JP2014196281A - 医薬組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
ミトコンドリア膜透過性遷移孔開口抑制剤、アンジオテンシンIIタイプ1受容体拮抗剤、PPARγ作動剤、及び造影剤からなる群より選ばれる1種以上の物質と、
前記物質を内部に封入する生体適合性粒子と、
を含む。
虚血再灌流障害である、
こととしてもよい。
個数平均粒子径が2.5〜1000nmのポリラクチドグリコライド共重合体又はそのポリエチレングリコール修飾体を含む、
こととしてもよい。
シクロスポリンである、
こととしてもよい。
イルベサルタンである、
こととしてもよい。
ピオグリタゾンである、
こととしてもよい。
臓器における障害である、
こととしてもよい。
前記臓器の梗塞の大きさを小さくする、
こととしてもよい。
シクロスポリンであって、
前記虚血に起因する障害は、
左室リモデリングである、
こととしてもよい。
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1について説明する。本実施の形態に係る医薬組成物は、mPTP開口抑制剤、アンジオテンシンIIタイプ1受容体拮抗剤及びPPARγ作動剤からなる群より選ばれる1種以上の物質と、当該物質を内部に封入する生体適合性粒子とを含む。以下では、生体適合性粒子に封入する物質としてmPTP開口抑制剤を用いる場合を説明する。
次に、本発明の実施の形態2について説明する。
次に、本発明の実施の形態3について説明する。
次に、本発明の実施の形態4について説明する。
1.2gのPLGA(和光純薬社製、PLGA7520、乳酸:グリコール酸=75:25、平均重量分子量20,000)と0.05gのシクロスポリンA(Sigma社製)とを、アセトン40mL及びエタノール20mLの混合溶媒に溶解しポリマー溶液とした。これを40℃、400rpmで攪拌した0.5wt%PVA溶液120mL中に一定速度(4mL/min)で滴下し、シクロスポリン封入粒子懸濁液を得た。続いて減圧下40℃、100rpmで攪拌を続けながら、混合溶媒を留去した。約2時間の混合溶媒留去後、懸濁液をフィルターろ過(目開き32μm)し、ろ液を一晩凍結乾燥し、シクロスポリン封入粒子の乾燥粉末を得た。得られた乾燥粉末は、個数平均粒子径が221nm、PLGAに対するシクロスポリンの封入率は、2.67%(w/v)であった。
イルベサルタン封入粒子は、150mgのイルベサルタン(塩野義製薬社製)を用いて同様に作製した。得られたイルベサルタン封入粒子の乾燥粉末は、個数平均粒子径が234nm、PLGAに対するイルベサルタンの封入率は、3.29%(w/v)であった。
ピオグリタゾン封入粒子は、100mgのピオグリタゾン(武田薬品社製)を用いて同様に作製した。得られたピオグリタゾン封入粒子の乾燥粉末は、個数平均粒子径が380nm、PLGAに対するピオグリタゾンの封入率は、3.7%(w/v)であった。
また、蛍光マーカー(FITC)を封入したFITC封入粒子及び何も封入していないPLGA粒子を同様に製造した。FITC封入粒子の乾燥粉末は、個数平均粒子径が225nm、PLGAに対するFITCの封入率は、5%(w/v)であった。なお、以下実施例4及び実施例5においては、PLGAに対するFITCの封入率が4.06%(w/v)のFITC封入粒子を用いた。
ここで、個数平均粒子径の定義は以下のように定義した。その粉体の集団の全体積を100%として累積カーブを求めたとき、その累積カーブが50%となる点の粒子径である50%径(D50)を累積中位径(平均粒子径)として一般的に粒度分布を評価するパラメータとして定義した。平均粒子径は、ナノ粒子を蒸留水に懸濁したサンプルをMicrotrack UPA150(日機装社製)を用いて光散乱法で計測した。
マウス(C57BL/6J、8‐10週齢、雄、25‐30g、n=8)の腹腔内にペントバルビタールナトリウム(60mg/kg)を投与し麻酔した。手技中は、人工呼吸器管理を行った(1回の換気量:0.5mL、呼吸数140回/分)。手技中は、加温パッドを用いてマウスを保温し、直腸温を36.8℃から37.2℃に維持した。第3−4肋間の高さで水平に切開し、心膜を開いた。外径1mmのシリコンチューブに8‐0シルクを通してスネア状にし、左心耳の下縁で左前下行枝を結紮した。心電図のST変化、心筋の色調変化を観察し、心筋の虚血を確認した。結紮から30分経過後にシリコンチューブを除去し、再灌流を行い、同時に被験物質の溶液を静脈に注射した。5‐0シルクにて閉胸後、自発呼吸を確認して抜管した。静脈に注射した被験物質は、生理食塩水、FITC封入粒子、シクロスポリン(1.0mg/kg及び2.5mg/kg)、シクロスポリン封入粒子(1.0mg/kg及び2.5mg/kg)とした。なお、対照としてのFITC封入粒子は、シクロスポリン封入粒子と同等のPLGAを含む濃度で用いた。
再灌流から24時間後、再度麻酔し、気管内挿管後に開胸した。左前下行枝を上記と同じ部位で同様に結紮し、虚血領域(Area at Risk;AAR)を明瞭にするために、2%のエバンスブルーを下大動脈から投与した。続いて速やかに心臓を摘出し、−80℃で凍結させた。左室を1mmの厚さに短軸方向にスライスし、切片を切り出した。得られた切片における心筋を、1%トリフェニルテトラゾリウムクロライド(TTC)溶液内で染色した(37℃、10分間)。各切片の梗塞(白色部位)、AAR(赤色部位)及び左室心筋全体の面積を計測し、梗塞面積/AARの面積とAARの面積/左室心筋全体の面積とを算出した。
AARの面積/左室心筋全体の面積は、4群で同等であった。図1は、算出した梗塞面積/AARの面積を示す。生理食塩水投与群と比較して、シクロスポリン(Cs)封入粒子投与群では、1.0mg/kg及び2.5mg/kgの濃度で梗塞面積が有意に縮小した(P<0.001)。一方、シクロスポリン(Cs)投与群では、1.0mg/kg及び2.5mg/kgの濃度で生理食塩水投与群と比較して梗塞面積の有意な縮小は見られなかった。なお、FITC封入粒子投与群は、生理食塩水投与群と比較して梗塞面積の有意な縮小は見られなかったため、PLGAの粒子による梗塞面積の縮小が否定された。
上記心筋虚血再灌流モデルマウスにおいて、再灌流と同時に生理食塩水、FITC及びFITC封入粒子を静脈に注射した10分後にマウスから心筋組織を採取し、凍結病理標本を作製した。病理標本の評価において光学及び蛍光顕微鏡はSMZ1500(Nikon社製)を用いた。また、FITC投与群の標本では、核染色用試薬としてDAPI(Vectashield,H1200)を用いた。HE染色にはマイヤー・ヘマトキシリン(武藤科学社製)及びエオシンY1%液(武藤科学社製)を用いた。
凍結病理標本の光学及び蛍光顕微鏡画像を図2Aに示す。蛍光画像において、光学画像で確認される冠動脈閉塞部及び冠動脈閉塞部領域にFITC蛍光が観察できる。図2Bは、凍結病理標本の短軸断面像を示す。FITC投与群の標本では、エバンスブルー/TCC染色で確認された梗塞部位(白色)に、FITCの蛍光が確認されなかった。一方、FITC封入粒子投与群の標本では、梗塞部位(白色)に一致してFITCの蛍光が観察された。図2Cは、FITC投与群の標本の蛍光画像、免疫染色画像及びHE染色画像を示す。FITC封入粒子が心筋細胞内に移行していることがこれらの画像から確認できる。凍結病理標本の画像解析の結果から、PLGAの粒子が虚血領域に選択的に輸送されることが明らかになった。
FITC封入粒子の細胞内分布を調べるために、上記心筋虚血再灌流モデルマウスにおいて、再灌流と同時に生理食塩水(5.0ml/kg)、FITC(生理食塩水5.0ml/kgに0.06mg)及びFITC封入粒子(生理食塩水5.0ml/kgに0.06mg/kgでFITCを含有するPLGA1.4mg)を静脈に注射し、再灌流5分後の虚血心筋からミトコンドリアを単離した(各群n=3)。ミトコンドリアは、Mitochondria Isolation Kit for Tissue(ab110168、Abcam社、米国マサチューセッツ州)を使用して、当該キットのプロトコールに従って単離した。再灌流5分後にマウスから心臓を摘出し、Dounceホモジナイザーで均質化した。ホモジネートを4℃で5分間、1000×gで遠心分離し、得られた上清をさらに15分間、1500×gで遠心分離し、沈殿物としてミトコンドリア画分を得た。最終的に得られた上清は、細胞画分として用いた。
図3Aは、ミトコンドリア画分の光学画像、蛍光画像及びミトコンドリアの量に対するFITCの量を示す。ミトコンドリア画分におけるFITC封入粒子では、封入していないFITCより多くの蛍光が観察された。ミトコンドリアの量に対するFITCの量は、封入してないFITCに対してFITC封入粒子で有意に高かった。図3Bは、細胞画分の光学画像、蛍光画像及びミトコンドリアの量に対するFITCの量を示す。細胞画分においても、FITC封入粒子でより多くの蛍光が観察され、ミトコンドリアの量に対するFITCの量は、封入してないFITCに対してFITC封入粒子で有意に高かった。
細胞へのFITC封入粒子の取り込み及びFITC封入粒子の細胞内局在を調べるため、初代培養のラット心筋細胞を用いた。新生ラットの心室筋細胞は、Fujinoらの方法を参考にして、新生のSprague Dawleyラットの心室から調製した(Fujino T et al.Recombinant mitochondrial transcription factor A protein inhibits nuclear factor of activated T cells signaling and attenuates pathological hypertrophy of cardiac myocytes,Mitochondrion,2012,12,449−458)。
図4に示すように、生理食塩水で処理した場合と比較して、100μMの過酸化水素で処理した心筋細胞には、FITC封入粒子が多く取り込まれていた(各群100個の心筋細胞を評価)。また、FITCの蛍光は、ミトコンドリアに局在していた。
実施例2と同様に、マウス(n=3)の心筋を虚血させ、30分経過後に再灌流を行い、同時に2.5mg/kgのシクロスポリン又は2.5mg/kgのシクロスポリンを含むシクロスポリン封入粒子を静脈に注射した。所定の時点で、EDTA−2K入りのチューブ(シグマ−アルドリッチ社製)を用いてマウスから血液を採取し、各マウスからサンプル(心臓、脳、肺、肝臓、脾臓及び腎臓)を収集した。実施例4と同様に、虚血心筋及び非虚血心筋からミトコンドリアを単離した。全てのサンプルの重さを量り、それぞれ均質化した。血液及び収集したサンプルのホモジネートに含まれるシクロスポリンの濃度は、HPLC法と高い相関性を示す公知の放射免疫測定法で測定した。
図5A及び図5Bは、それぞれ虚血心筋及び非虚血心筋におけるシクロスポリン(CsA)及びシクロスポリン封入粒子(CsA−NP)の濃度を示す。虚血心筋では、投与5分後及び30分後におけるシクロスポリンの濃度は、シクロスポリン封入粒子の投与群のほうがシクロスポリンの投与群よりも高かった。これに対し、非虚血心筋では、シクロスポリンの濃度は、シクロスポリンの投与群のほうがシクロスポリン封入粒子の投与群よりも高かった。シクロスポリンは、ミトコンドリアで機能すると考えられるため、ミトコンドリア画分でのシクロスポリンの濃度を調べた(図5C参照)。その結果、再灌流後5分後及び30分後におけるミトコンドリア画分のシクロスポリン濃度は、シクロスポリンをPLGAの粒子に封入することで、約5倍に増加した。
上記心筋虚血再灌流モデルマウスにおいて、再灌流と同時に生理食塩水、FITC封入粒子、シクロスポリン(1mg/kg、10mg/kg)及びシクロスポリン封入粒子(1mg/kg)を静脈に注射し、再灌流30分後の時点で得られた虚血心筋及び非虚血心筋の心臓サンプル由来の細胞内ミトコンドリア画分と細胞画分とからタンパク質を抽出した(各群n=8)。サンプルを、溶解緩衝液に加え、4−20%SDSポリアクリルアミドゲルでタンパク質(ミトコンドリア画分:2.0μg、細胞画分:5.0μg)を分離し、PVDF膜を用いて検出した。一次抗体として、シトクロムC(上清;1/1000、ミトコンドリア画分;1/2000、Santa Cruz Biotechnology社製)、Bax(1/1000、Cell Signaling Technology社製)、GAPDH(1/1000、Santa Cruz Biotechnology社製)及びVADC(1/1000、Cell Signaling Technology社製)を用いた。
mPTPの開口によってミトコンドリアから細胞質にシトクロムCが漏出する。図6A及び図6Bに示すように、生理食塩水(Saline)、FITC封入粒子(FITC−NP)及び1mg/kgのシクロスポリン(CsA 1mg/kg)を投与した群と比較して、10mg/kgのシクロスポリン(CsA 10mg/kg)及びシクロスポリン封入粒子(CsA−NP)を投与した群では、ミトコンドリア画分から細胞画分へのシトクロムCの漏出が抑制された。Baxは、アポトーシス促進に重要なタンパク質であって、細胞質からミトコンドリアへのBaxの転移は、ミトコンドリア外膜の透過を介したアポトーシスを引き起こし、これによってシトクロムCの漏出が誘導される。いずれの群でもBaxの転移が見られなかったので(図6A、図6D参照)、本実験で観察されたシトクロムCの漏出は、主にmPTPの開口に依存しており、シクロスポリン封入粒子によってmPTPの開口が抑制されたことが示された。なお、mPTPを構成するVDACに対するシトクロムC及びBaxは、いずれの群でも差はなかった(図6C、図6E参照)。また、非虚血心筋では、シトクロムCの漏出及びBaxの転移はいずれも見られなかった。
mPTPの主な制御因子であるシクロフィリンDを欠損させたマウスを用いて、シクロスポリン封入粒子の治療効果を評価した。シクロフィリンDノックアウトマウスは、Jackson Laboratories社から入手した。実施例2と同様に、マウスの心筋を虚血させ、45分経過後に再灌流を行い、再灌流と同時に1.0mg/kgのシクロスポリンを含むシクロスポリン封入粒子を静脈に注射した。再灌流から24時間後、梗塞面積/AARの面積とAARの面積/左室心筋全体の面積とを算出した(n=7〜8)。
図7Aは、AARの面積に対する梗塞面積を示す。野生型(WT)及びシクロフィリンDノックアウトマウス(CypD−/−)の双方において、シクロスポリン封入粒子(CsA−NP)群は、非投与群に対して有意に梗塞面積を縮小させた。また、シクロフィリンDノックアウトマウスでは、シクロスポリン封入粒子を投与しなくても野生型の非投与群よりも有意に梗塞面積が縮小しており、さらに、シクロスポリン封入粒子を投与しても梗塞面積のさらなる縮小は見られなかった。なお、AARの面積/左室心筋全体の面積は、4群で同等であるのを確認した(図7B)。このことから、シクロスポリン封入粒子の心保護作用は、シクロフィリンDに依存する、すなわち、mPTPの阻害によることが示唆された。
左室の機能と拡張(リモデリング)を調べるために心筋虚血再灌流モデルマウスにおいて、虚血前及び再灌流から1、2、4週間後に経胸壁2次元心エコー検査を行った。マウスは、再灌流と同時に生理食塩水、シクロスポリン(1mg/kg、10mg/kg)及びシクロスポリン封入粒子(1mg/kg)を静脈に注射した群で構成した(n=10)。心エコー検査には、イソフラン(1〜1.5%)の吸入麻酔下のマウスに対して40mHzのプローブ(VisualSonics社製)を用いた。マウスの心拍数は、約500bpmに維持した。左室拡張末期径(LVEDD)が最大となるレベルにおける短軸像において、Mモード検査を胸骨傍で行った、LVEDD及び左室収縮末期径(LVESD)を決定し、%短縮率(Fractional shortening:FS)と駆出率(Ejection Fraction:EF)とを算出した。FSは、数式{(LVEDD−LVESD)/LVEDD}×100を用いて算出した。EFは、数式{(LVEDV−LVESV)/LVEDV}×100を用いて算出した。なお、LVEDVは左室拡張末期容積で、LVESVは左室収縮末期容量である。
表2は、心エコー検査の結果を示す。1mg/kgのシクロスポリンの投与群では、生理食塩水投与群と同様に、左室の機能不全及びリモデリングが観察された。一方、10mg/kgのシクロスポリン又は1mg/kgのシクロスポリン封入粒子を投与した群では、左室の機能不全及びリモデリングが抑制された。
シクロスポリンは、タンパク質ホスファターゼの一種であるカルシニューリンをT細胞において阻害するため、免疫抑制剤として広く使用されている。一方、シクロスポリンは、心筋細胞でカルシニューリンパスウェイを阻害することによって、AMI後の左室機能障害を引き起こしうることが動物実験で示されている(Oie E et al.Cyclosporin A inhibits cardiac hypertrophy and enhances cardiac dysfunction during postinfarction failure in rats,Am J Physiol Heart Circ Physiol,2000,278,H2115−2123)。
表3は、各群のカルシニューリン活性を示す。シクロスポリン封入粒子の単回、静脈投与では、カルシニューリン活性に影響はなかった。また、シクロスポリン封入粒子を投与しても全身性の有害事象は現れなかった。
上記実施例2に従ってイルベサルタン封入粒子(3.0mg/kg)、FITC封入粒子、FITC又は何も封入していないPLGA粒子を投与したマウスを再灌流6時間後又は12時間後に安楽死させた(各群n=3)。心臓、血液及び脾臓における白血球(単球/マクロファージ、好中球及びリンパ球)をフローサイトメトリーで解析した。単球/マクロファージは、CD11bhi(CD90/B220/CD49b/NK1.1/Ly‐6G)loLy‐6Chi/lo、好中球は、CD11bhi(CD90/B220/CD49b/NK1.1/Ly‐6G)hiLy‐6Cint、リンパ球は、CD11blo(CD90/B220/CD49b/NK1.1/Ly‐6G)hiと定義した。測定にはFACSCalibur(BD Bioscience社製)を使用し、解析はCell Quest software(BD Bioscience社製)で行った。
図9は、再灌流6時間後の心臓、血液及び脾臓における白血球に対するフローサイトメトリー解析で検出したFITCシグナルを示す。貪食機能を持つ単球/マクロファージ、好中球では、FITC投与群と比較して、FITC封入粒子投与群で強いFITCシグナルを認めた。特に、単球/マクロファージにおいて、FITCシグナルの増加を認めた。
図10は、フローサイトメトリーによる再灌流12時間後の心臓における単球/マクロファージ及び炎症マーカーに対するイルベサルタン封入粒子の影響を示す。対照群には、何も封入していないPLGA粒子を投与した。イルベサルタン(Irb)封入粒子投与群は、PLGA粒子投与群と比較して、虚血心臓での単球/マクロファージ数が低下した。また、Irb封入粒子投与群では、炎症マーカーであるLy6C陽性細胞が減少した。以上の結果から、イルベサルタン封入粒子は、虚血心臓への単球/マクロファージ及び炎症細胞の浸潤を抑制することが示唆された。
上記実施例2と同様に、心筋の虚血を確認後、結紮から25分経過後に被験物質を静脈に注射した。静脈に注射した被験物質は、生理食塩水、FITC封入粒子、イルベサルタン(10.0mg/kg)、イルベサルタン封入粒子(3.0mg/kg)、ピオグリタゾン封入粒子(0.1mg/kg)とした。そして、結紮から30分経過した時点で、シリコンチューブを除去し、再灌流を行い、5‐0シルクにて閉胸後、自発呼吸を確認して抜管した。次に、心臓切片の梗塞面積、AARの面積及び左室心筋全体の面積を計測し、梗塞面積/AARの面積とAARの面積/左室心筋全体の面積とを算出した。
図11Aに算出した梗塞面積/AARの面積を示す。生理食塩水投与群と比較して、FITC封入粒子投与群、イルベサルタン(Irb)投与群では梗塞面積の縮小作用は見られなかった。一方、イルベサルタン(Irb)封入粒子投与群及びピオグリタゾン(Pio)封入粒子投与群では、梗塞面積が有意に縮小した(P<0.05)。また、AARの面積/左室心筋全体の面積に関しては、5群間で同等であった(図11B参照)。
イルベサルタン封入粒子による虚血心筋でのPPARγ活性を確認するために、再灌流6時間後における虚血心筋のPPARγ活性を測定した。再灌流前の左前下行枝の結紮前にイルベサルタン封入粒子(3.0mg/kg)を静脈内投与する点を除いては、上記実施例2と同様の実験を行った。対照として生理食塩水を用いた。
心臓組織は、虚血領域と非虚血領域に分けNE‐PER Nucler and Cytoplasmic Extraction Reagent Kit(Thermo社製)を使用して、各々の領域の細胞質タンパク質と核タンパク質とを抽出した。抽出したタンパク質は、BCA Protein assay kit(PIERC社製)を使用して定量した。総タンパク質量として同等量の核タンパク質に対してTransAM(商標)PPARγ Transcription Factor Assay Kits(Active Motif社製)を使用してPPARγ活性を測定した。
図12は、虚血心筋でのPPARγ活性を示す。Irb封入粒子投与群は、有意にPPARγ活性を亢進させた。このことから、イルベサルタン封入粒子の梗塞面積の縮小作用は、虚血心筋におけるPPARγの活性化によることが示された。
虚血障害が発生した心筋におけるFITC封入粒子の分布を評価した。マウス(C57BL/6J、8週齢、雄)にイソフルラン(エア・ウォーター社製)吸入麻酔下、人工呼吸器管理を行った(1回の換気量:0.5mL、呼吸数140回/分)。手技中は、加温パッドを用いてマウスを保温し、直腸温を36.8℃から37.2℃に維持した。第3−4肋間の高さで水平に切開し、心膜を開き、左心耳の下縁で左前下行枝を結紮した。結紮直後にFITC封入粒子又はFITC(10%DMSO)の溶液を虚血部に筋肉内注射した。閉胸後、自発呼吸を確認し抜管した。なお、FITC封入粒子は、生理食塩水で調製した3%溶液を40μl(1.2mg/mlのFITCに相当)又は3.75mg/mlの溶液を20μl(0.15mg/mlのFITCの相当)注射した。FITCは、0.15mg/mlの溶液を20μl注射した。なお、shamには、結紮を除く処置を行い、FITC封入粒子を投与した。注射から3時間後又は24時間後にマウスから心筋組織を採取し、実施例2と同様に、凍結病理標本を作製した。
図13の上段は、注射から3時間後の虚血させた心臓の光学画像及び蛍光画像を示す。蛍光画像において、光学画像で確認される梗塞部位(白色部位)に対応する部位にFITCの蛍光が観察できる。一方、図13の下段は、注射から3時間後のshamの心臓の光学画像及び蛍光画像を示す。光学画像で梗塞部位はなく、蛍光画像においてFITC蛍光は、ほとんど認められない。この結果から、PLGAの粒子が虚血に起因する梗塞領域に選択的に輸送されることが明らかになった。
Claims (9)
- ミトコンドリア膜透過性遷移孔開口抑制剤、アンジオテンシンIIタイプ1受容体拮抗剤、PPARγ作動剤及び造影剤からなる群より選ばれる1種以上の物質と、
前記物質を内部に封入する生体適合性粒子と、
を含む、虚血に起因する障害の治療、予防又は診断に使用するための医薬組成物。 - 前記虚血に起因する障害は、
虚血再灌流障害である、
ことを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。 - 前記生体適合性粒子は、
個数平均粒子径が2.5〜1000nmのポリラクチドグリコライド共重合体又はそのポリエチレングリコール修飾体を含む、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の医薬組成物。 - 前記ミトコンドリア膜透過性遷移孔開口抑制剤は、
シクロスポリンである、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の医薬組成物。 - 前記PPARγ作動剤及びアンジオテンシンIIタイプ1受容体拮抗剤は、
イルベサルタンである、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の医薬組成物。 - 前記PPARγ作動剤は、
ピオグリタゾンである、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の医薬組成物。 - 前記虚血に起因する障害は、
虚血状態になった臓器における障害である、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の医薬組成物。 - 前記臓器の梗塞の大きさを小さくする、
ことを特徴とする請求項7に記載の医薬組成物。 - 前記物質は、
シクロスポリンであって、
前記虚血に起因する障害は、
左室リモデリングである、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
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