JP2014173893A - スラブにおける特定範囲の板厚位置でのCa濃度分析結果を用いた耐サワー鋼スラブの品質判定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】HIC試験を行うことなく、鋳片の段階でHIC性を評価する。
【解決手段】タンディッシュ内溶鋼のCa濃度CaTD1を調査し(S1)、それと同一チャージのスラブのCa濃度CaS1を調査する(S2)。調査は、スラブ(厚さt)の基準側表面から厚さ方向にt/2の範囲で行う。そして、Ca低下量Cadrop1=CaTD1−CaS1とHIC試験結果とから、HICが発生しないCa低下量の閾値を決定する(S3〜S5)。次に、判定対象のチャージについて、タンディッシュ内溶鋼のCa濃度CaTD11及びスラブのCa濃度CaS1を調査する(S6,S7)。Ca低下量Cadrop(=CaTD11−CaS1)>閾値の場合は(S8、S9:YES)、HICが発生すると判断し、スラブを耐サワー鋼以外の用途に充当する(S10)。
【選択図】図3
【解決手段】タンディッシュ内溶鋼のCa濃度CaTD1を調査し(S1)、それと同一チャージのスラブのCa濃度CaS1を調査する(S2)。調査は、スラブ(厚さt)の基準側表面から厚さ方向にt/2の範囲で行う。そして、Ca低下量Cadrop1=CaTD1−CaS1とHIC試験結果とから、HICが発生しないCa低下量の閾値を決定する(S3〜S5)。次に、判定対象のチャージについて、タンディッシュ内溶鋼のCa濃度CaTD11及びスラブのCa濃度CaS1を調査する(S6,S7)。Ca低下量Cadrop(=CaTD11−CaS1)>閾値の場合は(S8、S9:YES)、HICが発生すると判断し、スラブを耐サワー鋼以外の用途に充当する(S10)。
【選択図】図3
Description
本発明は、タンディッシュからスラブでのCa濃度低下量からHIC性を評価する方法に関する。
鋳片や鋼材の品質を評価する方法として、鋳片サンプルの分析結果(介在物量、各元素量、粒径分布等)から評価する方法やタンディッシュ内溶鋼の分析結果(介在物量、各元素量等)から評価する方法が知られている(特許文献1〜5参照)。
また、特許文献6では、タンディッシュ内溶鋼の分析結果から鋳片の品質を評価し(一次判定)、この判定精度が所定の精度を満たさない場合は鋳片サンプルの分析結果から鋳片の品質を評価している(二次判定)。
さらに、モールド内溶鋼の分析結果(特許文献7参照)や鋼材の分析結果(特許文献8参照)から鋼材や鋳片の品質を評価する方法も知られている。
ところで、石油や天然ガスには硫化水素が含まれており、これらの輸送に用いられる鋼材(以下、耐サワー鋼と称する。)は常に硫化水素雰囲気下にある。このような雰囲気では、水素が鋼材中に進入・拡散し、鋼材中の介在物に集積・ガス化する。その結果、鋼材に内圧が加わることで水素誘起割れ(以下、HICと称する。)が発生する。そこで、耐サワー鋼には、優れた耐HIC性が要求される。
HIC性の評価は、鋳造、圧延後の製品に対するHIC試験によって行われるが、試験結果がわかるまでに数週間がかかる。また、耐サワー鋼用に製品を製造しても、HIC試験で不良がみつかると、その製品を耐サワー鋼として出荷できないため、再溶製し、製造した製品に対して新たにHIC試験を行う必要がある。そうすると、製造期間が長期化し、納期遅れ等の原因となる。
そこで、HIC試験を行うことなく、鋳片の段階でHIC性を評価できると、鋳造、圧延後の複数の工程(サンプル調整→HIC試験)を省略できるため、製造期間を大幅に短縮できる。ここで、HICはCaO集積帯(CaO介在物が凝集し、集積したもの)を起点として発生するため、鋳片段階でCaO集積帯の有無を評価できると、その評価結果に基づいてHIC性を評価できると考えられる。鋳片段階での評価方法としては、上述した特許文献1〜7の方法がある。
例えば、特許文献1〜4,6のように鋳片サンプルの分析結果を用いる場合は、CaO集積帯が発生した位置でCaO量(又はCa濃度)を分析する必要がある。しかし、集積帯が発生する位置は鋳片の幅方向、厚さ方向及び鋳造方向にバラつきがあるため、集積帯の位置を予測することは難しい。したがって、サンプルを採取しても、その分析結果を集積帯のCaO量として評価することができない。そのため、鋳片サンプルの分析結果からCaO集積帯の有無を正確に評価することができない。
一方、特許文献4〜6では、タンディッシュ内溶鋼の分析結果を用いるが、CaO介在物は鋳型以降でも凝集・集積する。したがって、タンディッシュ内溶鋼のCaO量(又はCa濃度)からCaO集積帯が存在しないと評価しても、その後、CaO介在物が凝集することによりHICが発生する場合がある。そのため、タンディッシュ内溶鋼の分析結果からHIC性を正確に評価できない。
また、特許文献7では、モールド(鋳型)内溶鋼の分析結果を用いているが、鋳型以降でもCaO介在物が集積するため、特許文献4〜6と同様に、HIC性を正確に評価することができない。
なお、特許文献8では、鋼材の分析結果を用いているため、鋳片段階でHIC性を評価できない。
このような理由から、特許文献1〜8の方法では、CaO集積帯の有無を正確に評価できず、また、鋳片の段階でHIC性を評価することができない。
そこで、本発明の目的は、HIC試験を行うことなく、鋳片の段階でHIC性を評価する方法を提供する。
本発明の品質判定方法は、曲げ部を有する連続鋳造機で鋳造したスラブを耐サワー鋼に充当可能かの判定を行う方法であり、
タンディッシュ内溶鋼のCa濃度を調査する第1調査工程と、前記第1調査工程と同一チャージで鋳造した厚さtのスラブにおいて基準側表面から厚さ方向にt/2の範囲でCa濃度を調査する第2調査工程と、前記第1調査工程で得たCa濃度から前記第2調査工程で得たCa濃度を差し引いた値であるCa低下量と、前記第1調査工程及び前記第2調査工程で調査したスラブを圧延して得た製品のHIC試験結果との関係を調査し、HIC性に関するCa低下量の閾値を決定する閾値決定工程とを備えている。
さらに、判定対象のチャージについてタンディッシュ内溶鋼のCa濃度を調査する第3調査工程と、前記判定対象のチャージで鋳造した厚さtのスラブにおいて基準側表面から厚さ方向にt/2の範囲でCa濃度を調査する第4調査工程と、
前記第3調査工程で得たCa濃度から前記第4調査工程で得たCa濃度を差し引いた値と、前記閾値決定工程で決定した前記閾値とを比較し、その差し引きした値が前記閾値を超えている場合は、前記判定対象のチャージで鋳造したスラブを耐サワー鋼以外の用途に充当する用途決定工程とを備えている。
タンディッシュ内溶鋼のCa濃度を調査する第1調査工程と、前記第1調査工程と同一チャージで鋳造した厚さtのスラブにおいて基準側表面から厚さ方向にt/2の範囲でCa濃度を調査する第2調査工程と、前記第1調査工程で得たCa濃度から前記第2調査工程で得たCa濃度を差し引いた値であるCa低下量と、前記第1調査工程及び前記第2調査工程で調査したスラブを圧延して得た製品のHIC試験結果との関係を調査し、HIC性に関するCa低下量の閾値を決定する閾値決定工程とを備えている。
さらに、判定対象のチャージについてタンディッシュ内溶鋼のCa濃度を調査する第3調査工程と、前記判定対象のチャージで鋳造した厚さtのスラブにおいて基準側表面から厚さ方向にt/2の範囲でCa濃度を調査する第4調査工程と、
前記第3調査工程で得たCa濃度から前記第4調査工程で得たCa濃度を差し引いた値と、前記閾値決定工程で決定した前記閾値とを比較し、その差し引きした値が前記閾値を超えている場合は、前記判定対象のチャージで鋳造したスラブを耐サワー鋼以外の用途に充当する用途決定工程とを備えている。
このように、本発明では、HIC性の評価にタンディッシュからスラブでの「Ca濃度低下量」を用いるとともに、低下量の算出に「スラブの基準側領域のCa濃度」を用いている。上記低下量によりCaO集積体の有無を正確に評価できるため、HIC試験を行うことなく、鋳片の段階でHIC性を評価できる。そして、その評価結果に基づいて鋳片の用途を決定できる。これにより、数週間を要するHIC試験を省略できるため、製造リードタイムを大幅に短縮することができる。
本発明によると、タンディッシュからスラブでの「Ca濃度低下量」によってCaO集積体の有無を正確に評価できるため、HIC試験を行うことなく、鋳片の段階でHIC性を評価できる。そして、この評価結果から鋼材の用途を決定できるため、製造リードタイムを大幅に短縮することができる。
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
ここでは、本発明の一実施形態である判定方法について、図1〜図4を参照しつつ説明する。
〔連続鋳造機〕
連続鋳造機100は、図1に示すように、垂直曲げ型連続鋳造機であって、タンディッシュ1と、タンディッシュ1の底部に取り付けられた浸漬ノズル2と、浸漬ノズル2の下部が配置された鋳型3と、鋳型3の直下から鋳造経路Qに沿って設けられた複数のロールとを備えている。タンディッシュ1には、二次精錬で成分調整が行われた溶鋼4が取鍋(図示省略)から供給されている。鋳型3には、平面視において略矩形状の開口が形成されており、スラブ(厚さt×幅wの鋳片)が鋳造可能となっている。
連続鋳造機100は、図1に示すように、垂直曲げ型連続鋳造機であって、タンディッシュ1と、タンディッシュ1の底部に取り付けられた浸漬ノズル2と、浸漬ノズル2の下部が配置された鋳型3と、鋳型3の直下から鋳造経路Qに沿って設けられた複数のロールとを備えている。タンディッシュ1には、二次精錬で成分調整が行われた溶鋼4が取鍋(図示省略)から供給されている。鋳型3には、平面視において略矩形状の開口が形成されており、スラブ(厚さt×幅wの鋳片)が鋳造可能となっている。
鋳造経路Qは、垂直方向に延在した垂直部と、垂直部から緩やかに湾曲した曲げ部と、曲げ部から水平方向に延在した水平部とを有する。また、本実施形態では、鋳造経路Qの一方側(鋳片の下側に対応)を「基準側」と呼び、鋳造経路Qの他方側(鋳片の上側に対応)を「反基準側」と呼ぶ。
鋳造を行うときは、タンディッシュ1内の溶鋼4を、浸漬ノズル2を介して鋳型3内に注入する。溶鋼は、鋳型3内で冷却され、凝固シェルを形成しながら下方へ引き抜かれ、内部まで凝固することにより、スラブ(鋳片)が鋳造される。その後、スラブは圧延処理等が施されることにより鋼板となり、耐サワー鋼(耐水素誘起割れ鋼)やその他の製品に充当される。
耐サワー鋼には、上述したように、優れた耐HIC性(耐水素誘起割れ性)が要求される。HICは、中心偏析部や内部割れ部にMnSが存在する場合に著しく発生することが知られている。そこで、二次精錬でCaを添加することによりMnSの生成を抑制する技術が提案されている(例えば、特開2010−189722号公報)。また、中心偏析や内部割れ自体を低減する技術も提案されている(例えば、特開2007−136496号公報)。
ここで、溶鋼へのCa添加量が適正な場合は、溶鋼中にCaO−Al2O3介在物が生成する。CaO−Al2O3は、溶鋼との濡れ性が良好であるため、溶鋼中で凝集せず、微細なままであり、耐HIC性に悪影響を及ぼさない。
しかしながら、Ca添加量が適正でない場合、例えば、MnS生成の抑制及びAl2O3の改質に対して必要な所要量を超える過剰な添加を行った場合は、溶鋼中にCaO−Al2O3介在物に加えて純粋なCaO介在物が生成する。CaOは溶鋼との濡れ性が悪いため、溶鋼中で凝集しやすい。凝集合体したCaOは粗大な介在物となって、HICを誘発する。
粗大化したCaO介在物は、溶鋼より密度が小さいため、大半は浮上分離するが、一部は鋳型3内の溶鋼の流れに乗って鋳片の奥深くまで潜り込み、凝固殻に捕捉されて集積帯を形成する。このような集積帯は、HICの起点となる。
そこで、予め適正なCa添加量を決定できればCaO介在物によるHIC発生を抑制できるが、そのためにはCa添加前の溶鋼中介在物の組成及び量と硫黄濃度とを正確に把握する必要がある。しかし、実操業では、これらを事前に把握することが不可能であるため、Ca添加量をMnS生成抑制に十分な量としている。そのため、Ca添加量が過剰となる場合が生じ、その結果、CaO集積帯が形成される。
ここで、CaO集積帯が常に同じ位置に発生すると、その位置のCa濃度を分析することにより、CaO介在物の集積度を直接把握することができる。これにより、鋳片でのCaO集積帯の有無を評価できる。しかし、CaO集積帯が発生する位置は、鋳造条件(鋳造速度及び浸漬ノズルの吐出孔の角度等)によって鋳片の厚さ方向に異なる。例えば、図2に示すように、鋳造条件(鋳造速度及び浸漬ノズルの吐出孔の角度)が異なる3つのスラブ(A〜C)では、高Ca濃度となる位置(a〜c)がそれぞれ異なる。a〜cでは集積帯が発生している。このように、CaO集積帯の位置を予測することはできないため、集積度(Ca濃度)からCaO集積帯の有無を評価することは困難である。
そこで、本発明者らは、Ca濃度の調査位置について観点を変え、低Ca濃度となる位置に着目した。CaO集積帯が発生した場合、CaO集積帯ではCa濃度が高くなる一方で、CaO集積帯が発生していない位置ではCa濃度が比較的低くなると考えられる。これを考慮しつつ、CaO集積帯が発生した場合の「スラブの任意の厚さ方向位置のCa濃度」と「タンディッシュ内溶鋼のCa濃度」との関係を調べたところ、集積帯が発生していない位置では、「スラブのCa濃度」が比較的低いため、「タンディッシュ内溶鋼のCa濃度」から「スラブのCa濃度」を差し引いた値が大きくなることがわかった。つまり、タンディッシュからスラブでのCa濃度低下量が大きい場合は、そのスラブにCaO集積帯が発生していると考えられるため、HICが発生すると評価できる。なお、CaO集積帯が発生していない場合は、Ca濃度が高くなる位置が存在しないため、Ca濃度が比較的低くなる位置も存在しないと考えられる。したがって、このような場合は、タンディッシュからスラブでのCa濃度低下量が小さいと推測される。
以上から、本発明では、『「タンディッシュ内溶鋼のCa濃度」から「スラブのCa濃度」を差し引いた値』(以下、「Ca低下量」と称する。)を用いてCaO集積帯の有無を評価し、その評価結果からHIC性を評価する。
以下では、上記評価方法について、図3,4を参照しつつ詳細に説明する。なお、「スラブのCa濃度」とは、後述するように、スラブの基準側領域のCa濃度である。
〔判定方法〕
先ず、タンディッシュ内溶鋼のCa濃度(CaTD1)を調査する(S1、第1調査工程)。ここでは、タンディッシュ内溶鋼を採取し、そのCa濃度を分析する。タンディッシュ内溶鋼は取鍋から常時供給されるため、Ca濃度(CaTD1)は採取時にかかわらず一定である。
先ず、タンディッシュ内溶鋼のCa濃度(CaTD1)を調査する(S1、第1調査工程)。ここでは、タンディッシュ内溶鋼を採取し、そのCa濃度を分析する。タンディッシュ内溶鋼は取鍋から常時供給されるため、Ca濃度(CaTD1)は採取時にかかわらず一定である。
次に、スラブのCa濃度(CaS1)を調査する(S2、第2調査工程)。ステップS1と同一チャージで鋳造したスラブにおいて、基準側表面から厚さ方向にt/2の範囲の領域R(以下、「基準側領域R」と称する。)からサンプルを採取し(図4参照)、Ca濃度を分析する。「基準側領域R」は、図4に示すように、反基準側表面からスラブの厚さ方向に0.50t以上t以下の範囲である。
CaO介在物の密度は溶鋼の密度より小さいため、溶鋼中のCaO介在物は、溶鋼との密度差に起因した浮力を受けて浮上する。図1に示すような曲げ部や水平部が形成された連続鋳造機では、CaO介在物が浮上すると反基準側の凝固シェルに捕捉され、集積帯を形成する。そのため、CaO集積帯は、スラブの反基準側に発生する(図2参照)。その一方で、スラブの基準側にはCaO集積帯が発生しない。
そこで、本発明では、CaO集積帯が発生しない「基準側表面から厚さ方向にt/2の範囲(基準側領域R)」でCa濃度を調査する(図4)。基準側領域RのCa濃度により、集積帯が発生していない位置における「Ca低下量」を算出できるため、CaO集積帯の有無を正確に評価できる。
続いて、ステップS1で得た「タンディッシュ内のCa濃度CaTD1」から、ステップS2で得た「スラブのCa濃度CaS1」を差し引いた値を用いて、「Ca低下量Cadrop1」を算出する(S3)。Cadrop1は、以下の式で表される。
Cadrop1=CaTD1−CaS1
Cadrop1=CaTD1−CaS1
次に、ステップS2のスラブを圧延し、鋼材を製造する。そして、鋼材に対してHIC試験を行い(S3)、HICが発生するか否かを調査する(HIC性の評価)。ここで、圧延条件は、耐サワー鋼を製造する際の圧延条件であることが好ましい。
続いて、ステップS3で得た「Ca低下量Cadrop1」とステップS4で得た「評価結果」(HIC性)とから、HIC性に関する(HICが発生しない)Ca低下量の「閾値(Cadropθ)」を決定する(S5、閾値決定工程)。本実施形態では、HICが全く発生しないときの最大Ca低下量を「閾値(Cadropθ)」とする。
次に、判定対象のスラブのHIC性を評価する。
判定対象のチャージのタンディッシュ内溶鋼のCa濃度CaTD11を調査する(S6、第3調査工程)。
また、ステップS6と同一チャージで鋳造したスラブのCa濃度CaS11を調査する(S7、第4調査工程)。調査位置は、ステップS2と同様に、スラブの基準側表面から厚さ方向にt/2の範囲の基準側領域Rとする(図4参照)。
そして、ステップS6で得た「タンディッシュ内のCa濃度CaTD11」から、ステップS7で得た「スラブのCa濃度CaS11」を差し引いた値を用いて、「Ca低下量Cadrop11」を算出する(S8)。Cadropは、以下の式で表される。
Cadrop=CaTD11−CaS1
Cadrop=CaTD11−CaS1
次に、「Ca低下量Cadrop」とステップS4で決定した「閾値(Cadropθ)」とを比較し、Cadrop>閾値(Cadropθ)である場合は(S9:YES)、スラブにCaO集積帯が発生していると考えられるため、HICが発生すると判断する。このようなスラブを耐サワー鋼に充当することはできないため、判定対象のスラブを耐HIC鋼以外の用途の製品に充当する(S10)。一方、Cadrop11≦閾値(Cadropθ)である場合は(S9:NO)、スラブにCaO集積帯が発生していないと考えられるため、HICが発生しないと判断し、判定対象のスラブを耐サワー鋼に充当する(S11)。
このように、本実施形態では、HIC性の評価に『タンディッシュからスラブでの「Ca低下量」』を用いるとともに、低下量の算出に「スラブの基準側領域のCa濃度」を用いている。これにより、CaO集積体の有無を正確に評価できるため、HIC試験を行うことなく、鋳片の段階でHIC性を評価できる。そして、この評価結果からスラブの用途を決定できる。これにより、数週間を要するHIC試験を省略して製品を出荷できるため、製造リードタイムを大幅に短縮することができる。
次に、本発明の判定方法を用いた実施例を説明する。表1,2及び図5には、実験条件及び実験結果を示している。
〔実施例〕
溶銑予備処理で溶銑を脱りん及び脱硫した後、転炉で脱炭した。その後、二次精錬において、LF装置で溶鋼を脱硫処理した後、環流脱ガス装置(RH)で脱ガス処理し、Caを添加した。ここでは、1回の精錬で235〜255[ton]の溶鋼を処理した。また、溶銑予備処理方法、転炉での脱炭方法、LF装置での処理方法、RHでの脱ガス処理方法及びCa添加方法は通常行われる方法で実施した。
溶銑予備処理で溶銑を脱りん及び脱硫した後、転炉で脱炭した。その後、二次精錬において、LF装置で溶鋼を脱硫処理した後、環流脱ガス装置(RH)で脱ガス処理し、Caを添加した。ここでは、1回の精錬で235〜255[ton]の溶鋼を処理した。また、溶銑予備処理方法、転炉での脱炭方法、LF装置での処理方法、RHでの脱ガス処理方法及びCa添加方法は通常行われる方法で実施した。
下記に鋳造条件を示す。
・スラブ :幅2100[mm]、厚さ280[mm]
・鋳造速度 :0.7[m/min]以上1.3[m/min]以下
・浸漬ノズル:吐出孔の角度が15°以上35°以下である2孔型ノズル
その他の鋳造条件は、当業者の常法通りの条件とした。
・スラブ :幅2100[mm]、厚さ280[mm]
・鋳造速度 :0.7[m/min]以上1.3[m/min]以下
・浸漬ノズル:吐出孔の角度が15°以上35°以下である2孔型ノズル
その他の鋳造条件は、当業者の常法通りの条件とした。
次に、スラブの判定方法について説明する。
<「タンディッシュ内溶鋼のCa濃度の調査」及び「スラブのCa濃度の調査」>
鋳片全長が10[m]となった時点で採取したタンディッシュ内溶鋼のCa濃度を調査した(25チャージ)。また、鋳造後、スラブの基準側領域RでCa濃度を調査した(図4参照)。Ca濃度の分析には、スパーク放電発光分光分析法を用いた。
鋳片全長が10[m]となった時点で採取したタンディッシュ内溶鋼のCa濃度を調査した(25チャージ)。また、鋳造後、スラブの基準側領域RでCa濃度を調査した(図4参照)。Ca濃度の分析には、スパーク放電発光分光分析法を用いた。
そして、スラブを耐サワー鋼製造用の常法通りの条件で圧延し、X60相当の製品を製造した。また、圧延後の製品に対してHIC試験をNACE standard TM0284-2003に規定される方法に従って実施した。本試験では、鋼材から採取したサンプルを硫化水素に浸漬し、これを3箇所で切断した。そして、3つの切断面を顕微鏡で観察することにより、割れの有無を確認した。割れが少しでも発生した場合は表1に「×」を示し、割れが発生しなかった場合は表1に「○」を示した。
<閾値の決定>
表1及び図5から、Ca低下量が4[ppm]以下の場合は(Ca低下量≦4[ppm])、HICが発生しなかった。
一方、Ca低下量が5[ppm]以上6[ppm]以下の場合は(5[ppm]≦Ca低下量≦6[ppm])、HICが発生した場合と発生しなかった場合とが混在した。また、Ca低下量が7[ppm]以上では(Ca低下量≧7[ppm])、HICが発生した。
これらの結果から、HIC発生を確実に抑制できるのは、Ca低下量≦4[ppm]のときであることがわかった。そこで、Ca低下量の閾値を4[ppm]とした(Cadropθ=4[ppm])。なお、5[ppm]≦Ca低下量≦6[ppm]では、凝固界面の状態によりCaO介在物の凝固殻への捕捉されやすさにバラつきが生じたため、HICが発生した場合と発生しなかった場合とが混在したと考えられる。
表1及び図5から、Ca低下量が4[ppm]以下の場合は(Ca低下量≦4[ppm])、HICが発生しなかった。
一方、Ca低下量が5[ppm]以上6[ppm]以下の場合は(5[ppm]≦Ca低下量≦6[ppm])、HICが発生した場合と発生しなかった場合とが混在した。また、Ca低下量が7[ppm]以上では(Ca低下量≧7[ppm])、HICが発生した。
これらの結果から、HIC発生を確実に抑制できるのは、Ca低下量≦4[ppm]のときであることがわかった。そこで、Ca低下量の閾値を4[ppm]とした(Cadropθ=4[ppm])。なお、5[ppm]≦Ca低下量≦6[ppm]では、凝固界面の状態によりCaO介在物の凝固殻への捕捉されやすさにバラつきが生じたため、HICが発生した場合と発生しなかった場合とが混在したと考えられる。
<判定対象の「タンディッシュ内溶鋼のCa濃度の調査」及び「スラブのCa濃度の調査」>
次に、判定対象のスラブのHIC性を評価する。上述した条件と同様な条件で、判定対象のチャージ(5チャージ)の「タンディッシュ内溶鋼のCa濃度」及び「スラブのCa濃度」を調査し、Ca低下量Cadropを算出した。
次に、判定対象のスラブのHIC性を評価する。上述した条件と同様な条件で、判定対象のチャージ(5チャージ)の「タンディッシュ内溶鋼のCa濃度」及び「スラブのCa濃度」を調査し、Ca低下量Cadropを算出した。
実験No.a〜cでは、Ca低下量が2[ppm],3[ppm],1[ppm]であり、Ca低下量≦4[ppm](閾値以下)であった。そこで、HICが発生しないと判断し(表2「○」参照)、スラブを耐サワー鋼へ充当した。
一方、実験No.d,eでは、Ca低下量が8[ppm],6[ppm]であり、Ca低下量>4[ppm](閾値超え)であった。そこで、HICが発生すると判断し(表3「×」参照)、スラブの充当先を耐HIC性が要求されないラインパイプ向けのX60に変更した。
また、実験No.a〜cでは、鋳造開始から出荷までの期間(鋳造→圧延→出荷)が19日であった。これに対し、HIC試験によってHIC性を評価する方法では、鋳造開始から出荷までの期間(鋳造→圧延→HIC試験→出荷)が28日と長期間を要した。このように、本実施例では、HIC試験を省略できたため、鋳造開始から出荷までの期間を28日→19日へ大幅に短縮できた。
また、実験No.d,eにおいて、鋳片の段階で再溶製を開始したところ、鋳造開始から耐サワー鋼の出荷までの期間(鋳造→再溶製→圧延→出荷)が54日であった。これに対し、HIC試験で製品のHIC性を評価する方法では、HIC試験を行った後に再溶製を開始したため、鋳造開始から耐サワー鋼の出荷までの期間(鋳造→圧延→HIC試験→再溶製→圧延→HIC試験→出荷)が72日と長期間を要した。このように、本実施例では、圧延及びHIC試験を省略できたため、鋳造開始から出荷までの期間を72日→54日へ大幅に短縮できた。
以上のように、本発明の判定方法を利用すると、HIC試験を行うことなく、鋳片の段階でHIC性を評価できたため、製造リードタイムを大幅に短縮できた。
次に、本発明の比較例を説明する。なお、実施例と同じ条件については説明を省略することがある。
〔比較例〕
スラブのCa濃度を、反基準側表面から厚さ方向にt/2未満の範囲(基準側領域R以外の領域)で調査した。表3及び図6には、実験条件及び実験結果を示している。実験結果から、「Ca低下量」と「HIC試験結果」とに規則性がなく、Ca低下量の閾値を決定することができなかった。
スラブのCa濃度を、反基準側表面から厚さ方向にt/2未満の範囲(基準側領域R以外の領域)で調査した。表3及び図6には、実験条件及び実験結果を示している。実験結果から、「Ca低下量」と「HIC試験結果」とに規則性がなく、Ca低下量の閾値を決定することができなかった。
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
例えば、上述の実施形態及び実施例では、図3に示すように、先ず「タンディッシュ内溶鋼のCa濃度」を調査し、その後「スラブの基準側領域のCa濃度」を調査したが(S1→S2、S6→S7)、これらの順序を変更してもよい。例えば、「スラブの基準側領域のCa濃度」を調査し、その後「タンディッシュ内溶鋼のCa濃度」を調査してもよい(S2→S1、S7→S6)。また、これらの調査を同時期に行ってもよい。
さらに、上述の実施形態及び実施例では、スラブのCa濃度調査位置を1箇所としたが、2箇所以上としてもよい。この場合、Ca低下量の算出にいずれのCa濃度を用いてもよい。
また、上述の実施形態では、図1において垂直部を有する連続鋳造機を例示したが、垂直部を有さない連続鋳造機を用いてもよい。
さらに、上述の実施例では、Ca濃度の分析にスパーク放電発光分光分析法を用いたが、この方法に限られず、原子吸光分析法等を用いてもよい。
本発明は、HIC試験を行うことなく、鋳片の段階でHIC性を評価できることから、硫化水素を含む石油や天然ガスを輸送するために用いられる鋼板向けの鋳片の品質判定方法に利用することができる。
1 タンディッシュ
2 浸漬ノズル
3 鋳型
4 溶鋼
2 浸漬ノズル
3 鋳型
4 溶鋼
Claims (1)
- 曲げ部を有する連続鋳造機で鋳造したスラブを耐サワー鋼に充当可能かの判定を行う品質判定方法であり、
タンディッシュ内溶鋼のCa濃度を調査する第1調査工程と、
前記第1調査工程と同一チャージで鋳造した厚さtのスラブにおいて基準側表面から厚さ方向にt/2の範囲でCa濃度を調査する第2調査工程と、
前記第1調査工程で得たCa濃度から前記第2調査工程で得たCa濃度を差し引いた値であるCa低下量と、前記第1調査工程及び前記第2調査工程で調査したスラブを圧延して得た製品のHIC試験結果との関係を調査し、HIC性に関するCa低下量の閾値を決定する閾値決定工程と、
判定対象のチャージについてタンディッシュ内溶鋼のCa濃度を調査する第3調査工程と、
前記判定対象のチャージで鋳造した厚さtのスラブにおいて基準側表面から厚さ方向にt/2の範囲でCa濃度を調査する第4調査工程と、
前記第3調査工程で得たCa濃度から前記第4調査工程で得たCa濃度を差し引いた値と、前記閾値決定工程で決定した前記閾値とを比較し、その差し引きした値が前記閾値を超えている場合は、前記判定対象のチャージで鋳造したスラブを耐サワー鋼以外の用途に充当する用途決定工程と
を備えていることを特徴とする、スラブにおける特定範囲の板厚位置でのCa濃度分析結果を用いた耐サワー鋼スラブの品質判定方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2013044483A JP2014173893A (ja) | 2013-03-06 | 2013-03-06 | スラブにおける特定範囲の板厚位置でのCa濃度分析結果を用いた耐サワー鋼スラブの品質判定方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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Publications (1)
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JP2014173893A true JP2014173893A (ja) | 2014-09-22 |
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ID=51695268
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP3239333A4 (en) * | 2014-12-26 | 2018-06-27 | Kabushiki Kaisha Kobe Seiko Sho (Kobe Steel, Ltd.) | Steel plate having excellent toughness and resistance to hydrogen-induced cracking, and steel pipe for line pipe |
EP3239319A4 (en) * | 2014-12-26 | 2018-06-27 | Kabushiki Kaisha Kobe Seiko Sho (Kobe Steel, Ltd.) | Steel plate having excellent hydrogen-induced cracking resistance and steel pipe for line pipe |
-
2013
- 2013-03-06 JP JP2013044483A patent/JP2014173893A/ja active Pending
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