JP2014156385A - カーボンナノチューブ分散液及びその利用 - Google Patents

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Abstract

【課題】カーボンナノチューブの凝集を抑え、高い分散安定性を示すカーボンナノチューブ分散液と、これを用いた、電気伝導性に優れるカーボンナノチューブ/ゴム複合体を提供する。
【解決手段】カーボンナノチューブ、界面活性剤としてアルキルジフェニルオキシドジスルホン酸ナトリウム、及び分散媒からなるカーボンナノチューブ分散液に、ゴムラテックスを配合し、次いで塩析することで、カーボンナノチューブ/ゴム複合体を得る。前記カーボンナノチューブは、平均直径Avと直径分布3σとが0.60>3σ/Av>0.20であるのが好ましい。また、前記分散媒は水であるのが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は分散性に優れたカーボンナノチューブの分散液及びそれを用いた複合体に関する。
従来から分散剤を用いて、分散安定性に優れたカーボンナノチューブの分散液を得る方法が、多数検討されている。例えば、タウロコール酸、シクロデキストリン、サポニンなどの自然発生の合成洗浄剤を分散剤とする方法(特許文献1)や、水中で、ドデシル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤を分散剤とする方法(特許文献2の実施例、特許文献3の段落0004)が知られている。しかしながら、分散安定性を確保するために、大量の界面活性剤を使用する必要のある場合があり、分散液の用途によっては、界面活性剤による悪影響の生じる場合があった。
また、ドデシル硫酸ナトリウムなどと同様のアニオン性界面活性剤であるドデシルジフェニルオキシドジスルホン酸ナトリウムは、結着樹脂中に着色剤や離型剤を分散させる分散剤として用いられている(特許文献4)。
特表2004−534714号公報 特開2002−264097号公報 特開2007−320828号公報 特開2011−197029号公報
本発明は、カーボンナノチューブの凝集を抑え、高い分散安定性を示すカーボンナノチューブ分散液と、これを用いた、電気伝導性に優れるカーボンナノチューブ/ゴム複合体を提供することを目的とする。
本発明によれば、カーボンナノチューブ、式(1)で表される界面活性剤、及び分散媒からなるカーボンナノチューブ分散液が提供される。
Figure 2014156385
(式(1)中、Rは炭素数4〜18のアルキル基である。)
前記カーボンナノチューブは、平均直径(Av)と直径分布(3σ)とが0.60>3σ/Av>0.20であるカーボンナノチューブにおいて著効が得られる。
また、前記分散媒は水であるのが好ましい。
更に本発明によれば、前記カーボンナノチューブ分散液とゴムラテックスとを混合し、次いで塩析することにより得られるカーボンナノチューブ/ゴム複合体が提供される。
以下、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。
本発明に用いるカーボンナノチューブは、公知の単層又は多層のカーボンナノチューブを用いることができる。本発明では、いずれのカーボンナノチューブもナノカーボン材料として使用可能であるが、なかでも、平均直径(Av)と直径分布(3σ)とが0.60>3σ/Av>0.20を満たすカーボンナノチューブは、そのファンデルワールス力の影響などにより、分散媒への分散安定性が得にくいものであるが、上記式(1)で表される界面活性剤であれば、少ない量でも高い分散安定性が得られる。
本発明において特に好ましいカーボンナノチューブは、平均直径(Av)と直径分布(3σ)とが0.60>3σ/Av>0.20を満たすものである。ここでいう平均直径(Av)、直径分布(3σ)は、それぞれ透過型電子顕微鏡でカーボンナノチューブ100本の直径を測定した際の平均値、並びに標準偏差(σ)に3を乗じたものである。なお、本明細書における標準偏差は、標本標準偏差である。
平均直径(Av)と直径分布(3σ)とが0.60>3σ/Av>0.20を満たすカーボンナノチューブを用いることにより、カーボンナノチューブが少量であっても、優れた導電性を示す組成物を得ることができる。得られる組成物の特性の観点から、0.60>3σ/Av>0.25がより好ましく、0.60>3σ/Av>0.50がさらに好ましい。
3σ/Avは、カーボンナノチューブの直径分布を表し、この値が大きいほど直径分布が広いことを意味する。本発明において直径分布は正規分布を取るものが好ましい。ここで言う直径分布は、透過型電子顕微鏡を用いて観察できる、無作為に選択された100本のカーボンナノチューブの直径を測定し、その結果を用いて、横軸に直径、縦軸に頻度を取り、得られたデータをプロットし、ガウシアンで近似することで得られるものとする。異なる製法で得られたカーボンナノチューブなどを複数種類組み合わせることでも3σ/Avの値を大きくすることはできるが、その場合正規分布の直径分布を得ることは難しい。即ち、本発明においては、単独のカーボンナノチューブ又は単独のカーボンナノチューブに、その直径分布に影響しない量の他のカーボンナノチューブを配合したものを用いるのが好ましい。
0.60>3σ/Av>0.20を満たすカーボンナノチューブであれば特に制限なく使用することができるが、日本国特許第4621896号公報、及び日本国特許第4811712号公報に記載されている、スーパーグロース法により得られるカーボンナノチューブ(以下、「SGCNT」ということがある)が好ましい。SGCNTは、ラマン分光法においてRadial Breathing Mode(RBM)のピークを有するカーボンナノチューブである。なお、三層以上の多層のカーボンナノチューブのラマンスペクトルには、RBMが存在しない。
本発明に用いる界面活性剤は、上記式(1)で表されるアルキルジフェニルオキシドジスルホン酸ナトリウムである。このような界面活性剤としては、ヘキシルジフェニルオキシドジスルホン酸ナトリウム(ダウファックス(登録商標)C6L)、デシルジフェニルオキシドジスルホン酸ナトリウム(ダウファックス(登録商標)C10L)、ドデシルジフェニルオキシドジスルホン酸ナトリウム(ダウファックス(登録商標)2A1、2A1−D、2EP)、n−デシルジフェニルオキシドジスルホン酸ナトリウム(ダウファックス(登録商標)3B2、3B2−D)、ヘキサデシルジフェニルオキシドジスルホン酸ナトリウム(ダウファックス(登録商標)8390、8390−D)、ダウファックス(登録商標)2000などの、炭素数6〜12のアルキルジフェニルオキシドジスルホン酸ナトリウムが市販品として挙げられる。
界面活性剤の配合量は、カーボンナノチューブの重量に対して、通常1〜30倍、好ましくは1.5〜25倍、より好ましくは2〜25倍である。分散安定性の観点からは、界面活性剤の配合量が多い分には特に問題はないが、カーボンナノチューブ分散液の用途によっては成形体表面への界面活性剤のブリードなど、用途や製品固有の問題を生じる原因になりやすいため、通常はなるべく少ない量を採用する。しかし、界面活性剤の量が少な過ぎると、分散液の分散性が不十分となる。
本発明に用いる分散媒は、用途に応じて任意に選択することができるが、界面活性剤の効果を有利に得ることから、メタノール、エタノールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;水;などの極性溶媒であるのが好ましく、特に水が好ましい。
カーボンナノチューブの分散液を得る方法に、格別な制限はなく、分散媒にカーボンナノチューブと上記式(1)記載の界面活性剤とを添加し、常法に従って分散処理をすればよい。分散媒にカーボンナノチューブと界面活性剤とを添加する順番に格別な制限はなく、いずれかを先に添加しても、同時に添加しても良い。分散処理は、攪拌子を用いて分散液を直接攪拌する方法や、キャビテーション効果が得られる分散方法が挙げられる。キャビテーション効果が得られる分散は、液体に高エネルギーを付与した際、水に生じた真空の気泡が破裂することにより生じた衝撃波を利用した分散方法であり、当該分散方法を用いることにより、カーボンナノチューブの特性を損なうことなく水中に分散することが可能となる。キャビテーション効果が得られる分散処理の具体例としては、超音波による分散処理、ジェットミルによる分散処理及び高剪断撹拌による分散処理が挙げられる。分散処理は、一つの方法のみを採用してもよいし、複数の分散処理方法を組み合わせてもよい。分散処理に用いる装置は、従来公知のものを使用すればよい。
本発明の分散液は、目的に応じてラテックスやポリマー溶液などに配合され、各種用途に使用することができる。
例えば、本発明の分散液とゴムラテックスとを混合した後、塩析などにより固形分を分取することで、カーボンナノチューブ/ゴム複合体を得ることができる。
カーボンナノチューブ/ゴム複合体を得るのに用いられるラテックスとしては、アクリロニトリル・ブタジエン系ラテックス、スチレン・ブタジエン系ラテックス、ポリブタジエン系ラテックス、アクリレート系ラテックス、シリコンゴム系ラテックス、フッ素ゴム系ラテックス、エチレン・プロピレン系ラテックスなどが挙げられる。これらの中でもアクリロニトリル・ブタジエン系ラテックスが好適である。
アクリロニトリル・ブタジエン系ラテックスを構成するアクリロニトリル・ブタジエン系ゴム(以下、単に「ニトリルゴム」ということがある)は、α,β−不飽和ニトリルに由来する構造単位を有するものであり、ヨウ素価が100以下であるニトリルゴムが好適に用いられる。ニトリルゴムは、α,β−エチレン性不飽和ニトリルに由来する構造単位の他に、得られるゴム架橋物がゴム弾性を保有するために、通常、ジエン単量体に由来する構造単位及び/又はα−オレフィンに由来する構造単位をも有する。
α,β−エチレン性不飽和ニトリルとジエン単量体及び/又はα−オレフィンと、必要に応じてこれらと共重合可能な他の単量体とを共重合して得られるニトリルゴムを水素添加(水素化)することで、ヨウ素価が100以下のニトリルゴムを得られる。このようなニトリルゴムは市販品を用いることができる。
ニトリルゴムにおけるα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量(ニトリル含量)は、全単量体単位中、20〜60重量%であるのが好ましく、特に25〜55重量%であるのが好ましく、とりわけ25〜50重量%であるのが好ましい。ニトリル含量がこの範囲であると、得られるゴム組成物の改質効果が高くなり、カーボンナノチューブの添加量が少なくても高い導電性が付与できる。ニトリル含量は、重合に用いるα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体の量を変えることにより調整できる。
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量は、JIS K 6364のミルオーブン法に従い、発生した窒素量を測定してアクリロニトリル分子量からその結合量を換算し、定量することができる。
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を形成する単量体としては、ニトリル基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物であれば限定されず、アクリロニトリル;α−クロロアクリロニトリル、α−ブロモアクリロニトリルなどのα−ハロゲノアクリロニトリル;メタクリロニトリルなどのα−アルキルアクリロニトリル;などが挙げられ、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが好ましい。α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体として、これらの複数種を併用してもよい。
ジエン単量体単位を形成するジエン単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどの炭素数が4以上の共役ジエン;1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエンなどの好ましくは炭素数が5〜12の非共役ジエンが挙げられる。これらの中では共役ジエンが好ましく、1,3−ブタジエンがより好ましい。
α−オレフィン単量体単位を形成するα−オレフィン単量体としては、好ましくは炭素数が2〜12のものであり、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが例示される。
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体と、ジエン単量体および/またはα−オレフィン単量体と共重合可能な他の単量体としては、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体、芳香族ビニル単量体、フッ素含有ビニル単量体、共重合性老化防止剤などが例示される。
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの、アクリル酸アルキルエステルおよびメタクリル酸アルキルエステルであって、アルキル基の炭素数が1〜18のもの;アクリル酸メトキシメチル、メタクリル酸メトキシエチルなどのアクリル酸アルコキシアルキルエステルおよびメタクリル酸アルコキシアルキルエステルであって、アルコキシアルキル基の炭素数が2〜12のもの;アクリル酸α−シアノエチル、アクリル酸β−シアノエチル、メタクリル酸シアノブチルなどのアクリル酸シアノアルキルエステルおよびメタクリル酸シアノアルキルエステルであって、シアノアルキル基の炭素数が2〜12のもの;アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピルなどのアクリル酸ヒドロキシアルキルエステルおよびメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステルであって、ヒドロキシアルキル基の炭素数が1〜12のもの;アクリル酸フルオロベンジル、メタクリル酸フルオロベンジルなどのフッ素置換ベンジル基含有アクリル酸エステルおよびフッ素置換ベンジル基含有メタクリル酸エステル;アクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸テトラフルオロプロピルなどのフルオロアルキル基含有アクリル酸エステルおよびフルオロアルキル基含有メタクリル酸エステル;マレイン酸ジメチル、フマル酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチルなどの不飽和多価カルボン酸ポリアルキルエステル;アクリル酸ジメチルアミノメチル、アクリル酸ジエチルアミノエチルなどのアミノ基含有α,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル;などが挙げられる。
芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルピリジンなどが挙げられる。
フッ素含有ビニル単量体としては、フルオロエチルビニルエーテル、フルオロプロピルビニルエーテル、o−トリフルオロメチルスチレン、ペンタフルオロ安息香酸ビニル、ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンなどが挙げられる。
共重合性老化防止剤としては、N−(4−アニリノフェニル)アクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)メタクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)シンナムアミド、N−(4−アニリノフェニル)クロトンアミド、N−フェニル−4−(3−ビニルベンジルオキシ)アニリン、N−フェニル−4−(4−ビニルベンジルオキシ)アニリンなどが挙げられる。
これらの共重合可能な他の単量体は、複数種類を併用されうる。ニトリルゴムに含有される、これらの他の単量体単位の含有量は、全単量体単位中に、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下、特に好ましくは10重量%以下の量である。
ニトリルゴムは、上記したニトリルゴムを構成する各単量体を共重合した後、必要に応じて水素化することにより製造することができる。各単量体を共重合する方法に格別な制限はないがが、たとえば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどの乳化剤を用いて約50〜1000nmの平均粒径を有する共重合体のラテックスを得る乳化重合法や、ポリビニルアルコールなどの分散剤を用いて約0.2〜200μmの平均粒径を有する共重合体の水分散液を得る懸濁重合法(微細懸濁重合法も含む)などを好適に用いることができる。これらのなかでも、重合反応制御が容易なことから乳化重合法がより好ましい。
上記乳化剤の使用量は、全単量体100重量部に対して、好ましくは1〜10重量部、より好ましくは1〜5重量部、特に好ましくは1.5〜3.0重量部である。乳化剤の使用量が多すぎると、メタノール抽出量、すなわち不純物が多くなるおそれがあり、逆に、乳化剤の使用量が少なすぎるとラテックスの安定性が低下して乳化重合反応を行うことができなくなる場合がある。
乳化重合においては、乳化剤以外の重合開始剤、分子量調整剤等の従来公知の重合副資材を使用することができる。これら重合副資材の添加方法は特に限定されず、重合初期に一括添加する方法、分割して添加する方法、連続して添加する方法などいずれの方法でも採用することができる。
重合開始剤としては、ラジカル開始剤であれば特に限定されないが、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素等の無機過酸化物;t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等のアゾ化合物等を挙げることができる。これらの重合開始剤は、単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤としては、無機または有機の過酸化物が好ましい。
重合開始剤として過酸化物を用いる場合には、重亜硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄等の還元剤と組み合わせて、レドックス系重合開始剤として使用することもできる。
重合開始剤の使用量は、全単量体100重量部に対して、好ましくは0.01〜2重量部、より好ましくは0.05〜1.5重量部である。
分子量調整剤としては、特に限定されないが、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン等のメルカプタン類;四塩化炭素、塩化メチレン、臭化メチレン等のハロゲン化炭化水素;α−メチルスチレンダイマー;テトラエチルチウラムダイサルファイド、ジペンタメチレンチウラムダイサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンダイサルファイド等の含硫黄化合物等が挙げられる。これらは単独で、または2種類以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、メルカプタン類が好ましく、t−ドデシルメルカプタンがより好ましい。
分子量調整剤の使用量は、全単量体100重量部に対して、好ましくは0.1〜0.8重量部、より好ましくは0.2〜0.7重量部の範囲である。
乳化重合の媒体は、通常、水が使用される。水の量は、全単量体100重量部に対して、好ましくは80〜500重量部、より好ましくは100〜300重量部である。
乳化重合に際しては、さらに、必要に応じてキレート剤、分散剤、pH調整剤、脱酸素剤、粒子径調整剤等の重合副資材を用いることができる。これらを用いる場合においては、その種類、使用量とも特に限定されない。
共重合により得られたニトリルゴムを水素化する方法は公知の方法によればよく、油層水素化法、水層水素化法のいずれも可能であるが、水素化された後のニトリルゴムのメタノール抽出量(不純物量)を低くできることから、油層水素化法が好ましい。
ニトリルゴムの水素化を油層水素化法で行う場合には、次の方法により行うことが好ましい。
すなわち、まず、乳化重合により調製したニトリルゴムのラテックスを塩析により凝固させ、濾別および乾燥を経て、有機溶媒に溶解する。次いで、有機溶媒に溶解させたニトリルゴムについて水素添加反応(油層水素化法)を行い、水素化物とし、有機溶媒として水溶性のアセトンなどを用いた場合には、得られた水素化物溶液を大量の水中に注いで凝固、濾別および乾燥を行うことにより水素添加されたニトリルゴムを得る。
上記ラテックスの塩析による凝固では、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硫酸アルミニウムなど公知の凝固剤を使用することができるが、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウムなどのマグネシウム塩を採用すると、メタノール抽出量をより一層低減することができるので好ましい。凝固剤の使用量は、水素化前のニトリルゴムの量を100重量部とした場合に、好ましくは1〜100重量部、より好ましくは5〜50重量部、特に好ましくは10〜50である。凝固温度は10〜80℃が好ましい。
油層水素化法の溶媒としては、水素化前のニトリルゴムを溶解する液状有機化合物であれば特に限定されないが、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、シクロヘキサノンおよびアセトンなどが好ましく使用される。
油層水素化法の触媒としては、公知の選択的水素化触媒であれば限定なく使用でき、パラジウム系触媒およびロジウム系触媒が好ましく、パラジウム系触媒(酢酸パラジウム、塩化パラジウムおよび水酸化パラジウムなど)がより好ましい。これらは2種以上併用してもよいが、ロジウム系触媒とパラジウム系触媒とを組み合わせて用いる場合には、パラジウム系触媒を主たる活性成分とすることが好ましい。これらの触媒は、通常、担体に担持させて使用される。担体としては、シリカ、シリカ−アルミナ、アルミナ、珪藻土、活性炭などが例示される。触媒使用量は、水素化するニトリルゴムの量に対して、好ましくは10〜5000重量ppm、より好ましくは100〜3000重量ppmである。
油層水素化法の水素化反応温度は、好ましくは0〜200℃、より好ましくは10〜100℃であり、水素圧力は、好ましくは0.1〜30MPa、より好ましくは0.2〜20MPaであり、反応時間は、好ましくは1〜50時間、より好ましくは2〜25時間である。
ニトリルゴムの水素化を水層水素化法で行う場合には、乳化重合により調製した水素化前のニトリルゴムのラテックスに、必要に応じて水を加えて希釈し、水素添加反応を行うことが好ましい。
ここで、水層水素化法には、水素化触媒存在下の反応系に水素を供給して水素化する(I)水層直接水素化法と、酸化剤、還元剤および活性剤の存在下で還元して水素化する(II)水層間接水素化法とがある。
(I)水層直接水素化法においては、水層の水素化前のニトリルゴムの濃度(ラテックス状態での濃度)は、凝集を防止するために40重量%以下とすることが好ましい。
また、用いる水素化触媒としては、水で分解しにくい化合物であれば特に限定されない。水素化触媒の具体例として、パラジウム触媒では、ギ酸、プロピオン酸、ラウリン酸、コハク酸、オレイン酸、フタル酸などのカルボン酸のパラジウム塩;塩化パラジウム、ジクロロ(シクロオクタジエン)パラジウム、ジクロロ(ノルボルナジエン)パラジウム、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸アンモニウムなどのパラジウム塩素化物;ヨウ化パラジウムなどのヨウ素化物;硫酸パラジウム・二水和物などが挙げられる。これらの中でもカルボン酸のパラジウム塩、ジクロロ(ノルボルナジエン)パラジウムおよびヘキサクロロパラジウム(IV)酸アンモニウムが特に好ましい。水素化触媒の使用量は、適宜定めればよいが、水素化するニトリルゴムの量に対して、好ましくは5〜6000重量ppm、より好ましくは10〜4000重量ppmである。
水層直接水素化法における反応温度は、好ましくは0〜300℃、より好ましくは20〜150℃、特に好ましくは30〜100℃である。反応温度が低すぎると反応速度が低下するおそれがあり、逆に、高すぎるとニトリル基の水素添加などの副反応が起こる可能性がある。水素圧力は、好ましくは0.1〜30MPa、より好ましくは0.5〜20MPaである。反応時間は反応温度、水素圧、目標の水素化率などを勘案して選定される。
水層直接水素化法においては、反応終了後、ラテックス中の水素化触媒を除去する。その方法として、例えば、活性炭、イオン交換樹脂などの吸着剤を添加して攪拌下で水素化触媒を吸着させ、次いでラテックスをろ過または遠心分離する方法を採ることができる。あるいは、水素化触媒を除去せずにラテックス中に残存させることも可能である。
一方、(II)水層間接水素化法では、水層の水素化前のニトリルゴムの濃度(ラテックス状態での濃度)は、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは1〜40重量%とする。
水層間接水素化法で用いる酸化剤としては、酸素、空気、過酸化水素などが挙げられる。これら酸化剤の使用量は、炭素−炭素二重結合に対するモル比(酸化剤:炭素−炭素二重結合)で、好ましくは0.1:1〜100:1、より好ましくは0.8:1〜5:1の範囲である。
水層間接水素化法で用いる還元剤としては、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、酢酸ヒドラジン、ヒドラジン硫酸塩、ヒドラジン塩酸塩などのヒドラジン類またはヒドラジンを遊離する化合物が用いられる。これらの還元剤の使用量は、炭素−炭素二重結合に対するモル比(還元剤:炭素−炭素二重結合)で、好ましくは0.1:1〜100:1、より好ましくは0.8:1〜5:1の範囲である。
水層間接水素化法で用いる活性剤としては、銅、鉄、コバルト、鉛、ニッケル、鉄、スズなどの金属のイオンが用いられる。これらの活性剤の使用量は、炭素−炭素二重結合に対するモル比(活性剤:炭素−炭素二重結合)で、好ましくは1:1000〜10:1、より好ましくは1:50〜1:2である。
水層間接水素化法における反応は、0℃から還流温度までの範囲内で加熱することにより行い、これにより水素化反応が行われる。この際における加熱範囲は、好ましくは0〜250℃、より好ましくは20〜100℃、特に好ましくは40〜80℃である。
こうして得られるアクリロニトリル・ブタジエン系ラテックスと、上述した本発明のカーボンナノチューブ分散液とをと混合し、次いで、塩析による凝固、濾別、乾燥を行うことで、カーボンナノチューブ/ゴム複合体を得ることができる。塩析は、前記油層水素化法におけるラテックスの塩析と同様に、メタノール抽出量をより一層低減することができるという点より、上述したマグネシウム塩を用いることが好ましい。また、凝固に続く濾別および乾燥の工程はそれぞれ公知の方法により行うことができる。
アクリロニトリル・ブタジエン系ラテックスに配合するカーボンナノチューブ分散液の量は、カーボンナノチューブ/ニトリルゴム複合体の電気伝導率の観点から、ニトリルゴム(ラテックスの固形分)100重量部に対して、カーボンナノチューブ0.1〜30重量部、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.5〜10重量部である。カーボンナノチューブの量が少なすぎると十分な導電性が得られない恐れがあり、逆に多すぎても効果に差がないため生産性の点でメリットがない。
本発明の分散液及びカーボンナノチューブ/ゴム複合体には、その使用目的に応じて各種添加剤を配合することができる。添加剤としては、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、発泡剤、帯電防止剤、難燃剤、滑剤、軟化剤、粘着付与剤、可塑剤、離型剤、防臭剤、香料等を挙げることができる。
製造例1(カーボンナノチューブの合成)
特許4621896号公報に記載に従って、スーパーグロース法によってSGCNTを得た。
具体的には次の条件において、カーボンナノチューブを成長させた。
炭素化合物:エチレン;供給速度50sccm
雰囲気(ガス)(Pa):ヘリウム、水素混合ガス;供給速度1000sccm
圧力1大気圧
水蒸気添加量(ppm):300ppm
反応温度(℃):750℃
反応時間(分):10分
金属触媒(存在量):鉄薄膜;厚さ1nm
基板:シリコンウェハー
得られたSGCNTは、BET比表面積1,050m/g、ラマン分光光度計での測定において、単層CNTに特長的な100〜300cm−1の低波数領域にラジアルブリージングモード(RBM)のスペクトルが観察された。また、透過型電子顕微鏡を用い、無作為に100本のSGCNT−1の直径を測定した結果、平均直径(Av)が3.3nm、直径分布(3σ)が1.9、(3σ/Av)が0.58であった。
<実施例1>
製造例で得られたSGCNT0.002g、ドデシルジフェニルオキシドジスルホン酸ナトリウム30%水溶液(製品名「ダウファックス(登録商標)2A1」、ダウケミカル社製;以下、同じ)0.03g、及び蒸留水10gを30mLバイアル瓶に入れ、卓上型超音波洗浄器(製品名「ブランソニック(登録商標)」、日本エマソン社製;以下、同じ)で15分間分散処理をした。目視で粒状の物質が確認できない程度に均一に分散できた。その分散液を、ナノ粒子解析装置(製品名「SZ−100」、堀場製作所製;以下、同じ)を用いて粒子径を測定したところ、キュムラント径が292.5nm、モード径が260.8nm、キュムラント多分散指数が0.424であった。
その後、5日間、室温(23℃)でその分散液を静置保管したが、析出物はなく、均一に分散した状態を保持していた。その分散液を、ナノ粒子解析装置を用いて粒子径を測定したところ、キュムラント径が274.2nm、モード径が292.9nm、キュムラント多分散指数が0.425であった。
<実施例2>
SGCNTに換えて、多層カーボンナノチューブ(製品名「NC7000」、ナノシル社製)を用いた以外は、実施例1同様に処理した。目視で粒状の物質が確認できない程度に均一に分散できた。その分散液を、ナノ粒子解析装置を用いて粒子径を測定したところ、キュムラント径が187.7nm、モード径が143.0nm、キュムラント多分散指数が0.351であった。
その後、5日間、室温(23℃)でその分散液を静置保管したが、析出物はなく、均一に分散した状態を保持していた。その分散液を、ナノ粒子解析装置を用いて粒子径を測定したところ、キュムラント径が189.4nm、モード径が143.6nm、キュムラント多分散指数が0.352であった。
<実施例3>
SGCNT0.3g、ドデシルジフェニルオキシドジスルホン酸ナトリウム30%水溶液25g、蒸留水300gを500mLバイアル瓶に入れ、卓上型超音波洗浄器で1分間分散前処理をした。その分散液をジェットミル(製品名「Nano Jet Pul JN20」、常光社製)を用いて分散処理した(ユニット24、吐出速度300000、5回処理)。目視で粒状の物質が確認できない程度に均一に分散できた。その分散液を、ナノ粒子解析装置を用いて粒子径を測定したところ、キュムラント径が1073.7nm、モード径が698.4nm、キュムラント多分散指数が0.391であった。
その後、12日間、室温(23℃)でその分散液を静置保管したが、析出物はなく、均一に分散した状態を保持していた。その分散液を、ナノ粒子解析装置を用いて粒子径を測定したところ、キュムラント径が1096.1nm、モード径が547.2nm、キュムラント多分散指数が0.645であった。
<比較例1>
ドデシルジフェニルオキシドジスルホン酸ナトリウム30%水溶液に換えて、ドデシル硫酸ナトリウムを0.01g使用した以外は、実施例1同様に処理した。CNTの分散が不十分で、粒子径は測定できなかった。
<比較例2>
ドデシルジフェニルオキシドジスルホン酸ナトリウム30%水溶液に換えて、ロジン酸カリウム25%水溶液(東邦化学社製:P1)を0.04g使用した以外は、実施例2同様に処理したが、CNTの分散が不十分で、粒子径は測定できなかった。
<比較例3>
ドデシルジフェニルオキシドジスルホン酸ナトリウム30%水溶液に換えて、ドデシル硫酸ナトリウムを7.5g使用した以外は、実施例3同様に処理した。CNTの分散が不十分で、粒子径は測定できなかった。
これらの結果から、上記式(1)で表される界面活性剤を用いると、分散安定性に優れ、長期保存後もカーボンナノチューブが凝集しない、カーボンナノチューブの分散液を得ることができることが分かる。特に、分散安定性の低い平均直径(Av)と直径分布(3σ)とが0.60>3σ/Av>0.20であるカーボンナノチューブにおいて、従来用いられているドデシル硫酸ナトリウムでは安定した分散液を得ることができない少量の界面活性剤であっても、上記式(1)で表される界面活性剤であれば、分散安定性に優れたカーボンナノチューブ分散液を得ることができる(実施例1と比較例1との対比)。
<実施例4>
製造例で得られたSGCNT0.002g、ドデシルジフェニルオキシドジスルホン酸ナトリウム30%水溶液(製品名「ダウファックス(登録商標)2A1」、ダウケミカル社製;以下、同じ)0.03g(ドデシルジフェニルオキシドジスルホン酸ナトリウム量0.009g)、及び蒸留水10gを30mLバイアル瓶に入れ、卓上型超音波洗浄器(製品名「ブランソニック(登録商標)」、日本エマソン社製;以下、同じ)で15分間分散処理をした。目視で粒状の物質が確認できない程度に均一に分散できた。その後、5日間、室温(23℃)でその分散液を静置保管したが、析出物はなく、均一に分散した状態を保持していた。
この5日間保管後の分散液を水素添加アクリロニトリル・ブタジエン系ラテックス(アクリロニトリル/ブタジエン/メチルアクリレート=34:65:1(重量比)、水素添加率90%、固形分濃度39.8重量%)0.5gを撹拌子で撹拌した中に滴下して、カーボンナノチューブ−ニトリルゴム混合液を得た。
得られた混合液を撹拌子で撹拌した塩化カルシウム水溶液(濃度35重量%)30gに滴下し、得られた析出物をろ過して蒸留水でよく洗浄して110℃真空下で一晩乾燥してCNT/ゴム複合体を得た。
得られたCNT/ゴム複合体を120℃で真空プレスして、厚み92μmのシートを得た。そのシートの電気特性を抵抗率計(三菱化学アナリテック社製、製品名「ロレスタ(登録商標)GP MCP−T610型」、プローブESP;以下、同じ)で測定した。電気伝導率は1.0×10−4S/cmであった。
<実施例5>
ドデシルジフェニルオキシドジスルホン酸ナトリウム30%水溶液の量を0.15g(ドデシルジフェニルオキシドジスルホン酸ナトリウム量0.045g)にしたこと以外は、実施例4同様に処理して厚み92μmのCNT/ゴム複合体シートを得た。電気伝導率は1.6×10−5S/cmであった。
<比較例4>
ドデシルジフェニルオキシドジスルホン酸ナトリウム30%水溶液に換えて、ドデシル硫酸ナトリウムを0.05g使用した以外は、実施例1同様に処理して厚み92μmのCNT/ゴム複合体シートを得た。電気伝導率は1.8×10−6S/cmであった。
実施例5と比較例4との比較から、界面活性剤が同量である場合、前記式(1)で表される界面活性剤を用いる方が、CNT/ゴム複合体の電気伝導率が高いことが分かる。更に、前記式(1)で表される界面活性剤の場合、より少ない界面活性剤量でもSGCNTが良好に分散し、ゴムに取り込まれる界面活性剤量も少ないことから、優れた電気伝導率が得られることがわかる。

Claims (4)

  1. カーボンナノチューブ、式(1)で表される界面活性剤、及び分散媒からなるカーボンナノチューブ分散液。
    Figure 2014156385
    (式(1)中、Rは炭素数4〜18のアルキル基である。)
  2. 前記カーボンナノチューブが、平均直径(Av)と直径分布(3σ)とが0.60>3σ/Av>0.20であるカーボンナノチューブである請求項1記載のカーボンナノチューブ分散液。
  3. 分散媒が水である請求項1又は2記載のカーボンナノチューブ分散液。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のカーボンナノチューブ分散液とゴムラテックスとを混合し、次いで塩析することにより得られるカーボンナノチューブ/ゴム複合体。
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