JP2014179629A - 太陽電池バックシート用接着剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】太陽電池バックシート製造時のフィルムへの初期密着性及び養生後のフィルムへの接着強度が良好であり、更に、長期的な耐候性、耐加水分解性に優れる太陽電池バックシート用接着剤、それを使用して得られる太陽電池バックシート、及びそれを用いて得られる太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】アクリルポリオール(a1)とイソシアネート化合物(a2)との反応で得られ、アクリルポリオール(a1)のガラス転移温度が20℃以下である太陽電池バックシート用接着剤は、太陽電池バックシート製造時のフィルムへの初期密着性及び養生後のフィルムへの接着強度が良好で、更に、長期的な耐候性、耐加水分解性に優れる。アクリルポリオール(a1)の水酸基価が0.5〜40mgKOH/gである太陽電池バックシート用接着剤がより好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、太陽電池バックシート用接着剤に関する。更に、本発明は、その接着剤を用いて得られる太陽電池バックシート、及びその太陽電池バックシートを用いて得られる太陽電池モジュールに関する。
太陽電池は、有用なエネルギー資源として実用化が進んでいる。太陽電池には様々な形態があり、代表的なものとして、シリコン系太陽電池、無機化合物系太陽電池及び有機系太陽電池等が知られている。
これらの太陽電池は、一般的に、太陽光が入射する側に、表面を保護する目的で表面保護シートが設けられている。太陽光が入射する面と反対側の面にも、太陽電池セルを保護する目的で裏面保護シート(バックシート)が設けられており、バックシートには太陽電池の長期的な性能劣化を最小限に抑えるために耐候性、耐水性、耐熱性、防湿性及びガスバリア性等の諸物性に優れることが求められている。
これら諸物性を有するシートを得るために、種々のフィルムが使用されており、例えば、アルミニウム、銅及び鋼板等の金属箔、金属板及び金属蒸着フィルム、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、フッ素樹脂及びアクリル樹脂等のプラスチックフィルム等を例示することができる。
太陽電池のバックシートとして、更に性能を向上するために、これらのフィルムを積層した積層体も使用される。
フィルムを積層した積層体の例を図1に例示する。バックシート10は複数のフィルム11及び12の積層体であり、フィルム11及び12は接着剤13を介して積層される。
フィルムの積層方法として、ドライラミネート法が一般的であり、接着剤13にはフィルム11及び12に対して十分な接着性を有することが要求される。
バックシート10は、封止材20、太陽電池セル30及びガラス板40等と一緒に太陽電池モジュール1を構成する(図3参照)。
太陽電池モジュール1は、長期間に渡って屋外に曝されるので、高温、多湿、太陽光に対して十分な耐久性が要求される。特に、接着剤13の性能が低いと、フィルム11及び12が剥がれ、積層されたバックシート10の外観が損なわれる。このため、太陽電池バックシート用接着剤には、長期間暴露されてもフィルムが剥離しないことが要求される。
太陽電池バックシート用接着剤の一例としてウレタン接着剤があり、特許文献1及び2は、ウレタン系接着剤が太陽電池バックシートの製造に用いられることを開示する。
特許文献1は、特定のポリエステルポリオールを用い、耐久性能が向上した屋外用ウレタン系接着剤を開示する(特許文献1特許請求の範囲、段落番号0014等参照)。特定のポリエステルポリオールを接着剤原料とすることで、ウレタン接着剤の耐加水分解性が向上し、太陽電池バックシート用途に有効な接着剤が得られることが記載されている(特許文献1段落番号0070〜0072等参照)。
特許文献2は、アクリルポリオールにイソシアネート硬化剤を配合して接着剤を製造し(特許文献2表1及び2参照)、この接着剤で太陽電池バックシートが製造されることを開示する(特許文献2段落番号0107等参照)。
特許文献1及び2は、ウレタン接着剤を用いて太陽電池バックシートを製造することで、太陽電池モジュールの外観が不良になることを防止できることを開示する。しかし、太陽電池バックシート用接着剤に求められる耐久性能は、年々高くなっている。
太陽電池バックシートは、一般的に接着剤をフィルムに塗布し乾燥後、フィルムを積層し(ドライラミネート法)、その積層体を約40〜60℃で数日間養生することで製造される。従って、太陽電池バックシート用接着剤には、ラミネート時におけるフィルムへの初期密着性、養生後のフィルムへの接着強度が十分であり、耐加水分解性にも優れることが重要であり、文献1、2の接着剤は必ずしも、上記性能を完全に満足するものではない。特許文献1及び2の接着剤で太陽電池バックシートを製造すると、屋外の環境が厳しい場合、バックシートを構成する複数のフィルムが互いに剥離する可能性がある。
更に、近年では、シリコンや無機化合物材料を用いた太陽電池よりも製造コストの安い有機系太陽電池の開発が進められている。有機系太陽電池は、着色することが可能で、柔軟性を有することも可能であるという特徴があるので、太陽電池バックシートを構成するフィルムとして透明なフィルムが採用される傾向がある。従って、太陽電池バックシート用接着剤には、長期間、接着強度を維持することに加え、紫外線に長期間曝されても色差変化が小さく、耐候性が著しく優れることも要求される。
特許第4416047号公報 特開2010−263193号公報
本発明は、かかる課題を解決するためにされたもので、その課題は、太陽電池バックシート製造時のフィルムへの初期密着性及び養生後のフィルムへの接着強度が良好であり、更に、長期的な耐候性、耐加水分解性に優れる太陽電池バックシート用ウレタン接着剤、その接着剤を使用して得られる太陽電池バックシート、及びその太陽電池バックシートを用いて得られる太陽電池モジュールを提供することである。
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、驚くべきことに、ウレタン樹脂の原料として特定のアクリルポリオールを用いることで、バックシート製造時のフィルムへの初期密着性及び養生後のバックシートフィルムへの接着強度が向上し、更に、長期的な耐候性、耐加水分解性に優れる太陽電池バックシート用接着剤が得られることを見い出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、一の要旨において、
アクリルポリオール(a1)とイソシアネート化合物(a2)との反応で得られるウレタン樹脂を含み、アクリルポリオール(a1)はガラス転移温度が20℃以下である太陽電池バックシート用接着剤を提供する。
本発明は、一の態様において、アクリルポリオール(a1)は水酸基価が0.5〜40mgKOH/gである上記太陽電池バックシート用接着剤を提供する。
本発明は、他の態様において、アクリルポリオール(a1)は、重合性単量体が重合することで得られ、重合性単量体は、グリシジル基を有する単量体を含む上記太陽電池バックシート用接着剤を提供する。
本発明は、好ましい態様において、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物を、更に含む上記太陽電池バックシート用接着剤を提供する。
本発明は、他の要旨において、上記太陽電池バックシート用接着剤を用いて得られる太陽電池バックシートを提供する。
本発明は、好ましい要旨において、上記太陽電池バックシートを用いて得られる太陽電池モジュールを提供する。
本発明に係る太陽電池バックシート用接着剤は、
アクリルポリオール(a1)とイソシアネート化合物(a2)との反応で得られるウレタン樹脂を含み、アクリルポリオール(a1)はガラス転移温度が20℃以下であるので、優れた耐候性、耐加水分解性を維持したまま、フィルムへの初期密着性、養生後のフィルムへの接着強度が向上する。
アクリルポリオール(a1)の水酸基価が0.5〜40mgKOH/gである場合、養生後のフィルムへの接着強度が更に向上した太陽電池バックシート用接着剤が得られる。
更に、本発明の太陽電池バックシート用接着剤は、アクリルポリオール(a1)は、重合性単量体が重合することで得られ、重合性単量体は、グリシジル基を有する単量体を含む場合、養生後のフィルムへの接着強度が更に向上して、より好適な接着剤となる。
本発明の太陽電池バックシート用接着剤は、更に、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物を含む場合、耐候性が著しく向上し、より好ましい。
本発明に係る太陽電池バックシートは、上記太陽電池バックシート用接着剤を用いて得られるので、生産性により優れ、更に、長期間屋外に暴露されても、接着剤が劣化してフィルムが剥離すること及びフィルムの変色を防止できる。
近年、光吸収層に有機化合物を用いた有機系太陽電池が開発されており、有機系太陽電池に着色性や柔軟性を持たせることが要求されている。従って、有機系太陽電池のバックシートを構成するフィルムが透明化する傾向があるので、色差変化が小さい本発明の太陽電池バックシートは、かかる点からも有用である。
本発明に係る太陽電池モジュールは、上記太陽電池バックシートを用いて得られるので生産性に優れ、更に、外観、耐久性にも優れる。
本発明の太陽電池バックシートの一実施形態を示す断面図である。 本発明の太陽電池バックシートの別の実施形態を示す断面図である。 本発明の太陽電池モジュールの一実施形態を示す断面図である。
本発明に係る太陽電池バックシート用接着剤は、アクリルポリオール(a1)とイソシアネート化合物(a2)が反応して得られる(A)ウレタン樹脂を含有する。
本発明に係る(A)ウレタン樹脂は、アクリルポリオール(a1)と、イソシアネート化合物(a2)の反応によって得られるポリマーであって、ウレタン結合を有する。
本発明において、「アクリルポリオール」とは、水酸基を有する(メタ)アクリレートの付加重合反応によって得られる化合物をいい、「側鎖」にエステル結合を有する。
「アクリルポリオール」は、水酸基を有する(メタ)アクリレートの単独重合体でも、水酸基を有する(メタ)アクリレートと「その他の重合性単量体」との共重合体であってもよいが、接着強度等の観点から、水酸基を有する(メタ)アクリレートと「その他の重合性単量体」との共重合体であることが好ましい。アクリルポリオールの水酸基がイソシアネート基と反応する。
「水酸基を有する(メタ)アクリレート」として、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート等を例示できる。
「その他の重合性単量体」とは、「水酸基を有する(メタ)アクリレート」以外の「エチレン性二重結合を有するラジカル重合性単量体」である。その他の重合性単量体は、グリシジル基を有する重合性単量体を含んでいることが本発明では好ましい。「グリシジル基を有する重合性単量体」として、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートを例示できるが、これに限定されるものではない。
本発明では、アクリルポリオール(a1)を得るための重合性単量体は、その100重量部当たり、グリシジル基を有する重合性単量体を0.5重量部以上含むことが好ましく、0.5〜10重量部含むことがより好ましい。グリシジル基を有する重合性単量体が0.5重量部以上含まれると、養生後のフィルムへの接着強度が向上し得る。
「その他の重合性単量体」として、具体的には、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、スチレン及びビニルトルエン等を例示できる。
尚、本明細書においては、アクリル酸及びメタクリル酸を総称して「(メタ)アクリル酸」ともいい、「アクリル酸エステルとメタクリル酸エステル」又は「(メタ)アクリレート」ともいう。
水酸基を有する(メタ)アクリレートを含む重合性単量体の重合は、例えば、通常の溶液重合の方法を使用して、有機溶媒中で適宜触媒等を用いて、上述の重合性単量体をラジカル重合することで行うことができる。ここで「有機溶媒」とは重合性単量体を重合するために用いることができ、重合反応後の太陽電池バックシート用接着剤としての特性に実質的に悪影響を与えないものであれば特に限定されるものではない。そのような溶媒として、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコールなどのアルコール系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒並びにそれらの組み合わせを例示することができる。
重合性単量体を重合させる際の反応温度、反応時間、有機溶媒の種類、単量体の種類及び濃度、攪拌速度、並びに触媒の種類及び濃度等の重合反応条件は、目的とする接着剤の特性等によって、適宜選択され得るものである。
「触媒」とは、少量の添加によって重合性単量体の重合を促進させることができる化合物であって、有機溶媒中で使用可能なものが好ましい。触媒として、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、t−ブチルペルオキシベンゾエート、2,2−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)及び、2,2−アゾビス(2−アミノジプロパン)ジヒドクロリド、及び2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を例示することができ、特に、2,2−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)が好ましい。
本発明における重合には、分子量を調節するために、連鎖移動剤等を適宜用いることができる。「連鎖移動剤」として、当業者に周知の化合物を使用できる。例えば、n−ドデシルメルカプタン(nDM)及びラウリルメチルメルカプタン等のメルカプタン類を例示できる。
上述のように重合性単量体を重合させることによりアクリルポリオール(a1)が得られる。アクリルポリオール(a1)の重量平均分子量は、接着剤の塗工適性の観点から、20万以下であることが好ましく、5000〜10万であることがより好ましい。尚、重量平均分子量は、ポリスチレン標準でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した値である。具体的には、下記のGPC装置及び測定方法を用いて値を測定することができる。GPC装置は、東ソー社製のHCL−8220GPCを用い、検出器として、RIを用いる。GPCカラムとして、東ソー社製のTSKgel SuperMultipore HZ−M 2本を用いる。試料をテトラヒドロフランに溶解して、流速を0.35ml/min、カラム温度を40℃にて流し、標準物質としての単分散分子量のポリスチレンを使用した検量線を用いて分子量の換算を行い、Mwを求める。
アクリルポリオール(a1)のガラス転移温度は、使用する単量体の質量分率を調整することにより、設定することができる。アクリルポリオール(a1)のガラス転移温度は、各単量体から得られる単独重合体(ホモポリマー)のガラス転移温度とアクリルポリオール(a1)中で使用される単独重合体の質量分率から、下記の計算式(i)を用いて求めることができる。この計算によって求められるガラス転移温度を目安にして単量体組成を決定することが好ましい。
(i):1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・+Wn/Tgn
[前記式(i)中、Tgはアクリルポリオール(a1)のガラス転移温度を示し、W1、W2、・・・Wnは各単量体の質量分率を示し、Tg1、Tg2、・・・Tgnは対応する各単量体の単独重合体のガラス転移温度を示す。]
尚、単独重合体のTgは、文献に記載されている値を用いることができる。そのような文献として、例えば、以下の文献を参照できる:三菱レーヨン社のアクリルエステルカタログ(1997年度版);北岡協三著、「新高分子文庫7、塗料用合成樹脂入門」、高分子刊行会、1997年発行、第168〜169頁;及び「POLYMER HANDBOOK」第3版第209〜277頁、John Wiley & Sons,Inc. 1989年発行。
本明細書では、下記の単量体の単独重合体のガラス転移温度は以下のとおりとする。
メチルメタクリレート:105℃
n−ブチルアクリレート:−54℃
メタクリル酸2−ヒドロキシエチル:55℃
シクロヘキシルメタクリレート:83℃
n−ブチルメタクリレート:20℃
グリシジルメタクリレート:41℃
2エチルヘキシルアクリレート:−70℃
本発明において、アクリルポリオール(a1)のガラス転移温度はラミネート時におけるフィルムへの密着性の観点から、好ましくは20℃以下であり、-55℃〜10℃であることがより好ましく、−40℃から−10℃であることが特に好ましい。
アクリルポリオール(a1)の水酸基価は、0.5〜40mgKOH/gであることが好ましく、1〜35mgKOH/gであることがより好ましく、3〜30mgKOH/gであることが特に好ましい。アクリルポリオール(a1)の水酸基価が40mgKOH/g以上である場合、フィルムへの密着性および接着性が不十分となり得、0.5mgKOH/g未満である場合、ウレタン樹脂の硬化が不十分となり得、加水分解性が不十分となり得る。
本明細書で水酸基価とは、樹脂1gをアセチル化するとき、水酸基と結合した酢酸を中和するために要する水酸化カリウムのmg数を示す。
本発明では具体的には、下記式(ii)で算出される。
(ii):水酸基価=(水酸基を有する(メタ)アクリレートの重量/水酸基を有する(メタ)アクリレートの分子量)×水酸基を有する(メタ)アクリレート単量体1モルに含まれる水酸基のモル数×KOHの式量×1000/アクリルポリオール(a1)の重量
イソシアネート化合物(a2)としては、脂肪族イソシアネート、脂環式イソシアネート、芳香族イソシアネートが挙げられ、本発明が目的とする太陽電池バックシート用接着剤を得ることができる限り、特に限定されるものではない。
本明細書では、「脂肪族イソシアネート」とは、鎖状の炭化水素鎖を有し、その炭化水素鎖にイソシアネート基が直接結合している化合物であって、環状の炭化水素鎖を有さない化合物をいう。「脂肪族イソシアネート」は、芳香環を有してもよいが、直接その芳香環と、イソシアネート基は、結合していない。
尚、本明細書では、芳香環は環状の炭化水素鎖に含まれない。
「脂環式イソシアネート」とは、環状の炭化水素鎖を有し、鎖状の炭化水素鎖を有してよい化合物である。イソシアネート基は、環状の炭化水素鎖と直接結合しても、有し得る鎖状の炭化水素鎖と直接結合してもよい。「脂環式イソシアネート」は、芳香環を有してもよいが、その芳香環と、イソシアネート基は、直接結合していない。
「芳香族イソシアネート」とは、芳香環を有し、かつ、イソシアネート基がその芳香環と直接結合している化合物をいう。従って、たとえ芳香環をその分子内に有していたとしても、イソシアネート基が芳香環に直接結合していない化合物は、脂肪族イソシアネートか、脂環式イソシアネートに分類される。
従って、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(OCN−C−CH−C−NCO)は、イソシアネート基が芳香環に直接結合しているので、芳香族イソシアネートに該当する。一方、例えば、キシリレンジイソシアネート(OCN−CH−C−CH−NCO)は、芳香環を有するが、イソシアネート基が芳香環に直接結合せず、メチレン基と結合しているので、脂肪族イソシアネートに該当する。
尚、芳香環は、二つ以上のベンゼン環が縮環していてもよい。
脂肪族イソシアネートとして、例えば、1,4−ジイソシアナトブタン、1,5−ジイソシアナトペンタン、1,6−ジイソシアナトヘキサン(以下、HDI)、1,6−ジイソシアナト−2,2,4−トリメチルヘキサン、2,6−ジイソシアナトヘキサン酸メチル(リジンジイソシアネート)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン(キシリレンジイソシアネート)等を例示できる。
脂環式イソシアネートとしては、例えば、5−イソシアナト−1−イソシアナトメチル−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(水添キシリレンジイソシアネート)、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン(水添ジフェニルメタンジイソシアネート)、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン等を例示できる。
芳香族イソシアネートとして、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート等を例示できる。
これらのイソシアネート化合物は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
本発明において、イシシアネート化合物(a2)は、本発明が目的とするウレタン接着剤を得ることができる限り特に限定されないが、耐候性の観点から脂肪族イソシアネート及び脂環式イソシアネートから選択することが好ましい。特に、HDI、イソホロンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネートが好ましく、特に、HDIの3量体が好ましい。
本発明に係るウレタン樹脂は、アクリルポリオール(a1)と、イソシアネート化合物(a2)を反応させることで得ることができる。反応は、既知の方法を用いることができ、通常、アクリルポリオール(a1)と、イソシアネート化合物(a2)を混合することで行うことができる。混合方法は、本発明に係るウレタン樹脂を得ることができる限り、特に限定されるものではない。
本明細書において「(B)ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物」とは、トリアジン誘導体の一種であり、トリアジン誘導体の炭素原子にヒドロキシフェニル誘導体が結合した化合物であって、一般的にヒドロキシフェニルトリアジン系化合物とされるものであり、本発明が目的とする太陽電池バックシート用接着剤を得られる限り、特に制限されるものではない。
そのような(B)ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物として、例えば、下記式(1)〜(5)で示される化合物及びその異性体を例示することができるが、これらに限定されることはない。
Figure 2014179629
Figure 2014179629
Figure 2014179629
Figure 2014179629
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本発明においては、化学式(3)で示される(B)ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物が好ましい。
化学式(1)〜(5)の(B)ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物は、一般に、紫外線吸収剤として使用されており、本発明が目的とする太陽電池バックシート用接着剤を得ることができる限り、他の紫外線吸収剤を組み合わせて使用することができる。(B)ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物は、市販されているものを使用することができる。例えば、BASF株式会社から市販されている、チヌビン400、チヌビン405、チヌビン479、チヌビン477及びチヌビン460(いずれも商品名)等を例示できる。
本発明の太陽電池バックシート用接着剤は、更に、ヒンダードフェノール系化合物を含むことが好ましい。「ヒンダードフェノール系化合物」とは、一般にヒンダードフェノール系化合物とされるものであり、本発明が目的とする太陽電池バックシート用接着剤を得られる限り、特に制限されるものではない。
ヒンダードフェノール系化合物は、市販されているものを使用することができる。ヒンダードフェノール系化合物として、例えば、BASF社から市販されている。IRGANOX1010、IRGANOX1035、IRGANOX1076、IRGANOX1135、IRGANOX1330及びIRGANOX1520(いずれも商品名)等を例示できる。ヒンダードフェノール系化合物は、酸化防止剤として接着剤に添加され、例えば、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等と組み合わせて使用してもよい。
本発明の太陽電池バックシート用接着剤は、更に、ヒンダードアミン系化合物を含んでいてもよい。
「ヒンダードアミン系化合物」とは、一般にヒンダードアミン系化合物とされるものであり、本発明が目的とする太陽電池バックシート用接着剤を得られる限り、特に制限されるものではない。
ヒンダードアミン系化合物は、市販されているものを使用することができる。ヒンダードアミン系化合物として、例えば、BAFS社から市販されているチヌビン765、チヌビン111FDL、チヌビン123、チヌビン144、チヌビン152、チヌビン292及びチヌビン5100(いずれも商品名)等を例示できる。ヒンダードアミン系化合物は、光安定剤として接着剤に添加され、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾエート系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物等と組み合わせて使用することができる。
本発明の太陽電池バックシート用接着剤は、更にシラン化合物を含んでいてもよい。
シラン化合物として、例えば、(メタ)アクリロキシアルキルトリアルコキシシラン類、(メタ)アクリロキシアルキルアルキルアルコキシシラン類、ビニルトリアルコキシシラン類、ビニルアルキルアルコキシシラン類、エポキシシラン類、メルカプトシラン類及びイソシアヌレートシラン類を用いることができるが、これらのシラン化合物のみに限定されることはない。
「(メタ)アクリロキシアルキルトリアルコキシシラン類」として、例えば、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、4−(メタ)アクリロキエチルトリメトキシシラン等を例示できる。
「(メタ)アクリロキシアルキルアルキルアルコキシシラン類」として、例えば、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルエチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシエチルメチルジメトキシシラン等を例示できる。
「ビニルトリアルコキシシラン類」として、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルジメトキシエトキシシラン、ビニルトリ(メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリ(エトキシメトキシ)シラン等が例示できる。
「ビニルアルキルアルコキシシラン類」として、例えば、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルエチルジ(メトキシエトキシ)シラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルジエチル(メトキシエトキシ)シラン等を例示できる。
「エポキシシラン類」は、例えば、グリシジル系シラン及びエポキシシクロヘキシル系シランに分類できる。「グリシジル系シラン」は、グリシドキシ基を有するもので、具体的には、例えば、3−グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジエトキシシラン等を例示できる。
「エポキシシクロヘキシル系シラン」は、3,4−エポキシシクロヘキシル基を有するもので、具体的には、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等を例示できる。
「メルカプトシラン類」として、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等を例示できる。
「イソシアヌレートシラン類」として、例えば、トリス(3−(トリメトキシシリル)プロピル)イソシアヌレート等を例示できる。
本発明に係る太陽電池バックシート用接着剤は、目的とする太陽電池バックシート用接着剤を得ることができる限り、更にその他の成分を含むことができる。
「その他の成分」を、太陽電池バックシート用接着剤に添加する時期は、目的とする太陽電池バックシート用接着剤が得られる限り、特に制限されるものではない。その他の成分は、例えば、ウレタン樹脂を合成する際に、アクリルポリオール(a1)及びイソシアネート化合物(a2)と一緒に添加しても良く、また、まずアクリルポリオール(a1)とイソシアネート化合物(a2)とを反応させてウレタン樹脂を合成した後、(B)ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物を加えるときに、一緒に添加してもよい。
「その他の成分」として、例えば、粘着付与樹脂、顔料、可塑剤、難燃剤、触媒及びワックス等を例示することができる。
「粘着付与樹脂」として、例えば、スチレン系樹脂、テルペン系樹脂、脂肪族石油樹脂、芳香族石油樹脂、ロジンエステル、アクリル樹脂及びポリエステル樹脂(ポリエステルポリオールを除く)等を例示できる。
「顔料」として、例えば、酸化チタン及びカーボンブラック等を例示できる。
「可塑剤」として、例えば、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソノニルアジペート、ジオクチルアジペート及びミネラルスピリット等を例示できる。
「難燃剤」として、例えば、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、アンチモン系難燃剤及び、金属水酸化物系難燃剤等を例示できる。
「触媒」として、金属触媒、例えば、錫触媒(トリメチルチンラウレート、トリメチルチンヒドロキサイド、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンマレエート等)、鉛系触媒(オレイン酸鉛、ナフテン酸鉛、オクテン酸鉛等)、そのほかの金属触媒(ナフテン酸コバルト等のナフテン酸金属塩等)、及びアミン系触媒、例えばトリエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルへキシレンジアミン、ジアザビシクロアルケン類、ジアルキルアミノアルキルアミン類等を例示できる。
「ワックス」として、パラフィンワックスやマイクロクリスタリンワックス等のワックスが好ましい。
本発明の太陽電池バックシート用ウレタン接着剤は、上述のウレタン樹脂及び(B)ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物、更に、場合により加えられるその他の成分を混合することによって製造することができる。混合方法は、本発明が目的とする太陽電池バックシート用ウレタン接着剤を得ることができる限り、特に限定されるものではない。成分を混合する順序等についても、特に限定されるものではない。本発明に係る太陽電池バックシート用ウレタン接着剤は、特別な混合方法及び特別な混合順序等を要することなく製造することができる。そして得られた太陽電池バックシート用ウレタン接着剤は、生産性、バックシートフィルムに対する接着強度に優れ、耐候性、耐加水分解性にも優れる。
太陽電池モジュールを製造する接着剤には優れた生産性と共に特に高いレベルで強度、耐候性が要求されている。本発明の太陽電池バックシート用ウレタン接着剤は、フィルムへのラミネーション適性、フィルムに対する接着強度に優れ、耐候性、耐加水分解性に優れているので、太陽電池バックシート用接着剤として好適なものとなる。
太陽電池バックシートを作製する際には、本発明の当該接着剤をフィルムへ塗布する。塗布方法としては、グラビアコート、ワイヤーバーコート、エアナイフコート、ダイコート、リップコート、コンマコートなどの様々な方法により行うことができる。本発明の太陽電池バックシート用ウレタン接着剤が塗布された複数のフィルムを貼り合わせ、太陽電池バックシートが得られる。
本発明の太陽電池バックシートの一の形態を図1〜3に例示するが、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
図1は、本発明の太陽電池バックシートの断面図である。太陽電池バックシート10は、2枚のフィルムとその間の太陽電池バックシート用接着剤13から形成されており、2枚のフィルム11及び12は、太陽電池バックシート用接着剤13によって貼り合わされている。フィルム11及び12は、同一の材料であっても、異なる材料であってもよい。図1では、2枚のフィルム11及び12は、貼り合わされているが、3枚以上のフィルムが貼り合わされていてもよい。
本発明に係る太陽電池バックシートの他の形態を図2に示す。図2では、フィルム11と太陽電池バックシート用接着剤13との間に、箔膜11aが形成されている。例えば、フィルム11が、プラスチックフィルムである場合、フィルム11の表面に、金属薄膜11aが形成されている形態を示す。金属薄膜11aは、プラスチックフィルム11の表面に、例えば蒸着によって形成することができ、この金属薄膜11aが形成されたフィルム11とフィルム12を、太陽電池バックシート用接着剤13を介して貼り付けて、図2に係る太陽電池バックシートを得ることができる。
プラスチックフィルムに蒸着する金属として、例えば、アルミニウム、鋼及び銅等を例示できる。プラスチックフィルムに蒸着加工を施すことで、フィルムにバリア性を付与することができる。蒸着材料としては、酸化珪素や酸化アルミニウムが用いられる。基材のプラスチックフィルム11は、透明でも、白や黒等に着色されていてもよい。
フィルム12として、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、フッ素樹脂、アクリル樹脂から成るプラスチックフィルムが用いられるが、耐熱性、耐候性及び剛性、絶縁性等を付与するためにポリエチレンテレフタレートフィルムやポリブチレンテレフタレートフィルムを用いることが特に好ましい。フィルム11及び12は、透明でも、着色されても良い。
フィルム11の蒸着薄膜11aとフィルム12とは、本発明の太陽電池バックシート用接着剤13を用いて貼り付けられるが、フィルム11及び12は、ドライラミネート法によって積層されることが多い。従って太陽電池バックシート用接着剤13には、ラミネート時におけるフィルムへの密着性に優れ、養生後におけるフィルムへの接着強度に優れていることが要求される。
図3は、本発明の太陽電池モジュールの一例の断面図を示す。図3では、本発明の太陽電池モジュール1は、ガラス板40、エチレン酢酸ビニル樹脂(EVA)等の封止材20、一般に複数の太陽電池セル30を接続して所望の電圧を発生するもの、及びバックシート10を重ね合わせ、その後スペーサ50でこれらの部材10、20、30及び40を固定して、得ることができる。
バックシート10は、上述したように、複数のフィルム11及び12の積層体なので、ウレタン接着剤13には、バックシート10が、たとえ長期間屋外に曝されても、フィルム11及び12が剥離せず、耐加水分解性に優れていることが要求される。
太陽電子セル30は、シリコンを用いて製造されることが多いが、色素を含んだ有機樹脂を用いて製造されることもある。その場合、太陽電池モジュール1は、有機系(色素増感)太陽電池モジュールとなる。有機系(色素増感)太陽電池には着色性が要求されるので、太陽電池バックシート10を構成するフィルム11及び12として透明フィルムが使用されることが多い。従って、太陽電池バックシート用接着剤13には、長期間屋外で曝されたとしても、色差変化が極めて小さく、耐候性に優れていることが要求される。
以下の、本発明の主な態様を示す。
1.アクリルポリオール(a1)とイソシアネート化合物(a2)との反応で得られるウレタン樹脂を含み、アクリルポリオール(a1)はガラス転移温度が20℃以下である太陽電池バックシート用接着剤。
2.アクリルポリオール(a1)は水酸基価が0.5〜40mgKOH/gである上記1に記載の太陽電池バックシート用接着剤。
3.アクリルポリオール(a1)は、重合性単量体が重合することで得られ、重合性単量体は、グリシジル基を有する単量体を含む上記1又は2に記載の太陽電池バックシート用接着剤。
4.ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物を、更に含む上記1〜3のいずれかに記載の太陽電池バックシート用接着剤。
5.上記1〜4のいずれかに記載の太陽電池バックシート用接着剤を用いて得られる太陽電池バックシート。
6.上記5に記載の太陽電池バックシートを用いて得られる太陽電池モジュール。
以下、本発明を実施例及び比較例を用いて説明するが、これらの例は、本発明を説明するためのものであり、本発明を何ら限定するものではない。
<アクリルポリオール(a1)の合成>
合成例1(アクリルポリオール(a1−1))
攪拌翼、温度計、及び還流冷却管を備えた四つ口フラスコに、酢酸エチル(和光純薬((株)製)150gを仕込み、約80℃で還流させた。このフラスコ内に、重合開始剤として2,2−アゾビスイソブチロニトリルを1g加え、表1に示す量の単量体の混合物を1時間30分かけてフラスコ内に連続的に滴下した。さらに2時間加熱した後、アクリルポリオール(a1)の不揮発分が39.8重量%の溶液を得た。
アクリルポリオール(a1−1)の重合性単量体成分の組成及び得られたアクリルポリオール(a1−1)の物性を表1に示す。
合成例2〜14
合成例1において、アクリルポリオール(a1)の合成に用いる単量体等の組成を表1及び表2に示すように変更したことを除いて、合成例1と同様の方法を用いて、アクリルポリオール(a1−2)〜(a1−12)及びアクリルポリマー(a1’−13)及び(a1’−14)を得た。得られたアクリルポリオールの物性を表1及び表2に示す。
表1及び表2に示す重合性単量体及びその他の成分を以下に示す。
・メチルメタクリレート(MMA):和光純薬(株)製
・ブチルアクリレート(BA):和光純薬(株)製
・シクロヘキシルメタクリレート(CHMA):和光純薬(株)製
・ブチルメタクリレート(BA):和光純薬(株)製
・2−エチルへキシルアクリレート(2EHA):和光純薬(株)製
・グリシジルメタクリレート(GMA):和光純薬(株)製
・2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA):和光純薬(株)製
・2,2−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN):大塚化学(株)製
・n−ドデシルメルカプタン(nDM):日油(株)製
Figure 2014179629
Figure 2014179629
<ポリマー(a1)のガラス転移温度(Tg)の算出>
ポリマー1〜14((a1)及び(a1’))のTgは、各ポリマーの原料である“重合性単量体”の単独重合体(ホモポリマー)のガラス転移温度を用いて、上述の式(i)を用いて計算した。
メチルメタクリレート等、各ホモポリマーのTgは、文献値を用いた。
<太陽電池バックシート用接着剤の製造>
実施例及び比較例で使用した太陽電池バックシート用接着剤の原料を以下に記載する。
(a1)アクリルポリオール
(a1−1)〜(a1−12)は、表1及び2に記載したポリマー1〜ポリマー12に対応する。
(a1’)ポリマー
(a1’−13)アクリルポリオールは、表2記載のポリマー13に対応する。
(a1’−14)アクリルポリマーは、表2記載のポリマー14に対応する。
(a1’−15)ポリエステルポリオールは、豊国製油社製のHS 2N-226P(商品名):無水フタル酸、2,4−ジブチル−1,5−ペンタンジオールから得られるポリエステルポリオール
(a2)イソシアネート化合物
(a2−1)住化バイエルウレタン社製のスミジュールN3300(商品名):脂肪族イソシアネート(1,6−ジイソシアナトヘキサン(HDI))
尚、成分(a1)と成分(a2)が反応することで(A)ウレタン樹脂が得られる。
(B)ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物
(b−1)BASF社製のチヌビン479(商品名):2−[4−(オクチル−2−メチルエタノエート)オキシ−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−[ビス(2,4−ジメチルフェニル)]−1,3,5−トリアジン
(B’)ベンゾトリアゾール系化合物
(b’−1)BASF社製のチヌビン328(商品名):2−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール)
ヒンダードフェノール系化合物
BASF社製のイルガノックス1330(商品名):1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン
下記の実施例1〜14及び比較例1〜4の太陽電池バックシート用接着剤を、上記成分を用いて製造し、得られた太陽電池バックシート用接着剤の性能を評価した。以下に製造方法及び評価方法を示す。
実施例1
<太陽電池バックシート用接着剤の製造>
表3に示すように、
90.7gの(a1−1)ポリマー1[228gのポリマー1の酢酸エチル溶液(固形分39.8重量%)]、
9.3gの(a2−1)住化バイエルウレタン社製のスミジュールN3300(商品名)、
0.5gの(b−1)BASF社製のチヌビン479(商品名)及び
0.2gのBASF社製のイルガノックス1330(商品名)
を秤量して混合し、接着剤溶液を調整した。この調製液を太陽電池バックシート用接着剤として、以下の試験を行った。
<接着剤塗布PETシート1、フィルム積層物2の製造>
先ず、実施例1の太陽電池バックシート用接着剤を透明ポリエチレンテレフタレート(PET)シート(三菱化学ポリエステルフィルム社製のO300EW36(商品名))に固形分重量が10g/mとなるように塗布し、80℃で10分間乾燥させ、接着剤塗布PETシート1を得た。
その後、接着剤塗布PETシート1の接着剤塗布面に、表面処理透明ポリオレフィンフィルム(フタムラ化学社製のリニアローデンシティポリエチレンフィルム LL−XUMN #30(商品名))の表面処理された面を被せ、平面プレス機(神藤金属工業社製のASF−5(商品名))を用いて、圧締圧1.0MPa 50℃で30分間、両フィルムをプレスした。プレスしたまま、両フィルムを50℃で1週間養生し、フィルム積層物2を得た。
<評価>
太陽電池バックシート用接着剤の評価を以下の方法で行った。
1.フィルムへの初期密着性の評価
室温環境下、接着剤塗布シート1を15mm幅に切りだし、接着剤塗布シート1の接着剤塗布面に、表面処理透明ポリオレフィンフィルム(フタムラ化学社製のリニアローデンシティポリエチレンフィルム LL−XUMN #30(商品名))の表面処理された面を被せ2kgローラーで1往復し貼りあわせた。その後、引っ張り強度試験機(オリエンテック社製のテンシロンRTM-250(商品名))を用いて、室温環境下、引っ張り速度100mm/min、180°の剥離試験を行った。評価基準は以下のとおりである。
◎:剥離強度が1N/15mm以上
○:剥離強度が0.1N/15mm以上1N/15mm未満
×:剥離強度が0.1N/15mm未満
2.養生後のフィルムへの剥離強度の測定
フィルム積層物2を15mm幅に切り出し、引っ張り強度試験機(オリエンテック社製のテンシロンRTM-250(商品名))を用いて、室温環境下、引っ張り速度100mm/min、180°の剥離試験を行った。評価基準は以下のとおりである。
◎:剥離強度が8N/15mm以上
○:剥離強度が6N/15mm以上8N/15mm未満
×:剥離強度が6N/15mm未満
3.耐加水分解性の評価
加圧蒸気を用いた促進評価法により評価を行った。フィルム積層物2を15mm幅に切り出し、ハイプレッシャークッカー(ヤマト科学社製 オートクレーブSP300(商品名))を用いて120℃、0.1MPa加圧環境下で100時間放置した後とりだし、室温環境下にて一日養生した。サンプルのポリオレフィンフィルム及びPETフィルムの浮き、剥がれを目視にて観察した。評価基準は以下のとおりである。
◎:フィルムの浮き、剥がれなし
×:フィルムの浮き、剥がれあり
4.UV照射による黄変性の評価
フィルム積層物2のポリオレフィンフィルム側を照射面として、UV照射試験機(岩崎電気社製のアイスーパーUVテスター W13(商品名)))にセットし、照度1000W/m、60℃50%RHの条件下で15時間の照射を行った。色差計にて照射前後の色差(Δb)を測定し、黄変度を評価した。評価基準は以下のとおりである。
◎:Δbが8未満
○:Δbが8以上 10未満
△:Δbが10以上 15未満
×:Δbが15以上
実施例2〜14および比較例1〜4
表3〜5に示される組成で太陽電池バックシート用接着剤を実施例1と同様の方法で製造した。
Figure 2014179629
Figure 2014179629
Figure 2014179629
表1〜4に示すように、実施例1〜14の太陽電池バックシート用接着剤は、アクリルポリオール(a1)とイソシアネート化合物(a2)との反応で得られるウレタン樹脂を含み、アクリルポリオール(a1)はガラス転移温度が20℃以下であるので、フィルムへの初期密着性、養生後の接着強度(剥離強度)に優れ、かつ、耐加水分解性、耐候性にも優れており、総合的にバランスの良い接着剤となっている。従って、実施例の接着剤は、太陽電池バックシート用接着剤として好適である。
特に、実施例2、3、6、10、12及び13の太陽電池バックシート用接着剤は、フィルムへの初期密着性、養生後のフィルムへの接着(剥離)強度、耐加水分解性、耐候性の全てに優れるので、有機系(色素増感)太陽電池のバックシート用接着剤としてより好適である。
これに対し、比較例1はアクリルポリオール(a’1−13)のガラス転移温度が20℃より高いのでフィルムへの密着性、剥離強度に劣る。
比較例2は、アクリルポリオール(a1)の代わりに、その他の重合性単量体のみからなる重合体(a1’−14)を用いた接着剤であるので、剥離強度及び耐加水分解性に劣る。
比較例3及び4は、アクリルポリオール(a1)の代わりに、ポリエステルポリオール(a1’−15)を用いた接着剤であるので耐加水分解性、耐候性が劣る。更に、比較例4は、(b−1)ヒドロキシフェニルトリアジンを含まないので、著しく耐候性が劣る。
これらの結果から、アクリルポリオール(a1)とイソシアネート化合物(a2)との反応で得られるウレタン樹脂を含み、アクリルポリオール(a1)のガラス転移温度が20℃以下である太陽電池バックシート用接着剤が優れていることが示された。
本発明は、太陽電池バックシート用接着剤を提供する。本発明に係る太陽電池バックシート用接着剤は、生産性、フィルムへの接着性および長期的な耐候性、耐久性を有し、太陽電池バックシートおよび太陽電池モジュールに好適に使用することができる。
1 太陽電池モジュール
10 バックシート
11 フィルム
11a 蒸着薄膜
12 フィルム
13 接着剤層
20 封止材(EVA)
30 太陽電池セル
40 ガラス板
50 スペーサ
合成例2〜14
合成例1において、アクリルポリオール(a1)の合成に用いる単量体等の組成を表1及び表2に示すように変更したことを除いて、合成例1と同様の方法を用いて、アクリルポリオール(a1−2)〜(a1−12)及びアクリルポリマー(a1’−13)及び(a1’−14)を得た。得られたアクリルポリオールの物性を表1及び表2に示す。
表1及び表2に示す重合性単量体及びその他の成分を以下に示す。
・メチルメタクリレート(MMA):和光純薬(株)製
・ブチルアクリレート(BA):和光純薬(株)製
・シクロヘキシルメタクリレート(CHMA):和光純薬(株)製
・ブチルメタクリレート(BMA):和光純薬(株)製
・2−エチルへキシルアクリレート(2EHA):和光純薬(株)製
・グリシジルメタクリレート(GMA):和光純薬(株)製
・2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA):和光純薬(株)製
・2,2−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN):大塚化学(株)製
・n−ドデシルメルカプタン(nDM):日油(株)製

Claims (5)

  1. アクリルポリオール(a1)とイソシアネート化合物(a2)との反応で得られるウレタン樹脂を含み、
    アクリルポリオール(a1)はガラス転移温度が20℃以下である太陽電池バックシート用接着剤。
  2. アクリルポリオール(a1)は水酸基価が0.5〜40mgKOH/gである請求項1に記載の太陽電池バックシート用接着剤。
  3. ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物を、更に含む請求項1又は2に記載の太陽電池バックシート用接着剤。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の太陽電池バックシート用接着剤を用いて得られる太陽電池バックシート。
  5. 請求項4に記載の太陽電池バックシートを用いて得られる太陽電池モジュール。
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