以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(一実施形態)
図1ないし図5は、本発明の一実施形態に係るPM堆積量推定装置および同装置を備えた内燃機関の排気浄化システムを示す図である。なお、本実施形態は、本発明を差圧センサ付きのフィルタユニットを備えた多気筒内燃機関としてのディーゼルエンジン(以下、単にエンジンという)に適用したものである。
まず、その構成について説明する。
図1に示す本実施形態のエンジン10は、複数、例えば4つの気筒11を有している。このエンジン10には、各気筒11内の図示しない燃焼室に吸気通路13を通して空気を吸入させる吸気装置14と、燃焼室内に燃料(例えば軽油)を噴射する燃料噴射ノズル15aを有するコモンレール式の燃料噴射装置15と、燃焼室からの排出ガスを外部に排気させる排気装置17とが装備されている。また、図示しないが、エンジン10には、その排気の一部を吸気側に還流させ再循環させるEGR装置(排気再循環機構)と、排気装置17内の排気エネルギを利用して吸気装置14内の空気を圧縮し、エンジン10の各気筒11内の燃焼室に空気を過給する排気ターボ過給機とが、装備されている。さらに、エンジン10には、燃焼室に吸気通路13を通して空気を吸入させるときに開弁する吸気弁と、燃焼室からの排出ガスを排気装置17側に排出させるときに開弁する排気弁と、これら吸気弁および排気弁をクランク軸の回転角に応じてそれぞれに開閉動作させる動弁機構とが、設けられている。
吸気装置14は、吸気マニホールド14aとそれより上流側の吸気管14bとを有している。詳細を図示しないが、吸気装置14は、さらに、吸気管14bの上流側でフィルタにより吸入空気を清浄化するエアクリーナと、排気ターボ過給機のコンプレッサより下流側の吸気通路内で過給により昇温した吸入空気を冷却するインタークーラと、エンジン10内への吸気流量を調整可能なディーゼルスロットル開度制御アクチュエータとを備えている。これらの構成自体は公知のものと同様である。
燃料噴射装置15は、図外の燃料タンクから燃料を汲み上げる低圧燃料ポンプと、この低圧ポンプからの燃料を高圧の燃圧(燃料圧力)に加圧して吐出する高圧燃料ポンプ46と、この高圧燃料ポンプ46からの燃料が導入されるコモンレール45とを備えている。
この燃料噴射装置15の燃料噴射ノズル15aは、例えば電磁駆動されるニードル弁で構成され、コモンレール45を通して供給される燃料(例えば軽油)を、後述する電子制御ユニット(以下、ECUという)50からの噴射指令信号に対応するタイミングおよび噴射期間で燃焼室内に噴射するようになっている。
吸気装置14の上流側には、新気の吸入空気量を検出するエアフローメータ48(流量センサ)が設けられており、コモンレール45にはその内部の燃料圧力を検出する燃料圧力センサ49が装着されている。
なお、各燃焼室は、ピストンより上方側の各気筒11の内部に形成されており、ピストンの往復運動に伴って燃焼室の容積が変化するとともにクランク軸が回転する。このクランク軸の回転角度位置はクランク角センサ23によって検出され、図示しないアクセルペダルの踏込み率であるアクセル開度は、アクセル開度センサ24によって検出されるようになっている。
排気装置17は、排気マニホールド38と、それより下流側の排気通路31aを形成する排気管31と、排気管31に装着された触媒32およびDPFユニット33(フィルタユニット)を含んで構成された排気浄化ユニット40と、を含んで構成されている。
図1中では詳細断面構造を図示せず、その排気通過方向における配置の前後関係のみを模式的に示すが、DPFユニット33は、例えば多孔質のセラミック基材の出入り口を交互に栓詰め等により目塞ぎして、エンジン10の排出ガスが各通路を形成する基材の壁を通過して隣の通路から出る下流側に流れるように構成されており、エンジン10の排気中に含まれるPM、例えば煤(SOOT)等を基材中で捕集する機能を有している。
触媒32は、例えばエンジン10の排出ガス中の一酸化窒素(NO)を酸化させてPMを低温燃焼させる二酸化窒素(NO2)を生成したり、排出ガス中の未燃炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)を酸化させて浄化したりすることができる貴金属触媒からなる酸化触媒である。この触媒32は、後述する燃料添加等により排出ガス中のHCが増量されるときにその酸化反応によって排出ガス温度を上昇させ、DPFユニット33内をPMの自燃温度以上の高温に昇温させることができるようになっている。
また、DPFユニット33の多孔質のセラミック基材には、少なくとも排気通路の内壁面上に分散されて貴金属触媒が担持されており、DPFユニット33は、この貴金属触媒の近傍領域においては、多孔質のセラミック基材の内壁面上に堆積するPMをその自燃温度未満の低温であっても連続的に酸化除去することができるようになっている。
勿論、排気浄化ユニット40は、DPFユニット33のようなパティキュレート(微粒子)フィルタを含む他の任意の構成とすることができる。例えば、DPFユニット33の多孔質のセラミック基材に貴金属触媒とNOx吸蔵材とを含むNOx吸蔵・還元型の触媒を担持させて、排気浄化ユニット40内に導入される排出ガスの空燃比がリーン(酸化雰囲気)となる通常運転時にはNOx(NO2やNO)を吸蔵させる一方、排気浄化ユニット40内に導入される排出ガスの空燃比が理論空燃比かそれ以上にリッチ(還元雰囲気)となるときには、そのNOx吸蔵材に吸蔵していたNOxを還元・放出させることもできる。
排気装置17には、さらに、ECU50からの燃料添加指令信号に応じて開閉し、低圧燃料ポンプで汲み上げた燃料の一部を排気マニホールド38または排気管31内に噴射することができる燃料添加弁39が併設されている。
この燃料添加弁39は、ECU50からの燃料添加指令信号に応じて開閉する電磁弁を内蔵しており、低圧燃料ポンプから供給される燃料を、ECU50からの指令信号に対応する噴射時期に一定の噴射率で噴射できるようになっている。また、燃料添加弁39は、エンジン10の特定の気筒11、例えば第4気筒の排気行程で添加燃料を噴射するようになっている。
そして、燃料添加弁39による燃料添加が選択的に実行され、エンジン10の排出ガス中に未燃燃料が投入されるとき、その投入量に応じて触媒32により排出ガス中の未燃燃料が酸化反応して排気温度が例えばPMの自燃温度以上に高まり、DPFユニット33の内部の温度が例えばDPFユニット33のセラミック基材内に侵入し捕集されているPMを除去する再生処理が実行されるようになっている。
すなわち、燃料添加弁39およびECU50は、DPFユニット33の内部の温度をPMの自燃温度以上の高温の再生処理温度(例えば摂氏600度程度)に上昇させてPMを除去する再生処理機構として機能するようになっている。また、ECU50は、燃料添加弁39による燃料添加時の燃料量を制御することで、再生処理温度を低温再生処理温度と高温再生処理温度とに切り替えることができるようになっている。
DPFユニット33の再生処理は、ECU50により、エンジン10の燃料噴射条件を切替え制御することで、実行することもできる。燃料噴射条件を切替え制御するとは、燃料添加弁39による燃料添加を実行すること以外に、DPFユニット33に捕集されたPMの堆積量が所定量以上になったことを条件に、燃料噴射装置15により燃焼室内へのポスト噴射を実行させたり、アフタ噴射またはリッチ燃料噴射を実行させたりすることであり、これらのうち少なくとも1つの燃料噴射が実行されることでエンジン10の排気温度が高められる。したがって、燃料添加弁39および燃料噴射装置15のうち少なくとも一方とECU50とによって再生処理機構が構成されてもよい。
排気浄化ユニット40には、触媒32およびDPFユニット33の上流側と下流側の間の差圧、すなわち、触媒32およびDPFユニット33を通過するガスの前後差圧を検出する差圧センサ34が装着されているとともに、DPFユニット33の内部の温度を検出する温度センサ42が装着されている。なお、以下の説明では、排気浄化ユニット40の触媒32およびDPFユニット33の意で、単にDPFユニット33という。
差圧センサ34は、DPFユニット33の入口側(上流側)のガスの圧力を導入する第1ガス圧力導入管部34aと、DPFユニット33の出口側(下流側)のガスの圧力を導入する第2ガス圧力導入管部34bと、第1および第2ガス圧力導入管部34a,34bからの上流側および下流側のガス圧力を受圧してこれらの圧力の差である前後差圧を検出するセンサ本体部34cとによって構成されている。
なお、差圧センサ34に代えて、DPFユニット33の上流側と下流側でそれぞれガス圧力を検出する上流側および下流側の絶対圧センサ(圧力センサ)を設け、ECU50が両絶対圧センサの検出値の差として算出した差圧を把握するようにしてもよい。また、DPFユニット33の上流側にのみその設置位置でのガス圧力を検出する絶対圧センサを設置し、DPFユニット33の下流側のガスの圧力をECU50によって大気圧等をパラメータとする推定処理により求めて、ECU50がその上流側のガス圧力の検出値および下流側のガス圧力の推定値の差として算出した差圧を把握するようにしてもよい。
前述の燃料添加弁39による燃料添加、エンジン10の燃料噴射条件の切替え制御、低圧燃料ポンプの通電制御、燃料噴射ノズル15aによる燃料噴射制御、ディーゼルスロットル開度制御やEGR弁の開度制御等は、ECU50により実行される。
ECU50は、具体的なハードウェア構成は図示しないが、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびバックアップRAM(不揮発性メモリでもよい)を含み、さらに、A/D変換器やバッファ等を含む入力インターフェース回路と、アクチュエータ類の駆動回路等を有する出力インターフェース回路とを含んで構成されている。
ECU50の入力インターフェース回路には、前述のクランク角センサ23、アクセル開度センサ24、差圧センサ34、温度センサ42、エアフローメータ48および燃料圧力センサ49の他に、エンジン10の内部の潤滑油の温度を検出する油温センサ26や、エンジン10の冷却水の温度を検出する水温センサ27等が接続されている。ECU50の出力インターフェース回路には、燃料添加弁39、低圧燃料ポンプ、燃料噴射ノズル15a、ディーゼルスロットル弁、EGR弁等のアクチュエータ類が接続されている。
このECU50は、ROM内に予め格納された制御プログラムを実行することにより、各種センサ情報やバックアップメモリに記憶された設定情報等に基づき、DPFユニット33の再生処理に関連して、以下の複数の処理機能を発揮できるようになっている。
ECU50は、その機能的には、第1推定処理部51、第2推定処理部52および再生時期判定処理部53を含んで構成されている。
第1推定処理部51は、後述する差圧活用条件が成立するとき、差圧センサ34の検出差圧と、温度センサ42の検出温度およびエアフローメータ48の検出吸入空気量とに基づいて、DPFユニット33内のPM堆積量の推定値に対応するDPF差圧値dpを算出する第1の堆積量推定処理を実行するようになっている。なお、ここでのDPF差圧値dpは、DPFユニット33内におけるPM堆積量の推定値であってもよい。また、この第1推定処理部51で算出されるDPF差圧値dpを第1の推定量推定値ともいう。
第2推定処理部52は、後述する差圧活用条件が成立しないとき、少なくともエンジン10の運転条件に基づいてDPFユニット33内におけるPM堆積量を推定する第2の堆積量推定処理を実行するようになっている。また、第2推定処理部52は、差圧活用条件が成立しない期間中はPM排出量の推定値を積算し、その期間以前のPM堆積量pmdpに加算することで現在のPM堆積量pmdpを推定するようになっている。さらに、第2推定処理部52は、推定算出したPM堆積量pmdpを基にDPF差圧値dp2を逆算するとともに、第1推定処理部51でDPF差圧値dp1を算出する第1の推定処理の採用頻度が予め設定された補正要求頻度thf以下であるか否かを判定する。そして、第1の推定処理の採用頻度が補正要求頻度thf以下に低下しているときには、現在のPM堆積量pmdpを後述する補正処理により増量補正するようになっている。なお、この第2推定処理部52で算出されるPM堆積量pmdpまたはDPF差圧値dpを第2の推定量推定値ともいう。
再生時期判定処理部53は、差圧活用条件が成立するか否かによって第1推定処理部51および第2推定処理部52のいずれかを選択し、それぞれDPFユニット33内におけるPM堆積量を推定可能な第1の推定処理と第2の推定処理とを選択的に実行させて、DPFユニット33内におけるPM堆積量の推定値に対応するDPF差圧値dpを算出させる。そして、再生時期判定処理部53は、DPF差圧値dpが予め設定された再生要求堆積量に達するか否かを所定時間毎に判定することで、DPFユニット33における再生処理の要否を判定するようになっている。
より具体的には、ECU50は、再生時期判定処理部53の機能により、予め設定された差圧活用条件が成立する否かを所定の演算周期で繰返し判定することによって、エンジン10の運転状態が差圧センサ34の検出差圧dpsenを所要の検出精度で取得することができる状態であるか否かを判定するようになっている。
ここにいう差圧活用条件は、差圧センサ34の検出差圧dpsenをDPF前後差圧として採用するための特定条件であって、所要の推定精度および信頼度での第1の推定処理を可能にする次の複数の採用条件C1−C7を含み、これらの条件がすべて成立する状態である場合に成立する。また、ECU50は、差圧活用許可条件をdpuseとして把握し、採用条件C1−C7が全て成立するときにdpuse=ONと判定し、それ以外の不成立時にはdpuse=OFFと判定するようになっている。
C1:吸入空気量が所定値以上であるとき(DPFユニット33内を通過する排気の流量が予め設定された閾値流量以上であるとき)
C2:DPF差圧の変化量が所定値以下であるとき
C3:排気温が所定値以上であるとき
C4:触媒水入りによる差圧上昇影響がないとき
C5:関連部品が異常でないとき
i) DPF差圧異常でないとき
ii) PM燃焼制御不可でないとき
iii)差圧センサまたは絶対圧センサ(差圧検出部)異常でないとき
iv) エアフローメータ(吸気流量検出部)異常でないとき
v) 排気温センサが異常でないとき
vi) 燃料添加弁異常でないとき
C6:燃料添加制御を行っていないとき、または、ポスト噴射制御を行っていないとき
C7:差圧センサの0点学習が完了しているとき
ECU50は、差圧活用条件dpuseが成立するとき(dpuse=ONのとき)、第1推定処理部51の機能により、DPFユニット33における再生処理の要否を判定するためのDPF差圧値として差圧センサ34の検出差圧を採用して、次に述べる第1の推定処理を実行する。
この第1の推定処理においては、ECU50は、差圧センサ34の検出差圧dpsenに基づいて、DPFユニット33内のPM堆積量pmdpがそのPMを除去する再生処理の要求時期に対応する再生要求堆積量に達するか否かを、所定時間毎に判定する。
ECU50は、まず、例えば差圧センサ34の検出差圧dpsenを、次の〔1〕式を用いて基準状態でのDPF差圧値dp1に変換する。
dp1=dpsen/(Ga×(T/573)) ・・・〔1〕
ここで、T[K]は、温度センサ42の検出温度をケルビンで表した温度値であり、Gaは吸入空気流量[g/s]である。
この場合、差圧センサ34の検出差圧dpsenは、現在の吸入空気量Gaをエンジン10の通常運転時の典型的な状態であるフィルタ内部温度が摂氏300度である場合の流量に置き換えたときの、単位流量当りの検出差圧に相当する再生要求判定用のDPF差圧値dp1に置き換えられる。これにより、エンジン10の運転状態変化による差圧センサ34の検出差圧の変動成分が除かれたDPFユニット33内のPM堆積量の影響が的確に反映されたDPF差圧値dpとなる。
ECU50は、このように、エンジン10の運転中に時々刻々と変化する吸入空気量Ga(それに対応する排出ガス流量)やフィルタ内部温度Tに影響されて変動する検出差圧dpsenを、基準状態でのDPF差圧値dp1に変換することで、その基準状態での再生要求堆積量に対応する再生要求差圧値dpth(再生処理の開始時期の判定差圧)と比較可能な現在のPM堆積量に対応する差圧値dpを算出するようになっている。
また、ECU50は、算出したDPF差圧値dp1が再生要求差圧値dpthに達したときには、DPFユニット33内のPM堆積量が再生要求堆積量に達したと判定して、燃料添加弁39による燃料の添加等の実行時期および噴射量を算出し、その算出結果に対応する燃料添加指令信号を燃料噴射ノズル15aの電磁弁部に出力して、DPFユニット33の再生処理を実行させるようになっている。
さらに、ECU50は、少なくとも高温再生処理が終了するときの差圧センサ34の検出差圧dpsenに基づいてDPFユニット33内におけるアッシュの残量を推定し(複数回の高温再生処理におけるアッシュ量に基づいて補正してもよい)、その推定値である推定Ash量に基づいて前述の再生要求差圧値dpthを補正できるようになっている。なお、ここにいうアッシュとは、DPFユニット33の再生処理温度では燃えずにDPFユニット33内に残留し易い粉体状物質であり、主に排出ガス中の潤滑油に含まれるカルシウム(Ca)成分とDPFフィルタ上にPMと共に吸着される燃料中の硫黄(S)成分が結合して生成される硫酸カルシウム(CaSO4)等で構成されるものである。また、推定Ash量の算出には、従来の任意のアッシュ量推定方法を用いることができる。
一方、ECU50は、差圧活用条件dpuseが成立しないとき(dpuse=OFFのとき)、DPFユニット33における再生処理の要否を判定するためのDPF差圧値として、差圧センサ34の検出差圧を直接使用せず、第2推定処理部52による第2の推定処理を実行する。
この場合、ECU50の第2推定処理部52は、例えば、エンジン10の要求負荷やエンジン回転速度に基づき、エンジン10の負荷が増大しエンジン回転速度が大きくなるにつれて増大する所定時間毎のPM排出量をPM排出量マップM1を参照して推定する。また、第2推定処理部52は、推定済みのPM排出量からDPFユニット33内のPMが前述の触媒により連続的に酸化除去される量を差し引いて、PM堆積量の加算値を算出し、この算出値を前回算出されたPM堆積量に加算して現在のPM堆積量pmdpを算出するようになっている。これにより、第2推定処理部52は、差圧活用条件dpuseが成立しない期間中、PM排出量を積算することになり、この差圧活用条件不成立期間(差圧活用不許可期間)の直前のPM堆積量に対しPM排出量の積算値を加算することで、現在のPM堆積量pmdpを推定することができる。
さらに、ECU50は、算出した現在のPM堆積量pmdpおよび前述の推定Ash量とDPF差圧値との関係を対応付けた2次元マップM2を参照し、現在のPM堆積量pmdpの推定値に対応する差圧値dpmapをDPF差圧値dp2として算出するようになっている。すなわち、ECU50は、差圧活用許可条件dpuseが不成立となる運転条件下では、エンジン10の運転条件に基づき所定時間毎のPM排出量を積算し、差圧活用許可期間に算出済みの最新のDPF差圧値dp1(第1の推定値)に加算することで、前後の期間におけるDPF差圧値dp1を補間するDPF差圧値dp2(第2の推定値)を算出する。
なお、差圧算出用の2次元マップMpは、エンジン10における予めの実験結果を基に、各運転状態におけるPM堆積量pmdpおよび推定Ash量とその状態で差圧センサ34により検出されるDPF前後差圧との関係を対応付けたものであり、現在のPM堆積量pmdpおよび推定Ash量に基づいて現在のDPF差圧値を逆算することができる。
ところで、差圧センサ34の検出差圧dpsenの検出精度が低い運転条件が長時間継続すると、第2推定処理部52により第2の推定値としてのDPF差圧値dp2が繰返し算出される。そのため、差圧センサ34の検出差圧dpsenに基づくDPF差圧値dp1が再度信用できるようになるまで、PM堆積量の推定誤差が蓄積されていき、PM堆積量pmdpが実PM堆積量から乖離する可能性がある。
そこで、本実施形態では、ECU50により、DPF差圧値dp2を基に算出するPM堆積量が実PM堆積量を反映できなくなったと判定できるほど差圧活用条件dpuseの成立頻度が低いか否かを判定し、その成立頻度が所定値以下のときには、エンジン10の運転状態を基にDPF差圧値dp2を算出する第2の堆積量推定処理において、所定時間毎のPM堆積量の加算値dlpmを増量補正するようになっている。
ここでの増量補正は、所定時間毎のPM堆積量の加算値dlpmに対し、エンジン10の構成から考えられるPM排出量のばらつき分程度の補正係数mpmを乗算する処理である。また、補正係数mpmは、差圧活用条件dpuseの成立頻度の算出値dpfrq(第1の推定処理の採用頻度)を基に、図2に示すような1次元補正係数マップM3を参照して算出・設定される1以上の係数である。
この補正係数mpmは、図2に示すように、補正要求頻度thf以下の範囲内では、第1の推定処理の採用頻度dpfrqが小さくなるほど大きい係数値に設定され、補正要求頻度thfを超える範囲内では固定値に設定される。
ECU50は、このように、所定時間毎のPM堆積量の加算値dlpmに補正係数mpmを乗算して、所定時間毎の推定PM排出量であるPM堆積量の加算値dlpmを多く見積もることで、差圧センサ34の検出差圧からPM堆積量を精度良く推定できない運転状態が長く続くときに、PM過堆積状態となることを未然に防止する。すなわち、DPFユニット33内の実PM堆積量が推定算出されるPM堆積量pmdp(pmdp(i)=pmdp(i−1)+dlpm×mpm)より大きくなる状態が続き、DPFユニット33内がPM過堆積状態に陥ることを未然に防止することができる。なお、ここでのiは、処理の実行回数を示す整数である。
次に、それぞれECU50で実行される差圧算出処理と、差圧活用許可頻度の算出処理と、エンジン10の運転条件に基づく推定PM排出量の算出および推定PM堆積量の補間処理とについて、説明する。
ECU50で実行される差圧算出処理は、図3に示すような手順で、所定時間毎に繰り返し実行される。
図3に示すように、この差圧算出処理では、まず、差圧活用許可条件dpuseがONか否かが判定され(ステップS11)、差圧活用条件dpuseが成立する場合(ステップS11でYESの場合)、差圧センサ34の検出差圧dpsenがDPF差圧値dp1として採用される(ステップS12)。
一方、差圧活用条件dpuseが成立しない場合(ステップS11でNOの場合)、現在のPM堆積量pmdpおよび推定Ash量に基づいて2次元マップM2から算出したDPF差圧値dpmapがDPF差圧値dp2として採用される(ステップS13)。
ECU50で実行される差圧活用許可頻度の算出処理は、図4に示すような手順で、所定時間毎に繰り返し実行される。
図4に示すように、この差圧活用許可頻度の算出処理では、まず、公知のエンジンストール判定処理(例えば、エンジンスイッチがON位置にある状態でエンジン10の回転が停止したことで判定する処理)が実行される期間外であるか否かが判定される。
このとき、エンジンストール判定処理の期間外(エンジン10が停止していない状態)であれば(ステップS21でYESの場合)、次いで、差圧活用許可頻度の算出用カウンタのカウント値tim(i)が、例えば直前のカウント値tim(i−1)に差圧活用許可頻度算出処理の周期である演算周期を加算した値にインクリメントされる(ステップS22)。
次いで、差圧活用許可条件dpuseがONか否かが判定される(ステップS23)。そして、このとき、差圧活用許可時間をカウントする差圧活用許可時間カウンタのカウント値dptim(i)が、例えば直前のカウント値dptim(i−1)に差圧活用許可頻度算出処理の周期である演算周期を加算した値にインクリメントされる(ステップS24)。
次いで、所定時間毎の差圧活用許可頻度を算出するために、まず、差圧活用許可時間カウンタのカウント値dptim(i)(以下、dpimと記す)がその所定時間に対応する所定値を超えるか否かが判定される(ステップS25)。
この判定ステップS25は、ステップS22で差圧活用条件dpuseが成立しない場合(NOの場合)やステップS21でエンジンストール判定処理の期間内である場合(NOの場合)にも、それぞれの判定ステップに次いで実行される。
差圧活用許可時間カウンタのカウント値dptimが所定値を超える場合、差圧活用許可時間カウンタが所定時間に対応するカウント値timに達したことになる。この場合、次いで、差圧活用許可時間カウンタのカウント値dptimを所定時間のカウント値timで除算することで、差圧活用許可頻度dpfrqが算出される(ステップS26)。
次いで、次の差圧活用許可頻度dpfrqの算出のために各カウンタのカウント値dptim、timが、クリアされる(ステップS26)。
ECU50で実行される、エンジン10の運転条件に基づく推定PM排出量の算出処理および推定PM堆積量の補間処理は、図5に示すような手順で、所定時間毎に繰り返し実行される。
図5に示すように、このPM排出量の算出およびPM堆積量の補間処理では、まず、エンジン10の要求負荷やエンジン回転速度に基づき、エンジン10の負荷が増大しエンジン回転速度が大きくなるにつれて増大する所定時間毎のPM排出量engpm(PM堆積量の所定時間毎の増加量に対応する量)がPM排出量マップM1を参照して算出される。また、推定済みのPM排出量engpmからDPFユニット33内のPMが触媒32により連続的に酸化除去される酸化除去量pmburnを差し引いて、PM堆積量の加算値dlpmが算出される(ステップS31)。
次いで、差圧活用条件dpuseが成立するか否かによって第1、第2の堆積量推定処理である2種類のPM堆積量pmdpの算出処理を切り替えるためのDPF差圧参照許可フラグdpflgが、「1」、すなわち、ONであるか否かが判定される(ステップS32)。
このとき、DPF差圧参照許可フラグdpflgが、「1」であれば(ステップS32でYESの場合)、次いで、PM再生処理要求時でない(PM再生処理要求時外である)か否かが判定される(ステップS33)。
そして、PM再生処理要求時外であれば(ステップS33でYESの場合)、次いで、差圧活用条件dpuseの成立頻度の算出値dpfrqを基に、差圧活用許可頻度1次元補正係数マップM3から補正係数mpmが算出・設定される(ステップS34)。
判定ステップS32でDPF差圧参照許可フラグdpflgが、「0」、すなわち、OFFであった場合、差圧活用条件dpuseが成立しておらず、第1の堆積量推定処理の結果であるDPF差圧値dp1がDPF差圧値dpとして入力されない。すなわち、差圧活用不許可状態となる。
判定ステップS32で差圧活用不許可状態となった場合(NOの場合)、差圧活用条件dpuseの成立頻度の算出値dpfrqを考慮することなく、補正係数mpmが所定の固定値、例えば1に設定される(ステップS35)。また、ステップS33で、PM再生処理要求時外であると判定された場合(NOの場合)、すなわち、PM再生処理が要求されているときにも、差圧活用条件dpuseの成立頻度の算出値dpfrqを考慮することなく、補正係数mpmが所定の固定値、例えば1に設定される(ステップS35)。
補正係数mpmが算出されると、次いで、差圧活用許可条件dpuseがONであるか否かが判定される(ステップS36)。
このとき、差圧活用許可条件dpuse=ONであれば(ステップS36でYESの場合)、次いで、差圧活用許可頻度dpfrqが補正要求頻度thfを超えるか否か、あるいは、差圧活用許可頻度dpfrqが補正要求頻度thf以下であるか否かが判定される(ステップS37)。
そして、差圧活用許可頻度dpfrqが補正要求頻度thfを超えていれば(ステップS37でYESの場合)、差圧センサ34の検出差圧dpsenに対応するDPF差圧値dp1と前述の推定Ash量とを基に、2次元マップM2かそれと同等な堆積量推定マップを参照して、現在のPM堆積量pmdp(i)が算出される(ステップS38;第1の推定処理)。
一方、ステップS36で差圧活用許可条件dpuse=OFFであった場合(NOの場合)、および、ステップS37で差圧活用許可頻度dpfrqが補正要求頻度thf以下であった場合(NOの場合)には、補正係数mpmを用いた増量補正が行われる。
すなわち、所定時間毎のPM堆積量の加算値dlpmが前回算出された推定PM堆積量値pmdp(i−1)に加算されて現在の推定PM堆積量pmdp(i)が算出されるとともに、その際に、所定時間毎のPM堆積量の加算値dlpmに補正係数mpmを乗じる処理(pmdp(i)=pmdp(i−1)+(dlpm×mpm )とする処理)がなされる(ステップS39;第2の推定処理)。
このように、本実施形態の内燃機関の排気浄化システムにおいては、ECU50によって、排ガス流量が小さい等の理由で差圧センサ34の検出差圧dpsenの誤差が大きくなるときにエンジン10の運転条件に基づいて所定時間毎のPM堆積量の増加量dlpmを算出し、差圧センサ34の検出差圧dpsenを使用できないために通常の第1の堆積量推定処理が実行できない差圧活用不許可期間におけるPM堆積量の変化量を、第2の堆積量推定処理を用いて算出し補間する。そして、このことを前提に、差圧センサ34で検出されるDPF差圧dpsenが信用できた頻度である差圧活用許可頻度dpfrqを周期的に算出する制御と、その差圧活用許可頻度dpfrqが補正要求頻度相当の所定値以下の場合に所定時間毎のPM排出量(現在値)に補正係数mpmを乗算する制御と、その補正係数mpmを差圧活用許可頻度dpfrqに応じて可変設定する制御とを実行するようになっている。
なお、差圧センサ34に代えて、DPFユニット33の上流側と下流側でそれぞれガス圧力を検出する上流側および下流側の絶対圧センサ(圧力センサ)を設ける場合、ECU50は、両絶対圧センサの検出値の差として検出差圧を算出する機能を有する差圧検出部を併有することになる。また、DPFユニット33の上流側にのみその上流側位置でのガス圧力を検出する圧力センサを設け、DPFユニット33の下流側のガスの圧力をECU50によって大気圧等をパラメータとする推定処理により求める場合、ECU50は、その上流側のガス圧力の検出値および下流側のガス圧力の推定値の差として検出差圧を算出する差圧検出部を有することになる。さらに、本発明にいう差圧センサや圧力センサは、直接的にガス圧力を検出可能な圧力検知素子を有するものに限らず、他の検出値や推定値から間接的にガス圧力を求めるものであってもよく、ECU50およびそれに接続する各種センサ類によって、そのような差圧センサもしくは圧力センサの機能を有する差圧検出機構が構成されていればよい。よって、第1推定処理部51では、差圧センサ34に代わる圧力センサ等(差圧検出機構)によって間接的に検出されるDPF前後差圧と、温度センサ42の検出温度およびエアフローメータ48の検出吸入空気量とに基づいて、DPFユニット33内のPM堆積量に対応するDPF差圧値dpが第1の堆積量推定値として算出されてもよい。
次に、本実施形態の作用について説明する。
上述のように構成された本実施形態のPM堆積量推定装置および内燃機関の排気浄化システムでは、ECU50により、エンジン10の運転条件に応じてDPFユニット33内におけるPM堆積量を推定可能な第1の推定処理と第2の推定処理とを選択的に採用して、PM堆積量が推定される。
そして、第1の推定処理では、差圧センサ34の検出差圧dpsenに基づいてDPFユニット33内のPM堆積量に対応するDPF差圧値dp1および推定PM堆積量pmdpが第1の推定値として算出される。また、第2の推定処理では、エンジン10の運転条件に基づいて推定PM堆積量pmdpおよびDPF差圧値dp2が第2の推定値として算出されるとともに、差圧活用許可頻度dpfrqが予め設定された補正要求頻度thf以下であるか否かが判定され、その採用頻度が補正要求頻度thf以下に低下しているときには第2の推定値dp2が増量補正される。
したがって、差圧活用許可条件C1−C7が成立しない運転状態が続き、エンジン10の運転条件に基づいて補間計算される推定PM堆積量pmdpの誤差が積算されて、推定PM堆積量pmdpが実PM堆積量に対しマイナス側に乖離してしまうことが有効に抑制される。その結果、PMの過堆積によるDPFユニット33の過昇温や過熱による損傷が未然に防止できることになる。
また、本実施形態においては、第1および第2の推定処理のうち第1の推定処理が採用される差圧活用許可条件C1−C7が成立するか否かを判定し、その判定結果に基づいて差圧活用許可頻度dpfrqが補正要求頻度thf以下であるか否かを判定するようにしている。したがって、差圧活用許可頻度dpfrqの成立判定周期に応じて差圧活用許可頻度dpfrqが補正要求頻度thf以下であるか否かが周期的に的確にチェックされることになり、推定PM堆積量pmdpが実PM堆積量に対しマイナス側に大きく乖離してしまうことが確実に防止される。
さらに、推定PM堆積量pmdpが実PM堆積量に対しプラス側に乖離する場合でも、その推定値を大きくすることで、推定誤差が過度に大きくなる前にDPFユニット33の再生処理等を実行することが可能になり、推定誤差が大きい運転期間を短縮できる。
加えて、本実施形態では、第2の推定値dp2を増量補正するときの補正係数mpmが、差圧活用許可頻度dpfrqが補正要求頻度thf以下の範囲内で小さい頻度になるほど大きい係数値に設定される。したがって、推定PM堆積量pmdpが実PM堆積量に対しマイナス側に大きく乖離してしまうことがより的確に防止されるとともに、推定PM堆積量pmdpが実PM堆積量に対しプラス側に乖離する場合であっても、推定誤差が大きくなる前の早期にDPFユニット33の再生処理等を的確に実行させることができる。
また、本実施形態では、差圧活用許可条件dpfrqが、DPFユニット33内を通過する排気の流量が予め設定された閾値流量以上であるという条件C1を含むので、差圧センサ34の検出差圧に基づくDPFユニット33内のPM堆積量の推定精度が十分に高まる。
このように、本実施形態の内燃機関の排気浄化システムでは、推定PM堆積量pmdpが実PM堆積量に対しマイナス側の誤差を生じるときには、PMの過堆積によるDPFユニット33の過昇温や過熱による損傷が未然に防止され、推定PM堆積量pmdpが実PM堆積量に対しプラス側の誤差を生じるときには、その誤差を過度に増大させることなくDPFユニット33の再生処理を実行させることができる。
また、本実施形態の排気浄化システムにおいては、DPFユニット33が、DPFフィルタを含んで構成され、燃料添加弁39およびECU50によって構成される再生処理機構が、DPFユニット33内に堆積されたPMを酸化させる高温再生処理を実行する。したがって、ディーゼルエンジンで粗悪燃料が継続的に使用されたりしても、PMの過堆積によるDPFユニット33の過昇温や過熱による損傷を未然に有効に防止できることになる。
なお、上述の一実施形態においては、差圧活用許可頻度dpfrqを差圧活用許可時間カウントdptimを用いて演算の繰返し周期に対応する所定時間毎にその所定時間(全時間)内における頻度値として算出したが、差圧活用許可頻度dpfrqは、演算の繰返し周期に対応する所定時間のうち一部の時間内における頻度値としてもよい。
すなわち、差圧活用許可頻度dpfrqは、所定時間毎の頻度値でなく、演算の繰返し周期(例えば、N秒)に対応する所定時間のうち演算実行直前の特定の時間(例えば、m秒;ただし、m<N)内の差圧活用許可頻度(特定の時間のうちの差圧活用許可時間/特定の時間)として求めてもよい。例えば、演算の繰返し周期が数秒程度のN秒であり、演算実行直前の特定の時間がN秒より短いm秒とすると、このN秒毎に直前のm秒内における差圧活用許可頻度(m秒のうちの差圧活用許可時間/m秒)として求めてもよい。
この場合、差圧活用許可頻度dpfrqの算出やそれを用いる処理の演算周期を容易に最適化できるとともに、その頻度値を補正精度の高まる値に設定できる。
また、上述の一実施形態では、内燃機関をディーゼルエンジンとし、フィルタユニットがDPFフィルタを内蔵するものとした。しかし、本発明のPM堆積量推定装置は、PM(粒子状物質、微粒子)を捕集し再生除去処理する他のフィルタユニットを用いる内燃機関の排気浄化システムにも適用可能である。
また、エンジン10の運転状態から所定時間毎のPM排出量engpmを算出する処理、その所定時間毎のPM排出量dlpmを用いて所定時間毎のPM堆積量の増加量dlpmを算出する処理等が、前述のような処理以外の従来の処理方法に置き換え得ることはいうまでもない。
以上のように、本発明によれば、推定PM堆積量pmdpが実PM堆積量に対し乖離してしまうことによってPMの過堆積が生じるのを抑制し、DPFユニット33の過昇温や過熱による損傷を未然に防止することができる。かかる本発明は、フィルタユニット内のPM堆積量を推定するPM堆積量推定装置とそれを備えた内燃機関の排気浄化システム全般に有用である。