JP2014195439A - 培養器、培養装置及び培養方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】スケールアップをしても十分効率的に細胞を掻き取ることが可能な培養器及びこれを備えた培養装置、並びに、培養方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る培養器は、細胞を培養するための培地を収容するための容器と、容器内に収容されており、容器の底面上の付着物を掻き取るための、2本以上のブレードあるいは途中に切り欠きを有する1本のブレードと、ブレードを支持する1本又は2本以上のスクレーパと、スクレーパに設けられた第1の磁力発生体とを備える。
【選択図】図3
【解決手段】本発明に係る培養器は、細胞を培養するための培地を収容するための容器と、容器内に収容されており、容器の底面上の付着物を掻き取るための、2本以上のブレードあるいは途中に切り欠きを有する1本のブレードと、ブレードを支持する1本又は2本以上のスクレーパと、スクレーパに設けられた第1の磁力発生体とを備える。
【選択図】図3
Description
本発明は、細胞を培養するための培養器及びこれを備えた培養装置、並びに、培養方法に関する。
シャーレ等の容器で細胞を培養し、培養後、容器の底面上に付着した細胞を物理的又は化学的に剥離させて回収する培養方法が広く用いられている。例えば、培養した細胞を体内に戻すことを前提とする再生医療などの分野にあっては、薬品で細胞を剥離する化学的な方法よりも、スクレーパで細胞を掻き取る物理的な方法の方が適している。
特許文献1は細胞を物理的手法で剥離するのに使用する装置を開示する。当該装置は、容器内に挿入されるブレードと、ブレードを容器の底面に押し当てるホルダと、ホルダと共にブレードを回転させる回転手段とを備え、ブレードを容器内に挿入して回転させることにより、底面上の細胞を掻き取る。
ところで、樹状細胞、間葉系幹細胞及び繊維芽細胞などの付着性細胞を培養するにあたっては、培養後の掻き取り作業を効率的に実施するため、また培養器底面に細胞を均一に付着させるため、底面がなるべく平滑な培養器を使用することが望ましい。他方、底面の面積がなるべく大きい培養器を使用し、一つの培養器で十分量の細胞を培養したいという要求もある。しかし、培養器のサイズが大きくなるに従って底面の優れた平面度を確保することが困難となる傾向にある。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、スケールアップをしても十分効率的に細胞を掻き取ることが可能な培養器及びこれを備えた培養装置、並びに、培養方法を提供することを目的とする。
本発明に係る培養器は、細胞を培養するための培地を収容するための容器と、容器内に収容されており、容器の底面上の付着物を掻き取るための2本以上のブレードあるいは途中に切り欠きを有する1本のブレードと、ブレードを支持する1本又は2本以上のスクレーパと、スクレーパに設けられた第1の磁力発生体とを備える。なお、本発明において、細胞の培養とは、微生物を培養することも含む。
上記培養器によれば、2本以上のブレードあるいは途中に切り欠きを有する1本のブレードを採用したことで、ブレードが容器底面の微細な凹凸及び撓みにより確実に追従でき、効率的に底面上の付着細胞を掻き取ることができる。ブレードの材質としてはある程度の弾性を有し、細胞毒性やその他安全性が担保できれば特に制限はない。具体例として、フッ素ゴム、ブチルゴム、イソブレンゴム、ブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、熱可塑性エラストマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、シリコーンゴムが挙げられ、弾性と滑り性からシリコーンゴムが最も好ましい。
磁力を利用して上記ブレードを遠隔操作するため、容器は以下の構成としてもよい。すなわち、上記容器は、略円形の底面と、スクレーパが有する回転軸孔に挿入するための回転軸とを有し、スクレーパは回転軸が挿入される回転軸孔と、回転軸孔から径方向に延びており1本又は2本以上のブレードを支持する支持部とを有し、支持部に第1の磁力発生体が配置されていてもよい。かかる構成を採用することにより、スクレーパの回転によって底面上の細胞を掻き取ることが可能となる。なお、ここでいう「磁力発生体」とは、磁場の発生源である磁石(永久磁石及び電磁石)に加え、磁場の発生源ではないものの磁石との間に引力が生じる部材(鉄板、コバルト板及びニッケル板など)をも包含する概念である。
上記培養器は、2本のスクレーパを備えてもよい。この場合、一方のスクレーパは、回転軸が挿入される回転軸孔と、回転軸孔から径方向に延びており第1のブレードを支持する支持部とを有し、他方のスクレーパは、回転軸が挿入される回転軸孔と、回転軸孔から径方向に延びており第2のブレードを支持する支持部とを有する。第1の磁力発生体は2つの磁力発生体からなり、第1のブレードを支持する支持部に一方の磁力発生体が配置され、第2のブレードを支持する支持部に他方の磁力発生体が配置されることが好ましい。
上記培養器は、1本のスクレーパを備えてもよい。この場合、スクレーパは、回転軸が挿入される回転軸孔と、回転軸孔から径方向に延びており第1のブレードを支持する第1の支持部と、回転軸孔から径方向であり且つ第1の支持部と反対方向に延びており第2のブレードを支持する第2の支持部とを有し、第1の磁力発生体は一対の磁力発生体からなり、第1の支持部に一方の磁力発生体が配置され、第2の支持部に他方の磁力発生体が配置されることが好ましい。
第1のブレードは回転軸孔の近傍から容器の半径r1の位置まで延びており、第2のブレードは容器の半径r2の位置から先端側まで延びており、半径r1と半径r2は式(1)の条件を満たすことが好ましい。
r1≧r2 ・・・(1)
r1≧r2 ・・・(1)
上記培養器は、ブレードが容器の底面から離隔するように容器内においてスクレーパを浮上させるための浮上機構を更に備えてもよい。かかる構成により、細胞の培養時、培地表面よりも高い位置にスクレーパを浮上させることで、スクレーパに細胞が付着することを防止でき、またブレードから化学物質が培地に溶出することを防止できる。
浮上機構は磁力によってスクレーパを浮上させるものとすることができる。スクレーパに配置された第1の磁力発生体は、スクレーパの遠隔操作のみならず、スクレーパを磁力で浮上させるのにも利用できる。例えば、スクレーパが第1の磁力発生体を有し、この第1の磁力発生体が容器の外側に配置される第2の磁力発生体と共に浮上機構を構成してもよい。あるいは、浮上機構が容器の外側に配置された第2の磁力発生体を更に有し、第1及び第2の磁力発生体の間の磁力によってスクレーパが浮上する構成であってもよい。
容器の底面の直径は30〜400mmとすることができる。容器の底面の平面度は好ましくは40〜800μmである。なお、ここでいう平面度はCNC三次元測定機 株式会社ミツトヨ製 FalcioApex910による測定に基づいて得られる値である。すなわち、容器中心から約10mm間毎の同心円上の等間隔各8点を測定し、容器の底面の最も高い所と最も低い所を通る二つの平行な平面を想定し、これらの平面間の距離を平面度とする。
本発明の培養器は閉鎖系において細胞を培養するために使用してもよい。この場合、培養器は、容器の上部開口を塞ぐように配置される蓋材を更に備えてもよい。また、容器は、液体ポートと、通気ポートとを側壁に有することが好ましい。
本発明は上記培養器を備える培養装置を提供する。すなわち、本発明の培養装置は、上記培養器と、培養器の底面上の付着物(細胞、細胞シート、培養中の分泌物等)を掻き取れるようにブレードが底面に接した状態でスクレーパを移動させる駆動ユニットとを備える。上述のとおり、スクレーパは容器の底面上の付着物を掻き取るための2本以上又は途中に切り欠きを有する1本のブレード、及び、第1の磁力発生体を有する。駆動ユニットは、培養器の上方、側方又は下方に配置され且つ当該培養器の底面に沿う方向に移動可能な第3の磁力発生体を有し、スクレーパは第1及び第3の磁力発生体の間の磁力によってブレードが底面に接した状態で移動する。
上記培養装置によれば、2本以上のブレードあるいは途中に切り欠きを有する1本のブレードを採用したことで、容器底面に微細な凹凸及び撓みがあっても、ブレードが十分確実に追従でき、効率的に底面上の付着細胞を掻き取ることができる。駆動ユニットは、容器の外側から磁力によってスクレーパを操作することを可能にするため、閉鎖系で培養するのに有用である。
培養器の容器が上記のように略円形の底面と回転軸とを有する場合、本発明の培養装置は以下の構成とすることができる。すなわち、本発明の培養装置は、当該培養器と、培養器の底面上の付着物を掻き取れるようにブレードが底面に接した状態でスクレーパを移動させる駆動ユニットとを備える。駆動ユニットは、培養器の上方、側方又は下方に配置され且つ回転軸に対応する位置を中心として当該培養器の底面に沿って円運動する第4の磁力発生体を有し、スクレーパは第1及び第4の磁力発生体の間の磁力によってブレードが底面に接した状態で回転する。かかる構成を採用することにより、スクレーパの回転によって底面上の付着物を掻き取ることが可能となる。
本発明は細胞の培養方法を提供する。本発明の培養方法は、(A)容器内にスクレーパを有する培養器に細胞又は培地を供給する工程と、(B)容器内において細胞を培養する工程と、(C)培養終了後、容器の底面上の付着物をスクレーパが有するブレードで掻き取る工程と、(D)培養した細胞を容器から排出する工程とを備える。上記スクレーパは、2本以上又は途中に切り欠きを有する1本のブレード、及び、第1の磁力発生体を有する。(C)工程において、培養器の上方、側方又は下方に配置した第3の磁力発生体を培養器の底面に沿う方向に移動させることによって、第1及び第3の磁力発生体の間の磁力を駆動力としてスクレーパを移動させると共にブレードで底面上の付着物を掻き取る。
上記培養方法によれば、2本以上のブレードあるいは途中に切り欠きを有する1本のブレードを採用したことで、容器底面に微細な凹凸及び撓みがあっても、ブレードが十分確実に底面に追従でき、効率的に底面上の付着細胞を掻き取ることができる。培養器の容器が上記のように略円形の底面と回転軸とを有する場合、上記(C)工程は以下のように実施してもよい。すなわち、(C)工程において、培養器の上方、側方又は下方に配置した第4の磁力発生体を回転軸に対応する位置を中心として培養器の底面に沿って円運動させることによって、第1及び第4の磁力発生体の間の磁力を駆動力としてスクレーパを回転させると共にブレードで底面上の付着物を掻き取る。
(B)工程におけるスクレーパの影響を低減する観点から、第1の磁力発生体と、培養器の外側に配置した第2の磁力発生体との間の磁力によって、容器内において培地よりも高い位置にスクレーパを浮上させた状態で(B)工程を実施することが好ましい。更に、容器内において培地よりも高い位置にスクレーパを浮上させた状態で(A)工程を実施してもよく、この状態で(D)工程を実施してもよい。
本発明の培養方法は閉鎖系において実施してもよい。この場合、少なくとも(A)工程の開始から(D)工程の終了まで、蓋材が容器の上部開口を覆った状態とすることが好ましい。
本発明によれば、スケールアップをしても十分効率的に細胞を掻き取ることが可能な培養器及びこれを備えた培養装置、並びに、培養方法が提供される。
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
<培養装置>
図1に示す培養装置1は、培養器内で細胞を培養し、その後、培養器の底面上の付着性細胞を遠隔操作で掻き取ることができる装置である。培養装置1は、培養器2と駆動ユニット3とを備える。培養対象の細胞としては、付着性細胞(樹状細胞、間葉系幹細胞及び繊維芽細胞、ミクログリア細胞、骨芽細胞、心筋細胞、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞など)が挙げられる。例えば、白血球中の単球を培養することによって樹状細胞に分化させることができる。
図1に示す培養装置1は、培養器内で細胞を培養し、その後、培養器の底面上の付着性細胞を遠隔操作で掻き取ることができる装置である。培養装置1は、培養器2と駆動ユニット3とを備える。培養対象の細胞としては、付着性細胞(樹状細胞、間葉系幹細胞及び繊維芽細胞、ミクログリア細胞、骨芽細胞、心筋細胞、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞など)が挙げられる。例えば、白血球中の単球を培養することによって樹状細胞に分化させることができる。
培養器2は、容器4と、スクレーパ5と、浮力発生ユニット(浮上機構)6とを有する。容器4は、細胞を培養する培地を収容する。スクレーパ5は、培地と共に容器4内に収容されており、細胞の培養後に容器4内で回転して容器4の底面41aを掻く。浮力発生ユニット6は、容器4の上部に配置され、スクレーパ5を底面41aから離間させる。駆動ユニット3は、容器4外に配置され、細胞の培養後にスクレーパ5を回転させる。
(容器)
容器4は、例えば透明な樹脂材料により構成されており、図2及び図3に示すように、円形の底板41と、底板41の周縁に沿って設けられた側壁42とを有する。底板41の内面41a(底面41a)の中心には、スクレーパ5を取り付けるための凸部43が形成されている。容器4の上部は、蓋材としての透明なフィルム(不図示)により塞がれている。フィルムの周縁部は、例えば溶着により、側壁42の上端部に接合されている。これにより、容器4内に閉鎖空間S1が構成されている。
容器4は、例えば透明な樹脂材料により構成されており、図2及び図3に示すように、円形の底板41と、底板41の周縁に沿って設けられた側壁42とを有する。底板41の内面41a(底面41a)の中心には、スクレーパ5を取り付けるための凸部43が形成されている。容器4の上部は、蓋材としての透明なフィルム(不図示)により塞がれている。フィルムの周縁部は、例えば溶着により、側壁42の上端部に接合されている。これにより、容器4内に閉鎖空間S1が構成されている。
容器4の底面41aは略円形である。底面41aの直径は好ましくは30〜400mmであり、より好ましくは100〜3000mmであり、更に好ましくは150〜250mmである。直径が30mm以上であれば一つの容器4内で十分量の細胞を培養することができ、他方、400mm以下であれば樹脂材料を使用し射出成型等によって十分に高い平面度の容器を作製できる。容器4の底面41aの平面度は、好ましくは40〜800μmであり、より好ましくは40〜500μmであり、更に好ましくは40〜150mである。平面度が40μm以上の容器であれば樹脂材料を使用してもこの条件を満たす容器を作製でき、他方、800μm以下であれば播種ムラが生じにくい。
側壁42は、送液ポート44及び通気ポート45を有する。送液ポート44は、培地及び細胞を流入又は流出させるためのポートであり、閉鎖空間S1に連通している。送液ポート44は、側壁42に一体的に形成されており、底板41の近傍から斜め上方に突出した筒形状を呈している。送液ポート44には、送液用のチューブ(不図示)が着脱自在に接続される。通気ポート45は、培地及び細胞の流入及び流出に伴って閉鎖空間S1内の気体を流入又は流出させるためのポートであり、異物の混入防止用のフィルタ(不図示)を介して閉鎖空間S1に連通している。通気ポート45は、側壁42に一体的に形成されており、側壁42における底板41よりも上方の位置から側方に突出した筒形状を呈している。通気ポート45の位置は、側壁42の周方向において送液ポート44の位置と異なっている。通気ポート45の基端部の位置は、送液ポート44の基端部の位置に比べ高い。このような配置により、通気ポート45からの培地及び細胞の漏出が防止される。
(スクレーパ)
図3及び図4に示すように、閉鎖空間S1内に収容されたスクレーパ5は、棒状の従動回転体51と、2個のブレード52と、2個の永久磁石(第1の磁力発生体)53とを有する。2個の永久磁石53は、浮力発生ユニット6と共にスクレーパ5の浮上機構を構成する。
図3及び図4に示すように、閉鎖空間S1内に収容されたスクレーパ5は、棒状の従動回転体51と、2個のブレード52と、2個の永久磁石(第1の磁力発生体)53とを有する。2個の永久磁石53は、浮力発生ユニット6と共にスクレーパ5の浮上機構を構成する。
従動回転体51は、例えば容器4の材料と同じ樹脂材料により構成されており、円筒部54と、円筒部54の周面から互いに逆側に延出した2本の従動アーム(支持部)55,56とを有する。
円筒部54は、底面41aに対して直立し、凸部43を囲んでいる。円筒部54の孔(回転軸孔)には、上方からピン(回転軸)21が挿通されており、ピン21の下端部は凸部43に装着されている。ピン21の上端部にはフランジ部21aが形成されている。フランジ部21aは円筒部54の上昇を規制する。従動回転体51は、ピン21により底板41に取り付けられ、底面41aに直交する軸線CL1を中心に回転自在となっている。なお、容器4を覆う蓋材の材質によっては、蓋材にピン21を設けてもよい。
また、従動回転体51は、ピン21をガイドとして浮上可能となっており、その浮上高さはフランジ部21aにより制限されている。なお、フランジ部21aの下には、回転規制用の凸部21bが形成されており、円筒部54の上端部には、凸部21bと嵌合可能な凹部54aが形成されている。このため、従動回転体51は、上限まで上昇したときに、凸部21bと凹部54aの嵌合により回転不能となる。
従動アーム55,56の長さは互いに異なっており、従動アーム55は従動アーム56と比べて短い。従動アーム55の先端部は円筒部54と側壁42の間に位置し、従動アーム55の先端部は側壁42の近傍に位置している。なお、二本の従動アーム55,56のなす角度は、必ずしも180°でなくてもよいが、160°〜200°の範囲であることが好ましい。この角度が160°〜200°であれば、回転軸を挟んで互いに異なる側に配置された永久磁石53の磁力を利用して、スクレーパ5をバランスよく浮上又は降下させることができる。
2個のブレード52は、従動アーム55,56の下にそれぞれ着脱自在に取り付けられている。ブレード52は、例えばシリコーンゴム等の弾性材料により構成されており、従動アーム55,56の延出方向に沿って延在すると共に、従動アーム55,56から下方に張り出している。ブレード52の下端縁には、薄肉の刃先部52aが形成されている(図6参照)。刃先部52aは底面41aに接触し、従動回転体51の回転に伴って底面41aを掻く。また、刃先部52aは、従動回転体51の浮上に伴って底面41aから離間する。
短い方の従動アーム55に取り付けられたブレード52は、底面41aの中心寄りに位置し、円筒部54の近傍から底面41aの半径r1の位置まで延びている。長い方の従動アーム56に取り付けられたブレード52は、底面41aの外寄りに位置し、底面41aの半径r2の位置から先端側まで延びている。ここで、半径r1と半径r2は式(1)の条件を満たす。
r1≧r2 ・・・(1)
r1≧r2 ・・・(1)
上記式(1)は、従動アーム55のブレード52が掻く範囲と、従動アーム56のブレード52が掻く範囲との一部が重複することを意味する。これにより、スクレーパ5を一回転させるだけで底面41aを隙間少なく掻くことができる。
2個の永久磁石53は、従動アーム55,56の上にそれぞれ配置されている。永久磁石53は、回転軸線CL1から離間し、ブレード52の上に位置している。永久磁石53は、従動アーム55,56の突出方向に沿って延伸した直方体である。すなわち、永久磁石53は、平面視で一方向に延伸した矩形(長方形)を呈する。永久磁石53のN極53NとS極53Sは、従動アーム55,56の幅方向に並んでいる(図6参照)。永久磁石53は、従動アーム55,56の上にそれぞれ形成された磁石収容部57に収容されており、磁石収容部57は蓋部材58により密封されている。
(浮力発生ユニット)
図2に示すように、浮力発生ユニット6は、プレート61と、プレート61を容器4の上に保持する冠状部材62とを有する。プレート61は、一方向に延伸した薄板形状を呈し、容器4の径方向に沿って水平に配置される。プレート61は、その長手方向に並ぶ2個の鉄板(第2の磁力発生体)63を有している。2個の鉄板63は、2個の永久磁石53をそれぞれ引き寄せ、スクレーパ5に浮力を発生させる。なお、上述のとおり、鉄板63も、永久磁石53と協働して磁力を発生するので磁力発生体に相当する。
図2に示すように、浮力発生ユニット6は、プレート61と、プレート61を容器4の上に保持する冠状部材62とを有する。プレート61は、一方向に延伸した薄板形状を呈し、容器4の径方向に沿って水平に配置される。プレート61は、その長手方向に並ぶ2個の鉄板(第2の磁力発生体)63を有している。2個の鉄板63は、2個の永久磁石53をそれぞれ引き寄せ、スクレーパ5に浮力を発生させる。なお、上述のとおり、鉄板63も、永久磁石53と協働して磁力を発生するので磁力発生体に相当する。
冠状部材固定部材62は、側壁42の上端部に装着される環状フレーム64と、容器4の径方向に沿うように環状フレーム64に架け渡されたプレートガイド65とを有する。プレートガイド65は、送液ポート44及び通気ポート45の位置を通らないように延在している。プレートガイド65の両端部は開口しており、プレート61の出し入れが可能となっている。
プレート61及びプレートガイド65は、容器4の上方に配置されており、スクレーパ5の永久磁石53とプレート61の鉄板63との間の引力によってスクレーパ5を浮上させる。プレートガイド65からプレート61を取り出した状態では、スクレーパ5に浮力が発生しないので、図4に示すようにブレード52は底面41aに接触する。一方、プレートガイド65にプレート61が挿入され且つスクレーパ5がプレート61に沿っている状態では、スクレーパ5に浮力が発生するので、図5に示すようにスクレーパ5が浮上してブレード52が底面41aから離間する。このとき、ピン21の凸部21bと円筒部54の凹部54aとが嵌合し、スクレーパ5が回転不能となる。なお、図4,5において、プレートガイド65の図示は省略した。
鉄板63及び永久磁石53の対はピン21を挟む2箇所に配置されるので、スクレーパ5の浮力はピン21を挟む2箇所で発生する。このため、スクレーパ5をよりしっかりと浮上状態に保つことができる。
プレートガイド65は、送液ポート44及び通気ポート45を通らないように延在しているので、プレート61及びスクレーパ5は、送液ポート44及び通気ポート45を通らない状態で保持される。このため、送液ポート44を介した送液又は通気ポート45を介した通気がスクレーパ5により妨げられることがない。送液又は送気が妨げられる状態とは、例えば、従動アーム55の端部により送液ポート44又は通気ポート45の一部が閉塞される状態である。
(駆動ユニット)
図1に示すように、駆動ユニット3は、天板31と、動力源32と、駆動回転体33と、2箇所の引力発生部(第3又は第4の磁力発生体)34とを有する。天板31は容器4を水平に支持する。以下では、天板31に支持された容器4を基準にして動力源32、駆動回転体33及び引力発生部34の配置を説明する。
図1に示すように、駆動ユニット3は、天板31と、動力源32と、駆動回転体33と、2箇所の引力発生部(第3又は第4の磁力発生体)34とを有する。天板31は容器4を水平に支持する。以下では、天板31に支持された容器4を基準にして動力源32、駆動回転体33及び引力発生部34の配置を説明する。
動力源32は天板31下方に設けられ、容器4の下方に位置する。動力源32は上方に突出した回転軸32aを有し、回転軸32aを回転させるモータ及び減速器(不図示)等を内蔵している。回転軸32aの中心軸線CL2はスクレーパ5の回転軸線CL1に一致する。
駆動回転体33は、回転軸32aの上端部に固定されており、回転軸32aの周面から互いに逆側に延出した2本の駆動アーム35,36を有する。駆動アーム35の長さは従動アーム55の長さに対応し、駆動アーム36の長さは従動アーム56の長さに対応している。
2箇所の引力発生部34は、駆動アーム35,36の上にそれぞれ設けられている。駆動アーム35,36が従動アーム55,56の下方にそれぞれ位置するときに、引力発生部34は、従動アーム55,56の永久磁石53の下方に位置する。
図6に示すように、引力発生部34は、矩形の鉄板37と、磁力発生体である永久磁石38,39とを有する。鉄板37は、駆動アーム35,36上に水平に固定されており、永久磁石38,39は鉄板37上に固定されている。永久磁石38,39は、一方向に延伸した直方体であり、その延伸方向が鉄板37の平行な2辺にそれぞれ沿うように配置されている。このため、永久磁石38,39は、平面視で長方形を呈する。
引力発生部34は、従動回転体51の回転に伴う永久磁石53の移動方向で永久磁石38,39が永久磁石53挟むように配置されている。永久磁石53のN極53N側に配置される永久磁石38は、S極38Sが上、N極38Nが下となるように配置されている。すなわち、永久磁石38の極は、永久磁石53の極のうち永久磁石38側の極を引き寄せるように上下に並んでいる。永久磁石53のS極53S側に配置された永久磁石39は、N極39Nが上、S極39Sが下となるように配置されている。すなわち、永久磁石39の極は、永久磁石53の極のうち永久磁石39側の極を引き寄せるように上下に並んでいる。永久磁石53と引き合うように配置されている。
3個の永久磁石53,38,39がこのように配置されることで、これらの磁石を繋ぐ磁力線のループMLが形成され、引力発生部34と永久磁石53の間に強い引力が生じる。鉄板37は、永久磁石38,39を結ぶ磁力線の経路として機能し、引力の強化に寄与している。
図1に示す駆動回転体33は、引力発生部34が永久磁石53の下に位置する状態で動力源32により回転させられる。これに先立って、プレート61はプレートガイド65から取り出され、スクレーパ5が下降してブレード52が底面41aに接触する。駆動回転体33が回転すると、引力発生部34及び永久磁石53を介して従動回転体51に動力が伝わる。この動力により、スクレーパ5が回転する。すなわち、動力源32は、駆動回転体33を回転させると共に、引力発生部34及び永久磁石53を介して伝わる動力によりスクレーパ5を回転させる。
引力発生部34及び永久磁石53の対はピン21を挟む2箇所に配置されるので、従動回転体51にはピン21の軸線CL1を中心とする偶力が発生する。この偶力を発生させることにより、軸線CL1を中心として従動回転体51をより円滑に回転させることができる。
<培養方法>
培養装置1を用いた培養方法について説明する。まず、培養器2を準備する。このとき、図5に示すようにスクレーパ5が浮上した状態、すなわち、プレートガイド65にプレート61を入れた状態としておくことが好ましい。
培養装置1を用いた培養方法について説明する。まず、培養器2を準備する。このとき、図5に示すようにスクレーパ5が浮上した状態、すなわち、プレートガイド65にプレート61を入れた状態としておくことが好ましい。
(播種工程)
次に、送液ポート44に送液チューブを接続し、送液ポート44を介して培養溶液を容器4内に注入する((A)工程)。培養溶液は、液状の培地に細胞が分散した混濁液である。細胞の播種は、上記混濁液を容器4内に供給することによって行ってもよいし、予め培地又は細胞を容器4に収容し、その後、容器4内に細胞又は培地を供給することによって行ってもよい。
次に、送液ポート44に送液チューブを接続し、送液ポート44を介して培養溶液を容器4内に注入する((A)工程)。培養溶液は、液状の培地に細胞が分散した混濁液である。細胞の播種は、上記混濁液を容器4内に供給することによって行ってもよいし、予め培地又は細胞を容器4に収容し、その後、容器4内に細胞又は培地を供給することによって行ってもよい。
(培養工程)
培養器2を水平にしてインキュベータに入れ、所定期間放置することで容器4内の細胞を培養する((B)工程)。培養工程において、細胞は底面41aに付着する。浮力発生ユニット6によりスクレーパ5が浮上させられているため、底面41aの全域を細胞の培養に用いることができる。なお、必要に応じ途中で培地の交換を行ってもよい。培地の交換は、送液ポート44を介して行うことができる。
培養器2を水平にしてインキュベータに入れ、所定期間放置することで容器4内の細胞を培養する((B)工程)。培養工程において、細胞は底面41aに付着する。浮力発生ユニット6によりスクレーパ5が浮上させられているため、底面41aの全域を細胞の培養に用いることができる。なお、必要に応じ途中で培地の交換を行ってもよい。培地の交換は、送液ポート44を介して行うことができる。
(スクレープ工程)
培養工程が完了すると、インキュベータから培養器2を取り出し、駆動ユニット3の天板31上に設置する。このとき、駆動回転体33と従動回転体51の位置を揃える。次に、プレートガイド65からプレート61を取り出すことでスクレーパ5を下降させ、ブレード52を底面41aに接触させる。次に駆動回転体33を回転させる。すると、引力発生部34と永久磁石53を介して従動回転体51に動力が伝わってスクレーパ5が回転する。この回転に伴いブレード52が底面41aを掻くことで底面41aから細胞が剥離される。すなわち、培養器2の下方に位置する引力発生部34をピン21に対応する位置を中心として培養器2の底板41に沿って円運動させることによって、磁力を駆動力としてスクレーパ5を回転させると共にブレード52で底面41a上の細胞を掻き取る((C)工程)。
培養工程が完了すると、インキュベータから培養器2を取り出し、駆動ユニット3の天板31上に設置する。このとき、駆動回転体33と従動回転体51の位置を揃える。次に、プレートガイド65からプレート61を取り出すことでスクレーパ5を下降させ、ブレード52を底面41aに接触させる。次に駆動回転体33を回転させる。すると、引力発生部34と永久磁石53を介して従動回転体51に動力が伝わってスクレーパ5が回転する。この回転に伴いブレード52が底面41aを掻くことで底面41aから細胞が剥離される。すなわち、培養器2の下方に位置する引力発生部34をピン21に対応する位置を中心として培養器2の底板41に沿って円運動させることによって、磁力を駆動力としてスクレーパ5を回転させると共にブレード52で底面41a上の細胞を掻き取る((C)工程)。
スクレーパ5は予め容器4内に収容されているので、スクレーパ5を容器4内に挿入する必要がない。また、スクレーパ5を回転させる動力は、引力発生部34及び永久磁石53を介して容器4外から容器4内に伝わる。従って、容器4の閉鎖空間S1を開放することなく細胞を剥離させることができる。
なお、ブレード52は、永久磁石53と引力発生部34に挟まれている。このため、ブレード52には、スクレーパ5の自重に加え引力発生部34と永久磁石53の間の引力が作用する。これにより、ブレード52と底面41aの接触圧力が高くなるため、細胞をより十分に剥離させることができる。
(回収工程)
スクレープ工程が完了すると、剥離した細胞を、培地と共に送液ポート44から回収する((D)工程)。容器4を駆動ユニット3から離脱させると共に、プレートガイド65にプレート61を挿入し、スクレーパ5を浮上させることが好ましい。スクレーパ5を浮上させることにより、スクレーパ5に妨げられることなく培地及び細胞を回収できる。
スクレープ工程が完了すると、剥離した細胞を、培地と共に送液ポート44から回収する((D)工程)。容器4を駆動ユニット3から離脱させると共に、プレートガイド65にプレート61を挿入し、スクレーパ5を浮上させることが好ましい。スクレーパ5を浮上させることにより、スクレーパ5に妨げられることなく培地及び細胞を回収できる。
培養装置1を用いることで、容器4の閉鎖空間S1を開放することなく、すなわち、播種工程の開始から回収工程の終了まで容器4の上部開口を蓋材で覆った状態で、細胞の培養及び回収を実施できる。つまり、本実施形態によれば、細胞の培養及び回収を閉鎖系で行うことができる。
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、容器4の底面41aの形状は略円形に限定されず、他の形状であってもよい。図7に示す容器4Aは略矩形の底面4aを有する。スクレーパ5Aは磁力によって浮上するように構成されている。またスクレーパ5Aが容器4Aの一辺4a側から対向する一辺4b側に移動するように構成されており、2本のブレード52Aによって略矩形の底面4c上の細胞を掻き取ることができる。
ブレードを2本に分けずに、1本の長いブレードを採用した場合、底面の凹凸や撓みに対するブレードの追従性が不十分となりやすい。したがって、使用するブレードの長さを制限して複数のブレードで底面の略全体をカバーできるようにすることで、底面の凹凸や撓みに対する追従性が向上し、より効率的に付着物を掻き取ることができる。ブレードの長さは、培養皿が円形の場合(容器4)、半径の20〜50%であることが好ましく、培養皿が矩形の場合(容器4A)、培養皿の幅の10〜50%であることが好ましい。複数のブレードを使用し、ブレードの長さの合計を、培養皿の半径又は幅よりも長くすることが好ましい。
図8〜図11に容器4に装着可能なスクレーパの他の例を示す。図8に示すように、従動アーム55,56のなす角は90°程度、あるいは、90°以下であってもよい。この角度が90°以内であると、二本の従動アーム55,56間の互いの垂直方向の動きの影響が少なく、容器底面の平面度への対応がしやすい。この角度の下限値は30°程度である。てこの原理により従動アーム56(長いアーム)と従動アーム55(短いアーム)の駆動力を均等に設定しやすい点から、長いアームに配されるブレードは短いアームに配されるブレードよりも短いことが好ましい。なお、ここでは二本の従動アーム55,56が一体的に形成されていて同時に回転することを想定しているが、それぞれ独立して回転できるように構成されていてもよい。
図9に示すように、2本の従動アーム55,56の長さは互いに均等であってもよい。また、従動回転体51は、必ずしも2本の従動アーム55,56を有していなくてもよく、図10に示すように、1本の従動アーム56のみを有していてもよい。図9,10に示す態様の場合、一本のブレード52が円筒部54から側壁42に亘っていてもよいが、長いブレードを採用すると、底面の凹凸や撓みに対する追従性が不十分となる傾向にある。したがって、図9に示すとおり、複数の短いブレードを採用することが好ましい。あるいは、図10に示すとおり、ブレードの途中に切り欠き52aを入れることで上記追従性を向上させてもよい。図11に示すスクレーパ5Bは、幅の広い1本の従動アーム57に三本のブレード52が配置されている。
図3,8〜11に示すとおり、培養皿が円形である場合、効率的な掻き取り作業を実施する観点から、スクレーパが一回転することによってブレードが培養皿の底面積の95%以上の領域をカバーすることが好ましい。他方、図7に示すとおり、培養皿が矩形である場合、同様の観点から、スクレーパが培養皿の一方から他方に移動(片道運動)することによってブレードが培養皿の底面積の95%以上の領域をカバーすることが好ましい。つまり、スクレーパの一回転又は片道運動(スクレーパの単位動作)によって培養皿の底面積の95%以上の領域の付着物をブレードが掻き取ることが好ましい。
上記実施形態においては、プレート61及びプレートガイド65を容器4の上方に配置する場合を例示したが、プレート61及びプレートガイド65を容器4の下方に配置し、スクレーパ5の永久磁石53とプレート61に配置した磁石(第2の磁力発生体)との間の斥力によってスクレーパ5を浮上させてもよい。
引力発生部34は必ずしも2個の永久磁石38,39を有していなくてよく、永久磁石53に対応する一つの永久磁石を有していればよい。一方、スクレーパ5が、永久磁石38,39に対応する2個の永久磁石を従動アーム55,56のそれぞれに有していてもよい。
スクレーパ5と駆動ユニット3の磁力発生体は永久磁石に限られず、浮力発生ユニット6の磁力発生体は鉄板に限られない。プレート61と従動回転体51の間に磁力を発生すると共に、駆動回転体33と従動回転体51の間に磁力を発生する組み合わせであれば、各部にどのような磁力発生体を採用してもよい。例えば、駆動回転体33の磁力発生体を鉄板としてもよい。従動回転体51の磁力発生体を鉄板とし、駆動回転体33及びプレート61の磁力発生体を永久磁石としてもよい。更に、電磁石を磁力発生体として採用することも可能である。
本発明者らは、本発明の効果を確認するため、以下の実施例及び比較例を実施した。
(実施例1)
底面の一辺が230mmである角型容器、及び、長さ230mmのブレードを準備し、図12に示す培養器を作製した。当該容器の底面は表面処理が施されており、その平面度は720μmであった。ブレードの中央に切り欠き(切れ目)を設けた。上記実施形態に係る培養方法によってHela細胞を培養した後、磁力によってスクレーパを1往復させて細胞の剥離率を測定した。その結果、細胞の剥離率は94%であった。細胞の剥離率は、スクレーパ剥離なしの場合の容器に接着している細胞数を基準とし、スクレーパ剥離後の容器に接着している細胞数によって算出される値である。
底面の一辺が230mmである角型容器、及び、長さ230mmのブレードを準備し、図12に示す培養器を作製した。当該容器の底面は表面処理が施されており、その平面度は720μmであった。ブレードの中央に切り欠き(切れ目)を設けた。上記実施形態に係る培養方法によってHela細胞を培養した後、磁力によってスクレーパを1往復させて細胞の剥離率を測定した。その結果、細胞の剥離率は94%であった。細胞の剥離率は、スクレーパ剥離なしの場合の容器に接着している細胞数を基準とし、スクレーパ剥離後の容器に接着している細胞数によって算出される値である。
(比較例1)
ブレードの中央に1箇所切り欠きを設けなかったことの他は、実施例1と同様にして培養及び細胞の剥離作業を行った。その結果、細胞の剥離率は52%であった。
ブレードの中央に1箇所切り欠きを設けなかったことの他は、実施例1と同様にして培養及び細胞の剥離作業を行った。その結果、細胞の剥離率は52%であった。
(実施例2)
図3に示す構成の培養器(底面直径:230mm、ピン(回転軸21)の直径:14mm)を作製した。培養器の底面は表面処理が施されており、その平面度は350μmであった。短いアーム(アーム55)には長さ60mmのブレードを設け、長いアーム(アーム56)にも長さ60mmのブレードを設けた。2つのブレードの軌跡が重なる領域の径方向の長さは12mmとした。上記実施形態に係る培養方法によってHela細胞を培養した後、磁力によってスクレーパを一回転させて細胞の剥離率を測定した。その結果、細胞の剥離率は97%であった。
図3に示す構成の培養器(底面直径:230mm、ピン(回転軸21)の直径:14mm)を作製した。培養器の底面は表面処理が施されており、その平面度は350μmであった。短いアーム(アーム55)には長さ60mmのブレードを設け、長いアーム(アーム56)にも長さ60mmのブレードを設けた。2つのブレードの軌跡が重なる領域の径方向の長さは12mmとした。上記実施形態に係る培養方法によってHela細胞を培養した後、磁力によってスクレーパを一回転させて細胞の剥離率を測定した。その結果、細胞の剥離率は97%であった。
(比較例2)
アーム55(短いアーム)にはブレードを設けず、アーム56(長いアーム)のみに長さ108mmのブレードを設けたことの他は、実施例2と同様にして培養及び細胞の剥離作業を行った。その結果、細胞の剥離率は84%であった。
アーム55(短いアーム)にはブレードを設けず、アーム56(長いアーム)のみに長さ108mmのブレードを設けたことの他は、実施例2と同様にして培養及び細胞の剥離作業を行った。その結果、細胞の剥離率は84%であった。
1…培養装置、2…培養器、3…駆動ユニット、4,4A…容器、5,5A,5B…スクレーパ、6…浮力発生ユニット(浮上機構)、21…ピン(回転軸)、21a…フランジ部、21b…凸部、38,39…永久磁石(第3又は第4の磁力発生体)、41a…容器の底面、42…側壁、44…送液ポート、45…通気ポート、51…従動回転体、52…ブレード、52a…切り欠き、53…永久磁石(第1の磁力発生体)、54…円筒部、54a…凹部、55,56,57…従動アーム(支持部)、61…プレート、63…鉄板(第2の磁力発生体)、65…プレートガイド、S1…閉鎖空間。
Claims (26)
- 細胞を培養するための培地を収容するための容器と、
前記容器内に収容されており前記容器の底面上の付着物を掻き取るための2本以上のブレードあるいは途中に切り欠きを有する1本のブレードと、
前記ブレードを支持する1本又は2本以上のスクレーパと、
前記スクレーパに設けられた第1の磁力発生体と、
を備える、培養器。 - 前記容器は、略円形の底面と、前記スクレーパが有する回転軸孔に挿入するための回転軸とを有し、
前記スクレーパは、前記回転軸が挿入される前記回転軸孔と、前記回転軸孔から径方向に延びており1本又は2本以上の前記ブレードを支持する支持部とを有し、
前記支持部に前記第1の磁力発生体が配置されている、請求項1に記載の培養器。 - 2本の前記スクレーパを備え、
一方のスクレーパは、前記回転軸が挿入される回転軸孔と、前記回転軸孔から径方向に延びており第1のブレードを支持する支持部とを有し、
他方のスクレーパは、前記回転軸が挿入される回転軸孔と、前記回転軸孔から径方向に延びており第2のブレードを支持する支持部とを有し、
前記第1の磁力発生体は2つの磁力発生体からなり、前記第1のブレードを支持する前記支持部に一方の磁力発生体が配置され、前記第2のブレードを支持する前記支持部に他方の磁力発生体が配置されている、請求項2に記載の培養器。 - 1本の前記スクレーパを備え、
当該スクレーパは、前記回転軸が挿入される回転軸孔と、前記回転軸孔から径方向に延びており第1のブレードを支持する第1の支持部と、前記回転軸孔から径方向であり且つ前記第1の支持部と反対方向に延びており第2のブレードを支持する第2の支持部とを有し、
前記第1の磁力発生体は一対の磁力発生体からなり、前記第1の支持部に一方の磁力発生体が配置され、前記第2の支持部に他方の磁力発生体が配置されている、請求項2に記載の培養器。 - 前記第1のブレードは前記回転軸孔の近傍から前記容器の半径r1の位置まで延びており、前記第2のブレードは前記容器の半径r2の位置から先端側まで延びており、
半径r1と半径r2は式(1)の条件を満たす、請求項3又は4に記載の培養器。
r1≧r2 ・・・(1) - 前記容器の底面の直径は30〜400mmである、請求項2〜5のいずれか一項に記載の培養器。
- 前記ブレードが前記容器の底面から離隔するように前記容器内において前記スクレーパを浮上させるための浮上機構を更に備える、請求項1〜6のいずれか一項に記載の培養器。
- 前記浮上機構は磁力によって前記スクレーパを浮上させるものであり、前記第1の磁力発生体は前記容器の外側に配置される第2の磁力発生体と共に前記浮上機構を構成する、請求項7に記載の培養器。
- 前記容器の上部開口を塞ぐように配置される蓋材を更に備える、請求項1〜8のいずれか一項に記載の培養器。
- 前記容器の底面の平面度が40〜800μmである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の培養器。
- 前記ブレードの材質はシリコーンゴムである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の培養器。
- 前記容器は、送液ポートと、通気ポートとを側壁に有する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の培養器。
- 閉鎖系において細胞を培養するために使用される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の培養器。
- 請求項1〜13のいずれか一項に記載の培養器と、
前記培養器の底面上の付着物を掻き取るように前記ブレードが前記底面に接した状態で前記スクレーパを移動させる駆動ユニットと、
を備え、
前記駆動ユニットは、前記培養器の上方、側方又は下方に配置され且つ当該培養器の底面に沿う方向に移動可能な第3の磁力発生体を有し、前記スクレーパは前記第1及び第3の磁力発生体の間の磁力によって前記ブレードが前記底面に接した状態で移動する、培養装置。 - 請求項2〜6のいずか一項に記載の培養器と、
前記培養器の底面上の付着物を掻き取れるように前記底面に前記ブレードが接した状態で前記スクレーパを移動させる駆動ユニットと、
を備え、
前記駆動ユニットは、前記培養器の上方、側方又は下方に配置され且つ前記回転軸に対応する位置を中心として当該培養器の底面に沿って円運動する第4の磁力発生体を有し、前記スクレーパは前記第1及び第4の磁力発生体の間の磁力によって前記ブレードが前記底面に接した状態で回転する、培養装置。 - (A)2本以上のブレードあるいは途中に切り欠きを有する1本のブレードを備えるスクレーパを容器内に収容した培養器に細胞又は培地を供給する工程と、
(B)前記容器内において細胞を培養する工程と、
(C)培養終了後、前記容器の底面上の付着物を前記スクレーパが有するブレードで掻き取る工程と、
(D)培養した細胞を前記容器から排出する工程と、
を備え、
前記スクレーパには第1の磁力発生体が設けられており、
(C)工程において、前記培養器の上方、側方又は下方に配置した第3の磁力発生体を前記培養器の底面に沿う方向に移動させることによって、前記第1及び第3の磁力発生体の間の磁力を駆動力として前記スクレーパを移動させると共に前記ブレードで前記底面上の付着物を掻き取る、培養方法。 - (A)2本以上のブレードあるいは途中に切り欠きを有する1本のブレードを備えるスクレーパを容器内に収容した培養器に培地を供給する工程と、
(B)前記容器内において細胞を培養する工程と、
(C)培養終了後、前記容器の底面上の付着物を前記スクレーパが有するブレードで掻き取る工程と、
(D)培養した細胞を前記容器から排出する工程と、
を備え、
前記容器は、略円形の底面と、前記スクレーパの回転軸孔に挿入するための回転軸とを有し、
前記スクレーパは、前記回転軸が挿入される前記回転軸孔と、前記回転軸孔から径方向に延びており前記ブレードを支持する支持部と、前記支持部に配置された第1の磁力発生体とを有し、
(C)工程において、前記培養器の上方、側方又は下方に配置した第4の磁力発生体を前記回転軸に対応する位置を中心として前記培養器の底面に沿って円運動させることによって、前記第1及び第4の磁力発生体の間の磁力を駆動力として前記スクレーパを回転させると共に前記ブレードで前記底面上の付着物を掻き取る、培養方法。 - 前記容器の底面の直径は30〜400mmである、請求項17に記載の培養方法。
- 前記培養器の底面の平面度が40〜800μmである、請求項17又は18に記載の培養方法。
- 閉鎖系において細胞を培養する、請求項16〜19のいずれか一項に記載の培養方法。
- 少なくとも(A)工程の開始から(D)工程の終了まで、蓋材が前記容器の上部開口を覆っている、請求項16〜20のいずれか一項に記載の培養方法。
- 前記ブレードの材質はシリコーンゴムである、請求項16〜21のいずれか一項に記載の培養方法。
- 前記容器は、送液ポートと、通気ポートとを側壁に有する、請求項16〜22のいずれか一項に記載の培養方法。
- 前記第1の磁力発生体と、前記培養器の外側に配置した第2の磁力発生体との間の磁力によって、前記容器内において前記培地よりも高い位置に前記スクレーパを浮上させた状態で(B)工程を実施する、請求項16〜23のいずれか一項に記載の培養方法。
- 前記容器内において前記培地よりも高い位置に前記スクレーパを浮上させた状態で(A)工程も実施する、請求項24に記載の培養方法。
- 前記容器内において前記培地よりも高い位置に前記スクレーパを浮上させた状態で(D)工程も実施する、請求項24又は25に記載の培養方法。
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CN112239712A (zh) * | 2020-09-18 | 2021-01-19 | 宁波海关技术中心 | 一种供细胞贴壁时使用的刮板器 |
-
2013
- 2013-03-29 JP JP2013073377A patent/JP2014195439A/ja active Pending
Cited By (2)
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CN112239712A (zh) * | 2020-09-18 | 2021-01-19 | 宁波海关技术中心 | 一种供细胞贴壁时使用的刮板器 |
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