JP2014161876A - パイプ状欠陥の無いNi鋼扁平鋳塊の造塊鋳造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】パイプ状欠陥の発生を効率よく抑制する。
【解決手段】鋳型3内への溶鋼注入完了後、所定の時点で押湯枠5を押し下げることにより、鋳塊押湯部の押湯テーパ部iを鉛直方向にd[m](0.005≦S・d/X≦0.015)押し下げる。これにより、凝固殻が押圧され、未凝固溶鋼Mが上方の空間Qに流れる。この状態から未凝固溶鋼Mの凝固が進行すると、鋳塊押湯部Iで最終凝固する。
ここで、所定の時点とは−0.05≦(Z−Y)/X≦0.05を満たすときであり、Xは鋳型3への溶鋼注入前に鋳型3、定盤4、押湯枠5、保温ボード6及び押湯ボード7に囲まれた鋳型空間Pの体積、Yは押湯枠5、保温ボード6及び押湯ボード7に囲まれた押湯空間Pの体積、Zは未凝固溶鋼の体積である。
また、Sは以下の式で表される。
S=押湯テーパ部i下端の水平断面積S−押湯テーパ部i上端の水平断面積S
【選択図】図4

Description

本発明は、Ni鋼を鋳造する造塊鋳造方法に関する。
造塊鋳造によって得られた鋳塊には、溶鋼の凝固収縮によって内部に空孔性欠陥が生じる。このような欠陥は圧延(分塊圧延、厚板圧延)や鍛造等によって縮小するが、欠陥が大きい場合は圧延等を行っても十分に縮小しない。そこで、従来から鋳塊の段階で欠陥を低減させる方法が検討されている。例えば、特許文献1〜4には、鋳塊を鋳型から取り出してから圧下する方法が記載されている。また、特許文献5〜7には、鋳型内で鋳塊を圧下する方法が記載されている。
特許文献1〜3では、鋳塊内部に未凝固溶鋼が存在する間に鋳型から鋳塊を取り出し、その後、鋳塊側面を圧下している。また、特許文献4では、鋳塊を完全凝固後に鋳型から取り出した後、鋳塊上端部(軸心部)を加圧している。
さらに、特許文献5では、鋳型内への溶鋼注入中に鋳塊を圧下している。本文献では、鋳型側壁が周方向に分割されており、各分割部をそれぞれ鋳塊に押し付けることにより鋳塊を圧下する。また、特許文献6では、完全凝固後に(鋳型内の鋳塊が通常の鍛圧加熱で得られる程度を十分にこえる高温状態のとき)、鋳塊上端部(軸心部)を加圧している。さらに、特許文献7では、鋳造時に、鋳型内壁面と鋳塊との間隙に加圧ガスを圧入することにより鋳塊を外周から圧潰する。
特開2004−202525号公報 特開2003−236643号公報 特開2003−80348号公報 特開平1−180750号公報 特開昭63−278638号公報 特開昭58−103930号公報 特開昭50−62127号公報
ところで、鋳塊内部に生じる空孔性欠陥は、鋼種によって異なる形状となって生じる。例えば、一般的な炭素鋼やCr−Mo鋼等では、鋳塊内部が等軸晶になりやすいため、鋳塊の厚み中心付近に短く独立したザク状(気孔状)の欠陥が発生しやすい。このような欠陥は、圧延等で圧着して消失させることができるため、製品においては、無害化しやすい。
これに対し、Ni濃度が比較的高いNi鋼では、溶鋼の凝固収縮率が大きく、固液共存温度域が狭いため、鋳塊の内部まで柱状晶になりやすい。そのため、Ni鋼では、鋳塊の厚み中心付近に長いパイプ状(空洞状)の空孔性欠陥が発生しやすい。このような欠陥が分塊圧延後のスラブ切断面に存在すると(図8に示す「スラブ切断面写真」参照)、厚板圧延前の加熱によりパイプ状欠陥の内面がスラブ内部まで酸化され、一旦生成した酸化物は、圧延によって消失しないため、欠陥として製品に残る。そこで、分塊圧延後に、スラブ切断面にパイプ状欠陥が現れなくなるまでスラブ先端部を切り取ることが考えられるが、その場合、スラブ先端部を多量に切り取る必要がある。そうすると、製品として使用可能な部分が減少するため、製品の歩留まりが低下する上に、計画していた量の製品が得られないことがある。
ここで、パイプ状欠陥の発生を抑制する方法として、ホットトップ鋳造法(鋳造中に鋳塊押湯部をアーク加熱して保温する方法)や鋳塊を鍛造する方法が知られている。しかしながら、前者は余分な加熱エネルギーを必要とし、後者は鋳塊を圧延するよりも生産性が低く、製造コストが大きいという問題がある。
そこで、上述した特許文献1〜7の方法を採用することが考えられる。しかしながら、特許文献1〜3では、鋳塊を内部に未凝固溶鋼が存在する間に鋳型から取り出すため、取り出す際に漏鋼のおそれがある。また、鋳型から取り出された鋳塊は急冷され、鋳塊内部の凝固が加速することで空孔性欠陥が増加する。
さらに、特許文献4では、鋳塊を完全凝固後に圧下しているが、完全凝固後は、ザク状欠陥を低減できても、長いパイプ状の欠陥を低減させることはできない。また、完全凝固した鋳塊では非常に大きな力で圧下しなければ内部を変形させることができず、そのためには過大な圧化装置を要するため、現実的なものといえない。加えて、特許文献4では、加圧部が鋳塊上端(軸心部)であるため、軸心部に生じた偏析が内部に押し込まれることにより、製品の歩留まりが低下する。
また、鋳型内で鋳塊を圧下する特許文献5〜7においても、下記の問題がある。
特許文献5では、溶鋼の注入中、つまり、鋳塊内部に多量の未凝固溶鋼が存在する状態で鋳塊を圧下するため、圧下後に未凝固溶鋼が凝固収縮することにより空孔性欠陥が生じる。さらに、特許文献5では、鋳型側壁を複数に分割するという複雑な構成であり、また、鋳型の分割位置から溶鋼が漏出するおそれがある。
また、特許文献6では、特許文献4と同様に、鋳塊を完全凝固後に圧下するため、パイプ状欠陥を低減させることができないことに加え、過大な圧化装置を要する。さらに、特許文献6では、鋳塊上端(軸心部)を加圧するため、軸心部に生じた偏析が内部に押し込まれることにより製品の歩留まりが低下する。
また、特許文献7では、鋳型内に加圧ガスを圧入しているが、ガスで鋳塊を圧下するためには過大なガス圧を要する。そのため、過大な圧化装置を要するので、特許文献4,6と同様に現実的なものといえない。
このような理由から、特許文献1〜7に記載された方法を採用しても、鋳塊の段階でパイプ状欠陥の発生を効率良く抑制することができない。
そこで、本発明の目的は、従来の方法(ホットトップ鋳造法や鍛造)を利用することなく、パイプ状欠陥の発生を効率良く抑制する造塊鋳造方法を提供することである。
本発明の造塊鋳造方法では、Niの質量濃度[mass%]が、3.25以上9.5以下である溶鋼を、鋳型上部に押湯枠を組合せてなる鋳型空間内に下方より注入し、鋳塊本体部及びその上方に連接した鋳塊押湯部を有する鋳塊を鋳造する。
ここで、前記鋳型空間の全体積X[m]に対する、前記押湯枠に囲まれた押湯空間の体積Y[m]の比率Y/X[−]が0.1≦Y/X≦0.2である。但し、前記鋳型空間の高さは、前記鋳型空間への溶鋼注入完了時における鋳型下端から鋳型内溶鋼浴面までの高さである。
また、製品厚みt[mm]が100≦t≦250となる厚鋼板の圧延素材となる扁平鋳塊を鋳造する。
さらに、前記押湯枠の下端部に、前記押湯枠の下端に近付くにつれて水平断面積が大きくなるテーパ部を形成する。これにより、前記鋳塊押湯部の下端部には、前記鋳塊押湯部の下端に近付くにつれて水平断面積が大きくなる押湯テーパ部が形成される。
そして、前記鋳型空間内に溶鋼を注入完了した後、前記鋳型空間の全体積X[m]に対する、鋳塊内部の未凝固溶鋼の体積Z[m]と前記押湯空間の体積Y[m]との差Z−Y[m]の比率(Z−Y)/X[−]が、−0.05≦(Z−Y)/X≦0.05となる時点で、前記押湯テーパ部を鉛直方向にd[m]押し下げる。
ここで、前記押湯テーパ部下端の水平断面積と前記押湯テーパ部上端の水平断面積との差S[m]と、前記押湯テーパ部を押し下げる距離d[m]と、前記鋳型空間Pの全体積X[m]とが、0.005≦S・d/X≦0.015を満足する。
本発明では、鋳型への溶鋼注入完了後、所定のタイミングで、押湯テーパ部をd[m]押し下げることにより、鋳塊の凝固部分(凝固殻)を所定量だけ内側に押圧する。これにより、凝固殻の内側にある未凝固溶鋼が押し上げられ、その上方に生じた空間(溶鋼の凝固収縮によって生じた空間)に流れる。この状態から未凝固溶鋼の凝固が進行すると、鋳塊押湯部で最終凝固するため、最終凝固部に生じやすいパイプ状欠陥が鋳塊本体部(製品となる部分)に生じないようにすることができる。したがって、本発明では、従来法で必要な大きな加熱エネルギーを要さず、また、生産性の低下及び製造コストの増大となることなく、鋳塊の段階でパイプ状欠陥の発生を効率良く抑制できる。
本発明によると、鋳型への溶鋼注入完了後、所定のタイミングで、凝固殻を押圧することにより、凝固殻の内側にある未凝固溶鋼をその上方に生じた空間(鋳塊押湯部となる部分)へ押し上げることができる。これにより、鋳塊押湯部で未凝固溶鋼が最終凝固するため、鋳塊本体部にパイプ状欠陥が生じないようにできる。よって、鋳塊の段階でパイプ状欠陥の発生を効率良く抑制できる。
下注ぎ造塊装置の概略断面図である。 図1に示す鋳型の斜視図である。 (a)は鋳型空間の斜視図であり、(b)は(a)のIIIb-IIIbの面における断面図である。 本発明の第1実施形態に係る造塊鋳造方法を順に示した模式図である。 「注入後の経過時間」と「未凝固溶鋼体積率」との関係を示す図である。 本発明の第2実施形態に係る造塊鋳造方法を順に示した模式図である。 本発明の第3実施形態に係る造塊鋳造方法を順に示した模式図である。 比較例の厚板圧延後のスラブ断面写真である。
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
ここでは、本発明の第1実施形態である造塊鋳造方法について、図1〜図5を参照しつつ以下に説明する。
〔下注ぎ造塊装置〕
下注ぎ造塊装置100は、図1に示すように、取鍋1内の溶鋼が注入される注入管2と、注入管2から溶鋼が注入される鋳型3と、注入管2及び鋳型3とを連通させる定盤4とを備えている。注入管2は定盤4上に立設し、鋳型3は定盤4上に設置されている。そして、定盤4に埋設された湯道41によって注入管2と鋳型3とが連通している。また、鋳型3の上端部には押湯枠5が取り付けられている。押湯枠5内には保温ボード6及び押湯ボード7が配置されている。
そして、鋳型3、定盤4、押湯枠5、保温ボード6及び押湯ボード7によって囲まれた領域には、鋳型空間Pが形成される。鋳型空間Pに注入された溶鋼は、冷却され、鋳塊となる。本発明では、上記装置により、鋳塊の水平断面における幅中央部の厚みが幅端部の厚みと同じ又はそれ以上である扁平鋳塊を鋳造することができる。なお、図1には、鋳型3への溶鋼注入開始前の状態を示している。
(鋳型)
鋳型3は、図2に示すように、内部に空間が形成された包囲壁からなる。
(押湯枠)
押湯枠5は、図1,2に示すように、鋳型3内に挿入された内挿式押湯枠であり、略四角筒状の枠部51を有している。枠部51の上端には外側に向かって突出した上縁部52が形成されている。なお、本実施形態では、押湯枠5に内挿式押湯枠を用いているが、後述する内外2層上置式押湯枠や上下2段上置式押湯枠等を用いてもよい。
枠部51は、図1に示すように、鋳型3の内壁面に沿って鉛直方向に延在し、下端部にテーパ部51tが形成されている。テーパ部51tは、枠部51の下端に近付くにつれて水平断面積が大きくなるように形成されている。ここで、テーパ部51tの水平断面積とは、テーパ部51t内の空間の水平断面積を示す。
また、押湯枠5の外周部には穴51aが形成されている(図1の拡大図参照)。穴51aに鋳型3上端に配置された固定ピン8を挿入すると、押湯枠5が鋳型3の上端部に対して所定の高さに固定される。鋳造開始時は、図1に示すように、押湯枠5が所定の高さに固定されている。
また、鋳型3上端には、図1,2に示すように、複数のスペーサ9が配置されている。固定ピン8により押湯枠5が鋳型3に固定された状態では、上縁部52がスペーサ9から鉛直方向に所定距離だけ離れている。この状態から固定ピン8を抜き取り、押湯枠5を押し下げると、上縁部52がスペーサ9上に配置され、押湯枠5が、これ以上、下方へ移動しない(図4(c)参照)。
(保温ボード、押湯ボード)
保温ボード6は、図1に示すように、鋳造前に鋳型3内に水平に吊り下げられ、鋳型3内の溶鋼浴面が上昇した際に溶鋼上に浮かぶように配置されている。一方、押湯ボード7は、押湯枠5の枠部51内周面に固定されている。押湯ボード7の下端部は、押湯枠5のテーパ部51tに沿ったテーパ形状となっている。これら2つのボードにより、押湯枠5内の溶鋼の温度低下を抑えることができる。また、鋳型内への溶鋼供給末期に保温ボード6上に保温材を投入することにより、鋳型3内の溶鋼浴面の温度低下を抑えることができる。
鋳造を行うときは、図1に示すように、取鍋1を注入管2の上方に配置し、取鍋1から注入管2へ溶鋼を注入する。溶鋼は注入管2内部に形成された湯道21を通過した後、定盤4内部の湯道41を通って鋳型3内へ下方から注入される。そして、鋳型3内で冷却されることにより鋳塊となる。その後、鋳塊は鋳型3から抜き取られ、圧延処理(分塊圧延、厚板圧延)等が施されることにより鋼板となる。なお、鋳造方法の詳細については後述する。
ここで、鋳型3内へ注入される溶鋼には、Niの質量濃度が3.25以上9.5以下[mass%]であるものを用いる。このような溶鋼を用いることにより、JIS G 3127に規定される低温圧力容器用Ni鋼鋼板等のNi鋼を製造することができる。なお、以下では、質量濃度の単位を単に[%]と記載することがある。
上記低温圧力容器用Ni鋼板等の内部品質に厳格なNi鋼は、内部にザク欠陥が残らないように、圧延処理において圧下比(=鋳塊厚みT/製品厚みT)を3以上とする必要がある。連続鋳造で得られた鋳片からは製品厚みtが300[mm]程度の厚鋼板用素材となる一般的なスラブ(製品)を製造できるが、製品厚みt[mm]が100以上250以下であるような製品を製造するためには、連続鋳造でなく、造塊鋳造によって得られた鋳塊を圧延する方法が採用されている。そこで、本発明では、製品厚みt[mm]が100≦t≦250となる厚鋼板の圧延素材となる鋳塊を対象とする。なお、上記圧下比で且つ製品厚みが250[mm]を超える厚鋼板を得るためには、鍛造を行うことが好ましいが、本発明では、鍛造でなく圧延を行うため、上記厚みtの範囲を対象とする。
次に、図1に示す鋳型空間Pについて、図3を参照しつつ説明する。図3には、鋳型空間Pを実線で示している。
〔鋳型空間〕
鋳型空間Pは、図3に示すように、鋳型3と定盤4に囲まれた鋳型本体空間P(押湯枠5に囲まれていない空間)と、その上方において押湯枠5、保温ボード6及び押湯ボード7に囲まれた押湯空間Pとの2つの空間から構成されている。鋳型空間Pの高さは、鋳型3への溶鋼注入完了時における定盤4上面(鋳型3下端)から鋳型内溶鋼浴面までの高さ(鉛直方向長さ)である。また、鋳型空間Pの体積はX[m]であり、押湯空間Pの体積はY[m]である。したがって、鋳型本体空間Pの体積はX−Y[m]で表される。なお、鋳型空間Pには、定盤4の湯道41が含まれない(図1参照)。
(鋳型本体空間)
鋳型本体空間Pは、下端部に近づくにつれて厚みが薄いテーパ状に形成されている。鋳型本体空間P内に供給された溶鋼は、鋳型3と直接接触して冷却されることにより凝固し、鋳塊本体部I(製品となる部分)に相当する領域となる(図4(d)参照)。
(押湯空間)
押湯空間Pは、略四角柱状の領域と、その下方に連接したテーパ状の領域(テーパ空間)pとからなる。テーパ空間pは、鋳型本体空間Pに近付くにつれて水平断面積が大きくなるように形成され、厚み方向にも幅方向にも広がっている。そして、押湯テーパ空間p上端の水平断面積Sは下端の水平断面積Sより大きく(S>S、図3(b)参照)、これらの差S−SがSである(S=S−S)。本実施形態では、テーパ空間pの下端と鋳型本体空間Pの上端とが一致しているため、鋳型本体空間P上端の水平断面積もSである。
押湯空間P内に供給された溶鋼は、鋳塊押湯部I(製品とならない部分)に相当する領域となる(図4(d)参照)。この領域は、押湯枠5を介して鋳型3に冷却されるため、鋳型本体空間P内に供給された溶鋼より凝固が遅い。このような領域を設けることにより、鋳塊押湯部Iに欠陥や偏析による不良部を集めることができる。鋳造後は、鋳塊押湯部Iを切除し、鋳塊本体部Iを製品に用いることにより、上記不良部が製品に含まれないようにすることができる。
また、テーパ空間p内に供給された溶鋼が凝固すると、鋳塊押湯部Iの下端部には押湯テーパ部iが形成される(図4(b)参照)。押湯テーパ部iでは、鋳塊本体部Iに近付くにつれて水平断面積が大きい。押湯テーパ部i上端の水平断面積はSであり、押湯テーパ部i下端の水平断面積はSであり、これらの差S−SはSとなっている(S=S−S)。
ここで、鋳型空間Pの全体積X[m]に対する押湯部Iの体積Y[m]の比率Y/X[−]が小さいと、欠陥や偏析による不良部を鋳塊押湯部Iに閉じ込めることができない。その結果、鋳塊本体部Iに不良部が生じる。そこで、扁平鋳塊を造塊鋳造する場合は、Y/Xを0.1以上とする事が一般的である。一方、Y/Xが大きいと、鋳塊押湯部Iが増加し、製品となる鋳塊本体部Iが減少するため、歩留りが低下する。そこで、Y/Xを0.2以下とする事が一般的である。上記から、本発明では、Y/Xが0.1以上0.2以下である一般的な鋳塊の造塊鋳造を対象とする。
続いて、図1,4を参照しつつ、本発明の造塊鋳造方法について詳細に説明する。
〔造塊鋳造方法〕
図1の状態から鋳型3内へ溶鋼を注入する。溶鋼の注入が完了した時点では、保温ボード6と溶鋼浴面とが接している。
この状態から溶鋼の凝固が進行する。凝固は下方から進行し(図4(a)参照)、外表面部に凝固殻が生成する一方で、内側には未凝固溶鋼Mが残る。また、溶鋼の凝固収縮により溶鋼浴面が低下し、保温ボード6の下方に空間Qが形成される。
そして、「所定の時点(−0.05≦(Z−Y)/X≦0.05となる時点)」で固定ピン8を押湯枠5の穴から抜き取り、押湯枠5にウェイト等を載せる(押し下げ開始)。押湯枠5は押し下げられ、これに伴って、鋳塊押湯部の押湯テーパ部iが押し下げられる。これにより、凝固殻が内側に押圧されることで、その内側の未凝固溶鋼Mは押し上げられ、上方の空間Qに流れる(図4(b)参照)。
その後、押湯テーパ部iを鉛直方向にd[m]押し下げた時点で押湯枠5の押し下げを終了する(図4(c)参照)。本実施形態では、押湯枠5をスペーサ9に当たるまで押し下げた時点が押し下げ終了となる。押し下げ終了時には、保温ボード6の下方の空間Qが著しく減少する。
この状態から、未凝固溶鋼Mの凝固が進行すると、溶鋼は鋳塊押湯部I(押湯ボード7に囲まれた領域)で最終凝固する。そのため、鋳塊の完全凝固時に、パイプ状欠陥が鋳塊本体部I(製品となる部分)に発生しない(図4(d)参照)。
その後、鋳塊を鋳型から抜き取り、パイプ状欠陥が発生した鋳塊押湯部Iを切り取る。そして、鋳塊本体部Iを圧延等することにより製品を製造する。
なお、図4(a)に示す状態から押湯枠5を押し下げなかった場合は、その後、鋳塊押湯部Iの凝固が進行することにより、鋳塊本体部Iの未凝固溶鋼が残った部分(厚み中心部)でブリッジングが生じる。これが原因で引けが生じ、引けが発達するとパイプ状欠陥となる。このように、押湯枠5を押し下げなかった場合は、鋳塊本体部Iにパイプ状欠陥が生じる。
ここで、鋳塊押湯部の押湯テーパ部iを「押し下げる時期」(「所定の時点」)及び「押し下げる距離d[m]」について説明する。
(押し下げる時期)
鋳型3内に未凝固溶鋼が多く残った状態で押湯テーパ部iを押し下げると、その後、未凝固溶鋼が凝固することで鋳塊本体部Iにパイプ状欠陥が発生しやすい。一方、完全凝固後は、鋳塊内部に既にパイプ状欠陥が生じているため、鋳塊を押圧してもパイプ状欠陥を低減できない。
上記点を考慮しつつ圧着実験を行った結果、本発明者は、鋳塊全体積X[m]に対する、未凝固溶鋼Mの体積Z[m]と押湯空間Pの体積Y[m]との差Z−Y[m]の比率「(Z−Y)/X」が−0.05以上0.05以下となる時点で押湯テーパ部iを押し下げることにより、パイプ状欠陥の発生を効果的に抑制できる知見を得た。また、後述する凝固伝熱解析の結果から、未凝固溶鋼Mの体積Z[m]が押湯空間Pの体積Y[m]とほぼ等しくなる時点(Y≒Zの時点)で押湯テーパ部iを押し下げることにより、パイプ状欠陥の発生を効果的に抑制できることを見出した。
(押し下げる距離)
押し下げる量が少ない場合は、凝固殻が殆ど押圧されないため、未凝固溶鋼Mが上方の空間Qへ殆ど流れない。このため、鋳塊本体部Iにパイプ状欠陥が発生しやすい。一方、押し下げる量が多い場合は、未凝固溶鋼Mが溶鋼浴面から噴出するため、パイプ状欠陥を効果的に抑制できない。
上記点を考慮しつつ実験を行った結果、本発明者は、押湯テーパ部iを、下記式を満たす距離d[mm]鉛直方向に押し下げることにより、パイプ状欠陥の発生を効果的に抑制できる知見を得た。
0.005≦S・d/X≦0.015
ここで、Sは下記の式で表される。
S=押湯テーパ部i下端の水平断面積S−押湯テーパ部i上端の水平断面積S(図3参照)
また、S・d/Xは、凝固殻の圧下体積に相当する。
本発明の対象であるNi鋼では、オーステナイト凝固しやすく、この凝固収縮率は約4%であることが知られている。鋳型3内の溶鋼の凝固収縮の大部分は、押湯枠5を押し下げる前の浴面低下で補われるため、パイプ状欠陥の発生を防止するために必要な圧下体積率は、オーステナイト凝固時の凝固収縮率(約4%)以下でよい。本発明の圧下体積率は、上記式から0.5[%]≦(S・d/X)×100[%]≦1.5[%]であり、オーステナイト凝固時の凝固収縮率(約4%)より小さい。
以上のように、本発明では、鋳型3内への溶鋼供給完了後、所定のタイミングで、押湯テーパ部iをd[m]押し下げることにより、凝固殻を押圧する。これにより、凝固殻の内側にある未凝固溶鋼Mが押し上げられ、その上方の空間Qに流れる。この状態から未凝固溶鋼Mの凝固が進行すると、鋳塊押湯部Iで最終凝固するため、製品となる鋳塊本体部Iにパイプ状欠陥が生じないようにすることができる。よって、従来の方法(ホットトップ鋳造法や鍛造)を利用することなく、鋳塊の段階でパイプ状欠陥の発生を効率良く抑制できる。
また、本発明では、鋳塊を鋳型から取り出す前に鋳型内で押圧する。このため、鋳塊を鋳型から取り出した後に押圧する先行技術(特許文献1〜3)で生じる問題、つまり、鋳塊を取り出す際に漏鋼が生じる問題及び取り出した後に凝固が促進することで欠陥が増加する問題が起こることを防止できる。
さらに、本発明では、鋳塊を押圧するタイミングを、未凝固溶鋼Mの体積Z[m]が押湯空間Pの体積Y[m]とほぼ等しくなる時点とし、鋳塊内部に未凝固溶鋼Mが多量に残っているとき(特許文献5参照)及び完全凝固後(特許文献4,6参照)に押圧しない。このため、先行技術(特許文献5)で生じる問題、つまり、押圧後に未凝固溶鋼Mが凝固することでパイプ状欠陥が生じることを解消できるとともに、先行技術(特許文献4,6)で生じる問題(パイプ状欠陥を圧着できない)を解消できる。
続いて、押湯枠5を押し下げる時期を検討するために行った凝固伝熱解析について説明する。
[解析]
凝固計算によって鋳塊の未凝固溶鋼体積率を求めた。凝固計算には下記表1〜4に示す物性値を用い、有限要素法によって計算した。ここで、未凝固溶鋼体積率は下記式によって表される。
未凝固溶鋼体積率=(Z/X)×100
但し、Zは未凝固溶鋼Mの体積[m]であり、Xは鋳型空間Pの全体積[m]である(図3(b)参照)。
なお、表1に示すNi鋼(3.5%,5%,9%)の比熱には純鉄の比熱(表2)を代用した。また、下記には、各物性値の出典を示している。
・比熱及び凝固線熱:「金属データブック」(日本金属学会編)
・密度及び熱伝導率:「溶鉄・溶滓の物性値便覧 溶鋼・溶滓部会報告」(日本鉄鋼協会)
ただし、固相線温度以上の温度域では、溶鋼流動による熱の移動を考慮するため、固相線温度での熱伝道率をλs、固相率をfsとして、熱伝導率λを以下の式で計算した。
λ=(5−4×fs)・λs
図5には、凝固計算の結果(未凝固溶鋼体積率の経時変化)を示している。図5(a)には「Ni含有量3.5%、鋳塊重量30[ton]、Y/X=0.2である鋳塊」の結果を示し、図5(b)には「Ni含有量9%、鋳塊重量40[ton]、Y/X=0.1」である鋳塊の結果を示している。ここで、「Y/X」のYは押湯空間Pの体積[m]であり、Xは鋳型空間Pの全体積[m]である(図3(b)参照)。
なお、未凝固溶鋼の体積は、固相率が流動限界固相率(fs=0.7)に達していない領域の体積によって評価した。固相率が流動限界固相率より小さい領域では、溶鋼が凝固収縮すると未凝固溶鋼のバルクから溶鋼が吸い込まれるので、パイプ状欠陥を発達させるおそれがあるのに対し、固相率が流動限界固相率に達した領域では、溶鋼が未凝固溶鋼のバルクから絶縁された状態となり、その後、凝固収縮してもデンドライト樹間に独立したザク状欠陥を形成するだけで、パイプ状欠陥を成長させないと考えられるからである。
また、計算結果の精度を検証するため、検証実験(バーテスト)を行った。検証実験では、鋳型内(鋳型中心)へ上方から直径25[mm]の鉄棒を挿入し、鋳塊の凝固界面の高さの経時変化を調べた(鋳型内への溶鋼注入完了後から5時間)。そして、測定結果と計算結果とを比較したところ、これらがほぼ一致することを確認した。さらに、「鉄と鋼」(平居正純ら、Vol.54、No.3(1968年),p.83)に報告されている扁平鋳塊の完全凝固時間と凝固計算で求めた完全凝固時間とを比較したところ、これらがほぼ一致した。このため、凝固計算から得られた結果は精度が高いと考えられる。
<計算結果>
図5(a)では、未凝固溶鋼体積率が約20%(注入後約5時間)までは未凝固溶鋼体積の減少速度が速いが、それ以降は未凝固溶鋼体積の減少速度が遅くなっている。また、図5(b)では、未凝固溶鋼体積率が約10%(注入後約5.5時間)までは未凝固溶鋼体積の減少速度が速いが、それ以降は未凝固溶鋼体積の減少速度が遅くなっている。
未凝固溶鋼体積率は(Z/X)×100で表されることから、図5(a)ではZ/X≒0.2以降で、図5(b)ではZ/X≒0.1以降で未凝固溶鋼体積率の減少速度が遅くなっている。そして、図5(a)ではY/X=0.2であり、図5(b)ではY/X=0.1であることから、いずれの鋳塊においても、「未凝固溶鋼Mの体積Z」と「押湯空間Pの体積Y」とが略等しくなる時点(Y≒Zの時点)から未凝固溶鋼体積の減少速度が遅くなっている。
ここで、未凝固溶鋼体積の減少速度について検討すると、図3に示すように、鋳型本体空間P内に供給された溶鋼(鋳塊本体部I)は鋳型と直接接触して冷却されるのに対し、押湯空間P内に供給された溶鋼(鋳塊押湯部I)は押湯枠5を介して冷却されるため鋳塊本体部Iより凝固が遅い。したがって、未凝固溶鋼体積の減少速度が速いときは、主に鋳塊本体部Iの凝固が進行しているのに対し、減少速度が遅くなってからは、主に鋳塊押湯部Iの凝固が進行していると考えられる。そうすると、Y≒Zとなる時点以降は、主に鋳塊押湯部Iの凝固が進行していると推測される。
しかしながら、実際は、Y≒Zの時点で鋳塊押湯部Iの凝固がある程度進行しているため、Y≒Zの時点では、未凝固溶鋼M(体積Z)の全てが押湯空間P(鋳塊押湯部I)に存在するのでなく、一部が鋳塊本体部I(厚み中心部分)に残っている。鋳塊本体部Iに残った未凝固溶鋼は、鋳塊押湯部Iの凝固体積(Y≒Z時の凝固体積)と略同体積の溶鋼である(以下において、鋳塊本体部Iに残った未凝固溶鋼を「未凝固溶鋼m」と称する)。このような状態から鋳塊押湯部Iの凝固がさらに進行すると、鋳塊本体部Iの未凝固溶鋼mが残った部分(厚み中心部分)でブリッジングが生じ、これが原因で引けが発生する。引けが発達するとパイプ状欠陥となり、鋳塊本体部Iに欠陥が生じる。そこで、Y≒Zの時点で、鋳塊本体部Iの未凝固溶鋼mが残った部分を押圧し、未凝固溶鋼mを鋳塊押湯部I側へ押し上げると、鋳塊本体部Iにパイプ状欠陥が発生することを防止できると考えられる(図4参照)。
このように、上記の結果から、Y≒Zとなる時点で、押湯テーパ部iを押し下げ、鋳塊本体部Iの未凝固溶鋼mが残った部分を押圧することにより、鋳塊本体部Iにパイプ状欠陥が発生することを効果的に抑制できることを見出した。
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について、図6を参照しつつ説明する。第2実施形態において第1実施形態と異なる点は、内外2層上置式押湯枠を用いていることである。なお、上述した第1実施形態と同一の構成については同一の符号を用い、その説明を適宜省略する。
押湯枠205は、図6に示すように、鋳型3上に載置された外層部210とその内側に配置された内層部220との2層構造になっている。内層部220の上端には内側及び外側に向かって延在した縁部が形成されている。
内層部220の下端部には、図6の拡大図に示すように、テーパ部220tが形成されている。テーパ部220tでは、内層部220の下端に近付くにつれて水平断面積が大きくなっている。
また、鋳造開始時、内層部220は、固定ピン208により外層部210に対して所定の高さに固定されている。固定ピン208は、外層部210に形成された貫通孔と内層部220の外周部に形成された穴とが連通した領域に挿入される。
また、外層部210の上端には、スペーサ209が配置されている。固定ピン208により内層部220が外層部210に固定された状態では、内層部220の縁部とスペーサ209とが鉛直方向に所定距離だけ離れているが、固定を解除し、内層部220を押し下げると、内層部220の縁部がスペーサ209上に配置される(図7(c)参照)。
そして、押湯枠205内には、第1実施形態と同様に、保温ボード6及び押湯ボード207が配置されている。押湯ボード207は、内層部220の内面に固定され、下端部が内層部220のテーパ部220tに沿ったテーパ形状となっている。
また、鋳型3への溶鋼注入開始前には、鋳型3、定盤4、押湯枠205、保温ボード6及び押湯ボード207によって囲まれた領域(鋳型空間P)が形成される。鋳型空間Pは、図6の拡大図に示すように、鋳型3と定盤4に囲まれた鋳型本体空間Pと、押湯枠205、保温ボード6及び押湯ボード207に囲まれた押湯空間Pとから構成されている。押湯空間Pの下端部には、押湯空間Pに近付くにつれて水平断面積が小さくなるテーパ空間pが形成されている。テーパ空間pで凝固した溶鋼は、押湯テーパ部i(鋳塊押湯部Iの下端部に形成されたテーパ部i)となる(図6(b)参照)。
次に、押湯枠205を用いた場合の造塊鋳造方法について説明する。
鋳型3内への溶鋼注入完了後、図6(a)に示すように、「所定の時点(−0.05≦(Z−Y)/X≦0.05となる時点)」で固定ピン208を抜き取り、内層部220にウェイト等を載せる(押し下げ開始)。内層部220は押し下げられ、これに伴って、鋳塊押湯部の押湯テーパ部iが押し下げられる。これにより、凝固殻が内側に押圧されることで、その内側にある未凝固溶鋼Mが押し上げられ、上方の空間Qに流れる(図6(b)参照)。そして、押湯テーパ部iを鉛直方向にd[m](0.005≦S・d/X≦0.015)押し下げた時点で内層部220の押し下げを終了する(図6(c)参照)。本実施形態では、内層部220の縁部がスペーサ209に当たるまで押し下げた時点が押し下げ終了となる。押し下げ終了時には、保温ボード6の下方の空間Qはほぼ消失する。
この状態から、未凝固溶鋼Mの凝固が進行すると、溶鋼は鋳塊押湯部Iで最終凝固する。このため、鋳塊の完全凝固時に、パイプ状欠陥が鋳塊本体部I(製品となる部分)に発生しない(図7(d)参照)。
このように、本実施形態においても、鋳塊本体部Iにパイプ状欠陥が生じないようにすることができるため、鋳塊の段階でパイプ状欠陥の発生を効率良く抑制できる。
〔第3実施形態〕
続いて、本発明の第3実施形態について、図7を参照しつつ説明する。第3実施形態において第1実施形態と異なる点は、上下2段上置式押湯枠を用いていることである。なお、上述した第1実施形態と同一の構成については同一の符号を用い、その説明を適宜省略する。
押湯枠305は、図7に示すように、鋳型3上に載置され、上段部310とその下方に配置された下段部320との2段構造となっている。
上段部310は、主に鋳塊押湯部を包囲する壁部によって形成されている(図7(d)参照)。また、上段部310の内周部には、下端部にテーパ部310tが形成されている(図7の拡大図参照)。テーパ部310tでは、上段部310の下端に近付くにつれて水平断面積が小さくなっている。
下段部320は、鋳型3上に配置され、スペーサとしても用いられる。下段部320を水平方向に引き抜くと、上段部310が押し下がり、鋳型3上に配置される。
また、押湯枠305内には、第1実施形態と同様に、保温ボード6及び押湯ボード307が配置されている。押湯ボード307は、上段部310の内周面及び下段部320の内周面に沿って配置されている。押湯ボード307の下端部は、上段部310テーパ部310tに沿ったテーパ形状となっている。
鋳型3への溶鋼注入開始前には、鋳型3、定盤4、押湯枠305、保温ボード6及び押湯ボード307によって囲まれた領域(鋳型空間P)が形成される。鋳型空間Pは、図7の拡大図に示すように、鋳型3と定盤4に囲まれた鋳型本体空間Pと、押湯枠305、保温ボード6及び押湯ボード307に囲まれた押湯空間Pとから構成されている。押湯空間Pの下端部には、押湯空間Pに近付くにつれて水平断面積が小さくなるテーパ空間pが形成されている。テーパ空間pで凝固した溶鋼は、押湯テーパ部i(鋳塊押湯部Iの下端部に形成されたテーパ部i)となる(図7(b)参照)。
次に、押湯枠305を用いた場合の造塊鋳造方法について説明する。
鋳型3内への溶鋼注入完了後、図7(a)に示すように、「所定の時点(−0.05≦(Z−Y)/X≦0.05となる時点)」で下段部320を抜き取り、上段部310にウェイト錘等を載せる(押し下げ開始)。上段部310は押し下げられ、これに伴って、鋳塊押湯部の押湯テーパ部iが押し下げられる。これにより、凝固殻が内側に押圧されることで、その内側にある未凝固溶鋼Mが押し上げられ、上方の空間Qに流れる(図7(b)参照)。そして、鋳塊押湯部の押湯テーパ部iを鉛直方向にd[m](0.005≦S・d/X≦0.015)押し下げた時点で上段部310の押し下げを終了する(図7(c)参照)。本実施形態では、上段部310が鋳型3上に載置された時点が押し下げ終了となる。押し下げ終了時は、保温ボード6の下方の空間Qはほぼ消失する。
この状態から、未凝固溶鋼Mの凝固が進行すると、溶鋼は鋳塊押湯部Iで最終凝固する。そのため、鋳塊の完全凝固時に、パイプ状欠陥が鋳塊本体部I(製品となる部分)に発生しない(図7(d)参照)。
このように、本実施形態においても、鋳塊本体部Iにパイプ状欠陥が生じないようにすることができるため、鋳塊の段階でパイプ状欠陥が発生することを効率良く抑制できる。
次に、本発明の実施例及び比較例を説明する。
押湯枠を押し下げる条件(時期、距離)を変えたときのパイプ状欠陥の発生の有無を調べた。
<実験条件>
下注造塊鋳造を行う際に、溶鋼注入温度を「液相線温度+40[℃]」とした。また、鋳型内の溶鋼の酸化を防止するため、鋳型へ溶鋼を供給した初期段階にSiO−CaO−Al系の被覆剤を投入して溶鋼浴面を被覆剤で覆った。さらに、鋳型内の溶鋼表面部を保温するため、鋳造前に予め断熱性の高い保温ボードを鋳型内に水平に吊り下げておき、鋳型内に供給された溶鋼状に浮かぶように配置した。また、溶鋼供給末期に保温ボード上に保温材を投入し、保温効果を高めた。そして、鋳塊の完全凝固後、溶鋼の供給開始から12時間経過後に鋳型から鋳塊を抜き取った。その後、鋳塊を250〜400[mm]厚みのスラブに分塊圧延した後、厚板圧延して製品を製造した。なお、比較例1〜15では、分塊圧延後のスラブ断面にパイプ状欠陥が生じていたため厚板圧延を行わなかった。
また、本実験では、30[ton]の鋳塊と40[ton]の鋳塊を鋳造した。30[ton]の鋳塊の鋳造には、図1に示す内挿式押湯枠を用い、押湯枠を押し下げる際に40[ton]のウェイトを使用した。一方、40[ton]の鋳塊の鋳造には、図6に示す内外2層上置式押湯枠を用い、50[ton]のウェイトを使用した。なお、比較例1〜4では、鋳造中に押湯枠を押し下げなかった。
表5〜7には実験条件を示している。本実験では、JIS G 3127に規定されている様な低温圧力容器用Ni鋼を製造した。また、これらの結果を表7に示している。ここで、表7に示す「d[m]」(鋳塊押湯部の押湯テーパ部iを押し下げた距離)は、「押湯枠を押し下げた距離」から「押湯ボードが押湯枠のテーパ部によって圧縮され潰れた長さ20[mm]」を差し引いた値である。
ここで、表7に示す「パイプ状欠陥発生」の評価方法及び「UT検査結果」の評価方法について説明する。
<パイプ状欠陥発生>
分塊圧延後、スラブ上端側から鋳塊押湯部に相当する部位をガス切断により切除し、切断面にパイプ状欠陥が存在する場合は、パイプ状欠陥有り「×」と評価した(図8参照)。この場合、鋳塊本体部にパイプ状欠陥が発生していると考えられるため、製品圧延を行わなかった。一方、切断面にパイプ状欠陥が存在せず、全面をスムーズにガス切断できた場合は、パイプ状欠陥無し「○」と評価した。この場合は、厚板圧延を実施した。
<UT検査結果>
厚板圧延を行って得られた製品に超音波探傷検査(UT試験)を行い、内部欠陥の有無を検査した。UT試験では、製品の厚み中心部において底面エコー高さの1/4以上の高さのエコーを返す欠陥が検出されなかった場合は、「合格」(欠陥無し)と判定した。
(結果)
表7に示すように、本発明を満たす実施例1〜12では、分塊圧延後のスラブ切断面にパイプ状欠陥が存在せず、良好な品質の製品が得られた。一方、本発明を満たさない比較例1〜15では、パイプ状欠陥が発生した。
比較例1〜4,11では、鋳造中に押湯枠を押し下げなかった。このため、未凝固溶鋼が鋳塊本体部で最終凝固したことにより、パイプ状欠陥が鋳塊本体部に発生したと考えられる。
また、比較例5,6,12,13では、(Z−Y)/Xが本発明の範囲(−0.05≦(Z−Y)/X≦0.05)を外れていた。比較例5,12では、(Z−Y)/Xが0.12,0.19(>0.05)であり、未凝固溶鋼が多く残っている時に鋳塊を押圧した。本例では、押圧後に未凝固溶鋼が鋳塊本体部で凝固したことにより、パイプ状欠陥が鋳塊本体部に発生したと考えられる。これに対し、比較例6,13では、(Z−Y)/Xが−0.07,−0.10(<−0.05)であり、未凝固溶鋼が殆ど残っていない時(完全凝固に近い状態)に鋳塊を押圧した。本比較例では、押圧時に既に鋳塊本体部にパイプ状欠陥が生じており、押圧により欠陥を縮小できなかったと考えられる。
さらに、比較例7〜10,14,15では、S・d/Xが本発明の範囲(0.005≦S・d/X≦0.015)を外れていた。比較例7,9,14では、S・d/Xが0.002,0.004(<0.005)であり、押圧量が少なかった。このため、未凝固溶鋼を十分に押し上げることができず、鋳塊本体部で未凝固溶鋼が最終凝固したため、鋳塊本体部にパイプ状欠陥が発生したと考えられる。これに対し、比較例8,10,15では、S・d/Xが0.021,0.019(>0.015)であり、押圧量が多かった。このため、未凝固溶鋼が溶鋼浴面から噴出し、鋳塊本体部にパイプ状欠陥が発生したと考えられる。
以上から、本発明を満たす条件では(−0.05≦(Z−Y)/X≦0.05となる時点で押湯空間Pの押湯テーパ部の押し下げを開始し、0.005≦S・d/X≦0.015を満たすd[m]だけテーパ部を押し下げた場合は)、パイプ状欠陥の発生を効果的に抑制できるとともに、良好な品質の製品が得られることがわかった。一方、本発明を満たさない場合は、鋳塊本体部にパイプ状欠陥が発生した。
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
例えば、上記実施形態では、押湯空間Pを押湯枠5,205,305、保温ボード6及び押湯ボード7,207,307に囲まれた空間としたが、押湯枠5の内周面に押湯ボード7が固定されていない場合は、押湯空間Pを押湯枠及び保温ボードに囲まれた空間とすることができる。
また、第1実施形態では、押湯枠5の上縁部52がスペーサ9に当たるまで押湯枠5を押し下げたが、上縁部52がスペーサ9に当たる前に押湯テーパ部iをd[m](0.005≦S・d/X≦0.015)押し下げることができると、その時点で押湯枠5の押し下げを終了してもよい。同様に、第2実施形態でも、内層部220の上端の縁部がスペーサ209に当たる前に押湯テーパ部iをd[m]押し下げることができると、その時点で内層部220の押し下げを終了してもよい。また、第3実施形態においても、上段部310が鋳型3上に載置される前に、押湯テーパ部をd[m]押し下げることができると、その時点で上段部310の押し下げを終了してもよい。
さらに、上記実施形態では、内挿式押湯枠(図1参照)、内外2層上置式押湯枠(図6参照)及び上下2段上置式押湯枠(図7参照)を例示したが、押湯枠の構成はこれらに限られない。
本発明の造塊鋳造方法は、Ni質量濃度が3.25[%]以上9.5[%]以下であるNi鋼の厚鋼板の製造に利用することができる。
1 取鍋
2 注入管
3 鋳型
4 定盤
5,205,305 押湯枠
6 保温ボード
7 押湯ボード
51 枠部
51t,220t,310t テーパ部
52 上縁部
41 湯路
100 下注ぎ造塊装置
210 外層部
220 内層部
310 上段部
320 下段部
鋳塊本体部
鋳塊押湯部
P 鋳型空間
鋳型本体空間
押湯空間
p テーパ空間
i 押湯テーパ部

Claims (1)

  1. Niの質量濃度[mass%]が、3.25以上9.5以下である溶鋼を、鋳型上部に押湯枠を組合せてなる鋳型空間に下方より注入し、
    鋳塊本体部及びその上方に連接した鋳塊押湯部を有する鋳塊を鋳造し、
    前記鋳型空間の全体積X[m]に対する、前記押湯枠に囲まれた押湯空間の体積Y[m]の比率Y/X[−]が
    0.1≦Y/X≦0.2
    であって、
    但し、前記鋳型空間の高さは、前記鋳型空間への溶鋼注入完了時における鋳型下端から鋳型内溶鋼浴面までの高さであり、
    製品厚みt[mm]が
    100≦t≦250
    となる厚鋼板の圧延素材となる扁平鋳塊の造塊鋳造方法において、
    前記押湯枠の下端部に、前記押湯枠の下端に近付くにつれて水平断面積が大きくなるテーパ部を形成し、
    前記鋳塊押湯部の下端部には、前記鋳塊押湯部の下端に近付くにつれて水平断面積が大きくなる押湯テーパ部が形成され、
    前記鋳型空間内に溶鋼を注入完了した後、
    前記鋳型空間の全体積X[m]に対する、鋳塊内部の未凝固溶鋼の体積Z[m]と前記押湯空間の体積Y[m]との差Z−Y[m]の比率(Z−Y)/X[−]が、
    −0.05≦(Z−Y)/X≦0.05
    となる時点で、
    前記押湯テーパ部を鉛直方向にd[m]押し下げ、
    前記押湯テーパ部下端の水平断面積と前記押湯テーパ部上端の水平断面積との差S[m]と、前記押湯テーパ部を押し下げる距離d[m]と、前記鋳型空間の全体積X[m]とが、
    0.005≦S・d/X≦0.015
    を満足することを特徴とする、パイプ状欠陥の無いNi鋼扁平鋳塊の造塊鋳造方法。
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