JP2014213539A - 繊維強化樹脂積層体の接合方法及び接合装置並びに繊維強化樹脂材 - Google Patents

繊維強化樹脂積層体の接合方法及び接合装置並びに繊維強化樹脂材 Download PDF

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Abstract

【課題】接合部分の強度の高い繊維強化樹脂材を得ることのできる繊維強化樹脂積層体の接合方法及び接合装置を提供すること。
【解決手段】強化繊維12を介在させてベース樹脂11を積層してなる繊維強化樹脂積層体1同士を接合する繊維強化樹脂積層体の接合方法であって、繊維強化樹脂積層体1の接合面13から強化繊維12を露出させた状態で、繊維強化樹脂積層体1同士を溶接する接合工程を有することを特徴とする繊維強化樹脂積層体の接合方法。また、繊維強化樹脂積層体1を加熱した後に、繊維強化樹脂積層体1の層同士を積層方向に直交する方向にずらすことにより、接合面13から強化繊維12を露出させる強化繊維露出工程を、前記接合工程の前に更に有することが好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、繊維強化樹脂積層体の接合方法及び装置並びに繊維強化樹脂材に関する。
従来、軽量且つ高強度の構造部材として、アルミ等の他に繊維強化材料が用いられている。繊維強化材料は、複合材料を繊維で強化したものであり、繊維強化ゴム(FRR)、繊維強化金属(FRM)、繊維強化セラミックス(FRC)、繊維強化プラスチック(FRP)等が知られている。これらのうち、繊維強化材料として最もよく利用されるFRPは、マトリクス(素地)としてプラスチックを用い、強化材として炭素やガラス等の繊維を用いたものである。FRPは、軽量、高強度、高弾性率の材料であり、自動車分野、航空分野、宇宙分野等において欠くことができない。
FRPの一種である繊維強化樹脂積層体の製造方法の一例について、図6を参照して説明する。
まず、ナイロン等からなるベース樹脂11(マトリクス樹脂)の薄膜を加熱し、柔軟性を持たせる(図6(a))。次に、加熱したベース樹脂11の温度が下がって硬化してしまう前に強化繊維12をベース樹脂11の薄膜上に散布する(図6(b))。続いて、強化繊維12を散布したベース樹脂11の薄膜を積層して積層体を形成する(図6(c))。最後に、積層体をプレスして冷却することで繊維強化樹脂積層体1が製造される(図6(d))。
ところで、FRPを、自動車や航空機等の大型の構造物の部材として用いる場合には、大きなサイズのFRPが求められる場合もある。このような場合には、上記のような方法で製造されたFRPを複数接合して、所望のサイズのFRPを製造することができる。FRP同士を接合する方法としては、抵抗溶着を利用してFRP同士を接合する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。FRP同士を抵抗溶着した場合には、FRPの接合部の樹脂が溶融した後、固化することで接合される。
特開2012−16867号公報
しかしながら、例えば、図6に示すような方法により製造された繊維強化樹脂積層体1の端部同士を溶接することで接合して繊維強化樹脂材を得た場合、繊維強化樹脂材の接合部分には強化繊維12がほとんど存在しない。繊維強化樹脂材のうち、強化繊維がほとんど存在していない箇所は、接合部分に応力がかかると破壊してしまう場合がある。
より具体的には、図7に示すように、接合した一対の繊維強化樹脂積層体(繊維強化樹脂材7)の接合部71は、樹脂のみで構成されている(図7(a))。このような、繊維強化樹脂材7においては、図7(b)に示すような、強化繊維12を含有している樹脂で構成される部分と樹脂のみで構成されている部分(接合部71)との界面での破壊(界面破壊)や、図7(c)に示すような、樹脂のみで構成されている部分(接合部71)での破壊(凝集破壊)が発生しやすい。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、接合部分の強度の高い繊維強化樹脂材を得ることのできる繊維強化樹脂積層体の接合方法及び接合装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため本発明は、強化繊維(例えば、後述の強化繊維12)を介在させて熱可塑性樹脂(例えば、後述のベース樹脂11)を積層してなる繊維強化樹脂積層体(例えば、後述の繊維強化樹脂積層体1)同士を接合する繊維強化樹脂積層体の接合方法であって、前記繊維強化樹脂積層体の接合面(例えば、後述の接合面13)から前記強化繊維を露出させた状態で、前記繊維強化樹脂積層体同士を溶接する接合工程を有することを特徴とする繊維強化樹脂積層体の接合方法を提供する。
本発明では、強化繊維を介在させて熱可塑性樹脂を積層してなる繊維強化樹脂積層体の接合面から強化繊維を露出させた状態で、繊維強化樹脂積層体同士を溶接する。
本発明によれば、接合面から露出された強化繊維同士が接して、絡み合った状態で繊維強化樹脂積層体同士が溶接されるため、繊維強化樹脂積層体が接合した部分にも強化繊維が存在する。これにより、繊維強化樹脂積層体の接合部分にも強化繊維が存在することで、繊維強化樹脂積層体の接合部分の強度を向上できる。
前記繊維強化樹脂積層体を加熱した後に、前記繊維強化樹脂積層体の層同士を積層方向に直交する方向にずらすことにより、前記接合面から前記強化繊維を露出させる強化繊維露出工程を、前記接合工程の前に更に有することが好ましい。
本発明では、繊維強化樹脂積層体を加熱し、その後に繊維強化樹脂積層体の層同士を積層方向に直交する方向にずらすことにより、接合面から強化繊維を露出させる。
本発明によれば、強化繊維を介在させて熱可塑性樹脂を積層してなる既製の繊維強化樹脂積層体であっても、容易に接合面から強化繊維を露出させることができる。これにより、上述の効果がより確実に得られる。
また、繊維強化樹脂積層体の層同士を積層方向に直交する方向にずらしているので、繊維強化樹脂積層体の厚さに関わらず、接合面を広く確保できることで接合部分の強度をより向上できる。
前記強化繊維露出工程において、前記繊維強化樹脂積層体を金型(例えば、後述の金型20A,20B)内に配置し、当該金型の少なくとも一部を稼動させることで、前記繊維強化樹脂積層体の層同士を積層方向に直交する方向にずらすことが好ましい。
本発明では、金型を用い、金型の少なくとも一部を稼動させることで、繊維強化樹脂積層体の層同士を積層方向に直交する方向にずらす。
本発明によれば、より簡便に繊維強化樹脂積層体の層同士を積層方向に直交する方向にずらすことができ、確実に接合部の強度を向上できる。
また、強化繊維(例えば、後述の強化繊維12)を介在させて熱可塑性樹脂(例えば、後述のベース樹脂層11)を積層してなる繊維強化樹脂積層体(例えば、後述の繊維強化樹脂積層体1)同士を接合する繊維強化樹脂積層体の接合装置(例えば、後述の接合装置100A)であって、積層方向が上下方向となるように複数の前記繊維強化樹脂積層体が並べて配置される下型(例えば、後述の下型21A)と、前記下型に対向して配置される上型(例えば、後述の上型22A)と、を備え、前記下型及び前記上型の少なくとも一方は、他方に対して進退可能であり、前記下型は、並べて配置された複数の前記繊維強化樹脂積層体を積層方向に直交する方向に押圧することによって、前記繊維強化樹脂積層体の層同士を積層方向に直交する方向にずらす可動式の入れ子(例えば、後述の入れ子211A)を有することを特徴とする繊維強化樹脂積層体の接合装置を提供する。
本発明では、強化繊維を介在させて熱可塑性樹脂を積層してなる繊維強化樹脂積層体同士を接合するための、下型と上型とを有する繊維強化樹脂積層体の接合装置において、繊維強化樹脂積層体の層同士を積層方向に直交する方向にずらす可動式の入れ子を下型に設ける。
本発明によれば、可動式の入れ子により、より簡便に繊維強化樹脂積層体の層同士を積層方向に直交する方向にずらすことができ、確実に接合部の強度を向上できる。
また、繊維強化樹脂積層体の層同士をずらす工程と、上型と下型で繊維強化樹脂積層体をプレスする工程を、ひとつの装置上で行うことができるので、繊維強化樹脂積層体の接合の作業効率を向上させることができる。
また、強化繊維(例えば、後述の強化繊維12)を介在させて熱可塑性樹脂(例えば、後述のベース樹脂層11)を積層してなる繊維強化樹脂積層体(例えば、後述の繊維強化樹脂積層体1)同士を接合する繊維強化樹脂積層体の接合装置(例えば、後述の接合装置100B)であって、積層方向が上下方向となるように複数の前記繊維強化樹脂積層体が並べて配置される下型(例えば、後述の下型21B)と、前記下型に対向して配置される上型(例えば、後述の上型22B)と、を備え、前記下型及び前記上型の少なくとも一方は、他方に対して進退可能であるとともに、他方に対して水平方向に移動することが可能であり、前記下型及び前記上型は、前記下型に並べて配置された前記繊維強化樹脂積層体を上面から押圧した状態で、少なくとも一方が他方に対して水平方向へ移動することによって、前記繊維強化樹脂積層体の層同士を積層方向に直交する方向にずらすことを特徴とする繊維強化樹脂積層体の接合装置を提供する。
本発明では、強化繊維を介在させて熱可塑性樹脂を積層してなる繊維強化樹脂積層体同士を接合する、下型と上型とを有する繊維強化樹脂積層体の接合装置において、下型及び上型の少なくとも一方は、他方に対して進退可能であるとともに、他方に対して水平方向に移動することが可能なものとする。
本発明によれば、下型及び上型の少なくとも一方が、繊維強化樹脂積層体を押圧した状態で、他方に対して水平方向へ移動することで、より簡便に、繊維強化樹脂積層体の層同士を積層方向に直交する方向にずらすことができ、確実に接合部の強度を向上できる。
また、繊維強化樹脂積層体の層同士をずらす工程と、上型と下型で繊維強化樹脂積層体をプレスする工程を、ひとつの装置上で行うことができるので、繊維強化樹脂積層体の接合の作業効率を向上させることができる。
また、強化繊維(例えば、後述の強化繊維12)を介在させて熱可塑性樹脂(例えば、後述のベース樹脂層11)を積層してなる繊維強化樹脂積層体(例えば、後述の繊維強化樹脂積層体1)同士を溶接することで形成された繊維強化樹脂材であって、前記繊維強化樹脂積層体同士が溶接されることで形成された溶接部は、前記強化繊維を含んで構成されることを特徴とする繊維強化樹脂材を提供する。
この発明によれば、上述の繊維強化樹脂積層体の接合方法によって接合した繊維強化樹脂積層体と同様の効果が奏される。
本発明によれば、接合部分の強度の高い繊維強化樹脂材を得ることのできる繊維強化樹脂積層体の接合方法及び接合装置を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る繊維強化樹脂積層体の接合方法について示す概略図である。 上記実施形態に係る繊維強化樹脂積層体の接合方法を実施するための、繊維強化樹脂積層体の接合装置について示す図である。 上記実施形態に係る繊維強化樹脂積層体の接合方法を実施するための、繊維強化樹脂積層体の接合装置について示す図である。 上記実施形態に係る繊維強化樹脂積層体の接合方法を実施するための、繊維強化樹脂積層体の接合装置について示す図である。 上記実施形態の変形例に係る繊維強化樹脂積層体の接合方法について示す図である。 繊維強化樹脂積層体の製造方法の一例を示す図である。 従来の繊維強化樹脂積層体の接合方法により接合された繊維強化樹脂積層体同士の接合部分の拡大断面図であって、(a)は繊維強化樹脂積層体が接合された状態を示す図であり、(b)及び(c)は繊維強化樹脂積層体同士の接合部分が破壊された状態の一例を示す図である。
本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。
<繊維強化樹脂積層体の接合方法>
図1は、本発明の一実施形態に係る繊維強化樹脂積層体の接合方法について示す概略図である。
本実施形態に係る繊維強化樹脂積層体の接合方法は、強化繊維露出工程と、接合工程と、を有する。
強化繊維露出工程では、図1(a)〜(c)に示すように、繊維強化樹脂積層体1を加熱した後に、繊維強化樹脂積層体1のベース樹脂層11同士を積層方向に直交する方向にずらすことにより、接合面13から強化繊維12を露出させる。
本実施形態において用いられる繊維強化樹脂積層体1は、上述した、図6で示す方法により製造される。繊維強化樹脂積層体1は、強化繊維12を介在させてベース樹脂11を積層してなる積層体である。ベース樹脂11は、ナイロン等の熱可塑性樹脂からなる。強化繊維12としては、ガラス繊維や炭素繊維の湾曲した短繊維が挙げられる。強化繊維12は、主にベース樹脂11の間に存在するが、繊維強化樹脂積層体1の製造時にベース樹脂11が加熱されて柔らかくなることで、一部はベース樹脂11の内部に存在する。
なお、繊維強化樹脂積層体1におけるベース樹脂11を、ベース樹脂層11と言う場合がある。
強化繊維露出工程では、繊維強化樹脂積層体1を加熱することでベース樹脂11を柔軟にし、繊維強化樹脂積層体1を積層方向に膨張させる。繊維強化樹脂積層体1を加熱することでベース樹脂層11が柔らかくなり、湾曲した短繊維である強化繊維12の内部応力が解放される力によって、ベース樹脂層11同士が離間しようとする(図1(b))。
繊維強化樹脂積層体1を加熱する方法は、繊維強化樹脂積層体1を全体的に加熱できる方法であれば特に限定されない。繊維強化樹脂積層体1を加熱する方法としては、遠赤外線ヒーターを用いる方法等が挙げられる。
繊維強化樹脂積層体1を加熱した後には、繊維強化樹脂積層体1のベース樹脂層11同士をずらすことにより強化繊維12を露出させる(図1(c))。上述のように、繊維強化樹脂積層体1が加熱されることで、ベース樹脂層11同士が離間しようとする力が働くので、容易にベース樹脂層11同士を積層方向に直交する方向にずらすことができる。ベース樹脂層11同士を積層方向に直交する方向にずらす方法や装置については特に限定されない。ベース樹脂層11同士を積層方向に直交する方向にずらす具体的な方法や装置については、後段で詳述する。
上述のように、ベース樹脂層11同士を積層方向に直交する方向にずらすことにより、接合面13から強化繊維12が露出する。接合面13における、強化繊維12の露出する程度については特に限定されないが、接合面13に、より多くの強化繊維12を露出させることで、繊維強化樹脂積層体1同士を接合させた接合部分の強度が高くなる傾向にある。
接合工程では、繊維強化樹脂積層体1の接合面13から強化繊維12を露出させた状態で、繊維強化樹脂積層体1同士を溶接する。
繊維強化樹脂積層体1の接合面13から強化繊維12を露出させた状態で、繊維強化樹脂積層体1同士を溶接することによって、接合面13の表面に露出した強化繊維12同士が接触し、絡み合うことで、繊維強化樹脂積層体1同士を接合させた接合部分の強度が強くなる。
また、図1(d)に示すように、接合する一対の繊維強化樹脂積層体1の接合部の形状が、相補的な形状になっていることで、より、繊維強化樹脂積層体1同士を接合させた接合部分の強度を強くすることができる。
接合工程において、繊維強化樹脂積層体1同士が溶接されることで、繊維強化樹脂材が形成される。
接合工程においては、繊維強化樹脂積層体1の積層方向の上下から加圧することによって繊維強化樹脂積層体1同士を溶接してもよいし、加熱することによって繊維強化樹脂積層体1同士を溶接してもよいし、これらを併用してもよい。また、接合工程においては、上述した強化繊維露出工程において繊維強化樹脂積層体1を加熱した予熱を利用して繊維強化樹脂積層体1同士を溶接してもよい。
繊維強化樹脂積層体1同士を溶接して繊維強化樹脂材を形成した後には、繊維強化樹脂材をプレス成形等に供することで、所望の形状に成形してもよい。
<繊維強化樹脂積層体の接合装置>
図2〜4は、上記実施形態に係る繊維強化樹脂積層体の接合方法を実施するための接合装置の動作について示す図である。図2〜4は、それぞれ、第1、第2及び第3の繊維強化樹脂積層体の接合装置の断面概略図である。
[第1の繊維強化樹脂積層体の接合装置]
図2を参照しながら第1の繊維強化樹脂積層体の接合装置について説明する。
繊維強化樹脂積層体1の接合装置100は、下型21と上型22とからなる金型20と、板材30と、ロボット40と、を備える(図2(a)〜(f))。
下型21は、断面において略中央部が下方に凹んだ凹部を有し、凹部の内部に積層方向が上下方向となるように複数の繊維強化樹脂積層体1が並べて配置される。
上型22は、断面において略中央部が下方に突出した凸部を有し、図示しない駆動機構により下型21に対して進退可能である。
板材30は、繊維強化樹脂積層体1に対する摩擦抵抗の大きな材質によって形成された板状の部材であり、下型21上に配置される繊維強化樹脂積層体1の上面に配置される。
ロボット40は、板材30の上面に配置されて板材30を下方向に加圧しつつ繊維強化樹脂積層体1を水平方向に移動させることが可能な可動式のロボットである。
接合装置100による繊維強化樹脂積層体1の接合方法について説明する。
まず、下型21に、積層方向が上下方向となるように、一対の繊維強化樹脂積層体1を配置する(図2(a))。一対の繊維強化樹脂積層体1は、繊維強化樹脂積層体1の積層方向に直交する方向の端部が接するようにして並べて配置される。繊維強化樹脂積層体1を配置する数は、特に限定されず、複数枚であればよい。
繊維強化樹脂積層体1は、加熱することで厚さ方向に膨張させた状態で下型21の上に配置してもよいし、下型21に加熱機構を設けて、下型21に繊維強化樹脂積層体1を加熱させてもよい。繊維強化樹脂積層体1は、加熱されることで前述したベース樹脂層11同士が離間しようとする。
続いて、2つ並べて配置した繊維強化樹脂積層体1の上面に板材30を配置し、更にロボット40のアームの先端を板材30の上面に当接させて板材30を加圧しつつ水平方向(図2(b)の矢印方向)に移動させる。ロボット40のアームの先端を水平方向に移動させることにより、図1(c)についての説明で記載したように繊維強化樹脂積層体1のベース樹脂層11同士が繊維強化樹脂積層体1の積層方向に直交する方向にずれる(図2(c))。一対の繊維強化樹脂積層体1は、積層方向に直交する方向の端部が接するように配置されており、繊維強化樹脂積層体1のベース樹脂層11同士がずれたとしても、一対の繊維強化樹脂積層体1の互いに接している端部同士は相補的な形状となる。
板材30は、上述のように、摩擦抵抗の大きな材質によって形成されているので、容易に繊維強化樹脂積層体1のベース樹脂層11同士をずらすことができる。
繊維強化樹脂積層体1のベース樹脂層11同士を、積層方向に直交する方向にずらした後に、ロボット40と板材30とを繊維強化樹脂積層体1の上面から取り除く。ロボット40と板材30とを繊維強化樹脂積層体1の上面から取り除いた後に、上型22を下降させて下型21に対して前進させる(図2(d))。
上型22を下降させて下型21に対して前進させることで、繊維強化樹脂積層体1同士が溶接されるとともに成形されて、繊維強化樹脂成形体5が得られる(図2(e))。
最後に、上型22を上昇させて下型21に対して後退させることで、繊維強化樹脂成形体5を金型20から取り出すことが可能になる(図2(f))。
[第2の繊維強化樹脂積層体の接合装置]
図3を参照しながら第2の繊維強化樹脂積層体の接合装置について説明する。
繊維強化樹脂積層体1の接合装置100Aは、下型21Aと上型22Aとからなる金型20Aを備える(図3(a)〜(e))。
下型21Aは、断面において略中央部が下方に凹んだ凹部を有し、凹部の内部に積層方向が上下方向となるように複数の繊維強化樹脂積層体1が並べて配置される。
上型22Aは、断面において略中央部が下方に突出した凸部を有し、図示しない駆動機構により下型21Aに対して進退可能である。下型21Aは、並べて配置された複数の繊維強化樹脂積層体1を積層方向に直交する方向に押圧することによって、繊維強化樹脂積層体1のベース樹脂層11同士を積層方向に直交する方向にずらす可動式の入れ子211Aを有する(図3(b))。可動式の入れ子211Aは、図示しない駆動機構により、下型21Aの側部から凹部内に突出可能となっている。
接合装置100Aによる繊維強化樹脂積層体1の接合方法について説明する。
まず、下型21Aに、積層方向が上下方向となるように、一対の繊維強化樹脂積層体1を配置する(図3(a))。一対の繊維強化樹脂積層体1は、繊維強化樹脂積層体1の積層方向に直交する方向の端部が接するようにして並べて配置される。繊維強化樹脂積層体1を配置する数は、特に限定されず、複数枚であればよい。
繊維強化樹脂積層体1は、加熱することで厚さ方向に膨張させた状態で下型21Aの上に配置してもよいし、下型21Aに加熱機構を設けて、下型21Aに繊維強化樹脂積層体1を加熱させてもよい。繊維強化樹脂積層体1は、加熱されることで前述したベース樹脂層11同士が離間しようとする。
続いて、下型21Aの側部に格納されている入れ子211Aを突出させて、繊維強化樹脂積層体1を積層方向に直交する方向に押圧する(図3(b))。入れ子211Aは、断面視において、先端が下側から上側に向かうに従って突出方向に傾斜するテーパ状となっている。このような入れ子211Aの形状により、繊維強化樹脂積層体1が入れ子211Aに押圧されることで、繊維強化樹脂積層体1のベース樹脂層11同士が繊維強化樹脂積層体1の積層方向に直交する方向にずれる(図3(b))。なお、繊維強化樹脂積層体1の下面の、入れ子211Aにより押圧される側とは逆の端部は、下型21Aの凹部の側壁に当接していることから、繊維強化樹脂積層体1は入れ子211Aに押圧されても下型21A上を横滑りすることはない。一対の繊維強化樹脂積層体1は、積層方向に直交する方向の端部が接するように配置されており、繊維強化樹脂積層体1のベース樹脂層11同士がずれたとしても、一対の繊維強化樹脂積層体1の互いに接している端部同士は相補的な形状となる。
繊維強化樹脂積層体1のベース樹脂層11同士を、積層方向に直交する方向にずらした後に、入れ子211Aを再び下型21Aの側部に格納し、上型22Aを下降させて下型21Aに対して前進させる(図3(c))。
上型22Aを下降させて下型21Aに対して前進させることで、繊維強化樹脂積層体1同士が溶接されるとともに成形され、繊維強化樹脂成形体5Aが得られる(図3(d))。
最後に、上型22Aを上昇させて下型21Aに対して後退させることで、繊維強化樹脂成形体5Aを金型20から取り出すことが可能になる(図3(e))。
なお、入れ子211Aは、繊維強化樹脂積層体1と接する側の端部において、断面視で下側よりも上側が繊維強化樹脂積層体1側に出ている形状としたが、これに限定されない。例えば、入れ子211Aの繊維強化樹脂積層体1を押圧する側の端部の形状が、断面視で厚み方向の中央部が突出した形状をしていてもよい。このような形状により、上型22Aで繊維強化樹脂積層体1を押さえつつ、入れ子211Aによって、繊維強化樹脂積層体1のベース樹脂層11同士を繊維強化樹脂積層体1の積層方向に直交する方向にずらすこともできる。
[第3の繊維強化樹脂積層体の接合装置]
図4を参照しながら第3の繊維強化樹脂積層体の接合装置について説明する。
繊維強化樹脂積層体1の接合装置100Bは、下型21Bと上型22Bとからなる金型20Bを備える(図4(a)〜(e))。
下型21Bは、断面において略中央部が下方に凹んだ凹部を有し、凹部の内部に積層方向が上下方向となるように複数の繊維強化樹脂積層体1が並べて配置される。
上型22Bは、断面において略中央部が下方に突出した凸部を有し、図示しない駆動機構により下型21Bに対して進退可能であるとともに水平方向に移動可能である(図3(b))。
接合装置100Bによる繊維強化樹脂積層体1の接合方法について説明する。
まず、下型21Bに、積層方向が上下方向となるように、一対の繊維強化樹脂積層体1を配置する(図4(a))。一対の繊維強化樹脂積層体1は、繊維強化樹脂積層体1の積層方向に直交する方向の端部が接するようにして並べて配置する。繊維強化樹脂積層体1を配置する数は、特に限定されず、複数枚であればよい。
繊維強化樹脂積層体1は、加熱することで厚さ方向に膨張させた状態で下型21Bの上に配置してもよいし、下型21Bに加熱機構を設けて、下型21Bに繊維強化樹脂積層体1を加熱させてもよい。繊維強化樹脂積層体1は、加熱されることで前述したベース樹脂層11同士が離間しようとする。
続いて、上型22Bを下降させて下型21Bに対して前進させることで、上型22Bで繊維強化樹脂積層体1を上面から押圧する(図4(b))。更に、下型21Bに並べて配置された繊維強化樹脂積層体1を上面から押圧した状態で、上型22Bを下型21Bに対して水平方向へ移動することによって、繊維強化樹脂積層体1のベース樹脂層11同士を積層方向に直交する方向(図4(c)の矢印の方向)にずらす(図4(c))。
繊維強化樹脂積層体1のベース樹脂層11同士を積層方向に直交する方向にずらした後に、上型22Bを下降させて下型21Bに対して更に前進させることで、繊維強化樹脂積層体1同士が溶接されるとともに成形されて、繊維強化樹脂成形体5Bが得られる(図4(d))。
最後に、上型22Bを上昇させて下型21Bに対して後退させることで、繊維強化樹脂成形体5Bを金型20Bから取り出すことが可能になる(図4(e))。
<繊維強化樹脂材>
本発明の実施形態に係る繊維強化樹脂材は、強化繊維を介在させて熱可塑性樹脂を積層してなる繊維強化樹脂積層体同士を上記実施形態に係る繊維強化樹脂積層体の接合方法を用いて溶接し、接合したものである。
本発明の実施形態に係る繊維強化樹脂材は、繊維強化樹脂積層体同士が溶接されることで形成された溶接部が、強化繊維を含んで構成される。
上記実施形態によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態に係る繊維強化樹脂積層体の接合方法では、強化繊維12を介在させてベース樹脂11を積層してなる繊維強化樹脂積層体1の接合面13から強化繊維12を露出させた状態で、繊維強化樹脂積層体1同士を溶接した。
本実施形態によれば、接合面13から露出された強化繊維12同士が接して、絡み合った状態で繊維強化樹脂積層体1同士が溶接されるため、繊維強化樹脂積層体1の接合した部分にも強化繊維12が存在する。これにより、繊維強化樹脂積層体1の接合部分にも強化繊維12が存在することで、繊維強化樹脂積層体1の接合部分の強度を向上できる。
また、本実施形態では、繊維強化樹脂積層体1を加熱し、その後に繊維強化樹脂積層体1の層同士を積層方向に直交する方向にずらすことにより、接合面13から強化繊維12を露出させた。
本実施形態によれば、強化繊維12を介在させてベース樹脂11を積層してなる既製の繊維強化樹脂積層体1であっても、容易に接合面から強化繊維12を露出させることができる。これにより、上述の効果がより確実に得られる。
また、繊維強化樹脂積層体1の層同士を積層方向に直交する方向にずらしているので、繊維強化樹脂積層体1の厚さに関わらず、接合面13を広く確保できることで接合部分の強度をより向上できる。
また、上述の第2及び第3の繊維強化樹脂積層体の接合装置を用いた繊維強化樹脂積層体1の接合方法では、金型20A,20Bの少なくとも一部(入れ子211A,上型22B)を稼動させることで、繊維強化樹脂積層体1の層同士を積層方向に直交する方向にずらした。
この方法によれば、より簡便に繊維強化樹脂積層体1の層同士を積層方向に直交する方向にずらすことができ、確実に接合部の強度を向上できる。
また、第2の繊維強化樹脂積層体の接合装置では、強化繊維12を介在させてベース樹脂11を積層してなる繊維強化樹脂積層体1同士を接合するための、下型21Aと上型22Aとを有する繊維強化樹脂積層体の接合装置100Aにおいて、繊維強化樹脂積層体1の層同士を積層方向に直交する方向にずらす可動式の入れ子211Aを下型21Aに設けた。
本実施形態によれば、可動式の入れ子211Aにより、より簡便に繊維強化樹脂積層体1の層同士を積層方向に直交する方向にずらすことができ、確実に接合部の強度を向上できる。
また、繊維強化樹脂積層体1の層同士をずらす工程と、上型22Aと下型21Aで繊維強化樹脂積層体1をプレスする工程を、ひとつの装置上で行うことができるので、繊維強化樹脂積層体1の接合の作業効率を向上させることができる。
また、第3の繊維強化樹脂積層体の接合装置では、強化繊維12を介在させてベース樹脂11を積層してなる繊維強化樹脂積層体1同士を接合する、下型21Bと上型22Bとを有する繊維強化樹脂積層体1の接合装置100Bにおいて、上型22Bを、下型21Bに対して進退可能であるとともに、下型21Bに対して水平方向に移動可能なものとした。
本実施形態によれば、上型22Bが繊維強化樹脂積層体1を押圧した状態で、下型21Bに対して水平方向へ移動することで、より簡便に、繊維強化樹脂積層体1の層同士を積層方向に直交する方向にずらすことができ、確実に接合部の強度を向上できる。
また、繊維強化樹脂積層体1の層同士をずらす工程と、上型22Bと下型21Bで繊維強化樹脂積層体1をプレスする工程を、ひとつの装置上で行うことができるので、繊維強化樹脂積層体1の接合の作業効率を向上させることができる。
また、本実施形態に係る繊維強化樹脂成形体によっても、上述の繊維強化樹脂積層体の接合方法によって接合した繊維強化樹脂積層体と同様の効果を得ることができる。
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
上記実施形態に係る繊維強化樹脂積層体の接合方法では、繊維強化樹脂積層体1を加熱した後には、繊維強化樹脂積層体1のベース樹脂層11同士をずらすことで強化繊維12を露出させ、接合面13を形成したが、繊維強化樹脂積層体1の製造時に接合面13から強化繊維12を露出させてもよい。
例えば、本発明の繊維強化樹脂積層体の接合方法では、図5(a)に示すような、長繊維の強化繊維62を介在させてベース樹脂61を積層してなる繊維強化樹脂積層体60を用いてもよい。繊維強化樹脂積層体60は、繊維強化樹脂積層体60の積層方向と直交する方向の端部から強化繊維62が突出している。図5(a)に示す、繊維強化樹脂積層体60の強化繊維62が突出している端部を接合面63として、一対の繊維強化樹脂積層体60の接合面63同士を溶接すれば、接合部分で強化繊維62が積層方向に重なって存在することになる(図5(b))。従って、一対の繊維強化樹脂積層体60の接合面63同士を溶接しても、接合部分の強度の高い繊維強化樹脂材が得られる。
また、第1〜3の繊維強化樹脂積層体の接合装置では、上型を下型に対して進退可能なものとしたが、下型を上型に対して進退可能なものとしてもよい。つまり、繊維強化樹脂積層体の接合装置においては、下型及び上型の少なくとも一方が、他方に対して進退可能であればよい。
また、第3の繊維強化樹脂積層体の接合装置では、上型22Bを下型21Bに対して水平方向に移動可能なものとしたが、下型21Bを上型22Bに対して水平方向に移動可能なものとしてもよい。つまり、第3の繊維強化樹脂積層体の接合装置においては、下型21B及び上型22Bの少なくとも一方が、他方に対して水平方向に移動可能であればよい。
1,60…繊維強化樹脂積層体
11,61…ベース樹脂(層)
12,62…強化繊維
13,63…接合面
20,20A,20B…金型
21,21A,21B…上型
22,22A,22B…下型
211A…入れ子

Claims (6)

  1. 強化繊維を介在させて熱可塑性樹脂を積層してなる繊維強化樹脂積層体同士を接合する繊維強化樹脂積層体の接合方法であって、
    前記繊維強化樹脂積層体の接合面から前記強化繊維を露出させた状態で、前記繊維強化樹脂積層体同士を溶接する接合工程を有することを特徴とする繊維強化樹脂積層体の接合方法。
  2. 前記繊維強化樹脂積層体を加熱した後に、前記繊維強化樹脂積層体の層同士を積層方向に直交する方向にずらすことにより、前記接合面から前記強化繊維を露出させる強化繊維露出工程を、前記接合工程の前に更に有することを特徴とする請求項1記載の繊維強化樹脂積層体の接合方法。
  3. 前記強化繊維露出工程において、前記繊維強化樹脂積層体を金型内に配置し、当該金型の少なくとも一部を稼動させることで、前記繊維強化樹脂積層体の層同士を積層方向に直交する方向にずらすことを特徴とする請求項2記載の繊維強化樹脂積層体の接合方法。
  4. 強化繊維を介在させて熱可塑性樹脂を積層してなる繊維強化樹脂積層体同士を接合する繊維強化樹脂積層体の接合装置であって、
    積層方向が上下方向となるように複数の前記繊維強化樹脂積層体が並べて配置される下型と、
    前記下型に対向して配置される上型と、を備え、
    前記下型及び前記上型の少なくとも一方は、他方に対して進退可能であり、
    前記下型は、並べて配置された複数の前記繊維強化樹脂積層体を積層方向に直交する方向に押圧することによって、前記繊維強化樹脂積層体の層同士を積層方向に直交する方向にずらす可動式の入れ子を有することを特徴とする繊維強化樹脂積層体の接合装置。
  5. 強化繊維を介在させて熱可塑性樹脂を積層してなる繊維強化樹脂積層体同士を接合する繊維強化樹脂積層体の接合装置であって、
    積層方向が上下方向となるように複数の前記繊維強化樹脂積層体が並べて配置される下型と、
    前記下型に対向して配置される上型と、を備え、
    前記下型及び前記上型の少なくとも一方は、他方に対して進退可能であるとともに、他方に対して水平方向に移動可能であり、
    前記下型及び前記上型は、前記下型に並べて配置された前記繊維強化樹脂積層体を押圧した状態で、少なくとも一方が他方に対して水平方向へ移動することによって、前記繊維強化樹脂積層体の層同士を積層方向に直交する方向にずらすことを特徴とする繊維強化樹脂積層体の接合装置。
  6. 強化繊維を介在させて熱可塑性樹脂を積層してなる繊維強化樹脂積層体同士を溶接することで形成された繊維強化樹脂材であって、
    前記繊維強化樹脂積層体同士が溶接されることで形成された溶接部は、前記強化繊維を含んで構成されることを特徴とする繊維強化樹脂材。
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