JP2014192217A - 化学機械研磨パッドおよびそれを用いた化学機械研磨方法 - Google Patents

化学機械研磨パッドおよびそれを用いた化学機械研磨方法 Download PDF

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和男 杉浦
Hiroyuki Tano
裕之 田野
Katsutaka Yokoi
勝孝 横井
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Abstract

【課題】CMPにおいて高い研磨速度を示すと共に、被研磨面の平坦性の向上と研磨欠陥(スクラッチ)の低減とを両立させることができる化学機械研磨パッド、および該化学機械研磨パッドを用いた化学機械研磨方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る化学機械研磨パッドは、(A1)アクリロニトリル−ブタジエン共重合体と、(A2)塩化ビニル樹脂と、を含有し、前記(A1)成分と前記(A2)成分との合計を100質量部としたときの含有割合が、(A1)成分30〜90質量部、(A2)成分70〜10質量部である研磨層を有することを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、化学機械研磨パッドおよび該化学機械研磨パッドを用いた化学機械研磨方法に関する。
半導体装置の製造において、優れた平坦性を有する表面を形成することができる研磨方法として、化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing、以下「CMP」ともいう。)が広く用いられている。化学機械研磨は、化学機械研磨パッドと被研磨面とを摺動させながら、化学機械研磨パッドの表面に化学機械研磨用水系分散体を流下させつつ、化学機械研磨的に研磨を行う技術である。
このような化学機械研磨では、化学機械研磨パッドの性状や特性により研磨結果が大きく左右されることが知られている。一般に、化学機械研磨パッドが柔らかいと、被研磨面の表面欠陥(具体的には、スクラッチと呼ばれる引っ掻き傷状の表面欠陥)を低減させることができるが、被研磨面の局所的な平坦性は悪くなってしまう。逆に、化学機械研磨パッドが硬いと、被研磨面の平坦性は良好となるが、被研磨面のスクラッチが増大してしまう。このような観点から、弾性率に着目した種々の化学機械研磨パッドが提案されている。
例えば半導体基板表面を平坦化する化学機械研磨に好適な化学機械研磨パッドとしては、ポリウレタンにフィラー状の成分を分散させた研磨パッド(例えば、特許文献1参照)、発泡ウレタンを使用した研磨パッド(例えば、特許文献2および特許文献3参照)、ポリオールやイソシアネートの使用量を調整してウレタン樹脂の架橋度を調節することにより物性値を制御した研磨パッド(例えば、特許文献4参照)等が検討されている。
特表平8−500622号公報 特開2005−236200号公報 特許第3956364号公報 特開2007−284625号公報
しかしながら、これらの従来の材料を用いた化学機械研磨パッドでは、研磨層の高弾性率化に着目して検討されているため、CMPにおける被研磨面の平坦性を向上させることはできても、研磨欠陥の発生を十分に抑制できない場合があった。
そこで、本発明に係る幾つかの態様は、上記課題を解決することで、CMPにおいて高い研磨速度を示すと共に、被研磨面の平坦性の向上と研磨欠陥(スクラッチ)の低減とを両立させることができる化学機械研磨パッド、および該化学機械研磨パッドを用いた化学機械研磨方法を提供するものである。
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
[適用例1]
本発明に係る化学機械研磨パッドの一態様は、
(A1)アクリロニトリル−ブタジエン共重合体と、
(A2)塩化ビニル樹脂と、
を含有し、前記(A1)成分と前記(A2)成分の合計を100質量部としたときの含有割合が、(A1)成分30〜90質量部、(A2)成分70〜10質量部である研磨層を有することを特徴とする。
[適用例2]
適用例1の化学機械研磨パッドにおいて、
前記(A1)アクリロニトリル−ブタジエン共重合体の結合アクリロニトリル量が20〜45質量%であることができる。
[適用例3]
適用例1または適用例2の化学機械研磨パッドにおいて、
前記(A2)塩化ビニル樹脂の平均重合度が800〜2500であることができる。
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか一例の化学機械研磨パッドにおいて、
前記研磨層が、さらに(B)水溶性粒子5〜120質量部を含有することができる。
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれか一例の化学機械研磨パッドにおいて、
前記研磨層に含まれる前記(A1)成分および前記(A2)成分の少なくとも一部が架橋されることができる。
[適用例6]
適用例5の化学機械研磨パッドにおいて、
前記研磨層のガラス転移温度が80℃以下であることができる。
[適用例7]
本発明に係る化学機械研磨方法の一態様は、
適用例1ないし適用例6のいずれか一例の化学機械研磨パッドを用いて化学機械研磨する工程を含むことを特徴とする。
本実施の形態に係る化学機械研磨パッドによれば、高い研磨速度を示すと共に、従来の化学機械研磨パッドよりも、被研磨面の平坦性を格段に向上させ、かつ研磨欠陥(スクラッチ)を格段に低減させることができる。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
1.化学機械研磨パッド
本実施の形態に係る化学機械研磨パッドの構成としては、後に詳述するが少なくとも一方の面に研磨層を備えていれば特に限定されない。かかる研磨層は、(A1)アクリロニトリル−ブタジエン共重合体30〜90質量部と、(A2)塩化ビニル樹脂70〜10質量部と、を含有している。
本実施の形態に係る化学機械研磨パッドによれば、後述する実施例からも明らかなよう
に、高い研磨速度を示すと共に、被研磨面の平坦性を向上させ、かつ研磨欠陥(スクラッチ)を低減させることができる。
以下、本実施の形態に係る化学機械研磨パッドの研磨層の形成に使用され得る成分、研磨層の形状、製造方法等について詳細に説明する。
1.1.(A1)アクリロニトリル−ブタジエン共重合体
本実施の形態に係る化学機械研磨パッドの研磨層は、(A1)アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(以下、「(A1)成分」ともいう。)を含有する。(A1)成分と(A2)成分の合計100質量部中に占める(A1)成分の含有割合は30〜90質量部であり、35〜80質量部であることが好ましく、40〜70質量部であることがより好ましい。(A1)成分を上記範囲内で含有することにより、得られる研磨層のショアD硬度が適度となり、CMPにおいて高い研磨速度が得られると共に、被研磨面の平坦性の向上と研磨欠陥(スクラッチ)の低減とを両立させることができる。(A1)成分の含有割合が上記範囲未満であると、得られる研磨層のショアD硬度が高くなりすぎて、被研磨面の平坦性は向上するが、研磨欠陥(スクラッチ)が増大する傾向がある。一方、(A1)成分の含有割合が上記範囲を超えると、得られる研磨層のショアD硬度が低くなりすぎて、研磨欠陥(スクラッチ)は減少するが、被研磨面の平坦性が損なわれる傾向がある。なお、(A1)成分と(A2)成分の含有割合は、研磨層を後述する(C)成分で架橋させた場合は、架橋前の(A1)成分と(A2)成分の含有割合を意味する。
(A1)アクリロニトリル−ブタジエン共重合体中の結合アクリロニトリル量は、20〜45質量%であることが好ましく、25〜45質量%であることがより好ましく、30〜45質量%であることが特に好ましい。結合アクリロニトリル量が上記範囲内にあると、(A2)塩化ビニル樹脂との相溶性が良好となり、得られる研磨層のショアD硬度も増大し、耐摩耗性も向上する。
(A1)アクリロニトリル−ブタジエン共重合体の製造方法は、特に制限されるものではないが、アクリロニトリルとブタジエンとを乳化重合し、凝固・乾燥させることにより容易に製造できる。なお、(A1)アクリロニトリル−ブタジエン共重合体中の結合アクリロニトリル量は、共重合体組成や重合条件を変更することにより適宜調整することができる。
1.2.塩化ビニル樹脂
本実施の形態に係る化学機械研磨パッドの研磨層は、(A2)塩化ビニル樹脂(以下、「(A2)成分」ともいう。)を含有する。(A1)成分と(A2)成分の合計100質量部中に占める(A2)成分の含有割合は70〜10質量部であり、65〜20質量部であることが好ましく、60〜30質量部であることがより好ましい。(A2)成分を上記範囲内で含有することにより、得られる研磨層のショアD硬度が適度となり、CMPにおいて高い研磨速度が得られると共に、被研磨面の平坦性の向上と研磨欠陥(スクラッチ)の低減とを両立させることができる。(A2)成分の含有割合が上記範囲未満であると、得られる研磨層のショアD硬度が低くなりすぎ、研磨欠陥(スクラッチ)は減少するが、被研磨面の平坦性が損なわれる傾向がある。一方、(A2)成分の含有割合が上記範囲を超えると、得られる研磨層のショアD硬度が高くなりすぎ、被研磨面の平坦性は向上するが、研磨欠陥(スクラッチ)が増大する傾向がある。
(A2)塩化ビニル樹脂の平均重合度は、800〜2500であることが好ましく、900〜2200であることがより好ましく、1000〜2000であることが特に好ましい。(A2)塩化ビニル樹脂の平均重合度が上記範囲内にあると、CMPにおける被研磨面の平坦性の向上と研磨欠陥(スクラッチ)の低減とを両立させやすくすることができる
。(A2)塩化ビニル樹脂の平均重合度が上記範囲外であると、研磨欠陥(スクラッチ)の発生が増大する傾向がある。
(A2)塩化ビニル樹脂の製造方法は、特に制限されるものではないが、塩化ビニルモノマーを懸濁重合させることにより容易に製造できる。まず、あらかじめ水と懸濁剤を入れた反応容器内に圧力をかけて液化させた原料の塩化ビニルモノマーを入れ、高速で攪拌することで塩化ビニルモノマーを微小な液滴にする。次いで、重合開始剤を重合容器に入れ、数気圧、40〜60℃の条件下で反応させる。得られた反応物を重合容器より抜き出した後に脱水、乾燥を行い、さらにスクリーンで粒子径を整えることで塩化ビニル樹脂を得ることができる。なお、(A2)塩化ビニル樹脂の平均重合度は、懸濁剤や重合条件を変更することにより適宜調整することができる。
1.3.(B)水溶性粒子
本実施の形態に係る化学機械研磨パッドの研磨層は、(B)水溶性粒子(以下、「(B)成分」ともいう。)を含有してもよい。(B)水溶性粒子は、研磨層中に粒子状で分散して存在し、CMPの際に化学機械研磨用水系分散体と接触することで脱離して、研磨層の表面近傍に該化学機械研磨用水系分散体を保持することのできる空孔(ポア)を形成することができる。この脱離は、化学機械研磨用水系分散体中に含有される水等との接触により溶解することで生じてもよく、この水等を含有して膨潤してコロイド状となることで生じるものであってもよい。
(B)水溶性粒子は、ポアを形成する効果以外にも、化学機械研磨パッドとしたときのパッドの押し込み硬さを大きくする効果を有する。このことにより、被研磨面に負荷できる圧力を大きくでき、これに伴い研磨速度を向上することができ、より高い研磨平坦性が得られる。したがって、(B)水溶性粒子は、化学機械研磨パッドにおいて十分な押し込み硬さを確保できる観点から、中実体であることが好ましい。
(B)水溶性粒子を構成する材料は特に限定されないが、例えば有機系水溶性粒子および無機系水溶性粒子が挙げられる。有機系水溶性粒子としては、デキストリン、シクロデキストリン、マンニット、糖類(乳糖等)、セルロース類(ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース等)、でんぷん、蛋白質、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキサイド、水溶性の感光性樹脂、スルフォン化ポリイソプレン、スルフォン化イソプレン共重合体等から形成されたものが挙げられる。無機系水溶性粒子としては、酢酸カリウム、硝酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、リン酸カリウム、硝酸マグネシウム、酸化亜鉛等から形成されたものが挙げられる。これらの中でも、有機系水溶性粒子を用いることが好ましく、シクロデキストリンを用いることが特に好ましい。これらの水溶性粒子は、上記各材料を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、所定の材料からなる一種の水溶性粒子であってもよく、異なる材料からなる二種以上の水溶性粒子であってもよい。
(B)水溶性粒子の平均粒径は5〜80μmであることが好ましく、10〜50μmであることがより好ましい。上記範囲内の平均粒径を有する水溶性粒子を用いることにより、研磨層表面に形成されるポアの化学機械研磨用水系分散体の保持能力とパッドの機械的強度とのバランスに優れた研磨層が得られる。
(B)水溶性粒子の含有割合は、(A1)成分と(A2)成分の合計100質量部に対して、5〜120質量部であることが好ましく、10〜80質量部であることがより好ましく、30〜50質量部であることが特に好ましい。上記範囲内の含有割合とすることにより、良好な研磨特性を示す研磨層が得られる。
1.4.(C)架橋剤
本実施の形態に係る化学機械研磨パッドの研磨層は、(C)架橋剤(以下、「(C)成分」ともいう。)で架橋されていてもよい。化学機械研磨パッドの研磨層を形成するための研磨層用組成物に(C)架橋剤を添加して混練することで、(A1)成分と(A2)成分との少なくとも一部が架橋して架橋構造が構築される。研磨層が(A1)成分と(A2)成分との架橋構造を有することにより、ショアD硬度と弾性率とのバランスを図ることができ、被研磨面の平坦性の向上と研磨欠陥(スクラッチ)の低減とを両立させやすくすることができる。
(C)架橋剤としては、過酸化ジクミル、過酸化ジエチル、過酸化ジ−t−ブチル、過酸化ジアセチル、過酸化ジアシル等の有機過酸化物;N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等のスルフェンアミド系架橋剤;テトラメチルチウラムジスルフィド等のチウラム系架橋剤;等の有機架橋剤;硫黄等の無機架橋剤が挙げられる。これらの中でも、ハンドリング性および化学機械研磨工程における汚染性が少ない等の観点から、有機架橋剤を用いることが好ましい。
(C)架橋剤の含有割合としては、(A1)成分と(A2)成分の合計100質量部に対して、3質量部以下であることが好ましく、0.01〜3質量部であることがより好ましく、0.2〜3質量部であることがさらに好ましく、0.3〜2質量部であることが特に好ましい。
1.5.研磨層の形状および物性
研磨層の平面形状は、特に限定されないが、例えば円形状、多角形状等とすることができ、使用する研磨装置に応じて適宜選択することができる。研磨層の平面形状が円形状である場合、その大きさは、好ましくは直径150mm〜1200mm、より好ましくは直径500mm〜1000mmである。研磨層の厚さは、好ましくは0.5mm〜5.0mm、より好ましくは1.0mm〜3.0mm、特に好ましくは1.5mm〜3.0mmである。
研磨層の被研磨物と接触する面(以下、「研磨面」という。)には、複数の凹部を形成してもよい。前記凹部は、CMPの際に供給されるスラリーを保持し、これを研磨面に均一に分配すると共に、研磨屑や使用済みのスラリー等の廃棄物を一時的に滞留させ、外部へ排出するための経路となる機能を有する。
凹部の深さは、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.1mm〜2.5mm、特に好ましくは0.2mm〜2.0mmとすることができる。凹部の幅は、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.1mm〜5.0mm、特に好ましくは0.2mm〜3.0mmとすることができる。研磨面において、隣接する凹部の間隔は、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.05mm〜100mm、特に好ましくは0.1mm〜10mmとすることができる。また、凹部の幅と隣り合う凹部の間の距離との和であるピッチは、好ましくは0.15mm以上、より好ましくは0.15mm〜105mm、特に好ましくは0.6mm〜13mmとすることができる。凹部は、前記範囲内の一定の間隔を設けて形成されたものであることができる。前記範囲の形状を有する凹部を形成することで、被研磨面のスクラッチ低減効果に優れ、寿命の長い化学機械研磨パッドを製造することができる。
前記各好ましい範囲は、各々の組合せとすることができる。すなわち、例えば深さが0.1mm以上、幅が0.1mm以上、間隔が0.05mm以上であることが好ましく、深さが0.1mm〜2.5mm、幅が0.1mm〜5.0mm、間隔が0.05mm〜10
0mmであることがより好ましく、深さが0.2mm〜2.0mm、幅が0.2mm〜3.0mm、間隔が0.1mm〜10mmであることが特に好ましい。
前記凹部を加工するための工具は、特開2006−167811号公報、特開2001−18164号公報、特開2008−183657号公報等に記載されている形状の多刃工具を用いることができる。使用する工具の切削刃は、ダイヤモンドあるいは、Ti、Cr、Zr、V等の周期表第4、5、6族金属から選択された少なくとも1種の金属元素と、窒素、炭素および酸素から選択された少なくとも1種の非金属元素と、で構成されるコーティング層を有してもよい。さらにコーティング層は1層設ける場合に限らず、材料を違えて複数層設けてもよい。このようなコーティング層の膜厚は、0.1〜5μmが好ましく、1.5〜4μmがより好ましい。コーティング層の成膜には、アークイオンプレーティング装置等の公知の技術を工具材質、コーティング材質等に応じて適時選択して使用することができる。
研磨層のショアD硬度は、好ましくは35〜100であり、より好ましくは40〜80である。このような硬さとすることで、十分な研磨速度と良好な表面状態の被研磨面を与える研磨層が得られる。なお、研磨層のショアD硬度は、JIS K6253に準拠した方法で測定することができる。
1.6.研磨層の製造方法
本実施の形態に係る化学機械研磨パッドの研磨層は、(A1)成分、(A2)成分、必要に応じて(B)成分、(C)成分を含有する研磨層用組成物を所望のパッド概形に成形することにより得ることができる。
研磨層用組成物は、上述の各成分を適当な混練機により混練する方法により調製することができる。混練機としては、公知のものを使用することができ、例えばロール、ニーダー、バンバリーミキサー、押出機(単軸、多軸)等の混練機が挙げられる。
研磨層用組成物が(B)水溶性粒子を含有するものである場合、混練時の温度において(B)水溶性粒子が固体であることが好ましい。あらかじめ上述の好ましい平均粒径範囲に分級した水溶性粒子を用い、水溶性粒子が固体である条件下で混練することにより、水溶性粒子を前記の好ましい平均粒径で分散させることができる。したがって、使用する高分子マトリックス材の加工温度に応じて、(B)水溶性粒子の種類を選択することが好ましい。
研磨層用組成物が(C)架橋剤を含有するものである場合、研磨層用組成物に含有される成分のうち(C)架橋剤以外の成分を混練して混合物を得た後に、その混合物に(C)架橋剤を加えてさらに混練して研磨層用組成物とすることが好ましい。このような二段階の混練を行った研磨層用組成物から形成された成形体は、その全体において架橋度の均一性が高いものとなり、表面均一性がきわめて高い被研磨面を与える研磨層が得られる。
研磨層用組成物を所望のパッド概形に成形する方法としては、例えば所望の概形と契合する金型を用いて成形する方法、組成物をシート状に成形し次いでこれを所望の形状に切り出す方法等を挙げることができる。
研磨層用組成物が(C)架橋剤を含有するものである場合、上記パッド概形の成形にあたって研磨層用組成物に加熱処理を施すことにより、(A1)成分および(A2)成分の架橋反応を同時に行うことができる。この加熱処理を行う温度としては、好ましくは80〜200℃、より好ましくは100〜180℃であり、加熱処理の時間としては、好ましくは3〜60分、より好ましくは5〜30分である。
研磨層用組成物は、本発明の効果を損なわない程度に、上記(A)〜(C)成分以外の成分を含有することもできる。
なお、研磨層のガラス転移温度(Tg)は、80℃以下であることが好ましい。研磨層のガラス転移温度が80℃以下であれば、研磨層用組成物を上記の温度範囲で加熱処理することでハンドリング性が良好となると共に、架橋反応を促進できる点で好ましい。かかる研磨層のTgは、単量体組成、ラジカル重合開始剤、分子量調節剤、重合温度等の重合条件を適切に選択することにより調節することができる。なお、研磨層のTgは、−80℃〜500℃の温度範囲で、窒素雰囲気下、昇温速度5℃/minの条件でDSC(示差走査熱量計)により測定できる。
このようにしてパッド概形を成形した後、切削加工により研磨面に前述したような凹部を形成してもよい。また、凹部となるパターンが形成された金型を用いて上述した研磨層用組成物を金型成形することにより、研磨層の概形と共に凹部を同時に形成することもできる。
1.7.化学機械研磨パッドの構成
本実施の形態に係る化学機械研磨パッドの構成としては、少なくとも一方の面に研磨層を備えていれば特に限定されない。本実施の形態に係る化学機械研磨パッドは、前述した研磨層のみで構成される場合もあるが、研磨層の凹部を形成していない面に支持層を設けることもできる。
支持層は、化学機械研磨パッドにおいて、研磨装置用定盤に研磨層を支持するために用いられる。支持層は、接着層であってもよいし、接着層を両面に有するクッション層であってもよい。
接着層は、例えば粘着シートからなることができる。粘着シートの厚さは、50μm〜250μmであることが好ましい。50μm以上の厚さを有することで、研磨層の研磨面側からの圧力を十分に緩和することができ、250μm以下の厚さを有することで、凹凸の影響を研磨性能に与えない程度に均一な厚みを有する化学機械研磨パッドが得られる。
粘着シートの材質としては、研磨層を研磨装置用定盤に固定することができれば特に限定されないが、研磨層より弾性率の低いアクリル系またはゴム系の材質であることが好ましい。粘着シートの接着強度は、化学機械研磨パッドを研磨装置用定盤に固定することができれば特に限定されないが、「JIS Z0237」の規格で粘着シートの接着強度を測定した場合、その接着強度が好ましくは3N/25mm以上、より好ましくは4N/25mm以上、特に好ましくは10N/25mm以上である。
クッション層は、研磨層よりも硬度が低い材質からなれば、その材質は特に限定されず、多孔質体(発泡体)または非多孔質体であってもよい。クッション層としては、例えば、発泡ポリウレタン等を成形した層が挙げられる。クッション層の厚さは、好ましくは0.1mm〜5.0mm、より好ましくは0.5mm〜2.0mmである。
2.化学機械研磨方法
本実施の形態に係る化学機械研磨方法は、上述の化学機械研磨パッドを用いて化学機械研磨する工程を含むことを特徴とする。本実施の形態に係る化学機械研磨方法によれば、上述の化学機械研磨パッドを用いているため、高い研磨速度で化学機械研磨でき、かつ被研磨面の平坦性の向上と研磨欠陥(スクラッチ)の低減とを両立させることができる。
本実施の形態に係る化学機械研磨パッドを使用して化学機械研磨できる材料としては、例えば基板材料、配線材料、ビアプラグ材料、電極材料、絶縁材料、バリアメタル材料等が挙げられる。基板材料としては、単結晶シリコン等;配線材料としては、タングステン、アルミニウム、銅等およびこれらのうちの1種以上と他の金属からなる合金;ビアプラグ材料としては、上記配線材料として例示したと同様のもの;電極材料としては、多結晶シリコン、非晶質シリコン等;絶縁材料としては、SiO系絶縁材料、低誘電率の有機系絶縁材料、水素含有多孔質絶縁材料(HSQ−SOG)等;バリアメタル材料としては、窒化ケイ素、窒化タンタル、窒化チタン等の窒化物系材料、タンタル、チタン、タングステン等の金属系材料等を、それぞれ挙げることができる。化学機械研磨の対象となる被研磨体は、上記の材料のうちの一種または二種以上から構成されたものであることができる。
本実施の形態に係る化学機械研磨方法によれば、例えば微細素子分離(STI)、ダマシン配線の形成、ビアプラグの形成、層間絶縁膜の形成等のための平坦化を行うことができる。上記微細素子分離を行うための研磨においては、SiO系絶縁材料を研磨することができる。また、ダマシン配線の形成では、研磨初期においては配線材料を、研磨後期においては配線材料および絶縁体材料ならびに任意的にバリアメタルを、それぞれ研磨することができる。さらにビアプラグ形成においてはビアプラグ材料の研磨を、層間絶縁膜の形成においてはSiO系絶縁材料、低誘電率の有機系絶縁材料、水素含有多孔質絶縁材料等の研磨を、それぞれ行うことができる。
本実施の形態に係る化学機械研磨方法においては、市販の化学機械研磨装置を用いることができる。市販の化学機械研磨装置としては、例えば、型式「EPO−112」、型式「EPO−222」(以上、株式会社荏原製作所製);型式「LGP−510」、型式「LGP−552」(以上、ラップマスターSFT社製);型式「Mirra」(アプライドマテリアル社製);型式「ReflexionLK」(株式会社AMAT製)等が挙げられる。
また、化学機械研磨用水系分散体としては、化学機械研磨の対象となる被研磨体に応じて適宜最適なものを選択することができる。
3.実施例
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準である。
3.1.実施例1
3.1.1.化学機械研磨パッドの研磨層の製造
(A1)成分としてアクリロニトリル−ブタジエンゴム共重合体(JSR株式会社製、商品名「JSR N220SH」、結合アクリロニトリル量:41質量%)50質量部、(A2)成分として塩化ビニル樹脂(太陽塩ビ株式会社製、商品名「TH−2000」、平均重合度:1900〜2100)50質量部、および(B)成分としてβ−サイクロデキストリン(塩水港製糖株式会社製、商品名「デキシパールβ−100」)31質量部を、あらかじめ120℃に加熱された押出機にて150℃、120rpmの条件で混練した。その後、(C)成分として過酸化ジクミル(日油株式会社製、商品名「パークミルD」)を2.0質量部添加し、さらに120℃、60rpmで混練し、研磨層用組成物を調製した。この研磨層用組成物を、金型内にて170℃で18分間加熱して成形し、直径600mm、厚さ2.8mmの円盤状の成形体を得た。次いで、この成形体の一方の面に、切削加工機(株式会社加藤機械製)を用いて、溝幅0.5mm、ピッチ1.5mm、溝深さ1.0mmの、研磨面の中心を中心とする同心円状の溝および放射状の溝を形成し、化学
機械研磨パッドの研磨層を製造した。このようにして得られた研磨層をそのまま化学機械研磨パッドとして使用した。なお、ここで製造した研磨層に含有されるβ−シクロデキストリンの平均粒径は15μmであり、研磨層全体に占めるβ−シクロデキストリンの体積率は、20体積%であった。
3.1.2.化学機械研磨の評価
上記で製造した化学機械研磨パッドを、化学機械研磨装置(型式「ReflexionLK」、株式会社AMAT製)に装着し、12インチ銅膜付きウェハを被加工膜として、以下の条件で研磨した。
・化学機械研磨用水系分散体:自社製Cu研磨スラリー(組成:コロイダルシリカ0.3質量%、グリシン0.6質量%、ベンゾトリアゾール0.005質量%、過酸化水素1質量%、pH=7)
・化学機械研磨用水系分散体供給速度:300ml/分
・ヘッド押し付け圧:13.8kPa
・定盤回転数:42rpm
・ヘッド回転数:38rpm
(1)ショアD硬度の測定
上記で得られた化学機械研磨パッドのショアD硬度を、JIS K6253に準拠した方法で測定した。その結果を表1に示した。
(2)研磨速度の評価
研磨速度は、電気伝導式膜厚測定器(KLA−TENCOR社製、形式「オムニマップRS100」)を用いて以下の手順にて測定した。すなわち、被加工膜である12インチ銅膜付きウェハについて、外周5mmを除いて直径方向に均等に81点の特定点を設定し、これら特定点について研磨前後の銅膜の厚さの差と研磨時間から各点における研磨速度を算出し、その平均値をもって研磨速度とした。その結果を表1に示した。
(3)平坦性の評価
被研磨体として、12インチ「754TEOSWafer(CuEP7kA)(SVTC製)」を用いて化学機械研磨を行うことにより、銅膜を残膜が3000Åとなるまで除去し、幅100μmの銅配線部と幅100μmの絶縁体部とが交互に連続したパターンが該パターンの長さ方向に3.0mm連続した部分について、銅配線部の窪み量(以下、「ディッシング」という。)を、精密段差計(KLA−TENCOR社製、形式「HRP−340」)を使用して測定することで、ディッシング量(Å)を測定し、これを平坦性評価の指標とした。その結果を表1に示した。なお、平坦性評価の基準は下記の通りであり、Aは良好、Bは可、Cは不可を意味する。
A:ディッシング量が0Å超50Å以下。
B:ディッシング量が50Å超200Å以下。
C:ディッシング量が200Å超。
(4)スクラッチ数の評価
化学機械研磨後の銅膜につき、欠陥検査装置(KLA−TENCOR社製、「KLA2351」)を用いて、ウェハ全面におけるスクラッチの個数を測定し、欠陥検査を行った。その結果を表1に示した。なお、スクラッチ数の基準は下記の通りであり、Aは良好、Bは可、Cは不可を意味する。
A:スクラッチ数が0個以上50個未満。
B:スクラッチ数が50個以上100個未満。
C:スクラッチ数が100個以上。
3.2.実施例2〜9、比較例1〜4
研磨層用組成物の各成分の種類および含有割合を表1に記載のものに変更したこと以外は、上記実施例1と同様にして実施例2〜9、比較例1〜3の化学機械研磨パッドを作製し、上記実施例1と同様にして化学機械研磨パッドの評価を行った。なお、比較例4では、市販の化学機械研磨パッド(ROHM&HAAS社製、商品名「IC1000」、熱架橋ポリウレタン樹脂により研磨層が作製されているもの)を使用し、上記実施例1と同様にして化学機械研磨パッドの評価を行った。
3.3.化学機械研磨パッドの評価結果
下表1に、各実施例および各比較例で用いた研磨層用組成物の組成ならびに各評価試験の評価結果を示す。
Figure 2014192217
なお、表1中、研磨層用組成物の組成の欄に記した略称は、それぞれ下記のものを意味する。また、表1中「−」は、該当欄に相当する成分を使用しなかったことを意味する。
<(A1)アクリロニトリル−ブタジエン共重合体>
・N230S(JSR株式会社製、商品名「JSR N230S」、ニトリルゴム(NBR)、結合アクリロニトリル量:35質量%)
・N220SH(JSR株式会社製、商品名「JSR N220SH」、ニトリルゴム(NBR)、結合アクリロニトリル量:43質量%)
・N215SH(JSR株式会社製、商品名「JSR N215SH」、ニトリルゴム(NBR)、結合アクリロニトリル量:48質量%)
<(A2)塩化ビニル樹脂>
・TH−500(大洋塩ビ株式会社製、商品名「TH−500」、塩ビホモポリマー、平均重合度:480〜540)
・TH−1000(大洋塩ビ株式会社製、商品名「TH−1000」、塩ビホモポリマー、平均重合度:1000〜1060)
・TH−2000(大洋塩ビ株式会社製、商品名「TH−2000」、塩ビホモポリマー、平均重合度:1900〜2100)
・TH−3800(大洋塩ビ株式会社製、商品名「TH−3800」、塩ビホモポリマー、平均重合度:3500〜4100)
<(B)水溶性粒子>
・β−シクロデキストリン(塩水港製糖株式会社製、商品名「デキシパールβ−100」、平均粒径15μm)
・活性酸化亜鉛(堺化学工業株式会社製、商品名「酸化亜鉛」、平均粒径0.6μm)
<(C)架橋剤>
・過酸化ジクミル(日油株式会社製、商品名「パークミルD」)
・Sulfur(鶴見化学工業株式会社製、商品名「金華印微粉硫黄」)
・Acc CZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクセラー CZ−G)
・Acc TT(テトラメチルチウラムジスルフィド、大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクセラー TT−P」)
上記実施例の評価結果から明らかなように、(A1)アクリルニトリル−ブタジエン共重合体30〜90質量部および(A2)塩化ビニル樹脂70〜10質量部を含有する研磨層を備えた化学機械研磨パッドを使用することで、高い研磨速度を示すと共に、被研磨面の平坦性を格段に向上させ、かつ研磨欠陥(スクラッチ)を格段に低減できることが分かった。
一方、上記組成の要件を満たさない比較例1〜4では、被研磨面の平坦性および研磨欠陥(スクラッチ)の低減のいずれか一方または双方のレベルが不十分であることが分かった。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。

Claims (7)

  1. (A1)アクリロニトリル−ブタジエン共重合体と、
    (A2)塩化ビニル樹脂と、
    を含有し、前記(A1)成分と前記(A2)成分の合計を100質量部としたときの含有割合が、(A1)成分30〜90質量部、(A2)成分70〜10質量部である研磨層を有することを特徴とする、化学機械研磨パッド。
  2. 前記(A1)アクリロニトリル−ブタジエン共重合体の結合アクリロニトリル量が20〜45質量%である、請求項1に記載の化学機械研磨パッド。
  3. 前記(A2)塩化ビニル樹脂の平均重合度が800〜2500である、請求項1または請求項2に記載の化学機械研磨パッド。
  4. 前記研磨層が、さらに(B)水溶性粒子5〜120質量部を含有する、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の化学機械研磨パッド。
  5. 前記研磨層に含まれる前記(A1)成分および前記(A2)成分の少なくとも一部が架橋されている、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の化学機械研磨パッド。
  6. 前記研磨層のガラス転移温度が80℃以下である、請求項5に記載の化学機械研磨パッド。
  7. 請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の化学機械研磨パッドを用いて化学機械研磨する工程を含む、化学機械研磨方法。
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