実施形態について、図面を参照して説明する。
<第1実施形態>
[A]構成
[A−1]蒸気タービンシステムの全体について
図1は、第1実施形態に係る蒸気タービンシステムの全体構成について、要部を模式的に示す概念図である。
蒸気タービンシステムは、図1に示すように、ボイラ10、高圧タービン20、再熱器30、中圧タービン40、低圧タービン50、復水器60、および、発電機70を有する。
蒸気タービンシステムにおいて、ボイラ10と高圧タービン20との間には、主蒸気管P10が設けられており、主蒸気管P10には、主蒸気止め弁V10aと蒸気加減弁V10bとが設置されている。高圧タービン20と再熱器30との間には、低温再熱蒸気管P20が設けられている。再熱器30と中圧タービン40との間には、高温再熱蒸気管P30が設けられており、高温再熱蒸気管P30には、再熱蒸気止め弁V30aとインターセプト弁V30bとが設置されている。中圧タービン40と低圧タービン50との間には、クロスオーバー管P40が設けられている。
蒸気タービンシステムでは、ボイラ10で発生した蒸気が、主蒸気管P10を流れ、主蒸気止め弁V10aと蒸気加減弁V10bとを順次介して、高圧タービン20に流入する。そして、高圧タービン20から排出された蒸気が、低温再熱蒸気管P20を流れ、再熱器30に流入する。そして、再熱器30で再熱された蒸気が、高温再熱蒸気管P30を流れ、再熱蒸気止め弁V30aとインターセプト弁V30bとを順次介して、中圧タービン40に流入する。そして、中圧タービン40から排出された蒸気が、クロスオーバー管P40を流れて、低圧タービン50に流入する。その後、蒸気は、復水器60で凝縮(復水)され、図示を省略しているが、その復水がボイラ10に戻される。
蒸気タービンシステムでは、高圧タービン20と中圧タービン40と低圧タービン50とにおいてタービンロータが同軸に連結されており、これらの各部に作動流体として流入した蒸気が膨張し仕事を行うことによって、タービンロータを回転させる。そして、そのタービンロータの回転によって、発電機70が駆動し、発電が行われる。
図1に示すように、蒸気タービンシステムは、上記の他に、制御部100(蒸気タービン制御装置)を有する。
制御部100は、各部の動作を制御する。たとえば、制御部100は、蒸気加減弁V10b(蒸気弁)を制御する蒸気弁制御装置であって、高圧タービン20と中圧タービン40と低圧タービン50とによって構成される蒸気タービンの入口に流入する蒸気の流量を調節する。制御部100は、タービン回転数検出器21が検出した実回転数の信号を受け、その実回転数に基づいて、蒸気加減弁V10bの動作を制御する。
ここでは、蒸気加減弁V10bとして、たとえば、前述の図15に示した蒸気弁V10と同じ構成の蒸気弁が、4つ設けられており、制御部100は、「絞り調速方式」で、その4つの蒸気弁V10を制御する。つまり、本実施形態において、蒸気タービンへ供給する蒸気量を増加させるときには、制御部100は、その4つの蒸気弁V10のそれぞれを同時に同じ開度で開ける。
本実施形態では、制御部100は、「調速運転」を行うときには、最大開度よりも小さく制限した制限開度を上限として、蒸気加減弁V10bを構成する複数の蒸気弁V10の動作を制御する。
この一方で、制御部100は、「負荷制限運転」を行うときには、最大開度を上限として、複数の蒸気弁V10の動作を制御する。
[A−2]制御部100(蒸気タービン制御装置)の詳細について
図2,図3は、第1実施形態に係る制御部100の詳細構成について、要部を模式的に示す図である。ここでは、制御部100の詳細構成を、図2と図3とに分けて示している。
制御部100は、図2に示すように、偏差演算器1,速度調定率器2,負荷設定器3,加算器4,負荷制限器5,および、低値優先回路6(LVG)を有している。
この他に、本実施形態では、制御部100は、図2,図3に示すように、第1の弁制御部11と、第2の弁制御部12と、第3の弁制御部13と、第4の弁制御部14とを有する。
ここで、第1の弁制御部11は、関数発生器111と、比較器112と、スイッチ回路113(ASW)と、変化率制限器114と、低値優先回路115とを含む。第1の弁制御部11は、蒸気加減弁V10bとして設けられた複数の蒸気弁V10のうち、第1の蒸気弁V10_1に開度指令信号S11を出力する。
これ同様に、第2の弁制御部12と第3の弁制御部13と第4の弁制御部14とのそれぞれは、関数発生器121,131,141と、比較器122,132,142と、スイッチ回路123,133,143と、変化率制限器124,134,144と、低値優先回路125,135,145とを含む。第2の弁制御部12と第3の弁制御部13と第4の弁制御部14とのそれぞれは、蒸気加減弁V10bとして設けられた複数の蒸気弁V10のうち、第2の蒸気弁V10_2,第3の蒸気弁V10_3,第4の蒸気弁V10_4のそれぞれに、開度指令信号S12,S13,S14を出力する。
制御部100において、各部は演算器によって構成されている。制御部100では、各部において演算処理を実施した後、その演算処理によって得た開度指令信号S11,S12,S13,S14を、複数の蒸気弁V10_1〜4(蒸気加減弁V10b)のそれぞれへ出力し、高圧タービン20(図1参照)へ供給する蒸気の流量を調整する。
制御部100を構成する各部について順次説明する。
[A−2−1]偏差演算器1
偏差演算器1は、図2に示すように、回転数設定信号S0と実回転数信号SJの間の偏差を算出する。具体的には、偏差演算器1は、設定されたタービンの目標回転数に対応する回転数設定信号S0の値と、タービン回転数検出器21(図1参照)がタービンの回転を実測することによって得た実回転数信号SJの値との間の差分値を求める。
そして、偏差演算器1は、その求めた偏差の値を出力信号S1として速度調定率器2へ出力する。
[A−2−2]速度調定率器2
速度調定率器2は、図2に示すように、偏差演算器1が出力した出力信号S1にゲイン(1/k)を乗算する。つまり、速度調定率器2は、偏差演算器1の出力信号S1の値に対して、速度調定率kの逆数を積算する演算処理を行う。速度調定率kは、予め設定された値であって、たとえば、5%であり、この場合には、偏差演算器1から出力された出力信号S1が20倍(=1/0.05)になる。
そして、速度調定率器2は、上記の処理により得た値を出力信号S2(=S1/k)として加算器4へ出力する。
[A−2−3]負荷設定器3
負荷設定器3は、図2に示すように、設定したタービンの負荷設定値に対応する負荷設定信号S3を、出力信号として加算器4に出力する。
[A−2−4]加算器4
加算器4は、図2に示すように、速度調定率器2が出力した出力信号S2と、負荷設定器3が出力した負荷設定信号S3とについて加算処理を実施することによって、負荷要求信号S4(=S2+S3=Xa)を求める。
そして、加算器4は、その負荷要求信号S4(=Xa)を低値優先回路6へ出力する。
[A−2−5]負荷制限器5
負荷制限器5は、図2に示すように、タービンの負荷制限値に対応する負荷制限信号S5(=Xb)を低値優先回路6に出力する。
[A−2−6]低値優先回路6
低値優先回路6は、図2に示すように、加算器4が出力した負荷要求信号S4(=Xa)と、負荷制限器5が出力した負荷制限信号S5(=Xb)との間において、低い方の値を選択する。
ここでは、「調速運転」を行う際には、負荷要求信号S4(=Xa)が負荷制限信号S5(=Xb)以下である(S4≦S5(つまり、Xa≦Xb))。このため、この場合には、負荷設定信号S4(=Xa)が選択される。
一方で、「負荷制限運転」を行う際には、負荷要求信号S4(=Xa)が負荷制限信号S5(=Xb)よりも大きい(S4>S5(Xa>Xb))。このため、この場合には、負荷制限信号S5(=Xb)が選択される。
そして、低値優先回路6は、その選択した信号を、出力信号S6(=S4またはS5(=XaまたはXb))として、第1の弁制御部11,第2の弁制御部12,第3の弁制御部13,第4の弁制御部14のそれぞれの関数発生器111,121,131,141に出力する。
[A−2−7]第1の弁制御部11
[A−2−7−1]関数発生器111
第1の弁制御部11のうち、関数発生器111は、低値優先回路6が出力した出力信号S6(S4またはS5)が入力される。そして、関数発生器111は、その低値優先回路6が出力した出力信号S6に基づいて、開度指令信号S111(=Xc)を出力する。
具体的には、関数発生器111は、低値優先回路6の出力信号S6に関連付けて設定された関数F(S6)を用いて、その出力信号S6に対応する開度指令信号S111(=Xc=F(S6))を求める。そして、その求めた開度指令信号S111(=Xc)を低値優先回路115に出力する。
図4は、第1実施形態に係る蒸気タービンシステムにおいて、関数発生器111で用いる関数F(S6)を示す図である。
図4において、横軸は、低値優先回路6が出力した出力信号S6の信号値であり、縦軸は、関数発生器111が出力する開度指令信号S111(=Xc)の信号値である。
図4に示すように、関数F(S6)は、低値優先回路6が出力した出力信号S6の信号値が0から100%までの間においては、その信号値の増加に伴って、開度指令信号S111(=Xc)の信号値が大きくなるように設定されている。ここでは、低値優先回路6の出力信号S6に応じて、開度指令信号S111(=Xc)が一定の割合で増加するのではなく、開度指令信号S111(=Xc)が増加する割合が大きくなるように設定されている。
そして、関数F(S6)は、低値優先回路6が出力した出力信号S6の信号値が100%を超えたときには、その出力信号S6の信号値に関わらずに、開度指令信号S111(=Xc)の信号値が100%の一定値になるように設定されている。
[A−2−7−2]比較器112
第1の弁制御部11のうち、比較器112は、加算器4が出力した負荷要求信号S4(=Xa)が入力されると共に、負荷制限器5が出力した負荷制限信号S5(=Xb)が入力される。
そして、比較器112は、負荷要求信号S4(=Xa)と負荷制限信号S5(=Xb)とについて比較処理を行い、その比較処理の結果に基づいて、出力信号S112を出力する。
具体的には、「調速運転」を行うときには、上述したように、負荷要求信号S4(=Xa)の値が負荷制限信号S5(=Xb)の値以下である(S4≦S5(つまり、Xa≦Xb))。この場合においては、比較器112は、信号値が0の信号(Low信号)を出力信号S112としてスイッチ回路113に出力する。
この一方で、「負荷制限運転」を行うときには、上述したように、負荷要求信号S4(=Xa)の値は、負荷制限信号S5(=Xb)の値よりも大きい(S4>S5(つまり、Xa>Xb))。この場合においては、比較器112は、信号値が1の信号(High信号)を出力信号S112としてスイッチ回路113に出力する。
[A−2−7−3]スイッチ回路113
第1の弁制御部11のうち、スイッチ回路113は、比較器112が出力した出力信号S112が入力される。この他に、スイッチ回路113は、100−α%(たとえば、α=5〜10%)の開度を示す開度指令信号Saと、100+β%(たとえば、α=5〜15%)の開度を示す開度指令信号Sbとのそれぞれが入力される。
スイッチ回路113は、比較器112が出力した出力信号S112に基づいて、100−α%の開度を示す開度指令信号Saと、100+β%の開度を示す開度指令信号Sbとのいずれかを切り替えて、出力信号S113として変化率制限器114に出力する。
具体的には、「調速運転」を行うときには、上述したように、信号値が0の出力信号S112(Low信号)が比較器112からスイッチ回路113に出力される。この場合には、スイッチ回路113は、100−α%の開度を示す開度指令信号Saを出力信号S113として変化率制限器114に出力する。
この一方で、「負荷制限運転」を行うときに、上述したように、信号値が1の出力信号S112(High信号)が比較器112からスイッチ回路113に出力される。この場合には、スイッチ回路113は、100+β%の開度を示す開度指令信号Sbを出力信号S113として変化率制限器114に出力する。
[A−2−7−4]変化率制限器114
第1の弁制御部11のうち、変化率制限器114は、スイッチ回路113が出力した出力信号S113(SaまたはSb)(100+α%または100+β%)が入力される。
変化率制限器114は、スイッチ回路113が出力した出力信号S113の信号値が切り替わったときに、予め定めた時間内で信号値を一定の割合で変化させて、出力信号S114として出力する。
図5は、第1実施形態に係る蒸気タービンシステムにおいて、変化率制限器114の処理を示す図である。
図5において、横軸は、時間tであり、縦軸は、開度(信号値)を示している。また、図5(a)は、スイッチ回路113が出力した出力信号S113(変化率制限器114の入力信号)を示し、図5(b)は、変化率制限器114が出力する出力信号S114を示している。
図5(a)に示すように、スイッチ回路113の出力信号S113が、100−α%から100+β%に切り替えられた場合には、図5(b)に示すように、変化率制限器114の出力信号S114を、予め定めた時間T114内において、100−α%から100+β%に一定の割合で増加させる。つまり、スイッチ回路113から矩形状に出力された出力信号S113をランプ状に変形し、変化率制限器114の出力信号S114として出力する。
具体的には、図5(a)及び図5(b)に示すように、スイッチ回路113の出力信号S113が、100−α%から100+β%に切り替えられる時点Ts以前においては、変化率制限器114は、100−α%の出力信号S114を出力する。そして、切り替え時点Ts後においては、変化率制限器114は、予め設定された時間T114内に、100−α%から100+β%に一定の割合で増加させて、出力信号S114を出力する。そして、予め定めた時間T114以後においては、100+β%の出力信号S114を出力する。
図示を省略しているが、スイッチ回路113の出力信号S113が、100+β%から100−α%に切り替えられた場合には、変化率制限器114の出力信号S114を、予め設定された時間T114内において、100+β%から100−α%に一定の割合で減少させる。
なお、出力信号S114を変化させる時間T114は、たとえば、3〜5秒間であるが、任意に設定可能である。
[A−2−7−5]低値優先回路115
第1の弁制御部11のうち、低値優先回路115は、図2に示すように、関数発生器111が出力した開度指令信号S111(=Xc)と、変化率制限器114が出力した出力信号S114(=Sa〜Sb=100−α%〜100+β%)とのそれぞれが入力される。
そして、低値優先回路115は、関数発生器111が出力した開度指令信号S111(=Xc)と、変化率制限器114が出力した出力信号S114(=Sa〜Sb)とについて比較処理を行って低い方の値を選択し、その選択した値を開度指令信号S11として出力する。
「調速運転」を行うときには、変化率制限器114が出力する出力信号S114は、信号値が100−α%である。このため、低値優先回路115が出力する開度指令信号S11は、信号値の上限が100−α%になる。したがって、第1の蒸気弁V10_1の開度は、100−α%に制限される。
この一方で、「負荷制限運転」を行うときには、変化率制限器114が出力する出力信号S114は、信号値が100+β%である。このため、低値優先回路115が出力する開度指令信号S11は、信号値の上限が100+β%になる。したがって、第1の蒸気弁V10_1の開度は、制限されない。
上記のように、本実施形態では、「負荷制限運転」を行うときには、最大開度を上限として、第1の蒸気弁V10_1の制御を行う。そして、「調速運転」を行うときには、最大開度よりも小さく制限した制限開度(100−α%)を上限として、第1の蒸気弁V10_1の制御を行う。
[A−2−8]第2の弁制御部12,第3の弁制御部13,第4の弁制御部14
第2の弁制御部12,第3の弁制御部13,第4の弁制御部14のそれぞれは、図2,図3に示すように、第1の弁制御部11と同様に構成されている。
第2の弁制御部12は、第1の弁制御部11と同様に、各部において演算処理を行い、第2の蒸気弁V10_2に開度指令信号S12を出力する。
第3の弁制御部13は、第1の弁制御部11と同様に、各部において演算処理を行い、第3の蒸気弁V10_3に開度指令信号S13を出力する。
第4の弁制御部14は、第1の弁制御部11と同様に、各部において演算処理を行い、第4の蒸気弁V10_4に開度指令信号S14を出力する。
これにより、本実施形態では、「負荷制限運転」を行うときには、第1の蒸気弁V10_1の場合と同様に、最大開度を上限として、第2の蒸気弁V10_2,第3の蒸気弁V10_3,第4の蒸気弁V10_4のそれぞれについて、制御が行なわれる。そして、「調速運転」を行うときには、第1の蒸気弁V10_1の場合と同様に、最大開度よりも小さく制限した制限開度(100−α%)を上限として、第2の蒸気弁V10_2,第3の蒸気弁V10_3,第4の蒸気弁V10_4のそれぞれについて、制御が行なわれる。
本実施形態は、「絞り調速方式」で運用される場合を示しているので、第2の蒸気弁V10_2,第3の蒸気弁V10_3,第4の蒸気弁V10_4のそれぞれは、第1の蒸気弁V10_1と同時に同じ開度になるように、制御される。
[B]動作
上記の蒸気タービンシステムの動作について示す。
ここでは、「絞り調速方式」で蒸気タービンを運用するときの制御部100の動作に関して、「調速運転」の場合と、「負荷制限運転」の場合とに分けて説明する。
[B−1]「調速運転」の場合
「調速運転」の場合には、上述したように、負荷要求信号S4(=Xa)が負荷制限信号S5(=Xb)以下である(S4≦S5(つまり、Xa≦Xb))。このため、低値優先回路6では、負荷設定信号S4(=Xa)が選択され、低値優先回路6から、出力信号S6として、第1の弁制御部11、第2の弁制御部12,第3の弁制御部13,第4の弁制御部14のそれぞれに出力される(図2,図3参照)。
第1の弁制御部11においては、図2に示すように、低値優先回路6の出力信号S6(=Xa)が、関数発生器111に入力される。関数発生器111では、関数F(S6)を用いて、その低値優先回路6の出力信号S6(=Xa)に対応する開度指令信号S111(=Xc=F(Xa))が求められ、低値優先回路115に出力される。
第1の弁制御部11においては、上記の他に、図2に示すように、負荷要求信号S4(=Xa)と負荷制限信号S5(=Xb)とのそれぞれが、比較器112に入力される。そして、比較器112において比較処理が行われ、その比較処理の結果に基づいて、比較器112から出力信号S112が出力される。ここでは、「調速運転」を行うので、負荷要求信号S4(=Xa)の値が負荷制限信号S5(=Xb)の値以下である(S4≦S5(Xa≦Xb))。このため、この場合には、信号値が0の出力信号S112(Low信号)が、比較器112からスイッチ回路113に出力される。
比較器112の出力信号S112が0の信号値(Low信号)である場合、スイッチ回路113においては、100−α%の信号値である開度指令信号Saが、出力信号S113として変化率制限器114に出力される。そして、スイッチ回路113の出力信号S113に応じて、変化率制限器114が出力信号S114を低値優先回路115に出力する。ここでは、スイッチ回路113の出力信号S113が、100−α%と100+β%との間で切り替えられた場合を除いて、スイッチ回路113の出力信号S113と同じ信号値の信号が、出力信号S114(=Sa=100−α%)として変化率制限器114から出力される。
そして、低値優先回路115においては、関数発生器111が出力した開度指令信号S111(=Xc=F(Xa))と、変化率制限器114の出力信号S114(=Sa=100−α%)とを比較する比較処理が行われる。そして、両者のうち低値が開度指令信号S11として低値優先回路115から第1の蒸気弁V10_1に出力される。このため、低値優先回路115が出力する開度指令信号S11は、信号値の上限が100−α%になる。したがって、第1の蒸気弁V10_1の開度は、100−α%に制限される。
第2の弁制御部12、第3の弁制御部13、第4の弁制御部14のそれぞれにおいても、第1の弁制御部11の場合と同様に演算処理を行う。そして、第2の蒸気弁V10_2、第3の蒸気弁V10_3、第4の蒸気弁V10_4のそれぞれに、開度指令信号S12,S13,S14が出力される(図2,図3参照)。
このため、第2の弁制御部12、第3の弁制御部13、第4の弁制御部14のそれぞれが出力する開度指令信号S12,S13,S14のそれぞれも、上記と同様に、信号値の上限が100−α%になる。したがって、第2の蒸気弁V10_2、第3の蒸気弁V10_3、第4の蒸気弁V10_4の開度は、第1の蒸気弁V10_1の場合と同様に、100−α%に制限される。
図6は、第1実施形態に係る蒸気タービンシステムにおいて、開度指令信号S11(S12,S13,S14)と蒸気流量との関係を示す図である。
図6において、横軸は、開度指令信号S11(S12,S13,S14)の信号値であり、縦軸は、複数の蒸気弁V10(V10_1〜4)を流れる蒸気流量Fを示している。
図6に示すように、蒸気弁V10を流れる蒸気流量Fは、開度指令信号S11の信号値が大きくなるに伴って増加する。
ここでは、開度指令信号S11の信号値が0%から100−α%より少し小さい部分では、蒸気流量Fが開度指令信号S11の信号値に比例して大きくなる。つまり、この部分では、開度指令信号S11に対して蒸気流量Fが増加する割合が一定であって、線形(直線)である。
この一方で、開度指令信号S11の信号値が100−α%の近傍から100%になる部分では、開度指令信号S11と蒸気流量Fとの間に比例関係が成立しない。この部分では、開度指令信号S11の信号値が0%から100−α%より少し小さい部分よりも、蒸気流量Fが増加する割合が小さい。また、この部分は、蒸気流量Fが増加する割合が、開度指令信号S11の増加に伴って減少しており、蒸気流量Fが、ほぼ一定である。
したがって、「調速運転」の場合に、蒸気弁V10の開度を100−α%に制限しても、蒸気流量Fは、ほとんど変化しない。
[B−2]「負荷制限運転」の場合
「負荷制限運転」の場合には、上述したように、負荷要求信号S4(=Xa)が負荷制限信号S5(=Xb)よりも大きい(S4>S5(つまり、Xa>Xb))。このため、低値優先回路6においては、負荷制限信号S5(=Xb)が選択され、その選択された負荷制限信号S5(=Xb)が、出力信号S6として、低値優先回路6から、第1の弁制御部11、第2の弁制御部12,第3の弁制御部13,第4の弁制御部14のそれぞれに出力される(図2,図3参照)。
そして、第1の弁制御部11においては、図2に示すように、低値優先回路6の出力信号S6(=Xb)が、関数発生器111に入力される。関数発生器111では、関数F(S6)を用いて、その低値優先回路6の出力信号S6(=Xb)に対応する開度指令信号S111(Xc=F(Xb))が求められ、低値優先回路115に出力される。
第1の弁制御部11においては、図2に示すように、上記の他に、負荷要求信号S4(=Xa)と負荷制限信号S5(=Xb)とのそれぞれが、比較器112に入力される。そして、比較器112において比較処理が行われ、その比較処理の結果に基づいて、比較器112が出力信号S112を出力する。ここでは、「負荷制限運転」を行うので、負荷要求信号S4(=Xa)の値が負荷制限信号S5(=Xb)の値よりも大きい(S4>S5(Xa>Xb))。このため、この場合には、信号値が1の出力信号S112(High信号)を、比較器112がスイッチ回路113に出力する。
比較器112が出力した出力信号S112の信号値が1である場合(High信号)には、スイッチ回路113は、100+β%の開度指令信号Sbを出力信号S113として変化率制限器114に出力する。その後、変化率制限器114が出力信号S114(=Sb=100+β%)を低値優先回路115に出力する。
そして、図2に示すように、低値優先回路115においては、関数発生器111が出力した開度指令信号S111(=Xc=F(Xb))と、変化率制限器114が出力した出力信号S114(=Sb=100+β%)との間を比較する比較処理が行われる。そして、両者のうち低い方の値が、開度指令信号S11として、第1の蒸気弁V10_1に出力される。
このため、低値優先回路115が出力する開度指令信号S11は、信号値の上限が100+β%になる。したがって、第1の蒸気弁V10_1の開度は、最大開度まで開けられる。
第2の弁制御部12、第3の弁制御部13、第4の弁制御部14のそれぞれにおいても、第1の弁制御部11の場合と同様に演算処理を行い、第2の蒸気弁V10_2、第3の蒸気弁V10_3、第4の蒸気弁V10_4のそれぞれに、開度指令信号S12,S13,S14を出力する(図2,図3参照)。第2の弁制御部12、第3の弁制御部13、第4の弁制御部14のそれぞれが出力する開度指令信号S12,S13,S14のそれぞれも、上記と同様に、信号値の上限が100+β%になる。したがって、第2の蒸気弁V10_2、第3の蒸気弁V10_3、第4の蒸気弁V10_4の開度は、第1の蒸気弁V10_1の場合と同様に、最大開度まで開けられる。
[C]まとめ
以上のように、本実施形態の蒸気タービンシステムにおいては、高圧タービン20と中圧タービン40と低圧タービン50とが、蒸気タービンとして設置されている。また、蒸気タービンシステムは、その蒸気タービンの入口に流入する蒸気の流量を調節する蒸気加減弁V10bとして、複数の蒸気弁V10_1〜4が設置されている。そして、その複数の蒸気弁V10_1〜4を制御する制御部100(蒸気弁制御装置)が設けられている(図1参照)。
制御部100は、低値優先回路6の出力信号S6(=負荷要求信号Xa)等に応じて、開度指令信号S11,S12,S13,S14を、複数の蒸気弁V10_1〜4のそれぞれに出力することによって(図2,図3参照)、蒸気タービンを「絞り調速方式」で運用する。つまり、制御部100は、複数の蒸気弁V10_1〜4のそれぞれが、同時に同じ開度になるように、制御を行う。
本実施形態では、制御部100は、「調速運転」を行うときには、最大開度(100%)よりも小さく制限した制限開度(100−α%)を上限として、複数の蒸気弁V10_1〜4のそれぞれを制御する。
このように、本実施形態において、「調速運転」を行うときには、複数の蒸気弁V10_1〜4において、弁棒27と上蓋22との間に一定のクリアランスがある状態が保持される(図15参照)。このため、本実施形態では、「調速運転」を行う場合において、複数の蒸気弁V10_1〜4が全開の状態で系統周波数が変化し、開度指令信号が周期的に変動するときであっても、弁棒27が上蓋22に繰返して接触することを防止できる。その結果、複数の蒸気弁V10_1〜4において、疲労破壊により割れが発生することを防止できる。
この一方で、「負荷制限運転」を行うときには、制御部100は、複数の蒸気弁V10_1〜4の開度を制限せずに、最大開度(100%)を上限として、制御を行う。複数の蒸気弁V10_1〜4を、最大開度(全開)まで開くことによって、弁棒27が上蓋22に接触した状態が保持され、弁棒27と上蓋22との隙間から蒸気が漏れることを防止できる(図15参照)。その結果、タービンの性能を向上することができる。
本実施形態では、制御部100は、「調速運転」と「負荷制限運転」との間を切り替えるときには、制限開度(100−α%)と最大開度(100%)との間において開度が一定の割合で変化するように、複数の蒸気弁V10_1〜4を制御する。このため、本実施形態においては、複数の蒸気弁V10_1〜4の開度が大きく変化することを防止できる。
したがって、本実施形態においては、蒸気タービンを安定に運転させることできる。
<第2実施形態>
[A]構成
図7,図8は、第2実施形態に係る蒸気タービンシステムにおいて、制御部100について要部を模式的に示す図である。ここでは、図2,図3の場合と同様に、制御部100の詳細構成を、図7と図8とに分けて示している。
本実施形態においては、図7,図8に示すように、制御部100において、第1の弁制御部11と第2の弁制御部12と第3の弁制御部13と第4の弁制御部14とのそれぞれの構成の一部が、第1実施形態の場合と異なる。また、制御部100は、「絞り調速方式」ではなく、「ノズル調速方式」にて運用するように制御する。本実施形態は、この点、および、関連する点を除き、第1実施形態の場合と同様である。このため、本実施形態において、この実施形態と重複する個所については、適宜、記載を省略する。
制御部100において、第1の弁制御部11は、図7に示すように、第1実施形態の場合と同様に、関数発生器111、比較器112(第1比較器)、スイッチ回路113、変化率制限器114、及び、低値優先回路115を備える。この他に、第1実施形態の場合と異なり、第1の弁制御部11は、比較器116(第2比較器)と、取消し回路117と、OR回路118(論理和回路)とを更に有する。
これと同様に、第2の弁制御部12、第3の弁制御部13、および、第4の弁制御部14のそれぞれは、図7,図8に示すように、第1実施形態の場合と同様に、関数発生器121,131,141と、比較器122,132,142と、スイッチ回路123,133,143と、変化率制限器124,134,144と、低値優先回路125,135,145とを備える。この他に、第1実施形態の場合と異なり、第2の弁制御部12、第3の弁制御部13、および、第4の弁制御部14のそれぞれは、第1の弁制御部11の場合と同様に、比較器126,136,146と、取消し回路127,137,147と、OR回路128,138,148とを、更に有する。
また、制御部100は、上記したように、第1実施形態の場合と異なり、「ノズル調速方式」で蒸気タービンを運用する。つまり、制御部100は、蒸気タービンへ供給する蒸気量を増加させるときには、第1の蒸気弁V10_1と、第2の蒸気弁V10_2と、第3の蒸気弁V10_3と、第4の蒸気弁V10_4との順で、弁を開け始めると共に、弁を全開にするように、各部を制御する。
この場合において、制御部100は、「調速運転」を行うときには、複数の蒸気弁V10_1〜4のうち、調速のために開度が調節されるものについては、最大開度(100%)よりも小さく制限した制限開度(100−α%)を上限として、制御を行う。
これに対して、「負荷制限運転」を行うときには、制御部100は、複数の蒸気弁V10_1〜4の開度を制限せずに、最大開度を上限として、制御を行う。
制御部100を構成する各部の詳細について順次説明する。
[A−1]第1の弁制御部11
[A−1−1]比較器116(第2比較器)
第1の弁制御部11のうち、比較器116は、図7に示すように、加算器4が出力した負荷要求信号S4(=Xa)が入力される。
そして、比較器116は、その入力された負荷要求信号S4と、予め設定された閾値THb(=Y1+α1)とを比較する比較処理を行う。そして、比較器116は、その比較処理の結果に応じて、OR回路118に出力信号S116を出力する。
具体的には、負荷要求信号S4(=Xa)の値が、予め設定された閾値THb(=Y1+α1)以下のときには(S4≦THb)、比較器116は、信号値が0の信号(Low信号)を、出力信号S116として出力する。
この一方で、負荷要求信号S4(=Xa)の値が、その閾値THb(=Y1+α1)よりも大きいときには(S4>THb)、比較器116は、信号値が1の信号(High信号)を、出力信号S116として出力する。
[A−1−2]取消し回路117
取消し回路117は、信号値が1の出力信号S116(High信号)を比較器116(第2比較器)が出力しているときには、その信号値が1の出力信号S116を保持し、負荷要求信号S4(=Xa)の値が閾値THa(=Y1)以下に低下した場合(Xa≦Y1)には、その信号値が1である出力信号S116(High信号)を取り消す。
そして、この場合には、取消し回路117は、比較器116(第2比較器)が出力する出力信号S116の信号値を0(Low信号)にする。
[A−1−3]OR回路118
OR回路118は、図7に示すように、比較器112(第1比較器)の出力信号S112と、比較器116(第2比較器)の出力信号S116とのそれぞれが入力される。そして、OR回路118は、論理和演算処理を行い、その演算結果を出力信号S118として出力する。
具体的には、「調速運転」を行うときには、信号値が0である出力信号S112(Low信号)が比較器112(第1比較器)から出力され、OR回路118に入力される。この一方で、「負荷制限運転」を行うときには、信号値が1である出力信号S112(High信号)が比較器112(第1比較器)から出力され、OR回路118に入力される。
上記したように、負荷要求信号S4(=Xa)の値が閾値THb以下のときには(S4≦THb)、信号値が0である出力信号S116(Low信号)が比較器116(第2比較器)から出力され、OR回路118に入力される。この一方で、負荷要求信号S4(=Xa)の値が閾値THbよりも大きいときには(S4>THb)、信号値が1である出力信号S116(High信号)が比較器116(第2比較器)から出力され、OR回路118に入力される。
そして、OR回路118は、比較器112(第1比較器)の出力信号S112と、比較器116(第2比較器)の出力信号S116との少なくとも一方が、信号値が1の信号(High信号)である場合には、信号値が1の出力信号S118(High信号)を出力する。
これに対して、OR回路118は、比較器112(第1比較器)の出力信号S112と、比較器116(第2比較器)の出力信号S116との両者が、信号値が0の信号(Low信号)である場合には、信号値が0の出力信号S118(Low信号)を出力する。
OR回路118の出力信号S118は、スイッチ回路113に入力される。そして、スイッチ回路113においては、そのOR回路118の出力信号S118に基づいて、変化率制限器114に出力信号S113を出力する。そして、変化率制限器114の出力信号が、第1実施形態の場合と同様に、低値優先回路115に入力される。その後、低値優先回路115において、関数発生器111が出力した開度指令信号S111(=Xc)と、変化率制限器114が出力した出力信号S114とのうち、低値が選択され、その選択された値が開度指令信号S11として出力される。そして、第1の蒸気弁V10_1が、その開度指令信号S11に基づいて動作する。
[A−2]第2の弁制御部12,第3の弁制御部13,第4の弁制御部14
第2の弁制御部12,第3の弁制御部13,第4の弁制御部14のそれぞれは、図7,図8に示すように、第1の弁制御部11と同様に構成されている。
第2の弁制御部12は、第1の弁制御部11と同様に、各部において演算処理を行い、第2の蒸気弁V10_2に開度指令信号S12を出力する。そして、第2の蒸気弁V10_2が、その開度指令信号S12に基づいて動作する。
第3の弁制御部13は、第1の弁制御部11と同様に、各部において演算処理を行い、第3の蒸気弁V10_3に開度指令信号S13を出力する。そして、第3の蒸気弁V10_3が、その開度指令信号S13に基づいて動作する。
第4の弁制御部14は、第1の弁制御部11と同様に、各部において演算処理を行い、第4の蒸気弁V10_4に開度指令信号S14を出力する。そして、第4の蒸気弁V10_4が、その開度指令信号S14に基づいて動作する。
本実施形態では、上述したように、「ノズル調速方式」で運用される。このため、蒸気タービンの入口へ供給する蒸気量を増加させるときには、第2の蒸気弁V10_2,第3の蒸気弁V10_3,第4の蒸気弁V10_4のそれぞれは、第1の蒸気弁V10_1が開き始めた後に、開度指令信号S12,S13,S14に応じて、順次、開き始める。また、第2の蒸気弁V10_2,第3の蒸気弁V10_3,第4の蒸気弁V10_4のそれぞれは、第1の蒸気弁V10_1が最大開度(全開)になった後に、順次、最大開度(全開)になる。
[A−3]制御部100の信号について
図9,図10,図11,図12は、第2実施形態に係る蒸気タービンシステムにおいて、制御部100の信号を示す図である。
図9は、第1の弁制御部11で用いられる信号の一部を示している。ここで、図9(a)において、横軸は、低値優先回路6の出力信号S6(=XaまたはXb)の信号値である。縦軸は、第1の弁制御部11を構成する関数発生器111が出力する開度指令信号S111の信号値(実線)と、第1の弁制御部11を構成するスイッチ回路113の出力信号S113の信号値(破線)である。また、図9(b)において、横軸は、低値優先回路6の出力信号S6(=XaまたはXb)の信号値であり、縦軸は、第1の弁制御部11を構成する低値優先回路115が出力する開度指令信号S11の信号値である。
同様に、図10,図11,図12は、第2の弁制御部12,第3の弁制御部13,第4の弁制御部14で用いられる信号の一部を示している。ここで、図10(a),図11(a),図12(a)は、横軸が、低値優先回路6の出力信号S6(=XaまたはXb)の信号値である。縦軸は、第2の弁制御部12,第3の弁制御部13,第4の弁制御部14のそれぞれを構成する関数発生器121,131,141の出力信号S121,S131,S141の信号値(実線)と、スイッチ回路123,133,143の出力信号S123,S133,S143の信号値(破線)である。また、図10(b),図11(b),図12(b)は、横軸が、低値優先回路6の出力信号S6(=XaまたはXb)の信号値であり、縦軸が、第2の弁制御部12,第3の弁制御部13,第4の弁制御部14のそれぞれを構成する低値優先回路125,135,145が出力する開度指令信号S12,S13,S14の信号値である。
図9〜図12においては、第1から第4の弁制御部11〜14の関数発生器111,121,131,141で用いる関数F1(S6)〜F4(S6)を示している。また、第1から第4の弁制御部11〜14の比較器116,126,136,146が比較処理のときに用いる閾値THb(=Y1+α1,Y2+α2,Y3+α3,Y4+α4)を示している。これと共に、第1から第4の弁制御部11〜14の取消し回路117,127,137,147が動作するときに用いる閾値THa(=Y1,Y2,Y3,Y4)を示している。
[A−3−1]関数発生器111,121,131,141が用いる関数F1(S6)〜F4(S6)について
関数F1(S6)〜F4(S6)は、図9(a)〜図12(a)に示すように、低値優先回路6の出力信号S6の信号値の増加に伴って、開度指令信号S111(=Xc),S121(=Xd),S131(=Xe),S141(=Xf)の信号値が増加する部分を含むように設定されている。
ここでは、低値優先回路6の出力信号S6のうち、開度指令信号S111,S121,S131,S141の信号値が0%よりも大きくなる出力信号S6の信号値Y1s,Y2s,Y3s,Y4sは、第1から第4の弁制御部11〜14の順で大きくなっている。また、低値優先回路6の出力信号S6のうち、開度指令信号S111,S121,S131,S141の信号値が100%よりも大きくなる出力信号S6の信号値(図示省略)は、第1から第4の弁制御部11〜14の順で大きくなっている。
具体的には、図9(a)に示すように、第1の弁制御部11の関数発生器111で用いられる関数F1(S6)は、出力信号S6の信号値が0(=Y1s)から増加するに伴って、開度指令信号S111(=Xc)の信号値が大きくなるように設定されている。そして、低値優先回路6の出力信号S6の信号値が閾値THa(=Y1)よりも大きな値になったときに、開度指令信号S111(=Xc)の信号値が100%になる。そして、さらに出力信号S6の信号値が大きくなった場合には、その信号値の増加に関わらずに、開度指令信号S111(=Xc)の信号値が100%で一定になる。
図10(a)に示すように、第2の弁制御部12の関数発生器121が用いる関数F2(S6)は、低値優先回路6の出力信号S6が、所定の信号値Y2s(>0)未満のときには、開度指令信号S121(=Xd)の信号値が0になるように設定されている。そして、低値優先回路6の出力信号S6が、その所定の信号値Y2s以上に増加するに伴って、開度指令信号S121(=Xd)の信号値が大きくなる。そして、低値優先回路6の出力信号S6の信号値が閾値THa(=Y2>Y2s)よりも大きな値になったときに、開度指令信号S121(=Xd)の信号値が100%になる。そして、さらに出力信号S6の信号値が大きくなった場合には、その信号値の増加に関わらずに、開度指令信号S121(=Xd)の信号値が100%で一定になる。
図11(a)に示すように、第3の弁制御部13の関数発生器131が用いる関数F3(S6)は、低値優先回路6の出力信号S6が、所定の信号値Y3s(>Y2s)未満のときには、開度指令信号S131(=Xe)の信号値が0になるように設定されている。そして、低値優先回路6の出力信号S6が、その所定の信号値Y3s以上に増加するに伴って、開度指令信号S131(=Xe)の信号値が大きくなる。そして、低値優先回路6の出力信号S6の信号値が閾値THa(=Y3>Y3s)よりも大きな値になったときに、開度指令信号S131(=Xe)の信号値が100%になる。そして、さらに出力信号S6の信号値が大きくなった場合には、その信号値の増加に関わらずに、開度指令信号S131(=Xe)の信号値が100%で一定になる。
図12(a)に示すように、第4の弁制御部14の関数発生器141が用いる関数F4(S6)は、低値優先回路6の出力信号S6が、所定の信号値Y4s(>Y3s)未満のときには、開度指令信号S141(=Xf)の信号値が0になるように設定されている。そして、低値優先回路6の出力信号S6が、その所定の信号値Y4s以上に増加するに伴って、開度指令信号S141(=Xf)の信号値が大きくなる。そして、低値優先回路6の出力信号S6の信号値が閾値THa(=Y4>Y4s)よりも大きな値になったときに、開度指令信号S141(=Xf)の信号値が100%になる。そして、さらに出力信号S6の信号値が大きくなった場合には、その信号値の増加に関わらずに、開度指令信号S141(=Xf)の信号値が100%で一定になる。
[A−3−2]比較器116,126,136,146の閾値THb(=Y1+α1,Y2+α2,Y3+α3,Y4+α4)について
第1から第4の弁制御部11〜14のそれぞれにおいて、比較器116,126,136,146が比較処理のときに用いる閾値THb(=Y1+α1,Y2+α2,Y3+α3,Y4+α4)は、図9〜図12に示すように、第1から第4の弁制御部11〜14の順で、大きくなるように設定されている。
具体的には、第2の弁制御部12の比較器126が比較処理のときに用いる閾値THb(=Y2+α2)は、第1の弁制御部11の比較器116が用いる閾値THb(=Y1+α1)よりも大きい。第3の弁制御部13の比較器136が比較処理のときに用いる閾値THb(=Y3+α3)は、第2の弁制御部12の比較器126が用いる閾値THb(=Y2+α2)よりも大きい。第4の弁制御部14の比較器146が比較処理のときに用いる閾値THb(=Y4+α4)は、第3の弁制御部13の比較器136が用いる閾値THb(=Y3+α3)よりも大きい(つまり、Y1+α1>Y2+α2>Y3+α3>Y4+α4)。
[A−3−3]取消し回路117,127,137,147の閾値THa(=Y1,Y2,Y3,Y4)について
第1から第4の弁制御部11〜14のそれぞれにおいて、取消し回路117,127,137,147が動作するときに用いる閾値THa(=Y1,Y2,Y3,Y4)は、図9〜図12に示すように、第1から第4の弁制御部11〜14の順で、大きくなるように設定されている。
具体的には、第2の弁制御部12の取消し回路127が動作するときに用いる閾値THa(=Y2)は、第1の弁制御部11の取消し回路117が用いる閾値THa(=Y1)よりも大きい。第3の弁制御部13の取消し回路137が動作するときに用いる閾値THa(=Y3)は、第2の弁制御部12の取消し回路127が用いる閾値THa(=Y2)よりも大きい。第4の弁制御部14の取消し回路147が動作するときに用いる閾値THa(=Y4)は、第3の弁制御部13の取消し回路137が用いる閾値THa(=Y3)よりも大きい(つまり、Y1>Y2>Y3>Y4)。
取消し回路117,127,137,147が動作するときに用いる閾値THa(Y1,Y2,Y3,Y4)は、第1から第4の蒸気弁V10_1〜4のそれぞれが、全開(100%)に対して、たとえば、5〜10%程度小さい開度(90〜95%)にするときの値に相当する。
また、第1から第4の弁制御部11,12,13,14のそれぞれにおいて、取消し回路117,127,137,147が動作するときに用いる閾値THaは、比較器116,126,136,146が比較処理のときに用いる閾値THbよりも小さい(THa<THb)。このため、比較器116,126,136,146が比較処理のときに用いる閾値THbは、取消し回路117,127,137,147が動作するときに用いる閾値THa(=Y1,Y2,Y3,Y4)に対して、たとえば、5〜15%程度の所定値(=α1,α2,α3,α4)を加算した値に相当する。
[C]動作
上記の蒸気タービンシステムの動作について示す。
ここでは、上記の図9,図10,図11,図12と共に、図7,図8を参照し、「ノズル調速方式」で蒸気タービンを運用するときの制御部100の動作に関して、「調速運転」の場合と「負荷制限運転」の場合とに分けて説明を行う。
[C−1]「調速運転」の場合
「調速運転」の場合には、上述したように、負荷要求信号S4(=Xa)が負荷制限信号S5(=Xb)以下である(S4≦S5(つまり、Xa≦Xb))。このため、低値優先回路6においては、負荷設定信号S4(=Xa)が選択されて、出力信号S6として、低値優先回路6から、第1の弁制御部11、第2の弁制御部12,第3の弁制御部13,第4の弁制御部14のそれぞれに出力される(図7,図8参照)。そして、第1の弁制御部11、第2の弁制御部12,第3の弁制御部13,第4の弁制御部14のそれぞれにおいて演算処理が行われて、各部から開度指令信号S11,S12,S13,S14が出力される。
[C−1−1]第1の弁制御部11の動作
第1の弁制御部11においては、図7に示すように、第1実施形態の場合と同様に、低値優先回路6の出力信号S6(=Xa)が、関数発生器111に入力される。関数発生器111では、関数F1(S6)を用いて、その低値優先回路6の出力信号S6(=Xa)に対応する開度指令信号S111(=Xc=F1(Xa))が求められ(図9(a)参照)、低値優先回路115に出力される。
また、図7に示すように、負荷要求信号S4(=Xa)と負荷制限信号S5(=Xb)とのそれぞれが、比較器112(第1比較器)に入力される。そして、比較器112において比較処理が行われ、その比較処理の結果に基づいて、比較器112から出力信号S112が出力される。ここでは、「調速運転」を行うので、負荷要求信号S4(=Xa)の値が負荷制限信号S5(=Xb)の値以下である(S4≦S5(つまり、Xa≦Xb))。このため、この場合には、信号値が0の出力信号S112(Low信号)が比較器112からOR回路118に出力される。
これと共に、第1の弁制御部11では、図7に示すように、第1実施形態の場合と異なり、加算器4が出力した負荷要求信号S4(=Xa)が比較器116(第2比較器)に入力される。そして、比較器116においては、その入力された負荷要求信号S4と、予め設定された閾値THb(=Y1+α1)とを比較する比較処理が行なわれる(図9参照)。そして、その比較処理の結果に応じて、比較器116がOR回路118に出力信号S116を出力する。
ここでは、負荷要求信号S4(=Xa)の値が閾値THb(=Y1+α1)以下のときには(S4≦THb)、信号値が0である出力信号S116(Low信号)を、比較器116がOR回路118に出力する。この一方で、負荷要求信号S4(=Xa)の値が閾値THb(=Y1+α1)よりも大きいときには(S4>THb)、信号値が1である出力信号S116(High信号)を、比較器116がOR回路118に出力する。
OR回路118においては、図7に示すように、比較器112(第1比較器)の出力信号S112と、比較器116(第2比較器)の出力信号S116とについて論理和演算処理を行い、その演算結果を出力信号S118として出力する。
具体的には、比較器112(第1比較器)の出力信号S112と、比較器116(第2比較器)の出力信号S116との少なくとも一方の信号値が1である場合には、信号値が1の出力信号S118(High信号)を、OR回路118が出力する。これに対して、比較器112(第1比較器)の出力信号S112と、比較器116(第2比較器)の出力信号S116との両者について信号値が0である場合には、信号値が0の出力信号S118(Low信号)を、OR回路118が出力する。
ここでは、「調速運転」を行うため、上述したように、信号値が0である出力信号S112(Low信号)が比較器112(第1比較器)からOR回路118に入力される。このため、比較器116(第2比較器)が出力する出力信号S116の信号値が1(High信号)の場合には、信号値が1の出力信号S118(High信号)を、OR回路118が出力する。一方で、比較器116(第2比較器)が出力する出力信号S116の信号値が0(Low信号)の場合には、信号値が0の出力信号S118(Low信号)を、OR回路118が出力する。
OR回路118が出力した出力信号S118の信号値が0(Low信号)である場合には、100−α%の開度指令信号Saが出力信号S113としてスイッチ回路113から変化率制限器114に出力される。そして、変化率制限器114から出力信号S114(=Sa=100−α%)が、低値優先回路115に出力される。これに対して、OR回路118が出力した出力信号S118の信号値が1(High信号)である場合には、100+β%の開度指令信号Sbが出力信号S113としてスイッチ回路113から変化率制限器114に出力される。そして、変化率制限器114から出力信号S114(=Sb=100+β%)が、低値優先回路115に出力される。
そして、図7に示すように、低値優先回路115においては、関数発生器111が出力した開度指令信号S111(=Xc=F(Xa))と、変化率制限器114が出力した出力信号S114(=SaまたはSb)とを比較する比較処理が行われる。そして、両者のうち低値が開度指令信号S11として第1の蒸気弁V10_1に出力される。
変化率制限器114の出力信号S114(=SaまたはSb)は、スイッチ回路113の出力信号S113が切り替わったときを除いて、スイッチ回路113の出力信号S113と同じである(図5参照)。このため、図9(a)に示すように、スイッチ回路113の出力信号S113(破線)と、関数発生器111が出力した開度指令信号S111(太い実線)とを比較して低い方の値が、図9(b)に示すように、開度指令信号S11として低値優先回路115から出力される。
具体的には、図9に示すように、低値優先回路6の出力信号S6(=負荷要求信号Xa)が、第1の蒸気弁V10_を全閉(0%)にする信号値Y1sから、全開(100%)にする信号値よりも大きい閾値THb(=Y1+α1)以下までの範囲(0≦Xa≦THb)において増加する場合には、最大開度(100%)よりも小さく制限した制限開度(100−α%)を上限とするように、開度指令信号S11が出力される。
ここでは、図9(a)に示すように、低値優先回路6が出力した出力信号S6(=Xa)の信号値が閾値THa(=Y1)より小さい場合には、スイッチ回路113の出力信号S113(=Sa=100−α%)よりも、関数発生器111が出力した開度指令信号S111の方が低値である。このため、図9(b)に示すように、関数発生器111が出力した開度指令信号S111と同じ信号が、低値優先回路115から開度指令信号S11として出力される。この場合には、低値優先回路6の出力信号S6の信号値の増加に応じて、低値優先回路115が出力する開度指令信号S11の信号値が増加するように、開度指令信号S11の出力が行われる。その結果、第1の蒸気弁V10_1は、低値優先回路115が出力する開度指令信号S11の信号値に応じて、全て閉められた状態(全閉=0%)から、最大開度よりも小さく制限された制限開度(100−α%)の間において、開度が調整される。
図9(a)に示すように、低値優先回路6が出力した出力信号S6の信号値が、閾値THa(=Y1)よりも小さい状態から増加して、その閾値THa(=Y1)よりも大きい閾値THb(=Y1+α1)未満になった場合には、関数発生器111が出力した開度指令信号S111よりも、スイッチ回路113の出力信号S113(=Sa=100−α)の方が低値である。このため、図9(b)に示すように、スイッチ回路113の出力信号S113(=Sa=100−α)と同じ信号が低値優先回路115から開度指令信号S11として出力される。この場合には、低値優先回路6が出力する出力信号S6の信号値の増加に関わらずに、低値優先回路115が出力する開度指令信号S11の信号値が、100−α%の一定値になるように、開度指令信号S11の出力が行われる。その結果、第1の蒸気弁V10_1は、最大開度(全開=100%)ではなく、最大開度よりも小さく制限された制限開度(100−α%)になるように調整される。
これに対して、図9(a)に示すように、低値優先回路6の出力信号S6(=Xa)が閾値THb(=Y1+α1)を超えた場合(Xa>Thb)には、スイッチ回路113の出力信号S113(=Sb=100+β)よりも、関数発生器111が出力した開度指令信号S111の方が低値である。このため、図9(b)に示すように、関数発生器111が出力した開度指令信号S111と同じ信号が、低値優先回路115から開度指令信号S11として出力される。この場合には、低値優先回路6が出力する出力信号S6の信号値の増加に関わらずに、低値優先回路115が出力する開度指令信号S11の信号値が、100%の一定値になるように、開度指令信号S11の出力が行われる。その結果、第1の蒸気弁V10_1は、最大開度(全開=100%)になるように調整される。
この他に、本実施形態では、上記したように、信号値が1の出力信号S116(High信号)を比較器116(第2比較器)が出力しているときには、取消し回路117が、その信号値が1の出力信号S116を保持し、負荷要求信号S4(=Xa)の値が閾値THa(THa=Y1)以下に低下した場合には、その信号値が1である出力信号S116(High信号)を取り消す。そして、この場合には、取消し回路117は、比較器116(第2比較器)が出力する出力信号S116の信号値を0(Low信号)にする。
この動作により、図9(a)に示すように、低値優先回路6の出力信号S6が閾値THbを超えた状態から閾値THb以下に低下した場合であっても、スイッチ回路113の出力信号S113(=Sb=100+β)よりも、関数発生器111が出力した開度指令信号S111の方が低値の状態になる。このため、図9(b)に示すように、関数発生器111が出力した開度指令信号S111と同じ信号が、低値優先回路115から開度指令信号S11として出力される。この場合には、低値優先回路6が出力する出力信号S6の信号値の低下に関わらずに、低値優先回路115が出力する開度指令信号S11の信号値が、100%の一定値になるように、開度指令信号S11の出力が行われる。その結果、第1の蒸気弁V10_1は、最大開度(全開)になるように調整される。
そして、図9(a)に示すように、低値優先回路6の出力信号S6が、その閾値THbよりも更に低下して閾値THa以下になった場合には、スイッチ回路113の出力信号S113(=Sa=100−α)よりも、関数発生器111が出力した開度指令信号S111の方が低値になる。このため、図9(b)に示すように、関数発生器111が出力した開度指令信号S111と同じ信号が、低値優先回路115から開度指令信号S11として出力される。この場合には、低値優先回路6の出力信号S6の信号値の低下に応じて、低値優先回路115が出力する開度指令信号S11の信号値が低下するように、開度指令信号S11の出力が行われる。その結果、第1の蒸気弁V10_1は、低値優先回路115が出力する開度指令信号S11の信号値に応じて、最大開度に開けられた状態(全開)から、全て閉められた状態(全閉)の間において、開度が調整される。
[C−1−2]第2の弁制御部12、第3の弁制御部13、第4の弁制御部14の動作
第2の弁制御部12、第3の弁制御部13、第4の弁制御部14のそれぞれにおいても、第1の弁制御部11の場合と同様に、演算処理が行われる。
そして、第2の蒸気弁V10_2、第3の蒸気弁V10_3、第4の蒸気弁V10_4のそれぞれに、開度指令信号S12,S13,S14が出力される(図7,図8,図10,図11,図12参照)。
[C−1−3]第1から第4の蒸気弁V10_1〜4の動作
第1から第4の蒸気弁V10_1〜4のそれぞれは、図7,図8に示すように、第1から第4の弁制御部11〜14のそれぞれから出力された開度指令信号S11〜S14の信号値に対応する開度に調整される。ここでは、図9(b),図10(b),図11(b),図12(b)に示す開度指令信号S11,S12,S13,S14のそれぞれに応じて、第1から第4の蒸気弁V10_1〜4のそれぞれの開度が調節される。
[C−1−3−1]開度指令信号S11〜S14の信号値が増加する場合の動作(開動作)
図9(b),図10(b),図11(b),図12(b)に示すように、開度指令信号S11,S12,S13,S14の各信号値は、低値優先回路6の出力信号S6(=Xa(負荷要求信号))が増加するに伴って、第1の弁制御部11,第2の弁制御部12,第3の弁制御部13,第4の弁制御部14の順で、0%よりも大きな値になる。このため、第1から第4の蒸気弁V10_1〜4のそれぞれは、第1の蒸気弁V10_1、第2の蒸気弁V10_2、第3の蒸気弁V10_3、第4の蒸気弁V10_4の順で、弁が開けられる。
また、開度指令信号S11,S12,S13,S14の各信号値は、低値優先回路6の出力信号S6が増加するに伴って、第1の弁制御部11,第2の弁制御部12,第3の弁制御部13,第4の弁制御部14の順で、100%の値になる。このため、第1から第4の蒸気弁V10_1〜4のそれぞれは、第1の蒸気弁V10_1、第2の蒸気弁V10_2、第3の蒸気弁V10_3、第4の蒸気弁V10_4の順で、弁が全開になる。
低値優先回路6の出力信号S6が閾値THb以下のときには、開度指令信号S11,S12,S13,S14の各信号値は、100−α%以下である。このため、この場合には、第1から第4の蒸気弁V10_1〜4のそれぞれは、最大開度(全開)よりも小さく制限した制限開度(100−α%)を上限として制御される。
その後、低値優先回路6の出力信号S6が閾値THbを超えたときには、開度指令信号S11,S12,S13,S14の各信号値は、100%になる。このため、この場合には、第1から第4の蒸気弁V10_1〜4のそれぞれは、最大開度(全開)になる。
図13は、第2実施形態に係る蒸気タービンシステムにおいて、第1から第4の蒸気弁V10_1〜4の開度と、低値優先回路6の出力信号S6(=Xa(負荷要求信号))との関係を示す図である。図13では、第1から第4の蒸気弁V10_1〜4のそれぞれを開けるときの動作(開動作)について示している。
図13において、横軸は、低値優先回路6の出力信号S6(=Xa)の信号値であり、縦軸は、第1から第4の蒸気弁V10_1〜4の開度である。図13は、図9(b),図10(b),図11(b),図12(b)に示す開度指令信号S11〜S14において、信号値が増加する場合について、重複させたものに相当する。
図13に示すように、低値優先回路6の出力信号S6(負荷要求信号Xa)が増加するに伴って、第1の蒸気弁V10_1、第2の蒸気弁V10_2、第3の蒸気弁V10_3、第4の蒸気弁V10_4の順で開けられた後に、最大開度(全開)になる。
第1の蒸気弁V10_1は、図13に示すように、低値優先回路6の出力信号S6(負荷要求信号)が閾値THb(=Y1+α1)になるまでは、最大開度よりも小さく制限された制限開度(100−α%)を上限として制御される。そして、第1の蒸気弁V10_1は、閾値THb(=Y1+α1)を超えたときに、最大開度(全開)になる。
第2の蒸気弁V10_2は、図13に示すように、第1の蒸気弁V10_1の次に開けられ、低値優先回路6の出力信号S6(負荷要求信号)が閾値THb(=Y2+α2)になるまでは、最大開度よりも小さく制限された制限開度(100−α%)を上限として制御される。そして、第2の蒸気弁V10_2は、閾値THb(=Y2+α2)を超えたときに、第1の蒸気弁V10_1に次いで、最大開度(全開)になる。
第3の蒸気弁V10_3は、図13に示すように、第2の蒸気弁V10_2の次に開けられ、低値優先回路6の出力信号S6(負荷要求信号)が閾値THb(=Y3+α3)になるまでは、最大開度よりも小さく制限された制限開度(100−α%)を上限として制御される。そして、第3の蒸気弁V10_3は、閾値THb(=Y3+α3)を超えたときに、第2の蒸気弁V10_2に次いで、最大開度(全開)になる。
第4の蒸気弁V10_4は、図13に示すように、第3の蒸気弁V10_3の次に開けられ、低値優先回路6の出力信号S6(負荷要求信号)が閾値THb(=Y4+α4)になるまでは、最大開度よりも小さく制限された制限開度(100−α%)を上限として制御される。そして、第4の蒸気弁V10_4は、閾値THb(=Y4+α4)を超えたときに、第3の蒸気弁V10_3に次いで、最大開度(全開)になる。
[C−1−3−2]開度指令信号S11〜S14の信号値が100%になった後に低下する場合の動作(閉動作)
図9(b),図10(b),図11(b),図12(b)に示すように、開度指令信号S11,S12,S13,S14の各信号値が、一旦、100%になった後には、低値優先回路6の出力信号S6が上記の閾値THbよりも低い閾値THaに低下するまで、開度指令信号S11,S12,S13,S14の各信号値は、100%を保持される。このため、この場合には、第1から第4の蒸気弁V10_1〜4のそれぞれは、最大開度(全開)で保持される。
そして、低値優先回路6の出力信号S6が、その閾値THaよりも小さくなったときには、開度指令信号S11,S12,S13,S14の各信号値は、100%の値の状態から、関数F1(S6),F2(S6),F3(S6),F4(S6)を用いて求められた値に低下する。そして、第1から第4の蒸気弁V10_1〜4のそれぞれは、その低値優先回路6の出力信号S6に応じた開度に調整される。
つまり、低値優先回路6の出力信号S6が低下する場合には、低値優先回路6の出力信号S6が増加する場合と異なり、第1から第4の蒸気弁V10_1〜4を、最大開度よりも小さい制限開度に制限せずに、通常の「調速運転」と同様に、最大開度まで開ける。
図14は、第2実施形態に係る蒸気タービンシステムにおいて、第1から第4の蒸気弁V10_1〜4の開度と、低値優先回路6の出力信号S6(=Xa(負荷要求信号))との関係を示す図である。図14では、第1から第4の蒸気弁V10_1〜4のそれぞれを閉めるときの動作(閉動作)について示している。
図14において、横軸は、図13と同様に、低値優先回路6の出力信号S6(=Xa)の信号値であり、縦軸は、第1から第4の蒸気弁V10_1〜4の開度である。図14は、図9(b),図10(b),図11(b),図12(b)に示す開度指令信号S11〜S14において、信号値が低下する場合について、重複させたものに相当する。
図14に示すように、低値優先回路6の出力信号S6(負荷要求信号Xa)が低下するに伴って、第4の蒸気弁V10_4、第3の蒸気弁V10_3、第2の蒸気弁V10_2、第1の蒸気弁V10_1の順で全開から閉められた後に、全閉になる。
第4の蒸気弁V10_4は、図14に示すように、低値優先回路6の出力信号S6(負荷要求信号)が閾値THa(=Y4)になるまでは、最大開度(100%)に制御される。そして、第4の蒸気弁V10_4は、その閾値THa(=Y4)よりも低下したときに、弁が閉まり始めて全閉になる。
第3の蒸気弁V10_3は、図14に示すように、低値優先回路6の出力信号S6(負荷要求信号)が閾値THa(=Y3)になるまでは、最大開度(100%)に制御される。そして、第3の蒸気弁V10_3は、第4の蒸気弁V10_4の次に閉められる。ここでは、第3の蒸気弁V10_3は、閾値THa(=Y3)よりも低下したときに、弁が閉まり始めて全閉になる。
第2の蒸気弁V10_2は、図14に示すように、低値優先回路6の出力信号S6(負荷要求信号)が閾値THa(=Y2)になるまでは、最大開度(100%)に制御される。そして、第2の蒸気弁V10_2は、第3の蒸気弁V10_3の次に閉められる。ここでは、第2の蒸気弁V10_2は、閾値THa(=Y2)よりも低下したときに、弁が閉まり始めて全閉になる。
第1の蒸気弁V10_1は、図14に示すように、低値優先回路6の出力信号S6(負荷要求信号)が閾値THa(=Y1)になるまでは、最大開度(100%)に制御される。そして、第1の蒸気弁V10_1は、第2の蒸気弁V10_2の次に閉められる。ここでは、第3の蒸気弁V10_3は、閾値THa(=Y1)よりも低下したときに、弁が閉まり始めて全閉になる。
このように、低値優先回路6の出力信号S6において、全開位置へ弁を開く「開動作」を開始するときの信号値は、閾値THbである。一方で、低値優先回路6の出力信号S6において、全開位置から弁を閉める「閉動作」を開始するときの信号値は、全開位置へ弁を開く「開動作」を開始するときの信号値(閾値THb)よりも低い閾値THaである。全開位置への「開動作」を開始する開始点と、全開位置から「閉動作」を開始するときの開始点とが異なっている。
[B−2]「負荷制限運転」の場合
「負荷制限運転」の場合には、上述したように、負荷要求信号S4(=Xa)が負荷制限信号S5(=Xb)よりも大きい(S4>S5(つまり、Xa>Xb))。このため、低値優先回路6においては、負荷制限信号S5(=Xb)が選択され、その選択された負荷制限信号S5(=Xb)が、出力信号S6として、低値優先回路6から、第1の弁制御部11、第2の弁制御部12,第3の弁制御部13,第4の弁制御部14のそれぞれに出力される(図7,図8参照)。そして、第1の弁制御部11、第2の弁制御部12,第3の弁制御部13,第4の弁制御部14のそれぞれにおいて演算処理が行われて、各部から開度指令信号S11,S12,S13,S14が出力される。
第1の弁制御部11においては、図7に示すように、低値優先回路6から出力された出力信号S6(=Xb)が、関数発生器111に入力される。関数発生器111では、関数F1(S6)を用いて、その低値優先回路6が出力した出力信号S6(=Xb)に対応する開度指令信号S111(Xc=F1(Xb))が求められ、低値優先回路115に出力される。
第1の弁制御部11においては、図7に示すように、上記の他に、負荷要求信号S4(=Xa)と負荷制限信号S5(=Xb)とのそれぞれが、比較器112(第1比較器)に入力される。そして、比較器112において比較処理が行われ、その比較処理の結果に基づいて、比較器112から出力信号S112が出力される。ここでは、「負荷制限運転」を行うので、負荷要求信号S4(=Xa)の値が負荷制限信号S5(=Xb)の値よりも大きい(S4>S5(Xa>Xb))。このため、この場合には、信号値が1の出力信号S112(High信号)が、比較器112からOR回路112に出力される。
図7に示すように、OR回路118においては、比較器112(第1比較器)の出力信号S112が入力される他に、比較器116(第2比較器)の出力信号S116が入力される。比較器112(第1比較器)の出力信号S112は、上記のように、信号値が1の信号(High信号)である。このため、OR回路118は、信号値が1の出力信号S118(High信号)をスイッチ回路113に出力する。
OR回路118の出力信号S118の信号値が1であるので、スイッチ回路113は、100+β%の開度指令信号Sbを出力信号S113として変化率制限器114に出力する。その後、変化率制限器114が低値優先回路115に出力信号S114(=Sb=100+β%)を出力する。
そして、低値優先回路115において、関数発生器111が出力した開度指令信号S111(=Xc=F(Xb))と、変化率制限器114が出力した出力信号S114(=Sb=100+β%)との間を比較する比較処理が行われる。そして、両者のうち低い方の値が開度指令信号S11として第1の蒸気弁V10_1に出力される。
このため、低値優先回路115が出力する開度指令信号S11は、図9(a)に示すように、100+β%以下になり、具体的には、図9(b)に示すように、信号値の上限が100%になる。したがって、第1の蒸気弁V10_1の開度は、最大開度(100%)まで開けられる。
第2の弁制御部12、第3の弁制御部13、第4の弁制御部14のそれぞれにおいても、第1の弁制御部11の場合と同様に演算処理を行い、第2の蒸気弁V10_2、第3の蒸気弁V10_3、第4の蒸気弁V10_4のそれぞれに、開度指令信号S12,S13,S14を出力する(図7,図8参照)。第2の弁制御部12、第3の弁制御部13、第4の弁制御部14のそれぞれが出力する開度指令信号S12,S13,S14のそれぞれも、上記と同様に、信号値の上限が100%になる。したがって、第2の蒸気弁V10_2、第3の蒸気弁V10_3、第4の蒸気弁V10_4の開度は、第1の蒸気弁V10_1の場合と同様に、最大開度まで開けられる。
[C]まとめ
以上のように、本実施形態の蒸気タービンシステムにおいて、制御部100は、「ノズル調速方式」での運用を行う。制御部100は、低値優先回路6の出力信号S6(=負荷要求信号Xa)等に応じて、開度指令信号S11,S12,S13を複数の蒸気弁V10_1〜4のそれぞれに出力することによって、複数の蒸気弁V10_1〜4のそれぞれが、順に、開き始めて最大開度(全開)になるように制御を行う。
本実施形態において、制御部100は、「調速運転」を行うときには、複数の蒸気弁V10_1〜4のうち、調速のために開度が調節されるものについては、最大開度(100%)よりも小さく制限した制限開度(100−α%)を上限として、制御を行う。
具体的には、低値優先回路6の出力信号S6(=負荷要求信号Xa)が、複数の蒸気弁V10_1〜4を全閉にする信号値から、全開にする信号値よりも大きい閾値THb(=Y1+α1,Y2+α2,Y3+α3,Y4+α4)以下までの範囲(0≦Xa≦THb)において増加する場合には、制御部100は、最大開度(100%)よりも小さく制限した制限開度(100−α%)を上限とするように、開度指令信号S11,S12,S13,S14を出力して、複数の蒸気弁V10_1〜4のそれぞれを制御する(図9〜図12参照)。
低値優先回路6の出力信号S6(=負荷要求信号Xa)が、閾値THb(=Y1+α1,Y2+α2,Y3+α3,Y4+α4)を超えた範囲(Xa>THb)の場合には、制御部100は、制限開度(100−α%)を上限として制限せずに、最大開度(100%)になるように、開度指令信号S11,S12,S13を出力して、複数の蒸気弁V10_1〜4のそれぞれを制御する(図9〜図12参照)。
低値優先回路6の出力信号S6(=負荷要求信号Xa)が、閾値THb(=Y1+α1,Y2+α2,Y3+α3,Y4+α4)を超えた状態から、その閾値THb以下であって、複数の蒸気弁V10_1〜4が全開になる信号値よりも小さい閾値THa(=Y1,Y2,Y3,Y4)の間の範囲(THa<Xa≦THb)に低下した場合には、制御部100は、最大開度(100%)を保持するように、複数の蒸気弁V10_1〜4のそれぞれを制御する(図9〜図12参照)。
そして、低値優先回路6の出力信号S6(=負荷要求信号Xa)が、その閾値THa(=Y1,Y2,Y3,Y4)以下の範囲(THa<Xa≦THb)に低下した場合には、複数の蒸気弁V10_1〜4のそれぞれを、通常通りに、低値優先回路6の出力信号S6(=負荷要求信号Xa)の信号値に応じて開度に制御する(図9〜図12参照)。
このため、「調速運転」において、系統周波数が変化し開度指令信号S11〜S14が周期的に変動するときであっても、弁棒27が上蓋22に繰返して接触することを防止できる(図15参照)。その結果、複数の蒸気弁V10_1〜4において、疲労破壊により割れが発生することを防止できる。
これに対して、「負荷制限運転」を行うときには、制御部100は、複数の蒸気弁V10_1〜4の開度を制限せずに、最大開度を上限として、制御を行う。このため、全開位置において弁棒27が上蓋22に接触した状態が保持され、弁棒27と上蓋22との隙間から蒸気が漏れることを防止できる(図15参照)。その結果、タービンの性能を向上することができる。
したがって、本実施形態においては、蒸気タービンを安定に運転させることできる。
<その他>
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。