WO2016104526A1 - 耐水素誘起割れ性に優れた鋼板およびラインパイプ用鋼管 - Google Patents

耐水素誘起割れ性に優れた鋼板およびラインパイプ用鋼管 Download PDF

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加藤 拓
佑一 岡
進佑 佐藤
晴弥 川野
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木村 世意
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    • C21D8/00Modifying the physical properties by deformation combined with, or followed by, heat treatment
    • C21D8/02Modifying the physical properties by deformation combined with, or followed by, heat treatment during manufacturing of plates or strips

Definitions

  • Patent Documents 3 to 8 do not evaluate CaO inclusions as described above. However, as a method for evaluating CaO inclusions, the amounts of inclusions and element amounts of slabs and molten steel in tundish as in Patent Documents 3 to 8 are disclosed. It is possible to evaluate from the above.
  • the upper limit of the amount of S is set to 0.003%.
  • the amount of S is preferably 0.002% or less, more preferably 0.0015% or less, and still more preferably 0.0010% or less. Thus, the smaller one is desirable from the viewpoint of improving hydrogen-induced crack resistance.
  • (Ca-1.25S) / O must be 1.80 or less.
  • (Ca-1.25S) / O is preferably 1.40 or less, more preferably 1.30 or less, still more preferably 1.20 or less, and particularly preferably 1.00 or less.
  • the lower limit of (Ca-1.25S) / O is about 0.1 from the viewpoint of suppressing Al 2 O 3 which is likely to form an aggregated coal like CaO.
  • Ca reduction amount a value obtained by subtracting “Ca concentration of slab” from “Ca concentration of molten steel in tundish” related to presence / absence of CaO accumulation zone. It was decided to evaluate the HIC property.
  • the steel sheet average temperature is determined as follows. That is, based on data such as a rolling pass schedule during rolling and a cooling method (water cooling or air cooling) between passes, the temperature at an arbitrary position in the plate thickness direction is calculated using a method suitable for calculation such as a difference method, Let the average value of the temperature from the surface of the calculated

Abstract

 耐水素誘起割れ性に優れた鋼板や鋼管を実現する。更には、圧延後に水素誘起割れ試験を行うことなく、鋳片の内部品質から耐水素誘起割れ性を評価できる鋼板や鋼管を実現する。前記耐水素誘起割れ性に優れた鋼板は、規定のC、Si、Mn、P、S、Al、Ca、N、およびOを満たし、更に、規定のREM、およびZrよりなる群から選択される1種以上の元素を含み、残部が鉄および不可避不純物からなり、前記Caと前記Sの比(Ca/S)が2.0以上であり、かつ前記Ca、前記Sおよび前記Oが(Ca-1.25S)/O ≦ 1.80を満たし、更に、タンディッシュ内溶鋼のCa濃度からスラブのCa濃度を差し引いたCa低下量が閾値Cadropθ以下であり、該閾値Cadropθは、前記スラブを圧延して得た鋼板に水素誘起割れが発生しない最大のCa低下量であることを特徴とする。

Description

耐水素誘起割れ性に優れた鋼板およびラインパイプ用鋼管
 本発明は、天然ガス・原油輸送用ラインパイプや貯蔵用タンクなどに好適な、耐水素誘起割れ性に優れた鋼板、および該鋼板を用いて得られる耐水素誘起割れ性に優れたラインパイプ用鋼管に関する。
 主に石油・ガスなどの輸送用ラインパイプや貯蔵用タンクでは、硫化水素を含有する劣質資源の開発に伴い、耐水素誘起割れ性や耐応力腐食割れ性などのいわゆる耐サワー性が必要とされる。以下では、この耐サワー性を備えた鋼板を「耐サワー鋼板」ということがある。水素誘起割れ(Hydrogen Induced Cracking、以下、「HIC」ということがある)は、上記硫化水素等による腐食反応に伴って鋼材内部に侵入した水素が、MnSやNb(C,N)をはじめとする非金属介在物などに集積し、ガス化により生じる割れであることが知られている。
 HICは、鋳片の中心偏析、内部割れ等を含む偏析部、特にMnS等の介在物を起点に発生しやすいことが知られている。そこで、従来より、耐HIC性を高める技術について幾つか提案されている。例えば特許文献1には、板厚中心部のMn、Nb、Tiの偏析度を抑制することにより耐HIC性を改善した鋼材が開示されている。また特許文献2には、CaとOとSの含有量からなるパラメータ式によりMnSやCa系酸硫化物を起点としたHICを抑制する方法が開示されている。
 これらの方法により、多くのHICは抑制されるものの、微細なHICが局所的に多数発生する場合がある。
 一方、鋼板は、溶製、鋳造、熱間圧延を経て得られた後、製品として出荷前にHIC試験が実施される。しかし、HIC試験は、結果が判明するまでに数週間を要する。また、上記HIC試験でHICが発生すると、上記鋼板を耐水素誘起割れ性に優れた製品として出荷できず、再度製造、即ち再び溶製から行って得られた製品に対し、再度のHIC試験を行う必要がある。そうすると、製造期間が長期化して納期遅れ等の原因となる。
 そこで、上記熱間圧延後にHIC試験を行うのではなく、前記鋳造後の鋳片の段階で耐HIC性を評価できれば、製造期間を大幅に短縮できると考えられる。HICは、上述したように、偏析部(中心偏析、内部割れ)やMnS等の介在物を起点に発生するため、鋳片の段階でこれらを評価できれば、その評価結果に基づいて耐HIC性を評価できると考えられる。
 例えば、圧延後にHIC試験を行う従来の方法では、鋳造から出荷までに下記の長い工程A-1を経る。これに対し、鋳片の段階で耐HIC性を評価できれば、下記工程B-1の通り、HIC試験を行う場合の「(HIC試験のための)サンプル調整→HIC試験」を省略できるため、製品を早期に出荷できる。
工程A-1:鋳造→圧延→(HIC試験のための)サンプル調整→HIC試験→出荷
工程B-1:鋳造→耐HIC性の評価→圧延→出荷
 また、HIC試験の結果がNGであった場合、従来の方法では、鋳造から再溶製までが長い下記の工程A-2を経る。これに対し、下記工程B-2の通り鋳片の段階で耐HIC性を評価できれば、この評価がNGであったとしても、下記工程A-2における「圧延→(HIC試験のための)サンプル調整→HIC試験」を省略でき、早期に再溶製を開始できる。
工程A-2:鋳造→圧延→(HIC試験のための)サンプル調整→HIC試験→再溶製
工程B-2:鋳造→耐HIC性の評価→再溶製
 このような方法として、特許文献3には、鋳片の段階で内部割れを評価する方法が開示されている。この方法では、内部割れの評価結果からHCR(Hot Charge Rolling)操業の可否を判断している。
 また、CaO介在物を評価するものではないが、特許文献4~8には圧延前に鋳片の品質を評価する方法が開示されている。例えば、特許文献4~7では、鋳片やタンディッシュ内溶鋼の介在物量、元素量等から鋳片の品質を評価している。また、特許文献8では、タンディッシュ内溶鋼の分析結果から鋳片の品質を評価し(一次判定)、この判定精度が所定の精度を満たさない場合は鋳片サンプルの分析結果から鋳片の品質を評価している(二次判定)。
特開2010-209461号公報 特開平06-136440号公報 特開2006-198649号公報 特開昭62-277539号公報 特開2002-214222号公報 特開平10-122854号公報 特開平10-249505号公報 特開2000-292418号公報
 特許文献3~8は、上記の通りCaO介在物を評価するものではないが、CaO介在物の評価方法として、特許文献3~8のように鋳片やタンディッシュ内溶鋼の介在物量及び元素量等から評価することが考えられる。
 鋳片の段階でCaO介在物を評価するには、CaO集積帯が発生した位置でCaO量又はCa濃度を分析する必要がある。しかし、CaO集積帯が発生する位置は、鋳片の幅方向、厚さ方向及び鋳造方向にバラつきがあるため、その位置を予測することは難しい。また、鋳片の所定の部分を分析しても、その分析結果が必ずしもCaO集積帯のCaO量とはいえない。したがって、鋳片の分析結果からCaO介在物を評価することができない。
 タンディッシュ内溶鋼の介在物量や元素量等からCaO介在物を評価することも考えられる。しかしCaO介在物は、鋳型に注入以降も凝集・集積する。よって、タンディッシュ内溶鋼のCaO量又はCa濃度からCaO集積帯が存在しないと評価しても、その後、CaO介在物が凝集することによりHICが発生するおそれがある。
 本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、耐水素誘起割れ性に優れた鋼板や鋼管を実現すること、更には、HIC試験を行うことなく、鋳片の内部品質から耐HIC性を評価できる鋼板や鋼管を実現することにある。
 上記課題を解決し得た本発明の耐水素誘起割れ性に優れた鋼板は、
質量%で、
C:0.02~0.15%、
Si:0.02~0.50%、
Mn:0.6~2.0%、
P:0%超0.030%以下、
S:0%超0.003%以下、
Al:0.010~0.08%、
Ca:0.0003~0.0060%、
N:0.001~0.01%、および
O:0%超0.0045%以下を満たし、更に、
REM:0%超0.02%以下、および
Zr:0%超0.010%以下
よりなる群から選択される1種以上の元素を含み、残部が鉄および不可避不純物からなり、
 前記Caと前記Sの比(Ca/S)が2.0以上であり、かつ
 前記Ca、前記Sおよび前記Oが(Ca-1.25S)/O ≦ 1.80を満たし、
 更に、タンディッシュ内溶鋼のCa濃度からスラブのCa濃度を差し引いたCa低下量が閾値Cadropθ以下であり、該閾値Cadropθは、前記スラブを圧延して得た鋼板に水素誘起割れが発生しない最大のCa低下量であるところに特徴を有する。
 前記閾値Cadropθは、予め、下記(i)~(iii)の方法で求められた値であってもよい。
(i)タンディッシュ内溶鋼のCa濃度とスラブのCa濃度を測定し、前記タンディッシュ内溶鋼のCa濃度から前記スラブのCa濃度を差し引いてCa低下量を算出する。
(ii)前記スラブと同一の鋳造条件で鋳造したスラブを圧延して得られる鋼板に対して水素誘起割れ試験を行う。
(iii)上記(i)で測定したCa低下量と、上記(ii)の水素誘起割れ試験結果とから、水素誘起割れの発生しない最大のCa低下量を求める。
 前記スラブと同一の鋳造条件で鋳造したスラブは、前記Ca低下量を測定したスラブであってもよい。
 前記スラブのCa濃度は、前記スラブにおいて厚さ方向に異なる2箇所以上の位置でCa濃度を調査し、得られた2つ以上のCa濃度のうちの最小のCa濃度であってもよい。
 前記閾値Cadropθは4ppm(質量ppm)であってもよい。
 前記鋼板は、更に他の元素として、下記(A)および(B)のうちのいずれか1以上を含んでいてもよい。
(A)質量%で、B:0%超0.005%以下、V:0%超0.1%以下、Cu:0%超1.5%以下、Ni:0%超1.5%以下、Cr:0%超1.5%以下、Mo:0%超1.5%以下、およびNb:0%超0.06%以下よりなる群から選択される1種以上の元素
(B)質量%で、Ti:0%超0.03%以下、およびMg:0%超0.01%以下よりなる群から選択される1種以上の元素
 上記鋼板は、ラインパイプ用や圧力容器用として好適である。また本発明には、上記鋼板で形成されるラインパイプ用鋼管も含まれる。
 本発明によれば、耐水素誘起割れ性の確実に優れた鋼板や鋼管を提供できる。更には、HIC試験を行うことなく、鋳片の内部品質から耐HIC性を評価できる鋼板や鋼管を提供できる。これらは、天然ガス・原油の輸送用ラインパイプや貯蔵用タンク等の圧力容器などに好適に用いられる。
図1は、CaO介在物の流れを説明する模式図である。 図2は、種々のスラブのCa濃度分布を示す図である。 図3(a)はスラブの断面図であり、図3(b)は製品の断面図である。 図4は、スラブの断面図である。 図5は、スラブの調査面を説明する図である。 図6は、実施例における第1実施形態の閾値決定結果を示しており、タンディッシュ内溶鋼のCa濃度CaTD1およびスラブのCa濃度CaS1と、HIC試験結果との関係を示す図である。 図7は、実施例における第2実施形態の閾値決定結果を示しており、タンディッシュ内溶鋼のCa濃度CaTD1およびスラブのCa濃度の最小値Camin1と、HIC試験結果との関係を示す図である。
 本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。まず本発明者らは、HICがMnS介在物を起点に発生しやすいことに着目した。その結果、脱硫作用を有する元素である希土類元素あるいはZrを鋼材に含有させることにより、MnSの生成を抑制し耐水素誘起割れ性を高めることが可能であることに想到した。更に、その脱硫作用を効果的に発揮させるために、後述する適切な含有量を見出すに至った。
 次に本発明者らは、HICが、鋳片製造時に生じるCaO集積部を起点に発生しやすいことに着目した。その結果、CaO集積部の有無を評価できる「タンディッシュ内溶鋼のCa濃度からスラブのCa濃度を差し引いたCa低下量」に注目し、スラブの段階で、このCa低下量を所定の閾値以下に収めれば、耐水素誘起割れ性の高い鋼板が得られ、更には製品を早期に出荷できることを見出した。この点については後に詳述する。
 まずは成分組成について説明する。尚、以下、成分について「%」は「質量%」、「ppm」は「質量ppm」を意味する。
 優れた耐HIC性を確保するには、鋼材の成分組成を制御する必要がある。更には、例えばラインパイプ用鋼材として求められるその他の特性として、高強度や優れた溶接性等を確保するにも、鋼板の成分組成を下記の通りとする必要がある。以下、前述した希土類元素およびZrをはじめ、各成分の規定理由について説明する。
 〔成分組成〕
 [C:0.02~0.15%]
 Cは、母材および溶接部の強度を確保するために必要不可欠な元素であり、0.02%以上含有させる必要がある。C量は、好ましくは0.03%以上であり、より好ましくは0.05%以上である。一方、C量が多すぎるとHAZ靭性と溶接性が劣化する。またC量が過剰であると、HICの起点や破壊進展経路となるNbCや島状マルテンサイトが生成しやすくなる。よってC量は0.15%以下とする必要がある。好ましくは0.12%以下、より好ましくは0.10%以下である。
 [Si:0.02~0.50%]
 Siは、脱酸作用を有すると共に、母材および溶接部の強度向上に有効な元素である。これらの効果を得るため、Si量を0.02%以上とする。Si量は、好ましくは0.05%以上であり、より好ましくは0.15%以上である。しかし、Si量が多すぎると溶接性や靭性が劣化する。またSi量が過剰であると、島状マルテンサイトが生じてHICが発生・進展する。よってSi量は、0.50%以下に抑える必要がある。Si量は、好ましくは0.45%以下、より好ましくは0.35%以下である。
 [Mn:0.6~2.0%]
 Mnは、母材および溶接部の強度向上に有効な元素であり、本発明では0.6%以上含有させる。Mn量は、好ましくは0.8%以上であり、より好ましくは1.0%以上である。しかし、Mn量が多すぎると、MnSが生成されて耐水素誘起割れ性が劣化するだけでなくHAZ靭性や溶接性も劣化する。よってMn量の上限を2.0%とする。Mn量は、好ましくは1.8%以下であり、より好ましくは1.5%以下、さらに好ましくは1.2%以下である。
 [P:0%超0.030%以下]
 Pは、鋼材中に不可避的に含まれる元素であり、P量が0.030%を超えると母材やHAZ部の靭性劣化が著しく、耐水素誘起割れ性も劣化する。よって本発明ではP量を0.030%以下に抑える。P量は、好ましくは0.020%以下、より好ましくは0.010%以下である。
 [S:0%超0.003%以下]
 Sは、多すぎるとMnSを多量に生成し耐水素誘起割れ性を著しく劣化させる元素であるため、本発明ではS量の上限を0.003%とする。S量は、好ましくは0.002%以下であり、より好ましくは0.0015%以下、更に好ましくは0.0010%以下である。この様に耐水素誘起割れ性向上の観点からは少ない方が望ましい。
 [Al:0.010~0.08%]
 Alは強脱酸元素であり、Al量が少ないと、酸化物中のCa濃度が上昇、即ち、Ca系介在物が鋼板表層部に形成されやすくなり微細なHICが発生する。よって本発明では、Alを0.010%以上とする必要がある。Al量は、好ましくは0.020%以上、より好ましくは0.030%以上である。一方、Al含有量が多すぎると、Alの酸化物がクラスター状に生成し水素誘起割れの起点となる。よってAl量は0.08%以下とする必要がある。Al量は、好ましくは0.06%以下であり、より好ましくは0.05%以下である。
 [Ca:0.0003~0.0060%]
 Caは、硫化物の形態を制御する作用があり、CaSを形成することによってMnSの形成を抑制する効果がある。この効果を得るには、Ca量を0.0003%以上とする必要がある。Ca量は、好ましくは0.0005%以上であり、より好ましくは0.0010%以上である。一方、Ca量が0.0060%を超えると、Ca系介在物を起点にHICが多く発生する。よって本発明では、Ca量の上限を0.0060%とする。Ca量は、好ましくは0.0045%以下であり、より好ましくは0.0035%以下、さらに好ましくは0.0025%以下である。
 [N:0.001~0.01%]
 Nは、鋼組織中にTiNとして析出し、HAZ部のオーステナイト粒の粗大化を抑制し、さらにフェライト変態を促進させて、HAZ部の靭性を向上させる元素である。この効果を得るにはNを0.001%以上含有させる必要がある。N量は、好ましくは0.003%以上であり、より好ましくは0.0040%以上である。しかしN量が多すぎると、固溶Nの存在によりHAZ靭性がかえって劣化するため、N量は、0.01%以下とする必要がある。好ましくは0.008%以下であり、より好ましくは0.0060%以下である。
 [O:0%超0.0045%以下]
 O(酸素)は、清浄度向上の観点から低いほうが望ましく、Oが多量に含まれる場合、靭性が劣化することに加え、酸化物を起点にHICが発生し、耐水素誘起割れ性が劣化する。この観点から、O量は0.0045%以下とする必要があり、好ましくは0.0030%以下、より好ましくは0.0020%以下である。
 [Ca/S(質量比):2.0以上]
 前述の通り、Sは硫化物系介在物としてMnSを形成し、該MnSを起点にHICが発生する。このため、Caを添加して鋼中の硫化物系介在物をCaSとして形態を制御し、耐HIC性に対するSの無害化を図る。この作用効果を十分に発揮させるには、Ca/Sを2.0以上とする必要がある。Ca/Sは、好ましくは2.5以上、より好ましくは3.0以上である。尚、本発明で規定するCa量とS量からCa/Sの上限は17程度となる。
 [(Ca-1.25S)/O ≦ 1.80]
 Ca系酸硫化物によるHICの発生を抑制するには、Ca系介在物の中でも特に凝集合体を形成しやすいCaOを抑制することが有効である。そしてそのためには、鋼中全Ca量から硫化物(CaS)として存在するCa分を差し引いたCa量(Ca-1.25S)が、O量に対して過剰とならないようにしなければならない。O量に対してCa量(Ca-1.25S)が過剰であると、酸化物系介在物としてCaOが形成され易くなり、該CaOの凝集合体(粗大なCa系介在物)が鋼板表層部に大量に形成されやすくなる。これらの粗大なCa系介在物はHICの起点となるため、優れた耐HIC性を得るには(Ca-1.25S)/Oを1.80以下とする必要がある。(Ca-1.25S)/Oは、好ましくは1.40以下、より好ましくは1.30以下、更に好ましくは1.20以下、特に好ましくは1.00以下である。尚、CaOと同様に凝集合体を形成しやすいAl23を抑制する観点から、(Ca-1.25S)/Oの下限値は0.1程度となる。
 [REM:0%超0.02%以下]
 REM(Rare Earth Metal、希土類元素)は、前述の通り、脱硫作用によりMnSの生成を抑制し耐水素誘起割れ性を高めるのに有効な元素である。このような効果を発揮させるには、REMを0.0002%以上含有させることが好ましい。REM量は、より好ましくは0.0005%以上、更に好ましくは0.0010%以上である。一方、REMを多量に含有させても効果が飽和する。よってREM量の上限は0.02%とすることが必要である。鋳造時の浸漬ノズルの閉塞を抑えて生産性を高める観点からは、REM量を0.015%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.010%以下、更に好ましくは0.0050%以下である。尚、本発明において、上記REMとは、ランタノイド元素(LaからLuまでの15元素)とSc(スカンジウム)およびYを意味する。
 [Zr:0%超0.010%以下]
 Zrは、脱硫作用により耐HIC性を向上させるとともに、酸化物を形成し微細に分散することでHAZ靭性の向上に寄与する元素である。これらの効果を発揮させるには、Zr量を0.0003%以上とすることが好ましい。Zr量は、より好ましくは0.0005%以上、更に好ましくは0.0010%以上、より更に好ましくは0.0015%以上である。一方、Zrを過剰に添加すると粗大な介在物を形成して耐水素誘起割れ性および母材靭性を劣化させる。よってZr量は0.010%以下とすることが必要である。Zr量は、好ましくは0.0070%以下、より好ましくは0.0050%以下、更に好ましくは0.0030%以下である。
 本発明の鋼材(鋼板、鋼管)の成分は、上記の通りであり、残部は鉄および不可避不純物からなる。また、上記元素に加えて更に、
(a)下記量のB、V、Cu、Ni、Cr、Mo、およびNbよりなる群から選択される1種類以上の元素を含有させることによって、強度や靭性をより高めたり、
(b)下記量のTiおよびMgよりなる群から選択される1種類以上の元素を含有させることによって、HAZ靭性の向上や、脱硫が促進されて耐HIC性をより改善することができる。以下、これらの元素について詳述する。
 [B:0%超0.005%以下]
 Bは、焼入れ性を高め、母材および溶接部の強度を高めるとともに、溶接時に、加熱されたHAZ部が冷却する過程でNと結合してBNを析出し、オーステナイト粒内からのフェライト変態を促進するため、HAZ靭性を向上させる。この効果を得るには、B量を0.0002%以上含有させることが好ましい。B量は、より好ましくは0.0005%以上であり、更に好ましくは0.0010%以上である。しかし、B含有量が過多になると、母材とHAZ部の靭性が劣化したり、溶接性の劣化を招くため、B量は0.005%以下とすることが好ましい。B量は、より好ましくは0.004%以下、更に好ましくは0.0030%以下である。
 [V:0%超0.1%以下]
 Vは、強度の向上に有効な元素であり、この効果を得るには0.003%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.010%以上である。一方、V含有量が0.1%を超えると溶接性と母材靭性が劣化する。よってV量は、0.1%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.08%以下である。
 [Cu:0%超1.5%以下]
 Cuは、焼入れ性を向上させて強度を高めるのに有効な元素である。この効果を得るにはCuを0.01%以上含有させることが好ましい。Cu量は、より好ましくは0.05%以上、更に好ましくは0.10%以上である。しかし、Cu含有量が1.5%を超えると靭性が劣化するため、1.5%以下とすることが好ましい。Cu量は、より好ましくは1.0%以下、更に好ましくは0.50%以下である。
 [Ni:0%超1.5%以下]
 Niは、母材および溶接部の強度と靭性の向上に有効な元素である。この効果を得るためには、Ni量を0.01%以上とすることが好ましい。Ni量は、より好ましくは0.05%以上、更に好ましくは0.10%以上である。しかしNiが多量に含まれると、構造用鋼材として極めて高価となるため、経済的な観点からNi量は1.5%以下とすることが好ましい。Ni量は、より好ましくは1.0%以下、更に好ましくは0.50%以下である。
 [Cr:0%超1.5%以下]
 Crは、強度の向上に有効な元素であり、この効果を得るには0.01%以上含有させることが好ましい。Cr量は、より好ましくは0.05%以上、更に好ましくは0.10%以上である。一方、Cr量が1.5%を超えるとHAZ靭性が劣化する。よってCr量は1.5%以下とすることが好ましい。Cr量は、より好ましくは1.0%以下、更に好ましくは0.50%以下である。
 [Mo:0%超1.5%以下]
 Moは、母材の強度と靭性の向上に有効な元素である。この効果を得るには、Mo量を0.01%以上とすることが好ましい。Mo量は、より好ましくは0.05%以上、更に好ましくは0.10%以上である。しかし、Mo量が1.5%を超えるとHAZ靭性および溶接性が劣化する。よってMo量は1.5%以下とすることが好ましく、より好ましくは1.0%以下、更に好ましくは0.50%以下である。
 [Nb:0%超0.06%以下]
 Nbは、溶接性を劣化させることなく強度と母材靭性を高めるのに有効な元素である。この効果を得るには、Nb量を0.002%以上とすることが好ましい。Nb量は、より好ましくは0.010%以上、更に好ましくは0.020%以上である。しかし、Nb量が0.06%を超えると母材とHAZの靭性が劣化する。よって、本発明ではNb量の上限を0.06%とすることが好ましい。Nb量は、より好ましくは0.050%以下、更に好ましくは0.040%以下、より更に好ましくは0.030%以下である。
 [Ti:0%超0.03%以下]
 Tiは、鋼中にTiNとして析出することで、溶接時のHAZ部でのオーステナイト粒の粗大化を防止しかつフェライト変態を促進するため、HAZ部の靭性を向上させるのに有効な元素である。さらにTiは、脱硫作用を示すため耐HIC性の向上にも有効な元素である。これらの効果を得るには、Tiを0.003%以上含有させることが好ましい。Ti量は、より好ましくは0.005%以上、更に好ましくは0.010%以上である。一方、Ti含有量が過多になると、固溶Tiの増加やTiC析出の増加により母材とHAZ部の靭性が劣化するため、0.03%以下とすることが好ましい。Ti量は、より好ましくは0.02%以下である。
 [Mg:0%超0.01%以下]
 Mgは、結晶粒の微細化を通じて靭性の向上に有効な元素であり、また脱硫作用を示すため耐HIC性の向上にも有効な元素である。これらの効果を得るには、Mgを0.0003%以上含有させることが好ましい。Mg量は、より好ましくは0.001%以上である。一方、Mgを過剰に含有させても効果が飽和するため、Mg量の上限は0.01%とすることが好ましい。Mg量は、より好ましくは0.005%以下である。
 本発明の鋼板は、タンディッシュ内溶鋼のCa濃度からスラブのCa濃度を差し引いたCa低下量が閾値Cadropθ以下であって、耐水素誘起割れ性の高い鋼板である。ここで閾値Cadropθとは、予め求められた、前記スラブを圧延して得た鋼板に水素誘起割れが発生しない最大のCa低下量を意味する。
 [Ca低下量]
 上記の通り、タンディッシュ内溶鋼のCa濃度からスラブのCa濃度を差し引いたCa低下量を所定の閾値以下とすることによって、耐水素誘起割れ性の高い鋼板が得られること、また製品を早期に出荷できることについて説明する。以下では、まず、上記Ca低下量を評価指標とした理由から説明する。
 本発明者らは、MnS介在物に着目した上で、MnSの生成を抑制するために、Caを二次精錬で溶鋼に添加することに関して研究を進めた。
 溶鋼へのCa添加量が適正な場合、溶鋼中にCaO-Al23介在物が生成する。CaO-Al23は溶鋼との濡れ性が良好であるため、溶鋼中で凝集せず、微細なままであり、耐HIC性に悪影響を及ぼさない。
 しかし、溶鋼へのCa添加量が適正でない場合、例えば、MnS生成の抑制及びAl23の改質に必要な所要量を超える過剰な添加を行った場合、溶鋼中には、CaO-Al23介在物に加えて純粋なCaO介在物も生成する。純粋なCaO介在物は、溶鋼との濡れ性が悪いため溶鋼中で凝集しやすい。凝集合体したCaOは、粗大な介在物となってHICを誘発する。
 粗大化したCaO介在物は、溶鋼よりも密度が小さいため、大半は浮上分離する。しかし、図1に示すように、一部は鋳型内の溶鋼の流れに乗って鋳片の奥深くまで潜り込みながら浮力を受け、凝固殻に捕捉されてCaO集積帯を形成する。CaO集積帯は、HICの起点となる。
 そこで、溶鋼への適正なCa添加量を予め決定できれば、CaO介在物によるHIC発生を抑制できる。そのためには、Ca添加前の溶鋼中の介在物量及びその組成並びに硫黄濃度を正確に把握する必要がある。しかしながら実操業では、これらを事前に把握することが不可能であるため、Ca添加量をMnS生成抑制に十分な量としている。その結果、Ca添加量が過剰となりやすく、CaO集積帯が形成されやすい。
 上記CaO集積帯が常に同じ位置に発生すれば、その位置のCa濃度を分析することでCaO介在物の集積度を把握することができる。また、CaO集積度から鋳片にCaO集積帯が発生しているかを推測できる。
 しかしCaO集積帯が発生する位置は、前述の通り、鋳造条件(鋳造速度及び浸漬ノズルの吐出孔の角度等)によって鋳片の厚さ方向に異なる。例えば、図2に示すように、鋳造条件(鋳造速度及び浸漬ノズルの吐出孔の角度)が異なる3つのスラブ(A~C)では、集積帯が発生した高Ca濃度の位置(a~c)がそれぞれ異なる。このようにCaO集積帯の位置を予測することはできないため、集積度(Ca濃度)からCaO集積帯が発生しているかを評価することは困難である。
 そこで本発明者らは、Ca濃度の調査位置について観点を変え、低Ca濃度となる位置に着目した。CaO集積帯が発生した場合、CaO集積帯ではCa濃度が高くなる一方で、CaO集積帯が発生していない位置ではCa濃度が比較的低くなると考えられる。これを考慮しつつ、CaO集積帯が発生した場合の「スラブの任意の厚さ方向位置のCa濃度」と「タンディッシュ内溶鋼のCa濃度」との関係を調べた。その結果、CaO集積帯が発生していない位置では「スラブのCa濃度」が比較的低いため、『「タンディッシュ内溶鋼のCa濃度」から「スラブのCa濃度」を差し引いた値』、即ち、「タンディッシュからスラブへのCa濃度低下量』が大きくなることがわかった。
 そうすると、前記『タンディッシュからスラブへのCa濃度低下量』が大きい場合、その位置には集積帯が発生していないが別の位置にCaO集積帯が発生していると考えられるため、HICが発生すると評価できる。一方、前記『タンディッシュからスラブへのCa濃度低下量』が小さい場合、タンディッシュのCa濃度とスラブのCa濃度とには殆ど差がない、つまり、スラブに高Ca濃度の位置がないと推測できる。この場合、スラブにCaO集積帯が発生していないと考えられるため、HICが発生しないと評価できる。
 本発明では、この様にCaO集積帯の有無と関連する「タンディッシュ内溶鋼のCa濃度」から「スラブのCa濃度」を差し引いた値(以下「Ca低下量」と称する)を用いて、耐HIC性を評価することとした。
 [Ca低下量の閾値の決定]
 次に、得られる鋼板が優れた耐HIC性を発揮するかを判断するための、前記Ca低下量の閾値Cadropθ、即ち、スラブを圧延して得た鋼板にHICが発生しない最大のCa低下量の求め方について説明する。
 上記閾値Cadropθは、予め求めておくが、その方法は特に制限されない。閾値Cadropθを求める方法として、予め、下記(i)~(iii)の方法で求めることが挙げられる。
(i)タンディッシュ内溶鋼のCa濃度とスラブのCa濃度を測定し、前記タンディッシュ内溶鋼のCa濃度から前記スラブのCa濃度を差し引いてCa低下量を算出する。
(ii)前記スラブと同一の鋳造条件で鋳造したスラブを圧延して得られる鋼板に対して水素誘起割れ試験を行う。
(iii)上記(i)で測定したCa低下量と、上記(ii)の水素誘起割れ試験結果とから、水素誘起割れの発生しない最大のCa低下量を求める。
 上記閾値Cadropθを求める方法として具体的に、下記第1実施形態と第2実施形態を例に、以下詳述する。
 〔第1実施形態〕
 (タンディッシュ内溶鋼のCa濃度の調査)
 タンディッシュ内溶鋼を採取し、そのCa濃度(CaTD1)を分析する。タンディッシュ内溶鋼は取鍋から常時供給されるため、Ca濃度(CaTD1)は採取時にかかわらず一定である。
 (スラブのCa濃度の調査)
 次に、スラブのCa濃度(CaS1)を調査する。図3(a)に示す通り、スラブの基準側表面から厚さ方向にD/2の範囲の領域R4(以下、「基準側領域R4」と称する)からサンプルを採取し、Ca濃度CaS1を分析する。「基準側領域R4」は、図3(a)に示すように、反基準側表面からスラブの厚さ方向にD/2以上D以下の範囲である。
 前述の通り、CaO介在物の密度は溶鋼の密度より小さいため、溶鋼中のCaO介在物は溶鋼との密度差に起因した浮力を受けて浮上する。曲げ部や水平部が形成された連続鋳造機では、図1に示す通り、CaO介在物が浮上すると反基準側の凝固シェルに捕捉されるため、CaO集積帯はスラブの反基準側に発生し、基準側に発生しない。
 そこで本発明では、上記図3(a)の通り、CaO集積帯が発生しない「基準側表面から厚さ方向にD/2の範囲(基準側領域R4)」、即ち後述する実施例では、スラブ厚Dの中心から基準側表面に向かって-0.50Dまでの範囲で、Ca濃度CaS1を調査する。この基準側領域R4のCa濃度CaS1により、CaO集積帯が発生していない位置の「Ca低下量」を算出できるため、CaO集積帯の有無を正確に評価できる。
 そして、『タンディッシュ内のCa濃度CaTD1』から『スラブのCa濃度CaS1』を差し引き、「Ca低下量Cadrop1」を算出する。Cadrop1は、以下の式で表される。
Cadrop1=CaTD1-CaS1
 (圧延)
 上記Ca濃度CaS1を測定したスラブと同一の鋳造条件で鋳造したスラブを熱間圧延し、閾値測定用の鋼板を製造する。例えば次の条件で圧延を行うことが挙げられる。即ち、上記スラブを、1050~1250℃となるよう加熱した後、鋼板の表面温度で900℃以上、下記の通り計算により求められる鋼板平均温度が1000℃以上の累積圧下率が40%以上でかつ1パス当りの圧下率が10%以上であるパスが2パス以上になるよう熱間圧延を行う。その後さらに、700℃以上900℃未満の累積圧下率が20%以上となるよう熱間圧延を行い、圧延終了温度が700℃以上900℃未満となるようする。その後、650℃以上の温度から水冷を開始し、350~600℃の温度で停止し、更にその後、室温まで空冷する。上記鋼板平均温度は、次の様にして求められる。即ち、圧延中の圧延パススケジュールやパス間の冷却方法(水冷あるいは空冷)などのデータに基づいて、板厚方向の任意の位置における温度を差分法など計算に適した方法を用いて計算し、求められた鋼片の表面から裏面までの温度の平均値を鋼板平均温度とする。
 (HIC試験)
 そして鋼板に対してHIC試験を行い、HIC発生の有無を調べる。HIC試験は、後述する実施例に示す通り、NACE(National Association of Corrosion and Engineer) standard TM0284-2003に規定された方法で行うことが挙げられる。
 前記HIC試験の対象領域は、図3(b)に示すように、反基準側領域に対応する製品領域R40のうち厚み中心部近傍を除く領域R41とする。前記図1に示す通り、粗大化したCaO集積帯はスラブの反基準側に形成されやすく、CaO起因のHICは、反基準側面近傍に対応する領域に発生しやすいからである。なお、厚み中心部では偏析起因のHICが発生しやすいため、CaO起因のHICと評価できない。そこで、厚み中心部近傍を除く領域R41でHICが発生しているかを調べる。
 (閾値の決定)
 続いて、前記「Ca低下量Cadrop1」と「HIC試験結果」とから、HICが発生しないCa低下量の閾値Cadropθを決定する。複数のCa低下量Cadrop1とHIC試験結果とを対比して、HICが全く発生しないときの最大Ca低下量を「閾値Cadropθ」とする。特に、複数のスラブの測定結果及び試験結果を用いることによって、より正確な閾値を得ることができ、HIC発生有無の誤判定を減らすことができる。
 〔第2実施形態〕
 次に、Ca低下量の算出方法が前記第1実施形態と異なる第2実施形態について、図4を参照しつつ説明する。上述した第1実施形態と同一の構成については説明を簡略化する。また前記図4においても、上述した第1実施形態と同一の構成については同一の符号を用い、その説明を適宜省略する。
 (タンディッシュ内溶鋼のCa濃度の調査)
 タンディッシュ内溶鋼のCa濃度(CaTD1)を調査する。
 (スラブのCa濃度の調査)
 次に、同一チャージで鋳造したスラブにおいて、図4に示す通り、厚さ方向に異なる2箇所以上の調査位置でサンプルを採取し、各サンプルのCa濃度を分析する。得られた2つ以上のCa濃度(CaS1、CaS2・・・)から最小のCa濃度(Camin1)を選択する。
 そして、「タンディッシュ内のCa濃度CaTD1」から「スラブの最小Ca濃度Camin1」を差し引いた値を用いて、「Ca低下量Cadrop11」を算出する。Cadrop11は、以下の式で表される。
Cadrop11=CaTD1-Camin1
 スラブの厚さ方向の全範囲でCa濃度の調査位置を1箇所とした場合、その位置が集積帯であると著しく高いCa濃度が検出される。高Ca濃度から算出したCa低下量は小さいため、CaO集積帯が発生していないと判断し、HICが発生しないと評価してしまう。しかし、実際は集積帯が発生し、これが原因でHICが発生しうることも考えられる。
 そこで、本実施形態では、スラブの厚さ方向に異なる2箇所以上の位置でCa濃度を調査する。CaO集積帯は鋳造条件によって決まる特定の厚さ方向位置に存在するため、調査位置を厚さ方向に変えることにより、CaO集積帯が発生していない位置を調査対象に含めることができる。
 また、2つ以上のCa濃度(CaS1、CaS2・・・)には、集積帯のCa濃度や集積帯が発生していない位置のCa濃度が含まれるが、これらのうち最小のCa濃度(Camin1)を選択することにより、集積帯が発生していない位置のCa濃度を選択できる。この濃度から集積帯が発生していない位置でのCa低下量を算出できるため、CaO集積帯の有無を正確に評価できる。
 ここで、CaO集積帯の生成メカニズムは、CaO介在物とAl23介在物とで同一であり、Al23介在物の集積帯の厚さは10mmと報告されている(文献:ISIJ International,Vol.43(2003),No.10,p.1548-1555)。この報告からCaO介在物の集積帯の厚さも10mmと推測できる。そうすると、図4に示すように、Ca濃度の各調査位置を厚さ方向に10mmより長く離すと、調査位置の1つが集積帯であっても、その他の調査位置は集積帯が発生していない位置となる。このような理由から、2箇所以上の調査位置は、それぞれ、厚さ方向に10mmを超えて離間していることが好ましい。なお、図4では、調査位置を2箇所とし、2つの調査位置の厚さ方向距離lが10mmを超える場合を示している(2つの調査位置の厚さ方向距離l>10mm)。
 また図1に示す通り、鋳造経路の曲げ部近傍では、CaO介在物が広範囲で捕捉されるため、図4に示すスラブの幅方向両端からD/2の領域R1、R2では、CaO集積帯が厚さ方向に広範囲に発生する。したがって、領域R1、R2ではCa濃度の調査位置を厚さ方向に変えても、集積帯が発生していない位置を調査できない可能性がある。そこで、Ca濃度調査位置を、主に広面側だけから冷却される、幅方向両端からD/2を除いた幅W-Dの領域R3とすることが好ましい。
 (圧延)
 上記Ca濃度CaS1等を測定したスラブと同一の鋳造条件で鋳造したスラブを熱間圧延し、閾値測定用の鋼板を製造する。
 (HIC試験)
 そして鋼板に対してHIC試験を行い、「反基準側面近傍に対応する領域R41」でのHIC発生有無を調べる。HIC試験は、後述する実施例に示す通り、NACE standard TM0284-2003に規定された方法で行うことが挙げられる。
 (閾値の決定)
 続いて、「Ca低下量Cadrop11」と「HIC試験結果」とから、HICが発生しないCa低下量の閾値Cadropθを決定する。本実施形態では、HICが全く発生しないときの最大Ca低下量を「閾値Cadropθ」とする。
 [判定対象チャージのCa低下量の測定]
 判定対象チャージのタンディッシュ内溶鋼のCa濃度CaTD11を調査する。例えば前記第2実施形態と同様に、同一チャージで鋳造したスラブにおいて厚さ方向に異なる2箇所以上でCa濃度を調査し、2つ以上のCa濃度(CaS11、CaS12・・・)から最小のCa濃度(Camin11)を選択する。2箇所以上の調査位置は、それぞれ、厚さ方向に10mmより長く離間していることが好ましい。
 そして、「タンディッシュ内のCa濃度CaTD11」から「スラブの最小Ca濃度Camin11」を差し引き、判定対象の「Ca低下量Cadrop」を算出する。Cadropは、以下の式で表される。
Cadrop=CaTD11-Camin11
 [判定対象チャージのCa低下量の評価]
 上記判定対象のCadropと、閾値Cadropθとを対比し、Cadropが閾値Cadropθ以下の場合、得られる鋼板は耐HIC性に優れていると判断し、Cadropが閾値Cadropθを超えている場合、得られる鋼板は耐HIC性に劣ると判断する。
 スラブの調査位置(調査面)は定常部が好ましいが、非定常部でもよい。「非定常部」とは、鋳造条件の変化時に鋳造された部分であり、鋳造速度の上昇時といった鋳造初期や、鋳造速度の下降時といった鋳造末期に鋳造された部分等が挙げられる。非定常部で調査する場合、図5に示すように、HIC試験を実施する部位に隣接する部分を調査することが好ましい。このような部分はHIC試験結果と同様な耐HIC性を示すため、より正確な評価を行うことができる。
 本発明の鋼板は、その圧延前の状態であるスラブの段階において、タンディッシュ内のCa濃度からスラブのCa濃度を差し引いて「Ca低下量Cadrop」を算出し、その「Ca低下量Cadrop」が、Cadrop≦閾値Cadropθを満たす鋼板である。本発明の鋼板は、上記Cadrop≦閾値Cadropθを満たしており、スラブにCaO集積帯が発生していないと考えられるため、HICが発生しない。
 このように、本実施形態では、耐HIC性の評価に「タンディッシュからスラブへのCa濃度低下量」を用いている。これから鋳片の内部品質(CaO介在物の集積度)を正確に評価できるため、この評価結果を基に鋳片の段階で耐HIC性を評価できる。これにより、数週間を要するHIC試験を省略できるため、製造から出荷までの期間を大幅に短縮することができる。
 本願は、2014年12月26日に出願された日本国特許出願第2014-266491号および2015年10月13日に出願された日本国特許出願第2015-202378号に基づく優先権の利益を主張するものである。2014年12月26日に出願された日本国特許出願第2014-266491号の明細書の全内容および2015年10月13日に出願された日本国特許出願第2015-202378号の明細書の全内容が、本願の参考のため援用される。
 以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
 (1)鋳造
 表1-1~表4および図6、7には、閾値を決定するための実験条件および実験結果を示す。連続鋳造により、スラブ厚Dが280mmであってスラブ幅Wが2100mmであるスラブを得た。第1実施形態の鋳造条件を表1-1および表1-2に、第2実施形態の鋳造条件を表2-1および表2-2にそれぞれ示す。本実施例では、API(The American Petroleum Institute)X65グレードの鋼板と、APIX70グレードの鋼板を得るべく、それぞれ25チャージの製造を行った。
 ここで、表1-1、表1-2、表2-1および表2-2に示す条件を説明する。
<タンディッシュ内溶鋼の成分>
 C、Mn、Nb、P、Caの濃度を発光分光分析法によって測定した。S濃度は低いため、発光分光分析法による測定が困難であった。そこで、S濃度の測定には燃焼-赤外線吸収法を用いた。
<鋳造条件>
・比水量
 比水量=(鋳型直下から連鋳機最終ロールまでの単位時間当たりの全二次冷却水量[l/min.])/(単位時間当たりの鋳造鋳片重量[kg/min.])
・鋳造速度
 鋳片の引き抜き速度[m/min.]であり、鋳片に接触するロール(メジャーロール)の直径(周長)と回転速度(単位時間当たりの回転数)から算出した。
 (2)Ca低下量の調査
 スラブの全長が10mとなった時点でタンディッシュ内の溶鋼を採取し、タンディッシュ内溶鋼のCa濃度CaTD1を調査した。鋳造後、スラブのCa濃度CaS1またはCamin1を調査した。表1-1および表1-2には、スラブの基準側領域R4でCa濃度を調査したときの調査位置とCa濃度CaS1を示している。表3-1、表3-2および表4には、スラブの厚さ方向に異なる2~10箇所(表3-1、表3-2および表4に示す合計N数=2~10)でCa濃度を調査したときの調査位置と各箇所でのCa濃度を示している。表3-1、表3-2および表4のうち、試験No.51~57、69~100は、2箇所で測定した。試験No.58~64は3~8箇所、試験No.65~68は10箇所を調査した。そして複数のCa濃度のうちの最小Ca濃度Camin1を示している。前記2~10箇所は、それぞれ厚さ方向に10mmを超えて離間した位置である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000004
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000005
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000006
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000007
 (3)圧延
 その後、上記スラブを、1050~1250℃となるよう加熱した後、鋼板の表面温度で900℃以上、計算により求められる鋼板平均温度が1000℃以上の累積圧下率が40%以上でかつ1パス当りの圧下率が10%以上であるパスが2パス以上になるよう熱間圧延を行い、その後さらに、700℃以上900℃未満の累積圧下率が20%以上となるよう熱間圧延を行い、圧延終了表面温度が850℃となるようにした。その後、冷却開始表面温度:950℃から平均冷却速度:10℃/sで冷却を開始し、350~600℃の温度で停止し、更にその後、室温まで空冷して、種々の成分組成であって、サイズが9~50mm板厚×2000~3500mm幅×12000~35000mm長さの鋼板を得た。
 (4)HIC試験
 閾値tθ決定のために、本実施例では圧延後にHIC試験を行った。
(a)圧延後の各鋼板からサンプルを切り出し、HIC試験を実施した。HIC試験はNACE standard TM0284-2003に規定された方法に従って実施した。
(b)HIC試験後、サンプルを3箇所で切断し、各断面(3断面)を顕微鏡で観察し、HICの有無を確認した。観察領域は、図3(b)に示した「反基準側領域に対応する製品領域R40」における、製品の厚み中心から板厚±5.3%以内の範囲を除く領域R41とした。
 (5)Ca低下量の閾値の決定
 図6は、第1実施形態の閾値決定結果を示しており、前記(2)で調査した「タンディッシュ内溶鋼のCa濃度CaTD1」ならびに表1-1および表1-2の「スラブのCa濃度CaS1」と、HIC試験結果との関係を示す。また図7は、第2実施形態の閾値決定結果を示しており、前記(2)で調査した「タンディッシュ内溶鋼のCa濃度CaTD1」、ならびに表3-1、表3-2および表4のスラブの最小Ca濃度Camin1と、HIC試験結果との関係を示す。
 前記図6から、第1実施形態の判定方法ではCa低下量が4ppm以下のとき、HICが発生しなかった。一方、Ca低下量が4ppmを超えたとき、HICが発生した場合と発生しなかった場合とが混在した。この結果から、HICの発生を確実に抑制できるのは、Ca低下量≦4ppmのときであることがわかった。そこで、第1実施形態の実施例では、Ca低下量の閾値を4ppm、即ちCadropθ=4ppmとした。
 また、図7から、第2実施形態の判定方法でも、Ca低下量が4ppm以下のとき、HICが発生しなかった。一方、Ca低下量が4ppmを超えたとき、HICが発生した場合と発生しなかった場合とが混在した。この結果から、HICの発生を確実に抑制できるのは、Ca低下量≦4ppmのときであることがわかった。そこで、第2実施形態の実施例でも、Ca低下量の閾値を4ppm、即ちCadropθ=4ppmとした。
 なお、「Ca低下量の閾値」は強度グレードに関係なく全ての製品から決定している。粗大なCaOによるHICの発生のしやすさは、製品の強度グレードに関係しないためである。
 (6)判定対象スラブの評価
 上記閾値を用いて、表5に示す成分組成の判定対象スラブの耐HIC性を評価した。
 表5に示す成分組成の鋼を溶製し、連続鋳造により、スラブ厚Dが280mmであってスラブ幅Wが2100mmであるスラブを得た。
 判定対象チャージのタンディッシュ内溶鋼のCa濃度CaTD11を調査すると共に、判定対象のスラブの最小のCa濃度(Camin11)を求め、判定対象のスラブのCa低下量Cadropを上述の通り算出した。そして、上記(5)の第1、2実施形態から求めた閾値Cadropθ=4ppmを用いて、判定対象のスラブのCa低下量Cadropが4ppm以下のときCaO起因のHICが発生しない、即ち、耐HIC性評価がOKと判断し、Ca低下量Cadropが4ppm超のときCaO起因のHICが発生する、即ち、耐HIC性評価がNGと判断した。この結果を表6に示す。
 その後、上記スラブを、1050~1250℃となるよう加熱した後、表6の「熱間圧延・冷却方法」の欄に「TMCP」または「QT」と示す通り、2パターンの熱間圧延・冷却方法により、成分組成が種々の鋼板(9~90mm板厚×2000~3500mm幅×12000~35000mm長さ)を得た。前記「TMCP」は、鋼板の表面温度で900℃以上、計算により求められる鋼板平均温度が1000℃以上の累積圧下率が40%以上でかつ1パス当りの圧下率が10%以上であるパスが2パス以上になるよう熱間圧延を行い、その後さらに、700℃以上900℃未満の累積圧下率が20%以上となるよう熱間圧延を行い、圧延終了表面温度が850℃となるようにし後、冷却開始表面温度:950℃から平均冷却速度:10℃/sで冷却を開始し、350~600℃の温度で停止し、更にその後、室温まで空冷する方法である。前記「QT」は、熱間圧延した後室温まで空冷し、850℃以上950℃以下の温度に再加熱して焼入れした後、600~700℃で焼き戻し処理を行う方法である。
 上記鋼板を用い、NACE standard TM0284-2003に規定された方法に従ってHIC試験を実施し、耐HIC性試験での割れの有無を確認した。その結果を表6に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000008
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000009
 表5および表6より次のことがわかる。鋼種No.1~7、10~16は、規定の成分組成を満たし、かつスラブのCa低下量が閾値以下に抑えられており、耐HIC性に優れた本発明の鋼板である。
 これに対し、鋼種No.9および18はスラブのCa低下量が閾値を超えているため、スラブの耐HIC性評価はNGであった。また圧延後に行うHIC試験では、鋼板に割れが生じ、耐HIC性に劣ることを確認した。また鋼種No.9および18は、鋼板の化学成分組成が本発明の規定を外れた例である。即ち、鋼種No.9の鋼板は、REMおよびZrが0%であり、かつ、(Ca-1.25S)/Oの値が規定を外れたため、耐HIC性に劣った。鋼種No.18は(Ca-1.25S)/Oの値が規定を外れたため、耐HIC性に劣った。鋼種No.8および17は、スラブのCa低下量が閾値よりも小さく抑えられているものの、鋼板の化学成分組成が本発明の規定を外れた例である。即ち、鋼種No.8はREMおよびZrが0%であり、かつ、(Ca/S)の値が規定を外れているため、耐HIC性に劣った。また鋼種No.17は(Ca/S)の値が規定を外れているため、耐HIC性に劣った。
 スラブでの耐HIC性評価がOKであった例では、鋳造開始から製品である鋼板、即ち、耐サワー鋼板の出荷までの期間(鋳造→圧延→出荷)が19日であった。これに対し、圧延後に得られた鋼板を用いてHIC試験を行い、耐HIC性を評価した場合には、鋳造開始から出荷までの期間(鋳造→圧延→HIC試験→出荷)が28日と長期間を要した。本実施例では、前記圧延後のHIC試験を省略できたため、鋳造開始から出荷までの期間を28日→19日へ大幅に短縮できた。
 また、スラブでの耐HIC性評価がNGであった例では、スラブの段階で再溶製を開始したところ、鋳造開始から製品である鋼板、即ち、耐サワー鋼板の出荷までの期間(鋳造→再溶製→圧延→出荷)は54日であった。これに対し、圧延後に得られた鋼板を用いてHIC試験を行い、製品の耐HIC性を評価した結果、評価がNGであった場合は、上記HIC試験を行った後に再溶製を開始したため、鋳造開始から製品である鋼板の出荷までの期間(鋳造→圧延→HIC試験→再溶製→圧延→HIC試験→出荷)が72日と長期間を要した。本実施例では、前記圧延後のHIC試験を省略できたため、再溶製が必要な場合であっても、鋳造開始から出荷までの期間を72日→54日へ大幅に短縮できた。
 以上のように、本発明によると、圧延後のHIC試験を行うことなく、鋳片であるスラブの段階で耐HIC性を評価できたため、製造リードタイムを大幅に短縮できた。尚、本実施例では、スラブの耐HIC性評価用閾値決定のためのHIC試験と、確認用のHIC試験とが同じであったため、本発明の判定方法は精度が高いといえる。
 

Claims (10)

  1.  質量%で、
    C:0.02~0.15%、
    Si:0.02~0.50%、
    Mn:0.6~2.0%、
    P:0%超0.030%以下、
    S:0%超0.003%以下、
    Al:0.010~0.08%、
    Ca:0.0003~0.0060%、
    N:0.001~0.01%、および
    O:0%超0.0045%以下を満たし、更に、
    REM:0%超0.02%以下、および
    Zr:0%超0.010%以下
    よりなる群から選択される1種以上の元素を含み、残部が鉄および不可避不純物からなり、
     前記Caと前記Sの比(Ca/S)が2.0以上であり、かつ
     前記Ca、前記Sおよび前記Oが(Ca-1.25S)/O ≦ 1.80を満たし、
     更に、タンディッシュ内溶鋼のCa濃度からスラブのCa濃度を差し引いたCa低下量が閾値Cadropθ以下であり、該閾値Cadropθは、前記スラブを圧延して得た鋼板に水素誘起割れが発生しない最大のCa低下量であることを特徴とする耐水素誘起割れ性に優れた鋼板。
  2.  前記閾値Cadropθは、予め、下記(i)~(iii)の方法で求められた値である請求項1に記載の鋼板。
    (i)タンディッシュ内溶鋼のCa濃度とスラブのCa濃度を測定し、前記タンディッシュ内溶鋼のCa濃度から前記スラブのCa濃度を差し引いてCa低下量を算出する。
    (ii)前記スラブと同一の鋳造条件で鋳造したスラブを圧延して得られる鋼板に対して水素誘起割れ試験を行う。
    (iii)上記(i)で測定したCa低下量と、上記(ii)の水素誘起割れ試験結果とから、水素誘起割れの発生しない最大のCa低下量を求める。
  3.  前記スラブと同一の鋳造条件で鋳造したスラブは、前記Ca低下量を測定したスラブである請求項2に記載の鋼板。
  4.  前記スラブのCa濃度は、前記スラブにおいて厚さ方向に異なる2箇所以上の位置でCa濃度を調査し、得られた2つ以上のCa濃度のうちの最小のCa濃度である請求項1~3のいずれかに記載の鋼板。
  5.  前記閾値Cadropθは4ppmである請求項1~3のいずれかに記載の鋼板。
  6.  更に他の元素として、質量%で、
    B:0%超0.005%以下、
    V:0%超0.1%以下、
    Cu:0%超1.5%以下、
    Ni:0%超1.5%以下、
    Cr:0%超1.5%以下、
    Mo:0%超1.5%以下、および
    Nb:0%超0.06%以下
    よりなる群から選択される1種以上の元素を含む請求項1~3のいずれかに記載の鋼板。
  7.  更に他の元素として、質量%で、
    Ti:0%超0.03%以下、および
    Mg:0%超0.01%以下
    よりなる群から選択される1種以上の元素を含む請求項1~3のいずれかに記載の鋼板。
  8.  ラインパイプ用である請求項1~3のいずれかに記載の鋼板。
  9.  圧力容器用である請求項1~3のいずれかに記載の鋼板。
  10.  請求項1~3のいずれかに記載の鋼板で形成されるラインパイプ用鋼管。
     
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