JP2014190670A - 蓄熱装置及び空気調和機 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡単な構成でありながら冷媒等の熱媒体が流通する配管と蓄熱材との熱交換性能を向上させることが可能な蓄熱装置を提供する。
【解決手段】蓄熱装置は、蓄熱槽、蓄熱材、及び配管5を具備する。蓄熱槽は外部の熱を受ける。蓄熱材を蓄熱槽に収容する。配管5は、入口管部6、出口管部7、及びこれら入口管部6と出口管部7を接続しかつ蓄熱材と接して配置される中間管部8を有する。この配管5に入口管部6から出口管部7に向けて熱媒体が流通される。中間管部8を、180°を超える曲げ角度で曲げられた複数の折返し部位を有するサーペンタイン状に形成したことを特徴としている。
【選択図】図3

Description

本発明の実施形態は、蓄熱装置及びこの装置を備える空気調和機に関する。
相変化が可能な蓄熱材の過冷却を利用して、この蓄熱材に熱を貯蔵し、放熱要求がされた時に、過冷却状態を解除して蓄熱材を液相状態から固相状態に変化させ、それに伴って放出される潜熱で対象物を加熱する蓄熱装置が知られている。
蓄熱材が過冷却される条件としては、蓄熱材が過冷却をすることが可能な物質(PCM;Phase change material)であること、及び蓄熱材が完全に溶融した液相状態にあることが挙げられる。
蓄熱材の過冷却状態を解除して、蓄熱材を液相状態から固相状態に変化させることは、「発核」と称されている。蓄熱材が液相状態にあるときに、蓄熱材の過冷却状態を解除すると、発核が開始されて、過冷却されて液相状態にある蓄熱材を固相状態に変化させることができる。蓄熱材の過冷却状態の解除は、一般的に過冷却状態の蓄熱材に電気的刺激を与えて(電圧を印加して)行なわれる。
このため、冬季等温度が低い条件下で例えば空気調和機の暖房運転が開始される場合、蓄熱材を発核させることにより、この蓄熱材から放出される潜熱で、低温状態にある圧縮機等を加熱できる。これにより、圧縮機の運転に伴って循環される冷媒の温度上昇が早められる結果、空気調和機の室内機からの温風を吹き出しが速やかに行なわれ暖房をすることが可能となる。
蓄熱材から放出される潜熱で例えば空気調和機に用いた冷媒を加熱するには、この冷媒が流通する配管を、蓄熱材を溜める蓄熱槽内に配設するとよい。この場合に、配管と蓄熱材との熱交換性能を向上させるために、配管にフィンを設けると、蓄熱槽が大形となる。したがって、こうしたことがないように配慮しつつ、配管と蓄熱材との熱交換性能を向上させることが望まれている。
特開2010−271004号公報 特開2011−179776号公報 特開2009−103393号公報
日本機械学会論文集(B編)71巻704号(2005−4)、「潜熱蓄熱を利用した熱供給ユニットに関する研究」、122頁〜128頁
実施形態は、簡単な構成でありながら冷媒等の熱媒体が流通する配管と蓄熱材との熱交換性能を向上させることが可能な蓄熱装置、及びこの装置を備える空気調和機を提供することにある。
前記課題を解決するために、実施形態の蓄熱装置は、蓄熱槽、蓄熱材、及び配管を具備する。蓄熱槽は外部の熱を受ける。蓄熱材を蓄熱槽に収容する。配管は、入口管部、出口管部、及びこれら入口管部と出口管部を接続しかつ蓄熱材と接して配置される中間管部を有する。この配管に入口管部から出口管部に向けて熱媒体が流通される。中間管部を、180°を超える曲げ角度で曲げられた複数の折返し部位を有するサーペンタイン状に形成したことを特徴としている。
第1の実施の形態に係る蓄熱装置を、その熱源である圧縮機とともに示す斜視図である。 第1の実施の形態に係る蓄熱装置が備える配管を示す正面図である。 図2の配管を一部省略した状態で拡大して示す正面図である。 第1の実施の形態に係る蓄熱装置を熱源と共に模式的に示す縦断面図である。 第1の実施の形態に係る蓄熱装置を備える空気調和機の冷凍サイクルを示す図である。 第2の実施の形態に係る蓄熱装置が備える配管を一部省略した状態で示す正面図である。 第3の実施の形態に係る蓄熱装置を、その熱源である圧縮機とともに示す斜視図である。 第3の実施の形態に係る蓄熱装置が備える配管を示す正面図である。 図8の配管の一部を拡大して示す正面図である。 (A)は第4の実施の形態に係る蓄熱装置が備える配管を示す正面図である。(B)は図10(A)中F10B−F10B線に沿う断面図である。 (A)は第5の実施の形態に係る蓄熱装置が備える配管を示す正面図である。(B)は図11(A)中F11B−F11B線に沿う断面図である。 第6の実施の形態に係る蓄熱装置を、その一部を切り欠くとともに、蓄熱材が省略された状態で熱源と共に模式的に示す斜視図である。 第6の実施の形態に係る蓄熱装置を、その一部を切り欠くとともに、蓄熱材が省略された状態で熱源と共に模式的に示す平面図である。 第6の実施の形態に係る蓄熱装置を熱源と共に模式的に示す縦断面図である。 第7の実施の形態に係る蓄熱装置を熱源と共に模式的に示す縦断面面である。 第8の実施の形態に係る蓄熱装置を、その一部を切り欠くとともに、蓄熱材が省略された状態で熱源と共に模式的に示す斜視図である。 第8の実施の形態に係る蓄熱装置を、その一部を切り欠くとともに、蓄熱材が省略された状態で熱源と共に模式的に示す平面図である。 第8の実施の形態に係る蓄熱装置を熱源と共に模式的に示す縦断面図である。
以下、第1の実施の形態に係る蓄熱装置1とこれを備えた空気調和機11を、図1〜図5を参照して詳細に説明する。
図1及び図4に示すように蓄熱装置1は、蓄熱槽2と、蓄熱材3(図4参照)と、発核手段4(図4参照)と、配管5を備えている。
図4に示すように蓄熱槽2は一側壁2aとこれから離間された他側壁2bを有している。これら一側壁2aと他側壁2bは蓄熱槽2の例えば厚み方向に対向している。なお、一側壁2aは蓄熱槽2の前壁(正面壁)をなしており、他側壁2bは蓄熱槽2の後壁(背面壁)をなしている。蓄熱槽2の内部に蓄熱材3が収容されている。蓄熱槽2は蓄熱材3で侵されない材料で形成されている。この蓄熱槽2の一側壁2aと他側壁2bは平行であってもなくてもよい。
蓄熱槽2は、その一側壁2aを経由して外部の熱源例えば後述する圧縮機の熱を受けるように配設される。この場合、蓄熱槽2は熱源である圧縮機との接触面積(受熱面積)が極力大きく確保されるように配置される。そのために、蓄熱槽2の構成材料を、柔軟性を有する材料例えばアルミパック等で形成することもできる。しかし、これに制約されず、合成樹脂や金属等の剛性を有する材料で蓄熱槽2を形成することが可能である。
蓄熱材3には、過冷却をすることが可能である蓄熱材、即ち、液相の状態から温度が下がって融点以下になっても凝固せずに液相状態を維持する特性を有した蓄熱材が使用される。このような蓄熱材は、潜熱蓄熱材又は相変化蓄熱材と称される。
こうした蓄熱材3として、例えば酢酸ナトリウム3水和物等の酢酸ソーダや、例えば硫酸ナトリウム10水和物等の硫酸ソーダを挙げることができるが、その中でも酢酸ナトリウム3水和物を用いることが望ましい。酢酸ナトリウム3水和物の融点は58℃、熱伝導率は0.7W/(m・K)、潜熱は264kJ/kg、比熱は3kJ/(kg・K)である。
図4に示した発核手段4は、任意のタイミングで過冷却状態の蓄熱材3に例えば電圧を印加して、蓄熱材3の過冷却状態を解除する(これを発核と称する)ために設けられている。この発核手段4は、図示しないアノード電極、カソード電極、及び発核電源を有している。
アノード電極及びカソード電極は、互に離間し対をなして設けられ、かつ、例えば全体が蓄熱材3に接する状態に配置されている。発核電源は、蓄熱槽2の外部に配置され、アノード電極及びカソード電極と電気的に接続されている。蓄熱材3を発核させるときに、発核電源は図示しない制御部で制御され、それにより、発核電源はアノード電極とカソード電極との間に所定の電圧を印加させる。こうした電圧の印加に伴い、液相状態で過冷却されている蓄熱材3は、過冷却状態を解除されて結晶化し、潜熱を放出しながら固相状態に変化する。
図2及び図3に示すように配管5は、入口管部6と、出口管部7と、これら入口管部6と出口管部7を接続した中間管部8とを有している。配管5の各部の断面は例えば円形である。この配管5の少なくとも中間管部8は、蓄熱材3より熱伝導率が大きい材質、例えば銅で形成されている。主要な銅の熱伝導率は、100W/(m・K)〜400W/(m・K)、純銅の場合は400W/(m・K)であり、例えば熱伝導率が387W/(m・K)の銅で中間管部8が形成されている。約酢酸ナトリウム3水和物の熱伝導率(0.7W/(m・K))より大幅に大きい。
配管5は図3に示すように1本の管を曲げて形成することが好ましい。それにより、溶接による接合箇所がなくなる。したがって、溶接箇所に起因して配管5が腐食する虞がなくなり、耐久性の向上とともに、接合箇所がある配管と比較して配管5での流路抵抗を低減することが可能である。
配管5には、その入口管部6から中間管部8を経由して出口管部7に向けて熱媒体、例えば後述する冷媒が流通される。図4に示すように配管5は、少なくとも中間管部8を蓄熱材3に接して、蓄熱槽2の一側壁2aと他側壁2bとの間に配置されている。
中間管部8は図2及び図3に示すようにサーペンタイン状に形成されている。詳しくは、中間管部8は複数の直管部位8a及び複数の折返し部位例えば曲管部位8bを有している。
各直管部位8aは、中間管部8の蛇行方向(即ち、隣り合った各曲管部位8bの先端を通る接線が延びる方向、例えば図2及び図3では上下方向)に、離間して配設されているとともに、横方向(蓄熱槽2の幅方向)に延びている。ここに、蓄熱槽2の幅方向とは図2及び図3において左右方向である。なお、図示の例では上下方向に一つ置きの直管部位8aが互い平行となるように中間管部8が形成されているが、これに代えて上下に隣り合った直管部位8aが互に逆方向に傾斜するように中間管部8が形成されていてもよい。
各曲管部位8bは、上下に隣り合った直管部位8aに連続されこれら直管部位8aを接続している。各曲管部位8bは180°を超える曲げ角度θ(図3参照)で曲げられている。これにより、上下に隣り合って対向する直管部位8a間は、これら直管部位8aを接続した曲管部位8bから遠ざかるほど、次第に狭められ、又は次第に広げられている。上下に隣り合った曲管部位8bは接触乃至は近接されていることが好ましい。上下に隣り合った曲管部位8bのピッチS(図2参照)は、全ての直管部位8aが平行であるサーペンタイン形状と比較して小さい。
なお、第1実施形態において直管部位8aと曲管部位8bは一体に作られている。しかし、直管部位8aと曲管部位8bとを別々に成形するとともに、これらを接続することによって、サーペンタイン状に形成された中間管部8を採用することも可能である。この場合、直管部位8aの一端に上向きの端部を設けるとともに、この直管部位8aの他端に下向きの端部を設けた複数の管部要素を用意し、上下に隣接される管部要素の上向きの端部と下向きの端部とを接続することで、接続された上向きの端部と下向きの端部とが曲管部位8bをなしたサーペンタイン状に形成された中間管部8とすることも可能である。
図2に示すように配管5に複数のスペーサ9が取付けられている。これらスペーサ9は、配管5の蛇行方向に隣り合った部位、例えば上下に隣り合った曲管部位8bで挟着されている。そのため、中間管部8の蛇行方向(上下方向)に隣り合った曲管部位(折返し部位)8b同士は、スペーサ9によって離された状態に保持されている。
これらのスペーサ9は合成樹脂又は金属により形成される。スペーサ9が合成樹脂製である場合、配管5を形成する金属とは異種の金属でスペーサを形成した場合に起こり得る腐食の虞がないので好ましい。スペーサ9が金属製である場合、前記腐食の虞をなくすために、配管5を形成する金属と同種の金属例えば銅製とすることが好ましい。
配管5の入口管部6と出口管部7は、断面が円形の直管で形成されている。これら入口管部6及び出口管部7は、蓄熱槽2の左右両端部に配設され、上下方向に延びていて、その上部を除く部位は蓄熱材3に接している。
図1に示すように入口管部6と出口管部7の上部は蓄熱槽2の上面を通って蓄熱槽2の外部に突出されている。この場合、後述する冷媒管の取り回しの関係で、蓄熱槽2外に突出された出口管部7等は曲げることも可能である。入口管部6と出口管部7の上部に管継手用の継手部材10a又は継手部材10bが取付けられている。
次に、前記蓄熱装置1を備えたヒートポンプ式の空気調和機を図5により説明する。空気調和機11は、室外機Kaと室内機Kbとから構成されている。
室外機Kaには、圧縮機12、四方切換え弁13、室外熱交換器14、及び膨張装置15等が配置されている。室内機Kbには、室内熱交換器16等が配置されている。これら圧縮機12−四方切換え弁13−室外熱交換器14−膨張装置15−室内熱交換器16は、冷媒管Pを介して順次接続されて、冷凍サイクル回路Rを構成している。この冷凍サイクル回路Rを流れる熱媒体には、例えば冷媒、具体的にはHFC(ハイドロフルオロカーボン)冷媒R410Aが使用される。
冷媒管Pは銅管等で形成されている。蓄熱装置1が有した配管5は冷媒管Pの一部を担っている。
詳しくは、四方切換え弁13から流出して圧縮機12に吸込まれるようとする冷媒を導く冷媒管部位は、四方切換え弁13に一端が接続された第1管部P1と、圧縮機12の吸込み口に一端が接続された第2管部P2とを有している。第1管部P1の他端は配管5の入口管部6に接続されているとともに、第2管部P2の他端は配管5の出口管部7に接続されている。この構成によって、配管5には、その入口管部6から出口管部7に向けて冷媒が流通される。
圧縮機12は蓄熱装置1を加熱する熱源として利用される。圧縮機12の外郭は鋳鉄で形成され、この外郭の形状は略円柱状である。圧縮機12はその運転により温度が上昇される。この場合、圧縮機12の温度は、圧縮機12の上部の方が下部よりも高くなる。このため、蓄熱装置1からみて、圧縮機12の上部は圧縮機12の下部よりも高温の第1熱源とみなせるとともに、圧縮機12の下部は第1熱源より低温の第2熱源とみなすことができる。
なお、蓄熱装置1が空気調和機11以外の機器、例えば冷蔵庫やヒートポンプ式給湯器などに適用される場合、蓄熱装置1を加熱する熱源として例えば温水配管などを使用することが可能である。
室外機Kaには室外熱交換器14に対向して室外送風機17が配置される。更に、室外機Kaには、温度センサの他、各構成部品を接続する配管や電気配線等が設けられている。
室外送風機17は、プロペラ型の室外ファン17Fと、これを駆動する駆動モータ17Mとからなる。室外熱交換器14において、室外ファン17Fの回転により室外熱交換器14を通風する室外空気と、室外熱交換器14の内部を流れる冷媒とが熱交換される。
室内機Kbには室内熱交換器16に対向して室内送風機18が配置される。更に、室内機Kbには、図示しない圧縮機駆動装置、温度センサの他、各構成部品を接続する配管や電気配線等が設けられている。
室内送風機18は、横流ファン型の室内ファン18Fと、これを駆動する駆動モータ18Mとからなる。室内熱交換器16において、室内ファン18Fの回転により室内熱交換器16を通風する室内空気と、室内熱交換器16の内部を流れる冷媒とが熱交換される。
空気調和機11の制御部は、図示しないリモートコントローラから運転開始信号を受けることにより、圧縮機12と、室外送風機17、及び室内送風機18に駆動信号を送る。それにより、空気調和機11の冷房運転又は暖房運転が開始される。
冷房運転では、圧縮機12で圧縮されて冷媒管Pに吐出される高温高圧のガス冷媒が、図5中実線で示すように切換えられた四方切換え弁13を経由して室外熱交換器14に流入する。室外熱交換器14に流入したガス冷媒は、室外送風機17の室外ファン17Fによって送風される外気と熱交換して冷却され、室外熱交換器14を流通するうちに徐々にガス状から液状に変化する。
室外熱交換器14の冷媒出口で、冷媒の全てが液状となることで、室外熱交換器14は凝縮器として機能する。この室外熱交換器14から導出される高圧の液冷媒は、膨張装置15に導かれて断熱膨張し、ガス冷媒と液冷媒の混ざった、いわゆる気液ニ相状態の冷媒となる。
この冷媒は、室内熱交換器16に導かれ、室内送風機18から送風される室内空気と熱交換して蒸発し、室内空気から蒸発潜熱を奪う。これにより、室内空気の温度が低下されて、この空気は室内に吹き出されて冷房作用をなす。室内熱交換器16において、冷媒は気液ニ相状態からガス状態に変化されるので、室内熱交換器16は蒸発器として機能する。こうして室内熱交換器16から流出したガス冷媒は圧縮機12に吸込まれて、冷房サイクルが形成される。
四方切換え弁13を図5中点線で示すように切換えることにより、圧縮機12から吐出される高温高圧のガス冷媒は、前記冷房サイクルとは逆方向に導かれて冷媒管Pを流通し循環して、暖房サイクルを形成する。このような暖房運転においては、室内熱交換器16が凝縮器として機能するとともに、室外熱交換器14が蒸発器として機能する。
そのため、室内熱交換器16に通風される室内空気は、室内熱交換器16での熱交換により加熱される。つまり、冷媒が凝縮する際に放出される凝縮熱を吸収して温度上昇される。こうして室内熱交換器16において温度が上がった空気は、室内に吹き出されて、暖房作用をなす。
この空気調和機11は前記構成の蓄熱装置1を備えている。即ち、図1に模式的に示すように蓄熱装置1は、その蓄熱槽2が圧縮機12と熱交換ができるように、圧縮機12の周面の少なくとも一部例えば全周に沿って配設されている。この場合、圧縮機12の少なくとも上部と熱交換ができるように蓄熱槽2を配設することが好ましい。
なお、第1実施形態では、圧縮機12の全周に沿って蓄熱装置1を配設するために、図1に示すように圧縮機12の半周形状に適合して半円形状に曲げられた一対の蓄熱装置1が使用されている。蓄熱槽2によって規定される各蓄熱装置1の厚みは十数mmである。図1中符号20は、蓄熱装置1を圧縮機12の外周に装着するための固定部品例えばねじを示している。
図4中符号19は軟質な伝熱シートを指している。この伝熱シート19は、圧縮機12の周面と蓄熱槽2の一側壁2aとの間に挟まれていて、それにより、密接性を高めて、圧縮機12と蓄熱槽2との熱交換を良好ならしめている。
このような蓄熱槽2の配置により、蓄熱槽2内の蓄熱材3は、冬季における空気調和機11の暖房運転中に、高温となる圧縮機12によって蓄熱材3の融点以上の温度となるように加熱される。したがって、空気調和機11の運転中、蓄熱材3は圧縮機12の排熱によって温度上昇され、溶解して液相状態となる。
これとともに、暖房運転が停止された状態が維持されると、圧縮機12の温度は周囲温度まで低下する。冬季等における圧縮機12の周囲温度は、前記融点の温度より低くなる。したがって、圧縮機12と同様に蓄熱材3はその融点を下回る温度にまで下がる。既述のように蓄熱材3は過冷却が可能な物質で形成されている。このため、蓄熱材3は、液相の状態から温度が下がって融点以下になっても、凝固せずに液相状態を維持して過冷却された状態となり、潜熱を蓄える。
例えば冬季において既述のように蓄熱材3が潜熱を蓄えた状態で、空気調和機11の暖房運転が開始されるときに、蓄熱装置1の発核手段4が動作される。それにより、発核電源に設定された所定の電圧が、蓄熱材3に接しているアノード電極とカソード電極との間に数秒間印加される。したがって、過冷却されて液相状態にある蓄熱材3が発核されて、この蓄熱材3の過冷却状態が解除される。
発核は蓄熱材3の全域に波及する。この場合、蓄熱材3に接している配管5の中間管部8はサーペンタイン状であるとともに、スペーサ9が中間管部8の上下方向に隣り合った部位間を塞ぐことなく部分的に設けられている。このため、発核の進行がスペーサ9で妨げられ難く、発核を蓄熱材3の全域に速やかに伝播させることが可能である。
発核が進行すると、過冷却状態の蓄熱材3は、液相状態から固相状態に相変位し、それに伴い潜熱を放出する。蓄熱材3から放出された潜熱によって、配管5及び圧縮機12が加熱されるので、暖房運転を開始した空気調和機11の圧縮機12に配管5を通って吸込まれようとする冷媒、及び圧縮機12の温度が上昇される。
過冷却状態の蓄熱材3から放出された潜熱で加熱される配管5の中間管部8はサーペンタイン状に形成されているだけではなく、その曲管部位8bの曲げ角度θが180°を越えている。この配管5は、全ての直管部位8aが平行であるサーペンタイン状の中間管部に比較して、蓄熱槽2の略全域に配置された中間管部8の全長が長く確保され、しかも、上下に隣り合った曲管部位8bのピッチSも小さい。
したがって、第1実施形態の蓄熱装置1は、冷媒が流通する配管5をより長くでき、この配管5が蓄熱槽2の限られた内部スペースに収容された構成であるので、配管5と蓄熱材3との熱交換面積が増やされている。そのため、蓄熱材3から放出された潜熱で配管5を流通する冷媒を効率よく加熱できる。それにより、冷媒の温度が速やかに上昇するので、暖房運転の開始を起点として室内機Kbから温風が吹き出されるまでに要する時間を短くすることが可能である。
既述のように配管5の中間管部8の長さを長くすることで熱交換面積を増やしたので、中間管部8にフィン等を取付けて熱交換面積を増やす必要がない。そのため、蓄熱装置1の構成が簡単である。これとともに、第1実施形態の蓄熱装置1では、蓄熱槽2の厚みを増やすことなく、十数mm程度の狭い蓄熱槽2内に長い配管5を収めることができるので、それに伴い、蓄熱装置1の大形化も防止できる。
空気調和機11の運転が継続されると、圧縮機12の温度が上昇されるので、この圧縮機12を熱源として蓄熱槽2はその一側壁2aから加熱される。これに伴い、蓄熱槽2内で固相状態に在る蓄熱材3は、既述のように溶解して液相状態になる。
空気調和機11の運転中において圧縮機12が振動することがある。その場合、圧縮機12の振動は蓄熱装置1に波及する。
第1実施形態において、配管5のサーペンタイン状に形成された中間管部8の上下に隣り合った曲管部位8b間にはスペーサ9が挟まれている。それにより、中間管部8の上下に隣り合った曲管部位8b同士は離れた状態に保持されている。したがって、圧縮機12から波及する振動を原因として、中間管部8の上下に隣り合った曲管部位8b同士が衝突して損傷することを防止できる。これとともに、中間管部8の上下に隣り合った曲管部位8b同士がスペーサ9を介して接続されているので、中間管部8の各部が自重により撓むことを防止することともできる。
なお、第1実施形態は、以上説明したスペーサ9を省略して実施することも可能である。この場合、圧縮機12から振動が波及しても、中間管部8の上下に隣り合った曲管部位8bが衝突しないように十分大きい隙間を、これら曲管部位8b間に確保して実施すればよい。しかし、既述のスペーサ9を用いることは、中間管部8の長さを、より長く確保できるので好ましい。
図6は第2の実施の形態を示している。第2実施形態は、以下の説明において第1実施形態とは相違し、それ以外は第1実施形態と同じである。このため、第1実施形態と同一ないしは同様の機能を奏する構成については、第1実施形態と同じ符号を付してその説明を省略する。又、説明においては必要により図4及び図5等も参照する。
第2実施形態では、第1実施形態で説明したスペーサに代えてバンド22が用いられている。
バンド22は、配管5のサーペンタイン状をなす中間管部8の少なくとも一部を結束して設けられている。具体的には、中間管部8の蛇行方向に隣り合った部位、好ましくは直管部位8aと曲管部位8bとが連続する部位を結束して、バンド22が配置されている。バンド22による結束で、中間管部8の蛇行方向に隣り合った曲管部位(折返し部)8b同士は、接触した状態に保持されている。なお、バンド22は中間管部8全体に上下方向に巻付けて中間管部8全体を結束して設けることも可能である。
バンド22は、合成樹脂又は金属等で形成できるが、金属製とする場合は、第1実施形態で説明したように中間管部8をなす金属材料と同種の材料例えば銅製とすることが好ましい。
第2実施形態の蓄熱装置1及びこれを備えた空気調和機11で、以上説明した以外の構成は、図6に示されない構成を含めて第1実施形態と同じである。したがって、この第2実施形態においても、簡単な構成でありながら、冷媒等の熱媒体が流通する配管5と過冷却可能な蓄熱材3との熱交換性能を向上させることが可能な蓄熱装置1、及びこれを備えた空気調和機11を提供できる。
しかも、第2実施形態において、中間管部8の蛇行方向に隣り合った曲管部位8b同士は接触している。これにより、隣り合った曲管部位8bのピッチSがより短くなることに応じて、中間管部8の全長がより長くなって、中間管部8の熱交換面積を更に増やすことが可能である。したがって、中間管部8の熱交換面積が増やされた場合、配管5内を流通する冷媒と発核された蓄熱材3との熱交換性能を更に向上することが可能である。
図7〜図9は第3の実施の形態を示している。第3実施形態は、以下の説明において第1実施形態とは相違し、それ以外は第1実施形態と同じである。このため、第1実施形態と同一ないしは同様の機能を奏する構成については、第1実施形態と同じ符号を付してその説明を省略する。又、説明においては必要により図4及び図5等も参照する。
第3実施形態では、配管5が複数の管部材、例えば図8に示すように第1管部材5aと第2管部材5bとで形成されている。これら第1管部材5aと第2管部材5bは、いずれも中間管部8を有している。
第1管部材5aの中間管部8は、曲げ半径が小さな曲管部位8b1と、この曲管部位8b1よりも曲げ半径が大きい曲管部位8b2を交互に形成してサーペンタイン状に形成されている。図8の例示では、第1管部材5aの中間管部8が、曲管部位8b1を図8において右端部でかつ入口管部6に近付けて形成されているとともに、曲管部位8b2を図8において左端部でかつ入口管部6から最も遠ざけて形成されている。
同様に、第2管部材5bの中間管部8も、曲げ半径が小さな曲管部位8b1と、この曲管部位8b1よりも曲げ半径が大きい曲管部位8b2を交互に形成してサーペンタイン状に形成されている。図8の例示では、第1管部材5aとは逆に、第2管部材5bの中間管部8が、曲管部位8b1を図8において左端部でかつ入口管部6から最も遠ざけて形成されているとともに、曲管部位8b2を図8において右端部でかつ入口管部6に近付けて形成されている。
第1管部材5aの曲管部位8b2は、その内側スペースに第2管部材5bの曲管部位8b1を収容できる大きさに形成されている。同様に、第2管部材5bの曲管部位8b2も、その内側スペースに第1管部材5aの曲管部位8b1を収容できる大きさに形成されている。
図8に示すように第1管部材5aと第2管部材5bとは、それらの曲管部位(折返し部位)8bを相対的に外側と内側に配置した形で並べられている。こうして隣り合って配設された第1管部材5a(又は第2管部材5b)の曲管部位8b1と、第2管部材5b(又は第1管部材5a)の曲管部位8b2との関係を、図9で代表して示す。即ち、曲げ半径が小さい曲管部位8b1を、曲げ半径が大きい曲管部位8b2の内側スペースに配置して、第1管部材5aと第2管部材5bとが組み合わされている。
この場合、相対的に外側に配置された曲管部位8b2の内周面と、相対的に内側に配置された曲管部位8b1の外周面とを接触させることが好ましい。こうした接触を得るために、曲管部位8b1の曲げ半径r1の中心O1と、曲管部位8b2の曲げ半径r2の中心O2とは隔てられている。こうして隔てられた距離、即ち、中心間距離Mは0.1mm〜2.5mmに設定するとよい。
これにより、曲管部位8b1がその外側スペースに配置された曲管部位8b2と接触してこの曲管部位8b2で支持される。したがって、圧縮機12の運転に伴って蓄熱装置1に波及する振動で、曲管部位8b1が振動して曲管部位8b2に衝突して相互に傷付くことを防止することが可能である。
しかも、前記中心間距離Mを設けて、曲管部位8b2の内側スペースに配置された曲管部位8b1と、この曲管部位8b1の外側スペースに配置された曲管部位8b2とを接触させたことにより、図8に示すように曲管部位8b1に連続された直管部位8aと、この直管部位8aと平行に配置されて曲管部位8b2に連続された直管部位8aとを、互に離れた状態に保持できる。
これにより、蓄熱槽2内の蓄熱材3を発核させた場合、第1管部材5aの直管部位8aとこれに対して上下方向に隣接された第2管部材5bの直管部位8aとの間を通って、過冷却された液相状態の蓄熱材3の発核を伝播させることができる。したがって、蓄熱材3全体を固相状態に変化させて、潜熱を放出することが可能である。
第3実施形態の蓄熱装置1及びこれを備えた空気調和機11で、以上説明した以外の構成は、図7〜図9に示されない構成を含めて第1実施形態と同じである。したがって、この第3実施形態においても、簡単な構成でありながら、冷媒等の熱媒体が流通する配管5と過冷却可能な蓄熱材3との熱交換性能を向上することが可能な蓄熱装置1、及びこれを備えた空気調和機11を提供できる。
しかも、第3実施形態では、中間管部8を有した複数の管部材例えば第1管部材5aと第2管部材5bで配管5を形成したので、第1実施形態と比較して配管5の熱交換面積が大幅に増えて、冷媒等の熱媒体が流通する配管5と過冷却可能な蓄熱材3との熱交換性能を大幅に向上させることができる。
加えて、相対的に外側に配置された曲管部位8b2と相対的に内側に配置された曲管部位8b1とが接している。そのため、これら内外の曲管部位間全体に隙間が形成された場合と比較して、内側の曲管部位8b1に連続した直管部位8aを、中心間距離Mに応じて長くできる。したがって、配管5の熱交換面積が増えて、蓄熱材3との熱交換性能を更に向上することが可能である。
又、配管5を形成する複数の管部材例えば第1管部材5aと第2管部材5bは、蓄熱槽2の厚み方向に並んでいない。このため、蓄熱槽2の厚みを増やすことなく、十数mm程度の狭い蓄熱槽2内に、熱交換面積が大きい配管5を収めることができる。したがって、既述のように配管5の熱交換性能を高める上で、蓄熱装置1の大形化を伴うことも防止することが可能である。
図10(A)及び図10(B)は第4の実施の形態を示している。第4実施形態は、以下の説明において第3実施形態とは相違し、それ以外は第3実施形態と同じである。このため、第3実施形態と同一ないしは同様の機能を奏する構成については、第3実施形態と同じ符号を付してその説明を省略する。又、説明においては必要により図4及び図5等も参照する。
第4実施形態の蓄熱装置1では、その配管5が有した中間管部8に伝熱部材例えば伝熱板24が複数装着されている。各伝熱板24は金属製好ましくは銅製である。これら伝熱板24は中間管部8の蛇行方向に隣り合った部位、例えば図10(B)に示すように上下方向に隣り合った直管部位8aで挟着されている。
具体的には、一部の伝熱板24は、図10(A)に示すように第1管部材5aの直管部位8aと、これに対して、下方に配置され、かつ、入口管部6から遠ざかるほど近付くように傾いた直管部位8aと、で挟着されている。これら伝熱板24は、スペーサとして機能していて、第1管部材5aが有した中間管部8の蛇行方向に隣り合った曲管部位(折返し部位)8b1同士を、離れた状態に保持している。そのため、第4実施形態では第3実施形態で用いたスペーサは使用されない。
これとともに、残りの伝熱板24は、図10(A)に示すように第2管部材5bの直管部位8aと、これに対して、上方に配置され、かつ、入口管部6から遠ざかるほど離れるように傾いた直管部位8aと、で挟着されている。これら伝熱板24は、スペーサとして機能していて、第2管部材5bが有した中間管部8の蛇行方向に隣り合った曲管部位(折返し部位)8b2同士を、離れた状態に保持している。そのため、第4実施形態では第3実施形態で用いたスペーサは使用されない。
第4実施形態の蓄熱装置1及びこれを備えた空気調和機11で、以上説明した以外の構成は、図10(A)及び図10(B)に示されない構成を含めて第3実施形態と同じである。したがって、この第4実施形態においても、簡単な構成でありながら、冷媒等の熱媒体が流通する配管5と過冷却可能な蓄熱材3との熱交換性能を向上することが可能な蓄熱装置1、及びこれを備えた空気調和機11を提供できる。
しかも、中間管部8に接した伝熱板24を備える第4実施形態では、発核により蓄熱材3から放出された潜熱を、伝熱板24で受けて配管5に伝えることができる。そのため、伝熱板24がない構成と比較して、潜熱による配管5の加熱性能が向上されるに伴い、配管5内を流通する冷媒の温度を、より素早く高めることが可能である。
なお、第4実施形態では、各伝熱板24に、それらの厚み方向に貫通する通孔又は溝等からなる貫通部を一個以上設けることが好ましい。こうした構成の採用により、伝熱板24の貫通部を通って蓄熱材3全体に発核が伝播できるようにすることが可能である。又、第4実施形態で説明した伝熱板24は、第1実施形態及び第2実施形態にも適用可能である。
図11(A)及び図11(B)は第5の実施の形態を示している。第5実施形態は、以下の説明において第3実施形態とは相違し、それ以外は第3実施形態と同じである。このため、第3実施形態と同一ないしは同様の機能を奏する構成については、第3実施形態と同じ符号を付してその説明を省略する。又、説明においては必要により図4及び図5等も参照する。
第5実施形態の蓄熱装置1では、その配管5が有した中間管部8に一枚の伝熱部材26が装着されている。伝熱部材26は金属板好ましくは銅板製である。この伝熱部材26は中間管部8にその前側と後側から交互に接して波板状に曲がった状態で配管5に装着されている。ここで、中間管部8の前側とは図11(A)が描かれた紙面の表面側を指しており、中間管部8の後側とは図11(A)が描かれた紙面の裏面側を指している。
第5実施形態の蓄熱装置1及びこれを備えた空気調和機11で、以上説明した以外の構成は、図11(A)及び図11(B)に示されない構成を含めて第3実施形態と同じである。したがって、この第5実施形態においても、簡単な構成でありながら、冷媒等の熱媒体が流通する配管5と過冷却可能な蓄熱材3との熱交換性能を向上することが可能な蓄熱装置1、及びこれを備えた空気調和機11を提供できる。
しかも、中間管部8に接した板状の伝熱部材26を備える第6実施形態では、発核により蓄熱材3から放出された潜熱を、伝熱部材26で受けて配管5に伝えることができる。そのため、伝熱部材26がない構成と比較して、潜熱による配管5の加熱性能が向上されるに伴い、配管5内を流通する冷媒の温度を、より素早く高めることが可能である。
なお、第5実施形態では、各伝熱部材26に、それらの厚み方向に貫通する通孔又は溝等からなる貫通部を一個以上設けることが好ましい。こうした構成の採用により、伝熱部材26の貫通部を通って蓄熱材3全体に発核が伝播できるようにすることが可能である。又、第5実施形態で説明した伝熱部材26は、第1実施形態及び第2の実施形態にも適用可能である。
図12〜図14を参照して第6の実施の形態に係る蓄熱装置1とこれを備えた空気調和機11を、詳細に説明する。第6実施形態は以下の説明において第1実施形態とは相違し、それ以外は第1実施形態と同じである。このため、第1実施形態と同一ないしは同様の機能を奏する蓄熱装置の構成については、第1実施形態と同じ符号を付して説明する。又、この蓄熱装置を備えたヒートポンプ式の空気調和機については、第1実施形態と同じであるが図5を用いて説明する。
図12に示すように蓄熱装置1は、蓄熱槽2と、蓄熱材3(図14参照)と、発核手段4(図13及び図14参照)と、配管5を備えている。
蓄熱槽2は一側壁2aとこれから離間された他側壁2bを有している。これら一側壁2aと他側壁2bは蓄熱槽2の例えば厚み方向に対向している。なお、一側壁2aは蓄熱槽2の前壁(正面壁)をなしており、他側壁2bは蓄熱槽2の後壁(背面壁)をなしている。蓄熱槽2によって規定される各蓄熱装置1の厚みは十数mmである。
蓄熱槽2の内部に蓄熱材3が収容されている。蓄熱槽2は蓄熱材3で侵されない材料で形成されている。この蓄熱槽2の一側壁2aと他側壁2bは平行であってもなくてもよい。
蓄熱槽2は、その一側壁2aを経由して外部の熱源例えば後述する圧縮機の熱を受けるように配設される。この場合、蓄熱槽2は熱源である圧縮機との接触面積(受熱面積)が極力大きく確保されるように配置される。そのために、蓄熱槽2の構成材料を、柔軟性を有する材料例えばアルミパック等で形成することもできる。しかし、これに制約されず、合成樹脂や金属等の剛性を有する材料で蓄熱槽2を形成することが可能である。
蓄熱材3には、過冷却をすることが可能である蓄熱材、即ち、液相の状態から温度が下がって融点以下になっても凝固せずに液相状態を維持する特性を有した蓄熱材が使用される。このような蓄熱材は、潜熱蓄熱材又は相変化蓄熱材と称される。
こうした蓄熱材3として、例えば酢酸ナトリウム3水和物等の酢酸ソーダや、例えば硫酸ナトリウム10水和物等の硫酸ソーダを挙げることができるが、その中でも酢酸ナトリウム3水和物を用いることが望ましい。酢酸ナトリウム3水和物の融点は58℃、熱伝導率は0.7W/(m・K)、潜熱は264kJ/kg、比熱は3kJ/(kg・k)である。
図13及び図14に示した発核手段4は、任意のタイミングで過冷却状態の蓄熱材3に例えば電圧を印加して、蓄熱材3の過冷却状態を解除する(これを発核と称する)ために設けられている。この発核手段4は、図示しないアノード電極、カソード電極、及び発核電源を有している。
アノード電極及びカソード電極は、互に離間し対をなして設けられ、かつ、例えば全体が蓄熱材3に接する状態に配置されている。発核電源は、蓄熱槽2の外部に配置され、アノード電極及びカソード電極と電気的に接続されている。蓄熱材3を発核させるときに、発核電源は図示しない制御部で制御され、それにより、発核電源はアノード電極とカソード電極との間に所定の電圧を印加させる。こうした電圧の印加に伴い、液相状態で過冷却されている蓄熱材3は、過冷却状態を解除されて結晶化し、潜熱を放出しながら固相状態に変化する。
図12及び図13に示すように配管5は、入口管部6と、出口管部7と、これら入口管部6と出口管部7を接続した中間管部8とを有している。この配管5において少なくとも中間管部8は、蓄熱材3より熱伝導率が大きい材質、例えば銅で形成されている。主要な銅の熱伝導率は、100W/(m・K)〜300W/(m・K)、純銅の熱伝導率は400W/(m・K)であり、例えば387W/(m・K)の銅で中間管部8が形成されている。酢酸ナトリウム3水和物の熱伝導率(0.7W/(m・K))より大幅に大きい。
配管5には、その入口管部6から中間管部8を経由して出口管部7に向けて熱媒体、例えば後述する冷媒が流通される。配管5は、少なくとも中間管部8を蓄熱材3に接して、図13及び図14に示すように蓄熱槽2の一側壁2aと他側壁2bとの間に配置されている。
中間管部8は図12に示すようにサーペンタイン状に形成されている。詳しくは、中間管部8は複数の直管部位8a及び複数の折返し部位8eを有している。
各直管部位8aは、中間管部8の蛇行方向(即ち、隣り合った各折返し部位8eが延びる方向、例えば図12では上下方向)に、離間して配設されているとともに、横方向(蓄熱槽2の幅方向)に延びている。ここに、蓄熱槽2の幅方向とは図12及び図13において左右方向である。
各折返し部位8eは、上下に隣り合った直管部位8aに連続されこれら直管部位8aを接続している。上下に隣り合った直管部位8aが互に逆方向に傾斜するように各折返し部位8eは180°を超える曲げ角度で曲げられている。これにより、上下に隣り合って対向する直管部位8a間は、これら直管部位8aを接続した折返し部位8eから遠ざかるほど、次第に狭められ、又は次第に広げられている。上下に隣り合った折返し部位8eは接触乃至は近接されていることが好ましい。上下に隣り合った折返し部位8eのピッチは、全ての直管部位8aが平行であるサーペンタイン形状と比較して小さい。
各直管部位8aは、上下方向に互に離間して配設されているとともに、斜めとなった状態で蓄熱槽2の幅方向(横方向)に延びている。ここに、蓄熱槽2の幅方向とは図12及び図13において左右方向である。各折返し部位8eは、上下に隣接する直管部位8aの端部を接続している。
なお、第6実施形態において配管5は一本の金属管で形成されているので、直管部位8aと曲管部位8bは一体に作られている。しかし、直管部位8aと折返し部位8eとを別々に成形するとともに、これらを接続することによって、サーペンタイン状に形成された中間管部8を採用することも可能である。この場合、直管部位8aの一端に上向きの端部を設けるとともに、この直管部位8aの他端に下向きの端部を設けた複数の管部要素を用意し、上下に隣接される管部要素の上向きの端部と下向きの端部とを接続することで、接続された上向きの端部と下向きの端部とが折返し部位8eをなしたサーペンタイン状に形成された中間管部8とすることも可能である。
図14に示すように中間管部8の幅Wは、この中間管部8の厚みTより広く形成されている。ここで、中間管部8の幅Wとは、蓄熱槽2の厚み方向(一側壁2aと他側壁2bとを結ぶ方向)に沿う直管部位8a及び曲管部位8bの夫々の前後両端間の寸法を指している。これとともに、中間管部8の厚みTとは、直管部位8aの上下両端間の寸法を指している。
このような中間管部8は、その素材である断面円形の銅管を径方向に押しつぶすように変形させて構成されている。この中間管部8の断面は楕円形ないしは長円形である。なお、中間管部8の内空部からなる流路の断面積は、後述する冷凍サイクルに要求される冷媒の量が、過不足なくかつ円滑に流通できるように確保されている。
中間管部8の長軸は中間管部8の幅Wを規定している。この中間管部8は外部から熱を受ける一側壁2aから遠ざかる方向に前記長軸が延びるように配設されている。具体的には、前記長軸が延びる方向を、蓄熱槽2の厚み方向(つまり、一側壁2aと他側壁2bとを結ぶ方向)に一致させて、中間管部8が蓄熱槽2内に配設されている。
一側壁2aの熱を他側壁2b側へ向けてより広範囲に伝導させる上で、中間管部8の幅Wは、例えば一側壁2aと他側壁2bとの離間距離の70%以上で、かつ、前記離間距離以下とすることが好ましい。これとともに、図14に示すように中間管部8の一側縁8cは蓄熱槽2の一側壁2aに接触ないしは接近して配置することが好ましい。更に、中間管部8の他側縁8dも蓄熱槽2の他側壁2bに接触ないしは接近して配置することが好ましい。
図13に示すように配管5の入口管部6と出口管部7は、断面が円形の直管で形成されている。これら入口管部6と出口管部7をなす銅管の直径は、中間管部8をなした銅管が押しつぶされる前の銅管の径と同じである。これとともに、入口管部6及び出口管部7は、蓄熱槽2の左右両端部に配設され、上下方向に延びていて、その上端部を除く部位は蓄熱材3に接している。
入口管部6と出口管部7の上端は蓄熱槽2の上面に開口されている。なお、入口管部6と出口管部7の上部を、蓄熱槽2の外部に突出させることも可能である。この場合、後述する冷媒管の取り回しの関係で、蓄熱槽2外に突出された出口管部7の上部は曲げることも可能である。
図13に示すように入口管部6と出口管部7は、蓄熱槽2の一側壁2aと他側壁2bとの間の略中央部位に配設されている。このため、中間管部8の一側縁8cは、入口管部6及び出口管部7よりも蓄熱槽2の一側壁2aに近付けられている。これとともに、中間管部8の他側縁8dも、入口管部6及び出口管部7よりも蓄熱槽2の他側壁2bに近付けられている。入口管部6と出口管部7の上部には管継手用の図示しない継手部材が取付けられる。
次に、前記蓄熱装置1を備えたヒートポンプ式の空気調和機を図5により説明する。空気調和機11は、室外機Kaと室内機Kbとから構成されている。
室外機Kaには、圧縮機12、四方切換え弁13、室外熱交換器14、及び膨張装置15等が配置されている。室内機Kbには、室内熱交換器16等が配置されている。これら圧縮機12−四方切換え弁13−室外熱交換器14−膨張装置15−室内熱交換器16は、冷媒管Pを介して順次接続されて、冷凍サイクル回路Rを構成している。この冷凍サイクル回路Rを流れる熱媒体には、例えば冷媒、具体的にはHFC(ハイドロフルオロカーボン)冷媒R410Aが使用される。
冷媒管Pは銅管等で形成されている。蓄熱装置1が有した配管5は冷媒管Pの一部を兼ねている。
詳しくは、四方切換え弁13から流出して圧縮機12に吸込まれるようとする冷媒を導く冷媒管部位は、四方切換え弁13に一端が接続された第1管部P1と、圧縮機12の吸込み口に一端が接続された第2管部P2とを有している。第1管部P1の他端は配管5の入口管部6に接続されているとともに、第2管部P2の他端は配管5の出口管部7に接続されている。この構成によって、配管5には、その入口管部6から出口管部7に向けて冷媒が流通される。
圧縮機12は蓄熱装置1を加熱する熱源として利用される。圧縮機12の外郭は鋳鉄で形成されている。圧縮機12はその運転により温度が上昇される。この場合、圧縮機12の温度は、圧縮機12の上部の方が下部よりもが高くなる。このため、蓄熱装置1からみて、圧縮機12の上部は圧縮機12の下部よりも高温の第1熱源とみなせるとともに、圧縮機12の下部は第1熱源より低温の第2熱源とみなすことができる。
なお、蓄熱装置1が空気調和機11以外の機器、例えば冷蔵庫やヒートポンプ式給湯器などに適用される場合、蓄熱装置1を加熱する熱源として例えば温水配管などを使用することが可能である。
室外機Kaには室外熱交換器14に対向して室外送風機17が配置される。更に、室外機Kaには、温度センサの他、各構成部品を接続する配管や電気配線等が設けられている。
室外送風機17は、プロペラ型の室外ファン17Fと、これを駆動する駆動モータ17Mとからなる。室外熱交換器14において、室外ファン17Fの回転により室外熱交換器14を通風する室外空気と、室外熱交換器14の内部を流れる冷媒とが熱交換される。
室内機Kbには室内熱交換器16に対向して室内送風機18が配置される。更に、室内機Kbには、図示しない圧縮機駆動装置、温度センサの他、各構成部品を接続する配管や電気配線等が設けられている。
室内送風機18は、横流ファン型の室内ファン18Fと、これを駆動する駆動モータ18Mとからなる。室内熱交換器16において、室内ファン18Fの回転により室内熱交換器16を通風する室内空気と、室内熱交換器16の内部を流れる冷媒とが熱交換される。
空気調和機11の制御部は、図示しないリモートコントローラから運転開始信号を受けることにより、圧縮機12と、室外送風機17、及び室内送風機18に駆動信号を送る。それにより、空気調和機11の冷房運転又は暖房運転が開始される。
冷房運転では、圧縮機12で圧縮されて冷媒管Pに吐出される高温高圧のガス冷媒が、図5中実線で示すように切換えられた四方切換え弁13を経由して室外熱交換器14に流入する。室外熱交換器14に流入したガス冷媒は、室外送風機17の室外ファン17Fによって送風される外気と熱交換して冷却され、室外熱交換器14を流通するうちに徐々にガス状から液状に変化する。
室外熱交換器14の冷媒出口で、冷媒の全てが液状となることで、室外熱交換器14は凝縮器として機能する。この室外熱交換器14から導出される高圧の液冷媒は、膨張装置15に導かれて断熱膨張し、ガス冷媒と液冷媒の混ざった、いわゆる気液ニ相状態の冷媒となる。
この冷媒は、室内熱交換器16に導かれ、室内送風機18から送風される室内空気と熱交換して蒸発し、室内空気から蒸発潜熱を奪う。これにより、室内空気の温度が低下されて、この空気は室内に吹き出されて冷房作用をなす。室内熱交換器16において、冷媒は気液ニ相状態からガス状態に変化されるので、室内熱交換器16は蒸発器として機能する。こうして室内熱交換器16から流出したガス冷媒は圧縮機12に吸込まれて、冷房サイクルが形成される。
四方切換え弁13を図5中点線で示すように切換えることにより、圧縮機12から吐出される高温高圧のガス冷媒は、前記冷房サイクルとは逆方向に導かれて冷媒管Pを流通し循環して、暖房サイクルを形成する。このような暖房運転においては、室内熱交換器16が凝縮器として機能するとともに、室外熱交換器14が蒸発器として機能する。
そのため、室内熱交換器16に通風される室内空気は、室内熱交換器16での熱交換により加熱される。つまり、冷媒が凝縮する際に放出される凝縮熱を吸収して温度上昇される。こうして室内熱交換器16において温度が上がった空気は、室内に吹き出されて、暖房作用をなす。
この空気調和機11は前記構成の蓄熱装置1を備えている。即ち、図12〜図14に模式的に示すように蓄熱装置1は、その蓄熱槽2が圧縮機12と熱交換ができるように、圧縮機12の周面の少なくとも一部に沿って配設されている。この場合、圧縮機12の少なくとも上部と熱交換ができるように蓄熱槽2を配設することが好ましい、なお、図3中符号19は軟質な伝熱シートを指している。この伝熱シート19は、圧縮機12の周面と蓄熱槽2の一側壁2aとの間に挟まれていて、それにより、密接性を高めて、圧縮機12と蓄熱槽2との熱交換を良好ならしめている。
このような蓄熱槽2の配置により、蓄熱槽2内の蓄熱材3は、冬季における空気調和機11の暖房運転中に、高温となる圧縮機12によって蓄熱材3の融点以上の温度となるように加熱される。したがって、空気調和機11の運転中、蓄熱材3は圧縮機12の排熱によって温度上昇され、溶解して液相状態となる。
これとともに、暖房運転が停止された状態が維持されると、圧縮機12の温度は周囲温度まで低下する。冬季等における圧縮機12の周囲温度は、前記融点の温度より低くなる。したがって、圧縮機12と同様に蓄熱材3はその融点を下回る温度にまで下がる。既述のように蓄熱材3は過冷却が可能な物質で形成されている。このため、蓄熱材3は、液相の状態から温度が下がって融点以下になっても、凝固せずに液相状態を維持して過冷却された状態となり、潜熱を蓄える。
例えば冬季において既述のように蓄熱材3が潜熱を蓄えた状態で、空気調和機11の暖房運転が開始されるときに、蓄熱装置1の発核手段4が動作される。それにより、発核電源に設定された所定の電圧が、蓄熱材3に接しているアノード電極とカソード電極との間に数秒間印加されるので、過冷却されて液相状態にある蓄熱材3が発核されて、この蓄熱材3の過冷却状態が解除される。
この場合、蓄熱材3に接している配管5の中間管部8はサーペンタイン状であるため、発核の進行が妨げられ難く、発核を蓄熱材3の全域に速やかに伝播させることが可能である。
発核が起こると、過冷却状態の蓄熱材3は、液相状態から固相状態に相変位し、それに伴い潜熱を放出する。放出された潜熱によって、配管5及び圧縮機12が加熱されるので、暖房運転を開始した空気調和機11の圧縮機12に配管5を通って吸込まれようとする冷媒、及び圧縮機12の温度が上昇される。それにより、冷媒の温度が速やかに上昇するので、暖房運転の開始を起点として室内機Kbから温風が吹き出されるまでに要する時間を短くすることが可能である。
過冷却状態の蓄熱材3から放出された潜熱で加熱される配管5の中間管部8はサーペンタイン状に形成されているだけではなく、その曲管部位8bの曲げ角度θが180°を越えている。この配管5は、全ての直管部位8aが平行であるサーペンタイン状の中間管部に比較して、蓄熱槽2の略全域に配置された中間管部8の全長を長く確保でき、しかも、上下に隣り合った曲管部位8bのピッチが小さい。
即ち、第6実施形態の蓄熱装置1は、蓄熱槽2の限られた内部スペースに、冷媒が流通する配管5がより長く収容された構成であり、それに伴って熱交換面積が増やされている。したがって、蓄熱材3から放出された潜熱で配管5を流通する冷媒を効率よく加熱できる。
それに伴って、冷媒の温度が速やかに上昇するので、暖房運転の開始を起点として室内機Kbから温風が吹き出されるまでに要する時間を短くすることが可能である。
既述のように配管5の中間管部8の長さを長くすることで熱交換面積を増やしたので、中間管部8にフィン等を取付けて熱交換面積を増やす必要がない。そのため、蓄熱装置1の構成が簡単である。
空気調和機11の運転が継続されると、圧縮機12の温度が上昇されるので、この圧縮機12を熱源として蓄熱槽2はその一側壁2aから加熱される。これに伴い、蓄熱槽2内で固相状態に在る蓄熱材3は、既述のように溶解して液相状態になる。
これとともに、圧縮機12の熱は、蓄熱槽2の一側壁2aを経由して蓄熱材3、及び冷媒が流通する配管5に伝えられる。この配管5の熱伝導率は固相状態に在る蓄熱材3の熱伝導率より遥かに大きい。
このような配管5の高熱伝導性を利用して、圧縮機12から一側壁2aを経由して中間管部8の一側縁8cに波及された熱を、素早く蓄熱槽2の他側壁2b側に伝導させることが可能である。これにより、配管5の中間管部8から周囲に放出される熱で、固相状態に在る蓄熱材3を溶かして液相状態にすることが可能である。この場合、圧縮機12の排熱を受けるとともに内部に冷媒が通る配管5を利用して、固相状態の蓄熱材3が溶かされるので、フィンなどを用いることなく、単純な構成で、固層状態の蓄熱材3を溶け残りがないように溶かすことが可能である。
しかも、第6実施形態では、中間管部8の一側縁8cが、圧縮機12の熱を受ける一側壁2aに接触若しくは近接している。このため、一側壁2aの熱を中間管部8が受取る効率が高い。
更に、配管5の中間管部8はその幅Wが厚みTより広い形状である断面楕円形乃至は長円形であり、その中間管部8の他側縁8dは、一側壁2aから遠く隔たった蓄熱槽2の他側壁2bに近付けられている。これにより、圧縮機(熱源)12から遠い位置でも、固相状態の蓄熱材3を溶かすことが可能である。したがって、蓄熱槽2の他側壁2b側において蓄熱材3の溶け残りを生じることを抑制可能である。
加えて、中間管部8はサーペンタイン状に形成されていて、蓄熱槽2の略全域に配置されているので、蓄熱槽2の上下両端部においても、蓄熱材3の溶け残りを生じることを抑制可能である。
ところで、蓄熱材が過冷却される条件としては、蓄熱材が過冷却をすることが可能な物質(PCM;Phase change material)であること、及び蓄熱材が完全に溶融した液相状態にあることが挙げられる。このため、潜熱を放出して固相状態となった蓄熱材を、外部から加熱することで溶かして液相状態にした場合に、溶け残りがあると、この溶け残りは結晶核として機能する。
こうした蓄熱材の溶け残りがあると、この溶け残りを起点として発核が進行するので、蓄熱材を過冷却状態に維持できない。したがって、過冷却を利用した長期間にわたる蓄熱ができないとともに、蓄熱材に蓄えた熱を任意のタイミングで放出する制御ができない。
蓄熱材の溶け残りは、蓄熱材を加熱する熱量が少ない場合や、加熱時間が短い場合等に起きる可能性がある。特に、蓄熱材が酢酸ナトリウム3水和物などの酢酸ソーダである場合、その熱伝導率が0.7W/(m・K)と小さい上に、固相状態の酢酸ソーダは対流しないため、酢酸ソーダの伝熱性は悪い。これにより、酢酸ソーダ製の蓄熱材は、溶け残りを生じる可能性が高い。
既述のように圧縮機12の排熱で固相状態の蓄熱材3を溶解させた場合、第6実施形態では、冷媒管Pの一部を担った配管5を利用して蓄熱材3の溶け残りを抑制できる。そのため、空気調和機11の運転が停止された後に液相状態の蓄熱材3が過冷却された際、それ以前の蓄熱材3の溶け残りを原因として、過冷却された蓄熱材3が発核されることがないので、蓄熱材3を過冷却された状態に維持できる。
したがって、第6実施形態では、発核手段4を用いて任意なタイミングで過冷却された蓄熱材3を発核操作することにより、蓄熱材3を発核させて、この蓄熱材3から潜熱を放出して配管5内の冷媒を加熱することが可能である。
なお、断面が円形で、かつ、その直径が、蓄熱槽2の一側壁2aと他側壁2bとの間の離間距離の例えば70%程度以上と太い配管5をサーペンタイン状に形成した構成でも、蓄熱材3の溶け残りを抑制して固相状態の蓄熱材3を素早く溶かすことは可能である。しかし、この場合、蓄熱槽2に占める配管5の容積が増えるので、それに応じて蓄熱槽2に収容される蓄熱材3の量が少なくなる。そのため、発核に伴って放出される熱量が減って、蓄熱装置の放熱性能が低下するので好ましくない。
これに対し、第6実施形態において、配管5の大部分を占める中間管部8の各部の断面形状は、楕円形乃至は長円形である。このため、蓄熱材3の量が多く確保されるに伴い、蓄熱装置1の放熱性能を向上できる点で好ましい。
図15は第7の実施の形態を示している。第7実施形態は以下の説明において第6実施形態とは相違し、それ以外は第6実施形態と同じである。このため、第6実施形態と同一ないしは同様の機能を奏する構成については、第6実施形態と同じ符号を付してその説明を省略する。又、説明においては必要により図12及び図5等も参照する。
第7実施形態は、配管5のサーペンタイン状をなす中間管部8が有する複数の直管部位8aの配置が第6実施形態とは異なる。
詳しくは、図15に示すように相対的に下側に配置される直管部位8a程、急な角度で傾斜されている。この傾斜によって、蓄熱槽2の他側壁2bに寄った直管部位8aの側縁(つまり、他側縁8d)が下方に配置されるとともに、直管部位8aの一側縁8cが上方に配置されている。こうした傾斜に拘わらず、各直管部位8aの一側縁8cは、蓄熱槽2の外部から加熱される一側壁2aに接触乃至は近接されている。
以上説明した構成により、相対的に下側に位置される直管部位8aの一側縁8cは、熱源である圧縮機12の上部12aに、より近付けられる。圧縮機12の上部12aは下部12bよりも高温になるので、圧縮機12の高い熱を各直管部位8aが受取り易くなる。これとともに、最も下位置の直管部位8aの他側縁8dは、蓄熱槽2の底壁に、より接近する。このため、直管部位8aを熱源とする蓄熱材3の加熱が、蓄熱槽2の底壁側でも良好に行なわれて、前記底壁側での蓄熱材3の溶け残りを、より確実に抑制することが可能である。
なお、第7実施形態において、直管部位8aの幅Wを、相対的に下側に位置される直管部位8aほど大きくすると、これら直管部位8aの他側縁8dを、蓄熱槽2の下部においてその他側壁2bに、より近付けることができるので好ましい。
第7実施形態の蓄熱装置1及びこれを備えた空気調和機11で、以上説明した以外の構成は、図15に示されない構成を含めて第6実施形態と同じである。したがって、この第7実施形態においても、簡単な構成でありながら冷媒等の熱媒体が流通する配管5と過冷却可能な蓄熱材3との熱交換性能を向上することができる。さらに、蓄熱材3が固相状態から液相状態に変化する際の蓄熱材3の溶け残りを抑制でき、過冷却状態の蓄熱材3を任意のタイミングで発核させることが可能である。これとともに、配管5の容積を原因とする蓄熱材3の減少による放熱性能の低下を抑制可能な蓄熱装置1を提供することが可能である。又、この蓄熱装置1を備える空気調和機11においては、蓄熱材3の発核に伴い潜熱を放出する蓄熱装置1により、暖房運転開始時において冷媒が加熱されるので、速やかに温風を吹き出すことが可能である。
図16〜図18は第8の実施の形態を示している。第8実施形態は以下の説明において第6実施形態とは相違し、それ以外は第6実施形態と同じである。このため、第6実施形態と同一ないしは同様の機能を奏する構成については、第6実施形態と同じ符号を付してその説明を省略する。又、説明においては必要により図5等も参照する。
第8実施形態は、配管5を1本の管ではなく同一直径の複数本の管部材で形成した構成が第6実施形態とは異なる。
詳しくは、管部材は断面円形の銅管で形成されている。複数本例えば2本の管部材5c,5dが、蓄熱槽2の厚み方向(言い換えれば、蓄熱槽2の一側壁2aと他側壁2bとを結ぶ方向)に並べられている。
並べられた管部材5c,5d同士は、相互間での熱伝導が可能となるように接触されている。この場合、隣接する管部材5c,5dをそれらの接触部で半田材料等金属のろう材を用いて接続することは、接触状態を機械的に保持できるとともに、管部材5c,5d同士の熱伝導性を高めることができるので好ましい。
この第8実施形態において、サーペンタイン状に形成された中間管部8の幅Wは、管部材の使用数と直径を掛け算した値で規定される。これとともに、中間管部8の厚みTは管部材5c,5dの直径で規定される。
以上のように中間管部8が複数本の管部材5c,5dで形成された構成によれば、中間管部8の厚みTが第6実施形態と同じであるとした場合、第8実施形態の中間管部8の方がその長手方向に延びる溝が、隣接した管部材5c,5dの上部間及び下部間に夫々形成されている分、表面積を多く確保できる。
そのため、固相状態の蓄熱材3を、圧縮機12から中間管部8に伝えられた熱で、より効果的に加熱することが可能である。これとともに、過冷却状態の解除に伴って蓄熱材3が放出する潜熱で、中間管部8内の冷媒を、より効果的に加熱することも可能である。しかも、中間管部8の上下面に形成された前記溝に応じて蓄熱槽2に収容される蓄熱材3の量が増えるので、蓄熱装置1の放熱性能を向上することが可能である。
更に、第8実施形態によれば、配管5の各部の断面積は同じであるので、冷媒が流通される流路が、急激に広がリ、或いは急激に狭められることがない。これにより、配管5での冷媒の流通抵抗を減らすことができる。
又、第8実施形態で、配管5の入口管部6と出口管部7とは、夫々中間管部8の両端に一体に連続して上下方向に延びた管部で形成されている。このため、冷媒管Pの第1管部P1と入口管部6とは、夫々の端面形状に応じた接続端部を有する第1継手管(図示しない)を介して接続される。空気調和機11の運転中、第1継手管内の冷媒は二つの入口管部6に吸込まれる。同様に、冷媒管Pの第2管部P2と出口管部7とは、夫々の端面形状に応じた接続端部を有する第2継手管(図示しない)を介して接続される。空気調和機11の運転中、二つの出口管部7から流出された冷媒は、第2継手管内で合流されてから第2管部P2を経由して圧縮機12に吸込まれる。
第8実施形態の蓄熱装置1及びこれを備えた空気調和機11で、以上説明した以外の構成は、図16〜図18に示されない構成を含めて第6実施形態と同じである。したがって、この第8実施形態においても、簡単な構成でありながら冷媒等の熱媒体が流通する配管5と過冷却可能な蓄熱材3との熱交換性能を向上することができる。さらに、過冷却をすることが可能な蓄熱材3が固相状態から液相状態に変化する際の蓄熱材3の溶け残りを抑制でき、過冷却状態の蓄熱材3を任意のタイミングで発核させることが可能である。これとともに、配管5の容積を原因とする蓄熱材3の減少による放熱性能の低下を抑制可能な蓄熱装置1を提供することが可能である。
又、この蓄熱装置1を備える空気調和機11においては、蓄熱材3の発核に伴い潜熱を放出する蓄熱装置1により、暖房運転開始時において冷媒が加熱される。このため、速やかに温風を吹き出すことが可能である。
なお、第7実施形態で説明した中間管部8の各直管部位8aを傾斜させる技術は、第8実施形態の蓄熱装置が備える配管5の各直管部位8aに対して適用することが可能である。
以上のように本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これら新規な実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であるとともに、発明の要旨を逸脱しない限り、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形などは、発明の範囲に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
又、本明細書に記載された実施形態には以下の発明が含まれている。
[1]
外部の熱を受ける蓄熱槽と、
この蓄熱槽に収容される蓄熱材と、
入口管部、出口管部、及びこれら入口管部と出口管部を接続しかつ前記蓄熱材と接して配置される中間管部を有し、この中間管部の幅が前記中間管部の厚みより広く、かつ、前記中間管部が前記蓄熱材より熱伝導率が大きい材質で形成されていて、前記入口管部から前記出口管部に向けて熱媒体が流通される配管と、
を具備することを特徴とする蓄熱装置。
[2]
外部の熱を受ける蓄熱槽と、
この蓄熱槽に収容され過冷却をすることが可能な蓄熱材と、
この蓄熱材の過冷却状態を解除する発核手段と、
入口管部、出口管部、及びこれら入口管部と出口管部を接続しかつ前記蓄熱材と接して配置される中間管部を有し、この中間管部の幅が前記中間管部の厚みより広く、かつ、前記中間管部が前記蓄熱材より熱伝導率が大きい材質で形成されていて、前記入口管部から前記出口管部に向けて熱媒体が流通される配管と、
を具備することを特徴とする蓄熱装置。
[3]
前記蓄熱槽の厚み方向に沿う前記中間管部の断面が、楕円形ないしは長円形で、この断面の形状における長軸で前記中間管部の幅が規定されていることを特徴とする[1]又は[2]に記載の蓄熱装置。
[4]
前記中間管部が、前記蓄熱槽の厚み方向に並べられて互に接触された複数の管部材で形成されていることを特徴とする[1] 又は[2]に記載の蓄熱装置。
[5]
前記蓄熱層が有した一側壁の上部で受熱できるように前記蓄熱槽が配設されるとともに、前記中間管部が前記蓄熱槽の横方向に延びる複数の直管部位を有するサーペンタイン状に形成されていて、前記直管部位のうちで下側位置の直管部位ほど、前記厚み方向に前記一側壁から隔たった前記蓄熱槽の他側壁寄りの端を下端として急角度で傾斜されていることを特徴とする[1]から[4]のうちのいずれかに記載の蓄熱装置。
[6]
冷媒管に冷媒を循環させる圧縮機を有するヒートポンプ式の空気調和機において、[1]から[5]のうちのいずれかに記載の蓄熱装置を備え、この蓄熱装置が有する蓄熱槽が前記圧縮機と熱交換できるように配設されるとともに、前記蓄熱装置が有する配管が前記冷媒管の一部を担っていることを特徴とする空気調和機。
1…蓄熱装置、2…蓄熱槽、2a…蓄熱槽の一側壁、2b…蓄熱槽の他側壁、3…蓄熱材、4…発核手段、5…配管、5a〜5d…管部材、6…入口管部、7…出口管部、8…中間管部、8a…直管部位、8b,8b1,8b2…曲管部位(折返し部位)、8c…中間管部の一側縁、8d…中間管部の他側縁、8e…折返し部位、9…スペーサ、11…空気調和機、12…圧縮機、12a…圧縮機の上部、T…冷媒管、r1,r2…曲げ半径、O1…曲げ半径r1の中心、O2…曲げ半径r2の中心、M…中心間距離、22…バンド、24…伝熱部材

Claims (13)

  1. 外部の熱を受ける蓄熱槽と、
    この蓄熱槽に収容される蓄熱材と、
    入口管部、出口管部、及びこれら入口管部と出口管部を接続しかつ前記蓄熱材と接して配置される中間管部を有し、この中間管部が、180°を超える曲げ角度で曲げられた複数の折返し部位を有するサーペンタイン状に形成されていて、前記入口管部から前記出口管部に向けて熱媒体が流通される配管と、
    を具備することを特徴とする蓄熱装置。
  2. 外部の熱を受ける蓄熱槽と、
    この蓄熱槽に収容され過冷却をすることが可能な蓄熱材と、
    この蓄熱材の過冷却状態を解除する発核手段と、
    入口管部、出口管部、及びこれら入口管部と出口管部を接続しかつ前記蓄熱材と接して配置される中間管部を有し、この中間管部が、180°を超える曲げ角度で曲げられた複数の折返し部位を有するサーペンタイン状に形成されていて、前記入口管部から前記出口管部に向けて熱媒体が流通される配管と、
    を具備することを特徴とする蓄熱装置。
  3. 前記中間管部を有する複数本の管部材で前記配管が形成されていて、隣り合って配置された前記各管部材がそれらの折返し部位を相対的に外側と内側に配置して並べられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄熱装置。
  4. 相対的に外側に配置された前記折返し部位と相対的に内側に配置された前記折返し部位とが接していることを特徴とする請求項3に記載の蓄熱装置。
  5. 前記中間管部が前記折返し部位に連続する直管部位を有しており、隣り合って配置された前記各管部材の前記直管部位同士が離れていることを特徴とする請求項3又は4に記載の蓄熱装置。
  6. 前記中間管部の蛇行方向に隣り合った部位で挟まれて、前記蛇行方向に隣り合った前記折返し部位同士を離れた状態に保持するスペーサを、更に備えることを特徴とする請求項1から5のうちのいずれか一項に記載の蓄熱装置。
  7. 前記中間管部の少なくとも一部を結束して、前記蛇行方向に隣り合った前記折返し部位同士を接触した状態に保持するバンドを、更に備えることを特徴とする請求項1から5のうちのいずれか一項に記載の蓄熱装置。
  8. 前記中間管部の蛇行方向に隣り合った部位で挟まれた金属製の伝熱部材を、更に備えることを特徴とする請求項1から5のうちのいずれか一項に記載の蓄熱装置。
  9. 前記中間管部の幅がこの中間管部の厚みより広いことを特徴とする請求項1から8のうちのいずれか一項に記載の蓄熱装置。
  10. 前記蓄熱槽の厚み方向に沿う前記中間管部の断面が、楕円形ないしは長円形で、この断面の形状における長軸で前記中間管部の幅が規定されていることを特徴とする請求項10に記載の蓄熱装置。
  11. 前記中間管部が、前記蓄熱槽の厚み方向に並べられて互に接触された複数の管部材で形成されていることを特徴とする請求項9に記載の蓄熱装置。
  12. 前記蓄熱槽が有した一側壁の上部で受熱できるように前記蓄熱槽が配設されるとともに、前記中間管部が前記蓄熱槽の横方向に延びる複数の直管部位を有していて、これら直管部位のうちで下側位置の直管部位ほど、前記厚み方向に前記一側壁から隔たった前記蓄熱槽の他側壁寄りの端を下端として急角度で傾斜されていることを特徴とする請求項8から11のうちのいずれか一項に記載の蓄熱装置。
  13. 冷媒管に冷媒を循環させる圧縮機を有するヒートポンプ式の空気調和機において、請求項1から12のうちのいずれか一項に記載の蓄熱装置を備え、この蓄熱装置が有する蓄熱槽が前記圧縮機と熱交換できるように配設されるとともに、前記蓄熱装置が有する配管が前記冷媒管の一部を担っていることを特徴とする空気調和機。
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