JP2014186850A - 有機el積層体 - Google Patents

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Abstract

【課題】端部からの水分の侵入を防止し、また、層間の剥離を防止して、水分による発光素子の劣化を好適に防止できる有機EL積層体を提供する。
【解決手段】封止基板が支持体の上に、無機膜とこの無機膜の下地となる有機膜との組み合わせを1以上有する、表層が無機膜であるガスバリアフィルムであり、パッシベーション膜と表層の無機膜とが対面して、接着剤によって有機ELデバイスとガスバリアフィルムとが接着されており、接着剤が、パッシベーション膜と表層の無機膜との間の全域に充填されており、さらに、有機ELデバイスの端部における、パッシベーション膜と表層の無機膜との間の間隙が、発光素子の位置における、パッシベーション膜と表層の無機膜との間の間隙よりも狭いことにより、この課題を解決する。
【選択図】図1

Description

本発明は、発光素子をパッシベーション膜で保護する有機ELデバイスを、封止基板で封止してなる有機EL積層体に関する。
有機EL(Electro Luminescence(エレクトロルミネッセンス))材料を用いた有機ELデバイス(OLEDデバイス)が、ディスプレイや照明装置等に利用されている。
この有機ELデバイスに利用される有機EL材料は、非常に水分に弱い。そのため、有機EL装置では、封止基板に凹形状を持たせて空間を形成し、有機EL材料が封止されるこの空間内にゲッター材を配置して、侵入する水分を補足することが行われている。
また、特許文献1に示されるように、可撓性を有する金属フィルムを封止基板として用いて水分の侵入を防止することも行われている。
しかしながら、これらの方法では、光取り出し方向が有機EL材料を形成する素子基板側であるボトムエミッション方式でしか利用することができず、光取り出し方向が封止基板側であるトップエミッション方式では利用することができない。
これに対し、特許文献2や特許文献3に示されるように、有機EL材料を用いる発光素子(有機EL素子)、そのものにガスバリア性を付与することで、水分による有機EL材料の劣化を防止する方法が開発されている。
具体的には、素子基板の上に有機EL材料や電極等を有する発光素子を、ガスバリア性を有するパッシベーション膜(保護膜)で覆い、このパッシベーション膜の上に、接着剤を用いて封止基板を接着してなる積層体構造(有機EL積層体)とすることで、水分による有機EL素子の劣化を防止している。
このような有機EL積層体において、パッシベーション膜の形成材料としては、ガスバリア性を発現する窒化ケイ素、酸化ケイ素および酸化窒化ケイ素等の無機材料が例示されている。
また、封止基板の形成材料としては、ガラス、プラスチック、石英、樹脂、金属等が例示されている。
特開2001−118674号公報 特開2010−198926号公報 特許第5036628号公報
しかしながら、本発明者の検討によれば、発光素子をパッシベーション膜で覆い、尚且つ、高いガスバリア能を持つガラスを封止基板として用いた場合であっても、封入した接着剤の端面からの水分の侵入により、パッシベーション膜を水分が通過し、有機EL材料のエッジ部から劣化してしまうことがわかった。
端面からの水分の侵入を抑制するために、接着剤の端面から有機EL材料までの距離を増やすことが考えられる。しかしながら、ディスプレイとして用いられる有機ELデバイス、特に、携帯電話等のモバイル用の有機ELデバイスでは、縁部を小さくして、製品のサイズに対して画面の比率を大きくしたいというニーズがある。そのため、端部から有機EL材料までの距離を増やすことは難しい。
あるいは、パッシベーション膜を厚くすることも考えられる。しかしながら、有機EL材料にダメージを与えないように低温でパッシベーション膜を成膜する条件下において、厚い無機膜を形成するのは非常に生産性が悪く、コストの増加を招いてしまう。
また、有機EL装置には、軽量化や薄手化の要求がある。しかしながら、封止基板として金属やガラスを用いると、有機EL装置が、重く、厚いものになってしまう。そのため、より良好に装置の軽量化や薄手化を図るためには、封止基板としてガラス等を用いるより、プラスチックフィルムを用いる方が有利である。
しかしながら、本発明者の検討によれば、発光素子をパッシベーション膜で覆ってなる有機ELデバイスを、封止基板としてのプラスチックフィルムで封止すると、軽量化や薄手化は図れるものの、往々にして、層間の剥離や、プラスチックフィルムに起因する発光素子の劣化等が生じる。
本発明の目的は、このような従来技術の問題点を解決することにあり、軽量化、薄手化を図ると共に、端部からの水分の侵入を防止し、また、層間の剥離を防止して、水分等による発光素子の劣化をより好適に防止できる有機EL積層体を提供することにある。
この課題を解決するために、本発明は、有機EL材料を用いる発光素子、および、この発光素子を覆うパッシベーション膜を有する有機ELデバイスと、透明な封止基板とを、接着剤によって接着してなる有機EL積層体であって、有機ELデバイスが、封止基板側に向けて発光するトップエミッション型であり、封止基板が、支持体の上に、無機膜と、この無機膜の下地となる有機膜との組み合わせを1以上有する、表層が無機膜であるガスバリアフィルムであり、パッシベーション膜と表層の無機膜とが対面して、接着剤によって有機ELデバイスとガスバリアフィルムとが接着されており、接着剤が、パッシベーション膜と表層の無機膜との間の全域に充填されており、さらに、有機ELデバイスの端部における、パッシベーション膜と表層の無機膜との間の間隙が、発光素子の位置における、パッシベーション膜と表層の無機膜との間の間隙よりも狭いことを特徴とする有機EL積層体を提供する。
ここで、有機ELデバイスの端部から発光素子までの距離である縁部距離Lが5mm以下であることが好ましい。
また、有機ELデバイスの端部から発光素子までの距離である縁部距離Lと、端部におけるパッシベーション膜と表層の無機膜との間の間隙である開口高さdとの比率が、d/L≦0.1であるのが好ましい。
また、パッシベーション膜と、ガスバリアフィルムの少なくとも表層の無機膜とが、同じ材料で形成されているのが好ましい。
また、有機ELデバイスの端部における接着剤の厚さが、1μm〜100μmであるのが好ましい。
また、発光素子の位置における接着剤の厚さが2μm〜200μmであるのが好ましい。
また、接着剤がシランカップリング剤を有するものであり、パッシベーション膜および表層の無機膜が、ケイ素化合物の膜であり、かつ、表面に−O基および−OH基の少なくとも一方が導入されたケイ素化合物を有するのが好ましい。
また、パッシベーション膜および表層の無機膜が窒化ケイ素の膜であるのが好ましい。
また、パッシベーション膜の厚さが10μm以下であるのが好ましい。
また、ガスバリアフィルムの有機膜の厚さが0.5μm〜5μmであるのが好ましい。
また、ガスバリアフィルムが、複数の無機膜を有し、かつ、全ての無機膜が同じ材料で形成されるのが好ましい。
このような本発明によれば、有機LE積層体の軽量化および薄手化を図ると共に、端部からの水分の侵入を防止することができ、また、層間の剥離防止することができるので、水分等による発光素子の劣化を好適に防止することができる。
本発明の有機EL積層体の一例を概念的に示す図である。 (A)および(B)は、本発明の有機EL積層体に用いられるガスバリアフィルムの別の例を概念的に示す図である。 図1に示す有機EL積層体の端部の構成を概念的に示す部分拡大図である。 本発明の有機EL積層体の他の一例の端部の構成を概念的に示す部分拡大図である。
以下、本発明の有機EL積層体について、添付の図面に示される好適実施例を基に、詳細に説明する。
図1に、本発明の有機EL積層体の一例を概念的に示す。
図1に示すように、本発明の有機EL積層体10は、有機EL材料を用いる発光素子24が形成された有機ELデバイス12と、ガスバリアフィルム14とを、接着剤16で接着してなるものである。また、本発明の有機EL積層体10は、端部において、ガスバリアフィルム14と有機ELデバイス12との間の間隙が絞られた形状を有するものである。
本発明の有機EL積層体10において、有機ELデバイス12は、素子基板20の上に発光素子24を形成して、発光素子24をパッシベーション膜26で覆ってなる、公知の有機ELデバイスと同様の構成を有する。
従って、本発明において、有機ELデバイス12は、有機EL材料を用いる発光素子24を有し、かつ、水分や酸素ガス等から保護するために発光素子24を覆うパッシベーション膜26を有するものであれば、各種の有機ELディスプレイや有機EL照明装置などの有機EL装置に利用される、公知の有機ELデバイス(OLEDデバイス)が、全て、利用可能である。
本発明の有機EL積層体10において、素子基板20は、各種の有機ELデバイスに用いられている素子基板が、全て利用可能である。具体的には、ガラス、プラスチック、金属、および、セラミック等からなる素子基板が例示される。
ここで、本発明の有機EL積層体においては、水分等による発光素子の劣化を防止するために、水分等が素子基板20を透過して発光素子24に至るのを防止できるのが好ましい。そのため、素子基板20は、ガラスや金属等のように、水分等の含有量が低く、かつ、水分等の透過率が低い材料からなる基板を用いるのが好ましい。
ここで、本発明の有機EL積層体10は、有機ELデバイス12を封止する封止基板として、後述する有機膜32と無機膜34とを積層してなる、有機/無機の積層構造を有するガスバリアフィルム14を用いる。そのため、本発明の有機EL積層体10は、素子基板20と逆側(ガスバリアフィルム14側)から光を発する、トップエミッション型の有機EL装置に利用される。
有機EL装置がトップエミッション形である場合には、素子基板20が光透過性を有する必要は無い。従って、本発明の有機EL積層体10を、トップエミッション型の有機EL装置に利用する場合には、素子基板20として、表面に陽極酸化膜を有するアルミニウム箔や、アルミニウム箔とポリイミドとの積層体など、絶縁層を有する可撓性の金属フィルム(金属板)を用いてもよい。本発明は、封止基板としてガスバリアフィルム14を用いるので、このような金属フィルムを素子基板20として用いることにより、フレキシブルな有機ELディスプレイや有機EL照明装置等を好適に作製できる。
また、素子基板20としてガラス等の光透過性のある材料を用いて、素子基板20側にも光を発するようにして、両面から光を発する構成としてもよい。
前述のように、本発明の有機EL積層体10において、有機ELデバイス12は、公知の有機ELデバイスである。
従って、素子基板20の上に形成される発光素子(有機EL素子)24は、有機EL材料からなる発光部(発光層)、電極、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層等を有する、有機EL材料を用いる公知の発光素子である。
発光素子24は、有機EL積層体10の用途や大きさ等に応じて、公知の方法で形成すればよい。
有機ELデバイス12は、発光素子24(あるいはさらに素子基板20の表面)を覆って、パッシベーション膜(保護膜)26が形成される。
パッシベーション膜26は、水分や酸素等が発光素子24に至って、発光素子24(特に、有機EL材料)が劣化するのを防止するためのものである。
パッシベーション膜26は、公知の有機ELデバイスに利用される、ガスバリア性を発現する材料からなる各種の膜(層)が利用可能である。
具体的には、ガスバリア性を有する無機化合物からなる膜が例示され、中でも、窒化ケイ素、酸化ケイ素および酸化窒化ケイ素等のケイ素化合物からなる膜が好適に例示される。その中でも、高いガスバリア性や、トップエミッション型に利用した際における光学特性等の点で、窒化ケイ素からなる膜は好適に例示される。
パッシベーション膜26は、膜の形成材料に応じた公知の方法で成膜すればよい。
後に詳述するが、本発明においては、パッシベーション膜26は、後述するガスバリアフィルム14の表層の無機膜34と同じ材料で形成されるのが好ましい。
また、パッシベーション膜26は、ケイ素化合物からなり、表面(ガスバリアフィルム側の表面)に、−O基および/または−OH基、特に−OH基が導入されているのが好ましい。特に、パッシベーション膜26が窒化ケイ素で形成され、その表面に、−O基および/または−OH基、特に−OH基が導入されているのが好ましい。
パッシベーション膜26表面に−O基や−OH基が導入されており、かつ、後述する接着剤16がシランカップリング剤を含有することで、好適な有機ELデバイス12(パッシベーション膜26)と接着剤16との密着性を得られる。この点に関しては、後に詳述する。
ケイ素化合物からなるパッシベーション膜26は、通常、発光素子24が損傷しない温度に保った状態で、プラズマCVDやスパッタリング等の気相堆積法(気相成膜法)によって形成される。
ここで、低温の気相堆積法によって形成されるケイ素化合物からなる膜では、全てのケイ素が例えば窒化ケイ素などの目的とする化合物となっているわけではなく、未結合の結合手を有するケイ素も存在する。特に、膜の表面では、未結合の結合手を有するケイ素が多量に存在している。そのため、パッシベーション膜26を成膜した後、膜の表面を空気(大気)に曝せば、この未結合の結合手に−O基や−OH基が結合して、パッシベーション膜26の表面に、−O基や−OH基、特に、−OH基を導入できる。
本発明の有機EL積層体10において、パッシベーション膜26の膜厚は、有機EL積層体10の用途やサイズ等に応じて、適宜、設定すればよい。
一般的に、パッシベーション膜26を厚くするほど、水分等に対するパッシベーション膜26による発光素子24の保護性能が高くなる。
しかしながら、有機ELデバイス12では、発光素子24の損傷を防止するために、高温でのパッシベーション膜26の成膜を行うことができない。そのため、厚いパッシベーション膜26を成膜するためには、時間や手間がかかり、コスト高となる。加えて、パッシベーション膜26は、無機材料からなる膜であるので、厚すぎると、自身の内部応力によって自然に割れ等の損傷を生じる。
ここで、本発明の有機EL積層体10においては、後述する有機/無機の積層構造を有する高性能なガスバリアフィルム14を、無機膜34をパッシベーション膜26側に向けて、封止基板として用いる。そのため、パッシベーション膜26を薄くしても、十分に、水分等による発光素子24の劣化を防止することができる。
以上の点を考慮すると、本発明の有機EL積層体10において、パッシベーション膜26の厚さは10μm以下とするのが好ましい。特に、5μm以下とするのが好ましく、さらに、3μm以下とすることがより好ましい。これにより、有機EL積層体10の薄膜化や薄手化を、より好適に行うことができ、さらに、コストダウンも図れる。
他方、有機EL積層体10において、ガスバリアフィルム14は、支持体30の上に、有機膜32を有し、この有機膜32の上に、無機膜34を有するものである。
本発明の有機EL積層体10は、前述の有機ELデバイス12と、このガスバリアフィルム14とが、無機膜34とパッシベーション膜26と対面させて、接着剤16によって、接着されることで、構成される。
本発明の有機EL積層体10において、ガスバリアフィルム14は、支持体30の上に、無機膜34と、この無機膜34の下地となる有機膜32との組み合わせを、1つ以上、有し、かつ、表面(支持体30と逆側の表面)が無機膜34である。
従って、本発明の有機EL積層体10においては、ガスバリアフィルム14は、例えば、図2(A)に示すガスバリアフィルム14aのように、無機膜34と下地の有機膜32との組み合わせを2つ有するものでもよく、あるいは、3以上、有するものでもよい。
また、後述するが、本発明の有機EL積層体10においては、ガスバリアフィルム14の支持体30として、リタデーション値が300nm以下の低リタデーションフィルムを用いるのが好ましい。また、有機膜32は、通常、いわゆる塗布法で形成される。
ここで、低リタデーションフィルムは、溶剤によって溶解され易い物も多い。そのため、支持体30として低リタデーションフィルムを用い、その表面に塗布法によって有機膜32を形成すると、塗料に含有される有機溶剤によって支持体30が溶解されてしまい、リタデーションの変動等の光学特性の劣化が生じる場合が有る。
このように、有機膜32の形成の際に、支持体30が溶解する可能性が有る場合には、図2(B)に示すガスバリアフィルム14bのように、支持体30の表面に、支持体30を保護するための保護無機膜34aを形成し、その上に、有機膜32と無機膜34との組み合わせを、1以上、形成してもよい。なお、保護無機膜34aは、無機膜34と同様のものとすればよい。
さらに、このように、支持体30の表面に、保護無機膜34aを設ける場合には、支持体30と保護無機膜34aとの間に、両者の成分が混合されてなる、混合層を有してもよい。この混合層を有することにより、温度や湿度の変化に起因するガスバリアフィルム14b(特に無機膜34)の損傷を、好適に防止できる。なお、この混合層は、気相堆積法で保護無機膜34aを成膜する際に、プラズマによる支持体30のエッチングや、支持体30にかけるバイアスによるイオン等の引き込みを制御することで、形成できる。
本発明の有機EL積層体10において、ガスバリアフィルム14の支持体30は、公知のガスバリアフィルムで支持体として用いられているものが、各種、利用可能である。
中でも、薄手化や軽量化が容易である、有機EL積層体10のフレキシブル化に好適である等の点で、各種のプラスチック(高分子材料/樹脂材料)からなるフィルムが好適に利用される。
具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、透明ポリイミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、シクロオレフィンポリマー(脂環式ポリオレフィン)、シクロオレフィンコポリマー、および、トリアセチルセルロースからなるプラスチックフィルムが、好適に例示される。
ここで、前述のように、本発明の有機EL積層体10は、トップエミッション型の有機EL装置に利用される。従って、有機EL積層体10の光学的な特性を考えると、支持体30は、リタデーション値(Retardation)が300nm未満、特に200nm以下、中でも特に150nm以下の、低リタデーションフィルムを用いるのが好ましい。
また、パッシベーション膜26および後述する無機膜34の負荷を軽減し、水分等による発光素子24の劣化を、より好適に防止するためには、支持体30自身の水分透過率が低く、かつ、含水量が少ないのが好ましい。特に、支持体30の含水量は、300[g/m2]以下であるのが好ましく、特に、200[g/m2]以下であるのが好ましい。
以上の点を考慮すると、支持体30は、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、トリアセチルセルロース、および、透明ポリイミドからなるプラスチックフィルムが好適に例示される。特に、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、および、シクロオレフィンコポリマー、などからなるプラスチックフィルムが好適であり、中でも、シクロオレフィンコポリマーからなるプラスチックフィルムは、支持体30として好適に例示される。
支持体30の厚さは、有機EL積層体10の用途や大きさによって、適宜、設定すればよい。ここで、本発明者の検討によれば、支持体30の厚さは、10μm〜200μm程度が好ましい。支持体30の厚さを、この範囲にすることにより、有機EL積層体10の軽量化や薄手化、等の点で、好ましい結果を得る。
なお、支持体30は、このようなプラスチックフィルムの表面に、反射防止や位相差制御、光取り出し効率向上等の機能が付与されていてもよい。
支持体30の上には、有機膜32が成膜される。有機膜32は、有機化合物からなる膜(有機化合物を主成分とする膜(層))で、基本的に、モノマーおよび/またはオリゴマを、架橋(重合)したものである。
有機膜32は、ガスバリアフィルム14において主にガスバリア性を発現する無機膜34の下地層となるものである。
ガスバリアフィルム14は、この下地となる有機膜32を有することにより、この有機膜32が、無機膜34のクッションとしても作用する。そのため、有機ELデバイス12とガスバリアフィルム14とを接着する際の押圧時や、有機ELデバイス12が外部から衝撃を受けた場合などに、この有機膜32のクッション効果によって、無機膜34の損傷を防止できる。
これにより、有機EL積層体10において、ガスバリアフィルム14が適正にガスバリア性能を発現して、水分による発光素子24の劣化を、好適に防止できる。
また、ガスバリアフィルム14は、無機膜34の下地となる有機膜32を有することにより、支持体30の表面の凹凸や、表面に付着している異物等を包埋して、無機膜34の成膜面を適正できる。その結果、成膜面の全面に、隙間無く、割れやヒビ等の無い適正な無機膜34を成膜できる。
ガスバリアフィルム14は、このような有機/無機の積層構造を有することにより、水蒸気透過率が1×10-4[g/(m2・day)]未満となるような、高いガスバリア性能を得ることができる。すなわち、本発明の有機EL積層体10は、有機/無機の積層構造を有する、高いガスバリア性能を有するガスバリアフィルム14を封止基板として用いることにより、前述のようにパッシベーション膜26を3μm以下と薄くしても、好適に、水分等による発光素子24の劣化を防止できる。
ガスバリアフィルム14において、有機膜32の形成材料としては、各種の有機化合物(樹脂/高分子化合物)が、利用可能である。
具体的には、ポリエステル、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、セルロースアシレート、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、脂環式ポリオレフィン、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、フルオレン環変性ポリカーボネート、脂環変性ポリカーボネート、フルオレン環変性ポリエステル、アクリロイル化合物、などの熱可塑性樹脂、あるいはポリシロキサン、その他の有機ケイ素化合物の膜が好適に例示される。これらは、複数を併用してもよい。
中でも、ガラス転移温度や強度に優れる等の点で、ラジカル重合性化合物および/またはエーテル基を官能基に有するカチオン重合性化合物の重合物から構成された有機膜32は、好適である。
中でも特に、上記強度に加え、屈折率が低い、透明性が高く光学特性に優れる等の点で、アクリレートおよび/またはメタクリレートのモノマーやオリゴマの重合体を主成分とする、ガラス転移温度が120℃以上のアクリル樹脂やメタクリル樹脂は、有機膜32として好適に例示される。
その中でも特に、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(DPGDA)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(TMPTA)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(DPHA)などの、2官能以上、特に3官能以上のアクリレートおよび/またはメタクリレートのモノマーやオリゴマの重合体を主成分とする、アクリル樹脂やメタクリル樹脂は、好適に例示される。また、これらのアクリル樹脂やメタクリル樹脂を、複数、用いるのも好ましい。
有機膜32を、このようなアクリル樹脂やメタクリル樹脂で形成することにより、骨格がしっかりした下地の上に無機膜34を成膜できるので、より緻密でガスバリア性が高い無機膜34を成膜できる。
有機膜32の厚さは、0.5μm〜5μmが好ましい。
有機膜32の厚さを0.5μm以上とすることにより、有機ELデバイス12とガスバリアフィルム14とを接着する際の押圧時などにおける、クッションとしての効果を十分に発揮して、無機膜34の損傷を、より確実に防止できる。また、有機膜32の厚さを1μm以上とすることにより、より好適に無機膜34の成膜面を適正にして、割れやヒビ等の無い適正な無機膜34を、成膜面の全面に渡って成膜できる。
また、有機膜32の厚さを5μm以下とすることにより、有機膜32が厚すぎることに起因する、有機膜32のクラックや、ガスバリアフィルム14のカール等の問題の発生を、好適に防止することができる。
以上の点を考慮すると、有機膜32の厚さは、1μm〜5μmとするのが、より好ましい。
なお、図2(A)に示すガスバリアフィルムのように、複数の有機膜32を有する場合には、有機膜32の厚さは、同じでも、互いに異なってもよい。
また、複数の有機膜32を有する場合には、各有機膜32の形成材料は、同じでも異なってもよい。しかしながら、生産性等の点からは、全ての有機膜32を、同じ材料で形成するのが好ましい。
有機膜32は、塗布法やフラッシュ蒸着等の公知の方法で成膜すればよい。
また、有機膜32の下層となる無機膜との密着性を向上するために、有機膜32は、シランカップリング剤を含有するのが好ましい。
有機膜32の上には、この有機膜32を下地として、無機膜34が成膜される。
無機膜34は、無機化合物からなる膜(無機化合物を主成分とする膜(層))で、ガスバリアフィルム14において、ガスバリア性を主に発現するものである。
また、本発明の有機EL積層体10においては、ガスバリアフィルム14の表層(支持体30と逆側の表面の膜)は、無機膜34となる。
無機膜34としては、ガスバリア性を発現する無機化合物からなる膜が、各種、利用可能である。
具体的には、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化インジウムスズ(ITO)などの金属酸化物; 窒化アルミニウムなどの金属窒化物; 炭化アルミニウムなどの金属炭化物; 酸化ケイ素、酸化窒化ケイ素、酸炭化ケイ素、酸化窒化炭化ケイ素などのケイ素酸化物; 窒化ケイ素、窒化炭化ケイ素などのケイ素窒化物; 炭化ケイ素等のケイ素炭化物; これらの水素化物; これら2種以上の混合物; および、これらの水素含有物等の、無機化合物からなる膜が、好適に例示される。
特に、透明性が高く、かつ、優れたガスバリア性を発現できる点で、ケイ素化合物からなる膜は、好適に例示される。その中でも特に、窒化ケイ素からなる膜は、より優れたガスバリア性に加え、透明性も高く、好適に例示される。
ここで、本発明の有機EL積層体10においては、表層の無機膜34と前述のパッシベーション膜26とが、同じ材料で形成されることが好ましい。
表層の無機膜34とパッシベーション膜26とは、異なっていてもよい。しかしながら、無機膜34とパッシベーション膜26とは、接着剤16を介して接着される。そのため、同じ材料で形成されることにより、より強固に接着される。この点に関しては後に詳述する。
なお、図2に示すガスバリアフィルム14aおよび14bのように、複数の無機膜34(保護無機膜34aを含む)を有する場合には、表層の無機膜34のみが、パッシベーション膜26とは、同じ材料で形成されればよい。すなわち、複数の無機膜34を有する場合には、無機膜34の形成材料は、互いに異なってもよい。しかしながら、生産性等を考慮すれば、全ての無機膜34を、同じ材料で形成するのが好ましい。
また、無機膜34をケイ素化合物で形成する際には、表層の無機膜34の表面に、−O基および/または−OH基、特に−OH基が導入されているのが好ましい。特に、表層の無機膜34が窒化ケイ素で形成され、その表面に、−O基および/または−OH基、特に−OH基が導入されているのが好ましい。
表層の無機膜34の表面に−O基や−OH基が導入されており、かつ、後述する接着剤16がシランカップリング剤を含有することで、好適なガスバリアフィルム14(無機膜34)と接着剤16との密着性を確保できる。この点に関しては、後に詳述する。
無機膜34の厚さは、形成材料に応じて、目的とするガスバリア性を発現できる厚さを、適宜、決定すればよい。なお、本発明者の検討によれば、無機膜34の厚さは、10〜200nmとするのが好ましい。
無機膜34の厚さを10nm以上とすることにより、十分なガスバリア性能を安定して発現する無機膜34が形成できる。また、無機膜34は、一般的に脆く、厚過ぎると、割れやヒビ、剥がれ等を生じる可能性が有るが、無機膜34の厚さを200nm以下とすることにより、割れが発生することを防止できる。
また、このような点を考慮すると、無機膜34の厚さは、10nm〜100nmにするのが好ましく、特に、15nm〜75nmとするのが好ましい。
なお、図2に示す例のように、ガスバリアフィルムが複数の無機膜34(保護無機膜34aを含む)を有する場合には、各無機膜34の厚さは、同じでも異なってもよい。
また、無機膜34は、膜密度が2.1g/cm3〜2.7g/cm3であることが好ましい。膜密度を2.7g/cm3以下とすることで、無機膜34、すなわち、ガスバリアフィルム14の柔軟性を確保することができる。したがって、後述するように、ガスバリアフィルム14を屈曲させて、端部においてガスバリアフィルム14と有機ELデバイス12との間の間隙を絞った形状とすることが容易にできる。また、膜密度を2.1g/cm3以上とすることで、高い耐久性を確保でき、長期に渡って十分なガスバリア性を確保できる。
なお、上記利点をより好適に得られるため、2.3g/cm3〜2.6g/cm3とするのがより好ましい。
無機膜34は、公知の方法で形成すればよい。具体的には、CCP−CVDやICP−CVD等のプラズマCVD、マグネトロンスパッタリングや反応性スパッタリング等のスパッタリング、真空蒸着など、気相堆積法が好適に例示される。
なお、先のパッシベーション膜26と同様、気相堆積法によって無機膜34を成膜した後に、膜の表面を空気に曝すことで、無機膜34の表面に−O基や−OH基、特に−OH基を導入できる。
接着剤16は、パッシベーション膜26と無機膜34とを接着するものである。接着剤16は、基本的に、有機ELデバイス12とガスバリアフィルム14との間の全域に充填される。このとき、接着剤16は、パッシベーション膜26の表面の凹凸を埋めるように充填される。
本発明の有機EL積層体10において、接着剤16は、パッシベーション膜26および無機膜34の形成材料に応じて、両者を十分な密着力で接着できるものを、適宜、選択すればよい。一例として、エポキシ系の接着剤や、アクリル系の接着剤16が例示される。
なお、本発明の有機EL積層体10は、トップエミッション型であるので、接着剤16は、高い光透過率を有する物を利用するのが好ましい。また、接着剤16は、アウトガスの放出が無い(あるいは極めて少ない)ものを用いるのが好ましい。
ここで、本発明の有機EL積層体10においては、接着剤16は、シランカップリング剤を含有するのが好ましい。
また、前述のように、接着剤16で接着ざれるパッシベーション膜26および無機膜34は、表面に−O基および/または−OH基が導入されているのが好ましい。
これにより、接着剤16と、パッシベーション膜26および無機膜34との密着性を、より高くできる。
周知のように、シランカップリング剤とは、ケイ素に、アルコキシ基等の加水分解性基と、アミノ基などの有機物との反応や相互作用とが期待できる有機官能基とを、結合させるものである。
シランカップリング剤は、加水分解性基が加水分解することにより−OH基となり、この−OH基と無機化合物表面の−OH基とが脱水縮合することにより、無機化合物表面との間で、強い共有結合を生じる。また、シランカップリング剤は、有機性官能基と有機化合物との共重合等によって、有機化合物とも強固に結び着く。シランカップリング剤は、これにより、有機物と無機物との密着性を向上する。
ここで、本発明者の検討によれば、パッシベーション膜26および無機膜34がケイ素化合物である場合には、その表面に−O基、好ましくは−OH基を導入して『SiOH』のような状態にしておくことにより、接着剤16が含有するシランカップリング剤の加水分解反応、および、脱水縮合が、好適に発生する。
すなわち、パッシベーション膜26および無機膜34の表面に−OH基等を導入することにより、パッシベーション膜26および無機膜34の表面から−OH基等が放出されてシランカップリング剤の加水分解反応が生じ、ケイ素化合物とシランカップリング剤とが脱水縮合による共有結合によって結合され、より高い、接着剤16と、パッシベーション膜26および無機膜34との密着力が得られる。
また、一般的に、シランカップリング剤を用いる場合には、pH調整剤を添加して(酸やアルカリを添加して)、pH調整を行う。ところが、シランカップリング剤を含有する接着剤にpH調整剤を添加すると、雰囲気の湿度や、有機溶剤からの給水によって、前述の加水分解が進行して、接着剤の粘度上昇等の不都合が生じる。
これに対し、本発明者の検討によれば、接着剤16がシランカップリング剤を含有し、かつ、ケイ素化合物からなるパッシベーション膜26および無機膜34の表面に−O基やOH基を導入しておけば、pH調整剤を添加してpH調整を行わなくても、高い密着力が得られる。すなわち、この構成によれば、接着剤16から、不都合の原因ともなり得るpH調整剤を無くすことも可能である。
また、接着剤16の厚さ(接着剤からなる膜の厚さ)は、有機EL積層体10の大きさや用途等に応じて、有機ELデバイス12とガスバリアフィルム14とを確実に接着できる厚さを、適宜、設定すればよい。具体的には、発光素子が形成された位置における接着剤16の厚さは、2μm〜200μmとするのが好ましい。
先にも述べたが、パッシベーション膜26の表面は、発光素子24に応じた凹凸を有しており、また、窒化ケイ素等からなる無機膜34は、硬く、脆い。そのため、無機膜34の割れ等の損傷を考慮すると、無機膜34を、直接、接着剤16に当接して、有機ELデバイス12とガスバリアフィルム14とを接着するのは、不利である。
これに対し、接着剤16の厚さ(素子位置での接着剤16の厚さ)を2μm以上とすることにより、有機ELデバイス12とガスバリアフィルム14とを接着する際の押圧時や、有機EL積層体10が外部から衝撃を受けた際などに、接着剤16を、無機膜34の損傷を防止するためのクッションとして有効に作用させて、無機膜34を保護できる。また、接着剤16により、パッシベーション膜26の表面の凹凸を包埋することができる。これにより、前述の有機膜32が有するクッションとしての作用との相乗効果で、より確実に、無機膜34の損傷を防止できる。
他方、接着剤からのアウトガスの放出や、硬化した場合のフレキシビリティの損失、光損失等を考慮すると、接着剤16の厚さは、200μm以下とするのが好ましい。
また、より好適なクッション効果による無機膜34の損傷防止、および、アウトガスの低減効果を得られる等の点で、接着剤16の厚さは、10μm〜100μmとするのが、より好ましく、20μm〜60μmとするのがさらに好ましい。
本発明の有機EL積層体10において、接着剤16による有機ELデバイス12とガスバリアフィルム14との接着は、基本的に、公知の有機EL積層体における封止基板の接着と同様に行えばよい。
すなわち、ガスバリアフィルム14の無機膜34の表面、および/または、有機ELデバイス12のパッシベーション膜26の表面に、接着剤16を塗布する。その後、無機膜34とパッシベーション膜26とを対面させて、有機ELデバイス12とガスバリアフィルム14とを積層し、必要に応じて、押圧して、加熱、紫外線照射等を行い、接着剤16を硬化して、両者を接着させる。
ここで、接着剤16は、通常、ガスバリア性を有さない。そのため、有機EL積層体10では、接着剤16の端面からは、水分等が侵入し、これが発光素子24に至って、発光素子を劣化させる可能性が有る。そこで本発明の有機EL積層体10においては、端部(周縁部)において、有機ELデバイス12(パッシベーション膜26)とガスバリアフィルム14(無機膜34)との間の間隙が絞られた形状を有する。なお、以下の説明では、特に記載が無い場合には、無機膜34とは、表層の無機膜34を示すこととする。
図3は、有機EL積層体10の端部の構成を概念的に示す部分拡大図である。
図3に示すように、有機EL積層体10の周縁部において、ガスバリアフィルム14は、有機ELデバイス12側に近づく方向に屈曲される。さらに、この屈曲位置よりも端部側において、ガスバリアフィルム14は、有機ELデバイス12と略平行になるように再度、屈曲される。すなわち、端部において、有機ELデバイス12とガスバリアフィルム14との間の間隙が絞られた形状を有している。言い換えると、端面における有機ELデバイス12のパッシベーション膜26の表面から、ガスバリアフィルム14の無機膜34までの距離(高さ)が、中央領域(発光素子24の位置)における該距離よりも小さくなるように、ガスバリアフィルム14が屈曲されて配置されている。
端部における、有機ELデバイス12とガスバリアフィルム14との間の間隙を絞った形状とすることにより、接着剤16の端面の表面積を小さくして、接着剤16の端面からの水分等の侵入を防止し、発光素子24の劣化を防止することができる。
ここで、有機EL積層体10の端部から発光素子24の端部までの距離である縁部距離をLとし、端部における有機ELデバイス12のパッシベーション膜26から、ガスバリアフィルム14の無機膜34までの距離である開口高さをdとすると、縁部距離Lが、5mm以下であることが好ましく、また、縁部距離Lと開口高さdとの比率d/Lは0.1以下であることが好ましい。
前述のとおり、特に、携帯電話等のモバイル用のディスプレイとして利用される場合、縁部を小さくする必要があるが、縁部距離Lを、5mm以下と小さくした場合であっても、開口高さdを、発光素子24の位置におけるパッシベーション膜26と無機膜34との間の距離よりも狭くすることで、好適に端面からの水分等の侵入を防止することができる。その際、比率d/L≦0.1とすることにより、より好適に端面からの水分等の侵入を防止することができる。
さらに、画面サイズ5インチ以下のディスプレイに対応する有機EL積層体10においては、比率d/Lは、0.002〜0.1とするのが好ましい。画面サイズ5インチ以下のディスプレイは、携帯電話等のモバイル機器に用いられる。従って、比率d/Lを、0.002〜0.1として、製品のサイズに対して画面の比率を大きくすることと、端面からの水分等の侵入を防止すことを両立することが好ましい。
また、発光素子24の位置における有機ELデバイス12のパッシベーション膜26から、ガスバリアフィルム14の無機膜34までの距離を封止高さdとすると、封止高さdと開口高さdとの比率d/dは、0.01〜0.9とするのが好ましい。
比率d/dを0.9以下とすることにより、縁部距離が5mm以下の場合でも、より好適に端面からの水分等の侵入を防止することができる。
また、比率d/dを0.01以上とすることにより、バリアフィルムの割れを防止して、柔軟性に追従させる形で形状を維持することができる。
また、開口高さdは、1μm〜100μmとすることが好ましい。開口高さを1μm以上とすることにより、確実に接着することができる。他方、開口高さdを100μm以下とすることにより、接着剤16の端面からの水分等の侵入を好適に防止することができる。さらに、上記観点から、5〜50μmとすることが好ましく、10〜30μmとすることがより好ましい。
また、ガスバリアフィルム14の屈曲位置は、最も端部側の発光素子24よりも外側(端部側)に配置するのが好ましい。
このように、本発明の有機EL積層体10は、前述の発光素子24(あるいはさらに素子基板20の表面)を覆うパッシベーション膜26を有する有機ELデバイス12と、有機/無機の積層構造を有し、表層が無機膜34であるガスバリアフィルム14とを、パッシベーション膜26と無機膜34とを対面させて、接着剤16で接着してなる構成を有する。
加えて、本発明の有機EL積層体10は、端部(周縁部)において、有機ELデバイス12(パッシベーション膜26)とガスバリアフィルム14(無機膜34)との間の間隙が絞られた形状を有する。
前述のように、有機ELデバイス(特に、トップエミッション型の有機ELデバイス)12として、素子基板20の上に形成した発光素子24を覆ってパッシベーション膜26を形成し、パッシベーション膜26の上を、接着剤を用いて封止基板で封止してなる構成が知られている。
特許文献1や特許文献2にも示されるように、このような有機ELデバイス12において、封止基板としては、ガラス板やプラスチックフィルム等の各種の物が例示されているが、通常、ガラス板が用いられている。
しかしながら、高いガスバリア能を持つガラスを封止基板として用いた場合であっても、封入した接着剤の端面からの水分の侵入により、パッシベーション膜を水分が通過し、発光素子の端部から劣化してしまう。
接着剤の端面から発光素子までの距離を増やすことで、端面からの水分の侵入を抑制することが考えられる。しかしながら、有機EL積層体は、ディスプレイとして用いられるため、縁部を小さくして画面の比率を大きくすることが求められており、接着剤の端面から発光素子までの距離を増やすことは難しい。
また、パッシベーション膜を厚くすることで、発光素子を保護することも考えられる。しかしながら、発光素子にダメージを与えずに、厚いパッシベーション膜を形成するのは非常に生産性が悪く、コストの増加を招いてしまう。
また、近年では、有機EL装置に対して、薄手化や軽量化の要求が高くなっている。加えて、用途によっては、有機EL装置には、折り曲げ等が可能なフレキシブル性を有することも、求められている。
これに対し、本発明の有機EL積層体10は、封止基板として、無機膜34と下地の有機膜32とのを有する有機/無機の積層体構造を有し、かつ、無機膜34を表層とするガスバリアフィルム14を用いる。
さらに、パッシベーション膜26と無機膜34とを、対面させた状態で、接着剤16によって、有機ELデバイス12とガスバリアフィルム14とを接着する。このとき、好ましい態様として、パッシベーション膜26と無機膜34とを同じ材料で形成する。
そのため、本発明によれば、封止基板として、柔軟性のあるガスバリアフィルム14を用いるので、端部において、ガスバリアフィルム14を屈曲させて、有機ELデバイス12とガスバリアフィルム14との間の間隙が狭くなるように形成することができる。そのため、接着剤16の端面の面積を狭くすることができ、接着剤16の端面からの水分等の侵入を防止することができる。
また、封止基板としてガラス板等を用いている従来の有機EL積層体に比して、軽量化および薄手化を図ることができる。
また、好ましい態様として、パッシベーション膜26と無機膜34とが、同じ材料で形成されるので、同じ力で接着剤16に接着できる。その結果、両膜の密着力を揃えて応力差を無くし、かつ、両膜に最適な接着剤を用いて、高い密着力での接着が可能である。そのため、パッシベーション膜26と接着剤16との間、および、接着剤16と無機膜34との間での層間剥離を、好適に防止できる。
さらに、ガスバリア性を発現する無機膜34を表層として、パッシベーション膜26と無機膜34とを対面させて、接着を行う。そのため、支持体30からアウトガスが放出されても、このアウトガスは無機膜34で遮蔽され、接着剤16やパッシベーション膜26に至ることを防止できる。従って、本発明によれば、支持体30からのアウトガスによる発光素子24の劣化や層間剥離も防止できる。
ここで、単に、柔軟性のあるブラスチックフィルムを用いて、端部において有機ELデバイス12とプラスチックフィルムとの間の間隙を絞った形状として、端面での接着剤の面積を小さくして、端面からの水分等の侵入を防止することが考えられる。
しかしながら、本発明者の検討によれば、封止基板としてプラスチックフィルムを用いると、パッシベーション膜26(特にケイ素化合物で形成されるパッシベーション膜)と、封止基板との両者を両立して、十分な密着性を得ることが難しい。
その結果、パッシベーション膜26と接着剤との間、および/または、接着剤とプラスチックフィルムとの間で層間剥離が生じて、この界面部に気泡状に水分等のガスが残存する。そのため、パッシベーション膜が有っても、長時間の経時で、この水分等が発光素子24に至ってしまい、発光素子24が劣化する。
さらに、本発明者は、検討の結果、プラスチックフィルムから放出される水分等のガス(いわゆるアウトガス)も大きな問題になることを見出した。
プラスチックフィルムは、内部に、水分等の様々なガスを内包している。これらのガスは、長時間の経時でフィルム内から放出されて、いわゆるアウトガスとなる。このアウトガスも、先の気泡内のガスと同様に、長時間の経時により、最終的には発光素子24に至り、発光素子24を劣化させる。加えて、アウトガスは、前述の層間の界面に存在する空間の気泡ともなるので、密着性の劣化すなわち層間剥離を増大してしまう。
すなわち、封止基板としてのプラスチックフィルムからアウトガスが発生することで、層間の剥離および水分等による発光素子24の劣化が、加速する。
これに対して、本発明においては、封止基板として、表層が無機膜34からなるガスバリアフィルム14を用いる。
ここで、図1に示すように、パッシベーション膜26の表面は、発光素子24に応じた凹凸を有している。また、窒化ケイ素等からなる無機膜34は、硬く、脆いので、他の部材に直接的に押圧されると、容易に、割れやヒビ等の損傷を生じる。
無機膜34が損傷すれば、此処から水分等が透過するので、ガスバリアフィルム14の性能が低下する。
そのため、一般的に考えれば、この無機膜34の損傷を考慮すると、ガスバリアフィルム14の表層を無機膜34として、無機膜34を、直接、接着剤16に当接して、有機ELデバイス12とガスバリアフィルム14とを接着するのは、不利である。
一方、最上層の無機膜34を保護するために、表層に保護有機膜を有するガスバリアフィルムも知られている。しかしながら、このガスバリアフィルムを用いて、保護有機膜をパッシベーション膜26に対面して、有機ELデバイス12とガスバリアフィルムとを接着すると、前述のプラスチックフィルムと同様の問題を生じる。
また、有機EL積層体を用いる有機EL装置では、有機EL積層体の上に偏光板や1/λ板等の様々な機能層が形成される。これらの機能層を無機膜34の保護膜として作用させることを考えて、支持体30をパッシベーション膜26に対面して、有機ELデバイス12とガスバリアフィルム14とを接着すると、やはり、前述のプラスチックフィルムと同様の問題を生じる。
これに対して、本発明の有機EL積層体10では、ガスバリアフィルム14が、無機膜34の下地として有機膜32を有する。そのため、有機ELデバイス12とガスバリアフィルム14とを接着する際の押圧時などに、有機膜32が無機膜34のクッションとして働き、無機膜34を保護して、その損傷を防止できる。
しかも、下地の有機膜32を有することにより、適正な無機膜34を形成できるので、ガスバリアフィルム14は、水蒸気透過率が1×10-4[g/(m2・day)]未満となるような、高いガスバリア性能を有する。これにより、前述のように、パッシベーション膜26の薄膜化によるコストダウンも図れる。
また、前述のとおり、接着剤16の層は、無機膜34のクッションとしても働く。クッションとしての機能を考慮すると接着剤16の層は厚いのが好ましい。接着剤16を厚くすると端面からの水分の侵入が増加するおそれがあるが、本発明においては、端部を絞った形状として接着剤16の端面の面積を小さくすることができる。従って、接着剤16を厚くして無機膜34を好適に保護しつつ、端面からの水分の侵入を防止することができる。
以上のとおり、本発明の有機EL積層体10によれば、封止基板としてガスバリアフィルム14を用いることによる軽量化および薄手化に加え、有機EL積層体10内部での層間剥離を防止し、かつ、封止基板としてガスバリアフィルム14を用いることの効果を十分に発現し、さらに、接着剤16の端部からの水分の侵入を防止して、パッシベーション膜26の薄膜化によるコストダウンを図ると共に、より好適に水分等による発光素子24の劣化を防止でき、その結果、長期に渡って目的性能を長期に渡って発揮する有機EL積層体10を得られる。
ここで、図1に示す有機EL積層体10では、ガスバリアフィルム14の端部を2度屈曲させて、有機ELデバイス12とガスバリアフィルム14との間の間隙を絞る構成としたが、本発明はこれに限定はされず、有機ELデバイス12とガスバリアフィルム14との間の間隙を絞り、開口高さdを封止距離dよりも小さくすることができればよい。
例えば、図4に示すように、ガスバリアフィルム14の周縁部を有機ELデバイス12の方向に湾曲させて、有機ELデバイス12とガスバリアフィルム14との間の間隙を絞り、開口高さdを小さくする構成としてもよい。
なお、発光素子の位置より外側において、端部から所定の距離までの間は、有機ELデバイス12とガスバリアフィルム14との間の間隙を、発光素子の位置における有機ELデバイス12とガスバリアフィルム14との間の間隙よりも小さくするのが好ましい。
以上、本発明の有機EL積層体について詳細に説明したが、本発明は、上記実施例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行なってもよいのは、もちろんである。
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
[実施例1]
実施例1として、図1に示す有機EL積層体10を作製した。
(有機ELデバイス)
素子基板20として、厚さ500μmのガラス基板を用いた。
この素子基板20の周辺2.5mmを、セラミックによってマスキングした。さらに、マスキングを施した素子基板20を一般的な真空蒸着装置に装填して、真空蒸着によって、厚さ100nmの金属アルミニウムからなる電極を形成し、さらに、厚さ1nmのフッ化リチウム層を形成した。
次に、電極およびフッ化リチウム層を形成した素子基板20に真空蒸着法によって、以下の有機化合物を、順次、形成した。
(発光層兼電子輸送層)
・トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム:膜厚60nm
(第2正孔輸送層)
・N,N’−ジフェニル−N,N’−ジナフチルベンジジン:膜厚40nm
(第1正孔輸送層)
・銅フタロシアニン:膜厚10nm
さらにこれらの層を形成した素子基板20を、一般的なスパッタリング装置に装填して、ITO(Indium Tin Oxide 酸化インジウム錫)をターゲットとして用いて、DCマグネトロンスパッタリングによって、厚さ0.2μmのITO薄膜からなる透明電極を形成して、有機EL材料を用いる発光素子24を形成した。
また、発光素子24は、大きさ2000μm×2000μmとした。
また、素子基板20の端部から発光素子24までの縁部距離Lは、2.5mmとした。
(パッシベーション膜)
次に、マスキングを除去し、有機EL素子が形成されたガラス基板に、プラズマCVD法によって、窒化珪素からなるパッシベーション膜26を形成した。
原料ガスは、シランガス(SiH4)、アンモニアガス(NH3)、窒素ガス(N2)および水素ガス(H2)を用いた。原料ガスの供給量は、シランガスが100sccm、アンモニアガスが200sccm、窒素ガスが500sccm、水素ガスが500sccmとした。また、形成圧力は50Paとした。
プラズマ励起電力は、周波数13.56MHzで3000Wとした。
パッシベーション膜26は、発光素子24上で3μmの厚さとした。また、パッシベーション膜26の成膜後、膜の表面を大気に曝し、−O基や−OH基を導入し、有機ELデバイス12を作製した。
(ガスバリアフィルム)
ガスバリアフィルム14としては、図2(B)に示すような、支持体30、無機膜34a、有機膜32、無機膜34が積層されたフィルムを用いた。
支持体30として、厚さ100μmのシクロオレフィンコポリマー(COC)フィルム(グンゼ社製、F1フィルム)を用いた。このCOCフィルムの水蒸気透過率(WVTR)は、2[g/m2・day]であった。
次に、支持体30上にプラズマCVD法によって、厚さ50nmの無機膜34aを形成した。
原料ガスは、シランガス(SiH4)、アンモニアガス(NH3)、窒素ガス(N2)および水素ガス(H2)を用いた。ガスの供給量は、シランガスが100sccm、アンモニアガスが200sccm、窒素ガスが500sccm、水素ガスが500sccmとした。また、形成圧力は50Paとした。すなわち、無機膜34aは、窒化珪素膜である。
プラズマ励起電力は、周波数13.56MHzで3000Wとした。また、バイアス電力は、周波数400kHzで500Wとした。
次に、無機膜34a上に有機膜32を形成した。有機膜32は、塗布法により支持体30に材料を塗布し、乾燥後、紫外線照射して重合を行って、厚さ2μmの膜を形成した。
有機膜32を形成する塗料は、MEK(メチルエチルケトン)に、TMPTA(ダイセル・サイテック社製)、光重合開始剤(チバケミカルズ社製 Irg184)、および、シランカップリング剤(信越シリコーン社製 KBM5103)を添加して、調製した。すなわち、有機膜32は、TMPTAを重合してなる層である。
光重合開始剤の添加量は、有機溶剤を除いた濃度で2質量%、シランカップリング剤の添加量は、有機溶剤を除いた濃度で10質量%とした(すなわち固形分における有機化合物は88質量%)。また、これらの比率で配合した成分をMEKに希釈した塗料の固形分濃度は、15質量%とした。
次に、有機膜32上にプラズマCVDによって、厚さ50nmの無機膜34を形成した。
無機膜34の形成は、バイアス電力を300Wとした以外は、前述の無機膜34aの形成と同様に行った。すなわち、無機膜34は、窒化珪素膜である。また、無機膜34の成膜後、膜の表面を大気に曝し、−O基や−OH基を導入した。
(接着剤)
接着剤16は、エポキシ樹脂(JER1001)を48%、エポキシ樹脂(JER152)を48%、シランカップリング剤(KBM502)を4%それぞれ加えたものをMEKに溶解させて50%重量溶液としたものとした。
この接着剤16をガスバリアフィルム14に所定の厚みとなるように塗布し、溶剤を十分に揮発させた後、有機ELデバイス12に不活性ガス下で貼り合せ、100℃の環境に100時間放置して硬化させて有機EL積層体10を作製した。
このとき、発光素子24の位置での接着剤16の厚さ(封止高さd)が50μm、端面における接着剤の厚さ(開口高さd)が25μmとなるように押圧して、ガスバリアフィルム14と有機ELデバイス12を接着した。すなわち、d/Lを0.01した。
(評価)
次に、作製した有機EL積層体10の作製直後の全体の輝度を測定した後に、温度60℃、湿度90%の環境下で、200時間放置し、その後、発光素子24を点灯させて、全体の輝度を再度測定して輝度低下の割合を測定した。また、黒色化(いわゆる、ダークスポット)の発生の有無を顕微鏡にて確認した。評価は、以下の基準に従って評価した。評価の結果、黒色化や、輝度低下は全く見られなかった(評価AAA)。
AAA:輝度低下が1%以下であり、黒色化が全く見られなかった。
AA:輝度低下が1%以上3%未満であった。
A:輝度低下が3%以上5%未満であった。
B:輝度低下が5%以上8%未満であった。
C:輝度低下が8%以上10%未満であった。
D:輝度低下が10%以上30%未満であった。
E:輝度低下が30%以上であり、目視でも発光が低くなっていることが容易に視認できる。
評価はCまで許容でき、D以下がNGである。
[実施例2]
実施例2として、開口高さdを1μmとし、d/Lを0.0004とした以外は、実施例1と同様にして有機EL積層体を作製した。
この有機EL積層体について、実施例1と同様の評価を行ったところ、評価はAであった。端部周辺に若干ダークスポットが見られたことから、端部の接着層が薄いため、微小な密着不良箇所から水分がわずかに侵入したと考えられる。
[実施例3]
実施例3として、開口高さdを50μmとし、封止高さdを100μmとし、d/Lを0.02とした以外は、実施例1と同様にして有機EL積層体を作製した。
この有機EL積層体について、実施例1と同様の評価を行ったところ、評価はAAであった。
[実施例4]
実施例4として、開口高さdを100μmとし、封止高さdを200μmとし、d/Lを0.04とした以外は、実施例1と同様にして有機EL積層体を作製した。
この有機EL積層体について、実施例1と同様の評価を行ったところ、評価はBであった。端部および全面部でダークスポットが見られた。これは、接着層が厚いことによるアウトガスの影響と、開口高さが大きいことによる端部からの侵入の影響と考えられる。
[実施例5]
実施例5として、開口高さdを110μmとし、封止高さをdを250μmとし、d/Lを0.044とした以外は、実施例1と同様にして有機EL積層体を作製した。
この有機EL積層体について、実施例1と同様の評価を行ったところ、評価はCであった。端部および全面部でダークスポットが見られた。これは、接着層が厚いことによるアウトガスの影響と、開口高さが大きいことによる端部からの侵入の影響が大きくなったと考えられる。
[実施例6]
実施例6として、発光素子の位置での接着剤厚さを250μmとした以外は、実施例1と同様にして有機EL積層体を作製した。
この有機EL積層体について、実施例1と同様の評価を行ったところ、評価はAであった。全面部に若干ダークスポットが見られたので、接着層が厚いことによるアウトガスの影響と考えられる。
[実施例7]
実施例7として、封止高さdを1.5μmとした以外は、実施例2と同様にして有機EL積層体を作製した。
この有機EL積層体について、実施例1と同様の評価を行ったところ、評価はBであった。全面部にダークスポットが見られたので、接着剤の厚さが薄いため、表層の無機膜が押圧によって破壊された影響と考えられる。
[実施例8]
実施例8として、縁部距離Lを1mmとし、d/Lを0.05とした以外は、実施例1と同様にして有機EL積層体を作製した。
この有機EL積層体について、実施例1と同様の評価を行ったところ、評価はAであった。端部に若干ダークスポットが見られたので、縁部距離が短いことにより水分の到達が早くなったことの影響と考えられる。
[実施例9]
実施例9として、縁部距離Lを1mmとし、d/Lを0.05とした以外は、実施例3と同様にして有機EL積層体を作製した。
この有機EL積層体について、実施例1と同様の評価を行ったところ、評価はBであった。端部にダークスポットが見られた。実施例8に比べ開口が広いことで、より水分進入の量が増え、縁部距離が短いことの影響が顕著になったと考えられる。
[実施例10]
実施例10として、開口高さdを85μmとし、封止高さdを100μmとし、縁部距離Lを0.8mmとし、d/Lを1.06とした以外は、実施例1と同様にして有機EL積層体を作製した。
この有機EL積層体について、実施例1と同様の評価を行ったところ、評価はCであった。これは、縁部距離Lに対して、開口高さdが大きいため、実施例8や9と比較して水分到達が早くなったと考えられる。
[実施例11]
実施例11として、ガスバリアフィルムの表層の無機膜として酸化アルミ膜を形成した以外は、実施例1と同様にして有機EL積層体を作製した。
酸化アルミ膜は、ターゲットとして金属アルミニウムを、プロセスガスとして酸素ガスおよびアルゴンガスを用いて、反応性スパッタリングにより形成した。酸化アルミ膜の厚さは、50nmとした。
この有機EL積層体について、実施例1と同様の評価を行ったところ、評価はCであった。これは、ガスバリアフィルムの無機膜とパッシベーション膜の材料の差で生じる接着剤との応力の差が顕著になり層間剥離が発生したためと考えられる。
[実施例12]
実施例12として、接着剤がシランカップリング剤を含まない以外は、実施例1と同様にして有機EL積層体を作製した。
この有機EL積層体について、実施例1と同様の評価を行ったところ、評価はCであった。これは、接着剤層と有機ELデバイスおよびガスバリアフィルムとの密着力が低く層間剥離が発生したためと考えられる。
[比較例1]
比較例1として、ガスバリアフィルムの表層の無機膜34を形成しない以外は実施例1と同様にして有機EL積層体を作製した。すなわち、無機膜と有機膜が形成され、有機膜が表層に形成されるガスバリアフィルムを封止基板とした。
この有機EL積層体について、実施例1と同様の評価を行ったところ、評価はDであった。これはガスバリアフィルムの有機膜からのアウトガスの影響と考えられる。
[比較例2]
比較例2として、発光素子の位置での接着剤の厚さdを200μmとし、端面での接着剤の厚さdを200μmとした以外は比較例2と同様の有機EL積層体を作製した。
この有機EL積層体について、実施例1と同様の評価を行ったところ、周縁部と全面部においてダークスポットが見られ、周縁部が1mmの幅で完全に黒色化し、発光が消失した。評価はEであった。これは、アウトガスと端部進入水分の両方が極めて多いことを示唆していると考えられる。
[比較例3]
比較例3として、封止基板として厚さ300μmのガラス基板を用い、発光素子の位置での接着剤の厚さdを200μmとし、端面での接着剤の厚さdを200μmとし、d/Lを0.08とした以外は実施例1と同様の有機EL積層体を作製した。
この有機EL積層体について、実施例1と同様の評価を行ったところ、周縁部が数100μmの幅で完全に黒色化していた。評価はEであった。
また、封止基板としてガラス基板を用いると、全体が重く厚くなってしまうという問題も生じる。
結果を表1に示す。
Figure 2014186850
以上のとおり、本発明の実施例である実施例1〜12は、200時間放置した後も輝度低下やダークスポットの発生がなく、あるいは、わずかであり、水分の侵入を防止し、発光素子の劣化を防止していることがわかる。
これに対して、比較例1〜3は200時間放置後には、端部付近で輝度低下が発生しており、接着剤の端面からの水分の侵入を防止できないことがわかる。また、比較例1、2では、全域で発光不良が発生しており、有機膜からのアウトガスにより発光素子の劣化を防止できないことがわかる。
また、実施例1〜5の対比、ならびに、実施例8および9の対比等から、開口高さdが大きいと接着剤の端面からの水分の侵入が増加するため、開口高さdは1μm〜100μmが好ましく、5μm〜50がより好ましく、10μm〜30μmがさらに好ましいことがわかる。
また、実施例1〜7の対比等から、封止高さdが大きいと接着剤からのアウトガスの影響があり、また、封止高さdが小さいと発光素子の凹凸により表層の無機膜が部分的に破壊されるため、封止高さdは2μm〜200μmが好ましく、10μm〜100μmがより好ましく、20μm〜60μmがさらに好ましいことがわかる。
また、実施例1と8と対比、実施例3と9との対比等から、縁部距離Lが短いほど接着剤の端面からの水分の侵入の影響が大きくなるため本発明が有効であることがわかる。
また、実施例1、3、8、9および10の対比等から、d/Lは0.1以下が好ましいことがわかる。
また、実施例1と11との対比から、ガスバリアフィルムの無機膜は窒化珪素膜であるのが好ましく、ガスバリアフィルムの無機膜とパッシベーション膜とは同じ材料からなることが好ましいことがわかる。
また、実施例1と12との対比から、接着剤はシランカップリング剤を含むのが好ましいことがわかる。
以上の結果から、本発明の効果は、明らかである。
有機ELディスプレイや有機EL照明装置などに、好適に利用可能である。
10,100 有機EL積層体
12 有機ELデバイス
14 ガスバリアフィルム
16 接着剤
20 素子基板
24 発光素子
26 パッシベーション膜
30 支持体
32 有機膜
34 無機膜

Claims (11)

  1. 有機EL材料を用いる発光素子、および、この発光素子を覆うパッシベーション膜を有する有機ELデバイスと、透明な封止基板とを、接着剤によって接着してなる有機EL積層体であって、
    前記有機ELデバイスが、前記封止基板側に向けて発光するトップエミッション型であり、
    前記封止基板が、支持体の上に、無機膜と、この無機膜の下地となる有機膜との組み合わせを1以上有する、表層が無機膜であるガスバリアフィルムであり、
    前記パッシベーション膜と前記表層の無機膜とが対面して、前記接着剤によって前記有機ELデバイスと前記ガスバリアフィルムとが接着されており、
    前記接着剤が、前記パッシベーション膜と前記表層の無機膜との間の全域に充填されており、
    さらに、前記有機ELデバイスの端部における、前記パッシベーション膜と前記表層の無機膜との間の間隙が、前記発光素子の位置における、前記パッシベーション膜と前記表層の無機膜との間の間隙よりも狭いことを特徴とする有機EL積層体。
  2. 前記有機ELデバイスの端部から前記発光素子までの距離である縁部距離Lが5mm以下である請求項1に記載の有機EL積層体。
  3. 前記有機ELデバイスの端部から前記発光素子までの距離である縁部距離Lと、端部における前記パッシベーション膜と前記表層の無機膜との間の間隙である開口高さdとの比率が、d/L≦0.1である請求項1または2に記載の有機EL積層体。
  4. 前記パッシベーション膜と、前記ガスバリアフィルムの少なくとも前記表層の無機膜とが、同じ材料で形成されている請求項1〜3のいずれかに記載の有機EL積層体。
  5. 前記有機ELデバイスの端部における前記接着剤の厚さが、1μm〜100μmである請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機EL積層体。
  6. 前記発光素子の位置における前記接着剤の厚さが2μm〜200μmである請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機EL積層体。
  7. 前記接着剤がシランカップリング剤を有するものであり、
    前記パッシベーション膜および前記表層の無機膜が、ケイ素化合物の膜であり、かつ、表面に−O基および−OH基の少なくとも一方が導入されたケイ素化合物を有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機EL積層体。
  8. 前記パッシベーション膜および前記表層の無機膜が窒化ケイ素の膜である請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機EL積層体。
  9. 前記パッシベーション膜の厚さが10μm以下である請求項1〜8のいずれか1項に記載の有機EL積層体。
  10. 前記ガスバリアフィルムの前記有機膜の厚さが0.5μm〜5μmである請求項1〜9のいずれか1項に記載の有機EL積層体。
  11. 前記ガスバリアフィルムが、複数の前記無機膜を有し、かつ、全ての前記無機膜が同じ材料で形成される請求項1〜10のいずれか1項に記載の有機EL積層体。
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