以下、添付図面を参照し、本発明の外壁検査装置および外壁検査システムを説明する。
本発明の外壁検査装置1は、図1に示されるように、壁面W上を移動するように構成され、検査対象とする箇所まで移動して壁面Wを検査する。本発明の外壁検査装置1の適用範囲は特に限定されるものではないが、たとえば、学校、ホテル、共同住宅などの建築物の外壁検査だけでなく、橋梁、トンネル、高架道路などの構造物の外壁検査にも用いることも可能である。
本発明の外壁検査装置1は、図2および図3に示されるように、壁面Wを検査するための検査装置Tと、壁面Wに対して吸着離脱可能な複数の吸着機構S1、S2がそれぞれ取り付けられた第1の移動部材P1および第2の移動部材P2と、第1の移動部材P1および第2の移動部材P2に接続され、第1の移動部材P1および第2の移動部材P2を駆動する駆動機構Dとを有している。第1および第2の移動部材P1、P2に取り付けられた吸着機構S1、S2の両方が壁面Wに対して吸着することによって、外壁検査装置1は壁面Wに安定して保持される。また、詳細は後述するが、第1および第2の移動部材P1、P2に取り付けられた吸着機構S1、S2のいずれか一方が壁面Wから離脱して、離脱した吸着機構S1、S2が取り付けられた第1および第2の移動部材P1、P2の一方が、駆動機構Dにより駆動されることにより、壁面W上を移動する。そして、吸着機構S1、S2が交互に吸着と離脱を繰り返し、第1および第2の移動部材P1、P2が交互に駆動されることにより、外壁検査装置1は検査対象箇所まで自在に移動することができる。
検査装置Tとしては、本実施形態では、図2および図3に示されるように、CCDカメラが第2の移動部材P2に設置され、レンズが壁面Wに向けられ、壁面Wの状態を撮像し、壁面Wに近接した位置で検査ができるように構成されている。また、検査装置Tは、図示しないインターフェースを介してパーソナルコンピュータと接続され、遠隔で操作することができるように構成されている。ここで、本実施形態では、検査装置TとしてCCDカメラを用いているが、検査装置Tの目的は、外壁のタイル、モルタル、コンクリート等の浮き、剥離等の有無を検査することであるので、そのような目的を達成できる、ハンマー、超音波、レーダーなどを用いた他の検査装置であってもよく、特にCCDカメラに限定されない。
第1および第2の移動部材P1、P2は、駆動機構Dからの駆動力により移動する部材である。また、吸着機構S1、S2、検査装置Tなど、外壁検査装置1に必要な部材を支持する支持体としても機能する。本実施形態では、第1および第2の移動部材P1、P2はそれぞれ、図2および図3に示されるように、壁面Wに吸着されたときに、壁面Wに対して略平行な平板状の構造を有しており、第1の移動部材P1は第2の移動部材P2に重なるように配置されている。重なるように配置とは、図2および図3に示されるように、第1および第2の移動部材P1、P2が離間した状態で、一方の移動部材が他方の移動部材を覆うように配置されている状態である。第1および第2の移動部材P1、P2の一方が、第1および第2の移動部材P1、P2の他方に重なるように配置し、後述するスライド移動駆動機構DSの駆動時に、スライド移動の方向の相対距離が伸縮するように移動することにより、外壁検査装置1全体をコンパクトにすることができる。すなわち、外壁検査装置1が縮んだ状態のとき、外壁検査装置1の全長が短くなり、外壁検査装置1の保管時や、外壁検査装置1を壁面W上で回転させるときに有利である。第1の移動部材P1には、図4に示されるように、壁面W側に3つの吸着機構S1が取り付けられ、同様に、第2の移動部材P2には、壁面W側に3つの吸着機構S2が取り付けられている。本実施形態では、図4に示されるように、第1の移動部材P1の前進方向(図4中、右下方向)に2つの吸着機構S1が設けられ、後退方向(図4中、左上方向)に1つの吸着機構S1が設けられている。第2の移動部材P2も同様に、第2の移動部材P2の前進方向(図4中、右下方向)に2つの吸着機構S2が設けられ、後退方向(図4中、左上方向)に1つの吸着機構S2が設けられ、略T字状の第2の移動部材P2が、第1の移動部材P1の前進方向側にある2つの吸着機構S1の間を移動できるように構成されている。
第1および第2の移動部材P1、P2は、駆動機構Dを介して互いに接続され、駆動機構Dは、第1および第2の移動部材P1、P2が相対移動できるように、第1および第2の移動部材P1、P2に取り付けられている。また、本実施形態では、第1の移動部材P1は、後述する駆動源SM2、SM4を搭載した第2の案内部材N2が第1の移動部材P1に対して移動する際、駆動源SM2、SM4が第1の移動部材P1に接触しないように、略四角形状の孔H1(図2参照)が設けられており、その孔H1および駆動源SM2、SM4を覆うカバーC(図2参照)が設けられている。また、第2の移動部材P2には、図4および図6に示されるように、後述する垂直移動駆動機構DVおよび回転駆動機構DRの第3および第4案内部材N3、N4を挿入可能な孔H2が設けられている。孔H2は、第3および第4案内部材N3、N4が第2の移動部材P2に対して壁面Wに略平行な面内で相対移動および相対回転できないように構成されている。
ここで、第1および第2の移動部材P1、P2は、吸着機構S1、S2を取り付けることが可能であり、壁面Wを移動して検査するために必要な強度が得られれば、フレーム状の構造などいずれの構造を採用しても良い。また、第1および第2の移動部材P1、P2の材質は、剛性および軽量化の観点からステンレス鋼などの軽量な金属製であることが好ましいが、他の金属や、樹脂などを採用することもできる。
吸着機構S1、S2は、ポンプ等により内部を負圧状態にすることによって壁面Wに吸着して、壁面W上で外壁検査装置1を支持する機構である。第1または第2の移動部材P1、P2に取り付けられた複数の吸着機構S1、S2は、駆動機構Dの駆動により、第1または第2の移動部材P1、P2と一体的に移動するように構成されている。すなわち、複数の吸着機構S1、S2がそれぞれ独立して移動するのではないので、駆動のためのモータや減圧のための真空ポンプを少なくすることができ、外壁検査装置1を小型軽量化することができ、移動の制御も容易となる。本実施形態では、吸着機構S1、S2は、図2および図3に示されるように、壁面Wに吸着離脱する略円錐状の吸着盤S11、S21と、吸着盤S11、S21に連結され、ポンプ等の負圧源に接続される、第1および第2の移動部材P1、P2に固定された略円筒状の吸引脚S12、S22と、チューブTuを介して吸引脚S12、S22に接続される真空ポンプPu(図2参照)とを備えている。この場合、第1の移動部材P1に設けられた複数の吸着機構S1が、共通の真空ポンプPuに接続され、第2の移動部材P2に設けられた複数の吸着機構S2が、共通の真空ポンプPuに接続されている。しかし、複数の吸着機構S1、S2のそれぞれを独自に吸着操作したい場合は、それぞれについて吸着ポンプを用いてもよく、特に共通の吸着ポンプを用いることに限定されない。ただし、軽量化の観点からは、本実施形態のように共通の真空ポンプを用いることが好ましい。つまり、第1および第2の移動部材P1、P2のそれぞれにおいて、真空ポンプを共通化することで外壁検査装置1の小型軽量化が可能になる。本実施形態のように、複数の吸着機構S1、S2が、駆動機構Dの駆動により、第1または第2の移動部材P1、P2と一体的に移動し、吸着機構S1、S2が共通の真空ポンプPuに接続されることにより、小型軽量化と動作制御の容易さが飛躍的に向上する。
吸着盤S11、S21と吸引脚S12、S22との間の連結部位には、図2および図3に示されるように、吸着盤S11、S21と吸引脚S12、S22の間をシールする弾性材料からなるOリングS13、S23と、吸着盤S11、S21と吸引脚S12、S22の連結を補助する可撓性を有する管状の連結補助部材S14、S24が設けられている。この構成により、表面に起伏のある壁面Wへの吸着時に、OリングS13、S23および連結補助部材S14、S24が弾性変形して、吸着盤S11、S21と吸引脚S13、S23の角度が変化し、壁面Wの形状に応じて吸着盤S11、S21の向きが変わる。したがって、壁面W表面が傾いている場所でも、吸着盤S11、S12がその傾きに合わせて向きを変えることができるので、吸着機構S1、S2は壁面Wに確実に吸着することができる。また、吸着盤S11、S21の内部空間は、図2に示されるように、第1の移動部材P1に設けられた制御装置CDにケーブルCaを介して連結された圧力センサ(図示せず)が設けられ、吸着盤S11、S21と壁面Wにより囲繞される空間の圧力が測定されるように構成されている。真空ポンプPuは、吸着盤S11、S21と壁面Wにより囲繞される空間を減圧して、吸着盤S11、S21が壁面Wに吸着し、外壁検査装置1が壁面Wに保持されれば、遠心ポンプやピストンポンプなどのいずれのポンプを用いてもよいが、短時間で壁面Wに吸着・保持できるという観点から高流量の遠心ポンプが好ましい。また、本実施形態では、真空ポンプPuを第1の移動部材P1上に取り付けるように構成しているが、真空ポンプPuは、第1の移動部材P1、第2の移動部材P2のいずれに設けてもよいし、外壁検査装置1には設けずに、地上に設けた真空ポンプを、外壁検査装置1に長尺のチューブにより接続してもよい。
第1および第2の移動部材P1、P2に接続された駆動機構Dは、第1および第2の移動部材P1、P2に対して、壁面Wに対して略垂直な方向および略平行な方向に駆動力を伝達するように構成され、後述する制御により、外壁検査装置1を移動させたい方向に応じて、駆動力を加える方向を変化させるように構成されている。ここで、壁面Wに対して略垂直な方向とは、壁面Wに近接または壁面Wから離間する方向(後述する第3の方向Z)のことをいい、具体的には壁面Wの法線を中心に±10°以内の方向をいう。また、壁面Wに対して略平行な方向とは、壁面Wに平行な面を中心に±10°以内の平面内にあるすべての方向(後述する第1の方向X、第2の方向Yおよび第3の方向R)のことをいう。
本発明の外壁検査装置1は、駆動機構Dにより駆動力が伝達された第1および第2の移動部材P1、P2が、吸着機構S1、S2により壁面Wに吸着されていない一方の移動部材が、吸着機構Dにより壁面Wに吸着されて壁面W上に固定された他方の移動部材に対して相対移動することにより壁面W上を移動するように構成されている。すなわち、駆動機構Dが第1および第2の移動部材P1、P2の両方に駆動力を加えたときに、壁面Wに吸着されている側の移動部材は吸着力により動かず、壁面Wから離れている側の移動部材のみが動くように構成されている。第1および第2の移動部材P1、P2が、共通の駆動機構Dにより互いに相対移動する構成であるため、それぞれに別個の駆動機構を必要とせず、外壁検査装置1は、全体として小型軽量化を実現することが可能である。軽量化により、外壁検査装置1の搭載可能重量範囲が大きくなり、より高容量の真空ポンプを搭載でき、吸着力を増大させることができる。その結果、検査装置Tの重量が大きくなっても、外壁検査装置1を安定して壁面Wに保持することが可能である。また、全体として軽量化することができるので、外壁検査装置1の重量に耐えかねてタイル等が剥がれて、壁面Wを損傷することもない。さらに、全体として小型化することができるので、壁面Wにある障害物を避けやすくなり、有効に検査することが可能である。
駆動機構Dは、駆動時に壁面Wに吸着されていない側の移動部材を、壁面Wに吸着されたもう一方の移動部材に対して相対移動させることができるように構成されていればよいが、本実施形態では、図4および図5に示されるように、駆動機構Dは、第1および第2の移動部材P1、P2の一方を、第1および第2の移動部材P1、P2の他方に対してスライド移動させるスライド移動駆動機構DSを備えている。ここでいうスライド移動は、第1および第2の移動部材P1、P2のうちの一方が、他方に対して壁面Wに対して略平行な方向に移動することをいう。スライド移動駆動機構DSは、第1および第2の移動部材P1、P2に接続され、第1および第2の移動部材P1、P2に対して、壁面Wに対して略平行な方向に駆動力を伝達するように構成されている。そして、スライド移動駆動機構DSが第1および第2の移動部材P1、P2の両方に駆動力を加えたときに、壁面Wに吸着されている側の移動部材は吸着力により動かず、壁面Wから離れている側の移動部材のみがスライド移動するように構成されている。
本実施形態では、スライド移動駆動機構DSは、図4および図5に示されるように、第1のスライド移動駆動機構DS1および第2のスライド移動駆動機構DS2を有している。第1および第2の移動部材P1、P2に対して、第1のスライド移動駆動機構DS1は、壁面Wに対して略平行な方向の1つである第1の方向Xに駆動力を伝達することが可能であり、第2のスライド移動駆動機構DS2は、壁面Wに対して略平行な方向であって、第1の方向に直交する第2の方向Yに駆動力を伝達することが可能である。すなわち、第1または第2のスライド移動駆動機構DS1、DS2が第1および第2の移動部材P1、P2に駆動力を加えたときに、壁面Wに吸着されている側の移動部材は吸着力により動かず、壁面Wから離れている側の移動部材のみが第1の方向Xおよび第2の方向Yに移動することができる。
より具体的には、第1のスライド移動駆動機構DS1は、図5および図7に示されるように、第1の案内部材N1と第1の移動部材P1に取り付けられた第1の駆動源SM1を有している。第1の案内部材N1は、第1の駆動源SM1の駆動力により、第1の移動部材P1上を第1の方向Xにおいて案内されるように構成されている。本実施形態では、第1の案内部材N1は、第1の方向Xにおいて第1の移動部材P1上を移動するように構成され、第1の方向Xにおいて第2の移動部材P2が第1の案内部材N1とともに移動するように第2の移動部材P2に接続されている。すなわち、図6に示されるように、第2の移動部材P2に形成された鍵穴状の孔H2において、第1のスライド移動駆動機構DS1または第1のスライド移動駆動機構DS1とともに第1の方向Xに移動する他の部材(たとえば、図6における回転駆動機構DR)が係合することにより、第2の移動部材P2が第1の案内部材N1とともに移動するように構成されている。なお、第1の案内部材N1を、第2の移動部材P2上を移動し、第1の移動部材P1が第1の案内部材N1とともに移動するように構成してもよい。第1の案内部材N1の形状は特に限定されないが、本実施形態では、図5等に示されるように、第1の方向Xおよび第2の方向Yに延びる略四角のフレーム状のガイドフレームとして形成されている。
本実施形態では、第1のスライド移動駆動機構DS1は、図8に示されるように、一端が第1の駆動源SM1に接続され、他端が第1の案内部材N1に接続され、第1の駆動源SM1からの駆動力を伝達する第1のリンクL1と、第1の移動部材P1から突出し、第1の案内部材N1を第1の方向Xに案内する第1のガイド部Gu1とをさらに備えている。第1のリンクL1は、第1の方向Xに伸縮するように第1の駆動源SM1と第1の案内部材N1に取り付けられている。第1のガイド部Gu1は、略四角のフレーム状の第1の案内部材N1の第1の方向Xに沿って形成された第1の案内レールNL1と係合して、第1の案内部材N1を第1の方向Xに案内している。この構成により、第1の駆動源SM1からの駆動力が、第1のリンクL1を介して第1の案内部材N1に伝達され、第1の案内部材N1が第1のガイド部Gu1にガイドされて、第1の方向Xに移動する。これにより、第1の案内部材N1が、第1の移動部材P1に対して第1の方向Xに相対移動し、第1の案内部材N1(第1のスライド移動駆動機構DS1)とともに第2の移動部材P2も第1の方向Xに移動する。したがって、第1の移動部材P1と第2の移動部材P2とが、第1の方向Xにおいて、相対移動が可能となる。
本実施形態では、上述したように、第1のリンクL1、第1の案内部材N1の第1の案内レールNL1、および第1のガイド部Gu1により、第1および第2の移動部材P1、P2の一方を、第1および第2の移動部材P1、P2の他方に対してスライド移動させる構成とした。しかし、第1および第2の移動部材P1、P2の一方を、第1および第2の移動部材P1、P2の他方に対してスライド移動させることができれば、本実施形態に限定されることはなく、パンタグラフ機構など、他の公知の機構によりスライド移動させることも可能である。また、本実施形態では、第1の駆動源SM1として、サーボモータなど、回転駆動力を発生させる駆動源を用いているが、上記のようなスライド移動させることができるものであれば、直線的な駆動力を発生させるものであってもよい。
第2のスライド移動駆動機構DS2は、図5および図7に示されるように、第2の案内部材N2と第2の駆動源SM2を有している。第2の案内部材N2は、第2の駆動源SM2の駆動力により、第1の移動部材P1上を第2の方向Yに案内されるように構成されている。本実施形態では、第2の案内部材N2は、第2の方向Yにおいて第1の移動部材P1上を移動するように構成され、第2の方向Yにおいて第2の移動部材P2が第2の案内部材N2とともに移動するように第2の移動部材P2に接続されている。すなわち、図6に示されるように、第2の移動部材P2に形成された鍵穴状の孔H2において、第2のスライド移動駆動機構DS2または第2のスライド移動駆動機構DS2とともに第2の方向Yに移動する他の部材(たとえば、図6における回転駆動機構DR)が係合することにより、第2の移動部材P2が第2の案内部材N2とともに移動するように構成されている。なお、第2の案内部材N2が第2の移動部材P2上を移動し、第1の移動部材P1が第2の案内部材N2とともに移動するように構成してもよい。
本実施形態では、第2のスライド移動駆動機構DS2は、図9に示されるように、第2の案内部材N2に取り付けられた第2の駆動源SM2に一端が接続され、他端が第1の案内部材N1に接続された第2のリンクL2をさらに備えている。第2のリンクL2は、第2の方向Yに伸縮するように第2の駆動源SM2および第1の案内部材N1に接続されている。第2の案内部材N2は、その形状は特に限定されないが、本実施形態では、略長方形の平板形状のガイドプレートであり、第2の方向Yに沿って移動可能なように、第1の案内部材N1の第2の方向Yに沿って形成された第2の案内レールNL2に係合する第2のガイド部Gu2を有している。この構成により、第2の駆動源SM2からの駆動力が、第2のリンクL2を介して第2の案内部材N2に伝達され、第2の案内部材N2が第2のガイド部Gu2にガイドされて、第2の方向Yに移動する。このとき、第1の案内部材N1は、第1のガイド部Gu1と係合しているため、第2の方向Yには移動できないように構成されている。これにより、第2の案内部材N2が、第1の移動部材P1に対して第2の方向Yに相対移動し、第2の案内部材N2(第2のスライド移動駆動機構DS2)とともに第2の移動部材P2も第2の方向Yに移動する。したがって、第1の移動部材P1と第2の移動部材P2とが、第2の方向Yにおいて、相対移動が可能となる。
本実施形態では、上述したように、第2のリンクL2、第2の案内部材N2、第1の案内部材N1の第2の案内レールNL2、および第2のガイド部Gu2により、第1および第2の移動部材P1、P2の一方を、第1および第2の移動部材P1、P2の他方に対してスライド移動させる構成とした。しかし、第1および第2の移動部材P1、P2の一方を、第1および第2の移動部材P1、P2の他方に対してスライド移動させることができれば、本実施形態に限定されることはなく、パンタグラフ機構など、他の公知の機構によりスライド移動させることも可能である。また、本実施形態では、第2の駆動源SM2として、サーボモータなど、回転駆動力を発生させる駆動源を用いているが、上記のようなスライド移動させることができるものであれば、直線的な駆動力を発生させるものであってもよい。
本実施形態では、駆動機構Dはさらに、図4および図6に示されるように、第1および第2の移動部材P1、P2の一方を、第1および第2の移動部材P1、P2の他方に対して壁面Wに略垂直な方向に移動させる垂直移動駆動機構DVを備えている。垂直移動駆動機構DVは、第1および第2の移動部材P1、P2を相対的に離間および近接させる方向に移動させる機構である。垂直移動駆動機構DVは、第1および第2の移動部材P1、P2に接続され、第1および第2の移動部材P1、P2に対して、壁面Wに対して略垂直な方向である第3の方向Zに駆動力を伝達するように構成されている。そして、垂直移動駆動機構DVが第1および第2の移動部材P1、P2の両方に駆動力を加えたときに、壁面Wに吸着されている側の移動部材は吸着力により動かず、壁面Wから離れている側の移動部材のみが移動するように構成されている。
垂直移動駆動機構DVは、図5および図7に示されるように、第3の案内部材N3と第2の移動部材P2に取り付けられた第3の駆動源SM3を有している。第3の案内部材N3は、第1および第2の移動部材P1、P2を第3の方向Zで相対移動させることができるように、第1および第2の移動部材P1、P2に接続されている。また、駆動源SM3は、第3の案内部材N3を介して、第1および第2の移動部材P1、P2を第3の方向Zで相対移動させるように駆動力を発生する。本実施形態では、駆動源SM3として、サーボモータなど、回転駆動力を発生させる駆動源を用いているが、上記のようなスライド移動させることができるものであれば、直線的な駆動力を発生させるものであってもよい。
本実施形態では、垂直移動駆動機構DVは、図10に示されるように、一端が第3の駆動源SM3に接続され、他端が第3の案内部材N3に接続される第3のリンクL3と、第3の案内部材N3を第3の方向Zにガイドする第3のガイド部Gu3を有している。ここで、図10において、詳細を見やすくするために、検査装置Tを省略している。第3の案内部材N3は、図11に示されるように、後述する略円筒状のベアリングホルダBHを挟み込むように、第3の方向Zに沿って一体的に形成された突条として設けられている。第3の案内部材N3には、第3の案内レールNL3が、第3の方向Zに沿って設けられ、第3のガイド部Gu3に案内されるように構成されている。第3のガイド部Gu3は、第2の移動部材P2の孔H2に挿入されて固定されたブラケットBLに固定されている。これにより、第3の案内部材N3は、第2の移動部材P2に第3の方向Zに摺動可能となっている。そして、第3の案内部材N3は、後述するように、第3の案内部材N3と第1の移動部材P1が第3の方向Zで相対移動できないように、第1、第2および第4の案内部材N1、N2、N4を介して、第1の移動部材P1に接続されている。第3のリンクL3は、第3の方向Zに伸縮できるように構成され、第2の移動部材P2と第3の案内部材N3が第3の方向Zにおいて相対移動し、第1の移動部材P1と第2の移動部材P2とが、第3の方向Zにおいて、相対移動が可能となる。
本実施形態では、上述したように、第3の案内部材N3の第3の案内レールNL3が第3のガイド部Gu3に案内されることによって、第2の移動部材P2と第3の案内部材N3が相対移動することを利用して、第1および第2の移動部材P1、P2の一方を、第1および第2の移動部材P1、P2の他方に対して壁面Wに略垂直な方向に移動させる構成とした。しかし、第1および第2の移動部材P1、P2の一方を、第1および第2の移動部材P1、P2の他方に対して壁面Wに略垂直な方向に移動させることができれば、本実施形態に限定されることはなく、パンタグラフ機構など、他の公知の機構を用いて移動させることも可能である。
また、本実施形態では、ベアリングホルダBHに第3の案内部材N3が一体的に設けられるが、第1および第2の移動部材P1、P2が互いに第3の方向Zで相対移動できればよく、必ずしも一体的に設けられることに限定されない。ただし、小型軽量化の観点からは、一体的に設けられることが好ましい。
図4および6に示されるように、駆動機構Dは、第1および第2の移動部材P1、P2の一方を、第1および第2の移動部材P1、P2の他方に対して壁面Wに略平行な平面内で回転させる回転駆動機構DRを備えている。回転駆動機構DRは、第1および第2の移動部材P1、P2に接続され、第1および第2の移動部材P1、P2に対して、壁面Wに略平行な平面内で回転する方向である第4の方向Rに駆動力を伝達するように構成されている。そして、回転駆動機構DRが第1および第2の移動部材P1、P2の両方に駆動力を加えたときに、壁面Wに吸着されている側の移動部材は吸着力により動かず、壁面Wから離れている側の移動部材のみが回転するように構成されている。
本実施形態では、回転駆動機構DRは、図5に示されるように、第4の案内部材N4と第2の案内部材N2に取り付けられた第4の駆動源SM4を有している。本実施形態における第4の案内部材N4は、回転駆動させることができるものであれば、その形状は特に限定されないが、第3の案内部材N3と一体化された略円筒状のベアリングホルダBHとして示されている。第4の案内部材N4は、第1および第2の移動部材P1、P2を第4の方向Rで相対回転させることができるように、第1および第2の移動部材P1、P2に接続されている。また、駆動源SM4は、第4の案内部材N4を介して、第1および第2の移動部材P1、P2を第4の方向Rで相対回転させるように駆動力を発生する。本実施形態では、駆動源SM4として、サーボモータなど、回転駆動力を発生させる駆動源を用いているが、直線的な駆動力を発生させる駆動源を用い、直線運動を回転運動に変換する機構を用いてもよい。
回転駆動機構DRは、本実施形態では、図11に示されるように、回転する第4の案内部材N4(円筒状のベアリングホルダBH)の内側で第4の案内部材N4を回転可能に支持するシャフトSH(図5参照)および一端が第4の駆動源SM4に取り付けられ、他端が第4の案内部材N4に取り付けられた第4のリンクL4をさらに備えている。第4のリンクL4は、第4の駆動源SM4からの駆動力により、第4の案内部材N4に回転力を加えることができるように構成されていれば、その取り付け位置は特に限定されるものではない。本実施形態では、略円柱状のシャフトSH(図5参照)が第2の案内部材N2上に固定され、そのシャフトSH周りに図示しないベアリングを介して第4の案内部材N4(ベアリングホルダBH)が回転するように構成されている。また、ベアリングホルダBHは、このシャフトSHに対して回転可能であるとともに、第3の方向Zにも移動可能となっている。なお、本実施形態では、上述のようにベアリングホルダBHが、第3の案内部材N3と第4の案内部材N4を兼ねて、第3の方向Zへの移動と、第4の方向Rへの回転動作を行なうように構成されているが、第3の方向Zへの移動を別の部材により行い、ベアリングホルダBHは回転動作だけを行なうようにしてもよい。
先に述べたように、第4の案内部材N4(ベアリングホルダBH)は、第2の移動部材P2に対して第4の方向Rで相対回転できないように、第2の移動部材P2に接続されている。一方、第4の案内部材N4が取り付けられている第2の案内部材N2は、第1の移動部材P1に対して第4の方向Rに相対回転できないように、第1の案内部材N1を介して、第1の移動部材P2に接続されている。したがって、第4の案内部材N4は、第1の移動部材P1に対して第4の方向Rに相対回転することができる。この構成により、第4の駆動源SM4が発生させた駆動力が、第4のリンクL4を介して第4の案内部材N4に伝達され、第4の案内部材N4が第4の方向Rに沿って第1の移動部材P1に対して回転する。第4の案内部材N4が第4の方向Rに沿って回転すると、吸着機構により吸着されていない側の移動部材が回転し、第1の移動部材P1と第2の移動部材P2とが、第4の方向Rにおいて、相対回転が可能となる。なお、本実施形態では、第4の案内部材N4が、第2の移動部材P2に対して第3の方向Z以外で相対移動しないように接続されているが、第1の移動部材P1に対して第4の案内部材N4が第3の方向Z以外で相対移動しないように接続し、第2の移動部材P2を第4の案内部材N4に対して相対移動するように構成してもよい。
本実施形態では、上述したように、第4のリンクL4、第4の案内部材N4、シャフトSHにより、第1および第2の移動部材P1、P2の一方を、第1および第2の移動部材P1、P2の他方に対して壁面Wに略平行な平面内で回転させる構成とした。しかし、第1および第2の移動部材P1、P2の一方を、第1および第2の移動部材P1、P2の他方に対して壁面Wに略平行な平面内で回転させることができれば、本実施形態に限定されることはなく、たとえばギヤを用いた機構など、他の公知の機構により回転させてもよい。
以上、本発明の外壁検査装置1の構造について説明したが、本発明の外壁検査装置1は、外壁検査装置1に搭載した制御装置CD、外壁検査装置1に有線または無線で接続されたパーソナルコンピュータ(図示せず)等により、さらに様々な機能を実行させたり、外壁検査装置1に図示しない他の機能を有する別部材を取り付けてもよい。なお、後述する、駆動指示機構、減圧指示機構、圧力検出機構、吸着不良回避機構、負荷検出機構、異常状態通知機構、傾斜角検出機構、傾斜状態通知機構は、その一例であり、本明細書で記載した機構以外を、外壁検査装置1に設けてもよい。
本発明の外壁検査装置1は、第1および第2の移動部材を駆動するように、使用者の操作などに基づいて駆動機構Dに指示する駆動指示機構と、吸着機構S1、S2を壁面Wに吸着または壁面Wから離脱させるように、吸着機構S1、S2に指示する減圧指示機構とを備えることができる。この駆動指示機構および減圧指示機構は、たとえば外壁検査装置1に設けられた制御装置CDにプログラムとして組み込むことができる。また、外壁検査装置1に有線または無線で接続されたコンピュータに組み込まれていてもよい。なお、後述する圧力検出機構、吸着不良回避機構、負荷検出機構、異常状態通知機構、傾斜角検出機構、傾斜状態通知機構についても同様に、外壁検査装置1に設けられてもよいし、外壁検査装置1に接続された他の装置に設けられていてもよい。駆動指示機構および減圧指示機構はそれぞれ、図示しないインターフェースを介して駆動機構Dおよび吸着機構S1、S2に接続されている。ここで、駆動指示には、壁面W上を、第1の方向X、第2の方向Y、第3の方向Z、第4の方向Rへの駆動のための指示だけでなく、駆動停止の指示も含まれる。また、吸着機構S1、S2を壁面Wに吸着させる指示とは、吸着機構S1、S2を壁面Wに吸着させるように吸着機構S1、S2内の圧力を減圧するための指示であり、吸着機構S1、S2を壁面Wから離脱させる指示とは、吸着機構S1、S2を壁面Wから離脱させるように吸着機構S1、S2内の減圧状態を解除するための指示である。減圧状態の解除は、真空ポンプの出力を切ることや吸着機構S1、S2内に外気をリークすることなどがあるが、吸着機構S1、S2を壁面Wから離脱させることができればよく、これに限定されない。このように、駆動指示機構と減圧指示機構を備えることにより、外壁検査装置1を遠隔で操作することができる。
また、本発明の外壁検査装置1は、圧力検出機構を備えていてもよい。圧力検出機構は、吸着機構S1、S2が壁面Wに吸着する際、吸着機構S1、S2内の圧力が、吸着機構S1、S2が壁面Wに吸着していることを示す所定の圧力条件を満たすか否かを判断するように構成される。吸着機構S1、S2内の圧力とは、吸着盤S11、S22と壁面Wに囲繞される空間の圧力のことであり、圧力センサ(図示せず)により測定される。所定の圧力条件は、外壁検査装置1の重量や壁面Wの状態によって左右されるが、吸着機構S1、S2が壁面Wに吸着して外壁検査装置1を壁面W上で保持することができる圧力により定められる。また、判断結果は、図示しないインターフェースを介して吸着不良回避機構に送信される。このように、圧力検出機構を備えていることで、吸着機構S1、S2が壁面Wに吸着しているかどうかを判断することができるので、外壁検査装置1が落下するのを防止することができる。
本発明の外壁検査装置1は、さらに吸着不良回避機構を備えていてもよい。吸着不良回避機構は、上述の圧力検出機構により吸着機構S1、S2内の圧力が所定の圧力条件を満たしていないと判断された場合、すなわち吸着機構S1、S2が外壁検査装置1を壁面W上で保持できる程度に壁面Wに吸着していないと判断された場合、駆動指示機構、減圧指示機構および/または外壁検査装置1を操作する使用者に吸着不良状態であることを通知するように構成される。ここで、吸着不良状態であることの通知は、図示しないインターフェースを介してデジタル信号を送信することにより行なわれる。使用者への通知は、図示しない表示装置への表示、図示しない音発生装置による警告音発生、図示しない発光装置による警告灯点灯などによって行なうことができる。つぎに、信号を受信した駆動指示機構が、吸着機構S1、S2内の圧力が所定の圧力条件を満たすまで、第1および第2の移動部材P1、P2を移動させるように指示し、および/または信号を受信した減圧指示機構が、吸着機構S1、S2内をさらに減圧するように真空ポンプの出力を上げるように指示するように構成されている。第1および第2の移動部材P1、P2の移動には、壁面位置を変えずに壁面Wに近接する方向に移動させたり、吸着可能な異なる壁面位置へ移動させたりすることなどが含まれる。このように、吸着不良回避機構を備えることにより、吸着機構S1、S2が壁面Wに吸着できない場合でも、吸着機構S1、S2を壁面Wに押し付けたり、異なる壁面位置に移動したり、吸着機構S1、S2内をさらに減圧したりすることができるので、外壁検査装置1が落下することなく、安定して壁面W上を移動することができる。さらに、使用者も吸着不良状態であることの通知を受けることになるので、手動でも吸着不良を回避する処理を行なうことができ、外壁検査装置1の落下を防止することができる。
また、本発明の外壁検査装置1は、負荷検出機構を備えていてもよい。壁面W上で第1および第2の移動部材P1、P2が移動する際、障害物などがあって、スムーズに移動できない場合がある。そのような場合、駆動機構Dは、第1および第2の移動部材P1、P2を駆動するための負荷よりも大きい負荷を受けることになる。負荷検出機構は、駆動機構Dの受ける負荷が、第1および第2の移動部材P1、P2を駆動するための所定の負荷条件を満たすか否かを判断するように構成され、第1および第2の移動部材P1、P2の移動が妨げられているか否かを判断できるようになっている。所定の負荷条件は、第1および第2の移動部材P1、P2の重量や駆動源SM1、SM2、SM3、SM4の出力によって左右されるが、第1および第2の移動部材P1、P2が移動を妨げられることなく移動するのに必要な負荷により定められる。また、判断結果は、図示しないインターフェースを介して異常状態通知機構に送信される。このように、負荷検出機構を備えていることにより、壁面Wに障害物があっても、それを検知することができる。
本発明の外壁検査装置1は、さらに異常状態通知機構を備えていてもよい。異常状態通知機構は、上述の負荷検出機構により駆動機構Dの受ける負荷が所定の負荷条件を満たしていないと判断された場合、すなわち第1および第2の移動部材P1、P2の移動が妨げられていると判断された場合、駆動指示機構および/または外壁検査装置1を操作する使用者に異常状態であることを通知するように構成される。駆動指示機構への通知は、図示しないインターフェースを介してデジタル信号を送信することにより行なわれ、使用者への通知は、図示しない表示装置への表示、図示しない音発生装置による警告音発生、図示しない発光装置による警告灯点灯などによって行なわれる。このように、異常状態通知機構を備えていることにより、壁面Wに障害物があっても、手動または自動で障害物を回避するための処理を行なうことができる。
駆動指示機構は、異常状態通知機構により異常状態を通知されたとき、駆動機構Dに対して第1または第2の移動部材P1、P2の駆動を停止する指示または駆動方向を変更する指示を行なうように構成される。駆動を停止する指示を行なう構成により、壁面W上に障害物があっても、外壁検査装置1が落下するのを防止することができる。また、駆動方向を変更する指示を行なう構成により、外壁検査装置1は、自動で障害物を回避して、落下することなく、安定して壁面W上を移動することができる。
また、本発明の外壁検査装置1は、傾斜角検出機構を備えていてもよい。傾斜角検出機構は、第1または第2の移動部材P1、P2の鉛直方向に対する角度が所定の角度条件を満たすか否かを判断するように構成される。鉛直方向に対する角度は、第1および第2の移動部材P1、P2に設けられた水平器(図示せず)により測定される。所定の角度条件は、任意に定めることができ、たとえば5°などに設定することができる。また、判断結果は、図示しないインターフェースを介して傾斜状態通知機構に送信される。
本発明の外壁検査装置1は、さらに傾斜状態通知機構を備えていてもよい。傾斜状態通知機構は、傾斜角検出機構により第1または第2の移動部材P1、P2の鉛直方向に対する角度が所定の角度条件を満たしていないと判断された場合、第1または第2の移動部材P1、P2の鉛直方向に対する角度が所定の角度条件を満たしていないことを駆動指示機構および/または外壁検査装置1を操作する使用者に通知するように構成される。駆動指示機構への通知は、図示しないインターフェースを介してデジタル信号を送信することにより行なわれ、使用者への通知は、図示しない表示装置への表示、図示しない音発生装置による警告音発生、図示しない発光装置による警告灯点灯などによって行なわれる。このように、傾斜状態通知機構を備えていることにより、第1または第2の移動部材P1、P2が鉛直方向に対して傾いていて、進行方向が歪んだり、十分な検査作業が行なえないような場合でも、手動または自動で傾斜を補正するための処理を行なうことができる。
駆動指示機構は、傾斜状態通知機構により傾斜状態が通知されたとき、第1または第2の移動部材P1、P2の鉛直方向に対する角度が所定の角度条件を満たすように、駆動機構Dに対して前記第1または第2の移動部材P1、P2を回転させる指示を行なうように構成されている。回転させる指示を行なうように構成されることで、自動で進行方向を修正でき、また適切な検査動作を行なうことができる。
つぎに、図10、図12a〜12sを参照しながら、本発明の外壁検査装置1の動作を説明する。なお、図12a〜12sは、動作を説明しやすくするために、適宜一部を省略し、変形し、点線で示しているが、同一の参照符号で示している要素は同一の機能を有するものである。なお、図12a、図12d、図12h、図12j、図12n、図12oおよび図12sは、外壁検査装置1を壁面W側から見た図であり、説明の便宜上、第2の移動部材P2を透かして示している。
<前進動作>
まず、外壁検査装置1の前進動作について説明する。図12aおよび図12bに示した状態は、吸着機構S1、S2の両方により壁面Wに外壁検査装置1が吸着された状態(以下、初期状態という)を示している。この初期状態では、第1および第2の移動部材P1、P2の吸着機構S1、S2がともに壁面Wに接触して吸着している。この初期状態から、使用者により、前進移動の指示がなされると、駆動指示機構、減圧指示機構等により外壁検査装置1が駆動される。まず、第2の移動部材P2の吸着機構S2の減圧が解除されると、第2の移動部材P2の吸着機構S2を壁面Wから離間させるために、垂直移動駆動機構DVの第3の駆動源SM3が駆動される。第3の駆動源SM3が駆動されると、第3の駆動源SM3に接続された第3のリンクL3が作動する。第3のリンクL3が作動すると、第3のリンクL3が接続された第3の案内部材N3(ベアリングホルダBH)が駆動される。第3の案内部材N3が駆動されると、上述したように、第1の移動部材P1と第2の移動部材P2とが相対移動し、第1の移動部材P1と第2の移動部材P2とが第3の方向Zにおいて互いに近付く方向に力が加わる。このとき、第1の移動部材P1の吸着機構S1は、壁面Wに吸着して、第1の移動部材P1は第3の方向Zには動かないため、相対的に第2の移動部材P2のみが移動し、図12cに示されるように、第2の移動部材P2が壁面Wから離れる方向に駆動される。
つぎに、図12dに示されるように、壁面Wから離間した第2の移動部材P2が前進方向に移動するように駆動される。すなわち、図12cの状態から、第1のスライド移動駆動機構DS1の第1の駆動源SM1が駆動される。第1の駆動源SM1が駆動されると、第1の駆動源SM1に接続された第1のリンクL1が作動する。第1のリンクL1が作動すると、第1のリンクL1が接続された第1の案内部材N1が前進方向に沿って押し出される。上述したように、第1の案内部材N1は、第2の移動部材P2と一体となって第1の方向Xに移動するので、第1の移動部材P1と第2の移動部材P2とが相対移動するように力が加わる。このとき、第1の移動部材P1の吸着機構S1は、壁面Wに吸着して、第1の移動部材P1は第1の方向Xには動かないため、相対的に第2の移動部材P2のみが移動する(図12aから図12dの状態まで)。
この後、第2の移動部材P2が上述のような相対移動により、図12eの状態から壁面W側に向かって移動し、第2の移動部材P2の吸着機構S2が壁面Wに接触し、吸着されて第2の移動部材P2の前進が完了する(図12f参照)。その後、今度は第1の移動部材P1の吸着機構S1が壁面Wから離間して(図12g参照)、壁面Wに吸着した第2の移動部材P2に対して第1の移動部材P1が第1の方向Xに相対移動し(図12h参照)、第1の移動部材P1の吸着機構S1が壁面W側に向かって駆動され、第1の移動部材P1の吸着機構S1が壁面Wに接触し、吸着されて第1の移動部材P1の前進が完了する(図12i参照)。この動作を繰り返すことにより、前進動作が行なわれる。
<側方移動動作>
つぎに、外壁検査装置1の側方移動動作について説明する。まず、前進動作と同様に、図12aおよび図12bに示される初期状態から、図12cに示されるように、垂直移動駆動機構DVにより、第2の移動部材P2が壁面Wから離れる方向に駆動される。
つぎに、図12jに示されるように、壁面Wから離間した第2の移動部材P2が側方(図12jでは、右方向)に移動するように駆動される。すなわち、図12cの状態から、第2のスライド移動駆動機構DS2の第2の駆動源SM2が駆動される。第2の駆動源SM2が駆動されると、第2の駆動源SM2に接続された第2のリンクL2が作動する。第2のリンクL2が作動すると、図12jに示されるように、第2のリンクL2が伸びて、第2のリンクL2の一端と第1の案内部材N1の接続箇所と、第2のリンクL2の他端と第2の案内部材N2の接続箇所とが第2の方向Yにおいて離れるように力が加わる。上述したように、第2の案内部材N2は、第2の移動部材P2と一体となって第2の方向Yに移動するので、第1の移動部材P1と第2の移動部材P2とが第2の方向Yに沿って相対移動するように力が加わる。このとき、第1の移動部材P1の吸着機構S1は、壁面Wに吸着して、第1の移動部材P1は第2の方向Yには動かないため、相対的に第2の移動部材P2のみが側方に移動する(図12aから図12jの状態まで)。
この後、第2の移動部材P2が上述のような相対移動により、図12kの状態から壁面W側に向かって移動し、第2の移動部材P2の吸着機構S2が壁面Wに接触し、吸着されて第2の移動部材P2の側方移動が完了する(図12l参照)。その後、今度は第1の移動部材P1の吸着機構S1が壁面Wから離間して(図12m参照)、壁面Wに吸着した第2の移動部材P2に対して第1の移動部材P1が第2の方向Yに相対移動し(図12n参照)、第1の移動部材P1の吸着機構S1が壁面W側に向かって駆動され、第1の移動部材P1の吸着機構S1が壁面Wに接触し、吸着されて第1の移動部材P1の側方移動が完了する。この動作を繰り返すことにより、側方移動動作が行なわれる。
<回転動作>
つぎに、外壁検査装置1の回転動作について説明する。まず、前進動作、側方移動動作と同様に、図12aおよび図12bに示される初期状態から、図12cに示されるように、垂直移動駆動機構DVにより、第2の移動部材P2が壁面Wから離れる方向に駆動される。
つぎに、図12oに示されるように、壁面Wから離間した第2の移動部材P2が図12o中、反時計回りに回転するように駆動される。すなわち、図12cの状態から、回転駆動機構DRの第4の駆動源SM4が駆動される。第4の駆動源SM4が駆動されると、第4の駆動源SM4に接続された第4のリンクL4が作動する。第4のリンクL4が作動すると、図12oに示されるように、第4のリンクL4が、第4の案内部材N4を反時計回りに回転させる方向に力が加わる。上述したように、第4の案内部材N4は、第2の移動部材P2と一体となって第4の方向Rに移動するので、第1の移動部材P1と第2の移動部材P2とが第4の方向Rに沿って相対移動するように力が加わる。このとき、第1の移動部材P1の吸着機構S1は、壁面Wに吸着して、第1の移動部材P1は第4の方向Rには回転しないため、相対的に第2の移動部材P2のみが反時計回りに回転する(図12aから図12oの状態まで)。
この後、第2の移動部材P2が上述のような相対移動により、図12pの状態から壁面W側に向かって移動し、第2の移動部材P2の吸着機構S2が壁面Wに接触し、吸着されて第2の移動部材P2の回転が完了する(図12q参照)。その後、今度は第1の移動部材P1の吸着機構S1が壁面Wから離間して(図12r参照)、壁面Wに吸着した第2の移動部材P2に対して第1の移動部材P1が第4の方向Rに相対移動し(図12s参照)、第1の移動部材P1の吸着機構S1が壁面W側に向かって駆動され、第1の移動部材P1の吸着機構S1が壁面Wに接触し、吸着されて第1の移動部材P1の回転が完了し、回転動作が完了する。
引き続いて、図13のフローチャートを用いて、外壁検査装置1の壁面W上での動作について説明する。
Step11
外壁検査装置1が壁面W上を移動する前においては、図12aおよび図12bに示されるように、第1および第2の移動部材P1、P2に取り付けられた吸着機構S1、S2が壁面Wに吸着され、第1および第2の移動部材P1、P2が壁面W上で保持されている。このとき、減圧指示機構の指示によって、吸着機構S1、S2内が減圧されており、圧力検出機構によって、吸着不良がないか監視されているが、以下の工程においても、吸着機構S1、S2が壁面Wに吸着されているときは常にその監視がなされている。
Step12
外壁検査装置1が壁面W上の移動を開始する際、先ず、第1および第2の移動部材P1、P2のいずれかの吸着機構S1、S2が、減圧指示機構によって、吸着機構S1、S2内の減圧状態が解消され、壁面Wから離脱する。
Step13
壁面Wから離脱した第1または第2の移動部材P1、P2が、垂直移動駆動機構DVによって、壁面Wから離間する方向に移動する。図12cに示される例では、第2の移動部材P2が、壁面Wから離間する方向に移動している。このとき、第1の移動部材P1は、壁面Wに固定されている。
Step14
壁面Wから離脱した第1または第2の移動部材P1、P2が、スライド移動駆動機構DSによって、壁面Wに固定された第1または第2の移動部材P1、P2に対してスライド移動する。図12dに示される例では、第1のスライド移動機構DS1によって、第2の移動部材P2が、固定された第1の移動部材P1に対して、図中上側に相対移動している(壁面W上を鉛直方向上向きに移動している)。また、図12jに示される例では、第2のスライド移動機構DS2によって、第2の移動部材P2が、固定された第1の移動部材P1に対して、図中右側に相対移動している(壁面W上を壁面Wに向かって左側に移動している)。図12dおよび図12jに示されるように、第1および第2の移動部材P1、P2の、スライド移動の方向における相対距離が、移動前の相対距離と比べて伸びている。
Step15
負荷検出機構は、駆動機構Dの負荷信号を検出し、駆動機構Dの受ける負荷が、第1および第2の移動部材P1、P2を駆動するための所定の負荷条件を満たすか否かを判断する。図12dおよび図12jに示される例では、第1および第2のスライド移動機構DS1の駆動源SM1、SM2であるサーボモータが受ける負荷が所定の負荷条件を満たすか否かが判断される。
Step151
負荷検出機構により駆動機構Dの受ける負荷が所定の負荷条件を満たしていないと判断された場合、すなわち壁面Wから離脱した第1または第2の移動部材P1、P2の移動が妨げられていると判断された場合、異常状態通知機構は、駆動指示機構および/または外壁検査装置1を操作する使用者に異常状態であることを通知する。
Step152
異常状態通知機構により異常状態を通知された駆動指示機構は、駆動機構Dに対して第1または第2の移動部材P1、P2の駆動を停止する指示または駆動方向を変更する指示を行なう。
Step16
負荷検出機構により駆動機構Dの受ける負荷が所定の負荷条件を満たしていると判断された場合、傾斜角検出機構は、壁面Wから離脱した第1または第2の移動部材P1、P2の鉛直方向に対する角度を検出し、その角度が所定の角度条件を満たすか否かを判断する。
Step161
傾斜角検出機構により壁面Wから離脱した第1または第2の移動部材P1、P2の鉛直方向に対する角度が所定の角度条件を満たしていないと判断された場合、傾斜状態通知機構は、その角度が所定の角度条件を満たしていないことを駆動指示機構および/または外壁検査装置1を操作する使用者に通知する。
Step162
傾斜状態通知機構により傾斜状態が通知された駆動指示機構は、壁面Wから離脱した第1または第2の移動部材P1、P2の鉛直方向に対する角度が所定の角度条件を満たすように、駆動機構Dに対して第1または第2の移動部材P1、P2を回転させる指示を行なう。図12oに示される例では、回転駆動機構DRによって、第2の移動部材P2が、固定された第1の移動部材P1に対して、反時計回りに相対回転している。
Step17
傾斜角検出機構により鉛直方向に対する角度が所定の角度条件を満たすと判断された場合、壁面Wから離脱した第1または第2の移動部材P1、P2が、垂直移動駆動機構DVによって、壁面Wに近接する方向に移動する。
Step18
壁面Wに当接した、第1または第2の移動部材P1、P2の吸着機構S1、S2は、減圧指示機構によって、吸着機構S1、S2内が減圧され、壁面Wに吸着する。
Step19
圧力検出機構は、圧力センサにより読取られた吸着機構S1、S2内の圧力が、吸着機構S1、S2が壁面Wに吸着していることを示す所定の圧力条件を満たすか否かを判断する。
Step191
圧力検出機構により吸着機構S1、S2内の圧力が所定の圧力条件を満たしていないと判断された場合、すなわち吸着機構S1、S2が壁面Wに吸着していないと判断された場合、吸着不良回避機構は、駆動指示機構、減圧指示機構および/または外壁検査装置1を操作する使用者に吸着不良状態であることを通知する。
Step192
吸着不良回避機構によって吸着不良であることが通知されると、駆動指示機構は、吸着機構S1、S2内の圧力が所定の圧力条件を満たすまで、第1または第2の移動部材P1、P2を移動させるように指示し、および/または減圧指示機構が、吸着機構S1、S2内をさらに減圧するように真空ポンプの出力を上げるように指示する。
圧力検出機構により吸着機構S1、S2内の圧力が所定の圧力条件を満たしていると判断された場合、Step12に戻り、上述のステップが繰り返される。
このように、壁面検査装置1は、第1および第2の移動部材P1、P2が壁面Wに対して吸着と離脱を繰り返し、第1および第2の移動部材P1、P2の、スライド移動の方向における相対距離を伸縮させながら移動することにより、壁面W上を移動することができる。
以上示してきたように、本発明の外壁検査装置によれば、外壁面にあらかじめ認められる窓や突起物などの障害物があったとしても、第1および第2の移動部材が相対移動を繰り返すことで、壁面上を自在に移動することができるので、検査対象箇所まで移動して検査することができる。さらに、負荷検出機構や異常状態通知機構を備えることにより、不意の障害物に対しても、その障害物を回避して移動することが可能である。また、第1および第2の移動部材を相対移動させることにより外壁検査装置を移動させる構成にすることにより、駆動機構をそれぞれの移動部材に設ける必要がなく共通化できるので、構造を単純化することができ、外壁検査装置を小型軽量化することができる。
つぎに、本発明の外壁検査システムについて説明する。なお、本発明の外壁検査システムについて、上述の外壁検査装置と同一の構成要素については同一の参照符号を付し、それらの説明については省略する。
本発明の外壁検査システム2は、壁面W上を移動する外壁検査装置1を制御するシステムであり、壁面W上を移動する外壁検査装置1を遠隔で操作することが可能で、壁面Wを自在に検査対象とする箇所まで移動して、検査することができる。したがって、人手による打診調査と違って、ゴンドラなどの足場を必要とせず、比較的安価に外壁を検査することができ、また検査対象箇所の近くで検査できるので、精度良く検査することができる。本発明の外壁検査装置1は、学校、ホテル、共同住宅などの建築物の外壁検査に用いられるだけでなく、橋梁、トンネル、高架道路などの構造物の外壁検査にも用いることも可能である。
外壁検査装置1は、壁面Wを検査するための検査装置Tと、壁面Wに対して吸着離脱可能な複数の吸着機構S1、S2がそれぞれ取り付けられた第1の移動部材P1および第2の移動部材P2と、第1の移動部材P1および第2の移動部材P2に接続され、第1の移動部材P1および第2の移動部材P2を駆動する駆動機構Dとを有している。
本発明の外壁検査システム2は、図14のブロック図に示されるように、制御部21、駆動部22、吸着部23、傾斜角検知部24、表示部25、入力部26および記憶部27を備えている。制御部21は、後述するように、複数の手段を備え、駆動部22、吸着部23、傾斜角検知部24、表示部25、入力部26および記憶部27とインターフェースを介して接続される。図14では、外壁検査システム2は、外壁検査装置1とは別に示されているが、外壁検査装置1内に設けられてもよい。
駆動部22は、外壁検査装置1の駆動機構Dにおける駆動源SM1、SM2、SM3、SM4とインターフェースを介して接続されている。駆動部22は、後述する制御部21の駆動指示手段21aからの駆動指示の信号を駆動源SM1、SM2、SM3、SM4のモータに送信するように構成されている。また、駆動部22は、駆動源SM1、SM2、SM3、SM4のモータが受ける負荷を検知し、負荷信号を後述する制御部21の負荷検出手段21bに送信するように構成されている。本実施形態では、駆動源SM1、SM2、SM3、SM4にサーボモータを用いており、サーボモータのサーボ機構が駆動部22の機能を有している。
吸着部23は、外壁検査装置1の吸着機構S1、S2における真空ポンプおよび圧力センサとインターフェースを介して接続されている。吸着部23は、後述する制御部21の減圧指示手段21dから減圧指示および減圧解除指示の信号を真空ポンプに送信するように構成されている。また、吸着部23は、圧力センサの圧力値を、後述する制御部21の負荷検出手段21bに送信するように構成されている。
傾斜角検知部24は、外壁検査装置1の第1および第2の移動部材P1、P2に設けられた水平器LGとインターフェースを介して接続され、水平器LGにより測定される鉛直方向に対する傾斜角を、後述する制御部21の傾斜角検出手段21eに送信するように構成されている。
表示部25は、液晶ディスプレイなどの表示装置、スピーカーなどの音発生装置、ランプなどの発光装置などで、制御部21からの信号を表示できるように構成されている。また、入力部26は、キーボードやマウスなどの入力装置で、制御部21にデータを入力できるように構成されている。また、記憶部27は、ハードディスクドライブなどの記憶装置で、制御部21のデータを保存できるように構成されている。
制御部21は、図14に示されるように、駆動指示手段21aおよび減圧指示手段21dを備え、さらに、負荷検出手段21b、異常状態通知手段21c、傾斜角検出手段21e、傾斜状態通知手段21f、圧力検出手段21gおよび吸着不良回避手段21hを備えている。
駆動指示手段21aは、インターフェースを介して駆動部22と接続され、第1および第2の移動部材P1、P2を駆動するように、駆動機構Dに指示するように構成されている。ここで、駆動機構Dに対する指示には、駆動のための指示だけでなく、駆動停止の指示も含まれる。
減圧指示手段21dは、インターフェースを介して吸着部23と接続され、吸着機構S1、S2を壁面Wに吸着または壁面Wから離脱させるように、吸着機構S1、S2に指示するように構成されている。ここで、吸着機構S1、S2を壁面Wに吸着させる指示とは、吸着機構S1、S2を壁面Wに吸着させるように吸着機構S1、S2内の圧力を減圧するための指示であり、吸着機構S1、S2を壁面Wから離脱させる指示とは、吸着機構S1、S2を壁面Wから離脱させるように吸着機構S1、S2内の減圧状態を解除するための指示である。減圧状態の解除は、真空ポンプの出力を切ることや外気を吸着機構S1、S2内にリークすることなどがあるが、吸着機構S1、S2を壁面Wから離脱させることができればよく、これに限定されない。
圧力検出手段21gは、インターフェースを介して吸着部23および吸着不良回避手段21hと接続され、減圧指示手段21dにより吸着機構S1、S2を壁面Wに吸着させる際、吸着機構S1、S2内の圧力が、吸着機構S1、S2が壁面Wに吸着していることを示す所定の圧力条件を満たすか否かを判断するように構成されている。吸着機構S1、S2内の圧力は、吸着盤S11、S22と壁面Wに囲繞される空間の圧力のことであり、圧力センサにより測定され、吸着部23から圧力データとして送信される。所定の圧力条件は、外壁検査装置1の重量や壁面Wの状態によって左右されるが、吸着機構S1、S2が壁面Wに吸着して外壁検査装置1を壁面W上で保持することができる圧力により定められる。また、判断結果は吸着不良回避手段21hに送信される。このように、圧力検出手段21gを備えていることで、吸着機構S1、S2が壁面Wに吸着しているかどうかを判断することができるので、外壁検査装置1が落下するのを防止することができる。
吸着不良回避手段21hは、インターフェースを介して圧力検出手段21g、減圧指示手段21dおよび駆動指示手段21aと接続され、圧力検出手段21gにより吸着機構S1、S2内の圧力が所定の圧力条件を満たしていないと判断された場合、吸着機構S1、S2内の圧力が所定の圧力条件を満たすまで、第1および第2の移動部材P1、P2を駆動する指示、および/または吸着機構S1、S2内をさらに減圧する指示を行なうように構成されている。吸着不良回避手段21hは、圧力検出手段21gによる判断結果を受信し、受信した判断結果をもとに、減圧指示手段21d、駆動指示手段21aおよび/または外壁検査装置1を操作する使用者に吸着不良状態であることを通知する。ここで、使用者への通知は、表示部25によって行なわれ、表示装置への表示、音発生装置による警告音発生、発光装置による警告灯発光などが行なわれる。つぎに、信号を受信した駆動指示手段21aは、吸着機構S1、S2内の圧力が所定の圧力条件を満たすまで、第1および第2の移動部材P1、P2を移動させるように指示し、および/または信号を受信した減圧指示手段21dは、吸着機構S1、S2内をさらに減圧するように真空ポンプの出力を上げるように指示する。移動には、壁面W位置を変えずに壁面Wに近接する方向に移動させたり、異なる壁面W位置へ移動させたりすることなどが含まれる。このように、吸着不良回避手段21hを備えることにより、吸着機構S1、S2が壁面Wに吸着できない場合でも、吸着機構S1、S2を壁面Wに押し付けたり、吸着可能な異なる壁面W位置に移動したり、吸着機構S1、S2内をさらに減圧したりすることができるので、外壁検査装置1が落下することなく、安定して壁面W上を移動することができる。さらに、使用者も吸着不良状態であることの通知を受けることになるので、手動でも吸着不良を回避する処理を行なうことができ、外壁検査装置1の落下を防止することができる。
負荷検出手段21bは、インターフェースを介して駆動部22および異常状態通知手段21cと接続され、駆動指示手段21aにより壁面W上で第1または第2の移動部材P1、P2を駆動する際、駆動機構Dの受ける負荷が、第1または第2の移動部材P1、P2を駆動するための所定の負荷条件を満たすか否かを判断するように構成されている。駆動機構Dの受ける負荷は、駆動部22から負荷データとして負荷検出手段21bに送信される。所定の負荷条件は、第1および第2の移動部材P1、P2の重量や駆動源SM1、SM2、SM3、SM4の出力によって左右されるが、第1および第2の移動部材P1、P2が移動を妨げられることなく移動するのに必要な負荷により定められる。また、判断結果は異常状態通知手段21cに送信される。このように、負荷検出手段21bを備えていることにより、壁面Wに障害物があっても、それを検知することができる。
異常状態通知手段21cは、インターフェースを介して負荷検出手段21bおよび駆動指示手段21aと接続され、負荷検出手段21bにより駆動機構Dの受ける負荷が所定の負荷条件を満たしていないと判断された場合、駆動指示手段21aおよび/または外壁検査装置1を操作する使用者に異常状態であることを通知するように構成されている。ここで、使用者への通知は、表示部25によって行なわれ、表示装置への表示、音発生装置による警告音発生、発光装置による警告灯発光などが行なわれる。このように、異常状態通知手段21cを備えていることにより、壁面Wに障害物があっても、手動または自動で障害物を回避するための処理を行なうことができる。
異常状態通知手段21cにより異常状態を通知された駆動指示手段21aが、駆動機構Dに対して第1または第2の移動部材P1、P2の駆動を停止する指示または駆動方向を変更する指示を行なうように構成されている。駆動を停止する指示を行なう構成により、壁面W上に障害物があっても、外壁検査装置1が落下するのを防止することができる。また、駆動方向を変更する指示を行なう構成により、外壁検査装置1は、自動で障害物を回避して、落下することなく、安定して壁面W上を移動することができる。
傾斜角検出手段21eは、インターフェースを介して傾斜角検知部24および傾斜状態通知手段21fと接続され、第1または第2の移動部材P1、P2の鉛直方向に対する角度が所定の角度条件を満たすか否かを判断するように構成されている。鉛直方向に対する角度は、第1および第2の移動部材P1、P2に設けられた水平器LGにより測定され、傾斜角検知部24を介して角度データとして送信される。所定の角度条件は、任意に定めることができ、たとえば5°などに設定することができる。また、判断結果は傾斜状態通知手段21fに送信される。
傾斜状態通知手段21fは、インターフェースを介して傾斜角検出手段21eおよび駆動指示手段21aと接続され、傾斜角検出手段21eにより第1または第2の移動部材P1、P2の鉛直方向に対する角度が所定の角度条件を満たしていないと判断された場合、第1または第2の移動部材P1、P2の鉛直方向に対する角度が所定の角度条件を満たしていないことを駆動指示手段21aおよび/または外壁検査装置1を操作する使用者に通知するように構成されている。ここで、使用者への通知は、表示部25によって行なわれ、表示装置への表示、音発生装置による警告音発生、発光装置による警告灯発光などが行なわれる。このように、傾斜状態通知手段21fを備えていることにより、第1または第2の移動部材P1、P2が鉛直方向に対して傾いていて、進行方向が歪んだり、十分な検査作業が行なえないような場合でも、手動または自動で傾斜を補正するための処理を行なうことができる。
傾斜状態通知手段21fにより傾斜状態が通知された駆動指示手段21aが、第1または第2の移動部材P1、P2の鉛直方向に対する角度が所定の角度条件を満たすように、駆動機構Dに対して第1または第2の移動部材P1、P2を回転させる指示を行なうように構成されている。回転させる指示を行なうように構成されることで、自動で進行方向を修正でき、また適切な検査動作を行なうことができる。
つぎに、図15のフローチャートを用いて、外壁検査システム2の一連の動作について説明する。
Step21
外壁検査装置1が壁面W上を移動する前においては、減圧指示手段21dの指示により、第1および第2の移動部材P1、P2に取り付けられた吸着機構S1、S2が壁面Wに吸着されるように吸着機構S1、S2内が減圧され、第1および第2の移動部材P1、P2が壁面上で保持されている。このとき、圧力検出手段21gによって、吸着不良がないか監視されているが、以下の工程においても、吸着機構S1、S2が壁面Wに吸着されているときは常にその監視がなされている。
Step22
外壁検査装置1が壁面W上の移動を開始する際、先ず、減圧指示手段21dによって、第1および第2の移動部材P1、P2のいずれかの吸着機構S1、S2内の減圧状態が解消され、その吸着機構S1、S2が壁面Wから離脱する。
Step23
壁面Wから離脱した第1または第2の移動部材P1、P2が、駆動指示手段21aの指示によって、垂直移動駆動機構DVに駆動され、壁面Wから離間する方向に移動する。
Step24
壁面Wから離脱した第1または第2の移動部材P1、P2が、駆動指示手段21aの指示によって、スライド移動駆動機構DSに駆動され、壁面Wに固定された第1または第2の移動部材P1、P2に対してスライド移動する。
Step25
負荷検出手段21bは、駆動機構Dの負荷を検出した駆動部22から負荷データを受信し、駆動機構Dの受ける負荷が、第1および第2の移動部材P1、P2を駆動するための所定の負荷条件を満たすか否かを判断する。たとえば、第1および第2のスライド移動機構DS1の駆動源SM1、SM2であるサーボモータが受ける負荷が所定の負荷条件を満たすか否かが判断される。
Step251
負荷検出手段21bにより駆動機構Dの受ける負荷が所定の負荷条件を満たしていないと判断された場合、すなわち壁面Wから離脱した第1または第2の移動部材P1、P2の移動が妨げられていると判断された場合、異常状態通知手段21cは、駆動指示手段21aおよび/または外壁検査装置1を操作する使用者に異常状態であることを通知する。
Step252
異常状態通知手段21cにより異常状態を通知された駆動指示手段21aは、駆動機構Dに対して第1または第2の移動部材P1、P2の駆動を停止する指示または駆動方向を変更する指示を行なう。
Step26
負荷検出手段21bにより駆動機構Dの受ける負荷が所定の負荷条件を満たしていると判断された場合、傾斜角検出手段21eは、壁面Wから離脱した第1または第2の移動部材P1、P2の鉛直方向に対する角度を検出した傾斜角検知部24から角度データを受信し、その角度が所定の角度条件を満たすか否かを判断する。
Step261
壁面Wから離脱した第1または第2の移動部材P1、P2の鉛直方向に対する角度が所定の角度条件を満たしていないと傾斜角検出手段21eにより判断された場合、傾斜状態通知手段21fは、その角度が所定の角度条件を満たしていないことを駆動指示手段21aおよび/または外壁検査装置1を操作する使用者に通知する。
Step262
傾斜状態通知手段21fにより傾斜状態が通知された駆動指示手段21aは、壁面Wから離脱した第1または第2の移動部材P1、P2の鉛直方向に対する角度が所定の角度条件を満たすように、駆動機構Dに対して第1または第2の移動部材P1、P2を回転させる指示を行なう。
Step27
傾斜角検出手段21eにより鉛直方向に対する角度が所定の角度条件を満たすと判断された場合、壁面Wから離脱した第1または第2の移動部材P1、P2が、駆動指示手段21aの指示によって、垂直移動駆動機構DVに駆動され、壁面Wに近接する方向に移動する。
Step28
壁面Wに当接した、第1または第2の移動部材P1、P2の吸着機構S1、S2内が、減圧指示手段21dの指示によって減圧される。
Step29
圧力検出手段21gは、吸着機構S1、S2内の圧力を検出した吸着部23から圧力データを受信し、その圧力が、吸着機構S1、S2が壁面Wに吸着していることを示す所定の圧力条件を満たすか否かを判断する。
Step291
圧力検出手段21gにより吸着機構S1、S2内の圧力が所定の圧力条件を満たしていないと判断された場合、すなわち吸着機構S1、S2が壁面Wに吸着していないと判断された場合、吸着不良回避手段21hは、駆動指示手段21a、減圧指示手段21dおよび/または外壁検査装置1を操作する使用者に吸着不良状態であることを通知する。
Step292
吸着不良回避手段21hによって吸着不良であることが通知されると、駆動指示手段21aは、吸着機構S1、S2内の圧力が所定の圧力条件を満たすまで、第1または第2の移動部材P1、P2を移動させるように指示し、および/または減圧指示手段21dが、吸着機構S1、S2内をさらに減圧するように真空ポンプの出力を上げるように指示する。
圧力検出手段21gにより吸着機構S1、S2内の圧力が所定の圧力条件を満たしていると判断された場合、Step22に戻り、上述のステップが繰り返される。
このように、壁面検査装置1は、駆動指示手段21aおよび減圧指示手段21dの指示により、第1および第2の移動部材P1、P2が壁面Wに対して吸着と離脱を繰り返し、第1および第2の移動部材P1、P2の、スライド移動の方向における相対距離を伸縮させながら移動することにより、壁面W上を移動することができる。
以上示してきたように、本発明の外壁検査システムによれば、外壁面にあらかじめ認められる窓や突起物などの障害物があったとしても、駆動指示手段の指示により第1および第2の移動部材が移動を繰り返すことで、壁面上を自在に移動することができるので、検査対象箇所まで移動して検査することができる。さらに、負荷検出手段や異常状態通知手段を備えることにより、不意の障害物に対しても、その障害物を回避して移動することが可能である。