JP2014200553A - 肌状態測定装置および肌状態測定方法 - Google Patents

肌状態測定装置および肌状態測定方法 Download PDF

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章平 福本
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星司 高見
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Abstract

【課題】蛍光強度の補正の精度を高め、精度良く肌状態を判定する。
【解決手段】データ解析部(22)は、予め想定された表皮層蛍光スペクトルおよび真皮層蛍光スペクトルを用いて、励起光を測定部位(70)に照射することによって生じる蛍光スペクトルに占める表皮層由来の蛍光の割合、および、真皮層由来の蛍光の割合を算出するスペクトル解析部(24)と、算出された割合を用いて、実測の蛍光強度を補正する蛍光強度補正部(25)とを備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、生体内に存在する測定対象物質の測定値を補正し、補正したデータを用いて肌状態を判定する肌状態測定装置等に関する。
従来、抗糖化(抗加齢)化粧品として、肌に蓄積したAGEs(Advanced Glycation Endproducts;後期糖化反応生成物)の低減を目的としたものが商品化されている。このAGEsは、タンパク質と、糖質や脂質との非酵素的糖付加反応(メイラード反応)により形成される最終生成物であり、黄褐色を呈し、その一部は蛍光を発する物質である。また、AGEsは、近くに存在する構造蛋白質と結合して架橋を形成する性質を有している。特にAGEsと真皮を構成しているコラーゲンとの架橋は、皮膚の弾力性を低下させるとともに、くすみの原因となることで問題となっている。
このようなAGEsをモニタリングすることで、肌の健康状態、老化を評価することができる。生体を侵襲することなく手軽にAGEsのデータを取得する方法として、皮膚コラーゲンに結合したAGEsからの蛍光スペクトルを測定し、測定した蛍光強度から肌に蓄積したAGEsの量を求める方法が知られている。
特許文献1には、皮膚の一部に励起光を照射し、皮膚の化学物質の蛍光によって皮膚から放出される光を検出し、検出光および蛍光と組織状態とを関連付けるモデルから、AGEsの尺度を決定する方法が記載されている。
特開2007−222669(2007年9月6日公開)
しかしながら、上記特許文献1の方法により得られる蛍光は、肌の表皮層に存在する生体内蛍光物質に由来する蛍光と、肌の真皮層に存在する生体内蛍光物質に由来する蛍光との合計となる。このため、上記特許文献1の方法では、肌の表皮層と真皮層とを切り分けて、表皮層、または/および、真皮層に存在する生体内蛍光物質(特に、肌の真皮層由来のAGEs)の蛍光データをそれぞれ精度よく測定することは困難であった。
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、蛍光強度の補正の精度を高める補正を行い、当該補正により得られたデータを用いて精度良く肌状態を判定することが可能な肌状態測定装置等を提供することにある。
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る肌状態測定装置は、280nm以上、410nm以下の波長範囲にピークを有する励起光を生体の測定部位に照射することによって生じる、測定対象物質の蛍光強度を補正する肌状態測定装置であって、予め想定された、表皮層のみに由来する蛍光スペクトルを表皮層蛍光スペクトルとし、予め想定された、真皮層のみに由来する蛍光スペクトルを真皮層蛍光スペクトルとし、実測の蛍光スペクトルと、上記表皮層蛍光スペクトルおよび上記真皮層蛍光スペクトルとを用いて、上記実測の蛍光スペクトルに占める、肌の表皮層に由来する蛍光の割合を示す表皮割合、または、上記実測の蛍光スペクトルに占める、肌の真皮層に由来する蛍光の割合を示す真皮割合を算出する算出部と、上記算出部により算出された上記表皮割合または上記真皮割合を用いて、上記実測の蛍光スペクトルの蛍光強度を補正する蛍光強度補正部と、を備えている。
また、本発明の一態様に係る肌状態測定方法は、280nm以上、410nm以下の波長範囲にピークを有する励起光を生体の測定部位に照射することによって生じる、測定対象物質の蛍光強度を補正する肌状態測定方法であって、予め想定された、表皮層のみに由来する蛍光スペクトルを表皮層蛍光スペクトルとし、予め想定された、真皮層のみに由来する蛍光スペクトルを真皮層蛍光スペクトルとし、実測の蛍光スペクトルと、上記表皮層蛍光スペクトルおよび上記真皮層蛍光スペクトルとを用いて、上記実測の蛍光スペクトルに占める、肌の表皮層に由来する蛍光の割合を示す表皮割合、または、上記実測の蛍光スペクトルに占める、肌の真皮層に由来する蛍光の割合を示す真皮割合を算出する算出工程と、上記算出工程にて算出された上記表皮割合または上記真皮割合を用いて、上記実測の蛍光スペクトルの蛍光強度を補正する蛍光強度補正工程と、を含んでいる。
本発明の一態様によれば、蛍光強度の補正の精度を高めることができるとともに、当該補正により得られたデータを用いて精度良く肌状態を判定することができるという効果を奏する。
本発明の一実施形態に係る肌状態判定システムの構成を示す図である。 上記肌状態判定システムにおける処理の流れの一例を示すフローチャートである。 皮膚ファントムモデルを用いた真皮層のAGEs測定実験の方法を説明するための図であり、作製した皮膚ファントムモデルの構造を示す断面図である。 皮膚ファントムモデルおよび3次元培養表皮モデルより得られた各種蛍光スペクトルを示す図である。 ヒトの経皮蛍光測定により得られた蛍光スペクトルを示す図である。 表皮中に多く含まれるニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)の蛍光測定により得られた蛍光スペクトルを示す図である。 糖化コラーゲン(AGEs)の蛍光測定により得られた蛍光スペクトルを示す図である。
〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について図1〜図7に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
〔本発明の技術的思想〕
まず、本発明の技術的思想について説明する。
本発明の発明者は、生体の測定部位(例えば、腕の皮膚表面)に励起光を照射することによって、該励起光を受けて蛍光を発する測定対象物質の蛍光データのうち、肌の表皮層および真皮層それぞれの蛍光強度を、検出される蛍光スペクトルのピーク波長を用いて算出できることを見出し、本発明に想到するに至った。
肌の経皮蛍光測定を用いて、肌中に含まれる測定対象物質を測定し、肌の老化、健康状態を評価する方法はこれまでも利用されてきた。しかしながら、経皮蛍光スペクトルに占める表皮由来と真皮由来を切り分けて評価する例は、本発明の発明者が知る限りではこれまでにない。
特に、肌の弾力やハリと関連し、肌老化の発生に最も関係する真皮層のみの情報を得ることで、肌の老化の兆候をより的確に捉えることができ、有用である。
このように、肌の表皮と真皮とを切り分けて蛍光データを補正すること、さらに、その補正に基づく判定を行うことで肌の状態の指標を評価するという技術的思想は、本発明の発明者の知る限りは存在しない。
〔肌状態判定システム100の構成〕
図1は、本実施形態に係る肌状態判定システム(肌状態測定システム)100の構成を示す図である。図1に示すように、肌状態判定システム100は、測定装置10および判定装置20を備えている。
肌状態判定システム100では、測定装置10において測定対象物質である肌内蛍光物質を検出するための励起光が照射される。そして、測定装置10は、励起光の照射によって発生した蛍光のスペクトルおよび蛍光強度を測定する。判定装置20は、当該蛍光に占める、肌の表皮層に由来する蛍光の割合(以下、表皮割合と称する)および肌の真皮層に由来する蛍光の割合(以下、真皮割合と称する)をそれぞれ算出し、算出した各割合に基づいて蛍光強度を補正し、補正した蛍光強度に基づいて肌状態を判定する。
<測定装置10の概要>
測定装置10は、測定対象の個体(生体)の肌(皮膚)における測定部位70に対して、励起光を照射し、当該照射によって生じる、測定対象物質の蛍光の強度を測定する。しかしながら、測定装置10が取得するデータは、このような蛍光のデータのみに限られず、その他の物性情報(または物理量)を取得するようにしてもよい。
例えば、一般に、肌の一部に光が照射されることにより生じる光としては、照射した光が反射した反射光、反射した光が肌を透過した透過光、または、励起光を照射することによって生じた蛍光(肌に含まれる物質に由来する蛍光)などを挙示できる。
よって、測定装置10は、本実施形態において示す光の強度の他、例えば、その半値幅、検出された光の波長、肌の透過率などといった、肌の一部に含まれる物質などに由来する物性情報(または物理量)のいずれかを特定するものであればよい。
測定装置10の測定対象となる測定部位70は、例えば、腕、手首、指、手のひら、頬、耳等であり、これらの測定部位70に対して励起光および参照光が照射される。
<測定装置10の構成>
測定装置10は、励起光源(励起光照射部)11および検出器(蛍光測定部)12を備えている。
(励起光源11)
励起光源11は、280nm以上、410nm以下の波長範囲にピークを有する励起光を測定部位70に照射するための光源である。励起光源11として、ハロゲンやキセノン光源のような管球タイプのもの、LED(Light-Emitting Diode、発光ダイオード)、LD(Laser Diode、レーザダイオード)等が利用可能である。
励起光の波長範囲は、測定対象物質の種類に応じて設定されればよい。例えば、励起光は、後期糖化反応生成物(AGEs(Advanced Glycation Endproducts))を検出することが可能な波長範囲を有していてもよい。
AGEsには、現在構造が明らかになったものだけでも20ほどの種類があり、その中で励起光を照射すると蛍光を発するものがいくつかある。例えば、ペントシジンおよびベスパーリジンはAGEsの代表的な例である。
ペントシジンはペントースと等モルのリジンとアルギニンとが架橋した構造を有し、酸加水分解後に安定な蛍光性物質である。このペントシジンは、特に糖尿病の発症や末期の腎症において増加することが報告されている。ペントシジンは、328〜335nmの波長の励起光を受けて378〜385nmの蛍光を発する。
ベスパーリジンはAGE化ウシ血清アルブミン(BSA)を酸加水分解した後、主要な蛍光性物質として単離され、2分子のリジンを架橋した構造を有している。ベスパーリジンは、370nmの波長の励起光を受けて440nmの蛍光を発する。
これらのAGEsの検出に適した励起光の波長としては、370nmまたはその近傍の波長(280〜410nm)が適している。AGEsの種類によって適応する励起光の幅としては、近紫外領域である280〜400nmから可視光領域である400〜600nmのものが適している。すなわち、AGEsの検出に適した励起光の波長範囲として280nm以上、600nm以下の範囲を設定することができる。
本実施形態では、励起光の波長は、近紫外領域の280nm以上、365nm以下の波長か、青紫領域の405nmの波長となっている。このような波長の光を測定部位70の特定部位(例えば、真皮など)に照射することにより、照射位置の真皮層に蓄積している測定対象物質(例えば、AGEs)からの蛍光が得られる。
励起光源11から出射される励起光は、直接、測定部位70に照射されてもよく、入射用光ファイバーや光学ロッド等の導光部材(プローブ)によって測定部位70まで導光されてもよい。このような導光部材も励起光照射部に含めることができる。
励起光の照射および蛍光の受光のために光ファイバーを用いる場合には、励起光出射用ファイバーと蛍光受光用ファイバーとが束ねられたバンドルファイバーを用いてもよい。励起光出射用ファイバーおよび励起光源11、ならびに、蛍光受光用ファイバーおよび検出器12はSMA(Sma[Sab Miniature Type A])コネクタを通して結合されればよい。プローブとして光ファイバーを用いることにより、励起光をできるだけロス無く測定部位70まで導くことができる。蛍光を検出する際の蛍光収率を高めるために、受光用ファイバーは測定対象に対して垂直に配置されることが望ましい。
また、測定装置10は、据え置き型の装置であっても、ユーザが保持するタイプのものであってもよい。
(検出器12)
検出器12は、上記励起光が測定部位70の表面(肌)に照射されることによって発生した蛍光を、反射用光ファイバー等の光学部材を通して受光し、その蛍光の波長ごとの強度を測定する。すなわち、検出器12は、どの波長の蛍光がどの程度の強さで検出されたのかを測定する。
なお、反射用光ファイバーを用いることは必須ではなく、検出器12が上記蛍光を直接受光してもよい。
検出器12としてはCCD(charge-coupled device)アレイやCMOS(c metal-oxide semiconductor)イメージセンサといった半導体検出器、光電子倍増管(PMT)やチャンネルトロン検出器等が利用可能である。ただし、測定装置10の可搬性を高める上では、半導体検出器を用いるほうが有利である。
蛍光は励起光よりも波長が長いため、検出器12としては、320〜500nmの範囲の光が検出できるものであればよいが、蛍光についても、AGEsの種類によって検出される波長に幅があるため、320〜900nmの範囲の光が検出できるものであれば利用可能である。
励起光源11から励起光を出射するタイミングは、ユーザが決定してもよいが、利便性を考慮して、測定装置10が備える制御部(不図示)によって制御されることが好ましい。
検出器12は、励起光源11から励起光が出射された後に蛍光を受光すると、当該蛍光の波長ごとの蛍光強度を測定し、その測定結果である蛍光のスペクトルを示す蛍光データを判定装置20のデータ取得部23へ出力する。
上記の構成によれば、測定装置10は、測定対象の個体の肌から得られた肌内蛍光物質(好ましくはAGEs)の蛍光強度(スペクトル)を測定することができる。
しかしながら、測定される上記蛍光は、真皮層に存在するAGEsに由来する蛍光だけではなく、表皮層に存在する蛍光物質に由来する蛍光も含んでいる。このため、上記蛍光スペクトルを利用して測定対象の個体の肌状態を判定したとしても、判定精度が低い。
そこで、測定装置10が、測定対象の個体の肌から得られた肌内蛍光物質の蛍光データを測定した後、判定装置20のスペクトル解析部(算出部)24は、上記蛍光データにおける表皮層由来の蛍光の割合(表皮割合)および真皮層由来の蛍光の割合(真皮割合)をそれぞれ算出する。そして、蛍光強度補正部25は、算出した各割合に基づいて蛍光強度を補正する。これにより、表皮層、および/または、真皮層における肌内蛍光物質(好ましくは、AGEs)を精度良く検出することができる。
<判定装置20の構成>
判定装置20は、測定装置10が測定した実測の蛍光強度を示す蛍光データと、蛍光スペクトルのピーク波長より解析した表皮割合および真皮割合のデータとを用いて、上記蛍光強度を補正し、補正した蛍光強度を用いて、測定対象の個体の肌の状態を判定する。
判定装置20と測定装置10とは、物理的に分離された個別の装置として実現されており、有線または無線により互いに通信可能に接続されている。判定装置20は、パーソナルコンピュータであってもよい。なお、測定装置10と判定装置20とを一体として実現してもよい。
判定装置20は、主制御部21、表示部27、操作部28および記憶部29を備えている。
(表示部27)
表示部27は、判定部26の判定結果を表示する表示装置であり、例えば、液晶ディスプレイである。
(操作部28)
操作部28は、ユーザからの入力操作を受け付ける入力装置であり、例えば、キーボード、マウス、入力ボタン等を含んでいる。
(記憶部29)
記憶部29は、例えば、ハードディスク、フラッシュメモリなどの不揮発性の記憶装置であり、蛍光データ、表皮層モデルデータ、真皮層モデルデータ、補正後蛍光データ、参照蛍光強度、ユーザ設定情報などの各種の情報を記憶する。
(主制御部21)
主制御部21は、制御プログラムを実行することにより、判定装置20の各部を制御するものである。主制御部21は、記憶部29に格納されている制御プログラムを、例えばRAM(Random Access Memory)等で構成される一次記憶部(不図示)に読み出して実行することにより、各種処理を実行する。
主制御部21は、データ解析部(肌状態測定装置)22および判定部26を備えている。
(データ解析部22)
データ解析部22は、検出器12から出力された蛍光データを、当該蛍光データが示す蛍光スペクトルのピーク波長を用いて解析することにより、表皮層由来の蛍光の割合(表皮割合)および真皮層由来の蛍光の割合(真皮割合)をそれぞれ算出する。そして、データ解析部22は、算出した表皮割合および真皮割合に基づいて、当該蛍光データが示す蛍光強度を補正する。
データ解析部22は、データ取得部23、スペクトル解析部(算出部)24、蛍光強度補正部25を備えている。
(データ取得部23)
データ取得部23は、検出器12から出力された蛍光データを取得する。蛍光データは、励起光を測定部位70に照射することで発生する蛍光の測定結果を示すデータである。
データ取得部23は、受信した蛍光データが示す蛍光スペクトルに対してピークの分離・抽出などの解析を行い、特定のピーク波長における肌内蛍光物質(好ましくはAGEs)の蛍光強度を抽出する。そして、データ取得部23は、抽出した蛍光強度を示す抽出蛍光データを蛍光強度補正部25へ出力する。
また、データ取得部23は、受信した蛍光データが示す蛍光スペクトルのデータをスペクトル解析部24へ出力する。
(スペクトル解析部24)
スペクトル解析部24は、記憶部29から読み出した表皮層モデルデータおよび真皮層モデルデータならびにデータ取得部23から出力された蛍光スペクトル(以下、経皮蛍光スペクトルと称する)のデータのピーク波長を用いて、測定対象物質に励起光を照射したときに得られる蛍光データ(すなわち、経皮蛍光スペクトル)に占める表皮割合および真皮割合を算出する。
表皮層モデルデータは、表皮層モデルに対して上記励起光を照射したときに得られる蛍光スペクトル(表皮層蛍光スペクトル)を示すデータである。詳細には、表皮層モデルデータは、ヒトの生検サンプルの表皮細胞、あるいは、市販の3次元培養表皮細胞に対して、励起光を照射したときに得られる蛍光スペクトルおよびピーク波長を示すデータであり、予め測定されて記憶部29に格納されているものである。ここで、表皮層モデルデータは、上記説明では予め測定されているものとしているが、表皮層内に存在する種々の物質の蛍光スペクトルデータを用いて理論的に導出されてもよい。
また、真皮層モデルデータは、真皮層モデルに対して上記励起光を照射したときに得られる蛍光スペクトル(真皮層蛍光スペクトル)を示すデータである。詳細には、真皮層モデルデータは、測定対象物質である糖化コラーゲン(AGEs)に対して励起光を照射したときに得られる蛍光スペクトルおよびピーク波長を示すデータであり、予め測定されて記憶部29に格納されているものである。ここで、真皮層モデルデータは、上記説明では予め測定されているものとしているが、真皮層内に存在する種々の物質の蛍光スペクトルデータを用いて理論的に導出されてもよい。
スペクトル解析部24は、上記経皮蛍光スペクトルに占める表皮層モデルデータが示す蛍光スペクトルの割合を表皮割合として算出する。同様に、スペクトル解析部24は、上記経皮蛍光スペクトルに占める真皮層モデルデータが示す蛍光スペクトルの割合を真皮割合として算出する。
以下、スペクトル解析部24が、真皮層モデルデータおよび表皮層モデルデータを用いて、表皮割合および真皮割合を算出する2つの方法について説明する。スペクトル解析部24は、下記の2つの方法のうち、いずれの方法を用いて表皮割合および真皮割合を算出してもよい。
ここで、第1の方法は、スペクトル解析部24が、実測の蛍光スペクトルが表皮層蛍光スペクトルと真皮層蛍光スペクトルとを合成したスペクトルであるという理論に基づく演算処理を実測の蛍光スペクトルのピーク波長に対して行うことにより、表皮割合または上記真皮割合を算出するというものである。
また、第2の方法は、スペクトル解析部24が、上記理論に基づく演算処理を実測の蛍光スペクトルに関して行うことにより、表皮割合または真皮割合を算出するというものである。具体的には、第2の方法において、スペクトル解析部24は、表皮層蛍光スペクトルと真皮層蛍光スペクトルとを合成することにより得られた合成スペクトルが、実測の蛍光スペクトルに一致または近似するときに、当該合成スペクトルを得るに至った表皮層蛍光スペクトルと真皮層蛍光スペクトルとの割合から表皮割合または真皮割合を算出する。
以下、それぞれの方法を具体的に説明する。
まず、第1の方法について説明する。第1の方法では、スペクトル解析部24は、表皮割合および真皮割合を、蛍光データが示す実測の蛍光のスペクトル(経皮蛍光スペクトル)のピーク波長と、想定される、表皮層に由来する蛍光スペクトルを示す表皮層蛍光スペクトル(表皮モデルデータ)のピーク波長、および、想定される、真皮層に由来する蛍光スペクトルを示す真皮層蛍光スペクトル(真皮モデルデータ)のピーク波長との関係を示す数式から算出する。
具体的には、第1の方法では、真皮層モデルデータの蛍光スペクトルのピーク波長をXnm、表皮層モデルデータの蛍光スペクトルのピーク波長をXnm、上記経皮蛍光スペクトルのピーク波長をYnmとする。また、表皮割合をA%とすると、真皮割合は(100−A)%と記述できる。X、X、Yは既知の値であるため、表皮割合Aおよび真皮割合(100−A)は、下記(1)式により簡易に算出できる。
Y=0.01×A×X+0.01×(100−A)×X・・・(1)
第1の方法では、数式を用いて簡易に算出することにより、小さな計算負荷で表皮割合および真皮割合を算出することができる。
次に、第2の方法について説明する。第2の方法では、スペクトル解析部24は、表皮モデルデータの蛍光強度、あるいは、真皮モデルデータの蛍光強度に対して、所定の比率を乗じる。そして、スペクトル解析部24は、経皮蛍光スペクトルから、所定の比率を乗じた表皮モデルデータのスペクトルを差し引いた差スペクトルが、真皮モデルデータのスペクトルと一致または近似するときの当該所定の比率を上記表皮割合として算出する。あるいは、スペクトル解析部24は、経皮蛍光スペクトルから、所定の比率を乗じた真皮モデルデータのスペクトルを差し引いた差スペクトルが、表皮モデルデータのスペクトルと一致または近似するときの当該所定の比率を上記真皮割合として算出する。なお、2つのスペクトルのピーク波長が±2nm以内で一致していることを2つのスペクトルが「近似」しているものとする。
第2の方法の具体的な処理の一例について説明する。第2の方法では、まず、表皮層モデルデータが示すスペクトルに対して、所定の比率を乗じる(規格化処理)。上記所定の比率は、経皮蛍光スペクトルの蛍光強度に対する蛍光強度の比率を示している。例えば、上記所定の比率は、経皮蛍光スペクトルの蛍光強度に対して1%の蛍光強度になる比率である。
なお、規格化処理はスペクトル解析部24が実行してもよいし、予め所定の比率に規格化されたデータを表皮層モデルデータおよび真皮層モデルデータとして記憶部29に格納していてもよい。
次に、スペクトル解析部24は、上記経皮蛍光スペクトルから、所定の比率を乗じた表皮層モデルデータのスペクトルを差し引いた差スペクトルの形状と、真皮層モデルデータのスペクトルの形状とが一致または近似しているか否かを判定する。ここで、一致または近似していた場合、処理は次に進む。一方、一致または近似していない場合、スペクトル解析部24は、表皮層モデルデータに乗じる比率を変化させて(例えば、経皮蛍光スペクトルの蛍光強度に対して2%の蛍光強度になる比率)、再び、上記経皮蛍光スペクトルから変化させた比率を乗じた表皮層モデルデータのスペクトルを差し引く。
そして、上記差スペクトルと真皮層モデルデータのスペクトルとが一致または近似した場合に、差し引いた表皮層モデルデータの経皮蛍光スペクトルの蛍光強度に対する比率が表皮割合となる。一方、真皮割合は、100−表皮割合より算出できる。なお、スペクトル解析部24は、表皮層モデルデータに対して規格化処理を適用し、上記と同様の処理を実行することにより、真皮割合を算出してもよい。
以上の通り、第2の方法では、経皮蛍光スペクトルの蛍光強度に対して何%になるかをが調整された比率をモデルデータのスペクトルに対して乗じる。すなわち、表皮モデルデータまたは真皮モデルデータのスペクトルの蛍光強度を、経皮蛍光スペクトルの蛍光強度に対して一定の蛍光強度(例えば、経皮蛍光スペクトルの蛍光強度に対して1%の蛍光強度)になるように規格化する。そして、該比率を変化させたときの差スペクトルに基づき、表皮割合または真皮割合を算出する。
第2の方法によれば、表皮割合および真皮割合を第1の方法よりも高精度で算出することができる。
より好ましくは、市販のPeak Fitソフト等を用いて、上記の表皮モデルデータのスペクトルと真皮モデルデータのスペクトルとを重ね合わせて、経皮蛍光スペクトルに一致するときの割合を算出するのが望ましい。
スペクトル解析部24は、以上のようにして算出された経皮蛍光スペクトルに占める表皮割合および真皮割合を示すデータを蛍光強度補正部25に出力する。
(蛍光強度補正部25)
蛍光強度補正部25は、スペクトル解析部24により算出された、測定対象物質に励起光を照射したとき得られる蛍光データ(経皮蛍光スペクトル)に占める表皮割合、および/または、真皮割合を用いて、データ取得部23から出力された抽出蛍光データが示す蛍光強度を補正する。
蛍光強度補正部25における補正方法の一例として、下記(2)式に示すように、経皮蛍光強度の実測値(蛍光データ)に真皮割合を乗じることにより、当該実測値を真皮層に由来する蛍光の強度を示す補正後真皮層由来蛍光強度へと補正する方法が挙げられる。
(補正後真皮層由来蛍光強度)=(実測値)×(真皮割合)・・・(2)
同様に、下記(3)式に示すように、経皮蛍光強度の実測値に表皮割合を乗じることにより、当該実測値を表皮層に由来する蛍光の強度を示す補正後表皮層由来蛍光強度へと補正する方法が挙げられる。
(補正後表皮層由来蛍光強度)=(実測値)×(表皮割合)・・・(3)
この補正により得られる補正後真皮層由来蛍光強度は、経皮蛍光強度の実測値よりも真皮層由来蛍光の真値に近い値となる。同様に、得られる補正後表皮層由来蛍光強度は、経皮蛍光強度の実測値よりも表皮層由来蛍光の真値に近い値となる。
蛍光強度補正部25は、補正した蛍光強度(以下、補正後蛍光強度と称する)を示す補正後蛍光データを記憶部29に格納するとともに、肌状態を判定することを命じる判定命令を判定部26へ出力する。
なお、蛍光強度補正部25において蛍光強度を補正する他の方法としては、蛍光スペクトルのピーク波長に応じて、表皮割合および真皮割合を規格化(特定の値を基準とした相対値として表現)し、蛍光強度と、規格化した表皮割合または真皮割合との和、差、積、または商をとる方法がある。
このように、データ解析部22は、蛍光データに占める表皮層の割合および真皮層の割合を算出し、算出した表皮層の割合および真皮層の割合を用いて蛍光データを補正する。これにより、真皮層由来の蛍光と表皮層由来の蛍光とを切り分けることができ、真皮層(あるいは、表皮層)に存在する肌内蛍光物質(好ましくはAGEs)を精度良く検出することができる。
(判定部26)
判定部26は、記憶部29に格納された補正後蛍光データ(蛍光強度補正部25が算出した補正後蛍光強度)と、所定の参照値(以下、参照蛍光強度と称する)とを比較した結果に基づいて肌の状態を判定する。
ここで、補正後蛍光強度として補正後表皮層由来蛍光強度が入力された場合、判定部26は、表皮層の肌状態の悪化の程度を判定する。一方、補正後蛍光強度として補正後真皮層由来蛍光強度が入力された場合、判定部26は、真皮層の肌状態の悪化の程度を判定する。
参照蛍光強度は、補正後蛍光強度を評価するための基準となる値である。例えば、参照蛍光強度は、予め年齢層ごとに算出された健常者の補正後蛍光強度の統計値(例えば、平均値)に基づいて算出された少なくとも1段階の値である。また、参照蛍光強度は、健常者の補正後蛍光強度の範囲であってもよい。
そして、判定部26は、補正後蛍光強度が参照蛍光強度よりも高い場合に、肌の状態は正常状態から外れていると判定する。参照蛍光強度を複数段階設け、正常、やや悪化、著しく悪化など、判定結果を複数段階出力してもよい。このような判定結果は、表示部27に表示される。
<肌状態判定システム100における処理の流れ>
次に、肌状態判定システム100における処理の流れの一例について説明する。図2は、肌状態判定システム100(特に、判定装置20)における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
まず、ユーザ(測定対象者)は、出射用光ファイバーおよび受光用光ファイバーで構成されるプローブの先端を、測定を所望する肌の箇所にあてる。励起光源11から肌内蛍光物質(好ましくは肌内AGEs)の測定に適した波長の励起光(光強度が補正されていてもよい)が出射されると、その励起光は、励起光出射用光ファイバーの先端から肌に出射される(励起光出射工程)。
肌に含まれる蛍光物質(好ましくはAGEs)に励起光が照射されることによって、蛍光が放射される(励起光出射工程)。この蛍光は、受光用光ファイバーの先端から入射し、検出器12へと導かれる。
検出器12は、蛍光を受光すると(蛍光受光工程)、当該蛍光の波長ごとの蛍光強度を測定し、その測定結果を示す蛍光データを判定装置20のデータ取得部23へ出力する。
データ取得部23は、蛍光データを受け取ると(S1)、受信した蛍光データが示す蛍光スペクトルに対してピークの分離・抽出などの解析を行い、特定のピーク波長における肌内蛍光物質(好ましくはAGEs)の蛍光強度を抽出する(S2)。そして、データ取得部23は、抽出した蛍光強度を示す抽出蛍光データを蛍光強度補正部25へ出力する。また、データ取得部23は、蛍光データを受け取ると(S1)、受信した蛍光データが示す蛍光スペクトルのデータをスペクトル解析部24へ出力する。
スペクトル解析部24は、蛍光スペクトルのデータを受信すると、予め記憶部29に格納されている表皮モデルの蛍光スペクトルのデータを示す表皮層モデルデータおよび真皮モデルの蛍光スペクトルのデータを示す真皮層モデルデータならびにデータ取得部23から出力された蛍光スペクトル(経皮蛍光スペクトル)のデータのピーク波長を用いて、当該経皮蛍光スペクトルに占める表皮割合および真皮割合を算出する(S3、算出工程)。そして、スペクトル解析部24は、算出した表皮割合および真皮割合を示すデータを蛍光強度補正部25へ出力する。
なお、ステップS2とステップS3の順序は、逆であってもよい。
蛍光強度補正部25は、データ取得部23から受信した抽出蛍光データが示す蛍光強度を、スペクトル解析部24から受信した表皮割合および真皮割合を用いて補正し、補正後表皮層由来蛍光強度および補正後真皮層由来蛍光強度を算出する(S4、蛍光強度補正工程)。
蛍光強度補正部25は、補正した蛍光強度を示す補正後蛍光データを記憶部29に格納するとともに、肌状態を判定することを命じる判定命令を判定部26に出力する。
判定部26は、記憶部29に格納された補正後蛍光データから肌内蛍光物質(好ましくはAGEs)の補正後蛍光強度を抽出する。そして、判定部26は、抽出した補正後蛍光強度と、記憶部29に予め格納されている参照蛍光強度とを比較することにより肌状態の悪化の程度を判定する。ここで、補正後蛍光強度として補正後表皮層由来蛍光強度が入力された場合、判定部26は、表皮層の肌状態の悪化の程度を判定する。一方、補正後蛍光強度として補正後真皮層由来蛍光強度が入力された場合、判定部26は、真皮層の肌状態の悪化の程度を判定する(判定工程、S5)。
参照蛍光強度として、例えば、10代、20代といった年齢層ごとに、肌内蛍光物質(好ましくはAGEs)の補正蛍光強度の平均値が求められ、予め記憶部29に格納されている。測定対象のユーザの年齢は、予め記憶部29に格納されているか、または、測定時にユーザによって操作部28を介して入力される。
判定部26は、測定対象のユーザの年齢に対応する参照蛍光強度を記憶部29から読み出し、実測蛍光強度(補正後蛍光強度)と比較する。例えば、判定部26は、実測蛍光強度(補正後蛍光強度)が参照蛍光強度よりも高い場合、ユーザの肌の状態は悪いと判定する。
肌状態の判定を終えると、判定部26は、判定結果を表示部27へ出力し、表示部27にて表示させる(S6)。
(第2蛍光強度補正工程)
上述の蛍光測定において、蛍光強度をより正確に測定するために、特定の基準物質に対して励起光を照射し、その蛍光を基準として蛍光強度を補正することが好ましい。
すなわち、本発明の測定方法に、基準物質から出射される標準となる蛍光を受光し、その蛍光の強度(リファレンス)を測定する標準蛍光測定工程と、上記標準蛍光測定工程において測定した蛍光の強度と所定の蛍光強度とを比較した結果に基づいて、上記蛍光データが示す蛍光の強度を補正する第2蛍光強度補正工程(第2補正工程)とを含めてもよい。所定の蛍光強度は、記憶部29に予め記憶されていればよい。
このような蛍光強度の補正を行うことにより、何らかの原因により、励起光源11の出力が低下したり、検出器12の検出感度が変化したりするなど、蛍光の検出に関わる部材に異常が生じた場合に、その異常によって影響を受けた蛍光データを補正することができ、測定対象物質の測定精度(測定値の信頼性)を高めることができる。
リファレンスを用いて蛍光強度の補正を行う場合の計算例の一例として、例えば、所定の強度とリファレンスとの比を算出し、当該比を実測値(励起光の照射によって発生した蛍光の強度)または補正後蛍光強度にかけることが挙げられる。測定装置10が正常であれば、上記比が1となるように所定の強度が設定されており、その場合、上記演算によって実測値は変化しない。しかし、例えば、励起光源11の出力または検出器12の検出感度が低下した場合には、リファレンスが小さくなり、上記比は1より大きくなる。それゆえ、当該比を実測値にかけることによって実測値が増加し、励起光源11の出力等が低下した影響を打ち消すことができる。
第2蛍光強度補正工程における上述の演算は、蛍光強度補正部25に行わせてもよく、データ解析部22のその他の機能ブロック(図示しない第2蛍光強度補正部)に行わせてもよい。
第2蛍光強度補正工程は、検出器12が蛍光データに対して与える影響を除くためのものであるため、蛍光強度補正部25における蛍光強度の補正には影響を及ぼさない。そのため、第2蛍光強度補正工程は、蛍光強度補正部25における蛍光強度の補正より先に行われても、その後に行われてもよい。
また、上記基準物質として、励起光を長時間照射しても蛍光強度が低下しにくい物質を選択することが好ましい。このような基準物質として、ナノメータサイズの粒子を用いたナノ粒子蛍光体を用いることが好ましい。ナノ粒子蛍光体は、励起光を連続的に照射しても発生する蛍光の強度が低下しにくい。上記基準物質として蛍光ビーズを用いた場合には、励起光を連続的に照射すると次第に蛍光強度が低下していくという問題がある。
なお、ナノ粒子蛍光体は、ナノ粒子のサイズを調整することによって蛍光波長を調整できるものである。
また、上述のように基準物質に対して励起光を照射することで発生した蛍光の強度(リファレンス)を測定し、当該蛍光強度に基づいて励起光源11の出力または検出器12の感度を調整してもよい。この場合、例えば、リファレンスが基準値から低下した分だけ励起光源11の出力または検出器12の感度を上げることにより、リファレンスが基準値を示すように調整すればよい。この調整は、ユーザが手動で行ってもよく、判定装置20が自動的に行ってもよい。
〔蛍光測定実験〕
ヒトの経皮蛍光スペクトルが、表皮層由来の蛍光スペクトルと真皮層由来の蛍光スペクトル(特に、肌内蛍光物質であるAGEsに由来する蛍光スペクトル)との合成で形成されていることを確認するために、蛍光測定実験を行った。蛍光測定実験では、生体を近似した皮膚ファントムモデルを作製して蛍光測定を行い、当該皮膚ファントムモデルの蛍光スペクトルとヒトの経皮蛍光測定のスペクトルとを比較した。
<皮膚ファントムモデルの調製>
図3は、皮膚ファントムモデルを用いた真皮層のAGEs測定実験の方法を説明するための図であり、作製した皮膚ファントムモデルの構造を示す断面図である。図3に示すように、カップ103内に濃度固定(濃度既知)の糖化コラーゲン(AGEs)102を調製し、その上に3次元培養表皮101を載せた。そして、カップ103の上面から励起光を照射し、蛍光データを取得した。
(表皮層モデルの調製)
3次元培養表皮101を皮膚ファントムモデルの表皮層モデルとして用いた。3次元培養表皮101は、37℃でCO濃度5%に設定したインキュベータ内で、3次元培養表皮モデルを14日間培養させて調製した。なお、3次元培養表皮モデルは、クラボウ株式会社のMEL−300−Aを用いた。3次元培養表皮モデルは、形態的にヒト皮膚に類似した構造をしており、基底層・有棘層・顆粒層・角質層を有している。
(真皮層モデルの調製)
濃度固定(濃度既知)の糖化コラーゲン(AGEs)102を皮膚ファントムモデルの真皮層モデルとして用いた。糖化コラーゲン102は、1/15Mリン酸緩衝液にコラーゲン(4.5g/dl)とグルコース(0.5M)とを混合させ、40℃に設定したインキュベータ内で30日間反応させることにより調製した。
<測定方法>
図3に示すように、上記30日反応させた濃度固定の糖化コラーゲンAGEs(真皮層モデル)に対して、3次元培養表皮(表皮層モデル)を載せた皮膚ファントムモデルが調製された上記カップ103の上面から、測定装置10を用いて励起光を照射し、該励起光による蛍光を検出した。あわせて、表皮層モデル(3次元培養表皮101)のみに対する蛍光測定実験も行った。そして、得られた皮膚ファントムモデルのスペクトル解析を行った。
(光源)
励起光源としては、AGEsの蛍光を測定するために、波長365nmの光を出射するLED光源を用いた。
(分光器)
検出器12の分光器は、市販の小型の分光器を用いた。
<測定結果>
図4は、皮膚ファントムモデルおよび表皮層モデルより得られた各種蛍光スペクトルを示す図である。図4の横軸は波長(nm)、縦軸は蛍光の強度(a.u.)を示している。
図4の(1)は、皮膚ファントムモデルに対して365nmの光を照射して得られた蛍光スペクトルを示している。すなわち、図4の(1)のスペクトルが示す蛍光は、表皮層モデルに由来する蛍光と、真皮層モデルに由来する蛍光との両方を含む。図4の(1)のスペクトルは、波長465nm近傍に波長ピークを示している。
一方、図5は、ヒトの経皮蛍光測定により得られた蛍光スペクトルを示す。図4の(1)と図5を比較すると、各スペクトルのピーク波長は互いに近い値である。すなわち、真皮層モデルと表皮層モデルとを含む皮膚ファントムモデルの蛍光測定におけるスペクトルは、ヒトの経皮蛍光測定におけるスペクトルと類似している。このことは、ヒトの経皮蛍光測定におけるスペクトルは、表皮層由来のスペクトルと真皮層由来のスペクトルとの合計で形成されていることを示している。したがって、真皮層由来のAGEsを精度よく測定するためには、表皮層由来のスペクトルを差し引いて評価する必要があることがわかる。
図4の(3)は、3次元培養表皮(表皮層モデル)のみに対して365nmの光を照射して得られた蛍光スペクトルを示している。図4の(3)のスペクトルは、波長470nm近傍に波長ピークを示している。すなわち、表皮層モデルに由来する蛍光のピーク波長は、470nm近傍であると考えられる。
一方、図6は、表皮中に多く含まれるニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)の蛍光測定により得られたスペクトルを示す。図4の(3)と図6を比較すると、各スペクトルのピーク波長は互いに近い値である。NADHは、生体内のエネルギー代謝に大きく寄与する物質であり、生体の部位や個人差により表皮中に含有されている量は異なる。そのため、表皮層由来の蛍光強度(好ましくは、NADHに由来する蛍光強度)を把握することで、より精度良く、真皮層由来の蛍光強度(好ましくは、AGEsに由来する蛍光強度)を測定することができる。
図4の(2)は、図4の(1)に示す蛍光スペクトルから、図4の(3)に示す蛍光スペクトルを差し引いた蛍光スペクトルを示している。すなわち、図4の(2)に示すスペクトルは、皮膚ファントムモデルの蛍光スペクトルにおける、真皮層モデルに由来する蛍光スペクトルである。図4の(2)のスペクトルは、波長460nm近傍に波長ピークを示している。すなわち、真皮層モデルに由来する蛍光のピーク波長は、460nm近傍であると考えられる。
一方、図7は、糖化コラーゲン102の蛍光測定により得られた蛍光スペクトルを示す図である。図4の(2)と図7を比較すると、各スペクトルのピーク波長は互いに近い値である。すなわち、真皮層モデルの蛍光測定におけるスペクトルは、真皮中で老化とともに蓄積される糖化コラーゲン102の蛍光測定におけるスペクトルと類似している。
以上の結果から、ヒトの経皮蛍光測定により得られる蛍光スペクトル(ピーク波長465nm近傍)は、表皮層由来の蛍光スペクトル(ピーク波長470nm近傍)と、真皮層由来の蛍光スペクトル(ピーク波長460nm近傍)との合計で形成されていることがわかった。
また、表皮層由来のピーク波長と真皮層由来のピーク波長とが互いに異なることを利用して、ヒトの経皮蛍光測定で得られた蛍光に占める表皮層の蛍光の割合と真皮層の蛍光の割合をそれぞれ算出することが可能であることが示された。
したがって、得られた蛍光スペクトルのピーク波長を用いて解析することにより、肌の層に応じて異なる蛍光をそれぞれモニタリングすることができる。これにより、肌の表皮あるいは真皮層の老化度合いをそれぞれ個別にモニタリングすることが可能となる。
〔ソフトウェアによる実現例〕
判定装置20の制御ブロック(特に、主制御部21)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。
後者の場合、判定装置20は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムおよび各種データがコンピュータ(またはCPU)で読み取り可能に記録されたROM(Read Only Memory)または記憶装置(これらを「記録媒体」と称する)、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを備えている。そして、コンピュータ(またはCPU)が上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る肌状態測定装置(データ解析部22)は、280nm以上、410nm以下の波長範囲にピークを有する励起光を生体の測定部位(70)に照射することによって生じる、測定対象物質の蛍光強度を補正する肌状態測定装置であって、予め想定された、表皮層のみに由来する蛍光スペクトルを表皮層蛍光スペクトル(表皮層モデルデータが示すスペクトル)とし、予め想定された、真皮層のみに由来する蛍光スペクトルを真皮層蛍光スペクトル(真皮層モデルデータが示すスペクトル)とし、実測の蛍光スペクトル(経皮蛍光スペクトル)と、上記表皮層蛍光スペクトルおよび上記真皮層蛍光スペクトルとを用いて、上記実測の蛍光スペクトルに占める、肌の表皮層に由来する蛍光の割合を示す表皮割合、または、上記実測の蛍光スペクトルに占める、肌の真皮層に由来する蛍光の割合を示す真皮割合を算出する算出部(スペクトル解析部24)と、上記算出部により算出された上記表皮割合または上記真皮割合を用いて、上記実測の蛍光スペクトルの蛍光強度を補正する蛍光強度補正部(25)と、を備えている。
また、本発明の態様7に係る肌状態測定方法は、280nm以上、410nm以下の波長範囲にピークを有する励起光を生体の測定部位に照射することによって生じる、測定対象物質の蛍光強度を補正する肌状態測定方法であって、予め想定された、表皮層のみに由来する蛍光スペクトルを表皮層蛍光スペクトルとし、予め想定された、真皮層のみに由来する蛍光スペクトルを真皮層蛍光スペクトルとし、実測の蛍光スペクトルと、上記表皮層蛍光スペクトルおよび上記真皮層蛍光スペクトルとを用いて、上記実測の蛍光スペクトルに占める、肌の表皮層に由来する蛍光の割合を示す表皮割合、または、上記実測の蛍光スペクトルに占める、肌の真皮層に由来する蛍光の割合を示す真皮割合を算出する算出工程(S3)と、上記算出工程にて算出された上記表皮割合または上記真皮割合を用いて、上記実測の蛍光スペクトルの蛍光強度を補正する蛍光強度補正工程(S4)と、を含んでいる。
上記の構成および方法によれば、上記肌状態測定装置は、280nm以上、410nm以下の波長範囲にピークを有する励起光を生体の測定部位に照射することによって生じる、測定対象物質の蛍光強度を補正するために、実測の蛍光スペクトルと、上記表皮層蛍光スペクトルおよび上記真皮層蛍光スペクトルを用いて、上記実測の蛍光スペクトルに占める、肌の表皮層に由来する蛍光の割合を示す表皮割合、または、上記実測の蛍光スペクトルに占める、肌の真皮層に由来する蛍光の割合を示す真皮割合を算出し、算出された上記表皮割合または上記真皮割合を用いて、上記実測の蛍光スペクトルの蛍光強度を補正する。
通常、生体の測定部位として、肌に励起光を照射することによって得られる蛍光強度は、肌の表皮層に存在する生体内蛍光物質に由来する蛍光強度と、肌の真皮層に存在する生体内蛍光物質に由来する蛍光強度との合計となる。例えば、肌の真皮層に存在するAGEsに由来する蛍光強度のみを取得したい場合であっても、得られる蛍光強度は、表皮層の蛍光物質の影響により、真の値よりも高い値となっている。
そこで、上記肌状態測定装置は、算出した表皮割合および真皮割合を用いて、実測の蛍光スペクトルの蛍光強度を、表皮層に由来する蛍光強度と真皮層に由来する蛍光強度とに分ける。
よって、上記肌状態測定装置は、表皮層、および/または、真皮層に存在する生体内蛍光物質の蛍光強度をそれぞれ精度よく測定することができる。
したがって、上記肌状態測定装置は、蛍光強度の補正の精度を高めることができるという効果を奏する。
特に、測定対象物質がAGEsである場合、真皮層由来の蛍光強度のみを取り出すことにより、真皮層に存在するAGEsの蓄積量を精度よく取得することができる。そして、取得されたAGEsの蓄積量と、予め年齢層ごとに算出された健常者の補正後蛍光強度の統計値とを比較することにより、肌状態を高精度で判定する肌状態判定装置等を実現することも可能となる。
したがって、上記肌状態測定装置は、補正により得られたデータを用いて精度良く肌状態を判定することができるという効果を奏する。
本発明の態様2に係る肌状態測定装置は、上記態様1において、上記算出部が、上記実測の蛍光スペクトルは上記表皮層蛍光スペクトルと上記真皮層蛍光スペクトルとを合成したスペクトルであるという理論に基づく演算処理を上記実測の蛍光スペクトルのピーク波長に対して行うことにより、上記表皮割合または上記真皮割合を算出してもよい。
上記の構成によれば、上記肌状態測定装置は、上記実測の蛍光スペクトルは上記表皮層蛍光スペクトルと上記真皮層蛍光スペクトルとを合成したスペクトルであるという理論に基づく演算処理を上記実測の蛍光スペクトルのピーク波長に対して行うことにより、上記表皮割合または上記真皮割合を算出する。
よって、上記肌状態測定装置は、ピーク波長に対して演算処理を行うことにより、表皮割合および真皮割合を簡易に算出することができる。すなわち、上記肌状態測定装置は、簡易な計算により、上記蛍光強度を表皮層に由来する蛍光強度と真皮層に由来する蛍光強度とに切り分けることができる。
したがって、上記肌状態測定装置は、小さな計算負荷で、上記蛍光強度を補正することができるという効果を奏する。
本発明の態様3に係る肌状態測定装置は、上記態様2において、上記算出部は、以下の式(1)を用いて、上記表皮割合または上記真皮割合を算出してもよい。
Y=0.01×A×X+0.01×(100−A)×X・・・(1)
Y:実測の蛍光スペクトルのピーク波長(nm)
A:表皮割合(%)
100−A:真皮割合(%)
:表皮層蛍光スペクトルのピーク波長(nm)
:真皮層蛍光スペクトルのピーク波長(nm)
上記の構成によれば、上記肌状態測定装置は、上記式(1)を用いて、上記表皮割合または上記真皮割合を簡易に算出することができる。
本発明の態様4に係る肌状態測定装置は、上記態様1において、上記算出部は、上記実測の蛍光スペクトルは上記表皮層蛍光スペクトルと上記真皮層蛍光スペクトルとを合成したスペクトルであるという理論に基づく演算処理を上記実測の蛍光スペクトルに関して行うことにより、上記表皮割合または上記真皮割合を算出してもよい。
上記の構成によれば、上記肌状態測定装置は、上記実測の蛍光スペクトルは上記表皮層蛍光スペクトルと上記真皮層蛍光スペクトルとを合成したスペクトルであるという理論に基づく演算処理を上記実測の蛍光スペクトルに関して行うことにより、上記表皮割合または上記真皮割合を算出する。
よって、上記肌状態測定装置は、蛍光スペクトルに関して上記演算処理を行うことにより、表皮割合および真皮割合を高精度で算出することができる。すなわち、上記肌状態測定装置は、高精度で、上記蛍光強度を表皮層に由来する蛍光強度と真皮層に由来する蛍光強度とに切り分けることができる。
したがって、上記肌状態測定装置は、上記蛍光強度を高精度で補正することができるという効果を奏する。
本発明の態様5に係る肌状態測定装置は、上記態様4において、上記算出部は、上記表皮層蛍光スペクトルと上記真皮層蛍光スペクトルとを合成することにより得られた合成スペクトルが、上記実測の蛍光スペクトルに一致または近似するときに、当該合成スペクトルを得るに至った上記表皮層蛍光スペクトルと上記真皮層蛍光スペクトルとの割合から上記表皮割合または上記真皮割合を算出してもよい。
上記の構成によれば、上記肌状態測定装置は、上記表皮層蛍光スペクトルと上記真皮層蛍光スペクトルとを合成することにより得られた合成スペクトルが、上記実測の蛍光スペクトルに一致または近似するときに、当該合成スペクトルを得るに至った上記表皮層蛍光スペクトルと上記真皮層蛍光スペクトルとの割合から上記表皮割合または上記真皮割合を算出する。
よって、上記肌状態測定装置は、表皮層蛍光スペクトルと真皮層蛍光スペクトルとの合成スペクトルを、実測の蛍光スペクトルと一致または近似させることにより、上記表皮割合または上記真皮割合を高精度で算出することができる。
本発明の態様6に係る肌状態測定システムは、上記態様1から態様5のいずれか1つの肌状態測定装置と、280nm以上、410nm以下の波長範囲にピークを有する励起光を生体の測定部位に照射する励起光照射部(励起光源11)と、上記励起光が上記測定部位に照射されることによって生じる蛍光の強度を測定する蛍光測定部(検出器12)とを含んでいる。
上記の構成によれば、上記肌状態測定システムは、280nm以上、410nm以下の波長範囲にピークを有する励起光を生体の測定部位に照射し、上記励起光が上記測定部位に照射されることによって生じる蛍光強度を測定し、上記肌状態測定装置は、測定された上記蛍光強度を補正する。
したがって、上記肌状態測定システムは、励起光を生体の測定部位に照射することによって測定した蛍光強度の補正の精度を高めることができる。
本発明の態様8に係る肌状態測定方法は、上記態様7において、標準となる蛍光を受光し、その蛍光の強度(リファレンス)を測定する標準蛍光測定工程と、上記標準蛍光測定工程において測定した蛍光の強度に基づいて、上記蛍光強度を補正する第2補正工程(第2蛍光強度補正工程)とをさらに含んでいてもよい。
上記の構成によれば、標準となる蛍光を受光することによって得られた測定値に基づいて、蛍光強度が補正される。
それゆえ、何らかの原因により、蛍光を検出する検出器の感度が変化するなど、蛍光の検出に関わる部材に異常が生した場合に、その異常によって影響を受けた蛍光強度を補正することができ、測定対象物質の測定精度を高めることができる。
なお、第2補正工程は、蛍光の検出器などの測定装置が測定値に対して与える影響を除くためのものであるため、吸光物質、表皮層の厚みなどの影響を除くための第1補正工程における補正には影響を及ぼさない。そのため、第2補正工程は、第1補正工程より先に行われても、第1補正工程の後に行われてもよい。
本発明の一実施形態に係る肌状態測定装置は、上記の課題を解決するために、280nm以上、410nm以下の波長範囲にピークを有する励起光を生体の測定部位に照射することによって生じる、測定対象物質の真皮層由来の蛍光の強度を示す蛍光データを補正する肌状態測定装置において、上記測定部位に対して励起光を照射する励起光照射部と、上記励起光を上記測定部位に照射した時に得られる蛍光を受光する蛍光受光部と、上記蛍光受光部において得られた蛍光スペクトルを解析し、上記スペクトルに占める表皮および真皮の割合を算出するスペクトル解析部と、上記スペクトル解析部において算出した表皮および真皮の割合を用いて、上記蛍光データを補正する蛍光強度補正部とを備えることを特徴としている。
上記の構成によれば、280nm以上、410nm以下の波長範囲にピークを有する励起光を生体の測定部位(例えば、腕の皮膚表面)に照射することによって、該励起光を受けて蛍光を発する測定対象物質の蛍光が発生し、その蛍光の強度を測定することにより、該測定対象物質の蓄積量を測定することができる。
このようにして得られた蛍光の強度は、表皮層と真皮層の生体内蛍光物質の蛍光強度の合計であるため、測定対象物質の真皮層由来の蛍光強度の真の値よりも高い値となっている可能性が高い。
そこで、スペクトル解析部は、上記蛍光受光部において得られた蛍光スペクトルを解析し、上記スペクトルに占める表皮および真皮の割合を算出する。
そして、蛍光強度補正部は、算出された表皮および真皮の割合を用いて、蛍光データを補正する。得られた蛍光スペクトルに占める表皮と真皮の割合を用いて補正を行うことにより、測定対象物質の真皮層由来の蛍光強度を精度よく測定することができる。また、肌状態測定装置は、上記補正により得られたデータを用いて精度良く肌状態を判定することができる。
本発明の一実施形態に係る肌状態測定装置において、上記蛍光強度補正部は、上記スペクトル解析部において算出した表皮および真皮の割合を、上記蛍光強度に積算することにより、該蛍光強度を補正することが好ましい。
上記の構成によれば、表皮層に存在する蛍光物質の影響によって真値よりも高く検出される測定対象物質の真皮層由来の蛍光強度を、表皮および真皮の割合を用いて算出することができ、測定対象物質の真皮層由来の蛍光強度を真値に近づけることができる。
本発明の一実施形態に係る肌状態測定装置において、上記スペクトル解析部は、予め用意した表皮モデルと真皮モデルに上記励起光を照射したときに得られる表皮モデル蛍光スペクトルと真皮モデル蛍光スペクトルを用いて、上記蛍光受光部で得られた蛍光スペクトルのピーク位置になるように、上記蛍光スペクトルに占める表皮モデル蛍光スペクトル割合と上記真皮モデル蛍光スペクトル割合を算出することにより、表皮および真皮の割合を算出することが好ましい。
上記の構成によれば、予め表皮モデル蛍光スペクトルと真皮モデル蛍光スペクトルを記憶させておくことで、測定時に精度良く経皮測定スペクトルを解析し、上記測定スペクトルに占める表皮および真皮の割合を算出することができる。
本発明の一実施形態に係る肌状態測定方法は、上記の課題を解決するために、280nm以上、410nm以下の波長範囲にピークを有する励起光を生体の測定部位に照射することによって生じる、測定対象物質の真皮層由来の蛍光の強度を示す蛍光データを補正する肌状態測定方法であって、予め用意した表皮モデルと真皮モデルに上記励起光を照射したときに得られる表皮モデル蛍光スペクトルと真皮モデル蛍光スペクトルを用いて、上記蛍光受光部で得られた蛍光スペクトルに占める表皮モデル蛍光スペクトル割合と上記真皮モデル蛍光スペクトル割合を算出する表皮および真皮割合算出工程と、上記表皮および真皮割合算出工程において算出した表皮および真皮割合を用いて、上記蛍光データを補正する蛍光強度補正工程とを含むことを特徴としている。
上記の構成によれば、280nm以上、410nm以下の波長範囲にピークを有する励起光を生体の測定部位(例えば、腕の皮膚表面)に照射することによって、該励起光を受けて蛍光を発する測定対象物質の蛍光が発生し、その蛍光の強度を測定することにより、該測定対象物質の蓄積量を測定することができる。
このようにして得られた蛍光の強度は、表皮層と真皮層の生体内蛍光物質の蛍光強度の合計であるため、測定対象物質の真皮層由来の蛍光強度の真の値よりも高い値となっている可能性が高い。
そこで、予め用意した表皮モデルと真皮モデルに上記励起光を照射したときに得られる表皮モデル蛍光スペクトルと真皮モデル蛍光スペクトルを用いて、上記蛍光受光部で得られた蛍光スペクトルに占める表皮モデル蛍光スペクトル割合と上記真皮モデル蛍光スペクトル割合を算出する。
そして、算出された表皮および真皮割合を用いて、蛍光データを補正する。測定した経皮蛍光スペクトルに占める表皮と真皮の割合を算出することで、表皮層と真皮層の情報を切り分けて取得することができる。
また、測定対象物質である真皮層の蛍光データの補正の精度を高めることができる。
本発明の一実施形態に係る肌状態測定方法は、標準となる蛍光を受光し、その蛍光の強度を測定する標準蛍光測定工程と、上記標準蛍光測定工程において測定した蛍光の強度に基づいて、上記蛍光データが示す蛍光の強度を補正する第2補正工程とをさらに含むことが好ましい。
上記の構成によれば、標準となる蛍光を受光することによって得られた測定値に基づいて、上記蛍光データが示す蛍光の強度が補正される。
それゆえ、何らかの原因により、蛍光を検出する検出器の感度が変化するなど、蛍光の検出に関わる部材に異常が生した場合に、その異常によって影響を受けた蛍光データを補正することができ、測定対象物質の測定精度を高めることができる。
なお、第2補正工程は、蛍光の検出器などの測定装置が測定値に対して与える影響を除くためのものであるため、吸光物質や表皮の厚みの影響を除くための第1補正工程における補正には影響を及ぼさない。そのため、第2補正工程は、第1補正工程より先に行われても、第1補正工程の後に行われてもよい。
本発明の一実施形態に係る肌状態測定装置および肌状態測定方法は、経皮蛍光測定で得られたスペクトルを解析し、表皮と真皮の割合を算出することで、真皮層由来の蛍光データの補正の精度を高めることができるという効果を奏する。
本発明の各態様に係る肌状態測定装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記肌状態測定装置が備える各手段として動作させることにより上記肌状態測定装置をコンピュータにて実現させる肌状態測定装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
(付記事項)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明は、肌状態に適した抗老化や抗糖化効果等の化粧品・医薬品の選択、肌のカウンセリング、あるいは化粧品・医薬品の有効性評価・モニタリング等、多面的に利用できる。
10 測定装置
11 励起光源(励起光照射部)
12 検出器(蛍光測定部)
20 判定装置
21 主制御部
22 データ解析部(肌状態測定装置)
23 データ取得部
24 スペクトル解析部(算出部)
25 蛍光強度補正部
26 判定部
27 表示部
28 操作部
29 記憶部
70 測定部位
100 肌状態判定システム
101 3次元培養表皮
102 糖化コラーゲン

Claims (5)

  1. 280nm以上、410nm以下の波長範囲にピークを有する励起光を生体の測定部位に照射することによって生じる、測定対象物質の蛍光強度を補正する肌状態測定装置であって、
    予め想定された、表皮層のみに由来する蛍光スペクトルを表皮層蛍光スペクトルとし、
    予め想定された、真皮層のみに由来する蛍光スペクトルを真皮層蛍光スペクトルとし、
    実測の蛍光スペクトルと、上記表皮層蛍光スペクトルおよび上記真皮層蛍光スペクトルとを用いて、上記実測の蛍光スペクトルに占める、肌の表皮層に由来する蛍光の割合を示す表皮割合、または、上記実測の蛍光スペクトルに占める、肌の真皮層に由来する蛍光の割合を示す真皮割合を算出する算出部と、
    上記算出部により算出された上記表皮割合または上記真皮割合を用いて、上記実測の蛍光スペクトルの蛍光強度を補正する蛍光強度補正部と、を備えることを特徴とする肌状態測定装置。
  2. 上記算出部は、上記実測の蛍光スペクトルは上記表皮層蛍光スペクトルと上記真皮層蛍光スペクトルとを合成したスペクトルであるという理論に基づく演算処理を上記実測の蛍光スペクトルのピーク波長に対して行うことにより、上記表皮割合または上記真皮割合を算出することを特徴とする請求項1に記載の肌状態測定装置。
  3. 上記算出部は、上記実測の蛍光スペクトルは上記表皮層蛍光スペクトルと上記真皮層蛍光スペクトルとを合成したスペクトルであるという理論に基づく演算処理を上記実測の蛍光スペクトルに関して行うことにより、上記表皮割合または上記真皮割合を算出することを特徴とする請求項1に記載の肌状態測定装置。
  4. 上記算出部は、上記表皮層蛍光スペクトルと上記真皮層蛍光スペクトルとを合成することにより得られた合成スペクトルが、上記実測の蛍光スペクトルに一致または近似するときに、当該合成スペクトルを得るに至った上記表皮層蛍光スペクトルと上記真皮層蛍光スペクトルとの割合から上記表皮割合または上記真皮割合を算出することを特徴とする請求項3に記載の肌状態測定装置。
  5. 280nm以上、410nm以下の波長範囲にピークを有する励起光を生体の測定部位に照射することによって生じる、測定対象物質の蛍光強度を補正する肌状態測定方法であって、
    予め想定された、表皮層のみに由来する蛍光スペクトルを表皮層蛍光スペクトルとし、
    予め想定された、真皮層のみに由来する蛍光スペクトルを真皮層蛍光スペクトルとし、
    実測の蛍光スペクトルと、上記表皮層蛍光スペクトルおよび上記真皮層蛍光スペクトルとを用いて、上記実測の蛍光スペクトルに占める、肌の表皮層に由来する蛍光の割合を示す表皮割合、または、上記実測の蛍光スペクトルに占める、肌の真皮層に由来する蛍光の割合を示す真皮割合を算出する算出工程と、
    上記算出工程にて算出された上記表皮割合または上記真皮割合を用いて、上記実測の蛍光スペクトルの蛍光強度を補正する蛍光強度補正工程と、を含むことを特徴とする肌状態測定方法。
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