JP2014214088A - 新規な猫3種混合ワクチン - Google Patents
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Abstract
【課題】注射部位に肉腫が発生する等の副作用を軽減した猫ウイルス性鼻気管炎ウイルス、猫カリシウイルス及び猫パルボウイルスの猫3種混合ワクチンの提供。
【解決手段】アジュバントを配合しない、猫ウイルス性鼻気管炎ウイルスの生ワクチンそして3種の猫カリシウイルスの不活化ワクチン及び猫パルボウイルスの不活化ワクチンを組み合わせた混合ワクチンで、アジュバントを使用しないため、副作用が少なく、安全で効力の高いワクチンとなった。前記猫3種混合ワクチンを、2ヶ月齢の猫に3〜4週間隔で2回接種し、翌年から年1回接種することを特徴とする上部呼吸器疾患及び猫汎白血球減少症から猫を防御する方法。
【選択図】なし
【解決手段】アジュバントを配合しない、猫ウイルス性鼻気管炎ウイルスの生ワクチンそして3種の猫カリシウイルスの不活化ワクチン及び猫パルボウイルスの不活化ワクチンを組み合わせた混合ワクチンで、アジュバントを使用しないため、副作用が少なく、安全で効力の高いワクチンとなった。前記猫3種混合ワクチンを、2ヶ月齢の猫に3〜4週間隔で2回接種し、翌年から年1回接種することを特徴とする上部呼吸器疾患及び猫汎白血球減少症から猫を防御する方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、猫ウイルス性鼻気管炎ウイルス、猫カリシウイルス及び猫汎白血球減少症からなる猫3種混合ワクチンに関する。
猫ウイルス性鼻気管炎(FVR)、猫カリシウイルス(FCV)感染症(FCI)及び猫汎白血球減少症(FPL)の3種は発生頻度の高い猫の感染症である。国内の疫学調査において、231検体の血清のうち猫汎白血球減少症ウイルス(FPLV)抗体陽性が61.5%、猫ウイルス性鼻気管炎ウイルス(FVRV)抗体陽性が17.3%、猫カリシウイルス抗体陽性が74.3%であったという報告がある(非特許文献1を参照)。
これら3種類の病原ウイルスのうち、FVRの病因であるFHV-1はヘルペスウイルス科、アルファウイルス亜科に分類される猫ヘルペスウイルス1であり、その症状から猫ウイルス性鼻気管炎ウイルス(FVRV)と呼ばれる。FVRは、急性、慢性あるいは潜伏感染の形態をとり、結膜炎と鼻気管炎が最も特徴的であるが、舌炎、膣炎及び流産も引き起こす。FCIの病因ウイルスはFCVであり、カリシウイルス科、ベシウイルス属に分類される小型のRNAウイルスである。FCIはFVRと同様の臨床症状を示し、発熱、鼻炎、気管炎、肺炎に伴う臨床症状、口腔・舌上皮の水泡・潰瘍形成などを認め、FVRより軽症のことが多い。FPLの病原ウイルスはFPLVであり、パルボウイルス科、パルボウイルス亜科、パルボウイルス属に分類される小型のDNAウイルスである。FPLは発熱、嘔吐、下痢を主徴として顕著な白血球数の減少を示し、急性で致死率が高い。
これら3種類の感染症に対するワクチン(以後、猫3種ワクチンという。)は、猫のコアワクチンとして広く使用されており、さらにこれら3種に他の感染症を加えた多種混合ワクチンも多数使用されている(特許文献1〜3を参照)。発明者らも猫3種ワクチンとして”京都微研”フィラインー3を提供し、続いてこれに猫白血病を加えた”京都微研”フィライン−4を、さらにクラミジアを加えた”京都微研”フィライン−7を市場に供してきた。
これら”京都微研”フィライン各製品には不活化ウイルスが含まれ、有効性向上のため油性アジュバントが用いられている。油性アジュバント含有ワクチンは注射局所反応が強く、近年猫において注射部位に肉腫が発生する事例が報告されている。そのため獣医師からはアジュバントを含まないワクチンの開発を望む声も高くなってきている。
日本の猫に分布するウイルス抗体の検索(日本獣医師会雑誌、38巻(2号)P.108-112 (1985))
本発明の目的は、従来の猫3種ワクチンと同等以上の効力を有しながら、注射部位に肉腫発生等の副作用のないワクチンを提供することである。換言すればアジュバントを含まない猫3種ワクチンの提供である。
この課題は、ワクチン抗原を全て弱毒生ワクチンとすれば容易に達成できるが、ワクチン接種猫がワクチン抗原によって発病するという笑えない事態を招く危険性が少ないながらも存在する。本発明者らは鋭意研究の結果、アジュバントを含まない3種ワクチンとして、FVRは生ワクチン、FCIとFPLは不活化ワクチンとする組み合わせが最適であることを究明し本発明を完成させた。この組み合わせによるアジュバントを含まない猫3種ワクチンは世界初である。
FVRVは、e25 CR/5-100株を1ドースあたりのウイルス量が、105.5TCID50以上となるように加える。FVRVはウイルス血症を起こさず、細胞から細胞へ感染し、中和抗体を産生しにくいため、細胞免疫による防御が有効であり、少量のウイルスで有効かつ安全な生ワクチンになると考えられる。実際e25 CR/5-100株は、これまで接種した猫に発病をもたらしたことはなく、生ワクチンの抗原として極めて安全であることが確認されている。
FCVは FC-7株とFC-28株及びFC-64株の3種を、それぞれ不活化前に108.0TCID50以上となるように加える。これらのFC株の組み合わせは、既に”京都微研”フィライン−7で採用されている。その目的は主として多様なFCVへの対応であったが、一方アジュバントなしでも免疫効果が持続することが観測されていた。
FPLVはFP-5株を1ドースあたりのウイルス量が、不活化前に105.5TCID50以上含まれるよう加える。このFP-5株もアジュバントを加えることなく免疫効果が持続することが確認されているが、その理由は不明である。
FCVとFPLVは0.2〜0.25%のホルマリン感作で不活化されるが、これに限定されない。
本発明のワクチンにより、FVR、FCI及びFPLの頻度の高い猫3種の感染症が、副作用を伴わず効果的に防護される。
以下に実施例を記載する。
混合ワクチンの調製:
1)猫ウイルス性鼻気管炎ウイルス原液の調製
CRFK細胞(ATCCより購入)を1×105個/mLに調整して、2リットルのローラーフラスコ中に分注し、0.3% トリプトース・ホスフェート・ブロス及び5% 牛胎児血清を加えた改変イーグル培地(MEM、Gibco BRL社製)を用いて、37℃、2〜3日間培養し、細胞層を形成させた。培養細胞の培養液を除き、1mL当たり約105.5TCID50のe25 CR/5-100株を培養細胞に接種し、32℃で60分間吸着させた後ウイルス増殖用培養液(自家製)を加え、37℃、1〜2日間回転培養し、ウイルスの増殖極期に培養液を採取した後、3,000G、30分間遠心し、その上清に安定剤液(10% 蔗糖、5%乳糖、2% L-アルギニン塩酸塩、0.3% PVP K-90)を等量加えて原液とした。この原液を1ドースあたりのウイルス量が、FVRVは105.5TCID50以上となるようバイアルに分注し凍結乾燥した。
1)猫ウイルス性鼻気管炎ウイルス原液の調製
CRFK細胞(ATCCより購入)を1×105個/mLに調整して、2リットルのローラーフラスコ中に分注し、0.3% トリプトース・ホスフェート・ブロス及び5% 牛胎児血清を加えた改変イーグル培地(MEM、Gibco BRL社製)を用いて、37℃、2〜3日間培養し、細胞層を形成させた。培養細胞の培養液を除き、1mL当たり約105.5TCID50のe25 CR/5-100株を培養細胞に接種し、32℃で60分間吸着させた後ウイルス増殖用培養液(自家製)を加え、37℃、1〜2日間回転培養し、ウイルスの増殖極期に培養液を採取した後、3,000G、30分間遠心し、その上清に安定剤液(10% 蔗糖、5%乳糖、2% L-アルギニン塩酸塩、0.3% PVP K-90)を等量加えて原液とした。この原液を1ドースあたりのウイルス量が、FVRVは105.5TCID50以上となるようバイアルに分注し凍結乾燥した。
2)猫カリシウイルスの原液の調製
上記のCRFK細胞と改変イーグル培地を用いて上記と同様の手法で猫カリシウイルスFC-7、FC-28及びFC-64株をそれぞれ32℃、2〜3日間回転培養した。ウイルスの増殖極期に培養液を採取した後、3,000G、30分間遠心し、その上清をウイルス浮遊液とした。ウイルス浮遊液にホルマリンを0.2%となるよう加えて22℃、2日間感作してウイルスを不活化してそれぞれの原液とした。
上記のCRFK細胞と改変イーグル培地を用いて上記と同様の手法で猫カリシウイルスFC-7、FC-28及びFC-64株をそれぞれ32℃、2〜3日間回転培養した。ウイルスの増殖極期に培養液を採取した後、3,000G、30分間遠心し、その上清をウイルス浮遊液とした。ウイルス浮遊液にホルマリンを0.2%となるよう加えて22℃、2日間感作してウイルスを不活化してそれぞれの原液とした。
3)猫汎白血球減少症ウイルスの原液の調製
前記2)と同様の材料、手法でFPLV FP-5株のウイルス浮遊液を調製し、このウイルス浮遊液にホルマリンを0.25%となるよう加えて37℃、3日間感作してウイルスを不活化して原液とした。
前記2)と同様の材料、手法でFPLV FP-5株のウイルス浮遊液を調製し、このウイルス浮遊液にホルマリンを0.25%となるよう加えて37℃、3日間感作してウイルスを不活化して原液とした。
4)混合ワクチンの調製
FCV及びFPLVの各原液を1ドースあたりのウイルス量が、FCVの FC-7株とFC-28株及びFC-64株の3種はそれぞれ不活化前に108.0TCID50以上、FPLVは不活化前に105.5TCID50以上含まれるよう、リン酸緩衝食塩液に加え不活化ワクチン液とした。この不活化ワクチン液を1ドース分に小分けした。凍結乾燥した1バイアルのFVRVを1ドース分の不活化ワクチン液にて溶解し混合ワクチンとした。
FCV及びFPLVの各原液を1ドースあたりのウイルス量が、FCVの FC-7株とFC-28株及びFC-64株の3種はそれぞれ不活化前に108.0TCID50以上、FPLVは不活化前に105.5TCID50以上含まれるよう、リン酸緩衝食塩液に加え不活化ワクチン液とした。この不活化ワクチン液を1ドース分に小分けした。凍結乾燥した1バイアルのFVRVを1ドース分の不活化ワクチン液にて溶解し混合ワクチンとした。
安全性試験:
実施例1にて調製した混合ワクチンを3施設合計63頭(雄29頭、雌34頭)の猫を用いて臨床試験を実施した。第1回注射は混合ワクチン1mLを皮下に注射し、第2回注射は第1回注射の3週間後に1mL皮下注射した。注射後の状態を毎日は観察した。その結果を表1に示す。
第1回注射時に軽度の異常が認められたものの症状は一過性で、いずれの猫も無処置で翌日には回復し、第2回注射時に異常は全く認められなかった。以上より本ワクチンは安全性に優れていることが実証された。
実施例1にて調製した混合ワクチンを3施設合計63頭(雄29頭、雌34頭)の猫を用いて臨床試験を実施した。第1回注射は混合ワクチン1mLを皮下に注射し、第2回注射は第1回注射の3週間後に1mL皮下注射した。注射後の状態を毎日は観察した。その結果を表1に示す。
第1回注射時に軽度の異常が認められたものの症状は一過性で、いずれの猫も無処置で翌日には回復し、第2回注射時に異常は全く認められなかった。以上より本ワクチンは安全性に優れていることが実証された。
有効性試験
本ワクチンを3週間隔2回猫に接種し、継続的に採取した血清について、FCVとFPLV、 FHVの抗体価の推移を測定した。結果を図1〜3に示す。その結果、本ワクチン接種猫は3株のFCVに対し良好な抗体応答を示し、1年経過後でも最少有効抗体価の16倍以上を維持していた。また、FPLVのピーク時抗体価は、1年後でも両ワクチン接種猫から最少有効抗体価128倍以上の抗体が検出された。一方、FHV抗体は42週後から陰性を示した。しかしながらそのような猫でもFHVに対し十分な免疫力を有していることを次に実証する。
本ワクチンを3週間隔2回猫に接種し、継続的に採取した血清について、FCVとFPLV、 FHVの抗体価の推移を測定した。結果を図1〜3に示す。その結果、本ワクチン接種猫は3株のFCVに対し良好な抗体応答を示し、1年経過後でも最少有効抗体価の16倍以上を維持していた。また、FPLVのピーク時抗体価は、1年後でも両ワクチン接種猫から最少有効抗体価128倍以上の抗体が検出された。一方、FHV抗体は42週後から陰性を示した。しかしながらそのような猫でもFHVに対し十分な免疫力を有していることを次に実証する。
本ワクチン免疫猫のFHV攻撃試験
本ワクチン接種42週後からFHV抗体が陰性となったため、そのような猫の免疫状態を攻撃試験によって検討した。試験には初年度に3週間隔で2回本ワクチンを注射し、1年後にFHV抗体が陰性となった猫を用い、ワクチン未接種対照猫とともに、103.0TCID50/0.1mLのFHV強毒C7501株で点鼻接種した。攻撃3週間にわたって抗体応答と結膜からのウイルス分離、体温測定と臨床観察を行い、結果を図4〜6に示した。攻撃後2ヶ月以内に本ワクチン接種猫のFHV中和抗体価は200倍以上に上昇するなど、対照猫に比べ早期に抗体応答が認められた(図4)。本ワクチン接種猫の鼻孔スワブから分離されたFHV量は、対照猫のほぼ半量であり、分離期間も対象猫の半分である7日間であった(図5)。対照猫が40℃以上の発熱を示したのに対し、本ワクチン接種猫の体温は試験期間中39℃以下であった(図6)。これらの成績は、本ワクチン接種猫は抗体が消失しても免疫学的記憶を保持し、FHVの感染に対し迅速に対応していることを示している。感染ウイルスの増殖が抑えられたことにより、発熱や臨床症状が軽減していることも示されている。
本ワクチン接種42週後からFHV抗体が陰性となったため、そのような猫の免疫状態を攻撃試験によって検討した。試験には初年度に3週間隔で2回本ワクチンを注射し、1年後にFHV抗体が陰性となった猫を用い、ワクチン未接種対照猫とともに、103.0TCID50/0.1mLのFHV強毒C7501株で点鼻接種した。攻撃3週間にわたって抗体応答と結膜からのウイルス分離、体温測定と臨床観察を行い、結果を図4〜6に示した。攻撃後2ヶ月以内に本ワクチン接種猫のFHV中和抗体価は200倍以上に上昇するなど、対照猫に比べ早期に抗体応答が認められた(図4)。本ワクチン接種猫の鼻孔スワブから分離されたFHV量は、対照猫のほぼ半量であり、分離期間も対象猫の半分である7日間であった(図5)。対照猫が40℃以上の発熱を示したのに対し、本ワクチン接種猫の体温は試験期間中39℃以下であった(図6)。これらの成績は、本ワクチン接種猫は抗体が消失しても免疫学的記憶を保持し、FHVの感染に対し迅速に対応していることを示している。感染ウイルスの増殖が抑えられたことにより、発熱や臨床症状が軽減していることも示されている。
Claims (6)
- 生きた猫ウイルス性鼻気管炎ウイルス(FVRV)抗原と不活化猫カリシウイルス(FCV)抗原及び不活化猫パルボウイルス(FPLV)抗原を含むことを特徴とする猫3種混合ワクチン。
- FVRVはe25 CR/5-100株を、FCVはFC-7株とFC-28株及びFC-64株の3種を、そしてFPLVはFP-5株を用いることを特徴とする請求項1に記載の猫3種混合ワクチン。
- 1ドースあたりのウイルス量が、FVRVは105.5TCID50以上、FCVのFC-7株とFC-28株及びFC-64株の3種はそれぞれ不活化前に108.0TCID50以上、FPLVは不活化前に105.5TCID50以上含まれることを特徴とする請求項1〜2に記載の猫3種混合ワクチン。
- アジュバントを含まないことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の猫3種混合ワクチン。
- FCVとFPLVを抗原として含む液状不活化ワクチンにより凍結乾燥したFVRV抗原を溶解することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の猫3種混合ワクチン。
- 請求項1から5のいずれかに記載の猫3種混合ワクチンを、2ヶ月齢の猫に3〜4週間隔で2回接種し、翌年から年1回接種することを特徴とする上部呼吸器疾患及び猫汎白血球減少症から猫を防御する方法。
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CN111876391A (zh) * | 2020-07-23 | 2020-11-03 | 中国农业科学院北京畜牧兽医研究所 | 猫泛白细胞减少症病毒fpv bj05株及其应用 |
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