第1偏心回転歯車に第1貫通孔が形成されており、その第1貫通孔を第2クランクシャフトが通過していてもよい。また、第2偏心回転歯車に第2貫通孔が形成されており、その第2貫通孔を第1クランクシャフトが通過してもよい。軸方向において、第1,第2クランクシャフトを、第1,第2偏心回転歯車(第1,第2偏心体)の外側で支持することができる。
第1モータと第2モータが、第1偏心回転歯車に対して、キャリアの回転軸方向の一方に配置されていてもよい。歯車伝動装置を製造するときに、第1モータと第2モータの双方を、軸方向の片側からクランクシャフトに取り付けることができる。
第1クランクシャフトのシャフト部が、第1偏心体から第1方向に延びていてもよい。また、第2クランクシャフトのシャフト部が、第2偏心体から第1方向とは反対方向の第2方向に延びていてもよい。第1モータと第2モータを、第1,第2偏心回転歯車に対して、互いに反対側に配置することができる。すなわち、第1モータと第2モータを、歯車伝動装置の軸方向の両側に配置することができる。歯車伝動装置のバランスを良好にすることができる。
第1クランクシャフトのシャフト部が第1方向に延びており、第2クランクシャフトのシャフト部が第2方向に延びている場合、第1クランクシャフトと第2クランクシャフトが同軸に配置されていてもよい。歯車伝動装置を軸方向から観察したときに、第1クランクシャフトと第2クランクシャフトがオーバーラップする。歯車伝動装置のスペースを有効に使うことができる。
(第1実施例)
図1に示す歯車伝動装置100は、3個外歯歯車22,24及び26が内歯歯車30と噛み合いながら偏心回転する減速機である。図4及び図5は、図1とは異なる部分の歯車伝動装置100の断面を示している。歯車伝動装置100は、外歯歯車22,24及び26と内歯歯車30の歯数差を利用し、モータ38のトルクを増大して出力する。外歯歯車22,24及び26は偏心回転歯車の一例であり、内歯歯車30は自転歯車の一例である。なお、歯車伝動装置100は、3個のクランクシャフト20,70及び80を備えている(図4,5も参照)。以下の説明では、第1外歯歯車22,第2外歯歯車24及び第3外歯歯車26と称し、第1クランクシャフト20,第2クランクシャフト70及び第3クランクシャフト80と称することがある。まず、図1及び図2を参照し、歯車伝動装置100の基本構造について説明する。
歯車伝動装置100は、ケース2とキャリア8と第1クランクシャフト20と外歯歯車22,24及び26を備えている。内歯歯車30は、ケース2の内周に複数の内歯ピン34を配置することにより形成されている。すなわち、ケース2の一部が内歯歯車30を構成している。ケース2とキャリア8の間に一対の軸受4が配置されている。軸受4は、アンギュラ玉軸受である。キャリア8は、一対の軸受4によって、ケース2に対してアキシャル方向及びラジアル方向に移動することが規制されている。キャリア8又はケース2が、歯車伝動装置100の出力軸である。軸線62は、キャリア8及びケース2の回転軸である。
キャリア8は、第1プレート8aと第2プレート8cを備えている。第1プレート8aから第2プレート8cに向けて柱状部8bが延びており、柱状部8bと第2プレート8cが固定されている。柱状部8bは、第1外歯歯車22の貫通孔22c,第2外歯歯車24の貫通孔24c及び第3外歯歯車26の貫通孔26cを通過している。柱状部8bと、貫通孔22c,24c及び26cとの間には隙間が設けられている。
第1クランクシャフト20は、一対の軸受14によって、キャリア8に支持されている。軸受14は、円錐ころ軸受である。第1クランクシャフト20は、一対の軸受14によって、キャリア8に対してアキシャル方向及びラジアル方向に移動することが規制されている。第1クランクシャフト20の回転軸52は、回転軸62と平行である。すなわち、第1クランクシャフト20は、回転軸62からオフセットした位置で、回転軸62に平行に延びている。第1クランクシャフト20は、1個の第1偏心体16を備えている。第1偏心体16が、円筒ころ軸受68を介して、第1外歯歯車22の貫通孔22aに係合している。回転軸52方向において、第1偏心体16は、一対の軸受14の間に配置されている。第1外歯歯車22は、第1クランクシャフト20を介してキャリア8に支持されている。第1クランクシャフト20は、第2外歯歯車24の貫通孔24b及び第3外歯歯車26の貫通孔26bを通過している。貫通孔24b及び26bについては後述する。
第1クランクシャフト20の一端に、モータ38が取り付けられている。回転軸52方向において、モータ38は、一対の軸受14の外側に配置されている。モータ38は、2個のアキシャルギャップモータ40,44を備えている。以下、第1アキシャルギャップモータ40,第2アキシャルギャップモータ44と称することがある。第1アキシャルギャップモータ40の位相角と第2アキシャルギャップモータ44の位相角は揃っている。なお、モータ38は、第2クランクシャフト70及び第3クランクシャフト80にも取り付けられている。以下、クランクシャフト20,70及び80に取り付けられているモータ38を、各々第1モータ38a,第2モータ38b及び第3モータ38cと称することがある。モータ38の詳細については後述する。
第1クランクシャフト20の一端には、エンコーダ54も取り付けられている。第1クランクシャフト20の他端(モータ38及びエンコーダが取り付けられている端部と反対の端部)に、ブレーキ12が取り付けられている。回転軸52方向において、エンコーダ54及びブレーキ12は、一対の軸受14の外側に配置されている。以下、クランクシャフト20,70及び80に取り付けられているブレーキ12を、各々第1ブレーキ12a,第2ブレーキ12b及び第3ブレーキ12cと称することがある。また、クランクシャフト20,70及び80に取り付けられているエンコーダ54を、各々第1エンコーダ54a,第2エンコーダ54b及び第3エンコーダ54cと称することがある。
第1モータ38aのトルクが第1クランクシャフト20に伝達されると、第1クランクシャフト20が回転する。第1クランクシャフト20の回転に伴って、第1偏心体16が偏心回転する。第1偏心体16は、回転軸52の周りを偏心回転する。第1偏心体16の偏心回転に伴って、第1外歯歯車22が、内歯歯車30と噛み合いながら偏心回転する。外歯歯車22は、回転軸62の周りを偏心回転する。第1外歯歯車22の歯数と内歯歯車30の歯数(内歯ピン34の数)は異なる。そのため、第1外歯歯車22が偏心回転すると、第1外歯歯車22と内歯歯車30の歯数差に応じて、第1外歯歯車22を支持しているキャリア8が、内歯歯車30(ケース2)に対して相対的に回転する。
なお、上記したように、第1クランクシャフト20は、貫通孔24b及び貫通孔26bを通過している。そのため、第1クランクシャフト20の回転は、第2外歯歯車24及び第3外歯歯車26の運動(偏心回転)に影響を及ぼさない。すなわち、第1モータ38aは、第1外歯歯車22を他の外歯歯車24,26から独立して駆動する。
図1〜5を参照し、歯車伝動装置100について詳細に説明する。なお、図4は第2クランクシャフト70の周囲の構造を示しており、図5は第3クランクシャフト80の周囲の構造を示している。なお、クランクシャフト70,80の周囲の構造について、第1クランクシャフト20の周囲の構造と共通する特徴については説明を省略することがある。
図3に示すように、第1外歯歯車22には、径が異なる4種類の貫通孔22a、22b、22c及び22dが形成されている。貫通孔22a、22b及び22cは、第1外歯歯車22の周方向に形成されている。貫通孔22aに第1クランクシャフト20が係合しており、貫通孔22bを第2クランクシャフト70及び第3クランクシャフト80が通過しており、貫通孔22cを柱状部8b(キャリア8)が通過しており、貫通孔22dを筒体64(図1,4及び5も参照)が通過している。図3では筒体64を省略している。以下の説明では、貫通孔22a,22b,22c及び22dを、各々第1貫通孔22a,第2貫通孔22b,第3貫通孔22c及び第4貫通孔22dと称することがある。第3貫通孔22cは、第1貫通孔22aと第2貫通孔22bの間、及び第2貫通孔22b,22bの間に形成されている。第4貫通孔22dは、第1外歯歯車22の中央に形成されている。クランクシャフト20,70及び80は、歯車伝動装置100の周方向に等間隔に配置されている。
図4に示すように、第2クランクシャフト70は、一対の軸受14によって、キャリア8に支持されている。第2クランクシャフト70の回転軸72は、回転軸62と平行である。第2クランクシャフト70は、1個の第2偏心体76を備えている。第2偏心体76が、円筒ころ軸受78を介して、第2外歯歯車24の第1貫通孔24aに係合している。第2クランクシャフト70は、第1外歯歯車22の第2貫通孔22b及び第3外歯歯車26の第2貫通孔26bを通過している。第2クランクシャフト70の一端に、第2モータ38b及び第2エンコーダ54bが取り付けられている。第2クランクシャフト70の他端に、第2ブレーキ12bが取り付けられている。第2モータ38bは、第2外歯歯車24を他の外歯歯車20,26から独立して駆動する。回転軸62において、第2外歯歯車24は、第1外歯歯車22と並んで配置されている。
図5に示すように、第3クランクシャフト80は、一対の軸受14によって、キャリア8に支持されている。第3クランクシャフト80の回転軸82は、回転軸62と平行である。第3クランクシャフト80は、1個の第3偏心体86を備えている。第3偏心体86が、円筒ころ軸受88を介して、第3外歯歯車26の第1貫通孔26aに係合している。第3クランクシャフト80は、第1外歯歯車22の第2貫通孔22b及び第2外歯歯車24の第2貫通孔24bを通過している。第3クランクシャフト80の一端に、第3モータ38c及び第3エンコーダ54cが取り付けられている。第3クランクシャフト80の他端に、第3ブレーキ12cが取り付けられている。第3モータ38cは、第3外歯歯車26を他の外歯歯車20,24から独立して駆動する。回転軸62において、第3外歯歯車26は、第1外歯歯車22と並んで配置されている。
歯車伝動装置100では、第1クランクシャフト20のみが第1外歯歯車22に係合しており、第2クランクシャフト70及び第3クランクシャフト80は第1外歯歯車22に係合していない。第2クランクシャフト70のみが第2外歯歯車24に係合しており、第1クランクシャフト20及び第3クランクシャフト80は第2外歯歯車24に係合していない。第3クランクシャフト80のみが第3外歯歯車26に係合しており、第1クランクシャフト20及び第2クランクシャフト70は第3外歯歯車26に係合していない。
図6〜図8を参照し、外歯歯車22,24及び26について説明する。外歯歯車22,24及び26の形状は同一である。歯車伝動装置100は、外歯歯車22,24及び26の組み付け形態に特徴を有する。図6〜図8は、図3に示す状態のときの外歯歯車22,24及び26を示している。以下、第1外歯歯車22について詳細に説明し、第2外歯歯車24及び第3外歯歯車26については説明を省略することがある。
図6に示すように、第1外歯歯車22には、4種類の貫通孔22a,22b、22c及び24dが形成されている。貫通孔22a,22b,22c及び22dの順に、径が大きくなっている。第1外歯歯車22には、1個の第1貫通孔22aと、2個の第2貫通孔22bが形成されている。貫通孔22a、22bは、第1外歯歯車22の周方向に等間隔に形成されている。上記したように、第1クランクシャフト20が第1貫通孔22aに係合し、第2クランクシャフト70と第3クランクシャフト80が第2貫通孔22bを通過している。
6個の第3貫通孔22cが、第1クランクシャフト20の周方向に形成されている。第3貫通孔22cは、第1貫通孔22aと第2貫通孔22bの間、及び、第2貫通孔22b,22bの間に2個ずつ形成されている。上記したように、キャリア8(柱状部8b)が、第3貫通孔22cを通過する。すなわち、第1外歯歯車22の周方向において、クランクシャフト20,70、80の両側に、柱状部8bが配置される。第1外歯歯車22の中央に、第4貫通孔22dが形成されている。
図7に示すように、第2外歯歯車24は、第1外歯歯車22を120度右回転させたものに相当する(図6も参照)。第2外歯歯車24は、1個の第1貫通孔24a,2個の第2貫通孔24b,6個の第3貫通孔24c及び1個の第4貫通孔24dを備えている。図8に示すように、第3外歯歯車26は、第1外歯歯車22を120度左回転させたものに相当する。第3外歯歯車26は、1個の第1貫通孔26a,2個の第2貫通孔26b,6個の第3貫通孔26c及び1個の第4貫通孔26dを備えている。第1貫通孔22a,24a及び26aの径、第2貫通孔22b,24b及び26bの径、第3貫通孔22c,24c及び26cの径、第4貫通孔22d,24d及び26dの径は各々等しい。
図1,4及び5に示すように、歯車伝動装置100では、回転軸62方向において、第1貫通孔22aと第2貫通孔24b,26b、第1貫通孔24aと第2貫通孔22b,26b、第1貫通孔26aと第2貫通孔20b,24bの各々がオーバーラップしている。
図9から図11を参照し、歯車伝動装置100の特徴を説明する。なお、図9及び図10は、歯車伝動装置100の特徴を概念的に示すものであり、正確な構造を示すものではない。図9及び図10は、第1外歯歯車22が内歯歯車30に最も噛み合っている部分(回転軸62から最も遠くに位置する歯先の周囲)を示している。図9に示すように、歯車伝動装置100の駆動中は、第1外歯歯車22の外歯が内歯歯車30(内歯ピン34)と接している。図9では外歯歯車22の歯先の右側が内歯歯車30と接し、歯先の左側は内歯歯車30と接していない。第2外歯歯車24及び第3外歯歯車26も同様に、内歯歯車30に最も噛み合っている部分では、歯先の右側が内歯歯車30と接し、歯先の左側は内歯歯車30と接していない。歯先の左側と内歯ピン34との隙間が、外歯歯車22と内歯歯車30とのバックラッシュに相当する。
図10に示すように、歯車伝動装置100では、歯車伝動装置100の駆動を停止させた後に、3個の外歯歯車22,24及び26のうちの少なくとも1個の外歯歯車(図10では第2外歯歯車24)を、駆動中とは反対方向に回転させることができる。より具体的には、3個のクランクシャフト20,70及び80の回転を停止した後に、第2クランクシャフト70だけを反対方向に回転させることができる。その結果、第1外歯歯車22及び第3外歯歯車26は歯先の右側が内歯歯車30に接し、第2外歯歯車24は歯先の左側が内歯歯車30に接する。なお、図10では第3外歯歯車26の図示を省略している。
歯車伝動装置100が停止しているときに、内歯歯車30の内歯(内歯ピン34)が、第1外歯歯車22及び第3外歯歯車26と、第2外歯歯車24とによって挟まれる。歯車伝動装置100の停止中に、外歯歯車22,24及び26ががたつくことを抑制することができる。また、上記したように、第1外歯歯車22に係合している第1クランクシャフト20と、第2外歯歯車24に係合している第2クランクシャフト70とが、共通のキャリア8に支持されている。そのため、歯車伝動装置100の停止中に、歯車伝動装置100の出力部の回転角がずれることを抑制することができる。換言すると、内歯歯車30と、外歯歯車22,24及び26との間のバックラッシュの影響を低減することができる。
図11に示すように、歯車伝動装置100では、1個のコントローラ90が、3個のモータ38a,38b及び38cを個別に駆動することができる。すなわち、コントローラ90が、第1クランクシャフト20,第2クランクシャフト70及び第3クランクシャフト80の回転方向,回転速度、駆動タイミング等を別々に調整することができる。そのため、上記したように、歯車伝動装置100が停止した後に、第1外歯歯車22及び第3外歯歯車26を偏心回転させることなく、第2外歯歯車24だけを偏心回転させることができる。
歯車伝動装置100の他の特徴を説明する。図1及び図2に示すように、第1モータ38aは2個のアキシャルギャップモータ40,44を備えている。第1アキシャルギャップモータ40と第2アキシャルギャップモータ44は、向かい合わせに配置されている。第1アキシャルギャップモータ40の位相角と第2アキシャルギャップモータ44の位相角は揃っている。そのため、第1クランクシャフト20は、スムーズに回転する。なお、第2モータ38b及び第3モータ38cの構造は、実質的に第1モータ38aと同一である。
第1アキシャルギャップモータ40は、ロータ42とステータ60を備えている。ロータ42の表面には永久磁石56が取り付けられており、ステータ60には巻線58が取り付けられている。第2アキシャルギャップモータ44は、ロータ42とステータ46を備えている。ロータ42の表面には永久磁石50が取り付けられおり、ステータ46には巻線48が取り付けられている。すなわち、第1アキシャルギャップモータ40と第2アキシャルギャップモータ44は、共通のロータ42を用いている。上記したように、第1アキシャルギャップモータ40と第2アキシャルギャップモータ44は、位相角が揃っている。そのため、アキシャルギャップモータ40,44には、コントローラ90(図11を参照)から同一の信号(電流)が供給される。
上記したように、アキシャルギャップモータ40,44は、共通のロータ42を用いている。より具体的には、ロータ42の一方の表面が第1アキシャルギャップモータ40のロータとして機能し、ロータ42の他方の表面が第2アキシャルギャップモータ44のロータとして機能する。そのため、第1アキシャルギャップモータ40と第2アキシャルギャップモータ44は、向かい合っているということができる。第1アキシャルギャップモータ40に生じる吸引力と、第2アキシャルギャップモータ44に生じる吸引力が釣り合う。アキシャル方向の力が第1クランクシャフト20にアキシャル方向の力が加わることを抑制することができる。
第1アキシャルギャップモータ40のステータ60が第2プレート8cに固定されており、第2アキシャルギャップモータ44のステータ46がモータフランジ66に固定されている。モータフランジ66は、キャリア8(第2プレート8c)に固定されている。そのため、ステータ46は、キャリア8に固定されているということができる。回転軸52方向において、ロータ42は、一対の軸受14の外側で第1クランクシャフト20に取り付けられている。この特徴は、第2モータ38b及び第3モータ38cも同様である。すなわち、回転軸62方向において、モータ38a、38b及び38cの全てが、歯車伝動装置100の一端側に配置されている。モータ38をクランクシャフト20,70及び80に組み付ける工程を簡単にすることができる。
図1に示すように、キャリア8(第1プレート8a,第2プレート8c)の中央、及びモータフランジ66の中央に貫通孔が形成されており、その貫通孔内に筒体64が配置されている。筒体64は、第1プレート8a,第2プレート8c及びモータフランジ66に固定されている。配線等(図示省略)を、筒体64内部に通過させることができる。すなわち、回転軸62方向において、他の部品が、歯車伝動装置100の中央貫通孔10を通過することができる。筒体64と第1プレート8a、及び筒体64とモータフランジ66の間にはO−リングが配置されている。また、筒体64と第2プレート8cの間にはオイルシールが配置されている。さらに、ケース2と第1プレート8aの間、及びケース2と第2プレート8cの間にオイルシール6が配置されている。歯車伝動装置100内の潤滑材等が、歯車伝動装置100の外部に漏れることが規制されている。
ここで、図12〜図14を参照し、歯車伝動装置100の駆動方法をいくつか説明する。図12〜14の横軸は時間を示し、縦軸はモータの出力軸の位相(クランクシャフトの回転角)を示す。区間T1は、歯車伝動装置100の出力軸を正回転(たとえば右回転)している時間を示す。区間T2は、歯車伝動装置100の出力軸を停止している時間を示す。区間T3は、歯車伝動装置100の出力軸を再び正回転している時間を示す。曲線38aは第1モータ38aの出力軸の位相を示し、曲線38bは第2モータの出力軸の位相を示し、曲線38nは従来の歯車伝動装置におけるモータの出力軸の位相を示す。
図12に示す第1の駆動方法では、第1モータ38aは、歯車伝動装置100の出力部(キャリア8又はケース2)の回転動作と同期して駆動・停止を繰り返す。すなわち、第1モータ38aは、従来の歯車伝動装置と同じタイミングで駆動・停止を行う。第2モータ38bは、区間T1及び区間T3では第1モータ38aと同じ動作を行う。しかしながら、第2モータ38bは、歯車伝動装置100の駆動を停止した直後に、出力軸を逆回転させる。歯車伝動装置100を停止している間(区間T2)、内歯歯車30が、第1外歯歯車22と第2外歯歯車24によって挟まれる(図9,10も参照)。また、第2モータ38bは、第1モータ38aを駆動する直前に、逆回転させた分だけ出力軸を正回転させる。それにより、区間T3において、第2モータ38bは、第1モータ38aと同期して駆動することができる。
図13に示す第2の駆動方法では、第1モータ38a及び第2モータ38bの双方が、従来のモータと異なる動作を行う。区間T1及び区間T3では、第1モータ38a及び第2モータ38bは同じ動作を行う。第1モータ38aは、歯車伝動装置100の駆動停止よりも遅れて停止する。換言すると、第1モータ38aは、歯車伝動装置100の駆動を停止させた直後に、出力軸をさらに正回転させる。第2モータ38bは、第1の駆動方法と同様に、歯車伝動装置100の駆動を停止した直後に、出力軸を逆回転させる(図12も参照)。すなわち、第2の駆動方法では、歯車伝動装置100の駆動を停止した直後に、第1モータ38aの出力軸を正回転させ、第2モータ38bの出力軸を逆回転させる。内歯歯車30を、第1外歯歯車22と第2外歯歯車24でより強固に挟むことができる。第1モータ38aは、歯車伝動装置100を駆動する直前に、正回転させた分だけ出力軸を逆回転させる。それにより、区間T3において、第1モータ38aと第2モータ38bは、同期して駆動することができる。
図14に示す第3の駆動方法でも、第1モータ38a及び第2モータ38bの双方が、従来のモータと異なる動作を行う。第3の駆動方法では、第1モータ38a及び第2モータ38bを逆回転させない。第1モータ38aは、第2の駆動方法と同様に、歯車伝動装置100の駆動停止よりも遅れて停止する。すなわち、第1モータ38aは、歯車伝動装置100の駆動と停止させた直後に、出力軸をさらに正回転させる。第2モータ38bは、歯車伝動装置100の停止よりも前に駆動を停止する。これにより、第1モータ38a及び第2モータ38bの双方を逆回転させることなく、内歯歯車30を、第2の駆動方法と同程度に第1外歯歯車22と第2外歯歯車24で強固に挟むことができる。また、第1モータ38aは、区間T2の開始の際に遅れて停止させた分だけ、歯車伝動装置100の駆動開始から遅れて駆動を開始する。第2モータ38bは、駆動を停止してから区間T2の開始に相当する分だけ、歯車伝動装置100の駆動開始よりも前に駆動を開始する。第3の駆動方法は、第2モータ38bが第1モータ38aよりも早いタイミングで駆動・停止を行う。それにより、区間T3において、第1モータ38aと第2モータ38bは、同期して駆動することができる。
上記第1〜第3の駆動方法において、第1モータ38aの動作と第2モータ38bの動作が反対であってもよい。なお、上記第1〜第3の駆動方法では、第1モータ38aと第2モータ38bの動作について説明した。第3モータ38cは、第1モータ38a又は第2モータ38bと同じ動作を行ってもよい。あるいは、第3モータ38cは、従来の歯車伝動装置と同様に、歯車伝動装置の駆動・停止と同期して動作を行ってもよい。上記した第1〜第3の駆動方法が可能なのは、歯車伝動装置100が2個以上の外歯歯車を備えており、各々の外歯歯車に対応するクランクシャフトを備えており、それらのクランクシャフトを他のクランクシャフトから独立して駆動することができるからである。すなわち、本明細書で開示する技術は、3個の外歯歯車、3個のクランクシャフト及び3個のモータを備える歯車伝動装置に限定されるものではない。
なお、上記実施例では、外歯歯車が偏心回転する歯車伝動装置について説明した。しかしながら、本明細書で開示する技術は、内歯歯車が偏心回転する歯車伝動装置に適用することもできる。重要なことは、少なくとも2個の偏心回転歯車を備えており、少なくとも1個の偏心回転歯車に係合するとともに少なくとも他の1個の偏心回転歯車には係合しないクランクシャフトが各々の偏心回転歯車に設けられており、それらのクランクシャフトの各々にモータが取り付けられており、各々のモータを独立して駆動することにより少なくとも1個の偏心回転歯車を他の偏心回転歯車から独立して駆動することである。
(第2実施例)
歯車伝動装置200について説明する。歯車伝動装置200は、歯車伝動装置100の変形例である。具体的には、歯車伝動装置200は、クランクシャフトの形状及びモータの配置位置が歯車伝動装置100と異なる。そのため、歯車伝動装置100と同じ部材には、歯車伝動装置100と同じ参照番号又は下二桁の数字が同じ参照番号を付すことにより、説明を省略することがある。
図15及び図16に示すように、第1クランクシャフト220の第1偏心体216が、第1外歯歯車222の第1貫通孔222aに係合している。第1クランクシャフト220のシャフト部は、第1偏心体216から回転軸252の一方向に延びている。換言すると、第1偏心体216は、第1クランクシャフト220の端部に形成されている。第2クランクシャフト270の第2偏心体276が、第2外歯歯車224の第1貫通孔224aに係合している。第2偏心体276は、第2クランクシャフト270の端部に形成されている。第2クランクシャフト270のシャフト部は、第2偏心体276から、第1クランクシャフト220のシャフト部とは反対方向に延びている。なお、第1クランクシャフト220と第2クランクシャフト270は同軸に配置されている。
歯車伝動装置200では、3個の第1クランクシャフト220が、回転軸262の周方向に等間隔に配置されている。図15及び図16には、3個の第1クランクシャフト220のうちの1個が示されている。他の2個の第1クランクシャフト220は、図示を省略する。3個の第1クランクシャフト220の全てが、第1外歯歯車222に係合している。3個の第1クランクシャフト220のうちの1個に、エンコーダ254が取り付けられている。3個の第1クランクシャフト220の全てに、第1アキシャルギャップモータ240が取り付けられている。3個の第1アキシャルギャップモータ240うちの2個の第1アキシャルギャップモータ240は、図示を省略する。
第1アキシャルギャップモータ240は、ロータ251とステータ260を備えている。ロータ251は、第1クランクシャフト220のシャフト部に固定されている。ロータ251とキャリア208(第1プレート208a)の間に、深溝玉軸受292が配置されている。ロータ251は、キャリア208に回転可能に支持されているということができる。ステータ260は、第1モータフランジ207に固定されている。第1モータフランジ207は、キャリア208に固定されている。そのため、ステータ260は、キャリア208に固定されているということができる。
3個の第2クランクシャフト270が、回転軸362の周方向に等間隔に配置されている。3個の第2クランクシャフト270のうちの2個の第2クランクシャフト270は、図示を省略する。3個の第2クランクシャフト270の全てが、第2外歯歯車224に係合している。3個の第2クランクシャフト270のうちの1個に、エンコーダが取り付けられている(図示省略)。3個の第2クランクシャフト270の全てに、第2アキシャルギャップモータ244が取り付けられている。3個の第2アキシャルギャップモータ244うちの2個の第2アキシャルギャップモータ244は、図示を省略する。
第2アキシャルギャップモータ244は、ロータ241とステータ246を備えている。ロータ241は、第2クランクシャフト270のシャフト部に固定されている。ロータ241とキャリア208(第2プレート208c)の間に、深溝玉軸受294が配置されている。ロータ241は、キャリア208に回転可能に支持されているということができる。ステータ246は、第2モータフランジ266に固定されている。第2モータフランジ266は、キャリア208に固定されている。そのため、ステータ246は、キャリア208に固定されているということができる。
歯車伝動装置200の特徴を説明する。上記したように、第1クランクシャフト220のシャフト部が、第1偏心体216から一方向に延びている。第1クランクシャフト220は、第2外歯歯車224を通過していない。そのため、第2外歯歯車224に、第1クランクシャフト220を通過させるための貫通孔を形成する必要がない。歯車伝動装置200は、歯車伝動装置100と比較して、第2外歯歯車224の強度が強い。同様に、第2クランクシャフト270は第1外歯歯車222を通過していない。歯車伝動装置200は、歯車伝動装置100と比較して、第1外歯歯車222の強度も強い。
歯車伝動装置200では、第1クランクシャフト220のシャフト部が延びる方向と、第2クランクシャフト270のシャフト部が延びる方向とが反対である。そして、第1アキシャルギャップモータ240と第2アキシャルギャップモータ244が、各々回転軸252方向の端部に配置されている。そのため、歯車伝動装置200の回転軸262方向において、歯車伝動装置200の重量バランスが安定する。また、第1アキシャルギャップモータ240と第2アキシャルギャップモータ244の発熱が、回転軸262方向の両側で起こる。そのため、歯車伝動装置200の熱バランスが安定する。
上記したように、歯車伝動装置200では、3個の第1クランクシャフト220の各々に第1アキシャルギャップモータ240が取り付けられており、3個の第2クランクシャフト270の各々に第2アキシャルギャップモータ244が取り付けられている。しかしながら、第1アキシャルギャップモータ240は、少なくとも1個の第1クランクシャフト220に取り付けられていればよい。同様に、第2アキシャルギャップモータ244は、少なくとも1個の第2クランクシャフト270に取り付けられていればよい。モータが取り付けられていないクランクシャフト220,270は、外歯歯車222,224の偏心回転に伴って、従動的に回転することができる。従動的に回転するクランクシャフトにブレーキを取り付けてもよい。モータとブレーキの双方を1個のクランクシャフトに取り付ける形態と比較して、歯車伝動装置の回転軸方向の長さを短くすることができる。なお、第1クランクシャフト220と第2クランクシャフト270は、同軸でなくてもよい。
(第3実施例)
歯車伝動装置300について説明する。歯車伝動装置300は、歯車伝動装置200の変形例である。具体的には、歯車伝動装置300は、1個のクランクシャフトに係合す外歯歯車の数が歯車伝動装置200と異なる。歯車伝動装置200と同じ部材には、歯車伝動装置200と同じ参照番号又は下二桁の数字が同じ参照番号を付すことにより、説明を省略することがある。
図17及び図18に示すように、第1クランクシャフト320が、2個の外歯歯車322,323に係合している。また、第2クランクシャフト370が、2個の外歯歯車324,325に係合している。以下、第1外歯歯車322,第2外歯歯車324、第3外歯歯車323及び第4外歯歯車325と称することがある。第3外歯歯車323には、第1貫通孔323a,第2貫通孔323b,第3貫通孔323c及び第4貫通孔323dが形成されている。第4外歯歯車325には、第1貫通孔325a,第2貫通孔325b,第3貫通孔325c及び第4貫通孔325dが形成されている。第1外歯歯車322と第3外歯歯車323は、回転軸352に対して対称である。そのため、第1クランクシャフト320の回転バランスが安定する。第2外歯歯車324と第4外歯歯車325も、回転軸352に対して対称である。第2クランクシャフト370の回転バランスも安定する。
第1クランクシャフト320は、回転軸352方向に並んでいる2個の偏心体316,317(第1偏心体316、第3偏心体317)を備えている。第1偏心体316が、円筒ころ軸受368を介して、第1外歯歯車322の第1貫通孔322aに係合している。第3偏心体317が、円筒ころ軸受369を介して、第3外歯歯車323の第1貫通孔323aに係合している。第2クランクシャフト370は、回転軸352方向に並んでいる2個の偏心体376,375(第2偏心体376、第4偏心体375)を備えている。第2偏心体376が、円筒ころ軸受378を介して、第2外歯歯車324の第1貫通孔324aに係合している。第4偏心体375が、円筒ころ軸受379を介して、第4外歯歯車325の第1貫通孔325aに係合している。
歯車伝動装置300では、第1外歯歯車322と第3外歯歯車323が同期して偏心回転する。また、第2外歯歯車324と第4外歯歯車325が同期して偏心回転する。歯車伝動装置300の駆動が停止している間、第1外歯歯車322と第2外歯歯車324が内歯歯車330(内歯ピン334)を挟み、第3外歯歯車323と第4外歯歯車325も内歯歯車330を挟む。そのため、歯車伝動装置300は、歯車伝動装置300の停止中に外歯歯車322,323,324及び325ががたつくことをより確実に抑制することができる。
なお、歯車伝動装置200と同様に、第1アキシャルギャップモータ340は、少なくとも1個の第1クランクシャフト320に取り付けられていればよい。同様に、第2アキシャルギャップモータ344は、少なくとも1個の第2クランクシャフト370に取り付けられていればよい。また、第1クランクシャフト320と第2クランクシャフト370は、同軸でなくてもよい。
第2実施例及び第3実施例では、3個の第1クランクシャフト及び3個の第2クランクシャフトを備える歯車伝動装置について説明した。しかしながら、第1クランクシャフト及び/又は第2クランクシャフトは、1個以上であればよい。また、第1クランクシャフト及び/又は第2クランクシャフトは、歯車伝動装置の出力部の回転軸と同軸でもよい。すなわち、歯車伝動装置の中央にクランクシャフトが配置されていてもよい。歯車伝動装置に中央にクランクシャフトが配置されている場合、外歯歯車の周方向に、外歯歯車の偏心回転に伴って従動的に回転するクランクシャフトを配置してもよい。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。