以下、本発明の実施形態について説明する。
[実施形態1]
図1〜図3は、実施形態1に係る物品取り付け具10を説明するために示す図である。実施形態1に係る物品取り付け具10は、壁面に固定するための壁面固定板100と物品に固定するための物品固定板200とによって構成されている。また、これら壁面固定板100と物品固定板200は、同一の金型で製造されるものであって、同一形状でかつ同一構造を有している。
なお、図1〜図3においては壁面固定板100について説明するが、物品固定板200(例えば、図8参照。)について説明を言及する場合には、物品固定板200の各構成要素に対しては、壁面固定板100の対応する構成要素の符号に100を足して200番台とした符号を付して説明を行う。例えば、壁面固定板100のテーパー面が「テーパー面111」である場合には、物品固定板200のテーパー面は「テーパー面211」というように物品固定板200のすべての構成要素については、それぞれに200番台の符号を付すこととする。
図1(a)は壁面固定板100の壁面50(例えば、図7参照。)に対向する側の面100a(以下、第1面100aとする。)の斜視図であり、図1(b)は壁面固定板100の第1面100aとは反対側の面100b(以下、第2面100bとする。)の斜視図である。
また、図2(a)は壁面固定板100の第1面100aを当該第1面100aに直交する方向(図1(a)における矢印y方向)に沿って見た場合を示す図であり、図2(b)は壁面固定板100の第2面100bを当該第2面100bに直交する方向(図1(b)における矢印y’方向)に沿って見た場合を示す図である。
また、図3(a)は図1(a)に示す壁面固定板100の上端部100cを図1(a)における矢印z’方向に沿って見た場合を示す図であり、図3(b)は図1(a)に示す壁面固定板100の下端部100dを図1(a)における矢印z方向に沿って見た場合を示す図である。
また、図3(c)は図1(a)に示す壁面固定板100の左端部100eを図1(a)における矢印x方向に沿って見た場合を示す図であり、図3(d)は図1(a)に示す壁面固定板100の右端部100fを図1(a)における矢印x’方向に沿って見た場合を示す図である。
図1〜図3を参照して実施形態1に係る物品取り付け具10の壁面固定板100について説明する。壁面固定板100は、図1〜図3に示すように、全体的な外形は細長い長方形状をなし、長手方向が左右方向となるようにして壁面に固定される。
そして、壁面固定板100は、当該壁面固定板100を側面から見た場合(例えば、図1(a)において矢印x’方向に見た場合)、薄肉部110(図2(a)及び図3(d)参照。)と、厚肉部120(図2(a)及び図3(d)参照。)とを有している。壁面固定板100の材質としては、ABS樹脂又はポリアセタール(POM)などの合成樹脂を好ましく用いることができる。
壁面固定板100の外形寸法としては、左右方向(x軸に沿った方向)の長さL1(横の長さL1ともいう。)が110mm程度であり、上下方向(z軸に沿った方向)の長さL2(縦の長さL2ともいう。)が30mm程度であるとする。ただし、これらの値は一例であって、これらの値に限定されるものではなく、適宜設定可能である。
なお、本明細書において、左右方向というのはx軸に沿った方向すなわち壁面において重力方向に直交する方向を指し、上下方向というのはz軸に沿った方向すなわち壁面において重力方向に沿った方向を指している。
壁面固定板100の薄肉部110は、壁面との間に所定の隙間S(図7参照。)を形成するものであり、以下では、薄肉部110において、壁面との間に所定の隙間Sを形成する面を「壁面隙間形成面」という。なお、物品固定板200の薄肉部210は、物品との間に所定の隙間S(図8参照。)を形成するものであり、以下では、薄肉部210において、物品との間に所定の隙間Sを形成する面を「物品隙間形成面」という。
壁面隙間形成面は、壁面固定板100の薄肉部110の先端縁部(上端部100c)から当該壁面固定板200の厚肉部120に向かうに従って当該薄肉部120の厚みを増すようなテーパー面となっており、物品隙間形成面も同様に、物品固定板200の薄肉部の先端縁部(上端部200c)から当該物品固定板200の厚肉部に向かうに従って当該薄肉部の厚みを増すようなテーパー面となっている。なお、以下では、壁面隙間形成面を「テーパー面111」と表記し、物品隙間形成面を「テーパー面211」と表記する。
なお、薄肉部110の根元部(厚肉部120との間の付け根部)の厚みは、厚肉部120の厚みよりもわずかに小さくなっている。このため、薄肉部110の根元部においては、テーパー面111と厚肉部120との間には段差dが形成されている(図3(c)及び図3(d)参照。)。具体的には、厚肉部120の厚みt1を6mmとし、薄肉部110の根元部の厚みは5mm程度としている。このため、段差dは1mm程度である。ちなみに、薄肉部110の先端部(上端部100c)の厚みt2(図3(a)参照。)は1mm程度とすることが好ましい。これらの値も一例であって、これらの値に限定されるものではなく、適宜設定可能である。
薄肉部110の根元部(厚肉部120との間の付け根部)におけるテーパー面111には、左右方向(x軸に沿った方向)に所定長さの細長い長溝112(図1(a)及び図2(a)参照。)が形成されている。この長溝112は、中央部C(図2(a)参照。)から左右に同じ長さで、かつ、左右両端部には達しないように形成されている。また、長溝112の中央部Cの左右両側に所定の間隔d1(後述する。)を置いて、1対のリブ113a,113bが形成されている。このリブ113a,113bの役目などについては後述する。
また、テーパー面111の先端縁部(上端部100c)に沿って突起114が形成されている。突起114の長さL3(図2(a)参照。)は、リブ113a,113bの間隔d1と同じかわずかに短い長さとし、実施形態1においては、18mm程度としている。また、突起114の高さ(厚みという。)は、薄肉部110の先端縁部(上端部100c)の厚みt2を含めた厚みt3で表すものとする(図3(c)及び図3(d)参照。)。ここでは、突起114の厚みt3は、厚肉部120の厚み(この場合6mm)の1/2を超えないように設定されている。突起114の厚みt3は、2.9mm程度としている。ただし、突起114のこのような厚みt3は一例であって、2,9mmに限られるものではなく、厚肉部120の厚みの1/2を超えない範囲で適宜設定可能である。
壁面固定板100の側に設けられる突起114は、物品固定板200(図8及び図9参照。)の長溝212内をスライドするものである。一方、物品固定板200の側に設けられる突起214は、壁面固定板100の長溝112内をスライドするものである。このため、壁面固定板100の突起114を「スライド突起114」とし、物品固定板200の突起214を「スライド突起214」とする。
また、壁面固定板100のテーパー面111には、物品固定板200のスライド突起214を当該壁面固定板100の長溝112に導くためのガイド部115を有している。ガイド部115はガイド面115sと、ガイド面115sの左右両端に形成されているガイド壁115a,115bとからなる。そして、ガイド面115sの左右両端間の幅((ガイド壁115a,115b間の幅)は、壁面固定板100の上端部100c側が広く、長溝112側が狭くなっている。具体的には、ガイド面115sにおける上端部100c側の幅は、スライド突起114の長さL3よりも十分広く(例えば、25mm程度)、長溝112側の幅がスライド突起114の長さL3よりもわずかに広い程度(例えば、20mm程度)なるように形成されている。
このようなガイド面115sは、テーパー面111の厚みを薄くすることによって形成されており、その結果として、ガイド壁115a,115bが形成される。すなわち、ガイド面115sは、テーパー面111において周辺よりも一段低い平面として形成されたものとなっており、当該ガイド面115sと長溝112の底部とは同一平面で繋がっている。
ここで、ガイド面115sと長溝112とが同一平面で繋がっている繋ぎ目を「突起出入り口112a」ということにする。この突起出入り口112aと、長溝112の底面と、ガイド面115sとはそれぞれが同一平面であるため、ガイド面115sから突起出入り口112aに入ったスライド突起は、長溝112に入ることができる。そして、物品固定板200のスライド突起214が長溝112に入った状態においては、突起出入り口112a以外の箇所では、当該スライド突起214は長溝112内を左右方向(x軸に沿った方向)にスライドするだけの動きが可能となる。
ところで、長溝112に形成されている1対のリブ113a,113bは、物品固定板200のスライド突起214がリブ113a,113bのうちのいずれかのリブを乗り越えたときに、「カチッ」というクリック感をユーザーに与える役目と、リブを乗り越えたスライド突起214が左右方向に容易には動かないように、物品固定板200のスライド突起214の動きを規制する役目とを果たすものである。
このため、長溝112は、リブ113aから長溝112の左端部112L(第1面100a側から見たときの左端部112L)までの長さ及びリブ113bから長溝112の右端部112R(第1面100a側から見たときの右端部112R)までの長さは、スライド突起114の長さL3とほぼ同じかスライド突起114の長さL3よりもやや長い程度が好ましい。
また、壁面固定板100の厚肉部120には、当該壁面固定板100を壁面50(図7参照。)に固定するための固定孔が左右2箇所に設けられている。第1面100a側から見たときの左側に位置する固定孔を左側固定孔130Lとし、第1面100a側から見たときの右側に位置する固定孔を右側固定孔130Rとする。
左側固定孔130Lは、1つのネジ孔131Lと3つのピン差し込み孔132Lからなり、右側固定孔130Rも、1つのネジ孔131Rと3つのピン差し込み孔132Rとからなる。これらネジ孔131L,131R及びピン差し込み孔132L.132Rは、取り付け対象となる壁の材質などによって選択的に用いることができる。
例えば、壁が木製である場合には、木ネジをネジ孔131L,131Rに通して壁面固定板100を壁に固定することができる。また、壁が石膏ボードなどである場合には、専用のピンをピン差し込み孔132L,132Rに通してピンを石膏ボードに挿し込むことによって壁面固定板100を壁に固定することができる。
図4は、ピン差し込み孔132L,132Rを説明するために示す図である。なお、ピン差し込み孔132L,132Rは、同じ構造となっているため、図4においては、ピン差し込み孔132Lを例にとって説明する。図4(a)は壁面固定板100を第2面100b側から見たとき(図1(b)及び図2(b)参照。)の3つのピン差し込み孔132Lを拡大して示す図であり、図4(b)は壁面固定板100を第1面100a側から見たとき(図1(a)及び図2(a)参照。)の3つのピン差し込み孔132Lを拡大して示す図であり、図4(c)は3つのピン差し込み孔132Lに3本のピンPを貫通させた状態を壁面固定板100の第1面100a側から見た場合を示す図である。
3つのピン差し込み孔132Lは、図4(a),(b)に示すように、各ピン差し込み孔132Lの中心を結ぶ線(破線で示す)が正三角形をなすように形成され、かつ、各ピン差し込み孔132Lを貫通した3本のピンPが互いに同じ角度で交差するように厚肉部120を斜め方向に貫通している。このようなピン差し込み孔132LにそれぞれピンPを貫通させると、ピンPは図4(c)に示すように、3本のピンPそれぞれが互いに交差して斜め方向に突出する。このようなピン差し込み孔を有する固定具は、公知である(例えば、実開昭62−78181号公報参照及び実用新案登録第3133473号公報参照。)。
なお、実施形態1に係る物品取り付け具10においては、各ピン差し込み孔132Lの間隔を独自に設定している。すなわち、実施形態1に係る物品取り付け具10においては、各ピン差し込み孔132Lの入口側(第2面100b側)の各ピン差し込み孔の間隔(隣り合うピン差し込み孔の間隔)d3は5mm程度で、出口側(第1面100a側))の間隔(隣り合うピン差し込み孔の間隔)d4を4mmとしている。ピン差し込み孔の間隔というのは、ここでは、各孔の中心から中心までの間隔であるとしている。
ピン差し込み孔の間隔をこのように設定したのは、ピン差し込み孔132Lを2次加工として行うのではなく、壁面固定板100を金型によって成形する際に、金型による一発成型によってピン差し込み孔をも同時に形成可能とするためである。すなわち、ピン差し込み孔132Lの入口側における各ピン差し込み孔の間隔と、出口側における各ピン差し込み孔の間隔が上記したような間隔であれば、ピン差し込み孔の間隔各ピン差込み孔が斜めに貫通する孔であっても、壁面固定板100を金型によって成形する際に、金型による一発成型が可能となる。
また、出口側の間隔を4mm程度とすることにより、例えば、石膏ボードにクロス張りが施されているような壁面に壁面固定板100をピンPによって固定した場合に、ピンPを突き刺すことによって孔(突き刺し孔という。)が生じることとなるが、ピンを引き抜いた後に、壁に残存する突き刺し孔を目立たなくするためである。
すなわち、壁面に取りつけられている壁面固定板100を取り外す必要が生じたときに、ピンPを引き抜いた後の壁面には、3つの突き刺し孔が残存することとなるが、出口側の間隔を4mm程度とすることにより、壁面に残存している3つの孔が相互に接近した状態となり、かつ、ピンを引き抜いた後はクロスが引っ張られて盛り上がった状態となるため、盛り上がったクロスを指などで押圧することにより、3つの突き刺し孔がクロスによって隠された状態となって、突き刺し孔がほとんど目立たなくなる。
勿論、各ピン差し込み孔132Lの出口側の間隔をより短くすることにより、ピンを抜いた後に残る孔はより目立たなくなる可能性もあるが、金型による一発成型でピン孔をも形成することができるようにすること、3本のピンPによって壁面固定板100を壁に固定したときに適切な強度が得られることなどを考慮して、実施形態1においては、各ピン差し込み孔132Lの出口側の間隔を4mmとしている。なお、厳密に4mmに設定しなければならないというものではなく、多少前後することは許容される。
なお、図4においては、厚肉部120の左側に設けられているピン差し込み孔132Lについて説明したが、厚肉部120の右側に設けられているピン差し込み孔132Rについても同様の構成となっている。
図1及び図2に説明が戻る。厚肉部120における左右方向のほぼ中央部には、上下方向(縦方向)に長い長孔140が設けられている。当該長孔140は、仮止め用の孔である(以下、仮止め用長孔140という。)。このような仮止め用長孔140を設けておくことにより、壁面固定板100を壁面に固定する際に、まずは、ネジ又はピンなどで仮止めを行って、壁面固定板100の固定位置や傾きなどが適切か否かを判断することができる。
また、厚肉部120には水準器の取り付けが可能な水準器取り付け部150が形成されている。
図5は、壁面固定板100の水準器取り付け部150に水準器160が取り付けられている状態を示す図である。壁面固定板100の水準器取り付け部150に、図5に示すように、水準器160を取り付けた状態としておくことにより、壁面固定板100を壁面に固定する際に、壁面固定板100の水平に対する傾きを調整することができる。それによって、壁面固定板100の水平の度合いを高精度に調整することができる。このとき、仮止め用長孔140にネジやピンを差し込んで仮止めした状態で水準器160を見ながら傾き調整を行うと、壁面固定板100を固定するための作業がし易くなる。
再び、図1及び図2に説明が戻る。図1(a)及び図2(a)に示すように、壁面固定板100における厚肉部120の左右両側の端部には、他の壁面固定板を左右方向に連結可能な連結部を有している。具体的には、壁面固定板100を第1面100a側から見たときの厚肉部120の左端部100e及び右端部100fのうちの一方(例えば左端部100eとする。)には、他の壁面固定板を左右方向(x軸に沿った方向)に連結可能とする連結凸部171が形成されており、他方(右端部とする。)には、他の壁面固定板を左右方向に連結可能とする連結凹部172が形成されている。
壁面固定板10の連結凸部171と他の壁面固定板の連結凹部172とは互いに嵌合するように形状となっており、当該壁面固定板100の連結凸部171及び連結凹部172と他の壁面固定板の連結凹部及び連結凸部とを嵌合させた状態においては、横方向(x軸に沿った方向)の引っ張り力を加えても引き抜けないような形状となっている。
また、当該壁面固定板100における厚肉部120の下端部100dには、他の壁面固定板を上下方向に連結可能な連結部を有している。具体的には、壁面固定板100における厚肉部120の下端部100dには、他の壁面固定板を縦方向(z軸に沿った方向)に連結可能とする連結凸部181,182及び連結凹部183,184が形成されている。なお、連結凸部181,182と連結凹部183,184の位置関係は、図2(a)に示すように、壁面固定板100を第1面100a側から見たときには、例えば、左から連結凸部181、連結結凹部183、連結凸部182、連結凹部184というように、連結凸部と連結凹部とが所定間隔を置いて交互に形成されている。
なお、この場合も、当該壁面固定板100の連結凸部181,182と他の壁面固定板の連結凹部183,184とは互いに嵌合するように形状となっており、当該壁面固定板100の連結凸部181,182及び連結凹部と他の壁面固定板の連結凹部と連結凸部とを嵌合させた状態とした場合においては、上下方向(z軸に沿った方向)の引っ張り力を加えても引き抜けないような形状となっている。
図6は、複数枚の壁面固定板を連結した状態を示す図である。図6(a)は2枚の壁面固定板100を左右方向(x軸に沿った方向)に連結した状態を示しており、図6(b)は2枚の壁面固定板100を上下方向(z軸に沿った方向)に連結した状態を示している。
図6(a)に示すように、2枚の壁面固定板100を左右方向(x軸に沿った方向)に連結した状態とすると、壁面固定板を1枚とした場合に比べて、左右方向(x軸に沿った方向)において、より長尺な物品を取り付けることができる。また、物品を壁面固定板100に取り付ける際に、物品の左右方向における取り付け位置の自由度を高めることができる。
また、図6(b)に示すように、2枚の壁面固定板100を上下方向(z軸に沿った方向)に連結した状態とすると、壁面固定板100を1枚とした場合に比べて、重力方向に加わる荷重に対する強度を高めることができる。なお、2枚の壁面固定板100を上下方向(z軸に沿った方向)に連結すると、下側の壁面固定板100は上側の壁面固定板100に対して上下が逆さまになる。すなわち、図6(b)の場合においては、下側の壁面固定板100は、テーパー面111が形成されている側が下向きとなる。
また、図6(a)に示す連結の仕方と図6(b)に示す連結の仕方とを組み合わせることも可能である。すなわち、左右方向に2枚の壁面固定板を連結し、かつ、上下方向に2枚の壁面固定板を連結することも可能である。なお、左右方向においては、3枚以上の壁面固定板を連結することも可能である。
以上は、壁面の側に固定する壁面固定板100について主に説明したが、実施形態1に係る物品取り付け具10は、前述したように、壁面固定板100と物品固定板200とから構成されている。物品固定板200は、壁面固定板100と同一形状でかつ同一構造を有するものである。すなわち、壁面固定板100と物品固定板200は、同じ金型で物品取り付け具として製造されるものであって、2枚で一組として使用する。すなわち、一方を壁面固定板100として用い、他方を物品固定板200として使用するものである。
次に、実施形態1に係る物品取り付け具10の使用例について説明する。ここでは、物品60が額縁である場合について説明する。このため、以下では、物品60を額縁60ともいう。また、壁面50は石膏ボードの壁にクロスが貼付けられているものとする。
図7は、壁面固定板100を壁面50に固定した状態を示す図である。図7(a)は正面図であり、図7(b)は側面図である。
壁面固定板100は、壁面50の所定位置に図7(a)及び図7(b)に示すように固定される。壁面固定板100をこのように固定する際には、まず、壁面固定板100の上端部100cが上方向を向くように壁面固定板100を壁面50に位置させる。そして、壁面固定板100の水準器取り付け部150に水準器160を取り付けた状態として、当該水準器160を見ながら傾きを調整する。このとき、仮止め用長孔140にビスやピンなどを通して仮止めした状態で、傾き調整を行うようにしてもよい。
そして、壁面固定板100の水平が取れたら、左側の3つのピン差し込み孔132L及び右側の3つのピン差し込み孔132Rにそれぞれ3本ずつピンPを差し込んで、各ピンPを石膏ボードに突き刺す。これによって、壁面固定板100は上端部100cが上向きとなる状態で壁面50に固定される。
このようにして、壁面固定板100を壁面50に固定すると、壁面固定板100のテーパー面111と壁面50との間には断面がくさび状の隙間S(図7(b)参照。)が形成される。
このように、壁面固定板100が壁面50に固定された状態においては、壁面固定板100の左右両側において、それぞれ3本のピンが図7(b)に示すように互いに交差した状態で斜め石膏ボードに突き刺さった状態となる。このため、人間が意図的にピンPを引き抜かない限り、壁面固定板100が壁面から外れてしまうことはない。このように、壁面50に固定された壁面固定板100は、ピンPの長さや石膏ボードの材質などにもよるが、重力方向に10kg程度の荷重を加えても耐えることが発明者らの実験により確かめられている。なお、実施形態1に係る物品取り付け具10においては、ピンPの長さは25mm程度のものを使用している。
図8は、物品固定板200を額縁60に固定した状態を示す図である。図8(a)は額縁60を裏面側から見た場合を示す図であり、図8(b)は図8(a)の側面図である。なお、図8においては、額縁60の大きさに対して物品固定板200を誇張して描いてある。
物品固定板200は、額縁60の裏面60aの所定位置に図8(a)及び図8(b)に示すように固定される。なお、額縁60の裏面60aは木製であるとする。このため、物品固定板200はビス291によって額縁60の裏面60aに固定する。
まず、物品固定板200の上端部200cが下側を向くように、物品固定板200を額縁60の裏面60aに位置させて、ネジ孔231L,231Rにビス291を通してネジ止めする。このとき、より高精度な水平を取る場合には、額縁60を水平面(例えば、床やテーブルなど)に垂直に置いた状態で、物品固定板200の水準器取り付け部250に水準器260を取り付けて、当該水準器260を見ながら額縁60に対する傾きを調整するようにしてもよい。この場合も、仮止め用長孔240にビス291などを通して仮止めした状態で、傾き調整を行うようにしてもよい。
このようにして、物品固定板200を額縁60の裏面60aに固定すると、物品固定板200のテーパー面211と額縁60の裏面60aとの間には断面がくさび状の隙間S(図8(b)参照。)が形成される。
図9は、実施形態1に係る物品取り付け具10を用いて額縁60を壁面50に取り付けた状態を示す側面図である。なお、壁面50は水平面(例えば床面とする。)に対して垂直であるとする。
実施形態1に係る物品取り付け具10を用いて額縁60を壁面50に取り付けた状態においては、図9に示すように、額縁60の裏面60aに固定されている物品固定板200のテーパー面211と壁面固定板100のテーパー面111とが対面して接触した状態となっている。
図9に示すように、額縁60を壁面50に取り付ける際には、物品固定板200のスライド突起214が壁面固定板100の長溝112に入るように、額縁60に対してわずかに重力方向に力を与えながら額縁60を左右(図9においては紙面に直交する方向)に動かすような操作を行う。
そして、物品固定板200のスライド突起214が壁面固定板100のスライド突起114の位置に達すると、壁面固定板100のガイド部115(ガイド面115s及びガイド壁115a,115bからなる。)によって長溝112の突起出入り口112aに導かれる。この状態で、額縁60を左右(図9において紙面に直交する方向)のいずれかの方向(図9において紙面の表面から裏面方向とする。)にスライドさせると、物品固定板200のスライド突起214が壁面固定板100の長溝112に形成されているリブ113b(図2参照。)を乗り越えて、壁面固定板100長溝112の端部に当接した状態となる。このとき、「カチッ」というクリック感がある。
上記は物品固定板200の側の動作を主体的に説明したが、物品固定板を上記したように操作すると、壁面固定板100の側も当該壁面固定板100のスライド突起114は物品固定板200の長溝212に入り、当該スライド突起114は、物品固定板200の長溝212に形成されているリブ113aを乗り越えて、スライド突起114が物品固定板200の長溝212の端部に当接した状態となる。
図9における円形の破線枠A1は、物品固定板200のスライド突起214が壁面固定板100長溝112に係合している状態を拡大して示す断面図である。破線枠A1に示すように、物品固定板200のスライド突起214は壁面固定板100長溝112に係合している。
また、図9における円形の破線枠A2は、壁面固定板100のスライド突起114が物品固定板200長溝212に係合している状態を拡大して示す断面図である。破線枠A2に示すように、壁面固定板100のスライド突起114は物品固定板200長溝212に係合している。
このように、物品固定板200のスライド突起214が壁面固定板100の長溝112の端部に達した状態となるととともに、壁面固定板100のスライド突起114が物品固定板200の長溝212の端部に達した状態となると、物品固定板200は壁面固定板100に確実に係合した状態となり、物品固定板200を意図的に外そうとしない限り、物品固定板200は壁面固定板100から外れることはない。このため、地震などが発生したとしても、額縁60が壁面50から落下してしまうということを確実に防止することができる。
なお、額縁60を取り外す際は、額縁60を逆方向(この場合は図9において紙面の裏面から表面方向)にスライドさせることにより、物品固定板200のスライド突起214及び壁面固定板100のスライド突起114が相手側の長溝112,212の突起出入り口112a,212aに到達するため、スライド突起114,214が長溝112,212から抜け出ることができ、それによって、額縁60を取り外すことができる。
なお、図9に示すように、額縁60を壁面50に取り付けた状態としたとき、額縁60の裏面60aと壁面50との間には、物品取り付け具(壁面固定板100及び物品固定板200)の厚み(約6mm)の隙間が形成されるが、この隙間はわずかであり、また、額縁60の裏面60aと壁面50との間において均一な隙間となるため、額縁60は壁面50に対して平行(床面に対して垂直)に取り付けられる。このため、額縁60の取り付け状態としては好ましい取り付け状態となる。
図10は、壁面固定板100と物品固定板200とが係合状態となるまでの過程を説明するために示す図である。図10(a)〜図10(d)は各過程を示す図である。なお、図10(a)〜図10(d)においては、壁面固定板100は壁面50に固定されているため、物品固定板200の動きを主体的にして説明する。
なお、図10(a)〜図10(d)のうちの図10(b)以外においては、壁面50及び額縁60の図示は省略されている。また、図10(b)以外においては、物品固定板200は第2面200bが示されており、壁面固定板100は第1面100aが示されている。
ユーザーが額縁60の取り付け作業を行う際においては、ユーザーは額縁60の存在によって壁面固定板100及び物品固定板200は目視できないため、壁面固定板100のスライド突起114及び物品固定板200のスライド突起214の位置関係も目視できない。このため、ユーザーは、額縁60の裏面60aに固定されている物品固定板200を壁面50に固定されている壁面固定板100に引掛けた状態として、額縁60をわずかに下方向に押し下げるようにしながら左右にわずかに動かすような操作を行う。
このような操作を行うことにより、ある位置で、額縁60をさらに下方に下げることができる。すなわち、図10(a)に示すように、物品固定板200のスライド突起214が壁面固定板100のスライド突起114の位置に達すると、物品固定板200は壁面固定板100に形成されているガイド部115(ガイド面115s及びガイド壁115a,115bからなる。)のガイドによってz軸沿って矢印z’方向(下方向)に侵入可能となる。
なお、図10(a)においては、物品固定板200のスライド突起214と壁面固定板100のスライド突起114との位置関係を分かり易くするため、物品固定板200のテーパー面211が壁面固定板100のテーパー面111に接触していない状態を示している。
このとき、壁面固定板100のスライド突起114の厚みt3と物品固定板200のスライド突起214の厚みt3とを足した合計の厚みは、6mm以下(厚肉部120,220の厚み以下)であるため、物品固定板200のスライド突起214と壁面固定板100のスライド突起114とは、互いに当接することがない。このため、物品固定板200のスライド突起214は、壁面固定板100のスライド突起114を素通りすることができる(図10(b)参照。)。
図10(b)は、物品固定板200のスライド突起214と壁面固定板100のスライド突起114との位置関係を示すための断面図である。なお、図10(b)は、図10(a)の状態から物品固定板200がさらに下方に進行して物品固定板200のスライド突起214が壁面固定板100のスライド突起114を素通りしようとしている状態を示している。図10(b)に示すように、物品固定板200のスライド突起214と壁面固定板100のスライド突起114とは、当接することなく、物品固定板200のスライド突起214は、壁面固定板100のスライド突起114を素通りすることができる。
そして、図10(b)の状態から額縁60をさらに押し下げると、物品固定板200のスライド突起214は、ガイド面115s上を進行して、図10(c)に示すように、突起出入り口112aに入る。このとき、突起出入り口112aと、長溝112の底面と、ガイド面115sとはそれぞれが同一平面であるため、ガイド面115sから突起出入り口112aに入ったスライド突起は、長溝112内を左右方向(x軸に沿った方向)にスライドすることができる。なお、図10(c)においては、説明を分かり易くするため、物品固定板200においては、スライド突起214のみが示され、その他の構成要素は図示が省略されている。
この状態から、物品固定板200を額縁60の側(図10における紙面の裏側)から見て左方向(図10における紙面の表面から見て右方向(矢印x方向))にスライドさせると、スライド突起214は、壁面固定板100の長溝112に形成されているリブ113bを乗り越えて、図10(d)に示すように、長溝112の右端部112Rに当接又は近接した状態となる。このとき、「カチッ」というクリック感がある。
なお、上記は物品固定板200の側の動作を主体的に説明したが、物品固定板200が上記動作を行うことにより、壁面固定板100のスライド突起114は、物品固定板200の長溝212に入り、当該スライド突起114は、物品固定板200の長溝212に形成されているリブ213aを乗り越えて、長溝212の左端部212Lに当接又は近接した状態となる。
すなわち、物品固定板200のスライド突起214は、図10においては、壁面固定板100における長溝112の右端部112Rに当接又は近接した状態となり、壁面固定板100のスライド突起114は、物品固定板200の長溝212の左端部212Lに当接又は近接した状態となる。このような状態は、物品固定板200が壁面固定板100に確実に係合した状態である。このとき、物品固定板200の第2面200bは壁面50に接触した状態となっているため、物品固定板200は壁面固定板100に対して左右の方向への動き以外の動きが規制された状態となっている。このため、意図的に物品固定板200を逆方向(図10においては左方向)にスライドさせない限り、物品固定板200は壁面固定板100から外れることがない。
図11は、物品固定板200が壁面固定板100に確実に係合した状態を示す外観図である。なお、図11は図10に示すような操作を行った結果を示す図である。図11に示すように、物品固定板200は壁面固定板100に対して、この場合、右側にずれた状態となる。
図11において示されていないが、物品固定板200が壁面固定板100に確実に係合した状態においては、物品固定板200のスライド突起214は壁面固定板100の長溝112の右端部112Rに当接又は近接した状態となっている。一方、壁面固定板100のスライド突起114は物品固定板200の長溝212の左端部212Lに当接又は近接した状態となっている。このとき、物品固定板200は額縁60の裏面60aに固定され、かつ、物品固定板200の第2面200bは壁面50に接触した状態となっている。また、壁面固定板100は壁面50に固定されている。このため、物品固定板200は壁面固定板100に対して左右方向の動きのみが可能となり、ユーザーが額縁60を意図的に外そうとしない限り、物品固定板200は壁面固定板100から外れることはない。
以上説明したように、実施形態1に係る物品取り付け具10によれば、壁面固定板100の側に形成されているスライド突起114と物品固定板200の側に形成されているスライド突起214とが、互いに相手側の長溝112,212に入り込んで横方向にスライドした状態で係合し、かつ、物品固定板200は、壁面固定板100に対して左右方向以外の動きが規制されている。また、左右方向の動きが長溝112,212に形成されているリブ113a,113b及び213a、213bによっても規制されているため、意図的に物品固定板200をスライドさせない限り、物品固定板200は壁面固定板100から外れることがない。これにより、地震などが発生しても、額縁60は壁面50から落下してしまうということがなくなる。
また、実施形態1に係る物品取り付け具10は、壁面固定板100及び物品固定板200は、同一形状でかつ同一構造を有している。このため、壁面固定板100及び物品固定板200を同一の金型によって製造することができる。これにより、金型を2種類用意する必要がなく、金型の製作費を削減することができる。また、壁面固定板100と物品固定板200とが同一形状でかつ同一構造を有していることにより、壁面固定板100と物品固定板200とを区別する必要がないため、大量生産した場合などにおいて、製造された壁面固定板及び物品固定板の管理が容易となる。
[実施形態2]
上記実施形態1においては、物品が額縁60である場合を例示したが、額縁60に限られるものではない。すなわち、実施形態1において示した額縁60は、物品固定板200を固定する面(額縁60の裏面60a)全体が平板状であるため、物品固定板200を固定する面全体が壁面50に接触するが、物品固定板200を固定する面と壁面50との間に空間部が存在する場合もある。写真などを貼る木製の枠付きパネルなどがその一例である。このような枠付きパネルは、合板などの板体の縁部に沿って角柱状の枠辺が取り付けられており、枠片で囲まれる部分が凹部となっている。このような枠付きパネルを壁面50に取り付けると、枠片の存在によって壁面50と板体との間に空間が存在することとなる。
このような枠付きパネルにも、実施形態1において説明した壁面固定板100と物品固定板200とを使用する場合には、物品固定板200を枠付きパネルに固定するための補助取り付け具を用いることが好ましい。実施形態2に係る物品取り付け具20は、実施形態1において説明した壁面固定板100及び物品固定板200の他に、物品固定板200を枠付きパネルに固定するための補助取り付け具300を有するものである。
図12は、実施形態2に係る物品取り付け具20を説明するために示す図である。実施形態2に係る物品取り付け具20は、上記したように、壁面固定板100及び物品固定板200の他に、物品固定板200を枠付きパネルに固定するための補助取り付け具300を有するものである。ただし、図12においては、壁面固定板100及び物品固定板200の図示は省略し、補助取り付け具300のみが示されている。なお、図12(a)は補助取り付け具300の斜視図であり、図12(b)は補助取り付け具300の正面図であり、図12(c)は補助取り付け具300の平面図であり、図12(d)は図12(bのa−a矢視断面図である。
図13は、写真などを貼り付ける木製の枠付きパネル70を示す斜視図である。枠付きパネル70は、図13に示すように、写真などを貼るための薄板71と、当該薄板71の裏面71aの4つの縁部(上縁部、右縁部、下縁部及び左縁部)に沿って設けられている枠体72とを有している。枠体72は4つの枠片721〜724からなる。なお、補助取り付け具300(図13においては図示せず。)は、薄板71の上縁部に設けられている枠片721の内周面721aに固定されるものとする。
図12及び図13を参照して補助取り付け具300について説明する。補助取り付け具300の材質は特に限定されるものではないが、壁面固定板100及び物品固定板200と同様の材質とすることができる。
補助取り付け具300は、図12に示すように、断面がL字型をなしている。すなわち、補助取り付け具300は、枠付きパネル70における枠片721の内周面721aに固定される枠片固定部310と、物品固定板200を取り付ける物品固定板取り付け部320とを有し、物品固定板取り付け部320と枠片固定部310とのなす角度は直角である。
枠片固定部310には、ネジ孔311,312が設けられており、枠片721の内周面721aにネジ止めすることができるようになっている。一方、物品固定板取り付け部320には、物品固定板200をネジ止めすることができるネジ孔321,322が形成されている。ネジ孔321,322の間隔は、物品固定板200のネジ孔231L,231R(図11参照。)の間隔と同じである。
なお、補助取り付け具300の長手方向の長さL4は、壁面固定板100及び物品固定板200の長手方向長さL1と同じとする。ただし、補助取り付け具の長手方向の長さL4は、必ずしも、壁面固定板100及び物品固定板200の長手方向長さL1と同じである必要はなく、例えば、補助取り付け具300の方が壁面固定板100及び物品固定板200よりも多少長く設定してもよく、逆に、補助取り付け具300の方が壁面固定板100及び物品固定板200よりも多少短く設定してもよい。ただし、ネジ孔321,322の間隔は、物品固定板200のネジ孔231L,231R(図11参照。)の間隔と同じとする必要がある。
また、枠片固定部310には、物品固定板200の下端部200dに形成されている連結凸部281,282(図11参照。)をスライドさせることができる長溝313が形成されている。また、枠片固定部310には、連結凸部281,282を長溝313に出入り可能とするための連結凸部出入り口314が形成されている。これにより、物品固定板200の連結凸部281,282は、当該連結凸部出入り口314から長溝313に入ることができるとともに、長溝313から外部に出ることができる。
図14は、補助取り付け具300の使用例について説明するために示す図である。図14(a)及び図14(b)は枠付きパネル70に補助取り付け具300を取り付ける際の取り付け方と、補助取り付け具300に物品固定板200を取り付ける際の取り付け方を説明するために示す図であり、図14(c)は図14(b)のa−a矢視断面図である。なお、図14は枠付きパネル70における枠片721の一部と、補助取り付け具300と、物品固定板200とを拡大して示す図である。
まず、図14(a)に示すように、枠付きパネル70における枠片721の内周面721aに補助取り付け具300を固定したのちに、当該補助取り付け具300に物品固定板200を取り付ける。補助取り付け具300を枠付きパネル70に固定する際には、枠片固定部310を木ネジによって枠片721の内周面721aにネジ止めする。このとき、図14(c)に示すように、枠片721の前面721b(壁面50に対向する側の面)と、補助取り付け具300における枠片固定部310の前面310bとが同一平面となるように、補助取り付け具300を枠片721に固定する。
また、補助取り付け具300に物品固定板200を取り付ける際には、図14(a)に示すように、物品固定板200の下端部200dに形成されている連結凸部281,282を枠片固定部310の連結凸部出入り口314から長溝313に入れて、当該連結凸部281,282を長溝313内で、図14におけるx軸に沿って左方向にスライドさせる。このとき、長溝313の端部313aがストッパとして機能し、連結凸部281,282が長溝313の端部313aに当接すると、それ以上のスライドができない状態となる。図14(b)は連結凸部181,182が長溝313の端部313aに当接した状態である。
連結凸部181,182が長溝313の端部313aに当接した状態となると、物品固定板200のネジ孔231Lと補助取り付け具300の物品固定板取り付け部320のネジ孔321とが一致し、また、物品固定板200のネジ孔231Rと補助取り付け具300の物品固定板取り付け部320のネジ孔322とが一致する。これにより、物品固定板200を補助取り付け具300の物品固定板取り付け部320に、ビスとナットなどによって固定することができる。これによって、物品固定板200と補助取り付け具300とは一体化される。
なお、物品固定板200と補助取り付け具300とが一体化されたときにおいては、物品固定板200の第2面200bと、補助取り付け具300における枠片固定部310の前面310bとが同一平面となるように設定されている。これにより、図14(c)に示すように、枠片721の前面721b(壁面50に対向する側の面)と、補助取り付け具300における枠片固定部310の前面310bと、物品固定板200の第2面200bとはそれぞれが同一平面となる。
このようにして、枠付きパネル70に補助取り付け具300及び物品固定板200が取り付けられたら、あとは、実施形態1に係る物品取り付け具10において説明したように、壁面50に固定されている壁面固定板100に枠付きパネル70側の物品固定板200を取り付けることによって、枠付きパネル70を壁面50に取り付けることができる。
図15は、枠付きパネル70を壁面50に取り付けた状態を示す図である。図15に示すように、枠片721の前面721b(壁面に対向する側の面)と、補助取り付け具300における枠片固定部310の前面310bと、物品固定板200の第1面200bとは、それぞれが同一平面となっているため、枠付きパネル70は枠体72(枠片721〜724)全体が壁面50に隙間なく接触した状態で取り付けることができる。枠付きパネル70の場合も、物品固定板200を壁面固定板100に取り付ける際の操作及び物品固定板200を壁面固定板100から取り外す際の操作は、実施形態1において説明した操作と同様であるため、ここではその説明は省略する。
このように、実施形態2に係る物品取り付け具20は、壁面固定板100及び物品固定板200の他に、物品固定板200を枠付きパネル70に固定するための補助取り付け具300を有している。このため、実施形態2に係る物品取り付け具20によれば、枠付きパネル70のように壁面50との間に空間が存在するような物品であっても、額縁などと同様に壁面に取り付けることができる。
また、補助取り付け具300は枠付きパネル70の枠体72(例えば、枠片721)にネジ止めされ、また、物品固定板200は補助取り付け具300にビスなどで固定されているため、補助取り付け具300と物品固定板200とは意図的に外さない限り、外れてしまうといったことがない。これにより、地震などが発生したとしても、枠付きパネル70が壁面50から落下してしまうということを確実に防止することができる。
ところで、図13に示すような枠付きパネル70に物品固定板200を固定する場合、補助取り付け具300を使用せずに、枠片721の前面721bに固定することも可能である。ただし、このように、枠片721の前面721bに物品固定板200を固定して、当該物品固定板200を壁面50に固定されている壁面固定板100に係合させると、下端部に位置する枠片723が壁面50に接触した状態で、上端部に位置する枠片721が物品固定板200の厚み(約6mm)分だけ出っ張る。このため、枠付きパネル70全体が、わずかではあるが前方に傾斜してしまうこととなる。
このような枠付きパネル70や前述した額縁60などは、壁面50に平行(床面に垂直)となるように取り付けることが好ましいとされているため、枠付きパネル70が前方に傾斜することはあまり好ましいことではない。しかし、実施形態2において説明したように、補助取り付け具300を用いて物品固定板200を枠片721の内周面721aに固定することによって、図15に示すように、枠体72全体が壁面50に接触した状態で枠付きパネル70を取り付けることができる。
以上説明したように、実施形態2に係る物品取り付け具20によれば、補助取り付け具300を枠付きパネル70に固定することによって、当該補助取り付け具300に物品固定板200を取り付けることができる。それによって、額縁60と同様に当該枠付きパネル70を壁面50に取り付けることができる。
なお、本発明は上述の各実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能となるものである。たとえば、下記に示すような変形実施も可能である。
(1)上記実施形態1においては額縁60を壁面50に取り付ける場合を例示し、また、上記実施形態2においては枠付きパネル70を壁面50に取り付ける場合を例示したが、本発明の物品取り付け具は、これら以外の種々の物品の取り付けに使用することができる。また、壁面50は建物の壁面に限られるものではなく、例えば、立て看板や仕切り板(例えば衝立など)をも含むものである。
(2)上記各実施形態においては、壁面固定板100の壁面隙間形成面及び物品固定板200の物品隙間形成面はそれぞれがテーパー面としたが、テーパー面に限らず、例えば、厚肉部よりも厚みを均一に薄くすることによって当該厚肉部と平行な平面であってもよい。
(3)上記各実施形態においては、壁面固定板100及び物品固定板200の形状は長方形としたが、長方形に限られるものではなく、正方形や6角形など種々の形状とすることができる。
(4)上記各実施形態においては、壁面固定板100の壁面50への固定は、木ネジ又はピンにより固定する場合を例示したが、木ネジ及びピンの両方の取り付けが可能であれば、両者を併用してもよい。また、壁面50が木ネジ又はピンを使用できない材質の場合には、物品の種類や重量によっては、接着剤によって壁面固定板100を壁面に固定するようにしてもよい。物品固定板200も同様に、物品60が木ネジを使用ができない材質の場合には、物品の種類や重量によっては、接着剤によって物品固定板200を物品に固定するようにしてもよい。
(5)上記実施形態2においては、枠付きパネルは木製の枠付きパネルとしたが、木製であることに限られるものではなく、アルミニウム製や合成樹脂製であってもよい。
(6)水準器は、物品取り付け具(壁面固定板及び物品固定板)に常に取り付けられていてもよく、また、水平を取る必要のあるときだけ水準器を取り付けて、水平が取れたら取り外すようにしてもよい。このように、水準器を必要に応じて取り付けるようにすることにより、1つの水準器を使い回しすることができ、物品取り付け具のコストを下げることができる。
(7)上記各実施形態においては、壁面固定板100及び物品固定板200を2枚を1セットとして物品取り付け具10,20としたが、壁面固定板又は物品固定板のうちの1枚であっても当該1枚の壁面固定板又は物品固定板を物品取り付け具とすることもできる。