以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
(実施の形態1)
まず本実施の形態のマイクロデバイスの構成として加速度センサの構成について図1および図2を用いて説明する。なお、説明の便宜のため、X方向、Y方向、Z方向が導入されている。図1において、X方向は2つの検出フレーム5c、5c同士が互いに隣り合う方向である。Y方向はX方向に直交する方向であって、ねじれ梁5bおよびリンク梁5dの延びる方向である。Z方向はX方向およびY方向の双方に直交する方向であって、支持基板1の表面に直交する上下方向(基板1Aと可動体とが互いに向かい合う方向)である。なおZ方向は、本実施の形態の加速度センサが測定対象とする加速度方向に一致する。
図1および図2を参照して、本実施の形態の加速度センサは、基板1Aと、アンカー部5aと、ねじれ梁5bと、検出フレーム5cと、リンク梁5dと、慣性質量体5eとを主に有している。
基板1Aは、支持基板1と、絶縁膜2と、導電性膜3とを有している。支持基板1上には絶縁膜2が形成されており、絶縁膜2上には導電性膜3が形成されている。支持基板1には、たとえばシリコン基板を用いることができる。絶縁膜2には、たとえば低応力の窒化シリコン膜やシリコン酸化膜を用いることができる。導電性膜3には、たとえば導電性を有する多結晶シリコン膜を用いることができる。
導電性膜3は、アンカー支持部3aと、検出電極3bと、固定電極3cとを有している。アンカー支持部3a、検出電極3bおよび固定電極3cは、たとえば同一の多結晶シリコン膜からパターニングにより互いに分離して形成されたものである。
アンカー支持部3a上には、支持部5a1を介在してアンカー部5aが形成されている。これによりアンカー部5aは基板1Aに支持されている。ねじれ梁5bは、アンカー部5aからY方向の両側に延びている。ねじれ梁5bは、ねじれ梁5bのY方向に延びる軸周りにねじれることができるようにアンカー部5aにより支持されている。
検出フレーム5cは、平面視において枠形状を有しており、枠形状の内側の2箇所でねじれ梁5bに接続されている。検出フレーム5cは、ねじれ梁5bを中心に回転可能なように、ねじれ梁5bを介在して基板1Aに支持されている。また検出フレーム5cは、少なくともその一部が導電性を有している。検出フレーム5cは、検出電極3bとZ方向に対向するように配置されている。
1つの検出フレーム5cに対向する検出電極3bは、2つの検出電極部3ba、3bbを有している。2つの検出電極部3ba、3bbは、それぞれY方向に延びており、かつ互いにX方向に隣り合っている。
リンク梁5dは、検出フレーム5cの枠形状の外側の2箇所に接続されている。リンク梁5dは、リンク梁5dのY方向に延びる軸周りにねじれることができるように検出フレーム5cにより支持されている。リンク梁5dのY方向に延びる軸は、ねじれ梁5bのY方向に延びる軸とX方向においてずれている。
上記のアンカー部5a、ねじれ梁5b、検出フレーム5cおよびリンク梁5dのセットが、たとえば2セット設けられている。これらの2セットは、平面視において各セットの間においてY方向に延びる仮想の中心線A−Aに対して互いに線対称となるように配置されている。
慣性質量体5eは、平面視において上記2セットの周囲を取り囲むように枠形状を有している。この慣性質量体5eは、枠形状の内側においてリンク梁5dに接続されている。これにより、1つの慣性質量体5eは、上記2セットの検出フレーム5cの各々にリンク梁5dを介在して接続されている。また慣性質量体5eは、少なくともその一部が導電性を有している。慣性質量体5eは、固定電極3cとZ方向に対向するように配置されている。固定電極3cは平面視において枠形状を有している。
上記のアンカー部5a、ねじれ梁5b、検出フレーム5c、リンク梁5dおよび慣性質量体5eは、一体の導電膜5から形成されており、たとえば導電性を有する多結晶シリコン膜からなっている。
本実施の形態においては、検出フレーム5cおよび慣性質量体5eは基板1Aに対して移動する可動構造体である。検出フレーム5cの検出電極3bと対向する表面には凸部5fが形成されており、かつ検出電極3bの検出フレーム5cと対向する表面には凸部3dが形成されている。検出電極3bの凸部3dと上下方向(Z方向)に対向する位置に検出フレーム5cの凸部5fが形成されている。このため、図1に示す平面視において検出電極3bの凸部3dと検出フレーム5cの凸部5fとは重複した位置に配置されている。
また慣性質量体5eの固定電極3cと対向する表面には凸部5fが形成されており、かつ固定電極3cの慣性質量体5eと対向する表面には凸部3dが形成されている。この固定電極3cの凸部3dと上下方向(Z方向)に対向する位置に慣性質量体5eの凸部5fが形成されている。このため、図1に示す平面視において固定電極3cの凸部3dと慣性質量体5eの凸部5fとは重複した位置に配置されている。
なお検出電極3bの凸部3dは検出電極3bの矩形状の平面形状の角部や外形の辺に沿った位置に形成されていることが好ましい。また固定電極3cの凸部3dは固定電極3cの枠形状の平面形状の角部や外形の辺に沿った位置に形成されていることが好ましい。
また検出フレーム5cの凸部5fは検出フレーム5cの枠形状の平面形状の角部や外形の辺に沿った位置に形成されていることが好ましい。また慣性質量体5eの凸部5fは慣性質量体5eの枠形状の平面形状の角部や外形の辺に沿った位置に形成されていることが好ましい。
次に、本実施の形態のマイクロデバイスとしての加速度センサの動作原理について図1および図2を用いて説明する。
図1および図2を参照して、この加速度センサでは、基板1Aに対して垂直方向に加速度が加えられると、慣性質量体5eが基板1Aに対して上下方向(Z方向)に変位する。この慣性質量体5eの変位がリンク梁5dを介して検出フレーム5cに伝えられることによって、ねじれ梁5bのY方向に延びる軸を中心として検出フレーム5cが回転する。この回転によって検出フレーム5cと検出電極3bとの距離が変化し、検出フレーム5cと検出電極3bとの間の静電容量が変化する。静電容量が容量−電圧変換回路によって加速度に比例する電圧に変換されることで加速度が検出される。
次に、本実施の形態のマイクロデバイスの製造方法として加速度センサの製造方法について図3〜図8を用いて説明する。
図3を参照して、たとえばシリコンよりなる支持基板1の表面上に絶縁膜2を介在してたとえば多結晶シリコンよりなる導電性膜3が形成される。この導電性膜3がフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いてパターニングされることにより、この導電性膜3からアンカー支持部3a、検出電極3bおよび固定電極(図示せず)が形成される。これにより、支持基板1と絶縁膜2とパターニングされた導電性膜3とからなる基板1Aが形成される。
アンカー支持部3a、検出電極3bおよび固定電極(図示せず)を覆うように基板1A上に、たとえばリン酸ガラス(PSG)などからなる犠牲膜4が形成される。この犠牲膜4がフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いてパターニングされることにより、犠牲膜4には、アンカー支持部3a、検出電極3bおよび固定電極の各々に達する孔4a、4cが形成される。
図4を参照して、犠牲膜4上を覆うように、たとえば多結晶シリコンよりなる導電膜5が成膜される。この導電膜5は孔4a、4c内を埋め込むように形成される。導電膜5の孔4a内を埋め込む部分は第1の支持部5a1を構成し、導電膜5の孔4c内を埋め込む部分は第2の支持部5c1を構成する。
ここで第1の支持部5a1の幅(たとえば直径)W1は第2の支持部5c1の幅(たとえば直径)W2よりも大きくなるように第1および第2の支持部5a1、5c1が形成される。この第1の支持部5a1により導電膜5とアンカー支持部3aとが連結され、かつ第2の支持部5c1により導電膜5と検出電極3bとが連結される。
図5を参照して、導電膜5に深堀エッチング(DRIE:Deep Reactive Ion Etching)などが行われて、導電膜5がパターニングされる。この際、犠牲膜4はエッチングストッパとして機能する。
上記の深堀エッチングによって導電膜5から、アンカー部5a、ねじり梁(図示せず)、検出フレーム5c、リンク梁(図示せず)および慣性質量体(図示せず)が形成される。この後、アンカー部5a、検出フレーム5cなどの導電膜5の表面上を覆うように薄膜6が形成される。この薄膜6は、導電膜5がたとえば多結晶シリコンよりなる場合には、多結晶シリコンの熱酸化を妨げるシリコン窒化膜などから形成される。
なお薄膜6は、酸化による導電膜5のパターン変化を見込んで形成されるが、酸化による導電膜5のパターン変化が無視できる場合は不要である。
この後、犠牲膜4がフッ酸溶液などによりエッチング除去される。
図6を参照して、上記のエッチング除去により、基板1Aの表面(上面)とアンカー部5a、検出フレーム5cなどの導電膜5の表面(下面)との間に隙間が生じる。ただし、導電性膜3と導電膜5とは支持部5a1、5c1により連結されているため、この段階では導電膜5は基板1Aに固定されている。
上記により、基板1Aとの間に隙間を介して配置された可動構造体(検出フレーム5c、慣性質量体)を第1および第2の支持部5a1、5c1の各々で基板1Aに対して支持した支持構造が形成される。
図7を参照して、外部に露出した導電性膜3および導電膜5の表面に熱酸化により熱酸化膜7が形成される。導電性膜3および導電膜5の各々が多結晶シリコンよりなる場合には、熱酸化膜7は酸化シリコンよりなる。この熱酸化膜7は導電性膜3および導電膜5の各々の表面側と膜中側とに一定の割合で成長する。
上記の熱酸化は、上下方向(Z方向)における第2の支持部5c1の少なくとも一部において、第2の支持部5c1の上下方向に直交する幅方向の全体が酸化するように行われる。また上記の熱酸化は、第1の支持部5a1の上下方向(Z方向)のいずれの部分においても、幅方向の全体が酸化することのないように行われる。つまり上記の熱酸化は、第1の支持部5a1の上下方向(Z方向)の全体において、酸化されていない多結晶シリコンの部分が残るように行われる。
上記の熱酸化により第2の支持部5c1の真下の導電性膜3の部分には未酸化部としての凸部3dが生じ、第2の支持部5c1の真上の導電膜5の部分には未酸化部としての凸部5fが生じる。
上記の熱酸化は、たとえば900℃以上の高温で酸素を含むガスを流してシリコンを化学的に変質させることにより行われる。この熱酸化の方法としては、たとえばドライO2酸化、ウエットO2酸化、スチーム酸化、水素燃焼酸化(パイロジェニック酸化)、酸素分圧酸化、塩酸酸化などの方法が用いられる。
この後、熱酸化膜7が、たとえば気相フッ酸などによりエッチング除去される。さらに薄膜6がたとえばプラズマエッチングなどによりエッチング除去される。
図8を参照して、上記の熱酸化膜7のエッチング除去により、第2の支持部5c1が形成されていた箇所において基板1Aから可動構造体(検出フレーム5c、慣性質量体)が浮いた状態となり、導電性膜3と導電膜5の上下方向に互いに対向する箇所に凸部3dと凸部5fとが形成される。
これにより、慣性質量体5eの固定電極3cと対向する表面には凸部5fが形成されており、かつ固定電極3cの慣性質量体5eと対向する表面には凸部3dが形成されている。この固定電極3cの凸部3dと上下方向(Z方向)に対向する位置に慣性質量体5eの凸部5fが形成されている。
またこの状態においては、第1の支持部5a1によりアンカー部5aなどを介在して可動構造体(検出フレーム5c、慣性質量体)が基板1Aに対して支持される。
また上記薄膜6のエッチング除去により、導電性膜3と導電膜5との表面が露出し、可動構造体を変位可能な状態となる。これにより図1および図2に示す本実施の形態のマイクロデバイスとしての加速度センサが製造される。
なお第2の支持部5c1の幅(たとえば直径)W2(図4)は、図6に示すように犠牲膜4が除去された状態においては可動構造体(検出フレーム5c、慣性質量体)をメカニカルに保持でき、かつできるだけ小さい方が望ましい。このため、第2の支持部5c1の幅(たとえば直径)W2の最小寸法は、図3の工程における犠牲膜4をパターニングする際のフォトリソグラフィ技術の最小加工寸法となる。
また犠牲膜4の厚みT1(図3)は、図7において導電性膜3の上面に形成される熱酸化膜7と導電膜5の下面に形成される熱酸化膜7とが上下方向に接触しないように設定される必要がある。このため、犠牲膜4の厚みT1は、導電性膜3または導電膜5の外側に膨らんだ厚みT2(図7)の2倍以上であることが必要である。
たとえば第2の支持部5c1の幅W2(図4)を0.4μmとし、熱酸化による導電性膜3または導電膜5の表面側と膜中側との熱酸化膜7の成長した厚みの割合を6:4と仮定する。この場合、第2の支持部5c1を幅方向に完全に熱酸化すれば、導電性膜3または導電膜5の表面側に0.3μm、膜中側に0.2μmの熱酸化膜7が成長する。このため、犠牲膜4の厚みT1は0.3×2=0.6μm以上とする必要がある。犠牲膜4の厚みT1を0.6μmとすると、最終的な導電性膜3と導電膜5との間の検出ギャップT3(図8)は、0.6μm+0.4μm=1μmとなる。
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
本実施の形態によれば、図6および図7に示すように第2の支持部5c1が酸化されて熱酸化膜7が形成された後に、図8に示すようにその熱酸化膜7が除去されることにより第2の支持部5c1が接続されていた箇所に凸部3d、5fが形成される。
この際、図9(A)〜(D)に示すように、導電性膜3および導電膜5の多結晶シリコンが熱酸化されると、熱酸化された部分はそれ以上酸化しない。このため、図9(C)および図9(D)に示すように酸化時間が長くなると凸部3d、5fの形状はそのままで、熱酸化膜7は上下方向に厚くなるように形成される。よって、熱酸化の時間が長くなっても、凸部3d、5fの形状を維持されることになり、凸部3d、5fの形状のばらつきが小さくなる。したがって、基板1Aと可動構造体(検出フレーム5c、慣性質量体5e)との製造中および使用中の固着が少なく、固着防止効果の一定化が容易な信頼性の高いマイクロデバイス(静電容量式加速度センサ)を実現することができる。
また犠牲層膜を除去して可動構造体をフリーにするリリース工程を気相フッ酸で実施できるため、歩留まりが向上する。また気相フッ酸によるリリースにも係わらず、犠牲膜4として平坦性に優れるリン酸ガラスを使用でき、性能バラツキの少ないマイクロデバイスを実現できる。
なお、犠牲膜4は必ずしもリン酸ガラスである必要はなく、ボロンとリンがドープされたBPSG膜、TEOS(Tetra Ethyl Ortho Silicate)膜などの他のシリコン酸化膜であってもよい。また犠牲膜4には、SiGeなどの多結晶シリコンとエッチング選択比を確保できる膜を適用することもできる。また犠牲膜4を除去する手段は、フッ酸溶液に限る必要はなく、気相フッ酸などの他の手法でも構わない。また、熱酸化膜7を除去する手段は、気相フッ酸に限らず、ストッパ効果で固着が完全に防止できる場合には液体フッ酸でも構わない。
また絶縁膜2は、たとえば下から順に積層されたシリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸化膜である。最上層のシリコン酸化膜は、導電性膜3のパターニング時のエッチングストッパとして機能し、犠牲膜4と一緒に除去される。シリコン窒化膜は犠牲膜4および熱酸化膜7の除去時のエッチングストッパとして機能する。シリコン窒化膜は、薄膜6としてシリコン窒化膜を用いた場合、薄膜6の除去時に一緒に除去される。
(実施の形態2)
図10を参照して、本実施の形態のマイクロデバイスとしての加速度センサの構成は、図1および図2に示す実施の形態1の構成と比較して、導電膜5側にのみ凸部5fが形成されており、導電性膜3側には凸部が形成されていない点において異なっている。本実施の形態においては、導電性膜3の表面(上面)は実質的に平坦である。
なお、これ以外の本実施の形態の構成は、図1および図2に示す実施の形態1の構成とほぼ同じであるため同一の要素については同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
次に、本実施の形態のマイクロデバイスの製造方法として加速度センサの製造方法について図11〜図16を用いて説明する。
図11を参照して、たとえばシリコンよりなる支持基板1の表面上に絶縁膜2を介在してたとえば多結晶シリコンよりなる導電性膜3が形成される。この導電性膜3がフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いてパターニングされることにより、この導電性膜3からアンカー支持部3a、検出電極3bおよび固定電極(図示せず)が形成される。これにより、支持基板1と絶縁膜2とパターニングされた導電性膜3とからなる基板1Aが形成される。
この導電性膜3の上を覆うように薄膜21が形成される。この薄膜21は、導電性膜3の材質(たとえば多結晶シリコン)の熱酸化を妨げる材質よりなり、たとえばシリコン窒化膜よりなっている。
薄膜21を介在してアンカー支持部3a、検出電極3bおよび固定電極(図示せず)を覆うように基板1A上に、たとえばリン酸ガラス(PSG)などからなる犠牲膜4が形成される。この犠牲膜4がフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いてパターニングされることにより、犠牲膜4には、犠牲膜4だけでなく薄膜21も貫通してアンカー支持部3aに達する孔4aと、犠牲膜4を貫通して薄膜21に達する孔4cが形成される。
この後、図12〜図14に示す本実施の形態の製造工程は、図4〜図6に示す実施の形態1の製造工程と同様の工程を経る。これにより図14に示すように、基板1Aとの間に隙間を介して配置された可動構造体(検出フレーム5c、慣性質量体)を第1および第2の支持部5a1、5c1の各々で基板1Aに対して支持した支持構造が形成される。
図15を参照して、この後、外部に露出した導電膜5の表面に熱酸化により熱酸化膜7が形成される。この熱酸化の際、導電性膜3の表面は、導電性膜3の熱酸化を妨げる材質よりなる薄膜21により覆われているため熱酸化されない。
導電膜5が多結晶シリコンよりなる場合には、熱酸化膜7は酸化シリコンよりなる。この熱酸化膜7は導電膜5の表面側と膜中側とに一定の割合で成長する。
上記の熱酸化は、上下方向(Z方向)における第2の支持部5c1の少なくとも一部において、第2の支持部5c1の上下方向に直交する幅方向の全体が酸化するように行われる。また上記の熱酸化は、第1の支持部5a1の上下方向(Z方向)のいずれの部分においても、幅方向の全体が酸化することのないように行われる。つまり上記の熱酸化は、第1の支持部5a1の上下方向(Z方向)の全体において、酸化されていない多結晶シリコンの部分が残るように行われる。
上記の熱酸化により第2の支持部5c1の真上の導電膜5の部分には未酸化部としての凸部5fが生じる。上記の熱酸化の条件は実施の形態1と同様である。
この後、熱酸化膜7が、たとえば気相フッ酸などによりエッチング除去される。さらに薄膜6、21がたとえばプラズマエッチングなどによりエッチング除去される。
図16を参照して、上記の熱酸化膜7のエッチング除去により、第2の支持部5c1が形成されていた箇所において基板1Aから可動構造体(検出フレーム5c、慣性質量体)が浮いた状態となり、平面視において第2の支持部5c1が形成されていた導電膜5の箇所に凸部5fが形成される。
またこの状態においては、第1の支持部5a1によりアンカー部5aなどを介在して可動構造体(検出フレーム5c、慣性質量体)が基板1Aに対して支持される。
また上記薄膜6、21のエッチング除去により、導電性膜3と導電膜5との表面が露出し、可動構造体を変位可能な状態となる。これにより図10に示す本実施の形態のマイクロデバイスとしての加速度センサが製造される。
本実施の形態によれば、導電性膜3は薄膜21により熱酸化されず膜減少がないため、実施の形態1と比較して狭いギャップ構造を実現することができる。
たとえば図13に示す第2の支持部5c1の幅(たとえば直径)W2を0.4μmとし、熱酸化によるポリシリコンの表面側と膜中側の酸化膜成長の割合を6:4と仮定する。この場合、第2の支持部5c1を幅方向に完全に熱酸化すれば、導電膜5の表面側に0.3μm、ポリシリコン膜中側に0.2μmの熱酸化膜7が成長する。本実施の形態では、導電性膜3上には熱酸化膜7は成長しないため、犠牲膜4の厚みは0.3μm以上とする必要がある。犠牲膜4の厚みを0.3μmとすると、最終的な導電性膜3と導電膜5との間の検出ギャップは、0.3μm+0.2μm=0.5μmとなり、実施の形態1と比較して、狭いギャップ構造を実現できる。
また導電膜5に実施の形態1と同様に熱酸化により凸部5fが形成されるため、この凸部5fの形状のばらつきが小さくなる。このため、基板1Aと可動構造体(検出フレーム5c、慣性質量体5e)との製造中および使用中の固着が少なく、固着防止効果の一定化が容易な信頼性の高いマイクロデバイス(静電容量式加速度センサ)を実現することができる。
なお上記においては図11に示すように薄膜21が導電性膜3上に形成された場合について説明したが、犠牲膜4上に形成されても上記と同様の効果が得られる。この場合、凸部は導電膜5ではなく導電性膜3に形成される。
(実施の形態3)
図17を参照して、本実施の形態のマイクロデバイスとしての加速度センサの構成は、図10に示す実施の形態2の構成と比較して、第1の支持部5a1が上下方向にテーパー形状を有している点、および凸部5fの上下方向の断面において三角形に近い形状を有している点において異なっている。本実施の形態においては、第1の支持部5a1が、基板1A側ほど幅が狭くなるような形状を有している。
なお、これ以外の本実施の形態の構成は、図10に示す実施の形態2の構成とほぼ同じであるため同一の要素については同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
次に、本実施の形態のマイクロデバイスの製造方法として加速度センサの製造方法について図18〜図23を用いて説明する。
図18を参照して、たとえばシリコンよりなる支持基板1の表面上に絶縁膜2を介在してたとえば多結晶シリコンよりなる導電性膜3が形成される。この導電性膜3がフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いてパターニングされることにより、この導電性膜3からアンカー支持部3a、検出電極3bおよび固定電極(図示せず)が形成される。これにより、支持基板1と絶縁膜2とパターニングされた導電性膜3とからなる基板1Aが形成される。
この導電性膜3の上を覆うように薄膜21が形成される。この薄膜21は、導電性膜3の材質(たとえば多結晶シリコン)の熱酸化を妨げる材質よりなり、たとえばシリコン窒化膜よりなっている。
薄膜21を介在してアンカー支持部3a、検出電極3bおよび固定電極(図示せず)を覆うように基板1A上に、たとえばリン酸ガラス(PSG)などからなる犠牲膜4が形成される。この犠牲膜4がフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いてパターニングされることにより、犠牲膜4には、犠牲膜4だけでなく薄膜21も貫通してアンカー支持部3aに達する孔4aと、犠牲膜4を貫通して薄膜21に達する孔4cが形成される。
これらの孔4a、4cは断面がテーパー形状となるように形成される。このテーパー形状とするために、孔4a、4cは反応性イオンエッチング(RIE)により形成される。この反応性イオンエッチングにおいて、たとえばプラズマ電力を下げたり、ガス圧力を上げたりして、エッチングガスのイオンエネルギーを下げることによりテーパー形状に孔4a、4cを形成することができる。
この後、図19〜図21に示す本実施の形態の製造工程は、図12〜図14に示す実施の形態2の製造工程と同様の工程を経る。これにより図21に示すように、基板1Aとの間に隙間を介して配置された可動構造体(検出フレーム5c、慣性質量体)を第1および第2の支持部5a1、5c1の各々で基板1Aに対して支持した支持構造が形成される。
図22を参照して、この後、外部に露出した導電膜5の表面に熱酸化により熱酸化膜7が形成される。この熱酸化の際、導電性膜3の表面は、導電性膜3の熱酸化を妨げる材質よりなる薄膜21により覆われているため熱酸化されない。
導電膜5が多結晶シリコンよりなる場合には、熱酸化膜7は酸化シリコンよりなる。この熱酸化膜7は導電膜5の表面側と膜中側とに一定の割合で成長する。
上記の熱酸化は、上下方向(Z方向)における第2の支持部5c1の最も基板1A側において、第2の支持部5c1の上下方向に直交する幅方向の全体が酸化するように行われる。また上記の熱酸化は、第1の支持部5a1の上下方向(Z方向)のいずれの部分においても、幅方向の全体が酸化することのないように行われる。つまり上記の熱酸化は、第1の支持部5a1の上下方向(Z方向)の全体において、酸化されていない多結晶シリコンの部分が残るように行われる。
上記の熱酸化により第2の支持部5c1の真上の導電膜5の部分には未酸化部としての凸部5fが生じる。上記の熱酸化の条件は実施の形態1と同様である。
この後、熱酸化膜7が、たとえば気相フッ酸などによりエッチング除去される。さらに薄膜6、21がたとえばプラズマエッチングなどによりエッチング除去される。
図23を参照して、上記の熱酸化膜7のエッチング除去により、第2の支持部5c1が形成されていた箇所において基板1Aから可動構造体(検出フレーム5c、慣性質量体)が浮いた状態となる。また平面視において第2の支持部5c1が形成されていた導電膜5の箇所に凸部5fが形成される。
またこの状態においては、第1の支持部5a1によりアンカー部5aなどを介在して可動構造体(検出フレーム5c、慣性質量体)が基板1Aに対して支持される。
また上記薄膜6、21のエッチング除去により、導電性膜3と導電膜5との表面が露出し、可動構造体を変位可能な状態となる。これにより図17に示す本実施の形態のマイクロデバイスとしての加速度センサが製造される。
本実施の形態によれば、図18に示すように犠牲膜4のテーパー形状の孔4cにより、その孔4c内を埋め込む第2の支持部5c1の断面形状もテーパー形状となる。このように第2の支持部5c1がテーパー形状となるため、図22に示す工程において僅かな熱酸化により、図23に示すように凸部5fを導電性膜3から離すことが可能となる。
本実施の形態によれば、導電性膜3の膜減少が少なく、狭ギャップ構造を実現することができる。また凸部5fの先端と導電性膜3との間の隙間が狭く、固着防止性能を向上することができる。さらに凸部5fの根元を太くすることができ、凸部5fが基板1Aに接触した際のメカニカル破損のない、信頼性の高いデバイス構造を実現することができる。
たとえば第2の支持部5c1を上部の寸法が1μmで、下部の寸法が0.2μmのテーパー形状とし、熱酸化による導電膜5の表面側と膜中側の酸化膜成長の割合を6:4と仮定する。この場合、テーパー形状の第2の支持部5c1の下部を幅方向に完全に酸化すれば、導電膜5の表面側に0.15μm、導電膜5の膜中側に0.1μmの熱酸化膜7が成長する。この場合、犠牲膜4の厚みは0.15μm以上であれば良い。犠牲膜4の厚みを0.2μmとすると、導電性膜3と導電膜5との間の検出ギャップは、0.2μm+0.1μm=0.3μmとなり、実施の形態1および2と比較して、狭いギャップ構造を実現することができる。この場合、凸部5fと導電性膜3との隙間は0.2μmであり、隙間が狭く、固着防止性能を向上することができる。また凸部5fの根本は0.8μmであり、接触時のメカニカル破損のない、信頼性の高いデバイス構造を実現することができる。
(実施の形態4)
図24を参照して、本実施の形態のマイクロデバイスとしての加速度センサの構成は、図1および図2に示す実施の形態1の構成と比較して、凸部3d、5fの先端が丸められて、凸部3d、5fの全体が断面において曲率を有するように形成されている点において異なっている。
なお、これ以外の本実施の形態の構成は、図1および図2に示す実施の形態1の構成とほぼ同じであるため同一の要素については同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
次に、本実施の形態のマイクロデバイスの製造方法として加速度センサの製造方法について図25〜図27を用いて説明する。
本実施の形態の製造方法は、図3〜図7に示す実施の形態1と同様の工程を経る。この後、図7に示す状態から熱酸化膜7がエッチング除去される。
図25を参照して、上記の熱酸化膜7のエッチング除去により、第2の支持部5c1が形成されていた箇所において基板1Aから可動構造体(検出フレーム5c、慣性質量体)が浮いた状態となり、導電性膜3と導電膜5の上下方向に互いに対向する箇所に凸部3dと凸部5fとが形成される。
図26を参照して、上記凸部3d、5fが形成された後、凸部3d、5fの鋭角な先端部を丸める処理が行われる。この処理は、たとえばXeF2ガスやSF6等方性プラズマなどにより多結晶シリコンをわずかに選択除去することにより行われる。
この後、薄膜6がたとえばプラズマエッチングなどによりエッチング除去される。
図27を参照して、上記薄膜6のエッチング除去により、導電性膜3と導電膜5との表面が露出し、可動構造体は変位可能な状態となる。これにより図24に示す本実施の形態のマイクロデバイスとしての加速度センサが製造される。
本実施の形態によれば、図26に示すように凸部3d、5fの鋭角な先端部をプラズマエッチングなどで丸めることができるため、メカニカルな接触に対し耐性のある信頼性の高い構造を実現することができる。
なお、図25の工程後に再度熱酸化して、酸化膜を気相フッ酸などで選択除去しても、同様の形状(つまり凸部3d、5fの鋭角な先端部が丸められた形状)を実現することができる。
(実施の形態5)
上記の実施の形態1〜4においてはマイクロデバイスとしてたとえばシリコン基板を用いた加速度センサについて説明したが、本発明が適用されるマイクロデバイスとしてはSOI(Silicon On Insulator)ウエハを用いた面内検出型の加速度センサであってもよい。以下、本実施の形態として、SOIウエハを用いた面内検出型の加速度センサの構成について図28および図29を用いて説明する。
図28および図29を参照して、本実施の形態の面内検出型の加速度センサは、基板1Aと、アンカー部5aと、梁5gと、慣性質量体5eと、可動電極5cと、固定電極5hと、基板支持部5iとを主に有している。
基板1Aはシリコン基板単層よりなっている。アンカー部5a、可動電極5c、慣性質量体5e、および基板支持部5iの各々は、たとえばシリコン活性層5と多結晶シリコン11a、11bとから構成されている。梁5gおよび固定電極5hの各々は、たとえばシリコン活性層5から構成されている。
固定電極5hは、基板支持部5iにより基板1Aに支持されている。基板支持部5iは、上記のとおりシリコン活性層5と多結晶シリコン11aとから構成されており、多結晶シリコン11aの第1の支持部11a1で基板1Aに接続されている。
アンカー部5aも、基板支持部5iと同様、シリコン活性層5と多結晶シリコン11aとから構成されており、多結晶シリコン11aの第1の支持部で基板1Aに接続されている。このアンカー部5aに梁5gを介在して慣性質量体5eが接続されている。この慣性質量体5eは、図28に示す平面視において両端を梁5gを介在してアンカー部5aに支持されているため、図29に示すように基板1Aの表面から浮いた状態で支持されている。
可動電極5cは、この慣性質量体5eに接続されており、慣性質量体5eと同様に基板1Aの表面から浮いた状態となっている。この可動電極5cは、基板1Aの表面に平行な面内方向において固定電極5hと対向している。
上記の慣性質量体5eおよび可動電極5cの各々の基板1Aと対向する表面(下面)には、凸部5fが形成されている。慣性質量体5eおよび可動電極5cの各々は、その凸部5fからその上方に位置する部分が多結晶シリコン11bよりなっており、それ以外の部分はシリコン活性層5よりなっている。
また基板1Aの表面であって慣性質量体5eおよび可動電極5cの各々と対向する部分には凸部3dが形成されている。この基板1Aの凸部3dと上下方向(Z方向)に対向する位置に慣性質量体5eおよび可動電極5cの各々の凸部5fが形成されている。このため、図28に示す平面視において基板1Aの凸部3dと慣性質量体5eおよび可動電極5cの各々の凸部5fとは重複した位置に配置されている。
上記の面内検出型の加速度センサにおいて、面内方向に加速度が加わると、固定電極5hに対して可動電極5cが面内方向に変位する。それにより固定電極5hと可動電極5cとの距離が変化し、固定電極5hと可動電極5cとの間の静電容量が変化する。静電容量が容量−電圧変換回路によって加速度に比例する電圧に変換されることで面内方向の加速度が検出される。
次に、本実施の形態のマイクロデバイスの製造方法として面内検出型の加速度センサの製造方法について図30〜図37を用いて説明する。
図30を参照して、まずシリコン基板1Aと、シリコン酸化膜4と、シリコン活性層5とが積層されたSOIウエハが準備される。
図31を参照して、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、シリコン活性層5およびシリコン酸化膜4を貫通してシリコン基板1Aに達する貫通孔10a、10bが形成される。
図32を参照して、貫通孔10a、10b内を埋め込むように、多結晶シリコン膜11a、11bが形成される。
図33を参照して、シリコン活性層5に深堀エッチング(DRIE)などが行われて、シリコン活性層5がパターニングされる。この際、シリコン酸化膜4はエッチングストッパとして機能する。これにより、シリコン活性層5と多結晶シリコン膜11aとから基板支持部5iが形成される。これと同時にシリコン活性層5と多結晶シリコン膜11aとからアンカー部5aも形成される。またシリコン活性層5と多結晶シリコン膜11bとから可動電極5cおよび慣性質量体5eが形成される。またシリコン活性層5から梁5gおよび固定電極5hの各々が形成される。
図34を参照して、この後、可動電極5c、基板支持部5iなどの表面上を覆うように薄膜6が形成される。この薄膜6は、多結晶シリコン膜11a、11bの熱酸化を妨げるシリコン窒化膜などから形成される。
この後、シリコン酸化膜4がフッ酸溶液などによりエッチング除去される。
図35を参照して、上記のエッチング除去により、基板1Aの表面(上面)と可動構造体(可動電極5c、慣性質量体5e、梁5g)の表面(下面)との間に隙間が生じる。ただし、可動電極5cおよび慣性質量体5eは、多結晶シリコン膜11bの第2の支持部11b1により基板1Aと連結されているため、この段階では基板1Aに固定されている。また基板支持部5iは、多結晶シリコン膜11aの第1の支持部11a1により基板1Aと連結されている。また図示していないがアンカー部5aも、多結晶シリコン膜11aの第1の支持部11a1により基板1Aと連結されている。
なお薄膜6は、酸化によるシリコン活性層5のパターン変化を見込んで形成されるが、酸化によるシリコン活性層5のパターン変化が無視できる場合は不要である。
上記により、基板1Aとの間に隙間を介して配置された可動構造体(可動電極5c、慣性質量体5e、梁5g)を第1および第2の支持部11a1、11b1で基板1Aに対して支持した支持構造が形成される。
図36を参照して、外部に露出したシリコン活性層5および多結晶シリコン膜11a、11bの表面に熱酸化により熱酸化膜7が形成される。この熱酸化膜7はシリコン活性層5および多結晶シリコン膜11a、11bの各々の表面側と膜中側とに一定の割合で成長する。
上記の熱酸化は、上下方向(Z方向)における第2の支持部11b1の少なくとも一部において、第2の支持部11b1の上下方向に直交する幅方向の全体が酸化するように行われる。また上記の熱酸化は、第1の支持部11a1の上下方向(Z方向)のいずれの部分においても、幅方向の全体が酸化することのないように行われる。つまり上記の熱酸化は、第1の支持部11a1の上下方向(Z方向)の全体において、酸化されていない多結晶シリコンの部分が残るように行われる。
上記の熱酸化により第2の支持部11b1の真下の導電性膜3の部分には未酸化部としての凸部3dが生じ、第2の支持部11b1の真上の導電膜5の部分には未酸化部としての凸部5fが生じる。上記の熱酸化は、実施の形態1と同様の条件で行なわれる。
この後、熱酸化膜7が、たとえば気相フッ酸などによりエッチング除去される。さらに薄膜6がたとえばプラズマエッチングなどによりエッチング除去される。
図37を参照して、上記の熱酸化膜7のエッチング除去により、第2の支持部11b1が形成されていた箇所において基板1Aから可動構造体(可動電極5c、慣性質量体5e)が浮いた状態となり、基板1Aと多結晶シリコン膜11bとの互いに対向する箇所に凸部3dと凸部5fとが形成される。
これにより、可動電極5cの凸部5fと上下方向に対向する基板1Aの位置に凸部3dが形成され、慣性質量体5eの凸部5fと上下方向に対向する基板1Aの位置に凸部3dが形成される。
またこの状態においては、アンカー部5aの第1の支持部11a1により可動構造体(検出フレーム5c、慣性質量体、梁5g)が基板1Aに対して支持される。
また上記薄膜6のエッチング除去により、シリコン活性層5および多結晶シリコン膜11aの表面が露出し、可動構造体は変位可能な状態となる。これにより図28に示す本実施の形態のマイクロデバイスとしての面内検出型の加速度センサが製造される。
本実施の形態によれば、加工の困難なSOI基板の基板と活性層の対向面に固着防止用の凸部3d、5fを形成することができ、信頼性の高いマイクロデバイスを実現することができる。
(その他)
上記実施の形態1〜5においてはマイクロデバイスとして加速度センサについて説明したが、マイクロデバイスとしては他のデバイスであってもよい。たとえば図38および図39に示すマイクロミラー、図40〜図42に示す角速度センサなどに本発明が適用されてもよい。
まずマイクロミラーについて説明する。
図38および図39を参照して、ミラー部101はミラー形成基板102の一面に形成されており、アルミニウム薄膜や金薄膜などから形成されている。ミラー形成基板102は中央を軸として回動するように構成されている。ねじれ梁103はミラー形成基板102に中央延長上に形成されている。アンカー部104は、ねじれ梁103を支持して支持基板106に固定されている。2つの駆動電極105は、ミラー形成基板102からギャップg0の距離に形成されてミラー形成基板102を静電引力で駆動する際に電圧が印加される部分である。
なお、ミラー形成基板102、ねじれ梁103およびアンカー部104は、たとえばそれぞれ単結晶シリコン、多結晶シリコン、鍍金ニッケルなどで形成され、支持基板106はシリコンやガラスなどで形成されている。
このマイクロミラーの動作原理においては、駆動電極105のうちの一方に電圧を印加すると、ミラー形成基板102と駆動電極105との間の電位差および静電容量に応じた静電引力が発生し、ミラー形成基板102が中央部を軸として回動し、ミラー部101は角度(走査角度)θsだけ傾く。たとえば、2つの駆動電極105に所定のバイアス直流電圧を印加し、さらに駆動電極105に所定の交流電圧を2つの駆動電極105の各々に位相が180度異なるように印加することにより、ミラー部101を回転振動させることができる。このようにして、印加電圧に基づいてミラー部101の角度が制御され、光ビームが走査される。
このマイクロミラーにおいて、上記実施の形態1の加速度センサと同様にして、2つの駆動電極105に凸部105aが形成され、かつミラー形成基板102に凸部102aが形成されてもよい。また実施の形態2〜5に示す構成と同様にマイクロミラーが構成されてもよい。
次に、角速度センサについて説明する。
図40〜図42を参照して、これらの図において駆動プレート205、206が互いに向かい合う方向のX方向と、X方向に直交する方向であって一対の慣性質量体202、203同士が向かい合う方向であるY方向と、X方向とY方向との双方に直交する上下方向のZ方向とが導入されている。
角速度センサ210は、その上に薄膜の絶縁膜209が形成された半導体基板201上に各構成が配設されてなるもので、それぞれ扇形をした一対の慣性質量体202、203を有している。これら慣性質量体202、203は、Y軸方向に延びる連結フレーム204を介在して、扇形状の中心角側を対向させて連結されており、図41から分かるように、半導体基板201の上方で基板201の表面に平行に保持されている。
慣性質量体202、203の保持手段としては、本体の両側に補助支持梁202A、203Aが設けられている。これら補助支持梁202A、203Aは、半導体基板201に接続されている。
また慣性質量体202、203に対応する絶縁膜209上には、検出電極211、212が設けられている。慣性質量体202,203と検出電極211、212とは、Z方向に小さな間隔を隔てて、電気的に独立している。また、検出電極211、212は、慣性質量体202、203に対応して略扇形に形成されており、それぞれ弧をなす側から外方へ延びる配線211a、212aを備えている。各配線211a、212aは、その先端側で、絶縁膜209上にアルミニウムや金などを堆積させることで形成された金属配線パッド217、218に接続されている。これら金属配線パッド217、218は、外部との電気的接続のために、所定のワイヤがボンディングされる領域となる。
さらに慣性質量体202、203に対応する絶縁膜209上には、各検出電極211、212の両側の径部分に沿って、モニタ電極213、214、215、216が設けられている。各モニタ電極213、214、215、216は、その一端側から外方へ延びる配線213a、214a、215a、216aを備えており、各配線213a、214a、215a、216aは、その先端側で、絶縁膜209上に設けられた金属配線パッド221、222、223、224に接続されている。
角速度センサ210では、慣性質量体202、203および連結フレーム204を隔てて左右対称に配置される駆動プレート205、206が設けられている。これらの駆動プレート205、206は、慣性質量体202、203と同様に、半導体基板201の上方で半導体基板201の表面に平行に保持されている。その保持手段として、各駆動プレート205、206の両側には、対をなす折曲げ梁227、228、229、230が形成されている。各折曲げ梁227、228、229、230は途中部で折り曲げられ、先端側でアンカー部231、232、233、234により接続されている。この折曲げ梁227、228、229、230は、X方向に柔軟で変形し易く、その他の方向には変形し難く設計されている。そして、駆動プレート205、206は、それぞれ、X方向に所定以上の弾性を有するリンク梁207、208を介して、連結フレーム204に接続されている。
駆動プレート205、206は、それぞれ連結フレーム204に接合されたリンク梁207、208の一端側に接続されている。その結果、駆動プレート205、206は、連結フレーム204に対して、リンク梁207、208の弾性に基づき許容される範囲で移動可能となる。また、駆動プレート205、206は静電力発生構造を備え、この構造として、平面部分にY方向に沿って形成された複数のスリット205a、206aを有している。
他方、駆動プレート205、206の各スリット205a、206aに対応して、平板状に形成された複数の駆動電極219、220が、半導体基板201上でY方向に沿って設けられている。これら駆動電極219、220は、半導体基板201に対して垂直に立ち上がるように、絶縁膜209上に形成された駆動電極結合用電極225、226に接合され、それぞれ対応するスリット205a、206a内に収まっている。この状態で、各駆動電極219、220とスリット205a、206aの内壁とは互いに平行に支持されている。このようにして、駆動プレート205、206に形成されたスリット205a、206aおよび該スリット205a、206aの内部に収納された駆動電極219、220は、微小なギャップで隔てられた平行平板の電極対を構成している。
この角速度センサ210の動作原理においては、駆動プレート205、206と駆動電極219、220との間にAC電位差を与えると、駆動プレート205、206はその電位差によって発生する静電引力によりX方向に振動する。駆動プレート205、206を電気的に接地し、駆動電極219、220に共通のDCバイアス電圧を伴った同相のAC電圧(Vdc±Vac)を印加すると、左右の駆動プレート205、206は逆相にX方向に沿って振動する。このとき、駆動プレート205、206がその一端側に接続されるリンク梁207、208を介して、連結フレーム204がX方向に力を受ける。左右両側のリンク梁207、208からの伝達力は、連結フレーム204上の異なったY軸上の二点間に作用するため、連結フレーム204およびこれに接続された慣性質量体202、203は、連結フレーム204上の中心の周りに回転捩れ振動を行う。この回転捩れ振動が、その共振周波数で行われる場合に、最大変位振幅および最大速度振幅が取得される。これにより、駆動AC電圧としては共振周波数を選ぶことが好ましい。
このように慣性質量体202、203が半導体基板201上で逆相に回転捩れ振動を行っている場合、Y方向の軸周りの角速度が入力されると、慣性質量体202、203はそれぞれの速度振動ベクトル方向および角速度ベクトル方向に直交する方向(半導体基板201に直交するZ方向)に、慣性力すなわちコリオリの力を受ける。その結果、慣性質量体202、203は互いに逆相の半導体基板201の外方への慣性力を受け、X方向中心軸の周りの回転振動が誘起される。この回転振動の変位は、角速度に比例するため、この変位を、各慣性質量体202、203とその下側に設けられた検出電極211、212との間の容量変化を通じ、C−V変換器により電気出力に変換して、角速度信号を取得することができる。
検出電極211、212と各慣性質量体202、203との間で形成される容量変化は、角速度検出時に差動変化となり、この差動変化を検出し得る回路構成を採用することにより、同相で変化するような外乱振動(X方向やZ方向の加速度による発生する慣性質量体202、203の変位振動)の影響を受けない構成を実現することができる。
この角速度センサ210において、上記実施の形態1の加速度センサと同様にして、図41に示すように、慣性質量体202、203に凸部202a、203aが形成され、かつ検出電極211、212に凸部211b、212bが形成されてもよい。また実施の形態2〜5に示す構成と同様にマイクロミラーが構成されてもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。