JP2014177212A - 車両用ステアリング装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ラックとピニオンとの噛み合いを良好に維持することができる技術を提供すること。
【解決手段】ラックガイド61の支持面61aは、円弧形状を呈し、通常時にラック軸16に接触している通常時接触面61bと、この通常時接触面61bの延長線ELよりもピニオン31側に形成され、ラック軸16に過大な負荷が加わりラック軸16が変位した場合に、ラック軸16がピニオン31から離間することを防止するストッパ面61cと、からなる。また、ラック軸16には、中空状の部材が用いられている。さらに、ストッパ面61cが形成される部位には、弾性に富む素材が用いられ、ラック軸16に過大な負荷が加わった場合に、ストッパ面61cが形成される部位を弾性変形させる構成とされている。
【選択図】図6
【解決手段】ラックガイド61の支持面61aは、円弧形状を呈し、通常時にラック軸16に接触している通常時接触面61bと、この通常時接触面61bの延長線ELよりもピニオン31側に形成され、ラック軸16に過大な負荷が加わりラック軸16が変位した場合に、ラック軸16がピニオン31から離間することを防止するストッパ面61cと、からなる。また、ラック軸16には、中空状の部材が用いられている。さらに、ストッパ面61cが形成される部位には、弾性に富む素材が用いられ、ラック軸16に過大な負荷が加わった場合に、ストッパ面61cが形成される部位を弾性変形させる構成とされている。
【選択図】図6
Description
本発明は、車両用ステアリング装置の改良技術に関する。
ステアリングホイールを操舵することによって発生した操舵トルクを、ステアリングホイールからラックアンドピニオン機構を介して操舵車輪に伝える車両用ステアリング装置が広く知られている(例えば、特許文献1(図3及び図4)参照。)。
特許文献1に示されるような、車両用ステアリング装置は、ピニオンと、このピニオンに噛み合うラックと、このラックが形成されているラック軸と、このラック軸を囲うと共にピニオンを挟むようにして2箇所に配置されているリング状のラック支持部と、これらのラック支持部の間に設けられラック軸をピニオンに向かって付勢するラックガイドとを有している。
ラックガイドには、ラック軸の背面に接触する円弧状の支持面が形成されており、この支持面は、ラック軸の背面の1箇所のみに接触する。そして、ラックガイドの中心線は、ラック軸の軸線に対して、支持面が背面に接触する方にオフセットしている。
このようなラックアンドピニオン機構が搭載されている車両用ステアリング装置において、ステアリングホイールを限界まで回転させると、ラック軸及びピニオンには過大な負荷が加わる。ラックガイドがラック軸に対してオフセットしている車両用ステアリング装置において、過大な負荷は、例えば、ラック軸をへの字に撓ませるように作用する。この過大な負荷によって、ラック軸がピニオンに対して変位することがある。ラック軸とピニオンとの距離が変化すると、ラックとピニオンとの噛み合いが悪化する。
本発明は、ラックとピニオンとの噛み合いを良好に維持することができる技術の提供を課題とする。
請求項1に係る発明は、ステアリングホイールを操舵することによって発生した操舵トルクを、前記ステアリングホイールからラックアンドピニオン機構を介して操舵車輪に伝える車両用ステアリング装置において、
前記ラックアンドピニオン機構のラックが形成されているラック軸と、
前記ラックアンドピニオン機構のピニオンの位置に対して前記ラック軸の軸長手方向の両側に位置する2個のラック支持部と、
これらの2個のラック支持部の間に位置し、前記ラック軸を少なくとも前記ラック以外の方向へ付勢することが可能な付勢部と、を備え、
前記2個のラック支持部は、操舵の中立位置に位置している状態の前記ラック軸の、前記ラックが形成されている部位の背面のみを、軸長手方向にスライド可能に支持するように、互いに接近して位置し、
前記付勢部は、
前記ラック軸の中心線に直交し且つ前記ピニオンの中心線に直交するピニオン直交基準線に沿ってスライド可能であって、前記ラック軸の、前記ラックが形成されている部位の前記背面を、軸長手方向にスライド可能に支えるラックガイドと、
このラックガイドを前記背面に向かって付勢する圧縮コイルばねと、からなり、
前記ラックガイドは、前記背面を支えるための支持面を有し、
この支持面は、前記ピニオン直交基準線に対して前記背面の片側のみに接触可能に形成され、
前記ラックガイドのスライド方向の中心線は、前記ピニオン直交基準線に対し、前記支持面が前記背面に接触する方にオフセットしており、
前記支持面は、
円弧形状を呈し、通常時に前記ラック軸に接触している通常時接触面と、
この通常時接触面の延長線よりも前記ピニオン側に形成され、前記ラック軸に過大な負荷が加わり前記ラック軸が変位した場合に、前記ラック軸が前記ピニオンから離間することを防止するストッパ面と、からなることを特徴とする。
前記ラックアンドピニオン機構のラックが形成されているラック軸と、
前記ラックアンドピニオン機構のピニオンの位置に対して前記ラック軸の軸長手方向の両側に位置する2個のラック支持部と、
これらの2個のラック支持部の間に位置し、前記ラック軸を少なくとも前記ラック以外の方向へ付勢することが可能な付勢部と、を備え、
前記2個のラック支持部は、操舵の中立位置に位置している状態の前記ラック軸の、前記ラックが形成されている部位の背面のみを、軸長手方向にスライド可能に支持するように、互いに接近して位置し、
前記付勢部は、
前記ラック軸の中心線に直交し且つ前記ピニオンの中心線に直交するピニオン直交基準線に沿ってスライド可能であって、前記ラック軸の、前記ラックが形成されている部位の前記背面を、軸長手方向にスライド可能に支えるラックガイドと、
このラックガイドを前記背面に向かって付勢する圧縮コイルばねと、からなり、
前記ラックガイドは、前記背面を支えるための支持面を有し、
この支持面は、前記ピニオン直交基準線に対して前記背面の片側のみに接触可能に形成され、
前記ラックガイドのスライド方向の中心線は、前記ピニオン直交基準線に対し、前記支持面が前記背面に接触する方にオフセットしており、
前記支持面は、
円弧形状を呈し、通常時に前記ラック軸に接触している通常時接触面と、
この通常時接触面の延長線よりも前記ピニオン側に形成され、前記ラック軸に過大な負荷が加わり前記ラック軸が変位した場合に、前記ラック軸が前記ピニオンから離間することを防止するストッパ面と、からなることを特徴とする。
請求項2に係る発明は、前記ラック軸には、中空状の部材が用いられていることを特徴とする。
請求項3に係る発明は、前記ラックガイドには、前記ラックガイドのスライド方向の中心線に沿って弾性変形部が形成され、前記ラック軸が変位した際に、前記弾性変形部が弾性変形する構成とされていることを特徴とする。
請求項1に係る発明では、ラックガイドには、ラック軸に過大な負荷が加わり、ラック軸が変位した場合にラック軸がピニオンから離間することを防止するストッパ面が形成されている。ラック軸は、ストッパ面によって、ピニオンから離間することを規制されている。このことにより、ラックとピニオンとの距離を所定の範囲内に保つことができる。即ち、ラックとピニオンとの噛み合いを良好に維持することができる。
請求項2に係る発明では、ラック軸には、中空状の部材が用いられている。中空状の部材を用いることにより、ラック軸を容易に弾性変形させることができる。ラックとピニオンとの距離を所定の範囲内に保ちつつ、ラック軸を弾性変形させることにより、ラック軸に加わる過大な負荷を吸収することができる。
請求項3に係る発明では、ラックガイドには、弾性変形部が形成されている。この弾性変形部は、ラック軸が変位した際に弾性変形する。このことにより、ラックとピニオンとの距離を所定の範囲内に保ちつつ、ラック軸に加わる過大な負荷を吸収することができる。
本発明を実施するための形態を添付図に基づいて以下に説明する。
実施例1による車両用ステアリング装置を説明する。
図1に示されるように、車両用ステアリング装置10は、ステアリングホイール11にステアリングシャフト12及び自在軸継手13,13を介してピニオン軸14(回転軸14)を連結し、このピニオン軸14にラックアンドピニオン機構15を介してラック軸16を連結し、このラック軸16の両端にボールジョイント17,17、タイロッド18,18及びナックル19,19を介して左右の操舵車輪21,21を連結した構成である。
車両用ステアリング装置10(以下、単に「ステアリング装置10」という。)によれば、運転者がステアリングホイール11を操舵することによって発生した操舵トルクを、ステアリングホイール11からラックアンドピニオン機構15及び左右のタイロッド18,18を介して、左右の操舵車輪21,21に伝えることができる。
ラックアンドピニオン機構15は、ピニオン軸14に形成されたピニオン31と、ラック軸16に形成されたラック32とからなる。ピニオン軸14は、車両の上下方向に延びている。ラック軸16は、車幅方向に延びた鉄鋼製の棒状の部材からなる。このラック軸16には、例えば機械構造用炭素鋼鋼材(JIS−G−4051)やクロムモリブデン鋼鋼材(JIS−G−4105)等を用いることができる。ラック軸16は、軸線方向にわたって、略D字状の孔(図3、符号16b参照)が開けられていることにより、中空状に形成されている。
図2及び図3に示されるように、ラック軸16は少なくとも、ラック32が形成されている部位の背面16aが略円弧状断面に形成されている。ピニオン軸14とラックアンドピニオン機構15とラック軸16とは、少なくとも要部がハウジング41に収納されている。このハウジング41は、車幅方向に貫通した細長い筒状の部材であって、長手中央の上端から上方に開口している。ラック軸16の両端は、ハウジング41の両端よりも車幅方向の外方へ延びている。ハウジング41の両端と左右のタイロッド18,18との間は、ブーツ42,42によって覆われている。
ピニオン軸14は、ピニオン31を挟んで上部及び下端部が、ハウジング41内に取付けられている2個の軸受(下の第1軸受43と上の第2軸受44)によって、回転可能に且つ軸方向への移動を規制するように支持されている。第1及び第2軸受43,44はボールベアリングによって構成されているが、第1軸受43はニードルベアリングのようなラジアル軸受であってもよい。
ステアリング装置10は、ピニオン31の位置(ピニオン31とラック32との噛み合い位置)に対してラック軸16の軸長手方向の両側に位置する2個のラック支持部50,50と、この2個のラック支持部50,50の間に位置する付勢部60とを備えている。
図3に示されるように、付勢部60の付勢方向は、ラック軸16を少なくともラック32以外の方向へ付勢することが可能に設定されている。詳しく述べると、付勢部60は、ラック軸16をピニオン31へ押し付ける作用をなすためのラックガイド機構によって構成されている。この付勢部60(ラックガイド機構60)は、ラック32とは反対側からラック軸16に当てる樹脂製のラックガイド61と、このラックガイド61をラック軸16の背面16aに向かって付勢する圧縮コイルばね62と、前記ラックガイド61を圧縮コイルばね62を介して押して付勢力を調整するための調整ボルト63とからなる。
ラックガイド61は、ラック軸16の、ラック32が形成されている部位の背面16aを押し付け、支持するための支持面61a(背面16aを支えるための支持面61a)を有する。つまり、ラックガイド61は、背面16aを軸長手方向にスライド可能に支える。このラックガイド61は、耐摩耗性を有するとともに摩擦抵抗が小さい材料からなり、例えば、ポリアセタール樹脂又はポリアセタールを含んだ樹脂や、ポリテトラフルエチレン樹脂(略記;PTFE、テフロン(登録商標))等のフッ素樹脂などの、樹脂製品が好適である。
図6(a)及び図6(b)に示されるように、ラックガイド61には、支持面61aと、2つの弾性変形部61d,61dとが形成されている。
図6(a)に示されるように、支持面61aは、円弧形状を呈し通常時にラック軸16に接触している通常時接触面61bと、この通常時接触面61bの延長線ELよりもピニオン側(図面左側)に形成されピニオンの移動を規制するストッパ面61cとからなる。ストッパ面61cは、言い換えれば、通常時接触面61bの延長線ELよりもラック軸16に近い部位に形成されている。
通常時接触面61bは、曲率半径r1の円弧面であり、通常時接触面61bの曲率半径r1は、ラック軸16の半径r2よりも大きい。このことにより、通常時接触面61bは、ラック軸16の背面16aに対して1箇所で接触している。ここで通常時とは、ステアリングホイールが操作されていない状態、又は、操作されていても操作量が僅かであり、ラック軸16に係っている負荷が十分に小さい状態を言う。
ストッパ面61cは、曲率半径r3の円弧面であり、通常時接触面61bから連続して形成されている。ストッパ面61cの曲率半径r3は、ラック軸16の半径r2よりも大きい。このことにより、ストッパ面61cは、ラック軸16の背面16aに対して1箇所で接触する。通常時接触面61bとストッパ面61cとを湾曲面によって連続させることにより、通常時接触面61bとストッパ面61cとの境界部分を滑らかに連続させることができる。
図6(b)も合わせて参照し、弾性変形部61d,61dは、ラックガイド61がオフセットされるのと同じ側の端部、即ち、ラックガイド61の下端部に形成されている。より詳細には、弾性変形部61d,61dは、円柱状のラックガイド61の下端部の一部を、ラックガイド中心線Lgに沿って欠肉状にすることにより形成されている。即ち、欠肉状に形成された周縁の残された部位が弾性変形部61d,61dであり、このように形成されることにより、弾性変形部61d,61dは、ラックガイドの径方向に撓みやすい構成とされている。
ここで、ラック軸16について、図7に基づき次のように定義する。図7(a)は、図2に示されるラックアンドピニオン機構15を模式的に表した斜視図である。図7(b)は、図7(a)に示されたラックアンドピニオン機構15の平面図である。図7(c)は、図2に示されるラックアンドピニオン機構15とラックガイド61との関係を模式的に表した断面図である。
図7(a)〜(c)に示されるように、ラック軸16の中心線Prに直交し且つピニオン31の中心線Ppに直交する直線Lcのことを「ピニオン直交基準線Lc」とする。また、ラック軸16の中心線Prに直交し且つピニオン31の中心線Ppに平行な直線Lpのことを「ピニオン平行基準線Lp」とする。このピニオン平行基準線Lpは、ピニオン直交基準線Lcに対して直交している。
図3及び図7に示されるように、ラックガイド61は、スライド方向の中心線Lg(付勢部の中心線Lg)を中心とする真円の円柱状の部材である。スライド方向の中心線Lgは、ピニオン直交基準線Lcに平行である。つまり、ラックガイド61は、中心線Lgを基準とした円形状断面に形成されている。ラックガイド61及び圧縮コイルばね62はラックガイドハウジング64に収納されている。このラックガイドハウジング64は、ハウジング41に一体に形成されており、ラックガイド61を中心線Lgに沿ってスライド可能に支持することが可能な円形状(真円状)の支持用孔64aを有している。ラックガイド61の外径はd1である。ラックガイド61の外周面と支持用孔64aの内面との間の隙間は、ラックガイド61がラック軸16を支持する方向にスライド可能な(進退運動が可能な)程度の極めて小さいものである。
ラックガイド61の支持面61aは、ラック軸16の背面16aのうち、ピニオン直交基準線Lcに対して、いずれか一方の面のみに接触可能に形成されている。例えば、支持面61aは、水平なピニオン直交基準線Lcに対して、上又は下の面のみに接触可能である。
ラック軸16の背面16aの半径r2の中心は、ピニオン直交基準線Lc上に位置している。一方、通常時接触面61bの半径r1の中心は、ピニオン直交基準線Lcに対して上又は下に、つまり、ラック32の歯幅方向にオフセットしている。この結果、支持面61aは、水平なピニオン直交基準線Lcに対して、ラック軸16の背面16aの上又は下の面のみに接触する。図3及び図7では、支持面61aは、ピニオン直交基準線Lcに対して背面16aの下の面のみに接触している。
ここで、ラック軸16の背面16aに対する通常時接触面61bの接触関係について、図8(a),(b)に基づき説明する。図8(a)は、図7(c)に合わせてラック軸16とラックガイド61との関係を示している。図8(b)は、図8(a)に示されたラックガイド61を、ラックガイド61のスライド方向から見た構成を表している。
上述のように、「r1>r2」の関係があるので、ラック軸16の背面16aに対して、通常時接触面61bは1つの接触部位Qsでのみ接触する。背面16aに対する通常時接触面61bの接触部位Qsは、ラック軸16の軸長手方向に直線状に延びる(図8(b)参照)とともに、ラックガイド61の大きさがラック軸16の軸長手方向に最大となるように位置している。より具体的には、ラックガイド61のスライド方向の中心線Lg及び圧縮コイルばね62の中心線Lgは、ピニオン直交基準線Lcに対し、通常時接触面61b(支持面61a)が背面16aに接触する方にオフセット量δだけオフセットしている。
図3、図7及び図8(a),(b)では、ラックガイド61のスライド方向の中心線Lgは、ピニオン直交基準線Lcに対して下にオフセットしている。接触部位Qsは、円形状断面に形成されているラックガイド61の中心線Lg上に位置している。従って、背面16aに対する通常時接触面61b(支持面61a)の接触部位Qsは、ラック軸16の軸長手方向に直線状に延び、その延び長さはラックガイド61の外径d1と同じである。
図5に示されるように、ラック軸16の断面中心Pr(中心線Pr)は、軸受50の断面中心Pj(中心線Pj)に対して、ピニオン31(図7(a)参照)から離れる方向にオフセット量Δ1だけオフセットし、且つ、ピニオン31の中心線Pp(図7(a)参照)に沿ってラック32の歯幅方向にオフセット量Δ2だけオフセットしている。このため、ラック32自体が軸受50によって支持される(接触する)ことを、より一層確実に防ぐことができる。
次に、上記実施例のステアリング装置10の作用を説明する。図9(a)は、ラック32が操舵の中立位置(車両が直進走行をする位置)に位置している状態の、ステアリング装置10を平面視で模式的に表している。図9(b)は、ステアリング装置10を右へ操舵することによって、ラック32が右にスライド変位している状態のステアリング装置10を平面視で模式的に表している。図9(c)は、ステアリング装置10を左へ操舵することによって、ラック32が左にスライド変位している状態のステアリング装置10を平面視で模式的に表している。
図3に示されるように、ラックガイド61に形成されている略円弧状断面の通常時接触面61b(支持面61a)は、ラック軸16の背面16aのうち、ピニオン直交基準線Lcに対していずれか一方の面のみに接触している。このため、ラックガイド61は、圧縮コイルばね62の付勢力F1によって、ラック軸16をピニオン31へ向かって押し付けるとともに、図5に示されるように、ラック軸16の背面16aを各ラック支持部50に押し付けている(予圧を付加している。)。
図5に示されるように、ラック軸16の断面中心Pr(中心線Pr)は、ラック支持部50の断面中心Pj(中心線Pj)に対して、ピニオン31(図7参照)から離れる方向にオフセット量Δ1だけオフセットし、且つ、ラック32の歯幅方向にオフセット量Δ2だけオフセットしている。この結果、図5及び図9(a)に示されるように、ラック軸16は、各ラック支持部50,50の断面中心Pjとラック軸16の断面中心Prとを結んだ作用線WL上に接点Qwを有し、この作用線WLの方向に反力F2が発生する。各ラック支持部50,50はラック軸16の背面16aを支持することになる。このラック軸支持構成は、いわゆる「2個の支点の両側から梁が張り出し、この梁の長手中央に集中荷重(ピニオン31の反力)が作用している」つり合い条件の支持構成に相当する。なお、オフセット量Δ1のオフセットはなくてもよい。その場合には、反力F2がラック上点Quから発生する。
このようにして、ラック軸16の背面16aは、ピニオン31と2個のラック支持部50,50との3点によって、軸長手方向へのスライドが可能に確実に支持される。しかも、ラック32自体が各ラック支持部50,50によって支持されることはない(接触することはない)。ラック軸16を支持するための別個の支持部材を設ける必要はなく、ラック軸16を支持するための支持構成を簡略化することができる。
さらに、ピニオン直交基準線Lc(図3参照)に対して、いずれか一方の面のみに接触可能に形成されただけの、極めて簡単な構成の通常時接触面61b(支持面61a)によって、ラック軸16をピニオン31へ向かって押し付けるとともに、ラック軸16の背面16aを各ラック支持部50,50に押し付けることができる。このため、ラック軸16の背面16aを各ラック支持部50,50に押し付けるのに、別個の部品を設ける必要はない。しかも、ラック軸16の背面16aに対して、支持面61aの略半分だけが接触する。このため、支持面61aの接触面積が少ないので、支持面61aを精度よく滑らかに加工することができる。この結果、ラック軸16がスライドするときの摩擦抵抗を抑制することができる。
さらに、2個のラック支持部50,50は、ラック軸16において、ラック32が形成されている部位の背面16aのみを支持することが可能であって、互いに接近して位置している。各ラック支持部50,50がラック32の長さの範囲内に位置するので、範囲外に位置している従来に比べて、ラック軸16の全長を短くすることができる。このため、ラックアンドピニオン機構15をラック32の長手方向に小型にすることができる。ラックアンドピニオン機構15を収納するためのハウジング41(図3参照)も小型化できるので、ステアリング装置10の小型化及び軽量化を図ることができる。
さらに、ラック軸16が従来に比べて短くなった分、ラック軸16に連結されているタイロッド18,18を長く設定することができる。このため、ステアリング装置10及びこのステアリング装置10を搭載する車両の、設計の自由度を高めることができる。例えば、ステアリング装置10のタイロッド18,18と図示せぬサスペンション装置とによって形成される、サスペンションジオメトリの設計自由度を高めることができる。
特に、このようなステアリング装置10を、車幅が小さい小型車に搭載する場合に、配置上の制約が小さい。しかも、タイロッド18,18を長く設定すれば、左右の操舵車輪21,21がバンプやリバウンドをしたときにおいて、トーの変化の影響を抑制することができる。この結果、車両の操縦性を高めることができる。
さらに、ラック軸16が短くなることにより、タイロッド18,18を長く設定することができる。従って、ラック軸16に対するタイロッド18,18の傾き角φ(張り角φともいう)を、小さく設定することができる。このため、図9(b)及び図9(c)に示されるように、ラック軸16が車幅方向にスライド変位したときに、ラック軸16に垂直な方向に作用する力fb(曲げ力fb)は小さくてすむ。曲げ力fbが小さいので、ラック軸16に生じる曲げモーメントは小さい。従って、ラック軸16の曲げ強度を十分に高めることができるとともに、ラック軸16の撓みを抑制することができる。ラック軸16の撓みが小さいので、操舵時における左右の操舵車輪21,21の転舵角の精度を高めることができる。しかも、ピニオン31に対するラック32の噛み合い状態を良好に保つことができ、この結果、ラックアンドピニオン機構15の耐久性を十分に確保することができる。
図9(a)に示されるように、走行中に左右の操舵車輪21,21に加わる外乱、例えば路面の凹凸などに起因して発生した各操舵車輪21,21の振動は、左右の操舵車輪21,21からタイロッド18,18を介してラック軸16に伝わる。
これに対して実施例では、ラック32が操舵の中立位置の付近に位置している場合には、ラック軸16の背面16aから左右のラック支持部50,50に予圧が付加されている。このため、ラック軸16の背面16aと各ラック支持部50,50との間には、隙間を有していない。予圧が付加されているとともに隙間がないので、前記振動に起因して、ラック軸16の背面16aが各ラック支持部50,50に当たる音、つまり打音の発生を十分に防止することができる。
例えば、図9(b)に示される右操舵のときや、図9(c)に示される左操舵のときに、ラック支持部50,50が受ける反力の方向は、ラック軸16の背面16aから左右のラック支持部50,50に予圧が付加されている方向である。このため、右操舵と左操舵とを反転させるときに、ラック軸16の背面16aが各ラック支持部50,50に当たる音(打音)の発生を、十分に防止することができる。
しかも、ラック軸16は従来に比べて短いので軽量である。仮に、予圧を上回る大きい外乱がラック軸16に伝わった場合であっても、打音を抑制することができる。従って、ステアリング装置10から車室に伝わる騒音を十分に防止することができ、この結果、車室内の環境をより高めることができる。
次に、ピニオン直交基準線Lcに対してラックガイド61の中心線Lgをオフセットしたことによる作用を説明する。図8(c)は、ピニオン直交基準線Lcに対して、ラックガイド61Aの中心線Lgがオフセットしていない場合(比較例)を示している。図8(b)には、図8(a)に示された実施例のラックガイド61と、図8(c)に示された比較例のラックガイド61Aとを、ラックガイド61,61Aのスライド方向から見た構成を表している。
図8(c)に示されるように、比較例の付勢部60Aの基本構成は図7(a)に示される実施例の付勢部60と実質的に同じであって、ラックガイド60Aと圧縮コイルばね62とからなる。図8(b),(c)に示されるように、比較例のラックガイド60Aの支持面61Aaは、ピニオン直交基準線Lcに対して背面16aの片側のみに接触している。それにもかかわらず、ラックガイド61Aのスライド方向の中心線Lgはピニオン直交基準線Lcに合致している。このため、支持面61Aaが背面16aに接触しない無駄な範囲は広い。その分、ラックガイド61Aの外径d2が大きくならざるを得ない。
さらに、図8(c)に示されるように、圧縮コイルばね62の付勢点Qc(圧縮コイルばね62の中心)はピニオン直交基準線Lc上に位置する。このピニオン直交基準線Lcから接触部位Qsまでの距離はδAである。このため、圧縮コイルばね62の付勢力によって、ラックガイド61Aの接触部位Qsがラック軸16を押したときに、このラック軸16から接触部位Qsに反力Poが加わる。この反力Poは圧縮コイルばね62の付勢力と同等である。従って、ラックガイド61Aには、モーメントMaが発生する(Ma=δA×Po)。
図3に示されるように、ラックガイド61はラックガイドハウジング64の支持用孔64aにスライド可能に嵌合されている。ラックガイド61と支持用孔64aの壁面との間には、モーメントMaに応じた「こじれ力」(偏り荷重)が作用する。このため、この「こじれ力」に摩擦係数を乗じた値の摩擦力が、ラックガイド61と支持用孔64aの壁面との間に生じる。この摩擦力は、ラックガイド61のスライド運動を阻害する抗力となる。このような抗力は、ラック軸16の振動に対するラックガイド61の追従性を高める上で、好ましくない。しかも、ラックガイド61と支持用孔64aの壁面との間に、偏った摩耗現象が発生することによって、ラックガイド61のガタツキの要因となり得るので、付勢部60の耐久性を高める上で改良の余地がある。
これに対し、図8(a)に示されるように、実施例では、ラックガイド61のスライド方向の中心線Lgは、ピニオン直交基準線Lcに対し、支持面61aが背面16aに接触する方にオフセットしている。このため、支持面61aが背面16aに接触しない無駄な範囲を狭くすることができる。その分、ラックガイド61の外径d1を小さくできるので、この結果、ラックガイド61を軽量にできる。このように、支持面61aが背面16aに接触可能な範囲を確保しつつ、ラックガイド61の小型化、軽量化を図ることができる。
質量体であるラックガイド61と、所定のばね定数の圧縮コイルばね62と、からなる振動系を考えたときに、この振動系の固有振動数(共振周波数)は、ラックガイド61が軽量になることによって大きくなる。このため、ラック軸16の振動に対するラックガイド61の追従性が高まるので、ピニオン31(図3参照)に対するラック32の良好な噛み合い状態を十分に維持することができる。従って、ピニオン31とラック32との摩擦特性が良好になるので、ラックアンドピニオン式ステアリング装置10(図1参照)を、より円滑に操舵することができ、この結果、操舵感覚を高めることができる。しかも、ピニオン31とラック32との良好な噛み合い状態を十分に維持できることによって、ラックアンドピニオン機構15の強度や耐久性を高めることができる。
さらに、図8(b)に示されるように、背面16aに対する支持面61aの接触部位Qsは、ラック軸16の軸長手方向に直線状に延びるとともに、ラックガイド61の大きさがラック軸16の軸長手方向に最大(外径d1の値)となるように位置している。つまり、ラックガイド61は、このラックガイド61のスライド方向の中心線Lgを基準とした円形状断面に形成され、この中心線Lg上に接触部位Qsが位置している。従って、背面16aに対する支持面61aの接触部位Qsは、ラック軸16の軸長手方向に直線状に延び、この直線状の延び長さはラックガイド61の外径d1と同じであり、最大である。このため、ラックガイド61のスライド方向の中心線Lgがピニオン直交基準線Lcに合致している場合(図8(c)参照)に比べて、支持面61aが背面16aに接触しない無駄な範囲が狭くてすむ。従って、ラックガイド61の大きさ(外径d1)を小さくできるので、この結果、ラックガイド61を軽量にできる。
さらに、図8(a)に示されるように、圧縮コイルばね62の付勢点Qcは接触部位Qsに合致している。このため、ラック軸16から接触部位Qsへ加わる反力Poによってモーメントが発生することはない。従って、ラック軸16の振動に対するラックガイド61の追従性を高めることができる。しかも、付勢部60の耐久性を高めることができる。例えば、前記モーメントが発生しないので、このモーメントによる過大な「こじれ力」(偏り荷重)がラックガイド61、圧縮コイルばね62及び調整ボルト63(図3参照)に作用しない。このため、ラックガイド61の各座面(支持面61aやばね受け面)や調整ボルト63の座面(ばね受け面)に変形(へたり現象)や損耗が発生することによる、ラックガイド61と調整ボルト63との間の隙間が増大することはない。
さらに、ラックガイド61のスライド方向の中心線Lgを、ピニオン直交基準線Lcに対し、支持面61aが背面16aに接触する方にオフセットさせたので、ラック軸16の背面16aに対してラックガイド61を誤った向きに組み付ける心配がない。このため、車両用ステアリング装置10の生産性が高まる。例えば、ラック軸16の背面16aに対して、ラックガイド61を天地逆向きに組み付けた場合には、ラックガイド61の支持面61aが背面16aから離れてしまう。このため、作業者は誤った向きであることを目視によって容易に認識することができる。
次に、ピニオン直交基準線Lcに対して支持面61aの接触部位Qsが片側のみに設けられていることによる作用を説明する。図10(a)は、図8(a)に合わせてラック軸16とラックガイド61との関係が示されている。図10(b)は、ピニオン直交基準線Lcに対して、ラックガイド61Bの中心線Lgがオフセットしていない場合(比較例)が示されている。図10(c)には、図10(a)に示された実施例のラックガイド61と、図10(b)に示された比較例のラックガイド61Bとを、ラックガイド61,61Bのスライド方向から見た構成が表されている。
図10(b),(c)に示されるように、比較例の付勢部60Bは、ラックガイド61Bと圧縮コイルばね62とからなる。ラックガイド61Bのスライド方向の中心線Lgはピニオン直交基準線Lcに合致している。しかも、ラックガイド60Bの支持面61Baは、ピニオン直交基準線Lcに対して背面16aの両側に接触している。つまり、ピニオン直交基準線Lcに対して支持面61Baの接触部位Qsが2箇所である。
図10(b)に示されるように、圧縮コイルばね62の付勢点Qc(圧縮コイルばね62の中心)はピニオン直交基準線Lc上に位置する。このピニオン直交基準線Lcから各接触部位Qs,Qsまでの距離はδB,δBである。このため、圧縮コイルばね62の付勢力によって、ラックガイド61の各接触部位Qs,Qsがラック軸16を押したときに、このラック軸16から各接触部位Qs,Qsにそれぞれ反力Po/2,Po/2が加わる。この反力Po/2は、圧縮コイルばね62の付勢力Poの半分である。従って、ラックガイド61Bには、ピニオン直交基準線Lcに対して両側にモーメントMb,Mbが発生する(Mb=δB×Po/2)。
さらに、図9(a)及び図9(b)に示されるように、左右の操舵車輪21,21を操舵しているときには、ラック軸16は操舵車輪21,21から推力(ラック軸16を車幅方向にスライド変位させようとする力)を受ける。この推力は、ラック32の圧力角により、ラック32がピニオン直交基準線Lc方向の反力に変換される。この反力の分、各接触部位Qs,Qsに加わる反力Po/2,Po/2が、さらに大きくなる。
このため、ラックガイド61Bは、モーメントMb,Mbを考慮した大きい高強度の材料、例えば鋼材を採用する必要がある。
これに対し、図10(a),(b)に示されるように、実施例では、ラックガイド60の支持面61aは、ピニオン直交基準線Lcに対して背面16aの片側のみに接触している。しかも、ラックガイド61のスライド方向の中心線Lgは、ピニオン直交基準線Lcに対し、支持面61aが背面16aに接触する方にオフセットしている。さらに、圧縮コイルばね62の付勢点Qcは接触部位Qsに合致している。このため、ラック軸16から接触部位Qsへ加わる反力Poによってモーメントが発生することはない。従って、ラックガイド61は、モーメントを考慮しない分だけ低強度の材料、例えば上述のように樹脂を採用することができる。
樹脂製のラックガイド61を採用することにより、質量体であるラックガイド61を軽量にすることができる。質量体であるラックガイド61と圧縮コイルばね62とからなる振動系を考えたときに、この振動系の固有振動数は、ラックガイド61が軽量になることによって、より大きくなる。このため、ラック軸16の振動に対するラックガイド61の追従性が一層高まるので、ピニオン31(図6(a)参照)に対するラック32の良好な噛み合い状態をより十分に維持することができる。従って、ピニオン31とラック32との摩擦特性が良好になるので、ラックアンドピニオン式ステアリング装置10(図1参照)を、より円滑に操舵することができ、この結果、操舵感覚を高めることができる。
なお、本発明では、ラックガイド61は、ラック軸16の背面16aに対する支持面61aの接触部位Qsが、ラック軸16の軸長手方向に直線状に延びるとともに、ラックガイド61の大きさがラック軸16の軸長手方向に最大(直線状に延びる接触部位Qsの長さが最大)となるように、ラックガイド61の形状や、ピニオン直交基準線Lcに対するオフセット量δが設定されることが、最も好ましい。
例えば、ラックガイド61を支持面61a側から見た端面(ラック軸16に臨んでいる方の端面の形状、つまり、ラックガイド61のスライド方向から見たとき(スライド方向の中心線Lgに沿って見たとき)の断面形状は、真円の円形状の断面の他に、楕円状の断面、ラック軸16の中心線Prに対して多角形(四角形や三角形など)の断面に設定することが可能である。
また、ピニオン31とラック32は「はす歯」の構成であるが、ラック32をラック軸16に対して直交する「すぐ歯」にし、ピニオン31を「はす歯」にし、ピニオン軸14をラック軸16の軸長手方向に傾けた構成にすることが可能である。また、ピニオン31とラック32の両方共に「すぐ歯」にすることも可能である。
図11に示されるように、ラック32からピニオン31に向かって、荷重F1が加わることがある。この荷重F1は、第1軸受43及び第2軸受44に分散して加わる。第1軸受43及び第2軸受44間の距離をL1、第1軸受43からピニオン直交基準線Lcまでの長さをL2、第2軸受44からピニオン直交基準線Lcまでの長さをL3、第1軸受43に加わる荷重をF2、第2軸受に加わる荷重をF3とした場合に、モーメントの釣り合いからL1×F2=L3×F1である。このことから、F2=(L3×F1)/L1。
本発明においては、付勢部60は、中心線Lgがラック軸の中心線Prよりも第1軸受43に近い部位に位置するように配置されている。付勢部60を第1軸受43側にオフセットした分、第1軸受43の外径d3よりも外径d4が大きい第2軸受44をラック軸16に近付けて配置することができる。即ち、ピニオン直交基準線Lc(ラック軸の中心線Pr)から第2軸受44までの距離L3を短くすることができる。上記の通り、F2=(L3×F1)/L1であるから、L3を小さくすることにより、外径d3の小さな第1軸受43に加わる荷重を軽減させることができる。
本発明に用いられるラック軸16は、図3及び図4に示されるように、2個のラック支持部50によって支持され、これらのラック支持部50,50の間にピニオン31が配置され、ラック軸16を挟んでピニオン31とは逆側にラックガイド61が配置されている。
車両の運転中にステアリングを一杯まで操作すると、ラック軸16に過大な負荷が加わることがある。ラック軸16は、2個のラック支持部50,50によって支持されていると共に、ラック軸16の軸線よりも下方の部位をラックガイド61によって付勢されている。このことにより、過大な負荷は、ラック軸16を略への字に撓ませるように作用する。
図12(a)の比較例に示されるように、ラック軸16がへの字に撓むことにより、ラック軸16はピニオン31から離れる方向に向かって変位する。このときの変位量をt1とする。この変位量t1が所定の値より大きいと、ラックとピニオンとの噛み合いが低下する。比較例による支持面161aは、単純な円弧形状を呈している。
図12(b)の実施例に示されるように、ラックガイド61には、通常時接触面61bの延長線ELよりもピニオン側(ラック軸16側)に、ストッパ面61cが形成されている。図3も合わせて参照し、ラック軸16に過大な負荷が加わり、ラック軸16のピニオン31から離間する方向への変位を抑制することができる。即ち、実施例における変位量t2は、比較例における変位量t1よりもt3だけ小さい。即ち、ラック軸16は、ストッパ面61cによって、ピニオン31から離間することを規制されている。このことにより、ラック32とピニオン31との距離を所定の範囲内に保つことができる。即ち、ラック32とピニオン31との噛み合いを良好に維持することができる。
加えて、ラック軸16には、中空状の部材が用いられている。中空状の部材を用いることにより、ラック軸16を容易に弾性変形させることができる。ラック32とピニオン31との距離を所定の範囲内に保ちつつ、ラック軸16を弾性変形させることにより、ラック軸16に加わる過大な負荷を吸収することができる。
図13も合わせて参照し、ラック軸16が変位することにより、ラックガイド61の弾性変形部61d,61dが弾性変形する。このことにより、ラック32とピニオン31との距離を所定の範囲内に保ちつつ、ラック軸16に加わる過大な負荷を吸収することができる。
次に、本発明の実施例2を図面に基づいて説明する。
図14〜図16に示されるのは、本発明の実施例2による電動パワーステアリング装置である。本発明によるラックアンドピニオン機構を電動パワーステアリング装置に搭載した。このような電動パワーステアリング装置について、以下説明する。
図14〜図16に示されるのは、本発明の実施例2による電動パワーステアリング装置である。本発明によるラックアンドピニオン機構を電動パワーステアリング装置に搭載した。このような電動パワーステアリング装置について、以下説明する。
図14に示されるように、電動パワーステアリング装置70(車両用ステアリング装置70)は、車両のステアリングホイール11から車両の操舵車輪21,21に至るステアリング系80と、このステアリング系80に補助トルクを加える補助トルク機構90とからなる。
ステアリング系80の構成は、図1に示された車両用ステアリング装置10と同様であり、符号を流用し、詳細な説明は割愛する。
補助トルク機構90は、ステアリングホイール11に加えたステアリング系80の操舵トルクを操舵トルクセンサ91で検出し、この操舵トルクセンサ91のトルク検出信号に基づき制御部92で制御信号を発生し、この制御信号に基づき操舵トルクに応じた補助トルクを電動モータ93で発生し、この補助トルクをウォームギヤ機構94を介してピニオン軸14に伝達し、さらに、補助トルクをピニオン軸14からステアリング系80のラックアンドピニオン機構15に伝達するようにした機構である。
操舵トルクセンサ91は、ピニオン軸14に加えられたトルクを検出し、トルク検出信号として出力するものであり、例えば磁歪式トルクセンサやトーションバー式トルクセンサによって構成される。
電動パワーステアリング装置70によれば、運転者の操舵トルクに電動モータ93の補助トルクを加えた複合トルクにより、ラック軸16で操舵車輪21,21を操舵することができる。
図15及び図16に示されるように、電動パワーステアリング装置70は、ピニオン軸14、ラックアンドピニオン機構15、操舵トルクセンサ91及びウォームギヤ機構94をハウジング101に収納し、ハウジング101の上部開口を上部カバー部101aで塞いだものである。操舵トルクセンサ91は、上部カバー部101aに取付けたものである。
ハウジング101は、上下に延びるピニオン軸14を3個の軸受(下から上方へ順に第1軸受103、第2軸受104、第3軸受105)を介して回転可能に支持したものであり、さらに電動モータ93を取付けるとともに、ラックガイド機構110(付勢部110)を備えている。3個の軸受103〜105はボールベアリングからなり、第1軸受103が第2軸受104よりも小径である。
ラックガイド機構110は、樹脂製のラックガイド111と、圧縮コイルばね112と、調整ボルト113とからなる。ラックガイド111の支持面111aは、通常時接触面111bとストッパ面111cとからなる。ラックガイド111の下端には、弾性変形部111dが形成されている。
このような電動パワーステアリング装置70においても、本発明所定の効果を得ることができる。
次に、本発明の実施例3を図面に基づいて説明する。
図17に示されるのは、本発明の実施例3による車両用ステアリング装置であり、上記図3に対応させて表している。車両用ステアリング装置120は、ラックガイド機構130(付勢部130)がピニオンの中心線Ppに対して、平行に配置されている。即ち、ラックガイド131、圧縮コイルばね132、調整ボルト133、ラックガイドハウジング134は、鉛直方向に延びているラックガイド中心線Lgaに沿って鉛直方向に向かって配置されている。さらに言い換えれば、図5に示されたオフセット量Δ1のオフセットがない状態ということができる。この場合には、反力F2がラック上点Quから発生する。
図17に示されるのは、本発明の実施例3による車両用ステアリング装置であり、上記図3に対応させて表している。車両用ステアリング装置120は、ラックガイド機構130(付勢部130)がピニオンの中心線Ppに対して、平行に配置されている。即ち、ラックガイド131、圧縮コイルばね132、調整ボルト133、ラックガイドハウジング134は、鉛直方向に延びているラックガイド中心線Lgaに沿って鉛直方向に向かって配置されている。さらに言い換えれば、図5に示されたオフセット量Δ1のオフセットがない状態ということができる。この場合には、反力F2がラック上点Quから発生する。
ラックガイド131の支持面131aは、通常時接触面131bと、ストッパ面131cとからなる。ラックガイド131の下端には、弾性変形部131dが形成されている。
このように構成された実施例3に係る車両用ステアリング装置120においても、本発明所定の効果を得ることができる。
なお、ラックガイド機構をピニオンの中心線Ppに対して平行に配置することは、電動パワーステアリング装置にも適用することができる。
次に、本発明の実施例4を図面に基づいて説明する。
図18に示されるのは、本発明の実施例4による車両用ステアリング装置であり、上記図3に対応させて表している。図3に比べ、ラック軸に対するラックガイド機構の位置を変更した。
図18に示されるのは、本発明の実施例4による車両用ステアリング装置であり、上記図3に対応させて表している。図3に比べ、ラック軸に対するラックガイド機構の位置を変更した。
車両用ステアリング装置140は、ラックガイド機構150(付勢部150)がピニオン直交基準線Lcよりも上方にオフセットされている。ラックガイド機構150は、樹脂製のラックガイド151と、圧縮コイルばね152と、調整ボルト153とからなる。ラックガイド151の支持面151aは、通常時接触面151bとストッパ面151cとからなる。ラックガイド151の下端には、弾性変形部151dが形成されている。
このように構成された実施例4に係る車両用ステアリング装置140においても、本発明所定の効果を得ることができる。
次に、本発明の実施例5を図面に基づいて説明する。
図19に示されるのは、本発明の実施例5による車両用ステアリング装置に用いられるラックガイドであり、上記図6(a)に対応させて表している。図6(a)に比べ、ストッパ面を平坦面によって形成した。
図19に示されるのは、本発明の実施例5による車両用ステアリング装置に用いられるラックガイドであり、上記図6(a)に対応させて表している。図6(a)に比べ、ストッパ面を平坦面によって形成した。
即ち、ラックガイド161の支持面161aは、円弧状の通常時接触面161bと、この通常時接触面161bの端部から一体的に形成されている平坦面状のストッパ面151cとからなる。ストッパ面151cを平坦面とすることにより、通常時接触面161bの延長線ELからさらにピニオン側に近づけてストッパ面151cを形成することができる。これにより、さらにラック軸の変位量を規制することができる。
このように構成された実施例5によるラックガイド161を用いた場合においても、本発明所定の効果を得ることができる。
尚、ラックガイド機構は、リヤ・トーイング・コントロール機構にも搭載可能である。即ち、ラックガイド機構は、これらのものに限らず、様々な用途の装置に搭載可能な機構である。
本発明の車両用ラックアンドピニオン式ステアリング装置10は、車幅が小さい小型車に搭載するのに好適である。
10,70,120,140…車両用ステアリング装置、11…ステアリングホイール、15…ラックアンドピニオン機構、16…ラック軸、16a…背面、21…操舵車輪、31…ピニオン、32…ラック、50…ラック支持部、60,110,130,150…付勢部、61,111,131,151,161…ラックガイド、61a,111a,131a,151a,161a…支持面、61b,111b,131b,151b,161b…通常時接触面、61c,111c,131c,151c,161c…ストッパ面、61d,111d,131d,151d…弾性変形部、62,112,132,152…圧縮コイルばね、Pr…ラック軸の中心線、Pp…ピニオンの中心線、Lc…ピニオン直交基準線、Lg…ラックガイド中心線、EL…延長線。
Claims (3)
- ステアリングホイールを操舵することによって発生した操舵トルクを、前記ステアリングホイールからラックアンドピニオン機構を介して操舵車輪に伝える車両用ステアリング装置において、
前記ラックアンドピニオン機構のラックが形成されているラック軸と、
前記ラックアンドピニオン機構のピニオンの位置に対して前記ラック軸の軸長手方向の両側に位置する2個のラック支持部と、
これらの2個のラック支持部の間に位置し、前記ラック軸を少なくとも前記ラック以外の方向へ付勢することが可能な付勢部と、を備え、
前記2個のラック支持部は、操舵の中立位置に位置している状態の前記ラック軸の、前記ラックが形成されている部位の背面のみを、軸長手方向にスライド可能に支持するように、互いに接近して位置し、
前記付勢部は、
前記ラック軸の中心線に直交し且つ前記ピニオンの中心線に直交するピニオン直交基準線に沿ってスライド可能であって、前記ラック軸の、前記ラックが形成されている部位の前記背面を、軸長手方向にスライド可能に支えるラックガイドと、
このラックガイドを前記背面に向かって付勢する圧縮コイルばねと、からなり、
前記ラックガイドは、前記背面を支えるための支持面を有し、
この支持面は、前記ピニオン直交基準線に対して前記背面の片側のみに接触可能に形成され、
前記ラックガイドのスライド方向の中心線は、前記ピニオン直交基準線に対し、前記支持面が前記背面に接触する方にオフセットしており、
前記支持面は、
円弧形状を呈し、通常時に前記ラック軸に接触している通常時接触面と、
この通常時接触面の延長線よりも前記ピニオン側に形成され、前記ラック軸に過大な負荷が加わり前記ラック軸が変位した場合に、前記ラック軸が前記ピニオンから離間することを防止するストッパ面と、からなることを特徴とする車両用ステアリング装置。 - 前記ラック軸には、中空状の部材が用いられていることを特徴とする請求項1記載の車両用ステアリング装置。
- 前記ラックガイドには、前記ラックガイドのスライド方向の中心線に沿って弾性変形部が形成され、前記ラック軸が変位した際に、前記弾性変形部が弾性変形する構成とされていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両用ステアリング装置。
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