JP2014214503A - 棒状構造体 - Google Patents

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Abstract

【課題】必要な補剛効果を確保しつつも小断面化や軽量化を図ることが可能な座屈拘束型の棒状構造体を提供することを課題とする。【解決手段】棒状構造体Aは、構造物B1,B2に接合されるアルミニウム合金製の軸力部材1と、軸力部材1の座屈を防止する鋼製の座屈拘束部材2とを備えるものである。軸力部材1は、パイプ状の中空材11と、中空材11の両端部を閉塞するエンド材12,12とを利用して形成し、座屈拘束部材2は、中空材11に挿通するとよい。【選択図】図2

Description

本発明は、ブレース、筋交い、トラス構造のラチスなどとして使用される棒状構造体に関する。
軸力を受ける棒状構造体として、柱梁架構等に配置される座屈拘束型の鋼製ブレースが知られている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
座屈拘束型の鋼製ブレースは、架構に接合される鋼製のブレース本体(軸力材)と、ブレース本体のオイラー座屈(曲げ座屈、横座屈とも言う)を防止する鋼製の座屈拘束部材とを備えるものである。鋼製ブレースにおいては、ブレース本体および座屈拘束部材の少なくとも一方を中空状とし、一方に他方を挿通した構成を採用することが多い。
なお、座屈拘束型のブレースに関する既往の研究(非特許文献1,2参照)によれば、座屈拘束部材のオイラー座屈荷重Pe(=π2EI/L2 ;E…座屈拘束部材のヤング係数、I…座屈拘束部材の断面二次モーメント、L…座屈拘束部材の長さ)をブレース本体の降伏軸力Pyで除した値(=Pe/Py)が大きいほど、座屈拘束部材による補剛効果が大きいとされている。
特許第3702818号公報 特許第4830498号公報 特許第5034579号公報
村瀬亮、外2名、「鋼モルタル板を用いた座屈拘束ブレースの実験的研究」、日本建築学会構造系論文集、社団法人日本建築学会、2007年10月、第620号、p.117-124 田所敦志、外3名、「鋼モルタル板を用いた座屈拘束ブレースの実験的研究」、日本建築学会構造系論文集、社団法人日本建築学会、2009年7月、第74巻、第641号、p.1363-1369
座屈拘束部材による補剛効果を高めるためには、例えば、座屈拘束部材の断面二次モーメントを大きくすればよいが、このようにすると、座屈拘束部材の断面積も大きくなってしまうので、棒状構造体の大断面化を招き、ひいては、重量の増加を招く虞がある。
このような観点から、本発明は、必要な補剛効果を確保しつつも小断面化や軽量化を図ることが可能な座屈拘束型の棒状構造体を提供することを課題とする。
このような課題を解決する第一の発明に係る棒状構造体は、構造物に接合されるアルミニウム合金製の軸力部材と、前記軸力部材のオイラー座屈を防止する鋼製の座屈拘束部材とを備えることを特徴とする。
第一の発明に係る棒状構造体は、曲げよりも軸力を主体的に受けるブレース、筋交い、トラス構造のラチス(弦材)などとして使用されるものである。
第一の発明によれば、軸力部材をアルミニウム合金製としているので、棒状構造体の軽量化を図ることが可能になる。また、鋼のヤング係数は、アルミニウム合金のヤング係数の約3倍であることから、座屈拘束部材を鋼製とすれば、その断面二次モーメントの大きさをアルミニウム合金製の座屈拘束部材を用いた場合に必要となる断面二次モーメントの1/3にしても、必要なオイラー座屈荷重Pe(=π2EI/L2)を得ることができる。つまり、本発明によれば、必要な補剛効果を確保しつつも小断面化を図ることが可能になる。
なお、第一の発明においては、座屈拘束部材を中空状とし、座屈拘束部材に軸力部材を挿通してもよいし、軸力部材を中空状とし、軸力部材に座屈拘束部材を挿通してもよい。
軸力部材を中空状とする場合には、パイプ状の中空材と、前記中空材の両端部を閉塞するエンド材とを利用して軸力部材を形成し、前記中空材に前記座屈拘束部材を挿通するとよい。
このようにすると、鋼製の座屈拘束部材の全体が軸力部材によって覆われるようになるので、座屈拘束部材への雨水等の付着を防ぐことができ、ひいては、座屈拘束部材の腐食を防ぐことが可能になる。
軸力部材の中空材に座屈拘束部材を挿通する場合には、前記中空材の内空断面形状と略同一の外形を有する鋼管を前記座屈拘束部材とし、前記中空材の内面と前記座屈拘束部材の外面との間にクリアランスを設けるとよい。
座屈拘束部材の外形を中空材の内空断面形状と略同一にすると、軸力部材の中空材が如何なる方向に曲がろうとしても、座屈拘束部材の外面が中空材の内面に速やかに接触するので、中空材にオイラー座屈が発生する荷重を大きくすることが可能になる。また、中空材の内面と座屈拘束部材の外面との間にクリアランスを設けておけば、中空材の内面と座屈防止部材の外面との間に摩擦力が発生し難くなる結果、座屈拘束部材への軸力伝達を抑制することが可能になり、ひいては、座屈拘束部材がオイラー座屈すること(すなわち、補剛効果が損なわれること)を防止することが可能になる。
また、軸力部材の中空材に座屈拘束部材を挿通する場合には、前記座屈拘束部材の開口端に当接する当接部材と、前記エンド材から前記当接部材に至る支持部材とを設けるとともに、前記当接部材および前記支持部材の少なくとも一方を、前記座屈拘束部材のオイラー座屈荷重よりも小さい荷重で塑性変形するように構成するとよい。
このようにすると、当接部材と支持部材とによって座屈拘束部材が中空材内部の所定位置に位置決めされることになるが、エンド材を介して当接部材および支持部材に大きな軸力が作用したときには、当接部材および支持部材の少なくとも一方に塑性変形が発生するようになる。すなわち、当接部材および支持部材の少なくとも一方が塑性変形するように構成しておけば、座屈拘束部材に軸力が伝わりに難くなるので、軸力部材に大きな軸力が作用したときでも、座屈拘束部材にオイラー座屈が発生することを抑制することが可能になり、したがって、座屈拘束部材の小断面化を図っても、軸力部材に対する必要な補剛効果を確保することが可能になる。
エンド材に雌ねじ孔を形成し、前記雌ねじ孔に螺合する雄ねじ部を支持部材に設けるとともに、支持部材から押抜力を受けて塑性変形するプレート材を当接部材とするとよい。
このようにすると、簡易な構成でありながらも、雄ねじ部のねじ込み操作によって当接部材の位置(すなわち、座屈拘束部材の位置)を調整することが可能になり、さらには、プレート材からなる当接部材が塑性変形することによって、座屈拘束部材への軸力伝達を抑制することが可能になる。
上記課題を解決する第二の発明に係る棒状構造体は、構造物に接合される中空の軸力部材と、前記軸力部材に収容された座屈拘束部材と、前記座屈拘束部材の端面に当接する当接部材と、前記軸力部材の端部から前記当接部材に至る支持部材とを備える棒状構造体であって、前記当接部材および前記支持部材の少なくとも一方は、前記座屈拘束部材のオイラー座屈荷重よりも小さい荷重で塑性変形する、ことを特徴とする。
第二の発明によれば、軸力部材を介して当接部材および支持部材に大きな軸力が作用したときに、当接部材および支持部材の少なくとも一方に塑性変形が発生するようになる。すなわち、第二の発明によれば、座屈拘束部材に軸力が伝わりに難くなるので、軸力部材に大きな軸力が作用したときでも、座屈拘束部材にオイラー座屈が発生すること(すなわち、補剛効果が損なわれること)を抑制することが可能になり、したがって、座屈拘束部材の小断面化を図っても、軸力部材に対する必要な補剛効果を確保することが可能になる。
前記軸力部材が、パイプ状の中空材と、前記中空材の両端部を閉塞するエンド材とを具備している場合には、前記エンド材に、前記中空材の内部に通じる雌ねじ孔を形成するとともに、前記雌ねじ孔に螺合する雄ねじ部を前記支持部材に設け、前記支持部材から押抜力を受けて塑性変形するプレート材を前記当接部材とするとよい。
このようにすると、簡易な構成でありながらも、雄ねじ部のねじ込み操作によって当接部材の位置(座屈拘束部材の位置)を調整することが可能になり、さらには、プレート材からなる当接部材が塑性変形することによって、座屈拘束部材への軸力伝達を抑制することが可能になる。
本発明によれば、小径化や軽量化を図りつつも高い補剛効果を得ることが可能になる。
本発明の実施形態に係る棒状構造体の使用状態を示す斜視図である。 本発明の実施形態に係る棒状構造体の断面図である。 軸力部材、当接部材および支持部材の分解斜視図である。 当接部材に塑性変形が発生した状態を示す断面図である。 実施例に係る棒状構造体の復元力特性を示すグラフである。 比較例に係る棒状構造体の復元力特性を示グラフである。
本実施形態に係る棒状構造体Aは、図1に示すように、構造物である枠状フレームBに接合されたブレースであり、枠状フレームBとともに後付けの補強架構を構成している。この補強架構は、既存の柱梁架構Cを耐震補強するものである。
棒状構造体Aは、図2に示すように、中空の軸力部材1と、軸力部材1に収容された座屈拘束部材2と、座屈拘束部材2の端面に当接する当接部材3と、軸力部材1の端部から当接部材3に至る支持部材4とを備えている。
軸力部材1は、地震力に起因して枠状フレームB(図1参照)がせん断変形した際に軸力を受ける部材である。図1に示すように、軸力部材1の一方の端部は、枠状フレームBの角部の接合部B1に接合されており、軸力部材1の他方の端部は、枠状フレームBの辺部の接合部B2に接合されている。
本実施形態の軸力部材1は、図3に示すように、パイプ状の中空材11と、中空材11の両端部を閉塞するエンド材12,12とを備えている。
中空材11は、アルミニウム合金製の押出形材からなる。中空材11の外形および内空断面形状は、いずれも円形である。なお、中空材11の外形および内空断面形状は、矩形、多角形、楕円形など円形以外の形状としても差し支えない。
本実施形態では、中空材11の母材として、溶接により軟化することのないA5083−O合金(焼きなましをしたAl−Mg系合金)を用いている。A5083−O合金は、耐力は低いものの、母材の降伏により大きな塑性変形能力が得られるので、エネルギー吸収能力が高い靭性型の復元力特性を実現することが可能になる。
なお、中空材11の母材としては、非熱処理型合金であるJIS規格の5000系アルミニウム合金(Al−Mg系合金)のほか、熱処理型合金であるJIS規格の6000系アルミニウム合金(Al−Mg−Si系合金)やJIS規格の7000系アルミニウム合金(Al−Zn−Mg系合金)を用いることができる。
6000系アルミニウム合金を用いる場合には、高い耐力を有するA6061−T6合金(溶体化処理後に焼入れ処理をし、その後に人工時効処理をしたAl−Mg−Si系合金)が好適である。
7000系アルミニウム合金を用いる場合には、A7003−T5合金(常温まで冷却した後に人工時効処理をしたAl−Zn−Mg系合金)が好適である。A7003−T5合金は、耐力が高くヤング係数が低いため、強度型の復元力特性を実現することが可能になる。
エンド材12は、アルミニウム合金製の押出形材を切削して形成したものである。エンド材12の母材は、A7003−T5合金である。
本実施形態のエンド材12は、中空材11の端部に接合される蓋部1aと、蓋部1aに立設された一対のフォーク1c,1cとを備えている。蓋部1aには、雌ねじ孔1bが形成されており、各フォーク部1cには、ピン孔1dが形成されている。
蓋部1aは、中空材11の内部に挿入される部分(小径部)と、中空材11の端面に突き合わされる部分(大径部)とを備えていて、段付き円柱状を呈している。小径部の外径は中空材11の内径以下であり、大径部の外径は、中空材11の外径と等しい。蓋部1aの大径部と中空材11との突き合わせ部は、その全周に亘って接合されている。
雌ねじ孔1bは、蓋部1aを貫通している。本実施形態の雌ねじ孔1bは、フォーク1c,1cの間において蓋部1aの外側の端面に開口するとともに、蓋部1aの内側(中空材11の内空側)の端面の中央に開口している。雌ねじ孔1bの孔壁には、雌ネジが螺刻されている。また、雌ねじ孔1bの中心軸は、中空材11の中心軸と一致している。
フォーク1c,1cは、互いに平行に設けられていて、図2に示すように、構造物の接合部B1,B2の厚さと同等の間隔をあけて対向している。
ピン孔1dは、フォーク1cを貫通している(図3参照)。ピン孔1dには、接合用のピンDが挿入される。一方のピン孔1dの中心軸は、他方のピン孔1dの中心軸と同軸であり、かつ、中空材11の中心軸に直交している。
座屈防止部材2は、軸力部材1のオイラー座屈(曲げ座屈)を防止する目的で配置された部材である。本実施形態の座屈防止部材2は、中空材11よりも短尺の鋼管からなり、座屈防止部材2の全体が中空材11に挿通されている。座屈防止部材2の母材は、STK400(一般構造用炭素鋼)である。座屈防止部材2の外形は、中空材11の内空断面形状と略同一であり、中空材11の内面と座屈拘束部材2の外面との間には、クリアランス(隙間)が設けられている。本実施形態では、座屈防止部材2の全周に亘って1.5mmのクリアランスを確保できるよう、座屈防止部材2の外径を中空材11の内径よりも3mmだけ小さくしている。なお、クリアランスの大きさは、中空材11の内径や座屈拘束部材2の外径等に応じて適宜設定すればよい。
当接部材3は、座屈拘束部材2の内径よりも大きな直径を有する円板状のプレート材からなり(図3参照)、座屈拘束部材2の開口端に当接している。なお、本実施形態の当接部材3は、座屈拘束部材2の外径よりも若干大きな直径を有している。当接部材3は、支持部材4から受ける押抜力によって塑性変形するように形成されているが(図4参照)、地震力に起因した軸力が軸力部材1に作用しない通常時においては、支持部材4とともに座屈拘束部材2の位置決めとして機能する。なお、当接部材3の板厚は、座屈拘束部材2のオイラー座屈荷重よりも小さい荷重で塑性変形するような大きさに設定する。
支持部材4は、段付きボルト41と、段付きボルト41の小径部に螺合されるナット42とを備えている。
段付きボルト41は、図2に示すように、エンド材12の雌ねじ孔1bに螺合する第一雄ねじ部4aと、当接部材3の貫通孔に挿入される第二雄ねじ部4bとを備えている。第一雄ねじ部4aのフォーク1c側の端面には、六角棒レンチ等の工具を係合するための六角穴(図示略)が凹設されており、座屈拘束部材2側の端面には、第二雄ねじ部4bが突設されている。第一雄ねじ部4aの外径は、当接部材3の貫通孔の孔径よりも大きく、第一雄ねじ部4aの端面は、当接部材3の貫通孔の開口縁部に係止される。第二雄ねじ部4bは、第一雄ねじ部4aよりも小径であり、エンド材12側から当接部材3の貫通孔に挿通される。貫通孔から突出した第二雄ねじ部4bには、ナット42が螺合されている。すなわち、当接部材3は、ナット42と第一雄ねじ部4aの端面とによって挟持されている。
棒状構造体Aを製造する手順の一例は、次のとおりである。
まず、中空材11の一方の端部にエンド部材12を接合する。具体的には、蓋部1aの小径部を中空材11の内部に挿入しつつ、蓋部1aの大径部を中空材11の端面に突き合わせ、蓋部1aの大径部と中空材11との突き合わせ部を全周に亘って溶接接合または摩擦攪拌接合を施せばよい。あるいは、中空材11とエンド部材12とを相対回転させつつ突き合わせて両者を摩擦圧接してもよい。なお、当接部材3および支持部材4は、エンド部材12を中空材11に接合する前にエンド部材12に装着しておく。
次に、中空材11の開口端から座屈拘束部材2を挿入し、その後、中空材11の他方の端部(開口端)にエンド部材12を接合する。
中空材11の両端にエンド部材12を接合したら、支持部材4をねじ込み、当接部材3を座屈拘束部材2の端面に当接させる。
本実施形態に係る棒状構造体Aの作用効果は、次のとおりである。
棒状構造体Aでは、軸力部材1をアルミニウム合金製としているので、棒状構造体Aの軽量化を図ることが可能になる。
また、棒状構造体Aでは、軸力部材1の内部に座屈拘束部材2を収容しているので、座屈拘束部材2の断面二次モーメントを無制限に大きくすることはできないが、アルミニウム合金よりもヤング係数の大きい鋼製の座屈拘束部材2を使用しているので、座屈拘束部材2をアルミニウム合金製とした場合よりも、座屈拘束部材2のオイラー座屈荷重Pe(=π2EI/L2 ;E…座屈拘束部材2のヤング係数、I…座屈拘束部材2の断面二次モーメント、L…座屈拘束部材2のピン間距離)は大きくなり、したがって、座屈拘束部材2による補剛効果が大きなものとなる。すなわち、鋼のヤング係数は、アルミニウム合金のヤング係数の約3倍であることから、座屈拘束部材2を鋼製とすれば、その断面二次モーメントの大きさをアルミニウム合金製の座屈拘束部材を用いた場合に必要となる断面二次モーメントの1/3にしても、必要なオイラー座屈荷重Pe(=π2EI/L2)を得ることができる。このように、棒状構造体Aによれば、必要な補剛効果を確保しつつも小断面化を図ることが可能になる。
棒状構造体Aでは、中空材11の両端の開口をエンド部材12,12で閉塞したので、軸力部材1は、密閉された容器となる。すなわち、棒状構造体Aによれば、座屈拘束部材2の全体が軸力部材1によって覆われるようになるので、座屈拘束部材2への雨水等の付着を防ぐことができ、ひいては、座屈拘束部材2の腐食を防ぐことが可能になる。また、棒状構造体Aでは、軸力部材Aの内部に配置した当接部材3と支持部材4によって、座屈拘束部材2が保持されるので、座屈拘束部材2を所定位置に位置決めすることができる。
棒状構造体Aでは、座屈拘束部材2の外形を中空材11の内空断面形状と略同一にしているが、このようにすると、軸力部材1の中空材11が如何なる方向に曲がろうとしても、座屈拘束部材2の外面が中空材11の内面に速やかに接触するようになるので、中空材11にオイラー座屈が発生する荷重を大きくすることが可能になる。
また、棒状構造体Aでは、中空材11の内面と座屈拘束部材2の外面との間にクリアランスを設けているが、このようにすると、中空材11の内面と座屈防止部材2の外面との間に摩擦力が発生し難くなる結果、座屈拘束部材2への軸力伝達を抑制することが可能になり、ひいては、座屈拘束部材2がオイラー座屈することを防止することが可能になる。
地震力に起因して枠状フレームB(図1参照)にせん断変形が生じ、軸力部材1に圧縮力が作用すると、当接部材3および支持部材4を介して座屈防止部材2にも圧縮力が作用することになるが、当接部材3が支持部材4から受ける押抜力が大きくなると、図4に示すように、当接部材3に円錐状の塑性曲げ変形が発生するようになるので、座屈拘束部材2に大きな圧縮力が作用することを防ぐことができる。なお、当接部材3は、座屈拘束部材2に接合されていないので、座屈拘束部材2に引張力が伝わることはない。このように、棒状構造体Aによれば、座屈拘束部材2に軸力が伝わりに難くなるので、軸力部材1に大きな軸力が作用したときでも、座屈拘束部材2にオイラー座屈が発生することを抑制することが可能になり、したがって、座屈拘束部材2の小断面化を図っても、軸力部材1に対する必要な補剛効果を確保することが可能になる。
なお、本実施形態では、当接部材3を座屈拘束部材2に固定せずに支持部材4に固定した場合を例示したが、当接部材3を溶接等によって座屈拘束部材2に固定し、当接部材3を支持部材4に固定しない構造としてもよい。また、一方の当接部材3を溶接等によって座屈拘束部材2に固定し、他方の当接部材3のみを座屈拘束部材2に固定しない構造としてもよい。また、本実施形態では、当接部材3に塑性変形が発生する場合を例示したが、細径の支持部材4を用いるなどして、支持部材4に塑性変形が発生するように構成してもよい。
また、本実施形態では、座屈防止部材2の外形を中空材11の内空断面形状と略同一としたが、適宜変更してもよい。例えば、図示は省略するが、円筒形の中空材11に対して、角筒形、H形、I形、溝形、山形、十字形の座屈防止部材2を用いてもよい。
また、本実施形態では、座屈拘束部材2の外側に中空状の軸力部材1を配置した場合を例示したが、軸力部材の外側に中空状の座屈拘束部材を配置してもよい。
棒状構造体Aの作用効果を確認する試験を実施した。
実施例においても、軸力部材1はアルミニウム合金製(中空材11:A5083−O合金、エンド材12:A7003−T5合金)であり、座屈拘束部材2は鋼製(STK400)である。また、当接部材3および支持部材4はオーステナイト系のステンレス鋼製(SUS304)である。棒状構造体Aの諸元は、表1に示すとおりである。
Figure 2014214503
比較例1,2に係る棒状構造体は、アルミニウム合金製の軸力部材1のみからなり、座屈拘束部材2、当接部材3および支持部材4を備えていない。
なお、比較例1に係る棒状構造体では、軸力部材1の中空材11をA5083−O合金、エンド材12をA7003−T5合金とし、比較例2に係る棒状構造体では、軸力部材1の中空材11をA7003−T5合金、エンド材12をA7003−T5合金としている。
比較例1,2における軸力部材1の諸元は、表1に示すものと同じである。
実施例に係る棒状構造体Aおよび比較例に係る棒状構造体のそれぞれに対して繰り返し載荷試験(正負交番で軸力を付与する試験)を行い、図5および図6に示す復元力特性を得た。横軸は、軸歪み(=軸方向の変形量δ/ピン間距離L×100(%))であり、縦軸は、中空材11に作用する応力(=軸力/中空材11の断面積)である。
図5に示すように、実施例に係る棒状構造体Aでは、中空材11に作用する圧縮応力が300(N/mm2)まで達してもオイラー座屈が発生せず、引張と圧縮とで履歴特性が同等となった。つまり、実施例に係る棒状構造体Aによれば、軸力部材1にオイラー座屈が生じ難くなる結果、地震エネルギーを効果的に吸収し得る紡錘形の復元力特性が得られるので、構造物に対して制震性能を付与することも可能となる。なお、試験後の棒状構造体Aを確認したところ、当接部材3に塑性変形(図4参照)が発生していたものの、座屈防止部材2は健全な状態(オイラー座屈が発生しない状態)であった。
これに対し、比較例1に係る棒状構造体では、母材の降伏により大きな塑性変形能力が得られるA5083−O合金を用いて中空材を形成しているので、図6に示すように、地震エネルギーをある程度は吸収できるものの、その量は、実施例に係る棒状構造体Aに比べると小さい。
また、比較例2に係る棒状構造体では、耐力が高くヤング係数が低いA7003−T5合金を用いて中空材を形成しているので、比較例1よりも大きな軸力まで耐えることができるが、中空材に作用する圧縮応力が250(N/mm2)となった時点で中空材にオイラー座屈が発生してしまい、その後は耐力が低下してしまったので、地震エネルギーの吸収量は、実施例に係る棒状構造体Aに比べて大幅に小さくなった。
A 棒状構造体
B 枠状フレーム(構造物)
1 軸力部材
11 中空材
12 エンド材
1b 雌ねじ孔
2 座屈拘束部材
3 当接部材
4 支持部材
41 段付きボルト
4a 第一雄ねじ部
4b 第二雄ねじ部

Claims (7)

  1. 構造物に接合されるアルミニウム合金製の軸力部材と、
    前記軸力部材の座屈を防止する鋼製の座屈拘束部材とを備えることを特徴とする棒状構造体。
  2. 前記軸力部材は、パイプ状の中空材と、前記中空材の両端部を閉塞するエンド材とを有し、
    前記座屈拘束部材は、前記中空材に挿通されている、ことを特徴とする請求項1に記載の棒状構造体。
  3. 前記座屈拘束部材は、前記中空材の内空断面形状と略同一の外形を有する鋼管からなり、
    前記中空材の内面と前記座屈拘束部材の外面との間にクリアランスが設けられていることを特徴とする請求項2に記載の棒状構造体。
  4. 前記座屈拘束部材の開口端に当接する当接部材と、
    前記エンド材から前記当接部材に至る支持部材とを備えており、
    前記当接部材および前記支持部材の少なくとも一方は、前記座屈拘束部材のオイラー座屈荷重よりも小さい荷重で塑性変形する、ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の棒状構造体。
  5. 前記エンド材には、前記中空材の内部に通じる雌ねじ孔が形成されており、
    前記支持部材は、前記雌ねじ孔に螺合する雄ねじ部を有し、
    前記当接部材は、前記支持部材から押抜力を受けて塑性変形するプレート材からなる、ことを特徴とする請求項4に記載の棒状構造体。
  6. 構造物に接合される中空の軸力部材と、
    前記軸力部材に収容された座屈拘束部材と、
    前記座屈拘束部材の端面に当接する当接部材と、
    前記軸力部材の端部から前記当接部材に至る支持部材とを備える棒状構造体であって、
    前記当接部材および前記支持部材の少なくとも一方は、前記座屈拘束部材のオイラー座屈荷重よりも小さい荷重で塑性変形する、ことを特徴とする棒状構造体。
  7. 前記軸力部材は、パイプ状の中空材と、前記中空材の両端部を閉塞するエンド材とを有し、
    前記エンド材には、前記中空材の内部に通じる雌ねじ孔が形成されており、
    前記支持部材は、前記雌ねじ孔に螺合する雄ねじ部を有し、
    前記当接部材は、前記支持部材から押抜力を受けて塑性変形するプレート材からなる、ことを特徴とする請求項6に記載の棒状構造体。
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