JP2014196281A - 医薬組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】虚血に起因する障害に対する薬効をより確実に得ることができる医薬組成物を提供する。【解決手段】虚血に起因する障害の治療、予防又は診断に使用するための医薬組成物は、ミトコンドリア膜透過性遷移孔開口抑制剤、アンジオテンシンIIタイプ1受容体拮抗剤。PPARγ作動剤及び造影剤からなる群より選ばれる1種以上の物質と、前記物質を内部に封入する生体適合性粒子と、を含む。前記生体適合性粒子は、個数平均粒子径が2.5〜1000nmのポリラクチドグリコライド共重合体又はそのポリエチレングリコール修飾体を含むものであってもよい。【選択図】図1

Description

本発明は、医薬組成物に関する。
急性心筋梗塞症(acute myocardial infarction、以下単に「AMI」とする。)は、虚血性心疾患の中で最も重篤な病態である。AMIを含む冠動脈疾患によって、世界中で年間700万人が死亡しており、冠動脈疾患は、死因の第一位となっている。AMI発症急性期の血行再建術やβ遮断薬及びアンジオテンシン変換酵素阻害剤等による標準的な薬物治療の普及によって、急性期の死亡率は減少し、重篤な梗塞後心不全の発症も抑制されている。しかし、梗塞後心不全による予後は悪く、心不全による死亡者数及び入院患者数は増加の一途をたどっている。
AMIの最も重要な予後規定因子は、梗塞の大きさである。このため、梗塞を縮小させる早期の再灌流療法がAMIに対する唯一の最適治療である(非特許文献1参照)。これによって、心原性ショック、致死性不整脈及び心不全が減少する。
一方、再灌流療法による冠血流回復で不可逆的な心筋細胞の壊死が促進され、再灌流療法の効果が制限される再灌流障害が問題となっている。
再灌流障害の原因の1つとして、酸化ストレスによるミトコンドリア膜透過性遷移孔(mitochondrial permeability‐transition pore、以下単に「mPTP」とする。)の開口が考えられている(非特許文献2参照)。このため、再灌流障害を抑制する治療因子としてmPTP開口抑制活性を有するシクロスポリンが有望視されている(非特許文献3乃至9参照)。この他、再灌流障害を抑制する治療因子としては、その心保護効果により、例えば、アンジオテンシンIIタイプ1受容体拮抗剤(angiotensin II type1 receptor blocker:以下、単に「ARB」とする。非特許文献10乃至12参照)及びPPAR(peroxisome proliferation‐activated receptor)γ作動剤(非特許文献13乃至17参照)が考えられる。
Lambert L et al.Association between timeliness of reperfusion therapy and clinical outcomes in st‐elevation myocardial infarction,JAMA,2010,303,2148‐2155 Shanmuganathan S et al.Mitochondrial permeability transition pore as a target for cardioprotection in the human heart,Am J Physiol Heart Circ Physiol,2005,289,H234‐H242 Gomez L et al.Inhibition of GSK3beta by postconditioning is required to prevent opening of the mitochondrial permeability transition pore during reperfusion,Circulation,2008,117,2761‐2768 Boengler K et al.Inhibition of permeability transition pore opening by mitochondrial STAT3 and its role in myochardial ischemia/reperfusion,Basic Res Cariol,2010,105,771‐785 Lim SY et al.Preconditioning and postconditioning: the essential role of the mitochondrial permeability transition pore,Cardiovasc Res,2007,75,530‐535 Huhn R et al.Hyperglycaemia blocks sevoflurane‐induced postconditioning in the rat heart in vivo; cardioprotection can be sestored by blocking the mitochondrial permeability transition pore,Br J Anaesth,2008,100,465‐471 Argaud L et al.Specific inhibition of the mitochondrial permeability transition prevents lethal reperfusion injury,J Mol Cell Cardiol,2005,38,367‐374 Krolikowski JG et al.Inhibition of mitochondrial permeability transition enhances isoflurane‐induced cardioprotection during early reperfusion: the role of mitochondrial KATP channels,Anesth Analg,2005,101,1590‐1596 Liu L et al.Age‐associated differences in the inhibition of mitochondrial permeability transition pore opening by cyclosporine A, Acta Anaesthesiol Scand,2011,55,622‐630 Yoshikawa M et al.Cardioprotective effect of the angiotensin II type 1 receptor antagonist TCV‐116 on ischemia‐reperfusion injury,Am Heart J,1994,128,1‐6 Jalowy A et al.Infarct size reduction by AT1‐receptor blockade through a signal cascade of AT2‐receptor activation, bradykinin and prostaglandins in pigs,J Am Coll Cardiol,1998,32,1787‐1796 Jugdutt BI et al.AT1 receptor blockade limits myocardial injury and upregulates AT2 receptors during reperfused myocardial infarction,Mol Cell Biochem,2004,260,111‐118 Mersmann J et al.Rosiglitazone is cardioprotective in a murine model of myocardial I/R,Shock,2008,30,64‐68 Yue Tl TL et al.In vivo myocardial protection from ischemia/reperfusion injury by the peroxisome proliferator‐activated receptor‐gamma agonist rosiglitazone,Circulation,2001,104,2588‐2594 Morrison A et al.Acute rosiglitazone treatment is cardioprotective against ischemia‐reperfusion injury by modulating AMPK, Akt, and JNK signaling in nondiabetic mice,Am J Physiol Heart Circ Physiol,2011,301,H895‐H902 Morrison A et al.PPAR‐γ and AMPK‐advantageous targets for myocardial ischemia/reperfusion therapy,Biochem Pharmacol,2011,82,195‐200 Abe M et al.Different effect of acute treatment with rosiglitazone on rat myocardial ischemia/reperfusion injury by administration method,Eur J Pharmacol,2008,589,215‐219 Dow J et al.Postconditioning does not reduce myocardial infarct size in an in vivo regional ischemia rodent model,J Cardiovasc Pharmacol Ther,2007,129,153‐163 Pagel PS et al.Transient metabolic alkalosis during early reperfusion abolishes helium preconditioning against myocardial infarction: restoration of cardioprotection by cyclosporin A in rabbits,Anesth Analg,2009,108,1076‐1082 Karlsson LO et al.Cyclosporine A, 2.5 mg/kg, Does Not Reduce Myocardial Infarct Size in a Porcine Model of Ischemia and Reperfusion,J Cardiovasc Pharmacol Ther,2012,17,159‐163 Karlsson LO et al.Cyclosporine does not reduce myocardial infarct size in a porcine ischemia‐reperfusion model,J Cardiovasc Pharmacol Ther,2010,15,182‐189 Piot C et al.Effect of cyclosporine on reperfusion injury in acute myocardial infarction,N Engl J Med,2008,359,473‐481 Mewton N et al.Effect of cyclosporine on left ventricular remodeling after reperfused myocardial infarction,J Am Coll Cardiol,2010,55,1200‐1205
しかしながら、シクロスポリンには梗塞の大きさを縮小する効果がないという対極の結果も複数報告されている(非特許文献18乃至21参照)。また、AMI患者を対象とした小規模臨床試験(対照群:30人、シクロスポリン投与群:28人)において、経皮的冠動脈インターベンションによる再灌流療法後の心臓壁運動異常の大きさ及び血中心筋逸脱酵素の増加を、シクロスポリンが抑制したものの、半年後の左室リモデリングの抑制には至っていない(非特許文献22及び23参照)。さらに、シクロスポリンは、臨床用量における副作用として、腎毒性、高血圧等が知られている。このため、再灌流障害抑制薬としてのシクロスポリンの用量を、十分な薬効が得られるまで増加させることは困難である。
また、ARB及びPPARγ作動剤による心保護効果は、虚血前に投与されることを前提とする。このため、臨床の現場において投与のタイミングの見極めが難しく、再灌流障害抑制薬としての薬効が確実に得られるとは言い難い。このように、シクロスポリン等の治療因子の虚血に起因する障害における治療薬としての役割は確立されていないのが現状である。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、虚血に起因する障害に対する薬効をより確実に得ることができる医薬組成物を提供することを目的とする。
本発明の観点に係る虚血に起因する障害の治療、予防又は診断に使用するための医薬組成物は、
ミトコンドリア膜透過性遷移孔開口抑制剤、アンジオテンシンIIタイプ1受容体拮抗剤、PPARγ作動剤、及び造影剤からなる群より選ばれる1種以上の物質と、
前記物質を内部に封入する生体適合性粒子と、
を含む。
この場合、前記虚血に起因する障害は、
虚血再灌流障害である、
こととしてもよい。
また、前記生体適合性粒子は、
個数平均粒子径が2.5〜1000nmのポリラクチドグリコライド共重合体又はそのポリエチレングリコール修飾体を含む、
こととしてもよい。
また、前記ミトコンドリア膜透過性遷移孔開口抑制剤は、
シクロスポリンである、
こととしてもよい。
また、前記PPARγ作動剤及びアンジオテンシンIIタイプ1受容体拮抗剤は、
イルベサルタンである、
こととしてもよい。
また、前記PPARγ作動剤は、
ピオグリタゾンである、
こととしてもよい。
また、前記虚血に起因する障害は、
臓器における障害である、
こととしてもよい。
また、前記医薬組成物は、
前記臓器の梗塞の大きさを小さくする、
こととしてもよい。
また、前記物質は、
シクロスポリンであって、
前記虚血に起因する障害は、
左室リモデリングである、
こととしてもよい。
本発明によれば、生体適合性粒子に封入されたミトコンドリア膜透過性遷移孔開口抑制剤、アンジオテンシンIIタイプ1受容体拮抗剤、PPARγ作動剤及び造影剤からなる群より選ばれる1種以上の物質が虚血部位に選択的に輸送されるため、虚血に起因する障害に対する薬効をより確実に得ることができる。
心筋虚血再灌流モデルマウスにおけるシクロスポリン(Cs)封入粒子による梗塞面積の縮小作用を示す図である。 心筋虚血再灌流モデルマウスから得られた心臓の画像を示す。Aは、冠動脈閉塞部及び冠動脈閉塞部領域の光学画像と蛍光画像とを示す。Bは、心臓の短軸断面の、エバンスブルー/TTC染色画像及び蛍光画像を示す。Cは、拡大したFITC蛍光画像、FITC免疫染色画像及びヘマトキシリン‐エオシン(HE)染色画像を示す。 心筋虚血再灌流モデルマウスから抽出したミトコンドリア画分及び細胞画分の光学画像、蛍光画像及びFITCを定量したデータを示す図である。Aは、ミトコンドリア画分に関する図である。Bは、細胞画分に関する図である。 生理食塩水又は過酸化水素に暴露し、FITC封入粒子を作用させた培養心筋細胞の画像及び過酸化水素に暴露した培養心筋細胞のFITC陽性細胞の割合を示す図である。 心筋虚血再灌流モデルマウスにおけるシクロスポリン及びシクロスポリン封入粒子の濃度を示す図である。Aは、虚血心筋におけるシクロスポリン及びシクロスポリン封入粒子の濃度の経時変化を示す図である。Bは、非虚血心筋におけるシクロスポリン及びシクロスポリン封入粒子の濃度の経時変化を示す図である。Cは、再灌流から5分後及び30分後の虚血心筋及び非虚血心筋から抽出したミトコンドリア画分におけるシクロスポリンの濃度を示す図である。 心筋虚血再灌流モデルマウスにおいて、再灌流30分後の時点で得られた虚血心筋の心臓サンプル由来の細胞内ミトコンドリア画分及び細胞画分各々から抽出したタンパク質を検出したデータを示す図である。Aは、ウェスタンブロッティングの結果を示す図である。B、C、D及びEは、それぞれshamを基準としたシトクロムC/GAPDH、シトクロムC/VDAC、Bax/GAPDH及びBax/VDACを示す図である。 シクロフィリンDノックアウトマウスにおけるシクロスポリン封入粒子の治療効果を示す図である。Aは、虚血領域の面積に対する梗塞面積を示す図である。Bは、左室心筋全体の面積に対する虚血領域の面積の割合を示す図である。 Aは、生理食塩水、シクロスポリン及びシクロスポリン封入粒子を投与した心筋虚血再灌流モデルマウスに対する虚血前及び再灌流から1、2、4週間後の2次元心エコー検査の結果を示す図である。Bは、再灌流4週後の左室拡張末期径を示す図である。Cは、再灌流4週後の左室収縮末期径を示す図である。Dは、再灌流4週後の短縮率を示す図である。Eは、再灌流4週後の駆出率を示す図である。 心筋虚血再灌流モデルマウスの再灌流6時間後の心臓、血液及び脾臓における白血球のフローサイトメトリー解析でのFITCシグナルの結果を示す図である。 イルベサルタン(Irb)封入粒子を投与した心筋虚血再灌流モデルマウスの再灌流12時間後の心臓における単球/マクロファージ及び炎症マーカーに関するフローサイトメトリー解析の結果を示す図である。 Aは、心筋虚血再灌流モデルマウスにおけるイルベサルタン(Irb)封入粒子及びピオグリタゾン(Pio)封入粒子の梗塞面積の縮小作用を示す図である。Bは、心筋虚血再灌流モデルマウスにおける左室心筋全体の面積に対する虚血領域の面積の割合を示す図である。 イルベサルタン(Irb)封入粒子投与時の心筋虚血再灌流モデルマウスの虚血心筋におけるPPARγ活性を示す図である。 心筋虚血障害モデルマウス(上段)及びsham(下段)から得られた心臓の短軸断面の光学画像及び蛍光画像を示す。 心筋虚血障害モデルマウスから得られた心臓の短軸断面の画像を示す。上段は、FITC封入粒子を投与した虚血部位の光学画像と蛍光画像とを示す。下段は、FITCを投与した虚血部位の光学画像と蛍光画像とを示す。 図14のFITC封入粒子を投与した虚血部位の蛍光画像を拡大した画像を示す。
本発明に係る実施の形態について説明する。
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1について説明する。本実施の形態に係る医薬組成物は、mPTP開口抑制剤、アンジオテンシンIIタイプ1受容体拮抗剤及びPPARγ作動剤からなる群より選ばれる1種以上の物質と、当該物質を内部に封入する生体適合性粒子とを含む。以下では、生体適合性粒子に封入する物質としてmPTP開口抑制剤を用いる場合を説明する。
mPTP開口抑制剤は、mPTPの開口を直接的、あるいは間接的に抑制するあらゆる物質、例えば、化合物、合成物、天然物、ペプチド、核酸等を含む。mPTPは、シクロフィリンD、VDAC(voltage dependent anion channel)等から構成され、ミトコンドリア内膜と外膜との接触部位にある孔構造である。mPTPは、mPTP開口抑制剤は、例えば、シクロスポリンであることが好ましい。シクロスポリンは、環状ポリペプチドで、カルシニューリン阻害作用を有し、免疫抑制剤として用いられている。シクロスポリンは、シクロフィリンDに結合し、シクロフィリンDを内膜から除去することで、mPTPの開口を抑制することが知られている。mPTP開口抑制剤として、シクロスポリンの中で天然に最も多いシクロスポリンAを用いてもよい。また、mPTP開口抑制剤として、N‐メチル‐バリン‐シクロスポリン、N‐メチル‐4‐イソロイシン-シクロスポリン(NIM811)等のシクロスポリンの誘導体を用いてもよい。
また、mPTP開口抑制剤として、cGMP依存性プロテインキナーゼを介してmPTPの開口を抑制するcGMP‐ホスホジエステラーゼ阻害剤、cGMPアナログ及び一酸化窒素産生剤の他、2‐アミノエトキシジフェニルホウ酸塩(2‐APB)、ボングクレキン酸、サングフェリンA及び吸入麻酔薬、例えばイソフルラン等を挙げることができる。
mPTP開口抑制剤は、市販のものを用いることができる。また、mPTP開口抑制剤は、既知の合成法、例えば化学反応又は酵素反応を利用した合成法で製造することができる(例えば、シクロスポリンであれば特開2005‐325061号公報参照)。この他、mPTP開口抑制剤は、化合物ライブラリに含まれる化合物の中から、mPTP開口抑制作用を有する化合物として選択した化合物であってもよい。
mPTP開口抑制作用を有する化合物の選択には、既知の方法、例えば、蛍光色素カルセインを用いた画像解析あるいはフローサイトメトリーで評価する方法等を利用してもよい。また、mPTP開口抑制作用は、市販の測定キットを用いて定量してもよい。より具体的には、該測定キットは、例えば、MitoProbe(商標) Transition Pore assay kit(モレキュラープローブス社製)等である。
mPTP開口抑制剤を内部に封入する生体適合性粒子は、生体適合性ポリマーから製造することができる。生体適合性ポリマーは、その様々な平均鎖長によって、内部粘性及びポリマー特性の差異をもたらす。本実施の形態で用いられるポリマーは、生体への刺激や毒性が低い生体適合性を備え、投与後分解して代謝される生体内分解性のものが好ましい。生体内分解性のポリマーとしては、例えば、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート等の部生物で産生される高分子及びコラーゲン、酢酸セルロース、バクテリアセルロース、ハイアミロースコーンスターチ、澱粉、キトサン等の天然高分子等が挙げられる。
生体適合性ポリマーから得られた生体適合性粒子は、封入するmPTP開口抑制剤を持続して放出、すなわち徐放することが好ましい。このため、生体適合性ポリマーとしては、例えば分子量5,000〜200,000のもの、分子量15,000〜25,000のものが好ましい。
生体適合性粒子は、生体適合性ポリマー、例えば生体適合性ポリエステルから製造することができる。生体適合性ポリエステルは、例えばD,L‐ラクチド、D‐ラクチド、L‐ラクチド、D,L‐乳酸、D‐乳酸、L‐乳酸、グリコリド、グリコール酸、ε‐カプロラクトン、ε‐ヒドロキシヘキサン酸、γ‐ブチロラクトン、γ‐ヒドロキシ酪酸、δ‐バレロラクトン、δ‐ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸等から選択される1種又はそれ以上のモノマーを重合することにより合成されるポリエステルである。好ましくは、生体適合性ポリマーは、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸・グリコール酸共重合体、又は乳酸・アスパラギン酸共重合体、とりわけポリラクチドグリコライド共重合体(PLGA)又はポリエチレングリコール/キトサン修飾‐PLGA(PEG/CS‐PLGA)である。
生体適合性ポリマーとしてのPLGAは、例えば1:99〜99:1、好ましくは3:1の割合で、乳酸又はラクチドとグリコール酸又はグリコライドとからなるコポリマーである。PLGAは、任意のモノマーから一般的な方法で合成してもよいし、市販のものを使用してもよい。市販のPLGAとしては、例えばPLGA7520(乳酸:グリコール酸=75:25、平均重量分子量20,000、和光純薬社製)が挙げられる。乳酸及びグリコール酸の含有量が25重量%〜65重量%であるPLGAは非晶質であり、アセトン等の有機溶媒に可溶である点で好ましい。
上記生体適合性粒子をPLGAから製造する場合、生体適合性粒子は、その粒子径が1,000nm未満、例えば2.5〜1,000nm、好ましくは5〜800nm、より好ましくは25〜600nm、さらに好ましくは約50〜500nm、最も好ましくは200〜400nmのPLGAを含むようにしてもよい。粒子径は、ふるい分け法、沈降法、顕微鏡法、光散乱法、レーザー回折・散乱法、電気的抵抗試験等で測定できる。粒子径は、測定方法に応じて、ストーク相当径、円相当径、球相当径で表すことができる。また、粒子径は、複数の粒子を測定対象として、その平均で表した個数平均粒子径、体積平均粒子径、面積平均粒子径等であってもよい。例えば、個数平均粒子径は、レーザー回折・散乱法等の測定に基づく個数分布等から算出される平均粒子径である。具体的には、粉体の集団の全体積を100%として累積カーブを求めたとき、その累積カーブが50%となる点の粒子径である50%径(D50)を平均粒子径としてもよい。
PLGAで製造された生体適合性粒子は、内皮細胞、白血球、心筋細胞、炎症細胞、血管透過性の高い部位等に移行しやすいため、封入するmPTP開口抑制剤を内皮細胞、白血球、心筋細胞、炎症細胞、血管透過性の高い部位等で持続して放出する点で好ましい。
また、上記生体適合性粒子は、PLGAのポリエチレングリコール(PEG)修飾体を用いて製造してもよい。PLGAの表面をPEGで修飾すると、血中安定性が向上する点で好ましい。
上記生体適合性粒子は、生体適合性ポリマーとmPTP開口抑制剤を、例えば、レーザー回折・散乱法等で測定したときに1,000nm未満、例えば2.5〜1,000nm、好ましくは5〜800nm、より好ましくは25〜500nm、さらに好ましくは約50〜300nm、最も好ましくは100〜250nmの個数平均粒子径を有する粒子に加工することができる方法であればいかなる方法によっても製造することができる。生体適合性粒子は、例えば、球形晶析法で製造することができる。球形晶析法は、晶析操作中に析出する結晶を球状に造粒する方法である。球形晶析法によれば、製造する化合物の物性を制御して化合物を加工できる。例えば、球形晶析法には、エマルジョン溶媒拡散法(以下、単に「ESD法」とする)がある。
ESD法では、物質、例えばmPTP開口抑制剤等を封入する生体適合性ポリマーを溶解する良溶媒と、生体適合性ポリマーを溶解しない貧溶媒の2種類の溶媒を用いる。良溶媒には、生体適合性ポリマーを溶解し、かつ貧溶媒へ混和する有機溶媒を用いる。良溶媒及び貧溶媒の種類は、封入される物質の種類等に応じて決定されるものであり、特に限定されるものではない。本実施形態に係る生体適合性粒子は、主に人体に作用させる医薬製剤の原料として用いられるため、人体に対して安全性が高く、かつ環境負荷の少ないものを用いることが好ましい。
貧溶媒としては、水又は界面活性剤を添加した水が挙げられる。例えば、界面活性剤としては、ポリビニルアルコール水溶液が好ましい。ポリビニルアルコール以外の界面活性剤としては、レシチン、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。なお、ポリビニルアルコールが残存している場合は、溶媒留去の後に、遠心分離等によりポリビニルアルコールを除去してもよい。
良溶媒としては、低沸点かつ難水溶性の有機溶媒であるハロゲン化アルカン類、アセトン、メタノール、エタノール、エチルアセテート、ジエチルエーテル、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。好ましくは、例えば環境や人体に対する悪影響が少ないアセトンのみ又はアセトンとエタノールとの混合液が用いられる。
ESD法では、まず、良溶媒中に生体適合性ポリマーを溶解後、生体適合性ポリマーが析出しないように、mPTP開口抑制剤溶解液を良溶媒中へ添加混合する。生体適合性ポリマーとmPTP開口抑制剤を含む混合液を、攪拌下で貧溶媒中に滴下すると、混合液中の良溶媒が貧溶媒中へ急速に拡散移行する。その結果、貧溶媒中で良溶媒の乳化が起き、直径数μmほどの良溶媒のエマルジョン滴が形成される。さらに、良溶媒と貧溶媒の相互拡散により、エマルジョン内から有機溶媒が貧溶媒へと継続的に拡散していくので、エマルジョン滴内の生体適合性ポリマー及びmPTP開口抑制剤の溶解度が低下する。最終的には、mPTP開口抑制剤を封入した球形結晶粒子の生体適合性粒子が生成する。その後、良溶媒である有機溶媒を遠心分離又は減圧留去し、生体適合性粒子粉末を得る。得られた粉末は、そのまま、又は必要に応じて凍結乾燥等により再分散可能な凝集粒子に複合化される。複合化された粒子は、mPTP開口抑制剤封入粒子として、容器内に充填される。このようにして得られたmPTP開口抑制剤封入粒子には、好ましくは、mPTP開口抑制剤が0.1〜99%(w/v)、より好ましくは0.1〜30%(w/v)、さらにより好ましくは1〜10%(w/v)、特に好ましく2〜3%(w/v)封入される。
上記球形晶析法では、得られるmPTP開口抑制剤封入粒子が略球形であるため触媒や原料化合物の残留といった問題を考慮する必要がない。また、球形晶析法によれば、粒子径のばらつきが少ないmPTP開口抑制剤封入粒子を容易に形成することができる。
なお、生体適合性粒子内部へのmPTP開口抑制剤の封入率を高めるため、貧溶媒にカチオン性高分子を添加してもよい。カチオン性高分子を貧溶媒中に添加した場合は、生体適合性粒子表面に吸着したカチオン性高分子がエマルション滴表面に存在するmPTP開口抑制剤と相互作用し、貧溶媒中へのmPTP開口抑制剤の漏出を抑制することができると考えられる。
カチオン性高分子としては、キトサン及びキトサン誘導体、セルロースに複数のカチオン基を結合させたカチオン化セルロース、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン等のポリアミノ化合物、ポリオルニチン、ポリリジン等のポリアミノ酸、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピリジニウムクロリド、アルキルアミノメタクリレート4級塩重合物(DAM)、アルキルアミノメタクリレート4級塩・アクリルアミド共重合物(DAA)等が挙げられる。特にキトサン又はその誘導体が好適に用いられる。
キトサンは、アミノ基を有する糖の1種であるグルコサミンが多数結合した天然高分子であり、乳化安定性、保形性、生分解性、生体適合性、抗菌性等の特徴を有するため、化粧品、食品、衣料品及び医薬品等の原料として広く用いられている。このキトサンを貧溶媒中に添加することにより、生体への悪影響がなく、安全性の高いmPTP開口抑制剤封入粒子を製造することができる。
以上のようにして得られたmPTP開口抑制剤封入粒子は、凍結乾燥等により粉末化させる際に再分散可能な凝集粒子(ナノコンポジット)に複合化できる。このとき、有機又は無機の物質を再分散可能に複合化させ、mPTP開口抑制剤封入粒子と共に乾燥させることが好ましい。例えば、糖アルコールやショ糖を用いることにより、封入率のばらつきを効果的に防止するとともに、糖アルコール等が賦形剤となりmPTP開口抑制剤封入粒子の取り扱いやすさを高めることができる。糖アルコールとしては、マンニトール、トレハロース、ソルビトール、エリスリトール、マルチトース、キシリトース等が挙げられ、この中でも特にトレハロースが好ましい。
この複合化により、mPTP開口抑制剤封入粒子が集まった、取り扱いやすい凝集粒子となっている。そして、使用時に水分に触れることでmPTP開口抑制剤封入粒子は、粒子に戻って高反応性等の特性を示す。なお、凍結乾燥法に代えて、例えばアグロマスタAGM(ホソカワミクロン社製)を使用した流動層乾燥造粒法により複合化して、再度分離可能な状態で一体化することもできる。
本実施の形態に係るmPTP開口抑制剤封入粒子を含む医薬組成物は、既知の方法で製造され、有効成分として約0.1%〜99%、約1%〜約50%、好ましくは1〜20%(%は重量%)のmPTP開口抑制剤封入粒子を含む。
本実施の形態に係るmPTP開口抑制剤封入粒子を含む医薬組成物は、注射剤、直腸坐剤、膣坐剤、経鼻吸収剤、経皮吸収剤、経肺吸収剤、口腔内吸収剤及び経口投与剤等が好ましい。このとき、当該医薬組成物は、例えば、薬理的に許容される担体と配合された合剤であってもよい。薬理的に許容される担体は、製剤素材として用いられる各種の有機担体物質又は無機担体物質である。薬理的に許容される担体は、例えば、固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、又は液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤等として酸化ストレス疾患治療薬に配合される。また、必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の添加物を用いることもできる。
賦形剤は、例えば、乳糖、白糖、D‐マンニトール、デンプン、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸等である。滑沢剤は、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、コロイドシリカ等である。結合剤は、例えば、結晶セルロース、白糖、D‐マンニトール、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等である。崩壊剤は、例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム等である。
溶剤は、例えば、注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール等である。溶解補助剤は、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D‐マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等である。懸濁化剤は、界面活性剤、親水性高分子等であって、例えば、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等である。
等張化剤は、例えば、塩化ナトリウム、グリセリン、D‐マンニトール等である。緩衝剤は、例えば、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩の緩衝液等である。無痛化剤は、例えば、ベンジルアルコール等である。防腐剤は、例えば、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸等である。抗酸化剤は、例えば、亜硫酸塩、アスコルビン酸等である。
本実施の形態に係るmPTP開口抑制剤封入粒子を含む医薬組成物は、mPTPの開口が関与する様々な状態、例えば、虚血に起因する障害の治療又は予防に使用するのが好適である。虚血に起因する障害は、例えば、虚血障害、虚血再灌流障害等を含む。虚血に起因する障害には、虚血による組織への酸素供給の低下、細胞及び細胞内小器官の膨化、ミトコンドリア膜及びライソゾーム膜の破壊等を起因とする状態異常、細胞障害、血管障害、臓器傷害等、さらに再灌流によって惹起される状態異常、細胞障害、血管障害、臓器傷害等も含む。ここで、虚血部位は、好ましくは、心臓、肺、腎臓、脳等の臓器である。この場合、虚血に起因する障害は、虚血状態になった臓器における障害となる。
特に、mPTP開口抑制剤封入粒子を含む医薬組成物は、下記実施例に示すように、虚血状態になった臓器の梗塞の大きさを小さくする。この点においても、mPTP開口抑制剤封入粒子を含む医薬組成物は、虚血に起因する障害の治療又は予防に使用するのが好適である。梗塞の大きさは、AMIの最も重要な予後規定因子である。このため、当該医薬組成物は、AMIの予後における心原性ショック、致死性不整脈及び心不全を減少させる。
PLGAを含む生体適合性粒子は、下記実施例6に示すように、虚血領域に効率よく選択的に送達される。また、当該生体適合性粒子にmPTP開口抑制剤としてシクロスポリンを封入したシクロスポリン封入粒子は、下記実施例7に示すように心筋の虚血領域でmPTPの開口を抑制する。また、下記実施例9に示すように、シクロスポリン封入粒子は、虚血に起因する障害である左室リモデリングを抑制する。左室リモデリングは、心筋梗塞などの虚血の際、心機能の低下を代償するために左室に進行性の過負荷が加えられ、梗塞部の伸展に引き続き、進行性の左室容積増大から心不全に移行する現象を言う。左室リモデリングは、心室性不整脈、心臓突然死の背景因子とも言われている。このため、左室リモデリングを抑制することで、心不全などの予後を大きく改善することができる。
この他、mPTP開口抑制剤封入粒子を含む医薬組成物は、内皮細胞、白血球、心筋細胞、炎症細胞、血管透過性の高い部位等に移行しやすいため、腎臓、肝臓、心臓、肺、膵臓等の臓器移植における拒絶反応の抑制、骨髄移植における拒絶反応及び移植片対宿主病の抑制、ベーチェット病、尋常性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、関節症性乾癬、再生不良性貧血、赤芽球癆及びネフローゼ症候群、炎症細胞が関与する炎症性疾患等に適用されてもよい。
本実施の形態に係るmPTP開口抑制剤封入粒子を含む医薬組成物の投与量は、被験体の性別、年齢、体重、症状等によって適宜決定される。当該医薬組成物は、mPTP開口抑制剤が治療上有効量となるように投与される。有効量とは、所望の結果を得るために必要なmPTP開口抑制剤の量であり、治療又は処置する状態の進行の遅延、阻害、予防、逆転又は治癒をもたらすのに必要な量である。当該医薬組成物の投与量は、典型的には、約0.01mg/kg〜約1000mg/kg、好ましくは約0.1mg/kg〜約200mg/kg、より好ましくは約0.2mg/kg〜約20mg/kgであり、1日に1回、又はそれ以上に分割して投与することができる。当該医薬組成物を分割して投与する場合、当該医薬組成物は、好ましくは1日に1〜4回投与される。また、当該医薬組成物は、毎日、隔日、1週間に1回、隔週、1ヶ月に1回等の様々な投与頻度で投与してもよい。好ましくは、投与頻度は、医師等により容易に決定される。なお、必要に応じて、上記の範囲外の量を用いることもできる。
以上詳細に説明したように、本実施の形態に係る医薬組成物は、下記実施例に示すように、生体適合性粒子に封入されたmPTP開口抑制剤が虚血部位に選択的に輸送され、除放的にmPTP開口抑制剤を放出する。このため、虚血に起因する障害に対する薬効をより確実に得ることができる。
また、本実施の形態に係る医薬組成物は、mPTP開口抑制剤を生体適合性粒子に封入しない場合と比較して、低濃度で十分な薬効が得られるので、mPTP開口抑制剤の全身的副作用、例えば、mPTP開口抑制剤としてシクロスポリンを用いた場合の腎毒性、高血圧等のリスクを小さくして、安全性を高めることができる。
また、本実施の形態では、mPTP開口抑制剤を封入する生体適合性粒子は、個数平均粒子径が2.5〜1000nmのPLGA又はそのPEG修飾体を含むものでもよいこととした。PLGAは、生体に対する刺激や毒性が低い生体適合性で、投与後分解して代謝される生体内分解性を備えるため、医薬用途、特に人体への投与に適している。また、PLGAのPEG修飾体は、血中安定性が向上するため、代謝吸収安定性等の薬物動態プロファイルを最適化するのに有用である。また、mPTP開口抑制剤を封入したPLGA及びPLGAのPEG修飾体は、内皮細胞、白血球、心筋細胞、炎症細胞、血管透過性の高い部位等に輸送され、蓄積され、封入するmPTP開口抑制剤を徐放するので、mPTP開口抑制剤を選択的に安全に対象部位に輸送することができる。
なお、本実施の形態では、生体適合性粒子に封入するmPTP開口抑制剤は、シクロスポリンであってもよいこととした。シクロスポリンは、下記実施例において生体適合性粒子に封入することで虚血領域に選択的に輸送され、優れた梗塞面積の縮小作用、すなわち臓器保護作用を発揮する。
また、本実施の形態では、虚血に起因する障害は、虚血状態になった臓器における障害であってもよいこととした。本実施の形態に係る生体適合性粒子は、下記実施例に示すように、血管透過性が高く、炎症細胞の集積する臓器虚血領域に選択的に輸送される。このため、心臓の他、肺、腎臓、脳等の虚血状態になった臓器における障害に対しても臓器保護作用を発揮する。
なお、mPTP開口抑制剤封入粒子には、1種又は2種以上のmPTP開口抑制剤を封入してもよい。また、mPTP開口抑制剤封入粒子には、1種又は2種以上のmPTP開口抑制剤とその他の薬剤、例えば抗生物質、抗炎症剤、ビタミン、又はmPTP開口抑制剤と併用することが望ましくない薬剤以外のものとを封入してもよい。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明する。
本実施の形態に係る医薬組成物は、生体適合性粒子に封入される物質がARBである点が上記実施の形態1に係る医薬組成物と異なる。ARBは、血圧降下作用を示すため、高血圧患者等に広く使用されている。ARBは、動物実験において心筋梗塞後の梗塞の大きさ、心筋梗塞後リモデリング、心不全に対する内因性保護因子(ブラジキニン、プロスタグランジン等)の分泌亢進、抗炎症作用等の複数のメカニズムを介して心保護作用をもたらす(非特許文献11、12参照)。さらに、ARBは、AMI患者の左室リモデリングを抑制し、生命予後を改善することも明らかにされている(Dickstein K et al.Effects of losartan and captopril on mortality and morbidity in high‐risk patients after acute myocardial infarction: the OPTIMAAL randomised trial. Optimal Trial in Myocardial Infarction with Angiotensin II Antagonist Losartan,Science,2009,325,612‐616)。
ARBは、直接的、あるいは間接的なアンジオテンシンIIタイプ1受容体拮抗作用を有するあらゆる物質、例えば、化合物、合成物、天然物、ペプチド、核酸等を含む。例えば、ARBとしては、ロサルタン、バルサルタン、カンデサルタンシレキセチル、テルミサルタン、オルメサルタンメドキソミル等を用いるのが好ましく、イルベサルタンを用いるのがより好ましい。
ARBは、市販のものを用いることができる。また、ARBは、既知の合成法、例えば化学反応を利用した合成法で製造することができる(例えば、ロサルタンであれば特表2006−504618号公報参照)。この他、化合物ライブラリに含まれる化合物の中から、アンジオテンシンIIタイプ1受容体拮抗作用を有する化合物として選択した化合物を用いてもよい。
アンジオテンシンIIタイプ1受容体拮抗作用を有する化合物を選択する方法には、既知の方法、例えば蛍光プローブを用いて培養細胞内のCa濃度を測定する方法等がある。また、被験物質のアンジオテンシンIIタイプ1受容体拮抗作用を定量する各種キットが市販されており、それを用いてもよい。
ARBは、例えば、上記実施の形態1のようにESD法等によって、PLGAから製造した生体適合性粒子に封入される。ARBを封入した生体適合性粒子は、その個数平均粒子径が1,000nm未満、例えば2.5〜1,000nm、好ましくは5〜800nm、より好ましくは25〜500nm、さらに好ましくは約50〜300nm、最も好ましくは100〜250nmであればよい。また、ARBを封入した生体適合性粒子には、好ましくは、ARBが0.1〜99%(w/v)、より好ましくは0.1〜30%(w/v)、さらにより好ましくは1〜10%(w/v)、特に好ましく3〜4%(w/v)封入される。
このようにして得られたARB封入粒子を含む医薬組成物は、既知の方法で製造され、有効成分として約0.1%〜99%、約1%〜約50%、好ましくは1〜20%(%は重量%)のARB封入粒子を含む。また、本実施の形態に係るARB封入粒子を含む医薬組成物は、上記実施の形態1と同様の用量、投与方法等で用いられる。
以上詳細に説明したように、本実施の形態に係る医薬組成物は、下記実施例に示すように、生体適合性粒子に封入されたARBが虚血部位に選択的に輸送され、除放的にARBを放出する。このため、虚血に起因する障害に対する薬効をより確実に得ることができる。
また、ARBによる血圧低下が心筋梗塞を惹起する可能性がある。心筋梗塞は心不全、心原性ショック等の重篤な副作用を引き起こすことが知られている。これに対し、虚血心筋部位に選択的に輸送されるARB封入粒子は、ARBを低濃度で使用することを可能にするため、上記重篤な副作用を回避して安全性を高めることができる。
また、本実施の形態では、ARBは、イルベサルタンであってもよいこととした。イルベサルタンは、下記実施例に示すように下記実施例において生体適合性粒子に封入することで虚血領域に選択的に輸送され、優れた臓器保護作用を発揮する。また、イルベサルタンは、そのPPARγ作動作用により虚血部位でのPPARγ活性を亢進させるので、虚血に起因する障害に対するさらなる薬効が得られる。
なお、ARB封入粒子には、1種又は2種以上のARBを封入してもよい。また、ARB封入粒子には、1種又は2種以上のARBとその他の薬剤、例えば、上記mPTP開口抑制剤を封入してもよい。また、ARBと共に封入され得るその他の薬剤は、抗生物質、抗炎症剤、ビタミン又はARBと併用することが望ましくない薬剤以外のものであってもよい。
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3について説明する。
本実施の形態に係る医薬組成物は、生体適合性粒子に封入される物質がPPARγ作動剤である点が上記実施の形態1に係る医薬組成物と異なる。PPARγ作動剤は、PPARγを直接的、あるいは間接的に活性化するあらゆる物質、例えば、化合物、合成物、天然物、ペプチド、核酸等を含む。例えば、PPARγ作動剤は、ロシグリタゾン、バラグリタゾン、リボグリタゾン等を含むチアゾリジンジオン系の物質、非ステロイド性抗炎症薬等であっても、ニトロリノール酸、酸化LDL、長鎖脂肪酸、エイコサノイド、リゾリン脂質等の内在性リガンド及びその誘導体等であってもよい。PPARγ作動剤としては、特にピオグリタゾンが好ましい。
また、PPARγ作動剤は、他の作用、例えば、アンジオテンシンIIタイプ1受容体拮抗作用を有するものであってもよい。アンジオテンシンIIタイプ1受容体拮抗作用を有するPPARγ作動剤としては、イルベサルタン及びテルミサルタン等が好ましい。特にイルベサルタンは、組織移行性に優れる点で特に好ましい。
PPARγ作動剤は、市販のものを用いることができる。また、PPARγ作動剤は、既知の合成法、例えば化学反応を利用した合成法で製造することができる(例えば、イルベサルタンであれば特表2008‐517895号公報参照)。この他、化合物ライブラリに含まれる化合物の中から、PPARγ作動活性を有する化合物として選択した化合物を用いてもよい。
PPARγ作動活性を有する化合物を選択する方法には、既知の方法、例えば培養細胞を用いたレポーター遺伝子アッセイ法、プレートに固相化したNcoRと複合体を形成したPPARγに被験物質が結合することによるPPARγの解離を検出する方法等がある。また、被験物質のPPARγ作動活性を定量する各種キットが市販されており、それを用いてもよい。
PPARγ作動剤は、例えば、上記実施の形態1のようにESD法等によって、PLGAから製造した生体適合性粒子に封入される。PPARγ作動剤を封入した生体適合性粒子は、その個数平均粒子径が1,000nm未満、例えば2.5〜1,000nm、好ましくは5〜800nm、より好ましくは25〜500nm、さらに好ましくは約50〜400nm、最も好ましくは200〜400nmであればよい。また、PPARγ作動剤を封入した生体適合性粒子には、好ましくは、PPARγ作動剤が0.1〜99%(w/v)、より好ましくは0.1〜30%(w/v)、さらにより好ましくは1〜10%(w/v)、特に好ましく3〜4%(w/v)封入される。
このようにして得られたPPARγ作動剤封入粒子を含む医薬組成物は、既知の方法で製造され、有効成分として約0.1%〜99%、約1%〜約50%、好ましくは1〜20%(%は重量%)のPPARγ作動剤封入粒子を含む。また、本実施の形態に係るPPARγ作動剤封入粒子を含む医薬組成物は、上記実施の形態1と同様の用量、投与方法等で用いられる。
以上詳細に説明したように、本実施の形態に係る医薬組成物は、下記実施例に示すように、生体適合性粒子に封入されたPPARγ作動剤が虚血部位に選択的に輸送され、除放的にPPARγ作動剤を放出する。このため、虚血に起因する障害に対する薬効をより確実に得ることができる。
また、PPARγ作動剤には、肝臓毒性、過剰体液貯留または浮腫を含む用量依存的な有害な副作用が知られている。本実施の形態に係る医薬組成物は、PPARγ作動剤を生体適合性粒子に封入しない場合と比較して、低濃度で十分な薬効が得られるので、PPARγ作動剤の副作用のリスクを小さくして、安全性を高めることができる。
また、本実施の形態では、PPARγ作動剤は、イルベサルタンであってもよいこととした。イルベサルタンは、下記実施例に示すように下記実施例において生体適合性粒子に封入することで虚血領域に選択的に輸送され、優れた臓器保護作用を発揮する。また、イルベサルタンは、そのPPARγ作動作用により虚血部位でのPPARγ活性を亢進させ、かつ上述のようにアンジオテンシンIIタイプ1受容体拮抗作用を有するので、虚血に起因する障害に対するさらなる薬効が得られる。
また、本実施の形態では、PPARγ作動剤は、ピオグリタゾンであってもよいこととした。ピオグリタゾンは、下記実施例に示すように下記実施例において生体適合性粒子に封入することで虚血領域に選択的に輸送され、優れた梗塞面積の縮小作用、すなわち臓器保護作用を発揮する。
なお、PPARγ作動剤封入粒子には、1種又は2種以上のPPARγ作動剤を封入してもよい。また、PPARγ作動剤封入粒子には、1種又は2種以上のPPARγ作動剤とその他の薬剤、例えば、上記mPTP開口抑制剤及びARBを封入してもよい。PPARγ作動剤と共に封入され得るその他の薬剤は、抗生物質、抗炎症剤、ビタミン又はPPARγ作動剤と併用することが望ましくない薬剤以外のものであってもよい。
なお、上記実施の形態1と同様に、本実施の形態及び上記実施の形態2に係る医薬組成物は、薬理的に許容される担体を含んでもよい。薬理的に許容される担体は、製剤素材として用いられる各種の有機担体物質又は無機担体物質である。薬理的に許容される担体は、例えば、固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、又は液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤等として酸化ストレス疾患治療薬に配合される。また、必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の添加物を用いることもできる。
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4について説明する。
本実施の形態に係る医薬組成物は、生体適合性粒子に封入される物質が造影剤である点が上記実施の形態1に係る医薬組成物と異なる。造影剤は、特に限定されず、体内での位置を外部から検出可能な物質であればよい。造影剤は、例えば、標識物質、蛍光物質、放射性物質、磁性物質、ガドリニウム化合物、ヨード造影剤等である。
造影剤は、例えば、上記実施の形態1のようにESD法等によって、PLGAから製造した生体適合性粒子に封入される。
造影剤封入粒子を含む医薬組成物は、既知の方法で製造され、有効成分として約0.1%〜99%、約1%〜約50%、好ましくは1〜20%(%は重量%)の造影剤封入粒子を含む。本実施の形態に係る造影剤封入粒子を含む医薬組成物は、虚血に起因する障害の診断に用いられる。当該造影剤封入粒子は、静脈又は動脈に投与されてもよいし、経口投与されてもよいし、チューブ等を用いて消化管内に注入されてもよい。また、当該造影剤封入粒子は臓器等に注射されてもよい。封入した造影剤に対応する検出装置又は検出方法で体内の当該造影剤封入粒子を検出することで、虚血に起因する障害の診断が可能である。
以上詳細に説明したように、本実施の形態に係る医薬組成物は、下記実施例14に示すように、虚血部位に選択的に輸送され滞留するため、封入した造影剤を外部から効率よく検出できる。これにより、虚血部位の検出感度が向上するため、虚血に起因する障害の診断をより正確にできる。また、当該医薬組成物は、虚血部位に選択的に輸送されるので、造影剤の投与量を減らすことができるため、安全性も高まる。
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
(実施例1:薬剤封入粒子の作製)
1.2gのPLGA(和光純薬社製、PLGA7520、乳酸:グリコール酸=75:25、平均重量分子量20,000)と0.05gのシクロスポリンA(Sigma社製)とを、アセトン40mL及びエタノール20mLの混合溶媒に溶解しポリマー溶液とした。これを40℃、400rpmで攪拌した0.5wt%PVA溶液120mL中に一定速度(4mL/min)で滴下し、シクロスポリン封入粒子懸濁液を得た。続いて減圧下40℃、100rpmで攪拌を続けながら、混合溶媒を留去した。約2時間の混合溶媒留去後、懸濁液をフィルターろ過(目開き32μm)し、ろ液を一晩凍結乾燥し、シクロスポリン封入粒子の乾燥粉末を得た。得られた乾燥粉末は、個数平均粒子径が221nm、PLGAに対するシクロスポリンの封入率は、2.67%(w/v)であった。
イルベサルタン封入粒子は、150mgのイルベサルタン(塩野義製薬社製)を用いて同様に作製した。得られたイルベサルタン封入粒子の乾燥粉末は、個数平均粒子径が234nm、PLGAに対するイルベサルタンの封入率は、3.29%(w/v)であった。
ピオグリタゾン封入粒子は、100mgのピオグリタゾン(武田薬品社製)を用いて同様に作製した。得られたピオグリタゾン封入粒子の乾燥粉末は、個数平均粒子径が380nm、PLGAに対するピオグリタゾンの封入率は、3.7%(w/v)であった。
また、蛍光マーカー(FITC)を封入したFITC封入粒子及び何も封入していないPLGA粒子を同様に製造した。FITC封入粒子の乾燥粉末は、個数平均粒子径が225nm、PLGAに対するFITCの封入率は、5%(w/v)であった。なお、以下実施例4及び実施例5においては、PLGAに対するFITCの封入率が4.06%(w/v)のFITC封入粒子を用いた。
ここで、個数平均粒子径の定義は以下のように定義した。その粉体の集団の全体積を100%として累積カーブを求めたとき、その累積カーブが50%となる点の粒子径である50%径(D50)を累積中位径(平均粒子径)として一般的に粒度分布を評価するパラメータとして定義した。平均粒子径は、ナノ粒子を蒸留水に懸濁したサンプルをMicrotrack UPA150(日機装社製)を用いて光散乱法で計測した。
(実施例2:心筋虚血再灌流モデルマウスにおけるシクロスポリン封入粒子の評価)
マウス(C57BL/6J、8‐10週齢、雄、25‐30g、n=8)の腹腔内にペントバルビタールナトリウム(60mg/kg)を投与し麻酔した。手技中は、人工呼吸器管理を行った(1回の換気量:0.5mL、呼吸数140回/分)。手技中は、加温パッドを用いてマウスを保温し、直腸温を36.8℃から37.2℃に維持した。第3−4肋間の高さで水平に切開し、心膜を開いた。外径1mmのシリコンチューブに8‐0シルクを通してスネア状にし、左心耳の下縁で左前下行枝を結紮した。心電図のST変化、心筋の色調変化を観察し、心筋の虚血を確認した。結紮から30分経過後にシリコンチューブを除去し、再灌流を行い、同時に被験物質の溶液を静脈に注射した。5‐0シルクにて閉胸後、自発呼吸を確認して抜管した。静脈に注射した被験物質は、生理食塩水、FITC封入粒子、シクロスポリン(1.0mg/kg及び2.5mg/kg)、シクロスポリン封入粒子(1.0mg/kg及び2.5mg/kg)とした。なお、対照としてのFITC封入粒子は、シクロスポリン封入粒子と同等のPLGAを含む濃度で用いた。
再灌流から24時間後、再度麻酔し、気管内挿管後に開胸した。左前下行枝を上記と同じ部位で同様に結紮し、虚血領域(Area at Risk;AAR)を明瞭にするために、2%のエバンスブルーを下大動脈から投与した。続いて速やかに心臓を摘出し、−80℃で凍結させた。左室を1mmの厚さに短軸方向にスライスし、切片を切り出した。得られた切片における心筋を、1%トリフェニルテトラゾリウムクロライド(TTC)溶液内で染色した(37℃、10分間)。各切片の梗塞(白色部位)、AAR(赤色部位)及び左室心筋全体の面積を計測し、梗塞面積/AARの面積とAARの面積/左室心筋全体の面積とを算出した。
(結果)
AARの面積/左室心筋全体の面積は、4群で同等であった。図1は、算出した梗塞面積/AARの面積を示す。生理食塩水投与群と比較して、シクロスポリン(Cs)封入粒子投与群では、1.0mg/kg及び2.5mg/kgの濃度で梗塞面積が有意に縮小した(P<0.001)。一方、シクロスポリン(Cs)投与群では、1.0mg/kg及び2.5mg/kgの濃度で生理食塩水投与群と比較して梗塞面積の有意な縮小は見られなかった。なお、FITC封入粒子投与群は、生理食塩水投与群と比較して梗塞面積の有意な縮小は見られなかったため、PLGAの粒子による梗塞面積の縮小が否定された。
(実施例3:心筋虚血再灌流モデルマウスにおけるFITC封入粒子の動態)
上記心筋虚血再灌流モデルマウスにおいて、再灌流と同時に生理食塩水、FITC及びFITC封入粒子を静脈に注射した10分後にマウスから心筋組織を採取し、凍結病理標本を作製した。病理標本の評価において光学及び蛍光顕微鏡はSMZ1500(Nikon社製)を用いた。また、FITC投与群の標本では、核染色用試薬としてDAPI(Vectashield,H1200)を用いた。HE染色にはマイヤー・ヘマトキシリン(武藤科学社製)及びエオシンY1%液(武藤科学社製)を用いた。
(結果)
凍結病理標本の光学及び蛍光顕微鏡画像を図2Aに示す。蛍光画像において、光学画像で確認される冠動脈閉塞部及び冠動脈閉塞部領域にFITC蛍光が観察できる。図2Bは、凍結病理標本の短軸断面像を示す。FITC投与群の標本では、エバンスブルー/TCC染色で確認された梗塞部位(白色)に、FITCの蛍光が確認されなかった。一方、FITC封入粒子投与群の標本では、梗塞部位(白色)に一致してFITCの蛍光が観察された。図2Cは、FITC投与群の標本の蛍光画像、免疫染色画像及びHE染色画像を示す。FITC封入粒子が心筋細胞内に移行していることがこれらの画像から確認できる。凍結病理標本の画像解析の結果から、PLGAの粒子が虚血領域に選択的に輸送されることが明らかになった。
以上の結果をまとめると、シクロスポリン封入粒子は、単独で用いられたシクロスポリンが梗塞面積に対する縮小作用を発揮しない濃度でも有意に梗塞面積を縮小した。PLGAの粒子は、選択的に虚血領域に輸送されるため、シクロスポリン封入粒子が虚血領域に効率よく輸送され、集積したものと考えられる。さらに、PLGAの粒子は封入するシクロスポリンを虚血領域で除放するため、梗塞面積の縮小作用が増強されたと考えられる。
(実施例4:心筋虚血再灌流モデルマウスの心筋におけるFITC封入粒子の分布)
FITC封入粒子の細胞内分布を調べるために、上記心筋虚血再灌流モデルマウスにおいて、再灌流と同時に生理食塩水(5.0ml/kg)、FITC(生理食塩水5.0ml/kgに0.06mg)及びFITC封入粒子(生理食塩水5.0ml/kgに0.06mg/kgでFITCを含有するPLGA1.4mg)を静脈に注射し、再灌流5分後の虚血心筋からミトコンドリアを単離した(各群n=3)。ミトコンドリアは、Mitochondria Isolation Kit for Tissue(ab110168、Abcam社、米国マサチューセッツ州)を使用して、当該キットのプロトコールに従って単離した。再灌流5分後にマウスから心臓を摘出し、Dounceホモジナイザーで均質化した。ホモジネートを4℃で5分間、1000×gで遠心分離し、得られた上清をさらに15分間、1500×gで遠心分離し、沈殿物としてミトコンドリア画分を得た。最終的に得られた上清は、細胞画分として用いた。
(結果)
図3Aは、ミトコンドリア画分の光学画像、蛍光画像及びミトコンドリアの量に対するFITCの量を示す。ミトコンドリア画分におけるFITC封入粒子では、封入していないFITCより多くの蛍光が観察された。ミトコンドリアの量に対するFITCの量は、封入してないFITCに対してFITC封入粒子で有意に高かった。図3Bは、細胞画分の光学画像、蛍光画像及びミトコンドリアの量に対するFITCの量を示す。細胞画分においても、FITC封入粒子でより多くの蛍光が観察され、ミトコンドリアの量に対するFITCの量は、封入してないFITCに対してFITC封入粒子で有意に高かった。
(実施例5:初代培養心筋細胞におけるFITC封入粒子の取り込み)
細胞へのFITC封入粒子の取り込み及びFITC封入粒子の細胞内局在を調べるため、初代培養のラット心筋細胞を用いた。新生ラットの心室筋細胞は、Fujinoらの方法を参考にして、新生のSprague Dawleyラットの心室から調製した(Fujino T et al.Recombinant mitochondrial transcription factor A protein inhibits nuclear factor of activated T cells signaling and attenuates pathological hypertrophy of cardiac myocytes,Mitochondrion,2012,12,449−458)。
新生ラットをイソフルラン麻酔下で安楽死させ、素早く心臓を摘出し分解した。トリプシン(和光純薬社製)及びコラゲナーゼタイプ2(ワーシントン社製、米国ニュージャージー州)で組織を分解後、10%ウシ胎仔血清(以下単に「FBS」とする。サーモサイエンティフィック社製、米国マサチューセッツ州)、ペニシリン(インビトロジェン社製、米国カリフォルニア州)及びストレプトマイシン(インビトロジェン社製)を含むダルベッコ変法イーグル培地(以下単に「DMEM培地」とする、シグマ−アルドリッチ社製)に、細胞を懸濁した。懸濁した細胞を100mmの培養皿(Cellstar(商標)、Greiner Bio−One社製、米国ノースカロライナ州)に2回播き、それぞれ70分間静置して、非心筋細胞の数を減らした。非接着性の心筋細胞を培養皿(Primaria(商標)、ファルコン社)に各実験に最適な密度となるように播き、37℃、5%Coを含む加湿空気環境下で36時間維持した。
続いて、心筋細胞をHBSSで洗浄し、培養培地において250nMのMitoTracker(商標) Orange(インビトロジェン社製)で30分間処理した。次に、培養培地を交換し、生理食塩水又は100μMの過酸化水素に心筋細胞を30分間暴露した。培養皿を洗浄し、FITC封入粒子(2.53μg/mlのFITCを含有する59.0μg/mlのPLGA)を含む新たな培地を培養皿に加えた。30分後、PBSでプレートを洗浄し、−20℃のメタノールで20分間固定した。その後、DAPI(Vectashield(商標)、Vector Laboratories社製)を含む培地を用いて標識し、共焦点顕微鏡(A1、ニコン社製)で観察した。
(結果)
図4に示すように、生理食塩水で処理した場合と比較して、100μMの過酸化水素で処理した心筋細胞には、FITC封入粒子が多く取り込まれていた(各群100個の心筋細胞を評価)。また、FITCの蛍光は、ミトコンドリアに局在していた。
実施例4の結果から、PLGAの粒子は、虚血再灌流モデルマウスの心筋内のミトコンドリアに到達することが示された。また、本実施例では、in vitroにおいても虚血再灌流の酸化ストレスをモデルとした過酸化水素への暴露によって、PLGAの粒子は、ラット心筋細胞のミトコンドリアへの取り込みが誘導された。心筋での虚血再灌流は静止形質及びミトコンドリア膜電位の消失に起因することが報告されており、これによって、虚血再灌流の心筋細胞及びミトコンドリアに輸送される陰イオン性のPLGAの粒子が相対的に多くなったと考えられる。
(実施例6:心筋虚血再灌流モデルマウスにおけるシクロスポリン封入粒子の動態解析)
実施例2と同様に、マウス(n=3)の心筋を虚血させ、30分経過後に再灌流を行い、同時に2.5mg/kgのシクロスポリン又は2.5mg/kgのシクロスポリンを含むシクロスポリン封入粒子を静脈に注射した。所定の時点で、EDTA−2K入りのチューブ(シグマ−アルドリッチ社製)を用いてマウスから血液を採取し、各マウスからサンプル(心臓、脳、肺、肝臓、脾臓及び腎臓)を収集した。実施例4と同様に、虚血心筋及び非虚血心筋からミトコンドリアを単離した。全てのサンプルの重さを量り、それぞれ均質化した。血液及び収集したサンプルのホモジネートに含まれるシクロスポリンの濃度は、HPLC法と高い相関性を示す公知の放射免疫測定法で測定した。
(結果)
図5A及び図5Bは、それぞれ虚血心筋及び非虚血心筋におけるシクロスポリン(CsA)及びシクロスポリン封入粒子(CsA−NP)の濃度を示す。虚血心筋では、投与5分後及び30分後におけるシクロスポリンの濃度は、シクロスポリン封入粒子の投与群のほうがシクロスポリンの投与群よりも高かった。これに対し、非虚血心筋では、シクロスポリンの濃度は、シクロスポリンの投与群のほうがシクロスポリン封入粒子の投与群よりも高かった。シクロスポリンは、ミトコンドリアで機能すると考えられるため、ミトコンドリア画分でのシクロスポリンの濃度を調べた(図5C参照)。その結果、再灌流後5分後及び30分後におけるミトコンドリア画分のシクロスポリン濃度は、シクロスポリンをPLGAの粒子に封入することで、約5倍に増加した。
表1は、マウスの血液、脳、肺、肝臓、脾臓及び腎臓におけるシクロスポリンの濃度を示す。
シクロスポリン単独の投与群とシクロスポリン封入粒子の投与群とを比較すると、血液、脳、肺、肝臓、脾臓及び腎臓におけるシクロスポリンの濃度は、同程度であった。これらの結果から、シクロスポリン封入粒子は、虚血再灌流における心筋の虚血領域のミトコンドリアに選択的に輸送されることが示唆された。
図5A及び図5Bに示すように、シクロスポリンを単独で投与した場合、シクロスポリンの濃度は、非虚血心筋よりも虚血心筋において低かった。虚血再灌流障害及びシクロスポリンで誘導される血管収縮の少なくとも一方に起因する微小血管機能障害のために、静脈に投与されたシクロスポリンが虚血再灌流後の心筋に十分輸送されないと考えられる。このため、虚血再灌流後の心筋、特にミトコンドリアに効率的にシクロスポリンを輸送すれば、mPTPの開口を阻害することで、再灌流障害を抑制できる。
心保護のためにミトコンドリアに生体適合性粒子を輸送するには、心臓の血管壁の内皮層、心筋細胞の細胞膜及びミトコンドリア膜を生体適合性粒子がこえなければならない。心血管内皮は、syndecan−1及びヘパラン硫酸などの糖タンパク質に覆われていて、ヘパラン硫酸は、内皮表面の陰イオン電荷の主な原因である。虚血再灌流は、内皮細胞間の細胞間結合の解離及び冠動脈の上皮からの糖タンパク質の放出の要因となることが報告されている。これらの知見は、陰イオン性のシクロスポリン封入粒子が非虚血心筋よりも、虚血心筋に選択的に輸送された本実施例の結果を支持する。一方、表1に示すように、シクロスポリン単独の投与群とシクロスポリン封入粒子の投与群とでは、血液、脳、肺、肝臓、脾臓及び腎臓におけるシクロスポリンの濃度が同程度であったことから、虚血再灌流に依存する血管透過性の向上がシクロスポリン封入粒子の心筋への輸送を促進したことが考えられる。
(実施例7:虚血再灌流障害に対するシクロスポリン封入粒子の心保護作用の機序解析)
上記心筋虚血再灌流モデルマウスにおいて、再灌流と同時に生理食塩水、FITC封入粒子、シクロスポリン(1mg/kg、10mg/kg)及びシクロスポリン封入粒子(1mg/kg)を静脈に注射し、再灌流30分後の時点で得られた虚血心筋及び非虚血心筋の心臓サンプル由来の細胞内ミトコンドリア画分と細胞画分とからタンパク質を抽出した(各群n=8)。サンプルを、溶解緩衝液に加え、4−20%SDSポリアクリルアミドゲルでタンパク質(ミトコンドリア画分:2.0μg、細胞画分:5.0μg)を分離し、PVDF膜を用いて検出した。一次抗体として、シトクロムC(上清;1/1000、ミトコンドリア画分;1/2000、Santa Cruz Biotechnology社製)、Bax(1/1000、Cell Signaling Technology社製)、GAPDH(1/1000、Santa Cruz Biotechnology社製)及びVADC(1/1000、Cell Signaling Technology社製)を用いた。
(結果)
mPTPの開口によってミトコンドリアから細胞質にシトクロムCが漏出する。図6A及び図6Bに示すように、生理食塩水(Saline)、FITC封入粒子(FITC−NP)及び1mg/kgのシクロスポリン(CsA 1mg/kg)を投与した群と比較して、10mg/kgのシクロスポリン(CsA 10mg/kg)及びシクロスポリン封入粒子(CsA−NP)を投与した群では、ミトコンドリア画分から細胞画分へのシトクロムCの漏出が抑制された。Baxは、アポトーシス促進に重要なタンパク質であって、細胞質からミトコンドリアへのBaxの転移は、ミトコンドリア外膜の透過を介したアポトーシスを引き起こし、これによってシトクロムCの漏出が誘導される。いずれの群でもBaxの転移が見られなかったので(図6A、図6D参照)、本実験で観察されたシトクロムCの漏出は、主にmPTPの開口に依存しており、シクロスポリン封入粒子によってmPTPの開口が抑制されたことが示された。なお、mPTPを構成するVDACに対するシトクロムC及びBaxは、いずれの群でも差はなかった(図6C、図6E参照)。また、非虚血心筋では、シトクロムCの漏出及びBaxの転移はいずれも見られなかった。
このため、実施例2で示されたシクロスポリン封入粒子による梗塞面積の有意な縮小は、シクロスポリン封入粒子によるmPTPの開口の抑制によることが示唆された。
(実施例8:シクロフィリンDノックアウトマウスにおけるシクロスポリン封入粒子の評価)
mPTPの主な制御因子であるシクロフィリンDを欠損させたマウスを用いて、シクロスポリン封入粒子の治療効果を評価した。シクロフィリンDノックアウトマウスは、Jackson Laboratories社から入手した。実施例2と同様に、マウスの心筋を虚血させ、45分経過後に再灌流を行い、再灌流と同時に1.0mg/kgのシクロスポリンを含むシクロスポリン封入粒子を静脈に注射した。再灌流から24時間後、梗塞面積/AARの面積とAARの面積/左室心筋全体の面積とを算出した(n=7〜8)。
(結果)
図7Aは、AARの面積に対する梗塞面積を示す。野生型(WT)及びシクロフィリンDノックアウトマウス(CypD−/−)の双方において、シクロスポリン封入粒子(CsA−NP)群は、非投与群に対して有意に梗塞面積を縮小させた。また、シクロフィリンDノックアウトマウスでは、シクロスポリン封入粒子を投与しなくても野生型の非投与群よりも有意に梗塞面積が縮小しており、さらに、シクロスポリン封入粒子を投与しても梗塞面積のさらなる縮小は見られなかった。なお、AARの面積/左室心筋全体の面積は、4群で同等であるのを確認した(図7B)。このことから、シクロスポリン封入粒子の心保護作用は、シクロフィリンDに依存する、すなわち、mPTPの阻害によることが示唆された。
(実施例9:心エコー検査による評価)
左室の機能と拡張(リモデリング)を調べるために心筋虚血再灌流モデルマウスにおいて、虚血前及び再灌流から1、2、4週間後に経胸壁2次元心エコー検査を行った。マウスは、再灌流と同時に生理食塩水、シクロスポリン(1mg/kg、10mg/kg)及びシクロスポリン封入粒子(1mg/kg)を静脈に注射した群で構成した(n=10)。心エコー検査には、イソフラン(1〜1.5%)の吸入麻酔下のマウスに対して40mHzのプローブ(VisualSonics社製)を用いた。マウスの心拍数は、約500bpmに維持した。左室拡張末期径(LVEDD)が最大となるレベルにおける短軸像において、Mモード検査を胸骨傍で行った、LVEDD及び左室収縮末期径(LVESD)を決定し、%短縮率(Fractional shortening:FS)と駆出率(Ejection Fraction:EF)とを算出した。FSは、数式{(LVEDD−LVESD)/LVEDD}×100を用いて算出した。EFは、数式{(LVEDV−LVESV)/LVEDV}×100を用いて算出した。なお、LVEDVは左室拡張末期容積で、LVESVは左室収縮末期容量である。
(結果)
表2は、心エコー検査の結果を示す。1mg/kgのシクロスポリンの投与群では、生理食塩水投与群と同様に、左室の機能不全及びリモデリングが観察された。一方、10mg/kgのシクロスポリン又は1mg/kgのシクロスポリン封入粒子を投与した群では、左室の機能不全及びリモデリングが抑制された。
図8Aは、生理食塩水、1mg/kgシクロスポリン(CsA)、10mg/kgシクロスポリン及び1mg/kgシクロスポリンを含むシクロスポリン封入粒子(CsA−NP)投与群におけるMモード検査の代表的な心エコー図を示す。虚血再灌流から4週後のシクロスポリン封入粒子投与群では、虚血前の状態までほぼ回復していた。図8B、図8C、図8D及び図8Eは、それぞれ再灌流4週後のLVEDD、LVESD、FS及びEFを示す。生理食塩水投与群に対して、シクロスポリン封入粒子投与群では、LVEDD及びLVESDが有意に低下した。また、シクロスポリン封入粒子投与群では、左室が形態的にどれだけ収縮したかの指標であるFS及び心機能の指標であるEFが、生理食塩水投与群に対して大きく改善した。
本実施例の結果と実施例2の結果と合わせると、シクロスポリン封入粒子は、梗塞サイズの縮小に伴って心機能を改善し、左室リモデリングを抑制することが示唆された。なお、各群の間で血圧と心拍数に有意な違いはなかった。
(実施例10:カルシニューリン活性に対するシクロスポリン封入粒子の影響)
シクロスポリンは、タンパク質ホスファターゼの一種であるカルシニューリンをT細胞において阻害するため、免疫抑制剤として広く使用されている。一方、シクロスポリンは、心筋細胞でカルシニューリンパスウェイを阻害することによって、AMI後の左室機能障害を引き起こしうることが動物実験で示されている(Oie E et al.Cyclosporin A inhibits cardiac hypertrophy and enhances cardiac dysfunction during postinfarction failure in rats,Am J Physiol Heart Circ Physiol,2000,278,H2115−2123)。
そこで、本実施例では、シクロスポリン封入粒子が、再灌流から3時間後の非虚血心筋におけるカルシニューリンの活性に与える影響を評価した。マウスは、再灌流と同時に生理食塩水、シクロスポリン(1mg/kg、10mg/kg)及びシクロスポリン封入粒子(1mg/kg)を静脈に注射した群で構成した。凍結しておいた心筋組織を、プロテアーゼ阻害剤を含む冷却した溶解緩衝液(50mM Tris、pH 7.5;0.1mM EDTA;0.1mM EGTA;1mM DTT;及び0.2% NP−40)内で均質化した。サンプルを4℃で45分間、100,000×gで遠心分離し、上清を回収した。溶解緩衝液で平衡化した脱塩カラム(P6 DG脱塩樹脂)に上清を通すことで、上清に含まれる遊離したリン酸基を除去した。カルシニューリン特異的なRIIホスホペプチドを用いて、回収した抽出液(各サンプルで5μg)のカルシニューリン活性を決定した。カルシニューリン活性の決定は、Biomol Green(商標) Quantizyme(商標) アッセイシステム(Calcineurin cellular activity assay kit Plus AK−816,Biomol International L.P.社製)を用いて製造者のプロトコールに従って行った。
(結果)
表3は、各群のカルシニューリン活性を示す。シクロスポリン封入粒子の単回、静脈投与では、カルシニューリン活性に影響はなかった。また、シクロスポリン封入粒子を投与しても全身性の有害事象は現れなかった。
本実施例の結果により、シクロスポリン封入粒子は、薬効が得られる濃度で使用しても、カルシニューリン活性を阻害しないため、カルシニューリンパスウェイに関連する左室機能障害などの重篤な有害事象の発生リスクが極めて低いことが示唆された。また、上記実施例において実験動物にシクロスポリン封入粒子を投与しても、全身性の有害事象が現れなかったことからも、シクロスポリン封入粒子は、安全性の高い薬剤であることが示唆された。
(実施例11:FITC封入粒子を用いたフローサイトメトリー解析)
上記実施例2に従ってイルベサルタン封入粒子(3.0mg/kg)、FITC封入粒子、FITC又は何も封入していないPLGA粒子を投与したマウスを再灌流6時間後又は12時間後に安楽死させた(各群n=3)。心臓、血液及び脾臓における白血球(単球/マクロファージ、好中球及びリンパ球)をフローサイトメトリーで解析した。単球/マクロファージは、CD11bhi(CD90/B220/CD49b/NK1.1/Ly‐6G)loLy‐6Chi/lo、好中球は、CD11bhi(CD90/B220/CD49b/NK1.1/Ly‐6G)hiLy‐6Cint、リンパ球は、CD11blo(CD90/B220/CD49b/NK1.1/Ly‐6G)hiと定義した。測定にはFACSCalibur(BD Bioscience社製)を使用し、解析はCell Quest software(BD Bioscience社製)で行った。
(結果)
図9は、再灌流6時間後の心臓、血液及び脾臓における白血球に対するフローサイトメトリー解析で検出したFITCシグナルを示す。貪食機能を持つ単球/マクロファージ、好中球では、FITC投与群と比較して、FITC封入粒子投与群で強いFITCシグナルを認めた。特に、単球/マクロファージにおいて、FITCシグナルの増加を認めた。
図10は、フローサイトメトリーによる再灌流12時間後の心臓における単球/マクロファージ及び炎症マーカーに対するイルベサルタン封入粒子の影響を示す。対照群には、何も封入していないPLGA粒子を投与した。イルベサルタン(Irb)封入粒子投与群は、PLGA粒子投与群と比較して、虚血心臓での単球/マクロファージ数が低下した。また、Irb封入粒子投与群では、炎症マーカーであるLy6C陽性細胞が減少した。以上の結果から、イルベサルタン封入粒子は、虚血心臓への単球/マクロファージ及び炎症細胞の浸潤を抑制することが示唆された。
(実施例12:心筋虚血再灌流モデルマウスにおけるイルベサルタン封入粒子の評価)
上記実施例2と同様に、心筋の虚血を確認後、結紮から25分経過後に被験物質を静脈に注射した。静脈に注射した被験物質は、生理食塩水、FITC封入粒子、イルベサルタン(10.0mg/kg)、イルベサルタン封入粒子(3.0mg/kg)、ピオグリタゾン封入粒子(0.1mg/kg)とした。そして、結紮から30分経過した時点で、シリコンチューブを除去し、再灌流を行い、5‐0シルクにて閉胸後、自発呼吸を確認して抜管した。次に、心臓切片の梗塞面積、AARの面積及び左室心筋全体の面積を計測し、梗塞面積/AARの面積とAARの面積/左室心筋全体の面積とを算出した。
(結果)
図11Aに算出した梗塞面積/AARの面積を示す。生理食塩水投与群と比較して、FITC封入粒子投与群、イルベサルタン(Irb)投与群では梗塞面積の縮小作用は見られなかった。一方、イルベサルタン(Irb)封入粒子投与群及びピオグリタゾン(Pio)封入粒子投与群では、梗塞面積が有意に縮小した(P<0.05)。また、AARの面積/左室心筋全体の面積に関しては、5群間で同等であった(図11B参照)。
(実施例13:心筋虚血再灌流モデルマウスにおけるイルベサルタン封入粒子の作用機序の検討)
イルベサルタン封入粒子による虚血心筋でのPPARγ活性を確認するために、再灌流6時間後における虚血心筋のPPARγ活性を測定した。再灌流前の左前下行枝の結紮前にイルベサルタン封入粒子(3.0mg/kg)を静脈内投与する点を除いては、上記実施例2と同様の実験を行った。対照として生理食塩水を用いた。
心臓組織は、虚血領域と非虚血領域に分けNE‐PER Nucler and Cytoplasmic Extraction Reagent Kit(Thermo社製)を使用して、各々の領域の細胞質タンパク質と核タンパク質とを抽出した。抽出したタンパク質は、BCA Protein assay kit(PIERC社製)を使用して定量した。総タンパク質量として同等量の核タンパク質に対してTransAM(商標)PPARγ Transcription Factor Assay Kits(Active Motif社製)を使用してPPARγ活性を測定した。
(結果)
図12は、虚血心筋でのPPARγ活性を示す。Irb封入粒子投与群は、有意にPPARγ活性を亢進させた。このことから、イルベサルタン封入粒子の梗塞面積の縮小作用は、虚血心筋におけるPPARγの活性化によることが示された。
これまでにシクロスポリンの再灌流障害抑制に関して、用量作用関係を解析した研究がされておらず、薬剤の用量が不十分であることが再灌流障害抑制薬としてのシクロスポリンの役割が確立されていないことの一因であると考えられる。上記実施例で示されたシクロスポリン封入粒子は、虚血領域の心筋細胞、心筋組織に選択的に輸送され、除放的にシクロスポリンを放出する。このため、シクロスポリン封入粒子は、シクロスポリンの梗塞面積の縮小作用を高め、低濃度で薬効を得ることができる。これにより、シクロスポリンを低濃度で使用できるので、シクロスポリンの全身的副作用(腎毒性、高血圧等)のリスクを小さくして、安全性を高めることができる。
また、上記実施例13の結果から、イルベサルタン封入粒子は、PPARγの活性化を介してイルベサルタンの梗塞面積の縮小作用を高めることが明らかとなった。上記のように、PPARγ作動剤による心保護効果は、虚血前に投与されることを前提としたものであったが、上記実施例12においては、心筋の虚血後のイルベサルタンの投与で梗塞面積の縮小作用を得ることができることを実証した。
イルベサルタンは、ARBでもあるため、イルベサルタン封入粒子による梗塞面積の縮小作用には、アンジオテンシンIIタイプ1受容体活性の抑制も寄与していると考えられる。また、ARBを高い濃度で用いることで血圧が低下することが知られており、この血圧低下が心筋梗塞を惹起し、その結果、心不全、心原性ショック等の重篤な副作用を引き起こす可能性がある。虚血心筋部位に選択的に輸送されるイルベサルタン封入粒子は、イルベサルタンを低濃度で使用することを可能にするため、上記重篤な副作用を回避することができる。
また、イルベサルタン封入粒子は、虚血心臓への単球/マクロファージ及び炎症細胞の浸潤を抑制することにより心保護作用を有するため、AMIの発症を抑制することができる。
ピオグリタゾン封入粒子においても梗塞面積の縮小作用が得られた。ピオグリタゾンはARBではないため、アンジオテンシンIIタイプ1受容体活性の抑制がなくても、PPARγ作動剤封入粒子が梗塞面積を縮小させるのに有効であることが明らかとなった。
(実施例14:心筋虚血障害モデルマウスにおけるFITC封入粒子の動態)
虚血障害が発生した心筋におけるFITC封入粒子の分布を評価した。マウス(C57BL/6J、8週齢、雄)にイソフルラン(エア・ウォーター社製)吸入麻酔下、人工呼吸器管理を行った(1回の換気量:0.5mL、呼吸数140回/分)。手技中は、加温パッドを用いてマウスを保温し、直腸温を36.8℃から37.2℃に維持した。第3−4肋間の高さで水平に切開し、心膜を開き、左心耳の下縁で左前下行枝を結紮した。結紮直後にFITC封入粒子又はFITC(10%DMSO)の溶液を虚血部に筋肉内注射した。閉胸後、自発呼吸を確認し抜管した。なお、FITC封入粒子は、生理食塩水で調製した3%溶液を40μl(1.2mg/mlのFITCに相当)又は3.75mg/mlの溶液を20μl(0.15mg/mlのFITCの相当)注射した。FITCは、0.15mg/mlの溶液を20μl注射した。なお、shamには、結紮を除く処置を行い、FITC封入粒子を投与した。注射から3時間後又は24時間後にマウスから心筋組織を採取し、実施例2と同様に、凍結病理標本を作製した。
(結果)
図13の上段は、注射から3時間後の虚血させた心臓の光学画像及び蛍光画像を示す。蛍光画像において、光学画像で確認される梗塞部位(白色部位)に対応する部位にFITCの蛍光が観察できる。一方、図13の下段は、注射から3時間後のshamの心臓の光学画像及び蛍光画像を示す。光学画像で梗塞部位はなく、蛍光画像においてFITC蛍光は、ほとんど認められない。この結果から、PLGAの粒子が虚血に起因する梗塞領域に選択的に輸送されることが明らかになった。
図14の上段は、FITC封入粒子溶液の注射から24時間後の心臓の光学画像及び蛍光画像を示す。24時間後でも蛍光画像において、光学画像で確認される梗塞部位に対応する部位にFITCの蛍光が観察できる。一方、図14の下段は、FITC溶液の注射から24時間後の心臓の光学画像及び蛍光画像を示す。光学画像で確認される梗塞部位に対応する部位には、蛍光画像においてFITC蛍光は認められない。FITC封入粒子溶液の注射から24時間後の心臓の光学画像を拡大すると、梗塞部位の心筋細胞にFITCの蛍光を確認できる(図15)。これらの結果から、PLGAの粒子が虚血に起因する梗塞領域に選択的に輸送され、少なくとも24時間は梗塞領域に滞留することが明らかになった。また、PLGAの粒子に封入されたFITCは、梗塞部位の心筋細胞に選択的に輸送されることが示された。なお、本実施例14と同様の実験において、FITC封入粒子を静脈内に投与しても梗塞領域に選択的にFITCの蛍光が観察された。
本実施例の結果からPLGAの粒子に封入されたFITC等の造影剤は、心筋梗塞等の虚血に起因する障害のある部位に効率よく選択的に輸送され、当該部位を選択的に造影できるため、適切な造影剤をPLGA等の生体適合性粒子に封入した医薬組成物は、虚血再灌流障害を含む虚血に起因する障害の診断に使用することができる。
また、本実施例及び上記実施例2乃至13の結果から、mPTP開口抑制剤、ARB及びPPARγ作動剤をPLGA等の生体適合性粒子に封入した医薬組成物は、虚血に起因する障害のある部位に効率よく選択的に輸送されるので、虚血に起因する障害の治療又は予防においても高い有効性を有する。
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
本発明は、虚血に起因する障害の治療、予防及び診断に好適である。本発明を適用することにより、虚血に起因する障害の治療及び予防の成績が向上し、患者の生活の質が確保される。

Claims (9)

  1. ミトコンドリア膜透過性遷移孔開口抑制剤、アンジオテンシンIIタイプ1受容体拮抗剤、PPARγ作動剤及び造影剤からなる群より選ばれる1種以上の物質と、
    前記物質を内部に封入する生体適合性粒子と、
    を含む、虚血に起因する障害の治療、予防又は診断に使用するための医薬組成物。
  2. 前記虚血に起因する障害は、
    虚血再灌流障害である、
    ことを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
  3. 前記生体適合性粒子は、
    個数平均粒子径が2.5〜1000nmのポリラクチドグリコライド共重合体又はそのポリエチレングリコール修飾体を含む、
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の医薬組成物。
  4. 前記ミトコンドリア膜透過性遷移孔開口抑制剤は、
    シクロスポリンである、
    ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  5. 前記PPARγ作動剤及びアンジオテンシンIIタイプ1受容体拮抗剤は、
    イルベサルタンである、
    ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  6. 前記PPARγ作動剤は、
    ピオグリタゾンである、
    ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  7. 前記虚血に起因する障害は、
    虚血状態になった臓器における障害である、
    ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  8. 前記臓器の梗塞の大きさを小さくする、
    ことを特徴とする請求項7に記載の医薬組成物。
  9. 前記物質は、
    シクロスポリンであって、
    前記虚血に起因する障害は、
    左室リモデリングである、
    ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
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