図1は、本発明の一の実施の形態に係る画像記録装置1の構成を示す図である。画像記録装置1は、長尺状の印刷用紙やフィルムである記録対象(記録対象は紙には限定されないが、以下、「記録用紙9」と呼ぶ。)上に、インクジェット方式にてカラー印刷を行う装置である。画像記録装置1により、モノクロ印刷が行われてもよい。画像記録装置1では、例えば、複数のページに対応する記録用紙9上の複数の領域に画像が記録される。
図1に示す画像記録装置1は、記録用紙9を図1中の(−Y)方向(以下、「搬送方向」ともいう。)に搬送しつつ記録用紙9上に画像を記録する本体10および本体10に接続されるコンピュータ5を備える。本体10は、インクの微小液滴を記録用紙9に向けて吐出する吐出部2、吐出部2の下方にて図1中の(−Y)方向へと記録用紙9を移動する移動機構3、並びに、吐出部2および移動機構3に接続される本体制御部4を備える。
移動機構3では、それぞれが幅方向に長い複数のローラ311が搬送方向に配列される。複数のローラ311の(+Y)側には、記録前の記録用紙9のロールを保持するとともに当該ロールから記録用紙9を搬送方向に送り出す供給部313が設けられる。複数のローラ311の(−Y)側には、記録用紙9の記録が行われた部位をロール状に巻き取って保持する巻取部312が設けられる。以下の説明では、単に記録用紙9という場合は搬送途上の記録用紙9(すなわち、複数のローラ311上の記録用紙9)を意味するものとする。移動機構3の一のローラ311aにはエンコーダ34が設けられ、エンコーダ34からのパルス信号に基づいて記録用紙9の搬送方向における移動速度が取得される。移動機構3は側壁部20に支持される。
吐出部2は、記録用紙9を幅方向に跨ぐフレーム301に取り付けられる。吐出部2は、複数(本実施の形態では4個)のヘッド部を含む。複数のヘッド部はそれぞれC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の色のインクを吐出し、Y方向に配列される。
図2の上段は1つのヘッド部23に含まれる吐出口241を示し、図2の下段は吐出口241により記録用紙9上に形成されるドット91(ただし、実際にドットが形成されない場合にもドットを仮想的に図示している。)を示している。また、図2の上段では記録用紙9の吐出部2に対する走査方向(すなわち、Y方向であり、記録方向でもある。)を縦向きに図示しており、吐出口241の数は実際よりも少なく図示している。
各ヘッド部23の底面には、複数(本実施の形態では4個)の吐出口列251,252,253,254が設けられ、各吐出口列251〜254は複数の吐出口241を走査方向に垂直かつ記録用紙9に沿う方向(図1中のX方向であり、記録用紙9の幅に対応する方向であるため、以下、「幅方向」ともいう。)に一定のピッチP(以下、「吐出口ピッチP」という。)にて配列して有する。また、複数の吐出口列251〜254は走査方向(Y方向)に一定の間隔(図2の上段にて符号Wを付す矢印にて示す間隔であり、以下、「列間隔」という。)にて配列される。以下、図2の上段に示す4個の吐出口列251〜254を(+Y)側から(−Y)方向に向かって順に第1ないし第4吐出口列とも呼ぶ。
また、ヘッド部23では、幅方向のみに着目した場合に、一の吐出口列にて幅方向に互いに隣接する2つの吐出口の間には、他の3個の吐出口列のそれぞれの1つの吐出口が配置される。例えば、最も(+Y)側の第1吐出口列251において、図2の上段にて符号241aを付す吐出口と符号241bを付す吐出口との間の中央には、(+Y)側から2番目の第2吐出口列252に含まれる1つの吐出口241cが配置され、吐出口241aと吐出口241cとの間の中央には(+Y)側から3番目の吐出口列253に含まれる1つの吐出口241dが配置され、吐出口241cと吐出口241bとの間の中央には最も(−Y)側の第4吐出口列254に含まれる1つの吐出口241eが配置される。
このように、ヘッド部23では、複数の吐出口列251〜254が吐出口241の位置を幅方向にずらしつつ走査方向に配列されることにより、幅方向に多数の吐出口241が一定のピッチ(正確には、各吐出口列251〜254における吐出口ピッチPの1/4のピッチ)にて配列され、図2の下段に示すように、記録用紙9上の走査方向の各位置にて、幅方向に一列に並ぶ複数のドット91の形成が可能とされる。
ヘッド部23では各吐出口241に対して圧電素子が設けられており、圧電素子を駆動することにより各吐出口241からインクの微小液滴が記録用紙9に向けて吐出される。実際には、複数の吐出口241は幅方向に関して記録用紙9上の記録領域の幅全体に亘って並んでおり、画像記録装置1ではワンパスにて高速な画像記録が可能である。なお、本実施の形態では、複数の吐出口列251〜254が一体的に形成されたヘッド部23が設けられるが、1または数個の吐出口列が一体的に形成されたヘッド要素をX方向およびY方向に配列することにより、ヘッド部23が構築されてもよい。
図3は本体制御部4の機能構成を示すブロック図である。本体制御部4は、ヘッド移動機構22および移動機構3の駆動制御を行う駆動機構制御部41、移動機構3のエンコーダ34からのエンコーダ信号が入力されるとともにヘッド部23の吐出口241からの微小液滴の吐出のタイミングを制御するタイミング制御部42、インターフェイス(I/F)を介してコンピュータ5に接続されるとともにヘッド部23に微小液滴の吐出に係る動作を指示する信号を入力する駆動信号生成部43、および、本体制御部4の全体制御を担う全体制御部44を備える。図3では図示の便宜上1つのヘッド部23のみを示しているが、実際には、駆動信号生成部43から複数のヘッド部23に信号が入力される。以下、1つのヘッド部23に着目して説明を行うが、他のヘッド部23においても同様の処理が行われる。
駆動信号生成部43は、コンピュータ5から入力される記録予定の元画像のデータ(以下、「元画像データ」という。)から実際の画像記録動作に従った処理済画像データを生成する画像データ処理部431、ヘッド部23に接続されるヘッド制御部432、画像データ処理部431から入力される処理済画像データに基づいてヘッド部23用の描画信号を生成する描画信号生成部433、および、画像メモリ434を有する。
駆動信号生成部43における基本的な処理では、ヘッド制御部432においてヘッド部23の複数の吐出口241のそれぞれに対して設けられるレジスタに、処理済画像データに基づいて微小液滴の吐出の要否を指示する値(描画信号の値)が入力され、ヘッド制御部432では、各吐出口列251〜254の複数の吐出口241に対するレジスタの値に応じた信号の集合が駆動信号としてヘッド部23へと入力される。これにより、各吐出口列251〜254において対応するレジスタに微小液滴の吐出動作(描画)を指示する値が入力されていた吐出口241では微小液滴の吐出が行われ、非描画を指示する値が入力されていた吐出口241では非描画時の動作(例えば、吐出口241から微小液滴が吐出されない程度の微小な振動運動)が行われる。
このように、処理済画像データに基づく駆動信号生成部43からの駆動信号の入力により、各吐出口241に対して微小液滴の吐出または非描画時の動作のいずれかである吐出動作を実行させる駆動制御がヘッド部23の各吐出口列251〜254において同時に行われる。なお、全体制御部44およびタイミング制御部42の機能については、以下の画像記録動作の説明において詳述する。
本実施の形態にて用いられるヘッド部23では、一般的なインクジェット方式のヘッドと同様に、高精度な画像記録を実現するための定格の値として駆動信号の入力の周期(以下、定格の周期を「基本周期」という。)が定められており、実際の画像記録動作では、吐出口列251〜254毎に基本周期(ただし、実用上、±数パーセント(%)の範囲内でのずれは許容される。)にて吐出動作が繰り返される。
図4は、画像記録装置1における画像記録動作の流れを示す図である。画像記録装置1では、標準描画、および、標準描画よりも高速な高速描画が選択可能であり、ここでは、標準描画が操作者により選択されて、標準描画を示す入力がコンピュータ5にて受け付けられる(ステップS10)。元画像データは、コンピュータ5から予め入力されて画像メモリ434に記憶されている。標準描画が選択されたことが確認されると(ステップS11)、画像メモリ434から元画像データが読み出され、画像データ処理部431の網点化部452が多階調の元画像を網点化した網点画像を示す網点画像データを生成する。さらに、画像データ処理部431では、網点画像データから実際の画像記録動作に従った処理済画像データが生成される(ステップS12a)。
図5は網点画像を抽象的に示す図である。図5の網点画像では、幅方向に対応する横方向(図5中にてx方向として示す。)に並ぶ画素の集合を画素列として、走査方向に対応する縦方向(図5中にてy方向として示す。)において(−y)側の画素列から(+y)側に向かって順に符号L1,L2,L3,・・・,Lm(説明の便宜上、mは4の倍数であるものとする。)を付している。
既述のように、ヘッド部23では、記録用紙9上において走査方向の各位置にて、4個の吐出口列251〜254により幅方向に一列に並ぶ複数のドットの形成が可能であり(図2の下段参照)、網点画像の各画素列の画素数は、吐出口列251〜254に含まれる吐出口241の数以下である。また、画像記録装置1では幅方向に関して(+X)側から(−X)方向に向かって第1吐出口列251の1つの吐出口241、第3吐出口列253の1つの吐出口241、第2吐出口列252の1つの吐出口241および第4吐出口列254の1つの吐出口241の順にて複数の吐出口241が並ぶ(図2の上段参照)。
したがって、画像データ処理部431では、画素列割振り部453が、各画素列L1,L2,L3,・・・,Lmの複数の画素が(+x)側から(−x)方向に順に、第1吐出口列251、第3吐出口列253、第2吐出口列252および第4吐出口列254にそれぞれ対応する4個のグループに割り振る。さらに、ダミー画素列挿入部454が、走査方向に関する吐出口列251〜254の位置のずれに合わせて、各グループにはダミーデータを挿入する。以上の処理により、これらのグループの集合である処理済画像データが生成される。
処理済画像データが生成されると(または、処理済画像データの一部が生成されると)、駆動機構制御部41が移動機構3を駆動することにより記録用紙9の移動が開始され(ステップS13a)、記録用紙9が一定の速度(後述の標準速度)にて移動する。そして、吐出部2の記録用紙9に対する相対移動に並行してタイミング制御部42が吐出タイミング信号を基本周期にて繰り返し出力し、吐出タイミング信号が入力される毎にヘッド制御部432がヘッド部23に駆動信号を出力して吐出動作が繰り返し行われる(すなわち、標準描画が行われる。)(ステップS14a)。
以上のように、駆動機構制御部41、タイミング制御部42、ヘッド制御部432および全体制御部44が、記録用紙9上の複数の描画位置の当該記録用紙9に対する相対移動に並行して、ヘッド部23用の処理済みの網点画像データに基づいて複数のドット出力要素を含むヘッド部23の出力制御を行う制御部として機能する。
ここで、図2のヘッド部23では、走査方向に関して互いに隣接する吐出口241の中心間距離である列間隔Wが、基本周期の間にヘッド部23が記録用紙9に対して相対的に移動する距離の整数倍(本実施の形態では、8倍)となる記録用紙9の移動速度(以下、「標準速度」といい、1倍速を意味する。)が予め決定されており、標準描画では、この標準速度にて記録用紙9を走査方向に連続的に移動しつつ4個の吐出口列251〜254において全吐出口241の吐出動作が基本周期にて同時に行われる。これにより、非描画時の動作が行われる場合も仮想的なドット形成動作とみなすと、4個の吐出口列251〜254により幅方向に一列に並ぶ複数のドットを形成するためのドット形成動作が行われる。
なお、標準速度にて記録用紙9を走査方向に移動しつつ4個の吐出口列251〜254において吐出動作を基本周期にて同時に行うことにより記録される画像の走査方向の解像度(すなわち、単位距離当たりのドット数であり、例えば、dpi(dot per inch)にて表される。)は、ヘッド部23の定格の標準解像度として予め決定されている。また、記録される画像の幅方向の解像度は、各吐出口列251〜254における吐出口ピッチPの1/4のピッチ(すなわち、幅方向のドット間距離)の逆数に相当する値となる。
そして、対象画像の全体が記録用紙9上に記録されると、記録用紙9の移動が停止され、画像記録装置1における標準描画が終了する(ステップS15a)。
次に、図4のステップS10にて高速描画が選択された場合について説明する。画像記録装置1では、標準速度をヘッド部23の吐出口列251〜254の数の約数倍した速度にて記録用紙9を移動しつつ記録を行うことが可能である。図4のステップS10にて高速描画を選択する際には、吐出口列251〜254の数の約数(ただし、1を除く。)の1つが倍速値として操作者によりさらに選択される。選択された倍速値(以下、「選択倍速値」という。)を示す入力はコンピュータ5にて受け付けられ、選択倍速値が図3の本体制御部4の全体制御部44に入力される。ここでは、吐出口列251〜254の個数4の約数の1つである2が選択倍速値として選択されたものとする。
選択倍速値を2とする高速描画(以下、「2倍速描画」とも呼ぶ。)が選択されたことが確認されると(ステップS11)、全体制御部44の演算部441では、選択倍速値に対応する各パラメータの値が駆動機構制御部41、タイミング制御部42および駆動信号生成部43に入力される。続いて、画像データ処理部431では、元画像から2倍速描画用の処理済画像データが生成される(ステップS12b)。なお、図4中のステップS12b(およびステップS13b)では、選択倍速値をNとして一般化した処理の内容を示している。
図3のサイズ変更部451では、例えば、元画像において幅方向に対応する方向(図5中のx方向)に並ぶ複数の画素にて互いに隣接する2つの画素の画素値の平均を求めることにより(あるいは、1つ置きに存在する画素を抽出することにより)、元画像のx方向の大きさ(画素数)が選択倍速値に従って1/2の大きさ(元の大きさを選択倍速値で除した大きさ)に変更される。
その後、各画素列(画素数の変更後の画素列)において(+x)側から(−x)方向に向かって画素を1つ置きに抽出することにより、抽出された画素列と残りの画素列との2つの画素列が生成される。一方の画素列は画素数の変更後の画素列において奇数番目の画素のみから構成され、他方の画素列は偶数番目の画素のみから構成される。以下の説明では、各画素列L1,L2,L3,・・・,Lmから生成される2つの画素列に符号La1,La2,La3,・・・,Lam、および、符号Lb1,Lb2,Lb3,・・・,Lbmをそれぞれ付している(ただし、画素列La1,La2,La3,・・・,Lamが、画素数の変更後の画素列において最も(+x)側の画素を含むものとする。)。
続いて、図6に示すように、画素列La1,Lb1,La2,Lb2,La3,Lb3,・・・,Lam,Lbm(図6中にて内部にLa1,Lb1,La2,Lb2,La3,Lb3,・・・,Lam,Lbmのいずれかを記す矩形にて示す。)が、ヘッド部23の吐出口列251〜254と同数の4個のグループ(以下、それぞれ「第1画素列グループ」、「第2画素列グループ」、「第3画素列グループ」および「第4画素列グループ」という。)G1,G2,G3,G4に順に割り振られる。したがって、第1画素列グループG1には画素列La1,La3,・・・,La(m−1)が含まれ、第2画素列グループG2には画素列Lb1,Lb3,・・・,Lb(m−1)が含まれ、第3画素列グループG3には画素列La2,La4,・・・,Lamが含まれ、第4画素列グループG4には画素列Lb2,Lb4,・・・,Lbmが含まれる。後述するように、第1ないし第4画素列グループG1〜G4の集合が処理済画像として取り扱われるため、図6(および後述の図7)ではこれらを1つの矩形にて囲んでいる。
ダミー画素列挿入部454は、第2ないし第4画素列グループG2〜G4に対して空白を示すダミー画素列を必要な数だけ挿入する。具体的には、図7に示すように、第2画素列グループG2では4個のダミー画素列(図7中にて符号Lを付す破線の矩形にて示す。以下同様。)が画素列Lb1よりも前段に挿入され、第3画素列グループG3では8個のダミー画素列Lが画素列La2よりも前段に挿入され、第4画素列グループG4では12個のダミー画素列Lが画素列Lb2よりも前段に挿入される。また、第1画素列グループG1にはダミー画素列は挿入されない。
以上の処理により、2倍速描画において用いられる第1ないし第4画素列グループG1〜G4が処理済画像データとして取得され、必要に応じて画像データ処理部431に記憶される。第1ないし第4画素列グループG1〜G4は第1ないし第4吐出口列251〜254にそれぞれ対応し、処理済画像データの一部が描画信号生成部433に出力されることにより、第1ないし第4画素列グループG1〜G4の最初の(最も上段の)画素列に相当する描画信号が、第1ないし第4吐出口列251〜254の吐出口241からの最初の微小液滴の吐出の要否を示すものとしてヘッド制御部432へと出力される。
画像データ処理部431にて処理済画像データが生成されると(または、処理済画像データの一部が生成されると)、記録用紙9の移動が開始され(ステップS13b)、記録用紙9が標準速度に選択倍速値を乗じた一定の速度(本動作例では、標準速度の2倍の速度)にて移動する。そして、吐出部2の記録用紙9に対する相対移動に並行してヘッド部23における吐出動作が繰り返し行われる(すなわち、高速描画が行われる。)(ステップS14b)。
詳細には、エンコーダ34からの出力に基づいて記録用紙9上の所定の記録開始位置近傍が最も(+Y)側の第1吐出口列251(図2の上段参照)の下方(−Z側)に到達するのと同時に、タイミング制御部42から第1および第2吐出口列251,252に対する吐出タイミング信号が駆動信号生成部43および全体制御部44に出力され、続いて、第3および第4吐出口列253,254に対する吐出タイミング信号が出力される。
既述のように、第1ないし第4画素列グループG1〜G4の最初の画素列に相当する描画信号が第1ないし第4吐出口列251〜254の吐出口241からの最初の微小液滴の吐出の要否を示すものとしてヘッド制御部432へと予め出力されており、タイミング制御部42が吐出口列251〜254毎に(ただし、2倍速描画では、第1および第2吐出口列251,252に対する吐出タイミング信号は同時に生成され、第3および第4吐出口列253,254に対する吐出タイミング信号は同時に生成される。)吐出タイミング信号を生成することにより、ヘッド制御部432にて入力済みの描画信号に基づいて当該吐出口列251〜254の各吐出口241に対する駆動信号が生成され、ヘッド部23へと出力される。
このように、高速描画では、各吐出口列に対する吐出タイミング信号の生成により、ヘッド制御部432が処理済画像データに基づく制御(すなわち、微小液滴の吐出または非描画時の動作を実行させる制御)を当該1つの吐出口列の全ての吐出口241に対して同時に行う(異なる吐出口列間では同時とは限らない。)。以降の処理では、各吐出口列251〜254の吐出タイミング信号の生成に同期して、描画信号生成部433から対応する画素列グループG1〜G4の次の画素列(この吐出タイミング信号によるインクの吐出制御にて参照される画素列の次の画素列)に相当する描画信号がヘッド制御部432に出力される。
図8は、吐出タイミング信号の生成時に第1ないし第4吐出口列251〜254における吐出動作にて参照される画素列を説明するための図である。図8の最も上段は第1吐出口列251に対する吐出タイミング信号を示し、上から2段目は第2吐出口列252に対する吐出タイミング信号を示し、上から3段目は第3吐出口列253に対する吐出タイミング信号を示し、最も下段は第4吐出口列254に対する吐出タイミング信号を示している。
図8では、第1および第2吐出口列251,252(または、第3および第4吐出口列253,254)に対する吐出タイミング信号(図8中の各段におけるパルスの部分)を示す図8中の複数の線(波形)は同じ形状となっている。また、図8では、各吐出口列251〜254に対する各吐出タイミング信号(パルス)に、当該吐出タイミング信号における吐出動作にて参照される画素列グループG1〜G4の画素列と同符号を付しており、ダミー画素列Lに対応する吐出タイミング信号については破線にて図示している。
図9は、第1および第2吐出口列251,252に対する最初の(1番目の)吐出タイミング信号の生成時におけるドットの描画位置を示す図である。図9では、第1および第2吐出口列251,252に対する1番目の吐出タイミング信号の生成時にヘッド部23の各吐出口241にほぼ対向する記録用紙9上の位置(当該吐出口241から実際にインクの微小液滴が吐出される際に微小液滴が着弾する位置であり、以下、「吐出位置」という。)を符号741を付す実線の円にて図示している。以下、各吐出口列251〜254に含まれる複数の吐出口241に対応する複数の吐出位置741の集合を吐出位置列と呼び、第1ないし第4吐出口列251〜254にそれぞれ対応する4個の吐出位置列を第1ないし第4吐出位置列751〜754と呼ぶ。第1ないし第4吐出位置列751〜754は(+Y)側から(−Y)方向に向かって順に列間隔Wを空けて配列されている。
また、図9では、記録用紙9上に配列設定された複数の描画位置を細線の矩形にて図示している。ここで、描画位置は吐出口241からのインクの微小液滴の吐出によりドットが形成される位置の最小単位であり、描画位置の幅方向(X方向)のピッチは各吐出位置列751〜754の吐出位置741のX方向のピッチの1/4(すなわち、各吐出口列251〜254の吐出口ピッチPの1/4のピッチ)に等しく、本実施の形態では、描画位置の走査方向(Y方向)のピッチ(以下、「描画ピッチ」という)Kは、第1ないし第4吐出口列251〜254の列間隔Wを8で除した値に等しい。すなわち、図9の描画位置の配列は標準描画にてドットが描画される位置の配列と同じである。画像記録装置1では、記録用紙9の(−Y)方向への連続移動により、第1ないし第4吐出位置列751〜754が記録用紙9上の複数の描画位置に対して(+Y)方向に相対的に移動する。以下の説明では、幅方向に並ぶ描画位置の集合を描画位置列Aという。
既述のように、各吐出口列251〜254において、1番目の吐出タイミング信号の生成時には、対応する画素列グループG1〜G4の最初の画素列に基づく吐出動作が行われる。これにより、第1吐出口列251では、図8に示すように画素列La1に基づく吐出動作が行われ、図9に示す第1吐出位置列751の各吐出位置741と重なる描画位置列A1中の描画位置(すなわち、X方向に3個置きに(吐出口ピッチPにて)存在する描画位置)にドットが描画される。このとき、高速描画時における各吐出口241からのインクの吐出量は、標準描画時における吐出口241からのインクの吐出量よりも多くされる。
また、第2吐出口列252では、図8に示すようにダミー画素列Lに基づく吐出動作が行われる。既述のようにダミー画素列Lは空白を示すものであるため、以下の説明では、通常の画素列(すなわち、ダミー画素列L以外の画素列)に基づいて各吐出口241において非描画時の動作が行われる場合は記録用紙9上に仮想的にドットが形成されるものとするが、ダミー画素列Lに基づいて非描画時の動作が行われる場合はドットは形成されないものとする。したがって、図9に示す第2吐出位置列752の各吐出位置741と重なる描画位置列A中の描画位置にはドットは描画されない。
タイミング制御部42の位相制御部421では、図8に示すように、第1および第2吐出口列251,252に対する1番目の吐出タイミング信号の生成時から、基本周期Tの1/2の時間だけ遅延した時刻に、第3および第4吐出口列253,254に対する1番目の吐出タイミング信号が生成される。このとき、第3および第4吐出位置列753,754は、第1および第2吐出口列251,252に対する最初の吐出タイミング信号の生成時の位置(図9中に実線の複数の円にて示す位置)から、描画ピッチKだけ(+Y)方向に記録用紙9に対して相対的に移動し、図9中に破線の複数の円にて示す位置に到達しているが、第3および第4吐出口列253,254では、図8に示すようにダミー画素列Lに基づく吐出動作が行われるため、第3および第4吐出位置列753,754の各吐出位置741と重なる描画位置列A中の描画位置にはドットは描画されない。
また、タイミング制御部42では、各吐出口列251〜254の1番目の吐出タイミング信号の生成後、基本周期Tの時間だけ経過すると、2番目の吐出タイミング信号が生成される。第1および第2吐出口列251,252の2番目の吐出タイミング信号の生成時には、第1および第2吐出位置列751,752は、最初の吐出タイミング信号の生成時の位置(図9中に実線の複数の円にて示す位置)から、記録用紙9の移動速度に基本周期Tを乗じた距離(図9中にて符号Vを付す矢印にて示す距離であり、以下、「基本周期に対応する距離」という。)だけ(+Y)方向に記録用紙9に対して相対的に移動し、図9中に細い二点鎖線の複数の円にて示す位置(すなわち、1番目の吐出タイミング信号の生成時における描画位置列Aから走査方向に描画ピッチKの2倍だけ離れた描画位置列A上)に到達している。
そして、第1吐出口列251では、図8に示すように画素列La3に基づく吐出動作が行われ、1番目の吐出タイミング信号により画素列La1に対応するドットが描画された図9中の描画位置列A1(図9中に実線の複数の円にて示す第1吐出位置列751の位置)から(+Y)方向に基本周期に対応する距離Vだけ離れた描画位置列A3中の対応する描画位置(図9中に二点鎖線の複数の円にて示す第1吐出位置列751と重なる描画位置)にドットが描画される。また、第2吐出口列252では、図8に示すようにダミー画素列Lに基づく吐出動作が行われ、図9中に二点鎖線の複数の円にて示す第2吐出位置列752と重なる描画位置列A中の対応する描画位置にはドットは描画されない。
第3および第4吐出口列253,254のそれぞれでは、2番目の吐出タイミング信号の生成時に第3または第4吐出位置列753,754が、最初の吐出タイミング信号の生成時の位置(図9中に破線の複数の円にて示す位置)から基本周期に対応する距離Vだけ(+Y)方向に離れた描画位置列A上に到達しているが、図8に示すようにダミー画素列Lに基づく吐出動作が行われるため、当該描画位置列A中の対応する描画位置にはドットは描画されない。
同様に、各吐出口列251〜254の2番目の吐出タイミング信号の生成後、基本周期Tの時間だけ経過すると、3番目の吐出タイミング信号が生成され、第1吐出口列251では画素列La5に基づく吐出動作が行われ、直前の吐出動作が行われた描画位置列A3(すなわち、画素列La3に対応するドットが描画された描画位置列)から(+Y)方向に基本周期に対応する距離Vだけ離れた描画位置列A5(すなわち、1番目の吐出タイミング信号により画素列La1に対応するドットが描画された描画位置列A1から(+Y)方向に基本周期に対応する距離Vの2倍だけ離れた描画位置列)にドットが描画される。
第2ないし第4吐出口列252〜254ではダミー画素列Lに基づく吐出動作が行われ、第2ないし第4吐出位置列752〜754と重なる描画位置列Aにはドットは描画されない。また、4番目の吐出タイミング信号の生成時には、第1吐出口列251にて画素列La7に基づく吐出動作が行われて描画位置列A1から基本周期に対応する距離Vの3倍だけ離れた描画位置列Aにドットが描画され、第2ないし第4吐出口列252〜254ではダミー画素列Lに基づく吐出動作が行われ、第2ないし第4吐出位置列752〜754と重なる描画位置列Aにはドットは描画されない。
このようにして、吐出口列251〜254毎に一定の基本周期Tにて吐出タイミング信号の生成が繰り返されると、5番目の吐出タイミング信号の生成時には、図10に示すように、第2吐出位置列752が1番目の吐出タイミング信号の生成時における位置(図10中にて内部に平行斜線を付す二点鎖線の複数の円にて示す位置)から走査方向に基本周期に対応する距離Vの4倍(すなわち、描画ピッチKの8倍)だけ離れた位置であり、1番目の吐出タイミング信号の生成時に第1吐出口列251により画素列La1に対応するドットが描画された描画位置列A1上に到達する。
そして、図8に示すように、第2吐出口列252において画素列Lb1に基づく吐出動作が行われることにより、第2吐出位置列752の各吐出位置741と重なる描画位置列A1中の描画位置(すなわち、X方向に吐出口ピッチPにて存在する描画位置であって、第1吐出位置列751の通過によりドットが描画された描画位置間の中央の描画位置)にドットが描画される。なお、図10および後述の図11および図12では、既にドットが描画された描画位置に平行斜線を付している。
また、第1吐出口列251では画素列La9に基づく吐出動作が行われて、描画位置列A1から描画ピッチKの8倍だけ離れた描画位置列Aにドットが描画され、第3および第4吐出口列253,254ではダミー画素列Lに基づく吐出動作が行われて対応する描画位置列Aにドットが描画されない。既述のように、第1および第2吐出口列251,252に対する吐出タイミング信号の生成時の位置(図10中にて実線の複数の円にて示す位置)から第1ないし第4吐出位置列751〜754が走査方向に描画ピッチKだけ進むと同時に、第1および第2吐出口列251,252のこの吐出タイミング信号と同じ順番の第3および第4吐出口列253,254に対する吐出タイミング信号が生成されるため、図10では、第3および第4吐出口列253,254に対する吐出タイミング信号の生成時における第3および第4吐出位置列753,754を破線の複数の円にて示している(後述の図11および図12において同様)。
第2吐出口列252のみに着目すると、6番目の吐出タイミング信号の生成時には、画素列Lb3に基づく吐出動作が行われて描画位置列A1から基本周期に対応する距離V(描画ピッチKの2倍)だけ離れた描画位置列A3にドットが描画され、7番目の吐出タイミング信号の生成時には、画素列Lb5に基づく吐出動作が行われて描画位置列A1から基本周期に対応する距離Vの2倍だけ離れた描画位置列A5にドットが描画され、8番目の吐出タイミング信号の生成時には、画素列Lb7に基づく吐出動作が行われて描画位置列A1から基本周期に対応する距離Vの3倍だけ離れた描画位置列Aにドットが描画される。
第1および第2吐出口列251,252の9番目の吐出タイミング信号の生成時には、図11に示すように、第3吐出位置列753が第1および第2吐出口列251,252の1番目の吐出タイミング信号の生成時における位置(図11中にて内部に平行斜線を付す二点鎖線の複数の円にて示す位置)から走査方向に基本周期に対応する距離Vの8倍だけ離れた描画位置列A1上に到達する。そして、図8に示すように、この時刻から基本周期Tの半分だけ遅延した時刻において第3吐出口列253(および第4吐出口列254)の吐出タイミング信号が生成されて第3吐出口列253において画素列La2に基づく吐出動作が行われることにより、描画位置列A1の(+Y)側の描画位置列A2中の対応する描画位置(すなわち、図11中にて破線の複数の円にて示す吐出位置列753の吐出位置741と重なる描画位置)にドットが描画される。
なお、9番目の吐出タイミング信号の生成時には、第1吐出口列251では画素列La17に基づく吐出動作が行われて対応する描画位置列Aにドットが描画され、第2吐出口列252では画素列Lb9に基づく吐出動作が行われて対応する描画位置列Aにドットが描画され、第4吐出口列254ではダミー画素列Lに基づく吐出動作が行われて対応する描画位置列Aにドットは描画されない。
第3吐出口列253のみに着目すると、10番目の吐出タイミング信号の生成時には、画素列La4に基づく吐出動作が行われて描画位置列A2から基本周期に対応する距離V(描画ピッチKの2倍)だけ離れた描画位置列A4にドットが描画され、11番目の吐出タイミング信号の生成時には、画素列La6に基づく吐出動作が行われて描画位置列A2から基本周期に対応する距離Vの2倍だけ離れた描画位置列A6にドットが描画され、12番目の吐出タイミング信号の生成時には、画素列La8に基づく吐出動作が行われて描画位置列A2から基本周期に対応する距離Vの3倍だけ離れた描画位置列Aにドットが描画される。
したがって、第1吐出口列251の1つの吐出口241と、幅方向に関してこの吐出口241に隣接する第3吐出口列253の1つの吐出口241との各組合せ(例えば、図2中の吐出口241a,241b)を吐出口群として各吐出口群に着目すると、吐出口群の走査方向に離れた2つの吐出口241により隣接する2個の描画位置列Aに対して順に吐出動作が行われ、各吐出口群が各描画位置列Aに1つのドットのみを描画する。
さらに、第1および第2吐出口列251,252の13番目の吐出タイミング信号の生成時には、図12に示すように、第4吐出位置列754が第1および第2吐出口列251,252の1番目の吐出タイミング信号の生成時における位置(図12中にて内部に平行斜線を付す二点鎖線の複数の円にて示す位置)から走査方向に基本周期に対応する距離Vの12倍だけ離れた描画位置列A1上に到達する。
そして、図8に示すように、この時刻から基本周期Tの半分だけ遅延した時刻において第4吐出口列254(および第3吐出口列253)の吐出タイミング信号が生成されて第4吐出口列254において画素列Lb2に基づく吐出動作が行われることにより、描画位置列A1の(+Y)側の描画位置列A2において、X方向に吐出口ピッチPにて存在する描画位置であって、第3吐出位置列753の通過によりドットが描画された描画位置間の中央の描画位置(すなわち、図12中にて破線の複数の円にて示す吐出位置列754の吐出位置741と重なる描画位置)にドットが描画される。
なお、13番目の吐出タイミング信号の生成時には、第1吐出口列251では画素列La25に基づく吐出動作が行われて対応する描画位置列Aにドットが描画され、第2吐出口列252では画素列Lb17に基づく吐出動作が行われて対応する描画位置列Aにドットが描画され、第3吐出口列253では画素列La10に基づく吐出動作が行われて対応する描画位置列Aにドットが描画される。
第4吐出口列254のみに着目すると、14番目の吐出タイミング信号の生成時には、画素列Lb4に基づく吐出動作が行われて描画位置列A2から基本周期に対応する距離V(描画ピッチKの2倍)だけ離れた描画位置列A4にドットが描画され、15番目の吐出タイミング信号の生成時には、画素列Lb6に基づく吐出動作が行われて描画位置列A2から基本周期に対応する距離Vの2倍だけ離れた描画位置列A6にドットが描画される。
したがって、第2吐出口列252の1つの吐出口241と、幅方向に関してこの吐出口241に隣接する第4吐出口列254の1つの吐出口241との各組合せ(例えば、図2中の吐出口241c,241e)を吐出口群として各吐出口群に着目すると、吐出口群に含まれる2個の吐出口241により隣接する2個の描画位置列Aに対して順に吐出動作が行われ、各吐出口群が各描画位置列Aに1つのドットを描画する。また、各描画位置列Aにおいて、吐出動作が行われる描画位置が1つ置きに存在するとともに、走査方向に一列に並ぶ描画位置の集合においても吐出動作が行われる描画位置が1つ置きに存在することとなる(すなわち、吐出動作が行われる描画位置がチェッカーボード状(市松模様状)に配置される。)。
ここで、既述のように、基本周期に対応する距離Vは描画ピッチKの2倍に相当する距離であるため、各吐出位置列751〜754は、吐出タイミング信号が生成される毎に、直前の吐出タイミング信号の生成時に配置されていた描画位置列Aから(+Y)方向に描画ピッチKの2倍だけ離れた描画位置列A上に配置される。したがって、図12(並びに図9ないし図11)中に太線の複数の矩形にて示すように、走査方向に連続して並ぶ2個の描画位置列Aの集合(例えば、第1および第2吐出口列251,252によりドットが描画される描画位置列A1、および、第3および第4吐出口列253,254によりドットが描画される描画位置列A2)を1つの描画位置ブロックBとすると、走査方向に並ぶ複数の描画位置ブロックB(ただし、描画位置列A1よりも(−Y)側のものを除く。)のそれぞれでは、(−Y)側の描画位置列Aに対して第1および第2吐出口列251,252によりドットが描画され、(+Y)側の描画位置列Aに対して第3および第4吐出口列253,254によりドットが描画される。すなわち、第1および第2吐出口列251,252と第3および第4吐出口列253,254との間では基本周期に対応する距離Vの1/2(描画ピッチK)だけドットが描画される位置が走査方向にずれている。
また、各描画位置ブロックB中の(−Y)側の描画位置列Aでは、第1吐出口列251により4個の描画位置毎にドットが描画され、第1吐出口列251により描画されるとともに互いに隣接するドット間の中央に第2吐出口列252によりドットが描画され、当該描画位置列Aでは1つ置きに存在する描画位置に対して第1および第2吐出口列251,252によりドットが交互に描画される。(+Y)側の描画位置列Aでも、第3吐出口列253により4個の描画位置毎にドットが描画され、第3吐出口列253により描画されるとともに互いに隣接するドット間の中央に第4吐出口列254によりドットが描画され、当該描画位置列Aでは1つ置きに存在する描画位置に対して第3および第4吐出口列253,254によりドットが交互に描画される。
一方で、既述のように、図4のステップS12bの処理では、まず、図5の対象画像の幅方向に対応する方向の大きさ(画素数)を選択倍速値に従って1/2の大きさに変更し、さらに網点化を行った網点画像(の一部)が、例えば図13に示すように準備される。なお、図13の網点画像では、各画素列に符号Lc1〜Lc8を付し、画素を示す矩形の内部に番号を記している。続いて、各画素列Lc1〜Lc8において、(+x)側から(−x)方向に向かって画素を1つ置きに抽出することにより、各画素列Lc1〜Lc8から画素列La1,La2,La3,・・・,La8、および、画素列Lb1,Lb2,Lb3,・・・,Lb8が生成される。そして、画素列La1,Lb1,La2,Lb2,La3,Lb3,・・・,La8,Lb8が、ヘッド部23の吐出口列251〜254と同数の4個の画素列グループG1,G2,G3,G4に順に割り振られる(図6参照)。
これにより、第1および第2吐出口列251,252と第3および第4吐出口列253,254とに対して、各描画位置ブロックBの(−Y)側の描画位置列Aに対応する図13中の画像の画素列と、(+Y)側の描画位置列Aに対応する図13中の画像の画素列とがそれぞれ割り当てられるとともに、第1吐出口列251と第2吐出口列252(または第3吐出口列253と第4吐出口列254)とに対して図13中の画像の対応する画素列における画素を(+x)側から(−x)方向に向かって交互に割り当てることが実現される。
図14は、記録用紙9上に配列設定される描画位置を示す図である。図14では記録用紙9上の複数の描画位置を細線の矩形にて図示し、図13の画像中の各画素に付した番号を当該画素に対応する描画位置を示す矩形の内部に記している(後述の図15、図17および図18において同様)。なお、矩形の内部に番号を記していない描画位置にはドットの描画は行われない。
既述のように、記録用紙9上の各描画位置列Aでは、図13中の対応する画素列Lc1〜Lc8における複数の画素の画素値に基づく吐出動作が、1つ置きに存在する描画位置に対して行われる。したがって、元画像の幅方向に対応する方向の大きさを1/2に変更して網点化した図13の画像は、図14に示すように、幅方向の大きさが2倍にされて記録用紙9上に記録され、標準描画にて記録される画像と同じ大きさとなる。実際には、走査方向(Y方向)に互いに隣接する2つの描画位置列Aでは、吐出動作が行われる描画位置が幅方向に1つの描画位置分だけずれる。
また、図8に示すように、第2吐出口列252では、5番目の吐出タイミング信号の生成時以降において通常の画素列(すなわち、ダミー画素列L以外の画素列)に基づく吐出動作が行われてドットが描画され、第3吐出口列253では、9番目の吐出タイミング信号の生成時以降において通常の画素列に基づく吐出動作が行われてドットが描画され、第4吐出口列254では、13番目の吐出タイミング信号の生成時以降において、通常の画素列に基づく吐出動作が行われてドットが描画される。
これに対し、ダミー画素列挿入部454では、第2画素列グループG2において4個のダミー画素列Lを画素列Lb1よりも前段に挿入し、第3画素列グループG3において8個のダミー画素列Lを画素列La2よりも前段に挿入し、第4画素列グループG4において12個のダミー画素列Lを画素列Lb2よりも前段に挿入することにより、第2吐出口列252では、5番目の吐出タイミング信号の生成時以降において通常の画素列に基づく吐出動作が実現され、第3吐出口列253では、9番目の吐出タイミング信号の生成時以降において通常の画素列に基づく吐出動作が実現され、第4吐出口列254では、13番目の吐出タイミング信号の生成時以降において通常の画素列に基づく吐出動作が実現されている。
以上のように、記録用紙9のヘッド部23に対する相対移動に並行して各吐出口列において全吐出口241の吐出動作を一定の基本周期Tにて同時に行うことにより、記録用紙9上では、描画位置列A1から(+Y)側に存在する複数の描画位置列Aに対して処理済画像データに従ってドットが描画される。そして、処理済画像データが示す画像の全体が記録用紙9上に記録されると、記録用紙9の移動が停止され、画像記録装置1における標準描画が完了する(ステップS15b)。なお、実際には、第4吐出口列254にて最後の画素列Lbmに基づく吐出動作が行われる前に、第1ないし第3吐出口列251〜253では、通常の画素列に基づく吐出動作が完了しているため、第2ないし第4画素列グループG2〜G4の通常の画素列の後段にもダミー画素列が挿入されている。
ここで、標準描画では、1つの描画位置列の描画が基本周期T[μ秒]にて行われるため、標準描画における走査方向の標準解像度をD[dpi]とすると、標準描画時の記録用紙9の走査方向への移動速度E1[m/秒]は数1にて示される。
(数1)
E1=25400/D/T
一方で、標準解像度Dに対応する2倍速描画では、基本周期をT[μ秒]として、隣接する2個の描画位置列の描画が基本周期にて行われるため(すなわち、1個の描画位置列当たりの時間がT/2[μ秒]となるため)、2倍速描画時の記録用紙9の走査方向への移動速度E2[m/秒]は数2にて示すことができ、移動速度E2が標準描画時の移動速度E1の2倍となる。
(数2)
E2=25400/D/(T/2)=2・25400/D/T
仮に、図13の画像の各画素の(−x)側に同じ画素値の画素を挿入することによりx方向の大きさを2倍にした画像を標準描画にて記録する場合、図15の画像が記録用紙9上に記録されることとなる。ここで、記録用紙9上において描画位置が幅方向および走査方向にそれぞれ1440[dpi]および360[dpi]に相当するピッチにて配列されている場合、図15の記録画像では、幅方向に隣接する2つの描画位置に対して同じ吐出動作が行われるため、これらの描画位置に対して1つのドットが描画されているとみなすと、図15の記録画像では、幅方向および走査方向にそれぞれ720(=1440/2)[dpi]および360[dpi]の解像度にて記録が行われていることとなる。
これに対し、図14の記録画像の作成では、図15の記録画像における同じ吐出動作が行われる2つの描画位置(1つのドットが描画されているとみなされる2つの描画位置)のうちの1つの描画位置に対して吐出動作が行われるため、図14の記録画像は図15の記録画像と同じ解像度であると捉えることができる。この場合も、図14の記録画像の作成時における各吐出口241からのインクの吐出量を、図15の記録画像の作成時よりも多くする(すなわち、1つの吐出口241により描画されるドットを大きくする)ことにより、図14の記録画像を図15の記録画像に近似した濃度とすることが可能である。
次に、図4のステップS10にて他の選択倍速値が選択された場合について説明する。操作者により吐出口列251〜254の数の約数の他の1つである4が選択倍速値として選択されて、その入力がコンピュータ5にて確認されると(ステップS11)、図4のステップS12bの処理では、サイズ変更部451が、元画像の幅方向に対応する方向の大きさ(画素数)を選択倍速値に従って1/4の大きさに変更し、さらに網点化部452が網点化を行って網点画像(の一部)が図16に示すように準備される。なお、図16の網点画像では、各画素列に符号Ld1〜Ld8を付し、画素を示す矩形の内部に番号を記している。
続いて、画素列割振り部453により、画素列Ld1〜Ld8が画素列グループG1,G3,G2,G4に順に割り振られる。既述のように、画素列グループG1,G3,G2,G4は第1吐出口列251、第3吐出口列253、第2吐出口列252および第4吐出口列254にそれぞれ対応し、画像記録装置1では幅方向に関して(+X)側から(−X)方向に向かって第1吐出口列251の1つの吐出口241、第3吐出口列253の1つの吐出口241、第2吐出口列252の1つの吐出口241および第4吐出口列254の1つの吐出口241の順にて複数の吐出口241が並んでいる(図2の上段参照)。
そして、ダミー画素列挿入部454により、第2画素列グループG2では2個のダミー画素列Lが画素列Ld3よりも前段に挿入され、第3画素列グループG3では4個のダミー画素列Lが画素列Ld2よりも前段に挿入され、第4画素列グループG4では6個のダミー画素列Lが画素列Ld4よりも前段に挿入される。
続いて、標準速度の4倍での記録用紙9の移動が開始され(ステップS13b)、吐出部2の記録用紙9に対する相対移動に並行してヘッド部23における吐出動作が繰り返し行われる(すなわち、4倍速描画が行われる。)(ステップS14b)。
このとき、タイミング制御部42の位相制御部421では、第1ないし第4吐出口列251〜254にそれぞれ対応する吐出タイミング信号を基本周期Tの1/4倍の時間だけ遅延させて順次出力する。具体的には、最初に第1吐出口列251の吐出タイミング信号が生成され、第1吐出口列251の吐出タイミング信号の生成時から基本周期Tの1/4倍の時間経過後に第3吐出口列253の吐出タイミング信号が生成され、第3吐出口列253の吐出タイミング信号の生成時から基本周期Tの1/4倍の時間経過後に第2吐出口列252の吐出タイミング信号が生成され、第2吐出口列252の吐出タイミング信号の生成時から基本周期Tの1/4倍の時間経過後に第4吐出口列254の吐出タイミング信号が生成される。また、第1吐出口列251の吐出タイミング信号の生成時から基本周期Tだけ経過後に第1吐出口列251の次の吐出タイミング信号が生成され、基本周期Tの間における第1ないし第4吐出位置列751〜754の(+Y)方向への相対移動距離は、4個の描画位置列Aに相当する距離とされる(図9参照)。
したがって、第1吐出口列251の1番目の吐出タイミング信号の生成時には、第1吐出口列251では画素列Ld1に基づく吐出動作が行われ、図17中の描画位置列A1において、図16の画像の画素列Ld1中の画素に対応するドットが、当該画素と同じ番号を記す描画位置(すなわち、3個置きに存在する描画位置)に描画される。また、第2ないし第4吐出口列252〜254のそれぞれに対する1番目の吐出タイミング信号の生成時には、第2ないし第4吐出口列252〜254ではダミー画素列Lに基づく吐出動作が行われるため、対応する描画位置列Aにはドットは描画されない。
また、基本周期Tの間にヘッド部23が記録用紙9に対して走査方向に描画ピッチKの4倍だけ相対移動するため、第1吐出口列251の3番目の吐出タイミング信号の生成時には、第1吐出位置列751から走査方向に描画ピッチKの8倍だけ離れた第2吐出位置列752が描画位置列A1上に到達し(図9参照)、この時刻から基本周期Tの2/4倍の時間経過後に第2吐出口列252の3番目の吐出タイミング信号が生成される。これにより、画素列Ld3に基づく第2吐出口列252の吐出動作が行われ、図17中の描画位置列A1から描画ピッチKの2倍だけ離れた描画位置列A3において、図16の画像の画素列Ld3中の画素に対応するドットが、当該画素と同じ番号を記す描画位置(3個置きに存在する描画位置)に描画される。
同様に、第1吐出口列251の5番目の吐出タイミング信号の生成時には、第1吐出位置列751から走査方向に描画ピッチKの16倍だけ離れた第3吐出位置列753が描画位置列A1上に到達し、この時刻から基本周期Tの1/4倍の時間遅延して第3吐出口列253の5番目の吐出タイミング信号が生成される。これにより、画素列Ld2に基づく第3吐出口列253の吐出動作が行われ、図17中の描画位置列A1から描画ピッチKだけ離れた描画位置列A2において、図16の画像の画素列Ld2中の画素に対応するドットが、当該画素と同じ番号を記す描画位置(3個置きに存在する描画位置)に描画される。
さらに、第1吐出口列251の7番目の吐出タイミング信号の生成時には、第1吐出位置列751から走査方向に描画ピッチKの24倍だけ離れた第4吐出位置列754が描画位置列A1上に到達し、この時刻から基本周期Tの3/4倍の時間遅延して第4吐出口列254の7番目の吐出タイミング信号が生成される。これにより、画素列Ld4に基づく第4吐出口列254の吐出動作が行われ、図17中の描画位置列A1から描画ピッチKの3倍だけ離れた描画位置列A4において、図16の画像の画素列Ld4中の画素に対応するドットが、当該画素と同じ番号を記す描画位置(3個置きに存在する描画位置)に描画される。
したがって、走査方向に連続して並ぶ4個の描画位置列Aの集合(例えば、描画位置列A1〜A4)を1つの描画位置ブロックとすると、図17中にて太線の矩形にて示す複数の描画位置ブロックBのそれぞれにおいて、最も(−Y)側の描画位置列Aに対して第1吐出口列251によりドットが描画され、この描画位置列Aの(+Y)側の描画位置列Aに対して第3吐出口列253によりドットが描画され、この描画位置列Aの(+Y)側の描画位置列Aに対して第2吐出口列252によりドットが描画され、最も(+Y)側の描画位置列Aに対して第4吐出口列254によりドットが描画される。また、第1吐出口列251の1つの吐出口241、幅方向に関してこの吐出口241に隣接する第3吐出口列253の吐出口241、幅方向に関してこの吐出口241に隣接する第2吐出口列252の吐出口241、幅方向に関してこの吐出口241に隣接する第4吐出口列254の吐出口241の各組合せ(例えば、図2中の吐出口241a,241d,241c,241e)を吐出口群として各吐出口群に着目すると、吐出口群の互いに走査方向に離れた4個の吐出口241により描画位置ブロックB内の4個の描画位置列Aに対して順に吐出動作が行われ、各吐出口群が各描画位置列Aに1つのドットのみを描画する。
このようにして、処理済画像データが示す画像の全体が記録用紙9上に記録されると、記録用紙9の移動が停止され(ステップS15b)、4倍速描画が完了する。
なお、仮に、図16の画像の各画素の(−x)側に同じ画素値の3個の画素を挿入することによりx方向に対応する方向の大きさを4倍にした画像を標準描画にて記録する場合、図18の画像が記録用紙9上に記録されることとなる。ここで、記録用紙9上において描画位置が幅方向および走査方向にそれぞれ1440[dpi]および360[dpi]に相当するピッチにて配列されている場合、図18の記録画像では、幅方向に連続する4個の描画位置に対して同じ吐出動作が行われるため、これらの描画位置に対して1つのドットが描画されているとみなすと、図18の記録画像では、幅方向および走査方向にそれぞれ360(=1440/4)[dpi]および360[dpi]の解像度にて記録が行われていることとなる。
これに対し、図17の記録画像の作成では、図18の記録画像における同じ吐出動作が行われる4個の描画位置(1つのドットが描画されているとみなされる4個の描画位置)のうちの1つの描画位置に対して吐出動作が行われるため、標準速度の4倍の速度にて記録が行われる図17の記録画像は図18の記録画像と同じ解像度であると捉えることができる。
以上に説明したように、4個の吐出口列251〜254が設けられるヘッド部23を用いて標準描画を行う場合には、記録用紙9が一定の標準速度にて走査方向に移動しつつヘッド部23の各吐出口241により、幅方向に関して当該吐出口241と同位置に配置されるとともに走査方向に関して記録用紙9上に一定の描画ピッチKにて存在する複数の描画位置(走査方向に並ぶ描画位置)のそれぞれに対して吐出動作が行われる。
また、選択倍速値を2として2倍速描画を行う場合には、記録用紙9が標準速度の2倍にて移動しつつ、幅方向に関して2個ずつ吐出口241が連続する第1および第3吐出口列251,253(並びに、第2および第4吐出口列252,254)により、幅方向に関して当該2個の吐出口241と同位置に配置されるとともに走査方向に関して記録用紙9上に描画ピッチKにて存在する描画位置に向けて順に吐出動作が行われ、当該2個の吐出口241の吐出位置741が通過する描画位置の全体において走査方向の各位置に1つのドットのみが描画されて2倍速描画が実行される。
さらに、選択倍速値を4として4倍速描画を行う場合には、記録用紙9が標準速度の4倍にて移動しつつ、幅方向に関して4個ずつ吐出口241が連続する第1吐出口列251、第3吐出口列253、第2吐出口列252および第4吐出口列254により、幅方向に関して当該4個の吐出口241と同位置に配置されるとともに走査方向に関して記録用紙9上に描画ピッチKにて存在する描画位置に向けて順に吐出動作が行われ、当該4個の吐出口241の吐出位置741が通過する描画位置の全体において走査方向の各位置に1つのドットのみが描画されて4倍速描画が実行される。
ここで、走査方向の解像度を例えば360[dpi]として標準描画が行われる場合に、ヘッド部23において標準描画と同様の吐出動作を行いつつ記録用紙9の移動速度を標準速度の2倍または4倍にすることにより、4個の吐出口列251〜254によりドットが幅方向に並ぶドット列を形成しつつ、走査方向の解像度が180[dpi]または90[dpi]となる画像を高速に記録をすることが考えられる。しかしながら、通常、標準描画における走査方向の解像度は幅方向の解像度に比べて低いため、このような画像記録手法により作成される記録画像では、走査方向に隣接するドット列間の間隔が広くなり、画像の質が大きく低下してしまう。
これに対し、画像記録装置1では、ヘッド部23における吐出口列の数の約数をN(ただし、Nは2以上の少なくとも1つの整数)として、移動機構3が記録用紙9を標準速度のN倍の速度にて移動する場合に、ヘッド部23にて幅方向に関してN個ずつ吐出口241が連続するN個の吐出口列において、走査方向に関して記録用紙9上に描画ピッチKにて存在する描画位置に向けて順に吐出動作を行うことにより、N個の吐出口列(幅方向に連続するN個の吐出口241)にてドットを描画する走査方向の位置をずらしつつ走査方向の各位置(各描画位置列A)にドットが描画され、N倍速描画が実行される。その結果、画像記録装置1では、各吐出口列において全吐出口241の吐出動作を基本周期にて同時に行いつつ、記録用紙9上に高精度な画像を高速に記録することが実現される。
また、画像記録装置1では、N倍速描画時において、各吐出口241からのインクの吐出量が標準描画時よりも増大されることにより、標準描画による記録画像に近似した濃度にて画像を記録して、高速描画時における記録画像の質の低下を抑制することができる。
ところで、既述のように、(N=2)として標準速度の2倍の速度にて記録を行う際には、処理済画像データの生成処理時に、標準描画にて記録される画像を示す元画像の幅方向に対応するx方向の大きさ(画素数)を1/2倍して生成された網点画像から処理済画像データが導かれ、当該網点画像の各画素に対応する1つのドットが記録用紙9上に形成され、(N=4)として標準速度の4倍の速度にて記録を行う際には、処理済画像データの生成処理時に、元画像のx方向の大きさを1/4倍して生成された網点画像から処理済画像データが導かれ、当該網点画像の各画素に対応する1つのドットが記録用紙9上に形成される。すなわち、標準速度のN倍の速度にて記録を行う際には、処理済画像データの生成処理時に、元画像のx方向の大きさを1/N倍して生成された網点画像から処理済画像データが導かれ、当該網点画像の各画素に対応する1つのドットが記録用紙9上に形成されることとなる。
既述のように、標準描画とN倍速描画とでは外形が同じ大きさの画像が記録されるため、標準描画により記録される画像(対象画像)の幅方向および走査方向の解像度をそれぞれDHおよびDV(例えば、それぞれ1440[dpi]および360[dpi])とすると、上記の標準速度のN倍の高速描画では、幅方向および走査方向の解像度をそれぞれDH/N(例えば、(N=2)では720[dpi]であり、(N=4)では360[dpi]である。)およびDVとして画像が記録されていると捉えることができる。換言すれば、画像記録装置1では、標準描画により記録される画像の幅方向の解像度を1/N倍にすることにより、走査方向の解像度を維持しつつ標準速度のN倍の速度にて高速に記録を行うことができる。なお、一般的に幅方向の解像度の低下は、走査方向の解像度の低下に比べて記録画像の質に対する影響は低い。
次に、網点化部452の動作および網点化部452にて使用される閾値マトリクスの生成について説明する。
図19は、網点化部452およびコンピュータ5の機能構成を周辺の機能構成と共に示すブロック図である。コンピュータ5の機能としては、網点化に関する部分のみを示している。コンピュータ5は、図20に示すように、各種演算処理を行うCPU501、基本プログラムを記憶するROM502および各種情報を記憶するRAM503をバスラインに接続した一般的なコンピュータシステムの構成となっている。バスラインにはさらに、網点化(ハーフトーン化)されるカラーの画像の元画像のデータを記憶する画像メモリ504、情報記憶を行う固定ディスク505、各種情報の表示を行うディスプレイ506、操作者からの入力を受け付けるキーボード507aおよびマウス507b、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体90から情報の読み取りを行ったり記録媒体90に情報の書き込みを行う読取/書込装置508、並びに、本体制御部4や他の装置と通信を行う通信部509が、適宜、インターフェイス(I/F)を介する等して接続される。
コンピュータ5には、事前に読取/書込装置508を介して記録媒体90からプログラム900が読み出され、固定ディスク505に記憶される。そして、RAM503や固定ディスク505を作業領域としてCPU501がプログラム900に従って演算処理を実行することにより(すなわち、コンピュータがプログラムを実行することにより)、コンピュータ5が、元画像の網点化に用いられる閾値マトリクス(ディザマトリクスとも呼ばれる。)を生成する閾値マトリクス生成装置としての処理を行う。閾値マトリクスおよび画像メモリ504に記憶されている元画像のデータは通信部509を介して本体制御部4に転送される。
図19中のコンピュータ5に示す非描画要素設定部51、出現番号割当て部52および閾値決定部53は、コンピュータ5により実現される機能である。一方、網点化部452は、複数の色成分の閾値マトリクスをそれぞれ記憶するメモリである複数のマトリクス記憶部461(SPM(Screen Pattern Memory)とも呼ばれる。)、および、多階調の元画像と閾値マトリクスとを色成分毎に比較する比較器462(すなわち、網点化回路)を含む。
コンピュータ5の機能は専用の電気的回路により実現されてもよく、部分的に専用の電気的回路が用いられてもよい。また、網点化部452を含む画像データ処理部431の機能も同様に、コンピュータにより実現されてもよく、適宜専用の電気的回路が利用されてもよい。本体制御部4の他の機能構成に関しても同様である。
図21は、図4のステップS12a,S12bにおける処理済画像データの生成の流れを示す図である。網点化部452では、予め元画像の網点化に必要な閾値マトリクスがマトリクス記憶部461に記憶されて準備される(ステップS21)。閾値マトリクスとしては、標準および各倍速記録に対応するものが元画像の色成分毎に準備される。以下の説明では一の色成分用の閾値マトリクスのみについて着目するが、他の色用の閾値マトリクスについても同様である。
既述のように、標準描画が行われる場合は、元画像のサイズ変更は行われず、N倍速描画が行われる場合は、サイズ変更部451により元画像のサイズが変更される(ステップS22)。また、元画像の変更後のサイズに対応する閾値マトリクスが選択される(ステップS23)。比較器462により、元画像と選択された閾値マトリクスとが比較されることにより、網点画像データが生成される(ステップS24)。必要に応じてサイズ変更が行われた元画像と、この元画像のサイズに合わせた閾値マトリクスとを利用することにより、N倍速描画時の演算量を削減することができる。
図22は、閾値マトリクス81および元画像70を抽象的に示す図である。閾値マトリクス81では、幅方向に対応する行方向(図22中にてx方向として示す。)、および、走査方向(記録方向)に対応する列方向(図22中にてy方向として示す。)に複数の要素が配列されており、元画像70においても幅方向に対応する方向(以下、閾値マトリクス81と同様に「行方向」と呼ぶ。)および走査方向に対応する方向(以下、閾値マトリクス81と同様に「列方向」と呼ぶ。)に複数の画素が配列されている(後述の網点画像において同様)。元画像は、例えば、0〜255までの階調値にて表現される。もちろん、さらに多くの階調値が利用されてもよい。
元画像70の網点化の際には、図22に示すように元画像70を同一の大きさの多数の領域に分割して網点化の単位となる繰り返し領域71が設定される。元画像70がサイズ変更されたものである場合は、繰り返し領域71のサイズも変更されたもにとなる。各マトリクス記憶部461は1つの繰り返し領域71に相当する記憶領域を有し、この記憶領域の各アドレス(座標)に閾値が設定されることにより閾値マトリクス81を記憶している。そして、概念的には元画像70の各繰り返し領域71と選択された閾値マトリクス81とを重ね合わせ、繰り返し領域71の各画素の当該色成分の画素値と閾値マトリクス81の対応する閾値とが比較されることにより、記録用紙9上のその画素の位置に描画(当該色のドットの形成)を行うか否かが決定される。
実際には、図19の比較器462が有するアドレス発生器からのアドレス信号に基づいて元画像70の1つの画素の画素値が取得される。一方、アドレス発生器では元画像70中の当該画素に相当する繰り返し領域71中の位置を示すアドレス信号も生成され、閾値マトリクス81における1つの閾値が特定されてマトリクス記憶部461から読み出される。そして、画素値とマトリクス記憶部461からの閾値とが比較器462にて比較されることにより、2値の網点画像(出力画像)におけるその画素の位置(アドレス)の画素値が決定される。
一の色成分に着目した場合に、図22に示す多階調の元画像70において、画素値が閾値マトリクス81の対応する閾値よりも大きい位置には、例えば、画素値「1」が付与され(すなわち、ドットが置かれ)、残りの画素には画素値「0」が付与される(すなわち、ドットは置かれない)。このようにして、網点化部452では、元画像70が閾値マトリクス81を用いて網点化され、網点画像データが生成される。
網点画像データは、既述のように、画素列割振り部453により吐出口列毎のデータに割り振られ(ステップS25)、さらにダミー画素列挿入部454によりダミー画素列が画素列の前後に必要に応じて挿入されることにより、処理済画像データが生成される(ステップS26)。
次に、閾値マトリクスを生成する処理について図23.Aおよび図23.Bを参照しつつ説明する。ここでは、2倍速描画および標準描画に用いられる閾値マトリクスの生成を例示する。
コンピュータ5では、標準描画の際の1つの繰り返し領域71に対応する記憶領域がマトリクス空間80として準備される(ステップS31)。マトリクス空間80は、画像記録装置1における記録方向に対応する列方向および列方向に垂直な行方向に配列されたマトリクス要素の集合である。各マトリクス要素には、1つの閾値が記憶可能である。マトリクス空間80に閾値を設定したものが、閾値マトリクスである。
非描画要素設定部51は、2倍速描画において、記録用紙9上における描画不能位置、すなわち、ドットが記録不可能な描画位置に対応するマトリクス要素を、非描画要素として設定する(ステップS32)。図14に示す例の場合、図24に示すように、チェッカーボード状に列方向および行方向に1要素置きに非描画要素812が設定される。以下、非描画要素812以外の平行斜線を付すマトリクス要素を「描画要素811」と呼ぶ。なお、マトリクス空間80の準備と非描画要素812の設定とは、実質的に並行して行われてもよい。
次に、出現番号割当て部52による描画要素811への出現番号の割り当てが行われる。出現番号とは、元画像の階調値の上昇に伴って出現するドットの描画位置の順番である。まず、出現番号割当て部52は、任意の1つの描画要素811に最初の出現番号を割り当てる(ステップS33)。以下、出現番号が決定された描画要素を「決定済み要素」と呼び、出現番号が未決定の描画要素を「未決定要素」と呼ぶ。
続いて、各未決定要素に対して、所定の評価関数を用いて評価値が算出されることにより、決定済み要素から最も離れた1つの未決定要素が特定され、当該未決定要素に次の出現番号が割り当てられる(ステップS34)。これにより、当該描画要素811が決定済み要素に変更される。このとき、元画像70の網点化時の閾値マトリクス81の反復適用が考慮され(図22参照)、マトリクス空間80の周囲の8近傍のマトリクス空間80内にも決定済み要素が同様に存在するものとして評価値の演算が実行される。ステップS34は、全ての描画要素811が決定済み要素となるまで繰り返される(ステップS35)。
次に、評価値の算出の一例について説明する。n番目の出現番号が割り当てられる描画要素811を求める際において、マトリクス空間80内の座標(xd,yd)の未決定要素の評価値Edn(xd,yd)は、中央のマトリクス空間80およびこのマトリクス空間80の8近傍に想定されるマトリクス空間80の番号をrとし、r番目のマトリクス空間80内のm番目の出現番号が割り当てられた決定済み要素のx方向およびy方向の位置(座標値)をそれぞれxdmrおよびydmrとして、数3により求められる。ただし、数3において、nおよびrは0から始まる。
実際には、数3の評価関数において、r番目のマトリクス空間80内のm番目の決定済み要素のx方向の位置xdmrは、中央のマトリクス空間80内における対応する決定済み要素のx方向の位置に、マトリクス空間80の番号に応じて(すなわち、中央のマトリクス空間80に対する相対位置に応じて)、マトリクス空間80のx方向の大きさを加算または減算することにより、もしくは、当該位置と同位置として求められる。y方向の位置ydmrは、中央のマトリクス空間80内における対応する決定済み要素のy方向の位置に、マトリクス空間80の番号に応じてマトリクス空間80のy方向の大きさを加算または減算することにより、もしくは、当該位置と同位置として求められる。
全ての未決定要素に対して評価値が算出されると、評価値が最小となる未決定要素に出現番号nが割り当てられる。ここで、数3の評価関数では、評価値として、中央のマトリクス空間80およびこのマトリクス空間80の8近傍に想定されるマトリクス空間80における決定済み要素と、中央のマトリクス空間80内の未決定要素との間の距離の二乗の逆数の和が求められるため、評価値が最小となる未決定要素は、閾値マトリクス81の反復適用を前提として決定済み要素から最も離れたものとなる。
評価値の算出方法は、数3には限定されない。例えば、決定済み要素からの距離の和が評価値として求められ、評価値が最大の未決定要素に次の出現番号が割り当てられてもよい。さらには、最も近い決定済み要素からの距離が一番大きい未決定要素に次の出現番号が割り当てられてもよい。
全ての描画要素811に出現番号が割り当てられると、非描画要素812が未決定要素に設定される。そして、任意の1つの未決定要素に次の出現番号が割り当てられ、決定済み要素となる(ステップS41)。描画要素811の場合と同様に、各未決定要素の評価値が求められ、評価値が最も小さい未決定要素に次の出現番号が割り当てられる(ステップS42)。すなわち、元画像の網点化時の閾値マトリクス81の反復適用を考慮しつつ、全ての決定済み要素から最も離れた非描画要素812を特定して次の出現番号が割り当てられる。
なお、描画要素811はチェッカーボード状に均一に配列されているため、ステップS42の演算処理では、決定済み要素である描画要素811は、評価値算出の際の対象外とされてもよい。
全ての非描画要素812に出現番号が割り当てられるまでステップS42は繰り返される(ステップS43)。これにより、全てのマトリクス要素に出現番号が割り当てられる。求められた出現番号の配列は一旦保存される。
次に、閾値決定部53により、標準描画用、すなわち、1倍速用の閾値マトリクスが生成される(ステップS44)。この処理では、マトリクス要素に与えられるべき閾値の範囲に、全マトリクス要素の出現番号が圧縮される。これにより、各描画要素811および各非描画要素812(ただし、標準描画では非描画要素も描画に利用される。)の閾値が決定される。例えば、出現番号を(閾値を設定すべき要素数−1)で除算し、これに(階調数−1)を乗算して四捨五入することにより、閾値が求められる。階調数が256の場合、0〜255のいずれかの整数が閾値として与えられる。このようにして生成された閾値マトリクスを用いることにより、50%の階調のチント画像を網点化すると、チェッカーボード状の描画が行われることになる。
さらに、閾値決定部53により、2倍速描画用の閾値マトリクスが生成される(ステップS45)。2倍速用閾値マトリクスでの生成では、描画要素811の出現番号のみを用いて出現番号が閾値に圧縮される。これにより、出現番号に従って、描画要素811のみの閾値が決定される。さらに、非描画要素812を省いて行方向に詰めることにより、行方向に関してマトリクス空間が1/2に縮小される(ステップS46)。その結果、図21のステップS22にて縮小された元画像に対応する閾値マトリクスが得られる。ステップS24の網点化では、縮小後の元画像と2倍速用閾値マトリクスとが比較される。
閾値マトリクスのデータは、読取/書込装置508にて(コンピュータを含む)電子装置読み取り/書き込み可能な記録媒体に記録され、記録媒体が本体制御部4にて読み取られることによりマトリクス記憶部461に記憶されてもよく、さらに、他の装置にて記録媒体を読み取ることにより、当該装置にて閾値マトリクスを用いて網点画像が生成されてもよい。
ここで、標準描画時のマトリクス空間を行方向に1/2に縮小したものを、2倍速用の閾値マトリクスを生成する際のマトリクス空間として準備し、このマトリクス空間に上記評価値を利用しつつ各マトリクス要素に閾値を単純に設定した場合について比較検討する。すなわち、1/2の大きさのマトリクス空間において、決定済み要素から最も離れた未決定要素に次の出現番号を割り当てて閾値が決定される。
この場合、階調が50%の元画像を行方向に縮小して網点化すると、図25.Aに示すように、ドットが描画される画素711とドットが描画されない画素712とがチェッカーボード状に並ぶ。しかし、この網点画像は、行方向に1/2に縮小したものであり、実際の記録の際には、図25.Bに示すように、非描画の画素713が挿入され、行方向に2倍に広がった状態で記録される。
図25.Bから明らかなように、ドットが描画される画素711は偏って存在し、階調50%のチント画像として筋が並んだ画像が記録されることになる。これに対し、画像記録装置1の2倍速用の閾値マトリクスは、非描画要素812の存在を前提に閾値が設定されるため、描画ドットの良好な離散状態が得られ、上記のような偏りは生じない。
さらに、標準描画用の閾値マトリクスが、図23.BのステップS42にて非描画要素812に出現番号を割り当てることにより生成されるため、2倍速用の閾値マトリクスの生成工程を利用して標準描画用の閾値マトリクスを速やかに得ることができる。
図26は、2倍速用の閾値マトリクスを取得する他の例を示す図である。図26では、まず、実マトリクス空間として、標準描画用のマトリクス空間から非描画要素を省いてマトリクス空間を行方向に1/2に縮小した空間が準備される(ステップS51)。実マトリクス空間は、記憶装置にマトリクス記憶部461として設定されるメモリ空間である。次に、非描画要素設定部51により、図24に示すマトリクス空間と実マトリクス空間との対応関係が設定される(ステップS52)。図24に示すマトリクス空間は実際には準備されない。以下、仮想的に設定された図24のマトリクス空間を「仮想マトリクス空間」と呼ぶ。実マトリクス空間と仮想マトリクス空間との対応関係を設定することにより、実質的に仮想マトリクス空間に非描画要素812が設定される。なお、実マトリクス空間の準備の前に実マトリクス空間と仮想マトリクス空間との対応関係とが準備されてもよく、この場合は、実マトリクス空間の準備と非描画要素の設定とが同時に行われると捉えられてもよい。
実マトリクス空間の全てのマトリクス要素は、仮想マトリクス空間の描画要素811に対応する。出現番号割当て部52は、実マトリクス空間の1つの描画要素に最初の出現番号を割り当てる(ステップS53)。そして、出現番号割当て部52が、実マトリクス空間のマトリクス要素の座標を仮想マトリクス空間での座標に変換しつつ、図23.AのステップS34と同様に、決定済み要素から最も離れた未決定要素に次の出現番号を割り当てる(ステップS54)。
具体的には、評価値を求める未決定要素が奇数行に位置する場合、実マトリクス空間における座標(x,y)は、仮想マトリクス空間における座標(2x−1,y)に変換される。ただし、行および列の座標x,yは、0から始まる。未決定要素が偶数行に位置する場合、実マトリクス空間における座標(x,y)は、仮想マトリクス空間における座標(2x,y)に変換される。このような座標変換を未決定要素および決定済み要素に対して行いつつ、各未決定要素の仮想マトリクス空間における評価値が求められる。
実マトリクス空間の座標を仮想マトリクス空間の座標へと変換する作業は、予め変換テーブルを準備しておき、この変換テーブルを参照して行われてもよい。これにより、座標変換を高速に行うことができる。
仮想マトリクス空間における評価値の算出および実マトリクス空間の描画要素への出現番号の割り当てが、未決定要素が存在しなくなるまで繰り返されることにより(ステップS55)、実マトリクス空間における全ての描画要素に出現番号が割り当てられる。仮想マトリクス空間を利用することにより、演算時に必要なメモリ容量を削減することができる。
その後、出現番号が階調値範囲内に圧縮されることにより、各マトリクス要素に閾値が設定される(ステップS56)。このようにして作成された閾値マトリクスは、最初の出現番号が割り当てられた描画要素の仮想マトリクス空間における位置が、図23.AのステップS33と同じであれば、図23.BのステップS45にて生成されるものと同一となる。図26の手法が採用される場合、標準描画時の閾値マトリクスは、別途作成される。
図27は、2倍速用の閾値マトリクスの生成時に準備されるマトリクス空間80の他の例を示す図である。図27のマトリクス空間80では、列方向に関して描画要素811が1つ置きに、行方向に関しては描画要素811が2つ置きに2つ配置される。このように、行方向に関しては、2個の描画要素811が連続して配置される。画像記録装置1では、このような非描画要素812の配置も閾値マトリクスの生成に利用される場合がある。
一般的に表現すれば、N倍速で画像記録が行われる場合、列方向に関して(N−1)個置きに1つ、かつ、行方向に関して(N−1)個置きに1つまたは(2N−2)個置きに2つ描画要素811が配置される。他のマトリクス要素は非描画要素812に設定される。この場合における閾値の決定方法は、図23.Aおよび図23.Bに示す方法、または、図26に示す方向と同様である。これにより、高速に画像を記録する場合においても、描画ドットの良好な離散状態が得られる。
なお、N倍速描画においても非描画要素812は、記録用紙9上の描画不能位置に対応して設定される。しかし、各吐出口列が任意のタイミングで吐出動作を行うことができる場合は、非描画要素812は描画不能位置には限定されず、上記Nは吐出口列の数の約数には限定されない。この場合、Nは2以上の任意の整数に設定可能である。画像記録装置1の記録速度、並びに、閾値マトリクスの描画要素811および非描画要素812の配置は、Nの値に応じて、様々に変更可能である。
以上、画像記録装置1の構成および動作、並びに、閾値マトリクスの生成について説明してきたが、これらは様々な変形が可能である。
上記実施の形態では、ヘッド部23において複数の吐出口列が配列され、各吐出口列において全吐出口の吐出動作を一定の周期にて同時に行うことにより、高精度な画像の高速記録が容易に実現されるが、画像記録装置では、それぞれが基本周期にて吐出動作を繰り返しつつ吐出タイミングが個別に変更可能な複数の吐出口を有する1つの吐出口列が設けられていてもよい。
このような画像記録装置でも、記録用紙9が標準速度にて走査方向に移動する場合に、幅方向に一定のピッチにて配列される複数の吐出口のそれぞれが走査方向に関して記録用紙9上に一定の描画ピッチにて存在する描画位置に向けて吐出動作を行う標準描画が実行され、記録用紙9が標準速度のN倍の速度(ただし、Nは2以上の少なくとも1つの整数)にて走査方向に移動する場合に、複数の吐出口において幅方向に関してN個ずつ吐出口が連続する各吐出口群において、走査方向に関して記録用紙9上に描画ピッチにて存在する描画位置に向けて、各吐出口群に含まれる吐出口から順に吐出動作を行うことにより、各吐出口群の吐出口にてドットを描画する走査方向の位置をずらしつつ走査方向の各位置にドットを描画するN倍速描画が実行される。これにより、記録用紙9上に高精度な画像を高速に記録することができる。
また、上記実施の形態のように、走査方向に配列される複数の吐出口列251〜254により幅方向に関して一定のピッチにて吐出口241が配列される場合には、N倍速描画時において、複数の吐出口241の各吐出口群において同一の描画ブロックに対して吐出動作を行う順序が同じとされるが、ヘッド部に1つの吐出口列のみが設けられる場合も、N倍速描画時に複数の吐出口の各吐出口群において吐出動作を行う吐出口の順序が同じとされることが好ましく、これにより、複数の吐出口における吐出動作の制御を容易に行うことが可能となる。
図1の画像記録装置1では、ヘッド部23にて吐出口列251〜254の列間隔Wが、選択倍速値として選択可能な吐出口列の数のいずれかの約数N(ただし、1を除く。)の整数倍の値に描画ピッチKを乗じた距離とされ(すなわち、走査方向の解像度DVを1/Nとした場合の描画位置の中心間距離(描画ピッチKのN倍)の整数倍とされ)、幅方向にN個ずつ吐出口241が連続するN個の吐出口列において吐出動作のタイミングの位相を360度/Nずつずらすことにより吐出動作の制御が容易に実現される。
これに対し、例えば、吐出口列が幅方向に対して傾斜して配置される場合等には、吐出口毎に吐出動作のタイミングの位相が変更されてもよい(標準描画において同様)。すなわち、各吐出口にて基本周期にて吐出動作が繰り返されるのであるならば、複数の吐出口における吐出動作の制御は様々な態様にて実現されてよい。
また、画像記録装置1では、基本周期の間にヘッド部23が記録用紙9に対して相対的に移動する距離にて列間隔Wを除した値が整数となる範囲内で、標準速度(ヘッド部23に対して予め決定された標準速度)をα倍または1/β倍(α,βは正の整数)した速度も標準速度とみなすことにより、様々な標準速度に対応する標準描画を基準としてN倍速描画が行われてもよい。
図17に示す4倍速の高速描画の例では、幅方向および走査方向の双方に傾斜する方向にドットが連続しているが、幅方向および走査方向のそれぞれに3個置きに存在する描画位置(すなわち、幅方向および走査方向のそれぞれに互いに4個の描画位置分の距離だけ離れた描画位置)にドットが描画されるのであれば、ドットが描画される描画位置の配置は様々に変更可能である。
さらに、画像記録装置1では、図15の記録画像(または、図18の記録画像)に対応する元画像データが準備され、この元画像データから高速描画用の処理済画像データが生成されてもよい。
画像記録装置では、ヘッド部23が記録用紙9に対して主走査および副走査することにより、記録が行われてもよい。例えば、幅方向に関して複数の吐出口が配列される幅が記録用紙9の記録領域よりも狭くされるとともに、ヘッド部23を走査方向および幅方向に記録用紙9に対して相対的に移動する走査機構が設けられる画像記録装置では、ヘッド部23がインクを吐出しつつ走査方向に相対移動(主走査)し、記録用紙9の端部へと到達した後に幅方向に所定距離だけ相対移動(副走査)し、その後、インクを吐出しつつ走査方向の直前の主走査とは逆向きに相対移動する。このように、ヘッド部23が記録用紙9に対して走査方向に主走査するとともに、主走査が完了する毎に、幅方向に間欠的に副走査することにより、記録用紙9の全体に画像が記録される。この場合の画像記録は、一度走査した領域をさらに走査するインタレース方式であってもよく、一度走査した領域を走査しないワンパス方式であってもよい。
ただし、上記実施の形態にて説明した記録用紙9上に高精度な画像を高速に記録する技術は、ヘッド部23に含まれる複数の吐出口が幅方向に関して記録用紙9上の記録領域の全体に亘って配列され、記録用紙9がヘッド部23の下方を1回通過するのみで(すなわち、ワンパス方式にて)記録が完了する高速画像記録装置に採用されることが好ましく、これにより、記録用紙9上に画像をより短時間に記録することができる。
画像記録装置1では、記録対象を移動する移動機構3により記録用紙9がヘッド部23に対して走査方向に移動するが、ヘッド部23をY方向に移動する移動機構が設けられてもよい。また、記録用紙9が枚葉であり、各記録用紙9が順次搬送されてもよい。このように、記録用紙9をヘッド部23に対して相対的に走査方向に一定の標準速度または標準速度のN倍にて移動する走査機構は様々な構成にて実現可能である。
また、画像記録装置1では、多階調のインクの吐出(例えば、大きさが異なるドットの形成)が行われてもよい。この場合、各サイズのドット用のサブマトリクスが生成され、サブマトリクスの集合が閾値マトリクスとして描画速度に応じて準備される。
画像記録装置1における記録対象は、記録用紙9以外にフィルム等であってもよい。
上記実施の形態にて利用される閾値マトリクスは、電子写真方式の印刷装置やCTP(Computer To Plate)用の製版装置等、印刷物の作成に係る他の画像記録装置にて用いられてもよい。このように、記録対象上において、所定の走査方向に垂直な幅方向に配列される複数の描画位置にそれぞれドットを描画する複数のドット出力要素を有するヘッドと、記録対象上の複数の描画位置を走査方向に対象物に対して相対的に移動させる移動機構とを備える様々な画像記録装置において、上記実施の形態にて説明した閾値マトリクスを利用することができる。
上記実施の形態では、本体制御部4が、画像データを生成する画像データ生成装置としての役割を果たすが、画像データ生成装置としての機能は本体10から独立して設けられてもよい。また、網点画像データは、ディスプレイ上における画像の表示等、印刷以外の用途に用いられてもよい。
上記実施の形態では、N倍速にて画像記録を行う場合に、元画像が行方向に縮小され、これに適合する閾値マトリクスが利用されるが、元画像の縮小を行わずに網点化が行われてもよい。この場合、閾値マトリクスとしては非描画要素を含むものが利用される。
また、未決定要素の評価値を求める際に、決定済み要素からの距離のみならず、決定済み要素の存在位置の方向に応じてに重み付けが行われてもよい。また、評価値を用いて出現番号を求めることは、評価値を用いて消滅番号を求めることと実質的に同様である。例えば、上記実施の形態にて求めた出現番号の順に、階調値が最大値から減少するに従ってドットが形成されない描画位置が決定されてもよい。
図23.Aおよび図23.Bに示す動作において、2倍速用の閾値マトリクスのみが生成されてもよい。すなわち、ステップS31〜S35,S45,S46のみが実行されてもよい。
非描画要素を考慮した閾値マトリクスの生成は、描画位置に制限がある様々な装置に利用可能であり、上記実施の形態にて説明したヘッド部を有する装置での利用には限定されない。
上記実施形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。