以下、本発明の一実施形態を図1〜図21を用いて説明する。図1には、一実施形態に係るレーザプリンタ1000の概略構成が示されている。
このレーザプリンタ1000は、光走査装置1010、感光体ドラム1030、帯電チャージャ1031、現像ローラ1032、転写チャージャ1033、除電ユニット1034、クリーニングユニット1035、トナーカートリッジ1036、給紙コロ1037、給紙トレイ1038、レジストローラ対1039、定着ローラ1041、排紙ローラ1042、排紙トレイ1043、通信制御装置1050、及び上記各部を統括的に制御するプリンタ制御装置1060などを備えている。なお、これらは、プリンタ筐体1044の中の所定位置に収容されている。
通信制御装置1050は、ネットワークなどを介した上位装置(例えばパソコン)との双方向の通信を制御する。
感光体ドラム1030は、円柱状の部材であり、その表面には感光層が形成されている。すなわち、感光体ドラム1030の表面が被走査面である。そして、感光体ドラム1030は、図1における矢印方向に回転するようになっている。
帯電チャージャ1031、現像ローラ1032、転写チャージャ1033、除電ユニット1034及びクリーニングユニット1035は、それぞれ感光体ドラム1030の表面近傍に配置されている。そして、感光体ドラム1030の回転方向に沿って、帯電チャージャ1031→現像ローラ1032→転写チャージャ1033→除電ユニット1034→クリーニングユニット1035の順に配置されている。
帯電チャージャ1031は、感光体ドラム1030の表面を均一に帯電させる。
光走査装置1010は、帯電チャージャ1031で帯電された感光体ドラム1030の表面を、上位装置からの画像情報に基づいて変調された光束により走査し、感光体ドラム1030の表面に画像情報に対応した潜像を形成する。ここで形成された潜像は、感光体ドラム1030の回転に伴って現像ローラ1032の方向に移動する。なお、この光走査装置1010の構成については後述する。
トナーカートリッジ1036にはトナーが格納されており、該トナーは現像ローラ1032に供給される。
現像ローラ1032は、感光体ドラム1030の表面に形成された潜像にトナーカートリッジ1036から供給されたトナーを付着させて画像情報を顕像化させる。ここでトナーが付着した潜像(以下では、便宜上「トナー像」ともいう)は、感光体ドラム1030の回転に伴って転写チャージャ1033の方向に移動する。
給紙トレイ1038には記録紙1040が格納されている。この給紙トレイ1038の近傍には給紙コロ1037が配置されており、該給紙コロ1037は、記録紙1040を給紙トレイ1038から1枚ずつ取り出し、レジストローラ対1039に搬送する。該レジストローラ対1039は、給紙コロ1037によって取り出された記録紙1040を一旦保持するとともに、該記録紙1040を感光体ドラム1030の回転に合わせて感光体ドラム1030と転写チャージャ1033との間隙に向けて送り出す。
転写チャージャ1033には、感光体ドラム1030の表面のトナーを電気的に記録紙1040に引きつけるために、トナーとは逆極性の電圧が印加されている。この電圧により、感光体ドラム1030の表面のトナー像が記録紙1040に転写される。ここで転写された記録紙1040は、定着ローラ1041に送られる。
定着ローラ1041では、熱と圧力とが記録紙1040に加えられ、これによってトナーが記録紙1040上に定着される。ここで定着された記録紙1040は、排紙ローラ1042を介して排紙トレイ1043に送られ、排紙トレイ1043上に順次スタックされる。
除電ユニット1034は、感光体ドラム1030の表面を除電する。
クリーニングユニット1035は、感光体ドラム1030の表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。残留トナーが除去された感光体ドラム1030の表面は、再度帯電チャージャ1031に対向する位置に戻る。
次に、前記光走査装置1010の構成について説明する。
この光走査装置1010は、一例として図2に示されるように、偏向器側走査レンズ11a、像面側走査レンズ11b、ポリゴンミラー13、光源14、カップリングレンズ15、開口板16、シリンドリカルレンズ17、反射ミラー18、及び走査制御装置(図示省略)などを備えている。そして、これらは、光学ハウジング30の所定位置に組み付けられている。
なお、以下では、便宜上、主走査方向に対応する方向を「主走査対応方向」と略述し、副走査方向に対応する方向を「副走査対応方向」と略述する。
カップリングレンズ15は、光源14から出力された光束を略平行光とする。
開口板16は、開口部を有し、カップリングレンズ15を介した光束のビーム径を規定する。
シリンドリカルレンズ17は、開口板16の開口部を通過した光束を、反射ミラー18を介してポリゴンミラー13の偏向反射面近傍に副走査対応方向に関して結像する。
光源14とポリゴンミラー13との間の光路上に配置される光学系は、偏向器前光学系とも呼ばれている。本実施形態では、偏向器前光学系は、カップリングレンズ15と開口板16とシリンドリカルレンズ17と反射ミラー18とから構成されている。
ポリゴンミラー13は、一例として内接円の半径が18mmの6面鏡を有し、各鏡がそれぞれ偏向反射面となる。このポリゴンミラー13は、副走査対応方向に平行な軸の周りを等速回転しながら、反射ミラー18からの光束を偏向する。
偏向器側走査レンズ11aは、ポリゴンミラー13で偏向された光束の光路上に配置されている。
像面側走査レンズ11bは、偏向器側走査レンズ11aを介した光束の光路上に配置されている。そして、この像面側走査レンズ11bを介した光束が、感光体ドラム1030の表面に照射され、光スポットが形成される。この光スポットは、ポリゴンミラー13の回転に伴って感光体ドラム1030の長手方向に移動する。すなわち、感光体ドラム1030上を走査する。このときの光スポットの移動方向が「主走査方向」である。また、感光体ドラム1030の回転方向が「副走査方向」である。
ポリゴンミラー13と感光体ドラム1030との間の光路上に配置される光学系は、走査光学系とも呼ばれている。本実施形態では、走査光学系は、偏向器側走査レンズ11aと像面側走査レンズ11bとから構成されている。なお、偏向器側走査レンズ11aと像面側走査レンズ11bの間の光路上、及び像面側走査レンズ11bと感光体ドラム1030の間の光路上の少なくとも一方に、少なくとも1つの折り返しミラーが配置されても良い。
光源14は、一例として図3〜図5に示されるように、面発光レーザ素子100を有している。本明細書では、レーザ発振方向をZ軸方向とし、Z軸方向に垂直な面内における互いに直交する2つの方向をX軸方向及びY軸方向として説明する。なお、図4は、図3のA−A断面図である。
面発光レーザ素子100は、発振波長が780nm帯の面発光レーザであり、基板101、下部半導体DBR103、下部スペーサ層104、活性層105、上部スペーサ層106、上部半導体DBR107、コンタクト層109、p側電極113、n側電極114、及びモードフィルタ115などを有している。
基板101は、n−GaAs単結晶半導体基板である。
下部半導体DBR103は、基板101の+Z側に不図示のバッファ層を介して積層され、n−AlGaAsからなる低屈折率層と、n−Al0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層のペアを40.5ペア有している。各屈折率層の間には、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成へ向かって組成を徐々に変化させた厚さ20nmの組成傾斜層(図4では図示省略、図5参照)が設けられている。そして、各屈折率層はいずれも、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、発振波長をλとするとλ/4の光学的厚さとなるように設定されている。なお、光学的厚さがλ/4のとき、その層の実際の厚さDは、D=λ/4n(但し、nはその層の媒質の屈折率)である。
下部スペーサ層104は、下部半導体DBR103の+Z側に積層され、ノンドープの(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pからなる層である。
活性層105は、下部スペーサ層104の+Z側に積層され、3層の量子井戸層と4層の障壁層とを有する3重量子井戸構造の活性層である。各量子井戸層は、0.7%の圧縮歪みを誘起する組成であるGaInAsPからなり、バンドギャップ波長が約780nmである。また、各障壁層は、0.6%の引張歪みを誘起する組成であるGaInPからなる。
上部スペーサ層106は、活性層105の+Z側に積層され、ノンドープの(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pからなる層である。
下部スペーサ層104と活性層105と上部スペーサ層106とからなる部分は、共振器構造体とも呼ばれており、その厚さが1波長の光学的厚さとなるように設定されている。なお、活性層105は、高い誘導放出確率が得られるように、電界の定在波分布における腹に対応する位置である共振器構造体の中央に設けられている。
上部半導体DBR107は、上部スペーサ層106の+Z側に積層され、p−Al0.9Ga0.1Asからなる低屈折率層とp−Al0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層のペアを24ペア有している。各屈折率層の間には、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成へ向かって組成を徐々に変化させた組成傾斜層(図4では図示省略、図5参照)が設けられている。そして、各屈折率層はいずれも、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、λ/4の光学的厚さとなるように設定されている。
上部半導体DBR107における低屈折率層の1つには、p−AlAsからなる被選択酸化層が厚さ30nmで挿入されている。この被選択酸化層108の挿入位置は、電界の定在波分布において、活性層105から3番目となる節に対応する位置である。
コンタクト層109は、上部半導体DBR107の+Z側に積層され、p−GaAsからなる層である。そして、このコンタクト層109は、p側電極113と導通する。
モードフィルタ115は、透明な誘電体膜であり、コンタクト層109の+Z側で、射出領域内に形成される。ここでは、一例として、モードフィルタ115は、射出領域の中心部を取り囲む円環状であり、反射率を中心部の反射率よりも低くする。
次に、面発光レーザ素子100の製造方法について簡単に説明する。なお、上記のように、基板101上に複数の半導体層が積層されたものを、以下では、便宜上「積層体」ともいう。
(1)上記積層体を有機金属気相成長法(MOCVD法)あるいは分子線エピタキシャル成長法(MBE法)による結晶成長によって作成する(図6(A)参照)。
ここでは、MOCVD法の場合には、III族の原料には、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMI)を用い、V族の原料には、フォスフィン(PH3)、アルシン(AsH3)を用いている。また、p型ドーパントの原料には四臭化炭素(CBr4)、ジメチルジンク(DMZn)を用い、n型ドーパントの原料にはセレン化水素(H2Se)を用いている。
(2)積層体の表面に一辺がL1(ここでは、25μm)の正方形状のレジストパターンを形成する。
(3)Cl2ガスを用いるECRエッチング法で、上記レジストパターンをフォトマスクとして四角柱状のメサ構造体(以下では、便宜上「メサ」と略述する)を形成する。ここでは、エッチングの底面は下部スペーサ層104中に位置するようにした。
(4)フォトマスクを除去する(図6(B)参照)。
(5)積層体を水蒸気中で熱処理する。これにより、被選択酸化層108中のAl(アルミニウム)がメサの外周部から選択的に酸化され、メサの中央部に、Alの酸化層108aによって囲まれた酸化されていない領域108bが残留する(図7(A)参照)。すなわち、発光部の駆動電流の経路をメサの中央部だけに制限する、いわゆる酸化狭窄構造体が形成される。上記酸化されていない領域108bが電流通過領域(電流注入領域)である。このようにして、例えば幅4μm〜6μm程度の略正方形状の電流通過領域が形成される。
(6)気相化学堆積法(CVD法)を用いて、SiNからなる保護層111を形成する(図7(B)参照)。ここでは、保護層111の光学的厚さがλ/4となるようにした。具体的には、SiNの屈折率nが1.86、発振波長λが780nmであるため、実際の膜厚(=λ/4n)は約105nmに設定した。
(7)レーザ光の射出面となるメサ上部にp側電極コンタクトの窓開けを行うためのエッチングマスク(マスクMという)を作製する。ここでは、一例として図8及び該図8におけるメサのみを取り出して拡大した図9に示されるように、モードフィルタ115が設けられる内径L4(ここでは、5μm)、外径L3(ここでは、13μm)の円環状の領域、メサの周囲、及びメサ上面の周囲がエッチングされないようにマスクMを作製する。モードフィルタの幅は4μmである。また、p側電極113とコンタクト層109が接触する領域の外形は、辺の長さL2(ここでは、20μm)の正方形状としている。このとき、該正方形の角にRがついている角丸矩形であっても良い。
(8)BHFにて保護層111をエッチングし、p側電極コンタクトの窓開けを行う。
(9)マスクMを除去する(図10(A)及び図10(B)参照)。ここで、射出領域内に残存している保護層111が、モードフィルタ115となる。
(10)メサ上部の光射出部となる領域に直径L3(ここでは、13μm)の円形状のレジストパターンを形成し、p側の電極材料の蒸着を行なう。p側の電極材料としてはCr/AuZn/Auからなる多層膜、もしくはTi/Pt/Auからなる多層膜が用いられる。
(11)射出領域に蒸着された電極材料をリフトオフし、p側電極113を形成する(図11(A)参照)。このp側電極113で囲まれた領域が射出領域である。なお、図11(A)におけるメサのみを取り出して拡大した図が図11(B)に示されている。射出領域の形状は、直径L3(ここでは、13μm)の円形である。本実施形態では、射出領域内に、光学的厚さがλ/4のSiNからなる透明な誘電体膜としてモードフィルタ115が存在している。これにより、射出領域内におけるモードフィルタ115が存在している領域の反射率は、射出領域の中心部の反射率よりも低くなる。すなわち、本実施形態では、射出領域内に低反射率領域(周辺部)と高反射率領域(中心部)とが存在することとなる。
(12)基板101の裏側を所定の厚さ(例えば100μm程度)まで研磨した後、n側電極114を形成する(図12参照)。ここでは、n側電極114はAuGe/Ni/Auからなる多層膜である。
(13)アニールによって、p側電極113とn側電極114のオーミック導通をとる。これにより、メサは発光部となる。
(14)チップ毎に切断する。
このようにして製造された面発光レーザ素子100について、基本横モードに対する高次横モードの抑圧比SMSR(Side Mode Suppression Ratio)が20dBとなる光出力(基本横モード出力)と電流通過領域の面積との関係を求めた。その結果が、モードフィルタがない比較例とともに図13に示されている。なお、SMSRは、複写機などでは、20dB程度以上であることが望ましいとされている。
比較例では、電流通過領域の面積を大きくしていくと、基本横モード出力が著しく低下している。これは、射出領域の周辺部に光出力のピークを持つ高次横モードが発振しやすくなるためである。
一方、面発光レーザ素子100では、基本モード出力は比較例よりも大きく、特に電流通過領域の面積が30μm2でも2.5mW以上の基本横モード出力が得られている。
ところで、電流通過領域の面積が小さいと、動作時の電流密度は高く、素子抵抗も高く、熱特性が悪くなる。また寿命が短いなど多くの不都合がある。また、複写機などでは基本横モード出力は1mW以上あることが好ましい。
図13から明らかなように、比較例では、基本横モード出力が1mW以上という条件を満たす電流通過領域の面積範囲は狭い。この場合には、電流通過領域の面積を再現性良く、及び均一性良く作ることは極めて困難であり、歩留りが悪い。
これに対し、面発光レーザ素子100では、上記条件を満たす電流通過領域の面積範囲は広い。そこで、高い基本横モード出力を維持しつつ、電流通過領域の面積を大きくすることが可能となる。その結果、素子抵抗が低く、熱特性に優れ、寿命が長く、歩留りの高い面発光レーザ素子を得ることができる。
一般に、基本横モードの光出力は射出領域の中心付近で最も大きく、周辺になるにつれて低下する傾向がある。これに対して、高次横モードはモードにもよるが少なくとも射出領域の周辺部で大きくなる。通常、基本横モードの次に発振し始め、基本横モードの出力に最も影響を与える一次のモードでは、周辺が最も強く中心に近づくにつれて弱くなる傾向がある。本実施形態では、射出領域の周辺部に設定された領域の反射率を、中心部の反射率よりも低くしているため、基本横モードに対する反射率を低下させずに高次横モードの反射率を低下させることとなり、高次横モードの発振を抑制することができる。
図14及び図15には、モードフィルタが設けられていない従来の標準的なデバイス構造の面発光レーザ素子Aが示されている。
図16及び図17には、面発光レーザ素子Aよりも電極の開口径を狭くした面発光レーザ素子Bが示されている(特許文献1参照)。この面発光レーザ素子Bでは、面発光レーザ素子Aに比べて、高次横モードが抑制される。更に、面発光レーザ素子Bでは、面発光レーザ素子Aに比べて、p側電極113とコンタクト層109との接触面積は広く、素子抵抗は低い。しかしながら、射出面の周辺領域をメタルで完全に遮光するので出力は小さくなってしまう。
図18及び図19には、誘電体膜によるモードフィルタ115が設けられている従来の面発光レーザ素子Cが示されている(特許文献2〜4参照)。この面発光レーザ素子Cでは、モードフィルタ115が透明な誘電体膜であるため、面発光レーザ素子Bに比べて、基本横モード出力は高くなる。しかしながら、図20に示されるように、p側電極113とコンタクト層109との接触領域は円環状(幅3.5μm)であり、接触面積が小さく、素子抵抗が高い。
これらに対し、面発光レーザ素子100では、図21に示されるように、p側電極113とコンタクト層109との接触領域の外側の外形は円環状ではなく角を含む形状(図21では正方形)であるので、p側電極113とコンタクト層109との接触面積が面発光レーザ素子Cよりも大きくなる。これにより、高い出力で単一横モード動作をさせつつ、素子抵抗を低くすることができる。なお、図21の面発光レーザ素子100におけるメサの幅は、図20の面発光レーザ素子Cにおけるメサの幅(直径)と同じとしている。
ところで、面発光レーザ素子Cにおいて、p側電極113とコンタクト層109との接触面積を十分に確保しようとすると、メサ上面の面積が大きくなり、アレイにする場合、狭いピッチで集積できない不都合があった。また、選択酸化処理の際の酸化距離が長くなるため、電流通過領域の形状、大きさの制御性が悪くなり、歩留りが低下するという不都合があった。
以上説明したように、本実施形態に係る面発光レーザ素子100によると、基板101上に、下部半導体DBR103、下部スペーサ層104、活性層105、上部スペーサ層106、上部半導体DBR107、コンタクト層109が積層されている。そして、レーザ光が射出される射出面上に、射出領域を取り囲んで設けられたp側電極113を有している。また、射出領域内には、該射出領域の中心部を取り囲んで設けられた光学的に透明な誘電体膜であるモードフィルタ115がλ/4の光学的厚さで形成されている。
そして、p側電極113におけるコンタクト層109に接触する部分の外側の外形は、角を含む形状である。この場合は、メサ上面の面積を大きくすることなく、p側電極113とコンタクト層109との接触面積を従来よりも大きくすることができる。そこで、高い出力で単一横モード動作をさせつつ、素子抵抗を低くすることができる。そして、従来よりも長寿命とすることができる。
本実施形態に係る光走査装置1010によると、光源14が面発光レーザ素子100を有しているため、安定した光走査を行うことができる。
本実施形態に係るレーザプリンタ1000によると、光走査装置1010を備えているため、高品質の画像を形成することが可能となる。
なお、上記実施形態では、p側電極113とコンタクト層109が接触する領域の外形が正方形状の場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、p側電極113とコンタクト層109が接触する領域の外形が長方形であっても良い。また、四角形以上の多角形(例えば、八角形)であっても良い。このとき、従来のp側電極とコンタクト層が接触する領域の外形である円が内接する多角形であっても良い。この場合は、メサの大きさを大きくすることなく、p側電極とコンタクト層の接触面積を従来よりも大きくすることができる。
また、上記実施形態では、保護層111がSiNの場合について説明したが、これに限らず、例えば、SiNx、SiOx、TiOx及びSiONのいずれかであっても良い。それぞれの材料の屈折率に合わせて膜厚を設計することで同様の効果を得ることができる。
また、上記実施形態では、モードフィルタ115が、射出領域の中心部を取り囲む円環状の場合について説明したが、これに限定されるものではない。
例えば、図22に示されるように、モードフィルタ115が、X軸方向に関して、中心部を挟んで対向し、射出領域の中心部から外れた部分に設けられた2つの小領域に形成されても良い。
この場合に、基板101が、一例として図23(A)に示されるように、表面の鏡面研磨面(主面)の法線方向が、結晶方位[1 0 0]方向に対して、結晶方位[1 1 1]A方向に向かって15度(θ=15度)傾斜したn−GaAs単結晶半導体基板であっても良い。すなわち、基板101が、いわゆる傾斜基板であっても良い。このとき、一例として図23(B)に示されるように、結晶方位[0 −1 1]方向が+X方向、結晶方位[0 1 −1]方向が−X方向となるように配置しても良い。
傾斜基板を用いると、偏光方向が安定し偏光抑圧比PMSRが高くなる。なお、偏光抑圧比PMSRとは、所望の偏光方向における光強度とそれに直交する方向における光強度との比である。
例えば、面発光レーザ素子100と同等の構造でモードフィルタがない面発光レーザ素子では、主には傾斜基板の効果であるが、活性層などの歪の効果も加わって、結果として基板の傾斜方向に直交する方向(図23(A)ではX軸方向)に偏光しやすくなった。このとき、偏光抑圧比PMSRは20〜30dBであった。
また、モードフィルタが円環状の上記面発光レーザ100では、基板の傾斜方向(図23(A)ではY軸方向)に偏光しやすくなった。このとき、偏光抑圧比PMSRは10〜20dBに低減した。
そして、図22に示されるモードフィルタ115が形成されている場合には、基板の傾斜方向に直交する方向(図23(A)ではX軸方向)に偏光しやすくなった。このとき、偏光抑圧比PMSRは20〜30dBであった。すなわち、対称的な(異方性のない)形状のモードフィルタに比べて、PMSRは改善した。なお、この場合、射出領域の中心部を取り囲む領域の一部で誘電体膜が欠けているが、基本モード出力は上記実施形態における面発光レーザ100と同程度であった。これにより、基本横モード出力が高く、素子抵抗が低いことに加えて、偏光抑圧比PMSRの高い面発光レーザが得られる。
光学的厚さがλ/4の透明な誘電体膜が形成される小領域の数を複数にすることで偏光安定性が向上した要因として、互いに直交する2方向における光閉じ込め作用に異方性が生じたことが考えられる。図22に示されるモードフィルタ115が形成されている場合には、偏光方向が基板の傾斜方向に直交する方向(図23(A)ではX軸方向)と一致する光は、射出領域の周辺部に比べて反射率の高い射出領域の中心部への閉じ込め作用が働き、偏光方向が基板傾斜方向と一致する光に比べて発振しきい値が低下する。その結果、偏光抑圧比が向上したと考えられる。
すなわち、モードフィルタを複数にして、各モードフィルタによって挟まれる領域に形状異方性をもたせることにより、横方向の閉じ込め作用に異方性を生じさせることが可能となる。その結果、閉じ込め作用の強い方向の偏光成分は閉じ込め作用の弱い方向の偏光成分に比べて発振しやすくなり、偏光方向を閉じ込め作用の強い方向に一致させることができる。
なお、所望の偏光方向を基板の傾斜方向(図23(A)ではY軸方向)とする場合には、モードフィルタ115を、Y軸方向に関して、中心部を挟んで対向し、射出領域の中心部から外れた部分に設けられた2つの小領域に形成すれば良い。
ところで、モードフィルタがない場合の安定な偏光方向は、活性層などでの歪状態を変えることで、変更することができる。
また、図22では、2つの小領域が、射出領域の中心を通りY軸方向に平行な軸に対して対称になるように設けられているが、これに限定されるものではない。射出領域の中心を通りY軸に平行な軸の一側に第1の小領域があり、他側に第2の小領域があれば良い。
また、図22では、各小領域の形状がドーナツを2つに割ったような形状の場合について説明したが、これに限定されるものではない。長方形状(図24参照)、半円形状、楕円形状など任意の形状であっても良い。
また、2つの小領域に形成される誘電体膜は、同じ材質であっても良いし、互いに異なる材質であっても良い。
また、モードフィルタ115が、射出領域の中心部から外れた部分に設けられ、長楕円形状のように、所望の偏光方向とそれに直交する方向とで形状異方性を有する1つの小領域に形成されても良い。このとき、幅が異なることによる形状異方性であっても良い。
ところで、傾斜基板を用いるときは、基板の主面の法線方向が、結晶方位<1 0 0>の一の方向に対して、結晶方位<1 1 1>の一の方向に向かって傾斜していれば良い。
また、一例として図24及び図25に示されるように、モードフィルタ115が、中心部を挟んで対向し、射出領域の中心部から外れた部分に設けられた2つの小領域に形成され、該2つの小領域の間に、p側電極113におけるコンタクト層109に接触する部分の一部が存在しても良い。この場合は、p側電極113とコンタクト層109の接触面積が増加し、素子抵抗を更に低減することができる。なお、このとき、モードフィルタ115の一部にp側電極がかぶっても良い。
また、上記実施形態では、モードフィルタ115の光学的厚さがλ/4の場合について説明したが、これに限定されるものではない。要するに、モードフィルタ115の光学的厚さがλ/4の奇数倍であれば良い。
また、上記実施形態において、前記面発光レーザ素子100に代えて、一例として図26及び図27に示されるように、面発光レーザ素子100の射出領域全面に、更に光学的厚さが2λ/4のSiNからなる誘電体膜116が積層された面発光レーザ素子100Aを用いても良い。この誘電体膜116の実際の膜厚(=2λ/4n)は、SiNの屈折率nが1.86、発振波長λが780nmであるため、約210nmに設定される。
このとき、射出領域の中心部は、光学的厚さが2λ/4のSiNからなる誘電体膜116で被覆される。また、モードフィルタは、光学的厚さがλ/4のSiNからなる誘電体膜111と光学的厚さが2λ/4のSiNからなる誘電体膜116とから構成される。すなわち、モードフィルタは、光学的厚さが3λ/4のSiNからなる誘電体膜から構成されることとなる。
この場合は、射出領域全部が誘電体膜116に被覆されていることとなるため、射出領域の酸化や汚染を抑制することができる。なお、射出領域の中心部は、誘電体膜116に覆われているが、その光学的厚さをλ/2の偶数倍としているため、反射率を低下させることがなく、誘電体膜116がない場合と同等の光学特性が得られた。
すなわち、反射率を低下させたい部分の光学的厚さがλ/4の奇数倍、それ以外の部分の光学的厚さがλ/4の偶数倍であれば、面発光レーザ素子100と同様の効果が得られる。
なお、この場合に、一例として図28に示されるように、モードフィルタが、射出領域の中心部を挟んで対向し、射出領域の中心部から外れた部分に設けられた2つの小領域に形成されても良い。そして、基板101が傾斜基板であっても良い。
また、上記実施形態において、前記面発光レーザ素子100に代えて、一例として図29及び図30に示されるように、素子の中心部に2層の透明な誘電体層からなる高反射率領域が設けられ、中心部から外れた領域に1層の誘電体層からなる低反射率領域が設けられた面発光レーザ素子100Bを用いても良い。それぞれの誘電体層の厚さは、発振波長λに対してλ/4n(nは発振波長に対する夫々の誘電体層の屈折率)の奇数倍の厚さに設定されている。
ここでは、中心部は、コンタクト層109上に、下層から順にSiO2、SiNの2種の誘電体が積層されている。この場合、下層の誘電体層117の屈折率が上層の誘電体層111の屈折率よりも小さくなるように設定する必要がある。成膜条件にも依るが、ここでは、下層の誘電体層117であるSiO2の屈折率は約1.5であり、上層の誘電体層111であるSiNの屈折率は約1.86である。
一方、素子の中心周辺部から外れた領域には、SiNのみが積層されている。
このように誘電体層の厚さを設定すると、中心部は通常の多層膜反射鏡と同じ構成となり、反射率が高くなる。また、中心部から外れた領域では、半導体多層膜反射鏡上に1層のλ/4n厚さの誘電体層が設けられる構成となる。そして、SiNの屈折率は半導体層の屈折率に対して小さいので、この領域の反射率は低くなる。
また、面発光レーザ素子100Bでは、中心部の反射率が向上することにより、中心部と中心部から外れた領域との反射率差を非常に大きくすることができる。
なお、この場合に、一例として図31に示されるように、モードフィルタが、中心部を挟んで対向し、射出領域の中心部から外れた部分に設けられた2つの小領域に形成されても良い。そして、基板101が傾斜基板であっても良い。
また、上記実施形態において、光源14は、前記面発光レーザ素子100に代えて、一例として図32に示される面発光レーザアレイ100Cを有しても良い。
この面発光レーザアレイ100Cは、複数(ここでは21個)の発光部が同一基板上に配置されている。ここでは、図32におけるX軸方向は主走査対応方向であり、Y軸方向は副走査対応方向である。複数の発光部は、すべての発光部をY軸方向に伸びる仮想線上に正射影したときに、隣接する発光部間隔が等間隔d2となるように配置されている。すなわち、21個の発光部は、2次元的に配列されている。なお、本明細書では、「発光部間隔」とは2つの発光部の中心間距離をいう。また、発光部の数は21個に限定されるものではない。
各発光部は、図32のA−A断面図である図33に示されるように、前述した面発光レーザ素子100と同様な構造を有している。そして、この面発光レーザアレイ100Cは、前述した面発光レーザ素子100と同様な方法で製造することができる。そこで、各発光部間で均一な偏光方向を持ち、高いシングルモード出力で複数のレーザ光を得ることができる。従って、円形で且つ光密度の高い微小な光スポットを21個同時に感光体ドラム1030上に形成することが可能である。
また、面発光レーザアレイ100Cでは、各発光部を副走査対応方向に延びる仮想線上に正射影したときの発光部間隔が等間隔d2であるので、点灯のタイミングを調整することで感光体ドラム1030上では副走査方向に等間隔で発光部が並んでいる場合と同様な構成と捉えることができる。ここで、上面から見た各素子(メサ)の外形は四角形であり、物理的に隣り合う素子側の辺はお互いに並行となる範囲で二次元に配置しており、円形で素子(メサ)を形成する場合と比較して、発光部間隔を同じにした場合、上面から見たメサの面積を大きくでき、上述したように電極コンタクト面積を広くできる。同じコンタクト面積とした場合は、素子と素子のピッチd1(ここでは発光部間隔と同じ)を狭くできる。
そして、例えば、上記間隔d2を2.65μm、光走査装置1010の光学系の倍率を2倍とすれば、4800dpi(ドット/インチ)の高密度書き込みができる。もちろん、主走査対応方向の発光部数を増加したり、副走査対応方向のピッチd1を狭くして間隔d2を更に小さくするアレイ配置としたり、光学系の倍率を下げる等を行えばより高密度化でき、より高品質の印刷が可能となる。面発光レーザアレイ100Cによれば、発光部間隔を狭くすることが可能となり、素子抵抗が小さく、高い出力で単一横モード動作が可能な面発光レーザ素子を、高密度に集積させることができる。なお、主走査方向の書き込み間隔は、発光部の点灯のタイミングで容易に制御できる。
また、この場合には、レーザプリンタ1000では書き込みドット密度が上昇しても印刷速度を落とすことなく印刷することができる。また、同じ書き込みドット密度の場合には印刷速度を更に速くすることができる。また、本発明の面発光レーザ素子はシングルモード出力が高いので、高速なプリント速度と、高精細な画質を得ることができる。
また、この場合には、各発光部からの光束の偏光方向が安定して揃っているため、レーザプリンタ1000では、高品質の画像を安定して形成することができる。
また、図34のように外形が八角形の素子が2次元に配置されていても良い。図35は3×3アレイ配置の図である。物理的に隣り合う素子側の辺がお互いに並行となるように2次元配置されている。コンタクト面積を広げる効果に関しては、四角形の方が高い効果が得られるが、従来の角のない素子形状に比べると、効果がある。
また、上記実施形態において、前記面発光レーザ素子100に代えて、面発光レーザ素子100と同様の発光部が1次元配列された面発光レーザアレイを用いても良い。
また、上記実施形態では、発光部の発振波長が780nm帯の場合について説明したが、これに限定されるものではない。感光体の特性に応じて、発光部の発振波長を変更しても良い。
また、上記各面発光レーザ素子は、画像形成装置以外の用途にも用いることができる。その場合には、発振波長は、その用途に応じて、650nm帯、850nm帯、980nm帯、1.3μm帯、1.5μm帯等の波長帯であっても良い。この場合に、活性層を構成する半導体材料は、発振波長に応じた混晶半導体材料を用いることができる。例えば、650nm帯ではAlGaInP系混晶半導体材料、980nm帯ではInGaAs系混晶半導体材料、1.3μm帯及び1.5μm帯ではGaInNAs(Sb)系混晶半導体材料を用いることができる。
また、各反射鏡の材料及び構成を発振波長に応じて選択することにより、任意の発振波長に対応した発光部を形成することができる。例えば、AlGaInP混晶などのAlGaAs混晶以外のものを用いることができる。なお、低屈折率層及び高屈折率層は、発振波長に対して透明で、かつ可能な限り互いの屈折率差が大きく取れる組み合わせが好ましい。
なお、上記実施形態では、光走査装置1010がプリンタに用いられる場合について説明したが、プリンタ以外の画像形成装置、例えば、複写機、ファクシミリ、又は、これらが集約された複合機にも用いることができる。
また、上記実施形態では、画像形成装置としてレーザプリンタ1000の場合について説明したが、これに限定されるものではない。
例えば、レーザ光によって発色する媒体(例えば、用紙)に直接、レーザ光を照射する画像形成装置であっても良い。
また、像担持体として銀塩フィルムを用いた画像形成装置であっても良い。この場合には、光走査により銀塩フィルム上に潜像が形成され、この潜像は通常の銀塩写真プロセスにおける現像処理と同等の処理で可視化することができる。そして、通常の銀塩写真プロセスにおける焼付け処理と同等の処理で印画紙に転写することができる。このような画像形成装置は光製版装置や、CTスキャン画像等を描画する光描画装置として実施できる。
また、一例として図36に示されるように、複数の感光体ドラムを備えるカラープリンタ2000であっても良い。
このカラープリンタ2000は、4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)を重ね合わせてフルカラーの画像を形成するタンデム方式の多色カラープリンタであり、ブラック用の「感光体ドラムK1、帯電装置K2、現像装置K4、クリーニングユニットK5、及び転写装置K6」と、シアン用の「感光体ドラムC1、帯電装置C2、現像装置C4、クリーニングユニットC5、及び転写装置C6」と、マゼンタ用の「感光体ドラムM1、帯電装置M2、現像装置M4、クリーニングユニットM5、及び転写装置M6」と、イエロー用の「感光体ドラムY1、帯電装置Y2、現像装置Y4、クリーニングユニットY5、及び転写装置Y6」と、光走査装置2010と、転写ベルト2080と、定着ユニット2030などを備えている。
各感光体ドラムは、図36中の矢印の方向に回転し、各感光体ドラムの周囲には、回転方向に沿って、それぞれ帯電装置、現像装置、転写装置、クリーニングユニットが配置されている。各帯電装置は、対応する感光体ドラムの表面を均一に帯電する。帯電装置によって帯電された各感光体ドラム表面に光走査装置2010により光が照射され、各感光体ドラムに潜像が形成されるようになっている。そして、対応する現像装置により各感光体ドラム表面にトナー像が形成される。さらに、対応する転写装置により、転写ベルト2080上の記録紙に各色のトナー像が転写され、最終的に定着ユニット2030により記録紙に画像が定着される。
光走査装置2010は、前記面発光レーザ素子100、面発光レーザ素子100A、及び面発光レーザ素子100Bのいずれか同様な面発光レーザ、あるいは前記面発光レーザアレイ100Cと同様な面発光レーザアレイのいずれかを含む光源を、色毎に有している。そこで、上記光走査装置1010と同様の効果を得ることができる。また、カラープリンタ2000は、この光走査装置2010を備えているため、上記レーザプリンタ1000と同様の効果を得ることができる。
ところで、カラープリンタ2000では、各部品の製造誤差や位置誤差等によって色ずれが発生する場合がある。このような場合であっても、光走査装置2010の各光源が前記面発光レーザアレイ100Cと同様な面発光レーザアレイを有していると、点灯させる発光部を選択することで色ずれを低減することができる。