JP2014198689A - 環状ポリスルフィド化合物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高価かつ加水分解を起こしやすいトリメチルシリル基による硫黄原子の保護を必要とせずに、また、反応液からの水分の除去を必要とせずに、環状ポリスルフィド化合物を高収率で簡易かつ経済的に製造する。
【解決手段】2個のSを有する、ジチオール化合物をアルカリ金属チオラート化して、アルカリ金属ジチオラート化合物を生成し;次いで、アルカリ金属ジチオラート化合物と、1〜4個のSを有する硫黄の二塩化物とを反応させて、環状ポリスルフィド化合物を生成する。
【選択図】なし
【解決手段】2個のSを有する、ジチオール化合物をアルカリ金属チオラート化して、アルカリ金属ジチオラート化合物を生成し;次いで、アルカリ金属ジチオラート化合物と、1〜4個のSを有する硫黄の二塩化物とを反応させて、環状ポリスルフィド化合物を生成する。
【選択図】なし
Description
本発明は、環状ポリスルフィド化合物の製法に関する。
環状ポリスルフィドは、ゴム用加硫剤、各種ポリマー改質剤、最近では電子デバイス等の電極材料として有用である。環状ポリスルフィドの合成法については次の方法がある。
特許文献1には、ビストリアルキルシリルスルフィドやジアルキル−2シラ−ジチアシクロアルカンなどを、ハロゲンやイオウの塩化物と反応させることにより、環状トリスルフィド(1,2,3−トリチアン)を得る方法が記載されている。
非特許文献1には、ジチオールにトリメチルシリルクロリドを反応させて得たビストリメチルシリルスルフィドを蒸留により単離した後、二塩化硫黄と反応させることにより、環状トリスルフィド(1,2,3−トリチアン)を得る方法が記載されている。
特許文献2には、ジハロゲン化合物とアルカリ金属の多硫化物を親水性溶媒および親油性溶媒の非相溶性の二相系溶媒中で反応させることにより、環状ポリスルフィドを得る方法が記載されている。
CHEMISTRY LETTERS, pp.1355-1358, 1980
報告されている環状ポリスルフィドの製造方法は製造工程が長く実用的ではない。
特許文献1および非特許文献1では、トリメチルシリル基で硫黄原子が保護された化合物を用いるが、このような化合物は水分により容易に加水分解されることにより収率が低くなるので、反応系から水分を除去する必要がある。
さらに、非特許文献1では、ジチオールに硫黄の保護基として高価なクロロトリメチルシランを2当量反応させなければならない。
そこで、高価かつ不安定なトリメチルシリル基による硫黄原子の保護を必要とせず、反応系から水分を除去することなく、環状ポリスルフィド化合物を高収率で簡易かつ経済的に製造する方法が必要である。
特許文献1および非特許文献1では、トリメチルシリル基で硫黄原子が保護された化合物を用いるが、このような化合物は水分により容易に加水分解されることにより収率が低くなるので、反応系から水分を除去する必要がある。
さらに、非特許文献1では、ジチオールに硫黄の保護基として高価なクロロトリメチルシランを2当量反応させなければならない。
そこで、高価かつ不安定なトリメチルシリル基による硫黄原子の保護を必要とせず、反応系から水分を除去することなく、環状ポリスルフィド化合物を高収率で簡易かつ経済的に製造する方法が必要である。
特許文献2では、上記の方法とは異なり、加水分解されやすいトリメチルシリル基による硫黄原子の保護は必要ないが、硫黄原子を含まないジハロゲン化合物に、硫黄原子を2個以上含有するアルカリ金属の多硫化物M2Sx(式中、Mはアルカリ金属であり、xは2〜6の整数)を反応させることによって、環状ポリスルフィドを得る。
モノまたはジスルフィドは耐熱性に優れることが知られている。3個以上のSを有するポリスルフィドは耐久性に優れる。使用の目的に応じて、耐熱性、耐久性および分散性のバランスがとれた環状ポリスルフィドが有用である。
そこで、本発明者らは、有用な環状ポリスルフィドの合成方法を検討した結果、2個のSを有するジチオール化合物と複数のSを有する硫黄の二塩化物の反応による合成が、原料の安定性や入手容易性、合成における反応性の観点から優位であることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、式(1):
式(1)で表されるジチオール化合物1モルに対して、MOA(式中、Mはアルカリ金属を示し、Aは水素原子またはC1〜C3のアルキル基を示す。)で表されるアルカリ金属の水酸化物またはアルコキシド化合物2.0〜15モルとを、水、有機溶媒または水と有機溶媒との混合溶媒の単相系で反応させて、式(2):
式(2)で表されるアルカリ金属ジチオラート化合物と、前記アルカリ金属ジチオラート化合物1モルに対して、SpCl2(式中、pは1〜4の整数である。)で表される硫黄の二塩化物2.0〜5.0モルとを、有機溶媒もしくは水と有機溶媒との混合溶媒の単相系または水と有機溶媒との二相系で反応させて、式(3):
本発明の製造方法によれば、ジチオール化合物にアルカリ金属の水酸化物またはアルコキシド化合物を反応させて、加水分解しないアルカリ金属ジチオラート化合物を生成し、得られたアルカリ金属ジチオラート化合物に硫黄の二塩化物を反応させるので、高価かつ加水分解を起こしやすいトリメチルシリル基による硫黄原子の保護を必要とせずに、また、反応液からの水分の除去を必要とせずに、環状ポリスルフィド化合物を高収率で簡易かつ経済的に製造することができる。
本発明の環状ポリスルフィドの製造方法は、
2個のSを有する、式(1)で表されるジチオール化合物(以下、「ジチオール化合物(1)」という。)をアルカリ金属チオラート化して、式(2)で表されるアルカリ金属ジチオラート化合物(以下、「アルカリ金属ジチオラート化合物(2)」という。)を生成する工程(A);および
アルカリ金属ジチオラート化合物(2)と、1〜4個のSを有する硫黄の二塩化物とを反応させて、式(3)で表される環状ポリスルフィド化合物(以下、「環状ポリスルフィド化合物(3)」という。)を生成する工程B
を含む。
2個のSを有する、式(1)で表されるジチオール化合物(以下、「ジチオール化合物(1)」という。)をアルカリ金属チオラート化して、式(2)で表されるアルカリ金属ジチオラート化合物(以下、「アルカリ金属ジチオラート化合物(2)」という。)を生成する工程(A);および
アルカリ金属ジチオラート化合物(2)と、1〜4個のSを有する硫黄の二塩化物とを反応させて、式(3)で表される環状ポリスルフィド化合物(以下、「環状ポリスルフィド化合物(3)」という。)を生成する工程B
を含む。
[工程A]
本発明に用いるジチオール化合物(1)のRは、置換または非置換のC2〜C18のヘテロ原子を含んでもよいアルキレン基である。より好適には、非置換のC3〜C8のヘテロ原子を含んでもよいアルキレン基である。アルキレン基に含まれるヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子などが挙げられる。アルキレン基の置換基として、アルキル基、アリール基、アルコキシ基が挙げられる。
本発明に用いるジチオール化合物(1)のRは、置換または非置換のC2〜C18のヘテロ原子を含んでもよいアルキレン基である。より好適には、非置換のC3〜C8のヘテロ原子を含んでもよいアルキレン基である。アルキレン基に含まれるヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子などが挙げられる。アルキレン基の置換基として、アルキル基、アリール基、アルコキシ基が挙げられる。
本発明に用いるアルカリ金属の水酸化物またはアルコキシド化合物は、ジチオール化合物(1)をアルカリ金属チオラート化してアルカリ金属ジチオラート化合物(2)を生成するものであれば、特に限定されず、市販されているものを用いることができる。このようなアルカリ金属水酸化物として、例えば、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)およびこれらの水和物などが挙げられる。このようなアルカリ金属アルコキシド化合物として、例えば、リチウムメトキシド(LiOMe)、リチウムエトキシド(LiOEt)、リチウムプロポキシド(LiOPr)、ナトリウムメトキシド(NaOMe)、ナトリウムエトキシド(NaOEt)、ナトリウムプロポキシド(NaOPr)、カリウムメトキシド(KOMe)、カリウムエトキシド(KOEt)、カリウムプロポキシド(KOPr)等がある。
なかでも、水中で反応を行う場合、水酸化ナトリウムやその水和物が好適に用いられ、有機溶媒中で反応を行う場合、ナトリウムメトキシド(NaOMe)が好適に用いられる。
なかでも、水中で反応を行う場合、水酸化ナトリウムやその水和物が好適に用いられ、有機溶媒中で反応を行う場合、ナトリウムメトキシド(NaOMe)が好適に用いられる。
ジチオール化合物(1)とアルカリ金属の水酸化物またはアルコキシド化合物とを反応させる際、アルカリ金属の水酸化物またはアルコキシド化合物の使用量は特に限定されないが、ジチオール化合物(1)1モルに対して、2.0〜15モルであることが好ましく、7.0〜10モルであることがより好ましい。
前記アルカリ金属の水酸化物またはアルコキシド化合物の使用量が2.0モル以上であれば、得られるアルカリ金属ジチオラート化合物(2)の収率が低下することがなく、15モル以下であれば使用量に見合う効果が認められ、経済的に有用である。
前記アルカリ金属の水酸化物またはアルコキシド化合物の使用量が2.0モル以上であれば、得られるアルカリ金属ジチオラート化合物(2)の収率が低下することがなく、15モル以下であれば使用量に見合う効果が認められ、経済的に有用である。
ジチオール化合物(1)とアルカリ金属の水酸化物またはアルコキシド化合物とを反応させる工程Aに使用する溶媒は単相系であり、ジチオール化合物(1)およびアルカリ金属の水酸化物またはアルコキシド化合物を溶解する水もしくは有機溶媒または、水と相溶性の有機溶媒および水の混合溶媒を使用することができる。
ジチオール化合物(1)とアルカリ金属の水酸化物またはアルコキシド化合物とを反応させる際に用いる有機溶媒は特に限定されない。
水と相溶性の有機溶媒として、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類;1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類;アセトニトリル、アクリロニトリルなどのニトリル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;ブチロラクトン、カプロラクトン、ヘキサノラクトンなどのエステル類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;N−メチルピロリドンなどの含窒素複素環式ケトン類が挙げられる。
これらの中でも、メタノールが好適に用いられる。これらの有機溶媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
水と非相溶性の有機溶媒として、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、シクロヘキサノールなどのアルコール類;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、テトラヒドロピランなどのエーテル類;プロピオニトリルなどのニトリル類;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチルなどのエステル類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、シクロヘキサン、石油エーテル、ベンジン、ケロシン、トルエン、キシレン、メシチレン、ベンゼンなどの炭化水素類;ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルムなどの塩素系が挙げられる。
これらの中でも、ジクロロメタンが好適に用いられる。これらの有機溶媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
水と相溶性の有機溶媒として、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類;1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類;アセトニトリル、アクリロニトリルなどのニトリル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;ブチロラクトン、カプロラクトン、ヘキサノラクトンなどのエステル類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;N−メチルピロリドンなどの含窒素複素環式ケトン類が挙げられる。
これらの中でも、メタノールが好適に用いられる。これらの有機溶媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
水と非相溶性の有機溶媒として、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、シクロヘキサノールなどのアルコール類;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、テトラヒドロピランなどのエーテル類;プロピオニトリルなどのニトリル類;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチルなどのエステル類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、シクロヘキサン、石油エーテル、ベンジン、ケロシン、トルエン、キシレン、メシチレン、ベンゼンなどの炭化水素類;ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルムなどの塩素系が挙げられる。
これらの中でも、ジクロロメタンが好適に用いられる。これらの有機溶媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ジチオール化合物(1)とアルカリ金属の水酸化物またはアルコキシド化合物とを反応させる工程Aに使用する溶媒のうち、アルカリ金属水酸化物を用いる場合、最も好適な溶媒は水であり、アルカリ金属アルコキシド化合物を用いる場合、最も好適な溶媒は、メタノールである。
ジチオール化合物(1)とアルカリ金属水酸化物とを反応させる際の水の使用量は特に限定されないが、ジチオール化合物(1)100質量部に対して、50〜2000質量部であることが好ましく、100〜1500質量部であることがより好ましい。
水の使用量が50質量部以上であれば、アルカリ金属水酸化物が溶解せず懸濁状態となることがなく、次工程の収率が向上する。また、水の使用量が2000質量部以下であれば、使用量に見合う効果が使用量に見合う効果が認められ、経済的に有用である。
水の使用量が50質量部以上であれば、アルカリ金属水酸化物が溶解せず懸濁状態となることがなく、次工程の収率が向上する。また、水の使用量が2000質量部以下であれば、使用量に見合う効果が使用量に見合う効果が認められ、経済的に有用である。
ジチオール化合物(1)とアルカリ金属アルコキシド化合物とを反応させる際の有機溶媒の使用量は特に限定されないが、ジチオール化合物(1)100質量部に対して、50〜3000質量部であることが好ましく、200〜2500質量部であることがより好ましい。
前記有機溶媒の使用量が50質量部以上であれば、アルカリ金属アルコキシド化合物が溶解せず懸濁状態となることがなく、次工程の収率が向上する。また、有機溶媒の使用量が3000質量部以下であれば、使用量に見合う効果が使用量に見合う効果が認められ、経済的に有用である。
前記有機溶媒の使用量が50質量部以上であれば、アルカリ金属アルコキシド化合物が溶解せず懸濁状態となることがなく、次工程の収率が向上する。また、有機溶媒の使用量が3000質量部以下であれば、使用量に見合う効果が使用量に見合う効果が認められ、経済的に有用である。
ジチオール化合物(1)とアルカリ金属の水酸化物またはアルコキシド化合物とを反応させる際の反応温度としては、0〜50℃であることが好ましく、20〜30℃であることがより好ましい。
前記反応温度が0℃以上であれば、反応に長時間を要することがない。前記反応温度が50℃を超えても反応系に影響はないが、50℃以下であれば温度に見合う効果が認められ、経済的に有用である。
前記反応温度が0℃以上であれば、反応に長時間を要することがない。前記反応温度が50℃を超えても反応系に影響はないが、50℃以下であれば温度に見合う効果が認められ、経済的に有用である。
ジチオール化合物(1)とアルカリ金属の水酸化物またはアルコキシド化合物とを反応させる際の反応時間は10分から1時間であることが好ましく、20〜30分であることが好ましい。
前記反応時間が10分以上であれば、反応がほぼ完了する。前記反応時間が1時間を超えても反応系に影響はないが、1時間以下であれば、時間に見合う効果が認められ、経済的に有用である。
前記反応時間が10分以上であれば、反応がほぼ完了する。前記反応時間が1時間を超えても反応系に影響はないが、1時間以下であれば、時間に見合う効果が認められ、経済的に有用である。
[工程B]
アルカリ金属ジチオラート化合物(2)と硫黄の二塩化物SpCl2(式中、pは1〜4の整数である)とを反応させる際、硫黄の二塩化物の使用量は特に限定されないが、アルカリ金属ジチオラート化合物(2)1モルに対して、2.0〜5.0モルであることが好ましく、3.0〜4.0モルであることがより好ましい。
前記硫黄の二塩化物の使用量が2.0モル以上であれば、得られる環状ポリスルフィド化合物(3)の収率が低下することがなく、5.0モル以下であれば使用量に見合う効果が認められ、経済的に有用である。
アルカリ金属ジチオラート化合物(2)と硫黄の二塩化物SpCl2(式中、pは1〜4の整数である)とを反応させる際、硫黄の二塩化物の使用量は特に限定されないが、アルカリ金属ジチオラート化合物(2)1モルに対して、2.0〜5.0モルであることが好ましく、3.0〜4.0モルであることがより好ましい。
前記硫黄の二塩化物の使用量が2.0モル以上であれば、得られる環状ポリスルフィド化合物(3)の収率が低下することがなく、5.0モル以下であれば使用量に見合う効果が認められ、経済的に有用である。
工程Aの反応後、溶媒を取り除くことでアルカリ金属ジチオラート化合物(2)を高収率で単離することができる。
単離したアルカリ金属ジチオラート化合物(2)と硫黄の二塩化物SpCl2とを反応させる工程Bにおいて、新たな溶媒を用いて、有機溶媒または水と有機溶媒との混合溶媒を用いる単相系を形成するか、有機相/水相の二相系を形成する。
あるいは、工程Aの反応を単独の有機溶媒中で行った場合、アルカリ金属ジチオラート化合物(2)を単離することなく、工程Aの反応液に硫黄の二塩化物SpCl2を添加して工程Bの反応を行うこともできる。
単離したアルカリ金属ジチオラート化合物(2)と硫黄の二塩化物SpCl2とを反応させる工程Bにおいて、新たな溶媒を用いて、有機溶媒または水と有機溶媒との混合溶媒を用いる単相系を形成するか、有機相/水相の二相系を形成する。
あるいは、工程Aの反応を単独の有機溶媒中で行った場合、アルカリ金属ジチオラート化合物(2)を単離することなく、工程Aの反応液に硫黄の二塩化物SpCl2を添加して工程Bの反応を行うこともできる。
工程Bで用いることができる有機溶媒は、工程Aで用いることができるものと同様である。
アルカリ金属ジチオラート化合物(2)と硫黄の二塩化物SpCl2とを単相系で反応させる際の溶媒使用量は特に限定されないが、アルカリ金属ジチオラート化合物(2)100質量部に対して、500〜3000質量部であることが好ましく、1000〜2500質量部であることがより好ましい。
前記溶媒の使用量が500質量部以上あれば、系内の濃度が低いため線状のポリマーを生成する可能性がなく環状ポリスルフィドの収率が高くなる。また、前記溶媒の使用量が3000質量部以下であれば、使用量に見合う効果が認められ、経済的に有用である。
前記溶媒の使用量が500質量部以上あれば、系内の濃度が低いため線状のポリマーを生成する可能性がなく環状ポリスルフィドの収率が高くなる。また、前記溶媒の使用量が3000質量部以下であれば、使用量に見合う効果が認められ、経済的に有用である。
アルカリ金属ジチオラート化合物(2)と硫黄の二塩化物SpCl2とを二相系で反応させる際の水相および有機相の溶媒使用量は特に限定されないが、アルカリ金属ジチオラート化合物(2)100質量部に対して、500〜5000質量部であることが好ましく、1000〜4500質量部であることがより好ましい。
前記溶媒の使用量が500質量部以上あれば、系内の濃度が低いため線状のポリマーを生成する可能性がなく環状ポリスルフィドの収率が高くなる。また、前記溶媒の使用量が5000質量部以下であれば、使用量に見合う効果が認められ、経済的に有用である。
前記溶媒の使用量が500質量部以上あれば、系内の濃度が低いため線状のポリマーを生成する可能性がなく環状ポリスルフィドの収率が高くなる。また、前記溶媒の使用量が5000質量部以下であれば、使用量に見合う効果が認められ、経済的に有用である。
有機相/水相の二相系で反応させる場合、相間移動触媒を用いることができる。その使用量は、アルカリ金属ジチオラート化合物(2)100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、0.1〜9質量部であることがより好ましい。
前記相間移動触媒の使用量が0.01質量部以上であれば、反応が完結するので、収率が低下することがない。前記相間移動触媒の使用量が10質量部以下であれば、使用量に見合う効果が認められ、経済的に有用である。
前記相間移動触媒の使用量が0.01質量部以上であれば、反応が完結するので、収率が低下することがない。前記相間移動触媒の使用量が10質量部以下であれば、使用量に見合う効果が認められ、経済的に有用である。
相関移動触媒としては、例えば、ベンジルトリエチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ヘキサデシルトリエチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムクロライドおよびトリオクチルメチルアンモニウムブロマイド等の4級アンモニウム塩、ヘキサドデシルトリエチルホスホニウムブロマイド、ヘキサデシルトリブチルホスホニウムクロライドおよびテトラ−n−ブチルホスホニウムクロライド等の4級ホスホニウム塩等が挙げられる。中でも、収率を向上させる観点および経済性の観点等から、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイドが好ましく用いられる。
アルカリ金属ジチオラート化合物(2)と硫黄の二塩化物SpCl2とを反応させる際の反応温度としては、0〜120℃であることが好ましく、5〜100℃であることがより好ましい。
前記反応温度が0℃以上であれば、反応に長時間を要することがない。前記反応温度が120℃を超えても反応系に影響はないが、120℃以下であれば温度に見合う効果が認められ、経済的に有用である。
前記反応温度が0℃以上であれば、反応に長時間を要することがない。前記反応温度が120℃を超えても反応系に影響はないが、120℃以下であれば温度に見合う効果が認められ、経済的に有用である。
アルカリ金属ジチオラート化合物(2)と硫黄の二塩化物SpCl2とを反応させる際の反応時間は10分から1時間であることが好ましく、20〜30分であることが好ましい。
前記反応時間が10分以上であれば、反応がほぼ完了する。前記反応時間が1時間を超えても反応系に影響はないが、1時間以下であれば、時間に見合う効果が認められ、経済的に有用である。
前記反応時間が10分以上であれば、反応がほぼ完了する。前記反応時間が1時間を超えても反応系に影響はないが、1時間以下であれば、時間に見合う効果が認められ、経済的に有用である。
反応終了後、均一であれば有機層を取得し、減圧または常圧下にて濃縮することで環状ポリスルフィド(3)を得ることができる。また、反応終了後、不均一である場合は濾過により生成物を取得することで環状ポリスルフィド(3)を得ることができる。
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
(実施例1)
[1,2,3−トリチエパンの製造]
攪拌機、温度計、滴下ロートおよび冷却器を備え付けた100mL容の四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、10%−水酸化ナトリウム水溶液40g(NaOH:100mmol)を仕込み、1,4−ブタンジチオール1.2g(10mmol)を滴下し、20℃で1時間撹拌した。その後、ジクロロメタン30gに加え、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド0.02g(0.05mmol)を添加した後、二塩化硫黄4.1g(40mmol)を滴下し、25℃で30分攪拌した。
分液により油層を取得した後、留去により溶媒を取り除くことで1,2,3−トリチエパンを1.1g(収率70%)で取得した。この物質はGCMS測定および1H−NMR測定により目的とする1,2,3−トリチエパンであることを確認した。
1H−NMR(400MHz、溶媒:CDCl3):2.79(s,4H)、1.91(s,4H)
なお、別途、10%−水酸化ナトリウム水溶液と1,4−ブタンジチオールとの反応により、ナトリウム1,4−ブタンジチオラートは収率99〜100%で取得できたことを確認した。
[1,2,3−トリチエパンの製造]
攪拌機、温度計、滴下ロートおよび冷却器を備え付けた100mL容の四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、10%−水酸化ナトリウム水溶液40g(NaOH:100mmol)を仕込み、1,4−ブタンジチオール1.2g(10mmol)を滴下し、20℃で1時間撹拌した。その後、ジクロロメタン30gに加え、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド0.02g(0.05mmol)を添加した後、二塩化硫黄4.1g(40mmol)を滴下し、25℃で30分攪拌した。
分液により油層を取得した後、留去により溶媒を取り除くことで1,2,3−トリチエパンを1.1g(収率70%)で取得した。この物質はGCMS測定および1H−NMR測定により目的とする1,2,3−トリチエパンであることを確認した。
1H−NMR(400MHz、溶媒:CDCl3):2.79(s,4H)、1.91(s,4H)
なお、別途、10%−水酸化ナトリウム水溶液と1,4−ブタンジチオールとの反応により、ナトリウム1,4−ブタンジチオラートは収率99〜100%で取得できたことを確認した。
(実施例2)
[1,2,3−トリチアンの製造]
攪拌機、温度計、滴下ロートおよび冷却器を備え付けた100mL容の四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、10%−水酸化ナトリウム水溶液40g(NaOH:100mmol)を仕込み、1,3−プロパンジチオール1.1g(10mmol)を滴下し、20℃で1時間撹拌した。その後、ジクロロメタン30gに加え、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド0.02g(0.05mmol)を添加した後、二塩化硫黄4.1g(40mmol)を滴下し、25℃で30分攪拌した。
分液により油層を取得した後、留去により溶媒を取り除くことで1,2,3−トリチアンを0.94g(収率68%)で取得した。この物質はGCMS測定および1H−NMR測定により目的とする1,2,3−トリチエパンであることを確認した。
1H−NMR(400MHz、溶媒:CDCl3):2.60(s,4H)、1.90(s,2H)
なお、別途、10%−水酸化ナトリウム水溶液と1,3−プロパンジチオールとの反応により、ナトリウム1,3−プロパンジチオラートは収率99〜100%で取得できたことを確認した。
[1,2,3−トリチアンの製造]
攪拌機、温度計、滴下ロートおよび冷却器を備え付けた100mL容の四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、10%−水酸化ナトリウム水溶液40g(NaOH:100mmol)を仕込み、1,3−プロパンジチオール1.1g(10mmol)を滴下し、20℃で1時間撹拌した。その後、ジクロロメタン30gに加え、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド0.02g(0.05mmol)を添加した後、二塩化硫黄4.1g(40mmol)を滴下し、25℃で30分攪拌した。
分液により油層を取得した後、留去により溶媒を取り除くことで1,2,3−トリチアンを0.94g(収率68%)で取得した。この物質はGCMS測定および1H−NMR測定により目的とする1,2,3−トリチエパンであることを確認した。
1H−NMR(400MHz、溶媒:CDCl3):2.60(s,4H)、1.90(s,2H)
なお、別途、10%−水酸化ナトリウム水溶液と1,3−プロパンジチオールとの反応により、ナトリウム1,3−プロパンジチオラートは収率99〜100%で取得できたことを確認した。
本発明の製造方法によれば、ジチオール化合物(1)にアルカリ金属の水酸化物またはアルコキシド化合物を反応させてアルカリ金属ジチオラート化合物(2)を生成し、得られたアルカリ金属ジチオラート化合物(2)に1〜4個のSを有する硫黄の二塩化物を反応させるので、簡易かつ経済的に、高い収率で環状ポリスルフィド(3)を製造することができる。このように製造された環状ポリスルフィドは、ゴム用加硫剤、各種ポリマー改質剤、最近では電子デバイス等の電極材料として有用である。
Claims (4)
- 式(1):
式(1)で表されるジチオール化合物1モルに対して、MOA(式中、Mはアルカリ金属を示し、Aは水素原子またはC1〜C3のアルキル基を示す。)で表されるアルカリ金属の水酸化物またはアルコキシド化合物2.0〜15モルとを、水、有機溶媒または水と有機溶媒との混合溶媒の単相系で反応させて、式(2):
式(2)で表されるアルカリ金属ジチオラート化合物と、前記アルカリ金属ジチオラート化合物1モルに対して、SpCl2(式中、pは1〜4の整数である。)で表される硫黄の二塩化物2.0〜5.0モルとを、有機溶媒もしくは水と有機溶媒との混合溶媒の単相系または水と有機溶媒との二相系で反応させて、式(3):
- アルカリ金属水酸化物が、LiOH、NaOH、KOHおよびこれらの水和物よりなる群から選択される、請求項1の製造方法。
- アルカリ金属水酸化物の使用量が、式(1)で表されるジチオール化合物1モルに対して、7.0〜10モルである、請求項1の製造方法。
- 硫黄の二塩化物の使用量が、式(2)で表されるアルカリ金属ジチオラート化合物1モルに対して、3.0〜4.0モルである、請求項1の製造方法。
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JP2013074685A JP2014198689A (ja) | 2013-03-29 | 2013-03-29 | 環状ポリスルフィド化合物の製造方法 |
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CN108456193A (zh) * | 2017-02-21 | 2018-08-28 | 三菱瓦斯化学株式会社 | 1,2,3,5,6-五硫杂环庚烷的制造方法 |
WO2019203195A1 (ja) * | 2018-04-20 | 2019-10-24 | 住友精化株式会社 | 環状ポリスルフィド化合物 |
-
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- 2013-03-29 JP JP2013074685A patent/JP2014198689A/ja active Pending
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CN108456193A (zh) * | 2017-02-21 | 2018-08-28 | 三菱瓦斯化学株式会社 | 1,2,3,5,6-五硫杂环庚烷的制造方法 |
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