JP2014156405A - 金属錯体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い耐久性を示す金属錯体を製造する製造方法を提供すること。
【解決手段】多価カルボン酸化合物と、周期表の3〜11族に属する遷移金属のイオンから選択される少なくとも1種の遷移金属イオンとを含む金属錯体の製造方法であって、前記多価カルボン酸化合物と前記遷移金属イオンとを溶媒中で反応させる工程を含み、該工程において、遷移金属イオンに対して5〜15モル当量の水を共存させることによって上記課題を解決する。
【選択図】 図10

Description

本発明は、金属錯体の製造方法に関する。さらに詳しくは、多価カルボン酸化合物と、周期表の3〜11族に属する遷移金属のイオンから選択される少なくとも1種の遷移金属イオンとを含む金属錯体の製造方法に関する。
これまで、脱臭、排ガス処理などの分野で種々の吸着材が開発されている。活性炭はその代表例であり、活性炭の優れた吸着性能を利用して、空気浄化、脱硫、脱硝、有害物質除去など各種工業において広く使用されている。近年は半導体製造プロセスなどへ窒素の需要が増大しており、かかる窒素を製造する方法として、分子ふるい炭を使用して圧力スイング吸着法や温度スイング吸着法により空気から窒素を製造する方法が使用されている。また、分子ふるい炭は、メタノール分解ガスからの水素精製など各種ガス分離精製にも応用されている。
圧力スイング吸着法や温度スイング吸着法により混合ガスを分離する際には、一般に、分離吸着材として分子ふるい炭やゼオライトなどを使用し、その平衡吸着量または吸着速度の差により分離を行っている。しかしながら、平衡吸着量の差によって混合ガスを分離する場合、これまでの吸着材では除去したいガスのみを選択的に吸着することができないため分離係数が小さくなり、装置の大型化は不可避であった。また、吸着速度の差によって混合ガスを分離する場合、ガスの種類によっては除去したいガスのみを吸着できるが、吸着と脱着を交互に行う必要があり、この場合も装置は依然として大型にならざるを得なかった。
一方、より優れた吸着性能を与える吸着材として、高分子金属錯体が開発されている。高分子金属錯体は、(1)広い表面積と高い空隙率、(2)高い設計性、(3)外部刺激による動的構造変化、といった特徴を有しており、既存の吸着材にはない吸着特性が期待される。
優れた吸着性能を有する金属錯体としてテレフタル酸と亜鉛イオンと4,4’−ビピリジルとからなる高分子金属錯体が示されている(非特許文献1参照)。
Banglin Chen、Chengdu Liang、Jun Yang、Damacio S. Contreras、Yvette L. Clancy、Emil B. Lobkovsky、Omar M. Yaghi、Sheng Dai、Angewandte Chemie International Edition、第45巻、1390〜1393頁(2006年)
高分子金属錯体を用いたガス吸着材、吸蔵材及び分離材の実用化に際しては、吸着性能、吸蔵性能及び分離性能のさらなる向上のみならず、金属錯体自体の耐久性の向上が求められている。例えば、実ガス中に含まれる水は金属錯体に悪影響を与え、ガス吸着性能が低下することが知られている。したがって、金属錯体の耐久性、特に耐水性の向上が早急に求められている。しかしながら、非特許文献1に記載の金属錯体について本発明者らが評価した結果、耐水性に問題があることが分かった。
本発明の目的は、従来よりも耐久性、特に耐水性に優れるガス吸着材、ガス吸蔵材或いはガス分離材として使用できる金属錯体を提供することにある。
本発明者らは鋭意検討し、多価カルボン酸化合物と、周期表の3〜11族に属する遷移金属のイオンから選択される少なくとも1種の遷移金属イオンとを含む金属錯体の製造方法であって、遷移金属イオンに対して5〜15モル当量の水を共存させることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明によれば、以下のものが提供される。
(1)多価カルボン酸化合物と、周期表の3〜11族に属する遷移金属のイオンから選択される少なくとも1種の遷移金属イオンとを含む金属錯体の製造方法であって、前記多価カルボン酸化合物と前記遷移金属イオンとを溶媒中で反応させる工程(A)を含み、該工程(A)において、遷移金属イオンに対して5〜15モル当量の水を共存させることを特徴とする、金属錯体の製造方法。
(2)前記工程(A)において、プロトン性溶媒を用いる(1)に記載の金属錯体の製造方法。
(3)前記工程(A)において、遷移金属イオンに対して1〜11モル当量の水を添加することにより前記水を共存させる(1)または(2)に記載の金属錯体の製造方法。
(4)前記工程(A)において、さらにモノカルボン酸化合物を添加する工程を含む(1)〜(3)のいずれかに記載の金属錯体の製造方法。
(5)前記工程(A)において、多価カルボン酸化合物、遷移金属イオン及びモノカルボン酸化合物のうちの少なくとも一種が懸濁した状態で反応させる(4)に記載の製造方法。
(6)さらに、前記遷移金属イオンに多座配位可能な有機配位子を添加する工程を含む(1)〜(5)のいずれかに記載の金属錯体の製造方法。
(7)多価カルボン酸化合物と、周期表の3〜11族に属する遷移金属のイオンから選択される少なくとも1種の遷移金属イオンと、該遷移金属イオンに多座配位可能な有機配位子とを含む金属錯体の製造方法であって、前記多価カルボン酸化合物と前記遷移金属イオンとを溶媒中で反応させる工程(A)と、工程(A)で得られた生成物に前記多座配位可能な有機配位子を反応させる工程(B)とを含み、該工程(A)において、遷移金属イオンに対して5〜15モル当量の水を共存させることを特徴とする、金属錯体の製造方法。
(8)前記工程(A)において、プロトン性溶媒を用いる(7)に記載の金属錯体の製造方法。
(9)前記工程(A)において、遷移金属イオンに対して1〜11モル当量の水を添加することにより前記水を共存させる(7)または(8)に記載の金属錯体の製造方法。
(10)前記工程(A)において、さらにモノカルボン酸化合物を添加する工程を含む(7)〜(9)のいずれかに記載の金属錯体の製造方法。
(11)前記工程(A)及び/または(B)において、多価カルボン酸化合物、遷移金属イオン、多座配位可能な有機配位子及びモノカルボン酸化合物のうちの少なくとも一種が懸濁した状態で反応させる(10)に記載の金属錯体の製造方法。
本発明により、多価カルボン酸化合物と、周期表の3〜11族に属する遷移金属のイオンから選択される少なくとも1種の遷移金属イオンとを含む金属錯体の製造方法を提供することができる。本発明の製造方法によって得られた金属錯体は、耐久性、特に耐水性に優れ、かつ各種ガスの吸着性能、吸蔵性能、分離性能にも優れるものである。よって、本発明の製造方法によって得られた金属錯体は、ガスの吸着材、吸蔵材及び分離材としても使用することができる。
テレフタル酸のカルボキシレート基と銅イオンとからなるパドルホイール骨格中の遷移金属イオンのアキシャル位に4,4’−ビピリジルが配位して形成されるジャングルジム骨格の模式図である。 ジャングルジム骨格が二重に相互貫入した三次元構造の模式図である。 実施例1で得た金属錯体の粉末X線回折パターンである。 実施例1で得た金属錯体の結晶構造である。 実施例1で得た金属錯体を重アンモニア水に溶解させて測定したH−NMRスペクトルである。 実施例1で得た金属錯体を重アンモニア水と重トリフルオロ酢酸とからなる混合溶液に溶解させて測定したH−NMRスペクトルである。 比較例1で得た金属錯体の粉末X線回折パターンである。 比較例2で得た金属錯体の粉末X線回折パターンである。 比較例3で得た金属錯体の粉末X線回折パターンである。 実施例1及び比較例2で得た金属錯体の273Kにおける二酸化炭素の吸着等温線である。
本発明の製造方法は、多価カルボン酸化合物と、周期表の3〜11族に属する遷移金属のイオンから選択される少なくとも1種の遷移金属イオンとを含む金属錯体の製造方法である。
本発明に用いられる多価カルボン酸化合物としては、特に限定されるものではないが、ジカルボン酸化合物、トリカルボン酸化合物、テトラカルボン酸化合物などを使用することができる。例えば、コハク酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、フマル酸、ムコン酸、2,3−ピラジンジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸、3,5−ピリジンジカルボン酸、2,5−チオフェンジカルボン酸、2,2’−ジチオフェンジカルボン酸などのジカルボン酸化合物;トリメシン酸、トリメリット酸、ビフェニル−3,4’,5−トリカルボン酸、1,3,5−トリス(4−カルボキシフェニル)ベンゼン、1,3,5−トリス(4’−カルボキシ[1,1’−ビフェニル]−4−イル)ベンゼンなどのトリカルボン酸化合物;ピロメリット酸、[1,1’:4’,1’’]ターフェニル−3,3’’,5,5’’−テトラカルボン酸、1,2,4,5−テトラキス(4−カルボキシフェニル)ベンゼンなどのテトラカルボン酸化合物などが挙げられる。これらの中でもジカルボン酸化合物が好ましく、芳香族ジカルボン酸化合物がより好ましい。多価カルボン酸化合物は、単独で用いても良く、2種以上の多価カルボン酸化合物を混合して用いても良い。また、本発明の製造方法により得られた金属錯体は、単一のジカルボン酸化合物からなる金属錯体を2種以上混合して使用することもできる。また、該多価カルボン酸化合物は、酸無水物やアルカリ金属塩の形で用いてもよい。
該多価カルボン酸化合物は、カルボキシル基以外に置換基をさらに有していてもよい。置換基を有する多価カルボン酸は、芳香族多価カルボン酸が好ましく、置換基は芳香族多価カルボン酸の芳香環に結合したものが好ましい。例えば、テレフタル酸は2−ニトロテレフタル酸であってもよい。置換基の数は1、2または3個が挙げられる。置換基としては、特に限定されないが、例えばアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基などの直鎖または分岐を有する炭素数1〜5のアルキル基)、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基,n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基など)、アミノ基、モノアルキルアミノ基(メチルアミノ基など)、ジアルキルアミノ基(ジメチルアミノ基など)、ホルミル基、エポキシ基、アシロキシ基(アセトキシ基、n−プロパノイルオキシ基、n−ブタノイルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基など)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基など)、ニトロ基、シアノ基、水酸基、アセチル基、トリフルオロメチル基などが挙げられる。
本発明に用いられる周期表の3〜11族に属する遷移金属のイオンとしては、例えば、スカンジウムイオン、ランタノイドイオン(ランタンイオン、テルビウムイオン、ルテチウムイオンなど)、アクチノイドイオン(アクチニウムイオンイオン、ローレンシウムなど)、ジルコニウムイオン、バナジウムイオン、クロムイオン、モリブデンイオン、マンガンイオン、鉄イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、銅イオンなどを使用することができ、中でもマンガンイオン、コバルトイオン、ニッケルイオン及び銅イオンが好ましく、銅イオンがより好ましい。遷移金属イオンは、単一の遷移金属イオンを使用することが好ましいが、2種類以上の遷移金属イオンを混合して用いてもよい。また、本発明の製造方法により得られた金属錯体は、単一の遷移金属イオンからなる金属錯体を2種以上混合したものでもよい。
該遷移金属イオンは金属塩の形で用いてもよい。遷移金属塩としては、例えば、スカンジウム塩、ランタノイド塩(ランタン塩、テルビウム塩、ルテチウム塩など)、アクチノイド塩(アクチニウム塩、ローレンシウム塩など)、ジルコニウム塩、バナジウム塩、クロム塩、モリブデン塩、マンガン塩、鉄塩、コバルト塩、ニッケル塩、銅塩などを使用することができ、中でもマンガン塩、コバルト塩、ニッケル塩及び銅塩が好ましく、銅塩がより好ましい。遷移金属塩は、単一の遷移金属塩を使用することが好ましいが、2種以上の遷移金属塩を混合して用いてもよい。また、これらの遷移金属塩としては、酢酸塩、ギ酸塩などの有機酸塩、硫酸塩、硝酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、炭酸塩などの無機酸塩を使用することができる。
本発明の製造方法は、多価カルボン酸化合物と、周期表の3〜11族に属する遷移金属のイオンから選択される少なくとも1種の遷移金属イオンとを溶媒中で反応させる工程(A)を含み、該工程(A)において、遷移金属イオンに対して5〜15モル当量の水を共存させることを特徴とする。好ましくは、遷移金属イオンは金属塩の形で用いるのがよい。常圧下、溶媒中で多価カルボン酸化合物及び遷移金属イオンを数時間から数日間反応させ、析出させることにより金属錯体を製造することができる。このとき、超音波またはマイクロウェーブ照射下で反応を行ってもよい。
金属錯体の製造に用いる溶媒としては、単一または混合して有機溶媒を使用することができる。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ジエチルエーテル、ブタノール、エチレングリコール、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、クロロホルム、アセトン、酢酸エチル、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミドなどが挙げられるが、中でもプロトン性溶媒が好ましい。プロトン性溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、ホルムアミド、N−メチルホルムアミドなどが挙げられる。特にアルコール溶媒であるメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコールなどがより好ましい。
金属錯体を製造するときの遷移金属塩と多価カルボン酸化合物の混合比率は、遷移金属塩:多価カルボン酸化合物=1:5〜8:1のモル比の範囲内が好ましく、1:3〜6:1のモル比の範囲内がより好ましい。
金属錯体を製造する際の多価カルボン酸化合物のモル濃度は0.01〜5.0mol/Lが好ましい。また、遷移金属塩のモル濃度は0.01〜5.0mol/Lが好ましい。これより低い濃度で反応を行っても目的とする金属錯体は得られるが、収率が低下するため好ましくない。
金属錯体を製造するときに共存させる水の量は、遷移金属イオンに対して5〜15モル当量の範囲内であり、6〜12モル当量の範囲内がより好ましい。ここで、「共存させる水の量」とは、反応系中に存在している水の量を意味し、添加する水の量、溶媒中にもともと存在する水の量、遷移金属塩の結晶水による水の量の総量である。従って、共存する水の量を制御するためには、用いる溶媒は、予め水を可能な限り除いた脱水溶媒を用いることが好ましい。また、結晶水を含む遷移金属塩を使用する場合には、結晶水も含めて共存する水の量が、前記5〜15モル当量の範囲内に収まる必要がある。従って、結晶水が多すぎない遷移金属塩を使用することが好ましい。
金属錯体を合成する際に、水を加えると、用いる遷移金属イオンの空の配位座を水が埋める。そのため、多価カルボン酸化合物と遷移金属イオンとの反応速度すなわち錯形成速度が制御され、結晶欠陥が少ない金属錯体を得ることが可能となる。結晶欠陥は金属錯体の分解の起点となりえるため、結晶欠陥が少ない本発明の製造方法により得られる金属錯体は、水蒸気に対する耐久性などに優れる。一方、反応の際に共存している水の量が多い場合、金属錯体が生成する過程において、遷移金属イオンと多価カルボン酸化合物との配位結合の加水分解反応が起こりうるため、耐久性が低下する。一方、共存している水の量が少なすぎる場合、前記の効果が得られず、耐水性、耐久性を発揮する金属錯体を得ることができない。本発明においては、前記工程(A)で共存させる水は、別途添加することが好ましい。別途添加することにより、共存させる水の量を容易に制御でき、結晶欠陥が少ない金属錯体を得ることができる。前記工程(A)において、遷移金属イオンに対して1〜11モル当量の水を添加することが好ましく、2〜9モル当量の水を添加することがより好ましい。
また、周期表の12族に属する金属のイオンは遷移金属イオンであるが、金属イオンと多価カルボン酸化合物との結合が弱く、共存する水によって加水分解されやすいため、得られる金属錯体の耐水性は十分なものではない。
反応温度としては、使用する溶媒に応じて適宜に選択すればよいが、253〜463Kが好ましく、298〜423Kがより好ましい。
反応が終了したことは吸光光度法、ガスクロマトグラフィーまたは高速液体クロマトグラフィーにより原料の残存量を定量することにより確認することができるが、これらに限定されるものではない。反応終了後、得られた混合液を吸引濾過に付して沈殿物を集め、有機溶媒による洗浄後、373K程度で数時間真空乾燥することにより、目的の金属錯体を得ることができる。
本発明の製造方法においては、さらにモノカルボン酸化合物を反応させる工程を含むことができる。当該モノカルボン酸化合物は、多価カルボン酸化合物と同様に遷移金属イオンに配位する。モノカルボン酸化合物が配位することにより、金属錯体の耐水性をより向上させることができる。モノカルボン酸化合物は、上記工程(A)において反応させることが好ましい。モノカルボン酸化合物としては、特に脂肪族モノカルボン酸化合物が好ましく、例えば、ギ酸;酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、シクロヘキサンカルボン酸、カプリル酸、オクチル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、α−リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、リノール酸及びオレイン酸などの脂肪族モノカルボン酸などを使用することができる。中でもギ酸、酢酸、オクチル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸が好ましい。
該モノカルボン酸化合物は、酸無水物やアルカリ金属塩の形で用いてもよく、原料金属塩のカウンターアニオンとして用いてもよい。また、該モノカルボン酸化合物は、反応初期から共存させても、反応後期に添加してもよい。金属錯体を製造するときの多価カルボン酸化合物と脂肪族モノカルボン酸化合物の混合比率は、多価カルボン酸化合物:脂肪族モノカルボン酸化合物=1:1,000〜5,000:1のモル比の範囲内が好ましく、1:100〜1,000:1のモル比の範囲内がより好ましい。
本発明の製造方法により得られた金属錯体がモノカルボン酸化合物を含む場合、その割合は本発明の効果をなわない限り特に限定されるものではないが、多価カルボン酸化合物とモノカルボン酸合物との組成比は、多価カルボン酸化合物:モノカルボン酸化合物=5:1〜5,000:1の範囲内であることが好ましく、10:1〜2,500:1の範囲内であることがより好ましい。組成比は、金属錯体を分解して均一な溶液とした後に、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーまたはNMRを用いて分析することで決定することができるが、これらに限定されるものではない。
本発明の製造方法においては、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに前記遷移金属イオンに多座配位可能な有機配位子を反応させる工程(B)を含むことができる。工程(B)は工程(A)と同時に行ってもよく、前記工程(A)の後に、得られた生成物に対して行ってもよい。
本発明に用いられる遷移金属イオンに多座配位可能な有機配位子とは、非共有電子対で遷移金属イオンに対して配位する部位を2箇所以上持つ中性配位子を意味する。
非共有電子対で遷移金属イオンに対して配位する部位としては、窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子などが挙げられる。該多座配位可能な有機配位子は、複素芳香環化合物であることが好ましく、中でも窒素原子を配位部位に有する複素芳香環化合物であることが好ましい。複素芳香環化合物は置換基を有していてもよく、2価の炭化水素基(例えば、エチンから水素原子を2個取り除いた形である2価の基)などで結合されていてもよい。
本発明に用いられる遷移金属イオンに多座配位可能な有機配位子としては、特に限定されるものではないが、遷移金属イオンに二座配位可能な有機配位子、三座配位可能な有機配位子、四座配位可能な有機配位子などを使用することができる。例えば、4,4’−ビピリジル、2,2’−ジメチル−4,4’−ビピリジン、1,2−ビス(4−ピリジル)エチン、1,4−ビス(4−ピリジル)ブタジイン、1,4−ビス(4−ピリジル)ベンゼン、3,6−ジ(4−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、2,2’−ビ−1,6−ナフチリジン、フェナジン、ジアザピレン、トランス−1,2−ビス(4−ピリジル)エテン、4,4’−アゾピリジン、1,2−ビス(4−ピリジル)エタン、4,4’−ジピリジルスルフィド、1,3−ビス(4−ピリジル)プロパン、1,2−ビス(4−ピリジル)−グリコール、N−(4−ピリジル)イソニコチンアミド、1,2−ビス(1−イミダゾリル)エタン、1,2−ビス(1,2,4−トリアゾリル)エタン、1,2−ビス(1,2,3,4−テトラゾリル)エタン、1,3−ビス(1−イミダゾリル)プロパン、1,3−ビス(1,2,4−トリアゾリル)プロパン、1,3−ビス(1,2,3,4−テトラゾリル)プロパン、1,4−ビス(4−ピリジル)ブタン、1,4−ビス(1−イミダゾリル)ブタン、1,4−ビス(1,2,4−トリアゾリル)ブタン、1,4−ビス(1,2,3,4−テトラゾリル)ブタン、1,4−ビス(ベンゾイミダゾール−1−イルメチル)−2,4,5,6−テトラメチルベンゼン、1,4−ビス(4−ピリジルメチル)−2,3,5,6−テトラメチルベンゼン、1,3−ビス(イミダゾール−1−イルメチル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3−ビス(4−ピリジルメチル)−2,4,6−トリメチルベンゼンなどの二座配位可能な有機配位子;2,4,6−トリス(4−ピリジル) −2−トリアジン、1,3,5−トリス(1−イミダゾリル)ベンゼン、1,3,5−トリス(2−ピリジル)ベンゼン、1,3,5−トリス(3−ピリジル)ベンゼン、1,3,5−トリス(4−ピリジル)ベンゼン、2,4,6−トリス(1−イミダゾリル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ピリジル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(3−ピリジル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(4−ピリジル)−1,3,5−トリアジンなどの三座配位可能な有機配位子;1,2,4,5−テトラキス(1−イミダゾリル)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(2−ピリジル)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(3−ピリジル)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(4−ピリジル)ベンゼン、テトラキス(1−イミダゾリルメチル)メタン、テトラキス(4−ピリジロキシメチレン)メタンなどの四座配位可能な有機配位子などが挙げられる。これらの中でも二座配位可能な有機配位子が好ましい。多座配位可能な有機配位子は、単独で用いても良く、2種以上の多座配位可能な有機配位子を混合して用いても良い。また、本発明の製造方法により得られた金属錯体は、単一の多座配位可能な有機配位子からなる金属錯体を2種以上混合して使用することもできる。
本発明に用いられる多座配位可能な有機配位子としては、点群がD∞hであり、かつ長軸方向の長さが7.0Å以上16.0Å以下である二座配位可能な有機配位子がより好ましい。
該二座配位可能な有機配位子の点群は、下記参考文献1に記載の方法に従って決定することができる。
参考文献1:中崎昌雄、分子の対称と群論、39〜40頁(1973年、東京化学同人)
例えば、4,4’−ビピリジル、1,2−ビス(4−ピリジル)エチン、2,7−ジアザピレン、1,4−ビス(4−ピリジル)ベンゼン、3,6−ジ(4−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、2,6−ジ(4−ピリジル)−ベンゾ[1,2−c:4,5−c’]ジピロール−1,3,5,7(2H,6H)−テトロン、4,4’−ビス(4−ピリジル)ビフェニレン、N,N’−ジ(4−ピリジル)−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシジイミドなどは左右対称な直線分子であり、かつ対称心を有するので、点群はD∞hとなる。また、1,2−ビス(4−ピリジル)エテンは2回回転軸とその軸に垂直な対称面を有するので、その点群はC2hとなる。
該二座配位可能な有機配位子の点群がD∞hの場合、対称性が高いために無駄な空隙が少なく、高い吸着性能を発揮することができる。また、該二座配位可能な有機配位子の長軸方向の長さが7.0Å以上16.0Å以下であると、錯体中の遷移金属イオン間距離が適度になり、ガス分子を吸脱着するのに最適な空隙を有する金属錯体を形成することができる。長軸方向の長さがこの範囲外の二座配位可能な有機配位子を用いても金属錯体は得られるが、吸蔵性能及び分離性能が低下する傾向がある。
本明細書における二座配位可能な有機配位子の長軸方向の長さは、富士通株式会社製Scigress Explorer Professional Version 7.6.0.52を用い、分子力学法MM3で配座解析を行った後、半経験的分子軌道法PM5で構造最適化を行うことで求めた最安定構造における、遷移金属イオンに対して配位する原子のうち構造式内で最も離れた位置にある2原子間の距離と定義する。
例えば、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンの窒素原子間距離は2.609Å、ピラジンの窒素原子間距離は2.810Å、4,4’−ビピリジルの窒素原子間距離は7.061Å、1,2−ビス(4−ピリジル)エチンの窒素原子間距離は9.583Å、1,4−ビス(4−ピリジル)ベンゼンの窒素原子間距離は11.315Å、3,6−ジ(4−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジンの窒素原子間距離は11.204Å、2,6−ジ(4−ピリジル)−ベンゾ[1,2−c:4,5−c’]ジピロール−1,3,5,7(2H,6H)−テトロンの窒素原子間距離は15.309Å、4,4’−ビス(4−ピリジル)ビフェニレンの窒素原子間距離は15.570Å、N,N’−ジ(4−ピリジル)−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシジイミドの窒素原子間距離は15.533Åとなる。
本発明に用いられる多座配位可能な有機配位子としては、4,4’−ビピリジル、2,7−ジアザピレン、1,2−ビス(4−ピリジル)エチン、1,4−ビス(4−ピリジル)ブタジイン、1,4−ビス(4−ピリジル)ベンゼン、3,6−ジ(4−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、2,6−ジ(4−ピリジル)−ベンゾ[1,2−c:4,5−c’]ジピロール−1,3,5,7(2H,6H)−テトロン、4,4’−ビス(4−ピリジル)ビフェニレン、N,N’−ジ(4−ピリジル)−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシジイミドなどが好ましく、中でも4,4’−ビピリジルが特に好ましい。
本発明の製造方法において、多座配位可能な有機配位子を反応させる工程(B)は、液相中で行われることが好ましい。用いられる溶媒としては、単一または混合して有機溶媒を使用することができる。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ジエチルエーテル、ブタノール、エチレングリコール、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、クロロホルム、アセトン、酢酸エチル、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミドなどが挙げられるが、中でもプロトン性溶媒が好ましい。プロトン性溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、ホルムアミド、N−メチルホルムアミドなどが挙げられる。特にアルコール溶媒であるメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコールなどがより好ましい。工程(B)で用いる溶媒は、上記工程(A)で用いる溶媒と同一であってもよいし異なるものであってもよい。
金属錯体を製造するときの遷移金属塩と多座配位可能な有機配位子の混合比率は、遷移金属塩:多座配位可能な有機配位子=1:3〜3:1のモル比の範囲内が好ましく、1:2〜2:1のモル比の範囲内がより好ましい。また、多座配位可能な有機配位子のモル濃度は0.005〜2.5mol/Lが好ましい。多座配位可能な有機配位子を反応させる工程(B)を含むことによって、多価カルボン酸化合物と、周期表の3〜11族に属する遷移金属のイオンから選択される少なくとも1種の遷移金属イオンと、該金属イオンに多座配位可能な有機配位子とからなる金属錯体を得ることができる。また、工程(B)を含む場合においても、前記したモノカルボン酸化合物を反応させ、金属錯体中に組み込むことができる。モノカルボン酸化合物は工程(A)において添加することが好ましい。
本発明の金属錯体の製造方法においては、多価カルボン酸化合物、遷移金属イオン、及び必要に応じて該金属イオンに多座配位可能な有機配位子及びモノカルボン酸化合物を加えた場合に、これらのうち少なくとも一種を懸濁状態で反応させてもよい。懸濁状態とは、前記4成分のうちの少なくとも一種を、その飽和溶解度以上の濃度で反応系中に加え、粒子が液体中に分散した状態を意味する。好ましくは、多価カルボン酸化合物と遷移金属イオンとを反応させる工程、または多価カルボン酸化合物と遷移金属イオンとモノカルボン酸化合物とを反応させる工程において、懸濁状態で反応を行うのがよい。懸濁状態で反応を行うことにより、容積効率を上げることができ、金属錯体の生産性が向上する。
本発明の製造方法により得られる金属錯体は、用いる多価カルボン酸化合物、遷移金属イオン及び該遷移金属イオンに多座配位可能な有機配位子の種類により、一次元、二次元、或いは三次元の集積構造をとる。
一例として、多価カルボン酸化合物としてテレフタル酸を、遷移金属イオンとして銅イオンを、多座配位可能な有機配位子として4,4’−ビピリジルを有する金属錯体について詳しく述べる。該金属錯体は、テレフタル酸のカルボキシレート基と銅イオンとからなるパドルホイール骨格中の銅イオンのアキシャル位に4,4’−ビピリジルが配位して形成されるジャングルジム骨格が二重に相互貫入した三次元構造を有する。ジャングルジム骨格の模式図を図1に、ジャングルジム骨格が二重に相互貫入した三次元構造の模式図を図2に示す。
上記「ジャングルジム骨格」とは、テレフタル酸などの多価カルボン酸化合物と遷移金属イオンとからなるパドルホイール骨格中の遷移金属イオンのアキシャル位に4,4’−ビピリジルなどの多座配位可能な有機配位子が配位し、多価カルボン酸化合物と遷移金属イオンとからなる二次元格子状シート間を連結することで形成されるジャングルジム様の三次元構造を意味する。「ジャングルジム骨格が多重に相互貫入した構造」とは、複数のジャングルジム骨格が互いの細孔を埋める形で貫入し合った三次元集積構造である。
該金属錯体がジャングルジム骨格が多重に相互貫入した構造を有することは、例えば単結晶X線構造解析、粉末X線結晶構造解析などにより確認できるが、これらに限定されるものではない。
本発明の製造方法により得られる金属錯体は、溶媒が吸着した状態ではガスを吸着しない。そのため、本発明の吸着材、吸蔵材、或いは分離材として使用する際には、予め得られた金属錯体について真空乾燥を行い、細孔内の溶媒を取り除くことが必要である。通常は金属錯体が分解しない程度の温度(例えば298K〜523K以下)で真空乾燥を行えばよいが、その温度はより低温(例えば298K〜393K以下)であることが好ましい。この操作は、超臨界二酸化炭素による洗浄によっても代えることができ、より効果的である。
本発明の製造方法により得られた金属錯体の耐久性は、繰り返し吸着測定前後の吸着量の変化量を比較することにより評価できる。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下の実施例および比較例における分析および評価は次のようにして行った。
(1)粉末X線回折パターンの測定
X線回折装置を用いて、回折角(2θ)=5〜50°の範囲を走査速度1°/分で走査し、対称反射法で測定した。分析条件の詳細を以下に示す。
<分析条件>
装置:株式会社リガク製SmartLab
X線源:CuKα(λ=1.5418Å) 45kV 200mA
ゴニオメーター:横型ゴニオメーター
検出器:D/teX Ultra
ステップ幅:0.02°
スリット:発散スリット=2/3°
受光スリット=0.3mm
散乱スリット=2/3°
(2)溶媒中の水分量の測定
微量水分測定装置を用いて、溶媒中の水分量の測定を測定した。分析条件の詳細を以下に記す。
<分析条件>
装置:三菱化学株式会社製 微量水分測定装置CA−100
測定方式:電量滴定方式
陽極液:三菱化学株式会社製 アクアミクロン AX
陰極液:三菱化学株式会社製 アクアミクロン CXU
(3)吸着等温線の測定
高圧ガス吸着量測定装置を用いて、容量法によりガス吸脱着量の測定を行い、吸着等温線を作成した(JIS Z8831−2に準拠)。このとき、測定に先立って試料を373K、0.5Paで5時間乾燥し、吸着水などを除去した。分析条件の詳細を以下に示す。
<分析条件>
装置:日本ベル株式会社製BELSORP−HP
平衡待ち時間:500秒
<実施例1>
窒素雰囲気下、ギ酸銅四水和物24.7g(109mmol、銅イオンに対して4モル当量の結晶水を含む)、テレフタル酸18.2g(109mmol)、ギ酸5.04g(109mmol)及び水3.94g(218mmol、銅イオンに対して2モル当量)を脱水メタノール200mLに分散させ、333Kで24時間攪拌した。用いたメタノールの水分量は銅イオンに対して0.0104モル当量であった。よって、テレフタル酸と銅イオンとを反応させる際に、共存していた水の量は、銅イオンに対して6.0104モル当量である。生成物を吸引濾過により回収した後、メタノールで3回洗浄し、中間体を単離した。窒素雰囲気下、単離した中間体をメタノール133mL中に分散させ、4,4’−ビピリジル8.54g(54.7mmol)を添加し、298Kで3時間攪拌した。このとき、反応溶液は懸濁したままであった。金属錯体を吸引濾過により回収した後、メタノールで3回洗浄した。続いて、373K、50Paで8時間乾燥し、目的の金属錯体29.3g(収率88%)を得た。
得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを図3に示す。粉末X線結晶構造解析の結果、得られた金属錯体はジャングルジム骨格が二重に相互貫入した構造を有していることがわかった。粉末X線結晶構造解析結果を以下に示す。また、結晶構造を図4に示す。
Triclinic(P−1)
a=7.87355Å
b=8.94070Å
c=10.79101Å
α=67.14528°
β=80.73986°
γ=79.31579°
wp=2.30%
=4.96%
得られた金属錯体10mgを重アンモニア水700mg(基準物質として3−(トリメチルシリル)プロパン酸ナトリウム−dを0.4wt%含有)に溶解させ、H−NMR測定を行った(測定装置:日本電子株式会社製JNM−LA500、周波数:500MHz、測定温度:298K、積算回数:2,048回)。得られたスペクトルを図5に示す。スペクトルを解析した結果、テレフタル酸の2位、3位、5位及び6位のプロトンに帰属される7.921ppm(s,4H)のピークの積分値を1,000とした際に、4,4’−ビピリジルの2位、6位、2’位及び6’位のプロトンに帰属される8.653ppm(s,4H)のピークの積分値は501.1であったことから、金属錯体に含まれるテレフタル酸と4,4’−ビピリジルのモル比は、テレフタル酸:4,4’−ビピリジル=2:1であることが分かった。なお、図5において3.8ppm付近のブロードなシグナルは水によるものである。
得られた金属錯体10mgを重アンモニア水700mgに溶解させた後、重トリフルオロ酢酸1,100mgを加えて白色沈殿を濾過したサンプルに基準物質として3−(トリメチルシリル)プロパン酸ナトリウム−dを1mg加えて、上記と同様の分析条件でH−NMR測定を行った。得られたスペクトルを図6に示す。スペクトルを解析した結果、4,4’−ビピリジルの2位、6位、2’位及び6’位のプロトンに帰属される9.105ppm(s,4H)のピークと3位、5位、3’位及び5’位のプロトンに帰属される8.482ppm(s,4H)のピークの積分値を合算した値を1,000とした際に、ギ酸のプロトンに帰属される8.129ppm(s,1H)のピークの積分値は5.228であったことから、金属錯体に含まれる4,4’−ビピリジルとギ酸のモル比は、4,4’−ビピリジル:ギ酸=24:1であることが分かった。
以上の結果より、金属錯体に含まれるテレフタル酸とギ酸のモル比は、テレフタル酸:ギ酸=48:1と算出した。
<比較例1>
窒素雰囲気下、ギ酸銅四水和物24.7g(109mmol、銅イオンに対して4モル当量の結晶水を含む)、テレフタル酸18.2g(109mmol)、ギ酸20.1g(436mmol)を脱水メタノール200mLに分散させ、333Kで24時間攪拌した。用いたメタノールの水分量は銅イオンに対して0.0104モル当量であった。よって、テレフタル酸と銅イオンとを反応させる際に、共存していた水の量は、銅イオンに対して4.0104モル当量である。生成物を吸引濾過により回収した後、メタノールで3回洗浄し、中間体を単離した。窒素雰囲気下、単離した中間体をメタノール133mL中に分散させ、4,4’−ビピリジル8.54g(54.7mmol)を添加し、298Kで3時間攪拌した。このとき、反応溶液は懸濁したままであった。金属錯体を吸引濾過により回収した後、メタノールで3回洗浄した。続いて、373K、50Paで8時間乾燥し、目的の金属錯体28.9g(収率86%)を得た。
得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを図7に示す。図3との比較から、得られた金属錯体は実施例1で得た金属錯体と同様のジャングルジム骨格が二重に相互貫入した構造を有していることがわかった。
実施例1と同様にしてH−NMR測定を行った結果、金属錯体に含まれるテレフタル酸と4,4’−ビピリジルのモル比は、テレフタル酸:4,4’−ビピリジル=2:1であり、4,4’−ビピリジルとギ酸のモル比は、4,4’−ビピリジル:ギ酸=34:1であることが分かった。以上の結果より、金属錯体に含まれるテレフタル酸とギ酸のモル比は、テレフタル酸:ギ酸=68:1と算出した。
<比較例2>
窒素雰囲気下、ギ酸銅四水和物24.7g(109mmol、銅イオンに対して4モル当量の結晶水を含む)、テレフタル酸18.2g(109mmol)、ギ酸5.04g(109mmol)及び水27.6g(1,532mmol、銅イオンに対して14モル当量)を脱水メタノール200mLに分散させ、333Kで24時間攪拌した。用いたメタノールの水分量は銅イオンに対して0.0104モル当量であった。よって、テレフタル酸と銅イオンとを反応させる際に、共存していた水の量は、銅イオンに対して18.0104モル当量である。生成物を吸引濾過により回収した後、メタノールで3回洗浄し、中間体を単離した。窒素雰囲気下、単離した中間体をメタノール133mL中に分散させ、4,4’−ビピリジル8.54g(54.7mmol)を添加し、298Kで24時間攪拌した。このとき、反応溶液は懸濁したままであった。金属錯体を吸引濾過により回収した後、メタノールで3回洗浄した。続いて、373K、50Paで8時間乾燥し、目的の金属錯体22.4g(収率73%)を得た。
得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを図8に示す。図3との比較から、得られた金属錯体はジャングルジム骨格が二重に相互貫入した構造を有していないことがわかった。
実施例1と同様にしてH−NMR測定を行った結果、金属錯体に含まれるテレフタル酸と4,4’−ビピリジルのモル比は、テレフタル酸:4,4’−ビピリジル=1.6:1であり、4,4’−ビピリジルとギ酸のモル比は、4,4’−ビピリジル:ギ酸=33:1であることが分かった。これらの結果より、金属錯体に含まれるテレフタル酸とギ酸のモル比は、テレフタル酸:ギ酸=53:1と算出した。
<比較例3>
窒素雰囲気下、硝酸亜鉛六水和物28.1g(94.5mmol、亜鉛イオンに対して6モル当量の結晶水を含む)、テレフタル酸15.7g(94.5mmol)及び4,4’−ビピリジル7.39g(47.3mmol)を容量比でN,N−ジメチルホルムアミド:エタノール=1:1からなるN,N−ジメチルホルムアミドとエタノールの混合溶媒8,000mLに分散させ、363Kで48時間攪拌した。用いた混合溶媒の水分量は亜鉛イオンに対して1.129モル当量であった。よって、テレフタル酸と亜鉛イオンとを反応させる際に、共存していた水の量は、亜鉛イオンに対して7.129モル当量である。生成物を吸引濾過により回収した後、メタノールで3回洗浄を行った。その後、373K、50Paで8時間乾燥し、目的の金属錯体27.5g(収率95%)を得た。
得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを図9に示す。別途合成した単結晶の構造解析結果から求めたシミュレーションパターンとの比較から、得られた金属錯体はジャングルジム骨格が二重に相互貫入した構造を有していることがわかった。
実施例1及び比較例1〜3で得られた金属錯体について、エスペック株式会社製低温恒温恒湿機PL−2KPを用い、353K、相対湿度80%の雰囲気下に置き、水蒸気曝露試験を行った。48時間後にサンプリングを行い、273Kにおける二酸化炭素の吸着量を容量法により測定し、吸着等温線を作成した。吸着等温線より0.92MPaにおける二酸化炭素の平衡吸着量を求め、その保持率を算出した結果を表1に示す。
Figure 2014156405
表1より、本発明の製造方法で得た実施例1の金属錯体は、反応中に共存させる水の量が本発明の規定より少ない比較例1、本発明の規定より多い比較例2及び遷移金属イオンとして亜鉛イオンを用いている比較例3で得た金属錯体に比べ、高温・高湿度下でも二酸化炭素の平衡吸着量保持率が高いことから、本発明で得られる金属錯体が耐水性に優れていることは明らかである。
実施例1及び比較例2で得られた金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素の吸着等温線を測定した。吸着等温線を図10に示す。
図10より、本発明の製造方法で得た実施例1の金属錯体は、反応中に共存させる水の量が本発明の規定より多い比較例2で得た金属錯体に比べ、二酸化炭素の平衡吸着量が高いことから、本発明で得られる金属錯体は吸着性能に優れていることは明らかである。
本発明の製造方法により得られる金属錯体は、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素(メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、プロペン、メチルアセチレン、プロパジエン、ブタン、1−ブテン、イソブテン、1−ブチン、2−ブチン、1,3−ブタジエン、メチルアレンなど)、希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンなど)、硫化水素、アンモニア、硫黄酸化物、窒素酸化物、シロキサン(ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサンなど)、水蒸気または有機蒸気(常温、常圧で液体状の有機物質の気化ガス)などを吸着するための吸着材、吸蔵するための吸蔵材及び分離するための分離材として使用することができる。

Claims (11)

  1. 多価カルボン酸化合物と、周期表の3〜11族に属する遷移金属のイオンから選択される少なくとも1種の遷移金属イオンとを含む金属錯体の製造方法であって、前記多価カルボン酸化合物と前記遷移金属イオンとを溶媒中で反応させる工程(A)を含み、該工程(A)において、遷移金属イオンに対して5〜15モル当量の水を共存させることを特徴とする、金属錯体の製造方法。
  2. 前記工程(A)において、プロトン性溶媒を用いる請求項1に記載の金属錯体の製造方法。
  3. 前記工程(A)において、遷移金属イオンに対して1〜11モル当量の水を添加することにより前記水を共存させる請求項1または2に記載の金属錯体の製造方法。
  4. 前記工程(A)において、さらにモノカルボン酸化合物を添加する工程を含む請求項1〜3のいずれかに記載の金属錯体の製造方法。
  5. 前記工程(A)において、多価カルボン酸化合物、遷移金属イオン及びモノカルボン酸化合物のうちの少なくとも一種が懸濁した状態で反応させる請求項4に記載の製造方法。
  6. さらに、前記遷移金属イオンに多座配位可能な有機配位子を添加する工程を含む請求項1〜4のいずれかに記載の金属錯体の製造方法。
  7. 多価カルボン酸化合物と、周期表の3〜11族に属する遷移金属のイオンから選択される少なくとも1種の遷移金属イオンと、該遷移金属イオンに多座配位可能な有機配位子とを含む金属錯体の製造方法であって、前記多価カルボン酸化合物と前記遷移金属イオンとを溶媒中で反応させる工程(A)と、工程(A)で得られた生成物に前記多座配位可能な有機配位子を反応させる工程(B)とを含み、該工程(A)において、遷移金属イオンに対して5〜15モル当量の水を共存させることを特徴とする、金属錯体の製造方法。
  8. 前記工程(A)において、プロトン性溶媒を用いる請求項7に記載の金属錯体の製造方法。
  9. 前記工程(A)において、遷移金属イオンに対して1〜11モル当量の水を添加することにより前記水を共存させる請求項7または8に記載の金属錯体の製造方法。
  10. 前記工程(A)において、さらにモノカルボン酸化合物を添加する工程を含む請求項7〜9のいずれかに記載の金属錯体の製造方法。
  11. 前記工程(A)及び/または(B)において、多価カルボン酸化合物、遷移金属イオン、多座配位可能な有機配位子及びモノカルボン酸化合物のうちの少なくとも一種が懸濁した状態で反応させる請求項10に記載の金属錯体の製造方法。
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