Sから、当該表面Sからの深さが0.05mmである位置までの範囲に亘って形成されている。
また、中間層L2は、少なくとも、表面Sからの深さが0.1mmである位置から、0.3mmである位置までの範囲に亘って形成されている。
母材層L3は、中間層L2の下層として形成されている。
未使用の玉軸受1における表面層L1及び母材層L3は、浸炭窒化処理時における焼入によって生成したマルテンサイトと、15体積%未満の残留オーステナイト(γ相)とを含んでいる焼入硬化層とされており、その断面硬さは、マイクロビッカース硬さで700Hv以上とされている。
また、未使用の玉軸受1における中間層L2は、浸炭窒化処理時における焼入によって生成したマルテンサイトと、25体積%以上、50体積%未満の残留オーステナイト(γ相)とを含んでいる焼入硬化層とされており、その断面硬さは、マイクロビッカース硬さで600Hv以上とされている。
表面層L1及び母材層L3は、高炭素クロム軸受鋼を焼入したときに得られる一般的な断面硬さの値である。中間層L2は、マルテンサイトよりも硬さの低いオーステナイト(残留オーステナイト)を表面層L1及び母材層L3よりも多く含んでいるため、表面層L1及び母材層L3よりも硬さの値が低く現れている。
図2(b)は、所定時間使用した後の玉軸受1の外輪3に形成された処理層を模式的に示す、外輪軌道面3aの部分断面図である。各層L1〜L3は、使用の前後で形成されている断面深さに変化はない。
玉軸受1を所定時間使用すると、外輪軌道面3aは、玉4との間で転がり接触するので、外輪軌道面3aには、転がり接触によるせん断応力が作用する。
玉軸受等の転がり軸受の軌道面において、転がり接触によって生じる最大せん断応力は、一般に、軌道面表面からの断面深さが0.1〜0.2mm程度の深さ領域に作用する。
よって、本実施形態の玉軸受1を所定時間使用させると、外輪軌道面3aにおいて、玉4との間の転がり接触によって生じる最大せん断応力は、主として中間層L2に作用する。
本実施形態では、この最大せん断応力が中間層L2に作用することで、中間層L2に含まれている残留オーステナイトが、応力誘起マルテンサイトに変態している。
このため、図2(b)に示すように、中間層L2に含まれている残留オーステナイト量は、玉軸受1の使用前と比較して減少している。残留オーステナイトは、減少した分だけ応力誘起マルテンサイトに変態している。
中間層L2には、残留オーステナイトが他の層より多く含まれており、使用後の玉軸受1の中間層L2には、残留オーステナイトが変態した応力誘起マルテンサイトが比較的多く含まれている。
一方、表面層L1及び母材層L3は、中間層L2よりも含有する残留オーステナイト量が少なく、また、転がり接触によって作用するせん断応力も中間層L2と比較して小さい。このため、図2(b)のように、表面層L1においては、若干残留オーステナイトが減少するが、表面層L1及び母材層L3では、中間層L2ほど応力誘起マルテンサイトが生じない。
つまり、本実施形態によれば、表面層L1及び母材層L3と比較して残留オーステナイト量が多い中間層L2を、少なくとも、外輪軌道面3aの表面Sからの深さが0.1mmである位置から、0.3mmである位置までの範囲に亘って形成したので、中間層L2は、玉4との間で転がり接触したときに生じる最大せん断応力が作用する深さ領域に存在することになる。これにより、中間層L2に含まれる残留オーステナイトを、転がり接触によるせん断応力によって積極的に応力誘起マルテンサイトに変態させることができる。
オーステナイトがマルテンサイトに変態するときには、硬さが向上するとともに体積膨張が生じる。
つまり、応力誘起マルテンサイトが中間層L2ほど生じない表面層L1及び母材層L3では、応力誘起マルテンサイトに伴う体積膨張が顕著ではないが、中間層L2では、残留オーステナイトをより多く含むことでより多くの応力誘起マルテンサイトが生じるため、体積膨張も表面層L1及び母材層L3と比較して顕著に表れる。
体積膨張が顕著に表れる中間層L2は、当該中間層L2と比べて体積膨張が顕著に表れない表面層L1と母材層L3との間に介在しているので、その体積膨張が制限される。このため、中間層L2には圧縮応力が生じる。
この結果、素材中に非金属介在物等の不純物が存在していたとしても、中間層L2における硬さの向上及び圧縮応力によって、不純物を起点としたき裂の発生又はその伸展が抑制され、中間層L2に転がり接触による最大せん断応力が継続的に作用したとしても、転がり疲労に対して長寿命を確保することができる。
このように本実施形態では、意図的に中間層L2に残留オーステナイトを多く残し、転がり接触時に作用するせん断応力を利用して、中間層L2を二次硬化させつつ圧縮応力を付与し、転がり接触による疲労寿命を向上させている。
さらに、本実施形態によれば、非金属介在物等の不純物が素材中に存在していたとしても、転がり疲労に対して長寿命を確保することができるため、上記従来例のように、高清浄度鋼等の特殊な鋼材を用いる必要がないため、上記従来例よりも、低コストで、転がり疲労に対して長寿命を確保することができる。
また、本実施形態では、表面層L1及び母材層L3の窒素濃度が0.1重量%未満とされ、中間層L2の窒素濃度が0.15〜0.6重量%とされている。
その理由は、浸炭窒化処理において、鋼中に拡散した窒素濃度が高ければ、焼入れ時の残留オーステナイト量を増加させることができるからである。このため、中間層L2の窒素濃度は、表面層L1及び母材層L3と比較して大きい値である0.15〜0.6重量%とされている。
上記実施形態において、表面層L1の断面硬さをマイクロビッカース硬さで700Hv以上としたが、表面層L1は玉4に直接接触するため、700Hv未満とすると、耐摩耗性が低下し、転がり寿命を低下させるおそれが生じる。よって、表面層L1の断面硬さは、700Hv以上とすることが好ましい。
また、上記実施形態において、表面層L1に含まれる残留オーステナイト量を15体積%未満としたが、残留オーステナイト量が15体積%以上となると、応力誘起マルテンサイト変態が無視できない程度に生じ、中間層L2の体積膨張を制限する効果を低減させてしまう。このため、表面層L1に含まれる残留オーステナイト量は、15体積%未満とすることが好ましい。
また、表面層L1の窒素濃度を0.1重量%未満としたのは、上記残留オーステナイト量に関連しており、窒素濃度を0.1重量%以上とすると、残留オーステナイト量を15体積%未満に抑制することが困難となるからである。
また、上記実施形態において、母材層L3の断面硬さをマイクロビッカース硬さで700Hv以上としたが、700Hv未満とすると、処理層L全体としての硬さが低下することで耐摩耗性が低下し、転がり寿命を低下させるおそれが生じる。よって、母材層L3の断面硬さは、700Hv以上とすることが好ましい。
また、上記実施形態において、母材層L3に含まれる残留オーステナイト量を15体積%未満としたが、表面層L1と同様、残留オーステナイト量が15体積%以上となると、応力誘起マルテンサイト変態が無視できない程度に生じ、中間層L2の体積膨張を制限する効果を低減させてしまう。このため、母材層L3に含まれる残留オーステナイト量は、15体積%未満とすることが好ましい。
また、母材層L3の窒素濃度を0.1重量%未満としたのは、上記残留オーステナイト量に関連しており、上記表面層L1と同様、窒素濃度を0.1重量%以上とすると、残留オーステナイト量を15体積%未満に抑制することが困難となるからである。
上記実施形態において、中間層L2の断面硬さをマイクロビッカース硬さで600Hv以上としたが、600Hv未満だと、玉4の転がり接触によって生じるせん断応力が作用することで応力誘起マルテンサイトが生じた後の断面硬さの値が不足するおそれがある。このため、中間層L2の断面硬さは、600Hv以上とすることが好ましい。
また、上記実施形態において、中間層L2に含まれる残留オーステナイト量を25体積%以上、50体積%未満としたが、残留オーステナイト量を25体積%未満とすると、十分な応力誘起マルテンサイトが得られないおそれがある。また、残留オーステナイト量を50体積%以上とすると、応力誘起マルテンサイトに変態せずにさらに残留するオーステナイトの量が多くなり、断面硬さの値を低下させるおそれがある。このため、中間層L2に含まれる残留オーステナイト量を25体積%以上、50体積%未満とすることが好ましい。
また、中間層L2の窒素濃度を0.15〜0.6重量%の範囲としたのは、上記残留オーステナイト量に関連しており、窒素濃度を0.15重量%未満とすると、残留オーステナイト量を25体積%以上とすることが困難となり、窒素濃度を0.6重量%より大きくすると、残留オーステナイト量を50体積%未満とすることが困難になるとともに、脆化するからである。
次に、上記外輪3の製造方法について説明する。
図3(a)は、外輪3の製造方法の一例を示す工程図である。
まず、SUJ2等の高炭素クロム軸受鋼からなる素材を外輪3としての所定形状に形成し外輪3の中間素材を得る(ステップS1)。
次いで、この中間素材に対して、浸炭窒化処理を行う(ステップS2)。この浸炭窒化処理においては、焼入れが行われるため、浸炭窒化処理の後に焼戻しが行われる(ステップS3)。
その後、上記各熱処理を終えた中間素材に対して研磨等の仕上げ加工が行われ(ステップS4)、外輪3の完成品が得られる。
上記ステップS2における浸炭窒化処理は、図3(b)に示すように、浸炭窒化工程(ステップS21)と、脱窒工程(ステップS22)と、焼入れ工程(ステップS23)とを含んでおり、中間素材を浸炭窒化炉内に配置した後、これら工程を連続的に行う。
図4は、浸炭窒化処理の熱処理条件を示す図である。
浸炭窒化処理においては、まず、ステップS1で得た中間素材を浸炭窒化炉内に配置する。そして、中間素材が配置された炉内を、カーボンポテンシャル1.1(CP=1.1)、及びアンモニア濃度3体積%とされた浸炭窒化雰囲気に調整し、830℃、3時間以上加熱保持する(浸炭窒化工程(第1工程))。
これによって、中間素材の表面には、窒素が拡散され、芯部よりも窒素濃度が高い高窒素濃度層が形成される。
なお、上記保持時間は、必要な深さ範囲に高窒素濃度層が形成されるように、中間素材の大きさや形状に応じて適宜調整される。
図5(a)は、浸炭窒化工程後の中間素材の表面近傍の状態を模式的に示した部分断面図である。
浸炭窒化工程後の中間素材は、図5(a)に示すように、芯部側の母材層L13よりも窒素濃度が高くなっている高窒素濃度層L12が表面側に形成されている。
なお、このとき、高窒素濃度層L12は、少なくとも、中間素材表面から、深さが0.3mmである位置までの範囲に亘って形成されている。これによって、中間素材が完成品である外輪3とされたときに、中間層L2(図2)が形成される断面深さの範囲を適切な範囲とすることができるからである。
図4に戻って、上記のようにして浸炭窒化工程を終えると、中間素材を浸炭窒化炉内にセットしたまま、アンモニアの導入を停止し、さらに水素ガス雰囲気に調整することで浸炭窒化炉内の雰囲気を還元雰囲気となるように設定を変更する。これによって、中間素材の表面に拡散した窒素を炉内側に拡散させることができ(脱窒工程(第2工程))、高窒素濃度層の表面側の窒素濃度を低下させることができる。
図4に示すように、脱窒工程は、炉内の雰囲気を上記のように設定し、830℃、0.5時間以上加熱保持する。
なお、上記保持時間は、必要な深さ範囲に脱窒層が形成されるように、中間素材の大きさや形状に応じて適宜調整される。
図5(b)は、脱窒工程後の中間素材の表面近傍の状態を模式的に示した部分断面図である。
脱窒工程後の中間素材は、図5(b)に示すように、最表面側から順に脱窒層L11と、高窒素濃度層L12と、母材層L13とが形成されている。
脱窒層L11は、脱窒工程によって形成された層である。脱窒層L11は、脱窒工程によって、浸炭窒化工程後に形成された高窒素濃度層L12の表面側の一部の窒素濃度を低下させることで形成されている。
脱窒層L11は、少なくとも、中間素材の表面から、当該表面からの深さが0.05mmである位置までの範囲に亘って形成されている。これによって、中間素材が完成品である外輪3とされたときに、表面層L1及び中間層L2(図2)が形成される深さの範囲を適切な範囲とすることができるからである。
図4に戻って、脱窒工程を終えると、中間素材は、例えば、約180℃程度に保持された焼入油の中に投入され、焼入れされる(焼入れ工程(第3工程))。
その後中間素材は、上述のように焼戻しされる(図3中、ステップS3)。焼戻しの条件としては、図4に示すように、焼入れ後の中間素材を190℃に保持された油槽に投入し、2時間保持する。
上記のようにして焼入れ焼戻しされた中間素材は、焼入れ前に形成された脱窒層L11、高窒素濃度層L12、及び母材層L13(図5(b))が、焼入れ焼戻しによって、それぞれ、表面層L1、中間層L2、及び母材層L3(図2)とされる。
上記構成の外輪3の製造方法によれば、脱窒工程によって、浸炭窒化工程で得られる高窒素濃度層L12(図5)の芯部側の一部を残しつつ表面側の一部の窒素濃度を低下させるので、最表面に、窒素濃度が低い脱窒層L11(図5)を設けることができる。また、表面層の下層においては、高窒素濃度層L12の一部が残り、さらにこの高窒素濃度層L12の下層においては、浸炭窒化工程による窒素拡散が及んでいないことから窒素濃度が低くなっている部分が、窒素濃度の低い母材層L13(図5)とされる。
鋼中に拡散した窒素濃度が高ければ、焼入れ時の残留オーステナイト量を増加させる。よって焼入れ工程によって焼入れが行われると、高窒素濃度層L12は、脱窒層L11及び母材層L13よりも窒素濃度が高いため、残留オーステナイト量が脱窒層L11及び母材層L13よりも多くなる。
よって、脱窒層L11及び母材層L13は、焼入れによって、残留オーステナイト量が比較的少ない表面層L1(図2)及び母材層L3(図2)となり、高窒素濃度層L12は、焼入れによって、表面層L1及び母材層L3に比べて残留オーステナイトを多く含んだ中間層L2(図2)となる。
この結果、表面層L1と、表面層L1よりも芯部側に位置している母材層L3と、表面層L1及び母材層L3の間に介在しているとともに、表面層L1及び母材層L3に比べて残留オーステナイトを多く含んだ中間層L2を有する処理層Lを中間素材に形成することができ、転がり疲労に対して長寿命を確保することができる外輪3を得ることができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記説明では、本発明による転がり部材を玉軸受の内外輪及び玉に用いた場合を例示したが、例えば、円すいころ軸受の軌道輪や、円すいころに用いることもできるし、相手部材と転がり接触する部材であれば、本発明による転がり部材を適用することができる。
本発明者らは、上記転がり部材に形成された処理層の状態、及び転がり部材による転がり疲労に対する効果を確認するための評価試験を行った。
評価試験には、下記寸法に形成された環状の試験片を、上述の製造方法によって浸炭窒化処理を施し、転がり部材として製造したものを用いた。なお、下記試験片寸法は、後述する転動疲労寿命試験機に用いられる試験片寸法に合わせて形成した。
試験片寸法:外周径60mm,内周径20mm,厚み11mm
試験片材質:SUJ2
評価方法としては、転がり部材として製造した上記試験片の断面硬さ、残留オーステナイト量、及び窒素濃度を測定し、これら値について評価した。
断面硬さは、上記試験片を樹脂等に埋包した後、試験片断面を鏡面研磨した上で、マイクロビッカース硬さ計を用いて、荷重300gfで表面から所定の深さ位置を測定した。
残留オーステナイト量は、試験片の表面側からX線回折による定量分析を行った。試験片の表面を、所定寸法まで電解研磨等によって削り取ることで、所定の深さ位置とし、所定の深さ位置ごとに、残留オーステナイト量の定量分析を行った。
窒素濃度は、樹脂に埋包した試験片を用い、EPMA(Electron Probe MicroAnalyser)を用いた検量線法によって、試験片断面における所定の深さ位置ごとに線分析(定量分析)を行った。
図6は、試験片の断面硬さ、及び残留オーステナイト量を測定した結果を示すグラフであり、(a)は、未使用の試験片の測定結果、(b)は、所定時間使用した後の試験片の測定結果を示している。なお、この所定時間使用した後の試験片としては、後述する疲労寿命試験を48時間実施することで転がり接触させた試験片を用いた。
また、図中、横軸は表面からの深さを示しており、縦軸は断面硬さ及び残留オーステナイト量を示している。また、残留オーステナイト量の測定結果は、四角点と実線とで示しており、断面硬さの測定結果は、丸点と破線とで示している。
図6(a)中、未使用の試験片の残留オーステナイト量の測定結果を見ると、表面からの深さが0.05mmである位置(表面層L1(図2)に相当)、及び表面からの深さが0.5mmである位置(母材層L3(図2)に相当)での残留オーステナイト量が10体積%未満となっている。
一方、表面からの深さが0.1〜0.3mmの範囲の位置(中間層L2(図2)に相当)での残留オーステナイト量は、25〜35体積%と、他の層と比較して多く含まれている。
この結果から、未使用の試験片においては、残留オーステナイト量が少ない表面層L1と、表面層L1よりも芯部側に位置するとともに残留オーステナイト量が少ない母材層L3と、表面層L1及び母材層L3に介在している残留オーステナイト量が比較的多い中間層L2とを有する処理層が形成されていることが確認できる。
図6(a)中、断面硬さの測定結果を見ると、表面からの深さが0.05mmである位置、及び表面からの深さが0.5mmである位置での断面硬さは約720Hv程度となっており、表面層L1及び母材層L3においては、高炭素クロム軸受鋼の一般的な焼入れ硬さが得られていることが判る。
また、中間層L2に相当する、表面からの深さが0.1〜0.3mmの範囲の位置での断面硬さは、620〜650Hvと、残留オーステナイト量が他の層よりも多いため、他の部分よりも断面硬さの値が低くなって現れている。
図6(b)中、使用後の試験片の残留オーステナイト量の測定結果を見ると、表面からの深さが0.5mmである位置での残留オーステナイト量は、未使用の試験片の残留オーステナイト量とほぼ変わらない。しかし、表面からの深さが0.05mmである位置での残留オーステナイト量は、未使用の試験片の残留オーステナイト量(約8体積%)と比較してやや減少している。これは、使用時における転がり接触によって作用するせん断応力が最表面の表面層L1に作用することで、わずかに含まれている残留オーステナイトの内の一部がマルテンサイトに変態したものと思われる。
図6(b)中、表面からの深さが0.1〜0.3mmの範囲の位置での残留オーステナイト量は、未使用の試験片の残留オーステナイト量(25〜35体積%)と比較して、10体積%程度となっており、大きく減少していることが確認できる。
この結果から、中間層L2においては、転がり接触によるせん断応力が作用することで、未使用時には比較的多く含まれていた残留オーステナイトが応力誘起マルテンサイトに変態することで、大きく減少したものと考えられる。
図6(b)中、使用後の試験片の断面硬さの測定結果を見ると、中間層L2に相当する、表面からの深さが0.1〜0.3mmの範囲の位置での断面硬さは、未使用の試験片の断面硬さ(620〜650Hv)と比較して、730〜770Hvと、非常に硬い値となっていることが判る。これは、中間層L2に含まれていた残留オーステナイトが応力誘起マルテンサイトに変態したことによって、二次硬化したと思われる。
このように、使用後の試験片の断面硬さ及び残留オーステナイト量の測定結果から、中間層L2に含まれていたオーステナイトが、転がり接触により作用するせん断応力によって応力誘起マルテンサイトに変態し、硬さが向上していることが確認できる。
なお、表面からの深さが0.05mmの位置での断面硬さの値も若干高くなっているが、これは、わずかに残留オーステナイトがマルテンサイトに変態したことに加え、加工硬化によるものと考えられる。
以上のように、断面硬さ及び残留オーステナイト量の測定結果から、未使用の試験片には、表面層L1、中間層L2、及び母材層L3を有する処理層Lが形成されていることが確認できるとともに、使用後の試験片の中間層L2には、転がり接触によるせん断応力が作用することで、残留オーステナイトが応力誘起マルテンサイトに変態し中間層L2の硬さを向上させていることが確認できた。
図7は、EPMAによる窒素濃度の線分析の結果を示すグラフである。図中、横軸は表面からの深さを示しており、縦軸は濃度を示している。また、図中、線図Nは、窒素濃度の線分析結果である。また、図7において、炭素濃度の線分析結果も合わせて示している(線図C)。
図7を見ると、中間層L2に相当する、表面からの深さが0.1〜0.3mmの範囲の位置での窒素濃度は、0.2〜0.5重量%の範囲であり、表面層L1及び母材層L3に相当する、表面からの深さが0〜0.05mmの範囲、及び表面からの深さが0.5mm以上の範囲それぞれの窒素濃度は、0.1重量%未満であることが確認できる。
また、炭素濃度は、分析した範囲において、SUJ2の炭素濃度と一致する約1重量%程度で安定していることが確認できる。
以上のように、図7から、表面層L1の窒素濃度は、浸炭窒化による窒素の拡散がほとんど及ばない母材層L3とほぼ同等の値となっているとともに、中間層L2の窒素濃度が、表面層L1及び母材層L3よりも高くなっていることが判る。このことより、焼入れ前の試験片においては、浸炭窒化工程によって高濃度窒化層L12が得られ、脱窒工程によって高濃度窒化層L12よりも窒素濃度を低下させた脱窒層L11が形成されていたことが確認できる。
また、本発明者らは、上記試験片を用いて、転動疲労寿命試験を実施した。
図8は、転動疲労寿命試験に用いた試験機を示す断面図である。
この転動疲労寿命試験機50は、試験片60が固定されるケーシング51と、試験片60に対向配置される環状部材52と、試験片60の軌道面60aと、環状部材52の軌道面52aとの間に介在して転動する複数の玉53と、試験片60に対して環状部材52を相対回転させる駆動軸54とを備えており、スラスト方向に荷重を加えながら試験片60の軌道面60a上で玉53を転動させるように構成されている。
試験片60は、図8に示すように、ケーシング51に固定される。ケーシング51内には、潤滑油Oが貯留されており、試験片60は、潤滑油Oによって浸漬される。
図8に示すように転動疲労寿命試験機50に組み込まれた試験片60は、ケーシング51の下方側から荷重が付与され、駆動軸54を回転させることで、荷重を付与しつつ試験片60上で複数の玉53を転動させる。
そして、試験片60にはく離が発生するか、応力繰り返し数100×106サイクルに到達するまで行った。なお試験条件は、以下の通り設定した。
荷重 :3920N
最大接触応力:5230MPa
応力繰り返し速度:30Hz
潤滑油:マシン油VG8相当
上記転動疲労寿命試験に用いた試験片としては、本発明に係る浸炭窒化処理を行って転がり部材として形成した試験片(実施例品)の他、比較例品として、一般的な焼入れ処理を行って形成した試験片についても同一条件によって試験を行い、これら実施例品と、比較例品とを互いに比較することで、寿命性能を評価した。
上記転動疲労寿命試験の結果、実施例品は、比較例品と比較して約4倍の寿命向上が見られた。
この結果から、本発明による転がり部材が、従来の一般的な熱処理品と比較して、転がり疲労に対して長寿命を確保できることを確認できた。
2 内輪 2a 内輪軌道面 3 外輪 3a 外輪軌道面
4 玉 4a 転動面 L1 表面層 L2 中間層
L3 母材層 L11 脱窒層 L12 高窒素濃度層 L13 母材層

Claims (6)

  1. 軸受鋼からなる素材により形成され、相手部材との間で転がり接触する転がり接触面を有する転がり部材であって、
    前記転がり接触面には、浸炭窒化処理による処理層が形成されており、
    前記処理層は、
    前記転がり接触面の表面に形成されている、残留オーステナイト量が15体積%未満である表面層と、
    前記表面層よりも芯部側に位置している残留オーステナイト量が15体積%未満である母材層と、
    前記表面層と前記母材層との間に介在している残留オーステナイト量が25体積%以上である中間層と、を有していることを特徴とする転がり部材。
  2. 前記中間層は、前記相手部材との間で転がり接触したときに生じる最大せん断応力が作用する深さ領域に形成されている請求項1に記載の転がり部材。
  3. 前記表面層は、前記転がり接触面の表面から、当該表面からの深さが0.05mmである位置までの範囲に亘って形成されており、
    前記中間層は、少なくとも、前記転がり接触面の表面からの深さが0.1mmである位置から、0.3mmである位置までの範囲に亘って形成されている請求項1又は2に記載の転がり部材。
  4. 前記表面層及び前記母材層の窒素濃度が0.1重量%未満であり、
    前記中間層の窒素濃度が0.15〜0.6重量%であり、
    前記表面層及び前記母材層のマイクロビッカース硬さが700Hv以上であり、前記中間層のマイクロビッカース硬さが600Hv以上である請求項1に記載の転がり部材。
  5. 内輪軌道面を有する内輪と、前記内輪の外周側に同心に配置され前記内輪軌道面に対向している外輪軌道面を有する外輪と、前記内輪軌道面及び前記外輪軌道面との間に転動自在に介在している複数の転動体と、を備えた転がり軸受であって、
    前記外輪、前記内輪、及び転動体の少なくとも一つが請求項1に記載の転がり部材であることを特徴とする転がり軸受。
  6. 相手部材との間で転がり接触する転がり接触面を有する転がり部材の製造方法であって、
    軸受鋼からなる素材に対して、浸炭窒化雰囲気中で加熱保持することで、窒素拡散によって得られる高窒素濃度層を素材表面側に設ける第1工程と、
    前記第1工程における浸炭窒化雰囲気を水素雰囲気に変更し、前記素材を水素雰囲気中で保持することで、前記高窒素濃度層の芯部側の一部を残しつつ前記高窒素濃度層の表面側の一部の窒素濃度を低下させる第2工程と、
    前記第2工程を経た前記素材に焼入れ処理を行う第3工程と、を含むことを特徴とする転がり部材の製造方法。
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