JP2014189824A - 昇降機用部品 - Google Patents
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Abstract
【課題】引張強さ:250MPa以上、基地硬さ:250HV以上で、かつ被削性に優れる片状黒鉛鋳鉄製の、昇降機用部品を提供する。
【解決手段】質量%で、C:2.70〜3.90%、Si:1.20〜2.80%、Mn:1.00〜3.20%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、炭化物が面積率で6.0%以下分散した組織と、を有する片状黒鉛鋳鉄製とする。上記した組成に加えてさらに、S:0.01%超0.30%以下、および/または、P:0.10〜0.40%、B:0.005〜0.20%、Cu:0.10〜0.40%、Cr:0.01〜1.50%のうちから選ばれた1種または2種以上、および/または、Sn:0.30%以下、Sb:0.30%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有できる。
【選択図】なし
【解決手段】質量%で、C:2.70〜3.90%、Si:1.20〜2.80%、Mn:1.00〜3.20%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、炭化物が面積率で6.0%以下分散した組織と、を有する片状黒鉛鋳鉄製とする。上記した組成に加えてさらに、S:0.01%超0.30%以下、および/または、P:0.10〜0.40%、B:0.005〜0.20%、Cu:0.10〜0.40%、Cr:0.01〜1.50%のうちから選ばれた1種または2種以上、および/または、Sn:0.30%以下、Sb:0.30%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有できる。
【選択図】なし
Description
本発明は、昇降機の摺動部、振動部等の昇降機用部品に係り、とくに鋳鉄製の昇降機用部品の強度と被削性の向上に関する。
昇降機の摺動部、振動部等の昇降機用部品としては、例えば、非常止め装置用制動子、シーブ、制動装置用制動圧等がある。非常止め装置用制動子は、非常時にガイドレールに押し付け、乗りかごを安全に停止するためのものである。そのため、非常止め装置用制動子には、適切な耐摩耗性を保有していることが必要であるとされている。また、シーブは、電動機で回転させたとき、巻きかけられたロープとの間で生じる摩擦力により、ロープを上下方向に移動させ、乗りかごを昇降させるためのものである。そのため、シーブには、巻きかけられるロープとの間で異常な摩耗を生じないことが必要であるとされている。
このような要望に対し、例えば、特許文献1には、高速エレベータ用非常止め制動子が提案されている。特許文献1に記載された制動子は、レールに押し付けられる表面の一部が純鉄で置き換えられた球状黒鉛鋳鉄FCD−40で構成される制動子である。このような球状黒鉛鋳鉄は耐摩耗性に優れ、非常止め時の停止距離を短くするうえ、制動相手材であるレールへの損傷を与えないとしている。
また、特許文献2には、エレベータ用非常止め装置が提案されている。特許文献2に記載されたエレベータ用非常止め装置では、制動子を、C:3〜4wt%、P:0.5wt%以上含み、あるいはさらにPとCrの合計で2.0wt%以上含む組成で、グラファイト相、ステダイト相、セメンタイト相及びパーライト相を含み、好ましくはステダイト相を面積率で5%以上含む組織を有する、鉄合金としている。さらにNiを1.5〜4wt%含有させてもよいとしている。これにより、制動子の摩擦係数が増大し、耐摩耗性が向上して、非常止め装置の重量を増加する必要がなくなったとしている。
また、特許文献3には、駆動系を機械的摩擦力で制動する制動装置に用いる制動体が提案されている。特許文献3に記載された制動体は、少なくともC:3〜4wt%、P:0.5〜2.0wt%、Cr:1.0〜2.5wt%、Ni:1.5〜4wt%を含み、相手材と摺動する摺動部の金属組織が、少なくともグラファイト相、ステダイト相、セメンタイト相及びパーライト相を含む、鉄合金である。これにより、制動子の摩擦係数、耐摩耗性が安定して高くなり、より小さな押し付けバネで制動可能な制動装置が得られるとしている。
また、特許文献4には、シーブを、重量%で、Ni:0.5〜2.0%、Cu:0.5〜2.0%を含み、かつパーライト面積率が90%以上である球状黒鉛鋳鉄で形成したことを特徴とするエレベータ駆動装置が記載されている。これにより、シーブの耐摩耗性が向上し、シーブ寿命を大幅に延長することができるうえ、シーブに巻きまわすロープを180kg/mm2以上、ビッカース硬さが480〜500の高強度ロープとすることができ、ロープの軽量化、小径化が達成できるとしている。
しかしながら、特許文献1に記載された球状黒鉛鋳鉄FCD−40製制動子では、切削性が悪く、製造上問題があった。また、特許文献2〜4に記載された技術では、Cr、Niを多量に含有させる必要があり、また、一般的に、片状黒鉛鋳鉄では強度や耐摩耗性を向上させるために、Cr、NiやMo、V等を多量に含有させており、材料コストが高騰するという問題があった。
本発明は、かかる従来技術の問題を有利に解決し、片状黒鉛鋳鉄にMo、Ni、V等の合金元素を含有することなく安価で、昇降機における非常止め装置用制動子、シーブ等の昇降機用として好適な、引張強さ:250MPa以上、基地硬さ:250HV以上で、かつ被削性に優れる片状黒鉛鋳鉄製の、昇降機用部品を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記した目的を達成するために、まず、片状黒鉛鋳鉄の高強度化と耐摩耗性向上、さらには被削性向上に及ぼす各種要因について鋭意研究した。その結果、本発明者らは、10mm厚程度の薄肉の部位と50mm厚程度の厚肉の部位が共存する複雑な形状であっても、引張強さ:250MPa以上、基地硬さ:250HV以上の高強度を有するエレベータ部品を、安定して製造するためには、黒鉛を微細化しパーライト基地を強化する必要があることに想到した。
従来、黒鉛を微細に分布させるために、Mo、Ni、V等を多量に含有させていた。というのは、Moは、黒鉛を微細化し、しかも基地中にも固溶し基地を強化する。また、Niは、黒鉛化を促進するとともに、フェライト中に固溶し基地を強化する。さらに、Vは炭素と結合して炭化物を形成し、さらに黒鉛を微細にしかも均一に分布させる。このようなことから、従来から、Mo、Ni、Vを多量に含有させていたのである。
しかし、これらの元素はいずれも高価であり、これら元素の多量含有は、安価な製品を提供するという点からは問題があった。そこで、本発明者らは、比較的安価で、基地に固溶して基地を強化するとともに、黒鉛を微細にする作用を有するMnに着目し、Mnの多量含有を指向し、さらにC含有量の適正化を図り、適正量の炭化物を分散させて、強度増加と被削性の改善との両立を図り、さらに、強度増加に対し悪影響を及ぼすSi含有量を可能な限り低減することに思い至った。
そして、本発明者らの更なる検討により、Si含有量を1.20〜2.80質量%と従来より低減し、さらに、Cを2.70〜3.90質量%とし、さらにMnを1.00〜3.20質量%と多量に含有させ、あるいはさらにSを0.01質量%超0.30質量%以下の適正範囲内で含有させることにより、Mo、Ni、Vを含有することなく、安価でかつ、引張強さ:250MPa以上の高強度を有し、かつ被削性にも優れる複雑形状の片状黒鉛鋳鉄製昇降機用部品とすることができることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
(1)片状黒鉛鋳鉄製の昇降機用部品であって、前記片状黒鉛鋳鉄を、質量%で、C:2.70〜3.90%、Si:1.20〜2.80%、Mn:1.00〜3.20%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、炭化物が面積率で6.0%以下分散した組織と、を有する鋳鉄とし、引張強さ:250MPa以上、基地硬さ:250HV以上を有し、被削性に優れることを特徴とする昇降機用部品。
(2)(1)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、S:0.01%超0.30%以下を含有することを特徴とする昇降機用部品。
(3)(1)または(2)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、P:0.10〜0.40%、B:0.005〜0.20%、Cu:0.10〜0.40%、Cr:0.01〜1.50%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする昇降機用部品。
(4)(1)ないし(3)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Sn:0.30%以下、Sb:0.30%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有することを特徴とする昇降機用部品。
(1)片状黒鉛鋳鉄製の昇降機用部品であって、前記片状黒鉛鋳鉄を、質量%で、C:2.70〜3.90%、Si:1.20〜2.80%、Mn:1.00〜3.20%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、炭化物が面積率で6.0%以下分散した組織と、を有する鋳鉄とし、引張強さ:250MPa以上、基地硬さ:250HV以上を有し、被削性に優れることを特徴とする昇降機用部品。
(2)(1)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、S:0.01%超0.30%以下を含有することを特徴とする昇降機用部品。
(3)(1)または(2)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、P:0.10〜0.40%、B:0.005〜0.20%、Cu:0.10〜0.40%、Cr:0.01〜1.50%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする昇降機用部品。
(4)(1)ないし(3)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Sn:0.30%以下、Sb:0.30%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有することを特徴とする昇降機用部品。
本発明によれば、昇降機部品用として好適な、引張強さ:250MPa以上、基地硬さ:250HV以上で、かつ被削性に優れる片状黒鉛鋳鉄を、安価にかつ容易に製造でき、産業上格段の効果を奏する。本発明によれば、非常止め装置用制動子、シーブ等の鋳鉄製昇降機用部品を安価に製造できるという効果もある。
本発明昇降機用部品の一つであるシーブの一般的な形状を、図1に模式的に示す。図1から明らかなように、昇降機用のシーブでは、肉厚:10〜15mm程度の薄肉部と、肉厚:45〜50mm程度の厚肉部とが混在している。本発明では、例えば、このようなシーブ(昇降機用部)を片状黒鉛鋳鉄で製造する。使用する片状黒鉛鋳鉄は、質量%で、C:2.70〜3.90%、Si:1.20〜2.80%、Mn:1.00〜3.20%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する。
まず、片状黒鉛鋳鉄の組成限定理由について説明する。以下、以下、とくに断わらない限り、質量%は単に%で記す。
C:2.70〜3.90%
Cは、基地組織をパーライトとし基地(鋳鉄)の強度を増加させるとともに、黒鉛を晶出させて自己潤滑性を向上させる重要な作用を有する元素である。このような効果を得るためには、2.70%以上含有する必要がある。2.70%未満では、薄肉部でチルが発生し、加工性が低下する。一方、3.90%を超える過剰の含有は、黒鉛の晶出が著しく多くなり、強度の大幅な低下を招き、所望の高強度を確保できなくなる。このため、Cは2.70〜3.90%の範囲に限定した。なお、好ましくは2.90〜3.70%である。
C:2.70〜3.90%
Cは、基地組織をパーライトとし基地(鋳鉄)の強度を増加させるとともに、黒鉛を晶出させて自己潤滑性を向上させる重要な作用を有する元素である。このような効果を得るためには、2.70%以上含有する必要がある。2.70%未満では、薄肉部でチルが発生し、加工性が低下する。一方、3.90%を超える過剰の含有は、黒鉛の晶出が著しく多くなり、強度の大幅な低下を招き、所望の高強度を確保できなくなる。このため、Cは2.70〜3.90%の範囲に限定した。なお、好ましくは2.90〜3.70%である。
Si:1.20〜2.80%
Siは、鋳鉄の基本元素の一つで、黒鉛晶出に必須の元素であり、1.20%以上の含有を必要とする。一方、2.80%を超えて過剰に含有すると、強度が低下し、所望の高強度を確保できなくなる。このため、Siは1.20〜2.80%の範囲に限定した。なお、製造上の観点からは1.40〜2.60%の範囲とすることが好ましい。
Siは、鋳鉄の基本元素の一つで、黒鉛晶出に必須の元素であり、1.20%以上の含有を必要とする。一方、2.80%を超えて過剰に含有すると、強度が低下し、所望の高強度を確保できなくなる。このため、Siは1.20〜2.80%の範囲に限定した。なお、製造上の観点からは1.40〜2.60%の範囲とすることが好ましい。
Mn:1.00〜3.20%
Mnは、黒鉛を微細化するとともに、基地組織であるパーライトを強化する作用を有する元素である。また、MnはSと結合しMnSを形成し、加工性、とくに切削性を向上させる。このような効果を確保するために1.00%以上の含有を必要とする。一方、3.20%を超える含有は、炭化物が析出し、加工性が低下する。このため、Mnは1.00〜3.20%の範囲に限定した。
Mnは、黒鉛を微細化するとともに、基地組織であるパーライトを強化する作用を有する元素である。また、MnはSと結合しMnSを形成し、加工性、とくに切削性を向上させる。このような効果を確保するために1.00%以上の含有を必要とする。一方、3.20%を超える含有は、炭化物が析出し、加工性が低下する。このため、Mnは1.00〜3.20%の範囲に限定した。
上記した成分が基本の成分であるが、この基本組成に加えて、選択元素として、S:0.01%超0.30%以下、および/または、P:0.10〜0.40%、B:0.005〜0.20%、Cu:0.10〜0.40%、Cr:0.01〜1.50%のうちから選ばれた1種または2種以上、および/または、Sn:0.30%以下、Sb:0.30%以下のうちから選ばれた1種または2種、を必要に応じて選択して含有できる。
S:0.01%超0.30%以下
Sは、Mnと結合してMnSを形成し、被削性向上に寄与する元素であり、このような効果を得るためには0.01%を超えて含有することが望ましい。一方、0.30%を超えて含有すると、Mnの歩留りが低下し、所望の強度、基地硬さを確保できなくなる。このため、Sは0.01%超0.30%以下の範囲に限定することが好ましい。なお、とくに添加しない場合でも鋳鉄中にSは不可避的不純物として、0.001〜0.01%程度は含有される。
Sは、Mnと結合してMnSを形成し、被削性向上に寄与する元素であり、このような効果を得るためには0.01%を超えて含有することが望ましい。一方、0.30%を超えて含有すると、Mnの歩留りが低下し、所望の強度、基地硬さを確保できなくなる。このため、Sは0.01%超0.30%以下の範囲に限定することが好ましい。なお、とくに添加しない場合でも鋳鉄中にSは不可避的不純物として、0.001〜0.01%程度は含有される。
P:0.10〜0.40%、B:0.005〜0.20%、Cu:0.10〜0.40%、Cr:0.01〜1.50%のうちから選ばれた1種または2種以上
P、B、Cu、Crはいずれも、耐摩耗性を向上させる元素であり、必要に応じて1種または2種以上選択して含有できる。
Pは、ステダイトを晶出させ、耐摩耗性を向上させる。このような効果を得るために0.10%以上含有することが望ましい。一方、0.40%を超えて含有すると、ステダイトが多量に形成され相手攻撃性が増加するとともに、靭性、加工性の低下を招く。このため、Pは、0.10〜0.40%の範囲に限定した。なお、製造上の観点からより好ましくは0.10〜0.30%である。なお、とくに添加しない場合でも鋳鉄中にはPは不可避的不純物として、0.01〜0.10%未満程度含有される。
P、B、Cu、Crはいずれも、耐摩耗性を向上させる元素であり、必要に応じて1種または2種以上選択して含有できる。
Pは、ステダイトを晶出させ、耐摩耗性を向上させる。このような効果を得るために0.10%以上含有することが望ましい。一方、0.40%を超えて含有すると、ステダイトが多量に形成され相手攻撃性が増加するとともに、靭性、加工性の低下を招く。このため、Pは、0.10〜0.40%の範囲に限定した。なお、製造上の観点からより好ましくは0.10〜0.30%である。なお、とくに添加しない場合でも鋳鉄中にはPは不可避的不純物として、0.01〜0.10%未満程度含有される。
Bは、炭化物を形成し、鋳鉄の強度を増加させ、耐摩耗性を向上させる。このような効果を得るために0.005%以上含有することが望ましい。一方、0.20%を超えて多量に含有すると、炭化物量が増加し、靭性が低下するとともに相手攻撃性が増加する。このため、含有する場合には、Bは0.005〜0.20%に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.01〜0.10%である。
Cuは、固溶して、基地硬さを増加させ、さらに耐食性を向上させる元素であり、このような効果を得るためには、0.10%以上含有することが望ましいが、0.40%を超えて含有すると、コスト高となる。このため、含有する場合には0.10〜0.40%に限定することが好ましい。より好ましくは0.15〜0.30%である。
Crは、基地を緻密にして基地を強化し、鋳鉄強度、基地硬さを増加させる元素である。このような効果を確保するためには0.01%以上含有することが望ましい。一方、1.50%を超えて含有すると、炭化物量が増加し、強度が増加するが、加工性、靭性の低下を招く。このため、含有する場合には、Crは0.01〜1.50%に限定することが好ましい。より好ましくは0.10〜1.30%である。
Crは、基地を緻密にして基地を強化し、鋳鉄強度、基地硬さを増加させる元素である。このような効果を確保するためには0.01%以上含有することが望ましい。一方、1.50%を超えて含有すると、炭化物量が増加し、強度が増加するが、加工性、靭性の低下を招く。このため、含有する場合には、Crは0.01〜1.50%に限定することが好ましい。より好ましくは0.10〜1.30%である。
Sn:0.30%以下、Sb:0.30%以下のうちから選ばれた1種または2種
Sn、Sbはいずれも、基地のパーライト化を促進する元素であり、必要に応じて1種または2種を含有できる。
Snは、フェライトの析出を防止し、基地のパーライト化を促進する元素である。このような効果を得るためには0.01%以上含有することが望ましい。一方、0.30%を超えて多量に含有しても効果が飽和し含有量に見合う効果が期待できなくなり、経済的に不利となる。このため、含有する場合には、Snは0.30%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.02〜0.20%である。
Sn、Sbはいずれも、基地のパーライト化を促進する元素であり、必要に応じて1種または2種を含有できる。
Snは、フェライトの析出を防止し、基地のパーライト化を促進する元素である。このような効果を得るためには0.01%以上含有することが望ましい。一方、0.30%を超えて多量に含有しても効果が飽和し含有量に見合う効果が期待できなくなり、経済的に不利となる。このため、含有する場合には、Snは0.30%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.02〜0.20%である。
Sbは、フェライトの析出を防止し、基地のパーライト化を促進する元素である。このような効果を得るためには0.01%以上含有することが望ましい。一方、0.30%を超えて多量に含有すると、炭化物を形成し、靭性低下の原因となる。このため、含有する場合には、Sbは0.30%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.02〜0.20%である。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。
本発明昇降機用部品は、上記した組成を有する片状黒鉛鋳鉄製でパーライト基地中に片状黒鉛が分散し、さらに炭化物が面積率で6.0%以下、分散した組織を有する。つぎに、組織限定理由について説明する。
基地はパーライトとする。基地がパーライト以外の組織では、所望の高強度を確保できなくなる。このような効果を得るためには、炭化物を面積率で6.0%以上分散させることが望ましい。耐摩耗性を向上させるため、合金元素を添加して炭化物を析出させてもよいが、面積率で6.0%を超えて分散させると、相手材への攻撃性が高くなり、また加工性(被削性)が低下する。このようなことから、炭化物は面積率で6.0%以下に限定した。
基地はパーライトとする。基地がパーライト以外の組織では、所望の高強度を確保できなくなる。このような効果を得るためには、炭化物を面積率で6.0%以上分散させることが望ましい。耐摩耗性を向上させるため、合金元素を添加して炭化物を析出させてもよいが、面積率で6.0%を超えて分散させると、相手材への攻撃性が高くなり、また加工性(被削性)が低下する。このようなことから、炭化物は面積率で6.0%以下に限定した。
上記した組成と組織を有する昇降機用部品の製造方法は、とくに限定する必要はなく、電気炉、キュポラ等の常用の溶製方法で上記した組成の溶湯を溶製し、砂型、自硬化性鋳型等の常用の鋳型に鋳込み、所望の形状の鋳物とし、切削等の加工により、昇降機用部品、例えば、図1に示すような形状のシーブとされる。
以下、実施例に基づいて、さらに本発明について説明する。
以下、実施例に基づいて、さらに本発明について説明する。
表1に示す組成の溶湯を電気炉で溶製し、鋳型(砂型)に鋳造し、切削加工で、図1に模式的に示す形状(外径:750mmφ)で、最大肉厚:50mm厚、最小肉厚:10mm厚のシーブとした。
得られたシーブから、試験片を採取し、組織観察、引張試験、硬さ試験を実施した。試験方法はつぎの通りである。
(1)組織観察
得られたシーブの図2に示す位置から、組織観察用試験片を採取し、肉厚方向断面を研磨し、腐食液:3%ナイタール液で腐食して、光学顕微鏡(倍率:50倍)で観察し、撮像し33mm2の大きさの写真について画像解析により炭化物面積率(%)を測定した。
(2)引張試験
得られたシーブの図2に示す位置から、試験片の長手方向が円周方向となるように、JIS Z 2201の規定に準拠して、JIS 14A号引張試験片(平行部大きさ:5.0mmφ×7.0mm標点間距離)を採取し、引張試験(引張速度:1mm/min)を実施し引張特性(引張強さTS)を求めた。
(3)硬さ試験
得られたシーブの図2に示す位置(最大肉厚部の肉厚中央部)から、測定方向が円周方向となるように硬さ試験片を採取し、肉厚中央位置で、JIS Z 2242の規定に準拠してビッカース硬さHV0.1を30箇所以上測定し、その平均値をその部品の基地硬さとした。
得られたシーブから、試験片を採取し、組織観察、引張試験、硬さ試験を実施した。試験方法はつぎの通りである。
(1)組織観察
得られたシーブの図2に示す位置から、組織観察用試験片を採取し、肉厚方向断面を研磨し、腐食液:3%ナイタール液で腐食して、光学顕微鏡(倍率:50倍)で観察し、撮像し33mm2の大きさの写真について画像解析により炭化物面積率(%)を測定した。
(2)引張試験
得られたシーブの図2に示す位置から、試験片の長手方向が円周方向となるように、JIS Z 2201の規定に準拠して、JIS 14A号引張試験片(平行部大きさ:5.0mmφ×7.0mm標点間距離)を採取し、引張試験(引張速度:1mm/min)を実施し引張特性(引張強さTS)を求めた。
(3)硬さ試験
得られたシーブの図2に示す位置(最大肉厚部の肉厚中央部)から、測定方向が円周方向となるように硬さ試験片を採取し、肉厚中央位置で、JIS Z 2242の規定に準拠してビッカース硬さHV0.1を30箇所以上測定し、その平均値をその部品の基地硬さとした。
得られた結果を表2に示す。
また、得られたシーブと同じ組成の溶湯を電気炉で溶製し、鋳型(砂型)に鋳造し、外径:211.9mmφ×内径:111.9mmφ×長さ300mmの円筒状試験片とし、切削試験に供した。試験方法はつぎの通りである。
また、得られたシーブと同じ組成の溶湯を電気炉で溶製し、鋳型(砂型)に鋳造し、外径:211.9mmφ×内径:111.9mmφ×長さ300mmの円筒状試験片とし、切削試験に供した。試験方法はつぎの通りである。
(4)切削試験
上記した円筒状試験片を被削材とし、旋盤を用いて、下記条件で被削材を切削し、チップ摩耗量を測定し、被削性を評価した。被削性の評価は、従来材を基準(1.00)とし、従来材のチップ摩耗量に対する比を算出し、1.00未満のものを被削性に優れると評価した。切削の条件はつぎのとおりとした。
切削面:内周面
周速:839.5 m/min
送り:0.35mm/rev
切り込み量:0.15mm(片肉)
切削長さ:50mm
工具(チップ):CBN(ノーズ半径R:0.8mm、三菱マテリアル(株)製)
得られた結果を表2に併記する。
上記した円筒状試験片を被削材とし、旋盤を用いて、下記条件で被削材を切削し、チップ摩耗量を測定し、被削性を評価した。被削性の評価は、従来材を基準(1.00)とし、従来材のチップ摩耗量に対する比を算出し、1.00未満のものを被削性に優れると評価した。切削の条件はつぎのとおりとした。
切削面:内周面
周速:839.5 m/min
送り:0.35mm/rev
切り込み量:0.15mm(片肉)
切削長さ:50mm
工具(チップ):CBN(ノーズ半径R:0.8mm、三菱マテリアル(株)製)
得られた結果を表2に併記する。
本発明例はいずれも、引張強さ:250MPa以上、基地硬さ:250HV以上で、かつ被削性に優れる昇降機用部品となっている。一方、本発明範囲を外れる比較例は、引張強さが:250MPa未満であるか、基地硬さが250HV未満であるか、あるいは被削性が低下している。
Claims (4)
- 片状黒鉛鋳鉄製の昇降機用部品であって、
前記片状黒鉛鋳鉄を、質量%で、C:2.70〜3.90%、Si:1.20〜2.80%、Mn:1.00〜3.20%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、炭化物が面積率で6.0%以下分散した組織と、を有する鋳鉄とし、
引張強さ:250MPa以上、基地硬さ:250HV以上を有し、被削性に優れることを特徴とする昇降機用部品。 - 前記組成に加えてさらに、質量%で、S:0.01%超0.30%以下を含有することを特徴とする請求項1に記載の昇降機用部品。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、P:0.10〜0.40%、B:0.005〜0.20%、Cu:0.10〜0.40%、Cr:0.01〜1.50%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の昇降機用部品。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、Sn:0.30%以下、Sb:0.30%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の昇降機用部品。
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