JP2014177733A - 水系プロセス用炭素繊維束 - Google Patents

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和洋 畑中
Satomi Matsuo
里美 松尾
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Abstract

【課題】炭素繊維の集束性、水系分散媒中の開繊性および水分散後の開繊性の保持に優れた水系プロセスに適した炭素繊維束を提供すること。
【解決手段】炭素繊維とサイジング剤を有してなる水系プロセス用炭素繊維束において、前記サイジング剤は、少なくともアミノカルボン酸単位、ジカルボン酸単位およびポリエーテルジアミン単位から構成されるポリアミドであって、ポリエーテルジアミン単位におけるポリエーテル構造の化学式量が100以上3000以下であり、アミノカルボン酸単位が20〜30mol%、ジカルボン酸単位とポリエーテルジアミン単位の合計が70〜80mol%である、水系プロセス用炭素繊維束。
【選択図】なし

Description

本発明は、チョップド繊維への加工性、チョップド繊維の取り扱い性に適した集束性、および抄紙プロセスに代表される水を媒体とするプロセスに適した開繊性に関するものである。
炭素繊維をマトリックス樹脂と複合させた炭素繊維強化複合材料は、軽量性、力学特性、導電性および寸法安定性等に優れることから、自動車、航空機、電気・電子機器、光学機器、スポーツ用品、建築材料などの幅広い分野で活用されている。
炭素繊維複合材料には多くの成形方法が知られているが、成形に用いられる基材を得る方法の一つとして、炭素繊維を湿式抄紙プロセスに代表される水系プロセスで加工する方法がある。例えば、チョップド繊維を水系媒体中に分散させて紙や不織布に加工した後、各種樹脂を母材として複合材料基材とするものである。燃料電池の電極基材等が、この抄紙プロセスにより製造される。
湿式抄紙プロセスでは、チョップド繊維を水系分散媒に分散させて抄紙する。抄紙品の品質を高めるには、炭素繊維の集束性と水系分散媒中での開繊性が要求される。集束性は、カット時の繊維長の均一化や、チョップド繊維をフィードする際のプロセス性において重要である。集束性が悪いとチョップド繊維をフィードする際に、チョップド繊維がフィーダーに詰まる原因となる場合がある。開繊性は繊維束が水系分散媒中で単繊維レベルで分散するための特性であり、抄紙品質に直接的に影響する。開繊性が悪いと抄紙品質に影響を与えるだけでなく、抄紙品を用いて成形した成形品の特性にも影響を与える。また、水系分散媒中に分散直後は開繊性が良好でも、水系分散媒に分散して時間が経過するとともに炭素繊維同士が凝集することで開繊性が悪くなる、すなわち水系分散媒への分散後の開繊性の保持が悪い場合がある。炭素繊維束の集束性と開繊性が優れるほど、炭素繊維強化複合材料の力学特性や導電特性が向上する。
このような背景から、水系プロセスに用いる炭素繊維束では、通常特定の樹脂をサイジング剤として付着させ、集束性および開繊性の改善を図っている。
特許文献1では、特定の水溶性ポリウレタンや特定の水溶性ポリアミドをサイジング剤として使用し、炭素繊維基材を製造することが開示されている。しかし、ここで使用している水溶性ポリアミドでは炭素繊維の開繊性に課題があり、特に水分散後の開繊性の保持が悪く、時間の経過とともに炭素繊維同士が凝集するという課題が残る。また、特許文献2では、界面活性剤を主成分とするサイジング剤を付着させた水系プロセス用炭素繊維が開示されている。ところが、界面活性剤をサイジング剤として用いた場合、水分散直後の開繊性は悪くないが、水分散後の開繊性の保持が悪く、時間の経過とともに炭素繊維同士が凝集する。このような場合、特に水系分散媒中の炭素繊維濃度を上げて目付の高い抄紙品を得ようとすると、基材における繊維の分散が不十分であり、炭素繊維同士が凝集しているため基材の品位が落ち、成形品の力学特性が十分に発揮できないという課題がある。
特開2010−37669号公報 国際公開第2006/019139号パンフレット
そこで本発明の目的は、炭素繊維の集束性、水系分散媒中の開繊性および水系分散媒への分散後の開繊性の保持に優れた水系プロセスへ適した炭素繊維束を提供することである。
本発明は、上記目的を達成するために次のいずれかの構成を有するものである。
(1)炭素繊維とサイジング剤を有してなる水系プロセス用炭素繊維束において、前記サイジング剤は、少なくともアミノカルボン酸単位、ジカルボン酸単位およびポリエーテルジアミン単位から構成されるポリアミドであって、ポリエーテルジアミン単位におけるポリエーテル構造の化学式量が100以上3000以下であり、アミノカルボン酸単位が20〜30mol%、ジカルボン酸単位とポリエーテルジアミン単位の合計が70〜80mol%であるポリアミドを含む、水系プロセス用炭素繊維束。
(2)前記炭素繊維束を構成する単繊維は、ウィルヘルミ法で測定される水との接触角の変化率が水分散前後で10%以下である、前記(1)に記載の水系プロセス用炭素繊維束。
(3)前記炭素繊維は、引張弾性率が360GPa以上800GPa以下である、前記(1)または(2)に記載の水系プロセス用炭素繊維束。
(4)前記炭素繊維は、X線光電子分光法(ESCA)で測定される表面酸素指数(O/C)が0.1以上0.2以下である、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の水系プロセス用炭素繊維束。
(5)前記アミノカルボン酸が、ε−アミノカルボン酸である、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の水系プロセス用炭素繊維束。
(6)前記ジカルボン酸が、アジピン酸である、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の水系プロセス用炭素繊維束。
(7)前記ポリエーテルジアミン単位におけるポリエーテル構造がポリエチレングリコール骨格から構成される、前記(1)〜(6)のいずれかに記載の水系プロセス用炭素繊維束。
(8)前記炭素繊維束を構成する単繊維は、ウィルヘルミ法で測定される水との第1接触角が55度以下である、前記(1)〜(7)のいずれかに記載の水系プロセス用炭素繊維束。
(9)前記炭素繊維束を構成する単繊維は、ウィルヘルミ法で測定される表面自由エネルギーが50〜70mJ/mである、前記(1)〜(8)のいずれかに記載の水系プロセス用炭素繊維束。
(10)前記ポリアミドは、数平均分子量が50,000〜100,000である、前記(1)〜(9)のいずれかに記載の水系プロセス用炭素繊維束。
(11)前記サイジング剤に酸化防止剤が0.1〜5質量%の割合で含有している、前記(1)〜(10)のいずれかに記載の水系プロセス用炭素繊維束。
(12)前記ポリアミドが前記炭素繊維に炭素繊維束質量あたり0.1〜10質量%の割合で付着している、前記(1)〜(11)のいずれかに記載の水系プロセス用炭素繊維束。
(13)前記炭素繊維束が1,000〜60,000本の単繊維からなる、前記(1)〜(12)のいずれかに記載の水系プロセス用炭素繊維束。
(14)前記炭素繊維束が繊維長0.5〜20mmのチョップド繊維束である、前記(1)〜(13)のいずれかに記載の水系プロセス用炭素繊維束。
本発明では、炭素繊維束が、特定の構造を有するポリアミドを含むサイジング剤を有してなるため、炭素繊維の集束性、水系分散媒中の開繊性および水系分散媒への分散後の開繊性の保持に優れ、それにより繊維の分散が良好な抄紙基材を得ることができる。
本発明者らは、炭素繊維とサイジング剤からなる水系プロセス用炭素繊維束において炭素繊維の集束性と水系分散媒中の開繊性及び水分散後の開繊性の保持を追求した結果、サイジング剤に用いる化合物の特定の構造が影響していることを見出し、本発明に到達したものである。以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の炭素繊維束は、炭素繊維とサイジング剤を含んでいる。
本発明で用いられる炭素繊維は、ポリアクリロニトリル(PAN)系、ピッチ系、レーヨン系などが使用できるが、得られる成形品の強度と弾性率とのバランスの観点から、PAN系炭素繊維が好ましい。また、サイジング剤への付着性を高め均一な皮膜を形成させるために、炭素繊維には表面処理が施されていても良い。表面処理としては、液相中での薬液酸化や電解酸化、あるいは気相酸化が挙げられるが、電解質水溶液中で炭素繊維を陽極として酸化処理する電解酸化が、簡便かつ強度低下が抑えられるために好ましい。電解処理液は特に限定されないが、硫酸、硝酸等の無機酸や、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の無機塩基、あるいは硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム等の無機塩が挙げられる。
表面処理をした炭素繊維としては、マトリックス樹脂との接着性の点、またサイジング剤との親和性の点から、X線光電子分光法(ESCA)で測定される表面酸素指数(O/C)が、好ましくは0.05〜0.50、さらに好ましくは0.1以上0.2以下であるものが使用できる。表面酸素指数(O/C)が0.05より小さいと、マトリックス樹脂との接着性が劣り、得られる成形品の力学特性が十分に発揮できず、またサイジング剤との親和性が低くなり炭素繊維が水分散後にサイジング剤が保持されにくくなる。また表面酸素指数(O/C)が0.50よりも大きいと、炭素繊維への表面処理の負担が大きく得られる成形品の力学特性に影響を与えるばかりか、サイジング剤の保持にも影響を与える。
なお、上記の表面酸素指数(O/C)は、次の手順に従い、X線光電子分光法により測定することができる。試料となる炭素繊維の単繊維を、適当な長さにカットしてステンレス製の試料支持台上に拡げて並べる。光電子脱出角度を90度とし、X線源としてMgKα1,2を用い、試料チャンバー内を1×10−8Torrの真空度に保つ。測定時の帯電に伴うピークの補正として、C1sの主ピークの結合エネルギー値を284.6eVに合わる。C1sピーク面積は、282〜296eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求め、O1sピーク面積は、528〜540eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。表面酸素指数O/Cは、前記C1sピーク面積に対するO1sピーク面積の比を、装置固有の感度補正値で割ることにより算出した原子数比で表す。X線光電子分光測定装置としては、島津製作所(株)製ESCA−750(装置固有の感度補正値:2.85)などを用いることができる。
また、炭素繊維の引張弾性率は、成形体の力学特性の点から好ましくは200〜800GPa、さらに好ましくは360〜800GPaの範囲内であるものが使用できる。炭素繊維の引張弾性率が、200GPaよりも小さい場合は、成形体の力学特性が劣り、800GPaよりも大きい場合は、炭素繊維の結晶性を高める必要があり、炭素繊維を製造するのが困難となる。炭素繊維の引張弾性率が、200〜800GPaの範囲、さらに好ましくは360〜800GPaの範囲内であると成形体の力学特性、炭素繊維の製造性の点で好ましい。また、炭素繊維の弾性率が360〜800GPaの範囲内であるとき、炭素繊維の結晶性が高いことから、サイジング剤との相互作用が強くなり水分散した炭素繊維の開繊性に優れ、時間の経過後も開繊性を保持する。なお、上記の引張弾性率は、JIS R7601−1986に記載のストランド引張試験により測定することができる。
また、炭素繊維の結晶性は、ラマン分光法により求めることができ、1480cm−1と1600cm−1のラマン強度比(I1480/I1600)が、成形体の力学特性の点から好ましくは、0.100〜0.700、さらに好ましくは、0.100〜0.450の範囲内であるものが使用できる。
本発明において炭素繊維束は、炭素繊維の単繊維(フィラメント)が集束された形態であり、通常フィラメント数は1,000〜60,000本程度である。炭素繊維の取り扱い性および開繊性の観点から、3,000〜40,000本が好ましい。より好ましくは6,000〜24,000である。
炭素繊維束を構成する炭素繊維(フィラメント)の直径は、3〜15μmが好ましく、より好ましくは5〜10μmである。
また、本発明の炭素繊維束には、発明の目的を損なわない範囲で少量の他の繊維種が含まれていても良い。他の繊維種としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、ボロン繊維、金属繊維などの高強度高弾性率繊維が挙げられ、これらを1種以上含有してもよい。
本発明におけるサイジング剤は、少なくともアミノカルボン酸単位、ジカルボン酸単位およびポリエーテルジアミン単位から構成されるポリアミドであって、ポリエーテルジアミン単位におけるポリエーテル構造の化学式量が100以上3000以下であり、アミノカルボン酸単位が20〜30mol%、ジカルボン酸単位とポリエーテルジアミン単位の合計が70〜80mol%であるポリアミドを含む。一般的に、アミノカルボン酸単位はアミノカルボン酸に由来した繰り返し構造単位であって、具体的には下記式(1)で表され、ジカルボン酸単位はジカルボン酸に由来した繰り返し構造単位であって、具体的には下記式(2)で表され、ポリエーテルアミン単位はポリエーテルアミンに由来した繰り返し構造単位であって、具体的には下記式(3)で表される。
Figure 2014177733
[式中、aは1〜20の整数を示す]。
Figure 2014177733
[式中、bは1〜20の整数を示す]。
Figure 2014177733
[式中、cは1〜10の整数を示し、dは、1〜20の整数を示し、eは、1〜100の整数を示し、fは、1〜10の整数を示す]。
アミノカルボン酸としては、アラニン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、バリンなどのアミノ酸、ε−アミノカルボン酸などの、アルキル鎖にアミノ基とカルボキシル基が付いた有機化合物が挙げられる。この中でも、ε−アミノカルボン酸が、ε−カプロラクタムの開環重合によって得られることから好ましく用いられる。
ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸、マレイン酸などの、二つのカルボキシル基を持つ有機化合物が挙げられる。この中でも、アジピン酸がこの炭素繊維を用いて成形品を作ったときの力学特性の点で好ましい。
ポリエーテルジアミンとしては、ポリエーテル構造がポリエチレングリコール骨格、ポリプロピレングリコール骨格から構成されるものが好ましく用いられ、それにより、得られたポリアミドの水に対する溶解性が良好となり、炭素繊維へのサイジング剤の付着工程において、サイジング剤を水溶液として用いることができ、有機溶剤を用いる場合と比較し、製造装置がより簡便なものになり得る。かかる観点から、ポリエーテルジアミン単位におけるポリエーテル構造はポリエチレングリコール骨格から構成されるものが好ましい。かかるポリエーテルジアミンは、例えばポリアルキレングリコールの両末端をジアミンに変性したものを用いることができる。このような例としては、ビスアミノプロピルポリエチレングリコールを挙げることができる。
ポリエーテルジアミン単位におけるポリエーテル構造の化学式量は、水系分散媒中の開繊性および水系分散媒への分散後の開繊性の保持の点から100以上3000以下であり、200以上2000以下であることが好ましく、400以上1000以下であることが、サイジング剤が炭素繊維に保持されやすくなる点でさらに好ましい。ポリエーテルジアミン単位におけるポリエーテル構造の化学式量が、400以上1000以下であると、炭素繊維が水分散中、ポリエーテル単位が親水性となり水側に存在し、他の構造部位は、炭素繊維に強く拘束されることで、水分散後に時間の経過があった場合でもサイジング剤が炭素繊維に保持されやすくなる。
ポリアミドは、ジカルボン酸とポリエーテルジアミンの塩にラクタムを共重合させて得ることができる。ここでいうジカルボン酸とポリエーテルジアミンの塩とは、ポリエーテルジアミンとジカルボン酸とを実質的に当モルで反応させた塩のことである。なお、ここでいう「実質的に当モル」とは、ポリエーテルジアミンとジカルボン酸との比率が、1から外れると、重合速度が遅くなり、かつ、到達重合度も低下する傾向にあることから、この影響が実質的に認められない範囲を意味しており、より具体的には、ポリエーテルジアミンとジカルボン酸の比率が、1±10%の範囲であることを意味している。
また、ポリアミドは、アミノカルボン酸とジカルボン酸、ポリエーテルジアミンを縮合重合させて得ることができる。この場合、それぞれの分子内に存在するカルボン酸基とアミノ基の反応により互いの分子内からの脱水により結合(縮合)し、それらが連鎖的に繋がってポリアミドが生成(重合)する。
ポリアミドの数平均分子量は、炭素繊維の集束性、水系分散媒中の開繊性および水系分散媒への分散後の開繊性の保持の点から50,000〜100,000であることが好ましく、60,000〜100,000であることがより好ましく、80,000〜100,000であることがさらに好ましい。ポリアミドの数平均分子量が50,000より小さいと、サイジング剤が炭素繊維に保持され難くなり、またポリアミドの数平均分子量が100,000より大きいと炭素繊維の集束性が悪くなる傾向がある。なお、ポリアミドの数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)を用いて測定しポリメチルメタクリレートで換算した値を用いることができる。
サイジング剤の炭素繊維に対する付着量は、炭素繊維の集束性、水系分散媒中の開繊性のバランスの点から、上述したポリアミドが、炭素繊維束100質量%に対し0.1〜10質量%となるようにするのが好ましく、0.5〜8質量%の範囲とするのがより好ましく、0.5〜3質量%の範囲とするのがさらに好ましい。上述したポリアミドの付着量が0.1質量%未満であると、皮膜形成が不十分となり、炭素繊維束の集束性および水系分散媒中の開繊性が不足する。また、上述したポリアミドの付着量が10質量%を超えると、繊維束が硬く取扱い性が不十分となるし、コスト面でも不利となる。
本発明において、サイジング剤には、本発明の目的を損なわない範囲で、消泡剤、乳化剤、防腐剤、スライム防止剤、架橋剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、エポキシ樹脂、アクリル樹脂や種々の熱可塑性樹脂などの成分を含有してもよい。また、公知のサイジング剤成分を添加することもできる。
特に、本発明では、サイジング剤に酸化防止剤を含有することが好ましい。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。この中でも、ヒンダードアミン系酸化防止剤が、無機充填剤、顔料などの配合樹脂で優れた効果を発揮することから好ましく用いられる。
酸化防止剤をサイジング剤に添加することで、サイジング剤処理中においてサイジング剤の熱分解が抑制されるため、集束性が良好となる。
酸化防止剤のサイジング剤に対する含有量は、炭素繊維の集束性、水系分散媒中の開繊性のバランスの点と熱分解の抑制との両立の点から、サイジング剤の全体量に対して0.1〜5質量%となるようにするのが好ましく、0.1〜3質量%の範囲とするのがより好ましく、0.1〜1質量%の範囲とするのがさらに好ましい。
炭素繊維のサイジング処理は、通常サイジング剤の水系媒体に対する溶液または分散液(サイジング液)に連続炭素繊維束を浸漬し、サイジング液を炭素繊維に滴下、散布あるいは噴霧した後、分散媒を乾燥・除去することで行う。
本発明の炭素繊維束では、分散媒を乾燥・除去する際の乾燥温度が180℃以上であると、より集束性および開繊性に優れる。その理由は明らかではないが、揮発分が除去されたサイジング剤が流動性を示し、繊維を均一に被覆するためと考えられる。
本発明の炭素繊維束は抄紙プロセスなどの水系プロセスに適している。本発明の炭素繊維束を抄紙プロセスに用いる場合には、前記サイジング剤が付着した連続繊維であるロービングを、ギロチンカッターなどの公知の切断機でカットしたチョップド繊維束とする。このチョップド繊維束の長さは特に限定されないが、0.5〜20mm程度にカットすることが好ましい。カット長をこの範囲にすることで、抄紙のプロセス性と、力学特性および電気特性のバランスに優れた基材を得ることができる。
また、本発明において用いるサイジング剤は、水系分散媒中の炭素繊維を高濃度にした場合でも開繊性が維持され、かついったん分散した単繊維の再凝集を防ぐことができる。
本発明の炭素繊維束が水系溶媒中で優れた開繊性を与える理由としては、サイジング剤が水系分散媒に高い親和性を示すと同時に、炭素繊維への親和性にも優れているため優れた開繊性が発現するものと考えられる。すなわち、親水性であるポリエーテル単位と、疎水性である単位が適切な割合でポリアミド樹脂を構成することで、ポリエーテル単位の親水性と疎水性である単位が、水系において炭素繊維周辺でバランス良く配置され、優れた開繊性及び水分散後の開繊性の保持が発現したと考えられる。特に、アミノカルボン酸単位、ジカルボン酸単位およびポリエーテルジアミン単位から構成されるポリアミドのポリエーテルジアミン単位におけるポリエーテル構造の化学式量が100以上3000以下であり、アミノカルボン酸単位が20〜30mol%、ジカルボン酸単位とポリエーテルジアミン単位の合計が70〜80mol%であるとき、炭素繊維が水分散中、ポリエーテル構造が親水性となり水側に存在し、他の構造部位は、炭素繊維に強く拘束されることで、水分散後に時間の経過があった場合でもサイジング剤が炭素繊維に保持されやすくなる。
本発明の炭素繊維束を構成する単繊維は、ウィルヘルミ法で測定される水との接触角の変化率が水分散前後で好ましくは10%以下、より好ましくは7%以下であることで、本発明の繊維束は水分散後の開繊性の保持に特に優れるようになる。かかる変化率が10%を超えると炭素繊維に残存しているサイジング剤の量が少なくなり、水分散後の開繊性が悪くなり、炭素繊維同士が再凝集しやすくなる。
また、本発明の炭素繊維束を構成する単繊維は、ウィルヘルミ法で測定される水との第1接触角が55度以下であることが、炭素繊維束にさらに優れた開繊性を与える点で好ましい。
また、本発明の炭素繊維束を構成する単繊維は、ウィルヘルミ法で測定される表面自由エネルギーが50〜70mJ/mであることが、炭素繊維束にさらに優れた開繊性を与える点で好ましい。
ここで、ウィルヘルミ法として、「表面科学」vol.21,No10,pp.643−650(2000)に、薄い基板を液体に入れ基板にかかる力Fを計測し、接触角を算出する方法が開示されている。具体的な手法については、後述する実施例に例示する。
ウィルヘルミ法で、測定される表面自由エネルギーは、ウィルヘルミ法によって測定される各接触角をもとに、オーエンスウェント(Owens−Wendt)の近似式を用いて求めることができる。オーエンスウェント(Owens−Wendt)の近似式は、Journal of polymer science vol.13 pp.1741−1747(1969)に、下記算出方法が開示されている。
具体的には、少なくとも2種類の液体に対する接触角θと、各液体の表面張力γ(固有値)と、表面張力の極性成分γlp(固有値)、表面張力の非極生成分γld(固有値)を下記式に代入し、検体の表面自由エネルギーの極性成分γspと非極性成分γsdの2元1次方程式が成り立つ。
γ(1+cosθ)=2(γsd ・γld0.5+2(γsp・γlp)0.5
γsdとγspから、表面自由エネルギーγ=γsd+γspを求めることができる。
本発明の炭素繊維束は、炭素繊維の集束性、水系分散媒中の開繊性および水系分散媒への分散後の開繊性の保持に優れているため、抄紙工程により単繊維レベルで均一に分散した炭素繊維シートを得ることができる。かかる炭素繊維シートは、電極材、面状発熱体、静電気除去シート等に好適に利用することができる。また、かかる炭素繊維シートを用い、マトリックス樹脂と組み合わせて、力学特性および電気特性に優れた炭素繊維強化複合材料を得ることができる。
以下、実施例によって、本発明について、より具体的に説明する。実施例で用いた炭素繊維、サイジング剤、およびサイジング剤の付着量の測定方法、炭素繊維の集束性評価方法、炭素繊維の開繊性評価方法、炭素繊維の水との接触角の評価方法、炭素繊維の水との接触角の水分散前後の変化率の評価方法、炭素繊維の表面自由エネルギーの評価方法を、次に示す。実施例の炭素繊維の作製環境および評価は、特に断りのない限り、温度25℃±2℃、相対湿度50%の雰囲気で行ったものである。また、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
<炭素繊維>
・炭素繊維A(アクリロニトリル99モル%とイタコン酸1モル%からなる共重合体を紡糸し、焼成し、総フィラメント数12,000本、比重1.8、ストランド引張強度4.6GPa、ストランド引張弾性率230GPaの炭素繊維を得た。次いで、その炭素繊維を、濃度0.05モル/lの硫酸水溶液を電解質として、電気量を炭素繊維1g当たり3クーロンで電解表面処理した。この電解表面処理を施された炭素繊維を続いて水洗し、150℃の温度の加熱空気中で乾燥し、原料となる炭素繊維を得た。このときの表面酸素濃度O/Cは、0.07であり、ラマン強度比(I1480/I1600)は、0.66であった。これを炭素繊維Aとした。)。
・炭素繊維B(アクリロニトリル99モル%とイタコン酸1モル%からなる共重合体を紡糸し、焼成し、総フィラメント数18,000本、比重1.73、ストランド引張強度5.5GPa、ストランド引張弾性率294GPaの炭素繊維を得た。次いで、その炭素繊維を、濃度0.05モル/lの硫酸水溶液を電解質として、電気量を炭素繊維1g当たり10クーロンで電解表面処理した。この電解表面処理を施された炭素繊維を続いて水洗し、150℃の温度の加熱空気中で乾燥し、原料となる炭素繊維を得た。このときの表面酸素濃度O/Cは、0.05であり、ラマン強度比(I1480/I1600)は、0.42であった。これを炭素繊維Bとした。)。
・炭素繊維C(アクリロニトリル99モル%とイタコン酸1モル%からなる共重合体を紡糸し、焼成し、総フィラメント数12,000本、比重1.8、ストランド引張強度4.4GPa、ストランド引張弾性率380GPaの炭素繊維を得た。次いで、その炭素繊維を、濃度0.05モル/lの硫酸水溶液を電解質として、電気量を炭素繊維1g当たり110クーロンで電解表面処理した。この電解表面処理を施された炭素繊維を続いて水洗し、150℃の温度の加熱空気中で乾燥し、原料となる炭素繊維を得た。このときの表面酸素濃度O/Cは、0.144であり、ラマン強度比(I1480/I1600)は、0.14であった。これを炭素繊維Cとした。)。
<サイジング剤>
・ポリアミドA(ε−カプロラクタムを24molと、繰り返し単位数が11のポリエチレングリコール(化学式量:484)から得られるビスアミノプロピルポリエチレングリコールとアジピン酸のモル比1対1の塩を76molの比率で混合し、通常の方法で縮合重合しポリアミドを得た。GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ−)による(ポリメチルメタクリレートで換算)数平均分子量は、83,500であった。これをポリアミドAとした。)。
・ポリアミドB(ラウリルラクタムを28molと、繰り返し単位数が40のポリエチレングリコール(化学式量:1760)から得られるビスアミノプロピルポリエチレングリコールとアジピン酸のモル比1対1の塩を72molの比率で混合し、通常の方法で縮合重合しポリアミドを得た。GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ−)による(ポリメチルメタクリレートで換算)数平均分子量は、95,000であった。これをポリアミドBとした。)。
・ポリアミドC(ε−カプロラクタムを20molと、繰り返し単位数が11のポリエチレングリコール(化学式量:484)から得られるビスアミノプロピルポリエチレングリコールとセバシン酸のモル比1対1の塩を80molの比率で混合し、通常の方法で縮合重合しポリアミドを得た。GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ−)による(ポリメチルメタクリレートで換算)数平均分子量は、80,000であった。これをポリアミドCとした。)。
・ポリアミドD(ラウリルラクタムを22molと、繰り返し単位数が50のポリエチレングリコール(化学式量:2200)から得られるビスアミノプロピルポリエチレングリコールとセバシン酸のモル比1対1の塩を78molの比率で混合し、通常の方法で縮合重合しポリアミドを得た。GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ−)による(ポリメチルメタクリレートで換算)数平均分子量は、51,000であった。これをポリアミドDとした。)。
・ポリアミドE(ウンデカンラクタムを30molと、繰り返し単位数が11のポリエチレングリコール(化学式量:484)から得られるビスアミノプロピルポリエチレングリコールとアジピン酸のモル比1対1の塩を70molの比率で混合し、通常の方法で縮合重合しポリアミドを得た。GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ−)による(ポリメチルメタクリレートで換算)数平均分子量は、90,000であった。これをポリアミドEとした。)。
・ポリアミドF(ε−カプロラクタムを24molと、繰り返し単位数が20のポリエチレングリコール(化学式量:880)から得られるビスアミノプロピルポリエチレングリコールとアジピン酸のモル比1対1の塩を76molの比率で混合し、通常の方法で縮合重合しポリアミドを得た。GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ−)による(ポリメチルメタクリレートで換算)数平均分子量は、95,000であった。これをポリアミドFとした。)。
・ポリアミドG(ε−カプロラクタムを61molと、繰り返し単位数が20のポリエチレングリコール(化学式量:880)から得られるビスアミノプロピルポリエチレングリコールとアジピン酸のモル比1対1の塩を39molの比率で混合し、通常の方法で縮合重合しポリアミドを得た。GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ−)による(ポリメチルメタクリレートで換算)数平均分子量は、85,000であった。これをポリアミドGとした。)。
・ポリアミドH(ε−カプロラクタムを24molと、繰り返し単位数が91のポリエチレングリコール(化学式量:4000)から得られるビスアミノプロピルポリエチレングリコールとアジピン酸のモル比1対1の塩を76molの比率で混合し、通常の方法で縮合重合しポリアミドを得た。GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ−)による(ポリメチルメタクリレートで換算)数平均分子量は、93,000であった。これをポリアミドHとした。)。
・ポリアミドI(ε−カプロラクタムを10molと、繰り返し単位数が50のポリエチレングリコール(化学式量:2200)から得られるビスアミノプロピルポリエチレングリコールとアジピン酸のモル比1対1の塩を90molの比率で混合し、通常の方法で縮合重合しポリアミドを得た。GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ−)による(ポリメチルメタクリレートで換算)数平均分子量は、80,000であった。これをポリアミドIとした。)。
・ポリアミドJ(ε−カプロラクタムを24molと、繰り返し単位数が2のポリエチレングリコール(化学式量:88)から得られるビスアミノプロピルポリエチレングリコールとアジピン酸のモル比1対1の塩を76molの比率で混合し、通常の方法で縮合重合しポリアミドを得た。GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ−)による(ポリメチルメタクリレートで換算)数平均分子量は、90,000であった。これをポリアミドJとした。)。
・ポリアミドK(ε−カプロラクタムを24molと、繰り返し単位数が11のポリエチレングリコール(化学式量:484)から得られるビスアミノプロピルポリエチレングリコールとアジピン酸のモル比1対1の塩を76molの比率で混合し、通常の方法で縮合重合しポリアミドを得た。GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ−)による(ポリメチルメタクリレートで換算)数平均分子量は、83,500であった。得られたポリアミドに、酸化防止剤(ヒンダードアミン系酸化防止剤(LA−63P((株)ADEKA製)))をサイジング剤全体量に対して1質量%添加したものをポリアミドKとした。)。
・A−774(特許文献1(特開2010−37669号公報)の実施例3に記載のポリアミドと同一のポリアミド)。
・界面活性剤(A)(特許文献2(国際公開第2006/019139号パンフレット)の実施例1に記載の界面活性剤と同一の界面活性剤)。
(1)サイジング剤付着量の測定方法
サイジング剤が付着している炭素繊維を約5g採取し、耐熱製の容器に投入した。次にこの容器を120℃で3時間乾燥し、吸湿しないように室温まで冷却後、秤量した炭素繊維の重量をW(g)とし、続いて容器ごと、窒素雰囲気中、450℃で15分間加熱後、吸湿しないように室温まで冷却し、秤量した炭素繊維の重量をW(g)とした。以上の処理を経て、炭素繊維へのサイジング剤の付着量を次式により求めた。
付着量(重量%)=100×{(W−W)/W}。
なお、サイジング剤を2種以上含む場合は、サイジング剤が付着している炭素繊維約5gをサイジング剤の可溶溶媒(ケトン系、アルコール系、水系溶媒など)に浸し、サイジング剤を溶解した。溶媒を除去することでサイジング剤成分を得て、核磁気共鳴(NMR)によりサイジング剤成分のポリアミドとその他成分の重量比を測定した。
(2)炭素繊維の集束性評価方法
炭素繊維束をカットし、チョップド繊維約70g[秤量値M(g)]を採取し、500mlメスシリンダーに投入し、次に、このメスシリンダーを、厚さ4mmのゴムシートの上で、高さ2.54cmから60回タッピング処理した後に、メスシリンダー内のチョップド繊維の容量V(mL)を読み取った。この処理を経て、充填嵩密度を次式により求めた。
D:充填嵩密度 D=M/V。
測定回数は3回とし、充填嵩密度を測定回数で除した平均嵩密度をA〜Dの4段階で評価した。A〜Bが合格、C〜Dが不合格である。
A:平均嵩密度が0.4以上である。
B:平均嵩密度が0.3以上、0.4未満である。
C:平均嵩密度が0.25以上、0.3未満である。
D:平均嵩密度が0.25未満である。
(3)炭素繊維の開繊性評価方法
6mm長にカットしたチョップド繊維0.05gを水300mLに投入し、20秒間ゆっくりと撹拌した後、20秒間静置する。炭素繊維の分散状態を目視で観察し、開繊性をA〜Dの4段階で評価した。A〜Bが合格、C〜Dが不合格である。
A:未開繊束数が1個未満である。
B:未開繊束数が1個以上5個未満である。
C:未開繊束数が5個以上10個未満である。
D:未開繊束数が10個以上である。
(4)炭素繊維の水との接触角の評価方法
次の手順に従い、ウィルヘルミ法により測定した。なお、本実施例では接触角の測定装置としてDataPhysics社製DCAT11を用い、試料専用ホルダー(表面が粘着物質でコーティングされた板)を使用した。試料となる炭素繊維の単繊維を、長さ12mmに15本カットした後、専用ホルダーに、単繊維を等間隔に貼り付けた。次に、単繊維の先端を切り揃えてホルダーをDCAT11にセットした。測定は、精製水の入ったセルを15本の単繊維の下端に0.2mm/sの速度で近づけ、単繊維の先端から5mmまで浸漬させた後、0.2mm/sの速度で単繊維を引き上げた。この操作を4回以上繰り返し、水液中に浸漬している時、すなわち単繊維が前進している際に単繊維の受ける力Fを電子天秤で測定し、この値を用いて次式より接触角θの値を算出した。
cosθ=(15本の単繊維が受ける力F(mN))/(15(単繊維の数)×単繊維の円周(m)×液体の表面張力(mN/m))
ここで、接触角θの算出は、1〜4回の平均値を用いた。これを3試験実施し、3試験の平均値を接触角とした。
(5)炭素繊維の水との接触角の水分散前後の変化率の評価方法
(4)と同様の方法で測定し、1回目の測定で得られた接触角を水分散前の接触角として算出した。これを3試験実施し、3試験の平均値を水分散前の接触角とした。また、さらに測定を続け5〜8回の平均値を水分散後の接触角として、算出した。これを3試験実施し、3試験の平均値を水分散後の接触角とした。水分散前後の変化率は、次式により求めた。
水分散前後の変化率(%)=100×((水分散後の接触角)−(水分散前の接触角)/(水分散前の接触角)
(6)炭素繊維の表面自由エネルギーの評価方法
(4)と同様の方法で測定し、炭素繊維の表面自由エネルギーは、炭素繊維の単繊維を、水、エチレングリコール、燐酸トリクレゾールの各液状媒体に対するウィルヘルミ法によって測定される各接触角を、それぞれウィルヘルミ法を用いて算出し、その数値をもとに、以下のオーエンス(Owens)の近似式を用いて表面自由エネルギーγ、表面自由エネルギーの極性成分γOPを算出した。
オーエンス(Owens)の近似式(各液体固有の表面張力の極性成分と非極性成分、さらに接触角θにより構成させる式)は、各液状媒体の表面張力の成分(各媒体に固有の値)、接触角を代入し、X、Yにプロットした後、最小自乗法により直線近似したときの傾きaおよび、切片bの自乗により求めた。
Y=a・X+b
X=(液体の表面張力の極性成分(mJ/m))1/2/(液体の表面張力の非極性成分(mJ/m))1/2
Y=(1+COSθ)・(液体の表面張力(mJ/m))/2(液体の表面張力の非極性成分(mJ/m))1/2
γOP(mJ/m)=a
γ(mJ/m)=a+b
なお、各液状媒体の表面張力の極性成分および非極性成分は、以下の固有値を使用した。
・精製水(PW)
表面張力72.8mJ/m、極性成分51mJ/m、非極性成分21.8mJ/m
・エチレングリコール(EG)
表面張力48.0mJ/m、極性成分19.0mJ/m、非極性成分29.0mJ/m
・燐酸トリクレゾール(TP)
表面張力40.9mJ/m、極性成分1.7mJ/m、非極性成分39.2mJ/m
(実施例1)
ポリアミドAのサイジング剤を濃度2.5%に調整した水溶液に炭素繊維Aを浸漬してサイジング剤を付着させ、熱風乾燥機により230℃で1分間乾燥した。得られたサイジング剤を付着した炭素繊維束を6mmにカットし、チョップド繊維を得た。得られた炭素繊維束は、ボビン巻き取り性や毛羽などに問題なく、取り扱い性は良好であった。
(1)サイジング剤の付着量の測定方法、(2)炭素繊維の集束性評価方法、(3)炭素繊維の開繊性評価方法、(4)炭素繊維の水との接触角の評価方法、(5)炭素繊維の水との接触角の水分散前後の変化率の評価方法、(6)炭素繊維の表面自由エネルギーの評価方法を記載したとおりに実施した。結果を表1に示す。
(実施例2〜19)
炭素繊維、サイジング剤を表1に示すように変更し、サイジング剤の付着量が表1に示すようになるようサイジング剤の濃度を変更した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維束、チョップド繊維を作製した。また、作製したチョップド繊維を用いて、サイジング剤の付着量、炭素繊維の集束性、炭素繊維の開繊性、炭素繊維の水との接触角、炭素繊維の水との接触角の水分散前後の変化率、炭素繊維の表面自由エネルギーを評価した。得られた結果を表1にまとめて示す。
(比較例1〜18)
炭素繊維、サイジング剤を表2に示すように変更し、サイジング剤の付着量が表2に示すようになるようサイジング剤の濃度を変更したこと以外は、実施例1と同様にして炭素繊維束、チョップド繊維を作製した。また、作製したチョップド繊維を用いて、サイジング剤の付着量、炭素繊維の集束性、炭素繊維の開繊性、炭素繊維の水との接触角、炭素繊維の水との接触角の水分散前後の変化率、炭素繊維の表面自由エネルギーを評価した。得られた結果を表2にまとめて示す。
Figure 2014177733
Figure 2014177733
表1および表2において、集束性の欄には、4段階評価に加え、カッコ内に平均嵩密度の数値を示している。
実施例1〜19と比較例1〜12の対比により、本発明の炭素繊維束は、集束性、水系分散媒中の開繊性および水系分散媒への分散後の開繊性の保持に優れていることが分かる。
本発明によれば、炭素繊維の集束性、水系分散媒中の開繊性および水系分散媒への分散後の開繊性の保持に優れた水系プロセスへ適した炭素繊維束が得られるため、抄紙工程により単繊維レベルで均一に分散した炭素繊維シートを得ることができ、かかる炭素繊維シートは、電極材、面状発熱体、静電気除去シート等に好適に利用することができるばかりか、かかる炭素繊維シートを用い、マトリックス樹脂と組み合わせて、力学特性および電気特性に優れた炭素繊維強化複合材料を得ることができ、自動車構造部材、航空機構造部材、スポーツ用品、電化製品、風車の羽根、自動車外板およびICトレイやノートパソコンの筐体(ハウジング)などのコンピューター用途等に広く展開でき、有用である。

Claims (14)

  1. 炭素繊維とサイジング剤を有してなる水系プロセス用炭素繊維束において、前記サイジング剤は、少なくともアミノカルボン酸単位、ジカルボン酸単位およびポリエーテルジアミン単位から構成されるポリアミドであって、ポリエーテルジアミン単位におけるポリエーテル構造の化学式量が100以上3000以下であり、アミノカルボン酸単位が20〜30mol%、ジカルボン酸単位とポリエーテルジアミン単位の合計が70〜80mol%であるポリアミドを含む、水系プロセス用炭素繊維束。
  2. 前記炭素繊維束を構成する単繊維は、ウィルヘルミ法で測定される水との接触角の変化率が水分散前後で10%以下である、請求項1に記載の水系プロセス用炭素繊維束。
  3. 前記炭素繊維は、引張弾性率が360GPa以上800GPa以下である、請求項1または2に記載の水系プロセス用炭素繊維束。
  4. 前記炭素繊維は、X線光電子分光法(ESCA)で測定される表面酸素指数(O/C)が0.1以上0.2以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の水系プロセス用炭素繊維束。
  5. 前記アミノカルボン酸が、ε−アミノカルボン酸である、請求項1〜4のいずれかに記載の水系プロセス用炭素繊維束。
  6. 前記ジカルボン酸が、アジピン酸である、請求項1〜5のいずれかに記載の水系プロセス用炭素繊維束。
  7. 前記ポリエーテルジアミン単位におけるポリエーテル構造がポリエチレングリコール骨格から構成される、請求項1〜6のいずれかに記載の水系プロセス用炭素繊維束。
  8. 前記炭素繊維束を構成する単繊維は、ウィルヘルミ法で測定される水との第1接触角が55度以下である、請求項1〜7のいずれかに記載の水系プロセス用炭素繊維束。
  9. 前記炭素繊維束を構成する単繊維は、ウィルヘルミ法で測定される表面自由エネルギーが50〜70mJ/mである、請求項1〜8のいずれかに記載の水系プロセス用炭素繊維束。
  10. 前記ポリアミドは、数平均分子量が50,000〜100,000である、請求項1〜9のいずれかに記載の水系プロセス用炭素繊維束。
  11. 前記サイジング剤に酸化防止剤が0.1〜5質量%の割合で含有している、請求項1〜10のいずれかに記載の水系プロセス用炭素繊維束。
  12. 前記ポリアミドが前記炭素繊維に炭素繊維束質量あたり0.1〜10質量%の割合で付着している、請求項1〜11のいずれかに記載の水系プロセス用炭素繊維束。
  13. 前記炭素繊維束が1,000〜60,000本の単繊維からなる、請求項1〜12のいずれかに記載の水系プロセス用炭素繊維束。
  14. 前記炭素繊維束が繊維長0.5〜20mmのチョップド繊維束である、請求項1〜13のいずれかに記載の水系プロセス用炭素繊維束。
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