本発明は、地盤調査等のために地中に鉛直に掘られた孔を利用して所望深度の地層の土砂を採取するための土砂採取装置、同装置を用いた土砂採取システム、並びに同システムを用いた土砂採取方法に関する。
従来、地盤調査で地中の土砂の硬軟や締まり具合を調べるための土標準貫入試験(レイモンドサンプラー)と呼ばれる試験方法が知られている。しかし、この手法では、精確な地盤調査や土のサンプル採取を行なうことができる反面、試験設備が大掛かりでコスト増となり、作業能率も悪い等の不都合があった。
そこで、簡易の地盤調査手法、例えばSWS試験(スウェーデン式サウンディング試験)或いはSDS試験(スクリュードライバーサウンディング試験)と呼ばれる手法で地中の土砂の硬軟や締まり具合を調べることも知られている(非特許文献1を参照)。
http://www.jiban.co.jp/service/survey/tyosa02.htm
しかしながら上記のような従来の簡易の地盤調査手法では、地中の土砂の硬軟や締まり具合をある程度は調べることができても、地中の土をサンプル採取できないため、土質判定を正確に行うことができず、例えば近年社会問題となっている液状化し易い地盤か否かのリスク判定を精度よく行うことができなかった。
そこで上記簡易の地盤調査手法で地中に掘られた調査孔を通して、地中の土を調査孔に挿入可能な簡易サンプラーでサンプル採取する手法も知られているが、従来の簡易サンプラーは、上下両端部が閉塞されたコアチューブの外周壁に開閉可能な縦長の採取窓を開口させ、その採取窓を通して調査孔内周面の土をこそぎ取るように採取している。このため、採取した土には、調査孔の内周壁付近に残存する他の地層の土等が混じり易く、所望深度の土だけを精度よく採取できので、高精度の土質判定を行うことができない等の欠点がある。更に上記コアチューブの外周壁に縦長の大きな採取窓を開口する関係で、コアチューブの剛性強度を高める上で不利になる等の不都合もあった。
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたもので、従来の手法の上記した様々な問題を構造簡単な土採取器を用いて一挙に解決できる土砂採取装置、土砂採取システム、並びに土砂採取方法を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、地中に鉛直に掘られた孔を通して該孔の底部の土砂を採取するための土砂採取装置であって、長さ調節可能に構成された支持ロッドと、その支持ロッドの下端に連結されて該支持ロッドと共に地上より前記孔内に挿入可能な採取器とを備え、前記採取器は、上下両端が開放された円筒状のコアチューブと、そのコアチューブ内に上下摺動及び相対回転可能に嵌合されて下限位置では該コアチューブの開放下端を塞ぎ、また上限位置では該コアチューブの開放下端を開くと共に該コアチューブに地上からの操作で着脱可能に結合される栓体とを備え、前記栓体は、前記コアチューブ内にその開放上端を通して挿入された前記支持ロッドの下端に連結されていて、その栓体が前記上限位置に在るときには該栓体より下方の前記コアチューブ内に、採取土砂を受け入れ可能な下端開放の土砂受容空間が形成されることを特徴とし、また請求項2の発明は、地中に鉛直に掘られた孔を通して該孔の底部の土砂を採取するための土砂採取装置であって、長さ調節可能に構成された支持ロッドと、その支持ロッドの下端に連結されて該支持ロッドと共に地上より前記孔内に挿入可能な採取器とを備え、前記採取器は、上下両端が開放された円筒状のコアチューブと、そのコアチューブ内に上下摺動及び相対回転可能に嵌合されて下限位置では該コアチューブの開放下端を塞ぎ、また上限位置では該コアチューブの開放下端を開くと共に該コアチューブの上部内周の雌ねじ部に螺合される栓体とを備え、前記栓体は、前記コアチューブ内にその開放上端を通して挿入された前記支持ロッドの下端に連結されていて、その栓体が前記上限位置に在るときには該栓体より下方の前記コアチューブ内に、採取土砂を受け入れ可能な下端開放の土砂受容空間が形成されることを特徴とする。
また請求項3の発明は、請求項1又は2の発明の前記特徴に加えて、前記コアチューブの下端部が下方に向かって先細り筒部に形成されると共に、前記栓体の先部が先細り状に形成され、前記栓体が前記下限位置に在るときに該栓体の前記先部の外周面が前記先細り筒部内周面に係合することで、前記コアチューブの開放下端が前記栓体で塞がれることを特徴とする。
また請求項4の発明は、請求項1〜3の何れかの発明の前記特徴に加えて、前記支持ロッドの外周面には、前記栓体が前記下限位置に在るときに前記コアチューブの上部内周に設けた雌ねじ部に螺合される雄ねじ部が設けられることを特徴とする。
また請求項5の発明は、請求項1〜3の何れかの発明の前記特徴に加えて、前記栓体の外周面には、該栓体が前記下限位置に在るときに前記コアチューブの先部内周に密着して該先部内周と前記栓体の先部外周面との間をシールする環状の弾性シール部材が装着されることを特徴とする。
また請求項6の発明は、請求項2又は4の発明の前記特徴に加えて、前記コアチューブは、前記栓体を内部に上下摺動及び相対回転可能に嵌合させるチューブ本体と、前記支持ロッドを摺動可能に挿通させ且つ前記雌ねじ部が少なくとも一部に形成された貫通孔を中心部に有して前記チューブ本体の開放上端に着脱可能に被着される蓋部材とで構成され、前記栓体は、前記蓋部材の装着状態では前記チューブ本体より離脱不能であり、また同蓋部材をチューブ本体より取り外した状態では、前記支持ロッドと共に該チューブ本体内にその開放上端より挿入可能であることを特徴とする。
更に請求項7の発明は、地中の土砂の硬軟や締まり具合を調べる地盤調査の際に地中に鉛直に掘られた孔を利用して所望深度の地層の土砂を採取するための土砂採取システムであって、前記請求項1〜6の何れか1項に記載の土砂採取装置と、前記支持ロッドを介して前記採取器を前記孔内及び地上間で昇降駆動可能な昇降駆動装置とを備え、前記昇降駆動装置として、前記地盤調査の際に地中に任意の押し下げ荷重で孔を掘り下げ且つその掘り下げ抵抗に基づき土砂の硬軟及び締まり具合を計測する地盤調査機に装備された昇降駆動装置が利用され、その地盤調査機の昇降駆動装置は、前記支持ロッドを回転駆動し得る回転駆動機構を備えていて、前記地盤調査の際には、該支持ロッドの下端に着脱可能に結合した調査用ドリルを下降させつつ回転させて前記孔を掘り下げ可能であることを特徴とする。
更に請求項8の発明は、前記請求項7に記載の土砂採取システムを用いた土砂採取方法であって、前記昇降駆動装置に前記支持ロッドを介して装着した拡径用ドリルを該昇降駆動装置により回転駆動することにより、前記地盤調査の際に掘られた前記孔を拡径して採取孔とする工程と、前記拡径用ドリルを前記支持ロッドより取り外した後、前記昇降駆動装置に前記支持ロッドを介して装着した前記採取器を、前記栓体を前記下限位置に保持した状態で該昇降駆動装置により前記採取孔の底部まで挿入、下降させる工程と、前記採取孔の底部において前記採取器の前記コアチューブ内で前記栓体を、前記支持ロッドを介して前記上限位置まで引き上げて該コアチューブの上部に結合する工程と、前記採取器に対し地上から前記支持ロッドを介して下向きの押込力を付与して前記コアチューブ内にその開放下端から前記採取孔底部の土砂を押し込む工程と、前記支持ロッドを介して前記採取器を前記昇降駆動装置により地上まで引き上げて、該採取器の前記コアチューブ内の土砂を取り出す工程とを順次に実行することを特徴とする。
以上のように請求項1,2の各発明によれば、土採取に際しては先ず、採取器のコアチューブ内で下限位置に保持した栓体でコアチューブの開放下端を塞いだ状態で、支持ロッドを介して採取器を孔の底部まで挿入、下降させ、その底部到着後は、支持ロッドを介して栓体をコアチューブ内の上限位置まで上昇させ、そのコアチューブに栓体を結合(特に請求項2の発明では、コアチューブに栓体を螺合)させる。この状態では、コアチューブの開放下端が開かれ、栓体より下方のコアチューブ内に土砂受容空間が形成されるため、採取器に対し地上から支持ロッドを介して下向きの押込力を付与すれば、コアチューブ内にその開放下端から孔底部の土砂のみを押し込み、採取可能となる。これにより、その採取した土には、孔内周付近に残る他の地層の土等は混じりにくくなり、所望深度(孔底部)の土だけを効率よく採取できることから、その採取土砂で土質判定、延いては液状化リスク判定を精度よく行うことができる。その上、コアチューブの外周壁には、強度低下の原因となる大きな採取窓を特別に開口する必要はないから、コアチューブの剛性強度を高める上で有利となる。
また特に請求項2の発明によれば、コアチューブ内で栓体を上方に引き上げたときに、そのコアチューブの上部内周の雌ねじ部に栓体を単に螺合させるだけで栓体を容易に固定できるため、地上からでも支持ロッドを介して栓体を下限位置に迅速且つ的確に固定操作可能となる。
また特に請求項3の発明によれば、コアチューブの下端部が下方に向かって先細り筒部に形成されると共に、栓体の先部が先細り状に形成されるので、採取器が孔底部に到達した時に、栓体及びコアチューブの先部を孔底部の土に適度に食い込ませることができ、従って、その採取土に他の地層の土をより混じりにくくして、より高精度の土質判定を行うことができる。その上、コアチューブの開放下端が前記先細り筒部により絞られるため、土砂採取後においてコアチューブ内の採取土砂が下方に脱落するのを、該先細り筒部により効果的に防止することができる。
また請求項4の発明によれば、支持ロッドの外周面には、栓体が下限位置に在るときにコアチューブ上部の雌ねじ部に螺合される雄ねじ部が設けられるので、採取器を孔に挿入、下降させるときには栓体を下限位置に確実に固定でき、従って、栓体が不用意にコアチューブ内を相対上昇してコアチューブ内に上層の土が侵入するのを効果的に防止できるため、そのサンプル採取した土に他の地層の土を一層混じりにくくして、より高精度の土質判定を行うことができる。
また特に請求項5の発明によれば、栓体の外周面には、該栓体が下限位置に在るときにコアチューブの先部内周に密着して該先部内周と栓体の先部外周面との間をシールする環状の弾性シール部材が装着されるので、そのシール効果により、採取器を孔に挿入、下降させるときに、コアチューブと栓体との隙間からコアチューブ内に土や水が侵入するのを効果的に防止でき、従って、サンプル採取した土に他の地層の土や水を一層混じりにくくして、より高精度の土質判定を行うことができる。
また特に請求項6の発明によれば、コアチューブは、栓体を内部に上下摺動及び相対回転可能に嵌合させるチューブ本体と、支持ロッドを摺動可能に挿通させ且つ前記雌ねじ部が形成された貫通孔を中心部に有してチューブ本体の開放上端に被着される蓋部材とで構成されるので、その蓋部材により栓体がコアチューブより抜け落ちるのを確実に防止でき、しかも蓋部材に雌ねじ部を設けたことで、比較的高い剛性強度が必要なチューブ本体には雌ねじ部を特別に加工する必要はなくなり、全体としてコスト節減に寄与することができる。
また特に請求項7の発明によれば、地中の土砂の硬軟や締まり具合を調べる地盤調査の際に地中に鉛直に掘られた調査孔を利用して土砂のサンプル採取を行うことができるため、採取孔を特別に掘る必要はなく、それだけコスト節減に寄与することができる。しかもその地盤調査機が備えるドリル駆動用の昇降駆動装置を、土砂のサンプル採取の際に採取器の昇降駆動手段として利用できるため、専用の昇降駆動手段を用意する必要はなく、更なるコスト節減に寄与することができる。
また特に請求項8の発明によれば、地盤調査で掘られた調査孔を、採取器が無理なく挿入、下降可能なサイズに拡径した上で、採取器を昇降させるので、地盤調査用ドリルより採取器が大径であっても、その採取器を用いて支障なくサンプル採取作業を行うことができる。
本発明の第1実施形態で用いる地盤調査機に土砂採取装置を組み込んだ状態を示す全体斜視図
土砂採取装置の正面図(図1の2−2線矢視図)
土砂採取装置の分解図
土砂採取装置の縦断面図であって(a)は栓体が下限位置に在るときを、また(b)は栓体が上限位置に在るときをそれぞれ示す
支持ロッド下端に選択的に取付けられる地盤調査用ドリル及び拡径用ドリルを示す正面図
サンプル土砂採取のための手法を説明する工程説明図1
サンプル土砂採取のための手法を説明する工程説明図2
本発明の第2実施形態に係る土砂採取装置の分解図(図3対応図)
土砂採取装置の縦断面図であって(a)は栓体が下限位置に在るときを、また(b)は栓体が上限位置に在るときをそれぞれ示す(図4対応図)
土砂採取装置の組立手順の一例を示す説明図
本発明の第3実施形態に係る土砂採取装置の要部説明図であって、(a)は調査用ドリルとスリーブと支持ロッドの分解図、(b)は組立図を示す
前記第3実施形態に係る土砂採取装置による土砂採取工程のうち、図6(A)(B)に対応した工程図
本発明の実施の形態を、添付図面に例示した本発明の実施例に基づいて以下に具体的に説明する。
先ず、図1〜図7を参照して本発明の第1実施形態について説明する。
本実施形態で用いる地盤調査機ESは、地上に住宅等の構造物を建てる前に予め行うべき地盤調査、例えばSWS試験(スウェーデン式サウンディング試験)或いはSDS試験(スクリュードライバーサウンディング試験)を実施する際に使用されるものであって、地中Eに任意の押し下げ荷重で調査孔H1を掘り下げ、その際の掘り下げ抵抗に基づき土砂の硬軟及び締まり具合を計測できるように構成される。
この地盤調査機ESは、従来公知であるが、その構成を図1を参照して次に簡単に説明する。即ち、地盤調査機ESは、車輪付きの基台Bと、この基台B上に搭載される昇降駆動装置ESdとを備えている。その昇降駆動装置ESdは、基台B上に立設された支柱Baと、この支柱Baに固設した案内レール10に沿って昇降自在に案内支持された昇降台11と、この昇降台11を連動機構(図示せず)を介して昇降駆動し得る昇降モータ12と、鉛直方向に延びる支持ロッドLを昇降台11に着脱可能に保持するクランプ手段13と、支持ロッドLを回転駆動し得る回転駆動機構ESrとを有する。
尚、昇降台11には、これを支柱Baに随時固定可能なブレーキ機構(図示せず)が付設されており、このブレーキ機構の作動時には、昇降台11を支柱Baの任意高さ位置に固定できる。また、前記ブレーキ機構の作動解除時には、昇降台11が支柱Baに対しフリー(昇降自在)となるため、後述する調査用ドリルD1に支持ロッドLを介して昇降台11等の全自重が作用し、これが地盤調査時における調査孔H1の掘り下げ荷重となる。
前記クランプ手段13は、工作機械の工具保持等のために用いられる従来周知のチャック機構と同様の構造であって、その具体的な説明は省略するが、昇降台11に対しては回転自在に搭載され、そして支持ロッドLの外周をその長手方向で任意位置に把持、即ちクランプ可能である。また昇降台11には、クランプ手段13を連動機構(図示せず)を介して回転駆動し得る回転モータ14が設置される。而して、そのクランプ手段13、連動機構及び回転モータ14は互いに協働して本発明の回転駆動機構ESrを構成する。
尚、昇降台11には、掘り下げ荷重調整用の複数の重錘15が選択的に取付可能となっており、その重錘15の取付個数を調整することで、昇降台11の自重、即ち掘り下げ荷重を任意に調整できるようになっている。
従って、支持ロッドLをクランプ手段13を介して昇降台11に保持させた状態で昇降モータ12を作動させると、支持ロッドLは昇降台11と共に昇降する。また、この間、回転モータ14を作動させると、支持ロッドLは、クランプ手段13と共に昇降台11に対し回転駆動される。かくして、後述する地盤調査の際には、支持ロッドLの下端に調査用ドリルD1(図5参照)を結合した状態でそれらロッドL及びドリルD1を地中Eに下降させつつ回転駆動できるため、このドリルD1により、図6(A)に示すような調査孔H1を地中Eに掘り下げ可能である。
このようにして地盤調査の際には、調査用ドリルD1で地中に任意の押し下げ荷重で調査孔H1を掘り下げることができ、その際の掘り下げ抵抗に基づき土砂の硬軟及び締まり具合を計測する。その掘り下げ抵抗は、地盤調査機ESに付属する制御解析ユニットUが昇降モータ12及び回転モータ14の各電気負荷、並びに調査用ドリルD1に加わる昇降駆動機構ESd等の全重量に基づいて演算することで判定可能である。その判定結果は、同ユニットUの表示盤に表示され、また必要に応じて印刷可能であり、更には電子データとして出力可能である。尚、上記制御解析ユニットUに代えて、所定の解析ソフトをインストールしたパソコンを掘り下げ抵抗の解析に使用してもよい。
前記地盤調査機ESには、サンプル土砂採取のための本発明の土砂採取装置Aを必要に応じて取付可能であり、図1では、その設置態様が示されており、このような設置態様を以て本発明の土砂採取システムが構成される。
即ち、その土砂採取システムにおいて、土砂採取装置Aは、前記支持ロッドLと、その支持ロッドLの下端に連結されて該支持ロッドLと共に地盤調査後の調査孔H1内に挿入可能な採取器Sとより構成される。
前記支持ロッドLは、軸線方向に縦列配置される金属製の複数のロッド要素5より分割構成されており、その各ロッド要素5の下端には連結雌部5aが、また上端には連結雄部5bがそれぞれ設けられる。従って、上下に並ぶ2本のロッド要素5のうち下側のロッド要素5の上端の連結雄部5bを上側のロッド要素5の下端の連結雌部5aに螺合、緊締することで、その両ロッド要素5が一体に接続される。そして、その接続本数を増減することで、支持ロッドLの長さ調整が可能となる。
また支持ロッドLの下端(即ち最下端のロッド要素5の下端の連結雌部5a)には、地盤調査用ドリルD1と、それよりも大径のサンプル土砂採取用ドリルD2と、次に説明する採取器Sの栓体Pとが選択的に螺合、緊締可能である。
前記採取器Sは、上下両端が開放された金属製の円筒状コアチューブCと、そのコアチューブC内に上下摺動及び相対回転可能に嵌合される金属製の栓体Pとを備える。その栓体Pの上部外周には雄ねじ部Psが形成され、更にその上端には連結雄部Pbが連設される。
そして、その栓体Pは、これがコアチューブC内で所定下限位置に在るときにはコアチューブCの開放下端を塞ぎ、また所定上限位置に在るときには、該コアチューブCの開放下端を開くと共にコアチューブCの上部内周の雌ねじ部2hsに前記雄ねじ部Psが螺合される。
前記栓体Pは、コアチューブC内にその開放上端を通して挿入された支持ロッドLの下端(即ち最下端のロッド要素5の下端の連結雌部5a)に該栓体Pの上端の前記連結雄部Pbが螺合、緊締される。そして、その栓体Pが前記上限位置に在るときには該栓体Pより下方のコアチューブC内に、採取土砂を受け入れ可能な下端開放の土砂受容空間Kが形成される。
前記コアチューブCは、栓体Pを内部に上下摺動及び相対回転可能に嵌合させる両端開放の細長い円筒状チューブ本体1と、そのチューブ本体1の開放上端に着脱可能に被着される蓋部材2とで構成される。その蓋部材2の中心部には、支持ロッドLを摺動可能に挿通させる貫通孔2hが形成され、その貫通孔2hの内周には、前記雌ねじ部2hsが少なくとも一部(図示例では下半部のみ)に設けられている。その蓋部材2のチューブ本体1への固定は、チューブ本体1の周壁を横切るよう貫通して蓋部材2の周壁に螺挿される複数のビスbを介してなされる。
前記栓体Pは、蓋部材2のチューブ本体1への装着状態では、蓋部材2が抜け止め機能を果たすことでチューブ本体1より離脱不能となっている。そして、その蓋部材2をチューブ本体1より取り外した状態では、栓体Pが支持ロッドLと共にチューブ本体1内にその開放上端より抜差可能である。
前記コアチューブCの下端部(即ちチューブ本体1の下端部)は下方に向かって先細りのテーパ部1tに形成され、このテーパ部1tが本発明の先細り筒部を構成する。また栓体Pの先部Paは、同じく先細り状に形成されている。従って、栓体Pが前記下限位置に在るときに栓体Pの先部Paの先細り外周面がチューブ本体1下端部の前記テーパ部1t内周に全周に亘り当接することで、コアチューブC(チューブ本体1)の開放下端が栓体Pで塞がれる。尚、図示例では、栓体Pの先部Paは、先端が尖った段付きテーパ面に形成されているが、本発明では、段のないテーパ面、或いは先端及び外周面が丸みを帯びた弾頭状に形成されていてもよい。
次に前記第1の実施形態を用いて地盤調査を行う手法、並びに地盤調査に伴い地中に掘られた調査孔H1を利用して行うサンプル土砂採取の手法について順次説明する。
[地盤調査について]
地盤調査、例えばSWS試験(スウェーデン式サウンディング試験)或いはSDS試験(スクリュードライバーサウンディング試験)を実施する場合には、地盤調査機ESを調査地点まで運び、そこで地盤調査機ESの昇降駆動機構ESdに支持ロッドLを介して取付けた調査用ドリルD1を下降させつつ回転駆動して地中Eに任意の押し下げ荷重で調査孔H1を掘り下げるようにし(図6の(A)工程を参照)、その掘り下げ抵抗に基づき土砂の硬軟及び締まり具合を計測する。その掘り下げ抵抗は、地盤調査機ESに付属する制御解析ユニットUが、昇降モータ12及び回転モータ14の各電気負荷、並びに調査用ドリルD1に加わる昇降駆動機構ESd等の全重量に基づいて演算して判定する。
ところで支持ロッドLは、調査用ドリルD1で調査孔H1を掘り下げる深度が深くなるに従ってロッド長さを順次延長する。その延長作業は、支持ロッドLを構成するロッド要素5を上側に順次継ぎ足すことで行われる。即ち、その手順は、調査用ドリルD1が支持ロッドLと共に下降することで昇降台11が基台10に対し下限位置まで達すると、クランプ手段13による支持ロッドLのクランプを一旦解除した上で、昇降台11を上昇させる。その後、ロッド要素5を継ぎ足して支持ロッドLを上方に延長させた後でクランプ手段13に支持ロッドLを再びクランプし、昇降駆動機構ESdを作動させてドリルD1による掘り下げを再開する。
このような作業を繰り返すことで、地表から硬い地層の深度まで調査孔H1を徐々に掘り下げていき、その一連の掘り下げ過程で各地層にある土砂の硬軟及び締まり具合を分析し、地盤の固さ分布を調べる。尚、前記した支持ロッドLの延長手順は、地盤調査時のみならず、その後のサンプル土砂採取時にも同様に行われる。
即ち、上記した簡易の地盤調査手法では、地中の土砂の硬軟や締まり具合をある程度は調べることができても、地中の土をサンプル採取できないため、土質判定を正確に行うことができず、近年社会問題となっている液状化し易い地盤か否か(即ち液状化リスク)を精度よく判定することはできなかった。
そこで本実施形態では、上記地盤調査手法で地中に掘られた調査孔H1を利用して、地中の土を比較的容易にサンプル採取できるようにしており、次にその土採取手法を説明する。
[サンプル土砂の採取について]
本実施形態によるサンプル土砂の採取作業は、次のような(B)〜(H)の工程(図6,7を参照)を順次実行することで行われる。
(B)工程
この工程では、調査用ドリルD1より大径の拡径用ドリルD2が使用される。そして、この拡径用ドリルD2を連結した支持ロッドLを、地盤調査機ESの昇降駆動装置ESdにクランプ手段13を介して装着した上で、昇降駆動装置ESd(即ち昇降モータ12及び回転モータ14の両方)を作動させて拡径用ドリルD2を下降させつつ回転駆動する。これにより、拡径用ドリルD2の穿孔作用で、地盤調査孔H1をその全域に亘り拡径した採取孔H2が形成される。
(C)工程
前記(B)工程の終了後は、支持ロッドLを引き上げて拡径用ドリルD2を支持ロッドLより取り外し、採取器Sと交換する。そして、昇降駆動装置ESd(即ち昇降モータ12のみ)を作動させて支持ロッドLと共に採取器Sを採取孔H2の底部まで挿入、下降させる。この間、採取器Sの栓体PはコアチューブC内の所定下限位置に保持される。
即ち、採取器SのコアチューブCを採取孔H2内に挿入して下降させるときは、予め栓体Pを前記下限位置まで手で移動させた状態で拡径孔H2に挿入する。そして、その挿入、下降の際にコアチューブCは、地中で拡径孔H2周囲の土砂から摩擦接触抵抗(土圧)を受けるため、同チューブCと栓体Pとの相対位置は終始変化せず(即ち栓体PがコアチューブC内の下限位置に保持され)、コアチューブCの開口下端は栓体Pで塞がれた状態が維持される。
(D)〜(E)工程
栓体Pの下端が採取孔H2の底部に達すると、そこで採取器SのコアチューブC内で栓体Pを、支持ロッドLを介して所定上限位置近くまで引き上げてコアチューブCの下端を開放する(D工程)。そして、そこから更に支持ロッドLを介して栓体Pを逆転、即ち締込み方向と逆方向に回転させて、コアチューブCの上部内周(即ち蓋部材2の貫通孔2hの雌ねじ部2hs)に対し栓体P上部の雄ねじ部Psを上向きに螺進させ、こうして栓体Pの上部の段部が蓋部材2下端に係合する位置が、栓体Pの上限位置となる(E工程)。これにより、栓体Pより下方のコアチューブC内には、採取土砂を受け入れ可能な下端開放の土砂受容空間Kが形成され、その土砂受容空間Kの下端は拡径孔H2の底部に臨んでいる。
尚、上記のように栓体PをコアチューブC内で引き上げ或いは回転させるときに、コアチューブCは、拡径孔H2内周から土圧を受けることで拡径孔H2の底部に固定されるため、栓体Pに対して共連れされたり或いは共回りしたりする虞れはない。
(F)〜(G)工程
前記(E)工程の終了後は、支持ロッドLを地盤調査機ES(昇降駆動機構ESdのクランプ手段13)から取り外し、その状態で支持ロッドLの上部が地上に露出、起立する。そこで次に、この支持ロッドLの上端に下向きの押込力を付与する。尚、この押込力は、図示例ではロッド上端をハンマー等で下向きに打撃することで支持ロッドLに付与するようにしているが、本発明では、何等かの静荷重付与手段を用いてロッド上端に下向きの押込力(静荷重)を作用させるようにしてもよい。この場合、静荷重付与手段としては、例えば地盤調査機ESの昇降駆動機構ESdを使用してもよい。
かくして、採取器Sには支持ロッドLを介して地上から下向きの押込力が伝達されるため、コアチューブC内の前記土砂受容空間Kには、その開放下端から採取孔H2の底部の土砂が押し込まれる。
(H)工程
前記(G)工程の終了後は、支持ロッドLを介して採取器Sを昇降駆動装置ESdにより地上まで引き上げて、採取器SのコアチューブC内に採取された土砂を取り出す。そして、この取り出したサンプル土砂を分析することで、高精度の土質判定を行うことができ、液状化リスクを的確に判定可能となる。
前記したように、本実施形態によれば、土のサンプル採取に際しては先ず、採取器SのコアチューブC内で下限位置に在る栓体PがコアチューブCの開放下端を塞いだ状態で、採取器Sを、支持ロッドSを介して採取孔H2の底部まで挿入、下降させ、しかる後に支持ロッドLを介して栓体PをコアチューブC内の上限位置まで上昇させ、そのコアチューブLの上部内周の雌ねじ部2hsに栓体Pの雄ねじ部Psを螺合させる。この状態では、コアチューブCの開放下端が開かれ、栓体Pより下方のコアチューブC内に土砂受容空間Kが形成されるため、採取器Sに対し地上から支持ロッドLを介して下向きの押込力を付与すれば、コアチューブC内にその開放下端から採取孔H2の底部の土砂のみを押し込み、採取可能となる。
これにより、その採取した土には、採取孔H2の内周付近に残る他の地層の土等は殆ど混じらず、所望深度(即ち前段階の地盤調査で固い地層と判断された採取孔H2の底部)の土だけを効率よく採取できることから、その採取土砂で土質判定、延いては液状化リスクの判定を精度よく行うことができる。その上、コアチューブCの外周壁には、強度低下の原因となる大きな採取窓を特別に開口させる必要はないから、コアチューブCの剛性強度を高める上で有利となる。
また本実施形態のように、コアチューブCの下端部が下方に向かって先細り筒部(テーパ部1t)に形成されると共に、栓体Pの先部Paが先細り状に形成されることで、採取器Sが採取孔H2の底部に到達した時に、栓体P及びコアチューブCの先部Paを採取孔H2の底部の土に適度に食い込ませることができる。従って、その採取土に他の地層の土をより混じりにくくして、より高精度の土質判定を行うことができる。しかもコアチューブCの開放下端が前記先細り筒部(テーパ部1t)により絞られるため、その絞り効果により、土砂採取後においてコアチューブ内の採取土砂が下方に脱落するのを効果的に防止することができる。
更に本実施形態のように、コアチューブCを、栓体Pを内部に上下摺動及び相対回転可能に嵌合させるチューブ本体1と、支持ロッドLを摺動可能に挿通させる中心孔2hを有してチューブ本体1の開放上端に着脱可能に被着される蓋部材2とで分割構成すれば、その蓋部材2が抜け止め機能を発揮できて、栓体PがコアチューブCより離脱するのを確実に防止できる。しかもこの蓋部材2に雌ねじ部2hsを設けたことで、高い剛性強度が必要なチューブ本体1には雌ねじ部を加工する必要はなくなる。またチューブ本体1及び蓋部材2に各々の機能に即した最適の材料選択を高い自由度を以て行うことが可能となり、全体としてコスト節減が図られる。
更にまた本実施形態では、地中の土砂の硬軟や締まり具合を調べる地盤調査の際に地中に鉛直に掘られた調査孔H1を利用して土砂のサンプル採取を行うことができるため、専用の採取孔を新規に掘る必要はなく、それだけコスト節減に寄与することができる。しかもその地盤調査機ESが備える調査ドリル駆動用の昇降駆動装置ESdを、土砂のサンプル採取の際に採取器Sの昇降駆動手段として利用できるため、採取器専用の昇降駆動手段を用意する必要はなく、更なるコスト節減が図られる。
その上、地盤調査で掘られた調査孔H1を、採取器Sが無理なく挿入可能なサイズに拡径した上で、そこに採取器Sを挿入、下降させるので、地盤調査用ドリルD1より採取器Sがかなり大径であっても、その採取器Sを用いて支障なくサンプル採取作業を行うことができる。
次に図8〜図10を参照して、本発明の第2の実施形態を説明する。本実施形態では、コアチューブCの上部を構成する蓋部材2の中心部に設けた貫通孔2hに、その軸方向全域に亘り雌ねじ部2hsが形成される。一方、支持ロッドLを分割構成する複数のロッド要素のうち最下端のロッド要素5′が、他のロッド要素5…よりも短く(即ち採取器Sのチューブ本体1とほぼ同じ長さに)形成され、その最下端のロッド要素5′の上部外周面には雄ねじ部Lsが設けられる。この雄ねじ部Lsは、栓体Pが図9(a)に示すようにコアチューブC内の下限位置に在るときに前記蓋部材2の雌ねじ部2hsに螺合される。そして、その螺合効果によれば、採取器Sを採取孔H2内に挿入、下降させるときでもコアチューブC内で栓体Pが下限位置に確実に固定可能となって、コアチューブCの開放下端を栓体Pで確実に閉塞可能となる。
さらに栓体Pの外周面には、その栓体Pが前記下限位置に在るときにコアチューブCの先細り状の先端筒部(即ちチューブ本体1の前記テーパ部1t)内周面に密着して栓体Pの先部Pa外周面と該テーパ部1tの内周面間をシールする環状のシール部材3が装着され、このシール部材3は、例えばゴム等の弾性材料で構成される。このシール部材3は、図示例では栓体Pの中間部外周面に凹設した環状のシール溝4に嵌着され、軸方向の位置決めがなされる。
尚、シール部材3の配設位置は、図示例では栓体Pの先細りテーパ部1tの終端(大径端)に設定されているが、本発明では、チューブ本体1の先部内周と栓体Pの先部Pa外周面との間でシール部材3がシール機能を発揮できる部位であればよく、例えば前記テーパ部1tの中間部であってもよい。
次に本実施形態の土砂採取装置Aの組立手順を図10を参照して説明する。先ず、外周にシール部材3を装着した栓体Pの上端を、ロッド要素5′の下端に螺合、緊締することで結合し、しかる後に蓋部材2を上方よりロッド要素5′に嵌合させる。この場合、蓋部材2は、その雌ねじ部2hsをロッド要素5′上部の雄ねじ部Lsに正転、即ち締込み方向に回転させることで雄ねじ部Lsを通過させ、その通過後は、ロッド要素5′の中間部に上下摺動自在となる(図10の(1)工程→(2)工程を参照)。以上により、栓体P、ロッド要素5′及び蓋部材2よりなる小組立体が構成される。
次いで、前記小組立体をチューブ本体1内にその開放上端より挿入した後、蓋部材2とチューブ本体1上部とをビスbで固着し、これにより、採取器Sの組立が終了する(図10の(3)工程→(4)工程を参照)。この場合、コアチューブC内で栓体Pを下端近くまで摺動させた後、ロッド要素5′を正転させてその外周の雄ねじ部Lsを蓋部材2の雌ねじ部2hsに対し下向きに螺進させることで、栓体Pが所定の下限位置に到達する。そして、この下限位置では、栓体Pの先細り先部Paの外周がチューブ本体1のテーパ部1内周に直接係合すると共に、その先細り先部Paの外周とテーパ部1内周との間にシール部材3が弾力的に挟まれてその間がシールされる。尚、最下端のロッド要素5′の上端に必要に応じて他のロッド要素5を順次継ぎ足していくことで、所望長さの支持ロッドLが得られる。
本実施形態においても、サンプル土砂の採取作業は、第1実施形態の前記(B)〜(H)の工程と基本的に同様の工程で行なわれる。但し、前記(C)工程から(D)工程に移行する段階、即ち、拡径孔H2の底部に達した採取器SのコアチューブC内で、栓体Pをそれまでの下限位置から上方へ引き上げる際には、先ず栓体Pを支持ロッドLを介して逆転させて、ロッド要素5′外周の雄ねじ部Lsを蓋部材2の雌ねじ部2hsに対し上向きに螺進させるようにして該雌ねじ部2hsを通過させる必要があり、その通過後はコアチューブC内で栓体Pを更に上方に引き上げる。そして、その引き上げられた栓体Pが上限位置(図9(b)参照)に達する直前に支持ロッドLを介して栓体Pを再び逆転させて、コアチューブCの上部内周(即ち蓋部材2の貫通孔2hの雌ねじ部2hs)に栓体P上部の雄ねじ部Psを螺合させ、こうして栓体Pの上部の段部が蓋部材2下端に係合する位置が、栓体Pの上限位置となる。そして、前記E工程からH工程までは、第1実施形態と同様に行なわれる。
かくして、本実施形態によれば、第1の実施形態の前記効果に加えて、採取器Sを採取孔H2に挿入、下降させるときには、栓体Pを下限位置(図9(a)を参照)に確実に固定できるため、栓体Pが不用意にコアチューブC内を相対上昇してコアチューブCの下端が開放すること(延いてはその開放下端からコアチューブC内に上層の土が侵入すること)を効果的に防止でき、従って、そのサンプル採取した土に他の地層の土を一層混じりにくくして、より高精度の土質判定を行うことができる。
更に前記弾性シール部材3のシール効果により、採取器Sを拡径孔H2に挿入、下降させるときにコアチューブCと栓体Pとの隙間からコアチューブC内に土や水が侵入するのをより効果的に防止できるため、採取した土に他の地層の土や水を一層混じりにくくして、より高精度の土質判定を行うことができる。
次に図11,図12を参照して、本発明の第3の実施形態を説明する。本実施形態では、第1及び第2の実施形態で(B)工程を実施する際に、拡径用ドリルD2に代えて、支持ロッドLの下部外周に、拡径用ドリルD2と略等径の円筒状スリーブ20が嵌装される。このスリーブ20は、その両端外周が先細りのテーパ状に形成されていて、支持ロッドLに嵌合されており、そのスリーブ20の下端には環状の内向き係合鍔部20fが一体に形成される。そして、この係合鍔部20fを調査用ドリルD1の上部外周の段部21と、そのドリルD1の上端の連結雄部22に螺合、緊締される支持ロッドLの下端(即ち最下端のロッド要素5(5′)の下端)との間に挟着することで、スリーブ20が調査用ドリルD1及び支持ロッドLに着脱可能に固定、連結される。
そして、前記(B)工程では、調査用ドリルD1の上端にスリーブ20を連結固定した状態で、地盤調査機ESの昇降駆動機構ESdにより支持ロッドLを介してスリーブ20及び調査用ドリルD1を調査孔H1内で回転させつつ下降させる。これにより、スリーブ20が調査孔H1内に圧入され、調査孔H1はその内周がスリーブ20でしごかれるようにして拡径されることで、採取孔H2となる。
本実施形態では、採取孔H2の内周の土砂がスリーブ20の圧縮効果で固められて孔底部に落下しにくくなるため、引き続く(C)工程を実行する際に、採取器S内には上層の土砂が入りにくくなる利点があり、また拡径用ドリルD2を特別に用意する必要もない。その他の効果は、第1及び第2の実施形態と基本的に同様である。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はそれら実施形態に限定されることなく、本発明の範囲内で種々の実施形態が可能である。
例えば、前記実施形態では、孔H2の底部に到達したコアチューブC内で、上方に引き上げた栓体Pを上限位置に固定するために、コアチューブCの上部内周の雌ねじ部2hsに栓体Pを螺合させて固定するものを示したが、本発明(請求項1)では、そのような螺合手段以外で、地上から操作されて栓体PをコアチューブCの上部に着脱可能に結合する結合手段を使用して、栓体PをコアチューブC内の上限位置に固定してもよい。そして、栓体PとコアチューブCの上部内周との間に設けられる上記結合手段としては、例えば、押し回し操作により着脱を行う従来周知のバヨネット機構や、電磁クラッチその他の電動式の結合機構が使用可能である。尚、上記バヨネット機構を用いる場合には、支持ロッドLを介して栓体PをコアチューブCに対し押し回し操作すれば、栓体PのコアチューブCに対する着脱が可能であり、また電磁クラッチその他の電動式の結合機構を用いる場合には、地上から無線又は有線の遠隔操作で電動式結合機構を作動・作動解除すればよい。
また前記実施形態では、支持ロッドSを介して採取器Sを昇降させる昇降駆動装置ESdとして、地盤調査機ESに装備される昇降駆動装置を用いたが、本発明(請求項1〜6)では、サンプル土砂採取のための採取器Sの昇降に専用の昇降駆動装置を使用してもよい。
また前記実施形態では、地盤調査機ESにより地盤調査のために掘られた調査孔H1を拡径してサンプル採取用の採取孔H2としたが、その調査孔H1の内径と採取器S(コアチューブC)の外径とが略一致する場合には、調査孔H1を拡径せずにそのまま採取孔として利用するようにしてもよい。
また前記実施形態では、地盤調査機ESにより地盤調査のために掘られた調査孔H1を利用してサンプル土砂の採取を行なうようにしたが、本発明(請求項1〜6)では、地盤調査以外の目的で掘られた孔を利用してサンプル土砂の採取を行なうようにしてもよい。
また前記実施形態では、地盤調査、即ち前記したSWS試験又はSDS試験を実施するに当たり、調査用ドリルの昇降・回転を全自動で実施可能な地盤調査機ESを用い、その地盤調査機ESの昇降駆動機構ESdにより採取器Sを昇降駆動するようにしたものを示したが、本発明では、人力を主体とした簡易の地盤調査機を使用して地盤調査するときに掘られる調査孔を利用して、採取器Sによるサンプル土砂採取を行うようにしてもよく、この場合、採取器Sの昇降は支持ロッドLを介して人力で行うようにしてもよい。
A・・・・・土砂採取装置
C・・・・・コアチューブ
D1・・・・調査用ドリル
D2・・・・拡径用ドリル
E・・・・・地中
ES・・・・地盤調査機
ESd・・・昇降駆動装置
ESr・・・回転駆動機構
H1・・・・孔としての調査孔
H2・・・・採取孔
K・・・・・土砂受容空間
L・・・・・支持ロッド
Ls・・・・支持ロッド外周の雄ねじ部
P・・・・・栓体
Ps・・・・栓体外周の雄ねじ部
S・・・・・採取器
1・・・・・チューブ本体
1t・・・・先細り筒部としてのテーパ部
2・・・・・蓋部材
2h・・・・蓋部材の貫通孔
2hs・・・雌ねじ部
3・・・・・弾性シール部材
5,5′・・支持ロッドを構成するロッド要素
本発明は、地盤調査等のために地中に鉛直に掘られた孔を利用して所望深度の地層の土砂を採取するための土砂採取装置、同装置を用いた土砂採取システム、並びに同システムを用いた土砂採取方法に関する。
従来、地盤調査で地中の土砂の硬軟や締まり具合を調べるための土標準貫入試験(レイモンドサンプラー)と呼ばれる試験方法が知られている。しかし、この手法では、精確な地盤調査や土のサンプル採取を行なうことができる反面、試験設備が大掛かりでコスト増となり、作業能率も悪い等の不都合があった。
そこで、簡易の地盤調査手法、例えばSWS試験(スウェーデン式サウンディング試験)或いはSDS試験(スクリュードライバーサウンディング試験)と呼ばれる手法で地中の土砂の硬軟や締まり具合を調べることも知られている(非特許文献1を参照)。
http://www.jiban.co.jp/service/survey/tyosa02.htm
しかしながら上記のような従来の簡易の地盤調査手法では、地中の土砂の硬軟や締まり具合をある程度は調べることができても、地中の土をサンプル採取できないため、土質判定を正確に行うことができず、例えば近年社会問題となっている液状化し易い地盤か否かのリスク判定を精度よく行うことができなかった。
そこで上記簡易の地盤調査手法で地中に掘られた調査孔を通して、地中の土を調査孔に挿入可能な簡易サンプラーでサンプル採取する手法も知られているが、従来の簡易サンプラーは、上下両端部が閉塞されたコアチューブの外周壁に開閉可能な縦長の採取窓を開口させ、その採取窓を通して調査孔内周面の土をこそぎ取るように採取している。このため、採取した土には、調査孔の内周壁付近に残存する他の地層の土等が混じり易く、所望深度の土だけを精度よく採取できので、高精度の土質判定を行うことができない等の欠点がある。更に上記コアチューブの外周壁に縦長の大きな採取窓を開口する関係で、コアチューブの剛性強度を高める上で不利になる等の不都合もあった。
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたもので、従来の手法の上記した様々な問題を構造簡単な土採取器を用いて一挙に解決できる土砂採取装置、土砂採取システム、並びに土砂採取方法を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、地中に鉛直に掘られた孔を通して該孔の底部の土砂を採取するための土砂採取装置であって、長さ調節可能に構成された支持ロッドと、その支持ロッドの下端に連結されて該支持ロッドと共に地上より前記孔内に挿入可能な採取器とを備え、前記採取器は、上下両端が開放された円筒状のコアチューブと、そのコアチューブ内に上下摺動及び相対回転可能に嵌合されて下限位置では該コアチューブの開放下端を塞ぎ、また上限位置では該コアチューブの開放下端を開くと共に該コアチューブに地上からの操作で着脱可能に結合される栓体とを備え、前記栓体は、前記コアチューブ内にその開放上端を通して挿入された前記支持ロッドの下端に連結されていて、その栓体が前記上限位置に在るときには該栓体より下方の前記コアチューブ内に、採取土砂を受け入れ可能な下端開放の土砂受容空間が形成され、前記コアチューブの下端部が下方に向かって先細り筒部に形成されると共に、前記栓体の先部が先細り状に形成されていて、前記栓体が前記下限位置に在るときに該栓体の前記先部の外周面が前記先細り筒部内周面に係合することで、前記コアチューブの開放下端が前記栓体で塞がれることを特徴とし、また請求項2の発明は、地中に鉛直に掘られた孔を通して該孔の底部の土砂を採取するための土砂採取装置であって、長さ調節可能に構成された支持ロッドと、その支持ロッドの下端に連結されて該支持ロッドと共に地上より前記孔内に挿入可能な採取器とを備え、前記採取器は、上下両端が開放された円筒状のコアチューブと、そのコアチューブ内に上下摺動及び相対回転可能に嵌合されて下限位置では該コアチューブの開放下端を塞ぎ、また上限位置では該コアチューブの開放下端を開くと共に該コアチューブの上部内周の雌ねじ部に螺合される栓体とを備え、前記栓体は、前記コアチューブ内にその開放上端を通して挿入された前記支持ロッドの下端に連結されていて、その栓体が前記上限位置に在るときには該栓体より下方の前記コアチューブ内に、採取土砂を受け入れ可能な下端開放の土砂受容空間が形成され、前記コアチューブの下端部が下方に向かって先細り筒部に形成されると共に、前記栓体の先部が先細り状に形成されていて、前記栓体が前記下限位置に在るときに該栓体の前記先部の外周面が前記先細り筒部内周面に係合することで、前記コアチューブの開放下端が前記栓体で塞がれることを特徴とする。
また請求項3の発明は、地中に鉛直に掘られた孔を通して該孔の底部の土砂を採取するための土砂採取装置であって、長さ調節可能に構成された支持ロッドと、その支持ロッドの下端に連結されて該支持ロッドと共に地上より前記孔内に挿入可能な採取器とを備え、前記採取器は、上下両端が開放された円筒状のコアチューブと、そのコアチューブ内に上下摺動及び相対回転可能に嵌合されて下限位置では該コアチューブの開放下端を塞ぎ、また上限位置では該コアチューブの開放下端を開くと共に該コアチューブに地上からの操作で着脱可能に結合される栓体とを備え、前記栓体は、前記コアチューブ内にその開放上端を通して挿入された前記支持ロッドの下端に連結されていて、その栓体が前記上限位置に在るときには該栓体より下方の前記コアチューブ内に、採取土砂を受け入れ可能な下端開放の土砂受容空間が形成され、前記支持ロッドの外周面には、前記栓体が前記下限位置に在るときに前記コアチューブの上部内周に設けた雌ねじ部に螺合される雄ねじ部が設けられ、前記コアチューブは、前記栓体を内部に上下摺動及び相対回転可能に嵌合させるチューブ本体と、前記支持ロッドを摺動可能に挿通させ且つ前記雌ねじ部が少なくとも一部に形成された貫通孔を中心部に有して前記チューブ本体の開放上端に着脱可能に被着される蓋部材とで構成され、前記栓体は、前記蓋部材の前記チューブ本体への装着状態ではそのチューブ本体より離脱不能であり、また同蓋部材をチューブ本体より取り外した状態では、前記支持ロッドと共に該チューブ本体内にその開放上端より挿入可能であることを特徴とする。
また請求項4の発明は、地中に鉛直に掘られた孔を通して該孔の底部の土砂を採取するための土砂採取装置であって、長さ調節可能に構成された支持ロッドと、その支持ロッドの下端に連結されて該支持ロッドと共に地上より前記孔内に挿入可能な採取器とを備え、前記採取器は、上下両端が開放された円筒状のコアチューブと、そのコアチューブ内に上下摺動及び相対回転可能に嵌合されて下限位置では該コアチューブの開放下端を塞ぎ、また上限位置では該コアチューブの開放下端を開くと共に該コアチューブの上部内周の雌ねじ部に螺合される栓体とを備え、前記栓体は、前記コアチューブ内にその開放上端を通して挿入された前記支持ロッドの下端に連結されていて、その栓体が前記上限位置に在るときには該栓体より下方の前記コアチューブ内に、採取土砂を受け入れ可能な下端開放の土砂受容空間が形成され、前記コアチューブは、前記栓体を内部に上下摺動及び相対回転可能に嵌合させるチューブ本体と、前記支持ロッドを摺動可能に挿通させ且つ前記雌ねじ部が少なくとも一部に形成された貫通孔を中心部に有して前記チューブ本体の開放上端に着脱可能に被着される蓋部材とで構成され、前記栓体は、前記蓋部材の前記チューブ本体への装着状態ではそのチューブ本体より離脱不能であり、また同蓋部材をチューブ本体より取り外した状態では、前記支持ロッドと共に該チューブ本体内にその開放上端より挿入可能であることを特徴とする。
また請求項5の発明は、請求項1〜4の何れかの発明の前記特徴に加えて、前記支持ロッドの外周面には、前記栓体が前記下限位置に在るときに前記コアチューブの上部内周に設けた雌ねじ部に螺合される雄ねじ部が設けられることを特徴とする。
また請求項6の発明は、請求項1〜5の何れかの発明の前記特徴に加えて、前記栓体の外周面には、該栓体が前記下限位置に在るときに前記コアチューブの先部内周に密着して該先部内周と前記栓体の先部外周面との間をシールする環状の弾性シール部材が装着されることを特徴とする。
更に請求項7の発明は、地中の土砂の硬軟や締まり具合を調べる地盤調査の際に地中に鉛直に掘られた孔を利用して所望深度の地層の土砂を採取するための土砂採取システムであって、前記請求項1〜6の何れか1項に記載の土砂採取装置と、前記支持ロッドを介して前記採取器を前記孔内及び地上間で昇降駆動可能な昇降駆動装置とを備え、前記昇降駆動装置として、前記地盤調査の際に地中に任意の押し下げ荷重で孔を掘り下げ且つその掘り下げ抵抗に基づき土砂の硬軟及び締まり具合を計測する地盤調査機に装備された昇降駆動装置が利用され、その地盤調査機の昇降駆動装置は、前記支持ロッドを回転駆動し得る回転駆動機構を備えていて、前記地盤調査の際には、該支持ロッドの下端に着脱可能に結合した調査用ドリルを下降させつつ回転させて前記孔を掘り下げ可能であることを特徴とする。
更に請求項8の発明は、前記請求項7に記載の土砂採取システムを用いた土砂採取方法であって、前記昇降駆動装置に前記支持ロッドを介して装着した拡径用ドリルを該昇降駆動装置により回転駆動することにより、前記地盤調査の際に掘られた前記孔を拡径して採取孔とする工程と、前記拡径用ドリルを前記支持ロッドより取り外した後、前記昇降駆動装置に前記支持ロッドを介して装着した前記採取器を、前記栓体を前記下限位置に保持した状態で該昇降駆動装置により前記採取孔の底部まで挿入、下降させる工程と、前記採取孔の底部において前記採取器の前記コアチューブ内で前記栓体を、前記支持ロッドを介して前記上限位置まで引き上げて該コアチューブの上部に結合する工程と、前記採取器に対し地上から前記支持ロッドを介して下向きの押込力を付与して前記コアチューブ内にその開放下端から前記採取孔底部の土砂を押し込む工程と、前記支持ロッドを介して前記採取器を前記昇降駆動装置により地上まで引き上げて、該採取器の前記コアチューブ内の土砂を取り出す工程とを順次に実行することを特徴とする。
以上のように請求項1〜4の各発明によれば、土採取に際しては先ず、採取器のコアチューブ内で下限位置に保持した栓体でコアチューブの開放下端を塞いだ状態で、支持ロッドを介して採取器を孔の底部まで挿入、下降させ、その底部到着後は、支持ロッドを介して栓体をコアチューブ内の上限位置まで上昇させ、そのコアチューブに栓体を結合(特に請求項2の発明では、コアチューブに栓体を螺合)させる。この状態では、コアチューブの開放下端が開かれ、栓体より下方のコアチューブ内に土砂受容空間が形成されるため、採取器に対し地上から支持ロッドを介して下向きの押込力を付与すれば、コアチューブ内にその開放下端から孔底部の土砂のみを押し込み、採取可能となる。これにより、その採取した土には、孔内周付近に残る他の地層の土等は混じりにくくなり、所望深度(孔底部)の土だけを効率よく採取できることから、その採取土砂で土質判定、延いては液状化リスク判定を精度よく行うことができる。その上、コアチューブの外周壁には、強度低下の原因となる大きな採取窓を特別に開口する必要はないから、コアチューブの剛性強度を高める上で有利となる。
また特に請求項2,4の各発明によれば、コアチューブ内で栓体を上方に引き上げたときに、そのコアチューブの上部内周の雌ねじ部に栓体を単に螺合させるだけで栓体を容易に固定できるため、地上からでも支持ロッドを介して栓体を下限位置に迅速且つ的確に固定操作可能となる。
また特に請求項1,2の各発明によれば、コアチューブの下端部が下方に向かって先細り筒部に形成されると共に、栓体の先部が先細り状に形成されるので、採取器が孔底部に到達した時に、栓体及びコアチューブの先部を孔底部の土に適度に食い込ませることができ、従って、その採取土に他の地層の土をより混じりにくくして、より高精度の土質判定を行うことができる。その上、コアチューブの開放下端が前記先細り筒部により絞られるため、土砂採取後においてコアチューブ内の採取土砂が下方に脱落するのを、該先細り筒部により効果的に防止することができる。
また特に請求項3,4の各発明によれば、コアチューブは、栓体を内部に上下摺動及び相対回転可能に嵌合させるチューブ本体と、支持ロッドを摺動可能に挿通させ且つ前記雌ねじ部が形成された貫通孔を中心部に有してチューブ本体の開放上端に被着される蓋部材とで構成されるので、その蓋部材により栓体がコアチューブより抜け落ちるのを確実に防止でき、しかも蓋部材に雌ねじ部を設けたことで、比較的高い剛性強度が必要なチューブ本体には雌ねじ部を特別に加工する必要はなくなり、全体としてコスト節減に寄与することができる。
また請求項3,5の各発明によれば、支持ロッドの外周面には、栓体が下限位置に在るときにコアチューブ上部の雌ねじ部に螺合される雄ねじ部が設けられるので、採取器を孔に挿入、下降させるときには栓体を下限位置に確実に固定でき、従って、栓体が不用意にコアチューブ内を相対上昇してコアチューブ内に上層の土が侵入するのを効果的に防止できるため、そのサンプル採取した土に他の地層の土を一層混じりにくくして、より高精度の土質判定を行うことができる。
また特に請求項6の発明によれば、栓体の外周面には、該栓体が下限位置に在るときにコアチューブの先部内周に密着して該先部内周と栓体の先部外周面との間をシールする環状の弾性シール部材が装着されるので、そのシール効果により、採取器を孔に挿入、下降させるときに、コアチューブと栓体との隙間からコアチューブ内に土や水が侵入するのを効果的に防止でき、従って、サンプル採取した土に他の地層の土や水を一層混じりにくくして、より高精度の土質判定を行うことができる。
また特に請求項7の発明によれば、地中の土砂の硬軟や締まり具合を調べる地盤調査の際に地中に鉛直に掘られた調査孔を利用して土砂のサンプル採取を行うことができるため、採取孔を特別に掘る必要はなく、それだけコスト節減に寄与することができる。しかもその地盤調査機が備えるドリル駆動用の昇降駆動装置を、土砂のサンプル採取の際に採取器の昇降駆動手段として利用できるため、専用の昇降駆動手段を用意する必要はなく、更なるコスト節減に寄与することができる。
また特に請求項8の発明によれば、地盤調査で掘られた調査孔を、採取器が無理なく挿入、下降可能なサイズに拡径した上で、採取器を昇降させるので、地盤調査用ドリルより採取器が大径であっても、その採取器を用いて支障なくサンプル採取作業を行うことができる。
本発明の第1実施形態で用いる地盤調査機に土砂採取装置を組み込んだ状態を示す全体斜視図
土砂採取装置の正面図(図1の2−2線矢視図)
土砂採取装置の分解図
土砂採取装置の縦断面図であって(a)は栓体が下限位置に在るときを、また(b)は栓体が上限位置に在るときをそれぞれ示す
支持ロッド下端に選択的に取付けられる地盤調査用ドリル及び拡径用ドリルを示す正面図
サンプル土砂採取のための手法を説明する工程説明図1
サンプル土砂採取のための手法を説明する工程説明図2
本発明の第2実施形態に係る土砂採取装置の分解図(図3対応図)
土砂採取装置の縦断面図であって(a)は栓体が下限位置に在るときを、また(b)は栓体が上限位置に在るときをそれぞれ示す(図4対応図)
土砂採取装置の組立手順の一例を示す説明図
本発明の第3実施形態に係る土砂採取装置の要部説明図であって、(a)は調査用ドリルとスリーブと支持ロッドの分解図、(b)は組立図を示す
前記第3実施形態に係る土砂採取装置による土砂採取工程のうち、図6(A)(B)に対応した工程図
本発明の実施の形態を、添付図面に例示した本発明の実施例に基づいて以下に具体的に説明する。
先ず、図1〜図7を参照して本発明の第1実施形態について説明する。
本実施形態で用いる地盤調査機ESは、地上に住宅等の構造物を建てる前に予め行うべき地盤調査、例えばSWS試験(スウェーデン式サウンディング試験)或いはSDS試験(スクリュードライバーサウンディング試験)を実施する際に使用されるものであって、地中Eに任意の押し下げ荷重で調査孔H1を掘り下げ、その際の掘り下げ抵抗に基づき土砂の硬軟及び締まり具合を計測できるように構成される。
この地盤調査機ESは、従来公知であるが、その構成を図1を参照して次に簡単に説明する。即ち、地盤調査機ESは、車輪付きの基台Bと、この基台B上に搭載される昇降駆動装置ESdとを備えている。その昇降駆動装置ESdは、基台B上に立設された支柱Baと、この支柱Baに固設した案内レール10に沿って昇降自在に案内支持された昇降台11と、この昇降台11を連動機構(図示せず)を介して昇降駆動し得る昇降モータ12と、鉛直方向に延びる支持ロッドLを昇降台11に着脱可能に保持するクランプ手段13と、支持ロッドLを回転駆動し得る回転駆動機構ESrとを有する。
尚、昇降台11には、これを支柱Baに随時固定可能なブレーキ機構(図示せず)が付設されており、このブレーキ機構の作動時には、昇降台11を支柱Baの任意高さ位置に固定できる。また、前記ブレーキ機構の作動解除時には、昇降台11が支柱Baに対しフリー(昇降自在)となるため、後述する調査用ドリルD1に支持ロッドLを介して昇降台11等の全自重が作用し、これが地盤調査時における調査孔H1の掘り下げ荷重となる。
前記クランプ手段13は、工作機械の工具保持等のために用いられる従来周知のチャック機構と同様の構造であって、その具体的な説明は省略するが、昇降台11に対しては回転自在に搭載され、そして支持ロッドLの外周をその長手方向で任意位置に把持、即ちクランプ可能である。また昇降台11には、クランプ手段13を連動機構(図示せず)を介して回転駆動し得る回転モータ14が設置される。而して、そのクランプ手段13、連動機構及び回転モータ14は互いに協働して本発明の回転駆動機構ESrを構成する。
尚、昇降台11には、掘り下げ荷重調整用の複数の重錘15が選択的に取付可能となっており、その重錘15の取付個数を調整することで、昇降台11の自重、即ち掘り下げ荷重を任意に調整できるようになっている。
従って、支持ロッドLをクランプ手段13を介して昇降台11に保持させた状態で昇降モータ12を作動させると、支持ロッドLは昇降台11と共に昇降する。また、この間、回転モータ14を作動させると、支持ロッドLは、クランプ手段13と共に昇降台11に対し回転駆動される。かくして、後述する地盤調査の際には、支持ロッドLの下端に調査用ドリルD1(図5参照)を結合した状態でそれらロッドL及びドリルD1を地中Eに下降させつつ回転駆動できるため、このドリルD1により、図6(A)に示すような調査孔H1を地中Eに掘り下げ可能である。
このようにして地盤調査の際には、調査用ドリルD1で地中に任意の押し下げ荷重で調査孔H1を掘り下げることができ、その際の掘り下げ抵抗に基づき土砂の硬軟及び締まり具合を計測する。その掘り下げ抵抗は、地盤調査機ESに付属する制御解析ユニットUが昇降モータ12及び回転モータ14の各電気負荷、並びに調査用ドリルD1に加わる昇降駆動機構ESd等の全重量に基づいて演算することで判定可能である。その判定結果は、同ユニットUの表示盤に表示され、また必要に応じて印刷可能であり、更には電子データとして出力可能である。尚、上記制御解析ユニットUに代えて、所定の解析ソフトをインストールしたパソコンを掘り下げ抵抗の解析に使用してもよい。
前記地盤調査機ESには、サンプル土砂採取のための本発明の土砂採取装置Aを必要に応じて取付可能であり、図1では、その設置態様が示されており、このような設置態様を以て本発明の土砂採取システムが構成される。
即ち、その土砂採取システムにおいて、土砂採取装置Aは、前記支持ロッドLと、その支持ロッドLの下端に連結されて該支持ロッドLと共に地盤調査後の調査孔H1内に挿入可能な採取器Sとより構成される。
前記支持ロッドLは、軸線方向に縦列配置される金属製の複数のロッド要素5より分割構成されており、その各ロッド要素5の下端には連結雌部5aが、また上端には連結雄部5bがそれぞれ設けられる。従って、上下に並ぶ2本のロッド要素5のうち下側のロッド要素5の上端の連結雄部5bを上側のロッド要素5の下端の連結雌部5aに螺合、緊締することで、その両ロッド要素5が一体に接続される。そして、その接続本数を増減することで、支持ロッドLの長さ調整が可能となる。
また支持ロッドLの下端(即ち最下端のロッド要素5の下端の連結雌部5a)には、地盤調査用ドリルD1と、それよりも大径のサンプル土砂採取用ドリルD2と、次に説明する採取器Sの栓体Pとが選択的に螺合、緊締可能である。
前記採取器Sは、上下両端が開放された金属製の円筒状コアチューブCと、そのコアチューブC内に上下摺動及び相対回転可能に嵌合される金属製の栓体Pとを備える。その栓体Pの上部外周には雄ねじ部Psが形成され、更にその上端には連結雄部Pbが連設される。
そして、その栓体Pは、これがコアチューブC内で所定下限位置に在るときにはコアチューブCの開放下端を塞ぎ、また所定上限位置に在るときには、該コアチューブCの開放下端を開くと共にコアチューブCの上部内周の雌ねじ部2hsに前記雄ねじ部Psが螺合される。
前記栓体Pは、コアチューブC内にその開放上端を通して挿入された支持ロッドLの下端(即ち最下端のロッド要素5の下端の連結雌部5a)に該栓体Pの上端の前記連結雄部Pbが螺合、緊締される。そして、その栓体Pが前記上限位置に在るときには該栓体Pより下方のコアチューブC内に、採取土砂を受け入れ可能な下端開放の土砂受容空間Kが形成される。
前記コアチューブCは、栓体Pを内部に上下摺動及び相対回転可能に嵌合させる両端開放の細長い円筒状チューブ本体1と、そのチューブ本体1の開放上端に着脱可能に被着される蓋部材2とで構成される。その蓋部材2の中心部には、支持ロッドLを摺動可能に挿通させる貫通孔2hが形成され、その貫通孔2hの内周には、前記雌ねじ部2hsが少なくとも一部(図示例では下半部のみ)に設けられている。その蓋部材2のチューブ本体1への固定は、チューブ本体1の周壁を横切るよう貫通して蓋部材2の周壁に螺挿される複数のビスbを介してなされる。
前記栓体Pは、蓋部材2のチューブ本体1への装着状態では、蓋部材2が抜け止め機能を果たすことでチューブ本体1より離脱不能となっている。そして、その蓋部材2をチューブ本体1より取り外した状態では、栓体Pが支持ロッドLと共にチューブ本体1内にその開放上端より抜差可能である。
前記コアチューブCの下端部(即ちチューブ本体1の下端部)は下方に向かって先細りのテーパ部1tに形成され、このテーパ部1tが本発明の先細り筒部を構成する。また栓体Pの先部Paは、同じく先細り状に形成されている。従って、栓体Pが前記下限位置に在るときに栓体Pの先部Paの先細り外周面がチューブ本体1下端部の前記テーパ部1t内周に全周に亘り当接することで、コアチューブC(チューブ本体1)の開放下端が栓体Pで塞がれる。尚、図示例では、栓体Pの先部Paは、先端が尖った段付きテーパ面に形成されているが、本発明では、段のないテーパ面、或いは先端及び外周面が丸みを帯びた弾頭状に形成されていてもよい。
次に前記第1の実施形態を用いて地盤調査を行う手法、並びに地盤調査に伴い地中に掘られた調査孔H1を利用して行うサンプル土砂採取の手法について順次説明する。
[地盤調査について]
地盤調査、例えばSWS試験(スウェーデン式サウンディング試験)或いはSDS試験(スクリュードライバーサウンディング試験)を実施する場合には、地盤調査機ESを調査地点まで運び、そこで地盤調査機ESの昇降駆動機構ESdに支持ロッドLを介して取付けた調査用ドリルD1を下降させつつ回転駆動して地中Eに任意の押し下げ荷重で調査孔H1を掘り下げるようにし(図6の(A)工程を参照)、その掘り下げ抵抗に基づき土砂の硬軟及び締まり具合を計測する。その掘り下げ抵抗は、地盤調査機ESに付属する制御解析ユニットUが、昇降モータ12及び回転モータ14の各電気負荷、並びに調査用ドリルD1に加わる昇降駆動機構ESd等の全重量に基づいて演算して判定する。
ところで支持ロッドLは、調査用ドリルD1で調査孔H1を掘り下げる深度が深くなるに従ってロッド長さを順次延長する。その延長作業は、支持ロッドLを構成するロッド要素5を上側に順次継ぎ足すことで行われる。即ち、その手順は、調査用ドリルD1が支持ロッドLと共に下降することで昇降台11が基台10に対し下限位置まで達すると、クランプ手段13による支持ロッドLのクランプを一旦解除した上で、昇降台11を上昇させる。その後、ロッド要素5を継ぎ足して支持ロッドLを上方に延長させた後でクランプ手段13に支持ロッドLを再びクランプし、昇降駆動機構ESdを作動させてドリルD1による掘り下げを再開する。
このような作業を繰り返すことで、地表から硬い地層の深度まで調査孔H1を徐々に掘り下げていき、その一連の掘り下げ過程で各地層にある土砂の硬軟及び締まり具合を分析し、地盤の固さ分布を調べる。尚、前記した支持ロッドLの延長手順は、地盤調査時のみならず、その後のサンプル土砂採取時にも同様に行われる。
即ち、上記した簡易の地盤調査手法では、地中の土砂の硬軟や締まり具合をある程度は調べることができても、地中の土をサンプル採取できないため、土質判定を正確に行うことができず、近年社会問題となっている液状化し易い地盤か否か(即ち液状化リスク)を精度よく判定することはできなかった。
そこで本実施形態では、上記地盤調査手法で地中に掘られた調査孔H1を利用して、地中の土を比較的容易にサンプル採取できるようにしており、次にその土採取手法を説明する。
[サンプル土砂の採取について]
本実施形態によるサンプル土砂の採取作業は、次のような(B)〜(H)の工程(図6,7を参照)を順次実行することで行われる。
(B)工程
この工程では、調査用ドリルD1より大径の拡径用ドリルD2が使用される。そして、この拡径用ドリルD2を連結した支持ロッドLを、地盤調査機ESの昇降駆動装置ESdにクランプ手段13を介して装着した上で、昇降駆動装置ESd(即ち昇降モータ12及び回転モータ14の両方)を作動させて拡径用ドリルD2を下降させつつ回転駆動する。これにより、拡径用ドリルD2の穿孔作用で、地盤調査孔H1をその全域に亘り拡径した採取孔H2が形成される。
(C)工程
前記(B)工程の終了後は、支持ロッドLを引き上げて拡径用ドリルD2を支持ロッドLより取り外し、採取器Sと交換する。そして、昇降駆動装置ESd(即ち昇降モータ12のみ)を作動させて支持ロッドLと共に採取器Sを採取孔H2の底部まで挿入、下降させる。この間、採取器Sの栓体PはコアチューブC内の所定下限位置に保持される。
即ち、採取器SのコアチューブCを採取孔H2内に挿入して下降させるときは、予め栓体Pを前記下限位置まで手で移動させた状態で拡径孔H2に挿入する。そして、その挿入、下降の際にコアチューブCは、地中で拡径孔H2周囲の土砂から摩擦接触抵抗(土圧)を受けるため、同チューブCと栓体Pとの相対位置は終始変化せず(即ち栓体PがコアチューブC内の下限位置に保持され)、コアチューブCの開口下端は栓体Pで塞がれた状態が維持される。
(D)〜(E)工程
栓体Pの下端が採取孔H2の底部に達すると、そこで採取器SのコアチューブC内で栓体Pを、支持ロッドLを介して所定上限位置近くまで引き上げてコアチューブCの下端を開放する(D工程)。そして、そこから更に支持ロッドLを介して栓体Pを逆転、即ち締込み方向と逆方向に回転させて、コアチューブCの上部内周(即ち蓋部材2の貫通孔2hの雌ねじ部2hs)に対し栓体P上部の雄ねじ部Psを上向きに螺進させ、こうして栓体Pの上部の段部が蓋部材2下端に係合する位置が、栓体Pの上限位置となる(E工程)。これにより、栓体Pより下方のコアチューブC内には、採取土砂を受け入れ可能な下端開放の土砂受容空間Kが形成され、その土砂受容空間Kの下端は拡径孔H2の底部に臨んでいる。
尚、上記のように栓体PをコアチューブC内で引き上げ或いは回転させるときに、コアチューブCは、拡径孔H2内周から土圧を受けることで拡径孔H2の底部に固定されるため、栓体Pに対して共連れされたり或いは共回りしたりする虞れはない。
(F)〜(G)工程
前記(E)工程の終了後は、支持ロッドLを地盤調査機ES(昇降駆動機構ESdのクランプ手段13)から取り外し、その状態で支持ロッドLの上部が地上に露出、起立する。そこで次に、この支持ロッドLの上端に下向きの押込力を付与する。尚、この押込力は、図示例ではロッド上端をハンマー等で下向きに打撃することで支持ロッドLに付与するようにしているが、本発明では、何等かの静荷重付与手段を用いてロッド上端に下向きの押込力(静荷重)を作用させるようにしてもよい。この場合、静荷重付与手段としては、例えば地盤調査機ESの昇降駆動機構ESdを使用してもよい。
かくして、採取器Sには支持ロッドLを介して地上から下向きの押込力が伝達されるため、コアチューブC内の前記土砂受容空間Kには、その開放下端から採取孔H2の底部の土砂が押し込まれる。
(H)工程
前記(G)工程の終了後は、支持ロッドLを介して採取器Sを昇降駆動装置ESdにより地上まで引き上げて、採取器SのコアチューブC内に採取された土砂を取り出す。そして、この取り出したサンプル土砂を分析することで、高精度の土質判定を行うことができ、液状化リスクを的確に判定可能となる。
前記したように、本実施形態によれば、土のサンプル採取に際しては先ず、採取器SのコアチューブC内で下限位置に在る栓体PがコアチューブCの開放下端を塞いだ状態で、採取器Sを、支持ロッドSを介して採取孔H2の底部まで挿入、下降させ、しかる後に支持ロッドLを介して栓体PをコアチューブC内の上限位置まで上昇させ、そのコアチューブLの上部内周の雌ねじ部2hsに栓体Pの雄ねじ部Psを螺合させる。この状態では、コアチューブCの開放下端が開かれ、栓体Pより下方のコアチューブC内に土砂受容空間Kが形成されるため、採取器Sに対し地上から支持ロッドLを介して下向きの押込力を付与すれば、コアチューブC内にその開放下端から採取孔H2の底部の土砂のみを押し込み、採取可能となる。
これにより、その採取した土には、採取孔H2の内周付近に残る他の地層の土等は殆ど混じらず、所望深度(即ち前段階の地盤調査で固い地層と判断された採取孔H2の底部)の土だけを効率よく採取できることから、その採取土砂で土質判定、延いては液状化リスクの判定を精度よく行うことができる。その上、コアチューブCの外周壁には、強度低下の原因となる大きな採取窓を特別に開口させる必要はないから、コアチューブCの剛性強度を高める上で有利となる。
また本実施形態のように、コアチューブCの下端部が下方に向かって先細り筒部(テーパ部1t)に形成されると共に、栓体Pの先部Paが先細り状に形成されることで、採取器Sが採取孔H2の底部に到達した時に、栓体P及びコアチューブCの先部Paを採取孔H2の底部の土に適度に食い込ませることができる。従って、その採取土に他の地層の土をより混じりにくくして、より高精度の土質判定を行うことができる。しかもコアチューブCの開放下端が前記先細り筒部(テーパ部1t)により絞られるため、その絞り効果により、土砂採取後においてコアチューブ内の採取土砂が下方に脱落するのを効果的に防止することができる。
更に本実施形態のように、コアチューブCを、栓体Pを内部に上下摺動及び相対回転可能に嵌合させるチューブ本体1と、支持ロッドLを摺動可能に挿通させる中心孔2hを有してチューブ本体1の開放上端に着脱可能に被着される蓋部材2とで分割構成すれば、その蓋部材2が抜け止め機能を発揮できて、栓体PがコアチューブCより離脱するのを確実に防止できる。しかもこの蓋部材2に雌ねじ部2hsを設けたことで、高い剛性強度が必要なチューブ本体1には雌ねじ部を加工する必要はなくなる。またチューブ本体1及び蓋部材2に各々の機能に即した最適の材料選択を高い自由度を以て行うことが可能となり、全体としてコスト節減が図られる。
更にまた本実施形態では、地中の土砂の硬軟や締まり具合を調べる地盤調査の際に地中に鉛直に掘られた調査孔H1を利用して土砂のサンプル採取を行うことができるため、専用の採取孔を新規に掘る必要はなく、それだけコスト節減に寄与することができる。しかもその地盤調査機ESが備える調査ドリル駆動用の昇降駆動装置ESdを、土砂のサンプル採取の際に採取器Sの昇降駆動手段として利用できるため、採取器専用の昇降駆動手段を用意する必要はなく、更なるコスト節減が図られる。
その上、地盤調査で掘られた調査孔H1を、採取器Sが無理なく挿入可能なサイズに拡径した上で、そこに採取器Sを挿入、下降させるので、地盤調査用ドリルD1より採取器Sがかなり大径であっても、その採取器Sを用いて支障なくサンプル採取作業を行うことができる。
次に図8〜図10を参照して、本発明の第2の実施形態を説明する。本実施形態では、コアチューブCの上部を構成する蓋部材2の中心部に設けた貫通孔2hに、その軸方向全域に亘り雌ねじ部2hsが形成される。一方、支持ロッドLを分割構成する複数のロッド要素のうち最下端のロッド要素5′が、他のロッド要素5…よりも短く(即ち採取器Sのチューブ本体1とほぼ同じ長さに)形成され、その最下端のロッド要素5′の上部外周面には雄ねじ部Lsが設けられる。この雄ねじ部Lsは、栓体Pが図9(a)に示すようにコアチューブC内の下限位置に在るときに前記蓋部材2の雌ねじ部2hsに螺合される。そして、その螺合効果によれば、採取器Sを採取孔H2内に挿入、下降させるときでもコアチューブC内で栓体Pが下限位置に確実に固定可能となって、コアチューブCの開放下端を栓体Pで確実に閉塞可能となる。
さらに栓体Pの外周面には、その栓体Pが前記下限位置に在るときにコアチューブCの先細り状の先端筒部(即ちチューブ本体1の前記テーパ部1t)内周面に密着して栓体Pの先部Pa外周面と該テーパ部1tの内周面間をシールする環状のシール部材3が装着され、このシール部材3は、例えばゴム等の弾性材料で構成される。このシール部材3は、図示例では栓体Pの中間部外周面に凹設した環状のシール溝4に嵌着され、軸方向の位置決めがなされる。
尚、シール部材3の配設位置は、図示例では栓体Pの先細りテーパ部1tの終端(大径端)に設定されているが、本発明では、チューブ本体1の先部内周と栓体Pの先部Pa外周面との間でシール部材3がシール機能を発揮できる部位であればよく、例えば前記テーパ部1tの中間部であってもよい。
次に本実施形態の土砂採取装置Aの組立手順を図10を参照して説明する。先ず、外周にシール部材3を装着した栓体Pの上端を、ロッド要素5′の下端に螺合、緊締することで結合し、しかる後に蓋部材2を上方よりロッド要素5′に嵌合させる。この場合、蓋部材2は、その雌ねじ部2hsをロッド要素5′上部の雄ねじ部Lsに正転、即ち締込み方向に回転させることで雄ねじ部Lsを通過させ、その通過後は、ロッド要素5′の中間部に上下摺動自在となる(図10の(1)工程→(2)工程を参照)。以上により、栓体P、ロッド要素5′及び蓋部材2よりなる小組立体が構成される。
次いで、前記小組立体をチューブ本体1内にその開放上端より挿入した後、蓋部材2とチューブ本体1上部とをビスbで固着し、これにより、採取器Sの組立が終了する(図10の(3)工程→(4)工程を参照)。この場合、コアチューブC内で栓体Pを下端近くまで摺動させた後、ロッド要素5′を正転させてその外周の雄ねじ部Lsを蓋部材2の雌ねじ部2hsに対し下向きに螺進させることで、栓体Pが所定の下限位置に到達する。そして、この下限位置では、栓体Pの先細り先部Paの外周がチューブ本体1のテーパ部1内周に直接係合すると共に、その先細り先部Paの外周とテーパ部1内周との間にシール部材3が弾力的に挟まれてその間がシールされる。尚、最下端のロッド要素5′の上端に必要に応じて他のロッド要素5を順次継ぎ足していくことで、所望長さの支持ロッドLが得られる。
本実施形態においても、サンプル土砂の採取作業は、第1実施形態の前記(B)〜(H)の工程と基本的に同様の工程で行なわれる。但し、前記(C)工程から(D)工程に移行する段階、即ち、拡径孔H2の底部に達した採取器SのコアチューブC内で、栓体Pをそれまでの下限位置から上方へ引き上げる際には、先ず栓体Pを支持ロッドLを介して逆転させて、ロッド要素5′外周の雄ねじ部Lsを蓋部材2の雌ねじ部2hsに対し上向きに螺進させるようにして該雌ねじ部2hsを通過させる必要があり、その通過後はコアチューブC内で栓体Pを更に上方に引き上げる。そして、その引き上げられた栓体Pが上限位置(図9(b)参照)に達する直前に支持ロッドLを介して栓体Pを再び逆転させて、コアチューブCの上部内周(即ち蓋部材2の貫通孔2hの雌ねじ部2hs)に栓体P上部の雄ねじ部Psを螺合させ、こうして栓体Pの上部の段部が蓋部材2下端に係合する位置が、栓体Pの上限位置となる。そして、前記E工程からH工程までは、第1実施形態と同様に行なわれる。
かくして、本実施形態によれば、第1の実施形態の前記効果に加えて、採取器Sを採取孔H2に挿入、下降させるときには、栓体Pを下限位置(図9(a)を参照)に確実に固定できるため、栓体Pが不用意にコアチューブC内を相対上昇してコアチューブCの下端が開放すること(延いてはその開放下端からコアチューブC内に上層の土が侵入すること)を効果的に防止でき、従って、そのサンプル採取した土に他の地層の土を一層混じりにくくして、より高精度の土質判定を行うことができる。
更に前記弾性シール部材3のシール効果により、採取器Sを拡径孔H2に挿入、下降させるときにコアチューブCと栓体Pとの隙間からコアチューブC内に土や水が侵入するのをより効果的に防止できるため、採取した土に他の地層の土や水を一層混じりにくくして、より高精度の土質判定を行うことができる。
次に図11,図12を参照して、本発明の第3の実施形態を説明する。本実施形態では、第1及び第2の実施形態で(B)工程を実施する際に、拡径用ドリルD2に代えて、支持ロッドLの下部外周に、拡径用ドリルD2と略等径の円筒状スリーブ20が嵌装される。このスリーブ20は、その両端外周が先細りのテーパ状に形成されていて、支持ロッドLに嵌合されており、そのスリーブ20の下端には環状の内向き係合鍔部20fが一体に形成される。そして、この係合鍔部20fを調査用ドリルD1の上部外周の段部21と、そのドリルD1の上端の連結雄部22に螺合、緊締される支持ロッドLの下端(即ち最下端のロッド要素5(5′)の下端)との間に挟着することで、スリーブ20が調査用ドリルD1及び支持ロッドLに着脱可能に固定、連結される。
そして、前記(B)工程では、調査用ドリルD1の上端にスリーブ20を連結固定した状態で、地盤調査機ESの昇降駆動機構ESdにより支持ロッドLを介してスリーブ20及び調査用ドリルD1を調査孔H1内で回転させつつ下降させる。これにより、スリーブ20が調査孔H1内に圧入され、調査孔H1はその内周がスリーブ20でしごかれるようにして拡径されることで、採取孔H2となる。
本実施形態では、採取孔H2の内周の土砂がスリーブ20の圧縮効果で固められて孔底部に落下しにくくなるため、引き続く(C)工程を実行する際に、採取器S内には上層の土砂が入りにくくなる利点があり、また拡径用ドリルD2を特別に用意する必要もない。その他の効果は、第1及び第2の実施形態と基本的に同様である。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はそれら実施形態に限定されることなく、本発明の範囲内で種々の実施形態が可能である。
例えば、前記実施形態では、孔H2の底部に到達したコアチューブC内で、上方に引き上げた栓体Pを上限位置に固定するために、コアチューブCの上部内周の雌ねじ部2hsに栓体Pを螺合させて固定するものを示したが、本発明(請求項1)では、そのような螺合手段以外で、地上から操作されて栓体PをコアチューブCの上部に着脱可能に結合する結合手段を使用して、栓体PをコアチューブC内の上限位置に固定してもよい。そして、栓体PとコアチューブCの上部内周との間に設けられる上記結合手段としては、例えば、押し回し操作により着脱を行う従来周知のバヨネット機構や、電磁クラッチその他の電動式の結合機構が使用可能である。尚、上記バヨネット機構を用いる場合には、支持ロッドLを介して栓体PをコアチューブCに対し押し回し操作すれば、栓体PのコアチューブCに対する着脱が可能であり、また電磁クラッチその他の電動式の結合機構を用いる場合には、地上から無線又は有線の遠隔操作で電動式結合機構を作動・作動解除すればよい。
また前記実施形態では、支持ロッドSを介して採取器Sを昇降させる昇降駆動装置ESdとして、地盤調査機ESに装備される昇降駆動装置を用いたが、本発明(請求項1〜6)では、サンプル土砂採取のための採取器Sの昇降に専用の昇降駆動装置を使用してもよい。
また前記実施形態では、地盤調査機ESにより地盤調査のために掘られた調査孔H1を拡径してサンプル採取用の採取孔H2としたが、その調査孔H1の内径と採取器S(コアチューブC)の外径とが略一致する場合には、調査孔H1を拡径せずにそのまま採取孔として利用するようにしてもよい。
また前記実施形態では、地盤調査機ESにより地盤調査のために掘られた調査孔H1を利用してサンプル土砂の採取を行なうようにしたが、本発明(請求項1〜6)では、地盤調査以外の目的で掘られた孔を利用してサンプル土砂の採取を行なうようにしてもよい。
また前記実施形態では、地盤調査、即ち前記したSWS試験又はSDS試験を実施するに当たり、調査用ドリルの昇降・回転を全自動で実施可能な地盤調査機ESを用い、その地盤調査機ESの昇降駆動機構ESdにより採取器Sを昇降駆動するようにしたものを示したが、本発明では、人力を主体とした簡易の地盤調査機を使用して地盤調査するときに掘られる調査孔を利用して、採取器Sによるサンプル土砂採取を行うようにしてもよく、この場合、採取器Sの昇降は支持ロッドLを介して人力で行うようにしてもよい。
A・・・・・土砂採取装置
C・・・・・コアチューブ
D1・・・・調査用ドリル
D2・・・・拡径用ドリル
E・・・・・地中
ES・・・・地盤調査機
ESd・・・昇降駆動装置
ESr・・・回転駆動機構
H1・・・・孔としての調査孔
H2・・・・採取孔
K・・・・・土砂受容空間
L・・・・・支持ロッド
Ls・・・・支持ロッド外周の雄ねじ部
P・・・・・栓体
Ps・・・・栓体外周の雄ねじ部
S・・・・・採取器
1・・・・・チューブ本体
1t・・・・先細り筒部としてのテーパ部
2・・・・・蓋部材
2h・・・・蓋部材の貫通孔
2hs・・・雌ねじ部
3・・・・・弾性シール部材
5,5′・・支持ロッドを構成するロッド要素