JP2014161675A - 抗血栓性材料としての生体親和性ポリマー - Google Patents

抗血栓性材料としての生体親和性ポリマー Download PDF

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Abstract

【課題】優れた抗血栓性を有する医療用機器を提供することを課題とする。
【解決手段】側鎖にエーテル基を少なくとも一つ含む構造と、生分解性ポリマー骨格からなる主鎖とを含む、生体親和性ポリマー組成物。
【選択図】図5

Description

本発明は、主に抗血栓性材料としての生体親和性ポリマーに関する。より詳細には、生体内に留置され、又は、生体に由来する物質に接触した際に、抗血液凝固作用等の血液適合性や、目的とする生体物質を選択的に吸着可能とできるような機能を有し、かつ生体内又は生体外で化学的に分解することができる機能を有する、医療用材料として使用するためのポリマー、そのポリマーを合成するための新規化合物及び当該化合物を用いたポリマーの製造方法、ならびにそのポリマーを含む組成物及び当該組成物を用いた医療用機器に関する。
一般に、医療用材料表面等に血液等の生体成分が接触すると、材料表面が異物として認識され、材料表面への生体組織中のタンパク質の非特異的吸着、変性、多層吸着等が生起し、この結果として凝固系、補体系、血小板系等の活性化が起こる。このため、生体との接触界面である医療用機器表面が異物として認識されることを防止するために、医療用機器表面に生体親和性を付与することが望まれる。具体的には、人工肺装置、透析装置、血液保存バッグ、血小板保存バッグ、血液回路、人工心臓、留置針、カテーテル、ガイドワイヤー、ステント、人工血管、内視鏡等の医療用機器では、血液等の生体物質に接触する部位が優れた生体親和性を有することが望まれる。
医療用機器表面に生体適合性を付与する手段として、従来から生体親和性を示す材料を人工的に合成し、これを各種医療用機器の表面に適用して使用することで生体に対する負荷を低減する試みがなされている。このような生体親和性材料としては、これまでに2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)ポリマー、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(2−メトキシエチルアクリレート)(PMEA)、ポリアルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド等が知られており、各種の用途で実用化がなされている。これらの生体親和性材料を医療用材料表面等の血液等の生体成分が接触する部位に使用することで、医療用機器表面が異物として認識されることが防止され、凝固系、補体系、血小板系等の活性化が抑制される。
上記MPCポリマーは、生体環境下で電気的な中性を保つベタインの一種であり、生体の細胞膜を被っているリン脂質極性基をビニル基等の重合性基に対してエステル結合を介して結合させ、更にその重合性基を重合させることで製造されるポリマーであり、アルキル鎖(主鎖)に対してリン脂質極性基が側鎖として設けられた構造を有している。
ポリエチレングリコール(PEG)は、エーテル構造である(C−O)を繰返し単位とする構造を有し、非常に優れた生体適合性を示すことが知られている。しかし、PEG自体は水溶性であるため、医療用材料として使用する場合には耐水溶性を付与する目的で、他のポリマーとのブロック共重合体やグラフト共重合体にして使用する等の必要がある。一方、ポリ(2−メトキシエチルアクリレート)(PMEA)等は、PEGの構成単位であるエーテル構造を主な構成とする基をビニル基等に結合したモノマーを重合させて、アルキル鎖(主鎖)に対してエーテル構造を主な構成とする側鎖として設けた構造を有している。このような構造を採ることにより、PEGが示す生体親和性を維持しつつ、アルキル鎖により耐水溶性を付与することが可能であることが明らかになっている。
ポリアルコキシアルキル(メタ)アクリルアミドは、側鎖の末端にエーテル構造を有する、(メタ)アクリルアミドを繰り返し単位とする構造を有し、その適度な親水性により、凝固系、補体系、血小板系の活性化を抑制することが可能であり、優れた血液親和性を発現することが見出されている。
主鎖に対してリン脂質極性基を含む側鎖を有するMPCポリマーをはじめ、エーテル構造からなるPEGや、主にエーテル構造から構成される側鎖を有するポリマーであるPMEA、並びにエーテル構造及びアミド結合を有するポリアルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド等のような、エーテル構造、アミド結合等の親水性基を有するポリマー材料が、生体を構成する物質と全く異なる構造を有するにも関わらず高い生体親和性を示す理由は必ずしも明らかとされていない。一方、最近の研究により、これらのポリマーには、生体物質において観察される「中間水」と呼ばれる状態の水分子が含有可能であることが明らかにされている(例えば、非特許文献1を参照されたい)。つまり、上記文献にも記載されるように、生体由来物質であるか人工的な合成物であるかによらず、生体親和性を示す物質は「中間水」を含有可能であり、この中間水と呼ばれる状態の水分子が物質の表面に存在することにより生体組織中のタンパク質の非特異吸着が防止され、その結果として生体親和性を発現することが実験的に明らかにされてきている。そして、所定の物質が「中間水」を含有するためには、必ずしもPEGのように物質全体が「中間水」の含有に適した構造を有する必要はなく、アルキル鎖等を主鎖として「中間水」の含有に適した構造を側鎖として設けることによっても、「中間水」を含有可能であることが明らかになっている。
生体親和性物質に含有される中間水は、典型的には、過冷却後の昇温過程で見られる特異な潜熱の放出や吸収によって特徴付けられる。つまり、中間水を含有する物質においては、−100℃程度に冷却した後に室温付近まで徐々に加熱する過程で、−40℃付近において潜熱の放出が観察されたり、−10℃以上の氷点下において潜熱の吸収が観察される等、特異的な潜熱の放出や吸収が観察される。様々な検証により、これらの潜熱の放出・吸収は物質に含まれる水分子の一定割合が規則化・不規則化を生じることに起因することが明らかになっており、このような挙動を示す水分子が中間水と定義されている。中間水は、物質を構成する分子からの特定の影響により弱く拘束された水分子であると推察されるが、リン脂質等の生体物質にも含まれることが明らかになっており、生体組織中のタンパク質の非特異吸着等の防止と関連するものと考えられている。そして、生体に含まれるリン脂質極性基を側鎖として設けたPMCポリマーの他、上記PEG、PMEA、ポリアルコキシアルキル(メタ)アルキルアミド等の物質においても中間水を含有可能であることが、生体親和性の発現に関係しているものと考えられている。
一方、これまでに加水分解や酵素分解等の作用により分解して消失する生分解性を有する生分解性ポリマーの存在が知られている。生分解性ポリマーは、一般には廃棄された後に自然界からの作用によって分解されることによって自然環境への負担を低下する目的で使用される。これに対し、近年では特に体内に留置される手術用縫合糸やステント、カテーテルのような医療用機器に生分解性ポリマーを使用することによって、治療完了後に抜糸等の処置を不要としたり、薬剤を徐放したりする機能を付加することが一般的となっている。
体内に留置される医療用機器に使用される生分解性ポリマーにおいては、所定期間で分解する特性以外に、分解により生じる物質が生体に対して毒性を示さずに代謝により体外に排出されるように設計されることが一般的である。このような生分解性ポリマーが使用される医療用機器の例として、例えば、特許文献1には、所定の構造を有する生分解性ポリマーと薬剤の混合層を生体内留置物の表面に設けることで、当該生分解性ポリマーの分解に伴って薬剤を徐放する技術が記載されている。また、特許文献2には、カテーテル等に使用される生分解性ポリマーであって、生体内で分解した際にカルボン酸を生成しないことにより、局所的なpH減少による炎症などのリスクが少ない点で生体適合性を示すと考えられるポリマーが記載されている。
しかしながら、上記のような医療用機器に使用される生分解性ポリマーにおいて、ポリマーとして存在する際の生体に対する親和性(生体親和性)を考慮した先行例は限られている。つまり、医療用機器に使用される間は、生体内の血液や組織に対して異物反応を生じさせない生体親和性を示すポリマーであって、且つ、所定の期間で生分解を生じて代謝されるようなポリマーは、これまでにほとんど提供されていない。例えば、特許文献3には、血液親和性や非血栓形成性等を示すリン脂質成分を生分解性ポリマーに対して共有結合により導入したポリマーが記載され、生分解性と血液親和性の両立が試みられているが、当該特性の発現は確認されていない。
Tanaka, M. et al., J. Biomat. Sci. Polym. Ed., 2010, 21, 1849-1863
特開第2009−61021号公報 特開第2012−232909号公報 特開第2012−46761号公報
以上のように、生分解性ポリマーに対して、当該ポリマーが生体内に存在する際に生体内の血液や組織に対して異物反応を生じさせない生体親和性が付与された材料の可能性は必ずしも現在までに明らかにされていない。このため、例えば、血管内に留置されるステントにおいては、ステント表面に設けられる生分解性ポリマーに対してヘパリン等の抗血栓性の薬剤を混合することで、再狭窄を防止することも一般的となっている。
上記問題を解決するために、本発明は生体親和性を示すと共に、良好な生分解性を示すポリマーを提供することを課題とする。また、上記ポリマーの製造においてモノマーとして用いる新規の化合物とその製造方法、及びそれを用いたポリマーの製造方法を提供することを課題とする。更に、当該ポリマーを用いた医療用機器を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明は、以下の特徴を有する。
(1)側鎖にエーテル基を少なくとも一つ含む構造と、生分解性ポリマー骨格からなる主鎖とを含む、生体親和性ポリマー組成物。
(2)前記生分解性ポリマー骨格が、式:(I)
−C−A− (I)
(式中、
は、カーボネート結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合又はウレア結合を有する単位構造から選択され;
Aは、少なくとも一つの基−Yによって水素原子が置換されているC1−8アルキレン基であり;
Yは、式:−L−Z(式中、Zは、鎖状エーテル、環状エーテル又はアセタール構造を少なくとも一つ有する構造であり、Lは、主鎖とZとのリンカーであり、アルキレン基、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合もしくはウレア結合又はそれらの組み合わせを有する単位構造から選択される)で示される基である)
で示される繰り返し単位を含む、上記(1)に記載の生体親和性ポリマー組成物。
(3)前記Aが、C1−8アルキレン基中のCに隣接する炭素原子以外の少なくとも一つの炭素原子がN、O又はSから選択されるヘテロ原子で置き換えられているか、及び/又はC1−8アルキレン基中の水素原子が低級アルキル基で置換されている基である、上記(2)に記載の生体親和性ポリマー組成物。
(4)前記リンカーLが、以下に示される基:

から選択されるか、又は上記の基とZとの結合部分に1,2,3−トリアゾール基を有している基から選択される、上記(2)又は(3)に記載の生体親和性ポリマー組成物。
(5)Zが、下記式(II):

[式中、lは、1〜30の整数であり、Uは、水素原子又は炭素数5以下の直鎖もしくは分岐鎖状のアルキル基であるか、又は下記式(III):

(式中、l’は、1〜5の整数である)で示される基である]
で示される基であるか、あるいは、Zは、下記式(IV):

(式中、l”は、1〜5の整数である)で示される基であるか、あるいは、Zは、下記式(V):

(式中、M’は、水素原子又は炭素数3以下の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基であり、E及びE’は、互いに独立して、−O−又は−CH−であり、ただし、少なくとも一方は−O−であり、Q’及びQ”は、互いに独立して、水素原子、炭素数6以下の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル、アルケニルもしくはアルキニル、C3−8脂環式アルキル又はベンジルを表すか、あるいはQ’及びQ”は、一緒になって炭素数2〜5のアルキレン基を形成し、k及びk’は、互いに独立して、0〜2の整数である)
で示される基である、上記(2)〜(4)のいずれか一に記載の生体親和性ポリマー組成物。
(6)前記主鎖が、生分解性ポリマーと非生分解性ポリマーとの共重合体である、上記(1)〜(5)のいずれか一に記載の生体親和性ポリマー組成物。
(7)下記一般式(VII):

(式中、
X及びX’は、互いに独立して−O−、−NH−又は−CH−であり、ただし、少なくとも一方は−CH−ではなく;
Yは、基−L−Zで示される構造部分であり(ここで、L及びZは、請求項2で定義されたとおりである);
Mは、水素原子、炭素数3以下の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基又は基−L−Zであり;
m及びm’は、互いに独立して、0〜5の整数であり、ただし、X及びX’が共に−O−のとき、m及びm’の少なくとも一方は0ではなく、また、m及びm’の和は、7以下であり;
これらの各々は、各繰り返し単位において異なっていてもよく、
で表される、モノマー化合物。
(8)上記(7)に記載の一般式(VII)で示されるモノマー化合物を開環重合する工程を含む、生体親和性ポリマー組成物の製造方法。
(9)上記(7)に記載のモノマー化合物の開環重合によって製造される生体親和性ポリマー組成物。
(10)生体内組織や血液に接して使用されたときに、分解されるまでの間、血液や組織に対して異物反応を抑制するための、上記(1)〜(6)のいずれか一に記載の生体親和性ポリマー組成物。
(11)上記(1)〜(6)、(9)及び(10)のいずれか一に記載の生体親和性ポリマー組成物を含む、医療用機器。
本発明によれば、生体に対して抗血栓性等の生体親和性を示すと共に、良好な生分解性を示すポリマー材料が提供可能となる。
実施例1で示されるMPA−MEのH−NMRスペクトルである。 実施例2で示されるMTC−MEのH−NMRスペクトルである。 実施例3で示されるP(TMC−ME)のH−NMRスペクトルである。 比較例1で示されるPTMCのH−NMRスペクトルである。 実施例4における、DSC測定の結果を示すグラフである。 実施例7における、血小板粘着数を示すグラフである。
用語の定義
本発明において、以下の用語は、単独で現れるか又は組み合わせて現れるかにかかわらず、それぞれについて説明される内容を示すものとして使用される。
本明細書において、用語「アルキル基」は、炭素原子による骨格を有する直鎖又は分岐鎖状の炭素鎖を含む、1価の飽和炭化水素基を示す。また、用語「アルキレン基」は、直鎖状の炭素鎖からなる2価の炭化水素基を示す。用語「アルキレンオキシド鎖」は、アルキレン基の末端以外の炭素原子をエーテル結合で置換した構造を示す。
用語「アルケニル」は、炭素原子による骨格中に一つ以上の炭素−炭素二重結合を有する直鎖又は分岐鎖状の炭素鎖を含む、1価の飽和炭化水素基を示す。アルケニルの炭素原子の数は特に制限されないが、炭素原子数2〜20が好ましく、炭素原子数2〜10がより好ましく、炭素原子数2〜6が最も好ましい。アルケニルの例は、エテニル(ビニル)、プロペニル、ブテニル、2−メチルプロペニル、ペンテニル、ヘキセニル等を含むが、これらに限定されない。また、用語「アルキニル」は、炭素原子による骨格中に一つ以上の炭素−炭素三重結合を有する直鎖又は分岐鎖状の炭素鎖を含む、1価の飽和炭化水素基を示す。アルキニルの炭素原子の数は特に制限されないが、炭素原子数2〜20が好ましく、炭素原子数2〜10がより好ましく、炭素原子数2〜6が最も好ましい。アルキニルの例は、エチニル、プロピニル、ブチニル、2−メチルプロピニル、ペンチニル、ヘキシニル等を含むが、これらに限定されない。
本明細書において、用語「アルコキシ」は、上記のアルキル基が酸素原子に結合した構造で、酸素原子で他の分子構造に結合している、1価の飽和炭化水素基を示す。アルコキシの炭素原子の数は特に制限されないが、炭素原子数1〜20が好ましく、炭素原子数1〜10がより好ましく、炭素原子数1〜6が最も好ましい。アルコキシの例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、i−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシ等を含むが、これらに限定されない。
用語「脂環式アルキル」とは、炭素による骨格が環を形成する、1価の脂肪族環状炭化水素基を示す。脂環式アルキルは、環を形成する炭素原子の数により表現され、例えば「C3−8脂環式アルキル」というときは、環を形成する炭素原子の数が3〜8個であることを示す。脂環式アルキルの例は、シクロプロピル(C)、シクロブチル(C)、シクロペンチル(C)、シクロヘキシル(C11)、シクロヘプチル(C13)、シクロオクチル(C15)等を含むが、これらに限定されない。
用語「鎖状エーテル」は、前記アルキル基中の末端以外の一つの−CH−部分がエーテル結合(−O−)で置き換えられた構造を示す。また、用語「環状エーテル」は、前記脂環式アルキルの一つの−CH−部分が、エーテル結合で置き換えられた構造を示す。
用語「モノマー」又は「単量体」は、互換的に使用することができ、高分子の基本構造の構成要素となりうる、低分子量の分子をいう。モノマーは通常、例えば炭素−炭素二重結合、エステル結合のような、重合反応の反応点となる官能基を有する。
用語「ポリマー」又は「重合体」は、互換的に使用することができ、分子量の小さいモノマーから得ることができる、モノマー単位の繰り返しで構成された構造を有する分子をいう。用語「高分子」は、ポリマーのほか、例えばタンパク質、核酸等のような多数の原子が共有結合してなる巨大分子をいう。
ポリマーにおいて用語「平均重合度」は、1個のポリマー分子中に含まれるモノマー単位の平均数をいう。すなわち、ポリマー組成物中には、異なる長さのポリマー分子がある程度の範囲で分散して存在している。
ポリマーの重合度に関して「数平均分子量」とは、ポリマー組成物中の分子1個あたりの分子量の平均をいい、「重量平均分子量」とは、重量に重みをつけて計算した分子量をいう。また、数平均分子量と重量平均分子量の比を分散度といい、ポリマー組成物の分子量分布の尺度となる。分散度が1に近いほど、ポリマー組成物中の平均重合度が近くなり、同じ程度の長さのポリマー鎖を多く含むことになる。
本発明において、用語「生体親和性材料」とは、中間水を含有可能であることにより、生体物質と接触した際に異物として認識されにくい材料をいう。生体親和性材料には、例えば補体活性、血栓活性、組織侵襲性等の生体に対する活性を有しない材料であれば、特定のタンパク質吸着や細胞粘着を誘導し、あるいは誘導しないような活性を示す材料を含む。本発明において用語「血液適合性材料」とは、主に血小板の付着や活性化に起因する血液凝固を惹起しない材料をいう。
本発明において、「生分解性ポリマー」とは、加水分解、酵素分解、微生物分解等の作用により化学的に分解することが可能なポリマーをいう。生分解性ポリマーの例としては、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン等のポリエステルやポリカーボネート等のような化学合成ポリマー、ポリペプチド、多糖類、セルロース等のような生体由来のポリマー、及びこれらの組み合わせによるポリマーが挙げられる。
本発明において「側鎖」とは、ポリマー主鎖に結合した枝分かれ構造を示す。
したがって、本発明の一つの態様は、側鎖にエーテル基を少なくとも一つ含む構造と、生分解性ポリマー骨格からなる主鎖とを含む、生体親和性ポリマー組成物である。本明細書において、「生体親和性ポリマー組成物」とは、血液凝固を抑制して血栓の形成を防止するために特に適した構造を有するポリマー組成物をいい、そのような用途における医療材料等に使用することができる。
本発明の一つの態様は、下記式(I)に示す繰り返し単位を有する生体親和性ポリマー組成物である。
−C−A− (I)
上記式(I)において、Cは、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合もしくはウレア結合又はそれらの組み合わせを有する単位構造から選択され、非限定的な具体例として、以下のスキーム1に掲げる単位構造が挙げられる:
上記式(I)において、Aは、少なくとも一つの基−Yによって水素原子が置換されているC1−8アルキレン基である。Aは、場合により、C1−8アルキレン基中のCに隣接する炭素原子以外の少なくとも一つの炭素原子がN、O又はSから選択されるヘテロ原子で置き換えられているか、及び/又はC1−8アルキレン基中の水素原子が低級アルキル基で置換されている基であってもよい。上記の基Yは、式:−L−Zで示される基であり、Lは、主鎖とZとのリンカーであって、アルキレン基、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合もしくはウレア結合又はそれらの組み合わせを有する単位構造から選択される。また、Zは、ポリエチレングリコール等の鎖状エーテル、環状エーテル又はアセタール構造を少なくとも一つ、すなわち少なくとも一つエーテル基を有するような分子鎖であれば特に制限されない。これらの各々は、各繰り返し単位において異なっていてもよい。
つまり、本発明に係るポリマーは、従来知られる生分解性ポリマーの内、脂肪族ポリエステル系やポリアミド系のものと同様に、主鎖として上記Aで示されるアルキレン基等を上記Cで示されるカーボネート結合、エステル結合、ウレタン結合、ウレア結合、アミド結合等で結合した繰り返し単位を含むことを特徴とする。また、当該アルキレン基等に含まれる炭素原子に対して所定の結合様式によりエーテル構造を含む側鎖が導入されていることを特徴とする。
上記エーテル構造を含む側鎖がアルキル鎖を主鎖とするポリマーに導入された際に、当該ポリマーが生体親和性を示すことは従来から知られている。これに対し、本発明においては、当該エーテル構造を含む側鎖を、カーボネート結合等によりアルキレン基等が結合された生分解性が期待される主鎖に対して導入することにより、生分解性を失うこと無しに生体親和性を付与可能であることを見出したことに基づくものである。
本発明に係るポリマーの重合度は特に制限されないが、重合度に応じてポリマーの平均分子量も変化し、分子量に応じて材料として使用するときの操作性等が変化する。このような点から本発明に係るポリマーの平均分子量は、2000〜1000000の範囲であることが好ましく、5000〜800000の範囲であることがより好ましく、8000〜500000の範囲であることが最も好ましい。本発明に係るポリマーの分子量分布は、特に制限されないが、1.0〜10の範囲であることが好ましく、1.0〜8の範囲であることがより好ましく、1.05〜5.0の範囲であることが最も好ましい。また、本発明に係るポリマーにおいては、式(I)で示されるC及びAの各々の構造は各繰り返し単位において異なっていてもよい。そのようなポリマーは、ポリマーの原料となるモノマー分子を二種類以上用いて重合反応を行うことで、合成することができる。
上記式(I)において構造部分Zは、ポリエチレングリコール等の鎖状エーテル、環状エーテル又はアセタール構造を少なくとも一つ、すなわち少なくとも一つエーテル基を有するような分子鎖であれば特に制限されない。
本発明の一つの態様においては、構造部分Zは、下記式(II)で示すことができる。

式(II)中、繰り返し数(l)は、1〜30の整数であり、Uは、水素原子又は炭素数5以下の直鎖もしくは分岐鎖状のアルキル基である。式(II)で示される繰り返しは鎖状エーテルに相当し、繰り返し数(l)が大きい場合には側鎖の水への溶解度が高くなる傾向が見られ、その結果としてポリマー全体が水溶性を有することになる。このため、式(II)で示される構造がポリマーに導入される密度等にも依存するが、典型的にはlは20以下であり、また10以下とされることが好ましい。また、特に式(II)で示される構造がポリマーに高い密度で導入される場合には、ポリマーの耐水溶性を確保するためにlを5以下としても、ポリマーは十分な割合で中間水を含有することができる。更に、lを1、2、3程度にすることで、充分な耐水性を確保すると共に中間水の含有割合を低下させて、血小板粘着は抑制しつつも所定の細胞等を吸着可能なポリマーとすることができる。また、式(II)で示される繰り返しはエチレングリコール(−C−O−)に対応するものであるが、本発明ではこれに限定されず、ポリマーの耐水溶性を向上する点でプロピレングリコール(−C−O−)に対応する構造を用いることも可能である。
鎖状エーテルの末端に設けられる構造Uにおいては、アルキル基の炭素数が大きいものを用いることでポリマーの耐水溶性が向上される一方で、炭素数が減少することで含有される中間水が増加する傾向にあり、典型的にはUとしてメチル(炭素数1)が好ましい。
又、Uは、下記式(III)で示すことができる基であってもよい。

式(III)中、l’は、1〜5の整数とすることができるが、l’が1のとき(すなわち、3員環のとき)には水中で開環して不安定となるため、l’は2、3、4又は5のいずれかとすることが好ましい。
また、本発明の他の具体的な態様においては、構造部分Zは、下記式(IV)で示すことができる。

式(IV)で示される構造は環状エーテルに相当するものであり、このような構造を側鎖に導入することで中間水の含有が可能となる。式(IV)中、l”は、1〜5の整数とすることができるが、l”が1のとき(すなわち、3員環のとき)には水中で開環して不安定となるため、l”は2、3、4又は5のいずれかとすることが好ましい。
また、本発明の他の態様においては、構造部分Zは、下記式(V)で示すことができる。

式(V)中、M’は、水素原子、炭素数3以下の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基であり、好ましくは、メチルである。E及びE’は、互いに独立して、−O−又は−CH−であり、ただし、少なくとも一方は−O−であってよいが、ともに−O−であるアセタール構造をとることが好ましい。Q’及びQ”は、互いに独立して、水素原子、炭素数6以下の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル、アルケニルもしくはアルキニル、C3−8脂環式アルキル又はベンジルを表すか、あるいはQ’及びQ”は、一緒になって炭素数2〜5のアルキレン基を形成するが、含有可能な中間水の割合を好ましい程度に保つため、好ましくは水素原子又は炭素数6以下のアルキルであり、最も好ましくは、Q及びQ’は、共に水素原子又はメチルである。k及びk’は、互いに独立して、0〜2の整数であるが、原料の入手容易性等から、k=1、k’=0である場合が好ましい。
以上のような構造部分Zは、少なくとも一つのエーテル基(−O−)を有していることにより、例えばポリエチレングリコールに見られるような高い分子運動性を示すことが可能であって、このような構造を側鎖中に有することでポリマーとして中間水を含有可能になると考えられる。そして、構造部分Zに含まれるエーテル基の数、構造部分Z自体の嵩高さ等を調節することにより、得られるポリマーが含有可能な中間水の量が調節されて抗血栓性の程度を調節することができる。
上記式(I)において、リンカーLは、主鎖と構造部分Zを連結する役割を果たす部分であり、典型的にはエーテル基、エステル基、アミド基、アミノ基、ウレタン基、ウレア基、アルキレン基等の、二価の官能基を用いることができる。上記構造部分Zは、上記のようにエーテル構造を有していることにより、一般的に高い分子運動性を有しうることが知られており、このような構造を側鎖部分に有することによって、ポリマーとして中間水を含有可能となると考えられている。このため、主鎖と構造部分Zを連結するリンカーLとしては、構造部分Zの個別の構造に応じて、分子運動性を阻害しない構造のものを種々選択して用いることが望ましい。また、ポリマーとして中間水を良好に含有して生体親和性を発揮するためには、ポリマーの各部が疎水性とならないことが望ましいと共に、特にタンパク質等の生体物質の吸着が生じ難いことが望まれる。このため、リンカーLの構造としては、疎水的な構造が過度に大きくならず、また極性が強い官能基が含まれないことが望ましい。また、モノマー分子を合成する際に構造部分Zを導入する反応を容易に行える構造のリンカーとすることが望ましい。
望ましく使用されるリンカーLの具体的構造は、使用する構造部分Zの構造にも依存するが、一般的には上記エーテル基、エステル基、アミド基、アミノ基、ウレタン基、ウレア基、アルキレン基等の他、上記スキーム1に例示したような単位構造が挙げられる。また、リンカーLと構造部分Zとの結合を形成するにあたって、例えばクリック反応と呼ばれる反応(例えばAngew. Chem. Int. Ed., 2001, 40, 2004-2021を参照されたい)を用いて、例えばアジドとアルキレンから誘導した1,2,3−トリアゾール構造を有するリンカーを導入することもできる。例示的な合成方法としては、先に例示したリンカーLの末端にエテニル基(−C≡C−)を導入したような基と、アジドを反応させることで、先に例示したリンカーLと構造部分Zとが1,2,3−トリアゾール環を介して結合したような構造を得ることができる。これらの構造を同様にリンカーLとして用いることができる。
上記で示したリンカーとして使用される二価の官能基の内で、アミド基、アミノ基、ウレタン基、ウレア基等のN−H結合を含む官能基をリンカーLとして用いた場合には、このリンカー部分が親水性を示す点で好ましいが、ポリマーに対して生体内に存在するタンパク質が吸着し易くなる傾向が見られるため、その用途によっては体内の生体物質が付着する場合が考えられる。また、メチレンやエチレンなどのアルキレン基を用いた際には疎水性が発現し、ポリマーが含有可能な中間水の割合が低下する傾向が見られる。一方、エーテル基をリンカーとする場合には、一般に合成の際の出発物質が主鎖側と側鎖側ともにアルコールを持つため、保護基を導入する反応で余計な副生物が生じて分離が困難になり、収率が低下することが予想される。このため、製造の容易さや生体親和性の観点からはリンカーLとしてエステル基を用いることが特に好ましい。
本発明に係るポリマーにおいて、上記説明した構造の側鎖は、主鎖の繰り返し単位全てについて存在している必要は必ずしもない。一方、合成の簡便さや、抗血栓性の程度をポリマーの構造から予測しやすくする観点から、一般的には重合の際に用いるモノマー化合物として予め構造部分Zを導入した化合物を使用して、主鎖ポリマーの繰り返し単位全てについて構造部分Zを含む側鎖が存在するようにすることが好ましい。
また、上記式(I)におけるAの部分に含まれる主鎖を成す一つの炭素原子にリンカーを介して2つの構造部分Zを導入することも可能である。また、更に、重合の際に用いるモノマーにおいて、一つ又は複数のカルボニル結合等(C)となる部分と、一つ以上の構造部分Zを導入することで、重合によって得られるポリマーにおいて、各カルボニル結合等(C)の間に存在する構造部分Zの数を任意に調整することも可能である。
上記式(I)において「C」で示される部分は、カーボネート結合、エステル結合、ウレタン結合、ウレア結合、アミド結合等であって、いずれもカルボニル炭素と、それに隣接する位置の少なくとも一方に酸素原子又は窒素原子が存在する基によって構成されるものである。このような構造をポリマーの主鎖に比較的高い密度で導入することにより、従来知られる脂肪族ポリエステル系やポリアミド系の生分解性ポリマーと同様に、この部分が生体内で加水分解等を生じることによって生分解性が発現するものと考えられる。
本発明に係るポリマーにおいて、結合部分Cとして使用される結合様式は、ポリマーが使用される用途、特に生分解に要する期間などに基づいて適宜決定することができる。結合部分Cとしてウレタン結合やアミド結合を用いた場合には、比較的体内での生分解速度の低いポリマーを得ることができる。一方、これらの結合様式を用いた場合には、生分解の際にアミン(NH)やカルボン酸が生成物として生じることで用途が限定されることが予想される。また、エステル結合は、比較的高い生分解速度を示すことが期待されるが、アミド結合と同様にカルボン酸が生分解の際の生成物として生じることが予想される。これに対して、結合部分Cとしてカーボネート結合を用いた場合には、ウレタン結合やアミド結合と比較して高い生分解速度を示すことが期待されると共に、生分解によって二酸化炭素とアルコールになることが期待される点で、好ましく用いることができる。
上記式(I)において、アルキレン基部「A」は少なくとも一つの基−Yと、場合により低級アルキル基によって水素原子が置換されているC1−8アルキレン基であり、場合により、Cに隣接する炭素以外の少なくとも一つの炭素がN、O又はSから選択されるヘテロ原子で置き換えられていてもよい。結合部分Cの選択とも関連して、当該アルキレン基部Aは少なくとも一つの炭素原子を有するものとすることが可能であり、また最大で8個程度の炭素鎖からなるものであることが生分解性の点から好ましい。また、炭素数が3以上のアルキレン基において、両端に位置する以外の炭素原子の少なくとも一つをエーテル基で置換した構造に相当するアルキレンオキシド鎖を使用することができる。このように、エーテル基が導入されたアルキレンオキシド鎖を主鎖に含ませることにより、アルキル鎖を用いる場合に比較してポリマーとして耐衝撃性などの機械的強度を向上させることができると共に、主鎖に対しても親水性を付与することが可能となる。
また、上記のように、上記結合部分Cにより相互に結合されるアルキレン基等により構成される主鎖に対し、当該アルキレン基等に含まれる任意の炭素原子に中間水の含有に関連するエーテル構造等を導入して側鎖とすることにより、結合部分Cに起因する生分解性を保持しつつ、中間水を含有可能なポリマーとすることが可能である。
本発明の好ましい一つの具体的な態様は、前記式(I)において、Cが、エステル結合(−C(=O)O−)又はカーボネート結合(−OC(=O)O−)である繰り返し単位からなる生体親和性ポリマー組成物である。更に具体的には、前記生分解性ポリマー骨格が、下記式(VI):

(式中、
X及びX’は、互いに独立して−O−、−NH−又は−CH−であり、ただし、少なくとも一方は−CH−ではなく;
Mは、水素原子、炭素数3以下の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基又は基−L−Zであり;
m及びm’は、互いに独立して、0〜5の整数であり、ただし、X及びX’が共に−O−のとき、m及びm’の少なくとも一方は0ではなく、また、m及びm’の和は、7以下であり;
Yは、基−L−Zで示される構造部分であり(ここで、L及びZは、上記定義のとおりである);
これらの各々は、各繰り返し単位において異なっていてもよく、
nは、重合度を表し、好ましくは2〜2000の範囲である
生体親和性ポリマー組成物である。
また、Mは、アルキル基であることが好ましく、メチル基が最も好ましい。
mとm’の値は、モノマーの原料化合物の選択によって決定されるが、モノマーの調製の点から、mとm’の和が、1〜4の範囲にあることが好ましく、mとm’が、共に1であることが最も好ましい。
本発明の一つの態様として、前記主鎖を、生分解性ポリマーと非生分解性ポリマーとの共重合体とすることができる。非生分解性ポリマーとしては、必要とする物性に応じて当業者に公知のポリマーを適宜用いることができ、その例としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル(PEMA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリウレタン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフルオロアルケン、ナイロン、シリコーン等が挙げられるが、これらに限定されない。非生分解性ポリマー骨格は、生分解性ポリマー骨格とブロック共重合体を形成していてもよく、生分解性ポリマーを形成するモノマー単位とランダム共重合していてもよい。また、所望の物性を得るために、複数の非生分解性ポリマーとの共重合体を形成していてもよい。
本発明に係る生体親和性ポリマーは、例えば以下のように、重合して得られるポリマーの側鎖となる部分を予め導入した環状構造を有するモノマーを開環重合することにより製造することができる。

例えば、上記一般式(VII)において、カルボニル炭素に隣接するX、X’として、CH、O、Nから選択することで、重合後のポリマーの主鎖に含まれる結合部分Cとして、カーボネート結合(O/O)、エステル結合(CH/O)、ウレタン結合(O/N)、アミド結合(CH/N)、ウレア結合(N/N)のいずれかが選択される。
また、m、m’として、互いに独立して0を含む整数(カーボネート結合、ウレア結合の場合には、いずれか一方は0でない)を選択することで、結合部分Cとにより結合されるアルキレン基部Aの長さが決定される。そして、上記一般式(VII)の「Y」として、炭素原子に適宜のリンカーLを介して構造部分Zを結合させることで、重合後のポリマーの側鎖部分にエーテル構造を有する側鎖を設けることができる。上記一般式(VII)の「M」として、水素、アルキル基、又は、上記「Y」と同様にリンカーLを介して構造部分Zを結合させることができる。
上記のようにして得られる環状モノマーを、典型的にはカルボニル炭素に隣接する結合のいずれかで開環して相互に重合することで、本発明に係る生体親和性ポリマーを製造することができる。
上記では、構造部分Zを含む部分Yを一つ含む環状モノマーについて説明したが、これに限定されず、m、m’に含まれる適宜の炭素原子に対しても一つ又は二つの構造部分Zを含む部分Yを設けることも可能である。また、m、m’に含まれる適宜の炭素原子(X、X’としてO、Nが選択される場合には、当該O、Nに隣接する炭素原子は除く)を酸素で置換することにより、重合後のポリマーの主鎖部分にエーテル構造を導入することができる。また、N,S等のヘテロ原子により、アルキレン基部Aの炭素原子を置換することも可能である。
例えば、一般式(VII)において、
X、X’を共に酸素原子として環状カーボネートとし、m及びm’が共に1であり、Mが、メチル基であり、
Yとして、エステル結合により所定のエーテル構造を結合したものを用いれば、当該環状カーボネートを開環重合させることにより、C=3のアルキレン基がカーボネート結合により結合された主鎖を有し、当該アルキレン基の中央の炭素原子に対して当該エーテル構造とメチル基が側鎖として設けられたポリマーを得ることができる。
本発明において、上記のように使用されるモノマー化合物としては、例えば、
5−メチル−5−(2−メトキシエチル)オキシカルボニル−1,3−ジオキサン−2−オン、
5−メチル−5−(2−エトキシエチル)オキシカルボニル−1,3−ジオキサン−2−オン、
5−メチル−5−(2−テトラヒドロフラニルメチル)オキシカルボニル−1,3−ジオキサン−2−オン、
5−メチル−5−(3−テトラヒドロフラニルメチル)オキシカルボニル−1,3−ジオキサン−2−オン、
5−メチル−5−(3−テトラヒドロピラニルメチル)オキシカルボニル−1,3−ジオキサン−2−オン
5−メチル−5−[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]オキシカルボニル−1,3−ジオキサン−2−オン、
5−メチル−5−(2−エポキシオキシエチル)オキシカルボニル−1,3−ジオキサン−2−オン、
4−メチル−4−(2−メトキシエチル)オキシカルボニル−1,3−ジオキサン−2−オン、
4−メチル−4−(2−エトキシエチル)オキシカルボニル−1,3−ジオキサン−2−オン、
4−メチル−4−(2−テトラヒドロフラニルメチル)オキシカルボニル−1,3−ジオキサン−2−オン、
4−メチル−4−(3−テトラヒドロフラニルメチル)オキシカルボニル−1,3−ジオキサン−2−オン、
4−メチル−4−(3−テトラヒドロピラニルメチル)オキシカルボニル−1,3−ジオキサン−2−オン
4−メチル−4−[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]オキシカルボニル−1,3−ジオキサン−2−オン、
4−メチル−4−(2−エポキシオキシエチル)オキシカルボニル−1,3−ジオキサン−2−オン、
γ−メチル−γ−(2−メトキシエチル)オキシカルボニル−δ−バレロラクトン、
γ−メチル−γ−(2−エトキシエチル)オキシカルボニル−δ−バレロラクトン、
γ−メチル−γ−(2−テトラヒドロフラニルメチル)オキシカルボニル−δ−バレロラクトン、
γ−メチル−γ−(3−テトラヒドロフラニルメチル)オキシカルボニル−δ−バレロラクトン、
γ−メチル−γ−(3−テトラヒドロピラニルメチル)オキシカルボニル−δ−バレロラクトン、
等が挙げられるが、これらに限定されず、目的とするポリマーの構造に応じて、適宜使用するモノマーを選択することができる。
上記では、カーボネート結合等の生分解性が期待される結合と、所定のエーテル基を含む構造が導入されたモノマーを重合して本発明に係る生体親和性ポリマーを製造する方法について説明したが、本発明はこれに限定されず、生分解性が期待される結合を有するポリマーに対して、主鎖をなす所定の炭素原子に対して所定のエーテル基を含む構造を導入することで本発明に係る生体親和性ポリマーを製造してもよい。本発明の生体親和性ポリマー組成物において、主鎖ポリマーの繰り返し単位全てにわたってエーテル基を含む構造が側鎖として結合している必要は必ずしもないが、合成の簡便さや、ポリマーの特性を予測しやすくする観点からは、エーテル基を含む構造が導入された単一種のモノマーを重合してポリマーとすることも好ましい。
また、例えば、使用する環状モノマーの環状部分に、ポリマーにおいてカーボネート結合等を形成するカルボニル炭素を複数導入すると共に、環状部分をなす適宜の炭素にエーテル基を含む構造を導入したモノマーを用いることより、カーボネート結合等の生分解性が期待される結合間に導入されたエーテル基を含む構造を有する側鎖の分布が、隣接する繰り返し単位で同一でないポリマーを製造することもできる。
また、本発明の一つの態様において、主鎖の部分に、生分解性ポリマーと非生分解性ポリマーのいずれをも含めることができる。そのような構造を有するポリマーは、例えば生分解性ポリマーと非生分解性ポリマーの共重合により、得ることができる。
一般式(VII)で示される化合物において、例えば、X、X’が共に−O−である場合、すなわち環状カーボネートである場合は、そのような化合物は、当業者に公知の方法を用いて合成することができる。例えば、以下のスキームに示すように、ジオールの誘導体から出発して、(a)エーテル基を含む構造を導入する反応、及び(b)ホスゲン、炭酸ジフェニル又は触媒存在下での一酸化炭素等の炭酸源を作用させて環状カーボネートを形成する反応を含む工程により、合成することができる。

(式中、M、m、m’、Y、Zは、先に定義されたとおりであり、P及びP’は脱離基を表し、Rは、−O−フェニルであるか、塩素原子であるか、又は存在しない)
さらに別の一例として、リンカー部分Lがエステル結合であるような一般式(VII)の化合物は、まず工程(a)として、ジオール構造を有するカルボン酸、例えば2,2−ビス(メチロール)プロピオン酸に、エーテル基を含む構造を有するアルコール、例えば2−メトキシエタノールを作用させてビス(ヒドロキシ)エステルを形成し、次いで工程(b)として、トリホスゲンを作用させることで、得ることができる。
ビス(ヒドロキシ)エステルを合成する工程は、場合により溶媒中で、例えばイオン交換樹脂の存在下で加熱することによって行われる。溶媒を用いる場合には、反応を阻害せず、原料を溶解する溶媒であればその種類は特に制限されないが、原料である構造部分Zを有するアルコールが液体であり、ジオールを十分に溶解する場合は、これを溶媒として用いることもできる。反応温度は室温から溶媒の沸点の範囲をとることができるが、収率を向上させるため、室温から100℃が好ましく、50〜90℃の範囲が最も好ましい。反応時間は原料化合物、加熱温度によって変化するが、1〜100時間、好ましくは10〜50時間の範囲である。
リンカー部分Lがエステル以外の構造である場合は、原料化合物の選択、例えばLをアミドとする場合は構造部分Zを有するアルコールをアミンにする、Lをエーテル基(−O−)とする場合にはジオール構造を有するカルボン酸をハロゲン化物にする等の変更を適宜行うことにより、対応するジオールの誘導体が合成される。その際に用いられる反応条件は、当業者に公知である。
環状カーボネートを形成する工程は、例えば前記得られたジオールの誘導体に、適切な溶媒中、塩基の存在下で、トリホスゲンを作用させることによって行われる。用いられる溶媒は特に制限されず、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン等の芳香族溶媒又は酢酸エチル等が挙げられるが、これらに限定されない。塩基はトリホスゲンを分解して反応系中でホスゲンを発生させるために用いられる。用いられる塩基としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン等が挙げられるが、これらに限定されない。
一般式(VII)で示される化合物において、X、X’の一方が−O−である場合、すなわちラクトンである場合は、そのような化合物は、当業者に公知の方法を用いて合成することができる。
一般式(VII)で示されるラクトンは、(a)エーテル基を含む構造を導入する反応、及び(b)ラクトン化反応を含む方法によって合成される。エーテル基を含む構造を導入する反応は、先にカーボネートの合成において述べたとおりである。ラクトン化反応は、例えばヒドロキシカルボン酸の分子内縮合、ヨードラクトン化又はStaudingerのケテン環化付加反応等の縮合反応、環状ケトンのBaeyer-Villiger酸化のような過酸を用いた酸化反応、あるいは予め環化したラクトールを酸化する等、当業者に公知の反応を用いて行うことができる。種々のモノマー化合物の合成に対する汎用性の高さから、過酸を用いた酸化反応が好ましい。例えば、一般式(VII)で示されるラクトンは、以下に示すようなスキームに従って合成することができる。原料化合物は、市販されているか又は当業者に公知の合成方法によって得ることができる。

(式中、M、m、m’、Zは、先に定義されたとおりである)
本発明の一つの態様は、一般式(VII)で示される化合物を開環重合する工程を含む、抗血栓性ポリマーの製造方法である。
一般式(VII)で示される化合物の開環重合は、当業者に公知の方法により実施される。開環重合の方法としては、カチオン重合反応、アニオン重合反応等を用いることができる。カチオン重合反応は、三フッ化ホウ素エーテル錯体、四塩化チタン、塩化アルミニウム等のルイス酸、塩酸、メタンスルホン酸等のプロトン酸、ヨウ化メチル等のアルキルカチオン発生剤を開始剤として用いて、行うことができる。アニオン開環重合は、アルカリ金属、金属ヒドリド、金属アルコキシド、有機金属化合物等を開始剤として用いて、行うことができる。
一般式(VII)で示される化合物が環状カーボネートである場合、ラクトンである場合のいずれも、カチオン重合及びアニオン重合のいずれをも用いることができる。環状カーボネートをカチオン重合する場合には、脱炭酸に伴うポリエーテルの副生を抑制するために、アルキルハライドのような大きな求核性を有する対アニオンを発生する開始剤を用いて行うことが好ましい。また、配位挿入機構で進行するとされており、米国食品医薬品局(FDA)によって使用が認められている、現在、該環状モノマー類の開環重合に最も一般的に用いられているオクチル酸スズを触媒とし、アルコールを開始剤として用いて該開環重合反応を行うこともできる。さらには、近年、注目されている有機分子触媒は水素結合によってモノマーとアルコール開始剤を共に温和に活性化させて重合反応を進行させるため、脱炭酸はもとよりエステル交換反応などの連鎖移動反応も抑制することができ、分子量分布が比較的揃ったポリマーが得られやすく、モノマー活性化触媒としてはチオウレア構造や芳香族フルオロアルコールを含むルイス酸、開始剤活性化触媒としては3級アミンを用いて該重合反応を行うこともできる。
一般式(VII)で示される化合物の開環重合は、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン又はトルエン等の溶媒中、1−ピレンブタノール、ラウリルアルコール、デカノール又はステアリルアルコール等の重合開始剤、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン(DBU)、ジメチルアミノピリジン(DMAP)又はトリエチレンジアミン(DABCO)等の環状アミン重合開始剤の存在下で、場合により二官能基化チオウレア、例えば1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)−3−シクロヘキシル−2−チオウレア等の有機分子触媒を用いて、窒素雰囲気下、室温で反応させることにより行われる。
本発明の重合方法において、反応系は、副反応を抑制する点から、酸素、水を除去した窒素雰囲気下で行うことが好ましい。反応温度は、室温から溶媒の沸点の範囲で選択することができる。反応の制御等の点から、室温〜50℃の範囲が好ましく、室温で行うことが最も好ましい。反応時間は、原料となる一般式(VII)の化合物、反応温度、触媒の有無に応じて変動するが、例えば室温で触媒を用いて行う場合、反応時間は1分〜12時間、好ましくは30分〜6時間、さらに好ましくは1時間〜3時間である。反応の終了は、モノマーである一般式(VII)の化合物が反応系中に存在しているか否かで判断することができ、H−NMR、TLC等の方法により確認することができる。重合反応が十分に進行したら、反応停止剤を加えることによって重合反応を終了させることができる。反応停止剤には、例えば酢酸、塩酸、硫酸、安息香酸等が挙げられるが、その種類は特に制限されない。
一般式(VII)で示されるモノマー化合物の開環重合によって製造される生体親和性ポリマー組成物もまた、本発明の目的である。
本発明により製造される生体親和性ポリマー組成物には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、必要に応じて、例えば、ラジカル捕捉剤、過酸化物分解剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤等の添加剤を添加して使用することができる。また、本発明のポリマー以外のポリマーと混合させて使用することができる。このような、本発明の生体親和性ポリマー組成物を含む組成物もまた、本発明の目的である。
本発明により製造される種々の生体親和性ポリマー組成物は、適宜の有機溶媒に溶解させて単独で使用することもできるし、使用の目的に応じて他の高分子化合物と混合して使用する等、各種の組成物として使用することができる。また、本発明の医療用機器は、生体内組織や血液と接して使用される表面の少なくとも一部分に本発明の生体親和性ポリマー組成物を有していればよい。つまり、医療用機器を成す基材の表面に対して、本発明の生体親和性ポリマー組成物を含む組成物を表面処理剤として用いることができる。また、医療用機器の少なくとも一部の部材を本発明の生体親和性ポリマー組成物、又は、その組成物で構成しても良い。
本発明の一つの態様は、生体内組織や血液に接して使用されたときに、分解されるまでの間、血液や組織に対して異物反応を抑制するための、本発明の生体親和性ポリマー組成物である。
本発明の生体親和性ポリマー組成物は、医療用途に好ましく使用されることができる。本発明の生体親和性ポリマー組成物を他の高分子化合物等と混合して組成物として使用する場合には、その使用の用途に応じて適宜の混合割合で使用することができる。特に、本発明の生体親和性ポリマー組成物の割合を90重量%以上とすることで、本発明の特徴を強く有する組成物とすることができる。その他、使用の用途によっては、本発明の生体親和性ポリマー組成物の割合を50〜70重量%とすることで、本発明の特徴を活かしつつ、各種の特性を併せ持つ組成物とすることができる。
本発明の一つの態様は、本発明の生体親和性ポリマー組成物を含む、医療用機器である。ここで、「医療用機器」とは、人工器官等の体内埋め込み型デバイス及びカテーテル等の一時的に生体組織と接触することがあるデバイスを含み、生体内で取り扱われるものに限定されない。また、本発明の医療用機器は、本発明のポリマー組成物を少なくとも表面の一部に有する医療用途に使用される機器である。本発明でいう医療用機器の表面とは、例えば、医療用機器が使用される際に血液等が接触する医療用機器を構成する材料の表面並びに材料内の孔の表面部分等をいう。
なお、本明細書において、「生体内組織や血液に接して使用され」とは、例えば、生体内に入れられた状態、生体内組織が露出した状態で当該組織や血液と接して使用される形態、及び体外循環医用材料において体外に取り出した生体内成分である血液と接して使用される形態等を当然に含むものとする。また、「医療用途に使用され」とは、上記「生体内組織や血液に接して使用され」、又は、それを予定して使用されることを含むものである。
本発明において、医療用機器を構成する基材の材質や形状は特に制限されることなく、例えば、多孔質体、繊維、不織布、粒子、フィルム、シート、チューブ、中空糸や粉末等いずれでも良い。その材質としては木錦、麻等の天然高分子、ナイロン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリオレフィン、ハロゲン化ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリ(メタ)アクリレート、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体等の合成高分子あるいはこれらの混合物が挙げられる。また、金属、セラミクス及びそれらの複合材料等が例示でき、複数の基材より構成されていても構わず、その血液と接する表面の少なくとも一部、好ましくは血液と接する表面のほぼ全部に本発明に係る生体親和性ポリマー組成物が設けられることが望ましい。
本発明の生体親和性ポリマー組成物は、生体内組織や血液と接して使用される医療用機器の全体をなす材料、又はその表面部をなす材料として用いることができ、体内埋め込み型の人工器官や治療器具、体外循環型の人工臓器類、手術縫合糸、さらにカテーテル類(血管造影用カテーテル、ガイドワイヤー、PTCA用カテーテル等の循環器用カテーテル、胃管カテーテル、胃腸カテーテル、食道チューブ等の消化器用カテーテル、チューブ、尿道カテーテル、尿菅カテーテル等の泌尿器科用カテーテル)等の医療用機器の血液と接する表面の少なくとも一部、好ましくは血液と接する表面のほぼ全部が本発明に係る生体親和性ポリマー組成物で構成されることが望ましい。また、本発明に係る生体親和性ポリマー組成物が有する生分解性を利用して、治療の際に体内に留置される医療用機器に特に好ましく用いることができる。
本発明の生体親和性ポリマー組成物は、止血剤、生体組織の粘着材、組織再生用の補修材、薬物徐放システムの担体、人工すい臓や人工肝臓等のハイブリッド人工臓器、人工血管、塞栓材、細胞工学用の足場のためのマトリックス材料等に用いても良い。
これらの医療用機器においては、血管や組織への挿入を容易にして組織を損傷しないため、さらに表面潤滑性を付与してもよい。表面潤滑性を付与する方法としては水溶性高分子を不溶化して材料表面に吸水性のゲル層を形成させる方法が優れている。この方法によれば、生体親和性と表面潤滑性を併せ持つ材料表面を提供できる。
本発明の生体親和性ポリマー組成物はそれ自体が生体親和性に優れた材料であるが、様々な生理活性物質をさらに担持させることもできるため、血液フィルターのみならず、血液保存容器、血液回路、留置針、カテーテル、ガイドワイヤー、ステント、人工肺装置、透析装置、内視鏡等の様々な医療用機器に用いることができる。
具体的には、本発明の生体親和性ポリマー組成物を、血液フィルターを構成する基材表面の少なくとも一部にコーティングしてもよい。また、血液バッグと前記血液バッグに連通するチューブの血液と接する表面の少なくとも一部に本発明の高分子化合物をコーティングしてもよい。また、チューブ、動脈フィルター、遠心ポンプ、ヘモコンセントレーター、カーディオプレギア等からなる器械側血液回路部、チューブ、カテーテル、サッカー等からなる術野側血液回路部から構成される体外循環血液回路の血液と接する表面の少なくとも一部を本発明の生体親和性ポリマー組成物でコーティングしてもよい。
また、先端に鋭利な針先を有する内針と、前記内針の基端側に設置された内針ハブと、前記内針が挿入可能な中空の外針と、前記外針の基端側に設置された外針ハブと、前記内針に装着され、かつ前記内針の軸方向に移動可能なプロテクタと、前記外針ハブと前記プロテクタとを連結する連結手段とを備えた留置針組立体の、血液と接する表面の少なくとも一部が本発明の生体親和性ポリマー組成物でコーティングされてもよい。また、長尺チューブとその基端(手元側)に接続させたアダプターから構成されるカテーテルの血液と接触する表面の少なくとも一部が本発明の生体親和性ポリマー組成物でコーティングされてもよい。
また、ガイドワイヤーの血液と接触する表面の少なくとも一部が本発明の生体親和性ポリマー組成物でコーティングされてもよい。また、金属材料や高分子材料よりなる中空管状体の側面に細孔を設けたものや金属材料のワイヤや高分子材料の繊維を編み上げて円筒形に成形したもの等、様々な形状のステントの血液と接触する表面の少なくとも一部が本発明の生体親和性ポリマー組成物でコーティングされてもよい。
また、多数のガス交換用多孔質中空糸膜をハウジングに収納し、中空糸膜の外面側に血液が流れ、中空糸膜の内部に酸素含有ガスが流れるタイプの中空糸膜外部血液灌流型人工肺の、中空糸膜の外面もしくは外面層に、本発明の生体親和性ポリマー組成物が被覆されている人工肺としてもよい。
また、透析液が充填された少なくとも一つの透析液容器と、透析液を回収する少なくとも一つの排液容器とを含む透析液回路と、前記透析液容器を起点とし、又は、前記排液容器を終点として、透析液を送液する送液手段とを有する透析装置であって、その血液と接する表面の少なくとも一部が本発明の生体親和性ポリマー組成物でコーティングされてもよい。
本発明の生体親和性ポリマー組成物を含む組成物を医療用機器等の表面に保持させる方法としては、コーティング法、放射線、電子線及び紫外線によるグラフト重合、基材の官能基との化学反応を利用して導入する方法等の公知の方法が挙げられる。この中でも特にコーティング法は製造操作が容易であるため、実用上好ましい。さらにコーティング方法についても、塗布法、スプレー法、ディップ法等があるが、特に制限なくいずれも適用できる。その膜厚は、好ましくは、0.1μm〜1mmである。例えば、本発明の生体親和性ポリマー組成物を含む組成物の塗布法によるコーティング処理は、適当な溶媒に本発明の生体親和性ポリマー組成物を含む組成物を溶解したコーティング溶液に、コーティングを行う部材を浸漬した後、余分な溶液を除き、ついで風乾させる等の簡単な操作で実施できる。また、コーティングを行う部材に本発明の生体親和性ポリマー組成物をより強固に固定化させるために、コーティング後に熱を加え、本発明の生体親和性ポリマー組成物との接着性を更に高めることもできる。また、表面を架橋することで固定化しても良い。架橋する方法として、コモノマー成分として架橋性モノマーを導入しても良い。また、電子線、γ線、光照射によって架橋しても良い。
架橋性モノマーとしては、メチレンビスアクリルアミド、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリアリルイソシアネート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート等のビニル基又はアリル基を1分子中に複数個有する化合物のほかに、ポリエチレングリコールジアクリレートがあげられる。このうち、ポリエチレングリコールジアクリレートを用いて、種々の官能基を導入した場合が、官能基を有する化合物の導入率が高く、更にポリエチレングリコール鎖を導入して親水性化できることにより、上記のように目的以外の細胞やタンパク質等の非特異的吸着が抑制されるので好ましい。この場合のポリエチレングリコール鎖の分子量は好ましくは100〜10000、さらに好ましくは500〜6000である。
以上のように本発明の生体親和性ポリマー組成物を含む組成物を、医療用機器の血液と接触する表面の少なくとも一部に導入すると、凝固系、補体系、血小板系の活性化等を抑制することが可能であり、優れた生体適合性を付与することができ、さらに生分解性を有するため、生体及び環境に対する負荷を少なくすることができる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、以下の例で用いた薬品は、とくに断りの無い場合は市販品をそのまま用いた。以下の例において、実施例1〜3及び比較例1で得られた生成物(中間化合物、最終化合物)の構造の確認、重合の進行度、各実施例で得られた重合体の数平均分子量及び分子量分布の測定、中間水の有無の確認は以下のようにして行った。
(1)数平均分子量([Mn]、単位:g/mol)
ピーク分子量が既知の標準ポリスチレンを用い、該標準ポリスチレンで校正したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(東ソー社製「HLC−8220」、カラム構成:Tosoh TSK−gels super AW5000、super AW4000、super AW3000)を使用して、重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を測定した。(溶媒:テトラヒドロフラン、温度:40℃、流量:1.0mL/min)。
(2)分子量分布([Mw/Mn])
上記(1)の方法で求めた重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の値を用い、その比(Mw/Mn)として求めた。
(3)NMR測定
モノマー及びポリマーの構造解析については、NMR測定装置(日本電子株式会社製、JEOL 500MHz JNM−ECX)を用い、H−NMR測定及び13C−NMR測定を行った。なお、ケミカルシフトはCDClH:7.26ppm、13C:77.1ppm)を基準とした。
[実施例1]2,2−ビス(メチロール)プロピオン酸2−メトキシエチル(MPA−ME)の合成

2,2−ビス(メチロール)プロピオン酸(ビス−MPA;30.0g、0.224mol)、イオン交換樹脂Amberyst-15(登録商標)(6.00g)を2−メトキシエタノール(150mL、1.91mol)に加えて90℃にて45時間加熱、撹拌した。その後、反応溶液からイオン交換樹脂を濾別し、得られた濾液を減圧下で濃縮、乾燥して淡黄色の油状物質として、2,2−ビス(メチロール)プロピオン酸2−メトキシエチル(MPA−ME)を得た(25.1g、収率58.5%)。1H-NMR (500 MHz, CDCl3): δ 4.35 (quin, 2H, CH2CH2OCH3), 3.85 (d, 2H, CHaHbOH), 3.73 (d, 2H, CH2HbOH), 4.35 (quin, 2H, CH2OCH3), 3.39 (s, 3H, OCH3), 1.11 (s, 3H, CH3).
[実施例2]5−メチル−5−(2−メトキシエチル)オキシカルボニル−1,3−ジオキサン−2−オン(MTC−ME)の合成

MPA−ME(25.1g、0.131mol)とピリジン(63.5mL、0.787mol)をジクロロメタン(DCM;150mL)に加え、ドライアイス−アセトン浴中で−75℃に冷却した。次にトリホスゲン(19.5g、0.0655mol)のDCM溶液(200mL)を滴下し、−75℃の冷却下にて2時間、その後室温にて2時間撹拌した。反応終了後、飽和塩化アンモニウム水溶液(200mL)を加えて45分間撹拌し、次いで有機相を1N 塩酸水溶液(200mL)で2回、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(200mL)、飽和食塩水(200mL)、及びイオン交換水(200mL)にて洗浄した。得られた有機相を硫酸マグネシウムにて乾燥後、減圧下で濃縮、乾燥した。その後、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル)にて精製し、無色の粘性液体として、5−メチル−5−(2−メトキシエチル)オキシカルボニル−1,3−ジオキサン−2−オン(MTC−ME)を得た(11.0g、収率43.8%)。1H-NMR (500MHz, CDCl3): δ 4.68 (d,2H,CHaHbOCOO), 4.32 (quin, 2H, CH2CH2OCH3), 4.20 (d, 2H, CHaHbOCOO), 3.57 (quin, 2H, CH2OCH3), 3.33 (s, 3H, OCH3), 1.31 (s, 3H, CH3). 13C-NMR (125MHz, CDCl3): δ 171.2 , 147.6 , 73.0 , 70.1 , 65.0 , 59.0 , 40.3 , 17.6。
[実施例3]MTC−MEの開環重合:P(MTC−ME)の調製

窒素雰囲気下グローブボックス内で、MTC−ME(0.441g、2.02mmol)を、1−ピレンブタノール(PB;5.2mg、0.019mmol)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU;6.1mg、0.040mmol)及び1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)−3−シクロヘキシル−2−チオウレア(TU;15.0mg、0.041mmol)の存在下、DCM(1mL)中、室温で重合した。90分間の撹拌後、H−NMRにてモノマーの消費を確認した後、停止剤として無水酢酸を数滴加え、一晩撹拌した。その後、反応溶液をジエチルエーテル:ヘキサン(1:3、40mL)中に再沈殿し、真空下で乾燥させて無色で粘性のあるポリマー、P(MTC−ME)を得た(0.350g、収率79.3%)。GPC: Mn 9556 g/mol, Mw/Mn 1.27. 1H-NMR (500MHz, CDCl3) δ 4.30 (m, 6H, COOCH2), 3.58 (t, 2H, CH2OCH3), 3.36 (s, 3H, OCH3), 1.27 (s, 3H, CH3).
[比較例1]PTMCの合成

窒素雰囲気下のグローブボックス内で、トリメチレンカーボネート(TMC:408mg、4.0mmol)を、PB(11.3mg、0.041mmol)、DBU(33.5mg、0.22mmol)、TU(75.3mg、0.20mmol)の存在下、DCM(1mL)中、室温で重合した。90分間の撹拌後、H−NMRにてモノマーの消費を確認した後、停止剤として無水酢酸を数滴加え、一晩撹拌した。その後、反応溶液をメタノール(40mL)中に再沈殿し、真空下で乾燥させて、無色で粘性のあるポリマーPTMCを得た(292.9mg、71.8%)。GPC: Mn 12000 g/mol, Mw/Mn 1.1. 1H-NMR (500MHz, CDCl3) δ 4.25(t, 4H, CH2CH2CH2), 2.05(quin, 2H, CH2CH2CH2).
[実施例4]P(TMC−ME)のDSC測定
乾燥状態及び5%水を含有させた状態のP(TMC−ME)について、DSC測定を行った。DSC装置(エスアイアイ・ナノテクノロジーズ株式会社、「EXSTAR X−DSC7000」)を用い、窒素流量50mL/min、5.0℃/minの条件で測定を行った。温度プログラムは、(i)30℃から−100℃まで冷却、(ii)−100℃で5分間保持、(iii)−100℃から30℃まで加熱を行った。上記(iii)において、水の低温結晶化に起因する発熱ピーク及び水の低温融解に起因する吸熱ピークの有無によって中間水の有無を確認した。乾燥状態及び5%水を含有させた状態のP(TMC−ME)のDSC測定の結果を図5に示す。5%水を含有させたP(TMC−ME)のDSC測定の結果を示す(b)の図より、−5℃付近に水の低温融解に伴う挙動、−15℃付近に水の低温結晶化に伴う挙動が確認され、本発明の抗血栓性ポリマーが、中間水を保持しており、すなわち生体適合性を有すること、生体適合性ポリマーとして機能し得ることが明らかになった。
[実施例5]水の静的接触角測定(液滴法)
メタノールで前洗浄したPET基板(直径14mm、厚さ125μm)に、1.0、0.5、0.2、0.1w/v%の各濃度に調整したP(MTC−ME)及びPTMCのアセトン溶液(40μL)をスピンコートにて塗布した(スピン条件:500rpm 5s、2000rpm 10s、SLOPE 5s、4000rpm 5s、SLOPE 4s、25℃)。1度目のスピンコートの10分後に2度目の塗布を行った。24時間の真空乾燥後、各ポリマーコート基板の中心部、左端、右端の3点についてそれぞれ水に対する接触角を測定した。1点の測定につき2μLの水滴を使用した。
[実施例6]水の静的接触角測定(水中気泡法)
ミリQ水の入った水槽に実施例5と同様のポリマーコート基板を、コート面を下向きにして浸漬させた。マイクロピペッターを用いて、気泡(2μL)を浸漬させたポリマーコート基板の中心部、左端、右端の3点に付着させ、コーティング面と気泡との接触角をθ/2法を用いて測定した。実施例5及び6の接触角測定の結果を、表1に示す。実施例3で得られたポリマーの接触角は、対照としてのPETを用いた場合と比べて小さな値を示し、実施例3で得られたポリマーの表面がより親水性であることが示された。また、比較例1で得られたポリマーの接触角は、PETを用いた場合と比べて大きな値を示し、ポリマーの表面がより疎水性であることを示した。
[実施例7]血小板粘着試験
P(MTC−ME)の0.2w/v%のアセトン溶液を塗布したスピンコート基板を8mm四方に切り、走査型電子顕微鏡(SEM)用試料台に固定した。ヒト血液を1500rpmで5分間遠心分離し、上澄みを多血小板血漿(platelet rich plasma:PRP)として回収した。残りの血液をさらに4000rpmで10分間遠心分離した上澄みを乏血小板血漿(platelet poor plasma:PPP)として回収した。PPPをリン酸緩衝(phosphate buffered saline:PBS)溶液を用いて800倍に希釈し、さらにPRPを希釈し、顕微鏡にて血小板数を確認しながら血小板濃度が4×10cell/mLの血小板溶液を調製した。この血小板溶液を各基板に200μL滴下し、37℃にて1時間静置した。その後、各基板をPBS溶液にて2回洗浄し、1%グルタルアルデヒド溶液に浸漬し、37℃にて2時間固定した。固定化した試料はPBS溶液にて10分、PBS:水=1:1にて8分、水にて8分、さらに水でもう一度8分浸漬させて洗浄した。各試料は室温で風乾し、SEMにて血小板粘着数を計測した。計測結果は、各基板表面に粘着した血小板の粘着形態を三種類、すなわちI型:活性化の度合いが小さい、血液中と同様の円形状の粘着形態、II型:活性化の度合いが中程度の、偽足形成が見られる粘着形態、III型:活性化の度合いが大きい、伸展した粘着形態に分類し、PETを対照として評価した。
血小板粘着数の計測結果を図6に示す。この結果から、比較例のPTMCと比べて、本発明の抗血栓性ポリマーは、血小板の粘着数を小さく抑えることができ、良好な生体適合性、抗血栓性を示すことが明らかになった。
[実施例8]酵素分解試験
P(MTC−ME)とPTMCの2種類のポリマーを使用した。1.5mLチューブにポリマーを30mg、リパーゼ溶液1mLを加えて、37℃にて静置した。リパーゼ溶液は2日毎に交換し、9日後、チューブよりリパーゼ溶液を抜き取り、残ったポリマー試料をミリQ水で3回すすいだ。その後、室温で24時間の真空乾燥後のポリマー重量から重量損失を求めた。
酵素処理9日後の重量減少率はそれぞれ、P(MTC−ME):6.4%、PTMC:1.7%であった。この結果から、比較例のPTMCと比べて、本発明の抗血栓性ポリマーは、酵素による優れた生分解性を有することが明らかになった。
本発明によれば、本発明のポリマー組成物は、血液凝固等の原因となる物質が付着しにくい、抗血栓材料として用いることができる。本発明のポリマー組成物は、例えば、人工血管のような医療用機器、又はステント等の、生体に接触する、又は生体内に留置させることがある医療用機器の表面処理剤として用いることができる。さらに、本発明のポリマー組成物を用いた医療用機器は、生分解性をも有することから、生体、環境に負荷を与えない高機能医療材料、スマートバイオマテリアルとして、例えば、組織の再生後に分解・吸収される人工代替器官や、埋め込み可能な細胞培養足場材料として用いることができる。

Claims (11)

  1. 側鎖にエーテル基を少なくとも一つ含む構造と、生分解性ポリマー骨格からなる主鎖とを含む、生体親和性ポリマー組成物。
  2. 前記生分解性ポリマー骨格が、式:(I)
    −C−A− (I)
    (式中、
    は、カーボネート結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合又はウレア結合を有する単位構造から選択され;
    Aは、少なくとも一つの基−Yによって水素原子が置換されているC1−8アルキレン基であり;
    Yは、式:−L−Z(式中、Zは、鎖状エーテル、環状エーテル又はアセタール構造を少なくとも一つ有する構造であり、Lは、主鎖とZとのリンカーであり、アルキレン基、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合もしくはウレア結合又はそれらの組み合わせを有する単位構造から選択される)で示される基である)
    で示される繰り返し単位を含む、請求項1に記載の生体親和性ポリマー組成物。
  3. 前記Aが、C1−8アルキレン基中のCに隣接する炭素原子以外の少なくとも一つの炭素原子がN、O又はSから選択されるヘテロ原子で置き換えられているか、及び/又はC1−8アルキレン基中の水素原子が低級アルキル基で置換されている基である、請求項2に記載の生体親和性ポリマー組成物。
  4. 前記リンカーLが、以下に示される基:

    から選択されるか、又は上記の基とZとの結合部分に1,2,3−トリアゾール基を有している基から選択される、請求項2又は3に記載の生体親和性ポリマー組成物。
  5. Zが、下記式(II):

    [式中、lは、1〜30の整数であり、Uは、水素原子又は炭素数5以下の直鎖もしくは分岐鎖状のアルキル基であるか、又は下記式(III):

    (式中、l’は、1〜5の整数である)で示される基である]
    で示される基であるか、あるいは、Zは、下記式(IV):

    (式中、l”は、1〜5の整数である)で示される基であるか、あるいは、Zは、下記式(V):

    (式中、M’は、水素原子又は炭素数3以下の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基であり、E及びE’は、互いに独立して、−O−又は−CH−であり、ただし、少なくとも一方は−O−であり、Q’及びQ”は、互いに独立して、水素原子、炭素数6以下の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル、アルケニルもしくはアルキニル、C3−8脂環式アルキル又はベンジルを表すか、あるいはQ’及びQ”は、一緒になって炭素数2〜5のアルキレン基を形成し、k及びk’は、互いに独立して、0〜2の整数である)
    で示される基である、請求項2〜4のいずれか一項に記載の生体親和性ポリマー組成物。
  6. 前記主鎖が、生分解性ポリマーと非生分解性ポリマーとの共重合体である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の生体親和性ポリマー組成物。
  7. 下記一般式(VII):

    (式中、
    X及びX’は、互いに独立して−O−、−NH−又は−CH−であり、ただし、少なくとも一方は−CH−ではなく;
    Yは、基−L−Zで示される構造部分であり(ここで、L及びZは、請求項2で定義されたとおりである);
    Mは、水素原子、炭素数3以下の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基又は基−L−Zであり;
    m及びm’は、互いに独立して、0〜5の整数であり、ただし、X及びX’が共に−O−のとき、m及びm’の少なくとも一方は0ではなく、また、m及びm’の和は、7以下であり;
    これらの各々は、各繰り返し単位において異なっていてもよく、
    で表される、モノマー化合物。
  8. 請求項7に記載の一般式(VII)で示されるモノマー化合物を開環重合する工程を含む、生体親和性ポリマー組成物の製造方法。
  9. 請求項7に記載のモノマー化合物の開環重合によって製造される生体親和性ポリマー組成物。
  10. 生体内組織や血液に接して使用されたときに、分解されるまでの間、血液や組織に対して異物反応を抑制するための、請求項1〜6のいずれか一項に記載の生体親和性ポリマー組成物。
  11. 請求項1〜6、9及び10のいずれか一項に記載の生体親和性ポリマー組成物を含む、医療用機器。
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