JP2014201110A - 複合材とそれを用いたフードパネル - Google Patents

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Abstract

【課題】アウタパネルを構成する基材自体の強度やアウタパネルの疑似等方性を維持しながら、簡単な構成で外部からの衝撃に応じて容易に変形させることのできる複合材とそれを用いたフードパネルを提供する。【解決手段】アウタパネル2は、l/hが5/2以内である近傍領域RAに存在する基材同士の境界部のうち、アウタパネル2の板厚中心に最も近い境界部である中心境界部に基材同士の密着力を低減する離型フィルム4を有し、l/hが16/2以上である遠方領域RCに存在する基材同士の境界部のうち、前記中心境界部よりも相対的に外側の境界部に基材同士の密着力を低減する離型フィルム5、6を有している。【選択図】図3

Description

本発明は複合材とそれを用いたフードパネルに関し、たとえば繊維強化樹脂からなるシート状の基材が複数積層されて一体とされたパネル材と該パネル材を支持するパネル材が接着剤を介して接合されている複合材とそれを用いたフードパネルに関するものである。
樹脂に強化用繊維材が混入されてなる繊維強化樹脂材(繊維強化プラスチック(FRP))は、軽量かつ高強度であることから、自動車産業、建設産業、航空産業等、広い産業分野で使用されている。
たとえば自動車産業においては、環境負荷影響等の少ない車両としてハイブリッド自動車や電気自動車が注目されており、その一層の小型化、軽量化、高性能化を目指した開発が自動車メーカー各社、自動車関連メーカー各社で日々進められている。これらの所謂エコカーのみならずその他一般のガソリン車両やディーゼル車両を含む車両全般に対して、車両の軽量化と高剛性化の双方を満足する部材として繊維強化樹脂材を車両用の外板パネルなどの一部または全部に適用しようとするニーズが高まっている。
ところで、たとえばフードパネル(エンジンフードともいう)などの車両用の外板パネルは、外部からの衝撃に応じて適度に変形することで車両衝突時に乗員や歩行者を保護している。たとえば車両用のフードパネルは、自車両が他車両や障害物と衝突した際にその略中央から屈曲したり、歩行者と衝突した際に歩行者の頭部などと衝接する箇所が内方へ変形することによって、乗員や歩行者に加わる衝撃を緩和している。
しかしながら、上記した繊維強化樹脂材はたとえば金属材などと比較して高剛性であることから、この繊維強化樹脂材を車両の外板パネルに適用した場合には、車両衝突時に乗員や歩行者に加わる衝撃を緩和することが難しいといった問題がある。
このような問題に対して、特許文献1には、繊維強化プラスチック素材を積層してバインダにより接合したフードパネルにおいて、衝突時にフードパネルを所定位置から折り曲げて乗員や歩行者を保護する技術が開示されている。
特許文献1に開示されている自動車用フードパネル構造は、たとえば、フードパネルを構成するアウタパネルに切欠き部を設けたり、アウタパネルの厚みを他の部分よりも薄くしたり、複数層からなる繊維強化プラスチック素材の配向角度を部分的に変えたり、複数層からなる繊維強化プラスチック素材の強化繊維量を部分的に減らしたり、繊維強化プラスチック素材の強化繊維の一部を破断して不連続部を設けたり、他の部分よりも剛性または強度、或いはその両方が低い異種の繊維強化プラスチック素材を用いることによって、フードパネルの車体前後方向のほぼ中央部に、他の部分よりも剛性または強度、或いはその両方が低い折曲げ容易部を形成したものである。
特開2006−224876号公報
特許文献1に開示されている自動車用フードパネル構造によれば、例えば前面衝突時に、フードパネルの開閉を行う開閉機構部を構成するフードロックストライカとヒンジを支持点とした曲げ入力に対して応力集中する部位(折曲げ容易部)を形成することができ、その折曲げ容易部から容易にフードパネルを折り曲げることができる。
しかしながら、特許文献1に開示されている自動車用フードパネル構造においては、たとえばフードパネルを構成するアウタパネルに切欠き部を設けたり、アウタパネルの厚みを他の部分よりも薄くする場合に、繊維強化プラスチック素材に含まれる強化繊維が切断されて繊維強化プラスチック素材自体の強度が低下してしまうといった問題や、アウタパネルを構成する繊維強化プラスチック素材の積層数が減少して疑似等方性を確保し得ないといった問題が生じ得る。また、たとえば複数層からなる繊維強化プラスチック素材の配向角度を部分的に変えたり、複数層からなる繊維強化プラスチック素材の強化繊維量を部分的に減らしたり、繊維強化プラスチック素材の強化繊維の一部を破断して不連続部を設けたり、他の部分よりも剛性または強度、或いはその両方が低い異種の繊維強化プラスチック素材を用いる場合には、フードパネルの製造工程が煩雑となり、その製造コストが高騰するといった問題が生じ得る。
本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、たとえばアウタパネルを構成する繊維強化プラスチック素材自体の強度やアウタパネルの疑似等方性を維持しながら、簡単な構成で外部からの衝撃に応じて容易に変形させることのできる複合材とそれを用いたフードパネルを提供することを目的とする。
前記目的を達成すべく、本発明による複合材は、枠状部を有する第1パネル材と繊維強化樹脂からなるシート状の基材が3層以上積層されて一体とされた第2パネル材を有し、該第2パネル材が第1パネル材の枠状部と接合されて該第1パネル材により支持されている複合材であって、第2パネル材の板厚をh、第2パネル材の板厚中心に沿って第1パネル材との接合部から第2パネル材の板厚方向と直交する方向へ離間する距離をlとした際に、前記第2パネル材は、l/hが5/2以内である近傍領域に存在する基材同士の境界部のうち、第2パネル材の板厚中心に最も近い境界部である中心境界部に、基材同士の密着力が相対的に弱い近傍脆弱部を有し、および/または、l/hが16/2以上である遠方領域に存在する基材同士の境界部のうち、前記中心境界部よりも相対的に外側の境界部に、基材同士の密着力が相対的に弱い遠方脆弱部を有しているものである。
繊維強化樹脂からなるシート状の基材が複数積層されて一体とされたパネル材において、JIS K 7078やASTM D 2344に準拠する層間剪断試験は、支点間距離/パネル材の板厚が4〜5程度で実施されている。また、JIS K 7074やASTM D 790に準拠する曲げ試験は、支点間距離/パネル材の板厚が16〜40程度で実施されている。すなわち、繊維強化樹脂からなるシート状の基材が複数積層されて一体とされたパネル材は、三点曲げ試験において、支点間距離/パネル材の板厚が5以下では層間剪断破壊モード(パネル材の中立軸近傍の層間で基材同士が剥離し、それが進展して破壊に至るモード)で破壊し易く、支点間距離/パネル材の板厚が16以上では曲げ破壊モード(引張曲げ応力が最大となり得るパネル材の引張側の最外層の層間で基材同士が剥離し、それが進展して破壊に至るモード)で破壊し易いと考えられている。
また、上記するパネル材は、板厚方向での均質性を確保し、たとえば熱収縮などに起因する反り変形を抑制するために、一般に中立軸がパネル材の板厚中心と一致するように設計されている。
上記する複合材によれば、パネル材の板厚をh、パネル材の板厚中心に沿って支持点からパネル材の板厚方向と直交する方向へ離間する距離をlとした際に、複合材の第2パネル材が、層間剪断モードで破壊し易いと考えられるl/hが5/2以内である近傍領域において、基材同士の境界部のうち第2パネル材の板厚中心に最も近い境界部である中心境界部に、基材同士の密着力が相対的に弱い近傍脆弱部を有していることによって、第2パネル材に曲げモーメントが作用した際に、層間剪断破壊の起点となり得る第2パネル材の板厚中心に最も近い中心境界部で基材同士を迅速に剥離させることができ、その第2パネル材の剛性を効果的に低減することができる。また、複合材の第2パネル材が、曲げ破壊モードで破壊し易いと考えられるl/hが16/2以上である遠方領域において、基材同士の境界部のうち前記中心境界部よりも相対的に外側の境界部に、基材同士の密着力が相対的に弱い遠方脆弱部を有していることによって、第2パネル材に曲げモーメントが作用した際に、引張曲げ応力が大きくなる中心境界部よりも相対的に外側の境界部で基材同士を迅速に剥離させることができ、その第2パネル材の剛性を効果的に低減することができる。
なお、近傍脆弱部は、l/hが5/2以内である近傍領域に存在する基材同士の境界部のうち、第2パネル材の板厚中心に最も近い境界部である中心境界部の全体に亘って設けられてもよいし、その一部のみに設けられてもよい。また、遠方脆弱部は、l/hが16/2以上である遠方領域に存在する基材同士の境界部のうち、前記中心境界部よりも相対的に外側の境界部の全体に亘って設けられてもよいし、その一部のみに設けられてもよい。
また、上記する複合材は、前記遠方脆弱部が基材同士の境界部のうち最も外側の境界部に設けられているものである。
上記する複合材によれば、第2パネル材に曲げモーメントが作用した際に、引張曲げ応力が最大となり得る最も外側の境界部で基材同士をより迅速に剥離させることができ、その第2パネル材の剛性をより効果的に低減することができる。
ここで、前記近傍脆弱部および/または前記遠方脆弱部は、基材同士の密着力を低減できれば適宜の構成を適用し得るが、たとえば、前記近傍脆弱部および/または前記遠方脆弱部はフッ素系樹脂を含んでいることが好ましい。また、前記近傍脆弱部および/または前記遠方脆弱部はフッ素系樹脂からなるフィルムによって形成されていることが望ましい。
上記する複合材によれば、近傍脆弱部や遠方脆弱部がフッ素系樹脂を含んでいることによって、たとえば第2パネル材を構成する基材がエポキシ樹脂などを含む場合に、基材同士の境界部に設けられた近傍脆弱部や遠方脆弱部によって基材同士の密着力を効果的に低減できるため、第2パネル材に曲げモーメントが作用した際にその第2パネル材の剛性をより効果的に低減することができる。また、近傍脆弱部や遠方脆弱部がフッ素系樹脂からなるフィルムによって形成されていることによって、当該近傍脆弱部や遠方脆弱部を基材同士の境界部の所望の箇所に容易且つ確実に配設できるため、基材同士の境界部の所望の箇所で基材同士の密着力を低減できるとともに、その複合材の製造工程を簡素化することもできる。
また、上記する複合材は、前記第2パネル材が、l/hが5/2以上かつ16/2以下である中間領域に存在する基材同士の境界部のうち、近傍脆弱部が配設された境界部から遠方脆弱部が配設された境界部までの間にある境界部に、基材同士の密着力が相対的に弱い中間脆弱部を有しているものである。
三点曲げ試験における破壊モードが層間剪断破壊モードから曲げ破壊モードへ遷移する中間領域においては、第2パネル材の物性などに応じてその遷移点は変化すると考えられる。上記する複合材によれば、複合材の第2パネル材が、l/hが5/2以上かつ16/2以下である中間領域に存在する基材同士の境界部のうち、近傍脆弱部が配設された境界部から遠方脆弱部が配設された境界部までの間にある境界部に、基材同士の密着力が相対的に弱い中間脆弱部を有していることによって、その中間領域において、近傍脆弱部が設けられた境界部から遠方脆弱部が設けられた境界部までの間にある適宜の境界部で基材同士を迅速に剥離させることができ、その第2パネル材の剛性をより効果的に低減することができる。
また、本発明によるフードパネルは、上記する複合材を用いたフードパネルであって、前記第2パネル材がフードパネルの外表面を形成するアウタパネルを構成し、前記第1パネル材がアウタパネルの内表面側に接合されて該アウタパネルを支持するインナパネルを構成しているものである。
また、上記するフードパネルは、前記遠方脆弱部が、基材同士の境界部のうち前記中心境界部よりも相対的にインナパネル側の境界部に設けられているものである。
上記するフードパネルによれば、たとえば車両が歩行者と衝突し、歩行者の頭部などがフードパネルに衝接した際、引張曲げ応力が相対的に大きくなり得るインナパネル側の境界部で曲げ破壊モードによる破壊を促進し、基材同士を迅速に剥離させて歩行者に加わる衝撃を低減することができる。
また、上記するフードパネルは、前記遠方脆弱部が、基材同士の境界部のうち前記中心境界部よりも相対的にインナパネル側とは反対側の境界部に設けられているものである。
上記するフードパネルによれば、たとえば自車両が他車両や障害物と衝突し、フードパネルをインナパネル側とは反対側へ屈曲させて衝突エネルギを吸収する場合、引張曲げ応力が相対的に大きくなり得るインナパネル側とは反対側の境界部で曲げ破壊モードによる破壊を促進し、基材同士を迅速に剥離させて乗員に加わる衝撃を低減することができる。
以上の説明から理解できるように、本発明によれば、繊維強化樹脂からなるシート状の基材が3層以上積層されて一体とされたパネル材とこのパネル材を支持するパネル材を備えた複合材において、たとえばパネル材を構成する基材に含まれる強化繊維材を切断したり、基材の積層数を減少させることなく、基材自体の強度やパネル材の疑似等方性を維持しながら、簡単な構成で外部からの衝撃に応じて当該パネル材を容易に変形させることができる。
本発明の複合材を用いたフードパネルの実施の形態1の全体構成を示した図であって、(a)はその上面図であり、(b)はその下面図であり、(c)は図1(a)のA−A矢視図である。 図1(c)のB部拡大図である。 図1(c)のC部拡大図である。 図3のD部拡大図である。 図3のE部拡大図である。 図3のF部拡大図である。 本発明の複合材を用いたフードパネルの実施の形態2の一部を拡大して示した一部拡大断面図である。
以下、図面を参照して本発明の複合材とそれを用いたフードパネルの実施の形態を説明する。なお、以下では、本発明の複合材が車両前方に配されるフードパネルに適用される形態について説明するが、本発明の複合材は、たとえばフードパネル以外の車両用パネル、車両用以外の適宜の用途に使用されるパネルなどに適用することができる。
[実施の形態1]
図1は、本発明の複合材を用いたフードパネルの実施の形態1の全体構成を示した図であって、図1(a)はその上面図であり、図1(b)はその下面図であり、図1(c)は図1(a)のA−A矢視図である。また、図2は、図1(c)のB部拡大図である。
図1(a)及び図1(b)で示すように、フードパネル(複合材)10は、その外表面を形成するアウタパネル(第2パネル材)2と、アウタパネル2の内表面側に接合されてアウタパネル2を支持するインナパネル(第1パネル材)1と、を備えている。インナパネル1は複数の枠状部1Aを有しており、インナパネル1の枠状部1A等とアウタパネル2が接着剤3(図1(c)参照)を介して接合されている。これにより、アウタパネル2は、図1(c)で示すように、アウタパネル2の板厚方向と平行な断面で視た際に間隔を置いて設けられた複数の接合部でインナパネル1により支持されている。
アウタパネル2は、図2で示すように、主に、繊維強化樹脂からなるシート状の基材21〜26が6層積層され、積層された基材21〜26同士がバインダ(不図示)により接着されて一体とされている。一方、インナパネル1は、アウタパネル2と同様、繊維強化樹脂からなるシート状の基材を複数積層させ、積層された基材同士をバインダにより接着して一体として形成してもよいし、たとえば鉄やアルミニウムなどの適宜の金属材料などから形成してもよい。
アウタパネル2のシート状基材を形成する繊維強化樹脂は、樹脂に強化用繊維材が混入されたものであり、この繊維強化樹脂に適用される樹脂(マトリックス樹脂ともいう)は熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれであってもよく、熱硬化性樹脂としては、たとえば、エポキシ樹脂やフェノール樹脂、メラミン樹脂などを挙げることができ、熱可塑性樹脂としては、たとえば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、AS樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、メタクリル樹脂、ポリアミド(PA)、ポリエステル、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリアミドイミド、熱可塑性エポキシ樹脂などのいずれか一種もしくは二種以上の混合材を挙げることができる。また、前記熱可塑性樹脂を主成分とする共重合体やグラフト樹脂やブレンド樹脂、たとえばエチレン−塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、ウレタン−塩化ビニル共重合体、アクリル酸変性ポリプロピレン、マレイン酸変性ポリエチレンなどを導入することもできる。
また、繊維強化樹脂に適用される繊維材としては、たとえば、ボロンやアルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニアなどのセラミック繊維や、ガラス繊維や炭素繊維といった無機繊維、銅や鋼、アルミニウム、ステンレス等の金属繊維、ポリアミドやポリエステル、セルロースなどの有機繊維のいずれか一種もしくは二種以上の混合材を挙げることができる。
次に、図3〜図6を参照して、フードパネル10のアウタパネル2の内部構造をより具体的に説明する。なお、本実施の形態1では、たとえば車両が歩行者と衝突して歩行者の頭部などがフードパネルに衝接した際、歩行者に加わる衝撃を低減し得るフードパネルの形態について説明する。
図3及び図4で示すように、アウタパネル2には、インナパネル1の枠状部1Aの内側であってインナパネル1との接合部に近接した領域、特に0≦l/h≦10/2(アウタパネル2の板厚をh(たとえば約2mm)、アウタパネル2の板厚中心に沿ってインナパネル1との接合部からアウタパネル2の板厚方向と直交する方向へ離間する距離をlとする)の領域R1に存在する基材21〜26同士の境界部のうち、アウタパネル2の板厚中心に最も近い基材23、24同士の境界部(中心境界部)に、その基材23、24同士の密着力を低減するための離型フィルム4が配設されている。
また、図3及び図5で示すように、アウタパネル2には、領域R1よりもインナパネル1との接合部から離間した領域、特に10/2≦l/h≦20/2の領域R2に存在する基材21〜26同士の境界部のうち、基材23、24同士の境界部よりも内表面側の基材24、25同士の境界部に、その基材24、25同士の密着力を低減するための離型フィルム5が配設されている。
さらに、図3及び図6で示すように、アウタパネル2には、領域R2よりもインナパネル1との接合部から更に離間した領域、特に20/2≦l/hの領域に存在する基材21〜26同士の境界部のうち、アウタパネル2の最も内表面側の基材25、26同士の境界部に、その基材25、26同士の密着力を低減するための離型フィルム6が配設されている。
なお、基材同士の密着力を低減するための離型フィルム4〜6は、たとえばポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene、PTFE)などのフッ素系樹脂を含むテフロン(登録商標)製フィルム(たとえば長さ約20mm、厚さ約20μm)から形成されている。この離型フィルム4〜6は、たとえばRTM成形時に基材同士の間に介在され、その基材同士がバインダにより接着されることで、アウタパネル2を構成する基材同士の境界部の適宜の位置に配設される。
ここで、上記したように、繊維強化樹脂からなるシート状の基材が複数積層されて一体とされたアウタパネル2は、JIS K 7078やASTM D 2344に準拠した層間剪断試験から、接合部に近接した領域、特にl/hが5/2以内である近傍領域RA(図3参照)では、層間剪断破壊モード(パネル材の中立軸近傍の層間で基材同士が剥離し、それが進展して破壊に至るモード)で破壊し易いと考えられる。一方で、アウタパネル2は、JIS K 7074やASTM D 790に準拠した曲げ試験から、接合部から離間した領域、特にl/hが16/2以上である遠方領域RC(図3参照)では、曲げ破壊モード(引張曲げ応力が最大となり得るパネル材の引張側の最外層の層間で基材同士が剥離し、それが進展して破壊に至るモード)で破壊し易いと考えられる。
本実施の形態1のフードパネル10では、層間剪断モードで破壊し易いと考えられる近傍領域RA(0≦l/h≦5/2の領域)において、アウタパネル2の板厚中心に最も近い基材23、24同士の境界部(中心境界部)に離型フィルム4が配設されている。これにより、たとえば車両が歩行者と衝突して歩行者の頭部などがフードパネルに衝接し、アウタパネル2に曲げモーメントが作用した際、層間剪断破壊の起点となり得る基材23、24同士の中心境界部で基材23、24同士を迅速に剥離させることができ、アウタパネル2全体の剛性を効果的に低減して歩行者に加わる衝撃を低減することができる。
また、曲げ破壊モードで破壊し易いと考えられる遠方領域RC(16/2≦l/hの領域)においては、基材23、24同士の中心境界部よりも相対的にインナパネル1側に存在する基材24、25同士の境界部や基材25、26同士の境界部に離型フィルム5、6が配設されている。これにより、たとえば車両が歩行者と衝突して歩行者の頭部などがフードパネルに衝接し、アウタパネル2が内表面側へ屈曲するように当該アウタパネル2に曲げモーメントが作用した際、引張曲げ応力が相対的に大きくなる基材24、25同士の境界部や基材25、26同士の境界部でその基材24、25同士や基材25、26同士を迅速に剥離させることができ、アウタパネル2全体の剛性を効果的に低減して歩行者に加わる衝撃を低減することができる。特に、本実施の形態1のフードパネル10では、最もインナパネル1側の基材25、26同士の境界部に離型フィルム6が配設されているため、引張曲げ応力が最大となって曲げ破壊の起点となり得る基材25、26同士の境界部で基材25、26同士を迅速に剥離させることができ、アウタパネル2全体の剛性をより効果的に低減することができる。
また、破壊モードが層間剪断破壊モードから曲げ破壊モードへ遷移すると考えられる中間領域RB(5/2≦l/h≦16/2の領域)においては、基材23、24同士の境界部や基材24、25同士の境界部に離型フィルム4、5が配設されている。これにより、近傍領域RAの離型フィルム4が設けられた境界部から遠方領域RCの離型フィルム5が設けられた境界部までの間にある適宜の境界部で基材同士を迅速に剥離させることができるため、アウタパネル2全体の剛性を更に効果的に低減することができる。
なお、上記する実施の形態1では、アウタパネル2の板厚方向と平行な断面で視て、基材23、24同士の境界部に設けられる離型フィルム4が近傍領域RAの全体に亘って配設される形態について説明したが、この離型フィルム4は近傍領域RAの一部に配設されてもよい。
また、上記する実施の形態1では、アウタパネル2の板厚方向と平行な断面で視て、最もインナパネル1側の基材25、26同士の境界部に設けられる離型フィルム6が遠方領域RCの一部に配設される形態について説明したが、この離型フィルム6は遠方領域RCの全体に亘って配設されてもよい。
また、基材同士の境界部に設けられる離型フィルム4〜6は、車両の車幅方向へ連続的に配設されてもよいし、適宜の位置に断続的に配設されてもよい。
また、上記する実施の形態1では、アウタパネル2が、略同じ厚みのシート状基材21〜26が6層積層されて一体とされる形態について説明したが、アウタパネル3を構成するシート状基材の積層数や各基材の厚み、その基材を積層する際の縦糸と横糸の配向角度などは適宜変更することができる。
[実施の形態2]
図7は、本発明の複合材を用いたフードパネルの実施の形態2の一部を拡大して示した一部拡大断面図である。本実施の形態2では、たとえば車両が他車両や障害物と衝突した際、乗員に加わる衝撃を低減し得るフードパネルの形態について説明する。
図7で示す実施の形態2のフードパネル10aは、上記する実施の形態1のフードパネル10に対して、基材同士の境界部に配設される離型フィルムの位置が相違しており、その他の構成は実施の形態1のフードパネル10と同様である。したがって、実施の形態1のフードパネル10と同様の構成には同様の符号を付してその詳細な説明は省略する。
図7で示すように、フードパネル10aを構成するアウタパネル2aには、インナパネル1aの枠状部1Aaの内側であってインナパネル1aとの接合部に近接した領域、特に、0≦l/h≦10/2の領域R1aに存在する基材21a〜26a同士の境界部のうち、アウタパネル2aの板厚中心に最も近い基材23a、24a同士の境界部(中心境界部)に、その基材23a、24a同士の密着力を低減するための離型フィルム4aが配設されている。
また、アウタパネル2aには、領域R1aよりもインナパネル1aとの接合部から離間した領域、特に10/2≦l/h≦20/2の領域R2aに存在する基材21a〜26a同士の境界部のうち、離型フィルム4aが配設された基材23a、24a同士の境界部よりも外表面側の基材22a、23a同士の境界部に、その基材22a、23a同士の密着力を低減するための離型フィルム5aが配設されている。
さらに、アウタパネル2には、領域R2aよりもインナパネル1aとの接合部から更に離間した領域、特に20/2≦l/hの領域に存在する基材21a〜26a同士の境界部のうち、アウタパネル2の最も外表面側の基材21a、22a同士の境界部に、その基材21a、22a同士の密着力を低減するための離型フィルム6aが配設されている。
本実施の形態2のフードパネル10aでは、インナパネル1aによって支持されたアウタパネル2aが層間剪断破壊モードで破壊し易いと考えられる近傍領域RA(0≦l/h≦5/2の領域)において、上記する実施の形態1と同様に、アウタパネル2aの板厚中心に最も近い基材23a、24a同士の境界部(中心境界部)に離型フィルム4aが配設されている。これにより、たとえば車両が他車両や障害物と衝突し、アウタパネル2aに曲げモーメントが作用した際、層間剪断破壊の起点となり得る基材23a、24a同士の中心境界部で基材23a、24a同士を迅速に剥離させることができ、アウタパネル2a全体の剛性を低減することができるため、衝突エネルギを効果的に吸収して乗員に加わる衝撃を低減することができる。
また、アウタパネル2aが曲げ破壊モードで破壊し易いと考えられる遠方領域RC(16/2≦l/hの領域)においては、基材23a、24a同士の中心境界部よりもインナパネル1a側とは反対側に存在する基材22a、23a同士の境界部や基材21a、22a同士の境界部に離型フィルム5a、6aが配設されている。これにより、たとえば車両が他車両や障害物と衝突し、アウタパネル2aが外表面側へ屈曲するように当該アウタパネル2aに曲げモーメントが作用した際、引張曲げ応力が相対的に大きくなる基材22a、23a同士の境界部や基材21a、22a同士の境界部でその基材22a、23a同士や基材21a、22a同士を迅速に剥離させることができ、アウタパネル2a全体の剛性を低減することができるため、衝突エネルギを効果的に吸収して乗員に加わる衝撃を低減することができる。
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
1…インナパネル(第1パネル材)、1A…インナパネルの枠状部、2…アウタパネル(第2パネル材)、3…接着剤、4〜6…離型フィルム(脆弱部)、10…フードパネル(複合材)、21〜26…シート状基材、RA…近傍領域、RB…中間領域、RC…遠方領域

Claims (8)

  1. 枠状部を有する第1パネル材と繊維強化樹脂からなるシート状の基材が3層以上積層されて一体とされた第2パネル材を有し、該第2パネル材が第1パネル材の枠状部と接合されて該第1パネル材により支持されている複合材であって、
    第2パネル材の板厚をh、第2パネル材の板厚中心に沿って第1パネル材との接合部から第2パネル材の板厚方向と直交する方向へ離間する距離をlとした際に、
    前記第2パネル材は、l/hが5/2以内である近傍領域に存在する基材同士の境界部のうち、第2パネル材の板厚中心に最も近い境界部である中心境界部に、基材同士の密着力が相対的に弱い近傍脆弱部を有し、および/または、l/hが16/2以上である遠方領域に存在する基材同士の境界部のうち、前記中心境界部よりも相対的に外側の境界部に、基材同士の密着力が相対的に弱い遠方脆弱部を有している複合材。
  2. 前記遠方脆弱部は、基材同士の境界部のうち最も外側の境界部に設けられている、請求項1に記載の複合材。
  3. 前記近傍脆弱部および/または前記遠方脆弱部はフッ素系樹脂を含んでいる、請求項1または2に記載の複合材。
  4. 前記近傍脆弱部および/または前記遠方脆弱部はフッ素系樹脂からなるフィルムによって形成されている、請求項3に記載の複合材。
  5. 前記第2パネル材は、l/hが5/2以上かつ16/2以下である中間領域に存在する基材同士の境界部のうち、近傍脆弱部が配設された境界部から遠方脆弱部が配設された境界部までの間にある境界部に、基材同士の密着力が相対的に弱い中間脆弱部を有している、請求項1から4のいずれか一項に記載の複合材。
  6. 請求項1から5のいずれか一項に記載の複合材を用いたフードパネルであって、
    前記第2パネル材がフードパネルの外表面を形成するアウタパネルを構成し、前記第1パネル材がアウタパネルの内表面側に接合されて該アウタパネルを支持するインナパネルを構成している、フードパネル。
  7. 前記遠方脆弱部が、基材同士の境界部のうち前記中心境界部よりも相対的にインナパネル側の境界部に設けられている、請求項6に記載のフードパネル。
  8. 前記遠方脆弱部が、基材同士の境界部のうち前記中心境界部よりも相対的にインナパネル側とは反対側の境界部に設けられている、請求項6に記載のフードパネル。
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