以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに以下に記載した構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
図1は、実施形態の巻線部品1の透過平面図である。実施形態の特徴は、後述の比較形態に対して、基板2にスリットや切り欠きを設けたものである。図3に示す比較形態に対して、第1の平面コイル3と第2の平面コイル4との間に発生する寄生容量を更に削減することを可能にする効果を有する。実施形態について詳細に説明するために、比較形態から説明する。
(比較形態1)
図3は、比較形態1に係る巻線部品1の分解斜視図である。比較形態1では、巻線部品1としてインダクタを例として挙げている。比較形態1である巻線部品1は、図3に示すように、基板2と、基板2を挟むように第1の平面コイル3と第2の平面コイル4からなる平面コイル部10を備えている。また、これら一対の平面コイル3、4には銅(Cu)板を用いている。
図3より、さらに、巻線部品1は、一対の平面コイル、すなわち、第1の平面コイル3と第2の平面コイル4を磁気的に結合するための一対の磁性体コア5a、5bを備え、基板2には、第1の平面コイル3と第2の平面コイル4とを導通させるためのスルーホール6を備えている。基板2を挟むように形成された第1の平面コイル3と第2の平面コイル4、すなわち、平面コイル部10をさらに挟むように、一対の磁性体コア5a、5bが備えられている。
図3において、基板2のZ軸の正の方向の面を表面とし、Z軸の負の方向の面を裏面とする。基板2の表面は第1の平面コイル3と対向しており、裏面は第2の平面コイル4と対向している。
図3において、比較形態1の基板2は、開口を有しC型形状でほぼ円形の第1の平面コイル3と第2の平面コイル4に挟まれており、それぞれ巻き始め端部と巻き終わり端部を有しており、第1、2の平面コイル3、4とほぼ同じC型形状を含むほぼ円形のコイル基板部21と、コイル基板部21を支持するための板状で長方形状の支持基板部22からなっている。支持基板部22は、長手と短手をもつ長方形状である。長手方向をX軸、短手方向をY軸方向になるように支持基板部22を配置したときに、長手方向の中央でY軸方向に平行な軸を基板の中心軸7と定義する。基板2の材料は、ガラス・エポキシや紙・フェノールなどからなっている。なお、比較形態の1ターンの平面コイルの形状は必ずしもC型形状でほぼ円形である必要はなく、C型形状のように一部に開口部を有している形状であればよい。比較形態1では、例としてC型形状でほぼ円形のコイルを用いて説明する。また、支持基板部22は必ずしも長方形状の板状ではなくてもよいが、比較形態1では、例として長方形状を用いて説明をする。
スルーホール6は、第1の平面コイル3と第2の平面コイル4を基板2を貫通させて電気的に接続させるものであり、その配置位置は接続端子に隣接していることが好ましく、比較形態1では各平面コイル3、4の端部の配置の関係から、基板2の支持基板部22とコイル基板部21の境界付近に設けることが多い。
図4は、比較形態1の図3から一対の磁性体コアを除いた平面コイル部10の詳細斜視図である。すなわち、基板2を挟んで第1の平面コイル3と第2の平面コイル4からなる構成になっている。第1の平面コイル3と第2の平面コイル4は、C型形状でほぼ円形でありCu板コイルである。第1の平面コイル3の巻き終わり端部35と基板2の表面のスルーホール6の端部は、図示しない導通パターンによって電気的接続されており、また、第2の平面コイル4の巻き始め端部41と基板2の裏面のスルーホール6の端部は、導通パターン16によって電気的接続されていて、第1の平面コイル3と第2の平面コイル4はスルーホール6を介して電気的接続をしている。
第1の平面コイル3と第2の平面コイル4は、基板2の表と裏の両面に対応する配置位置でそれぞれ備えられている。基板2には、各平面コイル3、4の開口に対応する部分に開口が設けられていて、一対の磁性体コア5a、5bはこの開口を貫通して嵌合する。
図4より、比較形態1では、第1の平面コイル3は1ターン目に相当し、第2の平面コイル4は2ターン目に相当している。第1の平面コイル3と第2の平面コイル4の基板2に対して、基板2の側に対向する側の接触面積を少なくするため、第1の平面コイル3と第2の平面コイル4の基板2の表裏の表面に対向する側に、同数の、今回の例ではそれぞれ6箇所の突起部11および12を設けた。
これらの突起部11、12は、基板2の表裏の表面に設けられたはんだ付け用のランド8にはんだ付けにより固定される。すなわち、基板2と第1の平面コイル3と第2の平面コイル4のそれぞれの間には、第1、第2の平面コイル3、4に突起部11、12が設けられている。第1の平面コイル3と第2の平面コイル4は、突起部11、12により基板2と接続され突起以外の部分には空隙が備えられている。各突起部11、12は、平面的に、すなわち、図4の座標軸でいえばZ軸方向に位置が重ならないように配置されている。また、図4において、第2の平面コイル4の突起部12は第2の平面コイル4の基板面側に設けられているため破線で示してある。これは、図4以降の第2の平面コイル4の突起部12の図示においても同様とした。
図5は、図4における第1の平面コイル3の−Z軸方向から見た平面図である。すなわち図3の正面に対して下方から見た平面図である。基板2と第1の平面コイル3とをはんだ付けによって固定するための突起部11は約60°の角度α毎に設けており、各突起部11はいわゆる円筒形状であり、第1の平面コイル3を基板2にバランス良く固定するため、例えば、内周側、外周側、内周側、外周側、内周側、外周側と各平面コイルの突起11を交互配置にして、上下の各平面コイルの3、4の各突起部11の重なりを無くすようにしているが、安定性と同一部品という条件を満たせば突起部11は各平面コイルの幅方向において、内周側、外周側に対して中央位置に配置しても良い。
図5より、第1の平面コイル3の基板2への突起部11による固定角度であるが、まず1ターン目である第1の平面コイル3の巻線を構成している基板2の表面の構成について述べる。なお、図5において、基板2のZ軸方向の面を表面、−Z軸方向の面を裏面とするので、図5は裏面から見た平面図である。第1の平面コイル3の巻き始め端部31は、基板の中心軸7を基準にして約50°の角度βだけ回転させた位置に配置する。第1の平面コイル3の基板2の側に設ける突起部11は巻き始め部31を外周側としている。第1の平面コイル3の巻き終わり部35における、もう一方に設ける突起部11は内側となる。この巻き終わり部35に隣接した位置の基板2に、裏面への貫通導体としてスルーホール6を設け、第1の平面コイル3の巻き終わり部35とCuからなる図示しない導体パターンによる接続を行うことにより、2ターン目である第2の平面コイル4の巻き始め部41への接続を行う。
図6は、図4における、第2の平面コイル4の−Z軸方向から見た平面図である。すなわち、図3の正面から見たときに下方から見た平面図である。基板2と第2の平面コイル4とをはんだ付けによる固定を行うための突起部12は、約60°の角度α毎に設けており、各突起部12はバランス良く第2の平面コイル4を基板2に固定するため、かつ、機械的強度を保つために、例えば、内周側、外周側、内周側、外周側、内周側、外周側というように交互に内周側、外周側、あるいは、その逆の順で、6箇所設定している。また、図6において、第2の平面コイル4の突起部12は、基板面側の第2の平面コイル4に設けられているため破線で示してある。図14の、第2の平面コイル4の突起部12の図示においても同様とした。
また、複数の突起部11、12を、各平面コイル3、4の1ターン毎に、外周側、内周側、あるいは、内周側、外周側というように、交互に、位置をずらして配置することで各突起部11、12をバランス良く配置し、各平面コイル3、4を導体パターンや導体からなるランド8を介して基板2に安定して固定することができる。
図6より、第2の平面コイル4の基板2への突起部12による固定角度であるが、まず2ターン目である第2の平面コイル4の巻線を構成している基板2の裏面の構成について述べる。なお、図6において、基板2のZ軸方向の面を表面、−Z軸方向の面を裏面とするので、図6は裏面から見た平面図である。第2の平面コイル4の巻き始め端部41は、基板の中心軸7を基準にして約20°の角度γだけ回転させた位置に配置する。第2の平面コイル4の基板2の側に設ける突起部12は巻き始め部41を内周側としている。第2の平面コイル4の巻き終わり部45における、もう一方に設ける突起部12は外側となる。この巻き始め部41に隣接した位置の基板2に、表面への貫通導体としてスルーホール6を設け、第2の平面コイル4の巻き始め部41とCuからなる導体パターン61による接続を行うことにより、2ターン目である第2の平面コイル4の巻き始め部41への接続を行う。なお、第1の平面コイル3と第2の平面コイル4とは同一部品である。
比較形態1の平面コイル部10を流れる電流について説明する。図7は、図4において、電流の流れる様子を破線で示し、わかりやすくするために説明に不要な部分を省いた図である。図7によると、電流は、基板2の表面の、第1の平面コイル3の巻き始め部31から入力され、1周し、巻き終わり部35から図示しない導電パターンを通り、スルーホール6を通過し基板2の裏面の導電パターン16を通り、第2の平面コイル4の巻き始め部41に入力され1周し巻き終わり部45から出力される。
図8は、図4における、比較形態1の、+Yから−Yに向かう方向に透過して見た組み立て済みの状態での平面コイル部10のイメージ透過図である。また、図9は、比較として、従来の形態を図8と同様にしてみた平面コイル部のイメージ透過図である。図9の従来形態の場合は、比較形態1のような突起部は存在していないので、各平面コイル3、4と基板2は直接接しており、基板2自体が誘電体であるため平面コイル間には寄生容量が発生してしまい、1ターン目と2ターン目、および、基板との間で高周波成分が通過しやすくなってしまう。すなわち、高周波成分が、図10の回路における出力端84に現れやすく、平面コイル間を高周波成分が通過することが高周波ノイズを増加させる要因となる。図8の比較形態1のように、基板2に対して突起部11、12を用いて、各平面コイル3、4を概ね浮かせて配置することにより空隙ができ、従来の形態よりも各平面コイル3、4と基板2の接触面積を小さくすることができ、各平面コイル3、4の間に存在する寄生容量の影響を小さくすることができ、高周波成分の通過を抑制することができる。
また、各平面コイル3、4を、基板2の表裏の面に、それぞれの突起部11、12を、平面的に、すなわち、Z軸方向の配置位置が重ならないようにずらして搭載することにより、第1の平面コイル3と第2の平面コイル4の間で、および、平面コイルの巻き始めと巻き終わりとの間での、寄生容量をさらに小さくすることが可能である。
図10は、比較形態1の平面コイルを用いたインダクタを、出力平滑回路内の平滑用チョークコイル81として使用した場合の、スイッチング電源装置70の回路構成図の一例である。スイッチング電源装置70は、4つのスイッチング素子71〜74を含んで構成され、直流入力電圧に基づいて入力交流電圧を生成するフルブリッジ型のブリッジ回路と1次側巻線76および2次側巻線77、78を有し、上記入力交流電圧を変圧して出力交流電圧を生成するトランス75と、このトランスの2次側に設けられると共に複数の整流素子であるダイオード79、80を含んで構成され、これら複数の整流素子によって上記出力交流電圧を整流する全波整流回路と、全波整流されたパルス波形を直流化する平滑用チョークコイル81および容量素子であるコンデンサ82を含む平滑回路と、上記ブリッジ回路を駆動する駆動回路とを備え、出力端子間に接続されているものである。
回路動作の概略であるが、高電圧バッテリ86の電圧が入力端子83に印加され、その直流電圧をスイッチング素子71〜74を用いて、PWM制御や位相シフトPWM制御等により動作させ、トランス75の一次巻線76に交流として印加する。一次巻線76に印加された交流電圧は二次巻線77、78との比率に応じた電圧で伝達され、整流ダイオード79、80により全波整流され、平滑用チョークコイル81および容量素子であるコンデンサ82を含む平滑回路により、直流として出力端子84に導かれる。この出力端子84に接続される負荷としては、低圧バッテリ87や補機類85が接続される。制御回路88は、出力端子84間の電圧を制御するもので、上記の説明にあるような制御を行い、駆動信号を駆動回路89を通してスイッチング素子71〜74に送り上記動作を行わせるものである。
なお、図4をはじめとする比較形態1の平面コイル3、4は、図10の平滑用チョークコイル81とみなされ、図4の、第1の平面コイル3の巻き始め端部31は、前段の回路である図10のダイオード79、80のカソード部とCuパターンや端子等により接続される。また、第2の平面コイル4の巻き終わり部45は、基板2の出口にあたり後段の回路である、図10のコンデンサ82の一方の端子と、基板上に設けたCuパターンや端子等により接続される。
図11は、図10の回路において、平滑用チョークコイル81に、図9のような従来の基板による巻線構造を用いた場合の、出力端子84から負荷85までの配線から発生する放射ノイズデータである。出力端子84に発生する放射ノイズは、前段の出力チョークコイル81とコンデンサ82による平滑回路に存在する高周波ノイズが基になり発生するものである。従って、高周波ノイズを抑制することで、放射ノイズが低減されることになる。
図12は、図10の回路において、平滑用チョークコイル81に比較形態1の構成を用いた場合の、出力端子84から負荷85までの配線から発生する放射ノイズデータである。ここで、FMラジオ帯(76MHz〜108MHz)に着目すると、図11に示す従来の構成による放射ノイズレベルは最大で39dB/μVであったものが、比較形態1の図12においては、最大で32dB/μVの放射ノイズレベルとなり、放射ノイズを7dB/μV低減する効果があることが分かる。すなわち、平面コイル間を高周波成分が通過することが、高周波ノイズを増加させる要因となるため、高周波成分が通過しやすい基板を介した容量成分を小さくすることにより、高周波ノイズを抑制する効果を確認できた。
(比較形態2)
図14は、比較形態2の平面コイル部10の詳細斜視図である。比較形態2は、比較形態1において各平面コイルの突起部11、12を無くす代わりに、基板2の表裏の両面側に突起部13を設けている。図11では、第1の平面コイル3側の突起部13は隠れて見えないが存在している。基板に設けた突起部13に対応する各平面コイル側のコイル表面には、導体からなるランドは設けられていない。比較形態2の基板に設けた突起部13の配置位置は、比較形態1と同様にZ軸方向の配置位置が重ならないようにずらして搭載することが好ましい。比較形態2の突起部13の材料は、Cuのような平面コイルと同じ材料からなる。程度の違いはあれ、比較形態1と同様の寄生容量を抑制する効果が得られる。なお、基板側に突起部を設ける比較形態2は、これから説明する実施形態に対してでも有効である。基板2の突起部と各平面コイル側のコイル表面との接続は、例えば、はんだ付けなどによって行う。
(実施形態1)
図1は、実施形態1の透過平面図である。図1は、比較形態1の図4のコイル基板部21、すなわち、基板2を−Z軸方向から見た平面図である。すなわち、図4の正面から見たときに、下方から見た平面図である。
図1において、実施形態1は、図4に示す比較形態1に対して、更に第1の平面コイルと第2の平面コイルとの間に発生する寄生容量を削減するために、基板2にスリット17や切り欠き18を設けたものである。実施形態1の基本構成は比較形態1と同じである。以下に、基板2への具体的なスリット17と切り欠き18の設定について説明する。
実施形態1において、基板2の表裏に設定しているランド8は比較形態1と全く同じため、配置位置関係については省略するが、ここでは基板2の表面と裏面とを区別するため、それぞれ表面側を8a、裏面側を8bとする。ちなみに、表面側とは、図1において上側すなわちZ軸の正方向から見た面であり、裏面側とは、図1において下側すなわちZ軸の負方向から見た面のことである。また、図1、図2では、表面側ランド8aは破線で示し、裏面側ランド8bは実線で示してあり、表面側ランド8aはこの方向からは反対側にあるので実際は見えていないということを示している。
実施形態1において、図4における上下の各平面コイル3、4に設けられた突起部11、12は、図1において対応するランド8a、8bにはんだ等で接続し、比較形態1と同様に電流が流れる。導電パターン19は、巻線部品1と図示しない外部の前後の回路とを接続するためのもので、その接続には端子やはんだ付け等が用いられる。巻線部品1の基板2を前後の回路と一体とした基板で形成することも可能である。基板2以外の構成要素については、比較形態1と全く同じであるため説明を省略する。
実施形態1においては、図1において、基板2にスリット17の配置を設定する条件は1つあり、その条件は、内周側あるいは外周側の表面に設定したランド8aと隣接した内周側あるいは外周側の裏面に設定したランド8bとの間に設定される。基板2の物理的な強度等を考慮すると、スリット17の配置は、ランド8aとランド8bとの中間位置に設けることが好ましいが、ランド8aとランド8bの間にあることで寄生容量の抑制に寄与する。ここでいう中間とは、スリットの配置をランド8aとランド8bとの中央辺りとすることを表す。
図1において、基板2に切り欠き18の配置を設定する条件は、基板2の強度とスリット17の数や大きさを考慮して適切に設定する必要がある。実施形態1の場合においては、内周側の表面に設定したランド8aと隣接した内周側の裏面に設定したランド8bとの中間、あるいは、外周側の表面に設定したランド8aと隣接した外周側の裏面に設定したランド8bとの中間に設定される。具体的には、支持基板22とコイル基板21の付け根の外周側の部分に2箇所、基板の中心軸7上で外周側に1箇所、内周側においては、支持基板22の反対側で基板の中心軸7に対して線対称な位置に2箇所設けてある。すなわち、合計5箇所に配置している。なお、この切り欠き18の配置の設定条件は、スリット17の配置の設定条件を満たす必要がある。
実施形態1においては、第1の平面コイル3の巻き終わり部35の接続箇所と、第2の平面コイル4の巻き始め部41の接続箇所の間には、切り欠き18の配置を除いている。これは、第1の平面コイル3の巻き終わり部35の接続箇所と、第2の平面コイル4の巻き始め部41の接続箇所が同電位だからである。
図1のように、スリット17と切り欠き18を設けて、基板2の表裏に設けたランド8aとランド8bとの直線距離を長くすること、および、ランド8a、8b間の容量成分を持つ基板の断面積を低減することにより寄生容量を低減することが可能である。一般的に、寄生容量は対向する導体間の距離に反比例しそれを横切る断面積に比例する。
図2は、図1の領域Aの部分拡大図であり、基板2の表裏に設けたランド8aとランド8bとの直線距離を長くすることについて説明するための平面透過拡大図である。図2によると、ランド8aとランド8bとの最短距離23に対し、スリット17の存在により、ランド8a、8bとの距離は迂回された距離24となり、すなわち、長くなるため寄生容量は小さくなる。スリットを迂回させる効果を得るために、ランド8a、8b間を横切るスリット17の長さはランド8a、8bの直径と同等もしくは直径よりも長いことが好ましい。スリット17と切り欠き18の位置については、上述の理由により容量成分が発生する箇所の距離を長くしたいことから基板2の表裏に設けたランド8aとランド8bとの中間位置に設定する必要がある。切り欠き18を、基板2の内周側同士および外周側同士に設けている理由は、ランド8aおよび8bが基板2の内外周に隣接しており、配置位置の都合上、スリットの延長が切り欠きとなるためである。
一方、スリット17と切り欠き18によって、ランド8a、8b間の断面積も小さくなり、寄生容量は小さくなる。また、スリット17と切り欠き18の大きさについては、基板2の強度を損なわない範囲で設定する必要があるが、基板2の厚み程度から最大でランド8a、8bの外周近傍同士まで設定することが可能である。そのように設定することにより各突起部11、12をバランス良く配置し、各平面コイル3、4を、導体パターンや導体からなるランド8を介して基板2に安定して固定することができる。
実施形態1について、スリット17と切り欠き18の、詳細設定について基本的な考え方であるが、基板2の表裏面に関わらず、隣接した各ランド8a、8bとの直線距離を長くさせること、および、ランドの直径と同等もしくは直径よりも長くさせることである。隣接した各ランド間の直線距離を長くしたり、断面積を低減することにより、基板2によって発生してしまう平面コイル3、4間の寄生容量の低減を図ることができる。
また、スリット17と切り欠き18の奥行きについては、基板2の強度を損なわない範囲で設定する必要があるが、基板2の厚み程度から最大で個々のランドの外周近傍同士まで設定することが可能である。スリット17と切り欠き18の位置については、上記の理由により寄生容量が発生する箇所の基板2の表裏面に関わらず、隣接した各ランド8a、8b間の距離を長くしたいことから隣接したランド間の中間位置に設定する必要がある。切り欠き18を内周側で隣接するランド間、または、外周側で隣接するランド間に設けている理由は、そこで配置すべきスリット17が基板2の内外周に隣接しており、スリット17を小さく設けることは容易ではないことから、スリット17を延長させた形が切り欠き18となったものである。したがって、スリット17と切り欠き18の機能は同じであり、スリット17の配置位置によって、基板強度を考慮して、適切に切り欠き18は設定可能である。
実施形態1の構成にすることにより、比較形態1の効果である、誘電体である基板に対して複数の突起部を用いて各平面コイルを概ね浮かせて配置することにより空隙ができ寄生容量を抑制可能であるが、比較形態1よりも基板2の表裏の隣接するランド8a、8b間の距離を長くすること、および断面積を小さくすることにより、平面コイル3、4間で発生する寄生容量を更に低減することができる。結果として、比較形態1よりも平面コイル3、4間での寄生容量を抑制し高周波ノイズを抑制することができる。
図13は、図10の回路において、平滑用チョークコイル81に実施形態1の構成を用いた場合の、出力端子84から負荷85までの配線から発生する放射ノイズデータである。ここで、FMラジオ帯(76MHz〜108MHz)に着目すると、図12に示す比較形態1の構成による放射ノイズレベルは最大で32dB/μVであったものが、本実施形態1の図13においては、最大で30dB/μVの放射ノイズレベルとなり、放射ノイズを更に2dB/μV低減する効果があることが分かる。すなわち、各平面コイル3、4間を高周波成分が通過することが、高周波ノイズを増加させる要因となるため、高周波成分が通過しやすい基板を介した容量成分を比較形態1よりも更に小さくすることにより、高周波ノイズを抑制する効果を確認できた。
比較形態1、実施形態1では、1ターンのC型形状の各平面コイル3、4を組み合わせた巻数2ターンの平面コイル部10について説明してきたが、以下の比較形態、実施形態においては2ターンの各平面コイルを組み合わせた巻数3ターン以上の平面コイル部について詳細に説明する。
(比較形態3)
巻数4ターンを構成する場合の平面コイル部10の比較形態3について図16を用いて説明する。図16は比較形態3の構成を示しており、比較形態1の1ターンの第1の平面コイル3と第2の平面コイル4を、それぞれ2ターンに置き換えた平面コイル部10の分解斜視図である。各平面コイル3、4の巻線は、基板2の表面に搭載された1、2ターン目を構成している2ターンの渦巻状の第1の平面コイル3と、裏面に搭載された3、4ターン目を構成している2ターンの渦巻状の第2の平面コイル4とにより構成される。なお、2ターンの渦巻形状の、とは、巻き始め端部と巻き終わり端部を有するC型形状であって、ほぼ円形に2巻き巻かれた形状であり必ずしも円形である必要はないが、比較形態3としては、渦巻形状でほぼ円形の平面コイルの例を用いて説明する。比較形態3でいうC型形状とは、両端が閉じていないという意味を含んでいる。
図16において、平面コイル部10は、基板2を挟んで第1の平面コイル3と第2の平面コイル4からなる構成になっている。2ターンの第1の平面コイル3の巻き終わり端部35は、図示しないCuからなる導通パターンによって基板2の表面のスルーホール6の端部と電気的接続されており、また、2ターンの第2の平面コイル4の巻き始め端部41と基板2の裏面のスルーホール6の端部が、導通パターン16によって電気的接続されており、第1の平面コイル3と第2の平面コイル4は、基板2の貫通導体としてのスルーホール6を介して電気的接続をしている。
第1の平面コイル3と第2の平面コイル4は、基板2の側に対向する面との接触面積を少なくするため、第1の平面コイル3と第2の平面コイル4の各々の面に、1ターンにつき6箇所、計12箇所の突起部11、12が設けられ、基板2の表裏の面に設けられたはんだ付け用のランド8にはんだ付けにより固定される。基板2と各平面コイル3、4とを、はんだ付けによる固定を行うための突起部11、12は、各平面コイルの各ターン毎に約60°の角度α毎に設けており、各突起部11、12は、各平面コイル3、4を基板2にランド8を介してバランス良く固定するため、例えば、内周側、外周側、内周側、外周側、内周側、外周側というように交互に内周側、外周側、あるいは、その逆の順で1ターンにつき6箇所設定している。1ターン毎に6箇所を設定してあるので2ターンで12箇所となり、第1の平面コイル3と第2の平面コイル4では4ターンなので合計24箇所の設定となる。すなわち、基板2と第1の平面コイル3、および、基板2と第2の平面コイル4のそれぞれの間には、第1、第2の平面コイル3、4に突起部11、12が設けられている。第1の平面コイル3と第2の平面コイル4は、突起部11、12により基板2と接続されるとともに、突起以外の部分には空隙が備えられている。
図17は、図16における比較形態3の第1の平面コイル3の−Z軸方向から見た平面図であり、図16の正面から見たときに下方から見た平面図である。図17において、第1の平面コイル3は、例えば2ターンの渦巻形状のコイルの外側の1ターンの端部を巻き始め端部31とすると、2ターンした後の内側の1ターンの端部が巻終わり端部35となる。第1の平面コイル3の2ターンのうちの、外側の1ターンは1ターン目に相当し、内側は2ターン目に相当する。比較形態3においては、第1の平面コイル3の巻き始め端部31の突起部11は外周側であり、巻終わり端部35の突起部11は内周側である。第1の平面コイル3の巻き始め端部31は、基板の中心軸7を基準にして約50°の角度βだけ回転させた位置に配置する。
図18は、図16における比較形態3の第2の平面コイル4の−Z軸方向から見た平面図であり、図16の正面から見た場合には下方から見た平面図である。図18において、例えば第2の平面コイル4は、2ターンの渦巻形状のコイルの内側の1ターンの端部を巻き始め端部41とすると、2ターンした後の外側の1ターンの端部が巻終わり端部45となる。第2の平面コイル4の2ターンのうちの、内側の1ターンは3ターン目に相当し、外側は4ターン目に相当する。比較形態3においては、第2の平面コイル4の巻き始め端部41の突起部12は内周側であり、巻終わり端部45の突起部12は外周側である。第2の平面コイル4の巻き始め端部41は、基板の中心軸7を基準にして約20°の角度γだけ回転させた位置に配置する。
比較形態3の平面コイル部10を流れる電流について説明する。図19は電流の流れる様子を破線で示し、わかりやすくするために説明に不要な部分を省いた図である。図19において、電流は基板2の表面の第1の平面コイル3の巻き始め端部31から入力され2周した後、巻き終わり端部35から図示しない導電パターンを通りスルーホール6を通過して基板2の裏面の導電パターン16を通り、第2の平面コイル4の巻き始め端部41に入力されて、更に2周した後、巻き終わり端部45から出力される。
なお、第1の平面コイル3の巻き始め端部31は、前段の回路である図10のダイオード79、80のカソード部とCuパターンや端子等により接続される。また、第2の平面コイル4の巻き終わり端部45は基板2の出口にあたり、後段の回路である図10のコンデンサ82の一方の端子とCuパターンや端子等により接続される。
また、第1の平面コイル3と第2の平面コイル4は、巻数において各平面コイルの損失量(電流の2乗×抵抗値)を揃えたい、すなわち、発熱量を同等としたいため、同じ巻数である一対であることが好ましいのであるが必ずしも一対である必要はない。例えば、第1の平面コイル3が1ターンで、第2の平面コイル4が3ターンであってもよい。その場合は、抵抗値は断面積と配線長と抵抗率の積となるため、第2の平面コイル4の3ターン側の断面積を厚み方向を増やす必要がある。すなわち、基板2を挟んでいる第1の平面コイル3と第2の平面コイル4との抵抗値を合わせるように厚みを調整し、各々のコイルに設ける突起部が重ならないように、各々のコイルに配置することにより、寄生容量の増加を抑制することができる。
(実施形態2)
図15は、実施形態2の巻線部品1の透過平面図である。実施形態2の特徴は、比較形態3に対して、基板2にスリット17や切り欠き18を設けたものである。図16に示す比較形態3に対して、第1の平面コイル3と第2の平面コイル4との間に発生する寄生容量を更に削減することを可能にする効果を有する。
図15において、基板2への具体的なスリット17や切り欠き18の配置の設定について説明する。基板2の表裏面に設定しているランド8の位置関係は、比較形態3に対してスリットや切り欠きの配置の都合上ずらしており、第1の平面コイル3の巻き始め端部31は、基板の中心軸7を基準にして約42°の角度βだけ回転させた位置に配置し、第2の平面コイル4の巻き始め端部41は、基板の中心軸7を基準にして約12°の角度γだけ回転させた位置に配置し、各コイルの突起に合わせて、それぞれ表面側を8a、裏面側を8bとする。ちなみに、表面側とは、図16において上側すなわちZ軸の正方向から見た面であり、裏面側とは、図16において下側すなわちZ軸の負方向から見た面のことである。また、本明細書では、表面側ランド8aは破線で示し、裏面側ランド8bは実線で示してあり、図15において、表面側ランド8aはこの方向からは反対側にあるので実際は見えていないということを示している。
図15において、基板2にスリット17の配置を設定する条件は2つあり、1つ目の条件は内外周側の表面に設定したランド8aと隣接した内外周側の裏面に設定したランド8bとの中間に設定される。2つ目の条件は、内周側の表面に設定したランド8aと隣接した外周側の表面に設定したランド8aとの中間、あるいは、内周側の裏面に設定したランド8bと隣接した外周側の裏面に設定したランド8bとの中間に設定される。
図15において、基板2に切り欠き18の配置を設定する条件は、基板2の強度と、スリット17の数や大きさを考慮して適切に設定する必要がある。実施形態2の場合においては、支持基板22とコイル基板21の付け根の外周側の部分に2箇所、基板の中心軸7上で外周側に1箇所、内周側においては、支持基板22の反対側で基板の中心軸7に対して線対称な位置に2箇所設けてある。すなわち、合計5箇所に配置している。なお、この切り欠き18の配置の設定条件は、スリットの配置の設定条件を満たす必要がある。
実施形態2においては、第1の平面コイル3の巻き終わり部35の接続箇所と、第2の平面コイル4の巻き始め部41の接続箇所の間には、切り欠き18の配置を除いている。これは、平面コイル3の巻き終わり部35の接続箇所と、平面コイル4の巻き始め部41の接続箇所の間は同電位のため、スリット17または切り欠き18の設定対象とはならないからである。
実施形態2について、スリット17と切り欠き18の、詳細設定について基本的な考え方であるが、基板2の表裏面に関わらず、隣接した各ランド8a、8bとの直線距離を長くさせること、および、ランドの直径と同等もしくは直径よりも長くさせることである。隣接した各ランド間の直線距離を長くしたり、容量成分を持つ基板の断面積を低減することにより、基板2によって発生してしまう平面コイル3、4間の寄生容量の低減を図ることができる。
また、スリット17と切り欠き18の奥行きについては基板2の強度を損なわない範囲で設定する必要があるが、基板2の厚み程度から最大で個々のランドの外周近傍同士まで設定することが可能である。スリット17と切り欠き18の位置については、上記の理由により寄生容量が発生する箇所の基板2の表裏面に関わらず隣接した各ランド8a、8b間の距離を長くしたいことから隣接したランド間の中間位置に設定する必要がある。切り欠き18を内周側で隣接するランド間、または、外周側で隣接するランド間に設けている理由は、そこで配置すべきスリット17が基板2の内外周に隣接しておりスリット17を小さく設けることは容易ではないことから、スリット17を延長させた形が切り欠き18となったものである。したがって、スリット17と切り欠き18の機能は同じであり、スリット17の配置位置によって、基板強度を考慮して、適切に切り欠き18は設定可能である。
これにより、実施形態2においても実施形態1と同様に、第1の平面コイル3と第2の平面コイル4を、基板2に対して突起部11、12を用いて概ね浮かせて配置することにより空隙ができて接触面積を小さくできるので、基板2に存在する寄生容量の影響を小さくして、第1の平面コイル3と第2の平面コイル4の間で発生する寄生容量を低減することが可能である。また、基板2の表裏面に関わらずに隣接するランド8a、8b間にスリット17もしくは切り欠き18を設定することにより、第1の平面コイル3と第2の平面コイル4の間で発生する寄生容量を更に低減することができる。結果として、実施形態1と同様に、第1の平面コイル3と第2の平面コイル4の間に発生する寄生容量を抑制し高周波ノイズを抑制することができる。
(比較形態4)
巻数3ターンを構成する場合の平面コイル部10の比較形態4について図21を用いて説明する。図21は比較形態4の構成を示しており、比較形態1の1ターンの第1の平面コイル3と第2の平面コイル4を、それぞれ2ターンに置き換えた平面コイル部10の分解斜視図である。平面コイル部10は、基板2を挟んで第1の平面コイル3と第2の平面コイル4からなる構成になっており、各平面コイル3、4の巻線は、基板2の表面に搭載された1、2ターン目を構成している2ターンの渦巻状の第1の平面コイル3と、裏面に搭載された2、3ターン目を構成している2ターンの渦巻状の第2の平面コイル4とにより構成される。
図21において、第1の平面コイル3と第2の平面コイル4はそれぞれ2ターンの渦巻形状のコイルとなっており、基板2と各平面コイル3、4とをはんだ付けにより固定するため、および、基板2の側に対向する面の接触面積を少なくするために、第1の平面コイル3と第2の平面コイル4に設けられた突起部11、12は、各平面コイルの各ターン毎に約60°の角度α毎に設けており、突起部11、12は各平面コイル3、4を基板2にバランス良く固定するため、例えば、内周側、外周側、内周側、外周側、内周側、外周側というように交互に内周側、外周側、あるいは、その逆の順で各平面コイルにつき2ターンであるので、1ターン毎に6箇所で2ターンで12箇所となり、第1の平面コイル3と第2の平面コイル4では4ターンなので合計24箇所の設定となる。すなわち、基板2と第1の平面コイル3、基板2と第2の平面コイル4とのそれぞれの間には、第1、第2の平面コイル3、4に突起部11、12が設けられていることで、第1の平面コイル3と第2の平面コイル4は、突起部11、12により基板2と接続されているとともに、突起以外の部分には空隙が備えられている。
比較形態4の、第1の平面コイル3の基本構成は比較形態3とほぼ同じである。例えば、2ターンの渦巻形状のコイルの外側の1ターンの端部を巻き始め端部31とすると、2ターンした後の内側の1ターンの端部が巻終わり端部35となる。第1の平面コイル3の2ターンのうちの、外側の1ターンは1ターン目に相当し、内側は2ターン目に相当する。比較形態4においては、第1の平面コイル3の巻き始め端部31の突起部11は外周側であり、巻終わり端部35の突起部11は内周側である。第1の平面コイル3の巻き始め端部31は、基板の中心軸7を基準にして図17のような約50°の角度βだけ回転させた位置に配置する。
比較形態4の第2の平面コイル4の基本構成は比較形態3とほぼ同じである。例えば、2ターンの渦巻形状のコイルの内側の1ターンの端部を巻き始め端部41とすると、2ターンした後の外側の1ターンの端部が巻終わり端部45となる。第2の平面コイル4の2ターンのうちの、内側の1ターンは3ターン目に相当し、外2側は4ターン目に相当する。比較形態4においては、第2の平面コイル4の、巻き始め端部41の突起部12は内周側であり、巻終わり端部45の突起部12は外周側である。第2の平面コイル4の巻き始め端部41は、基板の中心軸7を基準にして図18のような約20°の角度γだけ回転させた位置に配置する。
比較形態4では、図21のように、第1の平面コイル3の2ターンのコイルのうちの内側の1ターンのコイルと、第2の平面コイル4の2ターンのコイルのうちの内側の1ターンのコイルの一部が、Cuからなる第1のスルーホール63と第2のスルーホール64を介して基板2を貫通させることにより並列接続されている。また、第1の平面コイル3と第2の平面コイル4は、基板2の側に対向する面の接触面積を少なくするため、第1の平面コイル3と第2の平面コイル4の、合計4ターンのコイルの各々のコイル1ターンあたり6箇所で平面コイルあたり2ターンなので12箇所の突起部11、12が設けられ、基板2の表裏の面に設けたはんだ付け用のランド8にはんだ付けにより固定される。
図21において、例えば第1の平面コイル3において、2ターンの渦巻形状のコイルのうちの外側の1ターンのコイルの端部を巻き始め端部31とすると、1ターンした後の内側の1ターンのコイルの第1の中間部32が設けられ、2ターンした後の内側の1ターンのコイルの端部が巻終わり端部35となる。第1の平面コイル3の内側の1ターンのコイルの部分、すなわち、第1の中間部32から巻終わり端部35までの部分のコイルの幅は、第1の平面コイル3の外側の1ターンのコイルの部分、すなわち、巻き始め端部31から第1の中間部32までの部分のコイルの幅はほぼ1/2になっている。
図21において、例えば第2の平面コイル4において、2ターンの渦巻形状のコイルのうちの内側の1ターンのコイルの端部を巻き始め端部41とすると、1ターンした後の内側の1ターンのコイルの第2の中間部42が設けられ、2ターンした後の外側の1ターンのコイルの端部が巻終わり端部45となる。第2の平面コイル4の内側の1ターンのコイルの部分、すなわち、巻き始め端部41から第2の中間部42までの部分のコイルの幅は、第2の平面コイル4の外側の1ターンのコイルの部分、すなわち、第2の中間部42から巻終わり端部45までの部分のコイルの幅はほぼ1/2になっている。
上述のように、第1の平面コイル3と第2の平面コイル4のそれぞれの内側のコイルの幅を1/2に狭くして並列で接続させているため、この内側のコイルの狭くなっている部分に流れる電流は、外側のコイルに流れる電流の1/2になる。従って、このように並列接続を行うことにより、各平面コイル3、4で元々4ターンであったものを3ターンと同義とすることで、前述の突起部11、12を併用することにより、各巻線間および平面コイルの巻き始め端部と巻き終わり端部との寄生容量を小さくすることが可能である。
比較形態4では、第1の平面コイル3に流れる電流は、第1の中間部32において2つのルートに分流され、第2の平面コイル4に流れる電流は、第1の中間部42において分流された2つのルートから合流される。これについて以下に説明する。
ここで、比較形態4の接続方法によりそれに流れる電流について詳しく説明する。図22は、2つのルートに分流されて流れる電流の様子を破線、及び、実線で示し、わかりやすくするために説明に不要な部分を省いた図である。図22において、電流が、第1の平面コイル3の2ターンのコイルのうちの外側の1ターンのコイルの端部である巻き始め端部31から入力され、一周して、内側の1ターンのコイルの第1の中間部32に到達する。そこで、第1の中間部32で分流される一方の電流は、隣接した最近の突起11から図示しない導電パターンを介して第1のスルーホール63を介して基板2を貫通して、その後破線で示すように、第1のスルーホール63から導電パターンを介して第2の平面コイル4の内側の1ターンのコイルの巻き始め端部41に隣接した最近の突起12へ流れて、更に一周して、第2の中間部42に到達する。そして、第2の平面コイル4の外側の1ターンのコイルを流れて巻き終わり端部45から出力される。
また、図22において、第1の平面コイル3の第1の中間部32で分流されるもう一方の電流は、実線で示すように、第1のスルーホール63を介さないで第1の平面コイル3の内側の1ターンのコイルをそのまま一周して巻終わり端部35へ到達して、そこから隣接した最近の突起11から図示しない導電パターンを介して第2のスルーホール64へ流れ、第2のスルーホール64から図示しない導電パターンを介して第2の中間部42に隣接した最近の突起12へ流れて、第2の平面コイル4の2ターンのコイルのうちの第2の中間部42に到達する。そして、第2の平面コイル4の外側の1ターンのコイルを流れて巻き終わり端部45から出力される。
つまり、電流は、第1の平面コイル3の巻き始め端部31から入力され、図22において破線で示すように、第1の中間部32で分離し、第1の平面コイル3の幅が狭いコイルを一周して巻終わり端部35へ至るルートと、第1のスルーホール63を介して、第2の平面コイル4の巻始め端部41から第2の中間部42へ一周して流れこむルートの2つのルートを通り、合流した第2の中間部42から、そのまま、巻き終わり端部45から出力されるという回路を構成している。すなわち、第1の平面コイル3の巻始め端部31から中間部32を経由した巻終わり端部35まで、および、第2の平面コイル4の巻始め端部41から中間部42を経由した巻終わり端部45までは、それぞれ直列接続であり、第1の平面コイル3の中間部32から巻終わり端部35まで、および、第2の平面コイル4の巻始め端部41から中間部42までは並列接続となる。これを直並列接続と呼ぶ。
なお、上記と同様に、内側に対して外側のコイルを細くして並列接続としても良い。また、各平面コイルの巻き数についても適宜設定可能である。
第2のスルーホール64は、第1の平面コイル3の巻き終わり端部35に隣接した位置に基板2の裏面への貫通導体として設けられ、第1の平面コイル3の巻き終わり端部35と第2の平面コイル4の第2の中間部42を接続している。なお、各平面コイルは銅板で形成されている。
第1のスルーホール63は、第2の平面コイル4の巻始め端部41に隣接した位置に基板2の表面への貫通導体として設けられ、第2の平面コイル4の巻始め端部41と第1の平面コイル3の第1の中間部32を接続している。
(実施形態3)
図20は、実施形態3の巻線部品1の透過平面図である。実施形態3の特徴は、比較形態4に対して、基板2にスリット17や切り欠き18を設けたものである。図21に示す比較形態4に対して、第1の平面コイル3と第2の平面コイル4との間に発生する寄生容量を更に削減することを可能にする効果を有する。
図20において、基板2への具体的なスリット17や切り欠き18の配置の設定について説明する。基板2の表裏面に設定しているランド8の位置関係は、比較形態4に対してスリットや切り欠きの配置の都合上ずらしており、第1の平面コイル3の巻き始め端部31は、基板の中心軸7を基準にして約39°の角度βだけ回転させた位置に配置し、第2の平面コイル4の巻き始め端部41は、基板の中心軸7を基準にして約13°の角度γだけ回転させた位置に配置し、各コイルの突起に合わせて、それぞれ表面側を8a、裏面側を8bとする。
図20において、異なる巻線を形成している各平面コイル3、4の突起11、12に対応して基板2上に設けられた各ランド8で、隣接するランド間のスリット17の配置を設定する条件は、実施形態2と同じであるので説明は割愛する。
実施形態3において、並列接続している各平面コイル3、4の2ターンのうちの内周側の1ターンのコイルの突起11、12に対応した基板2上に設けられたランド8であって隣接したランド8間についてはスリット17は配置しない。その理由については切り欠きの設定とともに後述する。
図20において、基板2に切り欠き18の配置を設定する条件は、基板2の強度と、スリット17の数や大きさを考慮して適切に設定する必要がある。実施形態3の場合においては、基板2の中心軸7上で外周側に1箇所のみ設けてある。これまでの切り欠き18の配置を設定する条件であれば、支持基板22とコイル基板21の付け根の外周側の部分に2箇所、内周側においては、支持基板22の反対側で基板の中心軸7に対して線対称な位置に2箇所設けたのであるが、実施形態2とは異なる部分があり、その理由について説明する。
実施形態3においては、比較形態4の図21のように、第1の平面コイル3の2ターンのコイルのうちの内側の1ターンのコイルと、第2の平面コイル4の2ターンのコイルのうちの内側の1ターンのコイルの一部が、Cuからなる第1のスルーホール63と第2のスルーホール64を介して基板2を貫通させることにより並列接続されている。そのため、各平面コイルに流れる電流を、並列された各コイルに分流するだけであるために電位差が発生しないことから、第1の平面コイル3の2ターンのコイルのうちの内側の1ターンのコイルと、第2の平面コイル4の2ターンのコイルのうちの内側の1ターンのコイルの突起11、12に対応する基板2上に設けられたランド8であって隣接した各ランド間についてはスリット17は必要なくなるためである。また、この切り欠き18の配置の設定条件は、スリットの配置の設定条件を満たす必要があることと、基板2の強度と、スリット17の数や大きさを考慮して適切に設定する必要があることは変わらない。
実施形態3について、スリット17と切り欠き18の、詳細設定について基本的な考え方は、実施形態2と同じであるので説明は割愛する。
実施形態3の構成にすることにより、実施形態1と同様に、第1の平面コイル3と第2の平面コイル4を、基板2に対して突起部11、12を用いて概ね浮かせて配置することにより空隙ができて接触面積を小さくできるので、基板2に存在する寄生容量の影響を小さくして、第1の平面コイル3と第2の平面コイル4の間で発生する寄生容量を低減することが可能である。また、基板2の表裏面に関わらずに隣接するランド8a、8b間にスリット17もしくは切り欠き18を設定することにより、第1の平面コイル3と第2の平面コイル4の間で発生する寄生容量を更に低減することができる。結果として、実施形態1と同様に、第1の平面コイル3と第2の平面コイル4の間に発生する寄生容量を抑制し高周波ノイズを抑制することができる。