JP2014201501A - 単結晶シリコン引き上げ用シリカ容器及びその製造方法 - Google Patents

単結晶シリコン引き上げ用シリカ容器及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高温度下におけるシリカ容器中のシリコン融液の湯面振動を抑制できる単結晶シリコン引き上げ用シリカ容器及びその製造方法を提供する。【解決手段】直胴部61、湾曲部62、及び底部63を有する単結晶シリコン引き上げ用シリカ容器71であって、容器外側が気泡を含有する不透明シリカガラス51から成り、容器内側が透明シリカガラス52から成り、少なくとも前記直胴部61の内側表層部分において、結晶質シリカ粉が溶融した相と非晶質シリカ粉が溶融した相が粒状に混在する混合シリカ層53を有する単結晶シリコン引き上げ用シリカ容器71。【選択図】図1

Description

本発明は、単結晶シリコンを引き上げるためのシリカ容器及びその製造方法に関する。
従来より、単結晶シリコン引き上げ用シリカルツボの製造方法としては、引用文献1及び引用文献2に記載されているような製造方法が使用されている。これらの方法は、回転する型枠の中に高純度化処理された石英粉を投入、成形した後、上部から電極を押し込み、電極に加電することによりアーク放電を起こし、雰囲気温度を石英粉の溶融温度域(1800〜2100℃程度と推定)まで上昇させて、石英粉を溶融、焼結させる方法である。しかし、このような製造されたシリカルツボの使用時において、溶融シリコンとシリカルツボとが反応して一酸化ケイ素(SiO)ガスが生じ、それが単結晶シリコンに気泡(ガス泡)として取り込まれ、ボイドやピンホールと呼ばれる空隙欠陥が生成する等の単結晶シリコンの品質上の問題が出ていた。
特に、単結晶シリコンの一般的な引き上げ法であるCZ法(チョクラルスキー法)では、ルツボと呼ばれるシリカ容器内の溶融シリコンの融液面(以下、単に「湯面」とも称する。)に種結晶を付け(シーディング)、次いで種結晶の直径を若干絞りつつ成長させ(ネッキング)、次いで直径を拡大させつつ大直径単結晶シリコンを作製し(ショルダーリング)、引き続いて大直径単結晶シリコンの直径を一定に保持しつつ引き上げて(プリング)、長軸寸法の単結晶シリコンを取り出している。この引き上げ時に、溶融シリコンの湯面が振動する現象(以下、この現象を単に「湯面振動」と称する。)が発生する。この湯面振動が発生するとシーディング、ネッキングやショルダーリングができなくなったり、引き上げ(プリング)中に単結晶シリコンの一部が多結晶化する問題が生じていた。この原因の一つとして、酸化ケイ素(SiO)ガス発生による湯面振動が考えられていた。引用文献1、2で作製されたシリカルツボでは、特に直径12インチ(30cm)〜18インチ(45cm)の大直径単結晶シリコンを引き上げるための直径30インチ(75cm)〜54インチ(135cm)の大型容器である場合、高い頻度で強い湯面振動が発生するため、早急なる解決が求められていた。以下、シリカルツボと石英ルツボは同意語である。シリカガラスと石英ガラスも同意語である。
引用文献3では、溶融シリコンの湯面振動が発生しない石英ガラスルツボとして、ルツボの壁のIR(赤外線)透過率を3〜30%に設定すること等が示されている。しかしこのような広い透過率範囲の物性を有する大形化した石英ガラスルツボを使用しても、大直径単結晶シリコン引き上げ時における湯面振動を抑制することはできなかった。
引用文献4では、溶融シリコンの湯面振動が発生しない石英ガラスルツボの製造方法として、ルツボ製造時にルツボ内側の雰囲気に水蒸気を導入することが示されており、ルツボ内側表層全体におけるOH基濃度を高めることが湯面振動抑制に好ましいとされている。しかし、このような製造方法による、大形化した石英ガラスルツボを使用しても大直径単結晶シリコン引き上げ時における湯面振動を抑制する効果は不充分であった。またルツボ内側のシリコン融液による侵蝕(エッチング)が激しく、ルツボの寿命は短いものとなっていた。
引用文献5では、単結晶シリコン引き上げ時の石英ガラスルツボにおいて、溶融シリコン湯面付近の石英ガラスルツボ内表面の帯状部分のみを天然石英ガラスとすることにより、湯面振動を防止できると示している。しかしこのルツボは、全合成石英ガラスルツボに比較して湯面振動が相対的に少ないというものであり、大直径単結晶シリコン引き上げ時における湯面振動を抑制する効果は不充分であった。
引用文献6では、溶融シリコンの湯面付近の石英ガラスルツボ内表面に、気泡含有量の多い部分を帯状に分布させることにより、湯面振動を防止できると示している。しかしこのルツボではある程度の湯面振動抑制効果は認められるものの、気泡含有量の多い帯状部分の溶融シリコンによる侵蝕(エッチング)量が大きく、ルツボの寿命は短いものとなってしまった。また帯状部分に含まれている気泡が単結晶シリコン中に取り込まれる確率が高くなり、しばしば単結晶シリコン中にボイドやピンホールという空隙欠陥が生成する問題があった。
引用文献7では、回転軸対称性を有する石英ガラスルツボの気泡含有率、肉厚、透過率を円周にわたって均質にすることにより、溶融シリコンの湯面振動が防止できると示している。ルツボの各種物性を円周にわたって回転軸対称に高精度で作製することは湯面振動防止の観点からは基本的に重要なことと考えられる。しかし、ある程度の物性変動が生じたとしても、該湯面振動を防止できることが求められていた。
引用文献8では、溶融シリコンの湯面付近の石英ガラスルツボ内表面に複数個の微小凹部を具え、かつその下部に複数個の気泡を具えることにより湯面振動を防止できると示している。しかしこのルツボでは単結晶シリコン製造における初期の湯面振動は抑制できるものの、微小凹部が溶解された後では、再び振動が発生するという問題があった。特に単結晶シリコンを複数本引き上げる(マルチプリング)場合、2本目以降製造時の湯面振動が激しくなるということがあった。
引用文献9では、石英ガラスルツボ内表面に、石英粉を用いたサンドブラスト処理をすることにより、帯状に粗面領域を作製し、湯面振動を防止できると示している。しかしこのようなルツボでは単結晶シリコン製造時の初期の湯面振動は抑制できるものの、その効果は長く続かないものであった。また1個のルツボによりマルチプリングをすることは困難であった。
引用文献10では、石英ルツボ内表面にシリカ粉を酸水素火炎で溶融して、OH基を500〜1500ppm含有するシリカガラス層を堆積することにより、湯面振動を防止することができると示している。しかしこの製法は工程が複雑化して高コストになるばかりではなく、湯面付近のシリコン融液によるエッチングが大きく、そのため湯面振動が徐々に激しくなったりルツボ寿命が短くなってしまうという欠点が生じていた。
特公平4−22861号公報 特公平7−29871号公報 特開2000−219593号公報 特開2001−348240号公報 特許第4338990号公報 特許第4390461号公報 特開2010−30884号公報 特開2011−105552号公報 国際公開第WO2011/158712号パンフレット 特開2012−17240号公報
本発明は前述のような問題に鑑みてなされたもので、高温度下におけるシリカ容器中のシリコン融液の湯面振動を抑制できる単結晶シリコン引き上げ用シリカ容器を提供すること、及びそのようなシリカ容器の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、直胴部、湾曲部、及び底部を有する単結晶シリコン引き上げ用シリカ容器の製造方法であって、第1の原料粉として、粒径が10〜1000μmである結晶質シリカ粉を作製する工程と、第2の原料粉として、粒径が50〜2000μmである結晶質シリカ粉と、粒径が50〜2000μmである非晶質シリカ粉との混合粉を作製する工程と、前記第1の原料粉を、回転対称性を有する型枠の内側へ投入し、該型枠を回転させつつ該型枠の内壁に応じた所定の形状に仮成形して、該型枠内に第1の原料粉から成る第1の仮成形体を形成する工程と、前記第2の原料粉を、前記型枠内に形成した第1の仮成形体の内側及び上部の少なくともいずれか一方に投入して前記第1の原料粉から成る部分及び前記第2の原料粉から成る部分を有する第2の仮成形体を、製造するシリカ容器の形状に応じた形状として、かつ、該製造するシリカ容器の少なくとも直胴部の内側表層部分に相当する位置において、前記第2の原料粉から成る部分を有するものとして形成する工程と、前記型枠を回転させつつ、前記第2の仮成形体の内側から放電加熱溶融法によって加熱することにより、前記第2の仮成形体のうち前記第2の原料粉から成る部分を結晶質シリカ粉が溶融した相と非晶質シリカ粉が溶融した相が粒状に混在する混合シリカ層とするとともに、容器外側が気泡を含有する不透明シリカガラスから成り、容器内側が透明シリカガラスから成るものとする工程とを含むことを特徴とする単結晶シリコン引き上げ用シリカ容器の製造方法を提供する。
このような工程を有するシリカ容器の製造方法により、少なくとも直胴部の内側表層部分に、結晶質シリカ粉が溶融した相と非晶質シリカ粉が溶融した相が粒状に混在する混合シリカ層を有する単結晶シリコン引き上げ用シリカ容器を製造することができる。この混合シリカ層の存在する部分は、シリカ容器内部に原料シリコン融液を保持した際に、シリコン融液によるエッチング(侵蝕)を受ける。このエッチングは非晶質シリカ粉が溶融した相の方が、結晶質シリカ粉が溶融した相より速く、エッチング量が大きい。このエッチング効果の違いにより、混合シリカ層の表面(原料シリコン融液との界面)に微小な凹凸が形成される。この微小な凹凸の存在により、高温度下におけるシリカ容器中のシリコン融液の湯面振動を抑制することができる。また、高温度下での使用が長時間にわたることにより混合シリカ層のエッチングが進んでも、この微小な凹凸は消滅せずに存在し続けるため、長時間にわたってシリコン融液の湯面振動を抑制することができる。
この場合、前記混合シリカ層を、前記製造されるシリカ容器の内表面のうち、該シリカ容器が原料シリコン融液を保持した際の初期の融液面に相当する内表面上の位置を含んで形成することが好ましい。
混合シリカ層を形成する位置をこのようにすることにより、特に、単結晶シリコンを引き上げる方法の初期(シーディング、ネッキング、ショルダーリング等)におけるシリコン融液の湯面振動を効果的に抑制することができる。
また、前記第2の仮成形体の形成を、前記製造するシリカ容器の直胴部及び湾曲部の内側表層部分に相当する位置において、前記第2の原料粉から成る部分を有するものとして形成することが好ましい。
このように第2の仮成形体の形成を行うことにより、シリカ容器の直胴部及び湾曲部の内側表層部分に混合シリカ層を形成することができる。これにより、単結晶シリコン引き上げの初期段階(シーディング、ネッキング、ショルダーリング等)に加えて、それより後の段階(プリング、テーリング)におけるシリコン融液の湯面振動をも効果的に抑制することができる。
また、前記混合シリカ層を、前記シリカ容器の肉厚方向における厚さが2mm以上であり、幅が100mm以上であるものとして形成することが好ましい。
このような厚さ及び幅を有する混合シリカ層を形成することにより、製造したシリカ容器において原料シリコン融液の湯面振動の抑制をより確実に行い、その効果を持続させることができる。
また、前記第2の仮成形体の放電加熱溶融法による加熱を、該第2の仮成形体の外側から減圧しながら行うことが好ましい。
このように減圧しながら行う加熱により、容器外側の不透明シリカガラス及び容器内側の透明シリカガラスを効率よく作製することができる。
また、前記第2の原料粉において、前記結晶質シリカ粉のOH基濃度を50massppm以下とし、前記非晶質シリカ粉のOH基濃度を200〜2000ppmとすることが好ましい。
第2の原料粉を構成する両シリカ粉におけるOH基濃度をこのように設定することにより、作製される混合シリカ層の結晶質シリカ粉が溶融した相及び非晶質シリカ粉が溶融した相のシリコン融液に対するエッチング速度差をより顕著にすることができ、シリカ容器内表面の凹凸をより確実に形成させることができる。
また、前記第2の原料粉の不純物元素の濃度を、Li、Na、Kの各々について100massppb以下、Ca、Mgの各々について50massppb以下、Ti、Cr、Fe、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、W、Pbの各々について20massppb以下とすることが好ましい。
第2の原料粉の不純物元素濃度をこのようにすれば、作製される混合シリカ層がエッチングされる際に原料シリコン融液に取り込まれる不純物元素をより少なくすることができる。
また、本発明の単結晶シリコン引き上げ用シリカ容器の製造方法においては、上記のいずれかの方法によりシリカ容器を製造した後、さらに、該シリカ容器の内表面のうち前記混合シリカ層が形成されていない内表面の少なくとも一部に、不純物元素の濃度がLi、Na、Kの各々について50massppb以下、Ca、Mgの各々について25massppb以下、Ti、Cr、Fe、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、W、Pbの各々について10massppb以下であり、厚さが200〜2000μmの高純度シリカガラス層を形成する工程を有することが好ましい。
このように、混合シリカ層以外の部分に高純度シリカガラス層を追加で形成することにより、高温での使用時においてシリカ容器内壁から原料シリコン融液に取り込まれる不純物元素をより少なくすることができる。
また、本発明は、直胴部、湾曲部、及び底部を有する単結晶シリコン引き上げ用シリカ容器であって、容器外側が気泡を含有する不透明シリカガラスから成り、容器内側が透明シリカガラスから成り、少なくとも前記直胴部の内側表層部分において、結晶質シリカ粉が溶融した相と非晶質シリカ粉が溶融した相が粒状に混在する混合シリカ層を有することを特徴とする単結晶シリコン引き上げ用シリカ容器を提供する。
このような混合シリカ層等の構成を有するシリカ容器は、内部に原料シリコン融液を保持した際に、シリコン融液によるエッチングにより混合シリカ層の表面に微小な凹凸が形成される。この微小な凹凸の存在により、高温度下におけるシリカ容器中のシリコン融液の湯面振動を抑制することができる。
この場合、前記混合シリカ層が、前記シリカ容器の内表面のうち、該シリカ容器が原料シリコン融液を保持した際の初期の融液面に相当する内表面上の位置を含んで形成されていることが好ましい。
このような位置に混合シリカ層を形成することにより、特に、単結晶シリコンを引き上げる方法の初期におけるシリコン融液の湯面振動を効果的に抑制することができる。
また、前記混合シリカ層を前記直胴部及び前記湾曲部の内側表層部分において有するものであることが好ましい。
このように、シリカ容器の直胴部及び湾曲部の内側表層部分に混合シリカ層を有するものであれば、単結晶シリコン引き上げの初期段階(シーディング、ネッキング、ショルダーリング等)に加えて、それより後の段階(プリング、テーリング)におけるシリコン融液の湯面振動をも効果的に抑制することができる。
また、前記混合シリカ層は、前記シリカ容器の肉厚方向における厚さが2mm以上であり、幅が100mm以上であることが好ましい。
このような厚さ及び幅を有する混合シリカ層を形成することにより、原料シリコン融液の湯面振動の抑制をより確実に行い、持続させることができる。
また、前記混合シリカ層が、OH基濃度50massppm以下の結晶質シリカ粉及びOH基濃度200〜2000ppmの非晶質シリカ粉の混合粉を原料として形成されたものであることが好ましい。
混合シリカ層をこのようなOH基濃度の違いを有する2種のシリカ粉の混合粉を原料として形成されたものとすることにより、混合シリカ層の結晶質シリカ粉が溶融した相及び非晶質シリカ粉が溶融した相のシリコン融液に対するエッチング速度差をより顕著にすることができ、シリカ容器内表面の凹凸をより確実に形成させることができる。
また、前記混合シリカ層における不純物元素の濃度がLi、Na、Kの各々について100massppb以下、Ca、Mgの各々について50massppb以下、Ti、Cr、Fe、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、W、Pbの各々について20massppb以下であることが好ましい。
混合シリカ層の不純物元素濃度をこのようにすることにより、混合シリカ層がエッチングされる際に原料シリコン融液に取り込まれる不純物元素をより少なくすることができる。
また、前記シリカ容器の内表面のうち前記混合シリカ層が形成されていない内表面の少なくとも一部に、不純物元素の濃度がLi、Na、Kの各々について50massppb以下、Ca、Mgの各々について25massppb以下、Ti、Cr、Fe、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、W、Pbの各々について10massppb以下であり、厚さが200〜2000μmの高純度シリカガラス層を有することが好ましい。
このような高純度シリカガラス層を追加で有することにより、高温での使用時においてシリカ容器内壁から原料シリコン融液に取り込まれる不純物元素をより少なくすることができる。
本発明に係る単結晶シリコン引き上げ用シリカ容器の製造方法により、少なくとも直胴部の内側表層部分を結晶質シリカ粉が溶融した相と非晶質シリカ粉が溶融した相が粒状に混在する混合シリカ層とした単結晶シリコン引き上げ用シリカ容器を製造することができる。
このような混合シリカ層を有する本発明に係る単結晶シリコン引き上げ用シリカ容器は、内部に原料シリコン融液を保持した際に、混合シリカ層を構成する非晶質シリカ粉が溶融した相と結晶質シリカ粉が溶融した相のエッチング効果の差により、混合シリカ層の表面に微小な凹凸が形成される。この微小な凹凸の存在により、高温度下におけるシリカ容器中のシリコン融液の湯面振動を抑制することができる。また、高温度下での使用が長時間にわたることにより混合シリカ層のエッチングが進んでも、この微小な凹凸は消滅せずに存在し続けるため、長時間にわたってシリコン融液の湯面振動を抑制する効果を維持することができる。長時間にわたって湯面振動を防止する効果が続くため、単結晶シリコンのマルチ引き上げ(マルチプリング)に特に有効であり、シリカ容器の寿命も長期にすることができる。
本発明に係るシリカ容器の構造の一例を模式的に示す概略断面図である。 本発明に係るシリカ容器の構造の別の一例を模式的に示す概略断面図である。 本発明に係るシリカ容器の構造の別の一例を模式的に示す概略断面図である。 本発明に係るシリカ容器の構造の別の一例を模式的に示す概略断面図である。 本発明に係るシリカ容器の構造の別の一例を模式的に示す概略断面図である。 本発明に係るシリカ容器の製造方法の一例の概略を示すフロー図である。 本発明に係るシリカ容器の製造方法において用いることができる型枠の一例を示す概略断面図である。 本発明に係るシリカ容器の製造方法において用いることができる型枠の別の一例を示す概略断面図である。 本発明に係るシリカ容器の製造方法における、第1の仮成形体を形成する工程の一例を模式的に示す概略断面図である。 本発明に係るシリカ容器の製造方法における、第2の仮成形体を形成する工程の一例を模式的に示す概略断面図である。 本発明に係るシリカ容器の製造方法における、第2の仮成形体を加熱する工程の一例の一部(放電加熱溶融前)を模式的に示す概略断面図である。 本発明に係るシリカ容器の製造方法における、第2の仮成形体を加熱する工程の一例の一部(放電加熱溶融中)を模式的に示す概略断面図である。 本発明に係るシリカ容器の製造方法における任意の追加工程として、底部の内表面部分に高純度シリカガラス層を形成する工程の一例を模式的に示す概略断面図である。
本発明に係る単結晶シリコン引き上げ用シリカ容器は、内部に単結晶シリコンの原料となる多結晶シリコン等を収容し、該多結晶シリコン等を溶融して原料シリコン融液とし、この融液から単結晶シリコンを引き上げるためのものである。本発明のシリカ容器は、大規模集積回路(LSI)用又は太陽光発電(太陽電池、PV)用に使用される単結晶シリコンを引き上げるためのシリカ容器として用いることができる。
以下、本発明に係る単結晶シリコン引き上げ用シリカ容器及びその製造方法について図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下では特に単結晶シリコン製造用の大口径シリカ容器のルツボを例として説明する。なお、本発明のシリカ容器とはシリカルツボのことを示す。
本発明に係る単結晶シリコン引き上げ用シリカ容器の構造の例を、図1〜図5に示した。まず、図1を参照して説明する。図1に示したように、本発明に係るシリカ容器71は、回転軸対称性を有するルツボ形状であり、直胴部61、湾曲部62、及び底部63を有する。このとき、便宜上シリカ容器71の外径(D)の1/3を底部63の直径(D)とする。底部63は円形状の部分である。直胴部61は、シリカ容器71の上縁から高さ(H)の1/3の高さ部分までの間(高さH−H)の円筒状の部分である。またシリカ容器71の高さ(H)の1/3の高さ部分から底部63までの間(高さH)のうち、底部63以外を湾曲部62とする。
シリカ容器71は、少なくとも直胴部61の内側表層部分において、混合シリカ層53を有する。混合シリカ層53は結晶質シリカ粉が溶融した相と非晶質シリカ粉が溶融した相が粒状に混在して成るものである。混合シリカ層53は、均一なものではなく数100μm〜数1000μm単位で微細な粒状構造を有するものである。より具体的には、混合シリカ層53を構成する結晶質シリカ粉が溶融した相は、石英粉、水晶粉、クリストバライト粉等の結晶質シリカ粉を原料とし、混合シリカ層53を構成する非晶質シリカ粉が溶融した相は、火炎加水分解法による合成シリカガラス粉、酸水素ベルヌイ法による溶融シリカガラス粉等の非晶質シリカ粉を原料としている。すなわち、混合シリカ層53はこれらの混合粉を溶融して一体化したシリカ層である。
また、シリカ容器71は、容器外側が気泡を含有する不透明シリカガラスから成り、容器内側が透明シリカガラスから成る。シリカ容器71においてこのような2層構造とすることにより、高温度下のシリカ容器使用時において、シリカ容器71の内部の均熱性を確保することができる。この不透明シリカガラスは、通常、白色不透明である。透明シリカガラスは、実質的に気泡を含有しないため透明であり、通常、無色透明である。不透明シリカガラス51のかさ密度は、1.90〜2.15(g/cm)程度であり、透明シリカガラス52のかさ密度はほぼ2.20(g/cm)である。混合シリカ層53の位置を示すために、便宜上、図中には、混合シリカ層53以外の部分について不透明シリカガラス51及び透明シリカガラス52を示した。実際には、混合シリカ層53も、容器外側の領域に位置する部分は不透明シリカガラスから成り、容器内側の領域に位置する部分は透明シリカガラスから成る。
シリカ容器71に単結晶シリコン引き上げのための原料としてシリコン融液を保持した際に、シリカ容器71の内表面を構成するシリカ成分とシリコン融液との間の反応(溶融反応)により、シリカ容器71の内表面はシリコン融液によるエッチング(侵蝕)を受ける。このとき、混合シリカ層53では、結晶質シリカ粉が溶融した相の方が、非晶質シリカ粉が溶融した相よりもエッチング量(侵蝕量)が少ない(すなわち、エッチング速度が遅い)ことから、結晶質シリカ粉が溶融した相の粒状構造の部分が凸部となり、非晶質シリカ粉が溶融した相が凹部となる。このエッチング効果の違いにより、混合シリカ層53の表面(原料シリコン融液との界面)に微小な凹凸が形成され、ザラザラした粗面へと変化する。この粗面の発生により、高温度下におけるシリカ容器中の溶融シリコンの湯面において微細振動が発生しづらいし、発生した場合においても、波のように発生する湯面振動を該粗面により抑制できることになる。これは海岸にテトラポットの波消しブロックを配置することにより、海面の波を止めることができる現象に似ている。このように、混合シリカ層53は、湯面振動抑制層として作用する。
また、高温度下での使用が長時間にわたることにより混合シリカ層53のエッチングが進んでも、本発明のシリカ容器71では、混合シリカ層53が一定の厚さを有するため、微小な凹凸(粗面)は消滅せずに存在し続け、長時間にわたってシリコン融液の湯面振動を抑制することができる。長時間にわたって湯面振動を防止する効果が続くため、単結晶シリコンのマルチ引き上げ(マルチプリング)に特に有効である。
混合シリカ層53は、典型的には、図1に示したように、ルツボ形状のシリカ容器71の内側表層部分に帯状に位置する帯状内周層として形成されるが、必ずしもこれに限定されない。また、混合シリカ層53は、シリカ容器71の内表面のうち、シリカ容器71が原料シリコン融液を保持した際の初期の融液面(初期湯面)に相当する内表面上の位置を含んで形成されていることが好ましい。混合シリカ層53を形成する位置をこのように設定することにより、特に、単結晶シリコンを引き上げる方法の初期(シーディング、ネッキング、ショルダーリング等)における原料シリコン融液の湯面振動を効果的に抑制することができる。単結晶シリコンの引き上げにおいては、これらの引き上げ初期の工程における湯面振動を抑制することが特に重要である。初期工程において湯面振動が抑制できれば、後続の単結晶シリコン引き上げ工程において安定して引き上げることができる。本発明に係るシリカ容器71であれば、特に直径12インチ(30cm)〜直径18インチ(45cm)の大直径単結晶シリコンを引き上げるための直径30インチ(75cm)〜直径54インチ(135cm)の大口径シリカ容器においても、湯面振動の抑制を行うことができる。
混合シリカ層53は、シリカ容器71の肉厚方向における厚さが2mm以上であり、幅が100mm以上であることが好ましい。ここでいう混合シリカ層53の「幅」とは、シリカ容器71の内表面に露出している混合シリカ層53の領域のうち、シリカ容器71の高さ方向の長さを意味する。原料シリコン融液を保持した状態での高温でのシリカ容器の使用中に混合シリカ層53は徐々にエッチングされて薄くなっていくが、混合シリカ層53の厚さを2mm以上とすることにより、長時間にわたって原料シリコン融液の湯面振動の抑制をより確実に行うことができる。また、混合シリカ層53の幅(高さ)を100mm以上とすることにより、単結晶シリコンの引き上げ初期の湯面高さに混合シリカ層53をより確実に対応させることができる。また、単結晶シリコン引き上げ中に原料シリコン融液の湯面高さが低下しても一定期間湯面振動を抑制する効果を持続することができる。
混合シリカ層53は、直胴部の内側表層部分の少なくとも一部に形成されていればよく、その他の領域を含んでもよい。例えば、図3に示したように、混合シリカ層53をシリカ容器71の直胴部61の側壁を貫通するように形成してもよい。また、図4に示したように、混合シリカ層53をシリカ容器71の上端まで形成してもよい。この場合、直胴部61の側壁のうち一定高さ以上の部分を全て混合シリカ層53としてもよい。
また、図5に示したように、混合シリカ層53をシリカ容器71の直胴部61及び湾曲部62の内側表層部分において有するものとしてもよい。この構造により、単結晶シリコン引き上げの初期段階(シーディング、ネッキング、ショルダーリング等)に加えて、それより後の段階(プリング、テーリング)におけるシリコン融液の湯面振動をも効果的に抑制することができる。
ただし、以下の理由により、シリカ容器71の底部63には混合シリカ層53を設定しないことが好ましい。シリカ容器71の底部63に混合シリカ層53の表面が存在すると、単結晶製造時において、底部63の内側表面にも凹凸が生成し、ザラザラした粗面へ変化する。この状態でシリカガラスとシリコン融液が反応した際に、酸化ケイ素(SiO)ガスが発生し、底部63の凹凸面上でガス泡が成長し、その後シリコン融液中へガス泡が上昇することにより、成長中の単結晶シリコンの中に取り込まれ、ボイドやピンホールと呼ばれる空隙欠陥が発生しやすくなってしまう。
シリカ容器71の底部63の直径は製造する単結晶シリコンの直径に近似するため、少なくともシリカ容器71の底部63の内表面には、混合シリカ層53を設定せず、結晶質シリカ粉のみから成る原料粉を溶融した気泡を含まない透明シリカガラスからなる層(透明シリカガラス52)とすることが好ましい。
混合シリカ層53は、OH基濃度50massppm以下の結晶質シリカ粉及びOH基濃度200〜2000ppmの非晶質シリカ粉の混合粉を原料として形成されたものであることが好ましい。混合シリカ層53をこのようなOH基濃度の違いを有する2種のシリカ粉の混合粉を原料として形成されたものとすることにより、混合シリカ層53の結晶質シリカ粉が溶融した相及び非晶質シリカ粉が溶融した相のシリコン融液に対するエッチング速度差をより顕著にすることができ、シリカ容器71の内表面の凹凸をより確実に形成させることができる。結晶質シリカ粉が溶融した相のOH基濃度は結晶質シリカ粉のOH基濃度に、非晶質シリカ粉が溶融した相のOH基濃度は非晶質シリカ粉のOH基濃度に、それぞれ対応するが、シリカ容器71は1800℃程度以上のような高温の工程を経て製造されるため、多少の変動があるものと推定される。なお、混合シリカ層53全体のOH基濃度を赤外線分光光度法により測定した場合には、両原料粉のOH基濃度の平均程度の値となる。
混合シリカ層53は、原料シリコン融液を保持した際に、その界面からエッチングされるものである。そのため、混合シリカ層53を高純度のものとすることにより、混合シリカ層53から原料シリコン融液に取り込まれる不純物元素の量を低減することが好ましい。具体的には、混合シリカ層53における不純物元素の濃度がLi、Na、Kの各々について100massppb以下、Ca、Mgの各々について50massppb以下、Ti、Cr、Fe、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、W、Pbの各々について20massppb以下であることが好ましい。
図2には、本発明に係るシリカ容器の別の一例の概略を示した。図1に示したシリカ容器と対応する要素については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図2に示したシリカ容器72は、その内表面のうち混合シリカ層53が形成されていない内表面の少なくとも一部に、高純度シリカガラス層59を有する。図2に示したように、底部63の内表面上に高純度シリカガラス層59が形成されていることが好ましい。ただし、これに限定されず、湾曲部62及び底部63にかけて形成されていてもよく、また、シリカ容器72の内表面のうち、混合シリカ層53以外の全ての部分に形成されていてもよい。また、混合シリカ層53がシリカ容器72の内表面に露出されている部分があれば、混合シリカ層53の一部が高純度シリカガラス層59で覆われていてもよい。
高純度シリカガラス層59は、具体的には、不純物元素の濃度がLi、Na、Kの各々について50massppb以下、Ca、Mgの各々について25massppb以下、Ti、Cr、Fe、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、W、Pbの各々について10massppb以下であり、厚さが200〜2000μmであることが好ましい。シリカ容器72は、高純度シリカガラス層59を追加で有することにより、高温での使用時においてシリカ容器72の内壁から原料シリコン融液に取り込まれる不純物元素をより少なくすることができる。この態様は、高純度が要求される用途において特に好ましい。
また、図1〜図5のシリカ容器71、72における混合シリカ層53(及び高純度シリカガラス層59)以外の部分(以下、「通常シリカ部分」とも称する)の純度は、用途にもよるが、シリカ(SiO)純度としてソーラー用単結晶引き上げ用では99.99mass%以上、LSI用単結晶引き上げ用では99.999mass%以上が好ましい。また、この通常シリカ部分を作製するための原料粉として例えばアルカリ金属元素Li、Na、Kの各々が10massppm程度含有されるシリカ原料粉を使った場合においても、例えば、通常シリカ部分のOH基濃度を10〜50massppmに設定し、同時にAlを5〜30massppmに設定することにより、これらアルカリ金属元素のような拡散係数の値の大きな元素をシリカ容器の肉厚中に吸着、閉じ込めておくことが可能となる。OH基含有の効果として、金属不純物元素を吸着、固定する良い効果があるが、高温度下におけるシリコン融液による透明シリカガラス52のエッチング量を増大してしまうという負の効果もあるので、上記の範囲とすることが好ましい。Alについては、金属不純物元素を吸着、固定する効果とシリカガラスの高温度下における粘性度を向上させる良い効果があるが、被処理物のシリコン融液をAlで汚染するという負の効果もある。従ってAlを含有させる場合でも上記のように5〜30massppm(より好ましくは10〜20massppm)の範囲とすることが好ましい。
以下では、上記のようなシリカ容器71、72を製造することができる、本発明の単結晶シリコン引き上げ用シリカ容器の製造方法を具体的に説明する。
まず、図1に示したシリカ容器71の製造方法を、図6を参照して説明する。
図6の(a)及び(b)に示したように、第1の原料粉11及び第2の原料粉12を作製、準備する(工程(a)、工程(b))。第1の原料粉11は後述の第1の仮成形体41の作製工程より前に準備すればよく、第2の原料粉12は後述の第2の仮成形体43の作製工程より前に準備すればよい。
(第1の原料粉11の作製)
第1の原料粉11は、シリカ容器71、72のうち、混合シリカ層53(及び高純度シリカガラス層59)以外の部分(通常シリカ部分)を構成する材料となるものである。第1の原料粉11としては、粒径が10〜1000μmである結晶質シリカ粉を作製、準備する(工程(a))。第1の原料粉11は例えば以下のようにして珪石塊を粉砕、整粒することにより作製することができるが、これに限定されない。
まず、直径5〜50mm程度の天然珪石塊(天然に産出する水晶、石英、珪石、珪質岩石、オパール石等)を大気雰囲気下、600〜1000℃の温度域にて1〜10時間程度加熱する。次いで該天然珪石塊を水中に投入し、急冷却後取出し、乾燥させる。この処理により、次のクラッシャー等による粉砕、整粒の処理を行いやすくできるが、この加熱急冷処理は行わずに粉砕処理へ進んでもよい。
次いで、該天然珪石塊をクラッシャー等により粉砕、整粒し、粒径を10〜1000μm、好ましくは50〜500μmに調整して天然珪石粉を得る。
次いで、この天然珪石粉を、傾斜角度を有するシリカガラス製チューブから成るロータリーキルンの中に投入し、キルン内部を塩化水素(HCl)又は、塩素(Cl)ガス含有雰囲気とし、800〜1100℃にて1〜100時間程度加熱することにより高純度化処理を行う。ただし高純度を必要としない製品用途では、この高純度化処理を行わずに次処理へ進んでもよい。
以上のような工程後に得られる第1の原料粉11は結晶質のシリカである。
第1の原料粉11の粒径は、上記のように10〜1000μmとする。この粒径は50〜500μmとすることが好ましい。第1の原料粉11のシリカ純度(SiO)は、99.99mass%以上とすることが好ましく、99.999mass%以上とすることがさらに好ましい。
第1の原料粉11の純度が低い(悪い)場合、製造したシリカ容器71、72から内表面へ、さらには収容するシリコン融液への不純物金属元素の移動、拡散を防止するために、第1の原料粉11にAl、OH基を所定量含ませることができる。Alは、例えば硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩、塩化物等を水又はアルコール溶液として、これら溶液の中にシリカ粉を投入、浸漬させ、次いで乾燥することにより得られる。OH基は天然珪石に当初から含んでいるもの、又は中間工程で混合する水分をその後の乾燥工程におけるガス雰囲気、処理温度、時間により調整することができる。通常シリカ部分を構成するための第1の原料粉11のAlの含有量は上記のように5〜30massppmとすることが好ましい。第1の原料粉11のOH基濃度は10〜50massppmとすることができるが、上記のようにその後の工程でもOH基濃度を調整できる。
これらAl、OH基の含有が不純物金属元素のシリカガラス中の移動、拡散を防止するメカニズムの詳細は不明であるが、AlはSiと置換することにより不純物金属元素の陽イオン(カチオン)をシリカガラスネットワークの電荷バランスを保つという点から吸着、拡散防止するものと推定される。またOH基は水素イオンと金属イオンが置換することにより、これら不純物金属元素を吸着ないし拡散防止する効果が生ずるものと推定される。
(第2の原料粉の作製)
第2の原料粉12は、混合シリカ層53を構成するための材料となるものである。第2の原料粉12として、粒径が50〜2000μmである結晶質シリカ粉13と、粒径が50〜2000μmである非晶質シリカ粉14との混合粉を作製する(工程(b))。結晶質シリカ粉13及び非晶質シリカ粉14をそれぞれ別個に作製し、これを混合することにより第2の原料粉12を作製、準備することができる。
(結晶質シリカ粉13の作製)
結晶質シリカ粉13の作製は、基本的に上記の第1の原料粉11の作製と同様にできるが、粒径は50〜2000μmとする。このように比較的粗い方が混合シリカ層53の結晶質シリカ粉が溶融した相とした際にシリコン融液によりエッチングされにくいため好ましい。粒径は300〜1000μmとすることがさらに好ましい。また、結晶質シリカ粉13のOH基濃度は後述のように50massppm以下とすることが好ましい。結晶質シリカ粉が溶融した相自体はシリコン融液に対してエッチングされにくいものであるものの、結晶質シリカ粉13は、エッチングされることを目的とする混合シリカ層53を構成する原料となるため、結晶質シリカ粉13には、Al自体によるシリコン融液の汚染を考慮してAl元素を含有させない方が良い。ただし、場合によっては結晶質シリカ粉13にもAlを含有させてもよい。
(非晶質シリカ粉14の作製)
非晶質シリカ粉14の材質としては、高純度化処理された天然石英粉、天然水晶粉、又はクリストバライト粉を酸水素火炎溶融してシリカガラス塊とした後、粉砕、整粒したものや、四塩化ケイ素(SiCl)等のケイ素化合物の酸水素火炎加水分解法による合成シリカガラス塊を粉砕、整粒したシリカガラス粉が挙げられる。第2の原料粉12の粒径は50〜2000μmとし、好ましくは300〜1000μmとする。純度はシリカ成分(SiO)99.999mass%以上、より具体的には不純物元素の濃度を、Li、Na、Kの各々について100massppb以下、Ca、Mgの各々について50massppb以下、Ti、Cr、Fe、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、W、Pbの各々について20massppb以下とすることが好ましい。
(第2の原料粉12の混合調整)
以上のようにして作製した結晶質シリカ粉13及び非晶質シリカ粉14を混合することにより第2の原料粉12を作製、準備することができる。混合シリカ層53がシリコン融液にエッチングされた際の粗面の構造を適切なものにするため、2種類のシリカ粉の混合比率は結晶質シリカ粉13を90〜20mass%とすることが好ましく、80〜50mass%とすることがより好ましい。残りの比率が非晶質シリカ粉14である。
第2の原料粉12において、結晶質シリカ粉13のOH基濃度を50massppm以下とし、非晶質シリカ粉14のOH基濃度を200〜2000ppmとすることが好ましい。結晶質シリカ粉13のOH基濃度は上記のように調整することができる。結晶質シリカ粉13の水蒸気放出量は2×1017(HO分子/g)以下とすることが好ましい。非晶質シリカ粉14のOH基濃度の調節は種々の公知の方法を用いることができる。例えば、上記高純度化処理された天然石英粉、天然水晶粉、又はクリストバライト粉を酸水素火炎溶融する場合には、酸水素火炎の酸素、水素の流量を調節することによって、非晶質シリカ粉14中のOH基濃度を調節することができる。また、四塩化ケイ素のケイ素化合物の酸水素火炎加水分解法による作製の場合には、原料である四塩化ケイ素の流量に比べて、酸素及び水素の流量を増やすことにより非晶質シリカ粉14中のOH基濃度を上昇させることができる。
(第1の仮成形体の形成)
少なくとも第1の原料粉11を作製した後、図6の(c)に示すように、第1の原料粉11を、回転対称性を有する型枠の内側へ投入し、該型枠を回転させつつ該型枠の内壁に応じた所定の形状に仮成形して、該型枠内に第1の原料粉11から成る第1の仮成形体41を形成する(工程(c))。図7及び図8に、第1の原料粉11を仮成形する型枠の概略を表す断面図を示した。本発明で用いる型枠101、101’は、例えば、グラファイト、アルミナ等の耐熱性セラミック又は冷却システムを有する耐熱性金属から成り、回転対称性を有しており、型枠回転用モーター(不図示)により回転させることができる。また、図7に示したように、型枠101の内壁102には、減圧用の孔103が分配されて形成されていてもよい。減圧用の孔103は、減圧用の通路104に連なっている。また、型枠101を回転させるための回転軸106にも減圧用の通路105が通っており、ここから真空引きを行うことができるようになっている。本発明では、図8に示したような、減圧用の装備がない型枠101’を用いることもできる。この型枠101’の内壁102’には減圧用の孔が形成されておらず、回転軸106’にも減圧用の通路はない。以下では、図7に示した型枠101を用いた場合を例として説明するが、減圧を行わないこと以外は図8に示した型枠101’も同様に用いることができる。
工程(c)では、図7に示した型枠101の内壁102に、第1の原料粉11を導入し、第1の原料粉11を型枠101の内壁102に応じた所定の形状に仮成形して第1の仮成形体41とする(図9参照)。具体的には、型枠101を回転させつつ、徐々に第1の原料粉11を型枠101の内壁102に投入し、遠心力を利用して所定の厚さを有する容器形状に成形する。また内側から板状の内型枠(図示せず)を、回転する粉体に接触させることにより、第1の仮成形体41の肉厚を所定量に調整してもよい。この際、次の工程において第2の原料粉12を導入するための部位を残して調整する。図9には、第1の仮成形体41に凹部42を形成する場合を図示した。また、この第1の原料粉11の型枠101への供給方法は特に限定されないが、例えば、攪拌用スクリューと計量フィーダを備えるホッパーを用いることができる。この場合、ホッパーに充填された第1の原料粉11を、攪拌用スクリューで攪拌し、計量フィーダで供給量を調節しながら供給する。
次に、図6の(d)に示すように、第2の原料粉12を、型枠101内に形成した第1の仮成形体41の凹部42に投入する(工程(d))。これにより、第1の原料粉11から成る部分及び第2の原料粉12から成る部分を有する第2の仮成形体43を形成する。第2の仮成形体43の形状は製造するシリカ容器71、72の形状に応じた形状として、かつ、該製造するシリカ容器71、72の直胴部の内側表層部分の少なくとも一部に相当する部分が第2の原料粉12から成るものとして形成する。第2の原料粉12は、少なくとも第1の原料粉11の一部により第1の仮成形体41が形成された後に投入されるが、必要に応じて第2の原料粉12の投入後にも第1の原料粉11の一部を投入して第2の仮成形体43の全体を形成することもできる。
図10に図示した例は、図1に示したシリカ容器71又は図2に示したシリカ容器72の形状に応じたものである。この場合、第2の原料粉12は第1の仮成形体41の内側(凹部42)に投入される。図3〜図5に示したシリカ容器71を製造する場合は、それぞれ、各シリカ容器71に応じた形状になるように第2の仮成形体43の形状を調節する。図3に示したシリカ容器71を製造する場合は、第1の原料粉11を型枠内に導入した後、その側壁上部に第2の原料粉12を導入し、さらにその側壁上部に第1の原料粉11を導入すればよい。図4に示したシリカ容器71を製造する場合は、凹部を図4の混合シリカ層53の形状に相当するように第1の仮成形体41の内側かつ上部に形成し、該凹部に第2の原料粉12を導入する。
第2の仮成形体43における第2の原料粉12の占める領域(すなわち、混合シリカ層53となる領域)は、製造されるシリカ容器71の内表面のうち、シリカ容器71が原料シリコン融液を保持した際の初期の融液面に相当する内表面上の位置を含むことが好ましい。これにより、シリカ容器71により単結晶シリコンを引き上げる方法の初期におけるシリコン融液の湯面振動を効果的に抑制することができる。なお、上記のように、製造したシリカ容器71において原料シリコン融液の湯面振動の抑制をより確実に行い、その効果を持続させるため、混合シリカ層53を、シリカ容器71の肉厚方向における厚さが2mm以上であり、幅が100mm以上であるものとして形成することが好ましい。これは、第2の仮成形体43において第2の原料粉12の占める領域を調整することにより達成することができる。
また、第2の仮成形体43の形成を、製造するシリカ容器71の直胴部61及び湾曲部62の内側表層部分に相当する位置において、第2の原料粉12から成る部分を有するものとして形成することが好ましい。このように第2の仮成形体43の形成を行うことにより、シリカ容器71の直胴部61及び湾曲部62の内側表層部分に混合シリカ層53を形成することができる。これにより、単結晶シリコン引き上げの初期段階に加えて、それより後の段階におけるシリコン融液の湯面振動をも効果的に抑制することができる。
次に、図6の(e)に示したように、型枠101を回転させつつ、第2の仮成形体43の内側から放電加熱溶融法によって加熱することにより、第2の仮成形体43のうち第2の原料粉12から成る部分を結晶質シリカ粉が溶融した相と非晶質シリカ粉が溶融した相が粒状に混在する混合シリカ層53とするとともに、容器外側が気泡を含有する不透明シリカガラス51から成り、容器内側が透明シリカガラス52から成るものとする(工程(e))。この第2の仮成形体43の放電加熱溶融法による加熱は、該第2の仮成形体43の外側から減圧しながら行うことが好ましい。減圧しながら行う加熱により、容器外側の不透明シリカガラス及び容器内側の透明シリカガラスを効率よく作製することができる。
この工程の様子を、図11及び図12に具体的に示した。このシリカ容器71を作製する装置は、上記の回転軸対称性を有する回転可能な型枠101の他、回転モーター(図示せず)、及び放電加熱溶融(アーク溶融、アーク放電溶融とも呼ばれる)の熱源となる炭素電極(カーボン電極)212、電線212a、高圧電源ユニット211、蓋213等から成る。カーボン電極212は2本又は3本が一般的である。電源は、交流又は直流の2種類が使用できる。さらに、第2の仮成形体43の内側から供給する雰囲気ガスを調整するための構成要素、例えば、水素ガス供給用ボンベ411、不活性ガス供給用ボンベ412、混合ガス供給管420、ガス混合器及び流量調節器421等を具備する。
第2の仮成形体43の溶融、焼結手順としては、炭素電極212間に加電を開始する前に、まず、水素含有ガスを、第2の仮成形体43の内側から供給し始めることが好ましい。具体的には、図11に示したように、水素ガス供給用ボンベ411から水素ガスを、不活性ガス供給用ボンベ412から不活性ガス(例えば、窒素(N)やアルゴン(Ar)、ヘリウム(He))を供給して混合し、混合ガス供給管420を通じて、第2の仮成形体43の内側から供給する。なお、符号510で示した白抜き矢印は混合ガスの流れを示す。
次に、上記のように混合ガスの供給を続けた状態で、第2の仮成形体43が入っている型枠101を一定速度で回転させつつ、脱ガス用真空ポンプ(図示せず)を起動させ、減圧用の孔103、減圧用の通路104、105を通じて第2の仮成形体43の外側から減圧するとともに炭素電極212間に加電を開始する。
炭素電極212間にアーク放電(図12の符号220で図示)が開始されると、第2の仮成形体43の内表面部はシリカ粉の溶融温度域(1800〜2000℃程度と推定)となり、最表層部から溶融が始まる。最表層部が溶融すると脱ガス真空ポンプによる真空引きの減圧度が増加し(急に圧力が低下し)、第1の原料粉11及び第2の原料粉12に含まれている水や酸素等の溶存ガスを脱ガスしつつ溶融シリカガラス層への変化が内側から外側へ進行することになる。
第2の仮成形体43の全厚さの内側3分の1ないし半分程度が溶融し透明シリカガラスとなり、残り外側3分の2ないし半分程度が焼結した不透明シリカとなるまでに加電による加熱を継続する。
この放電加熱溶融時の容器肉厚層内部の雰囲気ガスは電極の消耗を少なくする目的からは窒素(N)、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)等の不活性ガスを主成分としても良いが、溶融後のシリカガラス中の溶在ガスを少なくするために、上記のように、この工程では雰囲気ガスを水素含有ガスとすることが好ましい。この水素含有ガスは、例えば、水素ガスと、窒素ガス(N)、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)等の不活性ガスからなる混合ガスとすることができる。水素ガス(H)の含有比率は1vol.%以上とすることが好ましく、1〜10vol.%とすることがより好ましい。この理由は、例えば脱ガスしにくい酸素ガス(O)が水素と反応し水(HO)を生成し、水分子は酸素分子に比較して拡散係数が大きいため、外層の外部へ放出されやすくなるものと考えられる。また水素ガス(H)は分子半径が小さく拡散係数が大きいため、雰囲気ガスに含まれていても外層外部へ放出されやすい。
ここまでの工程で、混合シリカ層53を有し、容器外側が気泡を含有する不透明シリカガラスから成り、容器内側が透明シリカガラスから成る本発明のシリカ容器71が製造される(図12参照)。
このようにしてシリカ容器71を製造した後、図2に示すシリカ容器72を製造するため、追加の工程として、該シリカ容器71の内表面のうち混合シリカ層53が形成されていない内表面の少なくとも一部に、高純度シリカガラス層59を形成することができる(図6の工程(f))。高純度シリカガラス層59は、不純物元素の濃度がLi、Na、Kの各々について50massppb以下、Ca、Mgの各々について25massppb以下、Ti、Cr、Fe、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、W、Pbの各々について10massppb以下であり、厚さが200〜2000μmであるものとして形成することが好ましい。
以下では、図2に示すシリカ容器72のように容器底部に高純度シリカガラス層59を形成する場合を例として説明する。この工程は、図6の(f)及び図13に示したように、工程(a)〜(e)で作製したシリカ容器71の内側の空間に第3の原料粉(高純度シリカガラス層形成用原料粉)21を散布しながら放電加熱溶融法により溶融し、該溶融した第3の原料粉21をシリカ容器71の底部の内表面部分に付着させることにより、シリカ容器71の底部の内表面部分に高純度シリカガラス層59を形成する。これにより、図2に示したシリカ容器72を製造することができる。この工程による高純度シリカガラス層59の基本的な形成方法は、例えば特許文献1及び特許文献2に示される内容に類似しているが、本発明においては、シリカ容器71の内表面のうち混合シリカ層53が形成されていない内表面の少なくとも一部(図2及び図13の場合は容器底部表面)に形成する。
図13に示した、シリカ容器71の底部の内表面部分に高純度シリカガラス層59を形成する装置は、工程(e)とほぼ同様であり、回転軸対称性を有するシリカ容器が設置されている回転可能な型枠101、回転モーター(図示せず)、及び第3の原料粉21が入った原料粉ホッパー303、攪拌用スクリュー304、計量フィーダ305、及び放電加熱溶融の熱源となる炭素電極212、電線212a、高圧電源ユニット211、蓋213等から成る。また、雰囲気ガスを調整する場合には、工程(e)と同様に、さらに、水素ガス供給用ボンベ411、不活性ガス供給用ボンベ412、混合ガス供給管420、ガス混合器及び流量調節器421等を具備していてもよい。これらの装置は工程(e)から続けて使用することができる。
高純度シリカガラス層59を形成する方法としては、まず、型枠101を所定の回転速度に設定し、高圧電源ユニット211から徐々に高電圧を負荷するのと同時に原料ホッパー303から徐々に第3の原料粉21をシリカ容器71の上部から散布する。この時炭素電極212間に放電は開始されており、シリカ容器71内部はシリカ粉の溶融温度域(1800〜2000℃程度と推定)にあるため、散布された第3の原料粉21はシリカの溶融粒子となってシリカ容器71の内表面に付着していく。シリカ容器71の上部開口部に設置されている炭素電極212、原料粉投入口、蓋213はシリカ容器71に対してある程度位置が変化させられる機構となっており、これらの位置を変化させることにより、シリカ容器71の底部の所定の場所に所定の厚さで高純度シリカガラス層59を形成することができる。
アーク放電溶融中のシリカ容器71内部の雰囲気ガスは炭素電極の消耗を少なくするために、窒素ガス(N)、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)等の不活性ガスを主成分とするが、水素ガス(H)1〜10vol.%の混合雰囲気とすることにより、含有する気泡が少ない高純度シリカガラス層59が得られる。
アーク放電溶融時に発生するカーボン微粒子、及びカーボンと酸素との化合物である一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)は高純度シリカガラス層59中に残留した場合、単結晶シリコン引き上げ時に不純物として再発生し、該シリコンの品質を低下させる原因のひとつとなりうる。これを抑制するためには、シリカ容器71外部からクリーンな雰囲気ガスを一定流量で供給しつつ、容器内部のガスを一定流量で排出させて溶融中のシリカ容器内部を適切に換気することが好ましい。
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
(実施例1)
図6に示した工程(a)〜(e)に従い、図1に示す単結晶シリコン引き上げ用シリカ容器71を製造した。第1の原料粉11として、粒径50〜500μm、純度99.999mass%の天然石英粉(A)を準備した。この天然石英粉(A)の不純物濃度、OH基濃度、HO分子放出量は表9に示したものである。第2の原料粉12として、天然石英粉(B)である結晶質シリカ粉13及び合成シリカガラス粉(A)である非晶質シリカ粉14の混合粉を準備した。非晶質シリカ粉14は、四塩化ケイ素SiClの酸水素火炎加水分解法により作製した合成シリカガラス粉である。この天然石英粉(B)及び合成シリカガラス粉(A)の不純物元素濃度、OH基濃度、HO分子放出量は表10に示したものである。結晶質シリカ粉13と非晶質シリカ粉14の混合比率は50:50(質量%比)とした。
図7、図9及び図10に示したグラファイト型枠101を回転させつつ第1の原料粉11及び第2の原料粉12を投入し、第2の仮成形体43とした。次いで図11及び図12に示した装置を用いて、第2の仮成形体43の内部雰囲気を乾燥したN95vol%、H5vol%の混合ガスとし、外周部から吸気減圧しつつ、第2の仮成形体43内部で放電加熱溶融を行い、シリカ容器71を作製した。
(実施例2)
第2の原料粉12を構成する非晶質シリカ粉14を表10に示した合成シリカガラス粉(B)とした他は実施例1と同様の方法により図1に示したシリカ容器71を製造した。
(実施例3)
第2の原料粉12を構成する非晶質シリカ粉14を表10に示した合成シリカガラス粉(C)とした他は実施例1と同様の方法により図1に示したシリカ容器71を製造した。
(実施例4)
実施例3と基本的に同様として図1に示したシリカ容器71を製造したが、結晶質シリカ粉13と非晶質シリカ粉14の混合比率を30:70(質量%比)とした。
(実施例5)
実施例3と同様の方法により製造したシリカ容器71の底部に高純度シリカガラス層59(図6の工程(f))を形成して、図2に示すシリカ容器72を製造した。この際の高純度シリカガラス層59のための原料粉は表11に示す不純物濃度及びOH基濃度である合成クリストバライト粉(A)とした。
(実施例6)
まず、放電加熱溶融時の溶融雰囲気ガスをN50vol%、H10vol%、He40vol%の混合ガスとした他は実施例2と同様の方法によりシリカ容器71を製造した。このシリカ容器71の底部に高純度シリカガラス層59(図6の工程(f))を、溶融雰囲気ガスをN50vol%、H10vol%、He40vol%として形成して、図2に示すシリカ容器72を製造した。この際の高純度シリカガラス層59のための原料粉(第3の原料粉21)は表11に示す不純物濃度及びOH基濃度である合成クリストバライト粉(A)とした。
(実施例7)
基本的に実施例3と同様にシリカ容器71を製造したが、混合シリカ層53の厚さを2mmとした。
(実施例8)
図3に示した態様のシリカ容器71を製造した。その他の条件は実施例3と同様とした。
(実施例9)
第2の原料粉12を構成する非晶質シリカ粉14を表10に示した合成シリカガラス粉(D)とした他は実施例1と同様の方法により図1に示したシリカ容器71を製造した。
(実施例10)
第2の原料粉12を構成する非晶質シリカ粉14を表10に示した合成シリカガラス粉(D)とした他は実施例6と同様の方法により図2に示したシリカ容器72を製造した。
(実施例11)
図6に示した工程(a)〜(e)に従い、図5に示す単結晶シリコン引き上げ用シリカ容器71、すなわち、混合シリカ層53を直胴部61及び湾曲部62の内側表層部分において有するものを製造した。第1の原料粉11として、粒径50〜500μm、純度99.999mass%の天然石英粉(A)を準備した。この天然石英粉(A)の不純物濃度は表9に示したものである。第2の原料粉12として、天然石英粉(C)である結晶質シリカ粉13及び合成シリカガラス粉(E)である非晶質シリカ粉14の混合粉を準備した。結晶質シリカ粉13の天然石英粉(C)は天然石英粉(B)を高純度化処理したものであり、非晶質シリカ粉14は、四塩化ケイ素SiClの酸水素火炎加水分解法により作製した合成シリカガラス粉である。この天然石英粉(C)及び合成シリカガラス粉(E)の不純物元素濃度、OH基濃度、HO分子放出量は表12及び表13に示したものである。結晶質シリカ粉13と非晶質シリカ粉14の混合比率は60:40(質量%比)とした。
(実施例12)
第2の原料粉12を構成する非晶質シリカ粉14を表13に示した合成シリカガラス粉(F)とし、結晶質シリカ粉13と非晶質シリカ粉14の混合比率を60:40(質量%比)とした他は実施例11と同様の方法により図5に示したシリカ容器71を製造した。
(実施例13)
第2の原料粉12を構成する非晶質シリカ粉14を表13に示した合成シリカガラス粉(G)とし、放電加熱溶融時の溶融雰囲気ガスをN93vol%、H7vol%の混合ガスとした他は、実施例12と同様の方法により、図5に示したシリカ容器71を製造した。
(実施例14)
結晶質シリカ粉13と非晶質シリカ粉14の混合比率を30:70(質量%比)とした他は、実施例13と同様の方法により、図5に示したシリカ容器71を製造した。
(比較例1)
原料粉として天然石英粉を用いて、減圧アーク溶融法により、シリカ容器を製造した。このシリカ容器は、本発明の混合シリカ層53に相当する部分がなく、容器外側が気泡を含有する不透明シリカガラスから成り、容器内側が透明シリカガラスから成るものである。
(比較例2)
まず、原料粉として天然石英粉を用いて、常圧アーク溶融法により、シリカ容器を製造した。次に、合成クリストバライト粉を原料として、シリカ容器上方からこの原料粉を散布しつつ常圧アーク溶融法によりこのシリカ容器の内表面全体にわたって高純度シリカガラス層を形成した。
[実施例及び比較例における評価方法]
各実施例及び比較例において用いた原料粉及び製造したシリカ容器の物性、特性評価を以下のようにして行った。
各原料粉の粒径測定:
光学顕微鏡又は電子顕微鏡で各原料粉の二次元的形状観察及び面積測定を行った。次いで、粒子の形状を真円と仮定し、その面積値から直径を計算して求めた。この手法を統計的に繰り返し行い、粒径の範囲(この範囲の中に99mass%以上の原料粉が含まれる)の値として、表1〜8に示した。
シリカ容器の層厚測定:
シリカ容器をカッターで切断し、断面をスケールで測定することにより求めた。
OH基濃度測定:
OH基濃度は、赤外線吸収分光光度法で測定を行った。OH基濃度への換算は、以下の文献に従う。
Dodd, D. M. and Fraser, D. B. (1966) Optical determination of OH in fused silica. Journal of Applied Physics, vol.37, P.3911.
不純物金属元素濃度分析:
不純物金属元素濃度が比較的低い(ガラスが高純度である)場合は、プラズマ発光分析法(ICP−AES)又はプラズマ質量分析法(ICP−MS)で行い、不純物金属元素濃度が比較的高い(ガラスが低純度である)場合は、原子吸光光度法(AAS)で行った。アルカリ金属元素Li、Na、K、アルカリ土類金属元素Ca、Mg、遷移金属元素Ti、Cr、Fe、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、W、Pbの15元素の濃度分析を行った。
Oガス放出量の測定方法:
各原料粉から2g程度サンプリングし、これを真空チャンバー内に設置し、1000℃真空下におけるガス放出量を測定した。詳細は以下の文献に従う。
Nasu, S. et al. (1990) “Gas release of various kinds of vitreous silica” ,Journal of Illuminating Engineering Institute of Japan, vol.74, No.9, pp. 595−600.
単結晶シリコン引き上げ時の湯面振動評価:
直径800mm(32インチ)のシリカ容器の中に純度99.99999999mass%の金属ポリシリコンを投入し、昇温を行いシリコン融液とした。その際、実施例1〜10では、シリコン湯面はシリカ容器の混合シリカ層(帯状内周層)のほぼ中央部分になるように設定されていた。CZ装置内をアルゴン(Ar)ガス100%雰囲気とし、単結晶シリコンの種結晶を回転させつつ下部へ移動させ、シーディング、ネッキング、ショルダーリングを進めた。湯面振動の程度の評価は下記の通りとした。
・湯面振動が無く、シーディング、ネッキング、ショルダーリングの全てが順調に行えた。 ○(良好)
・湯面振動が若干あったが、シーディング、ネッキングの工程を複数回繰り返すことによりショルダーリングまで行えた。 △(やや良好)
・湯面振動が激しくシーディング、ネッキング、ショルダーリングを行うことが不可能であった。 ×(不良)
単結晶シリコン連続引き上げ(マルチ引き上げ)評価:
製造したシリカ容器の中に純度99.99999999mass%の金属ポリシリコンを投入し、昇温を行いシリコン融液とし、次いで単結晶シリコンの引き上げを3回繰り返して行い(マルチ引き上げ)、単結晶シリコン育成の成功率として評価した。引き上げ条件は、引き上げ装置(CZ装置)内をアルゴン(Ar)ガス100%雰囲気とし、引き上げ速度1mm/分、単結晶シリコン寸法は直径300mm、長さ900mm、単結晶シリコンの引き上げ1回当たりの操業時間は約30時間とした。単結晶シリコン育成3回繰り返しの成功比率の分類は以下の通りとした。
・単結晶シリコンインゴット3本の引き上げに成功した ○(良好)
・単結晶シリコンインゴット2本の引き上げに成功した △(やや良好)
・単結晶シリコンインゴット引き上げは1本であった ×(不良)
ボイドとピンホールの評価:
実施例11〜14について、引き上げた単結晶シリコンにおけるボイドとピンホールの評価を以下のように行った。前記の単結晶シリコン連続引き上げにおいて、各単結晶シリコンマルチ引き上げ後の1本目の単結晶シリコンの任意の部位から、直径300mm、厚さ200μmの両面研磨仕上げのシリコンウェーハ各200枚を作製した。次いで各々のシリコンウェーハの両面に存在するボイドとピンホールの個数をパーティクル検出器により測定し、統計的に数値処理を行いシリコンウェーハ200枚当たりの欠陥の無い枚数を求めた。その結果、ボイドもピンホールも検出されないシリコンウェーハ枚数に応じて以下のような評価とした。ただし検出可能なボイドとピンホールの直径は50μm以上であった。
・無欠陥シリコンウェーハ枚数 200枚〜199枚 ○(良好)
・無欠陥シリコンウェーハ枚数 198枚〜197枚 △(やや良好)
・無欠陥シリコンウェーハ枚数 196枚以下 ×(不良)
実施例1〜14、比較例1〜2で製造したそれぞれのシリカ容器の製造条件と、測定した物性値、評価結果をまとめ、下記の表1〜13に示した。
Figure 2014201501
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表1〜13からわかるように、実施例1〜14では、単結晶シリコン引き上げ時に湯面振動を抑制することができ、マルチ引き上げを順調に行うことができた。また、実施例11〜14では、直胴部61に加えて湾曲部62にも混合シリカ層53を形成したことにより、単結晶シリコン引き上げ時にその内表面に粗面が生じるにもかかわらず、単結晶シリコンにボイドやピンホールと呼ばれる空隙欠陥がほとんど導入されなかったこともわかった。また、実施例11〜14では、単結晶シリコン引き上げの初期段階より後の段階においてもシリコン融液の湯面振動も安定して抑制できていた。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は単なる例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
11…第1の原料粉、 12…第2の原料粉、 13…結晶質シリカ粉、
14…非晶質シリカ粉、
21…第3の原料粉(高純度シリカガラス層形成用原料粉)、
41…第1の仮成形体、 42…第1の仮成形体の凹部、 43…第2の仮成形体、
51…不透明シリカガラス(容器外側)、 52…透明シリカガラス(容器内側)、
53…混合シリカ層、 59…高純度シリカガラス層、
61…直胴部、 62…湾曲部、 63…底部、
71…シリカ容器、 72…シリカ容器、
101、101’…型枠、 102、102’…内壁、 103…減圧用の孔、
104、105…減圧用の通路、 106、106’…回転軸、
211…高電圧電源ユニット、 212…炭素電極、 212a…電線、
213…蓋、 220…アーク放電、
303…ホッパー、 304…攪拌用スクリュー、 305…計量フィーダ、
411…水素ガス供給用ボンベ、 412…不活性ガス供給用ボンベ、
420…混合ガス供給管、 421…ガス混合器及び流量調節器、
510…混合ガスの流れ。
従来より、単結晶シリコン引き上げ用シリカルツボの製造方法としては、特許文献1及び特許文献2に記載されているような製造方法が使用されている。これらの方法は、回転する型枠の中に高純度化処理された石英粉を投入、成形した後、上部から電極を押し込み、電極に加電することによりアーク放電を起こし、雰囲気温度を石英粉の溶融温度域(1800〜2100℃程度と推定)まで上昇させて、石英粉を溶融、焼結させる方法である。しかし、このような製造されたシリカルツボの使用時において、溶融シリコンとシリカルツボとが反応して一酸化ケイ素(SiO)ガスが生じ、それが単結晶シリコンに気泡(ガス泡)として取り込まれ、ボイドやピンホールと呼ばれる空隙欠陥が生成する等の単結晶シリコンの品質上の問題が出ていた。
特に、単結晶シリコンの一般的な引き上げ法であるCZ法(チョクラルスキー法)では、ルツボと呼ばれるシリカ容器内の溶融シリコンの融液面(以下、単に「湯面」とも称する。)に種結晶を付け(シーディング)、次いで種結晶の直径を若干絞りつつ成長させ(ネッキング)、次いで直径を拡大させつつ大直径単結晶シリコンを作製し(ショルダーリング)、引き続いて大直径単結晶シリコンの直径を一定に保持しつつ引き上げて(プリング)、長軸寸法の単結晶シリコンを取り出している。この引き上げ時に、溶融シリコンの湯面が振動する現象(以下、この現象を単に「湯面振動」と称する。)が発生する。この湯面振動が発生するとシーディング、ネッキングやショルダーリングができなくなったり、引き上げ(プリング)中に単結晶シリコンの一部が多結晶化する問題が生じていた。この原因の一つとして、酸化ケイ素(SiO)ガス発生による湯面振動が考えられていた。特許文献1、2で作製されたシリカルツボでは、特に直径12インチ(30cm)〜18インチ(45cm)の大直径単結晶シリコンを引き上げるための直径30インチ(75cm)〜54インチ(135cm)の大型容器である場合、高い頻度で強い湯面振動が発生するため、早急なる解決が求められていた。以下、シリカルツボと石英ルツボは同意語である。シリカガラスと石英ガラスも同意語である。
特許文献3では、溶融シリコンの湯面振動が発生しない石英ガラスルツボとして、ルツボの壁のIR(赤外線)透過率を3〜30%に設定すること等が示されている。しかしこのような広い透過率範囲の物性を有する大形化した石英ガラスルツボを使用しても、大直径単結晶シリコン引き上げ時における湯面振動を抑制することはできなかった。
特許文献4では、溶融シリコンの湯面振動が発生しない石英ガラスルツボの製造方法として、ルツボ製造時にルツボ内側の雰囲気に水蒸気を導入することが示されており、ルツボ内側表層全体におけるOH基濃度を高めることが湯面振動抑制に好ましいとされている。しかし、このような製造方法による、大形化した石英ガラスルツボを使用しても大直径単結晶シリコン引き上げ時における湯面振動を抑制する効果は不充分であった。またルツボ内側のシリコン融液による侵蝕(エッチング)が激しく、ルツボの寿命は短いものとなっていた。
特許文献5では、単結晶シリコン引き上げ時の石英ガラスルツボにおいて、溶融シリコン湯面付近の石英ガラスルツボ内表面の帯状部分のみを天然石英ガラスとすることにより、湯面振動を防止できると示している。しかしこのルツボは、全合成石英ガラスルツボに比較して湯面振動が相対的に少ないというものであり、大直径単結晶シリコン引き上げ時における湯面振動を抑制する効果は不充分であった。
特許文献6では、溶融シリコンの湯面付近の石英ガラスルツボ内表面に、気泡含有量の多い部分を帯状に分布させることにより、湯面振動を防止できると示している。しかしこのルツボではある程度の湯面振動抑制効果は認められるものの、気泡含有量の多い帯状部分の溶融シリコンによる侵蝕(エッチング)量が大きく、ルツボの寿命は短いものとなってしまった。また帯状部分に含まれている気泡が単結晶シリコン中に取り込まれる確率が高くなり、しばしば単結晶シリコン中にボイドやピンホールという空隙欠陥が生成する問題があった。
特許文献7では、回転軸対称性を有する石英ガラスルツボの気泡含有率、肉厚、透過率を円周にわたって均質にすることにより、溶融シリコンの湯面振動が防止できると示している。ルツボの各種物性を円周にわたって回転軸対称に高精度で作製することは湯面振動防止の観点からは基本的に重要なことと考えられる。しかし、ある程度の物性変動が生じたとしても、該湯面振動を防止できることが求められていた。
特許文献8では、溶融シリコンの湯面付近の石英ガラスルツボ内表面に複数個の微小凹部を具え、かつその下部に複数個の気泡を具えることにより湯面振動を防止できると示している。しかしこのルツボでは単結晶シリコン製造における初期の湯面振動は抑制できるものの、微小凹部が溶解された後では、再び振動が発生するという問題があった。特に単結晶シリコンを複数本引き上げる(マルチプリング)場合、2本目以降製造時の湯面振動が激しくなるということがあった。
特許文献9では、石英ガラスルツボ内表面に、石英粉を用いたサンドブラスト処理をすることにより、帯状に粗面領域を作製し、湯面振動を防止できると示している。しかしこのようなルツボでは単結晶シリコン製造時の初期の湯面振動は抑制できるものの、その効果は長く続かないものであった。また1個のルツボによりマルチプリングをすることは困難であった。
特許文献10では、石英ルツボ内表面にシリカ粉を酸水素火炎で溶融して、OH基を500〜1500ppm含有するシリカガラス層を堆積することにより、湯面振動を防止することができると示している。しかしこの製法は工程が複雑化して高コストになるばかりではなく、湯面付近のシリコン融液によるエッチングが大きく、そのため湯面振動が徐々に激しくなったりルツボ寿命が短くなってしまうという欠点が生じていた。

Claims (15)

  1. 直胴部、湾曲部、及び底部を有する単結晶シリコン引き上げ用シリカ容器の製造方法であって、
    第1の原料粉として、粒径が10〜1000μmである結晶質シリカ粉を作製する工程と、
    第2の原料粉として、粒径が50〜2000μmである結晶質シリカ粉と、粒径が50〜2000μmである非晶質シリカ粉との混合粉を作製する工程と、
    前記第1の原料粉を、回転対称性を有する型枠の内側へ投入し、該型枠を回転させつつ該型枠の内壁に応じた所定の形状に仮成形して、該型枠内に第1の原料粉から成る第1の仮成形体を形成する工程と、
    前記第2の原料粉を、前記型枠内に形成した第1の仮成形体の内側及び上部の少なくともいずれか一方に投入して前記第1の原料粉から成る部分及び前記第2の原料粉から成る部分を有する第2の仮成形体を、製造するシリカ容器の形状に応じた形状として、かつ、該製造するシリカ容器の少なくとも直胴部の内側表層部分に相当する位置において、前記第2の原料粉から成る部分を有するものとして形成する工程と、
    前記型枠を回転させつつ、前記第2の仮成形体の内側から放電加熱溶融法によって加熱することにより、前記第2の仮成形体のうち前記第2の原料粉から成る部分を結晶質シリカ粉が溶融した相と非晶質シリカ粉が溶融した相が粒状に混在する混合シリカ層とするとともに、容器外側が気泡を含有する不透明シリカガラスから成り、容器内側が透明シリカガラスから成るものとする工程と
    を含むことを特徴とする単結晶シリコン引き上げ用シリカ容器の製造方法。
  2. 前記混合シリカ層を、前記製造されるシリカ容器の内表面のうち、該シリカ容器が原料シリコン融液を保持した際の初期の融液面に相当する内表面上の位置を含んで形成することを特徴とする請求項1に記載の単結晶シリコン引き上げ用シリカ容器の製造方法。
  3. 前記第2の仮成形体の形成を、前記製造するシリカ容器の直胴部及び湾曲部の内側表層部分に相当する位置において、前記第2の原料粉から成る部分を有するものとして形成することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の単結晶シリコン引き上げ用シリカ容器の製造方法。
  4. 前記混合シリカ層を、前記シリカ容器の肉厚方向における厚さが2mm以上であり、幅が100mm以上であるものとして形成することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の単結晶シリコン引き上げ用シリカ容器の製造方法。
  5. 前記第2の仮成形体の放電加熱溶融法による加熱を、該第2の仮成形体の外側から減圧しながら行うことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の単結晶シリコン引き上げ用シリカ容器の製造方法。
  6. 前記第2の原料粉において、前記結晶質シリカ粉のOH基濃度を50massppm以下とし、前記非晶質シリカ粉のOH基濃度を200〜2000ppmとすることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の単結晶シリコン引き上げ用シリカ容器の製造方法。
  7. 前記第2の原料粉の不純物元素の濃度を、Li、Na、Kの各々について100massppb以下、Ca、Mgの各々について50massppb以下、Ti、Cr、Fe、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、W、Pbの各々について20massppb以下とすることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の単結晶シリコン引き上げ用シリカ容器の製造方法。
  8. 請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の方法によりシリカ容器を製造した後、さらに、該シリカ容器の内表面のうち前記混合シリカ層が形成されていない内表面の少なくとも一部に、不純物元素の濃度がLi、Na、Kの各々について50massppb以下、Ca、Mgの各々について25massppb以下、Ti、Cr、Fe、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、W、Pbの各々について10massppb以下であり、厚さが200〜2000μmの高純度シリカガラス層を形成する工程を有することを特徴とする単結晶シリコン引き上げ用シリカ容器の製造方法。
  9. 直胴部、湾曲部、及び底部を有する単結晶シリコン引き上げ用シリカ容器であって、
    容器外側が気泡を含有する不透明シリカガラスから成り、容器内側が透明シリカガラスから成り、
    少なくとも前記直胴部の内側表層部分において、結晶質シリカ粉が溶融した相と非晶質シリカ粉が溶融した相が粒状に混在する混合シリカ層を有する
    ことを特徴とする単結晶シリコン引き上げ用シリカ容器。
  10. 前記混合シリカ層が、前記シリカ容器の内表面のうち、該シリカ容器が原料シリコン融液を保持した際の初期の融液面に相当する内表面上の位置を含んで形成されていることを特徴とする請求項9に記載の単結晶シリコン引き上げ用シリカ容器。
  11. 前記混合シリカ層を前記直胴部及び前記湾曲部の内側表層部分において有するものであることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の単結晶シリコン引き上げ用シリカ容器。
  12. 前記混合シリカ層は、前記シリカ容器の肉厚方向における厚さが2mm以上であり、幅が100mm以上であることを特徴とする請求項9ないし請求項11のいずれか1項に記載の単結晶シリコン引き上げ用シリカ容器。
  13. 前記混合シリカ層が、OH基濃度50massppm以下の結晶質シリカ粉及びOH基濃度200〜2000ppmの非晶質シリカ粉の混合粉を原料として形成されたものであることを特徴とする請求項9ないし請求項12のいずれか1項に記載の単結晶シリコン引き上げ用シリカ容器。
  14. 前記混合シリカ層における不純物元素の濃度がLi、Na、Kの各々について100massppb以下、Ca、Mgの各々について50massppb以下、Ti、Cr、Fe、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、W、Pbの各々について20massppb以下であることを特徴とする請求項9ないし請求項13のいずれか1項に記載の単結晶シリコン引き上げ用シリカ容器。
  15. 前記シリカ容器の内表面のうち前記混合シリカ層が形成されていない内表面の少なくとも一部に、不純物元素の濃度がLi、Na、Kの各々について50massppb以下、Ca、Mgの各々について25massppb以下、Ti、Cr、Fe、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、W、Pbの各々について10massppb以下であり、厚さが200〜2000μmの高純度シリカガラス層を有することを特徴とする請求項9ないし請求項14のいずれか1項に記載の単結晶シリコン引き上げ用シリカ容器。
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